(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】スガマデクスを乾燥させるための方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/16 20060101AFI20230405BHJP
A61K 31/724 20060101ALI20230405BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C08B37/16
A61K31/724
A61P21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549945
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2021050520
(87)【国際公開番号】W WO2021170304
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508145230
【氏名又は名称】メディチェム エセ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】プーチ セルラノ、ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラン ロペス、エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】マルカライン バルタ、ホルディ
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ ダ コスタ、ホアナ ラケル
【テーマコード(参考)】
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA10
4C086EA20
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086ZA22
4C086ZA94
4C090AA03
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4C090BA10
4C090BB04
4C090BB54
4C090BB63
4C090BB93
4C090CA19
4C090DA09
4C090DA23
(57)【要約】
本発明は、低含有量の有機溶媒、好ましくは水混和性有機溶媒、より好ましくはエタノール、2-プロパノールおよび/またはアセトンを有する、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを調製するための方法に関する。この方法は、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを、高い相対湿度を有する媒体に曝露する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スガマデクスまたはその塩から、好ましくはスガマデクスナトリウムから水混和性有機溶媒を除去するための方法であって、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを70%以上の相対湿度に曝露する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記相対湿度が80%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相対湿度が90%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記相対湿度が95%~100%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、0℃~100℃、好ましくは20℃~60℃、より好ましくは20℃~30℃、さらにより好ましくは約25℃の温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
除去される前記水混和性有機溶媒のうちの少なくとも1種が、酢酸、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
除去される前記少なくとも一種の水混和性有機溶媒が、アセトン、エタノールおよび2-プロパノールからなる群から選択され、好ましくはエタノールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが、前記方法の間撹拌される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが7w/w%以上の、好ましくは10w/w%以上の、より好ましくは15w/w%以上の水含有量を有するまで、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが、70%以上の相対湿度に、好ましくは80%以上の相対湿度に、好ましくは90%以上の相対湿度に、好ましくは95%~100%の相対湿度に曝露される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを70%以上の相対湿度に、好ましくは80%以上の相対湿度に、好ましくは90%以上の相対湿度に、好ましくは95%~100%の相対湿度に曝露する1つ以上の工程と、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを真空乾燥させる1つ以上の工程とを組み合わせて含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記真空乾燥させる工程が、20℃~100℃、好ましくは40℃~80℃、より好ましくは約70℃の温度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記真空乾燥させる工程が、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが5w/w%以下の、好ましくは3w/w%以下の水含有量を有するまで行われる、請求項10~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
5000ppm以下のエタノール含有量、アセトン含有量および/または2-プロパノール含有量を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウム。
【請求項14】
請求項13に記載のスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムから得られる医薬組成物。
【請求項15】
神経筋遮断薬をリバースさせるための、請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低含有量の有機溶媒を有する6-ペル-デオキシ-6-ペル-(2-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリンまたはその塩を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スガマデクスは、6-ペル-デオキシ-6-ペル-(2-カルボキシエチル)チオ-γ-シクロデキストリンについての国際的に一般に認められた一般名(INN)であり、C72H112O48S8の実験式、および2002.18g/モルの分子量を有する。
【0003】
