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特表2023-515215スイマーのスイミング特性を特定するためのコントローラ及びスイマーのスイミング特性を特定するための方法
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  • 特表-スイマーのスイミング特性を特定するためのコントローラ及びスイマーのスイミング特性を特定するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】スイマーのスイミング特性を特定するためのコントローラ及びスイマーのスイミング特性を特定するための方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20230405BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230405BHJP
   A63B 69/12 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A63B71/06 M
A61B5/11 200
A63B69/12 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551762
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2021052929
(87)【国際公開番号】W WO2021170384
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202041008427
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】515022571
【氏名又は名称】ロバート ボッシュ エンジニアリング アンド ビジネス ソリューションズ プライヴェット リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch Engineering and Business Solutions Private Limited
【住所又は居所原語表記】123, Industrial Layout, Hosur Road, Koramangala, Bangalore - 560 095, India
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ゾーンケ
(72)【発明者】
【氏名】アミタシュ カンカナル ジャガディッシュ
(72)【発明者】
【氏名】カウシュトゥブ アショーク ガンジー
(72)【発明者】
【氏名】センゴトゥヴェラン センシルムルガン
(72)【発明者】
【氏名】プードル マルダチャラム ディーパック
(72)【発明者】
【氏名】モハン プージャ
(72)【発明者】
【氏名】トマール マヒマ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB01
4C038VB31
4C038VC20
(57)【要約】
スイマーのスイミング特性を特定するために、ウェアラブルデバイス(100)のコントローラ(110)が用いられる。コントローラ(110)は、多軸ジャイロスコープ(112)及び多軸加速度計(114)を含むグループから選択された少なくとも1つのモーションセンサ(120)に接続されている。コントローラ(110)は、少なくとも1つのモーションセンサ(120)から到来した入力信号(202)を検出するように構成されている。コントローラ(110)はさらに、ストロークセグメンテーションモジュール(102)を用いて、入力信号(202)の少なくとも1つに基づき、動的にストロークセグメンテーションを実行し、特徴抽出モジュール(104)を用いて、ストロークセグメンテーションに基づき、少なくとも1つの入力信号(202)から特徴ベクトルを抽出し、分類器モジュール(106)により特徴ベクトルを用いてスイミング特性を特定するように、構成されていることを特徴とする。本発明は、スイマーのスタイルに動的に適合してスイミング特性を検出するコントローラ(110)及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイマーのスイミング特性を特定するためのウェアラブルデバイス(100)用のコントローラ(110)であって、当該コントローラ(110)は、多軸ジャイロスコープ(112)及び多軸加速度計(114)を含むグループから選択された少なくとも1つのモーションセンサ(120)に接続されており、前記少なくとも1つのモーションセンサ(120)から到来した入力信号(202)を検出するように構成されている、コントローラ(110)において、
前記コントローラ(110)は、
ストロークセグメンテーションモジュール(102)を用いて、前記入力信号(202)の少なくとも1つに基づきストロークセグメンテーションを実施し、
