(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】過酸化物系、ハロゲンオキソアニオン系、ニトレート系、ニトロアミン系、及びニトロトルエン系爆発物を検出するための分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/22 20060101AFI20230405BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20230405BHJP
C07C 203/04 20060101ALI20230405BHJP
C07C 243/02 20060101ALI20230405BHJP
B01J 23/04 20060101ALN20230405BHJP
B01J 31/22 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
G01N31/22 122
G01N31/00 J
G01N31/00 M
C07C203/04
C07C243/02
B01J23/04 Z
B01J31/22 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540522
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2021058279
(87)【国際公開番号】W WO2021198249
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511314898
【氏名又は名称】クリスチャン-アルブレヒツ-ユニバーシタット ツー キール
【氏名又は名称原語表記】Christian-Albrechts-Universitat zu Kiel
【住所又は居所原語表記】Christian-Albrechts-Platz 4,24118 Kiel Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・ヘルゲス
(72)【発明者】
【氏名】モルテン・ペーテルス
(72)【発明者】
【氏名】マイク・ブロックマン
【テーマコード(参考)】
2G042
4G169
4H006
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042AA03
2G042BA04
2G042BA05
2G042BA07
2G042BB08
2G042BD07
2G042BD14
2G042DA08
2G042FA01
2G042FA13
2G042FB02
4G169AA06
4G169BA27B
4G169BB05B
4G169BC02B
4G169BC68B
4G169BD01B
4G169BD02B
4G169BD04B
4G169BE11B
4G169CB35
4G169CB74
4G169DA02
4H006AA01
4H006AA05
(57)【要約】
本発明は、試料中において過酸化物系爆発物、ニトレート系爆発物、及び/又はニトロアミン系爆発物を検出するための、好ましくは一工程の方法である分析方法であって、過酸化物系化合物、特に過酸化物系爆発物、ニトロアミン、硝酸エステル若しくは硝酸塩、特にニトレート系爆発物、及び/又はニトロアミン系爆発物を含有することが疑われる試料と、Ni-ポルフィリン、酸、及び好ましくは酸安定性溶媒を含む組成物とを接触させる工程を含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を検出するための分析方法であって、過酸化物系化合物、ニトレート系化合物、又はニトロトルエン系化合物、又はニトロアミン系化合物を含有することが疑われる試料と、Ni-ポルフィリン及び酸を含む又はNi-ポルフィリン及び酸からなる組成物とを接触させる工程を含む、分析方法。
【請求項2】
検出しようとする前記化合物が爆発物である、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
過酸化物系爆発物が、トリアセトントリペルオキシド(TATP)、ジアセトンジペルオキシド(DADP)、メチルエチルケトンペルオキシド(MEKP)、及び/又はヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(HMTD)のうちの少なくとも1種であり、ニトレート系爆発物が、硝酸カリウム(KNO
3)、硝酸アンモニウム(NH
4NO
3)、硝酸尿素(NH
2COHNH
2
+・NO
3
-)、ニトログリセリン(NG)、エチレングリコールジニトレート(EGDN)、及び/又はペンタエリトリトールテトラニトレート(PETN)であり、ニトロアミン系爆発物が、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジナン(ヘキソーゲン、RDX)、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラゾクタン(オクトーゲン、HMX)、2,4,6-トリニトロフェニルメチルニトロアミン(テトリル)、2,4-ジニトロトルエン(DNT)若しくは2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)、及び/又はニトロ尿素(NH
2CONHNO
2)である、請求項1又は2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記試料をNi-ポルフィリン及び酸と接触させる前に、前記試料を最初に超塩基により処理することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項5】
前記試料をNi-ポルフィリン及び酸と接触させる前に、ニトロアミン及びニトロトルエンを含有する化合物を有機超塩基により前処理することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項6】
有機超塩基による処理後のニトロアミンがNi-ポルフィリンにより存在を示され、最終的に褐色を生じ、ニトロトルエンが超塩基による処理時に直ちに濃い紫色を生じることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項7】
前記組成物が酸安定性溶媒を含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項8】
前記酸が遊離酸であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項9】
前記酸がNi-ポルフィリンへの少なくとも1つの置換基により形成されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項10】
前記試料が、過酸化物系爆発物を含有することが疑われる容器から又は環境から採取される気体試料であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項11】
Ni-ポルフィリン、酸、及び場合により酸安定性溶媒を含む又はそれらからなる前記組成物が、多孔性酸安定性材料及び/又はゲルを形成する膨潤性液体吸着酸安定性材料である担体により保持され、前記担体がNi-ポルフィリン及び酸を含有する液体組成物の支持材料をなすことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項12】
Ni-ポルフィリン、酸、及び場合により酸安定性溶媒を含む又はそれらからなる前記組成物が液体であり、液滴の形態である前記試料と接触させられることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項13】
あらゆる過酸化物を検出するために前記試料の一部とNi-ポルフィリン及び強酸を含む組成物とを接触させ、過酸化水素のみを検出するために前記試料の一部とNi-ポルフィリン及び弱酸を含む組成物とを接触させることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項14】
過酸化物系化合物がNi-ポルフィリンにより存在を示され、最終的に緑色を生じ、ニトレート系化合物及びニトロアミン系化合物がNi-ポルフィリンにより存在を示され、緑色を生じ最終的に褐色を生じることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項15】
過酸化物系化合物、ニトレート系化合物、ニトロトルエン系化合物、又はニトロアミン系化合物の検出に使用するための分析方法において使用するための組成物であって、Ni-ポルフィリン、-1.2~0.23のpK
aを有する酸、及び場合により酸安定性溶媒を含む又はそれらからなることを特徴とする、組成物。
【請求項16】
前記酸が遊離酸であることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記酸がNi-ポルフィリンへの置換基であり、少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーによってNi-ポルフィリンのピロール環に結合している、及び/又は酸置換基がNi-ポルフィリンをメソ位で置換しているアリール基に直接若しくは中間リンカーにより結合しており、リンカーが少なくとも1個の原子の鎖長を有することを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
多孔性及び/又は膨潤性である担体上に保持されていることを特徴とする、請求項15から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
酸安定性溶媒中の溶液であることを特徴とする、請求項15から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポルフィリンが、少なくとも1つの電子供与性基で置換されている少なくとも1つのアリール基によりメソ位の少なくとも1箇所で置換されているNi-ポルフィリンであることを特徴とする、請求項15から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記Ni-ポルフィリンが、少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーにより少なくとも1つのアリール基に結合している酸基で置換されていること、及び/又は前記ポルフィリンが、少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーによりピロール基に結合している酸基で置換されていること、及び/又は前記Ni-ポルフィリンが、Ni-ポルフィリンをメソ位で置換している少なくとも1つのアリール基に直接結合している少なくとも1つの酸基で置換されていることを特徴とする、請求項15から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
