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特表2023-515090炭化水素の酸化脱水素のための流動化促進剤
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  • 特表-炭化水素の酸化脱水素のための流動化促進剤 図1
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  • 特表-炭化水素の酸化脱水素のための流動化促進剤 図3
  • 特表-炭化水素の酸化脱水素のための流動化促進剤 図4
  • 特表-炭化水素の酸化脱水素のための流動化促進剤 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】炭化水素の酸化脱水素のための流動化促進剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/42 20060101AFI20230405BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20230405BHJP
   B01J 29/16 20060101ALI20230405BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
C07C5/42
C07C11/04
B01J29/16 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549970
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 US2021018649
(87)【国際公開番号】W WO2021168165
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/979,051
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】522329526
【氏名又は名称】エコキャタリティク インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チュン、エレナ、ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ソフランコ、ジョン、エー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウィリアム、ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】クンドゥ、ソウメン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ハンヤオ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュ、バリー、ビー.
(72)【発明者】
【氏名】プレッツ、マシュー、ティー.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA15
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10A
4G169BB01A
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB10A
4G169BB11A
4G169BB15A
4G169BB16A
4G169BB18A
4G169BC01A
4G169BC02B
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC17A
4G169BC18A
4G169BC21A
4G169BC22A
4G169BC23A
4G169BC25A
4G169BC26A
4G169BC35A
4G169BC38A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC44A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC70A
4G169BD03A
4G169BD04A
4G169BD05A
4G169CB07
4G169CC07
4G169DA08
4G169EC23
4G169FC08
4G169ZA01A
4G169ZA04B
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC12
4H006BA14
4H006BA16
4H006BA30
4H006BA71
4H039CA29
4H039CC10
(57)【要約】
オレフィン及び水を生成するための、炭化水素の酸化脱水素のためのプロセスは、流動床内で炭化水素を、少なくとも1つの酸素移動剤(OTA)と、少なくとも1つの流動化促進添加剤と、を含み得る粒子状材料に接触させることを含み得る。炭化水素と粒子状材料との接触の少なくとも一部の期間中に、流動床は、酸素移動剤の1つ以上の材料の融点以上の温度であり得る。更に、炭化水素と粒子状材料との接触の少なくとも一部の期間中に、OTAの少なくとも一部の表面は、溶融層を含み得る。流動化促進添加剤は、炭化水素と粒子状材料との接触中に流動床内で還元されず、かつ粒子状材料の十分な流動化を維持する量で存在し得る。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン及び水を生成するための、炭化水素の酸化脱水素のためのプロセスであって、前記プロセスは、
流動床で、前記炭化水素を、
少なくとも1つの酸素移動剤と、
無機材料からなる少なくとも1つの流動化促進添加剤と、を含む、粒子状材料と接触させることを含み、
前記炭化水素と前記粒子状材料との前記接触の時間の少なくとも一部の期間中に、前記流動床は、前記酸素移動剤の1つ以上の材料の融点以上の温度であり、
前記炭化水素と前記粒子状材料との前記接触の時間の少なくとも一部の期間中に、少なくとも1つの前記酸素移動剤の少なくとも一部の表面は、溶融層を含み、
少なくとも1つの前記流動化促進添加剤は、前記温度での前記炭化水素と前記粒子状材料との前記接触中に、前記流動床内で還元されず、かつ
少なくとも1つの前記流動化促進添加剤は、前記粒子状材料の十分な流動化を維持する量で存在する、プロセス。
【請求項2】
少なくとも1つの前記酸素移動剤は、前記酸化脱水素中に還元を受けることによって、前記水の形成のための酸素を提供する化合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
少なくとも1つの前記酸素移動剤は、
MgMnOを含む混合酸化物を含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
少なくとも1つの前記酸素移動剤は、タングステン及びアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は前記アルカリ金属と前記アルカリ土類金属との組み合わせを含む、少なくとも2つの促進剤を更に含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
少なくとも1つの前記酸素移動剤は、
酸化マンガン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ルテニウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの還元性金属含有酸化物と、
少なくとも1つのアルカリ金属種であって、前記アルカリ金属種は、単体アルカリ金属、又はアルカリ金属を含む化合物を含む、アルカリ金属種と、
少なくとも1つのホウ素含有種であって、前記ホウ素含有種は、単体ホウ素、又はホウ素を含む化合物を含む、ホウ素含有種と、
