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特表2023-515222正極活物質前駆体材料およびリチウム二次電池用正極活物質の製造方法、およびこれによって製造されたリチウム二次電池用正極活物質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】正極活物質前駆体材料およびリチウム二次電池用正極活物質の製造方法、およびこれによって製造されたリチウム二次電池用正極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20230405BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230405BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230405BHJP
   C01G 53/10 20060101ALI20230405BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
H01M10/54
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/10
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551771
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 KR2020014254
(87)【国際公開番号】W WO2021172689
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0025144
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ-フン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ボン-ジン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB08
4G048AC06
4G048AE05
5H031BB01
5H031BB02
5H031EE03
5H031HH03
5H031RR02
5H050AA08
5H050AA17
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、ニッケル含有量の高い廃リチウム二次電池を用いた正極活物質前駆体材料の製造方法、これによって製造される正極活物質前駆体材料を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法、およびそれによって製造されたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)廃リチウム二次電池の正極活物質を浸出させて浸出液を得るステップと、
(2)前記浸出液に2~20w/v%のオキシム系物質を添加してニッケルを沈殿させるステップと、
を含む、廃リチウム二次電池を用いた正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項2】
前記廃リチウム二次電池の正極活物質は、下記化学式1で表される正極活物質を含むものである、請求項1に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
[化1]
LiNiCoMn
(前記化1において、
0.5≦x≦1であり、0≦y≦0.3であり、0≦z≦0.3であり、
x+y+z=1である。)
【請求項3】
前記(1)ステップ後、前記(2)ステップの前ステップで前記浸出液からマンガンを抽出するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項4】
前記オキシム系物質は、ジメチルグリオキシム、ジエチルグリオキシム、ジプロピルグリオキシム、およびエチルメチルグリオキシムからなる群から選択される1種以上であることを含むものである、請求項1に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項5】
前記(2)ステップにおいて、前記2~20w/v%のオキシム系物質は、けん化ステップを経て得られるものである、請求項1に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項6】
前記オキシム系物質のけん化は、極性溶媒とアルカリ性溶液とを混合した後、前記オキシム系物質を溶解させ、前記オキシム系溶液を得ることを含むものである、請求項5に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ性溶液は、NaOH、KOH、Ca(OH)、およびNHOHからなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項6に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項8】
前記極性溶媒は、水、アルコール、アセトン、およびカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項6に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項9】
前記(2)ステップにおいて、前記沈殿されたニッケルを硫酸処理して硫酸ニッケルを得るステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項10】
