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特表2023-515276経皮的冠動脈インターベンションのための血管内送入システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】経皮的冠動脈インターベンションのための血管内送入システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20230405BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61F2/95
A61M25/06 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575674
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 US2020057064
(87)【国際公開番号】W WO2021167653
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】16/793,120
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522327304
【氏名又は名称】クロスライナー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CROSSLINER, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシェル、ティム、エー.
(72)【発明者】
【氏名】サルティール、フランク、エス.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267AA14
4C267AA28
4C267AA56
4C267BB10
4C267BB16
4C267CC08
4C267GG22
4C267GG24
(57)【要約】
対象のガイドカテーテル延長/事前拡張システムは、外側送入シースと、シース内を延びる内側部材と、シースに対する内側部材の係合/分離のための機構とを含む。内側部材は、送入マイクロカテーテルを有するテーパ状の遠位先端部と、マイクロカテーテルに近接してテーパ状の遠位先端部に取り付けられた事前拡張バルーン部材とを備えて構成される。外側送入シース及び内側部材は、異なる係合/分離機構の動作のために変更される。送入マイクロカテーテルは、非外傷性、迅速、かつ便利な様相での処置部位へのバルーン部材の移動性の改善をもたらす。心臓手術の際に、ガイドワイヤ及びガイドカテーテルが、血管内の処置部位の近傍まで進められる。続いて、内側部材及び外側送入シースが、係合状態で、ガイドカテーテルの内側のガイドワイヤに沿って処置部位へと進められる。処置部位に到達すると、バルーン部材が、事前拡張処置のために膨張させられる。その後に、内側部材が、外側送入シースから分離されて引き戻され、ステントが、外側送入シースの内側を処置部位へと届けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位部分と、遠位部分と、前記近位部分と中間部分との間に位置する中間部分とを有しており、対象の血管内を制御可能に変位するように構成された血管内送入システムであって、
近位端及び遠位端を有するシース管腔を定めている可撓性の実質的に円筒状に輪郭付けられた細長い外側送入シースによって形成され、前記外側送入シースは、前記中間部分と遠位部分との間に延在し、前記シース管腔の前記遠位端にテーパ状の外側先端部を備えて構成されている外側部材であって、
前記外側送入シースの前記遠位端における前記外側部材の前記テーパ状の外側先端部は、前記テーパ状の外側先端部の遠位縁部と近位縁部との間に円筒状の様相で延在する壁を備えて構成され、前記壁は、内径及び外径を有し、前記壁の前記内径及び外径は、前記テーパ状の外側先端部の前記近位縁部から前記遠位縁部への方向に徐々に減少している、外側部材と、
長手軸に沿って延びる内部チャネルを定めている細長い本体を有しており、前記外側送入シースとの制御可能な関係にて、前記外側部材の前記シース管腔の内側に沿って延びている内側部材であって、
前記内側部材の前記細長い本体は、外径を有しており、所定の長さの細長い本体を有するテーパ状の送入カテーテルを備えて構成されたテーパ状の遠位部を有し、前記テーパ状の送入カテーテルは、前記シースの前記遠位端を過ぎて変位可能であり、前記外側部材の前記テーパ状の外側先端部の前記壁は、少なくとも一時的に、前記内側部材の前記遠位部とインターフェースし、前記外側部材の前記テーパ状の外側先端部の前記壁と前記内側部材の前記遠位部との間の前記インターフェースにおいて、前記外側部材の前記テーパ状の外側先端部の前記壁の前記内径は、前記内側部材の前記遠位部の前記外径よりも小さい、内側部材と、
前記内側及び外側部材に動作可能に結合して配置され、前記ガイドカテーテル延長/事前拡張サブシステムを係合動作モード又は分離動作モードで動作させるように制御可能に作動させられる相互接続機構と、
を備えており、
前記係合動作モードにおいて、前記ガイドカテーテル延長サブシステムの前記内側及び外側部材は、ガイドワイヤに沿って制御可能に一緒に変位するように係合し、前記内側部材は、係合時に、前記外側部材に対して独自に変位することができず、
前記分離動作モードにおいて、前記内側及び外側部材は、前記内側部材を前記外側部材から引き戻すために切り離される、血管内送入システム。
【請求項2】
前記内側部材の前記テーパ状の遠位部は、その外面において、前記シース管腔の前記テーパ状の外側先端部の内面とインターフェースし、
前記外側部材の前記テーパ状の外側先端部は、エラストマーのテーパ状の外側先端部であり、
前記分離動作モードにおいて、前記外側部材の前記テーパ状の外側先端部の前記壁の前記内径は、前記内側部材の外径よりも小さく、
前記係合動作モードにおいて、前記シース管腔の前記テーパ状の外側先端部の外径と前記内側部材の前記遠位部の外径との間の寸法の移行が、両者の間に実質的に段差のないインターフェースを形成するように、前記外側部材の前記テーパ状の外側先端部と前記内側部材とが相互作用する、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項3】
前記シースは、その長さに沿って補強され、前記外側部材は、その遠位端に、前記外側部材の前記補強されたシースを包む遠位軟質先端部カプセル化材料をさらに備え、前記遠位軟質先端部カプセル化材料は、前記シースの前記遠位端から前記近位端に向かって増加する勾配のデュロメータ値を有する可撓性の低デュロメータエラストマー材料である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記外側部材は、前記シースの外面と前記遠位軟質先端部カプセル化材料の内面との間に挟まれた遠位潤滑ライナをさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記送入カテーテルは、マイクロカテーテルであり、
前記テーパ状の送入マイクロカテーテルに近接して前記内側部材の前記テーパ状の遠位部に取り付けられたバルーン部材と、
前記内側部材の内部で前記近位部分と前記遠位部分の前記バルーン部材との間に延在し、外部のバルーン膨張システムと前記バルーン部材との間の流体の通路を提供する膨張管腔と
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記バルーン部材は、その遠位部における遠位外径を超える近位直径を有する近位部を有する、請求項5に記載の血管内システム。
【請求項7】
前記バルーン部材は、膨張状態及び収縮状態をとり、前記収縮状態において、前記バルーン部材は、血管内で変位させられ、前記バルーン部材は、事前拡張処置のために処置部位に少なくとも整列させて配置された後に前記膨張状態へと制御可能に変化させられる、請求項5に記載の血管内システム。
【請求項8】
前記内側部材の前記細長い本体及び前記マイクロカテーテルは、その長さに沿ってコイルで補強され、前記内側部材の前記テーパ状の遠位部は、前記コイルで補強された細長い本体上に配置された遠位テーパ要素を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記外側部材の前記外側送入シースは、第1の所定の外周を有する管状体を有し、前記外側部材の前記管状体は、前記外側送入シースの前記遠位端の前記テーパ状の外側先端部と、前記近位端との間に延在し、前記近位端において、前記外側送入シースは、第2の所定の外周を有する入口開口部を備えて構成され、前記入口開口部の前記第2の所定の外周は、前記外側送入シースの前記管状体の前記第1の外周を超える、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記外側部材の前記テーパ状の外側先端部は、弾性的に広がることができる構成を有し、前記外側シースの前記近位端の前記入口開口部は、漏斗状に輪郭付けられている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
遠位端に平坦化された部分を備えて構成され、前記外側部材の前記シースの前記近位端に固定された外側部材プッシャ
をさらに備え、
前記外側部材プッシャは、その長さに沿って延びるチャネルを備えて構成され、前記チャネルは、前記シース管腔に連通する、請求項2に記載の血管内システム。
【請求項12】
前記外側部材の前記外側シースは、その長さに沿って第1の可撓性を有する可撓性シースであり、前記外側部材プッシャは、その長さに沿って第2の可撓性を有する可撓性部材であり、前記第2の可撓性は、前記第1の可撓性と実質的に同じ、又は前記第1の可撓性を超える、請求項11に記載の血管内システム。
【請求項13】
前記相互接続機構は、スナップ嵌合機構を含み、前記スナップ嵌合機構は、前記外側部材の前記シースの近位端に配置された近位カプラと、前記内側部材の前記細長い本体の外面に配置された協働要素とを備えて構成され、前記近位カプラは、遠位中実リングと、前記中実リングから所定の距離に配置された中間分割リングとを含み、前記協働部材は、シャフト中間ロックリング、正方形の環状リング、及びスナップ嵌合ケージを含む群から選択される部材を含み、前記協働部材は、前記内側部材の前記細長い本体の前記外面に取り付けられ、前記外側及び内側部材を係合させるために前記遠位中実リングと前記中間分割リングとの間にスナップ嵌合の様相で解除可能にロックされる、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項14】
前記協働部材は、前記内側部材の前記外面に、それを取り囲む関係にて固定され、前記近位カプラは、その近位端に近位傾斜分割リングをさらに含む、請求項13に記載の血管内システム。
【請求項15】
前記シースにその近位端において形成された窓システムをさらに含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記マイクロカテーテルは、長さに沿って差のある可撓性を有している可撓性材料で形成され、前記マイクロカテーテルの可撓性は、その遠位端に向かって大きくなる、請求項5に記載の血管内システム。
【請求項17】
前記マイクロカテーテルは、前記マイクロカテーテルの前記所定の長さに沿って延びる平角線らせんコイルを含み、前記平角線らせんコイルのピッチが、前記マイクロカテーテルの可撓性がその遠位端に向かって大きくなるように、前記マイクロカテーテルの長さに沿って変化している、請求項16に記載の血管内システム。
【請求項18】
前記外側部材の前記外側送入シース、前記送入カテーテル、前記内側部材の前記細長い本体、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される部材のそれぞれの壁の少なくとも一部分を形成する平角線らせんコイル部材をさらに含み、前記平角線らせんコイルは、ニチノールなどの形状記憶合金で形成され、あるいは放射線不透過性材料で形成される、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項19】
前記テーパ状の送入カテーテル構造は、ガイドワイヤに沿ったスライドのための長手方向に延びる管腔を備えて形成されたマイクロカテーテルであり、
その遠位端において前記内側部材の近位端に結合した内側部材プッシャと、
その遠位端において前記外側部材の前記近位端に結合した外側部材プッシャと
をさらに含み、
前記外側部材プッシャは、カラーコーティングされ、前記カラーコーティングは、前記ガイドワイヤの色並びに前記内側部材及び前記内側部材プッシャの色から区別できる色を有する、請求項1に記載の血管内システム。
【請求項20】
ガイドワイヤと協働するガイドカテーテル延長サブシステムを備えた血管内システムであって、
近位部分と、遠位部分と、前記近位及び遠位部分の間に相互接続された中間連結部分とを有しているガイドカテーテル延長サブシステム
を備え、
前記ガイドカテーテル延長サブシステムは、
可撓性の実質的に円筒状に輪郭付けられた細長いシースによって形成された外側部材であって、前記シースは、前記シースに沿った補強構造を有し、前記シースは、近位端及び遠位端を有するシース管腔を定め、前記シースは、前記ガイドカテーテル延長サブシステムの前記中間連結部分と前記遠位部分との間に延在し、前記外側部材は、前記シース管腔の遠位端に配置された遠位軟質弾性先端部を有し、前記遠位軟質弾性先端部は、前記遠位軟質弾性先端部の近位縁部から遠位縁部へと減少する厚さを有する円筒形の壁を備えて構成され、前記壁は、前記遠位縁部における内径を有している、外側部材と、
長手軸に沿って延びる内部チャネルを定めているコイルで補強された細長い本体を有する内側部材であって、前記内側部材は、前記シースとの制御可能に変位可能な関係にて前記シース管腔に沿って内側を延びており、前記内側部材は、テーパ状の送入カテーテル構造を備えて構成された前記遠位端のテーパ状の遠位部を有し、前記内側部材の前記テーパ状の遠位部は、所定の長さのコイルで補強された細長い本体を有し、前記内側部材の前記細長い本体は、前記外側部材の前記遠位軟質弾性先端部の前記壁の前記内径を超える外径を有し、前記内側部材の前記テーパ状の遠位部は、その外面において、前記シースの前記遠位軟質弾性先端部の内面と弾性的にインターフェースし、前記テーパ状の送入カテーテル構造は、前記シースの前記遠位端を過ぎて変位可能である、内側部材と、