少なくとも1つのアルカリ土類金属含有種であって、前記アルカリ土類金属含有種は、単体アルカリ土類金属、又はアルカリ土類金属を含む化合物を含む、アルカリ土類金属含有種と、を含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項6】
少なくとも1つの前記酸素移動剤は、式(1):
ML (1)
(式中、
Mは、マンガン、スズ、インジウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、プラセオジム、テルビウム、セリウム、鉄、ルテニウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
Lは、少なくとも1つのアルカリ金属であり、
Bは、ホウ素であり、
Cは、少なくとも1つのアルカリ土類金属であり、
Oは、酸素であり、
aは、0.01~10であり、
bは、0.1~20であり、
cは、0.1~100であり、
xは、M、L、B、及びCの価電子状態に起因して必要な酸素原子の数である)の混合酸化物を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
少なくとも1つの前記酸素移動剤は、式(2):
MB (2)
(式中、
Mは、マンガン、スズ、インジウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、プラセオジム、テルビウム、セリウム、鉄、ルテニウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
Bは、ホウ素であり、
Cは、少なくとも1つのアルカリ土類金属であり、
Oは、酸素であり、
aは、0.01~10であり、
bは、0.1~20であり、
cは、0.1~100であり、
xは、M、L、B、及びCの価電子状態に起因して必要な酸素原子の数である)の混合酸化物を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記酸素移動剤は、ペロブスカイトである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項9】
前記炭化水素と前記粒子状材料との前記接触の時間の少なくとも一部の期間内において、前記流動床は、650℃~1500℃の温度である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記流動化促進添加剤は、非還元性酸化物、ゼオライト、粘土、流動接触分解触媒、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記流動化促進添加剤は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、金属炭化物、金属窒化物、二酸化チタン、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ硫酸塩、アルカリ土類硫酸塩、硫酸カルシウム、硫酸カルシウムの水素化物、アルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩、酸化ランタン、希土類金属酸化物、ホウ酸、ホウ酸の塩、酸化ホウ酸、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ガリウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される化学種を含む無機材料を含む非還元性酸化物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記流動化促進添加剤は、式(3):
2/nO・Al・ySiO・wHO (3)
(式中、
yは、2~1,000,000,000の整数であり、
nは、式(3)の少なくとも1つのゼオライトのカチオン部分の価数であり、
Mは、Zr、Mg、Ti、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される金属であり、
wは、ゼオライトの1単位構造当たりの水分子の数であり、nの少なくとも5%は、陽子電荷に起因する)の少なくとも1つのゼオライトを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記流動化促進添加剤は、少なくとも1つの流動接触分解触媒を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの流動接触分解触媒は、1つ以上の添加剤の添加によって安定化される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
少なくとも1つの前記酸素移動剤の少なくとも1つの前記流動化促進添加剤に対する重量比は、50:50~99:1である、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、先に2020年2月20日に出願された仮出願第62/979,051号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発についての記載)
本発明は、米国エネルギー省により授与された、授与番号DE-EE0008315として提供された政府支援によってなされたものである。政府は本発明について、所定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、全般的には化学処理に関し、特に酸化脱水素によるオレフィン生成に関する。
【背景技術】
【0004】
軽質オレフィン、例えば、エチレン及びプロピレンは、ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及び商業的に関心の高い多くのポリマーなどのポリマーを製造するための、重要な構成要素である。オレフィンの世界生産量の90%超は、ナフサ、又はエタン及びプロパンの高温蒸気クラッキングに由来する。蒸気クラッキングプロセスは、炉を利用するものであるが、非常にエネルギー集約的であり、しかも、オレフィンを1トン生産するには、1.5~2トンの二酸化炭素を生成してしまう。
【0005】
オレフィンの代替源は、シェール鉱床から産出された天然ガスの転化によるものである。天然ガスの1つ以上の成分を経済的に望ましいオレフィンに転化するために、様々な技術が探索されている。そのような反応の一例として、炭化水素の酸化脱水素が挙げられ、これは、より低い飽和度を有する化学種と水とを生成するものであり、例えば、エタンを、エチレンに転化し、水が生成されるという反応である。酸化脱水素の一形態では、酸素移動剤を使用して、反応のための酸素源を提供する。
【発明の概要】
【0006】
高温では、酸素移動剤は反応に使用される反応器内で十分な流動化を有することができず、所望の生成物の収率が低下することが観察されている。したがって、高温下の反応器内で十分な流動化が維持される酸化脱水素を使用した、オレフィン生成のための改善されたプロセスが必要とされている。本明細書に記載の1つ以上の実施形態によれば、酸素移動剤を有する流動化促進添加剤を含むことにより、反応器内で反応温度において、酸素移動剤の十分な流動化が可能になるということが見出された。
【0007】
態様によれば、オレフィン及び水を生成するための、炭化水素の酸化脱水素のためのプロセスは、流動床内で、炭化水素を粒子状材料と接触させることを含む。粒子状材料は、少なくとも1つの酸素移動剤と、無機材料からなる少なくとも1つの流動化促進添加剤と、を含み得る。炭化水素と粒子状材料との接触の時間の少なくとも一部の期間中に、流動床は、酸素移動剤の1つ以上の材料の融点以上の温度である。更に、炭化水素と粒子状材料との接触の時間の少なくとも一部の期間中に、少なくとも1つの酸素移動剤の少なくとも一部の表面は、溶融層を含む。少なくとも1つの流動化促進添加剤は、上記の温度での炭化水素と粒子状材料との接触中には、流動床内で還元されない。少なくとも1つの流動化促進添加剤は、粒子状材料の十分な流動化を維持する量で存在する。
【0008】
