(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】改善されたコンクリート組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20230406BHJP
C04B 24/24 20060101ALI20230406BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20230406BHJP
C04B 18/16 20230101ALI20230406BHJP
C04B 14/22 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/24 Z
C04B18/14 A
C04B18/16
C04B14/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549184
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 US2021018100
(87)【国際公開番号】W WO2021167861
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519246261
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アリベック,ケン
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】クラフツォフ,セルゲイ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA09
4G112PA29
4G112PA30
4G112PB26
(57)【要約】
本発明は、生化学的産生微生物及び/又は微生物により合成された副生成物を用いて、コンクリートを改善する組成物に関する。本発明はまた、該微生物株及び/又はその副生成物により、コンクリートの性能を向上する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物培養物及び/又はその増殖副生成物、及びコンクリート混合物を含む、コンクリートを改善する組成物。
【請求項2】
前記コンクリート混合物は、水、骨材及びセメントを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記骨材は、砂、砂利、石、岩、高炉スラグ、ガラス、再生コンクリートのうちの1つ又は組合せから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記増殖副生成物は、約0.001%~約5%の濃度で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記微生物培養物は、約0.1g/l~約100g/lの濃度で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記増殖副生成物は、バイオサーファクタントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記バイオサーファクタントは、ソホロ脂質である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ソホロ脂質は、ラクトンソホロ脂質である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記増殖副生成物は、炭水化物、ポリオール、脂質、糖脂質、エステル又はタンパク質の1つ又は組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記微生物培養物は、
Wickerhamomyces spp.及び/又は
Starmerella spp.を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記微生物は、栄養体状態にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記微生物は、胞子形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
コンクリート混和剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記コンクリート混和剤は、
a)促進剤、
b)結合剤、
c)防食剤、
d)空気連行剤、
e)結晶性混和剤、
f)顔料、
g)可塑剤、
h)超可塑剤、
i)ポンピング助剤、
j)遅延剤、
k)減水剤、
l)収縮低減剤、
m)水和制御混和剤、
n)アルカリシリカ反応抑制剤、
o)防湿混和剤、
p)透磁率低減混和剤、
q)ガス形成混和剤、
r)不分離性剤、
s)発泡混合物、及び
t)施工性混和剤
のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
微生物培養物及び/又はその増殖副生成物をコンクリートに添加することを含む、コンクリートの1つ以上の特性を改善する方法。
【請求項16】
前記コンクリートは、水、骨材、及びセメントを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コンクリートは、コンクリート混和剤をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コンクリート混和剤は、
a)促進剤、
b)結合剤、
c)防食剤、
d)空気連行剤、
e)結晶性混和剤、
f)顔料、
g)可塑剤、
h)超可塑剤、
i)ポンピング助剤、
j)遅延剤、
k)減水剤、
l)収縮低減剤、
m)水和制御混和剤、
n)アルカリシリカ反応抑制剤、
o)防湿混和剤、
p)透磁率低減混和剤、
q)ガス形成混和剤、
r)不分離性剤、
s)発泡混合物、及び
t)施工性混和剤
のうちの1つ又はそれらの組み合わせから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記骨材は、砂、砂利、石、岩、高炉スラグ、ガラス、及び再生コンクリートのうちの1つ又はそれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記増殖副生成物は、バイオサーファクタントである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記バイオサーファクタントは、ソホロ脂質である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ソホロ脂質は、ラクトンソホロ脂質である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記増殖副生成物は、炭水化物、ポリオール、脂質、糖脂質、エステル、及びタンパク質の組み合わせのうちの1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記増殖副生成物は、約0.001%~約50%の濃度で存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記微生物培養物は、約0.1g/l~約100g/lの濃度で前記組成物中に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記微生物培養物は、
Wickerhamomyces spp.及び/又は
Starmerella spp.を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記微生物は、栄養体状態にある、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記微生物は、胞子形態である、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記コンクリートは、
a)前記コンクリートの強度向上、
b)前記コンクリート組成物の水使用量の削減、
c)前記コンクリートの施工性向上、
d)前記コンクリートの空隙率の減少、
e)前記コンクリートの硬化時間の変更、及び
f)生物的ストレス及び非生物的ストレスから選択される1つ以上の環境ストレスに対する前記コンクリートの耐性の増加
のうちの1つ又はそれらの組み合わせによって改善される、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記コンクリート、増殖副生成物、及び/又は微生物培養物は、前記コンクリートの適用前に一緒に混合される、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
前記コンクリートは、前記微生物培養物及び/又は増殖副生成物が前記コンクリートに適用されるときに硬化する、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
前記コンクリートは、前記微生物培養物及び/又は増殖副生成物が前記コンクリートに適用されるとき、完全に硬化される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2020年2月20日出願の米国仮出願第62/979,161号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、鋼、プラスチックや木材よりも一般的な建築材料の1つである。現在のコンクリートの製造方法は、セメント、砂、及び水を、コンクリートの特性を改質する追加の化学物質と混合することに基づいている。添加剤の一例は、可塑剤として作用する化学界面活性剤である。この可塑剤の使用は、高強度コンクリート及び繊維強化コンクリートを製造する場合に特に有益である。
【0003】
コンクリート混合物中の水分濃度が増加すると、コンクリート強度は低下する。水分濃度が1%増加すると、コンクリートの最終強度は5%低下する。しかしながら、コンクリート混合物中に適切に水がないと、コンクリートは、所望の形態に流動させたり、扱うことができない。
【0004】
コンクリートには、扱うのに必要な水の量を減らすために、コンクリート可塑剤が添加される。可塑剤は、典型的には、0.1%~0.4%の濃度で添加される。これらの濃度の可塑剤では、コンクリートの可塑性を維持するのに必要な水分は5%~15%減少する。
【0005】
細菌、酵母又は真菌等の微生物の培養は、様々の有用な生物製剤の製造に重要である。微生物は、例えば、食品産業、製薬産業、農業、鉱業、環境修復、及び廃棄物管理において重要な役割を果たす。広範な産業において微生物の使用が拡大する大きな可能性が存在している。
【0006】
微生物バイオサーファクタントへの関心は、それらの多様性、環境に優しい性質、選択性、極限条件下での性能、及び環境保護における潜在的な用途のために、着実に増加している。バイオサーファクタントは、相間の界面張力を低減する微生物由来の化学物質である。ソホロ脂質(SLP)は、非病原性酵母によって産生される糖脂質の部類に属するバイオサーファクタントである。SLPは、農業、食品保存、生物医学、化粧品、及びその他産業において使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、微生物の独特かつ有利な使用、及びバイオサーファクタント等の微生物の増殖副生成物を提供する。特定の実施形態において、本発明は、微生物ベースの生成物、及び改善されたコンクリート組成物におけるその使用を提供する。
