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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-12
(54)【発明の名称】眼内薬物送達プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20230405BHJP
   A61F 2/16 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61F9/007 170
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576330
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 US2021019404
(87)【国際公開番号】W WO2021173662
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/980,620
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522336096
【氏名又は名称】スパイグラス ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPYGLASS PHARMA,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【弁理士】
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、グレン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ケーブル、クレイグ アラン ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリック ワイ.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC05
4C097SA05
4C097SA10
(57)【要約】
眼内レンズ組立体と共に使用するための眼内薬物送達プラットフォーム。プラットフォームは、リングと、水晶体嚢内の位置にリングを維持するためのハプティクスと、リングの前面にある、薬物溶出マトリックス又は他の薬物塊を収容するための隔室と、リングに対する眼内レンズの側方又は上下への移動を含む移動を抑制するためにリングの後面から後方に延びるスカートとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズ組立体(12)と共に使用するための眼内薬物送達プラットフォーム(13)であって、
リング(14)であって、前面(14A)、後面(14P)、及び中央にある開口部(15)を有する、リング(14)と、
前記前面(14A)に配置されるように構成された、治療剤を含む薬物溶出塊又は他の固体薬物塊(17)と、前記塊を前記前面(14A)に放出可能な態様で固定するための放出可能取付手段(16)と、
前記後面(14P)から後方に延びるスカート(19)であって、前記開口部(15)を部分的に又は完全に囲むスカートと、
を備え、
前記スカート(19)は、前記眼内レンズ組立体の眼内レンズ(20)及び前記開口部(15)の両方よりも大きい内径を有して、前記眼内レンズ組立体(12)を保持するように構成される、
眼内薬物送達プラットフォーム(13)。
【請求項2】
眼内レンズ組立体(12)と共に使用するための眼内薬物送達プラットフォーム(13)であって、
リング(14)であって、前面(14A)、後面(14P)、及び中央にある開口部(15)を有する、リング(14)と、
前記前面(14A)に配置されるように構成された、治療剤を含む薬物溶出塊又は他の固体薬物塊(17)と、前記塊を前記前面(14A)に放出可能な態様で固定するための放出可能取付手段(16)と、
前記後面(14P)から後方に延びるスカート(19)であって、前記開口部(15)を部分的に又は完全に囲むスカートと、
を備え、
前記スカート(19)は、前記眼内レンズ組立体の眼内レンズ(20)及び前記開口部(15)の両方よりも大きい内径を有して、前記プラットフォームが視軸に移動するのを抑制するように、前記眼内レンズの周りに延在するように構成される、
眼内薬物送達プラットフォーム(13)。
【請求項3】
前記取付手段は、前記前面に配置された隔室(16)と、前記隔室(16)と共に配置された前記薬物溶出塊(17)とを有し、
前記隔室は、前記塊を受け入れたり前記隔室から除去したりするための開口を有し、
前記塊(17)は、前記隔室(16)内に摩擦嵌合するための大きさ及び寸法に設定される、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記取付手段は、前記前面に配置された隔室(16)と、前記隔室(16)と共に配置された前記薬物溶出塊(17)とを有し、
