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特表2023-514990ウレアを合成するためのプロセスおよびプラント
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  • 特表-ウレアを合成するためのプロセスおよびプラント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ウレアを合成するためのプロセスおよびプラント
(51)【国際特許分類】
   C07C 273/04 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
C07C273/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022548214
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2021053036
(87)【国際公開番号】W WO2021170391
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20159396.9
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518320199
【氏名又は名称】カサーレ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルローネ、レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】ベルティーニ、パオロ
(72)【発明者】
【氏名】フマガッリ、マッテオ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006BD33
4H006BD52
4H006BD80
4H006BD84
(57)【要約】
アンモニアおよび二酸化炭素からウレアを合成するプロセスであって:ウレアの合成を反応器(1)とストリッパー(2)と凝縮器(3)とを少なくとも含む合成ループにおけるストリッピングプロセスにより行い;反応器からの流出物をストリッパー内で処理して未反応のアンモニアおよび二酸化炭素を除去し;ストリッパーからのウレア溶液(14)を低圧回収セクション(4)に送り;ストリッパー蒸気を反応器に向かう第1部分(151)と凝縮器に送られる第2部分(152)とに分け;凝縮器(3)はシェルアンドチューブケトル式凝縮器(shell-and-tube kettle condenser)であり、ストリッパー蒸気の凝縮をチューブ側(30)で行い;凝縮器からのカルバメート含有流出物(20)を反応器に戻す、プロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアおよび二酸化炭素からウレアを合成するプロセスであって:
ウレアの合成を反応器(1)とストリッパー(2)と凝縮器(3)とを少なくとも含む合成セクションにおけるストリッピングプロセスにより行い;
合成圧力下の前記反応器(1)内でアンモニアおよび二酸化炭素のウレアへの変換が起こりつつ、ウレアおよび未変換のカルバミン酸アンモニウムを含有する水性流出物(11)が形成され;
前記反応器からの流出物(11)のストリッピングステップを前記ストリッパー(2)内で行い、ここで、前記反応器からの流出物を加熱し、ストリッピング助剤として作用するガス状二酸化炭素(12)と接触させることで、ウレア含有溶液(14)および主にアンモニアと二酸化炭素とを含むストリッパー蒸気(15)がそれぞれ形成され;
前記ストリッパーからの前記ウレア含有溶液(14)の流出物をさらなる処理のために低圧回収セクション(4)に送り;
前記ストリッパーに供給される前記ガス状二酸化炭素(12)は前記合成セクションに供給される新鮮な二酸化炭素の全量を占め;
前記ストリッパー蒸気(15)を前記反応器に送られる第1部分(151)と前記凝縮器に送られる第2部分(152)とに分け;
前記凝縮器(3)はチューブ側(30)とシェル側(31)とを備えるシェルアンドチューブケトル式凝縮器(shell-and-tube kettle condenser)であり、前記ストリッパー蒸気(152)の前記第2部分を凝縮のために前記チューブ側(30)に送り;
カルバメート含有凝縮物流(20)を前記凝縮器の前記チューブ側から抜き出して前記反応器に戻す、
プロセス。
【請求項2】
