(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ポリマーコンポーネントのための化学的改質方法
(51)【国際特許分類】
C08F 267/10 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
C08F267/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551355
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 FR2021050272
(87)【国際公開番号】W WO2021170936
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ピルソ
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン・オージェ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ブランショ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・デルマ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ポンスレ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・ルジョー
【テーマコード(参考)】
4J026
【Fターム(参考)】
4J026AB28
4J026BA27
4J026BA30
4J026DB06
4J026DB12
4J026EA09
4J026FA05
4J026FA08
4J026GA06
(57)【要約】
本発明は、反応性基としてアミン基及び/又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種のポリマーを含むポリマーコンポーネントのための化学的改質方法であって、方法は、前記反応性基のうちの幾つか又はすべてと、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含む少なくとも1種の官能性化合物と、の間の共有結合反応の工程を含み、前記官能性化合物は、エポキシド化合物、無水物化合物、ハロゲン化アシル化合物、シリルエーテル化合物及びそれらの混合物から選択され、前記共有結合反応工程が、少なくとも1種の超臨界流体の存在下で行われることを特徴とする、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基としてアミン基及び/又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種のポリマーを含むポリマーコンポーネントのための化学的改質方法であって、
前記方法は、前記反応性基のうちの幾つか又はすべてと、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含む少なくとも1種の官能性化合物との間の共有結合反応の工程を含み、
前記官能性化合物は、エポキシド化合物、無水物化合物、ハロゲン化アシル化合物、シリルエーテル化合物及びそれらの混合物から選択され、
前記共有結合反応の工程が、少なくとも1種の超臨界流体の存在下で行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記超臨界流体が、超臨界CO
2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーコンポーネントが、1種又は複数のポリアミドを含むコンポーネントである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーコンポーネントが、ポリアミド-12のコンポーネントである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記官能性化合物が、非ポリマー化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記官能性化合物が、エポキシド化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記官能性化合物が、少なくとも1個のビニル基を含むエポキシド化合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記官能性化合物が、前記ポリマーコンポーネントに所与の特性を付与すること又は前記ポリマーコンポーネントの所与の特性を改善することができる少なくとも1個の基を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記共有結合反応の工程が、少なくとも1種の共溶媒の存在下で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記共有結合反応の工程が、以下の操作:
- 反応器に、前記ポリマーコンポーネント、少なくとも1種の官能性化合物、任意選択的に少なくとも1種の共溶媒及び任意選択的に少なくとも1種の触媒を装入する操作;
- 前記反応器へCO
2を導入する操作;
- CO
2の臨界温度より高い温度及びCO
2の臨界圧より高い圧力に前記反応器を加熱及び加圧し、前記反応の完了までこの温度及びこの圧力を維持する操作