前述の概要及び以下の詳細な説明の両方は、本技術の実施形態を呈しており、また、これらが特許請求される本技術の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。添付の図面は、技術の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、様々な実施形態を例示し、説明と共に、技術の原則及び動作を説明するのに役立つ。更に、図面及び説明は、単なる例示であることを意図し、いかなる様式でも特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【0009】
記載された実施形態の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載される。記載された実施形態の追加の特徴及び利点の一部は、その説明から当業者に容易に明らかであると思われ、また、以下の詳細な説明並びに図面及び特許請求の範囲を含む、記載された実施形態を実施することによって、認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の特定の実施形態の以下の発明を実施するための形態は、以下の図面と併せて読む場合、最も良く理解され得るが、そこでは、同様の構造が同様の参照数字で示される。
【0011】
図1】本明細書に記載の実施形態による、有用な生成物の同時形成を伴う酸素移動剤の還元/酸化を示す図である。
【0012】
図2】実験室規模の流動化実験のための装置の概略図である。
【0013】
図3】実施例1からの差圧対表面ガスの流速のチャートである。
【0014】
図4】実施例2からの差圧対床温度のチャートである。
【0015】
図5】実施例4からのエタン転化率対オレフィン選択性のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載の1つ以上の実施形態によれば、オレフィン及び水を生成するための、炭化水素の酸化脱水素のためのプロセスは、流動床内で炭化水素を、少なくとも1つの酸素移動剤(oxygen transfer agent、以下「OTA」)と、無機材料からなる少なくとも1つの流動化促進添加剤と、を含む粒子状材料に接触させることを含み得る。ここで、プロセスを更に詳細に説明する。
【0017】
1つ以上の実施形態では、少なくとも1つの流動化促進添加剤は、粒子状材料の流動化を維持するのに十分な量で存在する。反応器内の流動化は、気体と固体の流動様式の連続体上に存在し得る。例えば、流体が不動の粒子間の空隙を浸透して通るだけである場合、その結果として生じる様式は「固定床」として知られている。次いで、流動化は、「膨張床」、「最小流動化」、「平滑流動化」、「バブリング流動化」、「スラッギング流動化」、「乱流流動化」、「高密度流動化」、「噴出床流動化」、「チャネリング」、「希薄相流動化」、「高速流動化」、及び「希薄輸送流動化」の一部又は全部に進み得る。これらの様々な種類の流動化は、Jakobsen H.A.(2009)Fluidized Bed Reactors.In:Chemical Reactor Modeling.Springer,Berlin,Heidelberg(https://doi.org/10.1007/978-3-540-68622-4_10)により詳細に説明されている。本明細書で使用される場合、「流動床」という用語は、最小流動化を有するものとして挙動する反応器を指す。流動化促進添加剤が含まれていない場合、反応器は、流動化促進添加剤が含まれている場合、酸化脱水素にとって望ましい反応温度では、OTAが凝集してしまうことにより、固定床反応器に類似したものになる場合があり得る。しかしながら、流動化促進添加剤を添加することにより、粒子状材料が反応器内に懸濁される最小流動化が維持され得る。本明細書で使用される場合、「維持する」という用語は、流動化促進添加剤を添加しても流動化が同じままである状況、流動化促進添加剤を添加すると流動化が増加する状況、及び流動化がいくらか低下するものの最小流動化よりも低いレベルにまでは低下しない状況を含む。したがって、流動化促進添加剤は、反応器が固定床反応器として挙動することを防止することができ、これは、酸化脱水素にはかなりの妨げとなる。一部の実施形態では、反応器は、高速流動性様式で存在し得るが、この場合、反応器の高さ全体にわたって、固形成分が連続的かつ次第に減少し、粒子状材料の高密度床と反応器内の液体との間には明確な界面がない。
【0018】
本明細書に記載されるように、酸化脱水素(oxidative dehydrogenation、以下、「ODH」)を利用してオレフィンを形成することができる。1つ以上の実施形態では、炭化水素、例えばパラフィンのODHは、従来のオレフィン生成経路と比較して、世界的な規模のプラントからのCOの排出量をかなり低減させることができ、NOx排出量を実質的にゼロにすることができるオレフィン生成経路を提供する。ODHは、生成物としてオレフィン及び水を主に生成する、発熱性の選択的触媒プロセスである。反応スキーム(1)は、一般的なODH反応を提供する。
zC2n+2-2β+(z-1+δ)[O]→Cz×n2(z×n)+2-2β-2δ+(z-1+δ)HO (1)
(式中、zは、反応するパラフィン分子の数であり、nは、反応分子中の原子単位の数であり、βは、不飽和度であり、その値がゼロの場合には単結合を、値が1の場合には二重結合及び分子環を、値が2の場合には三重結合を表し、かつδは、不飽和度の変化である。)反応スキーム(1)中の酸素[O]は、金属酸化物の還元によって、又は分子酸素の触媒としての使用によって供給され得る。n=1の場合には、反応スキーム(1)に示される反応は、「メタンの酸化カップリング」として知られているものである。反応スキーム(2)は、エタンをエチレンにする例示的な酸化脱水素、すなわちn=2の場合の反応を示す。上記のように、この反応は発熱性であり、転化されるエタン1モル当たり105kJの熱を生成する。
CHCH+1/2O→CHCH+HO ΔH°=-105kJ/mol (2)
【0019】
ODH反応は、少なくとも1つのOTA及び少なくとも1つの流動化促進添加剤を含む粒子状材料の存在下で行われ得る。一部の実施形態では、少なくとも1つのOTA及び少なくとも1つの流動化促進添加剤は、粒子状材料中の別個の粒子である。一部の実施形態では、粒子状材料は、少なくとも1つの酸素移動剤と少なくとも1つの流動化促進添加剤とを組み合わせた粒子を含む。ここで、OTA及び流動化促進添加剤の両方を更に詳細に説明する。
【0020】
反応スキーム(1)の反応のいずれかに従って炭化水素の転化を促進する間、OTAは酸化された状態から、より酸化されていない、すなわち還元された状態に還元される。OTAを再生するために、酸素を使用して、還元されたOTAを再び酸化し得る。この再酸化プロセスは、1つ以上の酸化剤(酸素、空気、二酸化炭素、蒸気、NOx、及び/又は硫黄の酸化物など)の存在下での酸素移動剤の還元と同時に起こり得る。あるいは、OTAは、別個の工程で再び酸化され得る。図1に概略的に示される、有用な製品の同時形成を伴うOTAのこの還元/酸化は、しばしば、レドックス又は化学的ループシステムとして説明されるものである。実施形態では、OTAは、ODH中に還元され、それによって水を形成するための酸素を提供する化合物を含み得る。
【0021】
実施形態では、OTAの少なくとも一部分の表面は、炭化水素が粒子状材料と接触している時間の少なくとも一部の期間にわたって溶融層を含む。溶融層は、OTAの外側表面の、1~100%の表面積を有し得るが、例えば、OTAの外側表面の、1~95%、1~90%、1~85%、1~80%、1~75%、1~70%、1~65%、1~60%、1~55%、1~50%、1~45%、1~40%、1~35%、1~30%、1~25%、1~20%、1~15%、1~10%、5~95%、10~95%、15~95%、20~95%、25~95%、30~95%、35~95%、40~95%、45~95%、50~95%、55~95%、60~95%、65~95%、70~95%、75~95%、80~95%、又は更には85~95%の表面積を含み得る。理論に拘束されるものではないが、OTAがOTAの材料の融点付近又はそれよりも高い温度に曝されると、溶融層の形成が起こると考えられる。例えば、少なくとも450℃などのそのような温度は、流動床反応器内に存在し得る。
