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特表2023-515423抗IL-4R抗体医薬組成物及びその使用
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  • 特表-抗IL-4R抗体医薬組成物及びその使用 図1
  • 特表-抗IL-4R抗体医薬組成物及びその使用 図2
  • 特表-抗IL-4R抗体医薬組成物及びその使用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】抗IL-4R抗体医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230406BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230406BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230406BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230406BHJP
【FI】
A61K39/395 D ZNA
A61P37/02
A61P11/06
A61P11/02
A61P37/08
A61P17/00
A61P1/04
A61P11/00
A61P19/02
A61P29/00
A61P7/06
A61P27/02
A61P31/06
A61P13/12
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/19
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549280
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2021076854
(87)【国際公開番号】W WO2021164728
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】202010107765.0
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110145455.2
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】呉 ▲ティン▼▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】顔 貞
(72)【発明者】
【氏名】劉 洵
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC32
4C076DD09E
4C076DD22G
4C076DD23G
4C076DD24G
4C076DD41G
4C076DD41Z
4C076DD51G
4C076DD60G
4C076DD60Z
4C076DD67Q
4C076EE23E
4C076FF15
4C076FF61
4C076FF63
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE05
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA50
4H045DA76
(57)【要約】
本開示は、抗IL-4R抗体医薬組成物及びその使用に関する。具体的に、本開示は、緩衝液における抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物に関する。これ以外、当該医薬組成物は、糖、非イオン性界面活性剤及び粘度調整剤を更に含む。本開示における医薬組成物は、良好な安定性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片と、緩衝剤とを含み、前記緩衝剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝剤であり、前記緩衝剤のpHは、4.5~6.0であり、好ましくは4.5~5.5である医薬組成物。
【請求項2】
前記ヒスチジン-酢酸緩衝剤の濃度は、10 mM~60 mMであり、好ましくは10 mM~30 mMである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度は100 mg/mL以上であり、好ましくは100 mg/mL~200 mg/mLであり、好ましくは100 mg/mL~180 mg/mLであり、より好ましくは100 mg/mL~150 mg/mLである請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
粘度調整剤を更に含み、前記粘度調整剤は、MgCl2、CaCl2、NaF、NaSCN、KCl、CH3COONa、Na2SO4、NaI、アルギニン、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン及びリジンから選択され、好ましくはMgCl2、ヒスチジン及びアルギニン塩酸塩から選択される請求項1~3の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記粘度調整剤の濃度は5 mM~220 mMであり、好ましくは5 mM~148 mMであり、より好ましくは、前記粘度調整剤は、
i)5 mM~220 mMのアルギニン塩酸塩、
ii)5 mM~100 mMのヒスチジン、又は
iii)5 mM~90 mMのMgCl2である、
請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度は100 mg/mL~200 mg/mLであり、好ましくは120 mg/mL~150 mg/mLであり、且つ前記粘度調整剤は、50 mM~90 mMのMgCl2、50 mM~100 mMのヒスチジン、及び10 mM~200 mM、好ましくは50 mM~180 mMのアルギニン塩酸塩から選択される請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度は100 mg/mL~140 mg/mLであり、好ましくは100 mg/mL~120 mg/mLであり、且つ前記粘度調整剤は、5 mM~50 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2から選択され、好ましくは10 mM~40 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2であり、最も好ましくは30 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2である請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
界面活性剤を更に含み、好ましくはポリソルベートであり、最も好ましくはポリソルベート80又はポリソルベート20である請求項1~7の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤の濃度は0.1 mg/mL~1.2 mg/mLであり、好ましくは0.4 mg/mL~1.0 mg/mLであり、最も好ましくは0.8 mg/mLである請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
安定剤を更に含み、前記安定剤は、トレハロース又はスクロースが好ましく、スクロースがより好ましい請求項1~5及び7~9の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記安定剤の濃度は20 mg/mL~70 mg/mLであり、好ましくは40 mg/mL~60 mg/mLであり、最も好ましくは58 mg/mLである請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
(a)100 mg/mL~150 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)80 mM~148 mMの粘度調整剤、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、
を含み、又は、
(a)100 mg/mL~120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)5 mM~50 mMのヒスチジン、(d)0.4 mg/mL~1.0 mg/mLのポリソルベート80及び(e)50 mg/mL~60 mg/mLのスクロース、
を含む医薬組成物。
【請求項13】
(a)100 mg/mL~140 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)10 mM~40 mMの粘度調整剤、(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(e)40 mg/mL~70 mg/mLのスクロース、
又は、
(a)100 mg/mL~200 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)40 mM~220 mMの粘度調整剤、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、
を含み、
そのうち、前記粘度調整剤は、MgCl2、CaCl2、NaF、NaSCN、KCl、CH3COONa、Na2SO4、NaI、アルギニン、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン及びリジンから選択され、
好ましくは、
(a)100 mg/mL~140 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)10 mM~40 mMの粘度調整剤、(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(e)40 mg/mL~70 mg/mLのスクロース(そのうち、前記粘度調整剤は、ヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2である)、又は、
(a)100 mg/mL~180 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)40 mM~90 mMのMgCl2、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、又は
(a)100 mg/mL~180 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)50 mM~100 mMのヒスチジン、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、又は、
(a)100 mg/mL~180 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)50 mM~200 mMのアルギニン塩酸塩、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、
を含む医薬組成物。
【請求項14】
(a)100 mg/mL~120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である20 mM~60 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80及び(d)40 mg/mL~70 mg/mLのスクロース、
を含み、好ましくは、
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが5.0である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.8 mg/mLのポリソルベート80及び(d)58 mg/mLのスクロース、
を含む医薬組成物。
【請求項15】
(a)約150 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが約5.0である約20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.8 mg/mLのポリソルベート80及び(d)約120 mMのアルギニン塩酸塩、
を含む医薬組成物。
【請求項16】
前記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片は、
(i)それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:5に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3のような重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:38、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:40に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(ii)それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:5に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:8に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(iii)それぞれSEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12及びSEQ ID NO:13に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15及びSEQ ID NO:16に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、又は
(iv)それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:5に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:42、SEQ ID NO:39及びSEQ ID NO:8に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、
を含み、好ましくは、
それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:5に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:38、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:40に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、
を含み、
より好ましくは、前記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片は、以下の何れか一項に示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(v)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:1に示され、又はSEQ ID NO:1と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:2に示され、又はSEQ ID NO:2と少なくとも90%の同一性を有し、
(vi)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:9に示され、又はSEQ ID NO:9と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:10に示され、又はSEQ ID NO:10と少なくとも90%の同一性を有し、
(vii)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:25、26、27、43又は47に示され、又はSEQ ID NO:25、26、27、43又は47と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:28、29、30、37又は41に示され、又はSEQ ID NO:28、29、30、37又は41と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(viii)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:31、32又は33に示され、又はSEQ ID NO:31、32又は33と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:34、35又は36に示され、又はSEQ ID NO:34、35又は36と少なくとも90%の同一性を有し、
最も好ましくは、前記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片は、以下の何れか一項に示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(IX)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:43に示され、又はSEQ ID NO:43と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:37に示され、又はSEQ ID NO:37と少なくとも90%の同一性を有し、
(X)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:43に示され、又はSEQ ID NO:43と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:41に示され、又はSEQ ID NO:41と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(XI)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:47に示され、又はSEQ ID NO:47と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:41に示され、又はSEQ ID NO:41と少なくとも90%の同一性を有する、
請求項1~15の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片は、定常領域を含み、好ましくは、前記抗IL-4R抗体は、
SEQ ID NO:17に示される重鎖、及びSEQ ID NO:18に示される軽鎖、又は
SEQ ID NO:19に示される重鎖、及びSEQ ID NO:20に示される軽鎖、又は
SEQ ID NO:44に示される重鎖、及びSEQ ID NO:45に示される軽鎖、又は
SEQ ID NO:44に示される重鎖、及びSEQ ID NO:46に示される軽鎖、又は
SEQ ID NO:48に示される重鎖、及びSEQ ID NO:46に示される軽鎖、
を含み、
より好ましくは、
前記抗IL-4R抗体は、SEQ ID NO:44に示される重鎖、及びSEQ ID NO:45に示される軽鎖を含む、
請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の原液を緩衝剤で置換する工程を含む、請求項1~17の何れか一項に記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項19】
抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤であって、請求項1~17の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥することで得られる、凍結乾燥製剤。
【請求項20】
抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む再溶解溶液であって、請求項19に記載の凍結乾燥製剤を再溶解することで得られ、好ましくは、
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片と、(b)50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤と、(c)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(d)50 mg/mLのスクロースとを含み、且つ医薬組成物のpHが約5.3であり、又は
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片と、(b)50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤と、(c)0.8 mg/mLのポリソルベート80と、(d)50 mg/mLのスクロースとを含み、且つ医薬組成物のpHが約5.3であり、又は
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片と、(b)20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤と、(c)0.8 mg/mLのポリソルベート80と、(d)120 mMのアルギニン塩酸塩とを含み、且つ医薬組成物のpHが約5.3である、
ことを特徴とする再溶解溶液。
【請求項21】
請求項1~17の何れか一項に記載の医薬組成物、又は請求項19に記載の凍結乾燥製剤、又は請求項20に記載の再溶解溶液が収容されている容器を含む製品。
【請求項22】
免疫性疾患又は病症を治療又は予防する方法であって、被験者に治療有効量の請求項1~17の何れか一項に記載の医薬組成物、又は請求項19に記載の凍結乾燥製剤、又は請求項20に記載の再溶解溶液を投与することを含み、好ましくは、前記免疫性疾患又は病症は、IL-4R媒介性疾患又は病症であり、より好ましくは、前記免疫性疾患又は病症は、喘息、鼻ポリープ、慢性副鼻腔炎、アレルギー性皮膚病、好酸球性食道炎、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、関節炎、炎症性疾患、アレルギー反応、自己免疫リンパ組織増殖性症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核病及び腎臓病から選択され、最も好ましくは、前記免疫性疾患又は病症は、喘息又はアレルギー性皮膚病である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、薬物製剤分野に属し、具体的に、抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、及び免疫性疾患を治療する薬剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ここでの記載は、必ずしも従来技術を構成するものではなく、本開示に関連する背景情報のみを提供する。
【0003】
アレルギー性疾患は、重篤な医学的病症であり、生命を脅かさないアレルギー反応、及び生命を脅かせるアレルギー性疾患を含む。現在、アレルギーを治療する方法は、アレルゲンの回避、症状に対する薬理学的治療、及びアレルゲン特異的免疫療法による予防を含む。
【0004】
インターロイキン-4(IL-4であり、B細胞刺激因子又はBSF-1とも呼ばれる)は、低濃度の抗表面免疫グロブリン抗体に応答してB細胞の増殖を刺激する能力によって特徴付けられる。IL-4は、T細胞、肥満細胞、顆粒球、巨核球及び赤血球などの増殖を刺激することを含め、広範囲の生物活性を有することが証明されている。IL-4は、静止B細胞におけるMHC-IIの発現を誘導すると共に、活性化されたB細胞によって免疫グロブリンIgE及びIgG1の分泌を増強する。
【0005】
IL-4の生物活性は、特定の細胞表面IL-4受容体(IL-4R)によって媒介される。IL-4受容体(IL-4R)は、802個のアミノ酸残基で構成され、IL-4Rは、T細胞、B細胞、胸腺細胞、骨髄細胞、マクロファージ細胞及び肥満細胞の表面の何れにも発現される。IL-4Rのα鎖は、同時に、IL-13受容体(IL-13R)の構成部分でもあるため、IL-4Rは、IL-13の生物活性を媒介することもできる。被験者のアレルゲンとの接触又はアレルギー症状の出現の前、最中又は後に、新規の療法として、IL-4R拮抗薬を含む薬剤及びその組成物を投与することができる。
【0006】
タンパク質濃度の高い製剤は、タンパク質の物理的及び化学的安定性に対して挑戦を突き付けるとともに、タンパク質製剤の調製、貯蔵及び送達において難題をもたらす。問題の一つとしては、操作及び/又は貯蔵中に、タンパク質が粒子を形成しすいため、更なる加工中に操作が困難になる。
【0007】
現在、抗IL-4R抗体及びその製剤に関連する既存の特許出願は、WO2010053751、WO2001092340、WO2008054606、WO2014031610、CN106604744Aなどを含む。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
タンパク質製剤は、製剤の調製から、薬剤の患者への送達まで、タンパク質製剤の増加された粘度が何れも悪影響を与えることを考慮したので、タンパク質製剤の調製、貯蔵及び投与に適する適当な低粘度を有する比較的高い濃度のタンパク質製剤を開発する必要がある。
【0009】
本開示は、抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片と、緩衝剤とを含む医薬組成物を提供し、上記緩衝剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝剤から選択され、上記医薬組成物のpHは4.5~6.0であり、好ましくは約4.5~5.5であり、最も好ましくは約5.0である。
【0010】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、前記緩衝剤のpHが4.8~5.5であり、好ましくは約5.0である。
【0011】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記緩衝剤のpH値が約4.5~6.0であり、好ましくは4.5~5.5であり、好ましくは約4.6~5.5であり、好ましくは約4.7~5.5であり、好ましくは約4.8~5.5、4.9~5.5であり、好ましくは約5.0~5.5であり、好ましくは約5.2~5.5であり、又は好ましくは約5.3~5.5であり、最も好ましくは5.0であり、非限定的な実施例は、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.0、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記ヒスチジン-酢酸緩衝剤の濃度が10 mM~60 mMであり、非限定的な実施例は、10 mM~30 mM、10 mM~40 mM、20 mM~50 mMを含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記緩衝剤の濃度が約10 mM~50 mMであり、好ましくは約10 mM~30 mMであり、非限定的な実施例は、10 mM、12 mM、14 mM、16 mM、18 mM、20 mM、30 mM、32 mM、34 mM、36 mM、38 mM、40 mM、42 mM、44 mM、46 mM、48 mM及び50 mMを含み、最も好ましくは約20 mM又は50 mMである。
【0014】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~200 mg/mLであり、非限定的な実施例は、110 mg/mL、120 mg/mL、130 mg/mL、140 mg/mL、150 mg/mL、160 mg/mL、170 mg/mL、180 mg/mL、190 mg/mL、200 mg/mL、及びこれらのポイント値間の任意の範囲を含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~180 mg/mLである。
【0016】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が約150 mg/mLである。
【0017】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL以上であり、好ましくは100 mg/mL~150 mg/mLであり、最も好ましくは120 mg/mLである。
【0018】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~140 mg/mLである。
【0019】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~120 mg/mLであり、非限定的な実施例は、102 mg/mL、104 mg/mL、106 mg/mL、108 mg/mL、110 mg/mL、112 mg/mL、114 mg/mL、116 mg/mL、118 mg/mL、120 mg/mLを含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、粘度調整剤を更に含み、前記粘度調整剤は、MgCl2、CaCl2、NaF、NaSCN、KCl、CH3COONa、Na2SO4、NaI、Arg-HCl、アルギニン、ヒスチジン及びリジンから選択され、好ましくはMgCl2、ヒスチジン及びアルギニン塩酸塩(Arg-HCl)から選択される。
【0021】
幾つかの実施例において、医薬組成物は、粘度調整剤を含む。幾つかの場合に、抗体の濃度が高いため、抗体配合物は、高い粘度を有する。幾つかの実施例において、粘度調整剤は、リジン、アルギニン又はヒスチジンである。幾つかの実施例において、粘度調整剤はアルギニンである。幾つかの実施例において、粘度調整剤は、塩形態、例えばアルギニン、リジン又はヒスチジンの塩を含む。幾つかの実施例において、粘度調整剤は、アミノ酸、例えばL型-アミノ酸、例えばL-アルギニン、L-リジン又はL-ヒスチジンである。幾つかの実施形態において、上記粘度調整剤は、MgCl2、CaCl2、NaF、NaSCN、KCl、CH3COONa、Na2SO4、NaI、Arg-HCl、ヒスチジン及びリジンから選択される。幾つかの実施形態において、上記粘度調整剤は、MgCl2、ヒスチジン及びArg-HClから選択される。
【0022】
幾つかの実施例において、粘度調整剤の濃度は、約5 mM~約220 mMである。非限定的な実施例は、5 mM、10 mM、20 mM、30 mM、40 mM、50 mM、60 mM、70 mM、80 mM、90 mM、100 mM、110 mM、120 mM、130 mM、140 mM、150 mM、160 mM、170 mM、180 mM、190 mM、200 mM、210 mM又は220 mM、及びこれらのポイント値間の任意の範囲を含むが、これらに限定されない。
【0023】
幾つかの実施例において、粘度調整剤の濃度は、約10 mM~約220 mMである。幾つかの実施例において、粘度調整剤の濃度は、約50 mM~約180 mMである。
【0024】
幾つかの実施例において、粘度調整剤の濃度は、約5 mM~約148 mMである。
【0025】
幾つかの実施例において、粘度調整剤の濃度は、約50 mM~約120 mMである。
【0026】
幾つかの実施例において、粘度調整剤の濃度は、約5 mM~約50 mMである。幾つかの実施例において、粘度調整剤の濃度は、約10 mM~約40 mMである。
【0027】
幾つかの実施形態において、医薬組成物の粘度は、40 mPa.s未満であり、30 mPa.s未満である。
【0028】
幾つかの実施形態において、医薬組成物の粘度は、20 mPa.s未満である。
【0029】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記粘度調整剤の濃度が50 mM~148 mMであり、好ましくは85 mM~120 mMである。
【0030】
幾つかの実施形態において、上記粘度調整剤は、
i)5 mM~220 mMのアルギニン塩酸塩、
ii)5 mM~100 mMのヒスチジン、又は
iii)5 mM~90 mMのMgCl2である。
【0031】
幾つかの実施形態において、上記粘度調整剤は、
i)10 mM~220 mMのアルギニン塩酸塩、
ii)10 mM~100 mMのヒスチジン、又は
iii)10 mM~90 mMのMgCl2である。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記粘度調整剤は、5 mM~220 mMのアルギニン塩酸塩であり、非限定的な実施例は、10 mM、20 mM、30 mM、40 mM、50 mM、60 mM、70 mM、80 mM、90 mM、100 mM、110 mM、120 mM、130 mM、140 mM、150 mM、160 mM、170 mM、180 mM、190 mM、200 mM、210 mM又は220 mM、及びこれらのポイント値間の任意の範囲を含むが、これらに限定されない。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記粘度調整剤は、5 mM~100 mMのヒスチジンであり、非限定的な実施例は、10 mM、20 mM、30 mM、40 mM、50 mM、60 mM、70 mM、80 mM、90 mM又は100 mM、及びこれらのポイント値間の任意の範囲である。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記粘度調整剤は、10 mM~90 mMのMgCl2であり、非限制性実施例は、10 mM、20 mM、30 mM、40 mM、50 mM、60 mM、70 mM、80 mM又は90 mM、及びこれらのポイント値間の任意の範囲である。
【0035】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~200 mg/mLであり、且つ上記粘度調整剤が、MgCl2、ヒスチジン及びアルギニン塩酸塩から選択される。
【0036】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~200 mg/mLである場合、上記粘度調整剤が、50 mM~200 mMのMgCl2、ヒスチジン及びアルギニン塩酸塩から選択される。
【0037】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~200 mg/mLである場合、上記粘度調整剤が、50 mM~90 mMのMgCl2、50 mM~100 mMのヒスチジン、及び10 mM~200 mM、好ましく50 mM~180 mMのアルギニン塩酸塩から選択される。
【0038】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が120 mg/mL~150 mg/mLであり、且つ上記粘度調整剤が、50 mM~90 mMのMgCl2、50 mM~100 mMのヒスチジン及び50 mM~120 mMのアルギニン塩酸塩から選択される。
【0039】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~140 mg/mLであり、且つ上記粘度調整剤が、5 mM~50 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2から選択され、好ましくは10 mM~40 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2である。
【0040】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~140 mg/mLであり、且つ上記粘度調整剤が、30 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2である。
【0041】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の濃度が100 mg/mL~120 mg/mLであり、且つ上記粘度調整剤が、5 mM~50 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2から選択され、好ましくは10 mM~40 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2である。
【0042】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記粘度調整剤が、50 mM~90 mMのMgCl2、85 mM~100 mMのヒスチジン及び90 mM~120 mMのアルギニン塩酸塩から選択される。
【0043】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記粘度調整剤が、5 mM~50 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸又はMgCl2から選択され、好ましくは10 mM~40 mMのヒスチジン、アルギニン塩酸又はMgCl2である。
【0044】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、界面活性剤を更に含み、好ましくはポリソルベート80である。
【0045】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記界面活性剤の濃度が0.1 mg/mL~1.2 mg/mLであり、好ましくは0.8 mg/mLである。
【0046】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、界面活性剤の濃度が約0.1 mg/mL~1.0 mg/mLであり、好ましくは0.2 mg/mL~0.8 mg/mLであり、より好ましくは0.4 mg/mL~0.8 mg/mLであり、非限定的な実施例は、0.2 mg/mL、0.3 mg/mL、0.4 mg/mL、0.45 mg/mL、0.5 mg/mL、0.55 mg/mL、0.6 mg/mL、0.7 mg/mL、0.8 mg/mL、0.9 mg/mL、1.0 mg/mL、及びこれらのポイント値間の任意の範囲を含むが、これらに限定されず、最も好ましくは0.8 mg/mLである。
【0047】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~200 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~6.0である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)50 mM~220 mMの粘度調整剤、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80を含み、そのうち、上記粘度調整剤は、MgCl2、CaCl2、NaF、NaSCN、KCl、CH3COONa、Na2SO4、NaI、アルギニン、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン及びリジンから選択され、好ましくは、上記粘度調整剤は、MgCl2、ヒスチジン及びアルギニン塩酸塩から選択される。
【0048】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は安定剤を更に含み、上記安定剤は、トレハロース又はスクロースから選択されることが好ましく、スクロースが好ましい。
【0049】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記安定剤の濃度が20 mg/mL~70 mg/mLであり、好ましくは40 mg/mL~60 mg/mLであり、最も好ましくは58 mg/mLである。
【0050】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記安定剤の濃度が40 mg/mL~70 mg/mLである。
【0051】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、糖の濃度が約50 mg/mL~約60 mg/mLであり、好ましくは55 mg/mL~60 mg/mLであり、非限定的な実施例は、50 mg/mL、51 mg/mL、52 mg/mL、53 mg/mL、54 mg/mL、55 mg/mL、56 mg/mL、57mg/m、58/mL、59 mg/mL及び60 mg/mLを含む。
【0052】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~150 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)80 mM~148 mM、又は5 mM~50 mMの粘度調整剤、(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80及び(e)40 mg/mL~60 mg/mLのスクロースを含み、上記医薬組成物の粘度が20 mPa.s以下である。
【0053】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~150 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)80 mM~148 mMの粘度調整剤、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、
を含む。
【0054】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)10 mM~40 mMのヒスチジン、(d)0.4 mg/mL~1.0 mg/mLのポリソルベート80及び(e)50 mg/mL~60 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0055】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~140 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)10 mM~40 mMの粘度調整剤、(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(e)40 mg/mL~70 mg/mLのスクロース、
又は、
(a)100 mg/mL~200 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)40 mM~220 mMの粘度調整剤、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、
を含み、
そのうち、上記粘度調整剤は、MgCl2、CaCl2、NaF、NaSCN、KCl、CH3COONa、Na2SO4、NaI、アルギニン、アルギニン塩酸塩、ヒスチジン及びリジンから選択される。
【0056】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~140 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)10 mM~40 mMの粘度調整剤、(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(e)40 mg/mL~70 mg/mLのスクロース(そのうち、前記粘度調整剤は、ヒスチジン、アルギニン塩酸塩又はMgCl2である)、又は、
(a)100 mg/mL~180 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)40 mM~90 mMのMgCl2、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、又は
(a)100 mg/mL~180 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)50 mM~100 mMのヒスチジン、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、又は、
(a)100 mg/mL~180 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)50 mM~200 mMのアルギニン塩酸塩、及び(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、
を含む。
【0057】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~140 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)10 mM~40 mMのヒスチジン、(d)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(e)40 mg/mL~70 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0058】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)30 mMのヒスチジン、(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80及び(e)58 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0059】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが約5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)30 mMのヒスチジン、(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80及び(e)58 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0060】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが約5.0である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.8 mg/mLのポリソルベート80及び(d)58 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0061】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)約100 mg/mL~180 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが約4.5~5.5である約10 mM~30 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80及び(d)約90 mM~200 mMのアルギニン塩酸塩、
を含む。
【0062】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)約150 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが約5.0である約20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.8 mg/mLのポリソルベート80及び(d)約120 mMのアルギニン塩酸塩、
を含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~140 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である20 mM~60 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80及び(d)40 mg/mL~70 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~140 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが4.5~5.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80及び(d)40 mg/mL~70 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0065】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)100 mg/mL~120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが5.0~5.5である20 mM~60 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80及び(d)50 mg/mL~60 mg/mLのスクロース、
を含み、好ましくは、
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが5.0~5.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.8 mg/mLのポリソルベート80及び(d)58 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0066】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが約5.0である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.8 mg/mLのポリソルベート80及び(d)58 mg/mLのスクロース、
を含む。
【0067】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片が、以下のように示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(i)それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:5に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:8に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(ii)それぞれSEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12及びSEQ ID NO:13に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15及びSEQ ID NO:16に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(iii)それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:5に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:38、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:40に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、又は
(iv)それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:5に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:42、SEQ ID NO:39及びSEQ ID NO:8に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域。
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片が、
それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:5に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域、及び
それぞれSEQ ID NO:38、SEQ ID NO:7及びSEQ ID NO:40に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、
を含む。
【0068】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片が、以下のように示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(v)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:1に示され、又はSEQ ID NO:1と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:2に示され、又はSEQ ID NO:2と少なくとも90%の同一性を有し、
(vi)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:9に示され、又はSEQ ID NO:9と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:10に示され、又はSEQ ID NO:10と少なくとも90%の同一性を有し、
(vii)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:25、26、27、43又は47に示され、又はSEQ ID NO:25、26、27、43又は47と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:28、29、30、37又は41に示され、又はSEQ ID NO:28、29、30、37又は41と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(viii)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:31、32又は33に示され、又はSEQ ID NO:31、32又は33と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:34、35又は36に示され、又はSEQ ID NO:34、35又は36と少なくとも90%の同一性を有し、
好ましくは、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片は、以下のように示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(IX)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:43に示され、又はSEQ ID NO:43と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:37に示され、又はSEQ ID NO:37と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(X)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:43に示され、又はSEQ ID NO:43と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:41に示され、又はSEQ ID NO:41と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(XI)重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:47に示され、又はSEQ ID NO:47と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:41に示され、又はSEQ ID NO:41と少なくとも90%の同一性を有する。
【0069】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:43に示され、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:37に示される。
【0070】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片が定常領域を含む。幾つかの実施形態において、上記抗IL-4R的抗体又はその抗原結合断片は、ヒトκ、λ鎖又はその変異体の定常領域を含み、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4又はその変異体の重鎖定常領域、例えばIgG4-S228P又はIgG4-234A/235A変異体を更に含む。
【0071】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片が、
SEQ ID NO:17に示される重鎖、及びSEQ ID NO:18に示される軽鎖、又は
SEQ ID NO:19に示される重鎖、及びSEQ ID NO:20に示される軽鎖、又は
SEQ ID NO:44に示される重鎖、及びSEQ ID NO:45に示される軽鎖、又は
SEQ ID NO:44に示される重鎖、及びSEQ ID NO:46に示される軽鎖、又は
SEQ ID NO:48に示される重鎖、及びSEQ ID NO:46に示される軽鎖、
を含む。
【0072】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、上記抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片が、SEQ ID NO:44に示される重鎖、及びSEQ ID NO:45に示される軽鎖を含む。
本願は、重鎖可変領域配列がSEQ ID NO:47に示され、又はSEQ ID NO:47と少なくとも90%の同一性を有し、軽鎖可変領域配列がSEQ ID NO:41に示され、又はSEQ ID NO:41と少なくとも90%の同一性を有する抗IL-4R抗体に更に関する。
【0073】
本願は、SEQ ID NO:48に示される重鎖、及びSEQ ID NO:46に示される軽鎖を含む抗IL-4R抗体に更に関する。
【0074】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが4.5~6.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0075】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mLのhu25G7-A抗体、及び(b)pHが4.5である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤を含む。
【0076】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが4.5である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0077】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mLのhu25G7-A抗体、及び(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤を含む。
【0078】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0079】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが6.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0080】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mLのhu25G7-A抗体、及び(b)pHが5.5である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤を含む。
【0081】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.5である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0082】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100~150 mg/mLのhu25G7-A抗体、及び(b)pHが5.0~5.5である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤を含む。
【0083】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)122 mMのNaClを含む。
【0084】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)85 mMのMgCl2を含む。
【0085】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)148 mMのCaCl2を含む。
【0086】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)124 mMのKClを含む。
【0087】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)86 mMのCH3COONaを含む。
【0088】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)96 mMのNa2SO4を含む。
【0089】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)113 mMのNaIを含む。
【0090】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)74 mMのNaFを含む。
【0091】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)112 mMのNaSCNを含む。
【0092】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)120 mMのArg-HClを含む。
【0093】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)118 mMのリジンを含む。
【0094】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)93 mMのヒスチジンを含む。
【0095】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)207 mMのプロリンを含む。
【0096】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)85 mMのMgCl2を含む。
【0097】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)148 mMのCaCl2を含む。
【0098】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)93 mMのヒスチジンを含む。
【0099】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)50 mMのMgCl2を含む。
【0100】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)90 mMのMgCl2を含む。
【0101】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)90 mMのCaCl2を含む。
【0102】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)148 mMのCaCl2を含む。
【0103】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)90 mMのヒスチジンを含む。
【0104】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)120 mMのArg-HClを含む。
【0105】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)90 mMのMgCl2、及び(d)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0106】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)90 mM のMgCl2、及び(d)1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0107】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)122 mMのNaCl、及び(d)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0108】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)122 mMのNaCl、及び(d)1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0109】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)90 mMのヒスチジン、及び(d)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0110】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)90 mMのヒスチジン、及び(d)1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0111】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)120 mMのArg-HCl、及び(d)0.1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0112】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)120 mMのArg-HCl、及び(d)1 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0113】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約165 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である約20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)約50 mM~90 mMのMgCl2を含む。
【0114】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約165 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である約20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)約50 mM~90 mMのヒスチジンを含む。
【0115】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約165 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である約20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、及び(c)約90 mM~200 mMのArg-HClを含む。
【0116】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)120 mMのArg-HCl、及び(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0117】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが4.8である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)87 mMのヒスチジン、及び(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0118】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)100 mMのヒスチジン、及び(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0119】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)30 mMのヒスチジン、及び(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80、(e)41.8 mg/mLのスクロースを含む。
【0120】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)30 mMのヒスチジン、及び(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80、(e)58 mg/mLのスクロースを含む。
【0121】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.2である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)30 mMのヒスチジン、及び(d)0.4 mg/mLのポリソルベート80、(e)50 mg/mLのスクロースを含む。
