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特表2023-515462吸着材料からのNH3のマイクロ波除去のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】吸着材料からのNH3のマイクロ波除去のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/34 20060101AFI20230406BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20230406BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20230406BHJP
   C01C 1/12 20060101ALI20230406BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B01J20/34 E
B01J20/18 C
B01J20/18 B
B01D53/02
C01C1/12 A
C01C1/12 B
C01B3/56 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549776
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021018747
(87)【国際公開番号】W WO2021168226
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/980,090
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521338857
【氏名又は名称】スターファイアー エナジー
【氏名又は名称原語表記】STARFIRE ENERGY
【住所又は居所原語表記】403 Laredo St., Unit S, Aurora, CO 80011 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ ジョセフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチ アダム ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】キントナー ジョナサン ディー.
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G140
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012CA20
4D012CD06
4D012CG02
4G066AA61B
4G066CA29
4G066DA05
4G066GA18
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC09
4G140FE01
(57)【要約】
吸着材料をマイクロ波放射に曝露することによってNH吸着材料からNHを脱着するための方法およびシステムが記載される。NHクラッカのNH利用を増加させ、下流プロセス汚染の可能性を減少させるための方法も記載される。NHから高圧の高純度Hを製造する方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材料からアンモニアを脱着するための方法であって、
アンモニアが吸着されている吸着材料を提供することと、
前記吸着材料からアンモニアを脱着するように、前記吸着材料をマイクロ波放射に曝露することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記吸着材料から脱着したアンモニアを除去するように、前記吸着材料にスイープガスを通過させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着材料を真空ポンプにかけることによって前記吸着材料から純粋な脱着アンモニア流を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着材料は、4Aゼオライト、5Aゼオライト、または13Xゼオライトのうちの1つまたは複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着材料からアンモニアを脱着するように、前記吸着材料をマイクロ波放射に曝露することは、
前記吸着材料を、第1の光子エネルギーを有するマイクロ波放射に曝露することと、
前記吸着材料を、前記第1の光子エネルギーよりも大きな第2の光子エネルギーを有するマイクロ波放射に曝露することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アンモニアが吸着されている吸着材料を提供することは、
、N、およびアンモニアを含むガス混合物に前記吸着材料を通過させることを含み、前記吸着材料は、HおよびNの混合物に前記吸着材料を通過させながら、前記アンモニアを選択的に吸着する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電気化学的精製器の出口で高純度Hを生成するように、前記吸着材料を通過するHおよびNの前記混合物を前記電気化学的精製器に導くことと、
前記電気化学的精製器出口の前記出口で高圧の高純度Hを生成するように、前記高純度Hを電気化学的圧縮器に導くことと
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電気化学的精製器および前記電気化学的圧縮器は、プロトン交換膜デバイスである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
、Nおよびアンモニアを含む前記ガス混合物を形成するように、アンモニアを分解することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記吸着材料から脱着したアンモニアを除去することと、
ポンプを介して、前記除去されたアンモニアをアンモニアクラッカに導くことと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
アンモニアが吸着されている吸着材料を提供することは、
アンモニアクラッカからの出力流を前記吸着材料に通過させることを含み、前記出力流は残留量の未分解アンモニアを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記吸着材料からアンモニアを脱着するように、前記吸着材料をマイクロ波放射に曝露することは、
前記吸着材料を定期的にマイクロ波放射に曝露することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
吸着材料からアンモニアを除去するための装置であって、
吸着体容器と、
前記吸着体容器内に配設され、アンモニアが吸着されている吸着材料と、
前記吸着体容器内に配設された前記吸着材料にマイクロ波放射を向けるように構成されたマイクロ波放射器と
を備える、装置。
【請求項14】