前記廃リチウム二次電池の正極活物質は、廃リチウム二次電池を破砕した後、熱処理して得られることを含む、請求項1に記載の正極活物質前駆体材料の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される正極活物質前駆体材料およびリチウム塩を混合して、LiNix’Coy’Mnz’(0<x’≦1であり、0≦y’<1であり、0≦z’<1であり、x’+y’+z’=1である。)で表される正極活物質を得ることを特徴とする、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法によって製造された、リチウム二次電池用正極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル含有量の高い廃リチウム二次電池を用いた正極活物質前駆体材料の製造方法、これによって製造される正極活物質前駆体材料を用いたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法、およびそれによって製造されたリチウム二次電池用正極活物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器、ノートパソコン、ワイヤレス機器、電気自動車、電動バイクなど、超小型から中大型まで様々な種類のエネルギー貯蔵装置に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加している。このような二次電池の中でも高いエネルギー密度と動作電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化して広く使用されている。
【0003】
リチウム二次電池は、一般的に正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、分離膜および電解質から構成され、リチウムイオンの挿入/脱離(intercalation/de-intercalation)によって充電および放電が行われる二次電池である。リチウム二次電池は、エネルギー密度(energy density)が高く、起電力が大きく、高容量を発揮できるという利点を有するので、様々な分野に適用されている。
【0004】
特に、大容量リチウム二次電池には、三成分系(Ni、Co、Mn)正極活物質の使用が大きく増えるものと予想されており、高容量化だけでなく高出力化も同時に要求されることによって、高いエネルギー密度と高出力の実現のために、Ni含有量の高い層状構造の正極素材が開発されている。リチウム二次電池の生産と使用量が増加し、その廃棄量も増加することから、その処理のための廃リチウム二次電池の再処理および再活用技術の必要性が台頭している。また、二次電池および素材関連業界は価格競争が激しく、低価の原材料、低価工程、歩留まり向上などの努力が切実な状況であるだけでなく、二次電池の需要が増加し、使用後の廃電池と製造工程で発生する不良品、電極などを再活用しようとする試みも増加している。
【0005】
前記廃リチウム二次電池からニッケルのような遷移金属を回収し、これを再活用するためには、廃電池から正極活物質を分離し、前記分離した正極活物質から前記遷移金属などを分離した後、これを精製した後、これを再び正極活物質の製造のための原料として使用するために追加のステップを経なければならない。
【0006】
例えば、韓国公開特許第10-2011-0036628号公報では、廃バッテリーからリチウム、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む有価金属粉末を得るステップと、前記有価金属粉末を還元雰囲気で酸浸出して浸出溶液を得るステップと、前記浸出溶液からニッケル、コバルトおよびマンガンの水酸化物とリチウム炭酸塩(LiCO)を得るステップとを含むことを開示している。しかし、前記方法は、各遷移金属成分を個別に分離することができず、活用形態に制約があり、正極活物質として活用する時に所望の割合で組成を調節するためには、別途の遷移金属塩を添加しなければならず、遷移金属成分を抽出した後にも、不純物を除去するための相当なエネルギーと時間が必要となるという問題点がある。
【0007】
また、リチウム二次電池金属酸化物系正極活物質の再処理方法のうち、正極活物質を沈殿および/または溶媒抽出によってマンガン、ニッケルおよびコバルトをそれぞれ分離回収する方法が研究されているが、ニッケル含有量の高いリチウム二次電池の生産と使用量が増加するにつれて、ニッケル含有量の高い廃リチウム二次電池からニッケルを高純度および高収率で分離し、これを用いて正極活物質を製造できる方法に対する開発の必要性が台頭している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2011-0036628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述した従来の技術の問題点を改善するためのものであって、ニッケル含有量の高い廃リチウム二次電池を用いた正極活物質前駆体材料の製造方法、これによって製造される正極活物質前駆体材料を用いたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法、およびそれによって製造されたリチウム二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、(1)廃リチウム二次電池の正極活物質を浸出させて浸出液を得るステップと、(2)前記浸出液に2~20w/v%のオキシム系物質を添加してニッケルを沈殿させるステップと、を含む、廃リチウム二次電池を用いた正極活物質前駆体材料の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記正極活物質前駆体材料の製造方法によって製造される正極活物質前駆体材料およびリチウム塩を混合し、LiNiCoMn(0<x≦1であり、0≦y<1であり、0≦z<1であり、x+y+z=1である。)