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  • 特表-チップレスRFIDタグ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】チップレスRFIDタグ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/067 20060101AFI20230406BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20230406BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G06K19/067 020
G01N22/00 Y
G01N22/00 V
G01N22/00 S
H05K1/03 610G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549271
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021054069
(87)【国際公開番号】W WO2021165422
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20305162.8
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519327010
【氏名又は名称】インクジェット エンジン テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴーティエ ル ブルシュ、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】アベルジェル、エドモン
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】 本発明は、チップを備えない(個別化された)無線周波数識別デバイス(RFID)に関し、詳細には、チップレスRFIDタグとも呼ばれる、チップを備えない(個別化された)RFIDタグに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが載置された誘電体基板を含むチップレスRFIDタグであって、前記誘電体基板が、3~10GHzのうちの任意の周波数で測定された1~2の比誘電率と、3~10GHzのうちの任意の周波数で測定された10-3よりも小さい損失正接値を有することを特徴とする、チップレスRFIDタグ。
【請求項2】
前記誘電体基板が、1.001~1.25の比誘電率を有することを特徴とする、請求項1に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項3】
損失正接値が2×10-4よりも小さいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項4】
前記誘電体基板のかさ密度が、250kg・m-3よりも小さく、好ましくは100kg・m-3よりも小さいことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項5】
前記誘電体基板が、例えば紙、板紙又はプラスチックから成るシートなどの誘電体フィルムが載置された請求項1~4の何れか1項に記載の誘電体基板で構成され、前記誘電体フィルムに、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが配置されていることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項6】
前記誘電体フィルムが、以下の特徴、つまり、
- 3~10GHzのうちの任意の周波数で測定された前記比誘電率であって、前記メイン誘電体基板の比誘電率よりも大きく、好ましくは1.25よりも大きく、例えば2よりも大きく、好ましくは3.5よりも小さい比誘電率、並びに/或いは
- 3~10GHzのうちの任意の周波数で測定された損失正接値であって、前記メイン誘電体基板の損失正接値よりも大きく、好ましくは2×10-2よりも小さい損失正接値、並びに/或いは
- 前記メイン誘電体基板の厚さの少なくとも10分の1の厚さであって、好ましくは100μmよりも小さく、例えば50μmよりも小さい厚さ、並びに/或いは
- 例えばポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料で構成されること、
のうちの1つ又は複数を特徴とする、請求項5に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項7】
前記誘電体基板の上側が、導体材料の層から成る前記1つ又は複数のパターンと接触していることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項8】
前記誘電体基板の厚さが0.5mmよりも大きく、例えば0.75mmよりも大きいことを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項9】
前記誘電体基板の厚さが3mmよりも小さく、例えば1.5mmよりも小さいことを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項10】
前記パターンを構成する前記導体層が、200nmよりも大きく20μmよりも小さい導体材料の厚さを有することを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項11】
前記パターンを構成する前記導体層が、400nmよりも大きく2μmよりも小さい導体材料の厚さを有することを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項12】
前記誘電体基板の下、好ましくは前記誘電体基板の表面全体の下に導体材料の層を含むことを特徴とする、請求項1~11の何れか1項に記載の、グランドプレーン有りのチップレスRFIDタグ。
【請求項13】
前記誘電体基板の下の前記導体材料の層が、200nmよりも大きく20μmよりも小さい導体材料の厚さを有することを特徴とする、請求項12に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項14】
前記誘電体基板の下の前記導体材料の層が、400nmよりも大きく2μmよりも小さい導体材料の厚さを有することを特徴とする、請求項12又は13に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項15】
前記誘電体基板が、固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード、又は布地で作られた誘電体基板から選択されることを特徴とする、請求項1~14の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項16】
前記誘電体基板が固体ポリマー発泡体であることを特徴とする、請求項15に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項17】
前記誘電体基板が、気泡密度104~109個/cm3を有する固体ポリマー発泡体であることを特徴とする、請求項16に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項18】
前記誘電体基板が、平均直径が20~200μmの気泡サイズを有する固体ポリマー発泡体であることを特徴とする、請求項1~17の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項19】
前記誘電体基板の上面の全体と、導体材料の層から成る前記パターンで覆われた前記誘電体基板の上面の比が、2よりも大きいことを特徴とする、請求項1~18の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項20】
前記導体材料の層で覆われた前記誘電体基板の下面と、前記誘電体基板の下面の全体の比が、0.9よりも大きいことを特徴とする、請求項12~19の何れか1項に記載の、グランドプレーン有りのチップレスRFIDタグ。
【請求項21】
順に、
- 任意選択だが好ましい導体層で構成され、
