(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】AAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックス及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230406BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230406BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230406BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230406BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20230406BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230406BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20230406BHJP
C12N 7/02 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K14/705
C07K14/78
C07K19/00
C12N7/00
C12N7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549809
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2021018812
(87)【国際公開番号】W WO2021168276
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522327887
【氏名又は名称】アイソレア バイオ,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】591101777
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ルジンブール,ケリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ズリッキー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】エルモア,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】アソカン,アラヴィンド
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA24
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA21
(57)【要約】
本明細書には、アデノ随伴ウイルス(AAV)結合ポリペプチドを含む精製マトリックス及びその使用方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相挙動を有するポリペプチドにカップリングしたAAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスであって、前記AAV結合ポリペプチドが、AAV受容体(AAVR)のエクトドメイン、又はそのAAV結合断片若しくは誘導体を含む、精製マトリックス。
【請求項2】
前記AAVRが、ヒト、サル、オランウータン、又はマウスAAVR、又はその誘導体である、請求項1に記載の精製マトリックス。
【請求項3】
前記AAV結合ポリペプチドが、配列番号28~32、37~41、43~47、及び52~86のうちのいずれか1つを含む、請求項1に記載の精製マトリックス。
【請求項4】
前記AAV結合ポリペプチドが、配列番号29、33、52、64のうちのいずれか1つの配列、又は配列番号29、33、52、又は64のうちのいずれか1つと比べて最大25個のアミノ酸突然変異を含む配列を含む、請求項1に記載の精製マトリックス。
【請求項5】
前記AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎2(PKD2)ドメイン、又はその断片を含む、請求項1に記載の精製マトリックス。
【請求項6】
前記AAV結合ポリペプチドが、前記相挙動を有するポリペプチドに可逆的にカップリングされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項7】
前記AAV結合ポリペプチドが、前記相挙動を有するポリペプチドに共有結合的にカップリングされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項8】
前記相挙動のあるポリペプチドが、エラスチン様ポリペプチドである、請求項1~7のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項9】
前記相挙動のあるポリペプチドが、配列(Val-Pro-Gly-Xaa-Gly)
n(配列番号10)を有するペンタペプチドリピート、又はそのランダム化されたスクランブル類似体を含み;式中、Xaaが、プロリンを除く任意のアミノ酸であってよく、式中、nが、1以上360以下の間にある整数である、請求項1~7のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項10】
前記相挙動のあるポリペプチドが、
a.(GRGDSPY)
n(配列番号1)
b.(GRGDSPH)
n(配列番号2)
c.(GRGDSPV)
n(配列番号3)
d.(GRGDSPYG)
n(配列番号4)
e.(RPLGYDS)
n(配列番号5)
f.(RPAGYDS)
n(配列番号6)
g.(ZZPXXXXGZ)
m(配列番号148);
h.(GRGDSYP)
n(配列番号7)
i.(GRGDSPYQ)
n(配列番号8)
j.(GRGNSPYG)
n(配列番号9)
k.(GVGVP)
n(配列番号11);
l.(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)
m(配列番号12);
m.(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)
m(配列番号13);
n.(GVGVPGWGVPGVGVPGWGVPGVGVP)
m(配列番号14);
o.(GVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGEGVPGFGVPGVGVP)
m(配列番号15);
p.(GVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGKGVPGFGVPGVGVP)
m(配列番号16);及び
q.(GAGVPGVGVPGAGVPGVGVPGAGVP)
m(配列番号17)
から選択されるアミノ酸配列;
又はそのランダム化されたスクランブル類似体
(式中:
nは、20~360の範囲の整数であり;及び
mは、4~25の範囲の整数である)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項11】
前記相挙動のあるポリペプチドが、
(a)(GVGVP)
m(配列番号143);
(b)(ZZPXGZ)
m(配列番号149);
(c)(ZZPXXGZ)
m(配列番号150);又は
(d)(ZZPXXXGZ)
m(配列番号151)
(式中、mは、10以上160以下の間にある整数であり、式中、Xは、存在する場合に、プロリン又はグリシンを除く任意のアミノ酸であり、及び式中、Zは、存在する場合に、任意のアミノ酸である)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項12】
前記相挙動のあるポリペプチドが、
(a)(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)
m(配列番号144);又は
(b)(GVGVPGVGVPGLGVPGVGVPGVGVP)
m(配列番号146);
(式中、mは、2以上32以下の間にある整数である)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項13】
前記相挙動のあるポリペプチドが、
(a)(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)
m(配列番号144)(式中、mは、8又は16である);
(b)(GVGVPGAGVP)
m(配列番号145)(式中、mは、5以上80以下の間にある整数である);又は
(c)(GXGVP)
m(配列番号147)(式中、mは、10以上160以下の間にある整数であり、及び式中、リピート毎にXは、独立に、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びセリンからなる群から選択される)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項14】
前記精製マトリックスが、配列番号29、配列番号52、又は配列番号64のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドと、配列番号88のアミノ酸又は(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)
m(式中、mは16である)の配列(配列番号12)を含む相挙動のあるポリペプチドとを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項15】
前記精製マトリックスが、配列番号87及び171~174のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の精製マトリックス。
【請求項16】
前記精製マトリックスが、配列番号171のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の精製マトリックス。
【請求項17】
前記精製マトリックスが、配列番号170のアミノ酸配列を有する相挙動のあるポリペプチドと、配列番号169のAAV結合ポリペプチドとを含む、請求項15に記載の精製マトリックス。
【請求項18】
AAV粒子の精製方法であって、前記AAV粒子を請求項1~17のいずれか一項に記載の精製マトリックスと接触させることを含む方法。
【請求項19】
前記AAV粒子が、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つのカプシドタンパク質を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記AAV粒子が前記精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
第1の環境因子を使用して前記AAV-精製マトリックス複合体の前記サイズを増加させることを含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法であって、
前記第1の環境因子が、
a.温度、pH、塩濃度又は圧力のうちの1つ以上の変化;
b.1つ以上の界面活性剤、補因子、ビタミン、分子クラウディング剤、酵素、変性剤の添加;又は
c.電磁波又は音波の適用
のうちの1つ以上を含む、方法。
【請求項22】
タンジェンシャルフローろ過、分析超遠心、膜クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、ノーマルフローろ過、音波分離、遠心、向流遠心、及び高速タンパク質液体クロマトグラフィーからなる群から選択される技法を用いて前記AAV-精製マトリックス複合体をサイズを基準として少なくとも1つの不純物から分離することを含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
第2の環境因子を用いて前記AAV粒子を前記AAV-精製マトリックス複合体から溶出させ、前記第2の環境因子が、
a.温度、pH、塩濃度又は圧力のうちの1つ以上の変化;
b.1つ以上の界面活性剤、補因子、ビタミン、分子クラウディング剤、変性剤、酵素の添加;又は
c.電磁波又は音波の適用
のうちの1つ以上を含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
配列番号28~47、52、64、若しくは169のうちのいずれか1つの配列又は配列番号28~47、52、64、若しくは169のうちのいずれか1つと比べて少なくとも1つの突然変異を有する配列を含むAAV結合ポリペプチド。
【請求項25】
請求項24に記載のAAV結合ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸を含むベクター。
【請求項27】
請求項24に記載のAAV結合ポリペプチド、請求項25に記載の核酸、請求項26に記載のベクター、又はこれらの組み合わせを含む、組成物。
【請求項28】
AAV粒子のその生産時の収率を増加させる方法であって、AAV生産細胞を精製マトリックスの存在下に培養することを含む方法。
【請求項29】
AAV粒子をその生産時に安定化させる方法であって、AAV生産細胞を精製マトリックスの存在下に培養することを含む方法。
【請求項30】
AAV粒子をその精製時に安定化させる方法であって、前記AAV粒子をその精製時に精製マトリックスと接触させることを含む方法。
【請求項31】
AAV粒子をその貯蔵時に安定化させる方法であって、前記AAV粒子を精製マトリックスの存在下に貯蔵することを含む方法。
【請求項32】
AAV粒子の保管寿命を増加させる方法であって、前記AAV粒子を精製マトリックスの存在下に貯蔵することを含む方法。
【請求項33】
前記精製マトリックスが、請求項1~17のいずれか一項に記載の精製マトリックスである、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも約10μMの精製マトリックスが存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記AAV粒子が、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つの野生型AAV粒子である、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記AAV粒子が突然変異体AAV粒子である、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記AAV粒子が前記精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2020年9月22日に出願された米国仮特許出願第63/081,405号及び2020年2月19日に出願された米国仮特許出願第62/978,616号に対する優先権を主張する。前述の出願の各々の内容は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルに関する記載事項
[0002] 本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、全体として参照により本明細書に援用される:配列表のコンピュータ可読形式の写し(ファイル名:ISOL_003_02WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2021年2月19日;ファイルサイズ:15メガバイト)。
【0003】
[0003] 本開示は、概して、生物製剤の精製のための組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示は、アデノ随伴ウイルス結合ポリペプチドを含む精製マトリックス及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
[0004] アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子療法における1つ以上の治療用遺伝子の送達に有望な輸送手段である。AAVは、小型の複製欠損性DNAウイルスであり、感染細胞のゲノムに組み込まれる能力を有する。AAVは、治療用遺伝子の持続的な発現を促進し、遺伝子療法ベクターを繰り返し投与する必要性を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] しかしながら、AAVの作製及び精製方法には制約があり、それらが遺伝子療法へのAAVの広範な使用を困難にしている。AAVの増殖には、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスを使用する必要がある。ヘルパーウイルスが必要なため、AAV粒子の精製は複雑となる。現在のAAV粒子精製手法は、凍結融解サイクルの繰り返しを用いてAAV感染細胞を溶解させた後、続いて密度勾配遠心を用いて細胞ライセートを分画することにより、細胞性の汚染物質を含まない、且つ実質的にヘルパーウイルスを含まない感染性AAV粒子を入手することを伴うものである。標準的な精製技法では、概して活動性(感染性)ウイルスの収率は極めて低くなる(0.3~5%)。更に、ヘルパーウイルスを全く含まないAAV組成物を入手することは困難である。従って、当該技術分野では、改良されたAAV精製方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
[0006] 本開示は、AAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックス及びその使用方法を提供する。
【0007】
[0007] 一部の実施形態において、本開示は、相挙動を有するポリペプチドにカップリングしたAAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスを提供し、ここでAAV結合ポリペプチドは、AAV受容体(AAVR)のエクトドメイン、又はそのAAV結合断片若しくは誘導体を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、相挙動を有するポリペプチドに可逆的にカップリングされる。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、相挙動を有するポリペプチドに共有結合的にカップリングされる。
【0008】
[0008] 一部の実施形態において、AAVRは、ヒトAAVRである。一部の実施形態において、AAVRは、サルAAVRである。一部の実施形態において、AAVRは、オランウータンAAVRである。一部の実施形態において、AAVRは、マウスAAVRである。一部の実施形態において、AAVRは、ヒト、サル、オランウータン、又はマウスAAVRのうちのいずれか1つの誘導体である。
【0009】
[0009] 一部の実施形態において、AAVRは、野生型AAVRである。一部の実施形態において、AAVRは、突然変異体AAVRである。
【0010】
[0010] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号29、33、52、又は64のうちのいずれか1つの配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、最大25個のアミノ酸突然変異を有する配列番号29、33、52、又は64のうちのいずれか1つの配列を含む。
【0011】
[0011] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異を有する配列番号35のアミノ酸411~499を含む。一部の実施形態において、各突然変異は、個別に、V440H、S431H、Q432H、T434H、Y442H、I462H、D435H、D436H、K438H、及びI439Hからなる群から選択される。
【0012】
[0012] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号28~32、37~41、43~47、及び52~86のうちのいずれか1つを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号28~32、37~41、43~47、及び52~86のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを含む。
【0013】
[0013] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎1(PKD1)ドメイン、又はその断片を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎2(PKD2)ドメイン、又はその断片を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎3(PKD3)ドメイン、又はその断片を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎4(PKD4)ドメイン、又はその断片を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎5(PKD5)ドメイン、又はその断片を含む。
【0014】
[0014] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号29の配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸(即ち、非ヒスチジンアミノ酸)がヒスチジンに突然変異している配列番号29の配列を含む。
【0015】
[0015] 一部の実施形態において、本開示は、支持体にカップリングしたAAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスを提供し、ここでAAV結合ポリペプチドは、AAV受容体(AAVR)のエクトドメイン、又はそのAAV結合断片若しくは誘導体を含む。一部の実施形態において、支持体は、ビーズ、樹脂、膜、繊維、ポリマー、プレート、又はチップを含む。一部の実施形態において、支持体は、セファロース、アガロース、セルロース、ポリスチレン、ポリメタクリレート、及び/又はポリアクリルアミドを含むビーズである。一部の実施形態において、支持体は、磁気ビーズである。一部の実施形態において、支持体は、ポリマーである。一部の実施形態において、支持体は、合成ポリマーである。
【0016】
[0016] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、支持体に可逆的にカップリングされる。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、相挙動を有するポリペプチドに可逆的にカップリングされる。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、支持体に共有結合的にカップリングされる。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、相挙動のあるポリペプチドに共有結合的にカップリングされる。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、支持体に非共有結合的にカップリングされる。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、相挙動のあるポリペプチドに非共有結合的にカップリングされる。
【0017】
[0017] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、支持体にリンカーを介してカップリングされる。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、相挙動のあるポリペプチドにリンカーを介してカップリングされる。一部の実施形態において、リンカーはペプチドリンカーである。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、プロテアーゼ切断部位を含む。一部の実施形態において、リンカーは化学的リンカーである。
【0018】
[0018] 一部の実施形態において、融合タンパク質が、AAV結合ポリペプチドと、相挙動を有するポリペプチドとを含む。
【0019】
[0019] 一部の実施形態において、相挙動を有するポリペプチドは、エラスチン様ポリペプチドである。一部の実施形態において、相挙動を有するポリペプチドは、レジリン様ポリペプチドである。
【0020】
[0020] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、配列(Val-Pro-Gly-Xaa-Gly)n(配列番号10)を有するペンタペプチドリピート、又はそのランダム化されたスクランブル類似体を含み;式中、Xaaは、プロリンを除く任意のアミノ酸であってよい。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、配列(Val-Pro-Gly-Xaa-Gly)n(配列番号10)を有するペンタペプチドリピート、又はそのランダム化されたスクランブル類似体を含み;式中、Xaaは、プロリンを除く任意のアミノ酸であってよく、式中、nは、1以上360以下の間にある整数である。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GRGDSPY)n(配列番号1);(GRGDSPH)n(配列番号2);(GRGDSPV)n(配列番号3);(GRGDSPYG)n(配列番号4);(RPLGYDS)n(配列番号5);(RPAGYDS)n(配列番号6);(GRGDSYP)n(配列番号7);(GRGDSPYQ)n(配列番号8);(GRGNSPYG)n(配列番号9);(GVGVP)n(配列番号11);(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12);(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号13);(GVGVPGWGVPGVGVPGWGVPGVGVP)m(配列番号14);(GVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGEGVPGFGVPGVGVP)m(配列番号15); (GVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGKGVPGFGVPGVGVP)m(配列番号16);及び(GAGVPGVGVPGAGVPGVGVPGAGVP)m(配列番号17)から選択されるアミノ酸配列;又はそのランダム化されたスクランブル類似体を含み;式中:nは、20~360の範囲の整数であり;及びmは、4~25の範囲の整数である。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号144)又は(GVGVPGVGVPGLGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号146)のアミノ酸配列を含み、式中、mは、2以上32以下の間にある整数である。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGAGVP)m(配列番号145)のアミノ酸配列を含み、式中、mは、5以上80以下の間にある整数である。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GXGVP)m(配列番号147)のアミノ酸配列を含み、式中、mは、10以上160以下の間にある整数であり、及び式中、リピート毎にXは、独立に、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びセリンからなる群から選択される。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVP)m(配列番号143)、(ZZPXXXXGZ)m(配列番号148)、(ZZPXGZ)m(配列番号149)、(ZZPXXGZ)m(配列番号150)、又は(ZZPXXXGZ)m(配列番号151)から選択されるアミノ酸配列を含み、式中、mは、10以上160以下の間にある整数であり、式中、Xは、存在する場合に、プロリン又はグリシンを除く任意のアミノ酸であり、及び式中、Zは、存在する場合に、任意のアミノ酸である。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GRGDXPZX)m(配列番号152)又は(XZPXDGRG)m(配列番号153)のアミノ酸配列を含み、式中、Xはグルタミン又はセリンであり、Zはチロシン又はバリンであり、及びmは、10以上160以下の間にある整数である。
【0021】
[0021] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号29、配列番号52、又は配列番号64のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドと、(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号87のアミノ酸配列を含む。
【0022】
