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特表2023-515424B型肝炎及びD型肝炎ウイルス感染を阻害するための方法及び組成物
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  • 特表-B型肝炎及びD型肝炎ウイルス感染を阻害するための方法及び組成物 図1
  • 特表-B型肝炎及びD型肝炎ウイルス感染を阻害するための方法及び組成物 図2
  • 特表-B型肝炎及びD型肝炎ウイルス感染を阻害するための方法及び組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】B型肝炎及びD型肝炎ウイルス感染を阻害するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230406BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230406BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20230406BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K45/00
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/113 130Z
C12N15/115 Z
A61P31/20
A61P31/14
A61K31/7105
A61K31/713
A61K31/7088
A61K31/7115
A61K31/712
A61K31/7125
A61K38/43
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022549282
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 CA2021050176
(87)【国際公開番号】W WO2021163796
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/979,442
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505092979
【氏名又は名称】レプリコール インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイヤン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ブーロン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブランシェ マチウ
(72)【発明者】
【氏名】ラボンテ パトリック
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA44
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
本開示は、カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DNAJB12、及び/又は微小管-アクチン架橋因子1の活性を阻害することによりHBV SVPの集合及び又は分泌に関与するタンパク質を阻害するための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DNAJB12、及び微小管-アクチン架橋因子1の少なくとも1つの活性を阻害する薬学上許容可能な小分子と、担体とを含む、B型肝炎又はD型肝炎感染症の治療のための組成物。
【請求項2】
前記小分子がオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが、カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DNAJB12、もしくは微小管-アクチン架橋因子1のmRNAの一部に相補的な、アンチセンスオリゴヌクレオチド、合成干渉RNA、又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
HBVサブウイルス粒子(SVP)の集合及び/又は分泌を阻害する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記小分子が、配列番号12、13又は17で示される配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記小分子が、配列番号5、6、10、12、13又は17で示される配列を有する合成干渉RNAである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記小分子が、配列番号5、6、10、12、13又は17で示される配列を含むガイドRNAを用いるCRISPR-Cas9である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが、修飾された核酸塩基を含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが一本鎖又は二本鎖である、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドがシュピーゲルマー又はアプタマーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホジエステル結合、糖、及び塩基において少なくとも1つの修飾を含む、請求項2~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、2’-O-メチル修飾、2’-アミノ修飾、2’-ハロ修飾、非環式ヌクレオチドアナログ、3’-及び/又は5’-キャップ、シトシン塩基の5’メチル化、並びにウラシル塩基の4’チオ化の少なくとも1つを含む、請求項2~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