前記ストロークセグメンテーションに基づき、特徴抽出モジュール(104)により前記少なくとも1つの入力信号(202)から特徴ベクトルを抽出し、
前記特徴ベクトルを用いることにより、分類器モジュール(106)によって前記スイミング特性を特定する
ように構成されていることを特徴とする、
スイマーのスイミング特性を特定するためのウェアラブルデバイス(100)用のコントローラ(110)。
【請求項2】
前記ストロークセグメンテーションモジュール(102)において、
検出された前記入力信号(202)から少なくとも1つの主要軸信号をフィルタモジュール(122)により処理して、フィルタリングされた信号(204)を出力し、
ステートマシン条件に基づき、前記フィルタリングされた信号(204)からエンベロープ信号(206)を生成し、ここで、前記エンベロープ信号(206)は、
デフォルトで前記フィルタリングされた信号(204)に追従し、
前記フィルタリングされた信号(204)の値が減少している場合には、予め定義された割合で下降し、これは下降状態(128)と称され、
前記フィルタリングされた信号(204)の値が増加し、前記下降状態(128)にある前記エンベロープ信号(206)の値を上回った場合には、前記フィルタリングされた信号(204)に追従し、これは追従状態(130)と称され、
2つの追従状態(130)及び下降状態(128)のいずれか1つの発生に基づき、1つのストロークセグメントを検出する
ように構成されている、
請求項1に記載のコントローラ(110)。
【請求項3】
前記特徴ベクトルは、先行のストロークセグメントと現在のストロークとから抽出され、前記特徴ベクトルは、以下を含むグループから選択される、即ち、Z軸における加速度計(114)の最小値、X軸におけるジャイロスコープ(112)の最小値、Z軸におけるジャイロスコープ(112)の最大値、X軸における加速度計の値の平均値、Y軸における加速度計の値の平均値、X軸におけるジャイロスコープの値の平均値、Y軸におけるジャイロスコープの値の平均値、X軸における加速度計の値の標準偏差、X軸におけるジャイロスコープの値の標準偏差、X軸におけるジャイロスコープの値の最小二乗平均(RMS)、X軸、Y軸及びZ軸に沿った加速度計の値の単純移動平均(SMA)、並びに、X軸、Y軸及びZ軸に沿ったジャイロスコープの値のSMAを含むグループから選択される、
請求項1に記載のコントローラ(110)。
【請求項4】
前記スイミング特性は、ストロークタイプ(118)及びストロークカウント(116)を含み、前記ストロークタイプ(118)は、先行のストローク及び現在のストロークの特徴ベクトルに基づき、前記分類器モジュール(106)によって特定され、前記ストロークカウント(116)は、検出された前記ストロークセグメント及び前記ストロークタイプ(118)に基づき、ストロークカウンタ(108)によって特定される、
請求項2に記載のコントローラ(110)。
【請求項5】
スイミングストロークのダイナミックセグメンテーションのためのウェアラブルデバイス(100)用のコントローラ(110)であって、当該コントローラ(110)は、多軸ジャイロスコープ(112)及び多軸加速度計(114)を含むグループから選択された少なくとも1つのモーションセンサ(120)に接続されている、コントローラ(110)において、
当該コントローラ(110)は、
前記少なくとも1つのモーションセンサ(120)の検出された入力信号(202)から少なくとも1つの主要軸信号を、フィルタモジュール(122)により処理して、フィルタリングされた信号(204)を出力し、
ステートマシン条件に基づき、前記フィルタリングされた信号(204)からエンベロープ信号(206)を生成し、ここで、前記エンベロープ信号(206)は、
前記フィルタリングされた信号(204)の値が減少している場合には、前記エンベロープ信号(206)は予め定義された割合で減少し、これは下降状態(128)と称され、
前記フィルタリングされた信号(204)の値が増加しており、前記下降状態(128)にある前記エンベロープ信号(206)の値を上回った場合には、前記フィルタリングされた信号(204)に追従し、これは追従状態(130)と称され、
2つの追従状態(130)及び下降状態(128)のいずれか1つの発生の間に、1つのストロークセグメントを検出する
ように構成されていることを特徴とする、
スイミングストロークのダイナミックセグメンテーションのためのウェアラブルデバイス(100)用のコントローラ(110)。
【請求項6】
ウェアラブルデバイス(100)によりスイマーのスイミング特性を特定するための方法であって、
多軸ジャイロスコープ(112)及び多軸加速度計(114)から選択された少なくとも1つのモーションセンサ(120)から、入力信号(202)を受信するステップと、
ストロークセグメンテーションモジュール(102)を用いて、前記少なくとも1つのモーションセンサ(120)から受信した前記入力信号(202)の少なくとも1つに基づき、ストロークを動的にセグメンテーションするステップと、