前記隔室は、前記塊を受け入れたり前記隔室から除去したりするための開口を有し、
前記塊(17)は、前記隔室(16)内に摩擦嵌合するための大きさ及び寸法に設定される、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記薬物溶出塊(17)がマトリックス内に埋め込まれた治療剤を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記薬物溶出塊(17)がマトリックス内に埋め込まれた治療剤を含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記治療剤がビマトプロストを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記治療剤が結晶形のビマトプロストを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記治療剤が、ビマトプロスト又は他のプロスタグランジン類似体、β遮断薬、αアゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、又はRhoキナーゼ阻害剤を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記治療剤が、ビマトプロスト又は他のプロスタグランジン類似体、β遮断薬、αアゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、又はRhoキナーゼ阻害剤を含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項11】
眼内レンズ組立体(12)と共に使用するための眼内薬物送達プラットフォーム(13)であって、
リング(14)であって、前面(14A)、後面(14P)、及び中央にある開口部(15)を有する、リング(14)と、
前記後面(14P)から後方に延びるスカート(19)であって、前記開口部(15)を部分的に又は完全に囲むスカートと、
を備え、
前記スカート(19)は、前記眼内レンズ組立体の眼内レンズ(20)及び前記開口部(15)の両方よりも大きい内径を有して、前記眼内レンズ組立体(12)を保持するように構成され、
前記リング(14)又は前記スカート(19)、あるいは、前記リングと前記スカートの両方は、治療剤を含む薬物溶出塊又は他の固体薬物塊を含む、
眼内薬物送達プラットフォーム(13)。
【請求項12】
前記治療剤がビマトプロストを含む、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記治療剤が結晶形のビマトプロストを含む、
請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記治療剤が、ビマトプロスト又は他のプロスタグランジン類似体、β遮断薬、αアゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、又はRhoキナーゼ阻害剤を含む、
請求項11記載の装置。
【請求項15】
患者の眼内に治療剤を眼内送達するための方法であって、
請求項1に記載の眼内薬物送達プラットフォーム(13)を前記患者の水晶体嚢又は毛様溝に挿入する工程と、
眼内レンズが前記スカート(19)内に配置されるように、前記リング(14P)の前記後面が前記眼内レンズの前面(20A)に対向するように、前記患者の前記眼内に配置された前記眼内レンズ(20)の前方位置に前記眼内薬物送達プラットフォーム(13)を配置する工程と、
前記患者の前記眼内に配置された前記眼内薬物送達プラットフォーム(13)により、第1の薬物溶出塊(17)を前記患者の前記眼内に挿入し、前記第1の薬物溶出塊(17)を前記放出可能取付手段(16)で前記リング(14)に固定する工程と、
を含む、方法。
【請求項16】
前記放出可能取付手段は、前記前面(14A)に配置された隔室(16)を含み、
前記隔室は、前記第1の薬物溶出塊を受け入れたり前記隔室から除去したりするための開口を有し、
前記第1の薬物溶出塊は、前記隔室内に摩擦嵌合するように大きさ及び寸法が設定され、
前記第1の薬物溶出塊を前記リングに固定する工程は、前記第1の薬物溶出塊を前記隔室内に挿入することを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の薬物溶出塊を前記リングに固定した後、前記薬物送達プラットフォームが前記患者の前記眼内に留置されている間に、前記第1の薬物溶出塊を前記リングから除去して、第2の薬物溶出塊を前記リングに固定する工程を更に含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の薬物溶出塊が生分解性又は生体分解可能であり、
