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特表2023-515429多発性硬化症患者の亜集団の処置のためのマシチニブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】多発性硬化症患者の亜集団の処置のためのマシチニブ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20230406BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P25/00
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549333
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2021054164
(87)【国際公開番号】W WO2021165472
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20305163.6
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515084258
【氏名又は名称】エービー サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マウジー,アライン
(72)【発明者】
【氏名】マンスフィールド コリン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC82
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、それを必要とする患者の進行型多発性硬化症(MS)の処置に使用するための、マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに2年超の時間を有し、および/または発症からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに5年超の時間を有する、マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。特に、本発明は、それを必要とする患者の一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または非活動性二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMS)の処置に使用するための、マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに2年超の時間を有し、および/または発症からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに5年超の時間を有する、マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者の進行型多発性硬化症(MS)の処置に使用するためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、前記患者が、診断からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに2年超の時間を有するか、および/または発症からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに5年超の時間を有する、マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
前記患者が、診断からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに2年超の時間を有する、請求項1に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
前記患者が、発症からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに5年超の時間を有する、請求項1に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項4】
前記患者が、診断からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに2年超の時間を有し、発症からマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに5年超の時間を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
進行型MSが、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
進行型MSが、非活動性二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMS)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項7】
マシチニブの薬学的に許容される塩が、マシチニブメシル酸塩である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項8】
前記マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、経口投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
前記マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、約1mg/kg/日~約12mg/kg/日の範囲の用量、好ましくは約4.5mg/kg/日の用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項10】
前記マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、少なくとも12週間の間約4.5mg/kg/日の初回用量、その後約6mg/kg/日の用量で投与され、各用量の増大は、毒性により制御されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項11】
前記マシチニブが、第二選択処置として投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項12】
前記患者が、以前に投与された多発性硬化症の第一選択処置に応答しなかったか、または以前に多発性硬化症の第一選択処置を投与したにも関わらず疾患の不可逆的な進行を示した、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項13】
前記マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、少なくとも1つのさらなる薬学的活性剤と共に投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項14】
前記少なくとも1つのさらなる薬学的活性剤が、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アレムツズマブ、アザチオプリン、高用量ビオチン(MD1003)、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ダルファンプリジン、フマル酸ジメチル、ジロキシメルフマル酸エステル、エボブルチニブ(evobrutinib)、ファンプリジン、フィンゴリモド、グラチラマー酢酸塩、イブジラスト、免疫グロブリン、インターフェロン、たとえばインターフェロンベータ-1b、インターフェロンベータ-1a、またはペグインターフェロンベータ-1a、ラキニモド、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、ナタリズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オザニモド、ポネシモド、シンバスタチン、シポニモド、テリフルノミド、およびウブリツキシマブからなる群から選択される、請求項13に記載の使用のためのマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性硬化症の処置に関する。特に本発明は、進行型多発性硬化症の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系(CNS)の炎症性脱髄疾患である。多発性硬化症は、CNSに病変(場合によりプラークとも呼ばれる)をもたらすミエリンの喪失、過剰な数のアストログリア細胞、様々な度合いの軸索の病態、および進行型神経機能不全を特徴とする。上記神経機能不全は、特に運動障害(筋力の減少など)、感覚障害(暑さおよび冷たさ、触覚、刺痛の変化など)、平衡障害、視覚障害、および泌尿器の問題として顕在化し得る。平均約30歳(20~40歳)にて診断され、女性に主に発症する多発性硬化症は、若年および中年の成人における非外傷性神経性身体障害の主因であり、世界中で約250万人が罹患している。恐らくは、多発性硬化症は、その役割が未だ証明されていないウイルスなどの感染性作用物質を含む1つ以上の環境上の要因と遺伝子感受性の相互作用からもたらされる。特に、一部の患者では、多発性硬化症は、1つ以上の環境上の要因への曝露後の1つまたは複数のミエリン抗原に対する免疫応答の異常からもたらされ得る。
【0003】
現在、多発性硬化症(MS)は、2013年のMSの臨床試験での国際諮問委員会により定義された4つの型(場合により、疾患経過または表現型とも呼ばれる)を包有すると考えられている。この4つの型のMSは、clinically isolated syndrome(CIS)、再発寛解型多発性硬化症(RRMSまたはRR-MS)、二次性進行型多発性硬化症(SPMSまたはSP-MS)、および一次性進行型多発性硬化症(PPMSまたはPP-MS)である。clinically isolated syndrome(CIS)は、中枢神経系の炎症および脱髄により引き起こされる神経性の症状の最初のエピソードとして定義されており、後に、MSが発症してもよくまたは発症しなくてもよい。再発寛解型多発性硬化症(RRMS)は、最も一般的な型のMSであり、MS患者の約85%で起こり、新規の症状または症状の悪化(すなわち再発)といった明確に定義されたエピソード、およびその後の、部分的または完全な回復(すなわち寛解)の期間を特徴とする。RRMSは、通常、時間と共に二次性進行型多発性硬化症(SPMS)へと進行し、これは再発および寛解の発生を伴うか(活動性SPMS)または再発および寛解の発生を伴わない(非活動性もしくは無再発SPMS)経時的な症状の悪化および/または身体障害の蓄積を特徴とする。よって、RRMS患者の約50%が、10年以内にSPMSを発症し、約90%が25年以内にSPMSを発症することが推定されている。特に、患者の40%未満は、RRPMSからSPMSへ移行した後に再発(すなわち新規の症状または症状の悪化といった明確に定義されるエピソード)に苦しみ続ける。最後に、MS患者の約10~15%は、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)に罹患し、これは再発または寛解を伴うことなく、疾患の発症から症状の漸進的な悪化および/または身体障害の蓄積を特徴とする。
【0004】
現在定義されている型のMSから、2つの幅広いカテゴリーを区別することができる:再発、続いて寛解を呈し、主に炎症に関連するMS;ならびに再発および寛解を伴わずに漸進的に進行する、主に神経変性に関連するMS。本明細書中使用される場合、進行型多発性硬化症(進行型MS)は、進行型、非再発性の形態の多発性硬化症であり、MS患者の約60%を占める。
【0005】
現在、多発性硬化症は治癒しない。最も頻繁に処方される処置は、症状を管理すること、およびRRMSでは再発を管理し寛解をもたらすことを目的とする。疾患修飾療法(disease modifying therapy:DMT)もまた、利用可能であり、MSの活動性および進行を低減することを目的とする。よってDMTは、単に疾患の症状を軽減するのではなく、疾患の根底にある原因に影響を与える。しかしながら、多くのDMTは、有意な健康上のリスクを担持し、重篤な副作用に関連している。大部分の現在利用可能な疾患修飾療法(DMT)は、RRMSを標的とする。実際に、DMT(たとえばインターフェロンβ(INF-β)、グラチラマー酢酸塩、フマル酸ジメチル、またはナタリズマブ)は、主に、中枢神経系の炎症を低減することにより作用する。このようなDMTは、炎症よりも神経変性を特徴とする進行型MSを有する患者には適切ではない。一次性進行型MSでは、唯一FDAに認可された疾患修飾療法である、オクレリズマブがある。オクレリズマブを投与される患者は、処置されなかった患者よりも進行(すなわち悪化)する可能性がわずかに低い。二次性進行型MSでは、DMTは、活動性二次性進行型MSでのみ利用可能である。
【0006】
よって進行型多発性硬化症の処置が、依然として必要とされている。特に、進行型多発性硬化症、特にPPMSおよび非活動性SPMSにおいて経時的に起こる症状の漸進的な悪化および/または身体障害の蓄積を遅延または反転できる処置が必要とされている。
【0007】
よって本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するための、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、好ましくは2年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、好ましくは5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、それを必要とする患者の進行型多発性硬化症(MS)の処置に使用するための、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0009】
一実施形態では、上記患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物によるによる処置の開始までに、2年超の時間を有する。一実施形態では、上記患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有する。
【0010】
一実施形態では、上記患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0011】
一実施形態では、上記患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0012】
一実施形態では、進行型MSは、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)である。一実施形態では、進行型MSは、非活動性二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMSまたはnSPMS)である。
【0013】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体は、式(II)を有する:
【化1】
(式中、
は、独立して、水素、ハロゲン、(C-C10)アルキル、(C-C10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、可溶化基、および可溶化基で置換された(C-C10)アルキルから選択され、
mは、0~5である)。
【0014】
1つの好ましい実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。一実施形態では、マシチニブの薬学的に許容される塩は、マシチニブメシル酸塩である。
【0015】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約1mg/kg/日~約12mg/kg/日の用量、好ましくは約4.5mg/kg/日の用量で投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約4.5mg/kg/日の初回用量で少なくとも12週間、その後約6mg/kg/日の用量で投与するためのものであり、各用量の増大は、毒性により制御されている。