- その上に、任意選択であるが好ましい誘電体フィルムが載置され、
- その上に、前記メイン誘電体基板が載置され(例えば、固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)、
- その上に、前記導体材料の層から成る前記1つ又は複数のパターンが配置された誘電体フィルムが載置され、前記導体材料の層が好ましくは前記メイン誘電体基板の上面と接触することを特徴とする、請求項1~20の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項22】
- 前記導体層が、200nm~20μmの厚さを有し、例えば10μmよりも小さく、更には2μmよりも小さい厚さを有し、
- その上に、厚さ5~100μmの誘電体フィルムが載置され、
- その上に、厚さ0.5~3mmの前記メイン誘電体基板(例えば、固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)が載置され、
- その上に、厚さ5~100μmの誘電体フィルムが載置され、そこには、厚さが200nm~20μmであり、例えば10μmよりも小さく、更には2μmよりも小さい、前記導体材料の層から成る前記1つ又は複数のパターンが配置されている、ことを特徴とする、請求項21に記載のチップレスRFIDタグ。
【請求項23】
請求項1~22の何れか1項に記載のチップレスRFIDタグの前記タグを構成する各層を接着せずに接触させておくために、前記タグの各層の端を巻き込む又は溶着することを特徴とする、チップレスRFIDタグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップを備えない個別化された無線周波数識別デバイス(RFID)であるチップレスRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
「デバイス」とは、パッケージ、文書、特にセキュリティ文書、又は特許請求の範囲に記載のチップレスRFIDタグを組み込んだ全ゆる物体を意味する。
【0003】
無線周波数識別技術を使用したデータ伝送システムが、それぞれ適合されたデバイス(タグ)を担持する全ゆるタイプの物体及び生物(動物や人間など)の識別に、広く使用されている。ここ数十年で、RFID技術は情報の保存と伝送に益々使用されるようになった。
【0004】
このRFID技術は、トランスポンダ(「トランスミッタ」と「レスポンダ」の短縮形に由来する)とも呼ばれる、物体に配置された無線タグと、インテロゲータとも呼ばれる、無線タグを読み取って識別するためのリーダを使用する。RFID技術は一般に、「アクティブ」無線タグか、「パッシブ」無線タグかに分類される。アクティブ無線タグは、リーダに信号を送信するために使用するローカルエネルギー源(バッテリなど)を備えているため、一般に、送信信号範囲が比較的長いことを特徴とする。しかし、パッシブ無線タグは内部電源を備えていない。その理由は、パッシブ無線タグの信号送信エネルギーは、リーダ自体、具体的にはリーダから送信された信号を受信することから得られるためである。従って、パッシブ無線タグの信号範囲ははるかに小さく、通例8m未満である。
【0005】
実用的な観点から、RFID技術では、光信号よりもはるかに高い物質透過特性を有する無線周波数(RF)を使用する。従って、RFID技術では、バーコードに比べて相当厳しい環境での使用が可能になる。例えば、RFIDタグの読み取りは、紙、板紙、木材、塗料、水、土、ほこり、動物や人体、コンクリートなどの全ゆる種類の物質を貫いて、或いはタグ付けされたアイテム自体又はそのパッケージ越しに行うことができる。この特性により、RFIDタグの用途が広がっており、その例として、所有物及び人物の識別、具体的にはパッケージ、自動車(駐車場、通行料など)、在庫管理、電子アクセスカードが挙げられる。また、これには当然ながら全ゆるセキュリティ文書も含まれ、このようなセキュリティ文書には、銀行券、小切手、レストランのクーポンなどの支払い手段、IDカード、ビザ、パスポート、運転免許証などの身分証明書、或いは宝くじ、交通機関のチケット、文化イベントやスポーツイベントの入場券などがある。
【0006】
RFIDタグには大きく分けて、ICタグと呼ばれる電子集積回路を内蔵したタグと、通例ではチップレスRFIDタグと呼ばれる電子集積回路を内蔵しないタグの2種類がある。
【0007】
(アクティブ又はパッシブ)RFID ICタグは通例、アンテナ、電子回路、及び識別コードを保存するためのメモリを備える。上記電子回路は特に、読取装置から送信された信号の受信と、応答の送信に使用される。この信号は、特定の周波数帯で変調された、上記メモリに保存されている識別コードを含んだ信号の形式をしている。パッシブRFID ICタグの場合には、読取装置から送信された電波によって運ばれるエネルギーの一部が、チップに電力を供給するために使用される。
【0008】
IC RFIDタグは、その中に電子回路が存在するため、その原価は無視できない。この原価を下げることを目的として、本出願人はチップレスタグの開発を提案した。このタイプのRFIDタグは、集積回路も、トランジスタやコイル、コンデンサ、アンテナなどのディスクリート電子部品も、必要としない。特定の動作、具体的には共振器タイプの動作を生じさせるのは、このRFIDタグの導体幾何形状の特性である。この設定周波数での共振特性により、従来のRFIDタグよりも低コストで、チップレスRFIDタグを物体上で直接読み取ることが可能になる。
【0009】
従来技術にとっての重要な課題とは、チップレス無線周波数識別デバイスの符号化容量を増やすこと、及びこれらのデバイスの製造、特に識別デバイスを工業的に製造することである。
【0010】
非特許文献1では、UWB周波数帯域で動作する、高Q値のCSRR構造に基づく再送信チップレスタグを提案している。このタグは、複数のCSRR共振器を搭載した、送信と受信の2つの直交偏波マイクロストリップ広帯域モノポールアンテナで構成される。この論文の実験パートである第6章と第7章で、先ず、Rogers社4350タイプの誘電体基板が使用されている(基板の比誘電率は3.66、損失正接は0.004、厚さは0.508mm)。複数の厚さ(それぞれ0.3、0.508、0.8mm)でも試験が行われている。次に、上記誘電体基板が、それぞれプラスチック基板(比誘電率3.1、損失正接0.008、厚さ1mm)と発泡体(比誘電率1.06、損失正接0.0015、厚さ1mm)に置き換えられている。これらの変更から導き出された唯一の結論は、「出力スペクトルは符号化状態を正しく示している」ということであり、それ以外に示唆するものはない。
【0011】
非特許文献2では、「green radio(グリーン無線)」技術に関するEU研究プロジェクトの一環として開発された、高効率マイクロストリップ・パッチアンテナ素子を提供している。図1は、Rogers社Duroid5880の3層と厚さ10mm発泡体層の1層を含んだ基板による、広帯域開口と結合した積層パッチ構成を表している。これらのアンテナは、本発明のチップレスタグと同じ機能/実用性を備えてはいない。従って、設計上の問題は異なっている。
【0012】
非特許文献3には、「符号化容量の大きいダイポールアレイプレート・チップレスRFIDタグ」が記載されている。20ビットチップレスRFIDタグのトポロジに関するセクションIIIの最後の段落で、基板が、Rogers社RO4350(比誘電率3.66、損失正接0.003、厚さ0.1mm)と発泡体層(比誘電率1.3、損失正接0.02、厚さ1mm)で構成されると述べられている。
【0013】
非特許文献4には、「ウェアラブル用途向けのチップレス湿度センサ」、つまり衣服用湿度センサが記載されている。
【0014】
非特許文献5には、チップレスRFIDタグを読み取るためのスカラー法が記載されている。この文献の図9(a)に、ダイポール共振器アレイを備えるチップレスRFIDタグの説明がある。上記ダイポール共振器アレイは、中間層付きのグランドプレーンを備え、この中間層は、RO4350基板(Rogersタイプの誘電体、比誘電率3.66、損失正接0.003、厚さ0.1mm)と、上記グランドプレーンと上記基板の間に挿入される発泡体層(比誘電率1.3、損失正接0.02、厚さ1mm)とで構成される。
【0015】