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に定義したような反応工程の後又は同時に、前記官能性化合物の残基のうちの幾つか又はすべてと、少なくとも1種の第2の化合物との間の、別の共有結合反応の工程を含み、この工程が、少なくとも1種の超臨界流体の存在下で実行される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記残基が、第2の化合物の少なくとも1個の基と反応することができる基として、ビニル基を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2の化合物が、少なくとも1個のビニル基、及び前記ポリマーコンポーネントに所与の特性を付与するか又は前記ポリマーコンポーネントの所与の特性を改善することができる少なくとも1個の基を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
- 前記ポリマーコンポーネントのポリマーの反応性基のうちの幾つか又はすべてと、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含む少なくとも1種の官能性化合物との間の共有結合反応の工程であって、
前記官能性化合物は、エポキシド化合物、無水物化合物、ハロゲン化アシル化合物、シリルエーテル化合物及びそれらの混合物から選択され、
前記官能性化合物は、少なくとも1種のビニル基を更に含み、
それによって、結果として前記ポリマーコンポーネントが、前記官能性化合物の残基に共有結合方式で結合される工程と;
- 前記官能性化合物の残基のビニル基に、少なくとも1個のビニル基を含む第2の化合物を重合させる工程と
を連続して含み、
前記共有結合反応の工程及び前記重合させる工程が、少なくとも1種の超臨界流体の存在下で行われる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
- 前記反応性基がアミン基であり;
- 第1の化合物が、少なくとも1個のビニル基を含むエポキシド化合物であり;
- 第2の化合物が、少なくとも1個のビニル基と、少なくとも1個のリン原子を含む少なくとも1個の基とを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーコンポーネントに所与の特性を付与することができる方法、又は前記ポリマーコンポーネントの所与の特性を改善することができる方法である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーコンポーネントの表面及び芯の両方で、すなわち言いかえればコンポーネントの全体積で化学的改質を可能にする媒質中で、ポリマーコンポーネントを少なくとも1種の化学物質と共有結合反応させることによって、ポリマーコンポーネントを化学的に改質する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選択される化学物質の性質に応じて、本発明の方法は、化学的改質前にはポリマーコンポーネントに本来備わっていない目標とされる特性をポリマーコンポーネントに付与することができ、あるいは、コンポーネントの目標とされる特性を改善することを可能にする。目標とされる特性は、すべてを網羅するわけではないが、親水性、疎水性、親油性、疎油性、抗菌性、抗偽造性、凍結防止性、抗引っ掻き性、難燃性、帯電防止性、浄化性、抗老化性、審美的デザイン性(着色、光沢等)、機械的(摩擦、滑り、耐衝撃性、耐摩耗性等)、電気的(電気的遮蔽、電気伝導性、ドーピング等)、接着性又は非接着性であってよい。
【0003】
従来、ポリマーコンポーネントの特性は、例えば以下のような様々な方式で改質又は改善することができる:
- 複合材料を形成するための1種又は複数の有機又は無機装填物の添加、しかしながら、装填物の存在が、改質が望まれないポリマーの特性に負の効果を有する可能性がある;又は
- 目標とされる特性を付与又は改善することを可能にする1種又は複数の化学薬剤によるポリマーの含浸、しかしながら、以下の欠点を有する:
* 含浸は、表面処理のみを結果としてもたらし、コンポーネント深部への到達が可能とされず、したがって目標とされる特性がコンポーネントの表面にのみ局在すること;
* 含浸によっては、化学薬剤の強い結合が可能でなく、その薬剤によって付与された目標とされる特性は満足な経時的抵抗性を有していないこと。
【0004】
以上の観点から、本発明の著者らは、以下に述べる方法に限定されないポリマーコンポーネントを改質する方法の開発を企図した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、反応性基としてアミン基及び/又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種のポリマーを含むポリマーコンポーネントのための化学的改質方法であって、前記方法は、反応性基のうちの幾つか又はすべてと、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含む、第1の化合物とも称される少なくとも1種の官能性化合物と、の間の共有結合反応の工程を含み、前記官能性化合物が、エポキシド化合物、無水物化合物、ハロゲン化アシル化合物、シリルエーテル化合物及びそれらの混合物から選択され、前記共有結合反応工程が少なくとも1種の超臨界流体の存在下で行われることを特徴とする、方法に関する。
【0006】
