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特表2023-515370体外で長さ調整の可能なインプラントシステム及び長さ調整可能なインプラントコンポーネント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】体外で長さ調整の可能なインプラントシステム及び長さ調整可能なインプラントコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
A61B17/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548675
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021054500
(87)【国際公開番号】W WO2021170612
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20159426.4
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514048224
【氏名又は名称】ワルデマール リンク ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ハンス―ヨアキム
(72)【発明者】
【氏名】リンク,ヘルムート デー.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL27
4C160LL43
(57)【要約】
体外で長さ調整の可能なインプラントシステムであって、拡張対象の骨(90)に締結されるように実装され、互いに対して変位可能で、各々、拡張対象の骨(90)の一部に配置されることが意図された2つの締結部分(21、22)を備えた調整装置(2)を備えるインプラント可能な人工器官のためのインプラントコンポーネント(1)であって、調整装置(2)は、互いに対して変位可能な2つの締結部分(21、22)を牽引するように実装され、回転移動可能に配置された永久磁石を備える駆動要素(3)、及び、永久磁石の回転移動を調整装置(2)の長手方向の牽引運動に変換する機構(4)を備えるインプラントコンポーネント(1)と、インプラントコンポーネント(1)の駆動要素のための体外駆動部(7、7’、7”)と、を備える。体外駆動部(7、7’、7”)は、調整装置(2)による拡張対象の骨(90)を受容するように実装された内部(80)を備える回転搭載体外磁気リング(8)と、体外磁気リング(8)をそのリング面内で回転させるように実装された作動装置(75)と、を備え、体外磁気リング(8)は、永久磁石構造として実装され、その内部においてリングに対して静的な指向性静磁場を有し、体外磁気リング(8)は、作動装置(75)によって機械的に回転される。したがって、本発明は、同時に駆動部を簡易化しつつ、調整の信頼度を増すことを達成し、ひいては専門家でない者及び患者にとって好適となるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外で長さ調整の可能なインプラントシステムであって、
拡張対象の骨(90)に締結されるように設計され、互いに対して変位可能で、各々、前記拡張対象の骨(90)の一部に配置される2つの締結部分(21、22)を備えた調整装置(2)を有するインプラント可能な人工器官のためのインプラントコンポーネント(1)であって、前記調整装置(2)は、互いに対して変位可能な前記2つの締結部分(21、22)を牽引するように設計され、回転移動可能に配置された永久磁石を備えた駆動要素(3)、及び、前記永久磁石の回転移動を前記調整装置(2)の長手方向牽引移動に変換するギア式機構(4)を備える前記インプラントコンポーネント(1)と、
前記インプラントコンポーネント(1)の前記駆動要素(3)のための体外駆動部(7、7’、7”)と、を備え、
前記体外駆動部(7、7’、7”)は、前記調整装置(2)による前記拡張対象の骨(90)を受容するように設計される内部(80)を有する回転搭載体外磁気リング(8)と、前記体外磁気リング(8)をそのリング面内において回転させるように設計された作動装置(75)と、を備え、前記体外磁気リング(8)は、永久磁石構造として設計され、その内部に、前記体外磁気リング(8)に対して静止した指向性静磁場を有し、前記体外磁気リング(8)は、前記作動装置(75)によって機械的に回転されることを特徴とするインプラントシステム。
【請求項2】
前記指向性静磁場は、前記内部(80)に集中させられていることを特徴とする請求項1に記載のインプラントシステム。
【請求項3】
前記指向性静磁場は、中心内部において、非指向性及び/又は均質であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプラントシステム。
【請求項4】
前記体外磁気リング(8)は、前記インプラントコンポーネント(1)を装着した身体部分、特に、脚又は腕の前記体外磁気リング(8)への開閉可能なアクセスを生じるため、少なくとも2つのセグメント(81、82)に分割可能であることを特徴とし、前記セグメント(81、82)は、前記体外磁気リング(8)の開放位置へと展開可能である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項5】
前記セグメント(81、82)は、好ましくは磁力を伴うことなく、前記体外磁気リング(8)の開放位置へと展開可能である請求項4に記載のインプラントシステム。
【請求項6】
前記セグメント(81、82)間の分離面(83)は、前記指向性静磁場に平行に延びるように選択されることを特徴とする請求項4又は5に記載のインプラントシステム。
【請求項7】
前記セグメント(81、82)は、少なくとも1つ(73)が開放可能且つ再度閉鎖可能であり、少なくとも1つがヒンジ様に折り畳み可能である接続手段に接続されることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項8】
前記開放位置において、回転可能に固定するようその前記セグメント(81、82)で前記体外磁気リング(8)を固定する係止装置(84)が設けられることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項9】
固定装置が、前記体外磁気リング(8)上に設けられ、前記固定装置は、特に、係止ボルト(84’)により、前記開放位置外での前記体外磁気リング(8)の展開を遮断するように設計されることを特徴とする請求項4乃至8のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項10】
前記体外磁気リング(8)は、好ましくは同様の複数の副磁石(85)によって形成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項11】
前記副磁石(85)は、特に、希土類磁石から形成される同様の磁気双極体(86)であることを特徴とする請求項10に記載のインプラントシステム。
【請求項12】
前記副磁石(85)は、異なる磁化配向(87)で角度が固定されて、前記体外磁気リング(8)に沿って規則的に挿入される請求項9乃至11のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項13】
