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特表2023-515253ナノ粒子を含む組成物、その製造方法及び用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ナノ粒子を含む組成物、その製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/50 20150101AFI20230405BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230405BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230405BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230405BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20230405BHJP
   A61K 38/54 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61K35/50
A61P11/00
A61P31/14
A61P9/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61K31/7105
A61K31/728
A61K38/19
A61K38/18
A61P43/00 121
C12N5/071
C12N15/11 Z
B82Y5/00
A61K38/54
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562119
(86)(22)【出願日】2021-04-10
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2021052982
(87)【国際公開番号】W WO2021205411
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/008,355
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522396654
【氏名又は名称】オーガニセル リジェネレイティブ メディスン,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】マリア アイネス ミトラーニ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC16
4B065CA23
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA13
4C084DA17
4C084DC01
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA96
4C084ZB15
4C084ZB33
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086EA25
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZB33
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB58
4C087MA02
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA96
4C087ZB15
4C087ZB33
4C087ZC75
(57)【要約】
特定の態様において、ヒト羊水(HAF)由来の無細胞治療用組成物、並びに選択された疾患及び障害の予防及び治療のためのその使用が、本明細書中に提示される。
【選択図】図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(a) 修飾ヒト羊水(HAF);及び
(b) HAF由来ナノ粒子、
を含む組成物であって;
ここで、そのナノ粒子が30nm超の直径を有し、かつ、その組成物中の粒子の濃度が少なくとも1×108粒子/mlである、組成物。
【請求項2】
前記組成物中の粒子の濃度が、少なくとも1×109粒子/ml、又は少なくとも1×1010粒子/mlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中の粒子の濃度が、少なくとも1×1011粒子/mlである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の粒子の濃度が、約2×1011粒子/ml~約1.1×1012粒子/mlの範囲内である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、50nm~250nmの範囲内の直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、100~200nmの範囲内の平均(average又はmean)直径を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、膜カプセル化細胞外小胞を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ粒子が、エクソソームを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、表面結合タンパク質CD63を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも10pg/ml、少なくとも300pg/ml又は少なくとも400pg/mlの濃度にてCD63を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ナノ粒子が、CD9、CD63、CD81、CD326及びCD133から成る群から選択される3つ以上の表面結合タンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、CD14、CD24、CD42a、CD44、CD29、CD14及びCD146から選択される2つ以上の表面結合タンパク質をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、表面結合タンパク質HLA-DR、HLA-DP及びHLA-DQをさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ナノ粒子が、表1から選択されるmiRNAを1、2、3、4、5、10、20、25又は30個以上含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、hsa-let-7b、hsa-mir-200c、hsa-mir-30d、hsa-mir-125a、hsa-mir-483、hsa-mir-34c、hsa-mir-200a、hsa-mir-148a、hsa-mir-191、hsa-mir-21、hsa-mir-146a、hsa-mir-26b、hsa-mir-92b、hsa-mir-342、hsa-mir-34b、hsa-mir-423、hsa-mir-205、hsa-mir-203a、hsa-mir-99b、hsa-mir-375、hsa-mir-10b、hsa-mir-449c、hsa-mir-320a及びhsa-let-7f-2から選択されるmiRNAを5個以上含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ナノ粒子が、hsa-let-7b、hsa-mir-200c、hsa-mir-30d、hsa-mir-125a、hsa-mir-483、hsa-mir-34c、hsa-mir-200a、hsa-mir-148a、hsa-mir-191、hsa-mir-21、hsa-mir-146a、hsa-mir-26b、hsa-mir-92b、hsa-mir-342、hsa-mir-34b、hsa-mir-423、hsa-mir-205、hsa-mir-203a、hsa-mir-99b、hsa-mir-375、hsa-mir-10b、hsa-mir-449c、hsa-mir-320a、hsa-let-7f-2、hsa-mir-23a、hsa-mir-27b、hsa-mir-93、hsa-mir-221、hsa-mir-425、hsa-mir-151a、hsa-mir-190b、hsa-mir-223、hsa-mir-1180、hsa-mir-184、hsa-mir-361、hsa-mir-182、hsa-mir-92a-1、hsa-mir-29a、hsa-mir-183、hsa-mir-204、hsa-mir-574、hsa-mir-532、hsa-mir-28、hsa-mir-744、hsa-mir-2110、hsa-mir-140、hsa-mir-1307、hsa-mir-193b、hsa-mir-660、hsa-mir-224、hsa-mir-196b、hsa-mir-339、hsa-mir-186、hsa-mir-3065、hsa-mir-378a、hsa-mir-16-1、hsa-mir-338、hsa-mir-126、hsa-mir-95、hsa-mir-142、hsa-mir-328、hsa-mir-335、hsa-mir-125b-2、hsa-mir-149及びhsa-mir-150から選択されるmiRNAを10個以上含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記ナノ粒子が、hsa-mir-30d、hsa-mir-191、hsa-mir-21及びhsa-mir-146aを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記ナノ粒子が、hsa-mir-30d、hsa-mir-191、hsa-mir-21及びhsa-mir-146aから選択されるmiRNAを2個以上含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記ナノ粒子が、DNAポリメラーゼβ、DNAポリメラーゼλ、テロメラーゼ逆転写酵素及びRAD50を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、少なくとも200ng/ml又は少なくとも600ng/mlの濃度にてヒアルロン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、200~2000ng/ml又は600~2000ng/mlの範囲内の濃度にてヒアルロン酸を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、実質的に細胞を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、実質的に細菌、真菌及び酵母を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、実質的に産毛及び胎脂を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、アンギオゲニン(ANG)、BLC、EGF、FGF-6、GCP-2、IGFBP-1、IGF-BP2、IGF-BP4、IL-1RA、IL-6、LEPTIN、MCP-1、MIG、MIP-1DELTA、NAP-2、アディポネクチン(ACRP30)、GRO-A、HCC-4、HGF、ICAM-1、IGFBP-6、IL-1R4、IL-6R、IL-8、OPG、sTNFRII、sTNFRI、TIMP-1、TIMP-2、及びUPARから成る群から選択されるサイトカイン又は増殖因子を1若しくは複数、2個以上、5個以上、又は10個以上含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、ANG、IL-1RA、MCP-1、IL-6、UPAR、FGF-6、EGF、HGF、LEPTIN及びACRP30を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、ACRP30、AGRP、ANGPT2、AREG、AXL、B-NGF、BFGF、BTC、CCL28、CTAK、DTK、EGFR、ENA-78、FAS、FGF-4、FGF-9、G-CSF、GITR、GITR LIGAND、GRO、GRO-ALPHA、HCC-4、HGF、I-TAC、ICAM-1、ICAM-3、IGF-1SR、IGFBP-3、IGFBP-6、IL-11、IL-12 P40、IL-12 P70、IL-17、IL-1R1、IL-2R ALPHA、IL-6R、IL-8、IL1R4、MIF、MIP-1 ALPHA、MIP-2 BETA、MIP-3 BETA、MSP ALPHA、NT-4、OPG、OSM、PLGF、SGP130、STNFRI、STNFRII、TECK、THPO、TIMP-1、TIMP-2、TRAIL R3、TRAIL R4、UPAR、VEGF、VEGF-D、XCL1、ANG、BDNF、BLC、BMP4、BMP6、CCL23、CNTP、EGF、Eoxtanin 1、Eoxtanin 2、Eoxtaxin 3、FGF-6、FGF-7、FLT3-LIGAND、FRACTALKINE、GCP-2、GDNF、GMCSF、I-309、IGF-1、IGFBP1、IGFBP2、IGFBP4、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-1B、IL-1RA、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL1-A、INF GAMMA、LEPTIN、LIGHT、M-CSF、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP4、MDC、MIG、MIP-1A、MIP-3A、NAP-2、NT-3、PARC、PDGFBB、RANTES、SCF、SDF1A、TARC、TGF-B1、TGF-B3、TNFA及びTNFBのうちの1若しくは複数を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
以下の:
(a) 修飾ヒト羊水(HAF);及び
(b) HAF由来ナノ粒子、
を含む組成物であって;
ここで、そのナノ粒子が30nm超の直径を有し、かつ、その組成物中の粒子の濃度が少なくとも1×108粒子/mlである、組成物;並びに
1若しくは複数の医薬的に許容される賦形剤又は添加剤、
を含む医薬組成物。
【請求項29】
前記医薬組成物が、経口又は非経口投与のために構成されるか又は処方される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
それを必要としている対象の肺疾患又は肺障害を治療する方法であって、以下の:(a) 修飾ヒト羊水(HAF);及び(b) HAF由来ナノ粒子、を含む組成物であって;ここで、そのナノ粒子が30nm超の直径を有し、かつ、その組成物中の粒子の濃度が少なくとも1×108粒子/mlである組成物の治療的有効量をその対象に投与することを含み、ここで、その疾患又は障害が、急性呼吸器症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び気管支肺異形成から選択される、方法。
【請求項31】
前記肺疾患又は肺障害が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記肺疾患又は肺障害が、気管支肺異形成(BPD)を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記肺疾患又は肺障害が、急性呼吸器症候群を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、コロナウイルスに感染している、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、COVID19又はSARS関連コロナウイルス(SARS-CoV2)に感染している、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
それを必要としている対象の急性脳傷害を治療する方法であって、以下の:(a) 修飾ヒト羊水(HAF);及び(b) HAF由来ナノ粒子mを含む組成物であって;ここで、そのナノ粒子が30nm超の直径を有し、かつ、その組成物中の粒子の濃度が少なくとも1×108粒子/mlである組成物の治療的有効量をその対象に投与することを含む、方法。
【請求項37】
それを必要としている対象の急性臓器不全を治療する方法であって、以下の:(a) 修飾ヒト羊水(HAF);及び(b) HAF由来ナノ粒子mを含む組成物であって;ここで、そのナノ粒子が30nm超の直径を有し、かつ、その組成物中の粒子の濃度が少なくとも1×108粒子/mlである組成物の治療的有効量をその対象に投与することを含む、方法。
【請求項38】
それを必要としている対象の関節炎を治療する方法であって、以下の:(a) 修飾ヒト羊水(HAF);及び(b) HAF由来ナノ粒子mを含む組成物であって;ここで、そのナノ粒子が30nm超の直径を有し、かつ、その組成物中の粒子の濃度が少なくとも1×108粒子/mlである組成物の治療的有効量をその対象に投与することを含む、方法。
【請求項39】
前記関節炎は、骨関節炎又は関節リウマチである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、静脈内又は関節内注射によって投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記対象がヒトである、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この特許出願は、2020年4月10日に出願された、命名発明者Maria Ines MITRANIのCOMPOSITIONS COMPRISING NANOPARTICLES、METHOD OF MAKING AND USES THEREOFと題する米国特許仮出願第63/008,355号に対する優先権を主張するものである。上記の特許出願の全内容を、参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