前記マイクロ波放射器は、前記吸着体容器の外部に配置される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記吸着体容器は、マイクロ波透過窓をさらに備え、前記マイクロ波放射器は、前記マイクロ波透過窓を通してマイクロ波放射を前記吸着体容器内に向けるように構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、前記吸着体容器から延びる1つまたは複数の傾斜パイプセクションをさらに備え、
マイクロ波放射器は、前記1つまたは複数の傾斜パイプセクションのそれぞれの末端に近接して位置付けられ、
前記1つまたは複数の傾斜パイプセクションの各々は、マイクロ波放射が前記吸着体容器の長さ方向に伝播するように、前記マイクロ波放射を前記吸着体容器内に向けるように構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記マイクロ波放射器は、前記吸着体容器内に配設される、請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記吸着体容器は上部部分および下部部分に区画され、前記マイクロ波放射器は、前記下部部分からマイクロ波が隔離されるように前記上部部分に配設される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記マイクロ波放射器は、複数のマイクロ波放射器を含み、前記複数のマイクロ波放射器は、前記吸着体容器の中心軸に沿って位置付けられる、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記複数のマイクロ波放射器の各々に関連付けられたランチャをさらに備え、
前記ランチャは、回転方向、軸方向、または回転方向と軸方向との組み合わせで、前記マイクロ波放射器によって放射されたマイクロ波放射を方向付けるように構成される、請求項19に記載の装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2020年2月21日出願の米国仮特許出願第62/980,090号に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本明細書に記載される技術は、一般に、吸着材料をマイクロ波に曝露することによって吸着材料から吸着NHを除去し、放出されたNHを回収するためのシステムおよび方法に関する。このようにして回収されたNHは、後の使用のために再使用または貯蔵することができる。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素(CO)の人為的な排出は、地球温暖化、気候変動および海洋酸性化を引き起こしている。これらは、人類の継続的な経済発展および安全保障を脅かしている。この脅威に対処するために、COを実質的に排出しないエネルギー源が、先進国および開発途上国の両方で強く求められている。いくつかのCOフリーエネルギー生成の選択肢が広範に開発されてきたが、現在、実用的なCOフリー燃料を含むものはない。
【0004】
次の反応式(1)に従って、アンモニア(NH)は燃料として燃焼され得る。
4NH(g)+3O→2N+6H0(g)+熱 (1)
【0005】
NHは無炭素燃料として直接、または水素ガスおよび窒素ガスに改質すれば水素源として利用できる。NHは、NH、HおよびNの混合物中で使用して、その燃焼特性を特定のプロセスまたは装置に適合させることもできる。ガス状水素、液体水素または電池よりもエネルギー密度が高く、貯蔵条件が容易で、長期間の貯蔵および流通が安価である。
【0006】
アンモニア製造のための主要な工業的手順は、次の反応式(2)に示されるハーバー・ボッシュ法である。
(g)+3H(g)→2NH(g)(ΔH=-92.2kJ/mol) (2)
【0007】
2005年において、ハーバー・ボッシュ式アンモニア合成により、製造されるNH1トン当たり平均約2.1トンのCOが製造された。CO製造の約3分の2は、水素ガスを製造するための炭化水素を用いた水蒸気改質に由来し、残りの3分の1は合成プラントにエネルギーを供給するための炭化水素燃料の燃焼に由来する。2005年時点で、ハーバー・ボッシュ式NHプラントの約75%が原料および燃料として天然ガスを使用し、残りは石炭または石油を使用していた。ハーバー・ボッシュ式NH合成は世界の天然ガス生産量の約3%~5%および世界のエネルギー生産量の約1%~2%を消費した。
【0008】
ハーバー・ボッシュ反応は、一般に、約300℃~約550℃の温度および約90バール~約180バールの圧力にて、鉄酸化物またはルテニウム触媒を含む反応器中で行われる。適当な反応速度を得るためには高温が必要である。NH合成の発熱性質により、高温は反応物質に向かって平衡を駆動するが、これは高圧によって相殺される。
【0009】
アンモニア合成における近年の進歩は、約300℃~約600℃の温度ならびに1バールから圧力容器および圧縮器設計の実用限界までの範囲の圧力で動作できる反応器をもたらした。より低い動作圧力のために設計された場合、この新世代の反応器は、設備コストおよびガス圧縮コストを低減することができるが、触媒床を通過する毎にNHに変換されるNおよびH反応物質の割合も低減する。NHを液化して生成物流から除去するのではなく、これらの反応器は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第10,787,367号に記載されているように、吸着材料を使用して気相NH除去を行う。
【0010】
反応器生成物流からのNHの気相除去は、広範囲の圧力、流れおよび温度で反応器が動作することを可能にするため、非常に有利である。しかしながら、アンモニアは、後の液化および貯蔵のために純粋な形で吸着材料から除去されなければならない。米国特許第10,787,367号は、吸着体からNHを除去するための熱駆動法を記載している。これは効果的であるが、吸着材料が低い熱伝導率を有するため比較的ゆっくりとしたプロセスとなり得る。より高速のNH脱着プロセスは、より小さな吸着床の使用を可能にし、これは資本コストおよび反応器の設置面積を低減することができる。
【0011】
NHは、水素燃料を貯蔵して装置に送達するための費用対効果の高い方法であるが、特定のNHを燃料とする装置は99.999%超の水素純度を必要とし、NH不純物に対する許容度が低い。アンモニアの化学的熱力学は、NHを分解することにより、10~1000ppmの残留NHを含むN+H+NH混合物を生成するようなものであり、これは、プロトン交換膜燃料電池および同様のデバイスには高すぎる。残留NHは、NHを吸着するがNおよびHを通過させる材料製の床を通過することによって、分解ガス流から除去することができる。米国特許第10,787,367号は関連プロセスを記載しているが、吸着材料によって捕捉されたNHは、吸着床が引き続き使用することができるように定期的に除去されなければならない。従来の熱脱着よりも速いNH除去法が望ましい。
【0012】
最近開発されたNH燃料用のNH合成反応器およびNH分解反応器は、当分野における、従来の熱再生よりも迅速でより完全な、吸着材料から吸着NHを除去する方法の必要性を明らかにしている。
【発明の概要】
【0013】
