IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デュポン テイジン フィルムス ユーエス リミテッド パートナーシップの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】複合ポリマーフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20230405BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230405BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20230405BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20230405BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20230405BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230405BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20230405BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20230405BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20230405BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20230405BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230405BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230405BHJP
   C08J 7/052 20200101ALI20230405BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 M
B32B27/28 101
C08L31/04 S
C08L53/02
C09J7/35
C09J7/25
C09J153/02
C09J131/04
C09J123/08
C09J11/08
B65D65/40 D
C08J7/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022551396
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 IB2021051538
(87)【国際公開番号】W WO2021171190
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】2002633.2
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519399763
【氏名又は名称】デュポン テイジン フィルムス ユーエス リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】デン フェンフア
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シェンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン エリク
【テーマコード(参考)】
3E086
4F006
4F100
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC06
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA33
3E086BB52
3E086CA01
4F006AA35
4F006AB14
4F006AB16
4F006AB17
4F006BA13
4F006CA07
4F006DA04
4F006EA06
4F100AK12
4F100AK12B
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK68
4F100AK68B
4F100AL01
4F100AL01B
4F100AL09
4F100AL09B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA16
4F100CA16B
4F100CB03
4F100CB03B
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EJ38
4F100EJ38A
4F100EJ42
4F100GB16
4F100JA05
4F100JA05B
4F100JA06
4F100JA06B
4F100JA07
4F100JA07B
4F100JB16
4F100JB16B
4F100JK02
4F100JK06
4F100JL12
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002AF024
4J002BA004
4J002BA014
4J002BB06X
4J002BB06Y
4J002BF03X
4J002BF03Y
4J002BK004
4J002BP01W
4J002GF00
4J002GG01
4J002GG02
4J004AA05
4J004AA07
4J004AA09
4J004AB03
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA06
4J040BA182
4J040BA202
4J040CA081
4J040DB051
4J040DE032
4J040DK022
4J040DM011
4J040HA306
4J040HB03
4J040JB01
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA11
4J040NA08
4J040PA30
4J040PA33
(57)【要約】
第1および第2の表面を有する配向ポリエステル基材層を含むヒートシール可能な複合フィルムが提供される。スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび粘着付与樹脂を含むヒートシール可能なポリマーコーティング層が、基材層の第1の表面に配置されている。食料品を収容できる入れ物、前記ヒートシール可能な複合フィルムから形成された蓋を含むシール容器もまた記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール可能な複合フィルムであって、第1および第2の表面を有する配向ポリエステル基材層を含み、スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび粘着付与樹脂を含むヒートシール可能なポリマーコーティング層が基材層の第1の表面に配置されており、ヒートシール可能なポリマー層が、ヒートシール可能なポリマー層の総質量に対して20~40質量%の量のEVAコポリマーを含む、ヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル基材層が二軸配向されている、請求項1に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル基材層がポリエチレンテレフタラートである、請求項1または2に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項4】
スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーが、ポリスチレンブロック、ならびにブタジエンおよび/またはイソプレンまたはそれらの水素化同等物に由来するゴムブロックからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項5】
前記スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーのスチレン含有率が、コポリマーの質量に対して5~50%、好ましくは8~30%、好ましくは10~約20%および好ましくは10~約15%の範囲にある、請求項1~4のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項6】
スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーが、ポリブタジエンもしくはポリイソプレンまたはそれらの組み合わせからなるゴムブロックを含み、前記コポリマーが、トリブロックの各末端にポリスチレンブロックを有し、前記ゴムブロックによって一緒に連結したトリブロックコポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項7】
スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーが、水素化されたポリブタジエンもしくはポリイソプレンまたはそれらの組み合わせからなるゴムブロックを含み、好ましくは、水素化されたスチレンコポリマーが、
(i)スチレンブロックならびにエチレンおよびブチレン繰り返し単位からなるゴムブロックを含むトリブロックコポリマー、ならびに
(ii)スチレンブロックならびにエチレンおよびプロピレン繰り返し単位からなるゴムブロックを含むトリブロックコポリマー
から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項8】
スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーが50,000~400,000、好ましくは50,000~200,000の重量平均分子量(Mw)を示し、および/または、スチレンブロックの重量平均分子量(Mw)が5,000~50,000、好ましくは5,000~25,000である、請求項1~7のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項9】
スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーが、トルエン溶液から流延されたフィルムについてASTM D412-16に従って測定して、少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも10MPa、好ましくは少なくとも15MPa、好ましくは少なくとも20MPa、好ましくは15~30MPaの範囲の引張強度を示す、請求項1~8のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項10】
スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーが、ブルックフィールド粘度計を用いて10質量%のトルエン溶液で25℃で測定して250cPs以下、好ましくは100cPs以下、好ましくは少なくとも5cPs、好ましくは少なくとも10cPsの溶液粘度を示す、請求項1~9のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項11】
スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーが、-50~-80℃、好ましくは-60~-70℃の範囲のガラス転移温度、および/または0℃より高く、好ましくは50℃未満の融点を示す、請求項1~10のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項12】
ヒートシール可能なポリマー層が、層の総質量に対して10~50質量%、好ましくは20~40質量%、好ましくは25~35質量%の量のスチレンコポリマーを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項13】
EVAコポリマーが、5~50質量%、15~50質量%および好ましくは18~40質量%の範囲の酢酸ビニル含有率を有し、追加のコモノマー、好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸から好ましくは選択されるエチレン性不飽和コモノマーを含んでもよく、好ましくは、追加のコモノマーの総量が5質量%以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項14】
EVAコポリマーが40℃~95℃、好ましくは45℃~75℃の融点、および/または、5~1000、好ましくは5~600、好ましくは5~200、好ましくは5~100g/10分のメルトインデックスを示す、請求項1~13のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項15】
ヒートシール可能なポリマー層が、ヒートシール可能なポリマー層の総質量に対して25~35質量%の量のEVAコポリマーを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項16】
ヒートシール可能なポリマー層が第1のEVAコポリマー(EVA-1)および第2のEVAコポリマー(EVA-2)のブレンドを含み、好ましくは、前記第1のEVAコポリマー(EVA-1)が、20~50質量%、好ましくは20~40質量%の範囲の酢酸ビニル含有率を有し、好ましくは2.5~100、好ましくは5~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有し、前記第2のEVAコポリマー(EVA-2)が、5~20質量%、好ましくは10~20質量%の範囲のVA含有率を有し、好ましくは100~1000、好ましくは150~600g/10分のメルトインデックスを示す、請求項1~15のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項17】
EVA-2/EVA-1の質量比が、0/100より大きく100/100まで、より好ましくは0/100より大きく65/100まで、より好ましくは15/100~50/100、より好ましくは15/100~30/100の範囲にある、請求項16に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項18】
単一の等級のEVAコポリマーがヒートシール可能な層中に存在し、前記樹脂の酢酸ビニル(VA)含有率が、5~50質量%、好ましくは15~50質量%、好ましくは18~40質量%、好ましくは20~30質量%、好ましくは23.0~30.0質量%、好ましくは25~28質量%の範囲にあり、好ましくは、EVAコポリマーのメルトインデックスが、5~200、好ましくは5~100g/10分の範囲にある、請求項1~15のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項19】
粘着付与樹脂が、ポリテルペン、炭化水素樹脂、ロジンおよびロジンエステル樹脂、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項1~18のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項20】
粘着付与樹脂が、20℃~160℃、好ましくは90℃~125℃の環球式軟化点、および/または、200~5000、好ましくは500~2000の数平均分子量を示す、請求項1~19のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項21】
粘着付与樹脂が、アルファ-ピネン、ベータ-ピネンおよびd-リモネンに由来する天然ポリテルペン樹脂;脂肪族(C5)炭化水素樹脂、芳香族(C9)炭化水素樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂およびそれらの混合物から選択される石油系原料に由来する炭化水素樹脂;ならびにロジンのメチル、トリエチレングリコール、グリセリンおよびペンタエリトリトールエステルから選択される、請求項1~20のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項22】
ヒートシール可能なポリマー層が、ヒートシール可能なポリマー層の総質量に対して15~50質量%、好ましくは15~40質量%、好ましくは30~40質量%の量の粘着付与樹脂を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項23】
プライマーコーティング層が、層の順序が基材層/プライマー層/ヒートシール可能なポリマーコーティング層となるように基材層の第1の表面に配置され、好ましくは、プライマーが、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、EVAおよびエチレンアクリル酸(EAA)樹脂、好ましくはPVDCおよびEVA樹脂、好ましくはPVDC樹脂から選択されるポリマーである、請求項1~22のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項24】
プライマー層が、約0.05~約1.0g/m2、好ましくは約0.1g/m2~約0.5g/m2の乾燥コート質量、および/または、0.05μm~1μm、好ましくは0.05μm~0.5μmの厚さを示す、請求項20に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項25】
