(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】手術中に使用するための保護デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20230406BHJP
A61B 90/00 20160101ALI20230406BHJP
【FI】
A61B17/94
A61B90/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022549465
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 AU2021050135
(87)【国際公開番号】W WO2021163756
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521363310
【氏名又は名称】シーバス・エンタープライゼス・ピーティワイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEABAS ENTERPRISES PTY LTD
【住所又は居所原語表記】5 JENNIE PLACE, CARLINGFORD, NSW 2118, AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ゲルゲス,バッセム
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,ショーン・ジョゼフ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160NN04
(57)【要約】
腹腔鏡手術中に使用するための保護アセンブリであって、当該アセンブリが、非毒性材料から形成された薄い膜であって、当該膜が、トロカールのカニューレを通り抜けるのに十分に薄く、かつ機動性がある、薄い膜;当該薄い膜から延出する可撓性コネクタ;および前記カニューレを通過する寸法にされた挿入可能なシャフトであって、当該シャフトの遠位部が前記可撓性コネクタに固定される、挿入可能なシャフト;を備える、保護アセンブリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹腔鏡手術中に使用するための保護アセンブリであって、当該アセンブリが、非毒性材料から形成された薄い膜であって、
当該膜が、トロカールのカニューレを通り抜けるのに十分に薄く、かつ機動性がある、薄い膜;前記薄い膜から延出する可撓性コネクタ;および
前記カニューレへの前記膜の挿入を容易にし、続いて前記膜を、前記カニューレの出口を通過させて前記膜が患者の内臓で拡開されるようにする、挿入可能なプランジャであって、当該プランジャが、挿入されて前記カニューレを通過する寸法にされたシャフト、を含み、当該シャフトの遠位部が前記可撓性コネクタに固定される、挿入可能なプランジャ、を備える、保護アセンブリ。
【請求項2】
前記可撓性コネクタが、前記膜の周辺部に接続される、請求項1に記載の保護アセンブリ。
【請求項3】
挿入可能な前記シャフトの近位部が、前記シャフトが前記トロカールの前記カニューレ内へ内方移動するのを制限し、前記シャフトが前記トロカールを通って落下するのを防止するための、拡大されたヘッド、を備える、請求項1または2に記載の保護アセンブリ。
【請求項4】
前記膜が、前記膜が折り畳まれた構成で前記カニューレを通過することを可能にするために前記膜の巻きまたは折り畳みを容易にする複数の折り畳み領域、を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項5】
前記膜が、互いに実質的に交差する、および好ましくは垂直である少なくとも2つの線状周辺部、を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項6】
前記2つの線形周辺部が、前記線形周辺部を交差構成に方向付けるための少なくとも1つの湾曲した架橋部によって、接続される、請求項5に記載の保護アセンブリ。
【請求項7】
第1の弧の長さを有する第1の湾曲した架橋部と、翼状の膜を画定するために前記第1の弧の長さが第2の弧の長さより短いような前記第2の弧の長さを有する第2の湾曲した架橋部と、を備える、請求項6に記載の保護アセンブリ。
【請求項8】
前記コネクタの幅が、前記膜の全幅よりも実質的に小さい、請求項1から7のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項9】
前記可撓性コネクタの長さが、前記トロカールの前記カニューレの長さよりも長い、請求項1から8のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項10】
前記可撓性コネクタの長さが、前記トロカールの前記カニューレの長さの少なくとも2倍である、請求項9に記載の保護アセンブリ。
【請求項11】
前記膜が、前記膜の厚さ分だけ離れた対向する主要膜表面を備え、各膜表面が、隣接して配置される任意の2つの突出部が凹部によって分離されるような突出部および凹部の列、を備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項12】
前記主要膜表面の一方の各凹部が、トラフを形成する形状であり、前記主要膜表面の他方の突出部と整列している、請求項11に記載の保護アセンブリ。
【請求項13】
前記膜の主要表面上の前記突出部のそれぞれが、概して前記突出部および凹部の列の方向に対して交差する方向に、延在する、請求項12に記載の保護アセンブリ。
【請求項14】
前記突出部の平均高さが、前記凹部の平均深さに実質的に等しい、請求項11から13のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項15】
隣接して配置される前記突出部と凹部との間における前記膜の部分の厚さが、前記突出部の平均高さおよび/または前記凹部の平均深さと比べて実質的に小さいかまたは等しい、請求項11から14のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項16】
隣接する突出部と凹部との間の前記膜の部分が、折り畳まれた構成における前記膜の折り畳みまたは巻きを容易にする、請求項11から15のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項17】
前記コネクタが、前記膜と融着される、請求項1から16のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項18】
前記膜が、アブレーションによる偶発的な損傷を低減または最小化するのに十分な熱耐性を有する、請求項1から17のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項19】
前記可撓性コネクタが、使用中に前記トロカールの前記カニューレ中に引き込まれるときに前記膜の巻きまたは折り畳みを容易にするために先細周辺部が前記シャフトに向かう方向に概して先細になるように、前記膜の前記先細周辺部に取り付けられる、請求項1から18のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項20】
前記膜の幅が、前記膜上の前記コネクタの取り付け位置から徐々に広くなる、請求項19に記載の保護アセンブリ。
【請求項21】
前記可撓性コネクタの長さが、調整可能である、請求項1から20のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項22】
腹腔鏡手術中に使用するための保護アセンブリであって、
当該アセンブリが、非毒性材料から形成された薄い膜であって、当該膜が、トロカールのカニューレを通り抜けるのに十分に薄く、かつ機動性があり、ここで当該膜が、当該膜の厚さ分だけ離れた対向する主要膜表面を備え、各膜表面が、隣接して配置される任意の2つの突出部が凹部によって分離されるような突出部および凹部の列、を備える、薄い膜、を備える、保護アセンブリ。
【請求項23】
前記主要膜表面の一方の各凹部が、トラフを形成する形状であり、前記主要膜表面の他方の突出部と整列している、請求項22に記載の保護アセンブリ。
【請求項24】
前記膜の主要表面上の前記突出部のそれぞれが、概して前記突出部および凹部の列の方向に対して交差する方向に、延在する、請求項23に記載の保護アセンブリ。
【請求項25】
前記突出部の平均高さが、前記凹部の平均深さに実質的に等しい、請求項22から24のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項26】
隣接して配置される前記突出部と凹部との間における前記膜の部分の厚さが、前記突出部の平均高さおよび/または前記凹部の平均深さと比べて実質的に小さいかまたは等しい、請求項22から25のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【請求項27】
隣接する突出部と凹部との間の前記膜の部分が、折り畳まれた構成における前記膜の折り畳みまたは巻きを容易にする、請求項22から26のいずれか1項に記載の保護アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内への挿入のための医療デバイス、および患者の体内にデバイスを挿入するための手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲手術または鍵穴手術とは、外科医が皮膚に長さ約5~12mmの小さな切り込みを1つ以上入れ、そこから手術器具、ライト、およびカメラなどを挿入して患者の体内の組織構造を手術する一般的な手術方法である。一方、従来の開腹手術では、外科医が15~30cmの長さの切開を行う場合がある。その結果、低侵襲手術を受ける患者は、開腹手術を受ける患者に比べて術後の痛みが少なく、術後の回復が早いだけでなく、傷跡も目立たない。
【0003】
しかし、低侵襲手術は、開腹手術とは異なる手と目の調整スキルを必要とし、外科医は、ディスプレイ上で手術空間を2次元で見る必要があり、奥行き知覚が制限される。さらに、外科医は、処置される組織構造に対する触覚フィードバックが制限されており、手術空間が限られているため、閉塞している組織構造を牽引して治療対象の組織構造を露出させる能力が制限される可能性がある。その結果、低侵襲手術中に組織構造を不用意に焼くまたは穿孔させるリスクが生じる可能性がある。
【0004】
したがって、鍵穴手術中に使用するためのデバイスを提供することができれば、患者への傷害のリスクを低減または排除できるという利点が存在するであろう。
【0005】
本明細書において先行技術文献が参照される場合、この参照は、その文献がオーストラリアまたはその他の国の当該技術分野の共通の一般知識の一部を形成していることを認めるものではないことが、明確に理解されるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、患者の体内に挿入するための医療デバイスを対象とし、上記の欠点の少なくとも1つを少なくとも部分的に克服するか、または消費者に有用なまたは商業的な選択肢を提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、腹腔鏡手術中に使用するための保護アセンブリが提供され、当該アセンブリは、非毒性材料から形成された薄い膜であって、当該膜が、トロカールのカニューレを通り抜けるのに十分に薄くかつ機動性のある (maneuverable)、薄い膜;前記薄い膜から延出する可撓性コネクタ;および、前記カニューレへの前記膜の挿入を容易にし、続いて前記膜を、前記カニューレの出口を通過させて前記膜が患者の内臓で拡開されるようにする、挿入可能なプランジャであって、当該プランジャが、挿入されて前記カニューレを通過する寸法にされたシャフト、を含み、当該シャフトの遠位部が前記可撓性コネクタに固定される、挿入可能なプランジャ、を備える。
