IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-515420カテーテル標的ロックのための方法及びシステム
<>
  • 特表-カテーテル標的ロックのための方法及びシステム 図1
  • 特表-カテーテル標的ロックのための方法及びシステム 図2
  • 特表-カテーテル標的ロックのための方法及びシステム 図3
  • 特表-カテーテル標的ロックのための方法及びシステム 図4
  • 特表-カテーテル標的ロックのための方法及びシステム 図5
  • 特表-カテーテル標的ロックのための方法及びシステム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】カテーテル標的ロックのための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20230406BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549252
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 US2021019221
(87)【国際公開番号】W WO2021173542
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/980,909
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/132,070
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/132,358
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】ニンニ ブライアン
(57)【要約】
基準要素又は基準軌道を対象内の位置に設定できる多関節医療機器のアライメントを維持するための方法及びシステムが提供される。機器を通して、内視鏡、カメラ、生検ツール等の医用ツールを標的まで誘導することができ、多関節医療機器が、標的へ向かう軌道に逸脱を生じさせる外力を受けたときに、医療手技を容易にする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用装置であって、
湾曲可能体と、
前記湾曲可能体内に摺動可能に位置する少なくとも1つの制御ワイヤと、
1つ以上のセンサと、
前記医用装置を動作させるためのコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
関心領域に対する基準要素を決定し、
前記基準要素からの許容逸脱を決定し、
前記許容逸脱内に収まる前記関心領域への軌道を維持するために、前記医用装置を曲げ、回転させ、かつ/又は並進させる、
医用装置。
【請求項2】
前記基準要素は、前記湾曲可能体から前記関心領域までの基準軌道である、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項3】
前記1つ以上のセンサは、前記医療機器の位置及び前記基準要素を決定する電磁センサである、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項4】
前記湾曲可能体は、当該湾曲可能体の端から端まで延びる空洞と、前記空洞の周囲に少なくとも部分的に形成された壁と、を有する、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項5】
前記許容逸脱は、
前記湾曲可能体の遠位端から延びる誤差円錐の角度値を設定することと、
前記遠位端に関して空間内で点を選択し、前記基準要素が収まるべきゾーンのサイズを設定することと、
前記関心領域のうち、前記基準要素が収まるべき表面の領域を選択することと、
のうちの1つ以上によって決定される、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項6】
前記湾曲可能体に対する前記外力に対抗することは、前記基準要素が前記許容逸脱内に収まるか、或いは前記許容逸脱に戻るように、前記医用装置を曲げることを含む、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項7】
前記湾曲可能体は、遠位端から近位端に向かって、少なくとも第1、第2及び第3の湾曲可能セクションを有し、
前記湾曲可能体に対する前記外力に対抗することは、少なくとも前記第2の湾曲可能セクションを曲げることを含む、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記医用装置に及ぼされた前記力についての前記1つ以上のセンサからのフィードバックと、前記医用装置の位置についてのフィードバックとを用いて、前記基準要素を前記許容逸脱内に維持する、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項9】
対象の関心領域を標的化する方法であって、
湾曲可能体と、前記湾曲可能体内に摺動可能に位置する少なくとも1つの制御ワイヤと、1つ以上のセンサと、を備える医用装置を提供するステップと、
前記対象の第1の位置まで前記医用装置を前進させるステップと、
前記湾曲可能体の位置と関連付けられる基準要素を決定するステップと、
前記第1の位置と前記基準要素の間の許容逸脱を定めるステップと、
前記許容逸脱内で場所又は位置を維持するために、前記湾曲可能体に対する外力に対抗するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記基準要素は、前記湾曲可能体から前記関心領域までの基準軌道である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のセンサは、前記医療機器の位置及び前記基準要素を決定する電磁センサである、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記湾曲可能体は、当該湾曲可能体の端から端まで延びる空洞と、前記空洞の周囲に少なくとも部分的に形成された壁と、を有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも第2の基準要素を定めるステップと、
前記第1の位置と前記少なくとも第2の基準要素の間の許容逸脱を定めるステップと、
を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記許容逸脱は、
前記湾曲可能体の遠位端から延びる誤差円錐の角度値を設定することと、