基材の厚さが約10~約100μmであり、ヒートシール可能な層の厚さが、複合フィルムの全体の厚さの5~45%、好ましくは10~40%、好ましくは12~35%、および/または、2~10μm、好ましくは3~6μmの厚さである、請求項1~24のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項26】
600~1500g/25.4mm、好ましくは800~1500g/25.4mm、好ましくは800~1200g/25.4mm、好ましくは800~1125g/25.4mmの範囲のポリプロピレン基材に対するヒートシール強度を示す、請求項1~25のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項27】
少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%の透明度を示す、請求項1~26のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルム。
【請求項28】
食料品を収容できる入れ物、および請求項1~27のいずれか1項に記載のヒートシール可能な複合フィルムから形成された蓋を含むシール容器であって、前記複合フィルムのヒートシール可能なポリマー層が入れ物と直接接触し、複合フィルムが剥離可能なヒートシール結合によって入れ物に接着され、好ましくは、入れ物が、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレン、好ましくはポリプロピレンで作られている、シール容器。
【請求項29】
食料品、特にオーブン調理可能な食事の包装の蓋としての、請求項1~27のいずれか1項に記載の複合フィルムの使用であって、前記包装が入れ物をさらに含み、特に、入れ物が、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンまたはポリエチレン、好ましくはポリプロピレンで作られている、複合フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ポリマーフィルムおよびその製造方法に関する。フィルムは、シール可能なフィルム、特に包装用途のための、特に調理済みのオーブン調理可能な食事などの食品の包装用のシール可能で剥離可能なフィルムとしての使用に特に適している。特に、本発明のフィルムは、調理済みのオーブン調理可能な食事などの食料を収容できる容器の蓋としての使用に適切である。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、特にコンビニエンスフード、例えば電子レンジまたは従来式のオーブンで温められる、調理済みのオーブン調理可能な食事を包装するための食品包装などの包装用途では普通である。また、電子レンジまたは従来式のオーブンのいずれでも温めることができる、「オーブン両用」容器が公知である。容器は、ポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)またはポリスチレン(PS)から形成されていてもよく、または、PVDCコートされていてもよい。オーブン調理可能な食事のために広く普及して使用される容器はAPET/CPET容器であり、これは結晶性PET層の上に非晶質PET層を有する複合材料からなる。他の適切なタイプの容器には、箔トレー(特にアルミ箔トレー)、金属被覆されたトレーおよびPETコートされたカートン板または板紙から形成されたトレーが含まれる。金属被覆された(特にフラッシュメタライズド)PETカートン板から形成されたトレーが特別に有用である。
【0003】
そのような容器は、包装された内容物の漏れおよび乾燥を防止するために、また、貯蔵の間に虫類、細菌および空気に含まれる夾雑物に対する防護壁を提供するためにしっかりと容器をシールするだけでなく、開ける際に容易に容器から剥離することができる蓋を必要とする。蓋の他の重要な要件は、蓋が包装された内容物にくっついてはならないこと、および、オーブン中で生じた熱に耐えることができなければならないということである。容器の蓋は、典型的には可撓性ポリマー基材およびヒートシール可能なポリマー層を含むフィルムで作られ、しばしば「蓋用」フィルムと称される。蓋用フィルムを使用するシール容器の製造は、蓋用フィルムおよび容器の間のシールの形成を包含している。このシールは、容器の上に蓋を置き、それが容器の表面に接着し、蓋および容器の間に有効なシールを形成するようにシール可能なコーティング層を軟化または溶融するために熱および圧力を印加することによって形成される。
【0004】
二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた機械的強度のために蓋用フィルムのための可撓性基材として広く使用されており、様々な機能的なコーティングがヒートシール可能なポリマー層として使用するために提案されている。しかしながら、従来のポリエステル蓋用フィルムが比較的低いヒートシール強度を示す幾つかの容器基材があり、ポリエステル蓋用フィルムの用途の範囲を広げる必要性が残っている。特に、伝統的なCPET/APETトレーより経済的な傾向があるポリオレフィンで作られた容器、特にポリプロピレンまたはポリエチレン容器に対するポリエステルフィルムのシール性を改善する必要性が残っている。ポリオレフィン容器に対して優れたシール性および剥離性を示し、「きれいな剥離」を示すフィルムを提供する特定の必要性が残っている。本明細書において使用される場合、用語「きれいな剥離」とは、蓋用フィルムを剥離した後、容器の表面に目に見えるヒートシール可能な層の残留物が全くないかまたは実質上ないことを意味する。きれいな剥離は、消費者の観点から容器の内容物にシーラント材料が混入することがあり得るという印象を回避するために重要である。さらに、優れたシール性および剥離特性を示すフィルム、およびまた光学的透明度が、製品および包装品に関する、品質、新鮮さおよび衛生の目印として視認されるので良好な光学的性質を示すフィルムを提供する必要性が依然存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によると、ヒートシール可能な剥離性複合フィルムであって、第1および第2の表面を有する配向ポリエステル基材層を含み、スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび粘着付与樹脂を含むヒートシール可能なポリマーコーティング層が基材層の第1の表面に配置された、フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ポリエステル基材層の第1の表面は、フィルムが本明細書において記載の蓋用フィルムとして使用された場合、容器に面する表面である。ポリエステル基材層の第2の表面は、最も外側であり、容器の内部に向いていない表面である。
基材は自己支持型フィルムまたはシートであり、これはフィルムまたはシートが支持基体無しでも独立して存在できることを意味する。基材は一軸または二軸配向し、好ましくは二軸配向されている。基材が半結晶性と記載され得ることは、以下の本開示から認識されよう。本明細書において使用される場合、用語「半結晶性」とは、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、典型的には50%または45%または40%以下の結晶性を示すフィルムを指す。
【0007】
基材は任意の適切なフィルム形成熱可塑性ポリエステル材料から形成されてもよい。合成線状ポリエステルが好ましい。基材ポリエステルは結晶化可能であることが認識されよう。適切なポリエステルは、1種または複数のジカルボン酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5-,2,6-もしくは2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,10-デカンジカルボン酸、および特に一般式Cn2n(COOH)2[nは2~8である。]のものを含む脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸またはピメリン酸;および1種もしくは複数のグリコール、特に、脂肪族または脂環式グリコール、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)に由来するものを含む。
【0008】
基材ポリエステルのジカルボン酸成分は、好ましくは少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸(それは好ましくはテレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸から選択される)を含み、好ましくは上記したジカルボン酸から、好ましくは上記した芳香族ジカルボン酸(特にイソフタル酸)および脂肪族二酸から選択される第2の異なるジカルボン酸をさらに含んでもよい。したがって、ポリエステルは、好ましくは芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸または2,6-ナフタレンジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸に由来する。好ましくは、基材ポリエステルのジカルボン酸成分は、唯一の芳香族ジカルボン酸を含み、それは好ましくはテレフタル酸または2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、好ましくはテレフタル酸である。
