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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】高速ワクチンプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230406BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20230406BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K39/215
A61P31/14
A61P37/04
A61P43/00 105
A61K38/16
A61K38/19
A61K9/16
A61K47/46
C12N15/85 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548519
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 US2021017506
(87)【国際公開番号】W WO2021163222
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/975,044
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/014,002
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522316700
【氏名又は名称】サイトナス セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ムーミアイ,レモ
(72)【発明者】
【氏名】クレムケ,リチャード
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BD09
4B065BD11
4B065BD15
4B065CA24
4B065CA45
4C076AA31
4C076CC06
4C076EE57
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA19
4C084DC50
4C084NA05
4C084ZC412
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA71
4C085CC08
4C085DD23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
(57)【要約】
【解決手段】除核細胞をベースとするプラットフォームを使用してワクチン組成物を作製し送達する方法を提供する。除核細胞をベースとするプラットフォームを使用して対象の病原性感染症を取り除く方法も提供する。かかる除核細胞をベースとするプラットフォームは、従来の生体ワクチンと比較してワクチン開発のタイムラインが減少し、ワクチンの有効性を改善するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核のない状態での重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンの合成または分泌のために1または複数の細胞内小器官を含む無核細胞。
【請求項2】
前記1または複数の細胞内小器官が、小胞体またはゴルジ体である、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項3】
前記ワクチンが、前記無核細胞の表面に結合される、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項4】
前記ワクチンが、該ワクチンを前記無核細胞の前記表面に結合する膜貫通ドメインを含む、請求項3に記載の無核細胞。
【請求項5】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をさらに含む、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項6】
(a)ロイコシアリン、
(b)L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、
(c)最晩期抗原-4、
(d)(a)~(c)のいずれか1つの部分、または
(e)(a)~(d)のあらゆる組合せ
を含むホーミング受容体をさらに含む、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項7】
直径が約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項8】
前記直径が約8μmである、請求項7に記載の無核細胞。
【請求項9】
生存度を
(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、
(b)前記細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、
(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および
(d)(c)から3~5分以内に前記複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数すること
により測定したとき、少なくとも24時間の凍結休眠後に生存可能である、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項10】
生存度を
(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、
(b)前記細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、
(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および
(d)(c)から3~5分以内に前記複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数すること
により測定したとき、少なくとも24時間の凍結保存後に生存可能である、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項11】
凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項12】
単離または生成される、請求項1に記載の無核細胞。
【請求項13】
医薬製剤であって、
(a)請求項1に記載の無核細胞、または複数の請求項1に記載の無核細胞と、
(b)薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、または担体と
を含む医薬製剤。
【請求項14】
ワクチンを産生する方法であって、
(a)細胞から核を除去することで、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンの合成または分泌のために1または複数の細胞内小器官を含む除核細胞を産生する工程と、
(b)前記ワクチンをコードする外来性mRNAを前記除核細胞に導入する工程であって、該除核細胞は前記核のない状態で前記ワクチンを発現する、工程と
を含む方法。
【請求項15】
前記除核細胞が、除核細胞の生体活性を可逆的に遅くするか停止させるために4℃以下で保管され、その後(b)に導入する前に解凍される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記無核細胞が凍結乾燥され、その後(b)に導入する前に再水和される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記除核細胞が、除核細胞の生体活性を可逆的に遅くするか停止させるために-120℃以下で保管され、その後(b)に導入する前に解凍される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
(a)において前記細胞から前記核を除去することが、前記細胞の分化を行うことなく行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記1または複数の細胞内小器官が、小胞体またはゴルジ体である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
直径が約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記直径が約8μmである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a)で前記核を除去する前に、前記細胞に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をコードする核酸配列を有する外来性核酸分子を導入する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
(a)で前記核を除去する前に、前記細胞に、
a)ロイコシアリン、
b)L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、
c)最晩期抗原-4、
d)C-X-Cケモカイン受容体3型、
e)CD44抗原、
f)C-Cケモカイン受容体7型、
g)(a)~(f)のいずれか1つの部分、または
h)(a)~(g)のあらゆる組合せ
を含むホーミング受容体をコードする核酸配列を有する外来性核酸分子を導入する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記無核細胞に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をコードする配列を含む外来性mRNA分子を導入する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記無核細胞に、
(a)ロイコシアリン、
(b)L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、
(c)最晩期抗原-4、
(d)C-X-Cケモカイン受容体3型、
(e)CD44抗原、
(f)C-Cケモカイン受容体7型、
(g)(a)~(f)のいずれか1つの部分、または
(h)(a)~(g)のあらゆる組合せ
を含むホーミング受容体をコードする配列を含む外来性mRNA分子を導入する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンを対象に送達する方法であって、前記対象に、核のない状態でのSARS-CoV-2に対するワクチンの合成または分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む無核細胞を投与する工程を含む方法。
【請求項27】
前記1または複数の細胞内小器官が、小胞体またはゴルジ体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記無核細胞が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記無核細胞が、
(a)ロイコシアリン、
(b)L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、
(c)最晩期抗原-4、
(d)(a)~(c)のいずれか1つの部分、または
(e)(a)~(d)のあらゆる組合せ
を含むホーミング受容体をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記無核細胞の直径が約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記直径が約8μmである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記投与する工程が全身投与を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記無核細胞が、体重1kgにつき約10個の細胞~体重1kgにつき約1012個の細胞の間の投与量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記無核細胞が、少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、1日、2日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、2年、3年、または4年以内に、前記対象に2回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記対象がヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
アジュバントを投与する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
(a)実質的に核を含まない複数の細胞であって、その少なくとも1個の無核細胞が、核のない状態での重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンの合成または分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む、複数の細胞と、
(b)実質的に核を含まない前記複数の細胞を対象に投与するための指示書と
を含むキット。
【請求項38】
実質的に核を含まない前記複数の細胞が、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
実質的に核を含まない前記複数の細胞を前記対象に投与する前に、実質的に核を含まない前記複数の細胞の生体活性を修復するための指示書をさらに含む、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記ワクチンをコードする外来性mRNAを除核細胞に導入するための指示書をさらに含む、請求項37に記載のキット。
【請求項41】
核のない状態での病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する受容体の合成のための1または複数の細胞内小器官であって、前記受容体またはその発現レベルが前記無核細胞に対して外因性である、細胞内小器官を含む無核細胞。
【請求項42】
前記1または複数の細胞内小器官が、小胞体またはゴルジ体である、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項43】
前記病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する前記受容体が、前記無核細胞の表面に結合される、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項44】
前記病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する前記受容体が、前記無核細胞の細胞膜内に膜貫通ドメインを含む、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項45】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をコードする配列を有する外来性mRNA分子、またはその一部をさらに含む、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項46】
直径が約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項47】
前記直径が約8μmである、請求項46に記載の無核細胞。
【請求項48】
生存度を
(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、
(b)前記細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、
(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および
(d)(c)から3~5分以内に前記複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数すること
により測定したとき、少なくとも24時間の凍結休眠または凍結保存後に生存可能である、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項49】
凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項50】
単離または精製される、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項51】
病原体抗原と宿主細胞が産生するその天然受容体との結合を遮断する中和抗体をさらに含む、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項52】
前記中和抗体が、前記無核細胞の1または複数の細胞内小器官により合成される、請求項51に記載の無核細胞。
【請求項53】
(a)ロイコシアリン、
(b)L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、
(c)最晩期抗原-4、
(d)C-X-Cケモカイン受容体3型、
(e)CD44抗原、
(f)C-Cケモカイン受容体7型、
(g)(a)~(f)のいずれか1つの部分、または
(h)(a)~(g)のあらゆる組合せ
を含むホーミング受容体をさらに含む、請求項41に記載の無核細胞。
【請求項54】
(a)請求項41から53に記載の無核細胞、または複数の請求項41から53に記載の無核細胞と、
(b)薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、または担体と
を含む医薬製剤。
【請求項55】
対象における病原体による感染症、または前記対象を感染させるプロセスにある病原体を減らす方法であって、請求項1から53に記載の無核細胞、または請求項54に記載の医薬製剤を前記対象に投与することにより、前記細胞中で病原体抗原を有する病原体を捉えて、前記病原体が前記細胞内を伝播するのを防止する工程を含む方法。
【請求項56】
前記病原体が、投与後約14日以下で前記対象から取り除かれる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記無核細胞が、中和抗体またはナノボディを放出することにより、前記病原体抗原と宿主細胞が産生するその天然受容体との結合を遮断する、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記投与が全身投与を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記無核細胞が、体重1kgにつき約10個の細胞~体重1kgにつき約1012個の細胞の間の投与量で投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記無核細胞が、少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、1日、2日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、2年、3年、または4年以内に、前記対象に2回投与される、請求項55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年2月11日出願の米国仮特許出願第62/975,044号、および2020年4月22日出願の米国仮特許出願第63/014,002号に基づく利益を主張するものであり、これら文献はそれぞれ、それらの全体を参照することで本明細書に引用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照により本明細書で引用される配列表を含んでいる。2021年2月9日に作成された上記のASCIIコピーは、53712-706_601_SL.txtと命名され、サイズは1,695,927バイトである。
【背景技術】
【0003】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の流行、およびそれに付随する罹患率と死亡率に対して、保護的で持続性のある免疫応答を誘導する安全で有効なワクチンの必要性が強調される。この流行により、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の広範な感染など、緊急の医学的ニーズに対処するための世界中の従来のワクチン開発のパイプラインにおける深刻な欠点が明らかになった。SARS-CoV-2などの病原体を急速に発達させることにより生じる疾患または疾病を処置するのに安全で有効なワクチンおよび治療薬を商品化するのに要する時間を改善できる新たなワクチン開発プラットフォームの必要性が、緊急であり、未だ満たされていない。
【発明の概要】
【0004】
本明細書中のいくつかの実施形態では、核のない状態での病原体に対するワクチンの合成または分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む無核細胞が、記載される。いくつかの実施形態では、病原体はウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスである。いくつかの実施形態では、SARSコロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。いくつかの実施形態では、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。いくつかの実施形態では、病原体は細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、バチルス・アントラシス、エルシニア・ペスチス、フランシセラ・ツラレンシス、ブルセラ菌、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、赤痢菌、バークホルデリア・マレイ、バークホルデリア・シュードマレイ、クラミジア・シタッシ、コクシエラ・ブルネッティ、発疹チフスリケッチア、ビブリオ・コレラエ、またはクリプトスポリジウム・パルバム、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、病原体は毒素である。いくつかの実施形態では、毒素は、クロストリディウム・ボツリナム毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、またはトウゴマ由来のリシン毒素、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、1または複数の細胞内小器官は、小胞体またはゴルジ体である。いくつかの実施形態では、ワクチンは、無核細胞の表面に結合される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、無核細胞の表面にワクチンを結合させる膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、(a)ロイコシアリン、(b)L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、(c)最晩期抗原-4、(a)~(c)のいずれか1つの部分、または(a)~(d)のあらゆる組合せを含むホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である。いくつかの実施形態では、この直径は約8μmである。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも24時間の凍結休眠(cryohibernation)後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結保存後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結乾燥後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、単離または精製される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるトリパンブルー色素排除を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリパンブルー色素排除は、(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、(b)細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および(d)(c)から3~5分以内に複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数することにより実施される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるアネキシン-5細胞表面染色を使用して測定される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、赤血球または赤血球前駆体ではない。
【0005】
本明細書のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の無核細胞または複数の無核細胞と、薬学的に許容可能は賦形剤、希釈剤、または担体とを含む医薬製剤が、記載される。
【0006】
本明細書のいくつかの実施形態では、ワクチンを産生する方法であって、(a)細胞から核を除去して、病原体に対するワクチンの合成または分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む除核細胞を産生する工程と、(b)ワクチンをコードする外来性mRNAを除核細胞に導入する工程であって、該除核細胞は核のない状態でワクチンを発現する、工程とを含む方法が、記載される。いくつかの実施形態では、病原体はウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスである。いくつかの実施形態では、SARSコロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。いくつかの実施形態では、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。いくつかの実施形態では、病原体は細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、バチルス・アントラシス、エルシニア・ペスチス、フランシセラ・ツラレンシス、ブルセラ菌、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、赤痢菌、バークホルデリア・マレイ、バークホルデリア・シュードマレイ、クラミジア・シタッシ、コクシエラ・ブルネッティ、発疹チフスリケッチア、ビブリオ・コレラエ、またはクリプトスポリジウム・パルバム、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、病原体は毒素である。いくつかの実施形態では、毒素は、クロストリディウム・ボツリナム毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、またはトウゴマ由来のリシン毒素、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、除核細胞は、除核細胞の生体活性を可逆的に遅くするか停止させるために4℃以下で保管され、その後(b)に導入する前に解凍される。いくつかの実施形態では、無核細胞は凍結乾燥され、その後(b)に導入する前に再水和される。いくつかの実施形態では、除核細胞は、除核細胞の生体活性を可逆的に遅くするか停止させるために-120℃以下で保管され、その後(b)に導入する前に解凍される。いくつかの実施形態では、(a)において細胞から核を除去することは、細胞の分化を行うことなく行われる。いくつかの実施形態では、1または複数の細胞内小器官は、小胞体またはゴルジ体である。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である。いくつかの実施形態では、この直径は約8μmである。いくつかの実施形態では、上記方法は、(a)で核を除去する前に、細胞に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をコードする核酸配列を有する外来性核酸分子を導入する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、(a)で核を除去する前に、細胞に、ロイコシアリン、L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、最晩期抗原-4、C-X-Cケモカイン受容体3型、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、それらのホーミング受容体のいずれか1つの部分、またはそれらのホーミング受容体のいずれか1つのあらゆる組合せを含むホーミング受容体をコードする核酸配列を有する外来性核酸分子を導入する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、無核細胞に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をコードする配列を含む外来性mRNA分子を導入する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、無核細胞に、ロイコシアリン、L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、最晩期抗原-4、C-X-Cケモカイン受容体3型、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、それらのホーミング受容体のいずれか1つの部分、またはそれらのホーミング受容体のいずれか1つのあらゆる組合せを含むホーミング受容体をコードする配列を含む外来性mRNA分子を導入する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、赤血球または赤血球前駆体ではない。
【0007】
本明細書のいくつかの実施形態では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンを対象に送達する方法であって、対象に、核のない状態でのSARS-CoV-2に対するワクチンの合成または分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む無核細胞を投与する工程を含む方法が、記載される。いくつかの実施形態では、1または複数の細胞内小器官は、小胞体またはゴルジ体である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、ロイコシアリン、L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、最晩期抗原-4、C-X-Cケモカイン受容体3型、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、それらのホーミング受容体のいずれか1つの部分、またはそれらのホーミング受容体のいずれか1つのあらゆる組合せを含むホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である。いくつかの実施形態では、この直径は約8μmである。いくつかの実施形態では、投与は全身投与を含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、体重1kgにつき約10個の細胞~体重1kgにつき約1012個の細胞の間の投与量で投与される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、1日、2日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、2年、3年、または4年以内に、対象に2回投与される。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、上記方法は、アジュバントを投与する工程さらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、赤血球または赤血球前駆体ではない。
【0008】
本明細書のいくつかの実施形態では、実質的に核を含まない複数の細胞であって、そのうち少なくとも1個の無核細胞が、核のない状態での病原体に対するワクチンの合成または分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む、複数の細胞と、実質的に核を含まない複数の細胞を対象に投与するための指示書とを含むキットが、記載される。いくつかの実施形態では、実質的に核を含まない複数の細胞は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、上記キットは、実質的に核を含まない複数の細胞を対象に投与する前に、実質的に核を含まない複数の細胞の生体活性を修復するための指示書をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記キットは、ワクチンをコードする外来性mRNAを除核細胞に導入するための指示書をさらに含む。
【0009】
本明細書中のいくつかの実施形態では、無核細胞であって、核のない状態での病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する受容体の合成のための1または複数の細胞内小器官であって、受容体またはその発現レベルは、無核細胞に対して外因性である、細胞内小器官を含む無核細胞が、記載される。いくつかの実施形態では、1または複数の細胞内小器官は、小胞体またはゴルジ体である。いくつかの実施形態では、病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する受容体は、無細胞の表面に結合される。いくつかの実施形態では、病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する受容体は、無核細胞の細胞膜内に膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をコードする配列を有する外来性mRNA分子、またはその一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である。いくつかの実施形態では、この直径は約8μmである。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも24時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結保存後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結乾燥後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、単離または精製される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるトリパンブルー色素排除を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリパンブルー色素排除は、(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、(b)細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および(d)(c)から3~5分以内に複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数することにより実施される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるアネキシン-5細胞表面染色を使用して測定される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、単離または精製される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、病原体抗原と宿主細胞が産生するその天然受容体との結合を遮断する中和抗体を含む。いくつかの実施形態では、中和抗体は、無核細胞の1または複数の細胞内小器官により合成される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、ロイコシアリン、L-セレクチンすなわちリンパ球機能関連抗原1、最晩期抗原-4、C-X-Cケモカイン受容体3型、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、それらのホーミング受容体のいずれか1つの部分、またはそれらのホーミング受容体のいずれか1つのあらゆる組合せを含むホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、病原体はウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスである。いくつかの実施形態では、SARSコロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。いくつかの実施形態では、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。いくつかの実施形態では、病原体は細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、バチルス・アントラシス、エルシニア・ペスチス、フランシセラ・ツラレンシス、ブルセラ菌、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、赤痢菌、バークホルデリア・マレイ、バークホルデリア・シュードマレイ、クラミジア・シタッシ、コクシエラ・ブルネッティ、発疹チフスリケッチア、ビブリオ・コレラエ、またはクリプトスポリジウム・パルバム、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、病原体は毒素である。いくつかの実施形態では、毒素は、クロストリディウム・ボツリナム毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、またはトウゴマ由来のリシン毒素、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、ワクチンは、本明細書に記載のワクチンである。いくつかの実施形態では、無核細胞は、赤血球または赤血球前駆体ではない。
【0010】
本明細書のいくつかの実施形態では、対象における病原体による感染症を減らす方法、または対象を感染させるプロセスにある病原体を減らす方法であって、本明細書に記載の無核細胞、または本明細書に記載の医薬製剤を対象に投与することにより、細胞中で病原体抗原を有する病原体を捉えて、病原体が細胞内を伝播するのを防止する工程を含む方法が、記載される。いくつかの実施形態では、病原体は、投与後約14日以下で対象から取り除かれる。いくつかの実施形態では、無核細胞は、中和抗体またはナノボディを放出することにより、病原体抗原と宿主細胞が産生するその天然受容体との結合を遮断する。いくつかの実施形態では、投与は全身投与を含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、体重1kgにつき約10個の細胞~体重1kgにつき約1012個の細胞の間の投与量で投与される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、1日、2日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、2年、3年、または4年以内に、対象に2回投与される。いくつかの実施形態では、病原体はウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスである。いくつかの実施形態では、SARSコロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である。いくつかの実施形態では、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。いくつかの実施形態では、病原体は細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、バチルス・アントラシス、エルシニア・ペスチス、フランシセラ・ツラレンシス、ブルセラ菌、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、赤痢菌、バークホルデリア・マレイ、バークホルデリア・シュードマレイ、クラミジア・シタッシ、コクシエラ・ブルネッティ、発疹チフスリケッチア、ビブリオ・コレラエ、またはクリプトスポリジウム・パルバム、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、病原体は毒素である。いくつかの実施形態では、毒素は、クロストリディウム・ボツリナム毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、またはトウゴマ由来のリシン毒素、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、ワクチンは、本明細書に記載のワクチンである。いくつかの実施形態では、無核細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、リンパ組織中の1または複数の細胞に発現されるリガンドに対し特異的なホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、C-X-Cケモカイン受容体3型、ロイコシアリン、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1、または最晩期抗原-4、あるいはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約8μmである。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも24時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結保存後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結乾燥後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、単離または精製される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるトリパンブルー色素排除を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリパンブルー色素排除は、(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、(b)細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および(d)(c)から3~5分以内に複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数することにより実施される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるアネキシン-5細胞表面染色を使用して測定される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、赤血球または赤血球前駆体ではない。
【0011】
本明細書に開示される態様は、無核細胞であって、配列番号1、301~347、もしくは501~512のうち1または複数に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する配列によりコードされるウイルスに対するワクチンを、核のない状態で合成または分泌するための1または複数の細胞内小器官を含む無核細胞を提供する。いくつかの実施形態では、無核細胞は、赤血球または赤血球前駆体ではない。いくつかの実施形態では、無核細胞は、1または複数の細胞内小器官が内因性である有核親細胞から得られる。いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、DNA、RNA、抗原ペプチド、弱毒化生ウイルス、または非活化ウイルスである、あるいはそれらの組合せである。いくつかの実施形態では、抗原ペプチドは、配列番号2、3~7、151~154、251~260、401~447、551~562、651~660、751~761、851~859、951~984、1051~1057、もしくは1151~1153のうち1または複数に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原ペプチドは、配列番号2、8、401~447、もしくは551~563のうち1または複数に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原ペプチドは、配列番号101~104、201~209、301~347、501~512、601~610、701~711、801~809、901~934、1001~1007、もしくは1101~1103のうち1または複数に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する核酸配列からコードされる。いくつかの実施形態では、抗原ペプチドは、アルブミンをコードするアミノ酸配列、またはその一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、細胞の表面に結合される。いくつかの実施形態では、ワクチンは分泌性である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、リンパ組織中の1または複数の細胞に発現されるリガンドに対し特異的なホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、C-X-Cケモカイン受容体3型、ロイコシアリン、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1、または最晩期抗原-4、あるいはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約8μmである。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも24時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結保存後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結保存後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結乾燥後に生存可能である。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるトリパンブルー色素排除を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリパンブルー色素排除は、(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、(b)細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および(d)(c)から3~5分以内に複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数することにより実施される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるアネキシン-5細胞表面染色を使用して測定される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、核がない状態でのワクチンの合成または分泌は、無核細胞により約3日以上の間、行われる。いくつかの実施形態では、無核細胞は、薬学的に許容可能な担体にある。いくつかの実施形態では、無核細胞は、体重1kgにつき約10個の細胞~体重1kgにつき約1012個の細胞の間の投与量にある。いくつかの実施形態では、無核細胞は、体重1kgにつき少なくともまたは約10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012個の細胞の間の投与量にある。いくつかの実施形態では、無核細胞は、体重1kgにつき多くともまたは約10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012個の細胞の間の投与量にある。いくつかの実施形態では、無核細胞は、単離かつ精製される。
【0012】
本明細書に開示される態様は、無核細胞であって、核のない状態での細菌または毒素に対するワクチンの合成または分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む無核細胞を提供する。いくつかの実施形態では、無核細胞は、赤血球または赤血球前駆体ではない。いくつかの実施形態では、無核細胞は、1または複数の細胞内小器官が内因性である有核親細胞から得られる。いくつかの実施形態では、毒素は、クロストリディウム・ボツリナム毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、またはトウゴマ由来のリシン毒素、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、細菌は、バチルス・アントラシス、エルシニア・ペスチス、フランシセラ・ツラレンシス、ブルセラ菌、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、赤痢菌、バークホルデリア・マレイ、バークホルデリア・シュードマレイ、クラミジア・シタッシ、コクシエラ・ブルネッティ、発疹チフスリケッチア、ビブリオ・コレラエ、またはクリプトスポリジウム・パルバム、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、ワクチンは、細胞の表面に結合される。いくつかの実施形態では、ワクチンは分泌性である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、リンパ組織中の1または複数の細胞に発現されるリガンドに対し特異的なホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、C-X-Cケモカイン受容体3型、ロイコシアリン、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1、または最晩期抗原-4、あるいはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である。いくつかの実施形態では、無核細胞の直径は約8μmである。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも24時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結保存後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結休眠後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結保存後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結乾燥後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、単離または精製される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるトリパンブルー色素排除を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリパンブルー色素排除は、(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、(b)細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および(d)(c)から3~5分以内に複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数することにより実施される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるアネキシン-5細胞表面染色を使用して測定される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、核がない状態でのワクチンの合成または分泌は、無核細胞により約3日以上の間、行われる。いくつかの実施形態では、無核細胞は、薬学的に許容可能な担体にある。いくつかの実施形態では、無核細胞は、体重1kgにつき約10個の細胞~体重1kgにつき約1012個の細胞の間の投与量にある。いくつかの実施形態では、無核細胞は、体重1kgにつき少なくともまたは約10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012個の細胞の間の投与量にある。いくつかの実施形態では、無核細胞は、体重1kgにつき多くともまたは約10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012個の細胞の間の投与量にある。いくつかの実施形態では、無核細胞は、単離かつ精製される。
【0013】
本明細書に開示される態様は、本明細書に記載の無核細胞を複数含む細胞集団を提供する。
【0014】
本明細書に開示される態様は、対象にワクチンを送達する方法であって、本明細書に記載の複数の細胞のうち1個の細胞の第1の用量を対象に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、投与後にワクチン接種済となる(become vaccinated)。いくつかの実施形態では、投与は、凍結休眠または凍結保存から細胞を除去した後少なくとも24時間で行われる。いくつかの実施形態では、投与は、凍結休眠または凍結保存から細胞を除去した後少なくとも48時間で行われる。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結乾燥後に生存可能である。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるトリパンブルー色素排除を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリパンブルー色素排除は、(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、(b)細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および(d)(c)から3~5分以内に複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数することにより実施される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるアネキシン-5細胞表面染色を使用して測定される。いくつかの実施形態では、細胞は、核がない状態で対象において、約3日以上の間、ワクチンを合成または分泌する。いくつかの実施形態では、細胞は、核がない状態で対象において、約3~5日の間にわたり、ワクチンを合成または分泌する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞の第1の用量を投与後少なくとも1か月で、細胞集団の第2の細胞の第2の用量を対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞の第1の用量を投与後少なくとも2か月で、細胞集団の第2の細胞の第3の用量を対象に投与する工程をさらに含む。
【0015】
本明細書に開示される態様は、投与を必要とする対象に、核のない状態で治療薬を合成または分泌する無核細胞を投与する工程を含む方法であって、治療薬は、配列番号1に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する配列によりコードされるウイルスによる感染症に関連する疾患または疾病を処置するのに治療上有効である。いくつかの実施形態では、方法は、対象の疾患または疾病を処置する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、治療薬は、(a)インターロイキン10のアゴニスト、(b)インターロイキン10のアンタゴニスト、(c)インターロイキン6、(d)腫瘍壊死因子(TNF)、(e)(a)~(d)のいずれか1つの部分、または(e)(a)~(d)のいずれかの組合せである。いくつかの実施形態では、インターロイキン10のアゴニスト、またはその部分は、配列番号13に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、インターロイキン10のアゴニストまたはその部分は、アルブミンをコードするアミノ酸配列またはその一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、治療薬は細胞により分泌される。いくつかの実施形態では、インターロイキン6のアゴニスト、またはその部分は、配列番号14に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87% 88%、89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、TNFのアゴニストは、配列番号15に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、対象の肺組織中の1または複数の細胞に発現されるリガンドに対し特異的なホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1、C-Cモチーフケモカイン受容体2、またはC-X-Cモチーフケモカイン受容体4、あるいはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、無細胞は、対象のリンパ組織中の1または複数の細胞に発現されるリガンドに対し特異的なホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、C-X-Cケモカイン受容体3型、ロイコシアリン、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1、または最晩期抗原-4、あるいはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む免疫変調成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、呼吸器の疾患または疾病である。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、コロナウイルス疾患(COVID)の症状を含む。いくつかの実施形態では、COVIDはCOVID-19である。
【0016】
本明細書に開示される態様は、投与を必要とする対象に、核のない状態で治療薬を合成または分泌する無核細胞を投与する工程を含む方法であって、治療薬は、病原体による感染症により少なくとも部分的に生じる疾患または疾病を処置するのに治療上有効である。いくつかの実施形態では、病原体は、ウイルス、細菌、真菌、または毒素である。いくつかの実施形態では、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。いくつかの実施形態では、毒素は、クロストリディウム・ボツリナム毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、またはトウゴマ由来のリシン毒素、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、細菌は、バチルス・アントラシス、エルシニア・ペスチス、フランシセラ・ツラレンシス、ブルセラ菌、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、赤痢菌、バークホルデリア・マレイ、バークホルデリア・シュードマレイ、クラミジア・シタッシ、コクシエラ・ブルネッティ、発疹チフスリケッチア、ビブリオ・コレラエ、またはクリプトスポリジウム・パルバム、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、治療薬は、(a)インターロイキン10のアゴニスト、(b)インターロイキン10のアンタゴニスト(例えば、GIT27、AS101、メソプラム、またはリツキシマブ)、(c)インターロイキン6、(d)腫瘍壊死因子(TNF)、(e)(a)~(d)のいずれか1つの部分、または(e)(a)~(d)のいずれかの組合せいくつかの実施形態では、インターロイキン10のアゴニスト、またはその部分は、配列番号13に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、インターロイキン10のアゴニストまたはその部分は、アルブミンをコードするアミノ酸配列またはその一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、治療薬は細胞により分泌される。いくつかの実施形態では、インターロイキン6のアゴニスト、またはその部分は、配列番号14に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87% 88%、89% 90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、TNFのアゴニストは、配列番号15に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、対象の肺組織中の1または複数の細胞に発現されるリガンドに対し特異的なホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1、C-Cモチーフケモカイン受容体2、またはC-X-Cモチーフケモカイン受容体4、あるいはそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、無細胞は、対象のリンパ組織中の1または複数の細胞に発現されるリガンドに対し特異的なホーミング受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、C-X-Cケモカイン受容体3型、ロイコシアリン、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1、または最晩期抗原-4、あるいはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、無核細胞は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む免疫変調成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、表3~表6に提供される。
