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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】シリカ被覆デンプン
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/02 20060101AFI20230405BHJP
   C08L 39/00 20060101ALI20230405BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230405BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230405BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C08L3/02
C08L39/00
C08K3/36
C08L21/00
C08K9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536995
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 US2020063270
(87)【国際公開番号】W WO2021126548
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/948,376
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】アワル,アブドゥル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB04W
4J002AC00Y
4J002BJ00X
4J002DJ016
4J002EX087
4J002FB28W
4J002FD01W
4J002FD316
4J002FD31X
4J002GN01
(57)【要約】
一定量の粒子を含む加工デンプン生成物であって、各粒子は中間ポリマー被膜と、ナノシリカの外側被膜とを持つデンプンコアを有する、加工デンプン生成物。加工デンプン生成物を製造する方法であって、シリケートと水を混和させてナノシリカ溶液を形成すること;元のデンプンとポリマーを混和させて、中間ポリマー層を有するデンプンコアを持つ粒子を形成すること;ナノシリカ溶液と中間ポリマー層を有するデンプン粒子を混和させて、加工デンプン生成物の懸濁液を形成すること;加工デンプン生成物の懸濁液を脱水すること;加工デンプン生成物を乾燥させて、中間ポリマー被膜とナノシリカの外側被膜とを持つデンプンコアを含む粒子を有する加工デンプンを形成することを含む方法。ゴム配合物は、一定量のエラストマーと一定量の加工デンプンとを含む。粒子は、エラストマー全体に実質的に均一に分散している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子を含む、加工デンプン生成物であって、前記の各粒子がデンプンコアと中間ポリマー被膜とナノシリカを含む外側被膜とを含む、上記加工デンプン生成物。
【請求項2】
前記粒子が約1ミクロンと約10ミクロンの間の粒径を有する、請求項1に記載の加工デンプン生成物。
【請求項3】
前記粒子が約2ミクロンと約8ミクロンの間の粒径を有する、請求項1に記載の加工デンプン生成物。
【請求項4】
前記粒子が約3ミクロンと約7ミクロンの間の粒径を有する、請求項1に記載の加工デンプン生成物。
【請求項5】
前記加工デンプンが原料元のデンプンとシリカを混和させることにより製造される、請求項1に記載の加工デンプン生成物。
【請求項6】
前記ナノシリカがテトラエチルオルトシリケートを含む、請求項5に記載の加工デンプン生成物。
【請求項7】
前記中間ポリマーがポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)を含む、請求項1に記載の加工デンプン生成物。
【請求項8】
前記デンプンが、コメデンプン、コーンデンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含む、請求項1に記載の加工デンプン。
【請求項9】
加工デンプン生成物を製造する方法であって、
シリケートと水を混和させてナノシリカ含有溶液を形成すること;
元のデンプンとポリマーを混和させて粒子を形成すること、ここで各粒子はデンプンコアと中間ポリマー被膜とを有する;
前記ナノシリカ含有溶液と前記粒子を混和させて、加工デンプン生成物粒子の懸濁液を形成すること、ここで各加工デンプン生成物粒子はデンプンコアと、中間ポリマー被膜と、ナノシリカを含む外側被膜とを含む
を含む、方法。
【請求項10】
