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特表2023-515333電気的及び熱的に導電性の要素並びにそのような要素を生成する方法
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  • 特表-電気的及び熱的に導電性の要素並びにそのような要素を生成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】電気的及び熱的に導電性の要素並びにそのような要素を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/02 20060101AFI20230406BHJP
   H02K 55/04 20060101ALI20230406BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H02K3/02
H02K55/04
H02K3/04 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547730
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 FR2021050230
(87)【国際公開番号】W WO2021160960
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】2001311
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522309872
【氏名又は名称】アプソリュ システム
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】タンション,ジュリアン
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA07
5H603AA11
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB14
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC14
5H603CE06
5H603CE14
(57)【要約】
本発明は、高純度アルミニウムのワイヤ又はリボン(1)と、アルミニウムリボン(1)に沿って延びる熱分解グラファイト又はグラフェンのストリップ(2)とを含み、ワイヤ又はリボン(1)及びストリップ(2)は、電気的絶縁材料のシース(3)内に一緒にカプセル化される、電気的及び熱的に伝導性の要素(100)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的及び熱的に伝導性の要素であって、
- 高純度アルミニウムワイヤ又はテープと、
- 前記アルミニウムテープに沿って延びる熱分解グラファイト又はグラフェンストリップと、を含み、
前記ワイヤ又はテープとストリップとは、電気的絶縁材料のシース内に一緒にカプセル化される、
要素。
【請求項2】
前記シースの前記電気的絶縁材料は、カプトン(TM)のようなポリイミドである、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記ワイヤ又はテープは、前記電気的絶縁材料の層によって前記ストリップから電気的に絶縁される、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
前記テープは、10~200μmの間の厚さを有する、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の要素。
【請求項5】
前記ストリップは、10~200μmの間の厚さを有する、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の要素。
【請求項6】
前記熱分解グラファイトストリップは、前記テープの外方に横方向に延びる、請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の要素。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の電気的及び熱的に伝導性の要素の少なくとも1つの巻線を含む、コイル。
【請求項8】
請求項7に記載の少なくとも1つのコイルを含む、回転機械。
【請求項9】
- 請求項8に記載の極低温回転機械であって、
- 請求項7に記載の少なくとも1つのコイルを含む固定子と、