チップレスRFID技術には将来性があるものの、チップレスRFIDタグには現状、読取性能において改善の余地がある。読取性能とは、タグの被読み取り、被識別能力を意味する。即ち、例えば、測定ノイズやタグの近傍にある他の物体によって後方散乱された信号などの他の信号と比較して、タグの信号レベル(タグ情報を運ぶ必要な信号)を高めるなどの能力である。タグの製造とコストだけでなく読取性能の課題に対処するには、タグ自体、特にタグを構成する材料に対して一定の処理を施すことが不可欠になる。タグの製造に使用される材料が、タグによって後方散乱される必要な信号に直接影響する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】ジョンファ・マー(Zhong-Hua Ma)、ジェンホン・ヤン(JianHong Yang)、チチェン・チェン(Chih-Cheng Chen)、チェンフー・ヤン(Cheng-Fu Yang)「マイクロシステムズ・テクノロジーズ(Microsystems Technologies)」、2018年、第24巻、4373~4382頁
【非特許文献2】ペイシェイロ・クストーディオ(Peixeiro Custodio)、「2013年度IEEEアンテナ及び伝搬協会国際シンポジウム(2013 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium (APSURSI))」、会議:2013年7月7~13日、IEEE Xplore:2014年1月27日、INSPECアクセッション番号:14058155、DOI:10.1109/APS.2013.6711573、l828~1829頁
【非特許文献3】スヴァンダ・ミラン(Svanda Milan)他、「IEEEアクセス(IEEE Access)」、第7巻、138707~138720頁、2019年8月14日発行、Electronic ISSN:2169~3536、INSPECアクセッション番号:19088375、DOI:10.1109/ACCESS.2019.2935258
【非特許文献4】ローラ・コルチア(Laura Corchia)他、「2019年度RFIDの技術と応用に関するIEEE国際会議(2019 IEEE International Conference on RFID Technology and Applications (RFID-TA))」、会議日:2019年9月25~27日、INSPECアクセッション番号:19135523、174~177頁
【非特許文献5】ジャン・クラセック(Jan Kracek)、「限定的グランドプレーンを裏面に付けたダイポール共振器アレイに基づくチップレスRFIDタグを読み取るためのスカラー法(Scalar Method For Reading of Chipless RFID Tags Based on Limited Ground Plane Backed Dipole Resonator Array)」、マイクロ波の理論と技術に関するIEEE会報(IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques)、2019年11月11日、第67巻、4547~4558頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明は、チップを備えない(個別化された)新しい無線周波数識別デバイス(RFID)の1つ、詳細には「チップレスRFIDタグ」とも呼ばれる、チップを備えない(個別化された)RFIDタグを提案することによって、上記課題に対する有望な解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
詳細には、本発明は、チップレス無線周波数識別デバイス、好ましくはチップレスRFIDタグに関し、上記タグは、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが載置された、或る特定の誘電体基板を含むことを特徴とし、好ましくは、固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード又は布地(例えば、綿、麻、亜麻、又はナイロンやポリアミド、ビスコースなどの合成材料を縒り合わせた糸又は繊維から成る材料)で作られた誘電体基板であって、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが載置された誘電体基板を含むことを特徴とする。
【0019】
以下に詳細に説明するように、固体発泡体とは、好ましくは、かなりの割合の空気又は気体の泡を含み、従って一定の体積を占めながらも固体状態の物質を殆ど含まない、剛性又は可撓性を有し得る誘電性物質を意味する。この固体状態とは、好ましくは、分子又はイオン間に自由がないことを特徴とする物質の状態であり、従って発泡体は一般に、比誘電率が非常に低く、つまり比誘電率が1前後であることを特徴とする。1は空気の誘電率値である。
【発明の効果】
【0020】
実際に、本発明による上記誘電体と導体パターンの組立体により、最適な共振特性を示すだけでなく、放射効率に優れ更には優秀な読取性能を示すデバイスを実現できることを、本出願人は予期せず確認した。従って、本発明によるデバイスの共振特性を決定付けるのは少なくとも、誘電体と導体パターンの2つの層の組み合わせである。この発見により、チップレスRFIDタグの分野に、新たな応用分野が広く開かれた。というのは、本願で示すように、当該デバイスは、(それらのRFシグネチャは認識可能なままで)簡単に識別できる一方、その製造が容易だからである。このことは、一層、予想外で直感に反している。つまり、従来技術では、タグが有効な無線周波数信号を維持するには、タグ表面の導電特性を保つことが製造要件であると知られていたからであり、更に、従来技術では、誘電率の高い基板が存在することにより、タグの共振能力を向上させることができる(タグの共振器の品質係数が大きくなる)と知られていたからである。実際、基板の誘電率が高いほど、導体層の近くに存在する誘電体の位置で大きな電界が保持され、共振が向上する(品質係数が大きくなる)。一方で、リーダの能力については、品質係数が高いことが、実際の環境、即ちRFIDタグ以外の物体を含んだ環境でタグを読み取る基本的な基準として知られている。品質係数が高いほど、タグから送信された信号を周囲信号から時間的に分離できる可能性が高くなる。これにより、タグの正確な測定が可能になり、これが実際に目指す構成である。
【0021】
本発明において、特許請求の範囲に記載のデバイス/タグに対する修飾語「個別化された」の使用は、そのデバイス/タグを、識別/判別することが可能であることを端的に確認するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に関連して作られた様々なタグの幾何形状の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
誘電体基板
上述のように、本発明によるチップレスRFIDデバイス/タグは、或る特定の誘電体基板を含むことを特徴とする。
【0024】
この特定の誘電体基板は、有利には、以下の条件の少なくとも1つを満たす誘電体基板の中から選択される。
・ かさ密度が250kg・m-3よりも小さく、例えば100kg・m-3よりも小さい、かつ/又は
・ 比誘電率が3よりも小さく、好ましくは2よりも小さく、好ましくは1.25よりも小さい。例えば、この比誘電率は1.10よりも小さい。本発明による特定の一実施形態では、この比誘電率はほぼ1である。この比誘電率は、好ましくは1.001よりも大きい。例えば、この比誘電率は1.01よりも大きい、かつ/又は
・ 損失正接値が10-2よりも小さく、好ましくは10-3よりも小さく、例えば2×10-4よりも小さい。
【0025】
この特定の誘電体基板は、有利には、固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード又は布地(例えば、綿、麻、亜麻、又はナイロンやポリアミド、ビスコースなどの合成材料を縒り合わせた糸又は繊維から成る材料)で作られた誘電体基板の中から選択される。
【0026】
上記誘電体基板は、有利には剛性又は可撓性を有し、好ましくはフィルムの形で提供される。
【0027】
上記誘電体基板の厚さは、有利には0.1mmよりも大きい。上記厚さは、好ましくは0.5mmよりも大きい。例えば、上記厚さは0.75mmよりも大きい。
【0028】
