(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】血行動態の状態に関する療法スコアリング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/029 20060101AFI20230405BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230405BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61B5/029
A61B5/02 A
A61B5/0215 B
A61B5/02 310A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550828
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 US2021012788
(87)【国際公開番号】W WO2021173236
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル・ジューン・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジョンピン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】フェラス・アル・ハティブ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・マリノ
(72)【発明者】
【氏名】サイ・プラサド・ブディ
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA03
4C017AA07
4C017AA08
4C017AA09
4C017AB02
4C017AB03
4C017AC28
4C017BC11
4C017BD01
4C017BD04
4C017DD14
4C017EE01
4C017FF05
(57)【要約】
患者の動脈圧を監視するためのシステムは、療法に対する患者の応答性を予測するスコアを判定する。患者の動脈圧波形を表す、感知された血行動態のデータが、血行動態監視装置によって受け取られる。血行動態データから、大きさデータおよび傾向データが導出される。療法に対する患者の応答性を予測するスコアが、血行動態パラメータの大きさデータおよび傾向データを基に判定される。スコアの表現が出力される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の動脈圧を監視し、療法に対する前記患者の応答性を予測するスコアを判定するための方法であって、
血行動態監視装置によって、前記患者の動脈圧波形を表す、感知された血行動態データを受け取るステップと、
前記血行動態監視装置によって、前記血行動態データから、血行動態パラメータの大きさデータおよび傾向データを導出するステップと、
前記血行動態監視装置によって、前記血行動態パラメータの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、前記療法に対する前記患者の前記応答性を予測する前記スコアを判定するステップと、
前記血行動態監視装置によって、前記スコアの表現を出力するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記血行動態パラメータの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、前記スコアを判定するステップが、
前記血行動態パラメータの前記大きさデータ基に、大きさのサブスコアを判定するステップと、
前記血行動態パラメータの前記傾向データを基に、傾向のサブスコア判定するステップと、
前記大きさのサブスコアと前記傾向のサブスコアとの組み合わせとして前記スコアを判定するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大きさのサブスコアと前記傾向のサブスコアとの組み合わせとして前記スコアを判定するステップが、前記大きさのサブスコアと前記傾向のサブスコアとの乗法積として前記スコアを判定するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記大きさのサブスコアを判定するステップが、前記血行動態パラメータの前記大きさデータの小さい方の大きさ閾値における小さい方の正規化された閾値と、前記血行動態パラメータの前記大きさデータの大きい方の大きさ閾値における大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として、前記大きさのサブスコアを判定するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記正規化された値として、前記大きさのサブスコアを判定するステップは、前記血行動態パラメータの前記大きさデータが、前記小さい方の大きさ閾値よりも大きく、前記大きい方の大きさ閾値よりも小さいと判定することに応じて、前記小さい方の正規化された閾値と前記大きい方の正規化された閾値との間で補間するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記血行動態パラメータの前記傾向データを導出するステップが、定義された時間間隔に関連した、前記血行動態パラメータの最良適合ラインの傾斜を判定するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記傾向のサブスコアを判定するステップが、前記最良適合ラインの前記傾斜を正規化して、前記定義された時間間隔に関連した、前記血行動態パラメータの前記最良適合ラインの正規化された傾斜を判定するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記傾向のサブスコアを判定するステップが、前記最良適合ラインの前記正規化された傾斜に重み付け係数を適用して、前記定義された時間間隔に関連した、前記血行動態パラメータの前記最良適合ラインの、正規化してから重み付けされた傾斜を判定するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記血行動態パラメータの前記傾向データを導出するステップが、複数の定義された時間間隔に関連した、前記血行動態パラメータの複数の最良適合ラインの複数の傾斜を判定するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記血行動態パラメータが、1回拍出量変化(SVV)、脈圧変動(PPV)、1回拍出量(SV)、または1回拍出量指数(SVI)のうちの1つであり、前記療法が、前記患者に対する生理食塩水の静脈内送達である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記血行動態監視装置によって、前記血行動態データから、全身血管抵抗(SVR)または全身血管抵抗指数(SVRI)のうちの1つの大きさデータおよび傾向データを導出するステップと、
前記血行動態監視装置によって、SVRまたはSVRIのうちの前記1つの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、昇圧剤の静脈内送達に対する前記患者の応答性を予測する第2のスコアを判定するステップと、
前記血行動態監視装置によって、前記第2のスコアの表現を出力するステップと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記血行動態監視装置によって、前記血行動態データから、動脈圧の最高の上昇速度(dP/dt
max)、心拍出量(CO)、または心係数(CI)のうちの1つの大きさデータおよび傾向データを導出するステップと、
前記血行動態監視装置によって、dP/dt
max、CO、またはCIのうちの前記1つの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、循環作動薬の静脈内送達に対する前記患者の応答性を予測する第3のスコアを判定するステップと、
前記血行動態監視装置によって、前記第3のスコアの表現を出力するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記血行動態パラメータが、全身血管抵抗(SVR)または全身血管抵抗指数(SVRI)のうちの1つであり、前記療法が、前記患者に対する昇圧剤の静脈内送達である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記血行動態監視装置によって、前記血行動態データから、動脈圧の最高の上昇速度(dP/dt
max)の大きさデータおよび傾向データを導出するステップと、
前記血行動態監視装置によって、dP/dt
maxの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、循環作動薬の静脈内送達に対する前記患者の応答性を予測する第2のスコアを判定するステップと、
前記血行動態監視装置によって、前記第2のスコアの表現を出力するステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記血行動態パラメータが、動脈圧の最高の上昇速度(dP/dt
max)、心拍出量(CO)、または心係数(CI)のうちの1つであり、前記療法が、前記患者に対する循環作動薬の静脈内送達である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
患者の動脈圧を監視し、療法に対する前記患者の応答性を予測するスコアを判定するためのシステムであって、
前記患者の動脈圧波形を表す血行動態データを生成する血行動態センサと、
血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを記憶するシステムメモリと、
ユーザインターフェースと、
ハードウェアプロセッサであって、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、
