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特表2023-515227抗コロナウイルスにおけるジスルフィラムの使用
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  • 特表-抗コロナウイルスにおけるジスルフィラムの使用 図1
  • 特表-抗コロナウイルスにおけるジスルフィラムの使用 図2
  • 特表-抗コロナウイルスにおけるジスルフィラムの使用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】抗コロナウイルスにおけるジスルフィラムの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/145 20060101AFI20230405BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61K31/145
A61P31/14
A61P43/00 171
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551788
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2021078185
(87)【国際公開番号】W WO2021170093
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202010121688.4
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518222745
【氏名又は名称】上海科技大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI TECH UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.393 Middle Huaxia Road, Pudong New Area, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲海▼涛
(72)【発明者】
【氏名】▲ジン▼振明
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼秀娜
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼耀
(72)【発明者】
【氏名】▲饒▼子和
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB332
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA72
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC61
(57)【要約】
本発明は抗コロナウイルスにおけるジスルフィラムの使用を開示する。コロナウイルスによる疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造におけるジスルフィラムの使用である。本発明は、体外酵素活性実験により、ジスルフィラムが好適にコロナウイルスにおける主要プロテアーゼの活性を阻害することができ、既存技術にコロナウイルスによる疾患を治療するものが欠けているという不足を補うことが見出された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルスによる疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造におけるジスルフィラムの使用であって、
前記コロナウイルスはSARS-CoV-2、SARS-CoV、HCoV-HKU1、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-229E、TGEV、PEDV、PDCoV、FIPV又はIBVから選ばれる使用。
【請求項2】
前記疾患は哺乳動物又はトリ類の疾患であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記哺乳動物はヒト、ブタ及びネコを含むことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ジスルフィラムを薬物組成物の唯一の活性成分とすることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記薬物組成物は、さらに、薬学的に許容される担体、例えば薬学的に許容される薬用助剤を含むことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記ジスルフィラムはそれを含むキットの様態で存在し、前記キットは、さらに、コロナウイルスに関連する疾患を治療する薬物及び/又はほかのウイルスによる疾患を治療する薬物を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は出願日が2020年2月26日である中国出願2020101216884の優先権を主張する。本出願は中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、生物医薬の技術分野に属し、抗コロナウイルスにおけるジスルフィラムの使用、具体的に、コロナウイルスによる疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造におけるジスルフィラムの使用に関する。
