(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ヘテロサイクリックアミン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 417/14 20060101AFI20230405BHJP
A61K 31/5377 20060101ALN20230405BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
C07D417/14
A61K31/5377
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551582
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2021002440
(87)【国際公開番号】W WO2021172922
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0023899
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0025655
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOONG PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】35-14,Jeyakgongdan 4-gil,Hyangnam-eup,Hwaseong-si,Gyeonggi-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォルヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,キンリ
(72)【発明者】
【氏名】オム,ドッキ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン,ヘジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュンソク
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB09
4C063CC62
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA02
4C086AA04
4C086BC82
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ヘテロサイクリックアミン誘導体の製造方法に関し、本発明に係る製造方法は、不純物含有量が低減されたヘテロサイクリックアミン誘導体を高い収率で製造することができるという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)下記化学式1-1で表される化合物と下記化学式1-2で表される化合物をパラジウム触媒および塩基の存在下で反応させて、下記化学式1-3で表される化合物を製造する段階と、
2)下記化学式1-3で表される化合物を酸存在下で反応させて、下記化学式1-4で表される化合物を製造する段階と、
3)下記化学式1-4で表される化合物と下記化学式1-5で表される化合物を塩基の存在下で反応させて、下記化学式1で表される化合物を製造する段階とを含む、下記化学式1で表される化合物の製造方法:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項2】
前記段階1)で、前記化学式1-1で表される化合物および前記化学式1-2で表される化合物は1:0.1~1:2のモル比で使用される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記段階1)で、前記パラジウム触媒は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[トリス(2-メチルフェニル)ホスフィン]パラジウムおよびパラジウム(II)アセテートで構成される群より選択される1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記段階1)で、前記塩基は、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムtert-ブトキシドおよびカリウムtert-ブトキシドで構成される群より選択される1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記段階1)の反応は、80℃~150℃の温度で3時間~15時間行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記段階2)で、前記酸は塩酸である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記段階2)で、前記反応生成物を結晶化する段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記結晶化段階は、水による1次結晶化およびメタノールによる2次結晶化で行われる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記段階3)で、前記化学式1-4で表される化合物および前記化学式1-5で表される化合物を1:0.5~1:2.0のモル比で使用される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記段階3)で、前記塩基は、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメチレートおよび酪酸カリウムで構成される群より選択される1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記段階3)で、前記化学式1-5で表される化合物は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンと混合した状態で投入される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記段階3)の反応は-10℃~10℃の温度で行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記段階3)で、前記反応生成物を酢酸エチルを用いて抽出する段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記抽出段階はpH6.5~7.5で行われる、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記段階3)は、前記反応生成物をテトラヒドロフランに溶解する段階と、製造された溶液にリン酸含有溶液を混合する段階と、製造された混合物をろ過後、ろ過物を減圧濃縮する段階とをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記リン酸含有溶液は、前記化学式1-4で表される化合物1モルに対して0.05~0.5モルのリン酸がテトラヒドロフランに溶解したものである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記段階3)は、前記反応生成物を酢酸エチルによって結晶化する段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年2月26日付の韓国特許出願第10-2020-0023899号および2021年2月25日付の韓国特許出願第10-2021-0025655号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ヘテロサイクリックアミン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ITK(Interleukin-2 Tyrosine Kinase)とBTK(Bruton’s Tyrosince Kinase)は、Tec(tyrosine kinase expressed in hepatocellular carcinoma)、RLK(Resting Lymphocyte Kinase)およびBMX(Bone-Marrow tyrosine kinase gene on chromosome X)と共にTEC系の非受容体チロシンキナーゼの一種で、多様な免疫反応に作用する。
【0004】