ヒト羊水(HAF)由来の新規無細胞治療用組成物は、一部、本明細書中に提示される。HAFは、妊娠中に胎児を囲む羊膜嚢内に含まれる、部分的に特徴づけされた保護的な流体である。HAFは、水、塩、タンパク質、炭水化物、脂質、リン脂質、尿素、サイトカイン、増殖因子、ラクタート、ピルバート、酵素、ホルモン、タウリン、アミノ酸、ラクトフェリン破片、及び細胞の複合混合物を含んでいる。HAFはまた、産毛として知られている胎児由来の細い髪、及び胎児の皮膚を被覆することがわかっている胎脂、蝋様又はチーズ様白色物質も含んでいる。胎脂は、専用の胎児細胞によって産生され、胎児発育中と出生後数時間にわたり保護的役割をもたらす。
【0003】
HAFはまた、細胞も含む。HAFで見られるさまざまな細胞としては、胎児皮膚、呼吸、消化、及び尿管からの細胞、及び羊膜由来の細胞、並びにマクロファージ、造血前駆細胞及び幹細胞が挙げられる。造血前駆細胞及び幹細胞は、HAFに治癒、再生、及び発育上の特性を与えると考えられ、それに対して、マクロファージは、ある程度の免疫防御を提供すると考えられる。HAFから単離された細胞の中には、Nestin、β3-チューブリン、GFAP、NEFHなどの神経マーカー、並びにSSEA-4、Oct4、及びNanogなどの胚幹細胞(ESC)のいくつかのマーカーを発現するものもある。これらの細胞は、造骨性、脂質生成、筋原性及び神経分化を示す。それらはまた、肝細胞や内皮細胞に分化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
特定の態様において、修飾ヒト羊水(HAF)を含む無細胞治療用組成物が、本明細書中に提供される。特定の態様において、(a) 修飾ヒト羊水(HAF);及び(b) HAF由来ナノ粒子、を含み;ここで、そのナノ粒子は、50nm超の直径を有し、かつ、その組成物中の粒子の濃度は、少なくとも1×108粒子/mlである、無細胞治療用組成物が本明細書中に提供される。
【0005】
また、特定の態様において、それを必要としている対象の肺疾患又は肺障害を治療する方法であって、治療的有効量の本明細書中に開示された治療用組成物をその対象に投与することを含み、ここで、その肺疾患又は障害が、急性呼吸器症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び気管支肺異形成から選択される、方法も本明細書中に提示される。
【0006】
また、特定の態様において、それを必要としている対象の関節炎を予防又は治療する方法であって、治療的有効量の本明細書中に開示された治療用組成物をその対象に投与することを含む、方法も本明細書中に提示される。特定の実施形態において、関節炎とは、骨関節炎又は関節リウマチである。
【0007】
また、特定の態様において、それを必要としている対象の急性脳傷害を予防又は治療する方法であって、治療的有効量の本明細書中に開示された治療用組成物を対象に投与することを含む、方法も本明細書中に提示される。特定の実施形態において、急性脳傷害は、COVID-19などの急性呼吸器症候群コロナウイルスによって引き起こされ得る。
【0008】
また、特定の態様において、それを必要としている対象の急性臓器不全を予防又は治療する方法であって、治療的有効量の本明細書中に開示された治療用組成物を対象に投与することを含む、方法も本明細書中に提示される。特定の実施形態において、急性臓器不全又は急性の連続臓器不全は、COVID-19などの急性呼吸器症候群コロナウイルスによって引き起こされ得る。
【0009】
図面は、技術の実施形態を例示するものであって、制限するものではない。例示を明瞭かつ容易にするために、図面は実寸で作成されておらず、いくつかの場合では、特定の実施形態の理解を助けるために、種々の態様を誇張して又は拡大して示すことがある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1-1】図1A~1Cは、Organicell Flow及びOrganicell Flow-XLのナノ粒子分析を示す。図1Aは、Organicell Flowのある実施形態のナノ粒子分布を示す。図1Bは、Organicell Flow-XLの実施形態のナノ粒子分布を示す。正の傾きを有する結合線は、Flow-XLとFlowの間の上昇したナノ粒子濃度の典型である(N=4、p値<0.005、t-検定)。
【0011】
図1-2】図1A~1Cは、Organicell Flow及びOrganicell Flow-XLのナノ粒子分析を示す。図1Cは、Organicell FlowとOrganicell Flow-XLの間のナノ粒子濃度の比較を示す。正の傾きを有する結合線は、Flow-XLとFlowの間の上昇したナノ粒子濃度の典型である(N=4、p値<0.005、t-検定)。
【0012】
図2図2は、Organicell Flow(Flow)及びOrganicell Flow-XL(Flow-XL)におけるエクソソームマーカーCD63の濃度測定を示す。Y軸はCD63の濃度(pg/ml)を示す。正の傾きを有する結合線は、Flow-XLとFlowの間の上昇したCD63濃度の典型である(N=3)。
【0013】
図3図3は、Organicell Flow及びOrganicell Flow XL生成物のブラッドフォードの分析の結果を示す(Flowについてn=11、Flow XLについてn=6)。
【0014】
図4図4は、本明細書中に記載した治療用組成物(例えば、Organicell Flow XL)中の選択されたサイトカイン及び増殖因子の存在、及び相対濃度を示す代表的なドットブロット分析(分析#1)を示す。Organicell Flowに関する結果は、このアッセイにおいて類似の結果を提供した。対応するタンパク質がマッピング及び標識され、さらに、相対発現レベルが、正の対照スポットの平均に対して発現強度倍率によって測定された。
【0015】
図5-1】図5A~5Cは、本明細書中に記載した治療用組成物(例えば、Organicell Flow XL)中の選択されたサイトカイン及び増殖因子の存在、及び相対濃度を示す代表的なサイトカインアッセイの追加の結果を示す。Organicell Flow XL及びOrganicell Flowに関する結果は、これらのアッセイにおいて類似の結果を提供した。対応するタンパク質がマッピング及び標識され、さらに、相対発現レベルが、正の対照スポットの平均に対して発現強度倍率によって測定された。
【0016】
図5-2】図5A~5Cは、本明細書中に記載した治療用組成物(例えば、Organicell Flow XL)中の選択されたサイトカイン及び増殖因子の存在、及び相対濃度を示す代表的なサイトカインアッセイの追加の結果を示す。Organicell Flow XL及びOrganicell Flowに関する結果は、これらのアッセイにおいて類似の結果を提供した。対応するタンパク質がマッピング及び標識され、さらに、相対発現レベルが、正の対照スポットの平均に対して発現強度倍率によって測定された。
【0017】
図5-3】図5A~5Cは、本明細書中に記載した治療用組成物(例えば、Organicell Flow XL)中の選択されたサイトカイン及び増殖因子の存在、及び相対濃度を示す代表的なサイトカインアッセイの追加の結果を示す。Organicell Flow XL及びOrganicell Flowに関する結果は、これらのアッセイにおいて類似の結果を提供した。対応するタンパク質がマッピング及び標識され、さらに、相対発現レベルが、正の対照スポットの平均に対して発現強度倍率によって測定された。
【0018】
図6図6は、本明細書中に記載した治療用組成物(例えば、Organicell Flow XL)中の選択されたサイトカイン及び増殖因子の存在、及び相対濃度を示す図4及び5のドットブロット分析の概要を示す。Organicell Flowに関する結果は、このアッセイにおいて類似の結果を提供した。相対発現は、正の対照スポットの平均と比較した発現強度倍率によって計算された。完全なドットブロット分析は、組織再生と修復の種々の態様を調整する数種類のサイトカインを明らかにした(色凡例を参照)。
【0019】
図7図7は、Organicell Flow(Flow)及びOrganicell Flow XL(Flow XL)生成物中のヒアルロン酸の濃度を示す。
【0020】
図8図8A~8Cは、Organicell Flow(Flow)及びOrganicell Flow XL(Flow XL)生成物中のナノ粒子分布(図8A)、ナノ粒子濃度(図8B)及びナノ粒子モード粒子サイズ(図8C)の典型的な分析を示す。分析した生成物の数:Flow=12/Flow XL=5。
【0021】
図9図9は、単離されたエクソソームに対するそれらの相対量を示すエクソソーム(ナノ粒子)表面マーカーの典型的な分析を示す。
【0022】
図10図10は、単離されたエクソソームに対する陽性に発現された表面マーカーの平均蛍光強度の中央値(Y軸)を示す(分析した生成物の数=3)。
【0023】
図11図11は、質量分析法によって分析された3つの独立したOrganicell Flow組成物、及び観察された、一般的なタンパク質と独特なタンパク質の定量化のVin図形的分析を示す。
【0024】
図12図12は、タンパク質タイプによって分類された、Organicell Flowで検出された1225個の一般的なタンパク質を示す。
【0025】
図13図13は、DNA欠陥修復の調整に関わる40個の独特なタンパク質を明らかにしたOrganicell Flowタンパク質カーゴの生物情報科学分析を示す。データ分析は、Qiagen IPAソフトウェアを使用して完成した。実験的に観察された相関関係を有することが知られているタンパク質だけが分析に含まれている。
【0026】
図14図14は、Organicell Flowエクソソームから配列決定された102個の一般的な成熟miRNAを示す。
【0027】
図15図15は、同定されたOrganicell Flow miRNAの1216個のRNA標的に関する最上位標準経路分析を示す。この分析は、miRNAカーゴの送達によって最も調整される可能性が高い最上位の経路を明らかにする。
【0028】
図16図16A~16Bは、気管支肺異形成(BPD)の確立されたインビボラットモデルにおけるOrganicell Flow-XLの評価を示す。図16Aは、右室収縮期圧(RVSP)に対する正常酸素状態(白抜きの棒グラフ)と高酸素状態(黒色の棒グラフ)における生理的食塩水対照(PBS)と比較してOrganicell Flow-XL(羊膜エクソソーム)の効果を示す。図16Bは、右心室肥大に対する正常酸素状態(白抜きの棒グラフ)と高酸素状態(黒色の棒グラフ)における生理的食塩水対照(PBS)と比較したOrganicell Flow-XL(羊膜エクソソーム)の効果を示す(生理的食塩水に関してn=4、flow-XLに関してn=11、**p値<0.005)。
【0029】
図17図17は、治療及び対照動物のIVISライブイメージングを示す。左側:染料なし対照;中央:生理的食塩水染料対照;右側:エクソソーム染料治療。
【0030】
図18図18は、サイトカイン仲介免疫応答に関わるOrganicell miRNA標的を示す。
【0031】
図19図19は、ARDSに関連する遺伝子標的をOrganicell miRNAに示す。
【0032】
図20図20は、ARDS遺伝子に結び付いた29個のmiRNAを同定するOrganicellの60個の異なる経路を示す。
【0033】
図21図21は、疼痛(パネルA)、こわばり(パネルB)、身体機能(パネルC)、及び総WOMAC(パネルD)に関する0、30、及び90日目におけるWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)サブスケールスコアを示す。データは平均±SDとして表される(n=5)。異なった時点の間の特定のWOMACサブスケールスコアの比較が、一元配置ANOVAによって実施された、p=0.01(A)、0.07p=(B)、0.003p=(C)、0.003p=(D)。Tukeyの事後検定が、各時点の間の特定のWOMACスコアの差を比較するために使用された、*p<0.05、**p<0.01。
【0034】
図22図22は、疼痛(パネルA)、こわばり(パネルB)、身体機能(パネルC)、及び総WOMAC(パネルD)に関する0、30、及び90日目における個々の患者のWOMACサブスケールスコアを示す。各線は、0、30、及び90日目における一人の患者の特定のWOMACスコアを表す。
【0035】
図23図23Aは、0日目と比較した、30日目及び90日目におけるWOMACスコアの平均低下を示す。図23Bは、30日目と比較した、90日目におけるWOMACスコアの平均低下を示す。データは平均低下%±SDとして表される(n=5)。
【0036】
図24図24は、肺構造とマクロファージ浸潤に対するOrganicell Flow-XL投与の効果を示す:(A~C) Organicell Flow-XLを受けたHYP動物における改善した肺胞構造を示す代表的な肺切片。(D~F) HYP群におけるフォン・ヴィレブランド因子(vWF)免疫染色の減少を示す代表的な免疫蛍光染色(緑色)。(G~I) HYP群における増強された肺血管の筋性化を示す肺切片の代表的な免疫蛍光染色、緑色=vWF、赤色=α-平滑筋アクチン。(J~L) (Organicell Flow-XLを受けた)HYP群において減少したMAC-3染色を示すMAC-3抗体(茶色)を用いて免疫染色した代表的な肺切片。(M) Organicell Flow-XLを受けたHYP群における減少した平均肺胞径(n=4~7/群)。(N) HYP群において血管密度に有意差がない(n=6/群)。(O) Organicell Flow-XLを受けたHYP群における減少した血管再構築を明らかにした筋性化血管の平均パーセンテージの定量化(n=5~6/群)。(P) すべての群におけるMAC-3+細胞の平均数の定量化(n=4~5/群)。エラーバーは標準誤差を表す。*p値<0.05、***p値<0.001、****p値<0.0001。
【0037】
図25図25は、胸部X線像を示す。0日目と28日目における患者CU#1の胸部X線像(左側)。0日目と28日目における患者CU#2の胸部X線像(中央)。0日目と21日目における患者CU#3の胸部X線像(右側)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書中で治療用組成物と呼ばれる、HAF由来組成物が、本明細書中に提示される。しかしながら、本明細書中に提供された治療用組成物は、内容物と機能の両方において天然のHAFとは明確に異なった。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、無細胞であるか、又は実質的に細胞を含まない。従って、特定の実施形態において、治療用組成物は、真核細胞又は原核細胞を含んでいない。特定の実施形態において、治療用組成物は、真核細胞を含んでおらず、そして、その非限定的な例としては、母方由来細胞、胎児由来細胞、胎盤由来細胞、赤血球、有核細胞、白血球(white blood cells or leukocytes)、マクロファージ、造血前駆細胞、幹細胞、上皮細胞、同様のもの及びと又はその組合せが挙げられる。特定の実施形態において、治療用組成物は、原核細胞を含んでおらず、そして、その非限定的な例としては、細菌細胞が挙げられ、その非限定的な例としては、プロピオニバクテリウム種(Propionibacterium spp.)(例えば、P.アクネス(P. acnes))、コリネバクテリウム種(Corynebacterium spp.)、ブレビバクテリウム種(Brevibacterium spp.)、及びスタフィロコッカス種(Staphylococcus spp.)(例えば、S.エピデルミディス(S.epidermidis))が挙げられる。
【0039】
特定の実施形態において、治療用組成物は、病原菌を含んでおらず、そして、その非限定的な例としては、ウイルス、細菌、真菌、酵母、及び寄生生物が挙げられる。特定の実施形態において、治療用組成物はウイルスを含んでいない。
【0040】
いくつかの実施形態において、治療用組成物は、修飾HAFを含む。特定の実施形態において、修飾HAFは、1若しくは複数の細胞、病原菌、胎脂、産毛及び/又はマクロ粒子(例えば、直径が400nm超、又は300nm超、又は200nm超の粒子)を取り除くために加工された組成物である。いくつかの実施形態において、修飾HAFは、実質的に又は完全に細胞、病原菌、胎脂、産毛及びマクロ粒子を含まない。いくつかの実施形態において、修飾HAFは、ナノ粒子を実質的に含まない。特定の実施形態において、修飾HAFは、濾過したHAFである。いくつかの実施形態において、修飾HAFは、0.2μm以上又は0.1μm以上の細孔径を有するフィルターを通して濾過されたHAFである。いくつかの実施形態において、修飾HAFは、0.1μm~1μm、0.2μm~1μm、又は0.2μm~0.5μmの細孔径を有するフィルターを通して濾過されたHAFである。特定の実施形態において、修飾HAFは、好適な時間にわたり100×g~2500×g又は200×g~2000×gにて遠心分離にかけたHAFである。
【0041】
