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特表2023-515442筋肉特異的核酸調節エレメント及びその方法と使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】筋肉特異的核酸調節エレメント及びその方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230406BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230406BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230406BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N5/071
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
A61P21/04
A61P21/00
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549541
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021053945
(87)【国際公開番号】W WO2021165353
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】20158057.8
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】511281578
【氏名又は名称】フレイエ ユニヴェルシテイト ブリュッセル
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSITEIT BRUSSEL
【住所又は居所原語表記】Pleinlaan 2, B-1050 Elsene, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンドリーシュ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】チュア,ライ キム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA94
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA94
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA94
(57)【要約】
本発明は、遺伝子の筋肉特異的発現、特に横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋などの筋肉の細胞及び/又は組織における発現を増強することができる核酸調節エレメントであって、少なくとも2つの横隔膜特異的調節エレメントと、心臓及び骨格筋特異的調節エレメントとを含む核酸調節エレメントに関する。さらに、本発明は、これら核酸調節エレメントを含む発現カセット及びベクター、並びにそれらの使用に関する。本発明は、筋肉関連疾患の遺伝子治療、より詳細には横隔膜、心臓及び/又は骨格筋を指向する遺伝子治療を用いる用途、及びワクチン接種に特に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に記載のヌクレオチド配列若しくはその機能的フラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02)、配列番号3に記載のヌクレオチド配列若しくはその機能的フラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE04)、及び配列番号4に記載のヌクレオチド配列若しくはその機能的フラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE06)から選択される少なくとも2つの横隔膜特異的調節エレメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列又はその機能的フラグメントからなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)とを含む、筋肉特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメント。
【請求項2】
少なくとも:
a) 配列番号4に記載のヌクレオチド配列若しくはその機能的フラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE06);
b) 配列番号1に記載のヌクレオチド配列若しくはその機能的フラグメントからなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5);及び
c1) 配列番号2に記載のヌクレオチド配列若しくはその機能的フラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02)、又は
c2) 配列番号3に記載のヌクレオチド配列若しくはその機能的フラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE04)
のいずれか、又は
c3) c1)及びc2)の両方の横隔膜特異的調節エレメント
を含む、請求項1に記載の核酸調節エレメント。
【請求項3】
配列番号7又は配列番号8に記載のヌクレオチド配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(それぞれ、Dph-CRE04-CRE06又はDph-CRE06-CRE04)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列又はその機能的フラグメントからなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)とを含む請求項1又は2に記載の核酸調節エレメント。
【請求項4】
配列番号9に記載のヌクレオチド配列からなる横隔膜特異的制御エレメント(Dph-CRE02-CRE04-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列又はその機能的フラグメントからなる心臓及び骨格筋特異的制御エレメント(CSk-SH5)とを含む請求項3に記載の核酸調節エレメント。
【請求項5】
配列番号14に記載のヌクレオチド配列(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)を含む、請求項4に記載の核酸調節エレメント。
【請求項6】
筋肉細胞又は組織、好ましくは横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋の細胞又は組織、より好ましくは横隔膜、心臓及び/又は骨格筋の細胞又は組織における遺伝子発現を増強するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸調節エレメントのインビトロ又はエクスビボでの使用。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸調節エレメントを、プロモーターと導入遺伝子、好ましくはコドン最適化された導入遺伝子とに作動可能に連結して含む核酸発現カセット。
【請求項8】
プロモーターが筋肉特異的プロモーター、好ましくは配列番号15で規定されるSpc5-12プロモーターである、請求項7に記載の核酸発現カセット。
【請求項9】
導入遺伝子がサルコグリカン、好ましくはβ-サルコグリカン、より好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする、請求項7又は8に記載の核酸発現カセット。
【請求項10】
核酸調節エレメントが配列番号14(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)に記載のヌクレオチド配列を含み、プロモーターは、配列番号15により規定されるSpc5-12プロモーターであり、導入遺伝子はβ-サルコグリカンをコードする、請求項7~9のいずれか1項に記載の核酸発現カセットであって、好ましくは、配列番号16に規定されるマウス最小ウイルス(MVM)イントロン及び配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルをさらに含んでなる核酸発現カセット。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸調節エレメント又は請求項7~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセットを含むベクター、好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、より好ましくはAAV9ベクター。
【請求項12】
請求項7~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセット又は請求項11に記載のベクターと薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項13】
医学、好ましくは遺伝子治療、より好ましくは筋肉指向性遺伝子治療に使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸調節エレメント、請求項7~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセット、請求項11に記載のベクター又は請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
肢帯型筋ジストロフィー、好ましくは肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸調節エレメント、請求項7~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセット、請求項11に記載のベクター又は請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
筋肉細胞、好ましくは横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋の細胞、より好ましくは横隔膜、心臓及び/又は骨格筋の細胞において導入遺伝子産物を発現させるための方法、好ましくはインビトロ又はエクスビボ方法であって、
- 請求項7~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセット又は請求項11に記載のベクターを前記筋肉細胞に導入する工程;
- 導入遺伝子産物を筋肉細胞で発現させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、筋肉特異的遺伝子発現を増強することができる核酸調節エレメント、該調節エレメントを用いる方法及びその使用に関する。より詳細には、核酸調節エレメントは、横隔膜、心筋及び骨格筋並びに平滑筋、好ましくは横隔膜、心筋及び骨格筋における遺伝子発現を増強することができる。本発明は、これら調節エレメントを含む発現カセット、ベクター及び医薬組成物を包含する。本発明は、特に遺伝子治療、より詳しくは筋肉指向性遺伝子治療を用いる用途及びワクチン接種目的に有用である。
【背景技術】
【0002】
背景
平滑筋、骨格筋、心臓及び/又は横隔膜の機能を損なう遺伝子欠陥に起因する多くの遺伝性疾患(例えば、ポンペ病、筋ジストロフィー症など)が存在する。この遺伝子欠陥は、最終的には、生命を脅かす、重篤な筋力低下及び麻痺又は心肺機能不全をもたらし得る。例えば、肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)は、世界中での発症率が20万~35万人に1人である、最も重篤なLGMD疾患の1つである。これは、β-サルコグリカン(β-sg又はβsg)遺伝子の変異により引き起こされる常染色体劣性遺伝性筋ジストロフィーの一種であり、機能的なβ-サルコグリカンタンパク質の枯渇をもたらす。その結果、LGMD2E患者は、重度で広範な進行性筋肉消耗、骨盤及び肩甲帯の弱化、筋線維化及び筋力低下、心筋症、関節疾患並びに横隔膜機能障害を示す。標準的な方法ではこの疾患は治癒しないので、患者はしばしば心肺機能不全で死亡する。したがって、LGMD2Eの有効な臨床療法の開発は、急を要する、満たされていない医療ニーズである。
【0003】
遺伝子治療は、持続性の治療的応答を得るために治療用遺伝子を患部組織に送達する能力のおかげで、平滑筋、骨格筋、心臓及び横隔膜の機能障害及び変性を同時に処置するための前例のない機会を提供する。この有望性にもかかわらず、欠点は、望ましい治療効果を達成するためには、比較的高いウイルスベクター用量が必要であるため、臨床応用の可能性が妨げられているというものである。より詳細には、平滑筋、骨格筋、心臓及び/又は横隔膜に対する、より詳細には骨格筋、心臓及び/又は横隔膜に対する遺伝子治療は、遺伝子送達及び遺伝子発現の制限に起因して、比較的高率が悪い。さらに、治療用遺伝子産物に特異的な免疫反応は、平滑筋、骨格筋、心臓及び/又は横隔膜、より具体的には骨格筋、心臓及び/又は横隔膜を指向する遺伝子治療適用の効率を低下させる。
【0004】
臨床応用を妨げ、遺伝子治療によるLGMD2Eの効果的な治療法の開発を妨げる課題は、以下:(i)罹患した骨格筋、心臓及び横隔膜における治療用導入遺伝子の不十分な発現、及び(ii)この生命を脅かす疾患の種々の臨床症状(骨格筋の筋力低下/消耗、心筋症及び横隔膜機能不全を含む)を有効に処置するためには、非常に高い用量の従来のベクターが、この疾患に罹患した主要な筋肉群(すなわち、骨格筋、心臓及び横隔膜)に到達する必要があることに起因する毒性及び有害な免疫応答の可能性に関する。
筋肉へ導入遺伝子を送達する努力は、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルス(AAV)由来のベクター並びにプラスミドに集中されてきた。アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)は、筋肉指向性遺伝子治療のための最も有望な遺伝子送達ビヒクルである。AAVベクターの筋肉細胞への天然の向性、長期に持続する導入遺伝子発現、複数の血清型並びに最小限の免疫反応のため、AAVベクターは筋肉指向性遺伝子治療に適している。AAV9は、心臓遺伝子送達用の最も効率的なベクターとして知られ(Pacakら 2006 Circ Res. 99(4):e3-9;VandenDriesscheら, 2007.J Thromb Haemost.5(1):16-24;Inagakiら、2006.Mol Ther. 2006 14(1):45-53)、骨格筋遺伝子送達にも適している。AAVベクターは、局所、限局及び全身投与により、骨格筋、心筋、平滑筋及び横隔膜に送達することができる。
【0005】
しかし、幾つかの遺伝子送達アプローチの有効性及び安全性に関する懸念が残されている。主な制限要因としては、不十分及び/又は一過性の導入遺伝子発現レベル、及び望まない細胞タイプにおける導入遺伝子の不適切な発現が挙げられる。特に、抗原提示細胞(APC)での不用意な遺伝子発現は、遺伝子改変細胞及び/又は治療用導入遺伝子産物に対する不都合な免疫反応のリスクを増大させ、結果として長期の遺伝子発現を阻むことが示されている。
この問題は、筋肉及び横隔膜特異的シス調節エレメント(CRE)(シス調節モジュール(CRM)とも呼ばれる)を用いて遺伝子発現を増強することによって解決された。これら新規で堅牢なヒトシス調節エレメントは、ゲノムワイドデータマイニングにより取得され、非標的組織における発現を回避しつつ、横隔膜及び/又は心臓及び骨格筋における頑強な特異的導入遺伝子発現レベルをもたらした(WO 2015/110449 A1;WO 2018/178067 A1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらCRMの1つを用いて筋肉、心臓又は横隔膜で治療用タンパク質を単に発現させることは、特に、ベクター用量を望ましくない毒性(例えば、患者に全身投与された高いベクター用量に基づく、遺伝子治療試験の(全てではなくとも)ほとんどで発生した周知の肝臓毒性)を誘発しないレベルまでさらに減少させる必要があるために、十分でないことがある。
このように、筋肉への安全で効率的な遺伝子送達に対するニーズが当該分野に残っている。例えば、LGMD2Eの組織標的化遺伝子治療応用の有効性及び安全性をさらに向上させることが必須であり、理想的には、治療用のβ-サルコグリカン導入遺伝子(β-SG)の、高度で広範な横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的発現、好ましくは横隔膜、心臓及び骨格筋特異的発現を、より低く、したがってより安全なベクター用量で可能にするより堅牢な遺伝子治療ベクターの開発により向上させることが必須である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明者らは、筋肉細胞及び組織、例えば横隔膜、心臓及び/又は骨格筋において予想外の高発現をもたらす転写シス調節エレメント又はモジュール(CRE又はCRM)の新規な組合せに基づき、これら特定の細胞及び組織における発現を最大化するアプローチを開発することにより、現行の遺伝子治療適用の課題に対処した。この目的のため、LGMD2Eの遺伝子治療ストラテジとして強力な筋肉特異的プロモーターと発現を横隔膜に導くCREエレメント若しくはモジュール(本明細書において、Dph-CREとも呼ぶ)又は心臓及び骨格筋に導くCREエレメント若しくはモジュール(本明細書において、CSk(-)CRE又はCSk(-)SH(-)CRE又はCSk(-)SH又はCsk(-)CRE又はCSk(-)SH(-)CRE又はCsk(-)SH又はCSK(-)CRE又はCSK(-)SH(-)CRE又はCSK(-)SHとも呼ぶ)との組合せを用いて、ヒトβ-サルコグリカンcDNA(hβsg又はhβSG)を発現するAAVベクターを設計した。続いて、これら新規な調節エレメントをマウスにおいてインビボで検証したところ、心臓、平滑筋、骨格筋及び横隔膜(好ましくは心臓、骨格筋及び横隔膜)で予想外に高い組織特異的遺伝子発現が得られた。よって、このアプローチにより、治療効果を最大化する一方でより低くしたがってより安全なベクター用量の使用が可能となる。
【0008】
したがって、本発明は、次の観点を提供する。
観点1:配列番号2に記載の配列と少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列(好ましくは配列番号2に記載のヌクレオチド配列(例えば、Dph-CRE02))若しくはそのフラグメントを含むか、該配列若しくはフラグメントから本質的になるか又は該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント;配列番号3に記載の配列と少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列(好ましくは配列番号3に記載のヌクレオチド配列(例えば、Dph-CRE04))若しくはそのフラグメントを含むか、該配列若しくはフラグメントから本質的になるか又は該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント;配列番号4に記載の配列と少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列(好ましくは配列番号4に記載のヌクレオチド配列(例えば、Dph-CRE06))若しくはそのフラグメントを含むか、該配列若しくはフラグメントから本質的になるか又は該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメントより選択される少なくとも2つの横隔膜特異的調節エレメントと、配列番号1に記載の配列と少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列(好ましくは配列番号1に記載のヌクレオチド配列(例えば、CSk-SH5))若しくはそのフラグメントを含むか、該配列若しくはフラグメントから本質的になるか又は該配列若しくはフラグメントからなる心臓及び筋肉特異的調節エレメントとを含むか、該エレメントから本質的になるか又は該エレメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現を増強させる核酸調節エレメント。
【0009】
観点2:配列番号2に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(好ましくは配列番号2に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02))若しくはその機能的フラグメント;配列番号3に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(好ましくは配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04))若しくはその機能的フラグメントと、配列番号1に記載の配列と少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び筋肉特異的調節エレメント(好ましくは配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び筋肉特異的調節エレメント(CSk-SH5))若しくはそのフラグメントとを含むか、該配列若しくはフラグメントから本質的になるか又は該配列若しくはフラグメントからなる、観点1による核酸調節エレメント。
【0010】
観点3:配列番号5に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02-CRE04)と;配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか、該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか又は該エレメント若しくはフラグメントからなる、観点2による核酸調節エレメント。
観点4:配列番号10に記載のヌクレオチド配列(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - CSk-SH5)を含むか、該配列から本質的になるか又は該配列からなる、観点2又は3による核酸調節エレメント。
【0011】
観点5:配列番号4に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、好ましくは配列番号4に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントをさらに含む、観点2~4のいずれか1つによる核酸調節エレメント。
観点6:配列番号2に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(好ましくは配列番号2に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02))若しくはその機能的フラグメント;配列番号4に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(好ましくは配列番号4に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06))又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載の配列と少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び筋肉特異的調節エレメント(好ましくは配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び筋肉特異的調節エレメント(CSk-SH5))又はそのフラグメントとを含むか、該配列若しくはフラグメントから本質的になるか又は該配列若しくはフラグメントからなる、観点1による核酸調節エレメント。
