(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】PD-L1を標的とするための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230405BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230405BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230405BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230405BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20230405BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20230405BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20230405BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230405BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230405BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
C12N15/113 140Z
A61K31/713
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/712
A61K31/7115
A61K31/7125
A61P1/16
A61P31/20
C07K14/705 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551765
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 US2021019628
(87)【国際公開番号】W WO2021173811
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521195607
【氏名又は名称】アリゴス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】ベイゲルマン レオニド
(72)【発明者】
【氏名】フィッツジェラルド メーガン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】モンテロ サウル マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャリア アニールバン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB332
4C084ZC032
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB33
4C086ZC75
4H045AA50
4H045BA10
4H045DA50
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
本開示は、ヒトにおけるプログラム死-リガンド1(PD-L1)発現の下方調節を引き起こすCD274のmRNA転写物を対象とする低分子干渉RNA(siRNA)分子に関する。siRNAは、修飾糖、核酸塩基、結合、又は共有結合した標的部分を示す非修飾ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドで構築することができる。肝疾患、癌、肝細胞癌、ウイルス疾患、又はB型肝炎を含むがこれらに限定されない、PD-L1関連疾患の治療のためのsiRNAの医薬組成物、及びsiRNAを使用する方法も本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス鎖及びアンチセンス鎖を含むヒトCD274 mRNAを標的とする低分子干渉RNA(siRNA)であって、前記アンチセンス鎖が、非修飾ヌクレオチド及び修飾ヌクレオシドからなる群から選択される18~21個のヌクレオチドを含み、
各修飾ヌクレオシドは、修飾糖を含有し、かつ修飾核酸塩基を含有するか、又は脱塩基である、又は両方とも修飾糖を含有し、かつ修飾核酸塩基を含有するか、又は脱塩基であり、
前記ヌクレオシド間の各結合が、ホスホロチオエート、ホスホジエステル、ホスホルアミダート、チオホスホルアミダート、メチルホスフェート、メチルホスホン酸、ホスホノアセテート、アミド、ボラノホスフェート、又はそれらの任意の組み合わせであり、
前記siRNAが、ヒトCD274 mRNAの断片に対して少なくとも85%相補的である、低分子干渉RNA(siRNA)。
【請求項2】
前記siRNAが、ヒトCD274 mRNAの断片へのゼロ、1つ、又は2つのミスマッチを含む、請求項1に記載のsiRNA。
【請求項3】
前記ミスマッチが、1又は9~m個の位置のうちのいずれか1つ以上で発生し、mが、前記アンチセンス鎖中のヌクレオチドの総数である、請求項2に記載のsiRNA。
【請求項4】
前記ミスマッチが、前記siRNAのシード領域では発生しない、請求項2~3のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項5】
前記シード領域が、2~8位にある、請求項4に記載のsiRNA。
【請求項6】
前記siRNAが、配列番号2-380のいずれか1つに記載の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項7】
前記siRNAが、18個のヌクレオチドを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項8】
前記siRNAが、19個のヌクレオチドを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項9】
前記siRNAが20個のヌクレオチドを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項10】
前記siRNAが21個のヌクレオチドを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項11】
2ヌクレオチドオーバーハングを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項12】
前記2ヌクレオチドオーバーハングが、前記CD274 mRNAに非相補的である、請求項11に記載のsiRNA。
【請求項13】
前記修飾糖が、2’-OMe、2’-F、2’-MOE、2’-araF、2’-araOH、2’-OEt、2’-O-アルキル、LNA、scpBNA、AmNA、cEt、ENA、及びGNAからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項14】
前記アンチセンス鎖が、5’-リン酸基又は5’-リン酸模倣物を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項15】
前記5’-リン酸模倣物が、5’-ビニルホスホネートである、請求項14に記載のsiRNA。
【請求項16】
標的部分を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項17】
前記標的部分が、5’末端、3’末端、又はその両方で前記siRNAにコンジュゲートされる、請求項16に記載のsiRNA。
【請求項18】
前記標的部分が、脂肪酸、GalNAc、葉酸、コレステロール、トコフェロール、又はパルミチン酸である、請求項16~17のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項19】
前記修飾ヌクレオシドが、
【化1】
からなる群から選択され、式中、R
1は水素又はC
1-7のアルキルである、請求項1~18のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項20】
前記塩基が、アデニン、グアニン、シトシン、5-メチルシトシン、チミン、及びウラシルからなる群から選択される、請求項19に記載のsiRNA。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の有効量のsiRNAと、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又はそれらの組み合わせと、を含む、医薬組成物。
【請求項22】
B型肝炎の治療に使用するための、請求項1~20のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項23】
肝細胞癌(HCC)の治療に使用するための、請求項1~20のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項24】
前記siRNAが、外科手術、放射線療法、化学療法、標的療法、免疫療法、ホルモン療法、又は抗ウイルス療法と組み合わせて使用される、請求項22~23のいずれか一項に記載のsiRNA。
【請求項25】
前記siRNAが、PD-L1に対するsiRNAと、B型肝炎ウイルス(HBV)に対するsiRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と、を含む、請求項24に記載のsiRNA。
【請求項26】
対象におけるB型肝炎を治療するための方法であって、必要とする前記対象に、有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載のsiRNAを投与すること、又は必要とする前記対象に、有効量の請求項21に記載の医薬組成物を投与すること含む、方法。
【請求項27】
対象における肝細胞癌(HCC)を治療するための方法であって、必要とする前記対象に、有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載のsiRNAを投与すること、又は必要とする前記対象に、有効量の請求項21に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項28】
外科手術、放射線療法、化学療法、標的療法、免疫療法、ホルモン療法、又は抗ウイルス療法を施すことを更に含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、化学、生化学、分子生物学、及び医学の分野に関する。本開示は、ヒトにおけるプログラム死-リガンド1(PD-L1)発現の下方調節を引き起こすCD274のmRNA転写物を対象とする低分子干渉RNA(siRNA)分子に関する。siRNAは、修飾糖、核酸塩基、結合、又は共有結合した標的及び/又は親油性部分を示す非修飾ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドで構築することができる。肝疾患、癌、肝細胞癌、ウイルス疾患、又はB型肝炎を含むがこれらに限定されない、PD-L1関連疾患の治療のためのsiRNAの医薬組成物、及びsiRNAを使用する方法も本明細書に開示される。
【背景技術】
【0002】
活性化CD4+及びCD8+T細胞の表面に発現するプログラム細胞死1(PD-1)免疫チェックポイントは、阻害機構を制御して、自己免疫を防止する。マクロファージ、樹状細胞、マスト細胞、並びに非造血細胞を含む多数の細胞型に発現されたプログラム死リガンド1(PD-L1)によるPD-1の係合は、エフェクターサイトカイン(例えば、IL-2、TNF-α、IFN-γ)産生の低減若しくは喪失、及び他の阻害受容体及び免疫チェックポイント(例えば、CTLA-4、LAG-3、及びBTLA)の上方制御をもたらすT細胞の枯渇、又はT細胞のアポトーシスを誘発する。PD-L1の高発現は、腫瘍免疫監視を逃れる多くのタイプの癌によって示され、予後不良と関連付けられている。PD-1媒介免疫抑制は、B型肝炎などのいくつかのウイルス感染症にも関連する。疾患の治療のためのPD-1/PD-L1療法及びその改善が継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で提供される実施形態は、PD-L1調節不全に関連する疾患又は症状の治療、抑制、改善、予防、又は緩徐化のためのCD274、その組成物、及びその使用を標的とする低分子干渉RNA(siRNA)分子に関連する。
【0004】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、ヒトCD274 mRNAを標的とする低分子干渉RNA(siRNA)に関する。いくつかの実施形態では、siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、非修飾ヌクレオチド及び修飾ヌクレオシドからなる群から選択される18~21個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、各修飾ヌクレオシドは、修飾糖を含有し、かつ修飾核酸塩基を含有するか、又は脱塩基である、又は両方とも修飾糖を含有し、かつ修飾核酸塩基を含有するか、又は脱塩基である。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド間の各結合は、ホスホロチオエート、ホスホジエステル、ホスホルアミダート、チオホスホルアミダート、メチルホスフェート、メチルホスホン酸、ボラノホスフェート、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、siRNAは、ヒトCD274 mRNAの断片に対して少なくとも85%相補的である。いくつかの実施形態では、siRNAは、ヒトCD274 mRNAの断片へのゼロ、1つ、又は2つのミスマッチを含む。いくつかの実施形態では、ミスマッチは、1又は9~m個の位置のうちのいずれか1つ以上で発生し、mは、アンチセンス鎖中のヌクレオチドの総数である。いくつかの実施形態では、ミスマッチは、siRNAのシード領域では発生しない。いくつかの実施形態では、シード領域は、2~8位にある。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号2-380のいずれか1つに記載の配列を有する。いくつかの実施形態では、siRNAは、18個のヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、siRNAは、19個のヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、siRNAは、20個のヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、siRNAは、21個のヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、siRNAは、2ヌクレオチドオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、2ヌクレオチドオーバーハングは、CD274 mRNAに非相補的である。いくつかの実施形態では、修飾糖は、2’-OMe、2’-F、2’-MOE、2’-araF、2’-OEt、2’-O-アルキル、LNA、scpBNA、AmNA、cEt、ENA、及びGNAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、5’-リン酸基又は5’-リン酸模倣物を含む。いくつかの実施形態では、5’-リン酸模倣物は、5’-ビニルホスホネートである。