【0017】
本明細書に開示される態様は、病原体に関連する疾患または疾病を処置する方法であって、(a)病原体による感染症を患う対象に、実質的に核を含まない複数の細胞を投与することで、(i)(a)にて対象に投与された複数の細胞のうち少なくとも1つの無核細胞の感染症を病原体により許容し、(ii)(i)の後、少なくとも1つの無核細胞内での病原体の伝播を防止することにより病原体を対象からin vivoで隔離する工程と、(b)病原体に関連する疾患または疾病を、(i)複数の細胞のうち少なくとも1つの細胞から病原体をin vivoで除去するか減らすこと、および(ii)対象から少なくとも1つの無核細胞を実質的に除去することのうち少なくとも1つにより処置する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの無核細胞は、対象のリンパ組織中の1または複数の細胞に発現されるリガンドに対し特異的なホーミング受容体を含む。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、C-X-Cケモカイン受容体3型、ロイコシアリン、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1、または最晩期抗原-4、あるいはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、病原体はコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、配列番号1に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの無核細胞は、(a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、(b)サイトカイン、(c)(a)もしくは(b)の一部、または(d)(a)~(c)のあらゆる組合せを含む免疫変調成分を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの無核細胞は、(a)~(d)のうち1または複数を合成あるいは分泌するのに十分な、1または複数の細胞内小器官を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは、配列番号13、14、または15、あるいはそれらの組合せに対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、サイトカインは分泌性である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの無核細胞の直径は、約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの無核細胞の直径は約8μmである。いくつかの実施形態では、方法は、(a)における投与の前に、凍結休眠または凍結保存から実質的に核を含まない複数の細胞を除去する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、実質的に核を含まない複数の細胞は、凍結休眠、凍結保存、または凍結乾燥から実質的に核を含まない複数の細胞を除去した後、少なくとも24時間生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、少なくとも48時間の凍結乾燥後に生存可能である。いくつかの実施形態では、無核細胞は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、無核細胞は、単離または精製される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるトリパンブルー色素排除を使用して測定される。いくつかの実施形態では、トリパンブルー色素排除は、(a)複数の無核細胞のアリコートを懸濁液中で遠心分離して細胞ペレットを作り出すこと、(b)細胞ペレットを無血清培地に再懸濁させて無血清細胞懸濁液を産生すること、(c)一部のトリパンブルー染料と一部の無血清細胞懸濁液を混合すること、および(d)(c)から3~5分以内に複数の無核細胞を計数することであって、該複数の無核細胞の少なくとも一部が、生存度を示すトリパンブルー染料で染色されていない、計数することにより実施される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるアネキシン-5細胞表面染色を使用して測定される。いくつかの実施形態では、(b)において病原体関連の疾患または疾病を処置することは、複数の細胞のうち少なくとも1つの細胞から病原体を除去するか減らすことにより行われる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細胞は、少なくとも1つの細胞から病原体を減らすか除去するのに十分な抗ウイルス薬を含む。いくつかの実施形態では、(b)において病原体関連の疾患または疾病を処置することは、対象から少なくとも1つの無核細胞を実質的に除去することにより行われる。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、赤血球または赤血球前駆体ではない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの無核細胞は、病原体と、対象の細胞が発現する病原体認識型受容体との結合を遮断する中和抗体をコードする異種ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、方法は、核のない状態で、少なくとも1つの無核細胞により中和抗体を分泌することで、病原体と対象の細胞の病原体認識型部分との結合を減少するか改善する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、病原体は、ウイルス、細菌、毒素、または真菌である。いくつかの実施形態では、ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2またはその変異体である。いくつかの実施形態では、毒素は、クロストリディウム・ボツリナム毒素、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、またはトウゴマ由来のリシン毒素、あるいはそれらのあらゆる組合せである。いくつかの実施形態では、細菌は、バチルス・アントラシス、エルシニア・ペスチス、フランシセラ・ツラレンシス、ブルセラ菌、サルモネラ菌、大腸菌O157:H7、赤痢菌、バークホルデリア・マレイ、バークホルデリア・シュードマレイ、クラミジア・シタッシ、コクシエラ・ブルネッティ、発疹チフスリケッチア、ビブリオ・コレラエ、またはクリプトスポリジウム・パルバム、あるいはそれらのあらゆる組合せである。
【0018】
参照による引用
本明細書で言及される刊行物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ参照により引用されるように具体的かつ個々に示されるのと同じ程度にまで、参照により本明細書に引用される。引用により組み込まれる刊行物および特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示に矛盾する程度にまで、本明細書は、そのような矛盾のある題材に取って代わる、および/または、それに先行するように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書に開示される方法と組成物のいくつかの新規な特徴が、本開示に明記される。本明細書に開示される方法と組成物の特徴と利点は、開示された組成物と方法の原理が用いられている例示的な実施形態を明記する以下の詳細な記載と、添付の図面とを参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0020】
図1】本開示の一実施形態による高速ウイルス・ワクチン・プラットフォームにおいて細胞を操作するプロセスを示す図である。
図2】本開示の実施形態による高速ウイルス・ワクチン・プラットフォームを使用したワクチン産生のタイムラインを、従来のワクチン開発タイムラインと比較した図である。
図3】本開示の一実施形態による新たに同定されたウイルスを取り扱うために高速ウイルス・ワクチン・プラットフォームを配置するプロセスを示す図である。
図4】本明細書に記載の細胞質体が、本開示の一実施形態によるウイルス(例えばコロナウイルス)を捕捉して取り除くプロセスを示す図である。
図5】本明細書に記載の高速ウイルス・ワクチン・プラットフォームによる利益の非限定的な例を示す図である。
図6A】4℃で指定の時間にわたる凍結休眠から回復した直後の、MSCおよびMSC由来の細胞質体の生存度を示す代表的な線グラフである。生存度は、自動細胞計数器(automated cell count)(Cell Countess)中、トリパンブルー色素排除を使用して査定し、入力細胞の数との比として表示した。
図6B】4℃で指定の時間にわたる凍結休眠から回復した直後、ボイデン・チャンバ・アッセイにおいて移動したMSCとMSC由来の細胞質体とを比較する代表的な棒グラフである。細胞と細胞質体は、ボトムチャンバ中、血清を含まないか(陰性対照)、または化学遊走物質として10%プレミアムFBS(P-FBS)を伴って、3時間移動することを可能とされ、数はローディングコントロールに正規化した。
図7A】MSCおよび細胞質体へとトランスフェクトされたインターロイキン10(IL-10)mRNAの略図である。コザック配列を、IL-10mRNAコーディング領域(CDS)の開始コドンの前に追加した。ヒトβグロビン(HBB)mRNAの5’UTRと3’UTRは、それぞれIL-10 CDSの5’末端と3’末端に追加した。人工5’キャップをIL-10 mRNAの5’末端に追加し、シュードウリジン修飾を操作してmRNA安定性を増加した。
図7B】トランスフェクトした(++)もしくはトランスフェクトしていない(--)MSCまたはMSC由来の細胞質体を含む培養培地中のIL-10濃度を示す棒グラフである。MSC由来の細胞質体をIL-10 mRNAでトランスフェクトし、次いで24ウェルプレート中、2.5×10細胞/ウェルで播種した。調整培地(CM)をトランスフェクションの24時間後に集め、IL-10濃度をELISAにより求めた。
図7C図7Bのように1時間処置したMSCまたは細胞質体から得た指定の調整培地(CM)で処置した血清飢餓状態のRAWマクロファージ細胞における、Stat3およびリン酸化Stat3(P-Stat3、IL-10活性化のマーカー)のタンパク質発現を示す免疫ブロットである。未処置=CMで処置しなかった対照。完全培地=MSC完全培養培地で処置したRAW細胞。MSC Ctrl=トランスフェクトしていないMSCから得たCMで処置したRAW細胞。MSC IL-10=IL-10 mRNAでトランスフェクトしたMSCから得たCMで処置したRAW細胞。細胞質体Ctrl=トランスフェクトしていない細胞質体から得たCMで処置したRAW細胞。細胞質体IL-10=IL-10 mRNAでトランスフェクトした細胞質体から得たCMで処置したRAW細胞。
図7D】ELISAにより判定したときの、マウス血液中に分泌されたIL-10サイトカインの濃度を示す棒グラフである。MSCまたはMSC由来の細胞質体は図7Bのように処置し、C57BL/6マウスの脈管構造に後眼窩注射した。注射の2時間後、動物を屠殺し、血液試料を心穿刺により採取した。平均±SEM;n=3。
図8A】ボイデン・チャンバ・アッセイにおいてクリスタルバイオレットで染色したMSCまたはMSC由来の細胞質体が、基底膜抽出物(BME)で被覆した8.0μm多孔質フィルタの下面に侵入して、24時間にわたり化学遊走物質として10%FBSに向かったことを表す明視野顕微鏡画像である。陰性=FBSなし(陰性対照)。スケールバー=50μm。
図8B図8Aに示す膜の下面に侵入したMSCまたはMSC由来の細胞質体と、ローディング対照との比を示す代表的な棒グラフである。平均±SEM;n=18。
図9A】懸濁液培地中のMSCおよび細胞質体の代表的な落射蛍光顕微鏡画像(上部パネル)と位相差顕微鏡画像(下部パネル)である。アクチン皮質はLifeact RFPで染色し、一方で細胞核はVybrant(登録商標)Dyecycle(商標)Greenで染色した。矢印は細胞質体、矢頭(arrowhead points)はMSC核を指す。スケールバー=20μm。
図9B】Nikon Elementソフトウェアで測定したときの、MSCおよび細胞質体のサイズ分布を示す代表的な散布図である。平均±SEM;n=80。
図9C】肺に検出された、Vybrant(登録商標)DiDで標識したMSCまたは細胞質体を示す代表的な棒グラフである。MSCまたは細胞質体をDiD色素で標識し、C57BL/6マウスの脈管構造に後眼窩注射した。組織を24時間後に採取し、細胞懸濁液をフローサイトメトリーにより解析した。平均±SEM;n=3。
図9D】肝臓に検出された、Vybrant(登録商標)DiDで標識したMSCまたは細胞質体を示す代表的な棒グラフである。平均±SEM;n=3。MSCまたは細胞質体をDiD色素で標識し、C57BL/6マウスの脈管構造に後眼窩注射した。組織を24時間後に採取し、細胞懸濁液をフローサイトメトリーにより解析した。
図10A】肺に検出された、DiDで標識したMSCまたは細胞質体の数を示す代表的な散布図である。MSCを標準接着条件下で(2D)、または水滴法(handing drop method)(3D)により懸濁液中で培養し、3D細胞質体を生成する。MSCおよび細胞質体をVybrant(登録商標)DiD色素で標識し、C57BL/6マウスの脈管構造に後眼窩注射した。組織を24時間後に採取し、細胞懸濁液をフローサイトメトリーにより解析した。平均±SEM;n=2。
図10B】肝臓に検出された、DiDで標識したMSCまたは細胞質体の数を示す代表的な散布図である。MSCを標準接着条件下で(2D)、または水滴法(3D)により懸濁液中で培養し、3D細胞質体を生成する。MSCおよび細胞質体をVybrant(登録商標)DiD色素で標識し、C57BL/6マウスの脈管構造に後眼窩注射した。組織を24時間後に採取し、細胞懸濁液をフローサイトメトリーにより解析した。平均±SEM;n=2。
図10C】脾臓に検出された、Vybrantで標識したMSCまたは細胞質体の数を示す代表的な散布図である。MSCを標準接着条件下で(2D)、または水滴法(3D)により懸濁液中で培養し、3D細胞質体を生成する。MSCおよび細胞質体をDiD色素で標識し、C57BL/6マウスの脈管構造に後眼窩注射した。組織を24時間後に採取し、細胞懸濁液をフローサイトメトリーにより解析した。平均±SEM;n=2。
図11A】感染の12時間後、MOI 0.05でVSV-GFP(矢印)に感染させた有核親MSC(上部)とMSC由来の細胞質体(下部)の落射蛍光顕微鏡画像を例示する図である。GFP抗原は、除核細胞における、ウイルス複製および抗原産生を示す無核MSCにより明確かつしっかりと発現された。スケールバー=50μm。
図11B】感染の12時間後、MOI 0.1でVSV-GFP(矢頭)に感染させたMSC由来の無核細胞の高倍率落射蛍光顕微鏡画像である。核がないことを例示するために、ローダミンファロイジン(矢印)および核染色法DAPIを使用して、細胞質体をさらにF-アクチンフィラメントに対して染色した。
図12A】感染の48時間後、MOI 0.05で、GFP抗原をコードするoHSVに感染させたMSCと無核MSCの落射蛍光顕微鏡画像である。無核MSC(細胞質体)は、oHSV-GFPを接種して18時間後にMSCから生成した。スケールバー=50μm。
図12B】lifeact-RFPを発現するMSCまたは無核MSCが、GFPをコードする腫瘍溶解性単純疱疹ウイルス(oHSV-GFP)0.05MOIに感染し、その後、ヌードマウス中で成長する樹立U87膠芽腫腫瘍に注射されたことを例示する図である。画像は、注射の7日後に取得した。MSCと無核MSCはともに、強いGFPシグナルが示すように、oHSVを腫瘍細胞に送達した。特筆すべきことに、無核MSCは7日後に腫瘍中に検出されたが、多くのMSCは、中心(注射部位)の中、および増殖する腫瘍の外縁に存在した。
図12C図12Cは、GFPで被覆した腫瘍領域の割合を示す棒グラフであり、oHSV-GFPウイルスを保因するMSCまたは無核MSCにより感染した腫瘍細胞の部分が表される。
図12D図12Dは、IL-12(アジュバント)で操作した無核MSCとoHSVで操作した無核MSCとの組合せで処置した樹立膠芽腫腫瘍に存在するCD8+エフェクターT細胞と、PBSを注射した対照との比の上昇を示すグラフである。
図13A】細胞透過性抗原ペプチドを容易に取り込む有核間葉系間質細胞(MSC)(細胞質体)を例示する図である。図13Aは、100μMの細胞透過性抗原ペプチド(Arg)9-FAM(6-カルボキシフルオレセイン、FAM-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-OH)でインキュベートしたMSC(左側)と除核MSC(細胞質体)(右側)を示す。スケールバー=50μm。矢印はHoechst染色した核を、矢頭は陽性(Arg)9-FAMを示す。
図13B図13Bは、ImageJで測定した相対的蛍光強度を表す棒グラフを例示する。補正後の合計細胞蛍光=統合密度-(選択した細胞の領域Xバックグラウンド読取りの平均蛍光)。平均±SEM;n=10。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書には、病原体感染症(例えば、ウイルス、真菌、寄生虫、細菌)またはかかる病原体感染症に関連する疾患もしくは疾病を処置するか予防するための組成物および組成物およびキット、ならびにそれらの使用方法が開示される。本開示の組成物は細胞質体を含み、この細胞質体は、病原体感染症に関連する疾患もしくは疾病を処置する、および/または病原体感染症を予防するのに有効な治療薬を含有する、および場合によってはそれを産生するよう操作された除核細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療薬は、ワクチン(例えば、弱毒化ウイルス抗原)、急性ウイルス感染症の処置に有効なウイルス標的化薬、またはこの2つの組合せであってよい。いくつかの実施形態では、細胞質体はさらに、病原体を(例えば、in vivoで)捕捉し、それらを不活性化して急性感染症を処置するとともにさらなる感染症を予防するように操作されてもよい。いくつかの実施形態では、病原体は、コロナウイルスなどの1または複数のウイルスである。
【0022】
既存の細胞療法薬には多くの欠点がある。有効な細胞療法薬の開発には、遺伝子操作、およびex vivoでの新たな遺伝物質の細胞ゲノムへの導入が必要となることが多い。しかし、このプロセスは、ゲノムに危険な突然変異を導入し、特に操作された細胞が身体へと恒久的に生着して宿主細胞と融合する場合に、癌および他の生命を脅かす疾患を生み出すおそれがある。多くの既存の細胞療法薬に伴う他の顕著な課題は、身体への送達後、細胞が制御不能に増殖して身体に恒久的に生着する可能性があるというものであり、これにより生命が脅かされる可能性がある。また、対象への投与後に細胞に対する制御が欠如すると、治療細胞、およびその生体活性産物の正確な用量の送達が、困難となる(例えば、薬物動態が不十分となる)おそれがある。このため、治療薬または他の生体分子を送達するのに安全で制御可能な細胞療法薬が必要とされている。
【0023】
患者または対象に送達する前、従来の細胞療法薬は、所望の細胞機能と治療機能を生成するよう一般的に修飾されるか、またはex vivoで遺伝子改変される。しかし、これら細胞が対象に導入されると、新たな宿主環境が大幅にリプログラミングされ、負に改質、またはその他の方法で細胞を無効にしてしまう可能性がある。このため、リプログラミングおよび有害な外部シグナルに応答できない、さらに予測可能な細胞療法薬が必要とされている。
【0024】
現存する細胞療法は、癌または他の疾患に対する治療薬として対象に送達するために細胞療法に充填可能なDNA損傷薬/遺伝子標的化薬の量によって制限される。DNA損傷薬/遺伝子標的化薬としては、DNA損傷化学療法薬、DNA統合ウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、および、限定されるものではないがクラスタ化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、Casの小クラスタ(CRISPR/Cas系)、およびプラスミドを含む遺伝子療法用途/送達が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このため、かかる限定のない細胞療法薬が必要とされ、この細胞療法薬は、高用量の細胞毒性治療薬を配達する理想的なプラットフォームであってよい。
【0025】
本開示の細胞質体を使用して、治療薬を対象に送達することにいくつかの利点がある。DNAをその核(例えば、核をコードされた遺伝子、異物、または突然変異DNA)から宿主細胞へと意図せずに転移させる従来の細胞療法薬と異なり、本開示の細胞質体は、核なしでその転移を行うことはできない。加えて、本明細書に記載の細胞質体を使用した治療薬の対象への送達は、制御可能で有限であり(例えば、14日以下)、理由として、少なくともこの細胞質体は、核のない状態で他の細胞型へと増殖も分化もできないからである。本開示の細胞質体は、核のない状態で、本明細書に記載の治療薬または他の生体分子を発現および/または分泌するほか、標的細胞、標的組織、またはin vivo環境へと遊走するか帰巣する(home)場合がある。この少なくとも一部は、本明細書に記載の方法を使用した親化合物を除核し、そうして得られた細胞質体が、正常な生体機能(例えば、タンパク質産生/分泌、細胞運動、ケモカイン感知など)に十分な親細胞由来の細胞小器官を保持することにより、達成される。本明細書に記載の細胞質体は、対象に全身送達されたときでも、安全で制御可能な形で治療薬を対象の標的組織または標的細胞(例えば、リンパ組織、肺組織)に効率的かつ有効に送達する。さらに、従来の細胞療法薬の大量製造は非常に時間とコストを要するため、それらの臨床応用が制限されてしまう。核を伴う不死化細胞(例えば、hTERT)を使用して製造力を増大させることで、製造規模を大きくし製造コストを下げることができると考えられているが、不死化細胞は染色体異常を被りやすく、腫瘍または異所性組織形成を促進させるため、臨床応用には安全ではないという懸念が存在する。本開示の実施形態によるこのような細胞、またはあらゆる細胞型を除核することにより、細胞質体の製造に伴う規模の拡大とコスト低下が達成され、その一方で、従来の細胞療法薬がもたらす人体の健康に対するリスクが軽減される場合がある。
【0026】
本明細書に記載の組成物における製造の規模とコスト、安全性プロファイル、および有効性の改善は、ワクチン開発において重要な利益を伴う。本明細書に記載の組成物を産生する方法は、通常産生細胞株からのワクチン(例えば、抗原、mRNA)の単離と精製を必要とする従来のワクチン開発のタイムラインよりも速く行われる。対照的に、本開示の細胞質体は、ワクチンの単離と精製を必要とすることなく、継続的に抗ウイルス組成物を産生するよう操作される。必要な時点で、本明細書に記載の組成物は、筋肉内注射ではなく全身(例えば、吸入)投与されてよく、これによりワクチン投与のための医療施設が必要となくなり、患者経験が改善する。リンパ組織(または他の標的組織)に速やかに帰巣するという細胞質体の能力のため、ワクチンは、特定の従来の細胞療法薬(例えばエキソソーム)を全身投与するのに要する時間と比べわずかな時間で、対象のリンパ系に展開される場合がある。加えて、細胞質体の大きさが小さいことで(例えば、約8マイクロメートル)、細胞質体は血管系および組織実質中の小さな開口部に確実に捕捉されず、それにより従来の細胞療法薬と比較して体内分布が改善する。本明細書に開示される細胞質体は、事実上あらゆる種類のワクチンまたは抗ウイルス薬(例えば、抗ウイルス抗体および/または中和抗体)を発現して活動性感染症に対抗することに加え、将来の感染症を予防するように操作されてよい。加えて、本明細書に記載の細胞質体は、1種類より多くのワクチン(例えば、1種類より多くの病原体に対する)を発現して、ひとまとまりの(a panel of)ワクチンを単回投与形態で対象に投与するのを可能にするように操作されてよいこれは特に、有効な免疫化戦略において将来複数のワクチンを必要する場合のある、急速に発達する病原体(例えばSARS-CoV-2)に対して有益である。
【0027】
本明細書に開示される細胞質体は、医療において至急に必要とされる場合の容易に利用可能な解決策である。細胞質体は、除核の前または後に、標的化部分(例えば、ホーミング受容体)、免疫回避部分(例えば、「don’t eat me」シグナル伝達ペプチド)、とりわけ、到達前に免疫系によるクリアランスのリスクを伴うことなく細胞質体をリンパ組織に対し標的とするのに十分な他の生体分子を発現するよう操作されてよい。細胞質体は、凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥(cryodesiccated)され、およびその生体活性を遅くするか停止させて長期間貯蔵されてよい。医療において至急に必要とされるとき、細胞質体の生体機能は回復され(例えば、再水和、解凍)、送達前に必要に応じて(例えば、ワクチンまたは抗ウイルス薬を発現するための)さらなる操作を行うために最大5日間生存可能である。かかる生体機能として、治療用表面タンパク質、免疫刺激抗原、または受容体の発現、サイトカイン、ホルモン、またはタンパク質の分泌、エキソソームの放出、膜粒子のシェディング、死滅プロセスを介した免疫系の刺激、またはトンネリングナノチューブの作製が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本開示の細胞質体は、意図した細胞質体機能に負に影響を及ぼすことなく、製造および流通のプロセスの間に複数回冷凍かつ解凍されてよく、そうすることで迅速なワクチン展開に理想的なプラットフォームとなる。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞質体は、本明細書に記載の外来性ワクチンまたは他の生体分子を産生または送達するよう操作されることのない治療薬であり得る。例えば、例えば、目的の病原体に対し免疫のある対象から取得した細胞から得られる細胞質体など、未操作の細胞質体自体は、患者または対象に送達したときに、回復期血漿療法の手法と同様の治療特性を有する可能性がある。かかる細胞は、病原体と宿主受容体との係合を遮断する中和抗体を自然に産生する場合がある。いくつかの実施形態では、未操作の細胞質体は、本明細書に記載の治療薬または生体分子のうちいずれか1つを自然に産生することができ、これらは、処置を必要とする対象に治療効果を達成するのに使用される場合がある。
【0029】
本明細書に記載の高速ワクチンプラットフォームにおける多くの利益の非限定的な例を、図5に提供する。細胞質体の産生は急速に拡大されてよく、ウイルス抗原を発現するよう操作された何億もの細胞質体は、容易に製造され、必要となるまで貯蔵される場合がある。本明細書に記載の細胞質体は、ウイルス抗原を発現するよう操作されることに加えて、トラップとして作用する場合がある。かかる技術的特徴により、操作された細胞質体を病原体に感染させ、こうして病原体を隔離して他の細胞に感染するのを防止することが可能になる。例えば、本明細書に記載の細胞質体は、スパイクタンパク質を発現するSARS-CoV-2ウイルスに感染することとなるACE2受容体を発現するよう操作されることができる。感染に際して、SARS-CoV-2ウイルスは細胞質体に捕捉され、これ以上複製しない場合がある。感染した細胞質体は、分解のため免疫系により標的とされる場合がある。細胞質体は、細胞質体を標的組織またはリンパ節などの微小環境に帰巣させるためにケモカイン受容体を発現するよう操作されてよい。
【0030】
本明細書には、対象の病原性感染症の予防または処置のための組成物、方法、およびキットが提供される。いくつかの実施形態では、病原性感染症は、コロナウイルスまたはインフルエンザウイルスの感染症などのウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、病原性感染症は細菌感染症である。本明細書には、ウイルスの感染もしくはアウトブレイクを予防する、または急性感染症を処置するのに適切な抗ウイルス組成物を発現するように操作される細胞質体である。この細胞質体は、対象に送達されると、細胞質体の表面上に抗ウイルス組成物を提示することにより、または標的組織を取り囲む細胞外空間へと抗ウイルス組成物を分泌することにより、標的組織に抗ウイルス組成物を送達する。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞質体はさらに、病原体による細胞質体の感染を許容し、in vivoでの病原体の伝播を防止することにより、対象の病原体を捕捉するのに適している。図4に示すように、本明細書に記載の細胞質体は、病原体が認識可能なウイルス受容体を発現し、細胞質体の感染を促進することができる。この病原体は、細胞質体を感染させると、核ゲノムがない状態で複製も伝播もできない細胞質体にて隔離される。5日以内に、細胞質体は、食作用の自然過程を使用して対象から取り除かれる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、対象におけるウイルスのクリアランスを加速させるべく免疫系を活性化する。in vivoでの病原体の伝播を防止するための本明細書に開示される細胞質体に対する少なくとも1つの利点は、細胞質体は、複製対象である多くの病原体に必要な遺伝子情報を含む核を欠いているということである。
【0032】
図1を参照すると、いくつかの実施形態は、対象のリンパ組織(例えばリンパ節)や肺組織などの標的細胞または組織を標的とする接着分子、ケモカインもしくは保持受容体、またはその両方を発現するよう、除核前に遺伝子操作される細胞(例えば幹細胞)である(STEP1)。次に、操作された細胞は、細胞質体を産生するために本明細書に記載の方法を使用して除核される(STEP2)。その後、細胞質体は、対象の適応免疫反応を向上させるために、ワクチンまたは他の生体分子(例えば治療薬、中和抗体)および/あるいは免疫変調成分(例えば免疫賦剤)を発現、ならびにいくつかの実施形態ではそれらを分泌するように操作されてよい(STEP3)。細胞質体は、意図した機能により必要に応じてさらに操作される。結果生じる細胞質体は、ウイルスを捉えるトラップとして、またはワクチンを配するために使用されてよい。ウイルストラップの非限定的な例では、細胞質体は、治療(例えばワクチン)ペイロードによって操作されない場合がある。しかし、場合により、将来のウイルス感染症を防止するために、目的の病原体に対する中和抗体を発現および/または分泌することが有利な場合もある。いくつかの実施形態では、この例のウイルスは、SARS-CoV-2などのコロナウイルスである。しかし、図1のワークフローは、ヒトの健康に多大なリスクをもたらす病原菌(例えば炭疽菌)または毒素を含む、本明細書に記載のあらゆる病原体に適用可能であってよい。
【0033】
新たな病原体(例えばウイルス)の特定から流通まで、本開示の細胞質体を製造するプロセスの期間はおよそ2か月であり、これに対し従来のワクチン開発では12か月以上である。図2に示すように、本開示の細胞質体は、ウイルスのアウトブレイクより前に調製され、一定期間にわたり保管されてよい。これが意味するところでは、本開示の細胞質体(例えば、ホーミング受容体すなわち免疫賦活剤を発現するように操作される)は、次のウイルスのアウトブレイクに対処するべく速やかに配置される場合がある。図3を参照すると、事前に調製され凍結保存された細胞質体は、弱毒化ウイルスタンパク質を分泌するように操作される。この細胞質体は、それを必要とする対象に投与されると、対象においてウイルスに対する中和抗体の免疫活性化と産生を誘導する。
【0034】
本開示の細胞質体を産生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞をサイトカラシンBで処理し、皮質アクチン細胞骨格を軟化することができる。次いで、核をフィコール勾配での高速遠心分離により細胞体から物理的に抽出し、核のない(除核)細胞質体を生成することができる。細胞質体および無傷の有核細胞はフィコール勾配で異なる層に沈降するので、いくつかの実施形態では、細胞質体は、治療目的のために、または他の細胞(有核または除核)への融合のために容易に単離かつ調製可能である。除核プロセスは、何千万もの細胞を処理するほど臨床的にスケーラブル(scalable)であり得る。
【0035】
本明細書には、本開示の細胞質体を使用または送達する方法が開示される。細胞質体は、健康な個体を処置(例えばエネルギー改善、運動からの回復、もしくは天然物の送達のために)、または各種疾患(例えば本明細書に記載の疾患のいずれか)を処置するために、臨床的に関連するカーゴ(cargos)/ペイロードを送達するホーミング受容体として使用可能である。例えば、細胞質体は、健康な個体、例えば送達した治療薬が有効となる特定の障害と診断されていない個体に、サプリメント、老化防止因子、予防処置などを送達するために使用されてよい。
【0036】
また本明細書には、本明細書に記載のあらゆる組成物を含むキットも提供される。例えば、キットは、本明細書に記載の組成物または方法のいずれかを使用するための指示書を含むことができる。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載のいずれかの組成物の少なくとも一回量を含むことができる。
【0037】
I.組成物
本明細書には、対象における病原体関連の疾患もしくは疾病を処置または予防するのに有用な組成物が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、病原体関連の疾患もしくは疾病を処置または予防するのに適した活性薬剤を発現するよう操作された細胞質体(例えば除核細胞)を含む。いくつかの実施形態では、病原体関連の疾患または疾病は、コロナウイルス感染症などのウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、細胞質体は、弱毒化したウイルス抗原または抗ウイルス抗体などの抗ウイルス組成物、またはそれらの組合せを発現するよう操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面(例えば抗原提示)に抗ウイルス組成物を含む。いくつかの実施形態では、抗ウイルス組成物は、標的組織にて細胞質体により細胞外空間へと分泌される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の感染を許容しin vivoでの病原体の伝播を予防することにより、in vivoで病原体を捉えるか捕捉し、それにより急性病原性感染症または病原体関連の疾患もしくは疾病を処置するように、操作される。
【0038】
本明細書に記載の細胞質体は、制限されたか規定された(例えば、既知の、またはプログラム可能な)寿命を有するように操作される。本明細書に記載の細胞質体のサイズは、いくつかの実施形態で体内分布を改善する他の一部の細胞療法(例えばエキソソーム、赤血球、養子細胞治療)の細胞と比較して小さい。
【0039】
本明細書に記載の細胞質体は、凍結休眠または凍結保存後の生存度を維持するため、広範囲の導入において薬物送達のプラットフォームとして他に類を見ないほど適切なものとなる。凍結保存は、生体材料(例えば細胞、細胞質体)を短期間または長期間、非常に低温(例えば、固形COで-80℃、液体窒素で-196℃など)で冷却または冷凍し、保管することを含む。凍結休眠は、仮死状能にある生体材料(例えば細胞、細胞質体)を不凍温度、例えば4℃で短期間冷却して保管することを含む。細胞質体の凍結休眠は、以下の理由:凍結休眠は凍結保存ほど労力を要するものではない、凍結休眠を受けた細胞質体は運搬(例えば、輸送)可能である、のうち1または複数により有利な可能性がある。いくつかの実施形態では、細胞質体は凍結保存される。いくつかの実施形態では、細胞質は凍結休眠される。細胞質体を凍結休眠または凍結保存から取り除いた後、細胞質体は、本明細書に記載の方法に従い使用されてよい。いくつかの実施形態では、細胞質体は、凍結休眠または凍結保存から取り除いた後、少なくともまたは約24時間、48時間、72時間、あるいは24時間から73時間の間にあるあらゆる時間増分にわたり生存可能である。いくつかの実施形態では、細胞質体は、約24~約48時間の間にわたり生存可能である。いくつかの実施形態では、細胞質体は、約48~約72時間の間にわたり生存可能である。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるトリパンブルー色素排除を使用して測定される。いくつかの実施形態では、生存度は、本明細書に記載されるアネキシン-5細胞表面染色を使用して測定される。
【0040】
本明細書に記載の細胞質体は、所与の治療用途への適合が最良となるよう広く操作される。例えば、標的病原体による細胞質体の感染を増大させる細胞質体が、操作される(例えば細胞表面受容体により)。いくつかの実施形態では、細胞質体は、急性ウイルス感染症の処置に使用されるワクチンまたは抗ウイルス抗体としての使用において弱毒化ウイルス抗原を発現するよう操作される。別の例では、細胞質体は、困難な(difficult)組織(例えば、筋肉)、および弱毒化ウイルス抗原や抗ウイルス抗体などの活性薬剤を特異的に標的とするタンパク質を産生するか発現するよう操作される。加えて、いくつかの実施形態では、細胞質体は、宿主における抗原応答を回避するべく免疫回避部分(例えばCD34+)により操作される。細胞質体はさらに、細胞ホーミング、ケモカイン感知、および、主に影響を受けた領域にある損傷組織を標的とするのに必須の他の生物学的機能に使用される細胞表面受容体(例えば接着分子、ケモカイン受容体)を発現するよう操作される。
【0041】
いくつかの実施形態では、細胞質体の規定された寿命は、1時間未満~14日(例えば、1時間未満~1時間、1時間未満~6時間、6時間~12時間、12時間~1日、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、13日、14日、1~14日、1~12日、1~10日、1~9日、1~8日、1~7日、1~6日、1~5日、1~4日、1~3日、1~2日、2~14日、2~12日、2~10日、2~8日、2~7日、2~6日、2~5日、2~4日、2~3日、3~14日、3~12日、3~10日、3~8日、3~7日、3~6日、3~5日、3~4日、4~14日、4~12日、4~10日、4~8日、4~7日、4~6日、4~5日、4~7日、5~14日、5~12日、5~10日、5~8日、5~7日、5~6日、6~14日、6~12日、6~10日、6~8日、6~7日、7~14日、7~12日、7~10日、7~8日、8~14日、8~12日、8~10日、10~14日、10~12日、12~14日、14日未満、12日未満、10日未満、8日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、2日未満、1日未満、12時間未満、または6時間未満)である。いくつかの実施形態では、細胞質体集団の寿命は、細胞質体集団の一部(例えば、集団の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%)が死滅したと判定された平均時間を判定することにより評価することができる。細胞の死滅は、当該技術分野で公知のあらゆる方法により判定可能である。いくつかの実施形態では、例えば1または複数の時点での細胞質体の生存度は、形態測定学的または機能的パラメータがインタクトであるかどうかを判定することにより評価可能である(例えば、トリパンブルー色素排除により、無傷の細胞膜を評価する、(例えば、付着性の細胞質体における)プラスチックへの接着を評価する、細胞質体の移動を評価する、アポトーシス性マーカーによりネガティブ染色を行うなど)。いくつかの実施形態では、細胞質体の寿命は、細胞質体が得られた細胞の寿命に関連する場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、マクロファージから得た細胞質体は、12~24時間生存する場合がある。
【0042】
いくつかの実施形態では、細胞質体の直径は、少なくとも1μm以上である。いくつかの実施形態では、細胞質体の直径は、1μmを超える。いくつかの実施形態では、細胞質体の直径は、1~100μm(例えば、1~90μm、1~80μm、1~70μm、1~60μm、1~50μm、1~40μm、1~30μm、1~20μm、1~10μm、1~5μm、5~90μm、5~80μm、5~70μm、5~60μm、5~50μm、5~40μm、5~30μm、5~20μm、5~10μm、10~90μm、10~80μm、10~70μm、10~60μm、10~50μm、10~40μm、10~30μm、10~20μm、10~15μm、15~90μm、15~80μm、15~70μm、15~60μm、15~50μm、15~40μm、15~30μm、15~20μm)である。いくつかの実施形態では、細胞質体の直径は、10~30μmである。いくつかの実施形態では、細胞質体の直径は、5~25μmの間(例えば、5~20μm、5~15μm、5~10μm、10~25μm、10~20μm、10~15μm、15~25μm、15~20μm、または20~25μm)である。いくつかの実施形態では、細胞質体はエキソソームではない。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、いくつかの実施形態では、一部の細胞質体は、有利には、より良好な体内分布を可能にするほど、または対象の肺に捕捉されにくくなるほど十分に小さい可能性があると考えられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、その特性を改質するために細胞(例えば、異種培養された(xenocultured)細胞)に適用されるか、またはこの細胞を用いて培養される可能性がある。例えば、いくつかの実施形態では、細胞質体(例えば、未操作の細胞質体または操作された細胞質体)は、異種培養された細胞において健康促進因子を上方調節することができ、いくつかの実施形態では、異種培養された細胞は、それらが得られた対象へと戻ることができる。
【0044】
A.細胞
本明細書には、本開示の細胞質体を産生するように操作される細胞および細胞株が提供される。細胞質体は、有核親細胞などの対応する親細胞にから得られてよい。親細胞の非限定的な例として、不死化細胞、癌細胞(例えば、あらゆる癌細胞)、初代(例えば、宿主由来)細胞、または細胞株が挙げられる。いくつかの実施形態では、親細胞は、Huangらによる「J.Exp.Clin.Med.2010 Oct.22l 2(5):202-217」に記載のものなど、適切な方法を使用して不死化された細胞から得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、全体を参照により本明細書に引用される米国特許出願第16/715,859号明細書に提供される適切な方法を使用して、親細胞から得られる。
【0045】
いくつかの実施形態では、細胞は、1または複数の細胞を有するあらゆる生物体から生じる可能性がある。一部の非限定的な例として、原核細胞、真核細胞、細菌細胞、古細菌細胞、単細胞真核生物の細胞、原生動物細胞、植物細胞、藻細胞、真菌細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳動物(例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯類、ラット、マウス、非ヒト霊長類、ヒトなど)細胞などが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は体細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は幹細胞または前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は間葉系幹細胞または前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は間葉系間質細胞である。細胞は、1または複数の細胞を有するあらゆる生物体から生じる可能性がある。
【0046】
細胞の一部の非限定的な例として、原核細胞、真核細胞、細菌細胞、古細菌細胞、単細胞真核生物の細胞、原生動物細胞、植物細胞(例えば、作物、果実、野菜、穀類、大豆、コーン、トウモロコシ、小麦、種子、トマト、米、キャッサバ、サトウキビ、カボチャ、まぐさ、ジャガイモ、綿、カンナビス、タバコ、顕花植物、球果植物、裸子植物、シダ類、ヒカゲノカズラ類、ツノゴケ類、苔類、蘚類)、藻細胞(例えば、Botryococcus braunii、Chlamydomonas reinhardtii、Nannochloropsis gaditana、Chlorella pyrenoidosa、Sargassum patens C.Agardhなど)、海草(例えばケルプ)、真菌細胞(例えば酵母菌、キノコ由来の細胞)、動物細胞、無脊椎動物(例えば、ショウジョウバエ、刺胞動物、棘皮動物、線虫など)細胞、脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物)、哺乳動物(例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯類、ラット、マウス、非ヒト霊長類、ヒトなど)細胞などが挙げられる。時に、細胞は、天然の生物体から生じるものではない(例えば、細胞は合成により作られる場合があり、時に人工細胞と称される)。いくつかの実施形態では、細胞は体細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は幹細胞または前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は間葉系幹細胞または前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は造血性幹細胞または前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、筋細胞、皮膚細胞、血液細胞、または免疫細胞である。他の例示的な細胞として、B細胞、T細胞(細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、Tヘルパー細胞)、ナチュラルキラー細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞などのリンパ球細胞;顆粒球(好塩基性顆粒球、好酸性顆粒球、好中性顆粒球/過分葉好中球)、単球/マクロファージ、赤血球(網状赤血球)、肥満細胞、血小板/巨核球、樹状細胞などの骨髄性細胞;甲状腺(甲状腺上皮細胞、瀘胞傍細胞)、副甲状腺(上皮小体主細胞、好酸性細胞)、副腎(クロム親和性細胞)、松果体(松果体実質細胞)細胞を含む内分泌系由来の細胞;グリア細胞(星状細胞、小膠細胞)、大形細胞性神経分泌細胞、星細胞、ベッチェル細胞、下垂体(性腺刺激ホルモン分泌細胞、副腎皮質刺激ホルモン分泌細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン分泌細胞)を含む神経系の細胞;肺細胞(I型肺細胞、II型肺細胞)、クララ細胞、杯状細胞、塵埃細胞を含む呼吸器系の細胞;心筋細胞(Myocardiocyte)や周皮細胞を含む循環系の細胞;胃(胃主細胞、壁細胞)、杯状細胞、パネート細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、I細胞、K細胞、S細胞を含む消化器系の細胞;腸クロム親和性細胞、APUD細胞、肝臓(肝細胞、クッパー細胞)、軟骨/骨/筋肉を含む腸内分泌細胞;骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、歯(セメント芽細胞、エナメル芽細胞)を含む骨細胞;軟骨芽細胞、軟骨細胞を含む軟骨細胞(cartilage cell);毛胞、角化細胞、黒色素細胞(母斑細胞)を含む皮膚細胞;筋細胞を含む筋肉細胞;有足細胞、傍糸球体細胞、糸球体内メサンギウム細胞/糸球体外メサンギウム細胞、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、緻密斑細胞を含む泌尿器系細胞;精子、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、卵子を含む生殖器系細胞;および、他の細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、腱細胞、上皮角化細胞(分化上皮細胞)、上皮基底細胞(幹細胞)、指の爪や足指の爪の角化細胞、爪床基底細胞(幹細胞)、骨髄毛幹細胞、皮質毛幹細胞、表皮毛幹細胞、表皮毛根鞘細胞、ハックスリー層の毛根鞘細胞、ヘンレ層の毛根鞘細胞、外部毛根鞘細胞、毛母基細胞(幹細胞)、湿潤重層障壁上皮細胞(Wet stratified barrier epithelial cell)、角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道および膣の重層扁平上皮の表層上皮細胞、角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道および膣の上皮の基底細胞(幹細胞)、泌尿器上皮細胞(膀胱および尿道を裏打ちする)、外分泌上皮細胞、唾液腺粘液細胞(多糖リッチ分泌)、唾液腺漿液細胞(糖タンパク質酵素リッチ分泌)、舌のフォン・エブネル腺細胞(味蕾を濡らす)、乳腺細胞(乳汁分泌)、涙腺細胞(涙液分泌)、耳の耳道腺細胞(耳垢分泌)、エクリン汗腺暗細胞(糖タンパク質分泌)、エクリン汗腺明細胞(小分子分泌)、アポクリン汗腺細胞(発香性分泌、性ホルモン感受性)、眼瞼のモル腺細胞(特殊化した汗腺)、皮脂腺細胞(脂質リッチ皮脂分泌)、鼻のボーマン腺細胞(嗅上皮を濡らす)、十二指腸のブルンナー腺細胞(酵素およびアルカリ性粘液)、精嚢細胞(遊泳精子のためのフルクトースを含む精液構成要素を分泌する)、前立腺細胞(精液構成要素を分泌する)、尿道球腺細胞(粘液分泌)、バルトリン腺細胞(膣液分泌)、リトル腺細胞(粘液分泌)、子宮内膜細胞(糖質分泌)、気道および消化管の孤立杯細胞(Isolated goblet cell)(粘液分泌)、胃内壁粘液細胞(粘液分泌)、胃腺酵素分泌細胞(ペプシノーゲン分泌)、胃腺酸分泌細胞(塩酸分泌)、膵腺房細胞(炭酸水素塩および消化酵素分泌)、小腸のパネート細胞(リゾチーム分泌)、肺のII型肺細胞(サーファクタント分泌)、肺のクララ細胞、ホルモン分泌細胞、下垂体前葉細胞、成長ホルモン分泌細胞、プロラクチン分泌細胞、甲状腺刺激ホルモン分泌細胞、性腺刺激ホルモン分泌細胞、副腎皮質刺激ホルモン分泌細胞、脳下垂体中葉細胞、巨大神経分泌細胞、腸および気道細胞、甲状腺細胞、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞、副甲状腺細胞、上皮小体主細胞、好酸性細胞、副腎細胞、クロム親和性細胞、精巣のライディッヒ細胞、卵胞の内卵胞膜細胞、破裂卵胞の黄体細胞、顆粒層ルテイン細胞、卵胞膜黄体細胞、傍糸球体細胞(レニン分泌)、腎臓のマクラデンサ細胞、代謝および貯蔵細胞、障壁機能細胞(肺、腸、外分泌腺、および尿生殖路)、腎臓、I型肺細胞(肺の気泡を裏打ちする)、膵管細胞(腺房中心細胞)、(汗腺、唾液腺、乳腺などの)非横紋導管細胞、(精嚢、前立腺などの)導管細胞、閉じた体内体腔を裏打ちする上皮細胞、推進機能を持つ繊毛細胞、細胞外マトリクス分泌細胞、収縮細胞;骨格筋細胞、幹細胞、心筋細胞、血液細胞および免疫系細胞、エリスロサイト(赤血球)、巨核球(血小板前駆体)、単球、結合組織マクロファージ(様々なタイプ)、表皮ランゲルハンス細胞、破骨細胞(骨中)、樹状細胞(リンパ組織中)、ミクログリア細胞(中枢神経系中)、好中性顆粒球、好酸性顆粒球、好塩基性顆粒球、肥満細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、網状赤血球、血液および免疫系の幹細胞および委任前駆細胞(様々なタイプ)、多能性幹細胞、全能性幹細胞、誘導多能性幹細胞、成体幹細胞、感覚トランスデューサー細胞、自律性ニューロン細胞、感覚器および末梢性ニューロン支持細胞、中枢神経系ニューロンおよびグリア細胞、水晶体細胞、顔料細胞、メラノサイト、網膜色素上皮細胞、生殖細胞、卵原細胞/卵母細胞、精細胞、精母細胞、精原細胞(精母細胞の幹細胞)、精子、ナース細胞、卵胞細胞、セルトリ細胞(精巣中)、胸腺上皮細胞、間質細胞、および間質腎臓細胞が挙げられる。
【0047】
真核細胞の非限定的な例として、哺乳動物(例えば、げっ歯類、非ヒト霊長類、またはヒト)、非哺乳動物(例えば、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類)、無脊椎動物、昆虫、真菌、または植物の細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、真核細胞は、サッカロミセス・セレビシエなどの酵母菌である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳動物、鳥類、植物、または昆虫の細胞などのより高度な真核生物である。いくつかの実施形態では、有核細胞は初代細胞である。いくつかの実施形態では、有核細胞は、免疫細胞(例えば、リンパ球(例えばT細胞、B細胞)、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、肥満細胞、好塩基性細胞、樹状細胞、単球、骨髄誘導サプレッサ細胞、好酸球)である。いくつかの実施形態では、有核細胞は、食細胞または白血球である。いくつかの実施形態では、有核細胞は、幹細胞(例えば、成体幹細胞(例えば、造血幹細胞、乳腺幹細胞、腸幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経冠幹細胞、睾丸細胞)、胚性幹細胞、誘導可能な多能性幹細胞(iPS))である。いくつかの実施形態では、有核細胞は始原細胞である。いくつかの実施形態では、有核細胞は細胞株由来である。いくつかの実施形態では、有核細胞は懸濁細胞である。いくつかの実施形態では、有核細胞は粘着細胞である。いくつかの実施形態では、有核細胞は、癌遺伝子の発現により不死化された細胞である。いくつかの実施形態では、有核細胞は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)またはあらゆる癌遺伝子の発現により不死化される。いくつかの実施形態では、有核細胞は、患者または対象由来の細胞(例えば、自己由来の患者由来細胞、または同種異系患者由来細胞)である。いくつかの実施形態では、有核細胞は、本明細書に記載され当該技術分野で公知の除核技法のいずれかを使用して除核される前に、ベクター(例えば、ウイルスベクター(例えばレトロウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター)、アデノ関連性ウイルス(AAV)ベクター、小胞性ウイルスベクター(例えば水疱性口内炎ウイルス(VSV)ベクター)、またはハイブリッドウイルスベクター)、プラスミド)を用いてトランスフェクトされる。
【0048】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、対象に対して自己由来の細胞から得ることができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、対象に対し同種異系の細胞から得ることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、免疫細胞から得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ、リンパ球、線維芽細胞、成体幹細胞(例えば造血幹細胞、乳腺幹細胞、腸幹細胞、間葉系幹細胞、間充織間質細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、神経冠幹細胞、皮膚幹細胞、または睾丸細胞)、肥満細胞、好塩基球、好酸球、または誘導可能な多能性幹細胞から得られる。
【0050】
いくつかの実施形態では、除核前に、2つ以上の細胞(例えば、本明細書に開示される細胞のいずれか)は、本明細書に開示されるか当該技術分野で公知であるあらゆる方法により融合される。融合生成物の除核により、細胞質体を得ることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の細胞質体は、細胞または第2の細胞質体に融合される。いくつかの実施形態では、細胞は、あらゆる有核細胞(例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、または本明細書に記載のあらゆる哺乳動物細胞)、原生動物細胞(例えば、アメーバ細胞)、藻細胞、植物細胞、真菌細胞、無脊椎動物細胞、魚類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、または鳥類細胞)である。いくつかの実施形態では、第2の細胞は合成細胞である。したがって、本明細書に記載の細胞質体のいずれかに細胞を融合させることを含む、細胞の挙動を改質する方法が提供される。本明細書にはさらに、細胞質体が融合されている細胞を治療上有効量で対象に投与することを含む方法も提供される。
【0052】
いくつかの実施形態では、第2の細胞質体は、第1の細胞質体と同じタイプの細胞から得られる。いくつかの実施形態では、第2の細胞質体は、第1の細胞質体と異なるタイプの細胞から得られる。いくつかの実施形態では、第2の細胞質体は、少なくとも1つの治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、治療用小分子、治療用遺伝子編集因子、治療用ナノ粒子、または、第1の細胞質体が含有するか発現する治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、治療用小分子、治療用遺伝子編集因子、治療用ナノ粒子と同じ他の活性薬剤を含有するか、それらを発現する。いくつかの実施形態では、第2の細胞質体は、少なくとも1つの治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、治療用小分子、治療用遺伝子編集因子、治療用ナノ粒子、または、第1の細胞質体が含有するか発現する治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、治療用小分子、治療用遺伝子編集因子、治療用ナノ粒子とは異なる他の活性薬剤を含有するか、それらを発現する。いくつかの実施形態では、第1の細胞質体は、当該技術分野で公知のあらゆる方法、例えばウイルス系細胞表面ペプチドを用いた電気細胞融合またはウイルス融合を使用して、細胞または第2の細胞質体に融合することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、自然発生の除核細胞ではない。いくつかの実施形態では、細胞質体は、自然に除核を受ける細胞からは得られない。いくつかの実施形態では、細胞質体は、対象の身体中で除核された細胞ではない。いくつかの実施形態では、細胞質体は、対象の身体中で除核された細胞からは得られない。いくつかの実施形態では、細胞質体は、赤芽細胞から得られない。いくつかの実施形態では、細胞質体は、(例えば、本明細書に記載の除核などの操作がない場合)その寿命にわたり核を維持する細胞から得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、無核細胞(例えば、赤血球(赤血球(erythrocyte))、血小板、水晶体細胞、またはそれらの即時有核(immediate nucleated)前駆体)として対象に見出される細胞ではない。いくつかの実施形態では、細胞質体は、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、リボソーム、プロテアソーム、またはスプライソソームからなる群から選択される1または複数の構成成分を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、以下の特徴:接着、トンネルナノチューブ形成、アクチン媒介型伝播(2Dおよび/または3D)、移動、化学遊走物質勾配感知、ミトコンドリア輸送、mRNA翻訳、タンパク質合成、ならびにエキソソームおよび/または他の生体活性分子の分泌のうち1または複数を特徴とする。いくつかの実施形態では、(例えば、エキソソームを使用して)細胞質体は、タンパク質を分泌する能力を特徴とする。いくつかの実施形態では、細胞質体は、ex vivoで除核されている。いくつかの実施形態では、細胞質体は、in vitroで除核されている。いくつかの実施形態では、細胞質体は、(例えば、遠心分離により)物理的に除核されている。いくつかの実施形態では、細胞質体は、操作された除核細胞である。いくつかの実施形態では、細胞質体は赤血球ではない。いくつかの実施形態では、細胞質体はヘモグロビンを含有しない。いくつかの実施形態では、細胞質体は両凹形状を呈さない。
