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特表2023-515446スプライン加工された部品の形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】スプライン加工された部品の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 53/28 20060101AFI20230406BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20230406BHJP
   B21K 1/30 20060101ALI20230406BHJP
   F16D 13/60 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B21D53/28
B21D22/20 B
B21K1/30 Z
F16D13/60 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549549
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 CA2021050170
(87)【国際公開番号】W WO2021163792
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/978,096
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509263881
【氏名又は名称】マグナ パワートレイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファーレ,ハロルド
(72)【発明者】
【氏名】セカロブ,サソ
【テーマコード(参考)】
3J056
4E087
4E137
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056BA03
3J056BE09
3J056BE30
3J056CB05
3J056EA05
3J056EA23
3J056FA03
4E087AA10
4E087CA17
4E087DB02
4E087EA11
4E087EC11
4E087HA38
4E087HA81
4E087HB02
4E137AA01
4E137AA17
4E137BA01
4E137BA05
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA09
4E137CA24
4E137DA11
4E137EA02
4E137GA02
4E137GA15
4E137GB01
(57)【要約】
トルク伝達部品の新規の製造方法を提供する。上記方法は、複数のステーションを有するトランスファープレスに平坦なブランクを提供することと、複数のプレス作業を行うこととを含み、平坦なブランクはカップ形状に成形され、カップ形状の上に粗いスプラインが形成され、粗いスプラインがさらに加工されて滑らかなスプラインを規定する。上記部品は、トランスファープレスのパンチによって規定される連続した滑らかな内径と、トランスファープレスのダイスによって規定される複数の滑らかなスプラインとを含む。スプラインの小径は、スプラインを成形するために機械加工されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプライン加工された環状部品であって、
径方向のフランジセグメントと、
前記径方向のフランジセグメントと一体的に形成された、軸方向に延びるハブセグメントと、
前記ハブセグメントの径方向外面に形成された複数のスプラインとを備え、前記スプラインは大外径および小外径を含み、前記環状部品はさらに、
前記ハブセグメントの径方向内面に形成された連続した内径を備え、
前記小外径は滑らかであり、機械加工なしで形成され、
前記内径は滑らかであり、機械加工なしで形成される、環状部品。
【請求項2】
前記ハブ部は、前記ハブ部の周囲において変化する径方向厚みを有し、前記内径と前記小径との間に測定される第1の径方向厚みは、前記内径と前記外径との間に測定される第2の径方向厚みよりも小さい、請求項1に記載の環状部品。
【請求項3】
前記フランジセグメントと前記ハブセグメントとの交差部に配置された面取り部をさらに備え、前記面取り部は機械加工なしで形成される、請求項1に記載の環状部品。
【請求項4】
前記面取り部は、外向きの凹形状および内向きの凸形状を有する、請求項3に記載の環状部品。
【請求項5】
前記小径および前記大径は鏡面仕上げを含む、請求項1に記載の環状部品。
【請求項6】
前記部品は、ステアリン酸ナトリウム石鹸コーティングが塗布されたブランクから形成される、請求項1に記載の環状部品。
【請求項7】
前記部品はトランスファープレスで形成される、請求項1に記載の環状部品。
【請求項8】
前記フランジセグメント、ハブセグメント、およびスプラインは、共通のブランクからプレス加工され成形される、請求項1に記載の環状部品。
【請求項9】
前記内径は、前記小径と周方向に位置合わせされた、垂直に延びるウィットネスマークを含む、請求項1に記載の環状部品。
【請求項10】
トルク伝達部品の製造方法であって、前記方法は、
第1のステーション、第2のステーション、第3のステーションおよび第4のステーションを有するトランスファープレスに平坦形状を有する平坦なブランクを提供するステップを備え、前記第1、第2、第3および第4のステーションは、第1、第2、第3および第4のダイスと第1、第2、第3および第4のパンチとをそれぞれ含み、前記方法はさらに、
前記トランスファープレスの前記第1のステーションにおいて、前記第1のダイスと前記第1のパンチとの間で前記ブランクをプレス加工し、径方向のフランジセグメントと軸方向のハブセグメントとを有する未完成部品を形成するステップを備え、前記未完成部品は第1のカップ形状のプリフォームの形態であり、前記方法はさらに、
前記第1のプリフォームを前記第2のステーションに搬送し、前記第2のダイスと前記第2のパンチとの間で前記第1のプリフォームをプレス加工し、前記フランジセグメントと前記ハブセグメントとの間に配置された面取り部を有する前記未完成部品の第2のプリフォームを規定するステップと、
前記第2のプリフォームを前記第3のステーションに搬送し、前記第3のダイスと前記第3のパンチとの間で前記第2のプリフォームをプレス加工し、前記ハブセグメントから径方向外向きに延びる複数の粗いスプラインを有する前記未完成部品の粗いスプライン加工されたプリフォームを規定するステップと、
前記粗いスプライン加工されたプリフォームを前記第4のステーションに搬送し、前記第4のダイスと前記第4のパンチとの間で前記粗いスプライン加工されたプリフォームをプレス加工し、最終的な径方向のフランジセグメントと最終的な軸方向のハブセグメントとを有する滑らかなスプライン加工された部品を規定するステップとを備え、
前記滑らかなスプライン加工された部品は、前記最終的な軸方向のハブセグメントに沿って、一定の内径と、滑らかな小外径と、滑らかな大外径とを含む、方法。
【請求項11】
