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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】IL4Rに結合する抗体とその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230405BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230405BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230405BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230405BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230405BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230405BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230405BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230405BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/08
A61P17/00
A61P11/02
A61P11/06
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K31/57
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551774
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 CN2021077784
(87)【国際公開番号】W WO2021170020
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/982,521
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ミンジュ
(72)【発明者】
【氏名】タン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン,キャシー・シアオイエン
(72)【発明者】
【氏名】マ,マーク・ヂーチン
(72)【発明者】
【氏名】シア,シューカイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ヂョンピン
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ホンジアン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ヂージエン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA91Y
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZA621
4C084ZA891
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC021
4C084ZC132
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZA62
4C086ZA89
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA17
4C087MA21
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA24
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA60
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA34
4C087ZA62
4C087ZA89
4C087ZB13
4C087ZB26
4C087ZC02
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒトIL4Rαに特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位を提供する。本発明はまた、抗体又はその抗原結合部位をコードする核酸分子、抗体又はその抗原結合部位を発現するための発現ベクター、宿主細胞、及び方法を提供する。本発明はさらに、抗体又はその抗原結合部位を含む二重特異性分子、腫瘍溶解性ウイルス、及び医薬組成物、ならびに本発明の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合部位を使用する治療方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン4受容体アルファサブユニット(IL4Rα)に結合する単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位であって、重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記CDR1、CDR2及びCDR3は、(1)それぞれ配列番号1、5及び10に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(2)それぞれ配列番号1、6及び11に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(3)それぞれ配列番号2、7及び12に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(4)それぞれ配列番号3、8及び13に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(5)それぞれ配列番号4、8及び13に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;又は(6)それぞれ配列番号3、9及び14に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項2】
前記重鎖可変領域は、配列番号32、33(X1=W、X2=S;X1=L、X2=A;X1=W、X2=A)、34、38、40、41(X1=A、X2=K、X3=V、X4=H;X1=V、X2=K、X3=V、X4=H;X1=A、X2=Q、X3=V、X4=H;X1=A、X2=K、X3=M、X4=H;X1=A、X2=K、X3=V、X4=Y;X1=V、X2=K、X3=M、X4=H)、42(X1=R、X2=A、X3=S、X4=N;X1=K、X2=V、X3=S、X4=N;X1=K、X2=A、X3=T、X4=N;X1=K、X2=A、X3=S、X4=D;X1=R、X2=V、X3=T、X4=N)、43、44、47、49、51又は53に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項3】
軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記CDR1、CDR2及びCDR3は、(1)それぞれ配列番号15、22及び26に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(2)それぞれ配列番号16、22及び27に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(3)それぞれ配列番号17、23及び28に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(4)それぞれ配列番号18、24及び29に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(5)それぞれ配列番号19、24及び30に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(6)それぞれ配列番号20、25及び31に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;又は(7)それぞれ配列番号21、25及び31に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域は、配列番号35、36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)、37、39、45、46、48、50、52又は54に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる、請求項3に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項5】
前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、(1)それぞれ配列番号1、5、10、15、22及び26に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(2)それぞれ配列番号1、6、11、16、22及び27に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(3)それぞれ配列番号2、7、12、17、23及び28に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(4)それぞれ配列番号3、8、13、18、24及び29に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(5)それぞれ配列番号4、8、13、19、24及び30に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(6)それぞれ配列番号3、9、14、20、25及び31に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;又は(7)それぞれ配列番号3、9、14、21、25及び31に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる、請求項3に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項6】
前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、(1)それぞれ配列番号32及び35に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(2)それぞれ配列番号33(X1=W、X2=S)及び36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(3)それぞれ配列番号33(X1=W、X2=S)及び37に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(4)それぞれ配列番号34及び36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(5)それぞれ配列番号34及び37に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(6)それぞれ配列番号33(X1=L、X2=A)及び36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(7)それぞれ配列番号33(X1=L、X2=A)及び37に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(8)それぞれ配列番号33(X1=W、X2=A)及び36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(9)それぞれ配列番号33(X1=W、X2=A)及び37に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(10)それぞれ配列番号38及び39に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(11)それぞれ配列番号40及び45に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(12)それぞれ配列番号41(X1=A、X2=K、X3=V、X4=H;X1=V、X2=K、X3=V、X4=H;X1=A、X2=Q、X3=V、X4=H;X1=A、X2=K、X3=M、X4=H;X1=A、X2=K、X3=V、X4=Y;X1=V、X2=K、X3=M、X4=H)及び46に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(13)それぞれ配列番号42(X1=R、X2=A、X3=S、X4=N;X1=K、X2=V、X3=S、X4=N;X1=K、X2=A、X3=T、X4=N;X1=K、X2=A、X3=S、X4=D;X1=R、X2=V、X3=T、X4=N)及び46に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(14)それぞれ配列番号43及び46に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(15)それぞれ配列番号44及び46に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(16)それぞれ配列番号47及び48に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(17)それぞれ配列番号49及び50に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(18)それぞれ配列番号51及び52に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;又は(19)それぞれ配列番号53及び54に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる、請求項5に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項7】
前記重鎖可変領域に連結された重鎖定常領域、及び前記軽鎖可変領域に連結された軽鎖定常領域を含み、前記重鎖定常領域は、配列番号55に示されるアミノ酸配列を有し、前記軽鎖定常領域は、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、(a)ヒトIL4Rαに結合する;(b)サルIL4Rαに結合する;(c)IL4Rα-IL4相互作用を遮断する;及び(d)IL4Rα-IL13-IL13Rα1相互作用を遮断する、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、マウス抗体、ヒト抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、IgG1、IgG2又はIgG4アイソタイプである、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位。
【請求項11】
請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位をコードするヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項13】
請求項11に記載のヌクレオチド又は請求項12に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位、請求項11に記載のヌクレオチド、請求項12に記載の発現ベクター又は請求項13に記載の宿主細胞、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
さらに、抗アレルギー剤又は抗腫瘍剤を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗アレルギー剤は、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、β-アドレナリン受容体作動薬、cyc-LTsを標的とする薬物又はIgEを標的とする薬物である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
過剰なIL4及び/又はIL13シグナル伝達に関連するアレルギー性疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項14又は16に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む前記方法。
【請求項18】
前記アレルギー性疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー反応、アレルギー性鼻炎又はアレルギー性喘息である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象におけるSTAT6活性化の増加に関連する腫瘍を治療する方法であって、治療有効量の請求項14に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む前記方法。
【請求項20】
前記腫瘍は、固形腫瘍である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月27日に出願された米国仮出願No.62/982,521に基づく優先権を主張する。
【0002】
前述出願及び本出願で引用される又は審査されているすべての文献(「出願で引用される文献」)、本出願で引用される又は参照されるすべての文献(本出願で引用されるすべての文献、特許、公開された特許出願を含むがこれらに限定されない)(「本出願で引用される文献」)及び本出願で引用される文献中で引用される又は参照されるすべての文献は、本明細書で言及されている製品又は本明細書で参照により組み込まれている文献で言及されている製品の製造業者の指示、説明、製品仕様、及び製品シートとともに、本明細書で参照により本発明の実施に組み込まれ、使用することができる。より具体的には、すべての参照された文献は、個々の文献が参照によって組み込まれるように具体のかつ個別に示された場合と同じ程度に、参照によって組み込まれる。本発明で言及されるすべてのGenbank配列は、本発明の最も早い有効な出願日の配列であるように、Genbank配列の援用により組み込まれる。
【0003】
技術領域
本発明は、高い親和力及び機能性でヒトIL4R、特にIL4Rαに結合する、単離されたモノクローナル抗体、特にマウス、キメラ又はヒト化のモノクローナル抗体又はそれらの抗原結合部位に関する。本発明はまた、本発明の抗体又はその抗原結合部位をコードする核酸分子、本発明の抗体又はその抗原結合部位を発現させるための発現ベクター、宿主細胞及び方法を提供する。本発明はさらに、本発明の抗体又はその抗原結合部位を含む二重特異性分子、免疫複合体、キメラ抗原受容体、腫瘍溶解性ウイルス及び医薬組成物、ならびに本発明の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合部位を使用する治療方法を提供する。
【0004】
背景技術
アトピー性皮膚炎、過敏症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息などの2型炎症に関連するアレルギー性疾患は、世界中で30億以上の人々を苦しめ、その発生率は増加し続けている。衛生仮説によると、発生率が高いのは、生活水準が向上するにつれて感染症への曝露が減少し、免疫系が特定の無害なアレルゲンをより処理できるようになるためである(Stephen J. Galli et al.,(2008)Nature 454(7203):445-454)。2型免疫の中心となる2つの要因は、インターロイキン-4(IL-4)とIL-13である。それらは、例えば、免疫グロブリンE産生、及び炎症部位への先天性細胞動員など2型炎症に関連する主要な特徴のほとんどを推進するために必要である。(Gruning G et al.,(1998)Science 282:2261-2263; Rankin JA et al.,(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93:7821-7825; Wills-Karp M et al.,(1998)Science 282:2258-2261)。
【0005】