【0003】
[背景技術]
コロナウイルスは人畜に密接に関連するウイルスである。コロナウイルスHCoV-229E及びHCoV-OC43は通常の風邪を引き起こす(van der Hoek, L., Pyrc, K., Jebbink, M. ら Identification of a new human coronavirus. Nat Med 2004,10, 368-373)。2002から2003年の間にSARSコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS)は全世界で8098人を感染させた(Stadler, K., Masignani, V., Eickmann, M. ら SARS - beginning to understand a new virus. Nat Rev Microbiol 2003, 1, 209-218)。2004年に同定されたHCoV-NL63は同様に風邪に似た気道疾患を引き起こす(van der Hoek, L., Pyrc, K., Jebbink, M. ら Identification of a new human coronavirus. Nat Med 2004,10, 368-373)。2012年に中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が現れ、2016年4月26日までに、27か国で1728例の感染があった(de Wit, E., van Doremalen, N., Falzarano, D. ら SARS and MERS: recent insights into emerging coronaviruses. Nat Rev Microbiol 2016,14, 523-534.)。最近流行中のSARS-CoV-2ウイルスはCOVID-19を引き起こし、臨床所見が発熱、乾性咳及び呼吸困難である(Jeannette Guarner, MD, Three Emerging Coronaviruses in Two Decades: The Story of SARS, MERS, and Now COVID-19, American Journal of Clinical Pathology, , aqaa029)。コロナウイルスは牧畜業に対する影響が大きく、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、胃腸炎ウイルス(TGEV)及びブタデルタコロナウイルス(Porcine delta coronavirus、PDCoV、デルタウイルスとも呼ばれる)は、ブタの重症胃腸炎、下痢、嘔吐及び脱水を引き起こし、養豚業に莫大な損失をもたらす(Akimkin V, Beer M, Blome S, ら New Chimeric Porcine Coronavirus in Swine Feces, Germany, 2012. Emerg Infect Dis. 2016,22(7):1314-1315)。ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)はネコ科動物の致死性疾患を引き起こす。トリ伝染性気管支炎ウイルス(IBV)はトリ類に感染し、幅広く分布する家禽疾患で、家禽業に大きな悪影響を与える。
【0004】
コロナウイルスは系統分類においてニドウイルス目(Nidovirales)コロナウイルス科(Coronaviridae)オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)に属し、現在、SARS-CoV-2コロナウイルスのゲノム配列が既に開示されており、当該配列はSARS-Covとのヌクレオチド類似度が約90%であり、タンパク質配列はSARS-CoVと約80%の配列類似性がある。コロナウイルスのゲノムは一本鎖のセンス鎖RNAで、長さが約28 kbで、主にウイルスのパッケージングに必要な構造タンパク質及び複製・転写に関連する非構造タンパク質をコードする。コロナウイルス関連疾患を治療する薬物及びワクチンの開発は主に上記2種類のタンパク質に対する。ウイルスゲノムの三分の二の遺伝子は主に非構造タンパク質をコードする。ウイルスはpp1aとpp1abの2種類のポリメラーゼタンパク質をコードし、ウイルスの複製過程に関与する。pp1aとpp1abは2種類のウイルスによってコードされるパパイン及び主要プロテアーゼ(main protease)によって16の非構造タンパク質nsp1-16に切断することができ、これらの機能的サブユニットがウイルスによってコードされるプロテアーゼに独立したタンパク質単位に切断されないと、ウイルスは正常の転写・複製機能を完成し、さらに複製・転写複合体に組み立て、ウイルスの複製と転写を完成させることができない。中では、パパインは3つの酵素切断部位が、主要プロテアーゼはpp1aとpp1abに11個の酵素切断部位が存在する。主要プロテアーゼがウイルスの転写・複製の過程において重要な調節作用を発揮することがわかったため、研究の焦点になってきた(Ziebuhr, J.; Snijder, E. J.; Gorbalenya, A. E. Virus-encoded proteinases and proteolytic processing in the Nidovirales. J Gen Virol 2000, 81, 853-79.;Ziebuhr, J. Molecular biology of severe acute respiratory syndrome coronavirus. Curr Opin Microbiol 2004, 7, 412-9.)。主要プロテアーゼのコロナウイルスの増幅・複製に対する重要性のため、主要プロテアーゼの触媒部位に対する専一性が強く、安全性が高い阻害剤の探索は薬物の開発に特に重要である。
