(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】逆マイクロラテックスを含むワクチンアジュバント
(51)【国際特許分類】
A61K 39/39 20060101AFI20230405BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61K39/39
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549574
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2021053873
(87)【国際公開番号】W WO2021165312
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398057293
【氏名又は名称】ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】プリシュチャック、ドロテ
(72)【発明者】
【氏名】ベン アラス、ジュリエット
(72)【発明者】
【氏名】モンティエ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】プジョル、デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA38
4C085FF11
4C085FF12
4C085FF13
4C085FF17
4C085FF18
(57)【要約】
少なくとも1つの逆マイクロラテックスを含むワクチンアジュバントであって、逆マイクロラテックスが、少なくとも1つの油、少なくとも1つの界面活性剤、例えばアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形態で完全に又は部分的に中和されたポリアクリレートなどの少なくとも1つのポリマーを含み、ろ過によって、又はオートクレーブの熱を通過させることによって完全に滅菌可能であり、ワクチン抗原のみを含む水相と1ステップで乳化可能である、ワクチンアジュバント。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆マイクロラテックスとして、少なくとも1つの高分子電解質型ポリマーを含む逆マイクロエマルジョンを少なくとも含む、ワクチンアジュバント。
【請求項2】
前記逆マイクロラテックスが、油相、水相、少なくとも1つの油中水型(W/O)界面活性剤、少なくとも1つの水中油型(O/W)界面活性剤、及びアニオン性架橋高分子電解質を含み;前記アニオン性架橋高分子電解質は、少なくとも1つの架橋性モノマー及び少なくとも1つの親水性モノマー単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のワクチンアジュバント。
【請求項3】
前記モノマー単位が、アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩で完全に又は部分的に塩化されたアクリル酸に由来することを特徴とする、請求項2に記載のワクチンアジュバント。
【請求項4】
前記アクリル酸が、ナトリウム塩又はアンモニウム塩、好ましくはナトリウム塩で完全に又は部分的に塩化されていることを特徴とする、請求項3に記載のワクチンアジュバント。
【請求項5】
前記アニオン性架橋高分子電解質が、式(1):
【化1】
(式中、
・R1は、-H、-CH
3、-C
2H
5及び-C
3H
7から選択され、好ましくは-CH
3であり、
・nは、0~50であり、
・mは、8~22である)
のモノマー単位を含むことを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項6】
前記アジュバントが、油(H
1)、少なくとも1つの油中水型界面活性剤(E
1)及び少なくとも1つの水中油型界面活性剤(E
2)をさらに含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項7】
1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%の油中水型界面活性剤(E
1)を含むことを特徴とする、請求項6に記載のワクチンアジュバント。
【請求項8】
1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%の油中水型界面活性剤(E
2)を含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載のワクチンアジュバント。
【請求項9】
その重量の100%あたり、
a)50重量%~97.5重量%、好ましくは60重量%~90重量%の前記油(H
1);
b)1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%の前記油中水型界面活性剤(E
1);
c)1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%の前記水中油型界面活性剤(E
2);及び
d)0.5重量%~30重量%、好ましくは1重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~10重量%の少なくとも1つの逆マイクロラテックス、
を含み、重量含有率a)+b)+c)+d)の合計が100%に等しいことが理解される、請求項6~8のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項10】
前記油(H
1)が白色鉱油であることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載のワクチンアジュバント。
【請求項11】
ワクチンアジュバントの調製のための、請求項2~5のいずれか一項に記載の逆マイクロラテックスの使用。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のアジュバントと、少なくとも1つの抗原、又はアミノ酸配列を含む化合物の少なくとも1つのインビボジェネレーターの、少なくとも1つの水溶液(S)とを含む、ワクチン。
【請求項13】
・10重量%~80重量%の請求項1~10のいずれか一項に記載のアジュバント、及び
・20重量%~90重量%の前記水溶液(S)
を含むことを特徴とする、請求項12に記載のワクチン。
【請求項14】
前記ワクチンが、油中水型エマルジョン又は水中油型エマルジョンの形態であることを特徴とする、請求項12又は13に記載のワクチン。
【請求項15】
ろ過又はオートクレーブ処理によって前記ワクチンアジュバントを滅菌するステップを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のワクチンアジュバントを調製するためのプロセス。
【請求項16】
前記プロセスが、以下のステップ:
a)周囲温度で、機械的撹拌により、少なくとも1つの油と、少なくとも1つの油中水型界面活性剤(E
1)及び/又は水中油型界面活性剤(E
2)を含む乳化系とを含む、油相を調製するステップ;
b)周囲温度で機械的に撹拌しながら、前記少なくとも1つの逆マイクロラテックスを添加するステップ;
c)均一な混合物が得られるまで、周囲温度で前記機械的撹拌を維持するステップ
を含むことを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項17】
以下のステップ:
a)請求項15又は16に記載のプロセスで本発明のワクチンアジュバントを調製するステップ、及び
b)ステップa)で得られた前記ワクチンアジュバントを抗原媒体と混合するステップ
を含む、ワクチンを調製するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のワクチンアジュバント、その調製物、及びそれを含むワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン組成物は、一般的に、抗原、目的の疾患に対する防御を誘導する免疫原性化合物、及び抗原に対するワクチン接種動物の免疫応答の増幅を可能にするワクチンアジュバントから構成される。ワクチン組成物におけるアジュバントの使用は、特に、ワクチンの用量によって付与される体液性又は細胞性免疫応答の強度を増加させることを可能にし、より高いレベルの防御を確実にすること;1用量のワクチンによって付与される防御期間を延長すること;より低い抗原用量で、アジュバントなしで使用される1用量全量によって付与される効力と同等の効力を得ること;ワクチン防御を確実にするために必要な免疫化の回数を減らすことを可能にする。
【0003】
過去に様々なタイプの免疫アジュバントが開発されてきた。免疫アジュバントを得るための既存の技術的解決策の中では、少なくとも1つの油相及び少なくとも1つの水相(例えば、フロイントアジュバントなど)、リポソーム、合成免疫刺激性ポリマー、生体由来のアジュバント(サポニン、キトサン、サイトカイン、オリゴヌクレオチドなど)、又は水不溶性無機塩(例えば、非常に一般的に使用される水酸化アルミニウムなど)を含むエマルジョンが挙げられ得る。