配列番号1及び配列番号4からなる少なくとも1種の核酸ポリマーを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
治療を必要とする対象に、カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DNAJB12、及び微小管-アクチン架橋因子1の活性を阻害する有効量の薬学上許容可能な小分子を投与することを含む、B型肝炎又はD型肝炎感染症の治療のための方法。
【請求項15】
前記小分子がオリゴヌクレオチドである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドが、カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DnaJB12、カゼインキナーゼ1アイソフォームアルファ、コートマーサブユニットイプシロン、トランスデューシンベータ様タンパク質2、又は微小管-アクチン架橋因子1のmRNAの一部に相補的な、アンチセンスオリゴヌクレオチド、合成干渉RNA、又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、HBVサブウイルス粒子(SVP)の集合及び/又は分泌を阻害する、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記小分子が、配列番号12、13又は17で示される配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記小分子が、配列番号5、6、10、12、13又は17で示される配列を有する合成干渉RNAである、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記小分子が、配列番号5、6、10、12、13又は17で示される配列を含むガイドRNAを用いるCRISPR-Cas9である、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記オリゴヌクレオチドが、修飾された核酸塩基を含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記オリゴヌクレオチドが一本鎖又は二本鎖である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記オリゴヌクレオチドがシュピーゲルマー、アプタマー、miRNA、低分子干渉RNA(siRNA)又は低分子ヘアピンRNA(shRNA)である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホジエステル結合、糖、及び塩基において少なくとも1つの修飾を含む、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、2’-O-メチル修飾、2’-アミノ修飾、2’-ハロ修飾、非環式ヌクレオチドアナログ、3’-及び/又は5’-キャップ、シトシン塩基の5’メチル化、並びにウラシル塩基の4’チオ化の少なくとも1つを含む、請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
配列番号1及び配列番号4からなる少なくとも1種の核酸ポリマーを投与することを更に含む、請求項14~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
患者におけるHBVサブウイルス粒子(SVP)の集合及び/又は分泌を阻害するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年2月21日に出願された米国仮出願第62/979,442号、及び2020年9月16日に出願された米国仮出願第63/078,939号の優先権を主張するものであり、これらはそれぞれ参照によりその全内容が本明細書に援用される。
技術分野
