(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】試料の一部に光を集束させるための光学分光プローブ構成
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20230405BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230405BHJP
G02B 3/06 20060101ALI20230405BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20230405BHJP
G02B 3/02 20060101ALI20230405BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20230405BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
G01N21/65
G01N21/27 Z
G02B3/06
G02B3/00 A
G02B3/02
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549804
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 CA2021050191
(87)【国際公開番号】W WO2021163807
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514300959
【氏名又は名称】トルネード スペクトラル システムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベーア,ブラッドフォード ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ドライバー,シェーマス
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
2H087
【Fターム(参考)】
2G043EA03
2G043FA05
2G043GA03
2G043GA07
2G043GB01
2G043GB28
2G043HA01
2G043HA05
2G043JA01
2G043KA09
2G059AA05
2G059EE03
2G059EE12
2G059GG01
2G059JJ11
2G059JJ17
2G059LL02
2H087KA12
2H087LA25
2H087PA01
2H087PA02
2H087PA17
2H087PB02
2H087PB11
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA05
2H087QA06
2H087QA13
2H087QA14
2H087QA18
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA33
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087RA03
2H087RA07
2H087RA08
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA26
2H087RA45
(57)【要約】
(a)試料の表面または内部の1または複数の部分に少なくとも1つの焦点スポットまたは少なくとも1つの焦線を生成すると同時に、少なくとも1つの焦点スポットまたは少なくとも1つの焦線を鮮明化し、および/またはそのサイズを低減するために、試料に隣接した光学窓または透明容器によって生じる光学収差を補償し、(b)試料の表面または内部の1または複数の部分に、複数の焦点スポット、離散焦点スポットのアレイ、少なくとも1つの焦線、または少なくとも1つの焦点円を生成し、または(c)(a)および(b)を実現するために、平行励起光ビームの別々の部分を集束させるように配置され、そのための形状を持つ1または複数の表面を有する少なくとも1つの光学素子を有し得るサンプルレンズアセンブリが説明される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学分光プローブのためのサンプルレンズアセンブリであって、
略平行励起光ビームを受け取り、光学窓の後側または透明容器内にある試料に向けて光線を方向付けるために配置された少なくとも1つの光学素子であって、
前記光学窓または透明容器を通して前記光線を投射し、前記光線を、前記試料の表面または内部の1または複数の部分にある少なくとも1つの焦点スポットまたは少なくとも1つの焦線に集束させ、
結果として生じる前記試料からの散乱光を収集し、
前記少なくとも1つの焦点スポットまたは前記少なくとも1つの焦線を鮮明化し、および/またはそのサイズを低減するために、前記光学窓または前記透明容器によって生じる光学収差を補償する
ように配置され、そのための形状を持つ1または複数の表面を有する少なくとも1つの光学素子を備え、
前記収集された結果として生じる散乱光は、光学分光分析システムによって、前記試料の前記1または複数の部分に関する分光情報を測定するために用いられる、サンプルレンズアセンブリ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光学素子は、1または複数の非球状光学素子を備える、請求項1に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光学素子は、第1の軸に沿った第1の形状および第2の軸に沿った第2の形状を有するトロイダル光学素子を備え、前記第1および第2の軸は互いに垂直であり、前記第1および第2の形状は異なっている、請求項1に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光学素子は、(a)1または複数の球状光学素子、および/または(b)1または複数の球状トロイダル光学素子を備える、請求項1に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光学素子は、
焦点位置を有する非球状フォーカサと、
前記非球状フォーカサの前記焦点位置を実質的に中心とする少なくとも1つの球面を有する球状光学素子と
を備え、前記試料は、前記焦点位置またはその付近に載置される、請求項1~2のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項6】
前記球状光学素子は、真球状光学素子または部分球状光学素子を備える、請求項5に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光学素子は、複数の焦点スポット、少なくとも1つの焦線、または少なくとも1つの焦点円を生成するための形状を持つ少なくとも1つの表面を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項8】
光学分光プローブのためのサンプルレンズアセンブリであって、
略平行励起光ビームを受け取り、光線を試料に向けて方向付けるために配置された少なくとも1つの光学素子であって、
前記試料の表面または内部の1または複数の部分に、複数の焦点スポット、離散焦点スポットのアレイ、少なくとも1つの焦線、または少なくとも1つの焦点円を生成するために前記光線を投射して集束させ、
結果として生じる前記試料からの散乱光を収集する
ように配置され、そのための形状を持つ1または複数の表面を有する少なくとも1つの光学素子を備え、
前記収集された結果として生じる散乱光は、光学分光分析システムによって、前記試料の前記1または複数の部分に関する分光情報を測定するために用いられる、サンプルレンズアセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光学素子は、球状、非球状、円柱状、非円柱状、トロイダル、またはアキシコンである少なくとも1つの表面を有する、請求項8に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの光学素子は、前記試料に伝達する前に前記少なくとも1つの光学素子によって受け取られる前記平行励起光ビームの径と比べて小さい、ほぼ同じ、または大きい長さを有する前記焦線を生成するための少なくとも1つの形状を有する、請求項8~9のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの光学素子は、前記略平行励起光ビームの別々の部分を集束させ、前記試料の表面または内部の前記1または複数の部分に配置される前記複数の焦点スポット、複数の焦線、または複数の焦点円を同時に生成するために互いに並行して配置され作用する複数の光学表面領域を集合的に提供する、少なくとも1つのレンズ、少なくとも1つの鏡、またはその組み合わせを備える、請求項8~9のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの光学素子は、前記サンプルレンズアセンブリが前記略平行励起光ビームを受け取ると、前記試料に適した、直線、格子、または他の横方向分布を含むパターンで前記複数の焦点スポット、複数の焦線、または複数の焦点円を生成するために互いに並行して配置され作用する複数の光学表面領域を集合的に提供する、レンズレットアレイまたは反射鏡面のアレイを含む、請求項8~9のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項13】