ITKは、T細胞だけでなく、NK細胞およびマスト(mast)細胞で発現し、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13およびIL-17などの重要なサイトカインの生産およびT-細胞の増殖に重要な役割を果たす(Schaeffer et al.Nat.Immune2001,2,1183;Fowell et al.Immunity,1999,11,399)。T細胞は、TCRシグナル伝達によって活性化され、活性化されたT細胞は、炎症性サイトカインの生成、B細胞およびマクロファージを活性化させてRAのような自己免疫疾患を誘発する(Sahu N.et al.Curr Top Med Chem.2009,9,690)。従来、T細胞がTh1細胞で活性化されてRA疾患が誘発されることが知られていたが、最近、Th1細胞だけでなく、Th17/TregがRAの病因として作用されることが報告された(J Leipe J. et al.Arthritis Rheum.2010,62,2876)。また、ITKは、既存の喘息などの免疫治療薬物のターゲットとして開発された事例があるが、RA治療剤として開発された事例はない(Lo H.Y Expert Opin Ther Pat.2010,20,459)。しかし、最近、ITK-/-マウスによってTh17とTreg細胞の発生を調節することが報告されているため、RA治療のターゲットとして十分な可能性を有している(Gomez-Rodriguez J.et al.J.Exp.Med.2014,211,529)。
【0005】
ITK阻害剤PRN694を用いた研究で、RA疾患の代表的な炎症性サイトカインであるTNF-αが減少する研究などが報告されているため、ITK阻害を通じてTh17の発現を調節してRA治療剤としての開発可能性を確認することができた(Zhong Y.ey al.THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY 2015,290,5960)。
【0006】
BTKは、初期B-細胞の発達だけでなく、成熟したB-細胞の活性化、シグナル伝達および生存の調節剤として機能する。前記B-細胞は、抗原提示細胞(antigen-presenting cell)の表面にある抗原を認識するB細胞受容体(B cell receptor;BCR)により信号が伝達され、成熟した抗体生成細胞として活性化される。しかし、BCRによる異常なシグナル伝達はB-細胞の異常増殖および病理学的自己抗体の形成を引き起こし、これにより、癌、自己免疫および/または炎症性疾患を誘導することができる。したがって、B-細胞の異常増殖において、BTKが欠乏する場合、BCRによるシグナル伝達が遮断され得る。これにより、BTKの阻害はB-細胞媒介疾病過程を遮断することができるため、BTK阻害剤の使用はB-細胞媒介疾病の治療のための有用な接近であり得る。
【0007】
また、BTKは、B-細胞以外にも、疾病と関連する他の細胞によっても発現することができる。一例として、BTKは、骨髄細胞でFc-ガンマシグナル伝達の重要な構成成分で、肥満細胞(mast cell)により発現する。具体的には、BTK-欠乏骨髄誘導される肥満細胞は、損傷を受けた抗原で誘導される脱顆粒を起こし、BTK活性の阻害はアレルギーおよび喘息などの病理学的な肥満細胞反応を治療するのに有用であることが知られている(Iwaki et al.J.Biol.Chem.2005 280:40261)。また、BTK活性がないXLA患者の単核球は刺激に続くTNFαの生成が減り、BTK阻害剤によりTNFα媒介炎症を抑制できることが知られている(Horwoodet al.J.Exp.Med.197:1603、2003参照)。
【0008】
現在、BTKおよびITKを二重阻害する物質として開発された事例はないが、BTK阻害剤として、WO2008/039218においては、4-アミノピラゾロ[3,4-d]ピリミジニルピペリジン誘導体が開示されており、WO2015/061247においては、ピリジン、ピリミジン、ピラジンおよびピリタジン化合物などのヘテロ化合物が開示されており、WO2014/055934においては、ピリミジニルフェニルアクリルアミド誘導体が開示されている。ITK阻害剤として、WO2005/066335においてはアミノベンズイミダゾール、WO2005/056785においてはピリドン、WO2002/050071においてはアミノチアゾール誘導体が開示されており、最近、WO2014/036016においてはベンズイミダゾール誘導体が開示されている。
【0009】
そこで、本発明者らは、現在まで報告されたBTK、ITK阻害剤とは異なる化学構造を有するヘテロサイクリックアミン誘導体が優れたBTKおよびITK二重活性阻害効果を示すことができることを確認した。したがって、新規なヘテロサイクリックアミン誘導体を製造できる製造方法を鋭意研究した結果、後述する製造方法を使用する場合、商業的に大量生産が可能であり、さらには全体的に収率が向上し、かつ不純物が低減する製造方法を確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ヘテロサイクリックアミン誘導体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、下記の反応式1のような製造方法を提供し、より具体的には、以下の段階を含む製造方法を提供する:
1)下記化学式1-1で表される化合物と下記化学式1-2で表される化合物をパラジウム触媒および塩基の存在下で反応させて、下記化学式1-3で表される化合物を製造する段階;
2)下記化学式1-3で表される化合物を酸存在下で反応させて、下記化学式1-4で表される化合物を製造する段階;および
3)下記化学式1-4で表される化合物と下記化学式1-5で表される化合物を塩基の存在下で反応させて、下記化学式1で表される化合物を製造する段階である。
【化1】
【0012】
この時、前記化学式1で表される化合物は、キラリティー(Chirality)による以下の3種の化合物を全て包括する概念として理解されるべきである。
(1)
(S)-1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン
【化2】
(2)
(R)-1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン
【化3】
(3)
1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン
【化4】
以下、各段階別に本発明を詳しく説明する。
【0013】
(段階1)
前記段階1は、前記化学式1-1で表される化合物と前記化学式1-2で表される化合物を反応させて、前記化学式1-3で表される化合物を製造する段階であって、前記反応はアミン置換反応でパラジウム触媒および塩基の存在下で行われる。
【0014】
この時、前記化学式1-1で表される化合物および前記化学式1-2で表される化合物は1:0.1~1:2のモル比で使用することができる。具体的には、前記化学式1-1で表される化合物と前記化学式1-2で表される化合物は1:0.5~1:1.7、1:0.7~1:1.5、または1:0.9~1:1.5のモル比で使用することができる。
【0015】
また、前記パラジウム触媒は、化合物中のパラジウム(Pd)の原子価(valency)が0であるパラジウム(0)触媒、または原子価(valency)が+2であるパラジウム(II)触媒であり得る。例えば、前記パラジウム触媒としては、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[トリス(2-メチルフェニル)ホスフィン]パラジウムおよびパラジウム(II)アセテートで構成される群より選択される1種以上を使用することができる。
【0016】
また、前記段階1の反応で使用される塩基は、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムtert-ブトキシドおよびカリウムtert-ブトキシドで構成される群より選択される1種以上であり得る。その中で、反応速度および収率の側面から炭酸セシウムを使用することが好ましい。
【0017】
また、前記反応は、前記パラジウム触媒および前記塩基と共にホスフィン系化合物の存在下で行うことができる。前記ホスフィン系化合物としては、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-3,6-ジメトキシ-2,4’6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニルおよびジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニルで構成される群より選択される1種以上を使用することができる。
【0018】