【0008】
別の態様において、本発明は、腹腔鏡手術中に使用するための保護アセンブリを提供し、当該アセンブリは、非毒性材料から形成された薄い膜であって、当該膜が、トロカールのカニューレに通すために十分に薄くかつ機動性があり、当該膜が、当該膜の厚さ分だけ離れた 対向する主要膜表面を有する、薄い膜、を備え、各膜表面は、隣接して配置される任意の2つの突出部が凹部によって分離されているような突出部および凹部の列、を備える。
【0009】
1つの実施形態において、前記可撓性コネクタは、膜の周辺部に接続されている。
【0010】
1つの実施形態において、前記挿入可能なシャフトの近位部は、前記シャフトが前記トロカールの前記カニューレ内へ内方移動するのを制限し、前記シャフトが前記トロカールを通って落下するのを防止するための拡大されたヘッド、を備える。
【0011】
1つの実施形態において、前記膜は、前記膜が折り畳まれた構成で前記カニューレを通過することを可能にするために前記膜の巻き (rolling)または折り畳みを容易にする複数の折り畳み領域、を備える。
【0012】
1つの実施形態において、前記膜は、互いに実質的に交差する、好ましくは垂直である少なくとも2つの線状周辺部、を備える。
【0013】
好ましくは、前記2つの線形周辺部は、前記線形周辺部を交差構成に方向付けるための少なくとも1つの湾曲した架橋部によって、接続される。
【0014】
1つの実施形態において、第1の弧の長さを有する第1の湾曲した架橋部と、翼状の膜を画定するために前記第1の弧の長さが第2の弧の長さより短いような前記第2の弧の長さを有する第2の湾曲した架橋部と、が設けられる。
【0015】
1つの実施形態において、前記コネクタの幅は、前記膜の全幅よりも実質的に小さい。
【0016】
1つの実施形態において、前記可撓性コネクタの長さは、前記トロカールの前記カニューレの長さよりも長い。
【0017】
1つの実施形態において、前記可撓性コネクタの長さは、前記トロカールの前記カニューレの長さの少なくとも2倍である。
【0018】
1つの実施形態において、前記膜は、前記膜の厚さ分だけ離れた対向する主要膜表面を備え、各膜表面は、隣接して配置される任意の2つの突出部が凹部によって分離されるような突出部および凹部の列、を備える。
【0019】
好ましくは、前記主要膜表面の一方の各凹部は、トラフを形成する形状であり、前記主要膜表面の他方の突出部と整列している(aligned with)。
【0020】
1つの実施形態において、前記膜の主要表面上の前記突出部のそれぞれは、概して前記突出部および凹部の列の方向に対して交差する方向に、延在する。
【0021】
1つの実施形態において、前記突出部の平均高さは、前記凹部の平均深さに実質的に等しい。
【0022】
1つの実施形態において、隣接して配置される前記突出部と凹部との間における前記膜の部分の厚さは、前記突出部の平均高さおよび/または前記凹部の平均深さと比べて実質的に小さいかまたは等しい。
【0023】
1つの実施形態において、隣接する突出部と凹部との間の前記膜の部分は、折り畳まれた構成における前記膜の折り畳みまたは巻きを容易にする。
【0024】
好ましくは、前記コネクタは、前記膜と融着される。
【0025】
好ましくは、前記膜は、アブレーションによる偶発的な損傷を低減または最小化するのに十分な熱耐性を有する。
【0026】
1つの実施形態において、前記可撓性コネクタは、使用中に前記トロカールの前記カニューレ中に引き込まれるときに前記膜の巻きまたは折り畳みを容易にするために先細(convergent)周辺部が前記シャフトに向かう方向に概して先細になるように、前記膜の前記先細周辺部に取り付けられる。
【0027】
1つの実施形態において、前記膜の幅は、前記膜上の前記コネクタの取り付け位置から徐々に広くなる。
【0028】
1つの実施形態において、前記可撓性コネクタの長さは、調整可能である。
【0029】
本開示は、別の態様において、手術中に使用するための保護デバイスであって、患者の体内に少なくとも部分的に挿入するために適合された膨張可能な本体と、前記膨張可能な本体内に少なくとも部分的に配置される内側部材とを備え、ここで、膨張されると、前記保護デバイスが手術中に患者の体内の組織構造を保護するように構成される、保護デバイス、を広範に提供する。
【0030】
前記保護デバイスは、任意の適切な種類の手術に使用され得る。好ましくは、前記保護デバイスは、患者の体内の組織構造に対して行われる手術のために使用され得る。例えば、前記手術は、低侵襲手術(腹腔鏡、胸腔鏡、関節鏡、子宮鏡、虫垂切除術など)、開腹手術(開腹術、胆嚢摘出術など)、またはそれらの任意の適切な組み合わせであり得る。好ましくは、前記保護デバイスは、隣接する組織構造を保護する必要があり得る患者の体内の組織構造に対して行われる手術に、使用され得る。
【0031】
前記保護デバイスは、任意の適切な種類の手術装置と共に使用され得る。好ましくは、前記保護デバイスは、手術装置が患者を傷つける危険性がある場合、または手術装置による組織構造の治療が、隣接する組織構造などに損傷を与える可能性がある場合に、手術装置と共に使用され得る。例えば、前記保護デバイスは、切断具(メス、刃、はさみ、解剖器具、カッターなど)、穿刺用器具(針、カニューレ、プローブなど)、把持具(把持器、鉗子など)、エネルギー供給デバイス(熱エネルギー、冷エネルギー、電気エネルギーなど)、トロカール、およびそれらの任意の適切な組み合わせを含む手術装置と共に、使用され得る。
【0032】
前述のように、前記保護デバイスは、患者の体内への少なくとも部分的な挿入に適合されている。本発明の1つの実施形態では、前記保護デバイスは、少なくとも部分的に中に収容されるように、患者の体内に挿入され得る。本発明の1つの好ましい実施形態において、前記保護デバイスは、患者の体内に実質的に受容されるように、患者の体内に挿入され得る。この例では、前記保護デバイスの少なくとも一部が、創傷、外科的切開部などを通して、患者の体外に延出し得ることが想定される。好ましくは、前記保護デバイスは、患者の体内への取り外し可能な挿入に、適合され得る。この例では、前記保護デバイスは、患者の体内に永久に挿入されるのではなく、手術時に患者の体内に一時的に挿入され、次いで、手術の終了時に(特に、創傷または切開部を閉じる前に)取り除かれ得ることが想定される。
【0033】
前記保護デバイスは、任意の適切なサイズ、形状、または構成を有し得る。好ましくは、前記保護デバイスのサイズ、形状および構成は、手術中に保護および/または治療されるべき組織構造によって、少なくとも部分的に決定され得る。例えば、大きな表面積を有する組織構造が保護される場合、より小さな組織構造が保護される場合と比較して、より大きな保護デバイスが必要とされ得る。しかし、前記保護デバイスのサイズ、形状および構成は、外科的切開部、アクセスポート、または前記保護デバイスが挿入される体の開口部のサイズ、実施される外科的処置の種類、使用される手術器具の種類、および処置される組織構造などの多くの要因によって異なり得ることが、理解されるであろう。
【0034】
前述したように、前記保護デバイスは、手術中に組織構造を保護するように構成されている。前記保護デバイスは、任意の適切な手段によって組織構造を保護することができる。例えば、前記保護デバイスは、組織構造を少なくとも部分的に囲んでもよく、組織構造を実質的に囲んでもよく、組織構造を少なくとも部分的に覆うブランケットとして適用してもよく、組織構造を実質的に覆うブランケットとして適用してもよく、組織構造を少なくとも部分的に覆うカーテンとして適用してもよく、組織構造を実質的に覆うカーテンとして適用してもよい。好ましくは、前記保護デバイスは、手術装置と組織構造との間に、物理的、熱的、および/または電気的障壁を提供し得る。
【0035】
本発明の1つの実施形態において、前記保護デバイスは、手術中に組織構造に取り付けられ得る。好ましくは、前記保護デバイスは、手術中に組織構造に一時的に取り付けられ得る。使用において、前記保護デバイスは、手術中に患者の体内の組織構造に一時的に取り付けられ、その後、手術の終了時に(特に、創傷または切開部を閉じる前に)取り外されそして取り除かれることが想定される。本発明の1つの実施形態では、前記保護デバイスは、カーテンとして機能するように、手術中に組織構造体に取り付けられ得る。この例では、前記保護デバイスが組織構造を覆い得ることが、想定される。あるいは、前記保護デバイスは、組織構造を前記保護デバイスで少なくとも部分的に囲むことによって、組織構造を保護することができる。この例では、前記保護デバイスの一部が前記保護デバイスの別の部分に一時的に取り付けられ、その後、手術の終了時に取り外されそして取り除かれることが、想定される。前記保護デバイスの一部は、一時的な接着剤(非結合性接着剤、位置決め剤など)、機械的ファスナー(スティッチング、ステープル、縫合クリップ、縫合アンカー、鋲、クランプなど)、綱もしくはひも、またはそれらの組み合わせなど任意の適切な技術によって、組織構造および/または保護デバイスの別の部分に、一時的に取り付けられ得る。しかし、前記保護デバイスの一部が組織構造および/または保護デバイスの別の部分にどのように取り付けられるかは、保護すべき組織構造の種類およびサイズ、患者の体内の組織構造の位置、前記保護デバイスが製造される元の材料の種類、保護デバイスのサイズ、形状および構成、ならびに手術の長さによって異なり得ることが理解されるであろう。
【0036】
前記保護デバイスの任意の適切な部分は、組織構造および/または保護デバイスの別の部分に、一時的に取り付けられ得る。例えば、前記保護デバイスは、取り付け部を備えていてもよく、ここで前記保護デバイスの前記取り付け部は、組織構造に取り付け可能であるように構成され得る。前記保護デバイスの周縁部の少なくとも一部の周りに延在するマージン部、機械的ファスナーによって貫通されるように適合される1つ以上の領域、1つ以上のタブまたは取り付け部などの任意の適切な取り付け部が、設けられ得る。あるいは、前記保護デバイスは、前記保護デバイスを組織構造に取り付けるように構成された、1つ以上のテザー、コード、ワイヤまたはフィラメント、フックまたはかえし(barb)を備えていてもよい。この例では、前記保護デバイスを組織構造に取り付けるために、二次的な機械的ファスナーが必要でない場合が想定される。
【0037】
あるいは、前記保護デバイスは、1つ以上の加重部を備えていてもよく、これにより使用時に前記加重部が手術中の前記保護デバイスの動きを低減できる。この例では、前記加重部は、挿入状態から使用状態に前記保護デバイスを膨張させること、前記保護デバイスを組織構造の形状に適合させること、またはそれらの任意の適切な組み合わせにおいて支援し得ることが想定される。前記加重部は、任意の適切なサイズ、形状、および構成を有し得る。例えば、前記加重部は、マージン部、タブまたは取り付け部、膨張流体を受容するように適合された領域、などであり得る。
【0038】
前記保護デバイスは、膨張可能な本体を備えている。前記膨張可能な本体は、断面が任意の適切な形状を有し得る。例えば、前記膨張可能な本体は、断面が実質的に円形、楕円形、正方形、長方形、スタジアム形、三角形、六角形、または八角形であり得る。好ましくは、前記膨張可能な本体の少なくとも1つのコーナー半径は、丸みを帯び得る。使用において、丸みを帯びたコーナーを提供することにより、前記膨張可能な本体の弱点がなくなり、患者の体内への挿入中に前記保護デバイスが外科的切開部または身体開口部を引き裂くリスクが低減され、または前記膨張可能な本体が組織構造を切断および/もしくは穿孔するリスクが低減され得ることが、想定される。本発明の1つの実施形態において、前記膨張可能な本体は、断面が実質的に三角形であってもよい。例えば、前記膨張可能な本体は、丸みを帯びた角を有する三角形、トレフォイル(trefoil)形、三葉形、ルーロー三角形などであり得る。