本開示は、HBVサブウイルス粒子(SVP)の集合及び分泌に関与する様々な新規タンパク質を標的とすることにより、B型肝炎ウイルス(HBV)又はD型肝炎ウイルス(HDV)感染を阻害するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ヘパドナウイルス科(hepadnaviridae)のエンベロープウイルスである。このウイルスは、知られている最大のパンデミックウイルス感染の原因であり、世界中で20億人以上が感染し、これらの個人のうち3億人以上が慢性肝臓感染症を患っている。毎年、HBV感染の影響によりおよそ87万人が死亡している。この疾患の治療の必要性を満たすために、HBVの治療のために免疫療法薬(ペグ化インターフェロン及びチモシンアルファ1など)、並びにHBV逆転写酵素の様々なヌクレオシ(チ)ドアナログ阻害剤(エンテカビル及びテノホビルジソプロキシルフマル酸塩など)を含むいくつかの薬物が承認されている。しかしながら、これらの薬物は、肝臓でのウイルスの複製を抑制することができるが、HBVサブウイルス粒子(SVP)の生成にはほとんど又は全く効果がない。これらのSVPは、循環しているB型肝炎表面抗原タンパク質(HBsAg)の大部分をなし、遺伝源として組み込まれたHBV DNAを使用して複製とは独立して生成され得る。循環しているHBsAgは、最も豊富な循環ウイルス抗原であり、HBV感染に対する免疫応答を阻害する上で重要な機能を有する。治療がない場合のHBsAgの持続的なクリアランスは、感染の免疫制御の真の回復及び正常な肝機能の回復(機能的治癒)の最良のマーカーとして広く認められており、開発中の新しい治療法の現在の目標である。従って、SVPの生成を効果的に標的とすることができるHBVのより効果的な治療が依然として必要とされている。
治療中にHBsAgの高いクリアランス率を達成し、HBV及びHDV感染症の機能的治癒を達成する能力(治療なしでのHDV RNAの持続的クリアランス)を示した開発中の唯一の現在の治療法は、核酸ポリマー(NAP)である。NAPは、ビリオン又はE型肝炎抗原などの他のウイルス抗原の産生又は分泌に影響を与えることなく、SVPの集合及び分泌を選択的に妨害する。しかしながら、今日まで、SVPの集合及び分泌の基礎となる分子機序又はHBV及びHDV感染における抗ウイルス効果を促進するNAPの標的についてはほとんど知られていない。
【発明の概要】
【0003】
HDVは、HBVのサテライト感染と考えられている欠損ウイルスであり、HBVゲノム由来のHBsAgがそのエンベロープを形成することを必要とする。HDVのHBsAgアイソフォーム組成は、HBV SVPの場合と同じであり、HBV SVP及びHDVの集合及び又は分泌に同様の機構が使用されていることを示している。従って、HBV SVP及びHDVの集合及び又は分泌に関与する標的を阻害することによりHBV及び又はHDV感染症に対してより効果的な治療を提供することが望ましいであろう。
【0004】
概要
本開示によれば、HBV感染又はHBV/HDV重複感染を阻害するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に次のタンパク質:カゼインキナーゼIアイソフォームデルタ、DNAJB12、又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数の機能を阻害する薬理学上許容可能な小分子を投与することを含む方法がここに提供される。
また、HBV感染又はHBV/HDV重複感染を阻害するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に次のタンパク質:カゼインキナーゼIアイソフォームデルタ、DNAJB12、又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数のmRNAの一部に相補的な薬理学上許容可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む方法も提供される。
また、HBV感染又はHBV/HDV重複感染を阻害するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に次のタンパク質:カゼインキナーゼIアイソフォームデルタ、DNAJB12、又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数のmRNAの一部に相補的な薬理学上許容可能な合成干渉RNA(siRNA)を投与することを含む方法も提供される。
また、HBV感染又はHBV/HDV重複感染を阻害するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に次のタンパク質:カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DNAJB12又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数のmRNAの一部に相補的な薬理学上許容可能なCRISPR関連エンドヌクレアーゼ及びガイドRNA(gRNA)を投与することを含む方法も提供される。
また、次のタンパク質:カゼインキナーゼIアイソフォームデルタ、DNAJB12又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数の機能を阻害する薬理学上許容可能な小分子を含む組成物も提供される。
また、次のタンパク質:カゼインキナーゼIアイソフォームデルタ、DNAJB12又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数のmRNAの一部に相補的な薬理学上許容可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む組成物も提供される。
また、次のタンパク質:カゼインキナーゼIアイソフォームデルタ、DNAJB12又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数のmRNAの一部に相補的な薬理学上許容可能な合成干渉RNA(siRNA)を含む組成物も提供される。