【0008】
具体的には、好ましい実施形態において、本発明は、コンクリートの様々な特性を改善するのに、費用効果が高く、環境に優しいアプローチを提供する。利点を挙げると、これらの方法が、水中及び温度変化の大きい領域を含む広範囲の環境条件にわたって実施するできることである。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、微生物及び/又はその増殖副生成物の適用によって、コンクリートの様々な特性を改善する組成物を提供する。微生物及び/又はその増殖副生成物は、コンクリートの初期混合中に、水、セメント、骨材、コンクリート生成物の他の必要な要素に添加することができる。あるいは、微生物及び/又は増殖副生成物は、コンクリートが完全に固化した時点を含めて、コンクリートの初期注入後の任意の時点で適用することができる。
【0010】
特定の実施形態において、本発明は、酵母菌株及び/又はその増殖副生成物を利用する。一実施形態において、本発明の組成物及び方法において使用される微生物は、バイオサーファクタント産生酵母である。本発明は、例えば、培養されたStarmerella bombicola ATCC 22214を含む微生物ベースの生成物及び/又はその微生物の増殖生成物を提供する。さらに、本発明は、培養されたWickerhamomyces anomalus及び/又はその増殖副生成物を含む微生物ベースの生成物を提供する。微生物は、栄養型又は胞子型を含む様々な増殖段階にある。
【0011】
特定の実施形態において、本発明は、例えば、促進剤、結合剤、防食剤、空気連行剤、結晶性混和剤、顔料、可塑剤、超可塑剤、ポンピング助剤、遅延剤、減水剤、収縮低減剤、水和制御混和剤、アルカリシリカ反応性防止剤、防湿混和剤、透磁率低減混和剤、ガス形成混和剤、不分離性混和剤、発泡混和剤、及び/又は施工性混和剤等の1つ以上の追加の成分をさらに含む。
【0012】
特定の実施形態において、本発明は、微生物培養物及び/又は微生物増殖副生成物を含む本発明による組成物をコンクリート混合物に添加し、及び/又は硬化コンクリートの表面に塗布することにより、コンクリートの性能を向上する方法を提供する。コンクリートの性能は、例えば、コンクリート組成物中で使用される水の量を減少させる、コンクリートの可塑性を増加させる、コンクリートの空隙率を減少させる、コンクリートの硬化時間を変更する、及び/又は生物的及び/又は非生物的ストレスに対する耐性を増加させることによって、向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、微生物、及びバイオサーファクタント等の微生物の増殖副生成物の有利な使用を提供する。特定の実施形態において、本発明は、微生物ベースの生成物、及び改善されたコンクリート組成物におけるその使用を提供する。
【0014】
特定の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物は、コンクリートへの混和剤として微生物及び/又は微生物増殖副生成物を利用する。一実施形態において、本発明の方法で使用される微生物は、バイオサーファクタント産生酵母である。
【0015】
特定の実施形態において、本発明は、酵母菌株及び/又はそれらの増殖副生成物を利用する。本発明は、例えば、培養Wickerhamomyces anomalus酵母及び/又はその増殖副生成物を含む微生物ベースの生成物を提供する。さらに、本発明は、培養されたStarmerellaクレード酵母、好ましくは、Starmerella(Candida)bombicola、及び/又はその増殖副生成物を含む微生物ベースの生成物を提供する。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明は、1つ以上の微生物及び/又は微生物由来バイオサーファクタントをコンクリートに適用することによって、コンクリートの1つ以上の特性を改善する方法を提供する。特定の実施形態において、本方法は、酵母菌株に由来する1つ以上のバイオサーファクタント、例えば、Starmerella bombicola又はWickerhamomyces anomalusをコンクリートに適用することを含む。
【0017】
特定の実施形態において、本方法はまた、微生物自体及び/又はその副生成物を、コンクリート中で従来から使用される1つ以上の混和剤と共に適用することを含んでもよい。
【0018】
特定の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物は、コンクリート硬化中又は硬化後に適用生成物として微生物増殖副生成物を利用する。微生物及び/又は副生成物は、コンクリートに浸透、又はコンクリート表面に残る。
【0019】
一実施形態において、本発明による組成物は、小規模から大規模の培養プロセスによって得られる。これらの培養プロセスには、浸漬培養/発酵、表面培養、固相発酵(SSF)及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
利点を挙げると、本発明は、環境中に大量の無機化合物を放出することなく使用することができる。さらに、本組成物及び方法は、生分解性であり、毒物学的に安全な成分を利用する。従って、本発明は、「グリーン」処理として、全ての可能なコーティング(及び他の用途)において使用することができる。
【0021】
選択された定義
本明細書で使用される場合、「微生物ベースの組成物」とは、微生物又は他の細胞培養物の増殖の結果産生された成分を含む組成物を意味する。従って、微生物ベースの組成物は、微生物自体及び/又は微生物増殖副生成物を含む。細胞は、栄養体状態又は胞子形態、又は両方の混合物であってもよい。細胞は、プランクトン、バイオフィルム形態、又は両方の混合物であってもよい。増殖副生成物は、例えば、代謝産物、細胞膜成分、発現タンパク質、及び/又は他の細胞成分である。細胞は、無傷であっても溶解されていてもよい。いくつかの実施形態において、細胞は、微生物ベースの組成物中に、それらが増殖したブロスと共に存在する。細胞は、例えば、組成物1ミリリットル当たり少なくとも1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、又は1×1011以上の細胞の濃度で存在する。
【0022】
本発明はさらに、所望の結果を達成するために実際に適用される生成物である「微生物ベースの生成物」を提供する。微生物ベースの生成物は、単に、微生物培養プロセスから採取された微生物ベースの組成物である。あるいは、微生物ベースの生成物は、添加されたさらなる成分を含んでいてもよい。これらの追加の成分は、例えば、緩衝液、水等の適切な担体、さらなる微生物増殖を支持する添加栄養素、及び/又は微生物及び/又はそれが適用される環境中の組成物の追跡を容易にする薬剤を含む。また、微生物ベースの生成物は、微生物ベースの組成物の混合物を含んでいてもよい。また、微生物ベースの生成物は、これらに限定されないが、濾過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等の、何らかの方法で処理された微生物ベースの組成物の1つ以上の成分を含んでもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「単離された」又は「精製された」バイオサーファクタント又は他の微生物起源の生化学物質は、それが天然に関連する細胞物質等の他の化合物を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「単離された」は、菌株が天然に存在する環境から除去されることを意味する。従って、単離された菌株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、又は胞子(又は菌株の他の形態)として存在してもよい。
【0024】
「代謝産物」とは、代謝によって産生される任意の物質(例えば、増殖副生成物)又は特定の代謝プロセスに関与するのに必要な物質を指す。代謝産物の例としてはバイオサーファクタント、バイオポリマー、酵素、酸、溶媒、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、及びアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
「調節する」とは、変化(増加又は減少)を意味する。そのような変化は、本明細書に記載されるような標準的な既知の方法によって検出される。
【0026】
本明細書で提供される範囲は、その範囲内の全ての値について簡潔にされたものであると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は下位範囲、同様に、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、及び1.9等の上述の整数間にある小数点の値の全てを含むものと理解される。下位範囲に関して、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子下位範囲」が特に考えられる。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子下位範囲は、一方向に1~10、1~20、1~30、及び1~40、又は他方向に50~40、50~30、50~20、及び50~10を含むことができる。
【0027】
「減少」とは、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、75%、又は100%の負の変化を意味する。
【0028】
「増加」とは、少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、75%、又は100%の正の変化を意味する。
【0029】