IL-4とIL-13は、ヒトの5番染色体上で互いに隣接しており、調節要素を共有している可能性がある。t-ヘルパー2細胞(T2)では、これら2つのサイトカインの協調的及び非協調的発現の両方が観察される(Katherine Bao et al.,(2015)Cytokine 75(1):25-37)。2つのサイトカインは細胞表面受容体に結合して細胞機能を調節し、転写機構を活性化する。具体のには、IL-4は最初にピコモル親和性でIL-4Rα鎖に結合し、IL-2Rγ γc鎖を動員してI型受容体複合体を形成するか、あるいはIL-13Rα1を動員してII型受容体複合体を形成する。IL-2Rγ γc及びIL-13Rα1のレベル又は可用性によって、受容体複合体形成でどちらを動員するかが決まる。非造血細胞は、IL-2Rγ γcを発現しないか、低発現するが、IL-13Rα1を高発現することに対し、リンパ球では逆のことが発見されている。骨髄細胞はこれら2種類の細胞の間にある。II型IL-4受容体複合体の形成は、IL-13がIL-13Rα1鎖(ナノモル親和性結合)に結合することによって開始され、IL-4Rα鎖をさらに動員することもできる。II型IL-4受容体に加え、IL-13はIL-13Rα2にピコモル親和性で結合することができ、これはおとり受容体と考えられている(Irina G. Luzina et al.,(2012)J Leukoc Biol 92(4):753-764)。IL-4受容体複合体が組み立てられると、細胞内シグナル伝達分子が活性化され、その中のSTAT6及びIRSシグナル伝達は、I型IL-4受容体の活性化に応答するが、II型IL-4受容体はIRSを有意に活性化できない(Heller NM et al.,(2008)Sci Signal 1(51):ra17-ra17)。STAT6シグナル伝達はT2細胞の分化とIL-4産生に重要であり、IRS分子はPI3KやmTORなどのシグナル伝達経路を活性化する(Gadani SP et al.,(2012)J Immunol 189:4213-4219)。
【0006】
研究者らは、過剰なIL-4/IL-13シグナル伝達がアレルギー性疾患を引き起こす可能性があることを示唆しており、したがって、IL-4及びIL-13を介したシグナル伝達を改変するためのいくつかの治療用抗体が開発されている。例えば、IL-13に結合するLeprikizumab、AnrukinzumabとTralokinumab、及びIL-4を標的するPascolizumabである。DupilumabとPitrakinraはIL-4Rα拮抗剤であり、PitrakinraとIL-4Rαに結合するとI型とII型の両方のIL-4受容体を遮断する(Antoniu SA(2010)Curr Opin Investig Drugs 11:1286-1294)。そして、STAT6阻害剤は前立腺癌細胞の増殖を阻害することがわかっており、IL-4/IL-13を標的とすることががん治療に役立つ可能性があることを示唆している(Nappo G et al.,(2017)Oncogenesis 2017, 6(5):e342)。したがって、より望ましい治療特性を備えた、IL-4、IL-13及びそれらの受容体(特にIL-4Rα)を標的とするより多くの抗体が望まれる。
【0007】
発明の概要
本発明は、従来技術の例えば、Dupilumabなどの抗IL4Rα抗体と比較して、ヒト及び/又はサルIL4Rαと同等以上の結合親和性/能力、及びIL4Rα-IL4/IL13-IL13Rα1相互作用及び対応する細胞内シグナル伝達に対する同等以上の遮断活性を有する、IL4Rα(例えば、ヒトIL4Rα)に結合する例えば、マウス、ヒト、キメラ又はヒト化のモノクローナル抗体である単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位を提供する。
【0008】
本発明の抗体又はその抗原結合部位は、IL4Rαタンパク質の検出、ならびにアレルギー性疾患及びがんなどのIL4、IL13又はIL4R関連疾患の治療及び予防を含む、様々な用途に使用することができる。
【0009】
したがって、一側面では、本発明は、単離されたモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体)又はその抗原結合部位を提供する。前記モノクローナル抗体又はその抗原結合部位はIL4Rαに結合し、重鎖可変領域を含む。前記重鎖可変領域はCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域を含む。ここで、CDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域は、(1)それぞれ配列番号1、5及び10に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(2)それぞれ配列番号1、6及び11に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(3)それぞれ配列番号2、7及び12に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(4)それぞれ配列番号3、8及び13に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(5)それぞれ配列番号4、8及び13に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;又は(6)それぞれ配列番号3、9及び14に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる。
【0010】
一側面では、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、重鎖可変領域を含む。前記重鎖可変領域は、配列番号32、33(X1=W、X2=S;X1=L、X2=A;X1=W、X2=A)、34、38、40、41(X1=A、X2=K、X3=V、X4=H;X1=V、X2=K、X3=V、X4=H;X1=A、X2=Q、X3=V、X4=H;X1=A、X2=K、X3=M、X4=H;X1=A、X2=K、X3=V、X4=Y;X1=V、X2=K、X3=M、X4=H)、42(X1=R、X2=A、X3=S、X4=N;X1=K、X2=V、X3=S、X4=N;X1=K、X2=A、X3=T、X4=N;X1=K、X2=A、X3=S、X4=D;X1=R、X2=V、X3=T、X4=N)、43、44、47、49、51又は53に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる。ここで、前記抗体又はその抗原結合部位はIL4Rαに結合する。配列番号32に示されるアミノ酸配列列は、配列番号59又は60に示されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号40に示されるアミノ酸配列は、配列番号65又は66に示されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号33(X1=W、X2=A)及び41(X1=V、X2=K、X3=M、X4=H)に示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号61又は67に示されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0011】
一側面では、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位はIL4Rαに結合する。前記モノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、軽鎖可変領域を含む。前記軽鎖可変領域はCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域を含む。ここで、CDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域は、(1)それぞれ配列番号15、22及び26に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(2)それぞれ配列番号16、22及び27に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(3)それぞれ配列番号17、23及び28に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(4)それぞれ配列番号18、24及び29に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(5)それぞれ配列番号19、24及び30に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(6)それぞれ配列番号20、25及び31に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;又は(7)それぞれ配列番号21、25及び31に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる。
【0012】
一側面では、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、軽鎖可変領域を含む。前記軽鎖可変領域は、配列番号35、36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)、37、39、45、46、48、50、52又は54に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる。ここで、前記抗体又はその抗原結合部位はIL4Rαに結合する。配列番号35に示されるアミノ酸配列は、配列番号62又は63に示されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号45に示されるアミノ酸配列は、配列番号68又は69に示されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号36(X1=F、X2=V)及び46に示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号64又は70に示されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0013】
一側面では、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域を含む。ここで、重鎖可変領域CDR1、CDR2及びCDR3及び軽鎖可変領域CDR1、CDR2及びCDR3は、(1)それぞれ配列番号1、5、10、15、22及び26に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(2)それぞれ配列番号1、6、11、16、22及び27に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(3)それぞれ配列番号2、7、12、17、23及び28に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(4)それぞれ配列番号3、8、13、18、24及び29に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(5)それぞれ配列番号4、8、13、19、24及び30に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(6)それぞれ配列番号3、9、14、20、25及び31に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;又は(7)それぞれ配列番号3、9、14、21、25及び31に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる。ここで、前記抗体又はその抗原結合部位はIL4Rαに結合する。
【0014】
一側面では、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、(1)それぞれ配列番号32及び35に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(2)それぞれ配列番号33(X1=W、X2=S)及び36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(3)それぞれ配列番号33(X1=W、X2=S)及び37に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(4)それぞれ配列番号34及び36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(5)それぞれ配列番号34及び37に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(6)それぞれ配列番号33(X1=L、X2=A)及び36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(7)それぞれ配列番号33(X1=L、X2=A)及び37に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(8)それぞれ配列番号33(X1=W、X2=A)及び36(X1=L、X2=I;X1=F、X2=V;X1=F、X2=I)に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(9)それぞれ配列番号33(X1=W、X2=A)及び37に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(10)それぞれ配列番号38及び39に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(11)それぞれ配列番号40及び45に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(12)それぞれ配列番号41(X1=A、X2=K、X3=V、X4=H;X1=V、X2=K、X3=V、X4=H;X1=A、X2=Q、X3=V、X4=H;X1=A、X2=K、X3=M、X4=H;X1=A、X2=K、X3=V、X4=Y;X1=V、X2=K、X3=M、X4=H)及び46に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(13)それぞれ配列番号42(X1=R、X2=A、X3=S、X4=N;X1=K、X2=V、X3=S、X4=N;X1=K、X2=A、X3=T、X4=N;X1=K、X2=A、X3=S、X4=D;X1=R、X2=V、X3=T、X4=N)及び46に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(14)それぞれ配列番号43及び46に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(15)それぞれ配列番号44及び46に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(16)それぞれ配列番号47及び48に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(17)それぞれ配列番号49及び50に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;(18)それぞれ配列番号51及び52に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列;又は(19)それぞれ配列番号53及び54に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる。ここで、前記抗体又はその抗原結合部位はIL4Rαに結合する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖を含む。前記重鎖及び軽鎖は、ジスルフィド結合によって連結されており、前記重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含み、前記軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含む。ここで、重鎖可変領域のC末端は、重鎖定常領域のN末端に連結されており、軽鎖可変領域のC末端は、軽鎖定常領域のN末端に連結されている。ここで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、前述のアミノ酸配列を含み、且つ前記抗体又はその抗原結合部位はIL4Rαに結合する。重鎖定常領域は、配列番号55に示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG4定常領域であり得る。軽鎖定常領域は、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有するヒトκ定常領域であり得る。配列番号55及び56に示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号71及び72に示されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含むか、又は2本の重鎖と2本の軽鎖で構成されている。ここで、各重鎖は、上記の重鎖定常領域、上記の重鎖可変領域又はCDR配列を含み、各軽鎖は、上記の軽鎖定常領域、上記の軽鎖可変領域又はCDR配列を含む。ここで、前記抗体はIL4Rαに結合する。本発明の抗体は、完全長抗体、例えば、IgG1、IgG2又はIgG4アイソタイプ完全長抗体、好ましくは弱いADCC活性を有するIgG4アイソタイプ完全長抗体であり得る。軽鎖定常領域は、κ定常領域であり得る。その他の実施形態において、本発明の抗体は、一本鎖可変領域(scFv)抗体、又は抗体フラグメント、例えば、Fab又はF(ab’)フラグメントであり得る。
【0017】
例えば、Dupilumabなどの従来技術の抗IL4Rα抗体と比較して、本発明の抗体、又はその抗原結合部位は、ヒトIL4Rα及び/又はサルIL4Rαに対して、同等の(高くない場合)結合親和性/能力を有する。そして、IL4Rα-IL4/IL13-IL13Rα1相互作用及び対応する細胞内シグナル伝達に対して同等の(高くない場合)遮断活性を持っている。
【0018】
本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合部位とは異なる結合特異性を有する第2の機能的分子(例えば、第2の抗体)に連結された、本発明の抗体又はその抗原結合部位を含む二重特異性分子を提供する。本発明は、例えば、抗体薬物コンジュゲートなどの本発明の抗体又はその抗原結合部位を含む免疫複合体さらにを提供する。ここで、前記抗体又はその抗原結合部位は、治療剤(例えば、細胞毒素)に連結されている。他の一側面で、本発明の抗体又はその抗原結合部位は、キメラ抗原受容体(CAR)の一部であり得る。本発明は、キメラ抗原受容体を含むT細胞などの免疫細胞をさらに提供する。本発明の抗体又はその抗原結合部位は、腫瘍溶解性ウイルスによってコードされるか、又は腫瘍溶解性ウイルスと共に使用され得る。
【0019】
本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合部位、免疫複合体、二重特異性分子、腫瘍溶解性ウイルス、CAR又はCAR-T細胞、及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、抗アレルギー剤又は抗腫瘍剤をさらに含み得る。
【0020】
本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合部位をコードする核酸分子、ならびに前記核酸分子を含む発現ベクター及び前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明は、(i)宿主細胞において抗体を発現すること、及び(ii)宿主細胞又はその細胞培養物から抗体を単離することを含む、発現ベクターを含む宿主細胞による抗IL4Rα抗体又はその抗原結合部位を調製する方法を提供する。
【0021】
他の一側面で、IL4/IL13シグナル伝達を低減する方法を提供する。IL4はIL-4Rα及びγCを含む受容体を介してシグナルを伝達し、IL13はIL-4Rα及びIL13Rα1を含む受容体を介してシグナルを伝達する。IL4/IL13シグナル伝達の非限定的な例には、B細胞、好酸球、マクロファージ(例えば、活性化マクロファージ)の活性化及び/又は増殖、線維芽細胞の増殖、及び気道平滑筋などの平滑筋の増殖が含まれる。
【0022】
他の一側面で、本発明は、過剰なIL4/IL13シグナル伝達に関連する疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、治療有効量の本発明の抗体又はその抗原結合部位を対象に投与することを含む。
【0023】