【0039】
使用において、前記膨張可能な本体は、患者の体内に挿入するための挿入状態に移行され得る。前記挿入状態において、比較的小さな切開部、創傷などを通して患者の体内に前記膨張可能な本体を挿入できるように、前記膨張可能な本体が、折り畳まれる、巻かれる、またはその他の方法で圧迫または圧縮され得ることが、想定される。特定の実施形態では、実質的に三角形の膨張可能な本体(すなわち、使用状態)は、前記三角形の膨張可能な本体のコーナーを前記三角形の膨張可能な本体の中心に向かって折り畳むことによって、挿入状態(実質的に正方形の構成の形態)に移行され得る。このようにして、正方形の膨張可能な本体が、挿入状態における膨張可能な本体を形成するために、巻くまたは折り畳まれ得ることが、想定される。前記挿入状態において、前記膨張可能な本体の外径または幅は、前記膨張可能な本体の長さに沿って実質的に同じであり得ることが、想定される。
【0040】
前記膨張可能な本体は、任意の適切なサイズを有し得る。好ましくは、前記膨張可能な本体は、手術中に組織構造を保護および/または処置するのに十分なサイズを有する。さらに、前記膨張可能な本体は、外科的切開部、アクセスポート、または身体開口部を通して挿入できるサイズであることが想定される。前記膨張可能な本体は、任意の適切な寸法を有し得る。しかし、前記膨張可能な本体の断面表面積および膨張可能な本体の厚さが、挿入状態における膨張可能な本体の外径に影響を及ぼし得ることが、理解されよう。例えば、より厚い膨張可能な本体は、挿入状態において、挿入状態の場合のより薄い膨張可能な本体よりも、大きな外径を有し得る。例えば、比較的小さな断面積を有する膨張可能な本体は、挿入状態において、より大きい断面積を有する膨張可能な本体よりも、小さな外径を有し得る。
【0041】
好ましくは、挿入状態における膨張可能な本体の外径は、保護デバイスが挿入される外科的切開部、アクセスポートまたは身体開口部の内径より小さくてもよい。本発明の1つの実施形態において、挿入状態における膨張可能な本体の外径は、12mmトロカールアクセスポートの内径未満であってもよく、10mmトロカールアクセスポートの内径未満であってもよく、8mmトロカールアクセスポートの内径未満であってもよく、または、5mmトロカールアクセスポートの内径未満であってもよい。本発明の1つの好ましい実施形態において、前記挿入状態における(および好ましくは断面が実質的に三角形の形状を有する)前記膨張可能な本体の外径は、12mmのトロカールアクセスポートの内径未満であってもよい。
【0042】
前記膨張可能な本体は、任意の適切な厚さを有し得る。好ましくは、前記膨張可能な本体の厚さは、手術器具から組織構造を物理的、熱的、および/または電気的に絶縁するのに十分な厚さである。しかし、前記膨張可能な本体の物理的、熱的および/または電気的絶縁特性は、前記膨張可能な本体が製造される元の材料の種類、および前記膨張可能な本体の構造などの多くの要因によって異なり得ることが理解されるであろう。前記膨張可能な本体の厚さは、挿入状態にあるときの前記膨張可能な本体の外径に直接影響を及ぼし得ることが想定される。例えば、比較的厚い厚みを有する膨張可能な本体は、外科的切開部、アクセスポート、または身体開口部を通して挿入されるために、より小さい断面積を有する必要がある場合がある。本発明の1つの実施形態において、前記膨張可能な本体の厚さは、約0.5~3.0mm、より好ましくは約0.8~2.8mm、さらにより好ましくは約1.0~2.5mm、なおより好ましくは約1.2~2.3mmであり得る。最も好ましくは、前記膨張可能な本体の厚さは、約1.5~2.0mmであり得る。
【0043】
1つの実施形態において、前記膨張可能な本体は、1つ以上の種類の材料から作製され得る。例えば、前記膨張可能な本体は、単一の材料、または単一の種類の材料から作製され得る。あるいは、前記膨張可能な本体は、異なる材料、または異なる種類の材料を含んでいてもよい。本発明の1つの実施形態において、前記膨張可能な本体は、異なる材料の2つ以上の層を含み得る。例えば、前記膨張可能な本体は、第1の種類の材料から作製された第1の層と、第2の種類の材料から作製された第2の層と、を含み得る。異なる種類の材料から前記膨張可能な本体を作製することにより、透過率、導電率、抵抗などの異なる特性を有する2つ以上の層から前記膨張可能な本体を作製することが、可能になり得る。本発明の1つの実施形態において、前記膨張可能な本体は多層構造を有し得、ここで、1つ以上の層が、異なる種類の材料から作製され得る。
【0044】
1つの実施形態において、前記膨張可能な本体は、可撓性シート材料の1つ以上のシートから作製され得る。本発明の1つの実施形態において、前記膨張可能な本体は、可撓性シート材料の上部シート部材と、可撓性シート材料の下部シート部材と、から作製され得る。上部シート部材および下部シート部材のそれぞれは、1つ以上の材料の層を含み得ることが想定される。前記上部シート部材および前記下部シート部材のそれぞれは、同じ材料、同じ種類の材料、異なる材料、または異なる種類の材料を含み得る。前記上部シート部材および前記下部シート部材のそれぞれは、異なる材料の2つ以上の層を含み得る。本発明の1つの実施形態において、前記膨張可能な本体は、可撓性シート材料のシートから作製され得、前記可撓性シート材料は、上部シート部材および下部シート部材を形成するように折り畳まれ得る。
【0045】
前述のように、前記保護デバイスは、前記膨張可能な本体内に少なくとも部分的に配置された内側部材、を備える。本発明のいくつかの実施形態において、前記膨張可能な本体が、内側部材が少なくとも部分的に配置されるキャビティを内部に備え得ることが、想定される。
【0046】
前記膨張可能な本体が上部シート部材および下部シート部材を備えるいくつかの実施形態において、前記上部シート部材と前記下部シート部材との間にキャビティが形成されることが想定される。このように、本発明のこの実施形態では、前記上部シート部材および前記下部シート部材は、前記膨張可能な本体を形成するために、その周辺部の少なくとも一部の周りで互いに接続され得る。前記上部シート部材および下部シート部材は、接着剤、機械的ファスナー(スティッチング、ステープルなど)、熱処理、化学処理、機械的処理(超音波溶接、圧縮など)、またはこれらの組み合わせなどの任意の適切な技術を用いて互いに接続され得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記膨張可能な本体は、スリーブ部材を含んでいてもよい。前記膨張可能な本体の内部でキャビティが形成されるように、前記スリーブ部材が、一端のみ開口し得ることが想定される。いくつかの実施形態では、前記膨張可能な本体は、単層を有するスリーブ部材として作製され得るが、スリーブ部材が2つ以上の層を含み得ることが想定される。
【0048】
前記内側部材は、任意の適切な形態を有し得る。好ましくは、前記内側部材は、前記膨張可能な本体を、患者の体内に挿入するのに適した形状に構成することを可能にし、前記膨張可能な本体を、患者の体内に配置するときに元の形状に膨張することを可能にし、前記膨張可能な本体を、患者の体からの引き戻しまたは取り出しに適した形状に構成することを可能にするのに十分な機械的特性(圧縮性、弾力性など)を有し得る。例えば、前記内側部材は、実質的に中実のシート材料、複数のキャビティを含むシート材料、細長い材料で形成された構造、膨張流体(気体、液体、ゲルなど)を中に保持するためのレセプタクル、微粒子材料、およびこれらの任意の適切な組み合わせを有し得る。しかし、前記内側部材の種類は、使用される手術装置の種類および前記膨張可能な本体の所望の特性などの多くの要因によって異なり得ることが、理解されよう。使用中、複数のキャビティおよび/または前記膨張可能な本体と比べてより小さい表面積を有する内側部材は、実質的に中実である内側部材よりも容易に圧縮および/または折り畳まれ得ることが想定される。したがって、前記内側部材は、一体構造を有してもよく、2つ以上の別個の部分を有してもよい。前記2つ以上の個別の部分は、互いに接合されてもよいし、互いに流体連通していてもよいし、または互いに離間して配置されてもよい。好ましくは、前記内側部材は、挿入状態へと前記保護デバイスを折り畳むことを支援するように構成され得る。例えば、前記2つ以上の個別の部分および/または複数のキャビティは、折り線の領域における材料の量を減少させるように適応され得る。
【0049】
前記内側部材は、複数のキャビティを含み得、前記複数のキャビティは、その中に膨張流体(気体、流体、ゲルなど)を含み得る。前記膨張流体は、複数のキャビティの全部または一部を一時的または永久的に充填し得る。前記膨張流体は、前記内側部材内に永久的に収容されてもよく、または患者の体内への挿入前および/または挿入後に前記内側部材および/または保護デバイスに導入されてもよい。しかし、前記複数のキャビティが膨張流体で一時的または永久的に充填されるか、および複数のキャビティの全体または一部が充填されるかは、前記内側部材を作製するために使用される材料の種類、処置される組織構造、および使用される手術装置の種類などの多くの要因によって異なることが理解されるであろう。使用において、患者の体内へ前記保護デバイスを挿入するおよび/または引き込む際に、複数のキャビティが膨張流体で少なくとも部分的に充填され得ることが想定される。部分的に膨張された内側部材は、挿入状態へと前記膨張可能な本体を折り畳むまたは巻くことを支援し、前記膨張可能な本体にある程度の剛性を付与して患者の体内で前記膨張可能な本体を配置および展開することを支援し得る。前記部分的に膨張された内側部材は、手術中の前記保護デバイスの動きを減少させることを支援し得る。例えば、前記複数のキャビティに膨張流体を入れることで、加重部を提供できることが想定される。
【0050】
1つの具体的な実施形態において、前記内側部材は、弾性変形可能な材料から作製され得る。したがって、1つの好ましい実施形態において、前記内側部材は、弾性変形可能な内側部材であってもよい。本発明の1つの実施形態において、前記内側部材は、好ましくは真空下で、圧縮、収縮、または他の方法でサイズを小さくして、患者の体への挿入および/または患者の体からの引き戻しまたは取り出しに適した形状および/またはサイズに構成され得る。
【0051】
前記内側部材は、前記膨張可能な本体における前記キャビティ内に少なくとも部分的に封入され得る。より好ましくは、前記内側部材は、前記膨張可能な本体における前記キャビティ内に実質的に封入され得る。このようにすると、例えば、前記膨張可能な本体の断熱性能が向上し得、前記膨張可能な本体において耐水性の向上がもたらされ得る。
【0052】
前記内側部材および前記膨張可能な本体は、互いに固定され得る。このことは、任意の適切な技術を使用して達成できる。しかし、前記内側部材を前記膨張可能な本体に固定する方法は、前記内側部材および膨張可能な本体を作製するために使用される材料の種類および/または内側部材および膨張可能な本体を互いに固定する方法の生体適合性、熱または電気絶縁性によって異なり得ることが理解されるであろう。例えば、接着剤または機械的ファスナー(スティッチング、ステープルなど)、熱処理、化学処理、機械的処理(超音波溶着、圧縮など)を用いて、前記内側部材および前記膨張可能な本体が、互いに固定され得る。好ましくは、前記内側部材と前記膨張可能な本体とを互いに固定する方法により、例えば、前記膨張可能な本体の断熱性能および耐水性を維持することができる。
【0053】
1つの好ましい実施形態において、前記膨張可能な本体は、前記内側部材の上に成形され得る。この場合、オーバーモールドされた内側部材は、前記内側部材が前記膨張可能な本体によって実質的に包囲されてもよいように、前記膨張可能な本体によって包囲され得る。このようにすると前記膨張可能な本体の断熱性能が向上し、前記膨張可能な本体の耐水性が向上する可能性がある。
【0054】