誘電体基板の厚さは、有利には3mmよりも小さい。上記厚さは、好ましくは1.5mmよりも小さい。例えば、上記厚さは1.25mmよりも小さい。
【0029】
本発明に従って読取、共振及び識別の性能目標を満たす任意の誘電体基板を、本発明の範囲内で有利に使用することができる。例として、布地(例えば、綿、麻、亜麻、又はナイロンやポリアミド、ビスコースなどの合成材料を縒り合わせた糸又は繊維から成る材料)、段ボール、セル構造ボード、発泡ボード、例えばポリマーやバイオポリマーなどの固体発泡体が挙げられる。
【0030】
本発明による特定の一実施形態では、誘電体基板は、かさ密度が250kg・m-3よりも小さく、例えば100kg・m-3よりも小さいことを特徴とする。かさ密度は、例えば秤量などの任意の適当な方法によって測定することができる。特に断りのない限り、かさ密度は、通常の大気圧(1,013hPa)の下、温度20℃の物体に対して示される。従って、このかさ密度の測定には、誘電体基板として選択された材料のタイプに適用可能なASTM方式又はISO方式が有利に使用され得る。従って、選択された方式(かつ選択された材料のタイプに適用可能な方式)がASTMとISOの何れであっても、かさ密度の測定値は、好ましくは250kg・m-3よりも小さく、例えば100kg・m-3よりも小さい。
【0031】
本発明による特定の一実施形態では、誘電体基板は、その誘電特性、即ち、比誘電率が3よりも小さく、好ましくは2よりも小さいことを特徴とする。上記比誘電率は1.25よりも小さい。例えば、上記比誘電率は1.10よりも小さい。本発明による特定の一実施形態では、上記比誘電率はほぼ1である。上記比誘電率は、好ましくは1.001よりも大きい。例えば、上記比誘電率は1.01よりも大きい。
【0032】
本発明による特定の一実施形態では、誘電体基板は、その誘電特性、即ち、損失正接値が10-2よりも小さく、好ましくは10-3よりも小さく、例えば2×10-4よりも小さいことを特徴とする。
【0033】
なお、誘電率とは、電界が印加されたときの材料の応答を表す物理的特性である。損失正接は誘電正接とも呼ばれる。
【0034】
比誘電率と損失正接(tanδ)は、任意の適当な方法で測定され得る。例として、一般的に使用される誘電体分析技術である誘電分光法又は共振空洞法の使用が挙げられる。これらの技術は、特定の周波数、更には特定の温度における試料の複素インピーダンスを測定することに基づいている。本発明は、周囲温度付近(典型的には-20℃~+80℃)の温度に対する用途に関する。この温度範囲では、我々の周りに一般的に存在する誘電体材料の誘電率及び誘電損失は、特に3~10GHzのULB帯域幅である目的の帯域幅で、比較的一定であると見なすことができる。
【0035】
上記の方法により、例えば特定の周波数での、材料の誘電率値、更にはそのtanδ損失係数を入手できるようになる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で示す値は、温度20℃における、周波数帯域3~10GHzの範囲内にある何れかの周波数で測定された値に対応する。
【0036】
具体的には、以下の実施例で示す値の測定を、誘電体基板の誘電率評価に優れたDamaskos社08モデル(薄板試験機-Cavity)によって行った。このDamaskos社の薄板試験機を用いると、800~4000MHz帯域における誘電体の損失正接を非破壊で測定することも可能になる。これは本願の基板に特に適している。測定の実行は、Damaskos社の機器が制御する一般的なベクトル型及びスカラー型アナライザで行い、データの処理を、再現性に優れたDamaskos社の「Cavity」ソフトウェアで行う。
【0037】
固体発泡体
固体発泡体(例えば、ポリマー発泡体)は、断熱、防音、パッケージ、自動車産業などの多くの用途で使用されている。この発泡体は、閉じ込められた気体(通常は空気)の泡を含んだ連続的な固体の網状組織に例えることができる。このように気泡を閉じ込めることにより、泡の特性(密度、軽さ)を固体の特性と組み合わせることが可能になる。
【0038】
上記固体発泡体は有利には、その性質、即ち密度、独立気泡構造か連続気泡構造か、気泡のサイズと空間内配置を、特徴とし得る。
【0039】
固体発泡体は、90%を超える気体を含む場合(かさ密度100kg・m-3未満に相当)、低密度であるとみなされる。平均的な密度の発泡体は、100~600kg・m-3のかさ密度を有する。最後に、高密度の固体発泡体は、60%未満の気体を含んでいる。これは600kg・m-3を超えるかさ密度に相当する。かさ密度は、例えば秤量などの任意の適当な方法によって測定され得る。特に断りのない限り、かさ密度は、通常の大気圧(1,013hPa)の下、温度20℃の物体に対して示される。
【0040】
本発明で使用する固体発泡体は、好ましくは、250kg・m-3よりも小さいかさ密度を有する。例えば、上記固体発泡体は、100kg・m-3よりも小さいかさ密度を有する。
【0041】
本発明で使用する固体発泡体は、好ましくは、104~109個/cm3の気泡密度を有する。例えば、上記固体発泡体は、105~108個/cm3の気泡密度を有する。
【0042】
本発明で使用する固体発泡体は、好ましくは、平均直径が5μm~1mmの気泡サイズを有する。例えば、上記固体発泡体は、20~200μmの平均直径を有する。
【0043】
本発明の特許請求の範囲に記載の発泡体特性を提供する任意の材料を、有利に選択することができる。例として、発泡ボード、ポリマー又はバイオポリマーが挙げられる。ポリマーとは、一般に、複数の高分子(多数のサブユニットの繰り返しで構成される分子)から成る集合体を意味する。一般に、上記材料のモル質量が2,000g/モルよりも大きい場合、それをポリマーと呼ぶ。
【0044】
本発明による特定の一実施形態では、上記固体発泡体はポリマー発泡体であり、例えば、ポリウレタン、エポキシドなどの熱硬化性ポリマーの中から選択されたポリマーであり、或いは、好ましくは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び/又はこれらのポリマーのうちの1つ又は複数から成る混合物などの、熱可塑性プラスチックの中から選択されたポリマーである。ポリエチレン(PE)又はポリエチレンテレフタレート(PET)から成る80重量%を超える、例えば90重量%を超える気体を含んだ発泡体が、本発明の範囲内で有利に選択される。
【0045】
発泡体の形態、具体的には気泡のサイズ及び密度は、任意の適当な方法によって判定することができる。例として、発泡体(例えば、ポリマー発泡体)を、液体窒素下でポリマーのガラス転移温度よりも低い状態にして破断させる。破断面がきれいなため、気泡は変形しておらず、顕微鏡などで観察することができる。気泡数の計数が可能な画像解析ソフトウェアに結合された、好ましい電子顕微鏡を使用する。この画像解析ソフトウェアで、画像ごとの気泡の平均表面積を計算することも可能である。これにより、気泡の平均径、気泡が球形でない場合は等価平均径を判定することができる。気泡密度(1cm3当りの気泡の個数)は、式(n/A)(3/2)で決定される。ここで、nは画像内の気泡の個数、Aは画像の表面積である。
【0046】
ポリマー発泡体は、任意の適当な方法によって調製することができる。例として、ガス注入による物理的発泡(CO2又は窒素(N2)など)、又は発泡剤の添加と分解による化学的発泡が挙げられる。この発泡剤には、例えば、5-フェニルテトラゾール、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p.p-オキシビス(ベンゼン)スルホニルヒドラジド及び/又は好ましく使用されるアゾジカルボンアミドなどがある。
【0047】
ブロー押出法が、本発明の下で使用され得るポリマー発泡体フィルムの作製に特に適している。
【0048】
有利には、造核剤をポリマーに添加することができる。それによりも小さな気泡を得ることが可能になる。例として、無機充填剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、安息香酸ナトリウムなど)、有機相(例えばエラストマー、ゴム粒子など)、カーボンブラック、及び/又はナノ粒子(例えばナノクレイや、ナノチューブなどのカーボンナノ粒子)が挙げられる。
【0049】