前記疾患は、アレルギー性疾患であり得る。前記アレルギー性疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー反応、アレルギー性鼻炎又はアレルギー性喘息であり得る。いくつかの実施形態において、アレルギー性疾患を治療する方法は、本発明の組成物、二重特異性分子、又は抗体をコードするか又は保有する腫瘍溶解性ウイルス、あるいは対象において前述同じものを発現することができる核酸分子又はベクターを前記対象に投与することを含み得る。この方法はまた、抗アレルギー剤を投与することを含み得る。前記抗アレルギー剤は、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、ベータアドレナリン受容体作動薬、cyc-LTを標的とする薬剤、又はIgEを標的とする薬剤であり得る。
【0024】
前記疾患は、腫瘍疾患であり得る。前記腫瘍は、固形腫瘍又は非固形腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、前記腫瘍は前立腺がんである。いくつかの実施形態において、前記方法は、本発明の組成物、二重特異性分子、抗体薬物コンジュゲートなどの免疫複合体、CAR-T細胞、又は抗体をコードするか又は保有する腫瘍溶解性ウイルス、あるいは対象において前述同じものを発現することができる核酸分子又はベクターを前記対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗癌抗体、例えば、抗VISTA抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗LAG-3抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM 3抗体、抗STAT3抗体及び/又は抗ROR1抗体を、本発明の抗体又はその抗原結合部位と共に投与することができる。別の実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合部位は、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-21及び/又はGM-CSF)又は共刺激抗体(例えば、抗CD137抗体及び/又は抗GITR抗体)と共に投与することができる。本発明の抗体は、例えば、マウス抗体、ヒト抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体であり得る。
【0025】
他の一側面で、本発明は、治療有効量の本発明の抗体又はその抗原結合部位を対象に投与することを含む、タイプ2免疫応答を低減する方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記方法は、本発明の組成物、二重特異性分子、又は抗体をコードするか又は保有する腫瘍溶解性ウイルス、又は対象において前述同じものを発現することができる核酸分子又はベクターを前記対象に投与することを含む。
【0026】
他の一側面で、本発明は、診断のための方法、組成物及びキットを提供する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、細胞又は組織におけるIL4Rαの存在及び発現を決定するために使用され、予後及び適切な治療及びフォローアップを決定する。
【0027】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び実施例から明らかになるであろうが、これらは限定と解釈されるべきではない。本出願で引用されたすべての文書、Genbankの記録、特許、及び公開された特許出願の内容は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
附図説明
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1A-1Cは、マウス抗体B1D2F7D3B5(A)、B8G11F2B7G5E8及びB9D1D11F8D8(B)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(C)のヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図1B図1A-1Cは、マウス抗体B1D2F7D3B5(A)、B8G11F2B7G5E8及びB9D1D11F8D8(B)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(C)のヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図1C図1A-1Cは、マウス抗体B1D2F7D3B5(A)、B8G11F2B7G5E8及びB9D1D11F8D8(B)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(C)のヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図2A図2A-2Dは、マウス抗体B1D2F7D3B5(A)、B8G11F2B7G5E8(B)、B9D1D11F8D8(C)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(D)の細胞表面ヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図2B図2A-2Dは、マウス抗体B1D2F7D3B5(A)、B8G11F2B7G5E8(B)、B9D1D11F8D8(C)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(D)の細胞表面ヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図2C図2A-2Dは、マウス抗体B1D2F7D3B5(A)、B8G11F2B7G5E8(B)、B9D1D11F8D8(C)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(D)の細胞表面ヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図2D図2A-2Dは、マウス抗体B1D2F7D3B5(A)、B8G11F2B7G5E8(B)、B9D1D11F8D8(C)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(D)の細胞表面ヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図3図3は、マウス抗体B1D2F7D3B5、B8G11F2B7G5E8、B9D1D11F8D8、C2C1A1A1及びC2B2F7B7のカニクイザルIL4Rαへの結合能力を示す。
図4A図4A-4Bは、ヒトIL4Rα-IL4相互作用に対するマウス抗体B1D2F7D3B5、B8G11F2B7G5E8及びB9D1D11F8D8(A)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(B)の遮断能力を示す。
図4B図4A-4Bは、ヒトIL4Rα-IL4相互作用に対するマウス抗体B1D2F7D3B5、B8G11F2B7G5E8及びB9D1D11F8D8(A)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(B)の遮断能力を示す。
図5A図5A-5Bは、ヒトIL4と参照との結合に対するマウス抗体B1D2F7D3B5、B8G11F2B7G5E8及びB9D1D11F8D8(A)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(B)の遮断能力を示す。
図5B図5A-5Bは、ヒトIL4と参照との結合に対するマウス抗体B1D2F7D3B5、B8G11F2B7G5E8及びB9D1D11F8D8(A)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(B)の遮断能力を示す。
図6A図6A-6Cは、ヒトIL4と細胞表面ヒトIL4Rαとの相互作用に対するマウス抗体B1D2F7D3B5及びB8G11F2B7G5E8(A)、B9D1D11F8D8(B)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(C)の遮断能力を示す。
図6B図6A-6Cは、ヒトIL4と細胞表面ヒトIL4Rαとの相互作用に対するマウス抗体B1D2F7D3B5及びB8G11F2B7G5E8(A)、B9D1D11F8D8(B)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(C)の遮断能力を示す。
図6C図6A-6Cは、ヒトIL4と細胞表面ヒトIL4Rαとの相互作用に対するマウス抗体B1D2F7D3B5及びB8G11F2B7G5E8(A)、B9D1D11F8D8(B)、C2C1A1A1及びC2B2F7B7(C)の遮断能力を示す。
図7図7は、マウス抗体B1D2F7D3B5、B8G11F2B7G5E8、B9D1D11F8D8、C2C1A1A1及びC2B2F7B7の、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2 細胞における IL4 誘導 STAT6 リン酸化に対する阻害活性を示す。
図8図8は、マウス抗体B1D2F7D3B5、B8G11F2B7G5E8、B9D1D11F8D8、C2C1A1A1及びC2B2F7B7の、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞におけるIL13誘導 STAT6 リン酸化に対する阻害活性を示す。
図9図9は、キメラ抗体B8G11F2B7G5E8及びC2C1A1A1のヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図10図10は、キメラ抗体B8G11F2B7G5E8及びC2C1A1A1の細胞表面ヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図11図11は、キメラ抗体B8G11F2B7G5E8及びC2C1A1A1のヒトIL4Rα-IL4相互作用に対する遮断能力を示す。
図12図12は、キメラ抗体B8G11F2B7G5E8及びC2C1A1A1の、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2 細胞における IL4 誘導 STAT6 リン酸化に対する阻害活性を示す。
図13図13は、キメラ抗体B8G11F2B7G5E8及びC2C1A1A1の、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞におけるIL13誘導 STAT6 リン酸化に対する阻害活性を示す。
図14A図14A-14Bは、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)のヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図14B図14A-14Bは、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)のヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図15A図15A-15Bは、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)のカニクイザルIL4Rαへの結合能力を示す。
図15B図15A-15Bは、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)のカニクイザルIL4Rαへの結合能力を示す。
図16A図16A-16Bは、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)のcal-IL4Rαへの結合能力を示す。
図16B図16A-16Bは、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)のcal-IL4Rαへの結合能力を示す。
図17A図17A-17Bは、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の細胞表面ヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図17B図17A-17Bは、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の細胞表面ヒトIL4Rαへの結合能力を示す。
図18A図18A-18Bは、ヒトIL4とヒトIL4Rαを発現する293F細胞との相互作用に対するヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の遮断能力を示す。
図18B図18A-18Bは、ヒトIL4とヒトIL4Rαを発現する293F細胞との相互作用に対するヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の遮断能力を示す。
図19A図19A-19Bは、ヒトIL4Rα-IL4相互作用に対するヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の遮断能力を示す。
図19B図19A-19Bは、ヒトIL4Rα-IL4相互作用に対するヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の遮断能力を示す。
図20A図20A-20Bは、ヒトIL4と参照との結合に対するヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の遮断能力を示す。
図20B図20A-20Bは、ヒトIL4と参照との結合に対するヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の遮断能力を示す。
図21図21は、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2 細胞における IL4 誘導 STAT6 リン酸化に対する阻害活性を示す。
図22図22は、ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4及びhuB8G11F2B7G5E8-V14(A)、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15(B)の、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞におけるIL13誘導 STAT6 リン酸化に対する阻害活性を示す。
【0029】
例として与えられた以下の詳細な説明及び添付の図面は、最もよく理解され得るが、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されるべきではない。
【0030】
発明詳述
本発明をよりよく理解するために、いくつかの用語を最初に定義する。その他の定義は、詳細な説明全体に記載されている。
【0031】
「IL4Rα」という用語は、インターロイキン4受容体のαサブユニットを指す。「IL4Rα」という用語には、バリアント、サブタイプ、ホモログ、オルソログ、及びパラログが含まれる。例えば、ヒトIL4Rαタンパク質に特異的な抗体は、ある場合には、ヒト以外の種(例えば、サル)由来のIL4Rαタンパク質と交差反応することがある。その他の実施形態において、ヒトIL4Rαタンパク質に特異的な抗体は、ヒトIL4Rαタンパク質に完全に特異的であり、他の種又は他のタイプに対して交差反応性を示さないか、又は特定の他の種由来のIL4Rαと交差反応するが、他のすべてではなく交差反応する可能性がある。
【0032】
「ヒトIL4Rα」という用語は、例えば、Genbank登録番号NP_001244335.1を有するヒトIL4Rαのアミノ酸配列など、ヒト由来のアミノ酸配列を有するIL4Rαタンパク質を指す。「カニクイザルIL4Rα」及び「マーモセットサルIL4Rα」という用語は、例えば、Genbank登録番号EHH60265.1及びNP_001244161.1のアミノ酸配列をそれぞれ有するIL4Rα配列を指す。
【0033】
本明細書で言及される「抗体」という用語は、完全長抗体及び任意の抗原結合フラグメント(即ち、「抗原結合部位」)又はその一本鎖を含む。完全長抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結された2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略す)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCで構成されている。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化することができる。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖と軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体の定常領域は、免疫系のさまざまな細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1の成分(C1q)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0034】
抗体の「抗原結合部位」(又は単に「抗体部位」)という用語は、本明細書で使用される場合、抗原(例えば、IL4Rαタンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又は複数のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントによって実行できることが示されている。抗体の「抗原結合部位」という用語に含まれる結合フラグメントの例には、(i)Fabフラグメント、V、V、C及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つの Fab フラグメントを含む二価フラグメント;(iii)V及びCH1からなるFdフラグメント;(iv)抗体のシングルアームのV及びVからなるFvフラグメント;(v)VからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR);及び(vii)ナノ抗体、単一の可変ドメインと2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域;が含まれる。そして、Fvフラグメントの 2つのドメインであるV及びVは別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を使用して、それらを一本鎖タンパク質として作成できるようにする合成リンカーによって結合することができる。ここで、V及びVが対になって一価分子を形成する(単鎖Fv(scFv)といわれる;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883)を参照する。そのような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部位」という用語に包含されることを意図している。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られている従来の技術を使用して得られ、フラグメントは完全長抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0035】
本明細書で使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、IL4Rαタンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、IL4Rαタンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトIL4Rαタンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、他の種からのIL4Rαタンパク質などの他の抗原に対して交差反応性を有する可能性がある。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0036】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0037】