【0005】
いくつかの実施形態では、siRNAは、標的及び/又は親油性部分を更に含む。いくつかの実施形態では、標的部分は、5’末端、3’末端、又はその両方でsiRNAにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、標的部分は、脂肪酸、GalNAc、葉酸、コレステロール、トコフェロール、又はパルミチン酸である。いくつかの実施形態では、siRNAは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシルからなる群から選択される塩基を含む。
【0006】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載される有効量の任意のsiRNA、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又はそれらの組み合わせを含む。
【0007】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、感染症又は癌などの障害又は疾患の治療に使用するため、例えば、B型肝炎の治療、又は肝細胞癌(HCC)の治療に使用するための、本明細書に記載の任意のsiRNA又は本明細書に記載の任意の医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、siRNAは、外科手術、放射線療法、化学療法、標的療法、免疫療法、ホルモン療法、又は抗ウイルス療法と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、siRNAは、PD-L1に対するsiRNAとB型肝炎ウイルス(HBV)に対するsiRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む。
【0008】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、対象の疾患又は障害を治療するための方法に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の有効量の任意のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量の任意の医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、B型肝炎又は肝細胞癌などの感染症又は癌である。いくつかの実施形態では、方法は、外科手術、放射線療法、化学療法、標的療法、免疫療法、ホルモン療法、又は抗ウイルス療法を施すことを更に含む。
【0009】
他の実施形態は、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上記の特徴に加えて、追加の特徴及び変形は、図面及び例示的な実施形態の以下の説明から容易に明らかになるであろう。これらの図面は、典型的な実施形態を示し、範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【
図1】本明細書で提供される例示的な修飾siRNA配列による治療後のsiRNAで治療したヒト肝細胞癌細胞(SNU-387細胞)中に残存するPD-L1 mRNAの画分を示す。
【
図2】本明細書で提供される例示的な修飾siRNA配列による治療の72時間後のマウス肝臓におけるPD-L1 RNAの相対遺伝子発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で参照される全ての特許、出願、公開出願、及び他の出版物は、特に明記しない限り、参照によりそれらの全体を明確に組み込む。本明細書のある用語に対して複数の定義が存在する場合、特に明記しない限り、この節にある定義が優先される。
【0012】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0013】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さから、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%だけ変化する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。
【0014】
本明細書全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise、comprises、及びcomprising)」という用語は、記載された構成若しくは要素、又は構成若しくは要素の群を含むが、任意の他の構成若しくは要素、又は構成若しくは要素の群を除外しないことを意味すると理解されるであろう。
【0015】
「からなる(consisting of)」とは、「からなる」という語句に続く全てのものを含むが、それらに限定されることを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在しない場合があることを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素について本開示で指定された活動又は行為に干渉しないか、又はそれに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活動又は行為に実質的に影響を及ぼすかどうかに応じて存在していてもよい、又は存在しなくてもよいことを示す。
【0016】
本開示の実施は、特に明記しない限り、当技術分野の範囲内の分子生物学及び組換えDNA技術の従来の方法を採用する。
【0017】
肝細胞癌(HCC)は、肝臓癌の最も一般的な形態である。HCCは、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、及びD型肝炎ウイルスなどの肝炎を引き起こす、アルコール摂取、肝硬変、及びウイルス感染などの様々な条件によって引き起こされ得る。これらの条件に関連する炎症、線維症、及び肝硬変は、患部の肝細胞における悪性腫瘍を誘発する可能性がある。HCCは、腫瘍の完全な外科的切除が可能であるかどうかに応じて、約30%の5年生存率の予後不良を有する。
【0018】
初期疾患の場合、外科的切除が採用される。しかしながら、ほとんどのHCCは、診断が困難であるため、後期で特定される。後期の診断時に、腫瘍は切除不能であり、ほとんどの患者には全身療法が施される。最前線での現在の標準治療は、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ及び/又はレンバチニブを含む)である。大部分の患者は、これらの治療に反応しないか、又は病気を再発し、血管新生阻害剤(例えば、レゴラフニブ、カボザンチニブ、及び/又はラムシルマブ)又は免疫チェックポイント阻害剤(例えば、ニブルマブ及び/又はペンブロリズマブを含む)を使用する次善の療法を受ける。しかしながら、ほとんどの患者は、第1及び第2の療法に反応せず、臨床的恩恵は少なく、全生存期間は1年を超えない。更に、バイオマーカ駆動療法を欠いている。したがって、HCC及び関連する肝障害の治療のために、より許容可能で有効な治療法を開発する必要がある。
【0019】
HBVは、約3.2キロベース(kb)対の部分二本鎖の円形DNAであり、A~Hの8つの遺伝子型に分類される。HBV増殖経路は、非常に詳細に研究されている。複製の一部分は、共有結合閉環状DNA(covalently closed circular DNA、cccDNA)形態の形成を含む。cccDNAの存在は、宿主生物の寿命にわたってウイルスの再出現のリスクを引き起こす。HBV保有者は、数年にわたって疾患を伝播させることができる。推定3億人の人々がB型肝炎ウイルスに感染した状態で生きており、世界的に750,000人を超える人々が毎年B型肝炎で死亡すると推定される。加えて、免疫抑制個体又は化学療法を受けている個体は、特にHBV感染の再活性化のリスクがある。HBVは、急性及び/又は慢性であり得る。急性HBV感染は、無症候性であるか、又は症候性急性肝炎を示すかのいずれかであり得る。
【0020】
HBVは、血液、精液、及び/又は別の体液によって伝播され得る。これは、血液と血液との直接接触、無防備な性交渉、針の共有により起こることがあり、感染した母親からその乳児に出産過程中に起こることもる。HBV表面抗原(HBsAg)は、この感染の存在をスクリーニングするために最も頻繁に使用される。現在利用可能な薬剤は、HBV及び/又はHDV感染症を治癒させない。むしろ、薬剤は、ウイルスの複製を抑制する。
【0021】
D型肝炎ウイルス(hepatitis D virus、HDV)は、HepadnaviridaeファミリーのウイルスにおいてもDNAウイルスである。HDVは、HBVの存在下でのみ伝播することができる。HDVの伝播経路は、HBVの経路と同様である。HDVの伝播は、HBVとの同時感染(共感染)を介して、又は慢性B型肝炎若しくはB型肝炎保有状態に加えて(重感染)のいずれかで生じ得る。HDVによる重感染及び共感染の両方は、HBV単独による感染と比較して、より深刻な合併症をもたらす。これらの合併症としては、急性感染症における肝臓障害、更には肝硬変への急速な進行を経る可能性が高いことが挙げられ、慢性感染においては、肝癌を発症するリスクが増大することが挙げられる。B型肝炎との合併症において、D型肝炎は、全ての肝炎感染の中で20%の最も高い致死率を有する。現在、D型肝炎のための治癒又はワクチンは存在しない。
【0022】
プログラム細胞死1又はプログラム死1(PD-1)は、T細胞及び他の免疫細胞上の表面マーカとして発見される268アミノ酸長型I膜貫通タンパク質である。免疫チェックポイントとして、PD-1は、自己免疫障害を防ぐために免疫応答を負に調節するのに役立つ。PD-1タンパク質(NCBIアクセッション番号NP_005009.2)は、分化クラスタ279(CD279)遺伝子(NCBIアクセッション番号NG_012110.1)又はmRNA転写物(NCBIアクセッション番号NM_005018.3)から発現される。いくつかの好ましい実施形態では、PD-1はヒトPD-1タンパク質であり、CD279は、染色体2上のヒトCD279転写物又は遺伝子である。当業者であれば、核酸(DNA若しくはRNA)又は対応する翻訳されたタンパク質、又はそれらの配列を考慮すると、用語PD-1及びCD279は、しばしば名目上交換可能とみなすであろうと理解されたい。
【0023】
B7ホモログ1(B7-H1)としても知られるプログラム細胞死-リガンド1、又はプログラム死リガンド1(PD-L1)は、多くの異なる細胞型上の表面マーカとして見出される272アミノ酸長型I膜貫通タンパク質である。PD-L1は、PD-1の主要なリガンドであり、T細胞の細胞毒性及びサイトカイン産生の阻害をもたらす。HCC細胞などの癌細胞は、PD-L1発現を上方調節することによってこの免疫チェックポイントを利用し、近位T細胞による機能不全抗腫瘍免疫をもたらす。ウイルスはまた、感染力を高めるためにPD-1/PD-L1経路を調節することが観察されている。B型肝炎ウイルスは、感染した肝細胞におけるPD-L1を上方調節することが示されており、PD-1は、関連するT細胞である。PD-L1タンパク質(NCBIアクセッション番号NP_054862.1)は、分化クラスタ274(CD274)転写物(NCBIアクセッション番号NM_014143.4)から発現される。いくつかの好ましい実施形態では、PD-L1は、ヒトPD-L1タンパク質であり、CD274は、染色体9上のヒトCD274転写物又は遺伝子である。当業者であれば、核酸(DNA又はRNA)又は対応する翻訳されたタンパク質、又はそれらの配列を考慮すると、用語PD-L1及びCD274は、しばしば名目上交換可能とみなすであろうと理解されたい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、非修飾ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又は修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドとの組み合わせを含む一本鎖核酸分子を指す。siRNAの文脈において、オリゴヌクレオチドは、センス鎖(S鎖)又はアンチセンス鎖(AS鎖)などのsiRNAの鎖を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「非修飾ヌクレオチド」は、デオキシリボース糖又はリボース糖と、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、及びウラシルから選択される核酸塩基と、を有するヌクレオチドである。非修飾ヌクレオチドはまた、シチジン、ウリジン、5-メチルウリジン、グアノシン及びアデノシン、デオキシシチジン、デオキシウリジン、デオキシグアノシン、デオキシアデノシン、及びチミジンから選択されるヌクレオシドを有するとみなすことができる。デオキシリボース、リボース、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、シチジン、ウリジン、5-メチルウリジン、グアノシン、アデノシン、デオキシシチジン、デオキシウリジン、デオキシグアノシン、デオキシアデノシン、及びチミジンの構造は、当業者にとって既知である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「デオキシリボース糖」は、以下の構造を有する