前記副磁石(85)は、各場合において、前記副磁石(85)の浮遊磁場が前記体外磁気リング(8)のセグメント(81、82)間の分離面(83)に沿って最大に補償されるように配置されることを特徴とする請求項12に記載のインプラントシステム。
【請求項14】
前記副磁石(85)は、それらの浮遊磁場が前記体外磁気リング(8)の前記セグメント(81、82)間の前記分離面(83)に沿ってゼロに等しくなるように配置される請求項13に記載のインプラントシステム。
【請求項15】
前記駆動部(7、7’、7”)のためのハウジング(71)が設けられ、前記ハウジングには、1つ以上のシールド(67、68、69)が設けられることが好ましく、前記ハウジングは、特に、外部場を伴わないように前記体外磁気リング(8)を包囲することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項16】
前記駆動部(7、7’、7”)には、前記体外磁気リング(8)、特に、前記体外磁気リング(8)の旋回を示す計数機構(66)に作用する位置決め装置が設けられることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項17】
前記駆動部(7、7’、7”)には、前記人工器官を装着した身体部分(9)、特に、腕又は脚のための方向性レセプタクル(61、62)が設けられることが好ましいチルト保護としての支持足部(6)が設けられることを特徴とする前記請求項1乃至16のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項18】
前記インプラントコンポーネントの前記調整装置(2)は、前記永久磁石の回転移動を長手方向牽引移動に変換するため、前記ギア式機構(4)を介して前記駆動要素によって作動されるスピンドル駆動(5)をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載のインプラントシステム。
【請求項19】
インプラントコンポーネントであって、
拡張対象の骨(90)に締結し、互いに対して変位可能で長手方向拡張のための調整装置(2)によって互いに対して変位される2つの締結部分(21、22)を備えるように設計されるインプラント可能な人工器官のための前記調整装置(2)を備え、前記調整装置(2)は、回転可能に配置される永久磁石であって、前記永久磁石の回転移動を長手方向の牽引移動に変換するために、ギア式機構(4)を介してスピンドル駆動(5)に作用する前記永久磁石を備える駆動要素(3)を備え、前記駆動要素(3)は、体外駆動部(7、7’、7”)の磁場によって作動するように設計され、
前記駆動要素(3)から前記スピンドル駆動(5)まで力を伝達するための曲げビーム(35)が設けられることを特徴とするインプラントコンポーネント。
【請求項20】
インプラントコンポーネントであって、
請求項19に記載の調整装置を備え、前記スピンドル駆動(5)の駆動スピンドル(50)は、片側が開放され、前記曲げビーム(35)が挿入される中心孔部(51)を有することを特徴とするインプラントコンポーネント。
【請求項21】
インプラントコンポーネントであって、
請求項20に記載の調整装置を備え、前記曲げビーム(35)は、前記駆動要素(3)から離れたその自由端において、前記中心孔部(51)の底部の連結片(32)に連結され、前記曲げビーム(35)は、狭窄シャフトを有することが好ましいを特徴とするインプラントコンポーネント。
【請求項22】
インプラントコンポーネントであって、
請求項19乃至21のいずれか一項に記載の調整装置を備え、前記曲げビーム(35)は、駆動スピンドル(50)の長さの好ましくは少なくとも3分の1、より好ましくは少なくとも2分の1の長さを有し、特に、±5度までの角度オフセットを受容するように設計されることを特徴とするインプラントコンポーネント。
【請求項23】
インプラントコンポーネントであって、
請求項19乃至22のいずれか一項に記載の調整装置を備え、前記曲げビーム(35)は、チタン合金TiA16V4からなることを特徴とするインプラントコンポーネント。
【請求項24】
インプラントコンポーネントであって、
請求項19乃至23のいずれか一項に記載の調整装置を備え、体外駆動部(7、7’、7”)とともに、請求項1乃至16のいずれか一項に記載のシステムを形成することを特徴とするインプラントコンポーネント。
【請求項25】
体外で長さ調整の可能なインプラントシステムのための体外駆動部であって、
インプラントコンポーネント(1)の駆動要素によって駆動される調整装置(2)を備える前記インプラントコンポーネント(1)を備え、前記体外駆動部(7、7’、7”)は、磁場によって前記駆動要素(3)を作動させるように設計され、
前記体外駆動部(7、7’、7”)は、前記調整装置(2)による拡張対象の骨(90)を受容するように設計される内部(80)を有する回転搭載体外磁気リング(8)と、前記体外磁気リング(8)をそのリング面内で回転させるように設計された作動装置(75)と、を備え、前記体外磁気リング(8)は、永久磁石構造として設計され、その内部に、前記体外磁気リング(8)に対して静止した指向性静磁場を有し、前記体外磁気リング(8)は、前記作動装置(75)によって機械的に回転されることを特徴とする体外駆動部。
【請求項26】
請求項2乃至18のいずれか一項に記載のとおり設計されることを特徴とする請求項25に記載の体外駆動部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部人工器官の一部としてインプラントコンポーネントの長さを調整するために外側から(体外で)調整可能なシステムと、そのための調整装置とに関する。調整装置は、拡張対象の骨に固定されるように設計されるインプラントコンポーネントの人工器官シャフトのために設けられ、互いに対して変位可能であって各々が拡張対象の骨の一部に配置される締結部分と、互いに対して変位可能な2つの締結部分を牽引するように設計される駆動要素によって駆動される調整要素と、を備える。
【背景技術】
【0002】
体内で調整可能な人工器官は、いわば、人工器官がともに成長することを必要とする用途において意義を持つ。これらは特に、新たな細胞の形成を継続的に刺激するために、例えば、子どもの成長期等の自然過程を理由とするか、又は骨の形成(骨形成)のための分離点又は破壊点に沿って骨が徐々に伸長するような用途において、これに対応してより長い人工器官が必要とされるような場合に示される。例えば、後者の用途においては、新たな骨組織の形成を恒常的に刺激するために、分離点で形成された2つの骨の部分が、例えば、一日1mmずつ互いから離間するように連続的に移動される。このようにして、例えば、脚等の末端部を拡張することができる。これは、ヒトの2つの脚の間の長さ補正を行うのに重要である。同様に、一般的にはさらにゆっくりではあるものの、恒常的な人工器官の長さの増加を通じて、人工器官が備えつけられた骨を、子どもの自然な成長過程又は思春期と同様に長くするということも達成可能である。
【0003】
このような場合には、外部固定器が使用されることが長きに亘って知られている。しかしながら、これらには深刻な不都合があり、例えば、管理しにくく、事故のリスクが有り、さらには、感染のリスクが高い。