前記遠位端に関して空間内で点を選択し、前記基準要素が収まるべきゾーンのサイズを設定することと、
前記関心領域のうち、前記基準要素が収まるべき表面の領域を選択することと、
のうちの1つ以上によって決定される、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記湾曲可能体に対する前記外力に対抗するステップは、前記基準要素が前記許容逸脱内に収まるか、或いは前記許容逸脱に戻るように、前記医用装置を曲げることを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記湾曲可能体は、遠位端から近位端に向かって、少なくとも第1、第2及び第3の湾曲可能セクションを有し、前記湾曲可能体に対する前記外力に対抗するステップは、少なくとも前記第2の湾曲可能セクションを曲げることを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記湾曲可能体に対する前記外力に対抗するステップは、前記基準要素が前記逸脱の許容マージン内に収まるか、或いは前記逸脱の許容マージンに戻るように、前記医用装置の回転及び並進のうちの1つ以上を行うことを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記基準要素を前記許容逸脱内に維持するために、前記医用装置に及ぼされた前記力についての前記1つ以上のセンサからのフィードバックが、前記医用装置の位置についてのフィードバックとともに用いられる、
請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記対象の第1の位置まで前記医用装置を前進させるステップは、ユーザによって制御される操作ユニットからの指示に基づいて前進させることである、
請求項9に記載の方法。
【請求項20】
対象を治療する方法であって、
湾曲可能体と、前記湾曲可能体内に摺動可能に位置する少なくとも1つの制御ワイヤと、1つ以上のセンサとを備える医用装置を提供するステップと、
前記対象の第1の位置まで前記医用装置を前進させるステップと、
前記湾曲可能体の位置と関連付けられる基準要素を決定するステップと、
前記第1の位置と前記基準要素の間の許容逸脱を定めるステップと、
前記許容逸脱内で場所又は位置を維持するために、前記湾曲可能体に対する外力に対抗するステップと、
前記基準要素からの前記許容逸脱の範囲内の位置まで、前記医用装置内に治療ツールを挿入するステップと、
前記対象を治療するステップと、
を含む方法。
【請求項21】
前記対象を治療するステップは、前記対象から生検を採取するステップを含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基準要素は、前記湾曲可能体から、生検が採取される領域までの、基準軌道である、
請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、米国仮特許出願第62/980909号(2020年2月24日出願)、米国仮特許出願第63/132,070号(2020年12月30日出願)及び米国仮特許出願第63/132,358号(2020年12月30日出願)に対する優先権を主張し、その開示は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に援用される。優先権の利益は、米国特許法第119条(e)の下に主張される。
【0002】
本開示は、概して、医療用途の装置及び方法に関する。より詳細には、本開示は、空洞を有する多関節医療機器を対象とし、当該機器は、患者内で操縦することが可能であり、また、内視鏡、カメラ、カテーテルその他のツール等の医用ツールが医療手技のために空洞を通して誘導されることを可能にする。
【背景技術】
【0003】
医療分野では、内視鏡手術器具やカテーテル等の湾曲可能な医用器具がよく知られており、受け入れられ続けている。湾曲可能な医用器具は、概して、一般にスリーブ又はシースと呼ばれる可撓体を含む。可撓体に沿って(典型的には、内側に)1つ以上のツールチャネルが延びており、可撓体の遠位端に位置する標的へのアクセスを可能にする。
【0004】
器具は、ねじり剛性及び長手方向の剛性を維持しながら、対象とする標的につながる1つ又は複数のカーブを伴う患者内での柔軟なアクセスを提供することを目的とするので、医師は、医用器具の近位端を操縦することにより、医用器具の遠位端に位置するツールを制御することができる。
【0005】
最近、器具の遠位端の操縦性を高めるために、遠位部分を制御するロボット化器具が出現した。そのようなロボット化器具では、ロボット工学により遠位部分で局所的にカーブを形成するために、様々な技術が開示されている。
【0006】
例として、米国特許公開第2016/0067450号は、駆動腱が医用器具の遠位部を曲げている間に近位部の形状を保持するために、複数のコンジットを提供する。複数のコンジットは、コンジットの近位端を拘束又は拘束解除することによって二元的に、選択的に制御される。拘束されたコンジットを選択することにより、湾曲可能医療機器は、コンジットが展開された面積に基づいて湾曲可能医療機器の剛性を変えることによって、遠位セグメントを曲げる長さを変えることができる。
【0007】
しかしながら、このような湾曲可能医療機器は、機器の先端と標的とのアライメントを変化させ得る外力を受けるおそれがあるので、機器の標的化を更に改良し進化させる必要性が、当業界に残されている。したがって、標的とのアライメントを維持するための方法及びシステムが望まれている。
【発明の概要】
【0008】
よって、当業界におけるこのような例示のニーズに対処するために、本開示のシステムは、対象の関心領域を標的化するための方法を教示する。医用装置が提供され、当該医用装置は、湾曲可能体と、湾曲可能体内に摺動可能に位置する少なくとも1つの制御ワイヤと、1つ以上のセンサと、を備える。次に、方法は、医用装置を対象の第1の位置まで前進させるステップと、湾曲可能体の位置と関連付けられる基準要素を決定するステップと、第1の位置と基準要素の間の許容逸脱(acceptable deviation)を定めるステップと、許容逸脱内で場所又は位置を維持するために、湾曲可能体に対する外力に対抗するステップと、を含む。
【0009】
本明細書で提供される本発明は、以下を備える医用装置を提供する:湾曲可能体;湾曲可能体内に摺動可能に位置する少なくとも1つの制御ワイヤ;1つ以上のセンサ;及び、医用装置を動作させるためのコントローラ。コントローラは、関心領域に対する基準要素を決定し、基準要素からの許容逸脱を決定し、許容逸脱内に留まる関心領域への軌道を維持するために、医用装置を曲げ、回転させ、かつ/又は並進させる。