前記複数の光学表面領域は、(a)前記プローブヘッドからの異なる距離、および/または(b)前記試料内の異なる深さにある位置に前記複数の焦点スポットを生成するために、異なる焦点距離を有し、または前記略平行励起光ビームの前記光軸に沿った異なる位置に配置される、請求項11~12のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの光学素子は、前記複数の焦点スポット、前記少なくとも1つの焦線、または前記少なくとも1つの焦点円を鮮明化し、および/またはそのサイズを低減するために、前記サンプルレンズアセンブリと前記試料との間の光学窓または透明容器によって生じる光学収差を補償するように適合された少なくとも1つの表面を有する、請求項8~13のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項15】
前記サンプルレンズアセンブリは、前記少なくとも1つの光学素子に隣接しており、前記試料が流れる試料チャネルと、前記フローセルの表面に配置され、前記試料チャネルに隣接した、前記少なくとも1つの焦点スポット、前記少なくとも1つの焦線、または前記少なくとも1つの焦点円を受け取るための光学窓とを画定するフローアセンブリを含むフローセル内に統合される、請求項1~14のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項16】
前記フローアセンブリは、浅い試料チャネル部を備え、前記少なくとも1つの光学素子は、試料の流れ方向に略平行または略垂直であり前記浅い試料チャネル部と一致するように前記複数の焦点スポットまたは前記少なくとも1つの焦線を生成するために適合される、請求項15に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【請求項17】
前記試料チャネルは、前記試料の平均光散乱経路長よりも小さい深さを有する、請求項15~16のいずれか1項に記載のサンプルレンズアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月21日に出願された米国仮特許出願第62/979,817号の利益を主張するものであり、米国仮特許出願第62/979,817号の内容の全体が、ここにおいて本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本明細書において、一般に光学分光法の分野に関し、より具体的には、レーザビームで試料を照射し、試料からの戻り散乱光を収集するラマン分光試料プローブの構成要素に関する様々な実施形態が説明される。
【背景技術】
【0003】
ラマン分光法は、固体、結晶体、液体、または気体であってよい試料を照射するために、特定の波長を有するレーザ光子を含むレーザビームが用いられる分析法であり、レーザ光子のごく一部が、試料の分子から散乱する際に様々な波長にシフトする。波長のシフト量は、試料分子構造に依存する。したがって、異なる型の試料分子は、試料からの散乱光において異なるスペクトルパターンを生成し、これが、試料の化学組成を識別および定量化するために分析され得る。しかし、ラマン散乱効果は非常に弱いので、波長シフト信号は多くの場合、非常に微弱である。よって、試料からの散乱光を可能な限り多く収集することが有利である。加えて、試料は異成分から成る場合があるので、分光分析結果が試料全体を代表するように、試料の十分大きな面積または体積を照射することが有利である。また、試料が容器内または障壁の後側にあり、それによって照射ビームおよび/または散乱光が歪められる場合があるので、そのような歪みを補正することが有利である。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、本明細書の教示によると、光学分光プローブのためのサンプルレンズアセンブリが提供され、このサンプルレンズアセンブリは、略平行励起光ビームを受け取り、光学窓の後側または透明容器内にある試料に向けて光線を方向付けるために配置された少なくとも1つの光学素子を備え、少なくとも1つの光学素子は、光学窓または透明容器を通して光線を投射し、その光線を試料の表面または内部の1または複数の部分にある少なくとも1つの焦点スポットまたは少なくとも1つの焦線に集束させ、結果として生じる試料からの散乱光を収集し、少なくとも1つの焦点スポットまたは少なくとも1つの焦線を鮮明化し、および/またはそのサイズを低減するために、光学窓または透明容器によって生じる光学収差を補償するように配置され、そのための形状を持つ1または複数の表面を有しており、収集された結果として生じる散乱光は、光学分光分析システムによって、試料の1または複数の部分に関する分光情報を測定するために用いられる。
【0005】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、1または複数の非球状光学素子を備える。
【0006】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、第1の軸に沿った第1の形状および第2の軸に沿った第2の形状を有するトロイダル光学素子を備え、第1および第2の軸は互いに垂直であり、第1および第2の形状は異なっている。
【0007】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、(a)1または複数の球状光学素子、および/または(b)1または複数の球状トロイダル光学素子を備える。
【0008】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、焦点位置を有する非球状フォーカサと、非球状フォーカサの焦点位置を実質的に中心とする少なくとも1つの球面を有する球状光学素子とを備え、試料は、焦点位置またはその付近に載置される。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、球状光学素子は、真球状光学素子または部分球状光学素子を備える。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、複数の焦点スポット、少なくとも1つの焦線、または少なくとも1つの焦点円を生成するための形状を持つ少なくとも1つの表面を有する。
【0011】
他の態様において、本明細書の教示によると、光学分光プローブのためのサンプルレンズアセンブリが提供され、このサンプルレンズアセンブリは、略平行励起光ビームを受け取り、光線を試料に向けて方向付けるために配置された少なくとも1つの光学素子を備え、少なくとも1つの光学素子は、試料の表面または内部の1または複数の部分に、複数の焦点スポット、離散焦点スポットのアレイ、少なくとも1つの焦線、または少なくとも1つの焦点円を生成するために光線を投射して集束させ、結果として生じる試料からの散乱光を収集するように配置され、そのための形状を持つ1または複数の表面を有しており、収集された結果として生じる散乱光は、光学分光分析システムによって、試料の1または複数の部分に関する分光情報を測定するために用いられる。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、球状、非球状、円柱状、非円柱状、トロイダル、またはアキシコンである少なくとも1つの表面を有する。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、試料に伝達する前に少なくとも1つの光学素子によって受け取られる平行励起光ビームの径と比べて小さい、ほぼ同じ、または大きい長さを有する焦線を生成するための少なくとも1つの形状を有する。
【0014】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、略平行励起光ビームの別々の部分を集束させ、試料の表面または内部の1または複数の部分に配置される複数の焦点スポット、複数の焦線、または複数の焦点円を同時に生成するために互いに並行して配置され作用する複数の光学表面領域を集合的に提供する、少なくとも1つのレンズ、少なくとも1つの鏡、またはその組み合わせを備える。