【0004】
これらの不都合に対処するために、体内インプラント人工器官によって所望の長さに調整可能な、インプラント可能な人工器官が開発されてきた。この場合、特に、純粋に機械的な長さ調整の場合、又は、人工器官にインプラントされて外部から遠隔制御される駆動手段(ドイツの会社Implantcast GmbHのMutars System、フィンランドの会社Synosts OyのSynoste System)によって、実際の長さ調整が侵襲的に発生し得る。
【0005】
後者は、非侵襲的に外部から調整が実施可能であるという好都合をもたらす。この目的のためには、人工器官は、外側から(体外で)制御可能な電気モータ含むか、又は電気モータの一部を形成する。必要に応じて、外側からエネルギー供給も可能である。したがって、いわゆる分配型電気モータを備えた構造であって、人工器官及びその調整要素が電気モータの一部(すなわち、ロータ)を形成し、励起される他の部分(すなわち、ステータ)は、体外のアタッチメントによって形成される構造が既知である(特許文献1参照)。したがって、実際の電気モータは、基本的には、部分的に(そのロータとともに)体内に配置され、部分的に(そのステータとともに)体外に配置される。
【0006】
このような電気モータベースのシステムは、操作が簡単であるものの、誤操作も相対的に生じやすい。十分な体外調整可能性が達成されるものの、大きな調整力を備えた電気モータが患者にとって危険な誤調整を生じる操作エラーのリスクがあるために、操作には専門家が必要となる。したがって、このようなシステムの認証は複雑且つ困難である。適用は、大抵、専門家のみによって行われ得るが、これにはさらなる尽力を生じる。これは、結果として、専門家が(外来患者の)治療を行う時間のあるアポイント時間の必要性について調整の問題を生じたり、又は、(アポイントメントごとに、場合によっては医療的に疑問なほど大きな調整を代償として行うとしても)患者の訪問数を最少化するため、調整単位を(過度に)大きくしてしまうこと(アポイントメントごとにcm単位の調整パス)に繋がる。
本発明の目的は、体外作動を可能し、取り扱いのより簡単な改良システムを提供することである。
本発明に係るソリューションは、独立項の特徴に見出される。好都合な展開が従属項の主題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/786141号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
体外で長さ調整の可能なインプラントシステムであって、拡張対象の骨に締結されるように設計され、互いに対して変位可能で、各々、拡張対象の骨の一部に配置される2つの締結部分を備えた調整装置を有するインプラント可能な人工器官のためのインプラントコンポーネントであって、調整装置は、互いに対して変位可能な2つの締結部分を牽引するように設計され、回転移動可能に配置された永久磁石を備えた駆動要素、及び、永久磁石の回転移動を調整装置の長手方向牽引移動に変換するギア式機構を備えるインプラントコンポーネントと、インプラントコンポーネントの駆動要素のための体外駆動部と、を備えるインプラントシステムにおいて、本発明によると、体外駆動部は、調整装置の拡張対象の骨を受容するように設計される内部を有する回転搭載体外磁気リングと、体外磁気リングをそのリング面内において回転させるように設計された作動装置と、を備え、体外磁気リングは、永久磁石構造として設計され、その内部に、リングに対して静止した指向性静磁場を有し、体外磁気リングは、作動装置によって機械的に回転されるように設けられる。
まず、使用されるいくつかの用語について説明する。
「リングに対して静的」という用語は、リングとの関係において固定され、リングとともに回転する配置を意味しているものと理解される。
【0009】
「指向性」という用語は、磁場の通常均一の配列を意味するものとして理解される。特に、磁場の向きは、磁場のいずれのポイントでも同一の方向を有していなければならない。
「均質」という用語は、全体領域の少なくとも80%を含む中心領域における磁場強度の局所偏差が最大でも平均値の±10%である略均一な磁場をいう。
「静的」という用語は、一定強度の磁場を意味するものと理解される。したがって、特に、通常急速に変化する電磁場と対照的である。
【0010】
本発明は、電気モータによって作動されるという概念からは逸脱した、機械的作動を提供するという代わりの概念に基づく。本発明では、これを、磁場が機械的に(手動またはモータにより)回転可能な磁気リングによって静磁場を提供することにより達成する。好ましくは、磁気リングは、全体として、作動装置によって回転される。インプラントコンポーネント内で駆動要素として作用する永久磁石は、常に、磁気リングの静磁場に従って自身を配列させる。したがって、調整装置内で駆動要素として作用する永久磁石の位置は、静磁場の位置又は実施される回転の結果として得られたものである。本発明は、機械的に回転される静磁場への移行により、著しい簡易化と、駆動要素として作用する永久磁石の位置の精密な位置制御とを達成する。したがって、簡易な手動作動で事足りるようにすることができ、作動のための電流がもはや必要なくなる。
【0011】
これによりまた、不具合による電気ショックのリスクもなくす。さらに、不具合によって位置調整の経験、又は離脱が生じ得るリスクであって、過度に大きな調整や、ひいては骨自体と、特に、その周辺の筋肉又は腱等の軟部分とへの負傷に繋がり得るリスクを省くことができる。さらに、一定の静磁場により、電磁場変化で生じる渦電流による患者への負荷が回避される。
【0012】
したがって、駆動部が静磁場に基づく本発明に係るシステムは、アシスタント又は専門家以外の者、基本的には患者自身によっても動作させることができる。医療行為において、患者が必要に応じて家庭で調整装置を作動させることができるため、これは非常に好都合であることを表す。したがって、特に、操作が訓練済みの専門家によってのみ発生可能である場合に従来技術において過去に可能であったよりも頻繁に、丁寧且つ短いセクションで調整を実施することができるようになる。
【0013】
さらに、本発明により、回転可能な磁気リングによる静磁場の配列をより精密に行えるようにする。したがって、調整装置の駆動要素の角度位置の微調整を達成することができ、これにより、実施される調整の非常に精密な設定を可能にする。
【0014】
このように、本発明は、駆動部を同時に簡易化しつつ、驚くほど簡易に調整の安全性増加を達成することで、専門家以外の者及び患者にも好適となるようにする。
【0015】
好ましくは、磁気リングは、人工器官シャフトの装着された身体部分、特に、脚又は腕の磁気リングの内部への開閉可能なアクセスを生じるために、少なくとも2つのセグメントに分解可能である。したがって、磁気リングと、ひいては駆動部とは、全体として、調整装置を備えたインプラントコンポーネントが体内で配置される位置において、同様に配置可能である。例えば、駆動部は、大腿骨のシャフト内に配置されるインプラントコンポーネントを調整するために、磁気リングを展開することにより、患者の大腿の領域に容易に位置決め可能である。これにより、磁気リングによる処置対象の末端部へのねじ通しが省略される。駆動部の残りの部分は、磁気リングの展開によりその内部への自由アクセスが可能となるように設計されることが好ましい。この展開可能な磁気リングのおかげで、適用がかなり簡易になる。
