(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】固体結晶に基づいて形成された高屈折率光学デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230405BHJP
G02B 1/02 20060101ALI20230405BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/02
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535858
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 US2021019293
(87)【国際公開番号】W WO2021173590
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】マルホトラ, タニア
(72)【発明者】
【氏名】ウーダーカーク, アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤロシュチュク, オレグ
(72)【発明者】
【氏名】パービス セカンド, ラフェ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】イェ, ション
(72)【発明者】
【氏名】レキ, サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ラオ, ティンリン
(72)【発明者】
【氏名】ボロマンド, アーマン
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149BA01
2H149BA05
2H149BA11
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2H149DA12
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2H149FD03
2H199CA04
2H199CA12
2H199CA42
2H199CA54
2H199CA62
2H199CA67
(57)【要約】
光学素子が提供される。光学素子は、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む固体結晶を含む。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む固体結晶を備える、光学素子。
【請求項2】
前記固体結晶が連続層の形式である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記固体結晶が、スタック型の構成で配置された複数の固体結晶を含み、
前記光学素子が、前記固体結晶間に配置された複数の配向構造をさらに含む、
請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記固体結晶が、少なくとも約1.5の主屈折率および少なくとも約0.1の光学異方性を伴う光学的異方性であり、前記主屈折率が、前記固体結晶の軸に平行な方向における屈折率であり、前記固体結晶の前記軸が、前記固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記配向構造が、前記固体結晶の軸に対して直線方向、半径方向または円周方向に、均一な面内方位、周期的または非周期的な面内方位を少なくとも部分的に定義するように構成され、前記固体結晶の前記軸が、前記固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記固体結晶の軸の方位が、前記固体結晶内で空間的に一定であるか、または空間的に変化し、前記固体結晶の前記軸が、前記固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記光学素子が、パンチャラトナムベリー位相光学素子として機能するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記配向構造が、
光配向材料層、
機械的に摩擦された配向層、
異方性ナノインプリントを備えた配向層、
基板上に直接形成された異方性レリーフ、
前記基板上に堆積された強誘電性もしくは強磁性の材料、
薄い結晶性層もしくは結晶性基板、または
磁場もしくは電場の存在下での結晶化によって形成された配向層
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記結晶分子が、前記配向構造と接触して配置された第1の複数の結晶分子と、前記第1の複数の結晶分子の上方に配置された第2の複数の結晶分子とを含み、
前記第1の複数の結晶分子の軸の方位が、前記配向構造によって定義され、
前記第2の複数の結晶分子の軸の方位が、らせん状にねじれている、
請求項1から8のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記固体結晶が、キラル有機結晶分子またはキラルドーパントがドープされた有機結晶分子を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項11】
前記固体結晶が、粒界を有する複数の結晶粒を含み、少なくとも1つの結晶粒が、前記固体結晶が配置されている前記配向構造によって少なくとも部分的に配向される、請求項1から10のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
前記固体結晶が、熱ベースの切替え、偏光ベースの切替え、または感光性ベースの切替えのうちの少なくとも1つを通して、アモルファス状態と配向結晶状態との間で切替え可能であり、かつ/または好ましくは、前記固体結晶が一軸異方性もしくは二軸異方性である、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項13】
前記固体結晶が、
アントラセン、テトラセン、ペンタセン、前記アントラセンの誘導体、前記テトラセンの誘導体もしくは前記ペンタセンの誘導体のうちの少なくとも1つを含む飽和多環式炭化水素もしくは不飽和多環式炭化水素、
窒素複素環、硫黄複素環、および酸素複素環、
キノリン、ベンゾチオフェンもしくはベンゾピラン、
フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、フルオランテン、前記フェナントレンの誘導体、前記フェナントロリンの誘導体、前記ピレンの誘導体もしくは前記フルオランテンの誘導体のうちの少なくとも1つを含む湾曲した非対称のアセン、
2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,6ジメチルカルボン酸エステル結晶分子、前記2,6-ナフタレンジカルボン酸の誘導体もしくは前記2,6ジメチルカルボン酸エステル結晶分子の誘導体、または
アルキル基、シアノ基、イソチオシアネート基、フッ素、塩素もしくはフッ素化エーテルとの置換を含む、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニルもしくはフェニルアセチレン、もしくは前記ビフェニル、前記テルフェニル、前記クアテルフェニルもしくは前記フェニルアセチレンの誘導体
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項14】
少なくとも1つの面内方向に沿って変化する結晶方位と、1.6~2.6の範囲の屈折率と、0.1以上の光学異方性とを有する結晶層
を含む、固体結晶。
【請求項15】
前記結晶層が、単結晶層もしくは多結晶層であり、かつ/または好ましくは、前記結晶層が、少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素もしくは前記多環式芳香族炭化水素の誘導体を含む有機固体結晶層であり、かつ/または好ましくは、前記結晶層が、環構造系および2つの末端基系を含有する分子を含む有機結晶層であり、かつ/または好ましくは、前記結晶層が、芳香族炭化水素、ヘテロアレーン基もしくはこれらの誘導体を含む前駆体を有する結晶性ポリマーを含む有機結晶層であり、かつ/または好ましくは、前記結晶層が、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族炭化水素もいくはヘテロアレーン基を有するアモルファスポリマーのうちの少なくとも1つによって形成された結合剤を含む有機結晶層である、請求項14に記載の固体結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に光学デバイスに関し、より詳細には、固体結晶に基づいて形成された高屈折率光学デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
見た目が魅力的で軽量でコンパクトな電力効率の高い家庭用電子デバイスは、高い需要がある。したがって、これらの電子デバイスで使用される光学素子または光学デバイスを、これらの電子デバイスが、適応性があり、光学的に効率的で、軽量で、コンパクトで、広帯域性があり得るように設計することが望ましい。光学性能および物理的性質を向上させた光学デバイスを製造する技術は、研究開発にとって興味を引くトピックになっている。偏光選択性光学素子を製造するために、液晶(「LC」)が使用されている。偏光選択性光学素子の光学特性は、LCの屈折率および/または複屈折に依存し得る。例えば、LCの複屈折が増加するにつれて、偏光選択性格子の角度および回折帯域幅は増加し得る。現在利用可能なLCは、約1.97という大きな屈折率および約0.3という大きな複屈折を達成するように考案され得る。サイズおよび重量を減らし、かつ光学特性を向上させるには、より高い屈折率およびより大きな複屈折を有する材料に基づく光学素子が非常に望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様によれば、光学素子が提供される。光学素子は、固体結晶を含む。固体結晶は、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、連続層の形式である。
【0005】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、スタック型の構成で配置された複数の固体結晶を含み、光学素子は、固体結晶間に配置された複数の配向構造をさらに含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、少なくとも約1.5の主屈折率および少なくとも約0.1の光学異方性を伴う光学的異方性であり、主屈折率は、固体結晶の軸に平行な方向における屈折率であり、固体結晶の軸は、固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である。
【0007】
いくつかの実施形態では、配向構造は、固体結晶の軸に対して、直線方向、半径方向、または円周方向に、均一な面内方位、周期的または非周期的な面内方位を少なくとも部分的に定義するように構成され、固体結晶の軸は、固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である。
【0008】
いくつかの実施形態では、固体結晶の軸の方位は、固体結晶内で空間的に一定であるか、または空間的に変化し、固体結晶の軸は、固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である。
【0009】
光学素子は、好ましくは、パンチャラトナムベリー位相光学素子として機能するように構成され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、配向構造は、光配向材料層、機械的に摩擦された配向層、異方性ナノインプリントを備えた配向層、基板上に直接形成された異方性レリーフ、基板上に堆積された強誘電性もしくは強磁性の材料、薄い結晶性層もしくは結晶性基板、または磁場もしくは電場の存在下での結晶化によって形成された配向層のうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、結晶分子は、配向構造と接触して配置された第1の複数の結晶分子と、第1の複数の結晶分子の上方に配置された第2の複数の結晶分子とを含み、第1の複数の結晶分子の軸の方位は、配向構造によって定義され、第2の複数の結晶分子の軸の方位は、らせん状にねじれている。
【0012】
固体結晶は、好ましくは、キラル有機結晶分子またはキラルドーパントがドープされた有機結晶分子を含み得る。
【0013】
固体結晶は、好ましくは、粒界を有する複数の結晶粒を含み得、少なくとも1つの結晶粒は、固体結晶が配置されている配向構造によって少なくとも部分的に配向される。
【0014】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、熱ベースの切替え、偏光ベースの切替え、または感光性ベースの切替えのうちの少なくとも1つを通して、アモルファス状態と配向結晶状態との間で切替え可能である。
【0015】
固体結晶は、好ましくは一軸異方性または二軸異方性であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、アントラセンの誘導体、テトラセンの誘導体もしくはペンタセンの誘導体のうちの少なくとも1つを含む飽和多環式炭化水素もしくは不飽和多環式炭化水素;窒素複素環、硫黄複素環、および酸素複素環;キノリン、ベンゾチオフェンもしくはベンゾピラン;フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、フルオランテン、フェナントレンの誘導体、フェナントロリンの誘導体、ピレンの誘導体もしくはフルオランテンの誘導体のうちの少なくとも1つを含む湾曲した非対称のアセン;2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,6ジメチルカルボン酸エステル結晶分子、2,6-ナフタレンジカルボン酸の誘導体もしくは2,6ジメチルカルボン酸エステル結晶分子の誘導体;またはビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニルもしくはフェニルアセチレン、もしくはアルキル基、シアノ基、イソチオシアネート基、フッ素、塩素もしくはフッ素化エーテルとの置換を含むビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニルもしくはフェニルアセチレンの誘導体のうちの少なくとも1つを含む。本開示の第2の態様によれば、固体結晶が提供される。固体結晶は、少なくとも1つの面内方向に沿って変化する結晶方位と、1.6~2.6の範囲の屈折率と、0.1以上の光学異方性とを有する結晶層を含む。
【0017】
結晶層は、好ましくは、単結晶層または多結晶層であり得る。
【0018】
結晶層は、好ましくは、少なくとも1つの多環式芳香族炭化水素または多環式芳香族炭化水素の誘導体を含む有機固体結晶層であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、結晶層は、環構造系および2つの末端基系を含有する分子を含む有機結晶層である。
【0020】
いくつかの実施形態では、結晶層は、芳香族炭化水素、ヘテロアレーン基、またはそれらの誘導体を含む前駆体を有する結晶性ポリマーを含む有機結晶層である。
【0021】
いくつかの実施形態では、結晶層は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族炭化水素、またはヘテロアレーン基を有するアモルファスポリマーのうちの少なくとも1つによって形成された結合剤を含む有機結晶層である。
【0022】
本開示の説明、特許請求の範囲、および図面を考慮することにより、本開示の他の態様が当業者によって理解され得る。
【0023】
以下の図面は、様々な開示された実施形態による例示のために提供されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示の様々な実施形態による、光学デバイスの概略断面図である。
【
図1A-B】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスの概略断面図である。
【
図2A-B】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスの概略断面図である。
【
図2C-D】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスの概略断面図である。
【
図3A-B】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスの概略上面図である。
【
図4A-B】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスの概略断面図である。
【
図4C】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスの概略断面図である。
【
図5A】本開示の様々な実施形態による、入力結合要素および出力結合要素を備えた光導波路の概略断面図である。
【
図5B】本開示の様々な実施形態による、入力結合要素および出力結合要素を備えた光導波路の概略断面図である。
【
図6A】本開示の様々な実施形態による、固体結晶膜内の結晶分子の軸の空間的に変化する配向の概略3次元(「3D」)図である。
【
図6B】本開示の様々な実施形態による、固体結晶膜内の結晶分子の軸の空間的に変化する配向の概略3次元(「3D」)図である。
【
図6C】本開示の様々な実施形態による、固体結晶膜内の結晶分子の軸の空間的に変化する配向の概略3次元(「3D」)図である。
【
図7A】本開示の一実施形態による、透過型パンチャラトナムベリー位相(「PBP:Pancharatnam Berry Phase」)光学デバイスの概略図である。
【
図7B】本開示の一実施形態による、PBP光学デバイスがPBP格子として機能する場合の、
図7Aに示すPBP光学デバイスの結晶分子の軸の方位の概略断面図である。
【
図7C-D】本開示の一実施形態による、
図7Bに示すPBP格子のそれぞれ正の状態および負の状態の概略図である。
【
図8A】本開示の一実施形態による、
図7Aに示すPBP光学デバイスがPBPレンズとして機能する場合の、結晶分子の軸の方位の概略断面図である。
【
図8B】本開示の一実施形態による、
図8Aに示すPBPレンズにおける結晶分子の方位の一部分のx軸に沿う断面図である。
【
図8C-D】本開示の一実施形態による、
図8Aに示すPBPレンズのそれぞれ集束状態および非集束状態の概略図である。
【
図9A】本開示の一実施形態による、反射型PBP光学デバイスの概略図である。
【
図9B】本開示の一実施形態による、
図9Aに示すPBP光学デバイスが反射偏光体積ホログラム(「PVH」)格子として機能する場合の、結晶分子の軸の空間的に変化する方位の概略3D図である。
【
図9C】本開示の一実施形態による、
図9Aに示すPBP光学デバイスが反射PVH格子として機能する場合の、結晶分子の軸の方位の概略断面図である。
【
図10A】本開示の一実施形態による、ニアアイディスプレイ(「NED」)の概略図である。
【
図10B】本開示の一実施形態による、
図10Aに示すNEDの一部分の概略上面断面図である。
【
図11A-B】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスを製造するための方法を示す流れ図である。
【
図11C】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスを製造するための方法を示す流れ図である。
【
図11D-E】本開示の様々な実施形態による、光学デバイスを製造するための方法を示す流れ図である。
【
図12A-C】本開示の一実施形態による、固体結晶を含む光学デバイスを製造するためのプロセスの概略図である。
【
図13A-B】本開示の一実施形態による、固体結晶を含む光学デバイスを製造するためのプロセスの概略図である。
【
図13C-D】本開示の一実施形態による、固体結晶を含む光学デバイスを製造するためのプロセスの概略図である。
【
図14】本開示の一実施形態による、固体結晶を含む光学デバイスを製造するためのシステムの概略図である。
【
図15A】本開示の一実施形態による、物理蒸気輸送(「PVT」)に基づいた、配向構造を有する基板上に有機固体結晶をパターニングする方法の概略図である。
【
図15B】本開示の別の実施形態による、PVTに基づいた、配向構造を有する基板上に有機固体結晶をパターニングするための方法の概略図である。
【
図15C】本開示の別の実施形態による、PVTに基づいた、配向構造を有する基板上に有機固体結晶をパターニングするための方法の概略図である。
【
図16】本開示の一実施形態による、パターニングされた固体結晶(固体結晶層)を形成するための方法の概略図である。
【
図17】本開示の一実施形態による、配向構造の概略図である。
【
図18A】本開示の一実施形態による、基板上に配置された微細構造の概略上面図である。
【
図18B】本開示の一実施形態による、微細構造に配置され、かつ微細構造と固体結晶層との間に配置された表面改質層の概略図である。
【
図19A-B】本開示の様々な実施形態による、固体結晶材料に含まれ得る様々な分子の例示的な化学構造を示す図である。
【
図19C】本開示の様々な実施形態による、固体結晶材料に含まれ得る様々な分子の例示的な化学構造を示す図である。
【
図19D】本開示の様々な実施形態による、固体結晶材料に含まれ得る様々な分子の例示的な化学構造を示す図である。
【
図19E-G】本開示の様々な実施形態による、固体結晶材料に含まれ得る様々な分子の例示的な化学構造を示す図である。
【
図19H-I】本開示の様々な実施形態による、固体結晶材料に含まれ得る様々な分子の例示的な化学構造を示す図である。
【
図19J】本開示の様々な実施形態による、固体結晶材料に含まれ得る様々な分子の例示的な化学構造を示す図である。
【
図20】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【
図21】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【
図22】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【
図23】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【
図24】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【
図25】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【
図26】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【
図27】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【
図28】本開示の様々な実施形態による、所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための方法(または固体結晶層をパターニングするための方法)を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示と一致する実施形態について添付の図面を参照して説明するが、添付の図面は例示を目的とした単なる例であり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。同じ部品または類似の部品について言及するために、可能な限り図面全体で同じ参照番号が使用されているが、その詳細な説明については省略される場合がある。
【0026】
さらに、本開示において、開示された実施形態および開示された実施形態の特徴は、組み合わされてもよい。記載された実施形態は、本開示の実施形態の一部であり、すべてではない。当業者は、開示された実施形態に基づいて、本開示と一致する他の実施形態を導き出してもよい。例えば、開示された実施形態に基づいて、修正、適応、置換、追加、または他の変形が行われてもよい。開示された実施形態のそのような変形は、依然として本開示の範囲内である。したがって、本開示は、開示された実施形態に限定されない。代わりに、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0027】
本明細書で使用される「結合する(couple)」、「結合された(coupled)」、「結合している(coupling)」などの用語は、光学的結合、機械的結合、電気的結合、電磁的結合、またはそれらの組合せを包含し得る。2つの光学デバイス間の「光学的結合」は、2つの光学デバイスが光学的に直列に配列された構成を指し、一方の光学デバイスから出力された光は、他方の光学デバイスによって直接的または間接的に受光され得る。光学的に直列とは、1つの光学デバイスから出力された光が他の光学デバイスのうちの1つまたは複数によって透過、反射、回折、変換、修正、または他の方法で処理もしくは操作され得るように、光路内の複数の光学デバイスを光学的に位置決めすることを指す。いくつかの実施形態では、複数の光学デバイスが配列されるシーケンスは、複数の光学デバイスの全体的な出力に影響を与える場合もあれば、影響を与えない場合もある。結合は、直接結合または間接結合(例えば、中間要素を介した結合)であり得る。
【0028】
「AまたはBのうちの少なくとも一方」という句は、Aのみ、Bのみ、またはAおよびBなど、AとBとのすべての組合せを包含し得る。同様に、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」という句は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCなど、AとBとCとのすべての組合せを包含し得る。「Aおよび/またはB」という句は、「AまたはBのうちの少なくとも一方」という句と同様の意味を有する。例えば、「Aおよび/またはB」という句は、Aのみ、Bのみ、またはAおよびBなど、AとBとのすべての組合せを包含し得る。同様に、「A、B、および/またはC」という句は、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」という句と同様の意味を有する。例えば、「A、B、および/またはC」という句は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCなど、AとBとCとのすべての組合せを包含し得る。
【0029】
第1の要素が、第2の要素に対して、第2の要素の上に、第2の要素において、または少なくとも部分的に第2の要素内で、「取り付けられる」、「提供される」、「形成される」、「貼付される」、「装着される」、「固定される」、「接続される」、「接合される」、「記録される」、または「配置される」と記載されている場合、第1の要素は、堆積、コーティング、エッチング、接合、接着、ねじ込み、圧入、スナップフィッティング、締め付けなどの任意の好適な機械的または非機械的な方式を使用して、第2の要素に対して、第2の要素上に、第2の要素において、または少なくとも部分的に第2の要素内で、「取り付けられる」、「提供される」、「形成される」、「貼付される」、「装着される」、「固定される」、「接続される」、「接合される」、「記録される」、または「配置される」ことがある。さらに、第1の要素は、第2の要素と直接接触した状態であり得るか、または第1の要素と第2の要素との間に中間要素が存在し得る。第1の要素は、第2の要素の左、右、前、後、上、または下などの任意の好適な側に配置され得る。
【0030】
第1の要素が第2の要素の「上」に配置または配列されていると図示または説明されている場合、「上」という用語は、第1の要素と第2の要素との間の例示的な相対方位を示すために使用されているにすぎない。説明は、図に示された参照座標系に基づき得るか、または図に示された現在の表示または例示的な構成に基づき得る。例えば、図に示された表示について説明するとき、第1の要素は、第2の要素の「上」に配置されると説明されることがある。「上」という用語は、第1の要素が垂直な重力方向で第2の要素の上方にあることを必ずしも暗示するものではないことが理解される。例えば、第1の要素と第2の要素とのアセンブリが180度回転するとき、第1の要素は第2の要素の「下」にある(すなわち、第2の要素は第1の要素の「上」にある)場合がある。したがって、図が第1の要素が第2の要素の「上」にあると示しているとき、その構成は単なる例示的な例であることが理解される。第1の要素は、第2の要素に対して任意の好適な方位(例えば、第2の要素の上方または上部、第2の要素の下部または下、第2の要素の左、第2の要素の右、第2の要素の後ろ、第2の要素の前など)に配置または配列され得る。
【0031】
第1の要素が第2の要素の「上」に配置されていると説明される場合、第1の要素は、第2の要素に直接または間接的に配置され得る。第1の要素が第2の要素に直接配置されるとは、第1の要素と第2の要素との間に追加の要素が配置されていないことを示す。第1の要素が第2の要素に間接的に配置されるとは、第1の要素と第2の要素との間に1つまたは複数の追加の要素が配置されていることを示す。
【0032】
