(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ハイブリッドカーボンナノ粒子をベースとした光合成刺激剤、関連する製造方法及び農作物におけるナノバイオスティミュラント及びナノ肥料としての関連する使用
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20230405BHJP
C01B 32/15 20170101ALI20230405BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20230405BHJP
C05D 9/02 20060101ALI20230405BHJP
C05G 1/00 20060101ALI20230405BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A01N59/00 Z
C01B32/15
A01P21/00
C05D9/02
C05G1/00 A
A01G7/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546072
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 BR2021050039
(87)【国際公開番号】W WO2021207807
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】BR1020200021729
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522300673
【氏名又は名称】フンダサオ ウニヴェルシダッド デ ブラジリア
【氏名又は名称原語表記】FUNDACAO UNIVERSIDADE DE BRASILIA
(71)【出願人】
【識別番号】522300684
【氏名又は名称】クリルテック ソルソイス サステンタヴェイス エム エンジンアリア リミターダ
【氏名又は名称原語表記】KRILLTECH SOLUCOES SUSTENTAVEIS EM ENGENHARIA LTDA
(71)【出願人】
【識別番号】522300695
【氏名又は名称】エンプレサ ブラジレイラ デ ペスキサ アグロペクアリア-エンブラパ
【氏名又は名称原語表記】EMPRESA BRASILEIRA DE PESQUISA AGROPECUARIA - EMBRAPA
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェイラ ロドリゲス, マルセロ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス ファリア, ロゲリオ
(72)【発明者】
【氏名】ダ シルヴァ, ジュシマール
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェイラ ダ シルヴァ, アタイルソン
(72)【発明者】
【氏名】ガルバ ブサト, ジャデール
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ ソウサ, マルセロ
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド パチェコ リマ, カルロス
(72)【発明者】
【氏名】モラエス, ロチャ ゲデス, イタロ
(72)【発明者】
【氏名】ブランダオ, ブラガ, マルコス
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス, フォンテネレ, マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィトリア ダ シルヴァ ロドリゲス, カリメ
【テーマコード(参考)】
2B022
4G146
4H011
4H061
【Fターム(参考)】
2B022EA01
2B022EA10
4G146AA07
4G146AA15
4G146AA16
4G146AB04
4G146AC16A
4G146AC30A
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4H061EE19
4H061EE20
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4H061KK02
4H061LL15
(57)【要約】
本発明は、農薬分野に属する。本発明は、植物の葉及び/又は根への適用時に光合成を刺激し、且つ生育及び生産性を高める生理学的反応も刺激する、発光特性及び養分輸送特性を有するカーボンドットをベースとしたナノコンポジットの調製に関する。そのような反応は、文献中でバイオスティミュラント及び/又はバイオ肥料として分類される材料において特徴的である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光特性及び養分輸送特性を有するハイブリッドカーボンナノ粒子を含むことを特徴とする、光合成刺激剤。
【請求項2】
前記カーボンナノ粒子が、多量栄養素で、中でもカリウム、窒素、カルシウム、リン、マグネシウム及び硫黄、好ましくはリンで、又はマンガン、ホウ素、亜鉛、鉄、銅、モリブデン及び塩素等の微量栄養素で、ドープされていることを特徴とする、請求項1に記載の光合成刺激剤。
【請求項3】
前記カーボンナノ粒子が、青色/緑色/赤色領域における多状態及び放出を吸収することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光合成刺激剤。
【請求項4】
前記カーボンナノ粒子が、532nm波長領域における吸収を示し、及び645nm波長領域を中心とする放出を示すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光合成刺激剤。
【請求項5】
前記カーボンナノ粒子が、平均径が5nmである球形を示すことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の光合成刺激剤。
【請求項6】
部分的な酸-塩基中和反応であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光合成刺激剤の製造方法。
【請求項7】
カーボンドットナノ粒子の形成が、グルタミン、有機酸、クエン酸、酒石酸、オレイン酸、リンゴ酸、フマル酸、イソクエン酸、コーンスターチ等、好ましくはクエン酸及び酒石酸である、カーボンリッチなマトリックスから行われることを特徴とする、請求項6に記載の光合成刺激剤の製造方法。
【請求項8】
使用される塩基溶液は、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アニリン、メタルアミン、尿素及びチオ尿素、好ましくは水酸化アンモニウム及び尿素を含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の光合成刺激剤の製造方法。
【請求項9】
溶媒として水を使用することを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の光合成刺激剤の製造方法。
【請求項10】
注入ポンプにより酸及び塩基溶液を混合容器に注入し、続いてリサイクル物及びドーパント(微量栄養素及び多量栄養素又は刺激剤)を受けるための第2の混合容器に再移送し、次いで、材料の吐出を抑え、かつ内部において一定の圧力及び100~250℃の間、好ましくは150℃の温度を維持するバルブを備えるピストンフローチューブ型反応器にポンプ注入し、プロセスを乱流流体流出のレジメンに維持し、その後、前記チューブ型反応器から出てくる材料流を、同様の加熱パターン下で、連続撹拌槽型反応器に吐出し、前記反応器の吐出流を、上澄みを取り除きかつ底の材料を再循環させる分離システムに通過させ、前記反応器の前に挿入し、初期の試薬流を添加し、還流プロセスを生成物が形成されるまで繰り返す、連続フロースルーシステムにおいてカーボンドットナノ粒子の形成が行われることを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載のバイオ農薬ナノ製剤の製造方法。
【請求項11】
バイオスティミュラントとして使用することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光合成刺激剤の使用。