【化1】
Bは、核酸塩基を示す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「リボース糖」は、以下の構造を有する
【化2】
Bは、核酸塩基を示す。
【0028】
【0029】
本明細書で使用される場合、3’又は5’結合を含む場合、「修飾ヌクレオシド」又は「修飾ヌクレオチド」は、(a)修飾糖を含むか、又は含有する、(b)修飾塩基を含む、又は含有する、又は脱塩基である、又は(c)両方ともが(a)修飾デオキシリボースを含むか、又は含有する、(b)修飾塩基を含む、又は含有する、又は脱塩基であるヌクレオシドを指す。修飾糖は、修飾デオキシリボース糖又は修飾リボース糖のいずれかを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「修飾デオキシリボース」という用語は、非水素置換基で1つ以上の位置で置換されたデオキシリボース糖を指す。デオキシ糖環上の修飾は、2’-炭素を含む、環の任意の位置にあり得る。本明細書で使用される場合、「修飾リボース糖」という用語は、非水素置換基で1つ以上の位置で置換されたリボース糖を指す。デオキシリボース糖又はリボース糖の修飾は、2’-炭素を含む、環の任意の位置にあり得る。
【0031】
修飾糖の例としては、限定するものではないが、2’-デオキシ-2’-フルオロリボース(2’-F)、2’-デオキシ-2’-フルオロ-アラビノヌクレオチド(2’-araF)、2’-アラビノヌクレオチド(2’-araOH)、2’-O-メチルリボース(2’-OMe)、2’-O-(2-メトキシエチル)リボース(2’-MOE)、ロック核酸(LNA)、2’-O-エチルリボース(2’-OEt)、2’ーO-アルキル、(S)-拘束エチル(cEt)、エチレン架橋核酸(ENA)、4’-C-スピロシクロプロピレン架橋核酸(scpBNA)、アミド架橋核酸(AmNA)、ロック解除核酸(UNA)、及びグリコール核酸(GNA)が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「2’-F」は、2’フッ素置換を有し、以下の構造を有する修飾デオキシリボース糖を指す
【化4】
【0033】
本明細書で使用される場合、「2’-araF」は、2’位に結合したフッ素基を有し、以下の構造を有する修飾リボース糖を指す
【化5】
【0034】
本明細書で使用される場合、「2’-araOH」は、2’位に結合したヒドロキシ基を有し、以下の構造を有する修飾リボース糖を指す
【化6】
【0035】
本明細書で使用される場合、「2’-OMe」は、2’ヒドロキシルに結合したメチル基を有し、以下の構造を有する修飾リボース糖を指す
【化7】
【0036】
本明細書で使用される場合、「2’-MOE」は、2’ヒドロキシルに結合した2-メトキシエチル基を有し、以下の構造を有する修飾リボース糖を指す
【化8】
【0037】
本明細書で使用される場合、「ロック核酸」又は「LNA」は、5員環の2’位を4’位に接続する結合を含む修飾リボース糖を指す。ロック核酸の例には、
【化9】
並びに国際公開第2011/052436号、同第2014/046212号、及び同第2015/125783号に記載されているものが含まれ、各々がLNAの開示の目的のために参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「2’-O-エチル」は、2’ヒドロキシルに結合したエチル基を有し、以下の構造を有する修飾リボース糖を指す
【化10】
【0039】
本明細書で使用される場合、「cEt」は、2’ヒドロキシル及び4’炭素を架橋するメチルを含み、以下の構造を有する修飾リボース糖を指す
【化11】
【0040】
本明細書で使用される場合、「scpBNA」は、シクロプロパンが2’ヒドロキシル及び4’炭素を架橋し、以下の構造を有する修飾リボース糖を指す
【化12】
【0041】
本明細書で使用される場合、「AmNA」は、2’及び4’炭素がアミド結合で架橋され、以下の構造を有する修飾リボース糖を指す
【化13】
【0042】
本明細書で使用される場合、「ロック解除核酸」又は「UNA」は、5員糖環の2’位と3’位との間の結合が存在しない(非環式リボース)を指し、以下の構造を有する修飾ヌクレオチドを指す
【化14】
【0043】
構造の各々において、核酸塩基を指す「塩基」は、非修飾塩基、修飾塩基であり得る、又はヌクレオチドが存在しないように脱塩基であり得る。指定されていない場合、ヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又は脱塩基であり得る。
【0044】
「修飾塩基」は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、及びウラシル以外の任意の塩基を指す。例えば、修飾塩基は、置換アデニン、置換シトシン、置換5-メチルシトシン、置換グアニン、置換チミン、又は置換ウラシルであり得る。あるいは、修飾塩基は、置換シチジン、置換5-メチル-シチジン、置換ウリジン、置換5-メチルウリジン、置換グアノシン、置換アデノシン、置換デオキシシチジン、置換5-メチル-デオキシシチジン、置換デオキシウリジン、置換デオキシグアノシン、置換デオキシアデノシン、又は置換チミジンなどの修飾ヌクレオシドを構成することができる。
【0045】
ヌクレオチド間の特定の結合が特定されていない場合、結合は、ホスホジエステル又は非ホスホジエステル結合であり得、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸、ホスホルアミダート、チオホスホルアミダート、ホスホノアセテート、アミド結合、又はボラノホスフェート結合などの3’-5’結合及び2’-5’結合であり得る。ホスホジエステルは、以下の構造の
【化15】
を有することができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、ホスホロチオエートは、当業者によって理解されるように使用され、1つの酸素が硫黄で置き換えられるリン酸塩を指す。ホスホロチオエートは、以下の構造の
【化16】
を有することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、メチルホスホン酸は、当業者によって理解されるように使用され、1つの酸素がメチルで置き換えられるリン酸塩を指す。メチルホスホン酸は、以下の構造を有することができる
【化17】
【0048】
本明細書で使用される場合、ホスホルアミダートは、当業者によって理解されるように使用され、1つの酸素がアミドで置き換えられるリン酸塩を指す。ホスホルアミダートは、以下の構造を有することができる
【化18】
【0049】
本明細書で使用される場合、チオホスホルアミダートは、当業者によって理解されるように使用され、一1つの酸素が硫黄で置き換えられ、1つの酸素がアミドで置き換えられるリン酸塩を指す。チオホスホルアミダートは、以下の構造を有することができる
【化19】
【0050】
本明細書で使用される場合、ホスホノアセテートは、当業者によって理解されるように使用され、1つの酸素が、-CH
2-C(=O)O
-又は-CH
2-C(=O)OHで置き換えられるリン酸塩を指す。ホスホノアセテートは、以下の構造の
【化20】
を有することができる。
【0051】
本明細書で使用される場合、アミド結合は、当業者によって理解されるように使用され、アミドを指す。アミド結合は、以下の構造を有することができる
【化21】
【0052】
本明細書で使用される場合、ボラノホスフェートは、当業者によって理解されるように使用され、1つの酸素がホウ素基で置換されているリン酸塩を指す。ボラノホスフェートは、以下の構造を有することができる
【化22】
【0053】
いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、全てのホスホジエステル結合と連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、全てのホスホロチオエート結合と連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、全てのメチルホスホン酸結合と連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、全てのホスホルアミダート結合と連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、全てのチオホスホルアミダート結合と連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、全てのホスホノアセテート結合と連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、全てのアミド結合と連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、全てのボラノホスフェート結合と連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、ホスホジエステル及びホスホロチオエート結合の組み合わせと連結される。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドは、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸、ホスホルアミダート、チオホスホルアミダート、ホスホノアセテート、アミド、及びボラノホスフェート結合の組み合わせと連結され、少なくとも1つのタイプの結合が存在しない組み合わせも含む。
【0054】
当業者であれば、結合が非ホスホジエステル結合である場合、リンがキラル中心であり得ることを理解するだろう。例えば、ホスホロチオエートにおいて、リンは、(R)-立体中心又は(S)-立体中心であり得る。いくつかの実施形態では、非ホスホジエステル結合の各リンは、(R)-立体中心であり得る。他の実施形態では、非ホスホジエステル結合の各リンは、(S)-立体中心であり得る。例えば、各ヌクレオチド間にホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドにおいて、各ホスホロチオエートは、(S)配置であり得る。更に他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの非ホスホジエステル結合を含み得、リンは、(S)立体中心、及び少なくとも1つの非ホスホジエステル結合であり得、リンは、(R)-立体中心であり得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド内の特定の結合は、ラセミ混合物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド内の特定の結合は、(R)及び(S)立体異性体の不均等な混合物中に存在し得る。例えば、特定の結合が存在し得、(R)と(S)立体異性体との比は、0%:100%、10%:90%:、20%:80%、30%:70%、40%:60%、50%:50%、60%:40%、70%:30%、80%:20%、90%:10%、100%:0%、又は任意の2つの前述の比の間に定義される範囲内の任意の比である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド内の特定の結合は、鏡像異性的に純粋、(R)鏡像異性的に純粋な、又は(S)鏡像異性的に純粋である。
【0055】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の任意の化合物において、絶対立体化学が明示的に示されない場合、各中心が独立して、R配置若しくはS配置、又はこれらの混合物であってもよいことが理解される。したがって、本明細書に提供される化合物は、鏡像異性的に純粋な、鏡像異性的富化した、ラセミ混合物、ジアステレオマー的に純粋な化合物、ジアステレオマー的富化した化合物、又は立体異性混合物であってもよい。同様に、記載の任意の化合物において、全ての互変異性型もまた含まれるよう意図されることが理解される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「低分子干渉RNA」又は「siRNA」という用語は、本明細書に照らして理解されているような通常の意味を有し、siRNAに相補的なヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子の発現を妨害する二本鎖RNA分子のクラスを指す。siRNAは、典型的には、リン酸化5’末端とヒドロキシル化3’末端、及び2つのオーバーハングヌクレオチドを有する短二本鎖RNA(dsRNA)の明確な構造を有する。ダイサー酵素は、長dsRNA及び小ヘアピンRNA(shRNA)からのsiRNAの産生に触媒作用を及ぼす。二本鎖siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と会合し、一本鎖(パッセンジャー又はセンス鎖)は失われ、残りの鎖(ガイド鎖又はアンチセンス鎖)はRISと協働して相補的な標的RNAに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるsiRNAは、長さが15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35の塩基対など、約15~約35の塩基対を含み得る。いくつかの実施形態では、siRNAアンチセンス鎖は、転写サイレンシングを開始するために、CD274 mRNAなどの標的mRNAの断片又は一部に相補的である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるsiRNAは、修飾を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾のいずれかがセンス鎖に適用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾のいずれかが、アンチセンス鎖に適用される。いくつかの実施形態では、修飾は、siRNAの分解の制限、siRNAの半減期の改善、効力、活性、安定性、安全性、有効性、溶解度、透過性、選択性、生物学的利用能、又は融解温度の改善などの、1つ以上の有益な特性を付与する。