前記患者の前記動脈圧波形を表す前記血行動態データから、血行動態パラメータの大きさデータおよび傾向データを導出し、
前記血行動態パラメータの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、前記療法に対する前記患者の前記応答性を予測する前記スコアを判定し、
前記ユーザインターフェースを介して、前記スコアの表現を出力する
ように構成されているハードウェアプロセッサと
を備える、システム。
【請求項17】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、
前記血行動態パラメータの前記大きさデータを基に、大きさのサブスコアを判定するステップと、
前記血行動態パラメータの前記傾向データを基に、傾向のサブスコアを判定するステップと、
前記大きさのサブスコアと前記傾向のサブスコアとの組み合わせとして前記スコアを判定するステップと
によって、前記血行動態パラメータの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、前記スコアを判定するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、前記大きさのサブスコアと前記傾向のサブスコアとの乗法積として前記スコアを判定することにより、前記大きさのサブスコアと前記傾向のサブスコアとの組み合わせとして前記スコアを判定するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、前記血行動態パラメータの前記大きさデータの小さい方の大きさ閾値における小さい方の正規化された閾値と、前記血行動態パラメータの前記大きさデータの大きい方の大きさ閾値における大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として、前記大きさのサブスコアを判定するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、定義された時間間隔に関連した、前記血行動態パラメータの最良適合ラインの傾斜を判定することにより、前記血行動態パラメータの前記傾向データを導出するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、前記最良適合ラインの前記傾斜を正規化することにより、前記傾向のサブスコアを判定して、前記定義された時間間隔に関連した、前記血行動態パラメータの前記最良適合ラインの正規化された傾斜を判定するように構成されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、前記最良適合ラインの前記正規化された傾斜に重み付け係数を適用することにより、前記傾向のサブスコアを判定して、前記定義された時間間隔に関連した、前記血行動態パラメータの前記最良適合ラインの、正規化してから重み付けされた傾斜を判定するように構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、複数の定義された時間間隔に関連した、前記血行動態パラメータの複数の最良適合ラインの複数の傾斜を判定することにより、前記血行動態パラメータの前記傾向データを導出するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
前記血行動態パラメータが、1回拍出量変化(SVV)、脈圧変動(PPV)、1回拍出量(SV)、または1回拍出量指数(SVI)のうちの1つであり、前記療法が、前記患者に対する生理食塩水の静脈内送達である、請求項16に記載のシステム。
【請求項25】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、
前記血行動態データから、全身血管抵抗(SVR)または全身血管抵抗指数(SVRI)のうちの1つの大きさデータおよび傾向データを導出し、
SVRまたはSVRIのうちの前記1つの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、昇圧剤の静脈内送達に対する前記患者の応答性を予測する第2のスコアを判定し、
前記ユーザインターフェースを介して、前記第2のスコアの表現を出力する
ようにさらに構成されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、
前記血行動態データから、動脈圧の最高の上昇速度(dP/dt
max)、心拍出量(CO)、または心係数(CI)のうちの1つの大きさデータおよび傾向データを導出し、
dP/dt
max、CO、またはCIのうちの前記1つの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、循環作動薬の静脈内送達に対する前記患者の応答性を予測する第3のスコアを判定し、
前記ユーザインターフェースを介して、前記第3のスコアの表現を出力する
ようにさらに構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記血行動態パラメータが、全身血管抵抗(SVR)または全身血管抵抗指数(SVRI)のうちの1つであり、前記療法が、前記患者に対する昇圧剤の静脈内送達である、請求項16に記載のシステム。
【請求項28】
前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、
前記血行動態データから、動脈圧の最高の上昇速度(dP/dt
max)、心拍出量(CO)、または心係数(CI)のうちの1つの大きさデータおよび傾向データを導出し、
dP/dt
max、CO、またはCIのうちの前記1つの前記大きさデータおよび前記傾向データを基に、循環作動薬の静脈内送達に対する前記患者の応答性を予測する第2のスコアを判定し、
前記ユーザインターフェースを介して、前記第2のスコアの表現を出力する
ようにさらに構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記血行動態パラメータが、動脈圧の最高の上昇速度(dP/dt
max)、心拍出量(CO)、または心係数(CI)のうちの1つあり、前記療法が、前記患者に対する循環作動薬の静脈内送達である、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、動脈血圧監視に関し、より具体的には、各スコアが特定の療法に対する患者の応答性を予測する、1つまたは複数のスコアの判定に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈血圧の波形信号は、心拍出量(CO)、全身血管抵抗(SVR)、心拍血液量(SV)、1回拍出量変化(SVV)、脈圧変動(PPV)、1回拍出係数(SVI)、心係数(CI)、全身血管抵抗指数(SVRI)、動脈圧の最高の上昇速度(多くの場合、dP/dtmaxと称される)、または重要な生理学的イベントを監視および/もしくは予測するために使用され得る他の血行動態パラメータなど、血行動態パラメータの判定にしばしば利用される。たとえば、SVVの上昇は、心臓前負荷の減少を示し得、心臓前負荷が減少すると、SV、COが減少し得、動脈血圧が低下し得る。同様に、心後負荷の減少は、SVRの減少によって示され得、一方で、dP/dtmaxの低下は、心筋収縮能の低下を示し得る。そのような状態は、治療せずに放置しておくと、外科患者や重病の患者に、器官潅流障害、回復不能な虚血性障害、神経学的欠損、心筋症、腎臓機能障害、または他の深刻な病状などの予後危険をもたらす恐れがある。
【0003】
したがって、これらの血行動態パラメータのうちの1つまたは複数を監視するための何らかの機器を持たない病院はほとんどない。たとえば大手術中の手術室では、たとえば麻酔科医または他の臨床医は、しばしば、臓器および末梢組織の適切な潅流を確保するために患者の平均動脈圧を維持する任務を負う。したがって、参加している臨床医は、治療薬の投与が示されているかどうかを判定するために、そのような血行動態パラメータを緊密に監視するはずである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一例では、患者の動脈圧を監視し、療法に対する患者の応答性を予測するスコアを判定するための方法は、血行動態監視装置によって、患者の動脈圧波形を表す、感知された血行動態のデータを受け取るステップを含む。この方法は、血行動態監視装置によって、血行動態データから、血行動態パラメータの大きさデータおよび傾向データを導出するステップと、血行動態監視装置によって、血行動態パラメータの大きさデータおよび傾向データを基に、療法に対する患者の応答性を予測するスコアを判定するステップとをさらに含む。この方法は、血行動態監視装置によって、スコアの表現を出力するステップをさらに含む。
【0005】
別の例では、患者の動脈圧を監視し、療法に対する患者の応答性を予測するスコアを判定するためのシステムは、血行動態センサ、システムメモリ、ユーザインターフェース、およびハードウェアプロセッサを含む。血行動態センサは、患者の動脈圧波形を表す血行動態データを生成する。システムメモリは、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを記憶する。ハードウェアプロセッサは、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、患者の動脈圧波形を表す血行動態データから、血行動態パラメータの大きさデータおよび傾向データを導出するように構成されている。ハードウェアプロセッサは、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、血行動態パラメータの大きさデータおよび傾向データを基に、療法に対する患者の応答性を予測するスコアを判定して、ユーザインターフェースを介してスコアの表現を出力するようにさらに構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】療法に対する患者の応答性を予測する少なくとも1つのスコアを判定する例示の血行動態監視装置の斜視図である。
【
図2】患者の動脈圧を表す血行動態データを感知するための、侵襲性が最小限の例示の圧力センサの斜視図である。