【0012】
観点7:配列番号6に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントを含むか、該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか又は該エレメント若しくはフラグメントからなる、観点6による核酸調節エレメント。
観点8:配列番号11に記載のヌクレオチド配列(Dph-CRE02 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)を含むか、該配列から本質的になるか又は該配列からなる、観点6又は7による核酸調節エレメント。
観点9:配列番号3に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくはは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、好ましくは配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04)又はその機能的フラグメントをさらに含む、観点6~8のいずれか1つによる核酸調節エレメント。
【0013】
観点10:配列番号3に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(好ましくは配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04))又はその機能的フラグメント;配列番号3に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(好ましくは配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04))又はその機能的フラグメント;配列番号4に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(好ましくは配列番号4に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06))又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載の配列と少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び筋肉特異的調節エレメント(好ましくは配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び筋肉特異的調節エレメント(CSk-SH5))又はそのフラグメントとを含むか、該配列若しくはフラグメントから本質的になるか又は該配列若しくはフラグメントからなる、観点1による核酸調節エレメント。
【0014】
観点11:配列番号7に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントを含むか、該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか又は該エレメント若しくはフラグメントからなる、観点10による核酸調節エレメント。
観点12:配列番号8に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06-CRE04)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントを含むか、該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか又は該エレメント若しくはフラグメントからなる、観点10による核酸調節エレメント。
【0015】
観点13:配列番号12に記載のヌクレオチド配列(Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)を含むか、該配列から本質的になるか又は該配列からなる、観点10又は11による核酸調節エレメント。
観点14:配列番号13に記載のヌクレオチド配列(Dph-CRE06 - Dph-CRE04 - CSk-SH5)を含むか、該配列から本質的になるか又は該配列からなる、観点10又は12による核酸調節エレメント。
観点15:配列番号2に記載の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、好ましくは配列番号2に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02)又はその機能的フラグメントをさらに含む、観点10~14のいずれか1つによる核酸調節エレメント。
【0016】
観点16:配列番号9に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02-CRE04-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントを含むか、該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか又は該エレメント若しくはフラグメントからなる、観点10、11、13又は15のいずれか1つによる核酸調節エレメント。
観点17:配列番号14に記載のヌクレオチド配列(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)を含むか、該配列から本質的になるか又は該配列からなる、観点10、11、13、15又は16のいずれか1つによる核酸調節エレメント。
観点18:筋肉、詳細には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋、より詳細には横隔膜、心臓及び骨格筋における遺伝子発現を増強するための観点1~17のいずれか1つによる核酸調節エレメントの使用、好ましくはインビトロ又はエクスビボでの使用。
観点19:プロモーターに作動可能に連結された、観点1~17のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含む核酸発現カセット。
観点20:核酸調節エレメントがプロモーター及び導入遺伝子に作動可能に連結されている、観点19に記載の核酸発現カセット。
【0017】
観点21:プロモーターが、筋肉特異的プロモーター、例えば、デスミン(DES)プロモーター;合成SPc5-12プロモーター(SPc5-12);α-アクチン1プロモーター(ACTA1);クレアチンキナーゼ、筋肉(CKM)プロモーター;4.5LIMドメインタンパク質1(FHL1)プロモーター;α2アクチン(ACTN2)プロモーター;フィラミン-C(FLNC)プロモーター;筋小胞体/小胞体カルシウムATPase1(ATP2A1)プロモーター;トロポニンIタイプ1(TNNI1)プロモーター;トロポニンIタイプ2(TNNI2)プロモーター;トロポニンTタイプ1(TNNT1)プロモーター;トロポニンTタイプ3(TNNT3)プロモーター;ミオシン-1(MYH1)プロモーター;ミオシン-2(MYH2)プロモーター;サルコリピン(SLN)プロモーター;ミオシン結合タンパク質C1(MYBPC1)プロモーター;エノラーゼ(EN03)プロモーター;炭酸脱水酵素3(CA3)プロモーター;リン酸化可能速筋骨格筋ミオシン軽鎖(MYLPF)プロモーター;トロポミオシン1(TPM1)プロモーター;トロポミオシン2(TPM2)プロモーター;α-3鎖トロポミオシン(TPM3)プロモーター;アンキリンリピートドメイン含有タンパク質2(ANKRD2)プロモーター;ミオシン重鎖(MHC)プロモーター;αミオシン重鎖プロモーター(MHC)プロモーター;ミオシン重鎖プロモーター(αMHC)プロモーター;ミオシン軽鎖(MLC)プロモーター;筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター;ミオシン軽鎖1(MYL1)プロモーター;ミオシン軽鎖2(MYL2)プロモーター;ミオグロビン(MB)プロモーター;トロポニンTタイプ2(TNNT2)プロモーター。トロポニンCタイプ2(TNNC2)プロモーター;トロポニンCタイプ1(TNNC1)プロモーター;タイチンキャップ(TCAP)プロモーター;ミオシン重鎖7(MYH7)プロモーター;アルドラーゼA(ALDOA)プロモーター;dMCKプロモーター、tMCKプロモーター;MHCK7プロモーター;ミオシン重鎖11(Myh11)プロモーター;トランスジェリン(Tagln)プロモーター及びアクチンα2平滑筋(Acta2)プロモーターを含むか又は該プロモーターからなる群より選択される筋肉特異的プロモーターである、観点19又は20のいずれか1つによる核酸発現カセット。
【0018】
観点22:プロモーターが配列番号15により規定されるSPc5-12プロモーターである、観点19~21のいずれか1つによる核酸発現カセット。
観点23:プロモーターが配列番号56により規定されるMHCK7プロモーターである、観点19~21のいずれか1つによる核酸発現カセット。
観点24:プロモーターが配列番号57により規定されるデスミンプロモーターである、観点19~21のいずれか1つによる核酸発現カセット。
観点25:導入遺伝子が治療用タンパク質をコードする、観点19~24のいずれか1つによる核酸発現カセット。
【0019】
観点26:導入遺伝子がサルコグリカン、好ましくはβ-サルコグリカン、より好ましくはヒトβ-サルコグリカン(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)をコードする、観点19~25のいずれか1つによる核酸発現カセット。
観点27:導入遺伝子が酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、好ましくはヒト酸性α-グルコシダーゼ(hGAA)(例えば、配列番号58に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号59に記載のコドン最適化導入遺伝子)をコードする、観点19~25のいずれか1つによる核酸発現カセット。
観点28:導入遺伝子がルシフェラーゼ導入遺伝子(例えば、配列番号20に記載の導入遺伝子)などのレポーター遺伝子である、観点19~24による核酸発現カセット。
観点29:導入遺伝子がコドン最適化されている、観点19~28のいずれか1つに記載の核酸発現カセット。
【0020】
観点30:イントロン、好ましくはマウス微小ウイルス(MVM)イントロン(配列番号16に記載のもの)をさらに含む、観点19~29のいずれか1つによる核酸発現カセット。
観点31:ポリアデニル化シグナル、好ましくは合成ポリアデニル化シグナル、例えば配列番号17により規定されるものをさらに含む、観点19~30のいずれか1つによる核酸発現カセット。
観点32:観点1~17のいずれか1つによる核酸調節エレメント又は観点19~31のいずれか1つによる核酸発現カセットを含むベクター。
観点33:ウイルスベクター、好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、より好ましくはAAV9ベクター又はAAV8ベクターである、観点32に記載のベクター。
観点34:観点19~31のいずれか1つによる核酸発現カセット又は観点32~33のいずれか1つによるベクターと、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物。
観点35:医学における使用のための、観点1~17のいずれか1つによる核酸調節エレメント、観点19~31のいずれか1つによる核酸発現カセット、観点32若しくは33のいずれか1つによるベクター又は観点34に記載の医薬組成物。
【0021】
観点36:遺伝子治療、好ましくは筋指向性遺伝子治療に使用するための、観点1~17のいずれか1つによる核酸調節エレメント、観点19~31のいずれか1つによる核酸発現カセット、観点32若しくは33のいずれか1つによるベクター又は観点34に記載の医薬組成物。例えば、遺伝子治療は、グリコーゲン貯蔵障害、例えば、ポンペ病グリコーゲン貯蔵障害(GSD)タイプII、ダノン病、GSDタイプIIb、GSD III又はGSD 3(コリ病又はフォーブス病としても知られる)、GSD IV又はGSD4(アンデルセン病としても知られる)、GSD V又はGSD5(マッカードル病としても知られる)、GSD VII又はGSD7(タルイ病としても知られる)、GSD X又はGSD10、GSD XII又はGSD12(アルドラーゼA欠損としても知られる)、GSD XIII又はGSD13、GSD XV又はGSD15)及びムコ多糖症(例えば、ハンター症候群、サンフィリッポ症候群、ムコ多糖症(MPS)I、MPS II、MPS III、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIIC、MPS IV、MPS VI、MPS VII、MPS IXなど)を含むリソソーム貯蔵疾患(例えば、ファブリー病);ミトコンドリア障害(例えば、バルト症候群);チャネロパチー(例えば、ブルガダ症候群);代謝障害;筋管ミオパチー(MTM);筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD));筋強直性ジストロフィー;筋強直性筋ジストロフィー(DM);三好型ミオパシー;福山型先天性ジストロフィー;ディスフェリノパシー;神経筋疾患;運動ニューロン疾患(MND)(例えば、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT))、脊髄性筋萎縮症(SMA)又は筋萎縮性側索硬化症(ALS));エメリー・ドレイファス筋ジストロフィー;顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD);先天性筋ジストロフィー;先天性筋症;肢帯型筋ジストロフィー(例えば、肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E))、肢帯型筋ジストロフィータイプ2D(LGMD2D)、肢帯型筋ジストロフィータイプ2C(LGMD2C)、肢帯型筋ジストロフィータイプ2B(LGMD2B)、肢帯型筋ジストロフィータイプ2L(LGMD2L)、肢帯型筋ジストロフィータイプ2A(LGMD2A));代謝性ミオパチー;筋炎症性疾患;筋無力症;ミトコンドリアミオパチー;イオンチャネルの異常;核エンベロープ疾患;心筋症;心肥大;心不全;遠位ミオパチー、血友病(例えば、血友病A及びB);糖尿病;心血管疾患及び心臓疾患から選択される疾患又は障害のためのものであってもよい。
【0022】
観点37:遺伝子治療が、筋肉関連障害一般の処置、筋疾患一般の症状の緩和、又は筋肉細胞一般の機能の回復のためのものである、観点36による使用のための核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物。
観点38:遺伝子治療が心血管疾患を処置するためのものである、観点36よる使用のための核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物。心血管疾患の非限定的な例としては、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、冠状動脈疾患、末梢動脈疾患、先天性心疾患、鬱血性心不全、心不全、心筋梗塞(心臓発作としても知られる)、心筋虚血、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、心筋症、肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症、遺伝子変異により引き起こされる原発性心筋症(例えば、ブルガダ症候群、ポンペ病、ダノン病及びファブリー病)、心アミロイドーシス(心硬直症候群としても知られる)、心筋炎(炎症性心筋症としても知られる)、心臓弁膜症、弁狭窄、弁閉鎖不全症、心内膜炎、リウマチ性心疾患、心膜炎(すなわち、心膜の炎症及び/又は感染により引き起こされる疾患)、心タンポナーデ(心膜タンポナーデとしても知られる)、心内膜炎、心臓不整脈、高血圧、低血圧、血管狭窄、弁狭窄、又は再狭窄が挙げられる。
【0023】
観点39:肢帯型筋ジストロフィー、より好ましくは肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するための、観点1~17のいずれか1つによる核酸調節エレメント、観点19~26又は29~31のいずれか1つによる核酸発現カセット、観点32又は33のいずれか1つによるベクター又は観点34による薬学的組成物。
観点40:ライソゾーム貯蔵疾患の処置に使用するための、観点1~17のいずれか1つによる核酸調節エレメント;導入遺伝子がリソソームタンパク質、好ましくは酸性α-ガラクトシダーゼ(GAA)、α-ガラクトシダーゼA及びLAMP2からなる群から選択されるリソソームタンパク質をコードする観点19~25又は29~31のいずれか1つによる核酸発現カセット;前記核酸発現カセットを含む観点32又は33のいずれか1つによるベクター;又は前記核酸発現カセット又は前記ベクターを含む観点34に記載の医薬組成物。
観点41:ポンペ病の処置に使用するための、観点1~17のいずれか1つによる核酸調節エレメント、観点19~25、27又は29~31のいずれか1つによる核酸発現カセット、観点32又は33のいずれか1つによるベクター、又は観点34による薬学的組成物。
観点42:以下:
- 観点19~31のいずれか1つによる核酸発現カセット又は観点32若しくは33のいずれか1つによるベクターを、筋肉細胞に導入すること;
- 導入遺伝子産物を筋肉細胞で発現させること
を含む、筋肉細胞、例えば横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋の細胞、特に横隔膜、心臓及び/又は骨格筋の細胞において、導入遺伝子産物を発現させるための方法、好ましくはインビトロ又はエクスビボ方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1:核酸調節エレメント(A) CSk-SH5 (配列番号1)。(B) Dph-CRE02(配列番号2)。(C) Dph-CRE04(配列番号3)。(D) Dph-CRE06(配列番号4)。(E) Dph-CRE02とDph-CRE04がフランキング配列(下線)を介して連結されたDph-CRE02-CRE04(配列番号5)。(F) Dph-CRE02とDph-CRE06がフランキング配列(下線)を介して接続されたDph-CRE02-CRE06(配列番号6)。(G) Dph-CRE04とDph-CRE06がフランキング配列(下線)を介して接続されたDph-CRE04-CRE06(配列番号7)。(H) Dph-CRE06とDph-CRE04がフランキング配列(下線)を介して接続されたDph-CRE06-CRE04(配列番号8)。(I) Dph-CRE02、Dph-CRE04及びDph-CRE06がフランキング配列(下線)を介して互いに連結されたDph-CRE02-CRE04-CRE06(配列番号9)。(J) Dph-CRE02-CRE04-CSk-SH5(配列番号10)。(K) Dph-CRE02-CRE06-CSk-SH5(配列番号11)。(L) Dph-CRE04-CRE06-CSk-SH5(配列番号12)。(M) Dph-CRE06-CRE04-CSk-SH5(配列番号13)。(N) Dph-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5(配列番号14)。
図2図2:AAVベクターの設計AAVベクターは、ヒトβ-サルコグリカン(hβsg)又はルシフェラーゼ(Luc)を発現するように設計された。ベクターは、コドン最適化されたhβsg(hβsgco、配列番号19)又は非コドン最適化hβsg(配列番号18)導入遺伝子を含む。ベクターは、SPc5-12(配列番号15)と呼ぶ合成筋肉プロモーターを含む。ベクターはすべて、マウス微小ウイルスイントロン(MVM、配列番号16)及び合成ポリアデニル化サイト(pA、配列番号17)を含む。ベクターは5'側及び3'側のAAV逆方向末端反復(ITR)で挟まれている。ベクターは、心臓及び骨格筋特異的CRE(CSk-SH5)(A、B、A1)を、1又は2以上の横隔膜特異的CRE(CRE02、CRE04又はCRE06)との組合せで含むか(C-W)又はいかなるCREエレメントも含まない(X、Y、Z)。
図3図3:CREの組合せのルシフェラーゼ発現に対する影響SPc5-12(SPc)と呼ぶ合成筋プロモーターからルシフェラーゼを発現するAAVベクターを注入したCB17-SCIDマウスの腓腹筋及び大腿四頭筋の生物発光分析(BLI)。ベクターは、心臓/骨格筋CRE(CSk-SH5)を単独で、又は1若しくは2以上の横隔膜特異的CRE(CRE02、CRE04及び/又はCRE06)及び/又は心臓/骨格筋CRE(CSk-SH5)との組合せで含んでいた。
図4図4:腓腹筋(A)、大腿四頭筋(B)、横隔膜(C)及び心臓(D)におけるコドン最適化hβsc遺伝子の発現に対するCRE組合せの影響SPc5-12プロモーターからコドン最適化された(hβsgco)を発現するAAVベクターをCB17-SCIDに注入した。ベクターは、心臓及び骨格筋特異的CRE(CSk-SH5)を単独で又は1若しくは2の横隔膜特異的CRE(Dph-CRE02、Dph-CRE04及び/又はDph-CRE06)との組合せで含んでいた。hβsgco遺伝子の発現は、定量的リアルタイム逆転写酵素PCR(qRT-PCR)により測定した。
図5図5:腓腹筋(A)、大腿四頭筋(B)、横隔膜(C)及び心臓(D)におけるコドン最適化hβsc遺伝子の発現に対するCRE組合せの影響SPc5-12プロモーターからコドン最適化された(hβsgco)を発現するAAVベクターをCB17-SCIDに注入した。ベクターはCREエレメントを含んでいなかった(SPc)か、又は心臓及び骨格筋特異的CRE(CSk-SH5-SPC)、2つの横隔膜特異的CREと心臓及び骨格筋特異的CREとの組合せ(CRE04-CRE06-CSk-SH5)、若しくは3つの横隔膜特異的CREと心臓及び骨格筋特異的CREとの組合せ(CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5)を含んでいた。hβsgco遺伝子の発現は、定量的リアルタイム逆転写酵素PCR(qRT-PCR)により測定した。
図6図6:遺伝子治療処置したSgcbヌルマウスの表現型訂正を評価するためのトレッドミル持久力アッセイ。異なる3群のマウスをトレッドミル持久力アッセイに供した。Sgcbヌルマウスに、AAV-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA、AAV-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA、又はネガティブコントロールとしてのPBSを注射した。各マウス群の平均走行距離を示す(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
説明
一般定義
本明細書において、単数形(「a」、「an」及び「the」)は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、単数及び複数の両方への言及を含む。
