(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】排泄物を覆い隠し、飛沫や落下音を防止するための発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/22 20060101AFI20230405BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230405BHJP
C11D 3/10 20060101ALI20230405BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230405BHJP
C11D 3/34 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C11D1/22
C09K3/00 111B
C11D3/10
C11D3/20
C11D3/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538180
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 FR2019053167
(87)【国際公開番号】W WO2021123511
(87)【国際公開日】2021-06-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243602
【氏名又は名称】クレアネオル
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ダノス,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003BA09
4H003BA18
4H003DA06
4H003EA16
4H003EA25
4H003EB08
4H003EB22
4H003EB41
4H003FA20
4H003FA26
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の酸及び少なくとも1種の塩基から成る発泡剤を含有する発泡性組成物に関する。前記塩基及び酸は水の存在下で反応して二酸化炭素を生成することが可能であり、前記組成物はアニオン性界面活性剤も含有する。前記組成物はルースパウダーの形態であることを特徴とし、前記界面活性剤の質量パーセントが3%以上4%以下、特に3.5%未満であることを特徴とし、かつ/又は、前記酸(単数又は複数)+塩基(単数又は複数)の混合物の質量パーセントが90%以上であることを特徴とする。この組成物により、排泄物を覆い隠し、飛沫、臭気の増強、及び落下音を防止する泡沫が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物の落下音をマスキングし、少なくとも1種の酸及び少なくとも1種の塩基から成る発泡剤を含有する発泡性組成物であって、前記塩基及び前記酸は二酸化炭素を生成しながら水の存在下で反応可能であり、前記組成物はアニオン性界面活性剤も含有し、前記組成物はルースパウダー状であり、前記界面活性剤の質量パーセントは3%以上4%以下、特に3.5%未満であり、かつ/又は酸(単数又は複数)+塩基(単数又は複数)の混合物の質量パーセントは90%以上であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記発泡剤は、クエン酸、スルファミン酸、及び重炭酸ナトリウムから成り、クエン酸の質量パーセントはスルファミン酸の質量パーセントより大きいことが好ましい、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重炭酸ナトリウムの平均径は130μm以下である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、特にアルキル鎖が直鎖状であるアルキルベンゼンスルホン酸塩から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤の質量パーセントは1.5%以下、特に1.2%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
ガム、特にグアーガム、デンプン、ペクチン、寒天、ゼラチン、カラギーナン、及びアルギン酸塩、特にアルギン酸ナトリウムから選択される増粘剤を更に含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記増粘剤の質量パーセントはおよそ2.00%未満、特に1.60%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は粉体状のシリカを更に含有し、前記シリカの比表面積は特に、Brunauer‐Emmett‐Teller(BET)法に従って測定すると420m