前記内側部材は、その表面に取り付けられた少なくとも1つのスタンドオフを備えてもよい。成形の際に、少なくとも1つのスタンドオフが、中心に集まった実質的に平面的な配向に内側部材を維持することができる成形プレートの内面と、接触し得ることが想定される。この例では、前記少なくとも1つのスタンドオフが前記膨張可能な本体の材料によって覆われていない場合があり、その結果前記スタンドオフの表面が露出している場合があることが理解される。あるいは、前記膨張可能な本体の少なくとも一部は、前記少なくとも1つのスタンドオフに抗菌特性、耐水性、耐UV性、耐薬品性、耐摩耗性、導電性の低下、またはそれらの組み合わせを付与するように、コーティングまたは処理され得る。
【0055】
前記少なくとも1つのスタンドオフは、任意の適切なサイズ、形状および構成を有し得る。好ましくは、前記少なくとも1つのスタンドオフは、内側部材を、中心に集まった配向に維持し、および、例えば前記膨張可能な本体の断熱能力および耐水性を維持するのに十分なサイズ、形状および構成を有し得る。
【0056】
前記少なくとも1つのスタンドオフは、任意の適切な材料または材料の組み合わせから作製され得る。好ましくは、前記少なくとも1つのスタンドオフは、弾性変形可能であり、比較的耐引裂性があり、生体適合性があり、滅菌可能である材料から作製され得る。例えば、前記少なくとも1つのスタンドオフは、前記膨張可能な本体と同じ材料、前記膨張可能な本体とは異なる材料、前記内側部材と同じ材料、前記内側部材とは異なる材料、またはそれらの任意の適切な組み合わせから作製され得る。好ましくは、前記少なくとも1つのスタンドオフは、構造物を処理するための1つ以上の技術に対する耐性を有する材料から、作製され得る。例えば、前記少なくとも1つのスタンドオフは、耐切断性、断熱性、非導電性、放射線不透過性、超音波不透過性、気体不透過性、流体不透過性などを有する材料から作製され得る。あるいは、前記少なくとも1つのスタンドオフは、気体透過性、流体透過性などを有する材料から作製され得る。この例では、前記膨張可能な本体の外面に適用された流体または気体が、毛細管現象によって前記少なくとも1つのスタンドオフを介して本体キャビティおよび/または内側部材に入り得ることが想定される。
【0057】
1つの実施形態において、前記内側部材は、自己膨張可能であり得る。例えば、前記内側部材は、前記膨張可能な本体が抑制されていないときに、前記挿入状態から使用状態まで拡張し得る。あるいは、前記内側部材は、シリンジなどのデバイスの支援により、膨張され得る。例えば、前記シリンジは、膨張流体(気体、流体、ゲルなど)を内側部材、内側部材のキャビティ、内側部材の中空体、またはそれらの任意の適切な組み合わせに注入するために使用され得る。あるいは、前記膨張可能な本体の外面に適用された流体または気体が、少なくとも1つのスタンドオフを介して吸収されることによって、内側部材が膨張し得る。このように、前記内側部材の膨張により、前記膨張可能な本体が、前記挿入状態から、前記膨張可能な本体が完全に膨張された使用状態へと変化し得ることが、想定される。もちろん、挿入状態と、前記膨張可能な本体が部分的に膨張された使用状態との間に、多数の中間的な使用状態が存在し得ることが理解されるであろう。これらの中間的な使用状態は、例えば、前記膨張可能な本体が体内で膨張するためのスペースが限られている場合、または組織の比較的小さな領域のみを保護する必要がある場合に、使用され得る。使用において、前記保護デバイスを患者の体から取り出すことができるように前記内側部材を収縮させるために、シリンジなどのデバイスを使用して前記内側部材から膨張流体を取り出すことが、想定される。あるいは、前記保護デバイスを患者の体から取り出す前に、前記内側部材を物理的に圧縮するように、前記膨張可能な本体は、操作され得る。あるいは、患者の体から保護デバイスを取り出す前に、前記内側部材を圧縮するために、前記膨張可能な本体は、真空デバイスに接続され得る。
【0058】
前記内側部材は、任意の適切な材料から作製され得る。しかし、好ましくは、前記内側部材は、比較的弾性があり、比較的耐引裂性があり、生体適合性があり、滅菌可能な材料から作製され得る。例えば、前記内側部材は、押出ポリマー、膨張ポリマー、発泡ポリマー、またはそれらの組み合わせから作製され得る。好ましくは、前記内側部材は、比較的可撓性を有するポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンプロピレンジエンターポリマー、ネオプレン、ニトリル、シリコーン、フルオロエラストマー、ポリウレタン、ポリアミド、ナイロン、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ポリウレタン(メモリーフォーム(foam))など、またはそれらの任意の適切な組み合わせ(これらに限定されない)から作製され得る。
【0059】
前記内側部材は、独立気泡発泡体材料または連続気泡発泡体材料から作製され得る。本発明の1つの実施形態において、前記内側部材は、独立気泡発泡体材料から構成され得る。前記独立気泡発泡体材料は、20%以下、10%以下、5%以下の連続気泡含有量を有し、0%の連続気泡含有量を有し得る。本発明の1つの実施形態において、前記内側部材は、独立気泡エチレンビニルアセテートまたはポリビニルアルコール発泡体コアであってもよい。1つの実施形態において、前記内側部材は、独立気泡ネオプレンであってもよい。本発明の別の実施形態では、前記内側部材は、連続気泡発泡体材料を含み得る。前記連続気泡発泡体材料は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の連続気泡含有量を有し、100%の連続気泡含有量を有し得る。本発明の1つの実施形態において、前記内側部材は、連続気泡エチレンビニルアセテートまたはポリビニルアルコール発泡体コアであってもよい。本発明の1つの実施形態において、前記内側部材は、メモリーフォームであってもよい。本発明の1つの実施形態では、前記内側部材は、連続気泡ネオプレンであってもよい。前記連続気泡発泡体材料に膨張流体を注入することによって、ユーザが連続気泡発泡体材料を膨張させることができると想定される。例えば、前記膨張流体は、前記連続気泡発泡体材料に付随する膨張部に注入されてもよく、あるいは、前記膨張流体は、前記連続気泡発泡体材料に直接注入されてもよい。
【0060】
前記内側部材は、細長い材料のネットワークから作製され得る。任意の適切な種類の細長い材料が、使用され得る。しかし、好ましくは、前記細長い材料は、膨張可能または自己膨張可能であり得る。例えば、前記細長い材料は、可撓性チューブ、気送チューブ、バルーンチューブ、ルーメンチューブ、膨張可能なスリーブ、ステント構成要素などを含み得る。この例では、膨張流体を細長い材料のネットワークの開口部に注入することによって、ユーザが前記細長い材料のネットワークを膨張させることができると想定される。例えば、前記膨張流体は、前記細長い材料のネットワークに付随する膨張部に注入されてもよいし、あるいは、膨張流体は、前記細長い材料のネットワークに直接注入されてもよい。
【0061】
任意の適切な膨張流体が、使用され得る。例えば、前記膨張流体は、気体、流体、ゲル、またはそれらの任意の適切な組み合わせであり得る。好ましくは、前記膨張流体は、不燃性および非毒性であり得る。前記膨張流体が、流体、ゲル、またはそれらの適切な組み合わせであり得る1つの実施形態では、前記膨張流体を前記保護デバイスの内側部材に注入することによって、保護デバイスに重量を加え、患者の体内での前記保護デバイスの動きを減少させることが想定される。
【0062】
前記膨張可能な本体は、任意の適切な材料、または材料の組み合わせから作製され得る。好ましくは、前記膨張可能な本体は、比較的弾性があり、比較的耐引裂性があり、生体適合性があり、滅菌可能な材料から作製され得る。好ましくは、前記膨張可能な本体は、非付着性を有する材料から作製され得る。好ましくは、前記膨張可能な本体は、組織構造を処理するための1つ以上の技術に対する耐性を有する材料から作製され得る。例えば、前記膨張可能な本体は、耐切断性、断熱性、非導電性、放射線不透過性、超音波不透過性、気体不透過性、流体不透過性などを有する材料から作製され得る。
【0063】
あるいは、前記膨張可能な本体は、組織構造を治療するための1つ以上の技術に焦点を当てるかまたは対象とする材料から、作製され得る。例えば、前記膨張可能な本体は、耐切創性、熱伝導性、電気伝導性、放射線透過性、超音波透過性、気体透過性、流体透過性などを有する材料から作製され得る。この場合、前記膨張可能な本体が、前記保護デバイスによって覆われた組織構造に治療を集中させるために使用され得ることが想定される。
【0064】
前記膨張可能な本体は、任意の適切な材料から作製され得る。好ましくは、前記膨張可能な本体は、可撓性材料から作製され得る。例えば、前記膨張可能な本体は、ポリ塩化ビニル、シリコーン、テフロンPTFE、ニトリル、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ウレタン、ポリエチレン、ポリウレタンなどのポリマー、またはそれらの任意の適切な組み合わせから作製され得るが、これらに限定されない。好ましくは、前記膨張可能な本体は、シリコーンから作製され得る。しかし、使用される材料の種類は、保護デバイスが挿入されるべき外科的切開部、アクセスポートまたは身体開口部のサイズ、実施されるべき外科的処置の種類、使用されるべき手術装置の種類、および処置されるべき組織構造などの多くの要因によって異なり得ることが理解されよう。
【0065】
1つの実施形態において、前記膨張可能な本体の1つ以上の層は、断熱性、非導電性を有する材料から作製され得る。好ましくは、前記膨張可能な本体の1つ以上の層は、手術器具からのエネルギーおよび/または接触熱傷に対して耐性がある断熱性、非導電性材料から作製され得る。この例では、前記膨張可能な本体は、保護されるべき組織構造への熱傷または損傷のリスクを低減または最小化し、エネルギー漏れから組織構造を防護することが想定される。
【0066】
1つの実施形態において、前記保護デバイスは、保持部材を含んでいてもよい。任意の適切な保持部材が、使用され得る。しかし、好ましくは、前記保持部材は、可撓性を有し、滅菌可能であり、かつ非導電性を有する。例えば、前記保持部材は、縫合材料、コード、ケーブル、ガイドワイヤ、テザーなどであり得る。好ましくは、前記保持部材は、手術中に前記保護デバイスとの接続を保持し、患者の体から前記保護デバイスを引き出すのに十分な大きさおよび強度を有する。前記保持部材の目的は、ユーザが患者の体からデバイスを引き出すために前記保持部材を使用できるようにすること、および患者の体から装置を取り出すために大きな切開を行う必要ないようにすることの両方が、想定される。
【0067】
前記保持部材は、天然材料、合成材料、またはそれらの組み合わせから作製され得る。任意の適切な材料、例えば、天然材料(絹、カットグット、綿、亜麻、麻などを含む)、金属または金属合金(金属ワイヤ、ロープなどを含む)、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン(HDPE、PETなどを含む)、ポリアミドイミド(ガラス充填ポリアミドイミドなどを含む)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミドなどのポリマーまたはこれらの任意の適切な組み合わせが、使用され得る。本発明のいくつかの実施形態では、前記保持部材は、抗菌特性、耐水性、耐UV性、耐薬品性、耐摩耗性、導電性の低下、またはそれらの組み合わせを基板に提供するためにコーティングまたは処理され得る。
【0068】
前記保持部材は、モノフィラメントの形態で提供されてもよく、または、複数のストランドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記保持部材は、金属から作製され、高分子材料(金属ワイヤ、ケーブルなどを取り囲む高分子スリーブまたはチューブなど)でコーティングされるか、または環境のために適切とみなされる生分解性スリーブにセットされ得る。