【0122】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約5.0である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.8 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)58 mg/mLのスクロースを含む。
【0123】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)120 mg/mL~150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)30 mM~100 mMのヒスチジン、(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80、及び(e)41.8 mg/mL~58m/mLのスクロースを含む。
【0124】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)120 mMのアルギニン塩酸塩、及び(d)0.8 mg/mLのポリソルベート80を含む。
【0125】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mL~140 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが4.5~5.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0126】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mL~140 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが4.8~5.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.4 mg/mL~1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0127】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)100 mg/mL~120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが4.5~5.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.4 mg/mL~0.8 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0128】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約132 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約5.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.4 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0129】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約5.0である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.8 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0130】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約4.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.4 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0131】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約140 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約4.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.8 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0132】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約4.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0133】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0134】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約100 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約5.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.4 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0135】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約5.5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約1.2 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含む。
【0136】
一実施形態において、上記医薬組成物は、(a)約120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)pHが約5である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.8 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロース。
【0137】
本開示は、抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片の原液を緩衝剤で置換する工程を含む上記医薬組成物の調製方法を更に提供する。
【0138】
本開示は、抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤であって、上記医薬組成物を凍結乾燥することで得られる凍結乾燥製剤を更に提供する。
【0139】
本開示は、抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤であって、上記医薬組成物を希釈した後、凍結乾燥することで得られる凍結乾燥製剤を更に提供する。
【0140】
本開示は、抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む凍結乾燥製剤であって、上記医薬組成物を1倍、2倍又は3倍希釈した後、凍結乾燥することで得られる凍結乾燥製剤を更に提供する。
【0141】
本開示は、抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片を含む再溶解溶液であって、上記凍結乾燥製剤を再溶解することで調製されることを特徴とする再溶解溶液を更に提供する。
【0142】
幾つかの実施形態において、上記再溶解溶液は、
(a)120 mg/mLの抗IL-4R抗体又はその抗原結合断片、(b)pHが約5.0である50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)0.4 mg/mLのポリソルベート80及び(e)50 mg/mLのスクロースを含む。
【0143】
一実施形態において、上記再溶解溶液は、(a)約120 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)約50 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.8 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約58 mg/mLのスクロースを含み、且つ医薬組成物のpHが約5.3である。
【0144】
一実施形態において、上記再溶解溶液は、(a)約150 mg/mLのhu25G7-A抗体、(b)約20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤、(c)約0.8 mg/mLのポリソルベート80、及び(d)約120 mMのアルギニン塩酸塩を含み、且つ医薬組成物のpHが約5.3である。
【0145】
本開示は、上記医薬組成物又は凍結乾燥製剤又は再溶解溶液が収容されている容器を含む製品を更に提供する。
【0146】
本開示は、免疫性疾患又は病症を治療又は予防する方法であって、被験者に治療有効量の上記医薬組成物又は凍結乾燥製剤又は再溶解溶液を投与することを含み、好ましくは、上記免疫性疾患がIL-4R媒介性疾患又は病症である方法を更に提供する。
【0147】
幾つかの実施形態において、上記免疫性疾患又は病症は、喘息、鼻ポリープ、慢性副鼻腔炎、アレルギー性皮膚病、好酸球性食道炎、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、関節炎、炎症性疾患、アレルギー反応、自己免疫リンパ組織増殖性症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核病及び腎臓病から選択され、好ましくは、前記疾患又は病症は、喘息又はアレルギー性皮膚病である。
【0148】
幾つかの実施形態において、上記免疫性疾患又は病症は喘息である。
【0149】
別の実施形態において、上記免疫性疾患又は病症はアレルギー性皮膚病である。
【0150】
本開示は、免疫性疾患又は病症を治療又は予防する薬剤の調製における、上記医薬組成物、又は凍結乾燥製剤又は凍結乾燥製剤の再溶解溶液、又は製品の使用であって、好ましくは、上記免疫性疾患又は病症がIL-4R媒介性疾患又は病症である使用を更に提供する。
【0151】
本開示における医薬組成物、又は凍結乾燥製剤又は凍結乾燥製剤の再溶解溶液、又は製品は、薬剤として使用することができ、好ましくは免疫性疾患又は病症を治療又は予防する薬剤として使用され、より好ましくは、IL-4R媒介性疾患又は病症を治療する薬剤として使用される。
【0152】
本開示の医薬組成物、又は凍結乾燥製剤又は凍結乾燥製剤の再溶解溶液、又は製品は、薬剤として使用することができ、好ましくは免疫性疾患又は病症を治療又は予防する薬剤として使用され、より好ましくは、上記免疫性疾患又は病症は、喘息、鼻ポリープ、慢性副鼻腔炎、アレルギー性皮膚病、好酸球性食道炎、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、関節炎、炎症性疾患、アレルギー反応、自己免疫リンパ組織増殖性症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ぶどう膜炎、結核病及び腎臓病から選択され、好ましくは、前記疾患又は病症は、喘息又はアレルギー性皮膚病である。
【0153】
本願において、ヒスチジンは、緩衝剤として使用することができるとともに、粘度調整剤の作用を有するため、医薬組成物において、ヒスチジンの最終含有量は、緩衝剤中のヒスチジンの含有量と粘度を低下させるために更に追加されたヒスチジンの含有量との合計である。例えば、pHが5.0である20 mMのヒスチジン-酢酸緩衝剤において、その粘度低下効果を向上させるために90 mMのヒスチジンを更に追加すると、当該医薬組成物中のヒスチジンの最終濃度は110 mMとなり、医薬組成物のpHは約5.0となる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
図1】マウス皮膚炎に対する抗IL-4R抗体の作用を示す実験結果図である。マウス皮膚炎モデルにおいて、アセトンで感作した後、ヒト化抗体hu25G7-A、hu25G7-B及び陽性対照抗体デュピルマブは、皮下投与により、週2回投与され、27日目にマウスの耳の厚さを検出する。結果から明らかなように、対照群に比べ、hu25G7-A、hu25G7-B及びデュピルマブは、何れもマウスの耳の厚さを低減させることができ、且つhu25G7-Bは、デュピルマブよりも優れた効果を示す。
図2】製剤処方のフィッティング結果である。
図3】製剤安定性の変化の等高線図であり、そのうち、灰色領域は限界を超えたことを示し、白色領域は限界を超えていないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0155】
用語
本開示が更に容易に理解されるように、以下、幾つかの科学技術用語を具体的に定義する。本明細書の他の場所で明確に定義されていない限り、本明細書で使用される他の科学技術用語の全ては、当業者に一般的に理解されている意味を持っている。
【0156】
本開示は、出願PCT/CN2019/102169における全ての内容を本願に組み込む。
【0157】
「緩衝剤」とは、その酸-塩基共役成分の作用によってpHの変化に耐えられる緩衝剤を指す。pHを適切な範囲に制御する緩衝剤の例としては、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン塩、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリシルグリシン及び他の有機酸緩衝剤を含む。
【0158】
「ヒスチジン塩緩衝剤」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝剤である。ヒスチジン塩緩衝剤の実例は、ヒスチジン-塩酸塩、ヒスチジン-酢酸塩、ヒスチジン-リン酸塩、ヒスチジン-硫酸塩などの緩衝剤を含み、好ましくはヒスチジン-酢酸塩緩衝剤であり、ヒスチジン-酢酸塩緩衝剤は、ヒスチジンと酢酸とで調製され、ヒスチジン-酢酸(His-AA)緩衝剤とも呼ばれる。
【0159】
「クエン酸塩緩衝剤」は、クエン酸イオンを含む緩衝剤である。クエン酸塩緩衝剤の実例は、クエン酸-クエン酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸カリウム、クエン酸-クエン酸カルシウム、クエン酸-クエン酸マグネシウム緩衝剤などを含む。好ましいクエン酸塩緩衝剤は、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝剤である。
【0160】
「コハク酸塩緩衝剤」は、コハク酸イオンを含む緩衝剤である。コハク酸塩緩衝剤の実例は、コハク酸-コハク酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウム塩緩衝剤などを含む。好ましいコハク酸塩緩衝剤は、コハク酸-コハク酸ナトリウム緩衝剤である。
【0161】
「リン酸塩緩衝剤」は、リン酸イオンを含む緩衝剤である。リン酸塩緩衝剤の実例は、リン酸水素ニナトリウム-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ニナトリウム-リン酸二水素カリウム、リン酸水素ニナトリウム-クエン酸緩衝剤などを含む。好ましいリン酸塩緩衝剤は、リン酸水素ニナトリウム-リン酸二水素ナトリウム緩衝剤である。
【0162】
「酢酸塩緩衝剤」は、酢酸イオンを含む緩衝剤である。酢酸塩緩衝剤の実例は、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸ヒスチジン塩、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウム緩衝剤などを含む。好ましい酢酸塩緩衝剤は、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝剤である。
【0163】
「医薬組成物」は、1種又は複数種の本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片と他の化学成分とを含む混合物を示し、上記他の成分は、例えば、生理学的/薬学的に許容可能な担体及び賦形剤である。医薬組成物は、抗体活性成分の安定性を保持し、生体への投与を促進し、活性成分の吸収を促進することで生物活性を発揮することを目的とする。
【0164】
本明細書において、「医薬組成物」と「製剤」は相互に排他的ではない。
【0165】
本開示に記載の医薬組成物の溶液形態は、特に説明しない限り、その中の溶剤が何れも水性溶液である。
【0166】
「置換」とは、抗体タンパク質を溶解した溶剤系の置換を指し、例えば、物理的操作によって抗体タンパク質を含有する高塩分又は高張性の溶剤系を安定的な製剤の緩衝系で置換することにより、抗体タンパク質が安定的な製剤に存在することになる。上記物理的操作は、限外ろ過、透析又は遠心分離後の再溶解を含むが、これらに限定されない。
【0167】
「凍結乾燥製剤」は、液体又は溶液形態の医薬組成物又は液体又は溶液製剤を真空凍結乾燥する工程の後に得られた製剤又は医薬組成物を表す。
【0168】
本開示の「糖」は、単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む通常の組成物(CH2O)n及びその誘導体を含む。グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フラクトース、マルトース、デキストラン、グリセロール、エリスリトール、グリセリン、アラビニトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンニノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロースなどから選択されてもよい。好ましい糖は、非還元二糖であり、より好ましくはトレハロース又はスクロースであり、最も好ましくはスクロースである。
【0169】
本開示の界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、Triton、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オクチル配糖体ナトリウム、ラウリル/ミリスチル/リノレイル/ステアリル-スルホベタイン、ラウリル/ミリスチル/リノレイル/ステアリル-サルコシン、リノレイル/ミリスチル/セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル/コカミドプロピル/リノレイルアミドプロピル/ミリストイルアミドプロピル/パルミトイルアミドプロピル/イソステアリルアミドプロピル-ベタイン、ミリストイルアミドプロピル/パルミトイルアミドプロピル/イソステアリルアミドプロピル-ジメチルアミン、ナトリウムメチルココイル、メチルオレイルタウレートナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンとプロピレングリコールの共重合体などから選択されてもよい。好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80又はポリソルベート20であり、より好ましくはポリソルベート80である。
【0170】
「粘度」という用語は、「動粘度」又は「絶対粘度」であってもよい。「動粘度」は、重力の影響下での流体の流れへの阻止のメトリックである。等体積の2つの流体を同一のキャピラリー粘度計に入れ、重力により流動させる場合、粘性の高い流体は、キャピラリーを流れるためにより粘性の低い流体よりも長い時間を要する。例えば、一方の流体がその流れを完了させるために200秒を要し、他方の流体が400秒を要すると、後者の流体は、動粘度のメトリックが第1の流体に対して2倍である。「絶対粘度」は、動的又は単純粘度と呼ばれることもあり、動粘度と流体密度の積(絶対粘度=動粘度×密度)である。動粘度の単位はL2/Tであり、そのうち、Lは長さであり、Tは時間である。通常、動粘度は、センチストーク(cSt)で表される。動粘度のSI単位は、mm2/sであり、1 cStである。絶対粘度は、センチポアズ(cP)を単位として表される。絶対粘度のSI単位は、ミリパスカル・秒(mPa・s)であり、そのうち1 cP=1 mPa・sである。
【0171】
本明細書で使用される「約」、「およそ」という用語は、数値が当業者により測定された具体値の許容可能な誤差範囲内にあることを指し、上記数値部分は、どのように計測又は測定されるか(即ち、計測システムの限度)による。例えば、当該分野でそれぞれの実行において、「約」は、1以内又は1を超える標準偏差を意味してもよい。或いは、「約」又は「実質的に含む」は、その後に示される具体的な数値の±20%、±15%、±10%又は±5%の範囲を意味してもよい。なお、特に生物学的システム又はプロセスについて、当該用語は、多くとも1桁分、又は数値の最大5倍を意味してもよい。特に断りがない限り、具体値が本願及び請求の範囲に現れる場合、「約」又は「実質的に含む」の意味は、当該具体値の許容可能な誤差範囲にあると仮定すべきである。
【0172】
本開示に記載の医薬組成物は、その中の抗体が貯蔵後にその物理的安定性、及び/又は化学的安定性、及び/又は生物学的活性を実質的に保持しているという安定的な効果を達成することができる。好ましくは、医薬組成物は、貯蔵後にその物理的及び化学的安定性、及びその生物学的活性を実質的に保持している。貯蔵期間は、一般的に医薬組成物の所定の保存期間に基づいて選択される。現在、選択された温度で選択された期間貯蔵された後の安定性を測定するために、タンパク質の安定性を測定する分析技術が種々ある。
【0173】
安定的な薬物抗体製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、より好ましくは1年間、更により好ましくは2年間も保存された場合に、有意な変化が認められない製剤である。なお、安定的な液体製剤は、25℃を含む温度で1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月を含む期間保存された後に所望の特徴を示す液体製剤を含む。安定性の典型的な許容可能な基準は、SEC-HPLCによって測定され、通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない抗体モノマーが分解されることである。視覚的分析によると、薬物抗体製剤は、淡黄色でほぼ無色の透明液体又は無色、又は透明から僅かに乳白色である。前記製剤の濃度、pH及び重量オスモル濃度は、±10%を超えない変化を有する。通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない減少が認められる。通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない凝集が形成される。
【0174】
色及び/又は透明度を目視で検査した後、又はUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び動的光散乱(DLS)により測定された後、抗体が有意な凝集の増加、沈殿及び/又は変性を示さないと、上記抗体は、薬物製剤において「その物理的安定性を保持している」。タンパク質配座の変化は、蛍光分光法(タンパク質三次構造が決定される)及びFTIR分光法(タンパク質二次構造が決定される)によって評価することができる。
【0175】
抗体が有意な化学的変化を示さないと、上記抗体は、薬物製剤において「その化学的安定性を保持している」。化学的に変化した形態のタンパク質を検出して定量化することにより、化学的安定性を評価することができる。タンパク質の化学構造を常に変化させる分解プロセスは、加水分解又はトランケーション(サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS-PAGEなどの方法により評価される)、酸化(質量分析法又はMALDI/TOF/MSと組み合わせるペプチドマッピングなどの方法により評価される)、脱アミド化(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸の測定などの方法により評価される)及び異性化(イソアスパラギン酸の含有量の測定、ペプチドマッピングなどにより評価される)を含む。
【0176】
所定の期間における抗体の生物活性が薬物製剤の調製時に示された生物活性の所定範囲にあると、上記抗体は、薬物製剤において「その生物活性を保持している」。抗体の生物活性は、例えば、抗原結合測定によって決定することができる。
【0177】
「ヒトIL-4R」(hIL-4R)とは、インターロイキン-4(IL-4)、IL-4Rαに特異的に結合するヒトサイトカイン受容体を意味する。
【0178】
本明細書で使用されるアミノ酸の3文字コード及び1文字コードは、J. Biol. Chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0179】
「抗体(antibody,Ab)」という用語は、具体的な抗原(又はそのエピトープ、例えば、IL-4R抗原又はそのエピトープ)と特異的に結合するか又は相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子又は分子複合体を含む。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結される4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子及びその多量体(例えばIgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、HCVR又はVHと略称される)及び重鎖定常領域(CH)を含む。この重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3という3つの領域(ドメイン)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、LCVR又はVLと略称される)及び軽鎖定常領域(CL)を含む。軽鎖定常領域は、1つの領域(ドメイン,CL)を含む。VH及びVL領域は、更に、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域と、前記超可変領域の間に散在したフレームワーク領域(framework region,FR,骨格ドメイン、枠組み領域とも称される)と称される比較的保存的な領域とに細かく分けることができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRで構成され、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順にアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される。
【0180】
抗IL-4R抗体(又はその抗原結合断片)のFRは、ヒト生殖細胞系配列と同一であってもよく、又は自然に若しくは人工的に修飾されてもよい。抗体は、異なるサブクラス(subclass)の抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体であってもよい。
【0181】
抗原結合断片の非限定的な例は、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)単鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、及び(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))又は拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチドを含む。例えば領域特異的抗体、単一ドメイン抗体、領域欠失抗体、キメラ抗体、CDR-移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュール免疫薬(SMIP)及びサメ可変IgNARドメインなどの他の工学的改変分子も、本明細書で使用される「抗原結合断片」という用語に含まれる。
抗体の抗原結合断片は、典型的に、少なくとも1つの可変領域を含む。可変領域は、任意のサイズ又はアミノ酸からなる領域であってもよく、且つ、一般的に1つ又は複数のフレームワーク配列に隣接するか又はそのフレームワークにあるCDRを含む。VH領域及びVL領域を有する抗原結合断片において、VH及びVL領域は、任意の好適な配列で互いに対向して位置してもよい。例えば、可変領域は、二量体であってVH-VL又はVL-VH二量体を含んでもよい。
【0182】
幾つかの実施例において、抗原結合断片は、何れの可変領域及び定常領域の配置においても、可変領域と定常領域が互いに直接接続されてもよく、又は完全又は一部のヒンジ又はリンカー領域によって接続されてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変領域及び/又は定常領域の間に柔軟又は半柔軟連結が発生されるように、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60又はそれ以上)のアミノ酸で構成されてもよい。なお、本開示の抗原結合断片において、非共有結合的に互いに連結される、及び/又は1つ又は複数の単量体VH又はVL領域に連結される(例えば、ジスルフィド結合による)、可変領域及び定常領域を有するホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含んでもよい。
【0183】
「マウス抗体」は、本開示において、この分野の知識及び技術によって調製されるマウス又はラット由来のモノクローナル抗体である。調製時に抗原を試験対象に注射した後、所望の配列又は機能特性を有する抗体を発現したハイブリドーマを分離し、注射される試験対象がマウスである場合に、産生される抗体はマウス由来の抗体であり、注射される試験対象がラットである場合に、産生される抗体はラット由来の抗体である。
【0184】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」は、第1の種(例えばマウス)の抗体の可変領域と第2の種(例えば、ヒト)の抗体の定常領域を融合した抗体である。キメラ抗体を作製するには、まず、第1の種のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製し、そしてハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローニングし、更に必要に応じて第2の種の抗体の定常領域遺伝子をクローニングし、第1の種の可変領域遺伝子と第2の種の定常領域遺伝子をキメラ遺伝子として連結した後に発現ベクターに挿入し、最後に真核系又は原核系においてキメラ抗体分子を発現する。本開示の1つの好ましい実施形態において、上記キメラ抗体の抗体軽鎖は、ヒトκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域を更に含む。上記キメラ抗体の抗体重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその変異体の重鎖定常領域を更に含み、好ましくはヒトIgG1、IgG2又はIgG4の重鎖定常領域、又はアミノ酸変異(例えば、YTE変異、復帰変異、L234A及び/又はL235A変異、又はS228P変異)を使用したIgG1、IgG2又はIgG4の重鎖定常領域の変異体を含む。
【0185】
「ヒト化抗体(humanized antibody)」という用語は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)を含み、例えばマウス抗体などの動物由来抗体のCDR配列をヒトの抗体可変領域のフレームワーク領域(又は枠組み領域,framework region)に移植することで産生された抗体を指す。ヒト化抗体は、キメラ抗体が大量の異種タンパク質を保有することで誘導された異種反応を克服することができる。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む共通DNAデータベース又は開示された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットhttp://www.vbase2.org/で取得される)、及びKabat、E.A. et al.、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th editionで見出すことができる。免疫原性の低下による活性の低下を回避するために、上記ヒト抗体可変領域のフレームワーク配列を少量で復帰変異させることで活性を保持することができる。本開示のヒト化抗体は、更にファージディスプレイによりCDRに対して親和性成熟を行ったヒト化抗体も含む。
【0186】
抗原の接触残基のために、CDRの移植は、抗原に接触するフレームワーク残基により、産生された抗体又はその抗原結合断片の抗原への親和性を低減させることができる。このような相互作用は、体細胞が高度に変異した結果であり得る。従って、このようなドナーフレームワークアミノ酸をヒト化抗体のフレームワークに移植することが依然として必要とされ得る。非ヒト抗体又はその抗原結合断片からの、抗原結合に関与するアミノ酸残基は、動物のモノクローナル抗体可変領域の配列と構造を検査することにより同定することができる。CDRドナーフレームワークにおける、生殖細胞系と異なる各残基は、関連性があると考えられる。最も近い生殖細胞系を決定することができない場合、配列を、サブクラスコンセンサス配列又は高い類似性の百分率を有する動物抗体配列のコンセンサス配列と比較することができる。稀なフレームワーク残基は、体細胞が高度に変異した結果であり得ると考えられるため、結合において重要な役割が果たされる。
【0187】
本開示の1つの実施形態において、上記抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はマウスκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域を更に含んでもよく、又はヒト又はマウスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその変異体の重鎖定常領域を更に含んでもよい。
【0188】
ヒト抗体重鎖定常領域及びヒト抗体軽鎖定常領域の「通常の変異体」とは、従来技術に開示された抗体可変領域の構造と機能を変化させないヒト由来の重鎖定常領域又は軽鎖定常領域の変異体であり、例示的な変異体は、重鎖定常領域に対して定点で改変し、且つアミノ酸置換を行ったIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域の変異体を含み、具体的な置換は、例えば、従来技術で既知のYTE変異、L234A及び/又はL235A変異、又はS228P変異、又はknob-into-hole構造を得た変異(抗体重鎖にknob-Fcとhole-Fcの組み合わせを有するようにする)であり、これらの変異は、抗体可変領域の機能を変更せずに、抗体に新しい性能を付与することが確認された。
【0189】
「ヒト抗体」と「ヒト化抗体」は、互いに交換して使用されてもよく、ヒト由来の抗体、又はトランスジェニック生物から得られた抗体であってもよく、当該トランスジェニック生物は、「改変」により、抗原の刺激に応答して特異的ヒト抗体を産生し、且つ、当該分野で知られている任意の方法で産生することができる。幾つかの技術において、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座の要素が細胞株に導入され、これらの細胞株における内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座が標的として破壊される。トランスジェニック生物は、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、また当該生物は、ヒト抗体-分泌ハイブリドーマの産生に用いることができる。ヒト抗体は、重鎖と軽鎖が1人又は複数人のヒトDNA由来のヌクレオチド配列によりコードされる抗体であってもよい。完全なヒト抗体は、遺伝子又は染色体トランスフェクション方法及びファージディスプレイ技術により構築されてもよいし、体外で活性化したB細胞で構築されてもよく、これらは全て当該分野で知られているものである。
【0190】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体のグループから得られる抗体を指し、即ち、可能な変異体抗体(例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体製剤の調製期間に発生した変異を含み、これらの変異体は通常、少量で存在する)以外、上記グループを構成する個別の抗体は、同じエピトープを認識する、及び/又は同じエピトープと結合する。モノクローナル抗体調製物(製剤)の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。従って、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体のグループから得られる抗体の特性を示し、何れかの特定の方法によって抗体を調製する必要があると解釈すべきではない。例えば、本開示に基づいて使用されるモノクローナル抗体は、種々の技術によって調製することができ、上記技術は、ハイブリドーマ方法、組換えDNA法、ファージディスプレイ方法及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されず、このような方法及びモノクローナル抗体を調製するための他の例示的な方法は、本明細書において説明される。
【0191】
なお、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、分離した遺伝子でコードされるが、組換え法により、合成されたリンカーで連結することができ、これにより、その中のVL及びVH領域をペアリングして一価分子を形成するための単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)と呼ばれ、例えば、Bird et al. (1988)Science242: 423-426、及びHuston et al. (1988)Proc. Natl. Acad. Sci USA85: 5879-5883を参照)を産生することができる。このような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に含まれることが意図される。このような抗体断片は、当業者に知られている通常の技術により得られ、また、完全な抗体と同様に、機能性によって断片がスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、又は、完全な免疫グロブリンを酵素的若しくは化学的に切断することにより産生することができる。
【0192】
抗原結合断片は、1対のタンデムFv断片(VH-CH1-VH-CH1)を含む単鎖分子に組み込まれてもよく、当該1対のタンデムFv断片は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に1対の抗原結合領域(Zapata et al., 1995 Protein Eng.8(10): 1057-1062、及び米国特許US5641870)を形成する。
【0193】
Fabは、プロテアーゼパパイン(H鎖の224位のアミノ酸残基を切断する)でIgG抗体を処理して得られた分子量が約50,000 Daで抗原結合活性を有する抗体断片であり、そのうち、H鎖N末端側の約半分は、L鎖全体とジスルフィド結合によって結合される。
【0194】
F(ab')2は、ペプシンでIgGヒンジ領域内の2つのジスルフィド結合の下方部分を消化することで得られた分子量が約100,000 Daで抗原結合活性を有し、ヒンジ位置で連結された2つのFab領域を含む抗体断片である。
【0195】
Fab'は、上記F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することで得られた分子量が約50,000 Daで抗原結合活性を有する抗体断片である。Fab'は、例えばジチオスレイトールなどの還元剤で抗原を特異的に認識してそれに結合するF(ab')2を処理することで産生することができる。
【0196】
更に、抗体のFab'断片をコードするDNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入し、そしてベクターを原核生物又は真核生物に導入することにより、Fab'を発現することができる。
【0197】
「単鎖抗体」、「単鎖Fv」又は「scFv」という用語は、リンカーにより接続された抗体重鎖可変ドメイン(又は領域、VH)と抗体軽鎖可変ドメイン(又は領域、VL)の分子を含むことを意味する。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHという一般式を有することができる。適切な従来技術のリンカーは、反復GGGGSアミノ酸配列又はその変異体で構成され、例えば、1つ~4つ(1つ、2つ、3つ又は4つを含む)の反復の変異体を使用する(Holliger et al.(1993), Proc Natl Acad Sci USA. 90: 6444-6448)。本開示に利用可能な他のリンカーは、Alfthan et al.(1995), Protein Eng. 8: 725-731, Choi et al.(2001), Eur J I mmuno.31:94-106, Hu et al.(1996), Cancer Res. 56:3055-3061, Kipriyanov et al.(1999), J Mol Biol. 293: 41-56及びRoovers et al.(2001), Cancer I mmunol I mmunother. 50: 51-59に記載されている。
【0198】
ダイアボディ(diabody)とは、scFvが二量体化された抗体断片であり、二価抗原結合活性を有する抗体断片である。二価抗原結合活性において、2つの抗原が相同又は相異であってもよい。
【0199】
dsFvは、その中の各々のVHとVLにおける1つのアミノ酸残基がシステイン残基で置換されたポリペプチドをシステイン残基間のジスルフィド結合によって接続することにより得られる。既知の方法(Protein Engineering, 7: 697(1994))によって抗体の3次元構造予測に基づき、システイン残基で置換されるアミノ酸残基を選択することができる。
【0200】
本開示の幾つかの実施例において、抗原結合断片は、本開示の抗原を特異的に認識してそれに結合するモノクローナル抗体のVH及び/又はVL及び所望の他のドメインのコードcDNAを取得し、抗原結合断片をコードするDNAを構築し、上記DNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入した後、上記発現ベクターを原核生物又は真核生物に導入して抗原結合断片を発現する工程により産生することができる。
【0201】
「Fc領域」は、天然配列のFc領域又は変異体のFc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は、変化する可能性があるが、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、位置Cys226でのアミノ酸残基から、又はPro230から、そのカルボキシ末端まで延びるように定義される。Fc領域における残基の番号は、例えばKabatにおけるEUインデックスの番号である。Kabat et al., Sequences of Proteins of I mmunological Interest, 5th edition Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991。免疫グロブリンのFc領域は通常、2つの定常領域ドメインCH2及びCH3を有する。
「アミノ酸差異」又は「アミノ酸変異」という用語は、元のタンパク質又はポリペプチドと比べ、変異体タンパク質又はポリペプチドに、元のタンパク質又はポリペプチドを基にして1つ又はそれ以上のアミノ酸が挿入、欠失又は置換されたことを含むアミノ酸の変化又は変異があることを意味する。
【0202】
抗体の「可変領域」とは、単独の又は組み合わせた抗体軽鎖の可変領域(VL)又は抗体重鎖の可変領域(VH)を指す。当該分野で知られているように、重鎖及び軽鎖の可変領域は、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR)(超可変領域とも呼ばれる)によって接続される4つのフレームワーク領域(FR)で構成される。それぞれの鎖におけるCDRは、FRによって緊密に一緒に保持され、且つ、別の鎖からのCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成を促進する。CDRを決定するための技術は、少なくとも2つ存在する:(1)異種間の配列変異性に基づく方法(即ち、Kabat et al. Sequences of Proteins of I mmunological Interest, (5th edition, 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD))、及び(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づく方法(Al-Lazikani et al., J. Molec. Biol. 273:927-948 (1997))。本明細書で使用されるように、CDRは、何れか1つの方法又は2つの方法の組み合わせによって決定されたCDRを指すことができる。
「抗体フレームワーク」又は「FR領域」という用語は、当該可変ドメインの抗原結合環(CDR)のステントとして用いられる可変ドメインVL又はVHの一部を指す。本質的に、それは、CDRを有しない可変ドメインである。
【0203】
「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、抗体の可変ドメインにおける抗原結合を主に促進する6つの超可変領域の1つを指す。通常、それぞれの重鎖可変領域には3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)が存在し、それぞれの軽鎖可変領域には3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。CDRのアミノ酸配列境界は、「Kabat」番号付け規則(Kabat et al.(1991), 「Sequences of Proteins of I mmunological Interest」, 5th edition, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD)、「Chothia」番号付け規則Martin, ACR. Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains[J]. 2001及びImMunoGenTics(IMGT)番号付け規則(Lefranc, M. P. et al., Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77(2003)を参照する)などを含む種々の公知の方案の何れか1つによって決定することができる。例えば、典型的な書式では、Kabat規則によれば、前記重鎖可変領域(VH)中のCDRアミノ酸残基の番号は31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)及び95~102(HCDR3)であり、軽鎖可変領域(VL)中のCDRアミノ酸残基の番号は24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)及び89~97(LCDR3)である。Chothia規則によれば、VH中のCDRアミノ酸の番号は、26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)及び95~102(HCDR3)であり、VL中のアミノ酸残基の番号は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)及び89~97(LCDR3)である。KabatとChothiaの両方を組み合わせたCDR定義によって、CDRは、ヒトVH中のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)と95~102(HCDR3)及びヒトVL中のアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)と89~97(LCDR3)により構成される。IMGT規則によれば、VH中のCDRアミノ酸残基の番号は、大体、27~38(CDR1)、56~65(CDR2)と105~117(CDR3)であり、VL中のCDRアミノ酸残基の番号は、大体、27~38(CDR1)、56~65(CDR2)と105~117(CDR3)である。IMGT規則によれば、抗体のCDR領域は、プログラムIMGT/DomainGap Alignによって決定することができる。
【0204】
「抗体定常領域ドメイン」とは、抗体の軽鎖及び重鎖の定常領域からのドメインを指し、CL及び異なるクラスの抗体からのCH1、CH2、CH3及びCH4ドメインを含む。
【0205】
「エピトープ」又は「抗原決定基」は、抗原における、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する部位を指す。エピトープは通常、独特な空間配座で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続的又は非連続的なアミノ酸を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, 第66卷, G. E. Morris, Ed (1996)を参照する。
【0206】
「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合」及び「特異的に結合」という用語は、予め決定された抗原上のエピトープへの抗体の結合を指す。
【0207】
「親和性」という用語とは、単一のエピトープにおける抗体と抗原との間の相互作用の強度を指す。各抗原部位において、抗体「アーム」の可変領域は、弱い非共有結合力により複数のアミノ酸部位で抗原と相互作用し、相互作用が大きいほど、親和性が強くなる。本明細書で使用されるように、抗体又はその抗原結合断片(例えば、Fab断片)の「高親和性」という用語は通常、1E-9 M以下のKD(例えば、1E-10 M以下のKD、1E-11 M以下のKD、1E-12 M以下のKD、1E-13 M以下のKD、1E-14 M以下のKDなど)を有する抗体又は抗原結合断片を指す。
【0208】
「KD」又は」KD」という用語は、特定の抗体-抗原が相互作用する解離平衡定数を指す。通常、抗体は、約1E-8 Mよりも小さい、例えば約1E-9 M、1E-10 M又は1E-11 Mよりも小さい又はそれ以下の解離平衡定数(KD)で抗原と結合し、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を利用してBIACORE計で測定される。KD値が小さいほど、親和性が大きくなる。
【0209】
「核酸分子」という用語は、DNA分子又はRNA分子を指す。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖のDNA分子又はRNA分子、例えば二本鎖DNA又はmRNAであってもよい。核酸が別の核酸配列と共に機能的関係に置かれる場合、核酸は「効果的に連結されている」。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写に影響を与えると、プロモーター又はエンハンサーは、上記コード配列に効果的に連結されている。
【0210】
「ベクター」という用語は、1つ又は複数の目的遺伝子又は配列を送達し、且つ好適に宿主細胞にそれを発現することができる構築物を指す。ベクターの例としては、ウイルスベクター、裸のDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、陽イオン凝集剤と会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター及び一部の真核生物細胞、例えば、産生細胞を含むが、これらに限定されない。
【0211】
従来技術でよく知られている抗体及び抗原結合断片の産生・精製方法は、例えば、冷泉港の抗体実験技術マニュアルの5~8章及び15章の通りである。例えば、マウスは、抗原又はその断片により免疫可能であり、得られた抗体は、復元、精製されることができると共に、通常の方法によりアミノ酸シーケンスを行うことができる。抗原結合断片は、同様に通常の方法により調製することができる。本開示に記載の抗体又は抗原結合断片は、遺伝子工学的方法により、非ヒト由来のCDR領域に1つ又は複数のヒト由来のFR領域が加えられる。ヒトFR生殖細胞系配列は、IMGTヒト抗体可変領域の生殖細胞系遺伝子データベース及びソフトウェアMOEをアラインメントすることによって得られ、又は免疫グロブリン雑誌、2001ISBN012441351から得ることができる。
【0212】
「宿主細胞」という用語は、その中に発現ベクターが導入された細胞を指す。宿主細胞は、細菌、微生物、植物又は動物の細胞を含んでもよい。形質転換しやすい細菌は、大腸菌(Escherichia coli)やサルモネラ菌(Salmonella)の菌株などの腸内細菌科(enterobacteriaceae)のメンバー、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバシラス科(Bacillaceae)、肺炎球菌(Pneumococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)を含む。好適な微生物は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア酵母(Pichia pastoris)を含む。好適な動物宿主細胞系は、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞系)、HEK293細胞(HEK293E細胞などの非限定的な実施例)及びNS0細胞を含む。
【0213】
工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製、精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローニングしてGS発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定してトランスフェクションすることができる。1つの選択的な従来技術として、哺乳類発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。抗原に特異的に結合する抗体を発現することで、安定的なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで抗体を産生する。抗体を分泌した培養液は、通常の技術により精製することができる。例えば、調整された緩衝剤を含むタンパク質A又はタンパク質G Sepharose FFカラムで精製する。非特異的に結合した成分を洗い流す。更にpH勾配法により、結合した抗体を溶出し、SDS-PAGEで抗体断片を検出し、収集する。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子篩、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0214】
「与える」、「投与」、「付与」及び「処理」は、動物、ヒト、実験の被験者、細胞、組織、器官又は生物流体に適用される場合、外因性薬剤、治療剤、診断剤、組成物又は人為的操作(例えば、実施例における「安楽死」)を動物、ヒト、被験者、細胞、組織、器官又は生物流体に接触するように提供することを指す。「付与」及び「処理」は、例えば、治療、薬物動態、診断、研究と実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬と細胞との接触、及び試薬と流体との接触を含み、そのうち、上記流体は細胞と接触する。「付与」及び「処理」は、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを更に意味する。「処理」は、ヒト、獣医学又は研究被験者に適用される場合、治療的処理、予防又は予防的措置、研究と診断的応用を意味する。
【0215】
「治療」は、患者(又は被験者)に例えば本開示の実施例の何れか1つの化合物の組成物を含む内用又は外用の治療剤を投与することを意味し、上記患者(又は被験者)は、1種又は複数種の疾患症状を有する(又は有すると疑われ、又は罹患しやすい)が、上記治療剤は、これらの症状に対して治療作用を有すると知られている。通常、治療される患者(又は被験者)又はグループには、1種又は複数種の疾患症状が効果的に緩和される量で治療剤を投与することにより、これらの症状の解消を誘導したり、これらの症状を臨床的に測定可能な何れかの程度まで進行しないように抑制したりする。任意の具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者(又は被験者)の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の患者で必要な治療効果を発生させる能力などの種々の要因によって変化することができる。医者や他のプロのヘルスケアプロバイダによる当該症状の重症度又は進行状況への評価によく用いられる何れの臨床的検出方法により、疾患症状が軽減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、それぞれの目標疾患症状を全て効果的に軽減し得ないが、当該分野で知られている何れかの統計学的検定方法、例えばStudent t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定とWilcoxon検定によると、統計学的に有意な数の患者(又は被験者)において目標疾患症状を軽減すべきであることが確認された。
【0216】
「アミノ酸の保存的修飾」又は「アミノ酸の保存的置換」は、タンパク質又はポリペプチド中のアミノ酸が類似の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖配座及び剛性など)を有する他のアミノ酸によって置換されることで、タンパク質又はポリペプチドの生物活性又は他の所望の特性(例えば抗原親和性及び/又は特異性)を変えることなく、常に変化することができることを意味する。当業者であれば、通常、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸の置換は、実質的に生物活性を変化させないことが分かる(例えば、Watson et al., (1987)Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cu mmings Pub. Co., 第224ページ(4th edition)を参照する)。なお、構造的又は機能的に類似のアミノ酸の置換は、生物活性を破壊する可能性が低い。
【0217】
「IL-4Rとの結合」は、ヒトIL-4Rと相互作用できることを意味する。本明細書の「抗原結合部位」という用語は、本明細書の抗体又は抗原結合断片により認識される3次元空間部位を指す。
【0218】
「交差反応」は、本明細書の抗体の異なる種由来のIL-4Rへの結合の能力を指す。例えば、ヒトIL-4Rに結合する本明細書の抗体は、別の種のIL-4Rに結合することもできる。交差反応性は、結合測定(例えばSPR及びELISA)において精製抗原との特異的反応性、又はIL-4Rを生理学的に発現した細胞との結合又は機能的相互作用を検出することによって測定される。交差反応性を決定する方法は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)分析、又はフローサイトメトリーなどの、本明細書に記載の標準的な結合測定を含む。
【0219】
「中和」又は「阻害」抗体は、そのhIL-4Rへの結合によりhIL-4及び/又はhIL-13の生物活性が抑制される抗体を指す。このようなhIL-4及び/又はIL-13の生物活性への抑制は、当該分野で知られている1つ又は複数のhIL-4/又はhIL-13の生物活性指標、例えば、hlL-4/又はhIL-13により誘導された細胞活性化及びhIL-4とhIL-4Rの結合などの指標によって評価することができ、例えば、CN103739711Aにおける記載を参照する。「増殖の抑制」(例えば、細胞について)は、細胞増殖の何れの測定可能な低下も含むことを意図する。
【0220】
「免疫応答の誘導」と「免疫応答の増強」は、互いに交換して使用されてもよく、免疫応答による特定の抗原への刺激(即ち、受動的又は適応的)を指す。CDC又はADCCの誘導という用語について、「誘導」は、特定の直接細胞殺傷メガニズムを刺激することを指す。
【0221】
「ADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)」、即ち、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性は、Fc受容体を発現した細胞が抗体のFc部分を認識することにより、抗体で被覆された標的細胞を直接殺傷することを指す。IgG上のFc部分を修飾することにより、抗体のADCCエフェクター機能を低下又は解消することができる。上記修飾は、抗体の重鎖定常領域で変異することを指し、例えば、IgG1のN297A、L234A、L235A、IgG2/4キメラ、IgG4のF235E、又はL234A/E235A変異から選択される。
【0222】
工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製、精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローニングしてGS発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定してトランスフェクションすることができる。分子クローニング技術により、本明細書のヒト化抗体の配列を対応する発現ベクターに挿入し、HEK293細胞発現系による発現によって産生すると、対応するヒト化抗体を得ることができる。1つのより好ましい従来技術として、哺乳類発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。ヒト抗原に特異的に結合する抗体を発現することにより、安定的なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで抗体を産生する。抗体を分泌した培養液は、通常の技術により精製し、収集することができる。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子篩、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0223】
「有効量」又は「有効投与量」は、何れか1つ又は複数の有益又は所望の治療結果を得るために必要な薬剤、化合物又は医薬組成物の量を指す。予防的使用に関しては、有益又は所望の結果は、病症、その合併症と病症の進行中に現れた中間的な病的表現型の生化学的、組織学的及び/又は行動的症状を含め、リスクの解消や低減、重症度の軽減又は病症の発作の遅延を含む。治療的応用について、有益又は所望の結果は、種々の本開示の標的抗原関連病症の罹患率の低減又は前記病症の1つ又は複数の症状の改善、病症の治療に必要な他の薬剤の投与量の低減、別の薬剤の治療効果の向上、及び/又は、患者(又は被験者)の本開示の標的抗原関連病症の進行の遅延などの臨床的結果を含む。
【0224】
「外因性」は、場合によって生物、細胞やヒトの体外で発生した物質を意味する。
【0225】
「内因性」は、場合によって細胞、生物やヒトの体内で発生した物質を意味する。
【0226】
「単離した」とは、精製状態であり、この場合、指定された分子に、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物などの他の生物分子、又は、細胞破片や成長培地などの他の材料を実質的に含まないことを意味する。通常、「単離した」という用語は、本明細書に記載の化合物の実験や治療的使用を明らかに妨げる量で存在しない限り、これらの材料が全く存在しない、又は水、緩衝液や塩が存在しないことを指す意図はない。
【0227】
「相同性」又は「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列の類似性を指す。比較される2つの配列における位置が同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットに占められる場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンに占められる場合、上記分子が当該位置で相同である。2つの配列間の相同性百分率は、2つの配列の共有するマッチング又は相同位置数を比較される位置数で割って100%をかける関数である。例えば、配列が最適にアラインメントされる場合、2つの配列中の10つの位置のうち、6つがマッチングし、又は相同であると、2つの配列は60%相同である。一般的には、2つの配列をアラインメントすることで最大の相同性百分率が得られる場合に比較する。本明細書に記載の「少なくとも85%の配列同一性」とは、変異体と親配列を比較すると、2つの配列が少なくとも85%の相同性を有することを意味し、幾つかの形態において、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列相同性を有し、幾つかの具体的な形態において、90%、95%又は99%以上を有し、別の幾つかの具体的な形態において、少なくとも95%の配列相同性を有する。上記少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、親配列に1つ又は複数のアミノ酸の欠失、挿入又は置換変異を行うことで得られるものを含む。
【0228】
本明細書に用いられる「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養物」という表現は、互いに交換して使用されてもよく、これらの名称は何れもその子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という用語は、転移数を考慮せずに、初代被検細胞及びそれより誘導された培養物を含む。また、意図する又は意図しない変異のために、あらゆる子孫は、DNA含有量において正確に同じであることがあり得ないと理解すべきである。最初の形質転換細胞からスクリーニングされたものと同様の機能又は生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。
【0229】
「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、その後に説明される事件又は環境が生じてもよいが、必ずしもそうとは限らないことを意味し、当該表現には、当該事件又は環境が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的に1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在してもよいが、必ずしも存在するとは限らないことを意味する。
【0230】
例示的な抗体医薬組成物(製剤)の調製プロセスは、以下の通りである:
ステップ1、一定量の精製された抗IL-4R抗体溶液の溶剤を、抗体を含まない緩衝剤で置換(好ましくは限外ろ過)し、限外ろ過膜によって少なくとも6倍の体積で置換し、抗体を一定の濃度に濃縮する。一定の体積の他の補助材料母液を加え、緩衝剤で希釈し、抗体及び各補助材料を所望の濃度にし、均一に混合する。原液をろ過した後にセンターコンソールによってサンプリングして無菌性を検査する。原液を0.22 μmのPVDFろ材を通過させ、ろ液を収集する。
ステップ2:装入量を2.15 mLに調節し、ろ液を2 mLのバイアル瓶に充填し、栓をして、それぞれ充填開始、充填中、充填終了時にサンプリングしてセンターコンソールによって装入量の差を検出する。
ステップ3、蓋付け機をオンにし、アルミニウム蓋を施し、蓋を圧着する。
ステップ4、目視により、製品に不正確な装入量などの欠陥がないと確認する。バイアル瓶のラベルを印刷し、貼り付け、カートンのラベルを印刷し、カートンを折り畳み、カートンに入れ、カートンのラベルを貼り付ける。
【実施例
【0231】
以下、実施例を参照しながら本開示を更に説明するが、これらの実施例は、本開示の範囲を制限しない。実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常、例えば冷泉港の抗体技術実験マニュアル、分子クローニングマニュアルなどの通常の条件、又は原料又は商品メーカーにより提案された条件に従う。具体的な供給源が明記されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0232】
抗体調製の実施例
実施例1:マウス免疫接種及び検出
hisタグ付きのヒトIL-4R(h-IL-4R-his)組換えタンパク質、hisタグ付きのマウスIL-4R(m-IL-4R-his)組換えタンパク質及びhisタグ付きのアカゲサルIL-4R(rhesus-IL-4R-his)組換えタンパク質は、Acrobiosystems社により合成され、HEK293により発現された後に精製された。
【0233】
ヒトFcタグ付きのヒトIL-4R(h-IL-4R-Fc)組換えタンパク質は、それ自体で設計、発現及び精製された。精製されたタンパク質は、下記の各実施例の実験に適用可能である。
【0234】
本実施例の抗体又は抗原結合断片のVL領域及びVH領域のCDRアミノ酸残基の数及び位置は、既知のKabat番号付け規則(LCDR1-3、HCDR2-3)、及びAbM規則(HCDR1)に適合する。
【0235】
【表1】

