(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】水素を使用する材料処理装置及びプロセス
(51)【国際特許分類】
B01J 6/00 20060101AFI20230406BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20230406BHJP
F27D 99/00 20100101ALI20230406BHJP
C22B 5/12 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B01J6/00 101A
F27D7/02
F27D99/00 A
C22B5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022542988
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 IB2021050199
(87)【国際公開番号】W WO2021144695
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517407132
【氏名又は名称】リオ ティント アルキャン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RIO TINTO ALCAN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッハ、トーマス
【テーマコード(参考)】
4G068
4K001
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4G068BA02
4G068BA05
4G068BB02
4G068BB03
4G068BB04
4G068BC01
4G068BC17
4K001AA02
4K001AA10
4K001BA05
4K001CA09
4K001CA16
4K001GA19
4K001HA09
4K001HA12
4K056AA02
4K056AA12
4K056BB10
4K056CA01
4K056CA06
4K056EA00
4K063AA02
4K063AA06
4K063AA15
4K063BA03
4K063BA04
4K063CA02
4K063DA01
4K063DA12
4K063DA13
4K063DA26
(57)【要約】
か焼又は還元プロセスなどによって材料を処理するためのプロセスが開示される。このプロセスは、反応チャンバー内で水素及び酸素を反応させて熱及び蒸気を生成すること、反応チャンバーから蒸気を排出すること、この熱を使用して材料を処理し、処理された材料を生成すること、並びに、反応チャンバーから排出された蒸気の少なくとも一部を当該プロセスに戻すことを含む。装置もまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
か焼又は還元プロセスなどによって材料を処理するためのプロセスであって、
反応チャンバー内で水素及び酸素を反応させて熱及び蒸気を生成すること、反応チャンバーから蒸気を排出すること、この熱を使用して材料を処理し、処理された材料を生成すること、並びに、反応チャンバーから排出された蒸気の少なくとも一部を当該プロセスに戻すことを含む、プロセス。
【請求項2】
水素及び酸素ガスの燃焼を介して水素及び酸素を反応させることによって蒸気を生成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
水素と化学的に結合された酸素との反応を介して水素及び酸素を反応させることによって蒸気を生成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記の処理された材料を形成するときに、例えば材料の脱水によって、反応チャンバー内で蒸気を生成することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
蒸気の凝縮温度を超える温度に蒸気を維持することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロセスにおける輸送ガスとして、例えば、処理される材料及び/又は処理された材料を反応チャンバー内に、及び/又は反応チャンバーから輸送するために、反応チャンバーで生成された蒸気を使用することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロセスにおける熱伝達媒体として反応チャンバーで生成された蒸気を使用することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスが、定常状態などの所定の条件に達した後、プロセスが少なくとも95体積%の蒸気である煙道ガスを反応チャンバーから排出することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プロセスが、定常状態などの所定の条件に達した後、プロセスが100体積%の蒸気である煙道ガスを反応チャンバーから排出することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
材料及び処理された材料が粒子形態である、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
プロセスで生成され、プロセスから排出された蒸気の少なくとも一部を、プラント、例えば、工業施設で使用される構成要素に移送することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記構成要素が、機械的蒸気再圧縮器、熱蒸気再圧縮器、発電機及び/又は熱回収ユニットを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記材料が水和物であり、処理された材料が水和物の脱水形態である、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記材料が金属酸化物であり、処理された材料が金属酸化物の還元形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記材料を脱水するためのか焼プロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
卑金属を形成するための製錬プロセス又は直接還元プロセスなどの還元プロセスの一部である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
か焼又は還元プロセスなどによって材料を処理するためのプロセスであって、
水素及び酸素を燃焼させて熱及び蒸気を生成すること、この熱を使用して材料を処理し、処理された材料を生成すること、並びに、当該プロセスにおける移送ガスとして前記燃焼から生成された蒸気を使用することを含む、プロセス。
【請求項18】
前記プロセスから蒸気を排出すること、及び、次いで排出された蒸気の少なくとも一部を当該プロセスに移送することをさらに含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
反応チャンバー内で水素及び酸素を燃焼させ、蒸気及び熱を生成すること、並びに、この反応チャンバー内で材料を処理することを含む、請求項17又は請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
水素及び酸素を燃焼させ、1つの反応チャンバー内で蒸気及び熱を生成すること、並びに、蒸気及び熱を第2反応チャンバーに移送し、この第2反応チャンバー内で材料を処理することを含む、請求項17又は請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載のプロセスを行うための装置。
【請求項22】
材料を処理するための装置であって、
当該装置は、
材料を処理するように構成された反応チャンバー;
この反応チャンバー内で酸素と反応することができる水素源であって、反応チャンバー内の材料を処理し、処理された材料と蒸気を含む煙道ガスとを生成するための水素源;
処理された材料の出口;
煙道ガスの出口;及び