キットオブパーツにおいて、場合により酸安定性有機溶媒と混合されている、液体としての酸を入れた容器との組合せ、場合により液体超塩基を入れた容器との組合せで、Ni-ポルフィリンが、プラスチック片に結合された多孔性担体上に存在することを特徴とする、請求項15から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
キットオブパーツにおいて、酸安定性有機溶媒を入れた容器との組合せ、場合により液体超塩基を入れた容器との組合せで、Ni-ポルフィリンが-1.2~0.23のpKaを有する結合した酸基を有し、Ni-ポルフィリンがプラスチック片に結合された多孔性担体上に存在することを特徴とする、請求項15から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
キットオブパーツにおいて、場合により液体超塩基を入れた容器との組合せで、Ni-ポルフィリンが-1.2~0.23のpKaを有する遊離酸と混合されており、Ni-ポルフィリン及び遊離酸が容器中の酸安定性有機溶媒中に存在することを特徴とする、請求項15から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
キットオブパーツにおいて、場合により液体超塩基を入れた容器との組合せで、Ni-ポルフィリンが-1.2~0.23のpKaを有する結合した酸基を有し、Ni-ポルフィリンが容器中の酸安定性有機溶媒中に存在することを特徴とする、請求項15から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
試料中の化合物を検出するのに適した分析デバイスを製造する方法であって、場合により不活性ベース材料に結合された、多孔性及び/又は膨潤性である担体を提供する工程と、Ni-ポルフィリン及び-1.2~0.23のpKaを有する酸を含む又はNi-ポルフィリン及び-1.2~0.23のpKaを有する酸からなる組成物を前記担体上に添加する工程とを含む又はそれらの工程からなる、方法。
【請求項27】
前記酸が、遊離酸である、若しくは少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーによりNi-ポルフィリンのピロール環に結合している酸基である、及び/又は酸置換基が、Ni-ポルフィリンをメソ位で置換しているアリール基に直接若しくは少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーにより結合していることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物を有機溶媒中の溶液として担体上に添加し、続いて担体から溶媒を蒸発させることを特徴とする、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
試料中の化合物を検出するのに適した分析デバイスであって、場合により不活性ベース材料上に結合された、多孔性及び/若しくは膨潤性である担体を含む又はその担体からなり、前記担体がNi-ポルフィリン及び酸を含む又はNi-ポルフィリン及び酸からなる組成物を備えている、分析デバイス。
【請求項30】
前記酸が、遊離酸であるか、若しくは少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーによりNi-ポルフィリンのピロール環に結合している、及び/又は酸置換基が、Ni-ポルフィリンをメソ位で置換しているアリール基に直接若しくは少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーにより結合していることを特徴とする、請求項29に記載の分析デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは爆発物である、いくつかのクラスの化合物、特に過酸化物系、オキシハロゲン化物アニオン系、及び窒素系化合物を検出するための分析法に関する。これらの化合物としては特に、1.過酸化物系化合物、特に過酸化物系爆発物、例えばトリアセトントリペルオキシド(TATP)、ジアセトンジペルオキシド(DADP)、メチルエチルケトンペルオキシド(MEKP)、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(HMTD)、2.オキシハロゲン化物アニオン、特に塩素酸塩(例えば塩素酸ナトリウム(NaClO3)、塩素酸カリウム(KClO3))、又は臭素酸塩、例えば臭素酸ナトリウム(NaBrO3)、3.無機ニトレート(硝酸塩)、例えば硝酸カリウム(KNO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、硝酸尿素(NH2COHNH2
+・NO3
-)、4.有機ニトレート(硝酸エステル)、例えばニトログリセリン(NG)、エチレングリコールジニトレート(EGDN)、ペンタエリトリトールテトラニトレート(PETN)、5.ニトロアミン、例えば1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジナン(ヘキソーゲン、RDX)、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラゾクタン(オクトーゲン、HMX)、2,4,6-トリニトロフェニルメチルニトロアミン(テトリル)、及び/又はニトロ尿素(NH2CONHNO2)、並びに6.ニトロトルエン、例えば2,4-ジニトロトルエン(DNT)又は2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)が挙げられる。本発明の分析法は高感度を有するという利点があり、試料調製を必要とせず、一工程又は二工程で簡単な化学的比色試験により、同じ試薬で大部分の関連するクラスの爆発性化合物を検出する。
【背景技術】
【0002】
検出キットは、幅広い範囲のクラスの爆発物をカバーしそれらを識別する数種類の試薬又はホスト化合物を含有することがある。化学的方法は通常は試料調製を必要とする。窒素系爆発物の化学的検出のためのいくつかの方法が存在する。しかし、過酸化物系爆発物については限られた数の比色検出法しかない。
【0003】
国際公開第99/43846号(Ehud Keinan及びHarel Itzhaky)は、過酸化物系爆発物(環状過酸化物)、例えばトリアセトンペルオキシド(TATP)、ジアセトンペルオキシド(DADP)、及びヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(HMTD)等を検出するための比色法及びキットを記載している。過酸化物の検出は、二工程のプロセスに基づいている。第1の工程は、疑われる材料を有機溶媒中に溶解させ、環状過酸化物を強酸によりアセトン及び過酸化水素に加水分解することを必要とする。第2の工程では、酸性溶液を緩衝剤により中和し、過酸化水素及びペルオキシダーゼ酵素により酸化されるレドックス活性色素の色変化によって過酸化水素を検出する。特許は、有機溶媒、強酸、緩衝剤の溶液、ペルオキシダーゼ酵素、及びレドックス活性色素を含む、本発明の実用のためのキットを含む。このやや複雑な検出手順の理由は、強酸が環状過酸化物(爆発物)の開裂に必要であるが、しかし、実際の比色検出は中性pHにおいてのみ行うことができるという事実によるものである。したがって、中間工程として溶液の中和が必要である。
【0004】
TATPの比色分析による検出に関する、Lin及びSuslick、J. Am. Chem. Soc. 15519~15521頁(2010)は、気体試料がスルホン化した高架橋ポリスチレンイオン交換樹脂Amberlyst 15の酸性型の床を通って流れて酸加水分解され、続いて反応生成物を一連のレドックス色素と接触させる方法を記載している。酸は多孔性の固体樹脂に固定されているので、環状過酸化物の開裂は樹脂内の気相において生じ、別個の中和工程が避けられる。しかし、この手順の欠点は、揮発性爆発物(TATP及びDADP)のみを検出できるという事実である。更に、検出のための十分な蒸気圧を発生させるために、TATP及びDADPは容器に入れられる又は少なくとも空気交換が最小限である場所にある必要がある。TATP及びDADPと比較して高い昇華点及び低い蒸気圧を有するヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(HMTD)は検出することができない。この方法の利点は、固体酸加水分解後に蒸気を様々な反応性を有する一連のレドックス活性色素に当てることにより、TATPを過酸化水素及びヒドロペルオキシド等の他の酸化剤と区別できるという事実である。
【0005】
Amisarは国際公開第2005/089058 A2号において、塩素酸塩、臭素酸塩、及び/又は有機過酸化物を検出する方法を記載した。検出キットは、有機溶媒、強酸、芳香族アミン、及び遷移金属イオンを含む、2個の容器を含む。
【0006】
続報の特許である国際公開第2010/086834号においてAmisarは、1.過塩素酸塩、2.ニトロ芳香族化合物、3.ニトロアミン、ニトロエステル、塩素酸塩、及び臭素酸塩、4.過酸化物、5.ニトレートを同じ試料から検出する数段階の工程及び数種類の試薬を含む、逐次的手順を記載している。
【0007】
TATP又はHMTDの検出に関する、Schulte-Ladbeckら、Analyst 1152~1154頁(2002)は、遊離過酸化水素の除去のためにカタラーゼを液体試験試料へ加え、続いてアセトニトリルによる抽出を行って触媒を除去し、その後過酸化物系化合物を分解するために試料にUVを照射し、酵素触媒反応において、分解反応により生じた過酸化水素を比色分析により検出することを記載している。
【0008】
米国特許第7799573 B2号の、爆発物及び他の種の検出では、酸又は光により誘起される過酸化水素への分解と、その後のシュウ酸エステルとの反応及びその化学ルミネセンスの検出による過酸化水素の検出によって、過酸化物系爆発物を検出することを記載している。
【0009】
M. K. Chahal、M. Sankar、Dalton Trans. 2016年、45、16404~16412頁は、Ni-ポルフィリン(Ni-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)ポルフィリン)の合成を記載している。
【0010】
M. K. Chahal、M. Sankar、Dalton Trans.2017年、46、11669~11678頁は、センサー化合物としてNi-ポルフィリン(Ni-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)ポルフィリン)を使用した、シアン化物(CN-)、フッ化物(F-)、及びピクリン酸の検出を記載している。
【0011】
爆発物の検出における使用とは関係なく、Cong ら、Inorganic Chemistry 14361~14376頁(2019)は、過ハロゲン化Ni-ポルフィリン化合物を記載している。