前記ガイドカテーテル延長サブシステムの前記内側及び外側部材に動作可能に結合して配置され、前記ガイドカテーテル延長サブシステムを間欠的に係合動作モード又は分離動作モードで動作させるように制御可能に作動させられる相互接続機構であって、前記係合動作モードにおいて、前記内側部材の前記テーパ状の遠位先端部の前記外面及び前記外側部材の前記遠位軟質弾性先端部の前記壁の外面が、両者の間の実質的に滑らかな移行を形成する、相互接続機構と
を備えて構成され、
前記係合動作モードにおいて、前記ガイドカテーテル延長サブシステムの前記内側及び外側部材は、ガイドワイヤに沿って制御可能に一緒に変位するように係合し、
前記分離動作モードにおいて、前記内側及び外側部材は、お互いに対する制御可能な個別の直線又は回転変位のために切り離される、血管内システム。
【請求項21】
前記シースは、その近位端において、前記シースの管状体の外周を超える外周を有する入口開口部を備えて構成され、前記入口開口部は、前記入口開口部に近接して取り付けられた傾斜分割リング要素によって補強されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
対象の血管内を少なくとも処置部位まで進めることができるガイドワイヤをさらに含み、
前記ガイドカテーテル延長サブシステムは、前記ガイドワイヤに沿って制御可能に変位させられるように構成され、
その遠位端において前記内側部材の近位端に結合した内側部材プッシャと、
その遠位端において前記外側部材の前記近位端に結合した外側部材プッシャと、
前記内側部材を少なくともその前記近位端において包み、前記内側部材プッシャを少なくともその前記遠位端に沿って包む弾性ジャケットと
を含み、
前記テーパ状の送入カテーテル構造は、前記ガイドワイヤに沿ったスライドのための長手方向に延びる管腔を備えて形成されたマイクロカテーテルである、請求項20に記載の血管内システム。
【請求項23】
前記外側部材プッシャは、カラーコーティングされ、前記カラーコーティングは、前記ガイドワイヤの色並びに前記内側部材及び前記内側部材プッシャを包む前記弾性ジャケットの色から区別できる色を有する、請求項22に記載の血管内システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本PCT特許出願は、現時点において係属中の2020年2月18日に出願された米国特許出願第16/793,120号の優先権を主張し、米国特許出願第16/793,120号は、現時点において係属中の2018年9月17日に出願された米国特許出願第16/132,878号の部分継続(CIP)であり、米国特許出願第16/132,878号は、現時点において係属中の2018年2月20日に出願された米国特許出願第15/899,603号の部分継続(CIP)である。
【0002】
(参照による援用)
現時点において係属中の米国特許出願第16/793,120号、第16/132,878号、及び第15/899,603号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、例えば冠動脈などのヒト血管系において治療に使用される低侵襲装置に関し、とりわけ、血管内バルーン血管形成及び冠動脈ステント送入にとくに適合させた経皮的冠動脈インターベンションのための送入システムであって、事前拡張ガイドカテーテル延長機能によって強化された送入システムに関する。
【0004】
さらに、本発明は、経皮的血行再建を容易にするために、例えば事前拡張バルーン又はステントなどの種々の介入装置の非外傷性、簡便、かつ迅速な送入、並びに患者の体内の冠動脈(又は、他の血管)のカテーテルの交換のために設計された医療装置に関する。
【0005】
さらに、本発明は、従来からのバルーン血管形成カテーテルよりも優れた対象の介入装置の並外れた送入性を、処置のための病変部位への実質的に非外傷性の移動可能性と併せて可能にする小型のテーパ状の軟質遠位先端部を有する血管内送入システムに取り組む。
【0006】
さらに、本発明は、外側部材(外側送入カテーテルサブシステム)の内部の所定の位置に配置された内側部材(介入装置送入カテーテルサブシステム)を使用する血管内ガイドカテーテル延長/事前拡張システムに関し、内側部材は、外側部材のわずかにテーパ状の遠位端とインターフェースする遠位コイル補強テーパ部分を備えて形成される。これらは、内側カテーテルの遠位部分が外側部材に係合又は進入する移行地点において、外側部材(外側カテーテル)及び内側部材(内側カテーテル)の遠位端の間のインターフェースにおいて小型の外形及び実質的に「シームレスな」移行を形成するように寸法付けられる。この構造は、病気の血管に沿って内側及び外側部材を単一のユニットとして組織を傷つけることなく滑らかに通過させるためにきわめて有益である。
【0007】
さらに、本発明は、外側カテーテル(部材)と、外側カテーテルの内側を外側カテーテルに沿って変位可能な内側カテーテル(部材)とで構成された血管内ガイドカテーテル延長/事前拡張システムに関し、外側カテーテルの遠位テーパ軟質先端部が、縮小状態において外側カテーテルとの係合の領域における内側カテーテルの遠位部分の外径よりも小さい内径を有する拡大可能な可撓性の低デュロメータエラストマー部材として形成される。この構成は、遠位端において外側及び内側カテーテルの間の可逆的な弾性係合を達成し、これは、内側カテーテルが外側カテーテルから取り除かれたときに、外側カテーテルの広がった遠位端が縮小時の外径に戻ることを保証し、システムが血管の曲がり部分を次々に進むときに、外側及び内側部材の遠位接合部における「フィッシュマウス化」を低減(又は、排除)する。
【0008】
さらに、本発明は、お互いに対して変位可能な外側及び内側カテーテルを備えて構成された血管内ガイドカテーテル延長/事前拡張システムに関し、外側カテーテルの近位端が、補強の強化、シャフト中間ステント進入の改善、ステント塞栓の防止、可撓性の向上、及び造影剤注入流体の流量改善を提供する入口構成を有する。
【0009】
さらに、本発明は、(1)ガイドワイヤに沿ってガイドカテーテル内を一体に運動するように内側及び外側部材を制御可能に係合させる、又は(2)血管内処置において必要とされるとおりに内側カテーテルを外側部材(カテーテル)から後退させるために内側及び外側カテーテルを分離させる、のいずれかのために、医師によって作動/非作動にされるシャフト中間相互接続(ロック)機構を備えて設計された血管内ガイドカテーテル延長/事前拡張システムに関する。内側部材は、そのテーパ状のコイルで補強された遠位端に取り付けられた介入装置(事前拡張バルーン部材又はステントなど)を運ぶことができ、ロック機構は、滑らかで可逆的な係合/分離手順を提供する。さらに、このシャフト中間の可逆的なロックは、システムを前進させ、あるいは引き戻す際に、外側部材に対する内側部材の前方移動を防止し、内側及び外側カテーテルの遠位「シームレス」移行部の位置が、対象のシステムの移動時に軸方向について基本的に定位置に固定されたままであることを保証する。
【0010】
さらに、本発明は、バルーン部材を取り付けて運ぶためのテーパ状のコイル補強シャフトを遠位端に備えて構成され、外側カテーテルのコイル補強送入シースと一体のバルーン部材の所望の処置部位への「シームレスな」進入及び滑らかな送入を提供する血管内ガイドカテーテル延長/事前拡張システムに関する。
【0011】
さらに、本発明は、短いガイドワイヤとの用途のためのラピッドエクスチェンジ(RX)機能を備えたモノレールマイクロカテーテルの実施形態を特徴とする血管内ガイドカテーテル延長/事前拡張システムに取り組み、内側カテーテルの遠位テーパ軟質端部が、曲がりくねった血管系を移動するための柔軟性を依然として維持しながら、追加の耐キンク性及び「押し込み性」を提供するコイル補強マイクロカテーテルを備えて構成される。
【背景技術】
【0012】
冠動脈閉塞疾患又は末梢血管系における他の疾患は、多くの場合に、バルーン血管形成及び/又はステント留置によって処置される。血管内でバルーン又はステント送入システムなどの血行再建デバイスを治療部位へと前進させることは、血管が曲がりくねっており、かつ/又は石灰化している場合に、医師にとって困難となり得る。
【0013】
冠動脈ステントは、一般に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と呼ばれる処置において使用され、心臓に血液を供給する冠動脈に配置されて、冠動脈心疾患の治療のために動脈を開いた状態に保つ管状のデバイスである。ステントは、冠動脈の血流の改善及び胸痛の軽減に役立ち、急性心筋梗塞の場合に生存性を改善することが示されている。
【0014】
閉塞した冠動脈のステントによる処置は、他の血管形成処置と実質的に同じ工程に従うが、重要な違いが存在する。バルーンに取り付けられた圧縮された状態のステントは、バルーンの可撓性を著しく低下させ、冠動脈を通って滑らかに前進させることが難しくなる。これが、ステントを治療部位へと届けることを困難又は不可能にする可能性があり、未展開のステントが送入バルーンから外れる恐れがある。
【0015】
血管内イメージングを使用して、ステントの送入性に影響を及ぼす病変の厚さ及び硬度(石灰化)を評価することができる。心臓専門医は、この情報を使用して、病変をステントで治療するかどうかを決定し、治療する場合、どの種類及びサイズのステントを使用すべきかを決定する。ステントは、ベアメタルステント及び薬物溶出ステントのどちらも、ほとんどの場合、畳まれた(拡張前の)形態のステントがバルーンカテーテルの外側に取り付けられたユニットとして販売されている。
【0016】
医師は、血管を通ってステントを病変まで進めて膨張させる「直接ステント留置」を実行することができる。しかしながら、より困難な病変においてステント送入を容易にするために、ステントを送り込む前に閉塞を事前拡張することが一般的である。
【0017】
事前拡張は、通常のバルーンカテーテルを病変に通し、膨張させて病変の直径を増加させることによって達成される。バルーンカテーテルは、体内の狭い開口部又は通路を拡大するためにカテーテル挿入処置において使用される先端に膨張可能なバルーンを有する「ソフト」カテーテルの一種である。事前拡張の後に、事前拡張バルーンは取り除かれ、ステントカテーテルが、血管を通って病変まで進められ、膨張させられ、「足場」として血管を広げるための永久的なインプラントとして病変部位に残される。
【0018】
血管形成術において使用されるバルーンカテーテルは、オーバーザワイヤ(OTW)又はラピッドエクスチェンジ(RX)のいずれかの設計を有する。バルーンカテーテルは、ハブ(オーバーザワイヤの変種において)又はRXポート(バルーンカテーテルのラピッドエクスチェンジの変種の場合)を通ってバルーンカテーテルへと装てんできるガイドワイヤ上をスライドさせて配置される。オーバーザワイヤ型バルーンカテーテルにおいては、ガイドワイヤを通すための同心な管腔が、カテーテル内を近位ハブからバルーンまで延びる一方で、ラピッドエクスチェンジ型(RX)バルーンカテーテルにおいては、ガイドワイヤ通路用の管腔が、RXポートからカテーテルの内部をバルーンまで延び、ガイドワイヤの通過を可能にする。
【0019】
血行再建デバイスは、通常は、そのようなデバイスを治療の部位へと送入するための案内(又は、ガイド)カテーテルを使用する。ガイドカテーテルのみを使用して冠動脈への血行再建デバイスの前進を「バックアップ」することは、とりわけラジアルアクセス案内カテーテルを使用してステントが配置される場合に、制限され、困難となり得る。
【0020】
目的の部位への血行再建デバイスの送入を容易にするために、ガイドカテーテル延長システムが設計され、心臓手術において使用されている。
【0021】
例えば、「Guideliner(商標)」などのガイド延長システムが、Teleflexによって製造されている。このガイド延長システムは、Rootらによる米国特許第8,292,850号に記載されている。Rootら(米国特許第8,292,850号)は、大動脈から分岐する分岐動脈に挿入可能な介入心臓学装置と共に使用するためのガイドカテーテルの管腔に通される同軸ガイドカテーテルを記載している。
【0022】
Rootの同軸ガイドカテーテルは、ガイドカテーテルの管腔を通り、その遠位端を過ぎて延び、分岐動脈に挿入される。Rootは、テーパ状の内側カテーテルによって支持されたガイド延長部を使用している。内側カテーテルの目的は、ステント又はバルーンの送入のための追加の「バックアップ」支持を提供するために、ガイド延長部を冠血管の近位部分へと前進させるときに、血管の損傷を回避するための非外傷性の先端部を提供することである。
【0023】
「Guidezilla(商標)」などの別のガイド延長システムが、Boston Scientificによって設計及び製造されている。このガイド延長システムが、Andersonらによる米国特許第9,764,118号に記載されている。Andersonのガイド延長システムは、近位部剛性を有する近位部分と、近位部剛性とは異なる遠位部剛性を有する遠位部分と、近位部分と遠位部分との間の滑らかな移行を提供する移行部分とを有する押し部材を使用する。遠位管状部材が、押し部材に取り付けられ、押し部材の外径よりも大きい外径を有する。
【0024】
Hoによる米国特許出願公開第2017/0028178号が、バルーン又はステント送入システムの挿入時に広がることができるスリットカテーテルを使用するガイド延長システムを記載している。さらに、Hoのガイド延長部は、治療部位へのガイド延長部の送入を支援するために剛体プッシュロッドを使用する。
【0025】
「Guideliner(商標)」及び「Guidezilla(商標)」システム、並びにHoのシステムは、バルーン拡張カテーテル及び/又はステント送入カテーテルを意図される治療の部位へと送入するための追加の「バックアップ」支持を達成するために、ガイド延長システムをガイドカテーテルを通って冠動脈へと部分的に前進させるという考え方をサポートする。
【0026】