[0022] 一部の実施形態において、本開示は、AAVの精製方法であって、AAVを本明細書に記載される精製マトリックスと接触させることを含む方法を提供する。
【0023】
[0023] 一部の実施形態において、AAVは、野生型AAVカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、AAVは、突然変異体AAVカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、AAVは、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つのカプシドタンパク質を含む。
【0024】
[0024] 一部の実施形態において、AAVは、精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する。一部の実施形態において、本方法は、AAV-精製マトリックス複合体を1つ以上の不純物から分離することを含む。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は、AAV-精製マトリックス複合体を洗浄することによって1つ以上の不純物から分離される。
【0025】
[0025] 一部の実施形態において、本方法は、AAV-精製マトリックス複合体からAAVを溶出させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物のpHを変化させることによってAAVを溶出させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物の温度を変化させることによってAAVを溶出させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物のイオン強度を変化させることによってAAVを溶出させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物に還元剤を添加することによってAAVを溶出させることを含む。
【0026】
[0026] 一部の実施形態において、本方法は、第1の環境因子を使用してAAV-精製マトリックス複合体のサイズを増加させることを含む。一部の実施形態において、第1の環境因子は、a.)温度、pH、塩濃度又は圧力のうちの1つ以上の変化;b.)1つ以上の界面活性剤、補因子、ビタミン、分子クラウディング剤、酵素、変性剤の添加;又はc.)電磁波又は音波の適用のうちの1つ以上を含む。
【0027】
[0027] 一部の実施形態において、本方法は、AAV-精製マトリックス複合体をサイズを基準として少なくとも1つの不純物から分離することを含む。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は、直径を基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は、質量を基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態において、サイズを基準とした分離は、タンジェンシャルフローろ過、分析超遠心、膜クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、ノーマルフローろ過、音波分離、遠心、向流遠心、及び高速タンパク質液体クロマトグラフィーを用いて実施される。
【0028】
[0028] 一部の実施形態では、AAVをAAV-精製マトリックス複合体から溶出させるために第2の環境因子が使用される。一部の実施形態において、第2の環境因子は、温度、pH、塩濃度若しくは圧力のうちの1つ以上の変化;1つ以上の界面活性剤、補因子、ビタミン、分子クラウディング剤、変性剤、酵素の添加;又は電磁波若しくは音波の適用のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態において、本開示の方法は、約2時間~約10時間で完了する。
【0029】
[0029] 一部の実施形態において、本明細書に記載される精製方法は、約4時間~約8時間で完了する。
【0030】
[0030] 一部の実施形態では、組成物が、本開示の方法により精製されたAAV粒子を含む。一部の実施形態において、この組成物は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%が不純物を含まない。
【0031】
[0031] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号28~47、52、又は64のうちのいずれか1つの配列、又は少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する配列番号28~47、52又は64のうちのいずれか1つの配列を含む。
【0032】
[0032] また、本明細書には、本明細書に記載される1つ以上のAAV結合ポリペプチドをコードする核酸も提供される。
【0033】
[0033] また、本明細書には、本明細書に記載される1つ以上のAAV結合ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターも提供される。
【0034】
[0034] また、本明細書には、本明細書に開示されるAAV結合ポリペプチド、AAV結合ポリペプチドをコードする核酸、及び/又はAAV結合ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを含む組成物も提供される。
【0035】
[0035] また、本明細書には、本明細書に開示されるAAV結合ポリペプチド、AAV結合ポリペプチドをコードする核酸、及び/又はAAV結合ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを含むキットも提供される。
【0036】
[0036] また、本明細書には、AAV粒子のその生産時の収率を増加させる方法であって、AAV生産細胞を精製マトリックスの存在下に培養することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、少なくとも約10μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、少なくとも約10μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、AAV粒子は、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つの野生型AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は、突然変異体AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する。
【0037】
[0037] また、本明細書には、AAV粒子をその生産時に安定化させる方法であって、AAV生産細胞を精製マトリックスの存在下に培養することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、少なくとも約10μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、少なくとも約10μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、AAV粒子は、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つの野生型AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は、突然変異体AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する。
【0038】
[0038] また、本明細書には、AAV粒子をその精製時に安定化させる方法であって、AAV粒子をその精製時に精製マトリックスと接触させることを含む方法も提供される。一部の実施形態において、AAV粒子の精製時に少なくとも約10μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、AAV粒子の精製時に少なくとも約50μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、AAV粒子は、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つの野生型AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は、突然変異体AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する。
【0039】
[0039] また、本明細書には、AAV粒子をその貯蔵時に安定化させる方法であって、AAV粒子を精製マトリックスの存在下に貯蔵することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、AAV粒子の精製時に少なくとも約10μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、AAV粒子の精製時に少なくとも約50μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、AAV粒子は、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つの野生型AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は、突然変異体AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する。
【0040】
[0040] また、本明細書には、AAV粒子の保管寿命を増加させる方法であって、AAV粒子を精製マトリックスの存在下に貯蔵することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、AAV粒子の精製時に少なくとも約10μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、AAV粒子の精製時に少なくとも約50μMの精製マトリックスが存在する。一部の実施形態において、AAV粒子は、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つの野生型AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は、突然変異体AAV粒子である。一部の実施形態において、AAV粒子は精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する。
【0041】
[0041] これら及び他の実施形態について、以下の詳細な説明、実施例、及び特許請求の範囲に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】[0042]定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって決定したときの、精製マトリックスを使用して細胞上清から捕捉したAAV粒子の割合を示す。
【
図2】[0043]qPCRによって決定したときの、様々な溶出条件(例えば、第2の環境因子)を用いて精製マトリックスから溶出したAAV粒子の割合を示す。
【
図3】[0044](1)精製していない細胞上清の試料、及び(2)本開示の方法により精製したAAV粒子を含む試料を含有する銀染色したゲルの画像を提供する。AAV粒子を含有する試料では、VP1、VP2、及びVP3タンパク質のバンドが予想どおりのサイズ(即ち、それぞれ87kDa、72kDa、及び62kDa)で観察された。
【
図4】[0045]ウエスタンブロットの画像を提供し、これは、本明細書に記載される精製マトリックスを使用して、細胞上清中に存在するAAV VP1、VP2、及びVP3カプシドタンパク質を捕捉し、細胞上清から除去することに成功したことを示している。
【
図5A】[0046]対照AAV粒子(Pos Ctrl)、又は(i)本開示の方法によって精製していないか(Pos Ctrl)、若しくは(ii)本開示の精製マトリックス(例えばViraTag(商標))で精製したか、いずれかの、tdTomatoトランス遺伝子を担持するAAV8粒子に感染させた細胞の写真を示す。対照AAV及びViraTag(商標)で精製したAAVの両方とも、感染性である。「Neg Ctrl」と表示される画像は、いかなるAAV粒子にも感染させなかった細胞を示す。
【
図5B】[0047]対照AAV粒子(Pos Ctrl)又は本明細書に記載されるとおりの精製マトリックス(例えばViraTag(商標))で精製したAAV粒子に感染させた細胞の蛍光強度を示す。試験した両方のタイプのAAV粒子が、tdTomatoトランス遺伝子を担持した。
【
図6】[0048]AAV9精製マトリックス複合体を不純物から分離する間のタンジェンシャルフローろ過流束及び膜間差圧を示すグラフである。精製マトリックスはAAV9粒子をタンジェンシャルフローろ過(TFF)によって濃縮-ダイアフィルトレーション-濃縮-ダイアフィルトレーション(CDCD)モードで効率的に精製することができる。この工程は、高い流束で且つ低く安定した膜間差圧(TMP)によって透過制御モードで実施される。
【
図7】[0049]ウエスタンブロットであり、これは、タンジェンシャルフローろ過(TFF)工程の種々のステップにおけるAAVのVP1、VP2、及びVP3タンパク質の有無を示す。SM(出発材料)と表示される第1のレーンは、出発材料中にAAV粒子が存在することを示す。SMは、tdTomatoトランス遺伝子をパッケージングする組換えAAV9ベクターを産生する培養HEK293細胞からの上清であって、10U/mLベンゾナーゼ及び0.01%プルロニック酸で処理される。C(P)と表示される第2のレーンは、透過液中にAAV粒子が存在しないことを示す。C(R)と表示される第3のレーンは、保持液中にAAV粒子が存在することを示す。W(P)と表示される第4のレーンは、除去した汚染物質を含有する洗浄液中にAAV粒子が存在しないことを示す。E(P)と表示される第5のレーンは、溶出したAAV粒子を示す。
【
図8】[0050]TFF濃縮及びダイアフィルトレーションの間のAAV-精製マトリックス複合体を含有する組成物内にある汚染宿主細胞タンパク質(HCP)の定量化を示すグラフである。AAV-精製マトリックス複合体を含有する組成物は、SM又は「出発材料」と称され、血清型AAV9のAAV粒子を含有する。TFFの濃縮及びダイアフィルトレーション段階全体を通じて、1mL画分が収集される。DV1、DV2、DV3-4、DV5-6、DV7-8、及びDV9-10は、TFFの濃縮段階の間に収集された画分を指す。W1-2、W3-4、及びW5-6は、ダイアフィルトレーションの洗浄段階の間に収集された画分を指す。EC、E1、E2、E3、及びE4は、ダイアフィルトレーションの溶出段階の間に収集された画分を指す。
【
図9】[0051]精製マトリックスによる精製前(出発材料(SM)と称される)及び精製マトリックスによる精製後(「溶出」と称される)のAAV9粒子を含む組成物中における二本鎖DNA(dsDNA)不純物の濃度を示すグラフである。
【
図10】[0052]AAV8粒子の組成物が精製マトリックスの「AAV捕捉効率」に及ぼす効果を示すグラフである。AAV8粒子を含む組成物には、「ライセート」と称される、AAV8粒子を産生するHEK293細胞の細胞ライセートからの組成物、及び「上清」と称される、AAV8粒子を産生するHEK293細胞から回収した培地を含む組成物が含まれた。組成物は、1×10
7ウイルス粒子毎マイクロリットル(vp/uL)(「E7」と称される)、1×10
8vp/uL、又は1×10
10vp/uLのウイルス力価を含有した。組成物は、清澄化したもの(+)、又は清澄化していないもの(-)であった。組成物は、ヌクレアーゼに曝露したもの(+)又はヌクレアーゼに曝露していないもの(-)であった。精製マトリックスを使用して、各組成物からAAV8粒子を捕捉した。各試料のAAV捕捉効率は、以下の式を用いて計算した:100×(精製マトリックスによって捕捉されたAAV8粒子数/精製前の組成物中にあるAAV8粒子数)。
【
図11】[0053]銀染色したSDS-PAGEゲルの画像を提供し、これは、AAV8粒子を精製マトリックスで精製すると、ベンゾナーゼヌクレアーゼによる前処理とは無関係に、高純度のAAV8粒子が生じることを示している。(-)は、ベンゾナーゼヌクレアーゼによる前処理が実施されなかったことを示し、(+)は、前処理が実施されたことを示している。
【
図12】[0054]ベンゾナーゼヌクレアーゼ前処理がある(+)又はない(-)ときのAAV8試料中のdsDNA濃度を示すグラフである。前処理があるとき、又はないときで、精製マトリックスから溶出した精製後のAAV8を含む組成物は、Quant-iT picogreenアッセイによって評価したとき、同程度のdsDNAを有した。溶解したSM:清澄化した細胞ライセートを含む出発材料;捕捉:精製マトリックス捕捉ステップ上清;溶出:精製マトリックス溶出ステップ上清。
【
図13】[0055]様々な速度で遠心した後のAAV捕捉効率を示す。この図は、3500及び16000RCFを含め、500相対遠心力(RCF)以上の遠心速度を用いると、95%を超えるAAV8粒子の捕捉が達成されることを示している。
【
図14】[0056]逆方向末端反復(ITR)定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって定量化したときの、標準条件下(対照)又は精製マトリックス添加時のHEK293細胞培養物によって生み出されるAAV2力価の比較を示す。このデータは、精製マトリックスが存在すると、力価が8%以上増加し得ることを示している。スチューデントt検定、p=0.077。
【
図15】[0057]AAV8粒子と精製マトリックスとを含む組成物及びAAV8粒子とPBSとを含む組成物(陰性対照)における凍結融解サイクルを繰り返した後の全AAV8カプシドの変化率を示す。
【
図16】[0058]精製マトリックス濃度がAAV8粒子の捕捉効率に及ぼす効果を示すグラフである。捕捉効率は、以下の式を用いて計算した:100×(精製マトリックスによって捕捉されたAAV8粒子数/精製前の組成物中にあるAAV8粒子数)。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義
[0059] 本明細書で使用されるとき、及び添付の特許請求の範囲において、単数形「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形の指示対象を含む。従って、例えば、「あるタンパク質」と言うとき、それは1つのタンパク質を指すか、又はかかるタンパク質の混合物を指すことができ、「その方法」と言うとき、それは当業者に公知の等価なステップ及び/又は方法への言及を含むなどである。
【0044】
[0060] 本明細書で使用されるとき、用語「約」又は「近似的に」は、数値の前に付くとき、値±10%の範囲を示す。例えば、「約100」は、90及び110を包含する。
【0045】
[0061] また、本明細書で使用されるとき、「及び/又は」は、関連のある列挙される項目のうちの1つ以上の可能なあらゆる組み合わせ、並びに別様に解釈されるときの組み合わせの欠如(「又は」)を指し、及びそれを包含する。
【0046】
[0062] 文脈上特に指示がない限り、本明細書に記載される様々な特徴を任意の組み合わせで用い得ることが具体的に意図される。
【0047】
[0063] 更に、本開示はまた、一部の実施形態において、本明細書に示される任意の特徴又は特徴の組み合わせが除外され又は省かれ得ることも企図する。更に説明すれば、例えば、特定のアミノ酸がA、G、I、L及び/又はVから選択されてもよいと本明細書に指示がある場合、その文言はまた、アミノ酸が、それらのアミノ酸の任意の一部、例えばA、G、I又はL;A、G、I又はV;A又はG;Lのみ等から選択されてもよいことも指示しており、ここではかかる部分的組み合わせの各々が本明細書に明示的に示されたものとする。更に、かかる文言はまた、指定されるアミノ酸の1つ以上がディスクレームされてもよいことも指示している。例えば、詳細な実施形態において、アミノ酸は、A、G又はIでない;Aでない;G又はVでない等であり、ここでは、かかる可能なディスクレーマーの各々が本明細書に明示的に示されたものとする。
【0048】
[0064] 「アデノ随伴ウイルス」(AAV)は、小型の複製欠損性パルボウイルスである。本明細書で使用されるとき、AAVは、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3(3A型及び3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh32.33、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh74、AAVhu.68、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヘビAAV、フトアゴヒゲトカゲAAV、AAV2i8、AAV2g9、AAV-LK03、AAV7m8、AAV Anc80、AAV PHP.B、及び現在公知の、又は後に発見される任意の他のAAVのうちのいずれか1つの野生型又は突然変異体AAVを指し得る。一部の実施形態において、AAVは一本鎖ゲノムを有し得るか、又は二本鎖のゲノムを有し得る(例えば、自己相補性AAV)。
【0049】
[0065] 「AAV粒子」は、典型的には、カプシドと、タンパク質カプシドによってカプシドに封入された核酸(例えば、トランス遺伝子を含む核酸)とを含む。「カプシド」は、ほぼ球形のタンパク質外殻であり、T=1の正二十面体対称で会合及び配列した個々の「カプシドタンパク質サブユニット」又は「カプシドタンパク質」(例えば、約60個のカプシドタンパク質サブユニット)を含んでいる。従って、本明細書に記載されるAAVベクターのカプシドは、複数のカプシドタンパク質を含む。AAV粒子がカプシドタンパク質を含むと記載されるとき、そのAAV粒子はカプシドを含み、ここでカプシドは1つ以上のAAVカプシドタンパク質を含むことは理解されるであろう。AAV粒子が結合ドメインに結合していると記載されるとき、その結合ドメインは、カプシドの範囲内にある1つ以上のカプシドタンパク質に結合していてもよいことは理解されるであろう。用語「空のAAV粒子」又は「空のカプシド」は、発現カセット又はトランス遺伝子を含むベクターゲノム又は核酸を一切含まないAAV粒子又はカプシドを指す。
【0050】
[0066] 本明細書で使用されるとき、用語「AAV試料」は、本明細書では「AAV組成物」と同義的に使用され、AAV粒子を含有する組成物を指す。一部の実施形態において、「AAV試料」は、特定の血清型のAAVを含有する組成物を指す。例えば、「AAV8試料」は、AAV8粒子を含む組成物を指す。
【0051】
[0067] 本明細書で使用されるとき、用語「汚染物質」及び「不純物」は、同義的に使用される。汚染物質とは、精製された組成物に望ましくない任意の物質を指し得る。一部の実施形態において、汚染物質は、精製することが望まれる生物製剤以外の任意の物質である。汚染物質の非限定的な例としては、限定はされないが、溶媒、タンパク質、ペプチド、炭水化物、核酸、ウイルス、細胞(例えば、細菌、酵母、又は哺乳類細胞)、炭水化物、脂質、又はリポ多糖が挙げられる。一部の実施形態において、汚染物質は、エンドトキシン又はマイコトキシンである。
【0052】
[0068] 本明細書で使用されるとき、用語「断片」には、それがタンパク質又はポリペプチドを指すとき、トランケートされた形態のタンパク質又はポリペプチドが含まれる。例えば、AAVRの断片は、完全長AAVRのアミノ酸の約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、又は約99%を含み得る。
【0053】
[0069] 本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は同義的に使用され、ペプチド結合によって共有結合的に連結されたアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質は、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質の配列を含むことのできるアミノ酸の最大数に制限は設けられない。用語「ペプチド」は、例えば、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はこれらの組み合わせを含めた、アミノ酸の短鎖を指し得る。タンパク質及びペプチドには、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾されたポリペプチド、誘導体、類似体、及び融合タンパク質が含まれ得る。
【0054】
[0070] 「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド塩基の配列であり、RNA、DNA又はDNA-RNAハイブリッド配列(天然に存在するヌクレオチド及び天然に存在しないヌクレオチドの両方を含む)であってもよい。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のいずれかのDNA配列である。
【0055】
[0071] 本明細書で使用されるとき、ウイルス粒子を「単離する」又は「精製する」(又は文法上の等価語)とは、そのウイルス粒子が、ウイルス粒子を含む出発材料(例えば、細胞ライセート)中にある他の成分の少なくとも一部から少なくとも部分的に分離されることを意味する。代表的な実施形態において、「単離された」又は「精製された」ウイルス粒子は、出発材料と比較したとき少なくとも約10倍、約100倍、約1000倍、約10,000倍又はそれ以上濃縮される。
【0056】
[0072] 本明細書で使用されるとき、用語「アミノ酸」は、任意の天然に存在するアミノ酸、その修飾された形態、及び合成アミノ酸を包含する。天然に存在する、左旋性の(L-)アミノ酸を表1に示す。
【0057】
【0058】
[0073] 或いは、アミノ酸は、修飾アミノ酸残基であってもよく(非限定的な例を表2に示す)、及び/又は翻訳後修飾(例えば、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化又は硫酸化)によって修飾されているアミノ酸であってもよい。
【0059】
【0060】
【0061】
[0074] 更に、天然に存在しないアミノ酸は、「非天然」アミノ酸であり得る。
【0062】
[0075] 本明細書で使用されるとき、用語「環境因子」は、タンパク質ベースの精製マトリックスを含む組成物への適用時に組成物の1つ以上の特性を変化させる任意の因子である。環境因子の非限定的な例としては、温度、pH、塩濃度、精製マトリックスの濃度、生物製剤の濃度、若しくは圧力のうちの1つ以上の変化;1つ以上の界面活性剤、補因子、ビタミン、分子クラウディング剤、変性剤、還元剤、若しくは酸化剤の添加;又は電磁波若しくは音波の適用が挙げられる。
【0063】
[0076] 本明細書で使用されるとき、用語「相挙動のあるポリペプチド」は、相転移を起こす能力のある任意のポリペプチドを指す。一部の実施形態において、こうしたポリペプチドは、環境因子の適用に起因して相転移を起こす。例示的な相挙動のあるポリペプチドとしては、エラスチン様ポリペプチド(ELP)及びレジリン様ポリペプチド(RLP)が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用されるとき、用語「融合タンパク質」は、自然の中では一体に融合して見られない2つの(又は更に多くの)異なるポリペプチドをコードする2つの異種ヌクレオチド配列又はそれらの断片が、正しい翻訳リーディングフレームに一体に融合しているときに作り出されるポリペプチドを指す。
【0065】
AAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックス
[0077] 本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)結合ポリペプチドを含む精製マトリックスを提供する。一部の実施形態において、本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の精製方法であって、AAV粒子を本明細書に記載される精製マトリックスと接触させることを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、高力価のAAV粒子を生み出し、AAV粒子を含む組成物から1つ以上の汚染物質を除去する。
【0066】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
[0078] 一部の実施形態において、本明細書に記載される精製マトリックスは、AAV粒子の精製に利用される。AAVは、パルボウイルス科(Parvoviridae)に含まれるデペンドパルボウイルス属(Dependoparvovirus)に属する。AAVは、末端に2つの145ヌクレオチド長逆方向末端反復(ITR)がある約4.7キロベースの線状一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを有する。AAVはポリメラーゼをコードせず、ゲノム複製を細胞のポリメラーゼに頼る。
