(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】操縦可能なカテーテル先端のためのプラスチックレーザ溶接
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20230405BHJP
A61M 25/092 20060101ALI20230405BHJP
A61L 29/14 20060101ALI20230405BHJP
A61L 29/06 20060101ALI20230405BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20230405BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230405BHJP
B29C 65/16 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61M25/00 500
A61M25/092 500
A61L29/14
A61L29/06
A61L29/04 100
B23K26/21 N
B29C65/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549918
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2021018953
(87)【国際公開番号】W WO2021168389
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(71)【出願人】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】ラウ ナサニエル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】チャン ショウナ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ジョエル シー
(72)【発明者】
【氏名】スピード テリー
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
4E168
4F211
【Fターム(参考)】
4C081AC08
4C081CA021
4C081CA051
4C081CA161
4C081CA231
4C081CB05
4C081DA03
4C081EA14
4C267AA05
4C267BB03
4C267BB07
4C267BB12
4C267FF01
4C267GG07
4C267HH17
4E168BA16
4E168BA21
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB23
4E168DA02
4E168DA26
4E168DA28
4E168EA15
4E168EA17
4F211AD12
4F211AD35
4F211AG08
4F211AG11
4F211AH63
4F211TA01
4F211TC23
4F211TD11
4F211TN27
(57)【要約】
本開示は、製造方法、装置及び固定具に関する。インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングと、少なくとも2つのガイドリングの各々を通って延び、中空チャンバに平行である少なくとも1つのルーメン部と、を備える装置が提供され、少なくとも2つの構成要素は、溶接によって固定される。更に、固定具及び製造方法が提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、
前記インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々を通って延び、前記中空チャンバに平行である少なくとも1つのルーメン部と、
を備える装置であって、
前記少なくとも2つのガイドリングは、前記インナーライナに溶接される、
装置。
【請求項2】
インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、
前記インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々を通って延び、前記中空チャンバに平行である少なくとも1つのルーメン部と、
を備える装置であって、
前記少なくとも2つの構成要素は、溶接によって固定される、
装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つのガイドリングの各々の1つのルーメン部は、ワイヤが摺動できるようなルーメンを前記湾曲可能体に形成するように配置される、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ルーメン内の少なくとも1つのワイヤ、
を更に備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つのガイドリングの周りに設けられ、前記インナーライナの端から端まで延びるアウターライナ、
を更に備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも6つのガイドリングを備え、
少なくとも2つのガイドリングは、それぞれ少なくとも9つのルーメン部を含む、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも2つのガイドリングを通って延びる少なくとも9本のワイヤ、
を更に備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのルーメン部は、前記少なくとも2つのガイドリングを前記インナーライナに溶接するプロセスによって顕著に変化しなかった、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つのガイドリングと前記インナーライナの間の溶接部は、前記ガイドリングの内径と前記インナーライナの外径の円周の少なくとも半分に延在する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも2つのガイドリングと前記インナーライナの間の溶接部は、前記ガイドリングの内径と前記インナーライナの外径の円周の全体に延在する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項11】
前記インナーライナと前記少なくとも2つのガイドリングは、両方ともPEBAXから形成される、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項12】
前記インナーライナは、0.1~5%のカーボンブラックを含有する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項13】
前記インナーライナに沿って集合的に設けられた複数のガイドリングを備える、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項14】
インナーライナの外側に、少なくとも1つのルーメン部を有する少なくとも2つのガイドリングを組み合わせて、組立体を作製するステップと、
前記組立体を、前記少なくとも2つのガイドリングの間の距離を設定するように構成された固定具に配置するステップと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々を、前記インナーライナに溶接するステップと、
を含む製造方法であって、
前記少なくとも2つのガイドリングは、実質的に透明であり、前記インナーライナは、非透過性の光吸収材料で作られている、
方法。
【請求項15】
前記固定具は、離散的な間隔で直線的に動くように構成され、前記間隔は、前記ガイドリングの間隔である、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記固定具は、設定された溶接長さに基づいて回転するように構成される、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
溶接の前に、前記インナーライナにマンドレルを挿入するステップ、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも2つのガイドリングの各々の第1の位置での溶接が完了した後、前記固定具は、前記少なくとも2つのガイドリングが溶接が行われるべき第2の位置にあるように、回転するように構成される、
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも2つのガイドリングの各々に溶接を行うステップと、前記少なくとも2つのガイドリングを次の溶接のための位置まで回転させるステップは、所望の溶接が全て完了するまで繰り返される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つのガイドリングは、Pebaxで作られている、
請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記インナーライナは、少なくとも0.5%のカーボンブラックを含むPebaxで作られている、
請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも2つのガイドリングの各々を前記インナーライナに溶接するステップは、ルーメン包含領域と非ルーメン包含領域の両方を通した溶接を必要とする、
請求項14に記載の方法。
【請求項23】
ビジョンシステムと、
レーザ発生器と、
伝送ファイバと、
ビーム整形器と、
ガルバノメータヘッドと、
電動固定具と、
前記ビジョンシステム、前記電動固定具及び前記レーザ発生器と通信する制御装置と、
を備えるレーザ溶接システムであって、
前記レーザ溶接システムは、操縦可能医療機器の2つ以上の構成要素を溶接するように構成される、
レーザ溶接システム。
【請求項24】
前記レーザ溶接システムは、インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、前記インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングとを溶接するように構成される、
請求項23に記載のレーザ溶接システム。
【請求項25】
前記レーザ溶接システムは、(i)アウターライナを1つ以上のガイドリングに溶接し、又は、(2)押出部をインナーライナに溶接するように構成される、
請求項23に記載のレーザ溶接システム。
【請求項26】
前記レーザ溶接システムは、ルーメン包含領域と非ルーメン包含領域の両方を有する少なくとも1つの材料によって溶接するように構成される、
請求項23~25のいずれか1項に記載のレーザ溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
【0002】
本願は、米国仮特許出願第62/979930号(2020年2月21日に出願)及び第63/132743号(2020年12月31日に出願)に対する利益を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、製造方法、装置及び固定具に関する。より具体的には、本開示は、製造方法と、湾曲可能医療機器であって、当該機器に沿って中空チャンバ及びリングガイドを有する機器と、を対象とする。
【背景技術】
【0004】
医療分野では、内視鏡手術器具やカテーテル等の湾曲可能な医療機器がよく知られており、受け入れられ続けている。湾曲可能な医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる可撓体を含む。可撓体に沿って(典型的には、内側に)1つ以上のツールチャネルが延びており、可撓体の遠位端に位置する標的へのアクセスを可能にする。