「基準」とは、標準又は対照条件を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「バイオフィルム」は、細胞が細胞外多糖マトリックスを使用して互いに及び/又は表面に接着する、細菌等の微生物の錯体骨材である。バイオフィルム中の細胞は、液体培地中で浮遊又は泳動することができる単一細胞である同じ生物のプランクトン細胞とは生理学的に異なる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」とは、2つの液体間又は液体と固体間の表面張力(又は界面張力)を低下させる化合物を指す。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、及び/又は分散剤として作用する。微生物によって産生される界面活性剤は、「バイオサーファクタント」と呼ばれる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「生物ストレス」は、細菌、真菌、又は蔓脚類等の生体の結果である、組成物及び/又は物体に対する圧力である。「生物的ストレッサー」は、「非生物的ストレッサー」とは、「非生物的ストレッサー」がUV放射、凍結融解サイクル、又は塩水等の非生物的要因の結果であるという点で異なる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「促進剤」、「セメント促進剤」、「促進混和剤」、及び「コンクリート促進剤」は、コンクリート組成物の硬化時間を促進するコンクリート、セメント、モルタル、レンダリング、又はスクリードに使用される成分である。促進剤は、降水の有無にかかわらず、特に寒い時期に、コンクリートの硬化時間を遅らせたり、損傷を与えたりし得る悪天候の影響を相殺するために使用することができる。促進剤としては、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、塩化カルシウム、トリエタノールアミン、及びチオシアン酸ナトリウムが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「結合剤」、「接着剤」、「樹脂」、及び「エポキシ」は、コンクリートを、コンクリート、プラスター、及びスタッコ等の既存の構造物に結合することができるコンクリートに使用される成分である。結合剤なしでは、生コンクリートを、硬化したコンクリート構造物に接着させることができない。結合剤としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アクリル、及びブタジエン-スチレンコポリマーが挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「防食剤」は、塩化物及び大気CO2とセメントとの反応を制限することによって鉄筋コンクリートの早期破損を防止することができるコンクリートに使用される成分である。除氷塩等の発生源からの塩化物は、埋め込まれた鋼に到達し、錆を作る可能性がある。防食剤としては、アミノアルコール、亜硝酸カルシウム、及びモノフルオロリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「空気連行剤」は、組成物中に微小な気泡を作るためにコンクリート中で使用される化合物である。空気連行剤は、温度サイクル中に空気が膨張及び凝縮することを可能にし、コンクリートの施工性及び凝集性を改善し、コンクリートの偏析及びブリーディングを低減することによって、コンクリート中のエアポケットの発達を促進して耐久性を高める。空気連行剤としては、ウッドレジンの塩、合成洗剤、スルホン化リグニンの塩、石油酸の塩、タンパク質性物質の塩、脂肪酸及び樹脂酸及びそれらの塩、アルキルベンゼンスルホネート、及びスルホン化炭化水素の塩が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「結晶性混和剤」又は「透磁率低減剤」は、それが添加されるコンクリートの透磁率を低下させる。特定の例において、コンクリートは、適切な量の結晶性混和剤を添加することにより、水に対してほとんど不透過になる。結晶性混和剤としては、ラテックス及びステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「可塑剤」、「超可塑剤」、「施工性混和剤」、及び「減水混和剤」は、扱うのに必要とされる水の量を減少させ、流動性を増加させ、及び/又は水対セメント比を減少させるために、コンクリートに添加される。化学可塑剤のいくつかの例としては、リグノ硫酸塩、ポリグルコエステル、炭水化物、及びヒドロキシル化カルボン酸が挙げられる。改質リグノ硫酸塩、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒドを含む超可塑剤も存在し、これらは、水中で最大30%の減少を伴うコンクリートの施工性を可能にする能力において可塑剤よりも優れている。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ポンピング助剤」は、コンクリートがコンクリート輸送チャンバー又は保持チャンバーのためのパイプ、チャネル、ドラム、又は他のオブジェクトを通って容易に流れることを可能にする潤滑物質である。ポンピング助剤としては、有機及び合成ポリマー、有機凝集剤、パラフィンの有機エマルジョン、コールタールアスファルト、アクリル、ベントナイト、焼成シリカ、及び水和石灰が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「遅延剤」は、コンクリートの硬化時間を遅くする物質である。遅延剤のいくつかの例としては、リグニン、ホウ砂、糖、ならびに酒石酸及び塩が挙げられる。同様に、「水和制御混和剤」はコンクリートの硬化時間も遅くするが、水和制御混合物は蒸発プロセスが始まった後、より寛容であることが多い。水和制御混和剤は、時間放出カプ細胞と比較することができる。
【0041】
本発明によれば、コンクリートが固化する際の、「収縮低減装置」は、コンクリートの収縮を制限する。収縮低減剤のいくつかの例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びプロピレングリコールが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「アルカリ-シリカ反応性阻害剤」は、アルカリセメントペーストとシリカとの間の反応を阻害することによって、コンクリートの寿命全体にわたって起こり得る膨潤を阻害する。ケイ酸ナトリウムは、反応から結果、水に曝露されると体積が増加する吸湿性ゲルを生成する。アルカリシリカ反応抑制剤のいくつかの例としては、バリウム塩、硝酸リチウム、炭酸リチウム、及び水酸化リチウムが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「防湿」混和剤は、コンクリートへの水分浸透を防止又は妨げる。周囲環境からの湿気がコンクリートに浸透しないようにするために、水分が一般に使用される。これらの水分源は、地下壁、コンクリートスラブ、又は歩道のコンクリートを取り囲む土壌又は砂である。防湿はコンクリート組成物全体にわたって混合される添加剤とは対照的に、コンクリートへの外部塗料の形成であることが多い。プルーフコンクリートを湿らせるために使用することができるいくつかの材料としては、ステアリン酸カルシウム又はアンモニウムの石けん、オレイン酸カルシウム又はアンモニウムの石けん、ステアリン酸ブチル、及び各種石油生成物が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「防水」混和剤は防湿と同様であるが、特に高い地下水面、頻繁な洪水、又はプール内の環境において、液体水による浸透を防止するように設計されている。防水材もまた、コンクリートの外面に適用される。防水コンクリートに使用できるいくつかの材料には、ゴム化アスファルトコーティング、ベントナイト、ゴム系コーティング、及びウレタンコーティングが含まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ガス形成」混和剤は、硬化する前にコンクリートを膨張させる物質である。最も一般的なガス形成混和剤は、アルミニウム粉末、活性炭及び過酸化水素である。これらの添加された化学物質は、コンクリート中に水素ガスの気泡を形成する。コンクリートの沈下に抗することに加えて、水素ガスの存在は、コンクリートのブリーディングにも抗する。コンクリートブリーディングは、水が上方に押し上げられ、より高密度のセメント粒子が沈むときに起こる。ガス形成混和剤はまた、軽量コンクリートを作ることもできる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「不分離性」混和剤は、水の移動によって引き起こされる水圧及び摩擦の影響を緩和するために、水中での使用を目的として、コンクリートに添加されることが多い。不分離性混和剤は、コンクリートの凝集性を改善し、セメントペーストが洗い流されるのを防止する。コンクリートは、自己圧縮性である。セルロース及びアクリルポリマーは、不分離性組成物中で使用することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「発泡」混和剤は、コンクリート組成物に界面活性剤又は加水分解タンパク質等の他の化学物質を添加することによって、より軽く、より密度の低いコンクリートを作る。発泡混和剤を有するコンクリートは、構造的支持体とは対照的に、空隙充填のために使用されることが多い。
【0048】
本明細書で使用される場合、「骨材」又は「建築用骨材」は、水及びセメントと共にコンクリートを作るための3つの基本的な成分のうちの1つである。骨材は、粒子状材料である。骨材は、通常、コンクリート組成物の大部分を構成し、砂、石、砂利、ガラス、シリカ、高炉スラグ、再生コンクリート、岩石、又は他の関連の成分を含む。
【0049】
「有する」又は「含有する」と同義である「含む」という移行句は、包括的又は限定的であり、追加の非記載の構成要件又は方法ステップを排除しない。対照的に、「からなる」という移行句は、請求項に指定されていない任意の構成要件、ステップ、又は成分を排除する。「から実質的になる」という移行句は、請求項の範囲を、特定の材料又はステップ及び請求項に記載された「発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。「含む(comprising)」という用語の使用は、列挙された構成要件「からなる(consist)」又は「実質的になる(consist essentially)」実施形態を意図するものである。
【0050】
特段の定めがない、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」という用語は、包括的であると理解される。特段の定めがない、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「1つ」、及び「その」という用語は、単数又は複数であると理解される。
【0051】
特段の定めがない、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約」という用語は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差内と理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。
【0052】
本明細書に記載される変数の任意の定義における化学基のリストの列挙は、任意の単一の基又はリストされた基の組み合わせとしてその変数の定義を含む。本明細書中の変数又は態様の実施形態の列挙は、その実施形態を任意の単一の実施形態として、任意の他の実施形態又はその一部と組み合わせて含む。
【0053】
本発明による酵母菌株
好ましい実施形態において、本発明は、生化学的産生酵母を利用する。酵母は、天然又は遺伝子改質微生物である。例えば、酵母は、特定の特徴を示すために特定の遺伝子で形質転換される。また、酵母は、所望の菌株の突然変異体であってもよい。本明細書で使用される場合、「突然変異体」は、基準微生物の菌株、遺伝的変異体又はサブタイプを意味し、突然変異体は、基準微生物と比較して1つ以上の遺伝子変異(例えば、点突然変異、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、欠失、重複、フレームシフト突然変異又はリピート伸長)を有する。突然変異体を作製するための手順は、微生物学分野において周知されている。例えば、UV突然変異誘発及びニトロソグアニジンは、この目的のために広く使用されている。
【0054】