【0057】
いくつかの実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、5’-リン酸を含む。いくつかの実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、5’-リン酸模倣物を含む。リン酸塩又はリン酸模倣物は、糖環又はその組み合わせに対してOC及び/又はβ配置を含む。リン酸塩又はリン酸模倣物は、天然ホスフェート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ボラノホスフェート、ボラノチオホスフェート、ホスホネート、ハロゲン置換ホスホネート、ホスホルアミダート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、チオホスホジエステル、チオホスホトリエステル、ジホスフェート、及び/又はトリホスフェートである。好適なリン酸模倣物としては、5’-メチレンホスホネート(5’-MP)及び5’-(E)-ビニルホスホネート(5’-VP)などの5’-ホスホネート、並びに4’-オキシメチルホスホン酸、4’-チオメチルホスホン酸、又は4’-アミノメチルホスホン酸などの、オリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの糖部分(例えば、リボース又はデオキシリボース又はその類似体)の4’-炭素に結合した4’-リン酸類似体が挙げられる。いくつかの実施形態では、5’-リン酸模倣物は、5’-ビニルホスホネートである。
【0058】
siRNAは、標的部分などの少なくとも1つの部分で修飾され得る。いくつかの実施形態では、標的部分は、親油性部分である。いくつかの実施形態では、標的部分は、CH-3(CH2)n(CH)mCOOHの一般構造を有する長鎖脂肪酸であり、nは1~30の範囲の整数であり、mは1~30の範囲の整数である。標的部分の例としては、限定されないが、N-アセチルガラクトサミン(例えば、GalNAc3、GalNAc4、GalNAc5、GalNAc6、及び/又はGalNAc7などのトリアンテナリーGalNAcを含むGalNAc)、葉酸、コレステロール、トコフェロール、ビタミンE、又はパルミチン酸が挙げられる。長鎖脂肪酸の追加の例としては、ドコヘキサン酸、ドコサン酸、リノール酸(オメガ-6)、リノレン酸(オメガ-3)、オレイン酸、オクタン酸、デカノイル酸、ドデカノイル酸、ステアリン酸、エイコサン酸、及びアラキドン酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標的部分は、肝臓、心臓、肺、脳、骨、筋肉、腎臓、胃、小腸、大腸、又は膵臓などの特定の器官又は組織へのsiRNAの優先的な標的化をもたらす。いくつかの実施形態では、標的部分は、siRNAの5’末端にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、標的部分は、siRNAの5’リン酸にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、標的部分は、siRNAの3’末端にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、標的部分は、siRNAの3’糖ヒドロキシルにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、標的部分は、5’末端にコンジュゲートされ、別の標的部分は、siRNAの3’末端にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、第2の標的部分は、第1の標的部分にコンジュゲートすることができる。いくつかの実施形態では、標的部分は、リンカーで結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、若しくはウラシルヌクレオチドなどのヌクレオチド、又はトリエチレングリコール(TEG)、ヘキサエチレングリコール(HEG)、又はアルキルアミノリンカーを含む非ヌクレオシドリンカーである。
【0059】
本明細書で使用される場合、GalNAcは、以下の構造
【化23】
(式中、RはOH又はSHであり、nは任意の整数である)を有する。いくつかの実施形態では、siRNAをGalNAc部分に連結するこの構造に示されるデオキシシトシンヌクレオチドは、任意選択であり、省略することができる。いくつかの実施形態では、nは、0~10、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の範囲である。例えば、GalNAc4の場合、n=1、及びGalNAc6の場合、n=2である。しかしながら、nは、任意の整数に等しくてもよく、標的部分の所望の特性に基づいて選択されてもよいことを理解されたい。
【0060】
本明細書で使用される場合、「X量体」という用語は、「X」ヌクレオチド長であるオリゴヌクレオチド又は核酸ポリマーを指す。例えば、14量体は、14ヌクレオチド長であるオリゴヌクレオチド又は核酸ポリマーであり、20量体は、20ヌクレオチド長であるオリゴヌクレオチド又は核酸ポリマーである。いくつかの実施形態では、「X」は、ヌクレオチドの総数を指す。他の実施形態では、「X」は、標的への結合に関与するヌクレオチドの数を指すが、オリゴヌクレオチド又は核酸ポリマーは、標的への結合に関与しない追加のヌクレオチド又は成分を有してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのsiRNAが肝疾患を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、肝疾患は、限定するものではないが、肝臓癌、肝細胞癌(HCC)、胆管癌、肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのsiRNAは、肝疾患に関与する遺伝子の発現をサイレンシングするために使用される。いくつかの実施形態では、遺伝子はCD274である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのsiRNAは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%だけの疾患若しくは症状の減少、又は前述の値のうちのいずれか2つによって定義される範囲内の量の減少をもたらす。
【0062】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、天然状態で通常は付随する成分を実質的に又は本質的に含まない材料を指す。例えば、本明細書で使用される場合、「単離された細胞」は、天然に存在する状態の環境又は生物から精製された細胞、対象又は培養物から除去された細胞、例えば、インビボ又はインビトロ物質に有意に関連していない細胞を含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、いかなる保護基及び他の化合物の略語も、別途示されない限り、それらの一般的な使用法に従って使用される。
【0064】
本明細書に開示される化合物が充填されていない原子価を有する場合、その原子価が、水素又はその同位体、例えば、水素-1(プロチウム)及び水素-2(重水素)で充填されることを理解されたい。
【0065】
本明細書に記載の化合物が同位体で標識され得ることが理解される。重水素などの同位体での置換は、例えば、インビボ半減期の増加又は必要投与量の低減など、より大きい代謝安定性に起因するある特定の治療上の利点をもたらし得る。化合物構造中に表される各化学元素は、当該元素の任意の同位体を含んでもよい。例えば、化合物構造において、水素原子は、化合物中に存在すると明確に開示され得るか、又は理解され得る。水素原子が存在し得る化合物の任意の位置において、水素原子は、水素-1(プロチウム)及び水素-2(重水素)が挙げられるが、これらに限定されない、水素の任意の同位体であってもよい。したがって、本明細書における化合物に対する言及は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、全ての可能な同位体形態を包含する。
【0066】
値の範囲が提供される場合、上限及び下限、並びにその範囲の上限と下限との間に介在する各値が、実施形態内に包含されることが理解される。
siRNA合成
【0067】
2’-OMe、2’-MOE、及びLNAホスホロアミダイトモノマーの各々は、市販の供給源から調達した。全てのモノマーを、乾燥剤(P2O5、RT24h)を用いて真空デシケータ内で乾燥させた。ユニバーサル固体支持体(CPG)結合は、ChemGenesから入手した。合成ワークフローのための化学物質及び溶媒は、VWR/Sigma市販の供給源から購入し、精製又は処理なしで使用した。溶媒(アセトニトリル)及び溶液(アミダイト及び活性化剤)を、合成中、モレキュラーシーブ上に保存した。
【0068】
対照オリゴヌクレオチド配列及び標的オリゴヌクレオチド配列を、必要に応じて待機工程及び連結工程に対して修正を加えて製造業者によって書かれた標準サイクルを使用して、Expedite8909シンセサイザ上で合成した。固体支持体は、制御された細孔ガラスであり、モノマーは、標準的な保護基を含有した。各キメラオリゴヌクレオチドは、標準的な固相ホスホルアミダイト合成プロトコルに従って、市販の5’-O-(4、4’-ジメトキシトリチル)-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピル)DNA、6-N-ベンゾイルアデノシン(ABz)の2’-OMe、2’-MOE、及び/又はLNAホスホロアミダイトモノマー、4-N-アセチルシチジン(CAc)、2-N-イソブチリルグアノシン(GiBu)、及びウリジン(U)又はチミジン(T)を用いて個々に合成した。2’-O-Me-2,6、ジアミノプリンホスホロアミダイトは、Glen Researchから購入した。ホスホロアミダイトを、無水アセトニトリル中0.1M溶液として調製した。5-エチルチオテトラゾールを活性化剤として使用し、ジクロロメタン中3%ジクロロ酢酸を脱トリチルのために使用し、THF中の無水酢酸及びTHF中16%N-メチルイミダゾールをキャップ形成のために使用し、DDTT((ジメチルアミノ-メチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾリン-3-チオンを、オリゴリボヌクレオチドホスホロチオエートの合成のための硫黄移動剤として使用した。5-(エチルチオ)-1Hテトラゾール活性化剤の存在下でのCH3CN中ホスホロアミダイト0.1M溶液の固体結合オリゴヌクレオチドへの拡張カップリング、その後の拡張キャッピング、酸化及び脱保護により、修飾オリゴヌクレオチドを得た。全ての修飾ホスホロアミダイトの段階的なカップリング効率は、98.5%を超えた。
【0069】
固体支持体からの脱保護及び切断は、65℃で15分間のアンモニアメチルアミン(1:1、AMA)との混合で達成され、ユニバーサルリンカーを使用した場合、脱保護を65℃で90分間放置するか、固体支持体を水酸化アンモニウム溶液(28%)と共に55℃で8時間加熱して、塩基不安定保護基を脱保護した。濾過して固体支持体を除去した後、脱保護溶液をGeneVac遠心蒸発器内で真空下で除去した。表1-3は、2’-OMe、2’-MOE、及びLNAホスホロアミダイトモノマーの例示的な構造を示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0070】
6-N-ベンゾイルアデノシン(A
Bz)、4-N-アセチルシチジン(C
Ac)、2-N-イソブチリルグアノシン(G
iBu)、及びチミジン(T)のAmNA及びScp-BNAホスホロアミダイトモノマーをLUXNA Technologiesから入手した。全てのモノマーを、乾燥剤(P
2O
5、室温で24時間)を用いて真空デシケータで乾燥させた。AmNA-PS-DNA-PS及びscp-BNA-PS-DNA-PS修飾に関しては、合成を、0.3M5-(ベンジルチオ)-1Hテトラゾール活性化剤の存在下で(カップリング時間16~20分)、無水CH
3CN中で0.12Mの濃度に希釈したホスホロアミダイトモノマーを用いて、1μMスケールで3’から5’方向に行い、固体結合オリゴヌクレオチドを得た後、修飾キャッピング、酸化、及び脱保護を行って、修飾オリゴヌクレオチドを得た。全ての修飾ホスホロアミダイトの段階的なカップリング効率は97%を超えた。DDTT(ジメチルアミノ-メチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアザロリン-3-チオンを、オリゴリボヌクレオチドホスホロチオエートの合成のための硫黄移動剤として使用した。オリゴヌクレオチド担持固体支持体を、アセトニトリル中の20%DEA溶液で15分間洗浄し、次いでカラムをAcCNで完全に洗浄した。担体を、ジイソプロピルアミン:水:メタノール(1:1:2)をヒートブロック中で65℃で5時間加熱し、支持体から切断し、塩基不安定保護基を脱保護する。表4及び5は、AmNA及びScp-BNAホスホロアミダイトモノマーの例示的な構造を示す。
【表4】
【表5】
【0071】
コレステロール、トコフェロールホスホロアミダイト、及び固体支持体は、ChemGenesから入手した。コレステロール及びトコフェロール共役オリゴヌクレオチドは、3’コンジュゲーションのためにTEGリンカー上に結合したコレステロール及びトコフェロール支持体上で固相合成を開始することによって得られたが、ホスホロアミダイトの最終カップリングは5’共役オリゴヌクレオチドを提供した。
【化24】
粗オリゴマー又は生分析の定量
【0072】
試料を脱イオン水(1.0mL)に溶解し、以下のように定量化した。ブランキングを水単独(1.0mL)で最初に行い、次いで、20μLの試料及び980μLの水をマイクロチューブ内で十分に混合し、キュベットに移し、260nmで吸光度読取値を得た。粗物質を乾燥させ、-20℃で保存した。
粗HPLC/LC-MS分析
【0073】
