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特表2023-514923クラッチスリッピングポイント位置を特定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】クラッチスリッピングポイント位置を特定する方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/02 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
F16D48/02 640J
F16D48/02 640L
F16D48/02 640Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536714
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2019086033
(87)【国際公開番号】W WO2021121582
(87)【国際公開日】2021-06-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ブランケンフィエル,マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】カーペンマン,フレドリック
【テーマコード(参考)】
3J057
【Fターム(参考)】
3J057BB03
3J057DB01
3J057GA64
3J057GB09
3J057GB12
3J057GB19
3J057GE11
3J057GE13
3J057HH01
(57)【要約】
本開示は変速機(1)のクラッチ(2)のクラッチスリッピングポイント位置(Xsp)を特定する方法に関し、変速機は入力軸(3)を備え、入力軸は制動手段(4)によって制動されるように配置される。前記方法は、クラッチの完全解放時におけるクラッチの引き摺りの発生の有無を判定し(S1)、当該引き摺りの発生時に、入力軸が回転しないように所定の制動トルク(T)で制動手段を適用し(S2)、その後に、クラッチを完全解放位置から係合位置に向かって移動させ(S3)、入力軸の回転速度を示す所定の回転値で入力軸が回転し始めた時期を判定し(S4)、所定の回転値への到達時にクラッチが位置するクラッチ位置(X)を登録し(S5)、クラッチスリッピングポイント位置(Xsp)を特定するために、クラッチのクラッチ伝達特性、所定の制動トルク(T)、及び、登録されたクラッチ位置(X)を使用する(S6)ことを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機(1)のクラッチ(2)のクラッチスリッピングポイント位置(Xsp)を特定する方法であって、前記変速機が入力軸(3)を備え、前記入力軸が制動手段(4)によって制動されるように配置され、前記方法が、
- 前記クラッチの完全解放時に前記クラッチの引き摺りが発生しているかどうかを判定するステップ(S1)と、
- 前記クラッチの引き摺りが発生していることが判定されると、前記入力軸が回転しないように、所定の制動トルク(T)で前記制動手段を適用するステップ(S2)と、その後に、
- 前記クラッチを完全解放位置から係合位置に向かって移動させるステップ(S3)と、
- 前記入力軸の回転速度を示す所定の回転値で前記入力軸が回転し始めた時期を判定するステップ(S4)と、
- 前記所定の回転値への到達時に前記クラッチが位置するクラッチ位置(X)を登録するステップ(S5)と、
- 前記クラッチスリッピングポイント位置(Xsp)を特定するために、前記クラッチのクラッチ伝達特性、前記所定の制動トルク(T)、及び、前記登録されたクラッチ位置(X)を使用するステップ(S6)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記クラッチが、前記完全解放位置から前記係合位置に向かって所定の速度で移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記登録されたクラッチ位置への到達後に、前記クラッチをその完全解放位置へ解放するステップと、
- 前記制動手段を再び適用するステップと、その後に、
- 前記制動手段を解放するステップと、
- 前記クラッチを、前記特定されたクラッチスリッピングポイント位置へ移動させるステップと、
- 前記入力軸の加速度が所望のスリッピングポイントトルク(Tsp)に対応していることを検証するために、前記加速度を判定するステップと、