前記方法が、前記第1の薬物溶出塊を前記リングに固定した後、前記薬物送達プラットフォームが前記患者の前記眼内にされている間に、前記第1の薬物溶出塊が分解又は浸食された後に、第2の薬物溶出塊を前記リングに固定する工程を更に含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
患者の眼内に治療剤を眼内送達するための方法であって、
眼内薬物送達プラットフォーム(13)を前記患者の水晶体嚢又は毛様溝に挿入する工程を含み、前記眼内薬物送達プラットフォーム(13)は、
リング(14)であって、前面(14A)、後面(14P)、及び中央にある開口部(15)を有する、リング(14)と、
第1の薬物溶出塊と第2の薬物溶出塊とを前記前面(14A)に放出可能な態様で固定するための放出可能取付手段(16)と、を有し、
前記第1の薬物溶出塊は、前記薬物送達プラットフォームが前記患者の前記眼内に埋め込まれる前又は後に、前記放出可能取付手段に固定され、
前記患者の前記眼内に配置された前記眼内薬物送達プラットフォーム(13)により、前記第1の薬物溶出塊(17)又は前記第2の薬物溶出塊のうち一方を前記患者の前記眼内に挿入し、前記第1の薬物溶出塊(17)又は前記第2の薬物溶出塊を前記放出可能取付手段(16)によって前記リング(14)に固定する、
方法。
【請求項20】
前記放出可能取付手段は、前記前面(14A)に配置された隔室(16)を含み、
前記隔室は、前記第1及び第2の薬物溶出塊を受け入れたり前記隔室から除去したりするための開口を有し、
前記第1及び第2の薬物溶出塊は、前記隔室内に摩擦嵌合するように大きさ及び寸法が設定され、
前記第1及び第2の薬物溶出塊を前記リングに固定する工程は、前記第1の薬物溶出塊を前記隔室内に挿入する工程と、前記第1の薬物溶出塊が消尽されたときに、前記第2の薬物溶出塊を前記隔室内に挿入する工程と、を含む、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
患者の眼内に治療剤を眼内送達するための方法であって、
眼内薬物送達プラットフォーム(13)を前記患者の水晶体嚢又は毛様溝に挿入する工程を含み、前記眼内薬物送達プラットフォーム(13)は、
リング(14)であって、前面(14A)、後面(14P)、及び中央にある開口部(15)を有する、リング(14)と、
前記後面(14P)から後方に延びるスカート(19)であって、前記開口部(15)を部分的に又は完全に囲むスカートと、
を備え、
前記スカート(19)は、前記眼内レンズ組立体の眼内レンズ(20)及び前記開口部(15)の両方よりも大きい内径を有して、前記眼内レンズ組立体(12)を保持するように構成され、
眼内レンズが前記スカート(19)内に配置されるように、前記リング(14P)の前記後面が前記眼内レンズの前面(20A)に対向するように、前記患者の前記眼内に配置された前記眼内レンズ(20)の前方位置に前記眼内薬物送達プラットフォーム(13)を配置する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載する発明は、眼内薬物送達プラットフォームの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
眼内レンズは、薬物送達装置と共に使用されることがある。2019年7月19日に出願された特許文献1のような従来の出願において、本発明者らは、眼内レンズ(IOL)及びその眼内レンズに種々の方法で配置された薬物送達装置の種々のモジュール式の実施形態を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国出願第16/516,356号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下に説明する装置及び方法は、モジュール式IOLに薬物送達プラットフォームを追加するためのより便利な手段、及び、薬物送達プラットフォームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に説明する装置及び方法は、IOLと共に薬物送達プラットフォームの配置を提供し、その構成により、IOL及び薬物送達プラットフォームの相対的な移動を制限又は抑制し、薬物送達プラットフォームの隔室内に配置された薬物溶出塊の交換を可能にする。薬物送達プラットフォームは、リングを含み、そのリングの前方側に、(眼で浸食したり、ゆっくりと崩壊したり、溶解したりし得る)薬物溶出塊又は他の固体薬物塊を放出可能に保持する1又は複数の隔室又は他の手段を有する。また、薬物送達プラットフォームは、後面から後方に延びるスカートを含む。スカートは、開口部を部分的に又は完全に囲み、スカートの壁内に又はスカートの区分間にIOLレンズを保持するような大きさの内径を有するように構成される。スカートの内径は、眼内レンズ組立体の眼内レンズ及び開口部よりも大きいことが好ましい。スカートは、眼内レンズの周りに延在して、プラットフォームが視軸に向かって移動して患者の視野を遮るのを抑制するように構成される。スカートは、リングに対する眼内レンズの側方又は上下への動きを含む動きを拘束するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、眼内薬物送達システムの使用環境を示す。