【
図3】患者の動脈圧を表す血行動態データを感知するための、非侵襲性の例示のセンサの斜視図である。
【
図4】療法に対する患者の応答性を予測する少なくとも1つのスコアを判定する例示の血行動態監視システムを示すブロック図である。
【
図5】療法に対する患者の応答性を予測する少なくとも1つのスコアを判定するための例示の動作を示す流れ図である。
【
図6】各スコアがそれぞれの療法に対する患者の応答性を予測する、3つの個別のスコアを表示する血行動態監視装置の一例を示すブロック図である。
【
図7】動脈圧波形から導出された血行動態パラメータと対応する療法との間の関係を示す図表である。
【
図8A】患者に対する流体の治療的静脈内送達に関連した流体療法スコアを判定するための一例を示す図表である。
【
図8B】患者に対する流体の治療的静脈内送達に関連した流体療法スコアの大きさのサブスコアを判定するための一例を示す図表である。
【
図8C】患者に対する流体の治療的静脈内送達に関連した流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するための一例を示す図表である。
【
図8D】流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するために使用される、定義された時間間隔に対する最良適合ラインの一例を示す、患者の1回拍出量変化(SVV)対時間のグラフである。
【
図8E】流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するために使用される、定義された時間間隔に対する最良適合ラインの一例を示す、患者の1回拍出量変化(SVV)対時間のグラフである。
【
図8F】流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するために使用される、定義された時間間隔に対する最良適合ラインの一例を示す、患者の1回拍出量変化(SVV)対時間のグラフである。
【
図8G】流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するために使用される、定義された時間間隔に対する最良適合ラインの一例を示す、患者の1回拍出量変化(SVV)対時間のグラフである。
【
図8H】流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するために使用される、定義された時間間隔に対する最良適合ラインの一例を示す、患者の1回拍出量変化(SVV)対時間のグラフである。
【
図8I】流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するために使用される、定義された時間間隔に対する最良適合ラインの一例を示す、患者の1回拍出量変化(SVV)対時間のグラフである。
【
図8J】流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するために使用される、定義された時間間隔に対する最良適合ラインの一例を示す、患者の1回拍出量変化(SVV)対時間のグラフである。
【
図8K】流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するために使用される最良適合ラインの傾斜を正規化するための一例を示す図表である。
【
図8L】最良適合ラインの正規化された傾斜に重みを適用し、正規化してから重み付けされた傾斜を集約して、流体療法スコアの傾向のサブスコアを判定するための一例を示す図表である。
【
図8M】大きさのサブスコアおよび傾向のサブスコアを基に流体療法スコアを判定するための一例を示す図表である。
【
図9A】患者に対する流体の治療的静脈内送達に関連した大きさのサブスコアを判定するためのさらなる例を示す図表である。
【
図9B】患者に対する循環作動薬の治療的静脈内送達に関連した大きさのサブスコアを判定するための例を示す図表である。
【
図9C】患者に対する昇圧剤の治療的静脈内送達に関連した大きさのサブスコアを判定するための例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で説明されたように、血行動態監視システムは、対応する療法に対する患者の応答性を予測する1つまたは複数のスコア判定することにより、医療関係者が適時の有効な治療的介入を実行するように、意思決定支援を改善することができる1つまたは複数の定量的メトリックをもたらす。本開示の技術を実施する血行動態監視システムは、対応する血行動態パラメータから導出された大きさデータと傾向データとの組み合わせとしての1つまたは複数のスコアを判定する。したがって、対応する療法に対する患者の現在および将来の応答性をより正確に予測するために、1つまたは複数のスコアが、対応する血行動態パラメータの値と、この血行動態パラメータのたとえば経時的な傾向との両方に基づいて、判定される。
【0008】
図1は、療法に対する患者の応答性を予測する少なくとも1つのスコアを判定する血行動態監視装置10の斜視図である。
図1に示されるように、血行動態監視装置10は、ユーザが血行動態監視装置10と相互作用することを可能にする制御要素(たとえばグラフィカル制御要素)を含むグラフィカルユーザインターフェースを提示することができる表示器12、ならびに、対応する療法に対する患者の応答性を予測する少なくとも1つのスコアなどの情報をユーザに提示するための出力表示要素を含む。血行動態監視装置10は、以下でさらに説明される1つまたは複数の血行動態センサなどの1つまたは複数の周辺構成要素との有線接続(たとえば電気的接続および/または通信接続)用に構成された複数の入力および/または出力の(I/O)コネクタを含むことができる。たとえば、
図1に示されるように、血行動態監視装置10はI/Oコネクタ14を含むことができる。
図1の例は5つの個別のI/Oコネクタ14を示しているが、他の例では、血行動態監視装置10は、5つ未満のI/Oコネクタまたは6つ以上のI/Oコネクタを含み得ることを理解されたい。さらに別の例では、血行動態監視装置10は、I/Oコネクタ14を含むことなく、様々な周辺機器と無線で通信し得る。
【0009】
以下でさらに説明されるように、血行動態監視装置10は、1つまたは複数のプロセッサと、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを記憶するコンピュータ可読メモリとを含む。血行動態の療法スコアリングコードは、療法に対する患者の応答性を予測する少なくとも1つのスコアを生成するように実行可能である。たとえば、血行動態監視装置10は、I/Oコネクタ14を介して血行動態監視装置10に接続された1つまたは複数の血行動態センサなどによって、患者の動脈圧波形を表す、感知された血行動態データを受け取ることができる。血行動態監視装置10は、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、患者の潜在的な血行動態の状態を示し得る少なくとも1つの血行動態パラメータを導出する。たとえば、心臓前負荷の減少は、1回拍出量、心拍出量、動脈血圧を低下させ、器官潅流障害をもたらす可能性があり、1回拍出量変化(SVV)の上昇によって示され得、生理食塩水などの流体の治療的送達(たとえば静脈内送達)によって治療可能である。心後負荷の減少は、低血圧および器官潅流の潜在的な欠陥をもたらす可能性があり、全身血管抵抗(SVR)の低下によって示され得、昇圧剤(すなわち血管収縮剤)の治療的送達によって治療可能である。心筋収縮能の低下は、心室駆出、心拍出量、動脈血圧を低下させ、器官潅流障害をもたらす可能性があり、動脈圧の最高の上昇速度(多くの場合dP/dtmaxと称される)の低下によって示され得、循環作動薬の治療的送達によって治療可能である。
【0010】
血行動態監視装置10は、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードを実行して、対応する療法に対する患者の応答性を予測する1つまたは複数のスコアを判定する。1つまたは複数のスコアは、たとえば、心臓前負荷の減少(たとえばSVVの上昇によって示される)を示すとともに流体の治療的送達に対する患者の応答性を予測する流体療法スコア、心後負荷の減少(たとえばSVRの減少によって示される)を示すとともに昇圧剤の治療的送達に対する患者の応答性を予測する昇圧剤療法スコア、心筋収縮能の低下(たとえばdP/dtmaxの低下によって示される)を示すとともに循環作動薬の治療的送達に対する患者の応答性を予測する循環作動薬療法スコア、または他のスコアを含むことができる。
【0011】
以下でさらに説明されるように、血行動態監視装置10は、対応する血行動態パラメータから導出された大きさデータと傾向データとの組み合わせとしての1つまたは複数のスコアを判定することができる。したがって、血行動態監視装置10は、対応する療法に対する患者の応答性をより正確に予測するために、対応する血行動態パラメータの値と、この血行動態パラメータのたとえば経時的な1つまたは複数の傾向との両方を基に、1つまたは複数のスコアを判定することができる。血行動態監視装置10は、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコードをさらに実行して、1つまたは複数のスコアの表現を出力する。たとえば、以下でさらに説明されるように、スコアの表現は、たとえば血行動態監視装置10の表示器12におけるスコアの表示、スコアの色コーディング、スコアの象徴的表現、スコアの聴覚的表現、またはスコアの他の表現を含むことができる。
【0012】
そのため、本開示の技術を実施する血行動態監視装置10は、対応する療法に対する患者の応答性を予測する1つまたは複数のスコアを提供し、臨床医または他の医療関係者が、示された血行動態の状態に対する適時の有効な治療的処置を判定するのを支援することができる一方で、たとえば外科手術または他の臨床イベント中の、臨床医の情報処理の負担を減らすものである。
【0013】
図2は、患者の動脈圧を表す血行動態データを感知するために患者に取り付けられ得る血行動態センサ16の斜視図である。