【0015】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、サンプルレンズアセンブリが略平行励起光ビームを受け取ると、試料に適した、直線、格子、または他の横方向分布を含むパターンで複数の焦点スポット、複数の焦線、または複数の焦点円を生成するために互いに並行して配置され作用する複数の光学表面領域を集合的に提供する、レンズレットアレイまたは反射鏡面のアレイを含む。
【0016】
少なくとも1つの実施形態において、複数の光学表面領域は、(a)プローブヘッドからの異なる距離、および/または(b)試料内の異なる深さにある位置に複数の焦点スポットを生成するために、異なる焦点距離を有し、または略平行励起光ビームの光軸に沿った異なる位置に配置される。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つの光学素子は、複数の焦点スポット、少なくとも1つの焦線、または少なくとも1つの焦点円を鮮明化し、および/またはそのサイズを低減するために、サンプルレンズアセンブリと試料との間の光学窓または透明容器によって生じる光学収差を補償するように適合された少なくとも1つの表面を有する。
【0018】
少なくとも1つの実施形態において、サンプルレンズアセンブリは、少なくとも1つの光学素子に隣接しており、試料が流れる試料チャネルと、フローセルの表面に配置され、試料チャネルに隣接した、少なくとも1つの焦点スポット、少なくとも1つの焦線、または少なくとも1つの焦点円を受け取るための光学窓とを画定するフローアセンブリを含むフローセル内に統合される。
【0019】
少なくとも1つの実施形態において、フローアセンブリは、浅い試料チャネル部を備え、少なくとも1つの光学素子は、試料の流れ方向に略平行または略垂直であり浅い試料チャネル部と一致するように複数の焦点スポットまたは少なくとも1つの焦線を生成するために適合される。
【0020】
少なくとも1つの実施形態において、試料チャネルは、試料の平均光散乱経路長よりも小さい深さを有する。
【0021】
本出願の他の特徴および利点は、添付図面と共に参照される以下の詳細な説明から明らかになる。ただし、理解すべき点として、本出願の好適な実施形態を示すこの詳細な説明および具体例は、例示のために記載されたものにすぎず、この詳細な説明から、当業者には本出願の主旨および範囲内の様々な変更および修正が明らかになる。
【0022】
本明細書で説明する様々な実施形態を適切に理解するため、およびこれらの様々な実施形態をどのように実施するかをより明確に示すために、例として、以下で説明する、少なくとも1つの実施形態例を示す添付図面が参照される。図面は、本明細書で説明する教示の範囲を限定することを意図されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この例ではラマン分光分析システムである典型的な光学分光分析システムを示し、(レーザ、分光計、および電源を含む)主要分析器ユニット、プローブ、および制御コンピュータの間の関係が示される。
【
図2】典型的なプローブヘッドおよびサンプルレンズアセンブリ構成の図である。
【
図3】(高速収束励起ビームとしても知られている)高い開口数(NA)に伴い増加する光学収差を示す図である。
【
図4】所与の厚さの外部窓によって生じる光学収差を補償する特定の光学特性を有するように適合された非球面レンズの実施形態例の図である。
【
図5A】ガラスバイアル(右側の円形領域)内の試料に平行励起ビームを集束させる最良形態の両凸レンズ(左側)と、バイアルの円柱壁によって誘発され得る収差を補償するトロイダル素子(ガラスバイアルの左側)とを有する2素子サンプルレンズアセンブリの実施形態例の側面図である。
【
図5B】異なる目線から見た、
図5Aのデュアルレンズサンプルレンズアセンブリの別図である。
【
図6A】非球面レンズ(集束用)と、固体、液体、または気体試料との境界面を成す窓として機能するハーフボールレンズとを有する2素子サンプルレンズアセンブリの実施形態例である。
【
図6B】流体(すなわち液体または気体)試料のための導管として機能する穴が中心を貫通している球状素子(たとえばフルボールレンズ)を有する2素子サンプルレンズアセンブリの他の実施形態例である。
【
図7A】左下から右上に移動して、水平軸に沿ってビームを集束させつつも垂直軸に沿って光線軌跡を変更させないことにより焦点スポットまたは焦点スポットではなく垂直軸に沿って方向付けられた焦線をもたらす円柱レンズに衝突する模擬平行励起ビームの概略の斜視図である。
【
図7B】
図7Aと同じサンプルレンズアセンブリの上面図である。
【
図7C】円柱レンズ(
図7A)が固体試料表面に対して傾斜すると、表面がレンズに対し動いても焦線が表面に正確に集束し得る様子を示す概略図である。
【
図8A】水平軸に沿って入射平行励起ビームを全体的に集束させつつも垂直軸に沿って励起ビームを部分的にしか集束させないことにより、
図7A~7Cの円柱レンズの実施形態例よりも(この例では垂直に方向付けられた)小さな直線寸法を有する焦線が生じるトロイダル集束レンズの斜視図である。
【
図8B】
図7A~7Cの円柱レンズの実施形態例よりも(この例では垂直に方向付けられた)大きな直線寸法を有する焦線が生じるように、入射平行励起ビームを垂直方向に発散させる第1の発散レンズ(たとえば平凹レンズ)と、垂直方向に発散した励起ビームの光線を水平方向に集束させる第2の集束レンズ(たとえば平凸レンズ)とを含む2つの円柱レンズの斜視図である。
【
図8C-8D】到来する入射平行励起ビームへの2つのレンズの各々の作用を示す
図8Bと同じサンプルレンズアセンブリの上面図および側面図である。
【
図8E】円柱レンズを通過し、その後、球面集束レンズを通過することにより、垂直軸に沿って方向付けられた焦線を試料に生成する、平行励起ビームの実施形態例を示す。
【
図8F】アキシコンレンズを通過し、その後、球面集束レンズを通過することにより、試料に焦点円を生成する、平行励起ビームの実施形態例を示す。
【
図9A】試料焦点面(正方形で図示)上に16の焦点スポットを生成する、4×4格子状の16のレンズレットのレンズレットアレイの実施形態例を示す。
【
図9B】試料焦点面(正方形で図示)上に4つの焦点スポットを生成するために、共通集束光学素子を通過するように平行励起ビームの一部を向け直す2×2の平面鏡アレイの代替実施形態例を示す。
【
図10】各レンズレットが異なる焦点距離を有することにより、レンズから異なる距離に、またそれに伴い試料体積内の異なる点に焦点スポットを出現させる、レンズレットアレイの他の実施形態例の側面図である。
【
図11A】フローセルのためのサンプルレンズアセンブリの実施形態例の斜視図および部分透視図であり、このサンプルレンズアセンブリは、試料窓を通る入射平行励起ビームを集束させ、フローセルの流量範囲内で狭い領域(すなわち浅い試料チャネル)と一致する焦線を生成する円柱集束レンズを含む。
【
図11B】フローセルのためのサンプルレンズアセンブリの実施形態例の斜視図および部分透視図であり、このサンプルレンズアセンブリは、試料窓を通る入射平行励起ビームを集束させ、フローセルの流量範囲内で狭い領域(すなわち浅い試料チャネル)と一致する焦線を生成する円柱集束レンズを含む。
【
図11C】フローセルのためのサンプルレンズアセンブリの他の実施形態例の部分透視図であり、このサンプルレンズアセンブリは、試料窓を通る入射平行励起ビームを集束させ、フローセルの流量範囲内で狭い領域と一致する複数の焦点スポットを生成する集束レンズレットアレイを含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で説明する実施形態例の追加の態様および特徴は、添付図面と共に参照される以下の説明から明らかになる。
【0025】
本明細書の教示に係る様々な実施形態は、特許請求の範囲に記載の主題事項の少なくとも1つの実施形態の例を提供するために以下で説明される。本明細書で説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載の主題事項を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の主題事項は、以下で説明するデバイス、システム、または方法のいずれか1つの特徴の全てを有するデバイス、システム、または方法に限定されず、あるいは本明細書で説明するデバイス、システム、または方法の複数または全てに共通の特徴に限定されない。特許請求の範囲に記載の主題事項の実施形態ではないデバイス、システム、または方法が本明細書で説明され得ることも考えられる。本文書において特許請求の範囲に記載されない、本明細書で説明する任意の主題事項は、他の保護器具の主題事項、例えば継続特許出願であってよく、出願者、発明者、または所有者は、任意のそのような主題事項を本文書における開示によって取り下げ、放棄し、または公衆に捧げることを意図していない。