本明細書で使用される用語「含む」、「含んでなる」及び「から構成される」は、「包含する」又は「含有する」と同義であり、包摂的又はオープンエンドの語であり、記載されていない追加の部材、要素又は方法ステップを排除していない。この用語はまた、特許用語として確立された意味を有する「~からなる」及び「~から本質的になる」を包含する。
端点による数値範囲の記載は、記載された端点だけでなく、それぞれの範囲に含まれるすべての数値及び部分範囲を含む。
本明細書において、パラメータ、量、持続時間などの測定可能な値に言及する際に用いられる用語「約」は、開示の発明において行うに適切である限り、特定された値の/からの変動、例えば、特定された値の/からの±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、さらに好ましくは±-0.1%以下の変動を包含していることを意味する。修飾語「約」が付された値は、それ自体も具体的に開示され、また好ましいものとしても開示されていると理解されるべきである。
【0026】
一群のメンバーのうちの1若しくは2以上又は少なくとも1つのメンバーような用語「1又は2以上」又は「少なくとも1つ」はそれ自体明確であるが、さらに例示すれば、この用語は、とりわけ、前記メンバーの任意の1つ、又は前記メンバーの任意の2つ又は3つ以上、例えば、前記メンバーの任意の≧3、4、5、6若しくは7など前記全メンバーまでへの言及を包含する。別の例では、「1又は2以上」又は「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上を指す場合がある。
本明細書には、本発明の内容を説明するために発明の背景への言及が含まれる。この言及は、参照した資料のいずれかが、いずれかの請求項の優先日において、いずれかの国で公開されていたこと、知られていたこと、又は技術常識の一部であったことを認めたと解釈されるべきではない。
本開示を通じて、様々な刊行物、特許及び公開特許明細書は、特定するための参照方法で参照される。本明細書で引用したすべての文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、本明細書で具体的に言及される文献の教示又は節は、参照により組み込まれる。
【0027】
特に言及しない限り、技術用語及び科学用語を含む、本発明の開示に用いられるすべての用語は、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者が一般的に理解する意味を有する。さらなる指針として、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義が含まれる。特定の用語が本発明の特定の態様又は特定の実施形態に関連して定義されている場合、その含意は、そうでないと言及されない限り、本明細書全体に適用されること、すなわち、本発明の他の態様又は実施形態の文脈においても適用されることを意味する。
以下において、本発明の異なる態様又は実施形態をより詳細に記載する。記載された各態様は、そうでないとが明示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わせ得る。特に、好適又は有利として示される任意の特徴は、好適又は有利として示される1以上の他の任意の特徴と組み合わせてもよい。
【0028】
本明細書を通じて「1つの実施形態」又は「或る実施形態」への言及は、当該実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の各所に現れる句「1つの実施形態において」又は「或る実施形態において」は、必ずしもすべて同じ実施形態に言及しているわけではないが、そうであり得る。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、1又は2以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかなように任意の適切な様式で組み合わされてもよい。さらに、本明細書に記載されたいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含み、他の特徴を含まないが、当業者に理解されるように、異なる実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を構成する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求された実施形態のいずれも任意の組合せで使用することができる。
本発明に関連する一般的な方法については、特に、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th Ed.」(Green and Sambrook, 2012, Cold Spring Harbor Laboratory)、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら, 1987)を含む周知の教科書に言及する。
【0029】
或る観点において、本発明は、少なくとも2つ、例えば2、3又は4以上の横隔膜特異的調節エレメントと、心臓及び骨格筋特異的調節エレメントとを含んでなるか、該エレメントから本質的になる(すなわち、本調節エレメントは、クローニング目的に用いる配列を例えば追加的に含んでもよいが、示された配列は当該調節エレメントの必須部分を構成する)か、又は該エレメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現を増強するため、詳細には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するため、より詳細には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。ここで、前記少なくとも2つの横隔膜特異的調節エレメントは、以下:配列番号2に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、好ましくは配列番号2に示されるヌクレオチド配列(例えば、Dph-CRE02)、又はその機能的フラグメントを含むか若しくは該配列若しくはフラグメントから本質的になる(すなわち、本調節エレメントは、クローニング目的に用いる配列を例えば追加的に含んでもよいが、示された配列は当該調節エレメントの必須部分を構成し、例えば、より大きな調節領域の部分(例えば、プロモーター)を形成しない)か若しくは該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント;配列番号3に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、好ましくは配列番号3に示されるヌクレオチド配列(例えば、Dph-CRE04)、又はその機能的フラグメントを含むか若しくは該配列若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント;及び配列番号4に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、好ましくは配列番号4に示されるヌクレオチド配列(例えば、Dph-CRE06)、又はその機能的フラグメントを含むか若しくは該配列若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメントからなる群より選択され、心臓及び骨格筋特異的制御エレメントは、配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1に示されるヌクレオチド配列(例えば、CSk-SH5)、又はその機能的フラグメントを含むか若しくは該配列若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該配列若しくはフラグメントからなる。
【0030】
本明細書で用いる「調節エレメント」又は「シス-調節エレメント(CRE)」又は「シス-調節モジュール(CRM)」又は「SH」とは、転写制御エレメント、特に非コード性シス作用性転写制御エレメントをいう。遺伝子の転写、特に遺伝子の組織特異的転写を調節し及び/又は制御し得る転写調節エレメント、特に非コードシス作用性転写調節エレメントをいう。調節エレメントは、少なくとも1つの転写因子結合部位(TFBS)、より詳細には組織特異的転写因子のための少なくとも1つの結合部位を含む。調節エレメント単独は、代表的には、転写の開始に十分ではなく、この目的のためにはプロモーターを必要とする。代表的には、本明細書で用いられる調節エレメントは、当該調節エレメントを含ずにプロモーター単独からの遺伝子の転写と比較したときに、プロモーター駆動遺伝子発現を増加させるか又は増強する。したがって、調節エレメントは、特に、エンハンサー配列を含むが、転写を増強する調節エレメントは、代表的な遥か上流のエンハンサー配列に限定されず、調節対象の遺伝子から任意の距離に存在し得、当該遺伝子内又はオープンリーディングフレーム自体内にさえ存在し得ることが理解される。実際、転写を調節する配列は、インビボで調節している遺伝子の上流(例えば、プロモーター領域内)又は下流(例えば、3'UTR内)のいずれにも位置し得、該遺伝子のごく近傍に位置していてもよいし、更に遠位に位置していてもよいことが当該分野で公知である。本明細書に開示される調節エレメントは、天然に存在する配列、並びにそのバリアント及び当該調節エレメントの組合せ又は該調節エレメントの幾つかのコピーを包含する。すなわち、調節エレメントは天然に存在しない配列を含む。本明細書に開示される調節エレメントは、転写制御に関与するより大きな配列の部分、例えば、プロモーター配列の部分を含んでもよい。本発明の制御エレメントは、天然に存在しない配列である。本明細書に開示される調節エレメントは、核酸分子として提供される。
【0031】
本明細書で使用する用語「核酸」とは、代表的には、本質的にヌクレオチドから構成される任意の長さのオリゴマー又はポリマー(好ましくは直鎖ポリマー)をいう。ヌクレオチド単位は、一般に、複素環式塩基、糖基及び少なくとも1つ、例えば1、2又は3つのリン酸基(修飾又は置換されたリン酸基を含む)を含む。複素環式塩基は、特に、天然に存在する核酸中に広く存在するプリン塩基及びピリミジン塩基(例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U))、その他の天然に存在する塩基(例えば、キサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)、並びに化学的又は生化学的に修飾された(例えば、メチル化された)非天然の又は誘導された塩基を含み得る。糖基は、特に、天然に存在する核酸に共通するペントース(ペントフラノース)基(好ましくは、リボース及び/又は2-デオキシリボース)、又はアラビノース、2-デオキシアラビノース、トレオース又はヘキソース糖基、並びに修飾された又は置換された糖基を含み得る。本明細書で意図する核酸は、天然に存在するヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又はそれらの混合物を含み得る。修飾ヌクレオチドは、修飾複素環式塩基、修飾糖部分、修飾リン酸基又はそれらの組合せを含み得る。リン酸基又は糖の修飾は、安定性、酵素分解に対する耐性又は他の有用な特性を向上させるために導入され得る。用語「核酸」は、さらに好ましくは、DNA、RNA及びDNA/RNAハイブリッド分子を包含し、具体的には、hnRNA、プレmRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、増幅産物、オリゴヌクレオチド、及び合成(例えば、化学合成)DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドを含む。核酸は、天然に存在するもの、例えば自然界に存在し若しくは自然界から単離されたものであることができ;又は天然に存在しないもの、例えば組換えのもの、すなわち組換えDNA技術により製造されたもの、及び/又は部分的若しくは全体的に、化学的若しくは生化学的に合成されたものであることができる。「核酸」は、二本鎖、部分的に二本鎖又は一本鎖のいずれでもあることができる。一本鎖のとき、核酸はセンス鎖又はアンチセンス鎖であり得る。また、核酸は環状又は線状であり得る。
【0032】
本明細書において、「転写因子結合部位」、「転写因子結合配列」又は「TFBS」とは、転写因子が結合する核酸領域の配列をいう。TFBSの非限定的な例としては、TCF3又はE2Aとしても知られる転写因子3の結合部位;NF1としても知られる核因子Iの結合部位;C/EBPとしても知られるCCAAT-エンハンサー結合タンパク質の結合部位;MyoDとしても知られる筋原性分化の結合部位;SREBPとしても知られるステロール調節エレメント結合タンパク質の結合部位;LRFとしても知られる白血病/リンパ腫関連因子の結合部位;p53としても知られるタンパク質53の結合部位;HNF3aとしても知られる肝細胞核因子3-αの結合部位;HNF3bとしても知られる肝細胞核因子3-βの結合部位;HNF4としても知られる肝細胞核因子4の結合部位;MEF2A又はRSRFC4としても知られる筋細胞特異的エンハンサー因子2Aの結合部位;PPAR-γ1/2としても知られるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ1/2の結合部位;SRFとしても知られる血清反応因子の結合部位;Tal1_b又はTal1-βとしても知られる転写活性化因子様タンパク質1bの結合部位;EZH2としても知られるenhancer of zeste homolog 2の結合部位;SUZ12としても知られるポリコーム抑制複合体2サブユニットの結合部位;TBPとしても知られるTATA結合タンパク質の結合部位;FOLR2Aとしても知られる葉酸受容体αの結合部位;RESTとしても知られるRE-1サイレンシング転写因子の結合部位;TEAD4としても知られるTEAドメイン転写因子4の結合部位;RBBP5としても知られるレチナブラストーマ結合タンパク質5の転写因子結合部位;Msx-1としても知られるMshホメオボックス1の転写因子結合部位;SIN3Aとしても知られるSIN3転写調節因子ファミリーメンバーAの転写因子結合部位;JUNDとしても知られるJunDの転写因子結合部位;ZZZ3としても知られるジンクフィンガーZZ-タイプ含有3(Zinc Finger ZZ-Type Containing 3)の転写因子結合部位;AREB6としても知られるジンクフィンガーE-ボックス結合ホメオボックス1の転写因子結合部位;転写因子E2Fの転写因子結合部位;ITF2としても知られる転写因子4の転写因子結合部位;ER-αとしても知られるエストロゲン受容体αの転写因子結合部位;MYBL2としても知られるMyb関連タンパク質B;FOXA1としても知られるフォークヘッドボックスA1;FOXA2としても知られるフォークヘッドボックスA2;TAF7としても知られる転写開始因子TFIIDサブユニット7;SIN3AK20;MAXとしても知られるMAX転写因子;ZBTB7Aとしても知られるジンクフィンガー及びBTBドメイン含有タンパク質7Aが挙げられる。転写因子結合部位は、Transfac(登録商標)のようなデータベースにおいて見出し得る。
【0033】
本明細書で用いる場合、用語「同一性」及び「同一」並びに類似表現は、2つのポリマー分子間、例えば2つの核酸分子(例えば、2つのDNA分子)間の配列類似性をいう。配列の整列及び配列同一性の決定は、例えば、Altschulら1990(J Mol Biol 215:403-10)により最初に記載されたBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)、例えばTatusova and Madden 1999(FEMS Microbiol Lett 174:247-250)により記載された「Blast 2 sequences」アルゴリズムを用いて行うことができる。代表的には、配列同一性パーセンテージは、配列の全長にわたって算出される。本明細書で用いる場合、用語「実質的に同一」は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を示す。
【0034】
本明細書に開示された核酸調節エレメントに関して本願で用いられる用語「機能的フラグメント」は、当該調節エレメント配列の、筋肉特異的発現を調節する能力を保持するフラグメントをいい、すなわち、機能的フラグメントは、依然として組織特異性を付与でき、元の配列と同じ様式で(が、同程度ではない可能性はある)(導入)遺伝子の発現を調節することができる。機能性フラグメントは、好ましくは、由来する元の配列からの、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400又は少なくとも450の連続ヌクレオチドを含み得る。また好ましくは、機能性フラグメントは、由来する元の配列に存在する、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つ、さらに好ましくは少なくとも5つ、少なくとも10又は少なくとも15の転写因子結合部位(TFBS)を含み得る。本明細書で定義される機能性フラグメントは、好ましくは、由来する元の調節エレメントの核酸調節能の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は約100%を有する。
【0035】
本明細書で用いる「心筋及び骨格筋特異的調節因子」又は「心臓及び骨格筋特異的調節因子」とは、心筋及び骨格筋特異的な発現を増強することができる調節因子をいう。心筋及び骨格筋特異的調節エレメントの非限定的な例としては、WO 2015/110449において「CSk-SH」と表記される調節エレメントである。特に、配列番号1に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1に示されるヌクレオチド配列、又はその機能的フラグメントを含む若しくは該配列又はフラグメントから本質的になる若しくは該配列又はフラグメントからなる心筋及び骨格筋特異的調節エレメントが、本明細書で用いられる。実施形態では、配列番号1に示されるヌクレオチド配列(本明細書中で「CSk-SH5」又は「CSkSH5」又は「Csk-SH5」又は「CskSH5」又は「CSK-SH5」又は「CSKSH5」としても表記される)、又は配列番号1に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列から本質的になるか又は前記配列からなる心筋及び骨格筋特異的調節エレメントが用いられる。
【0036】
本明細書で用いる「心筋及び骨格筋特異的発現」とは、心臓(特に心筋)及び骨格筋においける(導入)遺伝子の優先的又は優勢な発現をいう。(導入)遺伝子の発現の少なくとも50%、より具体的には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%は心臓及び骨格筋内で起こり得る。(導入)遺伝子の発現の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、さらには1%未満が心臓及び骨格筋以外の器官又は組織で起こり得る。本願を通じて、発現の文脈で心筋及び骨格筋特異的が言及される場合、心筋細胞及び骨格筋細胞特異的発現、心筋芽細胞及び骨格筋芽細胞特異的発現又は心臓及び筋幹細胞/前駆細胞又は衛星細胞特異的発現も明示的に想定されている。
【0037】
本明細書で用いる用語「心筋」は、心臓に見出される自律調節される横紋筋タイプをいう。
本明細書で用いる用語「骨格筋」は、骨格に付着している、自発的に制御される横紋筋タイプをいう。骨格筋の非限定的な例としては、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大腿四頭筋、脛骨内筋及び腓腹筋が挙げられる。
本明細書で用いる用語「筋細胞」は、前駆筋幹細胞/前駆細胞、衛星細胞又は筋芽細胞から、適切な条件下で筋肉特異的表現型を発現することができるように分化した細胞をいう。最終分化した筋細胞は互いに融合して、筋繊維の主要な構成要素である筋管を形成する。用語「筋細胞」は脱分化した筋細胞もいう。この用語は、インビボの細胞及びエクスビボで培養された細胞も含み、初代細胞か継代細胞かを問わない。
本明細書で用いる「筋幹細胞」、「衛星細胞」、「筋芽細胞」という用語は、中胚葉において分化し、筋細胞又は筋細胞を生じさせる胚性細胞を意味する。この用語は、インビボの細胞及び(初代細胞であるか継代細胞であるかにかかわらず)エクスビボで培養された細胞を含む。
【0038】
本明細書で用いる「横隔膜特異的調節エレメント」とは、横隔膜及び骨格筋特異的発現を増強することができる調節エレメントをいう。横隔膜特異的調節エレメントの非限定的な例は、WO2018/178067においてDph-CRE01 - Dph-CRE065と表記される調節エレメントである。特に、配列番号2に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、好ましくは配列番号2に記載のヌクレオチド配列、又はその機能的フラグメントを含むか若しくは該配列若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント;配列番号3に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、好ましくは配列番号3に記載のヌクレオチド配列、又はその機能的フラグメントを含むか若しくは該配列若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメント;配列番号4に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、好ましくは配列番号4に記載のヌクレオチド配列、又はその機能的フラグメントを含むか若しくは該配列若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該配列若しくはフラグメントからなる横隔膜特異的調節エレメントが本明細書において用いられる。実施形態では、配列番号2(本明細書中で「Dph-CRE02」又は「CRE-02」又は「CRE02」としても表記される)に示されるヌクレオチド配列、又は配列番号2に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列から本質的になるか又は前記配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、配列番号3(本明細書中で「Dph-CRE04」又は「CRE-04」又は「CRE04」としても表記される)に示されるヌクレオチド配列、又は配列番号3に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列から本質的になるか又は前記配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、及び/又は配列番号4(本明細書中で「Dph-CRE06」又は「CRE-06」又は「CRE06」としても表記される)に示されるヌクレオチド配列、又は配列番号4に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列から本質的になるか又は前記配列からなる横隔膜特異的調節エレメントが用いられる。
【0039】
【表1】
【0040】