本開示で言及される波長範囲、スペクトル、または帯域は、例示を目的としたものである。開示された光学デバイス、システム、要素、アセンブリ、および方法は、可視波長範囲、ならびに紫外線(「UV」)波長範囲、赤外線(「IR」)波長範囲、またはそれらの組合せなどの他の波長範囲に適用され得る。
【0033】
「膜」および「層」という用語は、支持基板上または基板間に配置され得る、剛性もしくは可撓性、自己支持型もしくは自立型の膜、コーティング、または層を含み得る。「面内方向」、「面内方位」、「面内回転」、「面内配向パターン」、および「面内ピッチ」という句はそれぞれ、膜または層の平面(例えば、膜もしくは層の表面平面、または膜もしくは層の表面平面に平行な平面)内の方向、方位、回転、配向パターン、およびピッチを指す。「面外方向」という用語は、膜または層の平面に平行でない(例えば、膜または層の表面平面に垂直である、例えば、表面平面に平行な平面に垂直である)方向を示す。例えば、「面内」方向が表面平面内の方向を指す場合、「面外」方向は、表面平面に垂直な厚さ方向、または表面平面と平行ではない方向を指すことがある。
【0034】
レンズ、波長板、格子、導波路などの光学デバイスは、光学系において広く使用されている。例えば、このような光学デバイスは、拡張現実(「AR」)、仮想現実(「VR」)、および/または複合現実(「MR」)アプリケーション用のニアアイディスプレイ(「NED」)に実装されている。例えば、光導波路は、NEDにおいて仮想世界と現実世界とを重ね合わせるために使用されている。導波路が、例えばARアプリケーション用の仮想世界画像と現実世界画像とを重ね合わせるためのコンバイナとして機能する場合、導波路は導波路コンバイナと呼ばれることもある。導波路ディスプレイシステムは、画像光を放出するように構成された光源アセンブリと、画像光をユーザの目に誘導するように構成された導波路とを含み得る。光源アセンブリ(例えば、仮想画像プロジェクタ)からの画像光は、導波路の中へ結合され、導波路内の全内部反射(「TIR」)を介して目に中継され得る。光源アセンブリから放出される画像光は、複数の異なる色(例えば、赤、緑、および青)を含み得る。いくつかの実施形態では、異なる色の画像光を目に効率的に送達するために、スペクトル帯域を共有する複数の導波路が使用される場合があり、これにより、光学素子の数および重量(したがって、導波路ディスプレイシステムのサイズおよび重量)が増加する可能性がある。さらに、仮想世界の視野(「FOV」)は、導波路の材料の屈折率に依存し得る。導波路の材料の屈折率が大きくなるにつれて、導波路によって提供されるFOVは広がる可能性がある。
【0035】
さらに、偏光選択性光学デバイスは、NEDにおいて、導波路コンバイナの入力結合要素(例えば、格子)、バリフォーカルおよび/もしくはマルチフォーカルブロックの調節要素、ならびに/またはアイトラッキングシステムにおけるアイトラッキング構成要素などとして使用されている。偏光選択性光学デバイスを製造するために、液晶(「LC」)が使用されている。偏光選択性光学デバイスの光学特性は、LCの屈折率および/または複屈折に依存し得る。例えば、LCの複屈折が増加するにつれて、偏光選択性LC格子の角度および回折帯域幅は増加し得る。現在利用可能なLCは、最大約1.97の屈折率および最大約0.3の複屈折を実現するように考案され得る。NEDのサイズおよび重量を低減し、光学特性を高めるとともに、先進的でスマートなNEDを実現するには、より高い屈折率およびより大きな複屈折を有する材料に基づく光導波路および偏光選択性光学デバイスが非常に望ましい。
【0036】
本開示は、固体結晶膜または固体結晶層の形式の固体結晶(または固体結晶材料)を含む光学デバイスを提供する。固体結晶は、単結晶または多結晶であり得る。固体結晶材料は、有機材料、無機材料、またはそれらの組合せを含み得る。例えば、固体結晶は、有機結晶性材料、有機非結晶性材料、有機アモルファス材料、有機半結晶性材料および有機半アモルファス材料、無機結晶性材料、無機非結晶性材料、無機アモルファス材料、無機半結晶性材料および無機半アモルファス材料、有機半結晶性材料および有機半非結晶性材料、無機半結晶性材料および無機半非結晶性材料、またはそれらの組合せを含み得る。解説のために、固体結晶材料の一例として、固体有機結晶材料が使用される場合がある。解説の便宜のために、固体結晶材料に含まれる固体結晶分子は、有機分子または結晶分子と呼ばれることもある。本明細書に開示される技術的解決策は、有機結晶材料に限定されないことが理解される。
【0037】
本明細書で使用される結晶(または固体結晶)の「軸」とは、固体結晶が最も高いまたは最も大きい屈折率を有する固体結晶の軸を指すことがある。固体結晶に含まれる結晶分子の「軸」とは、結晶分子が最も高いまたは最も大きい屈折率を有し得る結晶分子の軸を指すことがある。結晶の軸は、結晶に含まれる結晶分子の軸の集合効果であり得る。固体結晶に含まれる結晶分子の軸の局所的方位(したがって、固体結晶の軸の方位)は、固体結晶が、固体結晶を含む光学デバイスに少なくとも1つの所定の光学機能を提供し得るように構成され得る。固体結晶の軸の方位は、固体結晶内の結晶分子の軸の方位の集合効果であり得る。固体結晶の軸および結晶分子の軸の上記の定義は、解説の便宜のためのものである。固体結晶の軸の方位は、固体結晶の結晶方位と呼ばれることもある。固体結晶および結晶分子に関連する方位は、屈折率が最も高い軸によって定義されることに限定されない。固体結晶の方位および結晶分子の方位の解説のために、または固体結晶もしくは結晶分子に関連する配向パターンの解説のために、他の好適な軸(例えば、屈折率が最も小さい軸、または屈折率が最も大きい軸に垂直な軸)が、構成可能な対象として使用される場合がある。
【0038】
いくつかの実施形態では、固体結晶の軸の方位は、結晶分子を所定の配向パターンで配向する(例えば、結晶分子の軸の方位を配向する)ことによって構成され得る。いくつかの実施形態では、所定の配向パターンは、固体結晶内の結晶分子の非自然的な配向パターンを指すことがある。例えば、所定の配向パターンは、結晶分子が配置されている基板に少なくとも部分的に構成され得るか、または特別なメカニズム(例えば、エッチング)を介して固体結晶内に構成され得るか、または基板上に配置された別個の材料で構成され得る。結晶分子の所定の配向パターンは、光学素子の少なくとも1つの所定の光学機能を実現する目的で、特別に設計、構成、または導入され得る。所定の配向パターンは、1次元パターン(例えば、結晶分子は同じ単一の方向に配向され得る)、2次元パターン(例えば、結晶分子は2次元平面において所定の方向に配向され得る)、または3次元パターン(例えば、結晶分子は3次元方向に配向され得る)であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、固体結晶の結晶分子の所定の配向パターンは、配向構造によって少なくとも部分的に構成、設定、または定義され得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、固体結晶の結晶分子が配置される基板の表面に形成、エッチング、配置、もしくは他の方法で提供される配向膜または配向層であり得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、別個の材料で形成され、基板の表面上に配置され得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、基板の表面に(例えば、基板の表面上に、または少なくとも部分的に基板の表面において)直接形成(例えば、直接エッチング)され得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、特別なメカニズムを介して、固体結晶(例えば、固体結晶層)中に直接形成され得る。配向構造は、固体結晶内部の構造上の特性であり得る。例えば、配向パターンは、成長した固体結晶の配向に影響を与えるように構成され得る磁場または電場の存在下で発生する固体結晶の結晶化プロセス中に形成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、結晶化プロセス中に固体結晶の表面に一体的に形成され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、光学デバイスは、結晶分子を所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向するように構成された配向構造を含み得る。配向構造は、配向構造パターンを含むかまたは定義し得る。いくつかの実施形態では、配向構造パターンは、結晶分子の所定の配向パターンと実質的に同じであり得る。例えば、固体結晶に含まれる結晶分子の異なる層が、配向構造の上方に配置され得る。配向構造と接触している第1の複数の結晶分子は、配向構造によって配向構造パターンで配向され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶中の第1の複数の結晶分子の上方に積み重ねられた第2の複数の結晶分子は、対応する第1の複数の結晶分子と同じパターンで配向され得る。このような構成では、固体結晶内の結晶分子は、実質的に配向構造パターンで配向され得、配向構造パターンは、結晶分子の所定の配向パターンと実質的に同じであり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、配向構造と接触している第1の複数の結晶分子は、配向構造によって配向構造パターンで配向され得る。第1の複数の結晶分子の上方に配置された(例えば、上方に積み重ねられた)第2の複数の結晶分子は、対応する第1の複数の結晶分子と同じパターンで配向されない場合がある(例えば、第2の複数の結晶分子は、配向構造パターンとは異なるパターンで配向され得る)。代わりに、第2の複数の結晶分子は、対応する第1の複数の結晶分子に相対する配向構造パターンに基づいて、1つまたは複数の所定の回転角だけ回転され得る(例えば、第2の複数の結晶分子は、固体結晶に添加されたキラルドーパントを介して導入されるねじれを含み得る)。1つまたは複数の所定の回転角は、面内回転角または面外回転角のうちの少なくとも一方であり得る。結晶分子の所定の配向パターンは、第1の複数の結晶分子が配向される配向構造パターンと、第1の複数の結晶分子の上方に積み重ねられた第2の複数の結晶分子に関連するねじれ(または回転)配向パターンとの組合せの結果であり得る。このような構成では、配向構造の配向構造パターンは、結晶分子の所定の配向パターンとは異なり得る。配向構造は、結晶分子を所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向し得る。
【0042】
例えば、配向構造は、配向構造と接触している結晶分子(例えば、第1の複数の分子)を配向構造パターンで配向し得る。第1の複数の結晶分子の上方に配置された(例えば、上方に積み重ねられた)固体結晶に含まれる残りの(例えば、第2の複数の)結晶分子は、配向構造によって配向されている対応する隣接する第1の複数の結晶分子に相対して配向され得る。いくつかの実施形態では、残りの結晶分子は、第1の複数の結晶分子の同じ配向に従い得る。例えば、残りの結晶分子の軸の方位は、対応する第1の複数の結晶分子の軸の方位に従い得る。いくつかの実施形態では、残りの結晶分子の少なくとも一部分は、対応する第1の複数の結晶分子の軸の方位に相対して1つまたは複数の所定の回転角だけ回転した軸の方位を有し得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、配向構造は、結晶分子の軸の方位(例えば、配向構造上で成長する固体結晶材料の成長方向)を定義または設定するように構成された構造(層、膜、または物理的特徴など)を指すことがある。いくつかの実施形態では、配向構造は、数分子の厚さなど、薄い場合がある。配向構造の層、膜、または物理的特徴は、機械的な双極子間の磁気メカニズム、または任意の他の好適なメカニズムを介して成長する固体結晶材料の分子(例えば、固体結晶分子)と相互作用し得る。例えば、配向構造は、ネマティックLC分子の方位を配向するためにLCデバイス(例えば、LCディスプレイ)で使用されてきたものと類似し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、結晶分子は、配向構造の上方で実質的に均一に配向され得る。すなわち、結晶分子の軸の方位は、実質的に均一に配向され得、その結果、固体結晶の軸の空間的に変化しない(例えば、一定の)方位がもたらされる。いくつかの実施形態では、結晶分子は、配向構造の上方で不均一に配向され得る。例えば、結晶分子の軸の方位は、固体結晶内で空間的に変化する場合があり、その結果、固体結晶の軸の空間的に変化する方位がもたらされる。結晶分子の異なる所定の配向パターンによって構成され得る、固体結晶の軸の異なる方位により、光学デバイスは、異なる光学機能を発揮し得る。例えば、光学デバイスは、結晶分子の所定の配向パターンに応じて、導波路、格子、プリズム、レンズ、アキシコン、光学回転子、波長板または位相差板、レンズアレイ、プリズムアレイなどとして機能し得る。
【0045】
固体結晶は、層、膜、プレート、または、層、膜、もしくはプレートのスタックの形式であり得る。固体結晶は、高い屈折率を有し得る。その結果、固体結晶を薄く軽量にすることができる。例えば、固体結晶は、約500ナノメートル(「nm」)から約5マイクロメートル(「μm」)の厚さを有し得る。したがって、固体結晶を含む光学デバイスを、薄く、軽量で、コンパクトにすることができる。固体結晶材料は、限られた小さなサイズの半導体素子または半導体デバイスを製造するために使用されている。例えば、固体の元の結晶材料を使用して製造された従来の半導体素子または半導体デバイスは、約10ミリメートル(「mm」)×10mm以下のサイズを有し得る。本開示で開示される技術的解決策により、大きなサイズを有する固体結晶の製造が可能になる。例えば、配向構造を使用して固体結晶を形成する(例えば、成長させる)ことによって、固体結晶を、約30~100mm以上の1つまたは複数の横方向寸法を有するように製造することができる。大きなサイズを有する固体結晶は、多種多様な技術分野での光学デバイスの用途を広げる可能性がある。
【0046】
図1Aは、本開示の一実施形態による、光学素子または光学デバイス100のx-z断面図を概略的に示す。
図1Aに示すように、光学デバイス100は、膜(層、またはプレート)の形式の固体結晶115を含み得る。固体結晶115の本体は、例示のために平坦に示されているが、固体結晶115の本体は、湾曲形状を有し得る。本開示では、解説のために、固体結晶は、固体結晶膜(または固体結晶層)と呼ばれることもある。固体結晶115は、複数の結晶分子を有する固体結晶材料を含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、光学デバイス100は、固体結晶115の軸の方位もしくは固体結晶115に含まれる結晶分子を配向するための所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義または設定するように構成された配向構造110も含み得る。解説のために、固体結晶115の軸は、固体結晶115が最も高いまたは最も大きい屈折率を有し得る軸を指すことがある。固体結晶115内の結晶分子の軸は、結晶分子が最も高いまたは最も大きい屈折率を有し得る軸を指すことがある。固体結晶115の軸の方位は、固体結晶115に含まれる結晶分子の軸の方位の集合効果であり得る。固体結晶115は、配向構造110上に配置され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、配向構造110上で成長し得る。いくつかの実施形態では、配向構造110は省略され得る。例えば、所定の配向パターンは、強誘電性材料または強磁性材料および強誘電性場または強磁性場の存在下での結晶化を通じて、固体結晶115の内部に導入され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、光学デバイス100は、基板105に(例えば、基板105上に)配置された様々な層、膜、および/または構造に支持および/または保護を提供するように構成された基板105も含み得る。配向構造110は、基板に配置され得る。いくつかの実施形態では、配向構造110は、基板105の一体部分であり得る。例えば、配向構造110は、基板105の表面上に、または少なくとも部分的に基板105の表面においてエッチングされ得る。いくつかの実施形態では、配向構造110は、基板105の内部に一体的に形成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造110は、基板105の表面上に別個に形成(例えば、堆積)され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、基板105は、固体結晶115に含まれる結晶分子に適合し得る(例えば、格子定数が一致する)。いくつかの実施形態では、基板105は、少なくとも可視スペクトル(例えば、約380nmから約700nmまでの範囲の波長)において光学的に透明であり得る(例えば、少なくとも約60%の光透過率を有する)。いくつかの実施形態では、基板105はまた、赤外線(「IR」)スペクトルの少なくとも一部分(例えば、約700nmから約1mmまでの範囲の波長)において透明であり得る。基板105は、ガラス、プラスチック、サファイア、ポリマー、半導体、またはそれらの組合せなど、上記で列挙した波長範囲の光に対して実質的に透明である好適な材料を含み得る。基板105は、剛性、半剛性、可撓性、または半可撓性であり得る。いくつかの実施形態では、基板105は、平坦形状、凸形状、凹形状、非球面形状、または自由形状の1つまたは複数の表面を有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、基板105は、別の光学素子もしくは光学デバイスの一部、または別の光電気要素もしくは光電気デバイスの一部であり得る。例えば、基板105は、固体光学レンズまたは固体光学レンズの一部であり得る。いくつかの実施形態では、基板105は、ディスプレイスクリーンなどの機能的デバイスの一部であり得る。いくつかの実施形態では、基板105は、光学デバイス100を製造、保管、または輸送するために使用され得る。いくつかの実施形態では、基板105は、光学デバイス100の残りの部分が製造されるか、または別の場所もしくはデバイスに輸送された後に、光学デバイス100の残りの部分から取り外し可能または除去可能であり得る。すなわち、基板105は、製造、輸送、および/または保管において、基板105上に提供される固体結晶115を支持するために使用され得、光学デバイス100の製造が完了したとき、または光学デバイス100が別の光学デバイスまたは光学系に実装されることになるとき、光学デバイス100の固体結晶115から分離または除去され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、固体結晶115は、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、または任意の他の飽和もしくは不飽和多環式炭化水素、およびそれらの誘導体、窒素複素環、硫黄複素環、および酸素複素環、キノリン、ベンゾチオフェン、およびベンゾピラン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、およびフルオランテンなどの湾曲した非対称のアセン、ならびにそれらの誘導体、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ジメチルカルボン酸エステル分子、およびそれらの誘導体、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、もしくはフェニルアセチレン、またはアルキル基、シアノ基、イソチオシアネート基、フッ素、塩素、もしくはフッ素化エーテルとの置換基を含むそれらの誘導体、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ピレン、ポリセン、フルオランテン、ベンゾフェノン、ベンゾクロメン、ベンジル、ベンズイミダゾール、ベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、ニトロピリジン-N-オキシド、ベンゼン-1,4-ジカルボン酸、ジフェニルアセチレン、N-(4-ニトロフェニル)-(s)-プロリナール、4,5-ジシアノイミダゾール、ベンゾジチオフェン、シアノピリジン、チエノチオフェン、スチルベン、アゾベンゼン、またはそれらの誘導体などの多環式芳香族炭化水素など、1つまたは複数の固体結晶材料に基づいて製造され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、キラル結晶分子またはキラルドーパントがドープされた結晶分子を含み得、固体結晶115は、キラリティ、すなわち掌性を示し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、以下の分子のうちの少なくとも1つを含み得、以下の分子のそれぞれは、環構造(または環構造系)および2つの末端基(または末端基系)を含み得る。いくつかの実施形態では、環構造は、シクロヘキサン、シクロペンタン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、またはそれらの誘導体などの1つまたは複数の飽和環状基を含み得る。いくつかの実施形態では、環構造は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、ビフェニル、トラン、ベンズイミダゾール、ジフェニルアセチレン、シアノピリジン、チエノチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、シラフルオレン、またはそれらの誘導体などの1つまたは複数の不飽和芳香族基を含み得る。末端基は、1つまたは複数のC1~C10アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、-CN、-NCS、-SCN、-SF5、-Br、-Cl、-F、-OCF3、-CF3、モノフッ素化もしくはポリフッ素化C1~C10アルキル基またはアルコキシ基を含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、結晶性ポリマーを含み得る。結晶性ポリマーの前駆体は、芳香族炭化水素またはヘテロアレーン基、およびそれらの誘導体を含み得る。結晶性ポリマーの例には、ポリエチレンナフタレート、ポリ(ビニルフェニルスルフィド)、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリチエノチオフェン、ポリチオフェン、ポリ(n-ビニルフタルイミド)、パリレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリ(ブロモフェニル)、ポリ(ビンリナフタレン)、または官能基を有する前駆体を有する液晶ポリマーが含まれ得る。いくつかの実施形態では、液晶ポリマーの前駆体は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族炭化水素、またはヘテロアレーン基を含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、結合剤として、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族の炭化水素基またはヘテロアレーン基(例えば、ポリスチレン)を有するアモルファスポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、脂肪酸、脂質、可塑剤、または界面活性剤(例えば、モノフッ素化もしくはポリフッ素化アルキル基またはアルコキシ基を有する分子)などの添加剤も含み得る。
【0055】
図19Aは、固体結晶材料に含まれ得る様々な分子の例示的な化学構造を示す。化学構造では、Rは官能基であり、CH
3、H、OH、OMe、OEt、OiPr、F、Cl、Br、I、Ph、NO
2、SO
3、SO
2Me、iPr、Pr、t-Bu、sec-Bu、Et、アセチル、SH、SMe、カルボキシル、アルデヒド、アミド、ニトリル、エステル、SO
2NH
3、NH
2、NMe
2、NMeH、もしくはC
2H
2のいずれか1つまたは任意の組合せであり得る。例えば、化学式が2つ以上のRを含む場合、すべてのRが異なり得るか、すべてのRが同じであり得るか、少なくとも2つのRが異なり得るか、または少なくとも2つのRが同じであり得る。
図19Bは、上記に列挙された
図19Aに示す官能基Rの1つまたは組合せを含む分子の例示的な化学構造を示す。
【0056】
いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、アミノ酸を含み得る。
図19Cは、固体結晶材料に含まれ得る様々なアミノ酸の化学構造を示す。官能基Rは、CH
3、H、OH、OMe、OEt、OiPr、F、Cl、Br、I、Ph、NO
2、SO
3、SO
2Me、iPr、Pr、t-Bu、sec-Bu、Et、アセチル、SH、SMe、カルボキシル、アルデヒド、アミド、ニトリル、エステル、SO
2NH
3、NH
2、NMe
2、NMeH、またはC
2H
2のいずれかであり得る。さらに、いくつかの実施形態では、
図19Cに示す分子は、列挙された官能基Rのいずれか1つまたは任意の組合せを含み得る。
【0057】
図19Dは、固体結晶材料に含まれ得る分子の例示的な化学構造を示す。いくつかの実施形態では、分子は、上記の官能基Rの1つまたは組合せ、すなわち、CH
3、H、OH、OMe、OEt、OiPr、F、Cl、Br、I、Ph、NO
2、SO
3、SO
2Me、iPr、Pr、t-Bu、sec-Bu、Et、アセチル、SH、SMe、カルボキシル、アルデヒド、アミド、ニトリル、エステル、SO
2NH
3、NH
2、NMe
2、NMeH、もしくはC
2H
2のいずれか1つまたは任意の組合せを含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、固体結晶材料に含まれ得る分子は、ドナー-ブリッジ-アクセプタ分子モチーフ、ドナー-ブリッジ-ドナー分子モチーフ、またはアクセプタ-ブリッジ-アクセプタ分子モチーフを有し得る。
図19Eは、分子に含まれ得る例示的なブリッジ官能基を示す。
図19Fは、分子に含まれ得る例示的な電子求引基(アクセプタ基)を示す。
図19Gは、分子に含まれ得る例示的な電子供与基(ドナー基)を示す。いくつかの実施形態では、分子は、上記の官能基Rの1つまたは組合せ、例えば、CH
3、H、OH、OMe、OEt、OiPr、F、Cl、Br、I、Ph、NO
2、SO
3、SO
2Me、iPr、Pr、t-Bu、sec-Bu、Et、アセチル、SH、SMe、カルボキシル、アルデヒド、アミド、ニトリル、エステル、SO
2NH
3、NH
2、NMe
2、NMeH、もしくはC
2H
2のいずれか1つまたは任意の組合せを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、有機塩、少なくとも1つの有機ベースの成分を有する陰イオン性分子と陽イオン性分子との混合物を含み得る。
図19Hは、固体結晶材料に含まれ得る陰イオン性分子の例示的な化学構造を示す。
図19Iは、陽イオン性分子の例示的な化学構造を示す。官能基Rは、CH
3、H、OH、OMe、OEt、OiPr、F、Cl、Br、I、Ph、NO
2、SO
3、SO
2Me、iPr、Pr、t-Bu、sec-Bu、Et、アセチル、SH、SMe、カルボキシル、アルデヒド、アミド、ニトリル、エステル、SO
2NH
3、NH
2、NMe
2、NMeH、もしくはC
2H
2のいずれか1つまたは任意の組合せであり得る。いくつかの実施形態では、官能基Rはまた、
図19Fに示す電子求引官能基と
図19Gに示す電子供与官能基との混合物を含み得る。
図19Jは、固体結晶相および/または液晶相を有する材料の分子の例示的な化学構造を示す。固体結晶相および/または液晶相を有する材料の分子の化学構造は、A-B-C-D-Eという構造式を有し得る。「A」、「B」、「C」、「D」、および「E」要素の例を
図19Jに示す。
【0060】
固体結晶115は、連続的な固体結晶膜であり得、隣接する結晶格子は、光学デバイス100全体にわたって互いに連続して接続され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、光学異方性、例えば、一軸光学異方性または二軸光学異方性であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、連続的な固体結晶115内に空間的に変化するまたは空間的に均一な光学異方性を有するように構成され得、この光学異方性は、配向構造110によって少なくとも部分的に定義、構成、または設定され得る。いくつかの実施形態では、空間的に変化するまたは空間的に均一な光学異方性は、固体結晶115に含まれる分子の軸の空間的に変化するまたは空間的に均一な方位に基づいて生成され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、固体結晶115は、第1の方向に沿った第1の主屈折率、および第1の方向に垂直な面内方向に沿った第2の主屈折率を有し得る。いくつかの実施形態では、第1の方向は、固体結晶115が最も高いまたは最も大きい屈折率を有し得る固体結晶115の軸に平行であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115の第1の主屈折率は、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.7、少なくとも約1.8、少なくとも約1.9、少なくとも約2.0、少なくとも約2.1、または少なくとも約2.2であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115の第1の主屈折率は、1.6~2.6の範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115の光学異方性(例えば、面内複屈折)は、少なくとも約0.1、少なくとも約0.2、少なくとも約0.3、少なくとも約0.35、または少なくとも約0.4であり得る。