図2に示される血行動態センサ16は、侵襲性が最小限の血行動態センサの一例であり、たとえば患者の腕に挿入された橈骨動脈カテーテルを介して患者に取り付けられ得る。他の例では、血行動態センサ16は、患者の脚に挿入された大腿動脈カテーテルを介して患者に取り付けられ得る。
【0014】
図2に示されるように、血行動態センサ16は、ハウジング18、流体入力ポート20、カテーテル側流体ポート22、およびI/Oケーブル24を含む。流体入力ポート20は、生理食塩水バッグまたは他の流体入力源などの流体源に対して細管または他の水圧接続によって接続されるように構成されている。カテーテル側流体ポート22は、患者の腕に挿入されたカテーテル(すなわち橈骨動脈カテーテル)または患者の脚に挿入されたカテーテル(すなわち大腿動脈カテーテル)に対して細管または他の水圧接続によって接続されるように構成されている。I/Oケーブル24は、たとえばI/Oコネクタ14(
図1)のうちの1つまたは複数によって血行動態監視装置10に接続するように構成されている。血行動態センサ16のハウジング18は、I/Oケーブル24によって血行動態監視装置10(
図1)に伝送される患者の動脈圧に対応する流体圧力を感知するための、1つまたは複数の圧変換器、通信回路、処理回路、および対応する電子部品を囲む。
【0015】
動作において、流体(たとえば生理食塩水)のカラムが、流体源(たとえば生理食塩水バッグ)から、流体入力ポート20経由で、血行動態センサ16を通って、患者に挿入されたカテーテルに向かってカテーテル側流体ポート22まで導入される。動脈圧は、流体カラムを通って、ハウジング16の内部で流体カラムの圧力を感知する圧力センサまで伝えられる。血行動態センサ16は、流体カラムの感知された圧力を圧変換器によって電気信号に変換し、対応する電気信号を、I/Oケーブル24を通して血行動態監視装置10(
図1)に出力する。したがって、血行動態センサ16は、患者の動脈圧の実質的に連続した心拍間隔の監視を表すアナログのセンサデータ(またはアナログのセンサデータのデジタル表現)を、血行動態監視装置10(
図1)まで伝送する。
【0016】
図3は、患者の動脈圧を表す血行動態データを感知するための、血行動態センサ26の斜視図である。
図3に示される血行動態センサ26は、非侵襲性血行動態センサの一例であり、1つまたは複数の指用カフによって患者に取り付けられ得て、患者の動脈圧を表すデータを感知する。
図3に示されるように、血行動態センサ26は、膨張式の指用カフ28および心臓基準センサ30を含む。膨張式の指用カフ28は、膨張式の指用カフ28に空気圧で接続された圧力調節器(図示せず)によって制御されて膨張したりかつ収縮したりするように構成された膨張式の血圧ブラダー(bladder)を含む。膨張式の指用カフ28は、指の動脈の変化する体積を測定するために心臓基準センサ30に対して電気的に接続された光(たとえば赤外線)送信器および光受信器をも含む。
【0017】
動作において、圧力コントローラは、指用カフ内の圧力を連続的に調節して、膨張式の指用カフ28の心臓基準センサ30によって光送信器および光受信器を介して測定された指の動脈の体積(すなわち無負荷時の動脈の体積)を一定に維持する。無負荷時の体積を連続的に維持するために圧力コントローラによって印加される圧力は、指における血圧を表すものであり、圧力コントローラによって心臓基準センサ30に通信される。心臓基準センサ30は、指における血圧を表す圧力信号を、患者の動脈圧波形を表す血行動態データに変換し、これが、たとえばI/Oコネクタ14(
図1)を通って血行動態監視装置10(
図1)に伝送される。したがって、血行動態センサ26は、患者の動脈圧の実質的に連続した心拍間隔監視を表すセンサデータを伝送する。
【0018】
図4は、対応する療法に対する患者の応答性を予測する1つまたは複数のスコアを判定する血行動態監視システム32のブロック図である。
図4に示されるように、血行動態監視システム32は血行動態監視装置10および血行動態センサ34を含む。血行動態監視システム32は、ICU、OR、または他の患者治療環境など、患者治療環境の内部に実装され得る。
図4に示されるように、患者治療環境は、患者36と、血行動態監視システム32を利用するように訓練された医療従事者38とを含むことができる。
【0019】
血行動態監視装置10は、
図1を参照しながら上記で説明されたように、たとえばシステムプロセッサ40、システムメモリ42、表示器12、およびアナログデジタルコンバータ(ADC)44を含む、統合されたハードウェアユニットであり得る。他の例では、血行動態監視装置10の1つまたは複数の構成要素および/または説明された機能のうちあらゆるものが、複数のハードウェアユニットの中に分散され得る。たとえば、いくつかの例では、表示器12は、血行動態監視装置10に対して遠隔から動作可能に結合された個別の表示デバイスであり得る。一般に、血行動態監視装置10は、
図4の例では、統合されたハードウェアユニットとして図示して説明されているが、本明細書では血行動態監視装置10に起因する機能を実行するように、電気的に接続された、通信可能に接続された、または動作可能に接続された、デバイスと構成要素との任意の組み合わせを含み得ることを理解されたい。
【0020】
図4に示されるように、システムメモリ42は血行動態の療法スコアリングソフトウェアコード48を記憶する。血行動態の療法スコアリングソフトウェアコード48は、血行動態パラメータモジュール50および療法スコアリングモジュール52を含む。表示器12はユーザインターフェース54を提供し、ユーザインターフェース54は、ユーザの、血行動態監視システム32の血行動態監視装置10および/または他の構成要素との相互作用を可能にする制御要素56を含む。
図4に示されるように、ユーザインターフェース54は、医療関係者(たとえば医療従事者38)に、対応する療法に対する患者36の応答性を予測する1つまたは複数のスコアを表示するかまたは提示する、図式的および/または可聴式の出力58をも提供することができる。
【0021】
血行動態センサ34は、患者36に取り付けられ得、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データを感知する。血行動態センサ34は、血行動態監視装置10に動作可能に接続されて(たとえば、有線接続もしくは無線接続の一方または両方によって電気的および/または通信可能に接続されて)、感知された血行動態データを血行動態監視装置10に供給する。いくつかの例では、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データが、血行動態センサ34によってアナログ信号として血行動態監視装置10に供給され、ADC 44によって、動脈圧波形を表すデジタル血行動態データに変換される。他の例では、血行動態センサ34は、感知された血行動態データをデジタル形式で血行動態監視装置10に供給することができ、その場合、血行動態監視装置10は、ADC 44を含まなくてよく、または利用しなくてよい。さらに他の例では、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データが、血行動態センサ34によって、血行動態監視装置10にアナログ信号として供給され得て、血行動態監視装置10によってアナログ方式で分析される。
【0022】
血行動態センサ34は、患者36に取り付けられる、非侵襲性であるかまたは侵襲性が最小限のセンサであり得る。たとえば、血行動態センサ34は、侵襲性が最小限の血行動態センサ16(
図2)、非侵襲性の血行動態センサ26(
図3)、または他の、侵襲性が最小限であるかもしくは非侵襲性の血行動態センサの形をとることができる。いくつかの例では、血行動態センサ34は、患者36の手首、腕、指、足首、つま先、または患者36の他の端などの端に、非侵襲的に取り付けられ得る。そのため、血行動態センサ34は、患者36が長時間装着するのに適した小型軽量で快適な血行動態センサの形をとることができ、数分または数時間などの長期間にわたって、患者36の動脈圧の実質的に連続した心拍間隔を監視する。
【0023】
ある特定の例では、血行動態センサ34は、侵襲性を最小限にするやり方で患者36の動脈圧を感知するように構成され得る。たとえば、血行動態センサ34は、患者36の腕に挿入された橈骨動脈カテーテルによって患者36に取り付けられ得る。他の例では、血行動態センサ34は、患者36の脚に挿入された大腿動脈カテーテルを介して患者36に取り付けられ得る。血行動態センサ34は、同様に、そのような侵襲性が最小限の技術によって数分または数時間などの長期間にわたって患者36の動脈圧の実質的に連続した心拍間隔を監視することができる。
【0024】
システムプロセッサ40は、血行動態パラメータモジュール50および療法スコアリングモジュール52を実装する血行動態の療法スコアリングソフトウェアコード48を実行して、対応する療法に対する患者36の応答性を予測する1つまたは複数のスコアを生成するように構成されている。システムプロセッサ40の例は、マイクロプロセッサ、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他の同等な離散論理回路もしくは集積論理回路のうち任意の1つまたは複数を含むことができる。
【0025】
システムメモリ42は、動作中の血行動態監視装置10内の情報を記憶するように構成され得る。いくつかの例では、システムメモリ42は、コンピュータ可読記憶媒体として説明される。いくつかの例では、コンピュータ可読記録媒体は非一時的媒体を含むことができる。「非一時的」という用語は、記録媒体が、搬送波または伝搬される信号で具現されたものではないことを示し得る。ある特定の例では、非一時的記録媒体は、経時的に変化し得るデータを記憶することができる(たとえばRAMまたはキャッシュ)。システムメモリ42は、揮発性コンピュータ可読メモリおよび不揮発性コンピュータ可読記憶装置を含むことができる。揮発性メモリの例は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、および揮発性メモリの他の形式を含むことができる。不揮発性記憶装置の例は、たとえば、磁気ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、または電気的プログラム可能メモリ(EPROM)もしくは電気的消去可能プログラム可能メモリ(EEPROM)の形式を含むことができる。