煙道ガス出口を介して排出された煙道ガスの少なくとも一部を当該装置に供給するための第1ライン
を含む装置。
【請求項23】
煙道ガス出口を介して排出された煙道ガスの少なくとも一部を反応チャンバーとは別の構成要素に供給するための第2ラインを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記材料を処理するための第1反応チャンバーと、水素及び酸素を燃焼させ第1反応チャンバーで使用する熱を生成するための第2反応チャンバーとを含む、請求項21~23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
材料を処理するためのプラントであって、請求項21~24のいずれか1項に記載の材料を処理するための装置を含むプラント。
【請求項26】
材料を処理するためのプラントを始動するプロセスであって、
当該プラントは、材料が処理される反応チャンバーを含み、
所定の条件が達成されるまで反応チャンバーを加熱する予熱ステップ;及び
次いで、反応チャンバーへの材料の供給を開始するステップを含む、
プロセス。
【請求項27】
前記予熱ステップが、反応チャンバー内で、炭化水素燃料を含む任意の適切な反応物源を燃焼させることを含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記予熱ステップが、反応チャンバー内で水素を燃焼させ、熱を生成することを含む、請求項26に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、か焼(calcination)によって材料を処理するためのプロセス及び装置に関する。
本発明はまた、還元プロセスを介して材料を処理するためのプロセス及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
か焼(脱水)プロセス
材料は、水和物などから水を除去するため、及び/又は酸化物などから酸素を除去するために処理されることがよくある。
【0003】
例えば、バイヤー(Bayer)プロセスのプラントなどのアルミナ製造プラントでのアルミナ(Al2O3)の製造では、水酸化アルミニウム(Al2O3・3H2O-水酸化アルミナ、アルミニウム三水和物、及び水和アルミナとも称される)をか焼して水分を除去する。同様に、石膏(CaSO4・2H2O)の脱水により、無水物(CaSO4)が形成される。
【0004】
既知のか焼装置(calciner)は、天然ガス及び酸素を燃焼させて、N2、CO2、及び蒸気(スチーム)を含む煙道ガスと熱とを形成する反応チャンバーを有する。天然ガス及び酸素の燃焼によって反応チャンバーで生成された熱は、水和材料をか焼、すなわち脱水して、脱水された材料を形成するために使用される。か焼中の熱損失により、反応チャンバーに提供されるエネルギー量は理論上の要件を大幅に上回る。反応チャンバーで生成された熱の一部は、煙道ガス中の蒸気に移送(伝達)される。しかし、か焼に必要なエネルギー量を減らす方法として、煙道ガスの熱を再捕捉しようとすることは、技術的に困難であり、及び/又は費用が高額になる可能性がある。
【0005】
還元プロセス
ヘマタイト(Fe2O3)などの金属酸化物は、金属酸化物の金属を還元するために、製錬(smelting)又は他の還元プロセスなどの還元条件に曝すことができる。十分な還元が行われる場合、卑金属(ベースメタル)を形成することができる。
【0006】
製錬装置及びその他の還元装置は、卑金属及びCO2を含む副生成物を形成するための還元剤として石炭を使用することがよくある。しかし、か焼装置と同様に、製錬プロセスで生成される熱の一部は煙道ガスに移送される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
か焼装置に天然ガスを使用し、製錬に石炭を使用すると、CO2やその他の有害な副生成物が発生する可能性がある。
【0008】
上記の説明は、オーストラリア又は他のいずれかの場所での一般常識の認識を示すものと見なされるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、水酸化アルミニウムのか焼によるアルミナの形成プロセスや、石膏の脱水による無水物の形成プロセスなどのか焼プロセスのために、天然ガスの代わりに水素を燃焼用燃料として使用することによってかなりの利点を実現できるという本発明者らの認識に基づく。
【0010】
本発明はまた、製錬などの還元プロセスのために石炭の代わりに水素を使用することによってかなりの利点を実現することができるという本発明者らによる認識に基づく。
【0011】
本発明は、材料を処理して処理された材料を形成するためのプロセスを提供する。この処理には、脱水された材料を形成するためのか焼(すなわち脱水)プロセス、又は例えば卑金属(ベースメタル)を形成するための還元プロセスなどのプロセスが含まれ得る。例えば、材料は水酸化アルミニウム又は石膏であってよく、処理された材料は、それぞれ、アルミナ又は無水物であってよい。例えば、材料はヘマタイト(Fe2O3)であってよく、処理された材料は鉄であってよい。
【0012】
例として、本発明は、か焼プロセス又は還元プロセスなどによって材料を処理するためのプロセスを提供し、これは、反応チャンバー内で水素及び酸素を反応させ、熱及び蒸気を生成すること、反応チャンバーから蒸気を放出すること、この熱を使用して材料を処理し、処理済みの材料を製造すること、並びに反応チャンバーから排出された蒸気の少なくとも一部を当該プロセスに、例えばその反応チャンバーに戻すことを含む。
【0013】
「反応チャンバー」という用語は、本明細書では、か焼反応又は還元反応のためのチャンバーを意味すると理解される。
【0014】
水素及び酸素を反応させることの利点は、材料のか焼に天然ガスなどの炭化水素燃料源を使用したり、材料の製錬などの還元に石炭を使用したりする必要性を排除できることである。これは、か焼プロセス及び還元プロセスからの炭素ベースの排出量を削減するのに役立ち得る。
【0015】
さらに、本プロセスは、酸素源として酸素のみを使用して操作することができ、それにより、空気(すなわち78%の窒素及び21%の酸素を有するガス混合物)の使用を完全に回避することができる。これは、プラントで処理されるガスの体積量を減らすという点で利点である。
【0016】
本プロセスは、酸素が豊富な空気で操作することができ、濃縮の量に応じて、空気で動作する場合と比較して窒素の量を減らすことができる。
【0017】
上述のように、本プロセスは、反応チャンバーから排出された蒸気の少なくとも一部を反応チャンバーに戻すことを含む。これは、プロセスに戻すという点で有利であり、例えば、蒸気に保持されている熱を反応チャンバーに戻し、それによって材料の処理に必要なエネルギー量を減らすのに役立つ。蒸気はまた、プロセスを通じて、材料及び/又は処理された材料の流動化及び/又は輸送に寄与し得る。排出されプロセスに移送された蒸気は、排出された蒸気の体積に対して、少なくとも30体積%、通常少なくとも40体積%であってよい。
【0018】
上述のように、本プロセスは水素及び酸素を反応させることによって蒸気(スチーム)を生成する。
この反応は、水素及び酸素ガスの燃焼によるものであってよい。
【0019】
本反応はまた、化学的に結合した酸素と水素とを反応させることによるものであってよい。
本明細書では、「化学的に結合した」(”chemically-bonded”)という用語は、金属などのヘテロ原子に化学的に結合している元素状酸素を意味するものと理解される。例えば、化学的に結合した酸素としては、酸化鉄に存在する酸素が挙げられ得る。
【0020】
さらに、例えば材料の脱水によって、処理された材料を形成するときに反応チャンバー内で蒸気が生成され得る。
【0021】
本プロセスは、プロセスの操作条件下で蒸気の凝縮温度を超える温度に蒸気を維持することを含み得る。
通常、蒸気の凝縮温度は大気圧で100℃である。
このプロセスは、大気圧以下で実施することができる。
【0022】
別の方法で説明すると、本プロセスは、上述のようにプロセスを操作することから生じる圧力よりも高い圧力下に反応チャンバーを置くことなく、すなわち、水素及び酸素を反応チャンバーに供給すること、水素及び酸素を燃焼させ、蒸気及び熱を生成すること、並びに、本プロセス内でこの熱を使用して材料を処理することによって実施することができる。
