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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ガラス容器用無色青色フィルター
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
G02B5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549605
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2021054193
(87)【国際公開番号】W WO2021165487
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20305171.9
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517338412
【氏名又は名称】ネクスドット
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ドゥベルトレト,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ノーダン,ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】ダミーコ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ソロ-オジョ,ウィルフリード
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA05
2H148CA14
2H148CA17
(57)【要約】
本発明は、半導電性ナノ粒子を含む重合性組成物を硬化することにより得られる光フィルタリングコーティングでコートされたガラス容器を含む光フィルタリングガラス容器に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光フィルタリングガラス容器であって、
i.色(Lug、Cug、hug)を有するガラス容器;
ii.半導電性ナノ粒子を含む重合性組成物を硬化することにより得られる光フィルタリングコーティングであって、前記光フィルタリングコーティングが少なくとも前記ガラス容器の一部上に存在する、光フィルタリングコーティングを含み、
5-マイクロメートル厚の光フィルタリングコーティングを通過した吸光度が、350nm~λcutの範囲の各光波長に対し0.5超であり、λcutは420nm~480nmの範囲であり;および
前記非コートガラス容器と前記光フィルタリングコーティングを有するガラス容器との間の明度の差異が、5未満である、光フィルタリングガラス容器。
【請求項2】
前記光フィルタリングコーティングを有するガラス容器の視感透過率が、前記非コートガラス容器の前記視感透過率の90%超、好ましくは95%超である、請求項1に記載の光フィルタリングガラス容器。
【請求項3】
60未満、好ましくは50未満の彩度Ccgを有する、請求項1または2に記載の光フィルタリングガラス容器。
【請求項4】
重合性組成物が、ゾルゲル重合性組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光フィルタリングガラス容器。
【請求項5】
ゾルゲル重合性組成物が、金属アルコキシド、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびこれらの混合物から選択されるモノマーまたはオリゴマーを含む、請求項4に記載の光フィルタリングガラス容器。
【請求項6】
光フィルタリングコーティングの厚みが、1μm~15μm、好ましくは1μm~10μm、より好ましくは2μm~6μmの範囲である。請求項4または5に記載の光フィルタリングガラス容器。
【請求項7】
重合性組成物が、(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマー、エポキシモノマーまたはオリゴマー、またはこれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光フィルタリングガラス容器。
【請求項8】
前記光フィルタリングコーティングの厚みが、2μm~100μm、好ましくは3μm~50μm、より好ましくは4μm~30μmの範囲である、請求項7に記載の光フィルタリングガラス容器。
【請求項9】
前記半導電性ナノ粒子が、式
(I)、
の物質を含み、式中、
Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Cs、またはこれらの混合物からなる群より選択され;
Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Cs、またはこれらの混合物からなる群より選択され;
Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはこれらの混合物からなる群より選択され;
Aは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはこれらの混合物からなる群より選択され;および
x、y、zおよびwは独立に、0~5の小数であり;x、y、zおよびwは、同時に0ではなく;xおよびyは、同時に0ではなく;zおよびwは、同時に0ではない場合がある、請求項1~8のいずれか1項に記載の光フィルタリングガラス容器。
【請求項10】
半導電性ナノ粒子を含む重合性組成物を硬化することにより得られる、ガラス容器のための光フィルターであって、
5-マイクロメートル厚の光フィルタリングコーティングを通過した吸光度が、350nm~λcutの範囲の各光波長に対し0.5より高く、λcutは420nm~480nmの範囲であり;および
明度が95より大きい、光フィルター。
【請求項11】
60未満、好ましくは50未満の彩度Cを有する、請求項10に記載の光フィルター。
【請求項12】
重合性組成物が、ゾルゲル重合性組成物である、請求項10または11に記載の光フィルター。
【請求項13】
ゾルゲル重合性組成物が、金属アルコキシド、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびこれらの混合物から選択されるモノマーまたはオリゴマーを含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の光フィルター。
【請求項14】
重合性組成物が、(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマー、エポキシモノマーまたはオリゴマー、またはこれらの混合物を含む、請求項10または11に記載の光フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス容器の分野に関する。特に、本発明は、光フィルターを含むガラス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の食品の香味品質は、食品が光に曝露されると損なわれ得ることは、一般に知られ、よく観察されることである。醸造業では、光、特に、太陽光が多くの種類のビールの香味に悪影響を与え得ることは、何世紀にもわたり知られてきた。近年、様々な種類のワインでも同じ現象が証明された。このように、光曝露から生じる香味は、一般に「日光」臭と呼ばれる。日光臭は、ほとんどの消費者により、極めて不快であると見なされる。
【0003】
実際の飲料中の日光臭の正確な起源は完全には理解されていないが、リボフラビン-ビタミンB2-およびその分光学的に等価な誘導体が、光活性化時に還元される傾向があり、水素イオンおよび1個または2個の電子を受け取り、それにより、その他の化合物の分解反応を開始し、最終的に強力な香味を有するチオール化合物になることは、広く認められている。特に、3-メチル-2-ブテン-1-チオール(3-MBT)は、光励起リボフラビンとイソ-α酸との間の反応により形成されると考えられている。光活性化がより効率的である波長の範囲は、光スペクトルの青色部中のおよそ440~450nmにある。
【0004】
リボフラビンの光活性化を回避するために、いくつかの解決策が開発されてきた。
最もよくある解決策は、通常、緑または褐色の着色ガラス容器の使用であり、天然または人工の光の青色成分に対する極めて強力なフィルタリング機能を有する。