【0069】
前記保持部材は、任意の適切な長さを有し得る。好ましくは、前記保持部材は、前記保護デバイスが患者の体内で解放され、保護されるべき組織構造上に配置された後、前記保持部材の少なくとも一部が常に患者の体外にあるのに十分な長さを有し得る。このようにして、前記保護デバイスは、手術後に回収され得るが、前記保持部材が十分な長さを有さない場合には回収されない可能性がある。従って、前記保持部材は、好ましくは、比較的長い。しかし、前記保持部材が長すぎる場合、前記保持部材が患者の体内の組織構造または別の手術器具に引っかかるリスクがあることが、理解されよう。したがって、より好ましくは、前記保持部材の過剰に長い部分は、前記保護デバイスを患者の体内に配置するために使用される手術装置に、収容されるかまたは取り付けられ得る。
【0070】
前記保持部材は、前記膨張可能な本体に取り付けられるように構成され得る。前記保持部材は、任意の適切な手段によって、前記膨張可能な本体に取り付けられ得る。例えば、前記保持部材は、接続部材を備えてもよく、前記膨張可能な本体と一体的に形成されてもよく、前記膨張可能な本体に直接取り付けられてもよく(例えば、前記保持部材の端部を前記膨張可能な本体の開口部に通すことによって)、またはそれらの任意の適切な組み合わせであってもよい。しかし、好ましくは、前記保持部材は、患者の体内に挿入されたときに前記保護デバイスとの接続を保持する性能を、ユーザに提供する。
【0071】
前記保持部材は、前記保持部材を前記膨張可能な本体に取り付けるための接続部材を備えていてもよい。任意の接続部材が、使用され得る。好ましくは、前記接続部材により、前記保持部材を前記膨張可能な本体に取り付けることが、容易になる。例えば、前記保持部材は、接着剤または機械的ファスナー(ねじ、ステープル、ピン、アンカー、アロー(arrow)など)などの接続部材を備えていてもよい。
【0072】
あるいは、結び目を作ることによって、または前記保持部材の端部を前記保持部材の起立部に融着できるような熱処理または化学処理を施すことによって、前記保持部材を加工して接続部材を形成することができる。ただし、使用される接続部材の種類および数は、使用される保持部材の種類および前記膨張可能な本体の種類によって異なり得ることが、理解されよう。
【0073】
前記保護デバイスは、膨張部を含んでいてもよい。前記膨張部は、任意の適切な種類であり得る。好ましくは、前記膨張部により、前記膨張可能な本体を挿入状態から使用状態に変化させるために前記膨張可能な本体へ前記膨張流体を注入するおよび/または抜き出すことが、可能になる。
【0074】
1つの好ましい実施形態において、前記膨張部は、1つ以上の弁を含む。任意の適切な弁、例えば、1つ以上の一方向(逆止)弁などを設けてもよい。前記一方向弁は、前記膨張可能な本体からの膨張流体の望ましくないまたは偶発的な抜き出しを防止するために、使用され得る。本発明のこれらの実施形態では、例えば手術の終了時に、前記膨張可能な本体の膨張に調整を加えるか、または前記膨張可能な本体から膨張流体を抜き出すために、膨張流体が前記膨張可能な本体から出ることを可能にするように適合された1つ以上のさらなる弁を、前記膨張部が備え得ることが、想定される。
【0075】
他の実施形態では、前記膨張部は、1つ以上の二方弁、ルアー作動弁などを含み得る。前記膨張部は、内側部材および/または前記膨張可能な本体を膨張させるように構成され得る。
【0076】
好ましい実施形態では、前記膨張部における1つ以上の弁は、流体が出入り可能な前記保護デバイス、における唯一のポイントを有し得る。
【0077】
膨張流体を前記膨張可能な本体に注入するために、膨張流体の供給源が前記膨張部に接続され得る。前記流体源は、任意の適切な種類であり得る。例えば、前記流体源は、ガスボンベ、リザーバー、IVバッグ、シリンジなど、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。前記膨張流体の源がシリンジを含む本発明の実施形態では、前記膨張流体を前記膨張可能な本体に注入することによって、前記膨張可能な本体が膨張し、手術中に組織構造を保護するために使用することが可能になることが、想定される。また、前記膨張可能な本体から膨張流体を抜き取るために、シリンジが、前記膨張部に接続され得る。この例では、前記膨張可能な本体から前記膨張流体を抜き取ることによって、前記膨張可能な本体が収縮し患者の体から取り出し可能になることが、想定される。
【0078】
さらに別の態様では、本開示は、手術装置を提供し、当該手術装置は、膨張可能な本体であって、当該膨張可能な本体が、当該膨張可能な本体内に位置する少なくとも1つの内側部材を備え、当該少なくとも1つの内側部材が膨張可能であり、当該保護デバイスが、手術中に患者の体内の組織構造を保護するように構成されている、膨張可能な本体;および、当該保護デバイスの少なくとも一部を受容するように構成されている手術器具であって、当該手術器具が手術中に患者の体内に当該保護デバイスを解放するように構成されている、手術器具と、を含む保護デバイス、を備える。
【0079】
好ましくは、前記保護デバイスは、本発明の第1の態様の保護デバイスである。
【0080】
前記手術装置は、保護デバイスの少なくとも一部を収容するように構成された手術器具を含む。前記手術器具は、使い捨て可能であってもよい。この例では、前記手術器具は、前記手術器具に既に挿入され使用準備が整った保護デバイスを含む滅菌システムとして、ユーザに提供され得ることが、想定される。あるいは、前記手術装置は、再使用可能であってもよい。この例では、前記手術装置は再使用可能で滅菌可能であり、前記保護デバイスは単回使用のみであることが、想定される。あるいは、前記手術器具および前記保護デバイスの両方が、再使用可能で滅菌可能であり得る。
【0081】
前記手術器具は、任意の適切な構成を有し得る。本発明の1つの実施形態において、前記手術器具は、腹腔鏡ツールに接続されたエンドエフェクタを備えてもよく、前記エンドエフェクタは、前記保護デバイスの少なくとも一部をその中に受容するように構成されている。本発明の別の実施形態では、前記手術器具は、収容部を含んでいてもよく、前記収容部は、その中に保護デバイスの少なくとも一部を受容するように構成されている。しかし、好ましくは、前記手術器具の構成により、外科的切開部、アクセスポートまたは身体開口部を通して前記保護デバイスを挿入することが容易になる。
【0082】
1つの実施形態において、前記手術器具は、エンドエフェクタを備える。前記エンドエフェクタは、前記手術器具に接続され得る。本発明の実施形態において、前記エンドエフェクタは、前記器具に取り外し可能に接続され得る。この例では、前記エンドエフェクタは、前記エンドエフェクタの交換を容易にするように、前記手術器具に取り外し可能に接続され得ることが、想定される。好ましくは、前記エンドエフェクタは、前記手術器具の操縦によって、操作可能であり得る。したがって、好ましい実施形態では、前記手術器具は、ハンドル、細長いバレル、およびエンドエフェクタを備え得る。
【0083】
前記エンドエフェクタは、任意の適切なサイズ、形状、または構成を有し得る。好ましくは、前記エンドエフェクタは、外科的切開部、アクセスポート、または身体開口部を通して挿入され、そこに前記保護デバイスの少なくとも一部を受容することができるのに十分なサイズ、形状、および構成を有する。前記エンドエフェクタは、任意の適切な種類であってもよい。好ましくは、前記エンドエフェクタは、前記保護デバイスの少なくとも一部を受容するように構成されている。例えば、前記エンドエフェクタは、前記手術器具の端部でまたは端部に向かって配置された長手方向に延在する内部コンパートメント、を備え得る。あるいは、前記エンドエフェクタは、手術器具の端部に操作可能に接続するように構成された取り外し可能な端部部材を含んでいてもよい。この例では、取り外し可能な端部部材が前記手術器具と同様の断面寸法を有し得ることが、想定される。使用において、前記保護デバイスが開口部を通して前記手術器具から患者の体内に展開され得るように、前記エンドエフェクタが開口部を備え得ることが、想定される。前記開口部は、任意の適切な構成であってもよい。例えば、前記開口部は、前記エンドエフェクタの長さに沿って少なくとも部分的に長手方向に延在していてもよく、前記エンドエフェクタの周りで少なくとも部分的に円周方向に延在していてもよく、前記エンドエフェクタの端部に位置していてもよく、またはそれらの任意の適切な組み合わせであってもよい。
【0084】
1つの実施形態において、前記手術器具は、収容部を備え得、前記収容部は、前記保護デバイスの少なくとも一部をその中に受容するように構成されている。前記収容部は、任意の適切なサイズ、形状、または構成を有し得る。好ましくは、前記収容部は、細長い収容部であってもよい。好ましくは、前記収容部は、外科的切開部、アクセスポートまたは身体開口部を通して挿入されその中に前記保護デバイスの少なくとも一部を受容することができるのに、十分なサイズ、形状および構成を有する。好ましくは、前記保護デバイスは、前記収容部内に配置されているとき、挿入状態(すなわち、膨張されていない状態)であり得る。
【0085】
前記収容部は、任意の適切な手段によって前記保護デバイスを受容するように構成され得る。前記収容部は、第1端部と、反対側の第2端部と、第1端部から第2端部まで収容部を通って少なくとも部分的に延在するボア(bore)と、を備えている。好ましくは、前記ボアは、前記第1端部から前記第2端部まで前記収容部を貫通して全長に亘って延在し得る。したがって、前記ボアは、一対の開放端部、または1つの開放端部と1つの閉鎖端部、から構成され得ることが想定される。前記ボアは、実質的に直線的であってもよいし、曲線的または蛇行した経路を有していてもよい。前記ボアは、任意の適切な長さおよび任意の適切な直径を有していてもよい。前記ボアの直径は、その長さに沿って実質的に一定であってもよいし、その長さに沿って変化してもよい。例えば、前記ボアは、その長さの少なくとも一部に沿って先細りになっていてもよく、首部、または同様の狭窄部などを含んでいてもよい。使用時には、前記保護デバイスが前記収容部の第2端部を通して展開され得ることが、想定される。
【0086】
前記収容部はまた、そこから外側に延在する少なくとも1つの突出部を含み得る。任意の適切な突出部が設けられ得るが、本発明の1つの好ましい実施形態では、前記突出部はフランジを備え得る。本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つのフランジは、前記収容部の外面に配置され得る。好ましくは、前記フランジは、前記収容部の第1端部に向かって収容部の外面に配置されてもよいし、前記収容部の第1端部に配置されてもよい。前記収容部の外面に配置されるフランジは、前記収容部が外科的切開部、アクセスポート、または身体開口部内を通過して患者の体内に入ることを妨げ得ることが想定される。したがって、前記フランジは、前記収容部(前記フランジを含む)の直径が前記外科的切開部、アクセスポートまたは身体開口部の直径に少なくとも等しくなるように、前記収容部の外面から外側に延在し得ることが想定される。前記フランジは、少なくとも部分的に前記収容部の周縁の周りに延在し得る。あるいは、前記フランジは、前記収容部の実質的に全周縁にわたって延在していてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、前記フランジは、環状フランジであり得る。
【0087】
前記手術器具は、前記保護デバイスを患者の体内に解放するように構成され得る。前記保護デバイスを患者の体内に解放する機構は、任意の適切な種類であってもよい。前記手術器具がエンドエフェクタを備える本発明の実施形態では、前記エンドエフェクタは、作動部の操作によって作動して、前記保護デバイスを解放することができる。前記手術器具が収容部を備える本発明の別の実施形態において、前記収容部は、その中に前記プランジャを受容するように構成され得、前記プランジャの収容部内および収容部に対する移動が、前記保護デバイスを解放させる。