【0023】
より具体的には、本プロセスは、反応チャンバーを圧力容器として構成することなく実施することができる。
【0024】
本プロセスは、反応チャンバーで生成された蒸気を輸送手段として、すなわち、プロセス内の流動化ガスとして使用することを含み得る。
【0025】
材料及び/又は処理された材料は、粒子形態であってよい。
材料及び/又は処理された材料が粒子形態である場合、反応チャンバー内で生成された蒸気を使用して、粒子状の材料及び/又は粒子状の処理された材料を反応チャンバー内へ、及び/又は反応チャンバーから輸送することができる。
【0026】
本プロセスは、反応チャンバーで生成された蒸気をプロセスの熱伝達媒体として使用することを含み得る。
【0027】
水素及び酸素を反応させて材料を処理する別の利点は、プロセスにおいて、並びに/又は、バイヤープロセスのプラントなどのプラントや、他の工業施設及び/若しくは工業施設の構成要素/装置の他のユニットの操作において、有益に使用され得る蒸気を生成する機会が与えられることである。
【0028】
例えば、反応チャンバーで生成された蒸気の一部は、機械的な蒸気再圧縮機、熱的な蒸気再圧縮機、発電機、及び/又は熱回収ユニットを含む構成要素に移送され得る。発電機としては、カリナ(Kalina)発電機又は有機ランキンサイクル発電機が挙げられ得る。熱回収ユニットとしては、復熱装置、再生器、熱交換器、熱ホイール、エコノマイザー、ヒートポンプなどが挙げられ得る。追加の例として、反応チャンバーで生成された蒸気の少なくとも一部は、ボーキサイトの消化中又はバイヤー液の蒸発中など、か焼以外のプロセスに使用されてよい。
【0029】
水素は99%超の純度を有し得る。
【0030】
煙道ガスは、最大100%の蒸気(スチーム)であってよい。
【0031】
材料は水和物であってよく、そして水和物の脱水形態である処理された材料を形成するために処理され得る。
【0032】
本プロセスは、材料を脱水するためのか焼プロセスであってよい。
【0033】
材料は、ヘマタイト(Fe2O3)などの金属酸化物であってよい。
その場合、本プロセスは、例えば、鉄などの卑金属を形成するための製錬直接還元プロセスの一部であってよい。
【0034】
本発明はまた、上記のプロセスを実施するためのプラントを提供する。
【0035】
本発明はまた、か焼プロセス又は還元プロセスなどによって材料を処理するためのプラントを始動するプロセスを提供し、このプラントは、材料が処理される反応チャンバーを含み、このプロセスは、定常状態条件などの所定の条件が達成されるまで反応チャンバーを加熱する予熱ステップ、及び次いで反応チャンバーへの材料の供給を開始するステップを含む。
【0036】
所定の条件は、定常状態条件であってよい。
「定常状態条件」(“steady state conditions”)という用語は、本明細書では、プロセスが始動段階を完了し、プラントオペレータに安定した操作を示す制御パラメータ内の所定の操作状態で、又はその所定の操作状態を超えて操作することを意味するものと理解される。制御パラメータは、プロセスのさまざまなポイントでの温度を含む、プラントオペレータによって選択された任意の適切な制御パラメータであり得る。制御パラメータの一例は、蒸気の凝縮温度又はそれを超える温度である。
【0037】
本プロセスが定常状態条件に達した後、プロセスは、少なくとも85体積%、典型的には少なくとも90体積%、より典型的には少なくとも95体積%の蒸気である煙道ガスを反応チャンバーから排出することを含み得る。
【0038】
予熱ステップは、水素及び酸素の燃焼に限定されない。予熱ステップは、炭化水素燃料を含む任意の適切な燃料源を反応チャンバー内又は反応チャンバーの外部で燃焼させること、及び熱を反応チャンバーに移送することを含み得る。
【0039】
特定の例として、外部蒸気源、例えば、工業プラントで生成された蒸気を使用して、予熱ステップで反応チャンバーを加熱することができる。反応チャンバーは、生成された蒸気の少なくとも一部を反応チャンバーに移送することによって、予熱ステップで加熱されてよい。
【0040】
反応チャンバー内で水素及び酸素を反応させるために定常状態条件に達した後に操作条件を変更することは、所定の期間にわたって水素の割合を増加させるガス供給物を提供することを含み得る。
【0041】
本発明はまた、か焼プロセス又は還元プロセスなどによる材料を処理するためのプロセスを提供し、このプロセスは、水素及び酸素を燃焼させて、蒸気及び熱を生成すること、この熱を使用して材料を処理し、処理された材料を生成すること、並びに燃焼から生成された蒸気をプロセス中の輸送ガスとして使用することを含む。
【0042】
先行段落で説明されたプロセスは、プロセスから蒸気を排出し、次いで排出された蒸気の少なくとも一部をプロセスに移送することをさらに含み得る。
【0043】
説明されたプロセスは、水素及び酸素を燃焼させ、反応チャンバー内で蒸気及び熱を生成すること、並びに反応チャンバー内で材料を処理することを含み得る。
【0044】
あるいは、本プロセスは、1つの反応チャンバーで水素及び酸素を燃焼させ、蒸気及び熱を生成すること、蒸気及び熱を第2反応チャンバーに移送すること、並びに第2反応チャンバーで材料を処理することを含み得る。
【0045】
本プロセスは、天然ガスを燃料源として、及び空気を燃料源の燃焼用の酸素源として使用することで操作される、製錬プラントなどの既存のか焼プラント又は還元プラントに適用され得る。
【0046】
既存のプラントは、燃料源として水素を使用し、及び燃料源の燃焼などの反応のための酸素源として酸素(通常は酸素のみ)を使用するように適切に改変されてよい。
【0047】
さらに、既存のプラントは、反応チャンバーから排出された少なくとも一部の蒸気が反応チャンバーに移送され、輸送ガスとして、及び任意選択で熱伝達媒体として機能するように改変されてよい。
【0048】
本発明はまた以下を提供する:
材料を処理するための装置であって、
当該装置は、
材料を処理するように構成された反応チャンバー;
この反応チャンバー内で酸素と反応することができる水素源であって、反応チャンバー内の材料を処理し、処理された材料と蒸気を含む煙道ガスとを生成するための水素源;
処理された材料の出口;
煙道ガスの出口;及び
煙道ガス出口を介して排出された煙道ガスの少なくとも一部を当該装置に供給するためのライン
を含む装置。
【0049】
本装置は、煙道ガス出口を介して排出された煙道ガスの少なくとも一部を反応チャンバーとは別の構成要素に供給するためのラインを含み得る。
【0050】
本装置は、材料を処理し、水素及び酸素を燃焼させるための第1反応チャンバー、並びに、第2反応チャンバーで使用するための熱を生成する第2反応チャンバーを含み得る。
【0051】
2つの反応チャンバーのオプションは、本発明の処理プロセスが既存の処理プラントに組み込まれるかどうかの状況において有利であり得る。
【0052】
その場合、既存の反応チャンバーは、材料を処理するためのチャンバーとして機能し続けることができ、そして、第2反応チャンバーは、水素及び酸素を燃焼させるために専用に構築され、既存のプラントに近接して配置され、かつ動作可能に接続されて既存の反応チャンバーに熱を供給することができる。
【0053】
本発明はまた、材料を処理するためのプラントを提供し、このプラントは材料を処理するための上記装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の諸実施形態は、以下の非限定的な図面を参照して更に説明される。
【0055】
【
図1】
図1は、本発明による材料を処理するための装置の一実施形態を例示する。
【
図2】
図2は、本発明による材料を処理するための装置の別の実施形態を例示する。
【
図3】
図3は、他の唯一ではないが、本発明による材料を処理するための装置の別の実施形態を例示する。
【
図4】
図4は、
図3に示される本発明による材料を処理するための装置の実施形態に基づく、本発明による処理プラントの一実施形態を例示する。
【
図5】
図5は、本発明による蒸気環境でのギブサイトのか焼に関する試験作業で生成されたXRDの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、材料を処理するための装置の一実施形態を示す。