【請求項12】
多量栄養素及び微量栄養素のキャリアとして使用することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光合成刺激剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
[01]本特許は、農薬分野に関する。本発明は、植物の葉及び/又は根への適用時に光合成を刺激し、且つ生育及び生産性を高める生理学的反応も刺激する、発光特性及び養分輸送特性を有するカーボンドットをベースとしたナノコンポジットの調製に関する。そのような反応は、文献中でバイオスティミュラント及び/又はバイオ肥料として分類される材料において特徴的である。
【0002】
[従来技術]
[02]連続的な人口増加は、止まらない都市化とともに、農村部の労働力の減少及び気候変動への適応に従って、食料需要の増加、限定された農業エリアでの持続的な生産という課題を克服するように、農業及び他の生産セクターに圧力をかけている(JAGGARD;QI;OBER、Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences、2010)。
【0003】
[03]UN(国際連合)によれば、世界人口は2050年には90億人を超え、食料生産は50~70%増加させなければならない。同時に、水及びエネルギーの需要は、比例的に増加する(KEATINGら、Global Food Security、3、125~132、2014)。
【0004】
[04]FAO(国際連合食糧農業機関)は、農地の枯渇及び劣化、水源の劇的な減少及び食料安全保障及び環境システム保全へのその影響について懸念を示している(PRASAD;BHATTACHARYYA;NGUYEN、Frontiers in microbiology、8、1014、2017)。例えば、食料及び動物飼料の両方の穀物の需要は、現在の21億トンを超え、2050年までに30億トンに到達し得る(KEATINGら、Global Food Security、3、125~132、2014)。
【0005】
[05]そのような悲観的な事態は、天然資源に負荷を与えずに、食料、エネルギー、及び水への増大する世界的な需要を満たす代替法の開発のための世界努力を急務とする(MUELLERら、Nature、490、25~257、out.2012)。
【0006】
[06]歴史的に言えば、農業が最も安定で重要なセクターであり、数世紀にわたり、食料及び動物飼料産業のための原料の供給を担ってきた。農業はバイオテクノロジー及び化学セクターにより導入された様々な技術的革新から恩恵を受けることから、1960年代の緑の革命は、世界的な食料供給の大幅な増加を手助けした。しかしながら、緑の革命後の合成殺虫剤及び肥料への強い依存は、環境システム及び公衆衛生へ悪影響を及ぼす結果となった(EUROPEAN PUBLIC HEALTH ALLIANCE、Agriculture and Public Health: Impacts and pathways for better coherence 2016)。
【0007】
[07]殺虫剤及び肥料の乱用は、環境システムの汚染だけでなく、水環境及び土壌の富栄養化を助長する(TILMANら、Nature、490、254~257、2002;BHAT、Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition、17、91~94、2008)。殺虫剤の残留物は、新鮮な水源(ALBUQUERQUEら、Environmental science. Processes & impacts、18、779~787、2016)、果実、加工食品(CABRAS、ANGIONI,J. Agric. Food Chem. 48、967~973 2000)及び母乳中でも発見されている(BEDIら、Science of The Total Environment、463~464、720~726、2013)。
【0008】
[08]Martinら(2018)は、癌と、殺虫剤への曝露との間の関連性を観測し、殺虫剤が悪性大腸癌新生物の病因に大いに寄与し得るため、人々の殺虫剤の残留物への曝露量のモニタリングが必要であると提唱している(Martinら、Chemosphere 209、623~631、2018)。
【0009】
[09]殺虫剤の使用に加え、土壌劣化を助長するもう1つの農業慣行は、灌漑システムである。農業生産のほぼ半数は、現在は灌漑作物である。そのような常習的慣行は、結果としてそのような耕作地を最終的に放棄する原因である土壌の酸性化、土壌中の鉱物の抽出率又は塩形成の加速を助長し得る(PRESLEYら、Soil Science Society of America Journal、68、1916~1926 2004)。
【0010】
[10]従って、持続可能な農業技術開発が進展しており、この文脈において、生産性を増加させ、同時に、環境負荷を低減できると思われることから、従来の農業の欠点を克服する可能な解決策としてナノテクノロジーが登場した(BHATTACHARYYA;NGUYEN、Frontiers in microbiology、8、1014、2017)。
【0011】
[11]ここ数年間では、農業における徐放性肥料、殺虫剤及び除草剤、センサー及び植物の生育及び発芽のためのナノマテリアルの段階的なインプットが観測されている(GOGOS;KNAUER;BUCHELI、Journal of Agricultural and Food Chemistry、60、9781~9792 2012;VISHWAKARMAら、Nanomaterials in Plants, Algae, and Microorganisms、1、473~500、2017;MULLEN、Nature Nanotechnology、14、515~516 2019)。幾つかの報告は、主に疾病管理及び作物保護に関する農業のナノテクノロジーに関する科学論文及び特許出願が増加傾向にあることを示している(FRACETOら、Frontiers in Environmental Science、4、20 2016)。さらに、ナノマテリアルは既に植物育種及び遺伝子工学目的で使用されている(AMENTAら、Regulatory Toxicology and Pharmacology、73、463~476 2015)。
【0012】
[12]多くの研究では、幾つかの異なる方法で、農業セクターにおけるナノテクノロジーの有益な役割を提案している(KUMARら、Journal of Environmental Science and Technology、16、2175~2184 2019)。最近の報告では、産業における無機ナノ肥料の使用に伴う利点や制限だけでなく、ナノ肥料を適用する効果的且つ効率的な方法及びその方法による経済的リターンの適用性が強調されてきた(RALIYAら、Metallomics、7、1584~1594、2018)。
【0013】
[13]それにも関わらず、農業用途でのナノテクノロジーの使用は、他の産業セクターに比べて依然としてわずかである(CHANDRIKAら、Nanotechnology Prospects and Constraints in Agriculture、159~186、2018)。農業におけるナノテクノロジーの具体的な実装には、一般の人々の安全性を保証する等、埋める必要のあるギャップがある。農業及び食料開発におけるナノテクノロジーの他の制限としては、規制事項及び世論がある(FRACETOら、Frontiers in Environmental Science、4、20 2016)。
【0014】
[14]さらに、ナノ肥料の使用を考慮した研究の大部分は、微量栄養素(亜鉛、銅、鉄、マンガン)の輸送に焦点を当てたものとなっており、多量栄養素(カリウム、窒素、硫黄、カルシウム、及びマグネシウム)の高度な輸送は疎かにされてきた(RALIYAら、Metallomics、7、1584~1594、2018)。
【0015】
[15]農業事業セクターにおいて既に使用されているナノ構造物のうち、無機ナノマテリアル(金属酸化物及び金属ナノ粒子(NP))はこのセクターでの全体の適用の55%を占め、ナノカプセルは26%を占め、ナノコンポジットは7%に対応し、カーボン系ナノマテリアル(カーボンナノチューブ、ブラックカーボン及びフラーレン)は報告された技術のうちわずか6%で調査されている(PETERSら、Trends in Food Science & Technology、54、155~164 2016)。