いくつかの実施形態において、治療用組成物は、0%~99%(vol/vol)の修飾HAFを含む。特定の実施形態において、治療用組成物は、50%~99%、60%~99%、70%~99%、70%~95%又は70%~90%の修飾HAFを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、治療用組成物はナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物はHAF由来ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、1%~50%(vol/vol)のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、1%~40%、1%~30%、1%~25%、5%~40%、5%~30%、5%~25%、又は10%~40%(vol/vol)のナノ粒子を含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、治療用組成物は、少なくとも1×108、少なくとも1×109、少なくとも1×1010、少なくとも1×1011、少なくとも2×1011、少なくとも4×1011、少なくとも5×1011又は少なくとも1×1012(粒子/ml)を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、1×108~1×1020(粒子/ml)の範囲内の平均(mean, average)又は絶対量のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、1×108~1×1018、1×109~1×1018、1×1010~1×1018、1×1011~1×1018、1×1012~1×1018、1×1013~1×1018、1×1014~1×1018、1×1012~1×1016、1×1012~1×1015、1×1012~1×1015、1×1011~1×1016、1×1011~1×1014、又は1×1011~1×1013(粒子/ml)の範囲内の平均(mean, average)又は絶対量のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、1×108~1×1013又は1×108~1×1012(粒子/ml)の範囲内の平均(mean, average)又は絶対量のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、
1×1011~1×1013、4×1011~1×1012、5×1011~1.5×1012又は4×1011~1.1×1013(粒子/ml)の範囲内の平均(mean, average)又は絶対量のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、約4×1011~約7.5×1011(粒子/ml)の範囲内の平均(mean, average)又は絶対量のナノ粒子を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、治療用組成物はヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、少なくとも100ng/ml、少なくとも200ng/ml、少なくとも250ng/ml、少なくとも300ng/ml、少なくとも350ng/ml、少なくとも400ng/ml、少なくとも500ng/ml、少なくとも550ng/ml、少なくとも600ng/ml又は少なくとも700ng/mlの量のヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、100~5000ng/ml、200~5000ng/ml、300~5000ng/ml、400~5000ng/ml、500~5000ng/ml、200~3000ng/ml、200~2000ng/ml、200~1000ng/ml、200~500ng/ml、300~500、500~800ng/ml又は600~800ng/mlの範囲内の平均(mean, average)又は絶対量のヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、HAFに由来するか又はHAF中に天然に見られるヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、遺伝子組換えによって製造されたヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、非ヒト起源から発現、産生、単離及び/又は精製されるヒアルロン酸を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、治療用組成物は、図4、5A、5B、5C及び6に示されたサイトカイン、可溶性受容体及び増殖因子から選択される1若しくは複数のサイトカイン、可溶性受容体及び/又は増殖因子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、1若しくは複数のサイトカイン、可溶性受容体及び/又は増殖因子を含み、そして、その非限定的な例としては、アンギオゲニン(ANG)、BLC、EGF(上皮増殖因子)、FGF-6(線維芽細胞増殖因子6)、GCP-2(CXCL6)、IGFBP-1(インシュリン様増殖因子結合タンパク質1)、IGF-BP2(インシュリン様増殖因子結合タンパク質2)、IGF-BP4(インシュリン様増殖因子結合タンパク質4)、IL-1RA(インターロイキン1受容体拮抗因子)、IL-6、LEPTIN、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)、MIP-1DELTA、NAP-2、アディポネクチン(ACRP30)、GRO-A、HCC-4、HGF、ICAM-1、IGFBP-6、IL-1R4、IL-6R、IL-8、OPG、sTNFRII、sTNFRI、TIMP-1、TIMP-2、及びUPARが挙げられる。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、アンギオゲニン(ANG)、BLC、EGF、FGF-6、GCP-2、IGFBP-1、IGF-BP2、IGF-BP4、IL-1RA、IL-6、LEPTIN、MCP-1、MIG、MIP-1DELTA、NAP-2、アディポネクチン(ACRP30)、GRO-A、HCC-4、HGF、ICAM-1、IGFBP-6、IL-1R4、IL-6R、IL-8、OPG、sTNFRII、sTNFRI、TIMP-1、TIMP-2、及びUPARの一覧から選択される2以上のサイトカイン、可溶性受容体及び/又は増殖因子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、アンギオゲニン(ANG)、BLC、EGF、FGF-6、GCP-2、IGFBP-1、IGF-BP2、IGF-BP4、IL-1RA、IL-6、LEPTIN、MCP-1、MIG、MIP-1DELTA、NAP-2、アディポネクチン(ACRP30)、GRO-A、HCC-4、HGF、ICAM-1、IGFBP-6、IL-1R4、IL-6R、IL-8、OPG、sTNFRII、sTNFRI、TIMP-1、TIMP-2、及びUPARの一覧から選択される1以上、3以上、4以上、5以上、6以上、8以上又は10以上のサイトカイン、可溶性受容体及び/又は増殖因子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、ANG、IL-1RA、MCP-1、IL-6、UPAR、FGF-6、EGF、HGF、LEPTIN及びACRP30を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、ACRP30、AGRP、ANGPT2、AREG、AXL、B-NGF、BFGF、BTC、CCL28、CTAK、DTK、EGFR、ENA-78、FAS、FGF-4、FGF-9、G-CSF、GITR、GITR LIGAND GRO、GRO-α、HCC-4、HGF、I-TAC、ICAM-1、ICAM-3、IGF-1SR、IGFBP-3、IGFBP-6、IL-11、IL-12 P40、IL-12 P70、IL-17、IL-1R1、IL-2R ALPHA、IL-6R、IL-8、IL1R4、MIF、MIP-1α、MIP-2β、MIP-3β、MSPα、NT-4、OPG、OSM、PLGF、SGP130、sTNFRI、sTNFRII、TECK、THPO、TIMP-1、TIMP-2、TRAIL R3、TRAIL R4、UPAR、VEGF、VEGF-D、XCL1、ANG、BDNF、BLC、BMP4、BMP6、CCL23、CNTP、EGF、Eoxtanin1、Eoxtanin2、Eoxtaxin3、FGF-6、FGF-7、FLT3-LIGAND、FRACTALKINE、GCP-2、GDNF、GMCSF、I-309、IGF-1、IGFBP1、IGFBP2、IGFBP4、IL-10、IL-13、IL-15、IL-16、IL-1B、IL-1RA、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL1-A、IFNγ(IFNγ)、LEPTIN、LIGHT、M-CSF、MCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP4、MDC、MIG、MIP-1A、MIP-3A、NAP-2、NT-3、PARC、PDGFBB、RANTES、SCF、SDF1A、TARC、TGF-B1、TGF-B3、TNFA、及びTNFBの一覧から選択される1以上、3以上、4以上、5以上、6以上、8以上又は10以上のサイトカイン、可溶性受容体及び/又は増殖因子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、HAFに由来するか又はHAF中に天然に見られるサイトカイン又は増殖因子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、遺伝子組換えによって製造されたサイトカイン又は増殖因子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、非ヒト起源から発現、産生、単離及び/又は精製されるサイトカイン又は増殖因子を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、治療用組成物は、少なくとも10pg/ml、少なくとも100pg/ml、少なくとも1ng/ml、少なくとも50ng/ml、少なくとも100ng/ml、少なくとも200ng/ml、少なくとも250ng/ml、少なくとも300ng/ml、少なくとも400ng/ml、少なくとも500ng/ml、少なくとも600ng/ml又は少なくとも700ng/mlの量のサイトカイン又は増殖因子を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、1~5000ng/ml、10~5000ng/ml、100~5000ng/ml、200~5000ng/ml、300~5000ng/ml、400~5000ng/ml又は500~5000ng/mlの範囲内の平均(mean, average)又は絶対量のサイトカイン又は増殖因子を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、治療用組成物は、少なくとも10pg/ml、少なくとも100pg/ml、少なくとも200pg/ml、少なくとも300pg/ml、少なくとも400pg/ml、少なくとも500pg/ ml、少なくとも1ng/ml、少なくとも50ng/ml、少なくとも100ng/ml、少なくとも200ng/ml、少なくとも250ng/ml、少なくとも300ng/ml、少なくとも400ng/ml、少なくとも500ng/ml、少なくとも600ng/ml又は少なくとも700ng/mlの量のCD63を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、100pg/ml~1000ng/ml、300pg/ml~1000ng/ml、400pg/ml~1000ng/ml又は450pg/ml~1000ng/mlの範囲内の平均(mean, average)又は絶対量のCD63を含む。
ナノ粒子
【0048】
いくつかの実施形態において、治療用組成物は、ナノ粒子(例えば、複数のナノ粒子)を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、HAF由来ナノ粒子(例えば、複数のナノ粒子)を含むか又はそれらから成る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、エクソソームを含むか又はそれらから成る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、エンドソームを含むか又はそれらから成る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子又はエクソソームは、膜結合又は膜カプセル封入小胞を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、膜結合又は膜カプセル封入小胞を含み、ここで、その膜成分はリン脂質二重層を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子はHAFに由来する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、最適な膜結合又は小胞内カーゴが取込まれ得る合成膜カプセル封入小胞である。
【0049】
本明細書中に開示されたとおり、HAF由来のナノ粒子又はエクソソームが他の起源由来のエクソソームと異なる。HAF由来エクソソームは、乳、血液、尿などの他の体液中に見られるエクソソームからのそれらのmiRNA含有量及びそれらのタンパク質含有量において異なる。理論値に制限されることなく、HAF由来のエクソソームは独特であるが、なぜなら、それらが母方、胎児、及び胎盤組織、並びに羊水と接触している多くの異なった細胞型に由来する及び/又はそれらから製造されるからである。
【0050】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、少なくとも10nm、少なくとも25nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも55nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm又は少なくとも100nmの平均(mean, average)又は絶対直径を有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、少なくとも50nmの平均(mean, average)又は絶対直径を有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、約10nm~300nm、30nm~300nm、40nm~300nm、50nm~300nm、50nm~250nm、50nm~250nm、50nm~200nm、75nm~200nm、又は100nm~150nmの範囲内の平均(mean, average)又は絶対直径を有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、約100~200nmの範囲内の平均(mean, average)又は絶対直径を有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、約100nm、125nm、150nm、175nm又は約200nmの平均(mean, average)又は絶対直径を有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、1若しくは複数の表面結合タンパク質を含み、そして、その非限定的な例としては、CD9、CD63、CD81、CD326、CD133、CD14、CD24、CD42a、CD44、CD29、CD146、HLA-DR、HLA-DP及びHLA-DQが挙げられる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、CD9、CD63、CD81、CD326、CD133、CD14、CD24、CD42a、CD44、CD29、CD146、HLA-DR、HLA-DP及びHLA-DQから選択される2以上、5以上、又は10以上の表面結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、CD9、CD63、CD81、CD326及びCD133から成る群から選択される3以上の表面結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、CD14、CD24、CD42a、CD44、CD29、CD14及びCD146から選択される2以上の表面結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、表面結合CD9、CD63、CD81、CD326及びCD133を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、表面結合CD14、CD24、CD42a、CD44、CD29、CD14及びCD146を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、表面結合HLA-DR、HLA-DP及びHLA-DQを含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、表面結合CD63を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、1若しくは複数のmicroRNA(miRNA)を含む。