これらのガイド延長部の機能は、介入装置で治療すべき病変を横切る際に追加の支持を提供するために、病変により近づくことを可能にすることである。しかしながら、追加の支持にもかかわらず、事前拡張バルーンカテーテル又はステント送入システムが治療すべき病変を通過することが、線維症、石灰化、管腔内の以前のステント支柱、及び/又は病変部位の角のある形状ゆえに、依然として困難又はほぼ不可能であり得る。
【0027】
現時点において使用されているガイド延長装置の限界の1つは、それらが比較的鈍い大径の円筒状の遠位端を使用することである。遠位縁部の比較的大きい外形ゆえに、ガイド延長部の送入性が多くの場合に制限され、治療される冠動脈の近位部分又は中間部分までしか前進させることができない。たとえ病変のバルーン事前拡張の後であっても、血管形成術又はステント留置術で治療される実際の病変までガイド延長部を届けることができることは、皆無ではないにせよ、きわめてまれである。これらの「鈍い端部の」管状ガイド延長装置は、うまくいかないことが比較的頻繁であり、深刻な解離合併症を引き起こす可能性がある。公表されたデータは、「鈍い端部の」管状ガイド延長システムが、症例の最大20%でうまくいかず、症例の約3%で重篤な冠動脈解離を引き起こす可能性を示している。
【0028】
Gillによる米国特許出願公開第2011/0301502号が、位置決め装置の直径をステント送入システムよりも小さくすることを可能にする長手方向の延長部を有するカテーテルを記載している。しかしながら、Gillの装置は、治療される病変を容易に、かつ傷つけることなく横切ることを可能にするための内側カテーテルを想定していない。Gillのシステムは、単にステント送入システムのためのカバーとして働き、長手方向の伸長ゆえにステント送入システムを前進させた後に取り除くことが可能である。
【0029】
ガイド延長カテーテルの内側のテーパ状の部品という考え方は、Rootのデバイスにおいて見られるが、先行技術のシステムは、きわめて短いテーパを使用しており、テーパをシステム全体の細長い一体型部材として想定しておらず、目的の治療領域へともたらされるテーパ状の送入マイクロカテーテルに事前拡張バルーンを取り付けることも、想定していない。さらに、先行技術は、血管の内部の内側カテーテルと外側ガイド延長部との間の実質的に「段差のない」境界を想定しておらず、内側及び外側カテーテル部材を可逆的に互いに嵌合させ、あるいはロックして、システム全体を1つの一体の装置として容易に移動可能にすることを、想定していない。
【0030】
Root又は他の先行技術のシステムは、対象の病変に至り、さらには対象の病変を過ぎるガイドカテーテル延長部/バルーンシステムの同軸送入の達成において有益と考えられるきわめて小さい外形の細長い先端部を有するバルーン(及び/又は、ステント)送入システムを、記載も、先取りも、想定もしていない。そのような実施形態は、これまでに市販されておらず、テーパ状の先端部の内側装置の説明は、ガイドカテーテル延長部の鈍い先端部を案内カテーテルから近位側にもたらすための機構としてのみ意図されており、バルーン(及び/又は、ステント)を血管内の目標の処置領域へと至り、さらには目標の処置領域を過ぎて送入するための機構としては決して意図されておらず、内側及び外側部材の一体的な性質、及び「段差のない」相互接続が、対象の病変を横切る外側送入「シース」部材の通過を可能にすることも、想定していない。
【0031】
したがって、管状のガイド延長システムの遠位部分を治療すべき病変へと至り、理想的には治療すべき病変を過ぎて送入することを可能にする装置及び方法が、「Guideliner(商標)」(Teleflex)又は「Guidezilla(商標)」(Boston Scientific)などの従来からのガイド延長装置と比べて大きな利点を有すると考えられる。
【0032】
従来からのバルーンカテーテル(オーバーザワイヤ又はクイックエクスチェンジ)はいずれも、外側送入シースと一体化されておらず、血管の内部を傷を生じることなく病変部位に至り、さらには病変部位を過ぎて前進させるべく介入装置(例えば、バルーン又はステントなど)が固定されるカテーテルの遠位端のテーパ状の送入マイクロカテーテルを使用していない。さらに、従来からのバルーンカテーテルはいずれも、従来からのバルーンカテーテルと外側送入シースとを単一のユニットとして一体的に動かすことを可能にすべく作動し、外側送入シースに対するバルーンカテーテルの前方変位を防止しつつ、バルーンカテーテルを外側送入シースから引き戻すことを可能にするために非作動とされる相互接続機構を介して外側送入シース(ガイドカテーテル延長サブシステム)に相互接続されているわけではない。
【0033】
介入装置(例えば、事前拡張バルーン)を、ガイドカテーテル延長サブシステム(外側送入シースなど)と共に、実質的に非外傷性かつ簡便な様相で、病変へと至り、さらには病変を過ぎて送入することができる血管内送入システムを提供することが大いに望ましく、効率的であると考えられる。
【0034】
さらに、治療のために病変へとシステムを外傷を生じることなく進めることができることを保証するために、「シームレスな」遠位境界を備える小型のテーパ状の遠位先端部形状を有する強化された遠位端を両方とも特徴とする外側カテーテル及び内側カテーテルを有する血管内送入システムを提供することが、大いに望ましいと考えられる。
【0035】
加えて、外側カテーテルの外側送入シース内に収められた内側バルーンカテーテルのコイル強化テーパ状遠位先端部に取り付けられたバルーンを使用することによって、経皮的血行再建処置を容易にすることが望ましいと考えられ、内側バルーンカテーテルは、処置すべき病変まで、及び処置すべき病変を過ぎて介入装置(事前拡張バルーン及び/又はステント)を運ぶために、テーパ状の遠位先端部に遠位の細長いテーパ状コイル強化マイクロカテーテルを備える。これは、従来からのガイドカテーテル延長及び事前拡張システムの大幅な改善を表すと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第8,292,850号明細書
【特許文献2】米国特許第9,764,118号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0028178号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0301502号明細書
【発明の概要】
【0037】
したがって、本発明の目的は、効率的かつ外傷性が最小限である様相で介入装置(バルーン又はステントなど)を冠動脈の閉塞性病変へと送入し、さらにはそのような病変を過ぎて送入することができる血管内適用のための医療装置を提供することである。
【0038】
本発明の別の目的は、事前拡張バルーン(又は、他の介入装置)の「横断性」の達成に有益であり、ガイド延長装置の効率的かつ安全な遠位送入を向上させる小型の外形を有し、「シームレス」な様相で遠位端において互いにインターフェースする外側カテーテル及び内側カテーテルを有する同軸の高度に可撓性の送入カテーテル装置を使用する血管内送入システムを提供することである。
【0039】
本発明のさらなる目的は、事前拡張バルーン(又は、別の介入装置)を、血管形成術(又は、ステント術)で治療される罹患ヒト冠動脈内の目的の病変へと送入し、かつ/又は目的の病変を過ぎて送入するために、高度に可撓性のコイル補強遠位テーパ細長マイクロカテーテル先端部を使用することである。
【0040】
本発明のさらなる目的は、外側カテーテル(外側送入シースサブシステム)と、外側カテーテルの外側シースの内側に収められて交換可能に接続された内側カテーテル(介入装置送入サブシステム)とを使用するガイドカテーテル延長/事前拡張システムであって、両者が血管内の治療の病変領域へと送入可能又はそれを超えて送入可能であり、内側カテーテルが、実質的に非外傷性の様相でガイドワイヤに沿ってスライドする事前拡張バルーン部材(又は、他の介入装置)が取り付けられた送入テーパ状マイクロカテーテルを遠位端に有している、ガイドカテーテル延長/事前拡張システムを提供することである。
【0041】
本発明のさらなる目的は、事前拡張バルーン(又は、別の介入装置)サブシステム(内側部材)と一体化されたガイドカテーテル延長サブシステム(外側部材)を提供することであり、外側部材と内側部材とが一体となって(「システム全体」として)ガイドワイヤに沿って病変部位へと変位するように互いに(ロック機構を介して)結合する。事前拡張処置の後に、ガイドカテーテル延長サブシステム(外側送入シースを備えて構成される)は、内側部材から切り離され、必要に応じて病変を過ぎて前進させることができる。続いて、内側部材(介入装置送入サブシステム)を引き出すことができる。外科手術に関して必要な場合、外側部材の外側送入シースは、外側送入シースの内側におけるステント(又は、他の介入装置)の病変部位への送入性を高めるために、ガイドカテーテル内に留まることができる。その後に、外側送入シースを、ステント(又は、他の介入装置)が病変へと届けられ、最終的な治療のために展開された後に、引き抜くことができる。
【0042】
さらに、本発明の目的は、事前膨張バルーン及び外側シースを処置部位へと、さらには処置部位を過ぎて、便利かつ安全に送入するために、内側部材及び外側部材の両方を単一のユニットとして一体的に通過させるべく、内側部材と外側部材(外側シース)との間に動作可能に結合した「ロック機構」を備えるガイドカテーテル延長/事前拡張システムを提供することである。
【0043】
本発明のさらなる目的は、バルーン(又は、他の介入装置)及びガイド延長システムの容易な通過を達成して、心臓手術を迅速化するために、非外傷性の様相で血管構造の内部を治療部位へと送入可能な事前拡張前バルーン(又は、他の介入装置)送入カテーテルを備えて構成されたガイド延長システムであって、従来からのシステムを用いて達成されるであろう曝露よりも低い放射線量曝露で経皮的冠動脈インターベンションを行うことを可能にし、ステント塞栓又はステント送入システムからの(薬物溶出ステントによる)薬物喪失のリスクが実質的にないという追加の利点も有するガイド延長システムを提供することである。
【0044】
本発明のさらなる目的は、お互いに対して変位可能であり、依然としてますます可撓性でありながら、長さに沿ってコイル補強によって強化され、造影剤注入流量及び塞栓防止の改善を達成することができる同軸な内側及び外側カテーテルを備えて構成され、外側カテーテルのテーパ状の遠位端を、内側カテーテルの遠位部との強力な接触及び内側カテーテルと外側カテーテルとの間のインターフェースにおけるほぼ段差のない(滑らかな)外面を形成するように、弾性的に引き伸ばすことができる血管内ガイドカテーテル延長/事前拡張システムを提供することである。
【0045】
本システム及び方法は、対象の血管内をガイドワイヤに沿って制御可能に変位するように構成された血管内送入システムに取り組む。本システムは、近位部分と、遠位部分と、近位部分と中間部分との間に位置する中間部分とを備えて形成される。本システムは、近位端及び遠位端を有するシース管腔を定める可撓性の実質的に円筒状に輪郭付けられた細長い外側送入シースによって形成された外側部材を含む。外側送入シースは、中間部分と遠位部分との間に延在し、シース管腔の遠位端のテーパ状の外側先端部を備えて構成される。外側送入シースの遠位端に位置する外側部材のテーパ状外側先端部は、テーパ状外側先端部の遠位縁部と近位縁部との間に円筒状の様相で延在する壁を備えて構成される。テーパ状外側先端部の壁は、内径及び外径を有する。テーパ状外側先端部の壁の内径及び外径は、テーパ状外側先端部の近位縁部から遠位縁部まで寸法が徐々に減少する。外側部材の管状構造に接続された近位(ワイヤ又はハイポチューブ)要素(押し又は引き)は、案内カテーテルの内側への適合性の向上及び(Rootのような)従来からのガイド延長カテーテルにおける堅固な「押し」要素よりも小さい外形を可能にするために、小型の外形及び「可撓性」(「剛体」でない)であってよい。これは、外側カテーテル(ハイポチューブ押し/引き要素を有する)と内側カテーテル(ガイド延長チューブ)との間のロックされた一体的接続を介して達成される「全体としてのシステム」の「押し込み性」ゆえに可能になる。
【0046】
本システムは、長手軸に沿って延びる内部チャネルを定めている細長い本体を有する内側部材(内側カテーテル)をさらに含む。内側部材は、外側送入シースとの制御可能な関係にて外側部材(外側カテーテル)のシース管腔に沿って内部に延在する。内側部材の細長い本体は、テーパ状の遠位部を有し、テーパ状の遠位部は、外径を有し、所定の長さの細長い本体を有するテーパ状の送入カテーテルを備えて構成される。内側部材のテーパ状の送入カテーテルは、外側シースの遠位端を過ぎて変位可能である。外側部材のテーパ状外側先端部の壁の内径が、内側部材のテーパ状の遠位部の外径よりも、これら2つの要素が遠位接合部を形成する領域において小さいことが重要である。
【0047】
相互接続機構が、内側部材と外側部材との間に動作可能に結合し、ガイドカテーテル延長/事前拡張サブシステムを係合動作モード又は分離動作モードで動作させるように制御可能に作動させられる。係合動作モードにおいて、ガイドカテーテル延長サブシステムの内側及び外側部材は、ガイドワイヤに沿った制御可能な共通変位のために係合する。これは、たとえ外側部材の接続されたプッシャ(押し/引き要素)が小さな外形を有し、可撓性(外側カテーテルの外側管状シースと同程度又はそれ以上に可撓性)であっても、本システム(内側部材に接続されてロックされた外側部材を有する)の「押し込み性」の向上も可能にする。分離動作モードにおいて、内側部材及び外側部材は、事前拡張処置又はステント送入の後に内側部材を外側部材から後退させるために分離される。
【0048】
内側部材の遠位部は、その外面において、シース管腔のテーパ状外側先端部の内面とインターフェースする。シース管腔の外側先端部の外径と内側部材の遠位先端部の外径との間の寸法の移行は、両者の間に実質的に段差のない境界の移行部を形成する。
【0049】
外側部材のテーパ状の外側先端部は、弾性的に広がることができる構成を有する。その近位端(本明細書においては、外側部材のシャフト中間部分とも呼ばれる)において、外側シースは、その周囲が外側シースの管状体の周囲を超える入口開口部を備えて構成される。いくつかの実施形態では、外側シースの近位端の入口開口部は、漏斗状である。
【0050】