【0010】
様々な態様では、基準要素は、装置上のセンサによって決定することができ、基準要素は、先端表面に垂直に延びる線である基準軌道とすることができる。他の態様では、基準要素は解剖学的特徴であり、ソフトウェアは、それを、レジストレーションによって“カテーテルセンサに基づく”基準に内部転換することができる。
【0011】
他の態様では、許容逸脱は、基準要素に基づいて決定することができ、また、装置に作用する力に対抗して、基準要素からの逸脱を軽減することができる。
【0012】
一態様では、装置先端と標的表面のアライメントを維持する方法が提供される。一部の態様では、装置先端から標的表面までの基準軌道を定める第1のステップが存在する。他の態様では、基準軌道からの許容逸脱マージンを定める第2のステップが存在し、第3のステップでは、許容逸脱マージン内に留まるように逸脱を最小化するために、基準軌道からの逸脱を引き起こす外力に対抗する。
【0013】
別の態様では、許容逸脱マージンを定める第2のステップに続いて、ユーザは、現在の軌道が許容逸脱マージン内にあるかどうかを決定するために、装置が形状を変えることを許可することができる。軌道が許容逸脱マージンの外にある場合、コントローラは、許容逸脱マージン内の所望の軌道に装置を戻すことができる。
【0014】
外力が加わったときや、挿入又は除去されるツールの変更により機器が所望の形状に戻らなくなったときに、湾曲可能機器と標的のアライメントを維持することにより、手技の長さの短縮、患者に対する外傷の減少、手技によって提供される診断率の上昇等の臨床改善を提供することができる。
【0015】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された段落と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の更なる目的、特徴及び利点は、本発明の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0017】
図1図1は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医療機器のブロック図である。
図2図2Aは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の拡大斜視図を示す。図2Bは、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、例示の湾曲可能医療機器の斜視図を示す。
図3図3は、対象の装置、方法又はシステムの1つ以上の実施形態に係る、空洞に挿入された例示の湾曲可能医療機器の切欠き図を提供する。
図4図4Aは、基準要素と、逸脱の許容マージンとを定めることを示す。図4Bは、許容マージンの範囲内にあり許容され得る、軌道のわずかな逸脱を示す。図4Cは、許容マージン内に留まるための大きな逸脱の反作用を示す。
図5図5Aは、基準要素と、逸脱の許容マージンとを定めることを示す。図5Bは、ツールの挿入を可能にするための湾曲可能体の弛緩を示す。図5Cは、ツールが挿入された湾曲可能体が、基準要素に合うように元の形状に曲がることができず、代わりに、再び軌道とアライメントするように空間内で並進することを示す。
図6図6Aは、標的が2つある場合の、基準要素と許容逸脱を定めることを示す。図6Bは、標的が2つある場合の、基準要素と許容逸脱を定めることを示す。
【0018】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。加えて、「’」という指定を含む参照数字(例えば12’や24’)は、同じ性質及び/又は種類の2次要素及び/又は参照を意味する。更に、これから図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の段落によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、いくつかの実施形態を有し、当業者に知られている詳細については、特許、特許出願その他の参考文献に依拠する。したがって、本明細書において特許、特許出願その他の参考文献が引用されたり繰り返されたりする場合、それは、あらゆる目的のために、また、記載される提案のために、参照により全体として援用されることを理解されたい。
【0020】
図1図3には、湾曲可能医療機器の先端から標的に向かって設定された基準要素からの逸脱を最小化するための、本明細書に記載のシステム及び方法と併用できる例示の湾曲可能医療機器の構造及び機能が記載される。本明細書の記載に加えて、本明細書に記載のシステム及び方法と併用できるシステムの更なる説明は、例えば、国際特許出願公開WO/2018/204202;WO/2020/086749;WO/2020/092097;WO/2020/092096;及びWO/2020/243285、並びに、米国特許出願公開第2019/0105468号及び第2020/0375682号に見つけることができる(それぞれ全体として本明細書に援用される)。
【0021】
図1は、完全な医用システムを構築することを目的とした様々な補助コンポーネントを包含する例示の湾曲可能医療機器システム1のシステムブロック図である。湾曲可能又は多関節の医療機器システム1は、駆動ユニット2と、湾曲可能体3と、位置決めカート4と、操作コンソール5と、ナビゲーションソフトウェア6とを備える。例示の湾曲可能医療機器システム1は、患者での使用を容易にするために、外部システムコンポーネント及び臨床ユーザとインタラクトすることができる。
【0022】
ナビゲーションソフトウェア6と駆動ユニット2は、バスを介して通信的に結合されて、相互にデータを送受信する。更に、ナビゲーションソフトウェア6は、湾曲可能医療機器システム1の補助コンポーネントであるCTスキャナ、透視装置及び画像サーバ(図示なし)に接続され、また、それらと通信することができる。画像サーバとしては、CT及び/又はMRIのスキャナや透視装置等の医用イメージングデバイスに接続されるDICOM(商標)サーバが挙げられるが、これに限定されない。ナビゲーションソフトウェア6は、画像ディスプレイに画像を表示するために、駆動ユニット2によって提供されるデータと、画像サーバに格納された画像及び/又はCTスキャナ及び透視装置からの画像によって提供されるデータとを処理する。
【0023】