特定の実施形態において、miRNAは、RNAサイレンシング及び遺伝子発現の転写後調節において機能することが多い、約22ヌクレオチドを含むこともある小さい非コーディングRNA分子である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、表1から選択される1若しくは複数のmiRNAを含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、表1から選択される2、3、4、5、10、20、25又は30以上のmiRNAを含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、hsa-let-7b、hsa-mir-200c、hsa-mir-30d、hsa-mir-125a、hsa-mir-483、hsa-mir-34c、hsa-mir-200a、hsa-mir-148a、hsa-mir-191、hsa-mir-21、hsa-mir-146a、hsa-mir-26b、hsa-mir-92b、hsa-mir-342、hsa-mir-34b、hsa-mir-423、hsa-mir-205、hsa-mir-203a、hsa-mir-99b、hsa-mir-375、hsa-mir-10b、hsa-mir-449c、hsa-mir-320a及びhsa-let-7f-2から選択される5以上のmiRNAを含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、hsa-let-7b、hsa-mir-200c、hsa-mir-30d、hsa-mir-125a、hsa-mir-483、hsa-mir-34c、hsa-mir-200a、hsa-mir-148a、hsa-mir-191、hsa-mir-21、hsa-mir-146a、hsa-mir-26b、hsa-mir-92b、hsa-mir-342、hsa-mir-34b、hsa-mir-423、hsa-mir-205、hsa-mir-203a、hsa-mir-99b、hsa-mir-375、hsa-mir-10b、hsa-mir-449c、hsa-mir-320a、hsa-let-7f-2、hsa-mir-23a、hsa-mir-27b、hsa-mir-93、hsa-mir-221、hsa-mir-425、hsa-mir-151a、hsa-mir-190b、hsa-mir-223、hsa-mir-1180、hsa-mir-184、hsa-mir-361、hsa-mir-182、hsa-mir-92a-1、hsa-mir-29a、hsa-mir-183、hsa-mir-204、hsa-mir-574、hsa-mir-532、hsa-mir-28、hsa-mir-744、hsa-mir-2110、hsa-mir-140、hsa-mir-1307、hsa-mir-193b、hsa-mir-660、hsa-mir-224、hsa-mir-196b、hsa-mir-339、hsa-mir-186、hsa-mir-3065、hsa-mir-378a、hsa-mir-16-1、hsa-mir-338、hsa-mir-126、hsa-mir-95、hsa-mir-142、hsa-mir-328、hsa-mir-335、hsa-mir-125b-2、hsa-mir-149及びhsa-mir-150から選択される5以上又は10以上のmiRNAを含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、hsa-mir-30d、hsa-mir-191、hsa-mir-21及びhsa-mir-146aから選択される2以上のmiRNAを含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、hsa-mir-30d、hsa-mir-191、hsa-mir-21及びhsa-mir-146aを含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は1若しくは複数の可溶性タンパク質を含み、そして、その非限定的な例としては、酵素、ホルモン、サイトカイン及び増殖因子が挙げられる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、DNAポリメラーゼβ、DNAポリメラーゼλ、テロメラーゼ逆転写酵素及びRAD50のうちの1若しくは複数を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、DNAポリメラーゼβ、DNAポリメラーゼλ、テロメラーゼ逆転写酵素及びRAD50を含む。
方法
【0054】
特定の実施形態において、疾患又は障害を治療するか、予防するか、その発症を遅らせる方法、或いは本明細書中に開示された疾患又は障害の1若しくは複数の症状又は二次性合併症を阻害するか、その発症を遅らせるか、その重症度を軽減するか、又は改善する方法が本明細書中に提示され、ここで、その方法は、それを必要とする対象に本明細書中に開示された組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、それを必要とする対象の疾患又は障害を治療するか又は予防する方法は、本明細書中に開示された治療用組成物又は医薬組成物の治療的有効量をその対象に投与することを含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、疾患又は障害は、急性呼吸器症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び気管支肺異形成(BPD)から選択される肺疾患又は肺障害を含む。いくつかの実施形態において、肺疾患又は肺障害は、急性呼吸器症候群(例えば、突然の急性呼吸器症候群)を含む。いくつかの実施形態において、肺疾患又は肺障害は、コロナウイルス感染によって引き起こされた急性呼吸器症候群を含むか又はそれらから成る。いくつかの実施形態において、肺疾患又は肺障害は、COVID19感染症又はSARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)感染症によって引き起こされた急性呼吸器症候群を含むか又はそれらから成る。特定の実施形態において、方法は、気管支肺異形成(BPD)の1若しくは複数の症状又は二次性合併症を予防するか、その発症を遅らせるか、その重症度を軽減するか、又は改善することを含む。BPDの二次性合併症は、肺高血圧症又は心臓機能不全を含み得る。従って、特定の実施形態において、方法は、気管支肺異形成(BPD)を患っているか、患っていると診断されたか又は患っていることが疑われた対象の肺高血圧症又は心臓機能不全を予防するか、その発症を遅らせるか、その重症度を軽減するか、又は改善することを含む。
【0056】
特定の実施形態において、方法は、関節炎又は関節の慢性若しくは急性炎症を治療するか、予防するか、又はその発症を遅らせることを含む。特定の実施形態において、方法は、関節炎、又は関節の慢性若しくは急性炎症の1若しくは複数の症状を阻害するか、その発症を遅らせるか、その重症度を軽減するか、又は改善することを含む。いくつかの実施形態において、関節炎は、骨関節炎又は関節リウマチである。
対象
【0057】
「対象」という用語は哺乳類を意味する。任意の好適な哺乳類を本明細書に記載した方法又は組成物によって処置することができる。哺乳類の非限定的な例には、ヒト、非ヒト霊長類(例えば類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル、マカク、その他)、家庭内動物(例えばイヌ、ネコ)、家畜(例えばウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)及び実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)が含まれる。いくつかの実施形態において、対象は、非ヒト霊長類又はヒトである。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。対象は、任意の年齢又は任意の成長段階(例えば、成体、十代、子供、新生児、又は子宮内の哺乳類)であってよい。対象は、雌雄いずれでもよい。いくつかの実施形態において、対象は、コロナウイルスに感染した対象である。いくつかの実施形態において、対象は、COVID19又はSARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)に感染した対象である。
医薬組成物
【0058】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書中に記載した治療用組成物を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書中に記載した、治療的有効量の治療用組成物を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、対象の疾患若しくは障害、又はその1若しくは複数の症状を治療するか又は予防する際の使用のための、本明細書中に記載した治療用組成物を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書中に記載した治療用組成物と、医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、添加剤又は担体を含む。
【0059】
医薬組成物は好適な投与経路のために製剤化することができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口、皮下(s.c.)、皮内、筋肉内、気管内、関節内、腹腔内及び/又は静脈内(i.v.)投与のために製剤化される。特定の実施形態において、医薬組成物は、組成物の例えばpH、浸透圧、粘度、透明性、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解若しくは放出の速度、吸着若しくは浸透を改変し、維持し、又は保存するための製剤材料を含む。特定の実施形態において、好適な製剤材料には、これだけに限らないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなど)、抗微生物剤、抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリスHCl、クエン酸塩、リン酸塩(例えばリン酸塩緩衝食塩液)、又は好適な有機酸)、増量剤(マニトール又はグリシンなど)、キレート化剤(エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)など)、錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど)、着色剤、香料及び希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、塩形成カウンターイオン(ナトリウムなど)、溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど)、希釈剤、賦形剤及び/又は医薬アジュバントが含まれる。特に、医薬組成物は“Remington: The Science And Practice Of Pharmacy” Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition, (1995)(以下、Remington’95)又は“Remington: The Science And Practice Of Pharmacy”, Pharmaceutical Press, Easton, PA, 22nd Edition, (2013)(以下、Remington 2013)(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に列挙されたような任意の好適な担体、製剤又は成分、その他又はそれらの組合せを含むことができる。
【0060】
特定の実施形態において、医薬組成物は好適な賦形剤を含み、その非限定的な例には、付着防止剤(例えばステアリン酸マグネシウム)、結合剤、フィラー、単糖類、二糖類、その他の炭水化物(例えばグルコース、マンノース又はデキストリン)、糖アルコール(例えばマンニトール又はソルビトール)、コーティング(例えばセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶セルロース、合成ポリマー、シェラック、ゼラチン、トウモロコシタンパク質ゼイン、腸溶性又はその他の多糖類)、デンプン(例えばジャガイモ、メイズ又はムギのデンプン)、シリカ、着色剤、崩壊剤、香料、潤滑剤、保存剤、吸着剤、甘味剤、媒体、懸濁剤、界面活性剤及び/又は湿潤剤(プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソーベート20、ポリソーベート80などのポリソーベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパルなど)、安定性向上剤(シュクロース又はソルビトールなど)、ならびに等張性向上剤(アルカリ金属ハライド、塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール)、及び/又はRemington’95又はRemington 2013に開示された任意の賦形剤が含まれる。本明細書で用いる「結合剤」という用語は、医薬混合物を組み合わされた状態に保つことを補助する化合物又は成分を意味する。医薬製剤を作製するための好適な結合剤は、医薬錠剤、カプセル及び顆粒の調製においてしばしば用いられる。
【0061】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は薬学的に許容される好適な添加剤及び/又は担体を含む。好適な添加剤の非限定的な例には、好適なpH調整剤、緩和剤、緩衝剤、硫黄含有還元剤、抗酸化剤その他が含まれる。硫黄含有還元剤の非限定的な例には、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、及びC1~C7チオアルカン酸などのスルフヒドリル基(例えばチオール)を有する還元剤が含まれる。抗酸化剤の非限定的な例には、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アルファ-トコフェロール、トコフェロールアセテート、L-アスコルビン酸及びその塩、L-アスコルビルパルミテート、L-アスコルビルステアレート、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、トリアミルガレート及びプロピルガレート、並びにエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)ジナトリウム、ピロリン酸ナトリウム及びメタリン酸ナトリウムなどのキレート化剤が含まれる。さらに、希釈剤、添加剤及び賦形剤は、一般に用いられる他の成分、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム及び重炭酸ナトリウムなどの無機塩、並びにクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及び酢酸ナトリウムなどの有機塩を含んでもよい。
【0062】
本明細書で用いる医薬組成物は長期間、例えば数か月又は数年にわたって安定であり得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は1つ又は複数の好適な保存剤を含む。保存剤の非限定的な例には、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、過酸化水素、その他、及び/又はそれらの組合せが含まれる。保存剤は塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セパゾニウム、塩化セチルピリジニウム、又は臭化ドミフェン(BRADOSOL(登録商標))などの四級アンモニウム化合物を含み得る。保存剤はチメロサールなどのチオサリチル酸のアルキル水銀塩、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀又はホウ酸フェニル水銀を含み得る。保存剤はメチルパラベン又はプロピルパラベンなどのパラベンを含み得る。保存剤はクロロブタノール、ベンジルアルコール又はフェニルエチルアルコールなどのアルコールを含み得る。保存剤はクロロヘキシジン又はポリヘキサメチレンビグアニドなどのビグアニド誘導体を含み得る。保存剤は過ホウ酸ナトリウム、イミダゾリジニル尿素、及び/又はソルビン酸を含み得る。保存剤は商品名PURITE(登録商標)として知られ、市販されている安定化オキシクロロ複合体を含み得る。保存剤は商品名POLYQUART(登録商標)として知られ、Henkel KGaAから市販されているポリグリコール-ポリアミン縮合レジンを含み得る。保存剤は安定化過酸化水素を含み得る。保存剤は塩化ベンザルコニウムであってよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は保存剤を含まない。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物は、混入物(例えば、細胞、血球細胞、血小板、ポリペプチド、ミネラル、血液由来化合物又は化学物質、ウイルス、細菌、真菌、酵母、病原菌、毒素、寄生生物など)を実質的に含まない。特定の実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物は、産毛及び/又は胎脂を実質的に含まない。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物は、エンドトキシンを実質的に含まない。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物は、5EU/ml未満、2.5EU/ml未満、1EU/ml未満、0.5EU/ml未満、0.1EU/ml未満又は0.05EU/ml未満のエンドトキシンを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物は、滅菌であるか又は無菌である。
【0065】