基材ポリエステルのグリコール成分は好ましくは、少なくとも1種の脂肪族ジオールを含み、その少なくとも1種はエチレングリコールである。好ましくは基材ポリエステルのグリコール成分は、脂肪族ジオール、好ましくはエチレングリコールである。
好ましい基材ポリエステルは、ポリエチレンテレフタラート(PET)およびポリエチレンナフタラート(PEN)、またはPET系もしくはPEN系のコポリエステルから選択される。ポリエチレンテレフタラート(PET)またはそのコポリエステルが特に好ましい。好ましくは、基材ポリエステルはPETである。
【0009】
フィルム形成ポリエステル樹脂は、基材の主成分であり、基材の総質量の少なくとも70質量%、好ましくは基材の総質量の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より典型的には少なくとも98%、より典型的には少なくとも99質量%を構成する。
基材が製造されるポリエステルの固有粘度は、好ましくは少なくとも約0.60、好ましくは少なくとも約0.61、好ましくは少なくとも0.62、好ましくは少なくとも0.63、好ましくは少なくとも0.64、好ましくは少なくとも0.65、好ましくは少なくとも約0.70、好ましくは少なくとも約0.75である。好ましくは、基材ポリエステルの固有粘度は、0.85以下、好ましくは0.83以下である。粘度が高すぎるポリエステルの使用は、フィルム製作中に難事を引き起こし、および/または特殊な、より頑丈なフィルム形成設備が必要となり得る。例えば、粘度を大幅に上げすぎると、安定なフィルムの生産を達成するために、アウトプットを下げる(すなわち、単位時間当たりに押し出されるポリエステルの量を減らし、経済的に劣る工程の原因となる)か、または溶融物の粘度を下げるために押出温度を上げる(ポリマーの熱分解および関連する性質の喪失の原因となり得る)ことが適切になることがある。
【0010】
ポリエステルの形成は、好都合には、一般に約295℃までの温度で縮合またはエステル交換による公知の方式で果たされる。好ましい実施形態において、例えば窒素流動床、または回転式真空乾燥器を使用する真空流動床などの流動床を使用する、当業界で周知の従来の技法を使用して、固相重合が、ポリエステルの固有粘度を所望の値に上げるために使用されてもよい。
【0011】
ポリエステル基材は、ポリエステルフィルムの製造において従来通りに使用される、任意の他の添加剤をさらに含んでもよい。したがって、微粒子充填剤、加水分解安定剤、抗酸化剤、UV安定剤、架橋剤、染料、滑沢剤、ラジカル捕捉剤、熱安定剤、界面活性剤、光沢増進剤、分解促進剤、粘性調整剤および分散安定剤などの薬剤を適宜組み込むことができる。微粒子充填剤、加水分解安定剤(好ましくは分岐モノカルボン酸のグリシジルエステル)および抗酸化剤(好ましくはヒンダードフェノール、第二級芳香族アミンおよびヒンダードアミン)は、特別の有用性を有し、この点で適切な添加剤は、国際公開第2012/120260号に開示され、その添加剤の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。UV安定剤もまた特に有用である。
【0012】
微粒子充填剤は、当業界で周知であるように製造中の取り扱い性および巻取り性を向上させ、および/または光学的性質を調整することができる。微粒子充填剤は典型的には微粒子無機充填剤である(例えば、金属またはメタロイド酸化物、例えば、アルミナ、チタニア、タルクおよびシリカ(特に沈降または珪藻土シリカおよびシリカゲル)、か焼チャイナクレーならびにアルカリ金属塩、例えば、カルシウムおよびバリウムの炭酸塩および硫酸塩)。微粒子無機充填剤は好ましくは細かく分割され、その体積分布メジアン粒径(体積%を粒子の直径に関連付ける累積分布曲線上で読み取った、全粒子の体積の50%に相当する球相当径、しばしば「D(v,0.5)」値と称される)は、好ましくは0.01~5μm、より好ましくは0.05~1.5μm、特に0.15~1.2μmの範囲である。好ましくは、無機充填剤粒子の少なくとも90体積%、より好ましくは少なくとも95体積%は、体積分布中央粒径±0.8μm、特に±0.5μmの範囲内にある。充填剤粒子の粒径は、電子顕微鏡、コールターカウンター、沈降分析および静的または動的光散乱によって測定することができる。レーザー光回折に基づく技法が好ましい。前述の従来から使用される添加剤は、従来の方式でポリマーへ導入されてもよい。例えば、フィルム形成ポリマーの原料であるモノマー反応体と混合することによって、または、タンブルブレンドもしくはドライブレンドによって、または押出成形機内で配合し、続いて冷却し、通常は顆粒もしくはチップに粉砕することによって、成分をポリマーと混合することができる。マスターバッチ技術を使用することもできる。
【0013】
基材の第1の表面に配置されたヒートシール可能なポリマー層は、容器、特にポリオレフィン容器、特にポリプロピレンまたはポリエチレン容器、特にポリプロピレン容器の表面にヒートシール結合を形成することができる。ヒートシール可能な層は、加熱されると、それを結合しようとする表面に接着するのに適した濡れが可能となるようにその粘度が十分に低くなるような十分な程度に軟化することができる。
ヒートシール可能なポリマー層のスチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーは、好ましくはポリスチレンブロック、ならびにブタジエン(従来通りには1,3-ブタジエン)および/またはイソプレンまたはそれらの水素化同等物に由来するゴムブロックからなる。
【0014】
スチレン含有率は、好ましくはコポリマーの5~50質量%、好ましくは8~30質量%、好ましくは10~約20質量%、および好ましくは10~約15質量%の範囲である。ゴムブロックは、コポリマーの質量の残部を構成する。スチレン含有率が大きすぎる場合、ポリマーは硬くなりすぎ、スチレン含有率が低すぎる場合、ポリマーはゴム状になりすぎる。
したがって、ゴムブロックは、ポリブタジエンもしくはポリイソプレン、またはそれらの組み合わせからなっていてもよい。そのようなコポリマーは、ゴムブロック(ポリブタジエンおよび/またはポリイソプレン)が一緒に連結したトリブロックの各末端にポリスチレンブロックを有するトリブロックコポリマーとして記載されてもよく、これらのコポリマーは一般にSBSまたはSISコポリマーと称される。
【0015】
SBSおよびSISのコポリマーの水素化同等物は、本発明において特別な有用性を有する。水素化されたブタジエンまたはイソプレン由来のブロックは、当業界において周知の従来の技法による選択的な水素化によって調製されてもよい。水素化は、例えば米国特許第3,494,942号、米国特許第3,634,594号、米国特許第3,670,054号または米国特許第3,700,633号に教示されるような先行技術で公知のプロセスのいずれかを使用して実行されてもよい。水素化は、共役ジエン二重結合の少なくとも約90%(好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%)が還元され、アレーン二重結合の0~10%が還元されるような条件下で実行することができる。水素化されたスチレンコポリマーは、好ましくは(i)スチレンブロックならびにエチレンおよびブチレン繰り返し単位からなるゴムブロックを含むトリブロックコポリマー(本明細書においてSEBSコポリマーと称される);ならびに(ii)スチレンブロックならびにエチレンおよびプロピレン繰り返し単位からなるゴムブロックを含むトリブロックコポリマー(本明細書においてSEPSコポリマーと称される)から選択される。エチレン/ブチレン(EB)ブロックは1,4-および1,2-ポリブタジエンに、エチレン/プロピレン(EP)ブロックは1,4-ポリイソプレンに由来する。そのようなコポリマーは、商品名Kraton(商標)Gで市販されている。SEBSコポリマーが最も好ましい。特に好ましい等級はKraton(商標)G1657Mである。
【0016】