前記第1、第2、第3および第4のパンチは減少する外径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1、第2、第3および第4のステーションにおいて加えられる圧力は異なる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第3および第4のダイスは、前記スプラインを成形するようにサイズ決めされ構成された、垂直に延びる突起部を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第3のステーションにおいて、前記ハブセグメントは前記プレス加工に応答して軸方向に伸長する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のダイスおよび前記第1のパンチは、前記フランジセグメントから前記ハブセグメントに移行する位置に空隙を規定する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のダイスは、前記面取り部を成形するための支持部を前記移行する位置に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第3のステーションは、前記第3のパンチを取囲むカウンタープレッシャースリーブを含み、前記方法は、前記カウンタープレッシャースリーブを前記ハブセグメントの上方に保持することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記粗いスプラインの材料を前記第4のダイスによって規定される空間に押込むことをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記スプラインの前記小径に対して機械加工作業は行われない、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記滑らかなスプライン加工された部品の上端をトリミングすることをさらに備える、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT国際特許出願は、2020年2月18日に先に出願された米国仮特許出願番号第62/978,096号の利益を主張し、その全内容を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
分野
本開示は、概して、スプライン加工された部品の新規の製造方法、およびこの新規の方法に従って製造されるスプライン加工された部品に関する。より具体的には、本開示は、絞り成形加工、ローラダイススプライン成形加工、およびコイニング作業を用いて製造される部品に関し、これらの加工および作業はすべて、トランスファープレス装置に順次提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景
この節では、必ずしも先行技術であるとは限らない本開示に関連する背景情報を提供する。
【0004】
たとえば、自動変速機、トルクカップリング、動力取出装置およびトランスファーケースなど、自動車用途で使用されるタイプの動力伝達装置は、通常、動力作動式の多板クラッチアセンブリを搭載している。典型的に、多板クラッチアセンブリは、入力部品によって駆動される第1のクラッチ数(クラッチハブなど)と、出力部品を駆動する第2のクラッチ部材(クラッチドラムなど)と、それらの間に配置された多板クラッチパックと、クラッチパックに係合してクラッチハブからクラッチドラムに駆動トルクを伝達するための動力式クラッチアクチュエータとを含む。クラッチドラムおよびクラッチハブは、典型的に、クラッチパックのクラッチプレートに形成された対応するクラッチ歯に係合して噛み合うように構成されたトルク伝達スプライン歯を有する環状部品である。
【0005】
必要な高強度およびトルク伝達特性を維持しながらこのようなクラッチ部材の質量を低減するために、多くの現代のクラッチハブおよびドラム(以下「環状クラッチ部品」と総称される)は、さまざまな金属成形および金属切削加工の組合せを用いてシートメタルブランクから形成される。現在の環状クラッチ部品の大量生産プロセスの非限定的な例として、Grobスプライン加工およびフローフォーミング加工がある。
【0006】
形成されるこれらのシートメタルクラッチ部品の設計に起因して、現在利用可能な加工はいくつかの既知の欠点も有する。具体的には、環状クラッチ部品はまず、径方向のプレートセグメントと軸方向に延びるハブセグメントとを有するカップ形状の部品に絞り加工されるスチールブランクから形成される。カップ形状の部品はその後、マンドレル上で成形されて、Grobスプライン加工によってハブセグメントにスプライン形状が作成される。平坦なフランジセグメントから外径へのスプライン形状の開始は、大きい半径が大ODにあり、小さい半径が小ODにある半径の形態である。典型的に、環状クラッチ部品は、スプラインを成形した後、別のトルク伝達部品の後続の溶接または接合を可能にするように構成された装着セグメントをプレートセグメント上に形成するために追加の金属切削加工または機械加工が必要である。環状クラッチ部品のプレートセグメントの平坦さを保証するために、金属切削機械加工も典型的に必要である。しかしながら、プレートセグメントの機械加工では、カッター工具がプレートセグメントの全長に沿って切削し、大ODおよび小OD表面の両表面上でスプライン形状のエッジに遭遇することが必要である。この「切削」されたエッジ形状によって切削が中断され、その結果、機械加工されたエッジ材料がバリとして下方のスプライン形状に押込まれる。そのため、スプライン形状領域のバリを除去するために後続のバリ取り作業が必要である。クラッチアセンブリの組立ての前に除去されないバリは、クラッチアセンブリの機能および耐用年数に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
外部スプラインを成形する1つの方法は、ブローチ加工である。ブローチ加工では、部品の外面から材料を除去して、スプライン加工された外面を規定する。しかしながら、この加工により、外部スプラインの小径および外部スプラインの側面において表面仕上げが悪化する可能性がある。結果として生じる表面仕上げの悪化により、スプライン表面に接触している摩擦板の滑らかな摺動運動が妨げられることがある。加えて、ブローチ加工はサイクルタイムが20~30秒などと長く、製造コストも高い場合がある。
【0008】
外部スプラインを成形する別の方法は、ワンショット成形加工である。ワンショット加工では、スプラインの材料が成形され、ブローチ加工と比較して改善された表面仕上げを提供することができる。しかしながら、表面仕上げは依然として、典型的に望まれるほど滑らかではない。このような成形のサイクルタイムは約15~20秒であることがあり、製造コストが高い。
【0009】
スプラインを成形するさらなる方法では、カムダイスまたはローラーダイスを使用する。このような加工のサイクルタイムは4秒まで短くすることができ、ブローチ加工またはワンショット加工と比較してコストを相対的に低くすることができる。ワンショット加工と同様に、この加工は、ブローチ加工のような材料除去加工ではなく、材料成形加工である。しかしながら、このアプローチでは、パーツの内径が連続していない。むしろ、パーツの側壁は概ね一定の厚みを有しており、大外径および小外径、ならびに大内径および小内径は加工によって規定される。
【0010】
このため、従来の冷間成形(Grobスプライン成形)加工よりも進歩した、環状クラッチ部品を形成可能な金属成形加工を開発することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