本明細書で使用される「マウス抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のマウス抗体は、マウス生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的突然変異誘発によって、又はインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)。しかし、本明細書で使用する「マウス抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がマウスフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図していない。
【0038】
「キメラ抗体」という用語は、ヒト以外の源からの遺伝物質をヒトからの遺伝物質と組み合わせることによって産生された抗体を指す。又は、より一般的には、キメラ抗体は、特定の種からの遺伝物質と別の種からの遺伝物質を有する抗体である。
【0039】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒトで天然に産生される抗体変異体との類似性を高めるためにタンパク質配列が改変された非ヒト種由来の抗体を指す。
【0040】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0041】
「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」、「抗原に対して特異性を有する抗体」という用語は、本明細書では「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と交換可能に使用される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヒトIL4Rαに特異的に結合する」抗体は、ヒトIL4Rαタンパク質(及びおそらく1つ又は複数の非ヒト種由来のIL4Rαタンパク質)に結合するが、非ヒトIL4Rαタンパク質には実質的に結合しない抗体を指す。好ましくは、抗体は「高親和性」でヒトIL4Rαタンパク質に結合する。即ち、5.0×-8M以下、好ましくは1.0×10-8M以下、より好ましくは7.0×10-9M以下のKでヒトIL4Rαタンパク質に結合する。
【0043】
本明細書で使用されるタンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質又は細胞に結合しないか、又は高親和性で結合しないこと、即ち、1.0×10-6M以上、より好ましくは1.0×10-5M以上、より好ましくは1.0×10-4M以上、より好ましくは1.0×10-3M以上、さらに好ましくは1.0×10-2M以上のKでタンパク質又は細胞に結合することを意味する。
【0044】
IgG抗体に対する「高親和性」という用語は、標的抗原に対して1.0×10-6M以下、より好ましくは5.0×10-8M以下、さらにより好ましくは1.0×10-8M以下、さらにより好ましくは、7.0×10-9M以下、さらに好ましくは1.0×10-9M以下のKを有する抗体を指す。ただし、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプでは異なる場合がある。例えば、IgMアイソタイプに対する「高親和性」結合は、1.0×10-6 M以下、好ましくは1.0×10-7 M以下、より好ましくは1.0×10-8 M以下のKを有する抗体を指す。
【0045】
本明細書で使用される「Kassoc」又は「K」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことを意図しているのに対し、本明細書で使用される「Kdis」又は「K」という用語は、 特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことを意図している。本明細書で使用される「K」という用語は、KのKに対する比率(即ち、K/K)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指すことを意図している。抗体のK値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによるものであり、好ましくはBiacoreTMシステムなどのバイオセンサーシステムを使用することによるものである。
【0046】
「EC50」という用語は、半数影響量としても知られ、特定の暴露時間後にベースラインと最大値の中間で応答を誘発する抗体の濃度を指す。
【0047】
「IC50」という用語は、半数阻害濃度としても知られ、特定の生物学的又は生化学的機能を、抗体の非存在に比べて50%阻害する抗体の濃度を指す。
【0048】
「対象」という用語は、あらゆるヒト又はヒト以外の動物を含む。「ヒト以外の動物」という用語は、哺乳類及び非哺乳類であるすべての脊椎動物を含み、例えば、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類及び爬虫類が含まれるが、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどの哺乳類が好ましい。
【0049】
「治療有效量」という用語は、疾患又は状態(がんなど)に関連する症状を予防又は改善する、及び/又は疾患又は状態の重症度を軽減するのに十分な本発明の抗体の量を意味する。治療有効量は、治療される状態に関連していると理解され、実際の有効量が当業者によって容易に識別されるものである。
【0050】
本発明で使用される用語「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列類似性を指す。2つの配列間の配列比較とパーセント同一性決定は、National Center For Biotechnology Institute Web サイトで入手可能な BLASTN/BLASTP アルゴリズムのデフォルト設定で実行できる。
【0051】
本発明の態様を以下により詳細に説明する。
【0052】
ヒトIL4Rαに対する結合親和性が向上し、IL4/IL13シグナル伝達遮断活性が向上した抗IL4Rα抗体
本発明の抗体、又はその抗原結合部位は、以前に記載された抗IL4Rα抗体(Dupilumabなど)と比較して、(高くない場合)同等の結合親和性/能力でヒトIL4Rαに特異的に結合する。
【0053】
本発明の抗体又はその抗原結合部位は、IL4RαのIL4又はIL13-IL13Rα1への結合を遮断することができ、それにより対応する細胞内シグナル伝達を遮断することができ、これは報告された抗IL4Rα抗体(Dupilumabなど) と比較して同等又はより高い遮断活性を有する。
【0054】
好ましくは、本発明の抗体はヒト化モノクローナル抗体である。さらに、あるいは、本発明の抗体は、例えば、キメラモノクローナル抗体であってもよい。
【0055】
抗IL4Rαモノクローナル抗体
本発明の抗体は、以下及び実施例に記載されるように、構造的及び化学的に特徴付けられるモノクローナル抗体である。抗体の重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列IDは、以下の表1にまとめて、いくつかの抗体は同じV又はVを持っている。抗体の重鎖定常領域は、配列番号55に示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG4重鎖定常領域であり得る。また抗体の軽鎖定常領域は、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有するヒトκ定常領域であり得る。
【0056】
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】
【0057】
表1の重鎖可変領域CDRs及び軽鎖可変領域CDRsは、Kabat番号付けシステムによって定義されている。しかし、当技術分野でよく知られているように、CDR領域は、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づくChothia、IMGT、AbM又はContact番号付けシステム/方法などの他の番号付けシステムによって決定することもできる。
【0058】
ヒトIL4Rαに結合する他の抗IL4Rα抗体のV及びV配列(又はCDR配列)は、本発明の抗IL4Rα抗体のV及びV配列(又はCDR配列)と「混合及び対形成」することができる。好ましくは、V及びV鎖(又はこれらの鎖のCDR)が混合されて対になる場合、特定のV/V対からのV配列は、構造的に類似したV配列によって置換される。同様に、好ましくは、特定のV/V対からのV配列は、構造的に類似したV配列で置換される。
【0059】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合部位は、以下のものを含む:
(a)表1に列挙されたアミノ酸配列が含まれる重鎖可変領域;及び
(b)表1に列挙されたアミノ酸配列が含まれる軽鎖可変領域、又はヒトIL4Rαに特異的に結合する別の抗IL4Rα抗体のV
別の実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合部位は、以下のものを含む:
(a)表1に列挙された重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3;及び
(b)表1に列挙された軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3、又はヒトIL4Rαに特異的に結合する別の抗IL4Rα抗体のCDR。
【0060】
別の実施形態において、本発明の抗体、又はその抗原結合部位は、抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域のCDR2ならびにヒトIL4Rαに結合する他の抗体のCDRs、例えば、別の抗IL4Rα抗体由来の重鎖可変領域のCDR1及び/又はCDR3、ならびに/又は軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む。
【0061】
さらに、CDR3ドメインは、CDR1及び/又はCDR2ドメインとは独立して、単独で相同的な抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができ、共通のCDR3配列に基づいて同じ結合特異性を有する複数の抗体を予測可能に生成することができる。例えば、Klimka et al.,, British J. of Cancer 83(2):252-260(2000);Beiboer et al.,, J. Mol. Biol. 296:833-849(2000);Rader et al.,, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:8910-8915(1998);Barbas et al.,, J. Am. Chem. Soc. 116:2161-2162(1994);Barbas et al.,, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:2529-2533(1995);Ditzel et al.,, J. Immunol. 157:739-749(1996);Berezov et al.,, BIAjournal 8: Scientific Review 8(2001);Igarashi et al.,, J. Biochem(Tokyo)117:452-7(1995);Bourgeois et al.,, J. Virol 72:807-10(1998);Levi et al.,, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:4374-8(1993);Polymenis and Stoller, J. Immunol. 152:5218-5329(1994)及びXu and Davis, Immunity 13:37-45(2000)を参照してください。また、米国特許NOs. 6,951,646;6,914,128;6,090,382;6,818,216;6,156,313;6,827,925;5,833,943;5,762,905及び5,760,185を参照できる これらの参考文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0062】
したがって、別の実施形態において、本発明の抗体は、抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域のCDR2と、少なくとも抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のCDR3又は別の抗IL4Rα抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のCDR3とを含み、かつ当該抗体がヒトIL4Rαに特異的に結合する。これらの抗体は、好ましくは、(a)IL4Rαへの結合について本発明の抗IL4Rα抗体と競合する;(b)機能的特性を保持する;(c)同じエピトープに結合する;及び/又は(d)同様の結合親和性を有する。別の実施形態において、本発明の抗体はまた、抗IL4Rα抗体の軽鎖可変領域のCDR2、又は別の抗IL4Rα抗体の軽鎖可変領域のCDR2を含んでもよく、当該抗体はヒトIL4Rαに特異的に結合する。別の実施形態において、本発明の抗体は、抗IL4Rα抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のCDR1、又は別の抗IL4Rα抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域のCDR1をさらに含み得、当該抗体はヒトIL4Rαに特異的に結合する。
【0063】
保守的修飾
別の実施形態において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3をそれぞれ含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、当該CDR1、CDR2及びCDR3配列は、本発明の抗IL4Rα抗体のCDR1、CDR2及びCDR3配列とは異なる。当該「異なる」は、1つ又は複数の保守的修飾によるものです。特定の保存的配列修飾が抗原結合を無効にしないことは、当技術分野において理解されている。例えば、Brummell et al.,(1993)Biochem 32:1180-8;de Wildt et al.,(1997)Prot. Eng. 10:835-41;Komissarov et al.,(1997)J. Biol. Chem. 272:26864-26870;Hall et al.,(1992)J. Immunol. 149:1605-12;Kelley and O'Connell(1993)Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al.,(1998)Int. Immunol.10:341-6及びBeers et al.,(2000)Clin. Can. Res. 6:2835-43を参照ください。
【0064】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、それぞれCDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む。その中で、
(a)重鎖可変領域のCDR1は、表1に列挙された配列、及び/又はその保存的修飾を含む;及び/又は
(b)重鎖可変領域のCDR2は、表1に列挙された配列、及び/又はその保存的修飾を含む;及び/又は
(c)重鎖可変領域のCDR3は、表1に列挙された配列、及び/又はその保存的修飾を含む;及び/又は
(d)軽鎖可変領域のCDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3は、表1に列挙された配列、及び/又はその保存的修飾を含む;及び
(e)この抗体は、ヒトIL4Rαに特異的に結合する。
【0065】
本発明の抗体は、ヒトIL4Rαへの高親和性結合、及びIL4Rα-IL4結合又はIL4Rα-IL13-IL13Rα1結合に対する遮断活性などの機能特性の1つ又は複数を有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影響を及ぼさない、又は変更しないアミノ酸改変を指すことを意図している。そのような保守的修飾には、アミノ酸の置換、付加及び欠失が含まれる。修飾は、点突然変異及びPCR媒介突然変異などの当技術分野で知られている標準的な技術によって、本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基を類似の側鎖を持つアミノ酸残基で置換することを指す。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは当技術分野で知っているものである。これらのアミノ酸残基ファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンなど)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸など)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファンなど)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つ又は複数のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変更された抗体が、本明細書に記載の機能アッセイを使用して、保持された機能(即ち、上記の機能)について試験することができる。
【0068】
エンジニアリング及び修飾された抗体
本発明の抗体は、本発明の抗IL4Rα抗体のV/V配列の1つ又は複数を有する抗体を出発物質として使用して、工学的に修飾抗体を調製することができる。抗体は、一方又は両方の可変領域(即ち、V及び/又はV)内(例えば、1つ又は複数のCDR領域内及び/又は1つ又は複数のフレームワーク領域内)の1つ又は複数の残基を改変することによって工学的改変することができる。
【0069】
ある特定の実施形態において、CDR移植は、抗体の可変領域を変更するために使用できる。抗体は、主に重鎖と軽鎖の 6 つの相補性決定領域(CDR)にあるアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。したがって、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外のアミノ酸配列よりも様々な抗体の間でより多様である。CDR 配列はほとんどの抗体-抗原相互作用の原因であるため、特定の天然抗体のCDR配列を特性相異な抗体のフレームワーク配列へ移植できる発現ベクターを構築することにより、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann et al.,(1998)Nature 332:323-327;Jones et al.,(1986)Nature 321:522-525;Queen et al.,(1989)Proc. Natl. Acadを参照ください。さらに、U.S.A. 86:10029-10033;米国特許NOs.5,225,539;5,530,101;5,585,089;5,693,762及び6,180,370を参照ください)。
【0070】
したがって、本発明の別の実施形態は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部位に関する。前記重鎖可変領域は、本発明の上記CDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、本発明の上記CDR1、CDR2及びCDR3を含む。これらの抗体は、本発明のモノクローナル抗体のV及びV CDR配列を含むが、異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0071】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベース又は公開された参考文献から入手できる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネットでwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能);Kabat et al.,(1991)上記どおり;Tomlinson et al.,(1992)J. Mol. Biol. 227:776-798;及びCox et al.,(1994)Eur. J. Immunol. 24:827-836から入手でき、それらは参照により明示的に本明細書に組み込まれる。別の実施形態において、ヒト重鎖可変領域遺伝子及びヒト軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、Genbankデータベースで入手可能である。例えば、HCo7 HuMAbマウスからの次の重鎖生殖系列配列は、Genbank 登録番号は1-69(NG--0010109、NT--024637 & BC070333)、3-33(NG--0010109 & NT--024637))及び 3-7(NG--0010109 & NT--024637)である。別の実施形態において、HCo12 HuMAbマウスからの次の重鎖生殖系列配列は、Genbank 登録番号は1-69(NG--0010109, NT--024637 & BC070333)、5-51(NG--0010109 & NT--024637)、4-34(NG--0010109 & NT--024637)、3-30.3(CAJ556644)及び3-23(AJ406678)である。