本発明による使用に適した酵母及び真菌種としては、これらに限られるものではないが、Acaulospora、Aspergillus、Aureobasidium(例えば、A. pullulans)、Blakeslea、Candida(例えば、C. albicans、C. apicola)、Cryptococcus、Debaryomyces(例えば、D. hansenii)、Entomophthora、Fusarium、Hanseniaspora(例えば、H. uvarum)、Hansenula、Issatchenkia、Kluyveromyces、Mortierella、Mucor(例えば、M. piriformis)、Meyerozyma(例えば、M. guilliermondii)、Penicillium、Phycomyces、Phycomyces、Pichia(例えば、P. anomala、P. guilliermondii、P. occidentalis、P. kudriavzevii)、Pseudozyma(例えば、P. aphidis)、Rhizopus、Saccharomyces(S. cerevisiae、S. boulardii sequela、S. torula)、Starmerella(例えば、S. bombicola)、Torulopsis、Thraustochytrium、Trichoderma(例えば、T. reesei、T. harzianum、T. virens)、Ustilago(例えば、U. maydis)、Wickerhamomyces(例えば、W. anomalus)、Williopsis及びZygosaccharomyces(例えば、Z. bailii)が例示される。
【0055】
いくつかの実施形態において、酵母は「キラー酵母」であり、これは菌株自体が免疫性である毒性タンパク質又は糖タンパク質の分泌を特徴とする酵母の菌株を意味する。キラー酵母によって分泌される外毒素は、例えば、酵母、真菌、又は細菌の他の菌株を死滅させることができる。キラー酵母としては、これらに限定されるものではないが、Wickerhamomyces spp.(W. anomalus)、Pichia、Hansenula、Saccharomyces、Hanseniaspora、(Hanseniaspora uvarum)、Ustilago maydis、Debaryomyces hansenii、Candida spp(C. albicans、C. rugosa、C. tropicalis、C. lipolytica、C. torulopsis)、Starmerella spp.(S. bombicola)、Cryptococcus、Kluyveromyces、Torulopsis、Ustilago、Williopsis、Zygosaccharomyces等が挙げられる。
【0056】
特定の実施形態において、微生物は、Starmerella spp.酵母及び/又はCandida spp.酵母、例えば、Starmerella(Candida)bombicola、Candida apicola、Candida batistae、Candida floricola、Candida riodocensis、Candida stellate及び/又はCandida kuoiである。特定の実施形態において、微生物は、Starmerella bombicola、例えば、菌株ATCC22214である。
【0057】
特定の好ましい態様において、微生物は、Wickerhamomyces anomalusである。
【0058】
例えば、かなりの量の、例えば、糖脂質バイオサーファクタント又は炭水化物、ポリオール、脂質、エステル、及び/又はタンパク質等の他の有用な代謝産物を蓄積することができる他の真菌株を含む他の微生物株を、本発明に従って使用することができる。本発明に従って有用な他の代謝産物及び/又は微生物成分としては、マンノプロテイン、ベータグルカン、生体乳化特性及び表面/界面張力低減特性を有するその他のものが挙げられる。
【0059】
本発明による酵母の増殖
本発明は、微生物の培養方法、及び微生物代謝産物及び/又は微生物増殖の他の副生成物の製造方法を利用する。微生物培養システムは、典型的には、浸漬培養発酵を使用するが、表面培養及びハイブリッドシステムを使用することもできる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「発酵」は、制御された条件下での細胞の増殖を指す。増殖は、好気性又は嫌気性である。文脈が別途必要としない限り、この語句は、プロセスの増殖期及び生成物生合成期の両方を包含することを意図する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ブロス」、「培養ブロス」、又は「発酵ブロス」は、少なくとも栄養素を含む培養培地を指す。発酵プロセス後のブロスの場合、ブロスは、微生物増殖副生成物及び/又は微生物細胞も含む。
【0062】
一実施形態において、本発明は、バイオマス(例えば、生存細胞物質)、細胞外代謝産物(例えば、低分子及び分泌タンパク質)、残留栄養素及び/又は細胞内成分(例えば、酵素及びその他タンパク質)を産生する材料及び方法を提供する。
【0063】
本発明に従って使用される微生物増殖容器は、工業用途の任意の発酵槽又は培養反応器である。本明細書で使用される場合、「反応器」、「バイオリアクター」、又は「発酵反応器」という用語は、1つ以上の容器及び/又は塔又は配管配置からなる発酵装置を含む。そのような反応器の例としては、これらに限定されるものではないが、連続撹拌タンク反応器(CSTR)、固定化細胞反応器(ICR)、トリックルベッド反応器(TBR)、気泡搭、ガスリフト発酵槽、スタティックミキサー、又は気液接触に適した他の容器もしくは他の装置が挙げられる。いくつかの実施形態において、バイオリアクターが第1の増殖リアクター及び第2の発酵リアクターを含んでもよい。従って、バイオリアクター又は発酵反応への基質の添加をする場合、これらのリアクターの一方又は両方への添加を適宜含ものとする。
【0064】
一実施形態において、容器は、pH、酸素、圧力、温度、撹拌機シャフト出力、湿度、粘度、及び/又は微生物密度及び/又は代謝産物濃度等の培養プロセスにおける重要な因子を測定するために、機能制御/センサを有してもよく、又は機能制御/センサに接続されてもよい。
【0065】
さらなる実施形態において、容器はまた、容器内の微生物の増殖をモニター(例えば細胞数及び増殖期の測定)することもできる。あるいは、毎日のサンプルを容器から採取し、希釈プレーティング技術等の当該技術分野で公知の技術による計数に供してもよい。希釈プレーティングは、サンプル中の細胞の数を推定するために使用される簡便な技術である。また、この技術は、異なる環境又は処理を比較することができる指標を提供することもできる。
【0066】
一実施形態において、本方法は、培養物に窒素源を補充することを含む。窒素源は、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素、及び/又は塩化アンモニウムである。これらの窒素源は、単独で、又は2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0067】
この培養方法は、増殖培養物を酸素化することができる。一実施形態によれば、低酸素含有空気を除去し、酸素化空気を導入するために、空気の緩慢な動き利用する。酸素化空気は、液体の機械的撹拌のためのインペラ、及び液体中への酸素の溶解のために液体に気泡を供給するための空気スパージャーを含む機構によって毎日補充される周囲空気であってもよい。
【0068】
本方法は、培養物に炭素源を補充することをさらに含む。炭素源は、典型的には、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、及び/又はマルトース等の炭水化物、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、及び/又はピルビン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、及び/又はグリセロール等のアルコール、大豆油、米ぬか油、オリーブ油、コーン油、ゴマ油、及び/又は亜麻仁油等の油脂である。これらの炭素源は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
一実施形態において、微生物の増殖因子及び微量栄養素が培地に含まれる。一実施形態において、無機塩も含まれていてもよい。特定の実施形態において、培養方法は、培養プロセスの前、及び/又は培養プロセス中に、液体培地中に追加の酸及び/又は抗菌剤を添加することをさらに含んでもよい。抗菌剤又は抗生物質は、培養物を汚染から保護するために使用される。さらに、培養中にガスが生成されるときの泡の形成及び/又は蓄積を防止するために、消泡剤を添加してもよい。
【0070】
混合物のpHは、目的の微生物に適したものとする。緩衝液、及び炭酸塩及びリン酸塩等のpHレギュレータを使用して、pHを好ましい値付近に安定化させることができる。金属イオンが高濃度で存在する場合、液体培地中でのキレート剤の使用が必要である。
【0071】
微生物は、プランクトン形態で、又はバイオフィルムとして増殖させることができる。バイオフィルムの場合、容器は、その中に微生物をバイオフィルム状態で増殖させることができる菌床を有することができる。また、このシステムは、例えば、バイオフィルム増殖特性を促進及び/又は改善する刺激(せん断力応力等)を印加する能力を有していてもよい。
【0072】
一実施形態において、微生物の培養方法は、約5℃~約100℃、好ましくは、15℃~60℃、より好ましくは、25℃~50℃で実施される。さらなる実施形態において、培養は、一定温度で連続的に実施されてもよい。他の実施形態において、培養は変化する温度にさらされてもよい。
【0073】
一実施形態において、方法及び培養プロセスで使用される装置は無菌である。反応器/容器のような培養装置は滅菌ユニット、例えばオートクレーブから分離されてもよいが、それに接続されてもよい。また培養装置は、接種を開始する前にインサイチュで滅菌する滅菌ユニットを有する可能性がある。空気は、当該技術分野で公知の方法によって滅菌することができる。例えば、周囲空気は容器内に導入される前に、少なくとも1つのフィルタを通過することができる。他の実施形態において、培地が低温殺菌されてもよく、又は任意で、熱を全く加えなくてもよく、低水分活性及び低pHの使用がない細菌増殖を制御するために利用されてもよい。
【0074】
発酵ブロスのバイオマス含量は、例えば、5g/l~180g/l又はそれ以上である。一実施形態において、ブロスの固形分は、10g/l~150g/lである。
【0075】
一実施形態において、本発明は、エタノール、ポリオール、エステル、乳酸、ベータ-グルカン、タンパク質、ペプチド、代謝中間体、多価不飽和脂肪酸、バイオサーファクタント、及び脂質等の微生物代謝産物を生成する方法をさらに提供する。本方法によって生成される代謝産物含量は、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%である。
【0076】
目的の微生物によって生成される微生物増殖副生成物は、微生物中に保持されてもよく、又は液体培地中に分泌されてもよい。他の実施形態において、微生物増殖副生成物を生成する方法は、目的の微生物増殖副生成物を濃縮及び精製するステップをさらに含んでいてもよい。さらなる実施形態において、液体培地は、微生物増殖副生成物の活性を安定化させる化合物を含有していてもよい。
【0077】
好ましい実施形態において、微生物増殖副生成物は、バイオサーファクタントである。本発明による具体的なバイオサーファクタントとしては、例えば、低分子量糖脂質(GL)、リポペプチド(LP)、フラボ脂質(FL)、リン脂質、ならびに高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体が挙げられる。