本発明の文脈において、ポリマーコンポーネントの語は、従来通りに、反応性基としてアミン基及び/又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種のポリマーを含む材料で製造されたコンポーネントであると規定され、前記ポリマーは、例えば、3D印刷技法又は押出/射出技法等の形成技法によってコンポーネントに形成される。本発明の方法は、したがって後工程段階で(すなわち、それが形成された後にコンポーネントを仕上げるための段階で)コンポーネントを製作するためのサイクルに属する方法であってよい。
【0007】
共有結合反応の語は、共有結合の形成のための反応であると規定され、この反応は、ポリマーコンポーネントのポリマーの反応性基と、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる官能性化合物の基との間で起こり、それによって共有結合がポリマーと官能性化合物との間に生じ、この共有結合は、残基、すなわち官能性化合物の反応性基の、ポリマーコンポーネントのポリマーの反応性基との共有結合反応の後に残存する基の形態で存在する。
【0008】
この反応を実施するために少なくとも1種の超臨界流体を使用することにより、以下の利点が観察された:
- ポリマーコンポーネントの深部に官能性化合物を送達する可能性、したがって、表面及び深部の両方、したがって全コンポーネントでその化学的改質を実現する可能性;
- 非超臨界媒質中で行われる同様の反応に比べて、はるかに速い反応動力学を反応工程に付与することを可能にする高い溶媒和力;
- 揮発性有機溶媒を使用せずに、前記改質を行うことができる可能性(反応後に揮発性有機溶媒を除去しようとすれば、エネルギー的、時間的にコストがかかり、その残分が処理されたコンポーネント中に存在しがちである);
- 従来の含浸方法と比較して、ポリマーコンポーネント中の活性成分の量(該当する場合、使用される触媒の量、それに加えて活性成分の残留量、該当する場合、触媒の残留量)を限定することによって前記改質を実行できる可能性。
【0009】
更に、本発明の方法は、以下の利点を有することができる:
- 一般に大量の生成物を必要とせずに、少ない工程数を含む容易に工業化することができる方法(これは液体溶媒中の浸漬技法と比較した超臨界流体を使用する方法の利点である)、及び、複数のコンポーネントの同時処理の可能性;
- 処理されるコンポーネントの表面の事前の準備が不要であること;
- 該当する場合、コンポーネントの複雑な起伏をすべて処理できる可能性。
【0010】
超臨界流体の語は、温度及び圧力の組(それぞれTC及びPC)に対応する臨界点を超えた圧力及び温度下の流体を指し、液相及び気相が同じ密度を有し、そこを超えると流体は超臨界範囲にあることが理解される。超臨界条件において、流体は、非超臨界条件の同じ流体に比べて溶解力が大幅に増加し、したがって官能性化合物の可溶化を容易にする。使用する超臨界流体が、使用する官能性化合物を可溶化可能であることが理解される。
【0011】
超臨界流体は、有利には、特にその低い臨界温度(31℃)により超臨界CO2であってよく、それにより、官能性化合物の分解のリスクなく低温で反応を実施することが可能になる。より正確には、超臨界CO2は、二酸化炭素をその臨界温度(31℃)を超えて加熱することによって、かつその臨界圧(73バール)を超えて圧縮することによって得られる。その上、超臨界CO2は、非可燃性、無毒、比較的安価であり、有機溶媒専用であることを必要とする方法と比較して、方法の最後に再処理を必要とせず、工業的視点から見ても適切な「グリーンな」溶媒である。最終的に、超臨界CO2は、(使用される圧力及び温度条件次第で適合させることが可能な) 良好な溶媒和力、低い粘性及び高い拡散性を有する。最終的に、周囲圧力及び周囲温度条件でのそのガスの性質は、反応の最後に、及び、CO2が非超臨界状態に戻された後で、このようにして改質されたコンポーネントと、(例えば反応しなかった化合物を含む)反応媒質とを分離する工程、それに加えてCO2の再使用を実行する工程を容易にする。更に、超臨界CO2は、ポリマーコンポーネントの深部に拡散することができ、可塑化に寄与し、このことはポリマーコンポーネント中への、試薬、及び、該当する場合、触媒の輸送、したがって共有結合反応工程を容易にし得る。これらの前述の条件はすべて、超臨界CO2を、成功裡に本発明による方法の反応工程を完了するための溶媒の優れた選択に寄付する。
【0012】
上に述べたように、本発明の方法は、ポリマーコンポーネントのポリマーの前記反応性基(アミン及び/又はヒドロキシル)のうちの幾つか又はすべてと、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含む、第1の化合物とも称される少なくとも1種の官能性化合物と、の間の共有結合反応の工程を含み、前記官能性化合物がエポキシド化合物、無水物化合物、ハロゲン化アシル化合物、シリルエーテル化合物及びそれらの混合物から選択され、前記共有結合反応工程が少なくとも1種の超臨界流体の存在下で行われることを特徴とする。
【0013】
本発明の方法に従って処理することが意図されるポリマーコンポーネントは、反応性基として、官能性化合物の少なくとも1個の基と反応して共有結合を形成することが見込まれるアミン基及び/又はヒドロキシル基を含む、少なくとも1種のポリマーを含む(又は更に排他的にそれらからなる)コンポーネントである。
【0014】