【0016】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、第二選択処置として投与するためのものである。一実施形態では、上記患者は、以前に投与された多発性硬化症の第一選択処置に応答しなかったか、または以前に多発性硬化症の第一選択処置を投与したにも関わらず疾患の不可逆的な進行を示した。
【0017】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1つのさらなる薬学的に有効な作用物質と共に投与するためのものである。一実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬学的に有効な作用物質は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アレムツズマブ、アザチオプリン、高用量ビオチン(MD1003)、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ダルファンプリジン、フマル酸ジメチル、ジロキシメルフマル酸エステル、エボブルチニブ(evobrutinib)、ファンプリジン、フィンゴリモド、グラチラマー酢酸塩、イブジラスト、免疫グロブリン、インターフェロン、たとえばインターフェロンベータ-1b、インターフェロンベータ-1a、またはペグインターフェロンベータ-1a、ラキニモド、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、ナタリズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オザニモド、ポネシモド、シンバスタチン、シポニモド、テリフルノミド、およびウブリツキシマブからなる群から選択される。
【0018】
定義
本発明では、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0019】
ある数字に先行する「約」は、上記数値の±10%以下を包有する。用語「約」が表す値はまた、それ自体が具体的にかつ好ましく開示されていることを理解されたい。
【0020】
「ベースライン」は、本明細書中使用される場合、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の前の時間を指す。たとえば、所定の患者に関して、ベースラインでのEDSSスコア(神経症状評価尺度(Expanded Disability Status Scale)でのスコア)は、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の患者への投与の前のEDSSスコアである。
【0021】
「最善の支持療法」は、一般に、深刻なまたは命に関わる疾患を有する患者のクオリティオブライフを改善するために提供される支持療法を指すために使用される。よって、本明細書中使用される場合、用語「最善の支持療法」および「支持療法」は、互換可能に使用され得る。MS、特に進行型MSに関して、支持療法は、症状の管理およびクオリティオブライフの向上を促進し得るある範囲の治療および戦略を含み得る。例として、症状の緩和を促進する薬物療法(特に根底にある原因に作用することなく症状の緩和を促進するための薬物療法)、体力、気分、および移動度の向上を促進するための治療、ならびに身体および精神の健康を支援し得るライフスタイルの調節が挙げられる。
【0022】
「緩和ケア」は、治癒的処置に応答しない疾患を有する患者の疼痛、ならびに心理学的、精神的、および社会的な問題の能動的かつ総合的なケアを指す。緩和ケアは、患者および家族の両方のクオリティオブライフを改善することを目的とする。
【0023】
「患者」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。本発明によれば、患者は、多発性硬化症、特に進行型多発性硬化症に罹患している哺乳動物、好ましくはヒトである。一実施形態では、患者は、医療の受診を待機しているか、または医療を受診しているか、または過去/現在/将来に医療の対象であった/ある/あり得るか、または多発性硬化症、特に進行型多発性硬化症の発症に関してモニタリングされている。
【0024】
「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される際に、いかなる有害反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応をももたらさない賦形剤または担体を指す。これは、ありとあらゆる溶媒、たとえば分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を含む。よって、薬学的に許容される賦形剤または担体は、いずれかの種類の非毒性の固体、半固体、または液体のフィラー、希釈剤、カプセル化物質または製剤化助剤を指す。ヒトへの投与に関して、製剤は、FDA(アメリカ食品医薬品局)またはEMA(欧州医薬品庁)などの規制当局が要求する無菌性、発熱性、全般的安全性、および純度の基準と一致しなければならない。
【0025】
「多発性硬化症の進行(MSの進行)」は、疾患経過の間に経時的に起こる症状の漸進的な悪化および/または身体障害の漸進的な蓄積を指す。MSの進行は、たとえばEDSS(神経症状評価尺度)によって評価され得る。
【0026】
「EDSS(神経症状評価尺度)」は、MS患者の身体障害レベルの測定および経時的な身体障害レベルの変化のモニタリングを目的とする尺度を指す。一般的にこれは、MS患者における疾患の進行を評価するために使用される。EDSSは、0.5単位の増分で0~10の範囲であり、最小のスコア0は、いずれの身体障害も伴わない正常な神経学的検査に対応し、最大のスコア10は、MSによる死亡に対応する。
【0027】
「EDSSスコアの進行」は、本明細書中使用される場合、MSに罹患している患者のEDSSスコアの経時的な変化を指す。疾患が進行すると、EDSSスコアは増加する。EDSSスコアの進行は、処置の有効性を評価するために使用され得る。よって、一実施形態では、EDSSスコアの進行は、ベースラインでのEDSSスコア(すなわち処置開始前のスコア)と処置が開始された後のEDSSスコアとの間の差異に対応する。経時的なEDSSスコアの差異がないことは、MS患者の疾患進行の非存在および安定した状態を示す。EDSSスコアの小さな増分(または正の差異)は、疾患の限定的な進行を示す。よって、増分が小さい(すなわち正の差異が小さい)と、MS患者はより安定している。したがって、処置前の同一の期間にわたるEDSSスコアの進行と比較して小さなEDSSスコアの増分は、疾患の進行の遅延を示す。EDSSスコアの減少(または負の差異)は、患者の疾患進行の非存在および改善を示す。よって、差異が大きいほど(すなわち負の差異が大きいほど)、改善が大きい。
【0028】
「進行型多発性硬化症(進行型MS)は、本明細書中使用される場合、多発性硬化症の進行型の形態、すなわち症状が徐々に悪化し神経機能が徐々に低下する多発性硬化症の形態を指す。よって、多発性硬化症の進行型の形態は、新規の症状または症状の悪化を伴わず、寛解を伴うことのない(すなわち症状が現れると回復または改善しない)、場合により長期間の、経時的な漸進的な減少を特徴とする。現在、多発性硬化症(MS)は、2013年のMSの臨床試験での国際諮問委員会により定義された4つの型(場合により、疾患経過または表現型とも呼ばれる)を包有すると考えられる。この4つの型のMSは、
MSが後に発症してもよくまたは発症しなくてもよい、中枢神経系の炎症および脱髄により引き起こされる神経症状の最初のエピソードとして定義されているclinically isolated syndrome(CIS);
新規の症状または症状の悪化のエピソードに対応する明確に定義された再発(発作、増悪、または症状再燃とも呼ばれる)の後に、限定的な症状を伴うかまたは症状のない部分的または完全な回復または改善の期間に対応する寛解が続くことを特徴とする再発寛解型多発性硬化症(RRMSまたはRR-MS);
初期の再発-寛解の表現型の後に続き、再発および寛解の発生を伴う(活動性SPMS)または伴わない(非活動性または無再発SPMS)、症状の進行型の悪化および/または経時的な身体障害の蓄積を特徴とする、二次性進行型多発性硬化症(SPMS);ならびに
再発または寛解を伴わない、症状の発症からの、症状の漸進的な悪化および/または身体障害の蓄積を特徴とする、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)
である。
【0029】
1つの特定の実施形態では、進行型多発性硬化症(進行型MS)は、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)、および非活動性二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMS)を包有する。
【0030】
「一次性進行型多発性硬化症(PPMS)」は、現在認識されている4つの型または表現型の多発性硬化症のうちの1つを指す。PPMSは、再発(すなわち新規の症状または症状の悪化のエピソード)または寛解(すなわち限定的な症状または症状のない改善または回復の期間)を伴わない、発症からの症状の漸進的な悪化および/または身体障害の蓄積を特徴とする。一実施形態によれば、PPMSは、進行型多発性硬化症(進行型MS)に包有される。
【0031】
「二次性進行型多発性硬化症(SPMS)」は、現在認識されている4つの種類または表現型の多発性硬化症のうちの1つを指す。SPMSは、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の初期の経過の後に続き、経時的な症状の悪化および/または身体障害の蓄積を特徴とする。
【0032】
「非活動性二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMSまたはnSPMS)」または「無再発二次性進行型多発性硬化症(無再発SPMS)」は、SPMSの亜型を指す。非活動性SPMSは、再発の非存在、すなわち新規の症状または症状の悪化のエピソードの非存在を特徴とする。一実施形態によれば、非活動性(または無再発)SPMSは、進行型多発性硬化症(進行型MS)に包有される。
【0033】
疾患または病態の第二選択処置または第二選択療法における「第二選択」は、上記疾患または病態の最初の処置(第一選択処置)の後に投与される処置または治療を指し、通常は最初の処置が無効であるかもしくは有効性が不十分である、有効でなくなった、または副作用を有するために、投与される。これに対し、疾患または病態の第一選択処置または第一選択療法における「第一選択」は、上記疾患または病態のために投与される第一または最初の処置または治療を指す。
【0034】
「治療上有効量」または「治療上有効用量」は、処置を必要とする患者に有意な負の作用または有害な副作用を引き起こすことなく、上記患者の進行型多発性硬化症の症状または徴候のうちの1つ以上の防止、低減、または遅延(減弱)を目的とする、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の量または用量または濃度を指す。一実施形態では、「治療上有効量」または「治療上有効用量」は、進行型MSに罹患している患者の疾患進行の遅延および/または制限、特には、症状の悪化および/または身体障害の蓄積の遅延および/または制限を目的とする、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の量または用量または濃度を指す。一実施形態では、「治療上有効量」または「治療上有効用量」は、進行型MSに罹患している患者のEDSSスコアの減少をもたらすこと、または進行型MSに罹患している患者のEDSSスコアの増加の速度の遅延をもたらすことを目的とする、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の量または用量または濃度を指す。
【0035】
「~を処置すること」または「処置」は、治療上の処置、予防的(もしくは防止的)処置、または治療上の処置および予防的(もしくは防止的)処置の両方を指し、目的は、それを必要とする患者の進行型MSの症状または徴候のうちの1つ以上を防止、低減、または遅延(減弱)することであり、好ましくは目的は、進行型MSに罹患している患者の疾患進行を遅延および/または制限すること、特には、進行型MSに罹患している患者の症状の悪化および/または身体障害の漸進的な蓄積を遅延および/または制限することである。一実施形態では、処置の目的は、進行型MSに罹患している患者のEDSSスコアの減少をもたらすこと、または進行型MSに罹患している患者のEDSSスコアの増加の速度の遅延をもたらすことである。
【0036】
「診断から処置の開始までの時間」は、本明細書中使用される場合、MS、特には進行型MSの最初の臨床的に確定した診断の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)と、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)との間の時間の長さを指す。一実施形態では、進行型MSの診断は、改訂されたMcDonaldの診断基準に基づく。MSの診断の時点で、前年の病歴に基づき、仮の疾患経過が特定されるべきであり、経過が活動性であるか否か(非活動性)、および進行型であるか否かが特定される。一実施形態では、日付が月/年として表される場合(すなわち日に関する情報がない場合)、日は、その月の最終日とみなされる。一実施形態では、日付が年として表される場合(すなわち日および月に関する情報がない場合)、月は、6月とみなされ、日は、その月の最終日、すなわち6月の最終日とみなされる。
【0037】
「発症から処置の開始までの時間」は、本明細書中使用される場合、最初のMS関連の症状の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)と、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)との間の時間の長さを指す。一実施形態では、最初の症状の日付は、病歴から、たとえば診療記録および臨床的に確定した診断後の患者/介護者のMS関連の症状の過去の想起から、後向きに決定される。一実施形態では、日付が月/年として表される場合(すなわち日に関する情報がない場合)、日は、その月の最終日とみなされる。一実施形態では、日付が年として表される場合(すなわち日および月に関する情報がない場合)、月は、6月とみなされ、日は、その月の最終日、すなわち6月の最終日とみなされる。
【0038】
詳細な説明
本発明は、それを必要とする患者の進行型多発性硬化症(MS)の処置に使用するための、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0039】
本発明によれば、進行型MSは、新規の症状または症状の悪化を伴わない、場合により長期間の経時的な漸進的な衰退、および寛解の非存在(すなわち症状が現れた後に回復または改善しないこと)を特徴とするMSの進行型の形態を指す。
【0040】
一実施形態では、進行型MSは、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)、および非活動性二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMS)を含む。一実施形態では、進行型MSは、PPMSおよび非活動性SPMSからなる。
【0041】
一実施形態では、進行型MSは、2017年の改訂されたMcDonaldの診断基準を使用して診断される。MSの診断のための2017年の改訂されたMcDonaldの診断基準は、研究および臨床の実務で広く使用されている良好に確立された診断手法である。多発性硬化症の診断のためのMcDonaldの診断基準は、Polman et al., Ann Neurol. 2011;69(2):292-302に公開されている。McDonaldの診断基準の2017年の改訂版は、Thompson et al., Lancet Neurol. 2018;17(2):162-173で公開されている。一実施形態によれば、McDonaldの診断基準の以前のバージョンを使用してMSに罹患していると診断された患者はまた、2017年のMcDonaldの診断基準に記述されたMSの診断基準も満たしている。