前記加工デンプン生成物粒子の懸濁液を脱水すること;および
前記加工デンプン生成物粒子を乾燥させて前記加工デンプン生成物を形成すること
を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シリケートがテトラエチルオルトシリケートである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記シリケートをイソプロピルアルコール、水酸化アンモニウム、および脱イオン水と更に混和させて前記ナノシリカ含有溶液を形成する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーが大きな電荷密度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーがポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
一定量のエラストマー;および
一定量の加工デンプン粒子、各加工デンプン粒子はデンプンコアと、中間ポリマー被膜と、ナノシリカを含む外側被膜とを含む
を含むゴム配合物であって、
前記粒子が前記エラストマー全体に実質的に均一に分散されている、
上記ゴム配合物。
【請求項16】
シランを更に含む、請求項15に記載のゴム配合物。
【請求項17】
前記シランがポリスルフィド型シランカップリング剤を含む、請求項15に記載のゴム配合物。
【請求項18】
前記シランがビス-3トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドを含む、請求項15に記載のゴム配合物。
【請求項19】
請求項15に記載のゴム配合物を含む、物品。
【請求項20】
請求項15に記載のゴム配合物を含むタイヤサイドウォールを含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001]本願は、2019年12月16日に出願された米国仮出願第62/948,376号の利益を主張する。上記出願の開示全体は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、ゴムコンパウンド用の補強フィラーに関し、より詳細には、ゴムコンパウンド用の加工デンプンフィラーに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]本節は、本開示に関連する背景情報を提供するが、それは、必ずしも先行技術とは限らない。
[0004]デンプンは、グリコシド結合によって結合した多数のグルコース単位からなる炭水化物である。デンプンは、低コスト、豊富な供給量、および環境に優しいといった多くの利点を有する。デンプンは、食品、製紙、ファインケミカル、および梱包材産業における使用で広く公知である。また、デンプンは再生可能な材料であり、そのため、石油系材料への依存度を低下させることができる。
【0004】
[0005]ゴムフィラーとしてのデンプンの適用は、近年ゴム産業からの高い関心を集めるようになっている。特に、タイヤにカーボンブラックおよびシリカと共にデンプンを使用すると、多数の特性の向上、例えばタイヤ重量の低減、転がり抵抗の低下、および耐摩耗性の維持した状態でのウェットグリップ性の向上を実現することができる。従来のタイヤのエネルギー消費および環境汚染の懸念から、デンプンの適用は、興味を引くものでもある。
【0005】
[0006]デンプンとゴム複合材料は、低コスト、軽量、および良好な総合性能が期待されるため、ゴムタイヤだけでなく、他の種類のゴム製品にも適用可能である。これらの理由から、例えば、デンプンバイオ複合材料、およびデンプンを合成ポリマーとブレンドすることによって得られるデンプン系熱可塑性樹脂を含むデンプン系複合材料を開発して、1種または複数種の合成ポリマー材料またはそれらの複合材料を置きかえるための広範な取り組みがなされている。
【0006】
[0007]しかし、デンプン粒子は比較的大きく(1~20μm)、同様に、カーボンブラックおよびシリカなどの従来のゴムフィラーと比較して表面積が小さい。更に、デンプンは極性であり、カーボンブラックと比較して、疎水性または無極性ゴム、例えばスチレン-ブタジエンゴム(SBR)および天然ゴム(NR)に対しては一般に、相互作用の低下を呈する。表面積が小さく、極性表面であるため、デンプンと疎水性ポリマーとの相互作用は不十分である。したがって、このようなデンプン粒子は、ほとんどのゴム複合材料においてフィラーとして使用される場合、補強とならない可能性がある。結果として、デンプン系ゴム複合材料は、タイヤを含む多くの用途に必要とされる機械的特性を実現することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0008]ゴム組成物中の補強フィラーとしてゴム組成物に利用できる加工デンプン生成物に対する継続的必要性が存在する。望ましくは、加工デンプン生成物は、未加工デンプンと比較して、ゴム組成物において性能の向上を実現できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0009]本開示に従い、ゴム組成物中の補強フィラーとしてゴム組成物に利用でき、未加工デンプンと比較して、ゴム組成物において性能の向上を実現できる加工デンプン生成物が、驚くべきことに発見された。
