(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】α-シンヌクレイン沈着物のMRIのための標的造影剤
(51)【国際特許分類】
C07D 333/22 20060101AFI20230405BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20230405BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230405BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230405BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230405BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230405BHJP
A61K 33/244 20190101ALI20230405BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20230405BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20230405BHJP
A61K 49/06 20060101ALI20230405BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230405BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230405BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C07D333/22 CSP
A61K47/59
A61K31/381
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/28
A61P25/00
A61K33/244
A61B5/055 383
G01T1/161 B
G01T1/161 A
A61K49/06
A61P25/16
A61K31/192
A61K31/122
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548474
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021017986
(87)【国際公開番号】W WO2021163585
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522007587
【氏名又は名称】テキサス チルドレンズ ホスピタル
(71)【出願人】
【識別番号】521324735
【氏名又は名称】アルゼカ バイオサイエンシズ、エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】522299001
【氏名又は名称】タニフム、エリック エイ.
(71)【出願人】
【識別番号】522316135
【氏名又は名称】スン、シエンウェイ
(71)【出願人】
【識別番号】522299023
【氏名又は名称】アンナプラガダ、アナンス ブイ.
(71)【出願人】
【識別番号】522316146
【氏名又は名称】メディチ、カルロ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タニフム、エリック、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】スン、シエンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】アンナプラガダ、アナンス、ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】メディチ、カルロ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4C096
4C188
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC41
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE26
4C076EE59
4C085HH07
4C085JJ05
4C085KA32
4C085KB12
4C085LL13
4C086AA01
4C086AA02
4C086BB02
4C086HA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZC78
4C096AA11
4C096AD19
4C096FC14
4C188EE02
4C188EE25
4C188FF04
4C188FF07
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB24
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA13
4C206ZC78
(57)【要約】
リポソーム組成物(「ADx-003」)が提供され、ADx-003は、第1のリン脂質と、リポソーム組成物を安定化することができる立体的にかさ高い賦形剤と、第1のポリマーで誘導体化された第2のリン脂質と、大環状ガドリニウム系造影剤と、第2のポリマーで誘導体化された第3のリン脂質であって、第2のポリマーが標的化リガンドにコンジュゲート化されており、標的化リガンドが、式I:
【化1】
(式中、Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、Yは、-CH-CH=CH-又は
【化2】
であり、A及びBは、独立して、C及びNから選択され、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-CH
3から選択され、R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OCH
3、-NO
2、-N(CH
3)
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換G
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)又はその薬学的に許容される塩によって表される、第3のリン脂質とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによる化合物:
【化1】
(式中、
Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、
Yは、-CH-CH=CH-又は
【化2】
であり、
A及びBは、独立して、C及びNから選択され、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-Meから選択され、
R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OMe、-NO
2、-NMe
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物が、以下の構造
【化3】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、以下の構造
【化4】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、以下の構造
【化5】
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートであって、
前記リン脂質-ポリマーは、
【化6】
(式中、変数nは、約70~約90の任意の整数であり、変数mは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つである)を含み、
前記標的化リガンドは、式Iによる化合物:
【化7】
(式中、
Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、
Yは、-CH-CH=CH-又は
【化8】
であり、
A及びBは、独立して、C及びNから選択され、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-Meから選択され、
R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OMe、-NO
2、-NMe
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)、又はその薬学的に許容される塩を含む、
リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート。
【請求項6】
nが77又は79である、
【化9】
を含む、請求項5に記載のリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート。
【請求項7】
nが77又は79である、
【化10】
を含む、請求項5に記載のリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート。
【請求項8】
nが77又は79である、
【化11】
を含む、請求項5に記載のリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート。
【請求項9】
リポソーム組成物であって、
第1のリン脂質と、
リポソーム組成物を安定化することができる立体的にかさ高い賦形剤と、
第1のポリマーで誘導体化された第2のリン脂質と、
大環状ガドリニウム系造影剤と、
第2のポリマーで誘導体化された第3のリン脂質であって、前記第2のポリマーが標的化リガンドにコンジュゲート化されており、前記標的化リガンドが、式Iによる化合物:
【化12】
(式中、
Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、
Yは、-CH-CH=CH-又は
【化13】
であり、
A及びBは、独立して、C及びNから選択され、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-Meから選択され、
R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OMe、-NO
2、-NMe
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)、又はその薬学的に許容される塩によって表される第3のリン脂質と
を含む、リポソーム組成物。
【請求項10】
前記第1のリン脂質が、水素添加大豆L-α-ホスファチジルコリン(「HSPC」)を含む、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項11】
前記リポソーム組成物を安定化することができる前記立体的にかさ高い賦形剤が、コレステロール(「Chol」)を含む、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項12】
第1のポリマーで誘導体化されている前記第2のリン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)(「DSPE-mPEG2000」)を含む、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項13】
前記大環状ガドリニウム系造影剤が、
【化14】
を含む、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項14】
前記大環状ガドリニウム系造影剤が、第4のリン脂質にコンジュゲートされ、
【化15】
又はその塩を含み、式中、変数xは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つである、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項15】
前記変数xが、16である(コンジュゲート:「Gd(III)-DOTA-DSPE」)、請求項14に記載のリポソーム組成物。
【請求項16】
前記標的化リガンドが、
【化16】
を含む、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項17】
前記標的化リガンドが、
【化17】
を含む、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項18】
前記標的化リガンドが、
【化18】
を含む、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項19】
第2のポリマーで誘導体化された前記第3のリン脂質が、
【化19】
又はその塩を含み、式中、変数nは、約70~約90の任意の整数であり、変数mは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つである、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項20】
前記第3のリン脂質、前記第2のポリマー及び前記標的化リガンドの前記コンジュゲートが、
【化20】
を含み、