また、HBV感染又はHBV/HDV重複感染を阻害するための組成物であって、次のタンパク質:カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DNAJB12又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数のmRNAの一部に相補的な薬理学上許容可能なCRISPR関連エンドヌクレアーゼ及びガイドRNA(gRNA)を含む組成物も提供される。
【0005】
一実施形態では、前記小分子はオリゴヌクレオチドである。
更なる実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DNAJB12又は微小管-アクチン架橋因子1のmRNAの一部に相補的な、アンチセンスオリゴヌクレオチド、合成干渉RNA又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼ及びガイドRNA(gRNA)である。
【0006】
一実施形態では、前記小分子は、配列番号12、13又は17で示される配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
代替実施形態では、前記小分子は、配列番号5、6、10、12、13又は17で示される配列を有する合成干渉RNAである。
追加の実施形態では、前記小分子は、配列番号5、6、10、12、13又は17で示される配列を含むガイドRNAを用いるCRISPR-Cas9である.
追加の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、修飾された核酸塩基を含む。
補足の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは一本鎖又は二本鎖である。
別の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドはシュピーゲルマー(Speigelmer)又はアプタマーである。
【0007】
一実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、そのホスホジエステル結合、その糖、及びその塩基に少なくとも1つの修飾を含む。
別の実施形態では、前記オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、2’-O-メチル修飾、2’-アミノ修飾、2’-ハロ修飾、非環式ヌクレオチドアナログ、3’-及び/又は5’-キャップ、そのシトシン塩基の5’メチル化、並びにそのウラシル塩基の4’チオ化の少なくとも1つを含む。
追加の実施形態では、本明細書に包含される組成物は、配列番号1及び配列番号4からなる少なくとも1つの核酸ポリマーを更に含む。
別の実施形態では、本明細書に定義される方法及び組成物は、HBVサブウイルス粒子(SVP)の集合及び/又は分泌を阻害する。
【0008】
更に、本明細書に定義される組成物のいずれかを投与することを含む、患者におけるHBVサブウイルス粒子(SVP)の集合及び/又は分泌を阻害する方法が提供される。
更に、患者におけるHBVサブウイルス粒子(SVP)の集合及び/又は分泌を阻害するための、本明細書に定義されるような組成物の使用が提供される。
更に、治療を必要とする対象に、カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ、DNAJB12、及び微小管-アクチン架橋因子1の活性を阻害する薬学上許容可能な小分子の有効量を投与することを含む、B型肝炎又はD型肝炎感染症の治療のための方法が提供される。
また、患者におけるHBVサブウイルス粒子(SVP)の集合及び/又は分泌を阻害するための、本明細書に定義されるような組成物の使用も提供される。
ここで、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、REP 2139とREP 2147との選択的タンパク質標的相互作用についてのボルケーノプロットを示す。各点は、REP 2139又はREP 2147と相互作用するタンパク質を表す。色の薄い点は、p<0.05の場合の選択比率が>2(REP 2139:REP 2147)のタンパク質を示す。色の濃い点は、識別された6つの候補を示す。
図2図2は、REP 2139とREP 2179との選択的タンパク質標的相互作用についてのボルケーノプロットを示す。各点は、REP 2139又はREP 2179と相互作用するタンパク質を表す。色の薄い点は、p<0.05の場合の選択比率が>2(REP 2139:REP 2179)のタンパク質を示す。色の濃い点は、識別された6つの候補を示す。
図3図3は、実施例1に記載されるようなNAP相互作用の標的のshRNA媒介ノックダウンの存在下でのHepG2.2.15細胞におけるHBsAg分泌の阻害を示す。モック、shRNAなし;CSNK1D、カゼインキナーゼ1アイソフォームデルタ;CopE、コートマーサブユニットイプシロン;CSNK1A1、カゼインキナーゼ1アイソフォームアルファ1;TBL2、トランスデューシン(transducing)ベータ様タンパク質2;MACF1、微小管-アクチン架橋因子1;CopA、コートマーサブユニットアルファ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本開示によれば、以下、次のタンパク質:カゼインキナーゼIアイソフォームデルタ、DNAJB12、又は微小管-アクチン架橋因子1のうち1つ又は複数の機能を阻害する小分子を使用することにより、HBV感染又はHBV/HDV重複感染を阻害するための方法が提供される。