スチレンコポリマーの重量平均分子量(Mw)は好ましくは50,000~400,000、好ましくは50,000~200,000である。スチレンブロックの重量平均分子量(Mw)は好ましくは5,000~50,000、好ましくは5,000~25,000である。分子量は、好ましくはポリスチレン(PS)標準を使用して従来のGPC技法によって適切に測定される。例えば、分子量の決定は、Hewlett-Packard 1050シリーズHPLCシステムで、2つのGPC Ultrastyragelカラム、103および104Å(5μm混合、300mm x 19mm、Waters Millipore Corporation, Milford, MA, USA)および移動相としてTHFを用いて行われてもよい。
【0017】
好ましくは、スチレンコポリマーの引張強度は、トルエン溶液から流延したフィルムについてASTM D412-16に従って測定して、少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも10MPa、好ましくは少なくとも15MPa、好ましくは少なくとも20MPaである。典型的には、引張強度は15~30MPaの範囲である。引張強度が低すぎると、ヒートシール可能な層の凝集強度が低くなりすぎ、層の凝集破壊のリスクが上がり、きれいな剥離ができなくなる場合がある。
好ましくは、スチレンコポリマーの溶液粘度は、10質量%のトルエン溶液で25℃でブルックフィールド粘度計を用いて測定して約250cPs以下、好ましくは約100cPs以下である。溶液粘度が高すぎると、コーティング配合物が高粘度すぎて基材に容易にコーティングすることができず、スチレンコポリマーは、コーティング配合物の溶媒ビヒクルに適切に溶解することができない。典型的には、スチレンコポリマーの溶液粘度は少なくとも5cPs、好ましくは少なくとも10cPsである。好ましくは、溶液粘度は5~250cPs、好ましくは10~100cPsの範囲である。
適切なスチレンコポリマーのガラス転移温度は、好ましくは-50~-80℃、好ましくは-60~-70℃の範囲である。適切なスチレンコポリマーの融点は好ましくは0℃を超え、好ましくは50℃未満である。
【0018】
ヒートシール可能なポリマー層は、好ましくはヒートシール可能なポリマー層の総質量に対して層の10~50質量%の量、好ましくは20~40質量%、好ましくは25~35質量%の量のスチレンコポリマーを含む。
ヒートシール可能な層はまたエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー樹脂を含み、これはスチレンコポリマーおよびポリエステル基材の間の結合を改善する。適切なEVAコポリマーはElvax(商標)樹脂としてDuPontから得ることができる。これらのコポリマー樹脂の酢酸ビニル(VA)含有率は、好ましくは5~50質量%、好ましくは15~50質量%、好ましくは18~40質量%の範囲である(これはASTM E168-16によって求められてもよい)。単一の等級のEVAコポリマーがヒートシール可能な層中に存在する場合には、これらのコポリマー樹脂の酢酸ビニル(VA)含有率は、優れた剥離強度およびきれいな剥離に加えて優れた透明度を得るためには好ましくは15~50質量%、好ましくは18~40質量%、好ましくは20~35質量%、好ましくは20~30質量%、好ましくは22~28質量%の範囲である。EVAコポリマーは、任意に少量の1種または複数の(好ましくは1種のみの)追加のコモノマー(すなわちエチレンおよび酢酸ビニルのコモノマー以外の)、好ましくはエチレン性不飽和コモノマー(特にアクリル酸およびメタクリル酸)を含んでもよく、好ましくは、追加のコモノマーの総量は約10質量%以下、好ましくは約5質量%以下、好ましくは約2.5質量%以下、好ましくは約1質量%以下である。
【0019】
EVAコポリマー樹脂の融点は、好ましくは40℃~95℃、好ましくは45℃~85℃、好ましくは45℃~75℃の範囲である。
EVAコポリマー樹脂のメルトインデックスは、好ましくは5~1000、好ましくは5~600、好ましくは5~200、好ましくは5~100g/10分の範囲である。単一の等級のEVAコポリマーがヒートシール可能な層中に存在する場合には、EVAコポリマーのメルトインデックスは、好ましくは5~200、好ましくは5~100g/10分の範囲である。
ヒートシール可能なポリマー層は、好ましくはヒートシール可能なポリマー層の総質量に対して層の20~70質量%、好ましくは20~40質量%、好ましくは25~35質量%の量のEVAコポリマーを含む。
【0020】
特に好ましい実施形態において、ヒートシール可能なポリマー層は、第1のEVAコポリマー(EVA-1)および第2のEVAコポリマー(EVA-2)のブレンドを含み、EVAコポリマーの総量は上記と同じである。第1のEVAコポリマー(EVA-1)は、好ましくは20~50質量%、好ましくは20~40質量%の範囲のVA含有率、および好ましくは2.5~100、好ましくは5~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する。第2のEVAコポリマー(EVA-2)は、好ましくは5~20質量%、好ましくは10~20質量%の範囲のVA含有率を有し、好ましくは100~1000、好ましくは150~600g/10分のメルトインデックスを示す。EVA-2/EVA-1の質量比は、好ましくは0/100を超え100/100まで、より好ましくは0/100を超え65/100まで、より好ましくは15/100~50/100、より好ましくは15/100~30/100の範囲である。
ヒートシール可能な層は、またスチレンコポリマーおよびポリエステル基材の間の接着結合を改善する粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂は、またスチレンコポリマーおよびEVA成分の間の相容性を改善し、それによってその間の相分離を妨げ、ヒートシール可能な層の凝集強度およびその光学的性質、特に透明度を改善する。
【0021】
一般に、本明細書において開示のスチレンコポリマーに適切な粘着付与樹脂は、ポリスチレンブロック相溶性の樹脂および水素化(中間)ブロック相溶性の樹脂、ならびにそれらの混合物を含む。ポリスチレンブロックと相溶性の樹脂は、クマロン-インデン樹脂、ポリインデン樹脂、ポリ(メチルインデン)樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルトルエン-アルファメチルスチレン樹脂、アルファメチルスチレン樹脂およびポリフェニレンエーテル、特にポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)の群から選択されてもよい。そのような樹脂は、例えば、商標「HERCURES」、「ENDEX」、「KRISTALEX」、「NEVCHEM」および「PICCOTEX」で市販されている。水素化(中間)ブロックと相溶性の樹脂は、相溶性のC5炭化水素樹脂、水素化C5炭化水素樹脂、スチレン化C5樹脂、C5/C9樹脂、スチレン化テルペン樹脂、完全水素化または部分的水素化C9炭化水素樹脂、ポリテルペン、ロジンおよびロジンエステル、ロジン誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。そのような樹脂は、例えば、商標「REGALITE」、「REGALREZ」、「ESCOREZ」および「ARKON」で市販されている。
【0022】
特に適切な粘着付与樹脂は、合成および天然ポリテルペン、炭化水素樹脂、ロジンおよびロジンエステル樹脂、ならびにそれらの組み合わせから選択される。粘着付与樹脂は、適切には20℃~160℃、好ましくは90℃~125℃の環球式軟化点を示す(好ましくはASTM E28-18に教示される手順に従って試験して)。粘着付与樹脂の数平均分子量は、好ましくは少なくとも200または500、好ましくは多くとも、5000、2000または1000である(好ましくは上記のGPC技法によって測定して)。
天然ポリテルペン粘着付与樹脂は、アルファ-ピネン、ベータ-ピネンおよびd-リモネンを含む天然で再生可能な原料に基づく。例としては以下を含む:
1) Piccolyte(登録商標)C樹脂(C85、C105、C115、C125、C135)、Piccolyte(登録商標)F樹脂(F105、F115)、Piccolyte(登録商標)A樹脂(A25、A115、A125、A135)、Piccolyte(登録商標)S樹脂(S25、S85、S115、S125、S135);すべてPinovaから入手可能である。
2) Sylvares(登録商標)TR樹脂(A25L、90、105、7115、7125);すべてArizona Chemicalから入手可能である。
【0023】
炭化水素粘着付与樹脂は、石油系原料、脂肪族(C5)、芳香族(C9)、DCPD(ジシクロペンタジエン)またはこれらの混合物のいずれかで作られる。例としては以下を含む:
1) Piccotac(商標)1020、1095、1100、1115、6095-E、8095;Picco(商標)5120、5140、6100、2215;Regalite(商標)S1100、7125;Regalite(商標)R1010、1100、9100、Regalrez(商標)1018、1094、3102、6108;すべてEastmanから入手可能である;