【0005】
一部の湾曲可能機器には、インナーライナとアウターライナがあり、また、可撓体の作動に寄与する任意の他の構成要素が機器内にある。しかしながら、湾曲可能機器の直径が小さい必要があり、機器の遠位端において曲率が高い必要がある場合、様々なライナと構成要素によって剛性が増し、十分に機器が曲がることが妨げられるので、このような構成はあまり有用ではない。よって、ワイヤを誘導するように機器に沿って配置されるガイドリングが、機器の制御のために使用される。例えば、米国特許第9,144,370号を参照されたい。ガイドリングを備える湾曲可能医療機器の別の例は、WO2018/204202に記載されている。この機器では、ガイドリングは、接着剤によってインナーライナ(又はバックボーン)に取り付けられる。しかしながら、製造中に接着剤を使用することは、必ずしも好ましいとは限らない。なぜなら、接着剤は塗布が難しく、不要な材料が追加されるおそれがあり、ガイドリング構造の間隔を調整することができないからである。特に、ガイドリングの間隔は、湾曲可能医療機器の機能性に直接影響を与える。接着剤は、塗布された当初に潤滑剤のように作用する場合があり、これにより、接着剤の接着が固まり始めるまで構成要素が動きやすくなってしまい、ガイドリングの間隔が変化したり一貫性がなくなったりする傾向が強くなる。また、カテーテルが適切に機能するには、リング間に接着剤がないこと、或いは、リング内の小さなルーメンが塞がれないことも重要となる。接着剤がリング間に配置されたり、或いは接着剤がルーメンを塞いだりすると、湾曲可能医療機器は、湾曲可能な自由度をいくらか失ってしまうおそれがある。接着剤は一般に手作業で塗布されるが、カテーテル構成要素のサイズによっては、前述したような接着剤の誤塗布がないようにそのような手作業を完了することは、困難な場合がある。更に、接着剤による接着強度は一貫しない場合があり、また、必要なカテーテルの耐久性に必要となる強度よりも低くなる場合があるが、ガイドリングのいずれかが緩んだりずれたりすると、カテーテルの機能に悪影響を及ぼすおそれがある。よって、このような問題を解決するための追加の湾曲可能機器及び製造方法が求められている。長さが短く、内部にルーメンを包含するガイドリングを、機器に沿って決まった間隔で取り付ける必要がある。
【0006】
現在、構成要素の取付けには、複数の添加法と非添加法が存在する。超音波や熱等の非添加法を使用することもできるが、そのプロセスでは、周囲の材料を変形させるおそれがあり、あまり局所的には使用することができず、カテーテル等の小径の機器には使用が困難である。これには例外もある。欧州特許第1234595号では、1580ナノメートル以下の赤外波長(すなわちND:YAGレーザや低出力ダイオードレーザ)を用いて、バルーンとカテーテル体の間でプラスチックレーザ溶接を行うバルーンカテーテルが提供されている。しかしながら、これが有効なのは、カテーテルの全長に沿って延びる薄いシート状の材料であるバルーンを、単純に接着する場合である。よって、ここに記載されるような欠陥を克服して、ガイドリングを通るルーメン部の構成を変えることなく取り付けられる必要のあるガイドリングを有する機器、或いは、既知の間隔を置いた関係で接着されたガイドリングに関して、湾曲可能機器及び製造方法を形成する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、以下を備える装置が提供される:インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナ;インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリング;少なくとも2つのガイドリングの各々を通って延び、中空チャンバに平行である少なくとも1つのルーメン部。少なくとも2つの構成要素は、溶接によって固定される。本装置は、カテーテルの遠位部分であり得るアウターライナを備えることもできる。本装置は、押出部を更に備えることができる。更なる実施形態では、少なくとも2つのガイドリングがインナーライナに溶接され、かつ/又は、アウターライナが少なくとも2つのガイドリングに溶接され、かつ/又は、押出部がインナーライナに溶接される。一部の実施形態では、本装置は複数のワイヤも備え、当該ワイヤは、ルーメンを通って延び(ガイドリングの一部又は全部を通って)、或いは、本装置が様々なセクションを有する場合は、ガイドリングの少なくとも1つのセクションを通って延びる。
【0008】
本発明の他の実施形態によれば、製造方法が提供される。本方法は、以下を含む:インナーライナの外側に、複数のガイドリングを組み合わせて、組立体を作製するステップ;組立体を、複数のガイドリングの間の距離を設定するように構成された固定具に配置するステップ;及び、複数のガイドリングの各々を、インナーライナに溶接するステップ。複数のガイドリングは、実質的に透明であり、少なくとも1つのルーメン部を含む。更なる実施形態によれば、溶接は、ルーメン包含領域と非ルーメン包含領域の両方を通して行われる。本発明の更に他の実施形態によれば、レーザ溶接システムが提供される。本システムは、ビジョンシステムと、レーザ発生器と、伝送ファイバと、ビーム整形器と、ガルバノメータヘッドと、電動固定具と、ビジョンシステム、電動固定具及びレーザ発生器と通信する制御装置と、を備えてよい。レーザ溶接システムは、操縦可能医療機器の2つ以上の構成要素を溶接するように構成される。更なる実施形態によれば、溶接は、ルーメン包含領域と非ルーメン包含領域の両方を通して行われる。他の例示の実施形態では、本システムは、(i)インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングとを溶接し、(ii)アウターライナを1つ以上のガイドリングに溶接し、かつ/又は、(iii)押出部をインナーライナに溶接するように構成される。
【0009】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0011】
【
図1】
図1は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の医療機器の3次元側面斜視図を示す。
【
図2】
図2は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の医療機器の3次元側面斜視図を示す。
【
図3】
図3は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の医療機器において光吸収インナールーメンに溶接された透明リングを示す実施形態の図である。
【
図4】
図4は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、医用装置を形成する方法の溶接形状を示す実施形態の図である。
【
図5】
図5は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、医用装置を形成する方法の別の溶接形状を示す実施形態の図である。
【
図6】
図6は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の医療機器の3次元側面斜視図を示す。
【
図7】
図7は、本発明と併用され得る例示のレーザ構成である。
【
図8】
図8は、本発明と併用され得る例示のコンピュータ構成である。
【
図9】
図9は、本発明と併用され得る例示のレーザパターンを示す図である。
【
図10】
図10A及び
図10Bは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、溶接長さの差を示す3次元側面斜視図である。
【0012】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載の装置、当該装置の製造方法、システム及び製造構成は、カテーテル製造と、構成要素の取付けに関する(例えば、(i)例えばカテーテルのインナールーメンを形成するインナーライナに対する、ガイドリングの取付け;(ii)例えばカテーテルの外側部分を形成するアウターライナに対する、ガイドリングの取付け;及び/又は、(iii)例えばカテーテルの一部を形成する押出部と、本製造によって作製された医用装置に対するガイドリングの取付け等)。
【0014】
一部の実施形態では、医用装置の遠位部分は、例示の湾曲可能医療機器の3次元側方斜視図を示す
図1及び
図2に示されている。湾曲可能医療機器は、湾曲可能体26内に拘束された少なくとも2つのガイドリング36a、36b(36a、36b、36c、36dの4つが示されている)を含む。ガイドリング36は、互いに距離を置いて構成され、互いに接触しない。
【0015】
湾曲可能体26は、インナーライナ44及びアウターライナ46を有し、これらは、湾曲可能体26の軸方向に沿って一定の位置にガイドリング36を保ちながら、湾曲可能な支持を湾曲可能体26に提供する。インナーライナ44の内側には、中空チャンバ28が、インナーライナの端から端まで延在している。この中空チャンバ28は、例えば、カテーテルのツールチャネルや作業チャネルとして用いることができる。各ガイドリング36には、少なくとも2つのルーメン部34が含まれ、ガイドリング36に埋め込まれるアンカーセグメント32a、32bを収容するように構成される。隣接するガイドリング間の空間は、弾性のあるインナーライナ44及びアウターライナ46と相まって、湾曲可能体26がガイドリング36間のオープンスペースのおかげで、より大きな範囲の曲げ運動を達成することを可能にする。
【0016】
医用装置は、サイズや操作性を含め、生体内での使用に合わせて構成及び/又は適合されている。分離したセクションと連続したアウターライナ46の構成は、患者の生体構造に対応するように、ナビゲーションに必要な柔軟性に調整することができる。ガイドリング36の間隔は、例えば湾曲可能体26の曲げ範囲、直径及び構造に応じて、広くしたり狭くしたりすることができる。図示のように、全てのガイドリング36は等間隔に配置されている。しかしながら、一部の実施形態では、間隔は変化してよい。例えば、湾曲可能体26の異なる湾曲可能セグメント間のガイドリング36間の距離が異なってもよいし、1つの湾曲可能セグメント内のガイドリング間隔が、別の湾曲可能セグメント内のガイドリング間隔と異なってもよいし、ガイドリング間隔が湾曲可能体26に沿って徐々に広くなったり狭くなったりしてもよい。インナーライナ44及び/又はアウターライナ46の直径も、患者の生体構造に基づいて変更することができる。一部の実施形態では、湾曲可能機器の外径(アウターライナ46の外径である)は、より侵襲性の低い手技と、より小さな生体構造に対する医療機器の使用の両方を可能にするように、最小化される。例えば、肺の区域気管支又は亜区域気管支内の操縦には、外径が5mm、4mm、3mm又は2mmよりも小さい機器を用いられる場合がある(例えば米国特許出願公開第2019/0105468号(参照により本明細書に援用される)参照)。
【0017】
図2は、入れ子状の制御ワイヤの使用例を更に示し、少なくとも2つのガイドリング36と併せて1組のルーメン部34の内部に、ワイヤ40a、42aが示されている。更に、この実施形態により、複数の制御ワイヤ40a、42aは、アンカーセグメント(32a、32b)で固定することができ、また、湾曲可能体26のルーメン部34を通して摺動自在に動作することができる。例示の構成のひとつとして入れ子状の制御ワイヤが図示されているが、代替の実施形態、例えば別個のワイヤを用いることができる。別個のワイヤは、1つ以上のルーメン部において固定されてもよいし、完全に摺動自在であってもよい。固定される場合、別個のワイヤは、同じ位置で固定されてもよいし、異なる位置で固定されてもよい。制御ワイヤの他の適切な構成は、当業者には明らかであろう。
【0018】
インナーライナ44に対する複数のガイドリング36の接着は、接着剤の代わりにレーザ溶接を用いて、