を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記クラッチの最高移動速度に対応する移動速度で、又は、前記クラッチの最高移動速度の70%、80%、又は90%に少なくとも対応する移動速度で、前記クラッチが、前記特定されたクラッチスリッピングポイント位置へ移動する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
- 前記入力軸の、判定された前記加速度が小さすぎて、前記加速度が前記所望のスリッピングポイントトルクに対応していない場合に、より係合される方に前記クラッチスリッピングポイント位置を調整するステップ、
を更に含む、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
- 前記入力軸の、判定された前記加速度が大きすぎて、前記加速度が前記所望のスリッピングポイントトルクに対応していない場合に、より解放される方に前記クラッチスリッピングポイント位置を調整するステップ、
を更に含む、請求項3~請求項5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
入力軸(3)及び前記入力軸のためのクラッチ(2)を備える変速機のための制御ユニット(10)であって、前記入力軸が制動手段(4)によって制動されるように配置され、前記制御ユニットが、
- 前記クラッチの完全解放時に前記クラッチの引き摺りが発生しているかどうかを判定し、
- 前記クラッチの引き摺りが発生していることが判定されると、前記入力軸が回転しないように、所定の制動トルク(T)で前記制動手段を適用する第1の信号を発し、その後に、
- 前記クラッチを完全解放位置から係合位置に向かって移動させる第2の信号を発し、
- 前記入力軸の回転速度を示す所定の回転値で前記入力軸が回転し始めた時期を判定し、
- 前記所定の回転値への到達時に前記クラッチが位置するクラッチ位置(X)を登録し、
- クラッチスリッピングポイント位置(Xsp)を特定するために、前記クラッチのクラッチ伝達特性、前記所定の制動トルク(T)、及び、前記登録されたクラッチ位置(X)を使用する、
ように構成される、制御ユニット。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記完全解放位置から前記係合位置に向かって所定の速度で前記クラッチを移動させる前記第2の信号を発するように構成される、請求項7に記載の制御ユニット。
【請求項9】
- 前記登録されたクラッチ位置への到達後に、前記クラッチをその完全解放位置へ解放させる第3の信号を発し、
- 前記制動手段を再び適用する第4の信号を発し、その後に、
- 前記制動手段を解放する第5の信号を発し、
- 前記クラッチを、前記特定されたクラッチスリッピングポイント位置へ移動させる第6の信号を発し、
- 前記入力軸の加速度が所望のスリッピングポイントトルクに対応していることを検証するために、前記加速度を判定する、
ように更に構成される、請求項7又は請求項8に記載の制御ユニット。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記クラッチの最高移動速度に対応する移動速度で、又は、前記クラッチの最高移動速度の70%、80%、又は90%に少なくとも対応する移動速度で、前記クラッチを、前記特定されたクラッチスリッピングポイント位置へ移動させる前記第6の信号を発するように構成される、請求項9に記載の制御ユニット。
【請求項11】
- 前記入力軸の、判定された前記加速度が小さすぎて、前記加速度が前記所望のスリッピングポイントトルクに対応していない場合に、より係合される方に前記クラッチスリッピングポイント位置を調整する、
ように更に構成される、請求項9又は請求項10に記載の制御ユニット。
【請求項12】
- 前記入力軸の、判定された前記加速度が大きすぎて、前記加速度が前記所望のスリッピングポイントトルクに対応していない場合に、より解放される方に前記クラッチスリッピングポイント位置を調整する、
ように更に構成される、請求項9~請求項11のいずれか1つに記載の制御ユニット。
【請求項13】
入力軸及び前記入力軸のためのクラッチ(2)を備える変速機(1)であって、前記入力軸が制動手段によって制動されるように配置され、請求項7~請求項12のいずれか1つに記載の制御ユニットを更に備える、変速機。
【請求項14】
前記入力軸の回転速度を示す値を測定するためのセンサ(5)を更に備え、前記センサが前記制御ユニットと通信接続される、請求項13に記載の変速機。
