(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ジフルオロメチルヨード化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07C 19/16 20060101AFI20230405BHJP
C07C 17/363 20060101ALI20230405BHJP
C07C 17/35 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C07C19/16
C07C17/363
C07C17/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549778
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 US2021018392
(87)【国際公開番号】W WO2021167987
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518346476
【氏名又は名称】リキュリウム アイピー ホールディングス リミテッド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウンニ,アディティア クリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】ピンチマン,ジョセフ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ピーター キンファ
(72)【発明者】
【氏名】バンカー,ケビン デュアン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC30
4H006BB15
4H006BB23
4H006BC10
4H006BC19
4H006BE12
4H006BE61
4H006EA02
(57)【要約】
本出願は、ジフルオロメチルヨージド及び[1.1.1]プロペランから1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを合成するための改善されたプロセスに関する。ジフルオロメチルヨージドは、スルホランなどの溶媒及び無機塩基の存在下でヨウ化物塩をクロロジフルオロ酢酸と反応させることによって作製され、[1.1.1]プロペランは、1,1-ジブロモ-2,2-シス[クロロメチル]シクロプロパンを、マグネシウム、メチルリチウム、又はフェニルリチウムなどの試薬と反応させることによって合成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフルオロメチルヨージド(CHF
2I)を作製するプロセスであって、
前記ジフルオロメチルヨージドを生成するように選択される反応条件下でヨウ化物塩をクロロジフルオロ酢酸と反応させることを含み、
前記反応条件が、
有効量の反応溶媒と、
前記反応溶媒中に分散された有効量の前記ヨウ化物塩と、
前記反応溶媒中に分散された有効量の無機塩基と、を含む、
プロセス。
【請求項2】
前記反応溶媒の少なくとも約50体積%がスルホランである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応溶媒の少なくとも約80体積%がスルホランである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応溶媒の少なくとも約95体積%がスルホランである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ヨウ化物塩が、ヨウ化ナトリウム(NaI)及びヨウ化カリウム(KI)のうちの1つ以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記反応条件が、約40℃~約260℃の範囲の反応温度を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応温度が、約50℃~約200℃の範囲内である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記反応温度が、約75℃~約175℃の範囲内である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応温度が、約100℃~約150℃の範囲内である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記有効量の無機塩基が、前記クロロジフルオロ酢酸の少なくとも約95モル%と反応するのに有効な量である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記有効量の無機塩基が、前記クロロジフルオロ酢酸の少なくとも約110モル%と反応するのに有効な量である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記無機塩基が、炭酸カリウム(K
2CO
3)、重炭酸カリウム(KHCO
3)、リン酸一カリウム(KH
2PO
4)、リン酸二カリウム(K
2HPO
4)、リン酸三カリウム(K
3PO
4)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)、リン酸一ナトリウム(NaH
2PO
4)、リン酸二ナトリウム(Na
2HPO
4)及びリン酸三ナトリウム(Na
3PO
4)、又は上記のいずれかの水和塩のうちの1つ以上を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記無機塩基が、炭酸カリウム(K
2CO
3)、リン酸二ナトリウム(Na
2HPO
4)若しくはそれらの混合物、又は上記のいずれかの水和塩を含む、請求項1~12のいず
れか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記有効量のヨウ化物塩が、クロロジフルオロ酢酸に基づいて2倍未満のモル過剰である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記有効量のヨウ化物塩が、クロロジフルオロ酢酸に基づいて1.5倍未満のモル過剰である、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ヨウ化物塩が10重量%未満のヨウ化銅(I)(CuI)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記反応溶媒の少なくとも約95体積%がスルホランであり、
前記ヨウ化物塩がヨウ化ナトリウム(NaI)を含み、
前記無機塩基が、炭酸カリウム(K
2CO
3)、リン酸二ナトリウム(Na
2HPO
4)若しくはそれらの混合物、又は上記のいずれかの水和塩を含み、