0.1ODの粗試料を、粗MS分析に使用した。粗LC-MSデータを確認した後、精製工程を実行した。
HPLC精製
【0074】
ホスホジエステル(PO)、ホスホロチオエート(PS)、及びキメラ修飾オリゴヌクレオチドを、アニオン交換HPLCによって精製した。緩衝液は、10%CH3CN中20mMのリン酸ナトリウム、pH8.5(緩衝液A)、及び10%CH3CN中20mMのリン酸ナトリウム、1.8MのNaBr、pH8.5(緩衝液B)であった。全長オリゴヌクレオチドを含有する画分をプールし、脱塩し、凍結乾燥した。
【0075】
共役オリゴヌクレオチドを、インハウス充填RPC-Source15逆相カラムによって精製した。緩衝液は、10%CH3CN中20mMの酢酸ナトリウム(緩衝液A)、及びCH3CN(緩衝液B)であった。全長オリゴヌクレオチドを含有する画分をプールし、脱塩し、凍結乾燥した。
精製オリゴマーの脱塩
【0076】
次いで、精製した乾燥オリゴマーを、Sephadex G-25M(Amersham Biosciences)を使用して脱塩した。カートリッジを10mLの脱イオン水で3回調整した。2.5mLの脱イオン水に完全に溶解した精製オリゴヌクレオチドを、極めてゆっくりと滴下してカートリッジに適用した。塩を含まないオリゴマーを3.5mLの脱イオン水で直接スクリューキャップバイアルに溶出した。
最終HPLC及びエレクトロスプレーLC/MS分析
【0077】
約0.10ODのオリゴマーを水に溶解し、次いでIEX-HPLC及びLC/MS分析のために特別なバイアル内でピペットで移した。分析HPLC及びESLC-MSは、キメラオリゴヌクレオチドの完全性を確認した。
【0078】
コレステロール及びトコフェロール共役配列を、Luna C8逆相カラム上の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって分析した。緩衝液は、10%CH3CN中20mMのNaOAc(緩衝液A)及び70%CH3CN中20mMのNaOAc(緩衝液B)であった。分析HPLC及びESLC-MSは、共役オリゴヌクレオチドの完全性を確認した。
合成後共役:
【0079】
5’-葉酸共役siRNA:0.1Mの四ホウ酸ナトリウム緩衝液中5’-ヘキシルアミノsiRNAに、DMSO(40mM)中に溶解した葉酸-NHSエステル(3モル当量)のpH8.5(2mM)の溶液を添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を水に溶解し、強アニオン交換カラム(GE Healthcare Bioscience、Source 30Q、30μm、2.54×8cm、A=30%水性CH
3CN中100mM酢酸アンモニウム、B=A中1.8MのNaBr、0~60%のB、60分、流量10mL/分)でHPLCによって精製した。残渣をインハウス充填Sephadex G-25カラムによって脱塩して、62~80%の単離された収率で5’-葉酸共役siRNAを得た。葉酸共役siRNAは、IEX-HPLC及びThermo Fischer ESI-LC-MSシステムによって特徴付けられた。表6は、例示的な核酸及び構造を示す。
【化25】
【表6-1】
【表6-2】
【0080】
表6に示される構造のいずれも、任意の塩基と組み合わせることができ、それによって構造の様々な組み合わせを生成することができる。例えば、表6からの略語及び構造を使用して、当業者であれば、略語「AmG」が
【化26】
を表すことを理解するであろう。更に、表に示されていないが、本出願全体を通じて他の箇所に記載されている追加の構造を、表又は本出願全体を通じて他の箇所に記載されている任意の塩基と組み合わせることができる。
医薬組成物
【0081】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の有効量のsiRNA及び薬学的に許容される担体、賦形剤、又はそれらの組み合わせを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる医薬組成物に関する。本明細書に記載の医薬組成物は、ヒト及び/又は獣医学的用途に好適である。
【0082】
本明細書で使用される「機能」及び「機能的」という用語は、生物学的、酵素的、又は治療的機能を指す。
【0083】
「有効量」又は「有効用量」という用語は、示される生物学的又は医学的応答を誘発する、活性化合物又は薬剤の量を示すために使用される。例えば、化合物の有効量は、疾患の症状を緩和若しくは回復させるか、又は治療されている対象の生存を延長するために必要とされる量であり得る。この応答は、組織、系、動物又はヒトにおいて生じ得、治療されている疾患の兆候又は症状の緩和を含む。有効量の決定は、本明細書に提供される開示を考慮して、十分当業者の能力の範囲内である。用量として必要とされる本明細書に開示される化合物の有効量は、投与経路、治療されているヒトを含む動物の種類、及び考慮中の特定の動物の身体特性によって決まる。用量は、所望の効果を達成するように合わせて調整され得るが、体重、食生活、併用投薬、及び医療分野の当業者が認識するであろう他の要因などの要因によって決まる。
【0084】
「薬学的に許容される塩」という用語は、限定するものではないが、鎮痛剤、治療薬、他の材料などを含む、比較的非毒性の無機及び有機酸、又は組成物の塩基付加塩を含む。薬学的に許容される塩の例としては、塩酸及び硫酸などの無機酸から得られる塩、並びにエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸から得られる塩が挙げられる。塩の形成に好適な無機塩基の例としては、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などの水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩が挙げられる。塩はまた、非毒性であり、かかる塩を形成するのに十分に強い塩基を含む、好適な有機塩基で形成され得る。例えば、そのような有機塩基のクラスは、メチルアミン、ジメチルアミン、及びトリエチルアミンを含む、モノ-、ジ-、及びトリアルキルアミン;モノ-、ジ-、及びトリエタノールアミンを含むモノ-、ジ-、又はトリヒドロキシアルキルアミン;グリシン、アルギニン、及びリジンを含むアミノ酸;グアニジン、N-メチルグルコサミン;N-メチルグルカミン;L-グルタミン;N-メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジルフェネチルアミン;トリヒドロキシメチルアミノエタン、を含み得るが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で互換的に使用される「製剤」、「医薬組成物」、及び「組成物」は、対象への投与のための物質の組成物を指す等価用語である。
【0086】
「薬学的に許容される」という用語は、対象、特にヒトの治療に適合することを意味する。
【0087】
「薬剤」という用語は、生物学的活性を有し、療法において使用され得る活性剤を指す。また、「薬剤」は、「少なくとも1つの薬剤」、「化合物」、又は「少なくとも1つの化合物」と同義であり得、誘導体、類似体、塩、又はプロドラッグなどの薬剤の任意の形態を指すことができる。薬剤は、様々な形態、分子錯体の成分、及び薬学的に許容される塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、及びサリチル酸塩)中に存在し得る。「薬剤」という用語はまた、任意の医薬分子又は化合物、治療分子又は化合物、マトリックス形成分子又は化合物、ポリマー、合成分子及び化合物、天然分子及び化合物、並びにそれらの任意の組み合わせを指すことができる。
【0088】
本明細書で使用される「対象」という用語は、本明細書に照らして理解されるような通常の意味を有し、治療、抑制、又は改善、観察、又は実験の対象である動物を指す。「動物」は、本明細書に照らして理解されているような通常の意味を有し、魚、甲殻類、又は爬虫類などの冷血及び温血脊椎動物及び/又は無脊椎動物、並びに特に哺乳動物を含む。「哺乳動物」は、本明細書に照らして理解されるような通常の意味を有し、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類、例えば、ヒト、サル、チンパンゼー、又は類人猿を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0089】
適切な製剤設計は、選択される投与経路による。本明細書に記載の化合物の製剤設計及び投与のための技術は、当業者に既知である。限定するものではないが、筋肉内、皮下、動脈内、静脈内、門脈内、関節内、皮膚内、腹膜、髄内注射、髄膜内、直接心室内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内注射などの、経腸、経口、直腸、局所、舌下、頬側、耳内、硬膜外、皮表、エアロゾル、非経口送達を含む、化合物を投与する複数の技術が当該技術分野において存在する。医薬組成物は、一般に、意図される具体的な投与経路に合わせて調整される。医薬組成物はまた、T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、マクロファージ、リンパ球、幹細胞、骨髄細胞、又は造血幹細胞などの患者又は個体から単離された細胞に投与することもできる。
【0090】
医薬組成物はまた、全身的よりも局所的に、例えば、多くの場合、デポー又は持続放出製剤において化合物を、臓器、組織、癌、腫瘍、又は感染部位に直接注射することによって化合物を投与することができる。更に、標的化した薬物送達システムで、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームで化合物を投与することができる。リポソームは、臓器に対して標的化され、かつ臓器、組織、癌、腫瘍、又は感染部位により選択的に取り込まれ得る。
【0091】
本明細書に開示の医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、ドラジェ作製、ゲル化、乳化、封入、捕捉、又は錠剤化プロセスによって、それ自体が既知である様式で製造され得る。本明細書に記載されるように、医薬組成物で使用される化合物は、薬学的に適合する対イオンを有する塩として提供されてもよい。
【0092】
本明細書で使用される場合、「担体」は、細胞、組織、及び/又は身体器官への化合物の通過、送達、及び/又は組み込みを促進する化合物、粒子、個体、半固体、液体、又は希釈剤を指す。例えば、限定することなく、ナノ粒子(LNP)は、オリゴヌクレオチドをカプセル化することによってオリゴヌクレオチド阻害剤を血流を通過する間の分解から保護する、及び/又は肝臓などの所望の器官への送達を促進することができる担体の一種である。
【0093】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、薬理活性はないが、薬学的に必要又は望ましい可能性がある、医薬組成物中の成分を指す。例えば、希釈剤は、製造及び/又は投与には質量が小さ過ぎる、効力のある薬物のかさ増しのために使用されてもよい。それはまた、注射、摂取、又は吸入によって投与される薬物を溶解させるための液体であってもよい。当該技術分野において一般的な希釈剤の形態は、限定するものではないが、ヒト血液の組成を模したリン酸緩衝生理食塩水などの、緩衝水溶液である。
【0094】
「賦形剤」という用語は、本明細書に照らして理解されるような通常の意味を有し、本組成物へバルク、稠度、安定性、結合能力、潤滑、崩壊能力などを提供するために、医薬組成物に添加された不活性物質、化合物、又は材料を指す。望ましい特性を有する賦形剤には、限定するものではないが、防腐剤、アジュバント、安定剤、溶媒、緩衝剤、希釈剤、可溶化剤、洗剤、界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤、アルコール、ケトン、アルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、塩、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム糖、デキストロース、フルクトース、マンノース、ラクトース、ガラクトース、スクロース、ソルビトール、セルロース、血清、アミノ酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチルフェノールエトキシレート、ベンゼトニウム塩化物、チメロサール、ゼラチン、エステル、エーテル、2-フェノキシエタノール、尿素、ビタミン、又はビタミン類が含まれる、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。医薬組成物中の賦形剤の量は、0重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、100重量%、又は前述の数のいずれか2つによって定義される範囲内の任意の重量%で見出すことができる。
【0095】
本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、免疫応答を刺激し、保護免疫の有効性を増加させる物質、化合物、又は材料を指し、免疫原性抗原、エピトープ、又は組成物と併せて投与される。アジュバントは、抗原の連続的な放出、サイトカイン及びケモカインの上方調節、投与部位での細胞動員、抗原提示細胞における抗原の取込み及び提示の増加、又は抗原提示細胞及び炎症ソームの活性化を可能にすることによって、免疫応答を改善するのに役立つ。一般的に使用されるアジュバントとしては、ミョウバン、アルミニウム塩、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム水酸化物、硫酸アルミニウムカリウム、油、鉱油、パラフィン油、水中油型エマルジョン、洗剤、MF59(登録商標)、スクアレン、AS03、α-トコフェロール、ポリソルベート80、AS04、モノホスホリル脂質A、ビロソーム、核酸、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸、サポニン、QS-21、タンパク質、フラゲリン、サイトカイン、ケモカイン、IL-1、IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、イミダゾキノリン、CpGオリゴヌクレオチド、脂質、リン脂質、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、トレハロースジアジコール、ペプチドグリカン、細菌抽出物、リポ多糖類、又はフロインドのアジュバント、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書で使用される任意の所与の物質、化合物、又は材料の「純度」という用語は、予想される存在量に対する物質、化合物、又は材料の実際の存在量を指す。例えば、物質、化合物、又は材料は、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%の純度であり得、それらの間の全ての小数を含む。純度は、限定されないが、副産物、異性体、エナンチオマー、分解生成物、溶媒、担体、ビヒクル、若しくは汚染物質、又はそれらの任意の組み合わせを含む、望ましくない不純物によって影響され得る。純度は、クロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、分光法、UV可視分光法、赤外線分光法、質量分析、核磁気共鳴、重量測定、若しくは滴定、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、測定された技術であり得る。