国際公開第WO2011054839号は、約440~450nmの波長範囲で光減衰機能を有する包装用フィルムを開示している。しかし、これらのフィルターは、広い吸収バンドを有し、500nm以上までの波長の光を除去し、強い着色のあるガラス容器を生ずる。
【0005】
これらの解決策は、着色ガラス容器をもたらす欠点を有し、明るさが少なく見え、一部の市場では満足のいくものではない。
出願者は、約440~450nmの波長範囲の青色光の効率的なフィルタリングを可能とし、同時に、高明度を保持する光フィルタリングコーティングを開発した。このようなフィルターは、白色ガラス容器の使用を可能にし、日光臭生成のリスクを低減する。白色ガラス容器は、その中に含有される液体のより良好な提示を可能とし、高級品市場へより適合される。
【発明の概要】
【0006】
従って、本開示は、光フィルタリングガラス容器に関し、該ガラス容器は、
i.色(Lug、Cug、hug)を有するガラス容器;
ii.半導電性ナノ粒子を含む重合性組成物を硬化することにより得られる光フィルタリングコーティングであって、前記光フィルタリングコーティングが少なくともガラス容器の一部上に存在する、光フィルタリングコーティングを含み、
5-マイクロメートル厚の光フィルタリングコーティングを通過した吸光度は、350nm~λcutの範囲の各光波長に対し0.5超であり、λcutは420nm~480nmの範囲であり、
非コートガラス容器と光フィルタリングコーティングを有するガラス容器との間の明度の差異は、5未満である。
【0007】
ある実施形態では、光フィルタリングコーティングを有するガラス容器の視感透過率は、非コートガラス容器の90%超、好ましくは95%超である。
【0008】
ある実施形態では、光フィルタリングガラスは、60未満、好ましくは50未満の彩度Ccgを有する。
【0009】
ある実施形態では、重合性組成物は、ゾルゲル重合性組成物である。特定の実施形態では、ゾルゲル重合性組成物は、金属アルコキシド、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびこれらの混合物から選択されるモノマーまたはオリゴマーを含む。特に、ゾルゲル重合性組成物の硬化により得られる光フィルタリングコーティングの厚みは、1μm~15μm、好ましくは1μm~10μm、より好ましくは2μm~6μmの範囲である。
【0010】
ある実施形態では、重合性組成物は、(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマー、エポキシモノマーまたはオリゴマー、またはこれらの混合物を含む。特に、前記重合性組成物の硬化により得られる光フィルタリングコーティングの厚みは、2μm~100μm、好ましくは3μm~50μm、より好ましくは4μm~30μmの範囲である。
【0011】
ある実施形態では、半導電性ナノ粒子は、式:
(I)、
の物質を含み、式中、
Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Cs、またはこれらの混合物からなる群より選択され;
Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Cs、またはこれらの混合物からなる群より選択され;
Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはこれらの混合物からなる群より選択され;
Aは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、I、またはこれらの混合物からなる群より選択され;および
x、y、zおよびwは独立に、0~5の小数(decimal number)であり;x、y、zおよびwは、同時に0ではなく;xおよびyは、同時に0ではなく;zおよびwは、同時に0ではない場合がある。
【0012】
本開示はまた、半導電性ナノ粒子を含む重合性組成物を硬化することにより得られる、ガラス容器のための光フィルターに関し、5-マイクロメートル厚の光フィルタリングコーティングを通過した吸光度は、350nm~λcutの範囲の各光波長に対し0.5より大きく、λcutは420nm~480nmの範囲であり;光フィルターの明度は、95より大きい。
【0013】
ある実施形態では、光フィルターは、60未満、好ましくな50未満の彩度Cを有する。
【0014】
ある実施形態では、重合性組成物は、ゾルゲル重合性組成物である。特定の実施形態では、ゾルゲル重合性組成物は、金属アルコキシド、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびこれらの混合物から選択されるモノマーまたはオリゴマーを含む。
【0015】
ある実施形態では、重合性組成物は、(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマー、エポキシモノマーまたはオリゴマー、またはこれらの混合物を含む。
【0016】
定義
本発明では、以下の用語は次の意味を有する。
-「吸光度」は、比率I/Iの常用対数であり、Iは試料への入射光の強度であり、Iは前記試料を通して透過された光の強度である。本開示では、吸光度は、350nm~780nmのUVおよび可視域で測定される。固体試料(コーティング)の場合、吸光度は、5-マイクロメートル厚試料で測定される。液体試料(吸収化合物の溶液)の場合、吸光度は、1センチメートル光路キュベット中で測定される。吸光度1は、10個の光子中の9個が試料により吸収されることを意味する。吸光度0.3は、2個の光子中の1個が試料により吸収されることを意味する。
-「彩度」は、CIE Lモデルにおける色の動径座標を意味する。彩度が増加すると、色の飽和が増加する。逆に、低い彩度は、薄色に対応する。特に、白色の彩度は0である。
-「色空間」は、観測者により知覚される色の表現のためのモデルを意味する。本開示では、色空間は、国際照明委員会(CIE)により1976年に定義された、CIE L色空間-Lとしても知られる-を指す。CIE Lでは、色は、明度(L)、赤と緑との間の位置(a)および黄と青との間の位置(b)により表される。このモデル内では、所与の明度に対する全ての色は、円内で表すことができ、その中では、aおよびbは、色の座標である。
-「比色係数」は、国際表色系CIE L(1976)の色の彩度と色相を意味し、標準光源D65および観測者を考慮して380と780nmの間で計算される(角度2°)。観測者は、国際表色系CIE Lで定義された「標準観測者」である。
-「コア/クラウン」は、中央部のナノ粒子:コアが、コアの周辺に配置された一群の物質:クラウンにより取り囲まれている、ヘテロ構造を意味する。
-「コア/シェル」は、中央部のナノ粒子:コアが、コア上に配置された物質層:シェルにより包埋されている、ヘテロ構造を意味する。2つの連続的シェルを配置してもよく、コア/シェル/シェルヘテロ構造が得られる。コアおよびシェルは、同じ形状であってもよく、例えば、コアがナノスフェアで、シェルが実質的に一定の厚さの層とすることにより、球状のコア/シェルナノ粒子が得られる。コアおよびシェルは、異なる形状であってもよく、例えば、ドット-ナノスフェアまたはナノキューブまたは任意の他のナノクラスター-がコアとして用意され、シェルがコアのまわりに横方向生育され、ナノプレートの形状であるがナノプレートの内部にドットを含むヘテロ構造が得られ、後者は、以降、ドットインプレート(dot in plate)と命名される。いくつかの実施形態では、コアおよびシェルは異なる組成を有する。他の実施形態では、組成は、コアからシェルへ連続的に変化し、コアとシェルとの間に正確な境界は存在しないが、コアの中心の特性は、シェルの外側境界の特性とは異なる。
-「色相」は、CIE Lモデルにおける色の角度座標を意味する。色相は、赤、オレンジ、黄、緑、青または紫として知覚される色の表記である。
-「光源」は、理論的可視光源を意味する。標準光源は、国際照明委員会(CIE)により定義される。自然光の場合、標準光源D65が好ましい。理由は、D65は平均昼光を表すことを目的としているためである。人工光の場合の特定の条件では、他の光源が使用される。
-「明度」は、光の絶対輝度値を意味する。CIE LAB色空間では、明度は、L=0(黒)~L=100(拡散白色(diffuse white))の範囲である。
-「視感透過率」は、ISO標準13666:1998で定義されているように、範囲内の各波長での目の感度により重み付けされ、D65照明条件(昼光)下で測定される380~780nmの波長範囲の平均を意味する。