前記反応条件が約100℃~約150℃の範囲の反応温度を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成するように選択される第2の反応条件下で、前記ジフルオロメチルヨージドを[1.1.1]プロペランと反応させることを更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記第2の反応条件が、ジフルオロメチルヨージド溶液を前記[1.1.1]プロペランと相互混合させることを含み、前記ジフルオロメチルヨージド溶液中の前記ジフルオロメチルヨージドの濃度が少なくとも約0.5Mである、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記[1.1.1]プロペランが、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンと固体マグネシウムとの間の反応の反応生成物である、請求項18又は19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記[1.1.1]プロペランが、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとメチルリチウム(MeLi)との間の反応の反応生成物である、請求項18又は19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記[1.1.1]プロペランが、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとフェニルリチウム(PhLi)との間の反応の反応生成物である、請求項18又は19に記載のプロセス。
【請求項23】
1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するためのプロセスであって、
前記1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成するように選択される反応条件下でジフルオロメチルヨージド(CHF
2I)を[1.1.1]プロペランと相互混合させることを含む、
プロセス。
【請求項24】
前記ジフルオロメチルヨージドが未希釈(ニート)である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記ジフルオロメチルヨージドが、ジフルオロメチルヨージド溶液の形態である、請求
項23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ジフルオロメチルヨージド溶液中の前記ジフルオロメチルヨージドの濃度が、少なくとも約0.25Mである、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記ジフルオロメチルヨージド溶液中の前記ジフルオロメチルヨージドの濃度が、少なくとも約1.0Mである、請求項25に記載のプロセス。
【請求項28】
前記ジフルオロメチルヨージド溶液中の前記ジフルオロメチルヨージドの濃度が、約0.1M~約10Mの範囲内である、請求項25に記載のプロセス。
【請求項29】
前記ジフルオロメチルヨージドが、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、請求項23~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記[1.1.1]プロペランが、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンと固体マグネシウムとの間の反応の反応生成物である、請求項23~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記[1.1.1]プロペランが、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとメチルリチウム(MeLi)との間の反応の反応生成物である、請求項23~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記[1.1.1]プロペランが、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとフェニルリチウム(PhLi)との間の反応の反応生成物である、請求項23~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権出願を参照することによる組み込み)
本出願は、2020年2月21日出願の米国特許仮出願第62/979,962号に対する優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、ジフルオロメチルヨージド及び1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
化合物ジフルオロメチルヨージド(CF2HI又はCHF2I)は、冷媒、溶媒、発泡剤、及び噴射剤として有用な組成物の成分として知られている。例えば、特許文献1を参照されたい。従来は、非特許文献1に開示されるように、ジフルオロカルベン前駆体をヨウ化カリウムと反応させることによって調製される。ジフルオロメチルヨージドはまた、有機合成における化学試薬としても有用である。例えば、特許文献2は、修正されたワークアップと共に従来のプロセスを使用してペンタン中のCF2HIの0.15M溶液を作製し、次いで、それをトリシクロ[1.1.1.01,3]ペンタン([1.1.1]プロペランとしても知られる)と反応させて、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成するためのプロセスを開示している。CF2HIを作製するための改善されたプロセスが望まれており、同様に1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するための改善された方法も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,083,742号明細書
【特許文献2】PCT国際公開第2019/139907号
【特許文献3】国際公開第2019/139907号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cao,P.et.al.J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1994,737-738
【非特許文献2】Monfette,S.,et al.,「Continuous Process for Preparing the Difluoromethylating Reagent [(DMPU)2Zn(CF2H)2]and Improved Synthesis of the ICHF2 Precursor」,Org.Process Res.Dev.,2020,24,6,1077-1083
【発明の概要】
【0006】