本発明による特定の一実施形態では、固体発泡体は、カートンプルーム(Carton Plume)の商品名でも知られる発泡ボードの中から選択される。このタイプの材料は、典型的には、3つの層を備える。この3つの層は、ポリマー発泡体(例えばポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)など)から成るメインの内部層を1つ含み、その内部層の外側に、紙やプラスチックなどの薄いフィルムが被覆されている。この紙やプラスチック、つまり、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが載置される、誘電体基板の上を覆う任意選択の層になる紙又はプラスチックの種類は重要ではない。その理由は、以下に詳細に説明するように、その層が占める厚さが固体発泡体の厚さと比較して、ごく僅かだからである。
【0050】
一般に、また本発明による特定の一実施形態では、ここに記載かつ/又は特許請求の範囲に記載のような特徴を有する誘電体基板(例えば固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)は、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが配置された誘電体基板全体の、少なくとも体積の95%かつ/又は厚さの95%かつ/又は重量の95%を占め、好ましくは、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが配置された誘電体基板全体の、少なくとも体積の99%かつ/又は厚さの99%かつ/又は重量の99%を占める。従って、本発明はまた、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが配置された薄い誘電体層が載置された誘電体基板で構成されるチップレスRFIDタグであって、上記誘電体基板が、それ自体ここに記載かつ/又は特許請求の範囲に記載のような特徴を有する誘電体基板から成るチップレスRFIDタグに関する。従って、上記薄い誘電体層(例えば紙、板紙、又はプラスチック材料のフィルム、プラスチックは例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、又は好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET))が占める厚さは、有利には、誘電体基板全体の厚さの5%よりも小さく、更には1%よりも小さい。
【0051】
もとより、任意選択であり重要ではないことだが、本出願人は、この薄い誘電体層又は誘電体フィルムが、幾つかの好ましい要件を満たす場合に、特許請求の範囲に記載のRFIDタグに多くの追加の利点をもたらすことを確認した。
【0052】
先ず重要なことは、特許請求の範囲に記載のタグの当該積層誘電体の「関連する」比誘電率と損失正接の値は、常に特許請求の範囲に記載の各特徴値を満たす値を有するということである。従って、このような基準に関しては、誘電体組立体に対する追加の誘電体フィルムの影響は殆どない。
【0053】
次に、これは本発明による一実施形態において大きな利点になることであるが、本出願人は、導体パターンが配置される誘電体表面の平坦性及び/又は表面状態が、タグ製造の追加の課題になり得ることを確認した。実際に、しばしば、タグのメイン誘電体(例えば、固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)の上を覆う層が十分な平坦性及び/又は良好な表面状態を示さないことがあり、追加の誘電体フィルムを使用したところ、より良好な結果/性能を達成することができた。これは、その誘電体フィルムが特に、必要な平坦性及び/又は表面状態を提供したからである。このようにして、上記誘電体フィルム上に直に、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンを配置することによって、より優れた性能が得られた。この導体フィルムの平坦性及び/又は表面状態の特性の評価には、任意の適当な方法が使用され得る。例として、実施し難い対策を考慮せずに済ますために、特許請求の範囲に記載のタグは、その全ゆる個所の総厚の変動が、100μmよりも小さく、好ましくは50μmよりも小さく、例えば40μmよりも小さく、20μmよりも小さく、10μmよりも小さく、更には例えば2μmよりも小さいことを特徴とすることが有利である。上記誘電体フィルム上に直に、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンを配置するのは、以下で説明する任意の適当な方法、例えばインクジェット印刷などの印刷を使用して行うことができる。次いで、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンで覆われた誘電体フィルムを、メイン誘電体基板(固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)に、任意の方向に任意の順序で追加することができる。本出願人は、各要素の積層順序を(1)メイン誘電体基板、(2)導体パターン、(3)誘電体フィルムにすることに利点を見い出した。つまり、この積層順序により、導体パターンが一方の面ではメイン誘電体基板によって、他方の面では誘電体フィルムによって、同時に保護されることから、タグの取り扱い及び/又は使用中に導体パターンを有利に保護することが可能になるからである。
【0054】
特定の一実施形態では、上記誘電体フィルムは、以下の特徴のうちの1つ又は複数を特徴とする。
- 3~10GHzのうちの任意の周波数で測定された比誘電率は、上記メイン誘電体基板(固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)の比誘電率よりも大きく、好ましくは1.25よりも大きく、例えば2よりも大きく、好ましくは3.5よりも小さい比誘電率、並びに/或いは
- 3~10GHzのうちの任意の周波数で測定された損失正接値は、上記メイン誘電体基板(固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)の損失正接値よりも大きく、好ましくは2×10-2よりも小さい損失正接値、並びに/或いは
- 上記メイン誘電体基板(固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)の厚さの少なくとも10分の1の厚さであって、好ましくは100μmよりも小さく、例えば50μmよりも小さい厚さ、並びに/或いは
- 例えばポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料で構成されること。
【0055】
特定の一実施形態では、誘電体フィルムの主な化学的構成は、メイン誘電体基板の化学的構成と同一である。例として、メイン誘電体基板がポリエチレンテレフタレート発泡体である場合には、追加の誘電体フィルムもポリエチレンテレフタレートをベースとする。
【0056】
板紙
既に説明したように、本発明による誘電体基板は、例として、段ボール又はセル構造ボードから選択され得る。例として、段ボールは、Bフルート段ボール(PCとも呼ばれ、一般に厚さは2.5~3.5mm)、Eフルート段ボール(マイクロフルート段ボールとも呼ばれ、一般に厚さは2~1.5mm)、Fフルート段ボール(ミニマイクロとも呼ばれ、一般に厚さは1.2mm前後)、Gフルート又はNフルート段ボール(ナノフルートと呼ばれ、厚さは0.8mm前後)、Oフルート段ボール(厚さは0.5mm前後)、或いは上記の段ボールの2つ以上の組み合わせの中から選択される。
【0057】
本発明で使用する板紙は、好ましくは、250kg・m-3よりも小さいかさ密度を有する。例えば、上記板紙は、100kg・m-3よりも小さいかさ密度を有する。
【0058】
本発明による特定の一実施形態では、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが載置された誘電体基板で構成されるチップレスRFIDタグは、誘電体基板の上側が、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンと接触していること特徴とする。実際、上述の誘電体基板上側の平坦/滑らかな表面に関する利点に加えて、本出願人は、層間(基板/任意選択のフィルム/導体パターンの間)に他の材料が存在しないようにすることも好ましいことを見い出した。例として、タグのこれらの部品の互いの間に接着剤を使用していない。