-「ナノメートルサイズ」は、閉じ込めにより量子効果が現れる物質のサイズを意味する。半導電性ナノ粒子の場合、ナノメートルサイズは、電子/ホール対の平均ボーア半径を用いて定義される必要がある。閉じ込めは、物質の20nm未満、好ましくは15nm未満、より好ましくは10nm未満の少なくとも1つの次元のサイズに対して有効である。より強力な閉じ込めは、5nm未満の少なくとも1つの次元のサイズで得られる。
-「ナノ粒子」は、100nm未満の少なくとも1つのその次元のサイズを有する粒子を意味する。ナノスフェアの場合、直径は、100nm未満でなければならない。ナノプレートの場合、厚さは、100nm未満でなければならない。ナノロッドの場合、直径は、100nm未満でなければならない。
-「ナノプレート」は、2D形状ナノ粒子を意味し、前記ナノプレートの最小寸法は、前記ナノプレートの最大寸法よりも、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3、少なくとも3.5、少なくとも4、少なくとも4.5、少なくとも5、少なくとも5.5、少なくとも6、少なくとも6.5、少なくとも7、少なくとも7.5、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9、少なくとも9.5または少なくとも10倍(アスペクト比)だけ小さい。
-「半導電性ナノ粒子」は、電子産業で既知であるがナノメートルサイズを有する半導電性材料に対応する電子構造を有する物質から作製される粒子を意味する。それらの特定の電子構造に起因して、半導電性材料は、高域通過タイプの吸収物質として挙動する。実際に、バンドギャップより高いエネルギーの波長を有する光は、半導電性材料により吸収され、電子/ホール対、エキシトンを生成し、これは、後で、材料中で再結合し、熱を消散する、または発光する、または両方を行う。これに対して、バンドギャップより小さいエネルギーの波長を有する光は、吸収され得ず、半導電性材料は、これらの波長に対し、透過性である。巨視的な半導電性材料では、可視光は通常、吸収されるが、近/中赤外光は吸収されない。半導電性粒子がナノメートルサイズを有する場合、閉じ込め-すなわち、形状およびナノメートルサイズ-は、量子機構のルールに従って電子構造を支配し、光吸収は、UV範囲またはUVと高エネルギー可視光に限定され得る。本開示内では、半導電性ナノ粒子は、閾値未満の波長を有する光を吸収し、この閾値は、350nm~800nmの範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、決定した色と光フィルタリングコーティングのガラス容器を含む光フィルタリングガラス容器に関する。
【0018】
本開示では、ガラスとしては、2種の材料が意図されている。
【0019】
ある実施形態では、ガラスは、実質的に融解シリカから作製された鉱物材料である。ガラス容器は、飲料および液状食品、特にビール、ワインおよび蒸留酒を入れるために好適する任意の形状を有し得る。ガラス容器は、典型的には、ボトルまたはフラスコである。白色ガラス容器、すなわち、ほぼ無色のガラス容器は特に好ましい。
【0020】
別の実施形態では、ガラスは、極めて高い光学性能を有するポリマー材料であり、鉱物ガラスのように見える。これら材料は、高級品-特に化粧品-用のパッケージングに極めてよく使用され、通常は、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリカーボネートがベースになっている。
【0021】
ガラス容器の色は、よく知られた比色測定により決定される。ガラス片が標準光源で照射され、ガラスを通して透過した光は、CIE Lモデル(標準観測者、2°)に従って解析され、明度Lug、彩度Cugおよび色相hugが得られる(ugは非コートガラス(uncoated glass)を意味する)。白色ガラスの色は0彩度に近づき、色相はこの場合、該当しないので、彩度および色相による色の表現は、特に白色ガラスに好適する。
【0022】
あるいは、ガラス容器の色は、任意の種類の光源を用いた透過スペクトルの測定から決定される。透過スペクトルと光源D65の既知のスペクトルとを組み合わせることにより、ガラス容器を通って透過する光のスペクトルをシミュレートし、その後、ガラス容器の色を計算できる。
【0023】
加えて、ガラス容器を介した視感透過率-以降、Tvと表す-は、明度の目安を与える。実際に、低い彩度を有するガラス容器は、Tvが低い場合、灰色に見え、Tvが高い場合、明るく見える。
【0024】
好ましいガラス容器は、10未満の彩度および90%より高い視感透過率Tvを有する。
【0025】
本開示では、ガラス容器は、光フィルタリングコーティングによりコートされる。光フィルタリングコーティングは、ガラス容器全体またはその一部をカバーし得る。
【0026】
光フィルタリングコーティングは、高エネルギー光照射に対してガラス容器の内容物を保護するのが目的である。実際に、ガラス物質は通常、350nm未満の波長のUV光に対する吸収剤である。しかし、350nmを越える波長のUV光、および可視光-380nm~780nm-は、ガラスにより全てが吸収さるわけではない。この透過性の波長の範囲では、高エネルギー照射がガラスにより透過され、最終的にガラス容器の内容物の分解を誘導する可能性が高い。この作用を制限するために、本明細書で開示の光フィルタリングコーティングは、350nm~λcutの範囲の各光波長に対し0.5超の吸光度を有し、λcutは420nm~480nmの範囲である。吸光度は、5-マイクロメートル厚の光フィルタリングコーティングを介して測定される。
【0027】
ある実施形態では、λcutは、430nm~480nmの範囲である。特に、λcutは、450nm~460nmの範囲、450nm~470nmの範囲、450nm~480nmの範囲、460nm~470nmの範囲、440nm~450nmの範囲、440nm~460nmの範囲、440nm~470nmの範囲、430nm~450nmの範囲、430nm~460nmの範囲、430nm~470nmの範囲または430nm~440nmの範囲の群中で選択される範囲であり得る。
【0028】
ある実施形態では、吸光度は、350nm~λcutの範囲の各光波長で、1より大きく、より好ましくは1.5より大きい。
【0029】
λcutの正確な値は、ガラス容器の予測含有量により決定される。日光臭に対する保護の特定の例では、λcutは、450nm~480nmの範囲で選択される。
【0030】
図1.1は、350nm~780nmからの光の波長の関数としての光フィルタリングコーティングの一般的吸光度曲線:A(λ)を示す。吸光度曲線は、3つのゾーンを示す。低波長領域、すなわち、UV光および高エネルギー可視光領域では、吸光度は高くおよび/またはほぼ一定であり、平均吸光度Aを有する第1のプラトーPを規定する。第1のプラトーPの後で、吸光度は急速に減少し、Aの1/10の値A:A=A/10に達し、これにより、減少ゾーンDを規定する。プラトーPと減少ゾーンDとの間の境界は、遷移λcutの波長を規定する。減少ゾーンDの後では、吸光度は、第2のプラトーPで減少および/または安定化し、可視光の赤端、すなわち、780nmまで延び得る。
【0031】
減少ゾーンDの幅は、一般に100nm未満であり、好ましくは50nm未満、より好ましくは40nm未満、さらに好ましくは30nm未満である。
【0032】
吸光度曲線は常に、この一般的形状を有するが、詳細は、使用する材料の特質によって変化し、λcutの正確な決定は困難な場合があり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、吸光度曲線は、図1.1に示すように、PとDの境界で明確な最大を示す。この実施形態では、λcutは、次の式により定義され、λcutは、減少ゾーンD中に存在する:
【数1】
この実施形態では、λcutは、代わりに、極大に対し次の式により定義される:
【数2】
他の実施形態では、吸光度曲線は、図1.2で示されるように、単調にゆっくり減少した後に、急速に減少する。この実施形態では、λcutは、吸光度の減少が減少ゾーンで顕著になるλの最低値、例えば、
【数3】
により定義され得る。
【0034】
上記で提案したλcutの異なる決定法は、異なる値であるが、近い値を与える。本開示では、λcutの値は、±5nmの不確定性を有する丸められた値と見なされるべきである。
【0035】
λcut値は、半導電性ナノ粒子の組成、形状および構造の適切な選択により420nm~480nmの範囲内で選択され得る。
【0036】