【0062】
固体結晶115は、光学デバイス100の少なくとも1つの所定の光学機能を実現するように構造的に構成または製造され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、固体結晶115の軸の実質的に空間的に変化しない(例えば、一定の)方位を有するように構造的に構成または製造され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、固体結晶115の軸の空間的に変化する方位を有するように構造的に構成または製造され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115の軸の空間的に一定のまたは空間的に変化する方位を構成することは、固体結晶115に含まれる結晶分子を所定の配向パターン、例えば、空間的に均一な配向パターン、または空間的に変化する配向パターンで配向することによって実現され得る。すなわち、固体結晶115は、結晶分子が所定の配向パターンで配向されるように構造的に構成または製造され得、それにより、少なくとも1つの所定の光学機能を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、配向構造110は、結晶分子を所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向するように構成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造110と接触している結晶分子の軸の方位は、配向構造110によって(または配向構造110とともに)配向され得、残りの結晶分子の軸の方位は、配向構造110によって配向および/または構成された隣接する結晶分子に従って配向され得る。いくつかの実施形態では、結晶分子の所定の配向パターンは、固体結晶115内の結晶分子の軸の空間的に均一な(もしくは一定の)方位および/または空間的に変化する方位をもたらし得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115内の結晶分子の軸の方位は、直線方向に、半径方向に、円周(例えば、方位角)方向に、もしくはそれらの組合せで周期的または非周期的に変化し得る。したがって、固体結晶115の軸は、固体結晶115内で、一定の方位、直線方向に周期的もしくは非周期的に変化する方位、半径方向に周期的もしくは非周期的に変化する方位、円周(例えば、方位角)方向に周期的もしくは非周期的に変化する方位、またはそれらの組合せを有するように構成され得る。
【0064】
光学デバイス100は、固体結晶115の軸の異なる方位に応じて、異なる光学機能を提供し得る。例えば、光学デバイス100は、固体結晶115の軸の異なる方位に応じて、光導波路、格子、プリズム、レンズ、アキシコン、光学回転子、波長板もしくは位相差板、レンズアレイ、プリズムアレイ、またはそれらの組合せとして機能し得る。光学デバイス100は、透過型光学デバイス、反射型光学デバイス、または透過反射型光学デバイスとして機能し得る。いくつかの実施形態では、光学デバイス100が透過型光学デバイスとして機能する場合、固体結晶115は、少なくとも可視スペクトル(例えば、約380nmから約700nm)において光学的に透明であり得る(例えば、少なくとも約60%の光透過率を有する)。いくつかの実施形態では、固体結晶115はまた、IRスペクトルの少なくとも一部分において光学的に透明であり得、例えば、近IRスペクトルにおいて少なくとも約60%の光透過率を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、配向結晶状態の固体結晶115は、光学異方性に起因して偏光依存性であり得る。例えば、固体結晶115は、異なる偏光を有する入射光に対して異なる光学機能を発揮し得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、様々な方法を通して、例えば、偏光ベースの切替え、熱ベースの切替え、または外部場ベースの切替えなどを通して、アモルファス状態と配向結晶状態との間で切替え可能であり得る。アモルファス状態では、固体結晶115は固体状態のままである場合があり、結晶分子は所定の配向パターンにない場合がある。結果として、アモルファス状態の固体結晶115は、固体結晶115内の結晶分子の所定の配向パターンによって決定される所定の光学機能を発揮しない場合がある。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、固体結晶115に入射する光の偏光を切り替えることによって、アモルファス状態と配向結晶状態との間で切替え可能であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、高温でアモルファス状態に切替え可能であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、固体結晶115は、固体結晶115内の結晶分子に外部場(例えば、外部光場)を適用することによって、アモルファス状態と配向結晶状態との間で切替え可能であり得、外部場は、固体結晶115内の結晶分子の方位および/または配向を変化させ得る。外部場が除去された後、結晶分子は、初期の方位および/または配向に戻り得る。例えば、結晶分子は、(例えば、異なる偏光状態を有する2つの光学ビームによって形成された)干渉パターンに従って配向され得る。干渉パターンは、結晶分子が選択的に配向され得る、強め合うまたは弱め合う干渉の領域を作成し得る。例えば、結晶分子は、強め合うまたは弱め合う干渉の領域において異なるように配向され得る。結晶分子が受けるホログラフィックパターンまたは能動的露光を作成すること、および時間スケールおよび長さスケールを構成することにより、結晶分子の方位および/または配向が動的に制御され得る。すなわち、結晶分子の能動的な方位および/または配向が達成され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、固体結晶115の軸の方位の空間的変化(または固体結晶115の軸の空間的に変化する方位)は、固体結晶115全体にわたって実質的に平滑であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶115は、少なくとも1つの粒界を有する複数の結晶粒(または区域)を含み得、各結晶粒または複数の結晶粒は、配向構造110によって少なくとも部分的に配向され得る。隣接する結晶粒と結晶分子との間の円滑な移行を実現するために、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加の官能基が結晶分子に組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、局所的な結晶性ひずみを解放するように構成された1つもしくは複数の添加剤または1つもしくは複数の可塑剤が、固体結晶115に加えられ得る。いくつかの実施形態では、可塑剤は、結晶化度に対して弱い親和性を示し得るアルキル鎖および/またはアルコキシ鎖を有する分子(例えば、液晶分子)を含み得、それにより、結晶相をより柔らかくし、変形および構造変化に対してより順応できるようにする。
【0068】
いくつかの実施形態では、配向構造110は、基板105上に形成された、または基板105に接合された別個の膜であり得る配向層を含み得る。配向層は、基板105と固体結晶115との間に配置され得、固体結晶115と接触している場合がある。いくつかの実施形態では、配向層は、1つまたは複数の光配向材料(「PAM」)を含み得る光配向材料層であり得る。いくつかの実施形態では、光配向材料は、偏光照射を受けたときに方位の秩序化を経る可能性のある感光性分子を含み得る。いくつかの実施形態では、感光性分子は、偏光照射を受けたときに配向構造パターンで配向され得る細長の異方性感光性ユニット(例えば、小分子またはポリマー分子の断片)を含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、感光性ユニットは、偏光感受性であり得る。例えば、感光性ユニットは、所定の偏光を有する光によって配向される場合があり、異なる偏光を有する光によっては配向されない場合がある。いくつかの実施形態では、配向層は、機械的に摩擦された層(例えば、機械的に摩擦されたポリマー層)であり得る。いくつかの実施形態では、配向層は、異方性ナノインプリントを有するポリマー層、例えば、例えばリソグラフィまたはナノインプリント技法を使用して製造された、異方性ナノ構造のパターンを含むポリマー層であり得る。いくつかの実施形態では、配向層は、磁場または電場の存在下で固体結晶115内の結晶分子を少なくとも部分的に配向するように構成された強誘電性材料または強磁性材料を含み得る。いくつかの実施形態では、配向層は、固体結晶115内の結晶分子を少なくとも部分的に配向するように構成された実質的に薄い結晶性膜(もしくは層)または結晶性基板であり得る。結晶性膜または結晶性基板は、配向構造パターンですでに配向されている固体結晶分子を含み得る。固体結晶115を形成する結晶分子が結晶性膜または結晶性基板上で成長するとき、格子定数マッチングを通じて、固体結晶115を形成する結晶分子の成長は、結晶性膜または結晶性基板の分子によって定義される配向構造パターンによって構成、影響、または決定され得る。
【0070】
薄い結晶性膜または結晶性基板の配向構造パターンは、本明細書に開示される任意の好適な方法を使用して形成され得る。固体結晶115を製造するプロセスにおいて、固体結晶115の結晶分子は、薄い結晶性の膜または基板上に堆積され得る(例えば、そこで成長し得る)。薄い結晶性の膜または基板と接触している固体結晶115の結晶分子は、薄い結晶性の膜または基板に含まれる結晶分子とともに配向され得る。異なる配向パターンを有する固体結晶115内に結晶分子の層のスタックを形成するために、複数の薄い結晶性の膜または基板が使用され得る。いくつかの実施形態では、配向層は、磁場または電場の存在下で発生する結晶化に基づいて、固体結晶115内の結晶分子を少なくとも部分的に配向するように構成され得る。いくつかの実施形態では、配向層は、六方晶窒化ホウ素(h-BN)層またはグラフェン層を含み得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、配向構造110は、基板105上にもしくは少なくとも基板105において直接形成された、または固体結晶115上にもしくは少なくとも部分的に固体結晶115において直接形成された特徴を含み得る。いくつかの実施形態では、配向構造110は、磁場または電場の存在下で発生する結晶化に基づいて、固体結晶115内に生成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造110は、固体結晶115内の結晶分子を所定の配向構造で少なくとも部分的に配向し得る外部光場に基づいて固体結晶115内に生成され得る。例えば、固体結晶115に含まれる結晶分子は、(例えば、異なる偏光状態を有する2つの光学ビームによって形成された)干渉パターンに従って配向され得る。干渉パターンは、結晶分子が選択的に配向され得る、強め合うまたは弱め合う干渉の領域を作成し得る。例えば、結晶分子は、強め合うまたは弱め合う干渉の領域において異なるように配向され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、基板105は、固体結晶115内の結晶分子を少なくとも部分的に配向するための配向構造110を有するようにナノ加工され得る。例えば、基板105は、アモルファスポリマーまたは液晶性ポリマー、液晶特性を有するものを含む架橋性単量体などの有機材料から製造され得る。いくつかの実施形態では、基板105は、メタ表面の製造に使用される金属または酸化物などの無機材料から製造され得る。基板105の材料は、等方性または異方性であり得る。いくつかの実施形態では、基板105は、可視波長スペクトルなどのある範囲の電磁周波数に対して透明またはほぼ透明であるレジスト材料からナノ加工され得る。レジスト材料は、熱可塑性物質、ポリマー、光学的に透明なフォトレジストなどの形式であり得る。レジスト材料は、凝固または硬化した後、固体結晶115に含まれる結晶分子に対して配向を提供し得る。すなわち、いくつかの実施形態では、基板105は、固体結晶115に含まれる結晶分子を少なくとも部分的に配向するための配向層としても機能し得る。
【0073】
基板105のナノ加工技法を使用して様々な配向パターンおよび特徴を実現することができ、これにより、固体結晶115に含まれる結晶分子を高いカスタマイズ性で少なくとも部分的に配向するための配向構造110の作成が可能になる。いくつかの実施形態では、配向構造110は、異方性レリーフを含み得、異方性レリーフは、基板105の表面(例えば、
図1Aにおける上部表面)上または固体結晶115の表面(例えば、
図1Aにおける下部表面)上に異方性レリーフを直接ウェットエッチングまたはドライエッチングすることによって形成され得る。いくつかの実施形態では、基板105は、固体結晶115に含まれる結晶分子を少なくとも部分的に配向するように構成された実質的に薄い結晶性基板であり得、基板105は、配向構造110として機能し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、
図1Bに示すように、光学デバイス150は、固体結晶115を挟む2つの配向構造110aおよび110bを含み得る。固体結晶115は、配向構造110aと110bとの両方と接触している場合がある。配向構造110aおよび110bは、固体結晶115に含まれる結晶分子を所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向するように構成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造110aおよび110bと接触している結晶分子の軸の方位は、それぞれ、配向構造110aおよび110bによって決定され得る。固体結晶115に含まれる他の結晶分子の軸の方位は、配向構造110aおよび/または配向構造110bと接触しており、配向構造110aおよび/または配向構造110bによって配向された隣接する結晶分子に従って配向され得る。2つの配向構造110aおよび110bは、それぞれ、配向構造パターンを定義するか、または配向構造パターンを有し得る。2つの配向構造110aおよび110bの配向構造パターンは、同じであり得るか、または異なり得る。
【0075】
再び
図1Aを参照すると、いくつかの実施形態では、光学デバイス100は、他の要素を含み得る。例えば、基板105は、第1の表面(例えば、
図1Aに示す表示に示された上部表面)および対向する第2の表面(
図1Aに示す表示に示された下部表面)を有し得る。固体結晶115は、基板105の第1の表面に配置され得る。いくつかの実施形態では、光学デバイス100は、基板105の第2の表面に配置された反射コーティングも含み得る。固体結晶115は、第1の表面(例えば、
図1Aに示す表示における上部表面)および対向する第2の表面(例えば、
図1Aに示す表示における下部表面)を有し得る。いくつかの実施形態では、光学デバイス100は、固体結晶115の第1の表面または第2の表面のうちの少なくとも一方に配置された反射防止コーティングを含み得る。いくつかの実施形態では、光学デバイス100は、互いに対向して配置された2つの基板を含み得る。例えば、第2の基板は、配向構造115上に配置され得る。
【0076】
同様に、
図1Bに示す光学デバイス150は、他の要素を含み得る。例えば、基板105の下部表面(配向構造110aが配置される表面と対向する表面)に反射コーティングが配置され得る。固体結晶115の上部表面または下部表面のうちの少なくとも一方に反射防止コーティングが配置され得る。いくつかの実施形態では、光学デバイス150は、配向構造115b上に配置された第2の基板を含み得る。
【0077】
図1Aおよび
図1Bは、例示のために1つの固体結晶115を示している。光学デバイス100または150に含まれる固体結晶(例えば、固体結晶の膜、層、またはプレート)の数は、2個、3個、4個、5個、6個などの任意の好適な数であり得る。いくつかの実施形態では、光学デバイス100または150に含まれる配向構造(例えば、配向層)の数は、1個または2個に限定されず、3個、4個、5個、6個などの3個以上であり得る。光学デバイス100または150に含まれ得る固体結晶(例えば、固体結晶の膜、層、またはプレート)および配向構造の数は、特定の用途に基づいて決定され得る。例えば、光学デバイス100または150は、複数の連続的な固体結晶(例えば、固体結晶の膜、層、またはプレート)と複数の配向構造(例えば、配向層)とが交互に配列されたスタックを含み得る。
【0078】
固体結晶に含まれる結晶分子は、結晶分子が配置されているそれぞれの配向構造によって少なくとも部分的に配向され得る。例えば、固体結晶膜内の結晶分子は、固体結晶膜が配置されている配向構造によって少なくとも部分的に配向され得る。いくつかの実施形態では、複数の配向構造は、同じであり得る。例えば、複数の配向構造は、それぞれの固体結晶膜に含まれる結晶分子を実質的に同じ所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向するように構成され得る。いくつかの実施形態では、複数の配向構造のうちの少なくとも2つは、互いに異なり得る。例えば、複数の配向構造のうちの少なくとも2つは、対応する少なくとも2つのそれぞれの固体結晶膜に含まれる結晶分子を少なくとも2つの異なる所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向するように構成され得る。いくつかの実施形態では、スタックの厚さが所定の厚さ以上である場合、複数の配向構造は、それぞれの固体結晶膜内の結晶分子の方位をリセットまたは再配向するという利点を提供し得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、複数の固体結晶膜は、同じ固体結晶を含み得る。いくつかの実施形態では、複数の固体結晶膜のうちの少なくとも2つは、異なる固体結晶を含み得る。例えば、固体結晶は、異なる光学分散(例えば、異なる複屈折分散)を有し得る。例えば、正の複屈折分散および負の複屈折分散の固体結晶をそれぞれ含む2つの固体結晶膜は互いに補償し得、その結果、所定の波長範囲(例えば、可視波長範囲)において実質的に無彩色の光学デバイスがもたらされる。いくつかの実施形態では、単一の固体結晶膜は、正の複屈折分散を有する第1の固体結晶材料と負の複屈折分散を有する第2の固体結晶材料との組合せを含み得、その結果、所定の波長範囲において実質的に無彩色の光学デバイスがもたらされる。
【0080】
図2A~
図2Dは、本開示の様々な実施形態による、光学デバイスのx-z断面図を概略的に示す。
図2A~
図2Dに示す実施形態では、それぞれの固体結晶膜内の結晶分子は、所定の配向パターン(例えば、所定の方向)で実質的に均一に配向され得る。
図2A~
図2Dに示す光学デバイスは、
図1Aに示す光学デバイス100もしくは
図1Bに示す光学デバイス150に含まれるものと同じもしくは類似する構造または要素を含み得る。
図2A~
図2Dに示す実施形態に含まれる同じもしくは類似の構造または要素の説明については、
図1Aおよび
図1Bに示す実施形態に関連して提示したものを含む上記の説明を参照することができる。
【0081】
図2Aに示すように、光学デバイス200は、基板201、基板201に(例えば、基板201上に、または少なくとも部分的に基板201において)配置された配向構造202、および配向構造202に(例えば、配向構造202上に)配置された固体結晶203を含み得る。固体結晶203は、膜、層、またはプレートの形式であり得る。解説の便宜のために、固体結晶203は、固体結晶膜203または固体結晶層203と呼ばれることもある。例示のために、基板201、配向構造202、および固体結晶203は、平坦な形状を有するものとして示されている。いくつかの実施形態では、基板201、配向構造202、または固体結晶203のうちの少なくとも1つは、湾曲形状を有し得る。固体結晶膜203は、配向構造202と接触した状態であり得、固体結晶膜203に含まれる結晶分子204は、配向構造202によって少なくとも部分的に配向され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜203に含まれる結晶分子204の各層は、x-y平面で配向構造202上に平坦に位置し得、固体結晶膜203の厚さ方向206(例えば、z軸方向)に垂直なx-y平面内で、(
図2Aに示す矢印によって示された)方位または配向方向205に従い得る。例えば、結晶分子204は、
図2Aに示すx軸方向に沿って空間的に均一に配向され得る。
【0082】
結晶分子204の複数の層が、固体結晶膜203を形成するようにz軸方向に沿って配置され得る(例えば、成長する)。解説のために、各分子204は、長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)を有するものとして示されており、分子204の軸は、分子204の最も高い屈折率の推定軸に沿って、分子204の長手方向にあると推定される。
図2Aに示すように、分子204の軸の方位は、配向構造202によって配向方向205に均一に配向される。すなわち、分子204の異なる層は、実質的に同じ配向方向205に配向され得る。分子204の長手方向および横方向を含む平面は、基板201の表面またはx-y平面に平行である(すなわち、分子204は、x-y平面において平坦である)。例示のために、固体結晶膜203または固体結晶層203内の結晶分子204は、同じ形状を有するように描かれている。いくつかの実施形態では、固体結晶層内の結晶分子204は、同じ(例えば、同じ結晶材料の分子)であり得る。いくつかの実施形態では、1つの固体結晶層内の結晶分子204は、2つ以上の異なる分子(例えば、2つ以上の異なる結晶材料の分子)を含み得る。
【0083】
図2Bに示すように、光学デバイス220は、固体結晶膜223を含み得る。固体結晶膜223に含まれる結晶分子224は、配向構造222によって少なくとも部分的に配向され得る。
図2Aに示す実施形態では、結晶分子204は、x-y平面に平坦に位置する(例えば、結晶分子204の長手方向および横方向を含む平面は、基板201の表面またはx-y平面に平行である)。
図2Bに示す実施形態では、結晶分子224は、x-y平面に平坦に位置し得るのではなく、x-z平面に平坦に位置し得る。すなわち、結晶分子204の長手方向および横方向を含む平面は、基板221の表面またはx-y平面に垂直であり得る。結晶分子224の各層は、固体結晶膜223の厚さ方向226(例えば、z軸方向)に垂直なx-y平面内で、(
図2Bに示す矢印によって表された)方位または配向方向225に従い得る。例えば、結晶分子224は、
図2Bに示すように、x軸方向に沿って空間的に均一に配向され得る。言い換えると、分子224の軸の方位は、配向構造222によって均一に配向され得る。すなわち、分子224の異なる層は、同じ配向方向225に均一に配向され得る。
【0084】
図2Cに示すように、光学デバイス240は、固体結晶膜243を含み得る。固体結晶膜243に含まれる結晶分子244は、配向構造242によって少なくとも部分的に配向され得る。x-z平面における各結晶分子244の長手方向(例えば、軸の方位)は、基板241の表面(または配向構造242の表面)に対して角度を形成し得る。例えば、結晶分子244は、x-z平面内で、(
図2Cに示す矢印によって表された)方位または配向方向245に従い得る。すなわち、分子244の軸の方位は、x-z平面において配向方向245に均一に配向され得、基板241の表面(または配向構造242の表面)に対して好適な角度を形成する。基板241の表面に対する結晶分子244の角度(例えば、分子244の軸の方位)は、30°、45°などの任意の好適な角度であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜243に含まれる結晶分子244は、適切な結晶成長条件下で他の好適な方位または配向方向を有し得る。例えば、結晶分子244は、固体結晶膜243の厚さ方向(例えば、z軸方向)の方位または配向方向に従い得る。
【0085】
図2Dに示すように、光学デバイス260は、複数の連続的な固体結晶膜と複数の配向構造(例えば、配向層)とが交互に配列されたスタックを含み得る。例示のために、2つの固体結晶膜263aおよび263b、ならびに2つの配向構造262aおよび262bが光学デバイス260に含まれるように示されている。固体結晶膜263aに含まれる結晶分子264aは、配向構造262aによって少なくとも部分的に配向され得、固体結晶膜263bに含まれる結晶分子264bは、配向構造262bによって少なくとも部分的に配向され得る。複数の配向構造は、その配向構造上に配置された結晶分子を配向するための同じまたは異なる所定の配向パターンを定義し得る。
図2Dに示す実施形態では、2つの配向構造は、それぞれの固体結晶膜に含まれる結晶分子に対して実質的に同じ配向パターンを提供し得る。例えば、結晶分子264aおよび264bは、
図2Dに示すように、x軸方向265aおよび265bに配向され得る。固体結晶膜263aおよび263bはそれぞれ、
図2Bに示す固体結晶膜223と同様であるように示されているが、いくつかの実施形態では、固体結晶膜263aおよび263bはそれぞれ、
図2Aに示す固体結晶膜203または
図2Cに示す固体結晶膜243と同様であり得る。
【0086】
図3Aおよび
図3Bは、本開示の様々な実施形態による、光学デバイスの上面図(例えば、x-y断面図)を概略的に示す。
図3Aおよび
図3Bに示す実施形態では、それぞれの固体結晶膜内の結晶分子は、所定のパターンで(例えば、所定の方向に)実質的に均一に配向され得る。
図3Aおよび
図3Bに示す光学デバイスは、
図1A~
図2Dに示す光学デバイス(例えば、
図1Aに示す光学デバイス100)に含まれるものと同じもしくは類似する構造または要素を含み得る。
図3Aおよび
図3Bに示す実施形態に含まれる同じもしくは類似の構造または要素の説明については、(例えば、
図1Aに示す実施形態に関連して提示したものを含む)上記の説明を参照することができる。
図3Aおよび
図3Aの上面図における分子の特定の配向、例示を目的としたものである。
【0087】
図3Aに示すように、光学デバイス300は、基板310、基板310に(例えば、基板310上に)配置された配向構造302、および配向構造302に(例えば、配向構造302上に)配置された固体結晶膜303を含み得る。固体結晶膜303は、配向構造302と接触した状態であり得る。固体結晶膜303に含まれる結晶分子304は、配向構造302によって少なくとも部分的に配向され得る。固体結晶膜303に含まれる結晶分子304は、配向構造302上に平坦に位置し得、固体結晶膜303の厚さ方向(例えば、z軸)に垂直な平面(例えば、x-y平面)内で、(
図3Aに示す矢印によって表された)方位または配向パターン(例えば、方向305)に従い得る。例えば、結晶分子304は、
図3Aにおけるx軸方向に沿って配向され得る。言い換えると、分子の軸の方位は、配向方向305に配向され得る。いくつかの実施形態では、結晶分子304は、y軸方向に沿って配向され得る。いくつかの実施形態では、結晶分子304は、x-y平面内で好適な方向に配向され得る。いくつかの実施形態では、
図3Aに示された上面視を有する光学デバイス300は、
図2Aに示された対応する断面視を有し得る。
【0088】
図3Bに示すように、光学デバイス320は、基板321、基板321に(例えば、基板321上に)配置された配向構造322、および配向構造322に(例えば、配向構造322上に)配置された固体結晶膜323を含み得る。固体結晶膜323に含まれる結晶分子324は、配向構造322上に平坦に位置し得、固体結晶膜323の厚さ方向(例えば、z軸)に垂直な平面(例えば、x-y平面)内で、(
図3Bに示す矢印によって表された)方位または配向パターン(例えば、方向325)に従い得る。言い換えると、分子の軸の方位は、配向方向325に配向され得る。配向方向325は、x軸またはy軸に対して角度を形成し得る。任意の好適な角度が構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、結晶分子324は、x軸方向に対して約45°の角度を有する方向に配向され得る。
【0089】
図4A~
図4Cは、本開示の様々な実施形態による、光学デバイスのx-z断面図を概略的に示す。
図4A~
図4Cに示す光学デバイスは、湾曲した基板および湾曲した固体結晶膜を含み得、湾曲した光導波路として機能し得る。
図4A~
図4Cに示す光学デバイスは、
図1A~
図3Bに示す光学デバイス(例えば、
図1Aに示す光学デバイス100)に含まれるものと同じもしくは類似する構造または要素を含み得る。
図4A~
図4Cに示す実施形態に含まれる同じもしくは類似の構造または要素の説明については、(例えば、