【0026】
表示器12は、液晶表示器(LCD)、発光ダイオード(LED)表示器、有機発光ダイオード(OLED)表示器、またはユーザにグラフ形状で情報を提供するのに適する他の表示デバイスであり得る。ユーザインターフェース54は、ユーザ入力が血行動態監視システム32の他の構成要素および/または血行動態監視装置10と相互作用することを可能にするグラフィカル制御要素および/または物理的制御要素を含むことができる。いくつかの例では、ユーザインターフェース54は、たとえば表示器12の接触感応および/または存在感応の表示スクリーンにグラフィカル制御要素を提示するグラフィカルユーザインターフェース(GUI)の形をとることができる。そのような例では、ユーザ入力は、タッチジェスチャ、スクロールジェスチャ、ズームジェスチャなどのジェスチャ入力、または他のジェスチャ入力の形で受け取られ得る。ある特定の例では、ユーザインターフェース54は、物理的ボタン、キー、つまみ、もしくはユーザ入力を受け取るように構成された他の物的管理要素などの物的管理要素の形をとること、および/またはこれを含むことができ、血行動態監視システム32の構成要素と相互作用する。
【0027】
対応する療法に対する患者36の応答性を予測する1つまたは複数のリスクスコアを生成するための血行動態監視システム32の動作が、
図5の流れ図と組み合わせて以下でさらに説明される。
図5に示されるように、血行動態監視装置10は、患者36の動脈圧波形を表す、感知された血行動態データを受け取る(ステップ60)。たとえば、血行動態センサ34は、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データを感知することができる。血行動態センサ34は、血行動態監視装置10に、血行動態データを(たとえばアナログのセンサデータとして)供給することができる。ADC 44は、アナログの血行動態データを、患者36の動脈圧波形を表すデジタルの血行動態データに変換することができる。
【0028】
血行動態監視装置10は、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データから、血行動態パラメータの大きさデータを導出する(ステップ62)。たとえば、以下でさらに説明されるように、血行動態監視装置10は、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコード48を実行して血行動態パラメータモジュール50を実施し、動脈圧波形データから血行動態パラメータデータを導出することができる。そのような血行動態パラメータデータは、たとえばSVVデータ、SVRデータ、dP/dtmaxデータ、または他の血行動態パラメータデータのうち任意の1つまたは複数を含むことができる。1つまたは複数の血行動態パラメータの大きさデータは、たとえば、経時的に導出された血行動態パラメータの値の形をとることができる。たとえば、前述のように、SVVの上昇は心臓前負荷の減少を示し得、これは流体の治療的送達によって治療可能である。血行動態パラメータモジュール50は、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データから、時間的に変化するSVVの大きさデータを導出することができ、そのようなSVVの大きさデータは、生理食塩水などの流体の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するスコアを判定するために使用可能である。同様に、血行動態パラメータモジュール50は、ノルエピネフリン、ドーパミンおよびエピネフリン、または他の血管収縮剤などの昇圧剤の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するスコアを判定するために使用可能な、時間的に変化するSVRの大きさデータを導出することができる。血行動態パラメータモジュール50は、ドブタミン、ミルリノン、アムリノン、カルシウム感作物質、または他の変力薬などの循環作動薬の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するスコアを判定するために使用可能な、時間的に変化するdP/dtmaxの大きさデータを導出することができる。
【0029】
血行動態監視装置10は、血行動態パラメータの傾向データを導出する(ステップ64)。たとえば、血行動態監視装置10は、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコード48を実行し、血行動態パラメータモジュール50を実現して、血行動態パラメータの傾向データを導出することができる。そのような傾向データは、以下でさらに説明されるように、たとえば1つまたは複数の定義された時間間隔に関連した血行動態パラメータデータの最良適合ライン(または複数の最良適合ライン)の形をとることができる。血行動態パラメータモジュール50は、流体の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するスコアを判定するように使用可能なSVVの傾向データ(またはPPVの傾向データ、またはSVの傾向データ、またはSVIの傾向データ)と、昇圧剤の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するスコアを判定するように使用可能なSVRの傾向データ(またはSVRIの傾向データ)と、循環作動薬の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するスコアを判定するように使用可能なdP/dtmaxの傾向データ(またはCIの傾向データ、またはCOの傾向データ)とのうち任意の1つまたは複数を導出することができる。
【0030】
血行動態監視装置10は、血行動態パラメータの導出された大きさデータを基に、大きさのサブスコアを判定する(ステップ66)。たとえば、以下でさらに説明されるように、血行動態監視装置10は、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコード48を実行し、療法スコアリングモジュール52を実現して、大きさデータの小さい方の大きさ閾値における小さい方の正規化された閾値(たとえば0)と、大きさデータの大きい方の大きさ閾値における大きい方の正規化された閾値(たとえば1)との間の正規化された値として、大きさのサブスコアを判定することができる。大きさデータの、小さい方の大きさ閾値と、大きい方の大きさ閾値とは、血行動態パラメータの関数であり得る。たとえば、以下でさらに説明されるように、SVVパラメータデータに対する小さい方の大きさ閾値は7%(たとえば0である、小さい方の正規化された数的閾値に対応する)であり得、SVVパラメータデータに対する大きい方の大きさ閾値は13%(たとえば1である、大きい方の正規化された数的閾値に対応する)であり得る。療法スコアリングモジュール52は、SVVパラメータデータ、SVRパラメータデータ、およびdP/dtmaxパラメータデータのうち任意の1つまたは複数について、大きさのサブスコアを(たとえば正規化された値として)判定することができる。
【0031】
血行動態監視装置10は、血行動態パラメータの導出された傾向データを基に、傾向のサブスコアを判定する(ステップ68)。たとえば、以下でさらに説明されるように、血行動態監視装置10は、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコード48を実行し、療法スコアリングモジュール52を実現して、血行動態パラメータデータの1つまたは複数の定義された時間間隔に関連した1つまたは複数の重み付けされた(いくつかの例ではさらに正規化された)最良適合ラインの集約化として、傾向のサブスコアを判定することができる。療法スコアリングモジュール52は、SVVパラメータデータ、PPVパラメータデータ、SVパラメータデータ、SVIパラメータデータ、SVRパラメータデータ、SVRIパラメータデータ、COパラメータデータ、CIパラメータデータ、およびdP/dtmaxパラメータデータのうち任意の1つまたは複数に対して傾向のサブスコアを判定することができる。
【0032】
血行動態監視装置10は、対応する療法に対する患者36の応答性をそれぞれ予測する大きさのサブスコアおよび関連する傾向のサブスコアを基に1つまたは複数のスコアを判定する(ステップ70)。たとえば、血行動態監視装置10は、血行動態の療法スコアリングソフトウェアコード48を実行し、療法スコアリングモジュール52を実現して、大きさのサブスコアと傾向のサブスコアとの乗法積など、大きさのサブスコアと関連する傾向のサブスコアとの組み合わせとして、1つまたは複数のスコアを判定することができる。
【0033】
血行動態監視装置10は、1つまたは複数のスコアの各々の表現を出力する(ステップ72)。たとえば、以下でさらに説明されるように、血行動態監視装置10は、(たとえば表示器12、1つまたは複数のスピーカデバイス、または他の出力装置によって)各スコアの数的表現、各スコアの色分けされた数的表現、各スコアの象徴的表現、各スコアの聴覚的表現、または各スコアの他の表現のうち任意の1つまたは複数を出力することができる。
【0034】
したがって、本開示の技術を実施する血行動態監視装置10は、対応する療法に対する患者36の応答性を予測する1つまたは複数のスコアを提供することにより、参加している医療関係者の情報処理負担を減らし、そのような医療関係者に対して、示された血行動態の状態に対する治療的処置の適時で有効な送達のための意思決定支援を提供するものである。その上、提供されるスコアは、導出された血行動態パラメータの大きさデータからだけでなく、傾向データからも判定されたものであり、対応する療法に対する患者の将来の応答性を示すのを支援することができ、それによって、対応するスコアによって提供される意思決定支援をさらに向上させるものである。
【0035】
図6は、それぞれの療法に対する患者36の応答性をそれぞれ予測する3つの別個のスコアを表示する血行動態監視装置10のさらなる例を示すブロック図である。