実施形態において、横隔膜特異的調節エレメントは、配列番号2(Dph-CRE02)に示されるヌクレオチド配列、又は配列番号2に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列からなる横隔膜特異的調節エレメント又はその機能的フラグメント;配列番号3(Dph-CRE04)に示されるヌクレオチド配列、又は配列番号3に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列からなる横隔膜特異的調節エレメント又はその機能的フラグメント;及び、配列番号4(Dph-CRE06)に示されるヌクレオチド配列、又は配列番号4に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列からなる横隔膜特異的調節エレメント又はその機能的フラグメントからなる群より選択される少なくとも2つの横隔膜特異的調節エレメントの組合せである。より具体的には、配列番号5(Dph-CRE02-CRE04)に記載のヌクレオチド配列、又は配列番号5に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、配列番号6(Dph-CRE02-CRE06)に記載のヌクレオチド配列、又は配列番号6に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、配列番号7(Dph-CRE04-CRE06)に記載のヌクレオチド配列、又は配列番号7に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、配列番号8(Dph-CRE06-CRE04)に記載のヌクレオチド配列、又は配列番号8に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント、又は、配列番号9(Dph-CRE02-CRE04-CRE06)に記載のヌクレオチド配列、又は配列番号9に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメントが本明細書において用いられる。
【0041】
本明細書で用いられる「横隔膜及び骨格筋特異的発現」は、横隔膜及び/又は骨格筋細胞又は横隔膜及び/又は骨格筋組織において、他(すなわち非横隔膜及び非骨格筋)の細胞又は組織と比較して、(導入)遺伝子の(RNA又はポリペプチドとしての)優先的又は優勢な発現をいう。(導入)遺伝子の発現の少なくとも50%、より具体的には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%が横隔膜及び/又は骨格筋細胞又は組織内で起こり得る。横隔膜及び骨格筋特異的発現は、発現遺伝子産物の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満又は1%未満の、横隔膜及び骨格筋以外の他の器官又は組織、例えば肺、肝臓、脳、腎臓及び/又は脾臓への「漏れ」が存在し得る。
本明細書で用いる「筋肉特異的発現」とは、他の(すなわち非筋肉)細胞又は組織と比較して、筋肉細胞における(導入)遺伝子の(RNA及び/又はポリペプチドとしての)優先的又は優位的な発現をいう。(導入)遺伝子の発現の少なくとも50%、より具体的には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%が筋肉細胞又は組織内で起こり得る。筋肉特異的発現は、発現遺伝子産物の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、さらには1%未満の、筋肉以外の器官又は組織、例えば肺、肝臓、脳、腎臓及び/又は脾臓への「漏れ」が存在し得る。
【0042】
本願で用いられる「平滑筋特異的発現」とは、他の(すなわち非平滑筋)細胞又は組織と比較して、平滑筋細胞及び組織における(導入)遺伝子(RNA及び/又はポリペプチドとして)の優先的又は優勢な発現をいう。特定の実施形態によれば、(導入)遺伝子の発現の少なくとも50%、より具体的には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%が平滑筋細胞又は組織内で生じる。特定の実施形態によれば、平滑筋特異的発現は、発現遺伝子産物の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、さらには1%未満の、平滑筋以外の他の器官又は組織への「漏れ」が存在し得る。
本発明の核酸調節エレメントは、本明細書に開示された2又は3以上の横隔膜特異的調節エレメントと、本明細書に開示された心筋及び骨格筋特異的調節エレメントとを組み合わせた人工配列を含む。実験の項で示したように、本明細書に開示した2つの横隔膜特異的調節エレメントと、本明細書に開示した心臓及び骨格筋特異的調節エレメントとの組合せにより、横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋における頑強な導入遺伝子の発現が導かれた。より具体的には、2つの横隔膜特異的調節エレメントと心臓及び骨格筋特異的調節エレメントは、横隔膜、平滑筋、心筋及び骨格筋特異的導入遺伝子発現を増強するため、より具体的には横隔膜、心筋及び骨格筋特異的導入遺伝子発現を増強するための新規な調節エレメントとして相乗的に作用する。さらに、本明細書に開示された第3の横隔膜特異的調節エレメントをこの組合せに加えることにより、横隔膜、心臓、平滑筋及び骨格筋特異的導入遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的導入遺伝子発現を相乗的様式でさらに増加させ得ることが示された。
【0043】
本明細書で用いる「横隔膜、心臓、平滑筋、骨格筋特異的発現」は、横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋の細胞又は組織における(導入)遺伝子の優先的又は優位的な発現をいう。特定の実施形態によれば、(導入)遺伝子発現の少なくとも50%、より詳細には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%が横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋細胞及び組織内で生じる。したがって、特定の実施形態によれば、(導入)遺伝子の発現の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満又はさらには1%未満が、横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋以外の器官又は組織で起こる。
本明細書で用いる「横隔膜、心臓及び骨格筋特異的発現」は、横隔膜、心臓及び/又は骨格筋の細胞又は組織における(導入)遺伝子の優先的又は優位的な発現をいう。特定の実施形態によれば、(導入)遺伝子の発現の少なくとも50%、より具体的には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%が横隔膜、心臓及び/又は骨格筋の細胞及び組織内で生じる。したがって、特定の実施形態によれば、(導入)遺伝子の発現の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満又はさらには1%未満が、横隔膜、心臓及び骨格筋以外の器官又は組織で起こる。
【0044】
実施形態において、本発明は、配列番号2に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02)又はその機能的フラグメント、配列番号3に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE04)又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。特定の実施形態において、本発明は、配列番号2に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02)又はその機能的フラグメント、配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04)又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE06)又はその機能的フラグメント、好ましくは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントを更に含む。
【0045】
実施形態において、本発明は、配列番号2に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02)又はその機能的フラグメント、配列番号4に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。特定の実施形態において、本発明は、配列番号2に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02)又はその機能的フラグメント、配列番号4に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE04)又はその機能的フラグメント、好ましくは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04)又はその機能的フラグメントを更に含む。
【0046】
実施形態において、本発明は、配列番号3に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE04)又はその機能的フラグメント、配列番号4に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。特定の実施形態において、本発明は、配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04)又はその機能的フラグメント;配列番号4に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02)又はその機能的フラグメント、好ましくは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02)又はその機能的フラグメントを更に含む。
【0047】
少なくとも2つの横隔膜特異的調節エレメント、及び、心筋及び骨格筋特異的調節エレメントは、本明細書に開示される核酸調節エレメントにおいて、任意の順序で組み合わせることができる。少なくとも2つの横隔膜特異的調節エレメント、及び、心臓及び骨格筋特異的調節エレメントは、縦列に組み合わせることができ、又は1若しくは2以上の調節エレメントの間に1若しくは2以上の介在又はフランキングヌクレオチド(例えば、クローニングの目的に用いられるヌクレオチド)を有して組み合わせることができる。
実施形態において、核酸調節エレメントは、配列番号5に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02-CRE04)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか若しくは該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる。特定の実施形態において、本発明は、配列番号5に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02-CRE04)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE06)、好ましくは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントを更に含む。
【0048】
実施形態において、核酸調節エレメントは、配列番号6に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか若しくは該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる。特定の実施形態において、本発明は、配列番号6に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE04)、好ましくは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04)又はその機能的フラグメントを更に含む。
【0049】
実施形態において、核酸調節エレメントは、配列番号7に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE04-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか若しくは該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる。特定の実施形態において、本発明は、配列番号7に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02)、好ましくは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02)又はその機能的フラグメントを更に含む。特定の実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号9に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02-CRE04-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか若しくは該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる。特定の実施形態において、本発明は、配列番号9に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02-CRE04-CRE06)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。
【0050】
実施形態において、核酸調節エレメントは、配列番号8に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE06-CRE04)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含むか若しくは該配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(例えば、CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか若しくは該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる。特定の実施形態において、本発明は、配列番号8に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06-CRE04)と、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとを含むか又は該エレメント若しくはフラグメントから本質的になるか若しくは該エレメント若しくはフラグメントからなる、筋肉特異的遺伝子発現、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現、より具体的には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントに関する。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02)、好ましくは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02)又はその機能的フラグメントを更に含む。
【0051】
特定の実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号10に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる(Dph-CRE02-Dph-CRE04-CSk-SH5)。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE06)、好ましくは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントを更に含む。特定の実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号11に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる(Dph-CRE02 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE04)、好ましくは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04)又はその機能的フラグメントを更に含む。
特定の実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号12に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる(Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)。他の具体的な実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号13に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる(Dph-CRE06 - Dph-CRE04 - CSk-SH5)。さらなる実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(例えば、Dph-CRE02)、好ましくは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02)又はその機能的フラグメントを更に含む。特定の実施形態では、核酸調節エレメントは、配列番号14に記載のヌクレオチド配列を含むか又は該配列から本質的になるか又は該配列からなる(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)。
【0052】
本明細書に開示された核酸調節エレメントは、核酸発現カセットで使用することができる。したがって、或る観点において、本発明は、核酸発現カセットにおける本明細書に記載の核酸調節エレメントの使用を提供する。
或る観点において、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む核酸発現カセットを提供する。実施形態では、核酸発現カセットは、導入遺伝子を含まない。この核酸発現カセットは、内在性遺伝子の発現を駆動するために用いることができる。好ましい実施形態では、核酸発現カセットは、プロモーター及び導入遺伝子に作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む。
本明細書で用いる場合、用語「核酸発現カセット」は、1又は2以上の所望の細胞タイプ、組織又は器官における(導入)遺伝子の発現を導く1又は2以上の転写制御エレメント(例えば、これらに限定されないが、プロモーター、エンハンサー及び/又は調節エレメント、ポリアデニル化配列、及びイントロン)を含む核酸分子をいう。代表的には、核酸発現カセットは、導入遺伝子を含むが、該核酸発現カセットが挿入された細胞における内在性遺伝子の発現を導くものとしても想定される。
【0053】
本明細書で用いる用語「作動可能に連結された」は、種々の核酸分子エレメントの各々に対する配置であって、該エレメントが機能的に接続して互いに相互作用可能なような配置をいう。このエレメントとして、限定されないが、プロモーター、エンハンサー及び/又は調節エレメント、ポリアデニル化配列、1又は2以上のイントロン及び/又はエキソン、並びに発現させる興味対象の遺伝子(すなわち、導入遺伝子)のコーディング配列を挙げることができる。核酸配列エレメントは、正しく配向され又は作動可能に連結されると、一緒に作用して互いの活性を変調させ、最終的に導入遺伝子の発現レベルに影響し得る。変調とは、特定のエレメントの活性レベルを増加させ、減少させ又は維持することを意味する。各エレメントの他のエレメントに対する位置は、各エレメントの5'末端及び3'末端に関して表現され得、任意の特定のエレメント間の距離は、当該エレメント間の介在ヌクレオチド又は塩基対の数で言及され得る。当業者に理解されるように、「動作可能に連結された」は、機能的活性を意味するものであり、必ずしも天然の位置的関係性に関連していない。実際、核酸発現カセットにおいて用いる場合、調節エレメントは、代表的には、プロモーターのすぐ上流に位置する(このことは一般的に正しいが、核酸発現カセット内での位置の限定又は排除として解釈されるべきでない)が、インビボでそうである必要はない。例えば、遺伝子の下流に天然に存在して該遺伝子の転写に影響を及ぼす調節エレメント配列は、プロモーターの上流に位置するとき、同じ様式で機能することができる。したがって、特定の実施形態によれば、調節エレメントの調節効果又は増強効果は、位置に依存しない。
【0054】
本願で用いる場合、用語「プロモーター」は、それが作動可能に連結された対応する核酸コーディング配列(例えば、導入遺伝子又は内在性遺伝子)の転写を直接又は間接のいずれかで調節する核酸配列をいう。プロモーターは、単独で機能して転写を調節してもよいし、1又は2以上の他の調節配列(例えば、エンハンサー又はサイレンサー、又は調節エレメント)と協調して機能してもよい。本願の文脈において、プロモーターは、代表的には、(導入)遺伝子の転写を調節するために、本明細書に開示される調節エレメントに作動可能に連結される。本明細書に記載の調節エレメントがプロモーター及び導入遺伝子の両方に作動可能に連結されている場合、調節エレメントは、(1)導入遺伝子の、有意な程度の筋肉特異的、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的、より具体的には横隔膜、心筋及び骨格筋特異的な発現をインビボで(及び/又はインビトロで、筋芽細胞、筋細胞又は筋肉由来細胞株、特に心筋及び骨格筋芽細胞、心筋及び骨格筋由来細胞株において)付与することができ、及び/又は、(2)筋肉、具体的には横隔膜、平滑筋、心筋及び骨格筋、より具体的には横隔膜、心筋及び骨格筋における(及び/又はインビトロで、筋芽細胞、筋細胞又は筋肉由来細胞株、特に、平滑筋、心筋及び骨格筋の筋芽細胞、平滑筋、心筋及び骨格筋の筋細胞、又は平滑筋、心筋及び骨格筋由来細胞株、より具体的には心筋及び骨格筋の筋芽細胞、心筋及び骨格筋の筋細胞、又は心筋及び骨格筋由来細胞株における)導入遺伝子の発現レベルを増加させることができる。
プロモーターは、同種であっても(すなわち、核酸発現カセットをトランスフェクトする動物、特に哺乳類と同じ種に由来しても)、異種であっても(すなわち、発現カセットをトランスフェクトする動物、特に哺乳類の種以外の供給源に由来しても)よい。このように、プロモーターの供給源は、本明細書に記載の調節エレメントとの組合せで機能する限り、任意のウイルス(例えば、CMV又はサイトメガロウイルス)、任意の単細胞原核生物又は真核生物、任意の脊椎生物又は無脊椎生物、又は任意の植物であってもよく、合成プロモーター(すなわち、天然に存在しない配列を有するプロモーター)であってもよい。好ましい実施形態において、プロモーターは、哺乳動物のプロモーター、特にマウス又はヒトプロモーターである。
【0055】
プロモーターは、誘導性プロモーターであっても、構成性プロモーターであってもよい。