【0016】
[16]金属ナノ粒子は、植物の病気及びストレス耐性を制御するのに使用することもできる。例えば、銀ナノ粒子は、幾つかの植物病原体に対する優れた結果を示しているため、農業において有望な可能性を提案するものである(WORRALLら、Agronomy、8、258、2018)。しかし、幾つかの研究は、これらのナノマテリアルが食物連鎖を通して土壌団粒及びナノ粒子の生体内蓄積及び養分移行を現す可能性があることを示しており(
図1)、(DE LA TORRE ROCHEら、Environmental Science and Technology、49、11866~11874、2015;UNRINEら、Environmental Science and Technology、46、9753~9760、2012;RALIYAら、Metallomics、7、1584~1594、2018)、さらに、土壌生物バランスの変化を誘発する可能性がある(GE;SCHIMEL;HOLDENA、Applied and Environmental Microbiology、78、6749~6758、2012)。
【0017】
[17]ヒト及び環境におけるナノ農薬残留物の生体内蓄積は、生産チェーンにおいてそのような添加物が緩やかに積もり増加するのは必然であるため、解決すべき課題であり、これらの残留物が発見される可能性がある全ての水準を考慮し、また、そのようなインプットの安全性パラメータを決定し、このように、環境負荷を確実に最小限にする必要がある。
【0018】
[18]この文脈において、本発明は、植物により完全に代謝され、食物連鎖の中で移行しない、すなわち、養分が移行しないカーボンナノ粒子、又はカーボンドットをベースとする点で、金属ナノ粒子を使用する全ての技術を凌駕する。
【0019】
[19]さらに、金属ナノ粒子は土壌微生物に効果がある。Geら(2012)は、DNAベースのフィンガープリント分析法により、土壌細菌集団におけるTiO2及びZnOナノ粒子の効果を評価した(GE;SCHIMEL;HOLDENA、Applied and Environmental Microbiology、78、6749~6758、2012)。得られた結果は、これらの材料が、土壌生物バランスに変化を誘発したことを示した。リゾビウム目(Rhizobiales)、ブラディリゾビウム科(Bradyrhizobiaceae)及ビブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)(窒素固定細菌)個体数ノ減少及ビスフィンゴモナス科(Sphingomonadaceae)及ビストレプトマイセス科(Streptomycetaceae)の個体数に対する好影響が観測された(GE;SCHIMEL;HOLDENA、Applied and Environmental Microbiology、78、6749~6758、2012)。
【0020】
[20]それらを受け、カーボンナノマテリアルは、低毒性を有し、生体適合性であり、生体内蓄積性ではないため、持続可能な農業の代替物を開発するものとして有望視されている。カーボンナノマテリアルは、肥料として機能するだけでなく、種の発芽及び植物の生育度の上昇に有益な効果を示した(ZHENGら、ACS Omega、2、3958~3965、2017)。
【0021】
[21]カーボンドットは、10nm未満の寸法を有するパラ結晶の球状ナノ粒子の類であり、アモルファスカーボン界面により封入された高度に配列された多環芳香族ドメイン(コア)で構成される(CHOIら、Chemistry - An Asian Journal、13、586~598、2018)。カーボンドットは2004年、単一壁カーボンナノチューブの精製プロセス中に、初めて単離された。(XUら、Journal of the American Chemical Society、120、12737~12737、2004)。
【0022】
[22]カーボンドットの調製方法は先行技術において多数表されている。
【0023】
[23]Liuら(2016)は、カーボン源として黒鉛電極を使用することによりカーボンドットを合成する電気化学的方法を採用している(LIUら、Analyst、141、2657~2664、2016)。研究者らは、電解質溶液として水酸化ナトリウム/エタノールを含む電気化学セル内に、陰極及び陽極として黒鉛ロッドを使用する。電気化学的回路を通る電流の流れは、結果として黒鉛ロッドのチップを形成し、このようにして異なる発光特性(広い波長域)を有するカーボンドットが得られる。著者らによって得られたカーボンドットは多分散であるため、発光挙動における差は、混合径及び明確な表面上の不良に起因する可能性がある。この方法のもう1つの欠点は生成物が低収率で黒鉛ロッドが高コストであること、及び精製段階の必要性である。上述の態様は電解により生成されるカーボンドットの商業用途を実施困難とすることを強調することが重要である。
【0024】
[24]電気化学的ルートも記載されており(RAMILA DEVI;VIGNESH KUMAR;SUNDRAMOORTHY、Journal of the Electrochemical Society、165、G3112~G3119、2018)他の特性を達成するための様々な電解質溶液の組成が提案されている。しかし、電気化学的方法の明らかな制限は、大きな粒度分布及び形態であり、通常、合成の終わりでは、得られる材料を後で分離し、精製することを要する(RAMILA DEVI;VIGNESH KUMAR;SUNDRAMOORTHY、Journal of the Electrochemical Society、165、G3112~G3119、2018)。
【0025】
[25]燃焼(combustion)又は燃焼(burning)等、カーボン源を要する幾つかの反応プロセスで生成される煤は、カーボンドットの合成のための前駆体として使用されてきた。これらの材料/副生成物を濃酸(硝酸等)とともに還流システムの中に導入した後、比較的小さいナノ粒子をサイズ分離する(LIUら、Angewandte Chemie、46、6473~6475、2007)。上記酸の強い酸化性は、煤中のカーボン凝集物の分解に重要であり、上記酸はカーボンコロイドとさらに反応して、粒子の蛍光放出とともに、酸素リッチな表面及び窒素リッチな表面不良を生じる。しかしながら、そのような煤ベース又はカーボンリッチな副生成物材料は、カーボンドットが低収率となり、大量の毒性残留物が形成される結果となった。
【0026】
[26]カーボン源の水熱処理が、カーボンドットを製造するのに最も一般的な手順となっている。このアプローチは、分子及び残留物等の各種源からナノ粒子を生成することを可能とする(DE YROら、AIP Conference Proceedings、2083、0200007、2019)。
【0027】
[27]カーボンドットの水熱合成の本質は、黒鉛コアの形成のためのビルディングブロックとして作用するカーボン分子の高温誘発核生成/縮合で開始するプロセスである。水熱合成スキームのもう1つの重要な特徴は、カーボン試薬由来の幾つかの残留物を黒鉛コアの表面上に保持し、それにより、粒子の様々な制御可能な機能性及び光学特性を付与することである(WANGら、Analytical Methods、10、2775~2784、2018)。
【0028】
[28]前述の方法とは対照的に、水熱ルートは、狭い粒度分布を有し、一定した発光挙動を示す粒子を提示する。しかし、制限因子は、合成タイミングに関連し、概して高く、内部の圧力を制御するシステムの使用により収率も低く抑えられる。
【0029】
[29]De Medeirosら(2019)は、マイクロ波系水熱合成を経由してカーボンドットを得た。マイクロ波の照射は、従来の水熱方法で使用されている熱源に置き換わる。マイクロ波加熱により生成するカーボンドットは、溶液中及び固相中の両方で強い発光を放出する。プロセスに従って放出されるエネルギー量はかなり高く、装置自体の中で制御できるため、合成時間はかなり減少する。得られる粒子は水熱方法を経由して得られるものと類似しているが、収率は低下し、合成で使用される器具の強度に制限される(DE MEDEIROSら、Journal of Materials Chemistry C,7、7175~7195、2019)。前述の態様は、水熱反応を経由したカーボンドットの大規模製造を阻害する。