前記カルバメート含有凝縮物流(20)を、前記凝縮器からの前記流出物からカルバメート含有液体(21)を分離するカルバメート分離器(5)を通じて前記反応器に戻し、前記液体を反応器に送る、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記カルバメート分離器で得られる前記カルバメート含有液体(21)を新鮮なアンモニア(22)と一緒にイジェクター(6)を通じて前記反応器に送る、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記イジェクター(6)に供給される前記新鮮なアンモニア(22)は前記合成セクションに供給される新鮮なアンモニアの大部分を占め、好ましくは供給される新鮮なアンモニアの少なくとも80%を占める、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ストリッパー蒸気(152)の前記第2部分を、前記凝縮器の前記チューブ側に導入する前に、新鮮なアンモニア流(17)および/または前記回収セクション(4)から来るカルバメート含有リサイクル溶液(18)と混合させる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ウレア合成セクションは高圧スクラバーを含まず、前記反応器から排出された不活性ガス流(16)を前記ストリッパー蒸気(152)の前記第2部分と混合させた後、前記ストリッパー蒸気を前記凝縮器の前記チューブ側に導入する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記合成セクションに供給される前記新鮮なアンモニアを前記イジェクターを通じて前記反応器に部分的に導入し、前記ストリッパー蒸気と部分的に混合させた後、前記凝縮器の前記チューブ側に導入する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項8】
前記凝縮器の前記シェル側(31)に好ましくは沸騰水である冷却流体を6bar以下、好ましくは2~6barの圧力で流す、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
ウレアを120bar~180barの圧力で合成し、低圧回収を2~6bar、好ましくは4barの圧力で行う、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項1に記載のプロセスを実施するのに適したCO-ストリッピングウレアプラントであって:
反応器(1)とストリッパー(2)と凝縮器(3)とを少なくとも含む合成ループ;
ウレア含有反応器流出物を前記反応器から前記ストリッパーに供給するように配置されたライン(11)、および、新鮮なCOを前記ストリッパーへのストリッピング媒体として供給するように配置されたライン(12);ならびに
前記ストリッパーからのウレア含有溶液の流出物をさらなる処理のために低圧回収セクション(4)に送るように配置されたライン(14);
を含み、
新鮮なCOを前記ストリッパーに供給するように配置された前記ライン(12)は、前記合成セクションにおける唯一のCO供給源であり、
ストリッパー頂部の蒸気の第1部分を前記反応器に供給するようにライン(151)が配置され、前記ストリッパー蒸気の第2部分を前記凝縮器に供給するようにライン(152)が配置され、
前記凝縮器はチューブ側(30)とシェル側(31)とを備えるシェルアンドチューブケトル式凝縮器(shell-and-tube kettle condenser)であり、前記ストリッパー蒸気の前記第2部分が凝縮のために前記凝縮器の前記チューブ側に供給されるように、前記ストリッパー蒸気の前記第2部分の前記ライン(152)が前記凝縮器の前記チューブ側に接続されており、
前記凝縮器から抜き出されたカルバメート含有凝縮物流を前記反応器に戻すようにライン(20)が配置されている、
プラント。
【請求項11】
前記凝縮器の前記チューブ側から抜き出された前記凝縮物を、前記反応器にリサイクルされるカルバメート含有液体と、蒸気相(vapour phase)または気相(gas phase)と、に分離するように配置されたカルバメート分離器(5)をさらに含む、請求項10に記載のプラント。
【請求項12】
前記カルバメート分離器からの前記カルバメート含有液体を前記ウレア反応器に供給するように配置されたイジェクター(6)と、前記イジェクターに動力流として新鮮なアンモニアを供給するように配置されたラインと、をさらに含む、請求項11に記載のプラント。
【請求項13】
前記ストリッパー蒸気の前記第2部分を、前記凝縮器の前記チューブ側に導入する前に、新鮮なアンモニア流および/または前記回収セクションからのカルバメート含有リサイクル溶液と混合させるように配置された1つまたは複数のラインをさらに含む、請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項14】