本明細書に記載した医薬組成物は、それらを用いる治療による任意の好適な形態及び/又は量で対象に投与するために構成され得る。例えば非経口投与(例えば注射又は注入による)のために構成された医薬組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液又はエマルジョンの形態を取ってよく、水性又は非水性溶媒、共溶媒、懸濁液、保存剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤、賦形剤、添加剤及び/又は希釈剤を含んでよい。いくつかの実施形態において、非経口投与に適した医薬組成物は1つ又は複数の賦形剤を含んでよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は凍結乾燥によって乾燥粉末形態にされる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は凍結乾燥によって好適な医薬溶媒(例えば水、食塩液、等張緩衝溶液(例えばPBS)、DMSO、その組合せなど)による再構成に適した乾燥粉末形態にされる。特定の実施形態において、凍結乾燥された医薬組成物の再構成された形態は哺乳類への非経口投与(例えば静脈内投与)に適している。
【0066】
特定の実施形態において、医薬組成物は経口投与のために構成され、錠剤、マイクロ錠剤、ミニ錠剤、マイクロペレット、粉末、顆粒、カプセル(例えばマイクロ錠剤、マイクロペレット、粉末又は顆粒が充填されたカプセル)、エマルジョン又は溶液など、又はその組合せとして製剤化されてよい。経口投与のために構成された医薬組成物は、活性成分の放出を遅延させ又は持続させる好適なコーティングを含んでよく、その非限定的な例には、脂肪酸、ワックス、シェラック、プラスチック、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(コハク酸ヒプロメロース)、ポリ酢酸ビニルフタル酸(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、酢酸セルローストリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、植物繊維、その他及びそれらの組合せなどの腸溶コーティングが含まれる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載した医薬組成物は局所投与のために構成されてよく、結合剤及び/又は潤滑剤、ポリマーグリコール、ゼラチン、ココアバター又は他の好適なワックス若しくは脂肪の1つ又は複数を含んでよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載した医薬組成物は、一般に局所的薬剤投与に適する局所的担体を含み、当業者には公知の任意の好適な材料を含む局所的製剤の中に組み込まれる。特定の実施形態において、医薬組成物の局所的製剤は局所パッチからの本明細書中に記載した治療用組成物の投与のために製剤化される。
【0068】
特定の実施形態において、最適な医薬組成物は、例えば意図された投与経路、デリバリーフォーマット及び所望の用量に基づいて当業者によって決定される (例えば上記のRemington’95又はRemington 2013、前掲を参照)。医薬組成物は、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、摩砕、乳化、カプセル化、トラップ化、又は錠剤化プロセスによる方法(例えばRemington’95又はRemington 2013に記載された方法を参照)を含む任意の好適な方式で製造することができる。
投与経路
【0069】
本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物を対象に投与する任意の好適な方法が使用され得る。任意の好適な製剤及び/又は投与経路が、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物の投与に使用され得る(例えばFingl et al. 1975, in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”を参照、そしてそれを、その全体として参照により本明細書に援用する)。好適な処方及び/又は投与経路は、例えば、対象の障害、疾患、リスク、年齢及び/又は健康状態、を考慮して医学の専門家(例えば医師)によって選択される。投与経路の非限定的な例には、局所又は局部(例えば経皮又は皮膚(例えば皮膚上若しくは表皮)、眼中又は眼上、鼻内、経粘膜、耳中、耳の内側(例えば鼓膜の後ろ))、腸内(例えば胃腸管を経由する送達、例えば経口(例えば錠剤、カプセル、顆粒、液体、乳化、トローチ、又はそれらの組合せ)、舌下、経胃栄養チューブ、直腸、その他)、非経口投与(例えば非経口、例えば静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、腔内、頭蓋内、関節内、関節スペース内、心筋内(心臓内)、空洞内注射、病巣内(皮膚病巣内)、骨内注入(骨髄内)、髄腔内(脊柱管内)、子宮内、膣内、膀胱内注入、硝子体内)、その他及びそれらの組合せが含まれる。
【0070】
いくつかの実施形態において、治療用組成物又は本明細書中に記載した医薬組成物は、適切な方法(その非限定的な例としては、(例えば、吸入器、例えば、単回/反復投与乾燥粉末吸入器、ネブライザーなどの使用による)鼻腔内投与、気道内注入、及び経口の吸入投与が挙げられる)を使用して肺、気管支管、気管、食道、静脈洞、又は鼻腔に投与される。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載した治療用組成物又は医薬組成物が対象に提供される。例えば、対象に提供される組成物は自己投与のため、又は別人(例えば医療従事者以外の者)によって対象に投与されるために提供されることがある。他の例として、組成物は、患者が本明細書に記載した組成物又は処置を受けることを許可する臨床医によって書かれた指示書(例えば処方箋)として提供され得る。さらに別の例では、組成物は対象に提供され、対象は組成物を経口、静脈内又は例えば吸入によって自己投与する。
【0072】
あるいは、全身的ではなく、例えば、持続性薬剤又は持続放出製剤を用いることを含めて、皮膚、粘膜又は治療のための目的の領域への直接適用による局所において本明細書中に記載した組成物を投与してもよい。
【0073】
特定の実施形態において、本明細書中に記載した組成物を含む医薬組成物は単独で(例えば単一活性成分(AI又は例えば単一活性医薬成分(API))として)投与することができる。他の実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物を含む医薬組成物は1つ又は複数の追加のAI/APIと組合せて、例えば2つの異なった組成物として、又は1つ又は複数の追加のAI/APIが本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物とともに混合され又は製剤化される単一組成物として、投与することができる。
用量と治療的有効量
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物の量は治療的有効量である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物の治療的有効量を対象に投与する。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物の治療的有効量は、有効な治療結果を得るのに必要とされる量である。特定の実施形態において、治療的有効量は、急性呼吸器症候群(例えばコロナウイルス感染によって引き起こされた急性呼吸器症候群)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び気管支肺異形成から選択される肺疾患又は肺障害の1若しくは複数の症状又は二次性合併症を予防する、治療する、重症度を軽減する、発症を遅らせる、及び/又は阻害する、軽減する、又は緩和するのに十分な量である。特定の実施形態において、治療的有効量は、関節炎(例えば、骨関節炎又は関節リウマチ)の1若しくは複数の症状を予防する、治療する、重症度を軽減する、発症を遅らせる、及び/又は阻害する、軽減する、又は緩和するのに十分な量である。治療的有効量の決定は、特に本明細書に提供した詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0075】
特定の実施形態において、治療的有効量は、効果的な治療効果(例えば、有益な治療効果)を提供するために十分に高い量であり、望ましくない副反応を最小化するのに十分に低い量である。従って、特定の実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物の治療的有効量は、対象の年齢、体重、及び一般症状、治療すべき病状の重篤度、及び/又は対象に投与される薬剤の特定の組合せによって多くの場合、対象ごとに変動し得る。よって、いくつかの実施形態において、治療的有効量は経験的に決定される。従って、対象に投与される本明細書中に記載した治療用組成物の治療的有効量は、例えば動物試験又は臨床試験で効果的であると見出された量、医師の経験、及び示唆された用量範囲又は投薬ガイドラインに基づいて、当業者が決定することができる。
【0076】
特定の実施形態において、本明細書中に記載した組成物(例えば、治療用組成物又は医薬組成物)の治療的有効量は、許容される治療結果が得ることを目的とした好適な用量(例えば、(対象の重量、年齢及び/又は状態に依存することが多い)好適な体積、頻度及び/又は濃度にて)投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物の治療的有効量は、少なくとも0.001mg/kg(例えば、対象の重量1kgあたりの本明細書中に記載した組成物の総タンパク質のmg)、少なくとも0.01mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも10mg/kg又は少なくとも100mg/kgから選択される1若しくは複数の用量を含む。特定の実施形態において、本明細書中に記載した組成物の治療的有効量は、約0.001 mg/kg(例えば、対象の重量1kgあたりの本明細書中に記載した組成物の総タンパク質のmg)~約5000mg/kg、0.01mg/kg~1000mg/kg、0.01mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~1000mg/kg、1mg/kg~1000mg/kg、10mg/kg~1000mg/kg、100mg/kg~1000mg/kg、0.1mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~250mg/kg、0.1mg/kg~150mg/kg、0.1mg/kg~100mg/kg、0.1mg/kg~75mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~25mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、及び0.5mg/kg~5mg/kg、その間の量及び組合せのうちの1若しくは複数の用量から選択される。いくつかの態様において、対象に投与される、本明細書中に記載した組成物の治療的有効量は、約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、500mg/kg、並びにその間の量及び組合せのうちの1若しくは複数の用量を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物の治療的有効量は、約0.1mg/kg~約50mg/kgの間である。
【0077】
特定の実施形態において、治療用組成物又は医薬組成物中のナノ粒子の量は決定される。従って、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した組成物(例えば、治療用組成物又は医薬組成物)の治療的有効量は、許容される治療結果を得ることを目的としたナノ粒子の好適な用量として投与される。特定の実施形態において、本明細書中に記載した組成物の治療的有効量は、少なくとも1.1×108粒子/kg(例えば、対象の体重1kgあたり)、少なくとも1.1×109粒子/kg、少なくとも1.1×1010粒子/kg、少なくとも1.1×1011粒子/kg、少なくとも1.1×1012粒子/kg又は少なくとも1.1×1013粒子/kgから選択される1若しくは複数の用量を含む。特定の実施形態において、本明細書中に記載した組成物の治療的有効量は、約1.1×108粒子/kg(例えば、対象の体重1kgあたり)~約1.1×1018粒子/kg、1.1×108粒子/kg~1.1×1016粒子/kg、1.1×108粒子/kg~1.1×1012粒子/kgの範囲内、その間の量及びその組合せのうちの1若しくは複数の用量から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した組成物の治療的有効量を投与することは、効果的な治療結果を得るために必要な頻度又は間隔で好適な用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した組成物の治療的有効量を投与することは、毎時、2時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、1日3回、1日2回、1日1回、週6回、週5回、週4回、週3回、週2回、毎週、毎月、年4回、年2回、毎年、それらの組合せで、及び/又は規則的又は不規則な間隔で、及び/又は単に医療従事者によって必要とされ又は推奨される頻度又は間隔で、好適な用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した組成物の治療的有効量は、継続的に、例えば、静脈内投与によって投与される。
キット
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載した治療用組成物又は医薬組成物(すなわち、組成物)を含むキットが本明細書中に提供される。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書中に記載した組成物の1若しくは複数の用量を含む。いくつかの実施形態において、キットは、1若しくは複数のパック及び/又は1若しくは複数の分注デバイスを含み、そしてそれは、本明細書中に記載した組成物の1若しくは複数の用量を含む。パックの非限定的な例は、本明細書中に記載した好適な量又は用量の本明細書中に記載した組成物を含む金属、ガラス又はプラスチック容器、シリンジ若しくはブリスターパックを含む。特定の実施形態において、キットは、本明細書中に記載した組成物を含んでいても又は含んでいなくてもよい、シリンジ又は吸入器などの分注デバイスを含む。パック又は分注デバイスは投与のための説明書を伴ってもよい。パック又は分注器は、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府官庁によって規定された形態で容器に付随し、ヒト又は獣医用投与のための薬剤の形態の官庁による承認を反映する注意書を伴ってもよい。そのような注意書は、例えば処方薬として米国食品医薬品局によって承認されたラベル、又は承認された製品添付文書であってよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、キット又はパックは、1日~1年、1日~180日、1日~120日、1日~90日、1日~60日、1日~30日、1時間~24時間、1時間~12時間、1時間~4時間、又はその間の時間で、患者を処置するために十分な量の本明細書中に記載した組成物を含む。
【0081】
キットは、製品ラベル及び/又はその中の成分の説明若しくは成分のインビトロ、インビボ、若しくはエクスビボの使用のための指示書を提供する1つ若しくは複数の添付文書を含んでもよい。例示的な指示書は、処置プロトコル又は治療計画の指示書が含まれ得る。特定の実施形態において、キットは包装材料を含み、これはキットの成分を収容する物理的な構造を意味する。包装材料は成分を無菌に保つことができ、そのような目的に一般的に用いられる材料(例えば紙、波形繊維、ガラス、プラスチック、箔、アンプル、バイアル、チューブ、その他)から作られてよい。製品ラベル又は添付文書は「印刷物」、例えば個別の、又は成分、キット若しくは包装材料(例えば箱)に貼付された、又はキット成分を含むアンプル、チューブ若しくはバイアルに取着された紙若しくはボール紙を含む。ラベル又は添付文書はさらに、コンピュータで読み取り可能な媒体、CD-若しくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3などの光学ディスク、磁気テープ又はRAM及びROM又は磁気/光学保存媒体などのこれらの混成物などの電子保存媒体、FLASH(登録商標)媒体又はメモリー型カードなどを含んでよい。製品ラベル又は添付文書は、その中の1つ又は複数の成分の同定情報、用量、作用機序、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)を含む活性成分の臨床薬理学を含んでよい。製品ラベル又は添付文書は、メーカー情報、ロット番号、製造場所、製造日を同定する情報、キット成分が用いられる適応病状、障害、疾患又は症状に関する情報を含んでよい。製品ラベル又は添付文書は、方法、処置プロトコル又は治療計画において1つ又は複数のキット成分を用いるための医師又は対象者のための指示書を含んでよい。指示書は、用量、頻度若しくは期間、及び本明細書で説明した方法、処置プロトコル又は治療計画のいずれかを実施するための指示書を含んでよい。キットは、本明細書中に記載した方法のいずれかを実施するためのラベル又は指示書をさらに含んでよい。製品ラベル又は添付文書は、起こり得る副作用に関する情報及び/又は警告を含んでよい。