で表される正極活物質を得ることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法によって製造されたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法は、ニッケル含有量の高い廃リチウム二次電池の正極活物質から高い回収率で高純度のニッケルを回収することができ、前記ニッケルを硫酸塩の形態で回収可能で、回収物を用いて正極活物質を製造するときに別途の追加工程を要しないため、正極活物質前駆体材料として直ちに活用可能であるという効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る正極活物質前駆体材料の製造フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ニッケル含有量の高い廃リチウム二次電池の正極活物質からニッケルを沈殿させるステップを含む、廃リチウム二次電池を用いた正極活物質前駆体材料の製造方法、前記製造方法によって製造される正極活物質前駆体材料を用いたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法、および前記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法によって製造されたリチウム二次電池用正極活物質に関するものである。
【0016】
具体的に、本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法は、従来の水およびアルコールに対する溶解度が1w/v%以下と極めて低く、特に、ニッケルを高濃度で含有した正極活物質の回収への適用が難しかったオキシム系物質を高濃度化したことに特徴があり、これをニッケルの回収に活用してニッケル含有量の高い廃リチウム二次電池の正極活物質から高い回収率で高純度のニッケルを回収することができ、前記ニッケルを硫酸塩の形態で回収し、回収物を用いて正極活物質を製造するときに別途の追加工程を要しないため、正極活物質前駆体材料として直ちに活用可能であるという効果を提供する。
【0017】
本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法において、前記廃リチウム二次電池正極活物質に対するニッケルの回収率は60%以上であってもよく、好ましくは、80%以上、さらに好ましくは、85%以上、最も好ましくは、90%以上であってもよく、本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法によって回収されるニッケルの純度は90%以上であってもよく、99%以上であることが好ましい。
【0018】
以下、本発明に係る正極活物質前駆体材料の製造方法、それによって製造された正極活物質前駆体材料を用いたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法、および前記製造方法によって製造されたリチウム二次電池用正極活物質について詳細に説明する。しかし、本発明は、これによって限定されるものではない。
【0019】
<正極活物質前駆体材料の製造方法>
本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法は、2~20w/v%のオキシム系物質を沈殿剤として添加してニッケルを沈殿させるステップを含むことを特徴とし、具体的に、(1)廃リチウム二次電池の正極活物質を浸出させて浸出液を得るステップと、(2)前記浸出液に2~20w/v%のオキシム系物質を添加してニッケルを沈殿させるステップとを含んでもよい。
【0020】
(1)廃リチウム二次電池の正極活物質を浸出させて浸出液を得るステップ
本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法において、廃リチウム二次電池の正極活物質は、ニッケルまたはニッケル塩を含むものであれば、特に限定されないが、ニッケルを含むとともに、コバルトおよびマンガンのうちの1つ以上を含む二成分系正極活物質、または、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む三成分系正極活物質であってもよく、好ましくは、前記三成分中のニッケルのモル比が50%~90%のものであってもよく、ニッケルのモル比が60%~80%であることが好ましい。
【0021】
一例として、本発明の廃リチウム二次電池の正極活物質は、下記化学式1で表される正極活物質を含むものであってもよい。
【0022】
[化1]
LiNiCoMn
前記化1において、0.5≦x≦1であり、0≦y≦0.3であり、0≦z≦0.3であり、x+y+z=1であり、好ましくは、0.5≦x≦0.9であり、0.1≦y≦0.3であり、0.1≦z≦0.3であり、x+y+z=1である。
【0023】
前記正極活物質を浸出させる物質としては、硫酸、過酸化水素などが挙げられる。
具体的に、本発明の正極活物質は、ニッケル含有量に特に限定されないが、ニッケル含有量が比較的少ないNCM111(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3)だけでなく、従来、ニッケル含有量が高いためニッケルの回収に技術的困難があったNCM523(LiNi0.5Co0.2Mn0.3)、NCM622、NCM811に対しても優れたニッケルの回収効果を有する。ここで、NCM523は、ニッケル(N)とコバルト(C)、マンガン(M)が5:2:3比率で製造されたことを意味し、NCM622は、ニッケル、コバルト、マンガンが6:2:2比率で製造されたことを意味し、NCM811は、ニッケル、コバルト、マンガンが8:1:1の比率で製造されたことを意味する。
【0024】
また、前記浸出液は、Li、Mn、Co、Niを含むものであってもよく、本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法は、前記(1)ステップで前記浸出液からマンガンを抽出するステップをさらに含んでもよく、溶媒抽出によって前記マンガンを抽出することができる。
【0025】