前記合成ループは高圧スクラバーを含まず、前記反応器から排出された不活性ガス流(16)を前記ストリッパー蒸気(152)の前記第2部分と混合させた後、前記ストリッパー蒸気を前記凝縮器の前記チューブ側に導入するようにラインが配置されている、請求項10~請求項13のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項15】
前記ウレア反応器が、20メートル未満、好ましくは12~18メートルの範囲の高さを有する垂直型反応器である、請求項10~請求項14のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項16】
前記反応器(1)、前記ストリッパー(2)、および前記凝縮器(3)を支持するための構造体を含み、前記構造体の最大の高さが40メートル以下であり、好ましくは30~38メートルの範囲である、請求項10~請求項15のいずれか1項に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレアを合成するためのプロセスおよびプラントに関する。特に、本発明は、ウレアを合成するためのCO-ストリッピングプロセスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレア合成の工業的プロセスの概要が、Meessen著、「Urea」、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Wiley-VCH Verlag,2010に記載されている。
【0003】
CO-ストリッピングプロセスは、反応器から抜き出されたウレア含有流出溶液の処理において、ストリッピング助剤としてガス状COを用いることに因んでいる。ストリッピング工程は、通常、反応器からの流出物(reactor effluent)が流下膜方式でチューブ側を通って流れ、ガス状COがチューブの底部から向流で供給される蒸気加熱シェルアンドチューブストリッパー(steam-heated shell-and-tube stripper)で行われる。熱い蒸気によりもたらされる熱が溶液に含まれる未変換のカルバミン酸アンモニウムの分解を引き起こし、ガス状COがアンモニアの分圧を低下させ、カルバメートの分解を促進する。
【0004】
そのため、ストリッピング工程により、未変換のカルバミン酸アンモニウムの含有量が低減したウレア溶液がストリッパー底部で回収され、主にアンモニアと二酸化炭素とからなるストリッパー頂部からのガス流が生まれる。
【0005】
ウレア溶液は回収セクションでさらに処理されて未変換のカルバメートが除去される。頂部からのガス流は、通常リサイクルカルバメート溶液を活用して高圧凝縮器中で凝縮され、こうして得られた凝縮物は反応器に送り返される。凝縮器の冷却媒体は、一般に、蒸発して蒸気を発生する水である。
【0006】
したがって、COストリッピングプラントは、通常、反応器、ストリッパー、凝縮器、およびスクラバーを含む高圧合成セクションを含む。これらの部材はいわゆる高圧ループを形成し、反応器からの流出物がストリッパーに進み、ストリッパーの頂部から出てくるガスが凝縮器に進み、凝縮器から抜き出された凝縮物が反応器へとリサイクルされる。
【0007】
CO-ストリッピングプラントで発生する課題は、高圧合成ループ内の部材間の循環を適切に確保することである。この目的のために、各部材を異なる高さに設置することが必要になる場合がある。たとえば、スクラバーから凝縮器への凝縮物の流れを確保するためにスクラバーを凝縮器の上方に配置し、凝縮器から反応器への凝縮物の流れを確保するために凝縮器を反応器の上方に配置することが必要になる場合がある。しかし、このように設置するには費用がかかる。
【0008】
EP2297094には、凝縮器がさらなる合成スペースを提供する水平型ケトル式装置であるCOストリッピングプロセスの進展について開示されている。この凝縮器は、ストリッパーガスの凝縮がシェル側で行われ、冷却水がチューブ側に供給されるシェルアンドチューブ式装置である。
【0009】
この設計では、凝縮器を水平にレイアウトし、新鮮なCOを反応器とストリッパーに分けることで装置の高さを低くすることができる。ただし、この解決策には欠点がある。
【0010】
第1の欠点はシェル側で凝縮を行うことである。これは、凝縮器の圧力容器全体が合成圧力(100barをはるかに超える)とウレアのプロセス流体による厳しい環境に耐えなければならないことを意味する。したがって、この設計における凝縮器は非常に高価である。
【0011】