そして、前記反応溶媒としては、アミン置換反応に対して不活性を示す溶媒を使用することができる。例えば、トルエン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ブチルアルコール、またはジメチルアセトアミド(DMAc)などの溶媒を使用することができるが、反応速度および収率の側面からトルエンおよびジメチルアセトアミド(DMAc)が好ましい。
【0019】
この時、前記溶媒は、前記化学式1-1で表される化合物の重量に対して10倍~30倍の体積量(mL/g)、より具体的には、15倍~25倍の体積量(mL/g)が用いられる。
【0020】
また、前記反応は、80~150℃の温度で3時間~15時間行うことができる。上述した範囲より低い温度条件および/または短い反応時間の間反応を行う場合、反応が十分に行われず、製造収率が低くなる。また、上述した範囲より高い温度条件および/または長い反応時間の間反応を行っても製造収率が実質的に増加せず、工程費用の側面から好ましくない。より具体的には、前記反応は90~130℃の温度で4時間~12時間、好ましくは4時間~10時間、より好ましくは6時間~10時間行うことができる。
【0021】
また、前記反応は、上述したパラジウム触媒、塩基およびホスフィン系化合物の組み合わせを使用する場合、マイクロ波反応装置を使用せず、一般的に知られている反応装置で行われる。したがって、前記化学式1で表される化合物を大量生産するための工程として、前記段階1)を適用することができる。
【0022】
一方、前記反応が終結した後、製造された前記化学式1-3で表される化合物を精製または分離する工程なしに、段階1と後述する段階2までの工程が同じ反応容器内でイン-サイチュ(In-situ)で行われる。このように、前記段階1で化合物の精製および分離工程を必要としないので、前記段階1を含む前記化学式1で表される化合物の製造方法は、化合物の産業的に大量生産の側面において有利である。
【0023】
(段階2)
前記段階2は、前記化学式1-3で表される化合物を酸存在下で反応させて、前記化学式1-4で表される化合物を製造する段階であって、酸存在下で前記化学式1-3で表される化合物のピペリジン環に置換されている保護基である、tert-ブチルオキシカルボニル基を除去させる段階である。
【0024】
前記段階2)の反応で使用される酸としては、塩酸、酢酸、トリクロロ酢酸、またはトリフルオロ酢酸などを使用することができる。その中で収率およびコストを考慮すると、塩酸を使用することが好ましい。
【0025】
前記反応の溶媒としては酢酸エチル、メチルアルコール、ジオキサンまたはトルエンなどの溶媒を使用することができる。
【0026】
また、前記反応は、室温(room temperature)で30分~20時間、好ましくは30分~4時間行うことができる。保護基であるtert-ブチルオキシカルボニル基の除去反応は、追加的な熱処理なく容易に起こる反応に相当して室温で行うことができる。ただし、反応時間が30分未満である場合反応が十分に行われず、反応時間が20時間を超える場合には製造収率が実質的に増加しないので、上述した反応時間が好ましい。
【0027】
一方、前記反応が終結した後、必要に応じて、前記化学式1-4で表される化合物を精製するために、前記反応生成物を結晶化する段階をさらに含むことができる。前記結晶化段階では、前記反応生成物に結晶化溶媒を使用して結晶化された前記化学式1-4で表される化合物を製造する。つまり、段階2)は前記化学式1-3で表される化合物を酸存在下で反応させた後、反応生成物を決定化して前記化学式1-4で表される化合物を製造する段階で行われる。
【0028】
具体的には、前記結晶化段階は、水による1次結晶化およびメタノールによる2次結晶化で行われる。このように、前記段階2)の反応終結後に生成された反応生成物を水およびメタノールによって順次結晶化する場合、反応後に残っている副産物であるパラジウム触媒、リガンド、アミノチアゾール残留物などを効果的に除去することができる。したがって、酢酸エチルなどの溶媒を使用してスラリー形態で精製する工程に比べて、高純度の化合物を高い収率で得ることができる。
【0029】
前記水による1次結晶化工程は、前記反応生成物に水を投入して約0~5℃の温度で10分~2時間攪拌して行われる。また、前記結晶化は水酸化ナトリウムなどの塩基の存在下で、反応物のpHを11以上、または12以上に維持しながら行うことが好ましい。前記条件下で結晶が生成されると、反応終了後、反応液を減圧ろ過して結晶を得ることができる。
【0030】
この時、前記水は、前記化学式1-1で表される化合物の重量に対して5倍~30倍の体積量(mL/g)、より具体的には、5倍~25倍の体積量(mL/g)が用いられる。
【0031】
次に、得られた結晶を乾燥した後、メタノールによる2次結晶化工程が行われる。前記メタノールによる2次結晶化工程は、得られた結晶にメタノールを投入して約50~80℃の温度で10分~2時間攪拌して行われる。
【0032】
この時、前記メタノールは、前記化学式1-1で表される化合物の重量に対して5倍~40倍の体積量(mL/g)、より具体的には、10倍~35倍の体積量(mL/g)が用いられる。
【0033】
(段階3)
前記段階3は、前記化学式1-4で表される化合物と前記化学式1-5で表される化合物を反応させて、前記化学式1で表される化合物を製造する段階である。前記反応は、アミド化反応で塩基の存在下で行うことが好ましい。
【0034】
この時、前記化学式1-4で表される化合物および前記化学式1-5で表される化合物は1:0.5~1:2.0のモル比で使用することができる。具体的には、前記化学式1-4で表される化合物と前記化学式1-5で表される化合物は1:0.5~1:1.5、1:0.7~1:1.3、または1:0.9~1:1.1のモル比で使用することができる。
【0035】
前記段階3の反応で使用される塩基としては、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメチレートおよび酪酸カリウムで構成される群より選択される1種以上を使用することができる。その中で反応完結および副産物生成の側面から、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、または炭酸水素カリウムを使用することが好ましい。
【0036】
このような反応溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)および水の混合溶媒を使用することができる。この時、前記テトラヒドロフランは、前記化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍~40倍の体積量(mL/g)が用いられ、前記水は、前記化学式1-4で表される化合物の重量に対して2倍~10倍の体積量(mL/g)が用いられる。
【0037】
一方、前記化学式1-5で表される化合物は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンと混合した状態で投入される。前記化学式1-5で表される化合物であるアクリロイルクロリドは化合物中に残留する少量の塩酸が存在する。したがって、前記塩酸が反応に参加して副産物として化学式1で表される化合物の二重結合にHClが添加された化合物およびアクリルアミドの二重結合にHClが添加された化合物などの不純物(以下、不純物C(ImpC))を生成させ、最終化合物の純度を低下させるという問題があった。しかし、前記化学式1-5で表される化合物を前記N,N-ジイソプロピルエチルアミン(N,N-Diisopropylethylamine;DIPEA)と共にテトラヒドロフランなどの溶媒に溶解した溶液状態で使用する場合、N,N-ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンによって前記化学式1-5で表される化合物中に残留する少量の塩酸を予め除去することができるので、前記不純物Cが生成されない。
【0038】
この時、前記化学式1-5で表される化合物とN,N-ジイソプロピルエチルアミンが混合された溶液内に、前記N,N-ジイソプロピルエチルアミンは前記化学式1-5で表される化合物1モルに対して0.01~0.2モルで含まれる。上述した範囲で、前記化学式1-5で表される化合物中の塩酸が効果的に除去される。
【0039】
また、前記反応は-10℃~10℃の温度、好ましくは0℃以下の温度、より好ましくは-10℃以上0℃未満の温度で行うことができる。前記反応で化学式1で表される化合物の二量体(以下、不純物B(ImpB))を製造することができるが、低温で反応進行時、このような不純物Bが生成されることを最小化することができる。具体的には、-10~0℃の反応温度、より具体的には、-8~-3℃の反応温度が不純物の低減および製造収率の側面から好ましい。したがって、前記反応中の反応温度の上昇を抑制するために使用される反応物および有機溶媒などの反応試薬は全て0℃以下の温度に冷却した後に使用することが好ましい。