【0078】
一実施形態において、微生物バイオサーファクタントは、ラムノ脂質(RLP)、ソホロ脂質(SLP)、トレハロース脂質又はマンノシルエリトリトール脂質(MEL)等の糖脂質である。一実施形態において、微生物バイオサーファクタントは、イツリン、フェンジシン又はサーファクチン等のリポペプチドである。
【0079】
一実施形態において、酵母ベースの組成物は、これらのバイオサーファクタントのいずれかのブレンドを含む。好ましくは、ブレンドは、ソホロ脂質、及び任意で、マンノシルエリスリトール脂質、サーファクチン、イツリン及び/又はラムノ脂質の1つ以上を含む。
【0080】
特定の実施形態において、微生物増殖副生成物は、炭水化物、ポリオール、脂質、糖脂質、エステル、及び/又はタンパク質である。これらの成分は、発酵の廃棄物としての副生成物である。増殖副生成物はまた、酵母細胞死から生じる残留化学物質とすることもできる。
【0081】
特定の実施形態において、精製された化合物は、目的の化合物の少なくとも60重量%である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは、少なくとも90重量%、最も好ましくは、少なくとも99重量%の目的の化合物である。例えば、精製された化合物は、重量基準で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、又は100%(w/w)の所望の化合物である。純度は任意の適切な標準的な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定される。
【0082】
微生物の培養及び微生物副生成物の産生する方法及び装置は、バッチ法、準連続法、又は連続法で実施することができる。
【0083】
一実施形態において、微生物培養組成物の全ては、培養の完了時に(例えば、所望の細胞密度、又はブロス中の特定の代謝産物の密度を達成した時に)除去される。このバッチプロセスにおいて、全く新しいバッチは、第1のバッチの採取時に開始される。
【0084】
他の実施形態において、発酵産物の一部のみが、任意の時点で除去される。本実施形態において、生細胞を有するバイオマスは、新しい培養バッチのための接種物として容器内に残る。除去される組成物は、無細胞ブロス又は細胞を含有する可能性がある。このようにして、準連続装置が生成される。
【0085】
利点を挙げると、この方法は、複雑な設備や高いエネルギー消費を必要としないことである。目的の微生物は、現場で小規模又は大規模培養され、培地と混合されていても利用することができる。同様に、微生物代謝産物はまた、必要な部位で大量に産生することもできる。
【0086】
利点を挙げると、微生物ベースの生成物を遠隔地で製造することができることである。微生物増殖施設は、例えば、太陽光、風力及び/又は水力を利用することによって、通電なしでも作動させることができる。
【0087】
酵母ベースの生成物の作製
本発明の1つの酵母ベースの生成物は、単に、酵母及び/又は酵母によって産生される微生物代謝産物及び/又は任意の残留栄養素を含有する発酵ブロスである。発酵産物は、抽出又は精製することなく直接使用することができる。所望であれば、抽出及び精製は、文献に記載されている標準的な抽出及び/又は精製方法又は技術を用いて容易に達成することができる。
【0088】
酵母ベースの生成物中の酵母は、活性形態もしくは不活性形態、又はそれらの混合物である。酵母ベースの生成物は、さらなる安定化、保存、及び貯蔵なしに使用される。利点を挙げると、これらの酵母ベースの生成物の直接的な使用は、微生物の高い生存能力を保存し、外来物質及び望ましくない微生物からの汚染の可能性を低減し、微生物増殖副生成物の活性を維持することである。
【0089】
一実施形態において、「Star3+」と表される第1の酵母発酵産物は、改質形態の固体発酵を使用して、酵母、例えば、Wickerhamomyces anomalusの培養を介して得ることができる。Wickerhamomyces anomalusは、食品及び穀物の製造に関連していることが多く、様々な溶媒、酵素、毒素、トリグリセリド、及びバイオサーファクタント(例えば、リン脂質)を製造するのに有効である。培養物は、例えば、米、大豆、ヒヨコマメ、パスタ、オートミール又は豆のような、酵母が付着し伝播する十分な表面積を有する基質上で増殖させることができる。全体に増殖する酵母細胞、及びその増殖副生成物(例えば、酵素、溶媒及び/又はバイオサーファクタント)を含む全発酵培地は、例えば、25~30℃で3~5日間の培養後に回収することができる。培養物は、基質とブレンドされ、ミリングされ、及び/又は微粉化され、任意で、乾燥される。これには、Star3+生成物が含まれる。例えば、1×1010~1012細胞/グラムを含む組成物は、他の成分と混合する前に、例えば、10、50、100、500、又は1,000倍まで希釈することができる。
【0090】
一実施形態において、酵母発酵生成物は、Wickerhamomyces anomalusの浸漬培養を介して得ることができる。25~30℃で7日間培養した後の発酵ブロスは、酵母細胞懸濁液、及び例えば、少なくとも1~100g/L、2~80g/L、3~60g/L、4~40g/L、5~20g/L又は6~10g/Lのバイオサーファクタントを含有する。
【0091】
一実施形態において、酵母発酵生成物はまた、バイオサーファクタント産生酵母、Starmerella bombicolaの培養を介して得ることもできる。この種は、SLP等の糖脂質バイオサーファクタントの製造に有効である。25℃で5日間培養した後の発酵ブロスは、酵母細胞懸濁液、及び例えば、少なくとも1~150g/L、2~120g/L、3~100g/L、4~80g/L、5~60g/L又は6~50g/Lの糖脂質バイオサーファクタントを含有する。
【0092】
特定の実施形態において、本組成物のバイオサーファクタントは、1つ以上の糖脂質バイオサーファクタントを含む。特定の好ましい実施形態において、糖脂質はソホロ脂質である。
【0093】
ソホロ脂質は、例えば、Starmerellaクレードの酵母、いくつかの実施形態においては、Wickerhamomyces anomalusによって産生される糖脂質バイオサーファクタントである。SLPは、長鎖ヒドロキシ脂肪酸に結合した二糖類ソホロースからなる。それらは、17-L-ヒドロキシオクタデカン酸又は17-L-ヒドロキシ-Δ9-オクタデセン酸にβ-グリコシド結合した部分アセチル化2-O-β-D-グルコピラノシル-D-グルコピラノース単位を含むことができる。ヒドロキシ脂肪酸は、一般に、16又は18個の炭素原子であり、1つ以上の不飽和結合を含有する。さらに、ソホロース残基は、6-及び/又は6'-位でアセチル化される。脂肪酸カルボキシル基は、遊離(酸性又は鎖状形態(一般式1))又は4"-位で内部エステル化(ラクトン形態(一般式2))することができる。S. bombicolaは、S. bombicolaラクトンエステラーゼと呼ばれる特異的酵素を産生し、これが鎖状SLPのエステル化を触媒してラクトンSLPを産生する。
【0094】
【化1】
式中、R
1及びR
1′は、独立して、飽和炭化水素鎖、又は、単一もしくは複数、特に単一の不飽和炭化水素鎖であり、8~20個、特に12~18個の炭素原子、より好ましくは、14~18個の炭素原子を有し、直鎖又は分枝鎖とすることができ、1個以上のヒドロキシ基を含むことができるものを表す。R
2及びR
2′を含み、独立して、水素原子、又は、飽和アルキル官能基、又は、単一のもしくは複数の、特に単一の不飽和アルキル官能基であって、1~9個の炭素原子、より好ましくは、1~4個の炭素原子を有し、直鎖又は分枝鎖とすることができ、1個以上のヒドロキシ基を含むことができるものを表し、R
3、R
3′、R
4及びR
4′は、独立して、水素原子又はアセチル基を表す。
【0095】
ソホロ脂質は、精製された形態であっても、発酵産物の混合物であってもよい。ソホロ脂質は、0.001~90重量%(wt%)、好ましくは、0.01~50wt%、より好ましくは、0.1~20wt%の濃度でコンクリート組成物に添加することができる。他の実施形態において、精製されたSLPは、SLPが0.001~50%(v/v)、好ましくは、0.01~20%(v/v)、より好ましくは、0.02~5%(v/v)の濃度で存在するという点で、許容される担体と組み合わせてもよい。
【0096】
酵母増殖から得られる酵母及び/又はブロスは、増殖容器から取り出され、例えば、直ちに使用するための配管を介して移送することができる。
【0097】
酵母発酵産物は、酵母細胞及び発酵ブロスを含む、又は酵母細胞から分離された発酵ブロスを含むことができる。一実施形態において、ブロス中のバイオサーファクタント又は他の増殖副生成物は、ブロスからさらに分離され、精製される。
【0098】
他の実施形態において、組成物(酵母、ブロス、又は酵母及びブロス)は、例えば、意図される使用、予期される適用方法、発酵タンクのサイズ、及び微生物増殖施設から使用場所への任意の輸送モードを考慮して、適切なサイズの容器に入れることができる。このように、酵母ベースの組成物が入れられる容器は、例えば、1ガロン~2,000ガロン以上であってもよい。他の実施形態において、容器は、2ガロン、5ガロン、25ガロン、250ガロン、又はそれ以上である。
【0099】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、以下の1つ以上を含むバイオサーファクタント単独を超える利点を有するものである。酵母細胞壁の外表面の一部としての高濃度のマンノプロテイン(マンノプロテインは非常に有効なバイオ乳化剤である)、酵母細胞壁中のバイオポリマーベータ-グルカン(乳化剤)の存在、及び培養物中のバイオサーファクタント、代謝産物及び溶媒(例えば、乳酸、エタノール、酢酸エチル等)の存在。
【0100】
本発明に従って有用な他の化学物質としては、マンノプロテイン、ベータ-グルカン、エタノール、乳酸、及び、例えば、生体乳化特性及び表面/界面張力低減特性を有する他の代謝産物が挙げられる。
【0101】
特定の実施形態において、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物をコンクリートに添加することができる。これらの組成物は、コンクリート成分の初期の混合中に添加することができ、又は微生物培養及び/又は増殖副生成物組成物は、初期のコンクリート適用後、すなわち、硬化プロセス中又は後に添加することができる。
【0102】
コンクリートは、水、セメント、及び骨材の3つの基本的な成分を有する。例えば、砂、石、岩石、砂利、再生コンクリート、ガラス、又は高炉スラグ等の骨材は、コンクリートの基本構造となるコンクリートの大部分を構成する。特定の実施形態において、骨材は、砂等の1種類、又は、例えば、砂、再生コンクリート、及びガラス等の異なる骨材の組み合わせとすることができる。セメントは、接着剤として使用され、骨材を互いに結合する。混合物が均質な、実施可能な組成物にするために、水を添加する。このコンクリート混合物は、用途に基づいて様々な形状及び組成で作製することができる。
【0103】
様々な種類の混和剤がコンクリート混合物に添加されている。これらには、例えば、促進剤、結合剤、防食剤、空気連行剤、結晶性混和剤、顔料、可塑剤、超可塑剤、ポンピング助剤、遅延剤、減水剤、収縮低減剤、水和制御混和剤、アルカリシリカ反応性防止剤、防湿混和剤、透磁率低減混和剤、ガス形成混和剤、不分離性混和剤、発泡混和剤及び/又は施工性混和剤が含まれる。
