IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシーズ・カナダ・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-515051プラズマ源を備える装置における熱管理
<>
  • 特表-プラズマ源を備える装置における熱管理 図1
  • 特表-プラズマ源を備える装置における熱管理 図2
  • 特表-プラズマ源を備える装置における熱管理 図3
  • 特表-プラズマ源を備える装置における熱管理 図4
  • 特表-プラズマ源を備える装置における熱管理 図5
  • 特表-プラズマ源を備える装置における熱管理 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】プラズマ源を備える装置における熱管理
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/10 20060101AFI20230405BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230405BHJP
   H01J 37/08 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
H01J49/10
H05H1/46 L
H01J49/10 500
H01J37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549781
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 US2021018574
(87)【国際公開番号】W WO2021168111
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】16/795,833
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518410032
【氏名又は名称】パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシーズ・カナダ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES CANADA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】チュン、タク シュン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、チュイ ハ シンディ
(72)【発明者】
【氏名】イカシアーノ、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ブライアン
【テーマコード(参考)】
2G084
5C038
5C101
【Fターム(参考)】
2G084AA27
2G084CC13
2G084DD01
2G084DD11
2G084FF02
2G084FF36
2G084FF39
2G084GG04
5C038GG09
5C038GH01
5C038GH17
5C101BB08
5C101DD03
5C101DD11
5C101DD23
(57)【要約】
誘導結合プラズマ等のプラズマ源を備える分析システムの熱管理構成を開示する。分析システムは、試料を受け取るとともにイオン化し、イオン化された試料を生成するように構成されているプラズマ源と、イオン化された試料を受け取り分析するように構成されている質量分析計または発光分光分析装置等の装置とを備えてよい。ヒートシールドがプラズマ源と装置との間に配置されてよく、ヒートシールドはプラズマ源からの加熱されたガス及び/またはプラズマを装置から離れる方へ向けるように構成および配置されてよい。いくつかの場合には、加熱されたガス及び/またはプラズマは、プラズマ源を備えるチャンバーから抜かれてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析システムであって、
試料を受け取とるとともにイオン化し、イオン化された試料を生成するように構成されているプラズマ源と、
分析される前記イオン化された試料を受け取るように構成されている装置と、
前記プラズマ源と前記装置との間に配置されているヒートシールドとを備え、前記ヒートシールドは、前記プラズマ源からの加熱されたガス、プラズマ、又はその両方を、前記装置から離れる方へ向けるように構成および配置されている分析システム。
【請求項2】
前記プラズマ源が誘導結合プラズマ源である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記装置が質量分析計または発光分光分析装置を備える、請求項1に記載の分析システム。
【請求項4】
前記ヒートシールドは、前記イオン化された試料が前記ヒートシールドを通って前記装置へ至ることを可能とするように寸法および形状が決定されているアパーチャを備える、請求項1に記載の分析システム。
【請求項5】
前記装置が、前記イオン化された試料を受け取るように構成および配置されたサンプリングアパーチャを備える、請求項4に記載の分析システム。
【請求項6】
前記ヒートシールドの前記アパーチャが前記サンプリングアパーチャよりも大きい、請求項5に記載の分析システム。
【請求項7】
前記ヒートシールドの前記アパーチャの縁と前記サンプリングアパーチャの縁との間の径方向の間隔が、約10mm~約30mmである、請求項6に記載の分析システム。
【請求項8】
前記径方向の間隔が約23.5mmである、請求項7に記載の分析システム。
【請求項9】
前記サンプリングアパーチャが前記装置のサンプリングコーンに形成されている、請求項5に記載の分析システム。
【請求項10】
前記ヒートシールドが、前記サンプリングコーンの少なくとも一部にコーティング層として形成されている、請求項9に記載の分析システム。
【請求項11】
前記ヒートシールドが前記サンプリングコーンに対し機械的に連結されている、請求項9に記載の分析システム。
【請求項12】
前記ヒートシールドが前記サンプリングコーンから離隔されている、請求項9に記載の分析システム。
【請求項13】
前記ヒートシールドが、第1のヒートシールド部分と第2のヒートシールド部分とを備え、前記第1のヒートシールド部分の方が、前記第2のヒートシールド部分よりも、前記サンプリングアパーチャの近くに配置されている、請求項5に記載の分析システム。