【0009】
[0010]デンプン粒子表面上のヒドロキシル基が強い極性を呈し、水素結合を介して隣接するデンプン粒子と相互作用を呈することが見出されている。デンプン粒子間の相互作用により、デンプンは凝集する傾向があり、それがゴムコンパウンド中のフィラーの分散性の悪化に繋がる可能性がある。したがって、デンプン表面上のヒドロキシル基を遮蔽することによりデンプン粒子の親水性を弱め、疎水性を高めることで、デンプンの凝集を最小限に抑え、ゴムコンパウンド中のフィラーの分散性を改善することができる。
【0010】
[0011]ある特定の態様において、加工デンプン生成物は、デンプンコアと、中間ポリマー被膜と、ナノシリカの外側被膜とを有する粒子を含む。デンプンコアは、補強フィラー構造として支持クロスベース(cross-base)を提供することができる。中間ポリマー層は、シリカコアの表面上の親水性ヒドロキシル基をブロックして、フィラー同士の相互作用を低減させる。中間ポリマー層は、エネルギー散逸のためのポリマーバッファーを更に創出する。ナノシリカの外側被膜は、シランと反応する加工デンプン生成物の表面積と可触性を増加させるためのシェルを創出する。
【0011】
[0012]他の態様において、加工デンプン生成物を製造する方法は、不可逆的吸着プロセスによりデンプン表面をナノシリカで被覆することを伴う。シリケートと水を混和してナノシリカ溶液を形成し;元の(オジリナルの)デンプンとポリマーを混和して、中間ポリマー層を有するデンプンコアを持つ粒子を形成する。ナノシリカ溶液と中間ポリマー層を有するデンプン粒子とを混和して、加工デンプン生成物の懸濁液を形成する。加工デンプン生成物の懸濁液は、脱水することができる。次いで、加工デンプン生成物を乾燥させて、中間ポリマー被膜とナノシリカの外側被膜とを持つデンプンコアを含む粒子を有する加工デンプンを形成することができる。
【0012】
[0013]更なる態様において、ゴム配合物は、一定量のエラストマーと一定量の加工デンプン粒子とを含み、粒子のそれぞれは、中間ポリマー被膜とナノシリカの外側被膜とを持つデンプンコアを含む。粒子は、エラストマー全体に実質的に均一に分散させることができる。
【0013】
[0014]更なる適用可能な領域は、本明細書において提供される説明から明らかとなる。本概要における説明および具体例は、例示目的のみが意図されており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0014】
[0015]本明細書に記載の図面は、全ての可能な実施ではなく、選択された態様の例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[0016]本開示の一態様による、デンプンコア、中間ポリマー被膜、および外側ナノシリカ被膜を図示する加工デンプン生成物の概略図である。
図2A】[0017]本開示の別の態様による、図1の加工デンプン生成物を製造する方法の概略図である。
図2B】[0018]図2Aに示す方法により製造された加工デンプン粒子の概略図である。
図3】[0019]元のデンプンと加工デンプン生成物とを比較する画像を含み、各画像は走査型電子顕微鏡から取られたもので、40マイクロメートルの幅を有し、元のデンプンと比較して加工デンプン生成物の凝集が減少していることを示している。
図4】[0020]元のデンプンと加工デンプン生成物とを比較する画像を含み、各画像は走査型電子顕微鏡から取られたもので、元のデンプンと比較して加工デンプン生成物の表面粗さが増加していることも含め、表面形態の違いを図示している。
図5】[0021]元のデンプンおよび加工デンプン生成物を配合したゴム組成物の引張特性を比較するグラフである。
図6】[0022]元のデンプンおよび加工デンプン生成物を配合したゴム組成物の弾性率を比較するグラフである。
図7】[0023]元のデンプンおよび加工デンプン生成物を配合したゴム組成物の硬化曲線を比較するグラフである。
図8】[0024]元のデンプンおよび加工デンプン生成物を配合したゴム組成物のオゾン劣化特性を比較するグラフである。