【0022】
実施形態では、OTAは、アルカリ金属と、炭化水素に接触すると、その炭化水素を酸化させてより不飽和な状態にすることができるか、又は反応スキーム(1)のように、炭素-炭素結合と結合して水を形成することができる、少なくとも1つの金属の混合酸化物、及び、水素に接触すると、水素を酸化させることが可能である、少なくとも1つの金属の混合酸化物のうちの少なくとも1つと、を含み得る。OTAは、ホウ素を更に含み得る。
【0023】
酸素移動剤中に含まれる混合酸化物は、立方結晶格子RR’O(式中、R及びR’は異なる元素であり、かつOは酸素である)のファミリーに由来する材料から調製され得る。これらの材料はR中のR’の固溶体であり、還元又は再酸化時には、結晶格子パラメータが変化することが非常に少なく、そのためOTAとして寸法的に安定するいということが判明している。材料の例としては、MgMnO、CuPbO、及びNiMnOが挙げられる。実施形態では、少なくとも1つのOTAは、MgMnOを含む混合酸化物を含み得る。酸化還元サイクルにおける安定な結晶構造に加えて、これらのRR’O材料は、非常に高密度で硬質の物質をもたらす方法で調製され得る。少量のホウ素の添加は、粒子の靭性を大幅に増加させ得る。
【0024】
実施形態では、OTAは、少なくとも1つの還元性金属含有酸化物と、少なくとも1つのアルカリ金属種と、少なくとも1つのホウ素含有種と、少なくとも1つのアルカリ土類金属含有種と、を含み得る。少なくとも1つの還元性金属含有酸化物は、酸化マンガン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ルテニウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。アルカリ金属種は、単体アルカリ金属、又はアルカリ金属を含む化合物を含み得る。ホウ素含有種は、単体ホウ素、又はホウ素を含む化合物を含み得る。アルカリ土類金属含有種は、単体アルカリ土類金属、又はアルカリ土類金属を含む化合物を含み得る。
【0025】
実施形態では、OTAは、式MLを有する混合酸化物を含み得るが、式中、Mは、マンガン、スズ、インジウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、プラセオジム、テルビウム、セリウム、鉄、ルテニウム、又はそれらの2つ以上の組み合わせであり、Lは、少なくとも1つのアルカリ金属であり、Bは、ホウ素であり、Cは、少なくとも1つのアルカリ土類金属であり、Oは、酸素であり、aは、0.01~10であり、bは、0.1~20であり、cは、0.1~100であり、xは、M、L、B、及びCの価電子状態に起因して必要な酸素原子の数である。
【0026】
他の実施形態では、OTAは、式MBを有する混合酸化物を含み得、式中、Mは、マンガン、スズ、インジウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、プラセオジム、テルビウム、セリウム、鉄、ルテニウム、又はそれらの2つ以上の組み合わせであり、Bは、ホウ素であり、Cは、少なくとも1つのアルカリ土類金属であり、Oは、酸素であり、aは、0.01~10であり、bは、0.1~20であり、cは、0.1~100であり、xは、M、B、及びCの価電子状態に起因して必要な酸素原子の数である。
【0027】
実施形態では、OTAは、ABXの構造を有する鉱物であるペロブスカイトを含み得るが、式中、A及びBはカチオンであり、Xは、両方のカチオンに結合を形成するアニオン、例えば酸化物である。例示的なペロブスカイトとしては、CaMnO、BaMnO3-δ、SrMnO3-δ、MnSiO、MnMgO4-δ、La0.8Sr0.2、La0.8FeO3-δ、CaTi0.1Mn0.93-δ、Pr11-δ、又はそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0028】
実施形態では、OTAは、特定の所望の生成物に対するより高い選択性を促進する、1つ以上の促進剤を更に含み得る。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、活性酸素はOTA内の促進剤部位に引き出され、OTAが反応スキーム(1)の選択的促進剤として、かつ選択的促進剤への酸素リザーバとして作用することを可能にすると考えられる。例示的な促進剤としては、例えば、Fe、Co、La、Sr、Sm、Pr、Y、Ga、Ce、Zr、Ti、W、Mo、V、Nb、及びCrの、一金属原子性酸化物及び混合金属酸化物と、Ni、Sn、Ga、W、Zr、Na、K、Cs、Rb、As、Sb、Bi、及びPのようなドーパントと、が挙げられ得る。他の促進剤は、ナトリウム、リチウム、カルシウム、及びバリウムのケイ酸塩又はアルミン酸塩などの、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のケイ酸塩又はアルミン酸塩を含み得る。更に、マンガン(褐マンガン鉱)、鉄、ジルコニウム、銅又はルテニウムのケイ酸塩及びアルミン酸塩を使用してもよい。使用され得る別のクラスの酸素流動性促進剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(イットリウムなどの添加剤を含むものでも含まないものでもよい)、酸化プラセオジム、又は酸化バリウムなどの、酸素アニオン輸送を促進する正孔構造を有する酸化物が挙げられる。実施形態では、促進剤は、タングステン及びアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアルカリ金属とアルカリ土類金属との組み合わせを含む。
【0029】
実施形態では、OTAの粒径は、10~200μm、10~190μm、10~180μm、10~170μm、10~160μm、10~150μm、10~140μm、10~130μm、10~120μm、10~110μm、10~100μm、10~90μm、10~80μm、10~70μm、10~60μm、10~50μm、10~40μm、10~30μm、10~20μm、20~200μm、30~200μm、40~200μm、50~200μm、60~200μm、70~200μm、80~200μm、90~200μm、100~200μm、110~200μm、120~200μm、130~200μm、140~200μm、150~200μm、160~200μm、170~200μm、180~200μm、又は更には190~200μmであり得る。粒径分布は、ASTMのD4464-15法(この方法を規定する文書の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる)を使用して、水分散剤中で、粒子屈折率1.730を用いて測定することができる。上記の測定を実施するための器具類としては、例えば、Mastersizer2000が挙げられ得る。
【0030】