本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法は、前記廃リチウム二次電池の正極活物質を得るための前処理工程として、廃リチウム二次電池を直ちに破砕した後、熱処理する工程をさらに含んでもよい。
【0026】
前処理工程において、廃リチウム二次電池を破砕する前に放電するステップをさらに含んでもよい。放電が完了すると、その後の有価金属回収工程は、不活性雰囲気ではなく大気中でも安全に行うことができる。放電は、放電溶液内で行われてもよい。放電溶液としては蒸留水を用いてもよい。放電の完了程度は、経時による電圧低減によって確認することができる。廃リチウム二次電池内の電解質は、放電過程で大部分除去される。
【0027】
前記破砕は、ミーリング(milling)によって行われてもよく、前記ミーリングは、機械的ミーリングであってもよく、具体的に、ロールミル(roll-mill)、ボールミル(ball-mill)、ジェットミル(jet-mill)、遊星ミル(planetary-mill)およびアトリションミル(attrition-mill)からなる群から選択された1種以上によって行われてもよい。
【0028】
前記破砕物は、1~15μmの粒径を有してもよく、好ましくは、1~7μmの粒径を有してもよく、より好ましくは、2~5μmの粒径を有してもよい。
【0029】
前処理工程において、前記破砕後に分級ステップをさらに含んでもよく、破砕物は、分級過程、好ましくは、シーブ(sieve)による分級によって、微細電極複合体粉末とその他の成分(正極、陰極、分離膜)という大きな画分に分離され、破砕物から電極複合体粉末を回収される。
【0030】
前処理工程において、前記分級後に比重分離ステップをさらに含んでもよく、破砕物を、好ましくは、水位段差(water level)が設けられた水洗タンク(rinse tank)を用いて比重分離することによって、破砕物中の分離膜が除去され、電極複合体、分離膜、集電体などを分離することができる。
【0031】
前処理工程において、前記比重分離後に磁力選別ステップをさらに含んでもよく、廃リチウム二次電池にステンレススチール(SUS)をさらに含む場合、破砕物から磁力選別(magnetic separation)によってステンレススチール(SUS)が選別されて削除される。
【0032】
前処理工程において、前記磁力選別後に熱処理を行ってもよい。前記熱処理は、廃リチウム二次電池に含まれる正極バインダー、正極導電材、負極活物質、負極バインダー、負極導電材、ポーチなどの前記正極活物質以外の不純物を除去するためのものであって、600℃~1000℃未満の温度範囲で行われてもよく、好ましくは、700℃~900℃の温度範囲で行われてもよく、さらに好ましくは、800℃~900℃の温度範囲で熱処理が行われることが好ましい。前記熱処理温度が1000℃以上の場合、前記正極活物質のリチウムまで除去することができる。
【0033】
また、本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法は、前記熱処理後に、前記前処理物質に硫酸を混合して残存する炭素材(負極活物質)、銅などの不純物をさらに除去する工程を含んでもよい。
【0034】
前記廃リチウム二次電池は、正極、負極、分離膜、および電解質を含み、ポーチをさらに含んでもよい。具体的に、廃リチウム二次電池は、負極と正極との間に分離膜(separator)を介して、ここに電解質を含む電解液が供給されたものを含む。より具体的に、前述した廃リチウム二次電池は、例えば、前記負極、前記分離膜、および前記正極を順次積層した後、これをワインディング(winding)するか、または折りたたんで円筒型または角型電池ケースまたはポーチに入れた後、前記電池ケースまたはポーチに有機電解液を注入して製造されたものであってもよい。
【0035】
前記廃リチウム二次電池の正極は、リチウム金属またはリチウム遷移金属酸化物を含むものであってもよく、当分野において知られている通常の方法で製造されたものであってもよい。例えば、正極活物質に、溶媒、必要に応じてバインダー、導電材、分散剤を混合および撹拌してスラリーを製造した後、これを正極集電体に塗布(コーティング)して圧縮した後、乾燥して製造されたものであってもよい。
【0036】
前記廃リチウム二次電池の正極活物質は、下記化学式1で表される正極活物質を含むものであって、ニッケルの含有量の高いものが好ましい。
【0037】
[化1]
LiNiCoMn
前記化1において、0.5≦x≦1であり、0≦y≦0.3であり、0≦z≦0.3であり、x+y+z=1であり、好ましくは、0.5≦x≦0.9であり、0.1≦y≦0.3であり、0.1≦z≦0.3であり、x+y+z=1である。
【0038】
前記正極の溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、水、またはこれらの混合物が用いられてもよく、前記正極の導電材は、ポリアクリル酸、アセチレンブラック、ファーネスブラック、グラファイト、炭素繊維、またはフラーレンなどの導電性助材などを用いてもよい。
【0039】
前記正極のバインダーは、正極活物質粒子同士を互いによく付着させ、また正極活物質を正極集電体によく付着させる役割を果たし、例えば、前記バインダーは、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、または様々な共重合体などを用いてもよい。
【0040】
前記正極集電体は、約3μm~約500μmの厚みであって、当該電池に化学的変化を引き起こすことなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、アルミニウムまたはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されたもので表面処理したものが用いられてもよい。前記集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、または不織布体の様々な形態が可能である。