この節は、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その局面、特徴、利点および目的のすべての包括的なリストとして解釈されるよう意図されたものではない。
【0012】
本開示の一局面は、高強度のトルク伝達部品の製造方法を提供することである。
本開示の別の局面は、高品質の表面仕上げを有する高強度のトルク伝達部品の製造方法を提供することである。
【0013】
本開示の別の局面は、連続した内径を有する高強度のトルク伝達部品の製造方法を提供することである。
【0014】
本開示の別の局面は、サイクルタイムが短く製造コストが低い高強度のトルク伝達部品の製造方法を提供することである。
【0015】
本開示のこれらのおよび他の局面によれば、スプライン加工された環状部品が提供され、上記環状部品は、径方向のフランジセグメントと、上記径方向のフランジセグメントと一体的に形成された、軸方向に延びるハブセグメントと、上記ハブセグメントの径方向外面に形成された複数のスプラインとを含み、上記スプラインは大外径および小外径を含み、上記環状部品はさらに、上記ハブセグメントの径方向内面に形成された連続した内径を含み、上記小外径は滑らかであり、機械加工なしで形成され、上記内径は滑らかであり、機械加工なしで形成される。
【0016】
一局面において、上記ハブ部は、上記ハブ部の周囲において変化する径方向厚みを有し、上記内径と上記小径との間に測定される第1の径方向厚みは、上記内径と上記外径との間に測定される第2の径方向厚みよりも小さい。
【0017】
一局面において、上記部品は、上記フランジセグメントと上記ハブセグメントとの交差部に配置された面取り部を含み、上記面取り部は機械加工なしで形成される。
【0018】
一局面において、上記面取り部は、外向きの凹形状および内向きの凸形状を有する。
一局面において、上記小径および上記大径は鏡面仕上げを含む。
【0019】
一局面において、上記部品は、ステアリン酸ナトリウム石鹸コーティングが塗布されたブランクから形成される。
【0020】
一局面において、上記部品はトランスファープレスで形成される。
一局面において、上記フランジセグメント、ハブセグメント、およびスプラインは、共通のブランクからプレス加工され成形される。
【0021】
一局面において、上記内径は、上記小径と周方向に位置合わせされた、垂直に延びるウィットネスマークを含む。
【0022】
本開示のさらに別の局面によれば、トルク伝達部品の製造方法が提供され、上記方法は、第1のステーション、第2のステーション、第3のステーションおよび第4のステーションを有するトランスファープレスに平坦形状を有する平坦なブランクを提供するステップを含み、上記第1、第2、第3および第4のステーションは、第1、第2、第3および第4のダイスと第1、第2、第3および第4のパンチとをそれぞれ含み、上記方法はさらに、上記トランスファープレスの上記第1のステーションにおいて、上記第1のダイスと上記第1のパンチとの間で上記ブランクをプレス加工し、径方向のフランジセグメントと軸方向のハブセグメントとを有する未完成部品を形成するステップを含み、上記未完成部品は第1のカップ形状のプリフォームの形態であり、上記方法はさらに、上記第1のプリフォームを上記第2のステーションに搬送し、上記第2のダイスと上記第2のパンチとの間で上記第1のプリフォームをプレス加工し、上記フランジセグメントと上記ハブセグメントとの間に配置された面取り部を有する上記未完成部品の第2のプリフォームを規定するステップと、上記第2のプリフォームを上記第3のステーションに搬送し、上記第3のダイスと上記第3のパンチとの間で上記第2のプリフォームをプレス加工し、上記ハブセグメントから径方向外向きに延びる複数の粗いスプラインを有する上記未完成部品の粗いスプライン加工されたプリフォームを規定するステップと、上記粗いスプライン加工されたプリフォームを上記第4のステーションに搬送し、上記第4のダイスと上記第4のパンチとの間で上記粗いスプライン加工されたプリフォームをプレス加工し、最終的な径方向のフランジセグメントと最終的な軸方向のハブセグメントとを有する滑らかなスプライン加工された部品を規定するステップとを含み、上記滑らかなスプライン加工された部品は、上記最終的な軸方向のハブセグメントに沿って、一定の内径と、滑らかな小外径と、滑らかな大外径とを含む。
【0023】
一局面において、上記第1、第2、第3および第4のパンチは減少する外径を有する。
一局面において、上記第1、第2、第3および第4のステーションにおいて加えられる圧力は異なる。
【0024】
一局面において、上記第3および第4のダイスは、上記スプラインを成形するようにサイズ決めされ構成された、垂直に延びる突起部を含む。
【0025】
一局面において、上記第3のステーションにおいて、上記ハブセグメントは上記プレス加工に応答して軸方向に伸長する。
【0026】
一局面において、上記第1のダイスおよび上記第1のパンチは、上記フランジセグメントから上記ハブセグメントに移行する位置に空隙を規定する。
【0027】
一局面において、上記第2のダイスは、上記面取り部を成形するための支持部を上記移行する位置に含む。
【0028】
一局面において、上記第3のステーションは、上記第3のパンチを取囲むカウンタープレッシャースリーブを含み、上記方法は、上記カウンタープレッシャースリーブを上記ハブセグメントの上方に保持することをさらに含む。
【0029】
一局面において、上記方法は、上記粗いスプラインの材料を上記第4のダイスによって規定される空間に押込むことを含む。
【0030】
一局面において、上記スプラインの上記小径に対して機械加工作業は行われない。
一局面において、上記方法は、上記滑らかなスプライン加工された部品の上端をトリミングすることを含む。
【0031】
さらなる適用可能領域は、本明細書に提供されている説明から明らかになるであろう。この概要における記載および具体例は、例示を目的としているに過ぎず、本開示の範囲を限定するよう意図されたものではない。
【0032】
本明細書に記載されている図面は、すべての可能な実現例ではなく選択された実施形態の例示を目的としているに過ぎず、本開示の範囲を限定するよう意図されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】多板クラッチアセンブリに使用されるタイプの従来のクラッチハブの等角図であり、このクラッチハブは、Grobスプライン成形加工を用いて絞り加工されたカップ形状のプリフォームから製造され、「機械加工前」の状態で示されている。
図2図1に示すクラッチハブの部分断面図であり、形成されたままの機械加工前の状態のGrobスプライン形状を示している。
図3】「背景」の節で述べた欠点の原因となる後続の金属切削加工作業を示す、図2と同様の部分断面図である。
図4】本開示の教示を具体化する新規の成形加工を使用するスプライン加工された部品の上面図であり、連続した内径を示している。
図5図4の部品の部分斜視図であり、滑らかな鏡面仕上げを有するスプライン加工された外面を示している。
図6】4つのステーションで成形される部品を示す、トランスファープレスの概略図である。
図7A】部品を成形するために使用されるブランクの概略図である。
図7B】部品を成形するために使用されるブランクの概略図である。