- 少なくとも1つの超伝導要素を含む回転子であって、前記固定子に対して回転可能に移動可能である、回転子と、
- 前記超伝導要素を極低温温度に維持するために前記回転子を取り囲むクライオスタットであって、前記固定子に対して固定される、クライオスタットと、を含む、
極低温回転機械。
【請求項10】
電気的及び熱的に伝導性の要素を製造する方法であって、
- 高純度アルミニウムワイヤ又はテープを提供することと、
- 前記ワイヤ又はテープに沿って熱分解グラファイトストリップを塗布することと、
- 前記アルミニウムワイヤ又はテープと前記熱分解グラファイトストリップとをカプセル化するシースを形成するよう電気的絶縁材料を堆積させることと、を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的及び熱的に伝導性の要素及びそのような要素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの電気モータ(ブラシ又はブラシレスDCモータ、ACモータ、同期又は非同期モータ、リニアモータ、ステッパモータなど)がある。
【0003】
全ての場合において、モータの電機子は、導電性要素の巻線からなる1つ以上のコイルを含む。
【0004】
コイルの数は、モータ構成及び所要の極数に依存する。
【0005】
殆どの用途において、電気的及び熱的に伝導性の要素は、銅線から構成される。実際、銅は、良好な導電体であり、良好な熱伝導体でもある。従って、銅は、限定的なジュール効果散逸で大量の電流を運ぶことができる。その良好な熱伝導率は、巻線が効率的に冷却されること、よって、電流密度がワイヤ(線)内で増加されることも可能にする。
【0006】
高周波数(AC供給源)で作動する用途のために、インダクタ内の電流の変動は、コイルの導電性要素内で渦電流損失を生じさせる。これらの損失は、表面上にあり、リッツ線(Litz wires)の使用によって限定されることができる。リッツ線は、高周波電流を運ぶように構成されたマルチストランド導電性ワイヤである。各ワイヤは、互いに電気的に絶縁されたストランドからなり、よって、表面渦電流の強度を減少させる。
【0007】
しかしながら、銅は、高密度材料である。
【0008】
電気モータを使用する宇宙及び航空用途は大きく発達している。これらの用途のために、モータの質量は重要な要因であり、銅コイルの使用は問題となる。実際、モータ(又は発電機)の比出力を増加させるためには、コイルの質量を減少させながら、コイルの電流密度を増加させなければならない。これらの2つの制約は、完全に相反的であり、銅は、満足な妥協が達成されることを可能にしない。何故ならば、電流密度を増加させることは、巻線を冷却すること及びワイヤの断面積を増加させることを必要とし、それらは質量の削減と両立しないからである。
【0009】
従って、幾つかのコイルは、銅の代わりに、電気的及び熱的に伝導性の要素としてのアルミニウムで作られる。
【0010】
アルミニウムは、銅よりも低い密度を有するが、より高い電気抵抗率(よって、より高いジュール効果散逸)及び(巻線のより不満足な冷却を暗示する)より低い熱伝導率も有する。
【0011】
従って、アルミニウム導電性要素は、問題に対する完全に満足できる解決策ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、要素の質量を最小限に抑えながら要素の熱放散及び要素を通じて流れる電流密度を最適化する電気的及び熱的に伝導性の要素を設計することが、本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、電気的及び熱的に伝導性の要素であって、
- 高純度アルミニウムワイヤ又はテープと、
- アルミニウムテープに沿って延びる熱分解グラファイト又はグラフェンストリップと、を含み、
ワイヤ又はテープとストリップとは、電気的絶縁材料のシース内に一緒にカプセル化(封入)される、
要素に関する。
【0014】
この本文において「高純度」とは、99%を上回る純度を意味する。
【0015】
この複合伝導性要素は、低質量のアルミニウムを利用する一方で、熱分解グラファイトによる改良された熱性能を提供する。
【0016】
幾つかの実施形態において、シースの電気的絶縁材料は、カプトン(TM)のようなポリイミドである。
【0017】
幾つかの実施形態において、ワイヤ又はテープは、電気的絶縁材料の層によってストリップから電気的に絶縁される。
【0018】
幾つかの実施形態において、テープは、10~200μmの間の厚さを有する。
【0019】
幾つかの実施形態において、ストリップは、10~200μmの間の厚さを有する。
【0020】