2,2-ジフルオロ-2-(フルオロスルホニル)酢酸を使用してジフルオロメチルヨージドを作製するための従来のプロセスは、一貫性のない収率に悩まされ、溶媒としてのアセトニトリルの使用は、下流の反応に有害であり得ることが現在見出されている。より大きな規模では、従来のプロセスは、更なる反応を複雑にする比較的希薄な溶液の形態のジフルオロメチルヨージドを生成するアセトニトリルを除去するために、煩雑なワークアップを必要とする。特許文献3に開示されている従来のプロセスの修正されたバージョンは当該技術分野における進歩を示しているが、実際には、生成されたCF2HIの比較的希薄な溶液により、規模の拡大は相変わらず複雑なままである。クロロジフルオロ酢酸を
使用する代替の従来のプロセスは、化学量論量のヨウ化銅(I)(CuI)の使用を伴い、これは、安全性、効率、及び廃棄物管理のために、大規模では望ましくない。加えて、代替の従来のプロセスに従ってクロロジフルオロ酢酸の脱炭酸を試みたときに、微量の所望の生成物のみが得られたことが報告されている。非特許文献2を参照されたい。
【0007】
これらの問題並びに他の以前に認識及び/又は理解されていなかった問題に対処するために、現在は、改善されたプロセスが開発されている。様々な実施形態が、ジフルオロメチルヨージド(CHF2I)を作製するプロセスを提供し、このプロセスは、ジフルオロメチルヨージドを生成するように選択される反応条件下でヨウ化物塩をクロロジフルオロ酢酸と反応させることを含み、反応条件は、有効量の反応溶媒と、反応溶媒中に分散された有効量のヨウ化物塩と、反応溶媒中に分散された有効量の無機塩基と、を含む、プロセス。
【0008】
ある実施形態では、反応溶媒の少なくとも約50体積%がスルホランである。ある実施形態では、ヨウ化物塩は、ヨウ化ナトリウム(NaI)及びヨウ化カリウム(KI)の一方又は両方を含む。ある実施形態では、反応条件は、約40℃~約260℃の範囲の反応温度を含む。
【0009】
様々な実施形態が、ジフルオロメチルヨージド(CHF2I)を作製するプロセスを提供し、このプロセスは、ジフルオロメチルヨージドを生成するように選択される反応条件下でヨウ化物塩をクロロジフルオロ酢酸と反応させることを含み、反応条件は、有効量の反応溶媒であって、反応溶媒の少なくとも約50体積%がスルホランである、有効量の反応溶媒と、反応溶媒中に分散された有効量のヨウ化物塩であって、ヨウ化物塩が、ヨウ化ナトリウム(NaI)及びヨウ化カリウム(KI)のうちの1つ以上を含む、有効量のヨウ化物塩と、反応溶媒中に分散された有効量の無機塩基と、約40℃~約260℃の範囲の反応温度と、を含む。
【0010】
別の実施形態は、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成するように選択される反応条件下でジフルオロメチルヨージドを[1.1.1]プロペランと相互混合させることを含む。ある実施形態では、プロセスは、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成するように選択される反応条件下で、未希釈(ニート)のジフルオロメチルヨージドを[1.1.1]プロペランと相互混合させることを含む。別の実施形態では、プロセスは、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成するように選択される反応条件下でジフルオロメチルヨージド溶液を[1.1.1]プロペランと相互混合させることを含む。ある実施形態では、ジフルオロメチルヨージド溶液中のジフルオロメチルヨージドの濃度は、約0.1M~10Mの範囲内である。ある実施形態では、ジフルオロメチルヨージド溶液中のジフルオロメチルヨージドの濃度は、少なくとも約0.25Mである。
【0011】
これら及び他の実施形態は、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ジフルオロメチルヨージドを作製するための反応器構成の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
別段の定めがない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で参照されるすべての特許
、出願、公開出願、及び他の出版物は、特に明記しない限り、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書のある用語に対して複数の定義が存在する場合、特に明記しない限り、この節にある定義が優先される。
【0014】
本願で使用される用語及び語句並びにこれらの変化形、特に添付の特許請求の範囲にあるものは、特に明記しない限り、限定的ではなく非限定的であると解釈されるべきである。上記の例として、「含むこと」という用語は、「限定することなく含むこと」、「含むが、これらに限定されないこと」などを意味するよう解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「備えること」という用語は、「含むこと」、「含有すること」、又は「特徴とする」と同義語であり、包括的又は非限定的であり、追加の列挙されていない要素又は方法の工程を除外しない。「有すること」という用語は、「少なくとも有すること」と解釈されるべきである。「含む」という用語は、「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである。「例」という用語は、考察中の項目の徹底的又は限定的なリストではなく例示的な実例を提供するために使用される。「好ましくは」、「好ましい」、「所望の」、又は「望ましい」のような用語、並びに同様の意味の単語の使用は、ある特定の特徴がその構造又は機能にとって重大、本質的、又は重要でさえあるということを暗示するものとして理解されるべきではなく、むしろ単に特定の実施形態で利用されてもされなくてもよい代替又は追加の特徴を強調することを目的とする。加えて、「備えること」という用語は、「少なくとも有すること」又は「少なくとも含むこと」という語句の同意語として解釈されるものとする。プロセスの文脈で使用される場合、「備えること」という用語は、プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含んでもよいことを意味する。化合物、組成物、又はデバイスの文脈で使用される場合、「備えること」という用語は、化合物、組成物、又はデバイスが少なくとも列挙された特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含んでもよいことを意味する。接続詞「及び」で連結された項目の群は、それらの項目の1つ1つが群に存在することを要求するものと解釈されるべきではなく、むしろ、(例えば、請求項において)文脈が明確にそうでないと示さない限り、「及び/又は」と解釈されるべきである。接続詞「又は」で連結された項目の群は、その群中の相互排他性を要求するものと解釈されるべきではなく、むしろ、文脈が明確にそうでないと示さない限り、「及び/又は」と解釈されるべきである。値の範囲が提供される場合、上限及び下限、並びにその範囲の上限と下限との間に介在する各値が、実施形態内に包含されることが理解される。
【0015】