2) Quintone(登録商標)A100、B170、K100、M100、N295、U190、S100、D100、U185;すべて日本の日本ゼオンから入手可能である;
3) Escorez(商標)1102、1304、1315、2203、5300、5320、5340、5400、5415、5600、5615、5690;すべてExxonMobilから入手可能である;
4) Wingtack(登録商標)86、95、98;Norsolene(登録商標)W85、90、100、110、120、130、140;すべてCray Valleyから入手可能である。
【0024】
ロジンエステル粘着付与樹脂は、ロジン酸およびアルコールの間の反応によって製造される。ロジン酸は水素化または不均化によって変性されてもよい。典型的な市販品は、メチル、トリエチレングリコール、グリセリンおよびペンタエリトリトールエステルである。例としては以下を含む:
1) Foral(登録商標)85、105;3085;Pentalyn(登録商標)A、H、Pentalyn(登録商標)9085、9100;Staybelite(登録商標)Ester 3、5、10;すべてPinovaから入手可能である;
2) Sylvalite(商標)RE80HP、RE85GB、RE100XL、RE100L、105L、110L、RE25、85、98;すべてArizona Chemicalから入手可能である;
3) Foralyn(商標)90、110、5020F;Permalyn(商標)2085、5095、3100、5110、6110;すべてEastmanから入手可能である。
【0025】
ヒートシール可能なポリマー層は好ましくは、ヒートシール可能なポリマー層の総質量に対して、層の15~50質量%、好ましくは約15~40質量%、典型的には約30~40質量%の量の粘着付与樹脂を含む。
したがって、ヒートシール可能なポリマー層は、好ましくは以下の量の前述の成分を含む:
(i) 層の10~50質量%、好ましくは20~40質量%、好ましくは25~35質量%の量のスチレンコポリマー、
(ii) 層の20~70質量%、好ましくは20~40質量%、好ましくは25~35質量%の量のEVA樹脂、および
(iii) 層の15~50質量%、好ましくは約15~40質量%、典型的には約30~40質量%の量の粘着付与樹脂。
上記の量が、完成したヒートシール可能なコーティング層(すなわちヒートシール可能なコーティング層の乾燥質量)中の各成分の質量による量に関係することは認識されよう。
【0026】
ヒートシール可能な層はまた、好ましくはシーラントコーティングの業界において従来からあるような、フィルムの取り扱いを改善する滑り助剤またはブロッキング防止剤を含む。適切な滑り助剤はカルナウバ蝋、kemamideおよびシリカを含む。そのような成分は、比較的少量で、典型的には5.0質量%以下、典型的には2.0質量%以下存在する。したがって、好ましい実施形態において、前記スチレン線状ブロックコポリマー熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび粘着付与樹脂の総量は、ヒートシール可能なポリマーコーティング層の少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも92質量%、好ましくは少なくとも95質量%を構成する。
ヒートシール可能な層は、以下に論じられるように、ポリエステル基材の上にコーティング配合物をコーティングすることにより、基材に適切に配置される。ヒートシール可能な層の成分は、典型的にはコーティングビヒクル、典型的には有機溶媒、好ましくはトルエン中で分散または溶解される。コーティング配合物は、好ましくはコーティング配合物の70~90、好ましくは75~85質量%の量のコーティングビヒクルを含む。
複合フィルムの形成は当業界において周知の従来の技法によって達成されてもよい。好都合には、基材の形成は、以下に記載の手順に従って押出によって達成される。
【0027】
一般的に、プロセスは、約275~約300℃、好ましくは約290~295℃の範囲内の温度で溶融ポリマーの層を押し出すステップ、押出物を急冷するステップ、および急冷された押出物を少なくとも一方向に配向するステップを含む。基材は一軸配向されてもよいが、好ましくはフィルムの平面内の相互に垂直な二方向に延伸することによって二軸配向されて機械的および物理的性質の満足な組み合わせを達成する。配向は、配向フィルムの製造のための当業界において公知の任意のプロセス、例えばインフレーション法またはフラットフィルム法によって達成されてもよい。二軸配向は、フィルムの平面内で相互に垂直な二方向に延伸することによって果たされて機械的および物理的性質の満足な組み合わせが達成される。インフレーション法では、熱可塑性ポリエステルチューブを押出成形し、これを続いて急冷し、再加熱し、次いで、横配向を起こすために不活性ガスの圧力によって膨らませ、さらに縦配向を起こす速度で引き抜くことによって、同時二軸配向を達成することができる。適切な同時二軸配向プロセスは、欧州特許出願公開第2108673号および米国特許出願公開第2009/0117362号に開示され、そのプロセスの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0028】
好ましいフラットフィルム法では、スロットダイを通してフィルム形成ポリエステルを押出し、ポリエステルが確実に非晶質状態に急冷されるように、冷却したキャスティングドラム上で速やかに急冷される。次いで、配向は、急冷された押出物をポリエステルのガラス転移温度より高い温度で少なくとも一方向に延伸することによって達成される。急冷された平らな押出物をまず一方向、通常は縦方向、すなわちフィルム延伸機の前進方向に、次いで横方向に延伸することによって連続的な配向を達成することができる。押出物の前進方向の延伸は、1組の回転ロール上または2対のニップロールの間で都合よく行われ、次いで横方向の延伸がテンター装置で達成される。
【0029】
延伸は、一般に、配向フィルムの寸法が、延伸の方向または各方向において元の寸法の2~5倍、より好ましくは2.5~4.5倍となるように行われる。より好ましくは、配向フィルムの寸法が前進方向の延伸で元の寸法の3.0~3.3倍、および横方向の延伸では元の寸法の3.3~3.9倍となるように、延伸が行われる。一方向のみの配向が必要な場合、より大きな延伸比(例えば約8倍まで)が使用されてもよい。延伸は、従来通りにコポリエステル組成物のTgより高い、好ましくは少なくとも約5℃高い、好ましくはTgより少なくとも約15℃高い、好ましくは約Tg+5℃~約Tg+75℃、好ましくは約Tg+5℃~約Tg+30℃の範囲の温度で達成される。したがって、典型的には、延伸は、約5~約155℃、好ましくは約5~約110℃の範囲の温度で達成される。縦方向と横方向に同等に延伸する必要はないが、釣り合いのとれた特性を望むならば、そうすることが好ましい。
【0030】
ポリエステルの所望の結晶化を促すために、ポリエステルのガラス転移温度を超えるがその融点未満の温度で寸法支持しながら、ヒートセットすることによって、延伸フィルムを寸法的に安定化させることができ、またそれが好ましい。ヒートセットの間に、少量の寸法の緩和が「トーイン」として公知の手順によって横方向(TD)に実施されてもよい。トーインは、2~4%の程度の寸法の緩和を含むことができる。当業界で公知であるように、工程または縦方向(MD)における寸法の緩和もまた可能である。実際のヒートセットの温度および時間は、フィルムの組成およびその所望の最終の熱収縮によって変わるが、フィルムの引裂き抵抗などの強靭性を実質的に低下させるような選択を行うべきではない。これらの制約の範囲内で、好ましいフィルムは、フィルムの溶融温度より約80℃低い温度(すなわちTM-80℃)からTMより約10℃低い温度(すなわちTM-10℃)、好ましくは約TM-70℃~約TM-20℃の温度のヒートセットされる。したがって、ヒートセット温度は、適切には約130~約245℃、好ましくは約150~約245℃の範囲、好ましくは少なくとも180℃、好ましくは190~230℃の範囲にある。ヒートセットの後、フィルムは典型的には、ポリエステルの所望の結晶化度を引き起こすように高速で急冷される。
【0031】