使用方法
【0097】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、必要とする対象又は患者を選択することに関連する。いくつかの実施形態では、患者は、PD-L1調節不全に関連する疾患又は状態の治療、抑制、改善、予防又は緩徐化を必要とする患者である。いくつかの実施形態では、PD-L1調節不全に関連するそのような疾患又は状態は、例えば、癌、HCC、ウイルス感染、又はHBVを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の疾患又は障害に対して以前に治療されたことのある患者が選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の疾患又は障害のリスクがあるために以前に治療されたことのある患者が選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の疾患又は障害の再発を発症した患者が選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の疾患又は障害のための治療に対する耐性が発生した患者が選択される。いくつかの実施形態では、前述の選択基準の任意の組み合わせを有し得る患者が選択される。
【0098】
本明細書に開示されるsiRNA分子を含むsiRNA分子及び医薬組成物は、既知の方法を使用して有効性及び毒性について評価することができる。本明細書に記載のsiRNAの潜在的な利点の非限定的なリストには、安定性の改善、安全性プロファイルの向上、有効性の向上、標的への結合の増強、標的(例えば、癌細胞又はウイルス感染細胞)に対する特異性の向上が含まれる。
【0099】
本明細書で使用される「治療する」、「治療」、「治療の」、又は「療法」という用語は、本明細書に照らして理解されるようなその通常の意味を有し、必ずしも疾患又は状態の完全治癒又は消滅を意味するものではない。本明細書で使用される(当該分野でも十分理解される)「治療する」又は「治療」という用語はまた、臨床結果を含む、対象の状態において有益な又は所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有益な又は所望の臨床的結果としては、限定するものではないが、1つ以上の症状又は状態の緩和又は改善、疾患の程度の低下、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の伝達若しくは拡散の予防、疾患の進行の遅延若しくは緩徐化、疾患状態の改善若しくは緩和、疾患の再発の減少、及び部分的若しくは完全であるかどうか、かつ検出可能又は未検出であるかどうかにかかわらず寛解が挙げられる。本明細書で使用される「治療すること」及び「治療」はまた、予防的治療を含む。治療方法は、治療有効量の活性薬剤を対象に投与することを含む。投与工程は、単回投与からなり得るか、又は一連の投与を含み得る。組成物は、患者を治療するのに十分な量及び持続時間で対象に投与される。治療期間の長さは、状態の重症度、患者の年齢及び遺伝的プロファイル、活性剤の濃度、治療に使用される組成物の活性、又はそれらの組み合わせなどの様々な要因に依存する。治療又は予防に使用される薬剤の有効投与量は、特定の治療又は予防レジメンの過程にわたって増加又は減少させ得ることも理解されよう。投与量の変化は、当該技術分野で既知の標準的な診断アッセイによって生じ、自明となり得る。場合によっては、長期の投与が必要とされ得る。
【0100】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の疾患又は障害を治療、抑制、改善、予防、又は緩徐化させる方法に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の疾患又は障害に罹患していると特定された対象に、本明細書に記載のsiRNAの有効量、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物を投与することを含む。本明細書に記載の他の実施形態は、本明細書に記載の疾患又は障害を治療、改善、予防、又は緩徐化させるための薬剤の製造における、本明細書に記載のsiRNAの使用に関する。本明細書に記載の更に他の実施形態は、本明細書に記載の疾患又は障害を治療、改善、予防、又は緩徐化させるための、本明細書に記載のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物に関する。
【0101】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、又は本明細書に記載の有効量のsiRNA若しくは本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物を、細胞若しくはウイルスを接触させること、又は癌若しくはウイルス感染症を有するとして特定された対象に投与することを含み得る、癌細胞又はウイルスの複製を阻害するための方法に関する。本明細書に記載の他の実施形態は、癌細胞又はウイルスの複製を阻害するための薬剤の製造における、本明細書に記載の有効量のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物に関する。本明細書に記載の更に他の実施形態は、癌細胞又はウイルスの複製を阻害するために、本明細書に記載のsiRNAの有効量、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、HCC細胞である。いくつかの実施形態では、ウイルスはB型肝炎である。
【0102】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、細胞増殖を阻害することが望ましい疾患に罹患していると特定された対象に、本明細書に記載の有効量のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物を投与することを含み得る、細胞増殖を阻害するため、例えば、癌細胞又はウイルスに感染した細胞の細胞増殖を阻害するための方法に関する。本明細書に記載の他の実施形態は、細胞増殖を阻害する、例えば、癌細胞若しくはウイルスに感染した細胞の細胞増殖を阻害するための薬剤の製造における、有効量の本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物の使用に関する。本明細書に記載の更に他の実施形態は、細胞増殖を阻害する、例えば、癌細胞若しくはウイルスに感染した細胞の細胞増殖を阻害するための、本明細書に記載の有効量のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、HCC細胞である。いくつかの実施形態では、ウイルスに感染した細胞は、B型肝炎ウイルスに感染している。
【0103】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、本明細書に記載の有効量のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物と細胞とを接触させることを含むことができる、細胞(例えば、癌細胞又はウイルスに感染している細胞)のアポトーシスを誘導する方法に関する。本明細書に記載の他の実施形態は、癌細胞若しくはウイルスに感染した細胞などの細胞のアポトーシスを誘導するための薬剤の製造における、本明細書に記載の有効量のsiRNA、又は有効量のsiRNAを含む医薬組成物に関する。本明細書に記載の更に他の実施形態は、癌細胞又はウイルスに感染した細胞などの細胞のアポトーシスを誘導するための、本明細書に記載の有効量のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、HCC細胞である。いくつかの実施形態では、ウイルスに感染した細胞は、B型肝炎ウイルスに感染している。
【0104】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、本明細書に記載の有効量のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物と細胞とを接触させることを含むことができる、細胞(例えば、癌細胞又はウイルスに感染している細胞)の生存能力を低下させる方法に関する。本明細書に記載の他の実施形態は、ウイルスに感染した癌細胞又は細胞などの細胞の生存率を低下させるための薬剤の製造において、本明細書に記載のsiRNAの使用に関する。本明細書に記載の更に他の実施形態は、癌細胞又はウイルスに感染した細胞などの細胞の生存率を低下させるための、本明細書に記載の有効量のsiRNA、又は本明細書に記載の有効量のsiRNAを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、HCC細胞である。いくつかの実施形態では、ウイルスに感染した細胞は、B型肝炎ウイルスに感染している。
【0105】
いくつかの実施形態では、ヒト対象のsiRNAの有効量は、1、10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μg、若しくは1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000mg、又は任意の2つの前述の量によって定義される範囲内の任意の量である。いくつかの実施形態では、ヒト対象のsiRNAの有効量は、1、10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ng/kg、若しくは1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000μg/kg、又は任意の2つの前述の量によって定義される範囲内の任意の量である。いくつかの実施形態では、有効量のsiRNAは、2回以上投与される。いくつかの実施形態では、siRNA用量は、1、2、3、4、5、6、7日、又は1、2、3、4週間、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月、又は1、2、3、4、5年、又は上記の2つの時間によって定義される範囲内の任意の期間又は組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの装填用量及び少なくとも1つの維持用量が、対象に投与され、少なくとも1つの装填用量は、少なくとも1つの維持用量よりも高いsiRNAの用量である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、2つ以上の医薬化合物/薬剤又は治療薬の組み合わせの使用を含む治療法を定義することを意図している。したがって、本出願における「併用療法」、「組み合わせ」、及び化合物/薬剤の「組み合わせて」の使用への言及は、同じ治療レジメン全体の一部として投与される化合物/薬剤を指し得る。したがって、2つ以上の化合物/薬剤の各々の投与量又はタイミングは異なり得、各々が同時に又は異なる時間に投与され得る。したがって、組み合わせの化合物/薬剤は、同じ医薬製剤において(すなわち、一緒に)、又は異なる医薬製剤において(すなわち別々に)、連続的に(例えば、前又は後に)又は同時に投与され得る。併用療法における2つ以上の化合物/薬剤の各々はまた、投与経路に関して異なり得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、「阻害剤」という用語は、酵素又は受容体に結合し、その活性を減少及び/又は遮断する分子である酵素阻害剤又は受容体阻害剤を指す。この用語は、可逆的又は不可逆的阻害剤に関連し得る。
【0108】