【0012】
爆発物の検出における使用とは関係なく、B. Du、A. Langlois、D. Fortin、C. Stern、P. D. Harvey、J. Clust. Sci. 2012年、23、737~751頁は、酸基で置換されるとpKa 4.2を有するNi-ポルフィリン化合物を記載している。
【0013】
爆発物の検出における使用とは関係なく、C. Matos、C. Ribeiro、L. R. Gomes、Med. Chem. Res. 2015年、24、3885~3891頁は、酸置換ポルフィリン(meso-テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィン)とモデル膜との相互作用を記載している。
【0014】
ニトロ芳香族、ニトロアミン、及び硝酸エステルの光学的検出法は、「Optical explosives detection: from color changes to fluorescence turn-on」、Germain, M. E.; Knapp, M. J. Chem. Soc. Rev. 2009年、38、2543頁において概説されている。無機ニトレート、有機ニトレート、及びニトロアミン等の窒素系爆発物を検出する方法は、Method and kit for detecting explosives、Margalit, Y. Eur. Pat. Appl. (1994)、欧州特許第586125 A2号、及び米国特許第5480612号に記載されている。
【0015】
国際公開第2008/130376 A2号(RDXを含めた爆発物の測定)は、紫外線を照射すると水素化物ドナーとして作用しニトロアミンを還元し、それにより完全共役のアクリジン又はアントラセン誘導体に転化される、9,10-ジデヒドロアクリジン又は9,10-ジデヒドロアントラセン誘導体等の色素を使用して、ニトロアミン、例えばRDX及びPETNを検出する方法を示している。検出は吸収又は発光の変化を観察することにより行われる。
【0016】
国際公開第2013/022494号(ニトロ含有分析物を含めた分析物の検出)は、紫外線による照射後の分解生成物が電子リッチな芳香族化合物の求電子性芳香置換により反応する、国際公開第2008/130376 A2号の変形形態を記載している。検出は光学シグナルに基づいており、これは吸収又は発光の変化であってもよい。
【0017】
A. D. Jarczewski、P. Pruszynski、K. T. Leffek、Can. J. Chem. 1979年、57、669~672頁、S.A.H. Amas、H. J. Yallop、Analyst 1966年、91、336~337頁は、ニトロトルエン、例えば2,4-ジニトロトルエン(DNT)又は2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)が、有機超塩基による処理時に直ちに青色(DNT)又は紫色(TNT)を生じることを記載している。
【0018】
これらの論文又は特許はいずれも、過酸化物系爆発物、オキシハロゲン化物アニオン、ニトロアミン、硝酸エステル及び/又は硝酸塩を同じ試薬により検出する、総合的な比色分析法(光学シグナルに基づく検出)を記載していない。公開された方法はいずれも、酸、塩基、又は紫外線を使用した別個の活性化工程を伴わずに一段階で過酸化物系爆発物(環状過酸化物)を検出する比色分析法を報告していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第99/43846号
【特許文献2】国際公開第2005/089058 A2号
【特許文献3】国際公開第2010/086834号
【特許文献4】米国特許第7799573 B2号
【特許文献5】欧州特許第586125 A2号
【特許文献6】米国特許第5480612号
【特許文献7】国際公開第2008/130376 A2号
【特許文献8】国際公開第2013/022494号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Lin及びSuslick、J. Am. Chem. Soc. 15519~15521頁(2010)
【非特許文献2】Schulte-Ladbeckら、Analyst 1152~1154頁(2002)
【非特許文献3】M. K. Chahal、M. Sankar、Dalton Trans. 2016年、45、16404~16412頁
【非特許文献4】M. K. Chahal、M. Sankar、Dalton Trans.2017年、46、11669~11678頁
【非特許文献5】Congら、Inorganic Chemistry 14361~14376頁(2019)
【非特許文献6】B. Du、A. Langlois、D. Fortin、C. Stern、P. D. Harvey、J. Clust. Sci. 2012年、23、737~751頁
【非特許文献7】C. Matos、C. Ribeiro、L. R. Gomes、Med. Chem. Res. 2015年、24、3885~3891頁
【非特許文献8】「Optical explosives detection: from color changes to fluorescence turn-on」、Germain, M. E.; Knapp, M. J. Chem. Soc. Rev. 2009年、38、2543頁
【非特許文献9】Method and kit for detecting explosives、Margalit, Y. Eur. Pat. Appl. (1994)
【非特許文献10】A. D. Jarczewski、P. Pruszynski、K. T. Leffek、Can. J. Chem. 1979年、57、669~672頁
【非特許文献11】S.A.H. Amas、H. J. Yallop、Analyst 1966年、91、336~337頁
【非特許文献12】M. M. Catalano、M. J.Crossley、M. M. Harding、L. G. King、Control of Reactivity at the Porphyrin Periphery by Metal Ion Co-ordination: a General Method for Specific Nitration at the β-Pyrrolic Position of 5,10,15,20-Tetraarylporphyrins. Chem. Commun. 1984年、1535~1536頁
【非特許文献13】V. Montanari、K. Kumar、Eur. J. Org. Chem. 2006年、4、874~877頁
【非特許文献14】J. Ignatowska、O. Shyshkov、T. Zipplies、K. Hintzer、G.-V. Roschenthaler、J. Fluor. Chem. 2012年、141、35~40頁
【非特許文献15】L. M., Jin、Z. Zeng、C.-C. Guo、Q.-Y. Chen、J. Org. Chem. 2003年、68、3912~3917頁
【非特許文献16】Y. Zhao、J. Hu、Angew. Chem. Int. Ed. 2012年、51、1033~1036頁
【非特許文献17】T. Hu、T. Liu、C. Hu、J. Lang、J. Porphyr. Phtalocyanines 2018年、22、751~757頁
【非特許文献18】G. Bringmann、D. C. G. Gotz、T. A. M. Gulder、T. H. Gehrke、T. Bruhn、T. Kupfer、K. Radacki、H. Braunschweig、A. Heckmann、C. Lambert、J. Org. Chem. 2008年、130、17812~17825頁
【非特許文献19】R. Labruere、P. Helissey、S. Debene-Finck、S. Giorgi-Renault、Lett. Org. Chem. 2012年、9、568~571頁
【非特許文献20】G. Besong、D. Billen、I. Dager、P. Kocienski、E. Sliwinski、L. R. Tai、F. T. Boyle、Tetrahderon 2008年、64、4700~4710頁
【非特許文献21】J. S. Lindsey、K. A. MacCrum、J. S. Tyhonas、Y. Y. Chuang、J. Org. Chem 1994年、59、579~587頁
【非特許文献22】M. Dommaschk、F. Gutzeit、S. Boretius、R. Haag、R. Herges、Chem. Commun. 2014年、50、12476~12478頁
【非特許文献23】B. J. Johnsonら、Sensors 2010年、10、2315~2331頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、好ましくは分光光度検出を行わずに、視覚的に検出できる呈色反応に先立って、試料の前処理の工程を行わずに又は前処理を一工程のみ行って、過酸化物系、オキシハロゲン化物アニオン系、及び窒素系爆発物を高感度で検出するための分析方法を提供することである。この分析法は好ましくは周囲条件において短時間のうちに、例えば60秒以内、30秒以内、20秒以内、又はそれ未満で行うことができる。さらなる目的は、この分析法において使用するための反応物を含有する簡単に使用できるデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、特許請求の範囲の特徴により目的を実現し、特に、試料中において分析物として過酸化物系爆発物、オキシハロゲン化物アニオン系爆発物、ニトレート系爆発物、及び/又はニトロアミン系爆発物を検出するための、好ましくは一段階プロセスであり場合により試料を有機超塩基により前処理する工程を伴う、分析方法であって、過酸化物系化合物、特に過酸化物系爆発物、オキシハロゲン化物アニオン系化合物、特にオキシハロゲン化物系爆発物、硝酸エステル若しくは硝酸塩、特にニトレート系爆発物、又はニトロアミン系化合物を含有することが疑われる試料と、Ni-ポルフィリン、酸、及び好ましくは酸安定性溶媒を含む、又はそれらからなる組成物とを接触させることを含む、方法を提供する。この方法は、試料とNi-ポルフィリンを含有する組成物とを接触させるのに先立って、過酸化物系爆発物を含有することが疑われる試料を加水分解する別個の工程を含まない。ニトロアミン系爆発物の検出については、二工程の手順が必要である。まず試料を有機超塩基で処理し、第2の工程で試料と上記のようなNi-ポルフィリンを含有する組成物とを接触させる。有機超塩基による前処理は、過酸化物、オキシハロゲン化物アニオン、硝酸エステル及び硝酸塩の検出と干渉せず、それらの検出を妨げない。そのため上記のあらゆる化合物は二工程の手順により検出できるが、しかし、ニトロアミンの検出に関しては、有機超塩基による前処理が必要である。更に、本発明は、この分析方法における分析デバイスとして使用するための、Ni-ポルフィリン、酸、場合により酸安定性溶媒を含む組成物を提供する。酸はNi-ポルフィリンとの混合物中に存在していてもよく、代わりに又は更に、酸はNi-ポルフィリンに結合していてもよく、例えば酸がNi-ポルフィリンの置換基であってもよい。