【請求項14】
前記第1のヒートシールド部分と前記第2のヒートシールド部分とが異なる材料から形成されている、請求項13に記載の分析システム。
【請求項15】
前記ヒートシールドが一様でない厚さを有する、請求項4に記載の分析システム。
【請求項16】
前記アパーチャに隣接する第1の径方向部分における前記ヒートシールドの厚さが、前記アパーチャから離隔した第2の径方向部分における前記ヒートシールドの厚さよりも小さい、請求項15に記載の分析システム。
【請求項17】
前記ヒートシールドが第1のヒートシールド層と、前記第1のヒートシールド層から離隔した第2のヒートシールド層とを備える、請求項1に記載の分析システム。
【請求項18】
前記第1のヒートシールド層と前記第2のヒートシールド層との間の間隙が、前記加熱されたガス及び/またはプラズマが抜かれる流路を形成している、請求項17に記載の分析システム。
【請求項19】
前記流路が、前記加熱されたガス及び/またはプラズマを抜くように構成されたポンプに対し連結されている、請求項18に記載の分析システム。
【請求項20】
前記ヒートシールドが、セラミック材料、金属材料、シリコン系材料、及び/または炭素系材料を備える、請求項1に記載の分析システム。
【請求項21】
前記ヒートシールドがセラミック材料を備え、前記セラミック材料は、酸化物、炭化物、及び窒化物からなるグループのうちの1つ以上である、請求項20に記載の分析システム。
【請求項22】
前記セラミック材料が、酸化アルミニウム、マコール、ムライト、窒化アルミニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、窒化ハフニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタン、炭化チタン、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭化ケイ素、炭化バナジウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、及び/または窒化バナジウムを含む、請求項21に記載の分析システム。
【請求項23】
前記ヒートシールドの厚さが約2mm~約4mmである、請求項1に記載の分析システム。
【請求項24】
前記プラズマ源が配置されるチャンバーの周囲の少なくとも一部に配置された1つ以上の断熱部材をさらに備える、請求項1に記載の分析システム。
【請求項25】
前記1つ以上の断熱部材が、前記プラズマ源と前記装置との間の境界面に配置されている、請求項24に記載の分析システム。
【請求項26】
前記チャンバーの前記周囲の前記一部が、前記チャンバーの側壁を形成している、請求項25に記載の分析システム。
【請求項27】
前記1つ以上の断熱部材の材料が前記ヒートシールドの材料と異なる、請求項24に記載の分析システム。
【請求項28】
前記1つ以上の断熱部材の最高使用温度が、前記ヒートシールド層の最高使用温度よりも低い、請求項24に記載の分析システム。
【請求項29】
前記1つ以上の断熱部材がガラス繊維層を備える、請求項24に記載の分析システム。
【請求項30】
前記1つ以上の断熱部材が前記チャンバーの内表面の少なくとも75%を覆うよう配置されている、請求項24に記載の分析システム。
【請求項31】
前記プラズマ源が配置されるチャンバーに対し連結されたポンプをさらに備え、前記ポンプは、前記加熱されたガス及び/またはプラズマの少なくとも一部を、前記チャンバーから抜くように構成されている、請求項1に記載の分析システム。
【請求項32】
分析システムを冷却する方法であって、
加熱されたガス、プラズマ、又はその両方をヒートシールドによって装置から離れる方へ向ける工程であって、前記ヒートシールドは、チャンバー内において前記装置とプラズマ源との間に配置されている、工程、及び、
前記加熱されたガス、プラズマ、又はその両方の少なくとも一部を前記チャンバーから抜く工程を備える方法。
【請求項33】
前記ヒートシールドが、第1のヒートシールド層及び、前記第1のヒートシールド層から離隔した第2のヒートシールド層を備え、前記加熱されたガス及び/またはプラズマが前記第1のヒートシールド層と前記第2のヒートシールド層の間の間隙を通じて抜かれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記加熱されたガス及び/またはプラズマが、前記分析システムに関連するポンプを介して抜かれる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
イオン化された試料を前記装置のサンプリングアパーチャを通じて受け取る受取工程をさらに備える、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記受取工程の前に、前記イオン化された試料に前記ヒートシールドのアパーチャを通過させる工程、をさらに備える請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒートシールドの前記アパーチャが、前記サンプリングアパーチャよりも大きい、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプリングアパーチャが、前記装置のサンプリングコーンに形成されている、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒートシールドが、前記サンプリングコーン上にコーティング層として形成されている、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒートシールドが、前記サンプリングコーンに対し機械的に連結されている、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒートシールドが、前記サンプリングコーンから離隔した、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された実施形態は、質量分析計または発光分光分析装置等の、プラズマ源を備える装置の熱管理を提供するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析システムまたは発光分光分析システム等の様々な分析システムは、化学試料の組成分析を行うために用いられる。多くの分析システムは、システムにより分析されうるイオン化された試料を生成するために、プラズマ源(誘導結合プラズマ源等)を利用する。例えば、化学試料はプラズマ源へ導入され、プラズマを通過させられ、この化学試料がプラズマに関連した高熱によってイオン化される。イオン化された試料は、次の分析のための分析装置に受け入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】いくつかの実施形態による、分析システムの概略断面図。