【0041】
前記廃リチウム二次電池の負極は、当技術分野において知られている通常の方法で製造されたものであってもよい。例えば、負極活物質に、溶媒、必要に応じてバインダー、導電材、分散剤を混合および撹拌してスラリーを製造した後、これを負極集電体に塗布(コーティング)して圧縮した後、乾燥して製造されたものであってもよい。
【0042】
前記負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵および放出できる炭素材料、リチウム金属、ケイ素または錫などであってもよい。好ましくは、炭素材であってもよく、炭素材としては、低結晶炭素および高結晶性炭素などが挙げられる。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、天然黒鉛、キッシュ黒鉛(kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(mesophase pitches)、および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0043】
前記負極の溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、水、またはこれらの混合物が用いられてもよく、前記負極の導電材料としては、ポリアクリル酸、アセチレンブラック、ファーネスブラック、グラファイト、炭素繊維、またはフラーレンなどの導電性助材などを用いてもよい。
【0044】
前記負極のバインダーは、負極活物質粒子同士を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、例えば、前記バインダーとしては、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、または様々な共重合体などを用いてもよい。
【0045】
前記負極集電体は、一般的に、約3μm~約500μmの厚さで作られる。このような前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こすことなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅またはステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、または銀で表面処理したもの、または、アルミニウム-カドミウム合金などを含んでもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、または不織布体の様々な形態に用いることができる。
【0046】
前記廃リチウム二次電池の分離膜としては、その種類を限定することではないが、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、およびエチレン-メタクリレート共重合体からなる群から選択されたポリオレフィン系高分子で製造された多孔質基材と、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイト、およびポリエチレンナフタレンからなる群から選択された高分子で製造された多孔質基材と、または無機物粒子およびバインダー高分子の混合物から形成された多孔質基材などを用いてもよい。特に、リチウムイオン供給コア部のリチウムイオンが外部電極にも容易に伝達されるためには、前記ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイト、ポリエチレンナフタレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された高分子で製造された多孔質基材に該当する不織布材料の分離膜を用いることが好ましい。
【0047】
前記分離膜は、気孔の大きさが約0.01μm~約10μmであり、厚さは一般的に、約5μm~約300μmであるものが用いられる。
【0048】
前記廃リチウム二次電池の電解質としては、例えば、PEO、PVdF、PVdF-HFP、PMMA、PAN、またはPVACを用いたゲル型高分子電解質、またはPEO、PPO(polypropylene oxide)、PEI(polyethylene imine)、PES(polyethylene sulphide)、またはPVAc(polyvinyl acetate)を用いた固体電解質などを用いてもよい。また、電解質としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルホルメート(MF)、ガンマ-ブチロラクトン(γ-BL;butyrolactone)、スルホレン(sulfolane)、メチルアセテート(MA;methylacetate)、またはメチルプロピオネート(MP;methylpropionate)を用いた非水電解液を用いてもよい。また、電解質は、リチウム塩をさらに含んでもよいが、このようなリチウム塩としては、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、またはテトラフェニルホウ酸リチウムなどを用いてもよい。
【0049】
本願の一実施例において、前記廃リチウム二次電池は、前記分離膜以外に有機固体電解質および/または無機固体電解質が共に用いられてもよいが、これに制限されるものではない。このとき、前記有機固体電解質および/または無機固体電解質が用いられる場合、場合によっては、固体電解質が分離膜を兼ねることもあるので、前述した分離膜を用いなくても構わない。
【0050】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリビニルアルコール、またはポリフッ化ビニリデンを含んでもよいが、これに制限されるものではない。前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiS、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0051】