480nmより長い波長を有する光のフィルタリングは特に望ましいわけではない。実際に、このような光はエネルギーが低く、妥当な暴露時間で食品の分解を誘導しない。加えて、480nmより長い波長の光は、緑色および黄色に関連し、人間の目は極めて敏感である。さらに、このような光のフィルタリングは、明度および強力な着色効果の減少を生じ、これは望ましくない。
【0037】
それと反対に、本明細書で開示の光フィルタリングコーティングは、それがコートされるガラス容器の明度を顕著に変化させない。換言すれば、光フィルタリングコーティングは高度に透明である。この性能を評価するために、光フィルタリングコーティングを有するガラス容器の色を、非コートガラス容器のために上記で開示した方法に従って測定し、明度Lcg、彩度Ccgおよび色相hcg(cgはコートガラス(coated glass)を意味する)を得た。
【0038】
本開示では、非コートガラス容器と光フィルタリングコーティングを有するガラス容器との間の明度の差異は、5未満である。
【0039】
差異が少ないほど、光フィルタリングコーティングは好ましい。特に、明度の差異は、4未満、好ましくは3未満、より好ましくは2未満であり得る。
【0040】
ある実施形態では、光フィルタリングガラス容器の彩度Ccgは、60未満、好ましくは50未満である。この彩度が大きな見える場合であっても、カラーバランス調整用添加物を光フィルタリングコーティングに加えて、明度の低下なしに彩度を低下させ得る。
【0041】
特定の実施形態では、非コートガラス容器と光フィルタリングコーティングを有するガラス容器との間の明度の差異は、2未満であり、光フィルタリングガラス容器の彩度Ccgは60未満である。
【0042】
ある実施形態では、光フィルタリングコーティングを有するガラス容器の視感透過率は、非コートガラス容器の90%超、好ましくは95%超である。これらの条件では、ガラス容器の明度は、光フィルタリングコーティングにより低下しない。
【0043】
本開示では、光フィルタリングコーティングは、半導電性ナノ粒子を含む重合性組成物を硬化することにより得られる。
【0044】
重合性組成物
本開示は、重合性組成物に関する。組成物は、少なくとも1種のモノマーまたはオリゴマー;少なくとも1種の前記モノマーまたはオリゴマーの重合を開始するための触媒;および前記モノマーまたはオリゴマー中に分散される半導電性ナノ粒子を含む。
【0045】
光フィルタリングコーティングのために好適な重合性組成物は、それが可視光に対し充分に透過性であり、半導電性ナノ粒子の分散を可能とする限りにおいて、任意の種類から構成されてよい。
【0046】
好適なモノマーまたはオリゴマーは、アリル化合物、(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物、ポリウレタンまたはチオウレタン材料を調製するために使用される化合物から選択される。これらのモノマーの混合物、または多官能モノマー-特に、エポキシ-アクリル酸化合物-は、同様に好適である。加えて、ゾルゲルとして通常既知の材料を調製するために使用される化合物は好適である。
【0047】
本開示では、(メタ)アクリルモノマーまたは(メタ)アクリルオリゴマーは、アクリル基またはメタクリル基を有する化合物である。(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートであってよい。
【0048】
好適な(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーは、多官能(メタ)アクリレートであり、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレートおよびヘキサアクリレートモノマーからなる群から選択されてよい。特に、多官能モノマーは、好ましくは、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、シリコーンヘキサアクリレートおよびこれらの混合物からなる群より選択される。多官能アクリレートモノマーの使用は、PETまたはポリカーボネートなどの熱可塑性基板に対する改善された引掻抵抗およびより良好な接着をもたらす。
【0049】
(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーの重合に特に適合された実施形態では、重合開始用の触媒は、フリーラジカル開始剤である。特定の実施形態では、触媒は、ペルオキソジカルボネート、ペルオキシエステル、ペルケタール、およびこれらの混合物からなる群より選択される。別の特定の実施形態では、触媒は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、およびこれらの混合物からなる群より選択されるアゾ化合物である。
【0050】
好適なエポキシモノマーまたはオリゴマーは、多官能エポキシであり、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどのペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリフェニルオールメタントリグリシジルエーテル、トリスフェノールトリグリシジルエーテル、テトラフェニルオールエタントリグリシジルエーテル、テトラフェニルオールエタンのテトラグリシジルエーテル、p-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、1,2,6-ヘキサントリオールトリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、グリセロールエトキシレートトリグリシジルエーテル、ヒマシ油トリグリシジルエーテル、プロポキシル化グリセリントリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、(3,4-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシルオヘキシルカルボキシレートおよびこれらの混合物からなる群より選択してよい。このようなポリエポキシドの使用は、得られた硬化コーティングの靱性および熱硬化性樹脂基板への接着を改善する。
【0051】
モノマーまたはオリゴマーの重合に特に適合された実施形態では、重合開始用触媒-多くの場合、硬化剤と呼ばれる-は、アミン、無水物、フェノールまたはチオールから選択される。
【0052】
本開示では、少なくとも2つのアルコール、チオールまたはエピチオ官能基を有するモノマーまたはオリゴマーと、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマーまたはオリゴマーの混合物は、好適な重合性組成物である。
【0053】
少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマーまたはオリゴマーは、2,2’-メチレンジフェニルジイソシアネート(2,2’-MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート(4,4’-DBDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)などの対称芳香族ジイソシアネートまたは2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(2,4’-MDI)、2,4’-ジベンジルジイソシアネート(2,4’-DBDI)、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)などの非対称芳香族ジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,5(または2,6)-bis(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NDI)、4,4’-ジイソシアナトメチレンジシクロヘキサン(H12MDI)などの脂環式ジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、またはこれらの混合物から選択してよい。
【0054】
チオール官能基を有するモノマーまたはオリゴマーは、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ビス[(2-メルカプトエチル)チオメチル]-1,4-ジチアン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンおよびこれらの混合物から選択してよい。