【0026】
説明の簡潔性および明確性のために、適切であると考えられる場合、参照番号は、対応または類似の要素を示すために図面間で繰り返され得ることが認識される。加えて、数々の具体的細部は、本明細書で説明する実施形態の完全な理解を提供するために記載される。ただし、本明細書で説明する実施形態は、これらの具体的細部がなくとも実施され得ることが当業者には理解される。他の例において、周知の方法、手順、および構成要素は、本明細書で説明する実施形態を不明瞭にしないために詳細に説明されていない。また、この説明は、本明細書で説明する実施形態の範囲を限定するものと考えられてはならない。
【0027】
留意すべき点として、本明細書で用いる「結合された」または「結合する」という用語は、これらの用語が用いられる文脈に依存していくつかの異なる意味を有し得る。たとえば、結合されたまたは結合するという用語は、機械的、光学的、または電気的な意味を有し得る。たとえば、本明細書で用いる場合、結合されたまたは結合するという用語は、特定の文脈に依存して、2つの素子またはデバイスが互いに直接連結され得ること、または電気信号、電気接続、機械素子、光学素子、または光路を介して1または複数の中間素子またはデバイスによって互いに接続され得ることを示してよい。
【0028】
留意すべき点として、本明細書で用いる場合の「透明」という用語は、限定はされないがたとえば容器または窓などの物体が、たとえば部分的に透明、半透明、または完全に透明など、特定の程度で透明であり得ることを意味してよい。
【0029】
また留意すべき点として、本明細書で用いる場合、「および/または」という言葉は、包括的論理和を表すことが意図されている。すなわち、たとえば「Xおよび/またはY」などの表現は一般に、たとえばXまたはYまたはその両方を意味することが意図されている。追加の例として、たとえば「X、Y、および/またはZ」などの表現は一般に、XまたはYまたはZまたはそれらの任意の組み合わせを意味することが意図されている。
【0030】
留意すべき点として、本明細書で用いる、たとえば「実質的に」、「約」、および「おおよそ」などの程度を示す用語は、最終結果が著しく変化することのないような、修飾された用語の妥当な量の逸脱を意味する。これらの程度を示す用語は、たとえばこの逸脱によってそれが修飾する用語の意味が打ち消されない場合、たとえば1%、2%、5%、または10%などの、修飾された用語の逸脱を含むものと解釈されてもよい。
【0031】
また、本明細書における終了点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数および分数を含む(たとえば1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含む)。また理解すべき点として、全ての数およびその分数は、たとえば1%、2%、5%、または10%など、最終結果が著しく変化しない場合、参照される数の特定量までの変動を意味する「約」という用語で修飾されるものと仮定される。
【0032】
1つの態様において、本教示は、調査される試料との境界面を成す、ラマン分析装置(たとえば光学分光分析システムの一例)の光学および機械サブシステムであるラマン「プローブ」の実装における新規的な概念を提供する。多くの(たとえば
図1に示すラマンシステム100などの)ラマン分析装置システムにおいて、プローブ102は、分析装置ユニット104からプローブ102へレーザエネルギを伝送するための1または複数の「励起ファイバ」106、および試料110からプローブ102によって収集された散乱光信号を分析装置ユニット104へ返送するための1または複数の「収集ファイバ」108である複数の光ファイバケーブルを介して主要分析装置ユニット104に接続される。
【0033】
プローブ102は更に、
図2に示すように、「プローブヘッド」102hおよび「サンプルレンズ」102oの2つの幅広部に分割される。プローブヘッド102hは一般に、励起ファイバ106から提供される発散レーザ光ビームを平行化し、この平行ビームをサンプルレンズ102oに向けるための光学素子を含み、これは、この例では励起コリメータおよび折畳み鏡である。励起ビームはその後、試料の一部に伝送され、その結果、散乱光が生じ、その後、プローブヘッド102hによって受け取られ、平行化される。プローブヘッド102h内の他の光学素子は、非ラマン散乱光を除去するために、サンプルレンズ102oから戻ってくる散乱光の少なくとも1つの平行ビームを受け取ってフィルタリングするためのダイクロイックフィルタと、その後、フィルタリングされた散乱戻り光を収集ファイバ108に集中させる収集フォーカサとを含む。収集された散乱光は、試料の一部に関する分光情報を測定するために光学分光分析システムによって用いられる。
【0034】
試料からの後方散乱光を検出する多くの光学分光分析システムにおいて、プローブヘッド102hを出る平行励起ビームは、サンプルレンズアセンブリ102oによって、「プローブ焦点」と称される小領域に集束する。この領域は、正しくは点ではなく、一般に励起ファイバ106である励起光源の画像であるため、「焦点スポット」と呼ばれ得る。実際には、励起光源と焦点スポットとの間の光学素子が、焦点スポットを理論的に完璧なサイズおよび形状からぶれさせ、歪ませ、および/または一般に拡大する様々な光学収差を誘発するので、この焦点スポットは、励起光源の完璧な再現ではない。たとえば、サンプルレンズアセンブリ102oに関して、現在の最先端の設計は一般に、単一の平凸または両凸レンズ、またはサファイアボールレンズを必要とする。これらの場合、レンズは、球体の一部である1または複数の表面、または完全な球体であるレンズを有する。そのような光学素子は、光学素子が完全な球体を備えない場合でも、当業者によって「球面レンズ」と呼ばれる。球状光学表面は、標準的な光学製造技術を用いての製造が比較的容易であるが、励起光源からの光を最適な焦点(すなわち焦点スポット)に届けないことが多い。この原因の一部として、球面形状を有する任意の単一のレンズは、歪み効果である「球面収差」を受けることにより、理論的に完璧な「近軸」レンズによって生成されるスポットと比較すると光の焦点スポットがぶれ、および/または広がることがある。
【0035】
これらの収差は、
図3に示すように、球状光学素子のNAが大きくなるほど深刻になる。
図3の上段において、集束レンズ150は、長い焦点距離および小さなNAを有するので、左から右へ伝搬する平行光線は、(上段における拡大挿入画像で示すように)比較的小さな焦点スポット152に集束することが可能である。
図3の中段において、集束レンズ160は、それぞれ集束レンズ150の焦点距離およびNAと比べて短い焦点距離および大きなNAを有する。集束レンズ160の球面および平坦面は、平行ビームを単一のスポットに上手く集束させず、その結果、焦点スポット162は第1段における焦点スポット152よりも大きい。
図3の第3段において、集束レンズ170は、それぞれ集束レンズ150の焦点距離およびNAと比べて更に短い焦点距離および非常に大きなNAを有し、その結果、更に集束が不十分になり、広大な焦点スポット172が生じる。
【0036】
多くの光散乱は実質的に等方性であり、これは、到来する光子が元の移動方向にかかわらず試料から全方向に等しく散乱することを意味するので、分光プローブのサンプルレンズアセンブリは、可能な限り大きなNAを有することが有利である。言い換えると、サンプルレンズアセンブリのNAが大きいほど、分光プローブ102によって捕捉される散乱角度の範囲は大きくなるので、測定されるスペクトル信号が強く、より明確に定義される。しかし、大きなNAを有する球状オプティックが用いられると、励起レーザビームのパワーが大きな面積に広がり、サンプルレンズアセンブリ102oによって収集されたとしても試料から散乱する光の大半が不正確に集束し、収集ファイバ108の芯に届かないため、測定されるスペクトル信号の品質が光学収差によって損なわれる(ここでは、品質は、測定された信号の信号強度および/または信号対雑音比によって評価される)。
【0037】