【0030】
[30]カーボンドットを作製するための高温炭化は水以外の溶媒中で実施された。Max-Planck Institut for Polymerforschungの研究者らは、例えば、オクタデセン及び1-ヘキサデシルアミン等の有機溶媒等の非配位性溶媒中に分散したクエン酸等のカーボン源の熱処理により高発光性のカーボンドットが生成することを示している(WANGら、Chemistry of Materials、22、4528~4530、2010)。逆に言えば、合成由来の残留物は、そのような条件でのカーボンドットの増産の障害となる。
【0031】
[31]前述の技術はカーボンドットの製造に効果的であるが、それらは均一で選択可能な特徴を有する大量の材料の製造に関する障害を共有する。カーボンドットが高収率で生成されるものであっても、合成は、電気化学的及び水熱プロセスでのように、得られる材料の再現性及び品質の問題に直面する。本発明により提案される方法は、カーボンドットの大規模製造を可能とし、水熱方法を使用せず、毒性試薬又は残留物が存在しないという点で前述の方法と異なることは特筆すべきである。本発明では、カーボンドットの製造は、再現性及び高収率を保証する閉回路における連続的なフロー反応を介して実施される。提案された方法は全ての水及び残留物を再利用し、且つ温室ガスを生成しない。
【0032】
[32]カーボンドット製造技術に加え、原料と合成材料の状態は、表面組成、機能性及び生物学的活性に影響を与える因子であるため、生物学的環境でのカーボンドットの検証は注意を要することを強調しておくことが重要である。
【0033】
[33]少数の例には、水熱方法は、表面上に前駆体分子の断片を含有するカーボンドットを生じることが説明されている。例えば、Zhaoら(2017)により報告された文献には、卵黄油の熱分解により製造されるカーボンドットは、薬物であるヘモコアグラーゼに似た抗出血作用を示す(Zhao,Y.、Zhang,Y.、Liu,X.ら、Scientific Report、7、4452、2017)。
【0034】
[34]中国特許出願公開第103980894号では、水熱ルートにより葉酸から製造されるカーボンドットは、特に、葉酸と相互作用する細胞膜タンパク質(葉酸受容体)と特異的に相互作用することにより腫瘍細胞を選択的に認識することができた。それぞれのカーボンドットは他の前駆体から製造される他のナノ粒子と類似する形態学的及び物理化学的特徴の全てを示した。それでも、表面上の葉酸断片の存在は、それらのカーボンドットを特有であり、特許保護に適格なものとする。
【0035】
[35]もう1つの例では、鶏卵膜の熱分解により製造されるカーボンドットは、DNA及びRNAの断片を選択的に認識することができた(Pramanikら、PCCP、20、20476、2018)。他のカーボン源の熱分解により製造されたカーボンドットは、核酸を認識する選択的な能力を示さなかったことは特筆すべきである。
【0036】
[36]国際公開第2018/160142号では、酸性条件においてポリオキシエチレンの縮合により製造されるカーボンドットは、抗生物性を有するナノマテリアルを生じ、不活性ポリマーフィルム中に組み込まれた。もう一度、上記形態学的及び物理化学的特徴は、粒子の表面特性が、それらの保護を可能とした特定の生物学的活性を生じるものであったが、他のカーボン源により製造されたカーボンドットの形態学的及び物理化学的特徴と類似している。
【0037】
[37]従って、形態学的及び物理化学的な側面では、通常、カーボンドットはカーボンスフィアのみであることが示唆されているとしても、合成プロセス及びカーボン源は、カーボンドットの表面組成及び生物学的特性に影響を与える。
【0038】
[38]農業における肥料としてのカーボンドットの使用は、Zhengら(2017)により公開された文献において提案されており、ナノ粒子の前駆体として花粉を使用することが開示されている(ZHENGら、ACS Omega、2、3958~3965、2017)。試験は水耕栽培レタスで実施され、20mg・L-1の溶液で処理された植物は、約50%生育することを示している。結果は、植物の生育を担うタンパク質又は酵素との選択的相互作用を示唆していない。著者らは単に肥料としてのカーボンドットの使用を提案している。
【0039】
[39]Liら(2018)により公開された研究では、黒鉛の電解により製造された5つのカーボンドットは、コメにおいて固有の表面組成及び独特の反応を示した(LIら、ACS、Applied Biomaterials、1、663~672、2018)。
【0040】
[40]粒子間の植物の生育作用における有意な差が記載されたが、大きさ及び物理化学的特徴が類似しているとしても、各粒子は固有の特徴を有することが明らかにされている。さらに、合成されたカーボンドットは植物の遺伝物質と相互作用し、生育遺伝子Os06g32600の発現を促すことが観測された。カーボンドットが大気中のCO2の固定を担うルビスコタンパク質と相互作用したことがさらに観測された(LIら、ACS、Applied Biomaterials、1、663~672、2018)。
【0041】
[41]上記の全てについて、本発明は、細胞膜タンパク質と特異的に相互作用する植物ホルモンの反応と類似した反応を模倣する特定の性質を有し、植物の加速的生育を促し、多量栄養素及び微量栄養素を植物細胞中に直接的に輸送するように専ら開発された合成有機触媒化プロセスにより得られたカーボンドットを扱う点で他の技術を凌駕する。
【0042】
[42]本特許に記載されているカーボンドットは、気孔をより長時間開いたままにし、試験培地の加速的生育を促すため、バイオスティミュラントとして機能し、養分の吸収を強化し、植物による水使用を改善し、光合成率を高める。
【0043】
[43]本明細書に提案されるカーボンドットの生物学的活性は特有であり、オーキシン、ジベレリン、及びサイトカイニンやその他のような植物ホルモンの作用に類似する植物代謝における粒子の作用が、分子レベルで起きることを示唆している。
【0044】
[44]上記の全てについて、本発明に開示されているような、細胞膜タンパク質H-ATPaseを活性化する植物ホルモンの模倣活性を有するバイオスティミュラントの開発は先行技術において想定外である。
【0045】
本発明は、
図1~19に基づいてより容易に理解することができ、それらの記載は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】金属及び金属酸化物ナノ粒子による食物連鎖の富栄養化プロセスを図示している。
【
図2】開発された方法からバイオスティミュラントを製造するスキームを示している。
【
図3】開発された方法により合成されたカーボンドットのフーリエ変換赤外スペクトルを示している。
【
図4】カーボンドットの形成及び合成前駆体由来の表面基の保持を示している。
【
図5】カーボンドットのUV-Vis範囲の吸光スペクトル及び360nm~620nmの間の励起放出スペクトルを示している。
【
図6】クロロフィルa及びbの吸光スペクトルを示している。
【
図7】Aでは、XPSスペクトル、及び、多量栄養素である窒素、リン及びカリウム(N、P、K)を計測することによるバイオスティミュラント組成を示している。Bでは、リンの高解像度スペクトルを示している。Cでは、顕微鏡画像及び高解像度透過型電子顕微鏡画像(HRTEM)及び、Dでは、粒子径分布を示している。
【
図8】50mg/Lの10ml体積の濃度のカーボンドットへ添加された養分溶液の体積(mL)の関数としてのゼータ電位(Z)及び流体力学的径を示している。
【
図9】4ブロック中の植物分布P1(白)及びP2(青)を示している。
【
図10】様々な濃度のカーボンドットで処理されたグループP1の、処理開始時から17日(A)、28日(B)、42日(C)及び56日(D)後のサンプル分布を示している。
【
図11】様々な濃度のカーボンドットで処理されたグループP2の、処理開始時から17日(A)、28日(B)、42日(C)及び56日(D)後のサンプル分布を示している。
【
図12】グループB1、B2、B3、及びB4について、植生ハウス中の処理分布を示している。
【
図13】「Finestra」トマトのブロックB1及びB2について、右側には光合成率、及び左側には水使用効率に対する様々な濃度でのカーボンドットを用いた処理効果を示している。
【