CTスキャナからの画像は、術前にナビゲーションソフトウェア6に提供されてよい。ナビゲーションソフトウェアを用いて、臨床ユーザは、画像から解剖学的コンピュータモデルを作成する。この特定の実施形態では、生体構造は、関連気道を伴う肺のものである。CTスキャナの胸部画像から、臨床ユーザは、生検等の臨床処置のために肺気道をセグメント化することができる。肺気道マップを生成した後、ユーザは、生検対象の病変にアクセスするための計画を作成することもできる。計画には、湾曲可能医療機器3を挿入及び操作するための、対象の標的(この例では病変である)につながる気道が含まれる。
【0024】
駆動ユニット2は、アクチュエータ及び制御回路構成を有する。制御回路構成は、操作コンソール5と通信的に結合される。駆動ユニット2は、駆動ユニット2のアクチュエータが湾曲可能医療機器3を動作させるように、湾曲可能医療機器3に接続される。したがって、臨床ユーザは、駆動ユニット2を介して湾曲可能医療機器3を制御することができる。また、駆動ユニット2は、物理的に位置決めカート4に接続される。位置決めカート4は、位置決めアームを含み、標的/患者に対して意図された位置に駆動ユニット2及び湾曲可能医療機器3を位置付ける。臨床ユーザは、湾曲可能医療機器3を挿入、操作及び除去して、医療手技(ここでは患者の肺での生検)を実行することができる。
【0025】
湾曲可能医療機器3は、臨床ユーザの操作による計画に基づいて、気道の病変へナビゲートすることができる。湾曲可能医療機器3は、各種ツール(例えば生検ツール)用の空洞を含む。湾曲可能医療機器3は、ツールを患者の病変へ誘導することができる。一例では、臨床ユーザは、生検ツールを用いて病変から生検サンプルを採取することができる。
【0026】
図2A及び図2Bは、湾曲可能医療機器3の一実施形態の概略図である。図2Aは、湾曲可能医療機器3の拡大斜視図である。図2Bは、湾曲可能医療機器3の湾曲可能セグメントを説明するための概略図である。湾曲可能医療機器3は、遠位端24及び近位端を有し(矢印Aの方向に)、また、近位部19と、3つの湾曲可能セグメント(それぞれ第1、第2、第3の湾曲可能セグメント12、13、14である)とを備える。
【0027】
図2Bの実施形態に示されるように、湾曲可能セグメント12、13、14は、独立して曲がり、3つの独立した曲率をもつ形状を形成することができる。湾曲可能医療機器3は、内径40及び外径42をもつ湾曲可能体7を含む(図4B参照)。外径は、湾曲可能体7の円筒状の壁8を形成し、内径は、ツールチャネル18として使用できる、湾曲可能体の端から端まで延びる空洞を画定する(図4b参照)。壁8は、湾曲可能体7の全長に延在してもよいし、或いは、曲げ性を高めるために、部分的に除去又は分割されてもよい(例えば、ガイドリングを有する)。壁8は、制御ワイヤの収容を目的とするいつかのルーメン34を収容することができる。ツールチャネル18は、湾曲可能体7の端から端まで延びるように構成される。湾曲可能体7の近位部19は、臨床ユーザが医用ツールを挿入/除去するためのアクセスを提供する。例えば、臨床ユーザは、ツールチャネル18を通して湾曲可能医療機器3の遠位端まで生検ツールを挿入し、回収することができる。これは、湾曲可能機器3が患者に挿入された後に達成することもできるし、或いは、湾曲可能機器3の挿入/回収と一致して達成することもできる。
【0028】
湾曲可能体7は、第1の制御ワイヤ9a、9b、9cのセットと、第2のセットの制御ワイヤ10a、10b、10cと、第3のセットの制御ワイヤ11a、11b、11cとを含む。壁8は、湾曲可能体7の長手方向に沿って構成されたルーメン34内に、制御ワイヤ9a~11cを収容する。ルーメン34により、湾曲可能体の軸方向に沿った制御ワイヤ9a~11cの摺動可能な動作が可能となる。制御ワイヤ9a~11cは、各湾曲可能セグメント12、13、14の遠位端で終端されて、3つの湾曲可能群(それぞれ3本のワイヤ(a、b、c)を含む)を形成する。第1の制御ワイヤ9a、9b、9cは、アンカーセグメント15a、15b、15cによって第1の湾曲可能セグメント12の遠位端で終端され、また、壁8内で互いにおよそ120度離れて構成される。第1の制御ワイヤ9a、9b、9cは、ワイヤ9a、9b、9cの近位端で駆動ユニット2に接続される。駆動ユニット2は、制御ワイヤ9a、9b、9cを作動させ、遠位端24から湾曲可能体7を曲げることによって、当該ワイヤを動かすための押す力又は引く力を誘発する。
【0029】
同様に、第2のセットの制御ワイヤ10a、10b、10cは、第2の湾曲可能セグメント13の遠位端でアンカーセグメント16a、16b、16cを用いて終端され、また、近位端で駆動ユニット2に接続される。第2のセットの制御ワイヤ10a、10b、10cも、壁8内に収容される。第2のセットの制御ワイヤ10a、10b、10cは、第2の湾曲可能セグメント13の遠位端から湾曲可能体7を曲げることができる。
【0030】
同様に、第3のセットの制御ワイヤ11a、11b、11cも、再び押し引きを誘発し、駆動ユニット2によって制御ワイヤ11a、11b、11cの遠位端24で作動されることにより、第3の湾曲可能セグメント14で湾曲可能体7を曲げるように構成される。
【0031】
したがって、駆動ワイヤ9、10、11のセットを押すか又は引くことにより、第1、第2、第3の湾曲可能セグメント12、13、14は、それぞれ、3次元において湾曲可能医療機器3を独立して曲げる。
【0032】
更に、患者の生体構造に対する外傷のリスクを避け、ツールチャネル18内のツールの前進/引戻しを改善するために、湾曲可能医療機器3は、湾曲可能体7の外径42及び内径40に途切れのない滑らかな表面を有することができる。更に、制御ワイヤ9、10、11は、湾曲可能体7の長さに沿った様々な位置で湾曲可能体に固定することができる。これにより、湾曲可能医療機器3を、複数の湾曲セグメント(特に、湾曲可能体の近位部から独立して操作される遠位湾曲セグメント)を有するように構成することができ、患者の目的の治療領域への柔軟なアクセスを改善することができる。本実施形態では、3つのセクションをもつ湾曲可能ロボットを説明したが、湾曲可能ロボットは、目的の用途に応じて2つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上の湾曲可能セクションを有し得ることが企図される。湾曲可能体に対する外力に対抗して場所や位置を維持するために、湾曲可能体内に2つ以上の湾曲可能セクションがあることが好ましい。これにより、例えば、第2及び第3の湾曲可能セグメント(セグメント13、14)の力を用いて、医療機器の姿勢を調整することができる。湾曲可能体7は、湾曲可能体を囲むシースを更に含んでよい。シースは、滑らかな外表面を提供することができ、また、生体適合性材料から構成されるものである。