【実施例
【0082】
実施例1‐製造
Organicell Flowは、ヒト羊水(HAF)由来の無細胞治療用組成物である。Organicell Flowを、スクリーニング及び適任のドナーから羊水を無菌的に回収することによって調製した。得られた時点で、HAFを、4℃にて10分間(分)にわたり500×g及び30分間にわたり2000×gに遠心分離して、大きな細胞破片を取り除いた。遠心分離後に、上清を、新しいバイアル中に移し、.22μMのフィルターを用いて濾過して、無菌を維持する。
【0083】
Organicell Flow XLもまた、ヒト羊水(HAF)由来の無細胞治療用組成物である。Organicell Flow XLを、スクリーニング及び適任のドナーから羊水を無菌的に回収することによって調製した。得られた時点で、HAFを、4℃にて10分間500×g遠心分離した。次に、サンプル上清を滅菌コニカルチューブに移した。サンプルペレットを捨てた。次に、流体を4℃にて30分間にわたり2000×gにて遠心分離した。サンプル上清を回収した。処理済HAFの一部(~1/4)を、後のエクソソーム再懸濁のために取っておいた。処理済HAFの別の一部(~3/4)をエクソソーム分離に使用した。処理済HAFの別の一部を「対照」サンプルに使用した。濾過流体を、最低3時間にわたり100,000×gにて超遠心にかけて、エクソソーム画分をペレット化した。それぞれのエクソソームペレットを、再懸濁のために取っておいた処理済HAFと共に再懸濁した。再懸濁したエクソソームを、再懸濁のために取っておいたHAFの全容積に移した。すべてのエクソソームペレットが再懸濁されるまで、このプロセスを繰り返し、そして、再懸濁のために取っておいたHAFに移した。再懸濁が完了した後に、その溶液を、0.22μMのフィルターを使用した濾過にかけた。次に、濾過した生成物を等分した。
【0084】
Flow-XLの達成された製造を、Nanosight Nanoparticle分析(図1)及びELISAによるエクソソームマーカー定量化(図2)によって確認した。Nanosight NS300を使用して、Organicell Flowのナノ粒子分布(図1A)を、Organicell Flow-XL(図1B)と比較した。その分析では、Flow Control(図1C)と比較した、Flow-XL生成物において有意に増強されたナノ粒子濃度を実証した。Flow-XL生成物における増加した濃度のエクソソームマーカーCD63もまた、ELISAによって実証した(図2)。Flow-XL製造プロセスは、検出不能なレベルから400pg/mL超にCD63濃度を高めることができる。
【0085】
Organicell Flow及びFlow XLの可溶性タンパク質コンパートメントは、いくつかのサイトカイン、ケモカイン、増殖因子及びヒアルロン酸から成った。それぞれのOrganicell Flowロットにおける総可溶性タンパク質濃度の定期試験を、ブラッドフォードタンパク質分析を使用して実施して、約1mg/mlを上回る再現性の高いタンパク質濃度を確実にする(図3)。いくつかのサイトカインアッセイもまた、Flow及びFlow XL生成物中に存在するサイトカイン及び増殖因子を検出するため及びその量を半定量的に計測するためにも実施した(図4、5A~5C及び6)。結果は、Flow及びFlow XL生成物が、類似したさまざまな血管形成促進性、免疫調整性1、抗炎症性2、代謝促進3、及び組織修復増殖因子4を含むことを示した(図4、5及び6)。Flow及びFlow XL生成物はまた、約400ng/ml(Flow)~約550ng/ml(Flow XL)の平均量でヒアルロン酸などの細胞外マトリックス成分を含んだ(図7)。
【0086】
ヒアルロン酸は、組織治癒、炎症、水恒常性、及び細胞間連絡などの多くの生物学的プロセスに参加する。
【0087】
Flow及びFlow XL生成物のナノ粒子分析を、Nanosight NS300(Malvern Panalytical)器具を使用して実施した。その結果は、5.24×1011粒子/mlの平均濃度と125nmの平均モード粒子サイズを有する最終製品の再現性の高いナノ粒子濃度を実証した(図8)。エクソソームの予想粒子サイズは直径50~200nmであった。
【0088】
MACsplexエクソソーム表面マーカーアレイ解析を実施して、Nanosight分析で観察されるナノ粒子がエクソソームであることを実証した。エクソソームマーカーCD63、CD81、及びCD9を、エクソソーム集団の様々な小集団に関連する表面マーカーに加えて検出した(図9図10)。この分析の結果はCD63、CD81、及びCD9の発現を確認した。興味深いことに、エクソソームが、高レベルのCD133及びCD326、上皮及び上皮始原細胞集団の2つのマーカーを発現することがわかった5、6
【0089】
エクソソームの脂質二重層の性質は、受容細胞内へのエクソソームカーゴの効果的な取込みを可能にする。エクソソーム再生の十分に確立された伝達物質であるエクソソームカーゴの2つの主要成分は、タンパク質とマイクロRNA因子である。エクソソームのタンパク質カーゴを測定するために、マススペクトル分析をEasy nLC1000及びQ Exactive器具を使用して実施した。エクソソームを、サイズ排除フィルターを使用してOrganicell Flowから沈殿させ、続いて、(三連で)3つの独立した生成物から超遠心分離し、そしてタンパク質溶解にかけた。Tune(バージョン2.9)とXcalibur(バージョン4.1)を使用して、データを回収し、さらに、Proteome Discoverer(バージョン2.2)を使用してデータを分析した。タンパク質発現一覧を、3つのサンプル複製を一つにまとめることによって作成し、そして、共通して発現するタンパク質をVinny 2.0 vin図形的分析を使用して決定した。WebGestaltツールキット分類システムを使用して、最上位タンパク質機能と経路ヒットを同定した。完了した分析は、3つの生成物にわたる1225の共通して検出されるタンパク質を明らかにした(図11)。同定したタンパク質の最上位の分子機能は、タンパク質結合、イオン結合、及び酵素との核酸結合、転写調節因子、及び輸送タンパク質が含まれ、最も豊富なタンパク質群の典型であった(図12)。経路濃縮分析は、インテグリン、PDGH、及びP53経路に関するトップヒットを明らかにした。タンパク質カーゴの酵素カテゴリをより深く掘り下げると、DNAポリメラーゼ(βとλ)、テロメラーゼ逆転写酵素、RAD50などのDNA修復を促進するタンパク質の存在がさらに実証された(図13)。
【0090】
エクソソームを、(三連で)3つの独立した生成物から沈殿させ、miRNAシークエンシング及び同定のためにRNA単離にかけた(表1)。完了したシークエンシングは、102の共通して発現されるmiRNA(100コピーの最少発現を有する)を明らかにした(図14)。生命情報工学分析をQiagen IPAソフトウェアを使用して達成して、1216のRNA標的に対して63のmiRNAを関連づけた。これらのmRNA標的の最上位標準経路分析は、肝線維症、老化、インターロイキン-6シグナル伝達、関節炎、IGF-1及びNFκ-Bシグナル伝達などの様々な経路の調整を明らかにする(図15)。miRNA機能は異なるが、miRNAは、好ましくない遺伝子発現の抑制のための強力なツールである。
【0091】
COPD病理学に関わるmRNA標的の集中分析は、実験的に観察された相関を通してCOPDに関連する45の遺伝子を直接標的化する25のmiRNAを明らかにした(図17)。これらの45の遺伝子では、いくつかの炎症誘発性分子が、Organicell Flowエクソソームの潜在的治療用標的として際立っていた。このように、Hsa-mir-21を、CXCL8(IL-8)とTNFαを標的化するために同定し、さらに、Hsa-mir-191をIL-6と結び付けた。CXCL8、TNFα、及びIL-6などの炎症誘発性サイトカインの上方制御は、COPDの増強された進行に関係した。同様に、Hsa-mir-146aは、IL-1の炎症性シグナル伝達を媒介して炎症誘発性シグナリング受容体である、IL-1受容体1の調整に結び付いた。炎症及び組織傷害の一般的な伝達物質の同定は別として、完了した分析はまた、COPDの新規メディエーターを標的化する潜在機構も明らかにした。その分析は、WNT5aの調整にhsa-mir-30d発現(Flowナノ粒子中で3番目に高度に発現されたmiRNA)を結び付けた。増強されたWNT5a発現は、COPD病理における間葉-上皮クロストークにおける障害を媒介する。エラスターゼで誘発された肺気腫のマウスモデルでは、IgG中和性抗体を介したWNT-5Aの阻害が、肺胞上皮細胞機能を誘発することを実証した。概要では、炎症及びCOPD関連遺伝子を標的化するFlow及びFlow XL中の数個のmiRNAの同定は、我々がこの障害に対する潜在的治療用機構を考案することを可能にした。このデータに基づいて、hsa-mir-30d、hsa-mir-191、hsa-mir-21、及びhas-mir-146aが、COPDの発症機序を減弱するWNT5a、IL1-R1、IL-6、CXCL8、及びTNFαの発現を抑制するように相乗効果的に働くと仮定した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
安全性に関する試験
【0092】
以下の試験セットを、それぞれのOrganicell Flowロットに対して完了して、製品安全性と再現性を確立した:
(1) 無菌性及びエンドトキシン試験
【0093】
安全性評価を、細菌、真菌、及び酵母混入の検出のためのエンドトキシン及び14日間の無菌性試験を実施することによって達成した。エンドトキシン試験をUSP<85>ガイドラインに従って達成し、及び無菌性試験をUSP<71>ガイドラインに従ってVRL Eurofins、適切なCLIA認証ラボラトリーによって実施した。エンドトキシン試験のために1つのバイアルを選択し、そして、製造手順の完了のときに、総ロット体積の10%を14日間の無菌性試験のために無作為に選択した。14日間の試験のために選択されるバイアルサンプルサイズを、総ロット生産サイズに基づいて必要とされる最小限の体積及びコンテナに関するUSP<71>ガイドラインによって決定した。さらに、製造過程サンプル(2mLの全容積)を、羊水の取扱い開始時(未加工の生成物サンプル)及び濾過前(濾過前サンプル)に14日間の滅菌分析のために回収した。安全性評価に関する我々の発売基準では、エンドトキシン濃度が5EU/ml未満でなければらない、かつ、すべてサンプルで無菌性に関して陰性でなければならないと宣言する。
(2) ブラッドフォード分析
【0094】
生成物組成試験をすべての生成物に対して完了して、ロット間再現性と安定性を確保した。ブラッドフォード分析をすべての生成物に対して完了して、全体的なタンパク質濃度の類似性を実証した(>1mg/ml)。
(3) Nanosight Nano-tracking分析(NTA)
【0095】
NTA分析を完了して、モード粒子サイズ及び濃度が我々の予想した範囲(<200nMモードサイズ及び>1mlあたり1×1010個の粒子)内であることを実証した。
【表2】
【0096】
すべての生成物が、臨床用途のために許容できると見なされるのに要求される標準品質要件を満たさなければならない。生成物ロットが安全性及び組成物の最小限の発売基準を通過しない事象では、製造調査を、主要因を決定するために品質保証関連及び実験ディレクターによって実施する。陽性の無菌性が報告される場合、追加のバックアップサンプルを即座に試験するために出す。バックアップ結果を待っている間、偏差は記録されなければならず、そして、バッチ記録文書が概説される。
実施例2‐気管支肺異形成(BPD)
【0097】
試験を完了して、気管支肺異形成(BPD)のラットモデルにおけるOrganicell Flow-XLの安全性及び生物学的活性を試験した8。このモデルでは、新生児期仔ラットを、出生後に3日間にわたり85~90%の酸素中に置いて、BPDと診断された早産幼児に存在する高酸素症肺傷害を誘発した。高酸素状態での3日後に、Organicell Flow-XL又は生理食塩水対照を気管内に投与し、そして、動物を14日間にわたり回収することを可能にした。14日間の実験に続いて、生存と肺高血圧症(右室収縮期圧と右心室肥大)の評価を完了した。生存評価は、生理食塩水処置動物において66%の生存率とFlow-XL処置群における100%の生存率を示した。Flow-XLは、プラセボ(図16A)と比較して、右心室肥大(図16B)を低減し、そして右室収縮期圧に対して中程度(統計的に有意でない)の効果を提供した。この試験の結果は、肺疾患の確立された動物モデルにおけるFlow-XLの安全性及び生物学的活性を実証した。達成されたエクソソームの保持を、投与後2時間の赤外線染色粒子のIVISライブイメージングによって確認した(図17)。
【0098】
肺組織の組織学的分析は、Flow-XL処置を受けた高酸素曝露(HYP)群において改良された肺胞構造を明らかにした。肺胞形成を、平均肺胞径(MLI)について計算することによって測定した。形態測定分析は、HYP-PLと比較して、Flow-XL処置(87.4±2.5μm)を受けたHYP群におけるMLIの有意な減少を明らかにした(101±6.1μm、p値<0.05)(図24A~C、M)。血管密度はまた、PL処置室内気(RA)対照(RA-PL)(1HPFあたり22.2±0.8血管)と比較して、プラセボ(PL)処置HYP(HYP-PL)において減少する(1HPFあたり7.33±0.6血管、p値<0.0001)。HYP群における血管密度は、Flow-XL処置により増強された(1HPFあたり9.5±1.0血管)(図24D~F、N)。
【0099】
肺血管リモデリングを、筋性化血管のパーセンテージを定量化することによって評価した。HYP-PL群の動物は、RA-PL(31.33±7.1%の筋性化肺静脈)と比較して、有意に増強された肺血管リモデリング(92.0±3.3%の筋性化肺静脈、p値<0.0001)を有した。Flow-XL処置は、HYP-PLと比較して、筋性化を有意に低減した(65.7±6.6%の筋性化肺静脈、
p値<0.05)(図24G~I、O)。高酸素傷害に対する免疫応答を、Mac-3免疫染色を介した肺組織へのマクロファージ浸潤によって計測した。マクロファージ浸潤は、RA-PL(0±1.0のMac-3陽性細胞/HPF)と比較して、HYP-PL群における高酸素に対応して増強した(28.2±4.4のMac-3陽性細胞/HPF、p値<0.001)。しかしながら、Flow-XLを受けたHYP動物は、HYP-PLと比較して、マクロファージ浸潤を有意に低減した(14.20±4.4のMac-3陽性細胞/HPF、p値<0.05)(図24J-L、P)。
実施例3‐炎症
【0100】
生命情報工学分析が、1216のRNA標的に63のmiRNAを結び付けた。Flow及びFlow XL生成物中に見られるmiRNAによって標的化されることがわかった炎症誘発性サイトカイン及びサイトカイン仲介免疫応答カスケードに関与する主役としては、TNF、IL-6、及びIL-8が挙げられる。さらに、Flow及びFlow XL生成物のmiRNAの収集物によっても標的化される炎症誘発性サイトカインのより広いアレイとしては、FGF2、IFNB1、IGF1、IL36a、IL37、TGF-B2、VEGFA、CCL8、及びCXCL12が挙げられる(図18)。この炎症誘発性サイトカインカスケードの阻害又は抑制が、高い免疫応答に関連する重症度を軽減し得る9。さらに、エクソソーム粒子中のmiRNAが、免疫応答に関連する148の遺伝子を標的化することがわかった。同時に、この分析は、免疫調節状況における、及び肺炎症(例えば、COVID-19感染症からの急性呼吸器症候群)に関係する症状の低減のための潜在的治療法としてのエクソソームの治療有効性を示唆する。
実施例4‐COVID-19と呼吸窮迫症候群
【0101】
重度のCOVID-19感染症の1つの主要な合併症は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発生である。COVID-19感染症におけるARDS発症のリスクは、免疫活性化及び免疫応答の低いロバスト性と一致した因子群と結び付いた9。間充織幹細胞由来の細胞外小胞が、Flow及びFlow XLエクソソーム中に見られるmiR-146aやmiR-21-5-pなどのmiRNAカーゴの送達を介したARDSに対する保護の重要な役割を提供すると予想される。Organicell Flow細胞外小胞は、miR-146a及びmiR-21-5-pの両方、並びにARDS疾患に関係する13の遺伝子を調整する27の追加で同定されたmiRNAを発現した。代表的なARDS遺伝子標的としては、TNF、IL-6、FOXO3、IGFBP3、STAT3、及びCOX-2が挙げられる(図18、19及び20)。先に確立された結果に伴うこの生命情報工学分析は、Organicell FlowがARDSを患っているCOVID-19患者での治療軽減を提供し得る及び感染症の全体的な重症度を軽減する新規治療法として使用され得る有力な証拠を提供する。併せて、この分析は免疫調節状況における及びCOVID-19感染症重症度の軽減のための潜在的治療法としてOrganicellの細胞外小胞の治療有効性を示唆する。
実施例5‐選択された参照文献
【0102】
1. Hovius JW, Bijlsma MF, van der Windt GJ, Wiersinga WJ, Boukens BJ, Coumou J, Oei A, de Beer R, de Vos AF, van 't Veer C, van Dam AP, Wang P, Fikrig E, Levi MM, Roelofs JJ and van der Poll T. The urokinase receptor (uPAR) facilitates clearance of Borrelia burgdorferi. PLoS Pathog. 2009;5:e1000447.