【0054】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、赤芽細胞から得られない。いくつかの実施形態では、細胞質体は、赤血球(RBC)にならない細胞から得られる。RBCと異なり、細胞質体は、多くの活性な生物学的プロセスおよび細胞小器官(例えばER/ゴルジ、ミトコンドリア、核内体、リソソーム、細胞骨格など)すべてを保持できる、生細胞様の実体であり得る。このため、細胞質体は、有核細胞のように機能し、接着、トンネルナノチューブ形成、アクチン媒介型伝播(2Dおよび3D)、移動、化学遊走物質勾配感知、ミトコンドリア輸送、mRNA翻訳、タンパク質合成、ならびにエキソソームおよび/または他の生体活性分子の分泌などの重要な生体機能を呈することができる。これらの機能のうち1または複数は、RBCにより提示されない場合がある。赤芽細胞から得られるRBCと比較して、細胞質体は、iPSC(人工多能性幹細胞)、あらゆる不死化細胞、幹細胞、初代細胞(宿主由来細胞)、細胞株、あらゆる免疫細胞、癌細胞を含むがこれらに限定されないあらゆるタイプの有核細胞、あるいはあらゆる真核細胞から得ることができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、リンパ性始原細胞から得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、リンパ球から得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、(例えば、骨髄由来の)間葉系幹細胞から得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、内皮幹細胞から得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、神経幹細胞から得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、皮膚幹細胞から得られる。
【0055】
B.病原体
本明細書に記載の細胞質体、およびこの細胞質体を含有する組成物は、いくつかの実施形態では、病原体を標的とするおよび/または死滅させるか、あるいはその他の方法で病原体を実行不能なものとする生体分子(例えば、ワクチン、治療薬、標的化部分)を含む。いくつかの実施形態では、病原体は、細菌、ウイルス、真菌、または毒素である。いくつかの実施形態では、病原体は自然発生のものである。いくつかの実施形態では、病原体は合成されたものである。
【0056】
いくつかの実施形態では、病原体はウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、動物ウイルス、植物ウイルス、細菌ウイルス、または古細菌ウイルスである。いくつかの実施形態では、動物ウイルスは、同じまたは異なる動物に疾患または疾病を生じさせる。いくつかの実施形態では、ウイルスは、RNAウイルスまたはDNAウイルスである。いくつかの実施形態では、RNAまたはDNAウイルスは、一本鎖または二本鎖である。いくつかの実施形態では、DNAまたはRNAウイルスは、プラス鎖またはマイナス鎖のウイルスである。
【0057】
いくつかの実施形態では、二本鎖ウイルス(dsDNA)ウイルスは、以下の科:ミオウイルス科、ポドウイルス科、サイフォウイルス科、アロヘルペスウイルス科、ヘルペスウイルス科、マラコヘルペスウイルス科、リポスリクスウイルス科、ルディウイルス科、アデノウイルス科、アムプラウイルス科(Ampullaviridae)、アスコウイルス科、アスファウイルス科、バキュロウイルス科、ビカウダウイルス科、クラバウイルス科(Clavaviridae)、コルチコウイルス科、フセロウイルス科、グロブロウイルス科、グッタウイルス科、ヒトロサウイルス科(Hytrosaviridae)、イリドウイルス科、マルセイユウイルス科、ミミウイルス科、ニマウイルス科、パンドラウイルス科、パピローマウイルス科、フィコドナウイルス科、プラズマウイルス科、ポリドナウイルス科、ポリオーマウイルス科、ポックスウイルス科、スファエロリポウイルス科(Sphaerolipoviridae)、およびテクティウイルス科に由来する。
【0058】
いくつかの実施形態では、一本鎖(ssDNA)ウイルスは、以下の科:アネロウイルス科、バシラリオドナウイルス科(Bacillariodnaviridae)、ビドナウイルス科(Bidnaviridae)、サーコウイルス科、ジェミニウイルス科、イノウイルス科、ミクロウイルス科、ナノウイルス科、パルボウイルス科、およびスピラウイルス科(Spiraviridae)に由来する。
【0059】
ssとds両方のDNA領域を含有するDNAウイルスは、ポリオウイルスの群に由来し得る。いくつかの実施形態では、ポリオウイルスとして、Haloarcula hispanica多形性ウイルス1、Halogeometricum多形性ウイルス1、Halorubrum多形性ウイルス1、Halorubrum多形性ウイルス2、Halorubrum多形性ウイルス3、およびHalorubrum多形性ウイルス6が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、dsRNAウイルスは、以下の科:ビルナウイルス科、クリソウイルス科、シストウイルス科、エンドルナウイルス科、ハイポウイルス科、メガビルナウイルス科、パルティティウイルス科、ピコビルナウイルス科、レオウイルス科、ロタウイルス科、およびトティウイルス科に由来する。
【0061】
いくつかの実施形態では、プラス鎖ssRNAウイルスは、以下の科:アルファフレキシウイルス科、アルファテトラウイルス科、アルベルナウイルス科、アルテリウイルス科、アストロウイルス科、バルナウイルス科、ベータフレキシウイルス科、ブロモウイルス科、カリチウイルス科、カルモテトラウイルス科、クロステロウイルス科、コロナウイルス科、ジシストロウイルス科、フラビウイルス科、ガンマフレキシウイルス科、イフラウイルス科、レヴィウイルス科、ルテオウイルス科、マルナウイルス科、メソニウイルス科、ナルナウイルス科、ノダウイルス科、ペルムトテトラウイルス科、ピコルナウイルス科、ポチウイルス科、ロニウイルス科、セコウイルス科、トガウイルス科、トンブスウイルス科、ティモウイルス科、およびビルガウイルス科に由来する。
【0062】
いくつかの実施形態では、マイナス鎖ssRNAウイルスは、以下の科:ボルナウイルス科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科、ラプドウイルス科、ニヤミウイルス科、アレナウイルス科、ブンヤウイルス科、オフィオウイルス科、およびオルソミクソウイルス科に由来する。
【0063】
ウイルスの非限定的な例として、以下が挙げられる:エーベルソン白血病ウイルス、エーベルソンマウス白血病ウイルス、エーベルソンウイルス、急性喉頭気管気管支炎ウイルス、アデレードリバーウイルス、アデノ関連ウイルス群、アデノウイルス、アフリカウマ症ウイルス、アフリカ豚熱ウイルス、AIDSウイルス、アリューシャンミンク病パルボウイルス、アルファレトロウイルス、アルファウイルス、ALV関連ウイルス、アマパリウイルス、アフトウイルス、アクアレオウイルス、アルボウイルス、アルボウイルス群C、アルボウイルス群A、アルボウイルス群B、アレナウイルス群、アルゼンチン出血熱ウイルス、アルゼンチン出血熱ウイルス、アルテリウイルス、アストロウイルス、クモザルヘルペスウイルス群、オーエスキー病ウイルス、アウラウイルス、Ausduk病ウイルス、オーストラリアバットリッサウイルス、アビアデノウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリ白血症ウイルス、トリリンパ腫症ウイルス、トリ骨髄芽細胞症ウイルス、トリパラミクソウイルス、トリ肺脳炎ウイルス、トリ網内皮症ウイルス、トリ肉腫ウイルス、トリC型レトロウイルス群、アビヘパドナウイルス、アビポックスウイルス、Bウイルス、B19ウイルス、ババンキウイルス、ヒヒヘルペスウイルス、バキュロウイルス、バーマフォレストウイルス、ベバルウイルス、ベリマー(Berrimah)ウイルス、ベータレトロウイルス、ビルナウイルス、ビトナーウイルス、BKウイルス、ブラッククリークカナルウイルス、ブルータングウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、ボルナ病(Boma disease)ウイルス、ヒツジボーダー病ウイルス、ボルナウイルス、ウシアルファヘルペスウイルス1、ウシアルファヘルペスウイルス2、ウシコロナウイルス、ウシ流行熱ウイルス、ウシ免疫不全ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ウシ白血症ウイルス、ウシ乳頭炎ウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、ウシ丘疹性口内炎ウイルス、ウシパルボウイルス、ウシ多核体ウイルス、ウシC型オンコウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、バギークリーク(Buggy Creek)ウイルス、弾丸形状ウイルス群、ブニヤムウェラウイルスの超群(supergroup)、ブンヤウイルス、バーキットリンパ腫ウイルス、ブワンバ熱、CAウイルス、カリチウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、ラクダ痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、イヌヘルペスウイルス、イヌコロナウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌヘルペスウイルス、イヌ微小ウイルス、イヌパルボウイルス、カーニョ・デルガディト(Cano Delgadito)ウイルス、ヤギ関節炎ウイルス、ヤギ脳炎ウイルス、ヤギヘルペスウイルス、ヤギポックスウイルス、カルジオウイルス、テンジクネズミ科ヘルペスウイルス1、サルヘルペスウイルス1、オナガザルヘルペスウイルス1、オナガザルヘルペスウイルス2、チャンディプラウイルス、チャンギノラウイルス、アメリカナマズウイルス、チャールビルウイルス、水痘ウイルス、チクングニヤウイルス、チンパンジーヘルペスウイルス、ウグイレオウイルス、シロザケウイルス、球菌ウイルス、ギンザケレオウイルス、媾疹ウイルス、コロラドダニ熱ウイルス、コルチウイルス、コロンビアSKウイルス、カゼウイルス、伝染性膿瘡ウイルス、伝染性膿胞性皮膚炎ウイルス、コロナウイルス、コリパルタウイルス、鼻風邪ウイルス、牛痘ウイルス、コクサッキーウイルス、CPV(細胞質多角体病ウイルス)、クリケット麻痺(cricket paralysis)ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、偽膜性喉頭炎随伴ウイルス、クリプトウイルス、サイポウイルス、サイトメガロウイルス、サイトメガロウイルス群、細胞質多角体病ウイルス、シカ乳頭腫ウイルス、デルタレトロウイルス、デング熱ウイルス、デンソウイルス、デペンドウイルス、ドーリウイルス、ディプロマ(diploma)ウイルス、C型ショウジョウバエウイルス、B型アヒル肝炎ウイルス、アヒル肝炎ウイルス1、アヒル肝炎ウイルス2、デュオウイルス(duovirus)、デュベンヘイジウイルス、変形翼ウイルス(Deformed wing virus)DWV、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、EBウイルス、エボラウイルス、エボラ様ウイルス、エコーウイルス、エコーウイルス、エコーウイルス10、エコーウイルス28、エコーウイルス9、エクトロメリアウイルス、EEEウイルス、EIAウイルス、EIAウイルス、脳炎ウイルス、脳心筋炎群ウイルス、脳心筋炎ウイルス、エンテロウイルス、酵素上昇ウイルス、酵素上昇ウイルス(LDH)、流行性出血熱ウイルス、伝染性出血性疾患ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ウマアルファヘルペスウイルス1、ウマアルファヘルペスウイルス4、ウマヘルペスウイルス2、ウマ流産ウイルス、ウマ動脈炎ウイルス、ウマ大脳症ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ウマモルビリウイルス、ウマ鼻腔肺炎ウイルス、ウマリノウイルス、ユーベナンジーウイルス、ヨーロッパエルク乳頭腫ウイルス、ヨーロッパ豚コレラウイルス、エバーグレーズウイルス、アイア(Eyach)ウイルス、ネコヘルペスウイルス1、ネコカリチウイルス、ネコ線維肉腫ウイルス、ネコヘルペスウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、ネコ白血病/肉腫ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ネコ肉腫ウイルス、ネコ多核体ウイルス、フィロウイルス、フランダースウイルス、フラビウイルス、口蹄疫ウイルス、フォートモーガンウイルス、フォーコーナーズ・ハンタウイルス、家禽アデノウイルス1、鶏痘ウイルス、フレンドウイルス、ガンマレトロウイルス、GB肝炎ウイルス、GBウイルス、風疹ウイルス、ゲタウイルス、テナガザル白血病ウイルス、腺熱ウイルス、ヤギ痘ウイルス、ゴールデンシャイナーウイルス、ゴノメタ(Gonometa)ウイルス、ガチョウパルボウイルス、顆粒病ウイルス、グロスウイルス、リスB型肝炎ウイルス、A群アルボウイルス、グアナリトウイルス、モルモットサイトメガロウイルス、モルモットC型ウイルス、ハンタンウイルス、ハンタウイルス、ボンビノスガイレオウイルス(hard clam reovirus)、野兎線維腫ウイルス、HCMV(ヒトサイトメガロウイルス)、赤血球吸着ウイルス2、日本血球凝集性ウイルス、出血熱ウイルス、ヘンドラウイルス、ヘニパウイルス、ヘパドナウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス群、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、F型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、非A非B型肝炎ウイルス、肝炎ウイルス、肝炎ウイルス(非ヒト)、肝因性脳脊髄炎レオウイルス3、ヘパトウイルス、アオサギB型肝炎ウイルス、B型ヘルペスウイルス、単純疱疹ウイルス、単純疱疹ウイルス1、単純疱疹ウイルス2、ヘルペスウイルス、ヘルペスウイルス7、ヘルペスウイルス・アテレス、ヘルペスウイルス・ホミニス、ヘルペスウイルス感染症、ヘルペスウイルス・サイミリ、ヘルペスウイルス・スイス、水痘・帯状疱疹ウイルス、高地Jウイルス(Highlands J virus)、ヒラメラブドウイルス、ブタコレラウイルス、ヒトアデノウイルス2、ヒトアルファヘルペスウイルス1、ヒトアルファヘルペスウイルス2、ヒトアルファヘルペスウイルス3、B型ヒトリンパ向性ウイルス、ヒトベータヘルペスウイルス5、ヒトコロナウイルス、ヒトサイトメガロウイルス群、ヒトフォーミーウイルス、ヒトガンマヘルペスウイルス4、ヒトガンマヘルペスウイルス6、ヒトA型肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス1群、ヒトヘルペスウイルス2群、ヒトヘルペスウイルス3群、ヒトヘルペスウイルス4群、ヒト疱疹ウイルス6、ヒト疱疹ウイルス8、ヒト免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒト免疫不全ウイルス2、ヒトパピローマウイルス、ヒトT細胞白血球ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI、ヒトT細胞白血病ウイルスII、ヒトT細胞白血病ウイルスIII、ヒトT細胞リンパ腫ウイルスI、ヒトT細胞リンパ腫ウイルスII、1型ヒトTリンパ球好性ウイルス、2型ヒトTリンパ球好性ウイルス、ヒトTリンパ向性ウイルスI、ヒトTリンパ向性ウイルスII、ヒトTリンパ向性ウイルスIII、イクノウイルス、幼児胃腸炎ウイルス、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス、伝染性造血性壊死ウイルス、伝染性膵臓壊死症ウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、インフルエンザウイルスD、インフルエンザウイルスpr8、昆虫イリデツセント(insect iridescent)ウイルス、昆虫ウイルス、イリドウイルス、日本Bウイルス、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、フニンウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、ケメロボウイルス、キラムラットウイルス、クラマスウイルス、コロンゴ(Kolongo)ウイルス、韓国型出血熱ウイルス、クンバ(kumba)ウイルス、キャヌサール森林病ウイルス、キジラガッチ(Kyzylagach)ウイルス、ラクロスウイルス、乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス、乳酸脱水素酵素ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ラングールウイルス、ウサギパルボウイルス、ラッサ熱ウイルス、ラッサウイルス、潜伏性ラットウイルス、LCMウイルス、リーキー(Leaky)ウイルス、レンチウイルス、レポリポックスウイルス、白血病ウイルス、ロイコウイルス、ランピースキン病ウイルス、リンパ節腫関連ウイルス、リンホクリプトウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、リンパ増殖性ウイルス群、マチュポウイルス、狂犬病恐怖症ウイルス、B型哺乳動物オンコウイルス群、B型哺乳動物レトロウイルス、C型哺乳動物レトロウイルス群、D型哺乳動物レトロウイルス、乳癌ウイルス、マプエラウイルス、マールブルグウイルス、マールブルク様ウイルス、マソンファイザーサルウイルス、マストアデノウイルス、マヤロウイルス、MEウイルス、麻疹ウイルス、メナングルウイルス、メンゴウイルス、メンゴウイルス、ミデルビュルフウイルス、授乳者小結節ウイルス、ミンク腸炎ウイルス、マウスの微小ウイルス、MLV関連ウイルス、MMウイルス、モコラウイルス、モルシポックスウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、サルBウイルス、サル痘ウイルス、モノネガウイルス、モルビリウイルス、マウントエルゴンコウモリウイルス、マウスサイトメガロウイルス、マウス脳脊髄炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、マウスKウイルス、マウス白血病ウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス微小ウイルス、マウス肺炎ウイルス、マウスポリオウイルス、マウスポリオーマウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス痘ウイルス、モザンビークウイルス、ムカンボウイルス、粘膜病ウイルス、ムンプスウイルス、マウスベータヘルペスウイルス1、マウスサイトメガロウイルス2、マウスサイトメガロウイルス群、マウス脳脊髄炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、マウス白血病ウイルス、マウス小結節誘導ウイルス、マウスポリオーマウイルス、マウス肉腫ウイルス、ムロメガロウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、ミキソーマウイルス、ミクソウイルス、ミクソウイルスの多形、耳下腺炎ミクソウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、ナイロウイルス、ナニルナウイルス(Nanirnavirus)、ナリバ(Nariva)ウイルス、ヌドゥムウイルス、ニースリングウイルス、ネルソンベイウイルス、神経向性ウイルス、ニューワールドアレナウイルス、新生児肺炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニパウイルス、非細胞病原性ウイルス、ノーウォークウイルス、核多角体病ウイルス(NPV)、ニップルネックウイルス、オニョンニョンウイルス、オケルボ(Ockelbo)ウイルス、腫瘍形成性ウイルス、腫瘍形成性ウイルス様粒子、オンコルナウイルス、オルビウイルス、オルフウイルス、オロポーシェウイルス、オルトヘパドナウイルス、オルトミクソウイルス、オルトポックスウイルス、オルトレオウイルス、オルンゴ(Orungo)、ヒツジパピローマウイルス、ヒツジカ
タル熱ウイルス、フクロウ・サル・ヘルペスウイルス、パリアムウイルス、パピローマウイルス、ウサギパピローマウイルス(Papillomavirus sylvilagi)、パポバウイルス、パラインフルエンザウイルス、1型パラインフルエンザウイルス、2型パラインフルエンザウイルス、3型パラインフルエンザウイルス、4型パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パラポックスウイルス、パラワクシニアウイルス、パルボウイルス、パルボウイルスB19、パルボウイルス群、ペスチウイルス、フレボウイルス、アザラシジステンパーウイルス、ピコドナウイルス、ピコルナウイルス、ブタサイトメガロウイルス-鳩痘ウイルス、ピリウイルス、ピクスナウイルス、マウス肺炎ウイルス、肺炎ウイルス、灰白脊髄炎ウイルス、ポリオウイルス、ポリドナウイルス、多角性ウイルス、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルス・ボビス、ポリオーマウイルス・セルコピテシ、ポリオーマウイルス・ホミニス(hominis)2、ポリオーマウイルス・マカセア(maccacae)1、ポリオーマウイルス・ムリス(muris)1、ポリオーマウイルス・ムリス2、ポリオーマウイルス・パピオニス(papionis)1、ポリオーマウイルス・パピオニス2、ポリオーマウイルス・シルビラジ(sylvilagi)、オランウータンヘルペスウイルス1、ブタ伝染性下痢ウイルス、ブタ血球凝集脳脊髄炎ウイルス、ブタパルボウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ブタC型ウイルス、ポックスウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、プロスペクトヒルウイルス、プロウイルス、偽牛痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、オウム痘(psittacinepox)ウイルス、ウズラ痘(quailpox)ウイルス、ウサギ線維腫ウイルス、ウサギ腎臓空胞化ウイルス、ウサギパピローマウイルス、狂犬病ウイルス、アライグマパルボウイルス、アライグマポックスウイルス、ラニケットウイルス、ラットサイトメガロウイルス、ラットパルボウイルス、ラットウイルス、ローシャーウイルス、組換え型ワクシニアウイルス、組替え型ウイルス、レオウイルス、レオウイルス1、レオウイルス2、レオウイルス3、爬虫類C型ウイルス、呼吸器感染症ウイルス、呼吸系発疹ウイルス、呼吸系ウイルス、細網内皮症ウイルス、ラブドウイルス、ラブドウイルス・カルピア(carpia)、ラジノウイルス、ライノウイルス、リジディオウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ライリーウイルス、牛疫ウイルス、RNA腫瘍ウイルス、ロスリバーウイルス、ロタウイルス、麻疹(rougeole)ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ルベラウイルス、ルベオラウイルス、ルビウイルス、ロシア秋脳炎ウイルス、SA 11シミアンウイルス、SA2ウイルス、サビアウイルス、サギヤマウイルス、サイミリンヘルペスウイルス1、唾液腺ウイルス、パパタシ熱ウイルス群、サンジンバ(Sandjimba)ウイルス、SARSウイルス、SDAV(唾液腺炎ウイルス)、シールポックス(sealpox)ウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、ソウルウイルス、ヒツジ痘ウイルス、ショープ線維腫ウイルス、ショープ乳頭腫ウイルス、シミアンフォーミーウイルス、シミアンA型肝炎ウイルス、シミアン・ヒト免疫不全ウイルス、シミアン免疫不全ウイルス、シミアンパラインフルエンザウイルス、シミアンT細胞リンパ増殖性ウイルス、シミアンウイルス、シミアンウイルス40、単純ウイルス、シンノンブルウイルス、シンドビスウイルス、天然痘ウイルス、南アメリカ出血熱ウイルス、スズメ痘ウイルス、スプマウイルス、リス線維腫ウイルス、リスザルレトロウイルス、SSV 1ウイルス群、I型STLV(シミアンTリンパ向性ウイルス)、II型STLV(シミアンTリンパ向性ウイルス)、III型STLV(シミアンTリンパ向性ウイルス)、丘疹性口炎ウイルス、顎下腺ウイルス、ブタアルファヘルペスウイルス1、ブタヘルペスウイルス2、スイポックスウイルス、沼地熱ウイルス、ブタ痘ウイルス、スイスマウス白血病ウイルス、TACウイルス、タカリベウイルス群、タカリベウイルス、タナ痘ウイルス、タテラポックス(Taterapox)ウイルス、テンチレオウイルス、タイラー脳脊髄炎ウイルス、タイラーウイルス、トゴトウイルス、トッタパラヤム(Thottapalayam)ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、チオマンウイルス、トガウイルス、トロウイルス、腫瘍ウイルス、ツパイウイルス、七面鳥鼻気管炎ウイルス、七面鳥痘ウイルス、C型レトロウイルス、D型オンコウイルス、D型レトロウイルス群、潰瘍性疾患ラブドウイルス、ウナウイルス、ウークニエミウイルス群、ワクシニアウイルス、空胞形成ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、バリセロウイルス、バリコラ(Varicola)ウイルス、大痘瘡ウイルス、痘瘡ウイルス、ウアシン・ギシュウー病ウイルス、VEEウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ベシクロウイルス、ビリュイスクウイルス、クサリヘビレトロウイルス、ウイルス性造血性敗血症ウイルス、ビスナマエディウイルス、ビスナウイルス、ハタネズミ痘(volepox)ウイルス、VSV(水疱性口内炎ウイルス)、ウォーラルウイルス、ウォリゴウイルス、疣ウイルス、WEEウイルス、西ナイルウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、ワタロアウイルス、冬季嘔吐ウイルス、ウッドチャックB型肝炎ウイルス、ウーリーモンキー肉腫ウイルス、創傷腫瘍ウイルス、WRSVウイルス、ヤーバサル腫瘍ウイルス、ヤーバウイルス、ヤタポックスウイルス、黄熱ウイルス、およびユグボグダノヴァツ(Yug Bogdanovac)ウイルス。
【0064】
いくつかの実施形態では、ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、デルタコロナウイルス、およびガンマコロナウイルスからなる群から選択することができる。アルファコロナウイルスの例として、コウモリコロナウイルスCDPHE15、コウモリコロナウイルスHKU10、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスNL63、ユビナガコウモリコロナウイルス1、ユビナガコウモリコロナウイルスHKU8、ミンクコロナウイルス1、ブタ伝染性下痢ウイルス、キクガシラコウモリコロナウイルスHKU2、およびスコトフィラスコウモリコロナウイルス512を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ベータコロナウイルスの例として、ベータコロナウイルス1、ハリネズミコロナウイルス1、ヒトコロナウイルスHKU1、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス、マウスコロナウイルス、アブラコウモリコロナウイルスHKU5、ルーセットコウモリコロナウイルスHKU9、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス、タケコウモリコロナウイルスHKU4を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。デルタコロナウイルスの例として、ヒヨドリコロナウイルスHKU11、バンコロナウイルスHKU21、コロナウイルスHKU15、キンパラ(Munia)コロナウイルスHKU13、ゴイサギコロナウイルスHKU19、ツグミコロナウイルスHKU12、メジロコロナウイルスHKU16、ヒドリガモコロナウイルスHKU20を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ガンマコロナウイルスの例として、鳥類コロナウイルス、ベルーガコロナウイルスSW1を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。コロナウイルスのさらなる例として、MERS-CoV、SARS-CoV、およびSARS-CoV-2を挙げることができる。いくつかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV-2であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、病原体は、人から人へと伝播しやすい、または伝染しやすく、死亡率が高く、公衆衛生に多大な影響が及ぶ可能性があり、公衆のパニックと社会混乱を引き起こし、公衆衛生の警戒態勢に特別な活動が必要となるおそれがある。これら病原体の例として、炭疽(バチルス・アントラシス)、ボツリスム(クロストリジウム・ボツリヌム毒素)、ペスト(エルシニア・ペスチス)、天然痘(大痘瘡)、野兎病(フランシセラ・ツラレンシス)、またはフィロウイルス(エボラ、マールブルク)やアレナウイルス(ラッサ、マチュポ)を含むウイルス性出血熱を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
いくつかの実施形態では、病原体は、中等度に伝播しやすく、罹病率が中等度で死亡率が低く、診断性能の特異的な向上と疾患監視の向上が必要となるおそれがある。これら病原体の例として、ブルセラ症(ブルセラ菌種)、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、食品安全性脅威(例えば、サルモネラ菌種、大腸菌O157:H7、または赤痢菌)、鼻疽(バークホルデリア・マレイ)、類鼻疽(バークホルデリア・シュードマレイ)、オウム病(クラミジア・シタッシ)、Q熱(コクシエラ・ブルネッティ)、トウゴマ(ヒマの種子)由来のリシン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、発疹チフス(リケッチア・プロワツェキイ)、ウイルス脳炎(東部ウマ脳炎、ベネズエラウマ脳炎、西部ウマ脳炎などのアルファウイルス)、または水安全性脅威(例えば、コレラ菌およびクリプトスポリジウム・パルバム)を挙げることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、病原体は、まだ同定されていない配列を有する新たな病原体である。いくつかの実施形態では、新たな病原体には、罹患率と死亡率が高く、健康に多大な影響を及ぼす可能性がある。これら病原体の例として、ニパウイルスやハンタウイルスを挙げることができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、病原体は毒素を含む可能性がある。いくつかの実施形態では、毒素は、本明細書に記載の病原体のうちいずれか1つにより分泌される可能性がある。
【0069】
いくつかの実施形態では、病原体は細菌を含む。いくつかの実施形態では、細菌はグラム陽性細菌の場合がある。いくつかの実施形態では、細菌はグラム陰性細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、s-ラクタマーゼに耐性を呈する株である。いくつかの実施形態では、抗原は、毒素原性大腸菌(ETEC)、志賀毒素産生大腸菌(STEC)、カンピロバクター・ジェジュニ、シュードモナス・エルジノーサ、アシネトバクター・バウマンニ、ストレプトコッカス・ミュータンス、ヘリコバクター・ピロリ、またはバチルス・アントラシスから得られる。
【0070】
病原体、および、本明細書に記載の除核細胞、組成物、もしくは医薬組成物により処置可能なこれら病原体に関連する疾患または疾病の例示的な列記は、表3~表6に見出すことができる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
C.活性薬剤
本開示の細胞質体は、抗ウイルス組成物(例えば、病原体に対するワクチン、中和抗体)などの活性薬剤を発現するか、これを含有する。活性薬剤は、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質(例えば、酵素、抗体、抗原、毒素、サイトカイン、タンパク質ホルモン、成長因子、細胞表面受容体、またはワクチン)、治療用ペプチド(例えば、ペプチドホルモンまたは抗原)、小分子活性薬剤(例えば、ステロイド、ポリケチド、アルカロイド、毒素、抗生物質、抗ウイルス剤、コルヒチン、タキソール、マイトマイシン、またはエムタンシン)、および治療用遺伝子編集因子のうち少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、治療用小分子、または治療用遺伝子編集成分のうち少なくとも1つを産生する(例えば、発現する、いくつかの実施形態では分泌する)ように操作することができる。代替的に、または付加的に、有核細胞(本明細書で使用するとき、「親」細胞)は、細胞質体への除核前に、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子活性薬剤、および遺伝子編集因子のうち少なくとも1つを産生するように操作される場合がある。
【0076】
治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子活性薬剤、または治療用遺伝子編集因子は、標的化部分を含むことができる。細胞質体により産生されるか細胞質体に含まれる可能性のある標的化部分の非限定的な例として、ケモカイン受容体、接着分子、および抗原が挙げられる。
【0077】
本開示の細胞質体は対象に投与される場合があり、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質(例えば、酵素、抗体、抗原、毒素、サイトカイン、タンパク質ホルモン、成長因子、細胞表面受容体、ワクチン、または現在利用可能か開発中であるあらゆる治療用タンパク質)、治療用ペプチド(例えば、ペプチドホルモンもしくは抗原、または現在利用可能か開発中であるあらゆる治療用ペプチド)、小分子活性薬剤(例えば、ステロイド、ポリケチド、アルカロイド、毒素、抗生物質、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗凝固剤、抗うつ薬、抗癌薬、抗てんかん薬、抗精神病薬、鎮静剤、コルヒチン、タキソール、マイトマイシン、エムタンシン、または現在利用可能か開発中であるあらゆる小分子活性薬剤)、治療用遺伝子編集因子、治療用ナノ粒子、または他の活性薬剤(例えば、細菌、細菌胞子、バクテリオファージ、細菌成分、ウイルス(例えば、腫瘍溶解性ウイルス)、エキソソーム、脂質、またはイオン)を含有する場合がある。腫瘍溶解性ウイルスの非限定的な例として、タリモジーン・ラハーパレプベック、Onyx-015、GL-ONC1、CV706、Voyager-V1、およびHSV-1716が挙げられる。一部の野生型ウイルスはさらに、ワクシニアウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レオウイルス、セネカウイルス、ECHO-7、セムリキ森林ウイルスなどの腫瘍溶解性挙動を呈する。
【0078】
いくつかの実施形態では、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、組換え発現される。いくつかの実施形態では、細胞質体が由来するか得られる細胞は、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子のうち1または複数を産生するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体が由来するか得られる細胞は、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子のうち1または複数を安定して(例えば、恒久的に)発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体が由来するか得られる細胞は、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子のうち1または複数を一時的に発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体が由来するか得られる細胞は、除核前に操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子の1または複数を一時的に発現するように操作される(例えば、除核後に操作される)。
【0079】
いくつかの実施形態では、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、細胞質体が由来するか得られる細胞において自然に(例えば、操作なしに)発現されない(例えば、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、細胞質体に対し外因性である)。いくつかの実施形態では、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、対象において自然に発現されない(例えば、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、対象に対し外因性である)。いくつかの実施形態では、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、対象における意図した治療部位(例えば、腫瘍、または脳、腸管、肺、心臓、肝臓、脾臓、膵臓、筋肉、眼などの特定の組織)には自然に発現されない(例えば、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、意図した治療部位に対し外因性である)。
【0080】
いくつかの実施形態では、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、細胞質体が由来するか得られる細胞において自然に(例えば、操作なしに)発現される(例えば、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、細胞質体に対し先天的に内因性である)(例えば、細胞質体が由来するか得られる細胞の操作がない状態で)。いくつかの実施形態では、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、対象において自然に発現される(例えば、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、対象に対し内因性である)。いくつかの実施形態では、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、対象における意図した治療部位(例えば、腫瘍、または脳、腸管、肺、心臓、肝臓、脾臓、膵臓、筋肉、眼などの特定の組織)に自然に発現される(例えば、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、意図した治療部位に対し内因性である)。
【0081】
いくつかの実施形態では、治療用の例えばDNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子は、合成細胞から得られて細胞質体に充填される。
【0082】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体が由来するか得られる細胞と比較して、DNA分子、RNA分子、タンパク質、ペプチド、小分子活性薬剤、および/または遺伝子編集因子に対して調整されるか、トランケートされるか、または変異なしのバージョンおよび/もしくはコピーを発現する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、あらゆる有核細胞(例えば、真核細胞、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、または本明細書に記載のあらゆる哺乳動物細胞)、原生動物細胞(例えば、アメーバ細胞)、藻細胞、植物細胞、真菌細胞、無脊椎動物細胞、魚類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、または鳥類細胞)から得られる。
【0083】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、あらゆる組合せで少なくとも2つ(例えば少なくとも2、3、4、または5つ以上)の異なる治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子活性薬剤、または治療用遺伝子編集因子を産生するか、含有する。例えば、いくつかの実施形態では、細胞質体は、治療用DNA分子および小分子活性薬剤を産生するか、含有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞質体は、2の異なる小分子活性薬剤を産生するか、含有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞質体は、ケモカイン受容体(例えば、標的化用)および小分子活性薬剤を産生するか、含有することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、治療用RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、小型干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA、長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)、またはRNAウイルスである。いくつかの実施形態では、治療用DNA分子は、一本鎖DNA、二本鎖DNA、オリゴヌクレオチド、プラスミド、細菌DNA分子、またはDNAウイルスである。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、サイトカイン、成長因子、ホルモン、抗体、小ペプチド系薬物、または酵素である。いくつかの実施形態では、細胞質体は、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子、治療薬、および/または治療用遺伝子編集因子を一時的に発現する。いくつかの実施形態では、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子、治療薬、および/または治療用遺伝子編集因子の発現は、誘導可能である。いくつかの実施形態では、有核細胞は、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子、治療薬、および/または治療用遺伝子編集因子を発現するように恒久的に操作される。いくつかの実施形態では、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子、治療薬、および/または治療用遺伝子編集因子の発現。本明細書に記載の方法のうちいずれかのいくつかの実施形態では、細胞質体は、活性薬剤またはナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、小分子、細菌、またはエキソソームである。
【0085】
治療用細胞の全身投与において、病変組織へのホーミングを完遂させるのに2つの主要な問題が存在する。先ず、細胞の大半は、肺または他の組織にある小さな毛細管に捕捉される場合があり、これにより肺塞栓症などの重篤な副作用が生じるおそれがある。いくつかの実施形態では、細胞質体は、その親細胞よりも遥かに小さく(例えば、親細胞の約60%の直径、1/8の体積)、強固な核を有していないため、細胞質体は、その親細胞よりも良好に、小さな毛細管および管を通過することができる。次に、病変組織への細胞の特異的なホーミングは、SDF-1α/CXCR4、CCL2/CCR2、およびPSGL-1などの接着分子といったケモカイン受容体シグナル伝達に依存する可能性がある。本明細書に示すように、細胞質体は、機能的なCXCR4、CCR2のほか、グリコシル化PSGL-1を特異的に発現するように操作することができ、こうして操作された細胞質体の特異的なホーミングを大いに促進することができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の細胞表面に発現される標的化部分(例えばCXCR4、CCR2、PSGL-1)を(例えば、細胞質体が得られる細胞を操作することにより、またはその細胞から)さらに含むことができる。細胞質体の細胞表面に発現され得る細胞表面タンパク質の非限定的な例として、CXCR4、CCR2、CCR1、CCR5、CXCR7、CXCR2、CXCR1などのケモカインを含む。ホーミング受容体として細胞質体の細胞表面に発現可能な細胞表面タンパク質の他の例として、C-X-Cケモカイン受容体3型、ロイコシアリン、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1、または最晩期抗原-4、あるいはそれらの組合せを挙げることができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体により分泌されるか、または細胞外マトリクス、例えばSDF1αやCCL2に固定される細胞標的化部分を(例えば、細胞質体が得られる細胞を操作することにより、またはその細胞から)さらに含むことができる。細胞ホーミングにおいて細胞質体により分泌され得るタンパク質の非限定的な例として、SDF1α、CCL2、CCL3、CCL5、CCL8、CCL1、CXCL9、CXCL10、CCL11、およびCXCL12が挙げられる。標的化部分は、細胞質体を標的細胞、標的組織、または標的環境に向ける場合がある。いくつかの実施形態では、標的化部分は、ケモカイン/ケモカイン受容体感知に基づき細胞質体を配向する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、直接の結合に基づき細胞質体を配向する。例えば、標的化部分は、標的細胞により発現される抗原に結合し得る抗体を含む場合がある。
【0087】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、以下からなる群から選択されるサイトカインのうち少なくとも1つを発現および/または分泌することができる:4-1BBL、アシル化刺激タンパク質、アディポカイン、アルブインターフェロン、APRIL、Arh、BAFF、Bcl-6、CCL1、CCL1/TCA3、CCL11、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17/TARC、CCL18、CCL19、CCL2、CCL2/MCP-1、CCL20、CCL21、CCL22/MDC、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L3、CCL4、CCL4L1/LAG-1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCR10、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CD153、CD154、CD178、CD40LG、CD70、CD95L/CD178、Cerberus(タンパク質)、ケモカイン、CLCF1、CNTF、コロニー刺激因子、共通b鎖(CD131)、共通g鎖(CD132)、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2、CXCL2/MIP-2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、EDA-A1、Epo、エリスロポエチン、FAM19A1、FAM19A2、FAM19A3、FAM19A4、FAM19A5、Flt-3L、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド、Foxp3、GATA-3、GcMAF、G-CSF、GITRL、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、肝細胞増殖因子、IFNA1、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA2、IFNA4、IFNA5/IFNaG、IFNA7、IFNA8、IFNB1、IFNE、IFNG、IFNZ、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFNω/IFNW1、IL-1、IL-10、IL-10ファミリー、IL-10様、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-17ファミリー、IL-17A-F、IL-18、IL-18BP、IL-19、IL-1A、IL-1B、IL-1F10、IL-1F3/IL-1RA、IL-1F5、IL-1F6、IL-1F7、IL-1F8、IL-1F9、IL-1様、IL-1RA、IL-1RL2、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-28A、IL-28B、IL-29、IL-3、IL-31、IL-33、IL-35、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6様、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-9、インフラマソーム、インターフェローム、インターフェロン、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンγ、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン8、IRF4、レプチン、白血病抑制因子(LIF)、白血球促進因子、LIGHT、LTA/TNFB、LT-β、リンホカイン、リンホトキシン、リンホトキシンα、リンホトキシンβ、マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージ炎症タンパク質、マクロファージ活性化因子、M-CSF、MHCクラスIII、様々なヘマトポエチン、モノカイン、MSP、ミオカイン、ミオネクチン、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ、オンコスタチンM(OSM)、オプレルベキン、OX40L、血小板因子4、プロメガポエチン、RANKL、SCF、STAT3、STAT4、STAT6、間質細胞由来因子1、TALL-1、TBX21、TGF-α、TGF-β、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TNF、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF12、TNFSF13、TNFSF14、TNFSF15、TNFSF4、TNFSF8、TNF-α、TNF-β、Tpo、TRAIL、TRANCE、TWEAK、血管内皮成長阻害薬、XCL1、またはXCL2。
【0088】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、少なくとも1つのサイトカインを発現および/または分泌して、骨髄性細胞、T細胞、例えばαβ細胞傷害性T細胞、γδT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、肥満細胞、内皮細胞、線維芽細胞、または様々な間質細胞のうちいずれか1つの生体活性を調節することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、対象の免疫系における回避を補助する表面マーカーを(例えば、細胞質体が得られる細胞を操作することにより、またはその細胞から)さらに含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞質体はCD47マーカーを含むことができる。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、CD47マーカーは、細菌がマクロファージにより貪食されるのを防止するのを助けると考えられている。細胞マトリクス受容体および細胞間接着分子の非限定的な例として、インテグリン、カドヘリン、糖タンパク質、およびヘパリン硫酸プロテオグリカンが挙げられる。治療用分子の非限定的な例として、腫瘍抗原および免疫修飾のペプチド、ポリアミン、ならびにATPが挙げられる。
【0090】
1.ワクチン組成物
本明細書中のいくつかの実施形態では、ワクチン組成物である活性薬剤を発現または送達するように操作される細胞質体が記載される。いくつかの実施形態では、ワクチン組成物をコードする核酸分子は、本明細書に記載の方法を使用して、細胞質体またはその親細胞へと導入される。いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、対応する親細胞に対し内因的な細胞機構(例えば、mRNA翻訳機構、タンパク質合成)を使用して、細胞質体中で発現される。対象に投与された後、いくつかの実施形態では、細胞質体は、ワクチン組成物を細胞外空間へと分泌するために、対応する親細胞の内因的なタンパク質分泌機構を利用する。細胞質体はさらに、ワクチン組成物が分泌される対象の標的組織(例えば、肺、リンパ)に特異的なホーミング受容体により操作される場合がある。細胞質体はさらに、本明細書に記載の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、あるいはサイトカインまたはその受容体のうちいずれか1つなどの免疫系活性化剤を発現するように操作される場合がある。
【0091】
いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、病原体の抗原に対抗する。抗原の非限定的な例として、天然配列を含むタンパク質、天然もしくは非天然アミノ酸を含むおよび/またはグリコシル化、パルミトイル化、ミリストイル化などの修飾を伴うポリペプチド、ならびに天然もしくは非天然塩基を含む核酸が挙げられる。病原体は、哺乳動物に感染症を引き起こすあらゆる細菌、ウイルス、または真菌の可能性がある。いくつかの実施形態では、病原体はウイルスの可能性がある。いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、ウイルスタンパク質、ウイルスタンパク質のフラグメント、またはウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質のフラグメントをコードする核酸から調製することができる。いくつかの実施形態では、ワクチンは、本明細書に記載のウイルスの不活性化バージョンを含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、本明細書に記載のウイルスの生弱毒化バージョンを含む。生弱毒ウイルスは、いくつかの実施形態では、生存しているが複製が不足しているウイルスである。生弱毒ウイルスは、他の場合では、生存しているが伝染性でないウイルスである。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞質体を含むワクチンは、ワクチン組成物を含む細胞質体の対象への投与後、対象に適応免疫反応を誘導する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のワクチンは、ウイルスによる感染症に対して対象を免疫化するか、ウイルスによる感染症により生じる疾患または疾病の重症度を低減するのに十分な適応免疫反応を誘導する。
【0093】
本明細書中のいくつかの実施形態では、本明細書に開示される病原体のウイルス抗原に対するワクチン組成物を発現するように操作された細胞質体が提供される。ウイルスは、DNAウイルスまたはRNAウイルスの可能性がある。DNAウイルスは、一本鎖(ss)DNAウイルス、二本鎖(ds)DNAウイルス、またはssとds両方のDNA領域を含有するDNAウイルスの可能性がある。RNAウイルスは、一本鎖(ss)RNAウイルスまたは二本鎖(ds)RNAウイルスの可能性がある。ssRNAウイルスは、プラス鎖RNAウイルスまたはマイナス鎖RNAウイルスへとさらに分類することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、インフルエンザのあらゆる属、株、またはサブタイプによりコードされるインフルエンザタンパク質に対し、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一である。例示的なインフルエンザ属として、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、およびインフルエンザウイルスDを挙げることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞質体は、赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)のインフルエンザウイルスタンパク質の組合せを呈するように操作できる。本明細書に記載の細胞質体により発現可能なインフルエンザ赤血球凝集素(HA)として、HAサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、またはH18を挙げることができる。本明細書に記載の細胞質体により発現可能なインフルエンザノイラミニダーゼ(NA)として、NAサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、N9、N10、またはN11を挙げることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞質体は、本明細書に記載のHAおよびNAのサブタイプのうちいずれか1つの組合せを発現することができる。1つの細胞質体により発現可能な例示的な組合せとして、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7、H7N9、またはH6N1を挙げることができる。他のさらなる例示的な組合せとして、H1N1、H1N2、H1N3、H1N4、H1N5、H1NG、H1N7、H1N8、H1N9、H1N10、H1N11、H2N1、H2N2、H2N3、H2N4、H2N5、H2NG、H2N7、H2N8、H2NB、H2N1D、H2N11、H3N1、H3N2、H3N3、H3N4、H3N5、H3NB、H3N7、H3N8、H3NB、H3N1D、H3N11、H4N1、H4N2、H4N3、H4N4、H4N5、H4NB、H4N7、H4N8、H4N9、H4N10、H4N11、H5N1、H5N2、H5N3、H5N4、H5N5、H5NB、H5N7、H5N8、H5N3、H5N1D、H5N11、HBN1、HBN2、HBN3、HBN4、HBN5、HBNB、HBN7、HBN8、HBN9、HBN10、HBN11、H7N1、H7N2、H7N3、H7N4、H7N5、H7NB、H7N7、H7N8、H7N9、H7N10、H7N11、H8N1、H8N2、H8N3、H8N4、H8N5、H8NG、H8N7、H8N8、5 H8N9、H8N10、HBN11、HBN1、H9N2、HBN3、H9N4、H3N5、H3N7、H3N8、H3N3、H9N1D、HBN11、H1DN1、H10N2、H1DN3、H1DN4、H1DN5、H1DNG、H1DN7、H1DN8、H1DN3、H10N10、H1DN11、H11N1、H11N2、H11N3、H11N4、H11N5、HUNG、H11N7、HUNS、H11NS、H11N10、H11N11、H12N1、H12N2、H12N3、H12N4、H12N5、H12NB、H12N7、H12N8、H12N3、H12N1D、H12N11、H13N1、H13N2、H13N3、H13N4、H13N5、H13NB、H13N7、H13N8、H13N3、H13N1D、H13N11、H14N1、H14N2、H14N3、H14N4、H14N5、H14NB、H14N7、H14N8、H14N9、H14N10、H14N11、H15N1、H15N2、H15N3、H15N4、H15N5、H15NB、H15N7、H15N8、H15N3、H15N1D、H15N11、H1BN1、H1BN2、H1BN3、H1BN4、H1BN5、H1BNB、H1BN7、H1BN8、H1GN3、H1BN10、H1BN11、H17N1、H17N2、H17N3、H17N4、H17N5、H17NB、H17N7、H17N8、H17N3、H17N10、H17N11、H1BN1、H18N2、H18N3、H18N4、H18N5、H1BNB、H18N7、H18N8、H18N3、H1BN10、またはH1BN11を挙げることができる。
【0095】
本明細書中のいくつかの実施形態では、細菌抗原に対するワクチン組成物を発現するように操作された細胞質体が提供される。いくつかの実施形態では、細菌抗原は、炭疽(バチルス・アントラシス)、ボツリスム(クロストリジウム・ボツリナム毒素)、ペスト(エルシニア・ペスチス)、野兎病(フランシセラ・ツラレンシス)、ブルセラ症(ブルセラ菌種)、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、サルモネラ菌種、大腸菌O157:H7、赤痢菌、鼻疽(バークホルデリア・マレイ)、類鼻疽(バークホルデリア・シュードマレイ)、オウム病(クラミジア・シタッシ)、Q熱(コクシエラ・ブルネッティ)、ブドウ球菌エンテロトキシンB、発疹チフス(リケッチア・プロワツェキイ)、ビブリオ・コレラエ、クリプトスポリジウム・パルバムから得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、トウゴマ(ヒマの種子)由来のリシン毒素に対するワクチン組成物を発現するように操作される。