【0023】
過酸化物系爆発物及びオキシハロゲン化物アニオンがNi-ポルフィリンによって存在が示され、最終的に緑色を生じ、ニトレート系爆発物及びニトロアミン系爆発物がNi-ポルフィリンによって存在が示され、最初に緑色を生じ最終的に褐色を生じるので、この分析方法及び組成物は爆発物間の識別を可能にするという利点を有する。
【0024】
更に、本発明は分析方法で使用するためのデバイスを提供し、このデバイスは、Ni-ポルフィリン、酸、及び好ましくは酸安定性溶媒、及び好ましくは担体、例えば多孔性担体を含む又はそれらからなる組成物を含み、担体はNi-ポルフィリン、酸、及び酸安定性溶媒を保持し、担体が本発明の液体組成物の支持材料をなすように、担体は例えば多孔性液体吸着材料である、及び/又はゲルを形成する膨潤性液体吸着材料、例えば酸安定性材料の膜、例えば合成ポリマー又はセルロースの膜である。
【0025】
Ni-ポルフィリンが酸安定性であり、酸が過酸化物系爆発物を分解してヒドロペルオキシド、又は過酸化水素を生じ、ニトロアミン又は硝酸エステルは分解されてニトロニウムイオン及び/又は二酸化窒素を生じ、これがNi-ポルフィリンと反応して色を変化させるので、本発明の方法及び組成物は、一工程で爆発物を検出するという利点がある。ニトロアミン(例えばヘキソーゲン及びオクトーゲン)はこれらの条件下でゆっくり反応する。したがって、本発明によれば、反応メカニズム:(-N(NO2)-CH2- + B → -N=CH- + BH+ + NO2
-)に従い、ニトロアミンを最初に有機超塩基(B)で処理して亜硝酸塩を除去する。数秒後、例えば10秒未満の反応時間後、生成した亜硝酸塩(NO2
-)を検出するために上記の手順を適用する。
【0026】
この方法は、過酸化物においては触媒的であり、例えば1個のTATP分子がおよそ60個のNi-ポルフィリン分子を対応するカチオンへ転化させることになり、これが赤色から緑色への色変化をもたらすので、過酸化物に対してきわめて高感度であることが分かった。窒素系爆発物もNO2-基1個当たり2個の電子を受け取る。例えば、ニトログリセリン及びヘキソーゲンは6当量のNi-ポルフィリンを酸化させることが可能である。高い感度は、Ni-ポルフィリンがそのソーレー帯のきわめて高いモル吸光係数を示すという事実によってももたらされる。したがって、本発明において色変化の視覚的検出のためにごく少量のポルフィリンしか使用する必要がない。
【0027】
例えば別個の酸加水分解若しくは塩基加水分解又はUV照射による爆発物の別個の活性化を、その後の呈色反応による検出と共に使用する先行技術とは対照的に、過酸化物系、オキシハロゲン化物系、又は窒素系の爆発物を含有することが疑われる試料と、Ni-ポルフィリン、酸、及び場合により酸安定性溶媒を含む又はそれらからなる組成物とを接触させることのみを必要とする反応において、本発明の分析方法は上記に挙げられた爆発物を検出する。
【0028】
本発明は例として以下を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による反応メカニズムを示す図である。
【
図2】分析方法によって得られる反応生成物のUVスペクトルを示す図である。
図2に示されるUVスペクトルは、本発明による組成物であるNi-テトラキス(トリメトキシフェニル)ポルフィリン及びトリフルオロ酢酸(TFA)、示されるような本発明によるこの組成物とTATPとの2.3分後の反応生成物、並びに本発明によるこの組成物とTATPとの12.5分後の反応生成物を重ね合わせたものである。UVスペクトルは、Ni-ポルフィリンにおいて特徴的であるソーレー帯及びQ帯がTATPの存在下で減少し、ポルフィリンラジカルカチオンにおいて典型的である、550~700nmのブロードバンドが構築されることを証明した。
【
図3】本発明の実施形態としての試験片を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一実施形態において、酸はNi-ポルフィリン及び任意選択の溶媒との混合中で存在する遊離酸であってもよいが、この遊離酸はNi-ポルフィリンに共有結合されていない。例えば液体酸の形態である遊離酸は、1種の酸又は少なくとも2種の酸の混合物である。更に、遊離酸はマトリックスに結合した酸の形態であってもよく、このマトリックスは担体であってもよい。マトリックスに結合した酸は例えば強酸性陽イオン交換剤であってもよい。酸は一般に、環状過酸化物、ニトロアミン、硝酸エステル、及び/又は硝酸塩、特に過酸化物系爆発物、ニトレート系爆発物、又はニトロアミン系爆発物を分解する活性がある。ニトロアミンを活性化するのに使用される強塩基は、純粋な形態である又はアセトニトリル等の不活性溶媒中の溶液としての、有機超塩基である。この有機超塩基のpKaは好ましくは24以上である。
【0031】
Ni-ポルフィリンは、好ましくは少なくとも1つのメソ位に、アリール基である、例えば少なくとも1つのフェニル環を含有する芳香族基である、電子供与性置換基を有し、このアリール基は少なくとも1つのメトキシ基により、又は置換アミノ基により、又は、各々が例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12個の炭素原子を有する、直鎖若しくは分岐若しくは環状のアルキル基により、場合により置換されている。Ni-ポルフィリンはそのメソ位が非置換であってもよく、又はNi-ポルフィリンは、好ましくは各メソ位について同じである又は独立に異なっていてもよい電子供与性基により、そのメソ位の1箇所、2箇所、3箇所、若しくは4箇所すべてが置換されていてもよい。
【0032】
一般に、すべての実施形態において酸は好ましくは最大で1.2のpKa値、例えば1.2未満、例えば-2.8~0.23のpKa値を有する。例えば、p-トルエンスルホン酸は-2.8のpKa値を有し、トリクロロ酢酸は0.7のpKa値を有する。一般的に好ましくは、酸は-1.2~0.23の範囲のpKaを有する。pKa値は好ましくは水中で20℃において決定される。最大で1のpKa値が好ましく、なぜならこれは例えば20℃においてTATP等の環状構造を有する過酸化物系爆発物を30秒以内又はそれ以下で分解させるからである。Ni-ポルフィリンの分解を防ぐために酸のpKaは好ましくは-4を下回るべきではない(例えばトリフリン酸pKa -5.1)。
【0033】
一実施形態において、酸は好ましくは酸安定性溶媒中で、Ni-ポルフィリンと混合されている化合物である。酸は、例えば-1.2から1.2まで又は0.23までのpKaを有する強酸であってもよい。酸は好ましくは、トリフルオロ酢酸(pKa 0.23)、ペンタフルオロプロピオン酸(pKa 0.5~1.2)、ヘプタフルオロ酪酸(pKa 1.2)、又はペルフルオロペンタン酸(pKa 0.5~1.2)、好ましくはペルフルオロペンタン酸、又はトリフルオロ酢酸、及びこれらの少なくとも2種の混合物から選択される。
【0034】
酸安定性溶媒は好ましくは、カチオン及びラジカルカチオンを安定化させる溶媒である。酸安定性溶媒は、有機ハロゲン化溶媒、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2,3-トリクロロプロパン、1,2,3-トリクロロプロパン、1,1,2,3-テトラクロロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、1,1,2,3,3-ペンタクロロプロパン、フッ素化C2-~C6-アルコール、好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、又はスルホラン、又はこれらの少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0035】
塩素化溶媒において、酸は好ましくはトリフルオロ酢酸(TFA)、ペンタフルオロプロピオン酸、ヘプタフルオロ酪酸、又はペルフルオロペンタン酸である。塩素化溶媒において、フッ素化アルコールにおいて、例えばHFIPにおいて、又はスルホランにおいて、酸はトルエンスルホン酸であってもよい。優先的には、いくつかの実施形態において急速な蒸発を防ぐために高沸点溶媒は高沸点の酸と組み合わされる。
【0036】
さらなる実施形態において、酸は、例えばポルフィリン部分に結合した、好ましくはNi-ポルフィリンの少なくとも1つのピロール環のβ位に結合した、Ni-ポルフィリンの置換基であってもよく、及び/又は酸は、Ni-ポルフィリンのメソ位にあるアリール置換基の置換基であってもよい。置換基の酸は好ましくは、Ni-ポルフィリンに、例えばそのピロール環に、及び/又はそのアリール置換基に、中間リンカーを介して結合しており、このリンカーは少なくとも1個の原子、好ましくは少なくとも2個の原子、又は少なくとも4個、又は少なくとも6個の原子の鎖長を有する。酸置換基とNi-ポルフィリンのピロール部分との間のリンカーは好ましくは、少なくとも2個の原子、例えば2~18個の原子、例えば4~18個の原子、又は6~18個の原子、例えば16個以下、又は14個以下、又は12個以下の原子の鎖長、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又は9個の原子の鎖長を有する。リンカーの原子は好ましくは、場合によりモノ若しくはジハロゲン化されているC原子、及び/又はO原子である。酸置換基とNi-ポルフィリンのメソ位にあるアリール置換基との間のリンカーは好ましくは、少なくとも1個の原子、例えば少なくとも2個の原子、例えば2~18個の原子、例えば4~12個の原子の鎖長を有し、これらの原子は好ましくは、場合によりモノ若しくはジハロゲン化されているC原子、及び/又はO原子である。リンカー鎖の原子は好ましくは炭素原子である。リンカーは、場合によりハロゲン化されているアルキル鎖、例えば少なくとも1つのハロゲン化メチル基、例えば-CF2-基若しくは-CCl2-基を含む又はそれらからなる鎖であってもよい。酸置換基とアリール置換基とを接続するリンカーの代替として、酸置換基はアリール基に直接結合していてもよい。メソ位の少なくとも1つにアリール置換基を有し酸置換基がアリール置換基に直接結合しているNi-ポルフィリンは、より簡単な合成により製造できるという利点がある。
【0037】
酸は、例えばカルボキシル基、スルフィド酸(sulfidic acid)基、例えばスルフィン酸基、又はスルホン酸基であってもよい。pKa<1を実現するために、カルボキシル基は好ましくは、リンカーを形成することができる又はリンカーの一部であってもよい少なくとも1つの-CF2-基又はフッ素化アルキル基に直接接続しており、スルホン酸基は例えば-CH2-又は-CF2-基のいずれかに接続されていてもよい。