【請求項15】
前記制動手段が、前記変速機の変速機ブレーキ、及び/又は、前記変速機の一部ではない、電動機ブレーキなどの補助制動手段、のいずれか1つである、請求項13又は請求項14に記載の変速機。
【請求項16】
請求項7~請求項12のいずれか1つに記載の制御ユニット、及び/又は、請求項13~請求項15のいずれか1つに記載の変速機を備える、車両(100)。
【請求項17】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータで実行されるときに、請求項1~請求項6のいずれかに記載のステップを実施するためのプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【請求項18】
コンピュータ可読媒体であって、プログラム製品がコンピュータで実行されるときに、請求項1~請求項6のいずれかに記載のステップを実施するためのプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムを担持している、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のクラッチのクラッチスリッピングポイント位置を特定する方法に関する。本発明は、更に、変速機のための制御ユニット、変速機、車両、コンピュータプログラム、及び/又は、コンピュータ可読媒体に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス、及び建設機械などの大型車両に適用することができる。本発明は大型トラックに関連して説明されることになるが、本発明はこの特定の車両に限定されず、軽量トラック、連結式ハウラー、掘削機(エクスカベータ)、ホイールローダ及びバックホーローダなどの他の車両に使用することも可能である。
【背景技術】
【0003】
トランスミッションとしても知られている車両変速機では、例えばテークオフ及びシフティングの間、クラッチを正確に制御することができるようにするためには、クラッチスリッピングポイント位置を予測することが極めて重要であり得る。例えばトラックに広く使用されている自動機械式トランスミッション(AMT:automated mechanical transmissions)の場合、これはとりわけ重要であり得る。
【0004】
クラッチスリッピングポイント位置は、典型的には、小さい定義済みトルク、例えば30Nmが伝達されるクラッチ位置である。この位置の外側では、クラッチは解放(分離)されていると見なすことができ、30Nmより小さいトルクを伝達することができる。この位置の内側では、既知の特性に従ってトルクが大きくなることになる。
【0005】
クラッチスリッピングポイント位置は、しばしば、クラッチが解放位置(分離位置)から係合位置に向かって低速で移動している間、変速機入力軸の加速度を監視することによって予測される。しかしながらこの手法は、クラッチスリッピングポイント位置の信頼できる予測を必ずしも提供するとは限らないことが認識されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の観点から、変速機のクラッチのクラッチスリッピングポイント位置を特定するための改良された方法を提供することが望ましい。
【0007】
以上の観点から、本発明の目的は、少なくともいくつかの態様では従来技術のいくつかの欠点のうちの少なくとも1つを軽減する、変速機のクラッチのクラッチスリッピングポイント位置を特定するための改良された方法を提供すること、及び/又は、有用な代替を少なくとも提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、その目的は請求項1に記載の方法によって達成される。本発明の第2の態様によれば、その目的は請求項7に記載の制御ユニットによって達成される。本発明の第3の態様によれば、その目的は請求項13に記載の変速機によって達成される。本発明の第4の態様によれば、その目的は請求項16に記載の車両によって達成される。本発明の第5の態様によれば、その目的は請求項17に記載のコンピュータプログラムによって達成される。本発明の第6の態様によれば、その目的は請求項18に記載のコンピュータ可読媒体によって達成される。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、上記目的は、変速機のクラッチのクラッチスリッピングポイント位置を特定する方法によって達成され、変速機は入力軸を備え、入力軸は制動手段によって制動されるように配置され、上記方法は、