本明細書の以下でスガマデクスナトリウムと称されるスガマデクスの8ナトリウム塩(化合物I)は、ロクロニウムまたはベクロニウムによって誘導される神経筋遮断のリバーサル(reversal)において治療的に有用であることが公知である。欧州および米国において、スガマデクスナトリウムは、ブリディオン(商標)という名称で販売されている。
【化1】
【0004】
スガマデクスは、米国再発行特許RE44,733に記載された。具体的には、この特許の実施例4は、水およびエタノールの混合物から濾過によって単離され、その後、乾燥条件の明記なしで乾燥される、スガマデクスナトリウムの調製を開示している。残留有機溶媒、この場合においてエタノールの量は、提供されていない。
【0005】
スガマデクスナトリウムを調製するためのいくつかの方法が、文献、例えば、WO2020058987A1、WO2020201930A1、WO2020028448A1、WO2019193198A1、WO2019002610A1、WO2019159191A1、WO2019102009A1、WO2018185784A1、WO2017163165A1、WO2017084401A1、WO2017144734A2、US2018251575A1、WO2016194001A1、WO2014125501A1およびWO2012025937A1に開示されている。これらの文献において、スガマデクスナトリウムは、標準的な乾燥条件、例えば、異なる温度での乾燥、または真空下での異なる温度での乾燥を使用して乾燥されている。乾燥スガマデクスナトリウムの残留有機溶媒の量は、これらの文献に示されていない。
【0006】
WO2019184773A1は、スガマデクスナトリウム中の気相不純物、すなわち、残留有機溶媒を除去するための方法を開示する。開示される方法は、いくつかの工程:(1)水に粗スガマデクスナトリウムを溶解する工程;(2)常圧または減圧下での蒸留の工程;および(3)工程(2)において得られた水溶液をフリーズドライまたはスプレードライする工程を含む。したがって、開示される方法は、スガマデクスナトリウム中の有機溶媒の存在を大幅に低減するために、いくつかの工程、ならびにフリーズドライまたはスプレードライなどのいくつかの複雑で費用がかかる標準的ではない蒸発技法を必要とする。
【0007】
従来技術の他の文献、例えばUS2019062459A1およびUS2019062460A1において、スガマデクスナトリウムは、スプレードライを使用して乾燥されている。
【0008】
CN110615860は、残留溶媒を含有するスガマデクスナトリウムを水に溶解する工程、濃縮する工程、および次いで、標準的な条件下(例えば、減圧下)で乾燥させる工程を含む、精製の方法を開示する。濃縮の工程は、40℃~70℃の温度、および-0.080~-0.098MPaの相対真空度での操作を含む。スガマデクスナトリウムの水への高い溶解度を考慮して、大量の収量を喪失することはないが、例えば濾過によってスガマデクスナトリウムの技術的に実行可能な単離を確実にするために、濃縮工程において除去されなければならない水の量を決定することが困難であるので、この方法は、工業的に適用することが困難である。
【0009】
従来技術における文献は、乾燥方法の間の湿度条件を明記していない。
【0010】
医薬品中に残っている有機溶媒の毒性または発がん性は、益々注目を集めており、医薬品の投与は、有機溶媒残留物の量に対する制限を課すことを求めている。したがって、製剤の品質および安全性を確実にするために、薬物物質中の有機溶媒残留物の制御を強化することが重要である。
【0011】
薬物物質中の有機溶媒の含有量の制限値に関して、ガイダンスが、ICHガイドラインQ3C(R6)に示されている。このガイドラインの目的は、患者の安全のために、医薬品中の残留溶媒についての許容される量を勧告することである。当然ながら、この範囲内よりも少ないことが望ましい。
【0012】
本発明の発明者らは、スガマデクスまたはその塩、特にスガマデクスナトリウムが、有機溶媒、特に水混和性有機溶媒に高い親和性を示すことを見出し、その結果、真空乾燥などの工業的製造プラントにおいて使用される標準的な乾燥方法を使用することによって、スガマデクスおよびその塩、特にスガマデクスナトリウムについて、上記のガイドラインの制限値を満たすことが不可能であることが観察された。
【0013】
他方では、低含有量の有機溶媒、すなわちICHガイドラインQ3C(R6)に従う有機溶媒の含有量を有する、スガマデクスまたはその塩、特にスガマデクスナトリウムを提供する従来技術において開示されている方法は、いくつかの工程ならびに/または費用および時間の観点でより多くの時間を要する技法、例えば、凍結乾燥、スプレードライ、フリーズドライなどを含む複雑な方法である。
【0014】
したがって、ICHガイドラインQ3C(R6)による有機溶媒、特に水混和性有機溶媒の含有量を有する、スガマデクスまたはその塩、特にスガマデクスナトリウムを得るために、スガマデクスまたはその塩から、特にスガマデクスナトリウムから、有機溶媒、好ましくは水混和性有機溶媒、より好ましくは酢酸、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される溶媒を除去する、より単純で、同時に工業的に適用可能な方法を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、大きな商業スケールで、スガマデクスまたはその塩から、好ましくはスガマデクスナトリウムから、酢酸、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される水混和性有機溶媒を除去するための方法を提供することであり、これは、低含有量の前記水混和性有機溶媒を有するスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを得ることを可能にする。
【0016】
本発明の方法は、穏和な条件下で実施されることを特徴とする、単純で工業的に拡張可能な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、スガマデクスまたはその塩から、好ましくはスガマデクスナトリウムから水混和性有機溶媒を除去するための方法であって、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを70%以上の相対湿度に曝露する工程を含む、方法を提供する。
【0018】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを、高い相対湿度に曝露することによって、室温のような穏和な温度条件下でさえ、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウム中の有機溶媒、特に水混和性有機溶媒の量を、ICHガイドラインQ3C(R6)による許容される制限まで常に減少させたことを見出した。
【0019】
「スガマデクスまたはその塩から、好ましくはスガマデクスナトリウムから水混和性有機溶媒を除去する」という用語は、スガマデクスまたはその塩中の、好ましくはスガマデクスナトリウム中の少なくとも1種の水混和性有機溶媒の含有量を、実質的に低減する、好ましくはICHガイドラインQ3C(R6)による値まで低減するプロセスを意味することが理解される。
【0020】
本発明による水混和性有機溶媒の例は、酢酸、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびテトラヒドロフランである。ICHガイドラインQ3C(R6)は、前記溶媒について、以下の制限を提供する。
【0021】
【0022】