1つ以上の実施形態では、OTAは、業界では「Geldart A」特性として知られている特性を示し得る。他の実施形態では、OTAは、業界では「Geldart B」特性として知られている特性を示し得る。粒子タイプは、D.Geldart,Gas Fluidization Technology,John Wiley&Sons(New York,1986),34-37、及びD.Geldart,「Types of Gas Fluidization,」Powder Technol.7(1973)285-292(なお、これらの文献は、参照により、その全内容が本明細書に組み込まれる)に従って、「グループA」又は「グループB」として分類され得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「グループA」という用語は、曝気可能な粉末であって、気泡を含まない範囲の流動化レベルと、高い床膨張性と、低速かつ直線状の脱気速度と、最大の気泡サイズ及び大きな後跡を有し、分割する/再度合体する気泡が優勢的に存在し得る気泡特性と、UとUmfとが等しい(Uは、必ずしもそうでなくてもよいが典型的にはメートル毎秒(m/秒)単位で測定される、キャリアガスの速度であり、Umfは最小流動化速度であり、この状態では、すなわち、過剰なガスの流速が存在する)と仮定した場合の、高い固体混合レベル及び気体の逆混合レベルと、軸対称のスラグ特性と、非常に浅い床を除いて、噴出することがないことと、を有する粉末を指す。等しい粒径(dρ)を想定した場合、平均粒径が減少するにつれて、又は45μm未満のdρを有する粒子の割合が増加するにつれて、又はガスの圧力、温度、粘度、及び密度が上昇するにつれて、上に列挙された特性は、改善される傾向がある。一般に、粒子は、小さな平均粒径及び/又は小さい粒子密度(ρρ)(1.4グラム毎立方センチメートル(g/cm)未満)を示し、低いガス速度で平滑流動化を示すように容易に流動化し、より高いガス速度でも、制御された小さな気泡によるバブリングを示し得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「グループB」という用語は、「砂様」粉末であって、Umfでバブリングを開始し、中程度の床膨張を示し、高速脱気性を示し、気泡サイズが制限されず、UとUmfとが等しいと仮定した場合に、中程度の固体混合レベルと、気体の逆混合レベルとを有し、軸対称スラグと非対称スラグとの両方を含み、かつ浅い床のみで噴出を示す、粉末を指す。これらの特性は、平均粒径が減少するにつれて改善する傾向があるが、粒径分布と、いくらかの不確実性を伴うが、ガスの圧力と、温度と、粘度と、又は密度とは、上記の特性の改善にはほとんど寄与しないように思われる。一般に、グループB粒子の大部分が40μm超でかつ500μm未満の粒径(dρ)を有する場合、密度(ρρ)は、1.4g/cm超でかつ4g/cm未満である。粒径(dρ)が、60μm超でかつ500μm未満である場合、密度(ρρ)は、4g/cmであり、粒径(dρ)が、250μm超でかつ100μm未満である場合、密度(ρρ)は、約1g/cmである。
【0033】
本明細書に記載のOTAなどのGeldartA及びGeldartBの粒径の粒子の流動化は、粒径10μm~200μmの微粒子の導入によって改善され得る。粒子間の表面接着性によって引き起こされる粒子間凝集は、流動化促進添加剤を導入することによって、本明細書に記載の実施形態に従って制御される。上記のようにして、流動化促進添加剤を含まなければ酸化脱水素には非実用的であるOTAが、流体及び移動床反応器での使用に実用的なものになり得る。同様に、流動化促進添加剤は、粒径調整を可能にし得る。したがって、OTAを生成するために使用される製造方法が、望ましい粒径の範囲を効率的にもたらさない場合、流動化促進添加剤は、製造中にOTAの形成過程に添加され得る。
【0034】
ここで、流動化促進添加剤について更に詳細に説明する。少なくとも1つの流動化促進添加剤は、炭化水素と粒子状材料との接触中には、流動床内で還元されなくてよい。例示的な流動化促進添加剤としては、非還元性酸化物、ゼオライト、粘土、流動接触分解触媒、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。更なる例示的な流動化促進添加剤としては、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、金属炭化物、金属窒化物、二酸化チタン、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ硫酸塩、アルカリ土類硫酸塩、硫酸カルシウム、硫酸カルシウムの水素化物、アルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩、酸化ランタン、希土類金属酸化物、ホウ酸、ホウ酸の塩、酸化ホウ酸、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ガリウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせから選択される化学種を含む、無機材料を含む、非還元性酸化物が挙げられる。
【0035】
実施形態において、流動化促進添加剤は、ゼオライト、例えば式M2/nO・Al・ySiO・wHO(ただし式中、yは、2~1,000,000,000の整数であり、nは、少なくとも1つのゼオライトのカチオン部分の価数であり、Mは、Zr、Mg、Ti、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される金属であり、wは、ゼオライトの1単位構造当たりの水分子の数であり、nの少なくとも5%は、陽子電荷に起因する)のゼオライトなどを含み得る。例えば、上記のゼオライトとしては、ゼオライトY、ゼオライトA、フォージャサイト、ベントナイト、ソーダライト、ZSM-10、MCM-68、MCM-61、MCM-35、ZSM-39、ZSM-23、ZSM-12、SAPO56、AlPO-5、AlPO-14、AlPO-41、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0036】
実施形態では、流動化促進添加剤は、流動接触分解(fluid catalytic cracking、以下、「FCC」)触媒を含み得る。本明細書に記載されるように、FCC触媒は、一般に接触分解触媒機能性を有することが知られている材料である。しかしながら、本明細書に記載されるようなFCC触媒は、現在開示されているシステム及び方法において接触分解機能性を以って動作しない(すなわち、それらが十分に不活性であり得る)場合があるということを理解されたい。FCC触媒は、結晶性ゼオライト、マトリックス、バインダー、及び充填剤を含み得る。一般に、ゼオライト、例えばY型ゼオライトは、活性種であり、触媒の約15~50重量パーセントを占め得る。マトリックスの一例としては、アルミナが挙げられ、これは触媒活性部位をも与え得る。バインダー及び充填剤成分、例えば、シリカゾル及びカオリンは、それぞれ、触媒の物理的強度を提供し得る。流動化促進添加剤として使用するために、流動接触分解触媒は、真新しく、平衡化され、かつ/又は安定化され得る。本明細書で使用される場合、「真新しい触媒」という用語は、FCCプロセスではまだ使用されていない触媒を指す。本明細書で使用される場合、「平衡化触媒」という用語は、FCCプロセスで既に使用されており、真新しい触媒としてのその活性に対して、その活性の50%超を失った触媒を指す。本明細書で使用される場合、「安定化触媒」という用語は、添加剤を含有する、又はそのゼオライトが安定性を促進するように修飾されているFCC触媒であって、その結果、そのFCC触媒の活性がその他の点では同一の、安定化されていないFCC触媒の活性よりも高くなっているFCC触媒を指す。
【0037】
実施形態では、流動化促進添加剤の粒径は、10~200μm、10~190μm、10~180μm、10~170μm、10~160μm、10~150μm、10~140μm、10~130μm、10~120μm、10~110μm、10~100μm、10~90μm、10~80μm、10~70μm、10~60μm、10~50μm、10~40μm、10~30μm、10~20μm、20~200μm、30~200μm、40~200μm、50~200μm、60~200μm、70~200μm、80~200μm、90~200μm、100~200μm、110~200μm、120~200μm、130~200μm、140~200μm、150~200μm、160~200μm、170~200μm、180~200μm、又は更には190~200μmであり得る。
【0038】