【0040】
一方、前記反応が終了した後、必要に応じて反応生成物を抽出、減圧濃縮による精製および結晶化する段階のうちの少なくとも一つを含み、前記化学式1で表される化合物を分離および精製することができる。高純度の化合物を製造するためには、前記反応生成物を抽出、精製および結晶化する段階全てを順次行うことが好ましい。
【0041】
具体的には、前記段階3の反応が終了した後、前記反応生成物を酢酸エチルを使用して抽出する段階をさらに含むことができる。具体的には、前記反応生成物を酢酸エチルと水を使用して抽出することができる。つまり、前記化学式1で表される化合物は、反応終結後に酢酸エチルおよび水を使用して抽出されたものであり得る。このように抽出する場合、メチレンクロライド/水の混合溶媒を使用して抽出する場合に比べて、高速液体クロマトグラフィー(high-performance liquid chromatography;HPLC)で分離される相対保持時間(relative retention time)が1.0未満である不純物を水層で効果的に除去することができる。
【0042】
そして、前記酢酸エチルによる抽出段階はpH6.5~7.5で行うことができる。前記pHが6.5より低い場合収率が低下する恐れがあり、pHが7.5より高い場合不純物の除去が難しくなる。より具体的には、前記酢酸エチルによる抽出工程はpH7.0~7.5の範囲で行うことができる。
【0043】
また、前記段階3は、前記反応生成物をテトラヒドロフランに溶解する段階と、製造された溶液にリン酸含有溶液を混合する段階と、製造された混合物をろ過後、ろ過物を減圧濃縮する精製段階とをさらに含むことができる。このような減圧濃縮段階は、前記酢酸エチルによる抽出工程後に行うことが好ましい。
【0044】
言い換えると、前記精製段階は、前記酢酸エチルによって抽出された生成物をテトラヒドロフランに溶解して溶液を製造する段階と、前記溶液にリン酸含有溶液を混合して、リン酸塩が生成された混合物を製造する段階と、前記リン酸塩が生成された混合物をろ過後、ろ過物を減圧濃縮する段階とからなる。
【0045】
前記リン酸含有溶液はテトラヒドロフラン溶媒にリン酸が溶解しているもので、この時、前記リン酸は、前記化学式1-4で表される化合物1モルに対して0.05~0.5モル溶解している。上述した範囲のリン酸が含まれているリン酸含有溶液を生成物に投入する場合、反応中の生成される化学式1で表される化合物と化学式1-4で表される化合物が結合した化合物(以下、不純物A(ImpA))がリン酸陰イオン(PO4
3-)と反応してリン酸塩を生成させることになるが、生成されたリン酸塩はろ過して容易に除去することができるので、最終的に製造される化学式1で表される化合物中の不純物Aの含有量が低くなる。
【0046】
また、前記段階3は、前記反応生成物を酢酸エチルによって結晶化する段階をさらに含むことができる。このような結晶化段階は、前記精製工程後に行うことが好ましい。
【0047】
言い換えると、前記結晶化段階は、前記精製工程後、減圧濃縮された生成物に酢酸エチルを投入して約20~40℃の温度で30分~4時間攪拌して行われる。前記条件下で結晶が生成されると、反応終了後に反応液を減圧乾燥して、最終生成物である化学式1-1で表される化合物を得ることができる。
【0048】
つまり、前記段階3の反応生成物を抽出、精製および結晶化する段階全てを順次行い、前記化学式1で表される化合物を製造する場合、前記段階3は、以下の段階で行うことができる:
前記化学式1-4で表される化合物と下記化学式1-5で表される化合物を塩基の存在下で反応させる段階;
前記反応生成物を酢酸エチルを用いて抽出する段階;
前記酢酸エチルによって抽出された生成物をテトラヒドロフランに溶解して溶液を製造する段階、前記溶液にリン酸含有溶液を混合してリン酸塩が生成された混合物を製造する段階、および前記リン酸塩が生成された混合物をろ過した後、ろ過物を減圧濃縮する段階;および
前記減圧濃縮物を酢酸エチルによって結晶化する段階である。
【0049】
このように、反応後に追加的な抽出、精製および結晶化する段階を経る場合、RRTが1.0未満である不純物(RRT<1.0)、不純物A(ImpA)、不純物B(ImpB)および不純物C(ImpC)の含有量が顕著に低い高純度の化学式1で表される化合物を製造することができ、これは後述する実施例と参照例を比較して確認することができる。
【発明の効果】
【0050】
上述のように、本発明に係る製造方法は、不純物含有量が低減されたヘテロサイクリックアミン誘導体を高い収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、下記の実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。また、当量(eq)は、各段階で行われる反応における出発物質に対するモール数を意味すると理解され得る。
【0052】
製造例:化学式1-1で表される化合物((S)-tert-ブチル3-((6-クロロ-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート)の製造
【化5】
(段階a)
2,6-ジクロロイソニコチン酸(10.0g、1.0eq)をジメチルホルムアミド(100.0mL)に溶解した後、1,1-カルボニルジイミダゾール(1.0g、1.2eq)を加えた。窒素ガス下で室温(25~30℃)で1時間攪拌した後、モルホリン(5.4mL、1.2eq)を加え、2時間同じ温度で攪拌して反応を終了した。酢酸エチル(200.0mL)と水(200.0mL)を加えて抽出し、水層を酢酸エチル(200.0mL)を用いて3回再抽出した。酢酸エチル層は無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製して化学式1-aで表される化合物である、(2,6-ジクロロピリジン-4-イル)(モルホリノ)メタノン(13.0g、93.0%)を得た。
1H-NMR(500MHz、CDCl
3):7.27(s、2H)、3.77(m、4H)、3.65(m、2H)、3.37(m、2H)
【0053】
(段階b)
段階aで得られた化学式1-aで表される化合物(10.0g、1.0eq)をジクロロメタン(100.0mL)に溶解した後、窒素ガス下で0~10℃に冷却した。そこに、1Mボラン-テトロヒドロフラン(115.0mL、3.0eq)をゆっくり滴下した後、室温で12時間攪拌して反応を終了した。反応液を0~10℃に冷却した後、6N-塩酸水溶液(256.0mL、20.0eq)をゆっくり滴下した後、同じ温度で1時間攪拌した。10N-水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9~pH12に調節した後、ジクロロメタンで2回抽出した。ジクロロメタン層は分離して無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製して化学式1-bで表される化合物である、4-((2,6-ジクロロピリジン-4-イル)メチル)モルホリン(8.1g、収率90.0%)を得た。
1H-NMR(500MHz、CDCl3):7.27(s、2H)、3.72(m、4H)、3.46(s、2H)、2.45(m、4H)
【0054】
(段階c)
段階bで得られた化学式1-bで表される化合物(1.0g、1.0eq)を1,4-ジオキサン(10.0mL)に溶解した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(465.8mg、0.2eq)およびキサントホス(1.5g、0.4eq)を投入した。そこに、化学式1-cで表される化合物である(S)-tert-ブチル3-アミノピペリジン-1-カルボキシレート(780.0ul、1.0eq)を加えた後、炭酸ナトリウム(1.3g、3.0eq)を投入した後、12時間還流して反応を終了した。これを30℃以下に冷却した後、水(20.0mL)と酢酸エチル(20.0mL)を加えた後、層分離した。酢酸エチル層は無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製して化学式1-1で表される化合物である、(S)-tert-ブチル3-((6-クロロ-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(900.0mg、収率54.1%)を得た。
1H-NMR(500MHz、CDCl3):6.63(s、1H)、6.31(s、1H)、4.66-4.65(m、1H)、3.84-3.82(m、1H)3.75-3.70(m、5H)、3.59-3.54(m、1H)、3.37(s、2H)、3.27-3.23(m、2H)、2.46(t、4H)、1.98-1.94(m、1H)、1.73(s、1H)、1.63-1.56(m、2H)、1.50(s、9H)