図1では、装置23は、材料を処理するための反応チャンバー25を含む。
【0057】
反応チャンバー25は、任意の適切なチャンバーであり得る。例えば、反応チャンバー25は、ロータリーキルン(kiln)、水素還元容器、又はガス浮遊か焼チャンバーを包含しうる。本発明のプロセスは、高圧条件下で操作される必要はなく、従って反応チャンバー25は圧力容器である必要はない。
【0058】
反応チャンバー25は、水素源27、酸素源29(この実施形態では酸素のみである)及び材料源31と流体連絡している。材料源31は、処理される材料を含む。反応チャンバー25は、これらの供給材料を反応チャンバー25に供給するための入口及び移送ラインを含む。反応チャンバー25は、反応チャンバー25で形成された処理材料を排出するための処理材料排出ライン33を含む。反応チャンバー25はまた、反応チャンバー25で生成された煙道ガスを排出するための出口ライン35を含む。
【0059】
水素源27及び酸素源29からの水素及び酸素は、それぞれ、反応チャンバー25に供給され、反応に供され、例えば燃焼に供されて、熱及び煙道ガスを生成する。煙道ガスは、蒸気を含めて、煙道ガスライン35を介して反応チャンバー25から排出される。
【0060】
熱は材料を処理するために使用される。
【0061】
材料が水和物などの結合水を有する場合、材料を処理することは、材料から水を追い出し、それぞれ水和物及び蒸気を形成することを含む。例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、石膏(CaSO4・2H2O)、カルサイト(CaCO3)、及び水和石炭は、反応チャンバー25で生成された熱を使用して処理され、それぞれ、アルミナ(Al2O3)、無水石膏(CaSO4)、石灰(CaO)及び脱水石炭が形成され得る。
【0062】
燃料源が水素に限定されず、天然ガスなどの他の燃料を含む場合(本発明のいくつかの実施形態の場合のように)、煙道ガス流は、蒸気に加えてCO2などの他の成分を有する。しかしながら、水素が唯一の燃料源であり、反応チャンバー25内で酸素のみと反応に供され、例えば燃焼に供される場合、蒸気は煙道ガスライン35内の唯一の成分である。煙道ガスは、粒子状物質及びその他の微量の煙道ガス成分のような不純物を含み得るが、さもなければ99%超のような高い純度を有することを理解されたい。蒸気のみの発生は、蒸気を再利用する前に、CO2やN2などの他の煙道ガス成分を分離する必要がないことを意味する。煙道ガスを個々の成分に分離することは技術的に困難であり、煙道ガスから蒸気を分離しようとする場合には費用が高額になることが多い。
【0063】
一実施形態では、水素源27は99%を超える純度を有する。
【0064】
装置23が材料から水を脱水又は除去するために使用される場合、材料から追い出された水は煙道ガスライン35にも存在する。このように、装置23には2つの蒸気源があり、第1の源は水素及び酸素の反応からのものであり、第2の源は材料(つまり水和物)の脱水からのものである。
【0065】
いくつかの実施形態において、酸素は、水素の完全燃焼を確実にするために、水素に対して化学量論的に過剰に提供される。
【0066】
酸素が化学量論的に過剰に供給される場合、煙道ガス供給ライン35ラインの煙道ガスは、微量(例えば5%未満)の酸素を有することがある。
一般に、水素の燃焼に使用される過剰な酸素は最小限に抑えられる。
【0067】
水素を使用してヘマタイト(Fe2O3)又は別の金属酸化物の形で材料を還元する場合、通常、反応には過剰な水素が必要とされ、つまり、反応を進行させることを可能にする温度を与えるのに十分な水素、及びこれに次いでヘマタイト又は他の金属酸化物を還元することを可能にする十分な水素が必要とされる。
【0068】
例えば、ヘマタイトの還元はまた、鉄だけでなく、様々な程度の種々の酸化生成物をもたらす可能性があることにも留意されたい。従って、製品にはFeOが含まれる場合がある。
【0069】
上述のように、反応に水素及び酸素のみを使用して反応チャンバー25のための熱を生成することによって、装置23はCO2又は他の炭素ベースの排出物を生成しない。
【0070】
水素が再生可能な資源から供給される場合、装置23は、炭化水素燃料に依存する装置と比較して、そのカーボンフットプリントを大幅に削減することができる。
【0071】
図1に示される実施形態では、煙道ガスライン35は、反応チャンバー25と流体連絡している煙道ガス移送ライン37を含む。煙道ガス移送ライン37は、煙道ガスライン35内の煙道ガス(通常、少なくとも実質的に蒸気である)の少なくとも一部を反応チャンバー25へ移送する。煙道ガス中の熱が捕捉されず、代わりに環境に放出される場合、反応チャンバー25で生成された熱の最大30%が環境に失われる。煙道ガスライン35を介して蒸気の少なくとも一部を反応チャンバー25に戻すことの利点は、そうでなければ蒸気を排出することによって環境に失われるであろう熱が反応チャンバー25に戻されることである。このようにして蒸気からの熱を装置23の他の場所で使用できるので、蒸気は熱伝達媒体として機能し得る。煙道ガス移送ライン37を使用して蒸気を反応チャンバー25に戻すことはまた、蒸気が反応チャンバー25への熱に寄与するので、反応チャンバー25の反応温度を維持するために必要とされる水素の量を減らすのに役立つことができる。
【0072】
いくつかの状況において、反応チャンバー25内の反応条件によっては、煙道ガスがバッグハウス(bag house)及び/又は電気集塵器などの固体濾過ユニットを通過した後でも、煙道ガス(すなわち蒸気)中に少量の固体が存在する場合があることに留意されたい。煙道ガス中に少量の固形物が存在する場合、煙道ガス移送ライン37を介して蒸気の少なくとも一部を反応チャンバー25に戻す前に、固形物を除去するために追加の濾過ステップを実行することができる。
【0073】
煙道ガスライン35及び煙道ガス移送ライン37における蒸気の凝縮を防止するために、ライン35、37は、蒸気の凝縮温度を超える温度に維持される。一実施形態では、蒸気の凝縮温度は100℃である。一実施形態では、煙道ガスライン35内の蒸気は、過熱蒸気、すなわち100℃超である。一実施形態では、蒸気の温度は、160℃以上に維持される。蒸気の温度を100℃超(例えば約160℃)に維持することは、蒸気の凝縮を防ぐのに役立ち得る。蒸気の凝縮を防止することはまた、材料及び/又は処理された材料が反応チャンバー25及び周囲の構造の壁及び表面に「付着」(“stick”)する原因となる凝縮蒸気の発生を低減するのに役立ち得る。煙道ガスライン35内の蒸気が凝縮するのを防ぐことは、蒸気の密度が、ライン35内の蒸気が輸送ガスなどの流体流動媒体として作用することを妨げる閾値を下回るのを防ぐのに役立つ。蒸気をブレークアップする(水から蒸気に散解させる)ために必要な潜熱はかなりの量のエネルギーを使用するので、装置10の温度を蒸気の凝縮温度より高く維持することは、エネルギー消費量が多い蒸気加熱ステップを低減又は排除するのに役立つ可能性がある。
【0074】
蒸気の凝縮温度は、煙道ガスライン35の圧力に依存する。一般に、煙道ガスライン35の圧力が上昇するにつれて、蒸気が凝縮する温度も上昇する。上述のように、一実施形態では、装置10は約1気圧などの大気圧で操作される。
【0075】
図2は、材料を処理するための装置の別の実施形態を示す。
図2の装置23aは、装置23に類似しており、同じ参照番号が類似の特徴を描写するために使用されている。
【0076】
装置のさらなる実施形態が
図2に示されている。
図2の装置23aは、
図1の装置23に類似しており、同じ参照番号が類似の特徴を描写するために使用されている。
【0077】
図2に示されるように、装置23aは、装置23と同様の水素源27及び酸素源29を有するが、
図1の材料源31の代わりに材料源31aが使用される。従って、装置23aでは酸素及び水素を反応チャンバー25で燃焼させて、熱及び蒸気を生成するが、材料源31aは化学的に結合された酸素を有する材料を含む。水素は材料を還元し、水素及び酸素の燃焼によって生成された熱を使用して材料の還元を促進することができる。そのような実施形態では、水素及び酸素の燃焼は、酸素と材料とのいかなる接触をも最小化又は排除するために、材料源23aを反応チャンバー25に導入する前に起こり得る。これは、材料及び/又は処理された材料の酸素による酸化の発生を低減又は排除するのに役立つ可能性がある。水素はまた、通常、酸素源29からの酸素に対して化学量論的に過剰に存在し、材料の還元の前に全ての酸素が確実に消費されるのを助けるであろう。