【0059】
導体層
上述のように、本発明によるチップレス無線周波数識別デバイス、好ましくはチップレスRFIDタグは、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが載置された、或る特定の誘電体基板で構成されることを特徴とする。本発明に特有のこの特定の事例では、上記チップレス無線周波数識別デバイス、好ましくはチップレスRFIDタグはまた、誘電体基板の下に、好ましくは誘電体基板の表面全体の下に、導体材料から成る1つ又は複数の層を含む。2つの導体層を含む構成(1つは誘電体基板の下、1つは誘電体基板の上の1つ又は複数のパターン)は、グランドプレーンを備えるタグについて以下に説明するように、本発明の特に興味深い事例(2つの導体層の間に挟まれた誘電体基板)である。
【0060】
本発明による特定の一実施形態では、パターンを構成する導体層の材料は、グラファイト、銅、ニッケル、銀、アルミニウム、白金及び/又はそれらの組み合わせから成る群から選択される材料、好ましくは銅及び/又は銀及び/又はアルミニウムを含む(又は好ましくは、それらで構成される)。
【0061】
本発明による特定の一実施形態では、パターンを構成する導体層は、導体材料の厚さが100nmよりも大きいことを特徴とする。例えば、150nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、200nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、250nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、300nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、400nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、500nmよりも大きい厚さが使用される。
【0062】
本発明による特定の一実施形態では、パターンを構成する導体層は、導体材料の厚さが20μmよりも小さいことを特徴とする。上記導体材料の厚さは、好ましくは10μmよりも小さく、更には2μmよりも小さい。例えば、1.5μmよりも小さい厚さが使用される。例えば、1μmよりも小さい厚さが使用される。
【0063】
上記導体材料の層は、任意の適当な付着方法によって、好ましくは誘電体基板上に直に、又は任意選択の誘電体フィルム上に、付着される。
【0064】
本発明によると、特定の一製造方法では、上記誘電体基板は一般に、例えば厚いシートや、誘電体フィルムを使用する任意選択の実施形態では薄いフィルムなど、長方形又は正方形の大きさを有するフィルムの形で提供される。上記シート(又はフィルム)は一般に基板搬送システムによって印刷機内へと移動し、この印刷可能かつ/又は個別化可能な基板を供給する少なくとも1つの入口ストアから、印刷済みかつ/又は個別化された、従って本発明による導体材料のパターンで覆われた基板を受け取る少なくとも1つの出口ストアまで、縦軸に従って方向付けられた搬送経路に沿って移動する。基板の「側縁」とは、上記縦軸の両側に位置する2つの端のことである。前縁及び/又は後縁とは、基板の横方向の縁のことである。上記基板はまた、ロールツーロール式機械のリールの形でも存在し得る。
【0065】
特許請求の範囲に記載のデバイス/タグの製造に適した方法の例として、導電性インク印刷法、具体的にはデジタル導電性インク印刷法、より具体的にはオンデマンド・インクジェット・デジタル導電性インク印刷法が挙げられる。このオンデマンド・インクジェット導電性インク印刷は、好ましくは圧電プリントヘッドを使用する。
【0066】
また、導体材料の層から成るパターンの付着方法に適した代替方法の例として、インク、ワニス及び/又はトナーなど、好ましくは誘電体の印刷物から成る最初のパターンをデジタル印刷する段階を含んだ方法が挙げられる。このデジタル印刷段階の後に付着段階が続き、この付着段階は、上記第1の印刷パターンの上に、それと同一の、貼付フィルムを含んだ導体フィルムから成るパターンを重ねることによって行われる。上記貼付フィルムは上記印刷物と導体フィルムとに接する。上記第1のパターンを印刷する段階に適した方法の例として、任意のデジタル印刷方法、具体的にはオンデマンド・インクジェット・デジタル印刷が挙げられる。このオンデマンド・ジェット印刷は、好ましくは圧電プリントヘッドを使用する。例として、上記第1のパターンへのフィルム貼付段階は、上記印刷物と上記導体フィルムの上記貼付フィルムとの間で選択的に相互接着される圧力/温度条件で、例えば1つ又は複数のピンチローラ・セット及び/又は1つ又は複数の加圧ローラによって、実行される。
【0067】
また、導体材料の層から成るパターンの付着方法に適した代替方法の例として、導体材料の熱転写による方法も挙げられる。
【0068】
また、タグの製造に適した代替方法の例として、各フィルムを互いに順次に組み立ててゆく方法が挙げられる。この方法は、導体フィルム(例えば、例として厚さ5~20μmの切り抜いたアルミニウム層)の作成を含み、導体フィルムを、切り抜き前又は後に、任意選択の運搬フィルム(例えばPET)に付着させ、続いて発泡体の層に、次いで導体フィルム(例えばアルミニウムの層)に付着させることができる。これらのフィルム/層は、適切な接着剤を使用して一体に保持され得るが、以下に説明するような巻き付け法又は溶着法は、接着剤の必要性がなくなることから好ましい。説明の観点から概略的にみると、この方法は、2つの「複合」層の生成と1つの切り抜き段階を特徴とするタグの製造に相当する。例えば、1つの「複合」金属層(以下の図はアルミニウムの例を示す)「アルミ/PET(接着剤付き)」を作成する。
-- アルミ -- 厚みの例5~20μm
-- 接着剤 --
-- PET --
次いで、この層を切り抜いてタグを作成する。次いで、最後に残った「複合」金属層(以下の例はアルミニウムの例を示す)「発泡体/アルミ」を作成しなければならない。
-- 発泡体 --
-- アルミ --
最後に、タグを形作るために、これらの2つの複合層を組み立てなければならない。
-- アルミ -- 厚みの例5~20μm
-- 接着剤 --
-- PET --
-- 発泡体 --
-- アルミ --
【0069】
また、タグの製造に適した代替方法の例として、2つの「複合」層の生成と1つの化学反応段階が挙げられる。先ず、「複合」金属層(以下の例はアルミニウムの例を示す)「アルミ/PET」を作成しなければならない。
-- アルミ -- 厚さ5~20μm(12μmで試験)
-- 接着剤 -- (任意選択)
-- PET --
次いで、保護のワニスを付着させて、アルミニウム面上にタグを描画する(ワニスは、タグに使われるアルミニウムのみを保護する)。
次いで、このワニス付きの層を、ワニスで保護されていないアルミニウムを除去する化学浴に浸す。その後、最後に残った「複合」金属層(以下の例はアルミニウムの例を示す)「発泡体/アルミ」を作成しなければならない。
-- 発泡体 --
-- アルミ --
最後に、タグを形作るために、これら2つの複合層を組み立てなければならない。当該連続する層の例を以下に示す。
-- ワニス -- タグに相当する
-- アルミ -- 厚さ5~20μm、タグに相当する
-- 接着剤 -- (任意選択)
-- PET --
-- 発泡体 --
-- PET --
-- 接着剤 -- (任意選択)
-- アルミ --
【0070】
タグの作成に、セロハンテープ/アルミニウムを使用することも想定され得る。導体パターンを切り抜くだけで、そのパターンは、適切な特定の基板に接着される。
【0071】
また、タグの製造に適した好ましい代替方法の例として、タグの各層の端を巻き込む又は溶着することによって、それらの層を順次に組み立ててゆく方法が挙げられる。この特定の実施形態の目的は、RFIDタグの各層の連続する接触表面間の接着剤の必要性をなくすと同時に、上記接触表面間の密接な接触を確保することである。この2つの目的の達成に適した任意の手段が有利に使用され得る。各層を巻き込み、それらの層の表面間の接触を維持する技術の実験は成功した。層の端(タグの外縁近傍)を溶着する技術の実施も成功した。例として、この溶着は、ロールツーロール式装置によって有利に実行され得る。この装置では、タグの積み重ねた層を先ずロールに巻き取り、次いで、それをロールから繰り出して、タグの取り出し/組み立てに適した位置で溶着する。最初にメイン誘電体基板(例えば固体発泡体)を切り抜く必要はない。