図8】1回目の絞り加工の前のトランスファープレスの第1のステーションに配置されたブランクの概略図である。
図9】第1のステーションにおける1回目の絞り加工時に、ブランクがカップ形状のプリフォームに成形される概略図である。
図10】2回目の絞り加工の前のトランスファープレスの第2のステーションに配置されたカップ形状のプリフォームの概略図である。
図11】第2のステーションにおける2回目の絞り加工時に、プリフォームが第2のプリフォームに成形される概略図である。
図12A】第3のステーションに配置された部品の概略図である。
図12B】第3のステーションにおける3回目の絞り加工時に、第2のプリフォームが粗いスプラインプリフォームに成形される概略図である。
図12C】粗いスプラインプリフォームの部分上面図である。
図13A】第4のステーションにおける粗いスプラインプリフォームの概略図である。
図13B】第4のステーションにおける4回目の絞り加工時に、粗いスプラインプリフォームが最終的な滑らかなスプライン加工された部品に成形される概略図である。
図13C】最終的な滑らかなスプライン加工された部品の部分上面図である。
図14A】本開示の教示に従って製造された1つ以上の環状部品を搭載しているクラッチアセンブリの概略図である。
図14B】本開示の教示に従って製造された1つ以上の環状部品を搭載しているクラッチアセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
図面のいくつかの図全体にわたって、対応する参照番号は対応する部分および/またはサブアセンブリを示す。
【0035】
ここで、添付の図面を参照して例示的な実施形態についてさらに十分に説明する。
例示的な実施形態は、本開示が完璧であって範囲を当業者に十分に伝えるように提供されている。本開示の実施形態を十分に理解してもらうために、具体的な構成要素、装置および方法の例などの多数の具体的詳細が記載されている。具体的詳細を利用しなくてもよく、例示的な実施形態は多くの異なる形態で具体化されてもよく、本開示の範囲を限定するように解釈されるべきではない、ということは当業者に明らかであろう。いくつかの例示的な実施形態において、周知のプロセス、周知の装置構造および周知の技術については詳細に説明しない。
【0036】
本明細書において用いられる用語は、特定の例示的な実施形態を説明することを目的としているに過ぎず、限定的であるよう意図されたものではない。本明細書において用いられる単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、複数形も包含するよう意図され得る。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」および「有している(having)」という語は、包含的であるため、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を明示するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。本明細書に記載されている方法ステップ、プロセスおよび動作は、実行順序として具体的に特定されている場合を除き、必ず記載または図示されている特定の順序でそれらを実行しなければならないように解釈されるべきではない。また、追加のまたは代替的なステップが利用されてもよいということも理解されるべきである。
【0037】
ある要素もしくは層が、別の要素もしくは層「の上にある」、「に係合されている」、「に接続されている」または「に結合されている」と称される場合、それは、他の要素もしくは層のすぐ上にあってもよく、他の要素もしくは層に直接係合されていてもよく、他の要素もしくは層に直接接続されていてもよく、または他の要素もしくは層に直接結合されていてもよく、または介在する要素もしくは層が存在してもよい。これに対して、要素が、別の要素もしくは層「のすぐ上にある」、「に直接係合されている」、「に直接接続されている」または「に直接結合されている」と称される場合、介在する要素もしくは層は存在しなくてもよい。要素間の関係を説明するために使用される他の単語(たとえば、「間に」対「間に直接」、「隣接して」対「直接隣接して」など)も同様に解釈されるべきである。本明細書において用いられる「および/または」という語は、関連付けられた列挙されたアイテムのうちの1つまたは複数の一切の組合せを包含する。
【0038】
第1の、第2の、第3のなどの語は、さまざまな要素、構成要素、領域、層および/またはセクションを説明するために本明細書において用いられ得るが、これらの要素、構成要素、領域、層および/またはセクションは、これらの語によって限定されるべきではない。これらの語は、1つの要素、構成要素、領域、層またはセクションを別の領域、層またはセクションと区別するためだけに使用され得る。「第1の」、「第2の」などの語および他の数値的な語は、本明細書において用いられるとき、文脈上特に明記されていない限り、シーケンスまたは順序を暗に示すものではない。したがって、下記の第1の要素、構成要素、領域、層またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層またはセクションと呼ぶことができる。
【0039】
空間的に相対的な語(「内側」、「外側」、「下」、「下方」、「下部」、「上方」、「上部」など)は、図面に示されている1つの要素または特徴の、別の要素または特徴との関係を説明する際に説明しやすくするために本明細書において用いられ得る。空間的に相対的な語は、図面に示されている向きに加えて、使用時または動作時の素子のさまざまな向きを包含するよう意図され得る。たとえば、図中の素子を上下反対にすると、他の要素または特徴の「下方」または「下」にあるように記載されている要素は、他の要素または特徴の「上方」になるであろう。したがって、「下方」という例示的な語は、上方および下方の両方の向きを包含し得る。素子は、違った風に向けられてもよく(90度回転させてもよく、または他の向きに向けられてもよく)、本明細書において用いられる空間的に相対的な記述子は、それに従って解釈され得る。
【0040】
概して、本開示の教示は、スチールのブランクから環状部品を製造する方法であって、機械加工されていないストレート成形されたスプラインを提供することが可能な方法に向けられる。本開示はさらに、この新規のパーツ成形加工を用いて製作される環状クラッチ部品に関する。一実施形態では、環状部品は、自動変速機、トランスファーケース、動力取出装置、トルクカップリングおよびディスコネクトカップリングを含み得るがこれらに限定されない車両の駆動系用途で使用される多板摩擦クラッチアセンブリのクラッチハブである。
【0041】