この従来の球面レンズの欠点を克服するために、発明者は、光学分光プローブ内のサンプルレンズアセンブリに非球面シングレットレンズが利用可能であることを発見した。コンピュータ制御研磨機および高度なガラス成形技術により、非球面レンズは、従来よりも著しく安価かつ高精度になったので、たとえば分光プローブなどの光学システムに非球状光学素子が容易に統合され得る。適切に成形された非球面レンズは、たとえばレーザ励起ビームなどの単色の軸上光ビームからほぼ完璧な画像を生成することができ、サンプルレンズアセンブリ内の非球状光学素子(複数も可)に用いられる低分散ガラスにより、戻り収集ビームにおける色収差が最小限に抑えられる。ラマン分光システムのためのサンプルレンズアセンブリとして機能する複合顕微鏡対物レンズに一部の非球面レンズが用いられ得るが、非撮像分光法の場合、複合多素子顕微鏡対物レンズよりも著しく単純で小さく安価であり、より多くの光子を伝送することから、シングレットレンズがより良い選択肢となり得る。
【0038】
1つの態様において、本明細書の教示によると、試料を保持し、または試料のための流路を提供する、光学分光測定システムから独立した試料装置の一部である試料容器、ベゼル、または窓の透明領域によって生じる光学収差を補償するために非球面レンズが適合される(すなわちその光学表面の1または複数の形状が特定の光学特性を有するように修正される)少なくとも1つの実施形態が存在する。実験室において、液体試料または固体試料は、バイアル、ビーカ、キュベット、または他のガラス筐体内に位置してよく、容器という用語は、これらのケース全てを包含することが意図される。工業環境において、試料液は、試料への光アクセスを可能にする平坦な透明窓を有する金属パイプを通って、または透明ガラス管を通って流れ得る。これらの例のいずれでも、ベゼルの壁または窓がシステム全体の追加の光学素子として機能することにより、サンプルレンズアセンブリからの収束励起光ビームは、試料に焦点スポットを生成する時に追加の光学収差に直面する。高品質で平行かつ光学的に平坦な表面を有する窓でさえ、光ビームの収束または発散時に球面収差を誘発する。しかし、ベゼルの壁または窓の光学特性が事前に知られている場合、予想される収差を補正し、試料の表面または体積に改善された焦点スポットをもたらす非球面レンズまたは鏡が設計および製造され得る。このシナリオが
図4に示される。
図4の上段において、非球面レンズ200は、小さな角度範囲内(典型的には+/-0.2度~+/-1.0度の範囲内)で互いに平行な光線を有する略平行励起光ビームを受け取り、非常に鮮明な焦点スポット202に光線を方向付けるように(たとえば形状および/または表面が)最適化されている。したがって、理解すべき点として、平行光ビームという用語は、完全平行光ビームまたは完全平行光ビームからわずかに逸脱し得る略平行光ビームを意味してよく、略平行光ビームという用語は、完全平行光ビームも意味し得る。
図4の中段において、レンズ200と試料焦点スポットとの間に分厚い窓212が導入され、鮮明な焦点を攪乱し、より大きく散逸した焦点スポット214をもたらす球面収差が生じる。
図4の下段において、非球面レンズ200’の表面形状はわずかに変更されており、特に、焦点スポット202の鮮明な焦点が復元されるように、窓212による球面収差を考慮し取り除くように再最適化されている。
【0039】
他の態様において、本明細書の教示によると、試料容器の歪曲効果の補償は、複数の球状光学素子および/または球状トロイダル光学素子を用いることによっても実現され、これらは集合的に、光学窓または透明試料容器によって生じる光学収差を補償する形状の少なくとも1つの表面を提供し、試料の表面または体積における少なくとも1つの焦点スポットまたは少なくとも1つの焦線を鮮明化し、および/またはそのサイズを低減する。多素子サンプルレンズアセンブリは単一の非球状光学素子よりも複雑であるが、球面レンズは製造が容易であり、多素子サンプルレンズアセンブリは、試料の表面または体積における少なくとも1つの焦点スポットまたは少なくとも1つの焦線を鮮明化するためにサンプルレンズアセンブリの光学素子間の距離を変更することによって様々な状況に合わせて調整するために用いられ得る。
【0040】
例として、
図5Aおよび
図5Bは、様々な壁厚さを有する円柱ガラスバイアル252の液体内容物を測定するために適合された光学分光プローブのための多素子サンプルレンズアセンブリ250の2つの図を示す。これらの種類のバイアルは通常、直径約5mm~25mmであり、約1mm~5mmの壁厚さを有するが、特殊な状況ではより小さいまたは大きいサイズで存在する場合もある。多素子サンプルレンズアセンブリ250は、(1)「最良形態」の両凸球面シングレット254、および(2)凸球面状の第1の面256aと、バイアル252の外側円柱凸面252aと実質的に同じ曲率半径を有する円柱凹面状の第2の面256bとを有するトロイダルレンズ256の2つの素子を備える。これら2つのレンズ254および256の径は、プローブヘッド(不図示)から到来する平行励起ビームのサイズに依存するが、典型的には直径約5mm~約20mmであってよく、最良形態レンズ254は、約10mm~約30mmの焦点距離を有してよい。バイアル252の壁の厚さに依存して、多素子サンプルレンズアセンブリ250の2つの素子254と256との間隔は、バイアルの内側表面に焦点スポットを配置するように調整され得る。
【0041】
他の実施形態例において、バイアル252は、液体試料の入ったビーカ(不図示)に置き換えられてよく、この場合、トロイダルレンズ256の表面256bの曲率半径は、ビーカの外側表面曲率半径と一致するように大きくされ得る。
【0042】
また他の実施形態例において、サンプルレンズアセンブリ250は、試験管(不図示)の半球状底面を介して測定するように適合されてよく、この場合、光学素子256は、表面256bを、試験管の底面の外側の曲率半径と実質的に一致する曲率半径を有する球状凹面に改造することによって更に適合され得る。
【0043】
また他の実施形態例において、サンプルレンズアセンブリ250は、ビーカの平坦底面またはキュベットの平坦側面(いずれも不図示)を介して測定するように適合されてよく、この場合、光学素子256は、トロイダルレンズ256の表面256bを、ビーカ底面またはキュベット側面の平坦な外側表面と一致する平坦な表面に改造することによって更に適合され得る。
【0044】
他の態様において、本明細書の教示によると、非球面集束レンズおよび球状光学素子を備えるサンプルレンズアセンブリの少なくとも1つの実施形態が提供され、球状光学素子の球状湾曲面(複数も可)は、非球面レンズからの収束光線が全ての位置で表面に対し垂直に球状素子に入るように、非球面レンズの焦点スポットを実質的に中心としている。その結果、球状素子による収差が誘発されず、光線は小さな焦点スポットに集束することになる。試料は、この小さな焦点スポットに載置され、球状素子は、試料がサンプルレンズアセンブリ内に漏洩することを防ぐ窓または導管の機能を果たす。留意すべき点として、球状素子は、光線に集束作用をもたらさないので、非集束球状素子である。
【0045】
図6Aを参照すると、非球面集束レンズ302および非集束球状光学素子304を備えるサンプルレンズアセンブリ300の実施形態例が示されており、球状光学素子304は、平坦側面304a(すなわち平坦表面)を有するハーフボールレンズであり、試料110は、ハーフボールレンズの平坦側面304aに載置される。留意すべき点として、試料110は様々な形状を有してよく、
図6Aには例示のために単なる一例が示される。焦点スポット306もまた、ハーフボールレンズの平坦側面304aと試料110との間の境界面にある。有利には、この実施形態は、光学素子304と接触している試料110の表面またはその極めて近くの位置に、焦点スポットのほぼ完璧な集束を実現するための手段を提供し、その結果、特に試料110が不透明または濁っている場合に、他の光学構成よりも強く一貫性のあるスペクトル信号が生じる。
【0046】
図6Bを参照すると、非球面集束レンズ352および非集束球状光学素子354を有する多素子サンプルレンズアセンブリ350の代替実施形態例が示される。レンズ352は、レンズ302と同様であってよい。この例において、球状光学素子354は、液体または気体試料を焦点スポット356の先へ運ぶために球体の中心を貫通する細い導管またはチャネル354cを有する真球である。この実施形態は、液体または気体試料を搬送するホースまたは管(不図示)が導管354cに直接連結され、漏洩を生じやすい光学素子354と金属ハウジングとの間の金属またはエポキシ系シールが回避され得る点で、有利である。使用中、導管354cは、(特に高圧下の場合)液体で完全に満たされてよく、試料液は不透明であるため、焦点スポットは、導管354cの内側近位表面と一致する、試料の近位表面に載置され得る。球状光学素子304または354の典型的なサイズは、半径約2mm~約20mmであってよく、非球面集束レンズ302または352は、直径約5mm~約25mmであってよく、焦点距離は直径に等しい。ただし、代替実施形態において、これらの寸法は全て、ここに記載する範囲例よりも小さく、または大きくてもよい。