【0072】
従って、本発明による好ましい一実施形態を構成するチップレスRFIDタグは、下から上へ順に、
- 任意選択であるが好ましい導体層で構成され、
- その上に、任意選択であるが好ましい誘電体フィルムが載置され、
- その上に、メイン誘電体基板が載置され(例えば、固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)、
- その上に、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが配置された誘電体フィルムが載置され、上記導体パターンは、タグの上側に、又は有利には上記メイン誘電体基板と上記誘電体フィルムの間に、位置し得る。
【0073】
上述のように、本発明はデバイス、好ましくは共振特性を有するタグに関する。本発明による特定の一実施形態では、特許請求の範囲に記載のタグは、特許請求の範囲に記載の誘電体基板と特許請求の範囲に記載の導体層で構成される。
【0074】
タグ
例として、本発明による(個別化された)チップレスRFIDタグは、以下の特徴を有する。
・ タグの幾何形状を特徴付ける1つ又は一式の導体パターン。好ましくは少なくとも1つ又は複数又は全てのパターンが非対称である、
・ 少なくとも1つの共振周波数frを含んだ識別子と、好ましくは、少なくとも1つの品質係数Qを有する、
・ 帯域幅が500MHz以上、好ましくは3.1~10.6GHzであることを特徴とする超広帯域(UWB)の周波数帯域で共振する、
・ グランドプレーン有り、又は無し、
・ 偏波、又は好ましくは偏波を解消する。
【0075】
タグ-幾何形状
特許請求の範囲に記載の方法によって符号化の可能性がもたらされたことで、本出願人はまた、一連の新しいタグファミリを開発した。従って、特定の一実施形態では、タグは好ましくは、少なくとも1つのパターン、好ましくは少なくとも2つの非対称のパターンで構成される。一例として、図1は、本発明の範囲内で特に開発されたグランドプレーン有りのタグを示している。この図1は、それぞれ6つの共振器を備える4つのタグを示している。タグの性能を最適化するために、2つの共振器ファミリ(濃い灰色のダブルL字形と、薄い灰色の傾斜45度のダブル平行ライン)が使用されている。各タグの左下に、それぞれの共振周波数が位置する周波数帯域が示されている。各タグの様々な幾何形状は、特許請求の範囲に記載の方法に関連して開発されたものである。
【0076】
タグ-識別子
本発明によるタグは好ましくは、少なくとも1つの共振周波数frを含んだ識別子と、好ましくは、少なくとも1つの品質係数Qとを有することを特徴とする。
【0077】
共振タグ
従って、本発明によるタグは、帯域幅が500MHz以上、好ましくは3.1~10.6GHzであることを特徴とする超広帯域(UWB)の周波数帯域で共振する。
【0078】
パッシブタグ
導入部分で既に説明したように、本願のタイプのチップレス無線周波数識別デバイスは、集積回路も、トランジスタやコイル、コンデンサ、アンテナなどのディスクリート電子部品も、必要としない。従って、このタイプのデバイスは、ローカル電源(バッテリなど)を組み込む必要がないため、受動的な動作を特徴とする。
【0079】
なお、、「デバイス」とは、パッケージ、文書、タグ、特にセキュリティ文書、或いは、チップレスRFIDによる識別標示を実行できる、又は識別標示を担持する保持体を配置可能な、全ゆる物体及び/又は生物を意味する。
【0080】
グランドプレーン有り又は無しのタグ
本発明によるタグは、グランドプレーンを有すること、又は有しないことを、特徴とすることができる。最も簡単に表現すると、本発明によるグランドプレーン有りのタグは、2つの金属層の間に挟まれた、厚さが典型的には3mmよりも小さく、典型的には100μmよりも大きい平坦な誘電体基板を特徴とする構造として定義される(上記2つの金属層は、上記誘電体基板上に載置された導体パターンの層と、上記誘電体基板の下に位置するもう一方の導体層である)。
【0081】
例として、上記基板の下に位置する導体層の厚さは、有利には、以下の厚さの中から選択される。
【0082】
本発明による特定の一実施形態では、上記基板の下に位置する導体層は、導体材料の厚さが100nmよりも大きいことを特徴とする。例えば、150nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、200nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、250nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、300nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、400nmよりも大きい厚さが使用される。例えば、500nmよりも大きい厚さが使用される。
【0083】
本発明による特定の一実施形態では、上記基板の下に位置する導体層は、導体材料の厚さが20μmよりも小さく、例えば10μmよりも小さく、更には2μmよりも小さいことを特徴とする。例えば、1.5μmよりも小さい厚さが使用される。例えば、1μmよりも小さい厚さが使用される。
【0084】
本発明による特定の一実施形態では、層の合計(導体パターン-誘電体-導体層)は、例えば、0.1~3mmの厚さとされる。
【0085】
タグに関しては、グランドプレーンの有無に拘らず、当技術分野において、「グランドプレーン」という用語はしばしば、好ましくは基板の表面に完全に対応する(基板の下に位置する)金属層に関連付けられる。
【0086】
本発明による特定の一実施形態では、上記グランドプレーンを構成する導体層の材料は、グラファイト、銅、ニッケル、銀、アルミニウム、白金及び/又はそれらの組み合わせから成る群から選択された材料、好ましくは銅及び/又は銀及び/又はアルミニウムを含む(又は好ましくはそれらで構成される)。本発明による特定の一実施形態では、上記グランドプレーンを構成する導体層の材料は、上記導体パターンの材料と異なる、又は同一であり、好ましくは同一である。
【0087】
第2の金属層(パターン)は、タグのパターンに対応する特定の幾何形状(図1に示されているパターンのような形状)を表すように作成される。従って、グランドプレーン有りのタグは2つの金属層を備える構造であるが、グランドプレーン無しのタグは単一の層、即ちタグのパターンを含む層のみを備える。グランドプレーン有りのタグは、そのグランドプレーン側を物体上に配置すると、その物体から電磁気的に絶縁されるという利点を有する。この場合に、タグに対する物体の影響は、グランドプレーン無しのタグに比べて少ない。
【0088】
なお、グランドプレーン有りのタグは、上記基板が間に挟まれた2つの金属層を含んだタグの特定の事例である。実際に、この好ましい構成では、2つの層のうちの一方が好ましくは全体的に金属化される。ただし、中間的なタグ構成が可能である。例えば、特定の動作を実現できるように、グランドプレーン側に開口が作成された(金属区画の除去)、グランドプレーン有りのタグが挙げられる。これにより、例えば、新たな共振を実現すること、又は第1の導体層上の既存の共振を修正することが可能になる。上記開口はまた、第2の金属層にある別々の共振器の絶縁に有利に働き、従ってこれらの共振の減結合を向上させ、これによりタグ読取性能の改善を可能にする効果を有する。
【0089】
グランドプレーンの導体材料の層は、任意の適当な付着方法によって、好ましくは誘電体基板上に直に付着され得る。例として、導体パターンを付着する上述の付着方法が繰り返される。
【0090】