【0055】
実施例:(S)-1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンの製造
【化6】
(段階1)
フラスコに製造例で得られた前記化学式1-1で表される化合物(50.0g、1.0eq)、前記化学式1-2で表される化合物(16.7g、1.2eq)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(11.1g、0.1eq)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(2,2’-bis(diphenylphosphino)-1,1’-binaphthyl;BINAP)(30.3g、0.4eq)、炭酸セシウム(118.9g、3.0eq)および前記化学式1-1で表される化合物の重量に対して20倍の体積のトルエン1000mLを投入して室温で10分間攪拌した。前記フラスコ内部温度を110℃に昇温した後、105~111℃の温度範囲で8時間攪拌して反応を完結した。得られた残渣をceliteろ過によって触媒および生成された無機塩を除去した。その後、有機層を減圧濃縮し、そこに前記化学式1-1で表される化合物の重量に対して5倍の体積の精製水250mL、前記化学式1-1で表される化合物の重量に対して20倍の体積の酢酸エチル1000mLを投入して有機層を抽出した。ここで発生した水層は廃棄した。その後、40~45℃で有機層を減圧濃縮して、前記化学式1-3で表される化合物を製造し、これを追加精製なしに次の段階2で使用した。
1H-NMR(500MHz、DMSO):10.51(s、1H)、6.93(s、1H)6.40(s、1H)、6.06(s、1H)、5.98(s、1H)、4.01(s、2H)、3.55(s、5H)、3.21(s、4H)、2.32(s、4H)、2.24(s、3H)、1.97(s、1H)、1.72(s、1H)、1.32(br s、2H)、1.15(s、9H)
【0056】
(段階2)
前記段階1で製造した化学式1-3で表される化合物に酢酸エチル(Ethyl acetate;EA)500mLおよび6N-HCl(250mL、5.0eq)を投入した後、室温で2時間攪拌して反応を終了した。
【0057】
水およびメタノールによる結晶化工程
次に、水層を抽出し、有機層に精製水1000mL(化学式1-1で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))を投入して2次抽出した。1次および2次で得られた水層を合わせてice-bathを用いて内部温度0~5℃を維持し、約30分間4N-NaOH700mL(化学式1-1で表される化合物の重量に対して14倍の体積量(mL/g))を投入してpH12以上を維持した状態で30分間攪拌した。これによって生成された結晶を減圧ろ過し、該ろ過物を精製水500mL(化学式1-1で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))およびヘキサン500mL(化学式1-1で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))で洗浄した。この時、洗浄されたろ過物を乾燥機に入れた後、40~45℃の温度で12時間以上真空乾燥した後、メタノール1.65L(化学式1-1で表される化合物の重量に対して33倍の体積量(mL/g))に投入して内部温度65℃で約30分間攪拌した後、室温に冷却した。これによって生成された結晶を減圧ろ過し、得られたろ過物を乾燥機に入れた後、40~45℃の温度で12時間以上真空乾燥して、前記化学式1-4で表される化合物28.5gを得た(収率:60.3%(段階1および段階2を含む))。
1H-NMR(500MHz、DMSO):10.47(s、1H)、6.93(s、1H)、6.28(d、1H)、6.02(s、1H)、5.94(s、1H)、3.91(s、1H)、3.56(s、4H)、3.20(s、2H)、3.06(d、1H)、2.79(d、1H)、2.44-2.42(m、1H)、2.37-2.34(m、1H)、2.32(s、3H)、2.28(s、4H)、2.03-2.01(m、2H)、1.63-1.60(m、1H)、1.44-1.42(m、1H)、1.30-1.28(m、1H)
【0058】
(段階3)
前記段階2で製造した化学式1-4で表される化合物(5.0g、1.0eq)にTHF90.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して18倍の体積量(mL/g))およびH2O 20.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して4倍の体積量(mL/g))を加えて室温で溶液を製造した。その後、外部温度-8~-5℃のbath(ice、H2O、MeOH混合)を用いて内部温度を-8~-3℃に冷却させた後、K2CO3(2.6g、1.5eq)を加えて溶解した。そこに、-8~-3℃に冷却したTHF5mLにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(N,N-Diisopropylethylamine;DIPEA)(111.5ul、0.05eq)と前記化学式1-5で表される化合物(1.1mL、1.05eq)を混合した溶液を内部温度-8~-3℃で滴下した。これを、-8~-3℃で0.5時間攪拌して反応を終了した。
【0059】
酢酸エチルによる抽出工程
反応が終了した反応容器に、-8~-3℃の温度の酢酸エチル100.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))と飽和されたNH4Cl水溶液50.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えた後、層分離して有機層のみを分離した。その後、水層に-8~-3℃の温度の酢酸エチル50.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えて再抽出した後、有機層のみを集めて外部温度35℃で減圧濃縮した。-8~-3℃の温度の酢酸エチル100.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))と0~5℃の温度のH2O 50.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えた後、1N-HCl溶液でpH7.0~7.5となるように調節した後、2回層分離した。分離された有機層を集めてNa2SO4で乾燥した後、外部温度35℃で減圧濃縮した。
【0060】
リン酸(H3PO4)による精製工程
そこに、-8~-3℃の温度のTHF90.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して18倍の体積量(mL/g))を投入して溶解させた。その後、H3PO4(9.3g、0.095eq)を-8~-3℃の温度のTHF5.0mLに溶解した溶液を-8~-3℃の温度で滴下した後、これを30分間攪拌した。Celiteろ過して塩を除去した後、濾液にH3PO4(8.3g、0.085eq)を-8~-3℃の温度のTHF5.0mLに溶解した溶液を滴下した後、これを-8~-3℃で30分間攪拌した。得られた残渣をCeliteろ過して塩を除去した後、ろ過物を外部温度35℃で減圧濃縮した。-8~-3℃の温度のメチレンクロライド(MC)25.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して5倍の体積量(mL/g))と0~5℃の温度のH2O 10.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して2倍の体積量(mL/g))を加えてpH9.0~9.5に調節した後、有機層を分離した。分離された有機層にNa2SO4を加えて乾燥した後、外部温度35℃で減圧濃縮した。
【0061】
酢酸エチルによる結晶化工程
そこに、酢酸エチル75.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して15倍の体積量(mL/g))を加えた後、結晶が生成されると、20~30℃で2時間攪拌しろ過した。ろ過物を室温で12時間減圧乾燥して、前記化学式1で表される化合物である、(S)-1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン3.4gを得た(収率60.0%)。