本明細書に記載のOTA及び流動化促進添加剤は、炭化水素の酸化脱水素のプロセスで使用され得る。実施形態では、OTA及び流動化促進添加剤の両方を含む粒子状材料は、流動床反応器に添加され得るが、その反応器内では、炭化水素が粒子状材料と接触し得る。他の実施形態では、粒子状材料はOTAを含み得るが、流動化促進添加剤は、別途、流動床反応器に添加され得る。上記のように、流動化促進添加剤は、反応器内での流動化を維持し得るため、反応器は、固定床反応器としては挙動しない。
【0039】
実施形態では、OTAの流動化促進添加剤に対する重量比は、50:50~99:1、50:50~95:5、50:50~90:10、50:50~85:15、50:50~80:20、50:50~75:25、50:50~70:30、50:50~65:35、50:50~60:40、55:45~99:1:10、60:40~99:1、65:35~99:1、70:30~99:1、75:25~99:1、80:20~99:1、85:15~99:1、90:10~99:1、又は更には95:5~99:1であり得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、流動化促進添加剤の濃度が高すぎる場合、OTAは、酸化脱水素においてその機能を実行することができないか、又は少なくとも、その機能の実行を大きく妨げられ得ると考えられる。しかしながら、流動化促進添加剤の濃度が低すぎる場合、流動化は、上に十分に説明した理由により損なわれる。
【0040】
炭化水素と粒子状材料との接触の時間の少なくとも一部の期間中に、流動床は、OTAの1つ以上の材料の融点以上の温度である。本明細書で使用される場合、「温度」という用語は、炭化水素が、OTA及び流動化促進添加剤と接触している間の、流動床反応器内の平均温度を指す。実施形態では、上記の温度は、少なくとも350℃である。実施形態では、上記の温度は、少なくとも450℃である。実施形態では、上記の温度は、少なくとも650℃である。例えば、上記の温度は、650℃~1500℃、650℃~1450℃、650℃~1400℃、650℃~1350℃、650℃~1300℃、650℃~1250℃、650℃~1200℃、650℃~1150℃、650℃~1100℃、650℃~1050℃、650℃~1000℃、650℃~950℃、650℃~900℃、650℃~850℃、650℃~800℃、650℃~750℃、700℃~1500℃、750℃~1500℃、800℃~1500℃、850℃~1500℃、900℃~1500℃、950℃~1500℃、1000℃~1500℃、1050℃~1500℃、1100℃~1500℃、1150℃~1500℃、1200℃~1500℃、1250℃~1500℃、1300℃~1500℃、1350℃~1500℃、又は更には1400℃~1500℃であり得る。少なくとも1つのOTAの少なくとも一部分の表面は、接触の少なくとも一部のための溶融層を含み得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、より高い温度は反応速度を増加させるが、そのより高い温度はまた、生成物の選択性に変化をもたらし得ると考えられる。例えば、より高い温度は、より多くの芳香族及びブタジエン、コークス、及びCOxの形成をもたらし得る。
【0041】
流動床反応器内の他のパラメータには、1時間あたりのガス空間速度(gas hourly space velocity、GHSV)と、表面ガスの流速と、OTA及び流動化促進添加剤を流動状態に保つために必要なキャリアガスの量と、が含まれる。本プロセスについてのGHSVは、OTAの1立方メートル当たり、約100~約150,000ノーマル立方メートル/時の範囲の炭化水素供給量と、1時間あたりの嵩密度で、例えば、1,000~10,000、又は1,000~5,000の範囲の流動化促進添加剤とを含むことが判明している。またOTAと流動化促進添加剤とは、キャリア流体、例えば不活性希釈剤流体又はガス形態の反応物のうちの1つによって、空気圧で、反応システムを通じて移動され得る。不活性希釈剤キャリアガス(「表面ガス」と呼ばれることもある)の例は、窒素、揮発性炭化水素(例えば、メタン)、蒸気、二酸化炭素、アルゴン、及び反応に干渉しない他のキャリアである。なお、このリストは網羅的であると見なされるべきではない。反応中の反応器内のキャリア流体(又は表面ガス)速度は、反応器の表面積に応じて、0.1m/秒~25m/秒、例えば0.5m/秒~20m/秒、1m/秒~15m/秒、又は5m/秒~15m/秒であり得る。必要なキャリアガスの量は、OTA及び流動化促進添加剤を流動状態で維持するために必要な量のみである。好ましくは、用いられるキャリアガスの量は、1kgのOTA及び流動化促進添加剤あたり、約0~約0.2kgのガスの範囲であり得る。あるいは、OTA及び流動化促進添加剤は、希釈剤なしで、大気圧よりも低い圧力下の反応器によって輸送され得る。
【0042】
一態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、オレフィン及び水を生成するための、炭化水素の酸化脱水素のためのプロセスは、流動床で、炭化水素を粒子状材料と接触させることを含む。粒子状材料は、少なくとも1つの酸素移動剤と、無機材料からなる少なくとも1つの流動化促進添加剤と、を含み得る。炭化水素と粒子状材料との接触の時間の少なくとも一部の期間中に、流動床は、酸素移動剤の1つ以上の材料の融点以上の温度である。更に、炭化水素と粒子状材料との接触の時間の少なくとも一部の期間中に、少なくとも1つの酸素移動剤の少なくとも一部の表面は、溶融層を含む。少なくとも1つの流動化促進添加剤は、上記の温度での炭化水素と粒子状材料との接触中には、流動床内で還元されない。少なくとも1つの流動化促進添加剤は、粒子状材料の十分な流動化を維持する量で存在する。
【0043】
第2の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの酸素移動剤及び少なくとも1つの流動化促進添加剤は、粒子状材料中の別個の粒子である。
【0044】
第3の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、粒子状材料は、少なくとも1つの酸素移動剤と、少なくとも1つの流動化促進添加剤と、を含む粒子を含む。
【0045】
第4の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの酸素移動剤は、酸化脱水素中に還元を受け、それによって水の形成のための酸素を提供する化合物を含む。
【0046】
第5の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの酸素移動剤は、MgMnOを含む混合酸化物を含む。
【0047】
第6の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの酸素移動剤は、タングステン及びアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属の組み合わせを含む、少なくとも2つの促進剤を更に含む。
【0048】
第7の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの酸素移動剤は、酸化マンガン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化プラセオジム、酸化テルビウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ルテニウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの還元性金属含有酸化物と、少なくとも1つのアルカリ金属種であって、当該アルカリ金属種は、単体アルカリ金属、又はアルカリ金属を含む化合物を含む、アルカリ金属種と、少なくとも1つのホウ素含有種であって、当該ホウ素含有種は、単体ホウ素、又はホウ素を含む化合物を含む、ホウ素含有種と、少なくとも1つのアルカリ土類金属含有種であって、当該アルカリ土類金属含有種は、単体アルカリ土類金属、又はアルカリ土類金属を含む化合物を含む、アルカリ土類金属含有種と、を含む。