【0104】
特定の実施形態において、促進剤は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物中、又はそれと共に使用される。塩化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、塩化カルシウム、トリエタノールアミン、及びチオシアン酸ナトリウムを、コンクリート組成物に使用することができるが、腐食問題を生じることが多く、防食剤の使用を必要とする。
【0105】
特定の実施形態において、防食剤は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物中、又はそれと共に使用される。防食剤としては、アミノアルコール、例えば、2-アミノメチルプロパノール、ベンゾトリアゾール、例えば、ジエチルエタノールアミンベンゾトライゾール及びメチルベンゾトリアゾール、亜硝酸カルシウム及びモノフルオロリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0106】
微生物培養物及び/又は増殖副生成物は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物の、処理される表面への付着を促進する組成物と共に適用される。接着促進物質は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物の成分であってもよく、又は酵母ベースの生成物と共に連続的に適用されてもよい。結合剤、接着剤、樹脂、及びエポキシは、コンクリートに使用される成分で、コンクリートを既存の構造物に結合させたり、コンクリートの表面に追加の化学物質を結合させることができる。これらの結合剤は、生コンクリートを、硬化コンクリート構造物に接着するのを補助するものである。本開示において使用することができる結合剤としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アクリル、及びブタジエン-スチレンコポリマーが挙げられる。
【0107】
特定の実施形態において、空気連行剤を、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物中、又はそれと共に使用することができる。空気連行剤としては、ウッドレジンの塩、合成洗剤、スルホン化リグニンの塩、石油酸の塩、タンパク質性物質の塩、脂肪酸及び樹脂酸及びそれらの塩、アルキルベンゼンスルホネート、及びスルホン化炭化水素の塩が挙げられる。
【0108】
特定の実施形態において、結晶性混和剤は、例えば、ラテックス及びステアリン酸カルシウムを含む微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物中、又はそれと共に使用される。
【0109】
特定の実施形態において、本発明の微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物は、顔料又は染料を含み、これは塗料又はその他コーティングの色を与えることができるが、さらに、例えば、UV光から表面又は対象を保護することができる。顔料又は染料は、天然、合成、無機、又は有機である。顔料又は染料は、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛黄色、黄色染料、ベンジジンイエロー、酸化クロムグリーン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、バーミリオン、ピグメントブラウン6、レッド170、ジオキサジンバイオレット、カーボンブラック、酸化鉄(II)、石英サンド(SiO2)、タルク、バライト(BaSO4)、カオリンクレー、及び石灰石(CaCO3)から選択することができる。
【0110】
特定の実施形態において、可塑剤、超可塑剤、施工性混和剤、及び減水混和剤を、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物に添加するか、又はそれと併せて使用することができる。化学可塑剤のいくつかの例としては、リグノ硫酸塩、ポリグルコエステル、炭水化物、及びヒドロキシル化カルボン酸が挙げられる。例えば、コンクリートの施工性を可能にする能力において可塑剤よりも優れている改質リグノ硫酸塩、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒドを含む超可塑剤も存在する。
【0111】
特定の実施形態において、ポンピング助剤は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物に添加する、又はそれと併せて使用される。ポンピング助剤としては、有機及び合成ポリマー、有機凝集剤、パラフィンの有機エマルジョン、コールタールアスファルト、アクリル、ベントナイト及び発熱性シリカ、及び水和石灰が挙げられる。
【0112】
特定の実施形態において、遅延剤及び水和制御混和剤は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物に添加する、又はそれと併せて使用される。遅延剤としては、リグニン、ホウ砂、糖、酒石酸及び塩が挙げられる。
【0113】
特定の実施形態において、収縮低減剤は、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びプロピレングリコールを含む、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物に添加する、又はそれと併せて使用される。
【0114】
アルカリシリカ反応性阻害剤は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物中、又はそれと共に使用することができる。アルカリシリカ反応抑制剤としては、バリウム塩、硝酸リチウム、炭酸リチウム、及び水酸化リチウムが挙げられる。
【0115】
防湿又は防水混和剤は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物中、又はそれと共に使用することができる。防湿コンクリートに使用することができる化学物質としては、例えば、ステアリン酸カルシウム又はアンモニウムの石けん、オレイン酸カルシウム又はアンモニウムの石けん、ステアリン酸ブチル、及び各種石油生成物が挙げられる。防水材もまた、コンクリートの外面に適用される。防水コンクリートに使用できるいくつかの材料としては、ゴム化アスファルトコーティング、ベントナイト、ゴム系コーティング、及びウレタンコーティングが含まれる。
【0116】
特定の実施形態において、ガス形成混和剤は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物に添加する、又はそれと併せて使用される。最も一般的なガス形成混和剤は、例えば、アルミニウム粉末、活性炭、及び過酸化水素である。
【0117】
特定の実施形態において、不分離性混和剤は、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物に添加する、又はそれと併せて使用される。セルロース及びアクリルポリマーは、不分離性混和剤中で使用することができる例示として挙げられる物質である。
【0118】
特定の実施形態において、発泡混和剤は、界面活性剤及び加水分解タンパク質を含む、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物に添加する、又はそれと併せて使用される。特定の実施形態において、コンクリート組成物は、重量又は容積基準で、約0.001%~約50%、約0.01%~約10%、約0.05%~約1%、又は約0.1%~約0.5%の濃度で微生物増殖副生成物を含有する。
【0119】
特定の実施形態において、コンクリートの表面に塗布される組成物は、組成物の重量又は容積基準で、約0.001%~約50%、約0.01%~約10%、約0.01%~約1%、又は約0.1%~約0.5%の濃度で微生物増殖副生成物を含有する。
【0120】
特定の実施形態において、微生物細胞は、例えば、組成物中1ミリリットル当たり少なくとも1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、又は1×1011以上の細胞の濃度で存在する。
【0121】
利点を挙げると、本発明によれば、微生物培養物及び/又は増殖副生成物は、微生物が増殖したブロスを含んでもよい。生成物は、例えば、少なくとも1重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、75重量%、又は100重量%のブロスであってもよい。生成物中のバイオマスの量は、例えば、それらの間の全てのパーセンテージを含めて0重量%~100重量%のいずれかである。
【0122】
任意で、生成物は、使用前に貯蔵することができる。貯蔵時間は短いことが好ましい。従って、貯蔵時間は、60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、又は12時間未満である。好ましい実施形態において、生細胞が生成物中に存在する場合、生成物は、例えば、20℃、15℃、10℃、又は5℃未満等の低温で貯蔵される。一方、バイオサーファクタント組成物は、典型的には、周囲温度で貯蔵することができる。
【0123】
本明細書に記載された組成物又は方法は、本明細書に記載された他の組成物及び方法のうちの1つ以上と組み合わせることができる。
【0124】
本発明の他の特徴及び効果は、以下の好ましい態様の説明、及び請求の範囲より明らかとなる。本明細書に引用される全ての参考文献は、参照により本明細書に援用される。
【0125】
コンクリートにおける微生物の使用とその増殖副生成物
本発明による組成物を含むコンクリートの使用は、様々な利点を提供する。コンクリートの混合物中で使用するために、微生物培養物及び/又は増殖副生成物を、水、セメント、骨材、及び任意の混和剤を含むコンクリートの様々な成分の初期混合中に添加することができる。
【0126】
酸性及びラクトンソホロ脂質の両方を使用することができる。2種類のソホロ脂質間の混合物は、各生成物用途の所望の特性に基づいて調節することができる。ソホロ脂質と、酵母細胞を含む他の成分との比は、各用途について変更することができる。ソホロ脂質は、化学物質及び/又は増殖培地を産生した生物から精製することができる。あるいは、ソホロ脂質は、未精製形態で使用することができる。バイオサーファクタントを生成するために使用される生物は組成物から除去することができ、一方、生物によって生成される増殖培地の他の成分及び他の副生成物は、コンクリート組成物に添加される混合物中に残すことができる。
【0127】
本明細書で使用される場合、組成物又は生成物を「適用する」とは、組成物又は生成物が、標的、部位又は材料に影響を及ぼすように、組成物又は生成物を、標的、部位又は材料と接触させることを指す。この影響は、例えば、微生物増殖及び/又はバイオサーファクタント及び他の増殖副生成物の作用によるものである。例えば、微生物ベースの組成物又は生成物は、液体又は乾燥形態で、注入、スプレー、混合、拡散、及び/又はインジェクションによって、コンクリートバッチプラントにおいて、及び/又はコンクリート生成物の使用場所において、コンクリート混合物に添加することができる。