1H NMR(500MHz、DMSO):10.57(m、1H)、6.91-6.90(m、1H)、6.80-6.85(m、0.5H)、6.70-6.40(m、1.5H)、6.10-5.96(m、3H)、5.65-5.63(d、0.5H)、5.42-5.40(d、0.5H)、4.42-4.40(m、0.5H)、4.10-4.0(m、1H)、3.90-3.87(m、1.5H)、3.56(m、4H)、3.20(s、2H)、3.14-3.10(m、1H)、2.68-2.63(m、0.5H)、2.32(m、4H)、2.19(s、3H)、1.90-2.0(m、1H)、1.80(m、1H)、1.50-1.40(m、2.5H)
【0062】
参照例1
【化7】
(段階1)
製造例で得られた前記化学式1-1で表される化合物(730.0mg、1.0eq)を1,4-ジオキサン(14.0mL)に溶解した。酢酸パラジウム(40.0mg、0.1eq)、キサントホス(204.7mg、0.2eq)、前記化学式1-2で表される化合物(203.6mg、1.0eq)、炭酸セシウム(1.7g、3.0eq)を順次加えた。マイクロ波反応装置で150℃、30分間反応させた。30℃以下に冷却した後、水(15.0mL)と酢酸エチル(15.0mL)を加えた後、層分離した。酢酸エチル層は無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(EA100%)で精製して、前記化学式1-3で表される化合物564.0mgを得た(収率65.0%)。
1H-NMR(500MHz、DMSO):10.51(s、1H)、6.93(s、1H)、6.40(s、1H)、6.06(s、1H)、5.98(s、1H)、4.01(s、2H)、3.55(s、5H)、3.21(s、4H)、2.32(s、4H)、2.24(s、3H)、1.97(s、1H)、1.72(s、1H)、1.32(br s、2H)、1.15(s、9H)
【0063】
(段階2)
前記段階1で得られた化学式1-3で表される化合物(500.0mg、1.0eq)をジクロロメタン(10.0mL)に溶解した後、0~10℃に冷却した。そこに、トリクロロ酢酸(1.6mL、20.0eq)をゆっくり滴下した後、1時間攪拌した。その後、12N-水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9~12に調節した後、分離されたジクロロメタン層は無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣に酢酸エチル(10.0mL)を加えて30分間結晶を生成した。生成された結晶をろ過した後、乾燥して、前記化学式1-4で表される化合物357.5mgを得た(収率:90.0%)。
1H-NMR(500MHz、DMSO):10.47(s、1H)、6.93(s、1H)、6.28(d、1H)、6.02(s、1H)、5.94(s、1H)、3.91(s、1H)、3.56(s、4H)、3.20(s、2H)、3.06(d、1H)、2.79(d、1H)、2.44-2.42(m、1H)、2.37-2.34(m、1H)、2.32(s、3H)、2.28(s、4H)、2.03-2.01(m、2H)、1.63-1.60(m、1H)、1.44-1.42(m、1H)、1.30-1.28(m、1H)
【0064】
(段階3)
前記段階2で得られた化学式1-4で表される化合物(350.0mg、1.0eq)をテトラヒドロフラン(7.0mL)に溶解した後、水(7.0mL)を加え、重炭酸ナトリウム(226.8mg、3.0eq)を加えた後、0~10℃に冷却した。前記化学式1-5で表される化合物(73.1ul、1.0eq)をゆっくり滴下した後、30分間攪拌して反応を終了した。これを、ジクロロメタンを用いて層分離した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=15:1)で精製して前記化学式1で表される化合物318.0mgを得た(収率:60.0%)。
1H NMR(500MHz、DMSO):10.57(m、1H)、6.91-6.90(m、1H)、6.80-6.85(m、0.5H)、6.70-6.40(m、1.5H)、6.10-5.96(m、3H)、5.65-5.63(d、0.5H)、5.42-5.40(d、0.5H)、4.42-4.40(m、0.5H)、4.10-4.0(m、1H)、3.90-3.87(m、1.5H)、3.56(m、4H)、3.20(s、2H)、3.14-3.10(m、1H)、2.68-2.63(m、0.5H)、2.32(m、4H)、2.19(s、3H)、1.90-2.0(m、1H)、1.80(m、1H)、1.50-1.40(m、2.5H)
【0065】
参照例2
【化8】
(段階1および段階2)
前記実施例で製造した段階1および段階2と同様の方法を使用して、前記化学式1-4で表される化合物を製造した。
【0066】
(段階3)
前記段階2で得られた化学式1-4で表される化合物(350.0mg、1.0eq)をテトラヒドロフラン(7.0mL)に溶解した後、水(7.0mL)を加え、重炭酸ナトリウム(226.8mg、3.0eq)を加えた後、0~10℃に冷却した。前記化学式1-5で表される化合物(73.1ul、1.0eq)をゆっくり滴下した後、30分間攪拌して反応を終了した。これを、ジクロロメタンを用いて層分離した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣に酢酸エチルを残渣重量に対して20倍の体積量(mL/g)だけ加えた後、室温で3時間攪拌して結晶を生成した。生成された結晶をろ過後、室温で減圧乾燥した後、そこにジメトキシエタンを結晶重量に対して15倍の体積量(mL/g)だけ加えた後、還流して溶解して室温に徐々に冷却した後、2時間攪拌して結晶を生成した。これをろ過後、室温で減圧乾燥して6番物質を前記化学式1で表される化合物0.12gを得た(収率30.0%)。
1H NMR(500MHz、DMSO):10.57(m、1H)、6.91-6.90(m、1H)、6.80-6.85(m、0.5H)、6.70-6.40(m、1.5H)、6.10-5.96(m、3H)、5.65-5.63(d、0.5H)、5.42-5.40(d、0.5H)、4.42-4.40(m、0.5H)、4.10-4.0(m、1H)、3.90-3.87(m、1.5H)、3.56(m、4H)、3.20(s、2H)、3.14-3.10(m、1H)、2.68-2.63(m、0.5H)、2.32(m、4H)、2.19(s、3H)、1.90-2.0(m、1H)、1.80(m、1H)、1.50-1.40(m、2.5H)
【0067】
参照例3
【化9】
(段階1および段階2)
前記実施例で製造した段階1および段階2と同様の方法を使用して、前記化学式1-4で表される化合物を製造した。
【0068】
(段階3)
前記段階2で製造した化学式1-4で表される化合物(2.34g、1.0eq)にTHF46.8mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))およびH2O 9.4mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して4倍の体積量(mL/g))を加えて室温で溶液を製造した。その後、外部温度0~5℃のbath(ice、H2O混合)を用いて内部温度を0~5℃に冷却させた後、NaHCO3(1.51g、3.0eq)を加えて溶解した。そこに、前記化学式1-5で表される化合物(0.51mL、1.05eq)を混合した溶液を内部温度0~5℃で滴下した。これを0~5℃で0.5時間攪拌して反応を終了した。
【0069】
酢酸エチルによる抽出工程
反応が終了した反応容器に、酢酸エチル46.8mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))とH2O 23.4mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えた後、層分離して有機層のみを分離した。その後、水層に酢酸エチル23.4mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えて再抽出した後、有機層のみを集めて外部温度40℃で減圧濃縮した。酢酸エチル46.8mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))とH2O 23.4mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えた後、1N-HCl溶液でpH7.0~7.5となるように調節した後、2回層分離した。分離された有機層を集めてNa2SO4で乾燥した後、外部温度40℃で減圧濃縮した。
【0070】
酢酸エチルによる結晶化工程
