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特表2023-515477蒸気搬送堆積によるペロブスカイトデバイス加工の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】蒸気搬送堆積によるペロブスカイトデバイス加工の方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20230406BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20230406BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
C23C16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549826
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 US2021018666
(87)【国際公開番号】W WO2021168175
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/978,760
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510328032
【氏名又は名称】ファースト・ソーラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】チェン,レ
(72)【発明者】
【氏名】ホー,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】リー,シヤオピーン
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,リック
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,チェ-ビン
(72)【発明者】
【氏名】ステインマン,ベラ
(72)【発明者】
【氏名】バラダラジャン,アラバムサン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイス,ダーク
(72)【発明者】
【氏名】シオーン,ガーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ジーボー
【テーマコード(参考)】
4K030
5F151
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA18
4K030BA01
4K030BA35
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA12
5F151AA11
5F151CB24
5F151CB29
(57)【要約】
蒸気搬送堆積(VTD)を使用して、ペロブスカイト層およびペロブスカイト前駆体層を形成することによって、光起電力デバイスを生産するための構造および方法が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト前駆体層を形成する方法であって、
堆積チャンバー内に支持体スタックを用意すること、ここで前記支持体スタックは、電極上に第1の電荷輸送層を有する、および
蒸気搬送堆積(VTD)法によって、前記堆積チャンバー内で、前記支持体スタック上に第1のペロブスカイト形成組成物を堆積させること
を含み、
ここで前記蒸気搬送堆積(VTD)法は
原料物質を375℃~550℃の範囲の温度に加熱すること、
前記堆積チャンバー内でキャリアガスを使用して、前記支持体スタックに対して前記原料物質の蒸気を誘導すること、ここで前記堆積チャンバーは、0.1~2.0Torrの範囲の圧力を有する、および
0.01~1.50μm毎分の範囲の堆積速度で、厚さ100~2000nmまで前記前駆体層を形成すること、ここで前記前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、この粒構造は、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、
を含む、
上記のペロブスカイト前駆体層を形成する方法。
【請求項2】
前記堆積チャンバーが、0.1~1.0Torrの範囲の圧力を有し;
前記堆積チャンバーが、20℃~150℃の範囲の温度を有し;
前記原料物質が、400℃~525℃の範囲の温度に加熱され;
80sccm~150sccmの範囲のキャリアガス流量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料物質が、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、および/または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含む粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する結晶マトリックス中に、少なくとも1種のハロゲン化金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記前駆体層が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックス中に、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、またはヨウ化セシウムスズ(CsSnI)のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体層が、複数のヨウ化鉛結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、前記前駆体層の粒構造の、少なくとも4分の1が、200nm~700nmの範囲である高さ、および100nm未満である幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積速度が、0.05~0.50μm毎分の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリアガスが、アルゴン、ヘリウム、または窒素のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1の電極;
前記第1の電極上の第1の電荷輸送層;および
前記第1の電荷輸送層上の前駆体層を含む、ペロブスカイト光起電力デバイスのための中間体構造であって、前記前駆体層が、100~2000nmの範囲の厚さを有し、前記前駆体層が、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、中間体構造。
【請求項12】
前記前駆体層の、前記複数のハロゲン化金属結晶粒構造が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックスを形成する、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項13】
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項14】
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項15】
前記前駆体層が、300~1200ナノメートルの範囲の厚さを有する、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項16】