癌は、外科手術、放射線療法、化学療法、標的療法、免疫療法、又はホルモン療法で治療され得る。これらの言及された治療法のいずれも、併用療法として別の療法と併せて使用され得る。化学療法化合物には、限定するものではないが、アレムツズマブ、アルトレタミン、アザシチジン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カバジタキセル、カペシタビン、カルボプラチン、カルモフル、カルムスチン、クロラムブシル、クロルメチン、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デシタビン、デノスマブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フォテムスチン、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、ヒドロキシカルバミド、イブリツモマブ、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、イキサベピロン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、ネダプラチン、ネラララビン、オファツムマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、ペルツズマブ、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ストレプトゾトシン、テガフール、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、トシツモマブ、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、若しくはビノレルビン、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「タンパク質キナーゼ阻害剤」という用語は、癌又は他の病気の治療のためのタンパク質キナーゼ、セリン/スレオニンキナーゼ、チロシンキナーゼ、又は二重特異性キナーゼの阻害剤を指す。いくつかの実施形態では、タンパク質キナーゼ阻害剤は、小分子、化合物、多糖類、脂質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、核酸、又はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、タンパク質キナーゼ阻害剤としては、限定するものではないが、アカラブルチ二ブ、アダボセルチブ、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、ビニメチニブ、ボスチニブ、ブリガチニブ、セジラニブ、セリチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、カボザンチニブ、ダコミチニブ、ダサチニブ、エントレチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、ロルタチニブ、マシチニブ、モメロチニブ、ムブリチニブ、ネラチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、オルムチニブ、オシメルチニブ、パクリチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ラドチニブ、レゴラフェニブ、ロシレチニブ、ルキソリチニブ、セルメチニブ、セマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、SU6656、チボザニブ、トセラニブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、若しくはベムラフェニブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0110】
本明細書で使用される場合、「チェックポイント阻害剤」という用語は、免疫機能を刺激する免疫チェックポイントを標的とする免疫療法を指す。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、小分子、化合物、多糖類、脂質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、核酸、又はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントは、PD-1/PD-L1チェックポイントである。いくつかの実施形態では、PD-1チェックポイントは、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、スパルタリズマブ、セミプリマブ、カラムリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、AMP-224若しくはAMP-514、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、PD-L1チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、AUNP12、CA-170、又はBMS-986189、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントは、CTLA-4チェックポイントである。いくつかの実施形態では、CTLA-4チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ又はトレミリムマブ、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書で使用される場合、「VEGF阻害剤」という用語は、血管内皮成長因子(VEGF)又はVEGF受容体(VEGFR)の阻害剤を指す。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤は、小分子、化合物、多糖類、脂質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、核酸、又はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤は、限定するものではないが、アフリベルセプト、アキシチニブ、ベバシズマブ、ブリバニブ、カボザンチニブ、セジラニブ、レンバチニブ、リンフィニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、ポナチニブ、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、セマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ。又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0112】
本明細書で使用される場合、「抗ウイルス薬」という用語は、ウイルス感染を治療するために投与される医薬組成物を指す。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、アデノウイルス、エボラウイルス、コロナウイルス、エプスタインバーウイルス(EBV)、フリードウイルス、ハンタウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトメタニューモウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、抗ウイルス薬は、小分子、化合物、多糖類、脂質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、核酸、又はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、抗ウイルス薬は、インターフェロン、キャプシドアセンブリ調節剤、配列特異的オリゴヌクレオチド、エントリ阻害剤、又は小分子免疫調節剤である。いくつかの実施形態では、抗ウイルス薬は、限定するものではないが、AB-423、AB-506、ABI-H2158、ABI-HO731、アシクロビル、アダプロミン、アデホビル、アラフェナミド、アマンタジン、アスナプレビル、バロキサビルマルボキシル、ベクラブビル、ボセプレビル、ブリブジン、シドホビル、シルプレビル、クレブジン、シタラビン、ダクラタスビル、ダノプレビル、ダサブビル、デレオブビル、ジピボキシル、エドクスジン、エルバスビル、エンテカビル、ファルダプレビル、ファムシクロビル、ファビピラビル、フィルブビル、ホミビルセン、ホスカルネット、ガリデシビル、ガンシクロビル、グレカプレビル、GLS4、グラゾプレビル、イドクスウリジン、イミキモド、IFN-α、インターフェロンアルファ2b、JNJ-440、JNJ-6379、ラミブジン、ラニナミビル、レジパスビル、メリシタビン、メチサゾン、MK-608、モロキシジン、ナルラプレビル、NITD008、NZ-4、オダラスビル、オンビタスビル、オセルタミビル、パリタプレビル、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペンシクロビル、ペラミビル、ピブレンタスビル、ピモディビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プレサトビル、ラダルブビル、ラビダスビル、レムデシビル、REP2139、REP2165、レシキモド、RG7907、リバビリン、リファンピシン、リマンタジン、ルザスビル、サマタスビル、セトロブビル、シメプレビル、ソホスブビル、ソリブジン、ソバプレビル、タリバビリン、テラプレビル、テルビブジン、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、トリアザビリン、トリフルリジン、トロマンタジン、ウミフェノビル、ウプリホスブビル、バラシクロビル、バルガンシクロビル、バニプレビル、ベドロプレビル、ベルパタスビル、ビダラビン、ボキシラプレビル若しくはザナミビル、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0113】
本明細書で使用される場合、「% w/w(重量%)」又は「% wt/wt(重量%)」という用語は、本明細書に照らして理解されるようなその通常の意味を有し、組成物の総重量に対する成分又は薬剤の重量に関して100を掛けたパーセンテージを指す。本明細書で使用される「体積%」は、本明細書の明細書で理解されるようなその通常の意味を有し、組成物の総液体体積にわたる化合物、物質、成分、又は薬剤の液体体積に関して100を掛けたパーセンテージを指す。
【0114】
本発明は、本明細書において、多数の実施形態を説明するために肯定的な言語を使用して本明細書に開示される。本発明はまた、物質若しくは材料、方法工程及び条件、プロトコル、又は手順などの主題が、完全に又は部分的に除外される実施形態も含む。
【実施例】
【0115】
上述の実施形態のいくつかの態様は、本開示の範囲を決して限定するものではない以下の実施例において更に詳細に開示される。当業者であれば、上述の説明及び特許請求の範囲に記載されるように、多くの他の実施形態も本発明の範囲内に含まれることを理解するであろう。
実施例1:siRNA設計
【0116】
18-21ヌクレオチド長のsiRNAを選択した。表7に示すように、ミスマッチは、アンチセンス鎖上のシード領域の外側にのみ許可された。シード領域は2~8位にあり、位置番号はアンチセンス鎖に基づく。鎖長は、2つのヌクレオチドオーバーハングを除外する。
【表7】
【0117】
実施例2:ヒトCD274遺伝子(PD-L1)を標的とするsiRNA
siRNAは、テンプレートとして、ヒトCD274 mRNA転写物(NCBIアクセッション番号NM_014143.4、3634nt長、配列番号1)を使用して設計した。18量体を表8に列挙する(配列番号2-93)。19量体を表9に示す(配列番号94-167及び283-380)。20量体を表10に示す(配列番号168-229)。21量体を表11に示す(配列番号230-282)。列挙されたsiRNAは全てアンチセンス鎖を示す。センス鎖(列挙されていない)は、列挙された各アンチセンス鎖に完全に相補的である。
【0118】
本明細書に列挙されるsiRNA、及び個々の核酸塩基、糖、結合、ヌクレオシド、ヌクレオチド、及びそれらの追加部分のいずれも、本明細書に記載の修飾のいずれかと共に構築及び使用され得る。表8-11及び配列番号2-380に列挙される配列は、修飾の適用前の非修飾オリゴヌクレオチド配列を表す。
【表8-1】
【表8-2】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表10-1】
【表10-2】
【表11-1】
【表11-2】
【0119】
実施例3:CD274 siRNAを使用した癌の治療
ヒト患者は、肝細胞癌(HCC)などの癌を有する。癌は、非転移性又は転移性の癌である。HCCの場合、患者は、線維症、肝硬変、非アルコール性肝疾患、肝炎、B型肝炎、又はC型肝炎などの別の肝臓状態も有し得る。有効量のCD274 siRNA又は有効量のCD274 siRNAを含む医薬組成物は、患者に非経口投与される。CD274 siRNAは、本明細書に記載の任意の許容ミスマッチを含む、配列番号2-380からなる群から選択される。CD274 siRNAは、任意選択的に、本明細書に記載されるように、個々の核酸塩基、糖、結合、ヌクレオシド、又はヌクレオチドに対する修飾のいずれかを有し得る。CD274 siRNAはまた、任意選択的に、腫瘍及び/又は肝組織に対する選択性を改善するために共有結合された標的部分を有し得る。CD274 siRNAは、デオキシリボース糖(DNAヌクレオチド)、リボース糖(RNAヌクレオチド)、又はそれらの任意の組み合わせで構築することができる。CD274 siRNAは、非修飾ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又はそれらの任意の組み合わせで構築することができる。CD274 siRNA又はCD274 siRNAを含む医薬組成物は、任意選択的に、別の抗新生物化合物又は療法との併用療法として投与され得る。
【0120】
有効量のCD274 siRNA又は有効量のCD274 siRNAを含む医薬組成物の投与後、癌は低減又は消去する。
実施例4:CD274 siRNAを使用したB型肝炎の治療
【0121】
ヒト患者は、B型肝炎感染症を呈する。B型肝炎感染症は、急性又は慢性である。B型肝炎感染症はまた、D型肝炎感染症と同時に起こり得る。患者はまた、線維症、肝硬変、非アルコール性肝疾患、又はHCCなどの別の肝臓の状態を有し得る。有効量のCD274 siRNA又は有効量のCD274 siRNAを含む医薬組成物は、患者に非経口投与される。CD274 siRNAは、配列番号2-380からなる群から選択される。CD274 siRNAは、任意選択的に、本明細書に記載されるように、個々の核酸塩基、糖、結合、ヌクレオシド、又はヌクレオチドに対する修飾のいずれかを有し得る。CD274 siRNAはまた、任意選択的に、肝組織に対する選択性を改善するために共有結合された標的部分を有し得る。CD274 siRNAは、デオキシリボース糖(DNAヌクレオチド)、リボース糖(RNAヌクレオチド)、又はそれらの任意の組み合わせで構築することができる。CD274 siRNAは、非修飾ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又はそれらの任意の組み合わせで構築することができる。CD274 siRNA又はCD274 siRNAを含む医薬組成物は、任意選択的に、別の抗ウイルス薬との併用療法として投与され得る。