そこに、酢酸エチル46.8mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))を加えた後、結晶が生成されると、20~30℃で2時間攪拌してろ過した。ろ過物を室温で12時間減圧乾燥して、前記化学式1で表される化合物である、(S)-1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン1.75gを得た(収率68.9%)。
【0071】
ジメトキシエタンによる結晶化工程
酢酸エチルによる結晶0.5gにジメトキシエタン7.5mL(酢酸エチルによる結晶の重量に対して15倍の体積量(mL/g))を加えた後、50~60℃で溶解した後、20~30℃に自然冷却させて結晶を生成した。結晶生成後、20~30℃で2時間攪拌してろ過した。ろ過物を室温で12時間減圧乾燥して、前記化学式1で表される化合物である、(S)-1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン0.25gを得た(収率35%)。
1H NMR(500MHz、DMSO):10.57(m、1H)、6.91-6.90(m、1H)、6.80-6.85(m、0.5H)、6.70-6.40(m、1.5H)、6.10-5.96(m、3H)、5.65-5.63(d、0.5H)、5.42-5.40(d、0.5H)、4.42-4.40(m、0.5H)、4.10-4.0(m、1H)、3.90-3.87(m、1.5H)、3.56(m、4H)、3.20(s、2H)、3.14-3.10(m、1H)、2.68-2.63(m、0.5H)、2.32(m、4H)、2.19(s、3H)、1.90-2.0(m、1H)、1.80(m、1H)、1.50-1.40(m、2.5H)
【0072】
参照例4
【化10】
(段階1および段階2)
前記実施例で製造した段階1および段階2と同様の方法を使用して、前記化学式1-4で表される化合物を製造した。
【0073】
(段階3)
前記段階2で製造した化学式1-4で表される化合物(288.0g、1.0eq)にTHF5760.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))およびH2O 1152.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して4倍の体積量(mL/g))を加えて室温で溶液を製造した。その後、外部温度0~5℃のbath(ice、H2O混合)を用いて内部温度を0~5℃に冷却させた後、NaHCO3(186.0g、3.0eq)を加えて溶解した。そこに、前記化学式1-5で表される化合物(63.0mL、1.05eq)を混合した溶液を内部温度0~5℃で滴下した。これを0~5℃で0.5時間攪拌して反応を終了した。
【0074】
酢酸エチルによる抽出工程
反応が終了した反応容器に、酢酸エチル5760.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))とH2O 2880.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えた後、層分離して有機層のみを分離した。その後、水層に酢酸エチル1440.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して5倍の体積量(mL/g))を加えて再抽出した後、有機層のみを集めて外部温度40℃で減圧濃縮した。酢酸エチル5760.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))とH2O 2880.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えた後、1N-HCl溶液でpH7.0~7.5となるように調節した後、2回層分離した。分離された有機層を集めてNa2SO4で乾燥した後、外部温度40℃で減圧濃縮した。
【0075】
リン酸(H3PO4)による精製工程
ここにTHF5184.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して18倍の体積量(mL/g))を投入して溶解させた。その後、H3PO4(6.8g、0.095eq)をTHF288.0mLに溶解した溶液を滴下した後、これを30分間攪拌した。Celiteろ過して塩を除去した後、濾液にH3PO4(6.1g、0.085eq)をTHF288.0mLに溶解した溶液を滴下した後、これを30分間攪拌した。得られた残渣をCeliteろ過して塩を除去した後、外部温度40℃で減圧濃縮した。
【0076】
酢酸エチルによる結晶化工程
ここに、酢酸エチル5760.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))を加えた後、結晶が生成されると、20~30℃で2時間攪拌してろ過した。ろ過物を室温で12時間減圧乾燥して、前記化学式1で表される化合物である、(S)-1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン195.5gを得た(収率60.0%)。
1H NMR(500MHz、DMSO):10.57(m、1H)、6.91-6.90(m、1H)、6.80-6.85(m、0.5H)、6.70-6.40(m、1.5H)、6.10-5.96(m、3H)、5.65-5.63(d、0.5H)、5.42-5.40(d、0.5H)、4.42-4.40(m、0.5H)、4.10-4.0(m、1H)、3.90-3.87(m、1.5H)、3.56(m、4H)、3.20(s、2H)、3.14-3.10(m、1H)、2.68-2.63(m、0.5H)、2.32(m、4H)、2.19(s、3H)、1.90-2.0(m、1H)、1.80(m、1H)、1.50-1.40(m、2.5H)
【0077】
参照例5
【化11】
(段階1および段階2)
前記実施例で製造した段階1および段階2と同様の方法を使用して、前記化学式1-4で表される化合物を製造した。
【0078】
(段階3)
前記段階2で製造した化学式1-4で表される化合物(15.0g、1.0eq)にTHF270.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して18倍の体積量(mL/g))およびH2O 60.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して4倍の体積量(mL/g))を加えて室温で溶液を製造した。その後、外部温度0~5℃のbath(ice、H2O混合)を用いて内部温度を0~5℃に冷却させた後、K2CO3(8.0g、1.5eq)を加えて溶解した。そこに、0~5℃に冷却したTHFにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(N,N-Diisopropylethylamine;DIPEA)(334.4ul、0.05eq)と前記化学式1-5で表される化合物(3.3mL、1.05eq)を混合した溶液を内部温度0~5℃で滴下した。これを0~5℃で0.5時間攪拌して反応を終了した。
【0079】
酢酸エチルによる抽出工程
反応が終了した反応容器に、0~5℃の温度の酢酸エチル300.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))と0~5℃の温度のH2O 150.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えた後、層分離して有機層のみを分離した。その後、水層に酢酸エチル75.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して5倍の体積量(mL/g))を加えて再抽出した後、有機層のみを集めて外部温度40℃で減圧濃縮した。0~5℃の温度の酢酸エチル300.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して20倍の体積量(mL/g))とH2O 150.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して10倍の体積量(mL/g))を加えた後、1N-HCl溶液でpH7.0~7.5となるように調節した後、2回層分離した。分離された有機層を集めてNa2SO4で乾燥した後、外部温度35℃で減圧濃縮した。
【0080】
リン酸(H3PO4)による精製工程
ここに0~5℃、THF270.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して18倍の体積量(mL/g))を投入して溶解させた。その後、H3PO4(0.36g、0.095eq)をTHF15.0mLに溶解した溶液を滴下した後、これを30分間攪拌した。Celiteろ過して塩を除去した後、濾液にH3PO4(0.32g、0.085eq)をTHF15.0mLに溶解した溶液を滴下した後、これを30分間攪拌した。得られた残渣をCeliteろ過して塩を除去した後、外部温度35℃で減圧濃縮した。