【0016】
便宜上、磁気リング内に配置された磁石の磁力によって磁気リングを展開することは、阻止されることも促進されることもない。この目的のために、磁気リングは、磁力を伴うことなく展開可能となるように設計される。「磁力を伴うことなく」という用語は、本明細書中、磁力による展開に対抗して方向付けられる力が、ゼロであるか、又は操作者が、特に、器具を追加することなく、手動で容易に克服可能となるほど小さいか、のいずれかを意味するものと理解される。この目的のために、セグメント間の分離面は、指向性静磁場の方向に延びるように選択されることが好都合である。したがって、分離面を横方向に進行する磁力の部分の最少化が達成される。
【0017】
この場合、セグメントは、少なくとも1つが開閉可能であり、少なくとも1つがヒンジ様に折り畳み可能である接続手段によって接続されることが好ましい。これらの接続手段のおかげで、セグメントは、容易に開放可能であり、関連末端部(本発明に係る調整装置とともにインプラントコンポーネントが含まれる身体部分であって、特に、腕又は脚)の搭載後、再び閉鎖することができる。接続手段の1つにおいて、ヒンジ様の折り畳み能力により(原則的に後者でも可能であるが)、開放可能なセグメントの完全な除去を回避することができるようにする。これにより、取り扱いがさらに楽になる。
【0018】
開放された展開状態において、磁気リングは、(望ましくない)移動に対して固定されることが好ましい。このために、捩じれ防止をして解放位置でそのセグメントにより磁気リングを固定する係止手段が、便宜上、設けられる。したがって、望ましくない折り畳みにも繋がり得る磁気リングの予期しない移動のリスクが効果的に相殺される。さらに好ましくは、固定装置が逆に設けられ、この固定装置は、特に、磁気リングの連結を閉鎖位置にする正のガイダンスによって設計される。したがって、閉鎖位置から出た磁気リングの展開が阻止される。これにより、例えば正常な作動中の磁気リングの望ましくない開放を確実に防ぐ。
【0019】
磁気リングは、永久磁石を備えるように設計される。これは、便宜上、磁気リング上に配される複数の副磁石によって形成される。これにより、市販であるが故に高いコスト効率で入手可能な通常の永久磁石を副磁石として使用できるようになる。したがって、比較的大きな磁気リングを効率的且つ比較的小さな重量で作成することができる。個々の副磁石、個々の磁石は、同様であり、すなわち特に磁気双極体として設計され、好ましくは希土類金属から作成される(いわゆる希土類磁石)。
【0020】
この場合、副磁石は、磁気リングに沿って規則的な間隔で、角度が固定されて異なる磁場配向で使用されることが好ましい。角度固定された配置により、磁気リング内の副磁石は、常に、自身の磁場配向を維持する。磁場配向の異なる個々の副磁石を使用することにより、結果として、磁気リングの内部で磁場が集中し、磁気リングの外部で磁場消失を生じるような静磁場の磁場プロファイルを生じることができる。さらに、このようにして、磁気リング内に均質な磁場を発生させることができる。理想的には、これは、可能な限り多く、可能な限り小さな副磁石によって達成されるが、磁気リング内の仮想的に均質な磁場について良好な近似が、1ダース程度(10~20)の多数の副磁石によって既に達成可能である。
【0021】
さらに、副磁石は、便宜上、各場合において、自身の磁場(より精密には、副磁石の外側の迷磁場)が磁気リングのセグメント間の分離面に沿って最大に補償されるように配される。したがって、分離面を横切る磁場を最小化することができる。これは、既に上述したとおり、簡易且つ信頼性が高く、磁力を伴わずにセグメントが開放可能となる、特に好都合なやり方である。
【0022】
好都合なことに、磁気リングを包囲するハウジングが駆動部に対して設けられる。このハウジングにより、磁気リング外部の磁場、特に迷磁場は、短絡して、ハウジングを包囲する外部空間が大幅に磁場を有さなくなる(「外部場を有さない」)。この目的のために、ハウジングは、1つ以上のシールドを有し、及び/又は、好ましくは、軟磁性材料から形成される。この結果として、磁気リングの磁場(内部においてかなり強力である)による外側への影響がなくなる。したがって、信頼性の高い輸送が著しく促進される。
【0023】
駆動部には、便宜上、磁気リング、特に、磁気リングの旋回を示す計数機構に作用する位置決め装置が設けられる。これにより、磁気リングの位置を示すことができるようになり、ユーザが精密且つ正確な調整を行うことができるようになる。これは、磁気リングの角度位置及び磁気リングの旋回数の双方に適用される。例えば、駆動装置によってもらされてきた調整装置の調整経路に関する情報を、読解可能且つ再現可能に、計数機構によって操作者に示すことができる。
【0024】
好都合なことに、好ましくは駆動部上に配置され、人工器官シャフト上に配された調整遮断部材に作用する体外遮断スイッチが設けられる。したがって、インプラントコンポーネントの調整要素は、調整遮断部材により、意図されない調整に対して遮断可能となる。駆動部による調整が与えられる場合、調整遮断部材は、遮断スイッチによって解放されるため、調整要素は、駆動部によって所望の調整を実施することができるように、再び解放される。
【0025】
駆動部には、支持足部が設けられることが好ましい。これは、駆動部を直立位置に保持し、同時に、インプラントコンポーネントに対する駆動部の正しい相対位置決めを維持するために、傾斜保護として機能する。当初の正しい位置決めを達成するために、支持足部には、調整装置を備えるインプラントコンポーネントがインプラントされる身体部分、特に、腕又は脚の方向性レセプタクルがさらに設けられることが好ましい。
本発明はまた、システムのための、上述のような体外駆動部まで拡張される。
【0026】
本発明はさらに、システムのための、上述のような調整装置を備えたインプラントコンポーネントまで拡張される。特に、本発明はまた、永久磁石の回転移動を長手方向の牽引移動に変換するために、永久磁石が回転移動可能に配された駆動要素がギア式機構を介してスピンドル駆動に作用するように、調整装置が設計され、駆動要素が体外駆動部の磁場によって作動するように設計され、特に好都合なのは、駆動部が駆動要素からスピンドル駆動まで動力を伝達するための曲げビームを備えたようなインプラントコンポーネントまで拡張される。
【0027】
長尺であり、且つ、せん断力を吸収又は伝達するように設計された曲げビームのおかげで、負荷のもとで生じるインプラントコンポーネントの屈曲を補償することができる。曲げビームにより、一方側のギア式機構(低速ギア)を備えた駆動要素と他方側の実際のスピンドル駆動との間の角度誤差を補償することができるようになる。このような角度誤差は、特に、インプラントコンポーネントが高負荷下で屈曲する場合に生じる。互いに、通常は、伸縮性調整機構の内側チューブ及び外側チューブの互いに対する締結部分の移動は、それらの中心軸を横切る負荷下で屈曲される。したがって、その軸に対して、ギア式機構を備えた実際の駆動要素がスピンドル駆動の軸に対してもはや正確に配列されなくなるというリスクがある。このような調整不良は、大抵の場合は小さな角度差のみに基づくが、機構の遮断に繋がり得る。本発明は、これが、一方側の駆動要素及びギア式機構と他方側のスピンドルとの間の曲げビームにより、驚くべき簡易な方法で、高い信頼性で防止可能であることを認識したものである。したがって、高負荷下であっても、調整要素が遮断されるリスクがない。