外側シースは、好ましくは、その長さに沿って補強される。外側部材は、その遠位端に外側部材の補強されたシースを包む遠位軟質先端部カプセル化材料を備える。遠位軟質先端部カプセル化材料は、シースの遠位端から近位端に向かって増加する勾配のデュロメータ値を有する可撓性の低デュロメータエラストマー材料である。
【0051】
外側部材は、外側シースの外面と遠位軟質先端部カプセル化材料の内面との間に挟まれた遠位潤滑ライナをさらに含む。
【0052】
送入カテーテルは、好ましくはマイクロカテーテルである。マイクロカテーテルは、可撓性材料で形成され、その長さに沿って異なる可撓性を有することができ、マイクロカテーテルの可撓性は、その遠位端に向かって増加する。
【0053】
バルーンカテーテルが、テーパ状の送入マイクロカテーテルに近接して内側部材のテーパ状の遠位部に取り付けられ、膨張管腔が、内側部材の内部で近位部分と遠位部分のバルーン部材との間に延在し、外部のバルーン膨張システムとバルーン部材との間の流体の通路を提供する。バルーン部材は、膨張状態又は収縮状態をとることができる。収縮状態で、バルーン部材は血管内で変位する。バルーン部材は、事前拡張処置のために処置部位に少なくとも整列して配置された後に膨張形態に制御可能に変形する。
【0054】
内側部材の細長い本体及びマイクロカテーテルは、それらの長さに沿ってコイルで補強される。
【0055】
平坦部を遠位端に備えて構成された外側カテーテルのプッシャ/プーラ要素が、外側カテーテルの外側シースの近位端に固定される。好ましくは、外側部材のプッシャ/プーラは、塞栓を防止するために、その長さに沿って延びてシース管腔に連通するチャネルを備えて構成される。外側カテーテルの外側シース管状構造に接続されたこの近位(押し及び引き)要素は、案内カテーテルの内側へのより良好な適合性及び(Rootなどの)従来からのガイド延長カテーテルにおける堅固な「押し」要素よりも小さい外形を可能にするために、小型の外形及び「可撓性」(「剛体」でない)であってよい。
【0056】
相互接続機構は、外側部材(カテーテル)のシースの近位端に配置された近位カプラと、内側部材(カテーテル)の細長い本体の外面に配置された協働要素とを備えて構成されたスナップ嵌合ロック機構を含むことができる。近位カプラが、遠位中実リングと、中実リングから所定の距離に配置された中間分割リングとを含むことができる一方で、協働部材は、シフト中間ロックリング、正方形の環状リング、スナップ嵌合ケージ、及び他の同様の部材を含む群から選択される部材を含む。協働部材は、内側部材の細長い本体の外面に取り付けられる。協働部材が遠位中実リングと中間分割リングとの間にスナップ嵌合の様相で係合してロックされると、外側部材と内側部材との間のロック係合が達成される。外側カテーテルのプッシャ/プーラ要素及びカプラは、外側部材の順行又は逆行運動の最中の変形を防止し、ステント又は他の装置が外側カテーテルのシャフト中間部を通過する際のシャフト中間カプラ(本明細書において、近位カプラとも呼ばれる)の変形を防止するために、記憶金属(例えば、ニチノールなど)から作られてよい。
【0057】
近位カプラは、その近位端に、外側部材の漏斗状の近位入口を補強し、漏斗入口における内側部材又はステント送入システムの変位によって引き起こされる漏斗状の近位入口の損傷又は永久変形を防止する近位傾斜分割リングをさらに含む。カプラ及びシャフト中間入口は、その周囲が外側部材の可撓性管状外側シース構造の周囲よりも大きい入口開口部(又は、「マウス」)を有することができる。
【0058】
対象の血管内システムは、少なくとも処置部位まで対象の血管内を前進させることができるガイドワイヤをさらに含み、ガイドカテーテル延長サブシステムは、ガイドワイヤに沿って制御可能に変位するように構成される。本システムの実施形態の1つにおいて、弾性外側ジャケットが、内側部材を少なくともその近位端において包み、内側部材のプッシャ/プ-ラを少なくともその遠位端に沿って包む。内側部材の近位端は、弾性外側ジャケットを内側部材の近位端の長さに融合させ、内側部材のプッシャ/プーラを弾性外側ジャケット内にぴったりと支持することによって、プッシャ/プーラに接続される。
【0059】
外側カテーテルの押し引き要素(又は、その外側ジャケット)は、内側カテーテルの押し引き要素、並びに冠動脈ガイドワイヤの通常の灰色又は銀色からの区別のために、識別色を有するようにカラーコーティングされてよい。あるいは、内側部材の弾性外側ジャケットが、外科医の便利のために、内側部材のプッシャ/プーラを対象のシステムの他の要素の色から区別するためにカラーコーティングされてよい。
【0060】
本発明のこれらの目的及び利点並びに他の目的及び利点は、本発明の詳細な説明を特許図面と併せて検討することで、当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】冠動脈内の目標部位へと進められた対象のガイドカテーテル延長/事前膨張システムを概略的に示している。
図2A】対象のガイドカテーテル延長/事前膨張システムを概略的に説明しており、組み立てられた内側及び外側カテーテルを示している。
図2B】対象のガイドカテーテル延長/事前膨張システムを概略的に説明しており、内側カテーテルを詳しく示している。
図2C】対象のガイドカテーテル延長/事前膨張システムを概略的に説明しており、対象のシステムの中間部分を詳しく示している。
図3A】対象の内側カテーテルの中間部分の図であり、内側カテーテル内の膨張管腔遠位シャフトと相互接続された膨張管腔ハイポチューブの縦断面を示している。
図3B】対象の内側カテーテルの中間部分の図であり、膨張管腔ハイポチューブの削り加工部分の縦断面を詳しく示している。
図3C】対象の内側カテーテルの中間部分の図であり、膨張管腔遠位シャフトに形成されたRXガイドワイヤ(GW)ポートを示す内側カテーテルの縦断面を示している。
図3D】対象の内側カテーテルの中間部分の図であり、図3Cに示した内側カテーテルのRXポート部分の等角図を示している。
図4】膨張管腔遠位シャフトとの接合部における膨張ハイポチューブの遠位端を詳しく示す内側カテーテルの縦断面図を示している。
図5A】対象のシステムの遠位部分を示しており、膨張バルーン部材を示している。
図5B】対象のシステムの遠位部分を示しており、収縮した状態のバルーン部材を示している。
図5C】対象のシステムの遠位部分を示しており、膨張感腔/バルーン接合部を詳しく示している。
図6図6Aは、対象の内側カテーテルの遠位部分の縦断面を示しており、バルーンの3mmの遠位及び近位テーパを詳しく示している。図6Bは、対象の内側カテーテルの遠位部分の縦断面を示しており、バルーンの6mmの遠位及び近位テーパを詳しく示している。
図7】外側カテーテルの遠位先端部を示している。
図8A】内側及び外側カテーテルのそれらの遠位端におけるインターフェースを詳しく示しており、内側カテーテルのテーパ状遠位端を表している。
図8B】内側及び外側カテーテルのそれらの遠位端におけるインターフェースを詳しく示しており、内側カテーテルと外側カテーテルとの間の接続点を幾分拡大して示している。
図9図9Aは、広げることができる分割リングを備えて構成された外側カテーテルの弾性的に伸ばすことができる遠位先端部の選択肢としての実施形態を表している。図9Bは、広げることができる先端部足場を備えて構成された外側カテーテルの弾性的に伸ばすことができる遠位先端部の選択肢としての実施形態を表している。図9Cは、スリットを備えて構成された外側カテーテルの弾性的に伸ばすことができる遠位先端部の選択肢としての実施形態を表している。図9Dは、スリットを備えて構成された外側カテーテルの弾性的に伸ばすことができる遠位先端部の選択肢としての実施形態を表している。
図10図10Aは、対象の外側カテーテルの近位部分の選択肢としての実施形態の側面図を示している。図10Bは、対象の外側カテーテルの近位部分の選択肢としての実施形態の側面図を示している。図10Cは対象の外側カテーテルの近位部分の選択肢としての実施形態の等角図を示している。図10Dは、対象の外側カテーテルの近位部分の選択肢としての実施形態の側面図を示している。図10Eは、対象の外側カテーテルの近位部分の選択肢としての実施形態の等角図を示している。図10Fは、対象の外側カテーテルの近位部分の選択肢としての実施形態の側面図を示している。図10Gは、対象の外側カテーテルの近位部分の選択肢としての実施形態の等角図を示している。
図11図11Aは、外側カテーテルの近位端におけるカプラの設計を詳しく示しており、平坦化されたハイポチューブプッシャの等角図を示している。図11Bは、外側カテーテルの近位端におけるカプラの設計を詳しく示しており、外側カテーテルの近位端の等角図である。図11Cは、外側カテーテルの近位端におけるカプラの設計を詳しく示しており、スナップ嵌合ロック機構を特徴とする外側カテーテルの近位端におけるカプラの側面図を示している。
図12図12Aは、対象の外側カテーテルの近位部分の代案の実施形態を示しており、近位カプラの等角図である。図12Bは、対象の外側カテーテルの近位部分の代案の実施形態を示しており、カプセル化された近位カプラの等角図である。図12Cは、対象の外側カテーテルの近位部分の代案の実施形態を示しており、カプセル化された近位カプラの側面図である。
図13図13Aは、外側カテーテルの近位端における近位カプラのさらに別の実施形態の等角図を示している。図13Bは、外側カテーテルの近位端における近位カプラのさらに別の実施形態の等角図を示している。
図14図14Aは、外側カテーテルの近位入口の溶接リングの実施形態を示しており、溶接リングカプラを示している。図14Bは、外側カテーテルの近位入口の溶接リングの実施形態を示しており、カプセル化された溶接リングカプラを示している。
図15図15Aは、外側カテーテルの近位カプラのさらなる代替の実施形態を示しており、漏斗の円形の輪郭の窓の側面図である。図15Bは、外側カテーテルの近位カプラのさらなる代替の実施形態を示しており、漏斗の円形の輪郭の窓の等角図である。図15Cは、外側カテーテルの近位カプラのさらなる代替の実施形態を示しており、漏斗の三角形の窓の側面図である。図15Dは、外側カテーテルの近位カプラのさらなる代替の実施形態を示しており、漏斗の三角形の窓の等角図である。
図16図16Aは、ハイポチューブプッシャのフラッシング管腔の考え方の図であり、プッシャと結合した外側カテーテルの近位カプラの等角図を示している。図16Bは、ハイポチューブプッシャのフラッシング管腔の考え方の図であり、プッシャ内の流路を示す図16Aの断面等角図である。図16Cは、ハイポチューブプッシャのフラッシング管腔の考え方の図であり、内側カテーテルと外側カテーテルとの間にフラッシング流体を注入する手順を示している。
図17図17Aは、対象のシャフト中間環状円形リングロック機構を示しており、「ロック解除」動作モードを示している。図17Bは、対象のシャフト中間環状円形リングロック機構を示しており、「ロック係合」動作モードを示している。図17Cは、対象のシャフト中間環状円形リングロック機構を示しており、対象のロック機構における環状円形リングの図である。
図18図18Aは、図17A及び図17Bに示した対象の環状円形リングロック機構を詳しく示しており、(図17Cの)環状円形リングとの係合のためのロックポケットを備えて構成された近位カプラを示している。図18Bは、図17A及び図17Bに示した対象の環状円形リングロック機構を詳しく示しており、互いにロックされた内側/外側カテーテルの縦断面図である。
図19図19Aは、シャフト中間「正方形」環状リングを特徴とするロック機構の代替の主題の実施形態を示しており、リング状のロック機構を備えた内側カテーテルを示している。図19Bは、シャフト中間「正方形」環状リングを特徴とするロック機構の代替の主題の実施形態を示しており、外側カテーテルの近位カプラに嵌合した内側カテーテルのリングを示している。図19Cは、シャフト中間「正方形」環状リングを特徴とするロック機構の代替の主題の実施形態を示しており、正方形環状リングの断面図を示している。
図20A】代替の「スナップ嵌合ケージ」ロック機構を示しており、溶接によるケージロックを有する内側カテーテルを示している。
図20B】代替の「スナップ嵌合ケージ」ロック機構を示しており、外側カテーテルの近位カプラに嵌合した内側カテーテルの溶接によるケージロックを示している。
図20C】代替の「スナップ嵌合ケージ」ロック機構を示しており、溶接によるケージ要素の等角図である。
図21】2つのロックスロットを特徴とする外側カテーテルの近位カプラの別の実施形態の側面図である。
図22図22Aは、対象のシステムのモノレールマイクロカテーテルの実施形態を表しており、モノレールマイクロカテーテルの実施形態の等角図を示している。図22Bは、対象のシステムのモノレールマイクロカテーテルの実施形態を表しており、線A-Aに沿って得た側面図を示している。
図23A】対象のモノレールマイクロカテーテルの実施形態を詳しく示しており、内側カテーテルハイポチューブプッシャに接続された内側カテーテルの近位部分の等角図を示している。
図23B】対象のモノレールマイクロカテーテルの実施形態を詳しく示しており、プッシャの近位端を幾分拡大した縮尺で詳しく示している。
図23C】対象のモノレールマイクロカテーテルの実施形態を詳しく示しており、ハイポチューブプッシャに接続された内側カテーテルの近位部分の側面図である。
図24図24Aは、対象のシステムのコイル補強バルーンカテーテルの実施形態の等角図を示している。図24Bは、対象のシステムのコイル補強バルーンカテーテルの実施形態の側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1図24Bに、心臓手術の最中に外科医の制御下で協働するガイドカテーテル延長サブシステム(本明細書において、外側カテーテル又は外側部材とも呼ばれる)及び介入装置送入サブシステム(本明細書において、内側カテーテル又は内側部材とも呼ばれる)を含む対象の血管内送入システム10が示されている。介入装置送入サブシステムは、さまざまな心臓介入装置の送入に使用可能であるが、実施態様のうちの1つにおいて、あくまでも例として、本発明の範囲をこの特定の実施形態に限定することなく、対象の介入装置送入サブシステムを、事前拡張処置を実行するためのバルーン部材の送入に合わせて構成されているものとしてさらに説明する。
【0063】