好ましくは、インライン緩和段階の使用によってフィルムはさらに安定化される。代替として、緩和処理はオフラインで実施することができる。この追加のステップにおいて、フィルムは、MDおよびTD方向の張力を大幅に下げて、ヒートセット段階の温度より低い温度で加熱される。フィルムが受ける張力は、小さい張力であり、典型的にはフィルム幅の5kg/m未満、好ましくは3.5kg/m未満、好ましくは2.5kg/m未満、典型的には1.0~2.0kg/mの範囲にある。フィルム速度を制御する緩和工程では、フィルム速度の低下(したがって、歪みの緩和)は、典型的には0~2.5%、好ましくは0.5~2.0%の範囲にある。熱安定化ステップの間、フィルムの横寸法の増加はない。熱安定化ステップで用いられる温度は、最終フィルムに望まれる特性の組み合わせに応じて変わり得るが、より高い温度が、より良好な、すなわち、より少ない残留収縮性をもたらす。135~250℃の温度が一般に望ましく、好ましくは150~230℃、より好ましくは170~200℃である。加熱の継続時間は、用いられる温度に依存するが、典型的には10~40秒の範囲にあり、20~30秒の継続時間が好ましい。この熱安定化工程は、水平および垂直の配置構成、別個の工程ステップとしての「オフライン」、またはフィルム製造工程の継続としての「インライン」のいずれかを含む様々な方法によって実施することができる。こうして加工されたフィルムは、このようなヒートセット後の緩和なしに製造されたものより小さい熱収縮を示す。
【0032】
ポリエステルフィルムの固有粘度は、好ましくは少なくとも約0.70、好ましくは少なくとも約0.75、好ましくは少なくとも0.80、好ましくは約0.85以下、好ましくは約0.83以下である。
好ましくは、複合フィルムは、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%の透明度を示す。この実施形態において、層中の任意の充填剤は、典型的には少量のみ存在し、一般に、層の質量に対して2.5%を超えず、好ましくは2.0%を超えず、好ましくは1.1%を超えず、好ましくは0.6%を超えず、好ましくは0.3%を超えず、好ましくは充填剤はシリカであり、その結果、フィルムの巻取り性(すなわちフィルムをロールに巻き取るときブロッキングまたはスティッキングが無いこと)は改善され、光学的性質の受け入れがたい低下がない。光学的に透明なフィルムは、そのようなフィルムが消費者に新鮮で衛生的な印象を与えるので蓋用フィルムに特に有利である。
【0033】
ヒートシール可能な層の形成は基材上にコーティング配合物をコーティングすることにより達成される。コーティングは、典型的にはロールコーティング、ならびにグラビアロールコーティングおよびリバースロールコーティングを含む任意の適切なコーティング技法を使用して達成することができる。コーティングは、好ましくは「オフライン」で、すなわち基材の製造の間に用いられる任意の延伸および後続のヒートセットの後に行われる。代替として「インライン」技法が使用されてもよく、すなわち、用いられる任意の延伸作業の前に、その最中またはその間に、典型的には二軸延伸作業の前進方向および横方向の延伸の間にコーティングステップは行われる。(「延伸間」コーティング)。コーティング配合物は、好ましくは基材に塗布されて約3.5g/m2~約10g/m2の乾燥コート質量を与える。
基材上へのヒートシール可能な層の塗布前に、基材と、続いて塗布されるヒートシール可能なポリマーコーティング層との間の結合を改善するために、基材の露出した表面は、好ましくは表面修飾プライマー処理を用いてコーティングされる。好ましくはプライマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、EVAおよびエチレンアクリル酸(EAA)樹脂から、好ましくはPVDCおよびEVA樹脂、好ましくはPVDC樹脂から選択されるポリマー層である。
したがって、本明細書において開示の複合フィルムの基材層の第1の表面にプライマー層が、層の順序が基材層/プライマー層/ヒートシール可能なポリマーコーティング層となるように配置されることが好ましい。プライマー層が基材層と直接接触し、ヒートシール可能なポリマーコーティング層がプライマー層と直接接触していることが認識されよう。
【0034】
プライマー層は適切にはコーティング層である。プライマーコーティング層は、本明細書において記載のコーティング技法を使用してコートされてもよく、インラインでコートされても、オフラインでコートされてもよい。プライマー層は、好ましくは基材層の表面に塗布されて約0.05~約1.0g/m2、好ましくは約0.1g/m2~約0.5g/m2の乾燥コート質量を与える。プライマー層の最終厚さは、好ましくは1μm以下、好ましくは約0.5μm以下、好ましくは約0.3μm以下、好ましくは少なくとも0.05μm、典型的には約0.1μmである。
基材の厚さは、好ましくは約10~約100μm、好ましくは10~約75μm、特に約12~約50μmである。
ヒートシール可能な層の厚さは、複合フィルムの全体厚さの好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、好ましくは約12%~約35%である。典型的には、ヒートシール可能な層は、約25μmまで、より好ましくは約15μmまで、より好ましくは約10μmまで、より好ましくは約2~約10μm、より好ましくは約3~6μmの厚さを有する。
【0035】
複合フィルムは、好ましくは600~1500g/25.4mmの範囲、好ましくは少なくとも700、好ましくは少なくとも800、好ましくは少なくとも900、好ましくは少なくとも1000g/25.4mmの、好ましくは1500以下、好ましくは1200以下、好ましくは1125g/25.4mm以下の、ポリプロピレン基材(好ましくはポリプロピレントレー)に対する本明細書において規定されるようなヒートシール強度(または剥離強度)を示す。好ましくは、標準PPトレーに対するフィルムのヒートシール強度は、800~1500g/25.4mm、好ましくは800~1200g/25.4mm、好ましくは800~1125g/25.4mmの範囲にある。ヒートシール強度が高すぎると、複合フィルムは剥離中に破損または寸断することがある。ヒートシール強度が低すぎると、複合フィルムおよび基材の間が不十分な接着になる。
本発明の複合フィルムは、コンビニエンスフードまたは調理済み食品、例えば電子レンジまたは従来式のオーブンのいずれかで温められる、オーブン調理可能な食事を包装するために入れ物の蓋をシールまたは提供するのに有用である。入れ物は、熱成形されたトレーまたはボウルなどの容器であってもよく、上記のトレー材料から形成されていてもよい。しかしながら、複合フィルムは、ポリオレフィン、特にPPまたはPE、特にPPで作られているこのような入れ物の蓋をシールまたは提供するために特に有用である。
【0036】
第2の態様において、本発明は、食料品、特にオーブン調理可能な食事を収容できる入れ物、および本明細書に定義されているヒートシール可能な複合フィルムから形成される蓋を含むシール容器を提供する。複合フィルムの前記ヒートシール可能なポリマー層が入れ物と直接接触すること、および複合フィルムが剥離可能なヒートシール結合によって入れ物に接着することは認識されよう。入れ物は、好ましくはポリオレフィン、特にPPまたはPE、特にPPで作られている。シール容器は、当業者に周知の技法で製造される。包装される食品が入れ物に導入されると、従来技法および設備を使用する温度および/または圧力でヒートシール可能なフィルム蓋が固定される。
【0037】
第3の態様において、本発明は、食料品、特にオーブン調理可能な食事の包装における蓋としての、本明細書において記載の複合フィルムの使用であって、前記包装が、入れ物を更に含み、特に入れ物が、ポリオレフィン、特にPPまたはPE、特にPPから作られている、使用を提供する。第3の態様の使用が第2の態様のシール容器を形成するのに適していることが認識されよう。
第1の態様の記載および選好は、第2および第3の態様に同等に適用可能である。
【0038】
特性測定
以下の試験方法がポリマーフィルムを特性評価するのに使用されてもよい:
(i) フィルムの光学的性質は、ヘーズ(広角度散乱(>2.5~180°))および透明度(狭角度散乱(<2.5°))の観点で、フィルムの厚さを通して可視光線の拡散透過率を測定することにより評価される。拡散透過率は、標準試験方法ASTM D1003-13に従って、好ましくはBYK Haze-gard Plus機を使用して測定した、前記採取角度で散乱透過した可視光線のパーセンテージである。したがって、ヘーズは100 x TDIF/TT(式中、TTは透射光の総量であり、TDIFは、法線から2.5を超える角度で散乱した拡散透射光の量である)として計算される。透明度は、狭角度散乱、すなわち、法線から2.5°未満にあたる光のパーセンテージとして計算される。透明度は常温(20℃)で1週間熟成した後に測定された。
【0039】
(ii) ポリエステルおよびポリエステル基材の固有粘度(dL/gの単位で)を、ASTM D5225-98(2003)に従って溶液粘度法によってViscotek(商標)Y-501C Relative Viscometerで(例えば、Hitchcock, Hammons & Yau in American Laboratory(1994年8月)“The dual-capillary method for modern-day viscometry”を参照)、o-クロロフェノール中のポリエステルの0.5質量%溶液を25℃で使用し、Billmeyerの一点法を使用することによって測定して、固有粘度を計算する。