【0067】
[0079] AAVは、溶菌ウイルスとして増殖し得るか、又は宿主細胞DNAに組み込まれて、プロウイルスとして維持され得る。一定の条件下では、AAVはヘルパーウイルスが存在しなくても複製することができるものの、効率的な複製には、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、又はワクシニアウイルスなどのヘルパーウイルスとの共感染が必要である。
【0068】
[0080] 本明細書に開示される組成物及び方法は、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3(3A型及び3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh32.33、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh74、AAVhu.68、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヘビAAV、フトアゴヒゲトカゲAAV、AAV2i8、AAV2g9、AAV-LK03、AAV7m8、AAV Anc80、AAV PHP.B、又は現在公知の、若しくは後に発見される任意の他のAAVのうちのいずれか1つの野生型又は突然変異体AAV粒子の精製に使用し得る。
【0069】
AAV結合ポリペプチド
[0081] 一部の実施形態において、本開示は、AAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスを提供する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAV受容体(AAVR)のエクトドメイン、又はそのAAV結合断片若しくは誘導体を含む。
【0070】
[0082] AAVR、別名KIAA0319L(例えば、Uniprotアクセッション番号Q8IZA0を参照のこと)は、AAV1、AAV2、AAV3B、AAV5、AAV6、AAV8、及びAAV9を含めた複数のAAV血清型のカプシドに結合する150kDaの糖タンパク質である。AAVRのエクトドメインは、N末端にある8個のシステインのモチーフ(MANEC)と、多発性嚢胞腎(PKD)ドメインとして知られる5個の免疫グロブリンドメインとを含む。AAV粒子はPKDドメインに結合して、形質導入を容易にする。従って、一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、1、2、3、4、又は5個のPKDドメイン、又はその断片若しくは誘導体を含む。
【0071】
[0083] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、ヒトAAVR(配列番号35)、マウスAAVR(配列番号36)、又はオランウータンAAVR(配列番号42)、又はその断片若しくは誘導体を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号35、36、又は42のうちのいずれか1つと少なくとも90%又は少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAVRのエクトドメイン又はその断片若しくは誘導体を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、N末端メチオニンを含むAAVRの断片を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列を含む。
【0072】
[0084] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25個又はそれ以上のアミノ酸突然変異を有する配列番号33又は配列番号34の配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号33又は配列番号34の配列、又はそれと少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%の同一性を有する配列を含む。特に指示されない限り、配列同一性は、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで利用可能な国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST(登録商標))を用いて決定される。一部の実施形態において、配列同一性は、比較される配列の全長にわたって計算される。一部の実施形態において、配列同一性は、比較される各配列の20アミノ酸、50アミノ酸、75アミノ酸、100アミノ酸、250アミノ酸、500アミノ酸、750アミノ酸、又は1000アミノ酸断片にわたって計算される。
【0073】
[0085] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上のPKDなど、1つ以上のPKDを含む。一部の実施形態において、PKDは、各々個別に、表3に掲載されるPKDから選択される。例えば、一部の実施形態において、PKDは、各々個別に、配列番号28~32、37~41、及び43~47から選択される。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは複数のPKDを含み、それらのPKDは、リンカーによって互いに接続されている。リンカーの非限定的な例は、本開示全体を通じて記載される。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは複数のPKDドメインを含み、ここで各PKDドメインは、同じ又は実質的に同じ配列を有する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは複数のPKDドメインを含み、ここで各PKDは、異なる配列を有する。
【0074】
【0075】
[0086] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎1(PDK1)ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎2(PDK2)ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎3(PDK3)ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎4(PDK4)ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、多発性嚢胞腎5(PDK5)ドメインを含む。
【0076】
[0087] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD1及びPKD2ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号92のアミノ酸配列を有するPKD1及びPKD2ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD1及びPKD3ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD1及びPKD4ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD1及びPKD5ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD2及びPKD3ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD2及びPKD4ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD2及びPKD5ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD3及びPKD4ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD3及びPKD5ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、PKD4及びPKD5ドメインを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは3個のPKDドメインを含み、ここで各PKDドメインは、PKD1~5のいずれか1つから独立に選択される。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは4個のPKDドメインを含み、ここで各PKDドメインは、PKD1~5のいずれか1つから独立に選択される。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは5個のPKDドメインを含み、ここで各PKDドメインは、PKD1~5のいずれか1つから独立に選択される。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは5個より多いPKDドメインを含み、ここで各PKDドメインは、PKD1~5のいずれか1つから独立に選択される。
【0077】
[0088] 前段落の任意の実施形態において、PKDドメインの各々は、野生型又は突然変異体PKDドメインから独立に選択されてもよい。一部の実施形態において、各PKDは、野生型PKDと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を有し得る。一部の実施形態において、本明細書に開示されるAAV結合ポリペプチドは、野生型PKDと少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、1つ以上のPKDを用いてAAVに結合する。
【0078】
[0089] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、その野生型AAVR又はPKDと比べて少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25個のアミノ酸突然変異を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、その野生型AAVR又はPKDと比べて最大約25個のアミノ酸突然変異、又はそれ以上を含む。例えば、AAV結合ポリペプチドは、野生型AAVRと比べて約25~35、約35~45、約45~55、約55~65、又は約65~75個のアミノ酸突然変異を含み得る。
【0079】
[0090] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、その野生型AAVR又はPKDと比べて少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25個のアミノ酸突然変異を含み、ここで各突然変異は、天然アミノ酸残基からヒスチジンへの変化を含む。
【0080】
[0091] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号29の配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸(即ち、非ヒスチジンアミノ酸)がヒスチジンに突然変異している配列番号29の配列を含む。
【0081】
[0092] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異を有する配列番号35を含む。一部の実施形態において、各突然変異は、個別に、V440H、S431H、Q432H、T434H、Y442H、I462H、D435H、D436H、K438H、及びI439Hからなる群から選択される。
【0082】
[0093] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異を有する配列番号35のアミノ酸411~499を含み、ここで各突然変異は、個別に、V440H、S431H、Q432H、T434H、Y442H、I462H、D435H、D436H、K438H、及びI439Hからなる群から選択される。
【0083】
[0094] 一部の実施形態において、配列番号35のAAV結合ポリペプチド又はその断片は、表4にある突然変異の組み合わせのうちの1つ以上を有する。表4の各行が、突然変異の組み合わせを意味する。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
[0095] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異を有する配列番号29を含み、ここで各突然変異は、個別に、S23H、Q24H、T26H、D29H、K30H、I31H、V32H、Y34H、及びI54Hからなる群から選択される。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、V32H及びV34H突然変異を有する配列番号29を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、S23H及びQ24H突然変異を有する配列番号29を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異を有する配列番号29を含み、ここで各突然変異は、個別に、S23H、Q24H、T26H、D29H、K30H、I31H、V32H、Y34H、及びI54Hからなる群から選択される。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号76~86のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0113】
[0096] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、N末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYPG(配列番号90)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸とを有する配列番号29を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異であって、各々が個別に、S23H、Q24H、T26H、D29H、K30H、I31H、V32H、Y34H、及びI54Hからなる群から選択される突然変異を有する配列番号29とN末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYPG(配列番号90)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異を有する配列番号52を含み、ここで各突然変異は、個別に、S23H、Q24H、T26H、D29H、K30H、I31H、V32H、Y34H、及びI54Hからなる群から選択される。
【0114】
[0097] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号93~116のうちのいずれか1つの核酸配列によってコードされる。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、V32H及びV34H突然変異を有する配列番号29とN末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYPG(配列番号90)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、S23H及びQ24H突然変異を有する配列番号29とN末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYPG(配列番号90)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異であって、各々が個別に、S23H、Q24H、T26H、D29H、K30H、I31H、V32H、Y34H、及びI54Hからなる群から選択される突然変異を有する配列番号29とN末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYPG(配列番号90)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号53~63のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0115】
[0098] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列と、加えてN末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYP(配列番号91)のアミノ酸配列を有する追加の4アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異であって、各々が個別に、S23H、Q24H、T26H、D29H、K30H、I31H、V32H、Y34H、及びI54Hからなる群から選択される突然変異を有する配列番号29のアミノ酸配列と、N末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYP(配列番号91)のアミノ酸配列を有する追加の4アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号29+V32H及びV34H突然変異とN末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYP(配列番号91)のアミノ酸配列を有する追加の4アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、S23H及びQ24H突然変異を有する配列番号29とN末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYP(配列番号91)のアミノ酸配列を有する追加の4アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異であって、各々が個別に、S23H、Q24H、T26H、D29H、K30H、I31H、V32H、Y34H、及びI54Hからなる群から選択される突然変異を有する配列番号29のアミノ酸配列とN末端におけるGNRPP(配列番号89)のアミノ酸配列を有する追加の5アミノ酸と、C末端におけるVDYP(配列番号91)のアミノ酸配列を有する追加の4アミノ酸とを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号65~75のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0116】
[0099] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、1つ以上のMANECモチーフを含む(例えば、配列番号49~51を参照のこと)。一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、1つ以上の組換えMANECモチーフを含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、野生型MANECモチーフと少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95、又は少なくとも約95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号49~51のうちのいずれか1つと少なくとも約80%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の同一性を有するMANECモチーフを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、1つ以上のMANECモチーフを介してAAV粒子に結合する。
【0117】
[0100] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、N末端メチオニンを含む。一部の実施形態において、N末端メチオニンは、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドの翻訳を開始させる。一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、N末端メチオニンを欠いている。
【0118】
[0101] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、及び/又はAAVrh74のAAV粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3B、AAV5、AAV6、AAV8、及びAAV9のうちの1つ以上のAAV粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAV1粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAV2粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAV3B粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAV5粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAV6粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAV8粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、AAV9粒子に結合する。
【0119】
[0102] 一部の実施形態において、AAVRは、ヒトAAVRである。一部の実施形態において、AAVRは、霊長類AAVRである。一部の実施形態において、AAVRは、野生型AAVRである。一部の実施形態において、AAVRは、突然変異体AAVRである。
【0120】
[0103] 一部の実施形態において、AAVRは、糖タンパク質である。一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、1つ以上のグリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、O結合型グリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、N結合型グリコシル化部位を含む。一部の実施形態において、AAVRは、N結合型グリコシル化を含む。一部の実施形態において、AAVRは、1つ以上のアスパラギン及び/又はグルタミン残基がグリコシル化されている。
【0121】
[0104] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、約1~約100個のAAV結合ポリペプチドを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドの数は、約1、約5、約10、約20、約30、約40、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、又は約100である。一部の実施形態において、相挙動のある単一のポリペプチドが、約1~約100個のAAV結合ポリペプチドなど、複数のAAV結合ポリペプチドにカップリングされてもよい。
【0122】
[0105] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、配列番号28~34、37~41、43~47、及び52~86のうちのいずれか1つの配列を含む。相挙動のある単一のポリペプチドが複数のAAV結合ポリペプチドにカップリングされる一部の実施形態において、各AAV結合ポリペプチドは、配列番号28~34、37~41、43~47、及び52~86から独立に選択されてもよい。
【0123】
[0106] 一部の実施形態では、核酸が、本明細書に記載される1つ以上のAAV結合ポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ベクターが、本明細書に記載される1つ以上のAAV結合ポリペプチドをコードする核酸を含む。
【0124】
[0107] 一部の実施形態では、キットが、AAV結合ポリペプチド、AAV結合ポリペプチドをコードする核酸、及び/又はAAV結合ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを含む。
【0125】
[0108] 一部の実施形態では、精製マトリックスが、AAV結合ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、キットが、精製マトリックスを含む。
【0126】
[0109] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるAAV結合ポリペプチドは、1つ以上のAAV粒子に結合する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスは、1つ以上のAAV粒子に結合する。
【0127】
[0110] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、約1nM~約500nMのKdを有する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、約1nM、約2nM、約3nM、約4nM、約5nM、約6nM、約7nM、約8nM、約9nM、約10nM、約20nM、約30nM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nM、約90nM、約100nM、約110nM、約120nM、約130nM、約140nM、約150nM、約160nM、約170nM、約180nM、約190nM、約200nM、約210nM、約220nM、約230nM、約240nM、約250nM、約260nM、約270nM、約280nM、約290nM、約300nM、約310nM、約320nM、約330nM、約340nM、約350nM、約360nM、約370nM、約380nM、約390nM、約400nM、約410nM、約420nM、約430nM、約440nM、約450nM、約460nM、約470nM、約480nM、約490nM、又は約500nM(間にある全ての値及び範囲を含む)のKdを有する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、50nM以上の親和性を有する。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、約50nM、約40nM、約30nM、約20nM、約2nM、約1nM、約0.1nM、約0.01nM、約0.001nMの親和性を有する。
【0128】
[0111] 一部の実施形態において、AAV粒子へのAAV結合ポリペプチドの結合は、2.5以上のpHで破綻する。一部の実施形態において、AAV粒子へのAAV結合ポリペプチドの結合は、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、約10.0、約10.5、約11.0、約11.5、約12.0、約12.5、約13.0、又は約13.5のpHで破綻する。
【0129】
支持体
[0112] 一部の実施形態において、本開示は、支持体(例えば、固体支持体)にカップリングされるAAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスを提供する。一部の実施形態において、本開示は、AAV結合ポリペプチドと、支持体にカップリングされる相挙動を有するペプチドとを含む精製マトリックスを提供する。一部の実施形態において、支持体は、ビーズ、樹脂、プレート、チップ、膜、繊維、又はポリマーである。一部の実施形態において、支持体は、シリカ、アガロース、ソフトアガロース、セルロース、酢酸セルロース、ポリスチレン、セファロース、ヘパリンセファロース、セルファインサルフェイト(celluline sulfate)、ヒドロキシアパタイト、セラミックハイドロキシアパタイト、アガロース、デキストラン、ラテックス、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、セラミック粒子、ポリアクリルアミド、ポリオレフィン、及び/又はポリフッ化ビニリデン、アガロースに固定化されたスルホプロピル、及び/又はこれらの組み合わせを含む。
【0130】
[0113] 一部の実施形態において、支持体は、ポリマーである。ポリマーの非限定的な例としては、ポリアクリル酸(polyamylic acid)、ポリアクリロニトリル(polyacrlonitrile)、ポリアリルアミン(polyallyamine)、ポリアクリレート類、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸アルキル類、ポリメタクリル酸アルキル、ポリブタジエン、ポリカルボメチルシラン、ポリスチレン、ポリペプチド、ポリ核酸、及びポリ(カーボネート)ウレタンが挙げられる。一部の実施形態において、支持体は、合成ポリマーである。一部の実施形態において、支持体は、組換えポリマーである。