特に、本発明の方法に従って処理することが意図されるポリマーコンポーネントは、1種又は複数のポリアミドを含む(又は更に排他的にそれらからなる)コンポーネントであってもよく、更により詳細には、ポリマーコンポーネントは、ポリアミド-12コンポーネント(それはPA-12によって記号化することができる)、より詳細には、多孔質又は部分的に多孔質のポリアミド-12、更により詳細には、960kg/m3と等しいか又はそれ未満、例えば、650kg/m3~960kg/m3の範囲の、好ましくは900kg/m3と等しいか又はそれ未満、例えば700kg/m3~900kg/m3の範囲の密度を有するポリアミド-12であってもよい。
【0015】
官能性化合物は、有利には非ポリマー化合物であり、すなわち、それらはすなわち、繰り返し単位の配列を含む化合物であるポリマーではなく、それによってポリマーコンポーネントの芯により容易に接近し、ポリマーコンポーネントの芯に位置する反応性基と共有結合方式で反応することが可能になる。
【0016】
より詳細には、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含む、反応工程で使用される官能性化合物は、エポキシド化合物、無水物化合物、ハロゲン化アシル化合物、シリルエーテル化合物及びそれらの混合物から選択される。
【0017】
言いかえれば、反応工程で使用される官能性化合物は、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含み、前記反応性基と共有結合方式で反応することができるこれらの基は、以下から選択される:
- エポキシド基(その場合、官能性化合物はエポキシド化合物とみなされる);
- 無水物基(その場合、官能性化合物は無水物化合物とみなされる);
- ハロゲン化アシル基(その場合、官能性化合物はハロゲン化アシル化合物とみなされる);
- シリルエーテル基(その場合、官能性化合物はシリルエーテル化合物とみなされる);及び
- それらの混合物。
【0018】
より詳細には、エポキシド化合物に関して、それは、ポリマーコンポーネントのポリマーの反応性アミン及び/又はヒドロキシル基と反応することができる基を構成する少なくとも1個のエポキシド基を含む化合物と理解され、エポキシド基は、共有結合方式で塩基性又は酸性条件でヒドロキシル又はアミン基と求核開環メカニズムに従って反応して、ポリマーコンポーネント及びエポキシド化合物の残基の間でエーテル結合(ポリマーの基がヒドロキシル基である場合)又はアミン結合(ポリマーの基がアミン基である場合)を形成する。
【0019】
無水物化合物に関して、それは、ポリマーコンポーネントのポリマーの反応性アミン及び/又はヒドロキシル基と反応することができる基を構成する少なくとも1個の無水物基を含む化合物と理解され、無水物基は、共有結合方式でヒドロキシル又はアミン基と反応して、反応性基がヒドロキシル基である場合、ポリマーコンポーネント及び無水物化合物の残基の間でエステル結合を形成し、又はポリマーの反応性基がアミン基である場合、ポリマーコンポーネント及び無水物化合物の残基の間でアミド結合を形成する。
【0020】
ハロゲン化アシル化合物に関して、それは、ポリマーコンポーネントのポリマーの反応性アミン及び/又はヒドロキシル基と反応することができる基を構成する少なくとも1個のハロゲン化アシル基(より詳細には、少なくとも1個の塩化アシル基)を含む化合物と理解され、ハロゲン化アシル基は、共有結合方式でヒドロキシル又はアミン基と反応して、反応性基がポリマーのヒドロキシル基である場合、ポリマーコンポーネントとハロゲン化アシル化合物の残基の間でエステル結合を、又はポリマーの反応性基がアミン基である場合、ポリマーコンポーネントとハロゲン化アシル化合物の残基の間でアミド結合を形成する。
【0021】
シリルエーテル化合物に関して、それは、ポリマーコンポーネントのポリマーの反応性アミン及び/又はヒドロキシル基と反応することができる基を構成する少なくとも1個のシリルエーテル基を含む化合物と理解され、シリルエーテル基は、共有結合方式でヒドロキシル基又はアミン基と反応して、反応性基がポリマーのヒドロキシル基である場合、ポリマーコンポーネントとシリルエーテル化合物の残基の間でエーテル結合を、又はポリマーの反応性基がアミン基である場合、ポリマーコンポーネントとシリルエーテル化合物の残基の間でアミンシリコーン結合を形成する。
【0022】
保有される官能性化合物に応じて、当業者であれば、ポリマーコンポーネントのヒドロキシル基及び/又はアミン基と可能な共有結合反応を可能にするために操作パラメーターを選択することができ、これらの操作パラメーターは予備試験によって求めることができる。
【0023】
有利には、化学的に改質されるように意図されるポリマーが反応性基としてアミン基を含むポリマーである場合、官能性化合物は、有利にはエポキシド化合物であり、処理されるポリマーコンポーネントと、第二級アミン(ポリマーのアミン基が第一級アミン基である場合)又は第三級アミン(ポリマーのアミン基が第二級アミン基である場合)結合の形成を可能にし、このタイプの結合は加水分解することが見込まれるエステル又はカルバマートの結合より安定である。
【0024】
より詳細には、官能性化合物は、エポキシド化合物であり得、エポキシド基、少なくとも1個のビニル基を更に含み、そのビニル基は、その後共有結合方式でビニル基と反応することができる基を含む別の有機化合物(以降は第2の化合物と称される)と反応し得る。例として、官能性化合物は、(メタ)アクリル酸グリシジル化合物、アリルグリシジルエーテル化合物、2-メチル-2-ビニルオキシラン化合物又は1,2-エポキシ-9-デセン化合物であってもよい。
【0025】
例として、官能性化合物がメタクリル酸グリシジルであり、ポリマーがポリアミド-12である場合、共有結合反応工程は概略的に以下の化学方程式で表すことができる:
【0026】
【0027】
n、m及び(n-m)は、角括弧の間の繰り返し単位の繰り返し数に相当し、メタクリル酸グリシジル化合物の残基は式-CH2-CH(OH)-O-CO-C(CH3)=CH2を満たす。
【0028】
官能性化合物は、特定の目標とされる性質をポリマーコンポーネントに付与することができる少なくとも1個の基を更に含んでもよく、目標とされる特性は、すべてを網羅するわけではないが、親水性、疎水性、親油性、疎油性、抗菌性、抗偽造性、凍結防止性、抗引っ掻き性、難燃性、荷電防止性、浄化性、抗老化性、審美的デザイン性(着色、光沢等)、機械的(摩擦、滑り、耐衝撃性、耐摩耗性等)、電気的(電気的遮蔽、電気伝導性、ドーピング等)、接着性又は非接着性であってよい。この場合、官能性化合物は、興味の対象となる有機化合物であり得る。
【0029】
興味の対象となる有機化合物とは、ポリマーコンポーネントに所与の特性を付与又は改善することができる少なくとも1個の基を含む化合物であることが理解される。
【0030】
更に、反応工程は少なくとも1種の共溶媒の存在下で実行されてもよく、それによって、官能性化合物の溶解性を改善し及び/又はポリマーコンポーネントの可塑性を改善することが可能になり、それによってポリマーコンポーネントの芯まで官能性化合物の接近を容易にすることができる。
【0031】
更に、反応工程は少なくとも1種の触媒の存在下で実行されてもよい。
【0032】
例として、官能性化合物が少なくとも1種のエポキシド基を含む化合物である場合、共溶媒はアセトン等のケトン溶媒であってもよく、触媒はトリエチルアミン等の第三級アミン等の塩基性化合物であってもよい。
【0033】
より詳細には、反応工程は以下の操作を含んでもよい:
- 反応器に、ポリマーコンポーネント、少なくとも1種の官能性化合物、任意選択的に少なくとも1種の共溶媒及び任意選択的に少なくとも1種の触媒を装入する操作;
- 反応器へCO2を導入する操作;
- CO2の臨界温度より高い温度、及びCO2の臨界圧より高い圧力に反応器を加熱加圧し反応の完了までこの温度及びこの圧力を維持する操作。
【0034】
変形として、反応器を加圧及び加熱する操作は、以下の一連の操作:
- CO2の臨界温度より高い温度、及びCO2の臨界圧より高い圧力に反応器を加熱加圧する操作であって、その温度及び圧力が、ポリマーコンポーネントの官能性化合物との反応を起こすことなく含浸を生じさせ、続いて官能性化合物の沈殿が発生する可能性があるように選択される操作;
- 圧力及び温度を上げる操作であって、その温度及び圧力が、官能性化合物のポリマーコンポーネントとの共有結合反応を可能にするように設定され、前記反応の完了までこの温度及びこの圧力が維持される操作
であってよく、
この一連の操作は、1回又は複数回繰り返すことができる。
【0035】
装入する操作は、有利には、ポリマーコンポーネントと、官能性化合物、場合により存在する触媒と場合により存在する共溶媒との間に、直接接触がないように実行されてもよい。
【0036】
反応工程の最後には、ポリマーコンポーネントは、化学的に改質され、官能性化合物の残基に共有結合方式で結合される(又は残基によって共有結合方式でグラフト化される)。
【0037】
官能性化合物の残基によって、官能性化合物が、ポリマーコンポーネントの反応性基とのその共有結合反応の後で残留することが理解される。
【0038】
反応工程の後、超臨界状態は、例えば反応が起きた反応器を減圧する従来の方法によって解消される。
【0039】
このように改質されたポリマーコンポーネントは、続いて例えば真空下、乾燥にかけられる。
【0040】
本発明の方法は、前述の反応工程の後に又は同時に(好ましくは前述の反応工程の後に)、官能性化合物の残基のうちの幾つか又はすべてと、少なくとも1種の第2の化合物との間の共有結合反応の工程を含んでもよく、当然、この場合、ポリマーコンポーネントに共有結合方式で結合した官能性化合物の残基は、第2の化合物の少なくとも1個の基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含むと推定される。この共有結合反応工程もまた、有利には、超臨界CO2等の官能性化合物との反応工程中に使用されるそれと同一の、少なくとも1種の超臨界流体の存在下で行われる。少なくとも1種の第2の化合物を伴うこの共有結合反応工程は、方法の化学的改質の目的がコンポーネントの所与の特性を獲得又は改善することであり、かつ、反応工程中に反応した前述の官能性化合物が前記特性の獲得又は改善を付与することができる基を含まない場合、特に、必要である。
【0041】
共有結合反応の語は、共有結合の形成のための反応であると規定され、この反応が、官能性化合物の残基の反応性基と第2の化合物の反応性基との間に生じる。
【0042】
例として、残基は、第2の化合物の少なくとも1個の基と反応することができる基として、ビニル基を含んでいてもよく、それに対応して、第2の化合物は、その残基のビニル基と反応することができる基として、やはりまたビニル基を含んでいてもよい。この場合、共有結合反応工程は、前述した残基を足掛かりとする2種の化合物を重合する工程、より詳細には、ビニル基を含む第2の化合物を重合する工程として定義することができ、重合は、そのビニル基を介して官能性化合物の残基から成長する。したがって、この工程の最後には、第2の化合物の重合から生じたポリマー鎖からなるグラフトに結合したポリマーコンポーネントが残り、ポリマーコンポーネントとグラフトとの間の結合は、ポリマーとグラフトの間で有機スペーサー基を形成する官能性化合物の残基を介して生じ、これらの残基は、一方では共有結合方式でポリマーコンポーネントに、他方では共有結合方式で前述のグラフトに結合する。この場合、残基は、一方でポリマーコンポーネントのヒドロキシル基及び/又はアミン基との、他方では第2の化合物のビニル基との、それらの反応の後で残留する官能性化合物からの基である。