【0005】
ジスルフィラム(Disulfiram;CAS番号:97-77-8)は特異的なアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH1)阻害剤で(Liu, Xinwei, ら “Targeting ALDH1A1 by disulfiram/copper complex inhibits non-small cell lung cancer recurrence driven by ALDH-positive cancer stem cells.” Oncotarget 7.36 (2016): 58516.)、慢性アルコール中毒の治療に使用され、アルコールに急性感受性が生じる。また、ジスルフィラムはドーパミン作動系に作用し、ジスルフィラム及びその代謝物である二硫化炭素はいずれもドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ(DBH)で、ドーパミンレベルを上昇させる。これによって譫妄、偏執、記憶障害、運動失調、構音障害及び前頭放出信号のようないくつかの神経・精神的症状につながる。このような作用以外、ジスルフィラムはドーパミン-β-ヒドロキシラーゼを阻害することで、大脳におけるドーパミン濃度が上昇し、ノルアドレナリンが低下することから、ジスルフィラムのアルコール依存における抗依存性作用が示唆される。
【0006】
2017年に雑誌ネイチャー(Skrott, Zdenek, ら “Alcohol-abuse drug disulfiram targets cancer via p97 segregase adaptor NPL4.” Nature 552.7684 (2017): 194-199.] )では、その抗腫瘍活性が発表され、研究ではジスルフィラムは体内において1種類の小分子に代謝されることで、天然タンパク質NPL4の凝集を促進してそのリガンドであるp97酵素類に結合すると、この過程は腫瘍生長を促進するNPL4-p97複合体の作用の発揮を阻害し、そして癌細胞の死亡を誘導することが見出された。また、ジスルフィラムはジンクフィンガー及びリングフィンガーE3ユビキチンリガーゼに特異的活性があることが見出され、これらのリガーゼは癌の進展において重要な作用を果たす(R Kona, F., D. A. M. B. Buac, and A. M Burger. “Disulfiram, and disulfiram derivatives as novel potential anticancer drugs targeting the ubiquitin proteasome system in both preclinical and clinical studies.” Current cancer drug targets 11.3 (2011): 338-346.)。関連特許出願はWO2017077336A1である。
既存技術では、上記ジスルフィラムがコロナウイルスによる関連疾患の治療に使用できるものがまだ存在しない。
【0007】
[発明の開示]
本発明の解決しようとする技術課題は、既存技術に有効にコロナウイルスによる疾患を治療及び/又は予防する薬物がまだ存在しないという欠陥に対するもので、抗コロナウイルスにおけるジスルフィラムの使用を提供し、具体的に、コロナウイルスによる疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造におけるジスルフィラムの使用に関する。
【0008】
本発明は、主に以下の技術的解決策によって上記技術課題を解決する。
本発明は、コロナウイルスによる疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造におけるジスルフィラム(CAS番号:97-77-8)の使用を提供する。
【0009】
好ましくは、前記の疾患は哺乳動物又はトリ類の疾患である。
好ましくは、前記の哺乳動物はヒト、ブタ及びネコを含む。
本発明に記載のコロナウイルスは、定義が本分野で熟知されるもので、系統分類においてニドウイルス目(Nidovirales)コロナウイルス科(Coronaviridae)オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)に属する。コロナウイルスはエンベロープ(envelope)を有し、ゲノムが一本鎖のセンス鎖のRNAウイルスで、自然界に幅広く存在する一種類のウイルスである。
【0010】
本発明の目的は、コロナウイルス感染による疾患の潜在的な治療プランを提供することである。本発明に記載のコロナウイルスは、好ましくはオルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)に属し、より好ましくはアルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属又はデルタコロナウイルス属に属する。
【0011】