特徴抽出モジュール(104)を用いて、前記ストロークのセグメントに基づき前記入力信号(202)から特徴ベクトルを抽出するステップと、
前記特徴ベクトルを用いることにより、分類器モジュール(106)によって前記スイミング特性を特定するステップと、
を含むことを特徴とする、
ウェアラブルデバイス(100)によりスイマーのスイミング特性を特定するための方法。
【請求項7】
ストロークを動的にセグメンテーションする前記ステップは、
検出された前記入力信号(202)から少なくとも1つの主要軸信号をフィルタモジュール(122)により処理して、フィルタリングされた信号(204)を出力するステップと、
ステートマシン条件に基づき、前記フィルタリングされた信号(204)からエンベロープ信号(206)を生成するステップであって、ここで、前記エンベロープ信号(206)は、
デフォルトで前記フィルタリングされた信号(204)に追従し、
前記フィルタリングされた信号(204)の値が減少している場合には、予め定義された割合で下降し、下降している当該状態を下降状態(128)と称し、
前記フィルタリングされた信号(204)の値が、前記下降状態(128)にある前記エンベロープ信号(206)の値を上回った場合には、前記フィルタリングされた信号(204)に追従し、追従している当該状態を追従状態(130)と称する、ステップと、
2つの追従状態(130)及び下降状態(128)のいずれか1つの発生に基づき、1つのストロークセグメントを検出するステップと、
を含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記特徴ベクトルを、先行のストロークセグメントと現在のストロークとから抽出し、前記特徴ベクトルを、以下を含むグループから選択する、即ち、Z軸における加速度計(114)の最小値、X軸におけるジャイロスコープ(112)の最小値、Z軸におけるジャイロスコープ(112)の最大値、X軸における加速度計の値の平均値、Y軸における加速度計の値の平均値、X軸におけるジャイロスコープの値の平均値、Y軸におけるジャイロスコープの値の平均値、X軸における加速度計の値の標準偏差、X軸におけるジャイロスコープの値の標準偏差、X軸におけるジャイロスコープの値の最小二乗平均(RMS)、X軸、Y軸及びZ軸に沿った加速度計の値の単純移動平均(SMA)、並びに、X軸、Y軸及びZ軸に沿ったジャイロスコープの値のSMAを含むグループから選択する、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記スイミング特性は、ストロークタイプ(118)及びストロークカウント(116)を含み、前記ストロークタイプ(118)を、先行のストローク及び現在のストロークの特徴ベクトルに基づき、前記分類器モジュール(106)によって特定し、前記ストロークカウント(116)を、検出された前記ストロークセグメント及び前記ストロークタイプ(118)に基づき、ストロークカウンタ(108)によって特定する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ウェアラブルデバイス(100)においてスイミングストロークを動的にセグメンテーションする方法であって、
少なくとも1つのモーションセンサ(120)の検出された入力信号(202)から少なくとも1つの主要軸信号を、フィルタモジュール(122)により処理して、フィルタリングされた信号(204)を出力するステップと、
ステートマシン条件に基づき、前記フィルタリングされた信号(204)からエンベロープ信号(206)を生成するステップであって、ここで、前記エンベロープ信号(206)は、
前記フィルタリングされた信号(204)の値が減少している場合には、予め定義された割合で減少し、これを下降状態(128)と称し、
前記フィルタリングされた信号(204)の値が増加しており、前記下降状態(128)にある前記エンベロープ信号(206)の値を上回った場合には、前記フィルタリングされた信号(204)に追従し、これを追従状態(130)と称する、ステップと、
2つの追従状態(130)及び下降状態(128)のいずれか1つの発生の間に、1つのストロークセグメントを検出するステップと、
を含む、
ウェアラブルデバイス(100)においてスイミングストロークを動的にセグメンテーションする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイマーのスイミング特性を特定するためのウェアラブルデバイス用のコントローラ及びスイマーのスイミング特性を特定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
既存のスイミングトラッキングソリューションにおいては、スイミング分類器モジュールが、特徴ベクトルにおけるタイミング情報を用い、時間パターンマッチングアルゴリズムを用いる。時間領域のパターンマッチングアルゴリズムは、(アマチュアからプロフェッショナルまで)スキルレベルがそれぞれ異なるスイマーに対しては、機能しない可能性がある。従って、あらゆる種類のスイマーに対して機能する単一のスイミング分類器ソリューションを開発する必要がある。