図3に示される湾曲可能体26を形成する。この医療機器の遠位部分は、任意のアウターライナ又はシース46を含まない状態で示されている。複数のガイドリング36は、ワイヤが各リングガイド36のルーメン部34を通して挿入され得るように、全てのルーメン部34が位置合わせされた状態で、インナーライナ44に沿って間隔を置いて配置される。よって、湾曲可能体26は、中空チャンバ28に平行に延びるワイヤ40a、42a(図示なし)を含むこともでき、ワイヤ40a、42aの各々は、ガイドリング36のルーメン部34を通って延びる。ルーメン部34の配列が、湾曲可能体26内でインナーライナ44とアウターライナ46の間で近位に延びることにより、ワイヤの配置を制御する効果的なルーメンが形成される。一部の実施形態では、ガイドリング36の少なくとも一部の中に、9本以上のワイヤが配置される。
【0019】
例示の一実施形態では、レーザ溶接によって、アウターライナ46をガイドリング36に固定することができる。また、任意に、このようなガイドリング36をレーザ溶接によってインナーライナ44に固定することもできる。このような例示の実施形態では、アウターライナ46は、ガイドリング36の材料よりも透明度の高い材料で作られてよく、ガイドリング36は、インナーライナ44の材料よりも透明度の高い材料で作られてよい。よって、溶接される最も外側の構成要素の透明度が、それが溶接される構成要素の透明度よりも高くなるように、溶接される構成要素は、様々な透明度の材料で作ることができる。溶接される構成要素の数に応じて、溶接される全ての構成要素の透明度は、合計で2通り、3通り、4通り、5通り又はそれ以上の異なる透明度(又はレベル)であり得る。一例の実施形態では、湾曲可能体のうち固定を必要とする構成要素は、溶接によって達成される固定を有することができる。
【0020】
図3に示されるような湾曲可能体を形成するために、
図4に示されるように、溶接プロセス中に構成要素を適所に保持するための固定具50が用いられる。ガイドリング36の回転配置を補助するために、各ガイドリング36のルーメン部34に1本以上のワイヤを挿入することができる。或いは、湾曲可能体に沿って複数のガイドリングを位置合わせするために、ガイドリング36は、ガイドリングの外側部分に、例えば空洞又は刻み目を含むことができる。固定具50は、ガイドリング36同士の所望の位置合わせを確実にするために、1つ以上の固定具スペーサ52を含んでもよい。固定具スペーサ52は、ガイドリング36が一貫した間隔を有することが望まれるのか、或いは別の所望の構成を有することが望まれるのかに基づいて、同じ寸法を有してもよいし、異なる寸法を有してもよい。レーザ溶接は、構成要素が固定具50内の位置からずれるのを防ぐために、最初に構成要素を適所に留めるように用いることができる。
【0021】
ガイドリングは、インナーライナよりも光吸収の低い材料で作られる。よって、湾曲可能体に集光すると、光はガイドリングを透過してインナーライナに到達し、例えば透過溶接によって、2つの材料の界面で溶接を行うことが可能となる。例えば、ガイドリングは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル(EVA)、或いは熱可塑性エラストマー(Pebax(登録商標)等のTPE)の押出し成形から形成することができる。これらの材料には、溶接可能でなければならないという制約がある。インナーライナは、同じ又は異なる硬さをもつ同じ種類の材料で形成されるが、高い光吸収性をもつことになる。一部の例では、インナーライナは、インナーライナの吸収性を高めるために、ある割合の染料又はカーボンブラックを含み、例えば、0.1~5%(例えば0.1%、0.5%、1.0%、2%、3%、4%、5%)のカーボンブラックを含むPebaxである。特定の実施形態では、インナーライナは、少なくとも0.5%のカーボンブラックを含んでよい。一部の実施形態では、X線による可視性と好ましい溶接特性の両方を提供するために、放射線透過性添加物が添加される(例えば硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、タングステン)。
【0022】
重要なことは、ガイドリングの吸収する光がインナーライナよりも少ないことであり、一部の実施形態では、ガイドリングは、溶接プロセスに使用される光の波長において実質的に透明である。ただし、透明性は必須ではない。重要なことは、リングガイド36が十分に透明であり、レーザパターンが十分に集光され、リングガイド36を通って延びるルーメン部34が、レーザ溶接プロセスによって溶けたり、実質的に変形したりしないことである。一部の実施形態では、ガイドリングをインナーライナに接着する溶接プロセスによって、いずれのルーメン部も顕著に変化しないことが好ましい。ルーメン部が顕著に変化するのは、ルーメン部34を通してワイヤを挿入したときに、ルーメン部を通したワイヤの摺動の自由度が低い場合や、ルーメン部の構造が50マイクロメートル、或いは10マイクロメートル、或いは2マイクロメートルよりも大きく変化する場合である。
【0023】
図4には、溶接プロセス中に使用される固定具50の一部が示されている。この図が例示する構成では、湾曲可能体26は、複数の固定具スペーサ52を有する固定具50と水平位置にあり、固定具スペーサ52は、固定具スペーサ52の間隔によって定められる一定量だけガイドリング36を分離する。
図4の固定具スペーサ52は、四角形のユニットとして示されているが、代替として円形や三角形の構造に設計することもできる。レーザ54は、透明度の高いガイドリング36と透明度の低いインナーライナ44の間の界面において、湾曲可能体26上に光56を提供するように位置付けられる。この例示の実施形態では、レーザ54は固定され、湾曲可能体26は矢印64で示されるように回転する。これにより、湾曲可能体26が回転すると、レーザパターン58が、リングガイド36/インナーライナ44の界面の内側の周りを通り、溶接部60を形成することができる。
【0024】
レーザ溶接では、多くの場合、溶接される材料間の堅固な物理的接触が必要となる。よって、本発明の一態様は、そのような接触を保証するために、厳しい公差を設けることである。一例の実施形態では、インナーライナ44の内側からガイドリング36の内側に向かって外方向に圧力を加えることができるように、中空チャンバ28に(すなわち、可撓性材料(例えば15~55GPaの曲げ弾性率をもつ材料)で作られるインナーライナ44内に)、マンドレル(図示なし)を挿入することができる。本開示の範囲内で、インナーライナ44の内側からガイドリング36の内側へ外方向に加えられる圧力の量は、中空チャンバ28に挿入されるマンドレルのサイズに基づいて変化し得る。一部の実施形態では、マンドレルは、マンドレルの形状に容易に適応できるインナーライナと組み合わせされるので、インナーライナとガイドリングの間の堅固な接触が保証される。そのような用途では、マンドレルがインナーライナの直径を十分に広げ、インナーライナとガイドリングを密着させる。更に、インナーライナは、接触を保証するように、インナーライナの外径とガイドリングの内径が干渉するように設計されてよい(同じ材料特性を使用)。マンドレルは、溶接プロセス中にインナーライナ内に残されてよい。更に、マンドレルは、反復可能で一貫した回転を提供する自動化手段等によって、湾曲可能体26を回転させるように回転することができる。例示のマンドレルは、中空チャンバ28に対して容易に挿入及び除去できるものであり、そのような挿入及び除去を可能にする材料で作ることができる。一例の実施形態では、マンドレルは、テフロンや同様の非粘着材料等の、摩擦係数の低い物質でコーティングされてよい。溶接部は、湾曲可能体26の円周の全体に及んでもよいし、一部に及んでもよい。1つのガイドリング36をインナーライナ44に溶接した後、固定具50は、レーザパターン58が第2のリングガイド/インナーライナの界面で湾曲可能体に入射するように、矢印62で示されるように並進することができる。
図4及び
図5に提供される固定具50により、湾曲可能体の形成に使用される全ての部品を、溶接中に適所に保持し、位置合わせすることが可能となる。
【0025】
代替構成は、
図5に示すように、凹面ミラー62内に湾曲可能体26を垂直に位置付けることである。レーザ54は、固定具50又は湾曲可能体26を動かすことなく、円筒状レーザパターン58によって1つのガイドリング36の周囲を同時に溶接することが可能である。ミラー62も固定されており、湾曲可能体26は、ミラー62の中心を通って引っ張られて、様々なガイドリング36がレーザパターン58と位置合わせされることになる。この構成の異なる実施形態では、レーザ溶接を実行する前に、間隔を空けた関係でガイドリング36を分離するために、追加の固定具(図示なし)が湾曲可能体に取り付けられる。この固定具は、レーザ溶接の実行時に湾曲可能体とともに動かすことができる。一部の実施形態では、この固定具は、溶接の放射線を吸収しないように、レーザ光に対して実質的に透明である。
【0026】
図6は、駆動リング38とともに示されている湾曲可能体26の更に長い部分を更に示す。駆動リング38は、湾曲可能体26の様々な湾曲可能セクションの交差部を含む、ガイドリング36のセクション内に配置することができる。ガイドリング36と駆動リング38は、幅及び/又は直径が同じであっても異なっていてもよく、或いは、湾曲可能体26の長さに沿った複数の又は範囲の異なる幅及び/又は直径を包含してもよい。一例の実施形態では、レーザ溶接を用いて、駆動リング38をインナーライナ44に溶接することができる。また、押出部30も図示されている。押出部30は、湾曲可能体26の1つ以上の様々な湾曲可能セクションに対して近位にあってよく、押出部30のルーメン部を通して、ワイヤ40a、42aが摺動自在に動作する。押出部30は、接着剤の代わりにレーザ溶接を用いて、インナーライナ44に接着される。レーザ溶接は、全ての溶接が完了する前に構成要素の位置がずれるのを防ぐために、最初に構成要素を適所に留めるように用いることができる。
【0027】
図1~
図6は、図示の関連サイズのインナーライナ、ガイドリング及びルーメン部を有する湾曲可能体の遠位端(アウターライナ又は押出部がある場合又はない場合)を示しているが、この方法及び固定具は、他の構成を備える様々な医療機器に使用することができる。また、図示の湾曲可能体の部分よりも近位に、湾曲可能体が、ガイドリングの代わりにルーメンを包含する連続した押出部を有することも企図される。例えば、WO2017/066253、WO2018/204202、米国特許出願公開第2018/0310804号、第2018/0243900号、第2018/0311006号、第2019/0015978号及び第2019/0105468号は、それぞれ、湾曲可能医用器具とその制御、使用を提供しており、それらは、少なくとも部分的に、本明細書で提供されるような方法によって作製することができる。
【0028】
図7は、ビジョンシステム2を含み得る例示のレーザ溶接システム4を示す。レーザ溶接システム4は、レーザ発生器14と、伝送ファイバ16と、ビーム整形器18と、CPU又は制御装置6と、ガルバノメータヘッド20とを含む。レーザ発生器14は、光を発し、或いは、ダイオードレーザポンプによってレーザビーム56を発する。伝送ファイバ16は、レーザ発生器14によって発生した光56をビーム整形器28に伝送する。ビーム整形器は、レーザビームを整形し直して、それをガルバノメータヘッドに送る。ガルバノメータヘッドは、溶接経路に沿ってレーザビームを動かす。ガルバノメータヘッド29は、溶接標的33にわたってレーザビーム56を出力する。
【0029】
レーザ溶接システム40のビジョンシステム2は、ビジョンシステム制御装置22及び光学検出器25を有してよい。ビジョンシステム2は、ビジョンシステム制御装置22を介して各構成要素の位置を特定し、ビジョンシステム制御装置22は、光学検出器25からの入力を受け取る。レーザ溶接システム4の制御装置6は、通信ポートを介して標的の構成要素部24の位置を受け取る。次に、制御装置6は、PID制御を介してレーザシステムの必要な軸を動かして、レーザ56が標的構成要素部24に確実に当たるようにする。