【0033】
図3は、空洞に挿入された例示の湾曲可能医療機器3の切欠き図を提供する。図3は、患者の肺の気管支周辺領域(気道周辺の側方領域である)の病変のナビゲーション及び標的化を例示する。この領域は、従来のカテーテルでは遠位での器用さが制限されるので、文献や先行技術で特定されているように、標的化することが困難であることが知られている。ナビゲーション段階では、気道22を通して病変に到達するために、第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13は、それぞれ、分岐点32を通して湾曲可能医療機器3をナビゲートする。分岐点32では、湾曲可能医療機器3が分岐点32を通って進む際に、第1の湾曲可能セグメント12は、娘枝に対する形状/向きを調整することができ、第2の湾曲可能セグメント13は、親枝に対する形状/向きを調整することができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13が分岐点32を通過すると、当該セグメントは、湾曲可能医療機器3の残りの部分のガイドとして機能することができるので、単一カテーテルの近位端からの挿入力を、遠位セクションの深刻な脱出を生じることなく、単一カテーテルの遠位部の挿入力に効果的に変換することができる。湾曲可能医療機器3の遠位端24が病変付近に到達すると、湾曲可能医療機器3は、第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13をそれぞれ曲げることによって、遠位端24を病変23(気道周辺の側方領域に位置する)に向ける。気道は病変23と直接つながってはいないので、これは、従来のカテーテルでは難易度の高い構成のひとつである。
【0034】
第1、第2、第3の湾曲可能セグメント12、13、14の各々を用いて、湾曲可能医療機器3は、この病変までの全ての分岐点を通る近位部19を動かすことなく、遠位端24を方向付けることができる。第1及び第2の湾曲可能セグメント12、13の3次元の曲げ能力を用いて、湾曲可能医療機器3は、全方向視やクラスタ視等(例えばWO/2020/092097;WO/2020/086749及び米国特許出願公開第2018/0311006号に記載される)の、気管支周囲の標的化の能力を高めるような独自の操作を実行することができる。
【0035】
制御ワイヤ9、10、11は湾曲可能体7の異なる位置に対応付けられるので、湾曲可能体7は、軸方向に沿って異なる曲げオブジェクトとして機能することができる。したがって、湾曲可能医療機器3は、蛇行経路を通した目的病変までのアクセスを改善することができる。また、湾曲可能医療機器3は、接合点のサイズや数を増大させることなく、軸方向に沿って異なる柔軟性を有することができる。
【0036】
また、第3の湾曲可能セグメントは、外力によって変形して、生体構造(肺気道、血管、脳室等)に及ぼされる力を最小限に抑えながら、生体構造の蛇行経路の形状に沿うことができる。したがって、生体構造の形状に沿うことにより、第3の湾曲可能セグメントは、カテーテルの挿入時に第1及び第2の湾曲可能セクションによってナビゲートされることができ、医療処置用の医用器具と制御用の駆動力の両方の送達ラインを展開することができる。
【0037】
外力による湾曲可能体7の変形(或いは並進)は、生体構造の経路の形状、呼吸等の作用による生体構造の位置変化、ツールチャネル18へのツールの挿入、或いは、当該ツールの動き又は使用に基づいて生じ得る。このような変形又は並進により、遠位端24が標的とずれてしまうおそれがある。
【0038】
図4A図4Cは、湾曲可能体7に作用する外力が存在する場合に、遠位端24と標的表面のアライメントを維持する方法を提供する。よって、第1のステップにおいて、ユーザは、湾曲可能体7の遠位端24を標的に向けて方向付け、例えば現在の先端の位置又は向きを基準要素として設定することができる。当該基準要素は、医用装置上の1つ以上のセンサ、又は医用装置に組み込まれた1つ以上のセンサを介して決定されてもよい。或いは、基準要素は、解剖学的特徴であってよい。この解剖学的特徴は、1つ以上のセンサを用いて、湾曲可能体の位置にレジストレーションされる。センサは、湾曲可能体7上にあってもよいし(先端か先端付近のいずれか)、先端から近位にあってもよいし、制御ワイヤ9上にあってもよい。他の実施形態では、1つ以上のセンサは、駆動ユニット2内にあってもよい(例えばアクチュエータに固定される)。軌道の決定に用いられる1つ以上のセンサは、電磁(EM)センサ、力センサ、ファイバ・ブラッグ・グレーティング等であってよい。基準要素は解剖学的特徴であってもよく、ソフトウェアは、それを、レジストレーションによって“カテーテルセンサに基づく”基準に内部転換することができる。
【0039】
基準要素は、先端に垂直な線である基準軌道であってよい。一態様では、軌道は、ツールチャネル18に対する中心とすることができる。
【0040】
基準要素は、湾曲可能体が関心領域を目標とできるようにすることを目的に、定めることができる。よって、基準要素は、関心領域に関連して説明されることがある。一部の実施形態では、湾曲可能体の位置が関心領域に十分近いとき、基準要素は、湾曲可能体の遠位端として定めることができる。他の実施形態では、基準要素は、米国特許出願第63/132,070号(参照により本明細書に援用される)に記載されるようなゴースト要素であってよい。よって、基準要素のゴースト画像の追加により、基準要素が定められた位置から離れるような湾曲可能体の動きを見ることができるように、基準要素を表示することができる。
【0041】
図4Aは、ルーメンに挿入され関心領域20に面している湾曲可能体7を示す。基準軌道22は、湾曲可能体7の遠位先端から、関心領域20(例えば腫瘍その他の病変、或いは腫瘍又は病変26内の領域)の中心部分へ向かって描出される。関心領域20の周辺では、許容逸脱24が決定される。本実施形態におけるこのような許容逸脱24は、湾曲可能体7の近位先端から関心領域20の外縁まで延在する円錐に対応し、この円錐内でのツールの伝搬により、関心領域20へのアクセスが提供される。このような逸脱24のマージンは、例えば、腫瘍26を包含してもよいし、腫瘍26の一部の範囲内にあってもよい。
【0042】
第2のステップにおいて、ナビゲーションソフトウェア6は、1つ以上の方向から、基準要素22からの逸脱24の許容マージンを定める。一態様では、許容逸脱の領域を定めるマージンは、先端から延在する誤差円錐24の角度値を設定することによって決定される。別の態様(図示なし)では、先端に関して空間内で点を仮想的に選択し、軌道が収まるべきゾーンのサイズを設定することによって、マージンを定めることができる。更なる態様では、セグメント化された病変の表面を“ペイント”して、軌道が収まるべき領域を表すことによって、マージンを定めることができる。