式中、nは77又は79である、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/975,265号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(「PD」)及びアルツハイマー病(「AD」)などの神経変性障害は、脳の異なる位置におけるミスフォールドタンパク質凝集体の病理学的沈着物を特徴とする。これらのミスフォールドタンパク質凝集体としては、PDにおけるレビー小体(「LB」)及びレビー神経突起(「LN」)の形態のα-シヌクレイン(「α-syn」)凝集体並びにADにおけるアミロイドβ(「Aβ」)プラーク及び過剰リン酸化τタングルが挙げられる。PDは、ADに続いて2番目に一般的な神経変性疾患であり、運動緩慢、硬直、振戦、及び姿勢不安定性を含む運動症状を臨床的に特徴とする。運動症状は、黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性によって引き起こされ、レビー病変の細胞質沈着を伴う。PDの死後研究におけるα-synの領域分布は、レビー病変が嗅球及び下部脳幹に由来し、中枢神経系の他の領域に徐々に広がることを示唆している。高レベルのLB及びLNが、PD関連運動症状の患者発現の前に、延髄/橋被蓋及び前嗅構造(Braakステージ1及び2)で観察される。PD関連運動症状は、病状が中脳及び前脳の基底部内の黒質及び他の核に拡大した中間段階(Braakステージ3及び4)でのみ現れ始める。PDとは別に、PD認知症(「PDD」)、LBを伴う認知症(「DLB」)及び多系統萎縮症(「MSA」)を含むいくつかの他の神経変性障害(「シヌクレイノパチー」と総称される)の病因もまた、ミスフォールドα-syn凝集体を特徴とする。
【0003】
黒質線条体変性、認知障害、及び運動機能障害を伴う剖検研究からのレビー病変の相関関係は、α-syn凝集体の非侵襲的検出及び定量化を可能にし得る技術が、生存個体におけるLB障害の早期診断及び臨床評価のための貴重なツールであることを示唆している。早期検出は、臨床試験、疾患逆転療法の評価、及び新しい薬物候補の治療有効性の検証のための豊富な患者コホートの動員のより良い機会を提供することができる。しかし、LB障害は複数のタンパク質障害を呈することが多い。例えば、認知症を発症したPD患者に焦点を当てた研究は、新皮質におけるα-syn蓄積とは別に、患者の約60%において広範囲のAβ蓄積もあることを明らかにした。また、約3%の症例がα-syn、Aβと共にτ蓄積を示した。
【0004】
いくつかのAβ陽電子放射断層撮影(「PET」)造影剤の最近の承認により、AD薬物臨床試験のためのコホートの充実度が大幅に改善された。また、これにより、他のタンパク質異常症(τ及びシヌクレイノパチー)のための類似の薬剤の探索が活発になった。α-synフィブリルに対する中程度から高い結合親和性を有する様々な分子足場(
図1)が過去10年間にわたって報告されているが、Aβフィブリルに対するα-synの選択性が低いことに少なくとも部分的に起因して、臨床解釈に成功したものはない。実際、α-syn病態のインビボ検出のための造影剤の開発は、いくつかの課題に直面しており、その1つは、インビトロスクリーニングアッセイのためのα-synフィブリルに対する高い親和性及び選択性を有する多様な分子足場の欠如である。
【0005】
更に、そのような足場が磁気共鳴画像法(「MRI」)での使用に適している場合、(PETと比較して)アクセスの容易さ及び低コストのために結果は変化する可能性がある。高いT1緩和能、アミロイド標的化リポソーム-ガドリニウム(Gd)ナノ粒子造影剤(リン脂質並びにリポソーム二重層の内面及び外面にコンジュゲートした、(3+)2-[4,7,10-トリス(カルボキシラトメチル)-1,4,7,10-テトラザシクロドデカ-1-イル]酢酸ガドリニウム(「ガドテラート」又は「Gd(III)-DOTA」)を含む非常に安定な大環状ガドリニウム系造影剤を含有する)により、ADのトランスジェニックマウスモデルにおけるアミロイド斑のインビボMRIが可能となった。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第17/162,126号を参照されたい。
【0006】
α-syn沈着物のMRIのための安定な標的化リポソームGd造影剤が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、リポソーム組成物(「ADx-003」)が提供され、ADx-003は、第1のリン脂質、リポソーム組成物を安定化することができる立体的にかさ高い賦形剤、第1のポリマーで誘導体化された第2のリン脂質、大環状ガドリニウム系造影剤、及び第2のポリマーで誘導体化された第3のリン脂質であって、第2のポリマーが標的化リガンドにコンジュゲート化されており、標的化リガンドが、式I、
【化1】
(式中、Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、Yは、-CH-CH=CH-又は
【化2】
であり、A及びBは、独立して、C及びNから選択され、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-CH
3から選択され、R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OCH
3、-NO
2、-N(CH
3)
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)又はその薬学的に許容される塩によって表される、第3のリン脂質を含む。
【0008】
更なる態様では、第1のリン脂質は、水素添加大豆L-α-ホスファチジルコリン(「HSPC」)を含み、リポソーム組成物を安定化することができる立体的にかさ高い賦形剤は、コレステロール(「Chol」)を含み、第1のポリマーで誘導体化された第2のリン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)(「DSPE-mPEG2000」)を含み、大環状ガドリニウム系造影剤は、Gd(III)-DOTAを含み、第4のリン脂質、例えば、
【化3】
又はその塩(例えば、ナトリウム塩)にコンジュゲートされる。いくつかの態様では、変数xは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つであってもよい。一態様では、変数xは、16である(コンジュゲート:「Gd(III)-DOTA-DSPE」)。
【0009】
いくつかの態様では、第2のポリマーで誘導体化され、第2のポリマーが標的化リガンドにコンジュゲートされている第3のリン脂質は、
【化4】
又はその塩(例えば、リン酸アンモニウム塩)を含むことができる。いくつかの態様では、変数nは、約10~約100の任意の整数、例えば、約60~約100、約70~約90、約75~約85、約77、又は約79であってもよい。変数mは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つであってもよい。例えば、nは77であってもよく、mは14であってもよく、nは79であってもよく、mは14であってもよく、nは77であってもよく、mは16であってもよく、nは79であってもよく、mは16であってもよい。
【0010】
一態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートの標的化リガンド態様は、
【化5】
を含む。
【0011】
一態様では、nは77であり、mは16であり(「DSPE-PEG3400」)、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートは、
【化6】
を含む(「DSPE-PEG3400-XW-01-11コンジュゲート」)。
【0012】
或いは、nは79であり、mは16であり(「DSPE-PEG3500」)、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートは、
【化7】
を含む(「DSPE-PEG3500-XW-01-11コンジュゲート」)。
【0013】
一態様では、対象のα-syn沈着物を画像化する方法が提供される。この方法は、検出可能な量のリポソーム組成物を対象に導入することを含むことができる。この方法は、リポソーム組成物が1つ又は複数のα-syn沈着物と会合するのに十分な時間を与えることを含むことができる。この方法は、1つ又は複数のα-syn沈着物と会合したリポソーム組成物を検出することを含むことができる。
【0014】
一態様では、対象におけるα-syn沈着物を画像化する方法のリポソーム組成物は、ADx-003を含むことができる。一態様では、対象におけるα-syn沈着物を画像化する方法のリポソーム組成物は、Gd(III)-DOTA-DSPE及びDSPE-PEG3400-XW-01-11コンジュゲート又はDSPE-PEG3500-XW-01-11コンジュゲートを含むことができる。一態様では、対象におけるα-syn沈着物を画像化する方法のリポソーム組成物は、HSPC、Chol、DSPE-mPEG2000、Gd(III)-DOTA-DSPE、及びDSPE-PEG3400-XW-01-11コンジュゲート又はDSPE-PEG3500-XW-01-11コンジュゲートを含むことができる。
【0015】
一態様では、リポソーム組成物は、患者のα-syn沈着物の画像化における使用に適しており、この使用は、検出可能な量のリポソーム組成物を患者に導入すること、リポソーム組成物が1つ又は複数のα-syn沈着物と会合するために十分な時間を与えること、及び1つ又は複数のα-syn沈着物と会合したリポソーム組成物を検出することを含む。一態様では、検出することは、MRIを使用して検出することを含む。
【0016】
一態様では、この使用は、1つ又は複数のα-syn沈着物と会合したリポソーム組成物を検出することによって、患者をPDを有すると同定することを更に含む。
【0017】
一態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートが提供され、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートのリン脂質-ポリマー態様は、
【化8】
又はその塩(例えば、リン酸アンモニウム塩)を含む。いくつかの態様では、変数nは、約10~約100の任意の整数、例えば、約60~約100、約70~約90、約75~約85、約77、又は約79であってもよい。変数mは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つであってもよい。例えば、nは77であってもよく、mは14であってもよく、nは79であってもよく、mは14であってもよく、nは77であってもよく、mは16であってもよく、nは79であってもよく、mは16であってもよい。
【0018】
一態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートの標的化リガンド態様は、
【化9】
(式中、Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、Yは、-CH-CH=CH-又は
【化10】
であり、A及びBは、独立して、C及びNから選択され、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-CH
3から選択され、R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OCH
3、-NO
2、-N(CH
3)
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)又はその薬学的に許容される塩によって表される。
【0019】
一態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートは、DSPE-PEG3400-XW-01-11コンジュゲート又はDSPE-PEG3500-XW-01-11コンジュゲートを含む。
【0020】
一態様では、
【化11】
(式中、Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、Yは、-CH-CH=CH-又は
【化12】
であり、A及びBは、独立して、C及びNから選択され、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-CH
3から選択され、R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OCH
3、-NO
2、-N(CH
3)
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)を含む化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0021】
一態様では、化合物は、構造
【化13】
を有する。
【0022】
別の態様では、α-syn凝集体を検出する方法が提供される。この方法は、
【化14】
(式中、Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、Yは、-CH-CH=CH-又は
【化15】
であり、A及びBは、独立して、C及びNから選択され、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-CH
3から選択され、R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OCH
3、-NO
2、-N(CH
3)
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)を含む化合物、又はその薬学的に許容される塩の有効量を試料又は対象に導入すること、化合物が試料又は対象中のα-syn凝集体と会合するのに十分な時間を与えること、及び試料又は対象中のα-syn凝集体と会合した化合物を検出することを含む。
【0023】