幾つかの実施形態において、熱分解グラファイトストリップは、テープの外方に横方向に延びて、熱分解グラファイトストリップが熱除去システムに容易に結合されることを可能にする。
【0021】
別の目的は、上述のような電気的及び熱的に伝導性の要素の少なくとも1つの巻線を含むコイルに関する。
【0022】
別の目的は、少なくとも1つのそのようなコイルを含む回転機械(rotating machine)に関する。当該回転機械は、
- 上述のような少なくとも1つのコイルを含む固定子と、
- 少なくとも1つの超伝導要素を含む回転子であって、固定子に対して回転可能に移動可能である回転子と、
- 超伝導要素を極低温温度に維持するために回転子を取り囲むクライオスタットであって、固定子に対して固定されるクライオスタットと、を含む。
【0023】
最後に、本発明は、上述のような電気的及び熱的に伝導性の要素を製造する方法にも関する。当該方法は、
- 高純度アルミニウムワイヤ又はテープを提供することと、
- ワイヤ又はテープに沿って熱分解グラファイトストリップを塗布することと、
- アルミニウムワイヤ又はテープと熱分解グラファイトストリップとをカプセル化するシースを形成するよう電気的絶縁材料を堆積させることと、を含む。
【0024】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】伝導性要素の製造の異なる段階における本発明の1つの実施形態による伝導性要素の斜視図である。
図2】本発明による伝導性要素を含むコイルの概略図である。
図3】本発明による伝導性要素を含む別のコイルの概略図である。
図4】熱除去システムへの直接的な接続を含む、本発明による伝導性要素を含むコイルの概略図である。
図5】熱除去システムへの直接的な接続を含む、本発明による伝導性要素を含むコイルの概略図である。
図6】高純度アルミニウムワイヤとポリイミドに封入された熱分解グラファイトストリップとを組み合わせた、本発明による伝導性要素を含むコイルの概略図である。
図7】極低温回転機械の断面図であり、極低温回転機械の固定子は、本発明による伝導性要素を含むコイルを含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1つの図から別の図への同じ参照符号によって参照される要素は同一であるか或いは同じ機能を果たす。
【0027】
図面の読みやすさの理由から、様々な要素は必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【0028】
本発明は、電気的及び熱的に伝導性である(electrically and thermally conductive)、すなわち、各々が要素の特性に寄与する2つの材料を組み合わせている、複合要素(composite element)を提供する。
【0029】
以下では、簡潔性のために、「伝導性要素(conductive element)」という用語が使用されるが、その要素が電気的及び熱的の両方で伝導性であることはいうまでもない。
【0030】
複合伝導性要素(composite conductive element)は、高純度アルミニウムのワイヤ(線)又はテープを含み、良好な電気伝導を提供する。幾つかの実施形態では、円形又は正方形の断面を有するワイヤが選択されてよい。しかしながら、好ましくは、厚さよりもずっと大きい幅を有する長方形の断面を有するテープが選択される。
【0031】
実際、小さい厚さ(典型的には10~200μm)を有する高純度のアルミニウム箔が市場で容易に入手可能である。アルミニウム箔を切断するときにテープの幅を調整することができる。よって、小さな厚さを有するこの導電性テープは、高速(典型的には、40Hzよりも上)で動作する電気機械システムにおいて特に重要である表面渦電流の発達を制限する。渦電流の発生を更に減少させるために、前記導電性テープの表面積を更に減少させるために、切断中にテープの幅を減少させることが可能である。用途に依存して、テープの幅は、2~50mmの間であることがある。
【0032】
複合伝導性要素は、アルミニウムワイヤ又はテープに沿って延在する熱分解グラファイトストリップを更に含む。
【0033】
熱分解グラファイトは、共有結合を有するグラフェンの層から形成される合成材料である。この材料は、熱伝導率が非常に高い単一の劈開面(cleavage plane)を有する。よって、熱分解グラファイトは、銅の約3倍の熱伝導率及び5倍より低い密度を有する。
【0034】
従って、導電性ワイヤ又はテープで直接的にカプセル化(封入)されて、熱分解グラファイトストリップは、並外れた性能で巻線の全表面に亘って均一な冷却を可能にする。