本発明の方法が適用されるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、濾過などの工業的製造プラントにおいて使用される標準的な単離方法によって単離された、有機溶媒、特に水混和性有機溶媒、より特にエタノール、2-プロパノールまたはアセトンを含有する、固体のスガマデクスまたはその塩、好ましくは固体のスガマデクスナトリウムを含む。
【0023】
特定の実施形態において、本発明の方法が適用されるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、100,000ppmを下回る、好ましくは50,000ppmを下回る、より好ましくは30,000ppmを下回る、より好ましくは25,000ppmを下回る、さらにより好ましくは20,000ppmを下回る、少なくとも1種の水混和性有機溶媒、例えば、エタノール、2-プロパノールまたはアセトンの含有量を有する。より好ましくは、本発明の方法が適用されるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、100,000ppmを下回る、好ましくは50,000ppmを下回る、より好ましくは30,000ppmを下回る、より好ましくは25,000ppmを下回る、さらにより好ましくは20,000ppmを下回る、エタノールの含有量を有する。
【0024】
例えば100,000ppm超の非常に高含有量の少なくとも1種の水混和性有機溶媒、好ましくはエタノール、2-プロパノールまたはアセトンを有するスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを用いる本発明の方法を使用することが望ましい場合、この少なくとも1種の水混和性有機溶媒、好ましくはエタノール、2-プロパノールまたはアセトンの初期含有量は、真空下での乾燥などの当業者に公知の従来の手段によって低減され得る。
【0025】
本発明の方法は、好ましくは乾燥させる方法である。
【0026】
本発明の方法によって得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、本発明の方法が適用される生成物の水混和性有機溶媒よりも低い少なくとも1種の水混和性有機溶媒の含有量を有する。
【0027】
別の特定の実施形態において、本発明の方法によって得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、本発明の方法が適用される生成物のエタノール含有量よりも低いエタノール含有量を有する。
【0028】
別の特定の実施形態において、本発明の方法によって得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、本発明の方法が適用される生成物の2-プロパノール含有量よりも低い2-プロパノール含有量を有する。
【0029】
別の特定の実施形態において、本発明の方法によって得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、本発明の方法が適用される生成物のアセトン含有量よりも低いアセトン含有量を有する。
【0030】
本発明の有機溶媒を除去するための方法に提供されるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、従来技術に開示される方法のいずれかにより、好ましくはWO2019102009A1に開示される方法により、得ることができ、単離することができる。例えば、残留有機溶媒としてエタノールを含有するスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、WO2019102009A1に開示される方法によって得ることができる。
【0031】
残留有機溶媒、好ましくは水混和性有機溶媒を含有するスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、有機溶媒中、好ましくは水混和性有機溶媒中の、あるいは水と有機溶媒、好ましくは水混和性有機溶媒との混合物中のスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムの再結晶またはスラリーによって得ることができる。
【0032】
「スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムをある相対湿度以上に曝露する」という用語は、本発明において使用される場合、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを、全体的にまたは部分的に、このある相対湿度以上を有するガス状媒体と接触させることを含む。
【0033】
例えば、「スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを60%以上の相対湿度に曝露する」という用語は、本発明において使用される場合、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを、全体的にまたは部分的に、60%以上の相対湿度を有するガス状媒体と接触させることを含む。
【0034】
例えば、「スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを70%以上の相対湿度に曝露する」という用語は、本発明において使用される場合、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを、全体的にまたは部分的に、70%以上の相対湿度を有するガス状媒体と接触させることを含む。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、80%以上の相対湿度に曝露される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、90%以上の相対湿度に曝露される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、95%~100%の相対湿度に曝露される。
【0038】
「相対湿度」という用語は、本発明において使用される場合、所与の温度での水蒸気の分圧の水の平衡蒸気圧に対する比を意味することが理解される。相対湿度は、通常、パーセンテージとして表され、100%を超えることができない。相対湿度は、湿度計を用いて測定される。これらの湿度測定器具は、典型的には、温度、圧力、質量、水分が吸収される場合の物質の機械的負荷または電荷などの他の量の、較正および算出による測定値に依拠し、これらの測定量から、相対湿度の測定値が導き出される。
【0039】
本発明の方法は、0℃~100℃、好ましくは20℃~60℃、より好ましくは20℃~30℃、さらにより好ましくは約25℃の温度で行うことができる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の方法によって除去される有機溶媒は、少なくとも水混和性有機溶媒を含む。より特定の実施形態において、本発明の方法によって除去される有機溶媒は、1種以上の水混和性有機溶媒からなる。
【0041】
「水混和性有機溶媒」という用語は、本明細書において使用される場合、室温で液体であり、室温で水と完全に混和する、すなわち、任意の割合で水と混和する、有機溶媒を意味する。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明の方法によって除去される水混和性有機溶媒は、酢酸、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、除去される水混和性有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、除去される水混和性有機溶媒は、アセトン、エタノールおよび2-プロパノール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはエタノールである。