【0131】
[0114] 一部の実施形態において、支持体は、樹脂である。一部の実施形態において、樹脂は正電荷である。一部の実施形態において、樹脂にカチオンが取り付けられる。一部の実施形態において、カチオンは、第4級アミノ基である。一部の実施形態において、正電荷樹脂は、ジエチルアミノエチルセルロース、磁性アミン、磁性プロピルアミン、磁性第4級アンモニウム、磁性ポリ-D-リジン、ポリ-D-リジン官能化ポリウレタン、スペルミンラテックス、トリス(2-アミノエチル)アミンラテックス、トリス(2-アミノエチル)アミンビーズ化アガロース、トリス(2-アミノエチル)-アクリルアミド、及びトリス(2-アミノエチル)ポリウレタンアミンを含む。一部の実施形態において、樹脂は負電荷である。一部の実施形態において、樹脂にアニオンが取り付けられる。一部の実施形態において、樹脂にアニオンが共有結合的に取り付けられる。アニオンの非限定的な例としては、スルホン酸塩又はカルボン酸塩が挙げられる。
【0132】
[0115] 一部の実施形態において、支持体は、多孔質である。一部の実施形態において、多孔質支持体は、樹脂又はビーズである。一部の実施形態において、多孔質支持体は、磁気ビーズである。一部の実施形態において、多孔質支持体は、約50nm~約5000nmの細孔径を有する。一部の実施形態において、細孔径は、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約300nm、約400nm、約500nm、約600nm、約700nm、約800nm、約900nm、約1000nm、約1100nm、約1200nm、約1300nm、約1400nm、約1500nm、約1600nm、約1700nm、約1800nm、約1900nm、約2000nm、約2100nm、約2200nm、約2300nm、約2400nm、約2500nm、約2600nm、約2700nm、約2800nm、約2900nm、約3000nm、約3100nm、約3200nm、約3300nm、約3400nm、約3500nm、約3600nm、約3700nm、約3800nm、約3900nm、約4000nm、約4100nm、約4200nm、約4300nm、約4400nm、約4500nm、約4600nm、約4700nm、約4800nm、約4900nm、又は約5000nmである。一部の実施形態において、細孔径とは、細孔の半径である。一部の実施形態において、細孔径とは、細孔の直径である。
【0133】
[0116] 一部の実施形態において、支持体は、1つ以上の架橋材料を含む。一部の実施形態において、多孔質支持体は、1つ以上の架橋材料を含む。一部の実施形態において、架橋は、AAVによる支持体の細孔との相互作用を防止する。一部の実施形態において、支持体は、静的繊維網目である。一部の実施形態において、支持体は、固体網目である。
【0134】
[0117] 一部の実施形態において、支持体は、AAV結合ポリペプチドへのカップリング前に前処理される。一部の実施形態において、支持体は、RNアーゼ溶液で前処理される。
【0135】
[0118] 一部の実施形態において、支持体は、リンカーを介してAAV結合ポリペプチドにカップリングされる。一部の実施形態において、リンカーは、支持体にカップリングされる。一部の実施形態において、リンカーは、AAV結合ポリペプチドにカップリングされる。リンカーの例は、本開示全体を通じて提供される。
【0136】
[0119] 一部の実施形態において、支持体は、デカンテーション、遠心又はろ過によって溶液から分離される。粒子が磁性である場合、磁界分離を用いることができる。
【0137】
[0120] 一部の実施形態において、支持体はベッセルに収容される。ベッセルの非限定的な例としては、遠心管、スピンチューブ、シリンジ、カートリッジ、チャンバ、チップ、多重ウェルプレート、ビーカー、クロマトグラフィーカラム、又は試験管が挙げられる。
【0138】
相挙動を有するポリペプチド
[0121] 一部の実施形態において、本開示は、相挙動を有するポリペプチドを含む精製マトリックスを提供する。一部の実施形態において、本開示は、AAV結合タンパク質にカップリングしている相挙動を有するポリペプチドを含む精製マトリックスを提供する。一部の実施形態において、本開示は、(i)AAV結合タンパク質と(ii)相挙動を有するポリペプチドとを含む融合タンパク質にカップリングされる支持体を含む精製マトリックスを提供する。
【0139】
[0122] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、レジリン様ポリペプチド(RLP)である。レジリン様ポリペプチドは、望ましい弾性回復力、圧縮弾性率、引張弾性率、剛性率、破断点伸び、最大引張り強さ、硬さ、反発弾性、及び圧縮永久ひずみを含めた機械的特性を備える弾性ポリペプチドである。一部の実施形態において、本明細書に記載されるレジリン様ポリペプチドは、1つ以上のリピートを含むポリマーである。一部の実施形態において、ポリマーリピートは、配列番号1~9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し得る。
【0140】
[0123] 一部の実施形態において、レジリン様ポリペプチドは、2種類以上のリピート、例えば配列番号1のリピートと配列番号3のリピートとを含む。
【0141】
[0124] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるレジリン様ポリペプチドは、所与のRLP内に最大500回現れるリピートを含む。一部の実施形態において、リピートは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約260、約270、約280、約290、約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約450、又は約500回現れる。
【0142】
[0125] 一部の実施形態において、RLPは、1つ以上の部分的リピートを含む。一部の実施形態において、部分的リピートの長さは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸である。一部の実施形態において、RLPは、リピートの一部でないRLPのN末端又はC末端に1つ以上の追加のアミノ酸を含む。
【0143】
[0126] 一部の実施形態において、1つ以上のRLPリピートはスクランブルされ、即ち、それらは異なるアミノ酸配列を含有するが、同じアミノ酸組成を保持している。例えば、リピートは、配列番号8と異なるアミノ酸配列を有するが、同じアミノ酸組成を保持していてもよい。
【0144】
[0127] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、エラスチン様ポリペプチドである。エラスチン様ポリペプチド(ELP)は、トロポエラスチンから誘導されるバイオポリマーである。一部の実施形態において、本明細書に記載されるエラスチン様ポリペプチドは、配列(Val-Pro-Gly-Xaa-Gly)n(配列番号10)を有するペンタペプチドリピートを含むポリマーである。
【0145】
[0128] 一部の実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、又は500(間にある全ての値及び範囲を含む)である。
【0146】
[0129] 一部の実施形態において、ペンタペプチドリピートはスクランブルされ、例えばそれは異なるアミノ酸配列を含むが、同じアミノ酸組成を維持している。例えば、ELPは、配列番号10と異なるアミノ酸配列を含み得るが、同じアミノ酸組成を維持していており、例えば配列の40%がグリシンであり、配列の20%がXaa(例えば、プロリンを除くいずれかのアミノ酸)であり、配列の20%がプロリンであり、及び配列の20%がバリンである。
【0147】
[0130] 一部の実施形態において、ELPは、1つ以上の部分的リピートを含む。一部の実施形態において、部分的リピートの長さは、1、2、3、又は4アミノ酸である。一部の実施形態において、ELPは、リピートの一部でないELPのN末端又はC末端に1つ以上の追加のアミノ酸を含む。
【0148】
[0131] ELP及びRLPは、環境因子に応答して相転移を起こす。ELP及びRLPは、1つ以上のポリペプチド(1つ以上のAAV結合ポリペプチドなど)にカップリングしたとき、又は1つ以上の他のポリペプチド(1つ以上のAAV結合ポリペプチドなど)との融合タンパク質として発現したときに相転移を起こすその能力を保持している。ELP及びRLPのようなポリマーは、曇点温度(Tc)とも称される転移温度(Tt)を呈する。一部の実施形態において、ELP及びRLPは、Ttで可溶性相から不溶性相への可逆的相転移を起こす。加熱又は塩濃度の上昇に伴い可溶性相から不溶性相へと転移するELPは、下限臨界共溶温度(LCST)と称されるTtを有する。冷却又は塩濃度の低下に伴い可溶性相から不溶性相へと転移するRLPは、下限臨界共溶温度(UCST)と称されるTtを有する。一部の実施形態において、相転移は、ELP及び/又はRLPの二次構造が変化する結果として生じる。例えば、ELPの相転移は、ランダムコイル(Tt未満)からII型βターンへと二次構造が変化する結果として生じる。一部の実施形態において、二次構造の変化は、円偏光二色性分光偏光測定法、小角X線散乱、紫外・可視分光光度法、静的光散乱、動的光散乱、核磁気共鳴分光法、固体核磁気共鳴分光法、赤外分光法、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、小角中性子散乱、顕微鏡法、及び低温電子顕微鏡法から選択される方法によって特徴付けられる。一部の実施形態において、ELPの相転移は、二次構造の変化によって生じるのではない。
【0149】
[0132] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるRLP及びELPは、約0℃~約100℃の間の転移温度を有する。一部の実施形態において、本明細書に記載されるRLP及びELPは、約10℃~約50℃の間の転移温度を有する。一部の実施形態において、転移温度は、約0℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、約49℃、約50℃、約51℃、約52℃、約53℃、約54℃、約55℃、約56℃、約57℃、約58℃、約59℃、約60℃、約61℃、約62℃、約63℃、約64℃、約65℃、約66℃、約67℃、約68℃、約69℃、約70℃、約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、約75℃、約76℃、約77℃、約78℃、約79℃、約80℃、約81℃、約82℃、約83℃、約84℃、約85℃、約86℃、約87℃、約88℃、約89℃、約90℃、約91℃、約92℃、約93℃、約94℃、約95℃、約96℃、約97℃、約98℃、約99℃、又は約100℃である。一部の実施形態において、本明細書に記載されるRLPは、約10℃~約100℃の転移温度を有する。
【0150】
[0133] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるRLP及びELPのTtは、RLP及びELPの一次構造(例えばアミノ酸配列)を操作することによって調節される。一部の実施形態において、ELP又はRLPの疎水性が調節される。一部の実施形態において、ELPの疎水性は、ゲスト残基Xaaのアイデンティティを変えることによって修飾される。一部の実施形態では、ELP又はRLPの疎水性を増加させる結果、Ttが低下する。一部の実施形態では、ELP又はRLPの疎水性を低下させる結果、Ttが上昇する。一部の実施形態において、ELP又はRLPの極性が調節される。一部の実施形態において、ELPの極性は、ゲスト残基Xaaのアイデンティティを変えることによって調節される。一部の実施形態では、ELP又はRLPの極性を増加させる結果、Ttが上昇する。一部の実施形態では、ELP又はRLPの極性を低下させる結果、Ttが低下する。
【0151】
[0134] 一部の実施形態において、ELPペンタペプチドリピートの数(n)を調節すると、Ttが変わる。一部の実施形態において、ペンタペプチドリピート(Val-Pro-Gly-Xaa-Gly)n(配列番号10)のnは、1以上500以下の整数である。一部の実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、又は500(間にある全ての値及び範囲を含む)である。
【0152】
[0135] 一部の実施形態において、Xaaは「ゲスト残基」、すなわちELPの相挙動を消失させることのない任意のアミノ酸である。一部の実施形態において、Xaaは、プロリンを除く任意のアミノ酸である。一部の実施形態において、Xaaは、各リピートについて独立に選択される。例えば、所与のELPは、ゲスト残基アラニン、グリシン、及びバリンを8:7:1の比で含み得る。一部の実施形態において、Xaaは、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン(praline)、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンからなる群から選択される。一部の実施形態において、Xaaは、表2及び/又は2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、アロイソロイシン、4-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸(Abu)、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、2-アミノイソ酪酸(Aib)、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Na-メチルアミノ酸など、及び一般にアミノ酸類似体からなる群から選択される非古典的アミノ酸である。一部の実施形態において、Xaaは、天然又は非古典的アミノ酸のD-異性体である。
【0153】
[0136] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるRLP及びELPのTtは、RLP及び/又はELPを含む組成物に1つ以上の環境因子を導入することによって調節される。一部の実施形態において、ELP及び/又はRLPのTtは、溶媒のイオン強度を調整することによって調節される。一部の実施形態において、溶媒のイオン強度は、塩を加えることによって調整される。一部の実施形態において、ELP及び/又はRLPは、コスモトロープとして分類されるアニオンを含む溶媒中では、より低いTtを含む。コスモトロープであるアニオンは高度に水和され、ELP及び/又はRLP上の水の遮蔽に影響を与える。一部の実施形態において、ELP及び/又はRLPのTtは、カオトロープであるアニオンを加えることを通じて調整されてもよい。低濃度では、カオトロープを加えると、ELP及び/又はRLPのTtが上昇する。高濃度では、カオトロープを加えると、ELP及び/又はRLPのTtが低下する。一部の実施形態において、ELP及び/又はRLPのTtは、水素結合を破綻させる1つ以上の試薬を導入することによって調整されてもよい。水素結合を破綻させる試薬の非限定的な例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び尿素が挙げられる。一部の実施形態において、水素結合形成を亢進させる試薬を利用してTtが調節される。一部の実施形態において、疎水性相互作用を亢進させる試薬を利用してTtが調節される。トリフルオロエタノールは、疎水性相互作用及び水素結合形成の両方を亢進させることによってTtの低下を生じさせる試薬である。
【0154】
[0137] 一部の実施形態において、ELP及び/又はRLP濃度を調整してTtを調節することができる。一部の実施形態において、ELP及び/又はRLP濃度が高くなると、Ttは減少する。一部の実施形態において、ELP及び/又はRLP濃度が低くなると、Ttは上昇する。
【0155】
[0138] 加えて、pH、光、及びイオン濃度の調節もまた利用して、Ttを調節することができる。
【0156】
[0139] 一部の実施形態において、荷電アミノ酸(例えば、ヒスチジン、リジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、オルニチン、又は他の非天然荷電アミノ酸)の数(例えば、加える、又は取り除く)及びアイデンティティ(例えば、正電荷又は負電荷を持つ)を調節することにより、pH調節によるTtの調整が可能となる。
【0157】
[0140] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるELP及び/又はRLPはブロック共重合体である。ブロック共重合体は2つ以上の配列ドメイン又はブロックを含み、ここで2つ以上のブロックが異なる特性を備える。調整することのできる特性の非限定的な例としては、親水性、疎水性、極性、及び二次構造が挙げられる。一部の実施形態において、ブロック共重合体は両親媒性であり、例えばそれは、少なくとも1つの疎水性ブロックと少なくとも1つの親水性ブロックとを含む。
【0158】
[0141] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるELP及び/又はRLPは、様々な形態に集合する。形態の非限定的な例としては、球状凝集体、ミセル、小胞、フィブリル、ナノフィブリル、ナノチューブ、及びヒドロゲルが挙げられる。一部の実施形態において、本明細書に記載されるRLP及び/又はELPは、環境因子を加えた後、様々な形態に集合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されるRLP及び/又はELPは、環境因子を加えた後、ある形態から別の形態へと変化する。一部の実施形態において、本明細書に記載されるRLP及び/又はELPは、AAV粒子を加えた後、ある形態から別の形態へと変化する。
【0159】
[0142] 一部の実施形態において、環境因子を加えることにより、RLP及び/又はELPが相転移を起こす。一部の実施形態において、RLP及び/又はELP相転移時、RLP及び/又はELPは、ある形態から別の形態へと変換される。
【0160】
[0143] 一部の実施形態において、RLP及び/又はELPの相転移により、稠密体、液体、液滴の形成が生じる。
【0161】
[0144] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、
(a)(GRGDSPY)n(配列番号1)
(b)(GRGDSPH)n(配列番号2)
(c)(GRGDSPV)n(配列番号3)
(d)(GRGDSPYG)n(配列番号4)
(e)(RPLGYDS)n(配列番号5)
(f)(RPAGYDS)n(配列番号6)
(g)(GRGDSYP)n(配列番号7)
(h)(GRGDSPYQ)n(配列番号8)
(i)(GRGNSPYG)n(配列番号9)
(j)(GVGVP)n(配列番号11);
(k)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12);
(l)(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号13);
(m)(GVGVPGWGVPGVGVPGWGVPGVGVP)m(配列番号14);
(n)(GVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGEGVPGFGVPGVGVP)m(配列番号15);
(o)(GVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGKGVPGFGVPGVGVP)m(配列番号16);及び
(p)(GAGVPGVGVPGAGVPGVGVPGAGVP)m(配列番号17)
からなる群から選択されるアミノ酸配列;
又はこれらのランダム化されたスクランブル類似体
(式中:
nは、1以上~500以下の範囲の整数であり;及び
mは、4以上~25以下の範囲の整数である)を含む。
【0162】
[0145] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)である。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列と、N末端又はC末端における最大10個の追加のアミノ酸とを含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列と、追加のC末端グリシンとを含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列と、追加のN末端メチオニンとを含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列と、追加のC末端グリシン及び追加のN末端メチオニンとを含む。
【0163】
[0146] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、配列番号88のアミノ酸配列を有する。
【0164】
[0147] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号144)又は(GVGVPGVGVPGLGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号146)(式中、mは、2以上32以下の間にある整数である)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号144)(式中、mは、8又は16である)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGAGVP)m(配列番号145)(式中、mは、5以上80以下の間にある整数である)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GXGVP)m(配列番号147)(式中、mは、10以上160以下の間にある整数であり、及び式中、リピート毎にXは、独立に、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びセリンからなる群から選択される)のアミノ酸配列を含む。
【0165】
[0148] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、
(a)(GVGVP)m(配列番号143);
(b)(ZZPXXXXGZ)m(配列番号148);
(c)(ZZPXGZ)m(配列番号149);
(d)(ZZPXXGZ)m(配列番号150);又は
(e)(ZZPXXXGZ)m(配列番号151)
(式中、mは、10以上160以下の間にある整数であり、式中、Xは、存在する場合に、プロリン又はグリシンを除く任意のアミノ酸であり、及び式中、Zは、存在する場合に、任意のアミノ酸である)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0166】
[0149] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVP)m(配列番号143)(式中、mは、20、40、又は80である)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GRGDXPZX)m(配列番号152)又は(XZPXDGRG)m(配列番号153)(式中、Xは、グルタミン又はセリンであり、Zは、チロシン又はバリンであり、及びmは、10以上160以下の間にある整数である)のアミノ酸配列を含む。
【0167】
[0150] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、第1の一組のリピート配列と、第2の一組のリピート配列とを含む。第1の一組のリピート配列及び第2の一組のリピート配列は、各々個別に、1回以上繰り返される配列を含み得る。一部の実施形態において、第1の一組のリピート配列及び/又は第2の一組のリピート配列は、配列番号1~17及び143~153のいずれか1つを含む繰り返し配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、第1の一組のリピート配列及び第2の一組のリピート配列を含み、ここで第1の一組のリピート配列は、(GRGDXPZX)40(配列番号154)のアミノ酸配列を含み、第2の一組のリピート配列は、アミノ酸配列(GVGVP)80(配列番号155)を含む(式中、Xはグルタミンであり、及びZはチロシンである)。一部の実施形態において、第1の一組のリピート配列と第2の一組のリピート配列とを含む相挙動のあるポリペプチドは、配列番号156の配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10組の異なる一組のリピート配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチド内にある各一組のリピート配列は、約5~約400回、例えば、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、約200、約205、約210、約215、約220、約225、約230、約235、約240、約245、約250、約255、約260、約265、約270、約275、約280、約285、約290、約295、約300、約305、約310、約315、約320、約325、約330、約335、約340、約345、約350、約355、約360、約365、約370、約375、約380、約385、約390、約395、又は約400回繰り返す配列を含む。
【0168】
[0151] 一部の実施形態において、配列番号1~17、88及び143~153のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドはまた、最大10個の追加のN末端及び/又はC末端アミノ酸も含む。一部の実施形態において、配列番号1~17、88及び143~153のいずれか1つのアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドはまた、追加のN末端メチオニンも含む。一部の実施形態において、配列番号1~17、88及び143~153のいずれか1つのアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドはまた、追加のC末端グリシンも含む。
【0169】
[0152] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、ELP及び/又はRLPの同じアミノ酸組成を有するが、リピートは含まない。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、ELP及び/又はRLPと約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、ELP及び/又はRLPと約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一のアミノ酸組成を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、ELP及び/又はRLPと約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一の疎水性アミノ酸の組成を含む。
【0170】
[0153] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、繰り返しのない非構造化ポリペプチドを含む。一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドは、少なくとも50アミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドは、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又は少なくとも100アミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドの配列は、少なくとも約10%のプロリン(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%)及び少なくとも20%のグリシン(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%)である。一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドは、バリン、アラニン、ロイシン、リジン、トレオニン、イソロイシン、チロシン、セリン、及びフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸を少なくとも約40%含む配列を有する。
【0171】
[0154] 一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドは、3個の連続した同一のアミノ酸を含まない配列を含み、ここで繰り返しのない非構造化ポリペプチドに任意の5~10アミノ酸部分配列が1回より多く現れることはなく、及び繰り返しのない非構造化ポリペプチドが、プロリンで始まってプロリンで終わる部分配列を含むとき、及びここでその部分配列は、少なくとも1つのグリシンを更に含む。