η=0.25ηred + 0.75(ln ηrel)/c
[式中、
η=固有粘度(dL/g)、
ηrel=相対粘度、
c=濃度(g/dL)、
ηred=還元粘度(dL/g)、これは(ηrel-1)/cと等しい(ηsp/cとしても表現される(ηspは比粘度である)]
【0040】
(iii) ガラス転移温度(Tg)および結晶の融点(Tm)は、示差走査熱量測定法(DSC)によってPerkinElmer HyperDSC 8500を使用して測定した。他に明示しない限り、下記標準試験法に従って、ASTM E1356-98に記載の方法を基準にして測定を行った。走査の間、乾燥窒素の雰囲気下に試料を維持した。20ml/分の流速およびAlパンを使用した。20℃から350℃まで試料(5mg)を20℃/分で加熱した。
ASTM E1356-98に記載のように、DSC走査で観察されたガラス転移の補外開始温度としてTgの値を求めた(熱流(W/g)対温度(℃))。Tmの値を転移のピーク吸熱としてDSC走査から求めた。
(iv)上記のDSC分析から、次式に従って計算した結晶化度(Xc)として結晶化度を測定した。
c = ΔHm/ΔHm°
[式中、
ΔHm=溶融吸熱の積分から計算した溶融の実測エンタルピー、
ΔHm°=結晶化度100%の対応するポリ(アルキレン-カルボキシレート)ホモポリマーの融解の理論エンタルピー]
したがって、PET(またはPETベースの)ポリエステルについて、ΔHm°は、100%結晶性のPETポリマーの融解の理論エンタルピー(140J/g)であり、PEN(またはPENベースの)のポリエステルに関しては、ΔHm°は、文献(B. Wunderlich,Macromolecular Physics,Academic Press,New York,(1976))において定義されるような100%結晶性のPENポリマーの融解の理論エンタルピー(103J/g)である。
(v)鉱物を充填した白色ポリプロピレン(30質量%の鉱物、0.36mmの厚さ)へのコーティングのヒートシール強度(また本明細書において剥離強度とも称される)は、以下のように評価された。コートフィルムを、Sentinelヒートシーラー(Model 12、Packaging Industries Group Inc.による)を使用してPPにシールした。他に明示しない限り、ヒートシール条件は次のとおりであった:350°F(上把持具)、100°F(底把持具)/0.1秒/80psi。上把持具が何か別の温度であったら、底把持具はなお、およそ100°Fであった。シール試料を印づけし、25mm幅の細片に切断し、ヒートシール強度を、INSTRON(登録商標)model 4464試験機で剥離強度試験によって求めた。把持具は50mm離してセットした。上側把持具は、シール試料のフィルム片を保持し、250mm/分の速度で移動させたが、下側把持具はシール試料のPP片を保持し、固定させた。フィルムを2つの片に分離するために必要とされる平均力が記録された。3つのシール試料片を各コート試料に対して測定した。
【0041】
(vi) メルトインデックスはASTM D1238-13に従って求められる(190℃の温度および2.16kgの試験荷重で)。
(vii) EVA樹脂の融点は、ASTM D3418-15に従って10℃/分の加熱速度で示差走査熱量測定法によって求められる。
【0042】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証される。実施例が説明の目的のみのためにあり、上記の本発明を限定するようには意図されないことが認識されよう。詳細の変更は本発明の範囲から逸脱することなくなされてもよい。
【実施例
【0043】
表1に示した材料を、複合フィルムを調製するのに使用した:
【表1】
【0044】
(比較例1~4;実施例5~10)
ポリエチレンテレフタラート(PET)組成物を溶融押出し、水冷式急冷回転ドラム上に流延して非晶質流延押出物を与えた。流延押出物は、約50~80℃の範囲の温度に加熱し、次いで、約3:1の前進方向の延伸比で縦に延伸した。100℃の温度でテンターオーブンへフィルムを通し、フィルムを元の寸法のおよそ3倍に横方向に延伸した。二軸延伸フィルムを、従来式手段の3段階晶析装置によって、210℃~230℃の温度でヒートセットした。PETフィルムの厚さは23μmであった。
PETフィルムの1つの表面に0.5g/m2のコート質量でオフラインで、PVDCプライマーコーティングをコートした。
【0045】
表2に示される組成物を有するヒートシール可能なコーティング配合物を、上記のように調製したPET基材の下塗り表面上へコーティングすることにより、一連の複合フィルムを調製した。コーティング配合物の成分の量は、完成したヒートシール可能なコーティング層において各成分の質量による量である(すなわちヒートシール可能なコーティング層の乾燥質量)。トルエン中15質量%で調製した実施例1、2および3を別にすれば、表2のコーティング配合物をトルエン中20質量%で調製した。6.0g/m2のコート質量でグラビアコーティングによってオフラインでコーティングを行った。
複合フィルムをポリプロピレン基材にヒートシール(350°F;保持時間0.1秒;圧力80psi)し、複合フィルムの剥離強度を本明細書において記載のように試験した。表2に結果を要約する。
トレーから手で剥離すると、本発明によるフィルムは容易できれいな剥離を示した。対照的に、比較例1、2および3のフィルムは、剥離の後のポリプロピレン基材にコーティング残留物が残った。
【0046】
【表2】
【0047】
一連の温度にわたって比較例4(スチレンブロックコポリマーはない)および実施例6(スチレンブロックコポリマー)の複合フィルムの剥離強度を試験し、表3に結果を示す。先に記載したのと、ヒートシールプロセスおよび試験方法は同じであった。発明の実施例は試験した各温度で優れた剥離強度を示すことがわかった。
【0048】
【表3】
【0049】
(比較例11および実施例12~16)
さらなる一連の複合フィルムを、剥離強度および透明度に対するEVAコポリマーの酢酸ビニル含有率の効果を調査するために調製した。実施例5~10に記載の手順を使用して、フィルムを調製した。以下のようにコーティング組成物を構成した:
EVA樹脂: 35.0質量%
スチレンブロックコポリマー:Kraton(登録商標)G1657ms 28.0質量%
粘着付与剤:Piccolyte(登録商標)M115 35.5質量%
その他:Syloid(登録商標)620 1.5質量%
以下の表4に示されるようにEVA樹脂を変化させた。トルエン中20質量%でコーティング配合物を調製し、6.0g/m2のコート質量でグラビアコーティングによって上記のPET基材のPVDC下塗り表面の上にオフラインでコートした。本明細書において記載のように測定した各複合フィルムの透明度および剥離強度は表4にある。
【0050】
【表4】

表4の結果は、一般にEVA樹脂のVA含有率が増えるにつれて透明度が低下することを実証する。結果はまた、VA含有率が0に低下すると接着性能が不十分になることを実証する。
【0051】
(実施例17~22)
さらなる一連の複合フィルムを、異なる酢酸ビニル含有率を有するEVA樹脂のブレンドの、剥離強度および透明度への効果を調査するために調製した。実施例17~22は実施例14に基づき、Elvax(登録商標)4260(28質量% VA)の一部をElvax(登録商標)410(18質量% VA)と置き換えた。コーティング層およびベース層の組成および複合フィルムの調製法は、他の点では実施例14と同一であった。以下の表5に示すようにEVA樹脂を変化させ、また透明度および剥離強度性能を示した。
【0052】
【表5】
【0053】
表5の結果は、比較的低いVA含有率を有するEVA樹脂が、比較的高いVA含有率を有するEVA樹脂の相分離を防止または低減するために相溶化剤として役立つことができ、結果として得られたコーティングの透明度が驚くほど改善され、しかも剥離強度への悪影響がないことを実証する。
【0054】
(比較例12および実施例6)
さらなる一連の複合フィルムを、剥離強度に対するコーティング層中のEVAコポリマーの量の効果を調査するために調製した。比較例12は実施例6に基づくが、ただし、以下の表6に示すようにElvax(登録商標)4260の量を変化させ、これもまた剥離強度性能を示す。コーティング層およびベース層の組成および複合フィルムの調製法は、実施例6と、他の点では同一であった。
【0055】
【表6】
【0056】
表6の結果は、コーティング層の総質量に対してEVAの量が比較的低くなると接着性能が不十分になることを実証する。トレーから手で剥離したら、本発明によるフィルムは容易できれいな剥離を示した。対照的に、比較例12のフィルムは、剥離の後のポリプロピレン基材に大量のコーティング残留物が残った。
【国際調査報告】