- クラッチの完全解放時(クラッチが完全に解放されたとき)に、クラッチの引き摺り(切れ不良)が発生しているかどうかを判定するステップと、
- クラッチの引き摺りが発生していることが判定されると、入力軸が回転しないように、所定の制動トルクで制動手段を適用するステップと、その後に、
- クラッチを完全解放位置(完全に解放された位置)から係合位置に向かって移動させるステップと、
- 入力軸がその入力軸の回転速度を示す所定の回転値で回転し始めた時期を判定するステップと、
- 所定の回転値への到達時(所定の回転値に到達したとき)にクラッチが位置するクラッチ位置を登録するステップと、
- クラッチスリッピングポイント位置を特定するために、クラッチのクラッチ伝達特性、所定の制動トルク、及び、登録されたクラッチ位置を使用するステップと、
を含む。
【0010】
クラッチに関する「引き摺り(dragging)」という表現は、本明細書においては、クラッチがたとえ完全に解放(分離)されていても、変速機の入力軸が回転を開始すること、又は、回転することを意味している。
【0011】
クラッチ伝達特性(clutch transfer characteristics)は、特定のクラッチに対して知られている特性である。特定のクラッチに対して特定のクラッチ伝達特性が存在することは、当業者にはよく分かっている。
【0012】
本明細書において開示される本発明の提供により、変速機のクラッチのクラッチスリッピングポイント位置を特定するための改良された方法が達成される。より詳細には、いくつかのクラッチは、解放された位置を含む、解放位置までのすべてにわたってトルクを伝達することがあり、そのために引き摺りトルクがもたらされ、この引き摺りトルクは、場合によっては変速機の内部損失より大きいことが分かっている。このような場合、変速機入力軸は直ちに回転を開始することになり、実際のクラッチスリッピングポイント位置に到達すると、入力軸とエンジンが同期することになる。これは、クラッチスリッピングポイントの判定を困難にすることになる。従って本発明の提供により、入力軸が回転しないように、所定の制動トルクで制動手段を適用することにより、以下のクラッチスリッピングポイント位置予測をより正確にすることができ、また、速やかに実施することができる。制動手段を適用することにより、例えばわずかなクラッチ引き摺りトルクのために入力軸が回転を開始することがないことを保証することができる。
【0013】
クラッチは、任意選択で、完全解放位置(fully disengaged position)から係合位置(engaged position)に向かって所定の(定義済みの)速度で移動させることも可能である。それにより、より信頼性が高く、かつ、より制御されたクラッチスリッピングポイント位置予測を実施することができる。
【0014】
上記方法は、任意選択で、
- 登録されたクラッチ位置への到達後(登録されたクラッチ位置に到達した後)に、クラッチをその完全解放位置へ解放するステップと、
- 制動手段を再び適用するステップと、その後に、
- 制動手段を解放するステップと、
- クラッチを、特定されたクラッチスリッピングポイント位置へ移動させるステップと、
- 入力軸の加速度を判定するステップであって、それによりその加速度が所望のスリッピングポイントトルクに対応していることを検証する、ステップと、
を更に含むことができる。
【0015】
それにより、特定されたクラッチスリッピングポイント位置が所望のスリッピングポイントトルクに対応していることを検証することができ、これは、改良された、より信頼性の高い方法であることを意味している。
【0016】
クラッチは、任意選択で、クラッチの最高移動速度に対応する移動速度で、又は、クラッチの最高移動速度の70%、80%、又は90%に少なくとも対応する移動速度で、特定されたクラッチスリッピングポイント位置へ移動させることができる。それにより、比較的速い移動速度を使用することによって検証をより速やかに実施することができる。
【0017】
上記方法は、更に任意選択で、
- 入力軸の、判定された加速度が小さすぎて、所望のスリッピングポイントトルクに対応していない場合に、より係合される方にクラッチスリッピングポイント位置を調整するステップ、
を更に含むことができる。
【0018】
上記方法は、更に任意選択で、
- 入力軸の、判定された加速度が大きすぎて、所望のスリッピングポイントトルクに対応していない場合に、より解放される方にクラッチスリッピングポイント位置を調整するステップ、