【0072】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知のGapped BLAST(Altschulet al.,(1997)、上記どおり)と呼ばれる配列類似性検索法を使用して、コンパイルされたタンパク質配列データベースと比較される。
【0073】
本発明で使用される抗体フレームワーク配列は、好ましくは、本発明の抗体フレームワーク配列に構造的に類似するものである。VCDR1、CDR2及びCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子と同じ配列を有するフレームワーク領域に移植することができる。あるいは、CDR配列は、生殖系列配列と比較して1つ又は複数の変異を含むフレームワーク領域に移植することができる。例えば、抗体の抗原結合能力を維持又は増強するために、フレームワーク領域の残基を変異させることが有益な場合がある。(例えば、米国特許NOs.5,530,101;5,585,089;5,693,762及び6,180,370を参照ください)。
【0074】
可変領域修飾の別のタイプは、V及び/又はVのCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって目的の抗体の1つ又は複数の結合特性(例えば、親和性)を改善することである。部位特異的突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発を実施して突然変異を導入することができ、抗体結合又は関心のある他の機能的特性に対する効果を、当技術分野で知られているようにインビトロ又はインビボアッセイで評価することができる。好ましくは、(当技術分野で知られている)保存的改変が導入される。突然変異は、アミノ酸の置換、付加又は欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下の残基が変更される。
【0075】
したがって、別の実施形態において、本発明は、以下を含む、重鎖可変領域を含む単離された抗IL4Rαモノクローナル抗体、又はその抗原結合部位を提供する;(a)本発明のV CDR1配列、又は1、2、3、4又は5個のアミノ酸置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列が含まれるV CDR1領域;(b)本発明のV CDR2配列、又は1、2、3、4又は5個のアミノ酸置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列が含まれるV CDR2領域;(c)本発明のV CDR3配列、又は1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列が含まれるV CDR3領域;(d)本発明のV CDR1配列、又は1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列が含まれるV CDR1領域;(e)本発明のV CDR2配列、又は1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列が含まれるV CDR2領域;及び(f)本発明のV CDR3配列、又は1、2、3、4又は5個のアミノ酸置換、欠失又は付加を有するアミノ酸配列が含まれるV CDR3領域。
【0076】
本発明のエンジニアリング抗体には、例えば、抗体特性を改善するために、V及び/又はVのフレームワーク領域残基が修飾られたものが含まれる。一般に、そのようなフレームワーク領域の修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために使用することができる。例えば、1つ又は複数のフレームワーク領域残基が、対応する生殖系列配列に「復帰突然変異」される。より具体的には、体細胞変異を受ける抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含む可能性がある。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定することができる。
【0077】
別の種類のフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内、又は 1つ又は複数のCDR領域内の 1つ又は複数の残基を変異させて、T 細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を低下させる。この方法は「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許公開第20030153043号にさらに詳細に記載されている。
【0078】
さらに、又はフレームワーク又はCDR領域内で行われる改変の代替として、本発明の抗体は、典型的には抗体の1つ又は複数の機能特性、例えば、血清半減期、補体固定、Fc 受容体結合、及び/又は抗原依存性細胞傷害などを変更するために、Fc領域内に改変を含むように操作することができる。さらに、本発明の抗体は、化学的に修飾することができ(例えば、1つ又は複数の化学部分を抗体に結合させることができる)、又は修飾してそのグリコシル化を変更し、再び抗体の1つ又は複数の機能特性を変更することができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、CH1-ヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変更(例えば、増加又は減少する)されるように改変される。この方法については、米国特許NOs.5,677,425号にさらに記載されている。CH1-ヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖と重鎖の組み立てを促進するため、又は抗体の安定性を増加又は減少させるために変更される。
【0080】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域を突然変異させて、抗体の生物学的半減期を減少させる。より具体的には、天然のFcヒンジドメインと比較してブドウ球菌プロテインA(SpA)との結合を損なうように、1つ又は複数のアミノ酸変異がFcヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン界面領域に導入される。この方法は、米国特許NOs.No.6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0081】
別の実施形態において、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、グリコシル化抗体を産生することができる(即ち、抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めるために変更することができる。そのようなグリコシル化修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ又は複数の部位を変更することによって達成することができる。例えば、1つ又は複数のアミノ酸置換を行うことで、1つ又は複数の可変領域フレームワークにおけるグリコシル化部位の除去をもたらし、それによってその部位でのグリコシル化を除去することができる。このようなアグリコシル化(aglycosylation)は、抗原に対する抗体の親和性を高める可能性がある。例えば、米国特許NOs.5,714,350号及び第6,350,861号を参照ください。
【0082】
さらに、あるいは、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体又はバイセクティングGlcNac構造が増加した抗体など、グリコシル化のタイプが変更された抗体を産生することができる。そのような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加又は減少させることが実証されている。このようなグリコシル化修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現させることによって達成することができる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当技術分野において記載されており、本発明の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用して、それによって改変されたグリコシル化を有する抗体を産生することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705、及びMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠いているため、Ms704、Ms705、及びMs709細胞株で発現される抗体は、それらの糖鎖がフコースを欠いている。Ms704、Ms705、及び Ms709 FUT8-/- 細胞株は、2つの置換ベクターを使用して、CHO/DG44 細胞内の目的とするFUT8 遺伝子の破壊によって作成されました(米国特許公開番号第20040110704号及び Yamane-Ohnuki et al.,(2004 )Biotechnol Bioeng 87: 614-22)を参照ください。別の例として、EP 1, 176, 195には、フコシルトランスフェラーゼをコードする機能的に破壊されたFUT8 遺伝子を有する細胞株が記載されており、そのような細胞株で発現した抗体は、α-1,6結合関連酵素を減少又は除去することにより低フコシル化を示す。EP 1,176,195はまた、抗体のFc領域に結合するN-アセチルグルコサミンにフコースを付加するための酵素活性が低下したかまたは消えた細胞株、例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)を記載している。PCT公開WO 03/035835 は、Asn(297)-結合糖鎖にフコースを結合する能力が低下し、その宿主細胞で発現される抗体の低フコシル化ももたらす変異型 CHO 細胞株であるLec13細胞を記載している(さらに、Shields et al.,(2002)J. Biol. Chem. 277:26733-26740を参照ください。)。改変されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、PCT公開WO 06/089231に記載されているように、ニワトリの卵でも産生することができる。あるいは、改変されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、ウキクサなどの植物細胞で産生することができる。植物系で抗体を産生する方法は、2006年8月11日に出願されたAlston & Bird LLPの弁護士整理番号040989/314911に対応する米国特許出願に開示されている。抗体のフコース残基は、フコシダーゼ酵素を使用して切断することができる。例えば、α-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.,(1975)Biochem. 14:5516-23)。
【0083】
本発明の抗体の別の修飾は、PEG化(pegylation)である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにPEG化することができる。抗体をPEG化するために、典型的には、抗体又はそのフラグメントを、1つ又は複数のPEG基が抗体又は抗体フラグメントに結合する条件下で、PEGの活性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応させる。好ましくは、PEG化は、活性PEG分子(又は類似の活性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して実施される。本明細書で使用されるという用語「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1-C10)アルコキシ-又はアリールオキシ - ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されてきたPEGの任意の形態を包含することを意図している。ある特定の実施形態において、PEG化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化する方法は当技術分野で知られており、本発明の抗体に適用することができる。例えば、EP0154316及びEP0401384を参照してください。
【0084】
抗体の物理的特性
本発明の抗体は、クラスを検出及び/又は区別するために、それらの様々な物理的特性によって特徴付けることができる。
【0085】
例えば、抗体は、軽鎖又は重鎖可変領域のいずれかに1つ又は複数のグリコシル化部位を含むことができる。このようなグリコシル化部位は、抗体の免疫原性の増加、又は抗原結合の変化による抗体のpKの変化をもたらす可能性がある。(Marshall et al(1972)Annu Rev Biochem 41:673-702;Gala and Morrison(2004)J Immunol 172:5489-94;Wallick et al(1988)J Exp Med 168:1099-109; Spiro(2002)Glycobiology 12:43R-56R;Parekh et al(1985)Nature 316:452-7;Mimura et al.,(2000)Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T 配列を含むモチーフで起こることが知られている。場合によっては、可変領域グリコシル化を含まない抗IL4Rα抗体が好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択するか、グリコシル化領域内の残基を変異させることによって達成できる。
【0086】
好ましい実施形態において、抗体はアスパラギン異性化部位を含まない。アスパラギンの脱アミド化は、N-G又はD-G 配列で発生し、ポリペプチド鎖に架橋(link)を導入してその安定性を低下させるイソアスパラギン酸残基の生成をもたらす(イソアスパラギン酸効果)。
【0087】
各抗体は固有の等電点(pI)を持ち、一般に6~9.5のpH範囲にある。IgG1抗体の pI は通常、pH範囲7~9.5にあり、IgG4抗体の pI は通常、pH範囲6~8にある。正常範囲外のpIを持つ抗体は、in vivo 条件下でいくらかのアンフォールディングと不安定性がある可能性があるという推測がある。したがって、正常範囲内のpI値を含む抗IL4Rα抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲のpIを持つ抗体を選択するか、荷電した表面残基を変異させることによって達成できる。
【0088】
本発明の抗体をコードする核酸分子
他の一側面で、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域、又はCDRをコードする核酸分子を提供する。核酸は、細胞全体、細胞溶解物に存在する;又は部分的に精製されたもしくは実質的に純粋な形態で存在することができる。核酸は、標準的な技術によって、他の細胞成分又は他の夾雑物、例えば、他の細胞の核酸又はタンパク質から精製されると、「単離される」又は「実質的に純粋になる」ものである。本発明の核酸は、例えば、DNA又はRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0089】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下でさらに説明するヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体については、ハイブリドーマによって産生された抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)得られた抗体については、そのような抗体をコードする核酸を遺伝子ライブラリーから回収することができる。
【0090】
好ましくは、本発明の核酸分子には、IL4Rαモノクローナル抗体のV及びV配列又はCDRをコードするものが含まれる。V及びVセグメントをコードするDNAフラグメントが得られると、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子又はscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することができる。これらの操作において、V又はVをコードするDNAフラグメントは、別のタンパク質をコードする別のDNAフラグメントに抗体定常領域又は柔軟なリンカーで作動可能に連結される。この場合で使用される用語「作動可能に連結された」は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、2つのDNAフラグメントが連結されることを意味することを意図する。
【0091】
領域をコードするDNAは、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、Vをコードする単離されたDNAを全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくはIgG1又はIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子の場合、VをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することができる。
【0092】
領域をコードするDNAは、軽鎖定常領域Cをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、Vをコードする単離されたDNAを全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準的なPCR増幅によって得ることができる。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域であり得る。
【0093】
scFv遺伝子を調製するために、V及びVをコードするDNAフラグメントを、柔軟なリンカーをコードする別のフラグメント、たとえばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別のフラグメントに作動可能に連結し、V及びV配列を連続した単鎖タンパク質として発現できるようにする。V領域とV領域がこの柔軟なリンカーによって連結されている(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;Huston et al.,(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;McCafferty et al.,,(1990)Nature 348:552-554を参照ください)。
【0094】
本発明のモノクローナル抗体の産生
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、Kohler and Milstein(1975)Nature 256: 495の周知の体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)技術を使用して産生され得る。モノクローナル抗体を産生するための他の実施形態には、Bリンパ球のウイルス又は発癌性形質転換及びファージディスプレイ技術が含まれる。キメラ抗体又はヒト化抗体も当技術分野で周知である。例えば、米国特許NOs.NOs.4,816,567;5,225,539;5,530,101;5,585,089;5,693,762及び6,180,370に記載されており、これらの内容は参照により全体が本明細書に具体的に組み込まれる。
【0095】
本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの生成