【0028】
この目的のために、駆動スピンドルは、便宜上、一方側で開放され、曲げビームの挿入される中心孔部を有する。したがって、曲げビームは、一方側では良好に案内され、他方側では、曲げビームのための比較的大きな長さが結果としてコンパクトな構築に繋がる。これにより、曲げビームにより、約±5度までの比較的大きな角度誤差も吸収することができるようになる。一方側の曲げビームと他方側の駆動スピンドルとの間の圧入接続のため、曲げビームの自由端と駆動スピンドルとの間の連結が、中心孔部の底部に設けられることが好ましい。この目的のために、便宜的に、曲げビームは、さらに駆動スピンドルの長さの好ましくは少なくとも3分の1、より好ましくは少なくとも2分の1に対応する長さを有し、±5度までの角度オフセットを吸収するように設計される。好都合なことに、曲げビームは、その主要部分に沿って横方向に収縮するように設計される。一方で、これは曲げビームの所望の曲げを促進し、他方で、中心孔部内の曲げビームの所望の間隙を確保する。
インプラントコンポーネントの駆動装置との相互作用に関するさらなる詳細について、以上の説明を参照する。
本発明について、好都合な実施形態を使用し、添付の図面を参照して以下にさらに詳細に説明する。図中、
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、インプラントコンポーネントの挿入される骨とその隣に配される駆動部との概略図である。
図2図2は、磁気リング内の静磁場の概略表現である。
図3図3a、bは、副磁石の概略表現と、隣接して配された2つの副磁石の物理的表現とである。
図4図4は、本発明に係る磁気リングを備えた駆動部の第1の実施形態の正面図である。
図5図5は、部分的に展開された状態における第1の実施形態の正面図である。
図6図6は、本発明に係る駆動部の第2の実施形態の斜視図である。
図7図7は、ハウジングの断面を含む第2の実施形態の断面図と磁気リングの正面図とである。
図8図8は、部分的に展開された状態における第2の実施形態の斜視図である。
図9図9は、完全に展開された状態における第2の実施形態の斜視図である。
図10図10は、ハウジング上方部分が部分的に除去された第2の実施形態の斜視図である。
図11図11は、図10に示された実施形態のハウジングの断面としての正面図である。
図12図12a、bは、ハウジング情報部分が載置され、ロックが部分的に切断された第2の実施形態のさらなる斜視図である。
図13図13a、bは、枢動可能な保護カバーを備えた第3の実施形態の正面図及び側面図である。
図14図14は、第3の実施形態の斜視図である。
図15図15は、第1の実施形態の例を使用したシールドの表現を示している。
図16図16は、本発明の一実施形態に係る調整装置を備えたインプラントコンポーネントの斜視図である。
図17図17は、内部が露出されたインプラントコンポーネントの平面図である。
図18図18は、図17に係るインプラントコンポーネントの部分切断表現である。
図19図19は、インプラントコンポーネントの調整装置のためのスピンドルの切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この目的のためにインプラントされた人工器官と調整装置との長さを調整するシステムが、図1の第1の実施形態の形態で模式的に示されている。下肢、すなわち脚9は、拡張対象の骨90を有するが、大腿骨の形態で見ることができる。これは、2つの部分91、92に分解され、インプラントコンポーネント1は、双方の部分でアンカリングされるため、大腿骨90の2つの部分91、92を互いに接続する。特に、本発明に係るインプラントコンポーネント1は、例えば、図16に示されるように、人工器官システムの長さ調整可能なシャフトとすることができる。
【0031】
他のインプラントコンポーネントとの接続のために、本発明に係るインプラントコンポーネント1は、その2つの端部に、各々錐体コネクタを有し、好ましくは、一端に雄錐体コネクタ11と他端に雌錐体コネクタ12とを有する(例えば、ねじによるもの等、他の形態の接続も可能であることが理解される)。インプラントコンポーネントは、特に、より大きな接合内部人工器官の一部とすることができ、特に、大腿骨90の全置換用とすることができる。調整装置2(図1中には不図示)により、インプラントコンポーネント1の両端は、錐体コネクタ11、12により互いから離れるように移動可能である。すなわち、インプラントコンポーネント1の長さを変更することができ、特に増加させることができる。
【0032】
体外駆動部7は、調整装置2を作動させるために設けられる。これは、キャリア70内で回転可能に保持及び案内される磁気リング8を備える。磁気リング8は、指向性静磁場がその内部80に生成されるように設計される。このような指向性静磁場88が図2中に示されている。ここでの磁気リング8は、単体の固形体として設計されるのでなく、離散的に、すなわち複数の副磁石85から構築される。副磁石85は、各々、磁気双極子として設計されるが、これは、一方では実際の磁性体が北極「N」を有し、他方では南極「S」を有することを意味する(これは、図3a中、異なるグレイシェーディングで示されている)。ここに示された磁性体が円筒形状を形成するように開発される場合、北極及び南極の配置は、基本的に変化せずに維持される(これは、図3bに示されており、残留磁化87の方向が黒色矢印でハイライトされている)。これは、さらに、結果として特定の磁気配向を生じる。したがって、技術的には、副磁石85は、図3bに明確に示されるとおり、内部に指向性磁場を有する双極磁石86である。
【0033】
本発明は、副磁石85の特性を利用するため、管理可能な数(すなわち16)の副磁石85を備えた指向性静磁場を発生させるが、これも非常に均質である(図2を参照のこと)。ここで「均質」とは、実際の平均磁場強度の±15%以下である磁場強度の場所依存変動が内部80の領域に亘って得られることを意味するものと理解される。これは、磁気リング8内の副磁石85の特定の角度向きによって達成される。
【0034】
この場合、一方では、副磁石85は、中心点に対して等距離に配される。すなわち、均一の円が理想的には得られる。他方で、副磁石85は、磁気リング8内に異なる向きで挿入される。これを可視化するために、残留磁化の方向87が図2(又は図3bに対応するように)示されている。中心において、またそこのみにおいて、副磁石85は、磁場線の所望のコースに対して各々並行する。磁化の方向87を示す矢印の位置から容易に導出できるように、副磁石85が側方に向かって挿入されるほど、捩れて挿入される。特に、この副磁石85の特別に捩れた配置こそが、内部80の非常に均質な指向性静磁場を発生させる。
【0035】