図1Aに示す実施形態に関連して提示したものを含む)上記の説明を参照することができる。
【0090】
図4Aに示すように、光学デバイス400は、基板401、基板401に(例えば、基板401上に)配置された配向構造402、および配向構造402に(例えば、配向構造402上に)配置された固体結晶膜403を含み得る。固体結晶膜403は、配向構造402と接触した状態であり得る。固体結晶膜403に含まれる結晶分子404は、配向構造402によって少なくとも部分的に配向され得る。固体結晶膜403に含まれる結晶分子404は、固体結晶膜403内で実質的に均一な方位または配向を有し得る。基板401は、1つまたは複数の湾曲した表面を含み得る。例えば、基板401の上部表面および下部表面のうちの一方または両方は、湾曲形状を有し得る。いくつかの実施形態では、基板401に配置された配向構造402は、1つまたは複数の湾曲した表面を含み得る。例えば、基板401の上部表面に面する配向構造402の少なくとも下部表面は、湾曲形状を有し得る。配向構造402の湾曲形状は、基板401の上部表面の湾曲形状と一致し得る。いくつかの実施形態では、
図4Aに示すように、基板401と配向構造402はともに、凸形状を有し得る。いくつかの実施形態では、配向構造402は、基板401の湾曲した表面上に直接形成(例えば、エッチング)され得る。
【0091】
固体結晶膜403は、第1の表面および対向する第2の表面を有し得る。固体結晶膜403の第1の表面および第2の表面のうちの一方または両方は非直線的であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜403の第1の表面と第2の表面と両方が非直線的であり得る。例えば、固体結晶膜403の第1の表面(例えば、上部表面)と第2の表面(例えば、下部表面)との両方は、配向構造402の湾曲形状と一致する湾曲形状を有し得る。例えば、
図4Aに示すように、固体結晶膜403は、基板402の凸形状と一致し得る凸形状を有し得る。固体結晶膜403は、電磁放射(例えば、光)を、TIRを介して固体結晶膜403内を内部的に伝搬するように誘導し得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜403は、基板401の上部表面上に成長し得る。成長プロセスは、最初に基板401の上面上に配向構造402を配置し、次いで配向構造402上に結晶分子404をエピタキシャルに堆積する(例えば、成長させる)ことを含み得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜403の前面(または上面)および対向する背面(または底面)は、互いに平行でない場合がある。
【0092】
図4Bに示すように、光学デバイス420は、凹形状を有する基板421、凹形状を有する配向構造422、および凹形状を有する固体結晶膜423を含み得る。
図4Bに示す実施形態では、配向構造422が基板421上に配置された別個の要素として示されているが、いくつかの実施形態では、配向構造422は、基板421の湾曲した表面上に直接形成(例えば、エッチング)され得る。配向構造422は、固体結晶分子423を所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向するように構成され得る。
【0093】
図4Cに示すように、光学デバイス440は、湾曲した(例えば、凹状の)固体結晶膜443を含み得る。いくつかの実施形態では、湾曲した固体結晶膜443は、結晶成長プロセス中にメニスカスを成形することによって得られ得る。結晶分子444は、メニスカスの形状に基づいて、成長プロセス中に配向され得る。そのような実施形態では、固体結晶膜443の製造プロセス中、配向構造および基板は省略され得る。
【0094】
図5Aは、本開示の一実施形態による、入力結合要素および出力結合要素を備えた光導波路500のx-z断面図を概略的に示す。
図5Aに示す光導波路500は、
図1A~
図4Cに示す光学デバイスに含まれるものと同じもしくは類似する構造または要素を含み得る。
図5Aに示す実施形態に含まれる同じもしくは類似の構造または要素の説明については、(例えば、
図1Aに示す実施形態に関連して提示したものを含む)上記の説明を参照することができる。
【0095】
図5Aに示すように、光導波路500は、湾曲した光導波路であり得る。光導波路500は、基板501、基板501に(例えば、基板501上に)配置された配向構造502、および配向構造502に(例えば、配向構造502上に)配置された固体結晶膜(または固体結晶)503を含み得る。固体結晶膜503は、配向構造502と接触した状態であり得る。固体結晶膜503内の結晶分子504は、配向構造502によって少なくとも部分的に配向され得る。例えば、固体結晶膜503に含まれる結晶分子504は、固体結晶膜503内で実質的に均一に配向され得る。言い換えると、配向構造502は、配向構造502上に配置された結晶分子504の少なくとも一部分を配向するための配向構造パターンを含むかまたは定義し得る。いくつかの実施形態では、結晶分子504は、
図5Aに示すように、均一な所定の配向パターンで配向され得る。いくつかの実施形態では、光導波路500の厚さは、約300μmから約1mmであり得、光導波路500の少なくとも1つの横方向の寸法は、約30mmから約100mmであり得る。
【0096】
光導波路500は、光導波路500の側面(例えば、上部側)に配置された1つまたは複数の入力結合要素505において入力光507を受光するように構成され得る。入力光507の波長は、可視スペクトルまたは近IRスペクトル内にあり得る。1つまたは複数の入力結合要素505は、入力光507を、入力結合光508として光導波路500の中へ結合するように構成され得る。光導波路500は、全内部反射(「TIR」)を介して、入力結合光508を、光導波路500に配置された1つまたは複数の出力結合要素506に誘導し得る。入力結合光508は、全内部反射光508と呼ばれることもある。1つまたは複数の出力結合要素506は、1つまたは複数の入力結合要素505から離れた側面(例えば、上部側)に配置され得る。1つまたは複数の出力結合要素506は、入力結合光508を出力光509として光導波路500の外へ結合するように構成され得、出力光509は、ユーザの目または他の光学素子の目に送達され得る。
図5Aに示す実施形態では、1つまたは複数の入力結合要素505および1つまたは複数の出力結合要素506は、光導波路500の同じ側面または表面に配置される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の入力結合要素505および1つまたは複数の出力結合要素506は、光導波路500の異なる側面または表面に配置され得る。
【0097】
光導波路500は、第1の表面(または側面)500-1および対向する第2の表面(または側面)500-2を含み得る。固体結晶膜503は、第1の表面(または側面)503-1および対向する第2の表面(または側面)503-2を含み得る。基板501は、第1の表面(または側面)501-1および対向する第2の表面(または側面)501-2を含み得る。いくつかの実施形態では、光導波路500の第1の表面(または側面)500-1は、固体結晶膜503の第1の表面(側面)503-1でもあり得、光導波路500の第2の表面(または側面)500-2は、基板501の第2の表面(側面)501-2でもあり得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、入力結合要素505は、光導波路500の第1の表面500-1または第2の表面500-2に配置され得る。例えば、いくつかの実施形態では、入力結合要素505は、第1の表面500-1または第2の表面500-2の一体部分であり得る。いくつかの実施形態では、入力結合要素505は、第1の表面500-1または第2の表面500-2に取り付けられた、接合された、貼付された、または他の方法で結合された別個の要素であり得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、出力結合要素506は、光導波路500の第1の表面500-1または第2の表面500-2に配置され得る。例えば、いくつかの実施形態では、出力結合要素506は、第1の表面500-1または第2の表面500-2の一体部分であり得る。いくつかの実施形態では、出力結合要素506は、第1の表面500-1または第2の表面500-2に取り付けられた、接合された、貼付された、または他の方法で結合された別個の要素であり得る。いくつかの実施形態では、入力結合要素505および出力結合要素506は、光導波路500の同じまたは異なる表面に配置され得る。いくつかの実施形態では、
図5Aには示されていないが、入力結合要素505または出力結合要素506のうちの少なくとも一方は、光導波路500の第2の表面500-2に配置され得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、入力結合要素505および出力結合要素506は、固体結晶膜503の同じ表面または異なる表面に配置され得る。例えば、
図5Aは入力結合要素505および出力結合要素506が、固体結晶膜503の第1の表面503-1上に配置されていることを示すが、入力結合要素505および出力結合要素506のうちの少なくとも一方は、固体結晶膜503の第2の表面503-2に配置され得る。いくつかの実施形態では、入力結合要素505および出力結合要素506は、基板501の同じまたは異なる表面に配置され得る。例えば、入力結合要素505または出力結合要素506のうちの少なくとも一方は、基板501の第1の表面501-1または基板501の第2の表面501-2に配置され得る。いくつかの実施形態では、入力結合要素505または出力結合要素506のうちの一方が基板501の第2の表面(側面)501-2に配置される場合、入力結合要素505または出力結合要素506のうちの他方は、固体結晶膜503の第1の表面(側面)503-1に配置され得る。入力結合要素505および出力結合要素506は、固体結晶膜503の第1の表面503-1、固体結晶膜503の第2の表面503-2、固体結晶膜503に面する配向構造502の第1の表面、基板501に面する配向構造502の第2の表面、基板の第1の表面501-1、または基板501の第2の表面501-2を含む様々な組合せの位置に配置され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、入力結合要素505は、入力結合回折格子と呼ばれ得る1次元(「1D」)回折格子または2次元(「2D」)回折格子を含み得る。1D回折格子は、1本の軸に沿って光ビームを回折し得、2D回折格子は、2本の軸に沿って光ビームを回折し得る。いくつかの実施形態では、2D回折格子は、2つの1D回折格子構造を直交して重ね合わせることによって作製され得る。入力結合回折格子の周期は、入力結合回折格子が回折を介して入力光507を好適な角度で光導波路500の中へ結合するように構成され得るように構成され得、入力結合光508は、TIRを介して光導波路500内を伝搬し得る。いくつかの実施形態では、出力結合要素506は、出力結合回折格子と呼ばれ得る1D回折格子または2D回折格子を含み得る。出力結合回折格子の周期は、出力結合回折格子が、TIRを介して光導波路500の内部を伝搬する光508を、回折を介して光導波路500の外へ結合し得るように構成され得る。いくつかの実施形態では、入力結合回折格子または出力結合回折格子のうちの少なくとも一方は、偏光依存性であり得る。例えば、入力結合回折格子または出力結合回折格子のうちの少なくとも一方は、第1の偏光を有する光を選択的に回折し、異なる偏光を有する光をごくわずかな回折でまたは回折なしで透過し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、入力結合回折格子または出力結合回折格子のうちの少なくとも一方は、基板501内または固体結晶膜503内に構成された(例えば、エッチングされた)1D周期構造または2D周期構造(例えば、隆起)を含み得る。いくつかの実施形態では、1D周期隆起または2D周期隆起は、
図5Aに示す基板501の上部において構成(例えば、エッチング)され得る。いくつかの実施形態では、1D周期隆起または2D周期隆起は、
図5Aに示す固体結晶膜503の上部および/または下部において構成(例えば、エッチング)され得る。いくつかの実施形態では、入力結合回折格子または出力結合回折格子のうちの少なくとも一方は、光導波路500に配置された別個のポリマーまたはガラスにおいて構成(例えば、エッチング)された1D周期隆起または2D周期隆起を含み得る。いくつかの実施形態では、入力結合回折格子または出力結合回折格子のうちの少なくとも一方は、感光性材料に記録された体積ホログラムから形成され得る。
【0103】
図5Bは、本開示の一実施形態による、入力結合要素および出力結合要素を備えた光導波路520のx-z断面図を概略的に示す。
図5Bに示す光導波路520は、
図1A~
図4Cに示す光学デバイス(例えば、
図2Dに示す光学デバイス260)に含まれるものと同じもしくは類似する構造または要素を含み得る。光導波路520は、
図5Aに示す光導波路500に含まれるものと同じもしくは類似の構造または要素を含み得る。
図5Bに示す実施形態に含まれる同じもしくは類似の構造または要素の説明については、上記の説明を参照することができる。
【0104】
図5Bに示すように、光導波路520は、平坦な光導波路であり得る。光学デバイス520は、複数の連続的な固体結晶膜と複数の配向構造とが交互に配列されたスタックを含み得る。固体結晶膜に含まれる結晶分子は、固体結晶膜が配置されている配向構造によって少なくとも部分的に配向され得る。例示のために、
図5Bに示す光学デバイス520は、基板521、第1の固体結晶膜523aおよび第2の固体結晶膜523b、ならびに第1の配向構造522aおよび第2の配向構造522bを含み得る。第1の配向構造522aは、基板521の表面(例えば、上面)に(例えば、表面上に)配置され得る。第1の固体結晶膜523aは、第1の配向構造522aの表面(例えば、上面)に(例えば、表面上に)配置され得る。第2の配向構造522bは、第1の固体結晶膜523aの表面(例えば、上面)に(例えば、表面上に)配置され得る。第2の固体結晶膜523bは、第2の配向構造522bの表面(例えば、上面)に(例えば、表面上に)配置され得る。
【0105】
第1の配向構造522aは、第1の固体結晶膜523aに含まれる結晶分子524aの少なくとも一部分を少なくとも部分的に配向するための第1の配向構造パターンを含むかまたは定義し得る。結晶分子524aは、第1の所定の配向パターンで配向され得、第1の所定の配向パターンは、第1の配向構造パターンと同じである場合もあれば、同じでない場合もある。第2の配向構造522bは、第2の固体結晶膜523bに含まれる結晶分子524bの少なくとも一部分を少なくとも部分的に配向するための第2の配向構造パターンを含むかまたは定義し得る。結晶分子524bは、第2の所定の配向パターンで配向され得、第2の所定の配向パターンは、第2の配向構造パターンと同じである場合もあれば、同じでない場合もある。第1の配向構造パターンは、第2の配向構造パターンと同じである場合もあれば、同じでない場合もある。言い換えると、第1の配向構造は、第2の配向構造と同じである場合もあれば、同じでない場合もある。
【0106】
第1の固体結晶膜523aに含まれる結晶分子524aは、第2の固体結晶膜523bに含まれる結晶分子524bと同じ特性を有する場合もあれば、有さない場合もある。いくつかの実施形態では、結晶分子524aは、結晶分子524bと同じタイプの結晶分子であり得る。いくつかの実施形態では、結晶分子524aは、第1の所定の配向パターンで配向され得、結晶分子524bは、第2の所定の配向パターンで配向され得る。第1の所定の配向パターンは、第2の所定の配向パターンと同じである場合もあれば、同じでない場合もある。
図5Bに示す実施形態では、第1の固体結晶膜523aに含まれる結晶分子524a、および第2の固体結晶膜523bに含まれる結晶分子524bは、同じ所定の配向パターン(例えば、
図5Bに示すx軸方向などの同じ所定の方向)で空間的に均一に配向される。
【0107】
光導波路520は、入力光527を光導波路520の中へ結合するように構成された1つまたは複数の入力結合要素525を含み得る。入力結合光527は、TIRを介して光導波路520内で光528として伝搬し得る。光導波路520は、光528を出力光529として光導波路520の外へ結合するように構成された1つまたは複数の出力結合要素526を含み得る。入力結合要素525および出力結合要素526は、光導波路520内の様々な組合せの位置に配置され得る。例えば、
図5Bに示すように、入力結合要素525および出力結合要素526は、第2の固体結晶膜523bの第1の側面(表面)523b-1および第1の固体結晶膜523aの第2の側面(表面)523a-2にそれぞれ配置され得る。いくつかの実施形態では、入力結合要素525および出力結合要素526はそれぞれ、1つもしくは複数の1D回折格子または2D回折格子を含み得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、光導波路520は、TIRを介して光導波路520内を伝搬する光528を出力結合要素526へ方向転換するように構成された方向付け要素530も含み得る。方向付け要素530は、光導波路520の好適な位置(または一部分)に配置され得る。例えば、方向付け要素530は、第2の固体結晶膜523bの第1の側面(表面)523b-1に配置され得、第1の固体結晶膜523aの第2の側面(表面)523a-2に配置された出力結合要素526に面し得る。いくつかの実施形態では、方向付け要素530および出力結合要素526は、同様の構造を有し得る。方向付け要素530は、例えば、1D回折格子または2D回折格子を含み得る。回折格子の周期は、方向付け要素530が、TIRを介して光導波路520内を伝搬する光528を、所定の入射角で出力結合要素526に向けて方向付け得るように構成され得る。いくつかの実施形態では、方向付け要素530は、折り畳み格子と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、複数の機能、例えば、光導波路520の瞳の方向転換、折り畳み、および/または拡張が、単一の回折格子、例えば、出力結合回折格子に組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、上記の格子は、視野(「FOV」)のタイリング、異なる色の単色画像の送達などの他の機能を提供するために、複数の区域(またはサブ格子)に分割され得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、
図2A~
図4Cに示す光学デバイスなど、固体結晶膜内の結晶分子の軸の空間的に均一な方位を有する開示された光学デバイスは、位相差板として機能し得る。一例として
図2Bを参照すると、透過光の位相を効果的に変更するために、光学デバイス220に入射する直線偏光は、その偏光軸を、結晶分子224の配向方向225(例えば、x軸方向)に実質的に沿って配向し得る。位相差板として機能する光学デバイス220は、代替としてまたは追加として、光学デバイスまたは光学系における偏光管理構成要素として機能するように効果的に構成され得る。例えば、位相差板220が、所定の波長スペクトル(例えば、可視スペクトル)の光に半波長複屈折を提供するように構成される場合、第1の偏光方向を有する直線偏光入力光が、第1の偏光方向に垂直な第2の偏光方向を有する直線偏光出力光に変換され得るか、または円偏光入力光が、逆の掌性を有する円偏光出力光に変換され得る。位相差板220が、所定の波長スペクトル(例えば、可視スペクトル)の光に4分の1波長複屈折を提供するように構成される場合、直線偏光入力光が円偏光出力光に、またはその逆に変換され得る。
【0110】
図6A~
図6Cは、本開示の様々な実施形態による、それぞれの固体結晶膜における結晶分子の軸の空間的に変化する方位の3D概略図を示す。結晶分子の軸の方位が空間的に変化するとき、固体結晶の軸の方位もまた、固体結晶膜内で空間的に変化し得る。
図6A~
図6Cに示す固体結晶膜および配向構造は、上記で説明したもの(例えば、
図1Aに示す光学デバイス100に関連して上記で説明したもの)と同じもしくは類似し得る構造または構成要素を有し得る。
図6A~
図6Cに示す実施形態に含まれる固体結晶膜および配向構造の説明については、(例えば、
図1Aに示す実施形態に関連して提示したものを含む)上記の説明を参照することができる。
【0111】
図6Aに示すように、光学デバイス600は、(層、膜、またはプレートの形式であり得る)固体結晶601を含み得る。解説のために、固体結晶601は、固体結晶膜601と呼ばれることがある。固体結晶膜601は、配向構造610上に配置され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜601は、好適な結晶成長プロセスによって配向構造610上に形成され得る。例示のために、配向構造610は薄層として示されている。配向構造610は、固体結晶膜601の結晶分子を少なくとも部分的に配向するための配向構造パターンを定義するかまたは含み得る。
【0112】
固体結晶膜601は、複数の結晶分子を含み得る。結晶分子は、配向構造610上に層状に配置され得る。例えば、
図6Aに示す実施形態は、6つの層の結晶分子を示している。例示のために、第1の層の結晶分子603a~603d(第1の複数の結晶分子603とも呼ぶ)、第2の層の結晶分子604a~604d(第2の複数の結晶分子604とも呼ぶ)、および第3の層の結晶分子605a~605d(第3の複数の結晶分子605とも呼ぶ)のみがラベル付けされている。
【0113】
第1の複数の結晶分子603は、配向構造610と接触した状態であり得る。第2の複数の結晶分子604および第3の複数の結晶分子605は、第1の複数の結晶分子603の上方もしくは上に配置されるかまたは積み重ねられ得、配向構造610と接触していない場合がある。配向構造610は、固体結晶膜601に含まれる結晶分子を少なくとも部分的に配向し得る。例えば、配向構造610と接触している第1の複数の結晶分子603は、配向構造610によって提供される配向構造パターンで配向され得る。
【0114】
図6Aに示すように、第1の複数の結晶分子603a~603dは、同じ方向または配向に配向されない場合がある。言い換えると、結晶分子の軸の方位は、空間的に変化する。参照番号602a~602dは、結晶分子の軸を示す(屈折率はこの軸に沿って最も大きくなり得る)。
図6Aに示すように、第1の複数の結晶分子603a~603dの軸602a~602dは、同じ方向または方位に配向されない場合がある。z軸方向にある各層の結晶分子(例えば、第1の複数の結晶分子603)は、配向構造の604の表面(例えば、上面)に平行な平面(例えば、x-y平面)において空間的に変化する方位および/または配向を有し得る。このパターンは、配向構造610の配向構造パターンによって少なくとも部分的に定義され得る。結果として、固体結晶の軸の方位もまた、固体結晶601内で空間的に変化し得る。
【0115】
x-y平面内の結晶分子の各層において、結晶分子の軸の方位は、隣接する結晶分子の軸の方位に対して所定の回転角だけ回転され得る。例えば、第1の複数の結晶分子603a~603dはそれぞれ、同じ層内(すなわち、同じx-y平面内)の隣接する結晶分子に対して所定の回転角だけ回転された、その結晶分子の対応する軸を有し得る。例えば、結晶分子603bの軸602bの方位は、結晶分子603aの軸602aの方位に対して第1の所定の回転角だけ回転され得る。結晶分子603cの軸602cの方位は、結晶分子603bの軸602bの方位に対して第2の所定の回転角だけ回転され得る。結晶分子603dの軸602dの方位は、結晶分子603cの軸602cの方位に対して第3の所定の回転角だけ回転され得る。第1の所定の回転角、第2の所定の回転角、および第3の所定の回転角は、同じである場合もあれば、同じでない場合もある。いくつかの実施形態では、第1の所定の回転角、第2の所定の回転角、および第3の所定の回転角は、同じであり得る。いくつかの実施形態では、第1の所定の回転角、第2の所定の回転角、および第3の所定の回転角のうちの少なくとも2つは、異なり得る。
【0116】
配向構造610と接触している第1の複数の結晶分子603は、配向構造610の配向構造パターンで配向され得る。第2の複数の結晶分子604および第3の複数の結晶分子605(および他の層内の他の結晶分子)は、第1の複数の結晶分子603と同じ配向パターンに従う場合もあれば、従わない場合もある。
図6Aに示す実施形態では、第2の複数の結晶分子604および第3の複数の結晶分子605(および他の層内の他の結晶分子)は、第1の複数の結晶分子603と同じ配向パターンに従う。すなわち、第1の複数の結晶分子603の上方に配置されるかまたは積み重ねられた結晶分子の軸の方位は、第1の複数の結晶分子603の軸の同じ方位に従う。言い換えると、第1の複数の結晶分子603の上方に配置された結晶分子の各層において、各結晶分子の軸の方位は、下位層に位置する対応する結晶分子の軸の方位と同じである。例えば、結晶分子604bの軸の方位は、結晶分子603bの軸の方位と同じであり、結晶分子605bの軸の方位は、結晶分子604bの軸の方位と同じであり、以下同様である。
図6Aに示すように、第3の層内の結晶分子605aの軸607aの方位は、第1の層内の結晶分子603aの軸602aの方位と同じである。結晶分子603aと結晶分子605aは、z軸方向において同じ列にある。
【0117】
図6Bに示すように、光学デバイス620は、固体結晶膜621、および配向構造624を含み得る。固体結晶膜621は、配向構造624上に配置され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜621は、コレステリック結晶膜であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜621は、キラル結晶分子、またはキラルドーパントがドープされた結晶分子を含み得、光学デバイス620は、キラリティ、すなわち掌性を示し得る。
【0118】
固体結晶膜621は、第1の複数の結晶分子623、および第1の複数の結晶分子623の上方に積み重ねられるかまたは配置された第2の複数の(すなわち、残りの)結晶分子625を含み得る。第1の複数の結晶分子623は、配向構造624と接触した状態であり得、残りの(すなわち、第2の複数の)結晶分子625は、配向構造624と接触していない場合がある。配向構造624と接触している結晶分子623は、配向構造624の表面(例えば、x-y平面内の上面)内で空間的に均一に配向され得る。第2の複数の結晶分子625は、配向構造624の表面に垂直な方向(例えば、z軸方向)に、ねじれらせん構造で積み重ねられ得る。
【0119】
図6Bにおいて、参照番号622a~622hは、各層における結晶分子の軸の方位を示す。
図6Bに示す実施形態では、各層において、結晶分子の軸の方位は同じである(例えば、層内で空間的に均一である)。
図6Bに示すように、配向構造624と接触している結晶分子623の軸622aの方位は、空間的に均一であり得る。すなわち、第1の複数の結晶分子623の軸622aは、同じ方向または方位に配向され得る。第1の複数の結晶分子623の上方に配置された第2の複数の結晶分子625の軸の方位は、配向構造624の表面に垂直な方向(例えば、z軸方向)にらせん状ねじれを有し得る。
図6Bに示すように、各軸622b~622hの方位は、下位層における軸の方位に対して所定の回転角だけ回転され得る。z軸方向における2つの隣接する層間の所定の回転角は、同じである場合もあれば、異なる場合もある(または、少なくとも2つの回転角が異なり得る)。いくつかの実施形態では、ねじれらせん構造またはらせん状ねじれ(例えば、結晶分子の軸の回転方向)の掌性は、キラル結晶分子またはキラルドーパントのタイプによって決定され得る。ねじれらせん構造またはらせん状ねじれのピッチは、キラル結晶分子のらせん状ねじれ力、または、らせん状ねじれ力およびキラルドーパントの濃度によって決定され得る。
【0120】
例示のために、
図6Bは、1つのコレステリック結晶膜621を示している。いくつかの実施形態では、複数のコレステリック結晶膜が、重なり合うように、または隣り合わせで積み重ねられ得、隣接するコレステリック結晶膜は、2つの隣接するコレステリック結晶膜間に配置された配向構造によって互いに分離され得る。それぞれのコレステリック結晶膜における結晶分子の軸の方位は、結晶分子の一部が配向される配向構造の表面に垂直な方向(例えば、z軸方向)に、らせん状ねじれを有し得る。いくつかの実施形態では、隣接するコレステリック結晶膜におけるらせん状ねじれは、反対の掌性を有し得る。いくつかの実施形態では、隣接するコレステリック結晶膜におけるらせん状ねじれは、同じ掌性を有し得る。
【0121】
図6Cは、それぞれの配向構造644a~644hによって分離された複数の固体結晶膜641a~641hのスタックを含む光学デバイス640の3D概略図を示す。
図6Cに示すように、固体結晶膜641a~641hにおける結晶分子の軸の方位は、配向構造の表面(またはスタック640が配置され得る基板の表面)に垂直な方向(例えば、z軸方向)に沿って、ある固体結晶膜から別の固体結晶膜へ回転(例えば、徐々に回転)され得る。いくつかの実施形態では、光学デバイス640は、光学回転子として機能し得る。
【0122】