2/g以上、特に420m
2/gである、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記シリカの質量パーセントは0.08~0.3%、特に0.26%、又は0.51%である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
精油ではない合成香料を更に含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
防水性及び気密性の可撓性小袋であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を収容することを特徴とする小袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器内の水に溶解可能な発泡性組成物に関する。
【0002】
排泄物が便器に落下すると、多少は大きな音が発生し、便器から飛沫が発生することもある。これらの問題は排尿及び排便中に起こる。
【0003】
多くの国で、特に日本では、便器内の水に排泄物(尿及び便)が落下すると周囲に聞こえる音が発生するということは、そのトイレを使用する人と周囲にいる人の双方の利用者を不快にさせると少なからず考えられている。
【0004】
使用前に水洗することも頻繁に行われている;水の排出又は補充の音は、排尿又は排便により発生する音を隠すために利用されている。この方法は水道料が掛かり、トイレ用の水は一般的に飲用水でもあるため、環境の観点からも避けるべきである。
【0005】
排泄物(尿や便)が水中に落下する音を発生させないために、また飛沫を防止するために、トイレットペーパーを便器の底に置くことも頻繁に行われてる。この方法は紙の費用が掛かり、環境の観点からも避けるべきである。
【0006】
従って、前述の問題に対処する他の解決策が求められている。
【背景技術】
【0007】
特許文献1には、固形錠剤の形態の圧縮粉体が記載されており、この粉体はトイレの水中に投入すると、飛沫を防止するためのかなり密度の高い泡沫を形成する。この泡沫は脱臭及び汚れ防止を行う。この組成物は粉体状であり、21質量%以上のアニオン性界面活性剤を含有する。界面活性剤の他に、発泡剤、錯化剤、泡沫安定剤、結合剤及び潤滑剤を含有する。発泡剤は以下から選択される:炭酸ナトリウム;炭酸カルシウム;炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム又は重炭酸ソーダ);炭酸カリウム;炭酸水素カリウム;並びに酒石酸、フマル酸、アジピン酸、クエン酸、及びリンゴ酸から選択される少なくとも1種の酸。アニオン性界面活性剤は、特に、αオレフィンのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ポリオキシエチレンエーテル硫酸塩(AES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)のナトリウム塩であってもよい。なお、前記文献には、具体的な組成は記載されていない。錯化剤は以下から選択される:エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA二ナトリウム、EDTA四ナトリウム、エチレングリコールビス2アミノエチルエーテル四酢酸(EGTA)、フェナントロリン、トリエタノールアミン、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、又はグルコン酸ナトリウム。これらのキレート剤の中には殺菌剤を兼ねているものもある。安定剤は、アルカノールアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、セチルアルコール、セルロース、ポリペプチド、デンプン、アルキルグリコシド(APG)及びアミンオキシドから選択される。結合剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC‐Na)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(L‐HPC)、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)、デキストリン、無水エタノール、及びポリエチレングリコールから選択される。潤滑剤は、塩、ラウリル硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、L‐ロイシン、酢酸ナトリウム、タルク、脂肪酸エステル及び糖、ステアリルフマル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム及びケイ酸アルミニウム、並びにシリカゲルから選択される。粉体を圧縮して固形錠剤を形成するために潤滑剤及び結合剤を用いるが、得られる泡沫が重くなり安定性が損なう傾向がある。原料は確実に化学反応を阻止するために適切に乾燥させる必要がある。本製品は界面活性剤の含有量が高いため、環境への影響も少なくない。更に、形成した泡沫は、特に便器内の尿の音を消すことに有用である。この泡沫は、便の落下を緩衝するためにあまり硬くはない。