磁気リング8を、特に、手動作動装置75によって作動することにより、その副磁石85とともに磁気リング8をリング面内で回転移動させ、結果として、指向性静磁場88もこれに応じて回転する。最も簡易な場合において、手動作動装置75は、磁気リング8の側面のハンドル75又はハンドルに好適なコーティングとして設計可能であるが、サーボ駆動(図示せず)による機械化も提供されてよい。駆動要素3としての永久磁石に関して、調整装置2の駆動の角度位置と現在達成されている調整経路とは、その静磁場88で磁気リング8をゆっくり回転させることにより、簡単且つ確実に判定可能である。したがって、本発明に係る駆動部7では既に、作動要素75による磁気リング8の手動調整であっても、永久磁石の実際の位置を簡易でありながら精密に制御できるようにし、結果として、ひいては調整装置2の駆動の現在の角度位置を結果として生じる。磁気リング8のキャビティ80内に生成される磁場の強度と静的、すなわち(場合によってはゆっくり回転するものの)恒常的に強い磁場としての設計とにより、この配置のおかげで、位置決め精度を悪化させるスリップが実際には発生しなくなる。この点に関して、駆動部7内の磁気リング8の旋回の数をモニタリングしてユーザに示す計数機構66を駆動部7上に任意で配置することによって達成される調整経路の検出をユーザにとってより容易にすることができる。磁気リング8の回転移動をインプラントコンポーネント1の駆動内の永久磁石に精密に変換することで、インプラント1の調整装置2によってもたらされる調整経路を正確に測定できるようになる。
【0036】
磁気リング8を備える駆動部7の構造設計の例について、第1の例としての実施形態に基づき、図4及び図5を参照して以下に説明する。参照符号7で全体的に設けられる駆動部は、磁気リング8が回転可能に搭載されるキャリア70を備える。ここで、円形凹部の内側は、磁気リング8のための案内78として作用する。さらに、2つの係合75’は、支持するためのハンドルとして提供されるが、キャリア70内に形成される。これらにより、駆動部7を問題なく移動及び位置決めさせることができるようになる。2つの支持足部6が駆動部7の下方領域内に設けられる。これらは、末端部(脚9)が磁気リング8の内部80を通じてインプラントコンポーネント1で案内可能となるように、傾斜保護して上昇位置に駆動部7を保持するように機能する。
【0037】
磁気リング8は、2つのセグメント81、82に分割され、各々が半円弧として設計される。磁気リング8の外周は、円形凹部によってキャリア70内に搭載され、これが内側で補完的な形状を有する。
【0038】
キャリア70は、水平に延びる分割線に沿って上半分と下半分とに分割される。この分割線について、キャリア70の側方にはバックル閉鎖73が設けられ、その反対側の側方にはヒンジ74が設けられる。バックル閉鎖73を開放することにより、キャリア70の上半分は、ヒンジ74を枢動点として、上方に展開可能である。展開時、磁気リング8のセグメント81は、上半分に残り、磁気リング8のセグメント82は、キャリア70の下半分に残る。セグメント81、82の外れ又は捩じれを避けるために、合計4つの係止閉鎖84で、各セグメント81、82につき2つずつが、キャリア70上に磁気リング8を係止するために設けられる。閉鎖状態において、2つのセグメント81、82は、クランプ閉鎖83’によって互いに接続される。これらが閉鎖されると、2つのセグメント81及び82は均一な磁気リング8を形成する。
【0039】
磁気リング8は、希土類材料によって作成された複数の(図示の例としての実施形態においては14の)円筒形副磁石85を備える。磁気リング8上の好適なレセプタクルは、磁気リング8上にこの副磁石を保持するために設けられる。円筒形の副磁石85は、このレセプタクル内に挿入され、捩じれを防止して締結され、外れないように固定される。個々の副磁石85が正確に規定された角度配向で挿入及び保持されるため、このねじれ防止のための係止が有意義である。この角度配向は、各副磁石85によって生成される磁場の特定の向きのために使用され、図4及び5においては矢印で可視化されている(矢印の意義については、図2及び3bの上述の説明も参照のこと)。個々の副磁石85の角度配向が常に隣接するものと異なることが見て取れる。この向きは、磁場が内部80に集中される(磁気リング8の外部空間が実質的に磁場を有さない)ような方法で選択されるため、略均質な指向性静磁場が内部80内に生じる(図2とこれに関する上述の説明を参照のこと)。
【0040】
特に、手動で磁気リング8を回転させることにより、このように生じさせた静磁場88を回転させることができ、内部80に配置された永久磁石は、磁場の作用の下で同期的に回転する。このような永久磁石を、以下に説明するとおり、インプラントコンポーネントのための駆動要素として使用する。
【0041】
駆動部7’の第2の実施形態が図6~11に示されている。これは、形状設計において異なるものの、機能的には、上述の第1の実施形態と略同様である。同一の参照符号が同一又は同様の部分のために使用され、不要な反復を避けるため、上述の説明を参照して、説明を同様に適用する。
【0042】
駆動部7’の第2の実施形態は、キャリア70の代わりに、磁気リングを包囲するハウジング71を有する。これは、ハウジング71の上方領域における大きな開口72を除いて、実質的に完全に磁気リング8を包囲する。この開口は、少なくとも30°、したがって、磁気リング8の周辺の12分の1に亘って延びるアクセスを可能にするような寸法を有することで、特に、手動による作動のために設計された磁気リング8の側面上において、ユーザが磁気リング8を手動で回転できるようにする(グリップコーティングが設けられる)。しかしながら、手動駆動が必須でないことに留意しなければならない。駆動モータのフランジ取付を可能にするために、ハウジング71における連結開口76が設けられる。ここで、磁気リング8に作用し、回転中に設定する駆動モータ(図示せず)が配され得る。このようなモータによる駆動は、任意で、第1の実施形態にも設けられてよいことに留意しなければならない。
【0043】
ハウジング71は、磁気リング8の(残余の)磁場から外部空間をシールドするために、例えば、透過性の高い鉄、ニッケル、及び/又は、コバルト合金等の軟磁性材料で作成されることが好ましい。特に、低合金構築及び加工鋼又は電気鋼シートが好都合である。
【0044】
好ましくは、少なくともハウジング71は、磁気リング8の側面の領域においてシールドを行うように設計される。便宜上、この場合のハウジング71は、シールドの領域(例えば、側面)における磁気リング8から距離を有するような寸法を有し、この距離は、個々の副磁石85の直径/高さと少なくとも同じ大きさ、好ましくはこの数倍である。材料の厚さ(通常、0.5mm以下)が比較的小さく、ひいては重量が軽いことにより、良好なシールド効果も達成可能である。任意で、磁気リング8の端面の領域においてもシールドが生じる場合、少なくとも個々の副磁石85の直径/高さの端面ハウジング壁の前述の距離を達成するめに、ハウジング71がかなり深い深さで設計されるか、又は、端面ハウジング壁の材料の厚さを、側面の領域よりかなり厚くし、大抵は2倍超、又は3倍超の厚さとする(すなわち、通常は1mm超)。
【0045】