【0030】
重要なことは、機器の透明部分への熱ダメージを抑え、溶融が実質的にインナーライナに沿って起こるようにすることである。これは、インナーライナの界面に集光することと、ガイドリングとインナーライナの関連材料を定めることによって、達成することができる。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、レーザ54の出力密度の厳密な制御が特に重要である。レーザのエネルギーは、ガイドリングひいてはルーメン部を透過するので、密度をインナーライナ界面に局所化し、溶接を行うことが重要である。一部の実施形態では、リングガイドは、非常に薄い押出し管であり得るインナーライナよりも厚い。更に、リングガイドに複数のルーメン部が配置される場合がある。そのようなルーメン部は特に小さく、また、ルーメン部を通って動くワイヤに摺動性を与え、医療機器の作動を提供するために、十分に均質な(変形しない)状態を保つことが必然的に必要となる場合がある。
【0032】
したがって、一例の実施形態では、レーザ溶接システム4は、所望の溶接に最適なそのようなパラメータ又は条件を利用するように構成される。制御できるパラメータとしては以下が挙げられるが、限定ではない:(1)レーザ出力(例示の範囲は18~30%であり、制御装置6及びレーザ発生器14によって設定される);(2)焦点距離(例示の範囲は150~200mmであるが、これは、少なくとも部分的に標的の構成要素によって変化する。焦点距離は、ガルバノメータから加工物の標的構成要素部までで測定される);(3)クロックスピード(レーザビーム54が加工物にわたって動く速度。例示の範囲は20000~50000ガルバノメータステップ/秒である);(4)レーザパス(標的構成要素部の溶接部上をレーザが通る回数。例示の範囲は2~20レーザパスであり得る);(5)締付け圧(溶接される部品間の圧力。例示の範囲は、マンドレル直径に基づいて変化することができ、0.081”~0.088”であり得る);(6)溶接パターン(レーザ発振中にレーザによって繰り返されるパターン。その例は
図9に見られる。すなわち、直線と、重なった円と、重なった四角形);(7)溶接時間(溶接の開始から停止までの合計時間。加工物及び/又は標的構成要素部の位置決め/ローディングは含まない。範囲は、クロックスピードと、実施されるレーザパスの数とに依存する);(8)レーザ波長(例示の範囲は、1.940マイクロメートル~2マイクロメートル(1940ナノメートル~2000ナノメートル)である);(9)レーザタイプ(他のレーザが適しているかもしれないが、例示のレーザはファイバレーザである);及び、(10)レーザ出力能力(例示の範囲は、最大120Wattsである)。
【0033】
図4は、プログラミングと制御によって指示されたときに、レーザが同じ設定で精確に繰り返して構成要素をレーザ照射する方法の例示の実施形態を提供する。固定具50を使用することにより、溶接システム4は、レーザ発振中に湾曲可能体26を保持することができ、固定具50が除去される前に構成要素を適所に留めることが可能となる。一実施形態では、レーザ溶接システム4は、5つの動作軸(x軸(幅)、レーザヘッド回転、θ軸(部分回転)、y軸(深さ移動)及びz軸(高さ移動))を有する1940ナノメートル(2ミクロン)のレーザシステムであってよい。レーザシステムのθ軸(部分回転)における運動制御能力は、本明細書に記載されるようなマンドレルと組み合わせて用いることができ、それにより、モータがθ軸での回転を制御して、所望の位置から数ミクロン以内の精度レベルで、湾曲可能体26を精確に回転させることができる。
【0034】
ビジョンシステム2と組み合わさって、レーザ溶接システム4は、標的構成要素とレーザ自体の自動的な動作を可能にする。これにより、ビジョンシステムは、構成要素の位置を特定することができ、関連するモータは、X軸、Y軸、Z軸、θ軸及びレーザヘッド回転軸でのレーザ及び/又は構成要素の動きを制御することができ、反復可能で正確かつ精密な溶接を提供が提供される。本明細書において例示の実施形態として提供されるようなレーザ溶接の自動化では、同じ構成要素又は後続の標的構成要素に対する反復の間も一貫性を保ちながら、形成される溶接部を、性能使用を満たすか或いは上回る強度特性をもつように設計することができるという点で、接着剤の使用に優る利点が提供される。
【0035】
溶接時の固定具50、レーザ54及び湾曲可能体26の制御は、
図7に示されるようなコンピュータシステムによって制御することができる。
図8により詳細に示されるように、コンピュータシステム4は、制御装置又はCPU6と、記憶装置/RAM8と、I/Oインタフェース10と、検出器インタフェース12とを含む。コンピュータシステム4は、ビジョンシステム2と通信して使用することもできるし、別々に使用することもできる。コンピュータシステム4は、1つ以上の機器を備えてよい。例えば、あるコンピュータが構成要素6、8、10を含み、他のコンピュータが構成要素12を含んでもよい。CPU6は、記憶装置/RAM8に格納されたコンピュータ実行可能命令を読み取って実行するように構成される。コンピュータ実行可能命令は、本明細書に記載の方法及び/又は計算の実行のための命令を含んでよい。例えば、CPU6は、所望の溶接を成功させるために、標的構成要素部24をレーザ54と適切に位置合わせするために必要な回転及び/又は並進の動作の量を計算することができる。
【0036】
記憶装置/RAM8は、1つ以上のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータ書込み可能媒体を任意に含み、例えば、磁気ディスク(例えばハードディスク)、光ディスク(例えばDVD、Blu-ray)、光磁気ディスク、半導体メモリ(例えば不揮発性メモリカード、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ、SRAM、DRAM)、EPROM、EEPROM等を含んでよい。記憶装置/RAM8は、コンピュータ可読データ及び/又はコンピュータ実行可能命令を格納することができる。コンピュータシステム4の構成要素は、バスを介して通信する。
【0037】
I/Oインタフェース10は、入出力デバイスに対して通信インタフェースを提供し、入出力デバイスとしては、キーボード、ディスプレイ、マウス、印刷装置、タッチスクリーン、ライトペン、光学記憶装置、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル、温度センサ等のセンサ、ネットワーク(有線又は無線のいずれか)が挙げられる。
【0038】
例
【0039】
カテーテル構成要素の機能要件を、表1に示す。
【表1】
【0040】
例1:押出部に対するインナーカバーの溶接
【0041】
インナーカバーと押出部の溶接には、多くの技術的な課題があった:(1)穴(ルーメン)のある所とない所でのレーザ吸収の差を補正すること;(2)インナーカバーの壁が薄い(0.5mm未満)ので、裂けないように維持しなければならないこと;(3)5mm未満の範囲の押出部の直径;(4)溶接部が張力に対して強くなければならないこと;(4)溶接部が25psiで密封されなければならないこと;(5)押出部を通るワイヤの周りで溶接を行う必要があること。
【0042】
窒素を使用した場合と使用しない場合で、可変の条件下で溶接を実施した。窒素ありの試験では、溶接前にN2をインナーカバーに流した。溶接を実施するために、ビジョンシステムが、押出部の位置を特定し、押出部の端から所望の距離だけレーザを移動させた。押出部を適所に留めてから部品を回転させて、部品の全周にわたって溶接を完了させた。18種類の個別の条件を試験し、線数、間隔、溶接継ぎ目でのレーザのパス数、溶接線幅、レーザパターン、クロックスピード(レーザビームが溶接継ぎ目上を移動する速度)、溶接長さ(角度)、レーザ出力を変化させた。試験したレーザパターンを、
図9に示す。得られた溶接部の引張強度を試験し、目視で観察した。更に、溶接部の漏れ試験を行った。結果を全体的に分析した結果、最も高い引張強度をもつ溶接部を得るための好ましい条件が得られた。
【0043】
選択されたパラメータは、引張強度の要件を満たすとともに、25psiでの漏れチェックに合格した。窒素の使用は、試行のばらつきを増大させるので、選択されなかった。
【0044】
例2:インナーライナに対するガイドリングの溶接
【0045】
インナーカバーとガイドリングの溶接には、例1と同じような技術的な課題があった:(1)穴(ルーメン)のある所とない所でのレーザ吸収の差を補正すること;(2)インナーカバーの壁が薄い(0.5mm未満)ので、裂けないように維持しなければならないこと;(3)ガイドリングの外径が5mm未満の範囲であること;(4)溶接部が張力に対して強くなければならないこと;(4)ガイドリングの幅が5mm未満の範囲であり、ガイドリング間に相応の間隔があること;(5)ガイドリングを通るワイヤの周りで溶接を行う必要があること。
【0046】
例1の結果を用いて、N2の有無、スポット溶接部の数、パスの数、スポットサイズ、レーザパターン、クロックスピード、溶接長さ(
図9は、穴(ルーメン)間の20°に基づいて、ガイドリングにわたって溶接長さがどのように変化するのかを示す図である)、及びレーザ出力の8つの条件を検討するための実験計画を作成した。得られた溶接部の引張強度を試験し、目視で観察した。
【0047】
更に10個のサンプルを作製し、異なる2箇所で引張強度を試験したところ、良好な相関が示された。
【0048】
サンプルの作製中、ビジョン制御システムにより、カメラはガイドリングの位置を特定し、ガイドリングをセンタリングして、レーザ溶接パターンをセンタリングすることができた。センタリングプロセス中、X軸とY軸で部品をミクロン単位で調節する制御が可能であり、より精度の高い位置決めが可能であった。最初に、ガイドリングを保持固定具に位置付けながらタック溶接し、その後固定具を除去して、リングを回転できるようにするとともに、各リングの全周にわたって溶接を実施できるようにした。
【0049】
結果:
【0050】
例1と例2に基づいて、レーザ溶接の好ましい設定を、以下の表2のように特定した。
【0051】
【0052】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。
【0053】
当然のことながら、要素又は部品が他の要素又は部品に関して「~上に」、「~に対して」、「~に接続される」、或いは「~に結合される」と言及される場合、それは、当該他の要素又は部品に対して直接的に上にあってよく、対してよく、接続されてよく、或いは結合されてよく、又は、介在する要素又は部品が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素又は部品に関して「直上にある」、「直接接続される」又は「直接結合される」と言及されるとき、介在する要素又は部品は存在しない。使用される場合、「及び/又は」という語句は、そのように提供される場合、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組合わせを含む。
【0054】