【0008】
特許文献2には、1~30質量部の泡沫安定剤を含有する粉体状の組成物が記載されている。この文献には、増粘剤としてグアーガム、3gの重炭酸ナトリウム、3gのクエン酸、安定剤として卵白を含有する組成物が開示されている。
【0009】
特許文献3には、水溶性ポリマーを含有する尿飛沫を防止し、数平均分子量が1,000,000~8,000,000の液剤が記載されている。このポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウムであってもよい。便器内の水の粘度が高くなり、ポリマーが水の表面又は磁器の表面に膜を形成することで、音が緩衝される。
【0010】
特許文献4には、クエン酸、アルカリ性重炭酸塩、カチオン性又は両性界面活性剤、増粘剤、及び任意に香料を含む粉体状の組成物が記載されている。界面活性剤は親油性であるため、トイレを洗浄する。
【0011】
特許文献5には、クエン酸、炭酸ナトリウム、及び水溶性繊維のフロックを含む組成物が記載されている。この組成物は水溶性紙に積層する。全体が便器の水に溶解すると、酸と炭酸ナトリウムとが反応し、二酸化炭素を生成する。繊維が水の粘度を高めるので、安定した泡沫が形成される。
【0012】
特許文献6には、炭酸ナトリウム、フマル酸又はコハク酸、香料、並びにラウリルエーテル硫酸ナトリウムの混合物を含有する組成物が記載されている。この粉体状の混合物を2回凝縮し、そうすることで、このように形成した固形物の外層に界面活性剤が多量に存在するようになる。この方法の実施は煩雑である。
【0013】
特許文献7には、便器を洗浄するための脱臭及び洗浄粉体が記載されている。この粉体は錠剤形態で凝縮できる。粉体は発泡剤(1~80質量部)、界面活性剤(1~80質量部)、泡沫安定化剤(1~80質量部)、及び香料又は芳香剤(1~80質量部)を含有する。発泡剤は、重炭酸塩又は炭酸塩、及びフマル酸又はコハク酸などの酸を含有する。界面活性剤は硫酸塩から選択される。安定剤はセルロース、ビニルポリマー、又は脂肪酸アミドである。形成した泡沫はトイレを洗浄するように機能するが、尿又は便の落下を緩衝するほど厚みも量も十分ではない。
【0014】
特許文献8には、発泡性消臭固形物が記載されている。重炭酸ナトリウム、クエン酸、及び香料を含む粉体を凝縮して固形物を形成する。この固形物がトイレの水に溶解すると、二酸化炭素を生成し、香気を放出する。その文献でも、生成した泡沫は排泄物の落下を緩衝できず;気泡が形成されたときに機械的作用により便器を洗浄するだけである。
【0015】
特許文献9には、直径2mm~10mmの粒状物の形態で、重炭酸塩;クエン酸であってもよい酸;ステアリン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、塩化セタルコニウム、レシチン、ヒドロキシポリエトキシドデカンから選択される界面活性剤;グリセリン、大豆酸メチル及びセルロースから選択される界面活性剤改質剤を含む組成物が記載されている。香料は、精油であるリモネン及びピネンから選択される。
【0016】
特許文献10には、30質量%の重炭酸ナトリウム、30~35質量%のクエン酸、25~30質量%のドデシル硫酸ナトリウム、5%のコカミドプロピルベタイン、2%未満の香料、及び抗菌剤を含有する固形錠剤が記載されている。界面活性剤が多量であるため、この製品は環境に配慮していない。
【0017】
特許文献11には、具体例は示されていないが、重炭酸ナトリウム、クエン酸及び界面活性剤を混合することが提案されている。この界面活性剤は以下から選択できる:脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルが直鎖状であるアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウレス‐4、及び自体公知の多くの他の界面活性剤。いずれにせよ、界面活性剤の割合は、酸‐塩基‐界面活性剤混合物に対して20質量%であり、よって製品は環境に配慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】中国特許出願公開第102703230号明細書