【0042】
簡潔に述べると、Polman et al., Ann Neurol. 2011;69(2):292-302で公開されているMSの診断のための2010年のMcDonaldの診断基準を、以下の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
Thompson et al., Lancet Neurol. 2018;17(2):162-173で公開された発症時に発作を伴う(すなわち再発寛解型多発性硬化症またはRRMS)患者におけるMSの診断に関する改訂された2017年のMcDonaldの診断基準を、以下の表2に示す。
【表2】
【0045】
Thompson et al., Lancet Neurol. 2018;17(2):162-173で公開された発症からの進行を特徴とする疾患経過(すなわち一次性進行型多発性硬化症またはPPMS)を有する患者におけるMSの診断のための改訂された2017年のMcDonaldの診断基準は、以下の通りである:
臨床上の再発とは無関係な1年の身体障害の進行(後向きまたは前向きに決定される);ならびに
以下の基準のうちの2つ:
以下の脳領域:脳室周囲、皮質、傍皮質、およびテント下のうちの1つ以上における多発性硬化症に特有の1つ以上のT2高強度病変;
脊髄における2つ以上のT2高強度病変;
CSFに特有のオリゴクローナルバンドの存在。
【0046】
一実施形態によれば、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始まで、1年超の時間を有するか、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始まで、2年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0047】
したがって、一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断(すなわち診断の時間)から1年以上および/または疾患の発症から(すなわち疾患発症の時間から)2年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0048】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始まで、2年超の時間を有するか、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始まで、5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断(すなわち診断の時間)から2年以上および/または疾患の発症から(すなわち疾患発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0049】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始まで、3年超の時間を有するか、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始まで、5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断(すなわち診断の時間)から3年以上および/または疾患の発症から(すなわち疾患発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0050】
本発明によれば、診断から本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までの時間は、MS、特に進行型MSに関する最初の確定した診断の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)と、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)との間の時間の長さを表す。よって、診断の時間は、MS、特に進行型MSに関する最初の臨床的に確定した診断の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)である。
【0051】
一実施形態では、診断から本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までの時間は、進行型MSに関する最初の臨床的に確定した診断の日付と、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付との間の時間の長さである。したがって一実施形態では、診断の時間は、進行型MSに関する最初の臨床的に確定した診断の日付である。
【0052】
一実施形態では、診断から本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までの時間は、2017年の改訂されたMcDonaldの診断基準に基づく進行型MSの最初の臨床的に確定した診断の日付と、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付との間の時間の長さである。よって一実施形態では、診断の時間は、2017年の改訂されたMcDonaldの診断基準に基づく進行型MSの最初の臨床的に確定した診断の日付である。
【0053】
一実施形態では、日付が月/年として表される場合(すなわち日に関する情報がない場合)、日は、その月の最終日とみなされる。一実施形態では、日付が年として表される場合(すなわち日および月に関する情報がない場合)、月は、6月とみなされ、日は、その月の最終日、すなわち6月の最終日とみなされる。
【0054】
一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、2年超、3年超、4年超、5年超、または6年超の時間を有する。一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有する。一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有する。
【0055】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上、2年以上、3年以上、4年以上、5年以上、または6年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)2年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)3年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。
【0056】
本発明によれば、発症から本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までの時間は、最初のMSに関連する症状の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)と、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)との間の時間の長さである。よって、疾患の発症の時間は、最初のMS関連の症状の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)である。
【0057】
一実施形態では、最初の症状の日付は、病歴から、たとえば診療録および臨床的に確定した診断後の患者/介護者のMS関連の症状の過去の想起から、後向きに決定される。一実施形態では、日付が月/年として表される場合(すなわち日に関する情報がない場合)、日は、その月の最終日とみなされる。一実施形態では、日付が年として表される場合(すなわち日および月に関する情報がない場合)、月は、6月とみなされ、日は、月の最終日、すなわち6月の最終日とみなされる。
【0058】
一実施形態では、最初のMS関連の症状は、最初の進行型MS関連の症状である。一実施形態では、最初の進行型MS関連の症状の日付は、疾患の不可逆的な身体障害の蓄積または不可逆的な進行に関連する時点である。一実施形態では、疾患の不可逆的な身体障害の蓄積または不可逆的な進行は、後の経過観察でゼロへと反転しないEDSSスコアにより定義される。一実施形態では、疾患の不可逆的な身体障害の蓄積または不可逆的な進行は、後の経過観察でゼロへと反転しない少なくとも0.5、少なくとも1.0、または少なくとも1.5の持続的な高いEDSSスコアとして定義される。
【0059】
一実施形態では、患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、3年超、4年超、5年超、6年超、または7年超の時間を有する。一実施形態では、患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0060】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)2年以上、3年以上、4年以上、5年以上、6年以上、または7年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。
【0061】
一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、2年超、3年超、4年超、5年超、または6年超の時間を有し、上記患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、3年超、4年超、5年超、6年超、または7年超の時間を有する。
【0062】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上、2年以上、3年以上、4年以上、5年以上、または6年以上、および疾患の発症から(すなわち疾患発症の時間から)2年以上、3年以上、4年以上、5年以上、6年以上、または7年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。
【0063】
一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、4年超の時間を有する。一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、6年超の時間を有する。一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0064】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上、および疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)2年以上、および疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)4年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)2年以上、および疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)2年以上、および疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)6年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)3年以上、および疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。
【0065】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)である。
【0066】
よって一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者のPPMSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者のPPMSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者のPPMSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0067】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者のPPMSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上、および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)2年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者のPPMSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)2年以上、および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者のPPMSの処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)3年以上、および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0068】
よって、一実施形態では、診断から本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までの時間は、PPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)と、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)との間の時間の長さである。よって一実施形態では、診断の時間は、PPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付である。
【0069】
一実施形態では、診断から本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までの時間は、2017年の改訂されたaMcDonaldの診断基準に基づくPPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付と、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付との間の時間の長さである。よって一実施形態では、診断の時間は、2017年の改訂されたMcDonaldの診断基準に基づくPPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付である。
【0070】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、2年超、3年超、4年超、5年超、または6年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有する。
【0071】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、3年超、4年超、5年超、6年超、または7年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0072】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、2年超、3年超、4年超、5年超、または6年超の時間を有し、上記患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、3年超、4年超、5年超、6年超、または7年超の時間を有する。