【0236】
抗ヒトIL-4Rモノクローナル抗体は、マウスを免疫することにより産生された。実験は、6~8週齢の雌のC57BL/6マウス(蘇州昭衍新薬研究中心有限公司,動物生産ライセンス番号:201503052)を使用した。
【0237】
飼育環境:SPF級。マウスを購入した後、12/12時間の明/暗周期で調節し、温度が20~25℃で、湿度が40~60%の実験室環境で1週間飼育した。環境に適応したマウスを3つのケージに分け、1ケージあたり5匹であった。免疫抗原は、Fcタグ付きのヒトIL-4R組換えタンパク質(h-IL4R-Fc,濃度が0.73 mg/mL)であった。フロイントアジュバント(sigma,Cat#:F5881)で乳化した:最初に完全フロイントアジュバント(CFA,Pierce、Cat#77140)を使用し、残りの追加免疫は、核酸アジュバント(CpG,上海生工)及びアルミニウムアジュバント(Alum,Thermo Cat#77161)を使用した。
【0238】
0日目に腹腔内(IP)に乳化された抗原を70 μg/匹で注射した。14、28、42、56、77日目に、背部の腫瘤及び腹部の腫大状況に基づき、背部及び腹腔内を選択して抗原を注射した(それぞれ0.1 mL注射した)。21、35、49、63、84日目に採血して血液検出を行い、実施例2のELISA方法によってマウス血清を検出し、マウス血清中の抗体力価を決定した。4回目の免疫後、血清中の抗体力価が高くて力価がプラトーに達する傾向のあるマウスを選択して脾臓細胞融合を行い、融合の3日前に追加免疫し、腹腔内(IP)にリン酸塩緩衝剤で調製された抗原溶液を10 μg/匹で注射した。最適化されたPEG媒介性の融合工程により、脾リンパ球と骨髄腫細胞Sp2/0細胞(ATCC(登録商標) CRL-8287(商標))を融合してハイブリドーマ細胞を得た。
【0239】
実施例2:抗体のELISA試験及びスクリーニング
1、ELISA結合実験:
ELISA実験は、抗IL-4R抗体の結合特性を検出するために使用された。hisタグ付きのIL-4R組換えタンパク質で被覆されたマイクロプレートを利用し、抗体を各ウェルに加えた後、二次抗体(HRPカップリングした抗一次抗体Fcの抗体)及びHRP基質であるTMBを加えることで抗体の抗原への結合活性を検出した。
【0240】
ヒト又はアカゲサルIL-4R-hisタンパク質で96ウェルマイクロプレートを被覆し、0.5 μg/mLの濃度で1ウェルあたり100 μLであり、4℃で一晩インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。200 μL/ウェルでブロッキング溶液を加えて室温で2時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。1ウェルあたりに希釈液で希釈した抗IL-4R被験抗体100 μLを加えた。室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。1ウェルごとに希釈液により1:20000倍で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体100 μLを加えた。室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。1ウェルごとに100 μLのTMBを加え、暗所で15分間反応させた。1ウェルごとに0.16 M/Lの硫酸50 μLを加えた。マイクロプレートリーダーThermo MultiSkanFcで450 nmのOD値を読み取り、抗IL-4R抗体のIL-4Rに対する結合EC50値を算出した。
【0241】
2、ELISA阻害実験:
本実験は、体外阻害実験により、スクリーニングされた抗ヒトIL-4R抗体によるヒトIL-4RとヒトIL-4の結合への阻害を検出した。具体的な方法としては、Fcタグ付きのIL-4R組換えタンパク質で96ウェルマイクロプレートを被覆し、ヒトIL-4Rに結合する抗体を加えて十分に結合してエピトープを占めた後、更にIL-4(Biolegend,Cat#574004)を加え、ビオチンカップリングした抗IL-4抗体及びNeutravidin-HRP(Pierce,Cat#31001)により、IL-4が更にIL-4Rに結合できるか否かを検出し、IL-4R抗体のIL-4/IL-4R結合に対する阻害のIC50値を算出した。
【0242】
ヒトIL-4R-Fcタンパク質で96ウェルマイクロプレートを被覆し、0.5 μg/mLの濃度で1ウェルあたり100 μLであり、4℃で一晩インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。200 μL/ウェルでブロッキング溶液を加えて室温で2時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。1ウェルごとに希釈液で希釈した抗IL-4R被験抗体100 μLを加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。1ウェルごとに希釈したIL-4 100 μLを加え、室温で1時間インキュベートし、洗浄液で3回洗浄した。1ウェルごとに希釈したビオチンカップリングした抗IL-4抗体100 μLを加え、室温で1時間インキュベートし、洗浄液で3回洗浄した。希釈液により1:5000倍で希釈したHRP標識Neutravidinを加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。1ウェルごとに100 μLのTMBを加え、暗所で15分間反応させた。1ウェルごとに0.16 M/Lの硫酸50 μLを加えた。マイクロプレートリーダーThermo MultiSkanFcによって450 nmのOD値を読み取り、IL-4R抗体によるIL-4RとIL-4の結合への阻害のIC50値を算出した。
【0243】
実施例3:ヒトIL-4Rに結合する抗体のレポーター遺伝子細胞活性実験
HEK-Blue IL-4細胞は、Invivogen(Cat#hkb-stat6)から購入され、当該細胞は、ヒトIL-4R遺伝子及びSTAT6媒介性のSEAPゲノムを安定してトランスフェクションし、SEAP基質であるQUANTI-Blueにより上清中に分泌されたSEAPを検出することでIL-4Rシグナル伝達経路の活性化レベルを特徴付けることができる。
【0244】
本実験は、細胞HEK-Blue IL-4の活性化を検出ことにより、IC50の大きさによってIL-4R抗体の体外細胞活性を評価した。
【0245】
10%FBS、100 μg/mLのZeocin(Invivogen,Cat#ant-zn-05)及び10 μg/mLのBlasticidin(Invivogen,Cat#ant-bl-05)を含むDMEM培地でHEK-Blue IL-4細胞を培養した。継代比率が1:5又は1:10で1週間に2~3回継代した。継代時に、培地を吸引除去し、5 mLの0.25%トリプシンで細胞層をすすいだ後、トリプシンを吸引除去し、細胞をインキュベータに入れて3~5分間消化し、新鮮な培地を加えて細胞を再懸濁した。96ウェルの細胞培養プレートに100 μLの細胞懸濁液を加え、密度が5×105細胞/mLであり、培地が10%FBS、100 μg/mLのZeocin及び30 μg/mLのBlasticidinを含むDMEMであり、96ウェルプレートの外周に100 μLの滅菌水のみを加えた。培養プレートをインキュベータで24時間(37℃,5%CO2)培養した。細胞が壁に接した後、1ウェルごとに勾配希釈した被験抗体100 μLを加えた。培養プレートをインキュベータで20~24時間(37℃,5%CO2)インキュベートした。1ウェルごとに20μLの細胞上清を1つの新しい96ウェルフラットプレートに入れ、180 μLのQUANTI-Blue基質溶液を加え、培養プレートをインキュベータにて暗所で1~3時間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(Thermo MultiSkanFc)により620 nmでの吸光度を測定した。
【0246】
実施例4:ヒトIL-4Rに結合する抗体によるTF-1細胞増殖への抑制実験
TF-1細胞(ATCC CRL-2003)は、IL-4Rを発現し、IL-4/IL-13などのサイトカインに対して感受性を持つリンパ腫細胞である。IL-4は、GM-CSFのない場合におけるTF-1細胞の増殖を刺激することができる。本実験は、中和抗体を加え、IL-4の作用経路を阻害し、TF-1細胞の増殖を抑制することにより、異なる抗IL-4R抗体の中和活性を比較した。
【0247】
細胞TF-1を10%FBS、2 ng/mLのGM-CSF(R&D,Cat#215-GM-010)を含むRPMI1640培地で培養し、継代比率が1:10で1週間に2~3回継代した。96ウェルの細胞培養プレートに100 μLの細胞懸濁液を加え、密度が2×105細胞/mLであり、培地が10%FBSを含むRPMI1640培地であり、96ウェルプレートの外周に100 μLの滅菌水のみを加えた。1ウェルごとに勾配希釈した被験抗体50μL及び最終濃度が0.7 ng/mLのIL-4(R&D,Cat#204-IL-050)50μLを加え、培養プレートをインキュベータで72時間(37℃,5%CO2)インキュベートした。培養終了後、CTGキット(Promega,Cat#G7572)で細胞の増殖を検出した。
【0248】
実施例5:体外結合親和性及び動態実験
Biacore、GE機器で被験ヒト化IL-4Rの抗体のヒトIL-4Rとの親和性を測定した。
ヒト抗捕捉キット(Cat. # BR-1008-39,GE)の取扱説明書における方法に従い、ヒト抗捕捉抗体をBiacore機器(Biacore X100,GE)のバイオセンサチップCM5に共有結合することにより、一定量の被験抗体を親和的に捕捉し、その後、チップの表面を濃度勾配を有する一連のIL-4R抗原(IL-4R抗原が何れもAcrobiosystemsから購入され、Cat#ILR-H5221)を流せ、Biacore機器(Biacore X100,GE)によって応答シグナルをリアルタイムで検出することで結合及び解離曲線を得た。各サイクルの解離が完了した後、ヒト抗捕捉キットに配置された再生溶液でバイオチップを洗浄して再生した。実験に使用されたアミンカップリングキットは、GE社(Cat. # BR-1000-50,GE)から購入され、緩衝剤はHBS-EP+10×緩衝溶液(Cat. # BR-1006-69,GE)をD. I. Waterで1×(pH7.4)まで希釈したものである。
【0249】
実験で得られたデータをBiacoreX100評価用ソフトウェア2.0 GEソフトウェアにより(1:1)結合モデルでフィッティングし、親和性の値を得た。
【0250】
実施例6:抗体の配列及び調製
以上の実施例2のELISA結合実験(ヒトIL-4R-hisのELISA結合)及びELISA阻害実験(ヒトIL-4/IL-4RのELISA阻害)、実施例3におけるIL-4の刺激下でのHEK293-Blue IL-4細胞の活性化への抑制実験、及び実施例4におけるIL-4の刺激下でのTF-1細胞の増殖への抑制実験により、体外活性が最も高い2株のモノクローナルハイブリドーマ細胞株を選択した。その活性検出結果は表2に示されている。
【0251】
【表2】