【特許文献2】特開2010‐063503号公報
【特許文献3】特開2011‐012410号公報
【特許文献4】特開2015‐052257号公報
【特許文献5】特開平03‐72124号公報
【特許文献6】特開平06‐105893A号公報
【特許文献7】特開平07‐278598号公報
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/049154号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/039089A1号明細書
【特許文献10】国際公開2008/020246号
【特許文献11】国際公開2016/017829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の1つの目的は、便器の水に溶解させると、泡沫の層を速やかに生成し、泡沫の厚さや密度により尿や便の移動を緩衝できる発泡性組成物を提案することである。
【0020】
本発明の別の目的は、排泄物が便器の水中に落下すると、泡沫が素早く再形成されて排泄物をマスキングする前述のような組成物を提案することである。
【0021】
本発明の別の目的は、周囲温度及び周囲湿度で少なくとも2か月間保存できる前述のような組成物を提案することである。
【0022】
本発明の別の目的は、ルースパウダーの形態であり、周囲温度及び周囲湿度で2か月間保存された場合でさえ塊を形成しない前述のような組成物を提案することである。
【0023】
本発明の別の目的は、環境への影響が低い前述のような組成物を提案することである。
【0024】
本発明の別の目的は、泡沫の層により悪臭の増強が制限される前述のような組成物を提案することである。
【0025】
本発明の別の目的は、泡沫の層により排泄物が水に落下するときの音が制限される前述のような組成物を提案することである。
【0026】
本発明の別の目的は、泡沫の層により排泄物が水に落下するときの飛沫が制限される前述のような組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
先行技術の前述した欠点のいずれか1つを解決するために、本発明は、少なくとも1種の酸及び少なくとも1種の塩基から成る発泡剤を含む発泡性組成物を提案する。前記塩基及び前記酸は水の存在下で二酸化炭素を生成することにより反応可能であり、前記組成物はアニオン性界面活性剤も含む。
【0028】
特徴的には、本発明によれば、前記組成物はルースパウダーの形態であり、3重量%以上4重量%以下、特に3.5重量%未満の界面活性剤、及び/又は90質量%以上の酸/塩基混合物を含む。
【0029】
界面活性剤の量が制限されると、環境への影響も限定的になる。本出願人は驚くべきことに、そのような量の界面活性剤は5分間安定した泡沫を得るのに十分であり、排泄物の落下を緩衝し、排泄物をマスキングするようにその落下後に再び密集することも示している。また、非常に迅速に形成され、トイレの水の表面に厚い層を形成する泡沫が得られる。更に、界面活性剤の存在は、このように低い割合であっても、本発明の組成物に洗浄効果を提供する。
【0030】
本発明によれば、発泡剤は何ら限定されるものではない。発泡剤は、例えば酒石酸、フマル酸、アジピン酸、クエン酸及びリンゴ酸、スルファミン酸、並びにこれらの酸の2種以上の混合物から選択される酸を含んでもよい。発泡剤はまた、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム又は重炭酸ソーダ)、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、及びこれらの塩基の2種以上の混合物から選択される少なくとも1種の塩基を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
特に有利な実施形態によれば、前記発泡剤は、クエン酸、スルファミン酸、及び重炭酸ナトリウムから成る。有利には、環境への影響を低減するために、クエン酸の質量パーセントは、水生環境に対して有害であるスルファミン酸の質量パーセントより高い。クエン酸及びスルファミン酸の溶解速度が異なると、これら2種の酸の存在により、単一の酸を用いた場合よりも長い期間にわたって発生する泡沫を得ることが可能になる。重炭酸塩は、まず一方の酸が放出するH+イオンと反応し、次いで他方の酸が放出するH+イオンと反応するため、同じ量の泡沫を発生させる泡沫発生時間が長くなる。
【0032】
本出願人は、特に以下に定義するような界面活性剤の場合、この発泡剤により界面活性剤の量を低減できることを示している。
【0033】
有利には、重炭酸ナトリウムは130μm以下の平均径を有する(篩法に従って測定)。このような粒度により、泡沫が迅速に得られ、本発明の組成物が全体的に迅速に溶解可能となる。