図2】いくつかの実施形態による、分析システムの概略断面図。
図3】いくつかの実施形態による、分析システムの概略断面図。
図4】いくつかの実施形態による、分析システムの一部の概略図。
図5】いくつかの実施形態による、分析システムの一部の概略図。
図6】いくつかの実施形態による、分析システムを冷却する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本開示のいくつかの態様によれば、分析システムが開示される。一実施形態では、分析システムは、試料を受け取るとともにイオン化し、イオン化された試料を生成するように構成されているプラズマ源と、分析されるイオン化された試料を受け取るように構成されている装置と、プラズマ源と装置との間に配置されたヒートシールドと、を備える。ヒートシールドは、プラズマ源からの加熱されたガス及び/またはプラズマを装置から離れる方へ向けるように構成および配置される。
【0005】
分析システムの様々な実施形態では、プラズマ源は誘導結合プラズマである。いくつかの実施形態では、装置は質量分析計または発光分光分析装置である。
分析システムの様々な実施形態では、ヒートシールドはイオン化された試料がヒートシールドを通って装置へ至ることを可能とするように寸法および形状が決定されているアパーチャを備える。
【0006】
分析システムの様々な実施形態では、装置はイオン化された試料を受け取るように構成および配置される。いくつかの実施形態では、ヒートシールドのアパーチャは、サンプリングアパーチャよりも大きい。いくつかの実施形態では、ヒートシールドのアパーチャの縁とサンプリングアパーチャの縁との間の径方向の間隔は約10mm~約30mmである。例えば、一実施形態では、径方向の間隔は約23.5mmである。
【0007】
分析システムの様々な実施形態では、サンプリングアパーチャは装置のサンプリングコーンに形成される。いくつかの実施形態では、ヒートシールドはサンプリングコーンの少なくとも一部にコーティング層として形成される。他の実施形態では、ヒートシールドは、サンプリングコーンに対し機械的に連結されている。いくつかの実施形態では、ヒートシールドはサンプリングコーンから離隔する。
【0008】
分析システムの様々な実施形態では、ヒートシールドは、第1のヒートシールド部分と第2のヒートシールド部分を備え、第1のヒートシールド部分の方が、第2のヒートシールド部分よりも、サンプリングアパーチャの近くに配置される。いくつかの実施形態では、第1及び第2のヒートシールド部分は異なる材料から形成される。
【0009】
分析システムの様々な実施形態では、ヒートシールドは一様でない厚さを有する。例えば、いくつかの実施形態では、アパーチャに隣接した第1の径方向部分におけるヒートシールドの厚さは、アパーチャから離隔した第2の径方向部分におけるヒートシールドの厚さよりも小さい。
【0010】
分析システムの様々な実施形態では、ヒートシールドは、第1のヒートシールド層と、第1のヒートシールド層から離隔した第2のヒートシールド層とを備える。いくつかの実施形態では、第1及び第2のヒートシールド層の間の間隙は、加熱されたガス及び/またはプラズマが抜かれる流路を形成する。いくつかの実施形態では、加熱されたガス及び/またはプラズマを抜くように構成されたポンプに対し流路は連結されている。
【0011】
分析システムの様々な実施形態では、ヒートシールドは、セラミック材料、金属材料、シリコン系材料、及び/または炭素系材料を備える。いくつかの実施形態では、ヒートシールドはセラミック材料を備え、そしてセラミック材料は酸化物、炭化物、及び窒化物からなるグループのうちの1つ以上である。例えば、いくつかの実施形態では、セラミック材料は酸化アルミニウム、マコール、ムライト、窒化アルミニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、窒化ハフニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタン、炭化チタン、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭化ケイ素、炭化バナジウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、及び/または窒化バナジウムを含む。
【0012】
分析システムの様々な実施形態では、ヒートシールドの厚さが約2mm~約4mmである。
様々な実施形態では、分析システムは、プラズマ源が配置されたチャンバーの周囲の少なくとも一部に配置された、1つ以上の断熱部材をさらに備える。いくつかの実施形態では、1つ以上の断熱部材は、プラズマ源と装置との間の境界面に配置される。例えば、いくつかの実施形態では、チャンバーの周囲の一部は、チャンバーの側壁を形成する。さらに、いくつかの実施形態では、1つ以上の断熱部材の材料は、ヒートシールドの材料とは異なる。いくつかの実施形態では、1つ以上の断熱部材の最高使用温度は、ヒートシールド層の最高使用温度よりも低い。いくつかの実施形態では、1つ以上の断熱部材はガラス繊維層を備える。さらに、いくつかの実施形態では、1つ以上の断熱部材は、チャンバーの内表面の少なくとも75%を覆うよう配置される。
【0013】
様々な実施形態では、分析システムは、プラズマ源が配置されるチャンバーに対し連結されているポンプをさらに備え、ポンプは加熱されたガス及び/またはプラズマの少なくとも一部をチャンバーから抜く。
【0014】
本開示の別の態様によれば、分析システムを冷却する方法が提供される。一実施形態では、分析システムを冷却する方法は、加熱されたガス及び/またはプラズマをヒートシールドによって装置から離れる方へ向ける工程であって、ヒートシールドはチャンバー内においてプラズマ源と装置との間に配置されている工程と、加熱されたガス及び/またはプラズマの少なくとも一部をチャンバーから抜く工程とを備える。