図1図3は、冷間成形作業によって形成されたカップ形状の部材を共に規定しながら、径方向のプレートまたはフランジセグメント12と軸方向のハブセグメント14とを有する従来の(先行技術の)クラッチ部品(以下「環状クラッチ部品10」)を示す。カップ形状の部材はその後、一般にGrobスプライン加工と称されるスプライン成形加工を受けることにより、周方向に並んだスプライン形状16、すなわち「スプライン」のセットが軸方向のハブセグメント14に形成される。その後、トリミングおよびスロット形成作業を行って、複数の送油孔18を貫通させ、径方向のフランジセグメント12に形成されるアパーチャ20を適切にサイズ決めする。これらの初期作業の後の環状クラッチ部品10を図2に示す。Grobスプライン加工の既知の欠点は、径方向のフランジセグメント12と軸方向のハブセグメント14との界面22における外半径の形状にある。この形状は、材料を除去するために図3に示すような後続の機械加工(すなわち金属切削作業)が必要であり、追加の駆動/被駆動部品の後続のレーザー溶接のために機械加工されたストレートスプライン24および機械加工された段差26が設けられている。ストレートスプライン24のための機械加工作業によってバリが発生することが分かっており、バリ取り作業によってバリを除去しなければならない。上述の説明は、多板クラッチパックのクラッチプレートに形成された内部クラッチ歯と噛み合うようにサイズ決めされ構成されたスプライン16を有する金属成形されたクラッチハブを製造する周知の方法の簡略化された開示である。このような「先行技術」のクラッチハブは、その意図する目的に対して満足のいくものである。しかしながら、代替的な製造方法の以下の詳細な開示は、スプライン機械加工および段差機械加工作業をなくすように、かつスプラインの表面仕上げを改善するように意図されている。
【0042】
この目的で、図4および図5は、本明細書に開示されている新規の方法に従って製造された、改善された環状部品100を示す。特に、図4は、環状部品100が、中心軸の周りに配置されて径方向のフランジセグメント102と軸方向に延びるハブセグメント104とを有するカップ形状の部材を含むことを示している。径方向のフランジセグメント102とハブセグメントとは界面105で合流する。ハブセグメント104は、界面105から、フランジセグメント102と反対側の開放端まで延びている。
【0043】
以下にさらに説明するように、(絞り加工作業で成形された)カップ形状のプリフォームはその後、追加のプレスおよび成形作業を受けることにより、連続した一連の周方向に並んだスプライン形状106がハブセグメント104に形成される。見られるように、中心アパーチャ110も設けられ、送油孔(図示していないが図1図3に示すものと同様)がハブセグメント104を貫通して設けられてもよい。本開示に従って、マルチステーショントランスファープレス120(図6)を用いて、(トランスファープレスによって形成された)切削されていないストレートスプライン形状106を含む完成部品が出力される。
【0044】
図6を参照して、4つのステーション120a,120b,120c,120dを含むトランスファープレス120が示されている。各ステーションを用いて、任意の追加の仕上げ作業の前に、スプライン106を含む部品100の最終的な成形形状が規定され得る。各ステーションについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0045】
第1のステーション120aは、カップ成形ステーションと称され得る。第2のステーション120bは、対角面成形ステーションと称され得る。第3のステーション120cは、粗スプライン成形ステーションと称され得る。第4のステーション120dは、仕上げスプライン成形ステーションと称され得る。一般に、あるステーションの後に成形される部品は、次のステーションに入れられてさらなる成形を受けた後、取出されて次のステーションに搬送されてさらに成形される。
【0046】
まず図6を参照して、トランスファープレス120は第1のステーション120aにおいて平坦なブランク121を受けるように構成されており、ブランク121に対して1回目のプレス作業が行われて、第1のカップ形状のプリフォーム124(概ね径方向のプレートおよび軸方向のハブ部を有する)を規定することが開始される。第1のプリフォーム124は第2のステーション120bに搬送され、そこでプリフォーム124は2回目のプレス作業を受けて第2のプリフォーム126を規定する(プレートとハブの界面をさらに規定する)。次に、第2のプリフォーム126は第3のステーション120cに搬送され、そこで第2のプリフォーム126は3回目のプレス作業を受けて、第1のスプライン加工されたプリフォーム128(ハブに形成された粗いスプライン)を規定する。次に、第1のスプライン加工されたプリフォーム128は第4のステーション120dに搬送され、そこで第1のスプライン加工されたプリフォーム128(粗いスプライン形状を有する)は4回目のプレス作業を受けて、スプライン106をさらに規定して成形し、部品100を規定する。
【0047】
さらなる説明の目的で、最初の平坦なブランク121と最終的に成形されスプライン加工された部品100との間に作成されるさまざまな中間形状(たとえば、上述のさまざまな成形されスプライン加工されたプリフォーム124,126,128)は、さまざまなステーション120a~120dにおいて搬送されプレス加工され成形されることから、未完成部品122と総称されることがある。平坦なブランク121も一般に未完成部品122と称されることがあり、トランスファープレス120の最終段階における未完成部品122も(トランスファープレス120の最終段階を経ており、完成部品100としてトランスファープレスから取出される状態ではあるが)やはり未完成部品122と称されることがある。プレス加工および成形によって平坦なブランク121の形状が未完成部品129の中間形状のうちの1つに変わると、未完成部品122はステーション内で成形されステーション間で搬送されるので、未完成部品122の形状は最初に提供された平坦なブランク121の形状とは異なることが理解されるであろう。
【0048】
異なる成形加工段階にある異なる形状の未完成部品122に対して1回目、2回目、3回目および4回目のプレス作業が概ね同時に行われるように、トランスファープレス120の各ステーションを同時に作動させてもよい。したがって、プレス作業1回当たりのサイクルタイムは、4秒などに短縮され得る。さまざまな成形段階にある未完成部品122は、自動またはロボット搬送機構(図示せず)によってプレス加工インスタンス間のステーション間で自動的に搬送されてもよい。
【0049】
次に図7Aおよび図7Bを参照して、平坦なブランク121がその平坦な形態で示されている。ブランク121は、一定の厚みを有する概ね平坦な形状を有してもよい。ブランク121は、一局面において、高強度スチールから作られてもよい。しかしながら、形成される特定のタイプの部品100の材料要件に応じて、アルミニウムなどの他の材料を使用してもよいことが理解されるであろう。ブランク121は、ブランク122が環状形状を有するように、中心アパーチャ110を含んでもよい。特定の部品100の最終形状およびサイズに応じて、さまざまな寸法のブランク121が使用されてもよい。本明細書における説明の目的で、例示および説明のために具体的な寸法が記載および/または図示されることがある。他の寸法も使用可能であることが理解されるであろう。一局面において、ブランク121の直径は約230mmであってもよく、アパーチャ110の直径は約90mmであってもよい。この例におけるブランク121の厚みは約3.6mmであってもよい。したがってブランク121は、この例では、ブランク121の中心に位置する孔を有する、薄い円形状の円盤として説明され得る。
【0050】
一局面において、ブランク121は、円盤形状の両面にコーティング121aを含んでもよい。コーティングは塩浴で塗布されてもよく、本明細書に記載されている成形作業時の熱の低減を補助するために使用されてもよい。一局面において、コーティング121aの有効成分はステアリン酸ナトリウム石鹸であってもよい。