【0088】
1つの実施形態において、前記手術器具は、エンドエフェクタを含んでよく、前記エンドエフェクタは、作動部の操縦によって作動させられ得る。このようにして、前記エンドエフェクタを作動させることによって、前記保護デバイスを患者の体内に解放することが、想定される。任意の適切な作動部が、使用され得る。好ましくは、前記作動部は、開放構成と閉鎖構成との間で前記エンドエフェクタを移動させることができる。例えば、前記作動部は、トリガデバイス、ラチェットデバイス、スプリングバイアス式ピストン器具、ケーブル張りのデバイスなどであり得る。前記作動部は、任意の適切な方法で手術器具と連結され得る。例えば、前記作動部は、前記手術器具の一部であってもよいし、独立して作動する手術器具であってもよい。使用において、前記エンドエフェクタを開放構成に移動させると、前記エンドエフェクタから前記保護デバイスを取り外すことができることが、想定される。前記保護デバイスは、ユーザまたはロボットデバイスによって前記エンドエフェクタから手動で取り外されてもよく、重力下で前記エンドエフェクタから落下してもよく、前記手術器具に付随する機構を用いて前記エンドエフェクタから外に出されてもよく、およびそれらの任意の適切な組み合わせが可能である。
【0089】
1つの実施形態において、前記手術器具は、収容部を含んでもよく、前記収容部は、その中にプランジャを受容するように構成され得る。このようにして、前記収容部内の前記プランジャの実質的に直線的な動きにより、前記収容部の第2端部を介して患者の体内に保護デバイスが解放されることが、想定される。より具体的には、前記プランジャの一部が前記収容部内の保護デバイスの一部と接触または係合することが、想定される。この実施形態では、前記収容部に対する前記プランジャの動きにより、前記収容部に対する前記保護デバイスの対応する動きが、もたらされ得る。好ましくは、前記収容部に対する前記プランジャの移動により、前記保護デバイスが、(例えば、押すことによって)前記収容部の開放端部に向かっておよびそこから出るように移動する。
【0090】
好ましくは、前記プランジャは、前記収容部の前記ボア内に受容され、前記収容部内で保護デバイスを移動させるのに十分なサイズ、形状および構成を有している。前記プランジャは、全体が前記収容部のボア内に受容され得る。あるいは、前記プランジャの一部は、前記収容部の前記ボアから突出していてもよい。好ましくは、前記プランジャの断面形状は、前記プランジャがボア内に受容され得るように、前記収容部の前記ボアの断面形状と実質的に同一であり得る。
【0091】
前記プランジャは、任意の適切なサイズ、形状または構成を有し得る。例えば、前記プランジャは、実質的に中実であってもよく、少なくとも部分的に中空であってもよく、複数の長手方向および半径方向に延在する翼(vanes)を有するシャフトを備えてもよく、シャフトの長さに沿う複数の横方向に延在するリブを有するシャフトを備えてもよく、それらの任意の適切な組み合わせであってもよい。好ましくは、前記プランジャは、第1端部と、反対側の第2端部とを備える細長いプランジャであり得る。本発明の実施形態では、前記プランジャは、凹部、好ましくは、その第1端部と第2端部との間のプランジャの長さの少なくとも一部に沿って長手方向に延在する細長い凹部(チャネルなど)、を含む。前記凹部は、任意の適切なサイズ、形状および構成を有し得る。しかし、好ましくは、前記凹部は、前記保護デバイスの保持部材の少なくとも一部をその中に受け入れるのに十分な大きさおよび構成を有する。あるいは、前記プランジャは、前記第1端部と前記第2端部との間で前記プランジャを少なくとも部分的に通って延在するボアを有し得る。使用時には、前記保護デバイスの前記保持部材が前記プランジャの前記ボアを通過し得ることが、想定される。
【0092】
前述のように、前記プランジャは、第1端部と、反対側の第2端部とを備え得る。使用時に、前記収容部に対して前記保護デバイスを移動させるために、前記第2端部が前記保護デバイスと接触することが、想定される。本発明のこの実施形態では、前記収容部に対して前記プランジャを移動させるために、前記プランジャの第1端部に力が加えられ得ることが、想定される。本発明のいくつかの実施形態において、前記第1端部は、力が加えられ得る接触部、を備えていてもよい。力は、ユーザ、ロボット装置などによって、加えられ得る。
【0093】
前記プランジャはまた、そこから外側に延在する少なくとも1つの突出部を含んでもよい。任意の適切な突出部が設けられ得るが、本発明の1つの好ましい実施形態において、前記突出部はフランジを含んでもよい。本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つのフランジは、前記プランジャの外面に配置され得る。好ましくは、前記フランジは、前記プランジャの第1端部に向かって前記プランジャの外面に配置されてもよいし、前記プランジャの第1端部に配置されてもよい。前記プランジャの外面に配置されるフランジにより、前記プランジャが前記収容部の前記ボア内を完全に通過できないようになり得ることが、想定される。したがって、前記プランジャ(前記フランジを含む)の直径が前記収容部の直径と少なくとも等しくなるように、前記フランジが前記プランジャの外面から外向きに延在し得ることが想定される。前記フランジは、少なくとも部分的に前記プランジャの周縁の周りに延在し得る。本発明の実施形態において、前記プランジャは、前記プランジャの両側に設けられた2つのフランジを備え得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、前記2つのフランジにより、前記プランジャの前記フランジからの、アンカーデバイスの取り外しが、容易になり得る。あるいは、前記フランジは、プランジャの実質的に全周にわたって延在していてもよい。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、前記フランジは、環状フランジであり得る。本発明の実施形態において、前記フランジは、前記プランジャに設けられた凹部と実質的に整列した凹部を、備えていてもよい。
【0094】
1つの実施形態において、前記プランジャの前記フランジの少なくとも一部は、前記プランジャが前記収容部のボア内に完全に受容されるときに、前記収容部のフランジの少なくとも一部と接触し得る。本発明の1つの実施形態において、前記プランジャの前記フランジの少なくとも一部は、前記プランジャが前記収容部のボア内に完全に受容されるときに、前記収容部の前記フランジの少なくとも一部内に少なくとも部分的に受容され得る。この例では、前記プランジャが前記収容部の前記ボア内に完全に受容されるときに、前記プランジャの前記フランジが前記収容部の前記フランジに当接し、患者の体から吹送ガスが漏れるのを防止する密封をもたらし得ることが、想定される。前記プランジャは、前記収容部と一体化されてもよいし、別個の構造として設けられてもよい。
【0095】
前記手術器具は、係止部を備えていてもよい。前記係止部は、任意の適切なサイズ、形状、または構成を有し得る。好ましくは、前記係止部は、前記保護デバイスが患者の体内で解放された後、前記保護デバイスの前記保持部材の少なくとも一部を前記手術器具と連結して保持するのに十分な機械的特性を有し得る。前記係止部は、前記手術器具と一体化され、保持部材の少なくとも一部を受容するように構成され得る。例えば、前記係止部は、突出部、開口部、ボア、スロット、機械的ファスナー(クリップ、止めネジなど)、またはそれらの任意の適切な組み合わせであってもよい。あるいは、前記係止部は、前記保持部材を手術器具の一部に一時的に接続するように構成され得る別個の構造物として、設けられ得る。この例では、前記係止部の少なくとも一部が前記プランジャのフランジの少なくとも一部内に少なくとも部分的に受容され得ることが、想定される。例えば、前記係止部は、断面が実質的に円形であってもよく、前記プランジャの前記フランジの少なくとも一部内に受容されるように構成されている。例えば、前記係止部は、停止部材として機能する前記保持部材の拡大領域を、含み得る。前記保持部材の前記拡大領域は、前記プランジャの前記フランジに対する前記拡大領域の移動を、実質的に阻止するようなサイズまたは形状を有し得る。
【0096】
前記係止部は、前記保持部材への取り付けのために、構成され得る。例えば、前記係止部は、前記手術器具への前記保持部材の取り付けを容易にする接続部材を備えていてもよい。あるいは、前記保持部材は、前記係止部に直接取り付けられてもよく(例えば、前記保持部材の端部またはループを前記係止部の開口部に通すことによって、または保持部材の端部またはループを前記係止部の領域の周りに通すことによって)、またはそれらの任意の適切な組合せによって、取り付けられ得る。本発明の1つの実施形態において、前記係止部は、前記保持部材に取り外し可能に取り付けられるように構成され得る。例えば、前記係止部は、前記係止部内における前記保持部材の圧力嵌めに起因する摩擦係合で前記保持部材を保持してもよい。例えば、前記係止部は、前記保持部材の少なくとも一部を摩擦係合状態で受け入れるように構成された凹部、ノッチ、スロットなどを備えていてもよい。したがって、使用時には、前記保護デバイスが患者の体内に配備された後、前記保持部材が前記係止部および/または前記手術器具から取り外され得ることが、想定される。あるいは、前記保持部材は、接着剤、熱処理、化学処理、またはそれらの任意の適切な組み合わせを使用して、前記係止部に取り付けられ得る。好ましくは、前記保持部材は、前記保護デバイスが患者の体内に挿入されるときに前記保護デバイスとの接続を保持する性能を、ユーザに提供する。
【0097】
前記保護デバイスは、スリーブで固定されてもよい。前記スリーブは、前記保護デバイスが患者の体内に挿入される間、前記保護デバイスの前記膨張可能な本体を挿入状態に維持するように構成され得ることが想定される。前記スリーブは、手動でユーザによってまたはロボット装置によって前記保護デバイスから取り外され得、または前記エンドエフェクタから外に出される際に前記保護デバイスから取り外され得る。あるいは、前記保護デバイスは、前記保持部材の少なくとも一部を用いて固定され得る。この例では、前記保護デバイスが患者の体内で解放されるとき、前記保持部材は、前記膨張可能な本体が使用状態まで膨張することを可能にする前記保護デバイスから、解かれ(unwrap)得ることが想定される。
【0098】
本開示は、先行技術に勝る多くの利点を提供する。例えば、本開示は、患者への損傷のリスクを低減または排除する鍵穴手術中に使用するための保護デバイスを提供する。さらに、本開示は、患者の体内への取り外し可能な挿入に適合され、前記保護デバイスが不注意に患者の体内に残されることがないように、手術中、前記保護デバイスとの接続が維持されるように構成される。
【0099】
本明細書に記載された特徴のいずれも、本発明の範囲内で、本明細書に記載された他の特徴のうちのいずれか1つ以上と任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0100】
本明細書における任意の先行技術への言及は、先行技術が共通の一般知識の一部を形成することの承認または何らかの形の示唆ではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0101】
本発明の好ましい特徴、実施形態および変形は、当業者が本発明を実施するのに十分な情報を提供する以下の詳細な説明から識別され得る。詳細な説明は、前述の発明の概要の範囲をいかなる形でも限定するものと見なされるべきではない。詳細な説明では、以下のように多数の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】1つの実施形態による使用状態における保護デバイスの上面斜視図である。