【0011】
HBVは世界中で3億人を苦しめており、HBV感染に起因する合併症により毎年推定87万人が死亡している。いくつかの抗ウイルス治療の使用が承認されているが、これらには、治療を受けている患者のごく一部を除いて、感染を永続的に制御し得る治療上有効な免疫応答を引き出すことができるものがない。
HBV感染は、以下を含む様々な異なる粒子の生成をもたらす:1)HBVコア抗原タンパク質(HBcAg)から構築される、HBV表面抗原(HBsAg)で覆われたウイルスカプシドを含む感染性HBV成熟ビリオン(又はデーン粒子)、2)ビリオン/カプシド相互作用の欠陥の結果である非感染性フィラメント並びに3)脂質、コレステロール、コレステロールエステル及びHBV表面抗原(HBsAg)から構成される高密度リポタンパク質様粒子である非感染性球状サブウイルス粒子(又はSVP)。生成された1ウイルス粒子ごとに、10,000~100,000SVPが血液中に放出される。従って、SVP(及びそれらが運ぶHBsAgタンパク質)は、血液中で圧倒的多数のウイルスタンパク質を示す。HBV感染細胞は、HBV e-抗原(HBeAg)と呼ばれるプレコアタンパク質の可溶性タンパク質分解産物も分泌する。
【0012】
HDVは、欠損ウイルスであり、共存するHBVの感染に由来するHBsAgを使用してそのウイルスエンベロープを形成し(Taylor、 2006、 Virology、 344: 71-76)、従って、HDV感染は、HBV感染を随伴する対象でのみ発生し得る。無症候性HBV保有者及び慢性HBV関連肝臓疾患におけるHDV重複感染の発生率は、HBV感染の発生率が低い国では低いが、HBV感染の発生率が高い国のHBV感染者では重大な合併症であり、肝臓疾患から肝硬変への進行速度を加速する可能性がある。HDVウイルス(HDV virus)を直接標的とする特定の承認された薬剤がなく、承認されたHBV治療薬との併用療法に対する患者の応答もHBV単独感染患者よりも劣っているため、HBV感染において満たされていない医療の必要性はHBV/HDV重複感染者において更に差し迫っている。
【0013】
現在承認されているHBV治療としては、インターフェロン-α又はチモシンα1に基づく免疫療法、及びヌクレオシド/ヌクレオチドアナログによるHBVポリメラーゼの阻害によるウイルス産生の抑制が挙げられる。HBVポリメラーゼ阻害薬は、感染性ビリオン産生の減少に有効であるが、HBsAgの減少に対する効果はほとんど若しくは全くなく、又は限られた数の患者における長期治療でHBsAgを極めて緩徐に減少させるだけである(Fungら、 2011、 Am. J. Gasteroenterol.、 106: 1766-1773; Reijndersら、 2011、 J. Hepatol.、 54: 449-454;)。HBVポリメラーゼ阻害薬の主な効果は、感染性ビリオンに存在する部分的二本鎖DNAへのプレゲノムウイルスmRNAの変換をブロックすることである。インターフェロンに基づく免疫療法は、感染性ウイルスの減少と血液からのHBsAgの除去を達成することができるが、治療を受けた対象のごく一部で可能であるにすぎない。
HBsAgは、HBV感染及びHBV/HDV重複感染において重要な役割を果たす。ビリオン形成に不可欠な構造成分としての役割とは別に、HBsAgはまた、ウイルスカプシド及びゲノムを欠いた、主にHBsAgを血液中に送達する働きをするように見えるサブウイルス粒子(SVP)の形で感染者の血液中に大量に放出される。SVPは感染細胞からデーン粒子の10,000~100,000倍過剰に分泌され、これにより、SVPはHBsAg抗体(抗HBs)を効果的に隔離することができるため、血液中のHBV又はHDVウイルスは適応免疫による認識を逃れることができる。いくつかの研究はまた、HBsAgがHBV感染に対する適応免疫応答及び自然免疫応答の活性化を直接ブロックすることを示唆している(Vaillant、 ACS Infectious Diseases 2020、12月10日に印刷前にオンラインで公開)。ヒトHBV感染におけるこの機能性及び免疫療法薬の活性に対するその影響の存在並びにHBV/HDV重複感染におけるこれらの抗ウイルス効果の追加の適用性は、米国公開特許第2014/0065102号明細書で従前に記載されており、これは参照により全体として本明細書に援用される。
【0014】
慢性HBV感染症のもう1つの重要な特徴は、HBVミニ染色体とも呼ばれる共有結合性閉環状DNA(cccDNA)と、染色体に組み込まれたHBV DNAとからなる感染細胞の核にHBV遺伝情報の安定した貯蔵庫を確立することである。cccDNAは、核内に複数のコピーで存在し、全てのウイルスタンパク質をコードするmRNAを生成するための転写鋳型として働き、新しいビリオンを生成するための未成熟ゲノム(プレゲノムRNA)として働く。組み込まれたHBV DNAは、プレゲノムRNAを生成することができないため、ビリオンを生成することができない。しかしながら、ウイルス複製を直接標的とする抗ウイルスアプローチの影響を受けない独立したHBsAg(及びSVP)供給源として存在し得る。