本発明は、以下の図を参照することによってより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】α-syn凝集体結合リガンドの先行技術の代表例の化学構造を提供する図である。
【0025】
【
図2】α-syn沈着物のMRIのための標的造影剤を含むリポソームの例示的な断面図を提供する図である。
【0026】
【
図3】1-インダノニル-、1,3-インダンジオニル-、α-テトラロニル-、及び4-オキソクマリニル-ジエン誘導体を含む新規なα-syn配位子の化学構造を提供する図である。
【0027】
【
図4】新規なα-syn配位子の分子設計の概略図を提供する図である。
【0028】
【
図5】1-インダノニル-、1,3-インダンジオニル-、α-テトラロニル-、及び4-オキソクマリニル-ジエン誘導体を含む新規なα-syn配位子の合成式を提供する図である。
【0029】
【
図6】ジエン誘導体のE,E配置における核オーバーハウザー効果(「NOE」)の概略図を提供する図である。
【0030】
【
図7】1-インダノニル-及び1,3-インダンジオニル-ジエン誘導体を含む新規なα-syn配位子の合成式を提供する図である。
【0031】
【
図8】チオフェンがジエン架橋に挿入された1-インダノニル-及び1,3-インダンジオニル-ジエン誘導体を含む新規なα-syn配位子の化学構造を提供する図である。
【0032】
【
図9】化合物36、45及び48におけるNOE相互作用の概略図を提供する図である。
【0033】
【
図10】化合物内の剛性を高めるために架橋ジエンの二重結合の一方が環系内でマスクされている種々の誘導体の合成式を提供する図である。
【0034】
【
図11】架橋ジエンの第二の二重結合がマスクされた種々の誘導体を含む、新規なα-syn配位子の化学構造を提供する図である。
【0035】
【
図12】新規なα-synリガンドの発光スペクトル及び結合親和性(K
d)データの表(表1)を示す。
【0036】
【
図13】リガンド8(XW-01-11)及び32(XW-01-64)を使用した、遊離リガンド対α-syn又はAβフィブリルに結合したリガンドの代表的な吸収/発光スペクトルを示す図である。
【0037】
【
図14】新規なα-syn配位子によるフィブリル結合時の、観察された蛍光及び発光最大値の深色シフト、蛍光の増加、並びに蛍光量子収率の表(表2)を示す。
【0038】
【
図15】α-synフィブリルと比較した、Aβフィブリルに対する新規なα-synリガンドの解離定数を比較した表(表3)を示す。
【0039】
【
図16】抗α-syn抗体並びにリガンド8(XW-01-11)及び32(XW-01-64)で共染色したPD脳組織切片の共焦点顕微鏡画像を示す図である。
【0040】
【
図17】抗α-syn抗体及びリガンド8(XW-01-11)で共染色したPD脳組織切片の共焦点顕微鏡画像を示す図である。
【0041】
【
図18】リガンド8(XW-01-11)及びそれぞれの抗α-syn対抗Aβ抗体で共染色したPD及びAD脳組織切片の比較共焦点顕微鏡画像を示す図である。
【0042】
【
図19】DSPE-PEG3400-XW-01-11コンジュゲートを調製するための例示的な合成スキームを示す図である。
【0043】
【
図20】α-synフィブリルとインキュベートした場合のリガンド8(XW-01-11)標識リポソームナノ粒子対対照リポソームの動的光散乱(「DLS」)グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
新規なα-syn標的化リポソーム-Gd造影剤ADx-003が、非常に安定な大環状Gd-DOTA画像化部分に基づいて開発された。ADx-003は、
図2に断面形態で示されているように一般的に理解することができる。
【0045】
したがって、一態様では、ADx-003は、第1のリン脂質、リポソーム組成物を安定化することができる立体的にかさ高い賦形剤、第1のポリマーで誘導体化された第2のリン脂質、大環状ガドリニウム系造影剤、及び第2のポリマーで誘導体化された第3のリン脂質であって、第2のポリマーが標的化リガンドにコンジュゲートされている、第3のリン脂質を含む。大環状ガドリニウム系造影剤は、第4のリン脂質にコンジュゲートされてもよい。
【0046】
リン脂質
いくつかの態様では、適切なリン脂質としては、2つの炭化水素鎖が約14~約24個の炭素原子の長さであり、様々な不飽和度を有するものが挙げられる。いくつかの態様では、適切なリン脂質としては、HSPC、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DPPC」)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DSPC」)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(「DSPE」)、及びそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。適切なリン脂質は、天然に存在するものであってもよく、又は合成のものであってもよい。
【0047】
いくつかの態様では、適切なリン脂質としては、国際公開第2005107820号に列挙されているもののいずれかを挙げることができ、その段落[0031]~[0033]の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
ポリマー-誘導体化リン脂質
いくつかの態様では、リポソーム組成物のリポソームは、可撓性の水溶性(親水性)ポリマー鎖を含有するか、又は可撓性の水溶性(親水性)ポリマー鎖でコーティングされた表面を含むことができる。これらのポリマー鎖は、リポソームと血漿成分との間の相互作用を防止することができ、血漿成分は、血液の細胞によるリポソームの取り込み及び血液からのリポソームの除去において役割を果たす。リポソームは、単核食細胞系の器官、主に肝臓及び脾臓(細網内皮系)による取り込みを回避することができる。
【0049】
一態様では、誘導体化リン脂質中のポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)であってもよい。PEGは、様々な分子量のいずれかを有することができる。一例では、PEG鎖は、約1,000~10,000ダルトンの分子量を有することができる。リポソームが形成されると、PEG鎖は、そのようなコーティングの非存在と比較して、リポソームの血液循環時間を延長するのに十分な親水性鎖の表面コーティングを提供することができる。
【0050】
いくつかの態様では、第1のポリマーで誘導体化された第2のリン脂質は、DSPE-mPEG2000を含む。いくつかの態様では、第2のポリマーで誘導体化され、第2のポリマーが標的化リガンドにコンジュゲートされている第3のリン脂質は、
【化16】
又はその塩(例えば、リン酸アンモニウム塩)を含み、式中、変数nは、約10~約100の任意の整数、例えば、約60~約100、約70~約90、約75~約85、約77、又は約79であってもよい。変数mは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つであってもよい。例えば、nは77であってもよく、mは14であってもよく、nは79であってもよく、mは14であってもよく、nは77であってもよく、mは16であってもよく、nは79であってもよく、mは16であってもよい。いくつかの態様では、第2のポリマーで誘導体化された第3のリン脂質は、DSPE-PEG3400又はDSPE-PEG3500を含む。
【0051】
いくつかの態様では、適切なポリマーとしては、国際公開第2005107820号に列挙されているもののいずれかを挙げることができ、その段落[0034]~[0038]の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、ポリマーによって誘導体化されたリン脂質は、国際公開第2016057812号及び米国特許出願第17/162,126号に開示されている組み合わせのいずれかであってもよく、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
立体的にかさ高い賦形剤
いくつかの態様では、リポソームは、安定化賦形剤を含むことができる。例えば、リポソーム組成物は、Cholを含むように製剤化することができる。他の態様では、リポソーム組成物は、脂肪アルコール、脂肪酸、コレステロールエステル、他の薬学的に許容される賦形剤、及びそれらの混合物を含むことができる。
【0053】
大環状ガドリニウム系造影剤
リポソーム組成物は、大環状Gd系造影剤を含む。いくつかの態様では、大環状ガドリニウム系造影剤は、リン脂質にコンジュゲートされたGd(III)-DOTA、例えば、
【化17】
又はその塩(例えば、ナトリウム塩)を含む。いくつかの態様では、変数xは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つであってもよい。一態様では、変数xは16であり、コンジュゲートはGd(III)-DOTA-DSPEである。Gd(III)-DOTA-DSPEの調製は、米国特許出願第17/162,126号に記載されている。
【0054】
他の態様では、大環状ガドリニウム系造影剤は、
【化18】
を含む。
【0055】
リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート
本発明の別の態様は、式II:
PL-AL-HP-X-TL
II
による構造を有するリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートを提供する。
【0056】
式中、PLはリン脂質であり、ALは脂肪族結合であり、HPは親水性ポリマーであり、Xは、結合、-O-、-RiO-、-RiO(C=O)、Ri-N(Rii)O(C=O)、Ri-N(Rii)(C=O)-、又はRi-N(Rii)であり、TLは式Iによる構造を有する標的化リガンドである。
【0057】
リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートは、リポソーム中に存在するものなどの膜へのコンジュゲートの組み込みを容易にするリン脂質-ポリマー領域を含む。リン脂質は、その構造が当業者に公知である両親媒性化合物である。いくつかの態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート中のリン脂質(PL)は、以下の構造式
【化19】
によって表される。
【0058】
式は、リン脂質中に一般的に存在する親水性リン酸基及び2つの疎水性脂肪酸鎖を示す。変数sは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つであってもよい。例えば、sは、14又は16であってもよい。様々な態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート中のリン脂質基は、HSPC、DPPC、DSPE、DSPC、又はDPPEのうちの1つであってもよい。適切なリン脂質及びポリマー誘導体化リン脂質としてはまた、本明細書に別途開示されるものを挙げることができる。
【0059】
コンジュゲートはまた、親水性ポリマー(HP)を含む。親水性ポリマーは、それらを水に可溶性にする極性又は荷電官能基を含有するポリマーである。親水性ポリマーの例としては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、及びポリアルキレンオキシドが挙げられる。いくつかの態様では、親水性ポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーである。親水性ポリ(アルキレンオキシド)は、約10~約100個の繰り返し単位を含むことができ、例えば、500~10,000ダルトンの範囲の分子量を有することができる。親水性のポリ(アルキレンオキシド)としては、例えば、PEG、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)などが挙げられる。親水性ポリマーHPは、本明細書中に記載されるように、アミド基又はカルバマート基を介してリン脂質部分にコンジュゲートすることができる。リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート中のHPは、アミド、カルバマート、ポリ(アルキレンオキシド)、トリアゾール、それらの組み合わせなどを介して芳香族部分にコンジュゲートすることができる。
【0060】
いくつかの態様では、親水性ポリマー(HP)は、以下の構造式
【化20】
のうちの1つによって表される。
【0061】
いくつかの態様では、変数rは、約10~約100の任意の整数、例えば、約60~約100、約70~約90、約75~約85、約77、又は約79であってもよい。
【0062】
いくつかの態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート中のリン脂質-ポリマー部分PL-HP-は、以下の構造式
【化21】
のうちの1つによって表すことができる。
【0063】
いくつかの態様では、変数rは、約10~約100の任意の整数、例えば、約60~約100、約70~約90、約75~約85、約77、又は約79であってもよい。変数sは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つであってもよい。例えば、rは77であってもよく、sは14であってもよく、rは79であってもよく、sは14であってもよく、rは77であってもよく、sは16であってもよく、rは79であってもよく、sは16であってもよい。
【0064】