本発明の一つの好適な実施例において、前記のジスルフィラムはSARS-CoV-2(ベータコロナウイルス属)による疾患の治療以外、ほかのコロナウイルスのSARS-CoV(ベータコロナウイルス属)やMERS-CoVなどによる重要な伝染病を治療することもでき、通常の風邪薬として、HCoV-HKU1(Human coronavirus HKU1;ベータコロナウイルス属)、HCoV-NL63(Human coronavirus NL63;アルファコロナウイルス属)、HCoV-OC43(Human coronavirus OC43)及びHCoV-229E(Human coronavirus 22E;アルファコロナウイルス属)などのコロナウイルスによる疾患を治療することもでき、さらに、獣医薬として、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(Transmissible gastroenteritis virus、TGEV;アルファコロナウイルス属)、ブタ流行性下痢ウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus、PEDV;アルファコロナウイルス属)、ブタデルタコロナウイルス(Porcine delta coronavirus、PDCoV;デルタコロナウイルス属)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(Feline infectious peritonitis virus、FIPV;アルファコロナウイルス属)、トリ伝染性気管支炎ウイルス(Infectious bronchitis virus、IBV;ガンマコロナウイルス属)などの動物疾患を治療することもできる。
【0012】
そのため、本発明に記載のコロナウイルスは好ましくはSARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV-HKU1、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-229E、TGEV、PEDV、PDCoV、FIPV又はIBVから選ばれる。
【0013】
ある形態において、本発明のジスルフィラム又はその薬学的に許容される塩はそれを含む薬物組成物の様態で存在し、好ましくは、前記薬物組成物はジスルフィラム及び/又はその薬学的に許容される塩を前記薬物組成物の唯一の活性成分とし、ならびに/あるいは、前記薬物組成物は、さらに、薬学的に許容される担体、例えば薬学的に許容される薬用助剤を含む。
【0014】
ある形態において、本発明のジスルフィラム又はその薬学的に許容される塩はそれを含むキットの様態で存在し、前記キットは、さらに、コロナウイルスに関連する疾患を治療する薬物及び/又はほかのウイルスによる疾患を治療する薬物を含む。
【0015】
本発明に係るジスルフィラムを活性生物とする薬物組成物は、いずれも本分野で公知の方法によって製造することができる。本発明の化合物をヒト又は動物の使用に適する任意の剤形にすることによって製造することができる。本発明の化合物のその薬物組成物における重量含有量が、通常、0.1~99.0%である。
【0016】
前記の薬学的に許容される担体は本分野の通常の担体で、前記の担体は任意の適切な生理学的に又は薬学的に許容される薬物助剤でもよい。前記の薬物助剤は本分野の通常の薬物助剤で、好ましくは薬学的に許容される賦形剤、充填剤又は希釈剤などを含む。より好ましくは、前記の薬物組成物は0.01~99.99%の上記タンパク質及び/又は上記の抗体薬物複合体と、0.01~99.99%の薬用担体とを含み、前記百分率は前記薬物組成物で占める質量百分率である。
【0017】
本発明におけるジスルフィラム又はそれを含む薬物組成物は、単位投与量の形で投与してもよく、投与経路は腸管又は非腸管であり、例えば経口、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、鼻腔、口腔粘膜、目、肺と気道、皮膚、膣、直腸などでもよい。
【0018】
投与剤形は液体剤形、固体剤形又は半固体剤形でもよい。液体剤形は溶液剤(真溶液(true solution)やコロイド溶液を含む)、乳剤(o/w型、w/o型及び多重エマルション)、懸濁剤、注射剤(水注射剤、粉末注射剤及び輸液剤を含む)、点眼剤、点鼻剤、洗剤及び擦剤などでもよい。固体剤形は錠剤(一般的な錠、腸衣錠、トローチ錠、分散錠、咀嚼錠、泡錠、口腔内崩壊錠)、カプセル錠(硬カプセル、軟カプセル、腸衣カプセル)、顆粒剤、散剤、マイクロペレット、滴丸、坐剤、膜剤、粘着シート、エアゾール(粉末吸入)剤、噴霧剤などでもよい。半固体剤形は軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤などでもよい。
【0019】
本発明におけるジスルフィラムは通常の製剤にも、徐放製剤、放出制御製剤、標的製剤及び様々な微粒子投与システムにも製造することができる。
用語「薬学的に許容される」とは、塩、溶媒、助剤などが一般的に無毒で、安全で、かつ患者の使用に適することである。前記の「患者」は好ましくは哺乳動物で、より好ましくはヒトである。
【0020】
用語「薬学的許容される塩」とは本発明におけるジスルフィラムと比較的に無毒の、薬学的に許容される酸又は塩基で製造される塩のことである。
本分野の常識に合うことを前提に、上記各好適な条件を任意に組み合わせれば、本発明の各好適な実例が得られる。
【0021】
本発明で用いられる試薬及び原料はいずれも市販品として得られる。
本発明の積極的な進歩効果は以下の通りである。