本明細書に記載の例示的な実施形態において、対象のシステム10を、本明細書において、ガイドワイヤ12及びガイドカテーテル14と共に心臓手術に使用することができるガイドカテーテル延長/事前拡張システムと呼ぶことができる。図1に示されるように、心臓手術の初期段階において、ガイドワイヤ(GW)12が、外科医によって血管16内へと動かされる。ガイドカテーテル14が、冠動脈20の入口18に隣接する位置まで、ガイドワイヤ12に沿って血管16(例えば、大動脈など)を通って進められる。ガイドワイヤ12を、心臓手術において、ガイドカテーテル14を案内するために使用することができ、その後に、以下の段落で詳述されるように、対象のガイドカテーテル延長/事前拡張システム10(ガイドカテーテル14の内側)を動脈20内で目標位置22に向かって延ばすことができる。
【0064】
図2A図2Cに示されるように、対象のガイドカテーテル延長/事前拡張システム10は、バルーンカテーテルサブシステム34(本明細書において、内側カテーテル、内側部材、又は事前拡張サブアセンブリとも呼ばれる)及びガイドカテーテル延長サブシステム36(本明細書において、外側カテーテルとも呼ばれる)を含む。内側カテーテル34は、外側カテーテル36と相互作用し、心臓手術において必要とされるとおりに、外側カテーテル36に係合させ、あるいは外側カテーテル36から切り離すことが可能である。
【0065】
対象のシステム10は、近位部分38と、遠位部分40と、近位部分38と遠位部分40との間に延在し、近位部分38と遠位部分40とを相互接続する中間部分42とを含む。事前拡張バルーン部材44が、内側カテーテル34の遠位部分40に保持される。さらに、内側カテーテル34の遠位部分40を、以下の段落で詳述されるように、細長いテーパ状マイクロカテーテル46を備えて構成することができる。
【0066】
対象のガイド延長/事前拡張システム10は、図1に示されるように、ガイドカテーテル14の管腔(内部チャネル)48内に延ばされる。確実に目標位置22に到達し、場合によっては目標位置22を通過するように、対象のガイド延長/事前拡張システム10は、ガイドカテーテル14の遠位端50を過ぎて冠動脈20へと深く、ガイドカテーテル14を通って進められる。対象のシステム10は、ガイドカテーテル14の遠位端50を過ぎて延びることにより、目標位置22への事前拡張バルーン44の適切な到達可能性を提供し、冠動脈20の入口18を過ぎて延びることにより、ガイドカテーテル14の位置決めを安定化し、冠動脈20及び目標部位22への対象のシステム10のアクセス可能性の改善を可能にする。
【0067】
図1図2A及び図2B図3C及び図3D図4図5A図5C、並びに図6Aに示されるように、ガイドワイヤ12は、ガイドカテーテル延長/事前拡張システム10の内部を延び、GW12の遠位端が遠位部分40の最外端52を過ぎ、GW12の近位端が中間部分42にある状態で、システム10を出る。
【0068】
動作時に、内側カテーテル34及び外側カテーテル36は、互いに連結され、血管16内に配置されたガイドカテーテル14の内側のガイドワイヤ12に沿って(単一のユニットとして)進められ、ガイドカテーテル14の遠位端50を過ぎて延びて、目標の病変部位22に到達する。対象のバルーンカテーテルサブシステム(内側部材)34が病変部位22に到達し、バルーン部材44が病変部位22に整列して位置すると、意図した事前拡張処置を実行することができる。ひとたび事前拡張が実行されると、外側カテーテル(本明細書において、外側部材とも呼ばれる)36を、内側カテーテル(本明細書において、内側部材とも呼ばれる)34との一体のユニットとして病変を横切って前進させることができ、その後に、外側カテーテルから内側カテーテルを引き出すために、内側カテーテル34を外側カテーテル36から切り離すことができる。
【0069】
あるいは、事前拡張処置の実行後に、内側カテーテル34を外側カテーテル36から切り離すことができる一方で、外側カテーテル36が拡張した病変を横切って進められる。加えて、外側カテーテル36を、事前拡張を行い、内側カテーテル34を取り除いた後に、病変の近傍に残してもよい。
【0070】
いずれの場合の状況においても、事前拡張後の病変の近傍に残された外側部材(カテーテル)36を、ステントを外側部材(カテーテル)36の内側で病変部位へと届けるために使用することができる。ステントが病変部位に設置(展開)されると、外側部材36はガイドカテーテル14から取り除かれる。
【0071】
さらなる段落において提示されるように、対象のシステムにおいて、外側カテーテル36の内側における内側カテーテル34の前方変位が防止される。排他的に、外側部材36に対する内側部材34の後方変位又は除去の変位は、病変の事前拡張後の外側部材からの内側部材の後退をサポートするために可能にされる。
【0072】
図2A図2Cを参照すると、対象のガイド延長/事前拡張システム10の近位部分38は、内側部材34のバルーン膨張ハブ56(図2Bに最もよく示されている)及び外側部材36の近位端58によって表される。
【0073】
図2B図3A図3D図4、及び図5Cを参照すると、内側部材(本明細書において、バルーンカテーテルサブシステム又は事前拡張バルーン送入サブシステムとも呼ばれる)34は、膨張ハブ56と事前拡張バルーン部材44との間を延びる内部膨張チャネル60を備えて構成される。内部膨張チャネル60は、心臓手術によって規定されるとおりのバルーン部材44の制御された膨張/収縮のために、バルーン膨張システム62(図2Bに概略的に示されている)とバルーン部材44との間の膨張用空気の通路として機能する。
【0074】
内部膨張チャネル60は、流体を漏らさない様相で互いに重ね合わせて相互接続された膨張管腔ハイポチューブ64及び膨張管腔遠位シャフト66によって形成される。
【0075】
内側部材34の近位端68に位置する膨張ハブ56は、近位開口部72によって(図2Bに概略的に示されるとおりの)バルーン膨張システム62に接続される内部円錐形チャネル70を備えて構成される。
【0076】
バルーン膨張システム62は、手動又は自動のシステムであってよい。好ましい自動の実施形態において、バルーン膨張システム62は、電子サブシステムと、空気圧サブシステムと、対応するユーザインターフェースを有する制御ソフトウェアとを含む。電子サブシステムは、制御ソフトウェアの制御下で、流体又は空気の流れによるバルーン部材44の加圧/減圧を制御するために、ソレノイド圧力弁(バルーン膨張ハブ56に流体に関して接続される)に電力を供給する。
【0077】
図2Bに示されるように、バルーン膨張ハブ56の内部円錐形チャネル70は、膨張管腔ハイポチューブ64に接続された遠位開口部74を備えて構成される。膨張管腔ハイポチューブ64の近位端は、バルーン部材44と膨張システム62との間の膨張用空気の通過をサポートするために、流体を漏らさない様相でバルーン膨張ハブ56の内部円錐形チャネル70の遠位開口部74に接続される。
【0078】
膨張管腔ハイポチューブ64は、図2B及び図4に示されるように、対象のシステム10の近位部分38の全長及び中間部分42の一部分を通って延び、遠位部分40において遠位端78で終わる。
【0079】
図2Bに示されるように、可撓性の鋸歯状部材80が、バルーン膨張ハブ56の遠位端82に接続された膨張管腔ハイポチューブ64の近位端76に設けられる。鋸歯状の可撓性部材80は、膨張管腔ハイポチューブ64の近位端76を支持し、外科医によって操作されるときの構造体の可撓な曲げを提供する。
【0080】
図2A図2C図3A図3D図4、及び図5Cに示されるように、膨張管腔遠位シャフト66は、中間部分42に沿って近位部分38の間を延び、遠位部分40で終わる。図3Aが、膨張管腔ハイポチューブ64と膨張管腔遠位シャフト66との間の接合部を詳しく示している。膨張管腔ハイポチューブ64は、内側部材34を通って最後まで延びているわけではなく、(図2B及び図4に示されるように)遠位端78において終わる。
【0081】
図3B図3Dを参照すると、膨張管腔ハイポチューブ64は、膨張管腔遠位シャフト66の壁によって同軸に包まれた削られた遠位部分90を有し、したがって、膨張管腔ハイポチューブ64は、膨張管腔遠位シャフト66と協働して、心臓手術において必要とされるとおりのバルーン部材44の制御された膨張/収縮のために、図5A図5Cに示されるように、バルーン膨張システム62とバルーン部材44の内部チャンバ92との間の密封された流体の連絡を提供する。
【0082】
図2B並びに図3C及び図3Dが、膨張管腔遠位シャフト66が、GW管腔96がその近位端98で始まるラピッドエクスチェンジ(RX)ガイドワイヤ(GW)ポート94を備えて構成されることを示している。GW管腔96は、内側カテーテル34の遠位部分40の全長にわたって膨張管腔遠位シャフト66の内側のRX GWポート94の間に延在する。GW管腔96は、RX GWポート94に対応する近位端98と、内側部材34の遠位部分40の最も外側の遠位端52に対応する遠位端100とを有する内部チャネルを形成する。図6A及び図6Bに示されるように、遠位部分40において、GW管腔96は、膨張管腔遠位シャフト66の遠位端102を過ぎて延びる。GW管腔96の遠位端100は、送入マイクロカテーテル46の形態であってよい徐々にテーパ状の部分104を構成する。
【0083】
図2A及び図2B図5A図5C図6A及び図6B、並びに図24A及び図24Bを参照すると、内側カテーテル(本明細書において、バルーンカテーテルサブシステムとも呼ばれる)34は、遠位部分40におけるテーパ状の遠位部分(本明細書において、テーパ状の遠位先端部とも呼ばれる)162を備えて構成される。テーパ状の遠位部分162は、マイクロカテーテル46に近接してテーパ状の遠位部分162に固定された事前拡張バルーン部材44を備える。事前拡張バルーン部材44は、患者の心臓の治療に必要とされるとおりの事前拡張/ステント留置処置をサポートするために、内側部材のテーパ状の遠位部分(先端部)162に固定される。
【0084】
バルーン部材44は、近位部分112及び遠位部分114を有する。バルーン部材44は、近位部分112を膨張管腔遠位シャフト66の遠位端102に結合させ、バルーン44の遠位部分114をマイクロカテーテル46の外面に結合させて、送入マイクロカテーテル46に近接して遠位部分40に取り付けられる(固定される)。
【0085】
図5A図5Cに示されるように、事前拡張バルーン44は、その近位部分112で、シース120の外側先端部164に隣接して並べられた遠位先端部162の近位部分204に取り付けられ、その遠位部分114で、内側部材34の遠位部分(先端部)162の遠位端166に取り付けられる。
【0086】
バルーン部材44は、収縮した(畳まれた)構成及び膨張した(拡張された)構成を間欠的にとることができる。収縮した(畳まれた)構成は、血管に対する対象のシステムの挿入時及び/又は引き出し時に使用される。バルーンは、所定の位置(目標部位22)にあるときに膨張(拡張)させられ、血管を広げ、事前拡張処置又はステント留置処置(ステントがバルーン上で治療部位へと届けられる場合)のためにプラークを圧縮する。膨張時に、バルーン44は、病変血管の事前拡張のために、図2A及び図2B図5A図5C図6A及び図6B、並びに図24A及び図24Bに示される膨張した/開いた構成をとる。収縮時に、バルーン部材44は、図5Bに示される収縮した構成をとる。
【0087】
バルーン44は、滑らかな表面、又は「チョコレート」構成を有することができる。「チョコレート」バルーンカテーテルは、編組シャフト及び非外傷性のテーパ状の先端部を有するオーバーザワイヤ型バルーン拡張カテーテルである。バルーンは、拡張時に、バルーンに小さな「枕」及び溝を作り出すニチノール構造によって拘束される。
【0088】
ここで図2A図2C図5A図5C図7図8A及び図8B図9A図9C、及び図9D図10A図10G図11C図12B及び図12C図13A及び図13B図14B図15A図15D図16A及び図16B図17A及び図17B図18A及び図18B図19B図20A及び図20B図21、並びに図24A及び図24Bを参照すると、外側カテーテル(ガイドカテーテル延長サブシステムとも呼ばれる)36は、円筒状の外側送入シース120を備えて形成され、外側送入シース120は、それに沿って内側を延びる内部チャネル122を有している。カプラ機構130が、円筒状シース120の近位端132に、それを取り囲む関係にて形成されている。
【0089】
近位端58において、外側カテーテル36は、外側部材プッシャ(本明細書において、プッシャ/プーラとも呼ばれる)134を含み、外側部材プッシャ134は、図10B図10G図11A図11C図12A図12C図13A及び図13B図14A及び図14B図15A図15D図16A及び図16B図17A及び図17B図18A及び図18B図19B、並びに図22に示されるように、一実施形態において、円形のワイヤ近位部分136と、シース130の近位端132に溶接又は他の方法で固定に取り付けられてよい平坦化された遠位部分138と、を有することができる中実ワイヤであってよい。別の実施形態において、押し引き要素134は、ハイポチューブで構成されてよい。
【0090】
あるいは、円形のプッシャワイヤを平坦なワイヤに溶接することができ、平坦なワイヤは、シース120の近位端132に溶接され、あるいは他の方法でしっかりと固定される。
【0091】
外側部材36のさらに別の代替の実施形態においては、円形のワイヤを、2つの平坦なワイヤに溶接又は他の方法でしっかりと固定することができ、次いで、2つの平坦なワイヤは、シース120の近位端132に溶接され、あるいは他の方法でしっかりと固定される。
【0092】
プッシャワイヤ部分の平坦な外形は、内側部材34が外側部材(カテーテル)36に挿入されたとき、プッシャワイヤが、手術において必要とされるとおりの外側部材36の近位カプラ130及びシース120の内側の内側カテーテル34の回転又は長手方向運動に関して障害物を生み出すことがないように、外側シース120の近位カプラ130に溶接される。近位押し引き要素134は、外側管状シース120と共に前進又は後退し、好ましくは可撓性である(剛体ではない)。プッシャ/プーラ134は、可撓性(剛体ではない)であってよく、その長手軸に沿った可撓性は、外側カテーテル36の管状外側送入シース120の可撓性に匹敵し、あるいはそれを超える。