この発明の概要は、以下の発明を実施するための形態においてさらに説明される、単純化された形式で概念の選択を導入するために提供される。本概要および前述の背景技術は、特許請求された主題の主要な態様または本質的な態様を特定することを意図していない。さらに、本概要は、特許請求された主題の範囲を決定する助けとして使用することを意図していない。
【0014】
いくつかの実施形態では、吸着材料からアンモニアを脱着するための方法は、アンモニアが吸着されている吸着材料を提供するステップと、吸着材料からアンモニアを脱着するように、吸着材料をマイクロ波放射に曝露するステップとを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、スイープガスまたは真空ポンプの使用などによって、吸着材料から脱着したアンモニアを除去することをさらに含むことができる。マイクロ波放射は、連続的にまたは段階的に吸着材料に向けることができる。マイクロ波放射の光子エネルギーは、吸着材料をマイクロ波放射に曝露するプロセス中に変化させることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、吸着材料からアンモニアを除去するための装置は、吸着体容器と、吸着体容器内に配設されており、アンモニアが吸着されている吸着材料と、吸着体容器内に配設された吸着材料にマイクロ波放射を向けるように構成されたマイクロ波放射器とを備える。マイクロ波放射器は、吸着体容器の内部または外部に配置することができる。いくつかの実施形態では、装置は複数のマイクロ波放射器を備える。マイクロ波放射器は、マイクロ波放射を吸着体容器内の所望の方向に向けるように、それに関連付けられたランチャを有してもよい。
【0016】
好ましい実施形態を含む、開示されたシステムおよび方法の非限定的かつ非網羅的な実施形態は、以下の図を参照して説明される。ここで、特に明記しない限り、同様の参照番号は種々の図面を通して同様の部分を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書に記載される様々な実施形態による、吸着材料からNHを除去するためのシステムの側断面概略図である。
図2】本明細書に記載される様々な実施形態による、吸着材料からNHを除去するためのシステムの側断面概略図である。
図3】本明細書に記載される様々な実施形態による、吸着材料からNHを除去するためのシステムの側断面概略図である。
図4】本明細書に記載される様々な実施形態による、吸着材料からNHを除去するためのシステムの側断面概略図である。
図5】本明細書に記載される様々な実施形態による、吸着材料からNHを除去するためのシステムの側断面概略図である。
図6】本明細書に記載される様々な実施形態による、吸着材料からNHを除去するためのシステムの上断面概略図である。
図7】本明細書に記載される様々な実施形態による、スイープガスによるマイクロ波誘導NH脱着および除去を試験するために構築された「マイクロ波管状炉」の概略ブロック図である。
図8図7に示された装置を用いて回収されたNHの経時的なグラフである。
図9】本明細書に記載される様々な実施形態による、真空ポンプによるマイクロ波誘導NH脱着および除去を試験するように変更されたマイクロ波管状炉のブロック図である。
図10】本明細書に記載される様々な実施形態による、吸着体容器の端部の窓を通るように向けられた外部マイクロ波源によるアンモニアのマイクロ波誘導脱着を試験するために使用される装置の概略ブロック図である。
図11】本明細書に記載される様々な実施形態による、吸着体容器の端部の窓を通るように向けられた外部マイクロ波源を用いたマイクロ波誘導脱着試験中の時間の関数としての公称マイクロ波出力およびアキュムレータ容器充填率のグラフである。
図12】本明細書に記載される様々な実施形態による、45°の角度のアーム上の窓を通るように向けられた外部マイクロ波源によるアンモニアのマイクロ波誘導脱着を試験するために使用される装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態は、本明細書の一部を形成し、例として特定の例示的実施形態を示す添付図面を参照して、以下により十分に説明される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に開示されている。しかしながら、実施形態は多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0019】
「Removal of Gaseous NH from an NH Reactor Product Stream」と題する米国特許第10,787,367号は、とりわけ、吸着材料を用いてNH反応器生成物流からガス状NHを回収するための方法の様々な実施形態を記載している。例えば、NHガスは、H+N+NH等の混合ガスを、4A型モレキュラーシーブ、5A型モレキュラーシーブ、または13X型モレキュラーシーブなどのNH吸着材料から構成される吸着床を通過させることにより、混合ガスから除去することができる。NHは、HおよびNよりも優先してモレキュラーシーブに吸着し、HおよびNは床を通過するが、NHは吸着材料に付着したままであるという正味の効果を有する。
【0020】
米国特許第10,787,367号は、熱駆動温度および圧力スイングプロセスを使用して吸着材料から吸着NHを除去することを記載している。対照的に、本出願は、マイクロ波放射(任意選択的に真空ポンプと組み合わせて)を使用して、吸着材料からNHを除去することを記載している。
【0021】
マイクロ波放射によるNH脱着
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、吸着材料からNHを脱着する方法は、一般に、NHを含んだ吸着材料をマイクロ波放射に曝露することを含む。任意の適切な周波数を含む任意の適切なタイプのマイクロ波放射を使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるマイクロ波放射の周波数は、2.45ギガヘルツ(GHz)(典型的な家庭用電子レンジで使用される周波数)である。しかしながら、工業用電子レンジで使用される周波数915MHzのような他の周波数も、本明細書に記載される方法において使用できることを理解すべきである。
【0022】
吸着NHが付加された吸着材料にマイクロ波放射を向けるか、または全体的に吸着材料をマイクロ波放射に曝露する具体的な方法は、NHが吸着材料から脱着されるように吸着材料がマイクロ波放射に十分に曝露されるものであれば、一般に限定されない。吸着材料の位置に対するマイクロ波放射源の特定の構成は、例えば図1図6に関して以下でさらに詳細に説明される。吸着材料からのNHの除去を改善するために複数の構成を用いることができることも理解すべきである。例えば、方法は、マイクロ波放射を第1の方向、角度、および/または距離から吸着材料に適用し、続いてマイクロ波放射を第1の方向、角度、および/または距離とは異なる第2の方向、角度、および/または距離から吸着材料に適用することを含むことができる。同様に、マイクロ波放射は、異なる方向、角度、および/または距離から吸着材料に同時に適用してもよい。
【0023】
本明細書に記載される方法において、吸着材料がマイクロ波放射に曝露される時間量は、一般に制限されない。いくつかの実施形態では、マイクロ波放射は、吸着材料から一部またはすべてのNHを除去する任意の時間、吸着材料に適用されてもよい。