図14】「Finestra」トマトのブロックB3及びB4について、右側には光合成率、及び左側には水使用効率に対する様々な濃度でのカーボンドットを用いた処理効果を示している。
【
図15】水耕栽培レタス作物体における、水使用効率に対する様々な濃度でのカーボンドットを用いた処理効果を示している。
【
図16】トウモロコシの苗の根の乾燥質量(RDM)における、カーボンドットの濃度効果を示している。
【
図17】養分溶液を介したカーボンドットの適用による、レオナルド花瓶中のトウモロコシ栽培システムを図示している。
【
図18】液体光合成(A)、気孔コンダクタンス(B)、蒸散(C)及び水使用効率(D)におけるカーボンドットの100mg/Lの濃度効果を示している。
【
図19】カーボンドットを含むホーグランド溶液を使用することによるトウモロコシ植物体中の養分のパーセンテージの増加又は減少を示している。
【0047】
[発明の詳細な説明]
[65]本発明は、一度植物の葉又は根に適用されると植物の生育を高める生理学的反応を引き起こすことが可能な、バイオスティミュラント及びバイオ肥料として使用されるフォトルミネッセンス特性を有する炭素質光合成刺激剤(カーボンドット)に関する。前記生理学的反応は、光合成変数において、植物根の特徴において、及び生育サイクルのための必須微量栄養素及び多量栄養素の吸収において、観測される。
【0048】
[66]さらに、本発明の生成物は、水への高い溶解性及び生分解性を示し、植物により完全に代謝されるために生体内蓄積性がなく、その利用により食物連鎖における従来のナノ粒子の養分移行の悪影響を減らし、且つ無毒である。まさにその理由により、伝統的な農薬と比べて土壌及び水の汚染に関する環境負荷を減らすことができ、したがって、インプットとして高い利用可能性を提供する。
【0049】
[67]ナノマテリアルは、有機カーボン源として作用し、それらの構造中で微量栄養素及び多量栄養素のキャリアとして機能する。ボトムアップ合成プロセスの間に、ナノマテリアルの大きさは制御されるため、それらの構造中の活性サイトの活性化は制御される。表面工学の知見を通じて、これらの活性部位は作られ、植物のナノコンポジットとの生物親和性及びそれらの代謝を容易とするため、最も多い種類の作物へより効率的に輸送される養分及び/又は刺激剤を受ける傾向にある。
【0050】
[68]この技術において示されているナノマテリアルは、
図2に従って反応器の組合せを使用し、フロースルー法により得られる。合成プロセス後、梱包しやすくするため、材料はもう1つの乾燥操作に付される。
【0051】
[69]本発明の態様の1つは、カーボンドットを製造する方法に関し、これは、グルタミン、有機酸、クエン酸、酒石酸、オレイン酸、リンゴ酸、フマル酸、イソクエン酸、コーンスターチ等の、出発物質として異なるカーボンリッチなマトリックスの使用を可能とする汎用的な方法である。方法はまた、好ましくはクエン酸及び酒石酸である、同一の官能基及び短鎖を有し、適切な試薬組成、コンポジットを提供可能な代替源を使用することにより共処理して行うことも可能である。
【0052】
[70]提案された方法は、従来のルート(水熱ルート)に比べた場合、水熱ルート中で発生するカーボン化プロセス及び粒子成長を開始するための長い安定化期間が不要であるため、速いプロセスである。また、本方法は連続的なプロセスで製造できるため、コストの低い方法でもある。溶媒として水を使用し、プロセスの終わりには合成により毒性のある廃棄物が生じない。
【0053】
[71]カーボンドットの合成で使用される方法は、物理化学的変換を含むプロセスである。使用されるルートは、溶媒として水を使用し、合成により毒性のある残留物が生じないため、化学的に環境にやさしいと考えられる。
【0054】
[72]一般的に、前記態様は、触媒化学反応及びフロースルー法からなるカーボンドットを得るためのプロセスにより理解できる。
【0055】
[73]ナノ粒子は、異なるカーボン源、すなわち、クエン酸、グルコース、アミノ酸、並びに、果皮、果肉及び動物の排泄物等の農業廃棄物から得られる。主にクエン酸が、酸からの塩の生成に使用されるヒドロキシル官能基源となる塩基溶液中の部分的な酸-塩基中和反応のために使用され、溶液形態でイオン(OH-)により誘発される静電反発により、幾つかの核生成点の形成に寄与する。塩基溶液としては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アニリン、メタルアミン(metallamine、metalamina)、尿素及びチオ尿素、好ましくは水酸化アンモニウムが使用できる。
【0056】
[74]カーボン源である酸溶液、及び官能基由来源である塩基溶液は、調製され、フローシステムに導入される。
【0057】
[75]注入ポンプ及びバルブを使用して前記溶液をミキサーに注入し、その後、リサイクル物及びドーパント(微量栄養素及び多量栄養素又は刺激剤)を受けるための第2の混合容器に再移送する。ミキサーを通過した後、反応器が100~250℃、好ましくは150℃に加熱されている場合、材料の吐出を抑え、その内部において一定の圧力を維持するバルブを備えることで試薬の揮発を回避するピストンフローチューブ反応器(PFR)内に試薬をポンプ注入する。
【0058】
[76]PFR反応器は、材料の流出における圧力降下を減らすため、ほんの数ミリメートルの縮径を備え、且つ粗度の低い材料で作られているものでなければならない。本プロセスのもう1つの重要な要素としては、混合物を加熱するためにこの反応器を温室内に収容しなければならないため、乱流流体流出のレジメンを維持することであり、それらの全てはベルヌーイの定理により算出される。
【0059】
[77]前記反応器は、使用する材料の濃度に応じて、100℃~250℃の間で加熱されなければならない。反応器内部の圧力は、出力バルブにより制御することで、溶液の沸騰を防ぐ。圧力は、含まれる塩の密度に応じて、反応によって異なる。前記圧力は高いため、反応器の材料は5barまでの圧力に耐えるものでなければならない。第1の反応器、チューブ反応器から出る材料流は、同様に加熱された撹拌動作中の連続撹拌槽型反応器(CSTR)中に吐出される。前記反応器の吐出流は、液体サイクロン密度差により作動する分離システム、又はオーバーフローにより最終生成物を取り除くことを可能とするデキャンタを通り、下流は還流へと戻る。
【0060】
[78]材料の還流は、最適な操作条件が確立されるまで要する。形成された生成物の密度は前駆体塩溶液よりも低いため、上澄みを取り除き、底の材料を再循環させ、反応器の前に挿入し、初期の試薬流を添加するというこの原理により、生成物を分離することができる。材料が還流された状態となる安定化プロセスまでのプロセスは、0.5~2時間、好ましくは1時間かかり、その時点から材料密度が変化し始め、生成物が形成し始める。
【0061】
[79]2時間サイクル後のプロセスの収率は95%(713g)である。この材料の量は、24ヘクタールに適用されるのに十分である。
【0062】
[80]この生成物は液体状態で保存してもよいし、又はその体積が約5倍量となるように材料がその表面積を拡張する乾燥プロセスを経てもよい。
【0063】
[81]このカーボンドットの製造技術は、形成されたカーボンドットの質に悪影響を及ぼすことなく産業スケールへの実施可能な変換を可能とするスケーリング特性を有する。ベンチスケールで製造されたカーボンドットの製造の100倍のスケールアップにより実施された試験では、同一の特性及び品質での製造及び維持が可能であることが示された。農業インプット産業により要求されるような、低環境負荷の高い製造要求のもとでは、そのような技術は型破りであり、新しい現在の製造要求に見合っている。
【0064】
[82]汎用性も開発された製造プラットフォームの主な特徴の1つであり、生産チェーンの需要を満たすことを目的としたその組成及びその特性の多様性を実現する。
【0065】
[83]このプロセスにより製造されるカーボンドットは、合成における前駆体分子の親水性基の存在のため、
図3に示された赤外スペクトルにより確認できるように、高い水溶性を示す。
【0066】
[84]ナノ粒子の表面基は、親水性に加え、溶液中でイオン複合電位(
図4)を有する。植物による需要の高い多量栄養素(カリウム、窒素、カルシウム、リン、マグネシウム及び硫黄)及び需要の低い微量栄養素(マンガン、ホウ素、亜鉛、鉄、銅、モリブデン及び塩素)の両方は、合成後に表面基により複雑化されたカーボンドットを調製するためにプロセスに追加することができる。