前記前駆体層内の厚さ偏差が30%未満である、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項17】
前記前駆体層が、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、および/または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含む、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項18】
前記前駆体層がヨウ化鉛を含む、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項19】
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項20】
前記前駆体層が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックス中に、少なくとも1種のハロゲン化金属を含み、および50%未満の前記前駆体層内の厚さ偏差を含む、請求項11に記載の中間体構造。
【請求項21】
光起電力デバイスを製造するための、ペロブスカイト前駆体層を有する中間体構造を形成する方法であって、
堆積チャンバー内に支持体スタックを用意すること、ここで前記支持体スタックは、電極上に第1の電荷輸送層を有する、および
蒸気搬送堆積(VTD)法によって、前記堆積チャンバー内で、前記支持体スタック上に第1のペロブスカイト形成組成物を堆積させること
を含み、
蒸気搬送堆積法は、
原料物質を375℃~550℃の範囲の温度に加熱すること、ここで前記原料物質が、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含む粉末である、
前記堆積チャンバー内で、キャリアガスを使用して、前記支持体スタックに対して、前記原料物質の蒸気を誘導すること、ここで前記堆積チャンバーが、0.1~2.0Torrの範囲の圧力を有する、ならびに
0.01~1.50μm毎分の範囲の堆積速度で、厚さ100~2000nmまで前記前駆体層を形成すること、ここで前記前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、
を含む、
上記の、ペロブスカイト前駆体層を有する中間体構造を形成する方法。
【請求項22】
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する、請求項2または21に記載の方法。
【請求項23】
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、請求項2または請求項21から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記前駆体層が、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、請求項2または請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記前駆体層が、複数のヨウ化鉛結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、前記前駆体層の粒構造の、少なくとも4分の1が、200nm~700nmの範囲である高さ、および100nm未満である幅を有する、請求項2または請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記堆積速度が、0.05~0.50μm毎分の範囲である、請求項2または請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記キャリアガスが、アルゴン、ヘリウム、または窒素のうちの少なくとも1種を含む、請求項2または請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、請求項2または請求項21から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前駆体層厚さが、100~1900nmの範囲であり、50%未満の層内の厚さ偏差を有する、請求項2、請求項21から22、または請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前駆体層多孔率が、40%よりも高い、請求項2または請求項21から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
第1の電極;
前記第1の電極上の第1の電荷輸送層;および
前記第1の電荷輸送層上の前駆体層
を含む、ペロブスカイト光起電力デバイスを製造するための中間体構造であって、
前記前駆体層は、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含み;
前記前駆体層は、100~2000nmの範囲の厚さを有し;
前記前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、この粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、
上記の中間体構造。
【請求項32】
前記前駆体層の、前記複数のハロゲン化金属結晶粒構造が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックスを形成する、請求項31に記載の中間体構造。
【請求項33】
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する、請求項31に記載の中間体構造。
【請求項34】
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、請求項12または請求項31から33のいずれか一項に記載の中間体構造。
【請求項35】
前記前駆体層が、300~1200ナノメートルの範囲の厚さを有する、請求項12または請求項31から33のいずれか一項に記載の中間体構造。
【請求項36】
前記前駆体層内の厚さ偏差が、30%未満である、請求項12または請求項31から35のいずれか一項に記載の中間体構造。
【請求項37】
前記前駆体層が、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、またはその組み合わせで本質的に構成される、請求項12または請求項31から36のいずれか一項に記載の中間体構造。
【請求項38】
前記前駆体層が、ヨウ化鉛(PbI)を含む、請求項12または請求項31から37のいずれか一項に記載の中間体構造。
【請求項39】
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、請求項12または請求項31から38のいずれか一項に記載の中間体構造。
【請求項40】
請求項1から10または請求項20から30のいずれか一項に記載の方法によって形成される、ペロブスカイト光起電力デバイスを製造するための中間体構造。
【請求項41】
請求項11から19または請求項31から40のいずれか一項に記載の中間体構造を用意すること;
前記中間体構造を第2のペロブスカイト形成組成物に暴露すること;および
前記第2のペロブスカイト形成組成物と共に前記中間体構造をアニールすること
を含む、光起電力デバイスのペロブスカイト吸収体層を製作する方法。
【請求項42】