【0015】
用語「オリゴヌクレオチド(ON)」とは、リボ核酸(RNA)及び/又はデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマー又はポリマーを指す。この用語には、修飾された核酸塩基(5’メチルシトシン及び4’チオウラシルを含む)、糖及び共有結合性ヌクレオシド間(主鎖)結合からなるON、並びに同様に働く非天然部分を有するONが含まれる。そのような修飾された又は置換されたONは、例えば、免疫反応性の低下、細胞取り込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強(アンチセンスON、siRNA及びshRNAに関して)及び/又はヌクレアーゼ媒介分解に対する安定性の増加などの望ましい特性のため、天然形態よりも好ましい場合がある。ONは、二本鎖である場合もある。また、ONには、アンチセンスオリゴヌクレオチド、シュピーゲルマー、アプタマー及びmiRNAなどの一本鎖分子だけでなく、低分子干渉RNA(siRNA)又は低分子ヘアピンRNA(shRNA)などの二本鎖分子も含まれる。
ONは、様々な修飾、例えば、安定化修飾を含むことができ、従って、そのホスホジエステル結合及び/又はその糖、及び/又はその塩基に少なくとも1つの修飾を含むことができる。例えば、ONは、限定されるものではないが、1若しくは複数の修飾を含み得るか、又は列挙される修飾を含む全ての結合若しくは糖若しくは塩基を含むように完全に修飾され得る。修飾された結合には、ホスホロチオエート結合及びホスホロジチオエート結合が含まれ得る。修飾された結合は有用であるが、ONには、ホスホジエステル結合が含まれ得る。追加の有用な修飾には、限定されるものではないが、2’-O-アルキル修飾(2’-O-メチル修飾など)、2’ O-メトキシエチル(2’MOE)、2’-アミノ修飾、2’-ハロ修飾(2’-フルオロなど)を含む糖の2’位での修飾;非環式ヌクレオチドアナログが含まれる。ロックド核酸などの他の2’修飾も当技術分野では知られており、使用することができる。具体的には、ONは、全体に修飾された結合を有するか、又は各結合が修飾されており(例えば、ホスホロチオエート);3’-及び/又は5’-キャップを有し;末端3’-5’結合を含み;そのONは、リンカー(単数又は複数)によって結合された2つ以上のON配列からなるコンカテマーであるか、又はそれを含む。塩基修飾には、シトシン塩基の5’メチル化(5’メチルシトシン又はヌクレオチドに関しては、5’メチルシチジン)及び/又はウラシル塩基の4’チオ化(4’チオウラシル又はヌクレオチドに関しては、4’チオウリジン)が含まれ得る。オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート結合、2’リボース修飾(2’O-メチル化など)及び修飾塩基(5’メチルシトシンなど)を有するなど、合成条件に化学的適合性がある場合には、化学的適合性がある異なる修飾結合を組み合わせることができる。更に、ONは、これらの異なる修飾の全てで完全に修飾されていてよい(例えば、各結合がホスホロチオエート化され、各リボースが2’修飾され、各塩基が修飾されている)。
【0016】
本明細書に包含されるように、用語「核酸ポリマー」又はNAPは、核酸標的とハイブリダイズするか、又は特定のタンパク質への結合をもたらす配列特異的二次構造を採用するための、配列特異的機能がない一本鎖ONである。NAPの生化学的活性は、存在するヌクレオチドの特定の順序に由来する特定の二次/三次ON構造を必要とする、ONのToll様受容体認識、標的核酸とのハイブリダイゼーション又はアプタマー相互作用に依存しない。NAPは、米国特許第8,067,385号、米国特許第8,008,270号、米国特許第8,513,211号、及び米国特許第8,008,269号に記載されているように、塩基及び又は結合及び又は糖修飾を含むことができる。NAPは、抗ウイルス活性を有するためにホスホロチオ化を必要とし、抗ウイルス効果を発揮するために長さ(一般には、20ヌクレオチドを超える)を必要とする。
一本鎖又は二本鎖のアンチセンスON(例えば、合成干渉RNA(siRNA)又は低分子ヘアピンRNA(shRNA))は、アンチセンスONと目的のmRNAの標的部分の配列との特異的ハイブリダイゼーションによって目的のメッセンジャーRNA(mRNA)又はマイクロRNA(miRNA)の特定の領域を標的とするように設計される。アンチセンスONが細胞に導入されると、mRNA上に又はmiRNAとの二本鎖領域が形成され、この特定のmRNA又はmiRNAはRNAse Hにより分解に向かう。siRNAが細胞に導入される(又はshRNAが細胞内で発現される)と、アンチセンス鎖(又はガイド鎖)はRISC(RNA誘導サイレンシング複合体)に組み込まれる。これは、標的mRNA上の相補領域とのガイド鎖標的化ハイブリダイゼーションを使用して、アルゴノートと呼ばれるRISCの触媒成分による切断を行う。アンチセンス及びsiRNAの同定、設計及び最適化は当技術分野で非常に明確に定義されており、標的mRNAの配列のみを必要とする。
【0017】