2. Arend WP. The balance between IL-1 and IL-1Ra in disease. Cytokine Growth Factor Rev. 2002;13:323-40.
3. Achari AE and Jain SK. Adiponectin, a Therapeutic Target for Obesity, Diabetes, and Endothelial Dysfunction. Int J Mol Sci. 2017;18.
4. Johns DE and Athanasiou KA. Growth factor effects on costal chondrocytes for tissue engineering fibrocartilage. Cell Tissue Res. 2008;333:439-47.
5. Koike C, Zhou K, Takeda Y, Fathy M, Okabe M, Yoshida T, Nakamura Y, Kato Y and Nikaido T. Characterization of amniotic stem cells. Cell Reprogram. 2014;16:298-305.
6. Murphy SV, Kidyoor A, Reid T, Atala A, Wallace EM and Lim R. Isolation, cryopreservation and culture of human amnion epithelial cells for clinical applications. J Vis Exp. 2014.
8. Reiter J, Drummond S, Sammour I, Huang J, Florea V, Dornas P, Hare JM, Rodrigues CO and Young KC. Stromal derived factor-1 mediates the lung regenerative effects of mesenchymal stem cells in a rodent model of bronchopulmonary dysplasia. Respir Res. 2017;18:137.
9. Liu Q, Zhou YH and Yang ZQ. The cytokine storm of severe influenza and development of immunomodulatory therapy. Cell Mol Immunol. 2016;13:3-10.
10. Wu C, Chen X, Cai Y, Xia J, Zhou X, Xu S, Huang H, Zhang L, Zhou X, Du C, Zhang Y, Song J, Wang S, Chao Y, Yang Z, Xu J, Zhou X, Chen D, Xiong W, Xu L, Zhou F, Jiang J, Bai C, Zheng J and Song Y. Risk Factors Associated With Acute Respiratory Distress Syndrome and Death in Patients With Coronavirus Disease 2019 Pneumonia in Wuhan, China. JAMA Intern Med. 2020.
実施例6‐骨関節炎
【0103】
この試験は5人の対象:膝の症候性骨関節炎を患っており、かつ、すべての組入れ/除外基準を満たす21~80歳の成人、を登録した。研究期間は1年であった。対象は、0日目にIV注入を介して1mlのOrganicell Flowを受け、そして、0日目、1週目、並びに1、3、6、9、及び12カ月目に経過観察した。IV注入の3カ月後、いずれの有害事象も観察されなかった。すべての対象を、最初の3カ月にわたり生成物が有害事象に関連することを観察するために入念に観察した。対象は、6、9、及び12カ月に観察され続けた。以下の人口統計、膝OAのベースライン特徴及び転帰評価を表2に示した(対象;n=5)。
【表3】
Organicell Flow処置の安全性
【0104】
IV注入後4時間にいたるまで、IV注入後24及び48時間に、並びにIV注入後1カ月に、どんな有害事象も報告されなかった。
有効性
【0105】
WOMAC疼痛スコアに対するOrganicell Flow処置の効果を評価した(図21A図22A図23、及び表3A)。1人の患者の疼痛スコアは、0日目と比較して30日目にまったく変化がなかった。残りの4人の患者について、疼痛スコア減少は、0日目と比較して30日目に16.7%~70%に及んだ。疼痛スコアは、0日目と比較して90日目に全5人の患者で減少し、疼痛の25%~80%の減少に及んだ。5人の患者のうちの4人には、30日目と比較して90日目に更なるスコア減少があり、10%~40%に及んだ;しかしながら、1人の患者には、30日目(スコア=8)と比較して90日目(スコア=12)の疼痛スコアにおいて50%の増加があった。
【0106】
WOMACこわばりスコアに対するOrganicell Flow処置の効果を評価した(図21B図22B図23、及び表3B)。0日目、30日目、及び90日目の平均こわばりスコアは、それぞれ5.4±2.2、4.0±1.9、及び3.4±2.1であった。30日目に、2人の患者にはこわばりスコア変化がなく、他の3人は0日目と比較してスコア減少が16.7%~60%に及んだ。90日目に、2人の患者にはスコア変化がなく、他の3人には0日目と比較して37.5%~80%に及ぶスコア減少があった。30日目と比較して、2人の患者にはスコア変化がなく、1人の患者には20%の増加があり(5から6へ)、そして、他の2人の患者には50%の減少があった。
【0107】
WOMAC身体機能スコアに対するOrganicell Flow処置の効果を評価した(図21C図22C図23、及び表3C)。身体機能スコアは、ベッドから立ち上がること、椅子から立ち上がること、歩くこと、及び階段を登ることなど、個人の動作における制限の度合いである。高いスコアは、より大きな身体機能の制限を示す。従って、WOMAC身体機能スコアの減少は、増強された身体機能を示した。WOMAC身体機能スコア(平均±SD)は、0日目(45.4±16.9)のスコアと比較して、30日目(29.8±16.2)と90日目(24±15.5)に有意に減少し(p<0.05)、身体機能における改善を示した。身体機能における減少は、0日目と比較して30日目において3.6%~60.7%、90日目において20%~82.1%に及んだ。5人の患者のうちの4人には、30日目と比較して90日目にスコアの一層の減少があった。その減少は17%~54.5%に及んだ。もう一方の患者には30日目と90日目に変化がなかった。
WOMAC総スコアに対するOrganicell Flow処置の効果を評価した(図21D図22D図23、及び表3D)。総WOMACスコアは、0日目(p<0.05)と比較して30日目と90日目に有意に改善した。0日目の平均総スコアは63±23.6であったが、30日目と90日目のスコアはそれぞれ41.2±21と34.4±21.3であった。30日目と90日目におおける総WOMACスコアの平均減少は、0日目と比較して、それぞれ35.2%(10.4%~62.8%に及ぶ)と49%(23.4%~81.4%に及ぶ)であった。30日目と比較した場合、5人の患者のうちの4人では、90日目に総WOMACスコアの更なる減少があり、14.5%~50%に及んだ。もう一方の患者には、90日目にスコアの9.3%の増加があった(43から47へ)。
【0108】
全体的に見て、本明細書中のデータは、Organicell Flowが疼痛とこわばりを軽減するのに効果的であり、骨関節炎において身体機能を改善することを示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
実施例7‐COVID-19、急性肺損傷、急性脳損傷、急性臓器不全
【0109】
この試験の主目的は、これらの重症Covid-19患者の治療のためのOrganicell Flowの安全性、実現可能性、及び利用可能性を実証するため、及び潜在的治療効率を示唆し得る臨床状況の改善と炎症性バイオマーカーの改善における治療後変化を観察するためであった。Organicell Flowを実施例1に記載のとおり調製した。この試験で投与したOrganicell Flowの特定のパラメーターは:無菌性(14日間の培養物:好気性、嫌気性、及び真菌汚染の増殖なし)、エンドトキシン(<0.05 EU/mL)、ナノ粒子組成物(濃度=3.26×1011/mL、モード粒子サイズ=90.2nm)、タンパク質濃度(2.83mg/mL)、及びヒアルロン酸濃度(261ng/mL)、であった。
【0110】
Organicell Flowを、継続中の医療ケアと同時に、ポスト治療後28日間にわたり観察した3人の重症Covid-19患者に投与した。すべての患者が、COVID-19と診断され、呼吸器不全を発症し、そして、40日間超にわたり入院した。3人の患者はすべて、その時利用可能な認可された標準ケアに加えて、Organicell Flowで治療した、COVID-19感染症によって引き起こされた重度の、多器官合併症に罹患していた。これらの患者は、ウイルスによって最も影響を受けたCOVID-19患者の小集団を表す。入院時点で、COVID-19感染症のための緊急用の認可された標準ケアは存在しなかった。これらの患者を、酸素補給、抗炎症剤、抗生物質、抗ウイルス薬、及びそれらの多臓器不全症状を管理するのに必要とされる他の薬物療法で治療した。
【0111】
第一の患者(匿名化対象CU#1)は、肥満、高血圧(HTN)、2型糖尿病、うつ病、高脂血症(HLD)、及びビタミンD欠乏を含めた複数の併発症を患っている74歳の白人女性であった。この患者は最初に、観測場所で治療する44日前に病院に入った。最初の診断は、陽性COVID-19感染症による急性低酸素性呼吸器不全であった。患者には、入院6日後に経口挿管し、肺炎を伴ったCOVID-19を治療した。COVID-19+試験は、入院後20日間にわたり報告された。気管切開配置を、観測場所への移動前に実施した。患者CU#1は、治療前に機械呼吸を必要とし続け、かつ、急性腎傷害及び貧血と共にICU譫妄よる急性代謝性脳症を発症した。入院時の初期COVID-19治療には、ヒドロキシクロロキンの10日間の治療単位、3つの用量のリババリン、及びカレトラが含まれた。追加の薬剤の包含を、複数の併発症によって引き起こされた合併症を管理するために継続していた。観測場所への移動の10日後に、継続中の医学的治療に加えて、Organicell Flow注入を開始した。患者の高いBMIのため、合計4つの用量のOrganicell Flowを投与することを決めた。
【0112】
第二の患者(匿名化対象CU#2)は、肥満、HTN、HLD、ホジキン病、甲状腺機能不全症(HYT)、及び頚動脈血管内膜切除術後状態を含めた複数の慢性併発症を患っている79歳の白人女性であった。この患者は、観測場所で治療する47日前に病院に入った。彼女の最初の診断には、陽性COVID-19感染症による敗血症症候群と低酸素性呼吸器不全が含まれた。最初の治療報告には、この患者がCOVID-19感染症を標的化するための何らかの抗ウイルス薬物療法を受けたかどうか示されていなかった;代わりに、治療には、併発症に関連する重篤な症状を管理するためのさまざまな薬物療法、抗生物質(セフェピムとバンコマイシン)、及び血液透析が含まれた。入院時の患者の重症度のため、2日後には機械呼吸がすぐに必要であった。患者には、カニューレ抜去し、次に、再挿管し、続いて、気管切開配置を実施した。COVID-19+試験は入院後16日間にわたり報告された。病院の治療単位は、急性腎傷害、輸血を必要とする貧血、脳性疾患、及び敗血症ショックによって複雑になった。患者は、観測場所への移動の数日前にPEG置換を受けた。観測場所への患者の移動は、人工呼吸器解放と他の併発症の管理を達成した。CU#2の高いBMIは、この患者が4つの用量のOrganicell Flowを受けることを条件づけた。
【0113】
第三の患者(匿名化対象CU#3)は、2型糖尿病とHTNを含めた併発症を患っている66歳のスペイン系の男性であった。この患者は、観測場所で治療する42日前に病院に入った。最初の診断には、COVID-19肺炎に続発する低酸素性呼吸器不全があった。初期のCOVID-19治療には、外来患者としてのヒドロキシクロロキン、続いて入院時のトシリズマブが含まれた。患者CU#3は、その後カニューレ抜去と再挿管が続く、挿管が必要であった。病院の治療単位は、低酸素血症性心拍停止、腎代償療法を必要とする急性腎傷害、急性DVT、及び脳性疾患によって複雑になった。患者は、観測場所への移動前に気管切開術を受けた。観測場所への移動は、人工呼吸器解放、血液透析の管理、栄養維持の継続、及び他の併発症の管理を達成した。COVID-19+試験は入院後8日間にわたり報告された。患者の容体が進行した場合、追加の薬剤及び抗生物質を、治療を通じて取入れた。患者は、観測場所への移動の9日後に始まる3つの用量のOrganicell Flowを受けた。
方法
【0114】