【0003】
従来技術の米国特許出願公開第2014278229号明細書によれば、パーソナルフィットネストラッキングデバイスにおいてジャイロスコープを使用することが開示されている。本明細書においては、かかるデバイスに実装可能な様々な技術を含む、バイオメトリックモニタリング装置について説明する。これに加えて、バイオメトリックモニタリング装置においてジャイロスコープを利用するための技術が提供される。かかる技術は、いくつかの実装によれば、ストロークサイクルカウント、ラップカウント及びストロークタイプに関してスイミングメトリクスを取得することを含み得る。かかる技術は、いくつかの実装によれば、自転車走行アクティビティに関してパフォーマンスメトリクスを取得することを含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014278229号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの実施形態について、以下の添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の1つの実施形態によるウェアラブルデバイス用のコントローラを示すブロック図である。
図2】本発明の1つの実施形態によるコントローラによって処理されるサンプル波形を示す図である。
図3】本発明に係る、スイミング特性を特定するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態の詳細な説明
図1は、本発明の1つの実施形態によるウェアラブルデバイス用のコントローラのブロック図を示している。スイマーのスイミング特性を特定するために、ウェアラブルデバイス100のコントローラ110が用いられる。コントローラ110は、多軸ジャイロスコープ112及び多軸加速度計114を含むグループから選択された少なくとも1つのモーションセンサ120に接続されている。コントローラ110は、少なくとも1つのモーションセンサ120から到来した(図2に示されている)入力信号202を検出するように構成されており、以下のことを特徴とする。即ち、コントローラ110はさらに、ストロークセグメンテーションモジュール102を用いて、入力信号202の少なくとも1つに基づき、ストロークセグメンテーションを実行し、特徴抽出モジュール104を用いて、ストロークセグメンテーションに基づき、少なくとも1つの入力信号202から特徴ベクトルを抽出し、分類器モジュール106により特徴ベクトルを用いてスイミング特性を特定するように、構成されていることを特徴とする。
【0008】
1つの実施形態によれば、コントローラ110は、以下のモジュールを含む。ストロークセグメンテーションモジュール102は、少なくとも1つのモーションセンサ120から到来した入力信号202の連続ストリームからストロークを検出し、各ストロークをセグメンテーションする。特徴抽出モジュール104は、分類のためにセグメンテーションされたストロークから統計的特徴を抽出する。分類器モジュール106によりスイミングストロークタイプを分類するために、現在のストロークセグメント及び先行のストロークセグメントの分類器から抽出された特徴が用いられる。ストロークセグメンテーションモジュール102によりフラグがセットされているときに、スイミングストロークをカウント/インクリメントするために、ストロークカウンタ108も用いられる。ストロークセグメントが(分類器モジュール106から検出されるような)ターンに相当する場合には、カウンタはインクリメントされない。
【0009】
コントローラ110は、センサから受信した信号を処理する電子制御ユニットである。コントローラ110は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)といったメモリ素子、アナログ/ディジタル変換器(ADC)及びその逆のDAC、クロック、タイマ及びバスチャネルを介してこれらの構成要素と接続されたプロセッサを含む。上述のモジュールは、メモリ素子に格納され、定義されたルーチンに従ってプロセッサによりアクセスされるロジック又は命令である。コントローラ110のこれらの内部構成要素は、使用されないことがあり、又は、従来技術であることから説明されておらず、また、これらの内部構成要素に限定されるものと解釈されてはならない。
【0010】
ウェアラブルデバイス100は、以下に限定されるものではないが、スマートウォッチ、スマートバンド、スマートリングなどから選択される任意の1つである。
【0011】