【0047】
図6Aおよび
図6Bの両方の実施形態例において、焦点スポット306および356と同心円状にある球面(すなわち球状光学素子304および354の球面)が収差を誘発しないことにより、これらの実施形態例に伴い出現し得る任意の球面収差、色収差、または他の光学収差が大幅に低減されるので、非球面レンズ302および352は、(
図4に示す実施形態に関して説明したように)試料プローブの平坦窓からの収差を抑えるために特に最適化される必要はない。また、球状素子304および354は、特定の測定シナリオの要件に依存して、任意のガラス、水晶、または他の透明材料で作られてよく、一般に、異なる材料の異なる反射率を補償するための光学設計の調整は必要でない。
【0048】
留意すべき点として、多素子サンプルレンズアセンブリ300および350の代替実施形態は、非球面レンズの代わりに、限定はされないがたとえば軸外し放物面鏡または楕円鏡などの非球面鏡を用いてよい。加えて、たとえば3鏡アナスチグマート設計やオフナー撮像リレーなどのように、単一の非球面レンズの代わりに複数の球面および/または非球面鏡が用いられてよい。
【0049】
他の実施形態例において、本明細書の教示によると、小さなスポットではなく直線に沿った焦点に励起ビームを届けるために、光学分光プローブと共にトロイダルまたは円柱レンズが用いられ得る。これは、延長した線に沿って試料110を照射することにより、適度に強い収集信号を維持しながら、不均質な試料の表面または内部のより全体的または平均的な評価が提供されるという点で、有利である。試料110のより大きな領域の分光感知は、集束レンズを用いずに平行ビームを試料110に直接伝送することによって実現され得るが、試料110が入射光子を等方的に散乱すると、入射光子のごく一部のみが小さな角度範囲内で後方散乱し、プローブヘッド102hのサンプルレンズアセンブリ102oおよび収集ファイバ108へ戻る。
【0050】
あるいは、本明細書の教示によると、
図7Aおよび
図7Bに示すように円柱サンプルレンズ402を有するサンプルレンズアセンブリ400は、十分に大きな散乱角度406を捕捉することにより、たとえば焦線404など、試料110のより大きな代表領域から後方散乱した光子を収集しながら、光学分光分析システムの高い測定精度または良好な感度のための強いスペクトル信号を供給するために用いられ得る。焦線404は、各々が試料110の異なる部分の測定を提供する複数の個々の焦点スポットと考えられ得る。この照射形状は、焦線404が、スペクトルデータの収集中に移動する試料110の2次元(2D)エリアを効果的に「掃引」するように、試料110の動き方向に略垂直に向けられ得ることから、試料110が一定方向(不図示)に移動または流動する場合に特に有用である。レンズ402の径または幅は平行ビームの径よりも大きくあってよいので、レンズ402の径は典型的には約2mm~約25mmであってよく、レンズ402の焦点距離は、サンプルレンズアセンブリ400に対する試料の想定位置によって決定される。レンズ402の焦点距離が、その幅または径と比べて小さい(すなわち大きなNAを提供する)必要がある場合、良好な集束鮮明度を維持し収差を防ぐために、レンズ402の1または両方の表面に非円柱形状を用いることが有利であり得る。非円柱表面は、サンプルレンズアセンブリと試料との間の試料容器(不図示)の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するためにも適合され得る。留意すべき点として、この図は、垂直方向に向けられた焦線を示すが、特定の実施形態において、焦線は任意の方向に向けられてよい。
【0051】
ここで
図7Cを参照すると、サンプルレンズアセンブリ450の代替実施形態において、サンプルレンズアセンブリは、形状がレンズ402と同様であり得るが、焦線404が試料110内の様々な深さに到達し、焦線404の一部が試料110の表面に正確に集束しながらも試料110の他の部分が焦点外れであるように試料110の表面に対して斜めの角度に方向付けられた円柱サンプルレンズ452を含む。たとえば、
図7Cにおける3つの長方形110a、110b、および110cは、試料110の表面の3つの異なる部分を表す。円柱レンズ452は、焦線454を生成する。留意すべき点として、光線は、焦線454の位置を通過し、右へ進み続けるが、焦線454を越えた光線の右側は、明確性を高めるために
図7Cでは切り捨てられている。試料110が位置110aにある場合、焦線454は、位置454aにおける試料110に完璧に集束する。あるいは、試料110が位置110bにある場合、焦線454は、位置454bにおける試料110に完璧に集束する。あるいは、試料110が位置110cにある場合、焦線454は、位置454cにおける試料110に完璧に集束する。中間試料位置(不図示)の各々は、試料表面に完璧に集束した焦線454のそれぞれの位置を有する。試料110が円柱レンズ452に近付く、または円柱レンズ452から遠ざかるように動く場合、焦線454の一部の領域はなお焦点にあるので、一貫性のあるスペクトル信号が提供される。レンズ452の可能なサイズおよび焦点距離は、上述したようなレンズ402のサイズおよび焦点距離と同様である。
【0052】
他の態様において、本明細書の教示によると、少なくとも1つの実施形態において、完全に円柱または非円柱状の光学素子(すなわち、レンズ452に関して上述したものと同様の寸法を有する円柱または非円柱レンズまたは鏡)を有するサンプルレンズアセンブリが用いられてよく、これによって、光学素子が、第1の軸に沿って平行ビームを収束させつつも、第1の軸に垂直な第2の軸に沿って収束または発散を生じないことにより、平行励起ビームの径に等しい長さを有する焦線が生じる。
【0053】
他の態様において、本明細書の教示によると、代替実施形態において、所望の測定型式に最も適した試料110の領域504を分光照明がカバーするように、焦線の長さを平行ビーム径より大きく、または小さくするように適合され得るトロイダル光学素子502を有するサンプルレンズアセンブリ500が提供される(
図8Aを参照)。この理由として、トロイダル光学素子502は、第1の軸方向(たとえば
図8Aにおける水平方向)と第2の軸方向(たとえば
図8Aにおける垂直方向)とで表面曲率が異なっていることにより、第1の軸方向には平行ビームを強力に収束させる(焦点スポット504を水平方向に狭くする)が、第2の軸方向には平行ビームを微弱にしか収束させない(その結果、焦点スポットが垂直線に広がる)。トロイダル光学素子のサイズおよび焦点距離は、たとえばサンプルレンズアセンブリ400および450など、上述の実施形態に関するものと同様であってよい。代替実施形態において、複数のトロイダル光学素子502が存在してよく、焦線は、図に示すような垂直方向だけではなく任意の方向に向けられ得る。また、代替実施形態において、トロイダル光学素子502は、サンプルレンズアセンブリと試料との間の試料容器(不図示)の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するように適合された1または複数の表面を有してよい。
【0054】
他の態様において、本明細書の教示によると、代替実施形態において、(発散円柱光学素子であってよい)第1のレンズ552および(収束円柱光学素子であってよい)第2のレンズ556を有するサンプルレンズアセンブリ550が提供され、これらは共に、第1の軸に沿って平行ビームを集束させながら第2の軸に沿ってビームを拡大し、試料110に長い焦線554を生成する(
図8B、
図8C、および
図8Dを参照)。光学素子552および556の両者は、上述した円柱レンズと同様のサイズおよび焦点距離であってよく、ただし、円柱レンズ552は負の焦点距離を有する。
図8Bは、元の平行ビームの径よりも大きい長さの焦線554を生成するサンプルレンズアセンブリ550の斜視図を示す。
図8Cは、レンズ552が第2の軸に沿ってビームを発散させ、レンズ556がその発散を変更しない様子を示す側面図を示す。
図8Dは、レンズ556が第1の軸に沿ってビームを収束させ、レンズ552が第1の軸に沿って平行ビームの経路を変更しない様子を示す上面図を示す。他の実施形態において、レンズ552は、第2の軸に沿って平行ビームを部分的に集束させ、
図8Aに直線504として示すものと同様の短い焦線を生成する収束円柱レンズであってよい。いずれの場合も、レンズ552は、試料110における所望の照射パターンの形状に依存して、第2の軸に沿って平行ビームを収束または発散させる役割を果たす。これらの実施形態は、