【0004】
油性ワクチンアジュバントは、油及び界面活性剤で構成され、水相にワクチン抗原を含むエマルジョンの形態でワクチンを製剤化することを可能にする。使用される油の中では、植物由来の油、鉱油、合成油、及び動物由来の油が挙げられ得る。油性アジュバント中に存在する界面活性剤は乳化性界面活性剤であり、親水性親油性バランス(HLB)値が8~19、より具体的には8~15であることを特徴とする親水性を有する。このような親水性界面活性剤は、例えば、アルキルポリグリコシド又はアルキルポリグリコシドの混合物;サポニン;レシチン;ポリオキシエチル化アルカノール;ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックを含むポリマー;脂肪酸、有利には20℃で液体である脂肪酸と、例えばソルビトール、マンニトール又はグリセロールなどの糖ポリオールとの縮合により得られるエステル;脂肪酸、有利には20℃で液体である脂肪酸とエトキシル化糖との縮合によって得られるエステルから構成され得る。
【0005】
油性アジュバント中に存在する界面活性剤は、「油中水」型の乳化性界面活性剤であり得、これは、油中水型エマルジョンを得るのに十分に低い、好ましくは1以上8.0未満のHLB値を有し、そのために水相が親油性脂肪相中に分散される界面活性剤を意味する。油中水型界面活性剤の中では、12~22個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のヒドロキシル基で置換された、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸のアンヒドロヘキシトールエステル、又はこれらのエステルの混合物が挙げられ得る。
【0006】
得られるワクチンエマルジョンは、特に使用される界面活性剤系の性質に応じて、油中水型、水中油型、又は水中油中水型であり得る。特に、油中水型エマルジョンタイプのアジュバントは、非アジュバントワクチンと比較して、又は水酸化アルミニウムなどの水性アジュバントでアジュバント化されたワクチンと比較して、長期間にわたってワクチン抗原に対する体液性及び細胞性応答を有意に増加させることを可能にする。このような長期的応答により、ワクチン注射の回数を減らすことを可能にすることができる。油中水型エマルジョン型のアジュバントは、ウシ、ヒツジ、ヤギ、魚及び鳥類の、ウイルス、細菌又は寄生病原体に対するワクチン接種を意図したワクチン組成物の調製に特に使用される。
【0007】
一部の合成ポリマーは免疫刺激特性も備え、ワクチンアジュバントとして使用されている。
【0008】
動物用ワクチンアジュバントとして使用される免疫刺激性ポリマーの中では、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(POE-POP)、ポリエチレンイミン、そのナトリウム型のアクリル酸ホモポリマー、アクリル酸とアクリル酸エステルのコポリマー(カルボマーとも呼ばれる)が挙げられ得る。アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルから得られるポリマーは、適切な溶媒中の沈殿重合プロセスに従って、又は仏国特許出願公開第2922767A1号明細書で公開された特許出願に記載されている逆乳化重合によって、合成することができる。アクリル酸のポリマーの中では、例えば、特に米国特許第5373044号明細書、米国特許第2798053号明細書、及び欧州特許出願公開第0301532A2号明細書に記載されている、Lubrizol社によってCARBOPOL(商標)の商品名で販売されているポリマーが挙げられる。
【0009】
カルボマー(又はアクリル酸ポリマー)は、ワクチンアジュバントとして適用するために1パーセントのオーダーの重量含有率で使用され、その希釈物は、容易に注射可能な、流体の半透明ワクチンの形態である。
【0010】
これらのポリマーアジュバントは、非常に優れた安全性を有し、関連抗原に対して強力な短期応答を誘発し、例えば国際公開第2007094893号パンフレット)に記載されているように、ブタのワクチン接種に特に使用されている。
【0011】
研究の有望な手段は、例えば米国特許第3919411号明細書に記載されているように、改善された性能を有するアジュバントを得るために、2つのタイプのアジュバントの免疫刺激特性を組み合わせることを目的として、これらのポリマーアジュバントをエマルジョンタイプの油性アジュバントと組み合わせて製剤化することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、ポリアクリレートを含み、安定で、使用者が直接乳化できる、すぐに使用できるポリマー油性免疫アジュバントを得るために、これら2つの技術(すなわち、油性アジュバントとポリアクリレートゲル)を組み合わせることは、特にアジュバントの安定性及び滅菌に関して、ガレヌスの課題である。
【0013】
本発明の目的のために、「すぐに使用できるポリマー油性免疫アジュバント」は、少なくとも1つの界面活性剤と1つのポリマーとを含有する油相から構成される混合物を意味すると理解され、この混合物はすでに滅菌されており、乳化ステップで水性抗原媒体と混合することによって直ちに使用できる。前記混合物が水相(抗原及び/又は有効成分を含む)と接触すると、低剪断又は高剪断撹拌系の使用によりエマルジョンが形成される。このタイプのアジュバント(以下、「ポリマー油性アジュバント」と呼ぶ)は、経時的に安定な予防用又は治療用ワクチンエマルジョンを得る目的で使用される。
【0014】
ポリマー油性アジュバントを調製するために、いくつかの戦略を検討し、特定することができるが、それぞれいくつかの技術的課題を提起する:
1)第1のアプローチは、カルボキシル基が塩化されていないポリマーであり、粉末の形態である、少なくとも1つのポリアクリル酸を油相に添加することにある。この場合、粉末は懸濁液の形態で、油中で安定化することが困難なままであり、時間の経過とともに沈降の問題を示し得る。さらに、このようにして得られたアジュバントは、ポリマーが中和されず、より具体的には乳化プロセス中に中和できないため、酸性のエマルジョンの生成をもたらす。これら全てのパラメーターは、この技術的解決策が不十分であることを意味する。
2)第2のアプローチは、少なくとも1つのポリアクリル酸を水に添加することによって予め形成された水性ゲルを、油性アジュバントに添加することにある。この場合、油相中の水性ゲルの分散は、このプロセスの最後に得られる混合物の均一性を保証しないという第1の制約を有する。さらに、このアプローチは、分散相の相分離を生じ、所望の製品が不均一になるという大きなリスクを有する。
3)第3のアプローチは、油性アジュバント中の逆ラテックス(又はその分散水相がポリアクリレートを含み、そのカルボキシル官能基がアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形態で予め中和されているW/Oエマルジョン)の形態である、ポリアクリレートなどのポリマー補助剤を分散させることである。しかし、時間の経過とともに相分離が観察され、これにより油性アジュバントの不均一性が生じる。
【0015】
すぐに使用できるポリマー油性アジュバントを製剤化することの難しさは、ワクチンの組成物に組み込まれる各化合物を滅菌するステップにも関連している。具体的には、注射による投与用のワクチン組成物は、無菌条件下で抗原を製剤化する前に滅菌しなければならない。使用できる滅菌方法の中では、生成物をオートクレーブで加熱滅菌した後、孔径0.2マイクロメートルのフィルターでろ過滅菌するステップ又はガンマ線照射のステップを挙げることができる。
【0016】
ワクチン組成物は滅菌できないエマルジョンの形態であるため、抗原媒体で乳化するステップの前に、ろ過又はオートクレーブを通過させることによる加熱によって、油性アジュバントを滅菌する必要がある。油性アジュバントに含まれる界面活性剤は、一般的に放射線滅菌に適合しないことにも留意されたい。
【0017】
現在市販されているポリマーワクチンアジュバントに関しては、その架橋構造及びその増粘特性により、孔径0.2マイクロメートルの滅菌フィルターでのろ過操作及び放射線滅菌操作の両方が不可能である。したがって、オートクレーブを通過することによる熱への曝露は、ポリマーワクチンアジュバントに適した唯一の滅菌技術である。この技術は水中のポリマーアジュバントの希釈溶液の調製を要するため、前記ポリマーアジュバントは、油性アジュバントと組み合わされる場合、この経路によって滅菌することができない。
【0018】
上記の要素から、ポリマーアジュバントと油性アジュバントの組み合わせを含有する無菌ワクチンを調製するには、
・一方で、オートクレーブ内で加熱することにより、又は滅菌ろ過することにより滅菌される油性アジュバント、及び
・他方で、オートクレーブ内で加熱することにより、溶液中で水和、希釈、滅菌されるポリマーアジュバント、及び