【0051】
ブランク121の厚みは、所望の材料移動量、特に部品100の外径にスプライン106を成形する際に生じる材料移動の量など、さまざまな要因に基づいて選択されてもよい。スプライン成形加工時には、材料が押され、成形され、厚い領域から体積の大きなスプライン領域に移動する。言い換えれば、材料は、工具によって規定される開放空間に押込まれたり引き込まれたりしてスプライン106を成形し得る。このように、未完成部品122の材料は、スプライン成形加工において、一般に未完成部品122から除去されず、むしろ外面の大径および小径を規定するように再割り当てされて、その後に仕上げられる粗いスプライン形状を成形する。
【0052】
平坦なブランク121は、さまざまな形状の未完成部品122に加工された後、上述のようにトランスファープレス120に導入されてステーション120a~d間で搬送される。次に、各搬送ステーション120a~dについてさらに詳細に説明する。
【0053】
図8を参照して、1回目の絞り加工とも称される1回目のプレス作業を行う前に、平坦なブランク121が第1のステーション120a内に位置決めされて示されている。第1のステーション120aは、第1のダイス130および第1のパンチ132を含む。実際は、特に記載のない限り、各ステーションがダイスおよびパンチを含んでおり、これらは従来のトランスファープレス作業において作動されてもよい。パンチはダイスの上方に配置される。したがって、上方および下方などの相対的な向きは、本明細書ではさまざまな部品のさまざまな位置決めを説明するために使用される。しかしながら、異なる向きも使用可能であることが理解されるであろう。たとえば、パンチはダイスの下方に配置されてもよい。別の局面において、パンチおよびダイスは、水平に移動するように、または水平/垂直に対して斜めの角度で移動するように構成されてもよい。
【0054】
図8~xxは、さまざまなステーション120a~dのダイスおよびパンチの断面図を示す。第1のダイス130は、ダイス130の上方に配置され得るブランク122を支持してもよい。一局面において、第1のダイス130は外側部130aを規定してもよく、外側部130aは、外側部130aの内部で径方向に規定されたダイスキャビティ130cを規定する内径を有する。一局面において、第1のダイス130は、キャビティ130cの下方に配置された下側部(図示せず)をさらに含んでもよく、この下側部は外側部130aと組合されてカップ状の形状を規定してもよい。しかしながら、一局面において、最初のプレス/成形作業時に、平坦なブランク121の最下面はこのような下側部に接触しない場合があるので、下側部を排除してもよい。後続のステーションにおける後続の成形作業を用いて、部品の径方向に延びるプレート部を規定してもよい。
【0055】
第1のダイス130(および本明細書に記載されている他のダイス)は、回転対称形状の概ね半分として断面的に示されている。中心軸の反対側に同様の構成が配置されることが理解されるであろう。図8に示すように、平坦なブランク121の中心孔/開口部は、パンチ132の下の図の左側に示されている。
【0056】
一局面において、平坦なブランク121がダイス130の上に支持されると、環状形状を有する保持リング134がブランク121の上方に配置されてもよい。より具体的には、保持リング134は、ブランク121をダイス130の外側部130aに対して挟み込んでもよく、ブランク121はダイスキャビティ130cの上に延びてもよい。
【0057】
ブランク122がダイス130の上に支持され、保持リング134がブランク121の上に配置されると、図9に示すようにブランク121が1回目の絞り加工を受けることにより、平坦なブランク121が未完成部品122に移行してもよい。未完成部品122は、特にスプライン106を成形することによって、完成形態になるまで複数の後続の作業を受けてその形状がさらに改良される。未完成部品122は、平坦なブランク121として先に説明したのと同じものであるが、異なる形状を有することが理解されるであろう。
【0058】
図9は、1回目の絞り加工時に未完成部品122がカップ形状の第1のプリフォーム124に成形される様子を示す。第1のパンチ132が第1のダイス130に向かって図9に示す位置に移動する。第1のパンチ132が第1のダイス130に対して下向きに移動すると、平坦なブランク121がダイスキャビティ130cに下向きに押込まれて、未完成部品122の第1のプリフォーム124を作成する。ダイス130の外側部130aは、丸みを帯びた内側エッジ130dを含んでもよい。平坦なブランク121がキャビティ130cに下向きに押込まれると、平坦なブランク121は外側部130aの頂部に沿って内向きに摺動し、丸みを帯びたエッジ130dに沿って摺動してキャビティ130cに落ち、未完成部品122の第1のプリフォームを形成する。この位置にある未完成部品122は、ダイス130の外側部130aの頂部の下方に配置される外側エッジ122aを有する。一局面において、材料がより容易に内向きに摺動することができるように、1回目の絞り加工時に保持リング134を持ち上げてもよい。別の局面において、保持リング134を除去または排除してもよい。
【0059】
第1のパンチ132は、ダイスキャビティ130cの中に受けられるようにサイズ決めされ、底面132aおよび外径132bを含んでもよい。底面132aと外径132bとの交差部に面取り部132cが規定されてもよい。面取り部132cは、外径132bとの交差部において丸みを帯びてもよく、面取り部132cと底面132aとの交差部においても丸みを帯びてもよい。
【0060】
パンチ132がダイス130に押込まれると、ブランク122が引き込まれてパンチ132の全体形状の周りに曲がる。面取り部132cによって、部品122を丸みを帯びたエッジ122bを含むように形成することができる。部品122の丸みを帯びたエッジ122bは面取り部132cの形状と厳密には一致せず、面取り部132cの領域におけるパンチ132とブランク122との間に開放空間または空隙が配置されてもよい。
【0061】
一局面において、面取り部132cは、一定の傾斜ではなく、凹状の断面形状を有してもよい。いずれの場合も、未完成部品122の材料が面取り部132cの周りで曲がるので、丸みを帯びたエッジ122bの湾曲形状と面取り部132cの表面との間に空間が規定されてもよい。
【0062】
加えて、ダイス130は、面取り部132cの領域におけるブランク122とダイス130との間に空隙または空間を規定してもよい。未完成部品122の丸みを帯びたエッジ122bは、ステーション120bなどでの後続のプレス加工においてさらに成形および加工することができる。面取り部132cおよびダイス130の両方が未完成部品122に対して空隙を規定するので、未完成部品122の実際の形状および曲率は、このステップ時に部品ごとに異なり得るものであり、より予測可能な曲率および形状は、未完成部品122に対して行われる後続のステップで規定され得る。
【0063】
パンチ132は、底面132aおよび外径132bに沿ったさまざまな形状特徴を規定するように、(面取り部132cに加えてまたは面取り部132cに代えて)異なる形状をさらに有してもよいことが理解されるであろう。
【0064】