様々な図に示されるようなある要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための記述を簡易にするために、本明細書では、「下」、「真下」、「下方」、「低い」、「上方」、「上」、「近位」、「遠位」等の空間的な相対語が使用される場合がある。ただし、当然のことながら、空間的な相対語は、図に示されている向きに加えて、使用中又は動作中の機器の様々な向きを包含することが意図される。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「真下」にあると記述されている要素は、図中の機器が裏返されると、当該他の要素又は特徴の「上方」に向けられることになる。よって、「下方」等の相対的な空間用語は、上と下の両方の向きを包含することができる。機器は、他の方法で方向付けられてもよく(90度回転又は他の方向に)、本明細書で使用される空間的な相対的記述子は、それに応じて解釈されるべきである。同様に、相対的な空間用語「近位」と「遠位」も、該当する場合、交換可能である場合がある。
【0055】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直、実質的に同心等)又は相対語(例えば、実質的に類似、実質的に同じ等)であり得る。
【0056】
本明細書で用いられる場合、「カテーテル」との用語は、概して、広範囲の医療機能を実行するために、狭い開口を通して体腔(例えば血管)の中に挿入されるように設計された、医療グレードの材料から作られる軟性の薄い管状器具を指す。一部の用途では、カテーテルは、シースと同様に機能する「ガイドカテーテル」を含み得る。
【0057】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」という用語は、本明細書において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。
【0058】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0059】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、
前記インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々を通って延び、前記中空チャンバに平行である少なくとも1つのルーメン部と、
を備える装置であって、
前記少なくとも2つのガイドリングは、前記インナーライナに溶接される、
装置。
【請求項2】
インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、
前記インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々を通って延び、前記中空チャンバに平行である少なくとも1つのルーメン部と、
を備える装置であって、
前記少なくとも2つの
ガイドリングは、溶接によって固定される、
装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つのガイドリングの各々の1つのルーメン部は、ワイヤが摺動できるようなルーメン
を湾曲可能体に形成するように配置される、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ルーメン内の少なくとも1つのワイヤ、
を更に備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つのガイドリングの周りに設けられ、前記インナーライナの端から端まで延びるアウターライナ、
を更に備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも6つのガイドリングを備え、
少なくとも2つのガイドリングは、それぞれ少なくとも9つのルーメン部を含む、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも2つのガイドリングを通って延びる少なくとも9本のワイヤ、
を更に備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのルーメン部は、前記少なくとも2つのガイドリングを前記インナーライナに溶接するプロセスによって
、50マイクロメートルよりも大きく変化しない、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つのガイドリングと前記インナーライナの間の溶接部は、前記ガイドリングの内径と前記インナーライナの外径の円周の少なくとも半分に延在する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも2つのガイドリングと前記インナーライナの間の溶接部は、前記ガイドリングの内径と前記インナーライナの外径の円周の全体に延在する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項11】
前記インナーライナと前記少なくとも2つのガイドリングは、両方ともPEBAXから形成される、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項12】
前記インナーライナは、0.1~5%のカーボンブラックを含有する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項13】
前記インナーライナに沿って集合的に設けられた複数のガイドリングを備える、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項14】
インナーライナの外側に、少なくとも1つのルーメン部を有する少なくとも2つのガイドリングを組み合わせて、組立体を作製するステップと、
前記組立体を、前記少なくとも2つのガイドリングの間の距離を設定するように構成された固定具に配置するステップと、
前記少なくとも2つのガイドリングの各々を、前記インナーライナに溶接するステップと、
を含む製造方法であって、
前記少なくとも2つのガイドリングは、実質的に透明であり、前記インナーライナは、非透過性の光吸収材料で作られている、
方法。
【請求項15】
前記固定具は、離散的な間隔で直線的に動くように構成され、前記間隔は、前記ガイドリングの間隔である、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記固定具は、設定された溶接長さに基づいて回転するように構成される、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
溶接の前に、前記インナーライナにマンドレルを挿入するステップ、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも2つのガイドリングの各々の第1の位置での溶接が完了した後、前記固定具は、前記少なくとも2つのガイドリングが溶接が行われるべき第2の位置にあるように、回転するように構成される、
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも2つのガイドリングの各々に溶接を行うステップと、前記少なくとも2つのガイドリングを次の溶接のための位置まで回転させるステップは、所望の溶接が全て完了するまで繰り返される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つのガイドリングは、Pebaxで作られている、
請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記インナーライナは、少なくとも0.5%のカーボンブラックを含むPebaxで作られている、
請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも2つのガイドリングの各々を前記インナーライナに溶接するステップは、ルーメン包含領域と非ルーメン包含領域の両方を通した溶接を
含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項23】
ビジョンシステムと、
レーザ発生器と、
伝送ファイバと、
ビーム整形器と、
ガルバノメータヘッドと、
電動固定具と、
前記ビジョンシステム、前記電動固定具及び前記レーザ発生器と通信する制御装置と、
を備えるレーザ溶接システムであって、
前記レーザ溶接システムは、操縦可能医療機器の2つ以上の構成要素を溶接するように構成される、
レーザ溶接システム。
【請求項24】
前記レーザ溶接システムは、インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、前記インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングとを溶接するように構成される、
請求項23に記載のレーザ溶接システム。
【請求項25】
前記レーザ溶接システムは、(i)アウターライナを1つ以上のガイドリングに溶接し、又は、(
ii)押出部をインナーライナに溶接するように構成される、
請求項23に記載のレーザ溶接システム。
【請求項26】
前記レーザ溶接システムは、ルーメン包含領域と非ルーメン包含領域の両方を有する少なくとも1つの材料によって溶接するように構成される、
請求項23~25のいずれか1項に記載のレーザ溶接システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
【0002】
本願は、米国仮特許出願第62/979930号(2020年2月21日に出願)及び第63/132743号(2020年12月31日に出願)に対する利益を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、製造方法、装置及び固定具に関する。より具体的には、本開示は、製造方法と、湾曲可能医療機器であって、当該機器に沿って中空チャンバ及びガイドリングを有する機器と、を対象とする。
【背景技術】
【0004】
医療分野では、内視鏡手術器具やカテーテル等の湾曲可能な医療機器がよく知られており、受け入れられ続けている。湾曲可能な医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる可撓体を含む。可撓体に沿って(典型的には、内側に)1つ以上のツールチャネルが延びており、可撓体の遠位端に位置する標的へのアクセスを可能にする。
【0005】
一部の湾曲可能機器には、インナーライナとアウターライナがあり、また、可撓体の作動に寄与する任意の他の構成要素が機器内にある。しかしながら、湾曲可能機器の直径が小さい必要があり、機器の遠位端において曲率が高い必要がある場合、様々なライナと構成要素によって剛性が増し、十分に機器が曲がることが妨げられるので、このような構成はあまり有用ではない。よって、ワイヤを誘導するように機器に沿って配置されるガイドリングが、機器の制御のために使用される。例えば、米国特許第9,144,370号を参照されたい。ガイドリングを備える湾曲可能医療機器の別の例は、WO2018/204202に記載されている。この機器では、ガイドリングは、接着剤によってインナーライナ(又はバックボーン)に取り付けられる。しかしながら、製造中に接着剤を使用することは、必ずしも好ましいとは限らない。なぜなら、接着剤は塗布が難しく、不要な材料が追加されるおそれがあり、ガイドリング構造の間隔を調整することができないからである。特に、ガイドリングの間隔は、湾曲可能医療機器の機能性に直接影響を与える。接着剤は、塗布された当初に潤滑剤のように作用する場合があり、これにより、接着剤の接着が固まり始めるまで構成要素が動きやすくなってしまい、ガイドリングの間隔が変化したり一貫性がなくなったりする傾向が強くなる。また、カテーテルが適切に機能するには、リング間に接着剤がないこと、或いは、リング内の小さなルーメンが塞がれないことも重要となる。接着剤がリング間に配置されたり、或いは接着剤がルーメンを塞いだりすると、湾曲可能医療機器は、湾曲可能な自由度をいくらか失ってしまうおそれがある。接着剤は一般に手作業で塗布されるが、カテーテル構成要素のサイズによっては、前述したような接着剤の誤塗布がないようにそのような手作業を完了することは、困難な場合がある。更に、接着剤による接着強度は一貫しない場合があり、また、必要なカテーテルの耐久性に必要となる強度よりも低くなる場合があるが、ガイドリングのいずれかが緩んだりずれたりすると、カテーテルの機能に悪影響を及ぼすおそれがある。よって、このような問題を解決するための追加の湾曲可能機器及び製造方法が求められている。長さが短く、内部にルーメンを包含するガイドリングを、機器に沿って決まった間隔で取り付ける必要がある。