本発明は、体外酵素活性実験により、ジスルフィラムが好適にコロナウイルスにおける主要プロテアーゼの活性を阻害することができ、既存技術にコロナウイルスによる疾患を治療するものが欠けているという不足を補うことが見出された。ジスルフィラムをさらに研究し、改造することにより応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、ジスルフィラムの新型コロナウイルスの主要プロテアーゼに対する阻害活性で、1はDMSO(陰性対照)、2は化合物分子、3は陽性対照(N3阻害剤)である。
図2図2は、ジスルフィラムの新型コロナウイルスの主要プロテアーゼに対する阻害曲線である。
図3図3は、ジスルフィラムの細胞レベルにおける新型コロナウイルスに対する阻害活性である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例の形によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を記載された実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、あるいは商品の説明書に従って選ばれた。
【0024】
[実施例1]
異なる化合物ライブラリーからハイスループットのスクリーニングを行い、得られたジスルフィラムはいずれも新型コロナウイルスの主要プロテアーゼに良い阻害効果がある。酵素活性実験の条件は、具体的に以下の通りである。
【0025】
酵素活性実験の蛍光基質:MCA-AVLQSGFR-Lys(Dnp)-Lys-NHであり、当該蛍光基質の励起波長及び放出波長がそれぞれ320nm及び405nmである。
酵素活性反応緩衝液は50mM Tris-HCl(pH 7.3)、1mM EDTAであり、酵素活性反応温度は30℃である。反応はプロテアーゼの添加によって開始し、プロテアーゼ反応の最終濃度が0.2μMであり、基質濃度が20μMであり、ジスルフィラム濃度が1.5μMである(Xue X, Yang H, Shen W, ら Production of authentic SARS-CoV Mpro with enhanced activity: application as a novel tag-cleavage endopeptidase for protein overproduction[J]. Journal of molecular biology, 2007, 366(3): 965-975.)。
【0026】
使用される陽性対照はN3阻害剤であり、有効にコロナウイルスの主要プロテアーゼを不活性化させることができ(楊海涛, 謝衛青, Xiaoyu X , ら Design of wide-spectrum inhibitors targeting coronavirus main proteases[J]. 生命有機化学, 2005, 3(10):1742-1752.)、構造式が以下で示される。
【0027】
【化1】
【0028】
図1から、ジスルフィラムの酵素活性実験曲線は、明らかに陰性対照と異なり、コロナウイルスの主要プロテアーゼに明らかな阻害活性を有することがわかる。
【0029】
[実施例2]
酵素活性阻害曲線測定に使用される蛍光基質:MCA-AVLQSGFR-Lys(Dnp)-Lys-NHであり、当該蛍光基質の励起波長及び放出波長がそれぞれ320nm及び405nmである。
【0030】
酵素活性阻害曲線測定の緩衝液は50mM Tris-HCl(pH 7.3)、1mM EDTAで、反応温度は30℃である。反応はプロテアーゼの添加によって開始し、プロテアーゼ反応の最終濃度が0.2μMであり、基質濃度が20μMであり、11個の異なる濃度のジスルフィラムで測定した結果、IC50値が9.35μMであった(図2)(Jin Z , Du X , Xu Y , ら Structure of Mpro from COVID-19 virus and discovery of its inhibitors[J]. Nature, 2020, 582(7811):1-9.)。
【0031】
[実施例3]
体外細胞抗ウイルス実験でqRT-PCRの方法によって検出した。Vero細胞を96ウェルプレートに接種し、37℃で20~24hインキュベートした後、10 μMのジスルフィラムで細胞を1h処理した。その後、SARS-CoV-2に感染した細胞を2時間入れたところ、MOI(multiplicity of infection、感染多重度)が0.01であった。その後、ウイルス及び薬物混合物を除去し、洗浄後、薬物を含む新鮮な培地でさらに細胞を培養した。72時間培養した後、QIAamp viral RNA mini kit (Qiagen)で培養上清液からウイルスRNAを抽出し、最後にqRT-PCRによって検出した(Jin Z , Du X , Xu Y , ら Structure of Mpro from COVID-19 virus and discovery of its inhibitors[J]. Nature, 2020, 582(7811):1-9.)。
【0032】
体外細胞抗ウイルス実験により、ジスルフィラムは新型コロナウイルスの複製を阻害することが見出されたため、ジスルフィラムはコロナウイルスによる関連疾患の治療に使用することができる。
以上、本発明の具体的な実施形態を記述したが、当業者にとって、これらは例示の説明だけで、本発明の原理と実質に反しないという前提下において、これらの実施形態に対して様々な変更や修正をすることができる。そのため、本発明の保護範囲は添付の請求の範囲によって限定される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】