を更に含むことができる。
【0019】
それにより、クラッチスリッピングポイント位置の上記2つの調整のうちのいずれか一方の観点から、より正確なクラッチスリッピングポイント位置を得ることができる。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、上記目的は、入力軸及び入力軸のためのクラッチを備える変速機のための制御ユニットによって達成され、入力軸は制動手段によって制動されるように配置され、制御ユニットは、
- クラッチの完全解放時(完全分離時)に、クラッチの引き摺りが発生しているかどうかを判定し、
- クラッチの引き摺りが発生していることが判定されると、入力軸が回転しないように、所定の制動トルクで制動手段を適用する第1の信号を発し、その後に、
- クラッチを完全解放位置(完全分離位置)から係合位置に向かって移動させる第2の信号を発し、
- 入力軸がその入力軸の回転速度を示す所定の回転値で回転し始めた時期を判定し、
- 所定の回転値への到達時にクラッチが位置するクラッチ位置を登録し、
- クラッチスリッピングポイント位置を特定するために、クラッチのクラッチ伝達特性、所定の制動トルク、及び、登録されたクラッチ位置を使用する、
ように構成される。
【0021】
本発明の第2の態様によって提供される利点及び効果は、本発明の第1の態様によって提供される利点及び効果と極めて類似している。本発明の第2の態様のすべての実施形態は、本発明の第1の態様のすべての実施形態に適用することができ、また、それらと組み合わせることができること、また、その逆についても同様であることに同じく留意されたい。
【0022】
制御ユニットは、任意選択で、完全解放位置から係合位置に向かって所定の速度でクラッチを移動させる第2の信号を発するように構成することができる。
【0023】
制御ユニットは、任意選択で、
- 登録されたクラッチ位置への到達後に、クラッチをその完全解放位置へ解放させる第3の信号を発し、
- 制動手段を再び適用する第4の信号を発し、その後に、
- 制動手段を解放する第5の信号を発し、
- クラッチを、特定されたクラッチスリッピングポイント位置へ移動させる第6の信号を発し、
- 入力軸の加速度を判定し、それによりその加速度が所望のスリッピングポイントトルクに対応していることを検証する、
ように更に構成することができる。
【0024】
制御ユニットは、任意選択で、クラッチの最高移動速度に対応する移動速度で、又は、クラッチの最高移動速度の70%、80%、又は90%に少なくとも対応する移動速度で、クラッチを、特定されたクラッチスリッピングポイント位置へ移動させる第6の信号を発するように構成することができる。
【0025】
制御ユニットは、任意選択で、
- 入力軸の、判定された加速度が小さすぎて、所望のスリッピングポイントトルクに対応していない場合に、より係合される方にクラッチスリッピングポイント位置を調整する、
ように更に構成することができる。
【0026】
制御ユニットは、任意選択で、
- 入力軸の、判定された加速度が大きすぎて、所望のスリッピングポイントトルクに対応していない場合に、より解放される方にクラッチスリッピングポイント位置を調整する、
ように更に構成することができる。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、上記目的は、入力軸及び入力軸のためのクラッチを備える変速機によって達成され、入力軸は制動手段によって制動されるように配置され、本発明の第2の態様の実施形態のうちの任意の1つによる制御ユニットを更に備える。
【0028】
本発明の第3の態様によって提供される利点及び効果は、本発明の第1の態様によって提供される利点及び効果と極めて類似している。本発明の第3の態様のすべての実施形態は、本発明の第1の態様及び第2の態様のすべての実施形態に適用することができ、また、それらと組み合わせることができること、また、その逆についても同様であることに同じく留意されたい。
【0029】
変速機は、任意選択で、入力軸の回転速度を示す値を測定するためのセンサを更に備えることができ、センサは制御ユニットと通信接続される。
【0030】
制動手段は、任意選択で、変速機の変速機ブレーキ、及び/又は、変速機の一部ではない、電動機ブレーキなどの補助制動手段、のいずれか1つであってもよい。
【0031】
クラッチは、車両の動力ユニット、例えば車両の内燃機関、又は電動機などの任意の他の動力ユニットに対して、入力軸を駆動的に解放(分離)及び係合させるように配置されることが好ましい。