【0045】
好ましい実施形態において、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが、酢酸、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される2種以上の水混和性有機溶媒を含む場合、本発明の方法は、ICHガイドラインQ3C(R6)による前記水混和性有機溶媒のそれぞれ1種の所望の含有量を有するスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを提供する。
【0046】
本発明の1つの特定の実施形態において、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、高相対湿度で固体材料とガス状媒体との接触を有利にするために、方法の間撹拌され、その結果、方法は加速され、より均質な生成物が達成される。
【0047】
この特定の実施形態において、本発明の方法は、パドル乾燥器、ロータリーコーン乾燥機、回転式乾燥機、ロータリードラム乾燥機、チューブバンドル乾燥機、撹拌タンク反応器、ヌッチェフィルター、遠心分離、流動床、高シェアミキサーまたはプレート乾燥機において行うことができる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、スガマデクス(Sugammdex)またはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、高相対湿度で固体材料とガス状媒体との接触を有利にするために、本発明の方法が適用される前に粉砕または微粉化され、その結果、方法は加速され、より均質な生成物が達成される。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが7w/w%以上の、好ましくは10w/w%以上の、より好ましくは15w/w%以上の水含有量を有するまで、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、70%以上の相対湿度に、好ましくは80%以上の相対湿度に、好ましくは90%以上の相対湿度に、好ましくは95%~100%の相対湿度に曝露される。
【0050】
ある相対湿度は、当技術分野において公知の方法のいずれかによって提供され得る。
【0051】
例えば、実験室スケールでは、ある相対湿度は、異なる塩の飽和溶液を使用することによって提供され得、これは、密閉容器内部の特定の値の相対湿度を維持することが公知である。約100%の相対湿度は、脱イオン水を含有するオープンレシピエントを使用することによって提供されてもよい。
【0052】
より大きなスケール、例えば工業スケールでは、ある相対湿度は、乾燥機などの容器中の制御された温度および湿度を有するガス、例えば空気または窒素を使用することによって提供され得る。そのため、ガス、例えば空気または窒素は、それがある湿度を取るように、水にバブリングされ得る。このガス、例えば空気または窒素は、次いで、好ましくはカートリッジフィルターを通して濾過された後、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが予め投入された乾燥機に入れられる。あるいは、例えば、抵抗性を有する液体の水を加熱することによりいくらかの水蒸気を生成させることによって、湿度を増加させることができる。小間隔で液体の水を冷却または加熱することを活発にする制御の任意の手段と一緒に、所望の湿度を達成することができる。特定の実施形態において、本発明の方法は、真空乾燥させる工程、あるいはスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを、低相対湿度、例えば、20%以下の相対湿度を有するガス状媒体、例えば窒素に曝露する工程を含む少なくとも1つの追加の工程をさらに含む。
【0053】
特定の実施形態において、本発明の方法は、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを60%以上の相対湿度に、好ましくは70%以上の相対湿度に、好ましくは80%以上の相対湿度に、好ましくは90%以上の相対湿度に、好ましくは95%~100%の相対湿度に曝露する1つ以上の工程と、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを真空乾燥させる1つ以上の工程とを組み合わせて含む。
【0054】
特定の実施形態において、本発明の方法の真空乾燥させる工程または複数の工程は、20℃~100℃、好ましくは40℃~80℃、より好ましくは約70℃の温度で行われる。
【0055】
真空乾燥させるという用語は、本明細書において使用される場合、減圧下、すなわち、760mmHgより低い圧力下で乾燥させることを意味する。
【0056】
本発明の好ましい実施形態において、真空乾燥させる工程または複数の工程は、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが5w/w%以下の、好ましくは3w/w%以下の水含有量を有するまで行われる。
【0057】
スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムの水含有量w/w%は、好ましくは、カールフィッシャー滴定によって測定される。
【0058】
本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、5000ppm以下のエタノール含有量を有する。別の実施形態において、本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、有機溶媒としてエタノールのみを5000ppm以下の量で含有する。
【0059】
本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、好ましくは、5000ppm以下の2-プロパノール含有量を有する。別の実施形態において、本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、有機溶媒として2-プロパノールのみを5000ppm以下の量で含有する。
【0060】
本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、好ましくは、5000ppm以下のアセトン含有量を有する。別の実施形態において、本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、有機溶媒としてアセトンのみを5000ppm以下の量で含有する。
【0061】
本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが、アセトン、メタノール、エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノールからなる群から選択される2種以上の水混和性有機溶媒を含有する本発明の実施形態において、本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、5000ppm以下のアセトン、エタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールのうちのそれぞれ1種の残留含有量、ならびに3000ppm以下のメタノールの含有量を有する。