図9に示す1回目の絞り加工時には、パンチ132を約30トンの力で作動させてもよい。1回目の絞り加工では、平坦なブランク121がその最終形状に成形されていないので、比較的低い圧力量が必要である。むしろ、ブランク121は、未完成部品122のカップ形状の第1のプリフォーム124に成形されている。一局面において、ダイス130は、パンチ132に反力を与えるためにパンチ132に向かって上向きの力を加えるガスアシストを含んでもよい。トランスファープレス120の他のステーションでもガスアシストを使用してもよい。
【0065】
部品122が図9に示すようなプリフォーム124に成形されると、パンチ132とダイス130とが分離してもよく、部品122が取出されて第2のステーション120bに搬送されてもよい。
【0066】
次に図10および図11を参照して、2回目のプレス作業、すなわち2回目の絞り加工時に部品122が第2のステーション120bにおいて成形されているのが示されている。第2のステーションは、第2のダイス140および第2のパンチ142を含む。第2のダイス140および第2のパンチ142の形状は、第1のダイス130および第1のパンチ132と概ね同様であってよい。しかしながら、以下の相違点がブランク122のさらなる成形を提供する。
【0067】
第2のダイス140は、外側部140aと下側部140bとの間の内側角に配置された支持部140eを含んでもよい。支持部140eは、上述の空隙と対照的である。支持部140eは、部品122の丸みを帯びたエッジ122bを、支持部140eの形状に対応する異なる形状に規定するように成形されている。パンチ142は、支持部140eの形状に対応する角形状を含む。
【0068】
図10に示すように、支持部140eは概ね凸形状を有してよく、パンチ142は概ね凹形状を含んでよい。図10に示すように、パンチ142はまだダイス140に係合するように完全には押されておらず、部品122はまだ第1のプリフォーム124の概ね湾曲したエッジを有している。
【0069】
図11は、部品122の角が支持部140eおよびパンチ142の形状に対応する形状に成形される様子を示す。図11において、パンチ142が押下げられてダイス140に係合する。ブランク122のこの角の形状は、最終的な部品の設計ニーズに応じて用途特有であってもよく、一般にスプライン成形の設計ニーズとは無関係である。図11に示すように、未完成部品122の角の両側の空隙はなくなっており、角は支持部140eの位置でパンチ142およびダイス140の形になっている。
【0070】
第2のダイス140は、第1のダイス130の外側部130aによって規定される内径よりもわずかに小さい、外側部140aによって規定される内径を含んでもよい。第2のパンチ142は、第1のパンチ132よりもわずかに小さい直径を有してもよい。第1のステーション120aに対するパンチ/ダイスからの直径減少は、第1のステーション120aで粗い形状を規定してから第2のステーション120bでその形状をさらに改良して規定することができるように機能する。また、パンチ142の直径が小さいので、パンチを第1のプリフォーム124内にさらに容易に受けることができる。
【0071】
パンチ142およびダイス140を図11に示す位置まで共に並進させる前に、部品122は、そのカップ形状の第1のプリフォーム124の状態で、第2のダイス140の上面の上方に配置されてもよい。第2のパンチ142は、未完成部品122のカップ形状の内径の内側に収まる。2回目の絞り加工のプレス作業(図11に示す)により、スプラインのない部品100の最終形状が効果的に規定される。しかしながら、内径は、スプライン成形加工時に最終的にわずかに小さくなる場合がある。加えて、部品122の面取り領域の形状は、所望に応じて、異なるダイス形状を含むことによってさらに変更されてもよい。2回目の絞り加工時には、第2のパンチ142によって510トンの力が加えられてもよい。この絞り加工時に第2のステーション120bにおいて加えられる力は、未完成部品122の幾何学的形状がより正確に規定されているので、第1のステーション120aにおいて加えられる力よりもかなり高い。
【0072】
第2のステーション120bにおける2回目の絞り加工の後、その第2のプリフォーム形状126を有する未完成部品122が第2のステーション120bから取出されて第3のステーション120cに搬送されてもよい。
【0073】
図12A図12Cを参照して、第3のステーション120cが示されており、部品122は未完成部品122の外面に粗い形態のスプライン106を含むように形成されている。第3のステーション120cは、第3のパンチ152および第3のダイス150を含む。
【0074】
ダイス150の外側部150aは、最終的に形成される部品100についてのスプライン106の所望の形状に対して負の形状を規定してもよい。言い換えれば、ダイス150は、所望のスプライン106の圧痕の形状に対応する、複数の垂直に延びる突起部150fを含んでもよい。各突起部150fは、ダイスの外側部150aから径方向内向きに延びてもよい。突起部150fは、突起部150fの最上端にリードイン特徴150gを含んでもよい。
【0075】
パンチ152および/またはダイス150を作動させる前に、インジェクタ(図示せず)が、プレス作業に先立ってブランク122をダイス150の位置の上方に保持してもよい。
【0076】
プレス作業時には、パンチ152は約140トンの圧力を加えてもよい。プレス作業時には、ダイス150は、ブランク122の材料をダイス150の外側部150aに沿って上向きに押し/引っ張り、スプライン106の領域における部品122の軸方向長さを延ばす。部品122の材料を引っ張ることにより、さらに、材料がパンチ152の外径に押付けられ、パンチ152の外径は部品122の内径を規定するように動作する。一例では、未完成部品122の頂部は、未完成部品の最下面から約63.9mm上方にある。先のプレス加工ステップでは、部品122の頂部は、部品122の最下面から約46.9mmであった。パンチ152の内径は第2のパンチ142の内径よりもわずかに小さいため、第3のパンチ152は未完成部品122の中に収まることができ、プレス作業時に材料を成形して第3のパンチ152のわずかに小さい直径に押付けることができる。
【0077】
図12Aおよび図12Bは、パンチ152およびダイス150を2つの位置で示す。図12Aは、プレス作業の前のパンチ152およびダイス150を示しており、図12Bは、ダイス150をパンチ152に対して上向きに移動させることによって粗い形態のスプライン106を成形する様子を示している。部品の内径122は概ね一定であり、パンチ152の直径によって規定される。
【0078】
図12Aおよび図12Bに示す一局面において、カウンタープレッシャースリーブ153が部品122の上方に配置されてパンチ152を取囲んでいる。カウンタープレッシャースリーブ153はパンチ152に対して所定の位置に固定されてもよく、パンチ152がダイス150に対して下向きに移動すると、カウンタープレッシャースリーブは、ダイス150の相対的な上向きの移動によってスプラインが成形されたときに未完成部品122を固定するように動作する。
【0079】
別の局面において、カウンタープレッシャースリーブ153を排除してもよく、パンチ152がカウンタープレッシャーを提供してもよい。
【0080】