第1の固体結晶膜641aにおいて、第1の配向構造644aと接触している結晶分子643aの軸642aは、x-y平面内で実質的に第1の方向または方位645aに方位付けされ得、第1の固体結晶膜641a内の結晶分子643aの上方に配置された他の結晶分子の軸は、実質的に第1の方位645aに従い得る。すなわち、第1の固体結晶膜641aの結晶分子の軸の方位は、空間的に均一であり得る。結果として、固体結晶641aの軸の方位は、空間的に変化しない(例えば、一定である)場合がある。第2の固体結晶膜641bにおいて、第2の配向構造644bと接触している結晶分子643bの軸642bは、x-y平面内で実質的に第2の方向または方位645bに方位付けされ得、第2の固体結晶膜641b内の結晶分子643bの上方に配置された他の結晶分子の軸は、実質的に、同じ第2の配向645bに従い得る。第2の方向または方位645bは、第1の方向または方位645aと同じである場合もあれば、異なる場合もある。例えば、いくつかの実施形態では、第2の方向または方位645bは、第1の方向または方位645aに対して約15°の角度で回転され得る。残りの固体結晶膜641c~641hにおける結晶分子の軸の方位は、それぞれ、配向構造644a~644hによって決定され得る。残りの固体結晶膜641c~641hにおける結晶分子の軸の方位は、第1の配向構造644aの表面(またはスタックが配置され得る基板の表面)に垂直な方向(例えば、z軸方向)に沿って、ある固体結晶膜から別の固体結晶膜へ回転(例えば、徐々に回転)され得る。スタック内の配向構造644a~644hはそれぞれ、それぞれの固体結晶膜641a~641hにおいてその上に配置された結晶分子の方位を再設定または再配向することができ、これにより、固体結晶膜641a~641hの軸をz軸方向に沿って効率的に回転させることができる。
【0123】
PBP光学素子は、光ビームの伝搬方向に垂直な平面において空間的に変化する光軸を有し得る。このような平面は、横断面または面内と呼ばれることもある。横断面において空間的に変化するLCダイレクタによってPBP光学素子を製造するために、LCが使用されている。LCに基づくPBP光学素子の光学特性は、LCの屈折率および/または複屈折に依存し得る。例えば、LCの複屈折が増加するにつれて、偏光選択性格子の角度および回折帯域幅は増加し得る。現在利用可能なLCは、屈折率が最大約1.97、複屈折が最大約0.3であり得る。サイズおよび重量を低減し、光学特性を向上させるには、より高い屈折率およびより大きい複屈折を有する材料に基づくPBP光学素子が非常に望ましい。本開示は、横断面における軸の空間的に変化する方位を有する開示された固体結晶に基づくPBP光学素子を提供する。すなわち、固体結晶の軸の方位は、横断面において空間的に変化するように構成され得、それにより、固体結晶ベースのPBP光学素子を形成する。いくつかの実施形態では、固体結晶に基づいて製造されたPBP光学素子は、約500nmから約5μmの厚さを有し得る。
【0124】
横断面における固体結晶の軸の方位は、固体結晶の軸の面内方位と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、固体結晶の軸の空間的に変化する面内方位は、固体結晶に含まれる結晶分子の軸の空間的に変化する面内方位を構成することによって実現され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶に含まれる結晶分子の軸の面内方位は、結晶分子を所定の面内配向パターンで配向することによって構成され得る。いくつかの実施形態では、結晶分子の所定の面内配向パターンは、上記のように、固体結晶が構成される(例えば、成長する)配向構造によって提供され得る。
【0125】
図7Aは、本開示の一実施形態による、開示された固体結晶または固体結晶膜701を含み得る透過型PBP光学素子または光学デバイス700の図を示す。固体結晶(または固体結晶膜)701は、上記および本明細書に記載の固体結晶のいずれかの実施形態であり得る。いくつかの実施形態では、PBP光学デバイス700は、
図7Aに示されていない1つまたは複数の配向構造も含み得る。いくつかの実施形態では、PBP光学デバイス700は、
図7Aに示されていない1つまたは複数の基板を含み得る。PBP光学デバイス700は、固体結晶膜701における結晶分子の面内配向パターン(または結晶分子の軸の面内方位)に応じて、プリズム、レンズ、ビーム屈折器、レンズアレイ、プリズムアレイ、またはそれらの組合せとして機能するなど、1つまたは複数の光学機能を提供するための透過型PBP光学デバイスとして動作し得る。
【0126】
図7Bは、本開示の実施形態による、
図7AのPBP光学デバイス700がPBP格子700として機能する場合の、結晶分子703の方位720の一部分のx-y断面図を概略的に示す。
図7Aおよび
図7Bに示すように、PBP格子700は、固体結晶膜701内の結晶分子703を少なくとも部分的に配向するように構成された配向構造704を含み得る。例えば、配向構造704と接触している結晶分子703は、配向構造704によって配向され得、固体結晶膜701内の残りの結晶分子703は、配向されていない隣接する結晶分子703の配向に従い得る。固体結晶膜701内の結晶分子703は、一方または両方の面内方向に沿って周期的かつ直線的に配向され得、その結果、固体結晶膜701内の結晶分子703の軸の方位は、一方または両方の面内方向に沿って周期的かつ直線的に変化し得る。
【0127】
例示のために、
図7Bは、結晶分子703の軸の方位が、一方の面内方向(例えば、
図7Bにおけるx軸方向)に沿って周期的かつ直線的に変化し得ることを示す。結晶分子703の軸の面内方位は、均一なピッチΛでx軸方向に沿って直線的な反復パターンで変化し得る。PBP格子700のピッチΛは、パターンの繰り返される部分の間のx軸に沿った距離の半分であり得る。ピッチΛは、PBP格子700の光学特性を部分的に決定し得る。例えば、PBP格子700の光軸(例えば、z軸)に沿って入射する円偏光は、回折次数m=+1、-1、および0にそれぞれ対応する一次光、共役光、および漏光を含む格子出力を有し得る。ピッチΛは、異なる回折次数での回折光の回折角を決定し得る。いくつかの実施形態では、ピッチΛが減少するにつれて、所与の波長の光に対する回折角は増加し得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、PBP格子700は、正の状態と負の状態との2つの光学状態を有する(またはその状態で動作することができる)受動PBP格子であり得る。PBP格子700の光学状態は、円偏光入力光の掌性およびPBP格子700における結晶分子の回転の掌性に依存し得る。
図7Cおよび
図7Dはそれぞれ、本開示の一実施形態による、PBP格子700の正の状態および負の状態の図を概略的に示す。いくつかの実施形態では、
図7Cに示すように、PBP格子700は、右回り円偏光(「RHCP」)入力光705に対応して正の状態で動作し得、RHCP入力光705を特定の波長で正の角度(例えば、+θ)に回折し得る。
【0129】
図7Dに示すように、PBP格子700は、左回り円偏光(「LHCP」)光入力707に対応して負の状態で動作し得、LHCP入力光707を特定の波長で負の角度(例えば、-θ)に回折し得る。さらに、PBP格子700は、光を回折することに加えて、PBP格子700を透過した円偏光の掌性を逆転させ得る。例えば、
図7Cに示す構成では、RHCP入力光705は、PBP格子700を通過した後、LHCP出力光706に変換され得る。
図7Dに示す構成では、LHCP入力光707は、PBP格子700を通過した後、RHCP出力光708に変換され得る。いくつかの実施形態では、PBP格子700は、LHCP入力光に対応して正の状態で動作し、RHCP入力光に対応して負の状態で動作し得る。特定の波長の非偏光入力光の場合、PBP格子700は、非偏光入力光のRHCP成分およびLHCP成分をそれぞれ正の角度(例えば、+θ)および負の角度(例えば、-θ)に回折し得る。したがって、PBP格子700は、円偏光ビームスプリッタとして機能し得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、円偏光入力光の掌性が別の光学デバイスによって切り替えられるとき、PBP格子700は、正の状態と負の状態との間で切替え可能であり得る。例えば、PBP格子700に能動偏光スイッチが結合され得る。PBP格子700は、能動偏光スイッチから出力された光を受光し得る。能動偏光スイッチは、PBP格子700に入射する円偏光の掌性を制御し(例えば、切り替え)、それにより、PBP格子700の光学状態を制御し得る。能動偏光スイッチは、能動偏光スイッチの動作状態(例えば、非切替え状態か、切替え状態か)に応じて、円偏光の掌性を維持するか、または円偏光の掌性を逆転させ得る。能動偏光スイッチの切替え速度は、PBP格子700の切替え速度を決定し得る。いくつかの実施形態では、能動偏光スイッチは、切替え可能な半波長板(「SHWP」)を含み得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、PBP格子700内の固体結晶(または固体結晶膜)701がアモルファス状態になるように構成される場合、PBP格子700は中性状態で動作し得る。中性状態では、PBP格子700は、入力光を回折しない場合があり、PBP格子700を透過する光の偏光に影響を与える場合もあれば、影響を与えない場合もある。いくつかの実施形態では、PBP格子700は、固体結晶701を配向結晶状態とアモルファス状態との間で切り替えることによって、正または負の状態と中性状態との間で切替え可能であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶701は、様々な方法、例えば、偏光ベースの切替え、熱ベースの切替え、または外部場ベースの切替えなどを通して、配向結晶状態とアモルファス状態との間で切替え可能であり得る。いくつかの実施形態では、PBP格子700は、正または負の状態と中性状態との間で切替え可能な能動PBP格子として機能し得る。
【0132】
図8Aは、本開示の一実施形態による、
図7Aに示すPBP光学デバイス700がPBPレンズ700として機能する場合の、結晶分子803の方位820の一部分のx-y断面図を概略的に示す。
図8Bは、本開示の一実施形態による、
図8Aに示すPBPレンズにおける結晶分子803の方位820の一部分のx軸に沿う断面図である。図示を簡略化するために、
図8Aでは、固体結晶膜701に含まれる各結晶分子803は小さいロッドで表されており、各ロッドは、長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)を有するものとして示されている。すなわち、各分子803は、長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)を有するものとして描かれており、分子803の軸は、分子803の最も高い屈折率の推定軸に沿って分子803の長手方向にあると推定される。小さいロッドの長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)は、分子803の長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)にそれぞれ対応し得る。
【0133】
図7Aおよび
図8Aに示すように、PBPレンズ700は、固体結晶膜701に含まれる結晶分子803を少なくとも部分的に配向するように構成された配向構造804を含み得る。例えば、配向構造804と接触している結晶分子803は、配向構造804によって配向され得、固体結晶膜701に含まれる残りの結晶分子803(例えば、配向構造804と接触している結晶分子の上方に配置されたもの)は、配向された隣接する結晶分子803の配向に従い得る。固体結晶膜701に含まれる結晶分子803の軸の方位は、面内半径方向(例えば、半径方向)に沿って周期的に変化し得る。
【0134】
PBPレンズ700は、結晶分子803の軸の面内方位に基づいてレンズプロファイルを生成することができ、位相差はT=2θであり得、ここで、θは、結晶分子803の軸の方位とx軸方向との間の角度である。
図8Aおよび
図8Aを参照すると、結晶分子803の軸の方位は、可変ピッチΛで、中心(O)805からPBPレンズ700のエッジ806まで連続的に変化し得る。ピッチは、結晶分子803間の距離として定義され、結晶分子803の軸の方位は、初期状態から約180°だけ(回転によって)変更される。中心805におけるピッチ(Λ
0)が最も大きく、端806におけるピッチ(Λ
r)が最も小さい、すなわち、Λ
0>Λ
1>...>Λ
rである。x-y平面では、レンズ半径(r)およびレンズ焦点(+/-f)を伴うPBPレンズ700の場合、θは、
を満たすことができ、ここで、λは入射光の波長である。結晶分子803の軸の連続的な面内回転は、得られた周期的構造(例えば、ピッチ)の周期が減少するように、PBPレンズ700の中心(O)805からエッジ806に向かって移動することによって加速し得る。
【0135】
PBPレンズ700は、2つの光学状態、すなわち、集束状態および非集束状態を有する受動PBPレンズ700であり得る。PBPレンズ700の光学状態は、受動PBPレンズ700に入射する円偏光の掌性およびPBPレンズ700における結晶分子の回転の掌性に依存し得る。
図8Cおよび
図8Dは、本開示の実施形態による、PBPレンズ700の集束状態および非集束状態の図をそれぞれ概略的に示す。図示を簡略化するために、
図8Cおよび
図8Dでは、固体結晶膜701に含まれる結晶分子803は小さいロッドで表されている。いくつかの実施形態では、
図8Cに示すように、PBPレンズ700は、RHCP入力光809に対応して集束状態で動作し得、正の焦点「f」を有し得る。
図8Dに示すように、PBPレンズ700は、LHCP入力光807に対応して非集束状態で動作し得、負の焦点「-f」を有し得る。さらに、PBPレンズ700は、光の集束および/または非集束に加えて、PBPレンズ700を透過した円偏光の掌性を逆転させ得る。例えば、
図8Cに示す構成では、RHCP入力光809は、PBPレンズ700を通過した後、LHCP出力光810に変換され得る。
図8Dに示す構成では、LHCP光入力807は、PBPレンズ700を通過した後、RHCP出力光808に変換され得る。いくつかの実施形態では、PBPレンズ700は、LHCP入力光に対応して非集束状態で動作し得、RHCP出力光に対応して集束状態で動作し得る。
【0136】
受動PBP格子と同様に、円偏光入射光の掌性が別の光学デバイスによって切り替えられるとき、PBPレンズ700は、集束状態と非集束状態との間で切替え可能であり得る。例えば、PBPレンズ700に能動偏光スイッチが結合され得る。PBPレンズ700は、能動偏光スイッチから出力された光を受光し得る。能動偏光スイッチは、PBPレンズ700に入射する円偏光の掌性を制御し(例えば、切り替え)、それにより、PBPレンズ700の光学状態を制御し得る。能動偏光スイッチは、能動偏光スイッチの動作状態(例えば、非切替え状態か、切替え状態か)に応じて、能動偏光スイッチを透過した後の円偏光の掌性を維持するか、または円偏光の掌性を逆転させ得る。能動偏光スイッチの切替え速度は、PBPレンズ700の切替え速度を決定し得る。いくつかの実施形態では、能動偏光スイッチは、SHWPを含み得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、PBPレンズ700内の固体結晶(または固体結晶膜)701がアモルファス状態になるように構成される場合、PBPレンズ700は中性状態で動作し得る。中性状態では、PBPレンズ700は、入力光を集束も非集束もしない場合があり、PBPレンズ700を透過する光の偏光に影響を与える場合もあれば、影響を与えない場合もある。いくつかの実施形態では、PBPレンズ700は、固体結晶701を配向結晶状態とアモルファス状態との間で切り替えることにより、集束状態または非集束状態と中性状態との間で切替え可能であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶701は、様々な方法、例えば、偏光ベースの切替え、熱ベースの切替え、または外部場ベースの切替えなどを通して、配向結晶状態とアモルファス状態との間で切替え可能であり得る。いくつかの実施形態では、PBPレンズ700は、集束状態または非集束状態と中性状態との間で切替え可能な能動PBPレンズとして機能し得る。
【0138】
図7A~
図7Dおよび
図8A~
図8Dに示す透過型PBP光学素子または光学デバイスに加えて、反射型PBP光学素子または光学デバイスもまた、開示された固体結晶に基づいて実現され得る。
図9Aは、固体結晶または固体結晶膜901を含み得る反射型PBP光学素子または光学デバイス900の図を示す。固体結晶膜901は、上記および本明細書に記載の固体結晶または固体結晶膜のいずれかの実施形態であり得る。いくつかの実施形態では、PBP光学デバイス900は、
図9Aに示されていない1つまたは複数の配向構造も含み得る。いくつかの実施形態では、PBP光学デバイス900は、
図9Aに示されていない1つまたは複数の基板も含み得る。PBP光学デバイス900は、固体結晶膜901における結晶分子の面内配向パターン(または結晶分子の軸の面内方位)に応じて、1つまたは複数の光学機能を有する反射型PBP光学デバイスとして動作し得る。
【0139】
図9Bは、光学デバイス920の固体結晶膜901に含まれる(903a、903bで表された)結晶分子903の軸の方位の一部分の3D図を概略的に示しており、
図9Cは、
図9AにおけるPBP光学デバイスが反射PBP格子として機能する場合の、結晶分子903の軸の方位940のx-z断面図を概略的に示す。解説のために、
図9Bにおける各分子903は、は、長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)を有するものとして示されており、分子903の軸は、分子903の最も高い屈折率の推定軸に沿って分子903の長手方向にあると推定される。固体結晶膜901全体にわたる結晶分子903の軸の方位の図示を簡略化するために、
図9Cでは、固体結晶膜901に含まれる各結晶分子903は、小さいロッドで表されており、各ロッドは、長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)を有するものとして示されている。小さいロッドの長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)は、分子903の長手方向(または長さ方向)および横方向(または幅方向)にそれぞれ対応し得る。
【0140】
反射PBP格子は、その物理的性質に起因して、反射偏光体積格子(「PVG」)と呼ばれることもある。
図9Bおよび
図9Cに示すように、いくつかの実施形態では、固体結晶膜901は、コレステリック結晶膜901であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶膜901は、キラル結晶分子またはキラルドーパントがドープされた結晶分子を含み得、固体結晶は、キラリティ、すなわち掌性を示し得る。配向構造904と接触している結晶分子903aの軸906は、面内方向のうちの一方(例えば、
図9Bにおけるx軸)に沿って周期的かつ直線的に変化し得る。配向構造904と接触している結晶分子903aの上に積み重ねられた結晶分子903bの軸907は、固体結晶膜901の表面に垂直な方向(例えば、
図9Bにおけるz軸方向)、例えば、固体結晶膜901の厚さ方向に沿って、らせん状にねじれ得る。配向構造904によって生成された結晶分子903の軸のこのような方位は、固体結晶膜901内に一定の屈折率の周期的で傾斜した平面905をもたらし得る。言い換えると、軸の同じ方位を有する結晶分子の異なる層からの結晶分子903は、固体結晶膜901内に一定の屈折率の傾斜した周期的平面905を形成し得る。
【0141】
入力光の位相を変調することによって入力光を回折する透過PBP格子とは異なり、反射PVG900は、ブラッグ反射(または傾斜マルチプレイヤ反射)を通して入力光を回折し得る。反射PVG900は主に、反射PVG900のらせん構造の掌性と同じ掌性を有する円偏光を回折し、主に、他の偏光を有する光を、透過光の偏光を変えることなく透過し得る。例えば、円偏光入力光が反射PVG900のらせん構造の掌性と反対の掌性を有する場合、入力光は主に、0次まで透過され得、透過光の偏光は、実質的に保持され得る(例えば、影響を受けない)。反射PVG900の回折効率は、固体結晶膜901の厚さの関数であり得る。例えば、反射PVG900の回折効率は、厚さとともに単調に増加し、その後、徐々に飽和し得る(例えば、実質的に一定のままである)。
【0142】
本開示の実施形態による光学素子または光学デバイスは、様々な分野において実装され得る。そのような実装は、本開示の範囲内にある。いくつかの実施形態では、開示された光学素子または光学デバイスは、拡張現実(「AR」)、仮想現実(「VR」)、および/または複合現実(「VR」)のためのニアアイディスプレイ(「NED」)における多機能光学構成要素として実装され得る。例えば、開示された光学素子または光学デバイスは、導波路ベースのコンバイナ、アイトラッキング構成要素、多焦点または可変焦点を実現するための調節構成要素、ディスプレイ解像度向上構成要素、瞳ステアリング要素、および偏光制御構成要素(例えば、4分の1波長板または半波長板)などとして実装される場合があり、これにより、重量およびサイズが大幅に低減され、NEDの光学性能が向上する可能性がある。
【0143】
図10Aは、本開示の一実施形態によるNED1000の図を示す。
図10Bは、本開示の実施形態による、
図10Aに示すNED1000の半分の断面上面図を示す。NED1000は、導波路、PBPレンズ、PBP格子、または反射PVH格子などの、開示された光学素子または光学デバイスのうちの1つまたは複数を含み得る。
図10Aに示すように、NED1000は、ユーザによって着用されるように構成されたフレーム1005を含み得る。NED1000は、フレーム1005に装着された左目ディスプレイシステム1010Lおよび右目ディスプレイシステム1010Rを含み得る。左目ディスプレイシステム1010Lおよび右目ディスプレイシステム1010Rはそれぞれ、コンピュータで生成された仮想画像をユーザのFOV内の左ディスプレイウィンドウ1015Lおよび右ディスプレイウィンドウ1015Rに投影するように構成された1つまたは複数の画像表示構成要素を含み得る。左目ディスプレイシステム1010Lおよび右目ディスプレイシステム1010Rの例には、導波路ディスプレイシステムが含まれ得る。例示のために、
図10Aは、ディスプレイシステムが、フレーム1005に結合された(例えば、装着された)光源アセンブリ1035を含み得ることを示している。NED1000は、VRデバイス、ARデバイス、MRデバイス、またはそれらの組合せとして機能し得る。いくつかの実施形態では、NED1000がARおよび/またはMRデバイスとして機能する場合、右ディスプレイウィンドウ1015Rおよび左ディスプレイウィンドウ1015Lは、ユーザの視点から完全にまたは少なくとも部分的に透明であり得、それによりユーザは、周囲の現実世界の環境を見ることが可能になる。いくつかの実施形態では、NED1000がVRデバイスとして機能する場合、右ディスプレイウィンドウ1015Rおよび左ディスプレイウィンドウ1015Lは不透明であり得、その結果、ユーザは、NED1000によって提供されるVRイメージに没入することができる。
【0144】
図10Bは、本開示の一実施形態による、
図10Aに示すNED1000の断面上面図である。
図10Bに示すように、(右目ディスプレイシステム1010Rまたは左目ディスプレイシステム1010Lを表し得る)ディスプレイシステム1010は、ユーザの1つまたは複数の目1020のための導波路ディスプレイまたはスタック型導波路ディスプレイを含み得る導波路ディスプレイシステムであり得る。例えば、スタック型導波路ディスプレイは、導波路ディスプレイのスタックを含む多色ディスプレイ(例えば、赤-緑-青(「RGB」)ディスプレイ)であり得、多色ディスプレイのそれぞれの単色光源は、異なる色の光を放出するように構成され得る。いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイシステムは、画像光を生成するように構成された光源アセンブリ1035、および拡大された画像光をユーザの目1020に出力するように構成された出力導波路1015を含み得る。いくつかの実施形態では、出力導波路1015は、NED1000において、仮想世界および現実世界の画像を重ね合わせるための導波路ベースのコンバイナとして機能し得る。導波路ベースのコンバイナは、ディスプレイウィンドウ(例えば、左ディスプレイウィンドウ1015Lまたは右ディスプレイウィンドウ1015R)として機能し得る。出力導波路1015は、光源アセンブリからの光を出力導波路の中へ結合するように構成された1つまたは複数の入力結合要素を含み得る。いくつかの実施形態では、出力導波路1015は、光をユーザの目1020に向けて出力導波路の外へ結合するように構成された1つまたは複数の出力結合(または減結合)要素を含み得る。いくつかの実施形態では、出力導波路1015は、1つまたは複数の結合要素によって出力された光を1つまたは複数の減結合要素へ方向付けるように構成された1つまたは複数の方向付け要素を含み得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、NED1000は、バリフォーカルまたはマルチフォーカルブロック1040を含み得る。ディスプレイシステム1010とバリフォーカルまたはマルチフォーカルブロック1040とがともに、画像光を射出瞳1025に提供し得る。射出瞳1025は、ユーザの目1020が位置している場所であり得る。例示のために、
図10Bは、単一の目1020に関連する断面図を示す。画像光をユーザの他方の目に方向付けるために、ディスプレイシステム1010とは別の同様のディスプレイシステム、およびバリフォーカルまたはマルチフォーカルブロック1040とは別の同様のバリフォーカルまたはマルチフォーカルブロックが、NED1000の残りの半分(図示せず)に含まれ得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、NED1000は、アイトラッキングシステム(図示せず)を含み得る。アイトラッキングシステムは、例えば、ユーザの片方または両方の目を照明するように構成された1つまたは複数の光源、および光源によって放出され、片方または両方の目によって反射された光に基づいて、ユーザの片方または両方の目の画像を捕捉するように構成された1つまたは複数のカメラを含み得る。いくつかの実施形態では、NED1000は、適応型調光要素1045を含み得、適応型調光要素1045は、NED1000を通して見られる現実世界の物体に対する透過率を動的に調整し、それにより、NED1000をVRデバイスとARデバイスとの間で、またはVRデバイスとMRデバイスとの間で切り替え得る。いくつかの実施形態では、ARおよび/またはMRデバイスとVRデバイスとの間の切替えとともに、ARおよび/またはMRデバイスにおいて適応調光要素1045を使用して、現実物体と仮想物体との間の明るさの差を軽減することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、導波路ベースのコンバイナ1015は、
図5Aにおける導波路500または
図5Bにおける導波路520などの、固体結晶膜内の結晶分子の軸の空間的に均一な方位を有する固体結晶膜に基づく開示された光学デバイスによって実現され得る。いくつかの実施形態では、導波路ベースのコンバイナ1015に配置された入力結合要素、方向付け要素、および/または出力結合(または減結合)要素は、
図7A~
図7Dに示すPBP格子700または
図9A~
図9Cに示す反射PVG格子900などの、固体結晶膜の平面方向に結晶分子の軸の周期的かつ直線的な方位を有する固体結晶膜に基づく開示された光学デバイスによって実現され得る。表面レリーフ格子(「SRG」)およびホログラフィック格子(「HG」)など、従来のNEDで使用される様々な格子と比較して、PBP格子として機能する開示された光学デバイスは、広い視野および広い波長スペクトル(例えば、可視波長の帯域)にわたって高い効率を有する場合があり、VR、AR、および/またはMRアプリケーション用に使用される導波路結合NEDに利点をもたらす可能性がある。さらに、
図9A~
図9Cに示す反射PVG格子900は、特定の掌性を有する円偏光を偏向させ、直交する掌性を有する円偏光を透過するように構成され得る。反射PVG格子900が、ARおよび/またはMRアプリケーション用のNED1000において、表示された画像と現実世界の光とを組み合わせるコンバイナとして使用される場合、現実世界の光の全体的な透過率は高くなり得る。高屈折率固体結晶に基づく導波路コンバイナは、効率的なRGB入力結合および出力結合のために、導波路ベースのNEDのFOVを広げ、コンバイナプレートの数を(複数から)1つに減らすことによってディスプレイ光学部品の重量を低減するように構成され得る。高屈折率固体結晶に基づく入力結合要素、方向付け要素、および/または出力結合(または減結合)要素(例えば、格子)は、NED用の高屈折率および高FOV導波路と互換性があるように構成され得る。
【0148】
さらに、