【0049】
第8の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの酸素移動剤は、式MLの混合酸化物を含み、式中、Mは、マンガン、スズ、インジウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、プラセオジム、テルビウム、セリウム、鉄、ルテニウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、Lは、少なくとも1つのアルカリ金属であり、Bは、ホウ素であり、Cは、少なくとも1つのアルカリ土類金属であり、Oは、酸素であり、aは、0.01~10であり、bは、0.1~20であり、cは、0.1~100であり、xは、M、L、B、及びCの価電子状態に起因して必要な酸素原子の数である。
【0050】
第9の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの酸素移動剤は、式MBの混合酸化物を含み、式中、Mは、マンガン、スズ、インジウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、プラセオジム、テルビウム、セリウム、鉄、ルテニウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、Bは、ホウ素であり、Cは、少なくとも1つのアルカリ土類金属であり、Oは、酸素であり、aは、0.01~10であり、bは、0.1~20であり、cは、0.1~100であり、xは、M、L、B、及びCの価電子状態に起因して必要な酸素原子の数である。
【0051】
第10の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、酸素移動剤は、ペロブスカイトである。
【0052】
第11の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、酸素移動剤は、CaMnC、BaMnO3-δ、SrMnO3-δ、MnSiO、MnMgO4-δ、La0.8Sr0.2、La0.8FeO3-δ、CaTi0.1Mn0.93-δ、Pr11-δ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0053】
第12の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、炭化水素と粒子状材料との接触の時間の少なくとも一部の期間中に、流動床は、少なくとも650℃の温度である。
【0054】
第13の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、炭化水素と粒子状材料との接触の時間の少なくとも一部の期間中に、流動床は、650℃~1500℃の温度である。
【0055】
第14の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、流動化促進添加剤は、非還元性酸化物、ゼオライト、粘土、流動接触分解触媒、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0056】
第15の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、流動化促進添加剤は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、金属炭化物、金属窒化物、二酸化チタン、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ硫酸塩、アルカリ土類硫酸塩、硫酸カルシウム、硫酸カルシウムの水素化物、アルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩、酸化ランタン、希土類金属酸化物、ホウ酸、ホウ酸の塩、酸化ホウ酸、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ガリウム、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される化学種を含む無機材料を含む非還元性酸化物を含む。
【0057】
第16の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、流動化促進添加剤は、式M2/nO・Al・ySiO・wHO(ただし式中、yは、2~1,000,000,000の整数であり、nは、少なくとも1つのゼオライトのカチオン部分の価数であり、Mは、Zr、Mg、Ti、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される金属であり、wは、ゼオライトの1単位構造当たりの水分子の数であり、nの少なくとも5%は、陽子電荷に起因する)の少なくとも1つのゼオライトを含む。
【0058】
第17の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、式(3)の少なくとも1つのゼオライトは、ゼオライトY、ゼオライトA、フォージャサイト、ベントナイト、ソーダライト、ZSM-10、MCM-68、MCM-61、MCM-35、ZSM-39、ZSM-23、ZSM-12、SAPO56、AlPO-5、AlPO-14、AlPO-41、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0059】
第18の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、流動化促進添加剤は、少なくとも1つの流動接触分解触媒を含む。
【0060】
第19の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの流動接触分解触媒は、真新しいものである。
【0061】
第20の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの流動接触分解触媒は、平衡化されている。
【0062】
第21の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの流動接触分解触媒は、1つ以上の添加剤の添加によって安定化されている。
【0063】
第22の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、1つ以上の添加剤は、ランタンを含む。
【0064】
第23の態様によれば、単独であるか又は任意の他の態様と組み合わせてであるかに関わらず、少なくとも1つの酸素移動剤の少なくとも1つの流動化促進添加剤に対する重量比は、50:50~99:1である。
【0065】
本開示の1つ以上の特徴を、以下の実施例の観点で例示する。
【実施例
【0066】
以下の実施例は、本質的に例示的なものであり、本出願の範囲を限定する役割を与えられていると解するべきではない。
【0067】
予備的な考慮事項
【0068】
以下の実験について、流動化促進添加剤は、式M2/nO・Al・ySiO・wHO(ただし式中、yは、2~1,000,000,000の整数であり、nは、少なくとも1つのゼオライトのカチオン部分の価数であり、Mは、Zr、Mg、Ti、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される金属であり、wは、ゼオライトの1単位構造当たりの水分子の数であり、nの少なくとも5%は、陽子電荷に起因する)のゼオライトを含む。以下の実施例において「OTA3」と称される例示的なOTAは、MgMnOの表面でのタングステン酸ナトリウムである。このOTAは、以下のように調製することができる:MgO(1,692g)、MnO(1,288g)、HBO(452g)、Na(1,481g)、メタタングステン酸アンモニウム(258g)、及び30%コロイダルシリカゾル(858g)を、乾燥混合した。この乾燥混合物に、蒸留水5Lを添加した。混合物を噴霧乾燥させて、70μmの平均粒径を得た。得られた粒子を、950℃で12時間、空気下でか焼して、最終OTAを生成した。