・水性抗原媒体と無菌的に混合されるポリマーアジュバント、及び
・滅菌油相で無菌的に乳化される、ポリマーアジュバントと抗原媒体の水性混合物
が必要であることがわかる。
【0019】
したがって、この方法は、多くのステップを含み、エネルギーを消費し、ポリマーアジュバントと油性アジュバントの組み合わせの混合物の直接販売ができないため、当業者には高価であると考えられている。
【0020】
したがって、少なくとも1つの油と、例えばポリアクリレートなどの少なくとも1つのポリマーとを含有するポリマー油性アジュバントを提供することにある解決策が必要であり、前記ポリマー油性アジュバントは、少なくとも1年以上、特に20℃で少なくとも2年間経時的に安定であり(「安定」とは、相分離がなく、保存中にポリマーが凝固しないことを意味すると理解される)、容易に滅菌可能であり、これにより、経時的に+4℃で1年間、+37℃で少なくとも1ヶ月間安定した(すなわち、沈降も相分離も示さない)エマルジョンを達成することが可能となる。本発明によるポリマー油性アジュバントは、免疫学的観点から有効なワクチン組成物を得ることを可能にしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の解決策は、少なくとも1つの逆マイクロラテックスを含むワクチンアジュバントである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明によるADJ3アジュバントを含むワクチンについて、マウスにおけるOVA抗原に対するIgG1抗体の応答を表すグラフである。
【
図2】
図2は、本発明によるADJ3アジュバントを含むワクチンについて、マウスにおけるOVA抗原に対するIgG2a抗体の応答を表すグラフである。
【
図3】
図3は、D0~D28のニューカッスル病LaSota株(NDV)に対する抗体価の変化を表すグラフである。
【
図4】
図4は、D0~D28のH9N2トリインフルエンザ(AIV)に対する抗体価の変化を表すグラフである。
【
図5】
図5は、対照群と比較した、試験ワクチン群によって得られた防御度(防御された動物数/総数)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的のために、逆マイクロラテックスは、少なくとも1つの高分子電解質型ポリマーを含む逆マイクロエマルジョンを意味する。
【0024】
本発明の目的のために、「マイクロエマルジョン」は、少なくとも1つの乳化界面活性剤を含む界面活性剤系の存在によって安定化された、熱力学的に安定な2つの不混和性液体の混合物を意味する。マイクロエマルジョンは、分散相の液滴のサイズが200ナノメートル以下、好ましくは100ナノメートル以下の平均粒径によって特徴付けられるため、一般的に透明である。
【0025】
本発明の目的のために、「逆マイクロエマルジョン」は、分散相が水相であり、連続相が油相である、上記で定義したマイクロエマルジョンを意味する。
【0026】
本発明の目的のために、「高分子電解質型ポリマー」は、ポリマー中に存在するモノマー単位の全部又は一部がイオン化された化学官能基を有するポリマーを意味する。したがって、アニオン性高分子電解質型ポリマーは、アニオン性機能を有するモノマー単位を主に含み、カチオン性高分子電解質型ポリマーは、カチオン性機能を有するモノマー単位を主に含む。
【0027】
本発明の目的のために、「アニオン性及び架橋高分子電解質型ポリマー」は、上記で定義され、その構成モノマー単位を介して、重合反応中に使用され得、それにより少なくとも2つのポリマー鎖を一緒に連結することが可能になる、少なくとも2つの反応性官能基を有する少なくとも1つのモノマー単位を含むアニオン性高分子電解質型ポリマーを意味する。
【0028】
逆マイクロラテックスは、次のステップを含むプロセスを実行することによって調製される:
・モノマー及び任意選択による様々な添加剤(例えば、架橋モノマーなど)を含有する水性溶液を調製するステップa)、
・ステップa)で得られた水相に、少なくとも1つの油、少なくとも1つの界面活性剤を添加し、これらの様々な成分を混合するステップb)、
・断熱媒体中でラジカル重合反応を開始させるためにラジカル開始剤を添加するステップc)、及び
・ステップc)の間に得られた反応媒体を機械的に撹拌しながら均質化するステップd)。
【0029】
逆マイクロラテックスを調製するためのそのようなプロセスは、参照により本特許出願に組み込まれる欧州特許出願公開第1371692A1号明細書で公開された欧州特許出願に記載されている。
【0030】
場合に応じて、本発明によるワクチンアジュバントは、以下の特徴の1つ以上を有し得る:
・逆マイクロラテックスは、油相、水相、少なくとも1つの油中水型(W/O)界面活性剤、少なくとも1つの水中油型(O/W)界面活性剤、及びアニオン性架橋高分子電解質を含み;前記アニオン性架橋高分子電解質は、少なくとも1つの架橋性モノマー及び少なくとも1つの親水性モノマー単位を含む;
・親水性モノマー単位は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩で完全に又は部分的に塩化されたアクリル酸に由来する;
・アクリル酸は、ナトリウム塩又はアンモニウム塩、好ましくはナトリウム塩で完全に又は部分的に塩化されている;
・アニオン性架橋高分子電解質は、式(1):
【化1】
のモノマー単位を含み、式中、R1は、-H、-CH
3、-C
2H
5及び-C
3H
7から選択され、好ましくは-CH
3であり、nは、0~50であり、mは、8~22である;
・前記アジュバントは、油(H
1)、少なくとも1つの油中水型界面活性剤(E
1)及び少なくとも1つの水中油型界面活性剤(E
2)をさらに含む;
・アジュバントは、1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%の油中水型界面活性剤(E
1)を含む;
・アジュバントは、1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%の油中水型界面活性剤(E
2)を含む;
・アジュバントは、その重量の100%あたり、
a)50重量%~97.5重量%、好ましくは60重量%~90重量%の前記油(H
1);
b)1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%の前記油中水型界面活性剤(E
1);
c)1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%の前記水中油型界面活性剤(E
2);及び
d)0.5重量%~30重量%、好ましくは1重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~10重量%の少なくとも1つの逆マイクロラテックス、
を含み、重量含有率a)+b)+c)+d)の合計が100%に等しいことが理解される。
・油(H
1)が白色鉱油であることを特徴とする、本発明によるワクチンアジュバント。油(H
1)は、例えば液体パラフィン、液体ワセリン、又はイソパラフィンなどの鉱物油であってもよいことに留意されたい。
【0031】
優先的に、本発明によるワクチンアジュバントに含まれる逆マイクロラテックスは、その重量の100%あたり、
・a’)10重量%~40重量%、好ましくは12重量%~30重量%の水、
・b’)30重量%~50重量%、好ましくは38重量%~50重量%の油(H2)、
・c’)5重量%~30重量%、好ましくは10重量%~25重量%の少なくとも1つの油中水型界面活性剤(E’1)と少なくとも1つの水中油型界面活性剤(E’2)との混合物、
・d’)5重量%~35重量%、好ましくは10重量%~30重量%の前記アニオン性架橋高分子電解質
を含み、重量含有率a’)+b’)+c’)+d’)の合計が100%に等しいことが理解される。
【0032】
本発明の主題であるワクチンアジュバントに含まれる油(H1)は、逆マイクロラテックスに含まれる油(H2)と同一又は異なる。
【0033】
1つの特定の態様によれば、本発明の主題であるワクチンアジュバントに含まれる油(H1)は、逆マイクロラテックスに含まれる油(H2)と同一である。
【0034】
油(H2)及び油(H1)は、特に、以下から選択される:
・スイートアーモンド油、ココナッツ油、モノイ油、ヒマシ油、ホホバ油、オリーブ油、菜種油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、コーン胚芽油、大豆油、綿実油、アルファルファ油、ケシ油、ウチキクリ油、マツヨイグサ油、キビ油、大麦油、ライ麦油、ベニバナ油、キャンドルナッツ油、パッションフラワー油、ヘーゼルナッツ油、ヤシ油、シアバター、アプリコット核油、カロフィラム油、シシンブリウム油、アボカド油、カレンデュラ油などの植物由来の油;
・植物油及びそのエトキシル化メチルエステル;
・スクアレン又はスクアランなどの動物由来の油;