【0252】
モノクローナルハイブリドーマ細胞株25G7及び7B10を選び出し、その中の抗体配列をクローニングした。ハイブリドーマから配列をクローニングするプロセスは、以下の通りである。
【0253】
対数増殖期のハイブリドーマ細胞を収集し、Trizol(Invitrogen,15596-018)でRNAを(キットの取扱説明書の工程に従って)抽出し、逆転写した(PrimeScript(商標) Reverse Transcriptase,Takara,cat # 2680A)。逆転写されたcDNAに対してマウスIg-Primer Set(Novagen,TB326 Rev.B 0503)でPCR増幅を実施した後にシークエンシング会社に送ってシーケンスを行い、得られた抗体配列を分析した。
【0254】
マウスモノクローナル抗体25G7の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、以下の通りである:
25G7 HCVR
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSDYGMHWVRQAPEKGLEWVAFISSGSSIIYYADIVKGRSTISRDNAKNTLFLQMTSLRSEDTAMYYCTRGNKRGFFDYWGQGTILTVSS(SEQ ID NO:1)
25G7 LCVR
QIVLTQSPALMSASPGEKVTMTCNASSSVSYMYWYQRKPRSSPKPWIYLTSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWRSNPPMLTFGSGTKLEVK(SEQ ID NO:2)
【0255】
それに含まれるCDR配列は、表3に示される通りである。
【表3】
【0256】
マウスモノクローナル抗体7B10の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、以下の通りである:
7B10 HCVR
QVQLQQPGTELLKPGASVSLSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGLIHPNSDTTKFSENFKTRATLTIDKSSSTAYMKLSSLTSEDSAVYYCAKSKIITTIVARHWYFDVWGTGTTVTVSS(SEQID NO:9)
7B10 LCVR
DIVLTQSPPSLAVSLGQRATISCKASQSVDYGGDSYMNWYQQKLGQPPKVLIYAASNLESGIPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDVATYYCQHSNENPPTFGGGTKLEIK(SEQID NO:10)
【0257】
それに含まれるCDR配列は、表4に示される通りである。
【表4】