ジャイロスコープ112及び加速度計114から到来した入力信号202のストリームを、特徴抽出のためにセグメンテーションする必要がある。時間窓長が一定である従来のスイミングストロークセグメンテーションは、スイミングストローク期間が、経験、スキル、及び、スイマーが採用するスイミングスタイルのタイプに左右されるため、正確ではない。従って、スイマーのタイプを動的(ダイナミック)に適合させるために、ストロークセグメンテーションモジュール102が設けられている。ストロークセグメンテーションモジュール102の主要なサブモジュールは、フィルタモジュール122、ダイナミックセグメンテーションモジュール124、及び、任意選択肢として検証モジュール126である。フィルタモジュール122は、未処理入力信号202をノイズのない滑らかな信号に変換する。ダイナミックセグメンテーションモジュール124は、ステートマシン条件/原理を用いてエンベロープ信号206を生成する。検証モジュール126は、検出セグメントを検証/確認する。
【0012】
図2は、本発明の1つの実施形態によるコントローラによって処理されるサンプル波形を示している。グラフ200が示されており、ここで、X軸は、適当な単位で時間を表し、Y軸は、適当な単位で電圧を表す。少なくとも1つのモーションセンサ120から受信される未処理信号又は少なくとも1つの入力信号202は、大幅に変化する。近似された正弦波波形が入力信号202から取得され、これを、フィルタリングされた信号204と称する。フィルタリングされた信号204から、ステートマシン条件に基づきエンベロープ信号206が取得される。これら既述の信号については、この後のセクションにおいて説明する。
【0013】
ここでは、ストロークセグメンテーションモジュール102の動作について説明する。コントローラ110は、検出された入力信号202から少なくとも1つの主要軸信号を、フィルタモジュール122により処理するように構成されている。主要軸信号は、他の信号の比較に基づき自動的に選択される。選択的に、ジャイロスコープ112又は加速度計114のいずれかの主要軸信号が、フィルタモジュール122を用いて検出されて平滑化され、このフィルタモジュール122の係数は、スイミングデータログを用いて経験的に決定される。フィルタモジュール122の一例は、以下に限定されるものではないが、無限インパルス応答(IIR)である。フィルタモジュール122は、少なくとも1つの入力信号202の変化の速い成分(即ち、主要軸信号)を除去し、変化の遅い成分のみを出力する。簡単に言えば、フィルタモジュール122は、少なくとも1つのモーションセンサ120から受信した主要軸信号を処理し、フィルタリングされた信号204を出力する。フィルタリングされた信号204は、その後、ダイナミックセグメンテーションモジュール124によって処理され、このダイナミックセグメンテーションモジュール124は、ステートマシン条件に基づき、フィルタリングされた信号204からエンベロープ信号206を生成する。
【0014】
次に、エンベロープ信号206の生成について説明する。エンベロープ信号206は、デフォルトではフィルタリングされた信号204に追従し、即ち、スタート時、コントローラ110によって開始させられたエンベロープ信号206は、フィルタリングされた信号204に追従し、状態が追従にセットされる。フィルタリングされた信号204の値が減少している場合には、エンベロープ信号206は、予め定義された割合で下降させられ、状態が下降に変化する。エンベロープ信号206におけるこの下降フェーズは、下降状態128と称され、予め定められた割合で実施される。ステートマシン条件に従って、フィルタリングされた信号204がエンベロープ信号206を下回っている限り、状態は下降状態128にとどまる。下降状態128において、フィルタリングされた信号204がエンベロープ信号206と交差してそれを上回ると、エンベロープ信号206は、フィルタリングされた信号204に追従させられ、状態は、追従に変化する。換言すれば、フィルタリングされた信号204の値が増加して、下降状態128にあるエンベロープ信号206の値を上回ると、エンベロープ信号206は、フィルタリングされた信号204に追従し始める。エンベロープ信号206のこの追従フェーズは、追従状態130と称される。コントローラ110は、2つの追従状態130及び下降状態128のいずれか1つの発生に基づき、1つのストロークセグメントを検出する。セグメンテーションを検証するために、状態遷移が発生した時点が捕捉される。状態遷移が208及び210により表されており、これらは、検出されたセグメントを検証するために検証モジュール126によって用いられる。
【0015】
フラグが真の場合には常に、以前に検出されたストローク時点から現在検出されたストローク時点までの未処理サンプルを用いて、ストロークセグメンテーションモジュール102から複数の統計的特徴が抽出される。これらの特徴は、3軸ジャイロスコープ112及び3軸加速度計114の入力信号202に基づき計算される。先行のストローク時点の終了と現在のストローク時点の開始との間において、特徴ベクトルが抽出される。特徴ベクトルは、以下を含むグループから選択される。即ち、Z軸における加速度計114の最小値、X軸におけるジャイロスコープ112の最小値、Z軸におけるジャイロスコープ112の最大値、X軸における加速度計の値の平均値、Y軸における加速度計の値の平均値、X軸におけるジャイロスコープ112の値の平均値、Y軸におけるジャイロスコープの値の平均値、X軸における加速度計の値の標準偏差、X軸におけるジャイロスコープの値の標準偏差、X軸におけるジャイロスコープの値の最小二乗平均(RMS)、X軸、Y軸及びZ軸に沿った加速度計の値の単純移動平均(SMA)、並びに、X軸、Y軸及びZ軸に沿ったジャイロスコープの値のSMAを含むグループから選択される。