(2)ニッケルを沈殿させるステップ
本発明に係る正極活物質前駆体材料の製造方法は、前記浸出液に、2w/v%以上、好ましくは、2~20w/v%、さらに好ましくは、10~20w/v%のオキシム系物質を添加してニッケルを沈殿させるステップを含む。
【0052】
本発明において、前記浸出液のニッケル濃度は、10g/L超過であってもよく、20g/L以上であることが好ましく、20~50g/Lであることがさらに好ましい。本発明は、20g/L以上の高濃度のニッケルを含有する浸出液でも高純度のニッケルを高収率で回収することができる。
【0053】
本発明において、前記オキシム系物質は、ジメチルグリオキシム(Dimetylglyoxime、DMG)、ジエチルグリオキシム、ジプロピルグリオキシム、およびエチルメチルグリオキシムからなる群から選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0054】
特に、前記オキシム系物質のうち、前記ジメチルグリオキシムは、従来、沈殿物の色変化を通じてニッケルの有無を確認する指示薬としては用いられているが、2w/v%以上の濃度で製造することが難しく、実質的に正極活物質の回収などに工程に使用することができなかった。本発明では、ニッケルの回収に活用可能な2w/v%以上の濃度のオキシム系物質を製造し、前記高濃度のオキシム系物質をニッケル含有浸出液に沈殿させることによってニッケル塩を分離させる役割が可能である。
【0055】
前記(2)ステップにおいて、前記2~20w/v%のオキシム系物質は、けん化ステップを経て得られるものであってもよい。したがって、本発明に係る正極活物質前駆体材料の製造方法は、前記(2)ステップにおいて、オキシム系物質をけん化して2~20w/v%のオキシム系溶液を得るステップをさらに含んでもよい。本発明において、ニッケルを沈殿させる物質であるオキシム系物質は、有機物であって、水のような極性溶媒に対して1w/v%未満の顕著に低い溶解度を有する物質である。したがって、本発明では、オキシム系物質をけん化して極性溶媒に対する溶解度を向上させることによって、2~20w/v%のオキシム系物質を得る。
【0056】
具体的に、前記オキシム系物質のけん化のために極性溶媒とアルカリ性溶液とを混合した後、前記オキシム系物質を溶解させ、前記オキシム系溶液を得ることを含んでもよい。例えば、前記アルカリ性溶液は、NaOH、KOH、Ca(OH)、およびNHOHからなる群から選択される少なくとも1種以上が用いられてもよく、前記オキシム系物質は、極性溶媒に溶解されている形態であってもよく、これに対するオキシム系物質の濃度は、2~20w/v%、好ましくは、5~15w/v%であってもよい。前記極性溶媒は、例えば、水、アルコール、アセトン、およびカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を用いてもよい。
【0057】
本発明において、オキシム系溶液は、オキシム系物質が40%以上、好ましくは、50%以上にけん化したものを含んでもよく、Ni含有量が増加するにつれて、オキシム系物質が100%にけん化することが好ましい。例えば、NCM523廃電池を用いる場合、50%けん化したオキシム系物質でニッケルを80%以上回収することができ、NCM811廃電池を用いる場合には、100%けん化したオキシム系物質でニッケルを80%以上回収することができるが、これに制限されるものではない。
【0058】
前記オキシム系溶液のけん化の程度は、前記アルカリ性溶液の添加量に応じて調節することができる。例えば、前記オキシム系物質のモル数100%に該当する重量で前記アルカリ性溶液を添加すると、50%けん化したオキシム系溶液を得ることができ、前記オキシム系物質のモル数200%に該当する重量で前記アルカリ性溶液を添加すると、100%けん化したオキシム系溶液を得ることができる。
【0059】
前記ニッケルを沈殿させるステップは、前記浸出液のpHが4~6、好ましくは、pH6の場合、前記オキシム系溶液を用いて、前記浸出液を沈殿させてNi塩を得るステップを含む。
【0060】
また、本発明に係る正極活物質前駆体材料の製造方法は、前記(2)ステップにおいて、前記沈殿されたニッケルを硫酸処理して硫酸ニッケル(NiSO)を得るステップをさらに含んでもよい。前記ニッケルを硫酸塩の形態で回収することによって、別途の処理工程なしに、リチウム二次電池の正極活物質前駆体として直ちに適用可能である。
【0061】
本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法において、前記廃リチウム二次電池正極活物質に対するニッケルの回収率は60%以上であってもよく、好ましくは、80%以上、さらに好ましくは、85%以上、最も好ましくは、90%以上であってもよく、特に、廃リチウム二次電池正極活物質に含まれたニッケル含有量の高い高濃度のニッケル条件でも、80%以上のニッケルの回収率を示すことができる。本発明の正極活物質前駆体材料の製造方法によって回収されるニッケルの純度は99%以上であることが好ましい。
【0062】
(3)追加の正極活物質前駆体材料を得るステップ
本発明に係る正極活物質前駆体材料の製造方法は、前記(1)ステップおよび/または前記(2)ステップの前および/または後のステップであって、マンガンを抽出するステップおよび/またはコバルトを抽出するステップをさらに含んでもよい。
【0063】