【0128】
微生物培養及び/又は増殖副生成物組成物が、硬化中又は硬化後にコンクリートに適用される場合、例えば、スプレーボトル又は加圧スプレー装置を使用するスプレーによって適用することができる。組成物は、布又はブラシを用いて塗布することもでき、組成物は表面に擦り付け、広げ、又は刷毛塗りされる。さらに、組成物は、組成物を入れた容器へ、表面を浸漬、浸す、又は沈めることによって、表面に適用することができる。
【0129】
一実施形態において、材料及び/又は表面を、組成物を浸漬することができる。例えば、浸漬は、必要に応じて、少なくとも5秒間、30秒間、1分間、30分間、60分間、12時間、24時間、36時間、48時間、又は72時間、又はそれ以上、行うことができる。
【0130】
特定の実施形態において、微生物培養物及び/又は増殖副生成物は、コンクリートの強度を増加させる、コンクリート組成物中で使用される水の量を減少させる、コンクリートの施工性を増加させる、コンクリートの空隙率を減少させる、コンクリートの固化速度を変更する、及び/又は生物的及び非生物的ストレスに対するコンクリートの耐久性を増加させることによって、コンクリートを改善することができる。
【0131】
コンクリート組成物
微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物は、例えば、ポルトランドセメント等の建設に使用される一般的なタイプのコンクリート/セメントに使用することができる。さらに、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物は、道路、駐車場、空港、及びダムに使用されることが多いアスファルトコンクリートに使用することができる。浸透性コンクリート、ナノコンクリート、微生物コンクリート、及びポリマーコンクリートは、微生物培養物及び/又は増殖副生成物を、混合物の成分として使用することができる全てのタイプのコンクリートである。
【0132】
さらに、バイオサーファクタントは、コンクリートに塗布されるコーティングに使用することができる。一般に、コンクリートは、水、塩、及び/又は空気による浸透を防止することによって、表面損傷、腐食、及び汚染からそれを密封するようにコーティングされる。特定の実施形態において、微生物培養物及び/又は増殖副生成物は、表面のみを被覆するが、他の実施形態においては、微生物培養物及び/又は増殖副生成物は、コンクリートに浸透し、表面に残る。
【0133】
コンクリート強度の向上
コンクリートの強度は、典型的には、コンクリート混合物中の水の量に反比例する。コンクリート中の水の濃度を1%減少させると、コンクリートの強度は約5%増加する。しかしながら、場合によっては、含水量の減少は、コンクリートの施工性と硬化時間を低下させる。
【0134】
本発明によれば、微生物培養物及び/又は増殖副生成物、好ましくは、ソホロ脂質及びW. anomalusの添加は、強度を損なうことなくコンクリートの施工性を高めることができる。コンクリートの強度を高めながら、コンクリートの施工性を保持するために、現在、コンクリート混合物中に可塑剤及び超可塑剤が使用されている。
【0135】
コンクリートの強度は、様々な方法を組み合わせるか、単独で用いて、向上させることができる。方法としては、これらに限られるものではないが、コンクリート組成物中の水の量を減少させ、コンクリートの空隙率を減少させることが含まれる。固化プロセス中にコンクリートから水が蒸発すると、コンクリートに空隙が生じるため、空隙量が小さいほどコンクリートが強固になる。残存するこれらの空隙が、コンクリートの空隙率を決める。微生物培養物及び/又は増殖副生成物を使用して、初期コンクリート混合物中の水の量を減少させることも、コンクリートの空隙率を減少させる。コンクリートの空隙率は、コンクリートに添加される微生物培養物及び/又は増殖副生成物の濃度によって決まり、微生物培養物及び/又は増殖副生成物を含まないコンクリート混合物と比較して、強度を増加させながら、コンクリートの施工性を維持することが可能となる。
【0136】
特定の実施形態において、約0.01%~約0.5%の濃度でコンクリート混合物にソホロ脂質を添加し、約0.1%~約0.5%の濃度で酵母細胞発酵廃棄物を添加すると、コンクリートの強度を著しく増加させることができる。酵母細胞発酵老廃物は、生きた又は死んだ酵母細胞の結果であり、従って、酵母細胞は、約0.1g/l~約100g/lの濃度で添加できる。酵母細胞、ソホロ脂質、及び/又は他の増殖副生成物の添加により、水の消費量を約1%~約50%、約10%~約25%、又は約15%~約20%減少させることもできる。この任意の水の減少によって、コンクリートの硬化時間も変更することができる。
【0137】
コンクリートの硬化時間の変更
微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物をコンクリート混合物に添加することにより、硬化時間を変更することができる。コンクリート中の水の濃度が、硬化の長さを決める(蒸発に影響する他の全ての変数が等しい場合)。水の濃度が低いと、蒸発は速く、硬化時間は短くなり、一方、水の濃度が高いと、水の蒸発は遅くなり、硬化時間が長くなる。利点を挙げると、特定の実施形態において、コンクリート混合物への本発明の組成物の添加は、コンクリートを施工可能なままにするのに必要とされる水の量を低減することができることである。従って、いくつかの実施形態において、コンクリートの硬化時間を短縮することができる。
【0138】
あるいは、特定の実施形態において、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物をコンクリート混合物に添加することによって、硬化時間を、コンクリート強度を保持しながら、又はさらには増加させながら、延長することができる。コンクリートは、長期にわたって展性である。
【0139】
生物的及び非生物的ストレスに対するコンクリートの耐性の増加
特定の実施形態において、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物は、環境ストレスに対する耐性を高めるために、コンクリート混合物に添加されるか、又はコンクリートの固化表面に適用される。ストレスには、細菌及び蔓脚類等の生物的ストレス、高温及び低温、凍結融解サイクル、塩、高圧又は低圧、風、沈降、波、水、UV放射、コンクリート混合物又はコンクリートコーティング中の不純物、静水圧、研磨(砂嵐等)、及びコンクリートの移動、例えば、トラックでの固化コンクリートスラブの輸送をはじめとする非生物的ストレスが含まれる。
【0140】
特定の実施形態において、コンクリートは、微生物培養物及び/又は増殖副生成物の添加により耐凍害性とすることができる。耐凍害性とは、コンクリートが0℃より低い温度で使用されても、その使用目的を維持する能力を指す。耐凍害性は、コンクリートの水分又は湿気の浸透を防止することによって達成することができ、それによって、コンクリート内に氷が形成され、コンクリートが破砕する可能性が防止される。さらに、微生物培養物及び/又は増殖副生成物は、組成物中の水分の濃度がより低いこと、及び/又はコンクリート内に同伴される空気の量が増加することにより、約-30oC、約-15oC、又は約-5oC以下の冷凍から生じるコンクリート破壊に耐えることを可能にする。
【0141】
特定の実施形態において、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物は、生物又は非生物物質による汚損を防止することによって、コンクリートの寿命を増大させる。本発明は、堆積の発生を防止するために使用することができる。
【0142】
特定の実施形態において、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物は、水、塩、及び/又は空気による浸透からコンクリートを封止する。バイオサーファクタント組成物は、コンクリートの表面に残存できる。また、組成物は、コンクリートに浸透することができる。浸透は、コンクリートの全深さの約0.1%~約1%、約0.5%~約5%、約1%~約10%、約5%~約50%、又は100%の深さに達する。
【0143】
特定の実施形態において、微生物培養物及び/又は増殖副生成物組成物は、コンクリートが波や風等の研磨要素に直接接触するのを防ぐことができる。
【0144】
コンクリートの評価
コンクリート組成物又はコンクリートコーティングの様々な特性を識別及び評価するために、様々な試験を行うことができる。これらの試験を用いて、コンクリートが構造要件を満たすことを検証することができる。あるいは、これらの試験を用いて、コンクリートの所望の特性を作り出すために、各種混和剤の最適濃度を決定することができる。
【0145】
吸収試験
コンクリート中の水分レベルの試験は、コンクリートサンプルの耐水性特性を決定する一般的な方法である。ある一般的な吸収試験はBS1881-122:2011において使用されるものである。
【0146】
英国規格(BS)1881-122:2011及びBS1881-122:1983試験は、浸水時にコンクリートサンプルに浸透する水の量を測定するものである。これらの試験は、試験のバリエーションと共に、当業者に知られている。これらの2つの試験において、様々なアイテムが必要とされる。重りを用いて、試験片が秤量され、コアリング機械を用いて、約75mm径のコアを切断し、乾燥炉を約105℃の温度で用い、約20℃の温度に維持された清浄水を含む、深さ少なくとも125mmのタンク、そして試験される3つのサンプルを保持するのに十分な容積の乾燥器として使用される、乾燥した気密容器が使用される。各サンプルは、透水性について当該技術分野で認識されている試験に従って処理される。
【0147】
急速塩化物透過性試験
急速塩化物透過性試験は、円筒形サンプルを通過する電荷の量をモニターすることによって、塩化物イオン浸透に抗するコンクリートの能力を評価するものである。この試験の一例は、ASTM C1202である。この試験では、電荷を6時間コンクリートに通す。コンクリートを通過した総電荷は、塩化物イオン浸透に抗する試験片の能力に関連する。通過する電荷レベルが低いということは、高い抵抗を示す。塩化物透過性試験は、当業者に周知されている。
【0148】
透水性試験
透水性試験は、静水圧にさらされたときのコンクリートサンプル中への水の浸透の深さを特定する。水浸透試験の2つの例、BS(欧州規格)EN12390-8及びDIN1048Part 5は、コンクリートサンプルが3日間にわたって0.5MPaの静水圧を受けたときの水浸透深さを試験するものである。コンクリートサンプルをキャストし、28日間硬化させ、次いで試験装置に入れる。サンプルホルダーは両端部が開いており、一方の端は静水圧にさらされる。3日後、サンプルを試験装置から取り出し、垂直に半分に割り、水浸透の最大深さを測定する。
【0149】
この試験は、静水圧下でのコンクリートへの水浸透を測定するため、地下室、トンネル、ダム、貯水池等の構造に使用されるコンクリートの試験に有用である。コンクリート構造物が、その寿命中に静水圧を受けることが意図されていない場合は、この透水性試験を吸収試験と組み合わせることができる。
【0150】
圧縮強度試験
圧縮強度試験は、加えられた静的又は動的荷重の下で適切に機能するコンクリートの能力をチェックするものである。いくつかの標準試験は、ASTM C31、ASTM C39、ASTM C192、AASHTO T-22、AASHTO T-23、AASHTO T-126、EN 1290-1、EN 12390-2、EN 12390-3、EN 12390-4、及びEN 12504-1である。