【0043】
許容逸脱は、例えば臨床ユーザが画面上で位置を示すことによって、入力されてよい。一部の実施形態では、許容逸脱は、臨床ユーザからの入力から得られる。例えば、ユーザの情報は、湾曲可能体の近位端の位置、及び/又は、関心領域の以前定めた位置と組み合わせられる。別の例では、許容逸脱は、セグメント化された病変の被覆率又は表面積(mm2)である。更に他の実施形態では、許容逸脱は、例えば誤差円錐の所定の角度値に基づいて、システムによって予め定められる。或いは、予め定められる許容逸脱は、基準要素と、関心領域のサイズとに基づいて計算される。ユーザのニーズによっては、セグメント化された病変と同じサイズである場合もあるし、この病変よりも小さい場合もある。許容逸脱は、ユーザが目的の手技について許容できると考える誤差のマージン、或いは逸脱のマージンであり得る。
【0044】
更に他の実施形態では、2つ(又はそれ以上)の許容逸脱、すなわち第1の許容逸脱と、より広い第2の許容逸脱が存在する。位置が第2の許容逸脱の範囲内にあるが、第1の許容逸脱の外にある場合、この通知が、例えば黄色のフラッグを介して、臨床ユーザに提示される。
【0045】
図4Bは、湾曲可能体7の実際の軌道が基準要素22からわずかに逸脱している状況を示す。ただし、この逸脱は十分ではないので、湾曲可能体7又はそこから延びるツールの軌道が、許容逸脱24(許容マージンとも記載される)の領域の外に移動するようなものではない。一方、図4Cは、湾曲可能体7の実際の軌道が基準要素22から大きく逸脱している状況を示す。これは、生体構造が呼吸運動によって動いたときに発生し得る。また、このような状況は、例えば、先端の硬いツールが湾曲可能体7の空洞内に配置されたときにも発生し得る。このような例では、基準要素と現在の軌道の不一致の原因となる外力に対抗する。
【0046】
第3のステップでは、基準要素からの逸脱を軽減するために、外力が打ち消される。例えば、ツールによって力が発生する場合(すなわち、生検プローブの適用による運動、或いはツール端部の硬さの増大による)、反作用は、所望の軌道からの逸脱に部分的又は全面的に対抗することができる。生体構造によって力が発生する場合、臨床ユーザ及び/又はナビゲーションソフトウェアは、患者の安全を確保するために、運動の範囲を適宜制限することが好ましい。また、力の制限を用いて、湾曲可能医療機器の完全性を確保することもできる。一部の実施形態では、中間湾曲可能セグメント13のみの制御ワイヤを調整して、医療機器の姿勢を調整して、逸脱の許容マージン内に位置を維持することによって、外力に対抗する。他の実施形態では、中間セグメント13と近位セグメント14の両方の制御ワイヤを調整することによって、外力に対抗する。
【0047】
一部の実施形態では、反作用の程度は、許容マージンの縁からの距離に反比例する。例えば、軌道が所望の軌道に近くなるほど、許容される逸脱が大きくなる。生体構造の運動は周期的であり得るので(例えば呼吸)、臨床ユーザ及び/又はナビゲーションソフトウェアは、インパルス(経時的な力の積分)を測定し、特定の定められた限界を超えたときに反作用を停止させることができる。更に患者の安全を確保するために、その後にモータをバックドライブして、かかる力が最小限になることを確実にすることができる。更に、インパルスを低減するために、いくらかの逸脱を許容することができ、これにより、湾曲可能体7は、より長い時間許容軌道を維持することができる。
【0048】
複数の湾曲セグメントで湾曲可能医療機器3を制御することができるので、反作用は、外力の方向に直接対応する必要がない。むしろ、図5A図5Cに示されるように、最終軌道が許容マージン内に収まりさえすれば、湾曲可能機器3の複数の湾曲セグメントを調整することができる。
【0049】
図5Aに示される実施形態では、基準要素22及び許容マージン24が定められる。ツールが湾曲可能体7内の空洞に挿入されるとき、図5Bに示されるように、湾曲可能体7の湾曲が緩い場合がある。湾曲可能体7は、ツール28が湾曲可能体の遠位端まで通過できるようにするために、意図的に緩めることができる。或いは、挿入されるツール28の硬い先端の剛性が高い場合、図5Aと比較して、湾曲可能体7が真っ直ぐになる場合がある。これは、湾曲可能体7とツール28の近位先端が許容逸脱24の領域内になく、生検その他の手技が関心領域20に到達し得ないことを意味する。図5Cは、ツール28によって生じた外力に対抗する調整を示す。図5Cに示される湾曲可能体7は、剛性の増大によって元の形状に曲がることはできないが、湾曲可能体7の方向が許容逸脱24の領域内にあるように、湾曲可能体7が基準要素22と十分にアライメントし直されるように、空間内で並進することができる。
【0050】
具体的には、一部のツールは、機能要素として硬い先端をもつので(例えば針や鉗子)、遠位湾曲可能セグメント12は、硬い先端によって制約を受け、曲がることが困難であり得る。この場合、システムが標的化の向きを再調整する際に、中間湾曲可能セグメント13(ツールの硬い先端の位置からオフセットしている)の動きを優先して調整することができる。
【0051】
一部の実施形態では、米国特許出願第63/132,374号(参照により本明細書に援用される)に記載されているように、湾曲可能体が関心領域内の複数の標的を狙ったりアクセスしたりできることを保証することを目的として、基準要素を定めることができる。複数の標的(例えば複数の生検箇所)の場合、基準要素は、様々な標的位置の周りの幾何学的中心までの基準軌道であってよい。或いは、様々な標的の各々について、複数の基準要素を定めることができる。
【0052】
ユーザは、複数の基準要素と、それらのサイクルを作成することができる。このような基準要素は、それぞれ手動で定めることもできるし、自動で定めることもできる。また、ユーザは、それらを手動で循環させることもできるし、ソフトウェアに自動で次のものに移行させることもできる。基準要素が変更されると、コントローラは、湾曲可能体と新しい基準要素を自動的に再アライメントし、また、湾曲可能体に対する外力に抵抗することにより、所定の許容逸脱内に収まるような姿勢を維持する。各基準要素がそれ自体の所定の許容逸脱を有することもできるし、全ての基準に対して単一のパラメータセットが適用されてもよい。図6Aでは、湾曲可能体7は当初、上の標的20A(暗灰色)にアライメントされている。次に、図6Bに示されるように、ユーザ又はシステムが下の標的20Bに切り替えると、湾曲可能体7は、許容逸脱24内の下の標的20Bにアライメントされるように順応する。図6Bの例示の実施形態では、基準要素22Bのトップのアライメントは、それが許容逸脱24内にあるときに、まさしく許容逸脱24の縁で停止する。この機能は調整可能である。例えば、基準要素が20Aから20Bに切り替えられたときに、湾曲可能体7は許容逸脱24の中心に位置するように順応することができ、ツール交換の際には、許容逸脱24の全体の境界内にのみ収まることができる。