なお、中間に誘電体層を含んだ2つの導体層を備えるチップレスタグは、コスト上の理由から、導体層を例えば折り曲げるなどして基板に巻き付けることにより作成することもできる。この場合、導体層は、基板の表面の少なくとも2倍の大きさの表面、典型的には同じ長さで幅が少なくとも2倍の表面を有し得る。この表面は、導体パターン及び/又はグランドプレーンを含んでおり、作成されると、有利には、誘電体層の両面に1回の操作で転写される。これは、上記導体層を折り曲げて一周させることで可能になる。従来の手法(2つの金属層を誘電体の各面に1つずつ転写する)との唯一の違いは、金属層が誘電体の一方の面にあるか、両面にあるかである。この部分が金属化されない場合は、従来の手法と比べて大きな違いはない。しかしながら、この部分(誘電体の片面又は両面)の金属化が可能であれば、より複雑な構造を作成することができるようになり、共振器の金属壁の空洞と同様に、品質係数を向上させることが可能になる。従って、必要な製造段階が少ないことから製造も容易なこの構造を、当業者は利用することができる。実際、この後者の手法は、単一の導体媒体を1つ印刷する、同様に単一の支持体を1つ接着する、といった技術的なステップの数を減少する。
【0091】
本発明による特定の一応用形態では、誘電体基板(グランドプレーン有り又は無し)は、特性が本発明の特許請求の範囲に記載のものに対応する、断熱又は遮音に使用される市販の材料の中から選択される。これらの市販の材料に、所望の導体パターンが直に配置される。
【0092】
従って、本発明は、グランドプレーン無しのタグとグランドプレーン有りのタグの両方に、有利に適用される。
【0093】
偏波解消タグ
本発明によるタグは好ましくは偏波性又は好ましくは偏波解消性であることを特徴とする。偏波解消タグは、入射波に対して垂直の向きの偏波を有する波を放出できるタグである(次に交差偏波について説明する)。
【0094】
本発明による特定の一実施形態では、チップレスRFIDタグは、誘電体基板の上面の全体と、導体材料の層から成るパターンで覆われた誘電体基板の上面との比が、2よりも大きい。
【0095】
本発明による特定の一実施形態では、グランドプレーン有りのチップレスRFIDタグは、導体材料の層で覆われた誘電体基板の下面と、誘電体基板の下面の全体との比が、0.9よりも大きい。
【0096】
リーダ
例として、本発明の範囲内で、このリーダは、電磁波を送信/受信するリーダである。上記リーダの動作原理のベースは、リーダが識別デバイス(例えば、タグ)の方向に電磁信号を発し、その信号を、上記識別デバイスがその幾何形状(及び例えば、その固有の共振特性)に応じて反射し、リーダはその反射信号を捕らえると、その受信信号を処理し(特に復号段階で)、それによって上記デバイス(例えば、タグ)に含まれている情報にアクセスできる、というものである。
【0097】
従って、一般に、本発明によるチップレス無線周波数識別デバイスは、RFIDシステムの一部であり、上記RFIDシステムはまた、1つ又は複数のRFIDリーダを含む。上記RFIDリーダには、監視コンピュータに、又は例えば既存のデータベースとのリンクの形成などが可能な処理を実行する電子基板に、接続されているものも、そうでないものもある。従って、上記リーダは、RFIDタグが取り付けられた物体を、そのRFIDタグを用いて識別するために使用される。このチップレスRFIDタグは、特定の電磁的シグネチャを備えた静的なレーダターゲットに相当する。従って、本発明の特定の一実施形態では、チップレスRFIDリーダは、動作の点においてレーダ、例えば航空機のシグネチャを一定の規模と出力の比率の範囲内で検出する航空レーダに相当する。例として、チップレスRFIDタグは、特定のタイミングシグネチャ又は周波数シグネチャを有するレーダターゲットと見なされ得る。RFIDタグから発され返ってくる信号の受信/識別に適した任意のタイプのレーダが、本発明の範囲内で有利に使用され得る。例として、インパルスレーダが挙げられるが、これに限定されることはない。
【0098】
本発明によるチップレス無線周波数識別デバイスによって得られる符号化容量は、現行の規格を満たす。つまり、得られたタグは、少なくとも40ビットの情報を有することが可能であり、これはEAN13タイプのバーコードに対応するからである。例として、クレジットカード判に対して40ビット[即ち、40/(85.60×53.98mm)=40/46ビット/cm2]よりも大きい値が得られた。従って、本発明による特定の一実施形態では、特許請求の範囲に記載のデバイスは、符号化容量値が0.85ビット/cm2よりも大きく、例えば1ビット/cm2よりも大きく、2ビット/cm2よりも大きく、更には5ビット/cm2よりも大きいことを特徴とする。
【0099】
本発明の一変形形態では、特許請求の範囲に記載のタグは、任意のタイプの物体及び/又は生物(例えば、動物や人間など)に配置され得る。本発明の一変形形態では、タグが取り付けられる(好ましくは接着される)物体は、広範囲の材料から選択され得る。そのうちの非限定的な例としては、金属や紙、布地、例えばメタクリル共重合体樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はポリ塩化ビニルなどのプラスチック、更には木材や合板などのセルロース系材料、又はガラスやセラミックなどの結晶性材料、例えば牛乳パックなどの、上記構成要素の1つ又は複数を含んだ複合材料などが挙げられる。
【0100】
本発明の一変形形態では、特許請求の範囲に記載のタグの誘電体基板は、請求項1~13のうちの1つ又は複数の要件を満たすことを条件として、広範囲の材料から選択され得る。そのうちの非限定的な例としては、紙や布地、例えばメタクリル共重合体樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はポリ塩化ビニルなどのプラスチック、更には木材や合板などのセルロース系材料、又はガラスやセラミックなどの結晶性材料、例えば牛乳パックなどの、上記構成要素の1つ又は複数を含んだ複合材料などが挙げられる。
【0101】
本願では、図面及び/又は様々な実施形態を参照して、様々な技術的特徴及び利点について説明している。当業者であれば理解するであろうが、或る特定の実施形態の技術的特徴であっても、実際には別の実施形態の特徴と組み合わせることができる。ただし、それと反対の指示が明示的にある場合、又は、上記の各特徴が両立しないことが明らかでない場合、又は、その組み合わせが、本願に記載の技術的問題のうちの少なくとも1つに対する解決策を提供しない場合を除く。更に、或る特定の実施形態に記載の技術的特徴を、その実施形態の他の特徴から切り離すこともできる。ただし、それと反対の指示が明示的にある場合を除く。
【0102】
本発明により、特許請求の範囲に記載の本発明の適用範囲から逸脱することなく、他の多くの特定の形態の実施形態が可能になることが当業者には明らかであろう。従って、本発明の実施形態は、例示のためのものと見なされなければならないが、添付の特許請求の範囲によって定義される領域内で修正可能であり、本発明は上記の細部に限定されてはならない。
【0103】
実施例
パッケージ材料-特徴
・ 高分子フィルム 厚さ1mm
・ かさ密度:60kg/m3
・ 測定による比誘電率:1.036(3.21GHz時)、1.035(3.89GHz時)
・ 測定による損失正接:1.9×10-5(3.21GHz時)、3.7×10-5(3.89GHz時)。
【0104】
上記の特性を有する既製のパッケージ材料を誘電体基板として使用して、以下の特徴を有するグランドプレーン有りのタグを作成した。
- 基板の表面全体の下に、厚さ10μmのアルミニウム層、
- アルミニウム製で厚さ10μmの、図1と同様の導体パターン。
【0105】
これらのタグは、様々な識別子と、より大きな品質係数を有することをを特徴とする。
【0106】
本発明による特定の一実施形態では、チップレスRFIDタグは、順に、
- 厚さが200nm~20μmであり、例えば10μmよりも小さく、更には2μmよりも小さい、任意選択だが好ましい導体層で構成され、
- その上に、厚さ5~100μmの、任意選択であるが好ましい誘電体フィルムが載置され、
- その上に、厚さ0.5~3mmのメイン誘電体基板(例えば固体発泡体、発泡ボード、段ボール、セル構造ボード及び/又は布地、好ましくは固体発泡体)が載置され、
- その上に、厚さ5~100μmの誘電体フィルムが載置される。そこには、厚さが200nm~20μmであり、例えば10μmよりも小さく、更には2μmよりも小さい、導体材料の層から成る1つ又は複数のパターンが配置されている。
【0107】
このRFIDタグはまた、有利には、全ての層(当然ながら導体パターンを除く)の幅及び長さの寸法が、クレジットカード又は銀行カードの幅及び長さの寸法に近いことを特徴とする。例として、これらの寸法は、好ましくは、長さが86±2mmであり、幅が54±2mmである(より正確な好ましい寸法は、85.725mm×53.975mmである)。
図1
【国際調査報告】