図9】[0025]元のデンプンおよび加工デンプン生成物を配合したゴム組成物のペイン効果を比較するグラフである。
図10】[0026]元のデンプンおよび加工デンプン生成物を配合したゴム組成物の割裂接着特性を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0027]下記の技術の説明は、本質的に1つまたは複数の発明の主題、製造および使用の例示に過ぎず、本願もしくは本願に対する優先権を主張して出願できる他の出願、またはそこから発行される特許において主張されるいずれかの特定の発明の範囲、適用、または使用を限定することを意図するものではない。開示される方法に関して、提示される工程の順序は本質的に例示的なものであり、したがって、工程の順序は、ある特定の工程を同時に遂行できる場合を含め、様々な態様において、特に明示的に断らない限り異なるものとすることができる。本明細書で使用する場合、「1つの(a)」および「1つの(an)」は、「少なくとも1つ」のその項目が存在することを意味し;可能な場合には、複数のそのような項目が存在する可能性がある。本技術の最も広い範囲を説明する際には、明示的に示される場合を除き、本明細書における数量は全て、「約」という単語によって修飾されているものと理解すべきであり、幾何学的および空間的記述は全て、「実質的に」という単語によって修飾されているものと理解すべきである。数値に適用される場合の「約」は、計算または測定が値に多少の不正確さを許容すること(その値にある程度近いこと;およそ、またはその値に合理的に近い;ほぼ)を意味する。そうではなく、何らかの理由で「約」および/または「実質的に」によって与えられる不正確さが本技術分野におけるこの通常の意味で理解されない場合、本明細書で使用する場合の「約」および/または「実質的に」は、そうしたパラメータを測定または使用する通常の方法から生じる可能性のある変動を少なくとも意味する。
【0017】
[0028]特許、特許出願、および科学文献を含む、この詳細な説明に引用される文献は全て、明示的に示されない限り、参照することにより本明細書に組み込まれる。参照することにより組み込まれる文献とこの詳細な説明との間に何らかの矛盾または曖昧さが存在する場合、本発明の詳細な説明が優先する。
【0018】
[0029]本技術の態様を説明し主張するために、非限定的用語、例えば、含む(including)、含有する(containing)、または有する(having)の同義語としてオープンエンドな用語である「含む(comprising)」が本明細書において使用されているが、態様は、それに変えてより限定的な用語、例えば「からなる」または「から本質的になる」を使用して説明することができる。したがって、材料、成分、またはプロセス工程を記載する、ある所与の態様については、本技術はまた、そのような材料、成分、またはプロセス工程からなるか、それらから本質的になり、追加の材料、成分またはプロセスを含まない態様(「からなる」の場合)、および態様の重要な特性に影響を与える追加の材料、成分またはプロセスを含まない態様(「から本質的になる」の場合)を、そのような追加の材料、成分またはプロセスが本願に明示的に示されていない場合であっても具体的に含むものである。例えば、要素A、BおよびCを記載する組成物またはプロセスの記載は、要素Dが本明細書において除外されるものとして明示的に記載されていない場合でも、本技術分野において記載される可能性のある要素Dを含まない、A、BおよびCからなる態様、およびA、BおよびCから本質的になる態様を具体的に想定している。
【0019】
[0030]本明細書において言及されるように、別に規定しない限り、組成のパーセンテージは全て全組成物の重量によるものである。範囲の開示は、別に規定しない限り、終点を含み、範囲全体内の個別の値および更に分割された範囲を全て含む。したがって、例えば、「AからBまで」または「約Aから約Bまで」という範囲は、AおよびBを含む。特定のパラメータ(例えば、量、重量パーセンテージなど)に関する値および値の範囲の開示は、本明細書において有用な他の値および値の範囲を除するものではない。所与のパラメータに関する2つ以上の特定の例示的な値が、そのパラメータについて主張することができる値の範囲の終点を定義できると想定される。例えば、本明細書において、パラメータXが値Aを有するように例示され、値Zを有するようにも例示されている場合、パラメータXは、約Aから約Zまでの値の範囲を有することができると想定される。同様に、あるパラメータに関する2つ以上の値の範囲(そのような範囲が入れ子になっている、重複している、または別個であるかに関わらず)の開示は、開示される範囲の終点を使用して主張され得る値の範囲の可能な組み合わせの全てを包含すると想定される。例えば、本明細書において、パラメータXが1~10、または2~9、または3~8の範囲の値を有すると例示されている場合、パラメータXは、1~9、1~8、1~3、1~2、2~10、2~8、2~3、3~10、3~9などを含む他の値の範囲も有することができると想定される。