【0034】
有利には、クエン酸は149μm以上595μm以下の平均径を有する粒子の形態である。スルファミン酸は2mm未満の平均径を有する粒子の形態である。このような粒度により、粉体状の化合物の混合が良好になり、均質な泡沫が迅速に得られる。
【0035】
有利には、界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、特にアルキル鎖が直鎖状であるアルキルベンゼンスルホン酸塩のナトリウム塩から選択される。本出願人は、このような界面活性剤と前述のような発泡剤との組み合わせが、少量の界面活性剤でも泡沫(安定性、緩衝性、得られる速度)の点で効果的であることが明らかであり、本発明の組成物の環境への影響が低減されることを示した。アルキルが直鎖状である前述の界面活性剤は酸素存在下の環境により、より迅速に分解される。
【0036】
従って、有利には、特に界面活性剤が前述の通りである場合、前記界面活性剤の質量パーセントは1.5%以下、特に1.2%である。
【0037】
有利には、本発明の組成物は、ガム、特にグアーガム、デンプン、ペクチン、寒天、ゼラチン、カラギーナン、及びアルギン酸塩、特にアルギン酸ナトリウムから選択される増粘剤を更に含有する。
【0038】
アルギン酸ナトリウムはアニオン性界面活性剤に可溶であるため好ましいとされている。このように、発泡剤からのCO2の放出により大量の泡沫を形成する界面活性剤と、この泡沫を長時間保存してその密度を高めることを可能にする増粘剤との間に良好な相乗作用が得られる。このように、対象物の緩衝性が良好になり、水中に落下する音がなくなり、排泄物が通過した後に泡沫層が再度形成される。
【0039】
更に、アルギン酸塩は、泡沫が形成されると、トイレの表面に保護膜を形成する。この膜は便器表面における垢の形成を後退させる。
【0040】
前述の全ての実施形態と組み合わせることが可能な特定の実施形態によれば、前記増粘剤の質量パーセントはおよそ2.00%未満であり、特に1.60%である。この割合は、環境への影響を低減するようにかなり低いが、それにもかかわらず、先に開示したように効果的である。アニオン性界面活性剤との前述の相乗効果を得ることが可能になる。
【0041】
有利には、本発明の組成物は粉体状のシリカを更に含む。前記シリカは水を吸収することが可能であり、従って、本発明の組成物をルースパウダーの形態でより長い時間保存することが可能である。
【0042】
有利には、前記シリカの比表面積は、Brunauer‐Emmett‐Teller(BET)法に従って測定すると420m2/g以上、特に420m2/gである。このようなシリカは少量であっても有効であることは明らかである。その比表面積は本発明の粉体が凝集することを防止する。少量であると、シリカは泡沫の形成もその安定性も妨げない。シリカの粒度は、有利には35.0μm以上65μm以下である。そのような粒子は、粉体中の水を良好に吸収することを可能にする。シリカ粒子は、他の成分の粒子と良好に混ざり、他の成分の粒子が形成した間隙に入り、水を効果的に吸収するように、他の成分の粒子より細かい。
【0043】
有利には、前記シリカの質量パーセントは0.08~0.3%、特に0.26%、又は0.51%である。この割合は、泡沫の形成及び安定性を妨げることはない。また、トイレで満足のいく効果を得るために使用する組成物の重量を増加させることはない。
【0044】
本発明の組成物は香料/芳香剤を含んでいてもよい。この香料/芳香剤は合成香料から選択され、精油ではない。香料/芳香剤は以下の化合物の少なくとも1種を含む香料から選択してもよい:α‐セドレンエポキシド、酢酸ボルニル、8‐sec‐ブチルキノリン、2,4,6‐トリエチルシクロヘックスtriethylcyclohexa‐3‐エン‐1‐カルバルデヒド、デカリン、ジブチルアミン、合成琥珀、1,1‐ジメトキシ‐2‐フェニルプロパン、イソニコチン酸メチル、ヌートカトン、1‐オクテン‐3‐オール、イソホロン(低濃度及び高濃度)、イソプロピルキノロン、アルジオールargeol、及びγ‐ウンデカラクトン。
【0045】
本発明はまた、本発明に従った組成物を収容する防水性及び気密性の可撓性小袋に関する。この小袋では、粉体状の組成物は、それ自体の重量で凝集しないように、2cm未満の厚さの層を形成する。
【0046】
この小袋は有利には、本発明の組成物を20g~45g、特に38.90g、39.00g、又は39.20g含有することが可能である。
【0047】
実験結果
本発明に従った組成物の例
本発明に従った組成物の7例を、以下の表1~4に示す。これらの組成物は全てルースパウダーの形態である。
【0048】
【0049】