【0096】
本明細書中のいくつかの実施形態では、本明細書に開示される腫瘍抗原に対するワクチン組成物を発現するように操作された細胞質体が提供される。「腫瘍抗原」は、本明細書で使用するとき、癌細胞により産生される抗原を表す。本開示に使用される、癌細胞または腫瘍細胞の非限定的な例として、棘細胞腫、小葉癌、聴神経腫、末端性黒子性黒色腫、先端汗腺腫、急性好酸球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性単球性白血病、成熟を伴う急性骨髄芽球白血病、急性骨髄性樹状細胞白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、アダマンチノーム、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺様歯原性腫瘍、副腎皮質癌、成人T細胞白血病、侵襲性NK細胞白血病、AIDS関連性癌、AIDS関連性リンパ腫、胞巣状軟部肉腫、エナメル芽細胞線維腫、肛門癌、未分化大細胞リンパ腫、組織非形成性甲状腺癌、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管筋脂肪腫、血管肉腫、虫垂癌、星細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、基底様癌、B細胞白血病、B細胞リンパ腫、ベリニ管癌、胆道癌、膀胱癌、芽細胞腫、骨癌、骨腫瘍、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、ブレンナー腫瘍、気管支腫瘍、細気管支肺胞上皮癌、褐色腫、バーキットリンパ腫、原発部位不明の癌、カルチノイド腫瘍、癌腫、上皮内癌、陰茎癌腫、原発部位不明の癌腫、癌肉腫、カストルマン病、中枢神経系胚芽腫、小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫、子宮頚癌、肝内胆管癌、軟骨腫、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、脈絡叢乳頭腫、慢性リンパ性白血病、慢性単球性白血病、慢性骨髄性白血病細胞、慢性骨髄増殖性疾患、慢性好中球性白血病、明細胞腫瘍、結腸癌、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、デゴス病、隆起性皮膚線維肉腫、類皮嚢胞、線維形成性小円形細胞腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、胎児性癌、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜癌、子宮内膜子宮癌、子宮内膜性腫瘍、腸疾患関連性T細胞性リンパ腫、上衣芽細胞腫、上衣腫、類上皮肉腫、赤白血病、食道癌、感覚神経芽腫、腫瘍のユーイングファミリー、ユーイングファミリー肉腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、乳腺外ページェット病、ファロピウス管癌、封入奇形胎児、線維腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性甲状腺癌、胆嚢癌、胆嚢癌、神経細胞神経膠腫、節神経腫、胃癌、胃リンパ腫、消化器系癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、消化管間質腫瘍、胚細胞腫瘍、胚細胞腫、妊娠性絨毛癌、妊娠性絨毛腫瘍、骨巨細胞腫、多形神経膠芽腫、神経膠腫、神経膠腫症、グロムス腫瘍、グルカゴノーマ、性腺芽細胞腫、顆粒膜細胞腫、ヘアリー細胞白血病、ヘアリー細胞白血病、頭頚部癌、頭頚部癌、心臓癌、血管芽細胞腫、血管周皮腫、血管肉腫、血液学的悪性腫瘍、肝細胞癌、肝脾T細胞リンパ腫、遺伝性乳房卵巣癌症候群、ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫(Hodgkin’s lymphoma)、下咽頭癌、視床下部神経膠腫、炎症性乳癌、眼球内黒色腫、島細胞癌、島細胞腫、若年性骨髄単球性白血病、カポジ肉腫、カポジ肉腫(Kaposi’s sarcoma)、腎臓癌、クラッツキン腫瘍、クルッケンベルク腫瘍、喉頭癌、喉頭癌、悪性黒子型黒色腫、白血病、白血病、口唇・口腔癌、脂肪肉腫、肺癌、黄体腫、リンパ管腫、リンパ管肉腫、リンパ上皮腫、リンパ性白血病、リンパ腫、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、悪性線維性組織球腫、骨悪性線維性組織球腫、悪性神経膠腫、悪性中皮腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、悪性トリトン腫瘍、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肥満細胞白血病、縦隔胚細胞腫瘍、縦隔腫瘍、骨髄甲状腺癌、髄芽腫、髄芽腫、髄様上皮腫、黒色腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞腫、中皮腫、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮癌、転移性尿路上皮癌、ミュラー管混合腫瘍、単球性白血病、口腔癌、ムチン性腫瘍、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、菌状息肉腫、骨髄異形成疾患、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄性肉腫、骨髄増殖性疾患、粘液腫、鼻腔癌、上咽頭癌、上咽頭癌腫、新生物、ノイリノーマ、神経芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫、神経腫、結節型黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫性皮膚癌、非小細胞肺癌、眼腫瘍、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、膨大細胞腫、視神経鞘髄膜腫、口腔癌、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣性胚細胞腫瘍、低悪性度卵巣癌、乳房のパジェット病、パンコースト腫瘍、膵臓癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、血管周囲類上皮細胞腫瘍、咽頭癌、クロム親和性細胞腫、中間型松果体実質腫瘍、松果体芽腫、下垂体細胞腫、下垂体腺腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽腫、多胚腫、前駆体T-リンパ芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、原発性肝細胞性癌、原発性肝臓癌、原発性腹膜癌、原始神経上皮腫瘍、前立腺癌、腹膜偽性粘液腫、直腸癌、腎細胞癌、染色体15上のNUT遺伝子に関与する気道癌腫、網膜芽細胞腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、リヒター形質転換、仙尾部奇形腫、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫症、脂腺癌、続発性新生物、精上皮腫、漿液性腫瘍、セルトリ-ライディッヒ細胞腫、性器索間質腫瘍、セザリー症候群、シグネット環細胞癌、皮膚癌、小円形青色細胞腫瘍、小細胞癌、小細胞肺癌、小細胞リンパ腫、小腸癌、軟部組織肉腫、ソマトスタチン産生腫瘍、煤煙性疣贅、脊髄腫瘍、脊椎腫瘍、脾辺縁帯リンパ腫、扁平上皮癌、胃癌、表在拡大型黒色腫、テント上原始神経上皮腫瘍、表層上皮性間質性腫瘍、滑膜肉腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球白血病、T細胞白血病、T細胞性リンパ腫、T細胞前リンパ球性白血病、奇形腫、末梢リンパ腺癌(Terminal lymphatic cancer)、精巣癌、莢膜腫、喉頭癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行性細胞癌、移行性細胞癌、尿膜管癌、尿管癌、泌尿生殖器腫瘍、子宮肉腫、ブドウ膜黒色腫、膣癌、ヴァーナー-モリソン症候群、疣状癌、視神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ワルチン腫瘍、ウィルムス腫瘍、ならびにそれらの組合せを含む癌の細胞を挙げることができる。いくつかの実施形態では、標的とされた癌細胞は、癌幹細胞などの癌細胞集団内に部分集団を表す。いくつかの実施形態では、癌はリンパ腫などの造血系統である。いくつかの実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、または他のあらゆる肺癌の種類を含む肺癌であってよい。例えば、肺癌として、腺癌、扁平上皮癌、大細胞(未分化)癌腫、大細胞神経内分泌腫瘍、腺扁平上皮癌、肉腫様癌、肺カルチノイド、または腺様嚢胞癌を挙げることができる。他の例示的な肺癌として、リンパ腫、肉腫、良性肺腫瘍、または過誤腫を挙げることができる。
【0097】
a.抗原
本明細書中のいくつかの実施形態では、細胞質体により発現される少なくとも1つの抗原またはその部分を含む細胞質体が記載される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原は、癌細胞により発現または放出される抗原の場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原は、病原体により発現または放出される抗原の場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原は、ウイルスにより発現または放出される抗原の場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原は、細菌により発現または放出される抗原の場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原は、真菌により発現または放出される抗原の場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原は、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドによりコードすることができ、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、細胞質体のカーゴであってよい。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターまたはプラスミドを含んでよい。いくつかの実施形態では、細胞質体は、標的組織に異種ポリヌクレオチドを送達する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原を含むか少なくとも1つの抗原をコードする異種ポリヌクレオチドを含む細胞質体は、本明細書に記載されるワクチンの部分であってよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原またはその部分は、癌細胞とともに発現されるか癌細胞に付随する癌抗原であってよい。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上で少なくとも1つの癌抗原を発現する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、少なくとも1つの癌抗原を放出または分泌する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの癌抗原は、細胞質体のカーゴであってよい。いくつかの実施形態では、細胞質体は、標的細胞または組織に少なくとも1つの癌抗原を送達する。癌抗原は、本明細書に記載の癌細胞のうちいずれか1つにより発現される場合がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞質体が対象に投与されると、細胞質体により発現または放出される癌抗原は、免疫応答(例えばB細胞活性化)を誘発するのに十分な場合がある。
【0099】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、少なくとも1つの癌抗原またはその部分を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000個以上の癌抗原を含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、癌細胞により発現されるかそれに付随する抗原のペプチジル配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である。
【0100】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000個以上の抗原を含む。いくつかの実施形態では、抗原は、本明細書に記載の抗原のペプチジル配列に対して約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である。いくつかの実施形態では、抗原またはその部分は、約5個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸の間のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、抗原またはその部分は約5個のアミノ酸~約10個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、または約2,000個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸の間の、アミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、約5個のアミノ酸、約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、約2,000個のアミノ酸、または約5,000個のアミノ酸のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、少なくとも約5個のアミノ酸、約10個のアミノ酸、約15個の、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、個のアミノ酸、または約2,000個のアミノ酸のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、多くとも約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、約2,000個のアミノ酸、または約5,000個のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、少なくとも約5個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、少なくとも約5個のアミノ酸~約10個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、または約2,000個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸の、アミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、抗原またはその部分は、少なくとも約5個のアミノ酸、約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、約2,000個のアミノ酸、または約5,000個のアミノ酸のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、最低で少なくとも約5個のアミノ酸、約10個のアミノ酸、約15個の、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、個のアミノ酸、または約2,000個のアミノ酸のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、最低で多くとも約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、約2,000個のアミノ酸、または約5,000個のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、抗原またはその部分は、多くとも約5個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、多くとも約5個のアミノ酸~約10個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約200個のアミ
ノ酸、約25個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約1,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸~約2,000個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸、または約2,000個のアミノ酸~約5,000個のアミノ酸の、アミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、多くとも約5個のアミノ酸、約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、約2,000個のアミノ酸、または約5,000個のアミノ酸のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、最大で少なくとも約5個のアミノ酸、約10個のアミノ酸、約15個の、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、または約2,000個のアミノ酸のアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、癌抗原は、最大で多くとも約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約1,000個のアミノ酸、約2,000個のアミノ酸、または約5,000個のアミノ酸長さを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上で抗原を発現する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、抗原を放出または分泌する。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞質体のカーゴであってよい。いくつかの実施形態では、細胞質体は、標的細胞または組織に抗原を送達する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞質体が対象に投与されると、細胞質体により発現または放出される抗原は、免疫応答(例えばB細胞活性化)を誘発するのに十分な場合がある。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗原またはその部分は、癌抗原である。いくつかの実施形態では、癌抗原は、癌細胞へと導入される病原体抗原である。例えば、細胞質体は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質を癌細胞へ導入するように操作可能である。このようなシナリオでは、SARS-CoV-2に対してワクチン接種を受けた対象は、癌細胞を標的とし死滅させることが可能な適応免疫系を獲得することになる。いくつかの実施形態では、癌抗原は、ベクター(細胞質体へと充填される)として腫瘍溶解性ウイルスを利用することにより癌細胞へと導入されて、mRNAを癌細胞へ導入することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原は、病原体抗原であってよい。いくつかの実施形態では、病原体抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、または毒素抗原である。抗原は、本明細書に記載されるもののうちいずれか1つ(例えば、表3~表6の病原体のうちいずれか1つ)により発現される場合がある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原は、ウイルス抗原であってよい。ウイルス抗原は、本明細書に記載のウイルス(例えばSARS-CoV-2)の抗原であってよい。いくつかの実施形態では、抗原はコロナウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、コロナウイルスのスパイクタンパク質(Sタンパク質)またはそのフラグメントである少なくとも1つのウイルス抗原を含む。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントは、単量体または三量体であってよい。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質は、融合前に安定化したスパイクタンパク質である。いくつかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0104】
いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントのウイルス抗原は、配列番号1または8に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントを含むウイルス抗原は、全体が本明細書に引用されるSilva Filipe,A.、Shepherd,J.G.、Williams,Tらによる「Genomic epidemiology reveals multiple introductions of SARS-CoV-2 from mainland Europe into Scotland. Nat Microbiol 6,112-122(2021)」に記載されるような少なくとも1つの突然変異または変異を含む。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントを含むウイルス抗原は、配列番号2に関連してAsp614Glyを含む少なくとも1つの突然変異を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントのウイルス抗原は、少なくとも5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、20個のアミノ酸、25個のアミノ酸、50個のアミノ酸、100個のアミノ酸、200個のアミノ酸、またはそれより多くのアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体の表面に発現される。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体により分泌される。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体のカーゴである。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体により標的組織に送達される。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、対象に免疫応答を誘導可能である。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、SARS-CoV-2感染症への適応免疫を誘導し、それを与えることができる。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、SARS-CoV-2感染症を処置または予防することができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上でスパイクタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、スパイクタンパク質を分泌する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、標的組織にスパイクタンパク質を送達する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上にスパイクタンパク質を発現し、スパイクタンパク質を分泌し、および/または標的組織にスパイクタンパク質を送達する。
【0106】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)またはNタンパク質のフラグメントである少なくとも1つのウイルス抗原を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントのウイルス抗原は、配列番号9に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントのウイルス抗原は、少なくとも5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、20個のアミノ酸、25個のアミノ酸、50個のアミノ酸、100個のアミノ酸、200個のアミノ酸、またはそれより多くのアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体の表面に発現される。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体により分泌される。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体のカーゴである。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体により標的組織に送達される。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、対象に免疫応答を誘導可能である。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、SARS-CoV-2感染症への適応免疫を誘導し、それを与えることができる。いくつかの実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、SARS-CoV-2感染症を処置または予防することができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上でヌクレオキャプシドタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、ヌクレオカプシドタンパク質を分泌する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、標的組織にヌクレオカプシドタンパク質を送達する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上にヌクレオカプシドタンパク質を発現し、ヌクレオカプシドタンパク質を分泌し、および/または標的組織にヌクレオカプシドタンパク質を送達する。
【0107】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、膜タンパク質(Mタンパク質)またはNタンパク質のフラグメントである少なくとも1つのウイルス抗原を含む。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントのウイルス抗原は、配列番号10に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントのウイルス抗原は、少なくとも5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、20個のアミノ酸、25個のアミノ酸、50個のアミノ酸、100個のアミノ酸、200個のアミノ酸、またはそれより多くのアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体の表面に発現される。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体により分泌される。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体のカーゴである。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体により標的組織に送達される。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、対象に免疫応答を誘導可能である。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、SARS-CoV-2感染症への適応免疫を誘導し、それを与えることができる。いくつかの実施形態では、膜タンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、SARS-CoV-2感染症を処置または予防することができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上で膜タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、膜タンパク質を分泌する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、標的組織に膜タンパク質を送達する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上に膜タンパク質を発現し、膜タンパク質を分泌し、および/または標的組織に膜タンパク質を送達する。
【0108】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、エンベロープタンパク質(E)またはNタンパク質のフラグメントである少なくとも1つのウイルス抗原を含む。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントのウイルス抗原は、配列番号11に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントのウイルス抗原は、少なくとも5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、20個のアミノ酸、25個のアミノ酸、50個のアミノ酸、100個のアミノ酸、200個のアミノ酸、またはそれより多くのアミノ酸長さを含む。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体の表面に発現される。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体により分泌される。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体のカーゴである。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントは、細胞質体により標的組織に送達される。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、対象に免疫応答を誘導可能である。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、SARS-CoV-2感染症への適応免疫を誘導し、それを与えることができる。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントを含む細胞質体は、SARS-CoV-2感染症を処置または予防することができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上でエンベロープタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、エンベロープタンパク質を分泌する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、標的組織にエンベロープタンパク質を送達する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上にエンベロープタンパク質を発現し、エンベロープタンパク質を分泌し、および/または標的組織にエンベロープタンパク質を送達する。
【0109】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、配列番号4~7のいずれか1つのフラグメントに対し少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である核酸配列によりコードされる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、配列番号4~7のいずれか1つのフラグメントに対し100%同一の核酸配列によりコードされる少なくとも1つのウイルス抗原を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、コロナウイルス変異体から得られる。いくつかの実施形態では、コロナウイルス変異体抗原は、配列番号401~447もしくは551~562のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルス変異体抗原は、配列番号301~347もしくは501~512のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、コロナウイルス変異体から得た抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、対象においてコロナウイルス変異体による感染症に対する免疫性を与えるか、またはコロナウイルス変異体により生じる疾患の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0111】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、鳥類コロナウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、鳥類コロナウイルス抗原は、配列番号251~260のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、鳥類コロナウイルス抗原は、配列番号201~209のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、鳥類コロナウイルスから得た抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、対象において鳥類コロナウイルスによる感染症に対する免疫性を与えるか、または鳥類コロナウイルスにより生じる疾患の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗原はエボラウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、抗原は、エボラウイルス糖タンパク質、マトリクスタンパク質、核タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質(例えば、VP30、VP35、もしくはVP24)、またはポリメラーゼ(L)タンパク質に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一である。いくつかの実施形態では、鳥類抗原は、配列番号251~260のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、鳥類抗原は、配列番号201~209のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、鳥類から得た抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、対象において鳥類による感染症に対する免疫性を与えるか、または鳥類により生じる疾患の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0113】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、ハンタウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、抗原は、ハンタウイルスポリメラーゼに対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であり、Mセグメントは2つのウイルス表面糖タンパク質(GnおよびGc)に対して前駆体(GPC)をコードし、Sセグメントはヌクレオカプシド(N)タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、抗原は、配列番号151~154のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原は、配列番号101~104のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ハンタウイルスから得た抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、対象においてハンタウイルスによる感染症に対する免疫性を与えるか、またはハンタウイルスにより生じる疾患の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0114】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)から得られる。いくつかの実施形態では、HIV抗原は、配列番号651~660のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HIV抗原は、配列番号601~610のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HIVから得た抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、対象においてHIVによる感染症に対する免疫性を与えるか、またはHIVにより生じる疾患の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0115】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、RSVメンフィス37などの呼吸系発疹ウイルス(RSV)から得られる。いくつかの実施形態では、RSV抗原は、配列番号751~761のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、RSV抗原は、配列番号701~711のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、RSVから得た抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、対象においてRSVによる感染症に対する免疫性を与えるか、またはRSVにより生じる疾患の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0116】
いくつかの実施形態では、細胞質体は複数のウイルス抗原を含むことができ、このウイルス抗原は同じものである(例えば、ウイルス抗原としてスパイクタンパク質のみを含む細胞質体)。いくつかの実施形態では、細胞質体は複数のウイルス抗原を含むことができ、このウイルス抗原は異なるものである。例えば、細胞質体は、スパイクタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、膜タンパク質、またはエンベロープタンパク質の組合せを含むウイルス抗原を含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面に発現され、細胞質体により封入され、および/または細胞質体により分泌され得るウイルス抗原の組合せを含むことができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗原は細菌から得られる。細菌はグラム陽性細菌の場合がある。いくつかの実施形態では、細菌はグラム陰性細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、s-ラクタマーゼに耐性を呈する株である。いくつかの実施形態では、抗原は、毒素原性大腸菌(ETEC)、志賀毒素産生大腸菌(STEC)、カンピロバクター・ジェジュニ、シュードモナス・エルジノーサ、アシネトバクター・バウマンニ、ストレプトコッカス・ミュータンス、ヘリコバクター・ピロリ、またはバチルス・アントラシスから得られる。
【0118】
いくつかの実施形態では、細菌抗原は、バチルス・アントラシス(例えば炭疽)から得られる。いくつかの実施形態では、細菌抗原は、保護抗原(PA)および2つの酵素成分として浮腫因子(EF)と致死因子(LF)に対して約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一である。いくつかの実施形態では、細菌抗原は、配列番号1151~1153のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細菌抗原は、配列番号1101~1103のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、バチルス・アントラシスから得た細菌抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、バチルス・アントラシスによる感染症から対象を免疫化する、またはバチルス・アントラシスによる感染症により生じる疾患もしくは疾病の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0119】
いくつかの実施形態では、細菌抗原は、クロストリジウムから得られる。いくつかの実施形態では、クロストリジウム抗原は、配列番号951~984のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、クロストリジウム抗原は、配列番号901~934のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、クロストリジウムから得た抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、対象においてクロストリジウムによる感染症に対する免疫性を与えるか、またはクロストリジウムにより生じる疾患の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0120】
いくつかの実施形態では、ワクチン抗原は、リシンから得られる。いくつかの実施形態では、リシン抗原は、配列番号1051~1057のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リシン抗原は、配列番号1001~1007のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リシンから得た抗原を発現する細胞質体の対象への投与は、対象においてリシンにより生じる毒性作用に対する免疫性を与えるか、またはその毒性作用を低下させるのに治療上有効である。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗原は融合タンパク質であってよく、本明細書に記載のタンパク質のうちいずれか1つまたはそのフラグメントは、別のペプチドと融合可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗原は、細胞膜タンパク質または膜貫通タンパク質と融合可能である。例示的な細胞膜タンパク質または膜貫通タンパク質として、CD63、CD81、CD82、CD47、ヘテロ三量体Gタンパク質、MHCクラスI、インテグリン、トランスフェリン受容体(TFR2)、LAMP1/2、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、EMMPRIN、ADAM10、GPI固定5’ヌクレオチダーゼ、CD73、補体結合タンパク質CD55とCD59、ソニックヘッジホッグ(SHH)、TSPAN8、CD37、CD53、CD9、PECAM1、ERBB2、EPCAM、CD90、CD45、CD41、CD42a、グリコホリンA、CD14、MHCクラスII、CD3、アセチルコリンエステラーゼ/AChE-S、AChE-E、アミロイドβA4/APP、および多剤耐性関連タンパク質を挙げることができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗原は、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質の尾部と融合可能である。いくつかの実施形態では、抗原はアルブミンと融合可能である。いくつかの実施形態では、抗原は、分子クランプを含むポリペプチドとともに発現可能である。いくつかの実施形態では、分子クランプは、同じ細胞質体中で抗原とともに発現されると、抗原を融合前の形態に維持する。いくつかの実施形態では、分子クランプは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15以上のアミノ酸残基の後に繰返しを行うパターンをコードするポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、分子クランプ(clam)をコードするポリペプチドは、長さが少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、分子クランプ自体は集まって二重らせんとなり、一本の鎖は前方に、もう一本の鎖はその逆に向かう。いくつかの実施形態では、鎖の中でのアミノ酸の対合は、疎水性および親水性のアミノ酸のパターンにより確実となる。いくつかの実施形態では、このパターンは、いずれのクランプもウイルス抗原に結合しないように配置される。いくつかの実施形態では、分子クランプ自体は集まって硬い杆体となる。いくつかの実施形態では、分子クランプは、リンカーによりウイルス抗原の所望の部分に連結されて、分子クランプを発現する細胞質体が混合物から精製されるのを可能にするなど他の機能を果たすことができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗原は、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA0125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)などの腫瘍抗原またはその部分である。いくつかの実施形態では、抗原は、一般に知られているあらゆる癌エピトープに対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原またはその部分を発現する細胞質体の対象への投与は、腫瘍ウイルスによる感染症に対して対象を免疫化する、または腫瘍ウイルスにより生じる癌の重症度を低下させるのに治療上有効である。
【0124】
b.異種核酸
本明細書中のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含むワクチンが記載される。異種であり得るポリヌクレオチドの非限定的な例として、遺伝子または遺伝子フラグメントのコーディングドまたは非コーディング領域、連鎖解析から定められる座位、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、自己増幅RNA、ウリジン含有RNA(uRNA)、自己増幅mRNA、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、あらゆる配列の単離DNA、あらゆる配列の単離RNA、無細胞DNA(cfDNA)や無細胞RNA(cfRNA)を含む無細胞ポリヌクレオチド、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により妨げられる場合がある。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドから翻訳される抗原は、対象に免疫応答を誘導することができる。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドから翻訳される抗原は、本明細書に記載の病原体のうちいずれか1つにより生じる感染症に対する適応免疫を対象に与えることができる。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドから翻訳される抗原は、対象において、本明細書に記載の病原体のうちいずれか1つにより生じる病原性感染症を処置または予防することができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の免疫変調成分のうち1または複数をコードすることができる。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、本明細書に記載の抗原のうちいずれか1つにより誘導される免疫応答を増大させる。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、Ii-キー/MHCクラスIIエピトープペプチドである。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、本明細書に記載のサイトカインのうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のホーミング受容体のホーミングタンパク質のうち1または複数、あるいはホーミング受容体のうち1または複数をコードすることができる。いくつかの実施形態では、ホーミングタンパク質は、細胞質体により分泌されてよい。いくつかの実施形態では、ホーミング受容体は、細胞質体の表面に発現されてよい。いくつかの実施形態では、1または複数のホーミング受容体は、リンパ組織中の1または複数の細胞に発現される1または複数のリガンドに特異的な場合があり、リンパ組織中の細胞は、内皮細胞、リンパ球、マクロファージ、または細網細胞、あるいはそれらの組合せを含むことができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の標的化部分のうち1または複数をコードすることができる。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の免疫変調成分のうち1または複数をコードすることができる。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のホーミング受容体のうち1または複数をコードすることができる。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のホーミングタンパク質のうち1または複数をコードすることができる。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の抗ウイルス組成物のうち1または複数をコードすることができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、ウイルス抗原をコードする異種DNA配列を含む。いくつかの実施形態では、異種DNA配列は、orf1a、orf1ab、スパイクタンパク質(Sタンパク質)、3a、3b、エンベロープタンパク質(Eタンパク質)、膜タンパク質(Mタンパク質)、p6、7a、7b、8b、9b、ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)、orf14、nsp1(リーダータンパク質)、nsp2、nsp3、nsp4、nsp5(3C様プロテイナーゼ)、nsp6、nsp7、nsp8、nsp9、nsp10(成長因子様タンパク質)、nsp12(RNA依存性RNAポリメラーゼすなわちRdRp)、nsp13(RNA5’-トリホスファターゼ)、nsp14(3’~5’のエキソヌクレアーゼ)、nsp15(endoRNAse)、およびnsp16(2’-Oリボースメチルトランスフェラーゼ)のうちいずれか1つをコードする。いくつかの実施形態では、細胞質体は、スパイクタンパク質またはそのフラグメントをコードする異種DNA配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードする異種DNA配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、膜タンパク質またはそのフラグメントをコードする異種DNA配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントをコードする異種DNA配列を含む。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、1または複数の抗原をコードする1または複数の異種DNA配列を含むことができる。例えば、異種ポリヌクレオチドは、Sタンパク質抗原およびNタンパク質抗原をコードすることができる。いくつかの実施形態では、異種DNA配列は、本明細書に記載の様々なウイルス抗原のうちいずれか1つをコードすることができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、異種DNA配列を転写し、ウイルス抗原へと翻訳する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、異種DNA配列を標的組織に送達し、そこでは、異種DNA配列は転写されて、標的組織によりウイルス抗原へと翻訳される。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の抗原のうちいずれか1つをコードする異種DNA配列を含むプラスミドを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質から得られる抗原をコードする核酸を含むDNAワクチン(GX-19)を含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号4~7のいずれか1つのフラグメントに対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号4~7のいずれか1つのフラグメントに対して約100%同一である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号8のフラグメントに対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一であるウイルス抗原をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号8のフラグメントに対して100%同一であるウイルス抗原をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号9のフラグメントに対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一であるウイルス抗原をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号9のフラグメントに対して約100%同一であるウイルス抗原をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号10のフラグメントに対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一であるウイルス抗原をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号10のフラグメントに対して約100%同一であるウイルス抗原をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号11のフラグメントに対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一であるウイルス抗原をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドは、配列番号11のフラグメントに対して約100%同一であるウイルス抗原をコードする。
【0129】
いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、ウイルス抗原をコードする異種RNA配列を含む。いくつかの実施形態では、異種RNA配列は、ウイルス抗原をコードするmRNA配列を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、orf1a、orf1ab、スパイクタンパク質(Sタンパク質)、3a、3b、エンベロープタンパク質(Eタンパク質)、膜タンパク質(Mタンパク質)、p6、7a、7b、8b、9b、ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)、orf14、nsp1(リーダータンパク質)、nsp2、nsp3、nsp4、nsp5(3C様プロテイナーゼ)、nsp6、nsp7、nsp8、nsp9、nsp10(成長因子様タンパク質)、nsp12(RNA依存性RNAポリメラーゼすなわちRdRp)、nsp13(RNA5’-トリホスファターゼ)、nsp14(3’~5’のエキソヌクレアーゼ)、nsp15(endoRNAse)、およびnsp16(2’-Oリボースメチルトランスフェラーゼ)のうちいずれか1つをコードする。いくつかの実施形態では、細胞質体は、スパイクタンパク質またはそのフラグメントをコードするmRNAを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、ヌクレオカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードするmRNAを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、膜タンパク質またはそのフラグメントをコードするmRNAを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、エンベロープタンパク質またはそのフラグメントをコードするmRNAを含む。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、1または複数のmRNA配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、mRNA配列は、本明細書に記載の様々なウイルス抗原のうちいずれか1つをコードすることができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、mRNAをウイルス抗原へと翻訳する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、mRNAを標的組織に送達し、そこではmRNAは標的組織によりウイルス抗原へと翻訳される。いくつかの実施形態では、mRNAは、自己増幅mRNA(saRNA)である。いくつかの実施形態では、mRNAは、ウリジン(uRNA)を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、完全長で融合前に安定したスパイク(S)タンパク質(mRNA-1273)をコードするmRNAを含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の抗原のうち1または複数をコードする1または複数の異種RNA配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のタンパク質から得られる抗原をコードするmRNAを含むSARS-CoV-2ワクチン(mRNA-LNPワクチン)を含む。mRNAは、脂質ナノ粒子の使用により封入されて送達される。