【0020】
[0031]ある要素または層が別の要素または層「に載っている」、「に係合されている」、「に接続されている」、または「に連結されている」ものとして言及される場合、それは、他の要素または層に直接載っている、係合されている、接続されている、または連結されている可能性もあり、介在する要素または層が存在する可能性もある。これに対し、要素が別の要素または層に「直接載っている」、「直接係合されている」、「直接接続されている」、または「直接連結されている」ものとして言及される場合、介在する要素または層は存在することができない。要素間の関係を説明するために使用される他の語(例えば、「間に」対「間に直接」、「隣接する」対「直接隣接する」など)も、同様に解釈されるべきである。本明細書において使用する場合、「および/または」という用語は、関連する列挙した項目の1つまたは複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0021】
[0032]「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、本明細書において、様々な要素、成分、領域、層および/または区域を記載するために使用できるが、これらの要素、成分、領域、層および/または区域は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層または区域を別の領域、層または区域と区別するためだけに使用できる。本明細書において使用される場合、「第1の」、「第2の」、および他の数値用語のような用語は、文脈によって明確に示されない限り、順序または順番を意味するものではない。したがって、以下に検討される第1の要素、成分、領域、層または区域は、例示的態様の教示から逸脱することなく、第2の要素、成分、領域、層または区域と称されることもあり得る。
【0022】
[0033]本開示は、例えば、図1に示すような加工デンプン生成物に関する。加工デンプン生成物は、離散粒子を含むことができ、粒子は、細かく分割することも、凝集させることもができる。デンプン粒子は、ゴム組成物に組み込まれるか、配合されるように構成することができる。各粒子は、中間ポリマー被膜とナノシリカの外側被膜とを持つデンプンコアを有することができる。非限定例として、加工デンプン生成物は、タイヤ用のゴム組成物中の補強フィラーとして使用されるように構成することができる。当業者は、必要に応じ、加工デンプン生成物の更に適切な最終用途を選択することができる。
【0023】
[0034]加工デンプン生成物の粒子は、約1ミクロン(1μm)から約10ミクロン(10μm)の粒径を有することができる。より詳細には、加工デンプン生成物の粒子は、約2ミクロン(2μm)から約8ミクロン(8μm)の粒径を有することができる。最も具体的には、加工デンプン生成物の粒子は、約3ミクロン(3μm)から約7ミクロン(7μm)の粒径を有することができる。当業者は、本開示の範囲内で加工デンプン生成物に関する他の適切な寸法を選択することができる。
【0024】
[0035]デンプンコアは、元のデンプンの粒子から形成することができる。元のデンプンの粒子は、加工デンプン生成物がゴム組成物に使用されることを可能にするように構成された粒径を有することができる。元のデンプンは、例えば約1ミクロン(1μm)から約20ミクロン(20μm)の粒径を有することができる。元のデンプンは、未加工デンプンとすることができる。元のデンプンは、非限定例として、コメデンプン、コーンデンプン、ジャガイモデンプンおよびコムギデンプンのうちの1種または複数種とすることができる。最も具体的な態様において、元のデンプンはコメデンプンである。当業者は、必要に応じ、加工デンプン生成物のデンプンコアの作製に他の適切な元のデンプンを採用することができる。
【0025】
[0036]認識すべきことであるが、デンプンコアは、その表面上に複数のヒドロキシル基を有することができる。元のデンプンが未加工である場合、第1のデンプンコアのヒドロキシル基は、デンプンコア間の水素結合の形成を介して第2のデンプンコアのヒドロキシル基と望ましくない相互作用を起こす可能性がある。水素結合は、元のデンプンによって画定されたデンプンコアの望ましくない凝集を引き起こす可能性がある。
【0026】