図2図2は、眼内薬物送達システムの使用環境を示す。
図3図3は、眼内レンズ組立体と共に使用するように構成された薬物送達プラットフォームを示す。
図4図4は、図3の薬物送達プラットフォームの後面図である。
図5図5は、薬物送達プラットフォームと眼内レンズ組立体とを組み合わせた後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1及び図2は、患者の眼内における眼内薬物送達システムの配置及び使用を図示する。眼1は、水晶体2(眼の天然レンズ)及び水晶体嚢3と、前眼房4とを含み、前眼房4は、角膜5と、虹彩6と、角膜と虹彩との間の空間を満たす房水と、虹彩と水晶体嚢との間の毛様溝(後眼房)7とを含む。後腔/硝子体8は、水晶体と網膜9との間の大きな空間である。眼の天然レンズ2は、光軸10により特徴付けられる(薬物送達プラットフォーム及び関連する眼内レンズ組立体の以下の説明において、後方及び前方という用語は、角膜が前方であり、網膜が後方である眼の解剖学的構造に関して使用される)。
【0008】
図2は、眼内での薬物送達プラットフォーム11の配置を眼内レンズ組立体12と共に示す。この例では、薬物送達プラットフォーム11は、リングの形態で提供され、眼内レンズ組立体12と共に水晶体嚢内に埋め込まれる。図2に示すように、薬物送達プラットフォームは、単独で設置することもできるが、眼内レンズ組立体12と共に使用することが意図されている。図2に示すように、薬物送達プラットフォームは、眼内レンズ組立体12の前方(眼内レンズ組立体12の前)に配置され、(眼の解剖学的構造に関して)後方(後ろ)に延びる保持リム又はスカートを有して、眼内レンズ上に取り付けられる。薬物送達プラットフォームは、虹彩の下方であって水晶体嚢の上方となる位置に配置することもできる。水晶体嚢は、天然レンズ又は人工レンズを含んでもよいし、レンズを全く含まなくてもよい。
【0009】
図3は、眼内レンズ組立体と共に使用するように構成された図2の薬物送達プラットフォームの前面図である。薬物送達プラットフォームはリング14を含み、このリング14は、好ましくはワッシャーのように平らであり、好ましくは隙間のない完全なリングであり、リングの360°全周に沿って連続し、前面14A及び後面14P(図4に示される)と中央にある開口部15とを有する。前面において、薬物送達プラットフォームは、薬物溶出塊17を保持するように構成された1以上の隔室16を含む。隔室は1つだけ設けて、それ以上の隔室を設けなくてもよいが、リングの周囲に配置された2以上の隔室を設けることが好ましい。薬物溶出塊は、ブロック、板、ウエハ、円筒状又は球状のペレットの形態で提供されてもよく、塊を収容する形状の内部空間を有する隔室内に確実に嵌合するように構成されてもよい。
【0010】
塊は、移植前又は移植後に、隔室に挿入してもよい。隔室は、塊に対して、摩擦嵌合又は他の放出可能な取付手段で塊を保持するように構成され、これにより、プラットフォームが眼内に留置されている間に、角膜又は角膜と強膜との間に形成されたスリットを通じて挿入されたツールを用いて、塊を挿入、除去及び交換することができる。隔室は、図に示すように開放側を有し、開放側は、リングの内側縁又はリングの外側縁にあってもよいし、塊の挿入及び除去を可能にする半径方向縁にあってもよい。隔室は、塊をリングに放出可能な態様で固定するための便利な手段を提供し、これにより、単純な把持器又はフック以外の特別なツールを使用することなく、塊を容易に取り付け、取り外し、及び/又は、交換することが可能になる。塊又は他の交換可能な薬物マトリクスを薬物送達プラットフォーム11に固定するために、環状マトリックス及び薬物送達プラットフォーム上の対応する環状戻り止めを含むスナップリング取付け具、又は塊上の対応する戻り止め受け入れ凹部と連結されたリング上の凹部内に配置されるスナップフィット戻り止めなど、他の放出可能取付手段を使用してもよい。
【0011】
また、薬物送達プラットフォームはハプティクス18を含んでもよく、ハプティクス18は外向きに付勢されたフィラメントであって、レンズ水晶体嚢3の内側の水晶体赤道(薬物送達プラットフォームが水晶体嚢内に移植されるべき場所)に当接するように構成され、かつ、リングをレンズ水晶体嚢3内の中心に保持して、眼の光軸と整列させるように構成される。
【0012】