【0081】
酢酸エチルによる結晶化工程
ここに、酢酸エチル225.0mL(化学式1-4で表される化合物の重量に対して15倍の体積量(mL/g))を加えた後、結晶が生成されると、20~30℃で2時間攪拌してろ過した。ろ過物を室温で12時間減圧乾燥して、前記化学式1で表される化合物である、(S)-1-(3-((6-((5-メチルチアゾール-2-イル)アミノ)-4-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン10.2gを得た(収率60.0%)。
1H NMR(500MHz、DMSO):10.57(m、1H)、6.91-6.90(m、1H)、6.80-6.85(m、0.5H)、6.70-6.40(m、1.5H)、6.10-5.96(m、3H)、5.65-5.63(d、0.5H)、5.42-5.40(d、0.5H)、4.42-4.40(m、0.5H)、4.10-4.0(m、1H)、3.90-3.87(m、1.5H)、3.56(m、4H)、3.20(s、2H)、3.14-3.10(m、1H)、2.68-2.63(m、0.5H)、2.32(m、4H)、2.19(s、3H)、1.90-2.0(m、1H)、1.80(m、1H)、1.50-1.40(m、2.5H)
【0082】
BTKおよびITKに対する阻害活性
前記実施例で製造された化学式1で表される化合物のBTKおよびITKに対する阻害活性を以下のように測定した。
【0083】
BTKに対する阻害活性評価は、Promega社製の「ADP-GloTM+BTK Kinase enzyme system」kitを用いて評価した。White96-well plateで最終濃度が10ng/mlとなるように準備したBTK酵素10ulと化合物の単一濃度の評価の場合、最終濃度が1uM、IC50評価の場合1000、200、40、8、1.6、0.32nM濃度の化合物5ulを混合した後、常温で15分間反応させた。反応が終わったplateにsubstrate 5ulと最終濃度が10uMとなるように準備したATP 5ulを入れた後、30℃で1時間反応させた。反応が終わったplateの全てのwellにADP-GloTM reagent 25ulで処理して30℃で40分間反応させた。その後、全てのwellにkinase detection buffer 50ulで処理した後、光を遮断して室温で30分間反応させた。全ての反応が終わったplateはluminescenceを測定して結果を算出した。評価はduplicateで行い、化合物の処理なしに酵素添加の有無によりnegative controlとpositive controlを算出し、その値に基づいてIC50を計算した。
【0084】
また、ITKに対する阻害活性評価は、Promega社製の「ADP-GloTM+ITK Kinase enzyme system」kitを用いて評価した。White96-well plateで最終濃度が4ng/mlとなるように準備したITK酵素10ulと単一濃度の評価の場合、最終濃度が1uM、IC50評価の場合1000、200、40、8、1.6、0.32nM濃度の化合物5ulを混合した後、常温で15分間反応させた。反応が終わったplateにsubstrate 5ulと最終濃度が25uMとなるように準備したATP 5ulを入れた後、30℃で1時間反応させた。反応が終わったplateの全てのwellにADP-GloTM reagent 25ulで処理して30℃で40分間反応させた。その後、全てのwellにkinase detection buffer 50ulで処理した後、光を遮断して室温で30分間反応させた。全ての反応が終わったplateはluminescenceを測定して結果を算出した。評価はduplicateで行い、化合物の処理なしに酵素添加の有無によりnegative controlとpositive controlを算出して、その値に基づいてIC50を計算した。
【0085】
計算結果、実施例で製造された化学式1で表される化合物のBTKに対する阻害活性(BTK IC50)は0.4nM~1.4nMであり、ITKに対する阻害活性(ITK IC50)は1.0nM~1.7nMであった。したがって、前記化学式1で表される化合物が優れたBTKおよびITK二重活性阻害効果を示すことを確認することができた。
【0086】
実施例および参照例2~5の比較
前記実施例および参照例2~5の製造方法で製造される最終化合物である前記化学式1で表される化合物の製造時に共に生成される不純物を確認するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記表1の条件で相対保持時間(relative retention time;RRT)により不純物を分離し、その結果を段階3の収率と共に下記表2に示す。
【表1】
1)RRTが1.0未満である不純物(RRT<1.0)
2)RRTが1.17である不純物A(ImpA):化学式1で表される化合物と化学式1-4で表される化合物が結合した化合物)
3)RRTが1.37である不純物B(ImpB):化学式1で表される化合物のdimer
4)RRTが1.18である不純物C(ImpC):化学式1で表される化合物の二重結合にHClが添加された化合物およびアクリルアミドの二重結合にHClが添加された化合物
【表2】
【0087】
上記表2に示すように、前記実施例の工程によって化合物の製造時、上述した参照例1の工程に追加的に1次および2次結晶化による化合物の分離および精製を行った参照例2の工程に比べて、全ての種類の不純物が低減された高純度の化合物を高い収率で製造することができることが分かった。
【0088】
また、前記実施例の工程によって化合物の製造時、実施例の工程での段階3での一部工程を変更して化学式1で表される化合物を製造した参照例3~5の工程に比べて、不純物が低減された高品質の化合物を製造することができることを確認した。
【0089】
具体的には、(1)段階3の反応でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を使用し、かつ(2)段階3の反応温度を-8~-3℃に調節し、(3)酢酸エチル(EA)による結晶化によって最終化合物を分離した実施例の工程により製造された化合物は、
(1)段階3の反応でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を使用せず、(2)段階3の反応温度を0~5℃に調節しながら、(3)酢酸エチル(EA)およびジメトキシエタン(DME)による結晶化によって最終化合物を分離した参照例3の工程により製造された化合物に比べて、不純物A(ImpA)、不純物B(ImpB)および不純物C(ImpC)の含有量が低いことが分かり、
(1)段階3の反応でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を使用せず、(2)段階3の反応温度を0~5℃に調節しながら、(3)酢酸エチル(EA)による結晶化によって最終化合物を分離した参照例4の工程により製造された化合物に比べて、不純物B(ImpB)および不純物C(ImpC)の含有量が低いことが分かり、
(1)段階3の反応でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を使用したが、(2)段階3の反応温度を0~5℃に調節し、(3)酢酸エチル(EA)による結晶化によって最終化合物を分離した参照例5の工程により製造された化合物に比べて、不純物B(ImpB)の含有量が低いことが分かった。
【0090】
実施例、参照例1および参照例2の比較
前記実施例、参照例1および参照例2の製造方法の各段階の収率を下記表3に示す。
【表3】
【0091】
上記表3に示すように、前記実施例の工程によって化学式1で表される化合物の製造時、マイクロ波装置が求められ、製造される化合物の分離および精製がカラムにより行われる参照例1の工程とは異なり、段階1および段階2がイン-サイチュ(In-situ)で行われ、結晶化によって化合物の分離および精製が行われるので、産業的に生産に有利で、かつ参照例1の工程に比べて収率が低下していないことが確認された。
【0092】
また、前記実施例の工程は、化合物の最終純度を高めるために参照例1の工程後に1次および2次結晶化によって化合物の分離および精製をさらに行う参照例2の工程に比べても、顕著に高い収率で最終化合物を製造することができることが分かった。
【0093】
したがって、本発明に係る実施例の工程によって、高品質を有する化学式1で表される化合物を産業的に大量生産できることを確認した。
【国際調査報告】