【0024】
13X型吸着材料からのNH脱着の熱重量分析により、これはある範囲の吸着エネルギーを有することを示す。電子光電子放出に類似したNHのマイクロ波脱着の光子モデルを用いて、低エネルギー部位に結合したNHは高エネルギー部位に結合したNHよりも長波長(低光子エネルギー)のマイクロ波により脱着するはずである。低エネルギー部位からNHを脱着するために高エネルギーマイクロ波光子を使用すると、NH加熱が生じるが、これはマイクロ波エネルギーの良好な使用ではない。このように、脱着中の加熱は、最初に低光子エネルギーマイクロ波を使用してNHを低エネルギー部位から脱着することによって最小化し、次に高光子エネルギーマイクロ波に進行してNHの高エネルギー部位を脱着することができる。これは、固定周波数マイクロ波源のセットまたは可変周波数マイクロ波源のいずれかを用いて行うことができる。
【0025】
NHを含む吸着材料に向けられたときにマイクロ波放射が示す脱着効果についての可能な説明は、吸着NHの双極子モーメントが、吸着結合を破壊して表面から分子を遊離させるのに十分な力またはエネルギーで、マイクロ波が吸着体表面上で分子をねじれまたは回転させることができるほど十分大きいということであるが、この理論に束縛されるという意図ではない。
【0026】
本明細書に記載されるマイクロ波NH脱着法は、吸着材料がマイクロ波を容易に吸収しないため、従来の熱再生よりもはるかに速い吸着体再生時間を提供することができる。マイクロ波はNH分子によってのみ吸収され、このことによって、マイクロ波エネルギーを吸着床の全質量に分散させるのではなく、吸着NHに集中させる。NH分子へのエネルギーのこの集中は、熱エネルギーが非常に乏しい熱伝導性を有する吸着床全体を通して伝導しなければならない場合よりも、NH分子を表面からはるかに迅速に脱着する。
【0027】
スイープガスによるマイクロ波脱着NHの除去
吸着材料から一旦脱着されると、本明細書に記載される方法は、脱着NHを吸着材料内から除去するために追加のステップおよび/または処理を必要とすることがある。いくつかの実施形態では、そのような除去は、非反応性スイープガスを使用して達成することができる。より詳細には、マイクロ波によって吸着材料から脱着されたNHは、非反応性スイープガスを吸着床に流すことによって吸着床から除去することができる。スイープガスは脱着したNH分子を伴って、吸着床から運び出す。そのような実施態様において、脱着されたNHは、NHとスイープガスとの混合物として吸着床から除去される。好ましくは、スイープガスはマイクロ波エネルギーを吸収しないため、NH分子によって吸収されるマイクロ波に干渉しない。適切なスイープガスの非限定的な例は、窒素、水素、および空気である。吸着材料にスイープガスを流すことは、マイクロ波放射が吸着材料に向けられている間に、または吸着材料をマイクロ波放射に曝露が終了した後に行うことができる。
【0028】
真空ポンプを用いた純粋なガスとしてのマイクロ波脱着NHの除去
いくつかの実施形態では、NHを純粋なガスとして吸着材料から除去することが望ましい。そのような実施形態では、真空ポンプを使用して、(a)マイクロ波曝露前に吸着床から間隙ガスを除去し、(b)マイクロ波によって脱着されたときにNHを吸着床から除去することができる。真空ポンプを使用して、吸着材料がマイクロ波に曝露された後、または吸着材料のマイクロ波放射への曝露中および曝露後の両方で、吸着床からNHを除去することもできる。いくつかの実施形態では、このようにして吸着床から除去された純粋なNHガスは、アキュムレータ容器またはブラダに向けられ、次いで、NHガスが圧縮ガス、加圧液体、または冷却液体のいずれかとして貯蔵され得る貯蔵容器にポンプで送られ得る。
【0029】
クラッカ中での回収NHの再利用
いくつかの実施形態では、NH吸着床を使用して、H、N、およびNHからなる分解NHガス流から残留NHを除去する。NおよびHは吸着床を通って下流プロセスに入るが、NHは吸着床に吸着される。そのような実施形態では、吸着床は、純粋なNHガス流を生成し、これを上流のNHクラッカに向け得る方法によって再生することができる。これにより、NHの利用が増加し、NHの大気への排気が防止される。
【0030】
加圧された純粋なHへのNHの変換
いくつかの実施形態では、高純度の加圧水素を生成するためにNHを使用することが望ましい。いくつかの実施形態では、本明細書中で使用される場合、「高純度」とは、99.8%超のHを意味する。そのような実施形態では、NHを分解してH+N+NH混合物を生成することができる。吸着床を使用して、分解ガス流から残留NHを除去し、10ppm未満のNHおよび場合によっては1ppm未満のNHを含む、NおよびHからなるガス流を提供することができる。N+Hガス流は、電気化学的精製器および圧縮器に導かれ、高純度の高圧水素を生成することができる。いくつかの実施形態では、圧力は13,000psigの高さであってもよい。電気化学水素精製圧縮装置の例には、HyET Hydrogen社製の装置がある。これらの例では、精製器および圧縮器は共に、入ってくるN+Hガス流中のNH不純物によって損傷され得るプロトン交換膜材料を使用する。
【0031】
マイクロ波放射を吸着材料に適用するためのシステム
前述したように、本明細書に記載される方法は、一般に、NHが吸着された吸着材料へのマイクロ波放射の適用を含む。このステップを実施するために、種々のシステムおよび装置を提供することができる。以下により詳細に説明される図1図6は、そのようなシステムおよび装置に対する様々な構成を提示する。
【0032】
吸着床の外部に配置されたマイクロ波源
いくつかの実施形態では、マイクロ波源が吸着床の外部に配置されるシステムが提供される。そのような構成は、例えば、マイクロ波源がNHまたは吸着床を通って流れる他のガスと適合しない材料から構築される場合、またはマイクロ波源が吸着床に存在する圧力と適合しない場合に有用であり得る。
【0033】
図1は、吸着体容器102を含む装置100を示す。吸着体容器102は、全体として、吸着材料105を位置付けることができる中空内部を有する。図1に示すように、吸着体容器102は、吸着体容器102の長手方向軸が略垂直に配向された略細長円筒形状を有する。しかし、他の吸着体容器の形状および配向を使用してもよいことを理解すべきである。
【0034】
図1に示す実施形態では、マイクロ波源101は、吸着体容器102の上端のすぐ外部など、吸着体容器102の外部に配置されている。マイクロ波源101によって生成されたマイクロ波は、ランチャ103によって導かれ、吸着体容器102の上部に配置されたマイクロ波透過窓104を通過して吸着体容器102内に入る。次いで、マイクロ波は、吸着体容器102に装填された吸着材料105を通って伝播し、吸着材料105内に吸着されたアンモニアを脱着する。これは、吸着体容器102が真空下にあるか、またはスイープガスに曝露されている場合に起こり得る。
【0035】
いくつかの実施態様では、吸着材料105は、吸着体容器102内に配置された多孔板108によって支持される。板108の穿孔により、ガスが板108を通って流れることができる。このようにして、吸着材料105から除去された脱着NHは、板108を通ってガス出口ポート107に向かって流れることができる。多孔板108の位置は、多孔板108に位置付けられた吸着材料105がマイクロ波源101に接近して、または離れるように移動できるように調整することができる。