【0062】
本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムが、アセトン、エタノールまたは2-プロパノールからなる群から選択される2種以上の水混和性有機溶媒を含有する本発明の実施形態において、本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、好ましくは5000ppm以下のアセトン、エタノールおよび2-プロパノールのうちのそれぞれ1種の残留含有量を有する。
【0063】
本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、薬物誘発性神経筋遮断のリバーサルのための医薬の調製のために使用される。
【0064】
本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムは、好ましくは非経口的投与される。注射経路は、静脈内、皮下、皮内、筋肉内または動脈内であり得る。静脈内経路は、好ましいものである。使用される正確な用量は、医薬が投与される個々の対象の必要性、修復される筋肉活動の程度、および麻酔医/救命救急専門医の判断に必ずしも依拠しないだろう。
【0065】
本発明の別の態様は、本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを含む医薬組成物を含む。好ましくは、本発明による医薬組成物は、例えば注射調製物としての使用のための溶液の形態で適用され得る。
【0066】
好ましくは、本発明による医薬組成物、好ましくは注射調製物としての使用のための医薬組成物は、スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを注射用水と混合することによって調製される。好ましくは、注射用水は、100ppm未満の酸素、好ましくは10ppm未満の酸素、より好ましくは1ppm未満の酸素を含有する。100ppm未満の酸素、好ましくは10ppm未満の酸素、より好ましくは1ppm未満の酸素を含有する注射用水は、水に不活性ガスをバブリングすることによって調製することができる。不活性ガスは、窒素またはアルゴン、好ましくは窒素であり得る。
【0067】
スガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを、100ppm未満の酸素、好ましくは10ppm未満の酸素、より好ましくは1ppm未満の酸素を含有する注射用水と混合するプロセスの間に形成される溶液は、好ましくは、不活性ガス、好ましくは窒素でバブリングされる。次いで、得られた溶液は、好ましくは、濾過され、バイアルに充填される。最後に、バイアルは、オートクレーブ中、好ましくは約121℃の温度で15分間の加熱における蒸気滅菌によって滅菌することができるが、他の温度および時間の条件も使用され得る。
【0068】
本発明による医薬組成物は、本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを、例えば、標準的な文献のGennaroら、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、Mack Publishing Company、1990年、パート8:Pharmaceutical Preparations and Their Manufacture;see 特に第8章「Parenteral preparations」、1545-1569頁;および第85章「Intravenous admixtures」、1570-1580頁を参照されたい)に記載されるような、薬学的に適切な液体と、また任意選択で薬学的に適切な補助剤と混合することによって調製される。好ましくは、本発明による医薬組成物は、本発明の方法により得られるスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを注射用水と混合することによって調製される。
【0069】
あるいは、本発明の医薬組成物は、単位用量容器または複数回用量容器、例えば、密閉されたバイアルおよびアンプル中に存在していてもよく、使用前に無菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライされた(凍結乾燥された)状態で保管されていてもよい。
【0070】
さらなる態様において、本発明は、(a)神経筋遮断剤、および(b)本発明の方法により調製されたスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウムを含む、神経筋遮断およびそのリバーサルを提供するためのキットに関する。
【0071】
本発明による好ましいキットは、本発明の方法により調製されたスガマデクスまたはその塩、好ましくはスガマデクスナトリウム、ならびにロクロニウム、ベクロニウム、パンクロニウム、ラパクロニウム、ミバクリウム、アトラクリウム、(シス)アトラクリウム、ツボクラリンおよびスキサメトニウムからなる群から選択される神経筋遮断剤を含有する。
【0072】
本発明において、数に先行し、それを指して使用される場合の「約」という用語は、その値の±10%の数によって規定される範囲内、好ましくは±5%の数によって規定される範囲内、より好ましくは±2%の数によって規定される範囲内、さらにより好ましくは±1%の数によって規定される範囲内にある任意の値を指定することを意味する。例えば、「約10」は、9~11の範囲内、好ましくは9.5~10.5の範囲内、より好ましくは9.8~10.2の範囲内、さらにより好ましくは9.9~10.1の範囲内を意味すると解釈されるべきである。
【0073】
本明細書において引用される刊行物、特許出願および特許を含むすべての文献は、それぞれの文献が、参照により組み込まれるように個々におよび具体的に示され、その全体が本明細書に示されているかのような同じ程度に、これにより参照によって本明細書に組み込まれる。
【0074】
「a」および「an」および「the」および「少なくとも1つ」という用語および本発明を記載する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)類似する指示対象の使用は、本明細書において別段の記載がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。1つ以上の項目の列挙が続く「少なくとも1つ」(例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」)という用語の使用は、本明細書において別段の記載がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、列挙された項目から選択される1つの項目(AまたはB)または列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(AおよびB)を意味すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、制限がない用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、本明細書において別段の記載がない限り、範囲内にあるそれぞれの別々の値に個々に言及する速記法としての役割を果たすことが単に意図され、それぞれの別々の値は、それが本明細書において個々に記述されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において別段の記載がない限り、または文脈によって他に明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書において提供されるありとあらゆる例、または例示的な語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより良く説明にすることが単に意図され、他に主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書における語は、任意の特許請求の範囲に記載されていない要素を本発明の実施に必須であるとして示すと解釈されるべきではない。