図4は、図3の薬物送達プラットフォームの後面図である。この図は、リング14の後面14P、中央にある開口部15、及びプラットフォームハプティクス18を示す。環状スカート19のような眼内レンズ保持構造は、後面14Pから後方に延び、開口部を部分的に又は完全に囲む。スカートは、薬物送達プラットフォームが、それが使用される眼内レンズの光学部に移動するのを抑制する(又は、これに対応して、眼内レンズ組立体のレンズ構成要素をスカート内に保持する)ように構成される。スカートは、開口部の周囲に完全に360°延在する必要はなく、間隙によって中断されてもよい。あるいは、スカートは、いくつかの区分に分かれていてもよく、各区分は開口部を部分的に囲むようにして、レンズの平面、リング、又は、リングとレンズとの組立体に対して、レンズ上にリングを固定するために区分が開口部に配置されていればよい。スカートは、レンズがスカート内に嵌まるように、内径が開口部及び眼内レンズよりも僅かに大きい第2の開口部を画定し、一方、リングの開口部はレンズよりも僅かに小さく、これにより、リングの前方位置へのレンズの移動を抑制又は制限する。スカートの第2の開口部の内径は、スカート内のレンズのわずかな側方及び/又は上下への移動を許容するように構成されてもよい。
【0013】
図5は、眼内への移植時に配置される、連結された薬物送達プラットフォーム及び眼内レンズ組立体12の後面図である。眼内レンズ組立体は、眼内レンズ20自体と、典型的には一対のレンズハプティクス21とを含む。レンズハプティクスは、プラットフォームハプティクスと同様に、外向きに付勢されたフィラメントであって、水晶体包被膜の内側の水晶体赤道に当接してレンズを水晶体包被膜内の中心に保持するとともに、眼の光軸と整列させるように構成される。図5に示すように、レンズ20はスカートの内側境界内に拘束され、これにより、プラットフォーム13のリング14と共通の前後方向軸に沿って整列される。レンズは、リングに対して前後方向にある程度自由に移動し得るが、ハプティクスは、水晶体嚢3の赤道面に近い平行な面に両構成要素を維持するか、又は同一平面上に維持するように機能し、両構成要素は水晶体嚢に埋め込まれたときに眼の光軸10を中心とすることが好ましい。
【0014】
塊17は、隔室内に挿入されるように大きさ及び寸法が設定され、摩擦嵌合によって隔室内に保持される。塊は、治療剤を注入又は含浸したマトリックスを含むことができる。好適なマトリックス材料には、シリコーン、ヒドロゲル、PLGA、PVA、PLA、生体分解可能なポリマー又は生分解性のポリマー、非分解性の医療グレードのポリマー又は他のポリマー、又は、非ポリマー拡散障壁が含まれる。好適な治療薬には、ビマトプロスト及び他のプロスタグランジン類似体、β遮断薬、αアゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、及びRhoキナーゼ阻害剤が含まれる。シリコーンに埋め込まれた結晶形のビマトプロストは、現在のところ、緑内障の長期治療に適している。他の治療剤は、黄斑変性、脈管障害、角膜ジストロフィー、角膜変性、遺伝病、近視、屈折異常、老視、ぶどう膜炎、浮腫、術後炎症、又は他の眼疾患、又は、眼周囲疾患の長期治療に使用することができる。
【0015】
塊17は、隔室内に挿入されるとともに摩擦嵌合(又は任意の他の好適な放出可能取付構造)によって隔室内に保持されるような大きさ及び寸法に設定されることが好ましい。塊、隔室、又はその両方は、治療剤の塊からの拡散又は溶出を制御するための半透過性膜を含んでもよい。また、隔室は、塊の周囲組織への露出を制御するような大きさの開口部を有するように穿孔してもよく、これにより、塊からの治療剤の溶出速度を制御することが可能になる。
【0016】
使用において、薬物送達プラットフォームは、眼内レンズの移植後に、又は眼内レンズの移植と共に、患者の眼内に治療剤を眼内送達する方法において使用され得る。外科医は、上述した眼内薬物送達プラットフォーム(13)を患者の眼内に挿入し、眼内薬物送達プラットフォーム(13)を、眼内レンズの前方(眼内レンズの前)となる位置に配置する。これにより、眼内レンズは、リングの後面が眼内レンズの前面に対向し、かつ、眼内レンズがスカート内に配置されるように、患者の眼内に配置される(これに代えて、外科医は、眼内薬物送達プラットフォーム(13)を眼内レンズ組立体の後方となる位置に配置してもよく、その結果、リングの前面は眼内レンズの後面に対向し、それにより眼内レンズはスカート内に配置される。この場合、眼内薬物送達プラットフォーム(13)は、リングの前面から前方に延びるスカートを備えるように製造すればよい)。薬物送達プラットフォームが初期状態で空の隔室を備え、隔室が空の状態で眼内に挿入される場合には、眼内薬物送達プラットフォームが患者の眼内に配置された後、外科医が第1の薬物溶出塊を患者の眼内に挿入し、第1の薬物溶出塊を放出可能取付手段でリングに固定する。放出可能取付手段が、前面に配置された隔室(16)を含み、かつ、隔室が、塊を受け入れたり隔室から除去したりするための開口を有する場合、外科医は、(隔室内に摩擦嵌合するための大きさ及び寸法に設定された)第1の薬物溶出塊を挿入し、第1の薬物溶出塊を隔室に挿入することによって第1の薬物溶出塊をリングに固定する。その後、外科医は、薬物送達プラットフォームが患者の眼内に留置されている間に、第1の薬物溶出塊をリングから除去して、第2の薬物溶出塊をリングに固定してもよい。外科医は、治療剤の大部分又は全部が溶出して塊が消尽した場合に塊を交換してもよいし、あるいは、塊を、第1の塊中の第1の治療剤とは異なる第2の治療剤を含有する第2の塊と交換してもよい(塊が生分解性である場合には、完全に分解又は浸食された時点で、外科医が単に新しい塊を挿入してもよい)。