・合成油、特に、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸ドデシル、ラウリン酸ヘキシル、ジカプリル酸プロピレングリコールなどの脂肪酸エステル、イソプロピルラノレート、イソセチルラノレートなどのラノール酸由来のエステル、トリヘプタン酸グリセロールなどの脂肪酸モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド、安息香酸アルキル、ポリ(α-オレフィン)、ポリ(イソブテン)などのポリオレフィン、イソヘキサデカン、イソドデカンなどの合成イソアルカン、及び過フッ化素油。シリコーン油もまた、本発明の文脈において使用することができる。
【0035】
後者の中では、より具体的に、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アミンによって変性されたシリコーン、脂肪酸によって変性されたシリコーン、アルコールによって変性されたシリコーン、アルコール及び脂肪酸によって変性されたシリコーン、ポリエーテル基によって変性されたシリコーン、エポキシ変性されたシリコーン、フッ素化基によって変性されたシリコーン、環状シリコーン及びアルキル基によって変性されたシリコーンが挙げられ得る。しかし、実用上の理由から、脂肪相がシリコーン油を含まないことが望ましい場合がある;
・石油の蒸留と、その後の脱硫、脱アスファルト、芳香族化合物の抽出、ワックスの抽出、及びその他の仕上げ処理ステップなどの処理ステップの実行によって得られる、鉱油、流動パラフィン、液体ワセリン、白色鉱油、イソパラフィンなどの炭化水素。ホワイトオイルとは、米国薬局方、US XXIII(1995)に記載されているFDA21 CFR172.878及びCFR178.3620(a)の規制に準拠する鉱油、及び欧州薬局方(2008)の純度要件に準拠する鉱油を意味する。例えば、Marcol(商標)、Primol(商標)、Drakeol(商標)、Eolane(商標)、Klearol(商標)、Puretol(商標)の商品名で販売されている油が挙げられ得る。
・軽油。本発明の目的のために、「軽油」は、低沸点(大気圧で100℃~250℃)を有する油(H2)を意味し、逆マイクロラテックスの脂肪相に含まれ、より高い沸点を有する少なくとも1つの油からも構成され;前記軽油は、濃縮された逆マイクロラテックスを得るために、形成された逆マイクロラテックスの蒸留による濃縮のステップ中に蒸発することが意図されている。この定義に合致する軽油として、Isopar(商標)C、Isopar(商標)E、Isopar(商標)G、Isopar(商標)H、Isopar(商標)L及びIsopar(商標)Mの商品名で販売されている7~14個の炭素原子を含むイソパラフィンが挙げられ得る。
【0036】
本発明の主題であるワクチンアジュバントに含まれる油中水型界面活性剤(E1)は、逆マイクロラテックスに含まれる油中水型界面活性剤(E’1)と同一又は異なる。
【0037】
1つの特定の態様によれば、本発明の主題であるワクチンアジュバントに含まれる油中水型界面活性剤(E1)は、逆マイクロラテックスに含まれる油中水型界面活性剤(E’1)と同一である。
【0038】
本発明の目的のために、「界面活性剤」は、2つの表面間の表面張力を改変し、両親媒性分子である化合物、すなわち、その構造に親油性部分と別の親水性部分を有する化合物を意味する。したがって、界面活性剤は、ある極性の相を異なる極性の別の相に可溶化及び/又は分散させることを可能にする。
【0039】
「油中水型界面活性剤」という用語は、油中水型エマルジョンを得るのに十分に低い、好ましくは1以上8.0未満のHLB値を有し、そのために水相が親油性脂肪相中に分散される界面活性剤を意味する。
【0040】
油中水型界面活性剤(E1)及び(E’1)では、12~22個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のヒドロキシル基で置換された、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸のアンヒドロヘキシトールエステル、又はこれらのエステルの混合物が挙げられ得る。
【0041】
「ヘキシトール」という用語は、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール(ガラクチトールとしても知られる)又はイジトールなどのヘキソースに由来するヘキソールを意味する。
【0042】
「アンヒドロヘキシトール」という用語は、ヘキシトールの脱水から生じる生成物を意味する。アンヒドロヘキシトールの例としては、例えば、アンヒドロソルビトール、アンヒドロマンニトール、アンヒドロダルシトール又はアンヒドロイジトールが挙げられる。「アンヒドロヘキシトール」という用語は、場合により同じ脱水反応中に副生成物として得られるジアンヒドロヘキシトール(例えば、イソソルビド、イソマンニド、イソダルシド、イソイジドなど)との混合物としての、モノアンヒドロヘキシトール(例えば、ソルビタン、マンニタン、ズルシタン(dulcitan)、イジタンなど)を意味する。
【0043】
「エステルの混合物」という用語は、単一の酸と単一のヘキシトールから、又は単一の酸といくつかのヘキシトールの混合物から、又はいくつかの酸の混合物と単一のヘキシトールから、又はいくつかの酸といくつかのヘキシトールの混合物から得られる。
【0044】
「12~22個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のヒドロキシル基で置換された、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸のアンヒドロヘキシトールエステル」は、例えば、ドデカン酸、ドデセン酸、テトラデカン酸、テトラデセン酸、ヘキサデカン酸、ヘキサデセン酸、オクタデカン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、エイコサン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、ドコサン酸、ドコセン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸、ジヒドロキシドコサン酸又はジヒドロキシオクタデカン酸から選択される酸のエステルを意味する。
【0045】
「12~22個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のヒドロキシル基で置換された、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸のアンヒドロヘキシトールエステル」は、例えば、ラウリン酸、イソラウリン酸、4-ドデセン酸、5-ドデセン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヒポゲン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、リノール酸、イソゲラン酸、リノレン酸、アラキン酸、10,13-エイコサジエン酸、ベヘン酸、エルシジン酸、セトレイン酸、ドコサジエン酸(brassic acid)、3-ヒドロキシヘキサデカン酸、4-ヒドロキシヘキサデカン酸、11-ヒドロキシヘキサデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ブラジル酸(brasileic acid)又は8,9-ジヒドロキシステアリン酸から選択される酸のエステルを意味する。
【0046】
これらのエステルは、対応する酸及びアンヒドロヘキシトールのエステル化によって得られる。エステル化反応は当業者に公知であり、多くの特許及び参考書に記載されている。
【0047】
12~22個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のヒドロキシル基で置換された、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸のアンヒドロヘキシトールエステルの中では、ラウリン酸ソルビタン(商品名Montane(商標)20で販売)、ラウリン酸マンニタン、ラウリン酸ズルシタン(dulcitan)、イソラウリン酸ソルビタン、イソラウリン酸マンニタン、イソラウリン酸デュシタン(ducitan)、パルミチン酸ソルビタン、パルミチン酸マンニタン、パルミチン酸ズルシタン(dulcitan)、ステアリン酸ソルビタン(商品名Montane(商標)60で販売)、ステアリン酸マンニタン、ステアリン酸ズルシタン(dulcitan)、イソステアリン酸ソルビタン(商品名Montane(商標)70で販売)、イソステアリン酸マンニタン、イソステアリン酸ズルシタン(dulcitan)、オレイン酸ソルビタン(商品名Montane(商標)80で販売)、オレイン酸マンニタン(商品名Montanide(商標)80で販売)、オレイン酸ズルシタン(dulcitan)、セスキオレイン酸ソルビタン(商品名Montane(商標)83で販売)、セスキオレイン酸マンニタン、トリオレイン酸ソルビタン(商品名Montane(商標)85で販売)、トリオレイン酸マンニタン、ベヘン酸(benenate)ソルビタン、ベヘン酸マンニタン、アラキン酸ソルビタン、及びアラキン酸マンニタンが挙げられ得る。