【0055】
エピチオ官能基を有するモノマーまたはオリゴマーは、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィドおよびビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(β-エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル]スルフィドから選択してよい。
【0056】
ある実施形態では、ポリウレタンまたはチオウレタン材料を生成する重合性組成物の組成は、完全な網目状高分子を得るために、化学量論的であり、すなわち、モノマー上のイソシアネート官能基の数は、モノマー上のアルコール、チオールまたはエピチオ官能基の数と実質的に等しい。
【0057】
ポリウレタンまたはチオウレタン材料を生成する組成物に特に適合された実施形態では、重合開始用の触媒は、有機スズ化合物であり、クロロジメチルスズ、クロロジブチルスズ、およびこれらの混合物から選択してよい。
【0058】
本開示では、ゾルゲルとして通常既知の材料を調製するために使用される化合物は好適である。モノマーまたはオリゴマーは、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびこれらの混合物から選択してよい。これらのモノマーまたはオリゴマーは、重合性組成物を形成するために溶媒中で調製され得る。好適な溶媒は、水/アルコール混合物などの極性溶媒である。
【0059】
アルコキシシランは、式:RSi(Z)4-pを有する化合物中から選択してよく、式中、R基は、同じまたは異なる、炭素原子を介してケイ素原子に結合される一価有機基であり、Z基は、同じまたは異なる、加水分解基または水素原子であり、pは、0~2の範囲の整数である。好適なアルコキシシランは、テトラエトキシシランSi(OC(TEOS)、テトラメトキシシランSi(OCH(TMOS)、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(sec-ブトキシ)シランまたはテトラ(t-ブトキシ)シランからなる群中で選択してよい。
【0060】
アルキルアルコキシシランは、式:RSi(Z4-n-mを有する化合物中から選択してよく、式中、R基は、同じまたは異なる、炭素原子を介してケイ素原子に結合される一価有機基であり、Y基は、同じまたは異なる、炭素原子を介してケイ素原子に結合される一価有機基であり、Z基は、同じまたは異なる、加水分解基または水素原子であり、mおよびnは、mは1または2に等しく、n+m=1または2であるような、整数である。
【0061】
エポキシアルコキシシランは、式:RSi(Z4-n-mを有する化合物中から選択してよく、式中、R基は、同じまたは異なる、炭素原子を介してケイ素原子に結合される一価有機基であり、Y基は、同じまたは異なる、炭素原子を介してケイ素原子に結合される一価有機基であり、少なくとも1つのエポキシ官能基を含み、Z基は、同じまたは異なる、加水分解基または水素原子であり、mおよびnは、mは1または2に等しく、n+m=1または2であるような、整数である。
好適なエポキシシランは、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランからなる群から選択されてよい。
【0062】
ゾルゲル材料を生成する組成物に特に適合された実施形態では、重合開始用の触媒は、ルイス酸である。亜鉛、チタン、ジルコニウム、スズまたはマグネシウムなどの金属のカルボキシレート;アルミニウムアセチルアセトネートAl(AcAc)は、好適な触媒である。
【0063】
ある実施形態では、アルコキシシランの量は、重合性組成物の理論的乾燥抽出物を基準にして、0~90重量%であり;アルキルアルコキシシランの量は、重合性組成物の理論的乾燥抽出物を基準にして、20~90重量%であり;触媒の量は、重合性組成物の理論的乾燥抽出物を基準にして、0.1~5重量%である。
【0064】
組成物の理論的乾燥抽出物は、重合中に放出された全ての溶媒および揮発性部分、例えば、アルキルシランの切断可能なアルキル置換基が除去される組成物の重量を意味する。
【0065】
本開示によるモノマーまたはオリゴマーの量は、重合性組成物の理論的乾燥抽出物を基準にして、20~99重量%、特に50~99重量%、さらに限定すれば、80~98重量%、なおさらに限定すれば、90~97重量%であってよい。
【0066】
本開示による重合性組成物中の触媒の量は、0.5~5.0重量%であってよい。ラジカル、付加または縮合工程により重合可能なメタクリル酸およびその他のモノマーの場合、重合性組成物中の触媒の量は、組成物の理論的乾燥抽出物を基準にして、特に、0.25~2.5重量%、さらに限定すれば、0.5~2.0重量%であってよい。ゾルゲル重合性組成物の場合、重合性組成物中の触媒の量は、組成物の理論的乾燥抽出物を基準にして、特に、0.75~2.5重量%、さらに限定すれば、0.5~1.5重量%であってよい。
【0067】
光フィルタリングコーティングの厚さは、使われるモノマーまたはオリゴマーの種類により、およびコーティングの機械的性質により、変化してよい。特に、(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマー、エポキシモノマーまたはオリゴマー、またはこれらの混合物から得られる光フィルタリングコーティングは、2μm~100μm、好ましくは3μm~50μm、より好ましくは4μm~30μmの範囲の厚さを有してよい。あるいは、ゾルゲル重合性組成物から得られる光フィルタリングコーティングは、1μm~15μm、好ましくは1μm~10μm、より好ましくは2μm~6μmの範囲の厚さを有してよい。
【0068】
半導電性ナノ粒子
本開示では、重合性組成物は、半導電性ナノ粒子を含む。
【0069】
材料は、種々の組成および構造を有し得る。鉱物材料中で、一部のもの、例えば、金属は、導電性である。一部のもの、例えば、酸化ケイ素または酸化スズは、電気絶縁性である。本開示で特に興味のあるのは、電子産業界でよく知られた半導電性材料から作製される材料である。半導電性材料は、巨視的なサイズを有し得る。半導電性材料がナノメートルサイズを有する場合には、それらの電子的および光学的特性は改変される。
【0070】
本開示では、半導電性ナノ粒子は、ガラス容器に対する特に興味深い光吸収特性をもたらす。特に、半導電性ナノ粒子の組成および構造の適切な選択により、吸収光(高エネルギー)の範囲と、透過光(低エネルギー)の範囲間でシャープな遷移を有する光吸収体を設計し得る。半導電性ナノ粒子は、閾値λcut未満の波長を有する光を吸収し、この閾値は、420nm~480nmの範囲内にある。
【0071】
組成
一実施形態では、半導電性ナノ粒子は、式:
(I)、
の物質を含み、式中、Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはこれらの混合物からなる群より選択され;Qは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Au、Ni、Pd、Pt、Co、Fe、Ru、Os、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nd、Ta、Ti、Zr、Hf、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Csまたはこれらの混合物からなる群より選択され;Eは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iまたはこれらの混合物からなる群より選択され;およびAは、O、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iまたはこれらの混合物からなる群より選択される。x、y、zおよびwは独立に、0~5の小数であり;x、y、zおよびwは、同時に0ではなく;xおよびyは、同時に0ではなく;zおよびwは、同時に0ではない場合がある。
特に、半導電性ナノ粒子は、式Mの物質を含み得、式中、Mは、Zn、Cd、Hg、Cu、Ag、Al、Ga、In、Si、Ge、Pb、Sbまたはこれらの混合物であり、およびEは、O、S、Se、Te、N、P、Asまたはこれらの混合物である。xおよびyは、独立に0~5の小数であるが、但し、xおよびyは同時に0ではないことを条件とする。
【0072】