本明細書で使用される場合、ALによって表される「脂肪族結合」は、リン脂質PLと親水性ポリマーHPとの間の結合に有用な任意の脂肪族基を含む。そのような脂肪族結合は、例えば、アミド、カルバマートなどの1つ又は複数の部分を介したヘテロ原子を含むことができるC
2~C
10アルキレン基を含むことができる。例えば、以下のコンジュゲート
【化22】
では、脂肪族結合ALである-CH
2CH
2NH(C=O)CH
2O-は、アミド部分を含む。更に、例えば、以下のコンジュゲート
【化23】
では、脂肪族結合ALである-CH
2CH
2NH(C=O)O-は、カルバマート部分を含む。ALは、コハク酸などのジカルボン酸から誘導される脂肪族結合を含むことができ、2つのアミド、2つのカルバマート、アミド及びカルバマートなどを含むことができる。
【0065】
そのような脂肪族結合は、リン脂質と親水性ポリマーとを結合させるために当該分野で公知であり、例えば、リン脂質-PEG化合物及び官能化リン脂質-PEGコンジュゲーション前駆体の市販の供給源に見出すことができ、これはPL-AL-PEG-NH2、PL-AL-PEG-CO2Hなどとして表すことができる。脂肪族結合の存在が暗示される場合、脂肪族結合に言及せずにそのような化合物を簡略化した形で呼ぶことは、当技術分野及び商業的供給源において一般的である。例えば、脂肪族連結基がアミド含有基-CH2CH2NH(C=O)CH2O-である1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]CAS番号147867-65-0は、当技術分野で通称、商業的に「DSPE-mPEG-2000」と呼ばれる。「DSPE-mPEG-2000」などの従来の簡略化された様式で本明細書に列挙される市販の材料は、対応する脂肪族結合を含むと理解されるべきである。
【0066】
したがって、様々な態様では、ALによって表される脂肪族リンカーは、カルバマート又はアミドを含むことができる。本明細書に記載されるリポソーム、方法及びコンジュゲートは、ALがカルバマート、アミド又はそのようなコンジュゲートの混合物を含むリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートを含むことができる。
【0067】
特定の一態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートが提供され、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートのリン脂質-ポリマー態様は、
【化24】
又はその塩(例えば、リン酸アンモニウム塩)を含む。いくつかの態様では、変数nは、約10~約100の任意の整数、例えば、約60~約100、約70~約90、約75~約85、約77、又は約79であってもよい。変数mは、12、13、14、15、16、17、又は18のうちの1つであってもよい。例えば、nは77であってもよく、mは14であってもよく、nは79であってもよく、mは14であってもよく、nは77であってもよく、mは16であってもよく、nは79であってもよく、mは16であってもよい。いくつかの態様では、リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートのリン脂質-ポリマー態様は、DSPE-PEG3400又はDSPE-PEG3500を含む。
【0068】
式IIのリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートはまた、以下で論じられる標的化リガンド(TL)を含む。
【0069】
標的化リガンド
リポソーム組成物は、ポリマーで誘導体化された少なくとも1つのリン脂質を含み、ポリマーは標的化リガンドにコンジュゲートされている。したがって、いくつかの態様では、リン脂質は、スペーサー鎖を含むように修飾される。スペーサー鎖は、親水性ポリマーであってもよい。親水性ポリマーは、典型的には、標的化リガンドにカップリングするために末端官能化されていてもよい。官能化された末端基は、例えば、マレイミド基、ブロモアセトアミド基、ジスルフィド基、活性化エステル又はアルデヒド基であってもよい。ヒドラジド基は、多くの生物学的に関連する化合物で生成することができるアルデヒドに対して反応性である。ヒドラジドはまた、活性エステル又はカルボジイミド活性化カルボキシル基によってアシル化することができる。アシル化種として反応性のアシルアジド基は、ヒドラジドから容易に得ることができ、アミノ含有リガンドの結合を可能にする。
【0070】
いくつかの態様では、標的化リガンドは、リポソームの表面からアクセス可能であってもよく、例えば、1つ又は複数の分子又は抗原に特異的に結合又は付着することができる。これらの標的化リガンドは、リポソームを特定の細胞又は組織、例えばα-synプラークに指向又は標的化することができ、細胞又は組織上の若しくは細胞又は組織と会合した分子又は抗原に結合することができる。
【0071】
一態様では、式(I)による化合物であって、
【化25】
式中、Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、Yは、-CH-CH=CH-又は
【化26】
であり、A及びBは、独立して、C及びNから選択され、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-CH
3から選択され、R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OCH
3、-NO
2、-N(CH
3)
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。式Iの化合物は、本明細書では「標的化リガンド」及び「結合リガンド」と互換的に呼ばれることがある。標的化リガンドは、α-syn、特にミスフォールドα-syn、例えば沈着物(本明細書ではプラークとも呼ばれる)又はフィブリルに見られるものに対する高い親和性結合を示す。
【0072】
式Iに含まれる化合物は、位置Xで変化して、異なる複素環式化合物を提供することができる。いくつかの態様では、Xは、1-インダノン複素環基を提供する-CH2-である。いくつかの態様では、Xは、テトラロン複素環基を提供する-CH2-CH2-である。いくつかの態様では、Xは、1,3-インダンジオン複素環基を提供する-CHO-である。いくつかの態様では、Xは、4-ヒドロキシクマリン複素環基を提供する-O-CO-である。この複素環基は、本明細書では「第1の芳香族基」と呼ばれることがある。
【0073】
式Iに含まれる化合物は、位置Yで異なり、異なるジエンを提供することができる。したがって、一態様では、Yは、-CH-CH=CH-であり、ジエン架橋が提供される。一態様では、ジエン架橋は、E,E配置を有する。他の態様では、Yは
【化27】
であり、それによって電子リッチなチオフェン基の形態のジエンを実現する。
【0074】
いくつかの態様では、化合物の第2の(右端の)芳香族基を修飾することができる。環内の修飾は、第2の芳香族基としてピリジンを提供するために、A又はB位のメチルダインを窒素原子で置換することを含むことができ、又は、それは、第2の芳香族基としてピリミジンを提供するために、位置A及びBのメチルダインを窒素原子で置換することを含むことができる。位置A、B、又はその両方が窒素で置換されている場合、置換を受ける位置は環の外側に置換基を有さない。
【0075】
式Iに含まれる化合物はまた、1つ又は複数の置換基が第1及び/又は第2の芳香環の周りに付加された化合物を含むことができる。適切な置換基の例としては、ハロゲン、ヒドロキシル、メトキシ、ニトロ、ジメチルアミン及び低級アルキル又はアリール部分が挙げられる。例えば、いくつかの態様では、第2の芳香環の円周に沿った水素原子は、パラ置換フェニル基で置換されている。
【0076】
式Iに含まれる適切な化合物としては、例えば、
図3及び
図8を参照すると、化合物8である((E)-2-((E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アリリデン)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン)、32である(4’-((E)-3-((E)-6-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-インデン-2-イリデン)プロパ-1-エン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-カルボン酸)、及び37である((Z)-2-((5-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)チオフェン-2-イル)メチレン)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン)を挙げることができる。
【0077】
いくつかの態様では、化合物は化合物8:
【化28】
である。
【0078】
式Iの結合リガンドとしては、沈着物及びフィブリル中に存在するα-synなどの、α-synに対して高い親和性を有する化合物が挙げられる。特に、フィブリル及び沈着物中に存在するα-synは典型的には凝集したα-synであるので、結合リガンドは凝集したα-synに対して高い親和性を有する。いくつかの態様では、化合物はα-syn特異的である。いくつかの態様では、化合物は、Aβよりもα-synに対して高い親和性を有する。α-Syn特異的は、本明細書で使用される場合、造影剤が、ミスフォールドタンパク質の疾患及び障害に関連する他のタンパク質と比較して、排他的又は優先的にα-synに結合するという事実を指す。本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、結合リガンドと第2の化学種との相互作用を指し、相互作用は化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存する。例えば、標的化リガンドは、一般に、タンパク質ではなくα-synの特定のタンパク質構造を認識して結合する。
【0079】
式Iの範囲内の化合物は、α-syn(例えば、凝集したα-syn)に対して様々な異なる結合親和性を有する。いくつかの態様では、化合物は、約500nM以下のKdで凝集したα-synに対する結合親和性を有する。いくつかの態様では、化合物は、約200nM以下のKdで凝集したα-synに対する結合親和性を有する。他の態様では、化合物は、約100nM以下のKdで凝集したα-synに対する結合親和性を有する。更なる態様では、化合物は、約50nM以下のKdで凝集したα-synに対する結合親和性を有する。
【0080】
いくつかの態様では、化合物は放射性標識を更に含む。放射性標識化合物は、放射性核種で置換された1つ又は複数の原子を有する。放射性標識の例としては、3H、14C、35S、125I、121I、112In、99mTcが挙げられる。化合物は、18F、11C、及び15Oなどの陽電子放射断層撮影に有用な原子を含むように修飾することもできる。
【0081】
式Iに含まれる適切な化合物は、薬学的に許容される塩、例えば、有機酸及び無機酸で形成されたものを含む酸付加塩として存在することができる。そのような酸付加塩は、通常、薬学的に許容される。しかし、薬学的に許容されない塩の塩は、問題の化合物の調製及び精製において有用であってもよい。塩基性付加塩も形成することができ、薬学的に許容される。
【0082】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される水溶性又は油溶性又は分散性であり、治療的に許容される、式Iに含まれる化合物の塩又は双性イオン形態を表す。塩は、化合物の最終的な単離及び精製中に、又は遊離塩基の形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって別々に調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、硫酸水素塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、パラ-トルエンスルホン酸塩(p-トシル酸塩)、及びウンデカン酸塩が挙げられる。化合物中の塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチル塩化物、臭化物、及びヨウ化物、ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミル硫酸塩、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステリル塩化物、臭化物、及びヨウ化物、並びにベンジル及びフェネチル臭化物で四級化されてもよい。治療的に許容される付加塩を形成するために使用することができる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸、並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸などの有機酸が挙げられる。塩はまた、化合物とアルカリ金属又はアルカリ土類イオンとの配位によっても形成することができる。したがって、式Iの化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩が企図される。
【0083】
リポソーム