連続臓器不全評価(SOFA)スコア評価、胸部X線、及び炎症性バイオマーカー試験を実施して、Covid19患者に対するOrganicell Flowの効果を試験した。ChartPad Software(Technomad)、クラウドベースの電子式データ取得プラットフォーム)を、患者データを回収するのに使用した。SOFAスコアを文献(Lambden S. et al., “The SOFA score-development, utility and challenges of accurate assessment in clinical trials,” Crit Care. 23:374 (2019))で報告されたとおり計算し、Organicell Flow治療法開始0、4、6、8、14、21、及び28日後に評価した。SOFAスコアを、呼吸(PaO2/FiO2、mmHg)、凝固(血小板、×103/μL)、肝臓(ビリルビン、mg/dL)、心臓血管(平均動脈圧)、神経学(グラスゴーコーマスコア)、及び腎臓(クレアチニン、mg/dL)について得られた臨床及びラボラトリー結果から得た。
【0115】
携帯用胸部X線(CXR)を使用して、肺異常を評価、同定、及び観察するために、ベースライン及び治療を通じて画像を取得した。画像を取得した後、Landmark病院にて放射線専門医によって分析を実施し、そして、臨床所見について概説するためにCXR報告を作成した。
【0116】
バイオマーカー収集物はOrganicell Flow治療法開始の0、4、6、8、14、21、及び28日後に生じて、D-ダイマー、CRP、IL2、IL6、及びTNFαの濃度を評価した。D-ダイマーとCRP測定はAthens Regional Labsで実施されたが、IL2、IL6、及びTNFαはQuest Diagnosticsによって計測された。
【0117】
すべての患者についてOrganicell Flowの治療前後にグラスゴーコーマ指数(GCS)スコアを収集した。GCSは、患者の意識レベルと神経学的機能レベルを評価する際に使用される15ポイントの神経学的等級である。それは外傷性脳傷害後の意識レベルを定量化するために広く使用される採点法である。総スコアは、そのそれぞれがスコア化される3つのカテゴリ:最良運動反応、最良言語応答、及び開眼、におけるスコアの合計である。
結果
【0118】
患者の臨床状況をOrganicell Flow治療法の開始後28日間にわたり観察した。治療後に、患者の呼吸状況は改善し、安定していた。CU#1呼吸状況は28日間を通じて改善し、21%の酸素T-collarから酸素治療法を必要としない室内気に変化し、CU#2の呼吸状況は28日間にわたり改善し、機械呼吸から非機械呼吸に移行し、及びCU#3の呼吸状況は治療の4日後に改善してカニューレ抜去し、その後、14日目までに酸素治療法から除かれた。さらに、すべての患者が、28日間の期間内にICU状況からステップダウンユニットに転出した(表4)。患者CU#1は治療開始後29日間で退院し、及び患者CU#3は治療開始後26日間で退院した。患者CU#2は、彼女は誤嚥のため停滞を経験したが、換気装置と血液透析を備えたステップダウンユニットにおいて管理されかつ安定していたため、病院に残った。
【表8】
SOFAスコアに対する効果
【0119】
SOFAスコアの改善はすべての患者で見られた。SOFAスコア計算は、CU#1で28日以内に3から0に、CU#2で28日以内に7から4に、及びCU#3で21日以内に4から0に減少した(表5)。SOFAスコアを計算するのに使用した個々のパラメーターの評価は、CU#1のPaO2/FiO2及びグラスゴースコアにおける改善、CU#2のグラスゴースコアとクレアチニンレベルにおける改善、及びCU#3のPaO2/FiO2とクレアチニンレベルにおける改善を示した(表5)。血小板数、ビリルビン、及びMAP測定値は、治療コースを通じて安定した状態を保った。
【表9】
肺画像化に対する効果
【0120】
CXR画像を、治療を通じて収集し、ベースラインから21及び28日目までの変化を観察し、そして報告した(図25)。ベースラインにて示された患者CU#1のCXR分析は、定義された胸水を伴わない左下肺葉に存在する浸潤を示した。28日後に、CXRは、肺基底部の両側に存在する基底、後腹膜気腔の混濁を示した。患者CU#2のCXR分析は、ベースラインにおける両側性肺疾患を示した。28日目に、CXR分析は、小さい胸膜浸出液を示した。患者CU#3のCXR分析は、ベースラインにおける両側性上葉浸潤を示した。21日目に、CXR分析は、左肺門領域に存在する後遺症硬化を示した。右上肢葉肺炎硬化に関する部分間隔分解能があった。
炎症性バイオマーカーの評価
【0121】
炎症性バイオマーカーの定量化をそれぞれの試験時点にて完了した(表6)。CU#1に関して、28日以内にTNFαの微増があった。CU#1では、4、6、及び8日目に感染した静脈ポートからの菌血症の結果と考えられる、CRP及びIL-6の上昇があった。しかしながら、CRP及びIL-6のレベルは、14日目から28日目を通してベースラインを下回るまで低下し始めた。さらに、D-ダイマー濃度は28日目にこの患者において低下した。CU#2もまた、14日目から28日目を通してCRP及びIL-6の低下を示したが、しかしながら、TNFα及びD-ダイマーは高い状態で維持された。CU#3は、8日目まで高レベルの炎症性マーカー、TNFα、IL-6、及びD-ダイマーを示したが、しかしながら、すべてのマーカーの減弱が21日目までに報告された。
【表10】
【0122】
治療前又は後にすべての患者に関するグラスゴースコアを収集した(表6)。
【表11】
【0123】
すべての患者における集団的データの分析は、SOFAスコアの減少、ICU臨床状態の改善、グラスゴースコアにおける改善、及び呼吸改善を示した。加えて、患者ラボラトリー結果は、減少する炎症性バイオマーカーを伴った改善を示した。
【0124】
患者CU#1の臨床像は、CXRを改良する肺、及び正常に戻る精神状態及び腎臓機能の両方でかなり改善した。この患者の呼吸機能は、治療後21日で改善し、26日目に21%のT-collarから室内気PMV及びカニューレ抜去に移行し、この患者の人口統計に大きな実績を表した。この患者の炎症性マーカー状況、IL6及びCRPは、14日の時点後に改善した。その患者は、治療開始の29日後の退院へとさらに改善した。CU#1に関するグラスゴースコアは治療後15に改善した。
【0125】
患者CU#2の臨床像は、治療タイムコースの間、呼吸機能を含めて全身的に改善した。その患者は、28日目までにCPAP 5 PS 10 30%換気から30% T-collar換気に移行し、さらに、急性譫妄が改善した。この患者は、急性腎傷害を負っており、研究期間の間、定期的な血液透析を必要とした。CU#2に関するグラスゴースコアは治療後に15に改善した。
【0126】
Organicell Flowを受けた後に、患者CU#3は、4日目までに酸素治療法からの完全なカニューレ抜去を伴う呼吸機能の急速な改善を示した。患者には、腎機能の完全な回復があり、クレアチニン濃度レベルの減少があり、及び17日目までに血液透析から除外された。CU#3は治療開始後26日で退院した。
【0127】
これらの完了した症例研究は、COVID-19感染症によって引き起こされた合併症からの回復のための安全かつ効果的な治療処置としてのヒト羊水由来ナノ粒子を実証した。COVID-19により重症を負った患者の治療アプローチとしてのOrganicell Flowの多用量投与は、安全かつ十分に許容され、いずれの重篤な有害事象の報告もなかった。Organicell Flowの分子組成、特に出生時に分泌される細胞外小胞及びエクソソームを含むナノ粒子集団は、COVID-19患者に対する治療薬として機能する。この試験は、COVID-19感染症によって引き起こされた重篤な臓器障害からの回復を支援する治療薬としてヒトにおける羊水由来生成物の先制使用を実証する。
【0128】
本明細書に引用したそれぞれの特許、特許出願、公開又は他のいずれかの参照若しくは文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含む本明細書が優先する。
【0129】
いずれの特許、特許出願、公開又は他のいずれかの文献の引用はこれらのいずれも妥当な先行技術であると承認するものではなく、これらの出版物又は文献の内容又は日付に関するいかなる承認を構成するものでもない。
【0130】
他に定義しない限り、本明細書で用いた全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術における当業者によって共通に理解される同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において本明細書に記載したものと同様又は等価の方法及び材料を用いることができるが、本明細書には好適な方法及び材料を記載している。
【0131】
本明細書に開示した特徴の全ては任意の組合せで組合せることができる。本明細書に開示したそれぞれの特徴は、同一、等価又は同様の目的を果たす代替の特徴に置き換えてもよい。従って、他に明示的に述べない限り、開示した特徴(例えば抗体)は等価又は同様の特徴の属の例である。
【0132】
本明細書で用いる場合、全ての数値又は数値範囲は、文脈から明らかに他が指示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数又は範囲内の整数を含む。さらに、本明細書に値のリストが記載されている場合には(例えば約50%、60%、70%、80%、85%又は86%)、リストには全ての中間値及びその分数値が含まれる(例えば54%、85.4%)。従って、説明すると80%又はそれ以上の同一性への言及は、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%など、並びに81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%など、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%などを含む。
【0133】
超(より大)又は未満を伴う整数への言及は、それぞれ参照する数より大きい又は小さい任意の数を含む。従って、例えば100未満への言及は99、98、97など、数字1までの全てを含み、10未満への言及は9、8、7など、数字1までの全てを含む。
【0134】
本明細書で用いる場合、全ての数値又は範囲は、文脈から明らかに他が指示されない限り、その範囲内の値及び整数の分数、並びにその範囲内の整数の分数を含む。従って、説明すると1~10などの数値範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5などを含む。したがって1~50の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20など、50を含み50まで、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などを含む。
【0135】
連続した範囲への言及は、その連続の中の異なった範囲の境界値を組合せた範囲を含む。従って、説明すると、例えば1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、又は8,000~9,000の連続した範囲への言及は、10~50、50~100、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000などの範囲を含む。
【0136】
本技術の基本的態様から逸脱することなく、上記に対して改変を行なうことができる。1つ又は複数の具体的な実施形態を参照して技術を実質的に詳細に説明したが、当業者であれば本出願に具体的に開示した実施形態に変更を加えることが可能であることが認識されよう。しかしこれらの改変及び改善は本技術の範囲及び精神に含まれる。
【0137】
本発明は、種々の実施形態及び態様を説明するため肯定的な言語を用いて本明細書で一般に開示している。本発明はまた、物質若しくは材料、方法及び条件、プロトコル若しくは手順などの特定の主題を全て若しくは部分的に除外した実施形態を特に含む。例えば、本発明の特定の実施形態又は態様において、材料及び/又は方法ステップを除外している。従って、本発明が何を含まないかに関して本発明が本明細書中で一般的に表明していないとしても、それにも関わらず、本発明において明示的に除外されていない態様は、本明細書に開示されている。
【0138】
本明細書中に記載した技術のいくつかの実施形態は、本明細書中に具体的に開示しなかった要素の不存在下でも好適に実施できる。従って、いくつかの実施形態において、「含むこと」又は「含む」という用語は、「実質的に~から成る」、「~から成る」又はその文法的なバリエーションで置き換えできる。「a」又は「an」という用語は、要素の1つ又は要素の2つ以上が記載されていることが文脈上明白でない限り、それが修飾する要素の1つ又は複数を意味することができる(例えば「試薬」は1つ又は複数の試薬を意味することができる)。本明細書で用いる用語「約」は、基本となるパラメーターの10%以内(即ちプラスマイナス10%)の値を意味し、数値列の最初における用語「約」の使用は、数値のそれぞれを修飾する(即ち「約1、2及び3」は約1、約2及び約3を意味する)。例えば、「約100グラム」の重量は、90グラム~110グラムの重量を含み得る。本明細書で用いる用語「実質的に」は、「少なくとも95%」、「少なくとも96%」、「少なくとも97%」、「少なくとも98%」、又は「少なくとも99%」を意味する値の修飾語を意味し、100%を含み得る。例えば、実質的にXを含まない組成物は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満のXを含んでよく、及び/又はXは組成物中に存在せず若しくは検出不能であってもよい。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
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【国際調査報告】