【0075】
本発明を行うための本発明者らに公知の最良の形態を含む本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むと、当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形を必要に応じて用いると予想し、本発明者らは、本発明が、本明細書において具体的に記載されたものとは別の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって認められているように、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題のすべての改変および等価物を含む。また、本明細書において別段の記載がない限り、または文脈によって他に明確に矛盾しない限り、上記に記載された要素のすべての可能な変形におけるそれらの任意の組み合わせが、本発明によって包含される。
【0076】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然ながら、決してその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0077】
一般的な実験条件:
エタノール含有量を決定するために使用されるGC法
装置:DB-624キャピラリーカラム(Agilent、75m.×0.53mm.直径、3μm膜厚)または等価物を備えたガスクロマトグラフを使用した。クロマトグラフは、FID検出器およびヘッドスペース注入デバイスを備えた。ヘッドスペースAgilent G1888を伴うagilent 7890Aクロマトグラフを使用した。
【0078】
クロマトグラフ条件:オーブン温度を、40℃で約10分間設定し、次いで1分当たり2℃の傾斜で75℃に上げ、75℃で10分間維持し、次いで再び1分当たり30℃の傾斜で240℃に上げ、240℃で5分間維持した。注入器温度を220℃に設定し、検出器温度を250℃に設定した。ヘリウムを、8psiの圧力および2:1のスプリット比でキャリアガスとして使用した。
【0079】
ヘッドスペース条件:ループおよび移送ラインの温度を100℃に設定した。それぞれの試料を85℃で30分間加熱した。加熱後、バイアルを18psiのヘリウムで0.3分間加圧した。試料ループを、0.15分間満たし(ループ体積=1mL)、0.05分間平衡化し、次いで0.5分間注入した。
【0080】
溶液の調製
エタノールのストック溶液:水中に1003.30μg/mLのエタノールを含有する溶液を、100.0mLのメスフラスコ中で127.0μLのエタノールを量的に溶解し、水で体積まで希釈することによって調製した。
【0081】
エタノールの標準溶液:25.0mLのエタノールのストック溶液を、量的に50.0mLの水に希釈した。この溶液は、試験検体中25083ppmのエタノールに相当する501.65μg/mLのエタノールを含有した。
【0082】
試験溶液:5.0mLの水中の約100mgのスガマデクスナトリウムの溶液を、三反復で調製した。
【0083】
手順:ヘッドスペース注入のために適切な20mL容量のバイアルを準備した。5.0mLの水を3つのバイアルのそれぞれ1つに導入し、5.0mLのエタノールの標準溶液を6つのバイアルのそれぞれ1つに導入し、5.0mLの試験溶液を3つのバイアルのそれぞれ1つに導入した。
【0084】
バイアルを適切な圧着キャップで密封し、記載した条件を使用してヘッドスペースによって分析した。
【0085】
上記の条件において、エタノールの保持時間は約8.7分であった。
【0086】
システム適合性
以下の要件を充足すべきであった:
- エタノールの標準溶液の6反復注入についての最大許容相対標準偏差は15.0%以下であった。
- 標準溶液におけるエタノールピークの対称性因子(またはテーリング因子)は0.8~2.5であった。
【0087】
算出
試験溶液中のエタノールの量(ppm)を以下の式を使用することによって算出した。
【数1】
式中:
A
T:試験溶液におけるエタノールピークの面積応答
A
S:エタノールの適切な標準溶液におけるエタノールピークの面積応答
C
S:エタノールの適切な標準溶液におけるエタノールの濃度μg/mL
W:試料溶液を調製するために使用したスガマデクスナトリウムの重量(g)
5:試験溶液を溶解するために使用した体積(mL)
【0088】
エタノールの含有量(ppm)の最終値を、三反復のそれぞれ1つについて得られた3つの結果の平均として算出する。
【0089】
2-プロパノール含有量を決定するために使用されるGC法
装置:DB-624キャピラリーカラム(Agilent、75m.×0.53mm.直径、3μm膜厚)または等価物を備えたガスクロマトグラフを使用した。クロマトグラフは、FID検出器およびヘッドスペース注入デバイスを備えた。ヘッドスペースAgilent 7697Aを伴うagilent 7890Aクロマトグラフを使用した。
【0090】
クロマトグラフ条件:オーブン温度を、40℃で約10分間設定し、次いで1分当たり2℃の傾斜で75℃に上げ、75℃で10分間維持し、次いで再び1分当たり30℃の傾斜で240℃に上げ、240℃で5分間維持した。注入器温度を220℃に設定し、検出器温度を250℃に設定した。ヘリウムを、8psiの圧力および2:1のスプリット比でキャリアガスとして使用した。
【0091】
ヘッドスペース条件:ループおよび移送ラインの温度を100℃に設定した。それぞれの試料を85℃で30分間加熱した。加熱後、バイアルを18psiのヘリウムで0.3分間加圧した。試料ループを、0.15分間満たし(ループ体積=1mL)、0.05分間平衡化し、次いで0.5分間注入した。
【0092】
溶液の調製
2-プロパノールのストック溶液:水中に2009.60μg/mLの2-プロパノールを含有する溶液を、25.0mLのメスフラスコ中で64.0μLの2-プロパノールを量的に溶解し、水で体積まで希釈することによって調製した。
【0093】
2-プロパノールの中間標準溶液:5.0mLの2-プロパノールのストック溶液を、量的に50.0mLの水に希釈した。この溶液は、試験検体中10048ppmの2-プロパノールに相当する200.96μg/mLの2-プロパノールを含有した。
【0094】
2-プロパノールの標準溶液:2.0mLの2-プロパノールの中間溶液を、量的に200.0mLの水に希釈した。この溶液は、試験検体中101ppmの2-プロパノールに相当する2.01μg/mLの2-プロパノールを含有した。
【0095】
試験溶液:5.0mLの水中の約100mgのスガマデクスナトリウムの溶液を、三反復で調製した。
【0096】
手順:ヘッドスペース注入のために適切な20mL容量のバイアルを準備した。5.0mLの水を3つのバイアルのそれぞれ1つに導入し、5.0mLの2-プロパノールの標準溶液を6つのバイアルのそれぞれ1つに導入し、5.0mLの試験溶液を3つのバイアルのそれぞれ1つに導入した。
【0097】