「リポソーム」は、一般に、内部空洞を含む球状又はほぼ球状の粒子を指す。リポソームの壁は、脂質の二重層を含むことができる。これらの脂質はリン脂質であってもよい。多数の脂質及び/又はリン脂質を、リポソームを作製するために使用することができる。一例は、疎水性部分及び極性頭部基部分を有する両親媒性脂質であり、これは、リン脂質によって例示されるように、水中の二重層小胞に自発的に形成することができるか、又は脂質二重層に安定に組み込まれることができ、その疎水性部分は、二重層膜の内部の疎水性領域と接触し、その極性頭部基部分は、膜の外部の極性表面に向けられている。リポソームは、本明細書の例、並びにそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第17/162,126号、国際公開第2016057812号及び国際公開第2012139080号に記載されているものを含む、任意の既知の方法によって調製することができる。
図2は、α-syn沈着物のMRIのための標的造影剤を含むリポソームの例示的な断面図を提供する。
【0084】
一態様では、ADx-003は、HSPC、Chol、DSPE-mPEG2000、DSPE-PEG3400-XW-01-11コンジュゲート、及びGd(III)-DOTA-DSPEを含む。一態様では、ADx-003は、HSPC、Chol、DSPE-mPEG2000、DSPE-PEG3500-XW-01-11コンジュゲート、及びGd(III)-DOTA-DSPEを含む。いくつかの態様では、第1のリン脂質は、DPPC、DSPC、又はDPPCとDSPCとの混合物を含むことができる。一態様では、ADx-003中の脂質組成及び成分のモル比(%)は、HSPC:Chol:DSPE-mPEG2000:Gd(III)-DOTA-DSPE:DSPE-PEG3400/3500-式Iコンジュゲート=約31.5:約40:約2.5:約25:約1である。いくつかの態様では、HSPC:Chol:DSPE-mPEG2000:Gd(III)-DOTA-DSPE:DSPE-PEG3400/3500-式Iコンジュゲートのいずれか1つのモル比は、最大10%、したがって、31.5±10%:40±10%:2.5±10%:25±10%:1±10%調整することができる。一態様では、ADx-003中の脂質組成及び成分のモル比(%)は、HSPC:Chol:DSPE-mPEG2000:Gd(III)-DOTA-DSPE:DSPE-PEG3400/3500-式Iコンジュゲート=約32.5:約40:約2:約25:約0.5である。一態様では、ADx-003中の脂質組成及び成分のモル比(%)は、HSPC:Chol:DSPE-mPEG2000:Gd(III)-DOTA-DSPE:DSPE-PEG3400/3500-式Iコンジュゲート=約32:約40:約2.5:約25:約0.5である。
【0085】
一態様では、ADx-003中のHSPC含有量は、約24mg/mL~約32mg/mL(総脂質)である。一態様では、ADx-003中のChol含有量は、約14mg/mL~約19mg/mLである。一態様では、ADx-003中のDSPE-mPEG2000含有量は、約5mg/mL~約7mg/mLである。一態様では、ADx-003中のGd(III)-DOTA-DSPE含有量は、30mg/mL~45mg/mLである。一態様では、ADx-003中のDSPE-PEG3400/3500-式Iコンジュゲート含有量は、約2mg/mL~約3mg/mLである。一態様では、ADx-003中の遊離ガドリニウム含有量は、2.5μg/mL未満を含めて、100μg/mL以下である。
【0086】
一態様では、リポソーム組成物のpHは6.4~8.4である。更なる態様では、リポソームの重量オスモル濃度は、200~400mOsmol/kgである。更なる態様では、リポソームの小胞サイズ(Z平均)は、動的光散乱によって測定される場合、150nm(D50)未満、約140nm(D50)、及び約120nm(D50)を含めて、約200nm(D50)未満である。
【0087】
明確にするために、数字と組み合わせた「約」という用語は、その数字の±10%を含むことを意図している。これは、「約」が独立した数字を変更することであるか、又は数字の範囲の両端のいずれか或いは両方で数字を変更することであるかにかかわらず当てはまる。言い換えると、「約10」は9~11を意味する。同様に、「約10~約20」は、9~22及び11~18を意図する。「約」という用語がない場合、正確な数が意図される。言い換えると、「10」は10を意味する。
【0088】
α-Synの検出方法
α-syn(例えば、凝集したα-syn)を検出するための方法が提供される。この方法は、有効量の式Iによる化合物:
【化29】
(式中、Xは、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、-CHO-又は-O-CO-であり、Yは、-CH-CH=CH-又は
【化30】
であり、A及びBは、独立して、C及びNから選択され、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立して、-H、ハロゲン、-OH及び-CH
3から選択され、R
5、R
6及びR
7は、独立して、-H、ハロゲン、-OH、-OCH
3、-NO
2、-N(CH
3)
2、C
1~C
6アルキル又は置換若しくは非置換C
4~C
6アリール基から選択され、但し、A及び/又はBがNである場合、隣接するR
5及び/又はR
7は-Hである)、又はその薬学的に許容される塩を、試料又は対象に導入することを含む。この方法はまた、化合物が試料又は対象中のα-synと会合するのに十分な時間を提供する工程、及び試料又は対象中のα-synと会合した化合物を検出する工程を含む。
【0089】
本明細書で使用される場合、α-synは、全長の140アミノ酸のα-シヌクレインタンパク質、例えば「α-syn-140」を指す。他のアイソフォーム又はフラグメントは、例えばエクソン3の欠失に起因して残基41~54を欠く「α-syn-126」、α-シヌクレイン-126、及び例えば、エクソン5の欠失に起因して残基103~130を欠く「α-syn-112」、α-シヌクレイン-112を含むことができる。
【0090】
α-Syn凝集体は、PD、DLB、及びMSAなどのLBを特徴とする病理学的状態で不溶性フィブリルを形成する。α-Synは、LBフィブリルの主要な構造成分である。α-Synは、PDに罹患しているか又はPDを有すると疑われる個体の脳に存在し得る。様々なα-synペプチドが、PDに関連するニューロン損傷に関連し得る。疾患に関連する様々なα-synアイソフォームとしては、α-syn-140、α-syn-126及びα-syn-112が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
検出方法で使用される化合物は、式Iによるα-syn標的化リガンドのいずれかであってもよい。例えば、いくつかの態様では、標的化リガンドは、Yが-CH-CH=CH-である式Iの化合物であり、更なる態様では、標的化リガンドは、A及びBが両方とも炭素原子である式Iの化合物である。更なる態様では、標的化リガンドは、
図3及び
図8の化合物8、化合物32、及び化合物37から選択され、なお更なる態様では、化合物は以下の構造、
【化31】
を有する。
【0092】
いくつかの態様では、検出方法で使用される化合物をリン脂質-ポリマーに連結して、式IIのリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートを形成する。リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートは、本明細書中に記載されるリン脂質(PL)及び親水性ポリマー(HP)のいずれかを含むことができる。リン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲートは、リポソームに組み込むことができる。式Iの化合物は、蛍光によって直接検出することができるか、放射性標識化合物を含むように修飾することができるか、又は他の手段によって検出することができるが、化合物をリポソームに組み込むことは、検出の選択肢を増加させることができる。
【0093】
この方法は、式Iによる化合物の有効量を試料又は対象に導入する工程を含む。試料は、α-synを含み得る組織の一部、例えば対象から得られた組織試料(例えば、神経組織試料)であってもよく、この場合、この方法はエクスビボ分析に使用される。化合物を試料に導入することは、単に、試料を化合物と接触させることを指す。或いは、インビボ分析を実施するために、化合物を対象に導入してもよい。本明細書で使用される「対象」は、任意の動物であってもよく、患者とも呼ぶことができる。対象は、脊椎動物、哺乳動物、例えば、研究動物(例えば、マウス又はラット)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ)、又はペット(例えば、犬、猫)であってもよい。いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0094】
この方法はまた、化合物が試料又は対象中のα-syn(例えば、凝集したα-syn)と会合するのに十分な時間を提供する工程を含むことができる。式Iの結合リガンドは、α-syn、特に凝集したα-synに対して親和性を有し、したがって、試料又は対象中に存在するα-synと会合する。化合物がα-synと会合するのに必要な時間の量は、試料の性質、投与方法、及び使用される化合物の親和性などのいくつかの変数に応じて変化し得る。化合物がα-synと会合するのに十分な時間の量は、当業者によって容易に決定することができる。例えば、化合物が試料又は対象中でα-synと会合するのに十分な時間は、少なくとも2分、5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、又は少なくとも8時間であってもよい。
【0095】
この方法は、試料又は対象中のα-synに関連する化合物(例えば、凝集したα-syn)を検出する工程を含むことができる。いくつかの態様では、検出することは、MRIを使用して検出することを含むことができる。別の例では、検出することは、蛍光イメージング(「FI」)によって検出することを含むことができる。検出することは、放射性造影剤を使用するSPECTイメージング及び/又はPETイメージングによる検出を含むことができる。放射性造影剤としては、例えば、米国国立衛生研究所のMolecular Imaging and Contrast Agent DatabaseのSPECTイメージング及び/又はPETイメージングでの使用に適切であると考えられる薬剤を挙げることができる。PETイメージングを含むがこれに限定されない、当業者に公知の任意の他の適切なタイプのイメージング方法論が企図される。
【0096】
いくつかの態様では、対象において検出されたα-syn(例えば、凝集したα-syn)の位置を示す画像が生成される。したがって、いくつかの態様では、有効量の造影剤(すなわち、標的化リガンド又はリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート)を対象に投与し、造影剤が分配された対象の組織領域の画像を生成することによって、対象の組織領域の画像を生成する方法が提供される。組織領域の画像を生成するためには、検出可能に有効な量の造影剤が目的の組織領域に到達する必要があるが、造影剤が単独でこの領域に局在する必要はない。しかし、いくつかの態様では、造影剤は、主に目的の組織領域に存在するように標的化又は局所投与される。画像としては、2次元断面図や3次元画像が挙げられる。いくつかの態様では、視覚画像を生成するために、コンピュータを使用して、造影剤によって生成されたデータを分析する。画像を生成する方法の一例はMRIである。MRIスキャナは、強い磁場、磁場勾配、及び電波を使用して体内の器官の画像を生成する。
【0097】
イメージングシステムは、典型的には、3つの基本的な構成要素である(1)撮像剤の励起を誘導するための適切な供給源を、(2)造影剤からの発光を分離又は区別するためのシステム、及び(3)検出システムを含む。検出システムは、手持ち式であってもよく、又は術中顕微鏡などの他の有用なイメージング装置に組み込まれてもよい。例示的な検出システムとしては、内視鏡、カテーテル、断層撮影システム、手持ち式イメージングシステム、又は術中顕微鏡が挙げられる。
【0098】
標的化リガンドの多くは、α-syn(例えば、凝集したα-syn)に対して、Aβ又はτタンパク質などのタンパク質ミスフォールディング障害に関与する他のタンパク質よりも高い親和性を示す。このより高い親和性のために、結合リガンドは、単独で、又はリン脂質-ポリマー-標的化リガンドコンジュゲート中に存在する場合、α-synのレベルをミスフォールディングを受けやすい他のタンパク質のレベルと区別することができる。特に、凝集したα-synのレベルを凝集したAβのレベルから区別することに関心がある。したがって、いくつかの態様では、α-synは、Aβの検出よりも高い特異性で検出される。他の態様では、α-synは、Aβの検出よりも1.5倍以上、Aβの検出よりも2倍以上、Aβの検出よりも3倍以上、Aβの検出よりも5倍以上、又はAβの検出よりも10倍以上高い特異性で検出される。
【0099】
いくつかの態様では、試料又は対象におけるα-syn(例えば、凝集したα-syn)を検出及び/又は画像化するための方法は、対象がミスフォールドしたα-synに関連する疾患を有するかどうかを診断するために、又は対象における疾患の進行を評価するために使用することができる。いくつかの態様では、対象は、PDを発症するか、PDを有するか、又はPDの処置を受けるリスクがある可能性があり、MSAなどのα-synの調節不全、ミスフォールディング、凝集又は処分に関連する疾患を有するリスクがある可能性があり、α-synの調節不全、ミスフォールディング、凝集又は処分に関連する疾患を有する可能性があり、α-synの調節不全、ミスフォールディング、凝集又は処分に関連する疾患の治療中などであってもよい。