【0053】
一部の例示の実施形態では、第1のステップにおいて、ユーザは、湾曲可能体7の遠位端24を標的に向けて方向付け、現在の先端位置(例えば第1の位置)又は向きを、ステップ1での基準要素として設定することができる。第2のステップにおいて、ユーザは、1つ以上の方向における基準要素からの許容逸脱の所定の値を定めることができ、或いはナビゲーションソフトウェア6に当該値を定めさせることができ、或いは当該値を変更することができる。
【0054】
第3のステップにおいて、ユーザは、基準要素が定められた時点の湾曲可能体7の形状から湾曲可能体7が形状を変化させることを許可することができる。例えば、湾曲可能体7は、ツールを挿入又は除去できるようにしたり、解剖学的運動(例えば呼吸)に合わせたりするために、湾曲を緩くすることができ、或いは他の方法で変形することができる。第4のステップにおいて、湾曲可能体7は、許容マージン内の所望の軌道に戻る。
【0055】
湾曲可能体7が当初の形状に戻っても(例えば同じ入力を用いて)、湾曲可能体7が所望の軌道に戻らない場合(硬さの変化、ツールの挿入又は除去、或いは解剖学的運動が原因で)、臨床ユーザ及び/又はナビゲーションソフトウェアは、軌道情報と、逸脱の許容マージンとを用いて、所望の軌道からの逸脱を最小限に抑えることができる。例えば、湾曲可能体7の位置は、湾曲可能セグメントのいずれかで調整することができ、湾曲可能体7は、軌道が回転するように回転することができ、湾曲可能体7は、空間内で並進することができ、或いは、これらの位置調整の任意の組合わせを利用することができる。
【0056】
センサからのフィードバックを用いて、臨床ユーザ及び/又はナビゲーションソフトウェアは、軌道の向き及び位置を、許容マージン内に収まるように微調整することができる。このような微調整は、例えば、試行錯誤から行うこともできるし、逆運動学から必要な新しい入力を決定することもできる。
【0057】
場所又は位置を許容逸脱内に維持するために、湾曲可能体に対する外力に対抗すると、場所を維持するための更なる調整が不要になる場合がある。対抗ステップは、例えば1つ以上の制御ワイヤを伸縮させることであってよく、湾曲可能体の位置は、一旦動かされると維持されることになる。次いで、ユーザは、例えば、サンプルが正確な場所から採取されるという強い自信をもって、生検サンプルを採取することができる。ただし、一部の実施形態では、連続的又は反復的な対抗ステップが好ましい場合がある。よって、複数の対抗(例えば1つ以上の制御ワイヤの複数の動作)が好ましい場合がある。
【0058】
ソフトウェア関連の開示
本開示の実施形態は、記憶媒体(より完全には「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」と呼ぶこともできる)に記録されたコンピュータ実行可能命令(例えば1つ以上のプログラム)を読み出し実行して、前述の実施形態のうち1つ以上の機能を実行し、かつ/又は、前述の実施形態のうち1つ以上の機能を実行するための1つ以上の回路(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))を含むコンピュータシステム400又は装置によって実現することもできるし、また、コンピュータシステム又は装置が、記憶媒体からコンピュータ実行可能命令を読み出し実行して、前述の実施形態のうち1つ以上の機能を実行すること、及び/又は1つ以上の回路を制御して、前述の実施形態のうち1つ以上の機能を実行することによって実行される方法によって実現することもできる。コンピュータシステムは、1つ以上のプロセッサ(例えば中央処理装置(CPU)410、マイクロ処理ユニット(MPU))を含んでよく、コンピュータ実行可能命令を読み出して実行するための別個のコンピュータ又は別個のプロセッサのネットワークを含んでよい。コンピュータ実行可能命令は、例えばネットワークク又は記憶媒体から、コンピュータに提供することができる。記憶媒体は、例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、分散コンピューティングシステムのストレージ、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)又はBlu-ray Disc(BD)(商標)等)、フラッシュメモリデバイス、メモリカード等のうち1つ以上を含んでよい。I/Oインタフェースは、入出力デバイスに対して通信インタフェースを提供するために用いることができ、入出力デバイスとしては、キーボード、ディスプレイ、マウス、タッチスクリーン、タッチレスインタフェース(例えばジェスチャー認識デバイス)、印刷デバイス、ライトペン、光学式ストレージデバイス、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル及びネットワーク(有線又は無線)が挙げられる。
【0059】
他の実施形態、変更及び/又は利点
本明細書に開示される様々な実施形態には、アクチュエータに取付け可能な近位セクションと、患者の管腔に挿入可能な遠位セクションとを有するカテーテルとしての湾曲可能体を制御するための内視鏡ナビゲーション誘導を提供するシステム、方法及びコンピュータ可読媒体が記載される。湾曲可能体は、管腔を通して挿入され、標的部位に関して位置関係に維持されるように有利に制御することができる。湾曲可能体は、それを取り外すことなく、様々な構成で動作することができる。例えば、湾曲可能体は、病変を見るための内視鏡イメージング機器(内視鏡カメラ)その他のツールとともに挿入することができ、次いで、正確に位置調整され、基準要素が決定されると、イメージング機器は除去することができ、生検ツールを挿入することができる。最初の生検が行われた後、追加の生検ツールや他のツールを挿入することもできる。
【0060】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によってのみ限定される。