図8Aのサンプルレンズアセンブリ550に関して示す単一のトロイダルレンズ502よりも多い数の光学素子を必要とするが、円柱光学素子はトロイダル光学素子よりも製造が容易であり、本明細書の教示に従って選択および配置され得る市販のレンズまたは鏡として入手可能であり得るので、サンプルレンズアセンブリ550の製造プロセスが簡略化され、および/またはコストが低減される。この実施形態の代替として、焦線の向きは、垂直、水平、または他の任意の方向であってよい。また、代替実施形態において、光学素子552および556は、たとえば円柱レンズの代わりに非円柱レンズを用いて、サンプルレンズアセンブリと試料との間の試料容器(不図示)の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するように適合された1または複数の表面を有してよい。
【0055】
他の態様において、本明細書の教示によると、円柱レンズまたは鏡は、試料に焦線を生成するために、(たとえば球面または非球面レンズや集束鏡などの)標準的な光学集束素子と結合され得る。たとえば、
図8Eに示す1つの実施形態例560において、収束円柱レンズ562などの円柱光学素子および球面集束レンズ564は、試料110上に焦線566を生成するために平行ビームの経路に配置される。収束円柱レンズ562および球面集束レンズ564のサイズおよび焦点距離は、たとえばサンプルレンズアセンブリ400および450など、本明細書で説明される上述の実施形態に関して説明したものと同様であってよい。他の実施形態において、円柱光学素子は、球面集束レンズ564と結合されると同様に試料上に焦線を生成する発散円柱レンズであってよい。この実施形態の代替として、焦線の向きは、垂直、水平、または他の任意の方向であってよい。また、代替実施形態において、光学素子562および564は、サンプルレンズアセンブリと試料との間の試料容器(不図示)の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するように適合された1または複数の表面を有してよい。
【0056】
アキシコンレンズ572を標準的な光学集束素子564と結合する追加の実施形態例570が
図8Fに示される。この光学素子の組み合わせは、円形経路576内で試料110を照射する。この経路は、円の縁部を描くが、円の内側領域は照射されず、各々が試料110の異なる部分の測定を提供する複数の個々の焦点スポットと考えられ得る。この種の構成は、より代表的な試料特性の測定のために拡大された試料領域をカバーしながらも、試料からの散乱光の良好な収集効率を実現するために実質的に1つの軸(この例では極座標系の放射軸)に沿って集中することから、
図8Eの実施形態例の焦線566と同様の利点を有する。また、代替実施形態において、光学集束素子564は、サンプルレンズアセンブリと試料との間の試料容器(不図示)の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するように適合された1または複数の表面を有してよい。
【0057】
図8Eおよび
図8Fに関して上述した構成について、代替実施形態は、2つの光学素子の順序を逆にしてもよく、または2つの光学素子を1つの光学素子、たとえば第1の面に円柱またはアキシコン形状を有し第2の面に球状集束形状を有する単一の光学素子に併合してもよい。
【0058】
他の態様において、本明細書の教示によると、プローブヘッド102hから発出する平行ビームの経路内に複数の集束素子を配置することによって、試料110のより全体的または空間平均的な分光学的評価が取得され得る。たとえば、
図9Aに示す1つの実施形態例において、サンプルレンズアセンブリ600は、(「レンズレットアレイ」と称されることが多い)小レンズの2次元アレイ602を備え、これは有利には、集合的に平行励起ビームを複数の焦点スポット604a~604nに集束させ、レンズレットアレイ602内の各小レンズもまた、それぞれの焦点スポットからの散乱光の一部を捕捉および平行化して、フィルタされ収集ファイバ108に集束する複数の平行な平行集合ビームをプローブヘッド102hに送り返す。測定されるスペクトルは、各焦点スポット604a~604nからの戻り散乱光ビームのスペクトル全ての加重平均であり、単に単一の位置で試料110を測定するのではなく全体として試料110のより代表的なビューを提供する。代替実施形態において、レンズレットアレイは、円柱レンズの1次元(1D)または2Dアレイまたは曲面鏡の2Dアレイであってよい。また、代替実施形態において、レンズレットアレイ602の個々のレンズレットの表面は、サンプルレンズアセンブリ600と試料110との間の試料容器(不図示)の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するように適合され得る。異なる代替実施形態において、複数の焦点スポットは、レンズレットアレイ602の個々のレンズレットの表面を適合すること、または追加の光学素子(不図示)を追加することによって、複数の焦線または複数の焦点円に変更されてよく、これらの変更は、
図8Eの光学素子562または
図8Fの光学素子572と同様の形式で略平行ビームの一部に作用し得る。
【0059】
代替実施形態において、
図9Bに示すサンプルレンズアセンブリ620を参照すると、平面鏡624a~624dの1Dまたは2Dアレイは、複数のビーム部分の各々が試料110の表面または内部の様々な位置630a~630dにおける様々な焦点スポットに集束するように、到来する平行ビームの複数のビーム部分を1または複数の集束光学素子628に向け直してよい。平面鏡624a~624dは、各鏡の平面が隣接する鏡に対してわずかに角度を有する個々の平面鏡であってよく、または単一のモノリシックな光学素子の異なる角度を有する面であってよく、またはこれらの方法の組み合わせであってよい。サンプルレンズアセンブリ620の実施形態例に示すものよりも多いまたは少ない数の鏡面が存在してもよい。また、代替実施形態において、集束光学素子628は、位置630a~630dに、より鮮明な焦点および/または小さなサイズの焦点スポットを生成するために、サンプルレンズアセンブリと試料との間の試料容器(不図示)の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するように適合された1または複数の表面を有してよい。代替または追加として、少なくとも1つの代替実施形態において、鏡面624a~624dは、試料容器の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するように適合され得る。
図9Aおよび
図9Bのサンプルレンズアセンブリ600および620の両者の個々のレンズレットまたは個々の鏡面は、それぞれ、典型的には1mm~5mmのサイズであってよいが、特定の実施形態に関して必要な場合、より小さくまたは大きくてもよい。代替実施形態において、レンズレットまたは個々の鏡面は、照射されている試料部分のサイズ、形状、または分布に最も適した焦点スポットの特定の分布をもたらすような形状、位置、および/または角度であってよい。異なる代替実施形態において、複数の焦点スポットは、鏡面624a~624dの表面を適合すること、または追加の光学素子(不図示)を追加することによって、複数の焦線または複数の焦点円に変更されてよく、これらの変更は、
図8Eの光学素子562または
図8Fの光学素子572と同様の形式で略平行ビームの一部に作用し得る。
【0060】
他の態様において、本明細書の教示によると、(a)プローブヘッドから異なる距離にある、および/または(b)試料(不図示)内の異なる深さ(110p1~110pq、qは整数)にある位置に焦点スポットが形成されるように、異なる焦点距離を有し得る、または平行ビーム656の主光軸654に沿った異なる位置に配置され得る集束光学素子のアレイ652を備えるサンプルレンズアセンブリ650を示す他の実施形態例が
図10に示される。異なる実施形態において、集束光学素子のアレイは、たとえば
図9Aおよび
図9Bなどの焦点スポットの2Dアレイ、またはたとえば
図10などの1Dアレイを提供するように配置され得る。サンプルレンズアセンブリ650は、実質的に透明かつ化学的に不均質な試料の光学特性を取得するために用いられてよく、試料からの戻り散乱光は、試料内の多数の異なる深さからの平均スペクトル特性を評価するために光学分光分析システムによって用いられ得る。サンプルレンズアセンブリ650は、限定はされないがたとえば粉末、ペレット、またはビーズなどの不規則な固体試料の表面の測定にも用いられてよく、いくつかの焦点スポットが正確に試料表面に集束し得る一方で他の焦点スポットは焦点外れであるが、焦点の合っていないスポットの各々が焦点の合っているスポットによって相殺される傾向があるため、全体信号強度における変動は最小限に抑えられる。加えて、代替実施形態において、各集束光学素子652は、サンプルレンズアセンブリ650と試料との間の試料容器(不図示)の光学窓または透明領域によって生じる収差を補償するように適合された1または複数の表面を有してよい。