【0130】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、ウイルス抗原をコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含むDNAまたはRNAベクターを含む。いくつかの実施形態では、DNAまたはRNAベクターは、プラスミドであってよい。いくつかの実施形態では、DNAまたはRNAベクターは、ウイルスベクターであってよい。ウイルスベクター、具体的にレトロウイルスベクターは、本明細書に記載のウイルス抗原のうちいずれか1つをコードする核酸配列を含むように操作されるとともに、細胞質体により標的組織へと送達することができる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純疱疹ウイルスI、アデノウイルス、アデノ関連性ウイルスなどから得ることができる。例示的なウイルスベクターとして、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター(AAV)、複製欠損性チンパンジーアデノウイルス、ChAdOx1、ニューカッスル病ウイルスベクター、M2欠損性単一複製(M2SR)インフルエンザベクター、痘ベクター、パルボウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルス(VSV)ベクター、または単純疱疹ウイルスベクター(HSV)が挙げられる。いくつかの実施形態では、レトロウイルスベクターとして、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV、MMLV、MuLV、またはMLV)またはマウス幹(Steam)細胞ウイルス(MSCV)ゲノムから得られるベクターなどのγレトロウイルスベクターが挙げられる。いくつかの実施形態では、レトロウイルスベクターとして、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ゲノムから得たものなどのレンチウイルスベクターも挙げられる。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、またはAAV9の血清型を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、2つ以上のウイルス由来のウイルス部分を含むキメラ・ウイルスベクターである。さらなる例では、ウイルスベクターは、組換えウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のSタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、SARS-CoV-2ワクチン(Gam-COVID-VacまたはGam-COVID-Vac lyo)非複製ウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、核酸配列を含むアデノウイルスベクターを含むSARS-CoV-2ワクチン、すなわちSARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質(Ad5-nCoV)を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質を発現するように操作される複製欠損性チンパンジーアデノウイルスChAdOx1を含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のタンパク質から得られる抗原をコードする核酸を含む非複製型アデノウイルスベクター(AdVac)を含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。いくつかの実施形態では、AdVacワクチンは、PER.C6細胞とともに調製される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、挿入物としてSARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質をコードする核酸とともにINO-4800 pGX DNAプラスミドを含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2(BNT162)のスパイク(S)タンパク質またはそのフラグメントを発現するように、mRNAまたは修飾mRNAを含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む麻疹ベクターを含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、注射により対象の筋肉に送達された後にエレクトロポレーションが行われるスパイクタンパク質をコードするDNAを含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。
【0131】
c.不活性化病原体とその部分
いくつかの実施形態では、細胞質体は、不活性化病原体(例えば、ウイルス、細菌、寄生虫、または真菌)、またはその部分を含む。いくつかの実施形態では、不活性化病原体は、不活性化ウイルスまたはその一部である。いくつかの実施形態では、不活性化ウイルスは、本明細書に記載のウイルスのうちいずれか1つである。いくつかの実施形態では、不活性化ウイルスは、コロナウイルス、ハンタウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸系発疹ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、肝炎ウイルス、または豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、不活性化ウイルスは、コロナウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、不活性化ウイルスは、SARS-CoV-2などのベータコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、不活性化ウイルスは不活性化SARS-CoV-2である。
【0132】
いくつかの実施形態では、細胞質体は不活性化SARS-CoV-2を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2は、ウーハン株に対する完全長アミノ酸配列と比較して、Asp614Gly、Pro323Leu、Ile599Val、pro585Ser、Phe308Tyr、Thr141Ile、Asp248Glu、Thr85Ile、Ala18Val、Asn439Lys、Glu251Val、Pro10Ser、Ser194Leu、Ser197Leu、Gly196Val、Leu108Phe、Gln213Lys、Leu84Ser、Thr175Met、Ser563Leu、Val13Leu、Gln57His、またはThr14Ileを含む突然変異を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、不活性化SARS-CoV-2を含む細胞質体は、不活性化SARS-CoV-2を含む細胞質体が対象の免疫細胞により飲み込まれると、対象においてSARS-CoV-2に対する免疫応答および適応免疫を誘導する。細胞質体を飲み込む際、免疫細胞は、不活性化SARS-CoV-2に接触し、続いてSARS-CoV-2に対する適応免疫応答を発する。いくつかの実施形態では、不活性化SARS-CoV-2ウイルスは、ホルマリンで不活性化したSARS-CoV-2ウイルスである。いくつかの実施形態では、細胞質体は、vero細胞培養物から得られる、ホルマリンで不活性化したSARS-CoV-2ウイルスを含むSARS-CoV-2ワクチン(PiCoVacc)を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)を含むSARS-CoV-2ワクチンを含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS0-CoV-2のスパイクタンパク質を発現するように操作されるビフィズス菌を含むSARS-CoV-2ワクチン(bacTRL-スパイク)を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、マイクロニードルアレイの使用によりSARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質またはそのフラグメントを送達することを含むSARS-CoV-2ワクチン(PittCoVacc)を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の融合前形態を含む多重組換えナノ粒子ワクチンを含むSARS-CoV-2ワクチン(NVX-CoV2373)を含む。いくつかの実施形態では、NVX-CoV2373を含む細胞質体は、アジュバントまたは免疫変調成分を含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のウイルス構造を模倣するウイルス様粒子(VLP)を含むSARS-CoV-2ワクチンを含み、そこではVLPは、植物由来の生産方法から製造される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含むSARS-CoV-2ワクチン(LUNAR-COV19)を含む。mRNAは、脂質媒介型送達系の使用により封入されて送達される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、スパイクタンパク質から得られる抗原を含むSARS-CoV-2ワクチンを含み、このワクチンは、gp96とOX40L、すなわちT細胞の共刺激物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞質体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む複製欠損性アデノウイルス5(RD-Ad5)ベクターを含むSARS-CoV-2ワクチン(T-COVIDTM)を含み、T-COVIDTMワクチンは鼻腔内の送達のために製剤化される。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ワクチンを含む細胞質体は、あらゆる適切な経路、例えば、皮下、静脈内、動脈、眼、経口、筋肉内、鼻腔内(例えば吸入)、腹腔内、局所、粘膜、硬膜外麻酔、舌下、上皮、羊膜外、関節内、皮内、骨内、鞘内、子宮内、膣内、膀胱内、硝子体内、血管周囲、および/または直腸投与、あるいは公知の投与方法のあらゆる組合せによる投与のために製剤化される。
【0134】
いくつかの実施形態では、不活性化ウイルスは、フィロウイルス(エボラ、マールブルク)やアレナウイルス(ラッサ、マチュポ)を含むウイルス性出血熱を生じさせるウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、不活性化ウイルスは、ウイルス脳炎(東部ウマ脳炎、ベネズエラウマ脳炎、西部ウマ脳炎などのアルファウイルス)を生じさせるウイルスから得られる。いくつかの実施形態では、不活性化ウイルスは、ハンタウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸系発疹ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、肝炎ウイルス、または豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスから得られる。
【0135】
いくつかの実施形態では、不活性化病原体は、不活性化細菌またはその部分である。いくつかの実施形態では、抗原は不活性化細菌から得られる。不活性化細菌は、グラム陽性細菌から得られる場合がある。いくつかの実施形態では、不活性化細菌は、グラム陰性細菌から得られる。いくつかの実施形態では、不活性化細菌は、s-ラクタマーゼに耐性を呈する株から得られる。いくつかの実施形態では、不活性化細菌は、毒素原性大腸菌(ETEC)、志賀毒素産生大腸菌(STEC)、カンピロバクター・ジェジュニ、シュードモナス・エルジノーサ、アシネトバクター・バウマンニ、ストレプトコッカス・ミュータンス、ヘリコバクター・ピロリ、またはバチルス・アントラシスから得られる。いくつかの実施形態では、不活性化細菌は、ブルセラ症(ブルセラ菌種)、クロストリジウム・パーフリンジェンスのイプシロン毒素、食品安全性脅威(サルモネラ菌種、大腸菌O157:H7、赤痢菌)、鼻疽(バークホルデリア・マレイ)、類鼻疽(バークホルデリア・シュードマレイ)、オウム病(クラミジア・シタッシ)、Q熱(コクシエラ・ブルネッティ)、トウゴマ(ヒマの種子)由来のリシン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、発疹チフス(リケッチア・プロワツェキイ)、水安全性脅威(例えば、コレラ菌およびクリプトスポリジウム・パルバム)、炭疽(バチルス・アントラシス)、ボツリスム(クロストリジウム・ボツリナム毒素)、ペスト(エルシニア・ペスチス)、天然痘(大痘瘡)、野兎病(フランシセラ・ツラレンシス)から得られる。
【0136】
2.追加の外生薬剤(Exogenous Agents)
本開示の細胞質体は、免疫変調成分などの追加の外生薬剤を発現するように操作される場合がある。いくつかの実施形態では、細胞質体は、本明細書に記載の免疫変調成分のうち1または複数を含む。免疫変調成分は、対象に免疫応答を直接または間接的に刺激する分子であってよい。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、対象に適応免疫反応を誘発する免疫活性化剤であってよい。いくつかの実施形態では、免疫活性化剤は、対象、例えば増殖性疾患または障害を患う対象の過活動免疫系を抑える免疫サプレッサであってよい。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、細胞質体の表面に発現されてよい。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、細胞質体により放出されてよい。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、細胞質体により分泌されてよい。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、細胞質体のカーゴであってよい。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、本明細書に記載の抗原と融合されるペプチドまたはタンパク質であってよい。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、アジュバントであってよい。
【0137】
非限定的な例では、免疫変調成分は、免疫細胞の表面上で同族受容体に結合することにより免疫応答を直接刺激し、免疫細胞にサイトカインを放出させることで免疫細胞を活性化する場合がある。免疫細胞の活性化は、いくつかの実施形態では、ウイルスに対する適応免疫の発達を助長する。別の例として、免疫変調成分は、IL-10産生および標的細胞による分泌を抑える、ならびに/または制御性T細胞の活性を抑えることにより免疫応答を間接的に刺激して、例えば、免疫細胞による抗腫瘍応答を増大させる。対照的に、免疫サプレッサとして作用する免疫変調成分は、対象の免疫応答を直接または間接的に阻害することができる。
【0138】
ある実施形態では、免疫変調成分は、パターン認識受容体(PRR)を標的とする。これらの受容体は、病原体などの感染因子に応答して免疫系の活性化をプライミングすることのできる膜貫通タンパク質またはエンドソーム内(intra-endosomal)タンパク質であってよい。PRRは、病原体関連型分子パターン(PAMP)分子および損傷関連型分子パターン(DAMP)分子を認識することができる。PRRは、膜結合されてよい。PRRは、細胞質性であってよい。膜結合型PRRは、マンノース受容体やアシアロ糖タンパク質受容体などのトール様受容体およびC型レクチン受容体が挙げられる。細胞質PRRは、NOD様受容体およびRIG-I-様受容体を含む。
【0139】
ある実施形態では、免疫変調成分は、DAMPアゴニストやPAMPアゴニストなど、損傷関連型分子パターン(DAMP)分子または病原体関連型分子パターン(PAMP)分子である。DAMP分子とPAMP分子は、トール様受容体(TLR)、Nod様受容体、C型レクチン、およびRIG-I-様受容体などの先天性免疫系受容体により認識可能である。ある実施形態では、免疫調節剤は、トール様受容体アゴニスト、STINGアゴニスト、またはRIG-Iアゴニストである。DAMP分子の例として、クロマチン関連タンパク質高移動度グループボックス1(HMGB1)などのタンパク質、ヒアルロナンフラグメントやグリカンコンジュゲートなどのタンパク質およびグリカンのカルシウム調節ファミリーのS100分子を挙げることができる。DAMP分子はさらに、アポトーシスまたは壊死の後に腫瘍細胞から放出されたとき、DNAなどの核酸であってよい。追加のDAMP核酸の例として、核またはミトコンドリアの外部に存在するATP、アデノシン、尿酸などのRNAおよびプリン代謝産物を挙げることができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、免疫変調成分は細胞質ゾルDNAであり、細菌性核酸は、インターフェロン調節因子(IRF)またはインターフェロン遺伝子の刺激物質(STING)により認識される環状ジヌクレオチドと呼ばれ、細胞質ゾルDNAセンサとして作用することができる。インターフェロン調節因子(IRF)により認識される化合物は、TLRおよび他のパターン認識受容体による免疫制御において役割を果たすことができる。
【0141】
免疫変調成分は、トール様受容体(TLR)アゴニストであってよい。免疫調節剤は、RIG-I-様受容体リガンドであってよい。免疫調節剤は、C型レクチン受容体リガンドであってよい。免疫調節剤は、NOD様受容体リガンドであってよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、免疫変調成分はTLRアゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、動物種によりTLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、またはTLR13のアゴニストからなる群から選択される。
【0143】
いくつかの実施形態では、免疫変調成分活性化剤は、以下:(a)加熱死菌産物、好ましくはHKAL、HKEB、HKHP、HKLM、HKLP、HKLR、HKMF、HKPA、HKPG、またはHKSA、HKSP、および(b)細胞壁構成成分産物、好ましくはLAM、LM、LPS、LIA、LIA、PGN、FSL、Pam2CSK4、Pam3CSK4、またはザイモサンを含むTLR2のリガンドである。
【0144】
いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、以下:リンタトリモド、ポリ-ICLC、RIBOXXON(登録商標)、Apoxxim、RIBOXXIM(登録商標)、IPH-33、MCT-465、MCT-475、およびND-1.1からなる群から選択されるTLR3のリガンドである。
【0145】
いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、国際公開第2014/052828号に記載のもの(U of Cal)、AZ126(N-(2-(シクロペンチルアミノ)-2-オキソ-1-(ピリジン-4-イル)エチル)-N-(4-メトキシフェニル)-3-メチル-5-フェニル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)、またはAZ368((E)-3-(4-(2-(シクロペンチルアミノ)-1-(N-(4-イソプロピルフェニル)-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)-2-オキソエチル)フェニル)アクリル酸)などの、LPS、MPLA、またはピリミド[5,4-b]インドールからなる群から選択されるTLR4のリガンドである。
【0146】
いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、FLAおよびフラジェリンからなる群から選択されるTLR5のリガンドである。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、TLR6のリガンドである。ある実施形態では、免疫変調成分は、TLR7アゴニストおよび/またはTLR8アゴニストである。ある実施形態では、免疫変調成分はTLR7アゴニストである。ある実施形態では、免疫変調成分はTLR8アゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、TLR8ではなくTLR7を選択的に刺激する(agonizes)。他の実施形態では、免疫刺激物質は、TLR7ではなくTLR8を刺激する。
【0147】
ある実施形態では、免疫変調成分はTLR7アゴニストである。ある実施形態では、TLR7アゴニストは、イミダゾキノリン、イミダゾキノリンアミン、チアゾキノリン、アミノキノリン、アミノキナゾリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジアミン、ピリミジン-2,4-ジアミン、2-アミノイミダゾール、1-アルキル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン、テトラヒドロピリドピリミジン、ヘテロアロチアジアジド-2,2-ジオキシド、ベンゾナフチリジン、グアノシンアナログ、アデノシンアナログ、チミジンホモポリマー、ssRNA、CpG-A、PolyG10、およびPolyG3から選択される。ある実施形態では、TLR7アゴニストは、イミダゾキノリン、イミダゾキノリンアミン、チアゾキノリン、アミノキノリン、アミノキナゾリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジアミン、ピリミジン-2,4-ジアミン、2-アミノイミダゾール、1-アルキル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン、テトラヒドロピリドピリミジン、ヘテロアロチアジアジド-2,2-ジオキシド、またはベンゾナフチリジンから選択されるが、グアノシンアナログ、アデノシンアナログ、チミジンホモポリマー、ssRNA、CpG-A、PolyG10、およびPolyG3は除く。いくつかの実施形態では、TLR7アゴニストは、非天然型化合物である。TLR7モジュレータの例として、GS-9620、GSK-2245035、イミキモド、レシキモド、DSR-6434、DSP-3025、IMO-4200、MCT-465、MEDI-9197、3M-051、SB-9922、3M-052、Limtop、TMX-30X、TMX-202、RG-7863、RG-7795、ならびに、米国特許出願公開第20160168164号(Jansen)、米国特許出願公開第20150299194号(Roche)、米国特許出願公開第20110098248号(Gilead Sciences)、米国特許出願公開第20100143301号(Gilead Sciences)、および米国特許出願公開第20090047249号(Gilead Sciences)に開示される化合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、TLR7アゴニストは、TNFαまたはIFNα産生を測定するPBMCアッセイによりEC50値が500nM以下である。いくつかの実施形態では、TLR7アゴニストは、TNFαまたはIFNα産生を測定するPBMCアッセイによりEC50値が100nM以下である。いくつかの実施形態では、TLR7アゴニストは、TNFαまたはIFNα産生を測定するPBMCアッセイによりEC50値が50nM以下である。いくつかの実施形態では、TLR7アゴニストは、TNFαまたはIFNα産生を測定するPBMCアッセイによりEC50値が10nM以下である。
【0148】
ある実施形態では、免疫変調成分はTLR8アゴニストである。ある実施形態では、TLR8アゴニストは、ベンザゼピン、イミダゾキノリン、チアゾキノリン、アミノキノリン、アミノキナゾリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジアミン、ピリミジン-2,4-ジアミン、2-アミノイミダゾール、1-アルキル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン、テトラヒドロピリドピリミジン、またはssRNAからなる群から選択される。ある実施形態では、TLR8アゴニストは、ベンザゼピン、イミダゾキノリン、チアゾキノリン、アミノキノリン、アミノキナゾリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジアミン、ピリミジン-2,4-ジアミン、2-アミノイミダゾール、1-アルキル-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン、テトラヒドロピリドピリミジンからなる群から選択されるが、ssRNAは除く。いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、天然型TLR8アゴニストまたはTLR8のベンザゼピンアゴニストを除くTLR8アゴニストである。
【0149】
一実施形態では、本明細書に記載の細胞質体は、免疫細胞の完全な活性化に重要な非抗原特異的シグナルである共刺激リガンドを含む、少なくとも1つの免疫変調成分を発現および/または分泌することができる。共刺激リガンドとして、腫瘍壊死因子(TNF)リガンド、サイトカイン(IL-2、IL-12、1L-15、またはIL21など)、および免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーリガンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。腫瘍壊死因子(TNF)は、全身性炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激する。その初期の役割は、免疫細胞の調節にある。腫瘍壊死因子(TNF)リガンドは、多数の共通の特徴を共有する。大多数のリガンドは、短い細胞質セグメントと比較的長い細胞外領域を含有するII型膜貫通タンパク質として合成される。TNFリガンドとして、神経成長因子(NGF)、CD4OL(CD4OL)/CD154、CD137L/4-1BBL、腫瘍壊死因子α(TNFa)、CD134L/OX4OL/CD252、CD27L/CD70、Fasリガンド(FasL)、CD3OL/CD153、腫瘍壊死因子f3(TNF(3)/リンホトキシン-α(LTa)、リンホトキシン-β(ur(3)、CD257/B細胞活性化因子(BAFF)/Blys/THANK/Ta11-1、グルココルチコイド誘導型TNF受容体リガンド(GITRL)、および腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、LIGHT(TNFSF14)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーは、細胞の認識、結合、または接着のプロセスに関与する細胞表面および可溶性タンパク質の大きな群である。これらタンパク質は、免疫グロブリンと構造的特徴を共有し、これらは免疫グロブリンドメイン(フォールド(fold))を有する。免疫グロブリンスーパーファミリーリガンドとして、ともにCD28に対するリガンドであるCD80とCD86が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
いくつかの実施形態では、免疫変調成分は、アジュバントであってよい。いくつかの実施形態では、アジュバントは、鎮痛性アジュバントを含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、またはリン酸カルシウム水酸化物などの無機化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、鉱油またはパラフィン油を含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、不活性化百日咳菌、ウシ結核菌、またはトキソイド(oxoids)などの細菌性生成物を含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、スクアレンのような非細菌性有機体を含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、洗浄剤(Quil A)などの送達システムの使用を含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、キラヤ、大豆、またはヒロハセネガから得られるサポニンなどの植物サポニンを含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、フロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバントを含むことができる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、落花生油のような食物系油を含むことができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、本明細書に記載の抗ウイルスの組成物などの1または複数の追加の治療薬を含む。いくつかの実施形態では、1または複数の追加の治療薬は、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質(例えば、酵素、抗体、抗原、毒素、サイトカイン、タンパク質ホルモン、成長因子、細胞表面受容体、またはワクチン)、治療用ペプチド(例えば、ペプチドホルモンまたは抗原)、小分子活性薬剤(例えば、ステロイド、ポリケチド、アルカロイド、毒素、抗生物質、抗ウイルス剤、コルヒチン、タキソール、マイトマイシン、またはエムタンシン)、および治療用遺伝子編集因子のうちいずれか1つ、あるいはそれらのあらゆる組合せであってよい。
【0152】
D.医薬組成物、製剤、投与量、および投与経路
本明細書には、細胞質体(例えば、本明細書に記載のあらゆる細胞から得られる細胞質体)を含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、様々な投与経路(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、眼窩後方、腹腔内、リンパ節内)のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容可能な担体(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)を含むことができる。「医薬組成物」という用語は、本明細書に開示される細胞質体と、希釈剤または担体などの他の化学成分との混合物を表す。医薬組成物は、生物体への化合物の投与を容易にすることができる。
【0153】
一般的に、本明細書に開示される方法は、全身投与により細胞質体組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、経口投与により細胞質体組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、腹腔内注射により細胞質体組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、坐薬の形態で細胞質体組成物を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、静脈内(「i.v.」)投与により細胞質体組成物を投与する工程を含む。皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、経皮注射、経皮投与、鼻腔内投与、リンパ内注射、直腸投与、胃内投与、眼内投与、脳室内投与、鞘内投与、または他のあらゆる適切な非経口投与など他の経路により、本明細書に開示される細胞質体組成物を投与してもよいことも、想到される。いくつかの実施形態では、損傷または炎症の部位にさらに近づき局所投与を行うための経路は、全身経路よりも好ましい。治療薬を投与する経路、投与量、時点、および期間は調整されてよい。いくつかの実施形態では、治療薬の投与は、病原体関連疾患または疾病の急性症状と慢性症状のいずれか、あるいは両方の発症の前、または後に行われる。
【0154】
本明細書に開示される疾患もしくは疾病を予防または処置するのに有効な、本明細書に開示される細胞質体の用量と投与量は、疾患または疾病に関連して観察された有益な応答、あるいは疾患または疾病の症状により定められる。有益な応答は、疾患もしくは疾病、または疾患もしくは疾病の症状を予防、緩和、阻止、あるいは治癒することを含む。いくつかの実施形態では、有益な応答は、対象のバイオマーカ、トランスクリプトームのリスクプロファイル、または腸マイクロバイオームの存在、レベル、もしくは活性における測定可能な改善を検出することにより測定されてよい。「改善」は、本明細書で使用するとき、前述の存在、レベル、または活性が、正常な個体(例えば、疾患または疾病を患っていない個体)に観察される存在、レベル、または活性へと移行することを表す。細胞質体組成物が治療上有効でない、あるいは疾患もしくは疾病、または疾患もしくは疾病の症状の十分な緩和を提供していない場合、投与の投与量および/または経路が変更される場合があるか、追加の薬剤が細胞質体組成物とともに対象に投与される場合がある。いくつかの実施形態では、患者が細胞質体組成物のレジメンを開始すると、患者は第2の処置レジメンを中止される(例えば、投与量が漸減される)。
【0155】
本明細書中のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞質体組成物の送達のほか、様々な処置レジメンにおいて本明細書に記載の特定の組成物を使用するために適切な投与と処置レジメンに適している薬学的に許容可能な賦形剤と担体溶液の製剤が開示される。いくつかの実施形態において、治療に有用な組成物それぞれにおける治療用遺伝子発現産物の量は、適切な投与量が化合物のあらゆる所与の用量で取得されるように調合されてよい。溶解度、バイオアベイラビリティ、生体半減期、投与経路、生成物貯蔵寿命のほか、他の薬学的考慮事項などの因子は、かかる医薬製剤を調製する当業者により企図され、そのため、様々な投与量および処置レジメンが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、細胞質体組成物は、眼内、硝子体内、非経口、皮下、静脈内、脳室内、筋肉内、鞘内、経口、腹腔内、経口もしくは経鼻吸入、または直接注射のいずれかにより1または複数の細胞、組織、あるいは器官に送達されるように、適切に製剤化された本明細書に開示される医薬組成物である。
【0156】
いくつかの実施形態では、注射可能な使用に適した細胞質体組成物の剤形として、滅菌注射溶液または分散体の即席調製のための滅菌水溶液または分散体および滅菌粉体が挙げられる。担体は、溶媒和物、あるいは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含有する分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、分散の場合に要求される粒径を維持することでレシチンなどのコーティングを使用すること、および界面活性剤を使用することにより維持される場合がある。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤と抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)により生じる可能性がある。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期間の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムとゼラチンからなる組成物での使用により生じる可能性がある。
【0157】
いくつかの実施形態では、例えば注射用水溶液の投与において、この溶液は、必要な場合に適切に緩衝化されてよく、最初に希釈液が十分な生理食塩水またはグルコースにより等張化される。これら特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内の投与に特に適している。投与量のいくらかの変動は、処置されている対象の状態に応じて必然的に生じる。投与の担当者は、いかなる場合も、個々の対象に対する適切な用量を判定することとなる。さらに、ヒトへの投与において、調製物は、FDA Office of Biologics標準により要求される滅菌性、発熱性、および全体的な安全性、ならびに純度の標準を満たす必要がある。
【0158】
他の医薬組成物は、微生物の活性を阻害する1または複数の防腐剤を任意選択で含む。適切な防腐剤として、メルフェン(merfen)やチオメルサールなどの水銀含有物質、安定した二酸化塩素、および塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジウムなどの第四アンモニウム化合物が挙げられる。
【0159】
一実施形態では、本明細書に記載の懸濁水溶液および分散体は、少なくとも4時間均質な状態を保つ。一実施形態では、懸濁水溶液は、1分未満持続する物理的撹拌により均質な懸濁液へと再懸濁される。また別の実施形態では、均質な分散水溶液を維持するために撹拌は必要とされない。
【0160】
経鼻投与用のエアロゾル製剤は、全体として滴剤またはスプレーに入れて鼻路に投与されるように設計された水溶液である。鼻溶液は、全体として等張であり、約5.5~約6.5のpHを維持するべくわずかに緩衝されるが、この範囲外のpH値も付加的に使用可能であるという点で、鼻の分泌物と同様の可能性がある。抗菌薬または防腐剤も、製剤に含めることができる。
【0161】
吸入用のエアロゾル製剤、および吸入薬は、薬剤または薬剤同士の組合せが、経鼻または経口の呼吸経路により投与されると、対象の呼吸樹へと運ばれるように設計することができる。吸入溶液は、例えば噴霧器により投与可能である。微粉化薬物または液体薬物を含む吸入剤または吹送剤は、例えば分配を補助するために、噴射剤中の薬剤または薬剤同士の組合せの溶液あるいは懸濁液の医薬用エアロゾルとして、呼吸器系に送達可能である。噴射剤は、ハロゲン化炭素、例えばフッ素化塩素化炭化水素、ヒドロクロロフルオロカーボン、およびヒドロクロロカーボンなどのフルオロカーボンのほか、炭化水素および炭化水素エーテルを含む液化ガスであってよい。
【0162】
ハロゲン化炭素噴射剤として、水素がすべてフッ素と置き換えられるフルオロカーボン噴射剤、水素がすべて塩素および少なくとも1つのフッ素と置き換えられるクロロフルオロカーボン噴射剤、水素含有フルオロカーボン噴射剤、ならびに水素含有クロロフルオロカーボン噴射剤を挙げることができる。有用な炭化水素噴射剤は、例えば、プロパン、イソブタン、n-ブタン、ペンタン、イソペンタン、およびネオペンタンを含む。炭化水素の配合物も、噴射剤として使用可能である。エーテル噴霧剤は、例えばジメチルエーテルのほか、エーテルも含む。エアロゾル製剤はまた、1より多くの噴射剤を含むことができる。例えば、エアロゾル製剤は、2以上のフルオロカーボンなど、同じクラスから1より多くの噴射剤、あるいはフッ化炭化水素や炭化水素などの様々なクラスからの1より多く、2より多く、および3より多くの噴射剤を含むことができる。本開示の医薬組成物はまた、圧縮ガス、例えば二酸化炭素、亜酸化窒素、または窒素などの不活性ガスで分注することができる。
【0163】
エアロゾル製剤はまた、他の成分、例えばエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールのほか、界面活性剤、または油や洗浄剤などの他の成分を含むこともできる。これらの成分は、製剤を安定させる、および/またはバルブ要素を潤滑させる役割を果たすことができる。
【0164】
エアロゾル製剤は、圧力下で包装することができるとともに、溶液、懸濁液、エマルジョン、粉末、および半固形調製物を使用してエアロゾルとして製剤化することができる。例えば、エアロゾル製剤溶液は、(実質的に)純粋な噴射剤に入れて、または噴射剤と溶媒の混合物として、輸送体、担体、またはイオンチャネル阻害剤などの薬剤の溶液を含むことができる。溶媒は、薬剤を溶解するために、および/または噴射剤の蒸発を遅らせるために使用可能である。溶媒は、例えば水、エタノール、およびグリコールを含むことができる。あらゆる適切な溶媒の組合せが使用可能であり、任意選択で防腐剤、抗酸化剤、および/または他のエアロゾル成分と組み合わされる。
【0165】
エアロゾル製剤は、分散液または懸濁液であってよい。エアロゾル製剤懸濁液は、薬剤または薬剤同士の組合せ、例えば輸送体、担体、イオンチャネル阻害剤、および分散剤からなる懸濁液を含むことができる。分散剤は、例えばソルビタントリオレアート、オレイルアルコール、オレイン酸、レシチン、およびトウモロコシ油を含むことができる。エアロゾル製剤懸濁液は、潤滑剤、防腐剤、抗酸化剤、および/または他のエアロゾル成分を含むことができる。
【0166】
エアロゾル製剤は、同様にエマルジョンとして製剤化することができる。エアロゾル製剤エマルジョンは、例えばエタノールなどのアルコール、界面活性剤、水、および噴射剤のほか、薬剤または薬剤同士の組合せ、例えば輸送体、担体、イオンチャネルを含むことができる。使用される界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性であってよい。エアロゾル製剤エマルジョンの一例は、例えばエタノール、界面活性剤、水、および噴射剤を含む。エアロゾル製剤エマルジョンの別の例は、例えば植物油、モノステアリン酸グリセリル、およびプロパンを含む。
【0167】
本明細書には、本明細書に開示される細胞質体組成物を含む滅菌注射溶液であって、適切な溶媒に必要な量で本明細書に開示される細胞質体組成物を、上記に列挙した他の成分のいくつかに組み込み、必要に応じてその後に滅菌濾過を行うことにより調製される滅菌注射溶液が開示される。一般に、分散剤は、塩基性分散媒と、上記に列挙したものから他の必要な成分とを含有する滅菌ビヒクルに、滅菌された様々な有効成分を組み込むことにより調製される。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および冷凍乾燥技法であり、この技法により、以前に滅菌濾過された溶液の追加の所望成分を加えた有効成分の粉末が得られる。
【0168】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、中性または塩の形態でも製剤化されてよい。薬学的に許容可能な塩として、例えば塩酸またはリン酸などの無機酸、あるいは酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸のような有機酸で形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、あるいは水酸化第2鉄などの無機塩基と、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得ることもできる。製剤化に際して、溶液は、投与製剤に適合する形で、かつ治療上有効な量で投与される。製剤は、注射溶液や薬物放出カプセル剤などの様々な投与形態で容易に投与される。
【0169】
対象に投与される適切な用量および投与量は、特定の細胞質体組成物、疾患状態とその重症度、処置が必要とされる対象のアイデンティティ(例えば体重、性別、年齢)などの要因により判定されるとともに、例えば投与される特定の薬剤、投与経路、処置される疾病、および処置される対象または宿主を含む、症例を取り囲む特定の状況に応じて判定することができる。
【0170】
細胞質体組成物の量、およびかかる組成物の投与回数は、本発明による教示の利益を得る当業者の考え得る範囲内にある。しかし、治療上有効量の開示された組成物の投与は、かかる処置を受ける患者に治療利益をもたらすほど十分な数の細胞質体の単回注射など、単回投与により達成され得る可能性が高い。
【0171】
代替的に、いくつかの状況では、比較的短期間または比較的長期間のいずれかにわたり、細胞質体組成物の複数回または連続投与を提供することが望ましい場合があり、この投与は、かかる組成物の投与を監視する医療従事者が判定してもよい。例えば、哺乳動物に投与される細胞質体の数は、約10、10、10、1010、1011、1012、1013、またはそれよりもさらに多くの桁の細胞質体であってよく、この細胞質体は、処置されている特定の疾患または障害の治療を達成するのに必要とされる場合があるように一回量として、または2回以上の投与に分けて投与される。実際、ある実施形態では、2つ以上の異なる細胞質体組成物を単独で、または1もしくは複数の他の治療薬と組み合わせて投与し、特定の治療レジメンの所望の効果を達成することが、望ましい場合がある。様々な実施形態では、1日量と単位用量は、使用される細胞質体組成物の活性、処置される疾患または疾病、投与の様式、個々の対象の要件、処置されている疾患または疾病の重症度、および主治医の判断を含むがこれらに限定されない多くの変数に応じて変更される。
【0172】
いくつかの実施形態では、細胞質体組成物の投与は、1時間に1回、2時間に1回、3時間に1回、4時間に1回、5時間に1回、6時間に1回、7時間に1回、8時間に1回、9時間に1回、10時間に1回、11時間に1回、12時間に1回、13時間に1回、14時間に1回、15時間に1回、16時間に1回、17時間に1回、18時間に1回、19時間に1回、20時間に1回、21時間に1回、22時間に1回、23時間に1回、1日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、7日に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、14日に1回、15日に1回、1か月に1回、2か月に1回、3か月に1回、4か月に1回、5か月に1回、6か月に1回、7か月に1回、8か月に1回、9か月に1回、10か月に1回、11か月に1回、1年に1回、2年に1回、3年に1回、4年に1回、または5年に1回、あるいは10年に1回である。有効な投与量範囲は、対象の処置に対する応答に基づき調整されてよい。いくつかの投与経路は、他の経路よりも高濃度の有効量の治療薬を必要とする。
【0173】
本開示の利点を考慮すると予想外ではあるが、患者の状態が改善されないある実施形態では、患者の疾患もしくは疾病の症状を改善、またはその他の方法で抑制もしくは制限するために、医師の裁量により細胞質体組成物の投与は、慢性的に、つまり、患者の生存期間全体を含む長期間にわたり投与される。患者の状態が改善するある実施形態では、投与される細胞質体組成物の用量は、一定期間にわたり一時的に減らされるか、一時的に停止されてもよい(すなわち「休薬期間」)。特定の実施形態では、休薬期間の長さは、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、または28日以上を含む、2日から1年の間である。休薬期間中の用量減少は、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む、ほんの一例として10%~100%である。ある実施形態では、投与される薬物の用量は、一定期間にわたり一時的に減らされるか、または一時的に停止されてもよい(すなわち「薬物転用」)。特定の実施形態では、薬物転用の長さは、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、または28日間以上を含む、2日間~1年間の間である。薬物転用中の投与量の減少は、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む、ほんの一例として10%~100%である。適切な期間の経過後、任意選択で正常な投薬スケジュールに戻される。
【0174】
いくつかの実施形態では、一旦患者の状態が改善すると、必要に応じて維持量が投与される。その後、特定の実施形態では、投与の用量もしくは頻度、またはその両方は、症状に応じて、疾患、障害、または疾病の改善が保持される程度にまで減少される。しかし、ある実施形態では、患者は、症状の再発後に長期間にわたり間欠的処置を必要とする。
【0175】
こうした治療レジメンの毒性と治療効果は、LD50とED50の判定を含むがこれらに限定されない、細胞培養物または実験動物における標準的な製薬手順により判定される。毒性と治療効果との用量比が治療指数であり、これはLD50とED50との比として表される。ある実施形態では、細胞培養アッセイと動物試験から得たデータは、ヒトを含む哺乳動物に使用するための治療上有効な1日量の範囲および/または治療上有効な単位用量を製剤化するのに使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細胞質体組成物の1日量は、毒性が最小限のED50を含む血中濃度の範囲内にある。ある実施形態では、1日量の範囲および/または単位用量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動する。
【0176】
E.細胞質体を捕捉する病原体
本明細書中のいくつかの実施形態では、病原体が細胞質体を感染させるのを許容し、病原体が細胞質体内で伝播または複製するのを防止することにより、病原体を捕捉するように操作された細胞質体が開示される。細胞質体のライフスパンは制御可能で有限であるため、細胞質体は死滅時に中に病原体を捕捉して死滅すると、病原体を死滅させることが可能となる。細胞質体の死滅は、アポトーシスまたはオートファジーなどを介する自然過程であってよい。病原体を捕捉するように操作された細胞質体は、病原体による細胞質体の感染を促進させる宿主受容体などの病原体認識部分を発現するように操作可能である。加えて、または代替的に、細胞質体は、対象の細胞中で病原体による感染症を処置または予防するのに治療上有効である本明細書に記載の活性薬剤を発現するか、これを含有するように操作することができる。かかる活性薬剤は、例えば、細胞質体から分泌されると、細胞外空間中の病原体と宿主細胞との結合を機能的に遮断する中和抗体であってよい。SARS-CoV-2による感染症を予防する場合、中和抗体は、感染症予防のために宿主細胞上で発現されるSARS-CoV-2スパイクタンパク質とヒトアンジオテンシン転換酵素2(ACE2)との結合を遮断する。
【0177】
病原体は、本明細書に開示されるものなど、複製または伝播のために核遺伝子情報を少なくとも部分的に必要とする本明細書に記載の細胞を感染させることが可能なあらゆる細菌、ウイルス、または真菌であってよい。感染した細胞質体は、宿主細胞の核に複製段階がある病原体の複製または伝播に必要な核成分を欠いており、こうして対象における病原体による感染症の予防または処置を減少させる。
【0178】
SARS-CoV-2による感染症を低減または予防する場合、細胞質体は、SARS-CoV-2に対する病原体認識部分(例えばACE2)を発現するように操作され、細胞質体がスパイクタンパク質およびACE2結合を介してSARS-CoV-2に感染すると、細胞質体は、マクロファージ食作用のためにマクロファージを自然に動員するか、または動員を行うように操作することができる。図4に見られるように、非限定的な例として、感染した細胞質体の食作用は、SARS-CoV-2に対する抗体を生成するために、ヘルパーT細胞およびB細胞などの免疫細胞を活性化することができる。いくつかの実施形態では、感染した細胞質体の食作用は、ウイルス感染を処置するためにT細胞を活性化することができる。
【0179】
本明細書に記載の細胞質体は、いくつかの実施形態では、病原体認識部分を発現、および場合により表示するように操作される。いくつかの実施形態では、病原体認識部分は、病原体と宿主細胞との結合を促進するのに十分な宿主受容体(目的の病原体における同族受容体)、またはその部分である。病原体認識部分は、細胞質体の表面上で細胞質体により発現される場合がある。いくつかの実施形態では、病原体認識部分は、細胞外環境に少なくとも一部がさらされるタンパク質から得られる。いくつかの実施形態では、病原体認識部分は、細胞表面受容体または膜貫通タンパク質をコードするポリペプチドから得られる。いくつかの実施形態では、病原体認識部分は、ウイルス感染中にウイルスタンパク質により結合されるタンパク質から得られる。例えば、病原体認識部分は、ウイルス感染中にSARS-CoV-2のスパイクタンパク質により結合されるアンジオテンシンI転換酵素2(ACE2)から得られてよい。いくつかの実施形態では、病原体認識部分は、本明細書に記載のウイルスのいずれか1つにより認識かつ制限可能である細胞表面受容体または膜貫通タンパク質から得られる。いくつかの実施形態では、病原体認識部分は、本明細書に記載のコロナウイルスのうちいずれか1つにより認識かつ結合可能な細胞表面受容体または膜貫通タンパク質から得られる。いくつかの実施形態では、病原体認識部分は、糖である。いくつかの実施形態では、病原体認識部分は、ポリペプチドである。コロナウイルスにより認識される非限定的な受容体として、ACE2、アラニンアミノペプチダーゼ(ANPEP)、癌胎児抗原関連細胞接着分子(CEACAM1)、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)、または糖が挙げられる。
【0180】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、ヒトアンジオテンシン転換酵素2(ACE2)またはその部分を発現するように操作され、これらは、例えばSARS-CoV、SARS-CoV-2、NL63などの、ACE2に特異的なコロナウイルスにより認識かつ結合可能である。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞質体の表面上にACE2またはその部分を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、完全長のACE2を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、ACE2のフラグメントを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、ACE2の部分は、ACE2ポリペプチドのアミノ酸配列の約5~約805の間のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ACE2の部分を含む病原体認識部分は、細胞外ドメイン、または細胞の外部に発現されるACE2の部分から得られる。いくつかの実施形態では、ACE2の部分は、ACE2のアミノ酸配列のN末端部分を含む。いくつかの実施形態では、ACE2の部分は、ACE2のアミノ酸配列のC末端部分を含む。いくつかの実施形態では、ACE2の部分は、約5個のアミノ酸~約10個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約400個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約5個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約15個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約400個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約10個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約20個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約400個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約15個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約25個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約400個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約20個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約50個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約400個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約25個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約100個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約400個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約50個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約200個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約400個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約100個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約400個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約200個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約400個のアミノ酸~約500個のアミノ酸、約400個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約400個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約600個のアミノ酸、約500個のアミノ酸~約805個のアミノ酸、または約600個のアミノ酸~約805個のアミノ酸の間を含む、ACE2ポリペプチドのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ACE2の部分は、ACE2ポリペプチドのアミノ酸配列の、約5個のアミノ酸、約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約400個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約600個のアミノ酸、または約805個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ACE2の部分は、ACE2ポリペプチドのアミノ酸配列の、少なくとも約5個のアミノ酸、約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約400個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、または約600個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ACE2の部分は、ACE2ポリペプチドのアミノ酸配列の、多くとも約10個のアミノ酸、約15個のアミノ酸、約20個のアミノ酸、約25個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、約100個のアミノ酸、約200個のアミノ酸、約400個のアミノ酸、約500個のアミノ酸、約600個のアミノ酸、または約805個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ACE2はヒトACE2(huACE2)である。いくつかの実施形態では、huACE2のアミノ酸配列は、配列番号12に提供される。
【0181】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、配列番号12に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である異種ポリペプチドを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、配列番号12のフラグメントに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上同一である異種ポリペプチドを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、配列番号12に対して100%同一である異種ポリペプチドを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、配列番号12のフラグメントに対して100%同一である異種ポリペプチドを発現するように操作される。
【0182】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、内因的レベルでACE2を発現する細胞と比較してより多くのACE2を発現するように操作可能であるとともに、SARS-CoV-2に感染させることが可能である。いくつかの実施形態では、細胞質体は、内因的レベルでACE2を発現する細胞と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上のACE2を発現することができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、内因的レベルでACEを発現する細胞と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5000倍、10000倍以上のACE2を発現可能であるとともに、SARS-CoV-2に感染させることが可能である。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞の表面上に内因的レベルでACE2を発現する細胞と比較して、細胞質体の表面上により多くのACE2を発現するように操作することができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞の表面上に内因的なレベルでACE2を発現する細胞と比較して、表面または細胞質体上に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上のACE2を発現することができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細胞の表面上に内因的なレベルでACE2を発現する細胞と比較して、表面または細胞質体上に少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5000倍、10000倍以上のACE2を発現することができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、ACE2を発現する細胞質体のウイルス感染価は、対照細胞よりも高くてよい。本文脈での「対照細胞」は、SARS-CoV-2に感染させることが可能な天然型細胞(例えば、自然にACE2を発現する)であってよい。いくつかの実施形態では、対照細胞は、細胞質体と同じ細胞型である。いくつかの実施形態では、対照細胞は、ACE2を発現しないという点を除くその他の点で細胞質体と同一である。ウイルス感染価は、一般に知られるアッセイにより測定かつ判定することができる。ウイルス感染価の例示的な測定として、ウイルスプラークアッセイ、蛍光焦点アッセイ(FFA)、およびエンドポイント希釈アッセイ(TCID50)を挙げることができる。これらのアッセイはそれぞれ、ウイルス感染価を測定するために細胞質体および/または細胞に付加される連続ウイルス希釈に左右される可能性がある。ウイルス感染価を判定するための他の例示的な測定として、一連の細胞質体および/または細胞を感染させるのに必要なウイルスのゲノムまたは粒子の量を定量化するためのqPCRあるいはELISAを挙げることができる。いくつかの実施形態では、ACE2を発現する細胞質体のウイルス感染価は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上の可能性がある。いくつかの実施形態では、ACE2を発現する細胞質体のウイルス感染価は、基準細胞より少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5000倍、または10000倍以上高い可能性がある。