CRSPR-Cas9は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Cas9タンパク質)の働きと、目的の遺伝子を標的とするように操作されたガイドRNA(gRNA)を使用する。gRNAは、協力して、Cas9活性を目的の遺伝子に向け、欠陥配列にスプライシングし、従って、機能的mRNAの転写を永久に妨げる。CRISPR-Cas9の同定、設計及び最適化は当技術分野で非常に明確に定義されており、標的遺伝子の配列のみを必要とする。
【0018】
オリゴヌクレオチド(oliognucleotide)アプタマーは、これらのオリゴヌクレオチド(olognucleotide)によって形成される三次元構造(three-dimensonal structure)のために、配列特異的且つ選択的なタンパク質相互作用を採用するオリゴヌクレオチドである。アプタマーは、合理的に設計するか、又は試験管内進化法(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)(SELEX法)及び目的のタンパク質標的を使用して縮重ライブラリから選択することができる。アプタマーはまた、シュピーゲルマーとしても知られるヌクレアーゼ分解(degregation)に対して高い耐性を有するL-リボースヌクレオチドから構築することもできる。アプタマーはまた、オリゴヌクレオチドについて上記のように(descrived above)修飾して、タンパク質相互作用の特異性及び/又は強度を最適化し、それらの医薬適合性を最適化する(oprtmize)ことができる。
本開示は、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【実施例
【0019】
実施例I
NAPの標的インタラクターの同定
NAPの抗ウイルス活性の生物学的基礎は、これらのポリマーと両親媒性アルファヘリックスの露出した疎水性表面との相互作用である(Vaillant、 2019、 ACS Inf Dis、 10: 675-687)。現在のリードNAPは、REP 2139であり(表1参照;配列番号1)、配列(2’OMe アデノシン、2’OMe-5-Me シチジン)20を有する完全にホスホロチオエート化されたオリゴヌクレオチドである。このNAPは、HBeAg陽性及び陰性の慢性感染症及びHBV/HDV重複感染症において、安全で、忍容性が高く且つ複数のHBV遺伝子型の感染に対して活性が強いことが示されている(Vaillant、 2019、 ACS Inf Dis、 10: 675-687)。ポリマーの長さに沿った2’OMe修飾の存在は、抗ウイルス活性に影響を与えない(Al-Mahtabら、 2016、 PLoS ONE、 11: e0156667、 Roehlら、 2017、 Mol Ther Nuc Acids、 8: 1-12)が、ポリマーの長軸に沿って水和を増加させ、水溶性を改善し、標的外相互作用を減少させる。NAP REP 2147(配列番号2)は、不活性なREP 2139の非ホスホロチオエート化対応物である(表1参照)。NAP REP 2179(配列番号3)は、REP 2139の20量体対応物であり、これもまた不活性である(Blanchetら、 2019、 Antiviral Res.、 164: 97-105)。これら3つのNAPは、SVPの集合及び又は分泌に関与する宿主タンパク質標的を同定するための生物学的に検証された選択ツールを提供する。
【0020】
【表1】
【0021】
HepG2.2.15細胞は、ビリオン及びSVPの産生を再現するHBV感染症のin vitroモデルであり、NAPの生物学的応答はin vivo研究及びヒト研究の両方で観察されたものに匹敵する(Al-Mahtabら、 2016、 PLoS ONE、 11: e0156667、 Bazinetら、 2017、 Lancet Gastro Hepatol、 12: 877-889; Quinetら、 2018、 Hepatol、 67: 2127-2140; Blanchet at al.、 2019、 Antiviral Res、 164: 97-105)。これらの細胞から細胞溶解物を調製し、ビオチン化したREP 2139、REP 2147及びREP 2179で三反復でプローブした。各NAPについて、結合したタンパク質を質量分析により同定した。次に、これら3つのタンパク質サブセットに選択法を適用して、REP 2147よりもREP 2139に選択的に結合するタンパク質及びREP 2179よりもREP 2139に選択的に結合するタンパク質を同定した。これらの分析についてのボルケーノプロットを図1及び2に示している。これらの図は、相対濃縮比(x軸)とこの濃縮の統計的有意性をプロットしたものである。この選択法によりREP 2147よりもREP 2139に選択的に結合する299のタンパク質候補とREP 2179よりもREP 2139に選択的に結合する82の候補を同定した。
【0022】
これらの同定されたタンパク質から、REP 2147よりもREP 2139且つREP 2179よりもREP 2139によって結合されることについて最大の選択性を示し、これまでに特徴付けられたDNA/RNA結合活性がない最終候補を同定した。これらのタンパク質を以下のように同定した:
1.微小管に基づく小胞輸送の調節に関与するカゼインキナーゼIアイソフォームデルタ(CSNK1D)
2.DNAJB12(これまで特徴付けられていなかった機能を備えたER常在性シャペロン)
3.小胞形成及びERからゴルジ体への逆行性輸送に関与するコートマーサブユニットイプシロン(COPE)、