【0100】
この方法は、α-synタンパク質(例えば、凝集したα-syn)の検出に基づいて対象のPDを診断することを含むことができる。α-Synのミスフォールディング及び凝集は、PD病因に関連することが示されている。PDの診断はまた、画像又は検出されたα-synタンパク質の量を、対照試料又は健常対象から採取した画像と比較することを含むことができる。この方法は、試料又は対象中の可溶性ミスフォールドα-synタンパク質の存在に従って、対象中のα-syn凝集に関連する疾患の存在を決定又は診断することを含むことができる。この方法は、試料又は対象中の可溶性ミスフォールドα-synタンパク質の存在に従って、対象中のMSAの存在を決定又は診断することを含むことができる。
【0101】
いくつかの態様では、この方法は、α-syn凝集に関連する疾患を有すると診断された対象をα-syn調節療法で治療することを含む。様々な機構を介してα-syn恒常性を標的とするいくつかの新規な治療法が現在開発中である。α-syn調節療法は、例えば、適切な阻害剤、能動又は受動免疫療法アプローチなどを用いて、α-synの産生を阻害すること、α-synの凝集を阻害することを含むことができる。α-syn恒常性を標的とする治療アプローチとしては、PD01A+若しくはPD03A+などの能動免疫、又はPRX002などの受動免疫を挙げることができる。可溶性ミスフォールドα-synの存在を検出するための本明細書に記載の方法を使用して、どの患者をα-syn調節療法で治療することができるかを決定することができる。現在、PDの治療法はないが、レボドパ、ドーパミンアゴニスト及びモノアミンオキシダーゼB阻害剤などの様々な薬物がPDの運動症状の治療に有用である。
【0102】
造影剤を含むリン脂質-ポリマー-標的化リガンド化合物は、薬学的に許容される担体と共に投与することができる。注射用途に適した医薬形態としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液を即時に調製するための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、形態は無菌でなければならず、容易な注射能力が存在する程度に流動性でなければならない。これは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。
【0103】
α-Syn検出用キット
本発明の別の態様は、対象中のα-syn(例えば、凝集したα-syn)を検出及び/又は画像化するためのキットを提供する。キットは、一般に、標的化リガンド並びに他の成分及び試薬を保持する1つ又は複数の容器を有するパッケージを、1つ又は複数の別個の組成物として、又は任意選択的に、試薬の互換性が許す限り混合物として含む。キットは、説明書及びリポソーム組成物を含むことができる。説明書は、検出可能な量のリポソーム組成物を試料又は対象に導入するように使用者に指示することができる。説明書は、リポソーム組成物がα-synと会合するのに十分な時間を与えるように使用者に指示することができる。説明書は、α-synに関連するリポソーム組成物を検出するように使用者に指示することができる。キットは、式Iの標的化リガンド及び/又は式IIによって表されるリン脂質-ポリマー-標的化コンジュゲートを含むことができる。
【0104】
キットに含まれる説明書は、包装材料に添付することができ、又は添付文書として含めることができる。説明書は、通常、書面又は印刷物であるが、これらに限定されない。このような説明書を記憶し、それらをエンドユーザに伝達することができる任意の媒体が、本開示によって企図される。そのような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「説明書」という用語は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0105】
キットの成分は、異なる物理的状態にあってもよい。例えば、いくつかの成分は凍結乾燥されてもよく、いくつかは水溶液中であってもよい。凍結しているものもある。個々の成分は、キット内に別々に包装されてもよい。本発明の方法又は関連する試験、治療、若しくは較正を行うための他の有用なツールもキットに含むことができ、これらには、緩衝液、酵素、蛍光試薬、MRI用の増強剤(例えば、常磁性イオン)、ゲル、プレート、検出可能な標識、容器などが含まれる。キットはまた、対象から生物学的試料を得るためのサンプリング装置、例えばシリンジ又は針も含むことができる。
【0106】
「有効量」という用語は、関連する方法を実施するのに有効な化合物(例えば、α-syn標的化リガンド)の数又は量を限定することを意図している。例えば、有効量のα-syn標的化リガンド、又はα-syn標的化リガンドを含むコンジュゲートが、検出可能なレベルで試料又は対象中に存在するα-synと会合する。対象において使用される場合、有効量は、投与に関連する望ましくない副作用を最小限に抑えるのに十分低い場合がある。治療有効量は、1つ又は複数の用量で投与することができる。
【0107】
本発明は、異性体(例えば、ジアステレオマー及びエナンチオマー)、互変異性体、塩、溶媒和物、多形、プロドラッグなどを含む、その薬学的に許容される形態のいずれかで本明細書に記載される化合物を含む。特に、化合物が光学活性である場合、本発明は具体的には、化合物のエナンチオマーのそれぞれ並びにエナンチオマーのラセミ混合物を含む。「化合物」という用語は、明示的に述べられているか否かにかかわらず、(時には、「塩」が明示的に述べられているが)そのような形態のいずれか又は全てを含む。
【0108】
「診断」という用語は、対象が疾患を発症する可能性又は対象における疾患の存在若しくは性質を決定することを包含することができる。診断という用語はまた、一般に予後と呼ばれる、疾患又は疾患のエピソードの重症度及び可能性のある転帰、又は回復の見込みを決定することを包含する。「診断」はまた、合理的な治療の文脈における診断を包含することができ、診断は、治療の初期選択、治療の修正(例えば、用量又は投薬計画の調整)などを含む治療の指針となる。
【0109】
値の範囲が提供される場合、文脈上明確に指示されない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間の各介在値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載値又は介在値は、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方又は両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0110】
本出願で使用される全て科学用語及び技術用語は、特に明記しない限り、当技術分野で一般的に使用される意味を有する。本明細書で提供される定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本出願の範囲を限定することを意味するものではない。
【0111】
本発明を以下の例によって説明する。特定の例、材料、量、及び手順は、本明細書に記載の本発明の範囲及び精神に従って広く解釈されるべきである。
【0112】
例
全ての試薬は、Sigma-Aldrich、TCI、Alfa Aesar又はAcros Organicsから入手し、更に精製することなく使用した。プロトン核磁気共鳴(1H NMR)を、Bruker600又は500NMR分光計で600MHz又は500MHzで記録した。炭素核磁気共鳴(13C NMR)を、それぞれBruker300又は500NMR分光計で75MHz又は125MHzで記録した。1H NMRについては、アセトン(2.05ppm)、クロロホルム(7.26ppm)又はジメチルスルホキシド(2.50ppm)の内部標準からの化学シフトを百万分率(ppm)で報告し、13C NMRについては、残留アセトン(206.26ppm)、クロロホルム(77.00ppm)又はジメチルスルホキシド(39.52ppm)のいずれかの内部標準からの化学シフトを百万分率(ppm)で報告する。NMRピーク多重度は以下の、s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、dd(二重項の二重項)、td(三重項の二重項)、dt(二重項の三重項)及びm(多重項)のように表される。結合定数(J)は、ヘルツ(Hz)で与えられる。高分解能質量スペクトルは、The Ohio State University Mass Spectrometry and Proteomics Facilityから得た。TLCを、EMD Chemical Inc.からのシリカゲル60 F254プレートで行い、成分を、紫外光(254nm)及び/又はエタノール中20重量%リンモリブデン酸溶液によって可視化した。全てのカラムクロマトグラフィーにSiliFlashシリカゲル(230~400メッシュ)を使用した。
【0113】
例1:標的化リガンドの分子設計
従来技術の化合物1を、α-syn凝集体に対する高い親和性及び選択性を有する新規な構造の開発に向けた構造活性相関(「SAR」)研究の足場として選択した。分子設計(
図4)は、分子の3つの部分である第1の芳香族基(A)、架橋(B)、及び第2の芳香族基(C)を対象とした。(A)については、1-インダノン及び1,3-インダンジオンを新規な誘導体の出発点として選択した。(B)については、いくつかの誘導体においてジエンを維持した。分子内の電子密度を増加させるために、二重結合の1つが電子リッチなチオフェン部分で置き換えられた誘導体も導入した。更に、分子内の剛性が全体的に増加した誘導体は、2つの異なる環系で第2の二重結合を「ロック」することによって導入された。第2の芳香族基(C)の周りの誘導体化は、電子リッチな芳香環及び電子が不足した芳香環の両方、並びに複素環を含んでいた。
【0114】
例2:標的化リガンドの化学合成
図5を参照して、環Aが1-インダノニル-(
図3に示すように、化合物7~15を生成するための式i)、1,3-インダジオニル-(
図3に示すように、化合物16~22を生成するための式ii)、α-テラロニル-(
図3に示すように、化合物23~24を生成するための式iii)又はクマリニル-(
図3に示すように、化合物25~28を生成するための式iv)部分のいずれかで置き換えられている第1の一連の誘導体を、ジエン架橋(B)を維持しながら、所望のケト基質と対応するシンナムアルデヒド誘導体との酸又は塩基触媒アルドール縮合反応によって入手した。
【0115】
したがって、酢酸(10mL)中のアルデヒド(1.0当量)及びインドリノン(1.0当量)の溶液に、37%HCl(0.5mL)をゆっくり添加した。反応混合物を110℃で一晩撹拌し、室温に冷却した。冷却した溶媒を氷水に注ぎ、濾別した。固体をメタノールで再結晶した。
【0116】
或いは、ジクロロメタン/メタノール(1:2、10mL)中のアルデヒド(1.0当量)及びインドリノン(1.0当量)の溶液に、エチレンジアミン二塩酸塩(0.25mmol)をゆっくり添加した。反応混合物を室温で5時間撹拌した。固体を濾別し、メタノールで再結晶した。
【0117】
特に、化合物8、(E)-2-((E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アリリデン)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オンに関して、化合物を、1-インダノン(250mg、1.89mmol)及び4-ヒドロキシ-3-メトキシシンナムアルデヒド(337mg、1.89mmol)を用いて酸性プロトコルによって調製して、所望の生成物(8)を赤色固体として得た(436mg、収率79%)。1H NMR(600 MHz,DMSO-d6)δ 9.52(s,1H),7.74(d,J=7.8 Hz,1H),7.69(td,J1=1.2 Hz,J2=7.2 Hz,1H),7.64(d,J=7.8 Hz,1H),7.47(t,J=7.2 Hz,1H),7.29(dt,J1=1.8 Hz,J2=10.2 Hz,1H),7.28(s,1H),7.13(d,J=15.6 Hz,1H),7.09(dt,J1=10.2 Hz,J2=15.6 Hz,1H),7.06(d,J=8.4 Hz,1H),6.81(d,J=8.4 Hz,1H),3.93(s,2H),3.86(s,3H);13C NMR(150 MHz,DMSO-d6)δ 192.9,149.6,148.9,148.4,143.3,139.3,135.1,134.9,134.2,128.4,127.9,127.1,123.7,122.6,122.5,116.1,111.0,56.2,30.7.HRMS(ESI)calcd for C19H17O3 [M+H]+293.1172,found,293.1171.
【0118】
初期の実験では、モノ-ケト基質が酸性条件下でより清浄な反応生成物及びより良好な収率をもたらし、一方、ジ-ケト基質は塩基性条件を好ましいことが示唆された。したがって、これらの基質を含む後続の反応を同様の反応条件下で行った。得られたジエンの
1H及び
13C NMRスペクトルは両方とも、単一の生成物と一致するピークを示し、2つの可能な異性体(E,E又はZ,E)のうちの1つのみが形成されたことが示唆された。異核多結合相関(「HMBC」)及びNOEスペクトルの更なる分析は、単離された生成物が、強調されたプロトン間で観察されたNOE増強のために、E,E配置を有することを示唆した(
図6)。
【0119】
架橋ジエン系の二重結合の1つが電子リッチなチオフェン部分で置き換えられて分子内の電子密度を増加させる誘導体を、式vii~ixに示すように2段階で合成した(