図12の第3のステーション120cのプレス作業の後、部品122は、その上に粗い形態の外部スプライン106を含んでおり、部品122の環状壁は、部品122にぶつかる垂直突起部によって生じる材料の引っ張りおよび成形によって生じる、延びた軸方向長さを有している。その後、その上に粗い形態のスプライン106を有する、第1のスプライン加工されたプリフォーム128として成形された部品122を取出して、第3のステーション120cから第4のステーション120dに搬送することができる。図12Cは第1のスプライン加工されたプリフォーム128の上面図であり、一定の内径および粗い形態のスプライン106を示している。
【0081】
図13A図13Cは、粗い形態のスプライン106が最終的な滑らかな形態に成形される、さらなるスプライン成形プレス作業を示す。最終形態の言及は、開示されているトランスファープレス120の加工の最後のステーション120dを指すが、追加の加工がさらに行われてもよいことが理解されるであろう。
【0082】
先のステーションと同様に、部品122は第4のダイス160の上方にまたは上側開口部に位置決めされ、第4のパンチ162は、ブランク122に挿入されてブランク122を第4のダイス160に押込むように構成されている。第4のパンチ162の外形は、部品100の最終的な内形を模倣する。同様に、第4のダイス160の形状は、部品100の最終的な外形を模倣する。第4のダイス160および第4のパンチ162の協働する形状は、未完成部品122の材料を最終部品100の形態に成形するように構成され、第4のダイス160および第4のパンチ162の対応する形状は、部品の滑らかな連続した内径101と、面取りされたエッジ103と、部品100の外側スプライン形状106とを規定する。第4のステーション120dは仕上げスプライン成形ステーションとも称され得る。
【0083】
プレス作業の前に、図13Aに示すように、粗い形態のスプライン106が、第4のダイス160の外側部160aに形成された垂直に延びる突起部160fと位置合わせされることにより、突起部160fが、プリフォーム128の粗い形態のスプライン106に存在している垂直の凹部と位置合わせされる。同様に、部品122の径方向外向きに突出する粗いスプライン形状が、垂直に延びる突起部160fの間の凹部と位置合わせされる。
【0084】
第4のパンチ162には、約95トンの圧力が加えられてもよい。粗い形態のスプライン106がすでに生じているので、この圧力量は第3のステーション120cにおける圧力量よりも低い。パンチ162の直径は第3のパンチ152の直径よりもわずかに小さく、部品100の滑らかな連続した内径101を規定する。
【0085】
図13Bに示す第4のステーション120dのプレス作業の終了時に、未完成部品122は完成部品100の形態であり、取出されてもよい。この形態では、成形作業が完了しており、内径101、面取り領域103、および外部スプライン幾何学的形状106がその最終的な成形状態にあるので、未完成部品122は部品100または完成部品100と称され得る。図13Cは、内径101およびスプライン106を含む完成部品100の上面図を示す。
【0086】
しかしながら、部品100に対する追加の加工がさらに行われてもよい。たとえば、部品100は、スプライン成形ステップ時に部品100の材料が押された/引っ張られた上端がトリミング作業によってトリミングされてもよい。しかしながら、スプライン106のさらなる機械加工は不要である。加えて、部品100の滑らかな連続した内径101は、部品100の内側形状に対する追加の機械加工が不要な部品を提供する。言い換えれば、一般に、スプライン形状または部品の内径もしくは外径を規定するために部品の径方向において材料を除去するまたは機械加工で除去する必要がない。
【0087】
このように、もたらされる部品100は、滑らかな連続した内径101を含む。外部スプライン106はさらに、滑らかで光沢のある/鏡面状の外観を呈する。この外観は、ブローチ加工またはワンショット加工の結果とは異なる。特に、スプライン106の根元およびスプライン106の外面における表面仕上げは図5に示すように鏡面状であり非常に滑らかであるが、他の加工では成形方向に(スプラインの長さに沿って)ウィットネスマークが生じ、仕上がりがより粗くなる。部品100では、材料がトランスファープレス120のパンチに接触する結果、部品100のカップ形状の内側の角にウィットネスマークが存在する場合がある。このように、部品100およびそのスプライン106の大外径および小外径はいずれも滑らかで鏡面状である。図4および図5に示すように、内径101は、スプライン106の小径と周方向に位置合わせされた、垂直に延びるウィットネスマークを含む。
【0088】
スプライン106の改善された表面仕上げにより、嵌合部品との性能を改善することができ、特に嵌合部品の表面と部品100のスプライン106との摺動接触が改善され得る。
【0089】
上述した加工およびもたらされる部品100は、さまざまな利点を提供する。たとえば、加工のサイクルタイムが短縮される。サイクルタイムが短縮され、スプラインに対する機械加工作業が低減される結果、製造コストが削減される。加えて、表面仕上げが、上述したように、たとえばブローチ加工と比較して改善される。
【0090】
図14Aを参照して、回転入力部品202と回転出力部品204との間に配置された多板摩擦クラッチアセンブリ200の基本的な概略図が示されている。クラッチアセンブリ200は、入力部品202によって駆動されるクラッチハブ206と、出力部品204を駆動するクラッチドラム208と、クラッチパック210と、動力作動式クラッチアクチュエータ212とを含む。一局面において、部品100はクラッチハブ206として形成されてもよい。クラッチパック210は、スプラインを介してクラッチハブ206に結合される内側クラッチプレート214と、スプラインを介してクラッチドラム208に結合される外側クラッチプレート216とを含む。クラッチアクチュエータ212は、クラッチパック210に係合力を加えて入力部品202から出力部品204に駆動トルクを伝える。少なくともクラッチハブ206(および場合によってはクラッチドラム208)は本開示の方法を用いて製造されることが意図されている。
【0091】
図14Bは、摩擦クラッチアセンブリ200が動力作動式ブレーキ装置として、場合によっては自動変速機の一部として使用されている基本的な概略図である。示されるように、クラッチドラム208はここでは静止部材であるが、クラッチハブ206は遊星ギアセット220の部品に結合されている。周知のように、摩擦クラッチ200の解放および制動動作は、遊星ギアセット220を介して出力部品204に一対の速度比出力を提供するように機能する。
【0092】
本開示の部品100のこれらの潜在的な使用を例示する目的は、これらの部品100が多種多様な自動車用のおよび自動車用ではないトルク伝達用途に適合され得ることを当業者が理解できるようにすることである。
【0093】
上述される実施形態の説明は、例示および説明の目的で提供されている。網羅的であることも、本開示を限定することも意図していない。具体的な一実施形態の個々の要素または特徴は、一般的にはその具体的な実施形態に限定されず、適切な場合には、具体的な表記または記載がなくても、交換可能であり、かつ選択された実施形態において使用可能である。また、具体的な一実施形態の個々の要素または特徴は、さまざまに変更されてもよい。このような変更は、本開示からの逸脱であるとみなされるべきではなく、このような改変はすべて、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
【国際調査報告】