4.微小管に基づく小胞輸送の調節に関与するカゼインキナーゼIアイソフォームアルファ(CSNK1A)
5.トランスデューシンベータ様タンパク質2(TBL-2)_(ERストレス応答のシグナル伝達に関与するER常在性内在性膜タンパク質)
6.微小管-アクチン架橋因子1(MCAF-1)(細胞周辺での細胞骨格相互作用に関与するタンパク質)
上記タンパク質とNAPとの相互作用は全て、NAPとの抗ウイルス活性で観察されたものと同じ構造結合関係を示している。HBVに対してin vitro及びin vivoでNAPについて確立された構造機能関係に従う新規NAPインタラクターを同定したのはこのスクリーニングアプローチが初めてであった。これらの標的は全て、細胞内タンパク質の形態形成又は輸送及び分泌のいずれかに関与しており、HBV SVPの形態形成及び分泌を阻害するNAPの標的となるタンパク質の候補である。従って、これらの新規タンパク質は全て、SVPの集合及び分泌を阻害するための適当に特徴付けられた潜在的な治療標的を表している。前記タンパク質の機能の阻害(小分子に基づくアプローチを使用)又は前記タンパク質の産生の減少(アンチセンスオリゴヌクレオチド又は合成干渉RNAを使用)を含むHBV感染症の治療のための方法及び組成物は、HDV感染症に対して等しく効果的である。
【0023】
実施例II
NAPの標的インタラクターの検証
SVPの集合及び又は分泌における上記で同定されたNAPインタラクターの各々の潜在的な役割を調べるために、HepG2.2.15細胞でのそれらの発現を、shRNAアプローチを使用してノックダウンした。NAP相互作用がサイズ選択的ではない外れ値のタンパク質(COPA)を陰性対照として選択した。
レンチウイルスの構築物を、ショートヘアピンRNA(shRNA)の発現用ベクターとして使用した。psPAX2、pMD2.G、及びpRSV-REVプラスミドはAddgeneから購入した。特定のノックダウンについての標的配列(表2)は、MISSION(登録商標)オンラインツール(https://www.sigmaaldrich.com)を使用して確認し、レンチウイルスプラスミドMISSION pLKO.1-puroにクローニングした。レンチウイルスベクターは、パッケージングプラスミドpsPAX2、pMD2.G、及びpRSV-REVとともに、HEK293T細胞のpLKO.1-puro誘導体でのトランスフェクションによって作出した。これらのトランスフェクト細胞からの上清を、トランスフェクション後2日目に回収し、清澄化し、濾過した(0.45μm)。
【0024】
【表2】
【0025】
HepG2.2.15細胞は、5%CO2の加湿インキュベーター内で37℃にて、10%ウシ胎仔血清、1%グルタミン及び0.1%ゲンタマイシンを添加したウィリアム培地E(WME)で維持した。トランスフェクションの24時間前に、細胞をトリプシン処理し、ウェルあたり1×105細胞の密度で24ウェルプレートに播種した。HepG2.2.15標的細胞に8μg/mlのポリブレン(Sigma)の存在下でレンチウイルス構築物を16時間接種し、更に3日間培養した。対照として、モック細胞にshRNA配列を含まないレンチウイルスベクター(pLKO.1 SHC001又はSHC002)を形質導入した。次に、細胞を回収し、溶解し、RT-qPCR、BCA法によるプロテオーム定量及びHBsAg ELISAにより分析した。細胞溶解物中及び/又は上清中のHBsAgレベルは、Genetic Systems(商標)HBsAg EIA 3.0(Biorad)を使用した酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定した。定量は、HepG2.2.15上清の希釈からの標準曲線を使用して行った。全ての結果を、BCAタンパク質アッセイによって決定された総細胞タンパク質に従って正規化した。
【0026】
これらの実験の結果により、HepG2.2.15細胞からのHBsAgの放出を阻害する3つのNAPインタラクターを同定した(図3)。これらのインタラクターは、カゼインキナーゼ1デルタ(CSNK1D)、DNAJB12及び微小管-アクチン架橋因子1(MCAF1)である。従って、小分子を使用してこれらのタンパク質の機能を直接妨害するか、又はアンチセンス若しくはsiRNAを使用してこれらのタンパク質のmRNAを分解するか、又はCRISPR-Cas9を使用してこれらのタンパク質の遺伝子を破壊するための方法は、当業者ならば簡単に導き出すことができる。アンチセンス、RNAi又はCRISPR-Cas9によるHBV及びHBV/HDV感染症の治療のための組成物及び方法は、上記で表2に記載されているような、CSNK1、DNAJB12若しくはMCAF-1の標的配列、又は当技術分野で周知の確立された方法を使用したこれらの標的の任意の他の適当なmRNA若しくは遺伝子配列の使用を含むことができる。
【0027】
本開示をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、それは更なる修飾が可能であり、本願は、当技術分野における既知の又は慣習的な実施の範囲内であり、且つ、前述の本質的な特徴に適用される可能性があり、且つ、添付の特許請求の範囲に従うような本開示からのそのような逸脱を含む任意の変形、使用、又は適合を包含することを意図することが理解される。
図1
図2
図3
【配列表】
2023515424000001.app
【国際調査報告】