【0122】
有効量のCD274 siRNA又は有効量のCD274 siRNAを含む医薬組成物の投与後、B型肝炎感染症(及び任意選択的に、D型肝炎感染症)は低減又は消去する。
実施例5:siRNAを使用した肝細胞癌細胞の治療
【0123】
ヒト肝細胞癌細胞(SNU-387)を96ウェルプレートに30,000細胞/ウェルで播種した。配列番号2-380のいずれかを含むsiRNAを、播種されたSNU-387細胞に、Lipofectamine RNAiMax(Life Technologies)を用いてトランスフェクトした。siRNAは、個々の核酸塩基、糖、結合、ヌクレオシド、又はヌクレオチドの修飾を含む、本明細書に記載の修飾のいずれかを含んでいた。siRNAの修飾は、異なる配列にわたって変化した。例えば、配列番号94-167(19量体)などのいくつかの配列では、センス鎖は、2’OMeとしてプリン及び2’Fとしてピリミジンを含み、3’末端に2つのmUヌクレオチドである2つのヌクレオチドオーバーハングを含んでいた。修飾配列番号94-167のセンス鎖における全ての結合は、ホスホロチオエート(PS)である2つの最5’-及び3’末端結合を除いてホスホジエステル(PO)結合であり、PS結合は計4つであった。加えて、配列番号94-167及び283-380(19量体)のアンチセンス鎖は、5’末端の2’OMeで開始し、3’末端に2つのmUヌクレオチドである2つのヌクレオチドオーバーハングを有する、交互の2’OMe及び2’Fパターンを含んでいた。修飾配列番号94-167のアンチセンス鎖中の全ての結合は、PS結合である2つの最5’-及び3’末端結合を除いてPO結合であり、PS結合は計4つであった。
【0124】
別の例として、配列番号283-380(19量体)などのいくつかの配列では、センス鎖は、5’末端の2’Fで開始し、3’末端に2つのmUヌクレオチドである2つのヌクレオチドオーバーハングを有する、交互の2’OMe及び2’Fパターンを含んでいた。修飾配列番号283-380のセンス鎖における全ての結合は、ホスホロチオエート(PS)である2つの最5’-及び3’末端結合を除いてホスホジエステル(PO)結合であり、PS結合は計4つであった。加えて、配列番号283-380(19量体)のアンチセンス鎖は、5’末端の2’OMeで開始し、3’末端に2つのmUヌクレオチドである2つのヌクレオチドオーバーハングを有する、交互の2’OMe及び2’Fパターンを含んでいた。修飾配列番号283-380のアンチセンス鎖中の全ての結合は、PS結合である2つの最5’-及び3’末端結合を除いてPO結合であり、PS結合は計4つであった。
【0125】
別の例として、配列番号230-282(21量体)などのいくつかの配列では、センス鎖は、2’OMeとしてプリン及び2’Fとしてピリミジンを含み、PS結合である2つの最5’末端結合を除いて、全ての結合はPO結合であり、PS結合は計2つであった。これらの21量体配列のセンス鎖は、オーバーハングを含まず、平滑末端であった。配列番号230-282(21量体)のアンチセンス鎖は、5’末端の2’OMeで開始し、3’末端に2つのmUヌクレオチドである2つのヌクレオチドオーバーハングを有する、交互の2’OMe及び2’Fパターンを含んでいた。21量体アンチセンス鎖中の全ての結合は、PS結合である2つの最5’-及び3’末端結合を除いてPO結合であり、PS結合は計4つであった。これらの配列に対するこれらの修飾は例示的なものであり、本明細書に記載の任意の修飾を任意のsiRNA配列に使用できることを理解すべきである。
【0126】
用量応答曲線の場合、4倍希釈系列のsiRNA(最高用量50nM;計6つの試験濃度)を試験した。トランスフェクションの48時間後に、細胞を回収し、RNAをRNeasy 96キット(Qiagen)で抽出し、RT-qPCRを実施して、PD-L1遺伝子ノックダウンを評価した。(同じ方法で処理された別個のプレートの)細胞生存率を、製造業者の指示に従ってCell Titer Glo(Promega)プロトコルを使用してトランスフェクションの48時間後に評価した。データを、4パラメータ用量応答式を使用して、GraphPad Prismを用いて調整した。表12は、選択されたsiRNAの代表的なEC50及びCC50値を提供する。
図1は、残存するPD-L1 mRNAの画分を示す。
【表12】
【0127】
別の実験では、96ウェルプレートに30,000細胞/ウェルで播種したSNU-387細胞に、Lipofectamine RNAiMax(Life Technologies)を用いてsiRNAをトランスフェクトした。各siRNAについて2つの濃度(20及び0.2nM)を試験した。トランスフェクションの48時間後に、細胞を回収し、RNeasy 96キット(Qiagen)を用いてRNAを抽出し、RT-qPCRを実施して、PD-L1遺伝子ノックダウンを評価した。(同じ方法で処理された別個のプレートの)細胞生存率を、製造業者の指示に従ってCell Titer Glo(Promega)プロトコルを使用してトランスフェクションの48時間後に評価した。結果を表13に示す。実施例5に記載の修飾であるsiRNAの特異的修飾を表に示す。
【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【表13-4】
【0128】
実施例6:siRNAを用いたマウスのインビボ治療
C57BL/6マウスを用意した。1回の皮下用量7.5mg/kgのsiRNA又はビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水)を、0日目にマウス(群あたりn=4)に投与した。siRNAは、本明細書に記載の任意の修飾を含め、配列番号2-380のいずれかを含んだ。3日目に、10mg/kgの低分子量ポリI:C(Invivogen製のLMW PIC)を、IVで全ての群に投与した。LMW PIC投与の5時間後にマウスを屠殺した。肝臓を切片化し、RNA抽出のためにRNALater(Qiagen)内に配置した。RNAを肝臓試料から抽出し、PD-L1遺伝子発現をRT-qPCRによって測定した。P値は、治療群をビヒクル対照と比較するt検定から判定した。その値を表2及び表14に示す。
【表14】
【0129】
表14に記載されるようなsiRNAのそれぞれについての修飾を含む配列を以下の表15に示す。
【表15】
【0130】
実施例に記載される例示的な配列及び例示的な修飾を含む例示的なsiRNAは、例示的な配列及び修正として意図される。しかしながら、本開示は、本明細書に記載の任意の修飾又は修飾の組み合わせを有する、本明細書に記載の任意のsiRNA配列に関し、本明細書に記載されるように実施され得ることを理解されたい。
【0131】
前述の実施形態のうちの少なくともいくつかでは、一実施形態で使用される1つ以上の要素は、交換が技術的に実行可能でない場合を除き、別の実施形態で互換的に使用され得る。請求される主題の範囲から逸脱することなく、上記の方法及び構造に対して様々な他の省略、追加、及び修正を行うことができることが当業者には理解されよう。全てのそのような修正及び変更は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、主題の範囲内に含まれることが意図される。
【0132】
本明細書の実質的にいかなる複数形及び/又は単数形の用語の使用に関しても、当業者は、文脈及び/又は用途に応じて適切に、複数形から単数形、及び/又は単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の入れ替えは、明確にするために本明細書で明示的に記載され得る。
【0133】
概して本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は、一般に「オープン」用語として意図されている(例えば、「含む(including)」という用語は、「含むが、これらに限定されない」として解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「含むが、これらに限定されない」として解釈されるべきである、と当業者によって理解されるであろう。導入された特許請求項の記述において特定の数が意図される場合、そのような意図が、その特許請求項中に明確に記述され、かつそのような記述がない場合は、そのような意図が存在しないことが、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、理解を補助するために、以下の添付の特許請求の範囲は、特許請求項の記述を導入するために、導入句「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」の使用を含み得る。しかしながら、そのような句の使用は、同一の特許請求項が、導入句「1つ以上の」又は「少なくとも1つの」及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含むときでさえ、不定冠詞「a」又は「an」による特許請求項の記述の導入が、そのような導入された特許請求項の記述を包含する特定の特許請求項を、そのような記述を1つのみ含む実施形態に制限することを暗示すると解釈されるべきではなく(例えば、「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)、同じことが、請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。加えて、導入された特許請求項の記述の特定の数が明示的に記述される場合でさえ、当業者は、そのような記述が、少なくともその記述された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語句なしの「2つの記述」の単なる記述は、少なくとも2つの記述、又は2つ以上の記述を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類似の慣習的表現が使用される場合、概して、そのような構造は、当業者がその慣習的表現を理解するであろうという意味で意図される(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、A及びB、A及びC、B及びC、並びに/又はA、B、及びCなどを有するシステムを含むがこれらに限定されない)。「A、B、又はCなどのうちの少なくとも1つ」に類似の慣習的表現が使用される場合、概して、そのような構造は、当業者がその慣習的表現を理解するであろうという意味で意図される(例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、A及びB、A及びC、B及びC、並びに/又はA、B、及びCなどを有するシステムを含むがこれらに限定されない)。2つ以上の代替用語を示す実質的にいかなる離接語及び/又は句も、本明細書又は特許請求の範囲におけるかどうかにかかわらず、用語のうちの1つ、用語のうちのいずれか、又は両方の用語を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、「A又はB」という句は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解される。
【0134】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者は、本開示がマーカッシュグループのメンバーの任意の個々のメンバー又はサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0135】
当業者によって理解されるように、記載された説明を提供することに関するものなどの任意の及び全ての目的のために、本明細書に開示される全ての範囲はまた、いずれか及び全ての可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。列挙された範囲はいずれも、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割することを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で説明される各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1などに容易に分割することができる。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」などの全ての言語は、列挙された数を含み、上で説明したように下位範囲に後で分割することができる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は各個々の部材を含む。したがって、例えば、1~3個の物品を有する群は、1、2、又は3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5個の物品を有する群は、1、2、3、4、又は5個の物品などを有する群を指す。
【0136】
本明細書では様々な態様及び実施形態が開示されてきたが、他の態様及び実施形態も当業者には明らかであろう。本明細書に開示される様々な態様及び実施形態は、例示の目的のためであり、限定することを意図するものではなく、真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0137】
公開及び未公開の出願、特許、並びに文献の参照を含むがこれらに限定されない、本明細書で引用される全ての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす。参照により組み込まれる出版物及び特許又は特許出願が、本明細書に含まれる開示と矛盾する程度まで、本明細書は、任意のそのような矛盾する材料に取って代わり、かつ/又は優先するよう意図する。
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【0147】
上文は、明確さと理解のために、図及び実施例としてある程度詳細に記述されているが、本開示の趣旨を逸脱することなく数多くの様々な修正がなされ得ることが、当業者によって理解される。したがって、本明細書に開示される形態は例示にすぎず、本開示の範囲を限定することは意図されていないが、それどころか本発明の真の範囲及び趣旨に沿った全ての修正及び代替案を包含することも明確に理解するべきである。
【配列表】
【国際調査報告】