【0172】
[0155] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるELP及び/又はRLPは、融合タンパク質の成分として発現する。一部の実施形態において、融合タンパク質は、ELP及び/又はRLPと、AAVRエクトドメイン(ecodomain)などのAAV結合ポリペプチド又はその断片若しくは誘導体とを含む。一部の実施形態において、融合タンパク質は、細菌又は哺乳類細胞で発現する。一部の実施形態において、融合タンパク質は、大腸菌(Escherichia coli)で発現する。一部の実施形態において、融合タンパク質は、昆虫細胞で発現する。一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドの配列は、少なくとも約10%のプロリン(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%)及び少なくとも20%のグリシン(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%)であり、及び少なくとも40%(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%)が、バリン、アラニン、ロイシン、リジン、トレオニン、イソロイシン、チロシン、セリン、及びフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0173】
[0156] 一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドは、3個の連続した同一のアミノ酸を含まない。一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドは、繰り返しのない非構造化ポリペプチド配列に1回のみ現れる部分配列(例えば、繰り返しのない非構造化ポリペプチドの断片)を含む。一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドは、プロリンで始まってプロリンで終わる部分配列を含む。一部の実施形態において、繰り返しのない非構造化ポリペプチドは、少なくとも1つのグリシンを含む部分配列を含む。
【0174】
[0157] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、配列番号164のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、配列番号170のアミノ酸配列を含む。
【0175】
[0158] 一部の実施形態において、相挙動のあるポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。
【0176】
精製マトリックスへのAAVの結合
[0159] 一部の実施形態において、本開示は、AAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスを提供し、ここでAAV結合ポリペプチドは、相挙動のあるポリペプチド及び/又は支持体にカップリングされている。
【0177】
[0160] 一部の実施形態において、本開示は、(i)AAV結合ポリペプチドと(ii)相挙動のあるポリペプチドとを含む融合タンパク質を含む精製マトリックスを提供し、ここで融合タンパク質は、支持体(例えば、固体支持体)にカップリングされている。一部の実施形態において、融合タンパク質は、AAV結合ポリペプチド中の残基を介して支持体にカップリングされている。一部の実施形態において、融合タンパク質は、相挙動のあるポリペプチド中の残基を介して支持体にカップリングされている。一部の実施形態において、融合タンパク質は、AAV結合ポリペプチドと支持体との間のリンカー中の残基を介して支持体にカップリングされている。一部の実施形態において、支持体への結合及び/又はカップリングは可逆的である。
【0178】
[0161] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、AAV粒子と接触させる。一部の実施形態において、精製マトリックスは、AAV粒子に結合して複合体を形成する。一部の実施形態において、(i)AAV結合ポリペプチドと(ii)相挙動のあるポリペプチドとを含む融合タンパク質を含む精製マトリックスは、AAV粒子に結合して複合体を形成する。一部の実施形態において、(i)AAV結合ポリペプチドと(ii)相挙動のあるポリペプチドとを含む融合タンパク質を含む精製マトリックスは、AAV粒子に結合して複合体を形成する。
【0179】
[0162] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、AAVに可逆的に結合する。可逆的結合及び/又は可逆的カップリングとは、複合体が個々の成分へと解離し得る、例えば分離し得ることを意味する。例えば、精製マトリックスとAAV粒子との間で複合体が可逆的に形成される場合、その精製マトリックスとAAV粒子とは、続いて解離することができる。一部の実施形態において、可逆的結合により、AAV粒子を精製マトリックスから分離することが可能になる。一部の実施形態において、解離は環境因子によって引き起こされる。一部の実施形態において、可逆的結合により、汚染物質及び/又は不純物を精製マトリックスから分離することが可能になる。一部の実施形態において、可逆的結合により、他の分子を精製マトリックスから分離することが可能になる。
【0180】
[0163] 一部の実施形態において、可逆的結合は非共有結合性であり、即ち、複合体の相互作用する成分の間(精製マトリックスと汚染物質、生物製剤、及び/又は他の分子との間など)に共有結合は形成されない。一部の実施形態において、非共有結合性相互作用により、精製マトリックスと汚染物質、生物製剤、及び/又は他の分子との互いの結合が生じる。非共有結合性相互作用の非限定的な例としては、双極子間力、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、水素結合、疎水性相互作用、及び静電相互作用が挙げられる。一部の実施形態において、非共有結合性の結合は、環境因子を加えることにより破綻する。
【0181】
[0164] 一部の実施形態において、精製マトリックスとAAV粒子との間の結合は、共有結合性である。一部の実施形態において、精製マトリックスとAAV粒子との間の共有結合は、例えばプロテアーゼを用いて切断されてもよい。
【0182】
[0165] 一部の実施形態において、精製マトリックスはリサイクル可能であり、つまり、これは1回以上の使用後に再使用できるということである。一部の実施形態において、精製マトリックスは、初回使用後、それが再び使用される前に再生される。一部の実施形態において、精製マトリックスは、精製マトリックスを塩酸グアニジンと共にインキュベートすることによって再生される。一部の実施形態において、精製マトリックスは、精製マトリックスを塩酸グアニジン中で約6Mなど、約1M~約10Mの範囲の濃度にてインキュベートすることによって再生される。一部の実施形態において、精製マトリックスは、精製マトリックスを水酸化ナトリウム中でインキュベートすることによって再生される。一部の実施形態において、精製マトリックスは、精製マトリックスを水酸化ナトリウム中で約1Mなど、約0.1M~約10Mの範囲の濃度にてインキュベートすることによって再生される。インキュベーションは、例えば、約1~約30分、約5~約10分、又は約10~約10分の長さであってもよい。一部の実施形態において、インキュベーションは、約5分の長さである。
【0183】
[0166] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、精製マトリックスを、80℃より高い、85℃より高い、90℃より高い、95℃より高い、又は100℃より高い温度など、高温でインキュベートすることによって再生される。インキュベーションは、例えば、約1~約30分、約5~約10分、又は約10~約10分の長さであってもよい。一部の実施形態において、インキュベーションは、約5分の長さである。一部の実施形態において、精製マトリックスは、精製マトリックスを95℃で約5分間インキュベートすることによって再生される。
【0184】
[0167] 一部の実施形態において、AAV粒子を含む第1の組成物からAAV粒子を精製した後、精製マトリックスは再生され、AAV粒子を含む更なる組成物からのAAV粒子の捕捉に使用される。一部の実施形態において、精製マトリックスは、少なくとも5サイクルの精製、例えば、少なくとも約5サイクル、少なくとも約6サイクル、少なくとも約7サイクル、少なくとも約8サイクル、少なくとも約9サイクル、少なくとも約10サイクルに再使用することができる。各精製サイクルが、AAV粒子を含む組成物からAAV粒子を精製するための精製マトリックスの使用を指す。後続のサイクルは、AAV粒子を含む更なる組成物からAAV粒子を精製するための同じ精製マトリックスの更なる使用を指す。例えば、3サイクル目の精製では、精製マトリックスは、AAV粒子を含む第3の組成物からAAV粒子を精製するため3回目に使用される;同じ精製マトリックスが既に、AAV粒子を含む第1の組成物からAAV粒子を精製するため1サイクル目に使用され、AAV粒子を含む第2の組成物からAAV粒子を精製するため2サイクル目に使用された。
【0185】
[0168] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、少なくとも5回の精製サイクル後にも、組成物から少なくとも95%のAAV粒子を捕捉する能力を保持している。
【0186】
リンカー
[0169] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、相挙動のあるポリペプチド又は支持体にリンカーを介してカップリングされる。一部の実施形態において、精製マトリックスの機能に干渉しない任意のリンカーを利用し得る。
【0187】
[0170] 一部の実施形態において、リンカーは、AAV結合ポリペプチドを相挙動のあるポリペプチドに接続する。一部の実施形態において、リンカーは、相挙動のあるポリペプチドとAAV結合ポリペプチドとの間の協働的相互作用を可能にする。一部の実施形態において、リンカーはペプチドである。一部の実施形態において、リンカーは、相挙動のあるポリペプチドの相挙動を保つ。一部の実施形態において、リンカーは、相挙動のあるポリペプチドのTtを保つ。一部の実施形態において、リンカーは、捕捉ドメインの構造を保つ。一部の実施形態において、リンカーは、1~50アミノ酸を含む。一部の実施形態において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50アミノ酸を含む。
【0188】
[0171] 一部の実施形態において、リンカーアミノ酸配列にプロリンを含めることにより、リンカーの剛直性を増加させる。
【0189】
[0172] 一部の実施形態において、トレオニン、セリン、及びグリシンを含めた小型の極性アミノ酸を含めることにより、リンカーの柔軟性を増加させる。
【0190】
[0173] 一部の実施形態において、リンカーは、限定はされないが、αヘリックス、βストランド、及びランダムコイルを含め、様々な二次構造をとり得る。一部の実施形態において、リンカーはαヘリックスをとり、(EAAAK)n(配列番号18)(式中、nは1~20の範囲のリピート数である)のアミノ酸リピートを含む。
【0191】
[0174] 一部の実施形態において、リンカーは、(G4S)n(配列番号19)[式中、nは、1~30(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の整数であることができる]を含む。実施形態において、ポリペプチドリンカーは、(SGGG)n(配列番号20)[式中、nは、1~50(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の整数である]のリピートを有する。実施形態において、ポリペプチドリンカーは、(GGGS)n(配列番号21)[式中、nは、1~20(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の整数である)]のリピートを有する。
【0192】
[0175] 一部の実施形態において、リンカーは、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号22)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、リンカーは、EGKSSGSGSESKST(配列番号23)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、リンカーはグリシンのみを含む。
【0193】
[0176] 一部の実施形態において、ペプチドリンカーはプロテアーゼ切断部位を含む。一部の実施形態において、プロテアーゼ切断部位はフューリン切断部位である。
【0194】
[0177] 一部の態様において、ポリペプチドリンカーは、ポリ-(Gly)nリンカー[式中、nは、1~30(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30である](配列番号48)である。他の実施形態において、リンカーは、ジペプチド、トリペプチド、及びクアドリペプチドからなる群から選択される。実施形態において、リンカーは、アラニン-セリン(AS)、ロイシン-グルタミン酸(LE)、及びセリン-アルギニン(SR)からなる群から選択されるジペプチドである。
【0195】
[0178] 一部の実施形態において、リンカーは、GKSSGSGSESKS(配列番号157)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号158)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号159)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号160)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号161)、SRSSG(配列番号162)、及びSGSSC(配列番号163)から選択される。
【0196】
[0179] 一部の実施形態において、リンカーは、自己切断型ペプチドである。一部の実施形態において、自己切断型ペプチドは、2Aペプチドである。2Aペプチドは、細胞におけるタンパク質の翻訳時にリボソームスキッピングを誘導する18~22アミノ酸長ペプチドのクラスである。一部の実施形態において、2Aペプチドは、EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号164)のアミノ酸配列を有するT2Aペプチド、ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号165)のアミノ酸配列を有するP2Aペプチド、QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号166)のアミノ酸配列を有するE2Aペプチド、又はVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号167)のアミノ酸配列を有するF2Aペプチドである。一部の実施形態において、2Aペプチドは、配列番号164~167のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の同一性を有する。一部の実施形態において、2Aペプチドは、そのN末端にGSG(配列番号168)を更に含む。
【0197】
[0180] 一部の実施形態において、リンカーは化学的リンカーである。一部の実施形態において、化学的リンカーは、炭水化物リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、及びポリエーテルリンカーからなる群から選択される。
【0198】
[0181] 一部の実施形態において、リンカーは、支持体とAAV結合ポリペプチドとの間の直接的な共有結合性の連結である。一部の実施形態において、リンカーは、AAV結合ポリペプチドのアミノ酸残基と相挙動のあるポリペプチドのアミノ酸残基との間の直接的な共有結合性の連結である。一部の実施形態において、融合タンパク質は、相挙動のあるポリペプチドとAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、融合タンパク質は、本明細書に記載されるとおりの1つ以上のリンカーを更に含む。一部の実施形態において、融合タンパク質は、N末端からC末端に、相挙動のあるポリペプチドと、リンカーと、AAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、融合タンパク質は、N末端からC末端に、AAV結合ポリペプチドと、リンカーと、相挙動のあるポリペプチドとを含む。
【0199】
[0182] 一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは1つ以上の多発性嚢胞腎ドメイン(PKD)を含み、ここでPKDは、個別に、PKD1、PKD2、PKD3、PKD4、及びPKD5から選択される。一部の実施形態では、2つ以上のPKDをリンカーが隔てている。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、N末端からC末端に、第1のPKDドメインと、リンカーと、第2のPKDドメインとを含む。一部の実施形態において、AAV結合ポリペプチドは、N末端からC末端に、第1のPKDドメインと、リンカーと、第2のPKDドメインと、リンカーと、少なくとも1つの追加のPKDドメインとを含む。
【0200】
[0183] 一部の実施形態において、リンカーは、AAVRの断片を含む。一部の実施形態において、リンカーは、1~1200アミノ酸長の間である。一部の実施形態において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、又は1250アミノ酸を含む。一部の実施形態において、リンカーは、配列番号24~27のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0201】
AAVの精製方法
[0184] 一部の実施形態において、本開示は、開示される精製マトリックスを使用したAAV粒子の精製方法を提供する。
【0202】
[0185] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号29のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号52のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号64のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。
【0203】
[0186] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号169のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)配列番号170のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号169のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号171のアミノ酸配列を含み、ここで相挙動のあるポリペプチドは、配列番号170のアミノ酸配列を含み、AAV結合ポリペプチドは、配列番号169のアミノ酸配列を含む。
【0204】
[0187] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと(ii)配列番号29のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号52のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号64のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。
【0205】
[0188] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号29のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号29のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドと、(iii)任意選択で、相挙動のあるポリペプチド及び/又はAAV結合ポリペプチドのN末端及び/又はC末端における最大約10個の追加のアミノ酸、(iv)任意選択で、C末端グリシン、及び(v)任意選択で、N末端メチオニンを含む。
【0206】
[0189] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号52のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号52のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドと、(iii)任意選択のN末端メチオニン、(iv)任意選択のC末端グリシン、及び(v)任意選択で、相挙動のあるポリペプチド及び/又はAAV結合ポリペプチドのN末端及び/又はC末端における最大約10個の追加のアミノ酸を含む。
【0207】
[0190] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号64のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドとを含む。一部の実施形態において、精製マトリックスは、(i)(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドと、(ii)配列番号64のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドと、(iii)任意選択のN末端メチオニンと、(iv)任意選択のC末端グリシンと、(v)任意選択で、N末端及び/又はC末端における最大約10個の追加のアミノ酸とを含む。
【0208】
[0191] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号88のアミノ酸配列を含む相挙動のあるポリペプチドを含む。
【0209】
[0192] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号29、52、又は64のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドを含む。
【0210】
[0193] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号64のアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドを含む。
【0211】
[0194] 一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号87のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号171のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、精製マトリックスは、配列番号171~174又は87のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有する。
【0212】
[0195] 一部の実施形態において、本方法は、1つ以上の不純物(本明細書では汚染物質とも称される)からのAAV粒子の分離を可能にする。一部の実施形態において、不純物は、AAV組成物中に望ましくない任意の化学薬品又は生物製剤である。一部の実施形態において、不純物は、ウイルス、タンパク質、核酸、リポ多糖類、脂質、マイコトキシン、炭水化物、及び/又は細胞である。一部の実施形態において、細胞には、細菌細胞、動物細胞、及びヒト細胞が含まれる。一部の実施形態において、細胞は、細菌細胞、酵母細胞、又は哺乳類細胞などの動物細胞からなる群から選択される。一部の実施形態において、細胞は、ニワトリ細胞、マウス細胞、モルモット細胞、ラット細胞、ウサギ細胞、ヤギ細胞、ウマ細胞、ヒツジ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、又はウシ細胞である。一部の実施形態において、細胞はヒト細胞である。
【0213】
[0196] 一部の実施形態において、本開示は、AAV1、AAV2、AAV3(3A型及び3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh32.33、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh74、AAVhu.68、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヘビAAV、フトアゴヒゲトカゲAAV、AAV2i8、AAV2g9、AAV-LK03、AAV7m8、AAV Anc80、AAV PHP.B、及び現在公知の、又は後に発見される任意の他のAAVから選択される野生型又は突然変異体AAVの精製方法を提供する。
【0214】
[0197] 一部の実施形態において、本開示は、AAV粒子の精製方法であって、AAV結合ポリペプチドと支持体とを含む精製マトリックスをAAV粒子に接触させることを含み、AAV結合ポリペプチドが、支持体にカップリングされている、方法を提供する。
【0215】
[0198] 一部の実施形態において、本開示は、AAV粒子の精製方法であって、AAV結合ポリペプチドと相挙動のあるポリペプチドとを含む精製マトリックスをAAV粒子に接触させることを含み、AAV結合ポリペプチドが、相挙動のあるポリペプチドにカップリングされている、方法を提供する。
【0216】
[0199] 一部の実施形態において、AAV粒子を精製する方法は、AAV粒子を精製マトリックスと接触させることを含み、ここで精製マトリックスは、(i)AAV結合ポリペプチドと(ii)相挙動のあるポリペプチドとを含み;AAV粒子は精製マトリックスに結合して複合体を形成し;複合体のサイズが第1の環境因子によって増加し;複合体はサイズを基準として少なくとも1つの汚染物質から分離され;及びAAV粒子は第2の環境因子によって精製マトリックスから分離される。
【0217】
[0200] 一部の実施形態において、AAV粒子を精製する方法は、AAV粒子を精製マトリックスと接触させることを含み、ここで精製マトリックスは、(i)AAV結合ポリペプチドと(ii)相挙動のあるポリペプチドとを含み;AAV粒子はマトリックスに結合して複合体を形成し;複合体のサイズが増加し;複合体はサイズを基準として少なくとも1つの汚染物質から分離され;及びAAV粒子は環境因子によってマトリックスから分離される。
【0218】
[0201] 一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、AAV粒子と精製マトリックスとの間での複合体の形成を含む。一部の実施形態において、AAV粒子は精製マトリックスに可逆的に結合する。一部の実施形態において、AAV粒子は、非共有結合性相互作用を通じて本明細書に記載される精製マトリックスに結合する。
【0219】
[0202] 一部の実施形態において、本明細書に記載される精製マトリックスと、AAV1、AAV2、AAV3(3A型及び3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh32.33、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh74、AAVhu.68、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヘビAAV、フトアゴヒゲトカゲAAV、AAV2i8、AAV2g9、AAV-LK03、AAV7m8、AAV Anc80、AAV PHP.B、及び現在公知の、又は後に発見される任意の他のAAV血清型から選択される血清型の野生型又は突然変異体AAV粒子との間に複合体が形成される。
【0220】
[0203] 一部の実施形態において、精製マトリックスと野生型AAVカプシドタンパク質を有するAAV粒子との間に複合体が形成される。一部の実施形態において、複合体は、精製マトリックスと突然変異体AAVカプシドタンパク質を有するAAV粒子との間に形成される。一部の実施形態において、複合体は、精製マトリックスとヒトAAV粒子との間に形成される。一部の実施形態において、複合体は、精製マトリックスと霊長類AAV粒子との間に形成される。一部の実施形態において、複合体は、精製マトリックスとウシAAV粒子との間に形成される。一部の実施形態において、複合体は、精製マトリックスとトリAAV粒子との間に形成される。一部の実施形態において、複合体は、精製マトリックスとオランウータンAAV粒子との間に形成される。一部の実施形態において、複合体は、精製マトリックスとサルAAV粒子との間に形成される。一部の実施形態において、複合体は、精製マトリックスとマウスAAV粒子との間に形成される。