【0067】
[85]さらに、それらは農業インプットとして高い適用可能性を提供する生分解性材料である。
【0068】
[86]従って、本発明のもう1つの態様は、強力な光合成刺激剤、バイオスティミュラント、及び有機ミネラルバイオ肥料としてのカーボンドットベースのナノ製剤の使用に関する。本文書に表された技術は、完全に無毒、生体適合性、非生体内蓄積性であり、グリーンナノテクノロジーの原理を使用して持続的に製造される。試験結果では、光合成効率が約60%上昇し、水使用効率が50%上昇し、根の質量が50%上昇したことが示された。必須化学元素で製造され、ドープされたナノマテリアルは同時に養分を提供し、植物の物理的側面を改善し、従来の肥料の使用の悪影響を減らす。提示された技術は、農業のナノテクノロジーの持続的な使用のための障害となる経済的な実施可能性、製造スケール化性、環境を考慮した製造及び安全性に関する制限を克服することを強調することが重要である。
【0069】
[87]光合成刺激剤としてのカーボンドットの使用は、その分光特性に起因する。窒素化芳香族試薬の導入は、C=N/C=O結合の形成を促進するが、青色/緑色/赤色エリアの中の多状態の吸収及び放出の役割を担う(
図5)。
【0070】
[88]クロロフィルa及びbは、青色(約440nm)及び赤色(約650nm)に対応するスペクトルエリアに中心が存在する2つの吸収バンドを示すが、緑色エリアについては極度に低いスペクトル反応を示す(
図6)。合成されたカーボンドットは、緑色エリア(532nm)に強い吸収を示し、645nmを中心とする放出を示す。日光により晒されるため、そのようなスペクトルの採用は、結果的に栽培生産性を上昇させる。
【0071】
[実施例]
[89]下記実施例は本発明の最良の実施形態を説明するために示されている。本発明は引用された実施例に限定されるものではなく、記載されている全ての用途又は他のいかなる同等の改変に使用できることも言及しておくべきである。
【0072】
実施例1:カーボンドットの合成
[90]農業での使用は、研究室での使用よりも大きな量を要する。そのため、
図1に示すように、プロセス及び製造スケーリングをパイロット機構に導入した。
図1に示すように、500gのグルコース及び550mLの水酸化アンモニウムを1000mLの水に溶解させ、フロースルーシステムに投入した。操作温度を150℃に設定し、2時間サイクルの後の最終生成物の収率は95%であった(713g)。この材料の量は、24ヘクタールに適用されるのに十分である。
【0073】
実施例2:多量栄養素を含有するハイブリッドカーボンドットの合成
[91]最初、プロセスには第2のミキサーが備えられていなかったが、リサイクルの必要性及び養分のインプットの要求により、第1のミキサーの後に第2のミキサーを追加して酸及び塩基流を受けるようにした。このようにして、化学量論比を達成するため、リサイクル及びドーパント投入量が算出される。これは、第2のミキサーに追加された最も多様なドーパントとともに、純粋なカーボンドット及びハイブリッドカーボンドットの両方を生成することを可能とする。
【0074】
[92]
図7aは、XPSスペクトル及び多量栄養素を含有するサンプル組成を示している。
図7bの高解像度XPSスペクトルは、カーボンマトリックス中にリン(P)が組み込まれていることを示している。131.25及び132.25eVに中心が存在するバンドは、それぞれ-C
3-PO基及びC-PO
3基に対応する。
図7c及びdでは球形であり平均径が5nmであるナノ粒子の画像を示している。この結果は、リンが植物細胞機構に直接的に輸送され得ること、及び養分の生物学的利用プロセスが、窒素養分の場合と同様であり、植物によるナノマテリアル代謝に依存することを示唆している。このナノ粒子は、同時に、光合成刺激剤、バイオスティミュラント/バイオ肥料、及び多量栄養素源(有機ミネラル肥料)として機能する。さらに、このナノ粒子は完全に水溶性であり、無毒であり、且つ土壌中の肥料の過剰使用により生じる環境負荷を有利に低減する。本発明の公開までに報告されてきた文献には、類似の技術は存在しなかったことも特筆すべき点である。
【0075】
実施例3:養分キャリア電位の評価
[93]カーボンドットの養分キャリア電位は、溶液中では、表面上に主に存在するカルボキシル基(COO-)が負電荷を帯びるため、反発力がコロイド安定性システムに有利に働くと調査されている。微量栄養素及び多量栄養素として分類される金属は、溶液中で正電荷を帯び、粒子中のカルボキシル基により引きつけられる。
【0076】
[94]イオンを加えた際のカーボンドットの表面挙動及び安定性を分析するため、養分溶液の投入を増やし、ゼータ電位(Z)及び流体力学的径の測定を行う。50mg/Lの濃度を有する10mL体積のカーボンドットを標準ホーグランド溶液(1/2強度)と見立てる。
図8では、ゼータ電位の挙動と流体力学的径は、投入したイオンの数が大きいほど観測できる。
【0077】
[95]予想していた通り、低下した電位は、金属陽イオンが表面に結合し、結果的に電位が徐々に低下することを示している。しかし、
図8で観測されるように、曲線挙動は特定の体積から一定に維持される傾向にある。イオン強度が高くても、流体力学的半径の小さな変化から確認されるように、粒子は安定性を示す。これらの特徴は、カーボンドットが、養分輸送を促進し、従来の農業で起きる養分浸出を回避するように標準的な養分溶液と併用できることを示唆している。コロイド安定性は光合成刺激剤、バイオスティミュラント/バイオ肥料及び液体有機ミネラル肥料としてのそのような技術の商用化の可能性も強める。
【0078】
実施例4:農業試験
[96]ピーマン作物体(トウガラシ(capsicum annuum))は、果実中の農薬の残留に関して多くの批判を受けてきたため、植物の生育におけるナノマテリアル効果を示すために選択する。
【0079】
[97]ピーマンの製造効率に対するカーボンドット効果は、2×4の階乗スキームに設定し、2は適用数であり(1つの適用数を4つに分割する)、4はカーボンドットの0、25、50及び100mg.L-1に及ぶ濃度である。試験は4つの繰り返しを有するランダムのブロックデザインで実施し、合計32の試験単位を集計した。
【0080】
[98]実験単位は、不活性基質及び植物の混合物でそれぞれ満たされた5.0dm3のプラスチック容器である。養分及び水は、1日4回、400mLの養分溶液全てを与える施肥潅漑により与える。
【0081】
[99]ピーマンの種を発芽トレイに播種し、27日後、組成が芝、バーミキュライト、有機廃棄物、農業有機廃棄物、及び石灰である不活性基質を予め充填した5リットル容器に若苗を植え替える。植え替えて19日以内の32本の苗を、カーボンドットの適用の開始のために選択し、大きさ及び生育基準は、選択時の全ての苗について同様のものを使用する。
【0082】
[100]適用したカーボンドット濃度(0~100mg.L
-1)は、前の試験から定義する。後述のカーボンドットの質量定量化において適用される溶液の最大量は、各濃度を有する植物1本あたり200mLである。植物は、P1及びP2の2つのグループに分け、P1に分類した植物には溶液(200mL)の単回用量を与え、P2には最大溶液量(200mL)に到達するまで、15日毎に、用量(50mL)を徐々に与える。
図9は、処理ランダム性を確認するため、植物を4ブロックに分けたものを表している。
【0083】
[101]植物は、ガラス温室に設置し、1日4回均一に灌漑した。カーボンドット溶液は、過剰量の溶液が植栽基質にそのまま流れていくことができるように葉上に噴霧する。
【0084】
[102]植物の相対成長におけるカーボンドット効果を測定するために、ミリメートル刻みのテープメジャーを、試験に沿って大きさを測定するために使用する。初日には、適用を開始する前に、初期の大きさを測定及び収集した後、最初の濃度を適用する。グループP1は、各植物において200mL量を与え、グループP2は50mLの最初の用量を与える。大きさを収集するプロセスは200mL量を達成するまで、グループP2への適用と同日に、2週間毎に実施する。
【0085】
[103]式1は植物の相対成長を算出するのに使用し、「hfinal」は処理適用後に実施された測定値を表し、「hinitial」は処理適用前に実施された測定値を表す。
【0086】
【0087】