図10Bに示すバリフォーカルまたはマルチフォーカルブロック1040は、導波路ディスプレイシステムから放出される光の距離を、光がユーザの目1020から所定の焦点距離で現れるように調整するように構成され得る。バリフォーカルまたはマルチフォーカルブロック1040は、光学的に直列に配列された1つもしくは複数のバリフォーカルまたはマルチフォーカル構造を含み得る。バリフォーカルまたはマルチフォーカル構造は、コントローラからの指示に従ってその焦点を動的に調整するように構成された光学デバイスと呼ばれることがある。バリフォーカルまたはマルチフォーカル構造は、固定の屈折力を有する1つもしくは複数の単焦点レンズ、および/または調整可能な(もしくは可変の)屈折力を有する1つもしくは複数の可変焦点もしくは多焦点レンズを含み得る。1つまたは複数の多焦点レンズは、
図8A~
図8Dに示すPBPレンズ700などの、固体結晶膜の面内半径方向に結晶分子の軸の非周期的方位を有する固体結晶膜に基づく開示された光学デバイスによって実現され得る。
【0149】
NEDにおける開示された光学デバイスの上記の用途は、単に例示を目的としたものである。さらに、固体結晶に基づく開示された光学デバイスはまた、アイトラッキング構成要素、ディスプレイ解像度向上構成要素、および瞳ステアリング要素などを実現するためにも使用され得るが、これは本開示によって限定されない。固体結晶に基づく開示された光学デバイスは、軽量、薄型、コンパクトであり、カスタマイズされ得る。したがって、開示された光学デバイスをNEDにおける多機能光学構成要素として使用することにより、NEDの重量およびサイズを大幅に低減すると同時に、光学性能および外観を向上させることができ、したがって、未来のスマートグラスの可能性が広がる。
【0150】
さらに、1つまたは複数の配向構造上に形成された開示された固体結晶は、電子デバイスの電子性能を改善するために電子デバイスにおいて実装され得る。多環式炭化水素などの従来の固体結晶は、フレキシブルエレクトロニクスの分野において、電界効果トランジスタ(「FET」)、薄膜トランジスタ(「TFT」)、光起電力素子などの様々な有機電子デバイスにおける有機半導体として使用されている。従来の固体結晶の格子定数を変更すること(例えば、従来の固体結晶を圧縮すると)により、電荷担体の移動度が高まる、したがって有機電子デバイスの電子輸送特性が高まり得ることが実証されている。1つまたは複数の配向構造上に形成された(例えば、成長した)開示された固体結晶は、結晶にとって特定の望ましい結晶格子が達成され得るように配向構造を調整することによって、制御可能な量のひずみを有するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ひずみは、固体結晶全体にわたって変化する場合があり、例えば、ひずみは、開示された固体結晶に基づいて同じデバイス内で変化する場合がある。いくつかの実施形態では、ひずみは、同じ基板(例えば、同じ基板上に)配置された複数の固体結晶全体にわたって変化する場合があり、例えば、ひずみは、それぞれの固体結晶を含む複数のデバイス全体にわたって変化する場合がある。いくつかの実施形態では、ひずみは、特定の空間パターン(PBPタイプのパターンなど)で変化する場合があり、これは新規な電子輸送特性の一助となる可能性がある。
【0151】
本開示はまた、固体結晶に基づいて形成される開示された光学素子または光学デバイスを製造するための様々な方法を提供する。このような光学素子または光学デバイスは、本明細書に開示され上記に記載されたPBP光学素子または光導波路を含み得る。例えば、
図11Aは、光学デバイスを製造するための方法400を示す流れ図である。光学デバイスは、固体結晶を含み得る。方法1100は、配向構造を提供することを含み得る(ステップ1105)。配向構造を提供するために、様々な方法が使用され得る。例えば、配向構造は、基板上に提供され得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、基板の表面上に別個の要素として形成(例えば、堆積、コーティング)され得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、好適なプロセス(例えば、エッチング)を介して、基板の表面上に、または少なくとも部分的に基板の表面において一体的に形成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、基板を使用せずに提供され得る。例えば、配向構造は、既製の構造であり得る。配向構造は、配向構造パターンを含むかまたは定義し得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、配向構造を提供することは、光によって感光性材料を処理することによって基板の表面上に光配向層を形成すること、基板の表面上に機械的に摩擦された配向層を形成すること、基板の表面上に異方性ナノインプリントを備えた配向層を形成すること、基板の表面のウェットエッチングもしくはドライエッチングによって基板の表面上に異方性レリーフを直接形成すること、基板の表面上に堆積された強誘電性もしくは強磁性の材料に基づいて基板の表面上に配向構造を形成すること、配向パターンを定義する結晶性層もしくは結晶性基板を配向構造として提供すること、または磁場もしくは電場の存在下での結晶化によって基板の表面上に配向構造を形成することのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0153】
方法1100は、配向構造上に固体結晶を形成することも含み得、固体結晶は、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む(ステップ1110)。配向構造上に固体結晶(または固体結晶の膜、層、もしくはプレート)を形成するために、様々な方法が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、固体結晶を、溶融固体結晶材料に基づく配向構造上で成長させることができる。したがって、配向構造上に固体結晶を形成することは、配向構造上に固体結晶を成長させることを含み得る。いくつかの実施形態では、配向構造上に固体結晶を形成することは、以下のプロセス、すなわち、有機結晶分子線エピタキシまたは有機結晶分子のホットウォールエピタキシのうちの少なくとも一方を含む気相堆積、熱配向、モールド配向、または表面配向を介した溶媒支援堆積、ポリマー支援連続鋳造、温度支援ゾーンアニーリング、物理蒸気輸送(物理気相堆積と呼ばれることもある)、スピンコーティング、または溶融結晶材料に基づく結晶成長プロセスのうちの少なくとも1つを使用して実行される。
【0154】
方法1100は、
図11Aに示されていない他のプロセスを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、複数の配向構造が提供され得、複数の固体結晶(または固体結晶層)が形成され得る。配向構造は第1の配向構造であり得、所定の配向パターンは第1の所定の配向パターンであり得、固体結晶は第1の固体結晶であり得、結晶分子は、第1の結晶分子であり得る。方法1100はまた、第1の固体結晶上に第2の配向構造を提供することと、第2の配向構造上に第2の固体結晶を形成することとを含み得る。第2の固体結晶は、第2の所定の配向パターンで配向された第2の結晶分子を含み得、第2の所定の配向パターンは、第2の配向構造によって少なくとも部分的に定義される。
【0155】
いくつかの実施形態では、方法1100によって形成される固体結晶は、少なくとも約1.5の主屈折率および少なくとも約0.1の光学異方性(例えば、複屈折)を伴う光学異方性であり得る。固体結晶の主屈折率は、固体結晶の軸に平行な方向の屈折率であり得る。固体結晶の軸は、固体結晶が最も高い屈折率を有する軸であり得る。
【0156】
図11Bは、固体結晶を含み得る光学デバイスを製造するための方法1130を示す流れ図である。方法1130は、配向構造と接触している溶融結晶材料を提供することを含み得る(ステップ1135)。互いに接触している溶融結晶材料および配向構造を提供するために、様々な方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、溶融結晶材料は、配向構造上にコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、溶融結晶材料は、配向構造上に堆積され得る。いくつかの実施形態では、溶融結晶材料は、容器の中に導入され得、配向構造は、容器の少なくとも1つの壁(例えば、底壁、側壁)に設けられ得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、溶融結晶材料の中に浸漬または挿入され得る。
【0157】
方法1130は、溶融結晶材料に基づいて固体結晶を作製することも含み得、固体結晶は、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む(ステップ1140)。溶融結晶材料に基づいて固体結晶を作製するために、本明細書に開示された様々な方法が使用され得る。
【0158】
方法1130は、
図11Bに示されていない他のプロセスも含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、固体結晶を作製することは、溶融結晶材料を冷却することを含み得る。いくつかの実施形態では、固体結晶を作製することは、種結晶をダイから離れるように移動させる(例えば、引き離される)ことによって、溶融結晶材料に基づいて固体結晶を成長させることを含み得る。ダイは、固体結晶の成長中に溶融結晶材料が貫流できるように少なくとも部分的に構成された少なくとも1つの毛細管を含み得る。ダイは、所定の形状を有するとともに配向構造を有する表面も含み得る。固体結晶は、配向構造に従ってダイの表面に沿って成長し得る。
【0159】
図11Cは、固体結晶を含み得る光学デバイスを製造するための方法1150を示す流れ図である。方法1150は、溶融結晶材料と2つの基板の2つの表面との間の接触を維持しながら、2つの基板間の空間内で溶融結晶材料を移動させることを含み得、2つの表面のそれぞれは、溶融結晶材料と接触して配置された配向構造を含む(ステップ1155)。溶融結晶材料を移動させることは、様々な輸送機構または移動機構を使用して達成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、搬送ベルトまたはロボットアームなどの機械的機構を使用して、溶融結晶材料と互いに向かい合う2つの基板の2つの表面との接触を維持しながら溶融結晶材料を2つの基板に沿って移動させることができる。溶融結晶材料の温度勾配は、好適な温度制御デバイス(例えば、加熱デバイスおよび/またはコントローラ)によって維持され得る。方法1150はまた、種結晶を使用して溶融結晶材料から、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む固体結晶を成長させることを含み得る(ステップ1160)。方法1150は、固体結晶材料を処理して(例えば、加熱することによって)溶融結晶材料を作製するなど、他の追加または代替のステップを含み得る。いくつかの実施形態では、固体結晶の成長は、他の好適な方法によって達成され得る。例えば、固体結晶の成長は、配向構造上に蒸気のエピタキシャル成長が存在するように、有機材料の蒸気から成長させることによって達成され得る。この方法は、コレステリック(またはねじれ状の)成長にも適用され得る。
【0160】
図11Dは、固体結晶を含み得る光学デバイスを製造するための方法1170を示す流れ図である。方法1170は、固体結晶材料をるつぼ内で処理して溶融結晶材料を作製することを含み得る(ステップ1175)。溶融結晶材料を作製するために、様々な好適な方法が使用され得る。例えば、溶融結晶材料を作製するために、固体結晶材料が加熱デバイスによって加熱され得る。いくつかの実施形態では、溶融結晶材料を作製するために、固体結晶材料がマイクロ波または高圧にさらされ得る。方法1170は、ダイの1つまたは複数の毛細管を通して、溶融結晶材料を少なくとも1つの配向構造を含む表面上に流れるように誘導することも含み得る(ステップ1180)。方法1170は、種結晶を使用して溶融結晶材料から、少なくとも1つの配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む固体結晶を成長させることも含み得る(ステップ1185)。
【0161】
いくつかの実施形態では、ダイの表面は、所定の湾曲形状を有し得、成長した固体結晶は、ダイの表面と実質的に同じ湾曲形状を有し得る。言い換えると、湾曲した固体結晶および/または湾曲した光学デバイスが製造され得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、固体結晶を成長させることは、ダイの上部に配置された種結晶をダイから離れるように移動させて、固体結晶をダイの表面に沿ったメニスカス結晶界面で成長させることを含み得る。開示された方法は、成長した固体結晶をるつぼから除去することをさらに含み得る。開示された方法は、るつぼから除去された固体結晶を冷却することも含み得る。
【0163】
図11Eは、固体結晶を含む光学デバイスを製造するための方法1190を示す流れ図である。方法1190は、所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義する配向構造を提供することを含み得る(ステップ1191)。方法1190は、配向構造上に固体結晶を形成することを含み得、固体結晶の結晶分子は、所定の配向パターンで配向される(ステップ1192)。
【0164】
図12A~
図12Cは、本開示の一実施形態による、固体結晶を含む光学デバイスを製造するためのプロセスを示す。
図12Aに示すように、基板1201が提供され得る。
図12Bに示すように、基板1201の表面に(例えば、表面上に)配向構造1202が配置され得る。いくつかの実施形態では、配向構造1202は、基板1201上に別個の要素として形成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造1202は、基板1201の一体部分として形成され得る。例えば、配向構造1202は、基板1201の表面上または少なくとも部分的に基板1201の表面においてエッチングされ得る。いくつかの実施形態では、
図12Aに示すプロセスは省略される場合があり、既製の配向構造1202が、基板なしで直接提供される場合がある。
【0165】
図12Cに示すように、固体(または溶融)結晶分子1203が、配向構造1202上に配置(例えば、堆積、コーティング、形成、成長など)され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶分子1203は、溶融結晶材料に基づく配向構造1202上で成長し得る。いくつかの実施形態では、
図12Cに示すプロセスは、溶融結晶材料を含むるつぼ内で実行され得る。いくつかの実施形態では、配向構造は、ダイに提供され得る。配向構造1202は、配向構造パターンを含むかまたは定義し得る。配向構造1202は、結晶分子1203を所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向し得る。配向構造パターンは、所定の配向パターンと同じである場合もあれば、同じでない場合もある。いくつかの実施形態では、配向構造1202と接触している第1の複数の結晶分子は、配向構造パターンで配向され得る。第1の複数の結晶分子の上方に配置(例えば、コーティング、成長など)された他の結晶分子は、第1の複数の結晶分子の配向および/または方位に従い得る。いくつかの実施形態では、第1の複数の結晶分子の上方に配置された他の結晶分子は、対応する第1の複数の結晶分子に対してねじられるかまたは回転され得る。いくつかの実施形態では、結晶分子1203は均一に配向され得る。いくつかの実施形態では、結晶分子1203は、不均一に配向され得る。例えば、結晶分子1203の軸の方位は、同じ方位または方向に配向されない場合がある。代わりに、結晶分子1203の軸の方位は、空間的に変化し得る。
【0166】
図13A~
図13Dは、本開示の一実施形態による、固体結晶(または固体結晶層)を含む光学デバイスを製造するためのプロセスを示す。
図13Aに示すように、基板1301が提供され得る。
図13Bに示すように、配向構造1302が提供され得る。配向構造1302は、面内配向構造パターンを提供するように構成され得、面内配向構造パターンは、配向構造1302の表面に沿って空間的に均一な方位パターン、または方位が配向構造1302の表面に沿って少なくとも1つの方向に変化する、空間的に変化する(もしくは不均一な)配向パターンを有し得る。いくつかの実施形態では、空間的に変化する配向パターンは、直線方向における周期的もしくは非周期的な方位変化、半径方向における周期的もしくは非周期的な方位変化、円周(例えば、方位角)方向における周期的もしくは非周期的な方位変化、またはそれらの組合せを含み得る。例示のために、
図13Bは、矢印1303によって示される直線的で周期的な方位を有する面内配向構造パターンの一部分を示す。図示されていないが、配向構造1302はまた、他の面内配向構造パターンを提供または定義するように構成され得る。
【0167】
図13Cに示すように、結晶分子は、配向構造1302上に配置(例えば、形成、堆積、成長、コーティングなど)され得る。第1の複数の(または第1の層の)結晶分子1304は、配向構造1302上に配置され得る。第1の複数の結晶分子1304は、配向構造1302によって配向構造パターンで配向され得る。第2の複数の(または第2の層の)結晶分子1306は、第1の複数の結晶分子1304の上方に配置され得る。第2の複数の結晶分子1306は、第1の複数の結晶分子1304と同じ配向パターンに従う場合もあれば、従わない場合もある。いくつかの実施形態では、第2の複数の結晶分子1306は、
図13Cに示すように、第1の複数の結晶分子1304と同じ配向パターンに従い得る。いくつかの実施形態では、第2の複数の結晶分子1306は、対応する第1の複数の結晶分子1304に対してねじれ(または回転)を有し得る。
図13Dに示すように、第3の複数の結晶分子1308は、第2の複数の結晶分子1304の上方に配置され得る。第3の複数の結晶分子1308は、第2の複数の結晶分子1306と同じ配向パターンに従う場合もあれば、従わない場合もある。第3の複数の結晶分子1308の上方に、追加の層の結晶分子が形成され得る。いくつかの実施形態では、異なる層の結晶分子間に、1つまたは複数の追加の配向構造が配置され得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、気相堆積法を使用して製造され得る。例えば、有機結晶分子の気相堆積は、有機分子線エピタキシおよびホットウォールエピタキシのうちの1つまたは複数を含み得る。分子方位、したがって結晶方位を制御するために、基板の表面が修正され得る。例えば、結晶分子を配向するための配向構造パターンを提供するために、配向構造が基板の表面上に形成され得る。六方晶窒化ホウ素を化学気相堆積(「CVD」)でコーティングしてファンデルワール表面を作成し、有機固体結晶の自立薄膜を可能にすることができる。有機分子線エピタキシでは、超高真空条件を使用し得る。ホットウォールエピタキシでは、約10-6Mbarなどの高真空条件を使用し得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、溶媒支援堆積法を使用して製造され得る。有機結晶化の場合、この方法を熱配向、モールド配向、および/または表面配向と組み合わせて、高純度の大型結晶を実現することができる。例えば、固体結晶は、温度および/または溶媒支援単結晶形成プロセスに基づいて形成され得る。このようなプロセスでは、有機分子は、溶媒に溶解され得る。基板は、均一に制御された温度で溶液内に置かれ得る。再結晶化は、局所的に冷却された基板上で実行され得る。温度を制御するために、酸化ケイ素、熱結合が使用され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶は、モールドおよび/または温度支援結晶化プロセスに基づいて形成され得る。このプロセスでは、有機分子は、高温下での乾燥プロセス中に、密閉された空間内で自己組織化し得る。このプロセスは、トリクロロ(オクタデシル)シランポリウレタンアクリレートモールドを備えた酸化ケイ素表面を使用し得る。いくつかの実施形態では、固体結晶は、ドクターブレーディングプロセスを伴うポリマー支援連続鋳造に基づいて形成され得る。ポリマーを使用して有機分子溶液の粘度を高め、膜の滑りを防止することができる。速度制御されたドクターブレードを備えた移動ステージが使用され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶は、表面配向および/または溶媒支援パターニングプロセスに基づいて形成され得る。基板の表面は、分子配向を誘発するようにパターニングされ得る。分子をより低いエネルギー状態の構成に向けて移動させるために、蒸気溶媒が使用され得る。分子を固化させるために、溶媒の制御された交換および/または除去が実行され得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、ゾーンアニーリング法に基づいて形成され得る。例えば、温度支援結晶化プロセスが使用され得る。溶融温度を超える高温では、急激な温度勾配が生じ得る。結晶化の方向および/または純度は、(基板上にコーティングされ得る)有機薄膜の温度勾配全体にわたる移動速度によって制御され得る。このプロセスでは、急激な温度勾配のある移動ステージが使用され得る。
【0171】
図15Aは、物理蒸気輸送(「PVT」)を使用して基板上に固体結晶(もしくは固体結晶層)を形成または製造する方法を概略的に示す。
図15Aに示すように、PVTプロセスでは、原料(ターゲット材と呼ばれることもある)1512および配向構造1520を備えた基板1510が、PVTチャンバ1505内に提供され得る。配向構造1520は、基板1510の表面に配置され得、固体結晶層の所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義するように構成され得る。例えば、配向構造1520は、配向構造1520と接触している固体結晶層の少なくとも結晶分子を配向し得る配向構造パターンを有し得る。原料1512は、有機固体結晶を含み得る。原料1512が熱および/または真空下で昇華されて、有機固体結晶蒸気1514(蒸気結晶分子1514とも呼ばれる)を生成し得る。例えば、有機固体結晶蒸気1514を生成するために、原料1512は、所定の温度に加熱され得るか、または所定の真空状態にさらされ得る。有機固体結晶蒸気1514は、PVTチャンバ1505内でPVTチャンバ1505に沿って輸送され得、基板1510に配置された配向構造1520の表面上に堆積され得る。配向構造1520上に堆積された有機固体結晶蒸気1514の分子は、配向構造1520によって所定の配向パターンで少なくとも部分的に方位付け(または配向)され得る。有機固体結晶蒸気1514は固化および結晶化されて、所定の配向パターンで配向された固体結晶分子を有する固体結晶層が形成され得る。
【0172】
図15Bは、本開示の別の実施形態による、PVTに基づいた、基板上に固体結晶(もしくは固体結晶層)を形成または製造するための方法を概略的に示す。
図15Bに示すプロセスは、固体結晶層を形成するPVTプロセス中に非溶媒蒸気(例えば、不活性ガス)がPVTチャンバ1505内に供給または生成され得ることを除いて、
図15Aに示すプロセスと同様であり得る。例えば、非溶媒蒸気(例えば、不活性ガス)1536は、入口(図示せず)を介してPVTチャンバ1505内に供給され得る。PVTチャンバ1505内に供給または生成される非溶媒蒸気1536の量は、例えば、PVTチャンバ1505内の有機固体結晶蒸気1514の濃度を制御するための流量制御デバイス(図示せず、同様に図示されていないコントローラによって制御され得る)、固体結晶蒸気1515の輸送速度、および原料1512から生成された固体結晶蒸気1514の固化速度論によって制御され得、これにより、配向構造1520で固体結晶層を形成する固体結晶分子の核形成および結晶成長速度を制御する。
【0173】
図15Cは、本開示の別の実施形態による、PVTに基づいた、基板上に固体結晶(もしくは固体結晶層)を形成または製造するための方法を概略的に示す。
図15Cに示す実施形態では、PVTチャンバ1505内に置かれた原料1512が熱および/または真空下で昇華されて固体結晶蒸気(例えば、例示を簡単にするために別個にラベル付けされていない、
図15Aに示す固体結晶蒸気1514)を生成した後、固体結晶蒸気は、PVTチャンバ1505内でPVTチャンバ1505に沿って輸送され得、基板1510に提供された配向構造1520上に堆積されて、基板1510上に固体結晶1560(または固体結晶層1560)を形成し得る。PVTプロセス中、溶媒蒸気1556が、PVTチャンバ1505内に供給または生成され得る。溶媒蒸気1556は、基板1510上に形成された固体結晶層1560内のアモルファスドメインまたは多結晶性ドメイン間の境界などの欠陥を選択的に除去するように構成され得る。いくつかの実施形態では、PVTチャンバ1505内に供給される溶媒蒸気1556の量は、流量制御デバイス(図示せず)によって制御され得る。いくつかの実施形態では、
図15A、
図15B、および/または
図15Cに示すプロセスは、基板1510で形成された固体結晶層の所定の結晶化度および/または厚さに到達するように、交互にかつ/または繰り返し実行され得る。
【0174】
図16は、本開示の一実施形態による、固体結晶(または固体結晶層)を形成するための方法を概略的に示す。
図16に示すように、固体結晶層は、溶媒支援コーティング法(例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、インクジェット印刷コーティング)とそれに続く連続結晶化プロセスを使用して、配向構造を備えた基板上に形成され得る。例えば、固体結晶材料(例えば、有機固体結晶材料)を溶媒に溶解して、固体結晶材料の溶液(固体結晶溶液とも呼ばれる)を形成することができる。固体結晶溶液は、好適な方法、例えばスピンコーティング、ブレードコーティング、インクジェット印刷コーティングなどによって、配向構造(
図16には図示せず)を備えた基板1605上に分注され得る。例えば、
図16に示すように、固体結晶溶液は、ノズル1610(例えば、インクジェットプリンタのノズル)を介して基板1605上に分注され得る。基板1605上に分注された固体結晶溶液は、ブレード1615を介して基板1605上に固体結晶溶液層としてコーティングされ得る。いくつかの実施形態では、ノズル1610および/またはブレード1615は静止している場合があり、基板1605は、コーティングプロセス中にブレード1615に対して1つまたは複数の方向(
図16に示す方向など)に移動し得、その結果、ブレード1615が基板1605の表面を横断して、ノズル1610によって分注された固体結晶溶液を、固体結晶溶液の均一な層に再形成し得る。
【0175】