【0035】
高純度アルミニウムの使用は、銅と比較してアルミニウム巻線の電気抵抗率の増加を制限する。ジュール効果散逸は、銅の場合より大きいが、導電性ワイヤ又はテープで直接的にカプセル化された熱分解グラファイトストリップは、この追加的な熱散逸が容易に除去されることを可能にする。
【0036】
熱分解グラファイトストリップは、3~60mmの間の幅及び10~200μmの間の厚さであってよい。
【0037】
幾つかの実施態様において、熱分解グラファイトストリップは、アルミニウムワイヤ又はテープよりも広い。よって、グラファイトストリップの側方部分は、外方に延びて、熱除去システムへの直接的な接続を可能にする。以下に詳細に記載する図4及び図5に例を示す。
【0038】
アルミニウムワイヤ又はテープと熱伝導性グラファイトストリップとの間に電気的な絶縁を提供するために、並びに伝導性要素を電気的に絶縁するために、電気的絶縁材料が使用される。この電気的絶縁材料は、個々のコンポーネント(構成要素)の最適なカプセル化を提供するポリイミドであることができる。カプトン(TM)は、(巻線の絶縁のために必要である)極めて良好な耐熱性も有するポリイミドである。それは、複合材料を構成する全てのコンポーネントの良好なカプセル化を確実にするために液体形態で使用されるという利点、可撓性であり且つ完全に電気的に絶縁された複合材料を得るために組立後に重合されるという利点、並びに複合伝導性要素の厚さを制限するために薄層(典型的には1~100μmのオーダ)に堆積されることができるという利点も有する。これは、複合導体中の温度勾配を低下させながら、コイルの形成におけるターンの数、よって、磁場を増加させる。
【0039】
図1は、伝導性要素の製造の異なる段階における、本発明の1つの実施形態による伝導性要素の斜視図である。
【0040】
図の右側には、高純度アルミニウムテープ1の一部分と、熱分解グラファイトストリップ2の一部分とが表されている。伝導性要素はコイルを形成するように意図されているので、それは、その長さがその幅よりもずっと長い、細長い形状を有し、前記長さは、典型的には、数十センチメートル又はメートルである。
【0041】
見えないが、テープ1をストリップ2から電気的に絶縁するために、電気絶縁材料の薄層がテープ1とストリップ2との間に介装される。
【0042】
図の左側には、テープ1及びストリップ2をカプトン(TM)のようなポリイミドのシース内にカプセル化した後の、複合伝導性要素100の一部が表されている。
【0043】
複合伝導性要素の構造は、それがモジュール化されること並びに最終用途に依存してその構成を適合させることも可能にする。例えば、伝導性要素は、1つ以上の熱導体及び/又は電気導体のスタックから構成されてよい。1つの特定の実施形態によれば、複合伝導性要素は、両側に配置された熱導体(熱分解グラファイト)の2つのストリップによって熱化された(thermalized)導電性の高純度アルミニウムワイヤ又はテープを含んでよい。別の特定の実施形態において、複合伝導性要素は、中心にある熱導体のストリップによって分離された2つの導電性ワイヤ又はテープを含んでよい。
【0044】
導電性要素がワイヤ(一本鎖、多本鎖、又はリッツ線のような他のもの)である場合、前記ワイヤの幾つかの巻線は、有利には、ワイヤの各ワイヤの良好な熱放散を確実にするために、熱分解グラファイトストリップ上に巻かれる。セット全体は、特にワイヤが電気的に絶縁されていない場合には、ポリイミドでカプセル化される。既に電気的に絶縁されたワイヤを使用する場合には、ポリイミドによるカプセル化は必要でない。次に、カプセル化の唯一の機能は、コイルがその形状を保持することように、熱導体と電気導体との間の良好な熱結合及び巻線間の凝集(cohesion)を確実にすることである。この場合には、ポリイミドを任意の他の熱伝導性接着剤で置き換えることができる。そのような構成の一例が、以下に詳細に記載される図6に図示されている。
【0045】
図1の中央において、複合伝導性要素100の部分は、部分断面図で示されている。
【0046】
前記複合伝導性要素の製造は、以下のように実施されることがある。
【0047】
高純度アルミニウムのワイヤ又はテープを提供する。
【0048】
液体状態のポリイミドの層を前記ワイヤ又はテープ上に堆積させ、次に、熱分解グラファイトストリップをポリイミド層に塗布し、それによって、アルミニウムワイヤ又はテープと熱分解グラファイトストリップとの間に電気的絶縁を提供する。
【0049】
次に、液体状態のポリイミドを再度堆積させて、アルミニウムワイヤ又はテープ1及び熱分解グラファイトストリップを完全に包むシースを形成する。
【0050】