【0038】
一般に、Ni-ポルフィリン及び酸及び場合により溶媒を含む組成物は、例えば多孔性物質又はゲルであってもよい固体担体上に保持される、例えば固体担体上に吸着される又は固体担体中に含有されることが可能である。多孔性物質は、例えばシリカ又はゼオライト又はセルロースであってもよい。ゲルは、例えばポリビニルアルコール(PVA)又はポリビニルピロリドン(PVP)等の酸安定性ポリマーであってもよい。優先的には、酸をポリマー骨格中に含有するゲルが使用される。これらのゲルは、Amberlite(登録商標)R-120又はDowex(登録商標)50 WX-4等の強酸性陽イオン交換樹脂として市販されている。
【0039】
有機超塩基は、有機溶媒中で可溶性である中性塩基であるべきで、アセトニトリル中でpKa >24を有するべきである。これらの塩基はアミジン、グアニジン、ホスファゼン(Schwesinger塩基)、グアニジノホスファゼン、又はプロアザホスファトラン(Verkadeの塩基)のファミリーに由来するものである。適切なアミジンの例は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU、pKa 24.3)である。十分な塩基強度を有するグアニドは、例えば2-t-bu-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(pka 24.3)、7-H-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(pKa 26.0)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(pKa 25.5)、又は1,8-ビス(テトラメチルグアニジノ)ナフタレン(pKa 25.1)である。最も有効なのは、ホスファゼン塩基(Schwesinger塩基)、例えばt-bu-ヘキサメチルホスホルイミドトリアミド(P1-t-Bu、pKa 26.9)、又は1,1-(ジメチルエチル)トリス[トリス(ジメチルアミノ) ホスホラニリデン]ホスホルイミド酸トリアミド(P4-t-Bu、pKa 42.6)等である。1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(pKa 23.3)は、ニトロアミン(ヘキソーゲン又はオクトーゲン)(pKa <24、上記を参照)と反応するほどの十分に強い塩基ではない。NaOH又はKOHの水溶液も、高温でも反応時間が長いことから適していない。
【0040】
担体上に組成物を保持することの代替として、例えばNi-ポルフィリンを含有する液体組成物を噴霧し、好ましくは、例えば爆発物を含有する試料が入っていることが疑われる容器の壁、又は試料内若しくは試料の近くに配置された紙、プラスチック、若しくはガラス表面であってもよい、固体担体上、好ましくは白色担体上に組成物を接触させることにより、組成物を液滴の形態で試料と接触させることができる。この実施形態において、酸がNi-ポルフィリンの置換基であることが好ましく、このことは遊離酸よりも酸に共有結合しているNi-ポルフィリンがより低刺激性であり、より揮発性が低く、及び/又はより腐食性が低いという利点がある。
【0041】
マトリックスに結合した酸の形態である遊離酸を含有する担体として、ハロゲン化溶媒中に溶解させたNi-ポルフィリンを含浸した強酸性陽イオン交換樹脂を使用することにより、試験片を製造することができる。TATP若しくはEGDNのヘッドスペースに試験片を浸す、又は微量の過酸化物系若しくは窒素系爆発物、例えばトリアセトントリペルオキシド(TATP)、ジアセトンジペルオキシド(DADP)、ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(HMDT)、メチルエチルケトンペルオキシド(MEKP)、塩素酸カリウム(KClO3)、臭素酸カリウム(KBrO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、硝酸尿素(NH2COHNH2
+・NO3
-)、ニトログリセリン(NG)、エチレングリコールジニトレート(EGDN)、ペンタエリトリトールテトラニトレート(PETN)、ヘキソーゲン(RDX)、オクトーゲン(HMX)、2,4,6-トリニトロフェニルメチルニトロアミン(テトリル)、若しくはニトロ尿素(NH2CONHNO2)等に直接接触させることにより、赤色から緑色への色変化が生じる。窒素系爆発物の場合、その後緑色から褐色への色変化が観察される。爆発物の検出は、黒色粉末(KNO3/硫黄/炭)又は火工品組成物(例えばKClO3/Al-粉末)等の混合物中においても可能である。
【0042】
本発明の別の態様において、トリフルオロ酢酸等の純粋な酸、又は優先的には高沸点の酸、例えばペンタフルオロプロピオン酸に溶解させたNi-ポルフィリンを含侵した、酸安定性多孔性ポリマー膜、例えばポリプロピレン膜、PVC膜フィルター、又は多孔性ポリフッ化ビニリデン、又はセルロース等が試験片として使用される。
【0043】
一般に、試験片は、結合した酸基を有する又は遊離酸と混合されているNi-ポルフィリンを収容するための多孔性物質又はゲルが結合された、不活性のベース材料、例えばプラスチック片を含んでいてもよい。試験片は、キットオブパーツとして、液体を分注するのに適した容器に入った遊離酸及び/又は酸安定性溶媒と組み合わせてもよく、場合により、好ましくは液体を分注するのに適した別の容器内の、超塩基と組み合わせてもよい。試験片に含まれるNi-ポルフィリンの代わりに、キットオブパーツとして、遊離酸と混合されたNi-ポルフィリン又は結合した酸基を有するNi-ポルフィリンが、場合により液体を分注するのに適した別の容器内の超塩基と組み合わせて、液体組成物中、好ましくは酸安定性溶媒に存在していてもよい。キットオブパーツは化合物を含有し、本発明の分析方法を実施するのに適している。
【0044】
TATP若しくはEGDNのヘッドスペースに試験片を浸す、又は微量の過酸化物、オキシハロゲン化物塩、硝酸塩、硝酸エステル、若しくはニトロアミンと直接接触させることにより、赤色から緑色への色変化が生じる。
【0045】
本発明の別の態様において、爆発物で汚染されていることが疑われる表面上に、溶媒中に溶解された、酸で置換されたNi-ポルフィリンを噴霧する。赤色から緑色への色の変化は爆発物の存在を示すことになる。或いは、拭き取り布を使用して表面の検体を採取し、拭き取り布にスプレーをかけることができる。
【0046】
Ni-ポルフィリンは構造1~3の1つを含む又は構造1~3の1つからなっていてもよく、構造1はNi-ポルフィリンが4つのすべてのメソ位においてアリール置換基(Ar)で置換されている実施形態を示す。例示的なアリール置換基はフェニル又は他の芳香族環(Ar)から独立に選択することができ、このアリール基は場合により、本明細書においてメトキシ基として示される、例えば1つのメトキシ基又は3つのメトキシ基として示される、及び3つのメチル基として示される、少なくとも1つの電子供与基により更に置換されている。例示的なアリール基(Ar)は、フェニル基、メトキシフェニル基、トリメトキシフェニル基、及びトリメチルフェニル基である。アリール基は、その炭素原子のいずれかによってNi-ポルフィリンのメソ位にある炭素へ結合されていてもよい。Ni-ポルフィリンに共有結合されている酸の実施形態において一般に好ましくは、Ni-ポルフィリンのメソ位にある置換基の少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、3つ、又は4つすべてが少なくとも1つの酸基で置換されている、例えば少なくとも1つの酸基がNi-ポルフィリンのメソ位においてアリール基の少なくとも1つに共有結合している。
【0047】
【0048】
構造2は、Ni-ポルフィリンの4つのすべてのメソ位がアリール基(Ar)で置換されている実施形態を示す。
【0049】
一実施形態において、あまり好ましくはないが、アリール置換基は電子供与基を有していない。電子供与基を有していないアリール置換基のこの実施形態では、この分析方法は指示色を生じるのがより遅く、この方法はあまり感度が高くない。
【0050】
場合により、あまり好ましくはないが、例えば強酸である酸、例えば-SO3Hに関して、酸はNi-ポルフィリンに直接、特にNi-ポルフィリンのアリール基に直接、すなわち中間リンカーを使用せずに結合している。好ましくは、酸は、例えば場合によりモノハロゲン化若しくはジハロゲン化されているC-原子である、及び/又はエーテル結合を形成するO-原子である、少なくとも1個の原子、好ましくは少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、又はより好ましくは少なくとも6個、又は少なくとも7個の原子、例えば12個以下又は10個以下又は8個以下の原子の鎖長を有していいてもよい、中間リンカーによってNi-ポルフィリンに結合している。一般に好ましくは、-CO2Hである酸基に関して、酸は酸基に直接隣接した少なくとも1つの-CF2-基を有するリンカーによって結合されている。一般に好ましくは、リンカーは、メチレン基、エーテル結合、ジフルオロメチレン基、ジクロロメチレン基、若しくはこれらの少なくとも2つの組合せを含む又はそれらからなっていてもよい。
【0051】
構造1は、組成物がNi-ポルフィリンと、Ni-ポルフィリンと混合されている化合物としての酸と、場合により溶媒とを含む実施形態に適している。
【0052】
構造2及び構造3は、酸がNi-ポルフィリンの置換基である実施形態を示す。構造2において、酸(酸)はNi-ポルフィリンのピロール環に直接(X
nにおいてn=0である)、又は1から10個までの原子の鎖長(X
nにおいてnが10以下である)、例えば好ましくはC-原子である少なくとも2個の原子の鎖長を有する中間リンカー(鎖)により共有結合しており、リンカー鎖は、メチレン基(-CH
2-)を含有する若しくはメチレン基(-CH
2-)からなっていてもよく、及び/又はジフルオロメチレン基(-CF
2-)、及び/又はジクロロメチレン基(-CCl
2-)、及び/又はエーテル結合(-O-)を含有する若しくはそれらからなっていてもよい。例として、酸置換基はカルボキシル基(CO
2H)として、又はスルホン酸基(SO
3H)として示される。
図2の実施形態において、最大で8箇所の位置が酸基を有していてもよく、例えば1、2、3、又は4箇所以上の位置が酸基を有していてもよく、これらの位置はNi-ポルフィリンのβ位である。
【0053】