第2の欠点は、新鮮なCOの一部を反応器に直接移すとストリッパーのアンモニア効率が低下することである。
【0012】
WO2019/083367には、ウレアのストリッピングプラント用の高圧カルバメート凝縮器が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ウレアのCO-ストリッピングプロセスおよび関連するプラントを改善することを目的とする。特に、本発明は、装置のコストを削減し、現行の解決策と比較して設置がより簡単で安価な低く配置された合成ループを提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、COストリッピングプラントの合成セクションにおける資本コストを削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、特許請求の範囲に記載のプロセスおよびプラントによって達成される。
【0015】
本発明において、ストリッパーに供給されるガス状COは合成ループに供給される新鮮なCOの全量を占める。すなわち、COは反応器に直接供給されない。関連する利点は、ストリッパーの最適な効率である。
【0016】
ストリッパー頂部のガス(ストリッパー蒸気ともいう)、すなわちストリッパーから出てくるアンモニアおよび二酸化炭素を含有するガスは、反応器に送られる第1部分と凝縮器に送られる第2部分に分けられる。ストリッパー蒸気の分割はEP1036787に従って行うことができる。関連する利点は、反応器内に不活性ガスが蓄積するのを最小限に抑えられる点である。
【0017】
凝縮器は、チューブ側とシェル側とを備えるシェルアンドチューブケトル式凝縮器(shell-and-tube kettle condenser)であり、ストリッパー頂部のガスの第2部分が凝縮のためにチューブ側に送られる。関連する利点は、高圧で攻撃的なプロセス流体が凝縮器のチューブ側に閉じ込められる点である。シェル側および特に大きな圧力容器は、カルバメート含有ウレア溶液による高い圧力および腐食性の攻撃に耐えるように設計してはならない。これにより凝縮器の資本コストが削減される。
【0018】
凝縮器から抜き出されたカルバメート含有凝縮物流は続いて反応器にリサイクルされる。
【0019】
本発明に係る合成セクションは設置に要する高さが低くて済む。好ましい実施形態では、例えば、凝縮物流を反応器に供給するためのイジェクターを設けることにより、および/または、高さを低くしサイズ(例えば、直径)を大きくした設計変更された垂直型反応器を採用することにより、高さをさらに低くすることができる。したがって、上記合成セクションの機器を製造および設置するための資本コストには競争力がある。
【0020】
[本発明の好ましい実施形態]
凝縮器のチューブ側から抜き出されたカルバメート含有凝縮物流は、そのまま或いはカルバメート分離器を通じて反応器にリサイクルされてもよい。カルバメート分離器は、典型的には二相混合物である凝縮器からの流出物をカルバメート含有液体と気相とに分離するために設けられてもよい。上記液体は続いて反応器に送られる。上記気相は非凝縮性のガスで主に構成されている場合があり、排気することができる。
【0021】
カルバメート含有液体は、好ましくは上述のカルバメート分離器における相分離後、イジェクターを通じて反応器に供給されてもよい。より好ましくは、イジェクターの動力流(motive stream)は新鮮なアンモニア流である。別の実施形態では、カルバメート含有液体は重力により反応器に流されてもよい。反応器の上方に凝縮器を設置しなくて済むため装置の高さが低くなるので、イジェクターを備えた実施形態が好ましい。
【0022】
イジェクターに供給される新鮮なアンモニアは、合成ループに供給される新鮮なアンモニアの大部分を占めてもよく、好ましくは、供給される新鮮なアンモニアの少なくとも80%を占めてもよい。新鮮なアンモニアの残りの部分は、凝縮器に送られるストリッパー頂部のガスの一部と混合させることによって、ループに入ってもよい。
【0023】
種々の実施形態によれば、凝縮器に向かうストリッパー頂部のガスは、反応器から排出された不活性ガス流、新鮮なアンモニア流、回収セクションから来るカルバメート含有リサイクル溶液の1又は複数と混合されてもよい。混合は、凝縮器のチューブ側に導入する前に行われてもよい。
【0024】
一実施形態では、ウレア合成セクション(高圧ループ)は高圧スクラバーを含まない。したがって、反応器から排出された不活性ガス流がストリッパー蒸気の第2部分と混合された後、当該ストリッパー蒸気が凝縮器のチューブ側に導入される。
【0025】