【0258】
得られた可変領域配列をヒトの定常領域配列に接続し、ヒト-マウスキメラ抗体配列を得た。分子クローニング技術により、キメラ抗体の配列を対応する発現ベクターに挿入した。HEK293細胞発現系によれば、ヒト-マウスキメラ抗体25G7-C及び7B10-Cを得ることができる。
【0259】
上記実施例2~5の方法により、精製されたキメラ抗体に対して対応する体外活性検出を行い、データは表5に示されている。結果から明らかなように、25G7-C抗体によるIL-4結合への阻害効果、及び細胞の増殖への抑制効果は、何れも参照抗体であるデュピルマブ(WHO Drug Information,Vol. 26,No.4,2012を参照して合成された)よりも顕著に優れている。
【0260】
【表5】
【0261】
実施例7:マウス抗体のヒト化実験
得られたマウス抗体25G7及び7B10をヒト化した。得られたマウス抗体VH/VLCDRの典型的な構造を基にして、重・軽鎖可変領域配列をヒト抗体のGermlineデータベースと比較し、相同性の高いヒト生殖細胞系テンプレートを得た。そのうち、ヒト生殖細胞系軽鎖フレームワーク領域は、ヒトκ軽鎖遺伝子に由来し、好ましくはヒト生殖細胞系軽鎖テンプレートIGKV3-11*01(SEQ ID NO:22で、抗体25G7に使用される)及びIGKV2D-29*01(SEQ ID NO:24で、抗体7B10に使用される)である。ヒト生殖細胞系重鎖フレームワーク領域は、ヒト重鎖に由来し、好ましくはヒト生殖細胞系重鎖テンプレートIGHV3-48*01(SEQ ID NO:21で、抗体25G7に使用される)及びIGHV1-2*02(SEQ ID NO:23で、抗体7B10に使用される)である。
【0262】
ヒト生殖細胞系テンプレート配列は、以下のように示される。
【0263】
ヒト生殖細胞系重鎖テンプレートIGHV3-48*01:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYSMNWVRQAPGKGLEWVSYISSSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(SEQ ID NO:21)
ヒト生殖細胞系軽鎖テンプレートIGKV3-11*01:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWP(SEQ ID NO:22)
ヒト生殖細胞系重鎖テンプレートIGHV1-2*02:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCAR(SEQ ID NO:23)
ヒト生殖細胞系軽鎖テンプレートIGKV2D-29*01:
DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSLLHSDGKTYLYWYLQKPGQPPQLLIYEVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCMQSIQLP(SEQ ID NO:24)
【0264】
マウス抗体のCDR領域を選択されたヒト化テンプレートに移植し、更にIgG定常領域と組換え、そして復帰変異を行い、一連のヒト化分子を得た。
ここで、hu7B10-VH-a、hu7B10-VH-b、hu7B10-VH-cには薬理学的修飾を加え、重鎖ヒト生殖細胞系テンプレートの第1位をQからEに変更した。2株の抗体のヒト化された重鎖可変領域配列は、それぞれSEQ ID NO:25~27、SEQ ID NO:31~33に示され、軽鎖可変領域配列は、それぞれSEQ ID NO:28~30、SEQ ID NO:34~36に示される。
【0265】
【化1】
【化2】
【0266】
ハイブリドーマクローン25G7の復帰変異は、表6のように設計された。
【表6】
【0267】
ハイブリドーマクローン7B10の復帰変異は、下記表7のように設計された。
【表7】
【0268】
例示的なヒト化抗体hu25G7(VH-c重鎖及びVL-a軽鎖を使用した)及びhu7B10抗体分子(VH-b重鎖及びVL-b軽鎖を使用した)は、そのそれぞれの完全な軽重鎖配列がSEQ ID NO:17~20に示される。
【0269】
hu25G7 HC
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYGMHWVRQAPGKGLEWVAFISSGSSIIYYADIVKGRSTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCTRGNKRGFFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVM HEALHNHYTQ KSLSLSLGK(SEQ ID NO:17)
hu25G7 LC
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCNASSSVSYMYWYQQKPGQAPRLLIYLTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQWRSNPPMLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:18)
hu7B10 HC
EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGLIHPNSDTTKFSENFKTRVTMTIDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCAKSKIITTIVARHWYFDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(SEQ ID NO:19)
hu7B10 LC
DIVLTQTPLSLSVTPGQPASISCKASQSVDYGGDSYMNWYLQKPGQPPQLLIYAASNLESGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCQHSNENPPTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:20)
【0270】
分子クローニング技術により、ヒト化抗体の配列を対応する発現ベクターに挿入し、HEK293細胞発現系による発現によって産生すると、対応するヒト化抗体を得ることができる。
【0271】
実施例8:ヒト化抗体活性データ
ヒト化抗体hu25G7及びhu7B10に実施例2~5に記載の体外活性検出を行い、試験結果は表8に示されている。
【0272】
結果から明らかなように、hu25G7及びhu7B10は、何れもアカゲサルIL-4Rに結合するのではなく、ヒトIL-4Rのみに結合するが、2つの抗体は、何れもヒトとアカゲサルの非相同性のエピトープに結合し、ヒトIL-4Rに特異的に結合できることが説明されている。2つの抗体は、何れもIL-4/IL-4R結合及び細胞内シグナル伝達経路を阻害することができるため、IL-4の活性化作用が中和され、TF-1細胞の増殖が抑制され、ここで、hu25G7の阻害及び抑制活性は、何れも参照抗体デュピルマブよりも顕著に優れている。
【0273】
【表8】