【
図2】1つの実施形態による使用状態における保護デバイスの上面斜視図である。
【
図3】1つの実施形態による使用状態における保護デバイスの上面斜視図である。
【
図4】
図3に示される保護デバイスの膨張部分を示す図である。
【
図5A】1つの実施形態による使用状態における保護デバイスの上面図である。
【
図5B】1つの実施形態による部分的に折り畳まれた保護デバイスの上面図である。
【
図5C】1つの実施形態による挿入状態の保護デバイスの上面図である。
【
図6】閉じた状態における、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面図である。
【
図7】開いた状態における、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面図である。
【
図8】1つの実施形態による手術装置の側面斜視図である。
【
図9A】手術装置をトロカール内に挿入して前記保護デバイスを展開するステップを示す、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面斜視図である。
【
図9B】手術装置をトロカール内に挿入して前記保護デバイスを展開するステップを示す、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面斜視図である。
【
図9C】手術装置をトロカール内に挿入して前記保護デバイスを展開するステップを示す、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面斜視図である。
【
図9D】手術装置をトロカール内に挿入して前記保護デバイスを展開するステップを示す、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面斜視図である。
【
図9E】手術装置をトロカール内に挿入して前記保護デバイスを展開するステップを示す、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面斜視図である。
【
図9F】手術装置をトロカール内に挿入して前記保護デバイスを展開するステップを示す、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面斜視図である。
【
図9G】手術装置をトロカール内に挿入して前記保護デバイスを展開するステップを示す、本発明の1つの実施形態による手術装置の側面斜視図である。
【
図10A】1つの実施形態による保護アセンブリ1000の上面図である。
【
図10B】保護アセンブリ1000の第1側面図である。
【
図10C】保護アセンブリ1000の第2側面図である。
【
図10D】保護アセンブリ1000の底面図である。
【
図11A】保護アセンブリ1000の第1斜視図である。
【
図11B】保護アセンブリ1000の第2斜視図である。
【
図12】保護アセンブリ1000の第1側断面図である。
【
図13】保護アセンブリ1000の第2側断面図である。
【
図14A】プランジャ1300が引き出された位置で示されている保護アセンブリ1000の上面図である。
【
図14B】プランジャ1300が引き出された位置で示されている保護アセンブリ1000の第1側面図である。
【
図14C】プランジャ1300が引き出された位置で示されている保護アセンブリ1000の第2側面図である。
【
図14D】プランジャ1300が引き出された位置で示されている保護アセンブリ1000の底面図である。
【
図15A】プランジャ1300が引き出された位置で示されている保護アセンブリ1000の上面斜視図である。
【
図15B】プランジャ1300が引き出された位置で示されている保護アセンブリ1000の側面斜視図である。
【
図16】保護アセンブリ1000の一部を形成する保護膜1100の(分離された)上面図である。
【
図17】保護膜1100の(分離された)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
(実施形態の説明)
図1には、1つの実施形態による手術中に使用するための保護デバイスが示されている。前記保護デバイス100は、膨張可能な本体10と、膨張可能な本体10内に少なくとも部分的に配置された内側部材12と、を備える。膨張可能な本体10は、PVAまたはEVAの連続気泡発泡体または独立気泡発泡体の形態で内側部材12上にオーバーモールドされたシリコーン層14を備える。使用において、シリコーン層14は、手術器具からのエネルギーおよび/または接触熱傷に対する耐性を提供でき、内側部材12は、保護されるべき組織を断熱することができると想定される。内側部材12は、オーバーモールド中に内側部材12を中心に集まった実質的に平面的な配向に維持するのを支援する少なくとも1つのスタンドオフ16を備える。内側部材12は、保護デバイスを挿入状態に圧縮または折り畳むことを支援し得る折り線(図示せず)の周りに配向された複数のキャビティ17を備える。
【0104】
メモリーフォームなどの独立気泡発泡体内側部材を含む1つの実施形態では、前記内側部材12が自己膨張するにつれて前記膨張可能な本体10が膨張することが想定される。連続気泡発泡体の内側部材を含む1つの実施形態では、内側部材12は、少なくとも1つのスタンドオフ16を膨張流体と接触させることによって、または前記内側部材12に直接膨張流体を注入することによって膨張し得ると想定される。
【0105】
保護デバイス100は、膨張可能な本体10に付随する保持部材20をさらに備える。使用中、前記保持部材20は、患者の体から保護デバイス100を引き出すために、ユーザにより使用され得る。
【0106】
図2において、実施形態による手術中に使用するための保護デバイスが図示されている。保護デバイス200は、膨張可能な本体30と、膨張可能な本体30内に少なくとも部分的に配置された内側部材22と、を備える。膨張可能な本体30は、PVAまたはEVA連続気泡発泡体の形態で内側部材22上にオーバーモールドされたシリコーン層24を備える。使用において、前記シリコーン層は、手術器具からのエネルギーおよび/または接触熱傷に対する耐性を提供し、連続気泡発泡体層が、保護されるべき組織を断熱できることが想定される。内側部材22は、オーバーモールド中に内側部材22を中心に集まった実質的に平面的な配向に維持するのを支援する少なくとも1つのスタンドオフ26を含んでいる。内側部材22は、保護デバイス200の折り線(図示せず)の周りに配向された1つ以上の部分を含む。このようにして、折り線の領域における材料の量は減らされ、保護デバイスを挿入状態へと折り畳むことを支援する。
【0107】
使用において、前記保護デバイスを挿入状態へと折り畳むのを支援するため、または前記保護デバイスを患者の体から取り外すことができるように内側部材を収縮させるために、内側部材22を真空下で圧縮する必要があり得ることが、想定される。使用において、連続気泡内側部材を含む実施形態では、少なくとも1つのスタンドオフ26に膨張流体を接触させることによって、または前記内側部材22に直接膨張流体を注入することによって、前記内側部材22が膨張し得ることが、想定される。メモリーフォームのような独立気泡発泡体内側部材を含む実施形態では、前記内側部材22が自己膨張すると前記膨張可能な本体30が膨張することが、想定される。
【0108】
保護デバイス200は、膨張可能な本体30に付随する保持部材40を、更に備える。使用において、保持部材40は、患者の身体から保護デバイス200を引き出すために、ユーザにより使用され得る。
【0109】
図3において、本発明の1つの実施形態による手術中に使用するための保護デバイスが、図示されている。保護デバイス300は、膨張可能な本体50と、膨張可能な本体50内に少なくとも部分的に配置された内側部材32と、膨張可能な本体50に付随し、その膨張を容易にするように構成された膨張部38と、を備える。膨張可能な本体50は、空気圧チューブのような細長い材料の形態で内側部材32上にオーバーモールドされたシリコーン層34を備える。使用において、シリコーン層34は、手術からのエネルギーおよび/または接触熱傷に対する耐性を提供し得、前記細長い材料32の間のエアポケット37が、保護されるべき組織を断熱することができると想定される。内側部材32は、オーバーモールド中に内側部材32を中心に集まった実質的に平面的な配向に維持するのを支援する少なくとも1つのスタンドオフ36を含む。内側部材32は、折り畳み線(図示せず)に沿って配向された複数の細長い材料を含み、これは、収縮すると、保護デバイスを挿入状態へと圧縮または折り畳むのを支援することができる。
【0110】
使用において、ユーザが膨張流体を膨張部38に注入し、気送チューブ32を膨張させ、続いて、膨張可能な本体50を膨張させ得ることが想定される。あるいは、ユーザは、少なくとも1つのスタンドオフ36に膨張流体を接触させることによって、または少なくとも1つのスタンドオフ36に膨張流体を直接注入することによって、膨張可能な本体50を膨張させてもよい。
【0111】
保護デバイス300は、膨張可能な本体50に付随する保持部材60をさらに備える。使用において、保持部材60は、患者の体から保護デバイス300を引き出すために、ユーザにより使用され得る。
図4では、保護デバイスの膨張部が示されている。シリンジ42は、保護デバイス300の膨張部38に膨張流体を注入するために、使用される。
【0112】
図5A~
図5Cでは、膨張可能な本体44を備える保護デバイス400が図示されている。使用において、完全に膨張した状態(
図5A)の膨張可能な本体44は、収縮し、次に折り線46に沿って折り畳まれて、部分的に折り畳まれた保護デバイスを実質的に正方形の構成(
図5B)で形成し、挿入状態(
図5C)へと巻かれる。
【0113】
図6および
図7において、患者の体内に挿入するための手術器具と保護デバイスとを備える手術器具が、図示されている。手術器具600は、保護デバイス500の少なくとも一部をその中に受容するように構成されたエンドエフェクタ54を備える。エンドエフェクタ54は、手術器具のハンドル52に取り付けられたトリガデバイスの形態の作動部分56によって作動され、エンドエフェクタ54を閉構成と開構成との間で移動させる。使用において、エンドエフェクタ54を開構成に移動させることにより、保護デバイス500がエンドエフェクタ54に挿入されるかまたはエンドエフェクタ54から取り外されることが可能になることが、想定される。エンドエフェクタ54は、保護デバイス500の保持部材64の少なくとも一部を手術器具600と連結して保持するように構成された係止部65を備える。
【0114】
図8において、患者の体内に挿入するための手術器具と保護デバイスとを含む手術器具が示されている。手術器具800は、保護デバイスをその中に受け入れるように構成された収容部90(図示せず)と、保護デバイスを患者の体内(図示せず)で解放するように構成されたプランジャ102と、を備える。収容部90は、第1端部92から、反対側の第2端部94まで延在するボア(図示せず)と、収容部90の第1端部92に位置するフランジ98と、を備える。収容部90のボア開口部96は、そこにプランジャ102を受容するように構成される。プランジャ102は、第1端部104と、反対側の第2端部106と、プランジャ102の第1端部104に位置するフランジ110と、プランジャ102の長さに沿って長手方向に延在する凹部108と、を備える。使用時に、保護デバイスの保持部材(図示せず)が収容部90のボア(図示せず)に通してボア開口部96から出ることができ、保持部材(図示せず)がプランジャ102の凹部108に配置され、スロット114およびプラグ部86を介して係止部112に取り外し可能に固定され得ることが、想定される。
【0115】
図9A~