本明細書の実質的にいかなる複数形及び/又は単数形の用語の使用に関しても、当業者は、文脈及び/又は用途に応じて適切に、複数形から単数形、及び/又は単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の入れ替えは、明確にするために本明細書で明示的に記載され得る。不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、利益を得るためにこれらの手段の組み合わせを使用することができないということを示すものではない。請求項中のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書に開示される化合物が充填されていない原子価を有する場合、その原子価が、水素又はその同位体、例えば、水素-1(プロチウム)及び水素-2(重水素)で充填されることを理解されたい。
【0017】
本明細書に記載の化合物が同位体で標識され得ることが理解される。重水素などの同位体での置換は、例えば、インビボ半減期の増加又は必要投与量の低減など、より大きい代謝安定性に起因するある特定の治療上の利点をもたらし得る。化合物構造中に表される各化学元素は、当該元素の任意の同位体を含んでもよい。例えば、化合物構造において、水素原子は、化合物中に存在すると明確に開示され得るか、又は理解され得る。水素原子が存在し得る化合物の任意の位置において、水素原子は、水素-1(プロチウム)及び水素
-2(重水素)が挙げられるが、これらに限定されない、水素の任意の同位体であってもよい。したがって、本明細書における化合物に対する言及は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、すべての可能な同位体形態を包含する。
【0018】
ジフルオロメチルヨージドを作製するプロセス
様々な実施形態が、ジフルオロメチルヨージド(CHF2I)を作製するプロセスを提供し、このプロセスは、ジフルオロメチルヨージドを生成するように選択される反応条件下でヨウ化物塩をクロロジフルオロ酢酸と反応させることを含む。反応条件は、有効量の反応溶媒と、反応溶媒中に分散された有効量のヨウ化物塩と、反応溶媒中に分散された有効量の無機塩基と、を含む。様々な実施形態では、反応条件は、反応を実施するのに有効な反応温度を更に含む。
【0019】
様々な実施形態では、プロセスで利用される反応溶媒は、主にスルホランである。例えば、ある実施形態では、反応溶媒の少なくとも約50体積%がスルホランである。他の実施形態では、反応溶媒の少なくとも約80体積%、少なくとも約95体積%、又は少なくとも約99体積%がスルホランである。スルホランは、望ましくは高純度、例えば、純度約99%で、様々な商業的供給源から入手することができる。反応溶媒がスルホランを含有する混合物である場合、混合物の残部は、DMF、アセトニトリル(MeCN)、又は水などの様々な溶媒のうちの1つ以上を含み得る。ある実施形態では、反応溶媒は、5体積%未満のMeCNを含む。有効量のスルホラン含有反応溶媒が反応過程を促進させるために使用され得、有効量のスルホラン含有反応溶媒は、以下に記載の実施例を含む、本明細書で提供されるガイダンスによって知らされる日常的な実験によって決定することができる。
【0020】
様々な実施形態では、反応溶媒中に分散されたヨウ化物塩は、ヨウ化ナトリウム(NaI)及びヨウ化カリウム(KI)のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、ヨウ化物塩はヨウ化ナトリウムである。他の実施形態では、ヨウ化物塩はヨウ化カリウムである。反応溶媒中に分散された有効量のヨウ化物塩は、典型的には、クロロジフルオロ酢酸に基づいてモル過剰であるように選択される。例えば、ある実施形態では、有効量のヨウ化物塩は、クロロジフルオロ酢酸に基づいて2倍未満のモル過剰である。別の実施形態では、有効量のヨウ化物塩は、クロロジフルオロ酢酸に基づいて1.5倍未満のモル過剰である。したがって、様々な実施形態では、有効量のヨウ化物塩は、クロロジフルオロ酢酸に基づいて1倍超のモル過剰であり、かつ1.5倍未満のモル過剰又は2倍未満のモル過剰である。有効量のヨウ化物塩は、以下に記載される実施例を含む、本明細書で提供されるガイダンスによって知らされる日常的な実験によって決定することができる。
【0021】
ある実施形態では、化学量論量のヨウ化銅(I)の使用が低減又は回避される。化学量論量の遷移金属ヨウ化物塩の使用は、安全性、効率、及び/又は廃棄物管理の考慮事項のため、大規模で実施するときは望ましくないことがある。驚くべきことに、そのような遷移金属ヨウ化物塩の使用を最小限に抑える又は不要にする反応条件が現在特定されている。例えば、様々な実施形態では、反応溶媒中に分散されたヨウ化物塩は、ヨウ化銅(I)(CuI)を10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は0.5重量%未満の量で含む。そのようなヨウ化物塩の有効量の選択は、以下に記載される実施例を含む、本明細書で提供されるガイダンスによって知らされる日常的な実験によって決定することができる。
【0022】
様々な実施形態では、反応条件は、反応溶媒中に分散された有効量の無機塩基を含む。ある実施形態では、無機塩基は、カリウムカチオン及び炭酸又はリン酸アニオンを含む。例えば、様々な実施形態では、無機塩基は、炭酸カリウム(K2CO3)、重炭酸カリウ
ム(KHCO3)、リン酸一カリウム(KH2PO4)、リン酸二カリウム(K2HPO4)、及びリン酸三カリウム(K3PO4)、並びに/又は上記のいずれかの水和塩のうちの1つ以上を含む。他の実施形態では、無機塩基は、ナトリウムカチオン及び炭酸又はリン酸アニオンを含む。例えば、様々な実施形態では、無機塩基は、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、リン酸一ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二ナトリウム(Na2HPO4)及びリン酸三ナトリウム(Na3PO4)、並びに/又は上記のいずれかの水和塩のうちの1つ以上を含む。ある実施形態では、無機塩基は、炭酸カリウム(K2CO3)、リン酸二ナトリウム(Na2HPO4)若しくはそれらの混合物、及び/又は上記のいずれかの水和塩を含む。反応溶媒中に分散された有効量の無機塩基は、典型的には、クロロジフルオロ酢酸の量に基づいて選択される。例えば、ある実施形態では、有効量の無機塩基は、クロロジフルオロ酢酸の少なくとも約95モル%と反応するのに有効な量である。別の実施形態では、有効量の無機塩基は、クロロジフルオロ酢酸の少なくとも約110モル%と反応するのに有効な量である。当業者は、様々な無機塩基の当量が一般に同じではないことを理解するであろう。したがって、例えば、クロロジフルオロ酢酸の少なくとも約95モル%と反応するのに有効なNa2HPO4のモル数は、原子価の差のため、K3PO4のモル数よりも大きい。
【0023】