バイアルを適切な圧着キャップで密封し、記載した条件を使用してヘッドスペースによって分析した。
【0098】
上記の条件において、2-プロパノールの保持時間は約10.4分であった。
【0099】
システム適合性
以下の要件を充足すべきであった:
- 2-プロパノールの標準溶液の6反復注入についての最大許容相対標準偏差は15.0%以下であった。
- 標準溶液における2-プロパノールピークの対称性因子(またはテーリング因子)は0.8~2.5であった。
【0100】
算出
試験溶液中の2-プロパノールの量(ppm)を以下の式を使用することによって算出した。
【数2】
式中:
A
T:試験溶液における2-プロパノールピークの面積応答
A
S:2-プロパノールの標準溶液における2-プロパノールピークの面積応答
C
S:2-プロパノールの標準溶液における2-プロパノールの濃度μg/mL
W:試料溶液を調製するために使用したスガマデクスナトリウムの重量(g)
5:試験溶液を溶解するために使用した体積(mL)
【0101】
2-プロパノールの含有量(ppm)の最終値を、三反復のそれぞれ1つについて得られた3つの結果の平均として算出する。
【0102】
アセトン含有量を決定するために使用されるGC法
装置:DB-624キャピラリーカラム(Agilent、75m.×0.53mm.直径、3μm膜厚)または等価物を備えたガスクロマトグラフを使用した。クロマトグラフは、FID検出器およびヘッドスペース注入デバイスを備えた。ヘッドスペースAgilent G1888を伴うAgilent 7890Aクロマトグラフを使用した。
【0103】
クロマトグラフ条件:オーブン温度を、40℃で約10分間設定し、次いで1分当たり2℃の傾斜で75℃に上げ、75℃で10分間維持し、次いで再び1分当たり30℃の傾斜で240℃に上げ、240℃で5分間維持した。注入器温度を220℃に設定し、検出器温度を250℃に設定した。ヘリウムを、8psiの圧力および2:1のスプリット比でキャリアガスとして使用した。
【0104】
ヘッドスペース条件:ループおよび移送ラインの温度を100℃に設定した。それぞれの試料を85℃で30分間加熱した。加熱後、バイアルを18psiのヘリウムで0.3分間加圧した。試料ループを、0.15分間満たし(ループ体積=1mL)、0.05分間平衡化し、次いで0.5分間注入した。
【0105】
溶液の調製
アセトンのストック溶液:水中に102.57μg/mLのアセトンを含有する溶液を、100.0mLのメスフラスコ中で13μLのアセトンを量的に溶解し、水で体積まで希釈することによって調製した。
【0106】
アセトンの中間標準溶液:10.0mLのアセトンのストック溶液を、量的に50.0mLの水に希釈した。この溶液は、試験検体中1026ppmのアセトンに相当する20.51μg/mLのアセトンを含有した。
【0107】
アセトンの標準溶液:10.0mLのアセトンの中間標準(standar)溶液を、量的に100.0mLの水に希釈した。この溶液は、試験検体中103ppmのアセトンに相当する2.05μg/mLのアセトンを含有した。
【0108】
試験溶液:5.0mLの水中の約100mgのスガマデクスナトリウムの溶液を、三反復で調製した。
【0109】
手順:ヘッドスペース注入のために適切な20mL容量のバイアルを準備した。5.0mLの水を3つのバイアルのそれぞれ1つに導入し、5.0mLのアセトンの標準溶液を6つのバイアルのそれぞれ1つに導入し、5.0mLの試験溶液を3つのバイアルのそれぞれ1つに導入した。
【0110】
バイアルを適切な圧着キャップで密封し、記載した条件を使用してヘッドスペースによって分析した。
【0111】
上記の条件において、アセトンの保持時間は約10.1分であった。
【0112】
システム適合性
以下の要件を充足すべきであった:
- アセトンの標準溶液の6反復注入についての最大許容相対標準偏差は15.0%以下であった。
- 標準溶液におけるアセトンピークの対称性因子(またはテーリング因子)は0.8~2.5であった。
【0113】
算出
試験溶液中のアセトンの量(ppm)を以下の式を使用することによって算出した。
【数3】
式中:
A
T:試験溶液におけるアセトンピークの面積応答
A
S:アセトンの標準溶液におけるアセトンピークの面積応答
C
S:アセトンの標準溶液におけるアセトンの濃度μg/mL
W:試料溶液を調製するために使用したスガマデクスナトリウムの重量(g)
5:試験溶液を溶解するために使用した体積(mL)
【0114】
アセトンの含有量(ppm)の最終値を、三反復のそれぞれ1つについて得られた3つの結果の平均として算出する。
【0115】
参照例1:
16844ppmのエタノールの残留含有量を有する約6gのスガマデクスナトリウムを、シャーレに入れ、真空下の閉鎖された実験用プレート乾燥機に導入した。試料を、温度が70℃で8時間および25℃で16時間に設定された5回の連続サイクルに曝露した。
【0116】
試料を、25℃の工程を開始する前に毎日ホモジナイズし、アリコートを、残留エタノール含有量の分析のために取得した。結果を下記の第1表に表す。
【0117】
【0118】
上記の第1表に示されるように、8時間の間70℃および16時間の間25℃の変化する温度で、真空下でスガマデクスナトリウムを5日保った後、エタノールの量は、実質的に減少しない。結果は、エタノール含有量が非常にわずかに(およそ600ppm程度)減少することを示す。
【0119】
参照例2:
10gのスガマデクスナトリウムを、25~30℃で61.5mLの水に溶解した。pHを、1.5Mの水性NaOHで9.0~9.95の範囲に調整し、12.3mLの2-プロパノールを添加した。次いで、得られた溶液を、20~25℃で61.26mLの2-プロパノールに対して添加した。追加の122.5mLの2-プロパノールを添加した。得られた懸濁液を1時間撹拌し、得られた固体を濾過によって収集し、24.5mLの2-プロパノールで洗浄し、真空オーブン中で、15時間、70~75℃で乾燥した。乾燥後、残留2-プロパノールの量は26815ppmであった。
【0120】
したがって、真空下で70~75℃で15時間の間の2-プロパノールおよび水から得られたスガマデクスナトリウムの乾燥後、残留2-プロパノールの量は、依然として26815ppmであり、標準的な乾燥条件が、ICHガイドラインQ3C(R6)による値まで残留2-プロパノール含有量を大幅に低減することは不可能であることを示す。
【0121】
参照例3:
10gのスガマデクスナトリウムを、25~30℃で61.5mLの水に溶解した。pHを、1.5Mの水性NaOHで9.0~9.95の範囲に調整し、12.3mLのアセトンを添加した。次いで、得られた溶液を、20~25℃で61.26mLのアセトンに対して添加した。追加の122.5mLのアセトンを添加した。得られた懸濁液を1時間撹拌し、得られた固体を濾過によって収集し、24.5mLのアセトンで洗浄し、真空オーブン中で、15時間、70~75℃で乾燥した。乾燥後、残留アセトンの量は21107ppmであった。
【0122】
したがって、真空下で70~75℃で15時間の間のアセトンおよび水から得られたスガマデクスナトリウムの乾燥後、残留アセトンの量は、依然として21107ppmであり、標準的な乾燥条件が、ICHガイドラインQ3C(R6)による値まで残留アセトン含有量を大幅に低減することは不可能であることを示す。
【0123】
実施例1:スガマデクスナトリウムを84%の相対湿度に曝露することによるエタノールで湿ったスガマデクスナトリウムの乾燥
19249ppmのエタノールの残留含有量を有する約6gのスガマデクスナトリウムを、25℃および大気圧下で、相対湿度が84%の値で一定に維持されるように塩化カリウムの飽和水溶液を含有するオープンレシピエントと一緒に閉鎖された実験用プレート乾燥機に入れた。