【0032】
本発明の第4の態様によれば、上記目的は、本発明の第2の態様の実施形態のうちの任意の1つによる制御ユニット、及び/又は、本発明の第3の態様の実施形態のうちの任意の1つによる変速機を備える車両によって達成される。
【0033】
本発明の第4の態様によって提供される利点及び効果は、本発明の第1の態様によって提供される利点及び効果と極めて類似している。本発明の第4の態様のすべての実施形態は、本発明の第1の態様、第2の態様及び第3の態様のすべての実施形態に適用することができ、また、それらと組み合わせることができること、また、その逆についても同様であることに同じく留意されたい。
【0034】
本発明の第5の態様によれば、上記目的は、コンピュータプログラムであって、このプログラムがコンピュータで実行されるときに、本発明の第1の態様の任意の実施形態のステップを実施するためのプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムによって達成される。
【0035】
本発明の第6の態様によれば、上記目的は、コンピュータ可読媒体であって、プログラム製品がコンピュータで実行されるときに、本発明の第1の態様の任意の実施形態のステップを実施するためのプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムを担持しているコンピュータ可読媒体によって達成される。
【0036】
以下、例として記載されている本発明の実施形態について、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の例示的実施形態による車両の側面図である。
図2】本発明の例示的実施形態による方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施形態を実証する線図である。
図4】本発明の例示的実施形態による変速機の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面は、本発明の例示的実施形態を略図で示したものであり、従って必ずしもスケール通りには描かれていない。示され、かつ、説明されている実施形態は例示的なものであること、また、本発明はこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。また、図面のいくつかの細部は、本発明をより良好に説明し、かつ、例証するために場合によっては誇張されていることに同じく留意されたい。同様の参照文字は、そうではないことが示されていない限り、説明全体を通して同様の要素を表している。
【0039】
図1は、大型トラック100の形態の車両を示したものである。トラック100は、本発明の例示的実施形態による変速機(ギアボックス)1を備えており、変速機1は、内燃機関ICEに駆動接続されている。変速機1は、例えば図4に示されている変速機であってもよい。内燃機関ICEが示されているが、本発明は他の動力ユニットに適用することも可能であり、また、それと組み合わせた、変速機1に駆動接続された1つ又は複数の電動機などに適用することも可能である。変速機1は、この実施形態では、後輪40にトルクを伝達するように構成されているプロペラ軸50に接続されている。トラック100が示されているが、本発明は、バス、建設機械車両、乗用車、等々などの任意のタイプの車両に適用することができる。
【0040】
本発明の第1の態様による方法の例示的実施形態について、とりわけ図2及び図3に関連して説明する。従って図2は、変速機1内のクラッチ2(図4を参照されたい)のクラッチスリッピングポイント位置Xspを特定する方法のフローチャートを示している。変速機1は、入力軸3(図4を参照されたい)及び入力軸3のためのクラッチ2を備えており、入力軸3は、制動手段(ブレーキ手段)4によって制動されるように配置されている。制動手段4は、図4に示されているように変速機のブレーキであっても、あるいは任意の他の制動手段であってもよい。
【0041】
フローチャートに示されている方法は、
S1:クラッチの完全解放時(クラッチが完全に解放(分離)されたとき)に、クラッチ2の引き摺り(クラッチ2の切れ不良)が発生しているかどうかを判定するステップ、
S2:クラッチ2の引き摺りが発生していることが判定されると、入力軸3が回転しないように、所定の制動トルクTで制動手段4を適用するステップ、引き続いて、
S3:クラッチ2を完全解放位置(完全に解放(分離)された位置)から係合位置に向かって移動させるステップ、