【0069】
そのOTA及び流動化促進添加剤を、OTA:流動化促進添加剤=50:50~90:10の重量比で予備混合した。
【0070】
実験室規模の流動化実験は、図2に示されるような、2.54cm(1インチ)の内径を有する、石英製で、バブリング床の、上向流反応器で行った。反応器10は、最高で1100℃の温度に達する能力を有し得る。触媒混合物18を載せるために、反応器には、入口側16に2つのメディアムフリット14を取り付ける。出口側20に4つのポートが設けられ、12点熱電対22、ガス出口24、及び差圧(differential pressure、DP)装置30の高脚26及び低脚28に供されている。DPの高脚26上で10sccmで動作する窒素ブローバック32は、微粉がDPを汚染することを防止するものである。ガスは、質量流量コントローラによって入口34を通って反応器に供給され、Camileデータ取得及び制御システムを使用して、リグ動作を制御する。
【0071】
典型的な室温流動化実験では、熱電対及びDPチューブを最初に設置し、続いてOTA/流動化促進添加剤の混合物又はそれぞれの純粋な材料を充填する。なお、純粋な材料の場合には、それらをあらかじめ混合してから反応器に注ぐ。次に、反応器に漏れがないかを検査してから、Nの流入を開始する。DPは30秒ごとに測定され、DPの読み取り値は、各N流量で、3分間取得される。N流量は、典型的には75~4000sccmの範囲である。これらの実験は、材料の流動性を(DP読み取り値から)明らかにし、流動性材料について最小流動化速度(Umf)を測定する。
【0072】
高温での実験については、DPは、様々な温度で、Umfを超える一定の表面ガス(N)の速度下で測定される。したがって、温度が上昇するにつれて、Nの体積流量が下げられて、一定の表面速度を維持するようになっている。純粋な材料又は混合物の温度は、N下で、室温から300℃まで、毎分5℃のペースで上昇させる。DPは、300℃~1000℃の間の温度で測定される。DP読み取り値は、各温度で、1時間にわたり、30秒間隔で収集される。
【0073】
実施例1:流動化の改善
【0074】
低い流動化プロファイルを示すOTA(これをOTA1と呼ぶことにする)を60g、反応器に充填し、Nの流速を0.14m/秒に上げた。DP対Nの流速のプロットである図3に示されるように、極めて低いDP読み取り値が、Nの全ての流量値で記録され、DP値は、流量が変化しても有意には変化しなかった。この挙動は、流動化特性が低い材料のものと一致する。
【0075】
次に、OTA1を10gと、FCC触媒(流動化促進添加剤として用いられている)を10gとの混合物を反応器に充填し、Nの流速を0.12m/秒に上げた。図3に示すように、より小さい材料充填量でも、有意に高いDP読み取り値が観察された。ガスの流速の変化に伴うDPの変化は、以下のパターンを示した。流速が低い場合には、システムは固定床のように挙動するが、その場合、DPは、最大DPに達するまで、ガスの流速の増加と共に直線的に増加する。最大DPに対するガスの流速は、圧力降下が床重量に等しくなる最小流動化速度(Umf)である。ガスの流速を更に増加させる(Umf超)と、結果として床の流動化をもたらし、DP値は、図3に示すように、これ以降全てのガスの流速でほぼ一定のままである。ガスの流速がUmf超の場合に、OTA1及び流動化促進添加剤混合物の床流動化/バブリングも視覚的に確認された。
【0076】
対照実験として、20gの純粋なFCC触媒流動化促進添加剤を反応器に充填し、Nの流速を0.12m/秒に上げた。FCC触媒のみの場合のDP読み取り値は、図3に示すように、OTA1にFCC触媒を加えた系の場合と同様であった。したがって、FCC触媒をOTA1に加えた場合、OTA1の室温での流動化が有意に改善され、OTA1とFCCとの混合物は、流動化という観点からは、純粋なFCC触媒と同じように挙動した。
【0077】
実施例2:反応温度の昇温
【0078】
室温で良好な流動化特性を示すOTA、すなわちOTA2を20g、反応器に充填した。300℃~800℃の温度でOTA2(20g)を流動化させ、続いて、表面ガス(N)の流速を一定として、それぞれの温度でDPを測定した。DP対床温度をプロットした図4に示すように、DPは、300℃及び400℃では変化しなかったが、500℃以上の温度では、有意に低くなった。500℃以上の温度でのDPの低下は、OTA2の流動性の喪失、及びその結果としてのガスのチャネリングと一致している。したがって、OTA2を使用した炭化水素の酸化脱水素の場合、500℃が温度の限界であると予想される。しかしながら、エタンの酸化脱水素のために経済的に実現可能であるプロセスについては、500℃は十分ではなく、より高い動作温度が必要である。4gのFCC触媒流動化促進添加剤を、16gのOTA2と混合し、OTAと流動化促進添加剤との重量比を80:20とした場合、DP対床温度をプロットした図4に示すように、DPは、300℃~750℃では有意に変化しなかったが、その後、800℃では有意に低下した。図4に示すように、純粋なFCC触媒流動化促進添加剤(40g)は、900℃までの温度では、流動性が喪失する兆候を示さなかった。このように、少量のFCC触媒流動化促進添加剤をOTA2に添加すると、動作温度(「ΔT」)が約300℃分増加する結果になる。
【0079】
実施例3:反応収率の維持
【0080】
上記のように調製したOTA3の5mL試料を、内径19mm(0.75インチ)を有するアルミナ製反応器に添加した。エタンを、OTA3を用いて、840℃の温度及び毎時4,000~4,800のGHSVの条件下で転化した。転化の結果を表1に示す。触媒床は、約810℃で流動性が喪失した。
【表1】
【0081】
次に、5mLのOTA3試料を、5mLの平衡化したFCC触媒流動化促進添加剤も含有する、上と同様のアルミナ製反応器に充填した。エタン転化を840℃で実行し、転化結果を表2に示した。GHSVは、OTA3の量に基づいて計算された。840℃では、触媒が流動性を喪失する兆候は全くなかった。このように、これら2つの実験は、FCC触媒流動化促進添加剤の添加が、所望の840℃の転化温度で反応成分の流動化を大幅に改善する一方で、その添加剤を添加しても、所望のオレフィン生成物の総収率に悪影響がなかったということを実証している。
【表2】
【0082】
実施例4:パイロット規模の酸化脱水素
【0083】
エタン転化率対オレフィン選択性をプロットした図5は、連続循環流体床パイロットユニット反応器において、合計で5kg~8kgのOTA及びFCC触媒流動化促進添加剤を使用して、エタンの酸化脱水素を実行した結果を示す。OTA3と同様のOTAを、FCC触媒流動化促進添加剤と混合し、その混合物中、OTAのFCC触媒流動化促進添加剤に対する重量比を、100:0~50:50とした。パイロット規模の実験から得られた図5に示される結果は、パイロット規模の反応器が表1及び表2に提供される実験室規模の実験の結果と同様の転化率及び選択性を提供することを示す。加えて、10~50%のFCC触媒流動化促進添加剤をパイロット規模の反応器に含めることにより、825℃までの反応温度が許容される。
【0084】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、そのような変更及び変形が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内に入る限り、記載した実施形態の変更及び変形を包含することが意図される。

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】