【0184】
本明細書中のいくつかの実施形態では、ホーミングタンパク質または受容体などの少なくとも1つの標的化部分を発現するように操作された細胞質体が記載される。いくつかの実施形態では、標的化部分は細胞質体により分泌される。いくつかの実施形態では、標的化部分は、本明細書に記載のケモカイン受容体のリガンドである。いくつかの実施形態では、標的化部分は、本明細書に記載のサイトカインである。いくつかの実施形態では、標的化部分はホーミング受容体である。いくつかの実施形態では、標的化部分は、細胞質体の表面に発現される。いくつかの実施形態では、標的化部分は、本明細書に記載のケモカイン受容体である。いくつかの実施形態では、標的化部分は、本明細書に記載のサイトカインのうちいずれか1つに対する受容体である。
【0185】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、リンパ組織中の1または複数の細胞に発現される1または複数のリガンドに特異的な可能性があり、リンパ組織中の細胞は、内皮細胞、リンパ球、マクロファージ、または細網細胞、あるいはそれらの組合せを含むことができる。分泌された標的化部分の非限定的な例として、SDF1α、CCL2、CCL3、CCL5、CCL8、CCL1、CXCL9、CXCL10、CCL11、CXCL12、またはそれらの組合せを挙げることができる。いくつかの実施形態では、標的化部分は、細胞質体の表面に発現される。細胞質体の表面に発現される標的化部分の非限定的な例として、CXCR4、CCR2、またはPSGL-1が挙げられる。細胞表面に発現される場合がある細胞表面タンパク質の非限定的な例として、CXCR4、CCR2、CCR1、CCR5、CXCR7、CXCR2、CXCR1、C-X-Cケモカイン受容体3型、ロイコシアリン、CD44抗原、C-Cケモカイン受容体7型、L-セレクチン、リンパ球機能関連抗原1、または最晩期抗原-4、あるいはそれらの組合せを挙げることができる。
【0186】
いくつかの実施形態では、標的化部分(例えば、ホーミングタンパク質またはホーミング受容体)を発現する細胞質体は、本明細書に開示される活性薬剤も発現する。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、本明細書に記載される追加の外因性薬剤である。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、本明細書に記載の病原体認識部分である。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、以下:病原体が発現するエピトープ、病原体に関連する微小環境に関連するエピトープ、または病原体が放出する生体分子に関連するエピトープに結合する抗体または単一ドメイン抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗体または単一ドメイン抗体のエピトープへの結合により、病原体に対する治療特性またはワクチン接種特性が付与される。いくつかの実施形態では、抗体または単一ドメイン抗体のエピトープへの結合は、免疫細胞を動員して免疫応答を活性化させ、病原体に対する治療特性を付与する。
【0187】
II.処置と予防の方法
本明細書には、処置または予防を必要とする対象に、本開示の細胞質体またはこの細胞質体を含有する医薬組成物を投与することにより、病原体関連の疾患または疾病を処置あるいは予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、細胞質体およびその医薬組成物は、本明細書に記載の疾患または疾病を処置するのに適している。このような疾患または疾病は、場合により、本明細書に記載の病原体による感染症により(少なくとも部分的に)生じる場合がある。いくつかの実施形態では、疾患または疾病は、例えば腫瘍溶解性ウイルスによる感染症などにより生じる癌である。
【0188】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞質体またはこの細胞質体を含有する医薬組成物を対象に全身投与する工程を含む。
【0189】
本明細書中のいくつかの実施形態では、処置を必要とする対象に細胞質体、またはこの細胞質体を含有する医薬組成物を投与することにより癌を処置する方法が開示される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、抗癌活性薬剤をコードする外因性核酸を含む。いくつかの実施形態では、抗癌活性薬剤は、腫瘍溶解性ウイルスに対するワクチンである。いくつかの実施形態では、細胞質体は、癌細胞に特異的な抗体または小分子を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、抗体は中和抗体の場合があり、癌細胞を標的とし、続いて適応免疫系を活性化させて癌細胞を中和する場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディ)の場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体薬物複合体(ADC)を形成するために細胞障害性薬物などの薬物にコンジュゲートされる場合がある。いくつかの実施形態では、細胞質体は、癌細胞と直接接触することにより治療特性を付与する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、癌細胞への免疫応答(例えば免疫細胞)を動員して活性化することにより、治療特性を付与する。
【0190】
本明細書に記載の病原体に対するワクチンを対象に接種させる方法も開示される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、病原体ワクチンとして使用するために病原体抗原を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、病原体は、表3~表6から選択される病原体のうちいずれか1つであってよい。いくつかの実施形態では、細胞質体は、表3~表6から選択される病原体のうちいずれか1つの抗原を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、抗原は、配列番号1、3~7、151~154、251~260、401~447、551~562、651~660、751~761、851~859、951~984、1051~1057、または1151~1153のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原は、配列番号2、8、101~104、201~209、301~347、501~512、601~610、701~711、801~809、901~934、1001~1007、または1101~1103のうち1または複数に対して少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上同一であるアミノ酸配列からコードされる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、ウイルスワクチンとして使用するためにウイルス抗原を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、細菌ワクチンとして使用するために細菌抗原を発現するように操作される。
【0191】
本明細書には、対象の病原体感染症を処置する方法も記載される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、処置を必要とする対象の病原体を減少するのに有効である、病原体に特異的な抗体または小分子を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、抗体は、病原体を標的とし、続いて適応免疫系を活性化させて病原体を中和する場合がある中和抗体であってよい。いくつかの実施形態では、抗体は単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディ)であってよい。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体薬物複合体(ADC)を形成するために細胞障害性薬物などの薬物にコンジュゲートすることができる。いくつかの実施形態では、細胞質体は、病原体と直接接触することにより治療特性を付与する。いくつかの実施形態では、細胞質体は、病原体への免疫応答(例えば免疫細胞)を動員して活性化することにより、治療特性を付与する。
【0192】
本明細書中のいくつかの実施形態では、細胞質体またはこの細胞質体を含有する医薬組成物を対象に投与することにより、対象における病原体による感染症を処置する方法が開示され、細胞質体は、対象のあらゆる組織(例えば、血液、筋肉、またはリンパ)において病原体を捕捉し、対象における病原体の伝播を防止し、および任意選択で、例えば食作用などにより対象から病原体を取り除くように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、病原体関連の疾患または疾病を処置するのに有効な治療薬を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、癌を処置するのに有効な治療薬を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、上記方法は、対象に1または複数の追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、1または複数の追加の治療薬は、以下からなる群から選択される:細胞療法薬、小分子、免疫療法薬、化学療法薬、放射線療法薬、遺伝子療法薬、および手術。追加の治療薬は、本開示の細胞質体と同時に対象に投与されてよい。追加の治療薬は、本開示の細胞質体よりも前または後に投与されてよい。
【0193】
A.疾患または疾病
本明細書に開示される病原体関連の疾患または疾病として、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、および原虫感染症、ならびに本明細書に開示される感染症に関連する疾患または疾病が挙げられる。いくつかの実施形態では、病原体は、表3~表6に列記される病原体のうちいずれか1つから選択されてよい。本明細書に記載の組成物およびこの組成物を利用する方法により処置または予防され得る感染症の非限定的な例として、アシネトバクター感染症、アクチノミセス症、アフリカ睡眠病(アフリカトリバノソーマ症)、AIDS(後天性免疫不全症候群)、アメーバ症、アナプラズマ症、アンギオストロンギルス症、アニキサス症、炭疽、溶血性アルカノバクテリア感染症、アルゼンチン出血熱、回虫症、アスペルギルス症、アストロウイルス感染症、バベシア病、バチルス・セレウス感染症、細菌性肺炎、細菌性膣疾患、バクテロイデス感染症、バランチジウム症、バルトネラ症、Baylisascaris感染症、BKウイルス感染症、黒色砂毛症、ブラストシスティス症、ブラストミセス症、ポリビア出血熱、ボツリヌス症(および乳児ボツリヌス症)、ブラジル出血熱、ブルセラ症、腺ペスト、バークホルデリア感染症、ブルーリ潰瘍、カリチウイルス感染症(ノロウイルスおよびサポウイルス)、カンピロバクター症、カンジダ症(モニリア症;鵞口瘡)、毛頭虫症、キャリオン病、猫ひっかき病、蜂巣炎、シャガス病(アメリカトリパノソーマ症)、軟性下疳、水痘、チクングンヤ熱、クラミジア症、クラミドフィラ・ニューモニエc感染症(台湾急性呼吸器因子すなわちTWAR)、コレラ、黒色分芽菌症、ツボカビ症、肝吸虫症、クロストリジウム・ディフィシレ大腸炎、コクシジオイデス症、コロラドダニ熱(CTF)、風邪(急性ウイルス性鼻咽頭炎;急性鼻感冒)、コロナウイルス感染症、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)、クリプトコックス症、クリプトスポリジウム症、皮膚幼虫移行症(CLM)、サイクロスポーラ症、嚢虫症、サイトメガロウイルス感染症、デング熱、デスモデスムス感染症、二核アメーバ症、ジフテリア、裂頭条虫症、メジナ虫症、エボラ出血熱、エキノコックス症、エーリキア症、蟯虫症(蟯虫感染)、エンテロコッカス感染症、エンテロウイルス感染症、発疹チフス、伝染性紅斑(第5病)、突発性発疹(第6病)、肝蛭症、肥大吸虫症、致死性家族性不眠症(FFI)、フィラリア症、ウェルシュ菌による食中毒、自由生活性アメーバ感染症、フゾバクテリウム感染症、ガス壊疽(クロストリジウム性筋壊死)、ジオトリクム症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、ジアルジア症、鼻疽、顎口虫症、淋病、鼠径肉芽腫(ドノヴァン症)、A群レンサ球菌感染症、B群レンサ球菌感染症、ヘモフィルス感染症、手足口病(HFMD)、ハンタウイルス肺症候群(HPS)、ハートランドウイルス疾患、ヘリコバクター・ピロリ感染症、溶血尿毒症症候群(HUS)、腎症候性出血熱(HFRS)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、単純ヘルペス、ヒストプラズマ症、鉤虫感染症、ヒトボカウイルス感染症、ヒト顆粒球性エールリヒア症(Human ewingii ehrlichiosis)、ヒト顆粒白血球アナプラズマ症(HGA)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症、ヒト単球性エールリヒア症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、ヒトパラインフルエンザウイルス感染症、膜様条虫症、エプスタイン・バーウイルス感染性単核症(モノ)、インフルエンザ(インフルエンザ(flu))、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、インフルエンザウイルスD、インフルエンザウイルスpr8、イソスポーラ症、川崎病、角膜炎、キンゲラ・キンゲ感染症、クールー病、ラッサ熱、レジオネラ症(レジオネラ症(Legionnaires’disease))、レジオネラ症(ポンティアック熱)、リーシュマニア症、ハンセン病、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病(ライムボレリア症)、リンパ管フィラリア症(象皮病)、リンパ球性脈絡髄膜炎、マラリア症、マールブルク出血熱(MHF)、麻疹、中東呼吸器症候群(MERS)、類鼻疽(ホイットモア病)、脳膜炎、髄膜炎菌性疾患、メタゴニムス症、微胞子虫症、伝染性軟属腫(MC)、サル痘、耳下腺炎、発疹熱(地方性発疹チフス)、マイコプラズマ肺炎、マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症、足菌腫(明確化(disambiguation))、ハエウジ病、新生児結膜炎(新生児眼炎)、ノロウイルス(小児および乳児)、(新型)変異クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD、nvCJD)、ノカルジア症、オンコセルカ症(河川盲目症)、オピストルキス症、パラコクシジオイデス症(南米ブラストミセス症)、肺吸虫症、パスツレラ症、アタマジラミ寄生虫(アタマジラミ)、コロモジラミ寄生虫(ヒトジラミ)、ケジラミ寄生症(陰部シラミ、ケジラミ)、骨盤炎症性疾患(PID)、百日咳(百日咳(Whooping cough))、ペスト、肺炎球菌感染症、ニューモシスティス性肺炎(PCP)、肺炎、小児麻痺、プレボテラ感染症、初代アメーバ髄膜脳炎(PAM)、進行性多病巣性白質脳症、オウム病、Q熱、狂犬病、回帰熱、呼吸合包体ウイルス感染症、リノスポリジウム症、ライノウイルス感染症、リケッチア感染症、リケッチア痘、リフトバレー熱(RVF)、ロッキー山斑点熱(RMSF)、ロタウイルス感染症、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、風疹、サルモネラ症、SARS(重症急性呼吸器症候群)、疥癬、猩紅熱、住血吸虫症、敗血症、シゲラ症(細菌性赤痢)、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、天然痘(痘瘡)、スポロトリクム症、ブドウ球菌食中毒、ブドウ球菌感染症、糞線虫症、亜急性硬化性全脳炎、梅毒、条虫症、テタヌス(破傷風)、白癬性毛瘡(床屋疹)、頭部白癬(頭皮白癬)、体部白癬(身体白癬)、股部白癬(陰金)、手白癬(手の白癬)、黒色癬、足部白癬(足白癬)、爪白癬(爪真菌症)、癜風(でん風)、トキソカラ症(眼幼虫移行症(OLM))、トキソカラ症(内臓幼虫移行症(VLM))、トキソプラズマ症、トラコーマ、旋毛虫症、トリコモナス症、鞭虫症(鞭虫感染症)、結核、野兎病、腸チフス、発疹チフス、ウレアプラズマ・ウレアリチカム感染症、コクシジオイデス症、ベネズエラウマ脳炎、ベネズエラ出血熱、ビブリオ・バルニフィカス感染症、ビブリオ・パラヘモリチカス腸炎、ウイルス性肺炎、西ナイル熱、白色砂毛症(チネア・ブランカ(Tinea blanca))、エルシニア・シュードツベルクローシス感染症、エルシニア症、黄熱病、ジカ熱、および接合菌症が挙げられる場合がある。
【0194】
コロナウイルス感染症は、αコロナウイルスまたはβコロナウイルスによる感染症の場合がある。αコロナウイルスの非限定的な例として、229EやNL63が挙げられる。βコロナウイルスの非限定的な例として、OC43、HKU1、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、または中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスが挙げられる。いくつかの実施形態では、SARSコロナウイルスは、SARS-CoV、SARS-CoV-2、またはそれらの変異体である。いくつかの実施形態では、MERSコロナウイルスは、MERS-CoVまたはその変異体である。いくつかの実施形態では、SARSコロナウイルスは、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)などの疾患または疾病を引き起こす。
【0195】
本明細書に記載のコロナウイルスは、いくつかの実施形態では、配列番号1および3~7のいずれか1つに提供される核酸配列によりコードされる。いくつかの実施形態では、コロナウイルス(またはその変異体)は、配列番号1および3~7のいずれか1つに対して少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である核酸配列によりコードされる。
【0196】
いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、配列番号2または8に提供されるアミノ酸配列によりコードされるスパイクタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Sタンパク質は、配列番号2または8に対して少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列によりコードされる。
【0197】
いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、配列番号9に提供されるアミノ酸配列によりコードされるヌクレオカプシド(N)タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Nタンパク質は、配列番号9に対して少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列によりコードされる。
【0198】
いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、配列番号10に提供されるアミノ酸配列によりコードされる膜(M)タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Mタンパク質は、配列番号10に対して少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列によりコードされる。
【0199】
いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、配列番号11に提供されるアミノ酸配列によりコードされるエンベロープ(E)タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Eタンパク質は、配列番号11に対して少なくとも約70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列によりコードされる。
【0200】
B.対象
いくつかの実施形態では、対象は、処置を必要としている、処置を必要としていると判定される、または処置を必要としている疑いがある。本明細書で使用するとき、「対象」という用語はあらゆる生物体を表す。例えば、対象は、哺乳動物、両生類、魚類、爬虫類、無脊椎動物、鳥類、植物、古細菌、真菌、または細菌の可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)、イヌ(例えば、イヌ(dog))、ネコ(例えば、ネコ(cat))、ウマ(例えば、ウマ(horse))、ヒツジ、ウシ、ブタ、非ヒト霊長類、例えば、サル(例えば猿)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトであってよい。本明細書に記載の方法のうちいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、0~120歳の間(例えば、出生時~1か月の間(例えば新生児)、1か月~2歳の間(例えば乳児)、2歳~12歳の間(例えば小児)、12歳~16歳の間(例えば青年)、1歳~120歳の間。1~115歳の間、1~110歳の間、1~105歳の間、1~100歳の間、1~95歳の間、1~90歳の間、1~85歳の間、1~80歳の間、1~75歳の間、1~70歳の間、1~65歳の間、1~60歳の間、1~50歳の間、1~40歳の間、1~30歳の間、1~25歳の間、1~20歳の間、1~15歳の間、1~10歳の間、5~120歳の間、5~110歳の間、5~100歳の間、5~90歳の間、5~60歳の間、5~50歳の間、5~40歳の間、5~30歳の間、5~20歳の間、5~10歳の間、10~120歳の間、10~110歳の間、10~100歳の間、10~90歳の間、10~80歳の間、10~60歳の間、10~50歳の間、10~40歳の間、10~30歳の間、10~20歳の間、20~120歳の間、20~110歳の間、20~100歳の間、20~90歳の間、20~70歳の間、20~60歳の間、20~50歳の間、20~40歳の間、20~30歳の間、30~120歳の間、30~110歳の間、30~100歳の間、30~90歳の間、30~70歳の間、30~60歳の間、30~50歳の間、40~120歳の間、40~110歳の間、40~100歳の間、40~90歳の間、40~80歳の間、40~60歳の間、40~50歳の間、50~120歳の間、50~110歳の間、50~100歳の間、50~90歳の間、50~80歳の間、50~70歳の間、50~60歳の間、60~120歳の間、60~110歳の間、60~100歳の間、60~90歳の間、60~80歳の間、60~70歳の間、70~120歳の間、70~110歳の間、70~100歳の間、70~90歳の間、70~80歳の間、80~120歳の間、80~110歳の間、80~100歳の間、80~90歳の間、90~120歳の間、90~110歳の間、90~100歳の間、100~120歳の間、または110~120歳の間)である。本明細書に記載の方法のうちいずれかのいくつかの実施形態では、対象はまだ生まれていない、例えば子宮内にいる。本明細書に記載の方法のうちいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1か月齢(例えば、少なくとも2歳、少なくとも12歳、少なくとも16歳、または少なくとも18歳)である。本明細書に記載の方法のうちいずれかは、対象、例えば罹患した対象(すなわち、疾患を患う、例えば疾患を患っていると診断された対象)、または無症状の対象(すなわち、臨床的に健康と提示される、すなわち疾患を患うと診断されない対象)を処置するために使用可能である。本明細書で使用するとき、処置は、疾患のリスクのある対象の疾患の徴候もしくは症状の発生を低減、または徴候もしくは症状を防止(すなわちそのリスクを低減)することを意味する「予防的処置」、および疾患と診断された対象において疾患の徴候または症状を低減、疾患の進行を低減、疾患の重症度を低減、再発を低減することを意味する「治療的処置」を含む。本明細書で使用するとき、「処置する」という用語は、疾患の少なくとも1つの臨床的パラメータを改善すること、および/または利益(例えば、老化防止、抗瘢痕化、創傷治癒、抗うつ、抗炎症、体重減少)を提供することを意味する。
【0201】
C.投薬頻度と投与
本明細書に提供される方法のうちいずれかのいくつかの実施形態では、組成物は、一定期間(例えば、毎日、2日ごと、週2回、週1回、毎週、月に3回、月に2回、月に1回、2か月ごと、3か月ごと、4か月ごと、5か月ごと、6か月ごと、7か月ごと、8か月ごと、9か月ごと、10か月ごと、11か月ごと、年1回)にわたり少なくとも1回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100回)投与される。さらに、毎月の処置、例えば、少なくとも1か月(例えば、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月以上、例えば12か月以上)にわたり月に少なくとも1回の投与、および年1回の処置(例えば、1年以上にわたり年に1回の投与)が企図される。投与の頻度は、特定の事象、例えば、病原体関連の疾患または障害の最初の症状、ワクチン組成物の初回投与、他の州、郡、国、または大陸への移動などに相関する場合がある。
【0202】
投与は、あらゆる適切な経路、例えば、皮下、静脈内、動脈、眼、経口、筋肉内、鼻腔内(例えば吸入)、腹腔内、局所、粘膜、硬膜外麻酔、舌下、上皮、羊膜外、関節内、皮内、骨内、鞘内、子宮内、膣内、膀胱内、硝子体内、血管周囲、および/または直腸投与、あるいは公知の投与方法のあらゆる組合せを介して行うことができる。
【0203】
いくつかの実施形態では、細胞質体の死滅プロセスは、対象に対する治療効果を呈することができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞質体の死滅プロセスは、免疫賦活の可能性がある。したがって、本明細書には、細胞質体を対象に投与する方法であって、細胞質体の死滅には対象に対する治療効果がある、方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象に投与される細胞質体は、死滅している。いくつかの実施形態では、対象に投与される細胞質体は、投与されると、残りのライフスパンが5日未満(例えば、4日未満、3日未満、2日未満、36時間未満、1日未満、18時間未満、12時間未満、6時間未満、2時間未満、または1時間未満)となる。
【0204】
いくつかの実施形態では、細胞は、対象から除去し、除核することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、除核前に(例えば、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子、治療薬、治療用遺伝子を編集因子、治療用ナノ粒子、および/または他の治療薬を産生または含有するように)操作される。いくつかの実施形態では、対象の細胞は、除核された後に(例えば、治療用DNA分子、治療用RNA分子、治療用タンパク質、治療用ペプチド、小分子、治療薬、治療用遺伝子を編集因子、治療用ナノ粒子、および/または他の治療薬を産生または含有するように)操作される。いくつかの実施形態では、細胞質体(操作されたか否かにかかわらず)は、細胞を除去された対象に投与される。
【0205】
いくつかの実施形態では、細胞質体が培養および/または貯蔵される培地(「調整培地」)は、治療利益を呈することができる。いくつかの実施形態では、(例えば、除核後に)細胞質体が細胞とともに共培養および/または貯蔵される培地(「調整培地」)は、治療利益を呈することができる。いくつかの実施形態では、細胞と融合された細胞質体が細胞とともに培養および/または貯蔵される培地(「調整培地」)は、治療利益を呈することができる。
【0206】
したがって、本明細書には、対象を処置する、防止する、または予防的に処置する、あるいは対象の健康を促進させる方法であって、対象に調製培地を投与する工程を含む方法が、提供される。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、いくつかの実施形態では、培養培地の治療利益は、細胞質体が分泌するエキソソームの培地(例えば、治療用タンパク質を含有する)における存在に起因し得ると考えられる。
【0207】
本明細書に提供される方法のうちいずれかのいくつかの実施形態では、組成物は、1または複数の追加の治療(例えば、あらゆる薬物(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症性薬剤)、または化学療法(例えば、化学療法剤(例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、シクロホスファミド)、あるいは本明細書に記載の小分子治療薬のうちいずれか)、細胞系療法、放射線療法、免疫療法、小分子、阻害核酸(例えば、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、miRNA、siRNA、lncRNA)、エキソソーム系療法、遺伝子治療、または手術)とともに投与される。いくつかの実施形態では、1または複数の追加の治療は、PD-1/PDCD1/CD279、CTLA-4/CD152、TIM-3/HAVCR2、TIGIT、LAG3、VISTA/C10orf54、BTLA/CD272、A2AR、KIR、CD28、ICOS/CD278、CD40L/CD154、CD137/4-1BB、CD27、OX40/CD134/TNFRSF4、GITR、またはSIRPαなどの免疫チェックポイントタンパク質を阻害する併用療法を含む。
【0208】
本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、組成物は、1または複数の追加の治療(例えば、あらゆる薬物(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤)、または化学療法(例えば、化学療法剤(例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、シクロホスファミド))、細胞系療法、放射線療法、免疫療法、小分子、阻害核酸(例えば、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、miRNA、siRNA、lncRNA)、または手術)をさらに含む。
【0209】
III.製造方法
本開示は、本明細書に開示される抗ウイルス組成物および細胞質体を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、免疫系(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ、リンパ球、肥満細胞、好塩基球、好酸球)、幹細胞(例えば、iPSC(人工多能性幹細胞)、成体幹細胞(例えば間葉系幹細胞)および胚性幹細胞を含む)、ならびに線維芽細胞から由来する(例えば、取得される)一般的に用いられる治療用細胞を含むがこれらに限定されない、身体から除去した正常細胞、癌細胞、またはあらゆる初代細胞から由来する(例えば、取得される)あらゆる有核細胞から、細胞核を除去する(除核とも呼ばれる)ための方法を提供する。細胞の除核は、制限期間、例えば最大5日間にわたり生存可能な治療用細胞質体を作製することができる。そのため、本開示は、いくつかの態様では、以下の作用:増殖、分化、対象への恒久的なグラフト化、癌性への変化(become cancerous)、コードされたDNA/遺伝子の対象への移行(例えば、危険な核によりコードされたDNA/遺伝子の対象への移行)のうち1または複数を実施できない安全な治療用ビヒクルとしての細胞質体の新たな使用を提供する。
【0210】
細胞系療法において、FDAの承認は、場合により、細胞が安定するという証拠に向けられており、このことが、細胞は一旦対象の中に入ると変化しないか、危険なものにならないということを意味している。しかし、初代細胞、照射された細胞、または「death-switch」制御された細胞を含む、現行の細胞生成物には依然として、in vivo環境で応答するか変化する可能性がある。重要なことに、現行の治療は依然として、in vivoで制御可能に応答しない新たな遺伝子を転写する可能性を保持する可能性がある。この遺伝子転写により、規制要件を満たす能力が妨げられる。対照的に、核を欠いた細胞質体は、一般的に、大いに異なるin vivo微小環境でも新たな遺伝子転写の可能性がないため、さらに制御されかつ安全な細胞系療法である。
【0211】
今日まで、細胞系療法は、一般的に正常なまたは操作された有核細胞を使用している。一部の細胞系療法は、細胞増殖および誘導された致死的なDNA損傷を防止するために、対象への投与前に細胞を照射する。しかし、この手法は突然変異を誘導し、細胞タンパク質およびDNAを不可逆的に損傷させるおそれのある想到量の活性酸素種を生じさせ、これにより対象の身体に大量の損傷/突然変異DNAが放たれるおそれがある。このような産物は、他の細胞へと統合する、および/または不要な抗DNA免疫応答を誘導する場合、危険となる可能性がある。照射された細胞も、細胞間の融合によりその突然変異DNAおよび遺伝子を宿主細胞に移行する可能性があるため、危険な可能性がある。細胞から核全体を除去することは、対象への核DNAのあらゆる導入を排除することのできる、細胞のライフスパンを制限する損傷の少ない有意に安全な方法である。さらに、間葉系幹細胞(MSC)などの多くの幹細胞は、放射線誘導型の死滅に対して高度な耐性を呈するため、この方法を使用して安全性を付与することはできない。他の場合、治療用細胞は、細胞のライフスパンを制限するように、薬物誘導可能な自滅への切換えにより操作されている。しかし、in vivoでの切換えの活性化は、強力ではあるが不要な副作用を伴う可能性のある有害な薬物を対象に投与することを必要とする可能性がある。この方法は培養細胞に自滅を誘導する可能性があるが(例えば95%超)、臨床施設へと移されたときに非効率的であると予測される。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、薬物により誘導可能な自滅への切換えは、対象の細胞がすべて薬剤性死滅を受ける場合があるものではないため、臨床診療において不十分な安全対策であり得ると考えられている。そのため、広範囲に操作された細胞または幹細胞あるいは癌細胞の場合、薬剤性自滅への切換えは、臨床診療において危険または不十分であると考慮することができる。さらに、治療用細胞の死滅は、大量のDNA(正常または遺伝子改変済)を放つ可能性があり、こうしてDNAは宿主細胞へと統合されるか、危険な全身性抗DNA免疫応答を誘導する可能性がある。細胞が突然変異する、および/または自滅への切換えを失うもしくは不活性化させる場合、細胞は制御不能な突然変異細胞となる可能性がある。加えて、これらの細胞は、対象中で宿主細胞と融合することで、DNA(例えば突然変異DNA)を移行することができる。宿主細胞がすべて自滅遺伝子を継承するため、このような融合細胞は危険な可能性があるが、染色体の再編成および細胞ハイブリダイゼーションの間に治療用細胞の遺伝子/DNAの一部を継承することができる。加えて、同じ理由により、自滅への切換えを伴う治療用細胞は、in vitroで細胞融合のパートナーとして使用するのに理想的ではない場合がある。治療用細胞のライフスパンを制限する他の方法は、治療用途に有益な生体機能(例えば、タンパク質翻訳)を終結させる重度の損傷を引き起こす熱誘導型死滅である。細胞質体とは異なり、有核細胞療法、および上記方法により不活性化される一部の細胞までもが、その核および遺伝子材料を保持することから、依然としてDNAを対象に移行することができる。化学療法薬やマイトマイシンCなどを含む多数の化学物質は、治療上の使用前に細胞増殖を阻害し、および/または細胞死を引き起こす。しかし、かかる薬物には、細胞を著しく損傷させる顕著なオフターゲット効果がある可能性があり、この効果は、毒性が高いことで臨床用途には望まれない。多くの抗増殖性で死滅誘導型の薬物は、耐性に起因して細胞を100%有効に阻害せず、細胞質体と異なり、多くの薬物効果が可逆的である。このため、この手法は、in vivoで不死化細胞または癌細胞の細胞増殖を防止するのに適切でない。
【0212】
本明細書には、本開示の細胞質体を製造する方法が提供される。いくつかの実施形態では、有核細胞(例えば、本明細書で「親細胞」と称される)は、皮質のアクチン細胞骨格を軟化させるためにサイトカラシンBで処置される。いくつかの実施形態では、方法は、有核細胞にウイルスペプチドまたはタンパク質などの活性薬剤を導入する工程と、細胞質体を産生するために親細胞から核を機械的に除去する工程(除核)とを含む。いくつかの実施形態では、親細胞はさらに、除核前に第2の活性薬剤に導入される。いくつかの実施形態では、親細胞は、除核後に第2の活性薬剤に導入される。第2の活性薬剤は、細胞質体により標的細胞に送達される治療薬であってよい。例示的な標的細胞は、筋芽細胞や成熟筋細胞などの筋細胞である。
【0213】
活性薬剤は、適切な一時的トランスフェクション方法(例えば、エレクトロポレーション)または形質導入(例えば、ウイルス媒介型)を使用して親細胞に導入される。いくつかの実施形態では、活性薬剤をコードする導入遺伝子を含むプラスミドが、親細胞へとトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、活性薬剤をコードする導入遺伝子を含むウイルスベクターが、親細胞へと形質導入される。プラスミドは、細菌プラスミド(例えば、大腸菌)であってよい。いくつかの実施形態では、親細胞はさらに、同様の方法により第2の活性薬剤に導入される。いくつかの実施形態では、第2の活性薬剤は、治療薬である。
【0214】
活性薬剤、および任意選択で第2の活性薬剤を発現する親細胞の核は、機械的な除核を用いて除去される。いくつかの実施形態では、親細胞壁は、細胞透過性マイコトキシンを用いて透過性とされる。機械的な除核は、不連続のフィコール勾配を用いる密度勾配遠心分離、すなわち高速遠心分離を実施して細胞質体を形成することを含む場合がある。細胞質体は、標準の精製プロトコルを用いて単離かつ精製される。細胞質体は、外因性核酸(例えばmRNA、DNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド)によりさらに操作されてよい。
【0215】
本開示は、DNA/遺伝子(例えば、プラスミド)RNA(例えば、mRNA、shRNA、siRNA、miRNA)、タンパク質、ペプチド、小分子治療薬(例えば、小分子薬物)、遺伝子編集成分、ナノ粒子、および他の治療薬(例えば、細菌、細菌胞子、バクテリオファージ、細菌性成分、ウイルス(例えば、腫瘍溶解性ウイルス)、エキソソーム、脂質、またはイオン)を含むがこれらに限定されない、治療機能を持つ生体分子の天然もしくは誘導可能な発現および/または取込みにより細胞質体を製造するための方法を提供する。
【0216】
生体分子(例えば、RNA分子(例えば、mRNA、miRNA、siRNA、shRNA、lncRNA)、DNA分子(例えば、プラスミド)、タンパク質、遺伝子編集因子(例えば、CRISPR/Cas9遺伝子編集因子)、ペプチド、プラスミド)を細胞質体(例えば、本明細書に記載のあらゆる細胞から得た細胞質体)へと導入するのに使用可能な様々な方法が、当該技術分野で公知である。生体分子を細胞質体へ導入するのに使用可能な方法の非限定的な例として、エレクトロポレーション、微量注射、リポフェクション、トランスフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、デンドリマーを用いるトランスフェクション、カチオンポリマーのトランスフェクション、細胞圧搾、超音波処理、光学的トランスフェクション、インペールフェクション(impalection)、流体力学的送達、マグネトフェクション、およびナノ粒子トランスフェクションが挙げられる。遺伝子編集因子の非限定的な例として、CRISPR/Cas9遺伝子編集、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびジンクフィンガーヌクレアーゼが挙げられる。
【0217】
細胞(例えば、本明細書に記載の細胞のうちいずれかれ)を培養する方法は、当該技術分野で公知である。細胞は、三次元培養、低酸素環境、規定された細胞外マトリクス成分での培養、化学物質、サイトカイン、成長因子での処理、あるいは、特定の望ましい細胞応答を誘導するあらゆる天然または合成の外因性薬剤への曝露を含むがこれらに限定されない、治療能力/利益を備えた特異的な生体機能の成長、増殖、生存度、分化、および/または誘導を好む条件下、in vitroで維持することができる。
【0218】
方法は、あらゆる有核細胞型(例えば、哺乳動物細胞、ヒト細胞)、原生動物細胞(例えば、アメーバ細胞)、藻細胞、植物細胞、真菌細胞、無脊椎動物細胞、魚類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、または鳥類細胞)から由来する(例えば、取得される)細胞質体のin vitroでの大規模産生を包含する。例えば、細胞は、自然に、または遺伝子操作により不死化されるか、および/あるいは発癌的に形質転換されている可能性がある。
【0219】
本明細書には、細胞質体の生体活性が遅くなるか完全に停止するように、本開示の精製かつ単離された細胞質体を貯蔵する方法が提供される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、最大10℃の温度で懸濁アニメーションに貯蔵される。いくつかの実施形態では、温度は約4℃である。いくつかの実施形態では、温度は4℃である。いくつかの実施形態では、温度は最大4℃である。いくつかの実施形態では、細胞質体は、最大または約96時間貯蔵される。時間経過後、細胞質体は、細胞質体の生体活性を回復させるべく懸濁アニメーションから除去される。結果生じる細胞質体は生存可能であり、それを必要とする対象への送達に適している。いくつかの実施形態では、4℃~10℃の間で貯蔵される細胞質体は、4℃~10℃の間で貯蔵する前の細胞質体と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上の生存率を呈する。
【0220】
本明細書に提供される組成物と方法のうちいずれかのいくつかの実施形態では、細胞質体は、後の使用のために冷却または冷凍される。細胞を保存する様々な方法が当該技術分野で公知であり、極めて低温での血清(例えばウシ胎仔血清)およびジメチルスルホキシド(DMSO)の使用(冷凍保存)、および4℃での貯蔵のための休眠培地の使用(凍結休眠)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書に提供される組成物と方法のうちいずれかのいくつかの実施形態では、細胞質体は使用前に解凍される。
【0221】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、約-80℃~約16℃の間の温度(例えば、約-80℃~約12℃、-80℃~約10℃、約-80℃~約8℃、約-80℃~約6℃、約-80℃~約4℃、約-80℃~約2℃、約-80℃~約0℃、約-80℃~約-4℃、約-80℃~約-10℃、約-80℃~約-16℃、約-80℃~約-20℃、約-80℃~約-25℃、約-80℃~約-30℃、約-80℃~約-35℃、約-80℃~約-40℃、約-80℃~約-45℃、約-80℃~約-50℃、約-80℃~約-55℃、約-80℃~約-60℃、約-80℃~約-65℃、約-80℃~約-70℃、約-60℃~約16℃、約-60℃~約12℃、約-60℃~約10℃、約-60℃~約8℃、約-60℃~約6℃、約-60℃~約4℃、約-60℃~約2℃、約-60℃~約0℃、約-60℃~約-4℃、約-60℃~約-10℃、約-60℃~約-10℃、約-60℃~約-16℃、約-60℃~約-20℃、約-60℃~約-25℃、約-60℃~約-30℃、約-60℃~約-35℃、約-60℃~約-40℃、約-60℃~約-50℃、約-50℃~約16℃、約-50℃~約12℃、約-50℃~約10℃、約-50℃~約8℃、約-50℃~約6℃、約-50℃~約4℃、約-50℃~約2℃、約-50℃~約0℃、約-50℃~約-4℃、約-50℃~約-10℃、約-50℃~約-16℃、約-50℃~約-20℃、約-50℃~約-30℃、約-50℃~約-40℃、約-20℃~約16℃、約-20℃~約12℃、約-20℃~約10℃、約-20℃~約8℃、約-20℃~約6℃、約-20℃~約4℃、約-20℃~約2℃、約-20℃~約0℃、約-20℃~約-4℃、約-20℃~約-10℃、約-20℃~約-15℃、約-10℃~約16℃、約-10℃~約12℃、約-10℃~約10℃、約-10℃~約8℃、約-10℃~約6℃、約-10℃~約4℃、約-10℃~約2℃、約-10℃~約0℃、約-10℃~約-4℃、約-10℃~約-6℃、約-4℃~約16℃、約-4℃~約10℃、約-4℃~約6℃、約-4℃~約4℃、約-4℃~約2℃、約-4℃~約0℃、約-2℃~約16℃、約-2℃~約12℃、約-2℃~約10℃、約-2℃~約6℃、約-2℃~約4℃、約-2℃~約2℃、約-2℃~約0℃、約0℃~約16℃、約0℃~約14℃、約0℃~約12℃、約0℃~約10℃、約0℃~約8℃、約0℃~約6℃、約0℃~約4℃、約2℃~約16℃、約2℃~約12℃、約2℃~約10℃、約2℃~約8℃、約2℃~約6℃、約2℃~約4℃、約4℃~約16℃、約4℃~約12℃、約4℃~約10℃、約4℃~約8℃、約4℃~約6℃、約6℃~約16℃、約6℃~約12℃、約6℃~約10℃、約6℃~約8℃、約8℃~約16℃、約8℃~約12℃、約8℃~約10℃、約10℃~約16℃、約10℃~約12℃、または約12℃~約16℃)で、約1日~約7日間(例えば、約1日~約6日、約1日~約5日、約1日~約4日、約1日~約3日、約1日~約2日、約2日~約7日、約2日~約6日、約2日~約5日、約2日~約4日、約2日~約3日、約3日~約7日、約3日~約6日、約3日~約5日、約3日~約4日、約4日~約7日、約4日~約6日、約4日~約5日、約5日~約7日、約5日~約6日、または約6日~約7日)、貯蔵することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の温度範囲で貯蔵される細胞質体は、同じ温度範囲で貯蔵される細胞質体と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上の生存率を呈する。
【0222】
いくつかの実施形態では、細胞質体は、凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、貯蔵のために凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、12日間、14日間、16日間、18日間、20日間、22日間、24日間、26日間、28日間、30日間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、18か月間、24か月間、30か月間、3年間、4年間、5年間、または10年間以上にわたり凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、細胞質体は、凍結乾燥前の細胞質体と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%以上の生存率を呈する。
【0223】
IV.キット
本明細書中のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物、医薬組成物、または細胞質体を使用するためのキットが開示される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキットは、対象の疾患または疾病を予防または処置する、あるいは本明細書に開示される疾患または疾病に対する予防または処置のために対象を選択するために使用される場合がある。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の医薬組成物、組成物、または細胞質体を含み、これらは本明細書に記載の方法を行うために使用される場合がある。キットは、材料または成分の集合体を含む。このため、いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の疾患または疾病の処置用に、医薬組成物または細胞質体を含む組成物を含有している。
【0224】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキットは、細胞質体の均質集団を選択するための成分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキットは、細胞質体の異種集団を選択するための成分を含む。いくつかの実施形態では、キットは、細胞質体が合成または放出する外因性治療薬のユニット数をアッセイするための成分を含む。いくつかの実施形態では、キットは、細胞質体の表面に発現される外因性治療薬のユニット数をアッセイするための成分を含む。いくつかの実施形態では、キットは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、単一分子配列(Simoa)、PCR、qPCRなどのアッセイを実行するための成分を含む。キットに構成される構成部分の正確な性質は、その意図した目的に左右される。例えば、一部の実施形態は、対象における本明細書に開示される疾患または疾病(例えば呼吸器疾患)に対するワクチン接種を行う、またはこれらを処置する目的のために構成される。いくつかの実施形態では、キットは、特に哺乳動物対象にワクチン接種を行う、または処置するために構成される。いくつかの実施形態では、キットは、特にヒト対象にワクチン接種を行う、または処置するために構成される。
【0225】
キットには指示書が含まれる場合がある。例えば、この指示書は、医療施設または臨床現場においてキットの成分を用いて対象にいかにしてワクチン接種を行うかを医療従事者に指示する場合がある。任意選択で、キットはさらに、希釈剤、緩衝剤、薬学的に許容可能な担体、シリンジ、カテーテル、塗布具、ピペッティングツール、測定ツール、包帯材料、またはその他の有用な道具一式など、他の有用な成分を含む。キット内で組み立てられる材料または成分は、医療従事者に提供され、その操作性および有用性を保つのに都合が良く適切な方法で保管される場合がある。例えば、成分は、溶解、脱水、または凍結乾燥された形態にあってよく、これらは室温、冷却温度、または冷凍温度で提供される場合がある。成分は、一般的には適切な包装材料に包含される。本明細書で利用するとき、「包装材料」という句は、組成物などのキットの内容物を収容するために使用される1または複数の物理的構造を指す。包装材料は、好ましくは汚染物質がない滅菌環境を提供するために周知の方法により構築される。キットに利用される包装材料は、遺伝子発現アッセイ、および処置の実施において慣例的に利用されるものである。本明細書で使用するとき、「包装」という用語は、個々のキット成分を保持可能である、ガラス、プラスチック、紙、ホイルなどの適切な固形マトリクスまたは材料を表す。このため、例えばパッケージは、適切な量の医薬組成物を包含するために使用されるガラスバイアルまたはプレフィルドシリンジであってよい。包装材料には、キットとその成分の内容物および/または目的を示す外部ラベルがある。
【0226】
V.定義
別段の定めのない限り、当該技術分野におけるすべての用語、表記、ならびにその他本明細書で使用される技術的および科学的な用語または専門用語は、主張された発明特定事項が属する技術分野の当業者が共通して理解するものと同じ意味を有するように意図される。いくつかの実施形態では、共通して理解される意味を有する用語は、明瞭さおよび/または即時参照のために本明細書で定義され、本明細書中のこのような定義を含めることは、必ずしも当該技術分野で一般に理解されるものとは実質的に異なるものを表すことと解釈されるべきではない。
【0227】
本出願の全体にわたって、様々な実施形態が範囲の形式で提示される場合がある。範囲の形式にある記載は、単に利便性と簡潔さのためのものであり、本開示の範囲に対する確固たる制限として解釈されるべきでないことを、理解されたい。したがって、範囲の記載は、起こり得るすべての部分範囲、同様にその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと考慮されねばならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6といった、具体的に開示された部分範囲のほか、その範囲内にある個々の数、例えば1、2、3、4、5、および6を有すると考慮する必要がある。このことは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0228】
本明細書と特許請求の範囲で使用するとき、「a」、「and」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを表していない限り複数の対象物を含む。例えば、「試料」という用語は、複数の試料を含み、その混合物も含む。
【0229】
絶対的または連続的な用語、例えば「will」、「will not」、「shall」、「shall not」、「must」、「must not」、「第1の(first)」、「最初に(initially)」、「次に(next)」、「の前に(before)」、「の後に(after)」、「最後に(lastly)」、および「最終的に(finally)」の使用は、本明細書に開示される本実施形態の範囲を限定するものではなく、例示的なものであることが意図される。
【0230】
本明細書で使用するとき、「少なくとも1つの(at least)」、「1または複数の(one or more)」、ならびに「および/または(and/or)」という句は、使用時(in operation)に接続的かつ弁別的である。例えば、「A、B、およびCのうち少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうち少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうち1または複数」、「A、B、またはCのうち1または複数」、ならびに「A、B、および/またはC」という表現はそれぞれ、A単独、B単独、C単独、AとB、AとC、BとC、あるいはAとBとCを意味する。
【0231】
「少なくとも(at least)」、「~を超える(greater than)」、または「~以上(greater than or equal to)」という用語が、一連の2つ以上の数値において最初の数値の前に付けられる場合は常に、「少なくとも」、「~を超える」、または「~以上」という用語は、一連の数値における数値それぞれに適用される。例えば、1、2、または3以上は、1以上、2以上、または3以上と同等の意味である。
【0232】
「多くとも(no more than)」、「~未満(less than)」、または「~以下(less than or equal to)」が、一連の2つ以上の数値において最初の数値の前に付けられる場合は常に、「多くとも」、「~未満」、または「~以下」という用語は、一連の数値における数値それぞれに適用される。例えば、3、2、または1以下は、3以下、2以下、または1以下と同等の意味である。
【0233】
本明細書に記載のあらゆるシステム、方法、ソフトウェア、組成物、およびプラットフォームは、モジュール式であり、連続的な工程に限定されない。したがって、「第1の」および「第2の」などの用語は、必ずしも優先順、重要度順、または作用順を示すものではない。
【0234】
「増加した(increased)」または「増加する(increase)」という用語は、概して統計的に有意な量の増加を意味するように本明細書で使用される。いくつかの実施形態では、「増加した」または「増加する」という用語は、基準値と比較して少なくとも10%の増加、例えば、基準値、標準、または対照と比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または最大100%の増加、あるいは10~100%の間でのいずれかの増加を意味する。他の「増加する」の例として、基準値と比較して少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれより多くの増加が挙げられる。
【0235】
「減少した(decreased)」または「減少する(decrease)」という用語は、概して統計的に有意な量の減少を意味するように本明細書で使用される。いくつかの実施形態では、「減少した」または「減少する」という用語は、基準値と比較して少なくとも10%の減少、例えば、基準値と比較して少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または最大100%の減少(例えば、基準値と比較して存在しないまたは検出不能な値)、あるいは10~100%の間でのいずれかの減少を意味する。マーカーまたは症状の文脈では、これらの用語は、かかる値の統計的に有意な減少を意味する。この減少は、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%以上の可能性があり、好ましくは所与の疾患がない個体に対して正常な範囲内で容認される値に低下する。他の「減少する」の例として、基準値と比較して少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれより多くの減少が挙げられる。
【0236】
本明細書で使用するとき、「細胞」は、概して生物体の生物学的単位を表す。
【0237】
本明細書で使用するとき、「真核細胞」という用語は、別個の膜結合型の核を有する細胞を表す。かかる細胞として、例えば、哺乳動物(例えば、げっ歯類、非ヒト霊長類、またはヒト)、非哺乳動物(例えば、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類)、無脊椎動物、昆虫、真菌、または植物の細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、真核細胞は、サッカロミセス・セレビシエなどの酵母菌である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳動物、鳥類、植物、または昆虫の細胞などのより高度な真核生物である。
【0238】
本明細書で使用するとき、「細胞質体」、「無核細胞」、または「除核細胞」という用語は、以前は有核の細胞(例えば、本明細書に記載のあらゆる細胞)から得た核のない細胞を表すよう互換的に使用される。いくつかの実施形態では、有核細胞は細胞小器官を含み、有核細胞由来の細胞質体はかかる細胞小器官を保持し、これにより場合によっては、細胞運動、タンパク質合成、タンパク質分泌などの細胞機能が可能となる。いくつかの実施形態では、「得ること(obtaining)」は、自然過程またはその他の過程を使用して有核細胞を除核細胞へと分化するのを必要としない。
【0239】
「ヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用するとき、概して塩基-糖-リン酸塩の組合せを指す。ヌクレオチドは、合成ヌクレオチドを含む場合がある。ヌクレオチドは、合成ヌクレオチドアナログを含む場合がある。ヌクレオチドは、核酸配列(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA))の単量体単位であってよい。ヌクレオチドという用語は、リボヌクレオシド三リン酸アデノシン三リン酸(ATP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シトシン三リン酸(CTP)、グアノシン三リン酸(GTP)、およびdATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTP、またはこれらの誘導体といったデオキシリボヌクレオシド三リン酸を含むことができる。このような誘導体として、例えば、[αS]dATP、7-デアザ-dGTPおよび7-デアザ-dATP、ならびにこれらを含有する核酸分子にヌクレアーゼ耐性を付与するヌクレオチド誘導体を挙げることができる。ヌクレオチドという用語は、本明細書で使用するとき、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTPs)およびそれらの誘導体を表す可能性がある。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の例示的な例として、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITP、ddTTPを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ヌクレオチドには、ラベルが付されない、または周知の技法により検出可能にラベルを付すことができる。ラベル付けは、量子ドットによっても行うことができる。検出可能なラベルとして、例えば、放射性同位体、蛍光ラベル、化学発光ラベル、生物発光ラベル、および酵素ラベルを挙げることができる。ヌクレオチドの蛍光ラベルとして、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’-ジメトキシ-4’5-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、4-(4’ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、カスケードブルー、オレゴングリーン、テキサスレッド、シアニン、および5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。蛍光標識したヌクレオチドの特異的な例として、カリフォルニア州フォスターシティのPerkin Elmerから入手可能な[R6G]dUTP、[TAMRA]dUTP、[R110]dCTP、[R6G]dCTP、[TAMRA]dCTP、[JOE]ddATP、[R6G]ddATP、[FAM]ddCTP、[R110]ddCTP、[TAMRA]ddGTP、[ROX]ddTTP、[dR6G]ddATP、[dR110]ddCTP、[dTAMRA]ddGTP、および[dROX]ddTTP;イリノイ州アーリントンハイツのAmershamから入手可能なFluoroLinkデオキシヌクレオチド、FluoroLink Cy3-dCTP、FluoroLink Cy5-dCTP、FluoroLink Fluor X-dCTP、FluoroLink Cy3-dUTP、およびFluoroLink Cy5-dUTP;インディアナ州インディアナポリスのBoehringer Mannheimから入手可能なフルオレセイン-15-dATP、フルオレセイン-12-dUTP、テトラメチル-ローダミン-6-dUTP、IR770-9-dATP、フルオレセイン-12-ddUTP、フルオレセイン-12-UTP、およびフルオレセイン-15-2’-dATP;ならびにオレゴン州ユージーンのMolecular Probesから入手可能なクロモソーム標識ヌクレオチド、BODIPY-FL-14-UTP、BODIPY-FL-4-UTP、BODIPY-TMR-14-UTP、BODIPY-TMR-14-dUTP、BODIPY-TR-14-UTP、BODIPY-TR-14-dUTP、Cascade Blue-7-UTP、Cascade Blue-7-dUTP、フルオレセイン-12-UTP、フルオレセイン-12-dUTP、Oregon Green 488-5-dUTP、ローダミンGreen-5-UTP、ローダミンGreen-5-dUTP、テトラメチルローダミン-6-UTP、テトラメチルローダミン-6-dUTP、Texas Red-5-UTP、Texas Red-5-dUTP、およびTexas Red-12-dUTPを挙げることができる。ヌクレオチドはさらに、化学的修飾によりラベル付けまたはマーク付けすることができる。化学修飾された単一ヌクレオチドは、ビオチン-dNTPの可能性がある。ビオチン化dNTPの一部の非限定的な例として、ビオチン-dATP(例えばbio-N6-ddATP、ビオチン-14-dATP)、ビオチン-dCTP(例えばビオチン-11-dCTP、ビオチン-14-dCTP)、およびビオチン-dUTP(例えばビオチン-11-dUTP、ビオチン-16-dUTP、ビオチン-20-dUTP)を挙げることができる。
【0240】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸」という用語は、一本鎖、二本鎖、または多重鎖の形態にあるあらゆる長さのヌクレオチド、すなわち、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、あるいはそれらのアナログの高分子形態を表すように互換的に使用される。ポリヌクレオチドは、細胞に対して外因性または内因性であってよい。ポリヌクレオチドは、無細胞環境に存在してよい。ポリヌクレオチドは、遺伝子またはそのフラグメントであってよい。ポリヌクレオチドは、DNAであってよい。ポリヌクレオチドは、RNAであってよい。ポリヌクレオチドは、あらゆる三次元構造を有し、既知または未知の機能を実行することができる。ポリヌクレオチドは、1または複数のアナログ(例えば、改質されたバックボーン、糖、または核酸塩基)を含む場合がある。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの集合の前または後に与えることができる。アナログの一部の非限定的な例として、5-ブロモウラシル、ペプチド核酸、ゼノ核酸、モルホリノ、ロックド核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、ジデオキシヌクレオチド、コルジセピン、7-デアザ-GTP、フルオロフォア(例えば糖に結合されるローダミンまたはフルオレセイン)、チオール含有ヌクレオチド、ビオチン結合ヌクレオチド、蛍光塩基アナログ、CpG島、メチル-7-グアノシン、メチル化ヌクレオチド、イノシン、チオウリジン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、キューオシン、およびワイオシンが挙げられる。ポリヌクレオチドの非限定的な例として、遺伝子または遺伝子フラグメントのコード領域または非コーディング領域、連鎖解析から規定された座位、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、いずれかの配列から単離されたDNA、いずれかの配列から単離されたRNA、無細胞DNA(cfDNA)および無細胞RNA(cfRNA)を含む無細胞ポリヌクレオチド、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により妨げられる可能性がある。
【0241】
「トランスフェクション」または「トランスフェクトされた」という用語は、概して非ウイルス系またはウイルス系の方法による核酸の細胞への導入を表す。核酸分子は、完全タンパク質またはその機能部分をコードする遺伝子配列の可能性がある。例えば、Sambrookらによる1989年の「Molecular Cloning:A Laboratory Manual,18.1-18.88」を参照されたい。
【0242】
用語「遺伝子」は、本明細書で使用するとき、任意選択でプロモータ、オペレータ、ターミネータなどの関連制御領域とともに、個々のタンパク質またはRNAをコードする核酸の部分(「コード配列」または「コード領域」とも称される)を表し、この関連制御領域は、コード配列の上流または下流に位置していてもよい。「遺伝子」という用語は、広く解釈されるものであり、遺伝子のmRNA、cDNA、cRNA、およびゲノムDNA形態を包含する可能性がある。一部の用途では、「遺伝子」という用語は、5’および3’の未翻訳領域(5’-UTRおよび3’-UTR)を含む転写された配列、エクソン、およびイントロンを包含する。いくつかの遺伝子では、転写された領域は、ポリペプチドをコードする「オープンリーディングフレーム」を包含する。この用語の一部の用途では、「遺伝子」は、ポリペプチドをコードするのに必要なコード配列(例えば「オープンリーディングフレーム」または「コード領域」)のみを含む。いくつかの態様では、遺伝子は、ポリペプチド、例えばリボソームRNA遺伝子(rRNA)や転移RNA(tRNA)遺伝子をコードしない。いくつかの態様では、「遺伝子」という用語は、転写された配列以外に、上流および下流の制御領域を含む非転写領域、エンハンサ、およびプロモータを含む。「遺伝子」という用語は、遺伝子のmRNA、cDNA、およびゲノム形態を包含する可能性がある。
【0243】
「突然変異」という用語は、本明細書で使用するとき、配列、例えば核酸またはアミノ酸配列内の残基を別の残基に置き換えること、すなわち配列内での1または複数の残基の欠失または挿入を表すことがある。1または複数の突然変異は、元の残基、続いて配列内の残基の位置を同定することにより、および新たに置換された残基の同一性により記述することができる。突然変異は、参照配列に対する配列(例えば、核酸配列、ゲノム配列、DNA、RNA、またはタンパク質配列などの遺伝子配列)の変化または改質であってよい。参照配列は、野生型配列、健康または正常細胞の配列、または疾患もしくは障害に関連しない配列であってよい。参照配列は、癌に関連しない配列であってよい。突然変異の非限定的な例として、点変異、1または複数のヌクレオチドの置換、1または複数のヌクレオチドの欠失、1または複数のヌクレオチドの挿入、1または複数のヌクレオチドの融合、フレームシフト突然変異、異常、選択的スプライシング、異常メチル化、ミスセンス変異、保存的突然変異、非保存的突然変異、ナンセンス突然変異、スプライス変異、代替的なスプライス変異、遷移、移転位、デノボ突然変異、有害突然変異、疾患を引き起こす突然変異、エピ変異、創始者突然変異、生殖細胞系列突然変異、体細胞突然変異、素因となる突然変異、スプライス部位突然変異、または感受性遺伝子突然変異が挙げられる。突然変異は、特定の疾患または障害に対する個体の感受性または素因性を増加させる病原性変異または突然変異の可能性がある。突然変異は、ドライバ突然変異(例えば、細胞にその環境中でフィットネスアドバンテージ(fitness advantage)を与えることにより細胞系統を癌に誘導することのできる突然変異)の可能性がある。ドライバ突然変異は、損失機能突然変異(lost function mutation)の可能性がある。突然変異は、損失機能突然変異の可能性がある。突然変異は、パッセンジャ突然変異(例えば、ドライバ突然変異によりゲノム中に生じ、クローン拡大に関連する可能性のある突然変異)の可能性がある。本明細書で使用するとき、「遺伝子」という用語は、ポリヌクレオチド要素の組合せを表す可能性があり、この組合せは、天然または組換え式に操作可能に連結されると、一部の生成物または機能を提供する。
【0244】
本明細書で使用するとき、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーに関連して本明細書で互換的に使用される。タンパク質は、コーディングオープンリーディングフレームから翻訳されるか、その成熟形態へと処理されるような完全長のポリペプチドを表し、一方でポリペプチドまたはペプチドは、特定のタンパク質へと固有にまたは同一にマッピングされるタンパク質の分解フラグメントまたは処理フラグメントを表すことができる。ポリペプチドは、隣接したアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基とのペプチド結合により一体的に結合されるアミノ酸の単一の線状ポリマー鎖であり得る。ポリペプチドは、例えば、炭水化物の付加やリン酸化などにより修飾することができる。タンパク質は、1または複数のポリペプチドを含むことができる。
【0245】
本明細書で使用するとき、「部分」もしくは「フラグメント」という用語、またはその同義語は、実体(例えばタンパク質)の一部を表すことができる。タンパク質またはポリペプチドの場合、部分またはフラグメントは、タンパク質またはポリペプチドの全長よりも小さい。いくつかの実施形態では、部分またはフラグメントは、完全長のタンパク質に意図された機能を維持する。
【0246】
「補体(complement)」、「補体(complements)」、「相補的」、および「相補性」という用語は、本明細書で使用するとき、概して所与の配列に対して完全に相補的であるとともにハイブリダイズ可能な配列を表す。いくつかの実施形態では、例えばA-T、A-U、G-C、およびG-Uの塩基対が形成されるように、所与の領域にわたり塩基の配列が、その結合パートナーの配列と相補的に結合可能である場合、所与の核酸でハイブリダイズされる配列は、所与の分子の「補体」または「逆補体」と称される。一般に、第2の配列にハイブリダイズ可能な第1の配列は、第2の配列に特異的または選択的にハイブリダイズ可能であり、その結果、第2の配列またはそのセットに対するハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション反応中に非標的配列とのハイブリダイゼーションより優先される(例えば、当該技術分野で一般的に使用される厳密な条件など、所与の一連の条件下で熱力学的により安定する)。典型的に、ハイブリダイズ可能な配列は、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%の配列相補性を含む、25%~100%の相補性など、それぞれの長さの全体または一部にわたり配列相補性の程度を共有している。相補性の割合を評価する目的のためなどの配列同一性は、あらゆる適切なアライメントアルゴリズムにより測定可能であり、このアルゴリズムとして、Needleman-Wunschアルゴリズム(例えば、任意選択でデフォルト設定を伴うwww.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.htmlにて利用可能なEMBOSS Needleアライナを参照)、BLASTアルゴリズム(例えば、任意選択でデフォルト設定を伴うblast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiにて利用可能なBLASTアライメントツールを参照)、またはSmith-Watermanアルゴリズム(例えば、任意選択でデフォルト設定を伴うwww.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/nucleotide.htmlにて利用可能なEMBOSS Waterアライナを参照)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。最適なアライメントは、デフォルトパラメータを含む、選択されたアルゴリズムのあらゆる適切なパラメータを使用して評価することができる。
【0247】
「パーセント(%)同一性」という用語は、本明細書で使用するとき、概して候補となる配列のアミノ酸(または核酸)残基の割合を指し、この残基は、必要に応じて最大のパーセント同一性を達成するべく配列のアライメントおよびギャップの導入後の参照配列のアミノ酸(または核酸)残基と同一である(すなわち、ギャップは、最適なアライメントのために候補配列および参照配列のうち1つまたは両方に導入することができ、比較目的のために非相同的な配列は無視される場合がある)。パーセント同一性を決定するためのアライメントは、例えば、BLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの、公に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野内にある様々な方法で達成することができる。2つの配列のパーセント同一性は、BLASTを用いて被験配列を比較配列とアライメントさせ、比較配列の同じ位置にあるアミノ酸またはヌクレオチドと同一であるアライメントされた被験配列におけるアミノ酸またはヌクレオチドの数を判定し、および同一のアミノ酸またはヌクレオチドの数を、比較配列中のアミノ酸またはヌクレオチドの数で割ることにより、算出することができる。
【0248】
「判定すること」、「測定すること」、「評価すること」、「査定すること」、および「解析すること」という用語は、しばしば測定の形式を表すように本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、要素が存在するか否かを判定(例えば検出)することを含む。これらの用語は、量的、質的、または定的および質的な測定を含むことができる。査定は、相対的または絶対的なものであってよい。「~の存在を検出すること」は、状況に応じて、存在する物の量を判定することに加えて、それが存在するか否かを判定することも含むことができる。
【0249】
「対象」および「個体」という用語は、発現された遺伝子材料を含有する生体実態を表すように本明細書でしばしば互換的に使用される。本明細書で使用するとき、「対象」という用語は、あらゆる生物体を表す。例えば、対象は、哺乳動物、両生類、魚類、爬虫類、無脊椎動物、鳥類、植物、古細菌、真菌、または細菌の可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)、イヌ(例えば、イヌ(dog))、ネコ(例えば、ネコ(cat))、ウマ(例えば、ウマ(horse))、ヒツジ、ウシ、ブタ、非ヒト霊長類、例えば、サル(例えば猿)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトであってよい。対象は、in vivoで取得またはin vitroで培養された生体実体の組織、細胞、およびそれらの子孫であってよい。対象は哺乳動物であってよい。哺乳動物はヒトであってよい。対象は「患者」であってよく、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の疾患または疾病を有すると診断された、またはそれらを有している対象を表す。いくつかの実施形態では、対象は診断されていないが、疾患または疾病を進行させるか有するリスクが高いと予測される。
【0250】
「in vivo」という用語は、対象の身体に生じる事象を説明するために使用される。
【0251】
「ex vivo」という用語は、対象の身体の外部に生じる事象を説明するために使用される。ex vivoアッセイは、対象に対して実施されない。むしろ、対象とは別の試料に対して実施される。試料に対し実施されるex vivoアッセイの一例は、「in vitro」アッセイである。
【0252】
「in vitro」という用語は、検査試薬を保持するための容器に包含されて生じる事象を説明するために使用され、それにより、検査試薬は材料が得られる生体源から分離される。in vitroアッセイは、生存または死滅している細胞を利用する細胞系アッセイを包含することができる。in vitroアッセイはさらに、無傷の細胞を利用しない無細胞アッセイを包含することができる。
【0253】
本明細書で使用するとき、「約」という用語の付く数は、その数のプラスまたはマイナス10%の数を表す。「約」という用語の付く範囲は、最低値のマイナス10%および最大値のプラス10%の範囲を表す。
【0254】
本明細書で使用するとき、「処置」または「処置すること」という用語は、レシピエントに対し有益または所望の結果を得るための医薬的またはその他の介入レジメンに関連して使用される。有益または所望の結果として、治療利益および/または予防利益が挙げられるが、これらに限定されるものではない。治療利益は、処置される症状、または根底にある障害の根絶あるいは寛解を表す場合がある。また、治療利益は、対象が依然として根底にある障害による影響を受ける場合があるにもかかわらず、対象に改善が観察されるように、根底にある障害に関連した生理学的症状のうち1または複数の根絶あるいは寛解により達成することができる。予防効果は、疾患もしくは疾病の出現を遅延、予防、または排除すること、疾患もしくは疾病の症状の発症を遅延または排除すること、疾患もしくは疾病の進行を遅くする、停止する、または逆転させること、あるいはそれらのあらゆる組合せを含む。予防利益において、特定の疾患を発症するリスクのある対象、または、疾患の生理学的症状のうち1または複数を報告する対象は、この疾患の診断が行われなかったとしても、処置を受ける場合がある。
【0255】
「適応免疫応答」という用語は、本明細書で使用するとき、抗原を制限する形で応答する免疫応答の成分を表し、Tリンパ球および体液に起因する細胞免疫応答、またはB細胞およびプラズマ細胞に起因する抗体応答を包含する。「細胞免疫応答」は、以下:T細胞によるサイトカイン/ケモカイン放出、二次リンパ器官へのT細胞ホーミング、T細胞増殖、および細胞傷害性T細胞応答のうちいずれか1つまたは複数により示される。いくつかの方法は、Tリンパ球のex vivo抗原刺激アッセイ、およびTリンパ球の四量体染色などのin vivoアッセイを含む、抗原特異性細胞免疫反応を検証するために使用可能である。「抗体応答」は、B細胞増殖、B細胞サイトカイン/ケモカイン放出、二次リンパ器官へのB細胞ホーミング、抗体分泌、IgG型抗体への切換えを行うアイソタイプ、または形質細胞分化のうち1または複数により示される。抗体応答は、いくつかの方法により検証可能であるが、優勢的な方法は、ワクチン接種を受けた個体の血清または血漿中での抗原特異性抗体の検出である。
【0256】
「アジュバント」は、本明細書で使用するとき、抗原と併用したときに抗原に対する適応免疫応答を促進させる物質を表す。「免疫刺激化合物」は、最終的に免疫応答の適応性成分(例えばB細胞、T細胞)の発達を生じさせる「危険シグナル」を開始するために自然免疫系と特異的に相互作用する物質を表す。免疫刺激化合物は、天然型または合成のいずれかで、dsRNA、リポ多糖、およびCpG DNAなどの病原体関連分子パターン(PAMP)を含む。免疫刺激化合物は、トール様受容体(TLR)、NOD様受容体、RIG-1またはMDA-5受容体、またはC-型レクチン受容体、あるいはSTING経路を含む様々な自然免疫受容体のアゴニストである。
【0257】
「薬学的に許容可能な担体」、「薬学的に許容可能な賦形剤」、「生理学的に許容可能な担体」、または「生理学的に許容可能な賦形剤」という用語は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、あるいは封入材料など、薬学的に許容可能な材料、組成物、または溶媒を表す。化合物は、医薬製剤の他の成分と適合可能という意味で「薬学的に許容可能」な可能性がある。化合物はさらに、合理的なベネフィット・リスク比と比例して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、あるいはその他の問題または合併症がないヒトおよび動物の組織または器官に接して使用するのに適切な場合がある。Remingtonによる「The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition」、「Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,PA,2005」、「Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th Edition」、Roweら編「The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2005」、「Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd Edition」、AshおよびAsh編「Gower Publishing Company:2007」、「Pharmaceutical Preformulation and Formulation,Gibson Ed.,CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2004」を参照されたい。
【0258】
「医薬組成物」という用語は、本明細書に開示される化合物と、希釈剤または担体などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、生物体への化合物の投与を容易にすることができる。化合物投与のあらゆる技法が当該技術分野に存在しており、経口投与、注射、エアロゾル投与、非経口投与、および局所投与が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で使用される章の見出しは、単に構成上の目的のために付したものであり、記載される発明特定事項を制限するものと解釈されるべきではない。
【0259】
VI.実施形態
組成物
本明細書には、下記実施形態による組成物が開示される:
【0260】
実施形態1.除核されており抗ウイルス薬を含む細胞を含む組成物。
【0261】
実施形態2.抗ウイルス薬が、ウイルス抗原、ウイルス、またはウイルス抗原に特異的な抗体を弱毒化したものである、実施形態1に記載の組成物。
【0262】
実施形態3.ウイルス抗原が、ウイルスタンパク質、ペプチドフラグメント、核酸、または糖部であり、ウイルス抗原に特異的な抗体が、ウイルスタンパク質、ペプチドフラグメント、核酸、または糖部に対して特異的である、実施形態2に記載の組成物。
【0263】
実施形態4.細胞が、抗ウイルス薬のin vivoでのタンパク質合成またはタンパク質分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む、実施形態2に記載の組成物。
【0264】
実施形態5.1または複数の細胞内小器官が、ゴルジ体、リボソーム、小胞体から選択される、実施形態4に記載の組成物。
【0265】
実施形態6.細胞直径が、長さ約1マイクロメートル~100マイクロメートルである、実施形態1から5のいずれかに記載の組成物。
【0266】
実施形態7.細胞が幹細胞である、実施形態1から6のいずれかに記載の組成物。
【0267】
実施形態8.幹細胞が間葉系幹細胞または人工多能性幹細胞である、実施形態7に記載の組成物。
【0268】
実施形態9.間葉系幹細胞が、脂肪組織または骨から得られる、実施形態8に記載の組成物。
【0269】
実施形態10.人工多能性幹細胞が、尿、唾液、頭髪、皮膚、または糞便から得られる、実施形態8に記載の組成物。
【0270】
実施形態11.ウイルス抗原、または該ウイルス抗原に特異的な抗体は、細胞の表面にて発現されるか、分泌性である、実施形態2から10のいずれかに記載の組成物。
【0271】
実施形態12.ウイルスのウイルス抗原が、化学リンカー、ペプチドリンカー、またはポリマーから選択されるリンカーにより細胞の表面に固着される、実施形態1から11のいずれかに記載の組成物。
【0272】
実施形態13.抗ウイルス薬が、
b)二本鎖(ds)DNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス)、
c)一本鎖(ss)DNAウイルス(+鎖または「センス」)DNA(例えば、パルボウイルス)、
d)dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス)、
e)(+)ssRNAウイルス(+鎖またはセンス)RNA(例えば、ピコルナウイルス、トガウイルス)、
f)(-)ssRNAウイルス(-鎖またはアンチセンス)RNA(例えば、オルソミクソウイルス、ラブドウイルス)、
g)生活環にDNA中間体を伴うssRNA-RTウイルス(+鎖またはセンス)RNA(例えば、レトロウイルス)、または
h)生活環にRNA中間体を伴うdsDNA-RTウイルスDNA(例えば、ヘパドナウイルス)
から選択されるウイルスに対して特異的であるか、またはこのウイルスから得られる、実施形態1から12のいずれかに記載の組成物。
【0273】
実施形態14.抗ウイルス薬が、呼吸系ウイルス、皮膚ウイルス、食品媒介型ウイルス、性感染症ウイルス、または腫瘍溶解性ウイルス、あるいはそれらの組合せから得られる、実施形態1から13のいずれかに記載の組成物。
【0274】
実施形態15.呼吸系ウイルスが、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸系発疹ウイルス、およびコロナウイルスから選択される、実施形態14に記載の組成物。
【0275】
実施形態16.皮膚ウイルスが、伝染性軟属腫、単純ヘルペスウイルス-1、および水痘-帯状疱疹ウイルスから選択される、実施形態14に記載の組成物。
【0276】
実施形態17.食品媒介型ウイルスが、A型肝炎、ノロウイルス、およびロタウイルスから選択される、実施形態14に記載の組成物。
【0277】
実施形態18.性感染症ウイルスが、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎、陰部ヘルペス、およびヒト免疫不全ウイルスから選択される、実施形態14に記載の組成物。
【0278】
実施形態19.腫瘍溶解性ウイルスが、ヒトパピローマウイルス感染症またはB型肝炎である、実施形態14に記載の組成物。
【0279】
実施形態20.リンカーが、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含む、実施形態12に記載の組成物。
【0280】
実施形態21.ウイルス抗原が、細胞に発現される膜貫通ペプチドである、実施形態3に記載の組成物。
【0281】
実施形態22.ウイルス抗原がヒトに対し免疫原性である、実施形態3から21のいずれかに記載の組成物。
【0282】
実施形態23.ウイルス抗原が、コロナウイルスから得られるペプチドである、実施形態3から22のいずれかに記載の組成物。
【0283】
実施形態24.コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)またはその変異体である、実施形態23に記載の組成物。
【0284】
実施形態25.ペプチドが、コロナウイルスから得られるスパイクタンパク質、膜タンパク質、または核タンパク質から選択される、実施形態23または24に記載の組成物。
【0285】
実施形態26.細胞が、ペプチドをコードするmRNAを含む、実施形態25に記載の組成物。
【0286】
実施形態27.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも80%同一であるmRNA配列を含む、実施形態26に記載の組成物。
【0287】
実施形態28.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも85%同一であるmRNA配列を含む、実施形態26に記載の組成物。
【0288】
実施形態29.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも90%同一であるmRNA配列を含む、実施形態26に記載の組成物。
【0289】
実施形態30.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるmRNA配列を含む、実施形態26に記載の組成物。
【0290】
実施形態31.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも100%同一であるmRNA配列を含む、実施形態26に記載の組成物。
【0291】
実施形態32.ペプチドが、配列番号2または8に対し少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態23から26のいずれかに記載の組成物。
【0292】
実施形態33.mRNAの半減期が3~5日である、実施形態26から32に記載の組成物。
【0293】
実施形態34.mRNAが、アルブミンペプチドを含む融合タンパク質をコードする、実施形態26から32のいずれかに記載の組成物。
【0294】
実施形態35.mRNAが、免疫変調成分を含む融合タンパク質をコードする、実施形態26から32のいずれかに記載の組成物。
【0295】
実施形態36.免疫変調成分が、対象における免疫応答の活性化因子である、実施形態35に記載の組成物。
【0296】
実施形態37.免疫変調成分が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)またはサイトカイン、あるいはそれらの組合せである、実施形態36に記載の組成物。
【0297】
実施形態38.細胞が、1または複数のホーミング受容体をさらに含む、実施形態1から37のいずれかに記載の組成物。
【0298】
実施形態39.1または複数のホーミング受容体が、化学リンカー、ペプチドリンカー、またはポリマーから選択されるリンカーにより細胞の表面に固着される、実施形態38に記載の組成物。
【0299】
実施形態40.リンカーが、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含む、実施形態39に記載の組成物。
【0300】
実施形態41.1または複数のホーミング受容体が細胞の表面に発現される、実施形態38に記載の組成物。
【0301】
実施形態42.1または複数のホーミング受容体が、細胞の表面上での1または複数のホーミング受容体の発現を増大させるように遺伝子組換えされている、実施形態41に記載の組成物。
【0302】
実施形態43.1または複数のホーミング受容体が、リンパ組織中の1または複数の細胞上に発現される1または複数のリガンドに対し特異的である、実施形態38から42のいずれかに記載の組成物。
【0303】
実施形態44.リンパ組織中の1または複数の細胞が、内皮細胞、リンパ球、マクロファージ、または細網細胞、あるいはそれらの組合せを含む、実施形態43に記載の組成物。
【0304】
実施形態45.1または複数のホーミング受容体が、同じものでない2つ以上のリガンドに対し特異的な2つ以上のホーミング受容体を含む、実施形態38から44のいずれかに記載の組成物。
【0305】
実施形態46.1または複数のホーミング受容体が、C-X-Cケモカイン受容体3型(CXCR3)、ロイコシアリン(CD43)、CD44抗原(CD44)、C-Cケモカイン受容体7型(CCR7)、L-セレクチン(CD62L)、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、または最晩期抗原-4(VLA4)から選択される、実施形態38から45のいずれかに記載の組成物。
【0306】
実施形態47.1または複数のホーミング受容体が、L-セレクチン(CD62L)およびC-Cケモカイン受容体7型(CCR7)を含む、実施形態38から46のいずれかに記載の組成物。
【0307】
実施形態48.1または複数のホーミング受容体が、リンパ組織の内皮細胞中に発現されるリガンドに対し特異的であり、組成物を対象に投与したとき、ウイルス抗原が、コロナウイルスに対する対象の免疫応答を活性化させるのに有効である、実施形態38から46のいずれかに記載の組成物。
【0308】
実施形態49.細胞が、1または複数の免疫変調成分をさらに含む、実施形態1から38のいずれかに記載の組成物。
【0309】
実施形態50.1または複数の免疫変調成分が、細胞の表面に固着される、実施形態49に記載の組成物。
【0310】
実施形態51.1または複数の免疫変調成分が、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含むリンカーを使用して、細胞の表面に固着される、実施形態50に記載の組成物。
【0311】
実施形態52.1または複数の免疫変調成分が細胞の表面に発現される、実施形態49から51のいずれかに記載の組成物。
【0312】
実施形態53.1または複数の免疫変調成分が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、リンホトキシンα(LTA)、リンホトキシンβ(LTB)、TNFスーパーファミリーメンバー4(TNFSF4)、CD40リガンド(CD40LG)、fasリガンド(FASLG)、CD70分子(CD70)、TNFスーパーファミリーメンバー8(TNFSF8)、TNFスーパーファミリーメンバー9(TNFSF9)、TNFスーパーファミリーメンバー10(TNFSF10)、TNFスーパーファミリーメンバー11(TNFSF11)、TNFスーパーファミリーメンバー12(TNFSF12)、TNFスーパーファミリーメンバー13(TNFSF13)、TNFスーパーファミリーメンバー13b(TNFSF13B)、TNFスーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)、TNFスーパーファミリーメンバー15(TNFSF15)、TNFスーパーファミリー18(TNFSF18)、エクトジスプラシンA(EDA)、サイトカイン、およびウイルス抗原タンパク質からなる群から選択される、実施形態49から52のいずれかに記載の組成物。
【0313】
実施形態54.1または複数の免疫変調成分が、アルブミンペプチドを含む融合タンパク質である、実施形態49から53のいずれかに記載の組成物。
【0314】
実施形態55.単離される、実施形態1から54のいずれかに記載の組成物。
【0315】
実施形態56.精製される、実施形態1から54のいずれかに記載の組成物。
【0316】
実施形態57.懸濁液、または細胞培養液、あるいはその両方に複数の細胞を含む、実施形態1から54のいずれかに記載の組成物。
【0317】
実施形態58.組成物が凍結保存されるか、既に少なくとも48時間凍結保存されている、実施形態1から57のいずれかに記載の組成物。
【0318】
実施形態59.実施形態1から58のいずれかに記載の組成物を送達する方法であって、送達を必要とする対象に組成物を全身送達または直接送達により投与する工程を含む組成物。
【0319】
実施形態60.全身送達が、静脈内送達または吸入を含み、直接送達が、筋肉内送達、腹腔内送達、およびリンパ節内送達を含む、実施形態59に記載の方法。
【0320】
実施形態61.送達後、組成物を含む生ウイルスにより対象を感染症から実質的に免疫化する工程をさらに含む、実施形態59または60に記載の方法。
【0321】
実施形態62.対象のウイルス感染症を予防する方法であって、実施形態1から58の組成物を対象に投与することで、組成物を含む生ウイルスにより対象を感染症から実質的に免疫化する工程を含む方法。
【0322】
実施形態63.対象の急性ウイルス感染症を処置する方法であって、実施形態1から58に記載の組成物を対象に投与することで、対象のウイルス負荷をへらす工程を含む方法。
【0323】
実施形態64.対象におけるコロナウイルスにより生じる疾患を予防する方法であって、実施形態1から58のいずれかに記載の組成物を対象に投与することで、コロナウイルスによる生じる疾患を予防する工程を含む方法。
【0324】
実施形態65.対象におけるコロナウイルスにより生じる疾患を処置する方法であって、実施形態1から58のいずれかに記載の組成物を対象に投与することで、コロナウイルスによる生じる疾患を処置する工程を含む方法。
【0325】
実施形態66.疾患が、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)である、実施形態64および65に記載の方法。
【0326】
実施形態67.
(a)4℃で少なくとも48時間、懸濁液に貯蔵された組成物を受け取る工程であって、該組成物の生体活性は遅くなっているか停止されている、工程と、
(b)懸濁液から組成物を除去することで、組成物の生体活性を回復する工程と
をさらに含む、実施形態59から66のいずれかに記載の方法。
【0327】
製造方法
本明細書には、下記実施形態による、細胞質体を利用して組成物を産生する方法が開示される:
【0328】
実施形態1.組成物を製造する方法であって、
(a)第1のウイルス抗原または抗ウイルスの抗体をコードする第1の核酸を親細胞に導入する工程であって、親細胞は、
i)核、および
ii)タンパク質合成またはタンパク質分泌のための1または複数の細胞内小器官
を含む、工程と、
(b)親幹細胞から核を機械的に除去して除核幹細胞を産生する工程であって、除核幹細胞は1または複数の細胞内小器官を含む、工程と
を含む方法。
【0329】
実施形態2.組成物を製造する方法であって、
(a)第1のウイルス抗原または抗ウイルス抗体をコードする第1の核酸を除核幹細胞に導入する工程であって、除核幹細胞は、第1のウイルス抗原または抗ウイルス抗体のタンパク質合成またはタンパク質分泌のための1または複数の細胞内小器官を含む、工程と、
(b)除核幹細胞中に第1のウイルス抗原または抗ウイルス抗体を発現する工程と
を含む方法。
【0330】
実施形態3.第1のウイルス抗原が、除核幹細胞の表面に発現される、実施形態1および2に記載の方法。
【0331】
実施形態4.第1のウイルス抗原または抗ウイルス抗体が分泌性である、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0332】
実施形態5.懸濁液の凍結温度未満の温度で少なくとも24時間、48時間、または96時間、除核細胞を懸濁液に貯蔵する工程をさらに含む、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
【0333】
実施形態6.第2のウイルス抗原をコードする第2の核酸を導入する工程であって、第1の核酸と第2の核酸は同一ではなく、第1のウイルス抗原と第2のウイルス抗原は同一ではない、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
【0334】
実施形態7.第1のウイルス抗原とは異なる複数のウイルス抗原をコードする複数の核酸を導入する工程をさらに含む、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
【0335】
実施形態8.核酸がメッセンジャーRNA(mRNA)である、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
【0336】
実施形態9.核酸がDNAである、実施形態1から8のいずれかに記載の方法。
【0337】
実施形態10.第1のウイルス抗原が哺乳動物から得られる、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
【0338】
実施形態11.抗ウイルス抗体がコロナウイルスに対し特異的である、実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
【0339】
実施形態12.第1のウイルス抗原が、コロナウイルスから得られる弱毒化ウイルス粒子である、実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
【0340】
実施形態13.第1のウイルス抗原が、化学リンカー、ペプチドリンカー、またはポリマーから選択されるリンカーにより除核幹細胞の表面に固着される、実施形態1から12のいずれかに記載の方法。
【0341】
実施形態14.リンカーが、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含む、実施形態13に記載の方法。
【0342】
実施形態15.第1のウイルス抗原が、除核幹細胞中で発現される膜貫通ペプチドである、実施形態1から14のいずれかに記載の方法。
【0343】
実施形態16.第1のウイルス抗原がヒトに対し免疫原性である、実施形態1から15のいずれかに記載の方法。
【0344】
実施形態17.第1のウイルス抗原が、コロナウイルスから得られるペプチドである、実施形態1から16のいずれかに記載の方法。
【0345】
実施形態18.ペプチドが、コロナウイルスから得られるスパイクタンパク質、膜タンパク質、または核タンパク質から選択される、実施形態17に記載の方法。
【0346】
実施形態19.コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)またはその変異体である、実施形態18に記載の方法。
【0347】
実施形態20.除核幹細胞が、ペプチドをコードするmRNAを含む、実施形態17から19のいずれかに記載の方法。
【0348】
実施形態21.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも80%同一であるmRNA配列を含む、実施形態20に記載の方法。
【0349】
実施形態22.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも85%同一であるmRNA配列を含む、実施形態20に記載の方法。
【0350】
実施形態23.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも90%同一であるmRNA配列を含む、実施形態20に記載の方法。
【0351】
実施形態24.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるmRNA配列を含む、実施形態20に記載の方法。
【0352】
実施形態25.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも100%同一であるmRNA配列を含む、実施形態20に記載の方法。
【0353】
実施形態26.ペプチドが、配列番号2に対し少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態17から20のいずれかに記載の方法。
【0354】
実施形態27.mRNAの半減期が3~5日である、実施形態20から26のいずれかに記載の方法。
【0355】
実施形態28.mRNAが、アルブミンペプチドを含む融合タンパク質をコードする、実施形態20から26のいずれかに記載の方法。
【0356】
実施形態29.mRNAが、免疫変調成分を含む融合タンパク質をコードする、実施形態20から26のいずれかに記載の方法。
【0357】
実施形態30.免疫変調成分が、対象における免疫応答の活性化因子である、実施形態29に記載の方法。
【0358】
実施形態31.免疫変調成分が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)またはサイトカイン、あるいはそれらの組合せである、実施形態30に記載の方法。
【0359】
実施形態32.除核幹細胞が、1または複数のホーミング受容体をさらに含む、実施形態1から31のいずれかに記載の方法。
【0360】
実施形態33.1または複数のホーミング受容体が、化学リンカー、ペプチドリンカー、またはポリマーから選択されるリンカーにより除核幹細胞の表面に固着される、実施形態32に記載の方法。
【0361】
実施形態34.リンカーが、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含む、実施形態33に記載の方法。
【0362】
実施形態35.1または複数のホーミング受容体が、除核幹細胞の表面に発現される、実施形態32に記載の方法。
【0363】
実施形態36.1または複数のホーミング受容体が、除核幹細胞の表面上での1または複数のホーミング受容体の発現を増大させるように遺伝子組換えされている、実施形態32から35のいずれかに記載の方法。
【0364】
実施形態37.1または複数のホーミング受容体が、リンパ組織中の1または複数の細胞上に発現される1または複数のリガンドに対し特異的である、実施形態32から36のいずれかに記載の方法。
【0365】
実施形態38.リンパ組織中の1または複数の細胞が、内皮細胞、リンパ球、マクロファージ、または細網細胞、あるいはそれらの組合せから選択される、実施形態37に記載の方法。
【0366】
実施形態39.1または複数のホーミング受容体が、同じものでない2つ以上のリガンドに対し特異的な2つ以上のホーミング受容体を含む、実施形態32から38のいずれかに記載の方法。
【0367】
実施形態40.1または複数のホーミング受容体が、C-X-Cケモカイン受容体3型(CXCR3)、ロイコシアリン(CD43)、CD44抗原(CD44)、C-Cケモカイン受容体7型(CCR7)、L-セレクチン(CD62L)、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、または最晩期抗原-4(VLA4)から選択される、実施形態32から39のいずれかに記載の方法。
【0368】
実施形態41.1または複数のホーミング受容体が、L-セレクチン(CD62L)およびC-Cケモカイン受容体7型(CCR7)を含む、実施形態32から40のいずれかに記載の方法。
【0369】
実施形態42.1または複数のホーミング受容体が、リンパ組織の内皮細胞中に発現されるリガンドに対し特異的であり、ウイルス抗原を対象に投与したとき、ウイルス抗原が、コロナウイルスに対する対象の免疫応答を活性化させるのに有効である、実施形態32から41のいずれかに記載の方法。
【0370】
実施形態43.除核幹細胞が、1または複数の免疫変調成分をさらに含む、実施形態1から42のいずれかに記載の方法。
【0371】
実施形態44.1または複数の免疫変調成分が、除核幹細胞の表面に固着される、実施形態43に記載の方法。
【0372】
実施形態45.1または複数の免疫変調成分が、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含むリンカーを使用して、除核幹細胞の表面に固着される、実施形態44に記載の方法。
【0373】
実施形態46.1または複数の免疫変調成分が、除核幹細胞の表面に発現される、実施形態43から45のいずれかに記載の方法。
【0374】
実施形態47.1または複数の免疫変調成分が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、リンホトキシンα(LTA)、リンホトキシンβ(LTB)、TNFスーパーファミリーメンバー4(TNFSF4)、CD40リガンド(CD40LG)、fasリガンド(FASLG)、CD70分子(CD70)、TNFスーパーファミリーメンバー8(TNFSF8)、TNFスーパーファミリーメンバー9(TNFSF9)、TNFスーパーファミリーメンバー10(TNFSF10)、TNFスーパーファミリーメンバー11(TNFSF11)、TNFスーパーファミリーメンバー12(TNFSF12)、TNFスーパーファミリーメンバー13(TNFSF13)、TNFスーパーファミリーメンバー13b(TNFSF13B)、TNFスーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)、TNFスーパーファミリーメンバー15(TNFSF15)、TNFスーパーファミリー18(TNFSF18)、エクトジスプラシンA(EDA)、サイトカイン、およびウイルス抗原タンパク質からなる群から選択される、実施形態43から46のいずれかに記載の組成物。
【0375】
実施形態48.1または複数の免疫変調成分が、アルブミンペプチドを含む融合タンパク質である、実施形態43から47のいずれかに記載の方法。
【0376】
実施形態49.除核幹細胞を単離する工程をさらに含む、実施形態1から48のいずれかに記載の方法。
【0377】
実施形態50.除核幹細胞を精製する工程をさらに含む、実施形態1から48のいずれかに記載の方法。
【0378】
実施形態51.除核幹細胞が、懸濁液、または細胞培養液、あるいはその両方における複数の除核幹細胞である、実施形態1から48のいずれかに記載の方法。
【0379】
実施形態52.除核幹細胞を少なくとも48時間凍結保存する工程をさらに含む、実施形態1から48のいずれかに記載の方法。
【0380】
実施形態53.対象におけるコロナウイルスにより生じる疾患を予防する方法であって、実施形態1から48のいずれかに記載の組成物を対象に投与することで、コロナウイルスによる生じる疾患を予防する工程を含む方法。
【0381】
実施形態54.対象におけるコロナウイルスにより生じる疾患を処置する方法であって、実施形態1から48のいずれかに記載の組成物を対象に投与することで、コロナウイルスによる生じる疾患を処置する工程を含む方法。
【0382】
実施形態55.疾患が、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)である、実施形態53および54に記載の方法。
【0383】
実施形態56.
(a)4℃で少なくとも48時間、懸濁液に貯蔵された除核幹細胞を受け取る工程であって、該除核幹細胞の生体活性は遅くなっているか停止されている、工程と、
(b)懸濁液から除核幹細胞を除去することで、除核幹細胞の生体活性を回復する工程と
をさらに含む、実施形態1から55のいずれかに記載の方法。
【0384】
ウイルス捕捉方法
実施形態1.対象の病原体を取り除く方法であって、
(a)病原体を取り除くことを必要とする対象に、実質的に核を含まない複数の細胞を投与する工程と、
(b)対象の組織中の病原体を、
i.(a)で対象に投与した複数の細胞のin vivo感染症を病原体により許容すること、および
ii.複数の細胞が感染した後、病原体の伝播を防止すること、
iii.食作用により対象から複数の細胞を除去することで対象から病原体を排除すること
により隔離する工程と
を含む方法。
【0385】
実施形態2.多くの病原体が、(a)での複数の細胞の投与に対して用量依存的な形で減少する、実施形態1に記載の方法。
【0386】
実施形態3.複数の細胞が、1または複数の免疫変調成分を発現し、1または複数の免疫変調成分が、複数の細胞中の1個の細胞の表面に発現されるか、複数の細胞中の1個の細胞により分泌される、実施形態1または2に記載の方法。
【0387】
実施形態4.1または複数の免疫変調成分が、複数の細胞中の1個の細胞の表面に固着される、実施形態3に記載の方法。
【0388】
実施形態5.1または複数の免疫変調成分が、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含むリンカーを使用して、細胞の表面に固着される、実施形態4に記載の方法。
【0389】
実施形態6.1または複数の免疫変調成分が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、リンホトキシンα(LTA)、リンホトキシンβ(LTB)、TNFスーパーファミリーメンバー4(TNFSF4)、CD40リガンド(CD40LG)、fasリガンド(FASLG)、CD70分子(CD70)、TNFスーパーファミリーメンバー8(TNFSF8)、TNFスーパーファミリーメンバー9(TNFSF9)、TNFスーパーファミリーメンバー10(TNFSF10)、TNFスーパーファミリーメンバー11(TNFSF11)、TNFスーパーファミリーメンバー12(TNFSF12)、TNFスーパーファミリーメンバー13(TNFSF13)、TNFスーパーファミリーメンバー13b(TNFSF13B)、TNFスーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)、TNFスーパーファミリーメンバー15(TNFSF15)、TNFスーパーファミリー18(TNFSF18)、エクトジスプラシンA(EDA)、1または複数のサイトカイン、およびウイルス抗原タンパク質からなる群から選択される。
【0390】
実施形態7.1または複数のサイトカインが、インターロイキン10およびインターロイキン12から選択される、実施形態6に記載の方法。
【0391】
実施形態8.複数の細胞が、標的組織に対し特異的な1または複数のホーミング受容体を発現するように操作され、1または複数のホーミング受容体が、複数の細胞中の1個の細胞の表面に発現されるか、複数の細胞中の1個の細胞により発現される、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
【0392】
実施形態9.標的組織が肺組織またはリンパ組織である、実施形態8に記載の方法。
【0393】
実施形態10.1または複数のホーミング受容体が、リンパ組織中で、内皮細胞、リンパ球、マクロファージ、または細網細胞、あるいはそれらの組合せを標的とする、実施形態9に記載の方法。
【0394】
実施形態11.1または複数のホーミング受容体が、化学リンカー、ペプチドリンカー、またはポリマーから選択されるリンカーにより、複数の細胞中の1個の細胞の表面に固着される、実施形態8から10のいずれかに記載の方法。
【0395】
実施形態12.リンカーが、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含む、実施形態11に記載の方法。
【0396】
実施形態13.1または複数のホーミング受容体が、複数の細胞中の1個の細胞の表面上での1または複数のホーミング受容体の発現を増大させるように遺伝子組換えされている、実施形態8から12のいずれかに記載の方法。
【0397】
実施形態14.1または複数のホーミング受容体が、同じものでない2つ以上の標的組織に対し特異的な2つ以上のホーミング受容体を含む、実施形態8から13のいずれかに記載の方法。
【0398】
実施形態15.1または複数のホーミング受容体が、C-X-Cケモカイン受容体3型(CXCR3)、ロイコシアリン(CD43)、CD44抗原(CD44)、C-Cケモカイン受容体7型(CCR7)、L-セレクチン(CD62L)、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、または最晩期抗原-4(VLA4)から選択される、実施形態8から14のいずれかに記載の方法。
【0399】
実施形態16.複数の細胞中の1個の細胞がウイルス抗原を含む、実施形態1に記載の方法。
【0400】
実施形態17.ウイルス抗原が、複数の細胞中の1個の細胞の表面に発現される、実施形態16に記載の方法。
【0401】
実施形態18.ウイルス抗原が、化学リンカー、ペプチドリンカー、ポリマーから選択されるリンカーにより、複数の細胞中の1個の細胞の表面に固着される、実施形態16に記載の方法。
【0402】
実施形態19.リンカーが、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含む、実施形態18に記載の方法。
【0403】
実施形態20.ウイルス抗原が、複数の細胞中の1個の細胞中に発現される膜貫通ペプチドである、実施形態16から19のいずれかに記載の方法。
【0404】
実施形態21.ウイルス抗原がヒトに対し免疫原性である、実施形態16から20のいずれかに記載の方法。
【0405】
実施形態22.ウイルス抗原が、コロナウイルスから得られるペプチドである、実施形態16から21のいずれかに記載の方法。
【0406】
実施形態23.ペプチドが、コロナウイルスから得られるスパイクタンパク質、膜タンパク質、または核タンパク質から選択される、実施形態22に記載の方法。
【0407】
実施形態24.コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)またはその変異体である、実施形態23に記載の方法。
【0408】
実施形態25.複数の細胞中の1個の細胞が、ペプチドをコードするmRNAを含む、実施形態22から24のいずれかに記載の方法。
【0409】
実施形態26.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも80%同一であるmRNA配列を含む、実施形態25に記載の方法。
【0410】
実施形態27.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも85%同一であるmRNA配列を含む、実施形態25に記載の方法。
【0411】
実施形態28.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも90%同一であるmRNA配列を含む、実施形態25に記載の方法。
【0412】
実施形態29.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるmRNA配列を含む、実施形態25に記載の方法。
【0413】
実施形態30.mRNAが、配列番号1に対し少なくとも100%同一であるmRNA配列を含む、実施形態25に記載の方法。
【0414】
実施形態31.ペプチドが、配列番号2に対し少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態22から25のいずれかに記載の方法。
【0415】
実施形態32.mRNAの半減期が3~5日である、実施形態25から31のいずれかに記載の方法。
【0416】
実施形態33.mRNAが、アルブミンペプチドを含む融合タンパク質をコードする、実施形態25から31のいずれかに記載の方法。
【0417】
実施形態34.mRNAが、免疫変調成分を含む融合タンパク質をコードする、実施形態25から31のいずれかに記載の方法。
【0418】
実施形態35.免疫変調成分が、対象における免疫応答の活性化因子である、実施形態34に記載の方法。
【0419】
実施形態36.免疫変調成分が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)またはサイトカイン、あるいはそれらの組合せである、実施形態34に記載の方法。
【0420】
実施形態37.病原体が、呼吸系ウイルス、皮膚ウイルス、食品媒介型ウイルス、性感染症ウイルス、または腫瘍溶解性ウイルス、あるいはそれらの組合せから選択される生ウイルスである、実施形態1から36のいずれかに記載の方法。
【0421】
実施形態38.呼吸系ウイルスが、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸系発疹ウイルス、およびコロナウイルスから選択される、実施形態37に記載の方法。
【0422】
実施形態39.コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)またはその変異体である、実施形態38に記載の方法。
【0423】
実施形態40.皮膚ウイルスが、伝染性軟属腫、単純ヘルペスウイルス-1、および水痘-帯状疱疹ウイルスから選択される、実施形態37に記載の方法。
【0424】
実施形態41.食品媒介型ウイルスが、A型肝炎、ノロウイルス、およびロタウイルスから選択される、実施形態37に記載の方法。
【0425】
実施形態42.性感染症ウイルスが、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎、陰部ヘルペス、およびヒト免疫不全ウイルスから選択される、実施形態37に記載の方法。
【0426】
実施形態43.腫瘍溶解性ウイルスが、ヒトパピローマウイルス感染症またはB型肝炎である、実施形態37に記載の方法。
【0427】
実施形態44.(a)における投与が、腹膜内投与、腫瘍内投与、静脈内投与、リンパ内投与、筋肉内投与、または吸入である、実施形態1から43のいずれかに記載の方法。
【0428】
実施形態45.病原体が、
a)二本鎖(ds)DNAウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス)、
b)一本鎖(ss)DNAウイルス(+鎖または「センス」)DNA(例えば、パルボウイルス)、
c)dsRNAウイルス(例えば、レオウイルス)、
d)(+)ssRNAウイルス(+鎖またはセンス)RNA(例えば、ピコルナウイルス、トガウイルス)、
e)(-)ssRNAウイルス(-鎖またはアンチセンス)RNA(例えば、オルソミクソウイルス、ラブドウイルス)、
f)生活環にDNA中間体を伴うssRNA-RTウイルス(+鎖またはセンス)RNA(例えば、レトロウイルス)、または
g)生活環にRNA中間体を伴うdsDNA-RTウイルスDNA(例えば、ヘパドナウイルス)
から選択される生ウイルスである、実施形態1に記載の方法。
【0429】
実施形態46.病原体が、細菌、ウイルス、寄生虫、フグ、自己抗体、抗体、劇毒物、毒性物質、またはそれらの組合せである、実施形態1から36のいずれかに記載の方法。
【0430】
実施形態47.