【0073】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、4年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、6年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、PPMSであり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0074】
一実施形態によれば、進行型多発性硬化症は、非活動性二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMSまたはnSPMS)である。
【0075】
よって、一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の非活動性SPMS(nSPMS)の処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の非活動性SPMS(nSPMS)の処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の非活動性SPMS(nSPMS)の処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0076】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の非活動性SPMS(nSPMS)の処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)2年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の非活動性SPMS(nSPMS)の処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)2年以上および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の非活動性SPMS(nSPMS)の処置に使用するための本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)3年以上および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0077】
したがって、一実施形態では、診断から本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までの時間は、非活動性SPMSまたはnSPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)と、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付(日/月/年、月/年、または年として表される)との間の時間の長さである。よって、一実施形態では、診断の時間は、非活動性SPMSまたはnSPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付である。
【0078】
一実施形態では、診断から本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までの時間は、2017年の改訂されたMcDonaldの診断基準に基づく非活動性SPMSまたはnSPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付と、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始の日付との間の時間の長さである。よって、一実施形態では、診断の時間は、2017年の改訂されたMcDonaldの診断基準に基づく非活動性SPMSまたはnSPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付である。
【0079】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、2年超、3年超、4年超、5年超、または6年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有する。
【0080】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、3年超、4年超、5年超、6年超、または7年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0081】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、2年超、3年超、4年超、5年超、または6年超の時間を有し、上記患者は、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、3年超、4年超、5年超、6年超、または7年超の時間を有する。
【0082】
一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、4年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、6年超の時間を有する。一実施形態では、進行型多発性硬化症は、非活動性SPMS(nSPMS)であり、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有し、発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0083】
本発明によれば、「処置」は、治療的処置、予防的もしくは防止的処置、または治療的処置および予防的(もしくは防止的)処置の両方を指し、目的は、それを必要とする患者の進行型多発性硬化症の症状または徴候のうちの1つ以上を防止、低減、または遅延(減弱)することである。
【0084】
一実施形態では、処置の目的は、進行型MSに罹患している患者の疾患進行を遅延および/または制限することである。一実施形態では、処置の目的は、進行型MSに罹患している患者の症状の悪化および/または身体障害の漸進的な蓄積を遅延および/または制限することである。
【0085】
一実施形態によれば、進行型MSに罹患している患者の疾患の進行は、EDSS(神経症状評価尺度)で評価される。
【0086】
本明細書中上述されるように、EDSSは、MS患者の身体障害のレベルを測定すること、および経時的な身体障害のレベルの変化をモニタリングすることを目的とする尺度である(Kurtzke JF. Neurology. 1983;33(11):1444-1452)。EDSSは、医師による神経学的検査に基づくものであり、0.5の単位で増分する0~10の範囲であり、最小スコアの0はいずれの身体障害も伴わない正常な神経学的検査に対応しており、最も高いスコア10は、MSによる死亡に対応している(以下の表3参照)。
【0087】
1.0~4.5の範囲のEDSSスコアを有する患者は、介助なしで歩行することができる。スコアの評価は、それぞれが特定のタスクを担うニューロンのネットワークを表し、それぞれが、0(身体障害なし)から5または6(より重篤な身体障害)までの尺度でスコア付けされる、8つの機能系(FS)の機能不全の測定に基づく。8つのFSは、錐体(筋力低下または肢を動かすことが困難であること);小脳(運動失調、平衡喪失、協調喪失、または振戦);脳幹(発声、嚥下、および眼振の障害);感覚性(しびれまたは感覚の喪失);腸および膀胱の機能;視覚機能;大脳機能;およびその他である。
【0088】
5~9.5の範囲のEDSSスコアを有する患者は、歩行の障害により同定される。
【0089】
【表3】
【0090】
したがって、経時的なEDSSスコアの増加は、疾患の進行、すなわち身体障害レベルの悪化を表す。経時的なEDSSスコアの差異の非存在は、MS患者の疾患進行の非存在および安定した状態を表す。EDSSスコアの小さな増加(または正の差異)は、制限された疾患の進行を表す。よって、増加が小さい(すなわち正の差異が小さい)ほど、MS患者はより安定している。したがって、たとえば処置前の同一の期間にわたるEDSSスコアの進行と比較して、EDSSスコアの増加が小さいことは、疾患の進行の遅延を表す。EDSSスコア(または負の差異)の減少は、患者の疾患進行の非存在および改善を表す。よって、減少が大きい(すなわち負の差異が大きい)ほど、改善が著しい。
【0091】
一実施形態では、処置の目的は、進行型MSに罹患している患者のEDSSスコアの減少をもたらすこと、または進行型MSに罹患している患者のEDSSスコアの増加の速度の遅延をもたらすことである。
【0092】
したがって一実施形態では、進行型多発性硬化症に罹患している患者は、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の治療上有効量を投与された後に、患者のEDSSスコアが減少したかまたは患者のEDSSスコアの増加の速度が遅延した場合、「処置」が成功したとみなされる。
【0093】
一実施形によればは、進行型MSに罹患している患者の疾患の進行は、この分野で一般に使用される他のツールで評価され得る。このような一般に使用されるツールの例として、限定するものではないが、MSFC(Multiple Sclerosis Functional Composite)およびMSQOL-54(Multiple Sclerosis Quality of Life)が挙げられる。
【0094】
一実施形態では、患者は、雄性である。別の実施形態では、患者は、雌性である。
【0095】
一実施形態では、患者は、成年である。本発明では、成年は、18、19、20、または21歳を超える対象である。一実施形態では、患者は、20、25、または30歳を超える。
【0096】
一実施形態では、患者は、小児である。本発明では、小児は、21、20、19、または18歳未満の対象である。
【0097】
一実施形態では、患者は、以前に、多発性硬化症のための処置を受けていた。
【0098】
多発性硬化症の処置の例として、限定するものではないが、免疫調節剤(たとえば本明細書中記載の免疫調節剤)、抗炎症薬、および神経標的化薬(たとえば本明細書中記載の神経標的化薬)が挙げられる。
【0099】
より具体的には、多発性硬化症の処置の例として、限定するものではないが、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アレムツズマブ、アザチオプリン、高用量ビオチン(MD1003)、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ダルファンプリジン、フマル酸ジメチル、ジロキシメルフマル酸エステル、エボブルチニブ(evobrutinib)、ファンプリジン、フィンゴリモド、グラチラマー酢酸塩(timexonまたはBCD-063としても知られている)、イブジラスト、免疫グロブリン、インターフェロン(インターフェロンベータ-1a(INF-β-1a)、インターフェロンベータ-1b(INF-β-1b)、ペグインターフェロンベータ-1a、およびペグインターフェロンベータ-1aバイオ後続品(BCD-054としても知られている)を含む)、ラキニモド、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、ナタリズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オザニモド、ポネシモド、シンバスタチン、シポニモド、テリフルノミド、およびウブリツキシマブが挙げられる。
【0100】
また多発性硬化症の処置は、限定するものではないが、抗炎症薬、たとえば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、副腎皮質ステロイド、鎮痛剤、たとえば抗炎症作用を伴わない鎮痛剤または経口オピオイド鎮痛剤を含み得る。
【0101】
一実施形態では、患者は、以前に、多発性硬化症、特に進行型多発性硬化症の第一選択処置を受けたことがある、または受けていた、または受けている。よって、一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、多発性硬化症、特に進行型多発性硬化症のためのさらなる処置である。一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、多発性硬化症、特に進行型多発性硬化症の第二選択処置である。
【0102】
一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、多発性硬化症、特に進行型多発性硬化症のため、すでに存在する処置に加え、さらなる処置として投与される。一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、多発性硬化症、特に進行型多発性硬化症のため、第一選択処置の代わりとしての、第二選択処置として投与される。
【0103】
一実施形態では、患者は、多発硬化症のための以前に行われた処置に応答しなかったか、または多発性硬化症のための処置を以前に行ったにも関わらず疾患の不可逆的な進行を示した。一実施形態では、患者は、多発性硬化症のための以前に行われた第一選択処置に応答しなかったか、または多発性硬化症のための第一選択処置を以前に行ったにも関わらず疾患の不可逆的な進行を示した。
【0104】
一実施形態では、患者は、多発性硬化症のための以前に行われた処置に耐性がある。一実施形態では、患者は、多発性硬化症のために以前に行われた第一選択処置に耐性がある。
【0105】
本発明では、2-アミノアリールチアゾール誘導体は、2位(すなわち複素環の窒素と硫黄原子との間)で二級または三級アミンにより置換されたチアゾリル基の存在を特徴とし、アミンの窒素原子が少なくとも1つのアリール基で置換されている、化合物を指す。
【0106】
一実施形態では、アリール基は、アリールアミド基(すなわち-NH-CO-アリール)で置換されている。
【0107】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体は、以下の式(I)を有する。
【化2】
(式中、
およびRは、独立して、水素、ハロゲン、(C-C10)アルキル、(C-C10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、シアノ、ジアルキルアミノ、可溶化基、および可溶化基で置換された(C-C10)アルキルであり、
mは0~5であり、
nは0~4であり、
は、以下のうちの1つである:
(i)アリール基(フェニルなど)(アリール基は、任意選択で、1つ以上の置換基、たとえばハロゲン、(C-C10)アルキル基、トリフルオロメチル、シアノ、およびアルコキシで置換されてよい);
(ii)ヘテロアリール基(2、3、または4-ピリジル基など)(ヘテロアリール基は、任意選択で、1つ以上の置換基、たとえばハロゲン、(C-C10)アルキル基、トリフルオロメチル、およびアルコキシで置換されてよい);
(iii)5員環芳香族複素環基(たとえば2-チエニル、3-チエニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリルなど)(芳香族複素環基は、任意選択で、1つ以上の置換基、たとえばハロゲン、(C-C10)アルキル基、トリフルオロメチル、およびアルコキシで置換されてよい)。
【0108】
一実施形態では、式(I)のRおよびRは、独立して、水素、ハロゲン、(C-C10)アルキル、(C-C10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、シアノ、ジアルキルアミノ、および可溶化基から選択される。
【0109】
よって、一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、式(I)の2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0110】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体は、以下の式(II)を有する。
【化3】
(式中、
は、独立して、水素、ハロゲン、(C-C10)アルキル、(C-C10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、可溶化基、および可溶化基で置換された(C-C10)アルキルから選択され、
mは、0~5である)。
【0111】