本明細書に開示された核酸調節エレメントにおいて筋肉特異的TFBSが豊富に存在することによって、原理的に、当該調節エレメントは、それ自体では筋肉特異的でないプロモーター(例えば、CAGプロモーター、CMVプロモーター)からでも筋肉特異的発現を導くことが可能になる。したがって、本明細書に開示された調節エレメントは、任意のプロモーターとの組合せで核酸発現カセットにおいて用いることができ、具体的には、プロモーターは、組織特異的、例えば筋肉特異的であってもよいし、遍在的に発現されてもよい。遍在的発現プロモーターの非限定的な例としては、ポリメラーゼII(pol II)プロモーター、ポリメラーゼIII(pol III)プロモーター(例えば、U6)及びキメラpol IIIプロモーターが挙げられる。これらプロモーターは、例えば非コーディングRNAの発現に適切であり得る。好ましくは、本明細書に開示される核酸発現カセットは、筋肉特異性、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋特異性、より具体的には横隔膜、心臓及び/又は骨格筋特異性を増大させ、及び/又は他の組織における発現の漏れを低減させるために、筋肉特異的プロモーター、具体的には横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋特異的プロモーター、より具体的には横隔膜、心臓及び/又は骨格筋特異的プロモーターを含む。
【0056】
筋肉特異的プロモーターの非限定的な例としては、デスミン(DES)プロモーター;合成SPc5-12プロモーター(SPc5-12);α-アクチン1プロモーター(ACTA1);クレアチンキナーゼ、筋肉(CKM)プロモーター;4.5LIMドメインタンパク質1(FHL1)プロモーター;α2アクチニン(ACTN2)プロモーター;フィラミン-C(FLNC)プロモーター;筋小胞体/小胞体カルシウムATPase1(ATP2A1)プロモーター;トロポニンIタイプ1(TNNI1)プロモーター;トロポニンIタイプ2(TNNI2)プロモーター;トロポニンTタイプ1(TNNT1)プロモーター;トロポニンTタイプ2(TNNT2)プロモーター;トロポニンTタイプ3(TNNT3)プロモーター;ミオシン-1(MYH1)プロモーター;ミオシン-2(MYH2)プロモーター;サルコリピン(SLN)プロモーター;ミオシン結合タンパク質C1(MYBPC1)プロモーター;エノラーゼ(EN03)プロモーター;炭酸脱水酵素3(CA3)プロモーター;リン酸化可能速筋骨格筋ミオシン軽鎖(MYLPF)プロモーター;トロポミオシン1(TPM1)プロモーター;トロポミオシン2(TPM2)プロモーター;α-3鎖トロポミオシン(TPM3)プロモーター;アンキリン反復ドメイン含有タンパク質2(ANKRD2)プロモーター;ミオシン重鎖(MHC)プロモーター;アルファミオシン重鎖プロモーター(αMHC)プロモーター;ミオシン軽鎖(MLC)プロモーター;筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター;ミオシン、軽鎖1(MYL1)プロモーター;ミオシン、軽鎖2(MYL2)プロモーター;ミオグロビン(MB)プロモーター;トロポニンCタイプ1(TNNC1)プロモーター;トロポニンCタイプ2(TNNC2)プロモーター、Titin-Cap(TCAP)プロモーター、ミオシン重鎖7(MYH7)プロモーター;アルドラーゼA(ALDOA)プロモーター;ミオシン重鎖11(Myh11)プロモーター;トランスジェリン(Tagln)プロモーター(SM22αプロモーターとしても知られる);アクチンα2、平滑筋(Acta2)プロモーター;Liら(1999、Nat Biotechnol. 17:241-245)に記載の合成プロモーター、例えばSPc5-12プロモーター、dMCKプロモーター及びtMCKプロモーター(それぞれ、Wangら(2008, Gene Ther, 15:1489-1499)に記載のMCKエンハンサー~MCK基底プロモーターまでの2重又は3重タンデムからなる)、及びMHCK7プロモーターが挙げられる。MHCK7プロモーターは、合成の骨格筋及び心筋特異的プロモーターであり、Salvaら(2007. Mol Ther 15: 320-9)に記載されている。好ましい実施形態において、プロモーターは、SPc5-12プロモーター、DESプロモーター及びMHCK7プロモーターからなる群より選択される筋特異的プロモーターである。
【0057】
特に好ましい実施形態では、プロモーターは、哺乳動物の筋肉特異的プロモーター、特にマウス又はヒト筋肉特異的プロモーターである。
実施形態では、プロモーターは、合成SPc5-12プロモーターである。SPc5-12プロモーターは、合成の筋肉特異的プロモーターであり、Liら(1999. Nat Biotechnol. 17:241-245)に記載されている。実施形態では、プロモーターは、配列番号15で規定されるSPc5-12プロモーターである。実施形態では、プロモーターは、MHCK7プロモーター、好ましくは配列番号56で規定されるMHCK7プロモーターである。実施形態において、プロモーターは、デスミンプロモーターであり、好ましくは配列番号57で規定されるデスミンプロモーターである。
さらに、プロモーターは、核酸発現カセット中の導入遺伝子のプロモーターである必要はないが、導入遺伝子が自身のプロモーターから転写されることも可能である。
核酸発現カセットの長さを最小にするために、調節エレメントは最小プロモーター、又は本明細書に記載のプロモーターの短縮バージョンに連結されてもよい。本明細書で用いる「最小プロモーター」(基本プロモーター又はコアプロモーターとも呼ばれる)は、全長サイズのプロモーターの一部であり、依然として発現を駆動することができるが、(例えば、組織特異的)発現の調節に寄与する配列の少なくとも一部を欠くものである。この定義は、(組織特異的)調節エレメントが欠失しており、遺伝子の発現を駆動可能であるが、該遺伝子を組織特異的様式で発現させる能力を喪失しているプロモーター、及び、(組織特異的)調節エレメントが欠失しており、遺伝子の(おそらく低下した)発現を駆動可能であるが、該遺伝子を組織特異的様式で発現させる能力を必ずしも喪失していないプロモーターの両方をカバーする。
【0058】
本明細書で用いる用語「導入遺伝子」は、特定の核酸配列であって、該核酸配列が導入された細胞において発現させるべきポリペプチド又はポリペプチドの一部をコードする核酸配列をいう。しかし、導入遺伝子は、代表的には、当該核酸配列が挿入された細胞における特定のポリペプチドの量を制御する(例えば、低下させる)ために、RNAとして発現させることも可能である。これらRNA分子には、RNA干渉(shRNA、RNAi)、マイクロRNA調節(miR)(これは、特定の遺伝子の発現の制御に用いることができる)、非コーディングRNA(ncRNA)、ロング非コーディングRNA(lncRNA)、ガイドRNA(gRNA)、触媒RNA、アンチセンスRNA、RNAアプタマーなどにより機能を発揮する分子が含まれるが、これらに限定されない。核酸配列を細胞に導入する方法は、本発明にとって必須ではなく、例えば、ゲノム中への組込みにより導入されてもよいし、エピソームプラスミドとして導入されてもよい。注目すべきことに、導入遺伝子の発現は、当該核酸配列が導入された細胞のサブセットに限定され得る。用語「導入遺伝子」は、(1)細胞内に天然に見出されない核酸配列(すなわち、異種性核酸配列);(2)導入される細胞内に天然に見出される核酸配列の変異体である核酸配列;(3)導入される細胞内に天然に見出される同じ(すなわち、相同な)又は類似の核酸配列の更なるコピーを追加するために働く核酸配列;又は(4)導入される細胞内において、その発現が誘導されるサイレントな天然に存在するか又は相同な核酸配列を含むものとされている。
導入遺伝子は、プロモーター(及び/又は(例えば、核酸発現カセットが遺伝子治療に用いられる場合)該導入遺伝子が導入される動物、特に哺乳動物)に対して相同であっても異種であってもよい。
【0059】
導入遺伝子は、全長cDNA又はゲノムDNA配列であってもよく、少なくとも何らかの生物活性を有する任意のフラグメント、サブユニット又は変異体であってもよい。具体的には、導入遺伝子はミニ遺伝子、すなわち、一部、大部分又は全てのイントロン配列を欠く遺伝子配列であり得る。よって、導入遺伝子は、場合により、イントロン配列を含み得る。場合により、導入遺伝子はハイブリッド核酸配列、すなわち、同種及び/又は異種のcDNA及び/又はゲノムDNAフラグメントから構築されたものであってもよい。「変異体」とは、野生型の又は天然に存在する配列とは異なる1又は2以上のヌクレオチドを含む核酸配列を意味し、すなわち、変異体核酸配列は、1又は2以上のヌクレオチドの置換、欠失及び/又は挿入を含む。ヌクレオチドの置換、欠失及び/又は挿入は、そのアミノ酸/核酸配列が野生型アミノ酸/核酸配列と異なる遺伝子産物(すなわち、タンパク質又は核酸)を生じさせることができる。このような変異体の製造は当該分野において周知である。場合によっては、導入遺伝子は、該導入遺伝子の産物が細胞から分泌されるようにリーダーペプチド又はシグナル配列をコードする配列も含み得る。
特定の実施形態では、導入遺伝子はコドン最適化されている。本明細書で用いられる用語「コドン最適化」、「コドン最適化された」及び類似表現は、例えば宿主細胞又は生物における最適発現のために、そのアミノ酸配列を変更することなく、核酸配列、特に導入遺伝子のコドン組成を変化させることを指す。実験の項で示したように、導入遺伝子のコドン最適化は、導入遺伝子の筋肉特異的、詳細には横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋特異的、より詳細には横隔膜、心臓及び骨格筋特異的発現をさらに増強させることができる。
【0060】
本明細書に記載の核酸発現カセットに含まれ得る導入遺伝子は、代表的には、RNA又はポリペプチド(タンパク質)などの遺伝子産物をコードする。導入遺伝子は、Cas及び/又は1若しくは2以上のgRNAなどのCRISPR/Casシステムのメンバーも含み得る。
実施形態では、導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードする。
治療用タンパク質は、分泌型タンパク質であってもよいし、非分泌型タンパク質であってもよい。分泌可能なタンパク質、特に分泌可能な治療用タンパク質の非限定的な例としては、凝固因子、例えば第VIII因子又は第IX因子、インスリン、エリスロポエチン、リポタンパク質リパーゼ、抗体又はナノボディ、成長因子、血管新生因子、サイトカイン、ケモカイン、血漿因子などが挙げられる。非分泌タンパク質の非限定的な例としては、代謝酵素(例えば、タファジン)、リソソームタンパク質、核タンパク質などが挙げられる。また、治療用タンパク質は、構造タンパク質であってもよい。構造タンパク質、特に構造治療用タンパク質の非限定的な例としては、ジストロフィン及びサルコグリカンが挙げられる。
【0061】
本願で想定される導入遺伝子の非網羅的で非限定的なリストには、治療目的の血管形成のための血管形成因子(例えば、VEGF、PlGF、又はエフリン、セマフォリン、スリッツ及びネトリンのようなガイダンス分子又はそれらの同族受容体)をコードする導入遺伝子;凝固因子(例えば、第VIII因子又は第IX因子)をコードする導入遺伝子、インスリンをコードする導入遺伝子、リポタンパク質リパーゼをコードする導入遺伝子、血漿因子をコードする導入遺伝子、サイトカイン、ケモカイン及び/又は成長因子(例えば、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド5(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、角質細胞成長因子(KGF)、単球化学吸引タンパク質-1(MCP-1)及び腫瘍壊死因子(TNF))をコードする導入遺伝子、カルシウム取り扱いに関与するタンパク質(例えば、筋小胞体/小胞体Ca2+-ATPase(SERCA)、ホスホランバン、カルセケストリン、ナトリウム-カルシウム交換体、L型カルシウムチャネル、リアノジン受容体)をコードする導入遺伝子、カルシニューリンをコードする導入遺伝子、マイクロディストロフィンをコードする導入遺伝子;フォリスタチン(FST)をコードする導入遺伝子;ミオチュブラリン1(MTM1)をコードする導入遺伝子;ジスフェリンをコードする導入遺伝子;ジストロフィンをコードする導入遺伝子;代謝酵素をコードする導入遺伝子、核タンパク質をコードする導入遺伝子;ミトコンドリアタンパク質(例えば、タファジン)をコードする導入遺伝子;リソソームタンパク質(例えば、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)(分泌型又は天然型)、α-ガラクトシダーゼA、LAMP2)をコードする導入遺伝子;イオンチャンネル(例えば、SCN5A)をコードする導入遺伝子;グリコーゲン代謝に関与する酵素(例えば、グリコーゲン合成酵素(GYS2)、グリコーゲン脱分枝酵素(AGL)、グリコーゲン分枝酵素(GBE1)、筋グリコーゲンホスホリラーゼ(PYGM)、筋ホスホフルクトキナーゼ(PKFM)、ホスホグリセレートムターゼ(PGAM2)、アルドラーゼA(ALDOA)、βエノラーゼ(ENO3)又はグリコゲニン1(GYG1))をコードする導入遺伝子;ムコ多糖症で欠損した酵素(例えば、α-L-イデュロニダーゼ、イデュロン酸スルファターゼ、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、ガラクトース-6-スルファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼ又はヒアルロニダーゼ)をコードする導入遺伝子;サルコグリカン(例えば、α-サルコグリカン、β-サルコグリカン及びγ-サルコグリカン)をコードする導入遺伝子;アノクタミン5をコードする導入遺伝子;カルパイン3をコードする導入遺伝子;抗体をコードする導入遺伝子、ナノボディをコードする導入遺伝子、抗ウイルスドミナントネガティブタンパク質をコードする導入遺伝子;及びそのフラグメント、サブユニット又は変異体が挙げられる。
【0062】
特定の実施形態では、導入遺伝子はサルコグリカン、好ましくはβ-サルコグリカン、より好ましくはヒトβ-サルコグリカン(配列番号18により規定される導入遺伝子)をコードする。さらなる実施形態では、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子は、コドン最適化されている(例えば、配列番号19により規定される導入遺伝子)。
特定の実施形態では、導入遺伝子は、リソソームタンパク質をコードし、好ましくは導入遺伝子は酸性α-グルコシダーゼ(GAA)(例えば、分泌型又は天然型としてのGAA)、α-ガラクトシダーゼA及びLAMP2からなる群より選択されるリソソームタンパク質をコードする。さらなる特定の実施形態では、導入遺伝子は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、好ましくはヒトGAA(配列番号58により規定される導入遺伝子)をコードする。さらなる実施形態では、ヒトGAAをコードする導入遺伝子は、コドン最適化されている(配列番号59により規定される導入遺伝子)。また、導入遺伝子はレポーター遺伝子であってもよく、すなわち導入遺伝子はルシフェラーゼ酵素などのレポーターをコードしていてもよい。特定の実施形態では、導入遺伝子はルシフェラーゼをコードし、例えば、導入遺伝子は配列番号20に示されるヌクレオチド配列を有していてもよい。
また、導入遺伝子は、免疫原性タンパク質をコードしていてもよい。免疫原性タンパク質の非限定的な例としては、病原体に由来するエピトープ及び抗原が挙げられる。
本明細書で用いる用語「免疫原性」は、免疫反応を惹起することができる物質又は組成物を指す。
【0063】
代表的には導入遺伝子産物の発現をさらに増加又は安定化させるために、その他の配列(例えば、イントロン及び/又はポリアデニル化配列)を同様に、本明細書に開示される核酸発現カセットに組み込み得る。
本明細書に記載された発現カセットにおいて、任意のイントロンを利用することができる。用語「イントロン」は、全体イントロンのうち、核内スプライシング装置が認識し、スプライシングするに十分な大きさの部分を包含する。代表的には、発現カセットのサイズをできるだけ小さくして、発現カセットの構築及び操作を容易にするために、短く機能的なイントロン配列が好ましい。いくつかの実施形態では、イントロンは、発現カセット内のコーディング配列によってコードされるタンパク質をコードする遺伝子から取得される。イントロンは、コーディング配列の5'側、コーディング配列の3'側又はコーディング配列内に位置することができる。イントロンをコーディング配列の5'側に配置する利点は、イントロンがポリアデニル化シグナルの機能と干渉する可能性を最小化することである。実施形態において、本明細書に開示される核酸発現カセットは、イントロンをさらに含む。適切なイントロンの非限定的な例は、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、ベータグロビンイントロン(betaIVS-II)、第IX因子(FIX)イントロンA、シミアンウイルス40(SV40)スモールtイントロン、及びベータアクチンイントロンである。好ましくは、イントロンは、MVMイントロン(配列番号16)である。
ポリAテールの合成を指示する任意のポリアデニル化シグナルは、本明細書に記載の発現カセットにおいて有用であり、その例は当業者に周知である。例示的なポリアデニル化シグナルには、シミアンウイルス40(SV40)後期遺伝子に由来するポリA配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、最小ウサギβ-グロビン(mRBG)遺伝子、及びLevittら(1989, Genes Dev 3:1019-1025)に記載された合成ポリA部位(SPA)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】
好ましくは、ポリアデニル化シグナルは、配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルである。
特定の実施形態では、本発明は、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーターに作動可能に連結された、配列番号3に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04)又はその機能的フラグメント、配列番号4に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる心臓及び骨格筋特異的調節エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとから本質的になるか又は該エレメントからなる核酸調節エレメント、好ましくは、配列番号12に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる核酸調節エレメント(Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)、及び、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)を含む核酸調節カセットを提供する。好ましい実施形態では、導入遺伝子はコドン最適化されている。実施形態では、核酸発現カセットは、MVMイントロンをさらに含む。実施形態では、核酸発現カセットは、ポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルをさらに含む。
【0065】
特定の実施形態では、本発明は、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーターに作動可能に連結された、配列番号2に記載のヌクレオチド配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE02)又はその機能的フラグメント、配列番号3に記載のヌクレオチド配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE04)又はその機能的フラグメント、配列番号4に記載のヌクレオチド配列からなる横隔膜特異的調節エレメント(Dph-CRE06)又はその機能的フラグメントと、配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなる心臓及び骨格筋特異的制御エレメント(CSk-SH5)又はその機能的フラグメントとから本質的になるか若しくは該エレメントから本質的になる核酸調節エレメント、好ましくは、配列番号14に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか若しくは該配列からなる核酸調節エレメント(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)、及び、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)を含む核酸発現カセットを提供する。好ましい実施形態では、導入遺伝子はコドン最適化されている。実施形態では、核酸発現カセットは、MVMイントロンをさらに含む。実施形態では、核酸発現カセットは、ポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルをさらに含む。
本明細書に開示された核酸調節エレメント及び核酸発現カセットは、そのまま用いてもよいし、代表的には、核酸ベクターの一部であってもよい。したがって、さらなる観点は、ベクター、特に核酸ベクターにおける、本明細書に記載の核酸調節エレメント又は本明細書に記載の核酸発現カセットの使用に関する。
【0066】
或る観点において、本発明はまた、本明細書に開示される核酸調節エレメントを含むベクターを提供する。さらなる実施形態では、ベクターは、本明細書に開示される核酸発現カセットを含む。
本願で用いる用語「ベクター」は、その中に、別の核酸分子(挿入核酸分子)(例えば、cDNA分子であるがこれに限定されない)が挿入されていてもよい核酸分子、例えば二本鎖DNAをいう。ベクターは、挿入核酸分子を適切な宿主細胞へ輸送するために使用される。ベクターは、挿入核酸分子を転写し、場合により転写物をポリペプチドに翻訳することを可能にする必要なエレメントを含むことができる。挿入核酸分子は、宿主細胞由来であってもよいし、異なる細胞又は生物由来であってもよい。宿主細胞内に入ると、ベクターは、宿主の染色体DNAと無関係に又は同時に複製することができ、ベクター及びその挿入核酸分子の幾つかのコピーが作製され得る。ベクターは、エピソーマルベクター(すなわち、宿主細胞のゲノムに組み込まれないもの)であってもよいし、宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターであってもよい。したがって、用語「ベクター」は、標的細胞への遺伝子導入を容易にする遺伝子送達ビヒクルとして定義され得る。この定義は、非ウイルス性ベクター及びウイルス性ベクターの両方を含む。非ウイルス性ベクターとしては、カチオン性脂質、リポソーム、ナノ粒子、PEG、PEI、プラスミドベクター(例えば、pUCベクター、ブルースクリプトベクター(pBS)及びpBR322、又は細菌性配列(ミニサークル)を欠くそれらの誘導体)、トランスポゾン系ベクター(例えば、ピギーバック(PB)ベクター又はスリーピングビューティー(SB)ベクター)などが挙げられるが、それらに限定されない。ウイルスベクターは、ウイルスに由来し、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、肝炎ウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。代表的には(ただし、必ずしもではない)、ウイルスベクターは複製欠損している。なぜならば、ウイルスベクターは、複製に不可欠なウイルス遺伝子が除去されているため、所与の細胞内で増殖する能力を喪失しているからである。しかし、いくつかのウイルスベクターは、所与の細胞(例えば、がん細胞)内で特異的に複製するように適合させることもでき、代表的には、(がん)細胞特異的(腫瘍)溶解を誘因するために用いられる。ビロソームは、ウイルス性エレメント及び非ウイルス性エレメントの両方を含むベクターの非限定的例である。具体的には、ビロソームは、リポソームと不活化HIV又はインフルエンザウイルスを組み合わせたものである(Yamadaら、2003)。別の例は、カチオン性脂質と混合されたウイルスベクターを包含する。