【0274】
実施例9:ヒト化抗体hu25G7の親和性成熟実験
酵母ディスプレイプラットホーム技術によりhu25G7抗体の親和性成熟を行い、hu25G7抗体を基に6つのCDRの親和性成熟についての酵母ライブラリーを設計して作製し、縮重プライマーを設計し、PCR及び相同組換え方法により設計された変異アミノ酸をhu25G7-scFv抗体ライブラリーに導入し、各ライブラリーの大きさは109程度であり、構築された酵母ライブラリーは、第2世代のシーケンス(GENEWIZ)の方法によりライブラリーの多様性を検証した。
【0275】
ビオチンで標識したヒトIL-4Rを利用してhu25G7-scFv酵母ライブラリーから高親和性の抗体をスクリーニングし、2ラウンドのMACSスクリーニング(ストレプトマイシン磁性ビーズ,Invitrogen)及び2ラウンドのFACSスクリーニング(BD FACSAriaTM FUSION)を経て、更に酵母モノクローナルを選択して培養して発現を誘導し、FACS(BD FACSCanto II)により酵母モノクローナルのヒトIL-4Rへの結合を検出し、野生型25G7抗体の親和性よりも高い酵母モノクローナルを選び出してシーケンスによって検証し、シーケンスされたクローンにアラインメント分析を行い、冗長配列を除去した後、非冗長配列を完全長ヒト抗体分子に変換し、哺乳動物細胞を発現した。親和性精製後の完全長抗体は、BIAcoreTM X-100(GE生命科学)により親和性測定を行い、ヒトIL-4Rに対して親和性が高い候補抗体分子を選択した。これらの抗体分子は、ヒトIL-4Rに対する親和性が野生型hu25G7抗体よりも高く、ここで、hu25G7-A抗体分子の親和性は、デュピルマブと同程度であるが、hu25G7-B分子の親和性は、デュピルマブより明らかに優れている。
【0276】
親和性成熟後に最終的に得られた抗体hu25G7-Aの軽鎖可変領域配列は、以下の通りである:
hu25G7-A LCVR
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVPYMYWYQQKPGQAPRLLIYLTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQWRAYPPMLTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:37)
【0277】
それに含まれるCDR配列は、表9に示される通りである。
【表9】