【0016】
スイミング特性は、ストロークタイプ118及びストロークカウント116を含む。ストロークタイプ118は、分類器モジュール106によって、先行のストローク及び現在のストロークの特徴ベクトルに基づき特定される。ストロークカウント116は、検出されたストロークセグメント及びストロークタイプ118に基づき特定される。特徴抽出モジュール104と同様に、スイミング分類器モジュール106は、ストロークセグメンテーションモジュール102のフラグが真である場合には常に、コントローラ110によって呼び出される。現在のストローク及び先行のストロークにおける特徴ベクトルが共にスタックされて、スイミング分類器モジュール106に送られる。スイミング分類器モジュール106は、機械学習(ML)モデルであり、このモデルは、類似のスタックされた特徴ベクトルとトレーニングラベルとを用いて、既にトレーニングされている。1つの実施例によれば、スイミングスタイルを自由形、バタフライ、平泳ぎ及び背泳ぎ、ターン並びに不明に分類する分類器モジュール106として、ランダムフォレスト(RF)が用いられる。このMLモデルは、ラップとジャンプとの間の休止/中断などの状況を扱うために、ラベル「不明」によってもトレーニングされる。RFモデルは、一例として用いられており、これに限定されるものと解釈してはならない。
【0017】
さらに、ストロークセグメンテーションモジュール102から到来したフラグと、分類器モジュール106から到来した特定されたストロークタイプ/スタイル118についてのフラグとが、ストロークカウンタ108によって互いに融合され、それにより、ストロークカウント116が更新される。ストロークセグメンテーションモジュール102から到来したフラグは、ターンイベントであったとしても真にセットされる。しかしながら、ターンイベントは、ストロークカウント116としてカウントされるべきではない。よって、ストロークセグメンテーションモジュール102から到来したフラグが真であり、かつ、ストロークタイプ118が自由形、バタフライ、平泳ぎ及び背泳ぎのうちのいずれか1つである場合にのみ、ストロークカウント116がインクリメントされる。
【0018】
本発明の1つの実施形態によれば、ウェアラブルデバイス100用のコントローラ110は、スイミングストロークのダイナミックセグメンテーションのために設けられている。コントローラ110は、多軸ジャイロスコープ112及び多軸加速度計114を含むグループから選択された少なくとも1つのモーションセンサ120に接続されている。コントローラ110は、以下のことを特徴とする。即ち、このコントローラ110は、少なくとも1つのモーションセンサ120の検出された入力信号202から、少なくとも1つの主要軸信号をフィルタモジュール122により処理するように、構成されていることを特徴とする。フィルタリングされた信号204は、フィルタモジュール122による出力として取得される。コントローラ110は、ステートマシン条件に基づき、フィルタリングされた信号204からエンベロープ信号206を生成し、ここで、フィルタリングされた信号204の値が減少している場合には、エンベロープ信号206は、予め定義された割合で減少し、これは下降状態128と称される。フィルタリングされた信号204の値が増加しており、下降状態128にあるエンベロープ信号206の値を上回った場合には、エンベロープ信号206は、フィルタリングされた信号204に追従し、これは追従状態130と称される。次いでコントローラ110は、2つの追従状態130及び下降状態128のいずれか1つの発生の間に、ストロークセグメントを検出する。その後、スイミング特性を特定するために、セグメンテーションされたストロークが、他の方法又は前述の方法と組み合わせられて用いられる。この段落において説明したコントローラ110は、前段落で説明したものと同様であるが、ここでは、ストロークのセグメンテーションだけに特化されている。
【0019】
図3は、本発明に係る、スイミング特性を特定するための方法を示している。ウェアラブルデバイス100によりスイマーのスイミング特性を特定するための方法は、以下のステップを含む。即ち、ステップ302において、多軸ジャイロスコープ112及び多軸加速度計114から選択された少なくとも1つのモーションセンサ120から、入力信号202を受信する。この方法が特徴とすることは、ステップ304において、少なくとも1つのモーションセンサ120の入力信号202の少なくとも1つに基づき、ストロークを動的にセグメンテーションすることである。ステップ306において、ストロークセグメントに基づき入力信号202から特徴ベクトルを抽出する。ステップ308において、この特徴ベクトルを用いることにより、分類器モジュール106によってスイミング特性を特定する。