様々な実施形態では、反応条件は、反応過程を促進させるのに有効な反応温度を更に含む。本明細書で使用される場合、反応温度とは、例えば、反応混合物と動作可能に接触している温度プローブによって測定されるような、反応容器内に収容された反応混合物の温度を指す。上記のように、反応混合物は、典型的には、クロロジフルオロ酢酸と、有効量の反応溶媒と、反応溶媒中に分散された有効量のヨウ化物塩と、反応溶媒中に分散された有効量の無機塩基と、を含む。約40℃以上、約50℃以上、約75℃以上、約100℃以上、約260℃以下、約200℃以下、約175℃以下、約150℃以下、又は終点として上記の温度のうちのいずれか2つによって定義される任意の範囲など、様々な反応温度が利用され得る。例えば、様々な実施形態では、反応条件は、約40℃~約260℃、約50℃~約200℃、約75℃~約175℃、又は約100℃~約150℃の範囲の反応温度を含む。
【0024】
様々な実施形態では、クロロジフルオロ酢酸の量、反応溶媒、ヨウ化物塩(又はその水和塩)の量及び種類、並びに/又は反応温度を含む、反応条件は、ジフルオロメチルヨージドを生成するための反応プロセスの過程を促進させるように、互いに組み合わせて選択される。様々な実施形態では、プロセスは、バッチ当たりの量で100g以上、1kg以上、2kg以上、又は5kg以上のジフルオロメチルヨージドを生成する規模でなど、比較的大きな規模で実施される。反応時間は、典型的には短く、反応器容積、温度、熱伝達、及び反応物が反応混合物に添加される速度などの当業者に知られている典型的な考慮事項に依存する。特定のバッチに対する適切な反応条件の選択は、以下に記載される実施例を含む、本明細書で提供されるガイダンスによって知らされる日常的な実験によって決定することができる。例えば、ある実施形態では、反応溶媒の少なくとも約95体積%がスルホランであり、ヨウ化物塩はヨウ化ナトリウムを含み、無機塩基は、炭酸カリウム、リン酸二ナトリウム若しくはそれらの混合物、又は上記のいずれかの水和塩を含み、反応温度は、約100℃~約150℃の範囲内である。
【0025】
様々な実施形態では、プロセスによって生成されるジフルオロメチルヨージドは、少なくとも約0.25M、少なくとも約0.5M、少なくとも約0.75M、又は少なくとも約1.0Mの濃度を有するジフルオロメチルヨージド溶液の形態で得られる。このプロセスによって生成されたジフルオロメチルヨージドはまた、実質的に純粋な状態、例えば、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の純度のニート液体として単離することができる。そのような未希釈のジフルオロメチルヨージド組成物及びジフルオロメチルヨージド溶液は、以下に記載されるような1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1
.1.1]ペンタンなど、いくつかの有用な製品を調製するために使用することができる。
【0026】
1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するプロセス様々な実施形態が、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するプロセスを提供し、このプロセスは、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成するように選択される反応条件下でジフルオロメチルヨージドを[1.1.1]プロペランと相互混合させることを含む。
【0027】
このプロセスで使用されるジフルオロメチルヨージドは、本明細書の他の箇所に記載される未希釈(ニート)ジフルオロメチルヨージド若しくはジフルオロメチルヨージド溶液、又は上記の従来のプロセス若しくはその変形など、別のプロセスによって調製されたジフルオロメチルヨージド組成物であり得る。ある実施形態では、ジフルオロメチルヨージドは未希釈である。以下の実施例12に示されるように、過剰量のアセトニトリルの存在は、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンの収率を望ましくなく減少させる可能性がある。様々な実施形態では、ジフルオロメチルヨージド溶液中のアセトニトリルの量は、10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は0.5重量%未満である。ジフルオロメチルヨージド溶液が使用される別の実施形態では、ジフルオロメチルヨージド溶液中のジフルオロメチルヨージドの濃度は、少なくとも約0.25Mである。別の実施形態では、ジフルオロメチルヨージド溶液中のジフルオロメチルヨージドの濃度は、約0.1M~10Mの範囲内である。ある実施形態では、本明細書に記載されるような第1の反応条件下でジフルオロメチルヨージドを作製するプロセスは、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成するように選択される第2の反応条件下で、ジフルオロメチルヨージドを[1.1.1]プロペランと反応させることを更に含む。様々な実施形態では、第2の反応条件は、ジフルオロメチルヨージド溶液を[1.1.1]プロペランと相互混合させることを含み、ジフルオロメチルヨージド溶液中のジフルオロメチルヨージドの濃度は、少なくとも約0.25M、少なくとも約0.5M、又は少なくとも約1.0Mである。
【0028】
プロセスで使用される[1.1.1]プロペランは、様々な供給源から入手しても、本明細書に記載されるように調製してもよい。例えば、ある実施形態では、[1.1.1]プロペランは、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンと固体マグネシウムとの間の反応の反応生成物である。別の実施形態では、[1.1.1]プロペランは、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとメチルリチウム(MeLi)との間の反応の反応生成物である。別の実施形態では、[1.1.1]プロペランは、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとフェニルリチウム(PhLi)との間の反応の反応生成物である。
【0029】
ある実施形態では、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するプロセスで使用されるジフルオロメチルヨージドは、未希釈であり、[1.1.1]プロペランは、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとメチルリチウム又はフェニルリチウムとの間の反応の反応生成物である。ある実施形態では、未希釈のジフルオロメチルヨージドは、本明細書に記載のプロセスによって作製される。
【0030】
ある実施形態では、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するプロセスで使用されるジフルオロメチルヨージドは、未希釈であり、[1.1.1]プロペランは、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとマグネシウムとの間の反応の反応生成物である。ある実施形態では、未希釈のジ
フルオロメチルヨージドは、本明細書に記載のプロセスによって作製される。
【0031】