【0015】
前記方法の様々な実施形態では、ヒートシールドは、第1のヒートシールド層と、第1のヒートシールド層から離隔した第2のヒートシールド層とを備え、加熱されたガス及び/またはプラズマは第1及び第2のヒートシールド層の間の間隙を通じて抜かれる。
【0016】
前記方法の様々な実施形態では、加熱されたガス及び/またはプラズマは、分析システムに関連するポンプを介して抜かれる。
様々な実施形態では、前記方法は、イオン化された試料を装置のサンプリングアパーチャを通じて受け取る受取工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、前記方法は受取工程の前に、イオン化された試料にヒートシールドのアパーチャを通過させる工程をさらに備える。前記方法のいくつかの実施形態では、ヒートシールドのアパーチャは、サンプリングアパーチャよりも大きい。さらに、いくつかの実施形態では、サンプリングアパーチャは、装置のサンプリングコーンに形成される。例えば、いくつかの実施形態では、ヒートシールドは、サンプリングコーン上にコーティング層として形成される。他の実施形態では、ヒートシールドは、サンプリングコーンに対し機械的に連結されている。さらに、いくつかの実施形態では、ヒートシールドはサンプリングコーンから離隔する。
【0017】
上述の概念、そして下記で議論する追加の概念は、この点に関して本開示は限定されないので、任意の適切な組み合わせで配置されてよいことが理解される。さらに、本開示の他の利点及び新しい特徴は、添付の図とともに考慮したときに、様々な非限定的な実施形態に関する下記の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0018】
本明細書と参照によって援用される文書とが、矛盾する開示及び/または一貫性のない開示を含む場合、本明細書が優先する。参照によって援用される2つ以上の文書が互いに対して矛盾する開示及び/または一貫性のない開示を含む場合、有効日が後の文書が優先する。
【0019】
添付の図面は一定の縮尺で描かれることを意図していない。図面において、様々な図により示されている各々の同一またはほぼ同一の構成要素は同じ数字で表され得る。明瞭さの目的のために、各図において、すべての構成要素が符号付けされていない場合がある。
【0020】
質量分析システムまたは発光分光分析システム等の分析システムは、化学試料をイオン化させる手段として、誘導結合プラズマ(ICP)トーチ等のプラズマ源を備えてよい。例えば、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)または誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)等において、ICPトーチはキロワットオーダーの電力レベルで作動し、数千ケルビンの温度(例えば、約5000K)をもつプラズマを生成させる。試料は、イオン化された試料を生成するべくプラズマへ導入されてよく、このイオン化された試料は、質量分析計へと向けられ、続いて質量分析計によって分析され得る。しかしながら、そうしたシステムでは、望ましくないことに、プラズマ源からの熱は装置へ送られる。例えば、プラズマ源からのプラズマ及び/または加熱されたガスと装置の構成要素(例えば、金属の構成要素または比較的高い熱伝導率をもつ他の構成要素)とが接触すると、プラズマ及び/または加熱されたガスからの熱は装置の中へ吸収されて散逸する。既存のシステムでは、この熱は、通常では、冷やされた冷却流体が流れる冷却チャネルまたはヒートパイプ、及び/または装置からの熱を除くように構成されている他の能動的または受動的な冷却構造等の冷却構成を介して軽減される。しかしながら、発明者らはそうした冷却構成は、多くの場合、分析システムの複雑さ、大きさ、及び/またはコストを増すことを認めるに至った。
【0021】
上記に鑑み、発明者らは、システムの装置(例えば、分析装置)に達する熱の量を著しく減少させ得る、プラズマ源を備える分析システム(例えば、ICP-MSまたはICP-OESシステム)の熱管理構成に関連した、認められた数多くの利益を認識するに至った。例えば、本明細書に記載の熱管理構成は、プラズマ源に関連した熱を、その熱がガス形態に関連している間(例えば、プラズマ及び/または加熱されたガスの状態にある間)に、システムから抜くことを可能にする。発明者らは、このようにして熱が抜かれることは、熱が装置によって吸収され、装置を通じて散逸された後に抜かれる(その場合、固体の接触面を通じた熱伝導及び/または熱移動に頼ることが必要になり得る)よりも、実質的に効率的であることを認めるに至った。それに応じて、いくつかの場合には、本明細書に記載の熱管理構成は、上述の冷却構造のどれも必要としない(またはより少数及び/またはより単純な冷却構造しか必要としない)分析システムを可能とすることができ、それによって、より単純及び/またはより費用効果の高い分析システムの設計を可能にする。例えば、本開示の熱管理構成は、既存のシステムと比較して、冷却要件の減少、使用電力の減少、冷却ハードウェアの減少または除去、及び/またはシステム全体のより小さな大きさを可能にする。
【0022】
いくつかの態様によれば、熱管理構成はプラズマ源(例えば、ICPトーチ)から装置(例えば、MSまたはOES装置)へ伝わる熱の量を減少するように構成および配置されたヒートシールドを備えてよい。プラズマ源は、プラズマ源に導入される試料をイオン化し、装置によって受け取られ、後に分析され得るイオン化された試料を生成するように構成されてよい。ヒートシールドは1つ以上の耐熱材料及び/または断熱材料から形成されてよく、ヒートシールドはプラズマ源と装置との間に配置されてよい。この方法では、ヒートシールドは、プラズマ源から装置への熱の移動を妨害するために構成および配置されてよい(例えば、プラズマ源により生成された加熱されたガス及び/またはプラズマを、装置から離れる方へ向けることによって)。
【0023】