特定の実施形態では、半導電性ナノ粒子は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、HgO、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、GeS、GeSe、SnS、SnSe、CuInS、CuInSe、AgInS、AgInSe、CuS、CuS、AgS、AgSe、AgTe、FeS、FeS、InP、Cd、Zn、CdO、ZnO、FeO、Fe、Fe、Al、TiO、MgO、MgS、MgSe、MgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、MoS、PdS、PdS、WS、CsPbCl、PbBr、CsPbBr、CHNHPbI、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CsPbI、FAPbBr(FAはホルムアミジニウムを意味する)またはこれらの混合物からなる群より選択される物質を含む。
【0073】
形状
本開示では、半導電性ナノ粒子は、さまざまな形状であってよいが、ただし、それらがナノ粒子で生成されるエキシトンの閉じ込めをもたらすナノメートルサイズを示すという条件下の場合である。
【0074】
半導電性ナノ粒子は、三次元でナノメートルサイズを有し、全ての3つの空間的次元でエキシトンの閉じ込めを可能とし得る。このようなナノ粒子、例えば、ナノキューブまたはナノスフェアは、図2に示されるナノドット1としても知られる。
【0075】
半導電性ナノ粒子は、二次元でナノメートルサイズを有し、第3の次元はより大きく:エキシトンは、2つの空間的次元中に閉じ込められる。このようなナノ粒子は、例えば、ナノロッド、ナノワイヤーまたはナノリングである。
【0076】
半導電性ナノ粒子は、一次元でナノメートルサイズを有し、他の次元はより大きく:エキシトンは、1つの空間的次元中のみに閉じ込められる。このようなナノ粒子、例えば、図2に示されるナノプレート2、またはナノシート、ナノリボンまたはナノディスクである。
【0077】
半導電性粒子の正確な形状は、閉じ込め特性を規定し;さらに、半導電性粒子の組成に応じて電子および光学特性、特にバンドギャップ、さらにλcutを規定する。一次元でナノメートルサイズを有するナノ粒子、特にナノプレートは、他の形状を有するナノ粒子に比べて、よりシャープな減少ゾーンを示す。実際に、ナノ粒子のナノメートルサイズが平均値の周りで変動する場合、減少ゾーンの幅は、拡大する。ナノメートルサイズが、1つのみの次元で厳密な原子層の数により制御される場合、すなわちナノプレートに対し、厚みの変動はほぼ0で、吸収状態と非吸収状態との間の遷移は、非常にシャープである。
【0078】
構造
ある実施形態では、半導電性ナノ粒子はホモ構造である。ホモ構造により、ナノ粒子は均質であり、その全体積中で同じ局所的組成を有することを意味する。
【0079】
代替的実施形態では、半導電性ナノ粒子はヘテロ構造である。ヘテロ構造により、ナノ粒子は、いくつかのサブボリュームからなり、各サブボリュームは、隣接サブボリュームとは異なる組成を有することを意味する。特定の実施形態では、全てのサブボリュームは、異なるパラメーター、すなわち、元素組成および化学量論を有する、上記で開示の式(I)により定義される組成を有する。
【0080】
ヘテロ構造の例は、図2に示されるコア/シェルナノ粒子であり、コアは、上記で開示の任意の形状:ナノスフェア11または44、ナノプレート33を有する。シェルは、コア:ナノスフェア12、ナノプレート34または45を全体的にまたは部分的にカバーする層である。コア/シェルヘテロ構造の特定の例は、コアおよびいくつかの連続的シェル:ナノスフェア12および13、ナノプレート34および35を含む多層構造である。便宜上、これらの多層ヘテロ構造は、以降では、コア/シェルと命名される。コアおよびシェルは同じ形状であってもよく-例えば、スフェア12中のスフェア11-または、そうでなくてもよい-例えば、プレート45中のドット44。
【0081】
ヘテロ構造の別の例は、図2に示されるコア/クラウンナノ粒子であり、コアは、上記で開示の形状を有する。クラウン23は、コア22-ここではナノプレート-の周辺に配置された一群の物質である。このヘテロ構造は、ナノプレートのコアと、ナノプレートの端部に配置されるクラウンとを用いると特に有用である。
【0082】
図2は、一方のコアと、他方のシェルまたはクラウンとの間の明確な境界を示す。ヘテロ構造はまた、組成が、コアからシェル/クラウンへ連続的に変化し、コアとシェル/クラウンとの間に正確な境界は存在しないが、コアの中心の特性は、シェル/クラウンの外側境界の特性とは異なる構造も含む。
【0083】
有利な実施形態では、半導電性ナノ粒子は、500nm未満、特に300nm未満、理想的には200nm未満の最大寸法を有する。小さいサイズの半導電性ナノ粒子は、異なる屈折率を有する物質中に分散すると、光散乱を誘導しない。
【0084】
下表1は、本開示での使用に好適な種々の半導電性ナノ粒子を開示する。
【0085】
【表1】
【0086】
ある実施形態では、半導電性ナノ粒子は有機化合物でキャッピングされる。キャッピングすることにより、有機化合物は、半導電性ナノ粒子の表面上に吸着または吸収されることを意味する。キャッピング化合物は、いくつかの利点をもたらす。
【0087】
特に、キャッピング剤は、分散剤として挙動し、重合性組成物中、または重合中の半導電性ナノ粒子の凝集を回避し得る。加えて、キャッピング剤は、それらがナノ粒子の境界条件を変えるので、半導電性ナノ粒子の光学特性に影響を与え得る:λcutは、キャッピング化合物の選択により調節し得る。
【0088】
好適なキャッピング化合物は、任意の種類の分子間相互作用により半導電性ナノ粒子の表面に対し親和性を有する少なくとも1種の化学的部分Mを含むリガンドである。
【0089】
特に、Mは、半導電性ナノ粒子の表面に存在する金属元素に対し親和性を有し得る。Mは、チオール、ジチオール、イミダゾール、カテコール、ピリジン、ピロール、チオフェン、チアゾール、ピラジン、カルボン酸またはカルボン酸塩/カルボキシレート、ナフチリジン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、フェノール、一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アミンまたは芳香族アミンであってよい。
【0090】
あるいは、Mは、半導電性ナノ粒子の表面に存在するO、S、Se、Te、C、N、P、As、Sb、F、Cl、Br、Iの群からなる選択される非金属要素に対して親和性を有し得る。Mは、イミダゾール、ピリジン、ピロール、チアゾール、ピラジン、ナフチリジン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アミンまたは芳香族アミンであってよい。
【0091】
リガンドは、同じまたは異なる、いくつかの化学的部分Mを含んでよい。リガンドは、高分子骨格に沿ったペンダント基またはポリマー骨格中の反復基として、化学的部分Mを有する、同じまたは異なる高分子であってよい。
【0092】
ある実施形態では、半導電性ナノ粒子は、マトリックス内に封入され、カプセルを形成する。封入により、半導電性ナノ粒子が封入物質内に分散され、それにより、封入物質が半導電性ナノ粒子の全表面をカバーすることを意味する。換言すれば、封入物質は、半導電性ナノ粒子の周りにバリアーを形成する。このようなバリアーは、いくつかの利点を有する。
【0093】
特に、半導電性ナノ粒子は、化学薬品、例えば、水分、酸化剤に対し保護され得る。加えて、媒体中に分散性のない半導電性ナノ粒子は、前記媒体との親和性が良好である材料で封入され、バリアーは相溶化剤として挙動する。最後に、封入半導電性ナノ粒子は、溶媒中の分散ではなく、媒体中で分散性粉末の形態であり得るので、それにより、現在の工程中でより容易な取り扱いで提供し得る。
【0094】
封入物質は、有機物質、特に有機ポリマーであり得る。好適な有機ポリマーは、ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリアクリルアミド;ポリアミド;ポリエステル;ポリエーテル;ポリオレフィン;ポリサッカライド;ポリウレタン(またはポリカルバメート);ポリスチレン;ポリアクリロニトリル-ブタジエンスチレン(ABS);ポリカーボネート;ポリ(スチレンアクリロニトリル);ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾールなどのビニルポリマー;ポリ(p-フェニレンオキシド);ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエチレンイミン;ポリフェニルスルホン;ポリ(アクリロニトリルスチレンアクリレート);ポリエポキシド、ポリチオフェン、ポリピロール;ポリアニリン;ポリアリールエテルケトン;ポリフラン;ポリイミド;ポリイミダゾール;ポリエーテルイミド;ポリケトン;ポリヌクレオチド;ポリスチレンスルホネート;ポリエーテルイミン;ポリアミン酸;またはこれらの任意の組み合わせおよび/または誘導体および/またはコポリマーである。