【0078】
一例として、材料源31aは、マグネタイト(Fe3O4)及びヘマタイト(Fe2O3)などの酸化鉄であり得る。酸化鉄中の酸素は、反応チャンバー25内の水素と反応して、水及び酸化鉄の還元形態を形成することができる。鉄の還元形態は、反応条件及び金属酸化物と水素の化学量論比に依存する。例えば、Fe2O3をFe3O4に還元することができる。さらなる還元を使用して、FeO、そして最終的にはFe0を形成することができる。還元の程度は、反応条件及び反応物質の化学量論比によって決定される。酸化鉄は材料源31aであると説明されているが、装置23aは鉄の還元に限定されず、他の金属酸化物は装置23aで処理(すなわち還元)され得る。
【0079】
装置23について煙道ガス移送ライン37を介して煙道ガスライン35から反応チャンバー25に煙道ガス(すなわち蒸気)の少なくとも一部を移送することの利点は、装置23aについても当てはまる。
【0080】
図1及び
図2に示される実施形態では、材料/処理された材料の流れは、煙道ガスの流れに対して向流(counter-current)である。しかしながら、いくつかの実施形態では、材料/処理された材料及び煙道ガスの流れは並流(co-current)である。装置23が材料を脱水するために使用される場合、向流が有用であり得る。
【0081】
図3は、材料を処理するために使用される装置100の一例を示す。
装置100は、
図1の実施形態の装置23と同様である。これに関し、装置100は、装置23と同様にして、反応チャンバー112、水素源114、酸素源115、材料源116、処理された材料の排出ライン117、煙道ガス排出ライン118、及び煙道ガス移送ライン120を含む。しかしながら、装置100は、例えば、酸素源115を除去すること、及び/又は材料源116を化学的に結合した酸素を有する材料源で置き換えることによって、装置23a又は23bと同様に変更することができる。
【0082】
図3に示された実施形態では、材料は、乾燥機124を介して材料源116から反応チャンバー112に供給される。乾燥機124は、材料から少なくとも一部の表面結合水を除去し、反応チャンバー112の上流に少なくとも一部が乾燥された材料を形成する。乾燥機124は、典型的には、装置100が材料を脱水するために使用されるときに使用される。例えば、材料が水酸化アルミニウム又は石膏である場合、乾燥機124は、表面結合水の全てを除去することができる。乾燥機124は、全ての実施形態において必要とされるわけではないことに留意されたい。使用される場合、乾燥機124に移送された後、材料は次に反応チャンバー112内で処理される。例えば、反応チャンバーはか焼装置として機能し得、材料の処理はか焼によって行われる。
【0083】
図3に示された実施形態では、例えば、処理された材料を形成する反応チャンバー112内でのか焼後、処理された材料は、次いで、処理された材料から熱を回収する熱回収装置128に移送される。熱回収装置128は、任意の適切な形態の装置であり得る。この熱回収は、処理された材料を冷却し、冷却された処理済み材料を形成し、装置100内に熱を保持するのに役立つ。処理された材料の排出ライン117は、包装及び出荷などのさらなる処理のために冷却された処理済み材料を供給する。
【0084】
図3に示された実施形態では、バッグハウスなどのダスト回収(集塵)装置126は、乾燥機124と流体連絡している。煙道ガスライン118は、ダスト回収装置126から延在している。
【0085】
図3に示された実施形態では、煙道ガス移送ライン120は、煙道ガスライン118及び熱回収装置128と流体連絡している。煙道ガス流118内の蒸気の少なくとも一部は、煙道ガス移送ライン120を介して熱回収装置128に移送される。熱回収装置128に移送された蒸気は、装置100を介して材料及び/又は処理された材料を移送するのを助けるための輸送ガス又は流体媒体として使用される。
【0086】
熱回収装置128内に通される蒸気は、反応チャンバー112、乾燥機126(使用される場合)に移動し、次いで、ダスト回収装置126を通じて移動する。この蒸気移動の方向は、矢印132によって示される。材料が乾燥機124内に導入されるか、及び/又は反応チャンバー112に入ると、ダスト及び他の微粒子物質が蒸気によって運ばれ、ダスト回収装置126に移送される。
【0087】
材料及び処理された材料は、一般に、熱回収装置128、反応チャンバー112及び乾燥機126を通る蒸気の流れと反対方向に(すなわち、蒸気の移動方向132と反対に)移動するので、装置100を通る材料及び処理された材料の正味の流れは、一般に、蒸気の流れに対して向流である。乾燥機124、反応チャンバー112、及び熱回収装置128内で、材料及び/又は処理された材料並びに蒸気の局所的な並流があり得るものの、しかしながら、全体として、材料及び/又は処理された材料の流れの正味の向流が生じ得ることに留意されたい。
【0088】
煙道ガスライン118は2つのラインに分割されている。第1ラインは、熱回収装置128に蒸気を提供する上記の煙道ガス移送ライン120である。第2ラインは、装置100の外部で使用するための蒸気源130として蒸気を提供する。
【0089】
蒸気源130は、工業プラント/施設などのプラント/施設内の他の装置/構成要素(単数又は複数)に蒸気を供給するために使用され得る。
【0090】
例えば、プラントがバイヤープロセスのプラントなどのボーキサイト処理プラント/施設である場合、蒸気源は、ボーキサイトの消化中、使用済みバイヤー液体の蒸発中や、バイヤープロセス内及び低圧蒸気を補足するボイラー/蒸気発生器内の不純物を除去するための苛性化(causticisation)中に、消化器を包含する装置/構成要素(単数又は複数)によって使用され得る。このようにして、装置100は、蒸気発生器として利用することができる。蒸気源130から延びる破線131は、いくつかの実施形態では、蒸気が貯蔵又は排出されず、代わりに装置/構成要素によって他の場所で使用されるという事実を表す。蒸気源130内の蒸気は、装置/構成要素によって連続的に使用することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、装置/構成要素は、蒸気源130をより高い圧力に「アップグレード」するための機械的蒸気再圧縮器及び/又は熱的蒸気再圧縮器などの再圧縮器である。例えば、機械的蒸気再圧縮は蒸気を1気圧から5気圧にアップグレードでき、熱的蒸気再圧縮は蒸気を5気圧から10気圧超にアップグレードできる。
【0092】
いくつかの実施形態では、装置/構成要素は、蒸気源130によって提供される蒸気から電気を生成するなど、蒸気中の熱を仕事に変換することができる、カリナ(Kalina)システム、有機ランキンサイクルシステム、ターボエキスパンダーなどの発電機又は電力ユニットである。
【0093】
いくつかの実施形態では、装置/構成要素は、復熱装置、再生器、熱交換器サーマルホイール、エコノマイザー、ヒートポンプなどの熱回収ユニットであり、蒸気源130から熱を回収する。
【0094】
装置/構成要素が蒸気源130から熱を回収するとき、蒸気源130から十分な熱が回収される場合、蒸気源130内の蒸気が凝縮し、それによって水の供給(図示せず)を形成することができることに留意されたい。この給水は、プラント/施設で使用され得る。
【0095】
煙道ガス移送ライン120及び蒸気源130内の蒸気の相対的な流れを制御するために、制御弁134が、煙道ガス移送ライン120と蒸気源130との接合部に設けられる。制御弁134は、煙道ガス移送ライン120及び蒸気源130における蒸気の相対的な流れを制御するために手動で又は自律的に操作され得る。煙道ガス移送ライン120及び蒸気源130における蒸気の相対的な流れは、装置100の操作条件及び例えばか焼のための熱の要件によって決定され得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、上記の装置/構成要素は制御弁134の上流に与えられる。そのような実施形態では、煙道ガス中の蒸気は、制御弁134を通過して煙道ガス移送ライン120又は蒸気源130に入る前に、装置/構成要素によって利用される。蒸気源130に入る蒸気は、破線131によって表されるように他の場所で利用することができる。