固体結晶溶液の層(または固体結晶溶液層)は、任意の好適な方法を使用して溶媒を蒸発させるように処理され得る。コーティングされた固体結晶溶液層内の溶媒が蒸発すると、固体結晶溶液層内の結晶分子を、配向構造によって少なくとも部分的に定義された所定の配向パターンに従って、配向構造によって所定の方位(例えば、面内方位)に少なくとも部分的に配向することが可能になり得る。溶媒が蒸発すると、固体状態の最密充填に起因して、配向構造上に形成された固体結晶溶液内の結晶分子は固化し得る。結晶分子は、望ましい分子方位を有する、すなわち、結晶分子が、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンに配列されている、固体結晶層を形成するように、(例えば、連続結晶化プロセスを介して)結晶化され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶層は、有機固体結晶層であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶溶液を溶媒コーティングプロセスと適合するものにし、コーティング性能をより良く制御するために、ポリマーを固体結晶材料または固体結晶溶液に添加して、固体結晶溶液の粘度を調整することができる。ポリマーの例には、結晶性ポリマー、アモルファスポリマー、ハイブリッドポリマー(ブロックコポリマー)、または液晶ポリマーなどが含まれ得る。いくつかの実施形態では、コーティング性能を向上させるために、界面活性剤(例えば、脂質、脂肪酸)も固体結晶溶液に添加され得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、固体結晶層は、ポリマーメソゲンに基づいて製造され得る。ポリマーメソゲンは、所定の配向パターンを有する固体結晶層を形成するための有機固体結晶材料として使用され得る。ポリマーメソゲンは、所定の高温まで加熱されたときまたは所定の溶媒に溶解されたときにネマティック相またはねじれネマティック相に転移するメソゲンからなる骨格または側鎖を含み得る。ポリマーメソゲンは、溶媒支援コーティング法などの任意の好適な方法を使用して、基板に提供される配向構造上に分注され得る。ポリマーメソゲンは、所定の高温まで加熱されるかまたは所定の溶媒に溶解されて(ポリマーメソゲン溶液を形成し)、ネマティック相またはねじれネマティック相に転移し得、その状態で、ポリマーメソゲンは、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向され得る。ポリマーメソゲンが配向構造によって配向された後、ポリマーメソゲンが冷却され得るか(例えば、ポリマーメソゲンの温度が所定の低温まで低下され得るか)、またはポリマーメソゲン溶液が溶媒を蒸発させるように処理され得る。溶媒が蒸発するかまたは温度が低下すると、固体状態の最密充填に起因して、ポリマーメソゲンは固化し得る。固化プロセス中、ポリマー骨格の配座に起因して、ポリマーメソゲンの方位(またはポリマーメソゲンの所定の配向パターン)は維持され得る。ポリマーメソゲンは、(例えば、連続結晶化プロセスを通して)結晶化されて、所定の分子方位(または所定の配向パターン)を有する固体結晶層を形成し得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、ポリマーメソゲンは、固体結晶層が基板上に形成されるときに、固体結晶層の分子に所定の配向パターンを提供するためのバルク配向構造として機能し得る。したがって、基板に提供される配向構造は、省略され得る。いくつかの実施形態では、ポリマーメソゲンを固体結晶材料と混合して、基板上に混合物を形成することができる。固体結晶材料およびポリマーメソゲンは、同様の化学的性質を有し得る。例えば、固体結晶材料およびポリマーメソゲンは、所定の高温まで加熱されるかまたは所定の溶媒に溶解されると、ネマティック相またはねじれネマティック相に転移し得る。いくつかの実施形態では、ポリマーメソゲンと基板上に分注された固体結晶材料との混合物は、所定の高温まで加熱されるかまたは所定の溶媒に溶解されて、ネマティック相またはねじれネマティック相に転移し得る。いくつかの実施形態では、所定の配向パターンをポリマーメソゲン内に誘導するために、混合物は光照射にさらされ得る。所定の配向パターンで配列されたポリマーメソゲンは、混合物中の固体結晶材料の固体結晶分子を配向し得る。固体結晶材料の固体結晶分子が配向された後、固体状態の最密充填に起因してポリマーメソゲンを固化させるために、混合物が冷却され得るか(すなわち、混合物の温度が所定の低温まで低下され得るか)、溶媒が蒸発され得る。固化プロセス中、固体結晶材料の固体結晶分子の方位(すなわち、結晶分子の所定の配向パターン)は維持され得る。固体結晶材料は、固体結晶材料の中に混合されたポリマーメソゲンとともに結晶化されて、所定の配向パターンで配向された結晶分子を有する固体結晶層を形成し得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、固体結晶層は、所定の高温まで加熱されるかまたは所定の溶媒に溶解されたときにネマティック相またはねじれネマティック相に転移する反応性メソゲン(例えば、アクリレート基またはエポキシ基を有する非ポリマーベースのメソゲン)に基づいて製造され得る。反応性メソゲンは、所定の配向パターンを提供するように構成された配向構造上に分注され得る。配向構造は、基板に提供され得る。反応性メソゲンが所定の高温まで加熱されるかまたは溶媒に溶解されてネマティック相またはねじれネマティック相に転移すると、反応性メソゲンは、配向構造によって少なくとも部分的に配向され得る。配向された反応性メソゲンは、さらに重合されて(例えば、光重合または熱重合されて)、少なくとも部分的に安定化された分子方位を有するポリマーメソゲンを形成し得る。ポリマーメソゲンが(例えば、所定の低温まで)冷却され得るか、またはポリマーメソゲンおよび溶媒を含む溶液が、溶媒を蒸発させるように処理され得る。溶媒が蒸発するかまたはポリマーメソゲンの温度が低下すると、固体状態の最密充填に起因して、ポリマーメソゲンは固化し得る。固化プロセス中、ポリマー骨格の配座に起因して、分子方位は維持され得る。ポリマーメソゲンは、望ましい所定の方位(例えば、所定の配向パターン)で結晶化され得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、反応性メソゲンは、液晶材料(または液晶)と混合され得る。液晶は、ほぼ室温でネマティック相またはねじれネマティック相であり得る。反応性メソゲンと液晶との混合物は、配向構造上に分注され得る。液晶は、配向構造によって少なくとも部分的に配向され得る。反応性メソゲンは、配向された液晶および配向構造によって配向され得る。すなわち、反応性メソゲンの配向(または方位)は、液晶によって強化され得る。配向された反応性メソゲンは、ポリマーメソゲンの方位を部分的に安定化するために、さらに重合(例えば、光重合または熱重合)されてポリマーメソゲンを形成し得る。反応性メソゲンが重合された後、液晶は、溶媒とともに除去されるか(例えば、洗い流されるか)、または(例えば、液晶を蒸発させるために)液晶を熱で所定の高温まで昇華させることによって除去され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶層は、ポリマーメソゲンに基づいて形成され得る。例えば、気相堆積、ブレードコーティング、インクジェット印刷、および本明細書に開示された他のプロセスなどの様々なプロセスを通して、ポリマーメソゲンをテンプレートとして(例えば、固体結晶分子をパターニングするための配向構造として)使用して、固体結晶材料から固体結晶層を成長させることができる。ポリマーメソゲン上に成長した固体結晶層は、ポリマーメソゲンによって提供された所定の配向パターンを有し得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、液晶材料(または化合物)を固体結晶材料と混合して、混合物を形成することができる。混合物を所定の高温まで加熱するかまたは所定の溶媒に溶解して、均質混合物を作ることができる。均質混合物は、配向構造上に分注され得る。混合物は所定の低温まで冷却され得るか、または混合物は溶媒を蒸発させるように処理され得る。温度が低下するかまたは溶媒が蒸発すると、液晶材料および固体結晶材料は、少なくとも部分的に相分離し得る。液晶材料は、ネマティック相またはねじれネマティック相であり得、配向構造によって少なくとも部分的に配向され得る。固体結晶材料は、好適なプロセスを使用して固化および結晶化されて、固体結晶層を形成し得る。結晶化中、固体結晶分子は、配向構造によって配向された液晶材料(または化合物)の配向調節力によって少なくとも部分的に配向され得る。結晶化中、液晶材料は、強いひずみを示すエリアを充填し得る。
【0181】
図17は、本開示の一実施形態による、配向構造を概略的に示す。
図17は、
図13B~
図3Dに示す実施形態に基づいている。
図13B~
図13Dに関連して上記で説明したように、配向構造1302は、物理気相堆積またはイオン気相堆積によって形成され得る。
図17に示すように、緩衝結晶性層1705が配向構造1302に(例えば、配向構造1302上に)配置され得る。緩衝結晶性層1705は、配向構造1302と接触する第1の表面と、後続のプロセスで上に形成される固体結晶層と接触する第2の表面とを有し得る。緩衝結晶性層1705は、固体結晶層における分子方位および結晶方位を維持しながら、固体結晶層と配向構造1302との間のひずみを低減するように構成され得る。いくつかの実施形態では、緩衝結晶性層1705は、液晶、液晶ポリマー、高温でネマティック相もしくはねじれネマティック相を有する固体結晶、多環式芳香族炭化水素(例えば、ポリエチレンアファタレート)、結晶性フッ素含有ポリマー(例えば、テトラフルオロエチレンなど)、またはポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0182】
図18Aは、本開示の一実施形態による、基板上に配置された配向構造の上面図を概略的に示す。配向構造は、マイクロスケール構造および/またはナノスケール構造などの任意の好適なサイズを有する複数の微細構造を含み得る。
図18Aに示すように、基板1804上に提供される配向構造1801は、複数の微細構造1802を含み得る。いくつかの実施形態では、配向構造1801は、基板1804の内部に一体的に形成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造1801は、基板1804の表面上に別個に形成され得る。いくつかの実施形態では、
図18Aに示すように、複数の微細構造1802は、アレイに配列された複数の溝を画定するか、形成するか、または含み得る。例示および解説のために、
図18Aでは、溝と微細構造はどちらも黒い長方形によって表されている。したがって、参照番号1802は、微細構造と溝との両方を指すことがある。
【0183】
溝1802の長手方向(または長さ方向)の方位は、溝1802の方位と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、アレイ内の溝1802の方位は、アレイの表面に沿って(または基板1804の表面に沿って)空間的に均一であり得る。すなわち、配向構造1801は、均一な配向構造パターンを提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、アレイ内の溝1802の方位は、空間的に均一ではなく空間的に変化し得る。溝1802の方位の空間的変化は、少なくとも1つの面内方向にピッチ(ピッチは、溝の方位が180°変化する距離であり得る)を伴うパターンを有し得る。いくつかの実施形態では、ピッチは、アレイの表面に沿って少なくとも1つの面内方向で均一(または同じ)であり得る。いくつかの実施形態では、ピッチは、アレイの表面に沿って少なくとも1つの面内方向で変化するピッチ(または不均一なピッチ)であり得る。すなわち、配向構造1801は、空間的に変化する(または不均一な)配向構造パターンを提供するように構成され得る。例えば、アレイ内の溝1802は、均一な(または一定の)方位、周期的に変化する方位、非周期的に変化する方位、またはそれらの組合せを有し得る。溝182の方位は、直線方向、半径方向、円周(例えば、方位角)方向、またはそれらの組合せで周期的または非周期的に変化し得る。
【0184】
例示のために、
図18Aは、x軸方向に均一なピッチで周期的に変化するアレイ内の溝1802の方位を示す。後続のプロセスで溝1802のアレイ上に形成される固体結晶層のサイズは、溝1802のアレイの境界によって定義され得る。溝1802は、空間的に均一なまたは空間的に変化する配向構造パターンで、固体結晶層の結晶分子を少なくとも部分的に配向するように構成され得る。すなわち、有機固体結晶層の軸の方位は、アレイ内の溝1802の方位によって少なくとも部分的に決定され得る。アレイ内の溝1802の方位(または溝1802によって提供される配向パターン)に応じて、溝1802上に形成された固体結晶層の軸は、有機固体結晶層内で、一定の方位、周期的に変化する方位、非周期的に変化する方位、またはそれらの組合せを有するように構成され得る。周期的または非周期的に変化する方位は、直線方向、半径方向、円周(例えば、方位角)方向、またはそれらの組合せにあり得る。固体結晶層は、物理気相堆積、溶媒コーティング(例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、インクジェット印刷)、これに続く、欠陥を減少させるための熱アニーリングなどの好適なプロセスを通じて、配向構造1801上に形成され得る。いくつかの実施形態では、配向構造1801の微細構造1802は、eビームまたはリソグラフィを使用して有機材料または有機無機ハイブリッド材料をエッチングすることによって製造され得る。いくつかの実施形態では、配向構造1801の微細構造1802は、有機材料または有機無機ハイブリッド材料のナノインプリントリソグラフィを使用して製造され得る。微細構造1802の外側の配向構造1801のエリアは、非パターニングエリア1803と呼ばれることがある。
【0185】
図18Bは、微細構造1802に(例えば、微細構造1802上に)配置され、かつ微細構造1802と後続のプロセスで形成される固体結晶層との間に配置された表面改質層1805を概略的に示す。いくつかの実施形態では、表面改質層1805は、異方性層(例えば、光配向材料層、液晶層、結晶性フッ素含有ポリマー、または半結晶性ポリオレフィン層など)を含み得る。いくつかの実施形態では、異方性層の分子は、微細構造1802(例えば、溝)の均一な方位と同じである均一な方位を有し得る。いくつかの実施形態では、異方性層の分子の方位は、微細構造1802(例えば、溝)の方位と同じように空間的に変化し得る。いくつかの実施形態では、表面改質層1805は、等方性層、例えば、SiO
2、MgF
2、シリコーン、シロキサン、フッ素化基を有するシラン、フッ素化ポリマー(「PFPE」)を含む、アモルファス層、またはポリオレフィン、ポリウレタン、ポレイミド、ポリエステル、結晶性アルキル基を有するシランを含む結晶性緩衝層を含み得る。いくつかの実施形態では、表面改質層1805は、異方性層および等方性層を含み得る。いくつかの実施形態では、表面改質層1805は、1つもしくは複数の異方性層および/または1つもしくは複数の等方性層を含み得る。いくつかの実施形態では、微細構造1802(例えば、溝)の深さは実質的に小さく、表面改質層1805は、微細構造1802(例えば、溝)上に配置され得、非パターニングエリア1803上に配置されない場合がある。
【0186】
いくつかの実施形態では、望ましい面内方位を有する固体結晶層は、ナノインプリントリソグラフィを用いて固体結晶材料(例えば、有機固体結晶材料)に基づいて製造され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、固体結晶材料の所定の溶融温度を超える温度まで加熱され得る。固体結晶材料は、溶融して溶融結晶材料になり得る。溶融結晶材料に、ナノインプリントモールドまたはテンプレートが積層され得る。ナノインプリントモールドは、複数のナノ構造を含み得る。いくつかの実施形態では、溶融結晶材料の層は、ナノインプリントモールドまたはテンプレート上に形成され得る。いくつかの実施形態では、溶融結晶材料は、ナノインプリントモールド内に形成されたナノ構造を少なくとも部分的に充填し得る。ナノインプリントモールドは、所定の配向パターンを提供するように構成された事前定義されたトポロジーパターン(例えば、ナノ構造)を有し得る。ナノインプリントモールドは、溶融結晶材料の結晶分子、例えば、少なくともナノインプリントモールドと接触している結晶分子を、均一な方位、周期的もしくは非周期的に変化する方位、またはそれらの組合せで少なくとも部分的に配向し得る。周期的または非周期的に変化する方位は、直線方向、半径方向、円周(例えば、方位角)方向、またはそれらの組合せにあり得る。
【0187】
ナノインプリントモールドが積層された溶融結晶材料は、冷却されて固化および結晶化し、所定の面内配向で配向された分子を有する固体結晶層を形成し得る。冷却および結晶化の後、固体結晶層は、ナノインプリントモールドから除去(例えば、剥離)され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、溶融温度が低下した共融混合物であり得る。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、溶媒と混合されて混合物を形成し得る。溶媒が通って蒸発できるように構成された軟質ナノインプリントモールド(例えば、シリコーン)が、混合物に積層され得る。溶媒は、蒸発し得る。固体結晶材料は、結晶化して、軟質ナノインプリントモールドによって提供される所定の面内方位に配向された結晶分子を有する固体結晶層を形成し得る。固体結晶層は、軟質ナノインプリントモールドから除去(例えば、剥離)され得る。いくつかの実施形態では、マザーナノインプリントモールドは、eビームまたはフォトリソグラフィを用いて材料をパターニングすることによって製造され、次いで、エッチングされて、配向構造パターンを提供するための微細構造を形成し得る。マザーナノインプリントモールドの材料には、例えば、シリコーン、二酸化ケイ素、石英、または溶融シリカが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ドータナノインプリントモールドは、ナノインプリントリソグラフィを使用してマザーナノインプリントモールドを複製することによって得られ得る。ドータナノインプリントモールドは、固体結晶層の製造におけるモールドとして使用され得る。ドータナノインプリントモールドの材料には、シリコーン、シロキサン、PFPE、またはポリオレフィンなどのポリマーが含まれ得る。いくつかの実施形態では、固体結晶層は、eビームまたはフォトリソグラフィを使用して固体結晶の無傷の部分をパターニングし、有機固体結晶のパターニングされた無傷の部分をエッチングすることによって製造され得る。固体結晶の無傷の部分は、物理気相堆積、溶媒コーティングおよび熱アニーリング、ゲル紡糸、溶融紡糸、または電着などの任意の好適な方法によって製造され得る。
【0188】
図20は、所定の配向パターンを有する固体結晶層(またはパターニングされた固体結晶層)を製造するための方法2000を示す流れ図である。方法2000は、原料に基づいてチャンバ内で固体結晶蒸気を生成することを含み得る(ステップ2005)。いくつかの実施形態では、プロセスは物理蒸気輸送プロセスであり得、チャンバは物理蒸気輸送チャンバであり得る。いくつかの実施形態では、原料は有機固体結晶材料であり得、固体結晶蒸気は有機固体結晶蒸気であり得る。例示的な物理蒸気輸送プロセスについての説明は、
図15Aに関連して上記で提示した説明を参照することができる。方法2000は、固体結晶蒸気をチャンバに沿って輸送して配向構造上に堆積させて、固体結晶材料層を形成することも含み得る(ステップ2010)。配向構造は、配向構造上に形成される固体結晶層の所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義するように構成され得る。例示的なプロセスについての説明は、
図15Aに関連して上記で提示した説明を参照することができる。方法2000は、固体結晶材料層を結晶化して固体結晶層を形成することも含み得る(ステップ2015)。固体結晶層は、所定の配向パターンを含み得る。
【0189】
いくつかの実施形態では、方法2000は、チャンバ(例えば、物理蒸気輸送チャンバ)内の非溶媒蒸気または溶媒蒸気のうちの少なくとも一方の量を制御することを含み得る。例えば、固体結晶蒸気が配向構造の表面に輸送されるプロセス中、物理蒸気輸送チャンバの中に導入されるかまたは物理蒸気輸送チャンバ内で生成される非溶媒蒸気の量を、動的または静的に調整(または制御)して、物理蒸気輸送チャンバ内の固体結晶蒸気の濃度、固体結晶蒸気の輸送速度、および固化速度論を制御し、それによって固体結晶層の核形成および結晶成長速度を制御することができる。いくつかの実施形態では、溶媒蒸気を物理蒸気輸送チャンバの中に導入するかまたは物理蒸気輸送チャンバ内で生成して、アモルファスドメインまたは多結晶性ドメイン間の境界などの欠陥を選択的に除去することができる。いくつかの実施形態では、方法2000は、結晶化プロセスの前、後、または最中に、溶媒蒸気または非溶媒蒸気のうちの少なくとも一方を固体結晶材料層から除去して、固体結晶または固体結晶層を形成することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法2000は、配向構造上に形成された固体結晶材料層の所定の結晶化度および厚さに到達するように、上記のプロセスのうちの1つまたは複数を繰り返しまたは交互に実行することを含み得る。
【0190】
図21は、有機固体結晶層などの所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための(または固体結晶層をパターニングするための)方法2100を示す流れ図である。方法2100は、固体結晶材料を溶媒に溶解して溶液を形成することを含み得る(ステップ2105)。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、有機固体結晶材料であり得る。方法2100は、配向構造上に溶液を分注して溶液層を形成することも含み得る(ステップ2110)。溶液を分注することは、配向構造上に溶液をコーティングすること(例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、またはインクジェット印刷コーティング)を含み得る。配向構造は、所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義し得る。方法2100は、固体結晶材料の結晶分子が配向構造によって配向され得るように、溶液層から溶媒を蒸発させることも含み得る(ステップ2115)。方法2100は、結晶分子を結晶化して固体結晶層を形成することをさらに含み得る(ステップ2120)。例えば、溶媒が蒸発すると、結晶分子は固化し得る。いくつかの実施形態では、結晶分子は、連続結晶化プロセスを通して結晶化され得る。いくつかの実施形態では、固体結晶層は、有機固体結晶層であり得る。いくつかの実施形態では、方法2100は、他のステップを含み得る。例えば、方法2100は、溶液の粘度を調整するために、固体結晶材料または溶液にポリマーを添加することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法2100は、コーティング性能を向上させるために溶液に界面活性剤を添加することも含み得る。
【0191】
図22は、有機固体結晶層などの所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための(または固体結晶層をパターニングするための)方法2200を示す流れ図である。方法2200は、配向構造上にポリマーメソゲンを分注することを含み得る(ステップ2205)。配向構造は、所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義し得る。ポリマーメソゲンは、有機固体結晶層を形成するための有機固体結晶材料として使用され得る。例えば、ポリマーメソゲンは、配向構造上にコーティングされ得る。方法2200は、ポリマーメソゲンを配向構造によって配向させるために、ポリマーメソゲンをネマティック相またはねじれネマティック相に転移させることも含み得る(ステップ2210)。例えば、ポリマーメソゲンは、所定の高温まで加熱されるかまたは所定の溶液に溶解されてネマティック相またはねじれネマティック相に転移し得、その状態で、ポリマーメソゲンは、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向され得る。方法2200は、ポリマーメソゲンを結晶化して固体結晶層を形成することも含み得る(ステップ2215)。いくつかの実施形態では、方法2200は、ポリマーメソゲンを冷却すること(例えば、温度を所定の低温まで低下させること)またはポリマーメソゲンが溶解している溶媒を蒸発させることを含み得る。溶媒が蒸発すると、または温度が低下すると、ポリマーメソゲンは固化し得る。固化プロセス中、ポリマーメソゲンの方位は維持され得る。いくつかの実施形態では、ポリマーメソゲンは、連続結晶化プロセスによって結晶化されて、所定の配向パターンを有する固体結晶層を形成し得る。
【0192】
図23は、有機固体結晶層などの所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための(または固体結晶層をパターニングするための)方法2300を示す流れ図である。方法2300は、配向構造上に反応性メソゲンを分注することを含み得る(ステップ2305)。配向構造は、所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義し得る。方法2300は、反応性メソゲンを配向構造によって配向させるために、反応性メソゲンをネマティック相またはねじれネマティック相に転移させることも含み得る(ステップ2310)。例えば、反応性メソゲンは、所定の高温まで加熱され得るかまたは所定の溶液に溶解されてネマティック相またはねじれネマティック相に転移し得る。方法2300は、反応性メソゲンを重合してポリマーメソゲンを形成することも含み得る(ステップ2315)。方法2300は、ポリマーメソゲンを結晶化して固体結晶層を形成することをさらに含み得る(ステップ2320)。ポリマーメソゲンは、有機固体結晶層であり得る固体結晶層を形成するための有機固体結晶材料として使用され得る。固体結晶層は、所定の配向パターンを有し得る。いくつかの実施形態では、ポリマーメソゲンは、冷却され得るか(例えば、ポリマーメソゲンの温度は所定の低温まで低下され得るか)、またはポリマーメソゲンを含む溶液は、溶媒を蒸発させるように処理され得る。溶媒が蒸発するか、またはポリマーメソゲンの温度が低下すると、ポリマーメソゲンは固化し得る。固化プロセス中、ポリマー骨格の配座に起因して、分子方位は維持され得る。
【0193】
図24は、有機固体結晶層などの所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための(または固体結晶層をパターニングするための)方法2400を示す流れ図である。方法2400は、ポリマーメソゲンを固体結晶材料と混合することを含み得る(ステップ2405)。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、有機固体結晶材料であり得る。ポリマーメソゲンは、固体結晶層が基板上に形成されるときに、固体結晶層の分子に所定の配向パターンを提供するためのバルク配向構造として機能し得る。固体結晶材料およびポリマーメソゲンは、同様の化学的性質を有し得る。例えば、固体結晶材料とポリマーメソゲンはどちらも、所定の高温まで加熱されるか、または所定の溶媒に溶解されると、ネマティック相またはねじれネマティック相に転移し得る。方法2400は、ポリマーメソゲンおよび固体結晶材料をネマティック相またはねじれネマティック相に転移させることを含み得る(ステップ2410)。例えば、ポリマーメソゲンと固体結晶材料との混合物は、所定の高温まで加熱されるか、または所定の溶液に溶解されて、ネマティック相またはねじれネマティック相に転移し得る。方法2400は、ポリマーメソゲンを光照射に供して、固体結晶材料の結晶分子に所定の配向パターンを誘発することを含み得る(ステップ2415)。ポリマーメソゲンは、光照射を受けると、固体結晶材料の結晶分子においてバルク配向を誘発し得る。方法2400は、固体結晶材料を結晶化して固体結晶層を形成することも含み得る(ステップ2420)。いくつかの実施形態では、固体結晶材料の結晶分子が配向された後、混合物は、冷却され得るか(すなわち、混合物の温度が所定の低温まで低下され得るか)、または混合物は、溶媒を蒸発させるように処理され得る。結果として、ポリマーメソゲンは固化し得る。固化プロセス中、固体結晶材料の固体結晶分子の方位(すなわち、結晶分子の所定の配向パターン)は維持され得る。固体結晶材料は、固体結晶材料の中に混合されたポリマーメソゲンとともに結晶化されて、所定の配向パターンで配向された結晶分子を有する固体結晶層を形成し得る。
【0194】
図25は、有機固体結晶層などの所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための(または固体結晶層をパターニングするための)方法2500を示す流れ図である。方法2500は、配向構造上に反応性メソゲンと液晶との混合物を分注することを含み得る(ステップ2505)。液晶は、ほぼ室温でネマティック相またはねじれネマティック相であり得る。方法2500は、室温で反応性メソゲンを液晶と混合することをさらに含み得る。混合物が配向構造上に分注されるとき、液晶は、配向構造によって配向され得、反応性メソゲンは、配向された液晶および配向構造によって配向され得る。すなわち、反応性メソゲンの配向(または方位)は、液晶によって強化され得る。方法2500は、反応性メソゲンを重合してポリマーメソゲンを形成することも含み得る(ステップ2510)。例えば、配向された反応性メソゲンは、ポリマーメソゲンの方位を部分的に安定化するために、さらに重合(例えば、光重合または熱重合)されてポリマーメソゲンを形成し得る。方法2500は、混合物から液晶を除去することも含み得る(ステップ2515)。例えば、液晶は、溶媒を使用して洗い流され得るか、または液晶は、(例えば、液晶を蒸発させるために)ポリマーメソゲンと液晶との混合物を所定の温度まで加熱することによって除去され得る。方法2500は、ポリマーメソゲンによって少なくとも部分的に提供される所定の配向パターンを有する固体結晶を形成することをさらに含み得る(ステップ2520)。例えば、ポリマーメソゲンをテンプレートとして(例えば、固体結晶分子をパターニングするための配向構造として)使用して、固体結晶層を固体結晶材料から成長させることができる。ポリマーメソゲン上に成長した固体結晶層は、ポリマーメソゲンによって提供された所定の配向パターンを有し得る。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、有機固体結晶材料であり得る。
【0195】
図26は、有機固体結晶層などの所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための(または固体結晶層をパターニングするための)方法2600を示す流れ図である。方法2600は、配向構造上に液晶材料と固体結晶材料との混合物を分注することを含み得る(ステップ2605)。混合物を所定の高温まで加熱するかまたは所定の溶媒に溶解して、均質混合物を作ることができる。配向構造は、所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義し得る。液晶材料は、配向構造によって、所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向され得る。方法2600は、液晶材料と固体結晶材料とを少なくとも部分的に相分離することも含み得る(ステップ2610)。例えば、混合物は、所定の低温まで冷却され得るか、または混合物は、溶媒を蒸発させるように処理され得る。結果として、液晶材料および固体結晶材料は、少なくとも部分的に相分離され得る。方法2600は、固体結晶材料を結晶化して、液晶材料によって少なくとも部分的に配向された結晶分子を有する固体結晶層を形成することをさらに含み得る(ステップ2615)。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は有機固体結晶材料であり得、固体結晶層は有機固体結晶層であり得る。