【0095】
封入物質は、鉱物、特に、鉱物酸化物または鉱物酸化物の混合物であってよい。好適な鉱物酸化物は、SiO、Al、TiO、ZrO、FeO、ZnO、MgO、SnO、Nb、CeO、BeO、IrO、CaO、Sc、NaO、BaO、KO、TeO、MnO、B、GeO、As、Ta、LiO、SrO、Y、HfO、MoO、Tc、ReO、Co、OsO、RhO、Rh、CdO、HgO、TlO、Ga、In、Bi、Sb、PoO、SeO、CsO、La、Pr11、Nd、La、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Gd、またはこれらの混合物である。好ましい鉱物封入物質は、SiO、AlおよびZnOである。特に、Znを含むナノ粒子は、SiOまたはZnOにより封入され、Cdを含むナノ粒子は、SiO、Al、またはSiOおよびAlの混合物により封入され得る。
【0096】
有利な実施形態では、カプセルは、500nm未満、特に300nm未満、理想的には200nm未満の最大寸法を有するナノ粒子である。小さいサイズのカプセルは、異なる屈折率を有する物質中に分散すると、光散乱を誘導しない。
【0097】
本開示によるカプセル中の半導電性ナノ粒子の量は、カプセルの総重量を基準にして、1.0~90重量%、特に2.5~50重量%、さらに限定すれば、3.0~25重量%であってよい。
【0098】
本開示による重合性組成物中の半導電性ナノ粒子の量は、重合性組成物の理論的乾燥抽出物を基準にして、10重量ppm~1重量%、特に20重量ppm~0.5重量%、さらに限定すれば、25重量ppm~0.25重量%であってよい。本開示では、半導電性ナノ粒子をキャッピングするために使用される有機物質または半導電性ナノ粒子を封入するために使用される物質は、半導電性ナノ粒子の量に含まれない。明確にするために、組成物理論的乾燥抽出物を基準にして、70重量%の鉱物マトリックス内に埋め込まれた30重量%の半導電性ナノ粒子を含む1重量%の凝集体を含む重合性組成物は、組成物の理論的乾燥抽出物を基準にして、0.3重量%の半導電性ナノ粒子を含む。
【0099】
一実施形態では、半導電性ナノ粒子は、重合性組成物中に均一に分散される、すなわち、各ナノ粒子は、その最近接ナノ粒子から少なくとも5nm、好ましくは10nm、より好ましくは20nm、さらにより好ましくは50nm、最も好ましくは100nmだけ離れている。換言すれば、半導電性ナノ粒子は、重合性組成物中で凝集していない。好都合にも、粒子がさらに遠く離れるほど、散乱は低くなる。
【0100】
ある実施形態では、重合性組成物中に含まれる半導電性ナノ粒子は、同じ式(I)、形状および構造を有する。
【0101】
別の実施形態では、重合性組成物中に含まれる半導電性ナノ粒子は、異なる式(I)および/または異なる形状および/または異なる構造を有する。この実施形態では、重合性組成物の吸光度は、ランベルト・ベールの法則により教示されるように、各タイプの半導電性ナノ粒子の吸光度の重畳により調節され得る。
【0102】
この実施形態では、吸光度曲線の減少ゾーンは、より複雑になり、図1.2に示すように、最初に減少し、次に、中間のプラトーがあり、その後、第2の減少がある。従って、2つの減少ゾーンDおよびDが定義され、各減少ゾーンは、100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは40nm未満、さらにより好ましくは30nm未満の幅を有する。加えて、上記で定義のAは、この場合にも当てはまり、2つの連続的減少に対応する。
【0103】
3つ以上の減少ゾーンを得てもよく、2つの減少ゾーンの実施形態との類推により定義し得る。
【0104】
光フィルタリングコーティングの吸光度は、半導電性ナノ粒子を含む5マイクロメートル厚コーティングで測定される。ある実施形態では、吸光度は、350nm~λcutの範囲の各光波長で、0.5、好ましくは1、より好ましくは1.5より大きい。λcutは可視範囲、好ましくは420nm~480nmの範囲、好ましくは420nm~450nmの範囲であり得る。
【0105】
一実施形態では、重合性組成物の吸光度または光フィルタリング層の吸光度は:
・350~480nmの範囲の最高波長の極大吸光度(前記極大は波長λmaxに対し吸光度値Amaxを有する);
・波長λ0.9に対し0.9Amaxの値(λ0.9はλmaxより大きい);
・波長λ0.5に対し0.5Amaxの値(λ0.5はλ0.9より大きい);
を有し、|λ0.5-λ0.9|は、15nm未満である。
好ましい構成では、|λ0.5-λ0.9|は、10nm未満、または5nm未満である。
ある実施形態では、前記光フィルタリング物質の吸光度は、波長λ0.1に対し0.1Amaxの値を有し、λ0.1はλ0.9より大きく;|λ0.1-λ0.9|は、30nm未満、好ましくは20nm未満、より好ましくは15nm未満である。
【0106】
添加物
重合性組成物は、従来の比率で添加物をさらに含み得る。これらの添加物は、抗酸化剤、UV光吸収体、光安定剤、抗黄変剤などの安定剤を含む。それらは、光フィルタリングコーティングの重合の効力を低下させても、光学特性-特に透過性-を劣化させてもいけない。
【0107】
有利な実施形態では、重合性組成物は、追加のUV光吸収体を含まない。実際に、半導電性ナノ粒子は、280nm~λcutの範囲の光波長に対し、大きな吸光度を示す。λcutが可視域で選択されると、280nm~380nmの範囲の全UV光が半導電性ナノ粒子により吸収され、それ以上のUV光吸収体は、重合性組成物中に必要ない。
【0108】
重合性組成物は、溶媒をさらに含んでよいが、但し、重合がその溶媒により妨害されないことが条件である。溶媒は、水、アルコール、または水/アルコール混合物などの極性溶媒、好ましくはアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチルセロソルブ(モノエトキシエチレングリコール)、およびエチレングリコールから選択してよい。
【0109】
本開示はまた、ガラス容器のための光フィルターに関する。
前記光フィルターは、半導電性ナノ粒子を含む重合性組成物を硬化させることにより得られる。
【0110】
5-マイクロメートル厚を有する前記光フィルターを通る吸光度は、350nm~λcutの範囲の各光波長に対し0.5超であり、λcutは420nm~480nmの範囲であり、光フィルターの明度は95より大きい。
【0111】
光フィルタリングコーティングに関して本明細書で開示の全特徴は、前記光フィルターに適する。重合性組成物および半導電性ナノ粒子の特定の特徴は、前記光フィルターで実施し得る。
【0112】
ある実施形態では、前記光フィルターの彩度は、60未満、好ましくは50未満である。
【0113】
ある実施形態では、光フィルターは、ゾルゲル重合性組成物、特に、金属アルコキシド、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、エポキシアルコキシシラン、およびこれらの混合物から選択されるモノマーまたはオリゴマーを含むゾルゲル重合性組成物を硬化させることにより得られる。
【0114】
ある実施形態では、光フィルターは、(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマー、エポキシモノマーまたはオリゴマー、またはこれらの混合物を含む組成物を硬化させることにより得られる。
【0115】
種々の実施形態が記載され、例示されてきたが、詳細な記載は、それに限定されるものと解釈されるべきではない。当業者であれば、特許請求の範囲により定められる本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正をこれら実施形態に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】350nm~780nmからの光の波長(線形スケール)の関数としての重合性組成物または半導電性ナノ粒子を含む物質の一般的吸光度(対数スケール):A(λ)およびλcutの決定の原理を示す。