S4:入力軸3がその入力軸3の回転速度を示す所定の回転値で回転し始めた時期を判定するステップ、
S5:所定の回転値への到達時(所定の回転値に到達したとき)にクラッチが有するクラッチ位置Xを登録するステップ、
S6:クラッチスリッピングポイント位置Xspを特定するために、クラッチ2のクラッチ伝達特性Ctc、所定の制動トルクT、及び、登録されたクラッチ位置Xを使用するステップ、
を含む。
【0042】
図3に示されているクラッチ伝達特性Ctcは、図4に示されている変速機1などの変速機1の所定の(定義済みの)クラッチ伝達特性である。例えば図3に示されている曲線のような曲線の形態のクラッチ伝達特性Ctcは、固有の変速機毎に提供することができ、及び/又は、特定のタイプの変速機に対して提供することができる。特定のクラッチ位置におけるクラッチトルクを定義する曲線として表現することができるクラッチ伝達特性を得る方法は当業者によく知られている。
【0043】
クラッチ2のクラッチ伝達特性Ctc、所定の制動トルクT、及び、登録されたクラッチ位置Xを使用することにより、クラッチスリッピングポイント位置Xspを特定することができる。より詳細には、クラッチ伝達特性CtcにおけるスリッピングポイントトルクTspによってクラッチスリッピングポイント位置Xspを見出すことができる。スリッピングポイントトルクTspは、トルクがゼロトルクから増加し始めたトルク値として、あるいはゼロトルクに近づくトルク値として定義することができる。言い換えると、スリッピングポイントトルクTspは、上記曲線における微分係数(導関数)の変化がゼロから正の値へ向かう上記曲線の区域の中に見出すことができる。例えばスリッピングポイントトルクTspは、上で言及したようにほぼ30Nmにすることができる。
【0044】
クラッチ2は、完全解放位置(完全分離位置)から係合位置に向かって、毎秒、所定のミリメートルの速度(mm/s)などの所定の速度で移動することが好ましい。
【0045】
上で言及したステップに加えて、上記方法は、登録されたクラッチ位置Xへの到達後(登録されたクラッチ位置Xに到達した後)に、クラッチ2をその完全解放位置へ解放するステップ、及び、もう一度制動手段4を適用するステップを更に含むことができる。引き続いて、
- 制動手段4を解放するステップ、
- クラッチ2を、特定されたクラッチスリッピングポイント位置Xsp(特定済みクラッチスリッピングポイント位置Xsp)へ移動させるステップ、
- 入力軸3の加速度を判定するステップであって、それによりその加速度が所望のスリッピングポイントトルクTspに対応していることを検証する、ステップ、
を実施することができる。
【0046】
クラッチ2は、クラッチ2の最高移動速度に対応する移動速度で、又は、クラッチの最高移動速度の70%、80%、又は90%に少なくとも対応する移動速度で、特定されたクラッチスリッピングポイント位置Xspへ移動させることができる。
【0047】
引き続いて、
- 入力軸3の、判定された加速度が小さすぎて(低すぎて)、所望のスリッピングポイントトルクTspに対応していない場合に、より係合する位置に向けてクラッチスリッピングポイント位置Xspを調整するステップ、
を実施することができる。
【0048】
更に、
- 入力軸3の、判定された加速度が大きすぎて(高すぎて)、所望のスリッピングポイントトルクTspに対応していない場合に、より解放する位置に向けてクラッチスリッピングポイント位置Xspを調整するステップ、
を同じく実施することができる。
【0049】
図4は、本発明の例示的実施形態による変速機1の略図を示したものである。変速機1は、本発明の第2の態様の実施形態による制御ユニット10に接続されている。示されている変速機1はトラックのための自動機械式トランスミッション(AMT)であり、クラッチ2、入力軸3、中間軸6、互いにかみ合っている歯車(ギアホイール)7、8、9、11のセット及びレンジギア12を備えている。クラッチ2は、入力軸3を例えば図1に示されている内燃機関ICEに対して駆動的に解放(分離)及び係合させるように適合されている。変速機1は、ここでは中間軸6に接続されている制動手段4を更に備えており、それにより入力軸3は制動手段4によって制動されるように配置されている。変速機1は、入力軸3の回転速度を示す値を測定するためのセンサ5を更に備えている。センサ5は例えば速度センサであってもよく、あるいはセンサを通過する歯車の歯の数(歯車のコグホイールの数)を計数するセンサであってもよい。制動手段4は制御ユニット10に接続されており、制御ユニット10によって制御されるように適合されている。また、センサ5は制御ユニット10と通信接続している。