ハウジング71には、さらに、末端部、例えば、脚の指向性レセプタクルが設けられる。しかしながら、インプラントコンポーネント1が設けられた末端部には、ここでは、その反対側のカウンターパート、すなわち反対側の脚が代わりに受け入れられてはならない。この目的のために、図6の例で示されるとおり、ハウジング71は、横断面が略V形状の凹部を備えたその支持足部6’の領域に設けられ、レセプタクル61を形成する。図示の実施形態において、これは、他方の脚(図示せず)の脚下方がレセプタクル61の領域に受容されるような寸法とされるか、又は、代替/追加として、他方の脚(図示せず)の大腿がレセプタクル62の領域に受容可能となるように、これよりかなり大きな寸法とされる。レセプタクル61、62は、便宜上、規定位置のみにおいて末端部を受容するような形状を有する。これに応じて、この他方の脚の脚下方又は大腿がレセプタクル61、62内に載置されると、駆動部7’は、設定対象のインプラントコンポーネント1の調整のためにいわば、正しく自動配列される(例えば、腕等、他の末端部についても、これが同様に適用される)。これにより、使用のため、本発明に係る駆動部7’の正しい適用又は位置決めを簡易化する。レセプタクル61、62も個々に適応的な形態で設計可能であることに留意しなければならない。
【0046】
第1の実施形態のとおり、磁気リング8には、図7の部分断面表現に示される複数の副磁石85が設けられる。ここで再び、本発明に係る集中した指向性静磁場を内部80に形成するために、矢印87で可視化された副磁石85の配列も見て取ることができる。ここでも、磁気リング8は、ハウジング71の上半分とともに展開可能な2つのセグメント81、82に再び分割される(図8及び9を参照のこと)。第1の実施形態のように、ヒンジ74は、一方ではこの目的のために設けられる。図9は、完全に展開されたハウジング71を備えた第2の実施形態を示している。折り畳み状態において分離面83に据えられたセグメント81、82の各端部が(図7を参照のこと)、分離面に明確に見て取れる。
【0047】
図10に示される表現において、ハウジング71の上方領域の一部が除外されている。磁気リング8の上方セグメント81に加え、上述のとおり、その副磁石85を明確に見て取ることができる。さらに、案内ローラがハウジング71の下方領域に配された湾曲案内レール79と相互作用する複数の案内ローラ89が磁気リング8上に見て取れる(図11を参照のこと)。このように、ハウジング71内の磁気リング8の確実な正の案内が達成される。折り畳まれた正常状態におけるセグメント81、82の接続のおかげで、磁気リング8の完全な案内がこのように結果として得られるため、湾曲案内レール79はハウジングの下半分を越えて延びれば十分である。展開状態において、これは、上方セグメント81に適用されないものの、後者は、湾曲形状と、外れてしまわない程度に、同様に湾曲したハウジング71の上半分における係止ボルト84’とのおかげで固定される。ハウジング71が折り畳まれ、セグメント81、82が次いで互いに係止されるとき、磁気リング8が再び閉鎖された後、駆動装置7’がさらなる介入を伴うことなく、再び使用されるように準備される。
【0048】
閉鎖(折り畳み)状態において2つのセグメント81、82の正しい相対位置決めを確保するため、案内要素77が設けられる。これらは、歯止めのように設計され、セグメント81、82上の分離面83の領域内で案内レール79の2つの端部に配される(図12及び13を参照のこと)。これらは、セグメント81、82をともに保持するばね捕捉機構の一部である。閉鎖状態において、これは、すなわち、案内レール79上で案内される案内ローラ89と案内レール79の端部における案内要素77により、磁気リング8のための効果的な案内及び固定を生じる。
【0049】
固定位置における係止のため、ハウジング71の上方領域及び磁気リング8の上方セグメント81における対応受容開口に差し込むことのできる係止ボルト84’が設けられる(図12a、bを参照のこと)。係止ボルト84’を差し込むために磁気リング8が立設されるべき位置は、セグメント81、82の間の分離面83がハウジング71のヒンジ74と配列される箇所であり、この基本的な位置においてのみ、展開が可能である。この基本的な位置における磁気リング8の正しい位置は、ハウジング開口72の領域内に配された参照符号74’によって示され、この符号の2分の1はハウジング71に付けられ、この符号の残り半分は、磁気リング8に付けられている(例えば、二重矢印符号として)。これらが互いに重なって並ぶ場合、基本的な位置が達成される。
【0050】
この基本的な位置において、受容開口は、ハウジング71と磁気リング8のセグメント81とに配列され、係止ボルト84’を挿入することができる。この結果として、磁気リング8が係止される正の案内を生じ、同時に、ばね捕捉機構が機械的組み合わせによって係止解除され、セグメント81、82が連結解除され、磁気リング8が展開可能となるようにする。係止ボルト84’の結果として、磁気リング8の上方セグメント81も、ここでは、展開中、又は展開状態において、望ましくない移動に対して固定される。
【0051】
駆動部7”のための第3の実施形態が図13a、b、及び14に示されている。これは、第2の実施形態に基づくが、これとは対照的に、異なって設計されたハウジング71を有する。上方領域において、これは、ヒンジ74上に折り畳まれて搭載され、磁気リング8の上方領域を解放状態で露出する外側保護カバー72’を有する。片持ち梁71”は、ヒンジ74の領域内でハウジング71上に設けられる。一方、これは、駆動部7”の輸送のためのハンドル75’を有し、他方では、開放限界を達成るために、このように保護カバー72’のための停止を形成する。
【0052】
片持ち梁71”はさらに、その側方輪郭により、反対側の末端部(もう一方の脚)のためのレセプタクル61を提供する。さもなければ、この機能は、第2の実施形態におけるレセプタクル61のものと対応しており、反復を避けるため、これを参照する。これはまた、第3の実施形態の他のコンポーネントにも同様に適用されるが、第2の実施形態の対応コンポーネントと同一又は対応の参照符号が付されている。
【0053】
特別な特徴として、第3の実施形態はさらに、外側保護カバー72’に対するカウンターパートを有する。内側保護カバー71’は、磁気リング8から内部80を分離するものであるが、磁気リング8の内側に設けられる。これは、機械的カバーとして作用するのみならず、周辺領域、特に、受容対象の末端部(特に、脚9)の隣接領域を、磁場を通じた不要な負荷からシールドするようにも機能する。
【0054】
磁気リング8は、ハウジング上に固定的に配され、磁気リング8がその側面でその下方領域に据えられる案内ローラ89’上に搭載される。これにより、比較的に重心の低いコンパクトな構築が可能となる。したがって、駆動部7”の意図しない転倒のリスクに対抗可能である。任意で、案内ローラ89’は、直径の拡張された端面において設計され、カラーが作られ、磁気リング8の横方向ガイドが達成されるようにする。さらなる案内ローラ89’も、特に、ハウジングの上方領域に設けられ得る。
【0055】
さらに、この第3の実施形態において、ハウジング71は、二重形成支持足部6”を有する。これらは、駆動部7”に、より幅広い接触面積を付与し、ひいては転倒に対する安全性を増す。さらに、反復を避けるため、以上の第2の実施形態の説明を参照する。
【0056】
磁気シールドは、好ましくは、高い磁気伝導性を有する(高い透過性を有する)材料、特に、鉄、ニッケル、コバルト合金等の軟質の磁性(強磁性)材料から作成されるが、磁気リング8又は周辺ハウジング71及びそのコンポーネント71’、72’上に設けられ得る。明確さのため、第1の実施形態に関し、種々のシールドについて図15を参照して以下に説明するが、他の実施形態においても同様である。外側シールド67は、比較的に大きな距離で設けられ得るもので、これは、副磁石85の直径又は高さの倍数を意味するものと理解される。このように離間したシールドにより、数十ミリメートルのみのシールド材料の材料厚さで十分且つ好都合である。