【0036】
吸着体容器102は、ガスの、吸着体容器102への流入および吸着体容器102からの流出が可能なように、ガス入口ポート106およびガス出口ポート107を備えている。前述したように、吸着材料105および吸着体容器102からの脱着されたNHの除去は、例えばスイープガスの使用によって促進することができる。このスイープガスは、入口ポート106を介して吸着体容器内に導入することができ、脱着されたNHを取り込んだスイープガスは、出口ポート107を介して吸着体容器102から除去することができる。図1は、吸着体容器の上端に近接して吸着体容器102の長手方向軸に垂直に配向された入口ポート106と、吸着体容器102の長手方向軸に平行に配向され、吸着体容器102の下端にある出口ポート107とを示すが、これらの入口ポート106および出口ポート107の位置および配向は限定されないことを理解すべきである。さらに、入口ポート106および出口ポート107の数は変更してもよい。
【0037】
吸着体容器の一端に配置された単一のマイクロ波源では、吸着体容器の遠端において吸着材料のアンモニアを脱着するのに十分な強度で吸着材料を通って伝播することができないことがある。したがって、いくつかの実施形態は、吸着体容器の長さに沿って配置された複数のマイクロ波源を備え、吸着材料のすべての領域が、アンモニアが脱着するのに十分なマイクロ波曝露を受けることを確実にすることができる。図2は、吸着体容器202の長さに沿って位置付けられた傾斜パイプセクション210に配置された複数のマイクロ波源201を有する装置200を示す。各マイクロ波源201は、マイクロ波源201からのマイクロ波が各傾斜パイプセクション210に関連するマイクロ波透過窓204を通過するように向けられるように対応するランチャ203を有する。このようにして、マイクロ波は、傾斜パイプセクション210を介して吸着体容器202に入り、吸着材料内に位置付けられた吸着材料205と相互作用する。
【0038】
傾斜パイプセクション210の角度Φによって、マイクロ波は吸着体容器202の本体に入り、その長さ方向に伝播し続けることを可能にする。この実施形態は、マイクロ波再生を任意の長さの吸着体容器で使用することを可能にする。角度Φは一般に限定されないが、いくつかの実施形態では、マイクロ波が吸着材料205と係合し、吸着材料205を通って出口ポート207に向かう方向に伝播し続ける可能性を増大させる方向へとマイクロ波が吸着体容器202内に伝達されるように、角度Φは90°未満であることが好ましい。
【0039】
図面に示されていない別の実施形態では、図1および図2に示す構成を組み合わせてもよい。そのような実施形態では、追加のマイクロ波放射器および窓が、図2に示す装置200の上部フランジ209の上に配置され、したがって、第1の傾斜パイプセクション210の上に配置された吸着材料が再生され得る。
【0040】
図1に示され、上記により詳細に説明された装置100と同様に、装置200の様々な特徴、例えば、入口ポート206および出口ポート207の位置、配向および数、吸着体容器202の形状、サイズおよび配向等、ならびに他の特徴、例えば、傾斜パイプセクション210の数、位置および配向を調整することができる。
【0041】
隔離された内部セクションに取り付けられたマイクロ波源
いくつかの実施形態では、マイクロ波源は、吸着体容器内に配置される。これは、マイクロ波源のコンポーネントが銅合金、亜鉛合金、および特定のゴムなど、アンモニアガスに対して感応性がある場合には困難であり得る。したがって、マイクロ波源が吸着体容器内に配置されるいくつかの実施形態では、マイクロ波源は、図3に示すように、吸着体容器内の隔離されたセクション内に配置することができる。
【0042】
図3に示す装置300では、吸着体容器302の上部部分302aは、底部セクション302bに対する上部セクション302aの小さな過圧(例えば、1~10psid)に耐えることができるマイクロ波透過窓304によって、容器302の下部部分302bから分離されている。マイクロ波源301は上部セクション302aに配置され、窓304によって底部セクション302bから隔離されている。
【0043】
放射器301からのマイクロ波はランチャ303によって導かれ、窓304を通過し、吸着体容器302に装填された吸着材料305を通って伝播する。吸着材料305は多孔板308によって支持されている。差圧調整器309は、上部セクション302aにおいて選択された過圧を維持するように設定される。高圧パージガスは、チューブ310を介して差圧調整器309に供給される。差圧調整器309は、その基準ガス線312内の圧力に、差圧調整器309の製造業者によって提供される様々な手段によって調整可能なプリセット値を加えた値に等しい減圧にて、パージガスを出口管311に導く。差圧調整器の原料ガスの組成は、マイクロ波源301を損傷せず、少量が窓304から底部セクション302bに漏れた場合にシステムのプロセスを妨げないように選択される。N+H+NHの流れを受けるマイクロ波再生吸着体容器については、NもしくはHのいずれか、またはN+Hの混合物が適切な過圧ガスの例である。上部セクション302aはまた、流量制限弁またはオリフィス314および排気ライン315を有するガス出口313に接続しており、差圧調整器309がガスの流れを停止した場合に上部セクション302a内の圧力を低下させる。これは、底部セクション302bの圧力が低下したときに一定の差圧を維持するために必要であり得る。
【0044】
上述した特徴以外は、装置300の構成は、概ね、図1に示す装置100と同様または同一である。図1に示され、上記により詳細に説明された装置100と同様に、装置300の様々な特徴、例えば入口ポート306および出口ポート307の位置、配向、および数、吸着体容器302の形状、サイズ、および配向等を調整することができる。
【0045】
吸着体容器の中心軸に沿って設置されたマイクロ波源
いくつかの実施形態では、マイクロ波源は、複数のマイクロ波源を吸着材料内に設けることができ、したがって、吸着材料が任意の長さであるにもかかわらず、吸着材料の完全な再生を可能にするように、吸着体容器内で吸着体容器の中心軸に沿って配置される。
【0046】
図4を参照すると、装置400は、1つまたは複数のマイクロ波放射器401が吸着体容器402の中心軸に沿って設置されている上記構成を採用している。図4に示す実施形態では、吸着材料403は、吸着体容器402内でマイクロ波放射器401の周辺に装填され、それによって吸着材料403の床を形成する。処理ガスは、入口ポート406を介して吸着体容器402に入り、吸収剤容器402内に装填され、多孔板405によって支持された吸着材料403の床を通って移動し、出口ポート407を介して容器402を出ることができる。1つまたは複数のマイクロ波放射器401が、吸着体容器402の中心軸に沿って配置される。マイクロ波放射器401は、吸着材料403によって囲まれている。マイクロ波放射器401によって360°放射されるマイクロ波は、吸着材料403を通って放射状に伝播し、吸着体容器壁404に当たり、反射して放射器401に戻る。このようにして、マイクロ波は、吸着材料403からNHを脱着するように機能することができる。