[0037]デンプンコア間の水素結合の形成を最小限に抑えるため、中間ポリマー被膜が採用される。特に、デンプンコアの中間ポリマー被膜は、デンプンコアのヒドロキシル基と相互作用するか、そうでなければヒドロキシル基を被覆するように構成することができる。換言すれば、中間ポリマー被膜は、デンプンコア間の水素結合の形成を阻止するように適合させることができる。
【0027】
[0038]中間ポリマー被膜は、外側被膜のナノシリカと相互作用するように十分に反応性となるように選択することもできる。中間ポリマー層は、加工デンプン粒子のエネルギー散逸を向上させることもできる。最も具体的な例において、中間ポリマー被膜は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDA)とすることができる。有利には、PDDAは、大きな電荷密度を有する。大きな電荷密度は、PDDAがデンプンコアのヒドロキシル基および外側被膜のナノシリカと同時に相互作用することを可能にできる。更に、中間ポリマー層は、PDDAの粘弾性特性のため、減衰層として機能することができる。PDDAは、とりわけ有利であることが見出されているが、当業者は、必要に応じ、中間ポリマー被膜のための十分に高電荷密度を持つ他の適切な材料を選択することもできる。
【0028】
[0039]ナノシリカの外側被膜は、加工デンプン生成物の中間ポリマー被膜上に配設され、デンプンコアと中間ポリマー被膜の両方を封入する。ナノシリカは、フィラーコンパウンドにおける使用に特に適した硬度を有することができ、それによりフィラーコンパウンドの補強効果を向上させることができる。ナノシリカの外側被膜は、加工デンプン生成物の外側被膜上にシラノール基を供給する。シラノール基は、ゴム組成物の加工デンプン生成物とゴムポリマーとの相互作用を増加させることができる。
【0029】
[0040]非限定例として、ナノシリカの外側被膜は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)から形成することができる。凝集したナノシリカは、例えば約500nmと約800nmの間の平均直径を有することができる。当業者は、本開示の範囲内でナノシリカに関する他の適切なタイプおよび寸法を選択することもできる。
【0030】
[0041]図3~4を参照すると、走査型電子顕微鏡を使用して、元のデンプンの粒子および加工デンプン生成物の粒子を画像化したものである。図3に示すように、元のデンプンおよび加工デンプン生成物の凝集が示されており、元のデンプンと比較して、加工デンプン生成物は、粒子凝集量の減少を呈していることがわかる。中間ポリマー被膜とナノシリカの外側被膜を追加すると、元のデンプン凝集体の構造の妨げとなる。図4に示すように、ナノシリカの外側被膜は、原料デンプンの表面積と比較して、表面積を増加させることができる。したがって、ナノシリカの外側被膜は、加工デンプン生成物の粒子がゴムポリマーと反応するための可触性の増加を実現する。
【0031】
[0042]本開示は、例えば、図2に示すような加工デンプン生成物を製造する方法を含む。方法の第1の工程は、ナノシリカの合成とすることができる。シリケートを溶液に投入してナノシリカを形成することができる。より具体的な態様において、シリケートは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)とすることができる。TEOSは、非限定例として、イソプロピルアルコール、脱イオン水、および水酸化アンモニウムと混和させてナノシリカの溶液を形成することができる。ナノシリカの溶液は、所定時間撹拌することができる。例えば、所定時間は、約8から約12時間とすることができる。当業者は、必要に応じ、他の適切なシリカ源および更なる材料を選択してナノシリカ溶液を形成することができる。
【0032】
[0043]方法の第2の工程は、元のデンプン上に中間ポリマー被膜を形成することとすることができる。元のデンプンは、高い電荷密度を有するポリマーと混和させることができる。非限定例として、ポリマーは、PDDAとすることができる。より詳細には、元のデンプンとPDDAは、NaClおよび脱イオン水と混和させて、中間ポリマー層を有するデンプンコアの粒子の懸濁液を形成することができる。表面加工デンプンの懸濁液は、所定時間、例えば、30分間撹拌することができる。次いで、表面加工デンプンの懸濁液を遠心分離し、中間ポリマー層を有するデンプンコアの粒子を収集することができる。
【0033】
[0044]方法の第3の工程は、中間ポリマー被膜上にナノシリカの外側被膜を形成することとすることができる。方法の第2の工程から、中間ポリマー層が上に形成されたデンプンコアを含む粒子を、第1の工程で形成されたナノシリカ溶液と混和させることができる。結果として得られる溶液は、加工デンプン生成物の粒子を含むことができる。加工デンプン生成物の粒子の溶液は、所定時間、例えば、約8時間から約12時間撹拌することができる。