【0221】
[0204] 一部の実施形態では、環境因子を使用してAAV-精製マトリックス複合体のサイズを増加させる。本明細書で使用されるとき、語句「サイズの増加」は、複合体の直径の増加又は複合体の質量の増加を指し得る。一部の実施形態において、サイズの増加は、複合体のモル質量の増加である。一部の実施形態において、サイズの増加は、複合体の流体力学半径の増加である。
【0222】
[0205] 一部の実施形態において、本明細書に記載される複合体のサイズは、環境因子の適用後に増加する。一部の実施形態において、精製マトリックスと生物製剤、汚染物質、及び/又は他の分子との間に形成される複合体のサイズが増加する。一部の実施形態において、初期複合体のサイズは、複数の複合体が凝集する結果として増加する。一部の実施形態において、複数の複合体は、精製マトリックスの自己集合に起因して凝集する。一部の実施形態において、複数の複合体は、環境因子の適用に起因して凝集する。一部の実施形態において、サイズ増加は、複数のタンパク質ベースの精製マトリックス分子の間の非共有結合性相互作用によって安定化する。一部の実施形態において、サイズ増加は、相挙動のあるポリペプチド間の非共有結合性相互作用によって安定化する。一部の実施形態において、非共有結合性相互作用は、双極子間力、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、水素結合、疎水性相互作用、及び/又は静電相互作用である。
【0223】
[0206] 一部の実施形態において、本開示の方法は、混合物中にある複数の複合体の形成を提供する。一部の実施形態では、全ての複合体のサイズが増加する。一部の実施形態では、一部の複合体のサイズが増加し、他の複合体のサイズは一定のままである。一部の実施形態において、1つの複合体のサイズが増加し、他の複合体のサイズは一定のままである。
【0224】
[0207] 一部の実施形態において、複合体のサイズは、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約55倍、少なくとも約60倍、少なくとも約65倍、少なくとも約70倍、少なくとも約75倍、少なくとも約80倍、少なくとも約85倍、少なくとも約90倍、少なくとも約95倍、少なくとも約100倍、又はそれ以上に増加する。一部の実施形態において、初期複合体のサイズは、少なくとも約2倍に増加する。一部の実施形態において、初期複合体のサイズは、少なくとも約5倍に増加する。一部の実施形態において、初期複合体のサイズは、少なくとも約10倍に増加する。一部の実施形態において、初期複合体のサイズは、少なくとも約25倍に増加する。
【0225】
[0208] 一部の実施形態において、複合体のサイズの増加は、肉眼で目視観察することができる。例えば、複合体のサイズの増加は、複合体を含む組成物の色、明澄度、粘度の変化を生じさせてもよく、及び/又は複合体の溶解度の変化(例えば、溶液からの沈殿)を生じさせてもよく、ここでかかる変化は、ヒトがいかなる特殊な機器も使用することなく観察可能である。
【0226】
[0209] 一部の実施形態において、当業者は、複合体のサイズの増加を、当該技術分野において公知の方法により測定し得る。一部の実施形態において、複合体のサイズの増加は、X線散乱、小角X線散乱、広角X線散乱、動的光散乱、分析超遠心、サイズ排除クロマトグラフィー、及び光子相関分光法からなる群から選択される技法を利用して測定することができる。
【0227】
[0210] 一部の実施形態において、環境因子は、AAV粒子と精製マトリックスとを含む組成物に加えられる第1の環境因子である。環境因子の例は、本開示全体を通じて提供される。
【0228】
[0211] 一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は、AAV-精製マトリックス複合体を洗浄することによって1つ以上の不純物から分離される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックスの洗浄は、AAV粒子による精製マトリックスとの結合を妨げない。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は緩衝液で洗浄される。緩衝液の非限定的な例としては、酢酸ナトリウム、生理食塩水、グリシンHCL、カコジル酸塩緩衝液、トリス-HCl、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、クエン酸塩、リン酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸(TAPS)、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)が挙げられる。一部の実施形態において、緩衝液は、アルギニン、ヒスチジン、尿素、プルロニック酸、及びtriton-x-100のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は溶媒で洗浄される。溶媒の非限定的な例としては、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、水、エタノール、トルエン、酢酸メチル、及び酢酸エチルが挙げられる。
【0229】
[0212] 一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は、サイズを基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は、直径を基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックスは、半径を基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックスは、質量を基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックスは、モル質量を基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックスは、遠心、タンジェンシャルフローろ過、分析超遠心、膜クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ノーマルフローろ過、音波分離、遠心、向流遠心、及び高速タンパク質液体クロマトグラフィーからなる群から選択される技法を用いることによってサイズを基準として少なくとも1つの不純物から分離される。
【0230】
[0213] 一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体は、遠心を用いてサイズを基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体を少なくとも1つの不純物から分離するのに約100相対遠心力(RCF)~約16,000RCFの間、例えば、約500~約16,000RCF、約1,000RCF~16,000RCFが適用される。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックス複合体を少なくとも1つの不純物から分離するのに少なくとも500相対遠心力(RCF)、例えば、少なくとも約500RCF、少なくとも約600RCF、少なくとも約700RCF、少なくとも約800RCF、少なくとも約900RCF、少なくとも約1000RCF、少なくとも約2000RCF、少なくとも約3000RCF、少なくとも約3500RCF、少なくとも約4000RCF、少なくとも約5000RCF、少なくとも約6000RCF、少なくとも約7000RCF、少なくとも約8000RCF、少なくとも約9000RCF、少なくとも約10,000RCF、少なくとも約11,000RCF、少なくとも約12,000RCF、少なくとも約13,000RCF、少なくとも約14,000RCF、少なくとも約15,000RCF、少なくとも約16,000RCF、少なくとも約17,000RCF、少なくとも約18,000RCF、少なくとも約19,000RCF、又は少なくとも約20,000RCFが適用される。
【0231】
[0214] 一部の実施形態において、AAV-精製マトリックスは、TFFを用いてサイズを基準として少なくとも1つの不純物から分離される。一部の実施形態では、TFFを用いてAAV-精製マトリックスを少なくとも1つの不純物からサイズを基準として分離してもよく、本明細書では「ダイアフィルトレーション」とも称される工程である。ダイアフィルトレーションは、洗浄及び溶出の両方のステップを含む。洗浄は、AAV-精製マトリックスを含む組成物中に含まれる不純物を取り除く。溶出は、精製されたAAV粒子を精製マトリックスから分離する。一部の実施形態において、AAV-精製マトリックスはTFFを用いて濃縮される。一部の実施形態では、TFFを用いて組成物内でのAAV-精製マトリックスの濃度を増加させてもよく、本明細書では「濃縮」とも称される工程である。
【0232】
[0215] タンジェンシャルフローろ過は、分子の分離及び/又は濃縮に精密ろ過膜及び限外ろ過膜の両方を採用する。精密ろ過膜は、典型的には0.1μm~10μmの間の細孔径を有する。限外ろ過膜は、典型的には、細孔径0.001μm~0.1μmの間の、精密ろ過膜よりも小さい細孔径を有する。一部の実施形態において、本開示の方法では、細孔径約0.001μm~約10μmの間の膜が利用される。一部の実施形態において、膜は、約0.001μm、約0.01μm、約0.05μm、約0.1μm、約0.2μm、約0.3μm、約0.4μm、約0.5μm、約0.6μm、約0.7μm、約0.8μm、約0.9μm、約1.0μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、又は約10μm(これらの間にある全ての値及び範囲を含む)の細孔径を有する。一部の実施形態において、膜は、約0.1μmの細孔径を有する。一部の実施形態において、膜は、約0.2μmの細孔径を有する。
【0233】
[0216] 一部の実施形態において、膜は、親水性化ポリフッ化ビニリデン(poly(vinylildene difluoride))(PVDF)、ポリエーテルスルホン(polyetheresulfone)(PES)、リン酸セルロース、ジエチルアミノエチルセルロース、ポリスルホン(polysufone)、再生セルロース、ナイロン、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ペグ化PES、及びスルホン化PESで作られている。
【0234】
[0217] TFFでは、膜が混合流体の流れに対して接線方向に置かれ、混合流体が膜の第1の面の上を接線方向に流される。同時に、流体媒質が膜の第2の表面と接触して置かれる。膜間差圧が、流体を膜に押し通し、透過性分子を共に運んでいく力である。
【0235】
[0218] 一部の実施形態において、1つ以上の汚染物質又は不純物からのサイズを基準としたAAVと精製マトリックスとの複合体の分離は、約0.1バール~約3バールの間の膜間差圧のTFFを用いて実施される。一部の実施形態において、膜間差圧は、約0.1バール、約0.2バール、約0.3バール、約0.4バール、約0.5バール、約0.6バール、約0.7バール、約0.8バール、約0.9バール、約1.0バール、約1.1バール、約1.2バール、約1.3バール、約1.4バール、約1.5バール、約1.6バール、約1.7バール、約1.8バール、約1.9バール、約2.0バール、約2.1バール、約2.2バール、約2.3バール、約2.4バール、約2.5バール、約2.6バール、約2.7バール、約2.8バール、約2.9バール、又は約3.0バール(これらの間にある全ての値及び範囲を含む)である。一部の実施形態において、膜間差圧は約1.5バールである。
【0236】
[0219] 一部の実施形態において、1つ以上の汚染物質からの本明細書に記載されるAAV粒子と精製マトリックスとの複合体の分離を向上させるため、クロスフロー流速が調整される。クロスフロー流速は、溶液の流れが供給チャネルを通って膜を越える速度である。これは、ろ液の流れを制限し得る分子を押し流す力を提供する。一部の実施形態において、クロスフロー流速は、約500L/m2/h~約2000L/m2/hの間である。一部の実施形態において、クロスフロー流速は、約500L/m2/h、約600L/m2/h、約700L/m2/h、約800L/m2/h、約900L/m2/h、約1000L/m2/h、約1100L/m2/h、約1200L/m2/h、約1300L/m2/h、約1400L/m2/h、約1500L/m2/h、約1600L/m2/h、約1700L/m2/h、約1800L/m2/h、約1900L/m2/h、又は約2000L/m2/hの間(これらの間にある全ての値及び範囲を含む)である。一部の実施形態において、クロスフロー流速は、約960L/m2/hである。一部の実施形態において、TFF分離は、精製マトリックスとAAV粒子とを含む複合体を保持するが、汚染物質は通過させる膜を使用することによって行われる。
【0237】
[0220] 一部の実施形態において、AAV粒子は、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物のpHを変化させることによってAAV-精製マトリックス複合体から溶出される。一部の実施形態では、pHを約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、又は約6.0単位増加させる。一部の実施形態では、pHを約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、又は約6.0単位低下させる。一部の実施形態において、AAV粒子は、AAV-精製マトリックス複合体から約2のpHで溶出される。一部の実施形態において、AAV粒子は、AAV-精製マトリックス複合体から約3のpHで溶出される。
【0238】
[0221] 一部の実施形態において、AAV粒子は、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物の温度を変化させることによってAAV-精製マトリックス複合体から溶出される。一部の実施形態では、温度を0.5℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、又は約40℃上昇させる。一部の実施形態では、温度を約0.5℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、又は約40℃低下させる。
【0239】
[0222] 一部の実施形態において、AAV粒子は、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物のイオン強度を変化させることによってAAV-精製マトリックス複合体から溶出される。一部の実施形態において、イオン強度の変化は、塩濃度を増加させることによってもたらされる。一部の実施形態において、イオン強度の変化は、塩濃度を低下させることによってもたらされる。塩の非限定的な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリシン、アルギニン、硫酸銅、ヨウ化ナトリウム、硫酸アンモニウム、及び硫酸ナトリウムが挙げられる。一部の実施形態では、タンパク質ベースの精製マトリックスと生物製剤、汚染物質、及び/又は分子とを含む組成物中の塩濃度を変化させるために透析が用いられる。
【0240】
[0223] 一部の実施形態において、AAV粒子は、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物に還元剤を添加することによってAAV-精製マトリックス複合体から溶出される。一部の実施形態において、1つ以上の還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール(BME)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ヒドラジン、水素化ホウ素、アミンボラン類、低級アルキル置換アミンボラン類、トリエタノールアミン、及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)からなる群から選択される。
【0241】
[0224] 一部の実施形態では、環境因子を用いてAAV粒子がAAV-精製マトリックス複合体から溶出される。一部の実施形態において、環境因子は、AAV粒子とAAV-精製マトリックス複合体とを含む組成物に加えられる第1の環境因子である。一部の実施形態において、環境因子は、AAV粒子とAAV-精製マトリックス複合体とを含む組成物に加えられる第2の環境因子である。環境因子の非限定的な例は、本開示全体を通じて提供される。
【0242】
[0225] 一部の実施形態において、本明細書に記載される精製マトリックスを使用してAAV粒子を精製する方法は、約30分~約24時間で完了する。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、約30分~約24時間で完了する。一部の実施形態において、本方法は、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、又は約24時間で完了する。一部の実施形態において、本明細書に記載される精製マトリックスを使用してAAV粒子を精製する方法は、約2時間~約10時間で完了する。
【0243】
[0226] 一部の実施形態において、AAV粒子の精製収率は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%である。
【0244】
[0227] 一部の実施形態において、AAV粒子は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の純度に精製される。
【0245】
[0228] 一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、1日に少なくとも0.1kg、少なくとも約0.2kg、少なくとも約0.3kg、少なくとも約0.4kg、少なくとも約0.5kg、少なくとも約0.6kg、少なくとも約0.7kg、少なくとも約0.8kg、少なくとも約0.9kg、少なくとも約1kg、少なくとも約2kg、少なくとも約3kg、少なくとも約4kg、少なくとも約5kg、少なくとも約6kg、少なくとも約7kg、少なくとも約8kg、少なくとも約9kg、少なくとも約10kg、又はそれ以上のAAV(これらの間にある全ての値及び範囲を含む)の精製が可能である。
【0246】
[0229] 一部の実施形態において、AAV粒子は、その生物学的活性及び/又は構造を保持している。一部の実施形態において、精製されたAAV粒子は、生物学的活性の亢進を呈する。
【0247】
[0230] 一部の実施形態において、精製されたAAV粒子は、精製後にその感染力の約95%を保持している。一部の実施形態において、精製されたAAV粒子は、精製後にその感染力の約96%を保持している。一部の実施形態において、精製されたAAV粒子は、精製後にその感染力の約97%を保持している。一部の実施形態において、精製されたAAV粒子は、精製後にその感染力の約98%を保持している。一部の実施形態において、精製されたAAV粒子は、精製後にその感染力の約99%を保持している。一部の実施形態において、精製されたAAV粒子は、精製後にその感染力の約100%を保持している。
【0248】
[0231] 一部の実施形態において、本明細書に開示されるマトリックスを使用して精製されたAAV粒子を含む組成物は、「内包型」のAAV粒子が濃縮されている。内包型AAV粒子は、AAVカプシド内に封入された所望のゲノム材料(例えば、AAVゲノム又は移入用カセット)を含む。空のAAV粒子は、所望のゲノム材料を欠いている。
【0249】
[0232] 試料中の内包型粒子及び空の粒子の相対量を決定する技法は幾つかある。例えば、本開示の精製マトリックスから溶出される試料中に存在するAAV粒子の総数は、ELISAを用いて決定されてもよい。一部の実施形態において、本開示の精製マトリックスから溶出される試料中に存在するウイルスゲノムの数は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を用いて決定されてもよい。一部の実施形態において、qPCRプライマーは逆方向末端反復(ITR)配列を標的とする。ITR配列を標的とするプライマーを利用したqPCRは、本明細書では、「ITR qPCR」と称される。AAV粒子の総数に対するウイルスゲノムの数の比が、全粒子に対する内包型粒子の比の近似を与える。一部の実施形態では、qPCR:ELISA値(例えば、試料中に存在するウイルスゲノムの数:試料中に存在するAAV粒子の総数)を用いて、全粒子に対する相対的な内包型粒子の比が近似される。
【0250】
[0233] 一部の実施形態において、qPCR:ELISA値は、本開示の精製マトリックスによる精製後に増加する。一部の実施形態において、本開示の精製マトリックスによる精製後、試料のqPCR:ELISA値は、精製前の試料のqPCR:ELISA値と比較して少なくとも約25%、例えば少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約100%増加する。一部の実施形態において、本開示の精製マトリックスによる精製後、試料のqPCR:ELISA値は、精製前の試料のqPCR:ELISA値と比較して少なくとも約50%増加する。
【0251】
AAV粒子を安定化させる方法
[0234] 本発明者らは、本明細書に記載される精製マトリックスが、予想外にも、AAV粒子のその生産、精製、及び/又は貯蔵時の安定化を助け得ることを発見した。本明細書においてAAV粒子との関連で使用されるとき、用語「安定化させる」又は「安定化」とは、精製マトリックスが、複数のAAV粒子を含むAAV試料の分解又は凝集を低減し、AAV粒子が他のタンパク質(例えば、細胞のAAV受容体)に結合するのを防止し、又は生産株細胞による合成を亢進させる能力を指す。
【0252】
[0235] 従って、一部の実施形態では、AAV粒子をその生産、精製、又は貯蔵時に精製マトリックスと接触させる。一部の実施形態において、AAV粒子のその生産時の収率を増加させる方法は、AAV生産細胞を精製マトリックスの存在下に培養することを含む。一部の実施形態において、AAV粒子をその生産時に安定化させる方法は、AAV生産細胞を精製マトリックスの存在下に培養することを含む。一部の実施形態において、AAV粒子をその精製時に安定化させる方法は、AAV粒子をその精製時に精製マトリックスと接触させることを含む。一部の実施形態において、AAV粒子をその貯蔵時に安定化させる方法は、AAV粒子を精製マトリックスの存在下に貯蔵することを含む。一部の実施形態において、AAV粒子の保管寿命を増加させる方法は、AAV粒子を精製マトリックスの存在下に貯蔵することを含む。
【0253】
[0236] 例えば、精製マトリックスは、培養下での生産時にAAV粒子と接触させてもよい。AAV粒子は、典型的には、HEK293細胞又はSf9細胞などの生産細胞株で生産される。一部の実施形態において、生産細胞株には、AAVの生産に必要な様々な遺伝子を含有する1つ以上のプラスミドがトランスフェクトされる(例えば、三重トランスフェクションプロトコル)。一部の実施形態において、生産細胞株には、AAVの生産に必要な様々な遺伝子を含有するバキュロウイルス構築物を感染させる。培養下のAAV生産細胞に精製マトリックスを(例えば、それを組織培養培地に添加することにより)添加すると、この工程で入手されるAAV粒子の収率及び/又は品質が増加し得る。一部の実施形態において、精製マトリックスは、約1μM~約1mM、例えば、約1μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約8μM、約9μM、約10μM、約20μM、約30μM、約40μM、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約150μM、約200μM、約250μM、約300μM、約350μM、約400μM、約450μM、約500μM、約550μM、約600μM、約650μM、約700μM、約750μM、約800μM、約850μM、約900μM、約950μM、又は約1mM(間にある全ての値及び範囲を含む)の濃度で培養物に添加されてもよい。一部の実施形態において、精製マトリックスは、約10μMの濃度で培養物に添加される。一部の実施形態において、精製マトリックスは、約100μMの濃度で培養物に添加される。いかなる理論によっても拘束されることなく、精製マトリックスは、AAV粒子が生産されているときにそれに結合する、及び/又はそれを物理的に取り囲むことができ、それによって、AAV粒子に対する細胞受容体を含め、他のタンパク質にAAV粒子が結合するのを防止すると考えられる。従って、培養細胞によって生産され、培養培地中に分泌されるAAVは、精製マトリックスの存在下にあれば、生産株細胞を再感染させることができないであろう。一部の実施形態において、培養下のAAV生産細胞株に精製マトリックスを添加すると、AAV粒子の収率が増加し得る。例えば、培養下のAAV生産細胞株に精製マトリックスを添加すると、精製マトリックスなしに培養される細胞と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、又はそれ以上のウイルス力価の増加が達成されることになり得る。
【0254】
[0237] 別の例として、精製されたAAV試料が(本明細書に記載される方法、又は当該技術分野において公知の他の方法を用いて)調製された後、貯蔵前(例えば、凍結前)に精製マトリックスが試料に添加されてもよい。いかなる理論によっても拘束されることなく、精製マトリックスはAAV粒子に結合し、及び/又はそれを物理的に取り囲み、ひいてはそれが他のAAV粒子と凝集するのを防止し、また、特に複数回の凍結融解サイクル中に、AAV粒子を分解から保護する助けにもなると考えられる。AAV粒子の凝集は、顕微鏡法によって目視で、及び/又はX線散乱、レーザー回折、分析超遠心、動的光散乱、ナノ粒子トラッキング解析、共鳴質量測定、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、光遮蔽法、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される技法によって観察されてもよい。一部の実施形態において、AAV粒子は、精製マトリックスの存在下に、約-80℃~約40℃の間、例えば、約-80℃、約-75℃、約-70℃、約-65℃、約-60℃、約-55℃、約-50℃、約-45℃、約-40℃、約-35℃、約-30℃、約-25℃、約-20℃、約-15℃、約-10℃、約-5℃、約0℃、約4℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、又は約40℃の温度で凍結及び貯蔵されてもよい。
【0255】
[0238] 一部の実施形態において、AAV粒子が精製マトリックスの存在下に貯蔵されるとき、AAV粒子の保管寿命は、精製マトリックスが存在しない中で貯蔵した試料と比較すると、少なくとも約10%長くなる。例えば、一部の実施形態において、保管寿命は、精製マトリックスが存在しない中、ほぼ同じ温度で貯蔵したAAV粒子の保管寿命と比べて少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、又は少なくとも約500%長くなる。
【0256】
[0239] 一部の実施形態において、AAV粒子は、精製マトリックスの存在下に約-80℃で貯蔵される。一部の実施形態において、AAV粒子は、精製マトリックスの存在下に約-20℃で貯蔵される。一部の実施形態において、AAV粒子は、精製マトリックスの存在下に約4℃で貯蔵される。一部の実施形態において、AAV粒子が精製マトリックスの存在下に約-80℃、約-20℃、又は約4℃で貯蔵されたとき、AAVの保管寿命は、それが精製マトリックスが存在しない中で貯蔵された場合と比べて少なくとも約10%長くなる。例えば、AAV粒子の保管寿命は、精製マトリックスが存在しない中、同じ温度で貯蔵したAAVの保管寿命と比べて少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、又は少なくとも約500%長くなり得る。本明細書で使用されるとき、増加した保管寿命とは、AAV粒子が貯蔵されて、実質的に同じレベルの感染力をなおも保持している時間の長さの増加を指し得る。
【0257】
[0240] 一部の実施形態において、精製マトリックスを使用してAAV粒子をその生産、精製、及び/又は貯蔵時に安定化させると、「内包型」AAV粒子の収率が増加し得る。従って、一部の実施形態において、精製マトリックスと接触させたときのAAV粒子の安定化の向上は、内包型AAV粒子の数を空の粒子と比較して定量することにより測定し得る。一部の実施形態において、AAV試料の生産、精製、及び/又は貯蔵時に精製マトリックスを使用すると、精製マトリックスの存在下に生産、精製、及び/又は貯蔵されないAAV試料と比較したとき、qPCR:ELISA値が増加することになり得る。
【0258】
環境因子