【0047】
図4に示す構成のいくつかの実施形態では、マイクロ波出力は、最初は比較的高い値に設定することができる。なぜなら、マイクロ波出力は、吸着材料403中のアンモニアによって吸収されており、したがって、マイクロ波出力が吸着体容器壁404から反射した後に放射器401まで完全に戻らないためである。アンモニアが吸着材料403から除去され、反射されたマイクロ波出力のかなりの束が放射器401に戻ると、マイクロ波出力を低減して、放射器401に到達する反射マイクロ波束を所望の限度未満に維持することができる。
【0048】
上述した特徴以外は、装置400の構成は、概ね、図1に示す装置100と同様または同一である。図1に示され、上記により詳細に説明された装置100と同様に、装置400の様々な特徴、例えば入口ポート406および出口ポート407の位置、配向、および数、吸着体容器402の形状、サイズ、および配向等を調整することができる。さらに、図4は2つの放射器401を示しているが、放射器401の数は限定されず、放射器401は任意の寸法を有してもよいことを理解すべきである。いくつかの実施形態では、装置400は、容器402の中心軸と位置合わせされ、容器402の略全長に延びる単一の放射器401を備える。
【0049】
図5は、マイクロ波放射器が吸着体容器の中心軸に沿って位置付けられている装置500の別の実施形態を示す。図5に示すように、吸着体容器502は、入口ポート506と、多孔板505によって支持された吸着材料503の床と、出口ポート507とを備える。マイクロ波放射器501は、吸着体容器502の中心軸上に配置される。ランチャ508は、放射器501に結合されて、マイクロ波を半径方向成分および軸方向成分の両方の伝播によってランチャ508から離す。ランチャ508は、放射器501から任意の方向に放射されたマイクロ波放射がランチャ508の方向転換に従うように放射器501を全体的に取り囲む。
【0050】
ランチャ508は、マイクロ波透過窓に適合して、マイクロ波がランチャ508から出ることを可能にする一方で、吸着材料503がランチャ508に入るのを防止することができる。そのような実施形態では、ランチャ508または窓は、ランチャ508の内部と吸着材料503との間の均圧を可能にするために排気孔を有してもよい。
【0051】
ランチャ508をるマイクロ波は、吸着体容器壁504で反射し、半径方向成分および軸方向成分の両方で伝播し続けることになる。これにより、マイクロ波束は、吸着体容器502を長さ方向に移動することができる。1つの放射器501からのマイクロ波束が次のマイクロ波放射器501の領域に到達する場合、マイクロ波束は次の放射器のランチャ508の外部から反射する。このようにして、放射器501は、他の放射器501からのマイクロ波出力に曝されない。
【0052】
図6は、マイクロ波放射器601が、マイクロ波を「回転」伝播させるランチャ605に結合されている装置600の別の実施形態の上断面図を示す。ランチャ605は、マイクロ波透過窓606に適合して、マイクロ波がランチャから出ることを可能にする一方で、吸着材料603がランチャ605に入るのを防止することができる。そのような実施形態では、ランチャ605または窓606は、ランチャ605の内部と吸着材料603との間の均圧を可能にするために排気孔を有してもよい。マイクロ波は、半径方向外の角度で半径方向平面内の吸着材料603を通って伝播し、半径方向外の角度で容器壁604から反射する。マイクロ波が容器602の中心へと伝播して戻る場合、マイクロ波は放射器601に到達するのではなくランチャ605の外面で反射する。このようにして、放射器601は反射マイクロ波出力に曝されない。
【0053】
ランチャが回転伝播および軸方向伝播の両方を引き起こすように成形されている場合、マイクロ波経路は、図5および図6に関して上述した特性の組み合わせとなる。この場合、マイクロ波は吸着材料の床を「旋回」する。マイクロ波は依然として吸着体容器壁から反射して、吸着床の長さ方向に伝播する。マイクロ波が吸着床内の次の放射器に到達する場合、マイクロ波はその放射器のランチャから反射し、したがって下流の放射器は上流の放射器のマイクロ波出力から保護される。
【実施例
【0054】
実施例1
窒素スイープガスを用いた13X型吸着ビーズからのNHのマイクロ波脱着を実証するために「マイクロ波管状炉」を構築した。マイクロ波管状炉は、1200ワットの家庭用キッチン電子レンジを横向きに使用して作られた。回転皿(carousel)を取り外し、その関連する駆動機構を切断し、2インチの石英管がマイクロ波空洞を通ることができるようにマイクロ波ハウジングの上部および底部に穴を開けることによって、電子レンジを実験室用に変更した。
【0055】
試験装置の図を図7に示す。マイクロ波管状炉は、2インチの石英管711が通っている電子レンジ710を含む。石英管711の各端部は、石英管711を1/4インチのガス線に接続することを可能にするために、ステンレス鋼製の2インチのOリング圧縮部から1/4インチのフェルールまでのフレアレス管継手712を有する。石英管711の中央部分は、13X型モレキュラーシーブビーズ714を含む。ビーズ714は、多孔質アルミナプラグ713によって適所に保持される。電子レンジ710の外側に延びる石英管711の部分は、マイクロ波が実験室内に漏れるのを防ぐためにアルミホイルで包まれている。
【0056】
ガスは、無水アンモニア701および窒素703のシリンダによって装置に供給される。各ガスの流れは、流れコントローラ(702および704)によって調節される。アンモニアおよび窒素の調節された流れが共通の管に供給される。ガス流は、弁705、706および707を適切に構成することによって、石英管711またはバイパス715のいずれかを通るように導くことができる。これらの経路のいずれかを通過した後、ガスはアンモニア検出器708を通って流れ、次いでフレア709に向けられ、そこでアンモニアはすべて燃焼して窒素および水蒸気になる。
【0057】
4000標準立方センチメートル/分(sccm)のNおよび300sccmのNHの流れを、吸着床714に向けた。吸着床714を出るガス中のNHの濃度を、0~1000ppmの赤外吸収検出器708によってモニタした。時間の関数としての出口NH濃度を図8に示す。出口NH濃度は実験開始約17分まで0であったが、当該17分の時点でNHは吸着床714を「ブレークスルー」し、検出器708の限界である1000ppmを超える出口濃度に急速に達した。18分の時点でNH流を止め、N流をオンのままにした。約23分の時点で、出口NH濃度は1000ppm未満に低下し、N流が床714および管711から残留NHをパージするにつれて低下し続けた。32分の時点で、吸着床714をバイパス715を介して迂回し、純粋なNをNHセンサ708に直接流し、センサの読み取り値を0ppm NHまで低下させ、そのゼロ較正を確認した。34分の時点で、窒素流を吸着床714に戻し、出口NH濃度を約120ppmまで上昇させた。
【0058】
36分の時点で、マイクロ波710のマイクロ波を10秒間オンにした。これにより、出口NH濃度は急速に760ppmまで上昇し、再び低下し始めた。38分の時点で、マイクロ波をさらに10秒間オンにした。これにより、出口NH濃度は1000ppm超まで急速に上昇し、次いで、マイクロ波を実験開始後約58分まで停止させると低下した。