【0093】
冠動脈介入処置を実行する外科医にとって、外側部材36を操作して外側送入シース120をバルーン送入サブシステム34と共に病変血管内の病変22に対する所望の位置に位置決めするうえで便利であるように、外側カテーテルのプッシャ134は、その近位端に、図10Fに示される近位ハンドル140を備えることができる。
【0094】
外側部材の管状構造120に接続された近位の(ワイヤ又はハイポチューブで構成された)押し/引き要素134は、小型の外形を有し、可撓性である(「剛体」ではない)ことによって、案内カテーテルの内側への適合性の向上及び(Rootのような)従来からのガイド延長カテーテルにおける堅固な「押し」要素よりも小さい外形を達成する。これは、外側カテーテル(ハイポチューブ押し要素を有する)と内側カテーテル(ガイド延長チューブ)との間のロックされた一体的接続を介して達成される「全体としてのシステム」の「押し込み性」ゆえに可能になる。
【0095】
さらに、内側カテーテル(内側部材)34は、心臓手術のさまざまな段階において、冠動脈インターベンション処置において必要とされるとおりの外側部材36からの内側部材34の引き出しを容易にすると共に、それらの間の係合/切り離しを制御するために、膨張ハブ56に取り付けられてよい内側部材のプッシャ(本明細書において、プッシャ/プーラとも呼ばれる)142(図2Aに示されている)を備えることができる。内側部材のプッシャ/プーラ142を、処置を行う外科医にとって便利であるように、内側部材のプッシャ/プーラのハンドルを備えて形成することができる。
【0096】
内側部材及び外側部材のプッシャのハンドルを、係合動作モードにおける内側及び外側部材の一体的な協働を強化するために、内側及び外側部材のお互いに対する追加の解除可能なロックを可能にする機構(参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/899,603号に詳述されている)を備えて構成することができる。
【0097】
内側部材34は、オーバーザワイヤ構成又はRX構成のいずれかであってよい。本明細書において詳述される実施形態のうちの1つにおいて、ガイドワイヤ12は、図3C及び図3D並びに図4に示されるように、管状の膨張管腔遠位シャフト66の近位端に形成されたRX GWポート94を通ってGW管腔96の内部チャネル146へと延び、GW管腔96の内部チャネル146に沿って延びる。対象のシステム10の遠位部分40において、ガイドワイヤ12は、図2A及び図2B図5A及び図5B、並びに図6A及び図6Bに示されるように、(テーパ状の部分104において)送入テーパ状マイクロカテーテル46に沿ってGW管腔内を延び、内側部材34の最外端52のGW管腔96の遠位端100から出る。
【0098】
外側部材36の外側送入シース120は、実質的に対象のシステム10の中間部分42の長さにわたって延在する可撓性円筒状管状体150で製造される。外側部材プッシャ134を操作することにより、外科医は、ガイドカテーテル14に沿った外側送入シース120及び内側部材34の一体的な前進を作動させる。(さらなる段落において詳述されるように)事前拡張処置が実行されると、外科医は、外側部材プッシャ134及び/又は内側部材プッシャ142を操作することによって、外側部材36のシース120に対する内側部材34の必要な線形後方変位を制御する。
【0099】
図8A図8B並びに図9A図9Dに示されるように、シース120の外側先端部164と内側部材34の遠位先端部162との間の境界は、シース120の外側先端部164に対する内側部材34の遠位先端部162の変位を容易にし、基本的に、心臓手術において必要とされるとおりのシース120の外側先端部164に対する遠位先端部162の変位を基本的に容易にする。
【0100】
シース120の遠位端160、並びに外側先端部164は、そこを通って内側部材34の遠位先端部162を簡単に後退させることができるようにする可撓性材料で形成される。平角線らせんコイルを、シース120の遠位端160及び外側先端部164に使用することができる。
【0101】
その近位端132において、外側カテーテル36のシース120は、図10A図10Gに示されるように、その外周が外側部材可撓性管状シース120の外周を超える入口「開口部」(又は、「マウス」)210を備えて構成される。シース120の内部チャネル122への入口210(本明細書において、「マウス」とも呼ばれる)を、さまざまな変更にて構成することができる。例えば、図10Aに示されるように、入口210は、(図10Aに示されるような)偏心開口部を有し、あるいは(図10B及び図10Cに示されるように)同心鈍角で輪郭付けられ、あるいは(図10D及び図10Eに示されるような)同心傾斜を有し、あるいは(図10F及び図10Gに示されるように)同心凹状輪郭を有する漏斗形状211を有する。プッシャ134は、漏斗形状の外側カテーテルの近位入口210の所定の地点に取り付けられている。
【0102】
図2A図2C図7、並びに図8A及び図8Bに示されるように、外側カテーテル36の外側送入シース120は、対象のシステム10の中間部分42に位置する近位端132と、遠位部分40に位置する遠位端160との間に延在する。対象のガイドカテーテル延長/事前拡張システム10の遠位部分40において、内側部材34は、図2A及び図2B図5A及び図5B図6A及び図6B図8A図22A及び図22B、並びに図24A及び図24Bに示されるように、マイクロカテーテル46を備えて形成されてよい遠位テーパ部分(本明細書において、遠位テーパ先端部とも呼ばれる)162を有するテーパ状の構成104にて構成される。マイクロカテーテル46は、例えば1~3cmなどのcm範囲の長さを有する長くて細い部材である。マイクロカテーテル46は、その遠位端52に1mmを超えない直径を有するテーパ状の円錐輪郭形状を有する。マイクロカテーテル46は、内側部材34のテーパ状遠位先端部162と一体的に形成されてよい。
【0103】
図2A図5A図5C図7、並びに図8A及び図8Bに示されるとおり、遠位端160において、外側送入シース120は、内側部材34の遠位先端部162と相互接続されてよいテーパ状の円錐輪郭構成を有する外側先端部164を備えて形成される。外側部材36の外側先端部164は、シース120の遠位端160と遠位部分40との間の滑らかな遠位テーパ移行部を提供する。
【0104】
図2A図5A及び図5B図6A及び図6B図8A及び図8B図22A及び図22B、並びに図24A及び図24Bにおいて、内側カテーテル34の遠位先端部162は、シース120の外側先端部164との相互接続の地点から遠位先端部162の遠位端166まで徐々に変化するテーパ状の構成を有するように示されている。マイクロカテーテル46は、一体的接続にて内側部材34の遠位テーパ部分162の遠位端166から延び(約1~3cmの長さ)、最も外側の遠位端52で終わる。
【0105】
対象のガイドカテーテル延長/事前拡張システム10を、マイクロカテーテル46の遠位部分がマイクロカテーテル送入装置の近位部分よりも可撓性かつ追従性であり、大幅に小さい外形を有し、ガイドカテーテル延長サブシステム(外側送入シース)の遠位部分よりも可撓性であるように、プラスチック(ポリマー)構成要素のデュロメータを外側送入シースの近位部分から遠位部分へと変えること(すなわち、遠位部分と比べて近位部分におけるデュロメータがより高い)、及び/又は近位部分から遠位部分への方向にマイクロカテーテル46におけるワイヤのらせんコイルの巻きの周波数(ピッチ)を変えること、のいずれかによって、遠位部分において可撓性がより大きいマイクロカテーテルの可撓性の差を有するように構成することができる。
【0106】
さらに、システム10は、バルーン部材44、マイクロカテーテル46、及び外側送入シース120が蛍光透視法を使用して容易に視覚化されるように、放射線不透過性を有するワイヤを含むことができる。遠位先端部162(図5A、並びに図6A及び図6Bに示されるように)が、バルーン44の近位部分112及び遠位部分114の近くに放射線不透過性マーカ264、266を備えることが想定される。放射線マーカ264、266は、外科医(オペレータ)が病変位置22に対するバルーン部材44の位置を視覚化することを可能にする。
【0107】
さらに、マイクロカテーテル送入部分46の最も外側の遠位先端部52及びシース120の先端部160は、放射線マーカの区別を外科医にとって可能にするために、1つ以上の放射線不透過性マーカ268、270(図2B及び図5Aに示される)を有することができ、これは、マイクロカテーテルが閉塞性病変を通り過ぎ、マイクロカテーテルに近接して運ばれるバルーン部材が所定の位置に保持されるときに、とくに重要である。
【0108】
図7に詳細に示されるように、その一実施形態において、外側カテーテル36は、シース120の内面152に配置された(あるいは、埋め込まれた)カテーテルシャフトコイル補強システム170を備えて構成される。好ましくは、潤滑性ライナ172が、シャフト120の内側に配置される。シャフト補強コイル170を、潤滑性ライナ172に接触させて、すなわちシャフト120の内面152を覆う潤滑性ライナ172の表面を取り囲む関係にて、シャフト120の内側に設置することができる。遠位軟質先端ジャケット174が、外側カテーテル36の長手軸176に沿って外側カテーテルシャフト120の遠位端に取り付けられる。
【0109】
遠位軟質先端ジャケット174は、(図7に示されるように)端部175においてシャフト120に接着されてよく、あるいはシャフト120の外面173の或る長さを覆ってよい。
【0110】
遠位軟質先端ジャケット174は、シャフト120の遠位端160において、コイル補強170及び潤滑性ライナ172を過ぎて延び、遠位縁部184及び近位縁部182を有するテーパ部分178で終わる。
【0111】
潤滑性ライナ172は、PTFE材料から形成されてよい。遠位軟質先端ジャケット172は、シース120の近位端132に向かって長手軸176に沿って高デュロメータに移行するきわめて可撓性の低デュロメータエラストマーPebax材料で形成されてよい。
【0112】
図7並びに図8A及び図8Bに示されるように、好ましい実施形態のうちの1つにおいて、内面152におけるシース120の内径が約0.048インチである一方で、外面173におけるシャフト120の外径は0.058インチである。外側カテーテル36のテーパ部分178の遠位縁部184における内径が約0.045インチである一方で、テーパ部分178の遠位縁部184における外径は約0.047インチである。シース120の外径(0.058インチ)とテーパ178の外径(0.047インチ)との間の勾配が、外面のテーパを定める一方で、シース120の内径(0.048インチ)と遠位縁部184におけるテーパ178の内径(0.045インチ)との間の勾配が、内面のテーパを定める。テーパ部分178の遠位壁180は、(シース120とテーパ部分178との間の)境界182から遠位軟質先端ジャケット174のテーパ部分178の最も外側の縁部184へと厚さの減少を有する。
【0113】
図8A及び図8Bと併せて図7に示されるように、内側カテーテルのテーパ要素104の外径は、最も外側の遠位縁部184における外側カテーテルの遠位先端部内径(0.045インチ)よりも約0.001インチ大きい約0.046インチの外径を有する。内側カテーテル34のテーパ要素104の外径と、外側カテーテルの外側先端部164の遠位縁部184における内径との間のこの差は、内側カテーテルのテーパ要素104と干渉したときのテーパ部分178における遠位軟質先端ジャケット174の伸張をもたらす。このような構成は、内側カテーテル34の遠位先端部と外側カテーテル36の遠位先端部との間のほぼシームレスな移行、並びに外側カテーテル36のテーパ要素178による内側カテーテル34の遠位先端部の圧迫による遠位端の小型な外形を提供する。内側カテーテル34が取り除かれると、外側カテーテル36の遠位軟質先端ジャケット174の遠位先端部のエラストマー特性が、テーパ部分178が元の内径(0.045インチ)に戻ることを可能にする。
【0114】
非係合の動作態様において、外側部材36のテーパ状の外側先端部164の壁180の前記内径は、内側部材34の外径よりも小さい。係合した動作態様において、外側部材36のテーパ状の外側先端部164と内側部材34とが、シース管腔120のテーパ状の外側先端部164の外径と内側部材34の遠位部分の外径との間の寸法の移行が、それらの間に実質的に段差のない境界移行部を形成するように相互作用する。
【0115】
図9A図9Dをさらに参照すると、テーパ部分178について、拡大可能なテーパ状の設計のいくつかの実施形態が考えられる。図9Aに示されるように、外側カテーテル36の遠位テーパ部分178における弾性は、遠位外側先端部164が(内側カテーテル34とインターフェースするときに)広がることを可能にするテーパ部分178に添えられた拡大可能な分割リング190によって増やされる。拡大可能な分割リング190は、内側カテーテルと外側カテーテルとの間の遠位端における干渉に応じてリング190が拡大及び収縮することを可能にするスリット192を有する。この構造は、内側カテーテル34の除去及びステント(又は、バルーン)の送入時のテーパ部分178の永久変形を防止するための追加の補強を提供する。
【0116】
図9Bを参照すると、外側カテーテル36の代替の実施形態において、テーパ部分178は、拡大可能な先端足場194を備えて構成されてよく、拡大可能な先端足場194は、NiTiワイヤから製造され、遠位端196と、遠位端196の直径よりも大きい直径を有する近位端198とを備えて構成されてよい。その可撓性ゆえに、拡大可能な足場194は、必要に応じて拡大及び収縮し、内側カテーテルの除去並びにステント又はバルーン部材の送入の際にテーパ部分178におけるジャケット174の永久変形に抵抗するための追加の支持を提供する。
【0117】
シース120の遠位端のテーパ部分178の別の代替の実施形態が、図9C及び図9Dに示されており、テーパ部分178の壁180が、その周囲に沿って離れて広がるテーパ部分178の長さに沿って長手方向に延びるスリット200を備えて成形されている。テーパ部分178が内側部材34の遠位端とインターフェースするときに、スリット200が一時的に広がり、内側カテーテル34の遠位先端部162を受け入れる。この設計は、内側カテーテル34の除去によって引き起こされ、あるいはステント/バルーン数の送入時に引き起こされる可能性があるテーパ部分178におけるジャケット174の永久変形を防止することができる。