【0278】
抗体hu25G7-Bの軽鎖可変領域配列は、以下の通りである:
hu25G7-B LCVR
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASPGVPPLAWYQQKPGQAPRLLIYLASSRPSGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQWRSNPPMLTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:41)
【0279】
それに含まれるCDR配列は、表10に示される通りである。
【表10】

【0280】
上記軽鎖可変領域hu25G7-A LCVRはhu25G7軽鎖定常領域と組換え、hu25G7-A抗体軽鎖を得て、上記軽鎖可変領域hu25G7-B LCVRはhu25G7軽鎖定常領域と組換え、hu25G7-B抗体軽鎖を得た。
【0281】
hu25G7-VH-cアミノ酸残基を最適化し、重鎖可変領域hu25G7-A/B VH及びhu25G7-C VHを得た。
hu25G7-A/B VH:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYGMHWVRQAPGKGLEWVAFISSGSSIIYYADIVKGRSTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCTRGNKRGFFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:43)
hu25G7-C VH:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYGMHWVRQAPGKGLEWVAFISSGSSIIYYADIVKGRSTISRDNAKNTLYLQMSSLRAEDTAVYYCTRGNKRGFFDYWGQGTLVTVSS (SEQ ID NO:47)
【0282】
上記重鎖可変領域は、hu25G7重鎖定常領域と組換え、hu25G7-A/hu25G7-B及びhu25G7-C抗体重鎖を得ることができる。
【0283】
hu25G7-A及びhu25G7-Bの完全な重鎖配列は、SEQ ID NO:44に示される。
hu25G7 HC(即ち、hu25G7-A/hu25G7-B抗体重鎖)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYGMHWVRQAPGKGLEWVAFISSGSSIIYYADIVKGRSTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCTRGNKRGFFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(SEQ ID NO:44)
hu25G7-C抗体重鎖:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDYGMHWVRQAPGKGLEWVAFISSGSSIIYYADIVKGRSTISRDNAKNTLYLQMSSLRAEDTAVYYCTRGNKRGFFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(SEQ ID NO:48)
【0284】
各々の完全な軽鎖配列は、SEQ ID NO:45~46に示される。
hu25G7-A LC
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVPYMYWYQQKPGQAPRLLIYLTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQWRAYPPMLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:45)
hu25G7-B/hu25G7-C LC
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASPGVPPLAWYQQKPGQAPRLLIYLASSRPSGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQWRSNPPMLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:46)
【0285】
実施例10:ヒト化抗体の親和性成熟活性データ
実施例3及び実施例4に従ってhu25G7-A及びhu25G7-Bの2つの抗体を検出し、hu25G7-A及びhu25G7-Bの2つの抗体は、何れもIL-4/IL-4Rの結合及び細胞内シグナル伝達経路を阻害することができるため、IL-4及びIL-13の活性化作用が中和され、TF-1細胞の増殖が抑制され、各活性データは表11に示されている。
【0286】
【表11】

【0287】
IL-13の刺激によるTF-1細胞増殖の抑制実験において、hu25G7-A及びhu25G7-Bは、何れも有益な効果を示した。hu25G7-A及びhu25G7-Bは、デュピルマブと比べて、IL-4、IL-13のIL-4Rとの結合、及び前記結合による細胞の増殖への阻害において顕著に向上した効果を有する。
【0288】
実施例11:マウス皮膚炎に対するヒト化抗体の作用研究
マウス皮膚炎モデルの構築:IL-4/IL-4Rαトランスジェニックマウス(賽業模式生物研究中心(太倉)有限公司から購入された)を選択し、各マウスの腹部範囲が約3 cm×3 cmであり、1.5%のOXZアセトンオリーブ油溶液(アセトン:オリーブ油=4:1)100 μLを均一に塗布して感作させ、感作当日はD0(Day0)とした。7日目(Day7)に1%のOXZアセトンオリーブ油溶液20 μLをマウスの両耳(両面)に均一に塗布して攻撃し、72時間ごとに1回攻撃した。
【0289】
本実験において、正常対照群(感作及び攻撃誘発時にアセトンオリーブ油溶液のみを塗布した)、モデル対照群、hu25G7-A、hu25G7-B及びデュピルマブ群の合計5群を設置し、1群あたり3~5匹のマウスであり、投与群の投与量が50 mg/kgであり、投与方式が皮下投与であり、週2回投与した(具体的な情報は表12に示されている)。27日目にノギスにて耳の厚さを検出し、結果は図1に示される通りである。
【0290】
【表12】

【0291】
結果から明らかなように、モデル対照群のマウスは、耳に明らかな病理的損傷が現れ、耳の厚さが正常対照群よりも明らかに高い。hu25G7-A、hu25G7-B及びデュピルマブ群のマウスは、27日目に耳の厚さがモデル対照群よりも明らかに低い。即ち、hu25G7-A、hu25G7-B及びデュピルマブは、何れも皮膚炎の治療に適用可能であり、且つhu25G7-Bの効果は、デュピルマブよりも優れている。
【0292】
製剤調製の実施例
調製中に使用された機器及び結果の算出方法は、以下の通りである。
【0293】
SECサイズ排除クロマトグラフィー:
ゲル細孔の孔径のサイズと高分子試料分子のコイル寸法の間の相関関係に基づいて溶質を分離する分析方法である。
SECモノマーの含有量百分率=Aモノマー/A総*100%(Aモノマーは、試料中の主ピークモノマーのピーク面積であり、A総は、全てのピーク面積の和である)。
SEC測定用機器:アジレント1260、カラム:waters、XBrige BEH200Å SEC(300×7.8 mm 3.5 μm)。
【0294】
CEキャピラリーゲル電気泳動:
ゲルをキャピラリーに移して支持媒体として行われた電気泳動であり、且つ一定の電圧で試料分子量の大きさに基づいて分離する方法である。
非還元CEの純度百分率=A主ピーク/A総*100%(A主ピークは、試料中の主ピークのピーク面積であり、A総は、全てのピーク面積の和である)。
CE測定用機器:Beckman、型番plus800
【0295】
iCIEFイメージングキャピラリー等電点電気泳動:
タンパク質の等電点pIの違いによって分離する技術である。
iCIEF中性ピークの含有量百分率=中性ピーク面積/総面積*100%(総面積は、酸性ピーク、中性ピークと塩基性ピークの面積の和である)。
iCIEF測定に使用される機器のメーカーはsimple proteinであり、型番がmuariceである。
【0296】
粘度の測定:レオメーター(メーカーAnton Paar,型番MCR xx2)により粘度を測定し、測定温度が25度であり、試料を測定プレートに直接置いて測定した。
【0297】
浸透圧:凝固点法により浸透圧を測定し、凝固点降下値と溶液のモル濃度との正比例関係に基づき、感度の高い感温素子を採用し、溶液の凝固点を測定し、電気量により浸透圧に変換した。機器メーカーはルーザーLoserであり、型番がOM815である。
【0298】
実施例1. 緩衝系のスクリーニング
pH4.5~6.5の異なる緩衝系において、100 mg/mLのhu25G7-A抗体、0.1 mg/mLのポリソルベート80(PS80)を含む製剤を調製し、異なる緩衝系における抗体の安定性を調べた。具体的な処方は、下記の表のように設計された。
【0299】
【表13】