構造3に示すように、少なくとも1つの酸(酸)は一般に、少なくとも1個の原子、例えば10個以下の原子(Xnにおいてnが1から10までである)を有するとしてここで示される鎖長、例えば好ましくはC-原子である少なくとも2個の原子、例えば3~6個の原子の鎖長を有する中間リンカーにより、メソ位においてアリール基に共有結合していてもよい。電子供与性アリール置換基(Ar)としての例示的なフェニル環に関して、酸は、例えば酸若しくはリンカー置換基の数に応じてアリール基の任意の位置で、好ましくは例示的なアリール置換基のようにフェニル基のオルト位若しくはパラ位で、2箇所のメタ位で、又は2箇所のメタ位及びパラ位で、直接結合している又はリンカーによってアリール基に結合している。本明細書においてまた、リンカー鎖は、エーテル結合をなすO基、メチレン基(-CH2-)を含有する若しくはそれらからなっていてもよく、及び/又はジフルオロメチレン基(-CF2-)及び/若しくはジクロロメチレン基(-CCl2-)及び/若しくはエーテル結合(-O-)を含有する又はそれらからなっていてもよい。ポルフィリンは例えば1~8個の酸基を有していてもよい。一般に、Ni-ポルフィリンに結合した酸は好ましくは-1.2~0.23のpKaを有し、例えば酸は-SO3H又は-CO2Hであり、好ましくは-CO2H又は-SO3Hである酸に直接隣接した少なくとも1つのジフルオロメチレン基のリンカーを有する。
【0054】
現在、反応メカニズムは
図1に示されるようなものであると仮定されており、ペルオキシド(R-O-O-R)との反応では、Ni-ポルフィリンの反応性Ni
2+(Ni
II)がポルフィリンの一部のみにより示されている。簡単にするために、不対電子及びポルフィリンラジカルカチオンの正電荷はポルフィリンのπ系上に非局在化しておらずピロール窒素に局在化しているように示されている。
【0055】
そこでは、色変化はポルフィリンの一電子酸化に基づいている。反応時の各ペルオキシド単位は2個の電子を受け取り、そのため、3個のペルオキシド単位を含むTATP又はHMTDの1分子は6個のポルフィリン分子を酸化する。感度のさらなる向上は、RO・により開始され外気酸素を酸化剤として取り込むラジカル連鎖反応を必要とする。ニトロアミン及び硝酸エステルの検出の場合における酸化種は、プロトン化種又はそこから排出されたニトロニウムイオンである。酸開裂はニトロアミン及び硝酸エステルの合成の逆過程に相当する。ニトロニウムイオン(NO2
+)はそれにより二酸化窒素(NO2)へ還元され、これは更に1当量の赤色のポルフィリンを緑色のポルフィリンラジカルカチオンへ酸化させ、還元されて亜硝酸アニオン(NO2
-)となる。赤色ポルフィリンが消費されると、二酸化窒素はラジカル再結合により緑色のポルフィリンラジカルカチオンと反応し褐色のβニトロ化ポルフィリンを形成する(例えば M. M. Catalano、M. J.Crossley、M. M. Harding、L. G. King、Control of Reactivity at the Porphyrin Periphery by Metal Ion Co-ordination: a General Method for Specific Nitration at the β-Pyrrolic Position of 5,10,15,20-Tetraarylporphyrins. Chem. Commun. 1984年、1535~1536頁を参照)。これは、過酸化物系爆発物と接触すると赤色から緑色への色の変化を生じ、ニトレート系又はニトロアミン系爆発物と接触すると、窒素系爆発物のみに特有であり過酸化物系爆発物と窒素系爆発物との区別を可能にする、赤色から緑色へ、最終的には褐色への色の変化を生じる、本発明の方法及びデバイスによる色変化を説明する(実施例を参照)。
【0056】
過酸化水素とTATP及びHMTD等の環状過酸化物とを区別するために、ジクロロ酢酸(pKa1.3)等の弱酸を採用することができ、これは環状過酸化物を加水分解できないが過酸化水素を活性化させるのに十分な強さである。実際的な用途における過酸化水素による偽陽性を避けるために、2つの試験片を使用し、1つはあらゆる過酸化物を検出するための強酸と共に、1つは過酸化水素のみを検出するための弱酸と共に使用する。弱酸は例えば1.2~2のpKaを有していてもよい。
【0057】
場合により、この方法は試料を組成物と接触させる工程からなっていてもよく、又はこの方法は、遊離過酸化水素の影響を低減又は排除するために、試料を組成物と接触させる前に試料からの遊離過酸化水素を破壊する追加の工程を含んでいてもよい。遊離過酸化水素を加水分解するために、試料とNi-ポルフィリンを含む組成物とを接触させる前に、試料は遊離過酸化水素を分解させる活性を有する反応物と接触させてもよい。したがって、デバイスは場合により、Ni-ポルフィリンを含む組成物が試料を受け入れるように配置されている流路を含んでいてもよく、ここでこの組成物の上流には遊離過酸化水素を分解する活性を有する反応物が配置されている。反応物は例えば無機触媒、例えばKMnO4又はMnO2であってもよい。反応物は、場合により流路の断面にまたがっている多孔性担体上に固定されていてもよい。
【0058】
流路は例えば、ウィッキング作用性材料、例えば多孔性材料によって、及び/又は例えば毛管作用により若しくはダクトにかかる陽圧又は陰圧により試料が移動することができるダクトによって設けることができる。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
ヘッドスペースからの固体TATPの検出
一方の端部にセルロースパッド(5×5mm)を備えたプラスチック片(90×5mm)に、トルエン中のポルフィリンの1mM溶液5μLをセルロースパッド上へ滴下することによりNi-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)ポルフィリンを含侵させ、次いで溶媒を蒸発により除去する。このようにして調製された試験片を、一滴の5~10μLのペルフルオロペンタン酸により湿らせる。本明細書における本発明のNi-ポルフィリン化合物への酸の添加もまたNi-ポルフィリン又はスティックの活性化とみなされる。活性化されたスティックを、被覆されていない表面上に存在するTATPの結晶におよそ3mmでごく近くに接近させる又はガラス小瓶内に存在するTATPのヘッドスペースに接近させる。15秒後、バッドの赤色が緑色になる。固体爆発物のヘッドスペースにおける飽和蒸気圧及び3mLの気体の体積を仮定すると、8nmolのTATPを検出できる。
【0060】
(実施例2)
ヘッドスペースからの有機ニトレート(例えばPETN、EGDN、NG)、及び硝酸塩(例えばNH4NO3、KNO3、NaNO3)の検出
被覆されていない表面上、又はガラス小瓶内にそれぞれ別々に存在する微量のこれらの化合物、PETN、EGDN、NG、及び硝酸塩(例えばNH4NO3、KNO3、NaNO3)を、一滴(5~10μl)のペルフルオロペンタン酸により処理する。数秒後、実施例1のように調製された活性化させたプラスチック片を、表面上に存在する化合物うちの1種にごく近くで(約3mm)接近させる又はガラス小瓶のヘッドスペースに接近させる。パッドの色は赤色から褐色になる。硝酸塩が溶液中、又は乾燥混合物中、例えば黒色粉末のような硫黄及び炭を有するもの等に存在する場合も、本発明による硝酸塩の検出は得られる。
【0061】
(実施例3)
ヘッドスペースからのニトロアミン(例えばヘキソーゲン、オクトーゲン、ニトロ尿素)の検出
別々に、表面上又はガラス小瓶内の微量の固体ニトロアミンを、一滴(5~10μl)の有機超塩基(例えばアセトニトリル中に溶解させた20vol.%のP1-t-Bu)の溶液により湿らせる。次いで一滴(5~10μl)のペルフルオロペンタン酸を同じスポットにつける。実施例1のように調製された活性化させた試験片を、表面上の有機超塩基中のニトロアミン化合物のうちの1種の懸濁液にごく近くで(約3mm)接近させる又はガラス小瓶のヘッドスペースに接近させる。パッドの色は直ちに赤色から褐色になる。
【0062】
(実施例4)
固体状態の過酸化物(例えばHMTD、TATP)、塩素酸塩(例えばKClO3、NaClO3)、及び臭素酸塩(例えばKBrO3、NaBrO3)の検出
汚染された表面をぬぐうことにより、活性化させた試験片(実施例1のように調製される)を別々に微量の固体HMDT、TATP、又は塩素酸塩と接触させる。試験片の色は、パッドが微量の固体爆発物と接触するスポットで直ちに赤色から緑色へ変わる。これらの緑色のスポットは広がり、約30秒以内にパッドが緑色に変わる。ジクロロメタン中に溶解させたTATPの10μlの12.65μM溶液を、前もって調製された試験片上に丸いスポットとして滴下した。1分後に試験片は薄緑色へ変わった。この方法を使用して、0.125nmol(28ng)のTATPを検出することが可能である。
【0063】
図3は、検出しようとする化合物と接触させる前に本発明によるNi-ポルフィリンを含侵させたセルロースパッドが末端に取り付けられたプラスチック片(未使用(赤))、及び同じNi-ポルフィリンを含有し酸を加えることにより活性化され過酸化物と接触された後のプラスチック片(過酸化物(緑))、及び同じNi-ポルフィリンを含有し酸を加えることにより活性化されニトレートと接触された後のプラスチック片(ニトレート(褐色))を示す。
【0064】
(実施例5)
結晶状態又は原液としての有機ニトレート(例えばPETN、EGDN、NG)、及び硝酸塩(例えばNH4NO3、KNO3、NaNO3)の検出
汚染された表面をぬぐうことにより、実施例1のように調製された活性化させた試験片を、別々の微量の固体硝酸塩又は有機ニトレート(PETNは固体であり、EDGN及びNGは液体である)と接触させる。スティックの色は、パッドが微量の固体爆発物と接触するスポットで直ちに赤色から緑色へ変わる。これらの緑色のスポットは褐色になりパッド全体に広がる。
【0065】
(実施例6)
固体状態のニトロアミン(例えばヘキソーゲン、オクトーゲン、ニトロ尿素)の検出
別々に、微量の固体ニトロアミンを一滴(5~10μl)のアセトニトリル中の有機超塩基(例えばP1-t-Bu)の溶液(20vol.% P1-t-Bu)により湿らせる。活性化させた試験片(実施例1のように調製される)を懸濁液と接触させる。パッドの色は直ちに赤色から褐色へ変わる。
【0066】
比較例1
ニトロトルエン(例えば2,4-ジニトロトルエン、2,4,6-トリニトロトルエン)の検出
別々の微量のこれらの爆発物、例えば2,4-ジニトロトルエン又は2,4,6-トリニトロトルエンを、有機超塩基(例えばアセトニトリル中のP1-t-Buの20vol.%の溶液)と接触させる。溶液は直ちに無色から濃い紫色(TNT)又は藍色(DNT)になる。この場合活性化された試験片は必要ない。
【0067】
(実施例7)
溶液からのHMTD及びTATPの検出
溶液中のHMTD及び/又はTATPの検出において、300μLのNi-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)ポルフィリン(CH2Cl2中、50μM)及び50μLのトリフルオロ酢酸(13M)を試料管に移した。10μLの25.3μM溶液(CH2Cl2中の別々のHMTD又はTATP)を加えた後、ポルフィリンのπ-ラジカルカチオンの形成に起因して溶液は数分以内に緑色になった。この方法は0.18nmol(40ng)のTATP又は(50ng)HMTDを赤色から緑色への色変化として検出できると計算された。