【0067】
好ましい実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、より好ましくはAAVベクターである。AAVベクターは、好ましくは、AAV形質導入における制限的ステップの1つ(すなわち、一本鎖AAVから二本鎖AAVへの変換)を克服するために、自己相補的二本鎖AAVベクター(scAAV)として用いられる(McCarty、2001、2003;Nathwaniら、2002、2006、2011;Wuら、2008)が、一本鎖AAVベクター(ssAAV)の使用も、本明細書に包含される。
実施形態では、ベクターは、AAV血清型9(AAV9)ベクター、より詳細には自己相補型AAV9ベクター(scAAV9)である。実施形態では、ベクターは、AAV血清型8(AAV8)ベクター、例えば自己相補型AAV8ベクター(scAAV8)又は一本鎖AAV8ベクター(ssAAV8)である。
ベクターは、AAVキャプシドが筋肉細胞に特異的にベクターを誘導するように操作されたAAVベクターであってもよい。例えば、ベクターは、Tulalamba Wら(Tulalamba W,ら Distinct transduction of muscle tissue in mice after systemic delivery of AAVpo1 vectors. Gene Ther.(2019) https://doi.org/10.1038/s41434-019-0106-3)に記載のAAVpo1ベクターであってもよい。
【0068】
AAVベクター粒子の製造は、例えば、記載されているように(Chahalら Production of adeno-associated virus (AAV) serotypes by transient transfection of HEK293 cell suspension cultures for gene delivery, Journal of Virological Methods. 196: 163-173 (2014);Griegerら, Production of recombinant adeno-associated virus vectors using suspension HEK293 cells and continuous harvest of vector from the culture media for GMP FIX and FLT1 clinical vector. Molecular Therapy. 24: 287-297 (2016);Blessingら, Scalable Production of AAV Vectors in Orbitally Shaken HEK293 Cells. Molecular Therapy Methods & Clinical Development. 13: 14-26 (2019))、浮遊適合(suspension-adapted)哺乳動物HEK293細胞の一過性トランスフェクションによって、又は記載されているように(Kotinら Manufacturing Clinical Grade Recombinant Adeno-Associated Virus Using Invertebrate Cell Lines. Human Gene Therapy. 28: 350-360 (2017))、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)を用いるSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞の感染に続く精製工程によって達成することができる精製は、記載されているように(VandenDriesscheら, 2007)、塩化セシウム(CsCl)密度勾配超遠心に基づいてもよく、又はクロマトグラフィー技術若しくはカラムを用いて、又は当該分野で知られる免疫アフィニティーによって行ってもよい。ベクターはまた、非ウイルス性ベクター、好ましくはプラスミド、ミニサークル又はトランスポゾンベースのベクター、例えばSleeping Beauty(SB)ベースのベクター又はpiggyBac(PB)ベースのベクターであり得る。
ベクターはまた、ウイルス性エレメント及び非ウイルス性エレメントを含み得る。
【0069】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号10に規定されるヌクレオチド配列からなる核酸調節エレメント(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - CSk-SH5)、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MVMイントロン、導入遺伝子、好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子、及びポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルを含む核酸発現カセットを含むベクターを提供する。好ましい実施形態では、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子は、コドン最適化される(配列番号19に規定される導入遺伝子)。特定の実施形態において、前記ベクターは、配列番号26又は27を有する。
特定の実施形態において、本発明は、配列番号13に規定されるヌクレオチド配列からなる核酸調節エレメント(Dph-CRE06 - Dph-CRE04 - CSk-SH5)、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MVMイントロン、導入遺伝子、好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子、及びポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルを含む核酸発現カセットを含むベクターを提供する。好ましい実施形態では、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子は、コドン最適化される(配列番号19に規定される導入遺伝子)。特定の実施形態において、前記ベクターは、配列番号30又は31を有する。
特定の実施形態において、本発明は、配列番号11に規定されるヌクレオチド配列からなる核酸調節エレメント(Dph-CRE02 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MVMイントロン、導入遺伝子、好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子、及びポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルを含む核酸発現カセットを含むベクターを提供する。好ましい実施形態では、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子は、コドン最適化される(配列番号19に規定される導入遺伝子)。特定の実施形態において、前記ベクターは、配列番号32又は33を有する。
【0070】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号12に規定されるヌクレオチド配列からなる核酸調節エレメント(Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MVMイントロン、導入遺伝子、好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子、及びポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルを含む核酸発現カセットを含むベクターを提供する。好ましい実施形態では、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子は、コドン最適化される(配列番号19に規定される導入遺伝子)。特定の実施形態において、前記ベクターは、配列番号28又は29を有する。
特定の実施形態では、本発明は、配列番号14に記載のヌクレオチド配列からなる核酸調節エレメント(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MVMイントロン、導入遺伝子、好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子、及びポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルを含む核酸発現カセットを含むベクターを提供する。好ましい実施形態では、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子は、コドン最適化される(配列番号19に規定される導入遺伝子)。特定の実施形態において、前記ベクターは、配列番号34又は35を有する。
本明細書に開示される核酸発現カセット及びベクターは、例えば、筋肉において通常発現され利用されるタンパク質(すなわち、構造タンパク質)を発現させるため、又は筋肉において発現され、その後身体の他の部分への輸送のために血流に輸出されるタンパク質(すなわち、分泌可能タンパク質)を発現させるために使用し得る。例えば、本明細書に開示される発現カセット及びベクターは、治療目的、特に遺伝子治療のために、治療量の遺伝子産物(例えば、ポリペプチド、特に治療用タンパク質、又はRNA)を発現させるために使用し得る。代表的には、遺伝子産物は、発現カセット又はベクター内の導入遺伝子によりコードされるが、原理的には、治療目的のために内在性遺伝子の発現を増加させることも可能である。代替の例では、本明細書に開示される発現カセット及びベクターは、ワクチン接種目的に、免疫学的量の遺伝子産物(例えば、ポリペプチド、特に免疫原性タンパク質、又はRNA)を発現させるために使用し得る。
【0071】
本明細書で教示される核酸発現カセット及びベクターは、薬学的に許容される賦形剤、すなわち1又は2以上の薬学的に許容されるキャリア物質及び/又は添加物、例えば緩衝剤、キャリア、賦形剤、安定剤などと共に医薬組成物に配合されてもよい。医薬組成物は、キットの形態で提供されてもよい。
本明細書で用いられる用語「薬学的に許容される」は、当該分野と一致して、医薬組成物の他の成分と適合性であり、レシピエントに有害でないことを意味する。
したがって、本発明のさらなる観点は、本明細書に記載の核酸発現カセット又はベクターを含む医薬組成物に関する。
これら医薬組成物の製造のための本明細書に記載の核酸調節エレメント及びベクターの使用も、本明細書に開示される。
例えば、医薬組成物はワクチンであってもよい。ワクチンは、免疫反応を増強するための1又は2以上のアジュバントをさらに含んでもよい。適切なアジュバントとしては、例えば、サポニン、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイル又は炭化水素エマルジョン、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、コリネバクテリウム・パルバム、合成アジュバントQS-21が挙げられるが、これらに限定されない。任意選択的に、ワクチンは、1又は2以上の免疫刺激分子をさらに含んでもよい。免疫刺激分子の非限定的な例としては、免疫刺激活性、免疫増強活性及び炎症促進活性を有する種々のサイトカイン、リンホカイン及びケモカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13);成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)-コロニー刺激因子(CSF));及び他の免疫刺激分子、例えばマクロファージ炎症因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2などが挙げられる。
【0072】
さらなる観点において、本発明は、医学における使用のための、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物に関する。
本明細書で用いる用語「処置する」又は「処置」は、治療的処置及び予防的手段の両方をいう。有益な又は望ましい臨床結果には、検出可能であろうが、検出不可能であろうが、望ましくない臨床状態又は障害の予防、障害の発生率の低減、障害に関連する症状の緩和、障害の範囲の縮小、障害の安定状態(すなわち、悪化しない状態)、障害の進行の遅延又は減速、障害の状態の改善又は緩和、寛解(部分又は全体)又はそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味し得る。
本明細書で用いる用語「治療的処置」又は「療法」及び類似表現は、その目的が、対象者の身体又はその要素を、望ましくない生理学的変化又は障害から望ましい状態、例えば、より重度ではないか又はより不快でない状態にさせる(例えば、症状の緩和、状態の改善又は緩和)か若しくは正常で健常な状態に戻す(例えば、対象者の健康、身体的完全性及び身体的幸福を回復させる)ことであるか、又は前記望ましくない生理学的変化又は障害に留めること(例えば、安定化又は悪化させないこと)であるか、又は前記望ましくない生理学的変化又は障害と比較してより重度又はより悪い状態への進行を防止若しくは遅延させることである処置をいう。
本明細書で用いる用語「予防」又は「予防的処置」及び類似表現は、疾患又は障害の発症を予防すること(疾患又は障害又は関連症状の重篤度を、罹患前に軽減することを含む)を包含する。このような罹患前の予防又は軽減とは、投与時点では疾患又は障害の明確な症状を示していない患者に対して、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物を投与することをいう。「予防(すること)」には、疾患又は障害が例えば或る期間の改善後に再発することの防止が包含される。
実施形態において、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、遺伝子治療、特に筋肉指向性遺伝子治療、特に横隔膜-、平滑筋-、心臓-及び骨格筋-指向性遺伝子治療、より特に横隔膜-、心臓-及び骨格筋-指向性遺伝子治療に用いるためのものである。
【0073】
また、遺伝子治療、特に筋肉指向性遺伝子治療、特に横隔膜-、平滑筋-、心臓-及び骨格筋-指向性遺伝子治療、より詳細には横隔膜-、心臓-及び骨格筋-指向性遺伝子治療のための医薬の製造のための、本明細書に記載された核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物の使用も本明細書に開示される。
また、本明細書には、遺伝子治療を必要としている対象における、遺伝子治療、特に筋肉指向性遺伝子治療、特に横隔膜-、平滑筋-、心臓-及び骨格筋-指向性遺伝子治療、より詳細には横隔膜-、心臓-及び骨格筋-指向性遺伝子治療のための方法であって、以下:
- 対象、特に対象の筋肉組織又は細胞、特に横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋組織又は細胞、より詳細には対象の横隔膜、心臓及び/又は骨格筋組織又は細胞に、本明細書に記載の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物を導入すること、ここで、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、プロモーター及び導入遺伝子に作動可能に連結した本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む;及び
- 治療有効量の導入遺伝子産物を、対象、特に対象の筋肉細胞又は組織、特に横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋細胞又は組織、より詳細には対象の横隔膜、心臓及び/又は骨格筋細胞又は組織で発現させること
を含む方法が開示される。
【0074】
導入遺伝子産物は、ポリペプチド、特に構造タンパク質、例えばジストロフィン又はサルコグリカン;分泌可能タンパク質、例えば、凝固因子、例えば、第IX因子又は第VIII因子、サイトカイン、成長因子、抗体又はナノボディ、ケモカイン、血漿因子、インスリン、エリスロポエチン、リポプロテインリパーゼ;又は非分泌タンパク質、例えば核タンパク質、代謝酵素又はリソソームタンパク質であり得る。さらに、導入遺伝子産物の非限定的な例は、導入遺伝子に関連して上記に開示されており、限定されないが、血管形成因子;サイトカイン及び/又は成長因子;カルシウム処理に関与するタンパク質;リソソームタンパク質;イオンチャネル、抗体、ナノボディ、抗ウイルスドミナントネガティブタンパク質、及びそれらのフラグメント、サブユニット又は変異体;及び酵素(例えば、グリコーゲン代謝に関与する酵素及びムコ多糖症で欠損している酵素)が含まれる。特定の実施形態では、導入遺伝子産物はサルコグリカン、好ましくはβ-サルコグリカンである。特定の実施形態では、導入遺伝子産物は、リソソームタンパク質、好ましくは酸性α-グルコシダーゼ(GAA)(例えば、分泌型又は天然型としてのGAA)、α-ガラクトシダーゼA又はLAMP2、より好ましくは酸性α-グルコシダーゼ(GAA)である。或いは、導入遺伝子産物は、RNA、例えばsiRNA又は非コーディングRNA(ncRNA)であってもよい。
【0075】
本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物を用いる遺伝子治療から利益を得ることができる例示的な疾患及び障害には、以下のものが含まれる:
- グリコーゲン貯蔵障害(例えば、ポンペ病グリコーゲン貯蔵障害(GSD)タイプII、ダノン病、グリコーゲン貯蔵障害(GSD)タイプIIb、GSDIII又はGSD3(コリ病又はフォーブス病としても知られる)、GSDIV又はGSD4(アンデルセン病としても知られる)、GSD V又はGSD5(マッカードル病としても知られる)、GSD VII又はGSD7(タルイ病としても知られる)、GSD X又はGSD10、GSD XII又はGSD12(アルドラーゼA欠損としても知られる)、GSD XIII又はGSD13、GSD XV又はGSD15)及びムコ多糖症(例えば、ハンター症候群、サンフィリッポ症候群、ムコ多糖症(MPS)I、MPS II、MPS III、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIIC、MPS IV、MPS VI、MPS VII、MPS IX)を含むリソソーム貯蔵疾患(例えば、ファブリー病);
- ミトコンドリア病(例えば、バルト症候群);
- チャネロパチー(例えば、ブルガダ症候群);
- 代謝異常;
- 筋管ミオパチー(MTM);
- 筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD));
- 筋強直性ジストロフィー;
- 筋強直性筋ジストロフィー(DM);
- 三好型ミオパチー;
- ディスフェリノパシー;
- 神経筋疾患;
- 福山型先天性ジストロフィー;
- 運動ニューロン疾患(MND)(例えば、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、脊髄性筋萎縮症(SMA)又は筋萎縮性側索硬化症(ALS));
- エメリー・ドレイファス筋ジストロフィー症;
- 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD);
- 先天性筋ジストロフィー;
- 先天性ミオパチー;
- 肢帯型筋ジストロフィー(例えば、肢帯型筋ジストロフィー2E型(LGMD2E)、肢帯型筋ジストロフィー2D型(LGMD2D)、肢帯型筋ジストロフィー2C型(LGMD2C)、肢帯型筋ジストロフィー2B型(LGMD2B)、肢帯型筋ジストロフィー2L型(LGMD2L)、肢帯型筋ジストロフィー2A(LGMD2A));
- 代謝性ミオパチー;
- 筋炎症性疾患;
- 筋無力症;
- ミトコンドリアミオパチー;
- イオンチャネルの異常;
- 核エンベロープ疾患;
- 心筋症;
- 心不全;
- 遠位ミオパチー;
- 心肥大;
- 血友病(例えば、血友病A及びB);
- 糖尿病;及び
- 心血管疾患及び心臓疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、冠状動脈疾患、末梢動脈疾患、先天性心疾患、うっ血性心不全、心不全、心筋梗塞(心臓発作としても知られる)、心筋虚血、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、心筋症、肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症、遺伝子変異により引き起こされる原発性心筋症(例えば、ブルガダ症候群、ポンペ病、ダノン病及びファブリー病)、心アミロイドーシス(心硬直症候群としても知られる)、心筋炎(炎症性心筋症としても知られる)、心臓弁膜症、弁狭窄、弁閉鎖不全症、心内膜炎、リウマチ性心疾患、心膜炎(すなわち、心膜の炎症及び/又は感染により引き起こされる疾患)、心タンポナーデ(心膜タンポナーデとしても知られる)、心内膜炎、心臓不整脈、高血圧、低血圧、血管狭窄、弁狭窄、又は再狭窄)。
【0076】
また、多くの神経筋疾患は、横隔膜及び呼吸筋の弱化のため呼吸機能に影響を及ぼす(www.medscape.com/viewarticle/805299_3)Semin Respir Crit Care Med.2002 Jun;23(3):191-200)。横隔膜の疾患の原因は様々であるが、横隔膜の機能に直接影響を与える遺伝子欠損によるものがあり得る。特に、横隔膜の機能に影響を与える遺伝子の変異に起因し、骨格筋及び/又は心臓レベルでの異常と組み合わさった複数の遺伝性疾患が存在する。例えば、筋管ミオパチー(MTM)は、ミオチュブラリン遺伝子の変異に起因し、骨格筋及び横隔膜に影響を及ぼす。MTMに罹患している患者は、代表的には、出生時に、低血圧、全身の筋力低下及び呼吸不全を呈する。生後期間を超える生存には、集中的サポート(しばしば、胃瘻栄養補給及び人工呼吸を含む)が必要である。重篤な呼吸困難のため、MTM患者は、代表的には、2歳を過ぎて生きらない。MTMについては、筋指向性遺伝子治療が、現在唯一の臨床的な選択肢である。或いは、ポンペ病(グリコーゲン貯蔵障害タイプII又はGSD IIとも呼ばれる)は、主に骨格筋、横隔膜及び心臓に影響を及ぼす。GSD IIは、リソソーム酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の欠損を生じ、リソソーム貯蔵欠損に至る。GSDII患者では、グリコーゲンはグルコースに効率的に分解されることができない。GSD II患者におけるグリコーゲンの蓄積は、進行性の筋力低下を伴うミオパシーを引き起こす。最も重篤な形態のGSD IIに罹患している患者は、医学的な介入を受けなければ、生後1年以内に呼吸不全で死亡する。その他の筋肉疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、出生男性約3500人に1人が罹患する。この疾患は横隔膜を含む骨格筋の進行性破壊に至り、罹患したほとんどの人が、30才までに呼吸不全で死亡する。多発性筋炎/皮膚筋炎、遺伝性チャネル障害、ミトコンドリア脳筋症、酸マルターゼ欠損症及び先天性ミオパシー、廃用性萎縮症を含むがこれらに限定されない他の多くのミオパシーも肺機能に影響する。横隔膜を患う他の疾患としては、先天性筋ジストロフィー(CMD)、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、肢帯筋ジストロフィー(LGMD)、筋強直性筋ジストロフィー(DM)、三好型ミオパシー、福山型先天性筋ジストロフィー、ディスフェリノパシー(DFS)を挙げられる。また、多くの神経障害は、横隔膜及び呼吸筋を弱くする。これには、筋萎縮性側索硬化症、ポリオ脊髄炎、ポストポリオ症候群、ケネディ症候群、卒中、多発性硬化症、脊髄性筋萎縮症、脊髄空洞症、神経根症及び運動ニューロン疾患が含まれる。腕神経叢炎及び孤立性片側又は両側横隔膜神経障害も、横隔膜を著しく弱めることがある。呼吸に影響する末梢神経障害は、主に、急性疾患、例えばギラン・バレー症候群、ポルフィリン症及び重症神経障害であるが、慢性疾患、例えば慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)も呼吸不全を起こすことがある。神経筋伝達障害、例えばランバート・イートン症候群及び重症筋無力症は、しばしば呼吸に影響を及ぼす。或いは、横隔膜の機能不全は、解剖学的異常をもたらす先天性欠損(例えば、アーノルド・キアリ奇形)又は後天性欠損(これは、怪我、外傷、感染(例えば、西ナイルウイルス、ボツリヌス菌)、有機リン酸エステルへの曝露、放射線療法、栄養不良、腫瘍の圧迫又は手術の結果として生じる)の結果であり得る。心臓手術で使用される冷温心肺は、横隔神経損傷の別の1つの一般的な原因である。さらに、放射線療法は横隔神経に影響し、横隔膜の機能障害を生じることがある。肺に影響を及ぼす閉塞性気道疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び喘息は、著しい過膨張を生じ、横隔膜の不利益及び弱体化をもたらすことがある。最後に、ループス(狼瘡)及び甲状腺障害も横隔膜の機能障害に寄与することが知られている。