本発明の抗体は、例えば、当技術分野で周知の組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマで産生することもできる(例えば、Morrison, S.(1985)Science 229:1202)。いくつかの実施形態において、標準的な分子生物学技術によって得られた部分的又は完全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結されるように、1つ又は複数の発現ベクターに挿入される。この場合では、「機能的に連結された」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するという規定機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターに連結されることを意味することを意図している。
【0096】
調節配列」という用語は、抗体遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーに由来する、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素が含まれる。あるいは、ユビキチンプロモーター又はβグロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列を使用することができる。さらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーターからの配列とヒトT細胞白血病ウイルス 1 型の長い末端反復配列を含む SRαプロモーター系など、さまざまな起源の配列で構成されている(Takebe et al.,(1988)Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0097】
抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、同じ又は別個の発現ベクターに挿入することができる。好ましい実施形態において、Vセグメントをベクター内のCセグメントに作動可能に連結され、Vセグメントをベクター内のCセグメントに作動可能に連結されているように、可変領域を、所望のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をコードしている発現ベクターへ挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作成できる。さらに、あるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0098】
軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語のさまざまな形態は、原核又は真核宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に使用される多種多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することを意図している。原核宿主細胞又は真核宿主細胞のいずれかで本発明の抗体を発現させることは理論的に可能であるが、真核細胞、及び最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。真核細胞、特に哺乳動物細胞は、原核細胞よりも抗体を構築し、適切に折り畳まれた免疫適格抗体を分泌する可能性が高いためである。
【0099】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(DHFR 選択マーカーで使用するための dhfr-CHO 細胞を含み、Urlaub and Chasin,(1980)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されており、DHFR選択マーカーは、例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp(1982)J. Mol. Biol. 159:601-621に記載されている)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。特にNSOミエローマ細胞で使用する場合、別の好ましい発現系は、WO87/04462、WO89/01036及びEP338,841に開示されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入された後、宿主細胞内で抗体を発現させるのに十分な時間、又は好ましくは宿主細胞が増殖する培地に抗体を分泌させるのに十分な時間、宿主細胞を培養することによって抗体が調製される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して培地から回収できる。
【0100】
二重特異性分子
一方で、少なくとも2つの異なる結合部位への結合部位を生成するために、別のペプチド又はタンパク質などの少なくとも1つの他の機能分子(例えば、別の抗体又は受容体に対するリガンド)に連結された本発明の1つ又は複数の抗体を含む二重特異性分子を提供する。したがって、本発明で使用される「二重特異性分子」には、3つ以上の特異性を有する分子が含まれる。
【0101】
いくつかの実施形態において、重特異性分子は、Fcに対する結合特異性及びIL4Rαに対する結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。
【0102】
二重特異性分子は、多くの異なる形式とサイズである可能性がある。サイズスペクトルの一端では、二重特異性分子は従来の抗体フォーマットを保持するが、違いなのは、2つの結合アームが同じ特異性ではなく、異なる特異性を持っていることである。もう一方の端には、ペプチド鎖によって結合された2つの単鎖抗体フラグメント(scFv's)からなる二重特異性分子、いわゆるBs(scFv)構築物である。中間サイズの二重特異性分子には、ペプチジル リンカーによって連結された2つの異なるF(ab)フラグメントが含まれる。これら及び他のフォーマットの二重特異性分子は、遺伝子工学、体細胞ハイブリダイゼーション、又は化学的方法によって調製することができる。例えば、See, e.g., Kufer et al, cited supra; Cao and Suresh, Bioconjugate Chemistry, 9(6), 635-644(1998); van Spriel et al., Immunology Today, 21(8), 391-397(2000)、及びそこで引用された参考文献を参照ください。
【0103】
免疫複合体
本発明の抗体は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)などの免疫コンジュゲートを形成するために治療薬にコンジュゲートすることができる。適切な治療剤には、細胞毒素、アルキル化剤、DNAマイナーグルーブバインダー、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核内輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼI又はII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質、及び有糸分裂阻害剤が含まれる。ADCにおいて、抗体及び治療薬は、好ましくは、ペプチジル、ジスルフィド、又はヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介して結合される。より好ましいリンカーは、例えば、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser又はGluなどのペプチドリンカーである。ADCは、米国特許NOs.7,087,600;6,989,452;及び7,129,261;PCT公開WO02/096910;WO07/038,658;WO07/051,081;WO07/059,404;WO08/083,312;及びWO08/103,693;米国特許公開第20060024317;20060004081;及び20060247295に従って作製することができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
抗体をコードする、又は抗体を保有する腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に優先的に感染して殺す。本発明の抗体は、腫瘍溶解性ウイルスと共に使用することができる。あるいは、本発明の抗体をコードする腫瘍溶解性ウイルスをヒトに導入することができる。
【0105】
キメラ抗原受容体
本発明はまた、本発明のCDR及び重鎖/軽鎖可変領域を含む抗IL4Rα scFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0106】
抗IL4Rα CARは、(a)抗IL4Rα scFvを含む細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0107】
CARは、細胞外抗原結合ドメインのN末端に、新生受容体を小胞体に向けるシグナルペプチド、及び細胞外抗原結合ドメインのN末端に、受容体をより結合しやすくするヒンジペプチドを含み得る。好ましくは、CARは、細胞内シグナル伝達ドメインにおいて、一次細胞内シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一般的に使用され、最も強力な一次細胞内シグナル伝達ドメインはITAMを含むCD3-zeta細胞質ドメインであり、そのITAMのリン酸化がT細胞の活性化につながる。共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、CD137、OX40などの共刺激タンパク質に由来する。
【0108】
CARは、サイトカイン及び共刺激リガンドなどの、T細胞増殖、持続性、及び抗腫瘍活性を増強する因子をさらに追加し得る。
【0109】
本明細書で提供されるCARを含む、エンジニアリング免疫エフェクター細胞も提供される。いくつかの実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、又は胚性幹細胞である。いくつかの実施形態において、免疫エフェクター細胞はT細胞である。
【0110】
医薬組成物
他の一側面で、本発明は、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化された本発明の1つ又は複数の抗体(又はその抗原結合部位、又は二重特異性分子、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス又は免疫複合体)を含む医薬組成物を提供する。組成物が複数の抗体(又はその抗原結合部位、又は二重特異性分子、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫複合体)を含む場合、抗体(又はその抗原結合部位、又は二重特異性分子、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫複合体)を別々に投与することができる。組成物は、別の抗体、又は抗腫瘍薬もしくは抗アレルギー剤などの薬物など、1つ又は複数の追加の薬学的に活性な成分を任意に含むことができる。
【0111】
医薬組成物は、任意の数の賦形剤を含むことができる。使用できる賦形剤には、ベクター、界面活性剤、増粘剤又は乳化剤、固体結合剤、分散剤又は懸濁剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、保存剤、等張剤、及びそれらの組み合わせが含まれる。適切な賦形剤の選択と使用は、Gennaro, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 2003)に教示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
好ましくは、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適している。投与経路に応じて、有効成分を不活性化する可能性のある酸や他の自然条件の作用から保護するために、有効成分を材料でコーティングすることができます。本明細書で使用される「非経口投与」という用語は、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、通常は注射によるものであり、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、本発明の抗体は、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下又は局所などの局所、表皮又は粘膜投与経路などの非経口経路を介して投与することができる。
【0113】
医薬組成物は、滅菌水溶液又は分散液の形態であることができる。それらはまた、マイクロエマルション、リポソーム、又は高薬物濃度に適した他の秩序構造に処方することもできる。
【0114】
単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される対象及び特定の投与様式に応じて変化し、一般に、治療効果を生み出す組成物の量である。当該量について、通常パーセンテージベースで、約0.01%から約99%、好ましくは約0.1%から約70%、最も好ましくは約1%から約30%の範囲である活性成分を、薬学的に許容される担体と組み合わせる。
【0115】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラス用量を投与してもよいし、複数の分割用量を経時的に投与してもよく、又は治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少又は増加させることができる。投与を容易にし、投与量を均一にするために、投与単位形態で非経口投与される組成物を処方することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態は、治療される対象に対する単位投与量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な薬学的ベクターと関連して所望の治療効果を生み出すように計算された所定の量を含む。あるいは、抗体は持続放出製剤として投与されてもよく、この場合、必要な投与頻度は少なくなる。
【0116】
組成物を投与する場合、投与量は、宿主の体重1kg当たり約0.0001~100mg、より通常は0.01~5mgの範囲であり得る。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、又は10mg/kg体重、又は1~10mg/kg体重の範囲内であり得る。例示的な治療計画は、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回、又は3~6ヶ月に1回の投与を伴う。本発明の抗IL4Rα抗体の好ましい投与計画には、1mg/kg体重又は3mg/kg体重での静脈内投与が含まれ、抗体の投与は、以下の投薬レジメンの1つにて実施する:(i)4週間ごとに6回、その後3ヶ月ごと;(ii)3週間ごと;(iii)3 mg/kg 体重で1 回、その後は3週間ごとに1 mg/kg体重で投与する。いくつかの方法では、投薬量は、約1~1000μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調整され、いくつかの方法では、約25~300μg/mlの血漿抗体濃度が達成される。
【0117】
本発明の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合部位、二重特異性分子、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス又は免疫複合体の「治療有効量」では、好ましくは、疾患の症状の重症度の軽減、疾患の無症候期間の頻度及び期間の増加、又は疾患の苦痛によって引き起こされる損傷又は障害の予防を引き起こすことができる。例えば、腫瘍対象の治療では、「治療有効量」は、未治療の対象と比較して、腫瘍増殖を好ましくは少なくとも約20%阻害、好ましくは少なくとも約40%阻害、より好ましくは少なくとも約60%阻害、より好ましくは少なくとも約88%阻害の量である。治療有効量の治療用抗体は、典型的にはヒトであるか、又は別の哺乳動物であり得る対象において、腫瘍サイズを減少させるか、さもなければ症状を改善することができる。
【0118】
薬学組成物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化された送達システムを含む制御放出製剤であり得る。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照ください。
【0119】
医薬組成物は、例えば、(1)無針皮下注射装置(例えば、米国特許NOs.5,399,163;5,383,851;5,312,335;5,064,413;4,941,880;4,790,824;及び4,596,556);(2)マイクロインフュージョン ポンプ(米国特許No.4,487,603);(3)経皮薬物送達デバイス(米国特許No.4,486,194);(4)注入デバイス(米国特許NOs.4,447,233及び4,447,224);及び(5)浸透デバイス(米国特許NOs.4,439,196及び4,475,196)などの医療装置によって投与することができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
ある特定の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、インビボでの適切な分布を確実にするように処方することができる。例えば、本発明の治療用抗体が血液脳関門を通過することを確実にするために、それらをリポソームに製剤化することができ、特定の細胞又は臓器への選択的輸送を増強するためのターゲティング部分をさらに含むことができる。例えば、米国特許NOs.4,522,811;5,374,548;5,416,016;及び5,399,331;V. V. Ranade(1989)J. Clin.Pharmacol.29:685;Umezawa et al.,(1988)Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038;Bloeman et al.,(1995)FEBS Lett.357:140;M. Owais et al.,(1995)Antimicrob. Agents Chemother. 39:180;Briscoe et al.,(1995)Am. J. Physiol. 1233:134;Schreier et al.,(1994)J. Biol. Chem. 269:9090;Keinanen and Laukkanen(1994)FEBS Lett. 346:123;及びKillion and Fidler(1994)Immunomethods 4:273を参照ください。
【0121】
本発明の用途及び方法
本発明の抗体もしくはその抗原結合部位、又は二重特異性、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫複合体を含む組成物は、例えば、過剰なIL4及び/又はIL13シグナル伝達に関連するアレルギー疾患の治療に関与するなど、多数のインビトロおよびインビボ有用性を有する。
【0122】
本発明の抗IL4Rα抗体が、IL4RαとIL4又はIL13-IL13Rα1との結合を遮断して2型免疫を低下させる能力があることから、本発明は、対象に本発明の組成物を投与することを含む、2型免疫に関連するアレルギー疾患を治療する方法を提供する。アレルギー性疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー反応、アレルギー性鼻炎又はアレルギー性喘息であり得る。
【0123】
他の一側面で、IL4又はIL13シグナル伝達はSTAT6を活性化することができ、STAT6阻害剤は癌細胞増殖を阻害することが見出されているので、本発明は対象における腫瘍細胞増殖を阻害する方法を提供する。前記方法は、対象に本発明の組成物を投与し、それによって対象の腫瘍増殖を阻害することを含む。本発明の抗体によって治療することができる腫瘍の非限定的な例には、黒色腫、肺がん、腎臓がん、前立腺がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がん(varian cancer)、及び尿路上皮がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