図6に示されるように、血行動態監視装置10は、表示器12に、流体スコア74、昇圧剤スコア76、および循環作動薬スコア78を表示する。流体スコア74(
図6の例では「94」の値を有する)は、血行動態監視装置10によってSVV(またはPPV、またはSVI、またはSV)パラメータデータを基に判定されたスコアを表し、流体の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するものである。昇圧剤スコア76(
図6の例では「56」の値を有する)は、血行動態監視装置10によってSVRパラメータデータを基に判定されたスコアを表し、昇圧剤の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するものである。循環作動薬スコア78(
図6の例では「31」の値を有する)は、血行動態監視装置10によってdP/dt
maxパラメータデータ(またはCOパラメータデータ、またはCIパラメータデータ)を基に判定されたスコアを表し、循環作動薬の治療的送達に対する患者36の応答性を予測するものである。
図6の例は3つの個別のスコア(74、76、および78)を示し、説明しているが、他の例では、血行動態監視装置10は、流体スコア74、昇圧剤スコア76、および循環作動薬スコア78のうち任意の1つまたは複数を判定して提供する(たとえば表示する)ことができることを理解されたい。
【0036】
図6に示されるように、流体スコア74、昇圧剤スコア76、および循環作動薬スコア78の各々が、小さい方の0の数的閾値と大きい方の100の数的閾値との間の値を有する。他の例では、血行動態監視装置10は、スコア74、76、および78を、0~1の範囲の値、-1~1の範囲の値、0~10の範囲の値、または他の定義された範囲など、他の小さい方の数的閾値と大きい方の数的閾値との間の数値として判定すること、および/または提供することができる。同様に、
図6の例では、大きい方の数的閾値(たとえば100)は、対応する療法に対する高い応答性の予測に対応し、小さい方の数的閾値(たとえば0)は、対応する療法に対する低い応答性の予測に対応するが、他の例では、小さい方の数的閾値および大きい方の数的閾値に対する予測された応答性のそのような対応は逆にされ得る(たとえば小さい方の閾値が高い応答性の予測に対応し、大きい方の閾値が低い応答性の予測に対応する)。
【0037】
いくつかの例では、血行動態監視装置10は、スコア74、76、および78を、それぞれのスコアの値を基に色分けされたスコアとして表示することができる。たとえば、血行動態監視装置10は、流体スコア74が、流体の治療的送達に対する患者36の予測された低い応答性に対応する値の第1の範囲内にある(たとえば0~40の値、または他の範囲の値)との判定に応じて、流体スコア74を第1の色(たとえば緑色)で表示することができる。同様に、血行動態監視装置10は、流体スコア74が、流体の治療的送達に対する患者36の予測された中程度の応答性に対応する値の第2の範囲内にある(たとえば40~80の値、または他の範囲の値)との判定に応じて、流体スコア74を第2の色(たとえば黄色)で表示することができる。血行動態監視装置10は、流体スコア74が、流体の治療的送達に対する患者36の予測された高い応答性に対応する値の第3の範囲内にある(たとえば80~100の値、または他の範囲の値)との判定に応じて、流体スコア74を第3の色(たとえば赤色)で表示することができる。本明細書で説明された例示の範囲(すなわち0~40の第1の範囲、40~80の第2の範囲、および80~100の第3の範囲)は単なる例示であり、対応する療法に対する患者の予測された応答性を図表で表示するためのスコアの所望の感度に依拠して、異なる範囲に(また、いくつかの例では調整可能に)なり得ることを理解されたい。
【0038】
いくつかの例では、血行動態監視装置10は、スコア74、76、および78のうち任意の1つまたは複数が、対応する療法に対する患者36の予測された高い応答性を示す基準(たとえば80を超える値、または他の閾値基準)などの閾値の警報基準に達したと判定することに応じて、感覚警報を起動することができる。感覚警報は、視覚警報、可聴警報、触覚警報、または他のタイプの感覚警報の形をとることができる。たとえば、感覚警報は、表示器12によって示されるぱっと光るグラフィックスおよび/または有色のグラフィックス、サイレンまたは繰返し音などの警報音、血行動態監視装置10を振動させるか、または参加している医療従事者もしくは他のユーザに感知可能な物理的衝撃を伝えるように構成された触覚警報、あるいは他のタイプの感覚警報の任意の組み合わせとして起動され得る。
【0039】
したがって、血行動態監視装置10は、臨床医または他の医療関係者に、患者が応答すると予測される療法の存在と、そのような療法のアイデンティティとの両方を示すための1つまたは複数のスコアを提供することができる。そのため、血行動態監視装置10は、参加している医療関係者が、患者の潜在的な血行動態の状態を安定化するかまたは防止するために、適時に効率よく治療的処置を提供するように判断することを容易にすることができる。
【0040】
図7は、血行動態パラメータ80と対応する療法82との間の関係を示す図表である。
図7に示されるように、血行動態パラメータ80は、とりわけ、SVV、PPV、SVI、SV、SVR、SVRI、dP/dt
max、CO、およびCIを含むことができる。療法82は、とりわけ、流体、昇圧剤、および循環作動薬の治療的送達を含むことができる。
図7に示されるように、また上記で説明されたように、SVVおよび/またはPPVの上昇(またはSVIもしくはSVの減少)は、心臓前負荷の減少を示し得、これは、患者に対する流体の対応する治療的送達によって治療可能である。SVRおよび/またはSVRIの減少は、心後負荷の減少を示し得、これは、患者に対する昇圧剤の対応する治療的送達によって治療可能である。dP/dt
max、CO、および/またはCIの減少は、心筋収縮能の低下を示し得、これは、患者に対する循環作動薬の対応する治療的送達によって治療可能である。
【0041】
図8A~
図8Mは、流体の治療的送達に対する患者の応答性を予測する流体療法スコアを判定するための血行動態監視装置10(
図1、
図4および
図6)の一例を示す。
図8A~
図8Mの例は、流体療法スコアを参照しながら以下で説明されるが、昇圧剤の治療的送達に対する患者の応答性を予測する昇圧剤療法スコア、および循環作動薬の治療的送達に対する患者の応答性を予測する循環作動薬療法スコアなどの他の療法スコアに適用可能であることを理解されたい。その上、
図8A~
図8Mの例は、SVVパラメータデータに基づく流体療法スコアを参照しながら以下で説明されるが、SVVパラメータデータ、PPVパラメータデータ、SVIパラメータデータ、およびSVパラメータデータのうち任意の1つまたは複数に基づく流体療法スコアの判定に適用可能であることを理解されたい。
【0042】
図8Aに示されるように、血行動態監視装置10は、対応する療法に対する患者の応答性を予測するスコアを、血行動態パラメータの大きさデータおよび傾向データを基に判定される、大きさのサブスコア(
図8Aには「AbsoluteScore」として示されている)と傾向のサブスコア(
図8Aには「TrendScore」として示されている)との組み合わせ(たとえば乗法積)として判定することができる。血行動態監視装置10は、任意の1つまたは複数の対応する療法に対する患者の応答性を予測する任意の1つまたは複数のスコアを判定することができる。
図8Aの例では、血行動態監視装置10は、流体療法スコア(
図8Aには「FluidScore」として示されている)を、流体の大きさのサブスコア(
図8Aには「AbsoluteFluidScore」として示されている)と流体の傾向のサブスコア(
図8Aには「FluidTrendScore」として示されている)との乗法積として判定する。
【0043】
図8Bは、
図8Aの流体の大きさのサブスコア(
図8Bには「AbsoluteFluidScore」として示されている)を判定するための一例を示す。
図8Bに示されるように、血行動態監視装置10は、流体の大きさのサブスコアを、7%のSVVの小さい方の大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、13%の大きい方の大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができるが、他の正規化された値の閾値および大きさ閾値も可能である。
【0044】
図8Bの例では、血行動態監視装置10は、小さい方の正規化された閾値と大きい方の正規化された閾値との間を線形補間して、小さい方の大きさ閾値(たとえば
図8Bの例では7%)よりも大きく、大きい方の大きさ閾値(たとえば
図8Bの例では13%)よりも小さい、中間のSVV値に関する流体の大きさのサブスコアを判定する。他の例では、血行動態監視装置10は、線形補間する必要はなく、中間のSVV値に関する流体の大きさのサブスコアを、非線形補間を基に判定することができる。血行動態監視装置10は、以下でさらに説明されるように、流体の治療的送達に対する患者の応答性を予測する流体スコアを判定するために、流体の大きさのサブスコアを利用する。
【0045】
図8Cは、
図8Aの流体の傾向のサブスコアを判定するための一例を示す。
図8Cに示されるように、血行動態監視装置10は、1つまたは複数の定義された時間間隔に関連した血行動態パラメータ(この例では、流体の治療的送達に対応するSVV)の最良適合ラインの正規化された傾斜の集約化を基に流体の傾向のサブスコア(
図8Cには「FluidTrendScore」として示されている)を判定することができる。たとえば、血行動態監視装置10は、流体の傾向のサブスコアを次式によって判定することができ、
【0046】
【0047】
ここで、nWindowsは定義された時間間隔の数であり、NormSlopeValueは、対応する定義された時間間隔に関連した血行動態パラメータの最良適合ラインの正規化された傾斜であり、WindowWeightは、対応する時間間隔に関連した重み値である。
【0048】
図8D~