この複合伝導性要素は、高電流密度、低質量、及び導電性テープの一体化された冷却を備えるコイルが生成されることを可能にする。
【0051】
この伝導性要素で作られたコイルは、円形(図2を参照)、三角形(図3を参照)、又は最適な充填率(fill factor)を保証する任意の他の形状に、平坦且つ螺旋状に巻かれることができる。複合伝導性要素100の各端に図示するディスクは、電源システム及び熱除去システム(図示せず)への接続のための要素を表している。
【0052】
複合伝導性要素は、より従来的な形状の円筒コイルを作るために使用されることもできる。この場合、複合テープは、従来的な円形の伝導性要素と比較して最適な充填率を提供する。提供される解決策を用いるならば、磁場密度は、次に、より多い巻数の故に増加させられ、質量は、複合テープの使用により低下させられ、許容出力密度は、ヒートシンクとしてのグラファイトの使用により大いに増加させられる。
【0053】
図4は、複合伝導性要素100の複数巻きの巻線を含むコイル200の1つの実施形態を図示している。円によって囲まれた部分の拡大図を示す右側部分に見られるように、複合伝導性要素は、熱分解グラファイトストリップ2と、ストリップ2よりも少ない幅を有する高純度アルミニウムテープ1とを含む。テープ1及びストリップ1に面するストリップ2の部分は、ポリイミドシース3内にカプセル化される。テープ1を越えて延びる熱分解グラファイトストリップ2の部分は、シース3内にカプセル化されない。コイル200は、(矢印によって概略的に示す)入口と出口との間で冷却流体300(水、油など)を循環させるように構成された熱除去システム400に関連付けられる。テープ1を越えて延びる熱分解グラファイトストリップ2の部分は、流体300中に浸漬されて、巻線の直接的な冷却を可能にする。
【0054】
図5は、図4に示す実施形態に対する1つの代替を図示している。複合伝導性のものは、図4のものに類似するが、熱除去は、高純度アルミニウムテープ1を越えて延びる熱分解グラファイトストリップ2の部分の側面上の冷却流体300(空気など)の強制流動(forced flow)によって達成される。
【0055】
図6は、複合伝導性要素100の複数巻きの巻線を含むコイル200の1つの実施形態を図示している。この実施形態において、導電性要素は、ワイヤの形態にある。図の右側部分は、ワイヤ1の2つの実施形態、すなわち、電気的絶縁材料中にカプセル化された複数の高純度アルミニウムストランド1’を含む一本鎖高純度アルミニウムワイヤ又はリッツ線を示している。熱伝導性要素は、熱分解グラファイトストリップ2である。各ワイヤ1は、ポリイミドシース3中にストリップ2と共にカプセル化される。1つの実施形態によれば、幾つかのワイヤ1は、ストリップ2の幅に亘って並んで配置され、ポリイミド中に一緒にカプセル化される。有利には、熱分解グラファイトストリップ2の一部分は、ワイヤ1及びシース3のセットを越えて延び、それによって、図4及び図5に関連して議論したように、シースのこの部分を冷却流体に曝す。
【0056】
そのようなコイルは、有利には、回転機械、モータ又は発電機において使用されることができ、特に、積載航空機又は人工衛星の使用のためにあることができる。
【0057】
これらの回転機械は、特に、極低温機械であることができる。これらの極低温機械は、固定子(ステータ)と、固定子に対して回転可能に移動可能な回転子(ロータ)とを含む。回転子は、少なくとも1つの超電導要素、例えば、AC電圧源又は1つ以上の磁気インサートによって電気的に供給されるように構成された超電導コイルを支持する。超伝導要素に対向して、固定子は、本発明に従って伝導性要素を含む少なくとも1つのコイルを支持する。回転子の超伝導要素とは異なり、固定子コイルは、室温を含む任意の温度で作動する。固定子は、如何なる超伝導要素も含まない。
【0058】
回転子は、超伝導要素を極低温、例えば、20~80Kの間の温度に維持するためにクライオスタット(cryostat)によって囲まれている。
【0059】
回転子は、回転子の回転軸に沿って延びる出力シャフトを含む。前記出力シャフトは、回転可能に駆動されるよう機械のシャフトに結合されるように構成される。
【0060】
それ自体知られている方法において、回転子は、固定子及び回転子の両方によって生成され且つ制御される磁場によって回転可能に駆動される。
【0061】
幾つかの実施形態において、クライオスタットは、固定子に対して固定される。この場合、固定子コイルは、クライオスタットの外面に対して配置されてよく、或いはクライオスタット自体の内側にさえ配置されてよく、それによって、回転子の超伝導要素と固定子コイルとの間の距離を減少させてよい。この減少された距離は、固定子コイルが曝される磁場を増加させる。