一実施形態では、式(II)のRは、独立して、水素、ハロゲン、(C-C10)アルキル、(C-C10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、および可溶化基から選択される。
【0112】
一実施形態では、式(II)のRは、可溶化基である。一実施形態では、式(II)のRは、可溶化基で置換された(C-C10)アルキルである。
【0113】
一実施形態では、式(II)のRは、(C-C10)アルキル-(C-C11)ヘテロシクロアルキル-(C-C10)アルキル-である。一実施形態では、式(II)のRは、(C-C)アルキル-(C-C11)ヘテロシクロアルキル(C-C10)アルキル、好ましくは(C-C)アルキル-(C-C11)ヘテロシクロアルキル-(C-C10)アルキル-である。一実施形態では、式(II)のRは、(C-C10)アルキル-(C-C11)ヘテロシクロアルキル-(C-C)アルキル-、好ましくは(C-C10)アルキル-(C-C11)ヘテロシクロアルキル-(C-C)アルキル-である。一実施形態では、式(II)のRは、(C-C10)アルキル-(C-C)ヘテロシクロアルキル-(C-C10)アルキル-、好ましくは(C-C10)アルキル-(C)ヘテロシクロアルキル-(C-C10)アルキル-である。一実施形態では、式(II)のRは、(C-C)アルキル-(C-C)ヘテロシクロアルキル-(C-C)アルキル-、好ましくは(C-C)アルキル-(C)ヘテロシクロアルキル-(C-C)アルキル-である。一実施形態では、式(II)のRは、(C-C)アルキル-ピペラジニル-(C-C)アルキル-、好ましくは(C-C)アルキル-ピペラジニル-(C-C)アルキル-である。一実施形態では、式(II)のRは、メチルピペラジニル-(C-C)アルキル-、好ましくはメチルピペラジニル-メチル-、より好ましくは4-メチルピペラジニル-メチル-である。
【0114】
よって、一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、上述の式(II)の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0115】
本明細書中使用される場合、用語「アリール基」は、単一の芳香環(すなわちフェニル)または共に縮合(たとえばナフチル)もしくは共有結合した複数の芳香環(通常5~12個の原子、好ましくは6~10個の原子を含み、少なくとも1つの環が芳香環である)を有するポリ不飽和の芳香族ヒドロカルビル基を指す。この芳香環は、任意選択で、それに縮合した1~2個のさらなる環(シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール)を含み得る。またアリールは、本明細書中列挙される炭素環系の部分的に水素付加された誘導体を含むように意図されている。適切なアリール基の例として、限定するものではないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびにベンゾ縮合炭素環部分、たとえば5,6,7,8-テトラヒドロナフチルが挙げられる。アリール基は、置換されていなくてもよいか、または1つ以上の置換基で置換され得る。一実施形態では、アリール基は、環が6個の炭素原子を含む単環であり、本明細書中「(C)アリール」と呼ばれる。
【0116】
本明細書中使用される場合、「アルキル基」は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する、飽和の直鎖状または分枝状の非環系炭化水素を指す。代表的な飽和直鎖アルキルとして、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルが挙げられる。飽和分枝状アルキルとして、限定するものではないが、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチル(dimtheyl)ペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、3,3-ジエチルヘキシルが挙げられる。本発明の化合物に含まれるアルキル基は、任意選択で1つ以上の置換基で置換され得る。
【0117】
本明細書中使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素原子により別の部分に結合しているアルキル基を指す。アルコキシ基の例として、限定するものではないが、メトキシ、イソプロポキシ、エトキシ、tert-ブトキシが挙げられる。アルコキシ基は、任意選択で1つ以上の置換基で置換され得る。
【0118】
本明細書中使用される場合、用語「シクロアルキル」は、3~10個の炭素原子を有する飽和環状アルキルラジカルを指す。代表的なシクロアルキルとして、シクロプロピル、1-メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルが挙げられる。シクロアルキル基は、任意選択で1つ以上の置換基で置換され得る。
【0119】
本明細書中使用される場合、用語「ハロゲン」は、-F、-Cl、-Br、または-Iを指す。
【0120】
本明細書中使用される場合、用語「ヘテロアリール」は、炭素原子の環のメンバーおよび1つ以上のヘテロ原子の環のメンバー(たとえば酸素、硫黄、または窒素など)を含む単環式または多環式の芳香族複素環を指す。通常、ヘテロアリール基は、1~約5個のヘテロ原子の環のメンバーおよび1~約14個の炭素原子の環のメンバーを有する。代表的なヘテロアリール基として、限定するものではないが、ピリジル、1-オキソ-ピリジル、フラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾ[1,4]ジオキシニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、キノリニル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、イソキノリニル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、インドリジニル、イミダゾピリジル、テトラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4]ピリミジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、およびベンゾ(b)チエニルが挙げられる。ヘテロ原子は、当業者に知られている保護基で置換されてよく、たとえば窒素上の水素は、tert-ブトキシカルボニル基で置換され得る。ヘテロアリール基は、任意選択で1つ以上の置換基で置換され得る。さらに、窒素または硫黄のヘテロ原子の環のメンバーは、酸化され得る。一実施形態では、芳香族複素環は、5~8員の単環ヘテロアリール環から選択される。ヘテロ芳香環またはヘテロアリール環の別の基への結合点は、ヘテロ芳香環またはヘテロアリール環の炭素原子またはヘテロ原子のいずれかであり得る。
【0121】
本明細書中使用される場合、用語「複素環」は、集合的に、ヘテロシクロアルキル基およびヘテロアリール基を指す。
【0122】
本明細書中使用される場合、用語「ヘテロシクロアルキル」は、2~11個の炭素原子を有し、飽和または不飽和であってよいが、芳香族ではない、O、N、またはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する単環基または多環基を指す。ヘテロシクロアルキル基の例として、限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル(valerolactamyl)、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリンジニル(tetrahydropyrindinyl)、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、テトラヒドロチオピラニルスルホキシド、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル-2-オン、テトラヒドロチエニル、およびテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニルが挙げられる。通常、単環式のヘテロシクロアルキル基は、3~7員である。好ましい3~7員の単環式ヘテロシクロアルキル基は、5~6個の環原子を有するヘテロシクロアルキル基である。ヘテロ原子は、当業者に公知の保護基で置換されてよく、たとえば窒素上の水素が、tert-ブトキシカルボニル基で置換され得る。さらに、ヘテロシクロアルキル基は、任意選択で1つ以上の置換基で置換され得る。さらに、複素環の別の基への結合点は、複素環の炭素原子またはヘテロ原子のいずれかであり得る。このような置換された複素環基の安定したアイソマーのみが、この定義で企図されている。
【0123】
本明細書中使用される場合、用語「置換基」または「置換されている」は、化合物または基上の水素ラジカルが、保護されていない形態でまたは保護基を使用して保護されている場合に反応条件に対して実質的に安定しているいずれかの望ましい基で置き換えられていることを意味する。好ましい置換基の例は、限定するものではないが、ハロゲン(クロロ、ヨード、ブロモ、またはフルオロ);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシ;アルコキシ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナート;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;酸素(-O);ハロアルキル(たとえばトリフルオロメチル);単環式もしくは縮合もしくは非縮合の多環式であり得るシクロアルキル(たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、もしくはシクロヘキシル)、または単環式もしくは縮合もしくは非縮合の多環式であり得るヘテロシクロアルキル(たとえばピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、もしくはチアジニル)、単環式または縮合もしくは非縮合の多環式アリールまたはヘテロアリール(たとえばフェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、またはベンゾフラニル);アミノ(一級、二級、または三級);COCH;CONH;OCHCONH;NH;SONH;OCHF;CF;OCFを含み;またこのような部分は、任意選択で、縮合した環構造または架橋、たとえば-OCHO-で置換され得る。これら置換基は、任意選択で、このような基から選択される置換基でさらに置換され得る。特定の実施形態では、用語「置換基」または形容詞の「置換された」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ハロアルキル、-C(O)NR1112、-NR13C(O)R14、ハロ、-OR13、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシ、-C(O)R13、-NR1112、-SR13、-C(O)OR13、-OC(O)R13、-NR13C(O)NR1112、-OC(O)NR1112、-NR13C(O)OR14、-S(O)rR13、-NR13S(O)rR14、-OS(O)rR14、S(O)rNR1112、-O、-S、および-N-R13(式中rは1または2であり、R11およびR12は、その存在毎に独立して、H、任意選択で置換されてよいアルキル、任意選択で置換されてよいアルケニル、任意選択で置換されてよいアルキニル、任意選択で置換されてよいシクロアルキル、任意選択で置換されてよいシクロアルケニル、任意選択で置換されてよいヘテロシクロアルキル、任意選択で置換されてよいアリール、任意選択で置換されてよいヘテロアリール、任意選択で置換されてよいアリールアルキル、または任意選択で置換されてよいヘテロアリールアルキルであり、R11およびR12は、結合する窒素原子と共に、任意選択で置換されてよいヘテロシクロアルキルまたは任意選択で置換されてよいヘテロアリールであり;R13およびR14は、その存在毎に独立して、H、任意選択で置換されてよいアルキル、任意選択で置換されてよいアルケニル、任意選択で置換されてよいアルキニル、任意選択で置換されてよいシクロアルキル、任意選択で置換されてよいシクロアルケニル、任意選択で置換されてよいヘテロシクロアルキル、任意選択で置換されてよいアリール、任意選択で置換されてよいヘテロアリール、任意選択で置換されてよいアリールアルキル、または任意選択で置換されてよいヘテロアリールアルキルである)からなる群から選択される置換基である。一実施形態では、用語「置換基」または形容詞「置換された」は、可溶化基を指す。
【0124】
本明細書中使用される場合、用語「可溶化基」は、実質的にイオン化させることができ、化合物を望ましい溶媒、たとえば水または水含有溶媒(「水可溶化基」)に溶解させることができるいずれかの基を指す。さらに、可溶化基は、化合物または錯体の脂溶性を増大させる基であり得る。一実施形態では、可溶化基は、それぞれが任意選択で、独立してアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、シアノで置換されるアルキル基でかまたはシクロヘテロアルキルもしくはヘテロアリールで置換される、N、O、Sなどの1つ以上のヘテロ原子で置換されるアルキル基、またはホスフェート、またはスルフェート、またはカルボン酸から選択される。一実施形態では、「可溶化基」は、以下のうちの1つである:
少なくとも1つの窒素または酸素のヘテロ原子のいずれかを含み、および/または基が少なくとも1つのアミノ基もしくはオキソ基で置換される、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基(限定するものではないが、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、4-ピペリドニル(piperidonyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル(valerolactamyl)、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラニル、およびジヒドロフラニル-2-オンを含む);
アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、およびジアルキルカルバモイル(限定するものではないが、メチルピペリジニル、メチルピペラジニル、およびメチルピロリジニルを含む)からなる基で置換され得る飽和環状アミノ基(限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル、およびピロリジニルを含む)であり得るアミノ基;
以下に示される構造a)~iのうちの1つ(式中、波線および矢印は、たとえば式(I)または(II)の、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体のコア構造への結合点に対応する)。
【化4】
【0125】
一実施形態では、可溶化基は、アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、およびジアルキルカルバモイル(限定するものではないがメチルピペリジニル、メチルピペラジニル、およびメチルピロリジニルを含む)からなる群で置換され得る飽和環状アミノ基(限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル、およびピロリジニルを含む)である。
【0126】
一実施形態では、可溶化基は、上記に示される構造c)であり、式中、波線および矢印は、たとえば式(I)または(II)の、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体のコア構造への結合点に対応する。
【0127】