クエン酸は、citric acid ANH FIN GR E330の商品名でQuaron社から販売されている製品である。クエン酸の平均粒度(篩法)は149μm(以上)~595μm(以下)である。
【0050】
スルファミン酸は、Sulfamic acid TSグレードの商品名でBrenntag社から販売されている製品である。スルファミン酸の平均粒度(篩法)は2mm未満である。
【0051】
重炭酸ソーダは、sodium bicarbonateグレード1の商品名でLa Compagnie du Bicarbonate社から販売されている製品である。重炭酸ソーダの平均粒度(篩法)は130μm以下である。
【0052】
アルギン酸塩は、Algogel3541の商品名でUnipex社から販売されている製品である。アルギン酸塩の平均粒度(篩法)は125μm未満である。
【0053】
シリカは、Sipernat50の商品名でAzelis社から販売されている製品である。シリカの平均粒度(篩法)は35.0μm以上65.0μm以下である。
【0054】
シリカの比表面積は窒素を用いた従来のBET法で測定した。
【0055】
芳香剤はUngerer社から販売されている。芳香剤は無色又は淡黄色の液体の形態である。これらの芳香剤は合成物であり、従って、精油の例ではない。
【0056】
MarlonはBrenntag社から販売されている。Marlonは白色粉体の形態である。
【0057】
これらの組成物は、事前に乾燥せずに成分を簡単に混合することにより形成する。
【0058】
界面活性剤の選択
アルキル安息香酸ナトリウム塩の代わりにラウリルサルコシン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、及びラウリル硫酸ナトリウムの混合物を用い、表1~4に示した組成物と同じ組成物を試験した。粉体を周囲温度で15日間保存した後、組成物を水に溶解しても、組成物は泡沫を形成しなくなった。
【0059】
実験プロトコル
Mr.Bricolage社から販売されている、水平排水口を有する白色セラミック製の簡易設置型トイレCLEO WC 商品番号647982を試験に使用した。これらのトイレは固定しておらず、簡単に操作できる。
【0060】
事前に洗浄したトイレに最大限の水を満たす(水が安定するまで)。初期の水位に印をつけた後、この初期水位から15cm上までセンチメートルスケールを貼る。その後、トイレに水(硬度0.35kg/m3(35°HF)、温度20℃の水道水)を基準マークまで満たす。
【0061】
試験する組成物の1回量を添加し、泡沫のレベルを30秒後、1分後、1分30秒後、2分後、3分後、及び4分後に評価した。
【0062】
5分経過時点で、5個の塊状物(3×3cm、18.8g)を便座の高さから、中央、上、下、右、及び左を狙い落下させる。そして、以下の点:「液体の飛沫があるか?」、「飛沫の音があるか?」、「塊状物が見えるか?」、「泡沫は塊状物の上で密集しているか?」を記録する。試験中、関連する所見も全て記録する。
【0063】
カップ、又は防水性及び気密性の溶接アルミニウム小袋のいずれかにおいて40℃で15日間保存した上記表の各組成物について、結果を下記に示す。
【0064】
カップに保存した組成物184‐05(基準組成物)
泡沫の高さは、30秒後:9.5cm;1分30秒後:9.5cm;2分00秒後:9.5cm;2分30秒後:9cm;3分後:9cm;4分後:9cmである。泡沫は空気を含み、音は弱まり、穴は閉じ、粉体は完全には溶解せず、飛沫はなく、塊状物は見えない。
【0065】
アルミニウム小袋に保存した組成物184‐05(基準組成物)
泡沫の高さは、30秒後:9cm;1分30秒後:8.5cm;2分00秒後:8.5cm;2分30秒後:8.5cm;3分後:8cm;4分後:7cmである。泡沫は空気を含み、音は弱まり、穴は閉じ、飛沫はなく、塊状物は見えず、対象物は緩衝されている。
【0066】
小袋に保存した組成物184‐48
泡沫の高さは、30秒後:9cm;1分30秒後:8.5cm;2分00秒後:8.5cm;2分30秒後:8.5cm;3分後:8cm;4分後:7cmである。泡沫は空気を含み、音は弱まり、穴は閉じ、飛沫はなく、塊状物は見えず、対象物は緩衝されている。
【0067】
小袋に保存した組成物184‐50
泡沫の高さは、30秒後:9cm;1分30秒後:8.5cm;2分00秒後:8.5cm;2分30秒後:8.5cm;3分後:8cm;4分後:7cmである。泡沫は空気を含み、音は弱まり、穴は閉じ、飛沫はなく、塊状物は見えず、対象物は緩衝されている。
【0068】
小袋に保存した組成物184‐51
泡沫の高さは、30秒後:8cm;1分30秒後:7.5cm;2分00秒後:7cm;2分30秒後:6.5cm;3分後:6cm;4分後:5cmである。泡沫は空気を含み、音は弱まり、穴は閉じ、飛沫はなく、塊状物は見えず、対象物は緩衝されている。