【0097】
装置100によって生成された過剰な蒸気を利用することは、操作に蒸気の使用が必要とされるプラント/施設内及びその周辺に配置された他の装置(apparatus/equipment)の効率を改善するために役立ち得る。余分な蒸気を利用することはまた、熱エネルギーを仕事に変換するために役立ち得る。
【0098】
酸素源115及び水素源114は、反応チャンバー112に接続され、これらの供給材料を反応チャンバー112に直接供給するものとして
図3に示されているけれども、酸素源115及び水素源114は反応チャンバー112に流体連絡していることのみが必要とされることに留意されたい。従って、酸素源115及び/又は水素源114は、反応チャンバー112に直接接続されるのではなく、反応チャンバー112の上流側に接続され得る。
【0099】
図3では、反応チャンバー112の上流側は、矢印132の方向と反対である、すなわち熱回収装置128に向かっている。例えば一実施形態では、酸素源115は、熱回収装置128に接続されている。
【0100】
そのような構成により、熱回収装置128を介して酸素源115から反応チャンバー112に移送される酸素は、出口ライン117内又はその近くで処理された材料を冷却するのを助ける冷却流体として機能し得る。同時に、酸素は、反応チャンバー112に入る前に加熱される。同様に、水素源114は、酸素源115の代わりに熱回収装置128に接続され得る。さらなる代替として、酸素源115及び水素源114の両方が熱回収装置128に接続される。
【0101】
酸素源115及び/又は水素源114が反応チャンバー112の上流側に接続されている場合、熱回収装置128に移送される戻りライン120からの蒸気は、酸素及び/又は水素ガスを燃焼のために反応チャンバー112に移送するために使用される。
【0102】
一実施形態では、材料源116を介して反応チャンバー112に供給される材料は、材料源31aがそうであるように、酸素が材料に化学的に結合されている形態である。そのような実施形態では、酸素源115の必要はないかもしれない。従って、酸素源115は全ての実施形態で必要とされるわけではない。しかしながら、いくつかの実施形態では、材料源116は、化学的に結合した酸素を有する材料を反応チャンバー112に提供し、酸素源115もまた、
図2の装置23aを参照して説明したのと同様の方法で反応チャンバー112に酸素を提供する。
【0103】
図1~
図3の装置23、23a、23b及び100は、例示的な形態でのみ示されている。これらは、より多くの可能な実施形態の例である。反応チャンバー112、熱回収装置128及び乾燥機126などの特徴は、いくつかの異なる構成要素から形成することができ、反応チャンバー112、熱回収装置128及び乾燥機126は、異なる段階(ステージ)を有し得ることを理解されたい。例えば、反応チャンバー112は、一次及び二次の反応段階を有することができる。熱回収装置128はまた、異なる段階で処理された材料を清浄化するのを助ける一連の相互接続されたサイクロンなどのいくつかの冷却段階を有することができる。
【0104】
図3に示された装置100の実施形態は、グリーンフィールド(greenfield)のプラントとして、又は既存の装置に組み込む(既存の装置に後付けする)ことによって形成することができる。
【0105】
上述のように、1つの組み込みオプションには、既存の反応チャンバーに熱を供給するため既存の装置に近接して配置されると共に、操作可能に接続され、水素及び酸素を燃焼させる別個の専用反応チャンバーを提供することが含まれる。
【0106】
組み込みオプションに関して、か焼用途などで材料を水和するために使用される既存の装置は、通常、煙道ガスを大気に放出し、反応チャンバーに接続された天然ガス供給を有する。典型的には、空気は酸素源として使用され、熱回収装置、例えば128を介して反応チャンバーに移送される。空気はまた、典型的には移送流体としても使用される。既存のか焼装置は、煙道ガス戻りライン120、酸素源115、及び水素源114を備えていない。
【0107】
一実施形態では、装置を組み込むプロセスは、煙道ガス流、例えば118が反応チャンバー112と流体連絡するように煙道ガス移送ライン120を取り付けることを包含する。
図3に示されるように、煙道ガス移送ライン120は、熱回収装置128を介して反応チャンバー112と流体連絡している。次に、水素源、例えば114、及び任意選択で酸素源、例えば115が反応チャンバー112に接続される。
【0108】
図3に示された装置100は、装置100を通して材料及び/又は処理された材料を移送するのを助けるために輸送ガス又は流体媒体として作用する蒸気の使用を必要とするので、装置100は理想的には蒸気の凝縮温度又はそれを超える温度にあるべきである。蒸気の凝縮温度は約100℃であるが、これは装置100の操作圧力に依存する。一実施形態では、装置100は160℃以上に維持される。
【0109】
装置100を起動するために、反応チャンバーは、反応チャンバーへの材料の供給を開始する前に、予熱ステップで、定常状態として所定の操作状態又はそれを超える状態になるように加熱される必要がある。一実施形態における所定の操作状態は、蒸気の凝縮温度以上の温度である。反応チャンバー112を蒸気の凝縮温度より高く加熱することは、反応チャンバー112内で酸素及び水素を燃焼させて熱を発生させることによって達成することができる。いったん十分な熱が発生すれば、反応チャンバー112は蒸気の凝縮温度より高くなければならない。水素及び酸素の燃焼によって生成された蒸気は、例えば、煙道ガス戻りライン120を介して反応チャンバー112に移送されて、反応チャンバー112を加熱することができる。
【0110】
一実施形態では、反応チャンバーが蒸気の凝縮温度以上になる前に反応チャンバー112が凝縮蒸気で溢れるのを防ぐために、反応チャンバー112は、典型的には、始動段階で、反応チャンバー112内での純粋な水素及び酸素の燃焼による以外の予熱オプションによって蒸気の凝縮温度を超える温度に加熱される。いったん反応チャンバー112が蒸気の凝縮温度を超える温度に加熱されると、操作条件を変更することができ、次いで水素及び酸素を反応チャンバー112内で燃焼させて熱及び蒸気を生成することができる。次に、反応チャンバー112で生成された蒸気を使用して、装置100の他の構成要素を加熱することができる。
【0111】
一実施形態では、少なくとも反応チャンバー112は、水素及び酸素の燃焼の前に、プラント/施設内の別の場所からの蒸気などの外部熱源を用いて始動段階で予熱される。例えば、プラント/施設がボーキサイト精製所である場合、ボーキサイトの消化中に生成された蒸気は、蒸気源130、戻りライン120、及び熱回収装置128を介して反応チャンバー112に移送され得る。
【0112】
一実施形態では、始動段階で反応チャンバー112を予熱することは、反応チャンバー112内で天然ガス及び酸素を燃焼させて熱を発生させることを含む。いったん反応チャンバー112が蒸気の凝縮温度以上になると、操作条件が変更され、水素が天然ガスの代わりに酸素との燃焼に供される。
【0113】
天然ガスから水素への移行は、段階的な移行であってよい。例えば、反応チャンバー112の予熱は、最初に100%天然ガスで開始し、ある期間にわたって、又は所定の反応チャンバー条件が満たされると、天然ガスが完全に水素に置き換えられるまで、天然ガスの一部が水素に換えられる。天然ガスは、反応チャンバー112が所定の操作状態に到達する直前に完全に置換されてよい。
【0114】
あるいは、始動段階での反応チャンバー112の予熱は、水素が希薄な燃料混合物を燃焼させることによって開始され、次いで、この燃料混合物は所定の操作状態が達成されるまで水素リッチな燃料混合物に移行され、その時点で水素リッチな燃料混合物は100%の水素と交換される。
【0115】
一実施形態では、反応チャンバー112は、熱回収装置128の位置などで反応チャンバー112の上流を加熱し、その熱を反応チャンバー112に伝達させることによって、蒸気の凝縮温度以上の温度に加熱される。
【0116】