本明細書中使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、生物学的に望ましくないものではない遊離酸または遊離塩基の塩を指し、一般的に、遊離塩基を適切な有機酸もしくは無機酸と反応させるか、または遊離酸を適切な有機塩基もしくは無機塩基と反応させることにより調製される。適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、ナプシラート、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/水素、リン酸塩/二水素、リン酸塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル化物、トリフルオロ酢酸塩、およびキシナホ酸塩が挙げられる。適切な塩基塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。例として、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、2(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、モルフォリン、4(2 ヒドロキシエチル)モルフォリン、および亜鉛の塩が挙げられる。また、酸および塩基のヘミ塩、たとえばヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩も形成され得る。
【0128】
一実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、もしくはリン酸などの無機酸、または適切な有機カルボン酸もしくはスルホン酸、たとえば脂肪族モノまたはジカルボン酸、たとえばトリフルオロ酢酸、酢酸、ピロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、またはシュウ酸、またはアミノ酸、たとえばアルギニンまたはリジン、芳香族カルボン酸、たとえば安息香酸、2-フェノキシ-安息香酸、2-アセトキシ-安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、芳香族脂肪族カルボン酸、たとえばマンデル酸またはケイ皮酸、ヘテロ芳香族カルボン酸、たとえばニコチン酸またはイソニコチン酸、脂肪族スルホン酸、たとえばメタン、エタン-または2-ヒドロキシエタン-スルホン酸、特にメタンスルホン酸、または芳香族スルホン酸、たとえばベンゼン-、p-トルエン-、またはナフタレン-2-スルホン酸による薬学的に許容される酸付加塩である。
【0129】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体の薬学的に許容される塩は、メシル酸塩である。
【0130】
他の意味が記載されない限り、用語「メシル酸塩」は、命名された薬学的物質(たとえば式(I)または(II)の化合物など)を用いたメタンスルホン酸塩の塩を表すように本明細書中使用される。メシル酸塩(mesylate)ではなくてメシル酸塩(mesilate)を使用したのは、WHOが発行したINNM(International nonproprietary names modified)(たとえばWorld Health Organization(February 2006). International Nonproprietary Names Modified. INN Working Document 05.167/3. WHO)に従っている。
【0131】
本明細書中使用される場合、「薬学的に許容される溶媒和物」は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体と、1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子、たとえばエタノールの化学量論的または準化学量論的な量とを含む分子複合体を表す。用語「水和物」は、上記溶媒が水である場合を指す。
【0132】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、マシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0133】
マシチニブの化学名は、4-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-N-[4-メチル-3-(4-ピリジン-3イルチアゾール-2-イルアミノ)フェニル]ベンズアミド-CAS番号790299-79-5である。
【化5】
【0134】
マシチニブは、米国特許第7,423,055号および欧州特許公開公報第1525200号に最初に記載された。
【0135】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、マシチニブメシル酸塩である。よって一実施形態では、本明細書中上述されるマシチニブの薬学的に許容される塩は、マシチニブメシル酸塩である。言い換えると、本明細書中上述されるように、マシチニブの薬学的に許容される塩は、マシチニブのメタンスルホン酸塩である。
【0136】
マシチニブメシル酸塩の合成のための詳細な手法は、国際特許公開公報第2008/098949号に提供されている。
【0137】
一実施形態では、「マシチニブメシル酸塩」は、マシチニブの経口的に生体利用可能なメシル酸塩-CAS 1048007-93-7(MsOH);C2830OS.CHSOH;MW 594.76を指す。
【化6】
【0138】
一実施形態によれば、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、治療上有効量で投与される。
【0139】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約1~約12mg/kg/日(mg/kg体重/日)の範囲の用量で投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブは、約1.5~約7.5mg/kg/日の範囲の用量で投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約3~約12mg/kg/日、好ましくは約3~約6mg/kg/日の範囲の用量で投与される。
【0140】
本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12mg/kg/日の用量で投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約1.5、3、4.5、6、7.5、9、10.5、または12mg/kg/日の用量で投与される。
【0141】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約3、4.5、または6mg/kg/日の用量、好ましくは約4.5mg/kg/日の用量で投与される。
【0142】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、最大約12mg/kg/日、より好ましくは約7.5mg/kg/日、さらにより好ましくは約6mg/kg/日に達するために、約1.5mg/kg/日の増分ごとに増大し得る。各用量の増大は、毒性により制御されており、いかなる毒性イベントもなければ、用量の増大が起こるのを許容する。
【0143】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の用量の増大は、初回用量の投与から少なくとも4週間後かつ初回用量の投与から26週間後より前のいずれかの時点、たとえば初回用量の投与から4週間後、8週間後、12週間後、16週間後、20週間後、または24週間後に起こる。各用量の増大は、毒性により制御されている。毒性による制御の例は、一定用量の試験処置による以前の4週間の処置の間、その重症度に関わらず、疑わしい重篤な有害なイベントが報告されず、疑わしい有害なイベントが処置の介入をもたらさず、および/または疑わしい有害なイベントが用量増大の時点で進行中ではないことを評価することを含む。
【0144】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも6週間の間、少なくとも9週間の間、または少なくとも12週間の間、約3mg/kg/日の初回用量で、その後約4.5mg/kg/日の用量で投与される。
【0145】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも4週間の間約3mg/kg/日の初回用量で、次に少なくとも4週間の間約4.5mg/kg/日の用量で、その後約6mg/kg/日の用量で投与され、各用量の増大は、毒性により制御されている。
【0146】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも6週間、少なくとも9週間、または少なくとも12週間の間、約4.5mg/kg/日の初回用量で、その後約6mg/kg/日の用量で投与され、各用量の増大は、毒性により制御されている。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、12週間の間約4.5mg/kg/日の初回用量で、その後約6mg/kg/日の用量で投与され、各用量の増大は、毒性により制御されている。
【0147】
一実施形態によれば、本明細書中記載される全ての用量は、活性成分自体の量を指し、その薬学的に許容される塩または溶媒和物の形態の量を指すものではない。よって、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブの薬学的に許容される塩または溶媒和物の組成の変形形態は、投与される用量に影響しない。
【0148】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与、静脈内投与、非経口投与、局所投与、吸入スプレーによる投与、直腸投与、経鼻投与、またはバッカル投与により投与され得る。
【0149】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与される。
【0150】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、1日に少なくとも1回、好ましくは1日に2回投与される。
【0151】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、長期間、たとえば少なくとも1、2、3、6、9、または12カ月間、投与される。
【0152】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与に適した形態である。
【0153】
経口投与に適した形態の例として、限定するものではないが、液体、ペーストまたは固体の組成物、より具体的には錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、および懸濁剤が挙げられる。
【0154】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、錠剤として、好ましくは100mgまたは200mgの錠剤として投与される。
【0155】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、さらなる処置もしくは第二選択処置として、および/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。
【0156】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、さらなる処置または第二選択処置として投与するためのものである。
【0157】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、支持療法または緩和ケアに対する追加として投与するためのものである。
【0158】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも別の薬学的活性剤と共に投与される。
【0159】
よって本発明では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、上記少なくとも別の薬学的活性剤と同時に、別々に、または連続して投与され得る。
【0160】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、上記少なくとも別の薬学的活性剤と組み合わせて、たとえば組み合わせた製剤、医薬組成物、または医薬として投与される。
【0161】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物および少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、別々に投与される。
【0162】
進行型MS患者に投与され得る他の薬学的活性剤の例として、限定するものではないが、免疫調節剤、抗炎症薬、および神経標的化薬が挙げられる。
【0163】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的活性剤は、免疫調節剤、抗炎症薬、および神経標的化薬を含むかまたはからなる群から選択される。
【0164】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的活性剤は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アレムツズマブ、アザチオプリン、高用量ビオチン(MD1003)、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ダルファンプリジン、フマル酸ジメチル、ジロキシメルフマル酸エステル、エボブルチニブ(evobrutinib)、ファンプリジン、フィンゴリモド、グラチラマー酢酸塩(timexonまたはBCD-063としても知られている)、イブジラスト、免疫グロブリン、インターフェロン(インターフェロンベータ-1a(INF-β-1a)、インターフェロンベータ-1b(INF-β-1b)、ペグインターフェロンベータ-1a、およびペグインターフェロンベータ-1aバイオ後続品(BCD-054としても知られている)を含む)、ラキニモド、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、ナタリズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オザニモド、ポネシモド、シンバスタチン、シポニモド、テリフルノミド、およびウブリツキシマブを含むかまたはからなる群から選択される。
【0165】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的活性剤は、免疫調節剤、すなわち免疫応答を調節する作用物質である。本明細書中使用される場合、免疫調節剤は、免疫応答を抑制する作用物質および免疫応答を刺激する作用物質の両方を含む。免疫調節剤の例として、限定するものではないが、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アレムツズマブ、アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、フマル酸ジメチル、ジロキシメルフマル酸エステル、エボブルチニブ(evobrutinib)、フィンゴリモド、グラチラマー酢酸塩(timexonまたはBCD-063としても知られている)、免疫グロブリン、インターフェロン(インターフェロンベータ-1a(INF-β-1a)、インターフェロンベータ-1b(INF-β-1b)、ペグインターフェロンベータ-1a、およびペグインターフェロンベータ-1aバイオ後続品(BCD-054としても知られている)を含む)、ラキニモド、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、ナタリズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オザニモド、ポネシモド、シンバスタチン、シポニモド、テリフルノミド、およびウブリツキシマブが挙げられる。免疫抑制剤の例として、限定するものではないが、アレムツズマブ、アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、ラキニモド、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、ナタリズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オザニモド、ポネシモド、シポニモド、テリフルノミド、およびウブリツキシマブが挙げられる。