[0241] 一部の実施形態において、本開示の方法は、精製マトリックスとAAV粒子とを含む組成物に対して1つ以上の環境因子を提供する。一部の実施形態において、精製マトリックスとAAV粒子とを含む組成物に1つ以上の環境因子が適用される。環境因子を適用すると、精製マトリックスとAAV粒子とを含む組成物に変化が生じる。一部の実施形態では、環境因子を使用して、AAV-精製マトリックス複合体のサイズを増加させる。一部の実施形態では、環境因子を使用して、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物から1つ以上の不純物を除去する。一部の実施形態では、環境因子を使用して、精製マトリックス複合体から1つ以上のAAV粒子を溶出させる。一部の実施形態において、1つ以上の環境因子は、タンパク質ベースの精製マトリックスと生物製剤、汚染物質、及び/又は分子との間の複合体のサイズの増加を生じさせる。一部の実施形態において、1つ以上の環境因子は、相挙動のあるポリペプチドの凝集を生じさせる。一部の実施形態において、1つ以上の環境因子は、AAV粒子がその天然の構造、機能、及び活性を保持することを可能にする。一部の実施形態において、1つ以上の環境因子は、AAV粒子がその天然の構造、機能、及び活性を亢進させることを可能にする。
【0259】
[0242] 一部の実施形態において、環境因子は、温度の変化である。一部の実施形態では、温度を約0.5℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、又は約40℃増加させる。一部の実施形態では、温度を約0.5℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、又は約40℃低下させる。
【0260】
[0243] 一部の実施形態において、環境因子は、pHの変化である。一部の実施形態では、pHを約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、又は約6.0単位増加させる。
【0261】
[0244] 一部の実施形態では、pHを約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、又は約6.0単位低下させる。
【0262】
[0245] 一部の実施形態において、環境因子は、イオン強度の変化である。一部の実施形態において、イオン強度の変化は、塩の濃度を増加させることによってもたらされる。一部の実施形態において、イオン強度の変化は、塩の濃度を低下させることによってもたらされる。塩の非限定的な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸銅、ヨウ化ナトリウム、及び硫酸ナトリウムが挙げられる。一部の実施形態において、塩は、約0.1M~約5Mの間、例えば、約0.1M、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2M、約1.3M、約1.4M、約1.5M、約1.6M、約1.7M、約1.8M、約1.9M、約2M、約2.1M、約2.2M、約2.3M、約2.4M、約2.5M、約2.6M、約2.7M、約2.8M、約2.9M、約3M、約3.1M、約3.2M、約3.3M、約3.4M、約3.5M、約3.6M、約3.7M、約3.8M、約3.9M、約4M、約4.1M、約4.2M、約4.3M、約4.4M、約4.5M、約4.6M、約4.7M、約4.8M、約4.9M、又は約5Mの濃度を有する。一部の実施形態において、塩は、0.6Mの濃度を有する。一部の実施形態では、タンパク質ベースの精製マトリックスと生物製剤、汚染物質、及び/又は分子とを含む組成物の塩の濃度を変化させるために透析が用いられる。
【0263】
[0246] 一部の実施形態において、環境因子は、補因子の添加である。補因子の非限定的な例としては、カルシウム、マグネシウム、コバルト、銅、亜鉛、鉄、マンガン、セレン、モリブデン、カリウム、補酵素A(CoA)、ヌクレオシド三リン酸、及びビタミン(例えば、ビタミンA、B、C、D、又はF)が挙げられる。一部の実施形態において、補因子は、カルシウムである。一部の実施形態において、ヌクレオシド三リン酸は、アデノシン三リン酸、ウリジン三リン酸、グアノシン三リン酸、シチジン三リン酸、又はチミジン三リン酸である。一部の実施形態において、ビタミンは脂溶性物質である。一部の実施形態において、ビタミンは水溶性である。ビタミンの非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン又はナイアシンアミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール、又はピリドキサミン、又は塩酸ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、K1、及びK2、葉酸、及びビオチンが挙げられる。
【0264】
[0247] 一部の実施形態において、環境因子は、タンパク質ベースの精製マトリックスの濃度の変化である。一部の実施形態において、環境因子は、生物製剤、汚染物質、及び/又は他の分子の濃度の変化である。
【0265】
[0248] 一部の実施形態において、環境因子は、タンパク質ベースの精製マトリックスと生物製剤、汚染物質、及び/又は分子とを含む組成物の圧力の変化である。一部の実施形態において、圧力の変化は、組成物の容積を増加又は低下させることによって達成されてもよい。
【0266】
[0249] 一部の実施形態において、環境因子は、1つ以上の界面活性剤の添加である。一部の実施形態において、1つ以上の界面活性剤は、遊離脂肪酸塩、石鹸、ラウリル硫酸ナトリウムなどの脂肪酸スルホン酸塩、エトキシ化プロピレングリコールなどのエトキシ化化合物、レシチン、ポリグルコン酸塩、第4級アンモニウム塩、リグニンスルホン酸塩、3-((3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ)-1-プロパンスルホン酸塩(CHAPS)、スクロース及びグルコースを含めた糖類、Triton X-100、及びNP-40である。一部の実施形態において、界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、又は両性である。
【0267】
[0250] 一部の実施形態において、環境因子は、1つ以上の分子クラウディング剤の添加である。分子クラウディング剤の非限定的な例としては、ポリエチレングリコール、デキストラン、及びフィコールが挙げられる。PEGには、PEG400、PEG1450、PEG3000、PEG8000、及びPEG10000が含まれ得る。
【0268】
[0251] 一部の実施形態において、環境因子は、1つ以上の酸化剤の添加である。酸化剤の非限定的な例としては、過酸化水素、親水的又は疎水的に活性化させた過酸化水素、予め形成された過酸、モノ過硫酸塩又は次亜塩素酸塩が挙げられる。
【0269】
[0252] 一部の実施形態において、環境因子は、1つ以上の還元剤の添加である。一部の実施形態において、1つ以上の還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール(BME)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ヒドラジン、水素化ホウ素、アミンボラン類、低級アルキル置換アミンボラン類、トリエタノールアミン、及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)からなる群から選択される。一部の実施形態において、環境因子は、1つ以上の変性剤の添加である。変性剤の非限定的な例としては、尿素、塩酸グアニジン、グアニジン、サリチル酸ナトリウム、ジメチルスルホキシド、及びプロピレングリコールが挙げられる。
【0270】
[0253] 一部の実施形態において、環境因子は、1つ以上の酵素の添加である。酵素の非限定的な例としては、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、シンテターゼ、トランスフェラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどのヌクレアーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、デヒドロゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、及びリパーゼが挙げられる。
【0271】
[0254] 一部の実施形態において、環境因子は、電磁波の適用である。一部の実施形態において、環境因子は、光の適用である。一部の実施形態において、電磁波は、約0.0001nm~約100mの間の波長を有する。一部の実施形態において、電磁波は、ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、及び電波からなる群から選択される。一部の実施形態において、電磁波はガンマ線である。一部の実施形態において、ガンマ線は、約0.0001nm~約0.01nmの間、例えば、0.0001nm、0.0005nm、0.001nm、0.002nm、0.003nm、0.004nm、0.005nm、0.006nm、0.007nm、0.008nm、0.009nm、及び0.01nmの波長を有する。一部の実施形態において、X線は、約0.01nm~約10nmの間、例えば、約0.01nm、0.02nm、0.03nm、0.04nm、0.05nm、0.06nm、0.07nm、0.08nm、0.09nm、0.10nm、0.2nm、0.3nm、0.4nm、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、又は約10nmの波長を有する。一部の実施形態において、紫外線放射は、約10nm~約400nmの間、例えば、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約280nm、約300nm、約350nm、又は約400nmの波長を有する。一部の実施形態において、可視光波は、約400nm~約800nmの間、例えば、約400nm、約450nm、約500nm、約550nm、約600nm、約650nm、約700nm、約750nm、又は約800nmの波長を有する。一部の実施形態において、赤外線放射は、約800nm~約0.1cmの間、例えば、約800nm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、又は約0.1cmの波長を有する。一部の実施形態において、電波は、約0.1cm~100mの間、例えば、約0.1cm、約1cm、約10cm、約100cm、約1000cm、約2000cm、約3000cm、約4000cm、約5000cm、約6000cm、約7000cm、約8000cm、約9000cm、又は約100mの波長を有する。
【0272】
[0255] 一部の実施形態において、環境因子は、音波の適用である。一部の実施形態において、音波は、約1Hz~2000kHzの間の周波数を有する。一部の実施形態において、音波は、約1Hz、約5Hz、約10Hz、約20Hz、約30Hz、約40Hz、約50Hz、約60Hz、約70Hz、約80Hz、約90Hz、約100Hz、約200Hz、約300Hz、約400Hz、約500Hz、約600Hz、約700Hz、約800Hz、約900Hz、約1kHz、約100kHz、約200kHz、約300kHz、約400kHz、約500kHz、約600kHz、約700kHz、約800kHz、約900kHz、約1000kHz、約1100kHz、約1200kHz、約1300kHz、約1400kHz、約1500kHz、約1600kHz、約1700kHz、約1800kHz、約1900kHz、又は約2000kHzの周波数を有する。
【実施例】
【0273】
実施例1.AAV結合ポリペプチドの開発
[0256] 野生型AAVRエクトドメインの部位特異的突然変異誘発を実施する。より具体的には、配列番号33~47のうちのいずれか1つから、あるアミノ酸配列を含むAAV結合ポリペプチドを選択し、それを標準的なクローン技術を用いた1つ以上のアミノ酸残基の部位特異的突然変異誘発に供する。AAV結合ポリペプチドの親和性を特徴付ける。AAVに対して少なくとも50nM又はそれ以上の結合親和性を有するAAV結合ポリペプチドを選択する。pHの変化及び塩の添加を含めた様々な環境因子がAAVへのAAV結合ポリペプチドの結合を破綻させる能力を特徴付ける。
【0274】
実施例2.AAV結合ポリペプチドと相挙動のあるポリペプチドとを含む精製マトリックスを使用したAAVの精製
[0257] 実施例1のAAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスを作成し、特徴付ける。より具体的には、(i)実施例1のAAV結合ポリペプチドと(ii)相挙動のあるポリペプチド(例えば、ELP)とを含む融合タンパク質を、標準プロトコルに従い大腸菌(Escherichia coli)で発現させる。等温滴定型熱量測定法を利用してAAV粒子に対する融合タンパク質の親和性を特徴付ける。融合タンパク質の転移温度を紫外可視分光光度法を用いて決定する。次に、標準的な技法を用いて、融合タンパク質をリンカー中に支持体へと共有結合的にカップリングして、精製マトリックスを作製する。支持体は、磁性ビーズ又は多孔質ビーズなど、ビーズである。
【0275】
[0258] 次に精製マトリックスを、AAV1、AAV2、AAV3B、AAV5、AAV6、AAV8、及びAAV9を含む種々の精製AAV試料と共に別々にインキュベートする。精製マトリックスは、様々なAAV粒子との複合体を形成する。
【0276】
[0259] 精製マトリックスとAAV粒子との様々なモル比を試験して、精製(即ち、AAV粒子の完全な捕捉)に最適な比を決定する。精製マトリックスと生物製剤とを含有する組成物に環境因子(例えば、塩化ナトリウム又は硫酸アンモニウムなどの塩の添加)を適用して、タンパク質ベースの精製マトリックスのサイズの増加を生じさせる。
【0277】
[0260] タンジェンシャルフローろ過及び遠心の両方を利用して、タンパク質ベースの精製マトリックスからAAV粒子を分離する。遠心及びタンジェンシャルフローろ過は、いずれもタンパク質ベースの精製マトリックスからの生物製剤の分離が可能であるものの、特殊な遠心機の必要なしに数千リットルの試料容積の迅速な精製が可能であるという理由でタンジェンシャルフローろ過が好ましい。
【0278】
[0261] TFFは、標準条件-例えば、1.5バール膜間差圧及び960L/m2/hクロスフロー流速を用いて実施する。0.1μm親水性化ポリ(ビニリデンジフルオライド)(PVDF)膜など、標準TFF膜を使用する。
【0279】
[0262] pHを(例えば4.5などの酸性pH)調整して、AAVから精製マトリックスを分離(即ち溶出)させる。AAVの純度をサイズ排除クロマトグラフィーによって特徴付ける。タンパク質ベースの精製マトリックスは、次に更なる精製ラウンドに再使用する。
【0280】
実施例3.AAV結合ポリペプチドと支持体とを含む精製マトリックスを利用した細胞ライセートからのAAVの精製
[0263] 生産株細胞株(例えば、HEK293)において標準プロトコルに従いAAVを生産する。細胞を溶解させて、遠心により細胞残屑を除去する。細胞上清を実施例2の精製マトリックスのうちのいずれか1つとある期間にわたって接触させて、複合体を形成させる。環境因子を適用して複合体のサイズを増加させる。AAVが結合した精製マトリックスをサイズを基準として不純物から分離する。第2の環境因子を適用することにより、精製マトリックスからAAVを溶出させる。次にAAVの力価を決定し、後に使用するため-80℃で凍結する。
【0281】
実施例4.精製マトリックスを使用した複数のAAV血清型の精製
[0264] tdTomatoトランス遺伝子をパッケージングする、AAV1、AAV2、AAV6、AAV8、及びAAV9粒子を含めた組換えAAV粒子を、標準プロトコルに従い生産株細胞株(例えば、HEK293)において産生させた。細胞を溶解させて、遠心することにより細胞残屑を除去した。細胞上清を、ある期間にわたって配列番号171のアミノ酸配列を有する精製マトリックスと接触させることにより、複合体を形成させた。精製マトリックスは、配列番号169のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドと、配列番号170のアミノ酸配列を有する相挙動のあるポリペプチドとを含んだ。次に環境因子(例えば、0.5M~2MのNaCl、MgCl2、又はCaCl2)を適用して複合体のサイズを増加させた。精製マトリックス、環境因子、及び細胞上清を室温で15分間インキュベートした。続いて、13cm2中空フィルタ(0.2μm細孔径)を使用して精製マトリックス、環境因子、及び細胞上清を濃縮した(5~10倍)。リン酸緩衝溶液及び塩化ナトリウムを使用して6回の洗浄ダイアボリュームを実施した。このプロトコルによれば、AAVが結合した精製マトリックスを不純物からサイズを基準として分離することが可能であった。緩衝液(例えば、第2の環境因子)を適用することにより、AAVを精製マトリックスから溶出させた。保持液から精製マトリックスを収集した。表5に示されるとおり、様々な緩衝液を評価した。次にAAVを力価測定し、後に使用するため-80℃で凍結した。
【0282】
【0283】
[0265] 定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を利用して、溶液から捕捉されたAAVの量及び溶出後に入手されたAAVの量を評価した。精製マトリックスは、99%を超える複数の血清型(AAV1、AAV2、AAV6、AAV8、及びAAV9)のAAV粒子を捕捉した(
図1)。評価した各緩衝液が、単回ダイアボリュームで65%を上回る結合AAV粒子を溶出した(
図2)。
【0284】
[0266] AAV粒子の溶出後に精製マトリックスをリサイクルして、それを将来の精製に利用できるか否かを決定した。リサイクルは、精製マトリックスを95℃で5分間インキュベートするか、又は精製マトリックスを1M NaOH又は6M塩酸グアニジンに5分間浸漬することによって実施した。
【0285】
[0267] 表6が示すとおり、精製マトリックスは、再生させて、繰り返し捕捉に利用することができる。5サイクルの精製/再生後、精製マトリックスは98%のAAVを捕捉する。
【0286】
【0287】
[0268] ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecycl sulfate)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を利用して、溶出したAAV試料の純度を評価した。次にゲルを銀染色することにより、試料中にある任意の汚染物質を可視化した。
図3に示されるとおり、ゲル上には、主要なAAV構造タンパク質Vp1、Vp2、及びVp3が見えるが、他の主要なバンドは認められなかった。ウエスタンブロットにより、精製マトリックスから溶出したカプシドタンパク質が試料中に存在することが確認された(
図4)。更に、AAV粒子が精製マトリックスによって捕捉された後、捕捉上清中にAAV粒子は残っていなかった(
図4のCapture Sup)。まとめると、このデータは、精製マトリックスからの溶出後、試料から実質的に全ての汚染物質が除去されており、単離されたAAVは高い純度を有することを示している。
【0288】
[0269] 続く実験において、精製マトリックスが内包型カプシド、空のカプシド、又は両方を捕捉可能かどうかを評価した。精製マトリックスから溶出した試料中に存在するAAVカプシドの総数は、ELISAベースのアッセイを用いて推定した。溶出させた試料はまた、qPCRも用いて評価し、ウイルスゲノムの数を決定した。qPCR:ELISA値を用いて、総カプシドに対する内包型カプシドの比率を近似した。表7に示されるとおり、精製マトリックスは内包型カプシドを濃縮した。
【0289】
【0290】
[0270] 溶出させたAAV試料はまた、それが精製後にも感染力を維持したかどうかを決定するためにもアッセイした。培養下にあるHEK293細胞(10,000細胞/ウェル)に、tdTomatoトランス遺伝子を担持するAAV8を感染多重度(MOI)1×10
6又は1×10
7で投与した。48のインキュベーション後、細胞をtdTomato蛍光に関して蛍光顕微鏡法を用いて可視化した。
図5Aに示されるとおり、精製マトリックス(ViraTag(商標))によって精製したAAVは、標準プロトコル(Pos Ctrl)に従い精製したAAVと同程度に細胞を感染させた。
図5Bに示されるとおり、このデータを定量化した。標準プロトコル(Pos Ctrl)によって精製したAAV8と、精製マトリックス(ViraTag(商標))によって精製したAAV8との感染力レベルの間に統計的に有意な差はなかった。従って、このデータは、試験した精製マトリックス(ViraTag(商標))を用いて精製したAAV粒子が高度な感染力を保持していることを示している。
【0291】
実施例5.精製マトリックス及びタンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いたAAV9の精製
[0271] tdTomatoトランス遺伝子をパッケージングする組換えAAV9ベクターを生産するHEK293細胞を浮遊状態で成長させて、遠心により回収した。200mLの上清を10U/mLベンゾナーゼ及び0.01%プルロニック酸で処理し、0.2ミクロンボトルトップフィルタに通して滅菌ろ過した。次に、この出発材料(SM)を実施例4の1μMの精製マトリックス及び0.6M NaCl塩(即ち、第1の環境因子)と混合してAAV-精製マトリックス複合体を形成した。
【0292】
[0272] このSMをRepligen KR2iタンジェンシャルフローろ過(TFF)ユニットを使用して連続流加培養モードで処理した。TFFは、50μM精製マトリックス及び0.6M NaClで調製した20mL保持液ベッセル、並びに0.2ミクロン細孔の13cm
2中空糸フィルタでセットアップした。濃縮-ダイアフィルトレーション(CD)モード(10倍濃縮係数(CF)、6倍ダイアボリューム(DV)のランを、等しい流量に設定したSMを含む透過液対照及び透過液ポンプで行った。200mL SM供給液が全て処理されたところで、保持された材料を6DVの洗浄緩衝液(20mMトリス、0.5M NaCl)でリンスした。ここで汚染物質を含まないものとなったAAV9材料を、次に氷上で再溶解させて、透過液側の弁を閉めたまま等容積の2×溶出緩衝液(即ち、第2の環境因子)と混合した。溶出緩衝液は、pH3の100mMグリシン及び0.6M NaClを含有した。20分後、この再循環試料を加温して室温に戻し、NaClで相分離させた。透過液側の弁を開き、純粋なAAV9を溶出緩衝液ダイアボリューム(100mMグリシン、pH3、0.6M NaCl)による第2のCDモード(2×CF、4×DV)で収集した。このラン全体を通じて流束及び膜間差圧(TMP)を追跡し(
図6)、安定した効率的な、且つ規模調整可能な工程が実証された。このラン全体を通じて透過液及び保持液試料を収集することにより、抗AAVウエスタンブロットによるAAV損失の分析(
図7)、並びにHEK HCP ELISA(Cygnus(登録商標))を用いた宿主細胞タンパク質(HCP)定量化及びQuant-iT(商標)picogreen assay(登録商標)(Thermo Fisher(登録商標))を用いたdsDNA定量化による純度の分析にかけた。この工程は、2~3対数のHCP(
図8)及び3対数を超える二本鎖DNA(dsDNA)(
図9)の除去が可能であった。
【0293】
実施例6.力価、清澄化、及びヌクレアーゼ処理がAAV精製に及ぼす効果
[0273] 実施例4の精製マトリックスが、AAV8粒子を生産するHEK293細胞の細胞ライセート又は浮遊培養培地(
図10では「上清」と称される)からAAV8粒子を捕捉する能力を試験した。細胞ライセートは、AAV8粒子を生産するHEK293細胞のペレットを0.5%Triton-X-100に再懸濁することによって作製した。
【0294】
[0274] 評価した細胞ライセート及び培地は、1×108~1×107ウイルス粒子毎マイクロリットル(vp/μL)の範囲の力価のAAV粒子を含有した。ヌクレアーゼ処理した細胞ライセートから精製マトリックスがAAV8粒子を捕捉する能力もまた評価した。ヌクレアーゼ処理した細胞ライセートは、50U/mLベンゾナーゼ(Millipore(登録商標))と共に34℃で1時間インキュベートした。
【0295】
[0275] 清澄化した細胞ライセート又は培地から精製マトリックスがAAV8粒子を捕捉する能力もまた評価した。細胞ライセート及び/又は培地は、13,200rpmで10分の遠心によって清澄化した。この上清を、続く13,200rpmで10分のAAV8粒子の単離に使用した。
【0296】
[0276] 各試料から、試料を10μM精製マトリックス及び0.6M NaCl(即ち、第1の環境因子)と混合し、試料を13,200rpmで10分間遠心することにより、AAV8粒子を単離した。
【0297】
[0277] AAV-精製マトリックス複合体を含有するペレットを、pH3の100mMグリシンを含む溶出緩衝液(即ち、第2の環境因子)に氷上で再懸濁し、室温に加温し、0.6M塩で転移させて、次に2度目の遠心を行った。逆方向末端反復(ITR)定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を用いて、溶出したAAV8の量を出発材料(即ち、AAV8粒子を含む培地又は細胞ライセート)と比較した。この技法は、PCRを用いてITRの数を測定することによってAAV粒子の数を定量化する。各試料のAAV捕捉効率は、以下の式を用いて計算した:100×(精製マトリックスによって捕捉されたAAV8粒子数/精製前の組成物中にあるAAV8粒子数)。
【0298】
[0278] 精製マトリックスは、力価(1×10
7~4×10
10)、清澄化、ヌクレアーゼ処理、又は出発材料としてライセートか培地かにかかわらず、98%を超えるAAV粒子をロバストに捕捉した(
図10)。ヌクレアーゼ処理有り及び無しのライセート試料の評価から、ヌクレアーゼ処理は、銀染色SDS-PAGE(
図11)及びdsDNAに関するQuant-iT(商標)picogreenアッセイ(
図12)によって比較したとき、最終的に溶出するAAV8粒子の純度に影響を与えなかったことが示された。
【0299】
実施例7.遠心速度がAAV8捕捉に及ぼす効果
[0279] AAV8 HEK293浮遊細胞培養液から回収した培地を10μM精製マトリックス及び0.6M NaClと混合してAAV-精製マトリックス複合体を形成した。この試料を100~16,000の範囲の相対遠心力(RCF)で10分間遠心した。各RCFについて、上清中に残る捕捉されなかったAAV8をITR qPCRを用いて定量化し、出発回収材料中に測定される量に対する割合として計算した。AAV捕捉効率は、上清中に捕捉されないまま残る割合を100%から差し引いたものとして測定し、結果から、500RCF以上の速度で極めて効率的なAAV8捕捉が生じたことが示された(
図13)。
【0300】
実施例8.精製マトリックスによるAAV2の安定化
[0280] 接着HEK293細胞を標準的な三重トランスフェクション方法によりトランスフェクトし、それを使用して、ルシフェラーゼトランス遺伝子を担持する組換えAAV2粒子を作製した。この細胞を精製マトリックスの存在下又は非存在下で6日間培養した。10μMの実施例4の精製マトリックスの存在下で培養した細胞を対照細胞と、治療又は対照の各群についてトリプリケートで比較した。4日目に培養培地を収集し、精製マトリックス添加剤有り又は無しの等容積の培地を補充した。6日目、再び培地を収集し、細胞をPBSでリンスし、剥ぎ取ることによって回収した。ITR2に対するプライマーを使用したqPCRを用いて比較するため、全ての画分で収集されたベクターゲノム総量を定量化した。培養培地に精製マトリックスを含めると、ベクターゲノム(vg)力価が少なくとも8%増加した(
図14)。
【0301】
実施例9.精製マトリックスによるAAV8の安定化
[0281] 浮遊状態で成長させたHEK293細胞から培地を回収し、ここで細胞はGFP-AAV8を生産した。培地をアリコートに分け、100μMの実施例4の精製マトリックスの添加有り又は無しのいずれかで-20℃で貯蔵した。加速安定性研究として、試料を凍結融解サイクル(-20℃~室温)に供し、次に、インタクトなAAV粒子の総量を定量化するAAV8 ELISA(Progen)を用いてアッセイした。対照及び精製マトリックス処理試料の定量化した粒子を凍結融解のない出発材料で正規化した。このデータは、凍結融解を介した分解及び凝集に対するAAV粒子の抵抗性が精製マトリックスによって亢進し得ることを示している(
図15)。
【0302】
実施例10.精製マトリックスによるAAV8粒子の捕捉