【0077】
実施形態において、本明細書に記載の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、肢帯型筋ジストロフィー、特に肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するものであり、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、プロモーターとβ-サルコグリカン、好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に示される導入遺伝子、好ましくは配列番号19に示されるコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む。
また、本明細書には、本明細書に記載の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物の、肢帯型筋ジストロフィー、特に肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置用医薬の製造のための使用であって、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、プロモーターとβ-サルコグリカン、好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に示される導入遺伝子、好ましくは配列番号19に示されるコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントが開示される。
【0078】
また、本明細書には、対象において、肢帯型筋ジストロフィー、特に肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)を処置する方法であって、以下:
- 対象、特に対象の筋肉組織又は細胞、好ましくは対象の横隔膜、平滑筋、骨格筋及び心臓組織又は細胞、より好ましくは対象の横隔膜、骨格筋及び心臓組織又は細胞に、本明細書に記載の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物を導入すること、ここで、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、プロモーターとβ-サルコグリカン、好ましくはヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む;及び
- 治療有効量のβ-サルコグリカン、好ましくはヒトβ-サルコグリカンを、対象、特に対象の筋肉組織又は細胞、好ましくは対象の横隔膜、骨格筋、平滑筋及び心臓組織又は細胞、より好ましくは対象の横隔膜、骨格筋及び心臓組織又は細胞で発現させること
を含む方法が開示される。
【0079】
特定の実施形態では、本発明は、肢帯型筋ジストロフィー、好ましくは肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するための、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MHCK7プロモーター及びデスミンプロモーターからなる群より選択されるプロモーターと、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、配列番号12に規定されるヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる調節エレメント(Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)を含む核酸発現カセット、前記核酸発現カセットを含むベクター、又は前記核酸発現カセット若しくは前記ベクターを含む医薬組成物に関する。特定の実施形態では、本発明は、肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するための、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MHCK7プロモーター及びデスミンプロモーターからなる群より選択されるプロモーターと、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、配列番号14に記載のヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる調節エレメント(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)を含む核酸発現カセット、前記核酸発現カセットを含むベクター、又は前記核酸発現カセット若しくは前記ベクターを含む医薬組成物に関する。特定の実施形態では、本発明は、肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するための、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MHCK7プロモーター及びデスミンプロモーターからなる群より選択されるプロモーターと、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、配列番号11に規定されるヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる調節エレメント(Dph-CRE02 - Dph-CRE06 - CSk-SH5)を含む核酸発現カセット、前記核酸発現カセットを含むベクター、又は前記核酸発現カセット若しくは前記ベクターを含む医薬組成物に関する。特定の実施形態では、本発明は、肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するための、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MHCK7プロモーター及びデスミンプロモーターからなる群より選択されるプロモーターと、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、配列番号13に記載されるヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる調節エレメント(Dph-CRE06 - Dph-CRE04 - CSk-SH5)を含む核酸発現カセット、前記核酸発現カセットを含むベクター、又は前記核酸発現カセット若しくは前記ベクターを含む医薬組成物に関する。特定の実施形態では、本発明は、肢帯型筋ジストロフィー、好ましくは肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するための、プロモーター、好ましくはSPc5-12プロモーター、MHCK7プロモーター及びデスミンプロモーターからなる群より選択されるプロモーターと、ヒトβ-サルコグリカンをコードする導入遺伝子(例えば、配列番号18に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号19に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、配列番号10に規定されるヌクレオチド配列から本質的になるか又は該配列からなる調節エレメント(Dph-CRE02 - Dph-CRE04 - CSk-SH5)を含む核酸発現カセット、前記核酸発現カセットを含むベクター、又は前記核酸発現カセット若しくは前記ベクターを含む医薬組成物に関する。
【0080】
本明細書に開示される、肢帯型筋ジストロフィー、好ましくは肢帯型筋ジストロフィータイプ2E(LGMD2E)の処置に使用するための核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物のさらなる実施形態では、導入遺伝子がコドン最適化されている。実施形態では、核酸発現カセットは、MVMイントロンをさらに含む。実施形態では、核酸発現カセットは、ポリアデニル化シグナル、好ましくは配列番号17により規定されるポリアデニル化シグナルをさらに含む。
また、本明細書には、プロモーターと酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、好ましくはヒト酸性α-グルコシダーゼ(hGAA)をコードする導入遺伝子(例えば、配列番号58に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号59に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む、ポンペ病の処置に用いるための本明細書に記載の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物も開示される。
また、本明細書には、プロモーターと酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、好ましくはヒト酸性α-グルコシダーゼ(hGAA)をコードする導入遺伝子(例えば、配列番号58に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号59に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む本明細書に開示される核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物の、ポンペ病の処置用医薬の製造のための使用も開示される。
【0081】
また、本明細書には、以下:
- 対象、特に対象の筋肉組織又は細胞、好ましくは対象の横隔膜、骨格筋、平滑筋及び心臓組織又は細胞、より好ましくは対象の横隔膜、骨格筋及び心臓組織又は細胞に、本明細書に記載の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物を導入すること、ここで、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、プロモーターと酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、好ましくはヒト酸性α-グルコシダーゼ(hGAA)をコードする導入遺伝子(例えば、配列番号58に記載の導入遺伝子、好ましくは配列番号59に記載のコドン最適化導入遺伝子)とに作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む;及び
- 治療有効量のGAA、好ましくはhGAAを、対象、特に対象の筋肉組織又は細胞、好ましくは対象の横隔膜、骨格筋、平滑筋及び心臓組織又は細胞、より好ましくは対象の横隔膜、骨格筋及び心臓組織又は細胞で発現させること
を含む、対象におけるポンペ病を処置するための方法も開示される。
【0082】
遺伝子治療プロトコルは、当該分野で広範に記載されている。これには、プラスミド(裸のもの又はリポソーム中のもの)の筋肉内注射、筋肉を含む様々な組織への流体力学的遺伝子送達、間質注射、気道への点滴、内皮への適用、肝実質内、静脈内又は動脈内投与などが挙げられるが、これらに限定されない。DNAの標的細胞への到達率を高めるために、さまざまなデバイスが開発されている。単純な方法は、DNAを含むカテーテル又は埋込み可能材料を標的細胞に物理的に接触させることである。また、別のアプローチは、注射針を使わず、高圧下で液柱を標的組織中に直接噴射するジェット注入デバイスを利用することである。これら送達の実例は、ベクター送達にも利用することができる。標的化遺伝子送達の別のアプローチは、核酸の細胞への特異的ターゲティングのために核酸又はDNA結合性物質を結合させたタンパク質又は合成リガンドからなる分子コンジュゲートの使用である(Cristianoら、1993)。
本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物は、ワクチンとして使用するためのもの、より詳細には予防ワクチンとして使用するためのものであってもよい。
【0083】
また、本明細書には、ワクチンの製造、特に予防ワクチンの製造のための、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物の使用も開示される。
また、本明細書には、必要とする対象者へのワクチン接種、特に予防ワクチン接種の方法であって、以下:
- 対象、特に対象の筋肉、より詳細には対象の横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋組織又は細胞、さらに詳細には対象の横隔膜、心臓及び/又は骨格筋組織又は細胞に、本明細書に記載の核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物を導入すること、ここで、核酸発現カセット、ベクター又は医薬組成物はプロモータと導入遺伝子とに作動可能に連結された本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む;及びかつ
- 免疫学的有効量の導入遺伝子産物を、対象、特に対象の筋肉、より詳細には対象の横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋組織又は細胞、さらに詳細には対象の横隔膜、心臓及び/又は骨格筋細胞又は組織で発現させること
を含む方法が開示される。
【0084】
本明細書で用いられる「処置を必要とする対象」などの句には、言及された疾患又は障害の処置から利益を得られる対象が含まれる。このような対象としては、限定されないが、前記疾患又は障害と診断された者、前記疾患又は障害に罹患又は発症しやすい者及び/又は前記疾患又は障害を予防すべき者が含まれ得る。
用語「対象(者)」及び「患者」は本明細書において交換可能に用いられ、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類を指し、具体的には、ヒト患者及び非ヒト哺乳動物が含まれる。「哺乳動物」の対象(者)には、ヒト、家畜動物、商業動物、農畜産業動物、動物園動物、スポーツ動物、ペット及び実験動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ;霊長類動物、例えば、類人猿(apes)、サル(monkeys)、オランウータン及びチンパンジー;イヌ科動物、例えばイヌ及びオオカミ;ネコ科動物、例えばネコ、ライオン及びトラ;ウマ科動、例えばウマ、ロバ及びシマウマ;食用動物、例えばウシ、ブタ及びヒツジ;偶蹄類動物、例えばシカ及びキリン;げっ歯類動物、例えばマウス、ラット、ハムスター及びモルモットなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい患者又は対象者は、ヒト対象である。
【0085】
本明細書で用いる「治療量」又は「治療有効量」とは、対象における疾患又は障害を処置するため、すなわち所望の局所又は全身効果を得るために有効な遺伝子産物の量をいう。したがって、この用語は、研究者、獣医師、医師その他の臨床医が求める、組織、系、動物又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応を誘発する遺伝子産物の量を指す。このような量は、代表的には、遺伝子産物及び疾患の重症度に依存するが、おそらくは日常的な実験を通じて、当業者が決定することができる。
本明細書で用いる「免疫学的有効量」とは、(導入)遺伝子がコードする免疫原へのその後の曝露に対する対象者の免疫応答を増強するに有効な(導入)遺伝子産物の量をいう。誘導された免疫のレベルは、例えば、分泌性中和抗体及び/又は血清抗体の量を、例えば、プラーク中和、補体固定、酵素結合免疫吸着又はマイクロ中和アッセイにより測定することによって決定することができる。
【0086】
代表的には、本明細書に記載の(すなわち、少なくとも1つの筋肉特異的核酸調節エレメントを有する)発現カセット又はベクターを使用する場合に発現する(導入)遺伝子産物の量は、核酸調節エレメントを侑なさい同一の発現カセット又はベクターを使用する場合より多い。より詳細には、その発現は、核酸調節エレメントを含まない同じ核酸発現カセット又はベクターと比較して、少なくとも2倍高く、少なくとも5倍高く、少なくとも10倍高く、少なくとも20倍高く、少なくとも30倍高く、少なくとも40倍高く、少なくとも50倍高く、又は少なくとも60倍若しくはそれ以上に高い。さらに、このよい高い発現は、筋肉、特に横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋の組織又は細胞、より詳細には横隔膜、心臓及び骨格筋の組織又は細胞に特異的であるままである。さらに、本明細書に記載の発現カセット及びベクターは、治療量の遺伝子産物の長期間にわたる発現を導く。代表的には、治療的発現は、少なくとも20日、少なくとも50日、少なくとも100日、少なくとも200日、又は少なくとも300日以上、例えば少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも5年、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年又は少なくとも10年以上持続するように想定される。遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)の発現は、任意の当該分野で認識される手段によって、例えば抗体ベースのアッセイ、例えばウェスタンブロット又はELISAアッセイによって、例えば遺伝子産物の治療的発現が達成されているかどうかを評価するために、測定され得る。また、遺伝子産物の発現は、遺伝子産物の酵素活性又は生物活性を検出するバイオアッセイで測定することもできる。
【0087】
また、本明細書には、本明細書に開示される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、又はベクターの、筋肉細胞、好ましくは横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋細胞、より好ましくは横隔膜、心臓及び/又は骨格筋細胞をトランスフェクト又は形質導入するための使用も開示される。
さらに、プロモータと導入遺伝子とに作動可能に連結された本明細書に開示の核酸調節エレメントを含む本明細書に開示の核酸発現カセット又はベクターの、筋肉細胞、好ましくは横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋細胞、より好ましくは横隔膜、心臓及び/又は骨格筋細胞において導入遺伝子産物を発現させるための使用も本明細書で開示される。
【0088】
さらに、筋肉細胞、好ましくは横隔膜、平滑筋、心臓及び/又は骨格筋細胞、より好ましくは横隔膜、心臓及び/又は骨格筋細胞において導入遺伝子産物を発現させるための方法であって、以下:
- プロモーターと導入遺伝子とに作動可能に連結された本明細書に開示の核酸調節エレメントを含む本明細書に開示の核酸発現カセット又はベクターで筋肉細胞をトランスフェクト又は形質導入すること;及び
- 導入遺伝子産物を筋肉細胞で発現させること
を含む方法も本明細書で開示される。
【0089】
筋肉細胞の非ウイルス性トランスフェクション又はウイルスベクター媒介形質導入は、インビトロ、エクスビボ又はインビボ手順で行うことができる。インビトロアプローチは、筋肉細胞、例えば対象者から予め採取した筋肉細胞、筋肉細胞株又は例えば人工多能性幹細胞又は胚細胞から分化させた筋肉細胞のインビトロトランスフェクション又は形質導入を必要とする。エクスビボアプローチは、対象者から筋細胞を採取すること、インビトロトランスフェクション又は形質導入、場合により、トランスフェクションした筋細胞を対象者に再導入することを必要とする。インビボアプローチは、本明細書に開示された核酸発現カセット又はベクターの対象者への投与を必要とする。好ましい実施形態において、筋肉細胞のトランスフェクションは、インビトロ又はエクスビボで行われる。
当業者は、本明細書に開示された核酸調節エレメント、核酸発現カセット及びベクターの使用が、遺伝子治療以外の意義、例えば幹細胞の横隔膜、平滑筋、心臓及び骨格筋細胞への誘導分化、筋肉細胞又は組織、例えば横隔膜、平滑筋心臓及び/又は骨格筋細胞及び/又は組織におけるタンパク質の過発現のためのトランスジェニックモデルを有すると理解する。
本発明を、下記の非限定的な実施例により更に説明する。
【実施例
【0090】
実施例
実施例1:デノボで計算により設計された調節因子(CRE)を含む新規AAVベクターの設計及び構築
AAV9ベクターは、ヒトサルコグリカンをコードするコドン最適化導入遺伝子を発現するように設計された。β-サルコグリカン(hβ-sgco又はhβsgco)(配列番号19)若しくは野生型hβ-sg(wt)遺伝子(配列番号18)、又はルシフェラーゼレポーター遺伝子(Luc)(配列番号20)を、CREエレメント(の組合せ)と組み合わせた合成SPc5-12プロモーター(配列番号15)から発現するように設計された。個々のCREエレメントは、横隔膜及び骨格筋(本明細書ではDph-CREと表記)又は心臓及び骨格筋(本明細書ではCSk-CRE又はCSk-SHと表記)における高い導入遺伝子発現を媒介することが知られている。ベクターはまた、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン(配列番号16)及び合成ポリアデニル化部位(pA)(配列番号17)を含んでいた。
CREエレメントを持たないAAVベクターをコントロールとして構築した(本明細書ではAAV-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA及びAAV-SPc5-12-MVM-hβsg-pAと呼ぶ)。
【0091】
図2は、設計及び構築された異なるAAVベクターを示す。ベクターは従来のクローニングにより構築された。