【0061】
留意すべき点として、焦線または複数の焦点スポットを提供する、本明細書で説明されるサンプルレンズアセンブリの様々な構成は、一般に、計器の視野内の複数の空間位置から同時に独立したスペクトルが収集されるデバイスであるハイパースペクトル撮像素子の役割を果たすものではない。ハイパースペクトル撮像は、複数のスペクトルを並行して収集するために、より高度な光学素子を必要とする傾向がある。対照的に、本教示は、試料表面および/または試料内の複数の位置からの戻り散乱光の全てを結合し、戻り散乱光を単一の収集ファイバに集束させるものであり、その結果、単一の結合スペクトルが収集される。
【0062】
他の態様において、本明細書の教示によると、焦線を生成するサンプルレンズアセンブリ構成および複数の焦点スポットを生成するサンプルレンズアセンブリ構成の両方が、有利には、光学焦点スポットの向こう側へ流れる液体またはスラリー試料の分光測定を行うために一般的に用いられるデバイスであるフローセルに統合または追加され得る。この統合は、典型的には、焦点スポット(複数も可)または焦線(複数も可)を流路の表面または内部に配置するために、サンプルレンズアセンブリのハウジングとフローセルのハウジングとの間の機械的結合または連動機構の形式をとる。単一の焦点スポットを用いる従来の分光フローセルは、全ての励起パワーを小さな焦点スポットに集めるので、光パワー密度が十分に高い場合、試料を損傷または変質させ得る。また、これらの従来のフローセルは、試料媒体が不均質であり、化学的に異なる試料材料の微粒子または他の領域が、光学分光プローブの小さな焦点スポットを通過することなくフローセルを容易に通過し得る場合、非代表的なサンプリングを生じやすい傾向もある。しかし、本明細書の教示によると、励起光ビームを延長された焦線または複数の個別の焦点スポットに集束させる実施形態が提供され、従来の分光フローセルに関連するこれらの非代表的サンプリング問題の両方が軽減され得る。
【0063】
加えて、
図7A~10の実施形態によると、光学測定ゾーンは、より広範なエリアまたは複数のエリアにわたって広がり、流動性液体試料または他の試料タイプを運搬する試料チャネルは、試料の流れを過度に妨害または抑制することなく、(主光軸に沿って測定した時に)非常に浅く作られ得る。例として、従来のフローセルにおける単一の試料チャネルは、直径約0.5mm(すなわち幅0.5mmおよび深さ0.5mm)であり得るので、同様のサイズの粒子による閉塞や、試料流体の粘度が高い場合に流れ抑制を生じやすいが、深さ約0.5mmおよび幅約5.0mmの浅く幅広なチャネルは、約10倍の大きさの断面積を有するので、スムーズな流体の流れが可能である。浅く幅広な測定チャネルを生成する利点は、励起光ビームが、試料液の光の不透明度にかかわらず、ほぼ一定の体積の試料液をサンプリングすることである。対照的に、従来の分光フローセルの場合、液体は、焦点励起スポットの位置において数ミリメートルの「深さ」にあり得る。試料液が比較的透明である場合、励起光ビームは試料液の深さ全体を貫通することができ、戻り散乱光はわずかに減衰するのみでプローブの収集レンズに戻り得るので、収集されたスペクトル信号は強く、ほとんど問題はない。しかし、試料液が比較的不透明または濁っており、試料チャネルの深さと同様またはそれ未満の(「平均自由行程長」または「平均光散乱経路長」としても知られている)光散乱距離を有する場合、励起光ビームは試料内まで通らず、戻り散乱光は吸収され、またはプローブの収集レンズ内に戻る経路から逸脱し得るので、調査される実質的な試料体積が減少し、それに応じてスペクトル信号強度が低下する。従来の分光フローセルにおいてスペクトル信号強度が試料の不透明度に依存することにより、スペクトルデータの定量的な解釈が極めて複雑になる。
【0064】
本明細書の教示によると、試料の最小光散乱距離と比べて(深さが)浅く、かつ大きな流体流体積を受け入れるように(幅が)広い試料チャネルが用いられる場合、深い試料チャネルが用いられる場合と比べて、小さな体積の試料が測定されることにより、スペクトル強度は低下し得るが、スペクトル強度が試料の不透明度に最小限にしか依存しないので、一貫性の高い測定結果が得られる。
【0065】
ここで
図11Aおよび
図11Bを参照すると、円柱収束集束レンズであってよい第1のレンズ702と、試料窓706、入口708aおよび出口708bを有する試料流路708、および流れ狭窄部710aおよび流れ拡張部710bを含むフローアセンブリ710を有する試料インタフェース704とを含むサンプルレンズアセンブリ700が示される。試料(不図示)は、入口708aを通って試料流路708に流入し、出口708bを通って流出する。試料の流動方向は、矢印で示される。代替実施形態において、入口708aおよび出口708bの位置は逆であってよい。集束レンズ702は、第1の軸に沿った平行励起光ビーム712を収束光ビーム714に集束させ、試料流路708に隣接した試料窓706の表面で単一の焦線716に向ける。フローアセンブリ710と試料窓706との間の最も狭い隙間により、試料液が試料流量を過度に抑制することなく、また試料流路708の詰まりや閉塞の危険性を高めることなく流れるための浅く幅広いチャネルが提供される。試料窓は、約1mm~約5mmの厚さであってよく、試料流路708の最も狭い領域は、約0.1mm~約1.0mmの幅であってよい。代替実施形態において、レンズ702は、窓706を通過する収束ビームによって生じる収差を補償するように適合された1または複数の表面を有してもよい。
【0066】
代替実施形態において、
図11Cに示すような光学素子722を備えるサンプルレンズアセンブリ720が提供される。光学素子722は、光学素子722がレンズレットアレイであるという点で光学素子702と異なっている。サンプルレンズアセンブリ720は、試料のより代表的なスペクトル測定を得るために、試料窓706に沿った複数の位置で試料(不図示)を同時に照射する対応する複数の焦点スポット724a~724cに収束する複数の収束光ビーム714a~714cを生成するための光学素子722(たとえば集束レンズの1Dアレイ)を用いる。光学素子722は、レンズレットアレイ、複数の個々のレンズ素子、または同じ機能を提供する他の光学素子(複数も可)を用いて実装され得る。他の実施形態において、光学素子722は、より多いまたは少ない数の収束光ビームを生成するために、より多いまたは少ない数のレンズレットを有するように実装され得る。また、少なくとも1つの代替実施形態において、レンズレットアレイ722の表面は、焦点スポット724a~724cのサイズを低減し、および/または焦点を鮮明化するために、窓706によって生じる収差を補償するように適合され得る。
【0067】
留意すべき点として、複数の光学素子を有するレンズレットアレイを用いる、本明細書で説明される様々な実施形態において、これらの素子は、サンプルレンズアセンブリが平行励起光ビームを受け取る時、試料に適した直線、格子、または他の横方向分布を含むパターンで複数の個別の焦点スポットを生成するための配置で位置し得る。
【0068】
他の代替実施形態において、サンプルレンズアセンブリ700または720は、(たとえば
図8A、
図8B、
図8C、
図8D、
図9A、または
図9Bのサンプルレンズアセンブリ実施形態のように)異なるサイズの励起光の焦線または異なる数および/または配置の焦点スポットを生成するために、単一の円柱集束レンズ702またはレンズレットアレイ722の代わりに異なる光学素子または異なる数の素子が用いられるように変更され得る。たとえば、この変更されたサンプルレンズアセンブリは、流路708内の単一の幅広く浅いチャネルの幅と一致するように、励起光716の焦線の長さまたは励起光724a~cの複数の焦点スポットの間隔を調整するために用いられ得る。
【0069】
サンプルレンズアセンブリ700または720の代替実施形態のいずれにおいても、試料流れ開口部の断面(すなわち焦線716付近の試料流路部分)は、より長い焦線または多い数の焦点スポットによって大幅に大きく作られてよく、試料流量を多くし、詰まりへの影響が少なくされる。
【0070】
本明細書で説明される出願者の教示は、例示のために様々な実施形態と関連しているが、出願者の教示がそのような実施形態に限定されることは意図されておらず、本明細書で説明される実施形態は例であることが意図されている。対照的に、本明細書で説明され示される出願者の教示は、本明細書で説明される実施形態から逸脱することなく様々な代替、変更、および均等物を包含するものであり、その範囲全般は、添付の特許請求の範囲において定義される。
【国際調査報告】