【0043】
より詳細には、本発明の文脈において、本発明の方法は、反応性基として、アミン基及び/又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種のポリマーを含むポリマーコンポーネントを改質する方法として定義することができ、前記方法は:
- 前記反応性基のうちの幾つか又はすべてと、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含む、第1の化合物とも称せられる少なくとも1種の官能性化合物と、の間の共有結合反応の工程であって、官能性化合物が、エポキシド化合物、無水物化合物、ハロゲン化アシル化合物、シリルエーテル化合物及びそれらの混合物から選択され、少なくとも1種のビニル基を更に含み、それによって、官能性化合物の残基に共有結合方式で結合したポリマーコンポーネントが得られる工程;
- 官能性化合物の残基のビニル基に、少なくとも1個のビニル基を含む第2の化合物を重合させる工程
を含み、
前記反応工程及び前記重合工程が、少なくとも1種の超臨界流体の存在下で行われる。
【0044】
第2の化合物は、ポリマーコンポーネントに所与の特性を付与又は改善することができる少なくとも1個の基、例えば、少なくとも1個のリン原子を含む基、例えば、ポリマーコンポーネントに難燃性を与えるホスファート基又はホスホナート基を更に含んでもよく、その場合には、第2の化合物は、興味の対象となる有機化合物となり得る。
【0045】
より詳細には、第2の化合物は、少なくとも1個のビニル基、及びポリマーコンポーネントに所与の特性を付与又は改善することができる少なくとも1個の基を含んでいてよい。
【0046】
この反応工程は、共溶媒及び/又はフリーラジカル開始剤(AIBN等)等の触媒の存在下で行われ得る。
【0047】
より詳細には、本発明による特定の方法は、
- ポリマーコンポーネントのポリマーの反応性基のうちの幾つか又はすべてと、前記反応性基と共有結合方式で反応することができる少なくとも1個の基を含む、第1の化合物とも称せられる少なくとも1種の官能性化合物と、の間の共有結合反応の工程であって、官能性化合物は、エポキシド化合物、無水物化合物、ハロゲン化アシル化合物、シリルエーテル化合物及びそれらの混合物から選択され、少なくとも1種のビニル基を更に含み、それによって、官能性化合物の残基に共有結合方式で結合したポリマーコンポーネントが結果として得られる工程;
- 官能性化合物の残基のビニル基に、少なくとも1個のビニル基を含む第2の化合物を重合させる工程を連続して含み、
前記反応工程及び前記重合工程が、超臨界CO2等の少なくとも1種の超臨界流体の存在下で行われる、方法である。
【0048】
なおより詳細には、本発明による特定の方法は、以下の一連の工程:
- 反応性基がアミン基であるポリマーコンポーネントのポリマーの反応性基のうちの幾つか又はすべてと、そのアミン基のうちのうちの幾つか又はすべてと共有結合方式で反応する、少なくとも1個のビニル基を含むエポキシド化合物である第1の化合物、例えば、メタクリル酸グリシジルと、の間の共有結合反応の工程であって、それによって、第1の化合物の残基に共有結合方式で結合したポリマーコンポーネントが結果として得られる工程;
- 第1の化合物の残基のビニル基に、少なくとも1個のビニル基、及び興味の対象となる少なくとも1個の官能基、例えばホスファート基又はホスホナート基等の少なくとも1個のリン原子を含む少なくとも1個の基を含む第2の化合物を重合させる工程
を連続して含み、
共有結合反応工程及び重合工程が、超臨界CO2等の少なくとも1種の超臨界流体存在下で行われる、方法である。
【0049】
例として、第2の化合物は、ビス[2-(メタクリロイロキシ)エチル]ホスファート、ジエチルアリルホスファート、ジエチルアリルホスホナート、ジメチルビニルホスホナート、ジエチルビニルホスホナート及びそれらの混合物から選択されてもよい。
【0050】
より詳細には、ポリマーコンポーネントを第2の化合物と反応させる工程は、以下の操作を含んでもよい:
- 官能性化合物と反応したポリマーコンポーネント、少なくとも1種の第2の化合物、任意選択で少なくとも1種の共溶媒、及び任意選択で少なくとも1種の触媒を、反応器に装入する操作;
- 任意選択で31℃を超える温度に予備加熱されていてもよい反応器に、CO2を導入する操作;
- CO2の臨界温度より高い温度及びCO2の臨界圧より高い圧力に反応器を加圧加熱し、反応の完了までその温度及びその圧力を維持する操作。
【0051】
変形として、反応器を加圧加熱する操作は、以下の一連の操作:
- CO2の臨界温度より高い温度及びCO2の臨界圧より高い圧力に反応器を加熱加圧する操作であって、その温度及び圧力が、ポリマーコンポーネントが第2の化合物と反応することなく含浸され、続いて第2の化合物の沈殿が生じる可能性があるように選択される操作;
- 圧力及び温度を上げる操作であって、その温度及び圧力が、第2の化合物と、ポリマーコンポーネントに共有結合方式で結合した官能性化合物の残基との共有結合反応を可能にするように設定され、その温度及びその圧力が、前記共有結合反応の完了まで維持される操作