【0059】
58分および64分の時点で、マイクロ波を吸着床714に20秒間適用した。いずれの場合も、マイクロ波は出口NH濃度を1000ppm超まで急激に上昇させ、その後急激に濃度が減少し、次いでゆっくりと濃度が減少した。
【0060】
74分の時点で、吸着床714をバイパス715を介して迂回し、純粋なNをNHセンサに導き、そのゼロ較正を再確認した。
【0061】
マイクロ波試験の前後に吸着床の熱画像を撮影した。熱画像は、吸着床714の不均一な加熱があることを示した。これは、マイクロ波空洞が定在波の形成を防止する「スターラ」を有していないことによるものと推測された。床714の最も高温の領域は100℃未満であった。13X型吸着体の熱再生を用いた先行研究は、100℃未満の温度ではNH脱着がほとんど起こらないことを示す。短いマイクロ波曝露後の出口NH濃度の急速な上昇および試験後の吸着床の中程度の温度は、マイクロ波が非熱励起により13X表面からNHを脱着することを示す。NH濃度の急速な上昇は、マイクロ波によるNH脱着が従来の熱脱着プロセスよりもはるかに速くなり得ることを示す。
【0062】
実施例2
実施例1のマイクロ波管状炉を変更して、真空ポンプを用いたマイクロ波によるNH脱着および純粋なNHの回収を実証した。図9は変更した装置の図を示す。この装置は、2インチの石英管912が通っている電子レンジ911から構成される。石英管912の各端部は、石英管912を1/4インチのガス線に接続することを可能にするために、ステンレス鋼製の2インチのOリング圧縮部から1/4インチのフェルールまでのフレアレス管継手913を有する。石英管912は、継手913が電子レンジ911のハウジングと接触することを可能にする長さに切断され、それによって実験室へのマイクロ波の漏れを防止した。石英管912の中央部分は、13X型モレキュラーシーブビーズ915を含む。ビーズ915は、多孔質アルミナプラグ914によって適所に保持される。
【0063】
ガスは、無水アンモニア901および窒素903のシリンダによって装置に供給される。各ガスの流れは、流れコントローラ(902および904)によって調節される。アンモニアおよび窒素の調節された流れが共通の管に供給される。ボール弁905を閉じて、石英管912を原料ガス901/903から隔離することができる。石英管912からの流出ガスは、ボール弁906および908を開閉することによってフレア907または真空ポンプ909のいずれかに向けることができる。真空ポンプ909からの排気は、アキュムレータブラダ910によって捕捉され、真空ポンプを通って移動したガスの量を測定する。
【0064】
4mm径の13X吸着ビーズ195.5グラム(約250mLの体積)の塊を石英管の中心に置いた。多孔質アルミナプラグを吸着ビーズの両側に配置して、ビーズをしっかりと固めた状態に保つのを助けた。
【0065】
600sccmのアンモニアを含有した窒素+アンモニアガス流を、8分間13Xビーズに通した。この間、ビーズ床からの出力はフレアに向けられた。フレアに流入するガスが燃焼するか否かを確認するために観察した。フレアに流入する窒素は燃焼せずに口火を横に押し出すが、フレアに流入するアンモニア含有ガスは特徴的な橙色のさらなる火炎を生成する。8分間ずっと橙色が観察されなかったことは、吸着床からのアンモニアの漏出がないことを示している。窒素流を維持しながらアンモニア流を停止することによってフレアの口火に影響を及ぼすかどうかを調べるために、アンモニア流を8分間の間に2回遮断した。口火は、アンモニアを遮断することによって乱されなかったが、これは、アンモニアが床から出ておらず、すべて13Xビーズによって吸着されたことを示す。
【0066】
床に600sccmのアンモニアを8分間付加した後、窒素およびアンモニアの流れを遮断した。アンモニア流に流れ持続時間を乗じたものは、4.8標準リットルのアンモニアが13Xビーズによって吸着されたことを示す。アンモニア吸着は発熱プロセスであり、前述の試験は、このアンモニア吸着量によってビーズ床温度を約50℃まで上昇させ得ることを示した。このため、床を約30分間冷却させた。
【0067】
冷却期間後、上流隔離弁905を閉じ、管912の出口を真空ポンプ909に接続し、真空ポンプ909を作動させた。真空ポンプ909は、残留ガスを管912からアキュムレータブラダ910に移送した。管912内の計算された残留ガスは0.5Lであり、これはアキュムレータブラダ910に移送されたガスの量と一致していた。アキュムレータブラダ910は、残留ガスが管912から除去されると充填を停止したが、これは、システムに漏れがなく、吸着アンモニアが真空のみによって13Xビーズから脱着されていなかったことを示す。
【0068】
真空ポンプを作動させたままにし、マイクロ波源911を公称1200Wで1分間作動させた。マイクロ波照射の間、アキュムレータブラダ910は、視覚的評価で約4Lまで膨張した。照射直後に赤外線カメラで石英管912を観察した。床の大部分は50℃で、1箇所のホットスポットは約85℃であることを示した。
【0069】
真空909をオフにし、吸着床915を約10分間冷却させた後、このプロセスをもう一度繰り返した。真空909をオンにし、マイクロ波911を1200Wで起動させた。アキュムレータブラダ910は40秒後にさらなる膨張を示さず、これはさらにアンモニアが床から除去されていないことを示し、したがってマイクロ波源はその時点で遮断された。2度目の40秒照射後の赤外線カメラによる観察により、前述の85℃のホットスポットと同じ位置に100℃のホットスポットが示された。より高い温度は、マイクロ波サイクル間の10分間の合間における床の不完全な冷却に起因するようであった。
【0070】
この実験は、13X吸着剤のマイクロ波照射がアンモニア脱着時間を劇的に減少できることを示した。本発明者らは、ビーズを85℃まで加熱した60秒間のマイクロ波照射により、吸着アンモニアの80%超が脱着されたと推定する。温度-圧力スイング処理による等価再生は1時間を超える時間および250℃超の床温度を必要とする。
【0071】
実施例3
図10に示すように、アンモニア吸着床を構築した。吸着床は、図1に関して前述した装置100の全体構成を有していた。吸着体容器本体1012は、各端部にフランジを有する4インチのスケジュール40炭素鋼パイプであった。ホウケイ酸ガラス窓1019を有する窓フランジ1020を、吸着体容器本体1012の上端に取り付けた。ガス入口管1013を吸着体容器本体1012の上端に溶接した。中心間距離0.094インチの六角形パターンの0.0625インチの穴を有する穿孔シートメタル板1015を吸着体容器本体1012の内部に溶接して、吸着ビーズ1014を支持した。めくらフランジ1021を下部吸着体容器1012のフランジに取り付けた。ガス出口管1016を、穿孔シートメタル板1015の下方の吸着体容器本体1012の下端に溶接した。
【0072】