【0300】
試料を滅菌ろ過して瓶に入れ、それぞれ40℃の高温条件下での試料の外観、SECを調べ、データは下記の表に示されている。
【0301】
【表14】

【0302】
結果から明らかなように、SA/CA/AA緩衝液の外観が悪いため、緩衝系はHis-AAを選択した。His-AA系には、pH4.5~5.5の外観が比較的良く、pH6.5のHis-AA以外、各緩衝系間にSECは有意差がなく、pH5.0、6.0がやや優れている。従って、当該抗体の緩衝系は、pH4.5~6.0のHis-AAを選択した。
【0303】
実施例2. 抗体濃度のスクリーニング
pH5.0、5.5の20 mMのHis-AA緩衝系において、異なる濃度のhu25G7-A製剤を調製し、製剤の成分は、以下の通りである:
1) 20 mMのHis-AA pH5.0、100 mg/mLのhu25G7-A
2) 20 mMのHis-AA pH5.5、100 mg/mLのhu25G7-A
3) 20 mMのHis-AA pH5.0、150 mg/mLのhu25G7-A
4) 20 mMのHis-AA pH5.5、150 mg/mLのhu25G7-A
5) 20 mMのHis-AA pH5.0、139 mg/mLのhu25G7-A
6) 20 mMのHis-AA pH5.0、127 mg/mLのhu25G7-A
7) 20 mMのHis-AA pH5.0、120 mg/mLのhu25G7-A
8) 20 mMのHis-AA pH5.5、138 mg/mLのhu25G7-A
9) 20 mMのHis-AA pH5.5、122 mg/mLのhu25G7-A
【0304】
製剤の調製が完了した後、まず、一部の製剤試料を取って製剤の粘度を検出した。その後、試料を滅菌ろ過して瓶に入れ、40℃の高温条件下での試料の外観、SEC、非還元CE-SDS、iCIEFを調べ、hu25G7-A製剤の粘度及び安定性に対する異なる抗体濃度の影響を調べた。結果は、下記の表に示されている。
【0305】
【表15】

【0306】
【表16】

【0307】
結果から明らかなように、異なる抗体濃度間の外観、SEC、CE、iCIEFは、有意差がなく、即ち、pHが5.0又はpH5.5のHis-AA緩衝液には、抗体濃度の製剤安定性への影響が大きくないが、抗体濃度が高いほど、製剤の粘度が大きくなり、pH5.0の緩衝液には、抗体濃度が100 mg/mLである場合、粘度が14 mPa.s程度であり、抗体濃度が120 mg/mLである場合、粘度が22 mPa.s程度である。
【0308】
実施例3. 粘度調整剤のスクリーニング
20 mMのHis-AA(pH5.0)緩衝液において、抗体濃度が120 mg/mLであり、異なる粘度調整剤を含むhu25G7-A製剤を調製した。粘度を評価指標として、製剤の粘度に対する異なる粘度調整剤の影響を調べた。皮下製剤の等張性に関する要求を満たすために、各粘度調整剤はブランク粘度調整剤の浸透圧270 mosm/kgで製剤に加えられ、その効果が調べられた。具体的な結果は、下記の表に示されている。
【0309】
【表17】

【0310】
結果から明らかなように、プロリン以外、NaCl、MgCl2、CaCl2、KCl、CH3COONa、Na2SO4、NaI、NaF、NaSCN、Arg-Hcl、Lys(リジン)及びHis(ヒスチジン)は、対応する最大濃度で、何れも製剤の粘度を顕著に低下させる作用を有する。そのうち、Arg-HCl、MgCl2、CaCl2、NaF、NaSCN及びヒスチジンは効果が比較的優れており、好ましくはArg-HCl、MgCl2、CaCl2及びヒスチジンを粘度調整剤とする。
【0311】
実施例4. 高濃度製剤の粘度に対する粘度調整剤の影響
粘度調整剤の効果を試験するために、pH5.0の20 mMのHis-AA緩衝液において、hu25G7-A抗体濃度が150 mg/mLのHu25G7-A製剤を調製し、具体的な成分は、以下の通りである:
1)粘度調整剤を含まない(N/A)
2)85 mMのMgCl2
3)148 mMのCaCl2
4)93 mMのヒスチジン
【0312】
粘度を評価指標として、高濃度製剤の粘度に対する異なる補助材料の影響を調べ、結果は下記の表に示されている。
【表18】

【0313】
結果から明らかなように、抗体濃度が150 mg/mLである場合、MgCl2、CaCl2及びヒスチジンは、製剤の粘度を20 mPa.s以下に低下させることができ、粘度低下作用が良い。
【0314】
実施例5. 製剤安定性に対する粘度調整剤の影響
pH5.0の20 mMのHis-AA 緩衝系において、Hu25G7-A抗体濃度が150 mg/mLで、異なる濃度の補助材料を含む製剤を調製し、製剤の熱安定性(40℃で17日間放置した)に対する異なる濃度の補助材料の影響を調べた。実験設計及び結果は、下記の表に示されている。
【0315】
【表19】


【表20】

【0316】
結果から明らかなように、MgCl2、Arg-HCl、NaCl及びヒスチジンは、製剤安定性への影響が比較的小さく、そのうち、MgCl2、Arg-HCl、NaCl及びヒスチジンを含む製剤の安定性は、CaCl2を含む製剤よりも優れており、CaCl2群は、高温条件下でCE低下幅が他の製剤試料よりも大きく、MgCl2、Arg-HCl及びヒスチジンを含む製剤の安定性は、何れも良好であるので、MgCl2、Arg-HCl及びヒスチジンが好ましい。
【0317】
実施例6. 粘度調整剤の製剤安定性への影響の総合評価
pH5.0の20 mMのHis-AA緩衝液において、0.1 mg/mLのPS80、150 mg/mLのHu25G7-A及び粘度調整剤を含む製剤を調製し、ここで、15日間振とうした試料中のPS80の濃度が1 mg/mLであり、Hu25G7-A製剤の粘度及び安定性に対する異なる補助材料の影響を調べた。実験設計は、以下の通りである。
1) N/A(粘度調整剤を含まない)
2) 90 mMのMgCl2
3) 120 mM のArg-HCl
4) 90 mMのヒスチジン
【0318】
製剤の調製が完了した後、まず、一部の製剤試料を取って製剤の粘度を検出した。その後、試料を滅菌ろ過して瓶に入れ、それぞれ40℃の高温、繰り返し凍結融解(-35℃~4℃)、振とう(25℃,300 rpm)の条件下での試料の外観、SEC及び非還元CEを調べ、製剤の粘度及び安定性に対する異なる補助材料の影響を評価した。結果は、下記の表に示されている。
【0319】
【表21】


【表22】

【0320】
結果から明らかなように、
補助材料である粘度調整剤を加えた後、外観に乳白光が現れたが、各補助材料間に差がなく、製剤に0.1 mg/mLのPS80が含まれる場合、粘度調整剤を含む群は、1日間振とうした後、外観に粒子が現れた。しかし、PS80が1 mg/mLである場合、15日間振とうした後、外観が依然として透明であった。
【0321】
40℃のSEC結果から明らかなように、粘度調整剤を加えた後、SECモノマー含有量がやや低下したが、各群の試料間に有意差がなく、ここで、Arg-HCl試料群及びヒスチジン試料群は比較的良く、ヒスチジン試料は安定性が最も良い。40℃のCE結果から明らかなように、粘度調整剤を加えた後、CEがやや低下したが、各補助材料間に差が大きくない。
【0322】
実施例7. 粘度調整剤の濃度のスクリーニング
pH5.0の20 mMのHis-AA緩衝系において、異なるHu25G7-A抗体濃度及び粘度調整剤を含む製剤を調製し、製剤の粘度を調べた。実験設計及び結果は、下記の表に示されている。
【0323】
【表23】

【0324】
結果から明らかなように、粘度調整剤であるHis、MgCl2及びArg-HClの濃度を向上させることで、製剤の粘度を明らかに低下させることができる。
【0325】
実施例8. 製剤の安定性試験
製剤の外観を向上させるために、製剤中の塩基性アミノ酸(粘度調整剤)の添加量を低減することを考慮し、以下のような製剤試料を調製した:
1. pH5.0の20 mMのHis-AA、30 mMのヒスチジン、0.8 mg/mLのPS80、41.8 mg/mLのスクロース、120 mg/mLの抗体Hu25G7-Aであり、当該試料中のヒスチジンの最終的含有量は50 mMである。
2. pH4.8の20 mMのHis-AA、87 mMのヒスチジン、0.8 mg/mLのPS80、150 mg/mLの抗体Hu25G7-Aである。
3. pH5.0の20 mMのHis-AA、100 mMのヒスチジン、0.8 mg/mLのPS80、150 mg/mLの抗体Hu25G7-Aである。
4. pH5.0の20 mMのHis-AA、120 mMのアルギニン塩酸塩、0.8 mg/mLのPS80、150 mg/mLの抗体Hu25G7-Aである。
【0326】
製剤の調製が完了した後、まず、一部の製剤試料を取って製剤の粘度を検出した。その後、試料を滅菌ろ過した後に瓶に入れ、それぞれ4℃、25℃での安定性を調べた。試料の外観、浸透圧、pH、SEC、非還元CE、iCIEFを検出し、異なる製剤試料の粘度及び安定性を評価し、結果は下記の表に示されている。
【0327】
【表24】

【0328】
【表25】

【0329】
結果から明らかなように、1~4番の製剤試料はpHドリフトが何れも0.1以内であり、緩衝能力が比較的良く、浸透圧が等張範囲にあり、且つ粘度が何れも20 mPa.s以内であり、1番の試料は、25度で3ヶ月放置した後、CE/iCIEFがやや低下し、4度で3ヶ月放置した後、外観が依然として透明であり、化学的安定性が有意に変化しなかった。1~4番の試料は、4℃で11ヶ月放置した後、外観が透明であり、且つSEC、iCIEF及びCE-SDSの検出結果が何れも安定的であるので、上記1~4番の製剤は何れも比較的安定的である。
【0330】
実施例9.糖濃度のスクリーニング
皮下製剤を開発し、注射による刺激性を減少するために、浸透圧を、等張に制御することが最も好ましいので、糖濃度をスクリーニングし、等張性糖濃度を決定した。pH5.0の50 mMのHis-AA、58 mg/mLのスクロース、0.8 mg/mLのPS80及び120 mg/mLのhu25G7-A抗体を含む製剤を調製し、凝固点法により浸透圧を3回測定した。
【0331】
【表26】

【0332】
結果から明らかなように、糖濃度が58 mg/mLである場合、浸透圧は約297 mosm/kgで、等張である。
【0333】
実施例10. 凍結乾燥プロセスのスクリーニング
pH4.9の25 mMのHis-AA、60 mg/mLのhu25G7-A、25 mg/mLのスクロース、0.2 mg/mLのPS80の製剤を調製し、滅菌ろ過し、3.4 mL/バイアルで充填し、下記の表の手順に従って凍結乾燥した。
【0334】
【表27】

【0335】
凍結乾燥後にボックスから取り出し、試料の外観は、白色ケークであり、見た目が膨らんでおり、陥没がなかった。約1.5 mLの注射用水で再溶解し、再溶解された試料の成分は、50 mMのHis-AA、120 mg/mLのhu25G7-A、50 mg/mLのスクロース、0.4 mg/mLのPS80で、pH 5.3であり、再溶解試料の各項目を検出した。結果から明らかなように、希釈凍結されて濃縮溶解された後に、再溶解溶液の各指標が良好である。
【0336】
【表28】

【0337】
実施例11. 製剤処方の最適化
50 mMのHis-AA緩衝液のpH、Hu25G7-A抗体の濃度及びPS80の濃度を変数としてDOE実験設計を行い、変数は、pHが4.5~5.5、PS80が0.4~1.2 mg/mL、Hu25G7-A抗体のタンパク質濃度が100~140 mg/mLであり、ソフトウェアJMPを適用して一連のhu25G7-A製剤処方を得て、処方には何れも58 mg/mLのスクロースが含まれ、その詳細は表29に示されている。40度の高温、振とう(300 rpm)、凍結融解実験(-35℃~4℃)を含めて、強制分解により、製剤の安定性を検出した。外観、粘度、SEC、非還元CE、iCIEFを評価指標として、結果は表30に示され、最小二乗法により結果の統計分析を行った。
【0338】
【表29】

【0339】
【表30】

【0340】
結果から明らかなように、5回凍結融解した後、各製剤は、外観が依然として透明である。
【0341】
各強制分解データをフィッティングし、ここで、粘度及び40度のCE、iCIEFの分解差分値のフィッティングが比較的良く、モデルが有効であり、結果は図2に示されている。PS濃度が0.8 mg/mLである場合、抗体濃度及びpHを横と縦の座標として、粘度、40度のCE/iCIEFの分解差分値を指標として等高線図をプロットし、粘度<30 cP、CE低下幅<3%、iCIEF低下幅<30%を限界として、製剤安定性の変化等高線図をプロットし、結果は図3に示されている。
【0342】
結果から明らかなように、タンパク質の濃度が低いほど、pHが低くなり、製剤の粘度が低くなり、pHが5.0である場合、CEの結果が最適であり、pHが5.1である場合、iCIEFの中性ピークが最適である。等高線図及び粘度の結果を合わせ、安定的な製剤は、抗体濃度100~140 mg/mL、0.4~1.2 mg/mLのPS80、pH4.5~5.5である。更に、抗体濃度が110~130 mg/mLであり、pHが4.85~5.45である場合、製剤はより安定的である。
【0343】
実施例12. 製剤安定性の検出
pH5.0の50 mMのHis-AA、120 mg/mLのhu25G7-A抗体、58 mg/mLのスクロース、0.8 mg/mLのPS80の製剤を調製し、滅菌ろ過し、瓶に入れた。その後、4℃での安定性実験を行い、結果は表31に示されている。
【0344】
【表31】

【0345】
結果から明らかなように、上述製剤は、4℃で4ヶ月放置した後、依然として安定的である。
図1
図2
図3
【配列表】
2023515423000001.app
【国際調査報告】