好ましい実施形態では、凝縮器に向かうストリッパー頂部のガスの一部を、新鮮なアンモニア、反応器からの排出ガス、および回収セクションから来るカルバメートリサイクル溶液と混合させる。こうして凝縮器に導入される新鮮なアンモニアは、合成ループに供給されるアンモニアのうちの少量、たとえば20%、または約20%であり得る。残部は、例えばイジェクターが設けられている場合はこれを通じて、反応器に直接導入され得る。
【0026】
反応器自体に不活性ガスが蓄積するのを避けるために、反応器頂部のガスは除去されなければならない。しかし、反応器の上部から排出され得る頂部ガスには、いくらかアンモニアと二酸化炭素も含まれている。この反応器からの排気ガスを凝縮器に向かうストリッパーガスと混合させると、排気ガスに含まれる反応物質(アンモニアと二酸化炭素)を凝縮により回収できるという利点がある。
【0027】
本実施形態のさらなる別の利点は、合成ループに供給される新鮮なアンモニアに廃熱を伝達して新鮮なアンモニアを予熱することによって、プロセスの全体効率を改善できることである。この流れに供給されるすべての熱は、回収セクションで使用可能な低圧蒸気として凝縮器で最終的に回収される。これにより、ストリッパーMP蒸気の消費量を、予熱器でアンモニアに伝達される熱の約半分まで減らすことができる。
【0028】
別の実施形態では、反応器からの排気ガスを高圧スクラバー内でカルバメートリサイクル溶液と接触させ、凝縮器のチューブ側に送られる溶液を得てもよい。
【0029】
好ましくは、凝縮器のシェル側に好ましくは沸騰水である冷却流体を6bar以下、好ましくは2~6barの圧力で流すことが好ましい。凝縮器のチューブはU字管の束であることが好ましい。
【0030】
凝縮器のチューブ側(すなわちプロセス側)で行われる凝縮は好ましくは全凝縮(total condensation)である。この用語は、不可避の非凝縮部分を除いて気相をほぼ完全に液体状態に凝縮することを意味する。
【0031】
好ましい実施形態では、ウレア反応器は、20メートル未満、好ましくは12~18メートルの範囲、より好ましくは12~16メートルの範囲の高さを有する垂直型反応器である。この高さは、通常のウレア反応器の高さである20~35メートルよりもかなり低い。本発明の一態様によれば、この低下した高さは、直径に対する高さの比率(h/D)を大きくすることで補償される。
【0032】
得られる構造体は、高圧合成セクションの部材を支持し、従来技術における通常の高さである45~60メートルに対し、40メートル以下、たとえば30~38メートルの最大高さを有し得る。これは設置コストの面で大きな利点である。
【0033】
好ましい実施形態は以下を含む:凝縮器から抜き出された凝縮物流がイジェクターを通じてウレア合成反応器に供給される;反応器自体に不活性ガスが蓄積するのを避けるために、反応器からの頂部ガスが除去される;排出されるガスに含まれるアンモニアと二酸化炭素を回収するために、反応器から排出されるガスを凝縮器に向かうストリッパーガスと混合させる;ストリッパーは、反応器と同じ圧力で作動するシェルアンドチューブ垂直型装置(shell-and-tube vertical apparatus)である;凝縮器は、反応器およびストリッパーと同じ圧力で作動する高圧装置である;反応器、ストリッパー、および凝縮器が相互接続されて高圧合成ループを形成する。
【0034】
以下の詳細な説明は、非限定的な例として説明される好ましい実施形態に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の実施形態に係るウレア合成プロセスおよびプラントのスキームである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は下記の主要な部材を示す:
ウレア反応器 1
高圧ストリッパー 2
高圧凝縮器 3
低圧回収セクション 4
カルバメート分離器 5
イジェクター 6
制御バルブ 7
【0037】
ウレアは、例えば140barの高圧下、反応器1内で形成される。ウレア反応器1は、内部がプレートで仕切られた垂直型装置である。ウレア含有溶液は下降管10を用いて回収され、ライン11を通じてストリッパー2に進む。
【0038】
ストリッパー2は、反応器1と実質的に同じ圧力で作動するシェルアンドチューブ垂直型装置(shell-and-tube vertical apparatus)である。反応器からの流出物11がストリッパー2のチューブ側に供給される。ガス状COは、ライン12を通じてチューブ側の底部に供給される。こうして、流出溶液は、ガス状COとは向流で、流下膜方式でチューブを下降する。チューブの周囲のシェル側は、ライン13から入る蒸気によって加熱される。