【0048】
油中水型界面活性剤(E1)及び(E’1)の中では、本出願人がMontanox(商標)81の名前で販売している5molのエチレンオキシドでエトキシル化された(5EO)オレイン酸ソルビタン、Simulsol(商標)OC72の名前で本出願人が販売しているジエトキシル化された(2EO)オレオセチルアルコールが挙げられ得る。
【0049】
「水中油型界面活性剤」(E2)及び(E’2)という用語は、親油性脂肪相が水相中に分散した水中油型エマルジョンを得るために、十分に高いHLB値、好ましくは8.0以上20以下、好ましくは8.0以上15.0以下のHLB値を有する界面活性剤を意味する。
【0050】
水中油型界面活性剤(E2)及び(E’2)では、12~22個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のヒドロキシル基で置換された、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸のアンヒドロヘキシトールエステル、又はこれらのエステルの混合物が挙げられ得、その後、これらは、エチレンオキシドを、エチレンオキシドの2~30モル当量の様々な程度まで添加するステップに供される。
【0051】
12~22個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のヒドロキシル基で置換され、エトキシル化された、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸のアンヒドロヘキシトールエステルの中では、特に、エトキシル化ソルビタンエステル、より具体的には、Montanox(商標)80の名前で出願人が販売している20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化されたオレイン酸ソルビタン、15molのエチレンオキシド(15EO)を含有するエトキシル化オレイン酸ソルビタン、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化されたオレイン酸ソルビタン、5molのエチレンオキシド(5EO)でエトキシル化されたオレイン酸ソルビタン、20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化されたオレイン酸マンニタン、15molのエチレンオキシド(15EO)でエトキシル化されたオレイン酸マンニタン、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化されたオレイン酸マンニタン、5molのエチレンオキシド(5EO)でエトキシル化されたオレイン酸マンニタン、20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化されたステアリン酸ソルビタン、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化されたステアリン酸ソルビタン、5molのエチレンオキシド(5EO)でエトキシル化されたステアリン酸ソルビタン、20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化されたステアリン酸マンニタン、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化されたステアリン酸マンニタン、5molのエチレンオキシド(5EO)でエトキシル化されたステアリン酸マンニタン、Montanox(商標)20の名前で出願人が販売している20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化されたラウリン酸ソルビタン、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化されたラウリン酸ソルビタン、5molのエチレンオキシド(5EO)でエトキシル化されたラウリン酸ソルビタン、20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化されたラウリン酸マンニタン、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化されたラウリン酸マンニタン、5molのエチレンオキシド(5EO)でエトキシル化されたラウリン酸マンニタン、5molのエチレンオキシドでエトキシル化されたトリオレイン酸ソルビタン、10molのエチレンオキシドでエトキシル化されたトリオレイン酸ソルビタン、20molのエチレンオキシドでエトキシル化されたトリオレイン酸ソルビタン、Montanox(商標)85の名前で出願人が販売している25molのエチレンオキシドでエトキシル化されたトリオレイン酸ソルビタン、5molのエチレンオキシドでエトキシル化されたトリオレイン酸マンニタン、10molのエチレンオキシドでエトキシル化されたトリオレイン酸マンニタン、20molのエチレンオキシドでエトキシル化されたトリオレイン酸マンニタン、25molのエチレンオキシドでエトキシル化されたトリオレイン酸マンニタンが挙げられ得る。
【0052】
水中油型界面活性剤(E2)及び(E’2)の中では、例えば、Simulsol(商標)1292の名前で本出願人が販売している25EOでエトキシル化されたヒマシ油、Simulsol(商標)OL50の名前で本出願人が販売している40EOでエトキシル化されたヒマシ油、3molのエチレンオキシド(3EO)でエトキシル化されたコーン油、8molのエチレンオキシド(8EO)でエトキシル化されたコーン油、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化されたコーン油、20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化されたコーン油、30molのエチレンオキシド(30EO)でエトキシル化されたコーン油、40molのエチレンオキシド(40EO)でエトキシル化されたコーン油、3molのエチレンオキシド(3EO)でエトキシル化された菜種油、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化された菜種油、20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化された菜種油、30molのエチレンオキシド(30EO)でエトキシル化された菜種油、40molのエチレンオキシド(40EO)でエトキシル化された菜種油、3molのエチレンオキシド(3EO)でエトキシル化されたヒマワリ油、10molのエチレンオキシド(10EO)でエトキシル化されたヒマワリ油、20molのエチレンオキシド(20EO)でエトキシル化されたヒマワリ油、30molのエチレンオキシド(30EO)でエトキシル化されたヒマワリ油、40molのエチレンオキシド(40EO)でエトキシル化されたヒマワリ油などのエトキシル化植物油が挙げられ得る。
【0053】
水中油型界面活性剤(E2)及び(E’2)の中では、アルキルポリグリコシド、より具体的には、アルキルポリグルコシド及びアルキルポリキシロシド、又はアルキルグリコシドの混合物、レシチン、サポニン、ポリオキシエチル化アルカノール、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックを含むポリマー、Silmulsol(商標)P7の名前で本出願人が販売している7molのエチレンオキシド(7EO)でエトキシル化されたラウリルアルコール、ペンタエトキシル化(5EO)オレオセチルアルコール、オクタエトキシル化(8EO)オレオセチルアルコール、Simulsol(商標)OC710の名前で本出願人が販売しているデカエトキシル化(10EO)オレオセチルアルコール、又はG-1086(商標)及びG-1096(商標)の名前で販売されているポリエトキシル化ヘキサオレイン酸ソルビタンが挙げられ得る。
【0054】
架橋モノマー単位は、伸長ポリマー鎖と前記架橋モノマーとの間に共有結合を確立することができる少なくとも2つの反応性官能基を有するモノマーから誘導される単位を意味する。例えば、架橋モノマー単位は、その構造内に少なくとも2つのエチレン官能基を含み得るモノマーから誘導してもよく、アクリルモノマーとのラジカル重合反応に関与する場合、前記架橋モノマーは、架橋ポリマーを得るために、伝播ステップ中に、アクリルポリマーの2つの鎖に共有結合することができる。
【0055】
架橋ポリマーは、水に不溶であるが、水中で膨潤することができ、したがって化学ゲルが得られる、三次元ネットワークの形態にある非線形ポリマーを意味する。
【0056】
架橋ポリマーは、少なくとも1つの架橋モノマー単位及び少なくとも1つの他のモノマー単位、より具体的には親水性モノマー単位から構成されるポリマーを意味する。本発明の目的のために、親水性モノマー単位は、水に可溶性であり、より具体的には5℃以上の温度で、より具体的には10℃以上の温度で、より具体的には20℃以上の温度で、水に可溶性であるモノマーから生じるモノマー単位を意味すると理解される。