【0020】
動的にセグメンテーションするステップ304は、以下において説明する複数のステップをさらに含む。ステップ310において、検出された入力信号202から少なくとも1つの主要軸信号をフィルタモジュール122により処理して、フィルタリングされた信号204を出力する。ステップ312において、ステートマシン条件に基づき、フィルタリングされた信号204からエンベロープ信号206を生成し、このエンベロープ信号206は、デフォルトでフィルタリングされた信号204に追従し、フィルタリングされた信号204の値が減少している場合には、予め定義された割合で下降する。下降している状態は、下降状態128と称される。最後に、フィルタリングされた信号204の値が、下降状態128にあるエンベロープ信号206の値を上回った場合には、フィルタリングされた信号204に追従する。追従している状態は、追従状態130と称される。ステップ314において、2つの追従状態130及び下降状態128のいずれか1つの発生に基づき、1つのストロークセグメントを検出する。
【0021】
特徴ベクトルは、先行のストロークセグメントと現在のストロークセグメントとから抽出される。特徴ベクトルは、以下を含むグループから選択される。即ち、Z軸における加速度計114の最小値、X軸におけるジャイロスコープ112の最小値、Z軸におけるジャイロスコープ112の最大値、X軸における加速度計の値の平均値、Y軸における加速度計の値の平均値、X軸におけるジャイロスコープの値の平均値、Y軸におけるジャイロスコープの値の平均値、X軸における加速度計の値の標準偏差、X軸におけるジャイロスコープの値の標準偏差、X軸におけるジャイロスコープの値の最小二乗平均(RMS)、X軸、Y軸及びZ軸に沿った加速度計の値の単純移動平均(SMA)、並びに、X軸、Y軸及びZ軸に沿ったジャイロスコープの値のSMAを含むグループから選択される。
【0022】
スイミング特性は、ストロークタイプ118及びストロークカウント116を含む。ストロークタイプ118は、分類器モジュール106によって、先行のストロークセグメント及び現在のストロークの特徴ベクトルに基づき特定される。ストロークカウント116は、検出されたストロークセグメント及びストロークタイプ118に基づき特定される。
【0023】
本発明によれば、ウェアラブルデバイス100においてスイミングストロークを動的にセグメンテーションする方法が開示される。ステップ310において、検出された入力信号202からフィルタモジュール122により少なくとも1つの主要軸信号を処理して、フィルタリングされた信号204を出力する。ステップ312において、ステートマシン条件に基づき、フィルタリングされた信号204からエンベロープ信号206を生成し、このエンベロープ信号206は、デフォルトでフィルタリングされた信号204に追従し、フィルタリングされた信号204の値が減少している場合には、予め定義された割合で下降する。下降している状態は、下降状態128と称される。最後に、フィルタリングされた信号204の値が、下降状態128にあるエンベロープ信号206の値を上回った場合には、フィルタリングされた信号204に追従する。追従している状態は、追従状態130と称される。ステップ314において、2つの追従状態130及び下降状態128のいずれか1つの発生に基づき、1つのストロークセグメントを検出する。このダイナミックセグメンテーション方法を、ストロークタイプ118及びストロークカウント116を特定するための他の方法と共に用いることができる。
【0024】
本発明によれば、少なくとも1つのモーションセンサ120を用いてスイミングストロークを検出しストロークを分類するコントローラ110及び方法が提供される。少なくとも1つのモーションセンサ120は、ジャイロスコープ112及び加速度計114から選択される。選択的に、単一の慣性測定ユニット(IMU)センサを用いることができる。検出される主なスイミングタイプ/スタイル118は、以下に限定されるものではないが、自由形、平泳ぎ、背泳ぎ及びバタフライである。コントローラ110は、スイミング分類のために第1及び第2の順序統計量を考慮する。本発明によれば、スイマーが子供、青年、成人等であるのかに関係なく、スイマーのスタイルに動的に適合してスイミング特性を検出するコントローラ110及び方法が提供される。さらに本発明は、同様にスイマーの腕長にも左右されない。
【0025】
これまで明細書において説明した実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないということを理解されたい。多くのこの種の実施形態及び明細書において説明した実施形態のさらに他の修正及び変更が考えられる。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】