[104]収集したデータは、統計試験の適用のため、スプレッドシートで表にまとめる。用いられた第1の統計試験には、収集データの分布の非正規性を示すシャピロ-ウィルク正規性の検定を使用する。次に、ノンパラメトリック統計、独立サンプルを使用するクラスカル-ウォリス検定を、結果を精査するために使用する(
図10)。この観点から、平均値の比較は、統計的な差及び観測された結論を特定するのに最も適切な手法である。
【0088】
[105]植物の生理学的な生育に沿ったカーボンドットの濃度及び数の効果は、別々にしたグループP1及びP2の統計データにより示される。
【0089】
[106]実施した統計分析から、グループP1(
図10)について、試験の開始ちょうどに植物1本あたり200mLを1回適用した後、適用後56日後に、100mg・L
-1の濃度での処理と0mg・L
-1の対照処理との間で統計的な差があると結論付けられる。他の処理、特に対照処理、すなわち、ナノバイオスティミュラントを適用しない場合(0;0mg.L
-1)と比較した場合、高濃度のカーボンドットが使用された場合(100mg.L
-1)は、ピーマンの相対成長がより大きくなる。
【0090】
[107]逆に、200mL量を達成するまでの2週間毎に、各濃度において50mLの量が適用される場合のグループP2の結果を分析すると(
図11)、25mg・L
-1の濃度での処理と、0mg・L
-1での対照処理との間の統計差が42日及び56日後に観測される。低濃度で数回に分けて適用する場合、対照濃度及び他の処理と比較した場合の相対成長に、より効果的な手法で寄与する。
【0091】
実施例4:「Finestra」トマトの光合成効率に対するカーボンドット効果
[108]光合成効率に対するカーボンドット効果は、赤外ガス分析器を使用する携帯光合成システムを使用して示される。これらの測定の重要な点は、CO2固定と気孔を経た葉の蒸散作用による水の損失との関係性である。CO2及び水の両方の赤外での特定の反応を、ガス交換中に赤外を検知するセンサーを開発するのに使用する(赤外ガス-交換分析器-IRGA)。
【0092】
[109]CO2及び水蒸気の変化は、葉を通して同時にモニターすることができ、これによりin vivoでの液体光合成、及び、葉を傷付けずに挟む読み取りチャンバー内の装置により照明されたときのサンプル蒸散、及びまたミトコンドリア呼吸率、及び、サンプルが読み取りチャンバー内の暗環境中にあるときの残留蒸散の正確且つ統合的な測定を実現する。
【0093】
[110]光合成に対するカーボンドットの効果は、Embrapa Vegetablesにより開発された雑種第一代である「Finestra」トマトで観測されている。
【0094】
[111]トマト苗は播種から25日後に花瓶へ植え替えを行い、植え替え後60日で果実の収穫を開始する。
【0095】
[112]播種から48日後、バイオスティミュラント適用を開始するために苗の植わった5つのトレイを選択する。この試験での濃度は下記の通りである。0mg・L-1(水のみ)、0.5mg・L-1、2.5mg・L-1、5mg・L-1及び10mg・L-1。溶液は、過剰量の溶液が基質中にそのまま流れていくことができるように葉上に噴霧する。トレイ及び花瓶を充填するのに使用される基質は、バイオ安定化された松樹皮、バーミキュライト、木炭粉、水、及び発泡フェノールで作り上げる。
【0096】
[113]苗への最初の用量の適用は、発芽トレイでのまま、本葉の発芽の後に行う。250mLの単回用量は各処理用トレイに等しく噴霧し、この手順をさらに3日連続して繰り返される。
【0097】
[114]予め処理したトレイから、各処理(0;0.5;2.5;5.0;10mg・L
-1)から20本の苗を選択して、基質を含む15リットルの花瓶に植え替える。苗は4つのブロックにランダムで分配し、これにより各処理につき1ブロックあたり4つの繰り返し、及び合計で80本の苗となる。ブロックB1及びB2を温室中で光に曝露した一方で、ブロックB3及びB4については日除け布で覆った(
図12)。
【0098】
[115]前の実施例で示されている式1を、相対成長を算出するのに使用する。
【0099】
[116]花瓶への植え替え後、苗は、基質中で15日間熟期を経、その後、適用を再開する。トマト植物の生育段階では、溶液と基質とが接触し得る中で、葉上に500mLの用量を適用する。等しく溶液噴霧するため、同一の用量処理(濃度)をしたものを分離し、まとめる。そして、ベンチへ返却する際に、日除け布を付した花瓶を、日除け布を付していないものと混同しないように細心の注意を払いながら、処理を再度それぞれの元々のベンチに分配する。適用手順はさらに4回、週毎に、常に単回用量で繰り返す。
【0100】
[117]データ収集は午前中に適用を止めた後に実施し、1日を通した光合成効率及び蒸散の機構及び強度に関する生理学的な研究を実施する。読み取り条件は全ての処理について保存し、分析完了後、装置により提示される、目的の変数により、統計学的検定に適用するためにデータを抽出する。
【0101】
[118]
図13及び14は処理の効果を示している。最初に採用された統計学的検定は、収集データの非正規分布型を示すシャピロ-ウィルク正規性検定である。そして、ノンパラメトリック統計、独立サンプルクラスカル-ウォリス検定を、結果を評価するために用いる。その観点において、平均の比較は、統計学的な差及び行われた観測の結論の特定に最も適切な手法となる。
【0102】
[119]「Finestra」トマト植物の光合成におけるカーボンドット濃度と自然光の効果の組合せは、日除け布を被せて処理したグループ(B3及びB4)と日除け布を被せないで処理したグループ(B1及びB2)を比較することで示される。既に説明した通り、カーボンドットは、クロロフィルによる吸光プロセスにおいて検出可能な吸光/発光及び放出特性を有する。
【0103】
[120]ブロックB1及びB2で得られたデータは、2.5mg・L
-1及び5mg・L
-1の濃度で処理することにより光合成率が上昇する傾向があることを示している(
図13)。
【0104】
[121]水使用効率は、IRGAにより直接的には得られないが、光合成値(Pho)を気孔コンダクタンス(Ci)で除することにより得られるパラメータである。このようにして、処理B1及びB2での水使用効率も2.5mg・L
-1及び5mg・L
-1(
図13)の濃度で上昇する傾向にある。
【0105】
[122]いずれも日除け布によって保護されているブロックB3及びB4で収集したデータは(
図14)、カーボンドットを適用した場合、光合成率は対照処理の光合成率よりも低い(0mg・L
-1)という事実を強調している。しかし、水使用効率は上昇している(
図14)。
【0106】
[123]日陰のブロックと日陰でないブロックと間の差は、カーボンドットの発光挙動が、それが外部光源により照射されるときにのみ起こることを示している。
【0107】
実施例5:レタス作物体の光合成効率に対するカーボンドット効果
[124]水耕栽培システムで栽培されたレタス(Lactuca sativa)の光合成に対するカーボンドットの影響も示される。水耕栽培作物体は、土壌又は基質が植物の生育に必須となる養分を全て含有する溶液により置き換えられる栽培技術である。
【0108】
[125]水耕栽培システムは、苗が根から養分溶液で徐々に灌漑されることを可能とする。このようにして、噴霧を行うことなく、水耕栽培システム自体が植物へのカーボンドットの分配手段として使用される。
【0109】
[126]独立の水耕栽培溶液を含む3つの容器に接続された3つの独立したベンチを使用する。各容器は、定期的にシステムの循環中に投入される1000リットル体積の溶液を含む。植物の生育に必須であるホーグランド改変養分溶液を全ての容器用に調製し、3つのカーボンドット濃度を0mg.L-1;20mg.L-1及び50mg.L-1と決定付ける。養分溶液自体をカーボンドットの分配手段として使用する。
【0110】
[127]苗を得、温室中で3つのベンチに等しく分配し、適応期間を経、このとき、予め調製した養分溶液で灌漑する。カーボンドットを容器中で希釈し、レタス苗の植え替え後、21日後に循環に導入する。
【0111】
[128]各処理における10本のレタスの苗のデータ収集を実施する。測定は、カーボンドットの適用開始後15日実施し、読み取り条件は全ての処理について保存する。分析完了後、実施例4のように、統計学的検定に適用するためにデータを抽出する。
【0112】
[129]
図15はIRGAにより得られたデータを示している。差は、より高濃度の処理50mg.L