【0017】
薬物送達プラットフォームが初期状態で薬物溶出塊を保持する隔室を備え、1つの(又は複数の)第1の塊で隔室を充填した状態で眼内に挿入される場合には、眼内薬物送達プラットフォームが患者の眼内に配置された後に、外科医が、薬物送達プラットフォーム及び塊を長期間眼内に放置する。塊が消尽すると、薬物送達プラットフォームが患者の眼内に留置されている間に、外科医が第1の薬物溶出塊をリングから除去し、第2の薬物溶出塊をリングに固定してもよい。外科医は、治療剤の大部分又は全部が溶出して第1の塊が消尽した場合に、塊を、第1の塊の第1の治療剤とは異なる第2の治療剤を含む第2の塊と交換してもよい(塊が生分解性である場合には、完全に分解又は浸食された時点で、外科医が単に新しい塊を挿入してもよい)。放出可能取付手段が、前面に配置された隔室(16)を含み、かつ、隔室が、塊を受け入れたり隔室から除去したりするための開口を有する場合、外科医は、(隔室内に摩擦嵌合するための大きさ及び寸法に設定された)第2の薬物溶出塊を挿入し、第2の薬物溶出塊を隔室に挿入することによって第2の薬物溶出塊をリングに固定する。
【0018】
放出可能取付手段の効果は、レンズ保持構造の効果の有無に関わらず奏することができ、レンズ保持構造の効果は、放出可能取付手段の効果の有無に関わらず奏することができる。例えば、有水晶体患者(無傷の天然レンズを有する患者)の場合、薬物送達プラットフォームは、レンズ保持スカートなしで提供されてもよい。薬物送達プラットフォームは、(無傷の)水晶体嚢の前方の毛様溝に係合するプラットフォームハプティクスを用いて毛様溝に埋め込むことができる。偽水晶体患者(以前に眼内レンズを移植したことのある患者)に対しては、薬物送達プラットフォームを毛様溝に移植し、プラットフォームハプティクスを(無傷の)水晶体嚢の前方の毛様溝に係合させてもよい。有水晶体患者及び偽水晶体患者のための装置を毛様溝に埋め込む方法の実施形態において、薬物送達プラットフォームは、毛様溝の外周に当接するように構成されたハプティクスを備えてもよい。無水晶体患者(全くレンズを持たない患者)については、薬物送達プラットフォームは、毛様溝の外周に当接するように構成されたハプティクスを備えてもよいし、あるいは、水晶体嚢に当接するように構成されたハプティクスを備えて、対応する位置に移植してもよく、スカートを備えてもよいし備えなくてもよい。
【0019】
リングのみ、スカートのみ、又はリングとスカートの両方を含む、薬物送達プラットフォーム自体は、(眼で浸食したり、ゆっくりと崩壊したり、溶解したりし得る)薬物溶出塊又は他の固体薬物塊を含んでもよいし、別個の薬物溶出塊(17)なしで構成されてもよい。この構成では、薬物送達プラットフォームは、前面14A及び後面14Pと中央にある開口部15とを有するリング14を含む、図3及び図4の薬物送達プラットフォームの全ての特徴を備え、任意の構成として、薬物溶出塊17を保持するように構成された隔室16、プラットフォームハプティクス18、及び、後面14Pから後方に延びて開口部を部分的又は完全に取り囲む環状スカート19を備える。隔室17は省略されてもよいし、治療剤を含む薬物溶出塊と共に使用するために維持されてもよい。プラットフォームは、第1の治療薬を含んでもよく、また、隔室内の薬物溶出塊は、第1の治療薬とは異なる第2の治療薬を含むことができる。
【0020】
レンズ保持構造の効果は、放出可能取付手段の効果なしに得ることができる。例えば、患者へのIOLの眼内送達のための方法は、前面(14A)及び後面(14P)と中央にある開口部(15)とを有するリング(14)を挿入する工程を含み、スカート(19)が後面(14P)から後方に延びており、このスカートは、眼内レンズ組立体の眼内レンズ(20)及び開口部(15)の両方よりも大きい内径を有しており、スカート(19)が眼内レンズ組立体(12)を保持するように構成された開口部(15)を部分的に又は完全に囲む。リングは、IOLのためのセンタリング装置として、又は、非点収差、屈折誤差又は多焦点性を補正するためのピンホール装置又は第2のレンズのためのキャリアとして構成することができる。
【0021】
装置及び方法の好ましい実施形態を、それらが開発された環境に関連して記載したが、それらは単に本発明の原理の例示にすぎない。実施形態の種々の要素は、他の種類の各々と組み合わせて、それらの要素の効果や種類の効果を得てもよく、種々の有益な特徴は、実施形態において単独で、又は互いに組み合わせて使用されてもよい。本発明の思想び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び構成を考案することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】