図7)。最初に、5-ブロモ-2-チオフェンカルボキシアルデヒドを、アルドール縮合反応条件下で1-インダノン(又は6-ヒドロキシル-1-インダノン)に曝露して、チオブロモ中間体36を得て、これを鈴木カップリング反応条件下で種々のアリールボロン酸エステルに曝露して(式vii)、化合物37~44を生成した。同様に、この系列の他の誘導体を、1-インダノン(式vii及びviii)及びα-テトラロンと、それぞれ4-ブロモ-2-チオフェンカルボキシアルデヒド及び5-ブロモ-2-チオフェンカルボキシアルデヒドとのアルドール縮合から調製して、対応するチオブロミド中間体45及び48を生成した。次いで、これらの中間体を異なるアリールボロン酸エステルに曝露して、それぞれ化合物46及び47並びに化合物49~51を得た。
【0120】
より具体的には、
図7及び
図8を参照して、第2の一連の1-インダノニル-及び1,3-インダンジオニル-ジエン誘導体を、それぞれのアリールボロン酸エステルの鈴木カップリングを介して1-インダノニル-ジエンブロミド(7及び11)及び1,3-インダンジオニル-ジエンブロミド(17)に第2の環を付加することによって生成して、式v及びviに示すように化合物29~35を生成した。したがって、1,4-ジオキサン/H
2O(4:1、10mL)中のインドリノン誘導体(1.0当量)、ボロン酸誘導体(2.0当量)及びK
2CO
3(1.0当量)の溶液をアルゴンによって20分間脱気し、Pd(PPh
3)
4(0.1当量)を添加した。反応混合物を再び脱気し(5分)、110℃で一晩撹拌した。反応混合物を水(5mL)でクエンチし、水層を酢酸エチル(30mL)で抽出し、飽和NaHCO
3(10mL)で洗浄し、ブライン(10mL)で洗浄した。合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0121】
化合物36、45、及び48のNOE(
図9)及びHMBCスペクトルの分析は、それぞれのアルドール縮合反応から生じる二重結合が全てZ配座を有することを示した。
【0122】
図10に示すように、架橋ジエンの二重結合の一方が環系内でマスクされて、分子内の剛性を高めために種々の誘導体にアクセスした。この系列の全てのメンバーは、それぞれのケト誘導体と対応するアルデヒドとの間の単一のアルドール縮合反応でアクセスされた。
図11は、種々の誘導体の化学構造を示す。
【0123】
全ての化合物の構造解明は、1H及び13C NMR、並びに各個々の化合物の高分解能質量スペクトルの分析によって達成された。全ての化合物のUV/VIS吸収及び発光スペクトルをリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)中で記録した。蛍光顕微鏡研究に適した蛍光特性を有する全ての化合物を合成フィブリル結合研究のために選択した。
【0124】
例3:合成α-Synフィブリルに対する結合親和性(K
d)
合成された全ての化合物(19及び28を除く)は、PBS中で良好な発光スペクトルを示した(
図12、表1)。結合親和性を決定した。結合親和性は、単一の生体分子とそのリガンド/結合パートナーとの間の結合相互作用の強さである。結合親和性は、二分子相互作用の強度を評価及び順位づけるために使用される平衡解離定数(K
d)によって測定及び報告される。K
d値が小さいほど、その標的に対するリガンドの結合親和性が大きくなる。K
d値が大きいほど、標的分子とリガンドがより弱く引き寄せられ、互いに結合する。
【0125】
α-Synフィブリル形成
以下の手順により、R-peptideから購入したペプチド(1mg、cat#S-1001-2、モル重量14460)からフィブリルを作成した。0.5mgのα-synをセントリコン(10000MWCO)中の0.2mlの水に懸濁した。この懸濁液に0.2mLリン酸緩衝液(10mM、pH7.5)を添加した。遠心分離機(18000g/s)で5分間スピニングすることによって可溶性材料を除去した。このプロセスを4回繰り返した。4回目の後、ペプチドをマイクロチューブ(200μl)に移し、2.5μlの300mM MnCl(水中で作成)を添加した。得られた混合物をインキュベーター中40℃で5~7日間撹拌した(溶液は濁った)。形成されたフィブリルを21,000g/sで6分間スピンダウンした。上清を廃棄し、フィブリルペレットを200μlのPBS緩衝液(pH=7.4)に再懸濁した。
【0126】
α-synフィブリル/リガンド結合アッセイ
PBS(pH=7.5、197μL)中の0.1nM~10μMの様々な濃度のリガンド溶液を、α-synフィブリル(3μL、2.5μMの最終濃度)を含有するマイクロチューブに添加した。混合物を振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。混合物を21,000g/sで15分間スピンダウンしてフィブリルを分離した。沈殿物をTris-HClで2回洗浄し、200μLの緩衝液に再懸濁した。蛍光は、分子の励起及び発光最大値を使用してSpectraMax-384プレートリーダで測定した。全てのデータ点を3連で実施した。結合部位のKd及び最大数(Bmax)の値は、MATLAB(登録商標)ソフトウェア(R2019B)を使用した非線形回帰によって、データを式Y=Bmax×X/(X+Kd)にフィッティングすることによって決定した。
【0127】
Kd値≧2μMを示した全ての化合物(化合物7、11、16~18、28、52~54及び56)は、不十分な結合剤と考えられ、結合なし(「NB」)と報告された。
【0128】
一般に、1-インダノン-ジエン誘導体は、8対20及び10対22によって例示されるように、対応する1,3-インダンジオン-ジエンよりも良好な結合剤であると考えられた。1-インダノン-ジエン部分上の任意の芳香族置換(活性化、13又は非活性化、14及び15)は、それぞれ非置換誘導体10及び8と比較して結合親和性を低下させる。α-テトラロン-ジエン及びクマリン-ジエン誘導体は全て、8、20、23及び25に例示されるように、対応する1-インダノン-ジエン及び1,3-インダノン-ジエン誘導体と比較して劣った結合を示した。Kdが18.8nMの化合物32とは別に、第2の芳香族基(C)に第2の環を付加することは、1-インダノン-ジエン又は1,3-インダンジオン-ジエン系のいずれの結合親和性も改善しないと考えられる。同様に、ジエン架橋中の二重結合の1つを電子リッチなチオペニル部分で置き換えること(化合物8対39)は、いくつかの中程度のKd値(化合物37、39、及び42)を除いて、α-synフィブリルに対するリガンドの結合親和性にプラスの影響を及ぼさない。架橋ジエンの第2の二重結合をC(化合物52~58)との縮合環にマスキングすることによって系をより剛性にすると、結合が低くなり、結合がなくなる。
【0129】
例4:α-Synフィブリル対Aβフィブリルに対する蛍光特性及びリガンド結合選択性
α-syn凝集体は、PD及び他のシヌクレイノパチーで遭遇する最も優勢なミスフォールドタンパク質凝集体を表すが、いくつかの研究は、Aβ及びτ凝集体がα-synと重複することが多いことを示唆している。インビボ適用のための潜在的なα-syn剤は、そのような場合の偽陽性を最小限に抑えるために、(特にAβに対して)高感度及び高選択性の両方でなければならない。11のリガンドの予備的なα-synフィブリル結合研究は、高い親和性から中程度の親和性(K
d≦100nM)を示した。Aβフィブリルと比較して、α-synに対するこれらのリガンドの蛍光特性及び結合親和性を更に評価した。遊離配位子の、α-syn又はAβフィブリルのいずれかの存在下での吸収及び発光最大値並びに蛍光量子収率を決定した。リガンド8(XW-01-11)及び32(XW-01-64)のデータによって例示されるように(
図13)、リガンドは全て、水性媒体中で≦0.5μMの濃度で最小の蛍光を示すが、これはα-syn又はAβフィブリルのいずれかを添加すると著しく増加した。
【0130】
蛍光の増加は、遊離分子からリガンド-フィブリル複合体への吸光度及び発光最大値の両方の深色シフトを伴い、α-synフィブリルへのリガンド結合時の蛍光量子収率の8~15倍の増加及びAβフィブリルへの結合時の更なる2~3倍の増加を伴う(
図14、表2)。
【0131】
これらのリガンドによるフィブリル結合時の蛍光及び発光最大値の観察された深色シフト、蛍光の増加、並びに蛍光量子収率は、βシート結合リガンドの他の観察結果と一致する。
【0132】
Aβフィブリルに対する結合親和性を飽和結合アッセイで評価した。
【0133】
Aβフィブリル形成
β-アミロイド(1~40)ペプチドは、R-Peptide(ジョージア州ボガート)から購入した。フィブリルは、Eric et al.(PLoS One,2012,7(10),e48515)によって概説されたプロトコルに従って調製した。Aβ(1~40)をPBS(pH7.4)に溶解して、433μg/ml(100μM)の最終濃度にした。溶液を、マグネチックスターラを使用して室温で4日間700rpmで撹拌して、フィブリルの形成を促進した。ストック溶液を等分し、将来の使用のために-80℃で保存した。フィブリルの均一な懸濁液を維持するために、ストック溶液を十分に撹拌した後、結合アッセイのためのアリコートを除去した。
【0134】
Aβフィブリル/リガンド結合アッセイ
PBS(pH=7.5、180μL)中の1nM~100μMの様々な濃度のリガンド溶液を、β-アミロイドフィブリル(20μL、10μMの最終濃度)を含有するマイクロチューブに加えた。混合物を振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。混合物を21,000g/sで12分間スピンダウンしてフィブリルを分離した。沈殿物をTris-HClで2回洗浄し、200μLの緩衝液に再懸濁した。蛍光は、分子の励起及び発光最大値を使用してSpectraMax-384プレートリーダで測定した。全てのデータ点を3連で実施した。結合部位のKd及び最大数(Bmax)の値は、MATLAB(登録商標)ソフトウェア(R2019B)を使用した非線形回帰によって、データを式Y=Bmax×X/(X+Kd)にフィッティングすることによって決定した。
【0135】
結果(
図15、表3)は、化合物29を除いて、他の全ての化合物が、二桁のα-synフィブリルと比較して、ナノモル範囲のAβフィブリルへの三桁の解離定数を有することを示す。2つのタンパク質凝集体間の各化合物のK
d値の比較は、最も高い親和性(K
d=9.7nM)を有する化合物8が、Aβに対して14.4倍の選択性を有することを示唆している。わずかにより中程度のα-syn結合剤である化合物32(K
d=18.8nM)は、Aβに対して26倍の選択性を有する。中程度のα-syn結合剤でもある化合物37(K
d=34.9nM)は、Aβに対して11.2倍の選択性を有する。
【0136】
例5:蛍光ヒトPD及びAD組織染色
α-syn凝集体に対する十分な蛍光特性、高親和性、及び選択性を考慮して、それぞれ14.4倍、26倍、及び11.2倍のAβ選択性に対するα-syn選択性を有するリガンド8、32、及び37を、ヒトPD及びAD患者の神経病理学的に検証された死後脳試料のインビトロ蛍光染色で更に評価した。PD脳の脳橋及び前頭皮質からの切片を透過処理し、抗体[抗α-シヌクレイン(aa121-125)抗体、クローンSyn211]及び各化合物の1μM溶液で順次処理し、共焦点顕微鏡法によって可視化した。
図16のI列は、細胞核を強調する蛍光ヘキスト染色を示し、それによって組織内の細胞体の斜視図を提供する。II列はリガンド蛍光を示す。III列は抗体からの蛍光を示す。IV列は、最初の3つの画像を混合することによって作成された合成画像である。行Aは、化合物8(XW-01-11)で処理したPD脳の前頭皮質の切片から得られた画像を示す。画像に見られるように、リガンドは組織内のレビー病変を強力に標識する。パターン及び標識強度は、抗体チャネルにおいて類似しているように見える。合成画像は、リガンド及び抗体シグナルの共局在を示し、それらが同じ病理に結合することを確認する。同様に、行Bのリガンド32(XW-01-64)で処理した切片は、リガンドによるレビー病変の強力な標識を示し、これは抗体の染色パターン及び強度によって裏付けられる。リガンド8で観察されるように、リガンド32と抗体画像との混合から画像化された複合体はまた、両方のシグナルの共局在化を示し、死後のヒトPD脳切片におけるレビー病変の標識化におけるこれらのリガンドの効率を確認する。処理された組織の近接したZ積層画像(C行)では、病変はリガンド及び抗体チャネルの暗孔(矢印)を取り囲むように見える。核染色、リガンド、及び抗体シグナルを混合することによって作成された合成画像は、リガンド及び抗体チャネルの暗点が、実際には、高倍率(行D)でより顕著な核によって占有されたスポットであることを示す。核の近接及び位置は、予想されるように、観察された病状が細胞質封入体であり、細胞外凝集体ではないことを示唆している。
【0137】
リガンド及び抗体Syn211組織染色実験によって標識された部位を更に特徴付けるために、隣接する皮質切片を化合物8で処理し、次いで、Syn211又はSyn303のいずれかで処理した。予想通り、化合物8及びSyn211(
図17、1行目)で処理した切片は、合成画像において共局在する同一のリガンド及び抗体標識パターンを示す。リガンド及び抗体の両方が、組織上に存在する全ての形態の病理を標識すると考えられる。一方、リガンド及び抗体Syn303(
図17、2行目)で処理した組織切片は、リガンドチャネルでは小さい神経突起(上の矢印)の両方が効果的に標識されるが、抗体チャネルでは成熟レビー小体のみ(下の矢印)が標識される。これらの所見は、標識された病理がα-synであり、リガンドが病理の全ての立体配座を標識することを示唆する。
【0138】