で行うことができ、
この一連の操作は、1回又は複数回繰り返すことができる。
【0052】
この操作様式によって、濃度勾配を伴わずにポリマーコンポーネントの改質をその全体で得ることが可能になり得る。
【0053】
配置操作は有利には、ポリマーコンポーネントと、化合物、場合により存在する触媒と場合により存在する共溶媒の間に直接接触がないように実行されてもよい。
【0054】
少なくとも1種の第2の化合物が関与する反応工程の後に、本方法は有利には、超臨界条件の停止の工程と、任意選択で改質されたポリマーコンポーネントを乾燥する工程とを含む。
【0055】
実施形態が何であれすべて、本改質方法は、特に、ポリマーコンポーネントに所与の特性を付与するか又はポリマーコンポーネントの所与の特性を改善することができる方法、例えば、ポリマーコンポーネントに難燃性を付与することができる方法であり得る。
【0056】
本発明の方法は、例えばポリマーコンポーネント、試薬、超臨界流体、場合により存在する共溶媒、及び場合により存在する触媒を装入するための容器(enclosure)、その容器の圧力を調節して真空下に置くための手段(例えば容器と連通する真空ポンプ)、並びに加熱手段を収容することが意図される、前記容器を含むオートクレーブ型のデバイス内で実施されてもよい。
【0057】
本発明の他の利点及び特徴は、以下の非限定的な詳細な記載において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】実施例1によるメタクリル酸グリシジルで処理されたポリアミド試料の
1H NMRスペクトルである。
【
図2】メタクリル酸グリシジルの
1H NMRスペクトルである。
【
図3】実施例1において開示される未処理のポリアミド試料の
1H NMRスペクトルである。
【
図5】実施例1に従ってメタクリル酸グリシジルで処理されたポリアミド試料(曲線a)、及び、メタクリル酸グリシジル、次いでジエチルアリルホスファートで処理されたポリアミド試料(曲線b)のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0059】
この実施例は、初回では、メタクリル酸グリシジル(以下、GMAと言う)を用いるポリアミド-12コンポーネントの化学的改質を含む、本発明の化学的改質方法の特定の様式の実施を説明し、この改質は特定の反応器内で超臨界CO2の下で行う。
【0060】
この改質反応の簡略化した反応ダイヤグラムは次のとおりであってよい:
【0061】
【0062】
n、m及び(n-m)は、角括弧内の繰り返し単位の繰り返し数に対応する。
【0063】
前述した特定の反応器は、外部加熱システムを装備した600mLのバッチ式ステンレス鋼反応器である。ダブルピストンポンプを用いてCO2を反応器へ導入し、そのヘッドは、5℃未満の温度に冷却してCO2を液相にし、反応器への注入の際のキャビテーション問題を回避する。反応器内の液体CO2の存在を回避するために31℃を超える温度に反応器を予備加熱する。反応器には、官能性化合物、触媒及び共溶媒を収容するように意図された60mL容量の晶析装置がその底に装備されている。ポリアミド-12コンポーネントを、反応器内でこれらの試薬の上に宙吊りにして、晶析装置との接触を回避する。
【0064】
より詳細には、ポリアミド-12コンポーネントは、試験片の最も広い部分が寸法61*9*3.7mmであり、試験片の最も薄い部分が61*3*3.7mmであるポリアミド-12引張試験片である。
【0065】
前述した反応器の晶析装置内に、メタクリル酸グリシジル(以降GMAと称される)10mL、トリエチルアミン2mL及びアセトン20mLを入れる。晶析装置の上に前述の試験片を置き、これは含まれている液体に接していない。晶析装置に添加されるアセトンの役割は、反応の間にその自己重合を回避するためにメタクリル酸グリシジルを希釈することであり、特にポリアミドへの化合物の浸透又は超臨界CO2中のメタクリル酸グリシジルの溶解性を改善するために再添加されたものではない。
【0066】
反応器を再び閉め密封したら、周囲温度で50バールに達するまでポンプを介して反応器にCO2を添加する。続いて50℃に反応器を加熱し、100バールに圧力を調節する。続いて加熱設定ポイントを140℃に設定する。1時間で50℃から140℃、及び100バールから300バールに反応器を変化させる。140℃及び300バールで6時間の処理の後、反応器を10分で300から70バールに、5分で70バールから大気圧に減圧する。減圧は反応器のカバーに置いた様々なバルブを介して実行する。
【0067】
続いて反応器を開けて、次いで茶色になった試験片を回収し、真空下、105℃でオーブン内で終夜乾燥する。乾燥後のその質量は安定である。試験片の質量は、処理前の1.16gから処理及び乾燥の後に1.23gに変化した。したがって、質量の増加は6%である。
【0068】
GMAによる改質によって引き起こされた着色は、本発明の方法に従って処理した試験片の芯にまで観察される。試験片の芯の外側の着色の強度勾配、並びに実際のコンポーネント内の不均衡も観察された。これらの不均衡は、未処理の試験片について観察される縞に相当し、ポリマーコンポーネントを製作する方法によって引き起こされたものである。
【0069】
試験片の効果的な化学的改質を確認するために、これを1H NMRによって特性評価した。
【0070】
このために、ポリマー20mgを、試験片の最も薄い部分からとり、ヘキサフルオロイソプロパノール及び重水素化クロロホルムの体積で8:2の混合物に溶解する。400 Mhz Bruker Avance IIスペクトロメーターでこの溶解したポリアミドについて298Kで128スキャンの