図8Jは、SVVパラメータデータの5つの定義された時間間隔に関連した最良適合ラインを使用して傾向データを判定するための一例を示す。
図8Dは、時間(分)の関数としてのSVVの割合としてプロットされた例示のSVVパラメータデータのグラフを示す。
図8Dに示されるように、血行動態監視装置10は、初期の評価ポイント84を使用してSVVパラメータを評価することができる。
図8Dの例では、初期の評価ポイント84は、676分の時刻におけるSVVの割合(10%のSVV)に対応する。
図8Dの例では、初期の評価ポイント84を676分にとっているが、これはSVVデータが得られる最新の時刻ではなく、初期の評価ポイント84には、SVVデータが得られる任意の時刻が採用され得ることを理解されたい。たとえば、ある特定の例では、新規の血行動態パラメータデータが得られるようになったとき、
図8D~
図8Jの例示の動作が繰り返し実行されるように、初期の評価ポイントは、血行動態パラメータデータ(この例ではSVV)が得られる最新の時刻として判定され得る。
【0049】
図8Eは、SVVパラメータデータのグラフであり、SVVデータの複数の定義された時間間隔を示す。詳細には、
図8Eの例は、5つの個別の時間間隔すなわち、675分から676分までの以前の(すなわち初期の評価ポイント84に対応する676分に関して)1分間のSVVデータを含む期間I1と、674分から676分までの以前の2分間のSVVデータを含む期間I2と、673分から676分までの以前の3分間のSVVデータを含む期間I3と、672分から676分までの以前の4分間のSVVデータを含む期間I4と、671分から676分までの以前の5分間のSVVデータを含む期間I5とを示すものである。
【0050】
図8Eの例は5つの別個の時間間隔(I1~I5)を示しているが、他の例では、血行動態監視装置10は、任意の1つまたは複数の時間間隔を利用することができる。たとえば、いくつかの例では、血行動態監視装置10は、血行動態パラメータ(たとえばSVV)の傾向データを導出するために、単一の定義された時間間隔を利用することができる。他の例では、血行動態監視装置10は、傾向データを導出するために、2つ、3つ、4つ、または5つ以上の定義された時間間隔を利用することができる。加えて、
図8Eの例は整数の分の期間を有する時間間隔の使用を示しているが、血行動態監視装置10は、すべての例において整数の分を利用する必要があるわけではない。たとえば、血行動態監視装置10は、10秒、15秒、30秒、90秒の定義された時間間隔、または他の非整数の分(または秒)を有する時間間隔を使用して、血行動態パラメータの傾向データを導出することができる。
【0051】
図8Fは、時間間隔I1に関するSVVの傾向データを判定するための血行動態監視装置10の一例を示す。
図8Fに示されるように、血行動態監視装置10は、期間I1に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの傾斜として、時間間隔I1(たとえばSVVデータの以前の1分)に含まれるSVVデータを用い、たとえば線形回帰を使用して、SVVに関する傾向データを判定することができるが、多項式傾向線、指数傾向線、または他の傾向判定などを使用することにより、他の線形または非線形の傾向判定が可能である。
図8Fの例では、血行動態監視装置10は、期間I1に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの傾斜を、+2の数値を有するものとして判定する。
【0052】
図8G~
図8Jは、期間I2~I5に関するSVVの傾向データを判定するための血行動態監視装置10の例を示す。たとえば、
図8Gの例では、血行動態監視装置10は、期間I2に含まれるSVVデータ(すなわち674分~676分のSVVデータ)を通る最良適合ラインの傾斜を、+1.1の数値を有するものとして判定する。
図8Hでは、血行動態監視装置10は、期間I3に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの傾斜を、+0.3の数値を有するものとして判定する。
図8Iの例では、血行動態監視装置10は、期間I4に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの傾斜を、-0.15の数値を有するものとして判定する。
図8Jでは、血行動態監視装置10は、期間I5に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの傾斜を、-0.2の数値を有するものとして判定する。
【0053】
図8Kは、期間I1~I5に関連して判定された傾斜値を正規化するための血行動態監視装置10の一例を示す。
図8Kに示されるように、血行動態監視装置10は、複数の判定された傾斜値の各々を正規化して、たとえば+1の数値から-1の数値の間の複数の正規化された傾斜値を生成することができるが、他の正規化された範囲も可能である。いくつかの例では、血行動態監視装置10は、従前の患者データを基に、複数の判定された傾斜値を正規化することができる。他の例では、血行動態監視装置10は、ある範囲の正規化された値を参照しながら、ある範囲の判定された傾斜値を基に、複数の判定された傾斜値を正規化することができる。
【0054】
図8Kの例では、血行動態監視装置10は、期間I1に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの判定された傾斜を、+1の数値を有するものとして正規化する。血行動態監視装置10は、期間I2に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの判定された傾斜を、+1の数値を有するものとして正規化する。血行動態監視装置10は、期間I3に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの判定された傾斜を、+0.76の数値を有するものとして正規化する。血行動態監視装置10は、期間I4に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの判定された傾斜を、-0.34の数値を有するものとして正規化する。血行動態監視装置10は、期間I5に含まれるSVVデータを通る最良適合ラインの判定された傾斜を、-0.58の数値を有するものとして正規化する。
【0055】
したがって、血行動態監視装置10は、血行動態パラメータの1つまたは複数の最良適合ラインの1つまたは複数の正規化された傾斜を、1つまたは複数の対応する定義された時間間隔を参照しながら判定することができる。血行動態監視装置10は、血行動態パラメータに関連した傾向のスコアを判定するために、1つまたは複数の最良適合ラインの正規化された傾斜を利用する。
【0056】
図8Lは、血行動態監視装置10が、SVVパラメータデータの最良適合ラインの正規化された傾斜の各々に重み付け係数を適用し、正規化してから重み付けされた傾斜を集約して、流体の傾向のサブスコアを判定する例を示す。
図8Lに示されるように、血行動態監視装置10は、それぞれの正規化された傾斜に対して、対応する重み付け係数(
図8Lには「ウィンドウ重み」として示されている)を掛けることなどによって、最良適合ラインの正規化された傾斜の各々に重み付け係数を適用することができる。たとえば、
図8Lに示されるように、期間I1(すなわち以前の1分間のSVVデータを含む、定義された時間間隔)に関連する正規化された傾斜値に対して0.3の重み付け係数が適用され得、期間I2(すなわち以前の2分間のSVVデータを含む、定義された時間間隔)に関連する正規化された傾斜値に対して0.2の重み付け係数が適用され得、期間I3(すなわち以前の3分間のSVVデータを含む、定義された時間間隔)に関連する正規化された傾斜値に対して0.1の重み付け係数が適用され得、期間I4(すなわち以前の4分間のSVVデータを含む、定義された時間間隔)に関連する正規化された傾斜値に対して0.05の重み付け係数が適用され得、期間I5(すなわち以前の5分間のSVVデータを含む、定義された時間間隔)に関連する正規化された傾斜値に対して0.02の重み付け係数が適用され得る。
【0057】
図8Lを参照しながら説明された重み付け係数は、例示の重み付け係数の単なる実例であり、そのような重み付け係数の値は、
図8Lの例を参照しながら説明されたものと異なり得ることを理解されたい。たとえば、血行動態監視装置10によって適用される重み付け係数は、同一のもの、または異なるものであり得、たとえば、判定される流体の傾向のサブスコアが、過去の患者データに関連した既知の患者の結果に対して有効な臨床治療と合致するように、平均された(または集約された)過去の患者データを基に実験的に判定され得る。
図8Lの例などのいくつかの例では、つい最近の時間間隔に関連する正規化された傾斜値は、あまり最近のものではない時間間隔に関連する正規化された傾斜値よりも強く重み付けされ得る。
【0058】
図8Lにさらに示されるように、血行動態監視装置10は、たとえば上記の式1によって正規化してから重み付けされた傾斜値を集約することができる。
図8Lの例では、血行動態監視装置10は、正規化してから重み付けされた傾斜値を集約して、1.73の数値を有する例示の流体の傾向のサブスコアを生成する。
【0059】
図8Mは、血行動態監視装置10が、流体療法スコア(
図8Mには「FluidScore」として示されている)を、流体の大きさのサブスコア(
図8Mには「AbsoluteFluidScore」として示されている)と流体の傾向のサブスコア(
図8Mには「FluidTrendScore」として示されている)との組み合わせとして判定する例を示す。
図8Mの例では、血行動態監視装置10は、
図8Bを参照しながら上記で説明されたように(すなわち、初期の評価ポイント84における10%のSVV値に基づき、7%のSVVパラメータに関する小さい方の大きさ閾値と13%のSVVパラメータに関する大きい方の大きさ閾値との間で線形補間して)、流体の大きさのサブスコアを、0.5の数値を有するものとして判定する。
【0060】
血行動態監視装置10は、流体療法スコアを、流体の大きさのサブスコアと流体の傾向のサブスコアとの乗法積として判定して、0.865の数値を有する流体療法スコアを生成する。