-1と対照処理0mg.L
-1の水使用効率のみにおいて観測できる。これらの観測は、適用が葉上で行われるときに光合成効率が達成されるという事実に貢献するが、光合成において変化を促進しなくとも、カーボンドットは光合成中の水のよりよい使用を促すことができる。
【0113】
実施例6:トウモロコシの苗の根におけるカーボンドット濃度の効果
[130]トウモロコシの苗を10%NaClO4溶液で10分間超音波処理し、殺菌のため蒸留水で5回すすぐ。それらをその後、発芽紙上に無菌状態で置き、暗所中、28℃のBODチャンバー内で発芽させる。発芽して2日後、約1~1.5cm発根した苗を、0mg.L-1、10mg.L-1、20mg.L-1、40mg.L-1、80mg.L-1及び160mg.L-1のカーボンドットを追加したホーグランド養分溶液(25%強度)を含有するプラスチックの花瓶の中の水耕栽培システムに移す。5日間の生育後、植物(n=9)を収穫し、根の乾燥重量(RDW)を評価する。結果は回帰により分析し、最も効率的なカーボンドット濃度を算出する。
【0114】
[131]最も効率的なカーボンドット濃度を算出するため、回帰分析を実施し、示されたモデルはデータに最も適応したものであった。回帰データは正規分布に従っている(
図16)。
【0115】
[132]低濃度での増加、及び使用したカーボンドット濃度が高いほど、段階的な阻害とともに、有意な二次モデルが示される(
図16)。最も効率的な濃度は100mg.L
-1カーボンドットと推定され、結果的に、対照処理と比較して、RDMが約75%多い。
【0116】
実施例7:光合成率、葉の中のガス交換及びトウモロコシの種の中の養分含有量に対するカーボンドット効果
[133]異なる用量のカーボンドットの回帰分析が一旦完了すると、実施例6で概説したように、カーボンドット効果は対照(0mg.L-1)のみと、最も効率的と観測された用量(100mg.L-1)との対比で示される。
【0117】
[134]約1~1.5cm発根した種を、上部に10%のHCl溶液で殺菌された0.5kgの砂(0.5~0.84mm)を含有するレオナルド花瓶(
図17)に移した後、電気伝導率が<5mS.cm
-1となるまで蒸留水ですすぐ。レオナルド花瓶の下部には、0又は100mg.L
-1のカーボンドットを追加した0.5dm
3のホーグランド養分溶液(25%強度)を配置する。苗を植え替え、毎週、溶液を新しく調製された溶液により置換するが、50、75及び100%強度に濃度を上昇させる。
【0118】
[135]28日間の生育後、液体光合成、気孔コンダクタンス及び蒸散等の葉のガス交換のパラメータを、IRGA型の光合成システムを使用することにより、6cm2の標準的な葉用チャンバーとともに、植物(n=4)において測定する。水使用効率(WUE)は、液体光合成及び蒸散の比として算出する。ガス交換チャンバー内のCO2濃度を400μmol.mol-1に設定し、測定は500μmol.m-2.s-1の光合成の流束密度の下で実施する。算出は、朝の9時~11時の間に実施する。実験を通して平均温度は約28℃であり、相対湿度は50~60%の間である。
【0119】
[136]養分分析のため、植物を収穫し、一定の重量となるまで65℃で熱処理し、さらに、ナイフミルを使用して細かい粉にすりつぶす(2mmメッシュ篩)。得られた材料は、マイクロ波プラズマを利用した原子発光分光法により、0.5gの組成物の、HNO3及びHClO4による180℃での消化後、、Ca、Mg、S、Fe、Cu、Mn、Zn及びNiの含有量を、分析する。アスコルビン酸/モリブデンブルー酸法により、組成物の、H2SO4及びH2O2での消化後、660nmでの比色分析でリンの合計を推定する。
【0120】
[137]分散分析のF検定により、葉のガス交換及び養分含有量を分析する。
【0121】
[138]カーボンドットの添加は、結果的に液体光合成を上昇させる(p<0.05)(
図18a)。しかし、気孔コンダクタンス及び蒸散率に変化はない(それぞれ
図18b及び18c)。
【0122】
[139]水使用効率(WUE)は、世界的な農業において需要が増加している。これに関し、植物スティミュラントは、植物の一次代謝及び二次代謝を弱めるプロセスの根構造改質剤及び誘発剤として作用するため、これらのスティミュラントの使用は、価値あるツールとして評価されるべきである。WUEはカーボンの取り込み量を最適化し、水の損失を最小にする植物の能力を表し、このように競争優位という結果となる。
【0123】
[140]カーボンドットはWUEを22%と大きく上昇させる(
図18d)。このパラメータの上昇は植物へのスティミュラント添加において特徴的であり、土壌から水を吸収する植物の能力を上げることにより根の生育を調節するカーボンドットの能力を強調する。
【0124】
[141]分析された全ての養分の含有量は、養分溶液中のカーボンドットの存在により大きく変化する(
図19)。それらのうち、Mg(8.7%)についてのみ、減少が観測される。リン、Ca及びZnは比較的小さな増加量を示し、それぞれ順に7.8、8.3及び13.0%であった。硫黄及びNiの含有量は26.6及び55.5%であり中程度の増加量を示す。最も大きな増加量はMn、Cu及びFeで観測され、それらの含有量はそれぞれ70.2、82.1、82.6%に達する。
【0125】
[142]養分含有量のデータは、カーボンドットが光合成刺激剤及びナノバイオスティミュラントとして作用し、幾つかの養分の吸収を改善することを示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と0.5~100mg.L
-1
の濃度のカーボンドットとを含むことを特徴とする、光合成刺激剤。
【請求項2】
前記カーボンナノ粒子が、多量栄養素で、中でもカリウム、窒素、カルシウム、リン、マグネシウム及び硫黄、好ましくはリンで、又はマンガン、ホウ素、亜鉛、鉄、銅、モリブデン及び塩素等の微量栄養素で、ドープされていることを特徴とする、請求項1に記載の光合成刺激剤。
【請求項3】
前記カーボンナノ粒子が、平均径が5nmである球形を示すことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の光合成刺激剤。
【請求項4】
カーボンドットナノ粒子の形成が、グルタミン、有機酸、クエン酸、酒石酸、オレイン酸、リンゴ酸、フマル酸、イソクエン酸、コーンスターチ等、好ましくはクエン酸及び酒石酸である、カーボンリッチなマトリックスから行われることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載の光合成刺激剤の製造方法。
【請求項5】
使用される塩基溶液は、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アニリン、メタルアミン、尿素及びチオ尿素、好ましくは水酸化アンモニウム及び尿素を含むことを特徴とする、請求項
4に記載の光合成刺激剤の製造方法。
【請求項6】
溶媒として水を使用することを特徴とする、請求項
4又は5に記載の光合成刺激剤の製造方法。
【請求項7】
注入ポンプにより酸及び塩基溶液を混合容器に注入し、続いてリサイクル物及びドーパント(微量栄養素及び多量栄養素又は刺激剤)を受けるための第2の混合容器に再移送し、次いで、材料の吐出を抑え、かつ内部において一定の圧力及び100~250℃の間、好ましくは150℃の温度を維持するバルブを備えるピストンフローチューブ型反応器にポンプ注入し、プロセスを乱流流体流出のレジメンに維持し、その後、前記チューブ型反応器から出てくる材料流を、同様の加熱パターン下で、連続撹拌槽型反応器に吐出し、前記反応器の吐出流を、上澄みを取り除きかつ底の材料を再循環させる分離システムに通過させ、前記反応器の前に挿入し、初期の試薬流を添加し、還流プロセスを生成物が形成されるまで繰り返す、連続フロースルーシステムにおいてカーボンドットナノ粒子の形成が行われることを特徴とする、請求項
4~
6のいずれか一項に記載の
光合成刺激剤の製造方法。
【請求項8】
バイオスティミュラントとして使用することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の光合成刺激剤の使用。
【請求項9】
多量栄養素及び微量栄養素のキャリアとして使用することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の光合成刺激剤。
【国際調査報告】