【0062】
クライオスタットは、その内側に真空を引くことができる封止された囲い(enclosure)を含む。この本文において、「真空」とは、(100Pa以下である)1mbar以下の圧力を意味する。
【0063】
回転子は、少なくとも2つの軸受(ベアリング)によって、クライオスタット内に自由に回転可能に取り付けられる。好ましくは、前記軸受は、超伝導要素が生成する磁場によって影響を受けないように、超電導要素から可能な限り離れて配置される。
【0064】
加えて、出力シャフトは、回転シールによってクライオスタットから切り離され、それはシャフトが回転することを可能にする一方で、クライオスタットがシールされることを確実にする。
【0065】
超電導要素と固定子との間の距離の利得に加えて、回転機械の設計は、クライオスタットの不動性の故に単純化される。よって、機械の寿命は延長される。特に、極低温冷却器の統合(integration)は、回転クライオスタットの場合と比較して容易にされる。
【0066】
図7は、そのような極低温機械の断面図である。
【0067】
回転子をRと呼ぶ。回転子は、固定子(図示せず)に対して軸XX’について回転可能に移動可能である。固定子Sは、上述のような複合伝導性要素を含む少なくとも1つのコイル200を含む。
【0068】
回転子は、出力シャフト22で終端する軸方向部分を有する。回転子は、軸方向部分から半径方向に延びる1つ以上のウイング21(翼)を更に含む。少なくとも1つの超電導コイル20が、それぞれのウイングに配置される。代替的に(図示せず)、1つ以上の超伝導磁気インサートを回転子の1つ以上のウイングに配置することができる。
【0069】
超伝導コイル20は、固定子コイル200に面して配置される。
【0070】
クライオスタットCは、回転子Rを取り囲む。クライオスタットCは、軸X-X’に沿って、2つの端部分C1、C2、及び端部分よりも広い中央部分C3を含む、囲いを有する。
【0071】
第1の端部分C1は、伝熱流体がクライオスタットに出入りすることを可能にするチューブ30のための通路を含む(伝熱流体回路のアーキテクチャは詳細に表されていない)。チューブ30は、軸XX’に沿って延び、伝熱流体リザーバ(図示せず)と流体接続する。チューブ30は、クライオスタットと一体的であり、後者と封止的に組み立てられ。それは回転子とチューブ30との間の界面31に配置された軸受(図示せず)によって回転子から切り離される。代替的に、チューブ30は、固定子と一体的であることができる。この場合には、回転シールが、クライオスタットの端部分C1とチューブ30との間の界面で必要とされる。
【0072】
軸XX’に沿って第1の端部分に対向する第2の端部分C2は、回転子の出力シャフト22のための通路を含む。出力シャフト22とクライオスタットの部分C2との間のシーリング(sealing)は、回転シール24によって確実にされる。
【0073】
クライオスタットの中央部分C3は、回転子の軸方向部分のためのハウジングを含み、回転子は、2つの軸受23によってクライオスタットの中央部分C3内に自由に回転可能に取り付けられる。軸受23は、有利には、超伝導コイルによって生成される磁場からの距離を最大にするために、回転子の半径方向ウイング21の両側で、中央部分C3の2つの端の近傍に配置される。クライオスタットは、回転子ウイング21を取り囲む(実質的に前記中央部分C3の中央において)中央部分C3から延びる半径方向延長部C4を含む。超伝導コイルの効率的な冷却を確実にするために、伝熱流体の通過を可能にするよう、小さなエアギャップが、クライオスタットの半径方向延長部の内面と回転子ウイング21の外面との間に維持される。純粋に例示的な例として、前記エアギャップの幅は、0.2mmのオーダにあってよい。
【0074】
更に、クライオスタットは、コイル200のためのハウジングを含むことがあり、それによって、前記コイルは、固定されるクライオスタットの3D半径方向延長部の外面と接触することがある。
【0075】
半径方向延長部C4におけるクライオスタットの厚さは、クライオスタットの残部の厚さよりも比較的薄く、例えば、1mmのオーダにある。
【0076】
よって、超電導コイル20とコイル200との間の距離は、エアギャップの幅とクライオスタットの厚さとの和に等しい。この距離は、例えば、1.2mmのオーダにあってよい。これは、クライオスタットが回転子と共に回転する超伝導モータと比較して、80%のオーダの減少を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】