【0034】
[0045]加工デンプン生成物の粒子の溶液は、ろ過することができる。加工デンプン生成物は、すすいで乾燥させることができる。すすぎのための溶液は、イソプロピルアルコールと脱イオン水の1:1溶液を含むことができる。例えば、加工デンプン生成物は、50℃のオーブンで所定時間乾燥させて、残存する水と溶媒を除去することができる。
【0035】
[0046]本開示は、加工デンプン生成物を含む、タイヤ構成要素用のゴム組成物を更に含む。より詳細には、加工デンプン生成物は、タイヤ構成要素用のゴム組成物にフィラーとして使用することができる。非限定例として、タイヤ構成要素は、タイヤサイドウォール、タイヤトレッドキャップ、またはタイヤベースとすることができる。当業者は、必要に応じ、タイヤ構成要素用のゴム組成物を更なるタイヤ構成要素に利用することができる。
【0036】
[0047]タイヤ構成要素用のゴム組成物は、一定量のエラストマーと、一定量の加工デンプンとを含むことができ、加工デンプンは、先に記載したように、中間ポリマー被膜とナノシリカの外側被膜とを持つデンプンコアを有する粒子を含む。粒子は、例えば、従来の混合操作によって、エラストマー全体に実質的に均一に分散させることができる。
【0037】
[0048]加工デンプン生成物は、0phrと20phrの間、より詳細には5phrと15phrの間、最も詳細には10phrの量でゴム組成物中に存在することができる。必要に応じ、ゴム組成物における加工デンプン生成物の他の適切な濃度も選択することができる。
【0038】
[0049]ゴム組成物は、シラン、より詳細には、ゴム用途用のポリスルフィド型シランカップリング剤を更に含むことができる。非限定的な一例として、シランは、ビス-3-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド(TESPT)とすることができる。シランは、ナノシリカの外側被膜のシラノール基と反応するように添加することができる。シランは、0.0phrと1.0phrの間、より詳細には0.5phrと0.9phrの間、最も詳細には0.7phrの量でゴム組成物中に存在することができる。必要に応じ、シランの他の適切な濃度も選択することができる。当業者は、本開示の範囲内で、他の適切なタイプのシランカップリング剤およびその濃度を選択することができる。
【0039】
[0050]本開示のゴム組成物は、ゴム配合技術分野において公知の様々な方法で、例えば、エラストマーと加工デンプン生成物を一般に使用される様々な添加剤材料と混合することにより配合することができる。例えば、添加剤材料としては、硬化助剤、例えば硫黄、活性化剤、遅延剤および促進剤、加工添加剤、例えば油、樹脂、例えば、粘着付与樹脂、可塑剤、非炭素フィラー、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤、素練り促進剤、ならびに補強材を挙げることができる。必要に応じ、ゴム組成物用の他の適切な添加剤も使用できる。ゴム組成物の意図された用途に応じ、一般的な添加剤が選択され、本発明のゴム組成物に従来の量で使用される。
【0040】
[0051]エラストマー、加工デンプン生成物、および添加剤材料は、押し出しまたは成型操作の前に、例えば、従来の混合操作によってゴム組成物全体に実質的に均一に分散させる。理解すべきことであるが、エラストマーと加工デンプン生成物の実質的に均一な分散は、徹底的な混合操作によって促進することができ、そうした混合操作を遂行する能力は、当業者が有するものである。
【0041】
[0052]本開示はまた、ゴム組成物を含む物品を含む。認識すべきことであるが、ゴム組成物は、押し出し、成型、または他の方法で所望の形状に形成し、熱と圧力の少なくとも一方を加えることにより硬化させることができる。最も具体的な例では、先にも記載されているように、ゴム組成物は、タイヤのトレッドに使用できる。
【0042】
[0053]下記の実施例は、本発明を限定する目的ではなく、例示を目的として提示される。
【実施例
【0043】
[0054]本技術の例示的態様が、本明細書に添付された幾つかの図を参照して提供される。
[0055]本開示のゴム組成物を、実験室サイズのゴムミキサーにおいて、従来の2パスゴム混合技法に従い、試験のために調製した。ゴム組成物は、ゴム組成物の物理化学的特性に対する加工デンプン生成物の一般的影響を評価するために選択した。加工デンプンを含む実験用ゴム組成物の処方を、元のデンプンを含む比較対象と共に、以下の表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
[0056]表1に示すゴム組成物を、標準的な加硫技法を使用して硬化させ、様々な加工特性および物理化学的特性に関して試験を行った。