【0039】
ストリッパー2では、反応器からの流出物に含まれる未反応のカルバメートの一部がガス状のアンモニアと二酸化炭素に分解される。
【0040】
ストリッパー2からの溶液流出物はライン14を通じて回収セクション4に送られる。
【0041】
主にアンモニアと二酸化炭素で構成されるストリッパー頂部のガスはライン15を用いてストリッパー2上部から抜き出される。
【0042】
このライン15は、反応器1に進む第1のライン151と凝縮器3に進む第2のライン152に分けられる。ライン152における流量はバルブ7によって制御される。
【0043】
つまり、ストリッパー頂部のガスの第1部分が反応器1に戻され、残りの第2部分が凝縮のために凝縮器3に送られる。好ましくは、バルブ7は、反応器1に向かうライン151の流れがライン15でストリッパーから抜き出される全流れの20%~40%になるように調節される。
【0044】
凝縮器3は、U字管の束30を有する水平ケトル式装置である。凝縮器3もまた、反応器1およびストリッパー2の圧力に実質的に等しい圧力で作動する高圧装置である。
【0045】
図示されるように、ストリッパー頂部のガスの第2部分(ライン152)は凝縮器3のチューブ側に送られる。
【0046】
より具体的には、ライン152のストリッパー頂部のガスの第2部分は、反応器からの排気ガス16、新鮮なアンモニア流17、および回収セクション4からのリサイクル溶液の流れ18と混合される。
【0047】
ストリッパー蒸気152と、上記の流れ16(反応器からの排気ガス)、17(新鮮なアンモニア)、18(カルバメートリサイクル物)、またはそれらの組み合わせのいずれかとの混合は任意である;図1は、ストリッパー蒸気152を上記すべての流れ16、17および18と混合する好ましい実施形態を示す。
【0048】
こうして得られたライン152のストリッパー蒸気の一部を含む混合流19は、凝縮器3のチューブ側30で凝縮される。シェル側31には、冷却流体、例えば沸騰水(図示せず)を流す。
【0049】
凝縮器からの流出物はライン20を通じてカルバメート分離器5に送られる。ライン20における凝縮器からの流出物は一般に二相混合物である。この混合物は、カルバメート分離器5で液体画分と気相画分に分離される。液体画分は、ライン21により分離器5を出て、イジェクター6およびその出力ライン23によって反応器1に戻される。新鮮なアンモニア流22がイジェクター6を駆動する。分離器5で分離された気相画分は、主に非凝縮性ガスからなり、ライン25を通じて排気することができる。
【0050】
回収セクション4は、例えば2~6barの低圧で作動する。回収セクション4は既知であり、詳細に説明する必要はない。基本的に、このセクションは低圧カルバメート分解器と低圧凝縮器を少なくとも含み;分解器でガス状のアンモニアと二酸化炭素がウレア溶液から除去され;当該ガスが低圧凝縮器でカルバメート含有リサイクル溶液へと凝縮される。
【0051】
つまり、回収セクション4は、カルバメート含有溶液18、および、本質的にウレアと水とからなるウレア溶液24を生成する。上述のように、カルバメート溶液18は、好ましくはストリッパー蒸気の一部152と共に凝縮器3に戻される。カルバメート溶液18は、凝縮器におけるストリッパー蒸気の凝縮を助けることができる。
【0052】
反応器1、ストリッパー2、および凝縮器3が相互接続されて高圧合成ループを形成することに留意されたい。いくつかの実施形態では、ループはスクラバーを含んでいてもよい。合成ループの部材は、好ましくは120~180barの範囲の同じまたは実質的に同じ圧力で作動する。
【0053】
図1は、高圧ループがスクラバーを含まない好ましい実施形態を示す。つまり、反応器1から抜き出された排気ガス16は、ストリッパー蒸気152の一部と混合された後、凝縮器3に直接入っていく。
【0054】
新鮮なCOは、ストリッパー2に接続されたライン12だけを通じてループに入ることにも留意されたい。つまり、新鮮なCOの唯一の供給源は、ストリッピング媒体としてストリッパー2に入るCOである。
【0055】
新鮮なアンモニアは、イジェクター6に接続されたライン22からループに入るが、場合により、凝縮器3の前の流れ152と混合させるライン17からループに入ることもある。アンモニアが両方の場所から入る場合、アンモニアの大部分はイジェクターを通じて、つまりライン22から入ることが好ましい。
【0056】
変形例では、反応器1からライン16を通じて排気されたガスが高圧スクラバーに送られ、カルバメート溶液、例えば溶液18の一部を用いて洗浄(wash)されてもよい。スクラバーからの液体流は凝縮器3のチューブ側に送られてもよい。
図1
【国際調査報告】