1H NMRスペクトルを取得した。
図1にそのスペクトルを図示する。処理したポリアミド試料を溶解する間、溶媒によってコンポーネントのごく表面は溶解されなかったことは留意されるべきであり、これは恐らく、コンポーネントの表面で化学的改質のレベルが高く、溶媒中でのポリマーの溶解性が著しく低減したことによる。
【0071】
比較として、ポリアミドの場合と同じ分析パラメーターを使用することによって1体積%の濃度を有するGMAを純粋なCDCl
3中で分析した。
図2にその
1H NMRスペクトルを図示する。
【0072】
比較として、処理したコンポーネントの場合と同じ分析パラメーターを使用することによって試験片の未処理片を分析した。
図3にその
1H NMRスペクトルを図示する。
【0073】
処理したコンポーネント及び未処理のコンポーネントのスペクトルの重ね合せの拡大を
図4に図示する。
【0074】
この重ね合せにおいて、処理したコンポーネントのスペクトルに3つの新しいピークが観察された:GMAに存在するメチル基に対応する1.98ppmのピーク、その両方がGMAに存在するビニルプロトンに対応する、5.78ppmを中心とするピーク及び6.23ppmのピーク。これらのスペクトルにGMAのプロトンの残存は観察されない。これは、それらの検出を困難にさせる、はるかに強度が高いポリアミド-12からの信号との重ね合せによることが推定される。ポリマー内のGMAのグラフト化を定量的に測定するために、GMAのメチル基、及びポリアミドのメチレン基(2.28ppmのピーク)の信号を積分し、全体的なグラフト化度(%)を下式によって求める:
【0075】
【0076】
ICH3GMAは、GMAのメチルに対応する1.98ppmのピークを含む積分であり、ICH2PA12は、ポリアミド-12のメチレン基に対応する2.28ppmのピークを含む積分である。
【0077】
計算によって、グラフト化度を3.8%モル濃度と見積もることが可能になる。この測定されたグラフト化度によって、調査された条件で超臨界CO2の下のポリアミド-12に対するGMAのグラフト化を検証することが可能になる。しかし、試験片内の改質勾配を測定することは可能でない。更に、それは、恐らく改質の最も部分である試験片の表面の非可溶化により過小評価されている可能性が高い。
【0078】
この実施例では、メタクリル酸グリシジルでの超臨界CO2下の処理がポリアミド-12試験片の芯での改質を可能にすることを明らかにし得る。
【0079】
GMAによって改質されたポリアミド-12コンポーネントを、2回目の処理において、GMAの残基であるビニル基を、やはりビニル基を含む化合物、この場合、ジエチルアリルホスファート(DEAP)と反応させることによって再改質する。この新しい改質の簡略化した反応ダイヤグラムは以下のようであってよい:
【0080】
【0081】
m、(n-m)及びpは、角括弧の間の繰り返し単位の繰り返し数に対応する。
【0082】
第1の工程について規定したように反応器内で処理を実行する。
【0083】
以下の試薬を反応器の底の晶析装置に入れる:
- DEAP2.5mL;
- アゾビスイソブチロニトリル0.2g;
- アセトン10mL。
【0084】
反応器の底の液体と接しないように、PA-12試験片を置く。
【0085】
反応器を再び閉め密封したら、周囲温度で50バールに到達するまで、反応器内のポンプを介してCO2を添加する。続いて40℃に反応器を加熱し、100バールに圧力を調節する。4時間の含浸後、加熱設定ポイントを80℃に設定する。1時間で43℃から76℃及び100バールから2,700バール(最終圧力に到達するように圧力調節しながら)に反応器を変化させる。80℃及び2,700バールで3時間処理した後、10分で2,700バールから70バールに、5分で70バールから大気圧に反応器を減圧する。
【0086】
続いて反応器を開けて、試験片を回収し、105℃で真空下オーブン中で終夜乾燥し、乾燥後のその質量は安定である。
【0087】
試験片を、続いてATRモードで赤外線分析した。試験片の表面の、DEAPによる改質前(曲線a)及び改質後(曲線b)のスペクトルを添付の
図5に提供する。縦座標は強度Iに、横座標は波数N(cm
-1)に相当する。
【0088】
このスペクトルで、アミドのC=O結合に対応する1,640cm-1及びアミドのC-N結合に対応する1,550cm-1のピークの有意な減少が観察される。更に、1,120及び951cm-1のピークの拡大、及び強度の増加が観察され、これはP=O及びP-O-C結合の存在に対応する。赤外線では、ほとんどの有機化合物が遍在することにより、C-C結合の形成(本反応の事例)を識別することは難しい。したがって、リン化合物の存在に対応する信号の存在が、DEAPの存在を示す。その沸点が45℃に近いため、試験片を105℃で真空下で終夜乾燥すると、グラフト化されていないDEAPの存在はなくなっていく。アミド結合の振動の変化は、一部は酸性リン酸基の存在による可能性がある。すなわち、酸性リン酸基が、ポリマーのアミド間に形成されたH結合を変化させることによって、アミドのC-N及びC=O等の周囲の結合の振動に影響を与える可能性がある。
【0089】
したがって、この分析は、超臨界CO2経路によって、PA-12に直接にグラフト化することができない官能性化合物(この場合、難燃性のための有機リン化合物)を、2工程でグラフト化する可能性を裏付けている。
【国際調査報告】