図8Mの例では、血行動態監視装置10は、流体療法スコアの表現を87の数値として出力するが、他の例では、血行動態監視装置10は、スコアの異なる表現を出力することができる。たとえば、血行動態監視装置10は、未処理のスコア(たとえば0.867の値)、四捨五入した未処理のスコア(たとえば0.87の値、0.9の値、または他の四捨五入したスコア)、またはスコアの他の表示を出力することができる。上記でさらに説明されたように、ある特定の例では、血行動態監視装置10は、スコアの表現を、色分けされたスコア、スコアの象徴的表現、または療法に対する患者の予測された応答性を示すスコアによって表された他の表現として、出力することができる。
【0061】
したがって、本開示の技術を実施する血行動態監視装置10は、対応する療法に対する患者の応答性を予測する1つまたは複数のスコアを提供することができ、臨床医または他の医療関係者が、示された血行動態の状態に対する適時の有効な治療的処置を判定するのを支援するための意思決定支援を提供するものである。上記で説明されたように、
図8A~
図8Mの例は、流体の治療的送達に対する患者の応答性を予測する流体療法スコアの判定を参照しながら説明されているが、
図8A~
図8Mの技術は、昇圧剤の治療的送達に対する患者の応答性を予測する昇圧剤療法スコア、および循環作動薬の治療的送達に対する患者の応答性を予測する循環作動薬療法スコアなどの他の療法スコアの判定にも適用可能である。
【0062】
図9Aは、患者に対する流体の治療的静脈内送達に関連した大きさのサブスコアを判定するためのさらなる例を示す図表である。
図9Aに示されるように、血行動態監視装置10は、SVV、PPV、SVI、およびSVのうち任意の1つまたは複数を基に、患者に対する流体の治療的送達に関連した大きさのサブスコアを判定することができる。たとえば、
図8Bを参照しながら上記で同様に説明されたように、血行動態監視装置10は、流体の大きさのサブスコア(
図9Aには「流体AbsoluteScore」として示されている)を、SVVの値に基づく正規化された値として判定することができる。
【0063】
図9Aにさらに示されるように、血行動態監視装置10は、PPV、SVI、およびSVのうち任意の1つまたは複数のそれぞれの値を基に、流体の大きさのサブスコアを、正規化された値として判定することができる。たとえば、
図9Aに示されるように、血行動態監視装置10は、流体の大きさのサブスコアを、7%のPPVの小さい方の大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、13%のPPVの大きい方の大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができる。血行動態監視装置10は、流体の大きさのサブスコアを、大きい方の40ml/m
2のSVIの大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、小さい方の30ml/m
2のSVIの大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができる。血行動態監視装置10は、流体の大きさのサブスコアを、大きい方の80mlのSVの大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、小さい方の60mlのSVの大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができる。
図8Bの例を参照しながら上記で同様に説明されたように、
図9Aを参照しながら説明された、大きい方の正規化された閾値および小さい方の正規化された閾値ならびに大きい方の大きさ閾値および小さい方の大きさ閾値は、単なる実例であり、他の正規化された値の閾値および大きさ閾値も可能である。
【0064】
図9Bは、患者に対する循環作動薬の治療的静脈内送達に関連した大きさのサブスコアを判定するための例を示す図表である。血行動態監視装置10は、
図8Bおよび
図9Aを参照しながら上記で同様に説明されたように(すなわち患者に対する流体の治療的送達に関連した大きさのサブスコアの判定に対応して)、dP/dt
max、CO、およびCIのうち任意の1つまたは複数の値を基に、循環作動薬の大きさのサブスコア(
図9Bには「循環作動薬のAbsoluteScore」として示されている)を、正規化された値として判定することができる。たとえば、
図9Bに示されるように、血行動態監視装置10は、循環作動薬の大きさのサブスコアを、700mmHg/secondのdP/dt
maxのPPVの大きい方の大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、400mmHg/secondのdP/dt
maxの小さい方の大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができる。血行動態監視装置10は、循環作動薬大きさのサブスコアを、大きい方の6L/minuteのCOの大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、小さい方の4L/minuteのCOの大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができる。血行動態監視装置10は、循環作動薬大きさのサブスコアを、大きい方の3L/minute/m
2のCIの大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、小さい方の2L/minute/m
2のCIの大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができる。
図9Bを参照しながら説明された、大きい方の正規化された閾値および小さい方の正規化された閾値ならびに大きい方の大きさ閾値および小さい方の大きさ閾値は単なる実例であり、他の正規化された値の閾値および大きさ閾値も可能であることを理解されたい。
【0065】
図9Cは、患者に対する昇圧剤の治療的静脈内送達に関連した大きさのサブスコアを判定するための例を示す図表である。上記で同様に説明されたように、血行動態監視装置10は、SVRおよびSVRIのうち任意の1つまたは複数の値を基に、昇圧剤の大きさのサブスコア(
図9Cには「昇圧剤のAbsoluteScore」として示されている)を、正規化された値として判定することができる。たとえば、血行動態監視装置10は、昇圧剤の大きさのサブスコアを、大きい方の1100dynes・sec・cm
-5のSVRの大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、小さい方の800dynes・sec・cm
-5のSVRの大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができる。血行動態監視装置10は、昇圧剤の大きさのサブスコアを、大きい方の2200dynes・sec・cm
-5・m
2のSVRIの大きさ閾値において0の数値を有する小さい方の正規化された閾値と、小さい方の1600dynes・sec・cm
-5・m
2のSVRIの大きさ閾値において1の数値を有する大きい方の正規化された閾値との間の正規化された値として判定することができる。
【0066】
図8A~
図8Mの例において流体療法スコアを参照しながら同様に説明されたように、血行動態監視装置10は、昇圧剤の大きさのサブスコアおよび循環作動薬の大きさのサブスコアを使用して、昇圧剤療法スコアおよび循環作動薬療法スコアのうちの1つまたは複数を判定することができる。たとえば、血行動態監視装置10は、患者のSVRパラメータデータ(またはSVRIパラメータデータ)から導出された傾向データを基に昇圧剤の傾向のサブスコアを判定して、昇圧剤の大きさのサブスコアと昇圧剤の傾向のサブスコアとの組み合わせとして昇圧剤療法を生成することができる。血行動態監視装置10は、患者のdP/dt
maxパラメータデータ(またはCOパラメータデータ、またはCIパラメータデータ)から導出された傾向データを基に循環作動薬の傾向のサブスコアを判定して、循環作動薬の大きさのサブスコアと循環作動薬の傾向のサブスコアとの組み合わせとして循環作動薬の療法スコアを生成することができる。
【0067】
したがって、本明細書で説明されたように、血行動態監視装置は、対応する療法に対する患者の応答性を予測する1つまたは複数のスコアを提供することができ、それによって、参加している医療関係者の情報処理の負担を減らし、そのような医療関係者に対して、示された血行動態の状態に対する治療的処置の適時で有効な送達のための意思決定支援を提供するものである。提供されるスコアは、導出された血行動態パラメータの大きさデータからだけでなく、傾向データからも判定されたものであり、対応する療法に対する患者の将来の応答性を示すのを支援することができ、それによって、対応するスコアによって提供される意思決定支援をさらに向上させるものである。
【0068】
本発明は例示的な実施形態を参照しながら説明されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更形態が作製され得、また、その要素を等価物で置換し得ることが当業者には理解されよう。加えて、特定の状況または材料を、本発明の教示に、その本質的な範囲から逸脱することなく適合させるために、多くの修正形態が作製され得る。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0069】
10 血行動態監視装置
12 表示器
32 血行動態監視システム
34 血行動態センサ
36 患者
38 医療従事者
40 システムプロセッサ
42 システムメモリ
44 アナログデジタルコンバータ(ADC)
48 療法スコアリングソフトウェアコード
50 血行動態パラメータモジュール
52 療法スコアリングモジュール
54 ユーザインターフェース
56 制御要素
58 出力
74 流体スコア
76 昇圧剤スコア
78 循環作動薬スコア
80 血行動態パラメータ
82 療法
【国際調査報告】