(a)4℃で少なくとも48時間、懸濁液に貯蔵された複数の細胞を受け取る工程であって、該複数の細胞の生体活性は遅くなっているか停止されている、工程と、
(b)懸濁液から複数の細胞を除去することで、複数の細胞の生体活性を回復する工程と
をさらに含む、実施形態1から46のいずれかに記載の方法。
【0431】
病原体を捕捉するための組成物
実施形態1.核のない状態での病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する受容体の合成のための1または複数の細胞内小器官を含む無核細胞。
【0432】
実施形態2.1または複数の細胞内小器官が、小胞体またはゴルジ体である、実施形態1に記載の無核細胞。
【0433】
実施形態3.病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する受容体が、無核細胞の表面に結合される、実施形態1から2のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0434】
実施形態4.病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する受容体が、病原体抗原またはその病原体抗原結合性フラグメントに対する受容体を無核細胞の表面に結合させる膜貫通ドメインを含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0435】
実施形態5.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む免疫変調成分をさらに含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0436】
実施形態6.直径が約1マイクロメートル(μm)~100μmの間である、実施形態1から5のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0437】
実施形態7.直径が約8μmである、実施形態6に記載の無核細胞。
【0438】
実施形態8.少なくとも24時間の凍結休眠の後に生存可能である、実施形態1から7のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0439】
実施形態9.少なくとも24時間の凍結保存の後に生存可能である、実施形態1から7のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0440】
実施形態10.凍結保存、凍結休眠、または凍結乾燥される、実施形態1から9のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0441】
実施形態11.単離または精製される、実施形態1から10のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0442】
実施形態12.病原体抗原が、コロナウイルスの抗原である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0443】
実施形態13.コロナウイルスがSARS-CoV-2である、実施形態12に記載の無核細胞。
【0444】
実施形態14.病原体抗原と宿主細胞が産生するその天然受容体との結合を遮断する中和抗体をさらに含む、実施形態1から13のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0445】
実施形態15.1または複数の免疫変調成分をさらに含む、実施形態1から14のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0446】
実施形態16.1または複数の免疫変調成分が、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含むリンカーを使用して、無核細胞の表面に固着される、実施形態15に記載の無核細胞。
【0447】
実施形態17.1または複数の免疫変調成分が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、リンホトキシンα(LTA)、リンホトキシンβ(LTB)、TNFスーパーファミリーメンバー4(TNFSF4)、CD40リガンド(CD40LG)、fasリガンド(FASLG)、CD70分子(CD70)、TNFスーパーファミリーメンバー8(TNFSF8)、TNFスーパーファミリーメンバー9(TNFSF9)、TNFスーパーファミリーメンバー10(TNFSF10)、TNFスーパーファミリーメンバー11(TNFSF11)、TNFスーパーファミリーメンバー12(TNFSF12)、TNFスーパーファミリーメンバー13(TNFSF13)、TNFスーパーファミリーメンバー13b(TNFSF13B)、TNFスーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)、TNFスーパーファミリーメンバー15(TNFSF15)、TNFスーパーファミリー18(TNFSF18)、エクトジスプラシンA(EDA)、1または複数のサイトカイン、およびウイルス抗原タンパク質からなる群から選択される、実施形態15に記載の無核細胞。
【0448】
実施形態18.標的組織に対し特異的な1または複数のホーミング受容体をさらに含む、実施形態1から17のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0449】
実施形態19.1または複数のホーミング受容体が、リンパ組織中で、内皮細胞、リンパ球、マクロファージ、または細網細胞、あるいはそれらの組合せを標的とする、実施形態18に記載の無核細胞。
【0450】
実施形態20.1または複数のホーミング受容体が、化学リンカー、ペプチドリンカー、またはポリマーから選択されるリンカーにより、複数の細胞中の1個の細胞の表面に固着される、実施形態18に記載の無核細胞。
【0451】
実施形態21.リンカーが、グリコシル-ホスファチジルイノシトール(GPI)またはB7-1抗原(B7-1)細胞質尾部を含む、実施形態20に記載の無核細胞。
【0452】
実施形態22.1または複数のホーミング受容体が、C-X-Cケモカイン受容体3型(CXCR3)、ロイコシアリン(CD43)、CD44抗原(CD44)、C-Cケモカイン受容体7型(CCR7)、L-セレクチン(CD62L)、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、または最晩期抗原-4(VLA4)から選択される、実施形態18から21のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0453】
実施形態23.ウイルス抗原を含む、実施形態1から23のいずれか1つに記載の無核細胞。
【0454】
実施形態24.
実施形態1から23のいずれか1つに記載の無核細胞、または複数の実施形態1から23のいずれか1つに記載の無核細胞と、
薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、または担体と
を含む、医薬製剤。
【0455】
実施形態25.対象における病原体による感染症を減らす方法であって、実施形態1から23のいずれか1つに記載の無核細胞、または実施形態24に記載の医薬製剤を対象に投与することにより、細胞中で病原体抗原を有する病原体を捉えて、病原体が細胞内を伝播するのを防止する工程を含む方法。
【0456】
実施形態26.病原体が、投与後14日以下で対象から取り除かれる、実施形態25に記載の方法。
【0457】
実施形態27.無核細胞が、中和抗体を放出することにより、病原体抗原と宿主細胞が産生するその天然受容体との結合を遮断する、実施形態26から27のいずれか1つに記載の方法。
【0458】
実施形態28.無核細胞が、ウイルス抗原を提示することで、対象を病原体による感染症から免疫化する、実施形態26から28のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0459】
VII.実施例
以下の実施例は、例示目的のためだけに含まれるものであり、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0460】
実施例1.コロナウイルスに対する抗ウイルス組成物を産生する方法
弱毒化したコロナウイルス抗原をコードする異種核酸による幹細胞(例えば間葉系幹細胞)のレンチウイルス媒介型トランスフェクションを実施する。次に、実施例7に記載の方法により幹細胞の除核を実施する。細胞表面に弱毒化コロナウイルス抗原を発現する除核幹細胞を、フローサイトメトリーを使用して検証する。弱毒化コロナウイルス抗原を発現する除核を完遂した幹細胞(本実施例では、「細胞質体」と称する)を、既知の方法に従い単離かつ精製する。任意選択で、実施例4で提供する方法を使用して細胞質体を凍結保存する。上述の細胞質体は、コロナウイルス感染症の予防用のワクチンとして有用である。
【0461】
コロナウイルスに対する第2の抗ウイルス組成物を上記と同様の方法を用いて産生するが、弱毒化コロナウイルス抗原の代わりに、コロナウイルスに対する抗体を幹細胞に発現させる。代替的に、または付加的に、エレクトロポレーション(または当該技術分野で公知のこれに匹敵する方法)を使用して、コロナウイルスに対する小分子を除核幹細胞へと充填する。コロナウイルスに対する抗ウイルス抗体および/またはコロナウイルスに対する小分子を発現する除核を完遂した幹細胞(本実施例では、「細胞質体」と称する)を、既知の方法に従い単離かつ精製する。任意選択で、実施例4で提供する方法を使用して細胞質体を凍結保存する。上述の細胞質体は、急性コロナウイルス感染症を処置するのに有用である。
【0462】
実施例2.対象のコロナウイルス感染症の予防
弱毒化コロナウイルスまたはコロナウイルスタンパク質のペプチドフラグメントを発現する、実施例1に記載の抗ウイルス組成物を、静脈内投与のために製剤化する。弱毒化コロナウイルスまたはコロナウイルスタンパク質のペプチドフラグメントは、本明細書に記載の細胞質体に封入されるmRNAからコードしてもよい。いくつかの実施形態では、抗ウイルス組成物は、筋肉内投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、対象には、第1および第2の用量の抗ウイルス組成物を投与する。いくつかの実施形態では、第2の用量の抗ウイルス組成物は、第1の用量の投与の少なくとも1日、2日、3日、4日、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、または4か月後に投与される。この製剤を対象に静脈内投与する。例えば、対象が小児であると、ヒト対象への投与を少なくとも5回実施することとなる。いくつかの実施形態では、対象が2か月齢、4か月齢、6か月齢、15~18か月齢の間、および4~6歳の間であるときに、製剤は対象に投与される。本実施例では、対象は、コロナウイルス感染症から免疫化されるようになる。
【0463】
実施例3.対象の急性コロナウイルス感染症の処置
コロナウイルスに対する抗コロナウイルス抗体(例えば、中和抗体)または小分子を発現する実施例1に記載の抗ウイルス組成物を、静脈内投与のために製剤化する。この製剤は、コロナウイルスに感染したか、感染の疑いのある対象に静脈内投与する。いくつかの実施形態では、投与は1回より多く実施する。例えば、投与は、一定期間(例えば、1年間)にわたり毎日、2日ごと、毎週、2週ごと、毎月、2か月ごとに実施してよい。本実施例では、対象のコロナウイルス感染症が低減する。
【0464】
代替的に、または付加的に、ペイロードのない除核幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)を、静脈内投与のために製剤化する。この製剤は、コロナウイルスに感染したか、感染の疑いのある対象に静脈内投与する。いくつかの実施形態では、投与は1回より多く実施する。例えば、投与は、一定期間(例えば、1年間)にわたり毎日、2日ごと、毎週、2週ごと、毎月、2か月ごとに実施してよい。本実施例では、細胞質体をin vivoでコロナウイルスに感染させると、細胞質体中でコロナウイルスを捕捉するようになる。核を欠いた細胞質体は、コロナウイルスの複製と伝播に必要な遺伝子材料を欠いており、これによりコロナウイルスをさらなる感染症から阻む。本実施例では、コロナウイルス感染症は低減する。
【0465】
実施例4.哺乳動物細胞からの細胞質体の産生
細胞質体は、同種異系または自己のドナー由来細胞から生成されるとともに、疾患の処置に加え診断にも使用可能である。概念実証として、様々な種類の哺乳動物細胞(例えば、間葉系幹細胞、好中球、線維芽細胞、およびナチュラルキラー細胞)の除核効率と回復速度を判定した。細胞培養プレートからの哺乳動物細胞を除去した後、不連続Ficoll勾配の高速遠心分離を使用した密度勾配遠心分離により、哺乳動物細胞を除核した。表1には、懸濁液プロトコルを使用した除核の結果を要約する。除核効率と細胞生存率は、形質転換されたhTERTと初代間葉系幹細胞(MSC)の両方に加え、線維芽細胞および好中球においても最高であった。表2には、接着プロトコルを使用した除核の結果を要約する。除核効率は、間葉系幹細胞とマクロファージの両方において70%を超えていた。この実験が示すところでは、様々な種類の哺乳動物細胞は、本明細書に記載の方法のうちいずれかを使用して除核を受けることができた。
【0466】
【表5】
【0467】
【表6】
【0468】
次に、96時間にわたる細胞質体の生存を判定した。MSCは経時的に増殖した一方、細胞質体は増殖しなかった。代わりに、生存可能な細胞質体における相対的な倍率変化は、96時間で下落する前に72時間は極めて一定のままであった。このため、細胞質体生存は3~4日間に及んだ。大半の細胞系療法を直ちに使用しないとき、凍結保存後の細胞質体の生存度を判定した。驚くことに、凍結保存後の細胞質体の生存度は、凍結保存後のMSCの生存度より高かった。除核直後に播種した細胞質体、および凍結保存から回復した細胞質体は、24時間後に同様の相対的細胞生存度を呈した。この実験が示すところでは、細胞質体の生存は凍結保存による影響を受けなかった。加えて、凍結休眠後の細胞質体の生存度は、凍結休眠後のMSCの生存度と同様であった(図6A)。様々な期間にわたる凍結休眠後に回復した細胞質体は、凍結休眠後に回復したMSCと同様、ボイデン・チャンバ・アッセイにおいて誘導型の移動を受けることができた(図6B
【0469】
次に、細胞の大規模産生をex vivoで設定し、続いて大容量の密度勾配遠心分離と除核を行い、治療用細胞質体を生成する。一実施形態では、治療用細胞質体に、疾患の処置用の治療用カーゴ(例えば、mRNA、薬物、ペプチドなど)を充填する。別の実施形態では、治療用細胞質体は、診断用に直ちに使用するため(例えば、静脈内注射(IV)、腹腔内注射(IP)、組織、またはin vitro用途のため)に調製される。
【0470】
実施例5.細胞質体は細胞小器官を有し、細胞外マトリクスと相互に作用し、細胞生体機能を実施し、カーゴを運ぶ
細胞質体が凍結保存後に生存度を保持することができたかどうかを判定した後、フローサイトメトリー解析を行い、MSC由来の細胞質体の細胞表面マーカープロファイルが骨髄由来のMSCと相違するかどうかを判定した。MSC由来の細胞質体と骨髄由来MSCはともに、CD45、CD90、CD44、CD146、およびCD166の細胞表面発現を維持した。細胞質体は、細胞骨格に付いてこれを再編成し、2Dおよび3Dの培養系中のマトリクスタンパク質上で拡散し、同じまたは異なる起源の細胞間でバイオプロダクトを移行することができるトンネリングナノチューブを形成した。細胞小器官の染色により、ゴルジ、ER、F-アクチン細胞骨格、リソソーム、エンドソーム、微小管、およびミトコンドリアが細胞質体中で無傷のままであったのを認めた。さらに、細胞質体は、in vitroで潜在的な帰巣を呈した。細胞質体は、細胞外マトリクスタンパク質上で容易に移動し、(化学探知を介して)可溶性ケモカイン勾配の方へと指向的に移動した。顕著なことに、精製mRNAにより外因的にトランスフェクトされた細胞質体は、機能的細胞内タンパク質を産生し、こうして、様々な臨床用途および疾患状態に対して開発されている治療用mRNAの用途を模倣することができる。これによりさらに、mRNA翻訳およびタンパク質合成における機構は、核がない場合に細胞質体において正常に作動するため、治療的価値を持つ生体活性分子の産生に使用可能であることが実証される。
【0471】
既知の分泌タンパク質をコードする精製mRNAにより外因的にトランスフェクトされた細胞質体は、調整培養培地において機能的細胞外タンパク質を産生し、これにより、ER/ゴルジおよび分泌経路は核がない場合に細胞質体において正常に作動することが認められる。加えて、分泌タンパク質を含有する細胞質体調整培地を用いたマクロファージおよび内皮細胞の処置は、これらの細胞において重要なシグナル伝達応答を活性化させた。これにより、細胞質体は、治療的価値を持つ分泌タンパク質および生体分子を産生かつ送達するのに新規なビヒクルとして使用可能であるという概念実証を得た。細胞質体には、siRNA、shRNA、mRNA、DNAプラスミド、ペプチド、および化学療法剤を含むがこれらに限定されない様々なカーゴを充填可能である。
【0472】
実施例6.操作された細胞質体は機能細胞表面タンパク質を発現することができる
フローサイトメトリーにより判定すると、CXCR4を発現する操作されたMSC、およびCXCR4を発現する操作されたMSC由来の細胞質体は、同等の量のCXCR4を発現する。操作された細胞質体が機能細胞表面タンパク質を発現できるかどうかを判定するために、CXCR4受容体を発現するMSCおよびMSC由来の細胞質体を、様々な濃度のSDF-1αの方へと移動させた。機能的CXCR4を発現するよう操作されたMSC由来の細胞質体は、SDF-1αの方への遊走可能であり、細胞移動はSDF-1αの濃度が増加するにつれて上昇する。さらに、遊走するMSC由来の細胞質体の数は、CXCR4を発現する遊走するMSCの数よりも多かった。
【0473】
MSC由来の細胞質体は、炎症を起こした血管系への細胞接着を媒介すると知られる機能細胞接着タンパク質を発現するように操作可能である。MSC由来の細胞質体は、治療用細胞のマクロファージ相互作用と食作用を調節すると知られる細胞タンパク質を発現するように操作可能である。
【0474】
実施例7-操作された細胞質体はin vitroとin vivoの両方で機能することができる。
理論に縛られるものではないが、本実施例は、「カーゴ」、例えば外因性mRNA分子を発現するように操作された細胞質体が産生可能であることを示す。図7B図7Cは、MSC由来の細胞質帯が、in vitroおよび静脈内注射後の前臨床マウスにおいて治療レベルの機能的抗炎症性サイトカインインターロイキン10(IL-10)を産生かつ分泌するように操作可能であることを示す。図7Bは、IL-10 mRNAによりトランスフェクトされた細胞質体が、高レベルのIL-10を分泌可能であることを示す。分泌IL-10が活性であるかどうかを判定するために、血清飢餓状態のマクロファージを、未処置のMSC、IL-10を発現するMSC、未処置の細胞質体、およびIL-10を発現する細胞質体から得た調整培地(CM)でインキュベートした。リン酸化STAT3は、IL-10を発現するMSCから得たCMでのインキュベーション後、およびIL-10を発現する細胞質体から得たCMでのインキュベーション後のマクロファージ中で検出されたが、STAT3活性は、未処置のMSCおよび未処置の細胞質体から得たCMでのインキュベーション後にマクロファージ中で検出されなかった(図7C)。細胞質体から分泌されたIL-10がin vivoで検出可能であるかどうかを判定するために、C57Bl/6マウスの後眼窩に、IL-10を発現するMSCまたはMSC由来の細胞質体を注射した。注射の2時間後、血液を採取してIL-10の濃度を判定した。IL-10は、未処置のMSCを注射したマウスの血液中でほとんどまたは全く検出されなかった(図7D)。図7Dに示すように、IL-10を発現するMSC由来の細胞質体を注射したマウスで検出したIL-10の濃度は、未処置のMSCを注射したマウスでの濃度と比較して高かった。
【0475】
これらのデータは、遺伝子操作した細胞質体系細胞療法が、正常組織および病変組織を処置する臨床的に関連性のある治療用サイトカインを産生かつ分泌する可能性を例示する。
【0476】
MSC由来の細胞質体が基底膜を通って侵入可能であるかどうかを判定するために、MSCまたはMSC由来の細胞質体を、24時間かけて基底膜を通って10%FBSへと侵入させた。図8A図8Bに示すように、MSC由来の細胞質体はまさに、10%FBSの存在下で未処置のMSCとして基底膜に侵入するのに効率的であった。注目すべきことに、未処置のMSCは化学遊走物質の不在下で基底膜に侵入可能であったが、MSCで処置した細胞質体は、化学遊走物質の不在下では基底膜にはさほど侵入することができなかった。これらのデータは、MSC由来の細胞質体が基底膜を通って消化かつ侵入可能であることを例示する。これらのデータは、細胞質体系の細胞療法が、組織内でカーゴを運ぶ複合細胞外マトリクス障壁を通って浸透かつ遊走する固有の可能性を例示する。
【0477】
図9A図9Bに示すように、MSC由来の細胞質体は平均直径12μmであり、一方でMSCは平均直径20μmである。MSC由来の細胞質体の体内分布を判定するために、マウスの後眼窩にMSCまたはMSC由来の細胞質体を注射した。図9C図9Dに示すように、肝臓に検出したMSC由来の細胞質体数は、肝臓に検出したMSC数より多かった。これらのデータは、細胞質体系の細胞療法が、広範囲の疾患を処置するために循環に直接送達される可能性を例示する。
【0478】
実施例8.細胞質体を生成する例示的な方法
間葉系幹細胞(MSC)の除核
このプロトコルは、Cell Biologyの1976年14巻の87~93頁にある第7章「Enucleation of Mammalian Cells in Suspension」(Michael H.Wigler,Alfred I.Neugut,I.Bernard Weinstein)から改変したものである。
【0479】
50%フィコール溶液の調製:遮光を施したガラスビーカ中、数グラムの(grams of)フィコール(PM400、GE Healthcare 17-0300-500)を、室温で24時間の連続磁気撹拌により、同等数のミリリットルの超純水(Invitrogen 10977-015)に溶解した。次いで、混合物を75℃で30分間オートクレーブした。混合物を降温した後、再び撹拌して均等な一貫性を確保した。屈折率を屈折計(Reichert 13940000)で測定すると、1.4230~1.4290の範囲内であった。アリコートを-20℃で貯蔵した。
【0480】
2倍のMEMの調製:各50mlの量で、10mLの10X MEM(Gibco、11430-030)、2.94mLの正確な炭酸水素ナトリウム(7.5%、Gibco、25080-094)、1mLの100X Pen-Strep(Gibco 15140-122)、および36mLの超純水(Invitrogen 10977-015)を使用した。次いで、溶液を0.22um膜フラスコ(Olympus 25-227)に通して濾過し、4℃で貯蔵した。
【0481】
除核の前日、20mL MSC培地[MEM 1X(Gibco 12561-056)、16.5%プレミアムFBS(Atlanta Biologics S1150)、1%HEPES 1M(Gibco 15630-80)、1%抗-抗100X(Gibco 15240-062)、1%Glutamax 100X(Gibco 35050-061)]中、15cmプレート(Olympus 25-203)につき2.5MでMSCを蒔いた。次に、サイトカラシンB(Sigma Aldrich C6762)を2倍のMEM(最終濃度1mLにつき2μM)に添加した。
【0482】
フィコール勾配の調製:2倍のCytoBを50%フィコールアリコートに1:1希釈で添加して、25%のフィコールストック濃度を作製した。次に、17%、16%、15%、および12.5%のフィコールを、25%フィコールを適切な体積の1倍のMEM緩衝液(1:1希釈で超純水にサイトカラシンBを添加した2倍のMEM)で希釈することにより作製した。希釈は、COインキュベータ中で少なくとも1時間平衡化し、緩くキャップをして覆った。次いで、フィコール勾配を13.2mL超透明管(Beckman、344059)に注ぎ入れ、COインキュベータ中で一晩(6~18時間)インキュベートした。
【0483】
除核を行う当日、12~25MのMSC(理想的には20M)を集めて除核のために各管に入れた。培地を吸引し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(GIBCO 14190-144)で1回洗浄した。5mLのTrypLE-Select(Gibco、12563011)を各プレートに添加し、最大5分間インキュベートした。細胞の90%を切り離したときに5mLの完全MSC培地を添加し、細胞を集めて50ml管(3~4つのプレート/管)に入れた。次いで、管を1,200rpmで5分間、遠心分離した。ペレットを10mL PBS中で再懸濁した。細胞を計数し、ペレット状にし、12.5%フィコールで再懸濁させた。次に、細胞フィコール混合物を滴下により40umセルストレーナ(Falcon 352340)に通して、新たな50mL管に移した。シリンジを使用して、細胞懸濁液3.2mLを、事前に作製した勾配へと徐々に充填させた。1mLの1X MEMの緩衝液をシリンジにより最終(上部)層で添加した。次いで、管をロータバケットに充填して平衡化し、26,000rpm、31℃、Accel7、Deccel7で60分間、超遠心分離(Beckman、L8M)を行った。遠心分離の終了時、次の3つの層:12.5%の上部に近い層(細胞質体およびデブリ)1、12.5/15%の界面に近い層(細胞質体)、および25%の下部にあるペレット(核体)が存在した。15%を超えるフィコール溶液の層を集め、15ml円錐管に入れた。次いで、集めた層を、4体積を超える温かい無血清MSC培地(すなわち、3mLのフィコール、および最大15mLの培地で満たしたもの)で希釈した。軽く混合した後、混合物を1,200rpmで10分間かけてペレット状にした。温かい無血清MSC培地で3回洗浄した後、実験プロトコルによる培地、例えば、トランスフェクション培地vs遊走培地vs無血清培地vs完全培地で細胞を再懸濁した。12ウェルプレート中、1:2000希釈Vybrant(登録商標)Dyecycle(商標)Green(Molecular Probes V35004)または1:5000希釈Hoechst 33342で完全MSC培地を添加することにより、除核の効率を判定した。小さな体積の各層を各ウェルに添加し、インキュベータ中で10分間かけて付着/染色を行った。集団ごとの陰性細胞質体のパーセンテージを、落射蛍光顕微鏡により判定した。
【0484】
細胞質体mRNAのトランスフェクション
1Mの細胞質体を、温かい無アミノ酸α-MEM完全培地1ml(ThermoFisher12561056、16.5%プレミアムウシ胎仔血清(FBS)、1%Glutamax(Gibco 35050061)、1%HEPES(Gibco 15630080))で懸濁した。1μgのmRNAを、温かいopti-MEMで希釈し、ピペットを用いて少なくとも20回混合した。4μlのリポフェクトアミン-3000(ThermoFisher L300015)を、46μlの温かいopti-MEM(ThermoFisher31985062)に添加し、ピペットを用いて少なくとも20回混合した。mRNAとリポフェクトアミン-3000の比は1:4(w/v)であった。mRNAおよびリポフェクトアミン-3000の希釈物を、ピペットを用いて少なくとも20回混合し、室温で15分間インキュベートした。mRNAおよびリポフェクトアミン-3000の混合物を細胞質体懸濁液に添加してよく混合し、37℃で30分間インキュベートした。細胞が群生するのを防ぐべく、懸濁液を5分ごとに振盪させた。インキュベーション後、細胞を遠心分離し、正常α-MEM完全培地(16.5%プレミアムFBS、1%抗生物質-抗真菌剤、1%Glutamax、1%HEPES)またはPBSに再懸濁させた。
【0485】
細胞質体siRNAのトランスフェクション
1Mの細胞質体を、温かい1mlの無A/A α-MEM完全培地(16.5%プレミアムFBS、1%Glutamax、1%HEPES)で懸濁した。2μlのsiRNAを、温かいopti-MEMで希釈し、ピペットを用いて少なくとも20回混合した。8μlのリポフェクトアミン-3000を、92μlの温かいopti-MEMで希釈し、ピペットを用いて少なくとも20回混合した。siRNAとリポフェクトアミン-3000の比は1:4(v/v)であった。siRNAおよびリポフェクトアミン-3000の希釈物を、ピペットを用いて少なくとも20回混合し、室温で15分間インキュベートした。siRNAおよびリポフェクトアミン-3000の混合物を細胞質体懸濁液に添加してよく混合し、37℃で20分間インキュベートした。細胞が群生するのを防ぐべく、懸濁液を5分ごとに振盪させた。20分間のインキュベーション後、細胞を遠心分離し、正常α-MEM完全培地(16.5%プレミアムFBS、1%抗生物質-抗真菌剤、1%Glutamax、1%HEPES)で再懸濁させた。
【0486】
腫瘍溶解性ウイルスに感染した細胞質体の生成
除核の1日前(通常は除核の18時間前)、2.510^6hTERT-MSCを15cm皿に蒔いた。播種の約2時間後、細胞をPBSで1回洗浄した。次いで、8mLの無血清opti-MEMにより異なるMOI(例えば0.05または0.5)で、細胞をoHSV-GFP(Imanis OV3001)に感染させた。次に、細胞を時折振盪させながら37℃で2時間インキュベートした。次いで、ウイルス接種物を廃棄した。20mLの事前に温めた完全培養培地(α-MEM、16.5%プレミアムFBS、1%抗生物質-抗真菌剤、1%Glutamax、1%HEPES))を各ウェルに添加した。細胞は除核まで37℃でインキュベートした。図11は、親細胞または参照細胞(無核細胞)、および本明細書に記載の除核細胞へと直接ポリペプチド(VSV-GFP)を導入する蛍光画像を例示する。図12は、GFP抗原をコードする腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)によるMSCの感染を例示する。図12Cは、除核されたMSCによる標的癌細胞へのカーゴ(例えばGFPレポータ)の送達増加を例示する。図12Dは、本明細書に記載の除核MSCに接触した標的癌細胞への免疫細胞(例えば、CD8+エフェクターT細胞)の動員増加を例示する。
【0487】
細胞質体中で機能タンパク質を過剰発現するレンチウイルス
標的細胞を、6ウェルプレート中の1つのウェルに1-2×10細胞/ウェルの密度で、または10cmプレート中に0.5-1M MSCで播種した。翌日、濃縮した組換えレンチウイルスを37℃の水槽中で解凍し、解凍直後に水槽から取り出した。次いで、細胞をPBSで3回洗浄した。200μLの無血清遊離培地または2mLの無血清培地(1:1250 SureENTRY)を添加した。標的細胞を6ウェルプレート中、MOI 10:1に感染させた。翌日、ウイルスの上清を除去し、適切な完全成長培地を細胞に添加した。72時間のインキュベーション後、細胞を2×100mm皿の中で二次培養した。安定した細胞株生成のため、適量の選択薬物(すなわち、ピューロマイシン)を添加した。選択の10~15日後、拡張のためにクローンを採集し(picked)、陽性クローンをスクリーニングした。選択した陽性クローンを除核のために拡張させた。上記で概説するように操作した細胞質体を調製した。通常の生化学方法または機能アッセイ、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)、ウエスタンブロット、ボイデン・チャンバ・アッセイにより、細胞質体上での標的タンパク質発現を判定した。
【0488】
細胞質体へのペプチド充填
1ウェルにつき1×10/mlの細胞を、4-チャンバスライドガラス(LabTek IIの4-チャンバスライドガラス、155383)上、完全MSC培地[MEM 1X(Gibco 12561-056)、16.5%プレミアムFBS(Atlanta Biologics S1150)、1% HEPES 1M(Gibco 15630-80)、1%抗-抗100X(Gibco 15240-062)、1%Glutamax 100X(Gibco 3505-061)]に蒔いた。細胞を少なくとも1時間、または一晩中取り付けた。次いで、細胞をPBS(Gibco 14190-144)ですすいだ。Arg9(FAM)(配列番号1154)(10mM、Anaspec、AS-61207)を、完全培地中、1:100(100uM)の完全濃度に希釈した。次いで、細胞質体を1~2時間インキュベートし、PBSで3回すすいだ。Hoechst33342(Invitrogen)を、1:5000の希釈で、完全培地中、少なくとも10分間かけて添加した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、落射蛍光顕微鏡により撮像した。図13は、Arg9と共培養したときの目的のポリペプチドにおけるペプチドの取込みまたは充填の増加を例示する。
【0489】
実施例9.細胞質体はin vivoでより良好な体内分布を呈する
MSCを3D懸滴(3D MSC)中で培養し、次いで除核することで、3D細胞質体を生成した。懸滴によるMSCの3D培養プロトコルは、「Curr Protoc Stem Cell Biol.2014 Feb 6;28:Unit-2B.6.」(Thomas J.Bartosh1 and Joni H.Ylostalo)から改変されている。
【0490】
健康なMSCを、トリプシンにより2D培養したプレートから採取し、143万個の細胞/mlで新鮮なα-MEM(ThermoFisher 12561056)完全培地(16.5%プレミアムFBS、1%抗生物質-抗真菌剤、1%Glutamax、1%HEPES)中で再懸濁させた。15cmプレートの蓋を完全に開き、20mlのPBSをプレートに添加した。マルチチャネルピペットを使用して、一滴につき35μl(約50,000個の細胞/一滴)で、プレートの蓋に液滴を生じさせた。約100~120個の液滴を各蓋に配した。蓋を閉じ、プレートをインキュベータに戻した。液滴を2日間培養後、セルリフタで採取し、集めて15ml管に入れた(管1つにつき約300個の液滴)。管を1,200rpmで5分間遠心分した。上清を除去し、管をPBSで2回洗浄した。次いで、PBSをすべて除去し、新たに解凍した0.25%トリプシン-EDTA(ThermoFisher 25200114)7.5mlを各管に添加した。管を水槽中で4分間インキュベートした。液滴は、ローリテンションチップを備えた1mlピペットにより約10~20回優しくピペッティングし、水槽中でさらに4分間インキュベートした。液滴の大半が分離されるまで、液滴は、ローリテンションチップを備えた1mlピペットにより再度優しくピペッティングした。7.5mlの完全血清培地(GlutaMAX Supplement(Gibco 35050061)、ウシ胎仔血清-Premium Select(Atlanta Biologicals S11550)、HEPES(1M)(Gibco 15630080)、抗生物質-抗真菌剤(100X)(Gibco 15240062))を各管に添加し、管を1,200rpmで10分間遠心分離した。分離した細胞を10mlの完全血清培地で洗浄し、この細胞を5mlの完全血清培地で再懸濁させた。細胞を70μm細胞フィルタに通した後、フィルタを5mlの完全血清培地で洗浄した。細胞を計数し、事前処理した12.5%フィコールにより10M/ml超で再懸濁させた。30~40Mの細胞を各除核管において使用した。続いて、上述の除核プロトコルに従った。
【0491】
DiD標識した正常な2D培養MSC(2D MSC)、3D MSC、または3D細胞質体を、それぞれBalB/Cマウスの後眼窩に注射した。示された組織を注射の24時間後に採取し、DiD標識した細胞をFACSにより解析した。図10A図10Cは、3D培養MSCから3D由来細胞質体の生成の完遂を示すとともに、3D由来細胞質体は、循環への注射後、2D培養細胞と比較して肺捕捉が少なく、末梢器官への体内分布が良好であったことも示す。これは、カーゴを組織へと位置づけて運ぶ治療上の能力を大いに改善すると推測される。
【0492】
実施例10:感染症により生じる疾患を処置する方法
SARS-CoV-2に感染した患者は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の症状を呈し始めた。COVID-19の呼吸器症状として、息切れ、および/または呼吸困難が挙げられる。
【0493】
インターロイキン10(IL-10)のアゴニストを発現する本明細書に記載の細胞質体、またはその一部を含有する、対象のCOVID-19の呼吸器症状を処置するのに十分である医薬製剤を、患者に投与する。本実施例では、細胞質体は、細胞質体のリンパ系への効率的な帰巣を可能にするべくリンパ組織を標的とするホーミング受容体も発現する。細胞質体はさらに、リンパ系への到達前に細胞質体が確実に対象から取り除かれないように、「don’t eat me」シグナルペプチドなどの免疫回避部分も発現する。投与後、対象の呼吸器症状は軽減される。
【0494】
実施例11:腫瘍溶解性ウイルスに感染した細胞質体の生成
除核の1日前(通常、除核の18時間前)、2.510^6のhTERT-MSCを15-cm皿に蒔いた。蒔いてから約2時間後、細胞をPBSで1回洗浄した。次いで、様々なMOI(例えば、0.05または0.5)で、8mLの無血清opti-MEMにより、細胞をoHSV-GFP(Imanis OV3001)に感染させた。次に、細胞をたまに振盪させながら、37℃で2時間インキュベートした。その後、ウイルス接種材料を破棄した。事前に温めた20mL完全培養培地(α-MEM、16.5%Premium FBS、1%Antibiotic-Antimycotic、1%Glutamax、1%HEPES)を各ウェルに添加した。除核を行うまで細胞を37℃でインキュベートした。図11A図11Bは、親細胞または基準細胞(無核細胞)に直接、および本明細書に記載の除核細胞にポリペプチド(VSV-GFP)を導入する蛍光画像を例示する。感染後12時間、MOI0.05でVSV-GFP(矢印)に感染した除核親MSC(上部)とMSC由来無核細胞(下部)との落射蛍光顕微鏡画像は、レポーターペプチドGFPのMSCへの導入を例示した。GFP抗原は無核MSCにより明白かつ強力に発現され、除核細胞におけるウイルス複製と抗原産生が示される。スケールバー=50μm。図11Bは、感染後12時間、MOI0.1で、VSV-GFP(矢頭)に感染したMSC由来の無核細胞の高倍率落射蛍光顕微鏡画像を例示する。核の欠如を例示するために、ローダミンファイロジン(矢印)と各染色DAPIを使用して、除核細胞のF-アクチンフィラメントをさらに染色した。図11は、細胞質体が抗原ペプチドなどの外因性ペプチドを発現するために腫瘍溶解性ウイルスで操作されて形質転換することができることを例示する。図11はさらに、ウイルス捕捉を目的に細胞質体はウイルスに感染させることができることを例示する。
【0495】
実施例12:細胞質体に接触する細胞を標的とするための免疫応答の動員と活性化
除核の1日前(通常、除核の18時間前)、2.510^6のhTERT-MSCを15-cm皿に蒔いた。蒔いてから約2時間後、細胞をPBSで1回洗浄した。次いで、様々なMOI(例えば、0.05または0.5)で、8mLの無血清opti-MEMにより、細胞をoHSV-GFP(Imanis OV3001)に感染させた。次に、細胞をたまに振盪させながら、37℃で2時間インキュベートした。その後、ウイルス接種材料を破棄した。事前に温めた20mL完全培養培地(α-MEM、16.5%Premium FBS、1%Antibiotic-Antimycotic、1%Glutamax、1%HEPES)を各ウェルに添加した。除核を行うまで細胞を37℃でインキュベートした。図12A図12BDは、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)コード化GFP抗原にMSCを感染させることを例示する。MSCと無核MSCの落射蛍光顕微鏡画像は、感染後48時間、MOI0.05で、oHSVコード化GFP抗原への感染を例示する。oHSV-GFPを接種して18時間後、無核MSCをMSCから生成した。スケールバー=50μm。図12Bは、0.05MOIの腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスコード化GFP(oHSV-GFP)に感染させ、次いでヌードマウス中で成長する樹立U87神経膠芽腫へと注射した後の、lifeact-RFPを発現するMSCまたは無核MSCを例示する。注射の7日後に画像を取得した。MSCと無核MSCはともに、強力なGFPシグナルが示すようにoHSVを腫瘍細胞に送達した。留意すべきは、7日後の腫瘍には無核MSCをごくわずかしか検出できなかったが、成長する腫瘍の中心(注射部位)と外縁に多数のMSCが存在していたことである。図12Cは、GFPで覆われた腫瘍領域の割合を示す棒グラフであり、oHSV-GFPウイルスを保因するMSCまたは無核MSCに感染した腫瘍細胞の部分を表す。図12Dは、PBSを注射した対照と比較したときの、IL-12(アジュバント)操作した無核とoHSV操作した無核MSCとの組合せにより処置した樹立神経膠芽腫腫瘍に存在するCD8+エフェクターT細胞の比の増加を示すグラフである。図12は、本明細書に記載の細胞質体が、操作した細胞質体の部位に免疫細胞を動員することにより十分な免疫応答を導入可能であることを例示する。このようなシナリオでは、細胞質体、および細胞質体に封入されるあらゆるカーゴ(例えば、細胞質体内部に捕捉されるウイルス)は、動員された免疫応答により破壊を受けることになる。
【0496】
実施例13:細胞質体へのペプチド負荷
ウェルごとに1x10/mlを、完全MSC培地[MEM 1X(Gibco 12561-056);16.5%premium FBS(Atlanta Biologics S1150);1%HEPES 1M(Gibco 15630-80);1%Anti-Anti 100X(Gibco 15240-062);1% Glutamax 100X(Gibco 35050-061)]中、4-チャンバガラススライド(LabTek II 4-チャンバガラススライド、155383)上に播種した。細胞を少なくとも1時間または一晩かけて付着させた。次いで、細胞をPBS(Gibco 14190-144)ですすいだ。Arg9(FAM)(配列番号1154)(10mM、Anaspec、AS-61207)を完全培地中で希釈して、総濃度を1:100(100uM)とした。次いで、細胞質体を1~2時間インキュベートし、PBSで3回すすいだ。Hoechst 33342(Invitrogen)を完全培地中、少なくとも10分かけて1:5000の希釈で添加した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、落射蛍光顕微鏡で撮像した。図13Aと13Bは、Arg9と同時にインキュベートしたときに目的のポリペプチドのペプチド取込みまたは負荷が増大したことを例示する。図13Aに示すように、MSC(左側)と除核MSC(右側)は、100μMの細胞透過性抗原ペプチド(Arg)9-FAM(6-カルボキシフルオレセイン、FAM-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-Arg-OH)でインキュベートしたMSCを例示する。スケールバー=50μmである。矢印はHoechst染色した核、矢頭は陽性(Arg)9-FAMを示す。図13Bは、ImageJで測定された相対蛍光強度を表す棒グラフを例示する。訂正した細胞蛍光の総数=統合密度-(背景読取りの選択された細胞X平均蛍光の領域)。平均±SEM;n=10。全体として、図13は、本明細書に記載の細胞質体(例えば、核のないMSC)に、目的のポリペプチドを直接負荷可能であることを例示する。例えば、抗原およびArg9(FAM)と細胞質体との同時接種により抗原を細胞質体に導入することができる。その後、これらの細胞質体は、本明細書に記載のワクチンとして機能することができる。
【0497】
本発明の好ましい実施形態の本明細書中で示し記述してきたが、かかる実施形態は単なる一例として提供されるものであることは当業者には明白であろう。現時点で、本発明から逸脱することなく多数の変動、変更、および置換えが当業者により相当される。本明細書に記載の本発明の実施形態に代わる様々な代案が本発明の実施に利用されてよいことを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を規定するものであり、この特許請求項の範囲内の方法と構造、およびそれらの等価物はそれにより包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
【配列表】
2023515355000001.app
【国際調査報告】