【0006】
現在、構成要素の取付けには、複数の添加法と非添加法が存在する。超音波や熱等の非添加法を使用することもできるが、そのプロセスでは、周囲の材料を変形させるおそれがあり、あまり局所的には使用することができず、カテーテル等の小径の機器には使用が困難である。これには例外もある。欧州特許第1234595号では、1580ナノメートル以下の赤外波長(すなわちND:YAGレーザや低出力ダイオードレーザ)を用いて、バルーンとカテーテル体の間でプラスチックレーザ溶接を行うバルーンカテーテルが提供されている。しかしながら、これが有効なのは、カテーテルの全長に沿って延びる薄いシート状の材料であるバルーンを、単純に接着する場合である。よって、ここに記載されるような欠陥を克服して、ガイドリングを通るルーメン部の構成を変えることなく取り付けられる必要のあるガイドリングを有する機器、或いは、既知の間隔を置いた関係で接着されたガイドリングに関して、湾曲可能機器及び製造方法を形成する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、以下を備える装置が提供される:インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナ;インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリング;少なくとも2つのガイドリングの各々を通って延び、中空チャンバに平行である少なくとも1つのルーメン部。少なくとも2つの構成要素は、溶接によって固定される。本装置は、カテーテルの遠位部分であり得るアウターライナを備えることもできる。本装置は、押出部を更に備えることができる。更なる実施形態では、少なくとも2つのガイドリングがインナーライナに溶接され、かつ/又は、アウターライナが少なくとも2つのガイドリングに溶接され、かつ/又は、押出部がインナーライナに溶接される。一部の実施形態では、本装置は複数のワイヤも備え、当該ワイヤは、ルーメンを通って延び(ガイドリングの一部又は全部を通って)、或いは、本装置が様々なセクションを有する場合は、ガイドリングの少なくとも1つのセクションを通って延びる。
【0008】
本発明の他の実施形態によれば、製造方法が提供される。本方法は、以下を含む:インナーライナの外側に、複数のガイドリングを組み合わせて、組立体を作製するステップ;組立体を、複数のガイドリングの間の距離を設定するように構成された固定具に配置するステップ;及び、複数のガイドリングの各々を、インナーライナに溶接するステップ。複数のガイドリングは、実質的に透明であり、少なくとも1つのルーメン部を含む。更なる実施形態によれば、溶接は、ルーメン包含領域と非ルーメン包含領域の両方を通して行われる。本発明の更に他の実施形態によれば、レーザ溶接システムが提供される。本システムは、ビジョンシステムと、レーザ発生器と、伝送ファイバと、ビーム整形器と、ガルバノメータヘッドと、電動固定具と、ビジョンシステム、電動固定具及びレーザ発生器と通信する制御装置と、を備えてよい。レーザ溶接システムは、操縦可能医療機器の2つ以上の構成要素を溶接するように構成される。更なる実施形態によれば、溶接は、ルーメン包含領域と非ルーメン包含領域の両方を通して行われる。他の例示の実施形態では、本システムは、(i)インナーライナであって、当該インナーライナの端から端まで延びる中空チャンバを有するインナーライナと、インナーライナに沿って集合的に設けられた少なくとも2つのガイドリングとを溶接し、(ii)アウターライナを1つ以上のガイドリングに溶接し、かつ/又は、(iii)押出部をインナーライナに溶接するように構成される。
【0009】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0011】
【
図1】
図1は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の医療機器の3次元側面斜視図を示す。
【
図2】
図2は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の医療機器の3次元側面斜視図を示す。
【
図3】
図3は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の医療機器において光吸収インナールーメンに溶接された透明リングを示す実施形態の図である。
【
図4】
図4は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、医用装置を形成する方法の溶接形状を示す実施形態の図である。
【
図5】
図5は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、医用装置を形成する方法の別の溶接形状を示す実施形態の図である。
【
図6】
図6は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の医療機器の3次元側面斜視図を示す。
【
図7】
図7は、本発明と併用され得る例示のレーザ構成である。
【
図8】
図8は、本発明と併用され得る例示のコンピュータ構成である。
【
図9】
図9は、本発明と併用され得る例示のレーザパターンを示す図である。
【
図10】
図10A及び
図10Bは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、溶接長さの差を示す3次元側面斜視図である。
【0012】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載の装置、当該装置の製造方法、システム及び製造構成は、カテーテル製造と、構成要素の取付けに関する(例えば、(i)例えばカテーテルのインナールーメンを形成するインナーライナに対する、ガイドリングの取付け;(ii)例えばカテーテルの外側部分を形成するアウターライナに対する、ガイドリングの取付け;及び/又は、(iii)例えばカテーテルの一部を形成する押出部と、本製造によって作製された医用装置に対するガイドリングの取付け等)。
【0014】
一部の実施形態では、医用装置の遠位部分は、例示の湾曲可能医療機器の3次元側方斜視図を示す
図1及び
図2に示されている。湾曲可能医療機器は、湾曲可能体26内に拘束された少なくとも2つのガイドリング36a、36b(36a、36b、36c、36dの4つが示されている)を含む。ガイドリング36は、互いに距離を置いて構成され、互いに接触しない。
【0015】
湾曲可能体26は、インナーライナ44及びアウターライナ46を有し、これらは、湾曲可能体26の軸方向に沿って一定の位置にガイドリング36を保ちながら、湾曲可能な支持を湾曲可能体26に提供する。インナーライナ44の内側には、中空チャンバ28が、インナーライナの端から端まで延在している。この中空チャンバ28は、例えば、カテーテルのツールチャネルや作業チャネルとして用いることができる。各ガイドリング36には、少なくとも2つのルーメン部34が含まれ、ガイドリング36に埋め込まれるアンカーセグメント32a、32bを収容するように構成される。隣接するガイドリング間の空間は、弾性のあるインナーライナ44及びアウターライナ46と相まって、湾曲可能体26がガイドリング36間のオープンスペースのおかげで、より大きな範囲の曲げ運動を達成することを可能にする。
【0016】
医用装置は、サイズや操作性を含め、生体内での使用に合わせて構成及び/又は適合されている。分離したセクションと連続したアウターライナ46の構成は、患者の生体構造に対応するように、ナビゲーションに必要な柔軟性に調整することができる。ガイドリング36の間隔は、例えば湾曲可能体26の曲げ範囲、直径及び構造に応じて、広くしたり狭くしたりすることができる。図示のように、全てのガイドリング36は等間隔に配置されている。しかしながら、一部の実施形態では、間隔は変化してよい。例えば、湾曲可能体26の異なる湾曲可能セグメント間のガイドリング36間の距離が異なってもよいし、1つの湾曲可能セグメント内のガイドリング間隔が、別の湾曲可能セグメント内のガイドリング間隔と異なってもよいし、ガイドリング間隔が湾曲可能体26に沿って徐々に広くなったり狭くなったりしてもよい。インナーライナ44及び/又はアウターライナ46の直径も、患者の生体構造に基づいて変更することができる。一部の実施形態では、湾曲可能機器の外径(アウターライナ46の外径である)は、より侵襲性の低い手技と、より小さな生体構造に対する医療機器の使用の両方を可能にするように、最小化される。例えば、肺の区域気管支又は亜区域気管支内の操縦には、外径が5mm、4mm、3mm又は2mmよりも小さい機器を用いられる場合がある(例えば米国特許出願公開第2019/0105468号(参照により本明細書に援用される)参照)。
【0017】
図2は、入れ子状の制御ワイヤの使用例を更に示し、少なくとも2つのガイドリング36と併せて1組のルーメン部34の内部に、ワイヤ40a、42aが示されている。更に、この実施形態により、複数の制御ワイヤ40a、42aは、アンカーセグメント(32a、32b)で固定することができ、また、湾曲可能体26のルーメン部34を通して摺動自在に動作することができる。例示の構成のひとつとして入れ子状の制御ワイヤが図示されているが、代替の実施形態、例えば別個のワイヤを用いることができる。別個のワイヤは、1つ以上のルーメン部において固定されてもよいし、完全に摺動自在であってもよい。固定される場合、別個のワイヤは、同じ位置で固定されてもよいし、異なる位置で固定されてもよい。制御ワイヤの他の適切な構成は、当業者には明らかであろう。
【0018】
インナーライナ44に対する複数のガイドリング36の接着は、接着剤の代わりにレーザ溶接を用いて、
図3に示される湾曲可能体26を形成する。この医療機器の遠位部分は、任意のアウターライナ又はシース46を含まない状態で示されている。複数のガイドリング36は、ワイヤが各
ガイドリング36のルーメン部34を通して挿入され得るように、全てのルーメン部34が位置合わせされた状態で、インナーライナ44に沿って間隔を置いて配置される。よって、湾曲可能体26は、中空チャンバ28に平行に延びるワイヤ40a、42a(図示なし)を含むこともでき、ワイヤ40a、42aの各々は、ガイドリング36のルーメン部34を通って延びる。ルーメン部34の配列が、湾曲可能体26内でインナーライナ44とアウターライナ46の間で近位に延びることにより、ワイヤの配置を制御する効果的なルーメンが形成される。一部の実施形態では、ガイドリング36の少なくとも一部の中に、9本以上のワイヤが配置される。
【0019】
例示の一実施形態では、レーザ溶接によって、アウターライナ46をガイドリング36に固定することができる。また、任意に、このようなガイドリング36をレーザ溶接によってインナーライナ44に固定することもできる。このような例示の実施形態では、アウターライナ46は、ガイドリング36の材料よりも透明度の高い材料で作られてよく、ガイドリング36は、インナーライナ44の材料よりも透明度の高い材料で作られてよい。よって、溶接される最も外側の構成要素の透明度が、それが溶接される構成要素の透明度よりも高くなるように、溶接される構成要素は、様々な透明度の材料で作ることができる。溶接される構成要素の数に応じて、溶接される全ての構成要素の透明度は、合計で2通り、3通り、4通り、5通り又はそれ以上の異なる透明度(又はレベル)であり得る。一例の実施形態では、湾曲可能体のうち固定を必要とする構成要素は、溶接によって達成される固定を有することができる。
【0020】