【0069】
小袋に保存した組成物184‐52
泡沫の高さは、30秒後:9.5cm;1分30秒後:8.5cm;2分00秒後:8cm;2分30秒後:7cm;3分後:6.5cm;4分後:5cmである。泡沫は空気を含み、音は弱まり、穴は閉じ、飛沫はなく、塊状物は見えず、対象物は緩衝されている。
【0070】
小袋に保存した組成物184‐53
泡沫の高さは、30秒後:7cm;1分30秒後:5.5cm;2分00秒後:5cm;2分30秒後:5cm;3分後:4cm;4分後:3.5cmである。泡沫は崩壊しやすく、泡沫は落下後に密集せず、緩衝はごくわずかで、音がある。
【0071】
小袋に保存した組成物184‐54
泡沫の高さは、30秒後:9cm;1分30秒後:8.5cm;2分00秒後:8cm;2分30秒後:7.5cm;3分後:7cm;4分後:5.5cmである。泡沫は空気を含み、音は弱まり、穴は閉じ、飛沫はなく、塊状物は見えず、対象物は緩衝されている。
【0072】
シリカの選定
BETが120m2/gであるシリカを試験した。2か月後の粉体の凝集の結果は、BET法に従って測定した比表面積が450m2/gのシリカより劣る。シリカは泡沫中に固形で存在することから、泡沫を重くして気泡を壊す傾向がある。シリカが細かいほど(数値で示す)、泡沫は形成されたまま安定して残る。
【0073】
シリカの割合の影響
シリカを2種の割合、つまり0.26%、即ち0.10g、及び0.51%、即ち0.20gで検討した。泡沫の高さ、緩衝性、対象物の落下時や落下後の泡沫の挙動の点でトイレの性能に影響はなかった。一方、シリカは保存後の性能、及び粉体の凝集に影響を与える。
【0074】
トイレでの性能に及ぼす保存時間の影響
40℃で15日間(閉鎖したオーブン内で保存)、周囲温度(平均湿度)で1か月間保存した後の、及び40℃で15日間、周囲温度(1か月間と同様)で2か月間保存した後の各組成物について、上記と同様の実験を実施した。符号Cは、組成物をカップ中で保存したことを示し、符号Sは、組成物を小袋中で保存したことを示す。
【0075】
表5には、前述の湿度条件下、40℃で15日間保存し、その後周囲温度で1か月間保存した場合の結果が記載されている。
【0076】
表6には、前述の湿度条件下、40℃で15日間保存し(閉鎖したオーブン内で保存)、その後周囲温度で2か月間保存した場合の結果が記載されている。泡沫の高さはcmで測定する。
【0077】
図面がない本出願の結果全てにおいて、製品の使用又は保存を損なう変質のみを記録している。組成物に関して変質が記録されていなければ、結果に変質はないということである。
【0078】
【0079】
40℃で15日間保存した結果
組成物184‐51は泡沫を形成するが、緩衝性は劣り、若干の飛沫が認められる(カップに保存した粉体)。カップに保存した組成物184‐52も同様である。カップに保存した組成物184‐53については、性能に変化はない。アルミニウム小袋に保存した場合、緩衝性は弱く、得られた泡沫は崩壊しやすく、塊状物の落下後に密集しない。小袋に保存した組成物184‐54については、変質は認められない。一方、カップに保存した場合は、泡沫が少なく、緩衝性もほとんど得られない。
【0080】
1か月間保存した結果
カップに保存した組成物184‐51は、15日間保存した場合より緩衝性が低い。組成物184‐52についても同様であり、更に若干の飛沫が発生している。他の組成物については、性能は安定しており、40℃で15日後に得られた場合と同一である。
【0081】
2か月間保存した結果
カップに保存した組成物184‐51はあまり緩衝しない。組成物184‐52も同様であり、更に飛沫は多く、音を減衰することはない。他の組成物については、性能は安定しており、40℃で15日後に得られた場合と同一である。組成物184‐48、184‐50、及び184‐54については、驚くべきことに、得られた泡沫の高さが40℃で15日後に得られた泡沫よりも高いことが見出されている。
【0082】
粉体の凝集に及ぼす容器の影響
40℃で15日間保存した後、組成物184‐48を収容した小袋は膨張しており、これは、小袋内で化学反応が起こり、それによりCO2が放出されたことを示している。組成物184‐51及び184‐52についても同様であり、それらの粉体は小袋内で大幅に凝集し、膨張もしている。組成物184‐53を含む小袋は少し膨張しているが、組成物はルースパウダーの形態を保っている(塊が形成されてない)。
【0083】