ある実施形態では、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するプロセスで使用されるジフルオロメチルヨージドは、少なくとも約0.25M(少なくとも約0.5M又は少なくとも約1.0Mなど)の濃度を有するジフルオロメチルヨージド溶液であり、[1.1.1]プロペランは、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとメチルリチウム又はフェニルリチウムとの間の反応の反応生成物である。ある実施形態では、少なくとも約0.25M(少なくとも約0.5M又は少なくとも約1.0Mなど)の濃度を有するジフルオロメチルヨージド溶液は、本明細書に記載のプロセスによって作製される。
【0032】
ある実施形態では、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するプロセスで使用されるジフルオロメチルヨージドは、少なくとも約0.25M(少なくとも約0.5M又は少なくとも約1.0Mなど)の濃度を有するジフルオロメチルヨージド溶液であり、[1.1.1]プロペランは、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンとマグネシウムとの間の反応の反応生成物である。ある実施形態では、少なくとも約0.25M(少なくとも約0.5M又は少なくとも約1.0Mなど)の濃度を有するジフルオロメチルヨージド溶液は、本明細書に記載のプロセスによって作製される。
【0033】
様々な実施形態では、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを作製するプロセスで使用される反応条件は、プロセスで使用されるジフルオロメチルヨージドを作製するために使用される反応条件と組み合わせて選択される。様々な実施形態では、個々のプロセスの一方又は両方は、バッチ当たりの量で100g以上、1kg以上、2kg以上、又は5kg以上の(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成する規模でなど、比較的大きな規模で実施される。いくつかの実施形態では、ジフルオロメチルヨージドは、本明細書に記載される反応の生成物として都合よく得られ、したがって、CHF2Iは、未希釈であり得るか、又は本明細書の他の箇所に記載されるようなヘプタン又はMTBE含有溶媒など、非極性若しくは極性非プロトン性溶媒中のCHF2Iの溶液の形態であり得る。特定の実施形態では、溶液は、少なくとも約0.25M(少なくとも約0.5M又は少なくとも約1.0Mなど)のCHF2I濃度で作製され得る。CHF2Iの濃縮溶液もまた、非極性又は極性非プロトン性溶媒を未希釈のCHF2Iと、又はより高く濃縮されたCHF2I溶液と相互混合させることによって得ることができる。好適な非極性溶媒としては、ヘプタンなどのアルカンが挙げられ、好適な極性非プロトン性溶媒としては、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、ジエトキシメタン(DEM)、及びテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。いくつかの実施形態では、そのような比較的高く濃縮されたCHF2I溶液は、[1.1.1]プロペランとの後続の反応で直接使用されて、(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを生成することができる。ジフルオロメチルヨージドと[1.1.1]プロペランとの反応の反応時間は、典型的には短く、そのような反応は、約35℃以下などの低反応温度で相互混合することによって実施され得る。特定の反応条件は、反応器容積、温度、熱伝達、並びにジフルオロメチルヨージド及び[1.1.1]プロペランが相互混合される速度など、本開示によって知らされるような、当業者に知られている典型的な考慮事項に依存する。特定のバッチに対する適切な反応条件の選択は、以下に記載される実施例を含む、本明細書で提供されるガイダンスによって知らされる日常的な実験によって決定することができる。
【実施例】
【0034】
特許請求の範囲を決して限定するものではない、更なる実施形態が、以下の実施例において更に詳細に開示される。
【0035】
実施例1
ジフルオロメチルヨージドの調製
【0036】
【0037】
NaI(54.0g、360mmol)及びK
2CO
3(24.9g、180mmol)を、大きな撹拌棒を収容した500mLの3つ口フラスコに添加した。反応器システム100の実施形態によって
図1に示されるように、3つ口フラスコ5は、フラスコの左側ポート15に熱電対10を備えていた。中間ポート20は50mLの添加漏斗25を収容しており、右側ポート30は、-78℃に冷却された風袋計量済みの受けフラスコ40と共に蒸留装置35を有した。蒸留装置35にある真空ポート45は、バブラー50に接続された。添加漏斗25は、上部に取り付けられた閉鎖式三方活栓55を有しており、これは、システム100が、N
2源60からのN
2でフラッシュされ、次いで反応中は閉鎖されることを可能にし、唯一の出口は受けフラスコ40及びバブラー50に通じていた。
【0038】
スルホラン(136mL、3.5体積)をフラスコに添加し、結果として得られた塩混合物を150℃(浴温度)に加熱し、135℃の内部(反応)温度となった。クロロジフルオロ酢酸(39.1g、300mmol)を120分の合計添加時間で添加漏斗により滴下添加しながらスラリーを撹拌した。この酸を添加したとき、バブラーを通るCO2の流れで示されるように、最初の添加から最終量に至るまでガスが連続的に発生した。結果として得られたマスタードイエローのスラリーを132℃の内部(反応)温度で更に1時間撹拌した。
【0039】
次いで、反応物を100℃の温度に冷却し、39mLのMTBE(1体積)を添加漏斗に添加し、次いでフラスコに15分間液化添加することにより、残りの気相生成物が受けフラスコに運ばれて、ジフルオロメチルヨージド(CHF2I)がMTBE溶液としてもたらされた(この時点で、生成物の大部分(95%超)が、溶媒を添加する前に蒸留され得る)。MTBEの添加が完了した後、蒸留を5分間続けた。反応フラスコを熱源から取り出し、受けフラスコを0℃に加温し、これにより、微量な副生成物であるCHF2Clが、受けフラスコから蒸留除去され、バブラーを通ってドライアイス-アセトントラップに排出された。透明で無色のCHF2I-MTBE溶液は、62.71gの重量及び1.25g/mLの密度を有した。1H及び19F NMRスペクトルは、溶液がCHF2Iにおいて3.96Mであることを示した(198.9mmol、収率66%)。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ7.67(t,J=56.0Hz,1H);19F
NMR(CDCl3,376MHz)δ-67.3。
【0040】
実施例2
ジフルオロメチルヨージドの調製
【0041】
【0042】
NaI(34g、227mmol)及びNa
2HPO