図3に示されるような湾曲可能体を形成するために、
図4に示されるように、溶接プロセス中に構成要素を適所に保持するための固定具50が用いられる。ガイドリング36の回転配置を補助するために、各ガイドリング36のルーメン部34に1本以上のワイヤを挿入することができる。或いは、湾曲可能体に沿って複数のガイドリングを位置合わせするために、ガイドリング36は、ガイドリングの外側部分に、例えば空洞又は刻み目を含むことができる。固定具50は、ガイドリング36同士の所望の位置合わせを確実にするために、1つ以上の固定具スペーサ52を含んでもよい。固定具スペーサ52は、ガイドリング36が一貫した間隔を有することが望まれるのか、或いは別の所望の構成を有することが望まれるのかに基づいて、同じ寸法を有してもよいし、異なる寸法を有してもよい。レーザ溶接は、構成要素が固定具50内の位置からずれるのを防ぐために、最初に構成要素を適所に留めるように用いることができる。
【0021】
ガイドリングは、インナーライナよりも光吸収の低い材料で作られる。よって、湾曲可能体に集光すると、光はガイドリングを透過してインナーライナに到達し、例えば透過溶接によって、2つの材料の界面で溶接を行うことが可能となる。例えば、ガイドリングは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル(EVA)、或いは熱可塑性エラストマー(Pebax(登録商標)等のTPE)の押出し成形から形成することができる。これらの材料には、溶接可能でなければならないという制約がある。インナーライナは、同じ又は異なる硬さをもつ同じ種類の材料で形成されるが、高い光吸収性をもつことになる。一部の例では、インナーライナは、インナーライナの吸収性を高めるために、ある割合の染料又はカーボンブラックを含み、例えば、0.1~5%(例えば0.1%、0.5%、1.0%、2%、3%、4%、5%)のカーボンブラックを含むPebaxである。特定の実施形態では、インナーライナは、少なくとも0.5%のカーボンブラックを含んでよい。一部の実施形態では、X線による可視性と好ましい溶接特性の両方を提供するために、放射線透過性添加物が添加される(例えば硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、三酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、タングステン)。
【0022】
重要なことは、ガイドリングの吸収する光がインナーライナよりも少ないことであり、一部の実施形態では、ガイドリングは、溶接プロセスに使用される光の波長において実質的に透明である。ただし、透明性は必須ではない。重要なことは、ガイドリング36が十分に透明であり、レーザパターンが十分に集光され、ガイドリング36を通って延びるルーメン部34が、レーザ溶接プロセスによって溶けたり、実質的に変形したりしないことである。一部の実施形態では、ガイドリングをインナーライナに接着する溶接プロセスによって、いずれのルーメン部も顕著に変化しないことが好ましい。ルーメン部が顕著に変化するのは、ルーメン部34を通してワイヤを挿入したときに、ルーメン部を通したワイヤの摺動の自由度が低い場合や、ルーメン部の構造が50マイクロメートル、或いは10マイクロメートル、或いは2マイクロメートルよりも大きく変化する場合である。
【0023】
図4には、溶接プロセス中に使用される固定具50の一部が示されている。この図が例示する構成では、湾曲可能体26は、複数の固定具スペーサ52を有する固定具50と水平位置にあり、固定具スペーサ52は、固定具スペーサ52の間隔によって定められる一定量だけガイドリング36を分離する。
図4の固定具スペーサ52は、四角形のユニットとして示されているが、代替として円形や三角形の構造に設計することもできる。レーザ54は、透明度の高いガイドリング36と透明度の低いインナーライナ44の間の界面において、湾曲可能体26上に光56を提供するように位置付けられる。この例示の実施形態では、レーザ54は固定され、湾曲可能体26は矢印64で示されるように回転する。これにより、湾曲可能体26が回転すると、レーザパターン58が、
ガイドリング36/インナーライナ44の界面の内側の周りを通り、溶接部60を形成することができる。
【0024】
レーザ溶接では、多くの場合、溶接される材料間の堅固な物理的接触が必要となる。よって、本発明の一態様は、そのような接触を保証するために、厳しい公差を設けることである。一例の実施形態では、インナーライナ44の内側からガイドリング36の内側に向かって外方向に圧力を加えることができるように、中空チャンバ28に(すなわち、可撓性材料(例えば15~55GPaの曲げ弾性率をもつ材料)で作られるインナーライナ44内に)、マンドレル(図示なし)を挿入することができる。本開示の範囲内で、インナーライナ44の内側からガイドリング36の内側へ外方向に加えられる圧力の量は、中空チャンバ28に挿入されるマンドレルのサイズに基づいて変化し得る。一部の実施形態では、マンドレルは、マンドレルの形状に容易に適応できるインナーライナと組み合わせされるので、インナーライナとガイドリングの間の堅固な接触が保証される。そのような用途では、マンドレルがインナーライナの直径を十分に広げ、インナーライナとガイドリングを密着させる。更に、インナーライナは、接触を保証するように、インナーライナの外径とガイドリングの内径が干渉するように設計されてよい(同じ材料特性を使用)。マンドレルは、溶接プロセス中にインナーライナ内に残されてよい。更に、マンドレルは、反復可能で一貫した回転を提供する自動化手段等によって、湾曲可能体26を回転させるように回転することができる。例示のマンドレルは、中空チャンバ28に対して容易に挿入及び除去できるものであり、そのような挿入及び除去を可能にする材料で作ることができる。一例の実施形態では、マンドレルは、テフロンや同様の非粘着材料等の、摩擦係数の低い物質でコーティングされてよい。溶接部は、湾曲可能体26の円周の全体に及んでもよいし、一部に及んでもよい。1つのガイドリング36をインナーライナ44に溶接した後、固定具50は、レーザパターン58が第2の
ガイドリング/インナーライナの界面で湾曲可能体に入射するように、矢印62で示されるように並進することができる。
図4及び
図5に提供される固定具50により、湾曲可能体の形成に使用される全ての部品を、溶接中に適所に保持し、位置合わせすることが可能となる。
【0025】
代替構成は、
図5に示すように、凹面ミラー62内に湾曲可能体26を垂直に位置付けることである。レーザ54は、固定具50又は湾曲可能体26を動かすことなく、円筒状レーザパターン58によって1つのガイドリング36の周囲を同時に溶接することが可能である。ミラー62も固定されており、湾曲可能体26は、ミラー62の中心を通って引っ張られて、様々なガイドリング36がレーザパターン58と位置合わせされることになる。この構成の異なる実施形態では、レーザ溶接を実行する前に、間隔を空けた関係でガイドリング36を分離するために、追加の固定具(図示なし)が湾曲可能体に取り付けられる。この固定具は、レーザ溶接の実行時に湾曲可能体とともに動かすことができる。一部の実施形態では、この固定具は、溶接の放射線を吸収しないように、レーザ光に対して実質的に透明である。
【0026】
図6は、駆動リング38とともに示されている湾曲可能体26の更に長い部分を更に示す。駆動リング38は、湾曲可能体26の様々な湾曲可能セクションの交差部を含む、ガイドリング36のセクション内に配置することができる。ガイドリング36と駆動リング38は、幅及び/又は直径が同じであっても異なっていてもよく、或いは、湾曲可能体26の長さに沿った複数の又は範囲の異なる幅及び/又は直径を包含してもよい。一例の実施形態では、レーザ溶接を用いて、駆動リング38をインナーライナ44に溶接することができる。また、押出部30も図示されている。押出部30は、湾曲可能体26の1つ以上の様々な湾曲可能セクションに対して近位にあってよく、押出部30のルーメン部を通して、ワイヤ40a、42aが摺動自在に動作する。押出部30は、接着剤の代わりにレーザ溶接を用いて、インナーライナ44に接着される。レーザ溶接は、全ての溶接が完了する前に構成要素の位置がずれるのを防ぐために、最初に構成要素を適所に留めるように用いることができる。
【0027】
図1~
図6は、図示の関連サイズのインナーライナ、ガイドリング及びルーメン部を有する湾曲可能体の遠位端(アウターライナ又は押出部がある場合又はない場合)を示しているが、この方法及び固定具は、他の構成を備える様々な医療機器に使用することができる。また、図示の湾曲可能体の部分よりも近位に、湾曲可能体が、ガイドリングの代わりにルーメンを包含する連続した押出部を有することも企図される。例えば、WO2017/066253、WO2018/204202、米国特許出願公開第2018/0310804号、第2018/0243900号、第2018/0311006号、第2019/0015978号及び第2019/0105468号は、それぞれ、湾曲可能医用器具とその制御、使用を提供しており、それらは、少なくとも部分的に、本明細書で提供されるような方法によって作製することができる。
【0028】
図7は、ビジョンシステム2を含み得る例示のレーザ溶接システム4を示す。レーザ溶接システム4は、レーザ発生器14と、伝送ファイバ16と、ビーム整形器18と、CPU又は制御装置6と、ガルバノメータヘッド20とを含む。レーザ発生器14は、光を発し、或いは、ダイオードレーザポンプによってレーザビーム56を発する。伝送ファイバ16は、レーザ発生器14によって発生した光56をビーム整形器28に伝送する。ビーム整形器は、レーザビームを整形し直して、それをガルバノメータヘッドに送る。ガルバノメータヘッドは、溶接経路に沿ってレーザビームを動かす。ガルバノメータヘッド29は、溶接標的33にわたってレーザビーム56を出力する。
【0029】
レーザ溶接システム40のビジョンシステム2は、ビジョンシステム制御装置22及び光学検出器25を有してよい。ビジョンシステム2は、ビジョンシステム制御装置22を介して各構成要素の位置を特定し、ビジョンシステム制御装置22は、光学検出器25からの入力を受け取る。レーザ溶接システム4の制御装置6は、通信ポートを介して標的の構成要素部24の位置を受け取る。次に、制御装置6は、PID制御を介してレーザシステムの必要な軸を動かして、レーザ56が標的構成要素部24に確実に当たるようにする。
【0030】
重要なことは、機器の透明部分への熱ダメージを抑え、溶融が実質的にインナーライナに沿って起こるようにすることである。これは、インナーライナの界面に集光することと、ガイドリングとインナーライナの関連材料を定めることによって、達成することができる。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、レーザ54の出力密度の厳密な制御が特に重要である。レーザのエネルギーは、ガイドリングひいてはルーメン部を透過するので、密度をインナーライナ界面に局所化し、溶接を行うことが重要である。一部の実施形態では、ガイドリングは、非常に薄い押出し管であり得るインナーライナよりも厚い。更に、ガイドリングに複数のルーメン部が配置される場合がある。そのようなルーメン部は特に小さく、また、ルーメン部を通って動くワイヤに摺動性を与え、医療機器の作動を提供するために、十分に均質な(変形しない)状態を保つことが必然的に必要となる場合がある。
【0032】