いくつかの実施形態では、ヒートシールドは、イオン化された試料を装置へ送ることを可能にするように構成されたオリフィスを備えてよい。例えば、MSまたはOESシステムは、サンプリングコーンに形成され、イオン化された試料を受け取るように配置されたサンプリングアパーチャを備え、ヒートシールドのアパーチャは、サンプリングアパーチャの上に重なる。この方法では、イオン化された試料を含むわずかな部分のプラズマがアパーチャを通り、装置による後の分析のためにサンプリングアパーチャに受け取られるが、一方で、残りのプラズマ及び/または加熱されたガスが、装置から離れる方へ向けられる。いくつかの実施形態では、ヒートシールドのアパーチャは、サンプリングアパーチャよりも大きくてよい。例えば、ヒートシールドアパーチャの中心は、サンプリングアパーチャの中心と実質的に合い、ヒートシールドアパーチャの周囲は、サンプリングアパーチャの周囲から径方向に離隔する。いくつかの場合には、そうした構成はプラズマの最も熱い部分(プラズマの中心部分に存在してよい)へのヒートシールドの露出を避けることに役立ち、それゆえに、ヒートシールドへの損傷の回避及び/または減少に役立ってよい。いくつかの実施形態では、ヒートシールドアパーチャとサンプリングアパーチャとの間の径方向間隔は約10mm~約30mmでよい。1つの典型的な実施形態では、サンプリングアパーチャとヒートシールドアパーチャとの間の径方向間隔が約23.5mmになるように、サンプリングアパーチャは約3mmの直径をもってよく、ヒートシールドアパーチャは約53mmの直径をもってよい。しかしながら、これに関して本開示は限定されず、アパーチャの他の間隔及び/または寸法がいくつかの場合では適切な場合がある。
【0024】
さらに、いくつかの実施形態では、ヒートシールドのアパーチャは、サンプリングアパーチャが形成されるサンプリングコーンの直径よりも大きくてよい。例えば、ヒートシールドアパーチャの直径は、サンプリングコーンの直径よりも少なくとも5mm大きい。発明者らは、そうした構成は、ヒートシールドを取り外す必要なしに、装置からサンプリングコーンを取り外すことを可能にするのに有益であってよいことを認めるに至った。しかしながら、ヒートシールドのアパーチャが、サンプリングコーンの直径よりも小さく、ヒートシールドがサンプリングコーンの上に少なくとも部分的に重なる等の、他の構成が適切な場合もあることが認められる。
【0025】
いくつかの実施形態では、ヒートシールドは、MSまたはOES装置のサンプリングコーンのように、プラズマ源と装置との間の境界面に隣接して置かれた別部材でよい。例えば、ヒートシールドは境界面に接触して置かれ、またはヒートシールドは境界面から近接して離隔して置かれる。いくつかの場合では、ヒートシールドと境界面との間の小さな空隙(例えば、約1mm)は追加の断熱性を提供してよい。他の実施形態では、ヒートシールドは、境界面の少なくとも一部のコーティング層として形成されてよい。例えば、ヒートシールドの少なくとも一部は、サンプリングコーンの一部のコーティング層として形成される。他の実施形態では、ヒートシールドは、ヒートシールドに対して機械的に連結されている別部材でよい。これらの構成の各々では、サンプリングコーンに隣接したヒートシールドの位置決めは、ヒートシールドと境界面の大きな間隙を避けることに役立つ場合がある。そうした大きな間隙は、境界面に対する加熱されたガス及び/またはプラズマの巻き込みを導き、それによって、装置への熱の移動は悪化する。
【0026】
特定の実施形態に応じて、ヒートシールドは、サンプリングコーンまたは装置の他の構成要素のコーティング層として形成されているか、別部材として提供されているかによらず、任意の適切な厚さをもってよい。例えば、いくつかの実施形態では、ヒートシールドの厚さは、約0.5mm~約5mm、約1mm~約4mm、及び/または約2mm~約3mmである。さらに、いくつかの実施形態では、ヒートシールドは一様でない厚さをもってよい。例えば、発明者らは、いくつかの場合では、ヒートシールドのアパーチャの近傍で、より薄いヒートシールドは、プラズマ源が位置するチャンバー内で望ましい空気流を促進することに役立ってよく、それによって、下記に説明されたように、加熱されたガス及び/またはプラズマのチャンバーからのより効率的な抜きを可能にすることを認めるに至った。それに応じて、本開示では、ヒートシールドが、任意の特定の厚さまたは厚さの組み合わせをもつことに限定されないことが認められる。
【0027】
いくつかの実施形態では、ヒートシールドは、単一のモノリシックな構成要素で構成され、一方で他の実施形態では、ヒートシールドは2つ以上の別個の構成要素を備えるモジュール式構造を備える。例えば、第1の構成要素は、第1のヒートシールド部分を、サンプリングアパーチャのより近くに形成する。一方で、第2の構成要素は、第2のヒートシールド部分を、サンプリングアパーチャからさらに遠くへ離隔して形成してよい(例えば、径方向に沿って)。そうしたいくつかの実施形態では、ヒートシールドのアパーチャは、ヒートシールドの第1の部分に形成されてよい。いくつかの態様によると、ヒートシールドの少なくとも一部は、取り外しが可能でよい。例えば、サンプリングアパーチャに位置が近いことが原因で、高温にさらされる上述したヒートシールドの第1の部分は、取り換えまたは修理のために取り外しが可能でよい。
【0028】
上述のように、本開示によるヒートシールドは、1つ以上の高温材料(例えば、融解、またはそうでなければ実質的に分解せずに高温への暴露に耐えることができる材料)から形成されてよい。さらに、ヒートシールドは、プラズマ源から装置への熱の移動を減少するのに役立つために、断熱材料(例えば、低い熱伝導率をもつ材料)から形成されてよい。いくつかの実施形態では、ヒートシールドは1つ以上の、酸化物、炭化物、及び/または窒化物等のセラミック材料を備えてよい。適切なセラミック材料は酸化アルミニウム、マコール、ムライト、窒化アルミニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム、窒化ハフニウム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタン、炭化チタン、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭化ケイ素、炭化バナジウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、及び/または窒化バナジウムを含んでよいが、これらには限定されない。他の適切な材料は金属材料、シリコン系材料、及び/または炭素系材料を含んでよいが、これらには限定されない。いくつかの実施形態では、ヒートシールドは、異なる熱的特性を持つ複合的な材料を備えてよい。例えば、ヒートシールドは、サンプリングアパーチャにより近いヒートシールドの部分においては、よりよい耐熱性(例えば、よりよい断熱性及び/またはより低い熱伝導率)を示すように構成される。このことから、本明細書に説明しているように、ヒートシールドは任意の適切な方法で配置された、材料の任意の適切な組み合わせを備えてよいことが認められる。