同様に、過塩素酸カリウム(KClO3)の検出限界は270ngと決定され、硝酸アンモニウム(NH4NO3)の検出限界は85ngである。
【0068】
(実施例8)
構造2の合成、鎖: CH2(CF2)6、酸基: CO2H
V. Montanari、K. Kumar、Eur. J. Org. Chem. 2006年、4、874~877頁による配合に従い、塩化トシル及びトリエチルアミンを用いて2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロオクタン-1,8-ジオールを調製して、モノトシル化された種である2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ-8-ヒドロキシオクチル4-メチルベンゼンスルホナートを得た。ヨウ化カリウムとの反応により2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ-8-ヨードオクタン-1-オールを得た(V. Montanari、K. Kumar、Eur. J. Org. Chem. 2006年、4、874~877頁に従って合成される)。(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)、臭化カリウム、及び次亜塩素酸ナトリウムとの反応により2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ-8-ヨードオクタン酸を得た(J. Ignatowska、O. Shyshkov、T. Zipplies、K. Hintzer、G.-V. Roschenthaler、J. Fluor. Chem. 2012年、141、35~40頁から改変)。これを酸触媒エステル化においてメタノールと反応させてメチル2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ-8-ヨードオクタノエートを得た。その後のNi-ポルフィリン、亜ジチオン酸ナトリウム、及び重炭酸ナトリウムとの反応により、β位でペルフルオロ化酸により置換されたポルフィリンを得る(L. M., Jin、Z. Zeng、C.-C. Guo、Q.-Y. Chen、J. Org. Chem. 2003年、68、3912~3917頁から改変)。
【0069】
ポルフィリンに酸を結合させる別の方法は、ベータ位にピナコールエステル又はボロン酸を有するポルフィリンによる鈴木-宮浦カップリングである(Y. Zhao、J. Hu、Angew. Chem. Int. Ed. 2012年、51、1033~1036頁に基づく)。このポルフィリンは、N-ブロモスクシンイミド(NBS)による臭素化(T. Hu、T. Liu、C. Hu、J. Lang、J. Porphyr. Phtalocyanines 2018年、22、751~757頁に従う)及びその後のビス(ピナコラト)ジボロン、酢酸カリウム、及び[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドとの反応(G. Bringmann、D. C. G. Gotz、T. A. M. Gulder、T. H. Gehrke、T. Bruhn、T. Kupfer、K. Radacki、H. Braunschweig、A. Heckmann、C. Lambert、J. Org. Chem. 2008年、130、17812~17825頁の修正された形態)により得られた。最終工程において、塩基触媒エステルけん化によって酸が得られる。反応を以下に概略的に示す。
【0070】
【0071】
(実施例9)
構造3の合成、鎖: CH2(CF2)2、酸: CO2H
2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールから出発して、塩化トシル及びトリエチルアミンとの反応によりモノトシル化された種である2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシブチル 4-メチルベンゼンスルホナートを得た(V. Montanari、K. Kumar、Eur. J. Org. Chem. 2006年、4、874~877頁に従って合成される)。この化合物をヨウ化カリウムとの反応により2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヨードブタン-1-オールへ転化させた(V. Montanari、K. Kumar、Eur. J. Org. Chem. 2006年、4、874~877頁から改変)。(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)、臭化カリウム、及び次亜塩素酸ナトリウムとの反応により2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヨードブタン酸を生成させた(J. Ignatowska、O. Shyshkov、T. Zipplies、K. Hintzer、G.-V. Roschenthaler、J. Fluor. Chem. 2012年、141、35~40頁に従う)。メタノール中での酸触媒反応により、酸をメチルエステルへ転化させる。
【0072】
3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドから出発して、N-ブロモスクシンイミド(NBS)による臭素化によって2-ブロモ-3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドを得た(R. Labruere、P. Helissey、S. Debene-Finck、S. Giorgi-Renault、Lett. Org. Chem. 2012年、9、568~571頁に従って合成される)。その後、アルデヒドをエタン-1,2-ジオール及びp-トルエンスルホン酸によりアセタールとして保護する。これはtert-ブチルリチウムによるリチウム-ハロゲン交換を行う可能性を与える。次いでトリメチルボレートを加え、塩酸の添加により化合物を脱保護して(6-ホルミル-2,3,4-トリメトキシフェニル)ボロン酸を得る(G. Besong、D. Billen、I. Dager、P. Kocienski、E. Sliwinski、L. R. Tai、F. T. Boyle、Tetrahderon 2008年、64、4700~4710頁に従う)。この化合物をメチル2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヨードブタノエートとの鈴木-宮浦カップリングにおいて転化させてメチル2,2,3,3-テトラフルオロ-4-(6-ホルミル-2,3,4-トリメトキシフェニル)ブタノエートを得た(Y. Zhao、J. Hu、Angew. Chem. Int. Ed. 2012年、51、1033~1036頁に基づく)。
【0073】
その後、酸触媒縮合反応とそれに続く2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)による酸化においてポルフィリンが得られる(J. S. Lindsey、K. A. MacCrum、J. S. Tyhonas、Y. Y. Chuang、J. Org. Chem 1994年、59、579~587頁に従う)。M. Dommaschk、F. Gutzeit、S. Boretius、R. Haag、R. Herges、Chem. Commun. 2014年、50、12476~12478頁による処方に従ってニッケルアセチルアセトネートによるメタレーションを行い、その後酸を塩基性エステルけん化により放出させた。反応を以下に概略的に示す。
【0074】
【0075】
(実施例10)
TATPの検出のためのスワブ試験
耐溶媒性及び耐酸性の拭き取り布(例えば親水化ポリプロピレン)を使用してTATPにより汚染された表面を拭き取る。10mlのクロロホルム中に溶解させた酸としての、(CF2)8リンカー及びCO2H基を有する0.5mgのNi-ポルフィリン(構造2、調製は実施例8を参照)の溶液を拭き取り布にスプレーする。赤色から緑色への色変化はTATP若しくは別の過酸化物又はニトロアミン若しくはニトレート系の爆発物による汚染を示す。
【0076】
(実施例10)
試験の実際的な実施
プラスチック片(90×5mm)は一方の端にセルロースパッド(5×5mm)を備えている。パッドを有機溶媒中のNi-ポルフィリンの溶液で湿らせる。溶媒を蒸発させ、乾燥したパッドに赤色ポルフィリンを均一に含浸させた状態にしておく。このスティックは長期間保存可能である(乾燥した環境において室温で >2年)。使用前に、一滴(5~10μL)のペルフルオロペンタン酸をパッドに付着させて試験片を活性化させる。ここで試験片は活性のままであり約15分間はすぐに使用できる。酸は滴下ボトルから付着させてもよく、又はパッドの上空の容器から機械的な力により放出させてもよい。これらの実施例において、以下の検出限界を決定できた: TATP: 約40ng、KClO3: 約270ng、NH4NO3: 約85ng、硝酸尿素: 約350ng、HMTD: 約50ng。
【0077】
比較例1
比較のために、M. K. Chahal、M. Sankar、Dalton Trans. 2016年、45、16404~16412頁に従って電子リッチなNi-ポルフィリン(Ni-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)ポルフィリン)を調製し、M. K. Chahal、M. Sankar、Dalton Trans. 2017年、46、11669~11678頁に従ってシアン化物(CN-)、フッ化物(F-)、及びピクリン酸のセンサーとして使用した。これらの公開文献で使用されるNi-ポルフィリンへ、トリフルオロ酢酸(TFA)及びTATP及びHMDTを添加した。室温で1分後、非特異的な反応が生じた。したがって、Chahalらにより記載されたこれらのポルフィリンは過酸化物系爆発物の検出に適していない。
【0078】
比較例2
2、3、又は4位でメソフェニル環に直接結合しているCO2H基を有するNi-テトラ(カルボキシフェニル)ポルフィリン(B. Du、A. Langlois、D. Fortin、C. Stern、P. D. Harvey、J. Clust. Sci. 2012年、23、737~751頁)は適切ではなく、これはカルボン酸基が過酸化物系又はニトレート系爆発物を開裂させるのに十分な酸性(pKa 4.2)ではないためと仮定される。Ni-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(CAS# 136300-60-2)を合成し(B. J. Johnsonら、Sensors 2010年、10、2315~2331頁)、塩化メチレンに溶解させた。TATP及びHMDTを加えた。色変化は観察されなかった。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を検出するための分析方法であって、過酸化物系化合物、ニトレート系化合物、又はニトロトルエン系化合物、又はニトロアミン系化合物を含有することが疑われる試料と、Ni-ポルフィリン及び酸を含む又はNi-ポルフィリン及び酸からなる組成物とを接触させる工程を含む、分析方法。