【0057】
架橋ポリマーは、遊離酸形態又は部分的若しくは完全に塩化された形態の2-メチル-2-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸;遊離酸形態又は部分的若しくは完全に塩化された形態のアクリル酸、遊離酸形態又は部分的若しくは完全に塩化された形態のメタクリル酸、遊離酸形態又は部分的若しくは完全に塩化された形態のイタコン酸、遊離酸形態又は部分的若しくは完全に塩化された形態の2-カルボキシエチルアクリル酸、遊離酸形態又は部分的若しくは完全に塩化された形態のマレイン酸、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、ビニルピロリドンに由来する親水性モノマー単位を含み得る。
【0058】
架橋モノマー単位は、特にエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレンビス(アクリルアミド)又はこれらの化合物の混合物、ジアリルオキシ酢酸又はジアリルオキシ酢酸ナトリウムなどのその塩、又はこれらの化合物の混合物から選択される、ジエチレン性又はポリエチレン性モノマーから誘導されるモノマー単位を意味する。
【0059】
本発明によるアジュバント中に存在する界面活性剤は、1以上8未満のHLB値によって特徴付けられる親油性を有する、上記で定義及び記載された油中水型界面活性剤(E1)又は油中水型界面活性剤(E’1)、及び8以上20以下のHLB値によって特徴付けられる親水性を有する、上記で定義及び記載された水中油型界面活性剤(E2)又は水中油型界面活性剤(E’2)である。
【0060】
本発明の別の主題は、ワクチンアジュバントの調製のための、先に定義した逆マイクロラテックスの使用である。
【0061】
本発明によるワクチンアジュバントを調製するプロセスは、滅菌ろ過又はオートクレーブ処理によってワクチンアジュバントを滅菌するステップを含む。
【0062】
ろ過は、好ましくは、平均直径が0.22ミクロン以下の細孔を有するフィルターで実施される(規格ISO 13408-2:2018(en)を参照)。
【0063】
ろ過する前に、アジュバントを前ろ過してもよい。例として、平均直径0.45μmの細孔を有する疎水性フィルターを使用して、アジュバントを前ろ過することができる。前ろ過及びろ過ステップは、第1の膜が平均直径0.45μmの細孔を有し、第2の膜が平均直径0.2μmの細孔を有する二重膜疎水性フィルター、又は平均直径0.45μmの細孔を有する第1の疎水性フィルターと平均直径0.2μmの細孔を有する第2の疎水性フィルターとの組み合わせの使用を含む単一のステップで実行できる。これは、第1の膜又は第1のフィルターが、第2の膜又は第2のフィルターよりも大きな細孔を有することを意味する。理想的には、第1の膜又は第1のフィルターは、直径が0.3μm以上の細孔、好ましくは直径が0.6μm以下、より具体的には0.45μmに等しい細孔を有する。第2の膜は、殺菌作用を得るために、直径が0.22μm以下の細孔を有する。
【0064】
アジュバントのろ過及び/又は前ろ過に使用されるフィルター及び膜は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又はPP(ポリプロピレン)タイプのポリマー支持体から構成され得る。
【0065】
優先的に、本発明によるアジュバントを調製するための前記プロセスは、以下のステップを含む:
a)周囲温度で、機械的撹拌により、少なくとも1つの油と、少なくとも1つの油中水型界面活性剤(E1)及び/又は水中油型界面活性剤(E2)を含む乳化系とを含む、油相を調製するステップ;
b)周囲温度で機械的に撹拌しながら、少なくとも1つの逆マイクロラテックスを添加するステップ;
c)均一な混合物が得られるまで、周囲温度で機械的撹拌を維持するステップ。
【0066】
本発明の目的のために、周囲温度は、15℃以上30℃以下の温度を意味すると理解される。
【0067】
本発明の別の主題は、本発明によるアジュバントと、少なくとも1つの抗原、又はアミノ酸配列を含む化合物の少なくとも1つのインビボジェネレーターの、少なくとも1つの水溶液(S)とを含むワクチンである。
【0068】
好ましくは、ワクチンは、
・10重量%~80重量%の本発明によるアジュバント、及び
・20重量%~90重量%の水溶液(S)
を含む。
【0069】
好ましくは、前記ワクチンは、油中水型エマルジョン又は水中油型エマルジョンの形態である。
【0070】
抗原、又はアミノ酸配列を含有する化合物の少なくとも一つのインビボジェネレーターは、ウイルス、細菌若しくは寄生生物などの死微生物、又はこれらの微生物の精製画分、又は生微生物を意味し、この病原性は低減されている。本発明の抗原を構成し得るウイルスの例には、インフルエンザウイルス等のオルソミクソウイルス、ニューカッスル病ウイルス等のパラミクソウイルス、伝染性気管支炎ウイルスなどのコロナウイルス、オーエスキー病ウイルス又はマレック病ウイルスなどのヘルペスウイルスが含まれる。本発明による抗原を構成することができる細菌型の微生物としては、大腸菌(E.coli)、並びにパスツレラ(Pasteurella)、アビバクテリウム(Avibacterium)、ブドウ球菌(Staphylococcus)及び連鎖球菌(Streptococcus)属のものが挙げられ得る。寄生生物の例としては、エイメリア(Eimeria)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、及びリーシュマニア(Leishmania)属のものが挙げられる。また、組み換えウイルス、特にアデノウイルス、ワクシニアウイルス、カナリア痘ウイルス、ヘルペスウイルス、又はバキュロウイルスなどの非エンベロープウイルスも挙げられ得る。また、非エンベロープ組み換え生ウイルスベクターも意味し、このゲノムは、好ましくは、対応するエンベロープウイルスの複製に必須でない部分に挿入され、抗体の合成及び/又は上記のエンベロープウイルス若しくは病原性微生物に対する防御作用を誘導する抗原サブユニットをコードする配列を含み;これらの抗原サブユニットは、例えば、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、又はペプチド画分であり、及び/又はエンベロープウイルス、細菌又は寄生生物などの生微生物による感染に対して防御する画分であり得る。微生物に挿入される外因性遺伝子は、例えば、オーエスキーウイルスに由来し得る。特に、病原性微生物又はウイルスに由来する外因性ヌクレオチド配列が挿入されたヌクレオチド配列から構成される組換えプラスミドが挙げられ得る。後者のヌクレオチド配列の目的は、アミノ酸配列を含有する化合物の発現を可能にすることであり、この化合物自体の目的は、宿主生物における免疫反応を誘発することである。
【0071】
上記で定義されるワクチンは、この抗原の性質及び処置される個体の性質に依存する抗原濃度を含む。しかし、本発明によるアジュバントが、必要とされる通常の抗原用量を有意に減少させることを可能にすることは、特に注目に値する。適切な抗原濃度は、当業者によって従来法で決定することができる。一般的に、この用量は、約0.1μg/cm3~1g/cm3、より一般的には1μg/cm3~100mg/cm3である。本発明による組成物中の前記インビボジェネレーターの濃度は、ここでもまた、特に前記ジェネレーターの性質及びそれが投与される宿主に依存する。この濃度は、通例の実験に基づき、当業者によって容易に決定され得る。指標として、インビボジェネレーターが組換え微生物である場合、本発明による組成物中の濃度は、一般的に、102~1015微生物/cm3、好ましくは、105~1012微生物/cm3である。当該インビボジェネレーターが組換えプラスミドである場合、本発明の主題であるプロセスに従って得られる組成物中のその濃度は、0.01g/dm3~100g/dm3であり得る。上記で定義される通り、ワクチンは、アジュバント相と抗原相を混合し、任意選択により水又は薬学的に許容される希釈媒体を添加することによって、調製される。
【0072】
本発明によるワクチンを調製するためのプロセスは、以下のステップ:
a)本発明によるワクチンアジュバントを調製すること、
b)ステップa)で得られたワクチンアジュバントを抗原媒体と混合すること
を含む。
【0073】
好ましくは、抗原媒体は、ワクチンを形成することを意図しており、ワクチン抗原媒体について言及される。
【0074】
抗原媒体は、上記のように、少なくとも1つの抗原又はアミノ酸配列を含む化合物の少なくとも1つのインビボジェネレーターを含む水性媒体を意味する。
【0075】
好ましくは、混合物は、ワクチンがその重量の100%当たり、10重量%~80重量%のアジュバント及び20重量%~90重量%の抗原媒体、好ましくは50重量%~80重量%のアジュバント及び20重量%~50重量%の抗原媒体、さらにより好ましくは50重量%~70重量%のアジュバント及び30重量%~50重量%の抗原媒体を含むような混合物である。