【0050】
制御ユニット10は、
- クラッチ2の完全解放時(完全分離時)に、クラッチ2の引き摺りが発生しているかどうかを判定し、
- クラッチ2の引き摺りが発生していることが判定されると、入力軸3が回転しないように、所定の制動トルクTで制動手段4を適用する第1の信号を発し、引き続いて、
- クラッチ2を完全解放位置(完全分離位置)から係合位置に向かって移動させる第2の信号を発し、
- 入力軸3がその入力軸3の回転速度を示す所定の回転値で回転し始めた時期を判定し、
- 所定の回転値への到達時(所定の回転値に到達したとき)にクラッチが有するクラッチ位置Xを登録し、
- クラッチスリッピングポイント位置Xspを特定するために、クラッチのクラッチ伝達特性Ctc、所定の制動トルクT、及び、登録されたクラッチ位置Xを使用する、
ように構成される。
【0051】
制御ユニット10は、完全解放位置から係合位置に向かって所定の(定義済みの)速度でクラッチ2を移動させる第2の信号を発するように構成することができる。
【0052】
制御ユニット10は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ又は別のプログラマブルデバイスを含むことができる。制御ユニット10は、同じく、あるいは代わりに、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ又はプログラマブルアレイ論理、プログラマブル論理デバイスあるいはデジタル信号プロセッサを含むことも可能である。制御ユニット10が上で言及したマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はプログラマブルデジタル信号プロセッサなどのプログラマブルデバイスを含んでいる場合に、プロセッサは、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードを更に含むことができる。制御ユニット10は埋設ハードウェアを備えることができ、ハードウェアが密な物理的関係を示す場合に、統合されたソフトウェアを有する場合もある。物理的関係の例は、共有ケーシング、及び1つ又は複数の回路基板に取り付けられた構成要素である。制御ユニット10は、接続された1つ又は複数の副制御ユニット、又は等価コンピュータ資源によって形成することができることに留意されたい。
【0053】
制御ユニット10は、
- 登録されたクラッチ位置Xへの到達後(登録されたクラッチ位置Xに到達した後)に、クラッチ2をその完全解放位置へ解放させる第3の信号を発し、
- もう一度制動手段4を適用する第4の信号を発し、引き続いて、
- 制動手段4を解放する第5の信号を発し、
- クラッチ2を、特定されたクラッチスリッピングポイント位置Xspへ移動させる第6の信号を発し、
- 入力軸3の加速度を判定し、それによりその加速度が所望のスリッピングポイントトルクTspに対応していることを検証する、
ように更に構成することができる。
【0054】
制御ユニット10は、クラッチ2の最高移動速度に対応する移動速度で、又は、クラッチ2の最高移動速度の70%、80%、又は90%に少なくとも対応する移動速度で、クラッチ2を、特定されたクラッチスリッピングポイント位置Xspへ移動させる第6の信号を発するように更に構成することができる。
【0055】
制御ユニット10は、
- 入力軸3の、判定された加速度が小さすぎて、所望のスリッピングポイントトルクTspに対応していない場合に、より係合する位置に向けてクラッチスリッピングポイント位置Xspを調整する、
ように更に構成することができる。
【0056】
制御ユニット10は、
- 入力軸の、判定された加速度が大きすぎて、所望のスリッピングポイントトルクTspに対応していない場合に、より解放する位置に向けてクラッチスリッピングポイント位置Xspを調整する、
ように更に構成することができる。
【0057】
本明細書において説明されている方法は、場合によっては、例えばサービスのために車両がワークショップにある間に、及び/又は、例えば運転者が休憩中で、車両が静止している間に実施されることが好ましい。
【0058】
本発明は、上で説明した、また、図面に示されている実施形態に限定されず、それどころか当業者は、添付の特許請求の範囲の範疇で多くの変更及び修正を加えることができることを認識することになることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】