具体的に、前記マンガンを抽出するステップは、pH3~4で、リン酸系物質を用いてマンガンを含む浸出液を溶媒抽出して、マンガン(Mn)塩を得るステップを含み、前記マンガン塩は、硫酸マンガン(MnSO)であることを含む。前記リン酸系物質は、マンガン塩抽出剤であって、前記浸出液のpHが3~4、好ましくは、pH3.5~4、さらに好ましくは、pH4の場合、Mn塩を80%以上の効率で抽出できる物質を含むことができる。前記Mn塩の抽出効率は、80%以上であってもよく、好ましくは、85%以上、さらに好ましくは、90%以上であってもよく、前記リン酸系物質は、例えば、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸[Di-(2-ethylhexyl)phosphoric acid,D2EHPA]または2-エチルヘキシルホスホン酸モノ2-エチルヘキシルエステル(2-ethylhexyl phosphonic acid mono 2-ethylhexyl ester、PC88A)を含むものであってもよく、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸であることが好ましい。
【0064】
マンガンを抽出するステップは、前記(1)ステップ後、前記(2)ステップの前ステップに含まれてもよい。
【0065】
具体的に、前記コバルトを抽出するステップは、pH4~5で、リン酸系物質を用いて、コバルトを含む浸出液を溶媒を抽出して、コバルト(Co)塩を得るステップを含み、前記コバルト塩は、硫酸コバルト(CoSO)であることを含む。前記リン酸系物質は、コバルト浸出剤であって、前記浸出液のpHが4~5、好ましくは、pH4.5~5、さらに好ましくは、pH5の場合、Co塩を80%以上の効率で抽出できる物質を含むことができる。前記Co塩の抽出効率は、80%以上であってもよく、好ましくは、85%以上、さらに好ましくは、90%以上であってもよく、前記リン酸系物質は、例えば、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸[Di-(2-ethylhexyl)phosphoricacid,D2EHPA]または2-エチルヘキシルホスホン酸モノ2-エチルヘキシルエステル(2-ethylhexyl phosphonic acid mono 2-ethylhexyl ester、PC88A )を含むものであってもよく、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸であることが好ましい。
【0066】
<リチウム二次電池用正極活物質の製造方法>
また、本発明は、本発明に係る正極活物質前駆体材料の製造方法によって製造される正極活物質前駆体材料およびリチウム塩を混合して、LiNix’Coy’Mnz’(0<x’≦1であり、0≦y’<1であり、0≦z’<1であり、x’+y’+z’=1である。)で表される正極活物質を得ることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0067】
本発明によって製造される正極活物質は、ニッケルまたはニッケル塩を含むものであれば、特に限定されないが、ニッケルを含むとともに、コバルトおよびマンガンのうち1つ以上を含む二成分系正極活物質、または、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む三成分系正極活物質であってもよい。
【0068】
前記リチウム塩は、炭酸リチウムおよび水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも1種以上であってもよい。
【0069】
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、本発明によって製造された正極活物質前駆体材料を用いる点を除いては、公知の製造方法によって正極活物質を製造することができる。
【0070】
<リチウム二次電池用正極活物質>
また、本発明は、本発明に係るリチウム二次電池用正極活物質の製造方法によって製造されたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、本発明によって製造された正極活物質前駆体材料を用いる点を除いては、公知の製造方法によって製造することができる。
【0071】
[発明の実施のための形態]
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が、下記の実施例によって限定されるものではない。
【0072】
正極活物質前駆体材料の製造
ニッケルの回収のための前処理過程であって、廃リチウム二次電池から分離したNCM811、NCM523またはNCM111正極材900kgを破砕し、ミリングで粒子大きさ2μm~5μmに粉砕処理した。前記得られた粉末を硫酸溶液で6時間以上反応させた後、Li、Mn、Co、Niが含まれた浸出液を得た。前記Li、Mn、Co、Niが含まれた浸出液から溶媒抽出してMnを抽出した。
【0073】
<実施例1>
1)10w/v%DMG溶液の製造(けん化100%)
NCM523廃リチウム二次電池から得られたMnが抽出された抽出残液(Ni 29g/L)に含まれたNiに対して2.2当量のDMGを用いた。Ni 29g/L溶液100mLを沈殿させるためには、約12.62gのDMGが必要となり、10w/v%DMG溶液を作るために、約126mLのDI-WaterにNaOHを溶解させた。このとき、NaOHは、DMGモル数の200%である8.69gを用いた。DI-WaterにNaOHが完全に溶解されると、DMGを投入して溶解させ、けん化100%のDMG溶液を製造した。
【0074】
2)硫酸ニッケル溶液の製造
NCM523廃リチウム二次電池から得られたMnが回収された抽出残液は、pH5.0に調節した。その後、80℃に維持し、先に製造したけん化100%の10w/v%DMG溶液を滴下(dropping)して添加した。30分以上温度を維持し、撹拌(stirring)した。反応が完了すると、常温に冷ました後、ろ過して沈殿物を得た。前記沈殿物をDI-Waterで洗浄し、硫酸処理して高純度の硫酸ニッケル溶液を得た。
【0075】
本発明の実施形態に係る正極活物質前駆体材料の製造過程を図1に示した。
<実施例2>
1)20w/v%DMG溶液の製造(けん化100%)