【0076】
ステップb)の間、サポニン、動物及び/又は植物及び/又は鉱物及び/又は合成油、界面活性剤、水酸化アルミニウム、レシチン及びレシチン誘導体から選択される免疫賦活剤を任意選択により混合物に添加してもよい。
【0077】
好ましくは、ステップb)において、抗原媒体を高剪断撹拌しながらアジュバントに徐々に添加してエマルジョンを形成する。
【0078】
乳化プロセスの最後に、好ましくは油中水型の、安定で均一なエマルジョンの形態のワクチンが得られる。
【0079】
最終的なワクチンは、製造後すぐに投与することができ、+4℃の温度で少なくとも1年間保存できる(ワクチン中に存在する抗原の性質及び経時的な物理化学的安定性による)。
【0080】
ワクチンは、注射によるヒト又は動物の治療において、経口、非経口、粘膜又は卵内経路により投与されることを意図している。
【実施例】
【0081】
本発明によるアジュバントの例を以下に示す。
【0082】
実施例1:ポリアクリル酸ナトリウムに基づく逆マイクロラテックスの調製
1.1 逆マイクロラテックス(A)、(B)、(C)及び(D)の調製
ポリマーとして架橋ポリアクリル酸ナトリウムを含む逆マイクロラテックスは、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第1371692B1号明細書で公開された欧州特許の教示に従って調製される。より具体的には、欧州特許第1371692B1号明細書の段落[0021]、段落[0025]及び[0026]、段落[0033]~[0048]、さらにより具体的には段落[0039]~[0041](実施例2)の教示が、逆マイクロラテックスの調製に使用される。調製したマイクロラテックスのそれぞれについて、Exxon Mobil社から販売されている流体白色鉱物油、Marcol(商標)52を使用する。逆マイクロラテックスを調製するための同じプロセスは、様々な重量濃度の界面活性剤の存在下で実行され、
・界面活性剤の重量が14%に等しい場合、逆マイクロラテックス(A)、
・界面活性剤の重量が18%に等しい場合、逆マイクロラテックス(B)、
・界面活性剤の重量が22%に等しい場合、逆マイクロラテックス(C)、
・界面活性剤の重量が25%に等しい場合、逆マイクロラテックス(D)
を得ることを可能にする。
【0083】
ラジカル重合後に得られる逆マイクロラテックス(A)、(B)、(C)及び(D)は、乳白色から半透明の油状組成物の形態である。これらの逆マイクロラテックスは、油相と界面活性剤との混合物60重量%、架橋ポリアクリル酸ナトリウム15重量%及び水25重量%を含有する。
【0084】
1.2 逆マイクロラテックス(E)、(F)、(G)及び(H)の調製
逆マイクロラテックス(A)の調製のためのプロセスは、逆マイクロラテックス(E)を得るために、オレイン酸ソルビタンの代わりにオレイン酸マンニタンを油中水型界面活性剤として使用して行われる。
【0085】
逆マイクロラテックス(B)の調製のためのプロセスは、逆マイクロラテックス(F)を得るために、オレイン酸ソルビタンの代わりにオレイン酸マンニタンを油中水型界面活性剤として使用して行われる。
【0086】
逆マイクロラテックス(C)の調製のためのプロセスは、逆マイクロラテックス(G)を得るために、オレイン酸ソルビタンの代わりにオレイン酸マンニタンを油中水型界面活性剤として使用して行われる。
【0087】
逆マイクロラテックス(D)の調製のためのプロセスは、逆マイクロラテックス(H)を得るために、オレイン酸ソルビタンの代わりにオレイン酸マンニタンを油中水型界面活性剤として使用して行われる。
【0088】
逆マイクロラテックス(E)、(F)、(G)及び(H)は、乳白色から半透明の油性組成物の形態であり、油相と界面活性剤との混合物60重量%、架橋ポリアクリル酸ナトリウム15重量%及び水25重量%を含有する。
【0089】
実施例2:1.1 逆マイクロラテックス(A’)、(B’)、(C’)、(D’)の調製
実施例1.1に記載の逆マイクロラテックス(A)、(B)、(C)、及び(D)の調製のためのプロセスは、逆マイクロラテックス(A’)、(B’)、(C’)、及び(D’)をそれぞれ得るために、アクリル酸とテトラエトキシル化ラウロイルメタクリレート(2mol%)の混合物の存在下で実施される。
【0090】
逆マイクロラテックス(A’)、(B’)、(C’)、及び(D’)は、乳白色から半透明の油性組成物の形態であり、油相と界面活性剤の混合物60重量%、アクリル酸とテトラエトキシル化ラウロイルメタクリレートの架橋共重合体15重量%及び水25重量%を含有する。
【0091】
実施例3:逆マイクロラテックス(B’’)及び(C’’)の調製
実施例1の逆マイクロラテックス(B)を調製するためのプロセスは、油相と界面活性剤との混合物49重量%、架橋ポリアクリル酸ナトリウム15重量%及び水36重量%を含有する、乳白色から半透明の油性組成物の形態である逆マイクロラテックス(B’’)を得るために、より多量の水の存在下で実施される。
【0092】
実施例1の逆マイクロラテックス(C)を調製するためのプロセスは、油相と界面活性剤との混合物49重量%、架橋ポリアクリル酸ナトリウム15重量%及び水36重量%を含有する、乳白色から半透明の油性組成物の形態である逆マイクロラテックス(C’’)を得るために、より多量の水の存在下で実施される。
【0093】
実施例4:本発明によるアジュバントの調製
ポリマー油性アジュバントは、以下のプロセスに従って調製される:
a)周囲温度で、機械的撹拌により、少なくとも1つの油と、少なくとも1つの油中水型界面活性剤(E1)及び/又は水中油型界面活性剤(E2)を含む乳化系とを含む、油相を調製するプロセス;
b)周囲温度で中程度の機械的撹拌(50~150rpm)を行いながら、逆マイクロラテックス又は逆ラテックスを添加するプロセス;
c)均一な混合物が得られるまで、周囲温度で中程度の機械的撹拌(50~150rpm)を維持するプロセス。
【0094】
本発明の目的のために、周囲温度は、15℃以上30℃以下の温度を意味すると理解される。
【0095】
このようにして、ADJ1、ADJ2、ADJ3、ADJ’1アジュバントが調製され、表1に記載の組成によって特徴づけられる。
【0096】
【0097】
実施例5:本発明によるアジュバント及び比較アジュバントの評価
5.1 ろ過性
本発明によるアジュバント及び比較アジュバントのろ過性は、以下のプロトコルに従って評価される:
・2ピース12mlシリンジに10mlのアジュバントを導入し、
・直径25mmの0.22μm PTFEシリンジフィルターを接続し、
・3310gの重量をかけ、
・時間の関数としてフィルタリングされた質量を測定する。
【0098】
ろ過されたアジュバントの量を時間の関数として測定し、試験した各アジュバントについて得られた結果を以下の表に記録する。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
表2~5に記録された結果は、本発明によるアジュバントADJ1、ADJ2、ADJ3のろ過が、疎水性フィルター、平均細孔径0.2マイクロメートルの、特にPTFE製の疎水性フィルター上での比較アジュバントADJ’1のろ過よりも速いことを示す。
【0104】
5.2 本発明によるアジュバント及び比較アジュバントの安定性の研究
本発明によるアジュバントADJ1、ADJ2、ADJ3及び比較アジュバントADJ’1の安定性は、以下のプロトコルに従って評価される:
i)100mlフラスコ中の90mlの量の試験する組成物を、20℃に調節された気候室に1年間導入する。試験した化合物の外観は、安定性試験においてチャンバー内に入れる前及び1ヶ月(M1)、3ヶ月(M3)、6ヶ月(M6)、及び1年(Y1)の期間後に評価される。
ii)100mlフラスコ中の90mlの量の試験する組成物を、37℃に調節された気候室に1ヶ月間(M1)導入する。試験した組成物の外観は、安定性試験においてチャンバー内に入れる前及び1ヶ月後に評価される。
【0105】
安定性とは、相分離及び/又は沈降の観察がないことを意味すると理解される。観察結果を以下の表6に記録する。
【0106】
【0107】
本発明によるアジュバントADJ1、ADJ2、ADJ3、ADJ’1は、以下に記載する保存条件下で均一な外観を有するが、比較アジュバントADJ’1については、経時的に及び様々な温度で不均一な外観(相分離及び沈降)が観察される。
【0108】
5.3.本発明によるアジュバントを含有するワクチン組成物の安定性の特徴付け
本発明によるアジュバントADJ1、ADJ2、ADJ3を含有するプラセボワクチンエマルジョンの安定性特性は、標準エマルジョンスクリーンを備えた標準ヘッドを取り付けたSilverson L4又はL5ローターステーターミキサーを使用して、以下のプロトコルに従って、200グラムの量(250mlの低型ビーカーで調製)で評価した:
i/Silverson L4又はL5ミキサーを使用して1000rpmの回転速度で機械的に撹拌しながら、60グラムの水相を140グラムのアジュバントに添加し(このステップ中、撹拌ヘッドはビーカーの底から0.5cmの位置に配置する必要がある);