【0124】
試料をホモジナイズし、小アリコートを4日の間毎日取得した。これらのアリコートを残留エタノール含有量について分析した。結果を下記の第2表に示す。
【0125】
【0126】
上記の第2表に示されるように、エタノールの量は、スガマデクスナトリウムを25℃および84%の相対湿度に4日間曝露した後、劇的に低減される。
【0127】
実施例2:真空乾燥させる工程およびスガマデクスナトリウムを100%の相対湿度に曝露する工程を組み合わせるエタノールで湿ったスガマデクスナトリウムの乾燥
14149ppmのエタノールの残留含有量を有するスガマデクスナトリウムの試料を、25℃および大気圧下で、相対湿度がその後16時間100%の値で一定に維持されるように脱イオン水を含有するオープンレシピエントと一緒に閉鎖された実験用プレート乾燥機に導入した。この時間の後、脱イオン水を含有するレシピエントを除去し、真空を適用し、温度を次の8時間70℃に設定した。次いで、温度を25℃に冷却し、試料をホモジナイズし、アリコートを残留エタノール含有量の分析のために取得した。
【0128】
得られた試料を、合計で3日間、大気圧下25℃で100%の相対湿度に16時間曝露し、続いて、真空下70℃で8時間に加熱する上記に記載される同じサイクルに付した。アリコートを残留エタノール含有量の分析のために毎日取得した。結果を下記の第3表に表す。
【0129】
【0130】
上記の第3表に示されるように、エタノールの量は、3日間の25℃での100%の相対湿度への曝露および70℃での真空乾燥のサイクルを行った後、劇的に低減される。
【0131】
実施例3:真空乾燥させる工程およびスガマデクスナトリウムを94%の相対湿度に曝露する工程を組み合わせるエタノールで湿ったスガマデクスナトリウムの乾燥
20483ppmのエタノールの残留含有量を有するスガマデクスナトリウムの試料を、25℃および大気圧下で、相対湿度がその後16時間94%の値で一定に維持されるように硝酸カリウムの飽和水溶液を含有するオープンレシピエントと一緒に閉鎖された実験用プレート乾燥機に導入した。この時間の後、硝酸カリウムの飽和水溶液を含有するレシピエントを除去し、真空を適用し、温度を次の8時間70℃に設定した。次いで、温度を25℃に冷却し、試料をホモジナイズし、アリコートを残留エタノール含有量の分析のために取得した。
【0132】
得られた試料を、合計で4日間、大気圧下25℃で94%の相対湿度に16時間曝露し、続いて、真空下70℃で8時間に加熱する上記に記載される同じサイクルに付した。アリコートを残留エタノール含有量の分析のために毎日取得した。結果を下記の第4表に表す。
【0133】
【0134】
上記の第4表に示されるように、エタノールの量は、4日間の25℃での94%の相対湿度への曝露および70℃での真空乾燥のサイクルを行った後、劇的に低減される。
【0135】
実施例4:真空乾燥させる工程およびスガマデクスナトリウムを75%の相対湿度に曝露する工程を組み合わせるエタノールで湿ったスガマデクスナトリウムの乾燥
20647ppmのエタノールの残留含有量を有するスガマデクスナトリウムの試料を、25℃および大気圧下で、相対湿度がその後16時間75%の値で一定に維持されるように塩化ナトリウムの飽和水溶液を含有するオープンレシピエントと一緒に閉鎖された実験用プレート乾燥機に導入した。この時間の後、塩化ナトリウムの飽和水溶液を含有するレシピエントを除去し、真空を適用し、温度を次の8時間70℃に設定した。次いで、温度を25℃に冷却し、試料をホモジナイズし、アリコートを残留エタノール含有量の分析のために取得した。
【0136】
得られた試料を、合計で4日間、大気圧下25℃で75%の相対湿度に16時間曝露し、続いて、真空下70℃で8時間に加熱する上記に記載される同じサイクルに付した。アリコートを残留エタノール含有量の分析のために毎日取得した。結果を下記の第5表に表す。
【0137】
【0138】
上記の第5表に示されるように、エタノールの量は、4日間の25℃での75%の相対湿度への曝露および70℃での真空乾燥のサイクルを行った後、低減される。
【0139】
実施例5:真空乾燥させる工程および撹拌下でスガマデクスナトリウムを100%の相対湿度に曝露する工程を組み合わせるエタノールで湿ったスガマデクスナトリウムの乾燥
19414ppmのエタノールの残留含有量を有するスガマデクスナトリウムの試料を、25℃および大気圧下で、相対湿度が22時間100%の値で一定に維持されるように脱イオン水を含有するオープンレシピエントと一緒に閉鎖された実験用プレート乾燥機に導入した。試料を、定期的に、すなわち最初の8時間の間は1時間ごとに、撹拌およびホモジナイズした。
【0140】
これらの22時間後、試料をKF分析のために取得し、その水含有量が15.41%であったことを示し、残りを真空下75℃で8時間乾燥し、4146ppmのエタノールの含有量および2.15%の水含有量を有するスガマデクスナトリウムを得た。
【0141】
実施例6:真空乾燥させる工程およびスガマデクスナトリウムを94%の相対湿度に曝露する工程を組み合わせる2-プロパノールで湿ったスガマデクスナトリウムの乾燥
35007ppmの2-プロパノールの残留含有量を有するスガマデクスナトリウムの試料を、25℃および大気圧下で、相対湿度がその後16時間94%の値で一定に維持されるように硝酸カリウムの飽和(saturared)水溶液を含有するオープンレシピエントと一緒に閉鎖された実験用プレート乾燥機に導入した。この時間の後、硝酸カリウムの飽和(saturared)水溶液を含有するレシピエントを除去し、真空を適用し、温度を次の8時間70℃に設定した。次いで、温度を25℃に冷却し、試料をホモジナイズし、アリコートを残留2-プロパノール含有量の分析のために取得した。
【0142】
得られた試料を、合計で4日間、大気圧下25℃で94%の相対湿度に16時間曝露し、続いて、真空下70℃で8時間に加熱する上記に記載される同じサイクルに付した。アリコートを残留2-プロパノール含有量の分析のために毎日取得した。結果を下記の第6表に表す。
【0143】
【0144】
上記の第6表に示されるように、4日間の2-プロパノールの量は、25℃での94%の相対湿度への曝露および70℃での真空乾燥のサイクルを行った後、低減される。
【0145】
実施例7:真空乾燥させる工程およびスガマデクスナトリウムを94%の相対湿度に曝露する工程を組み合わせるアセトンで湿ったスガマデクスナトリウムの乾燥
27070ppmのアセトンの残留含有量を有するスガマデクスナトリウムの試料を、25℃および大気圧下で、相対湿度がその後16時間94%の値で一定に維持されるように硝酸カリウムの飽和(saturared)水溶液を含有するオープンレシピエントと一緒に閉鎖された実験用プレート乾燥機に導入した。この時間の後、硝酸カリウムの飽和(saturared)水溶液を含有するレシピエントを除去し、真空を適用し、温度を次の8時間70℃に設定した。次いで、温度を25℃に冷却し、試料をホモジナイズし、アリコートを残留アセトン含有量の分析のために取得した。
【0146】
得られた試料を、合計で4日間、大気圧下25℃で94%の相対湿度に16時間曝露し、続いて、真空下70℃で8時間に加熱する上記に記載される同じサイクルに付した。アリコートを残留アセトン含有量の分析のために毎日取得した。結果を下記の第7表に表す。
【0147】
【0148】
上記の第7表に示されるように、アセトンの量は、4日間の25℃での94%の相対湿度への曝露および70℃での真空乾燥のサイクルを行った後、劇的に低減される。
【国際調査報告】