ヒト組織中の凝集物上のα-syn対Aβフィブリル結合で観察された選択性を評価するために、等モル濃度のリガンド8、32、及び37を、AD患者の神経病理学的に検証された死後脳試料からの皮質切片と一緒に、上記のようにPD組織上で更に評価した。
図18は、α-syn対Aβに対して14.4倍の選択性を有するトップの結合剤(8)からのデータを示す。行Aで観察され得るように、PD組織は、病理の大きな沈着物と細かい沈着物の両方の強力な標識を示す(II列)。同様の標識パターン及び効率が抗体チャネル(III列)で観察される。両方のシグナルをヘキストシグナルと混合することによって生成された合成画像(IV列)は、リガンド及び抗体シグナルの共局在を示す。PD組織とは異なり、AD組織からの蛍光画像(B行)は、リガンドチャネル(II列)においてほとんどが高密度コアAβプラークを示すが、拡散プラークからなるより微細な凝集体は示さない。抗体、抗βアミロイド、17-24抗体(4G8)は、高密度コア及びびまん性Aβ病理の両方を強調している(III列)。両方のシグナルをヘキストシグナルと混合することによって生成された合成画像は、高密度コアプラークからのリガンド及び抗体シグナルの重複を示す(IV列)。このデータは、リガンドがフィブリルAβよりも高い効率でフィブリルα-synを標識することを示唆している。処理されたAD組織からの高倍率画像(列C)は、予想されるように、観察されたAβ病変は、PD組織で観察された細胞内レビー病変とは異なり、細胞外であることを示す。
【0139】
ヒト組織の取得
ヒトPD脳組織及びAD脳組織を、NIH Neurobiobankから得た。
【0140】
ヒトPD脳組織におけるα-syn病理の標識化
中脳組織(前頭皮質5469)をTissue-Tek O.C.T.で包埋した。化合物を液体窒素中に30分間保持した。-20℃下でLecia Biosystems Cryostatを用いて、包埋された組織を厚さ30μmの切片にスライスし、予備洗浄した顕微鏡スライドに取り付けた。切片を1×PBSTで2回洗浄し、10%ホルマリン溶液を20分間ロードした。切片を1×PBSで3回洗浄し、0.1% Triton-X100で10分間透過処理した。切片を1×PBSで2回洗浄し、2%正常ロバ血清と共に室温で1時間インキュベートした。切片を抗α-シヌクレイン(aa121-125)抗体、クローンSyn211(Ascites free)(1%ロバ血清中1:1000)と共に4℃で一晩インキュベートし、1×PBSで3回洗浄した。切片を、Alexa Fluor488(PBS中1:200)で標識した蛍光二次抗体と室温で2時間インキュベートした。切片を1×PBSTで3回洗浄し、試験する化合物で処理した。各組織切片を、PBSに溶解した5μMの試験化合物と共に室温で30分間インキュベートした。切片を1×PBSTで3回洗浄し、TrueBlack Lipofuscin Autofluorescence Quencher(エタノール中1:20)を2分間ロードした。切片を1×PBSで3回洗浄し、カバーガラスを被せた。Alexa Fluor488又はAlexa Fluor647用の標準的な励起/発光フィルターを使用して、Lecia DMi8電動蛍光顕微鏡で組織を画像化した。
【0141】
ヒトAD脳組織におけるβアミロイドプラークの染色
中脳組織(前頭皮質5590)をTissue-Tek O.C.T.で包埋した。化合物を液体窒素中に30分間保持した。-20℃下でLecia Biosystems Cryostatを用いて、包埋された組織を厚さ30μmの切片にスライスし、予備洗浄した顕微鏡スライドに取り付けた。切片を1×PBSTで2回洗浄し、次いで、10%ホルマリン溶液に20分間ロードした。切片を1×PBSで3回洗浄し、0.1% Triton-X100で10分間透過処理した。切片を1×PBSで2回洗浄し、2%正常ロバ血清と共に室温で1時間インキュベートした。切片を精製抗βアミロイド、17-24抗体(4G8)(1%ロバ血清中1:500)と共に4℃で一晩インキュベートし、1×PBSで3回洗浄した。切片を、Alexa Fluor488(PBS中1:200)で標識した蛍光二次抗体と室温で2時間インキュベートした。切片を1×PBSTで3回洗浄し、試験する化合物で処理した。各組織切片を、PBSに溶解した5μMの試験化合物と共に室温で30分間インキュベートした。切片を1×PBSTで3回洗浄し、TrueBlack Linpofuscin Autofluorescence Quencher(エタノール中1:20)を2分間ロードした。切片を1×PBSで3回洗浄し、カバーガラスを被せた。Alexa Fluor488又はAlexa Fluor647用の標準的な励起/発光フィルターを使用して、Lecia DMi8電動蛍光顕微鏡で組織を画像化した。
【0142】
ヒト脳組織HRP-DAB染色
中脳組織(前頭皮質5469又は前頭皮質5590)をTissue-Tek O.C.T.で固定した。化合物を液体窒素中に30分間保持した。-20℃下でLecia Biosystems Cryostatを用いて、冷凍した組織を厚さ30μmの切片にスライスし、予備洗浄した顕微鏡スライドに取り付けた。切片を1×PBSTで2回洗浄し、10%ホルマリン溶液を20分間ロードした。切片を1×PBSで3回洗浄し、50μlの過酸化物Blockを各切片に適用し、室温で10分間インキュベートした。切片を1×PBSで2回洗浄し、2%正常ロバ血清と共に室温で1時間インキュベートした。切片を抗α-シヌクレイン(aa121-125)抗体、クローンSyn211(Ascites free)(1%ロバ血清中1:1000)又は精製抗β-アミロイド、17-24抗体(4G8)(1%ロバ血清中1:500)と共に4℃で一晩インキュベートし、1×PBSで3回洗浄した。切片をビオチン化二次抗体と室温で2時間インキュベートし、1×PBSTで3回洗浄した。切片をストレプトアビジン/HRP標識と30分間インキュベートし、1×PBSTで3回洗浄した。切片を蒸留水と10分間インキュベートし、DAB Chromagen(50μLのDAB Chromagenを1mlのDAB基質と組み合わせる)とインキュベートした。切片を蒸留水で3回洗浄し、アルコールを通して10分間脱水した。最後に、切片をキシレンでカバースリップまで洗浄し、室温で2日間保存し、明視野顕微鏡で画像化した。
【0143】
例6:DSPE-PEG3400-XW-01-11コンジュゲートの合成
図19を参照して、ブロモ酢酸エチル(2.3g、13.5mmol)を、DMF(10mL)中の6-ヒドロキシ-1-インダノン(1.0g、6.8mmol)、K
2CO
3(2.8g、20.2mmol)及びKI(112mg、0.7mmol)の溶液に一度に添加した。反応混合物を90℃で一晩撹拌した。この時点で、TLC(シリカ、1:3EtOAc-ヘキサン)は、反応が完了したことを示した。反応混合物を室温に冷却し、溶離液として酢酸エチル(50mL)を使用してセライトパッドで濾過し、濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の生成物(1.4g、90%)を白色固体として得た。
1H NMR(600 MHz,CDCl
3)δ 7.38(d,J=8.4 Hz,1H),7.26(dd,J
1=2.4 Hz,J
2=8.4 Hz,1H),7.10(d,J=2.5 Hz,1H),4.64(s,2H),4.26(q,J=7.8 Hz,2H),3.06(t,J=6.0 Hz,2H),2.69(t,J=6.0 Hz,2H),1.29(t,J=7.8 Hz,3H);
13C NMR(150 MHz,CDCl
3)δ 206.7,168.4,157.6,148.9,138.2,127.7,124.4,105.8,65.3,61.5,36.9,25.1,14.1.
【0144】
37%HCl(0.2mL)を生成物(700mg、3.0mmol)及び酢酸(10mL)中の4-ヒドロキシ-3-メトキシシンナムアルデヒド(588mg、3.3mmol)の溶液にゆっくり添加した。反応混合物を120℃で一晩撹拌し、室温に冷却した。冷却した溶媒を氷水に注ぎ、濾別した。固体をメタノール中で再結晶させ、所望の生成物(768mg、70%)を褐色固体として得た。1H NMR(600 MHz,DMSO-d6)δ 13.09(s,1H),9.52(s,1H),7.55(d,J=8.4 Hz,1H),7.32-7.24(m,3H),7.13(dd,J1=6.0 Hz,J2=9.0 Hz,1H),7.08(d,J=5.4 Hz,1H),7.06(td,J1=3.0 Hz,J2=7.8 Hz,1H),6.81(d,J=8.4 Hz,1H),4.79(s,2H),3.85(s,3H),3.84(s,2H);13C NMR(150 MHz,DMSO-d6)δ 192.7,170.6,148.4,142.6,140.4,135.8,134.2,127.9,123.7,122.4,106.3,65.3,56.2,29.9.
【0145】
生成物(120mg、0.3mmol)及び乾燥DMF(8mL)中のDSPE-PEG3400-NH2(500mg、0.1mmol)の溶液に、HSTU(160mg、0.4mmol)を添加した。反応混合物を室温で2日間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をメタノール/水混合物(1:1、8ml)で希釈し、2000MWCO透析カセットにロードし、MES緩衝液(10mM、2×5リットル)で8時間透析し、水(3×5リットル)で2日間透析した。凍結乾燥により水分を除去し、DSPE-PEG3400-XW-01-11(242mg、48%)を黄色固体として得た。1H NMR(600 MHz,CDCl3)δ 7.45(d,J=8.4 Hz,1H),7.23(dd,J1=2.4 Hz,J2=5.6 Hz,1H),7.19-7.17(m,2H),7.15(d,J=2.4 Hz,1H),7.02-6.99(m,3H),6.78(dd,J1=8.4 Hz,J2=10.8 Hz,1H),5.09(brs,1H),4.48(s,2H),4.30(dd,J1=2.4 Hz,J2=12.0 Hz,1H),4.12-4.06(m,2H),4.01(t,J=4.2 Hz,2H),3.98(brs,2H),3.81-3.77(m,5H),3.73(s,2H),3.49(dd,J1=2.4 Hz,J2=7.8 Hz,2H),3.48-3.46(m,3H),3.35-3.32(m,4H),3.20-3.18(m,2H),2.21-2.18(m,4H),1.93-1.92(m,4H),1.50-1.47(m,4H),0.761(t,J=6.0 Hz,6H);HRMS(MALDI)calcd for C219H410N2O92P [M+H]+4571.7203,found,4571.7069.
【0146】
例7:化合物8(XW-01-11)標識リポソームの作製
HSPC:DSPE-mPEG2000:Chol:Gd-DOTA-DSPE:DSPE-PEG3400-XW-01-11を32:2.5:40:25:0.5のモル比(%)で含む脂質混合物を60~65℃でエタノール(600μL)に溶解した。エタノールに溶解したDHPE-ローダミン(200μL中1mg)を添加し、生じた溶液を、ヒスチジン緩衝生理食塩水(HBS)(10mMヒスチジン、140mM NaCl、約pH7.6)で60~65℃で45分間水和させた。水和した脂質溶液を、高圧押出機(Northern Lipids、カナダブリティッシュコロンビア州バンクーバー)を使用して、60~65℃で400nm(5回通過)、続いて200nm(8回通過)のヌクレオポア膜に連続的に押し出して、所望のサイズのリポソームを形成した(動的光散乱(DLS)装置(米国ニューヨーク州ホルツビルのBrookhaven Instruments Corp.)。リポソーム懸濁液を、300kDaの分子量カットオフ膜(米国カリフォルニア州のSpectrum Laboratories Inc.)を使用してヒスチジン緩衝生理食塩水(HBS)に対して透析して、非カプセル化材料を除去した。対照リポソーム(非標的化リポソーム)を同じプロトコルを用いて調製したが、DSPE-PEG3400-XW-01-11画分をmPEG2000で置き換えた。
【0147】
例8:α-Synフィブリルへの化合物8(XW-01-11)標的化リポソームの結合のインビトロ評価
図20は、(a)本発明の標的化リポソームとα-synフィブリルとの間の反応を示す模式図、(b)例7で調製したリガンド8(XW-01-11)標識リポソームの溶液が194nmの平均流体力学的直径を有することを示すDLSグラフ、(c)例7の標的リポソームを1nMのα-synフィブリルと1.5時間インキュベートした後の流体力学的直径(2346nm)の大きな増加を示すDLSグラフであり、これはナノ粒子とフィブリルの間の凝集体の形成に起因し、フィブリルに対するXW-01-11の高い親和性によって一緒に保持されたものである、DLSグラフ、(d)非標的化ナノ粒子(すなわち、DSPE-PEG3400-XW-01-11画分をmPEG2000に置き換えた)の例示的溶液が169nmの平均流体力学的直径を有することを示すDLSグラフ、(e)非標的化ナノ粒子の例示的溶液を1nMのα-synフィブリルと1.5時間インキュベートしても流体力学的直径>500nmの粒子は得られず、非標的化ナノ粒子とα-synフィブリルとの間に相互作用がないことを示すDLSグラフを示す。
【0148】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に利用可能な資料の完全な開示は、参照により組み込まれる。上記の詳細な説明及び例は、理解を明確にするためにのみ与えられている。そこから不必要な制限を受けることはないと理解される。本発明は、図示及び記載された正確な詳細に限定されず、当業者に明らかな変形例は、特許請求の範囲によって定義される本発明内に含まれる。
【国際調査報告】