【0166】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、抗炎症薬である。抗炎症薬の例として、限定するものではないが、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、イブジラスト、および免疫グロブリンが挙げられる。
【0167】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、神経標的化薬である。本明細書中使用される場合、神経標的化薬の例として、限定するものではないが、高用量ビオチン(MD1003)、ダルファンプリジン、およびファンプリジンが挙げられる。
【0168】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、高用量ビオチン(MD1003)、イブジラスト、オクレリズマブ、シンバスタチン、およびシポニモドを含むかまたはからなる群から選択される。
【0169】
一実施形態によれば、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、任意選択で本明細書中上述される少なくとも別の薬学的活性剤と共に、MSの1つ以上の症状または徴候を処置することを目的とする少なくとも1つのさらなる薬学的活性剤と共に投与される。MSの1つ以上の症状を処置することを目的とするさらなる薬学的活性剤の例として、限定するものではないが、抗炎症薬、たとえば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、副腎皮質ステロイド、鎮痛剤、たとえば抗炎症作用を伴わない鎮痛剤または経口オピオイド鎮痛剤、筋弛緩剤、疲労を低減する薬物療法、抗うつ剤、抗ムスカリン薬、および緩下剤が挙げられる。
【0170】
一実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬学的活性剤は、抗炎症薬、たとえば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、副腎皮質ステロイド、鎮痛剤、たとえば抗炎症作用を伴わない鎮痛剤または経口オピオイド鎮痛剤を含むかまたはそれからなる群から選択される。
【0171】
一実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬学的活性剤は、抗炎症薬、特に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。NSAIDの例として、限定するものではないが、イブプロフェンおよびナプロキセンが挙げられる。
【0172】
一実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬学的活性剤は、副腎皮質ステロイドである。副腎皮質ステロイドの例として、限定するものではないが、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、およびベタメタゾンが挙げられる。
【0173】
一実施形態では、少なくとも1つのさらなる薬学的活性剤は、鎮痛剤、たとえば抗炎症作用を伴わない鎮痛剤または経口オピオイド鎮痛剤が挙げられる。抗炎症作用を伴わない鎮痛剤の例として、限定するものではないが、アセトアミノフェンが挙げられる。経口オピオイド鎮痛剤の例として、限定するものでないが、モルヒネ、オキシコドン、およびメサドンが挙げられる。
【0174】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、副腎皮質ステロイド、抗炎症作用を伴わない鎮痛剤、経口オピオイド鎮痛剤、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アレムツズマブ、アザチオプリン、高用量ビオチン(MD1003)、クラドリビン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ダルファンプリジン、フマル酸ジメチル、ジロキシメルフマル酸エステル、エボブルチニブ(evobrutinib)、ファンプリジン、フィンゴリモド、グラチラマー酢酸塩(timexonまたはBCD-063としても知られている)、イブジラスト、免疫グロブリン、インターフェロン(インターフェロンベータ-1a(INF-β-1a)、インターフェロンベータ-1b(INF-β-1b)、ペグインターフェロンベータ-1a、およびペグインターフェロンベータ-1aバイオ後続品(BCD-054としても知られている)を含む)、ラキニモド、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、ナタリズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オザニモド、ポネシモド、シンバスタチン、シポニモド、テリフルノミド、およびウブリツキシマブを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1つの薬学的活性剤と共に投与される。
【0175】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、副腎皮質ステロイド、抗炎症作用を伴わない鎮痛剤、経口オピオイド鎮痛剤、高用量ビオチン(MD1003)、イブジラスト、オクレリズマブ、シンバスタチン、およびシポニモドを含むかまたはからなる群から選択される少なくとも1つの薬学的活性剤と共に投与される。
【0176】
本発明の別の目的は、それを必要とする患者の進行型多発性硬化症(MS)を処置するための方法であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を患者に投与するステップを含み、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、好ましくは2年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、好ましくは5年超の時間を有する、方法である。
【0177】
一実施形態では、患者は、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する。
【0178】
また本発明は、それを必要とする患者の進行型多発性硬化症(MS)を処置するための方法であって、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上、好ましくは2年以上および/または疾患の発症から(すなわち発症の期間から)2年以上、好ましくは5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を患者に投与するステップを含む、方法に関する。
【0179】
また本発明は、それを必要とする患者の進行型多発性硬化症(MS)を処置するための方法であって、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)3年以上および/または疾患の発症から(すなわち発症の期間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を患者に投与するステップを含む、方法に関する。
【0180】
本発明の別の目的は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するためまたは進行型MSを処置するための医薬組成物であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含み、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、好ましくは2年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、好ましくは5年超の時間を有する、医薬組成物である。
【0181】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するためまたは進行型MSを処置するための医薬組成物であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含み、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する、医薬組成物に関する。
【0182】
一実施形態では、本明細書中上述される医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0183】
また本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するためかまたは進行型MSを処置するための医薬組成物であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含み、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上、好ましくは2年以上、および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)2年以上、好ましくは5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、医薬組成物に関する。
【0184】
一実施形態では、それを必要とする患者の進行型MSの処置に使用するためまたは進行型MSを処置するための医薬組成物であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含み、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上、好ましくは2年以上、および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)3年以上、および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、医薬組成物に関する。
【0185】
本発明の別の目的は、それを必要とする患者の進行型MSの処置のための医薬の製造に使用するための、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、1年超、好ましくは2年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、2年超、好ましくは5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0186】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置のための医薬の製造に使用するための、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記患者が、診断から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、3年超の時間を有し、および/または発症から2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物による処置の開始までに、5年超の時間を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0187】
また本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置のための医薬の製造に使用するための、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記医薬が、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)1年以上、好ましくは2年以上、および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)2年以上、好ましくは5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0188】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする患者の進行型MSの処置のための医薬の製造に使用するための、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、上記医薬が、任意選択で診断から(すなわち診断の時間から)3年以上、および/または疾患の発症から(すなわち疾患の発症の時間から)5年以上経過後のさらなる処置もしくは第二選択処置としておよび/または支持療法もしくは緩和ケアに対する追加として投与するためのものである、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0189】
また本発明は、それを必要とする患者の後期進行型MS(すなわち進行型MSの後期)の処置のための医薬の製造に使用するための、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、後期進行型MSが、診断から1年以上、好ましくは2年以上の時間として、および/または疾患の発症から2年以上、好ましくは2年以上の時間として定義される、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。言い換えると、また本発明は、それを必要とする患者の後期進行型MS(すなわち進行型MSの後期)の処置のための医薬の製造に使用するための、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、後期進行型MSが、診断から少なくとも1年、好ましくは少なくとも2年の時間として、および/または疾患の発症から少なくとも2年、好ましくは少なくとも5年の時間として定義される、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にマシチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0190】
一実施形態では、後期進行型MSは、診断から3年以上の時間として、および/または疾患の発症から5年以上の時間として定義される。言い換えると、一実施形態では、後期進行型MSは、診断から少なくとも3年の時間として、および/または疾患の発症から少なくとも5年の時間として、定義される。
【0191】
実施例
本発明を、さらに以下の実施例により示す。
【0192】
実施例1:試験AB07002の設計および一次解析結果
方法
本明細書中上記に定義される進行型多発性硬化症(進行型MS)の処置としての4.5mg/kg/日の用量の経口マシチニブを評価することを目的として、国際的な多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験を行った。適格患者は、18~75歳であり、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)または非活動性二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMSまたはnSPMS)と診断されており、2.0~6.0の範囲のEDSS(神経症状評価尺度)のベースラインスコアを有していた。適格患者を、96週間、4.5mg/kg/日(mg/kg体重/日)のマシチニブまたはプラセボによって処置した。
【0193】
主要評価項目は、共分散モデル(すなわち12週目(W12)~96週目(W96)までの全ての測定に関するANCOVA GEEモデル)の反復解析を使用したベースラインからの総合的なEDSSの変化であった。
【0194】