[0057]図5~6を参照すると、表1の元のデンプンのゴム配合物および表1の加工デンプンのゴム配合物の引張特性の試験を行い、比較したものである。加工デンプンのゴム配合物は、元のデンプンのゴム配合物と比較して、引張特性の向上を示す。したがって、加工デンプンのゴム配合物は、コンパウンドにおける補強フィラーとして機能すると結論付けられる。
【0046】
[0058]引き続き図6を参照すると、100%、200%および300%の歪みで元のデンプンのゴム配合物および加工デンプンのゴム配合物について、弾性率を計算したものである。歪みが大きくなるにつれて2種の配合物の弾性率の差が大きくなることが見出された。例えば、100%の歪みでは2種のコンパウンドは同様の弾性率を呈したが、300%の歪みでは、加工デンプンコンパウンドは原料元のデンプンコンパウンドよりも15%高い弾性率を呈した。このように、加工デンプンのゴム配合物は、元のデンプンのゴム配合物よりも高い弾性率を呈し、それは、フィラーとして使用した場合の加工デンプン生成物の補強効果を更に示唆するものである。
【0047】
[0059]図7に示すように、元のデンプンのゴム配合物と加工デンプンのゴム配合物のそれぞれに関する硬化曲線を計算し、比較した。元のデンプンのゴム配合物および加工デンプンのゴム配合物は、同様の硬化曲線を呈した。
【0048】
[0060]図8を参照すると、元のデンプンのゴム配合物と加工デンプンの配合物のそれぞれについて、疲労特性を調べたものである。より詳細には、元のデンプンのゴム配合物と加工デンプンの配合物のそれぞれについて、オゾン条件下で保存した後に試験を行ったが、オゾンはゴム疲労の重要な因子として公知であるため、これは、コンパウンドの疲労特性を間接的に反映することができる。したがって、オゾン動的荷重が高い配合物ほど高い抗疲労特性を有することになる。
【0049】
[0061]配合物をオゾンに0、24、48、72および96時間曝露した後、元のデンプンのゴム配合物と加工デンプンの配合物のそれぞれについて、最大荷重を計算した。加工デンプンの配合物は、元のデンプンの配合物よりも高い荷重を有することが見出された。この結果は、加工デンプンの配合物中の表面シラノール基とポリマーとのカップリングが起こり、それがゴムに誘発される潜在的な破損箇所を減少させることができるためであると考えられる。このように、ゴムの抗疲労特性の効果的な向上がみられる。
【0050】
[0062]図9に示すように、元のデンプンのゴム配合物と加工デンプンの配合物のそれぞれと、ゴム配合物のそれぞれのポリマーとの相互作用を調べた。ペイン効果が、フィラーとポリマーとの相互作用を調べるための一般的なツールである。等式ΔG’=ΔG’(0.1%)-ΔG’(20%)を使用して、同一ゴム系におけるペイン効果を半定量的に計算することができる。加工デンプンの配合物は、元のデンプンの配合物よりも低いΔG’を呈することが示され、したがって、加工デンプンの配合物の方がフィラー/エラストマー相互作用が強いことが示された。
【0051】
[0063]図10を参照すると、元のデンプンのゴム配合物と加工デンプンの配合物のそれぞれについて、割裂接着力試験を遂行したものである。加工デンプンの配合物は、元のデンプンの配合物よりも高い割裂接着力を呈した。割裂接着力の向上は、中間ポリマー被膜におけるエネルギー散逸と関連する可能性があると考えられる。中間ポリマーの粘弾性により、中間ポリマーは、ゴム組成物の加工デンプン生成物とエラストマーとの間の減衰層として機能することができる。
【0052】
[0064]有利なことに、加工デンプン生成物は、シランカップリング剤の存在下では疎水性であり、したがって、ゴム組成物中の補強フィラーとして利用することができる。更に、加工デンプン生成物は、特に未加工デンプンと比較した場合に、ゴム組成物の性能の向上を実現することができる。
【0053】
[0065]本開示が完全となり、その範囲が当業者に十分に伝わるように、例示的態様が記載されている。本開示の態様の完全な理解を実現するため、多数の具体的詳細、例えば特定の構成要素、デバイス、および方法の例が記載されている。具体的な詳細を採用する必要がないこと、例示的態様は多くの異なる形態で具現化できること、およびどちらも本開示の範囲を限定するように解釈すべきではないことは、当業者には明らかとなる。いくつかの例示的態様においては、周知のプロセス、周知のデバイス構造、および周知の技術が詳細に記載されていない。いくつかの態様、材料、組成物、および方法の同等の変更、修正および変形は本技術の範囲内で行うことができ、実質的に同様の結果を得ることができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】