図9Gでは、患者の身体に保護デバイスを挿入するための手術器具を備える手術装置の側面斜視図が示されている。明瞭にするために、患者の体は示されていないが、トロカールの上部123が患者の体外に留まる一方で、トロカールのカニューレ122は、切開部を通して患者の体の中に挿入され得ることは理解されるであろう。収容部90と、プランジャ102と、前記収容部90のボア内に位置する保護デバイスと、を備える手術器具800は、収容部90の第1端部に位置するフランジ98がトロカール116の上面に当接するまでトロカール116のアクセスポート118に挿入され得る。プランジャ102は、プランジャ102の第1端部に位置するフランジ110が収容部90のフランジ98の上面に当接するまで押し下げられる。収容部90のボア(図示せず)内でのプランジャ102の直線運動の結果、保護デバイス80は、収容部90の第2端部94を通って患者の体内に解放される。保護デバイス80の膨張可能な本体82が挿入状態から膨張すると、保持部材84は患者の体内に展開される。使用中、保持部材84のプラグ部86および係止部112は、保持部84を手術器具800と連結した状態で保持する。
【0116】
保護デバイス80が患者の体腔内に放出された後、プランジャ102は、収容部90のボアから取り外され得る。使用において、保持部材84および係止部112が、プランジャ102の凹部108およびフランジ110からそれぞれ取り外されることが想定される。収容部90は、次いで、トロカール116のアクセスポート118から取り外され得る。使用において、保持部材84が、係止部112のスロット114から取り外され、これにより保持部材84が収容部90のボアを通過することが可能になると想定される。保持部材84は、手術中に保護デバイス80との接続を保持するように、側方に配置される。使用において、膨張可能な本体82を収縮させ、トロカール116を通して膨張可能な本体82を引き出すことによって、患者の体から保護デバイス80が取り外され得ることが想定される。あるいは、トロカール116が取り外され得、それにより、収縮した膨張可能な本体82が患者の体の切開部を通して引き出され得る。
【0117】
図10~
図17を参照すると、保護アセンブリ1000の別の好ましい実施形態が図示されている。保護アセンブリ1000は、医療グレードのシリコーンまたは任意の他の種類の弾力性および可撓性高分子材料(これらに限定されない)のような無毒の医療グレード材料から形成された薄膜1100を有する保護部材を含む。保護膜1100は、丸みを帯びた角又は頂点を有する全体的に三角形又は翼状の構成を備える。膜1100の形状の重要性は、前述の項でより詳細に説明される。膜1100の厚さは、その全体寸法に比して十分に小さい。その結果、膜1100は、膜1100を腹腔鏡トロカール1200の中空カニューレに巻き込むことができるように、十分に薄く、機動性がある。膜1100は、トロカール1200を通して患者の体内に導入されると、トロカール1200のカニューレに通された後、展開または拡張されて保護構成に拡開されるように構成されている。このような保護構成において、前記膜1100は、腹腔鏡手術が実施されている間、患者の内臓を遮蔽するために患者の内臓で拡開され得る。
【0118】
膜1100の少なくとも周辺部は、膜1100をプランジャ1300の遠位端部1310(
図14および
図15に示す)に接続する(不定の長さの)可撓性コネクタ1150を含む。プランジャ1300は、膜1100を(巻かれた構成で)トロカール1200のカニューレの中に押し込むために設けられている。具体的には、可撓性コネクタ1150の一端は、プランジャの遠位先端1310に固定され、可撓性コネクタ1150の他端は、膜1100のマトリックスと融着される。可撓性コネクタ1150が膜1100と接続する点1152(
図16に示す)は、可撓性コネクタ1150が膜1100から誤って結合解除される可能性をさらに減らすために、好ましくは、補強または強化される。
【0119】
図10A~
図10Dおよび
図12は、プランジャ1300のシャフト部1320が腹腔鏡トロカール1200のカニューレに完全に挿入された完全挿入構成にあるプランジャ1300を示す。
図14A~
図14Dは、前記プランジャ1300が引き出し位置にある(トロカール1200のカニューレから引き出された)状態を示している。特に
図12を参照すると、プランジャ1300は、トロカール1200の入口部1220に受容されて着座する大きさの拡大されたヘッド1330を含む。トロカール1200の入口部は、外科医がタブ1207の下に指を置いてトロカール1200を保持できるように、座部(seat)1205から半径方向に延在する翼またはタブ1207を有する平坦なフランジ付き座部1205、を備える。前記プランジャヘッド1330は、プランジャ1300が患者の体内のカニューレを通って落下するのを防止するために、前記トロカール1200のカニューレの直径より大きくなるように構造化されている。
【0120】
前記膜1100は、膜1100の厚さ分だけ離れた2つの主要面を備える。前記膜1100の主要面は、膜1100を折り畳むまたは曲げることを可能にする(巻くことができるようにする)複数の折り畳み領域、を有する実質的に同一の構成を有する。前記膜1100の主要面のそれぞれ(
図16および
図17に示す詳細断面図) 。膜1100の各表面は、隣接して配置される任意の2つの突出部1120が凹部1140によって分離されるような突出部1120および凹部1140の交互の列、を含み、その結果、前記交互の構成を有する。膜1100の主要膜表面の一方にある各凹部1140は、トラフを形成し、膜1100の主要膜表面の他方にある突出部1140と整列するように形作られる。前記主要膜表面上の突出部1120または凹部1140のそれぞれは、前記突出部1120および前記凹部1140の列の方向に対して交差方向(好ましくは直交方向)に延在することにも注目することが重要である。また、突出部1120のそれぞれについての高さ(および前記凹部1140の深さ)は、実質的に等しいことが明らかである。好ましい実施形態では、各突出部1120および凹部1140についての高さは、0.5mm~1mmであり、より好ましくは0.25mm~0.75mmである。少なくともいくつかの実施形態では、前記高さは、0.5mmであり得る。前記膜1100の領域は、突出部1120および凹部1140が中にあるマトリックスを形成し、これらの膜領域1130は、前記突出部1120および凹部1140が設けられている他の領域と比較して比較的薄い厚さを有する。これらの領域の厚さは、好ましくは、0.5mm~1mmである。比較的薄い厚さを有する膜領域は、膜1100が(巻くために)容易に曲げられるかまたは折り畳まれ得る複数の折り畳み領域を、もたらす。膜1100の全体の厚さは、これらの膜領域1130の厚さ、前記突出部1120の高さ、および前記凹部1140の深さの合計である。したがって、前記膜領域1130が0.5mmであり、各突出部が0.5mmの平均高さを有し、各凹部が0.5mmの平均深さを有する場合、前記膜1100の全体の厚さは、1.5mmとなる。
【0121】
好ましい実施形態における膜1100は、独特の形状を有し、いくつかの重要な利点を提供する。具体的には、前記膜1100は、平坦な表面上に配置されるとき、互いに実質的に垂直である2つの線状周辺部1101および1103を備える。これら2つの垂直な線状部1101および1103は、第1弓形架橋部1102(比較的短い弧長を有する)および第2架橋部1104(比較的長い弧長を有する)によって架橋されており、これにより前記膜1100、特に膜表面は、翼状構成を有する。
【0122】
可撓性コネクタ1150は、前記膜と同じ材料から形成され得、また、前述のように膜1100と融着され得る。前記可撓性コネクタ1150の瞬間幅(すなわち、任意のセクションに沿った前記コネクタ1150を横断する幅)は、前記トロカール1200のカニューレの全直径よりも実質的に小さい。このような構成により、外科医は、前記プランジャ1300を使用して、(巻かれた構成における)前記膜1100を、前記カニューレを通して患者の体内に挿入し、腹腔鏡手術を開始する前に、前記膜1100を拡開して患者の内臓を遮蔽することができる。手術が行われている間、前記プランジャ1300は、前記トロカール1200のカニューレを通過する前記可撓性コネクタ1150の十分な長さを残して引き出され得る。前記プランジャ1300は、長い可撓性コネクタ1150によって膜1100に接続されたまま、引き出されて脇に配置され(placed aside)得る。好ましくは、前記可撓性コネクタ1150の長さは、トロカールのカニューレの長さよりもはるかに長く、これにより、前記可撓性コネクタが前記プランジャ1300の遠位部と依然結合している間に前記カニューレを通過する際に、前記膜1150を患者の体内に配置することが可能になる。
【0123】
前記可撓性コネクタ1150は、実質的に小さくなるように寸法決めされているので、前記トロカール1200のカニューレ内には、前記膜1100を使用して腹腔鏡手術を実施するために他の腹腔鏡エフェクタを挿入できるような、十分な空き容積が存在する。腹腔鏡手術が終了すると、外科医は、前記カニューレを通して前記膜1100を引き出すことによって、前記膜1100を引き抜くことができる。前記可撓性コネクタ1150は、使用中に前記トロカール1200のカニューレに引き込まれるときに前記膜1100の巻きまたは折り畳みを容易にするために先細周辺部がコネクタに向かう方向に概して先細になるように、前記膜の前記先細周辺部に取り付けられる。前記膜1100は、前記膜1100上の前記コネクタ1150の取り付け位置から徐々に広がり、その結果、前記膜1100は、前記トロカール1200のカニューレの中に容易に巻かれ、それによって、前記膜1100の引き抜きが容易になる。
【0124】
前記膜1100は、ヘルスケア用途で使用するために配合された40デュロメーター医療グレードのシリコーン材料を含む。前記膜1100の好ましい実施形態における医療グレードシリコーン材料に使用されるシリコーンベースポリマーは、揮発性が低く、過酸化物を含まず、時間が経っても変色しないプラチナ硬化材料である。40デュロメーター医療グレードシリコーンは、-65℃~+232℃の範囲で作用する性能を有し、極端な高温下で良好な性能を発揮する可能性が高い。前記膜1100のシリコーン材料は、前記膜1100に耐熱性を付与するのを支援する。突出部1120と凹部1140の交互の列を有する前記膜1100の構成により、断熱性がさらに改善され、前記膜1100の曲げおよび伸張が可能になり、膜1100全体の裂けが防止される。
【0125】
本明細書および特許請求の範囲(存在する場合)において、「含む(comprising)」という用語、および「含む(comprises)」および「含む(comprise)」を含むその派生語は、記載された整数のそれぞれを含むが、1つ以上のさらなる整数を含むことを排除しない。
【0126】
本明細書全体を通して、「1つの(one)実施形態」または「1つの(an)実施形態」を参照することは、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所で「1つの(one)実施形態において」または「1つの(an)実施形態において」という表現が現れることは、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、任意の適切な方法で1つ以上の組み合わせで、組み合わされ得る。
【0127】
法令に準拠して、本発明は、構造的または方法的な特徴に多かれ少なかれ特化した言葉で説明されている。本明細書に記載された手段は、本発明を実施するための好ましい形態を含むので、本発明が、示されたまたは記載された特定の特徴に限定されないことが理解されよう。したがって、本発明は、当業者によって適切に解釈される添付の特許請求の範囲(存在する場合)の適切な範囲内で、その任意の形態または変更において特許請求される。
【図】
【国際調査報告】