【0029】
いくつかの態様によれば、本明細書に開示される熱管理構成は、加熱されたガス及び/またはプラズマを、プラズマ源が置かれているチャンバーから抜くことを可能にする。上述のように、発明者らはそうした装置が、装置内へ熱が散逸してから(例えば、装置に関連する能動的または受動的な冷却構造を介して)装置から熱が抜かれる既存の装置と比較して、より効率的にシステムから熱を抜くことを可能にしてよいことを認めるに至った。例えば、加熱されたガス及び/またはプラズマは高い流動性がありそして熱をシステムから抜くように、チャンバーから直接的に抜かれる。それゆえに、いくつかの実施形態では、ポンプはチャンバーに対して連結されていてよく、ポンプは加熱されたガス及び/またはプラズマをチャンバーの外に吸い出すように構成されてよく、それによって装置に最終的に到達する加熱されたガスの量は減少する。一実施形態では、そうしたシステムの運用方法は、ヒートシールドによって加熱されたガス及び/またはプラズマを装置から離れる方へ向けること、及びチャンバーから少なくとも一部の加熱されたガス及び/またはプラズマを抜くことを含んでよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、前述したようなヒートシールドは、加熱されたガス及び/またはプラズマが抜かれる流路を形成するように構成および配置されてよい。例えば、ヒートシールドは第1のヒートシールド層と、第1の層から離隔した第2のヒートシールド層とを備え、それら2つの層の間の間隔によって流路が形成される。ヒートシールドは、第1の層と第2の層との間に、任意の適切な間隔をもってよいことが認められる。例えば、いくつかの実施形態では、間隔は約1mm~約5mmである。
【0031】
いくつかの場合では、分析システムは、プラズマ源が置かれるチャンバーの内部の周りに配置される、1つ以上の断熱部材を備えてよい。例えば、そうした断熱部材は、上述するようにプラズマ源と装置との間に置かれたヒートシールドに加えて、またはそれに代えて提供される。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、断熱部材は、チャンバーの壁によって吸収され、続いて装置に移動する(例えば、熱伝導または熱伝達を介して)熱の量を減少させることによって等、装置への熱の移動を避けるのに役立ち得る。ヒートシールドと1つ以上の断熱部材との両方を備えているいくつかの実施形態では、断熱部材の材料は、ヒートシールドの材料と比較して、比較的低い熱性能をもつように選ばれてよい。発明者らは、ヒートシールドよりもプラズマ源から遠くへ置かれ得る断熱部材は、ヒートシールドが暴露されるような高温または高い熱レベルに暴露されなくてよく、それゆえにそうした断熱部材には、より低品位の断熱材料を使うのが適切な場合があることを認めるに至った。例えば、1つ以上の断熱部材が、ヒートシールドの材料と比較して、より低い断熱性能、より低い最高使用温度、及び/またはより高い熱伝導率をもつ材料で形成される。いくつかの典型的な実施形態では、断熱部材は1つ以上のガラス繊維層を備えていてよい。しかしながら、本開示は、ヒートシールドと断熱部材が異なる材料から形成される実施形態に限定されるものではないことが認められる。例えば、ヒートシールドと断熱部材は、同じ材料から形成されてもよい。さらにまた、1つ以上の断熱部材が、チャンバーの任意の適切な部分において提供されてよいことが認められる。例えば、断熱部材はプラズマ源の周りのチャンバーの周囲を覆うように置かれてもよく、チャンバーの内表面の少なくとも75%等、チャンバーの相当な部分を覆うように置かれてもよく、または、チャンバーの任意の他の適切な部分を覆うように置かれてもよく、この点に関して本開示は限定されない。
【0032】
本明細書に記載のいくつかの実施形態がプラズマ源を備える一方で、本明細書に開示される熱管理構成はまた、試料の取り扱いにプラズマベースでない熱源を使うシステム等、プラズマ源を備えないシステムにおいても用いられてよいことが認識される。さらに、いくつかの場合では、開示された熱管理構成は、質量分析計または発光分光分析装置等の分光分析装置とともに用いられるが、本開示は、特定のタイプ装置のまたは分析システムに限定されないことが理解される。
【0033】
図を参照すると、特定の非限定的な実施形態がより詳細に説明される。これらの実施形態に関して説明される様々なシステム、構成要素、特徴、そして方法は、開示が本明細書に説明される特定の実施形態のみに限定されないように、個々に、及び/または任意の所望の組み合わせのどちらかに使われてよいことが理解される。
【0034】
図1は、チャンバー102内に配置される、プラズマ源110(ICP源等)を備える分析システム100の一実施形態の概略断面図である。プラズマ源110は、プラズマ112を生成し、プラズマ源に導入される試料114をイオン化し、イオン化された試料116を形成するように構成されてよい。イオン化された試料は、MSまたはOES装置等の装置120によって分析されてよい。例えば、装置120は、装置120によって受け取られるイオン化された試料116を分析するように構成および配置される1つ以上のセンサまたはセンサアセンブリ122を備える。図に示すように、装置120はチャンバー102と装置120との間の境界面に、サンプリングアパーチャ124を備えてよい。図示された実施形態において、サンプリングアパーチャ124は、装置120のサンプリングコーン126に形成され、サンプリングアパーチャを通る軸に対し径方向に対称でよい。しかしながら、本開示は、サンプリングコーン126に対する、またはサンプリングアパーチャ124が形成される装置120の他の特徴に対する任意の特定の構成に限定されないことが認められる。
【0035】