他の一側面で、本発明は、IL-4又はIL-13に応答する細胞の活性化を低減又は阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態において、活性化を阻害することは、サイトカインの産生又は分泌を阻害することを含む。いくつかの実施形態において、活性化を阻害することは、増殖を阻害することを含む。ハイブリッドIL-4Rα/γC受容体の刺激を介してIL-4に応答する細胞には、B細胞、好酸球、及びマクロファージが含まれるが、これらに限定されない。ハイブリッドIL-4Rα/IL-3Rα1受容体の刺激を介してIL-13に応答する細胞には、線維芽細胞及び平滑筋細胞が含まれるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、平滑筋細胞の増殖を阻害する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、線維芽細胞増殖を阻害する方法を提供する。
【0125】
他の一側面で、本発明は、診断のための方法、組成物及びキットを提供する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、細胞又は組織におけるIL4Rαの存在及び発現を決定するために使用される。いくつかの実施形態において、前記診断は、予後を示し、及び/又は治療及び/又はフォローアップをガイドする。例えば、ヒト膀胱癌におけるIL4Rαの過剰発現は、疾患の病理学的グレード及び病期と相関することが見出されている。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、膀胱癌のグレード及び段階を診断するために使用される。IL-4Rαの高発現は、口腔がんの発生と複数回の再発と相関することが見出されている。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、予後ならびに適切な治療及び経過観察を決定するための口腔癌診断キット又は方法において使用される。腫瘍におけるIL-4Ra発現は、上皮性悪性胸膜中皮腫(MPM)の外科的切除を受ける患者の生存率と逆相関している。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、MPMの予後及び適切な治療及び/又はフォローアップを決定するための診断キット又は方法において使用される。
【0126】
併用療法
一側面では、本発明は、本発明の抗IL4Rα抗体又は抗原結合部位、二重特異性分子又は腫瘍溶解性ウイルスを、2型免疫関連アレルギー疾患を改善するのに有効な1つ又は複数の他の薬物と組み合わせることを含む併用療法を提供する。前記薬物は、アレルギー性鼻炎の治療に臨床的に使用される抗ヒスタミン薬(Hヒスタミン受容体を標的とする)、又は喘息治療で臨床的に使用されるコルチコステロイド、ベータアドレナリン受容体作動薬及びcyc-LTを標的とする薬剤であり得る。抗IgE抗体であるオマリズマブも、本発明の抗体又はその抗原結合部位、二重特異性分子又は腫瘍溶解性ウイルスによるアレルギー性疾患の治療に使用することができる。ある特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0127】
他の一側面で、本発明は、本発明の抗IL4Rα抗体又はその抗原結合部位、二重特異性分子、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス又は免疫複合体を、対象における腫瘍増殖を阻害するのに有効な1つ又は複数の他の薬剤と組み合わせることによる併用療法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、抗IL4Rα抗体(又はその抗原結合部位、二重特異性分子、腫瘍溶解性ウイルス、CAR-T細胞、又は免疫複合体)及び抗OX40抗体、抗TIM-3抗体、抗CD137抗体、抗GITR抗体、抗LAG-3抗体、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体など1つの又はそれ以上の他の抗体を対象に投与することを含む、対象における腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。ある特定の実施形態において、対象はヒトである。IL4Rα経路阻害剤は、がんの標準治療とさらに組み合わせることができる。例えば、IL4Rα経路阻害剤は、LAG-3及び/又はPD-1阻害剤及び化学療法レジメンと組み合わせることができる。抗IL4Rα抗体は、細胞毒性薬であり得る化学療法薬と共に投与することができる。例えば、エピルビシン、オキサリプラチン、及び5-フルオロウラシルは、抗IL4Rα療法を受けている患者に投与できる。必要に応じて、抗IL4Rαと1つ又は複数の他の抗体(例えば、抗LAG-3及び/又は抗PD-1抗体)の組合せは、免疫原性物質とさらに組み合わせることができる。前記免疫原性物質は、例えば、癌細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、及び糖分子を含む)、及び免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞である(He et al.,(2004)J. Immunol. 173:4919-28)。使用できる腫瘍ワクチンの非限定的な例には、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1及び/又はチロシナーゼなどのメラノーマ抗原ペプチド、又はサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞が含まれる。抗IL4Rα抗体と併用できる他の治療法には、インターロイキン-2(IL-2)投与、放射線、手術、又はホルモン遮断が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
本明細書で論じる治療剤の組み合わせは、薬学的に許容される担体中の単一の組成物として同時に、又は薬学的に許容される担体中の各薬剤との別個の組成物として同時に投与することができる。別の実施形態において、治療剤の組み合わせでは順次に実施できる。
【0129】
さらに、複数回の併用療法を順次に実施される場合、順次な投与の順序を各投与時点で逆にするか、同じ順序に維持することができ、順次な投与を同時投与と組み合わせることができ、又はそれらの任意の組み合わせを行うことができる。
【0130】
本発明は、さらなる限定として解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。本出願を通じて引用されるすべての図及びすべての参考文献、Genbank配列、特許及び公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例
【0131】
実施例
実施例1:ハイブリドーマ技術を用いたマウス抗IL4Rαモノクローナル抗体の作製
免疫接種
E Harlow, D. Lane, Antibody: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1998に記載されている方法に従って、マウスを免疫した。組換えヒトIL4Rα-hisタンパク質(Sino biological inc.,カタログ番号10402-H08H)を免疫原として使用し、自家製のヒトIL4Rα-hisタンパク質(配列番号57に示されるアミノ酸配列)を使用して、抗血清の力価の決定、及び抗原特異的抗体を分泌するハイブリドーマのスクリーニングに使用した。一次免疫及び追加免疫の免疫用量は、マウス1匹あたりの注射あたり20μgのヒトIL4Rα-hisタンパク質であった。免疫応答を高めるために、完全フロイント アジュバント及び不完全フロイント アジュバント(Sigma, St. Louis, Mo., USA)を、それぞれ初回免疫及び追加免疫に使用した。簡単に説明すると、アジュバントと免疫原との混合物は次のように調製された。まず、アジュバントをバイアル内でボルテックスによって穏やかに混合した。所望の量のアジュバントを、オートクレーブした1.5mLマイクロ遠心チューブに移した。抗原は、0.2~0.3mg/mlの範囲の濃度になるようにPBS又は生理食塩水で調製した。次に、計算された量の抗原をアジュバントとともにマイクロ遠心分離管に加え、得られた混合物を2分間穏やかにボルテックスして混合し、油中水エマルジョンを生成した。次に、アジュバント-抗原エマルジョンを、動物注射用の適切な注射器に吸い込んだ。合計20μgの抗原を150~200μlの容量で注射した。各動物を免疫し、抗血清力価に応じて2~3回追加免疫した。力価がより良好な動物には、細胞融合前に腹腔内注射によって最終追加免疫を与えた。
【0132】
ハイブリドーマの融合とスクリーニング
融合の直前に、マウス骨髄腫細胞株(SP2/0-Ag14, ATCC#CRL-1581)の細胞を培養して対数期に到達させた。免疫したマウスからの脾臓細胞を無菌的に調製し、Kohler G, and Milstein C, "Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity," Nature, 256: 495-497(1975)に記載の方法に従って骨髄腫細胞と融合させた。続いて、融合した「ハイブリッド細胞」を、DMEM/20%FCS/HAT培地を入れた96ウェルプレートに分注した。生存しているハイブリドーマのコロニーを、融合の7~10日後に顕微鏡下で観察した。2週間後、各ウェルの上清を、組換えヒトIL4Rα-hisタンパク質を使用したELISAベースのスクリーニングにかけた。簡単に説明すると、PBS中のヒトIL4Rα-his タンパク質(2.0μg/mL)をELISAプレートに60μL/ウェルでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBSTで4回洗浄した後、200μlのブロッキングバッファー(5%w/vスキムミルクを含むPBST中)でブロックした。希釈したハイブリドーマ上清(60μl)を各ウェルに加え、37℃で40分間インキュベートした。次いでプレートを4回洗浄し、HRPヤギ抗マウスIgG(Jackson Immuno reesearch、カタログ番号115-036-071)を検出のために使用し、結合OD値を450nmで観察した。次いで、ヒトIL4Rα-hisタンパク質と結合可能な抗体を分泌する陽性ハイブリドーマを選択し、24ウェルプレートに移した。高い特異的ヒトIL4Rα結合及びIL4RαIL4 又はIL4Rα-13Rα1-IL13遮断活性を示す抗体を産生するハイブリドーマ クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、細胞株のクローン性を確保した後、モノクローナル抗体を精製した。簡単に説明すると、プロテインAセファロースカラム(bestchrom(Shanghai)Biosciences、カタログ番号AA0273)を5~10倍カラム容量のPBSバッファーを使用して洗浄した。細胞上清をカラムに通し、その後、タンパク質の吸光度がベースラインに達するまで、PBSバッフーを使用してカラムを洗浄した。カラムを溶出バッファー(0.1Mグリシン-HCl、pH2.7)で溶出し、溶出液をすぐに1.5mLチューブに集め、中和バッファー(1M トリス-HCl、pH9.0)で中和した。免疫グロブリンを含む画分をプールし、4℃で一晩PBSで透析した。続いて、精製モノクローナル抗体のインビトロ機能活性を以下のように特徴付けた。
【0133】
実施例2:BIACORE 表面プラズモン共鳴を用いたマウス抗IL4Rαモノクローナル抗体の親和性測定
実施例1で生成された精製抗IL4Rαマウスモノクローナル抗体(mAb)は、Biacore T200システム(GE Healthcare、Pittsburgh、PA、USA)によって結合親和性及び結合動力学について特徴付けられた。
【0134】
簡単に説明すると、Biacore(GE Healthcare、Pittsburgh、PA、USA)が提供する標準的なアミン カップリング キットを用いて、ヤギ抗マウスIgG(GE healthcare、カタログ番号 BR100838、Mouse Antibody Capture Kit)を第一級アミン基を介してCM5チップ(カルボキシメチル化デキストラン被覆チップ)に共有結合させた。バイオセンサー表面の未反応部分は、エタノールアミンでブロックされた。次いで、66.67nMの濃度の本発明の精製抗IL4Rα抗体及び10μg/mlの抗IL4Rαベンチマーク(Dupilumab(登録商標),BMとも呼ばれる)を、10μL/分の流速でチップ上に流した。次に、HBS EP バッファー(Biacoreから提供)中の組換えヒトIL4Rα-his(自社作成、配列番号57に示すアミノ酸配列)、カニクイザル IL4Rα-his タンパク質(Sino biological inc.,カタログ番号90897-C08H)、又はマーモセット IL4Rα-his タンパク質(Sinobiological Inc.からの外注品、cal-IL4Rα-hisとも呼ばれる、アミノ酸配列は配列番号:58に示される)の段階希釈品を、30μL/分の流速でチップに流した。抗原抗体結合動態は2分間追跡し、解離動態は10分間追跡した。BIA評価ソフトウェアを使用して、結合及び解離曲線を1:1ラングミュア結合モデルに適合させた。K、K及びK値を決定し、以下の表2にまとめた。
【0135】
【表2】
【0136】
本発明のすべてのマウス抗体は、ヒトIL4Rαに特異的に結合し、それらのほとんどは、ベンチマークと比較して同等又はより高い結合親和性を示した。
【0137】
実施例3:マウス抗IL4Rα抗体のIL4Rα結合活性
本発明のマウス抗IL4Rα抗体のIL4Rαへの結合活性は、Capture ELISA、フローサイトメトリー(FACS)及び間接ELISAによって決定された。
【0138】
3.1 Capture ELISA
簡単に言えば、PBS中の2μg/mlヤギ抗マウスIgG Fcγフラグメント特異的(Jackson Immuno Research、カタログ番号115-005-008)を100μl/ウェルで96ウェルプレートにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄バッファー(PBS+0.05%w/v Tween-20、PBST)で1回洗浄した後、200μl/ウェルのブロッキングバッファー(5%w/vスキムミルクを含むPBST)を加え、37℃で2時間ブロックした。プレートを再度洗浄し、100μl/ウェルの連続希釈(2.5%w/v脱脂乳含有PBSTで5倍希釈、66.7nM から開始)した本発明の抗IL4Rα抗体、ベンチマーク又は陰性対照hIgG(ヒト免疫グロブリン(pH4)静注用、Hualan Biological Engineering Inc.)と共に37℃で40分間インキュベートし、プレートを再度4回洗浄した。100μL/ウェルのビオチン標識ヒトIL4Rα-hisタンパク質(配列番号57で自家製、in 2.5%w/v脱脂乳含有PBST、0.14nM)を、捕捉された抗IL4Rα抗体を含む96ウェルプレートに追加した。37℃で40分間インキュベートし、プレートを4回洗浄し、HRP 標識ストレプトアビジン(PBSTで 1:10000で希釈、Jackson Immuno Research、カタログ番号016-030-084)を100μL/ウェル添加し、37℃で40分間インキュベートした。最後の洗浄後、100μL/ウェルのELISA基質TMB(Innoreagents、カタログ番号MB-S-002)を追加し、インキュベーションした。10分後、25℃で1M HSOを50μL/ウェル加えて反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取った。Graphpad Prismソフトウェアを使用してデータを分析し、EC50値を取得した。
【0139】
3.2 細胞ベースの結合FACS
293F-IL4Rα細胞表面に発現したIL4Rαに対するマウス抗IL4Rα抗体の結合活性を、フローサイトメトリー(FACS)により試験した。293F 細胞(Thermofisher Inc.、カタログ番号11625019)に、EcoRI とXbaIとの間にヒトIL4Rα(uniprot #P24394-1 のアミノ酸残基 1-825)をコードするヌクレオチドを有するpCMV-T-P プラスミド コンストラクトでトランスフェクトし、安定した細胞プール(293F-IL4Rαと命名される)を、その後の細胞ベースの結合FACS 及び細胞ベースのリガンド 遮断FACS分析のために選択した。293F-IL4Rα細胞を細胞培養フラスコから回収し、2回洗浄し、FACS緩衝液(2% v/vウシ胎児血清を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS))に再懸濁した。次に、FACSバッファーで段階希釈(80nMから開始、4倍連続希釈)した抗IL4Rα抗体又はコントロール物質を100μL/ウェルで、2×10細胞/ウェルを含む96ウェルプレートに添加し、40分間氷浴した。細胞をFACSバッファーで2回洗浄した後、100μL/ウェルの R-フィコエリトリン標識アフィニティー精製F(ab')断片化ヤギ抗マウスIgG(H+L)((FACS バッファーで1:1000に希釈、Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-116-146)。)を加えた。暗所で4℃で40分間インキュベーションした後、細胞を3回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。Becton Dickinson FACS Canto II-HTSを用いて蛍光値を測定した。Graphpad Prismソフトウェアを使用してデータを分析し、EC50値を取得した。
【0140】
3.3 間接ELISA
カニクイザルIL4Rαタンパク質又はcal-IL4Rα-hisタンパク質との抗IL4Rα抗体の交差反応を測定した。簡単に説明すると、炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.6)中のカニクイザルIL4Rα-hisタンパク質(Sino biological inc.,カタログ番号90897-C08H)2μg/mL又は炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.6)中のcal-IL4Rα-his タンパク質(Sinobiological inc. からの外注品、製品カタログ BAX2)0.2μg/mLを96ウェルプレートに100 μL/ウェルでコーティングし、37℃で2時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファー(PBS + 0.05%w/vTween-20、PBST)で1回洗浄し、200 μL/ウェルのブロッキングバッファー(5%w/v脱脂乳を含む PBST)を加え、37℃で2時間ブロックした。プレートを再度洗浄し、段階希釈した本発明の抗IL4Rα抗体又は対照物質(0.004~66.7nM、66.7nMから開始、2.5%w/vスキムミルクを含むPBSTで5倍勾配で希釈)を100μLで各ウェルに添加し、37℃で40分間インキュベートした。プレートを4回洗浄した後、100μL/ウェルのペルオキシダーゼ標識アフィニティー精製ヤギ抗マウスIgG(Fcγ フラグメント特異的)(PBSTバッファーで1:5000に希釈、Jackson Immunoresearch、カタログ番号:115-036-071)を37℃で40分間インキュベートした。最後の洗浄後、100μL/ウェルのTMB(Innoreagents)を加え、インキュベーションした。3~10分後、25℃で1M HSOを50μL/ウェル添加することにより反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取った。Graphpad Prismソフトウェアを使用してデータを分析し、EC50値を取得した。
【0141】
3つの測定結果を表3及び図1A~1C、図2A~2D、図3に示した。
【0142】
結果から、本発明のマウス抗IL4Rα抗体は、高い結合能力でヒトIL4Rαに特異的に結合し、それらのいくつかはベンチマークよりも高い結合活性でサルIL4Rαタンパク質に結合したことが分かった。
【0143】
【表3】
【0144】
実施例4:IL4Rα-ベンチマーク又はIL4Rα-IL4相互作用に対するマウス抗IL4Rα抗体の遮断活性
4.1 リガンド遮断 ELISA
本発明の抗IL4Rα抗体がIL4-IL4Rα相互作用をブロックする能力は、競合ELISAによって決定された。簡単に説明すると、PBS中2μg/mLの濃度のヒトIL4Rα-hisタンパク質(配列番号: 57、自家調製)を100μL/ウェルで96ウェルプレートにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液(PBS + 0.05%w/vTween-20、PBST)で洗浄し、PBST中の5%w/v脱脂乳で37℃で2時間ブロッキングした。次いで、洗浄緩衝液を使用してプレートを再度洗浄した。
【0145】