簡単には、野生型ヒトβ-サルコグリカン遺伝子(hβsg)(配列番号18)、コドン最適化hβsgco遺伝子(配列番号19)又はルシフェラーゼをコードするレポーター遺伝子(配列番号20)(全て5'及び3'末端部のHind III及びBstBI制限部位で挟まれている)を、SPc5-12プロモーターの下流にクローニングした。該プロモーターは調節エレメントCSk-SH5(配列番号1)と作動可能に連結された。ヒトβ-サルコグリカン遺伝子(hβsg)は、Gene optimizer(GeneArt, Life technologies, Germany)を用いてコドン最適化した。
SPc5-12プロモーター(配列番号15)に作動可能に連結されたCSk-SH5調節エレメント(配列番号1)を、一本鎖アデノ随伴ウイルスベクター(AAVss)骨格に関してMVMイントロン(配列番号16)の上流にクローニングした。このベクターはまた、49bpの合成ポリアデニル化部位(Levitt Nら,1989)(配列番号17)を含んでいた。
【0092】
図2Aに示すベクター(AAV-CSk-SH5-SPc5-12-MMV-h)、図2Bに示すベクター(AAV-CSk-SH5-SPc5-12-MMV-hβsgco-pA)及び図2A1に示すベクター(AAV-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA)を、異なるDph-CREをクローニングするための骨格として利用した。
1、2又は3つの横隔膜CRE(Dph-CRE)を、CSk-SH5 CREの上流にクローニングして、hβsgco遺伝子を発現する構築物を作製した(1つのCRE:図2C(AAV-CRE02-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA)、図2D(AAV-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA)、図2E(AAV-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA);2つのCRE:図2F(AAV-CRE02-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA)、図2H(AAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA)、図2J(AAV-CRE06-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA)、図2L(AAV-CRE02-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA);及び3つのCRE:図2N(AAV-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA))。
同様に、2又は3つの横隔膜CREを、CSk-SH5 CREの上流にクローニングして、野生型hβsg遺伝子を発現する構築物を作製した(2つのCRE:図2G(AAV-CRE02-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsg-pA)、図2I(AAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsg-pA)、図2K(AAV-CRE06-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsg-pA)、図2M(AAV-CRE02-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsg-pA);及び3つのCRE:図2O(AAV-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβsg-pA))。
【0093】
さらに、1、2又は3つの横隔膜CREを、CSk-SH5 CREの上流にクローニングし、Lucレポーター遺伝子を発現する構築物を作製した(1つのCRE:図2R(AAV-CRE02-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA)、図2Q(AAV-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA)、図2P(AAV-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA);2つのCRE:図2S(AAV-CRE06-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA、図2T(AAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA)、図2T(AAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MM-Luc-pA)、図2U(AAV-CRE02-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA)、図2V(AAV-CRE02-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA);及び3つのCRE:図2W(AAV-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA))。
最後に、CREを含まない3つのコントロールベクター、すなわち、AAV-SPc5-12-MVM-hβsgco-pA(図2Y)、AAV-SPc5-12-MVM-hβsg-pA(図2X)及びAAV-SPc5-12-MVM-Luc-pA(図2Z)を作製した。
【0094】
実施例2:レポーター遺伝子を介した調節エレメントのインビボ検証
どのCRE組合せが最も強力かを評価するため、異なるCREの組合せを含み、Spc5-12プロモーターからルシフェラーゼ遺伝子(Luc)を発現するAAVベクターを、比較分析のためにCB17-SCIDマウスに注射した。異なるCREの組合せを、ルシフェラーゼ遺伝子発現を増強する能力について試験した。より詳細には、以下のベクターを注射した:
AAV-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2Z、配列番号46)
AAV- CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2A1、配列番号47)
AAV-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2P、配列番号36)
AAV-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2Q、配列番号37)
AAV-CRE02-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2R、配列番号38)
AAV-CRE06-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2S、配列番号39)
AAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2T、配列番号40)
AAV-CRE02-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2U、配列番号41)
AAV-CRE02-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2V、配列番号42)
AAV-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-Luc-pA (図2W、配列番号43)。
【0095】
実験手順
AAVベクターの作製及び精製
AAV9ベクターは、Vandendriesscheら(2007. J Thromb Haemost 5:16-24;これは特に参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、目的のpAAVプラスミド、アデノウイルスヘルパープラスミド、及びAAV2 rep遺伝子をAAV9 cap遺伝子と共に送達するキメラパッキング構築物での、293Tヒト胎児腎細胞のリン酸カルシウム(Invitrogen Corp, Carlsbad, CA)同時トランスフェクションにより製造した。
簡単には、トランスフェクションの2日後に、細胞を採取し、ベクター粒子を、等密度遠心分離法を用いて精製した。収集した細胞を、凍結/融解の連続サイクル及び超音波処理により溶解させ、ベンゾナーゼ(Novagen, Madison,WI)及びデオキシコール酸(Sigma-Aldrich, St.Louis, MO)で処理し、続いて3回連続の塩化セシウム(Invitrogen Corp, Carlsbad, CA)密度勾配超遠心に供した。AAVベクターを含む画分を回収し、ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(Gibco、BRL)中の1mM MgCl2中で濃縮し、-80℃で保存した。
ベクター力価(単位:ウイルスゲノム(vg)/ml)を、ABI 7500 Real-Time PCR System(Applied Biosystem, Foster city, CA, USA)で、SYBR Green mix(SYBR Green色素、Taqmanポリメラーゼ、ROX、dNTPを一体として含む)及びルシフェラーゼ特異プライマーを用いる定量リアルタイムPCRによって測定した。用いたフォワード及びリバースプライマーは、それぞれ、5’-CCCACCGTCGTATTCGTGAG-3’(配列番号8)及び5’-TCAGGGCGATGGTTTTGTCCC-3’(配列番号49)であった。
適切なcDNAを有する、対応するAAVベクターを作製するために用いたそれぞれのベクタープラスミドを既知のコピー数(102~107)で使用して、標準曲線を作成した。
【0096】
動物実験
4~5週齢のCB17-SCID成体マウスに、1011vg/マウスの用量で静脈内注射した。ルシフェラーゼ活性は、注射後7日後又は10日後に、全身生物発光分析(BLI)により評価した。注入の15週後に、コホートあたり1匹のマウスを犠牲にし、個別臓器のBLIを行い、各臓器中のルシフェラーゼ発現レベルを定量した。図3は、試験した構築物の腓腹筋及び大腿四頭筋におけるルシフェラーゼ発現の倍差を示す。
【0097】
結果
全身生物発光分析により、CSk-Sh5-CREの組合せ、及び二重Dph-CRE組合せCRE02及びCRE04、CRE04及びCRE06(任意の順序)、及びCRE02及びCRE06、又は三重Dph-CRE組合せCRE02、CRE04及びCRE06は、CREを有さないコントロールSpc5-12プロモーターと比較して、ルシフェラーゼ発現の予想外で不均衡な増加をもたらすことがわかった(データは示さず)。CREエレメントの組合せは、個々のCREエレメントと比較して、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現をより高いレベルに増加させた。また、注射したマウスの腓腹筋及び大腿四頭筋を、安楽死後に切り出し、BLIを用いて生物発光活性を調べた。これら結果は、CSk-SH5-CREと1つのDph-CRE(すなわちCRE-02)、2つのDph-CRE(すなわちCRE-02+CRE-04)又は3つのDph-CRE(すなわちCRE-02+CRE-04+CRE-06)とを組み合わせると予想外に増加する全身BLIの結果を確証した(図3)。
【0098】
実施例3:治療用導入遺伝子を介した調節エレメントのインビボ検証
どのCRE組合せが最も強力かを決定するために、異なるCREの組合せを含むAAVベクターを、比較分析のためにCB17-SCIDマウスに注射した。異なるCRE組合せを、コドン最適化されたhβsg遺伝子発現について評価した。より詳細には、以下のベクターを注射した:
AAV-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA(図2A、配列番号21)
AAV-CRE02-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA(図2C、配列番号23)
AAV-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA (図2D、配列番号24)
AAV-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA (図2E、配列番号25)
AAV-CRE02-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA (図2F、配列番号26)
AAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA (図2H、配列番号28)
AAV-CRE06-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA (図2J、配列番号30)
AAV-CRE02-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA (図2L、配列番号32)。
【0099】
実験手順
AAVベクターの作製及び精製
AAVベクターの作製及び精製は、実施例2に記載したように行った。定量的リアルタイムPCRによるベクター力価の測定に用いたフォワード及びリバースプライマーは、それぞれ5’- AGGGATGGTTGGTTGGTGG-3’(配列番号50)及び5’- GGCAGGTGCTCCAGGTAAT -3’(配列番号51)であった。
【0100】
動物実験
4~5週齢のCB17-SCID成体マウスに、3×1011vg/マウスの用量で静脈内注射した。1コーホートあたり2~3匹のマウスに注射した。注射の26日後に、1コホートあたり1匹のマウスを犠牲にし、犠牲にしたマウスから種々の臓器を単離した(筋肉、例えば大腿四頭筋、腓腹筋、脛骨筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋、横隔膜、心臓並びに非筋肉臓器、例えば肝臓、腎臓、脳、脾臓の単離)。Q-RT-PCRを実施し、hβsgco遺伝子発現を定量した。
【0101】
mRNAの解析
トータルRNAを、製造者(Invitrogen Corp, Carlsbad, CA, USA)の指示に従い、シリカ膜ベースの精製キットにより、マウスの異なる臓器から抽出した。続いて、各サンプルの200ngのトータルRNAを、cDNA合成キット(Invitrogen Corp, Carlsbad, CA, USA)を用いて逆転写(RT)に供した。次に、ABI 7700(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)において、フォワードプライマーとして5’-CATCACAAGTGACATCGGCA-3’(配列番号52)、リバースプライマーとして5’-TGGCAGCCCATGTTCTGGC-3’(配列番号53)を用いて(アンプリコン217bp)、トータルRNA 10ngに相当するcDNA量を、定量(q)PCRにより増幅した。hβsgco mRNAレベルは、内因性マウスグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(mGAPDH)遺伝子のmRNAレベルに対して規格化した。フォワードプライマーとして5’- TGTGTCCGTCGTGGATCTGA-3’(配列番号54)を用い、リバースプライマーとして5’- GCCTGCTTCACCACCTTCTTGA-3’(配列番号55)を用いた(アンプリコン82bp)。RNAサンプルは、逆転写酵素を用いて増幅され、DNA増幅を除外するためには逆転写酵素を用いないで増幅された。増幅されたPCRフラグメントのサイズを、1.8%アガロースゲルで確認した。
【0102】
結果
CSk-SH5-CREと二重Dph-CRE組合せCRE02及びCRE04、CRE04及びCRE06(任意の順序)並びにCRE02及びCRE06又は三重Dph-CRE合せCRE02とCRE04とCRE06との組合せは、CSk-SH5-CRE単独又はCSk-SH5-CREと単一Dph-CREとの組合せと比較して、hβsgco遺伝子発現の予期せぬ不均衡な増加をもたらした(図4)。ある種のCREの組合せは、hβsgco遺伝子発現の増強に関して、他の組合せより強力であった。
【0103】
実施例4:治療用導入遺伝子を介した調節エレメントのインビボ検証
どのCRE組合せが最も強力であるかを決定するために、異なるCRE組合せを含むAAVベクターを、hβsgco遺伝子発現の比較分析のためにCB17-SCIDマウスに注射した。以下のベクターを注射した。
-AAV-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA(図2Y、配列番号45)(SPc5-12)
-AAV-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA(図2A、配列番号21)(CSkSH5-SPc5-12)
-AAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA(図2H、配列番号28)(Dph-CRE04-Dph-CRE06-CSkSH5-SpC5-12)
-AAV-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA(図2N、配列番号34)(Dph-CRE02-Dph-CRE04-Dph-CRE06-CSkSH5-SpC5-12)
【0104】
実験手順
実験手順は実施例3に記載したものと同様であるが、動物研究設計に幾らかの変更を加えた。簡単には、4~5週齢の成体CB17-SCIDマウスに、3×1011vg/マウスの用量で静脈内注射した。1コーホートあたり4~5匹のマウスに注射した。注射の2ヶ月後に、コホート当たり1匹のマウスを犠牲にし、犠牲にしたマウスから様々な臓器を分離した(筋肉、例えば大腿四頭筋、腓腹筋、脛骨筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋、横隔膜、心臓、並びに非筋肉臓器、例えば、肝臓、腎臓、脳、脾臓の分離)。Q-RT-PCRを実施し、hβsgco遺伝子発現を定量した。
【0105】
結果
表2~4は、試験したベクターの腓腹筋、大腿四頭筋及び心臓におけるhβSGco発現を互いに比較して示す。相対的なhβSGcoの発現を倍差で示す。
【0106】
【表2】
【表3】
【表4】
【0107】
図5及び表2~4に示す結果は、ベクターがCREを含んでいれば、コントロールベクター(CREを含まない;図5及び表1~3でSPc5-12と示す)と比較して、hβsgco遺伝子の骨格筋又は心臓特異的mRNA発現が顕著に増加することを示す。最も重要なことは、CSk-SH5-CREと二重Dph-CRE組合せCRE04及びCRE06又は三重Dph-CRE組合せCRE02とCRE04とCRE06との組合せが、βsgco mRNAの発現レベルを、CREを含まないコントロールSpc5-12プロモーターと比較して、骨格筋及び心臓においてそれぞれ約100倍まで及び約30倍まで予想外で不均衡に増加させたことである。
【0108】
実施例5:導入遺伝子のコドン最適化の効果のインビボ評価
hβsg遺伝子のコドン最適化が非コドン最適化遺伝子と比較してhβsgタンパク質レベルを更に増加させ得るかを決定するため、遺伝子を含む3組のAAVベクターを並べ、コドン最適化遺伝子又は野生型hβsg遺伝子を含む3対のAAVベクターを並べて比較した。3対のベクターは以下の通りである:
i) pAAV-SPc5-12-MVM-hβ-SGwt-SynthpA(図2X、配列番号44)対pAAV-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-SynthpA(図2Y;配列番号45)
ii) pAAV-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGwt-SynthpA(図2B、配列番号22)対pAAV-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-SynthpA(図2A、配列番号21)
iii) pAAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGwt-SynthpA(図2H、配列番号28)対pAAV-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-SynthpA(図2I、配列番号29)
【0109】
これらAAVベクターは、実施例3に記載されるように製造され、力価決定され、4~5週齢の雄CB17マウスに注射される。各マウスに3×1011vgの用量で注射する;1コーホートあたり4~5匹のマウスに注射する。注射の2ヶ月後に、マウスを犠牲にし、犠牲にしたマウスから種々の臓器を単離する(筋肉、例えば大腿四頭筋、腓腹筋、脛骨筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋、横隔膜、心臓、並びに非筋肉組織、例えば肝臓、腎臓、脳、脾臓の単離)。ウェスタンブロットを、wt又はコドン最適化hβsg遺伝子をコードするAAVベクターを注射したマウスの種々の単離組織で行った。
【0110】
実施例6:SGCBヌルマウスにおける調節エレメントのインビボ評価
CRE組合せDph-CRE02-Dph-CRE04-Dph-CRE06-CSkSH5(配列番号14)の治療効果を、ホモ接合型サルコグリカン、ベータ(ジストロフィン関連糖タンパク質)(Sgcb)標的化変異マウスにおいて、β-サルコグリカンをコードする導入遺伝子を含むベクターを用いる遺伝子治療により評価した。β-サルコグリカンをノックアウトしたSgcbヌルマウスは、タイプ2Eのヒト肢帯型筋ジストロフィーと同様の重篤な筋ジストロフィーを発症する。
コホート当たり3匹の2~3日齢の新生仔Sgcbヌル雄マウスに、実験ベクターAAV-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA(図2N、配列番号34)又はCREを欠いたコントロールベクターAAV-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pA(図2Y、配列番号45)を1×1011vgのベクター用量で注射した。
【0111】
ベクター注入の6ヶ月後に、マウスを、トレッドミル持久力アッセイに供して、筋肉パフォーマンスをモニターした。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を注射したSgcbヌルマウスを、遺伝子治療により処置しないコントロールとして用いた。走行距離は、Bioseb社(フランス)のトレッドミルを用いてTREAD SOFTWAREを使用して測定した。結果を図6に示す。
実験ベクターAAV-CRE02-CRE04-CRE06-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pAを注射したマウスは、CREを含まないコントロールベクター(AAV-SPc5-12-MVM-hβ-SGco-pAと表記する)を注射したマウス(平均距離148m)に比べてより長い距離(平均距離364m)走った。また、実験ベクターを注射したマウスは、PBSを注射したコントロールマウス(平均距離71m)より5倍長い距離を走った。
これら結果から、遺伝子治療がSgcbヌルマウスで効果的であったこと、及びCREの組合せが治療効力を増大させたことを示す。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
【配列表】
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【国際調査報告】