図2】半導電性ナノ粒子のさまざまな形状(スフェア、プレート)および構造(ホモ構造、コア/シェル、コア/クラウン、ドットインプレート)の略図である。
図3】光フィルタリングコーティングを有するガラス容器を示す。
図4】実施例1のナノ粒子NP1、分散液D1およびガラスS1のコートシートの吸光度曲線を示す。
図5】比較例のボトルおよび本開示による光フィルターでコートされたボトルの光波長λの関数としての透過曲線Tを示す。
図6】リボフラビン溶液の光波長λの関数としての吸光度Aを示す。溶液が青色光で照射され、光曝露期間の増加(0~30時間)後に吸光度が測定される。
【0117】
実施例
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。
比色測定:
全ての比色測定は、透過率の測定とそれに続く色の計算後に得られた。
透過率は、キセノン光源を備えたJASCO UV-VIS770分光計を用いて、380nm~780nmの波長範囲で測定された。
光源D65のスペクトルは、CIE標準で定義されている。
光フィルター
種々のコーティングが調製され、ガラスに適用された。
【0118】
実施例1:フィルター
1.2nmの厚み(4単層に相当)、15nmの長さ、および20nmの幅を有し、組成がコアからシェルへ継続的に変化するCdSのナノプレート中に包含されたCdSe0.50.5ドットを含む式CdSe1-x(x=0.3)のドットインプレート半導電性ナノ粒子(以降、NP1)を欧州特許EP2633102で開示の手順に従ってヘプタン中で調製した。
【0119】
10mMのNaHCO溶液中のNP1を含む0.5mLの分散液を、20モル%のジヒドロリポ酸メタクリレートと80モル%の40のMnを有するポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートのポリ(DHLA-co-PEGMEMA)コポリマーの5mgと混合し、60℃での一晩の緩やかな撹拌下で保持した。その後、試料をエタノールで洗浄し、エタノール中で高分子でキャッピングされたナノ粒子を得た。この分散液D1は、5%のナノ粒子の重量含有率を有する。
加えて、ゾルゲル溶液SGを、100μLの(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、65μLのジエトキシジメチルシランおよび35μLの0.1M HClを含む別のバイアル中で同様に調製した。溶液SGを室温で24時間撹拌した。
【0120】
50μLの分散液D1を、200μLの溶液SGに加え、重合性組成物を得た後、スピンコーティングにより、ガラスシートS0上に400rpmで30秒間(分配ステップ(dispensing step))、その後、2000rpmで2分間(展開ステップ(spreading step))堆積させた。次に、得られた試料を150℃で6時間加熱し、硬化後、縮合された5μm厚の、1%のCdSナノプレートの重量含有率を有するゾルゲルコーティングを得た。コートガラスシートはS1である。
【0121】
コーティング前のガラスシートは、86.3の明度および95%の視感透過率を有する。
【0122】
コーティング後、コートガラスシートは、85.73の明度および95%の視感透過率を有する。光フィルタリングコーティングは、高度に透明であり、コートボトルの化粧品特性は維持される:それらは非コートと同様に明るく見える。
【0123】
ヘプタン中のナノ粒子NP1(一点鎖線)の、分散液D1(点線)の、およびコートガラスシートS1(実線)の吸光度曲線(A)を、紫外-可視中の光波長の関数として測定し、図4に示す(対数スケール)。425nmの遷移λcutの波長が、コートガラスシートS1に対し得られる。
【0124】
他のコーティングが、同じプロトコルで調製された。
式CdSe0.750.25の、12nmの長さ;20nmの幅および1.2nmの厚み(4単層に相当)のプレート形状を有する半導電性ナノ粒子(以降、NP2)を欧州特許EP2633102で開示の手順に従って調製した。
【0125】
式CdSeの、10nmの長さ;22nmの幅および1.2nmの厚み(4単層に相当)のプレート形状を有する半導電性ナノ粒子(以降、NP3)を欧州特許EP2633102で開示の手順に従って調製した。
式CdSe0.50.5の、10nmの長さ;21nmの幅および1.2nmの厚み(4単層に相当)のプレート形状を有する半導電性ナノ粒子(以降、NP4)を欧州特許EP2633102で開示の手順に従って調製した。
式CdSの、10nmの長さ;20nmの幅および1.5nmの厚み(5単層に相当)のプレート形状を有する半導電性ナノ粒子(以降、NP5)を欧州特許EP2633102で開示の手順に従って調製した。
実施例1で報告したように、ナノ粒子NP2、NP3、NP4およびNP5は、ポリ(DHLA-co-PEGMEMA)コポリマーでキャッピングされ、それぞれ分散液D2~D5が調製された。
下表2は、分散液D1およびD5の吸光度特性を示す。
【0126】
【表2】
【0127】
実施例2:光フィルタリングガラス容器。
市販のガラスびんB0をガラス容器として使用した。B0の色をL表色系で測定する:L=86.3;a=-0.16およびb=0.23。
市販のボトルB0に分散液D1~D5で浸漬コーティングした後、150℃で6時間加熱し、硬化後、縮合された5μm厚の、1%のナノ粒子NP1~NP5の重量含有率を有するゾルゲルコーティングを得た。コートボトルはB1~B5である。
加えて、青色光を吸収すると考えられる光フィルタリングフィルムでコートされた市販のボトルB6の特性を明らかにした。
図3は、このような光フィルタリングガラス容器100を示し、ボトルB0(110)は、全体に光フィルタリングコーティング(120)でカバーされている。
図5は、ボトルB0およびB6(対照)ならびにB1~B5を通過する光透過率を示す。
ボトルB1~B5のλcutは、それぞれ、425nm、480nm、512nm、445nmおよび460nmである。ボトルB1およびB5のλmax、λ0.9、λ0.5およびλ0.1に関する特徴は、表2に記載したナノ粒子の分散液D1およびD5の特徴と同じであり、ゾルゲルコーティングでのナノ粒子の組み込みは、吸光度の特徴を変えなかった。
【0128】
日光臭-リボフラビンの分解への適用
250mg/Lの濃度のリボフラビンの溶液が調製される。この溶液は、1cm経路光キュベット中で測定する場合、442nmで最大吸光度1.03の吸光度を示す。
ボトルB0にリボフラビンの溶液を満たし、青色LED光曝露に30時間曝露した(LED430~465nmの発光スペクトル、放射照度0.1W/cm)。吸光度曲線を青色光曝露の種々の期間で記録し、図6に0、1、4、7、12、15、24および30時間について示す(矢印により定める順に)。442nmの吸光度は、1.03から0.124まで減少し、30時間の青色光曝露後に、88%のリボフラビンが光分解されたことを示す。
同じ実験をボトルB1~B6を用いて再現した。対照として、同じ測定をボトルB0で、光曝露なしに実施した。
下表3は、リボフラビン分解およびボトルの比色特性を示す。
【0129】
【表3】
【0130】
表3は、ボトルB1~B5中に含まれるリボフラビンの分解が、光フィルタリングコーティングのために防止されたことを示す。
比較例のボトルB6は、リボフラビン保護には効果的である(12%分解)が明度は16.3だけ低下する:ボトルB6は、くすんだ灰色に見え、オレンジ色に強く着色した。
加えて、ボトルB3は、輝度に対し大きな影響(-5.1)および極めて強力な着色があった(明度の低下は少なくても、基準B6よりより大きな彩度)。実際に、B3のλcutは、約512nmであり、効率的光フィルタリングと高い明度との間の良好なバランスを与えるλcutに対する上限として特定された480nmより遙かに大きい。
ボトルB2とB6の比較は、リボフラビンの同じ保護が達成される(13%と12%の分解)が、B2はより明るい:ガラスボトルの明度はほぼ不変であり(86.3から84.5へ、これは、B6の明度:70と比較できる)、彩度はより低い(B2は60で、B6は72)。
最終的に、ボトルB1、B2、B4およびB5は、良好な光フィルタリングガラス容器であり、ガラス容器の輝度を劣化させることなく、飲料中の日光臭の発生に対する保護を与える。

図1.1】
図1.2】
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】