ii/ステップi/で得られた混合物を、4000rpm(又は7m/s)の回転速度で3分間、高剪断(Silverson L4又はL5ミキサーを使用)に供することにより、エマルジョンを生成する。
【0109】
ステップii/の終わりに得られるエマルジョンは、流体で、均質であり、注射可能である。「流体」という用語は、より具体的には、M62スピンドルを備えたBrookfield LVDV1+を用いて、回転速度60rpm、20℃で測定した動的粘度が30~40mPa.sである液体エマルジョンを意味する。
【0110】
得られたエマルジョンの安定性は、以下のように特徴付けられる:
i)30mlフラスコ中の25mlの量の試験する組成物を、4℃に調節された気候室に1年間導入する。試験した化合物の外観は、安定性試験においてチャンバー内に入れる前及び1ヶ月(M1)、3ヶ月(M3)、6ヶ月(M6)、及び1年(Y1)の期間後に評価される。
ii)30mlフラスコ中の25mlの量の試験する組成物を、20℃に調節された気候室に1年間導入する。試験した化合物の外観は、安定性試験においてチャンバー内に入れる前及び1ヶ月(M1)、3ヶ月(M3)、6ヶ月(M6)、及び1年(Y1)の期間後に評価される。
iii)30mlフラスコ中の25mlの量の試験する組成物を、37℃に調節された気候室に1ヶ月間(M1)導入する。試験した組成物の外観は、安定性試験においてチャンバー内に入れる前及び1ヶ月後に評価される。
【0111】
安定性とは、相分離及び/又は沈降の観察がないことを意味すると理解される。観察結果を以下の表7に記録する。
【0112】
【0113】
5.4 本発明によるアジュバントを含有するワクチンの免疫学的特性の特徴付け
本発明による、また先の実施例に記載されている、ポリマー油性アジュバントADJ1、ADJ2及びADJ3のアジュバント特性は、いくつかのワクチンモデル及びいくつかの動物種で特徴付けられた。
【0114】
第1の試験中に、本発明によるアジュバントADJ3をオボアルブミンの溶液とともに製剤化して、マウスに注射することを意図したワクチンを得た。
【0115】
第2の試験では、本発明によるアジュバントADJ2を不活化パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)細菌から構成される細菌抗原媒体で製剤化して、鳥類への投与を意図したワクチンを得た。
【0116】
第3の試験では、本発明によるアジュバントADJ1を、ニューカッスル病及びH9N2インフルエンザに対する鳥類用に意図されたウイルスワクチンの製剤化に使用した。これらの試験は、いくつかの種及びいくつかの抗原モデルにおける本発明によるアジュバントのワクチンアジュバント特性を実証する。
【0117】
得られた結果を以下に示す。
【0118】
5.4.1 試験1:オボアルブミンを抗原としたマウスでの試験
この試験は、抗原モデルとしてオボアルブミン(OVA)を使用した90日間のワクチン接種プロトコルで、OF1マウスで実施される。ワクチンは、生理学的血清で10mg/mlに調製したOVAの抗原溶液から調製し、0.22μmフィルターでのろ過により滅菌した。OVA抗原及び本発明によるADJ3アジュバントを含むワクチンの製剤化は、本発明によるアジュバントADJ3/抗原媒体比70/30(体積/体積)中のi-コネクターを介した乳化によって行われる。
【0119】
【0120】
ワクチンの安全性は、注射部位での局所反応を観察することによって評価される。ワクチンの有効性は、ELISA法による血液中のIgG1及びIgG2a抗体の検出によって評価される。この検出は、ワクチン接種の日(D0の「初回ワクチン接種」)、次いで14日後(D14)、28日目(D28)のブースターワクチン接種時、次いで42日目(D42)、次いで56日目(D56)、次いで90日目(D90)の安楽死時に行われる。
【0121】
試験群のメンバー間で局所反応は観察されず、したがって、本発明によるADJ3アジュバントを含むワクチンが十分に許容されたことを示している。
【0122】
図1及び2は、D14、D28、D42、D56、及びD90におけるIgG1及びIgG2a抗体のアッセイを示す。
【0123】
本発明によるADJ3アジュバントを含むワクチンでは、抗原を含む非アジュバントワクチンと比較して、2つのクラスの抗体について有意に高い抗体価が観察され、これにより、開発された製剤のワクチンアジュバント特性が確認される。
【0124】
5.4.2 試験2:ニワトリでのワクチン試験、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)細菌抗原
この試験は、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)細菌病原体に対する42日間のワクチン接種プロトコルでニワトリに対して実施された。この実験で使用した動物は、ワクチン接種時(D0)で36日齢の赤ニワトリ(red chicken)である。各ワクチン用量は、1用量(0.5ml)=0.5×108CFU又は1×108CFU/mlの不活化パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)菌を含有する。ワクチン群は、群間でランダムに分配された11羽のオスとメスのニワトリで構成される。
【0125】
【0126】
本発明によるADJ2アジュバントを含有する製剤は、本発明によるADJ2アジュバント/抗原媒体比70/30(重量/重量)中で、無菌DT50チューブ内のTube Drive乳化剤(Ika社により販売)を使用して調製される:プレエマルジョンは速度3で2分間(1100rpm)、次いで速度9で6分間(4000rpm)。
【0127】
動物はD0にワクチン接種される。D42の屠殺時に局所反応が観察される。血液サンプルは、D0、D14、D42に採取される。抗原特異的ELISAアッセイは、市販の検出キット(ID-VEtが販売するID Screenパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)ニワトリ及びシチメンチョウ間接キット)を使用して、血清中の抗体レベルを検出するために実施される。
【0128】
本発明によるADJ2アジュバントを含むワクチンは、屠殺時に重大な局所反応が観察されないため、ニワトリにおいて十分に許容される。以下の表10に示されるように、ニワトリにおいて、非アジュバントワクチンと比較して、ADJ2アジュバントでアジュバント化されたワクチンについても有意により高い抗体価が観察される。
【0129】
【0130】
5.4.3 試験3:ニワトリでのワクチン試験、ニューカッスル病/トリインフルエンザウイルス抗原
この試験は、ニューカッスル病LaSota株(NDV)及びH9N2トリインフルエンザ(AIV)に対する二価不活化ウイルスワクチンによる28日間のワクチン接種プロトコルでニワトリに対して実施された。この実験で使用される動物は、実験開始時(D0)に28日齢のSPF(特定病原体除去)ニワトリである。ワクチン群は、表11のように形成される。
【0131】
【0132】
試験ワクチンは、本発明によるポリマー油性アジュバントADJ1を用いて、2つのAIV及びNDV不活性化ウイルス価を含有する抗原媒体を含む、本発明によるADJ1アジュバント/抗原培地比70/30(重量/重量)中での乳化により製剤化される。対照群はワクチン接種を受けていない。
【0133】
ワクチンは、D0に筋肉内注射される。ワクチン接種後のD0、D7、D14、D21及びD28に血液サンプルを採取し、血球凝集阻害試験によって分析して、各原子価(AIV及びNDV)に対する特異的抗体価を決定する。AIV群では、ワクチン接種後のD28に防御負荷を実施して、負荷後のウイルス量を測定する(XZ株H9N2 AIVウイルスの静脈内0.2ml中2.106EID50)。口咽頭及び排泄腔のスワブをウイルス負荷の5日後に採取し、SPFニワトリ胚に接種して、2世代の伝播後のウイルスの存在を測定する。
【0134】
ワクチン接種群では、2つの価数のワクチン接種後に強い抗体価が観察される(
図1及び
図2)。病原性負荷の後、死亡は観察されず、ワクチン接種群では、スワブサンプルで観察されたウイルス量もなく、これは、AIVウイルス負荷に対する完全な防御を示す(
図3)。
【0135】
5.5 実験の結論
本発明によるアジュバントは、
・特に、無菌アジュバントを得るのに適した、平均孔径が0.2マイクロメートルの疎水性フィルター(特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製)でのろ過動力学、
・20℃及び37℃での経時安定性、すなわち、相分離及び/又は沈降現象を示すことなく、均一で透明な外観を保持すること、
・ワクチン水相の存在下で前記アジュバントを乳化することによって形成される安定なワクチンエマルジョンを得ること、
・様々な抗原媒体の存在下でのワクチン組成物中の様々な動物種における免疫のアジュバント効果
によって特徴付けられる。
【国際調査報告】