NCM523廃リチウム二次電池から得られたMnが抽出された抽出残液(Ni 29g/L)に含まれたNiに対して2.2当量のDMGを用いた。Ni 29g/L溶液100mLを沈殿させるためには、約12.62gのDMGが必要となり、20w/v%DMG溶液を作るために、まず、約63mLのDI-WaterにNaOHを溶解させた。このとき、NaOHは、DMGモル数の200%である8.69gを用いた。DI-WaterにNaOHが完全に溶解されると、DMGを投入して溶解させ、けん化100%のDMG溶液を製造した。
【0076】
2)硫酸ニッケル溶液の製造
前記製造されたけん化100%の20w/v%DMG溶液を用いたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高純度の硫酸ニッケル溶液を得た。
【0077】
<実施例3>
1)10w/v%DMG溶液の製造(けん化50%)
NCM523廃リチウム二次電池から得られた前記Mnが抽出された抽出残液(Ni 29g/L)に含まれたNiに対して2.2当量のDMGを用いた。Ni 29g/L溶液100mLを沈殿させるためには、約12.62gのDMGが必要となり、10w/v%DMG溶液を作るために、まず、約126mLのDI-Water(脱イオン水)にNaOHを溶解させた。このとき、NaOHは、DMGモル数の100%である4.34gを用いた。DI-WaterにNaOHが完全に溶解されると、DMGを投入して溶解させ、けん化50%のDMG溶液を得た。
【0078】
2)硫酸ニッケル溶液の製造
前記製造されたけん化50%の10w/v%DMG溶液を用いたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高純度の硫酸ニッケル溶液を得た。
【0079】
<実施例4>
1)10w/v%DMG溶液の製造(けん化100%)
NCM811廃リチウム二次電池から得られたMnが抽出された抽出残液(Ni 47g/L)に含まれたNiに対して2.2当量のDMGを用いた。Ni 47g/L溶液100mLを沈殿させるためには、約20.46gのDMGが必要となり、10w/v%DMG溶液を作るために、まず、約204mLのDI-WaterにNaOHを溶解させた。このとき、NaOHは、DMGモル数の200%である13.6gを用いた。DI-WaterにNaOHが完全に溶解されると、DMGを投入して溶解させ、けん化100%のDMG溶液を製造した。
【0080】
2)硫酸ニッケル溶液の製造
NCM811廃リチウム二次電池から得られた抽出残液(Ni 47g/L)を用いたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高純度の硫酸ニッケル溶液を得た。
【0081】
<実施例5>
1)10w/v%DMG溶液の製造(けん化50%)
NCM811廃リチウム二次電池から得られた前記Mnが抽出された抽出残液(Ni 47g/L)に含まれたNiに対して2.2当量のDMGを用いた。Ni 47g/L溶液100mLを沈殿させるためには、約20.46gのDMGが必要となり、10w/v%DMG溶液を作るために、まず、約204mLのDI-Water(脱イオン水)にNaOHを溶解させた。このとき、NaOHは、DMGモル数の100%である6.8gを用いた。DI-WaterにNaOHが完全に溶解されると、DMGを投入して溶解させ、けん化50%のDMG溶液を得た。
【0082】
2)硫酸ニッケル溶液の製造
NCM811廃リチウム二次電池から得られた抽出残液(Ni 47g/L)を用いたこと、および前記製造されたけん化50%の10w/v%DMG溶液を用いたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高純度の硫酸ニッケル溶液を得た。
【0083】
<比較例1>
1)1w/v%DMG溶液の製造(けん化0%)
NCM111廃リチウム二次電池から得られたMnが抽出された抽出残液(Ni 9.66g/L)に含まれたNiに対して2.2当量のDMGを用いた。Ni 9.66g/L溶液100mLを沈殿させるために4.2gDMGを用い、これをエタノールに溶かして約1w/v%DMG溶液を製造した。
【0084】
2)硫酸ニッケル溶液の製造
NCM111廃リチウム二次電池から得られた抽出残液(Ni 9.66g/L)を用いたこと、および前記製造した1w/v%DMG溶液を用いたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高純度の硫酸ニッケル溶液を得た。
【0085】
<比較例2>
1)1w/v%DMG溶液の製造(けん化0%)
NCM523廃リチウム二次電池から得られたMnが抽出された抽出残液(Ni 29g/L)に含まれたNiに対して2.2当量のDMGを用いた。Ni 29g/L溶液100mLを沈殿させるために、約12.62gのDMGを用い、これをエタノールに溶解して約1w/v%のDMG溶液を製造した。
【0086】
2)硫酸ニッケル溶液の製造
前記製造された1w/v%DMG溶液を用いたことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高純度の硫酸ニッケル溶液を得た。
【0087】
前記実施例1~5および比較例1および2によって得られたニッケルの回収率と純度を下記表1に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
前記表1を参照すると、DMGを50%以上けん化したとき、高濃度のニッケルを含有する廃電池から得られた抽出残液でも、99%以上の高純度のニッケルを89%以上の回収率で得られた。
【0090】
これに対し、けん化していないDMGを用いる場合、ニッケル含有量の低い廃電池からニッケルを回収したときは、88%の回収率を示したが、ニッケル含有量の高い電池からニッケルを抽出したときは、ニッケルの回収率が16%と顕著に低いことを確認することができた。
図1
【国際調査報告】