【請求項2】
検出しようとする前記化合物が爆発物である、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
過酸化物系爆発物が、トリアセトントリペルオキシド(TATP)、ジアセトンジペルオキシド(DADP)、メチルエチルケトンペルオキシド(MEKP)、及び/又はヘキサメチレントリペルオキシドジアミン(HMTD)のうちの少なくとも1種であり、ニトレート系爆発物が、硝酸カリウム(KNO
3)、硝酸アンモニウム(NH
4NO
3)、硝酸尿素(NH
2COHNH
2
+・NO
3
-)、ニトログリセリン(NG)、エチレングリコールジニトレート(EGDN)、及び/又はペンタエリトリトールテトラニトレート(PETN)であり、ニトロアミン系爆発物が、1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジナン(ヘキソーゲン、RDX)、1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラゾクタン(オクトーゲン、HMX)、2,4,6-トリニトロフェニルメチルニトロアミン(テトリル)、2,4-ジニトロトルエン(DNT)若しくは2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)、及び/又はニトロ尿素(NH
2CONHNO
2)である、請求項1又は2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記試料をNi-ポルフィリン及び酸と接触させる前に、前記試料を最初に超塩基により処理することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項5】
前記試料をNi-ポルフィリン及び酸と接触させる前に、ニトロアミン及びニトロトルエンを含有する化合物を有機超塩基により前処理することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項6】
有機超塩基による処理後のニトロアミンがNi-ポルフィリンにより存在を示され、最終的に褐色を生じ、ニトロトルエンが超塩基による処理時に直ちに濃い紫色を生じることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項7】
前記組成物が酸安定性溶媒を含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項8】
前記酸が遊離酸であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項9】
前記酸がNi-ポルフィリンへの少なくとも1つの置換基により形成されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項10】
前記試料が、過酸化物系爆発物を含有することが疑われる容器から又は環境から採取される気体試料であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項11】
Ni-ポルフィリン、酸、及び場合により酸安定性溶媒を含む又はそれらからなる前記組成物が、多孔性酸安定性材料及び/又はゲルを形成する膨潤性液体吸着酸安定性材料である担体により保持され、前記担体がNi-ポルフィリン及び酸を含有する液体組成物の支持材料をなすことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項12】
Ni-ポルフィリン、酸、及び場合により酸安定性溶媒を含む又はそれらからなる前記組成物が液体であり、液滴の形態である前記試料と接触させられることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項13】
あらゆる過酸化物を検出するために前記試料の一部とNi-ポルフィリン及び強酸を含む組成物とを接触させ、過酸化水素のみを検出するために前記試料の一部とNi-ポルフィリン及び弱酸を含む組成物とを接触させることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項14】
過酸化物系化合物がNi-ポルフィリンにより存在を示され、最終的に緑色を生じ、ニトレート系化合物及びニトロアミン系化合物がNi-ポルフィリンにより存在を示され、緑色を生じ最終的に褐色を生じることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項15】
過酸化物系化合物、ニトレート系化合物、ニトロトルエン系化合物、又はニトロアミン系化合物の検出に使用するための分析方法において使用するための組成物であって、Ni-ポルフィリン、-1.2~0.23のpK
aを有する酸、及び場合により酸安定性溶媒を含む又はそれらからな
り、
前記酸がNi-ポルフィリンへの置換基であり、少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーによってNi-ポルフィリンのピロール環に結合している、及び/又は酸置換基がNi-ポルフィリンをメソ位で置換しているアリール基に直接若しくは中間リンカーにより結合しており、リンカーが少なくとも1個の原子の鎖長を有することを特徴とする、組成物。
【請求項16】
過酸化物系化合物、ニトレート系化合物、ニトロトルエン系化合物、又はニトロアミン系化合物の検出に使用するための分析方法において使用するための組成物であって、Ni-ポルフィリン、-1.2~0.23のpK
a
を有する酸、及び場合により酸安定性溶媒を含む又はそれらからなり、
前記Ni-ポルフィリンが、少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーにより少なくとも1つのアリール基に結合している酸基で置換されていること、及び/又は前記ポルフィリンが、少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーによりピロール基に結合している酸基で置換されていること、及び/又は前記Ni-ポルフィリンが、Ni-ポルフィリンをメソ位で置換している少なくとも1つのアリール基に直接結合している少なくとも1つの酸基で置換されていることを特徴とする
、組成物。
【請求項17】
前記酸が遊離酸であることを特徴とする、請求項
16に記載の組成物。
【請求項18】
前記酸がNi-ポルフィリンへの置換基であり、少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーによってNi-ポルフィリンのピロール環に結合している、及び/又は酸置換基がNi-ポルフィリンをメソ位で置換しているアリール基に直接若しくは中間リンカーにより結合しており、リンカーが少なくとも1個の原子の鎖長を有することを特徴とする、請求項
16に記載の組成物。
【請求項19】
多孔性及び/又は膨潤性である担体上に保持されていることを特徴とする、請求項15から
18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
酸安定性溶媒中の溶液であることを特徴とする、請求項15から
18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポルフィリンが、少なくとも1つの電子供与性基で置換されている少なくとも1つのアリール基によりメソ位の少なくとも1箇所で置換されているNi-ポルフィリンであることを特徴とする、請求項15から
20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
キットオブパーツにおいて、場合により酸安定性有機溶媒と混合されている、液体としての酸を入れた容器との組合せ、場合により液体超塩基を入れた容器との組合せで、Ni-ポルフィリンが、プラスチック片に結合された多孔性担体上に存在することを特徴とする、請求項15から
21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
キットオブパーツにおいて、酸安定性有機溶媒を入れた容器との組合せ、場合により液体超塩基を入れた容器との組合せで、Ni-ポルフィリンが-1.2~0.23のpKaを有する結合した酸基を有し、Ni-ポルフィリンがプラスチック片に結合された多孔性担体上に存在することを特徴とする、請求項15から
21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
キットオブパーツにおいて、場合により液体超塩基を入れた容器との組合せで、Ni-ポルフィリンが-1.2~0.23のpKaを有する遊離酸と混合されており、Ni-ポルフィリン及び遊離酸が容器中の酸安定性有機溶媒中に存在することを特徴とする、請求項15から
21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
キットオブパーツにおいて、場合により液体超塩基を入れた容器との組合せで、Ni-ポルフィリンが-1.2~0.23のpKaを有する結合した酸基を有し、Ni-ポルフィリンが容器中の酸安定性有機溶媒中に存在することを特徴とする、請求項15から
21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
試料中の化合物を検出するのに適した分析デバイスを製造する方法であって、場合により不活性ベース材料に結合された、多孔性及び/又は膨潤性である担体を提供する工程と、Ni-ポルフィリン及び-1.2~0.23のpKaを有する酸を含む又はNi-ポルフィリン及び-1.2~0.23のpKaを有する酸からなる組成物を前記担体上に添加する工程とを含む又はそれらの工程からなる、方法。
【請求項27】
前記酸が、遊離酸である、若しくは少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーによりNi-ポルフィリンのピロール環に結合している酸基である、及び/又は酸置換基が、Ni-ポルフィリンをメソ位で置換しているアリール基に直接若しくは少なくとも1個の原子の鎖長を有する中間リンカーにより結合していることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物を有機溶媒中の溶液として担体上に添加し、続いて担体から溶媒を蒸発させることを特徴とする、請求項26又は27に記載の方法。
【国際調査報告】