【0118】
対象のシステムの重要な「シームレス」の態様は、シース120の外側先端部164の外径(そのテーパ部分178における)と、内側部材34の遠位先端部162の外径との間の移行部が、それらの間に実質的に緩やかな(滑らかな)移行を形成することである。
【0119】
図2C図10A図10G図11A図11C図12A図12C図13A及び図13B図14A及び図14B、並びに図15A図15Dに示されるように、対象のシステムは、中間部分42において、外側部材36のシース120の近位端132に形成された近位カプラ130を含む相互接続機構220と、(図17A及び図17B図18B図19A及び図19B、並びに図20A図20Cに示されるような)内側部材34の外面に形成された協働機構222とによって構築される。
【0120】
対象のガイドカテーテル延長/事前拡張システム10は、内側/外側カテーテル係合モード及び内側/外側カテーテル切り離しモードで動作することができ、これは、相互接続機構220を制御することによって達成される。対象の相互接続機構220は、(心臓手術において必要とされるとおりに)内側及び外側カテーテル34、36を係合させ/切り離すと共に、外側送入シース120の内側の内側部材34の望ましくない前方変位を防止するように構成される。係合動作モードは、たとえ外側部材36の接続された押し/引き要素134が小さな外形の可撓性要素(外側カテーテル36の外側管状シース120と同程度又はそれ以上に可撓性)として構成されていても、「システム全体」(内側カテーテル34に接続されてロックされた外側カテーテル36を有する)の「押し込み性」の向上を可能にする。
【0121】
相互接続ユニット220は、(近位端132における)シース120の管状体150の内面152が(内側部材34上の)協働機構222の外面224と係合するときのシース120の近位端132に構成された近位カプラ130と内側部材34の外面224に構成された協働機構222との間の干渉に基づいて動作する。
【0122】
一例として、対象のガイドカテーテル延長/事前拡張システム10に適用可能ないくつかの相互接続機構が想定される。対象の係合機構は、内側部材34と外側部材36との間の制御可能な係合/切り離し、並びに所定の位置を超える外側送入シース120に対する内側部材34の前方移動を防止するように構成される。
【0123】
例えば、図11A図11Cに示されるように、レーザ切断によるカプラ130を、近位開放(分割)リング240と、中実遠位リング242及び開放(分割)遠位リング244を含む一対の遠位リングとで構成することができる。近位開放リング240、並びに遠位リング242及び244は、カプラベース246と一体に形成される。カプラ130を、ステンレス鋼又はヒートセットNiTiから形成することができる。外側カテーテル36のプッシャ/プーラ要素134及びシフト中間カプラ(本明細書において、近位カプラとも呼ばれる)130は、外側部材の順行又は逆行運動の最中の変形を防止し、ステント(又は、他の装置)が外側カテーテル36のシャフト中間部分を通過する際のシャフト中間カプラ130の変形を防止するために、記憶金属(例えば、ニチノールなど)から作られてよい。
【0124】
開放リング240は、(図10A図10D図10E、及び図11Cに示される)外側カテーテル36の近位入口開口部(例えば、漏斗状)211に相関付けられる。近位開放リング240は、外科手術において必要とされるとおりの内側カテーテル34の進入/除去のために必要とされるとおりに漏斗210への入口211の拡張を可能にする。図10A図10D図10E、及び図11A図11Cに示されるように、近位開放リング240は、シート120の漏斗状の近位端の近位開口部210のための支持を提供する。近位リング240は、入口開口部(「マウス」)211を補強し、入口開口部の損傷又は永久変形を防止して、入口開口部210におけるシース120の弾性特性を支持する。遠位リング242、244は、漏斗の近位開放リング240とは別個のスナップ嵌合ロック機構を形成する。遠位リング242は拡大しない(閉じた円の輪郭である)が、分割リング244の開口部は、外側カテーテル36の近位カプラ130に対する内側カテーテル34の変位の際に広がる。
【0125】
カプラ130の基部246は、図11B及び図11Cに示されるように、平坦又は三日月(横断方向において)のいずれかの輪郭を有するプッシャ134の協働する遠位端250と一致するように、平坦であってよく、あるいは好ましくはわずかに弓形(断面において)である。プッシャ134を、ステンレス鋼又はNiTiから製造することができる。プッシャ134の遠位端250は、カプラ130の基部部材246に溶接される(接着、付着、又は他の方法で取り付けられる)。PTFEライナ(図7にも示されている)172が、図11Cに示されるようにカプラ130を包むことができる。
【0126】
シース120は、カプラ及びPTFEライナ172を囲む関係に配置される。(図7に示した)シース120の遠位端160の遠位軟質先端ジャケット174と同様のPebaxによるカプセル化を、シース120の近位端132に使用することができる。外側カテーテル36の遠位端のカテーテルシャフトコイル補強170(やはり図7に示されている)の長さを、外側カテーテル36の近位端まで延ばすことができる。
【0127】
図11A図11C図17A図17C、並びに図18A及び図18Bに示されるように、図11A図11Cに示される特定の実施形態のための協働機構222は、スナップ嵌合ロックのためのシャフト中間ロックリング252(図17B図17C、及び図18Bに示される)をさらに含む。
【0128】
図12A図12Cに示される外側カテーテルの近位入口構造の別の実施形態は、図11A図11Cに示したものと同様であるが、以下を含む特定の変更を伴う。
(a)カプラ130の基部246の周りの追加の厚さ及び追加の材料、
(b)ポリマーカプセル化の付着を改善するための改質表面処理(例えば、ビーズブラスト)、及び
(c)ステントの通過を妨げかねない損傷を防止するために漏斗に追加の支持を提供するための硬質ポリマー(ナイロンなど)によるカプセル化の使用。
【0129】
図13A及び図13Bに示される)近位入口210におけるカプラ130の追加の実施形態は、入口ポート210を補強する開放リング(リブ)256を特徴とする。スナップ嵌合ロック260は、カプラ130の遠位端の少なくとも2つの開放リング262によって表される。カプラ130は、図13A及び図13Bに示される変形例に示されるように、好ましくは、ステンレス鋼又はヒートセットNiTiのいずれかから形成されるレーザカットによるカプラである。
【0130】
ハイポチューブプッシャ/プーラ134は、その遠位端250において平坦化されてよく、カプラ130の基部246に溶接される。PTFEライナ172は、カプラ130の下方に延在し、Pebaxカプセル化174は、プッシャ134が取り付けられたカプラ130を包む。カテーテルシャフトコイル補強構造170は、外側カテーテル36のシャフト120に沿って、その遠位端から近位端まで延びる。スナップ嵌合ロック260が、図17A図17C及び図18Bに示される協働機構222の円形リングの実施形態と協働する。いくつかの実施形態において、カプセル化174及び/又はプッシャ/プーラ134は、外科医の利便性及び手術の安全性のために、外側部材のプッシャ/プーラ134を対象の構成の他の要素から区別するために、図11Aに示されるように、目立つ色でカラーコーティングされてもよい。
【0131】
カプラ130のさらなる変形例が、図14A及び図14Bに示されており、カプラ130は、プッシャ134の遠位端250に溶接された個々のリング266、268を有する。図示のように、ロック機構260は、中実の遠位リング266と、中間分割リング268とによって形成され、各々のリング266、268はプッシャ134に溶接されている。近位傾斜分割リング270も、プッシャ134に溶接されている。この設計は、各々のリング266、268、及び270のサイズ及び構成に関する柔軟性の向上をもたらし、単一の直径に限定されるレーザカットによるカプラとは対照的に、さまざまな漏斗形状/寸法の形成をサポートする。
【0132】
図15A及び図15Bが、流体の流れのための追加の開放断面経路を提供することによって造影剤注入流量を改善する漏斗窓を特徴とする近位カプラ130の別の変形例を示している。図15A及び図15Bに示されるように、シース120に円形の開口部272が形成されている。開口部272は、スナップ嵌合ロック構造280の近位分割リング274及び遠位リング276、278に妨げられることがない様相の所定のパターンにて配置される。図15C及び図15Dに示されるように、カプラ130は、スナップ嵌合ロック280の近位リング274及び遠位リング278、276に妨げられることがない様相でシース120に形成された三角形の開口部282を備えて形成される。
【0133】
図15A図15Dには、それぞれ円形及び三角形の開口部272、282のみが示されているが、プラスチックカプセル化の切り欠きの他の構成も、注入された造影流体が切り欠きを通過できるように、対象の構造において考えられる。
【0134】
図16A図16B、及び図16Cを参照すると、外側カテーテル36の近位端の別の実施形態が示されており、これは、内側及び外側カテーテル34、36の間に注入される流体で空気が誤って進入した場合の望ましくない塞栓の状況を防止するための潜在的な解決策としてとくに設計されている。これを防止するために、フラッシュ管腔290が、平坦なハイポチューブを介してプッシャ134に組み込まれる。ルアーハブが、図16Cに示されるようにハイポチューブ(プッシャ134)の近位端に接続され、したがって、外科医がハイポチューブ134を介して内側及び外側カテーテルの間に流体を注入することができる。流体がハイポチューブ134内のチャネル290を介して外側カテーテル管腔292に進入するとき、内側及び外側カテーテルとの間の気泡の進入が防止される。
【0135】
さらに、図17A図17Cを参照すると、図11A図11E図12A図12C図13A及び図13B図14A及び図14B、並びに図15A図15Dに示される近位カプラ130の間の相互接続ユニット220は、内側カテーテル34の外面224に形成された環状円形リング252(本明細書において、中間ロックリングとも呼ばれる)の形態の協働部材222を含む。ステンレス鋼の環状リング252が、外側カテーテルカプラ130の必要な分割リング機構からの最小の可逆的な係合/切り離しを可能にする完全に丸い表面で輪郭付けられている。図17Cに示されるリング252は、滑らかなロック/ロック解除動作のための外面302上の丸みを帯びた輪郭を有する。リング252の内面304も、内側カテーテル34の外面224と係合する滑らかな構造である。
【0136】
図17Aは、外側カテーテル36に対する内側カテーテル34の切り離された構成を示している。図17Bは、リング252が遠位中実リング308と中間分割リング310とによって形成されたスナップ嵌合ロック306に係合するように、内側カテーテル34がシース120の近位端の開口部210の内側に受け入れられてロックされたときのロック係合構成を表している。この位置にあるとき、近位傾斜分割リング312が内側カテーテル34を取り囲み、リング252がスナップ嵌合ロック306内にロックされ、したがって、外科手術において必要とされるとおりの外科的操作のために内側及び外側カテーテルが係合する。
【0137】
外側カテーテル36の内側における内側カテーテル34の長手方向運動の際に、リング252が近位傾斜分割リング312及び中間分割リング310を通過するとき、これらのリングのアームは、元の位置から広げられ、リング252の通過のための充分な空間を形成する。所定の位置にあるとき、すなわちリング252がリング308と310との間に受け入れられたとき、傾斜分割リング312及び分割リング310のアームは、それらの元の閉じた位置に戻る。リング252は、リング308、310の間に捕捉され、それらの間にスナップ嵌合にてロックされ、したがって内側及び外側カテーテルの相対変位を防止する。
【0138】
図17A図17Cに示した構造を詳しく示す図18A及び図18Bを参照すると、外側カテーテル36のシース120の一部分(ポケット)316が、コイル170によって補強されておらず、スナップ嵌合ロック306の中実な遠位リング308と中間分割リング310との間にシャフト中間ロックリング252が挿入されるときに撓むことが示されている。リング308及び310の間のシース120の撓み部分316は、内側カテーテル34及び外側カテーテル36をロック係合状態に維持するための追加の保持力を提供する。
【0139】
ステンレス鋼の環状リング252を、接着剤によって内側カテーテルシャフト34の外面224に取り付けることができる。ロックリングの形状(完全な円形表面)は、外側カテーテルのカプラ130のレーザカット特徴に対する滑らかな可逆的係合/切り離しを可能にする。スナップ嵌合ロック306の遠位リング308が、内側カテーテル34のさらなる遠位方向の動きを防止する一方で、中間分割リング310は、シャフト中間ロックリング252と接触すると開き、触覚スナップを提供する。近位傾斜分割リング312は、漏斗211をシャフト120の残りの部分の内径よりも大きい内径へと開くことを可能にする。また、シャフト中間ロックリング252の滑らかな通過も可能にする。
【0140】
非補強のシャフトポケット316とシャフト中間ロックリング252との間の干渉が、ユーザが内側カテーテル34を外側カテーテル36から取り外そうとし、したがって両者の間のスナップ嵌合ロックを切り離すまで、外側カテーテル36への内側カテーテル34の保持をもたらす。ロック機構の切り離しに必要な力を、0.1~2.0ポンドに調整することができる。
【0141】