【0061】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0062】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。例えば、本開示は、例示の実施形態に関して先に説明された。しかしながら、本開示を適用可能であり得る、具体的に記載されていない多くの変形がある。例えば、医療手技で使用するための内視鏡に関して様々な実施形態が記載されているが、本開示は、様々な機械的構造内で使用するためのボアスコープの機械的手技に関しても適用可能である。したがって、以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用装置であって、
湾曲可能体と、
前記湾曲可能体内に摺動可能に位置する少なくとも1つの制御ワイヤと、
1つ以上のセンサと、
前記医用装置を動作させるためのコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
関心領域に対する基準要素を決定し、
前記基準要素からの許容逸脱を決定し、
前記許容逸脱内に収まる前記関心領域への軌道を維持するために、前記医用装置を曲げ、回転させ、かつ/又は並進させる、
医用装置。
【請求項2】
前記基準要素は、前記湾曲可能体から前記関心領域までの基準軌道である、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項3】
前記1つ以上のセンサは、前記医用装置の位置及び前記基準要素を決定する電磁センサである、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項4】
前記湾曲可能体は、当該湾曲可能体の端から端まで延びる空洞と、前記空洞の周囲に少なくとも部分的に形成された壁と、を有する、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項5】
前記許容逸脱は、
前記湾曲可能体の遠位端から延びる誤差円錐の角度値を設定することと、
前記遠位端に関して空間内で点を選択し、前記基準要素が収まるべきゾーンのサイズを設定することと、
前記関心領域のうち、前記基準要素が収まるべき表面の領域を選択することと、
のうちの1つ以上によって決定される、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項6】
前記湾曲可能体に対する外力に対抗することは、前記基準要素が前記許容逸脱内に収まるか、或いは前記許容逸脱に戻るように、前記医用装置を曲げることを含む、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項7】
前記湾曲可能体は、遠位端から近位端に向かって、少なくとも第1、第2及び第3の湾曲可能セクションを有し、
前記湾曲可能体に対する外力に対抗することは、少なくとも前記第2の湾曲可能セクションを曲げることを含む、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記医用装置に及ぼされた前記力についての前記1つ以上のセンサからのフィードバックと、前記医用装置の位置についてのフィードバックとを用いて、前記基準要素を前記許容逸脱内に維持する、
請求項1に記載の医用装置。
【請求項9】
対象の関心領域を標的化するための医用装置の作動方法であって、
湾曲可能体と、前記湾曲可能体内に摺動可能に位置する少なくとも1つの制御ワイヤと、1つ以上のセンサと、を備える前記医用装置
前記対象の第1の位置まで前記医用装置を前進させるステップと、
前記湾曲可能体の位置と関連付けられる基準要素を決定するステップと、
前記第1の位置と前記基準要素の間の許容逸脱を定めるステップと、
前記許容逸脱内で場所又は位置を維持するために、前記湾曲可能体に対する外力に対抗するステップと、
実行させる方法。
【請求項10】
前記基準要素は、前記湾曲可能体から前記関心領域までの基準軌道である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のセンサは、前記医用装置の位置及び前記基準要素を決定する電磁センサである、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記湾曲可能体は、当該湾曲可能体の端から端まで延びる空洞と、前記空洞の周囲に少なくとも部分的に形成された壁と、を有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも第2の基準要素を定めるステップと、
前記第1の位置と前記少なくとも第2の基準要素の間の許容逸脱を定めるステップと、
を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記許容逸脱は、
前記湾曲可能体の遠位端から延びる誤差円錐の角度値を設定することと、
前記遠位端に関して空間内で点を選択し、前記基準要素が収まるべきゾーンのサイズを設定することと、
前記関心領域のうち、前記基準要素が収まるべき表面の領域を選択することと、
のうちの1つ以上によって決定される、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記湾曲可能体に対する前記外力に対抗するステップは、前記基準要素が前記許容逸脱内に収まるか、或いは前記許容逸脱に戻るように、前記医用装置を曲げることを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記湾曲可能体は、遠位端から近位端に向かって、少なくとも第1、第2及び第3の湾曲可能セクションを有し、前記湾曲可能体に対する前記外力に対抗するステップは、少なくとも前記第2の湾曲可能セクションを曲げることを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記湾曲可能体に対する前記外力に対抗するステップは、前記基準要素が前記許容逸脱内に収まるか、或いは前記許容逸脱に戻るように、前記医用装置の回転及び並進のうちの1つ以上を行うことを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記基準要素を前記許容逸脱内に維持するために、前記医用装置に及ぼされた前記力についての前記1つ以上のセンサからのフィードバックが、前記医用装置の位置についてのフィードバックとともに用いられる、
請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記対象の第1の位置まで前記医用装置を前進させるステップは、ユーザによって制御される操作ユニットからの指示に基づいて前進させることである、
請求項9に記載の方法。
【国際調査報告】