ガスは、無水アンモニア1001および窒素1003のシリンダによって装置に供給される。各ガスの流れは、流れコントローラ(1002および1004)によって調節される。アンモニアおよび窒素の調節された流れが共通の管に供給される。ボール弁1005を閉じて、吸着体容器1012を原料ガス1001/1003から隔離することができる。ガス出口管1016を介して吸着体容器1012から出るガスは、圧力計1022を通過し、次いで隔離弁1006を通過して真空ポンプ1007に至る。真空ポンプからの排気は、ボール弁1008および1010を開閉することによってフレア1009またはアキュムレータブラダ1011のいずれかに向けることができる。アキュムレータブラダ1011は、真空ポンプを通って移動したガスの量を測定する手段を提供する。
【0073】
吸着体容器1012に、2200g(3.5L)の4mm径13X型吸着ビーズを装填した。容器1012をその原料ガス1001/1003から隔離し、その間隙ガスを真空ポンプ1007で除去し、フレア1009に排出した。吸着体容器1012を真空ポンプ1007から隔離し、原料ガスマニホールドに再接続した。容器圧力が0psig(大気圧)に達するまで、アンモニアガスを吸着体容器1012に流入させて、吸着ビーズ1014にアンモニアを完全に付加した。間隙アンモニアガスは真空ポンプ1007で除去し、フレア1009に排出した。次いで、真空ポンプ1007の排気は、29Lのガス容量を有すると予め測定されたアキュムレータブラダ1011に向けられた。
【0074】
図11は、30分間のマイクロ波誘導脱着試験中のアキュムレータ充填率および公称マイクロ波出力を示す。マイクロ波源1017は、試験の最初の3分間は停止していた(0ワット)。この間、アキュムレータブラダ1011は充填されず、これは、システムに漏れがないこと、及び、アンモニアが真空だけでは除去できないこととを示している。マイクロ波源1017を、4~6分間作動させ(1200W)、次いで、2分間停止(0W)して、試験の3分時点から冷却した。アキュムレータブラダ1011は、約11分間のマイクロ波曝露後に充填し始めることが観察された。アンモニアが吸着体容器1012から出始めると、マイクロ波源1017停止中もアンモニアは出続けた。マイクロ波源の21分間の作動および9分間の停止からなる30分間が終了したとき、アキュムレータブラダ1011は一杯であった。
【0075】
実施例4
図12に示すように、アンモニア吸着床を構築した。吸着体容器本体1212は、各端部にめくらフランジ1221を有する4インチのスケジュール40炭素鋼パイプであった。ホウケイ酸ガラス窓1219を有する窓フランジ1220を、45°の角度で主吸着体容器1212本体に接するパイプセクションに取り付けた。ガス入口管1213を吸着体容器本体1212の上端に溶接した。0.094インチの中心間分離を有する0.0625インチの六角形パターンの穴を有する穿孔シートメタル板1215を吸着体容器本体1212の内部に溶接して、吸着ビーズ1214を支持した。ガス出口管1216を、穿孔シートメタル板1215の下方の吸着体容器本体1212の下端に溶接した。
【0076】
ガスは、無水アンモニア1201および窒素1203のシリンダによって装置に供給される。各ガスの流れは、流れコントローラ(1202および1204)によって調節される。アンモニアおよび窒素の調節された流れが共通の管に供給される。ボール弁1205を閉じて、吸着体容器1212を原料ガスから隔離することができる。ガス出口管1216を介して吸着体容器1212から出るガスは、圧力計1222を通過し、次いで隔離弁1206を通過して真空ポンプ1207に至る。真空ポンプからの排気は、ボール弁1208および1210を開閉することによってフレア1209またはアキュムレータブラダ1211のいずれかに向けることができる。アキュムレータブラダ1211は、真空ポンプを通って移動したガスの量を測定する手段を提供する。
【0077】
吸着体容器1212に、2200g(3.5L)の4mm径13X型吸着ビーズを装填した。容器1212をその原料ガス1201/1203から隔離し、その間隙ガスを真空ポンプ1207で除去し、フレア1209に排出した。吸着体容器1212を真空ポンプ1207から隔離し、原料ガスマニホールドに再接続した。容器圧力が0psig(大気圧)に達するまで、アンモニアガスを吸着体容器1212に流入させて、吸着ビーズ1214にアンモニアを完全に付加した。間隙アンモニアガスは真空ポンプ1207で除去し、フレア1209に排出した。次いで、真空ポンプ排気は、29Lのガス容量を有するように予め測定されたアキュムレータブラダ1211に向けられた。
【0078】
真空ポンプ1207が作動している間、1200Wマイクロ波源1217を5分間作動させ、3.5分間冷却させた後、5.5分間作動させた。マイクロ波源1217の10.5分間の作動および3.5分間の停止からなる14分間が終了したとき、アキュムレータブラダ1211はアンモニアで一杯であった。この45°の角度構成は、図10に示され、実施例3に記載された直線状の構成と比較して、吸着床1214から29Lのアンモニアを除去するのに半分の時間を要した。
【0079】
上記より、本発明の特定の実施形態が説明のために本明細書に記載されているが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことができることが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて限定されない。
【0080】
本技術は、特定の構造および材料に特有の言い回しで説明したが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明は、説明された特定の構造および材料に必ずしも限定されないことを理解すべきである。むしろ、特定の態様は、特許請求された発明を実施する形態として記載される。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの実施形態を実施することができるため、本発明は以下に添付する特許請求の範囲に存在する。
【0081】
別段の指示がない限り、本明細書(特許請求の範囲を除く)において使用される、寸法、物理的特性等を表すものなどのすべての数または表現は、どんな場合にも用語「約」によって修飾されたものとして理解される。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとする試みとしてではなく、少なくとも、明細書または特許請求の範囲に記載された、用語「約」によって修飾された各数値パラメータは、少なくとも、記載された有効数字に照らして、また丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。さらに、本明細書に開示されたすべての範囲は、あらゆるサブ範囲またはそこに包含されるあらゆる個々の値を記載する請求項を包含し、その裏付けを提供するものと理解されるべきである。例えば、記載された1~10の範囲は、1の最小値と10の最大値との間で、かつ/またはそれらを含むあらゆるサブ範囲または個々の値、すなわち、1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わるすべてのサブ範囲(例えば、5.5~10、2.34~3.56など)または1~10の任意の値(例えば、3、5.8、9.9994など)を記載する請求項を含み、その裏付けを提供すると考えるべきである。

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【国際調査報告】