【0196】
図27は、有機固体結晶層などの所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための(または固体結晶層をパターニングするための)方法2700を示す流れ図である。方法2700は、溶融結晶材料にモールドを積層することを含み得る(ステップ2705)。いくつかの実施形態では、モールドは、溶融結晶材料の分子に所定の配向パターンを提供するように構成されたナノインプリントモールドであり得る。いくつかの実施形態では、ナノインプリントモールドは、複数の溝を画定する複数の微細構造を含み得る。溶融結晶材料は、溝を埋めることができる層としてモールドに対してコーティングされ得る。方法2700は、モールドが積層された溶融結晶材料を冷却して結晶化し、固体結晶層を形成することも含み得る(ステップ2710)。方法2700は、固体結晶材料を所定の溶融温度に加熱して、溶融結晶材料を生成することも含み得る。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、有機固体結晶材料であり得る。方法2700は、冷却および結晶化の後にモールドから固体結晶層を除去することも含み得る。
【0197】
図28は、有機固体結晶層などの所定の配向パターンを有する固体結晶層を製造するための(または固体結晶層をパターニングするための)方法2800を示す流れ図である。方法2800は、固体結晶材料を溶媒と混合して混合物を形成することを含み得る(ステップ2805)。いくつかの実施形態では、固体結晶材料は、有機固体結晶材料であり得る。方法2800は、所定の配向パターンを少なくとも部分的に定義するモールドを混合物に積層することも含み得る(ステップ2810)。方法2800は、溶媒を蒸発させることも含み得る(ステップ2815)。方法2800は、固体結晶材料を結晶化して、所定の配向パターンを有する固体結晶層を形成することをさらに含み得る(ステップ2820)。方法2800は、ナノインプリントモールドが積層された溶融結晶材料を冷却して固化させることも含み得る。方法2800は、ナノインプリントモールドから固体結晶層を除去することも含み得る。
【0198】
図14は、本開示の一実施形態による、固体結晶を含み得る光学デバイスを製造するためのシステム1400を概略的に示す。システム1400は、溶融結晶材料に基づいて固体結晶を成長させるように構成され得る。システム1400は、るつぼ1405を含み得る。固体結晶材料は、るつぼ1405内に配置され得、溶融結晶材料1410を作製するために処理(例えば、加熱)され得る。固体結晶材料またはるつぼ1405の温度を上昇させるためのデバイス(例えば、加熱要素)、および加熱要素を制御するためのコントローラは、
図14には示されていない。ダイ1415は、るつぼ1405内に配置され得る。ダイ1415は、溶融結晶材料1410の流れを誘導するための複数の毛細管を含み得る。例えば、ダイ1415は、中央キャピラリ1431およびリングキャピラリ1432を含み得る。ダイ1415は、表面1432を含み得る。表面1432は、表面1432の上に、もしくは少なくとも部分的に表面1432内に堆積または形成された(ラベル付けされていない)配向構造を含み得る。配向構造は、配向構造パターンを定義するかまたは含み得る。配向構造は、配向構造上に成長した結晶分子を所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向するように構成され得る。種結晶1435は、ダイ1415の上方に配置され得る。種結晶1435は、ダイ1415から引き離されるか、またはダイ1415から離れるように移動され得、溶融結晶材料1410が種結晶1435の移動に追随することを可能にする。溶融結晶材料1410と種結晶1435との間の界面でメニスカスが形成され得る。メニスカス-結晶界面では、固体結晶1440が成長し得る。溶融結晶材料1410は、中央キャピラリ1431およびリングキャピラリ1432を通って、ダイ1415の表面1432へ流れ得る。固体結晶は、表面1432上で成長し得、表面1432で提供される配向構造によって、所定の配向パターンで少なくとも部分的に配向され得る。固体結晶1440は、ダイ1415の表面1432の形状に応じて、任意の好適な形状であり得る。例えば、表面1432は平坦な表面であり得、固体結晶1440は平坦な形状を含み得る。
【0199】
さらに、開示された技術的解決策によれば、1つまたは複数の配向構造上に固体結晶を形成する(例えば、成長させる)ことは、形成された固体結晶を含む電子デバイスの電子性能を改善することもできる。1つまたは複数の配向構造上に固体結晶を形成する(例えば、成長させる)ことは、固体結晶にとって特定の望ましい結晶格子が達成され得るように配向構造を調整することによって、制御可能な量のひずみを提供することができる。いくつかの実施形態では、ひずみは、固体結晶全体にわたって変化する場合があり、例えば、ひずみは、開示された固体結晶に基づいて同じデバイス内で変化する場合がある。いくつかの実施形態では、ひずみは、同じ基板に(例えば、同じ基板上に)配置された複数の固体結晶全体にわたって変化する場合があり、例えば、ひずみは、それぞれの固体結晶を含む複数のデバイス全体にわたって変化する場合がある。いくつかの実施形態では、ひずみは、特定の空間パターン(PBPタイプのパターンなど)で変化する場合があり、これは新規な電子輸送特性の一助となる可能性がある。
【0200】
いくつかの実施形態では、光学素子は、所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む固体結晶を含み、所定の配向パターンは、光学素子の所定の光学機能を実現するための配向構造によって少なくとも部分的に定義される。いくつかの実施形態では、固体結晶は連続層の形式である。いくつかの実施形態では、光学素子は基板も含み、配向構造は基板上に配置され、固体結晶は配向構造上に配置され、固体結晶に含まれる結晶分子は配向構造によって少なくとも部分的に配向される。いくつかの実施形態では、光学素子は基板を含み、配向構造は基板の一体部分である。いくつかの実施形態では、固体結晶は、スタック型の構成で配置された複数の固体結晶を含み、光学素子は、固体結晶間に配置された複数の配向構造をさらに含み得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、複数の固体結晶のうちの少なくとも1つは、複数の配向構造のそれぞれに配置され、複数の固体結晶のうちの少なくとも1つは、対応する配向構造によって少なくとも部分的に定義される対応する所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む。いくつかの実施形態では、固体結晶は、少なくとも約1.5の主屈折率および少なくとも約0.1の光学異方性を伴う光学的異方性であり、固体結晶の主屈折率は、固体結晶の軸に平行な方向における屈折率であり、固体結晶の軸は、固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である。
【0202】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、全内部反射(「TIR」)を通して固体結晶内を内部的に伝搬するように光を誘導するように構成され、光の波長は、可視波長スペクトルまたは近赤外波長スペクトルである。いくつかの実施形態では、光学素子は、光導波路として機能するように構成され、固体結晶は、少なくとも約1.5の主屈折率および少なくとも約0.1の光学異方性を伴う光学的異方性であり、固体結晶の主屈折率は、固体結晶の軸に平行な方向における屈折率であり、固体結晶の軸は、固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である。いくつかの実施形態では、固体結晶は、第1の表面および対向する第2の表面を有し、第1の表面または第2の表面のうちの少なくとも一方は非直線的である。
【0203】
いくつかの実施形態では、光学素子は、回折を介して入力光を固体結晶の中へ結合するように構成された第1の回折格子であって、入力結合回折格子のピッチが、固体結晶がTIRを介して固体結晶内を内部的に伝搬するように入力結合光を誘導するように構成される、第1の回折格子と、入力結合光を、回折を介して固体結晶の外へ減結合するように構成された第2の回折格子とを含む。いくつかの実施形態では、第1の回折格子または第2の回折格子のうちの少なくとも一方は、所定の偏光を有する光を選択的に回折するように構成される。いくつかの実施形態では、第1の回折格子または第2の回折格子のうちの少なくとも一方は、固体結晶が配置される基板上に形成された1次元周期構造または2次元周期構造のうちの少なくとも一方を含み得る。
【0204】
いくつかの実施形態では、第1の回折格子または第2の回折格子のうちの少なくとも一方は、固体結晶において形成された1次元周期構造または2次元周期構造のうちの少なくとも一方を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の回折格子または第2の回折格子のうちの少なくとも一方は、別個の要素として形成された1次元周期構造または2次元周期構造のうちの少なくとも一方を含み得、別個の要素は、固体結晶の表面に配置される。いくつかの実施形態では、第1の回折格子または第2の回折格子のうちの少なくとも一方は、体積ホログラフィック格子を含み得る。いくつかの実施形態では、固体結晶の厚さは、約300μmから約1mmの間であり、固体結晶の少なくとも1つの横方向の寸法は、約30mmから約100mmの間である。いくつかの実施形態では、固体結晶の軸の方位は、固体結晶内で空間的に変化し、固体結晶の軸は、固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である。
【0205】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、少なくとも約1.5の主屈折率および少なくとも約0.1の光学異方性を伴う光学異方性であり、固体結晶の主屈折率は、固体結晶の軸に平行な方向の屈折率である。いくつかの実施形態では、固体結晶は、固体結晶内の固体結晶の軸の空間的に変化する面内配向を有するように構成される。いくつかの実施形態では、結晶分子は、結晶分子の軸の空間的に変化する面内配向を有するように配向構造によって少なくとも部分的に配向され、その結果、固体結晶の軸の空間的に変化する面内配向が提供され、結晶分子の軸は、結晶分子が最も高い屈折率を有する軸である。
【0206】
いくつかの実施形態では、光学素子は、可視波長スペクトルまたは近赤外波長スペクトルの光に対して動作可能なパンチャラトナムベリー位相光学素子として機能するように構成される。いくつかの実施形態では、結晶分子は、配向構造と接触している第1の複数の結晶分子と、第1の複数の結晶分子の上方に配置された第2の複数の結晶分子とを含み、第1の複数の結晶分子の軸の方位は、配向構造によって定義され、第2の複数の結晶分子の軸の方位は、第1の複数の結晶分子に相対して配向している。いくつかの実施形態では、第1の複数の結晶分子の軸の方位は、半径方向の面内方向に沿って周期的に変化する。
【0207】
いくつかの実施形態では、第1の複数の結晶分子の軸の方位は、一方または両方の面内方向に沿って周期的かつ直線的に変化する。いくつかの実施形態では、固体結晶はコレステリックであり、キラル有機結晶分子またはキラルドーパントがドープされた有機結晶分子を含む。いくつかの実施形態では、結晶分子は、配向構造と接触している第1の複数の結晶分子と、第1の複数の結晶分子の上方に配置された第2の複数の結晶分子とを含み、第1の複数の結晶分子の軸の方位は、配向構造によって定義され、第2の複数の結晶分子の軸の方位は、光学素子の第1の表面に垂直な方向に沿って、らせん状にねじれる。
【0208】
いくつかの実施形態では、第1の複数の結晶分子の軸の方位は、面内方向のうちの一方に沿って周期的かつ直線的に変化し、軸の配向が同じである第1の複数の結晶分子および第2の複数の結晶分子からの結晶分子は、固体結晶内に一定の屈折率の傾斜した周期平面を形成する。いくつかの実施形態では、固体結晶は第1の固体結晶であり、固体結晶内の結晶分子は第1の結晶分子であり、所定の配向パターンは第1の所定の配向パターンであり、配向構造は第1の配向構造であり、光学素子は、第2の配向構造によって少なくとも部分的に定義される第2の所定の配向パターンで配向された第2の結晶分子を含む第2の固体結晶をさらに含み、第1の固体結晶および第2の固体結晶は、第2の配向構造によって互いに分離される。いくつかの実施形態では、第1の固体結晶および第2の固体結晶は、異なる光学分散を有する。
【0209】
いくつかの実施形態では、第1の固体結晶および第2の固体結晶は、コレステリックであり、キラル有機結晶分子またはキラルドーパントがドープされた有機結晶分子を含み、第1の固体結晶および第2の固体結晶は、反対の掌性を示す。いくつかの実施形態では、第1の固体結晶の軸の方位は、第1の配向構造によって少なくとも部分的に定義され、第1の固体結晶内で空間的に一定であり、第2の固体結晶の軸の方位は、第2の配向構造によって少なくとも部分的に定義され、第2の固体結晶内で空間的に一定であり、第2の固体結晶の軸の方位は、光学素子の第1の表面に垂直な方向に沿った第1の固体結晶の軸の方位に対してある角度だけ回転している。いくつかの実施形態では、光学素子は、約500mmから約5μmの間の厚さを有する。いくつかの実施形態では、固体結晶の軸の方位は、固体結晶内で空間的に滑らかに変化する。
【0210】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、粒界を有する複数の結晶粒を含み、少なくとも1つの結晶粒は、固体結晶が配置されている配向構造によって少なくとも部分的に配向される。いくつかの実施形態では、固体結晶内の結晶分子のうちの1つまたは複数は、隣接する結晶粒と固体結晶の結晶分子との間の円滑な移行を促進するための官能基を含む。いくつかの実施形態では、固体結晶は、局所的な結晶性ひずみを解放して、隣接する結晶粒と固体結晶内の結晶分子との間の円滑な移行を促進するように構成された、添加剤または可塑剤を含む。いくつかの実施形態では、配向構造は、固体結晶内の結晶分子の軸について、均一な方位、直線方向の周期的な方位、半径方向の周期的な方位、または円周(または方位角)方向の周期的な方位を少なくとも部分的に定義するように構成され、結晶分子の軸は、分子が最も高い屈折率を有する軸である。
【0211】
いくつかの実施形態では、固体結晶は、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、アントラセンの誘導体、テトラセンの誘導体、もしくはペンタセンの誘導体のうちの少なくとも1つを含む飽和多環式炭化水素もしくは不飽和多環式炭化水素、窒素複素環、硫黄複素環、および酸素複素環、キノリン、ベンゾチオフェン、もしくはベンゾピラン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、フルオランテン、もしくはそれらの誘導体のうちの少なくとも1つを含む湾曲した非対称のアセン、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,6ジメチルカルボン酸エステル結晶分子、もしくはそれらの誘導体、またはアルキル基、シアノ基、イソチオシアネート基、フッ素、塩素、もしくはフッ素化エーテルとの置換を含む、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、もしくはフェニルアセチレン、もしくはそれらの誘導体のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、固体結晶は、可視波長スペクトルにおいて60%以上の光透過率を有する。
【0212】
いくつかの実施形態では、光学素子は、配向構造が提供された基板を含み、基板は、可視波長スペクトルにおいて60%以上の光透過率を有する。いくつかの実施形態では、基板は、ガラス、ポリマー、または半導体材料のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、基板の少なくとも1つの表面は湾曲形状を有し、湾曲形状は、凸形状、凹形状、非球面形状、円筒形状、または自由形状のうちの1つである。いくつかの実施形態では、固体結晶は、基板の第1の表面に配置され、光学素子は、基板の第2の表面に配置された反射コーティングをさらに含む。いくつかの実施形態では、光学素子は、固体結晶の表面に配置された反射防止コーティングを含む。いくつかの実施形態では、固体結晶は、熱ベースの切替え、偏光ベースの切替え、または感光性ベースの切替えのうちの少なくとも1つを通して、アモルファス状態と配向結晶状態との間で切替え可能である。
【0213】
いくつかの実施形態では、配向構造は第1の配向構造であり、光学素子は、固体結晶内の結晶分子を少なくとも部分的に配向するように構成された第2の配向構造をさらに含み得、固体結晶は、第1の配向構造と第2の配向構造との両方と接触している。いくつかの実施形態では、固体結晶は第1の固体結晶であり、固体結晶内の結晶分子は第1の結晶分子であり、所定の配向パターンは第1の所定の配向パターンであり、配向構造は第1の配向構造であり、光学素子は、第2の配向構造によって少なくとも部分的に定義される第2の所定の配向パターンで配向された第2の結晶分子を含む第2の固体結晶をさらに含み、第1の固体結晶および第2の固体結晶は、第2の配向構造によって互いに分離される。
【0214】
いくつかの実施形態では、第1の固体結晶および第2の固体結晶は、同じまたは異なる光学分散を含む。いくつかの実施形態では、第1の所定の配向パターンは、第2の所定の配向パターンと同じであるか、または異なる。いくつかの実施形態では、配向構造は、光配向材料層、機械的に摩擦された配向層、異方性ナノインプリントを備えた配向層、基板上に直接形成された異方性レリーフ、基板上に堆積された強誘電性もしくは強磁性の材料、薄い結晶性層もしくは結晶性基板、または、磁場もしくは電場の存在下での結晶化によって形成された配向層のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、配向構造は、六方晶窒化ホウ素層またはグラフェン層を含む。いくつかの実施形態では、固体結晶は、一軸異方性または二軸異方性である。
【0215】
いくつかの実施形態では、光学素子を製造するための方法は、配向構造を提供することと、配向構造上に固体結晶を形成することとを含み、固体結晶は、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む。いくつかの実施形態では、配向構造上に固体結晶を形成することは、配向構造上に固体結晶を成長させることを含み得る。いくつかの実施形態では、配向構造上に固体結晶を形成することは、以下のプロセス、すなわち、有機結晶分子線エピタキシまたは有機結晶分子のホットウォールエピタキシのうちの少なくとも一方を含む気相堆積、熱配向、モールド配向、もしくは表面配向を介した溶媒支援堆積、ポリマー支援連続鋳造、温度支援ゾーンアニーリング、物理蒸気輸送、スピンコーティング、または溶融結晶材料に基づく結晶成長プロセスのうちの少なくとも1つを使用して実行される。
【0216】
いくつかの実施形態では、配向構造を提供することは、基板の表面上に配向構造を堆積することを含み得る。いくつかの実施形態では、配向構造を提供することは、光によって感光性材料を処理することによって基板の表面上に光配向層を形成すること、基板の表面上に機械的に摩擦された配向層を形成すること、基板の表面上に異方性ナノインプリントを備えた配向層を形成すること、基板の表面のウェットエッチングもしくはドライエッチングによって基板の表面上に異方性レリーフを直接形成すること、基板の表面上に堆積された強誘電性もしくは強磁性の材料に基づいて基板の表面上に配向構造を形成すること、配向パターンを定義する結晶性層もしくは結晶性基板を配向構造として提供すること、または磁場もしくは電場の存在下での結晶化によって基板の表面上に配向構造を形成することのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、配向構造は第1の配向構造であり、所定の配向パターンは第1の所定の配向パターンであり、固体結晶は第1の固体結晶であり、結晶分子は第1の結晶分子であり、方法は、第1の固体結晶上に第2の配向構造を提供することと、第2の配向構造上に第2の固体結晶を形成することとを含み、第2の固体結晶は、第2の所定の配向パターンで配向された第2の結晶分子を含み、第2の所定の配向パターンは、第2の配向構造によって少なくとも部分的に定義される。いくつかの実施形態では、光学素子は、パンチャラトナムベリー位相光学素子または光導波路として機能する。いくつかの実施形態では、固体結晶は、少なくとも約1.5の主屈折率および少なくとも約0.1の光学異方性を伴う光学的異方性であり、固体結晶の主屈折率は、固体結晶の軸に平行な方向における屈折率であり、固体結晶の軸は、固体結晶が最も高い屈折率を有する軸である。いくつかの実施形態では、固体結晶を製造するための方法は、互いに接触している溶融結晶材料および配向構造を提供することと、溶融結晶材料に基づいて固体結晶を作製することとを含み、固体結晶は、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む。いくつかの実施形態では、固体結晶を作製することは、溶融結晶材料を冷却することを含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、固体結晶を作製することは、種結晶をダイから離れるように移動させることによって、溶融結晶材料に基づいて固体結晶を成長させることを含み、ダイは、固体結晶の成長中に溶融結晶材料が貫流できるように少なくとも部分的に構成された少なくとも1つの毛細管を含み、ダイは、所定の形状を有するとともに配向構造を有する表面を含み、固体結晶は、配向構造に従ってダイの表面に沿って成長する。
【0219】
いくつかの実施形態では、固体結晶を製造するための方法は、溶融結晶材料と2つの基板の2つの対向する表面との間の接触を維持しながら、2つの基板間の空間内で溶融結晶材料を移動させることであって、2つの対向する表面のそれぞれが、溶融結晶材料と接触している配向構造を含む、溶融結晶材料を移動させることと、種結晶を使用して溶融結晶材料から、配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む固体結晶を成長させることとを含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、固体結晶を製造するための方法は、るつぼ内で固体結晶材料を処理して溶融結晶材料を作製することと、ダイの1つまたは複数の毛細管を通して、溶融結晶材料を少なくとも1つの配向構造を含む表面上に流れるように誘導することと、種結晶を使用して溶融結晶材料から、少なくとも1つの配向構造によって少なくとも部分的に定義される所定の配向パターンで配向された結晶分子を含む固体結晶を成長させることとを含む。いくつかの実施形態では、ダイの表面は、所定の湾曲形状を有し、成長した固体結晶は、ダイの表面と実質的に同じ湾曲形状を有する。いくつかの実施形態では、固体結晶を成長させることは、ダイの上部に配置された種結晶をダイから離れるように移動させて、固体結晶をダイの表面に沿ったメニスカス結晶界面で成長させることを含む、方法は、成長した固体結晶をるつぼから除去することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、るつぼから除去された固体結晶を冷却することをさらに含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つの面内方向に沿って周期的に変化する少なくとも1つの結晶方位を有する有機単結晶または有機多結晶の層を含む有機固体結晶を提供する。有機固体結晶の第1の屈折率は、少なくとも1つの結晶方位に沿って1.6~2.6の範囲にあり得る。固体結晶の光学異方性は、0.1以上であり得る。
【0222】
いくつかの実施形態では、有機固体結晶は、所定の配向パターンを有する配向層または配向構造の表面で製造され得る。有機固体結晶材料は、配向層の表面に分注され得る。有機固体結晶材料の分子は、配向層によって提供される所定の配向パターンに従って配向され得る。いくつかの実施形態では、分子の方位は、少なくとも1つの面内方向に沿って連続的に変化するように、所定の配向パターンに従って配向され得る。有機固体結晶の方位は、分子の方位によって設定され得る。面外方向(例えば、厚さ方向)に沿った有機固体結晶の連続層の分子の方位は、配向層と接触している分子の配向に従い得る。
【0223】
本明細書に記載のステップ、動作、またはプロセスのいずれも、単独で、または他のデバイスと組み合わせて、1つもしくは複数のハードウェアおよび/もしくはソフトウェアモジュールとともに実行または実施され得る。一実施形態では、ソフトウェアモジュールは、コンピュータプログラムコードを包含するコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品とともに実装され、コンピュータプログラムコードは、記載されたステップ、動作、またはプロセスのいずれかまたはすべてを実行するためにコンピュータプロセッサによって実行され得る。いくつかの実施形態では、ハードウェアモジュールは、デバイス、システム、光学素子、コントローラ、電気回路、論理ゲートなどのハードウェア構成要素を含み得る。
【0224】
本開示の実施形態はまた、本明細書の動作を実行するための装置に関し得る。この装置は、特定の目的のために特別に構築され得、かつ/または、この装置は、コンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に有効化または再構成される汎用コンピューティングデバイスを含み得る。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステムバスに結合され得る、有形の非一過性コンピュータ可読記憶媒体、または電子命令を記憶するのに好適な任意のタイプの媒体に記憶され得る。非一過性コンピュータ可読記憶媒体は、プログラムコードを記憶することができる任意の媒体、例えば、磁気ディスク、光ディスク、読取り専用メモリ(「ROM」)、またはランダムアクセスメモリ(「RAM」)、電気的プログラマブル読取り専用メモリ(「EPROM」)、電気的消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(「EEPROM」)、レジスタ、ハードディスク、ソリッドステートディスクドライブ、スマートメディアカード(「SMC」)、セキュアデジタルカード(「SD」)、フラッシュカードなどとすることができる。さらに、本明細書に記載の任意のコンピューティングシステムは、単一のプロセッサを含み得るか、または計算能力を向上させるために複数のプロセッサを採用するアーキテクチャであり得る。プロセッサは、中央処理ユニット(「CPU」)、グラフィックス処理ユニット(「GPU」)、またはデータを処理するように構成された、および/もしくはデータに基づいて計算を実行する任意の処理デバイスであり得る。プロセッサは、ソフトウェア構成要素とハードウェア構成要素との両方を含み得る。例えば、プロセッサは、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、プログラマブル論理デバイス(「PLD」)、またはそれらの組合せなどのハードウェア構成要素を含み得る。PLDは、複合プログラマブル論理デバイス(「CPLD」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)などであり得る。
【0225】
さらに、図面に示された実施形態が単一の要素を示す場合、実施形態が複数のそのような要素を含み得ると理解される。同様に、図面に示された実施形態が複数のそのような要素を示す場合、実施形態がそのような要素を1つだけ含み得ると理解される。図面に示された要素の数は、説明のみを目的としており、実施形態の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、特に記載のない限り、図面に示された実施形態は相互排他的ではなく、任意の好適な方式が組み合わされてもよい。例えば、ある実施形態に示されているが別の実施形態には示されていない要素は、それでもやはり、他の実施形態に含まれる場合がある。
【0226】
例示的な実装形態を説明するために、様々な実施形態について説明してきた。開示された実施形態に基づいて、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の様々な変更、修正、再配置、および置換を行うことができる。したがって、本開示を上記の実施形態を参照して詳細に説明してきたが、本開示は、上記の実施形態に限定されない。本開示は、本開示の範囲から逸脱することなく他の同等の形式で具現化されてもよい。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲において定義される。
【国際調査報告】