システム100は、プラズマ源110と装置120との間に配置されたヒートシールド130をさらに備える。前述したように、ヒートシールド130は、プラズマ源110によって生成される加熱されたガス及び/またはプラズマ118を装置120から離れる方へ向けるように構成および配置されてよく、それによって装置120によって吸収され、及び/または装置120へと散逸する熱量は減少する。ヒートシールド130は、イオン化された試料116が装置120へ流れる、アパーチャ132を形成してよい。図示された実施形態において、ヒートシールド130は、サンプリングコーン126から離隔され、空隙134を形成する。前述したように、いくつかの場合では、空隙134は、プラズマ源110と装置との間の追加の断熱性を提供してよい。しかしながら、他の実施形態では、ヒートシールド130とサンプリングコーン126との間に間隙がなくてもよい(例えば、ヒートシールドとサンプリングコーンが互いに接触していてもよい)。さらにまた、サンプリングコーン126と同様に、ヒートシールド130は、アパーチャ132の中心を通る軸に対し径方向に対称であってもよい(例えば、ヒートシールドは円形であってもよい)が、この点に関して本開示は限定されないので、他の構成が適切である場合もある。
【0036】
図1の分析システム100は、チャンバー102に関連するポンプ140をさらに備える。いくつかの場合では、ポンプ140は、プラズマ源110によって生成された加熱されたガス及び/またはプラズマ118を、チャンバー102から抜くように作動してよい。前述したように、そうした構成は、熱が加熱されたガス及び/またはプラズマに関連する場合には熱が比較的高い移動性を有することを利用して、装置120へと熱が吸収され及び/または散逸したあとに熱を抜くように構成された既存の冷却構成と比較して、より効率的にシステム100から熱を抜くことができる点で有利である。いくつかの実施形態では、ポンプ140は、加熱されたガス及び/またはプラズマ118がヒートシールド130によって装置120から離れる方へ向けられたあとに、加熱されたガス及び/またはプラズマ118をチャンバー102から抜くように構成されてよい。
【0037】
図1にさらに示すように、システム100はチャンバー102内に配置される随意の断熱部材150を備える。例えば、断熱部材はチャンバー102の周囲に配置され、いくつかの場合には、チャンバー102の側壁を形成する。さらに、いくつかの場合には、1つ以上の断熱部材がチャンバー102と装置120との間の境界面に配置されてよい。
【0038】
ここで分析システム200の別の実施形態である図2を参照する。図1に関連して上述された実施形態と同様に、システム200は、チャンバー202内に配置されたプラズマ源210を備える。プラズマ源は、プラズマ212を生成し、プラズマ源に導入される試料214をイオン化し、それによってイオン化された試料216が形成される。イオン化された試料216は、装置に関連した1つ以上のセンサまたはセンサアセンブリ222を用いた、MSまたはOES等の装置220によって分析されてよい。図に示すように、装置は、サンプリングコーン226に形成されるサンプリングアパーチャ224を備え、イオン化された試料216は、サンプリングアパーチャ224を通じて装置220に受け取られてよい。この実施形態では、ヒートシールド230は、ヒートシールド230がサンプリングコーン226の少なくとも一部と接触するように、サンプリングコーン226と直接隣接する。例えば、ヒートシールド230は、ヒートシールド230とサンプリングコーン226とが単一の一体構造を形成するように、サンプリングコーン226の一部にコーティング層として形成される。あるいは、ヒートシールド230とサンプリングコーン226とは互いに機械的に連結され得る別々の部材として提供されてよい。図に示すように、ヒートシールド230は、ヒートシールド230のアパーチャ232がサンプリングアパーチャ224よりも大きくなり得るように、サンプリングコーン226の全体には提供されなくてよい。
【0039】
さらに言えば、前述した実施形態と同様に、分析システム200は、加熱されたガス及び/またはプラズマ218をチャンバー202から抜くための、チャンバー202に関連したポンプ240をさらに備えてよい。これに加えて、1つ以上の断熱部材250がチャンバー202の周囲等、チャンバー202に配置されてよい。
【0040】
図3は分析システム300の、さらなる一実施形態の概略断面図を示す。図1図2に関連して前述した実施形態と同様に、システム300は、チャンバー302内に配置されたプラズマ源310を備え、プラズマ源は、プラズマ312を生成し、プラズマ源に導入される試料314をイオン化し、それによってイオン化された試料316を形成する。イオン化された試料316は、装置に関連した1つ以上のセンサまたはセンサアセンブリ322を用いた、MSまたはOES装置等の装置320によって分析されてよい。図に示すように、装置はサンプリングコーン326に形成されたサンプリングアパーチャ324を備え、イオン化された試料316は装置320にサンプリングアパーチャ324を通じて受け取られる。
【0041】
この実施形態では、ヒートシールド330は、第1のヒートシールド層334と、第1の層から離隔した第2のヒートシールド層336とを備え、それら第1及び第2の層の間に流路338を形成する。このようにして、ヒートシールド330のアパーチャ332に入り込む加熱されたガス及び/またはプラズマ318は、流路338を通じてシステム300から抜かれてよい。例えば、流路は、加熱されたガス及び/またはプラズマ318を流路から抜くように構成されるポンプ340に対して連結されている。さらに、上述した実施形態と同様に、ヒートシールド330は、加熱されたガス及び/またはプラズマ318を装置300から離れる方へ向けるように構成および配置されてよく、いくつかの場合には、ポンプ340は加熱されたガス及び/またはプラズマ318をチャンバー302から抜くようにさらに構成されてよい。さらに、いくつかの場合には、システムは、チャンバー302の側壁沿い及び/またはチャンバーと装置320との間の境界面等の、チャンバー302の周囲に配置された、1つ以上の断熱部材350を備えてよい。
【0042】