4(24.9g、94mmol)を、大きな撹拌棒を収容した250mLの3つ口フラスコに添加した。
図1に示されるように、フラスコは、フラスコの左側ポートに熱電対を備えていた。中間ポートは50mLの添加漏斗を収容しており、右側ポートは、蒸留凝縮器、及び-78℃に冷却された風袋計量済みの受けフラスコを有した。蒸留装置にある真空ポートをバブラーに接続して流量を監視した。添加漏斗は、上部に取り付けられたN
2バルーン付きの閉鎖式三方活栓を有しており、これは、システムが、N
2でフラッシュされ、次いで反応中は閉鎖されることを可能にし、唯一の出口は受けフラスコ及びバブラーに通じていた。
【0043】
スルホラン(64mL、4体積)をフラスコに添加し、結果として得られた混合物を140℃(浴温度)に加熱し、120℃の内部(反応)温度となった。クロロジフルオロ酢酸(24.6g、189mmol)を添加漏斗から60分間滴下添加しながらスラリーを撹拌した。この酸を添加したとき、バブラーを通るCO2の流れで示されるように、最初の添加から最終量に至るまでガスが連続的に発生した。結果として得られたマスタードイエローのスラリーを更に30分間撹拌し、バブラーからのガスの排出が少なくとも10分間見られなくなった後に熱から取り出した。この時点で、N2バルーンに接続された三方活栓を開いて、N2の穏やかな流れにより、生成物がセットアップを通って受けフラスコに押し込まれるようにした。
【0044】
受けフラスコを0℃に加温し、CHF2I(25.6g、収率76%)を透明で無色の液体として得た。
【0045】
実施例3
ジフルオロメチルヨージドの調製
塩基としてNa2HPO4を使用したより大きな規模の実施例(500gのクロロジフルオロ酢酸の投入)、NaI(689g、4.60mol)及びNa2HPO4(272g、1.92mol)を、大きな撹拌棒を収容した3Lの3つ口フラスコに添加した。フラスコの左側のポートに温度計を装備し、右側ポートに、クロロジフルオロ酢酸(500g、3.83mol)を収容した500mLの添加漏斗を装備し、中間右側ポートは、蒸留装置、及び-60℃に冷却された風袋計量済みの受けフラスコを有した。蒸留装置にある真空ポートをバブラーに接続して流量を監視した。添加漏斗は、上部に取り付けられたN2ライン付きの閉鎖式三方活栓を有しており、これは、システムが、N2でフラッシュされ、次いで反応中は閉鎖されることを可能にし、唯一の出口は受けフラスコ及びバブラーに通じていた。スルホラン(1300mL)をフラスコに添加し、結果として得られた混合物を145℃(浴温度)に加熱し、130~135℃の内部温度となった。クロロジフルオロ酢酸を添加漏斗から2時間滴下添加した。反応物を更に2時間撹拌し、次いで、バブラーからのガスの排出が10分間見られなくなった後に冷却した。この時点で、N2ラインに接続された三方活栓を開いて、N2の穏やかな流れにより、生成物の残りがセットアップを通って受けフラスコに30分間押し込まれるようにした。受けフラスコを0℃に加温し、CHF2I(520g、収率76%)を透明で無色の液体として得た。
【0046】
実施例4C(比較)
ジフルオロメチルヨージドの調製
従来のプロセスの修正されたバージョン(非特許文献1を参照されたい)を使用して、以下のようにCHF2Iを調製した。窒素の不活性雰囲気でパージ及び維持された100Lの反応器に、MeCN(20L、4.0V)、及びKI(9.32Kg、2.0当量)を入れた。混合物を撹拌し、加熱して、内部温度を38±2℃に到達させた。温度を40±5℃に維持し、2,2-ジフルオロ-2-(フルオロスルホニル)酢酸(5.0Kg、1.0当量)を撹拌しながら滴下添加し、内部温度を40±5℃に維持した。添加後、反応物を40±5℃で撹拌した。反応進行を、1H-NMR及び19F-NMRによって監
視した。完了したら、反応物を5±5℃に冷却し、次いで反応混合物を10分間撹拌しながら氷水(5V)及びヘプタン(6V)で希釈した。有機相を分離し、水相をヘプタン(2V)で抽出した。組み合わされた有機相を飽和NaHCO3水溶液(5V×2)、冷水(5V×2)で洗浄した。有機相を1H-NMRによって監視して、MeCNが除去されたことを確認した。有機相をNa2SO4(0.6重量%)で乾燥させ、次いで0±5℃で30分間撹拌し、その後、撹拌を停止し、乾燥剤を沈降させた。次いで、結果として得られたCHF2Iの溶液を暗所において-5±5℃でぜん動ポンプにより別個の100Lの反応器に移し、Na2SO4は元の反応器内に保持された。ジフルオロメチルヨージド(CHF2I)の量を、内部標準として3,4,5-トリクロロピリジンを使用してqNMRによって計算した。CHF2Iをヘプタン中の0.205M溶液(40L、収率29%)として得た。
【0047】
この実施例は、従来のプロセス及びその変形からアセトニトリルを除去するために必要とされ、CHF2Iの比較的希薄な溶液(0.25M未満)をもたらす煩雑なワークアップを実証する。
【0048】
実施例5
[1.1.1]プロペランの調製(手順A)
【0049】
【0050】
3つ口の1Lの丸底フラスコにメチルリチウム(DEM中3.1M(0.807mol、260.6mL)を投入し、-50℃に冷却した。次いで、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパン(109g、DEM中0.367mol(218mL)の溶液を、1時間にわたってカニューレ移送により滴下添加した。1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンの添加後、不均一混合物を-50℃浴で1時間撹拌した後、-30℃までゆっくりと加温した。反応物を更に30分間撹拌し、この時点でドライアイス浴を0℃氷浴に交換した。1時間後、反応フラスコを30℃に設定した水浴に入れ、蒸留装置に接続し、蒸留物の受けフラスコを-50℃浴に浸漬した。[1.1.1]プロペランを真空蒸留(約100mbar)によって単離し、DEM中の4.7重量%溶液として得た(423g、19.9gの[1.1.1]プロペラン、89%収率)。[1.1.1]プロペラン溶液を窒素下で保管し、次のステップで直接使用した。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ1.93(s,6H)。
【0051】
実施例6
[1.1.1]プロペランの調製(手順B)
【0052】
【0053】
削り状のマグネシウム(7.29g、300mmol)を、撹拌棒を収容した、炉乾燥
された500mLの一口フラスコに添加した。熱電対の先端がフラスコの基部にあるようにデジタル熱電対が貫通しているゴムセプタムをフラスコに取り付けた。フラスコをまだ熱い間に排気し、窒素で充填した。室温に達した後、50mLの無水THFをフラスコに添加し、続いてTHF中のジイソブチルアルミニウムヒドリドの1.0M溶液の10mLを滴下添加した。削り状のマグネシウムをフラスコ内で1時間撹拌して、削り片の反応を十分に促進した。1時間後、削り状のMgを収容したフラスコに、追加の30mLのTHFを添加した。室温に維持した水浴にフラスコを浸漬して、反応温度を中等度にした。1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパン(30g、101mmol)を別個の100mLのコニカルフラスコに添加し、THF(90mL)中に溶解した。反応の温度を20~35℃に維持しながら、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパンの溶液を削り状のマグネシウムにカニューレを介して60分間滴下添加した。添加が完了した後、反応物を周囲温度で更に1時間撹拌した。結果として得られたTHF溶液中の[1.1.1]プロペランの含有量は、内部標準としてp-キシレンを使用した1H NMRを使用して決定した。積分比は、[1.1.1]プロペランの収率55%を示した。