材料源116が化学的に結合した酸素を有する材料を提供する場合、反応チャンバー112を予熱することは、酸素源115から反応チャンバー112に酸素を移送することを含み得、そこで酸素は最初に水素源114からの水素と共に燃焼されて熱を生成し、反応チャンバー112を蒸気の凝縮温度以上の温度に加熱する。次いで、化学的に結合した酸素を有する材料は、水素と反応させるために反応チャンバー112に移送される。
【0117】
化学的に結合した酸素を有する材料が反応チャンバー112に移送される前に、酸素源115からの酸素の供給を、例えば0%まで減少させることができる。代替的には、酸素源115からの酸素の還元及び化学的に結合された酸素を有する材料の反応チャンバー112への移送は、同時に起こり得る。さらなる代替として、化学的に結合された酸素を有する材料は、酸素源115からの酸素が還元される前に、反応チャンバー112に移送され得る。
【0118】
材料源116からの化学的に結合した酸素を有する材料に加えて酸素源115が必要とされる実施形態では、酸素源115からの酸素の供給は、処理条件に応じて、酸素源から必要とされる酸素の最小量まで減少させることができる。
【0119】
例えば、処理条件が、酸素の80%が化学的に結合した酸素から与えられ、酸素の20%が酸素源115から与えられることを必要とする場合、酸素源115からの酸素の100%を最初に反応チャンバー112に供給して、水素と共に燃焼させて熱を発生させてよく、次に酸素源115からの酸素の量を所定の時間にわたって、又は所定の反応条件が満たされた後に20%まで減少させると同時に、材料からの化学的に結合した酸素の量を増加させることができる。
【0120】
始動段階で反応チャンバー112を予熱することは、異なる加熱プロセスを組み合わせることができる。例えば、反応チャンバー112は、外部熱源を使用して、酸素及び水素、又は酸素及び天然ガスを含む燃料混合物を燃焼させることによって予熱することができる。
【0121】
図4は、
図3に示された装置100に基づくか焼プラント200、例えば、水酸化アルミニウムをか焼してアルミナを形成するためのか焼プラントの一実施形態を示す。
【0122】
以下の要約は、
図3の装置100及び
図4のプラント200の構成要素の関係を概説する。
・装置100の反応チャンバー112は、プラント200のか焼セクション212aである。
・装置100の乾燥機124は、プラント200の乾燥セクション224aである。
・装置100の熱回収装置128は、プラント200の熱回収セクション228aである。
・装置100のダスト回収(集塵)装置126は、バッグハウス226の形態であるプラント200のダスト回収(集塵)セクション226aである。
・装置100の材料源116は、プラント200の材料インプット216である。
・装置100の酸素源115及び水素源114は、それぞれ、プラント200の酸素インプット215及び水素インプット214である。
・装置100の戻りライン120は、プラント200の戻り蒸気ライン220である。
・装置100のアウトプットライン117は、プラント200の処理された材料の流出路(アウトフロー)217である。
【0123】
図4に例示されたプラント200では、処理された材料の流出路217からバッグハウス230への蒸気の流れの方向は、左から右である。従って、処理された材料の流出路217は、反応チャンバー212の上流にあり、バッグハウス226は、反応チャンバー212の下流にある。
【0124】
乾燥セクション224aは、サイクロン240を有する。材料は、材料インプット216に供給され、そこでプラント200を通る蒸気の上記流れが、材料をサイクロン240まで運ぶ。表面結合水の少なくとも一部、典型的には表面結合水の殆どが、インプット216からサイクロン240への輸送中に材料から除去される。サイクロン240は、材料を清浄化し、ダスト(塵)及び他の不要な微粒子物質は、バッグハウス226に移送される。次に、清浄化された材料は、サイクロン240からか焼セクション212aに移送される。
【0125】
か焼セクション212aは、反応チャンバー212の下流に配置されたサイクロン242a及び242bを有する。清浄化された材料は、乾燥セクション224aのサイクロン240からサイクロン242bの上流の位置に供給され、そこで、次に蒸気は、清浄化された材料を下流のサイクロン242bに移送して、さらに材料を清浄化する。次いで、さらに清浄化された材料は(サイクロン242bでのか焼の結果として形成された処理済み材料のいかなるものも併せて)、反応チャンバー212に移送される。水素インプット214及び酸素インプット215は、反応チャンバー212のすぐ上流にある。水素及び酸素はそれらのそれぞれのインプット214及び215を通って反応チャンバー212に供給され、そこでそれらは燃焼されて、熱及び蒸気を生成する。この熱が材料をか焼して、反応チャンバー212内で処理された材料を形成する。蒸気はまた、材料の脱水(すなわちか焼)によって反応チャンバー内で生成される。蒸気は、乾燥セクション224a内の材料の表面水分の蒸発によっても生成される。次に、反応チャンバー内に存在する材料の大部分が処理されて、反応チャンバー内で処理された材料が形成される。例えば、材料が水和物である場合、処理された材料は水和物が脱水された形態である。
【0126】
次に、処理された材料は、残りの清浄化された材料の全てと共に、反応チャンバー212からサイクロン242aに移送され、そこで残りの清浄化された材料はか焼され、処理された材料が形成される。
【0127】
清浄化された材料のか焼の大部分、すなわち少なくとも80%は、一般に、反応チャンバー212で起こる。
【0128】
反応チャンバー212で生成された蒸気は、プラントを通ってバッグハウス226に移送される。材料インプット216からサイクロン240へ少なくとも部分的に材料を移送するのに役立つのは、反応チャンバー212からバッグハウス226へのこの蒸気の移送である。バッグハウス226を出ると、蒸気は、戻り蒸気ライン220と蒸気源230とに分割される。
【0129】
材料が反応チャンバー212で処理された(すなわち形成された材料が得られた)後、それは次に熱回収段階228aに移送される。熱回収段階228aは、処理された材料を清浄化及び冷却するいくつかのサイクロン244を有する。処理された材料は、処理された材料の流出路217を通過する前に、最終サイクロン246を通過する。戻り蒸気ライン220は、最終サイクロン246と流体連絡している。戻り蒸気ライン220内の蒸気は、プラント200内の材料及び処理された材料を流動化し、輸送する。
【実施例】
【0130】
例1-か焼プラント200のモデリング
図4に示されたか焼プラント200は、ギブサイト(gibbsite)などの水酸化アルミニウムをか焼し、SysCADを使用してアルミナを形成し、プラント200で使用されるさまざまなインプット及びアウトプットの流量を測定する装置としてモデル化された。この例では、水酸化アルミニウムは材料(すなわち水和物)であり、アルミナは処理された材料(例えば脱水された材料)である。
【0131】
一例では、4.51トン(t)/時のH2及び38.2トン/時のO2が反応チャンバー212に供給され、284トン/時のアルミニウム水和物がインプット216に供給される。
【0132】
H2及びO2が燃焼されて、187トン/時の蒸気が生成された。
蒸気のこの187トン/時という値には、反応チャンバー212内で水酸化アルミニウムの脱水から生成された蒸気も含まれる。
【0133】
水酸化アルミニウムが反応チャンバー212に入る前の乾燥段階224a及びか焼段階212aにおける水酸化アルミニウムの脱水は、か焼段階212a及び乾燥段階224aから生成され、バッグハウス226に移送される蒸気の総量が287トン/時であることを意味する。
【0134】
284トン/時のアルミニウム水和物は205トン/時のアルミナを形成する。
【0135】
114トン/時の蒸気は、戻り蒸気ライン220を介して移送され、粒子状物質、例えば水酸化アルミニウム及びアルミナの輸送ガスとして機能する。
【0136】
天然ガスを使用して水酸化アルミニウムをか焼してアルミナを形成するために使用されるプラントは、約3GJ(ギガジュール)/時のエネルギー要件を有するが、プラント200は、約2.9GJ/時のエネルギー要件を有する。