1か月後、組成物184‐48はブロックを形成しているが、小袋はほとんど膨張していない。カップでは変化はない。組成物184‐51を含む小袋は少し膨張しているが、組成物は粉体状のままである。カップでは、粉体は粒状になる。組成物184‐52は、カップに保存しても小袋に保存してもブロックを形成する。184‐53についても同様である。最後に、小袋に保存した組成物184‐54はルースパウダーの形態のままであり;小袋は膨張せず、香料は使用後も依然として粉体中でもボウル中でも匂いが感知できる。一方、カップに保存すると、粉体は粒状となり、無臭となる。
【0084】
2か月後、組成物184‐51、184‐52、及び184‐53のみが、小袋で保存してもカップで保存しても、圧縮されてブロックを形成するか、又は粒状になる。
【0085】
特に、組成物184‐48、184‐50、及び184‐54では、小袋で保存することが好ましいことが分かる。おそらく粉体が小袋の中で広がり、それ自身の重量により凝縮/圧縮していない薄層を形成することから、小袋はルースパウダーを保存することを可能にしている。一方、カップでは、外部環境と接触する表面は制限されているが(カップは閉じられていない)、シリカの存在にもかかわらず、組成物の重量が凝集する傾向がある。
【0086】
香料の影響
組成が不明なマリン香料は、2か月間の保存後、組成物を全体に渡って不安定にし、かつ/又は、もはや匂いを感知できない。
【0087】
一方、α‐セドレンエポキシド、酢酸ボルニル、8‐sec‐ブチルキノリン、2,4,6‐トリエチルシクロヘックス‐3‐エン‐1‐カルバルデヒド、デカリン、ジブチルアミン、合成琥珀、1,1‐ジメトキシ‐2‐フェニルプロパン、イソニコチン酸メチル、ヌートカトン、1‐オクテン‐3‐オール、イソホロン(低濃度及び高濃度)、イソプロピルキノロン、アルジオール、及びγ‐ウンデカラクトンから選択される少なくとも1種の化合物を含むパイン芳香剤により、排便時及び排便後に生じやすい悪臭をマスキングする芳香を得ることが可能となる。これらの化合物のうち少なくとも2種の混合物を芳香剤としても使用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸ナトリウムと、少なくとも1種の酸及び少なくとも1種の塩基の混合物から成る発泡剤とを含み、前記混合物の質量パーセントは90%以上であり、前記混合物は二酸化炭素を生成することにより水の存在下で反応性である、ルースパウダー状の発泡性組成物であって、
前記発泡性組成物は、さらに、アルキル鎖が直鎖状であるアルキルベンゼンスルホン酸塩から選択されるアニオン性界面活性剤を含み、前記界面活性剤の質量パーセントは1.2%、又は3%以上4%以下であり、前記発泡性組成物は、便器中の水に溶解すると泡沫の層を生成し、前記泡沫は排泄物の落下音をマスキングするように構成していることを特徴とする発泡性組成物。
【請求項2】
前記発泡性組成物は、質量パーセントが3%以上3.5%未満のアニオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項3】
前記発泡剤は、クエン酸、スルファミン酸、及び重炭酸ナトリウムから成り、クエン酸の質量パーセントはスルファミン酸の質量パーセントより大きいことが好ましい、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項4】
前記重炭酸ナトリウムの平均径は130μm以下である、請求項3に記載の発泡性組成物。
【請求項5】
ガム、特にグアーガム、デンプン、ペクチン、寒天、ゼラチン、カラギーナン、及びアルギン酸塩、特にアルギン酸ナトリウムから選択される増粘剤を更に含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡性組成物。
【請求項6】
前記増粘剤の質量パーセントはおよそ2.00%未満である、請求項5に記載の発泡性組成物。
【請求項7】
前記増粘剤の質量パーセントは1.60%である、請求項6に記載の発泡性組成物。
【請求項8】
前記組成物は粉体状のシリカを更に含有し、前記シリカの比表面積は特に、Brunauer‐Emmett‐Teller(BET)法に従って測定すると420m
2/g以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の発泡性組成物。
【請求項9】
前記シリカの質量パーセントは0.08~0.3%である、請求項8に記載の発泡性組成物。
【請求項10】
前記シリカの質量パーセントは0.26~0.51%である、請求項8に記載の発泡性組成物。
【請求項11】
精油ではない合成香料を更に含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の発泡性組成物。
【請求項12】
防水性及び気密性の可撓性小袋であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の発泡性組成物を収容することを特徴とする小袋。
【国際調査報告】