図19A図19Cを参照すると、(金属又はポリマー材料で形成された)正方形の環状リング320を含むシャフト中間ロックの別の代替の実施形態が示されている。図17A図17C及び図18Bに示したリング252とは異なり、リング320は、図19Cに示される正方形の断面321を有する。正方形の環状リング320は、熱融着Pebaxカプセル化322を用いて内側カテーテル34の外面224に取り付けられる。あるいは、内側カテーテルの外面224に接着されてもよい。図19Bに示されるとおり、内側カテーテルがロック位置にあるとき、正方形の環状リング320は、中実リング326及び分割リング328によって形成されたスナップ嵌合ロック324に嵌まり込み、カプセル化322がシース120の内面152と接触し、リング320がリング326及び328の間に位置する。
【0142】
図20A図20Cに示されるさらなる代替の実施形態において、シャフト中間ロック機構220は、いくつか(例えば、4本)のNiTi形状設定ワイヤ336を介して互いに接続された2つのNiTiリング332、334を有するケージ状構造330の形態の協働部材222を備えて形成される。図20Aに示されるように、ケージ330は、接着又は熱融着Pebaxカプセル化338のいずれかによって内側カテーテル34の外面224に取り付けられる。ワイヤ336の各々は、図20A及び図20Bに示されるようにカプセル化338から自由に残された弓形の延伸部分340を有する。
【0143】
図20Bに示されるように、ロック構成において、ケージ構造330は、外側カテーテルのカプラ130に嵌まり込む。各々のワイヤ336のカプセル化されていない弓形の部分340が、カプセル化338の外部にケージ330のワイヤ336から離れるように延びる。ケージ330がスナップ嵌合機構346のリング342と分割リング344との間に受け入れられるとき、ロック機構346が作動し、内側及び外側カテーテル34、36が係合する。
【0144】
さらに図21を参照すると、外側カテーテル36の近位カプラ130は、接続要素358で接続されたリング354及び356によって形成された2つのロックスロット350、352を含むことができる。
【0145】
図17A図17C図18A及び図18B図19A及び図19B図20A図20C、並びに図10A図10G図11A図11C図12A及び図12B図13A及び図13B図14A及び図14B図15A図15D、及び図21を参照すると、外科医が近位カプラ130の内部チャネル122内で内側部材34を直線的に変位させると、スナップ嵌合環状リング252、320、又はケージ330が、(遠位先端部162に向かう)内側カテーテル34の前進運動を可能にするように外側へと柔軟に曲げられる近位リング240、312のアームの間のチャネル122に進入する。スナップ嵌合環状リング252、320、又はケージ330がスナップ嵌合ロックの中間分割リング244、262、268、310、328をさらに通過すると、傾斜近位リングのアームは元の位置に戻るが、中間分割リングのアームは外側に柔軟に曲げられて、ケージ330のリング252、320が遠位の中実リングと中間分割リングとの間に位置することを可能にする。リング/ケージ252、320、330がスナップ嵌合ロック機構のリングの間にスナップ嵌合すると、中間分割リングのアームは元の位置に復帰する。
【0146】
内側部材34を外側部材36から切り離すために、外科医は、内側部材34を近位カプラ130の内部チャネルから引っ張る。チャネルからスナップ嵌合環状リング/ケージ252、320、330を取り出す際に、引っ張り動作によって中間分割リングのアームが外側に曲げられ、それらの間をスナップ嵌合環状リング/ケージ252、320、330が通過できるようになり、したがって内側カテーテル34が外側カテーテル36の近位カプラ130から解放される。
【0147】
図3Dに戻ると、対象のガイドカテーテル/事前拡張延長システム10の中間部分42の膨張管腔遠位シャフト66を、編組補強構造260で製造することができる。編組補強部材260は、内側部材34の相互接続ユニット220の協働機構222に接続された或る程度可撓性の管を形成する。ガイドワイヤ12を通過させるためのRX(ラピッドエクスチェンジ)ポート94を、編組で補強された膨張管腔遠位シャフト66の壁を貫いて形成することができる。
【0148】
編組補強構造260を、シャフト66に長手方向の剛性を与えると考えられるキンクを防止するために、編組補強膨張管腔遠位シャフト66内の金属パターン又はワイヤで構成することができる。金属編組260を、手術中の外側送入シース120に対する内側部材34の引き込みに必要な高い柔軟性を加えるために編組補強シャフト66に埋め込むことができる。
【0149】
約1ミル~3ミルの線太さを有する平角線らせんコイル(例えば、ニチノールなどの形状記憶合金から作られる)を、編組260に埋め込むことができる。このコイルを、その内面及び外面に配置されたプラスチックのきわめて薄いコーティングを備えて形成することができ、これにより、膨張管腔遠位シャフト66の肉厚を7ミル未満、好ましくは約5ミルに減少させることが容易になる。
【0150】
平角線らせんコイル262の形態のカテーテルシャフトコイル補強170によって管状部材を補強し、あるいは平角線らせんコイルから管状部材を形成する原理を、対象のガイドカテーテル延長/事前拡張システム10において、(図7図8B図9A図9D図10A図11C図12B及び図12C図13A及び図13B図14B図15A図15C図16A及び図16B図17A及び図17B図18A及び図18B図19B図20B、及び図21に示されるような)外側送入シース120及び(図2A及び図2B図5A図22、並びに図24A図24Bに示されるような)マイクロカテーテル46に適用することができる。外側送入シース120及び/又はマイクロカテーテル46において、そのような平角線らせんコイルを、それらの壁の長さに沿った所定の位置、例えば近位端及び/又は遠位端に埋め込むことができる。
【0151】
あるいは、外側送入シース120及び/又はマイクロカテーテル46の全長を、平角線らせんコイルを備えて形成することができる。コイル間のピッチを、非外傷性の手術を容易にするために、遠位端に向かって増加する管状部材(シース120及び/又はマイクロカテーテル46)の長さに沿った可撓性の勾配を提供するように調整することができる。
【0152】
図22A及び図22B並びに図23A図23Cを参照すると、標準的なオーバーザワイヤ(OTW)ガイドワイヤ管腔を利用するのではなく、内側カテーテル34’のモノレールラピッドエクスチェンジ(RX)設計を実施して、短いガイドワイヤの使用を可能にすることができる。対象のコイル補強内側部材シャフト400の等角図及びその線A-Aに沿って得た側面図を表している図22A及び図22Bに示される実施形態において、内側部材34’の遠位部分40’は、内側部材34の外面224に取り付けられたテーパ要素402を含む。内側部材34’の外側シャフト400は、遠位先端部406から図2A図2C並びに図3C及び図3Dに示したRX入口ポート94まで延びるコイル補強構造404で補強されたコイルである。遠位先端部406は、外科手術において必要とされるとおりに内側カテーテル34’が外側カテーテル36内に装てんされるときにテーパ要素402と共に外側カテーテル36の内面とインターフェースするテーパ状軟質先端部である。
【0153】
遠位部分40’は、(図2A図2C並びに図3C及び図3Dに示される)内側カテーテル34の近位端のRX入口ポートと連絡する同心ガイドワイヤ管腔408を含む。
【0154】
図23A図23Cに示されるように、図22A及び図22Bに示したモノレールマイクロカテーテルの実施形態の近位端412は、削り加工されたハイポチューブプッシャ414を利用する。コイル補強内側部材シャフト416の近位端412及びハイポチューブプッシャ414は、内側部材34’のモノレールマイクロカテーテルの実施形態の近位端412に沿ってチューブとして図22A及び図22Bに示されるコイル補強内側部材シャフト416(ガイドワイヤ管腔408として機能する)及びハイポチューブプッシャ414から延びる(かつ、これらを含む)近位外側ジャケット418内に包まれる。
【0155】
図23A及び図23Bに示される実施形態は、近位外側ジャケット418を穿刺することによって製造されるRXガイドワイヤ「ノッチ」終端/入口420を特徴とする。続いて、コイル補強内側部材シャフト416が、RX入口「ノッチ」420を介して近位外側ジャケットチューブ418へと挿入される。削り加工されたハイポチューブ415が、近位外側ジャケットチューブ418へとその管腔422を介してさらに挿入され、コイル補強内側部材シャフト416及び近位外側ジャケットチューブ418のポリマーが、内側部材シャフト416とプッシャ414とを接続するように互いに融合され、したがってモノレールマイクロカテーテル内側部材34’の近位端412を形成する。
【0156】
外科医の便利のために、外側カテーテル36の押し/引き要素134を、内側カテーテル34の押し/引き要素などのシステムの他の要素、並びに装置の送入に使用される冠動脈ガイドワイヤ又はステント送入システムの通常の灰色又は銀色から区別するための識別色を有するように、図11Aに示されるように着色(カラーコーティング)することができる。あるいは、押し引き要素414の近位外側ジャケット418は、その色が対象のシステム内の他の要素の色から区別されるようにカラーコーティングされてもよい。
【0157】
内側カテーテルの追加のコイル補強バルーンカテーテルの実施形態500を表す図24A及び図24Bをさらに参照すると、この構造は、マイクロカテーテル46の補強シャフト特性を、以下の属性を有する拡張バルーン44の補強シャフト特性と組み合わせる。
a.コイル補強シャフト502は、曲がりくねった血管系を進むための柔軟性を依然として維持しながら、追加の耐キンク性及び押し込み性を提供し、
b.構造のより長い遠位先端部504は、狭窄症及び狭い病変部を容易に横切るための小さな外形のテーパ状の軟質先端部を含む。
【0158】
図24A及び図24Bに示されるように、対象の構造500の遠位部分504は、内側部材のシャフト500の長さにわたって延びるコイル補強構造506で補強された内側部材シャフト500を含む。遠位テーパ要素508が、内側部材シャフト500上に配置され、内側部材シャフト500を取り囲む関係にて端部510及び512の間に延在する。遠位テーパ軟質先端部514は、コイル補強シャフト500の端部に配置されたマイクロカテーテル46の形態であってよい。
【0159】
図22A及び図22Bに示した実施形態と同様に、バルーン部材44は、内側部材シャフト500上に配置され、放射線不透過性マーカ264及び266が、バルーン部材44内の内側部材シャフト500上に配置される。その近位端516において、バルーン部材44は、外側部材シース120の近位テーパ要素178の外側先端部164と干渉する。遠位端518において、バルーン部材44は、シャフト500をぴったりと囲む。
【0160】
図1図24Bに戻ると、心臓手術、とくには事前拡張ルーチンを実行するための動作において、冠動脈ガイドワイヤ12の近位端が、膨張管腔遠位シャフト66に形成されたRXポート94へと通され、内側部材34の内側チャネル(GW管腔96)を通ってマイクロカテーテル46の最も外側の遠位端52へと向かい、マイクロカテーテル46の最も外側の遠位端52を過ぎて延ばされる。その後に、ガイドカテーテル14が、対象の血管16内に進められる。
【0161】
続いて、内側に内側部材34がロックされた外側部材36の外側送入シース120が、最初にマイクロカテーテル46と共に、ガイドカテーテル14の内部チャネル48内に配置され、単一のユニットとしての内側及び外側部材34、36の両方が、ガイドカテーテル14内を治療部位22に向かって一体的に進められる。外側部材のシース120及び内側部材34を、外側部材プッシャ134を押すことによって一体的に変位させることができる。この動作により、内側部材34のマイクロカテーテル46は、ガイドカテーテル14の遠位端50を過ぎて延びて病変部位92に到達するまで、外側部材36と共にGW12に沿ってスライドする。処置のこの段階において、バルーン部材44は収縮した構成にある。
【0162】
ガイドカテーテル14の遠位端50を過ぎて延びるガイドワイヤ12は、マイクロカテーテル46(収縮した状態のバルーン44が遠位先端部162に取り付けられている)を処置部位26に向かってスライドさせるためのガイドとして機能する。
【0163】
続いて、(処置部位22に位置した)バルーン部材44は、プラークを圧縮し、血管16内の血液通路を広げるために、膨張管腔遠位シャフト66及び膨張管腔ハイポチューブ64によって形成された膨張管腔を介して膨張ハブ56に接続されたバルーン膨張システム62によって膨張させられる。
【0164】
続いて、ひとたび病変が拡張されると、バルーン44は収縮させられ、外側送入シース120を(係合動作モードにおいて)内側部材34との一体のユニットとして病変22を横切って前進させることができ、その後に内側部材を外側送入シース120から切り離し(ロック解除し)、シース120から取り除くことができる。
【0165】
あるいは、内側部材34を病変拡張の直後にシース120から切り離して引き抜くことができる一方で、外側部材36は病変22を横切って進められる。
【0166】
シース120を、(病変の拡張の直後に)処置部位の近位側の所定の位置に残してもよい。
【0167】
内側部材34を引っ張った後に、ステントを部位22に送入することができる。ステントを、その閉鎖形態にて、血管16内へとシース120の内側に導入することができる。所定の位置にあるときに、ステント支持バルーン(図示せず)を膨張させて、ステントを開くことができる。その後に、外側送入シース120が除去され、開いたステントが血管16内に残される。
【0168】
本発明をその特定の形態及び実施形態に関連して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、上述した修正以外のさまざまな修正に頼ることができることを、理解できるであろう。例えば、具体的に図示及び説明された要素を、機能的に等価な要素で置き換えることができ、特定の特徴を、他の特徴とは独立して使用することができ、特定の場合に、要素、ステップ、又はプロセスの特定の位置は、逆転又は介入を許容し、これらはいずれも添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神又は範囲から逸脱するものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図24
【国際調査報告】