【0151】
この試験は、所望の荷重、品質管理、設計混合物の承認、及び受容性に適合するために必要なサイズ又は構造的成要素を決めるために使用してもよい。試験はコンクリート適用の現場や製造場所で実施することができる。
【0152】
圧縮強度を測定するために、円筒状又は立方体コンクリート試験片を、圧縮試験機械で一定の負荷速度下に置き、破断荷重(コンクリート破壊が測定される荷重)を測定する。強度は、破断荷重を、荷重方向に垂直な試験片の断面積で除算することによって計算される。強度の単位は、様々な圧力単位のうち、psi、kg/cm2、又はMPaである。
【0153】
最終試験結果は、同じサンプルから鋳造され、28日間(28日間の強度)で完全に設計された容量を有することが一般に明記されている、同じ硬化齢で試験されたいくつかの試験片の平均強度から導出される。3つの連続する試験結果は、指定された強度を満たすか、超えなければならず、試験は指定された強度の特定のパーセンテージより低くてはいけない。
【0154】
圧縮試験機以外に必要な装置は、金型、ミキサー、試験装置、サンプル硬化装置である。
【0155】
引張強度試験
引張強度試験は、引張力が加えられたときの破壊に対するコンクリートの抵抗を判断するものである。この試験のいくつかの規格は、ASTM C31、ASTM C78、ASTM C192、AASHTO T-23、AASHTO T-97、AASHTO T-126、EN12390-5、EN1339、EN1340、及びEN1521である。
【0156】
コンクリートは、通常、コンクリートの引張強度が圧縮強度の10~15%であるので、直接引張荷重に対する抵抗を必要とする用途のためには設計されていない。コンクリートの特性を識別するのに用いられるいくつかのタイプの引張強度試験としては、直接引張力印加試験、曲げ試験、間接分割シリンダー試験、そして、稀だが、一軸引張試験が含まれる。
【0157】
曲げ試験は、未補強コンクリート角柱又は梁に、対称的な2点又は3点荷重を用いて曲げ荷重を加えることを含む一般的な試験である。コンクリート梁は、荷重を受けて曲げられ、梁が破損したときの破損点における荷重を用いて、引張強度及び/又は破壊係数を計算する。分割シリンダー試験では、円柱形の試験片を、圧縮機のプラテンの間にその長軸方向を水平にして配置し、円柱をその軸に沿って分割させることによって、試験片が破損するまで、試験片の側面に荷重を漸増的に加える。
【0158】
必要な装置は、金型、ミキサー、試験装置、及びサンプル硬化装置である。曲げ試験のために、曲げ梁枠又は曲げプラテンが圧縮機に設置される。分割シリンダー試験では、分割荷重を加えるために試験治具と木片を必要とする。
【0159】
密度試験
コンクリートの密度を求める様々な試験があり、主に、既知の体積を乾燥及び浸漬条件の両方で計量する浮力バランス法、そして生コンクリートサンプルを既知の体積の金属容器内に配置する降伏バケット法によって行われる。生コンクリートは、容器内で圧縮され、頂部まで充填され、頂部は水平に掻き取られ、次いで、秤量される。密度は、単純な重量体積計算によって求められる。使用できる標準試験は、ASTM C29、ASTM C138、AASHTO T-19、AASHTO T-121、EN 12390-7、及びEN 1097-3である。
【0160】
必要な装置は、金型、ミキサー、浮力バランス及びフレーム、スケール、タンピングロッド、打ち抜きプレート、及びサンプル硬化装置である。
【0161】
高密度コンクリートは、張力をかけたケーブル又は補強バー等のプレテンション補強要素を鋳造する際に使用することができる。コンクリートを、プレテンションケーブルに注いで、バーとコンクリートの間にさらに結合強度を与える。コンクリートが硬化したら、バーを解放し、コンクリート要素を圧縮させる。これは、橋桁やプレテンション床スラブ等の高強度要素に使用される。低密度コンクリート及び空気連行コンクリートは、悪天候条件における性能を改善するために、オングレードの床スラブに使用される。コンクリート密度は、バイオサーファクタント、骨材、セメントの存在、その空気含有量を含む、成分の密度に応じて変化する。
【0162】
スランプ試験
コンクリートスランプ試験を用いて、生コンクリートのコンシステンシーと施工性、及び流動し易さを測定する。一般に、試験は、水対セメント比を示し、高い水含量は、高いスランプ値を示す。スランプは、硬化コンクリートの圧縮強度の指標である。一般に、標準重量コンクリートでは、含水量が高いほど強度が低くなる。しかしながら、バイオサーファクタントを含む混和剤は、必要な流動性のために必要とされるセメント比に対する必要な水を変化させることによって、スランプ値に影響を与える。使用できる標準試験は、ASTM C143、AASHTO T-119、及びEN 12350-2である。
【0163】
試験は、標準化された寸法のスランプコーン又はアブラムコーンと呼ばれる、生コンクリートで充填された円錐形金型を用いて実施される。コーンが外されると、生コンクリートは垂直に沈降し、スランプ値は、元の高さからの垂直沈降、すなわちスランプの測定値である。必要な装置は、金属スランプコーン、タンピングロッド、スランプコーンベース、テープメジャー、金型、ミキサー、試験装置、及びサンプル硬化装置である。
【0164】
適切かつ均一な混合物が鉄筋コンクリート要素全体に確実に分布させために、高流動コンクリートが、高強度鉄筋型枠内のコンクリートの鋳造に使用される。従って、スランプを測定する主な目的は、許容可能な施工性を達成することである。
【0165】
空気含量試験
空気含量試験を用いて、コンクリート内の空気の量を求める。試験は、通常、圧力法を用いる。コンクリートを、既知の体積の容器内に配置し、上部を洗い流す。この方法は、ボイルの法則に基づいており、空隙内の空気柱は、加えられた圧力に比例する。ポンプを備えた別個の空気チャンバーを接続することによって、封止された試験容器に圧力が印加される。バルブを閉じた状態で、チャンバーは、較正された動作圧力に加圧され、圧力ゲージは、風袋引きされる。バルブが開かれると、コンクリート内の空気が試験チャンバー内へ膨張し、ゲージが、空気含有量の単位で読取り値を示す。必要な装置は、空気連行計、ストライクオフバー、ラバーマレット、ミキサー、試験装置、及びサンプル硬化装置である。使用される標準試験は、ASTM C231、AASHTO T-152、及びEN 12350-7である。
【0166】
コンクリートが凍結と解凍の周期に曝される場所では、コンクリートに高レベルの空気連行が必要なことが多い。水は凍結すると膨張し、これは、コンクリート要素の結合又は引張強度を超える内力を生成し、亀裂を生じる。非常に小さな気泡の形態の空気は、水が堆積及び膨張する貯留部として作用として作用する、コンクリート内の空隙空間となり、凍結サイクルにおける内圧を緩和し、コンクリートを保護する。空気は、混合ブレードを用いてコンクリート混合物中に均一に分配される。添加剤を、混合プロセス中に使用して、混入した空気の気泡を安定化させ、コンクリート硬化後も残る。
【0167】
コンクリートテストハンマー
テストハンマーを用いて、現場コンクリートの強度を判断する。コンクリートテストハンマーは、リバウンドハンマー又はシュミットハンマーとしても知られている。テストハンマーは、解放されると、設計された量のエネルギーでコンクリートサンプルの表面に衝突するバネ作動質量用いるものである。衝突後の反発距離が測定される。ハンマーは、試験される表面に対して垂直に保持され、反発はサンプリング点の硬度に従って変化する。この反発測定値を、換算表により圧縮強度に換算する。機器の向きを補うために、異なる換算表が作られている。こうした表は、圧縮下で破砕される前に、コンクリートサンプルに対して反発試験を実施することによって開発された。圧縮試験機以外に必要な装置は、金型、ミキサー、試験装置、サンプル硬化装置である。
【0168】
これは、先に概説したように、圧縮強度を決定するための標準試験ではない。しかしながら、圧縮試験されるコンクリート試験片の数は、ランダム試験に比べて、考慮するには少なすぎることが多い。また、多くの場合、構造物の改造、モデル化、及び解析のために老化コンクリート要素の圧縮強度を決定することも重要である。
【0169】
超音波パルス速度試験
超音波コンクリート試験には、コンクリートの均一性の測定、空隙、亀裂及びその他欠陥の有無の判断、老化、火災、霜又は化学的浸食の作用によって起こるコンクリートの劣化、層厚及び弾性係数の測定、及びコンクリート強度の判断が含まれる。これらのパラメータを試験するために、超音波パルスをコンクリートに通し、走行時間を測定する。
【0170】
この試験は、コンクリートの品質を評価するために、完成したコンクリートに対して実施される。超音波パルスの高速が観察されるとき、コンクリートは、密度又は欠陥の存在に関して、全体にわたって均一かつ均質である。表面及び表面下の問題は、この方法で検出することができる。
【0171】
実施例
本発明及びその多くの利点は、例示として与えられる以下の実施例からより深く理解される。以下の実施例は、本発明の方法、用途、実施形態、及び変形例のいくつかを例示する。実施例は、本発明を限定するものではない。
【0172】
実施例1-ソホロ脂質及びW. anomalusによるコンクリート圧縮強度の増加
バイオサーファクタントと酵母培養の組み合わせは、コンクリートの強度を改善する。圧縮強度試験を用いてサンプルの強度を評価した。各サンプルは、ポルトランドセメント、砂、及び水を含んでいた。いくつかのサンプルはさらに、W. anomalus及びラクトンか酸性ソホロ脂質のいずれかを含んでいた。
【0173】
以下の試験条件において、150mlの水を、混和剤なしで、QUIKRETE(登録商標)1kg毎に添加した、水及びQUIKRETE(登録商標)を含む従来のコンクリート混合物に、W. anomalus及びソホロ脂質を添加した。
1.対照:0g/lのW. anomalus及び0ml/lのソホロ脂質
2.群2:10g/lのW. anomalus及び0.05ml/lのラクトンソホロ脂質
3.群3:10g/lのW. anomalus及び0.1ml/lのラクトンソホロ脂質
4.群4:10g/lのW. anomalus及び0.3ml/lの酸性ソホロ脂質
5.群5 :10g/lのW. anomalus及び0.1ml/lの酸性ソホロ脂質
6.群6:10g/lのW. anomalus及び0.05ml/lの酸性ソホロ脂質
【0174】
酵母及びバイオサーファクタントを含む又は含まないコンクリート混合物を、50mmの定直径及び100mmの高さを有するシリンダーに注ぐ。コンクリートサンプルを室温(22℃)で27日間乾燥させる。
【0175】
各コンクリートサンプルの圧縮強度を求めるために、TORBAL FB高解像度精密フォースゲージを使用した。各コンクリートサンプルシリンダーは、ゲージが水平にされ、風袋引きされたスタンドに垂直に置かれた。シリンダーに亀裂が生じ、力が測定できなくなるまで圧縮を加えた。得られた最大力を表1に記録した。各試験条件を3回実施した。得られた平均最大圧縮力を、各トライアル条件について求めた。
【0176】
【0177】
表1に示される結果に基づいて、10g/lのW. anomalus及び0.05ml/lのラクトンソホロ脂質を含むコンクリート混合物は、酵母細胞又はソホロ脂質のいずれも有さない対照コンクリートよりも21.4%高い圧縮強度を有していた。
【国際調査報告】