ここで図4を参照すると、ヒートシールドとサンプリングコーンとの一実施形態がより詳細に説明されている。特に、図4は、アパーチャ404を備えるヒートシールド402、ならびにサンプリングアパーチャ408が形成されるサンプリングコーン406を示す。図示された実施形態において、アパーチャ404は、サンプリングコーンの直径412よりも大きい直径410をもつ。この場合、第1の間隔414が、アパーチャ404とサンプリングコーン406との間に提供されてよい。いくつかの場合には、この間隔(径方向沿いに形成されてよい)によって、ヒートシールド402の取り外しを必要とすることなく、ヒートシールド402のアパーチャ404を通じてサンプリングコーン406を取り外すことが可能となる。しかしながら、前述したとおり、いくつかの実施形態において、ヒートシールドはサンプリングコーンの上に少なくとも部分的に重なっていればよい。したがって、ヒートシールドのアパーチャがサンプリングコーンより大きい構成に本開示が限定されないことが理解される。
【0043】
図4にさらに示すように、サンプリングアパーチャ408とヒートシールドアパーチャ404とは、サンプリングアパーチャ408の縁とヒートシールドアパーチャの縁との間に第2の間隔416を形成するように構成および配置されてよい。例えば、前述するように、この第2の間隔416は、ヒートシールド402が、プラズマ源によって生成されるプラズマの中心部分に一般に存在する最も高い温度に暴露されないように、選択される。
【0044】
図5は、ヒートシールドおよびサンプリングコーンの構成のさらなる一実施形態を示す。前述した実施形態と同様に、図5は、アパーチャ504を備えるヒートシールド502、ならびにサンプリングアパーチャ508が形成されたサンプリングコーン506を示す。この実施形態では、ヒートシールドは、モジュール式で形成される。特に、ヒートシールド502は第1のヒートシールド部分510を備え、この第1のヒートシールド部分510の方が、第2のヒートシールド部分512よりも、サンプリングアパーチャ508の近くに配置されている。例えば、そうした構成は、ヒートシールド部分510,512のうちの1つ以上を取り外しできるようにすることを可能にする。例えば、第1のヒートシールド部分510は、プラズマ源により生成されるプラズマの中心部分に近いことから、第2のヒートシールド部分512よりも高い温度に暴露され、したがって第1の部分510は第2の部分512よりもより頻繁な取り換えが必要となる場合がある。これに代えて、またはこれに加えて、いくつかの場合では、第1及び第2の部分は異なる材料から形成されてよい。例えば、第1の部分510は、第1の部分が第2の部分よりも高い最高使用温度をもつように、第2の部分512と比較してより高品位な高温材料から形成される。そうした構成によって、高品位の材料が、プラズマの中心に最も近く最も高い温度に暴露されるヒートシールドの部分にのみ使われることを可能にすることができる一方で、他のより低品位な材料(及び潜在的により低コストの材料)がより低い温度に暴露されるヒートシールドの部分では使われることができる。
【0045】
ヒートシールド、ヒートシールドアパーチャ、サンプリングコーン、サンプリングアパーチャが図4図5において一般に円形形状をもつように図示される一方で、長方形形状、楕円形状、及び/または不規則形状等、他の形状が、それらの特徴のうちの1つ以上に適切であり得ることが認識される。さらに、ヒートシールド及び/またはサンプリングコーン(または装置においてサンプリングアパーチャが形成される他の特徴)は、3次元形状(例えば、部分的な円錐形状)を有してもよく、実質的に平面であってもよい。したがって、本開示はこれらの特徴について特定の形状に限定されない。
【0046】
ここで図6を参照すると、分析システムを作動させる方法がより詳細に説明されている。図6は、分析システムを作動させる方法600の一実施形態を示すフローチャートを示す。前記方法は、プラズマ源によって生成された、加熱されたガス及び/またはプラズマが、装置(MSまたはOES分析装置等)から離れる方へ向けられるステップ602から始まる。加熱されたガス及び/またはプラズマが、チャンバー内においてプラズマ源と装置との間に配置されたヒートシールドを介して装置から離れる方へ向けられてよい。前記方法は、次いで、加熱されたガス及び/またはプラズマがチャンバーから抜かれるステップ604に進む。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法600は、イオン化された試料(例えば、プラズマ源を通ることによって予めイオン化された試料)がヒートシールドのアパーチャを通り抜けるステップ606へ随意で進んでよい。これに代えて、またはこれに加えて、前記方法は、イオン化された試料が装置のサンプリングアパーチャを通して受け取られるステップ608へ随意に進んでよい(例えば、装置による続く分析のために)。
【0048】
一例において、3つの異なる構成を用いるICP-MSシステムのサンプリングアパーチャの近くの温度を測定する一連の実験が行われた。第1の構成では、ヒートシールドの配置なしに、プラズマをサンプリングコーンに直接暴露した。第2の構成では、セラミックのヒートシールドをICP源とサンプリングコーンとの間に配置した。第3の構成では、ICP源とサンプリングコーンとの間にセラミックのヒートシールドを利用することに加え、断熱部材をICPチャンバーの周囲に追加した。各構成において、ICP源からのプラズマに暴露されたあとの温度を、サンプリングコーンのサンプリングアパーチャから約7.62cm(3インチ)に配置された温度プローブを用いて測定した。3つの実験の構成の結果は下記表1に要約され、それぞれ、ヒートシールドと断熱部材とを備える第2及び第3の構成の測定温度の実質的な減少を実証している。
【0049】
表1
実験の構成 測定温度
ヒートシールドなし 120℃
セラミックのヒートシールドあり 91℃
セラミックのヒートシールド及び断熱部材あり 82℃。
【0050】
本開示の様々な態様は単独に、組み合わせにおいて、または前述した実施形態において明確に議論していない多様な構成において使われてよく、それゆえに前述の説明において述べた、または図面に示した応用の詳細及び構成要素の構成に限定されない。例えば、一実施形態で説明された様態は、他の実施形態で説明された様態と任意の方法で組み合わされてよい。本教示は、当業者によって認められるであろうように、様々な代替形態、修正形態、均等形態を包含する。それゆえに、前述の説明及び図面は単なる例である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】