【0054】
粗[1.1.1]プロペラン溶液を蒸留装置に接続し、30℃に設定された水浴に入れ、生成物を真空蒸留した。蒸留物の受けフラスコを-78℃の浴に浸漬した。[1.1.1]プロペラン溶液は蒸留によりTHF中の溶液とし得られ、次のステップで直接使用した。
【0055】
実施例7
[1.1.1]プロペランの調製(手順C)
【0056】
【0057】
-45℃のEt2O(80mL)中の1,1-ジブロモ-2,2-ビス(クロロメチル)シクロプロパン(25g、84.23mmol)の撹拌溶液に、フェニルリチウム(ジブチルエーテル中1.9M、89.2mL、168.5mmol)を15分間かけて滴下添加した。反応混合物を-45℃で30分間撹拌し、次いで冷却浴を除去し、氷浴に交換した。2時間後、生成物を0~5℃の真空蒸留によって蒸留し、蒸留物を-78℃で収集して、[1.1.1]プロペラン(Et2O中0.53M、52mL、収率32%)を無色の溶液として得た。[1.1.1]プロペラン溶液を窒素下で保管し、次のステップで直接使用した。
【0058】
実施例8
1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンの調製
【0059】
【0060】
このプロセスは、実施例1に記載されるように調製されたジフルオロメチルヨージド溶液、及び実施例6(手順B)に記載されるように調製された[1.1.1]プロペラン溶液を利用した。撹拌棒を収容した、乾燥した100mLの一口丸底フラスコにセプタムを取り付け、窒素充填バルーンでフラッシュした。試薬等級のジエトキシメタン(DEM)(20.1mL)及びジフルオロメチルヨージド(MTBE中5.3M、3.1mL、16.5mmol)を順次添加する前に、容器を0℃に冷却した。撹拌しながら、[1.1.1]プロペラン(THF中0.37M、40.3mL、15.0mmol)を5分間かけて添加した。次いで、反応物を氷浴から取り出し、室温まで加温させた。
【0061】
室温で24時間後、1H NMRスペクトルの分析は、[1.1.1]プロペランが所望の生成物に完全に変換されたことを示した。透明で無色の溶液を真空で濃縮し、浴温度を20℃に維持した。溶媒を除去した後、容器を室温にて真空下で乾燥させて、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタン(2.70g、約93重量%(残留THFを含む)、10.4mmol、収率69%)を白色固体として得た。1H NMR(CDCl3,400MHz):5.64(t,J=56.0Hz,1H),2.39(s,6H)。
【0062】
実施例9
1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンの調製
【0063】
【0064】
このプロセスは、ジエトキシメタン中のジフルオロメチルヨージドの溶液、及び実施例5に記載の手順(手順A)を使用して調製された[1.1.1]プロペラン溶液を利用した。[1.1.1]プロペラン(DEM中4.09重量%、22kg、13.61mol)の溶液に、DEM(6L)中のジフルオロメチルヨージド(2.91kg、16.34mol)を0~5℃で添加した。混合物を25℃に加温し、25~30℃で48時間撹拌した。次いで、混合物を濃縮して、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタン(2.31kg、収率70%)をオフホワイトの固体として得た。
【0065】
実施例10
1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンの調製
【0066】
【0067】
このプロセスは、ヘプタン中のジフルオロメチルヨージドの溶液、及び実施例5(手順A)に記載されるように調製された[1.1.1]プロペラン溶液を利用した。0℃に冷却された3つ口丸底フラスコに、[1.1.1]プロペラン(DEM中5.9重量%、84.7g、0.076mol)を添加し、続いて、CF2HI(ヘプタン中18重量%、100g、0.101mol)の予備冷却された(0℃の)溶液を一度に添加した。混合
物を0℃で10分間撹拌した後、冷却浴を除去し、反応物を25℃で2時間撹拌した。反応物を真空で濃縮して、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンを白色固体として得た(17.8g、収率91%)。
【0068】
実施例11
1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンの調製
【0069】
【0070】
このプロセスは、ペンタン中のジフルオロメチルヨージドの溶液、及び実施例7(手順C)に記載されるように調製された[1.1.1]プロペラン溶液を利用した。-40℃の[1.1.1]プロペラン(ジメチルエーテル中0.53M、52mL、27.6mmol)の撹拌溶液に、CF2HI(ペンタン中0.15M、200mL、30mmol)を添加した。反応混合物を室温まで加温し、2日間撹拌した。次いで、反応混合物を0~5℃にて真空で濃縮して、1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタン(5g、収率75%)を固体として得た。
【0071】
実施例12
1-(ジフルオロメチル)-3-ヨードビシクロ[1.1.1]ペンタンの調製
以前に公開されたプロセス(非特許文献1を参照されたい)に従ってCHF2Iを以下のように調製した。丸底フラスコを窒素の雰囲気でパージ及び維持し、MeCN(500mL)、及びKI(186g、1.12mol)を添加した。混合物を撹拌し、加熱して、内部温度を40℃に到達させた。温度を40℃に維持し、MeCN(40mL)中の2,2-ジフルオロ-2-(フルオロスルホニル)酢酸(106g、0.596mol)を撹拌しながら滴下添加し、内部温度を40℃に維持した。添加後、反応物を60℃で2時間撹拌した。完了したら、生成物を蒸留して、CHF2I(アセトニトリル中32重量%、50g、収率15%)を得た。
【0072】
工程2:-40℃の[1.1.1]プロペラン(Et2O中0.23M、100mL、23mmol)の溶液に、CHF2I(アセトニトリル中32重量%、25g、45mmol)を添加した。反応混合物を加温し、室温で撹拌した。48時間後、生成物は1H NMR分析によって観察されなかった。この実施例は、過剰なアセトニトリルが収率に与える有害な影響を示す。
【国際調査報告】