結果は、最小2乗平均の差異として表され、EDSSスコアの進行、すなわちEDSSスコアの経時的な変化、または言い換えると、ベースラインでのEDSSスコアとマシチニブもしくはプラセボによって処置した後のEDSSスコアとの間の差異を説明する(正の値は、患者の悪化を表す)。処置の効果は、グループ間の差異として報告される(ΔLSM、負の値は、プラセボによる処置と比較したマシチニブによる処置の有益な効果を示す)。
【0195】
選択基準は、以下を含む:
一次性進行型MS(PPMS)または改訂されたMcDonaldの診断基準による包含前の2年以内に再発していない二次性進行型多発性硬化症(非活動性SPMSまたはnSPMS)に罹患している患者;
ベースラインで2.0~6.0を含む範囲のEDSSスコアを有する患者;
参加前の2年以内に1ポイント以上のEDSSスコアの進行を有した患者;および
18~75歳であり、50kg超の体重および18~35kg/mのBMI(ボディマス指数)を有する男性または女性の患者。
【0196】
その神経学的臨床兆候および症状ならびに磁気共鳴画像法で観察された病変(「MRI病変」)を良好に説明するMS以外の疾患に罹患している患者は、除外された。
【0197】
MSの診断のための改訂されたMcDonaldの診断基準は、研究および臨床の実務で広く使用されている良好に確立された診断手法である。多発性硬化症の診断に関するMcDonaldの診断基準は、Polman et al., Ann Neurol. 2011;69(2):292-302に公開されている。McDonaldの診断基準の2017年の改訂版は、Thompson et al., Lancet Neurol. 2018;17(2):162-173に公開されている。以前のバージョンのMcDonaldの診断基準を使用して診断された患者もまた、2017年のMcDonaldの診断基準に記載されるMSの基準を満たす。
【0198】
用語「二次性進行型」は、二次性進行型MS(SPMS)が以前にRRMSを経験した患者で診断されたという事実を説明する。MS患者が炎症性の再発をもはや経験していなくとも疾患が悪化し続けている場合、患者は、SPMSの疾患経過に移行したとみなされる。
【0199】
結果
以下の表4は、進行型MSの集団をその構成要素PPMSおよび非活動性SPMSのサブグループへと分類した、試験AB07002の4.5mg/kg/日のマシチニブの完全なデータセットからの主要有効性解析の結果を表す。簡潔に述べると、
マシチニブは、EDSSの進行の有意な遅延により証明されるように、進行型MSの処置に関してプラセボと比較して有効性を実証した(プラセボによる処置後のLSM EDSSと比較したマシチニブによる処置後のLSM EDSSを参照またはΔEDSSを参照);
マシチニブは、EDSSの進行の遅延により示されるように、PPMSの処置に関してプラセボと比較して有意ではない傾向を実証した(プラセボによる処置後のLSM EDSSと比較したマシチニブによる処置後のLSM EDSSを参照またはΔEDSSを参照);
マシチニブは、非活動性SPMSの処置に関してプラセボと比較してEDSS進行の有意な遅延を示した;実際に、平均して、EDSS進行の明らかな停止を認めた(ベースラインでのEDSSスコアより低いマシチニブによる処置後のEDSSスコアを示す、マシチニブによる処置の後のLSM EDSSの負の値を参照)。
【0200】
【表4】
【0201】
実施例2:臨床マーカー「診断からの時間」および「発症からの時間」の組み合わせによる進行型MSの亜集団の解析
方法
試験AB07002からの主要評価項目のデータの亜集団解析は、進行型MS患者におけるマシチニブの有効性に及ぼす、臨床マーカーの、最初のMSの臨床症状の推定日から導出されるベースラインと比較した「発症からの時間」(すなわち処置の開始の日付)またはベースラインと比較した「診断からの時間」(すなわち処置の開始の日付)の影響を評価した。
【0202】
驚くべきことに、この結果は、後期の疾患の発症時(すなわちMS診断から少なくとも1年後および/または疾患の最初の症状から少なくとも2年後)に処置を受けた患者のみが、マシチニブによる処置から恩恵を受けやすいことを示している。早期の進行型MS疾患の発症(すなわちMSの診断または疾患の最初の症状の直後)の患者は、プラセボと比較してマシチニブに対し識別可能な応答を示さなかった。よって、臨床マーカー「診断から処置の開始までの時間」および「発症から処置の開始までの時間」は、マシチニブに対する可能性のある応答の予測指標として、よって、マシチニブによる処置から恩恵を受ける可能性が最も高い患者の選択のための手法として、使用され得る。
【0203】
「発症からの時間」は、最初の臨床症状の日付(年/月/日、年/月、または年)から導出され、この期間は、処置の開始の日付から計算される。最初の症状の日付は、通常、病歴から、たとえば診療記録および臨床的に確定した診断後の患者/介護者のMS関連の症状の過去の想起から、後向きに決定される。欠測データの補完は、様々な方法を使用して操作でき;その一例は、以下の手法である:日に関する情報がない場合、日付は、その月の最終日とみなされ;日および月がない場合、日は、6月の最終日とみなされる。
【0204】
進行型MSの「診断からの時間」は、理想的には、MS専門の神経学者により決定された進行型MSの臨床的に確定した診断に基づくものである。実際に、これは、進行型MS、すなわちPPMSまたは非活動性SPMSの最初の臨床的に確定した診断の日付(年/月/日、年/月、または年)から導出され、この期間は、処置の開始の日付から計算される。MS診断時に、暫定的な疾患経過が特定され(再発-寛解、一次性進行型、または二次性進行型)、経過が活動性であるか否か(非活動性)および進行型であるか否かが、前年の病歴に基づき特定される。表現型は、累積した情報に基づき定期的に再評価される。
【0205】
最初の診断は、発症時に再発-寛解型(RRMS)または発症時に進行型(PPMS)のいずれかであり得る。一般に、診断のプロセスは、臨床試験、病歴、研究試験、ならびに脳および場合により脊髄の磁気共鳴画像法(MRI)からエビデンスを得ることを含む。これらの試験は、患者の神経性症状の他の可能性がある原因を排除し、MSと一貫するデータを集めるように意図されている。バリデートされた生体マーカーが存在しないため、MSの臨床的に確定した診断は、病変の空間的多発性(神経系において1超の場所での損傷を示唆する)および病変の時間的多発性(損傷が1超の場所で起こったことを示唆する)を伴う中枢神経系(CNS)の関与の客観的な臨床エビデンスが実証された場合に限って行われる。これらの重要な原則は、研究および臨床の実務で広く使用されている手法である、多発性硬化症の診断に関する2017年の改訂されたMcDonaldの診断基準により具現化されている(Thompson et al., Lancet Neurol. 2018;17(2):162-173)(さらなる詳細に関しては本明細書中上記を参照)。また、以前のバージョンのMcDonaldの診断基準を使用して診断された全ての患者は、2017年のMcDonaldの診断基準に記載されるMSの基準を満たす。患者がもはや炎症性の再発を経験していない場合でも疾患が悪化し続けている場合、患者は、RRMSの疾患経過から非活動性二次性進行型MS(SPMS)へと移行したとみなされる。SPMSの診断を行うために、患者の症状の変化の入念な記録、神経学的検査、およびMRIスキャンの反復を含む、様々な戦略を使用することができる。
【0206】
結果
より具体的には、上述の臨床データは、経口投与されたマシチニブ(4.5mg/kg/日)が「進行型MS」集団の別個の亜集団により大きな治療上の利益を提供することを示している(以下の表5参照)。この増強された処置-効果は、EDSSスコアの変化により測定した場合、マシチニブの処置アームおよびプラセボの処置アームの間の均一な(すなわち進行型MSの集団ならびにその構成要素のPPMSおよび非活動性SPMSのサブグループ)統計学的有意差、ならびにプラセボ処置アームではみられなかった総EDSSスコアの均一な反転(すなわち減少)により証明されるベースラインと比較した身体障害の実際の減少に関するものである。
【0207】
対応する最大の解析対象集団データセット(表4参照)との亜集団解析の比較は、ΔEDSSの相対差として記録される(R%)。大きい正のR%の値は、マシチニブ処置から大きい恩恵を受ける亜集団を表し、負のR%の値は、亜集団における処置-効果の低下または識別可能な処置-効果がないことを表す。
【0208】
【表5】
【0209】
「2年超の診断から処置の開始までの時間および5年超の発症から処置の開始までの時間」を有すると定義された亜集団は、マシチニブによる処置後にプラセボと比較して、ベースラインからのEDSSの変化の統計学的有意差を示した(p<0.05)。これは、進行型MS、PPMS、および非活動性SPMSの患者のカテゴリーに当てはまるものであった。特に3つ全てのカテゴリーは、EDSSの減少(すなわちベースラインからの負の変化)の反転により証明されるように、身体障害の総合的な低減も示した。最大の解析対象集団データセットとの比較は、上記で参照した選択した亜集団が、PPMS患者では113%の相対的な改善、進行型MS患者では64%の相対的な改善、および非活動性SPMS患者では24%の相対的な改善を有したことを示している。
【0210】
これに対し、「2年以下の診断から処置の開始までの時間が2年以下または5年以下の発症から処置の開始までの時間」を有すると定義された補完的な亜集団は、プラセボと比較して有意なマシチニブによる処置効果を示さないか、またはさらにはいずれの識別可能な傾向も示さなかった。さらに、全ての患者のカテゴリーは、EDSSの継続的な増加を示し、これは、プラセボと類似である(有意ではない)またはプラセボを超える蓄積する身体障害および疾患進行に対応する。
【0211】
いずれの理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、同定した患者の亜集団において観察したマシチニブによる処置-効果が、薬物の標的化機構の動的な病態生理学的な影響と相関する「診断からの時間」および「発症からの時間」のパラメータによるものであり、たとえば中枢神経系(CNS)の区分けなどのプロセスを公安することを示唆している。このMSのモデルは、MSの活動性型(RRMSおよび活動性SPMS)が、末梢性の獲得免疫(たとえばB細胞およびT細胞リンパ球)により主に駆動され、進行型MS(PPMSおよび非活動性SPMS)が、CNSの中に含まれることとなる自己永続的な自然免疫関連の炎症により主に駆動されると考えている。このような疾患の病理生理学のシフトは、進行型MS患者の疾患の進行を変えるためのRRMS療法が失敗したことにより強調される。よって、この進行期のMSを、たとえば活性化マクロファージ/ミクログリアおよびマスト細胞の調節を介して標的化することにより、区分けされた神経炎症を阻害し、CNS修復経路を促進することを可能にし得る。
【0212】
実施例3:
「診断から処置の開始までの時間」にのみ基づくサブグループ解析および「臨床的な発症から処置の開始までの時間」にのみ基づくサブグループ解析を、それぞれ以下の表6~8および表9~11にまとめる。繰り返しになるが、これらデータは、経口投与されたマシチニブ(4.5mg/kg/日)が「進行型MS」集団の別個の亜集団により大きな治療上の利益を提供することを示している。また、これらのデータは、組み合わせた臨床マーカー「発症/診断からの時間」のカットオフ値を定義するために使用した(実施例2参照)。
【0213】
臨床マーカー「診断から処置の開始までの時間」による進行型MSの亜集団の解析
どの進行型MS患者がマシチニブによる処置から最も利益を受ける可能性があるかを同定する確立された予後または予測生体マーカーが存在しないため、入手可能な臨床マーカーを使用する必要がある。変数「診断からの時間」(ベースラインまたは処置の開始時)は、それが疾患プロセスのより早期または後期で処置するために有用であるか否かを示す際に潜在的予測値を有する。
【0214】
進行型MS患者(PPMS患者および非活動性SPMS患者の両方を含む)では、2年超の診断から処置の開始までの時間を有する亜集団は、マシチニブ処置アームで、プラセボと比較して有意なマシチニブによる処置-効果(EDSS=-0.133、p=0.0033、最大の解析対象集団データセットと比較した場合の処置-効果における34%の改善)、および身体障害の総合的な低減を示した(以下の表6を参照)。これに対し、2年以下の診断から処置の開始までの時間を有する進行型MS患者の補完的亜集団は、プラセボと比較して識別可能な処置-効果を示さなかった。
【0215】
【表6】
【0216】
PPMS患者に関して、2年超の診断から処置の開始までの時間により、プラセボと比較して最初に強く有意なマシチニブの処置-効果を示す亜集団が区別された(ΔEDSS=-0.246、p=0.0119、最大の解析対象集団データセットと比較した場合の処置-効果の85%の改善に対応)(以下の表7を参照)。また、ベースラインと比較したEDSSの減少の反転により証明されるように、身体障害の総合的な低減も、この亜集団のマシチニブアームで観察された。これに対し、2年以下の診断から処置の開始までの時間を有するPPMS患者の補完的亜集団は、プラセボと比較して識別可能な処置-効果を示さなかった。
【0217】
PPMS患者に関して、3年超の診断から処置の開始までの時間もまた、プラセボと比較して有意なマシチニブの処置-効果(ΔEDSS=-0.211、p=0.0229、最大の解析対象集団データセットと比較した場合の処置-効果の59%の改善に対応)およびベースラインと比較したEDSSの減少の反転により証明される、マシチニブアームでの身体障害の総合的な低減を示す亜集団を定義した(以下の表7を参照)。
【0218】
【表7】
【0219】
非活動性SPMS患者に関して、2年超または3年超の診断から処置の開始までの時間を有する亜集団もまた、プラセボと比較した有意なマシチニブの処置効果およびマシチニブ処置アームにおける身体障害の総合的な低減を示した(以下の表8を参照)。これに対し、2年以下の診断から処置の開始までの時間を有する非活動性SPMS患者の補完的亜集団は、プラセボと比較して識別可能な処置効果を示さなかった。
【0220】
【表8】
【0221】
臨床マーカー「発症から処置の開始までの時間」による進行型MSの亜集団の解析(試験AB07002)
どの進行型MS患者がマシチニブ処置から最も利益を受ける可能性があるかを同定する確立された予後または予測生体マーカーが存在しないため、入手可能な臨床マーカーを使用する必要がある。変数「臨床的な発症からの時間」は、それが疾患プロセスのより早期または後期で処置するために有用であるか否かを示す際に潜在的予測値を有する。
【0222】
進行型MS患者(PPMS患者および非活動性SPMS患者の両方を含む)では、5年超の発症から処置の開始までの時間により定義された亜集団は、プラセボと比較して有意なマシチニブの処置-効果(ΔEDSS=-0.156、p=0.0003、最大の解析対象集団データセットと比較する場合処置-効果の58%の改善に対応)、およびマシチニブ処置アームにおける身体障害の総合的な低減を示した。これに対し、5年以下の発症から処置の開始までの時間を有する進行型MS患者の補完的亜集団は、プラセボと比較して識別可能な処置効果を示さなかった。
【0223】
【表9】
【0224】
PPMS患者に関して、5年超の発症から処置の開始までの時間により、プラセボと比較して有意なマシチニブ処置-効果(ΔEDSS=-0.214、p=0.0176,最大の解析対象集団データセットと比較した場合の処置-効果の61%の改善に対応)およびマシチニブ処置アームにおける身体障害の総合的な低減を示す亜集団が区別された(以下の表10を参照)。これに対し、5年以下の発症から処置の開始までの時間を有するPPMS患者の補完的亜集団は、プラセボと比較して識別可能な処置-効果を示さなかった。
【0225】
【表10】
【0226】
非活動性SPMS患者では、5年超の発症から処置の開始までの時間により定義した亜集団もまた、プラセボと比較して有意なマシチニブの処置-効果および、マシチニブ処置アームにおける身体障害の総合的な低減を示した(以下の表11を参照)。これに対し、5年以下の発症から処置の開始までの時間を有する非活動性SPMSの補完的亜集団は、プラセボと比較して識別可能な処置効果を示さなかった。
【0227】
【表11】
【国際調査報告】