【0057】
直接隣接するジャケットシールド68は、磁気ホイール8上のシールドのため、便宜上、設けられる。通常、シールドの距離は、ここでは、副磁石85の直径又は高さにおおよそ等しく、少なくとも0.5ミリメートル、好ましくは1ミリメートルまでの材料の厚さが好都合である。このようなジャケットシールドはまた、内側、例えば、関連の脚9の周辺領域の保護のため、第3の実施形態の内側保護カバー71’上が好都合となり得る。
【0058】
さらに、磁気ホイールの端面上に近接場シールド69としてシールドも設けられ得る。ここでの距離は、通常、副磁石85の直径又は高さよりも小さく、軟鉄の強力な磁気制御が生じるようにする。したがって、少なくとも1ミリメートル、通常は数ミリメートルのかなり大きな材料の厚さが求められる。
【0059】
インプラントコンポーネント1の一例としての実施形態が図17~19に示されている。図17は、自身の調整装置2を備えたインプラントコンポーネント1の部分断面を示している。図示の例としての実施形態において、インプラントコンポーネント1は、シャフトのような形状を有し、ひいては人工器官シャフト、特に、モジュラー人工器官システムのための部分を形成する。
【0060】
その2つの端部の各々において、好ましくは標準化人工器官システムの隣接人工器官モジュール上の連結要素、例えば、さらなるシャフト又は接合コンポーネントへの接続を有する。したがって、インプラントコンポーネント1は、図17の右側に示されるその端部の連結要素としての雄錐体11と、さらなる人工器官モジュール(図示せず)を接続するための表現において左側に示されるその端部における雌錐体12としての連結要素とを有する。錐体コネクタ以外の接続タイプも設けられ得ることが理解される。
【0061】
連結要素11、12の間の実際のシャフト本体は、外側チューブ21及び内側チューブ22が内部において長手方向に変位可能に案内されるように設計される。これらは、調整装置2の一部であり、インプラントコンポーネント1のために異なる長さの調整ができるようにするため、伸縮自在に相互作用する。外側チューブ21及び内側チューブ22は、一方のスライドガイド28が内側チューブ22の自由端に配され、外側チューブ21においては移動可能となり、他方のスライドガイド29が内側チューブ22への移行領域において外側チューブ21の端部に固定的に配される2つのスライドガイドを介して、互いに接続される。さらに、外側チューブ21との関連で内側チューブ22の相互の捩れを回避するために、外側チューブ21の内側にガイド溝が配される。軸方向軸受け25は、同様に外側チューブ21の端部に配されて、シールドリングペア24が割り当てられるものであるが、周辺の身体組織又は流体に対して外側チューブ21の内側を閉鎖するために、長手方向調整のための軸受けとして機能する。
【0062】
インプラントコンポーネント1の長さを調整するための調整装置2は、さらに、内側チューブの中心軸周りで回転移動可能に配置された永久磁石を有する駆動要素3を備える。このような配列によると、その分極方向(北極から南極の方向)が中心軸に直交するように設計される。便宜上、副磁石85は、上述のとおり、この目的のためにも使用される。減速ギアとして、ギア式機構4が駆動要素3の下流に配される。図示の例としての実施形態においては、約1~20の減速を有する2段階遊星ギアとして設計される。
【0063】
ギア式機構4は、スピンドル駆動5に作用するが、これはギア式機構4の回転移動を長手方向調整の線形移動に変換する。曲げビーム35は、ギア式機構4とスピンドル駆動5との間でトルクを伝達するために設けられる。ギア式機構4は、曲げビーム35の従動端部34を作用するが、これは内側チューブ22の中心軸27と同軸に配される。曲げビーム35は、さらに、シールドリング24の領域内に配されるカラー36を有し、これに接合された、曲げビーム35の自由端において連結片37で終わる長尺狭窄シャフト領域32を有する。長尺狭窄シャフト領域32は、片側が開放された駆動スピンドル50の中心孔部51内に挿入され、ここで、連結片37は、中心孔部51の底部において駆動スピンドル50に接続される。駆動スピンドル50は、曲げビーム35による回転動作で設定されるが、外側チューブ21の中心軸26周りを回転し、ひいては、駆動スピンドル50上に配されて内側チューブ22に固定的に接続される調整スライド52の長手軸移動をもたらす。したがって、駆動磁石3の回転は、最終的に、減速ギア4及びスピンドル駆動5を介して、インプラントコンポーネント1の長手軸方向の調整をもたらす。
【0064】
以降、図18及び図19を参照する。動作中、負荷の課された調整装置2において、曲げ応力が生じる。インプラントコンポーネント1の長手方向の調整の結果として生じる実質的な負荷は、座屈荷重であり、これが屈曲に際して、略シャフト様のインプラントコンポーネント1に応力を加える。この抗力は、図18における長尺矢印でシンボル化されている。この応力の結果として、外側チューブ21の中心軸26と内側チューブ22の中心軸27との間で、角度誤差が生じ得る。すなわち、負荷の下、これら2つの中心軸26、27は、もはや配列されないものの、数度の角度調整不良を有する。
【0065】
駆動磁石3からスピンドル駆動5までの感度の高いトルクの伝達が非常に妨げられ、その結果として、望ましくない遮断が生じ得る。本発明によると、曲げビーム35は、その屈曲(図19中には矢印の表現でシンボル化されている)のおかげで調整不良を吸収することができるが、ここでは療法を提供する。±5度まで、好ましくは±2度までの範囲内で調整不良の補償を可能にする。このようにして、曲げ応力に対する駆動系の耐性を増し、ひいては、インプラントコンポーネント1の調整装置2の耐荷重及び信頼度を増す。
【0066】
自身の調整装置2を備えたインプラントコンポーネント1は、自身の駆動磁石3を備えた調整装置2が磁気リング8の面内に据えられるように、駆動部7、7’の内部80にインプラントコンポーネント1を付けた末端部(脚9)を配置することによって調製される。具体的には、磁気リング8が通常、手で回転される駆動部7、7’を作動させることにより、磁場リング8と同期してともに回転する磁場88が、駆動磁石3に作用するが、これも同様に、対応してともに同期的に回転される。通常電磁的に生成された電場(特に、電気モータ巻線)と対照的に、自身強度に対して変調されていないものの、一定の強度を有する静磁場により、駆動磁石3と磁気リング8との間の滑りが確実に回避される。したがって、磁気リング8の角度位置及び旋回数は、駆動磁石3と等しくなる。したがって、簡易に精密な長手方向の調整が実施され得る。調整のために実施される回転数(ひいては、このようにして達成される調整経路)は、ここでは、計数機構66上でユーザに示される。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13a
図13b
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図15
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図18
図19
【国際調査報告】