抗IL4Rα抗体又は対照物質を、2.5% w/v脱脂乳含有PBSTバッファーで段階希釈(80nM から開始、4倍段階希釈)し、段階希釈した抗IL4Rα抗体又は対照物質をIL4Rαコーティングプレートに100μL/ウェルで添加し、ヒトIL4Rα-hisタンパク質とともに37℃で40分間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで4回洗浄し、その後、濃度0.56nMのビオチン標識ヒトIL4タンパク質(Sinobiological Inc., カタログ番号11846-HNAE)100μLを各ウェルに加え、37℃で40分間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで再度洗浄した。次に、100μL/ウェルのHRP標識ストレプトアビジン(PBSTバッファーで1:10000に希釈、Jackson Immunoresearch、カタログ 016-030-084)を加え、37℃で40分間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで再度洗浄した。最後に、TMBを加え、1M HSOで反応を停止し、吸光度を450nmで読み取りました。 Graphpad Prismソフトウェアを使用してデータを分析し、IC50値を取得した。
【0146】
4.2 ベンチマーク遮断ELISA
本発明の抗IL4Rα抗体がベンチマーク-ヒトIL4Rα結合をブロックする能力を、競合ELISAアッセイで測定した。簡単に説明すると、96ウェルマイクロプレートに、PBS中の2μg/mL濃度のベンチマークを100μl/ウェルでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄バッファー(PBS+0.05%w/v Tween-20、PBST)で洗浄し、PBST中の5%w/v無脂肪乳で37℃で2時間ブロックした。プレートブロッキング中、本発明の抗IL4Rα抗体又は対照を、ビオチン標識ヒトIL4Rα-hisタンパク質(配列番号57、社内作成、PBST中の2.5%w/v無脂肪乳で0.55nMで調製)で100nMから開始の4倍連続希釈し、25℃で40分間インキュベートした。プレートの洗浄後、抗体/IL4Rα--his混合物をベンチマークコーティングプレートに1ウェルあたり100μl添加した。37℃で40分間インキュベートした後、洗浄バッファーを使用してプレートを洗浄した。その後、100μl/ウェルのHRP標識ストレプトアビジンをプレートに添加し、37℃で40分間インキュベートして、プレートに結合したビオチン標識ヒトIL4Rα-hisを検出した。プレートを洗浄バッファーで再度洗浄した。最後にTMBを添加し、1M HSOで反応を停止させ、吸光度を450nmで読み取った。Graphpad Prismソフトウェアを使用してデータを分析し、IC50値を取得した。
【0147】
4.3 細胞ベースのリガンド遮断FACS
上記で調製した293F-IL4Rα細胞を用いて、細胞表面IL4RαへのIL4タンパク質の結合をブロックする抗IL4Rα抗体の活性をフローサイトメトリー(FACS)によって評価した。
【0148】
簡単に言えば、293F-IL4Rα細胞を細胞培養フラスコから回収し、2回洗浄し、FACS緩衝液(2%v/vウシ胎児血清を含むPBS)に再懸濁した。次に、FACSバッファーで段階希釈(80nMから開始、4倍段階希釈)した抗IL4Rα抗体又は対照物質を100μL/ウェルで、1×10細胞/ウェルを含む96ウェルプレートに添加し、40分間氷浴した。プレートをFACS緩衝液で2回洗浄し、100μl/ウェルの1.67nMビオチン標識ヒトIL4タンパク質(Sino biological inc.,カタログ番号11846-HNAE)を添加し、暗所で4℃で40分間インキュベートした。プレートをFACSバッファーで2回洗浄した後、100μl/ウェルのR-フィコエリトリン・ストレプトアビジン(FACSバッファーで1:500希釈、Jackson Immunoresearch、カタログ番号016-110-084)を添加し、暗所で4℃で40分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。Becton Dickinson FACS Canto II-HTS装置を使用して蛍光を測定した。Graphpad Prismソフトウェアを使用してデータを分析し、IC50値を取得した。
【0149】
3つの測定の結果を以下の表4と図4A~4B、5A~5B及び6A~6Cに示した。
【0150】
表4及び図4A~4Bから、本発明のすべての抗IL4Rα抗体が、ベンチマークに匹敵する遮断活性でヒトIL4-ヒトIL4Rα相互作用を遮断することができたことが分かった。
【0151】
図5A及び5Bは、本発明の抗体のいくつかがヒトIL4Rα-ベンチマーク結合を遮断することができたことを示し、それらがベンチマークと同じ又は類似のエピトープに結合する可能性があることを示唆している。
【0152】
さらに、表4及び図6A~6Cに示すように、すべての抗IL4Rα抗体はIL4の細胞表面IL4Rαへの結合をブロックすることができ、その遮断能力は参照製品の遮断能力に非常に近かった(ただし、IC50値はベンチマークの値よりもわずかに高かった)。
【0153】
【表4】
【0154】
実施例5:マウス抗IL4Rα抗体の細胞ベースの機能測定
IL4とIL13はIL4Rαに結合し、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞でSTAT6のリン酸化を誘導することができた。リン酸化ステップはIL4/IL13シグナル伝達経路において重要である。
【0155】
簡単に説明すると、pcDNA3.1-Puro(YouBio biological inc.,カタログ番号VT9222)プラスミド コンストラクト(BamHI とXhoI の間にヒトIL4Rαをコードするヌクレオチドを含む)、STAT6プラスミド(Sino biological inc.,カタログ番号HG13190-NH)(KpnI とXbaI の間にヒトSTAT6をコードするヌクレオチドを含む)、及びSTAT6ルシフェラーゼ レポーター遺伝子プラスミドSTAT6-Luc(Yeasen biological inc.,カタログ番号11588ES03)を用いて、IL13Rα1をネイティブに発現するHEK293T細胞(ATCC CRL-11268)を安定的にトランスフェクトし、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞を社内で調製した。次に、単一細胞クローンLB2を、その後のすべての機能アッセイのために選択した。
【0156】
本発明の抗IL4Rα抗体は、IL4及びIL13誘導STAT6リン酸化に対する阻害効果について試験された。
【0157】
簡単に説明すると、対数期のHEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞を培地(RPMI1640+10% FBS)に再懸濁し、100μL/ウェルで96ウェルプレートに播種し、各ウェルには5×10細胞が含まれた。次に、50μLの段階希釈した抗IL4Rα抗体又はコントロール(自社で調製した抗CD22抗体を含む)(100nMから開始、5倍段階希釈)を各ウェルに加え、37℃で30分間インキュベートした。次に、50μLのIL4タンパク質(600 pg/mL、Sino biological inc.,カタログ番号11846-HNAE)又はIL13タンパク質(50 ng/mL、Sino biological inc.,カタログ番号10369-HNAC)を各ウェルに加え、37℃で20分間インキュベートした。プレートを遠心分離し、染色バッファー(社内で調製、DPBS+0.5%w/vBSA+2 mM EDTA)で2回洗浄した後、50μLの固定バッファー(BD biosciences inc.,カタログ5545655)を各ウェルに加え、4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、200μLの透過化緩衝液(BD biosciences inc.、カタログ番号558050)を各ウェルに添加し、30分間氷浴した。プレートを染色緩衝液で3回洗浄した。その後、抗pSTAT6抗体(pSTAT6ストック溶液の20倍希釈、BD biosciences inc., カタログ番号562079)を添加し、氷上で60分間静置した。最後に、プレートを2回洗浄し、染色バッファーに再懸濁した。Becton Dickinson FACS Canto II-HTSを用いて蛍光値を測定した。Graphpad Prismソフトウェアを使用してデータを分析し、IC50値を取得した。
【0158】
結果を以下の表5と図7、8に示した。
【0159】
結果は、すべての抗IL4Rα抗体が、HEK293T-IL4Rα-STAT6-STAT6LUC-LB2細胞におけるIL4又はIL13誘導STAT6リン酸化を、参照物質と同等以上の遮断活性で遮断できることを示している。
【0160】
【表5】
【0161】
実施例6:キメラ抗体の生成及び特徴付け
抗IL4Rαマウスモノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を配列決定し、配列IDを表1にまとめた。
【0162】
抗IL4RαマウスmAbモノクローナル抗体C2C1A1A1及びB8G11F2B7G5E8の重鎖及び軽鎖の可変ドメインを、それぞれヒトIgG4重鎖定常領域(配列番号55)を含むベクター及びヒトκ軽鎖定常領域(配列番号56)を含むベクターにクローニングし、ここで可変領域のC末端は、対応する定常領域のN末端に連結される。
【0163】
ヒトIgG4重鎖定常領域に連結した重鎖可変領域をコードするヌクレオチドを含むベクターと、ヒトκ軽鎖定常領域に連結した軽鎖可変領域をコードするヌクレオチドを含むベクターを、軽鎖コンストラクト:重鎖コンストラクトの60%:40%の比率で1mg/mL PEIで50mL 293F懸濁細胞に一時的にトランスフェクトした。
【0164】
振盪フラスコ中で6日間培養した後に細胞上清を回収し、スピンダウンして細胞をペレット化し、免疫グロブリン分離のために0.22μmフィルターを通して濾過した。キメラ抗体はプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。簡単に説明すると、プロテインAセファロースカラム(bestchrom(Shanghai)Biosciencesから、カタログ番号AA0273)を、PBS緩衝液を使用して5から10倍カラム容積で洗浄した。細胞上清をプロテインAセファロースカラムに通し、タンパク質の吸光度がベースラインに達するまでカラムをPBS緩衝液で洗浄した。カラムを溶出バッファー(0.1M グリシン-HCl、pH2.7)で溶出し、すぐに中和バッファー(1M Tris-HCl、pH9.0)を含む1.5mlチューブに集め、中和した。免疫グロブリンを含む画分をプールし、PBSで4℃で一晩透析した。
【0165】
精製された抗体は、Capture ELISA、競合ELISA、BIAcore親和性試験、細胞ベースの結合FACS、及び細胞ベースの機能測定において、上記の実施例のプロトコル(以下に記載するわずかな変更を加えた)に従って試験した。
【0166】
Capture ELISAでは、ヤギ抗マウスIgG(Fcγフラグメント特異的)の代わりに、2μg/mlのヤギ抗ヒトIgG(アフィニティー精製ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ フラグメント特異的、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-005-098)を100μL/ウェルで使用した。
【0167】
間接ELISAでは、ペルオキシダーゼ標識アフィニティー精製ヤギ抗マウスIgG(Fcγ フラグメント特異的)の代わりに、ペルオキシダーゼ標識アフィニティー精製 F(ab’)断片化ヤギ抗ヒトIgG(Fcγ フラグメント特異的、Jackson Immunoresearch、カタログ 109-036-098)を100μL/ウェルで使用した。
【0168】
BIAcoreでは、ヤギ抗マウスIgGの代わりにヤギ抗ヒトIgG(GE healthcare、カタログ番号BR100839、Human Antibody Capture Kit)を使用し、CM5チップに共有結合した。
【0169】
細胞ベースの結合FACSでは、R-フィコエリトリン標識アフィニティ精製F(ab')断片化ヤギ抗マウスIgG(H+L)の代わりに、R-フィコエリトリン標識アフィニティ精製ヤギ抗ヒトIgG(Fcγフラグメント特異的、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-115-098)をFACSバッファーで1:1000に希釈し、100μL/ウェルで使用した。
【0170】
結果を表6及び図9~13に示した。データは、キメラ抗体がその親マウス抗体と同様の結合親和性/能力及び遮断活性を有することを示している。
【0171】
【表6】
【0172】
実施例7:抗IL4Rαモノクローナル抗体B8G11F2B7G5E8及びC2C1A1A1のヒト化
マウス抗IL4Rα抗体 B8G11F2B7G5E8及びC2C1A1A1をヒト化し、さらに特性を明らかにした。マウス抗体のヒト化は、確立されたCDRグラフト法を使用して、以下に説明するように実行された。
【0173】
マウス抗体B8G11F2B7G5E8及びC2C1A1A1のヒト化のためのアクセプターフレームワークを選択するために、各マウス抗体の軽鎖及び重鎖可変領域配列をヒト免疫グロブリン遺伝子データベースに対してブラスト(BLAST)した。最高の相同性を持つヒトの生殖系列が、ヒト化のためのアクセプターフレームワークとして選択された。マウス抗体の重鎖/軽鎖可変領域CDRを選択したフレームワークに挿入し、フレームワークの残基をさらに復帰突然変異させて、より多くの候補の重鎖/軽鎖可変領域を取得した。合計13個の例示的なヒト化B8G11F2B7G5E8抗体、即ち、huB8G11F2B7G5E8-V1からhuB8G11F2B7G5E8-V11、huB8G11F2B7G5E8-V13及びhuB8G11F2B7G5E8-V14まで、ならびに16個の例示的なヒト化C2C1A1A1抗体、即ち、huC2C1A1A1-V1からhuC2C1A1A1-V16までが得られ、その重鎖/軽鎖可変領域の配列IDを表1に示した。
【0174】
ヒトIgG4重鎖定常領域(配列番号55)に連結されたヒト化重鎖可変領域をコードするヌクレオチドを含むベクター、及びヒトκ軽鎖定常領域(配列番号56)に連結されたヒト化軽鎖可変領域をコードするヌクレオチドを含むベクターを、軽鎖コンストラクト:重鎖コンストラクトの60%:40%の比率で1mg/mL PEIで50mL 293F懸濁細胞に一時的にトランスフェクトした。
【0175】
振とうフラスコで6日間培養した後に細胞上清を回収し、上清中の細胞を遠心分離によってペレット化し、0.22μmフィルターでろ過して免疫グロブリンを分離した。抗体は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製された。簡単に説明すると、プロテインAセファロースカラム(bestchrom(Shanghai)Biosciencesから、カタログ番号AA0273)を、PBS緩衝液を使用して5から10倍カラム容積で洗浄した。細胞上清をプロテインAセファロースカラムに通し、タンパク質の吸光度がベースラインに達するまでカラムをPBS緩衝液で洗浄した。カラムを溶出バッファー(0.1M グリシン-HCl、pH2.7)で溶出し、すぐに中和バッファー(1M Tris-HCl、pH9.0)を含む1.5mlチューブに集め、中和した。免疫グロブリンを含む画分をプールし、PBSで4℃で一晩透析した。
【0176】
実施例8:ヒト化抗体の特徴付け
【0177】
【表7】
【0178】
ヒトIL4Rαに対するヒト化抗体の結合親和性は、前の実施例のプロトコルに従ってBIAcore技術によって評価された。測定K、K及びK値を測定し、表7及び表8にまとめた。
【0179】
【表8】
【0180】
結果は、ヒト化抗体がヒトIL4Rαに対してキメラ抗体と同様の結合親和性を有し、すべてのヒト化huC2C1A1A1抗体が参照と比較してヒトIL4Rαに対してより高い結合親和性を示すことが示されている。
【0181】
ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V2、huB8G11F2B7G5E8-V4、huB8G11F2B7G5E8-V14、huC2C1A1A1-V14及びhuC2C1A1A1-V15は、Biacore、capatureELISA、間接ELISA、細胞ベースの結合FACS、競合ELISA及び細胞ベースの機能測定において、上記の実施例のプロトコル(以下に記載するわずかな変更を加えた)に従って試験した。
【0182】
Capture ELISAでは、ヤギ抗マウスIgG(Fcγフラグメント特異的)の代わりに、2 μg/mLヤギ抗ヒトIgG(アフィニティー精製ヤギ抗ヒトIgG、Fcγフラグメント特異的、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-005-098)を100μL/ウェルで使用した。
【0183】
間接ELISAでは、ペルオキシダーゼ標識アフィニティー精製ヤギ抗マウスIgG(Fcγ フラグメント特異的)の代わりに、ペルオキシダーゼ標識アフィニティー精製 F(ab’)断片化ヤギ抗ヒト IgG(Fcγ フラグメント特異的、Jackson Immunoresearch、カタログ 109-036-098)100 μl/ウェルで使用した。
【0184】
BIAcoreでは、ヤギ抗マウスIgGの代わりに、ヤギ抗ヒトIgG(GE healthcare、カタログ番号BR100838、Human Antibody Capture Kit)を使用し、CM5チップに共有結合した。
【0185】
細胞ベースの結合FACSでは、R-フィコエリトリン標識アフィニティ精製F(ab')断片化ヤギ抗マウスIgG(H+L)の代わりに、R-フィコエリトリン標識アフィニティ精製ヤギ抗ヒトIgG(Fcγフラグメント特異的、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-115-098)をFACSバッファーで1:1000に希釈し、100μL/ウェルで使用した。
【0186】
ヒト化抗体huB8G11F2B7G5E8-V14及びhuC2C1A1A1-V15の熱安定性も試験した。簡単に説明すると、GloMeltTM Thermal Shift Protein Stability Kit(Biotium、カタログ番号33022-T、カタログ番号181214)を使用して、タンパク質サーマルシフトアッセイによってTm(融解温度)を測定した。簡単に説明すると、GloMeltTM色素を室温で解凍した。染料を含むバイアルをボルテックスし、遠心分離した。次に、5μL 200×染料を95μL PBSに添加して10×染料を調製した。反応系に2μL 10×染料及び10μgヒト化抗体を加え、PBSに添加して総反応量が20μLにした。色素と抗体を含むマイクロ遠心チューブを簡単に遠心分離し、表9のパラメーターを使用して融解曲線プログラムを設定したリアルタイムPCRサーマルサイクラー(Roche、LightCycler 480 II)に設置した。
【0187】
【表9】
【0188】
結果を表10-1~10-3及び図14A~14Bから図22までに示した。
【0189】
【表10-1】
【0190】
【表10-2】
【0191】
【表10-3】
【0192】
データは、ヒト化C2C1A1A1抗体が、参照と比較して、ヒトIL4Rαに対する同等(良くなければ)の結合親和性/活性、及びIL4Rα-IL4/IL13に対する遮断能力を示すが、ヒト化B8G11F2B7G5E8抗体は、IL4/IL13-IL13Rα1-IL4Rα相互作用に対して有意に優れた遮断能力を示した。
【0193】
本発明は、1つ又は複数の実施形態に関連して上で説明されてきたが、本発明はそれらの実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれるすべての代替物、修正物、及び等価物をカバーすることを意図していることを理解されたい。本明細書で引用されるすべての文書は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0194】
この出願のシーケンス情報を次の表にまとめた。
【0195】
【表11-1】

【表11-2】

【表11-3】

【表11-4】

【表11-5】

【表11-6】

【表11-7】

【表11-8】

【表11-9】

【表11-10】

【表11-11】

【表11-12】

【表11-13】

【表11-14】

【表11-15】

【表11-16】
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22
【配列表】
2023515223000001.app
【国際調査報告】