したがって、一例の実施形態では、レーザ溶接システム4は、所望の溶接に最適なそのようなパラメータ又は条件を利用するように構成される。制御できるパラメータとしては以下が挙げられるが、限定ではない:(1)レーザ出力(例示の範囲は18~30%であり、制御装置6及びレーザ発生器14によって設定される);(2)焦点距離(例示の範囲は150~200mmであるが、これは、少なくとも部分的に標的の構成要素によって変化する。焦点距離は、ガルバノメータから加工物の標的構成要素部までで測定される);(3)クロックスピード(レーザビーム54が加工物にわたって動く速度。例示の範囲は20000~50000ガルバノメータステップ/秒である);(4)レーザパス(標的構成要素部の溶接部上をレーザが通る回数。例示の範囲は2~20レーザパスであり得る);(5)締付け圧(溶接される部品間の圧力。例示の範囲は、マンドレル直径に基づいて変化することができ、0.081"~0.088"であり得る);(6)溶接パターン(レーザ発振中にレーザによって繰り返されるパターン。その例は
図9に見られる。すなわち、直線と、重なった円と、重なった四角形);(7)溶接時間(溶接の開始から停止までの合計時間。加工物及び/又は標的構成要素部の位置決め/ローディングは含まない。範囲は、クロックスピードと、実施されるレーザパスの数とに依存する);(8)レーザ波長(例示の範囲は、1.940マイクロメートル~2マイクロメートル(1940ナノメートル~2000ナノメートル)である);(9)レーザタイプ(他のレーザが適しているかもしれないが、例示のレーザはファイバレーザである);及び、(10)レーザ出力能力(例示の範囲は、最大120Wattsである)。
【0033】
図4は、プログラミングと制御によって指示されたときに、レーザが同じ設定で精確に繰り返して構成要素をレーザ照射する方法の例示の実施形態を提供する。固定具50を使用することにより、溶接システム4は、レーザ発振中に湾曲可能体26を保持することができ、固定具50が除去される前に構成要素を適所に留めることが可能となる。一実施形態では、レーザ溶接システム4は、5つの動作軸(x軸(幅)、レーザヘッド回転、θ軸(部分回転)、y軸(深さ移動)及びz軸(高さ移動))を有する1940ナノメートル(2ミクロン)のレーザシステムであってよい。レーザシステムのθ軸(部分回転)における運動制御能力は、本明細書に記載されるようなマンドレルと組み合わせて用いることができ、それにより、モータがθ軸での回転を制御して、所望の位置から数ミクロン以内の精度レベルで、湾曲可能体26を精確に回転させることができる。
【0034】
ビジョンシステム2と組み合わさって、レーザ溶接システム4は、標的構成要素とレーザ自体の自動的な動作を可能にする。これにより、ビジョンシステムは、構成要素の位置を特定することができ、関連するモータは、X軸、Y軸、Z軸、θ軸及びレーザヘッド回転軸でのレーザ及び/又は構成要素の動きを制御することができ、反復可能で正確かつ精密な溶接を提供が提供される。本明細書において例示の実施形態として提供されるようなレーザ溶接の自動化では、同じ構成要素又は後続の標的構成要素に対する反復の間も一貫性を保ちながら、形成される溶接部を、性能使用を満たすか或いは上回る強度特性をもつように設計することができるという点で、接着剤の使用に優る利点が提供される。
【0035】
溶接時の固定具50、レーザ54及び湾曲可能体26の制御は、
図7に示されるようなコンピュータシステムによって制御することができる。
図8により詳細に示されるように、コンピュータシステム4は、制御装置又はCPU6と、記憶装置/RAM8と、I/Oインタフェース10と、検出器インタフェース12とを含む。コンピュータシステム4は、ビジョンシステム2と通信して使用することもできるし、別々に使用することもできる。コンピュータシステム4は、1つ以上の機器を備えてよい。例えば、あるコンピュータが構成要素6、8、10を含み、他のコンピュータが構成要素12を含んでもよい。CPU6は、記憶装置/RAM8に格納されたコンピュータ実行可能命令を読み取って実行するように構成される。コンピュータ実行可能命令は、本明細書に記載の方法及び/又は計算の実行のための命令を含んでよい。例えば、CPU6は、所望の溶接を成功させるために、標的構成要素部24をレーザ54と適切に位置合わせするために必要な回転及び/又は並進の動作の量を計算することができる。
【0036】
記憶装置/RAM8は、1つ以上のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータ書込み可能媒体を任意に含み、例えば、磁気ディスク(例えばハードディスク)、光ディスク(例えばDVD、Blu-ray)、光磁気ディスク、半導体メモリ(例えば不揮発性メモリカード、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ、SRAM、DRAM)、EPROM、EEPROM等を含んでよい。記憶装置/RAM8は、コンピュータ可読データ及び/又はコンピュータ実行可能命令を格納することができる。コンピュータシステム4の構成要素は、バスを介して通信する。
【0037】
I/Oインタフェース10は、入出力デバイスに対して通信インタフェースを提供し、入出力デバイスとしては、キーボード、ディスプレイ、マウス、印刷装置、タッチスクリーン、ライトペン、光学記憶装置、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル、温度センサ等のセンサ、ネットワーク(有線又は無線のいずれか)が挙げられる。
【0038】
例
【0039】
カテーテル構成要素の機能要件を、表1に示す。
【表1】
【0040】
例1:押出部に対するインナーカバーの溶接
【0041】
インナーカバーと押出部の溶接には、多くの技術的な課題があった:(1)穴(ルーメン)のある所とない所でのレーザ吸収の差を補正すること;(2)インナーカバーの壁が薄い(0.5mm未満)ので、裂けないように維持しなければならないこと;(3)5mm未満の範囲の押出部の直径;(4)溶接部が張力に対して強くなければならないこと;(5)溶接部が25psiで密封されなければならないこと;(6)押出部を通るワイヤの周りで溶接を行う必要があること。
【0042】
窒素を使用した場合と使用しない場合で、可変の条件下で溶接を実施した。窒素ありの試験では、溶接前にN2をインナーカバーに流した。溶接を実施するために、ビジョンシステムが、押出部の位置を特定し、押出部の端から所望の距離だけレーザを移動させた。押出部を適所に留めてから部品を回転させて、部品の全周にわたって溶接を完了させた。18種類の個別の条件を試験し、線数、間隔、溶接継ぎ目でのレーザのパス数、溶接線幅、レーザパターン、クロックスピード(レーザビームが溶接継ぎ目上を移動する速度)、溶接長さ(角度)、レーザ出力を変化させた。試験したレーザパターンを、
図9に示す。得られた溶接部の引張強度を試験し、目視で観察した。更に、溶接部の漏れ試験を行った。結果を全体的に分析した結果、最も高い引張強度をもつ溶接部を得るための好ましい条件が得られた。
【0043】
選択されたパラメータは、引張強度の要件を満たすとともに、25psiでの漏れチェックに合格した。窒素の使用は、試行のばらつきを増大させるので、選択されなかった。
【0044】
例2:インナーライナに対するガイドリングの溶接
【0045】
インナーカバーとガイドリングの溶接には、例1と同じような技術的な課題があった:(1)穴(ルーメン)のある所とない所でのレーザ吸収の差を補正すること;(2)インナーカバーの壁が薄い(0.5mm未満)ので、裂けないように維持しなければならないこと;(3)ガイドリングの外径が5mm未満の範囲であること;(4)溶接部が張力に対して強くなければならないこと;(5)ガイドリングの幅が5mm未満の範囲であり、ガイドリング間に相応の間隔があること;(6)ガイドリングを通るワイヤの周りで溶接を行う必要があること。
【0046】
例1の結果を用いて、N2の有無、スポット溶接部の数、パスの数、スポットサイズ、レーザパターン、クロックスピード、溶接長さ(
図9は、穴(ルーメン)間の20°に基づいて、ガイドリングにわたって溶接長さがどのように変化するのかを示す図である)、及びレーザ出力の8つの条件を検討するための実験計画を作成した。得られた溶接部の引張強度を試験し、目視で観察した。
【0047】
更に10個のサンプルを作製し、異なる2箇所で引張強度を試験したところ、良好な相関が示された。
【0048】
サンプルの作製中、ビジョン制御システムにより、カメラはガイドリングの位置を特定し、ガイドリングをセンタリングして、レーザ溶接パターンをセンタリングすることができた。センタリングプロセス中、X軸とY軸で部品をミクロン単位で調節する制御が可能であり、より精度の高い位置決めが可能であった。最初に、ガイドリングを保持固定具に位置付けながらタック溶接し、その後固定具を除去して、リングを回転できるようにするとともに、各リングの全周にわたって溶接を実施できるようにした。
【0049】
結果:
【0050】
例1と例2に基づいて、レーザ溶接の好ましい設定を、以下の表2のように特定した。
【0051】
【0052】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。
【0053】
当然のことながら、要素又は部品が他の要素又は部品に関して「~上に」、「~に対して」、「~に接続される」、或いは「~に結合される」と言及される場合、それは、当該他の要素又は部品に対して直接的に上にあってよく、対してよく、接続されてよく、或いは結合されてよく、又は、介在する要素又は部品が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素又は部品に関して「直上にある」、「直接接続される」又は「直接結合される」と言及されるとき、介在する要素又は部品は存在しない。使用される場合、「及び/又は」という語句は、そのように提供される場合、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組合わせを含む。
【0054】
様々な図に示されるようなある要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための記述を簡易にするために、本明細書では、「下」、「真下」、「下方」、「低い」、「上方」、「上」、「近位」、「遠位」等の空間的な相対語が使用される場合がある。ただし、当然のことながら、空間的な相対語は、図に示されている向きに加えて、使用中又は動作中の機器の様々な向きを包含することが意図される。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「真下」にあると記述されている要素は、図中の機器が裏返されると、当該他の要素又は特徴の「上方」に向けられることになる。よって、「下方」等の相対的な空間用語は、上と下の両方の向きを包含することができる。機器は、他の方法で方向付けられてもよく(90度回転又は他の方向に)、本明細書で使用される空間的な相対的記述子は、それに応じて解釈されるべきである。同様に、相対的な空間用語「近位」と「遠位」も、該当する場合、交換可能である場合がある。
【0055】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直、実質的に同心等)又は相対語(例えば、実質的に類似、実質的に同じ等)であり得る。
【0056】
本明細書で用いられる場合、「カテーテル」との用語は、概して、広範囲の医療機能を実行するために、狭い開口を通して体腔(例えば血管)の中に挿入されるように設計された、医療グレードの材料から作られる軟性の薄い管状器具を指す。一部の用途では、カテーテルは、シースと同様に機能する「ガイドカテーテル」を含み得る。
【0057】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」という用語は、本明細書において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。
【0058】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0059】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】