【0137】
プラント200において水酸化アルミニウムをアルミナに転化するための理論的エネルギー要件は約1.8~2.0GJ/時であり、理論的エネルギー要件と実際のエネルギー要件との差は、熱損失などのエネルギー損失に因ることに留意されたい。
【0138】
しかしながら、この計算は、プラント200によって生成された蒸気がアルミナ精製所の補助装置のエネルギー必要量を減らすために他の場所で使用され得るという事実を考慮していないので、プラント200の使用はアルミナ精製所の全体的なエネルギー効率を改善するのに役立つ可能性がある。
【0139】
この実施例は、水酸化アルミニウムをか焼してアルミナを形成することを対象としているが、上記装置及びプロセスは、製錬、水素還元を含む直接還元プロセスの対象となる脱水、か焼が可能な任意の材料に適用可能である。
【0140】
例2-(水酸化アルミニウムの供給源としての)ギブサイトをアルミナにか焼するための蒸気条件(水素-酸素生成蒸気の蒸気条件と同様)のシミュレーション
出願人は、天然ガス燃焼のか焼装置を操作して、ギブサイト(Al2O3・3H2O)の形態の水酸化アルミニウムをアルミナ(Al2O3)に脱水する。
【0141】
出願人の天然ガス燃焼のか焼装置の現在の状態と本発明との1つの違いは、本発明による水素-酸素火炎(flame)の使用である。
【0142】
水素-酸素火炎の特性には、天然ガス-空気火炎温度よりも大幅に高い燃焼温度(表1参照)、及び、水素が淡い青色の火炎で燃えて、放射による熱伝達が最小限に抑えられることが含まれる。
【0143】
【0144】
水素-酸素火炎の支配的な熱伝達メカニズムは、燃焼によって生成された蒸気による対流及び伝導である。
【0145】
これらの熱伝達メカニズムにより、水素-酸素火炎をか焼装置内又は(上述されているような)外部の別の反応チャンバー内に包含させることができ、それによって、生成された蒸気及び熱が次にか焼装置に伝達され、か焼装置内の固形物の大部分が目標温度に到達することが可能になる。
【0146】
か焼装置内の(水素-酸素火炎に関連する)高温領域のリスクは、別個の水素燃焼チャンバーにより少なくとも実質的に排除される。
【0147】
先行段落の説明にもかかわらず、か焼装置内又は外部の別の反応チャンバー内に水素-酸素火炎を包含させる両方のオプションが実行可能なオプションであることに留意されたい。
【0148】
出願人の天然ガス燃焼のか焼装置の現在の状態と本発明との別の違いは、か焼装置内のガス組成である。酸素が水素と共に燃焼される場合、か焼装置の煙道ガスは純粋な蒸気になり、そして酸素が豊富な空気が使用される場合、煙道ガスは窒素及び蒸気の組み合わせになると考えられる。
【0149】
いくつかの研究では、水蒸気濃度に対するギブサイトの熱分解速度が負であることが示されている。つまり、これは、生成される水蒸気が更なるギブサイトのか焼を妨げることを意味する一方で、ベーマイト、ガンマ、デルタ、シータ、そして最終的にはアルファの経路を介して多量の水蒸気の経路が妨げられることなく進行する可能性があるという反対の見解がある。
【0150】
工業的には、ギブサイトのか焼は、フラッシュか焼装置及びバブリング又は循環流動床(CFB)反応器で行われる。
【0151】
CFB技法は、CFB内の固体の再循環により、製品の品質に影響を与えることなくスケールアップすることができ、これにより、大容量及び負荷変動時にも均等な温度分布と均一な製品品質が得られる。
【0152】
CFBか焼プロセスの主な構成要素は、2つの予熱段階、か焼段階及び2つの冷却段階である。供給材料がプロセスに供給されてからアルミナ製品が排出されるまでの全滞留時間は、通常、約20分である。CFBか焼装置は、通常、製品の品質目標に応じて、900~1000℃の範囲で操作される。材料は目標温度で6分間保持される。
【0153】
この例を行う主な理由は、典型的な循環流動床のか焼装置を再現する条件下で、ギブサイトをアルミナにか焼するために蒸気条件(水素-酸素生成蒸気の条件と同様)をシミュレートすることであった。
【0154】
試験作業は、実験室規模の循環流動床反応器で実施された。
【0155】
試験作業の方法論
外部電気炉を備えた直径85mmのCFB反応器を使用して、蒸気環境でのギブサイトのか焼を試験した。
【0156】
各試験の前に、ギブサイトを105℃で乾燥させて、遊離水分を全て除去した。次に、乾燥した固形物を圧力フィーダーに入れた。
【0157】
炉を目標温度まで加熱した。以下のポイントで低流量の窒素をシステム内に導入した:
・圧力フィーダー;
・再循環ラインのループシール;
・炉の底部のサンプルポイント。
【0158】
これらの窒素の流れは、システムのより低温の部分で蒸気が凝縮して閉塞を引き起こすのを防ぐために必要とされた。
【0159】
次に、蒸気を目標流量で導入し、いったん反応器内の温度が安定したら、圧力フィーダーを介して約1.5kgの固形物をシステム内に導入した。
【0160】
いったん固形物が目標温度に達すると、炉の底部にある収集フラスコで固形物をサンプリングする前に、必要な期間システム内に固形物を保持した。
【0161】
窒素をフラスコに導入し、これにより、不活性雰囲気で固形物を冷却し、また収集フラスコで水が凝縮する前に固形物から蒸気を除去するのを助けた。
【0162】
結果
出願人のか焼装置での酸素による水素燃焼をシミュレートするために、以下の試験条件を用いた。
【0163】
【0164】
装置の規模が小さく、周囲の熱損失が大きいため、排出アルミナポートで蒸気凝縮が発生し、試験作業中にアルミナの閉塞が起こった。この理由により、蒸気が凝縮して材料の閉塞を引き起こすのを防ぐために、不活性ガスとして窒素を増加させつつ導入した。
【0165】
いったん材料の閉塞が不活性ガスの流れで解消されると、ギブサイトをか焼することにより次の結果が得られた。
【0166】
X線回折(XRD)
XRDを使用して、か焼プロセス中に形成されたアルミナ相を同定した。提出された2つのサンプルの特徴的なパターンを
図5に示す。
【0167】
図5から、以下の事項が把握され得る。
1.ギブサイトはか焼され、主にガンマアルミナ相及びシータアルミナ相が形成された。- これは、出願人の製錬所グレードのアルミナ製品の品質仕様と一致している。
2.ギブサイトはか焼され、わずかに微量のアルファアルミナ相が形成された。- これは、出願人の製錬所グレードのアルミナ製品の品質仕様と一致している。
【0168】
点火による損失(loss on ignition:LOI)
点火による損失を用いて、上記のアルミナ相に転化されたギブサイトの量を測定した。これから以下の事項を把握することができた:
1.アルミナ表面の水分は無視できる程度であり、残留水分量は0.05%未満であった。
2.ギブサイトのアルミナへの転化は約99.7%完了していた。- これは、出願人の製錬所グレードのアルミナ製品の品質仕様と一致している。
【0169】
考察
上記の結果は、水素-酸素火炎によって生成された条件下での蒸気によりギブサイトがアルミナにか焼され得ることを示している。
【0170】
さらに、これらの結果は、製造されたアルミナが出願人の製錬所グレードのアルミナ仕様を満たすのに好適であることを示している。
【0171】
さらに、過半量のガンマアルミナ及びシータアルミナの形成は、高蒸気条件下で予想される以下のか焼経路をサポートする:
ギブサイト→(ベーマイト)→ガンマアルミナ→(デルタアルミナ)→シータアルミナ→アルファアルミナ。
【0172】
上記の括弧内の相は直接観察されなかったけれども、技術文献は、これらの相が分解反応中に存在した可能性があることを示している。
【0173】
マテリアルハンドリングの問題を管理するための試験作業での上述の窒素の使用は、大気に曝された表面で蒸気の凝縮を生じさせる装置の小さい実験室規模の性質に因り必要とされた。これがスケールアップの支障になるとは思われない。
【0174】
ギブサイトをアルミナにか焼する上記の試験作業は、水酸化アルミニウムのか焼によるアルミナの形成及び石膏の脱水による無水物の形成などのか焼プロセスのため、並びに還元プロセスのために、天然ガスの代わりに水素を燃焼燃料として使用可能であることを発明者に示している。
【0175】
本発明の本質及び範囲から逸脱することなく、上述の本発明の実施形態に多くの修正を加えることができる。
【国際調査報告】