[0282] ルシフェラーゼ(luc)トランス遺伝子を担持するAAV8粒子を生産するHEK293浮遊細胞から培地を回収した。この培地を、0μM、0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、及び50μMの実施例4の精製マトリックスと接触させると、AAV8粒子と精製マトリックスとの間で複合体が形成された。第1の環境因子(即ち0.6M NaCl)を適用して、複合体のサイズを増加させた。続いて、複合体が入った培地を13,200毎分回転数(rpm)で10分間(min)遠心した。このプロトコルによれば、サイズを基準として複合体を不純物から分離することが可能であった。逆方向末端反復(ITR)定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を利用して、出発材料中のAAV粒子の量と比較した、精製マトリックスを使用して培地から捕捉されたAAV粒子の量を評価した。この技法は、PCRを用いてITRの数を測定することによってAAV粒子の数を定量化する。各濃度における精製マトリックスの捕捉効率は、以下の式を用いて計算した:100×(精製マトリックスによって捕捉されたAAV8粒子数/精製前の組成物中にあるAAV8粒子数)。
図16は、10μM以上の精製マトリックス濃度が、ロバストな98%を超えるウイルス捕捉に十分であることを示している。
【0303】
本開示の番号付き実施形態
[0283] 添付の特許請求の範囲にもかかわらず、本開示は、以下の番号付き実施形態を示す:
1.支持体にカップリングしたAAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスであって、AAV結合ポリペプチドが、AAV受容体(AAVR)のエクトドメイン、又はそのAAV結合断片若しくは誘導体を含む、精製マトリックス。
2.AAVRがヒトAAVRである、実施形態1に記載の精製マトリックス。
3.AAVRがサルAAVRである、実施形態1に記載の精製マトリックス。
4.AAVRがオランウータンAAVRである、実施形態1に記載の精製マトリックス。
5.AAVRがマウスAAVRである、実施形態1に記載の精製マトリックス。
6.AAVRが野生型AAVRである、実施形態1~5のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
7.AAVRが突然変異体AAVRである、実施形態1~5のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
8.AAV結合ポリペプチドが配列番号33の配列を含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
9.AAV結合ポリペプチドが、最大25個のアミノ酸突然変異を有する配列番号33の配列を含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
10.AAV結合ドメインが、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異を有する配列番号35のアミノ酸411~499を含み、各突然変異が、個別に、V440H、S431H、Q432H、T434H、Y442H、I462H、D435H、D436H、K438H、及びI439Hからなる群から選択される、実施形態1に記載の精製マトリックス。
11.AAV結合ポリペプチドが、配列番号28~32、37~41、43~47、及び52~86のうちのいずれか1つを含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
12.AAV結合ポリペプチドが、配列番号28~32、37~41、43~47、及び52~86のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
13.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎1(PKD1)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
14.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎2(PKD2)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
15.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎3(PKD3)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
16.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎4(PKD4)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
17.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎5(PKD5)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
18.AAV結合ポリペプチドが配列番号29の配列を含む、実施形態1に記載の精製マトリックス。
19.AAV結合ポリペプチドが、少なくとも1つのアミノ酸がヒスチジンに突然変異している配列番号29の配列を含む、実施形態18に記載の精製マトリックス。
20.支持体が、ビーズ、樹脂、膜、繊維、ポリマー、プレート、又はチップである、実施形態1~19のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
21.支持体が、セファロース、アガロース、セルロース、ポリスチレン、ポリメタクリレート、及び/又はポリアクリルアミドを含むビーズである、実施形態20に記載の精製マトリックス。
22.支持体が、磁気ビーズである、実施形態20に記載の精製マトリックス。
23.支持体が、ポリマーである、実施形態20に記載の精製マトリックス。
24.支持体が、合成ポリマーである、実施形態23に記載の精製マトリックス。
25.AAV結合ポリペプチドが、支持体に可逆的にカップリングされる、実施形態1~24のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
26.AAV結合ポリペプチドが、支持体に共有結合的にカップリングされる、実施形態1~24のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
27.AAV結合ポリペプチドが、支持体に非共有結合的にカップリングされる、実施形態1~24のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
28.AAV結合ポリペプチドが、支持体にリンカーを介してカップリングされる、実施形態1~27のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
29.リンカーがペプチドリンカーである、実施形態28に記載の精製マトリックス。
30.ペプチドリンカーがプロテアーゼ切断部位を含む、実施形態29に記載の精製マトリックス。
31.リンカーが化学的リンカーである、実施形態28に記載の精製マトリックス。
32.再使用可能である、実施形態1~31のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
33.配列番号9のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドを含む、実施形態1~31のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
34.配列番号52のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドを含む、実施形態1~31のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
35.配列番号64のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドを含む、実施形態1~31のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
36.相挙動を有するポリペプチドにカップリングしたAAV結合ポリペプチドを含む精製マトリックスであって、AAV結合ポリペプチドが、AAV受容体(AAVR)のエクトドメイン、又はそのAAV結合断片若しくは誘導体を含む、精製マトリックス。
37.AAVRがヒトAAVRである、実施形態36に記載の精製マトリックス。
38.AAVRがサルAAVRである、実施形態36に記載の精製マトリックス。
39.AAVRがオランウータンAAVRである、実施形態36に記載の精製マトリックス。
40.AAVRがマウスAAVRである、実施形態36に記載の精製マトリックス。
41.AAVRが野生型AAVRである、実施形態36~40のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
42.AAVRが突然変異体AAVRである、実施形態36~40のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
43.AAV結合ポリペプチドが配列番号33の配列を含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
44.AAV結合ポリペプチドが、最大25個のアミノ酸突然変異を有する配列番号33の配列を含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
45.AAV結合ドメインが、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は少なくとも5個の突然変異を有する配列番号35のアミノ酸411~499を含み、各突然変異が、個別に、V440H、S431H、Q432H、T434H、Y442H、I462H、D435H、D436H、K438H、及びI439Hからなる群から選択される、実施形態36に記載の精製マトリックス。
46.AAV結合ポリペプチドが、配列番号28~32、37~41、43~47、及び52~86のうちのいずれか1つを含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
47.AAV結合ポリペプチドが、配列番号28~32、37~41、43~47、及び52~86のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つを含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
48.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎1(PKD1)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
49.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎2(PKD2)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
50.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎3(PKD3)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
51.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎4(PKD4)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
52.AAV結合ポリペプチドが、多発性嚢胞腎5(PKD5)ドメイン、又はその断片を含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
53.AAV結合ポリペプチドが、配列番号29の配列を含む、実施形態36に記載の精製マトリックス。
54.AAV結合ポリペプチドが、少なくとも1つのアミノ酸がヒスチジンに突然変異している配列番号29の配列を含む、実施形態53に記載の精製マトリックス。
55.AAV結合ポリペプチドが、相挙動を有するポリペプチドに可逆的にカップリングされる、実施形態36~54のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
56.AAV結合ポリペプチドが、相挙動を有するポリペプチドに共有結合的にカップリングされる、実施形態36~54のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
57.AAV結合ポリペプチドが、相挙動を有するポリペプチドに非共有結合的にカップリングされる、実施形態36~54のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
58.AAV結合ポリペプチドが、相挙動を有するポリペプチドにリンカーを介してカップリングされる、実施形態36~57のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
59.リンカーがペプチドリンカーである、実施形態58に記載の精製マトリックス。
60.ペプチドリンカーがプロテアーゼ切断部位を含む、実施形態58に記載の精製マトリックス。
61.リンカーが化学的リンカーである、実施形態58に記載の精製マトリックス。
62.融合タンパク質が、AAV結合ポリペプチドと、相挙動を有するポリペプチドとを含む、実施形態36~61のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
63.相挙動のあるポリペプチドが、エラスチン様ポリペプチドである、実施形態36~62のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
64.相挙動のあるポリペプチドが、レジリン様ポリペプチドである、実施形態36~62のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
65.相挙動のあるポリペプチドが、配列(Val-Pro-Gly-Xaa-Gly)n(配列番号10)を有するペンタペプチドリピート、又はそのランダム化されたスクランブル類似体を含むポリマーであり;式中、Xaaが、プロリンを除く任意のアミノ酸であってよい、実施形態63に記載の精製マトリックス。
66.nが、1以上360以下の整数である、実施形態65に記載の精製マトリックス。
67.相挙動のあるポリペプチドが、
a.(GRGDSPY)n(配列番号1)
b.(GRGDSPH)n(配列番号2)
c.(GRGDSPV)n(配列番号3)
d.(GRGDSPYG)n(配列番号4)
e.(RPLGYDS)n(配列番号5)
f.(RPAGYDS)n(配列番号6)
g.(GRGDSYP)n(配列番号7)
h.(GRGDSPYQ)n(配列番号8)
i.(GRGNSPYG)n(配列番号9)
j.(GVGVP)n(配列番号11);
k.(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12);
l.(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号13);
m.(GVGVPGWGVPGVGVPGWGVPGVGVP)m(配列番号14);
n.(GVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGEGVPGFGVPGVGVP)m(配列番号15);
o.(GVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGVGVPGKGVPGFGVPGVGVP)m(配列番号16);及び
p.(GAGVPGVGVPGAGVPGVGVPGAGVP)m(配列番号17)
から選択されるアミノ酸配列;
又はそのランダム化されたスクランブル類似体
(式中:
nは、20~360の範囲の整数であり;及び
mは、4~25の範囲の整数である)を含む、実施形態1~63のいずれか1つに記載の精製マトリックス。
68.相挙動のあるポリペプチドが、
(a)(GVGVP)m(配列番号143);
(b)(ZZPXXXXGZ)m(配列番号148);
(c)(ZZPXGZ)m(配列番号149);
(d)(ZZPXXGZ)m(配列番号150);又は
(e)(ZZPXXXGZ)m(配列番号151)
(式中、mは、10以上160以下の間にある整数であり、式中、Xは、存在する場合に、プロリン又はグリシンを除く任意のアミノ酸であり、及び式中、Zは、存在する場合に、任意のアミノ酸である)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~63のいずれか1つに記載の精製マトリックス。
69.相挙動のあるポリペプチドが、
(a)(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号144);又は
(b)(GVGVPGVGVPGLGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号146);
(式中、mは、2以上32以下の間にある整数である)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~63のいずれか1つに記載の精製マトリックス。
70.相挙動のあるポリペプチドが、
(a)(GVGVPGVGVPGAGVPGVGVPGVGVP)m(配列番号144)(式中、mは、8又は16である);
(b)(GVGVPGAGVP)m(配列番号145)(式中、mは、5以上80以下の間にある整数である);又は
(c)(GXGVP)m(配列番号147)(式中、mは、10以上160以下の間にある整数であり、及び式中、リピート毎にXは、独立に、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びセリンからなる群から選択される)から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~63のいずれか1つに記載の精製マトリックス。
71.再使用可能である、実施形態36~70のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
72.配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドを含む、実施形態36~70のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
73.配列番号52のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドを含む、実施形態36~70のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
74.配列番号64のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドを含む、実施形態36~70のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
75.配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドと、配列番号88のアミノ酸配列又は(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)を含む相挙動のあるポリペプチドとを含む、実施形態36~70のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
76.精製マトリックスが、配列番号52のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドと、配列番号88のアミノ酸配列又は(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)を含む相挙動のあるポリペプチドとを含む、実施形態36~70のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
77.精製マトリックスが、配列番号64のアミノ酸配列を有するAAV結合ポリペプチドと、配列番号88のアミノ酸配列又は(GVGVPGLGVPGVGVPGLGVPGVGVP)m(配列番号12)(式中、mは16である)を含む相挙動のあるポリペプチドとを含む、実施形態36~70のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
78.配列番号87及び171~174のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態36~70のいずれか一つに記載の精製マトリックス。
79.AAVの精製方法であって、AAVを実施形態1~35のいずれか一つに記載の精製マトリックスと接触させることを含む方法。
80.AAVが、野生型AAVカプシドを含む、実施形態79に記載の方法。
81.AAVが、突然変異体AAVカプシドを含む、実施形態79に記載の方法。
82.AAVが、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、又はAAVrh74のうちのいずれか1つのカプシドを含む、実施形態79に記載の方法。
83.AAVが精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する、実施形態79~82のいずれか一つに記載の方法。
84.AAV-精製マトリックス複合体を1つ以上の不純物から分離することを含む、実施形態83に記載の方法。
85.AAV-精製マトリックス複合体が、AAV-精製マトリックス複合体を洗浄することによって1つ以上の不純物から分離される、実施形態84に記載の方法。
86.AAV-精製マトリックス複合体からAAVを溶出させることを含む、実施形態83~85のいずれか一つに記載の方法。
87.AAVが、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物のpHを変化させることによってAAV-精製マトリックス複合体から溶出される、実施形態86に記載の方法。
88.AAVが、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物の温度を変化させることによってAAV-精製マトリックス複合体から溶出される、実施形態86に記載の方法。
89.AAVが、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物のイオン強度を変化させることによってAAV-精製マトリックス複合体から溶出される、実施形態86に記載の方法。
90.AAVが、AAV-精製マトリックス複合体を含む組成物に還元剤を添加することによってAAV-精製マトリックス複合体から溶出される、実施形態86に記載の方法。
91.AAVの精製方法であって、AAVを実施形態36~78のいずれか一つに記載の精製マトリックスと接触させることを含む方法。
92.AAVが、野生型AAVカプシドを含む、実施形態91に記載の方法。
93.AAVが、突然変異体AAVカプシドを含む、実施形態91に記載の方法。
94.AAVが、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つのカプシドを含む、実施形態91に記載の方法。
95.AAVが精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する、実施形態91~94のいずれか一つに記載の方法。
96.第1の環境因子を使用してAAV-精製マトリックス複合体のサイズを増加させることを含む、実施形態95に記載の方法。
97.第1の環境因子が、
a.温度、pH、塩濃度又は圧力のうちの1つ以上の変化;
b.1つ以上の界面活性剤、補因子、ビタミン、分子クラウディング剤、酵素、変性剤の添加;又は
c.電磁波又は音波の適用
のうちの1つ以上を含む、実施形態96に記載の方法。
98.AAV-精製マトリックス複合体をサイズを基準として少なくとも1つの不純物から分離することを含む、実施形態96又は97に記載の方法。
99.AAV-精製マトリックス複合体が、直径を基準として少なくとも1つの不純物から分離される、実施形態98に記載の方法。
100.AAV-精製マトリックス複合体が、質量を基準として少なくとも1つの不純物から分離される、実施形態98に記載の方法。
101.サイズを基準とした分離が、タンジェンシャルフローろ過、分析超遠心、膜クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、ノーマルフローろ過、音波分離、遠心、向流遠心、及び高速タンパク質液体クロマトグラフィーを用いて実施される、実施形態98~100のいずれか一つに記載の方法。
102.第2の環境因子を使用してAAVをAAV-精製マトリックス複合体から溶出させる、実施形態91~101のいずれか一つに記載の方法。
103.第2の環境因子が、
a.温度、pH、塩濃度又は圧力のうちの1つ以上の変化;
b.1つ以上の界面活性剤、補因子、ビタミン、分子クラウディング剤、変性剤、酵素の添加;又は
c.電磁波又は音波の適用
のうちの1つ以上を含む、実施形態102に記載の方法。
104.精製マトリックスを再生すること、及び精製マトリックスを第2のAAVの精製に再使用することを含む、実施形態79~103のいずれか一つに記載の方法。
105.精製されたAAVが、精製前の感染力レベルの95%より高い感染力レベルを有する、実施形態79~103のいずれか一つに記載の方法。
106.AAVが精製後にその感染力の少なくとも96%を保持している、実施形態79~103のいずれか一つに記載の方法。
107.AAVが精製後にその感染力の少なくとも97%を保持している、実施形態79~103のいずれか一つに記載の方法。
108.AAVが精製後にその感染力の少なくとも98%を保持している、実施形態79~103のいずれか一つに記載の方法。
109.AAVが精製後にその感染力の少なくとも99%を保持している、実施形態79~103のいずれか一つに記載の方法。
110.AAVが精製後にその感染力の少なくとも100%を保持している、実施形態79~103のいずれか一つに記載の方法。
111.精製されたAAVで内包型カプシドが濃縮されている、実施形態79~103のいずれか一つに記載の方法。
112.精製されたAAVが、精製前のqPCR:ELISA比と比較してqPCR:ELISA比の増加を呈する、実施形態111に記載の方法。
113.約2~約10時間で完了する、実施形態79~112のいずれか一つに記載の方法。
114.約4~約8時間で完了する、実施形態113に記載の方法。
115.実施形態79~114のいずれか一つに記載の方法により精製されたAAVを含む組成物。
116.少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%が不純物を含まない、実施形態115に記載の組成物。
117.少なくとも1つの突然変異を有する配列番号28~47のうちのいずれか1つの配列を含むAAV結合ポリペプチド。
118.実施形態117に記載のAAV結合ポリペプチドをコードする核酸。
119.実施形態118に記載の核酸を含むベクター。
120.実施形態117に記載のAAV結合ポリペプチド、実施形態118に記載の核酸、又は実施形態119に記載のベクターを含む組成物。
121.実施形態117に記載のAAV結合ポリペプチド、実施形態118に記載の核酸、又は実施形態119に記載のベクターを含むキット。
122.AAV粒子のその生産時の収率を増加させる方法であって、AAV生産細胞を精製マトリックスの存在下に培養することを含む方法。
123.AAV粒子をその生産時に安定化させる方法であって、AAV生産細胞を精製マトリックスの存在下に培養することを含む方法。
124.AAV粒子をその精製時に安定化させる方法であって、AAV粒子をその精製時に精製マトリックスと接触させることを含む方法。
125.AAV粒子をその貯蔵時に安定化させる方法であって、AAV粒子を精製マトリックスの存在下に貯蔵することを含む方法。
126.AAV粒子の保管寿命を増加させる方法であって、AAV粒子を精製マトリックスの存在下に貯蔵することを含む方法。
127.精製マトリックスが、実施形態1~78のいずれか一つに記載の精製マトリックスである、実施形態122~126のいずれか一つに記載の方法。
128.AAV粒子が、以下の血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh32.33、AAVrh74、トリAAV又はウシAAVのうちのいずれか1つの野生型AAV粒子である、実施形態122~127のいずれか一つに記載の方法。
129.AAV粒子が、突然変異体AAV粒子である、実施形態122~127のいずれか一つに記載の方法。
130.AAV粒子が精製マトリックスに可逆的に結合してAAV-精製マトリックス複合体を形成する、実施形態122~127のいずれか一つに記載の方法。
131.精製マトリックスが少なくとも約10μMの濃度で存在する、実施形態122~127のいずれか一つに記載の方法。
【0304】
参照による援用
[0284] 本明細書に引用される全ての参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願は、あらゆる目的から全体として参照により援用される。しかしながら、本明細書に引用される任意の参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願についての言及は、それが世界のどこの国でも有効な先行技術を構成する又は技術常識の一部を成すことの承認又は何らかの形の示唆ではなく、及びそのように解釈されてはならない。
【配列表】
【国際調査報告】