前記第2のペロブスカイト形成組成物が、セシウム(Cs)カチオン、ルビジウム(Rb)カチオン、メチルアンモニウム(MA)化合物、またはホルムアミジニウム(FA)化合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記アニールするステップが、0.1Torr~1000Torrの範囲の圧力で、10分~90分の範囲の時間長で、45~60%の範囲の湿度で、50℃~150℃の範囲の温度で実施される、請求項41または42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2021年2月19日に特許協力条約の権限下で出願された国際出願であり、参照によって本明細書に組み込まれた、2020年2月19日に出願された米国特許仮出願第62/978,760号の利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
[0002]本明細書は、一般に光起電力デバイスに関し、より詳細には、光起電力デバイスを生産するのに使用するための、ペロブスカイト吸収体および前駆体層の形成に関する。
[0003]光起電力デバイスは、光起電力効果を示す半導体物質を使用して、光を電気へ変換することによって電力を生じる。ペロブスカイトは、光起電力デバイスにおいて活性層を形成することができる物質の一分類である。ペロブスカイト化合物は、ABX構造を有し、但し、AおよびBはカチオンであり、Xはハロゲン化物である。一部のハロゲン化鉛ペロブスカイト化合物およびハロゲン化スズペロブスカイト化合物は、光起電力デバイスにおける使用について研究されてきた。これらの構造において、A部位は、有機のメチルアンモニウム(MA)、ホルムアミジニウム(FA)、または無機のセシウム(Cs)カチオンもしくはルビジウム(Rb)カチオンで構成され得る。B部位は、鉛(Pb+2)カチオンまたはスズ(Sn+2)カチオンによって占有され得る。さらにX部位は、ハロゲン化物、例えばヨウ素(I)、臭素(Br)、または塩素(Cl)によって占有され得る。光起電力デバイスにおいて、ペロブスカイト物質は、負電荷輸送層および正電荷輸送層と接触して、かつ負電荷輸送層と正電荷輸送層との間に位置する。
【0003】
[0004]ペロブスカイトは、有望な物質であるが、効率的な、信頼できる、スケーラブルな製造方法は欠如している。既知の、ペロブスカイトを製造する方法は、組成物または前駆体の溶液からの、真空蒸発、スプレー塗布、またはスピン塗布を含む。方法は、一段階法および多段階法を含むことができる。既知の、ペロブスカイト物質を製造する方法は、生産における使用には著しい支障を有する。
【0004】
[0005]例えば、真空蒸発は、典型的には、1×10-4mbar(0.01Pa)よりも低い圧力を伴う高真空を必要とする。複数フラックスの正確な制御を伴う共蒸発は、大面積生産に移行するには困難であり、費用がかかる。必要とされる低い圧力は、規模を拡大した、効率的な生産にあまり適さず、大面積にわたる均一な厚さの被覆は、実現するのが難しく、また典型的には、高真空で使用される装置への腐食損傷に関連する懸念のために、特定の組成物、例えばヨウ化ホルムアミジニウム(FAI)の使用を排除して、あまり適応性がない。
【0005】
[0006]溶液ベース法もまた欠点を有する。ペロブスカイト化合物は、自己集合結晶化し、それは低温溶液加工が可能である点では有利である。しかし、結晶化速度は、極めて高く、制御が難しいことがあり、その結果、粗さおよび凹凸を含まない、密で均一な薄膜を生産するのが難しい。
【0006】
[0007]ペロブスカイト物質を製作する方法は、連続的なコーティングによりハロゲン化金属膜を形成し、その後、有機ハロゲン化物溶液をハロゲン化金属膜に塗布してBX膜およびAX膜のラミネートを形成することを含むことができ、次いで、その2つの薄膜が反応してABX構造を形成する。2段階法は、いくらかの改善を示したが、溶液をベースとした層堆積法は、不均一な層厚さをもたらし、薄膜の不完全な反応をもたらし得る。確立された方法を使用して得られた薄膜は、予測不可能な品質、表面にわたって数センチメートルを超える不十分な均一性を有し、有効な光起電力デバイスで使用するには、極めて粗く、凹凸があり得る。スプレー塗布法において、溶媒は、望ましくない副生成物をもたらし、化合物の選択を制限し、乾燥および薄膜形成時間を増長することがある。スピン塗布は、規模を拡大して使用するには実用的ではなく、数平方センチメートルを超える面積にわたって、不均一な層を生じる。
【発明の概要】
【0007】
[0008]均一な厚さの薄層、高い製造速度、低コスト、およびより優れた薄膜品質で、ペロブスカイト吸収体およびペロブスカイト前駆体を効率的に、かつスケーラブルに大面積作製するための改善された方法、システム、および構造を提供することが有益であろう。
【0008】
[0009]図面において示された実施形態は、本来説明的なものであり、例示的なものであり、特許請求の範囲によって画定される主題を限定しようというものではない。説明的な実施形態の、以下の詳細な記述は、以下の図面と関連して読まれる場合に理解することができ、参照番号は、図全体を通して同じ部分、対応する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0010]蒸気搬送堆積(VTD)システムを図式的に描いた図である。
図2】[0011]図1のVTDシステムの断面図を図式的に描いた図である。
図3】[0012]一例の物質のペロブスカイト格子構造の抽象を示す図である。
図4】[0013]光起電力デバイスの一実施形態を図式的に描いた図である。
図5】[0014]光起電力デバイスの一実施形態を図式的に描いた図である。
図6】[0015]一例の方法のフローチャートを示す図である。
図7】[0016]一例の前駆体層を示す図である。
図8】[0017]一例の前駆体層を示す図である。
図9】[0018]一例の前駆体層を示す図である。
図10】[0019]一例の前駆体層を示す図である。
図11】[0020]図11Aは、例の前駆体層および対応するペロブスカイト層を示す。図11Bは、例の前駆体層および対応するペロブスカイト層を示す。
図12】[0021]記載の方法によって形成されたペロブスカイト層のSEM画像を示す図である。
図13】[0022]ペロブスカイト層の波長による吸収を示す図である。
図14】[0023]ペロブスカイト層の光透過測定を示す図である。
図15】[0024]ペロブスカイト層のX線回折測定を示す図である。
図16】[0025]ペロブスカイトデバイスの逆方向走査による電流電圧測定を示す図である。
図17】[0026]ペロブスカイトデバイスの断面SEM画像を示す図である。
図18】[0027]ペロブスカイトデバイスの断面SEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0028]特許または出願ファイルは、色彩で作成された、少なくとも1つの図面および/または1つもしくは複数の写真を含有することができる。色彩を付した図面(複数可)の、本特許または特許出願出版物の複写は、米国特許商標庁によって、請求および必要な手数料の納付時点で提供されるであろう。
【0011】
[0029]実施形態は、ハロゲン化金属のペロブスカイト前駆体層、および蒸気搬送堆積(VTD)によってペロブスカイト前駆体層を形成する方法を提供する。記載の方法によって形成されたペロブスカイト前駆体層は、改善された厚さ均一性、密度、およびプロセススループットを有する。記載の方法によって製造されたペロブスカイト層は、粒径、完全な前駆体変換、改善された厚さ均一性、ならびにピンホールおよび分路欠陥の減少または消失などの改善された特徴を有する。また、前駆体層をペロブスカイト層へ変換する方法も提供される。一般に、本明細書で提供される光起電力デバイスは、部分的に形成された、または完全に形成された光起電力モジュールを含むことができる。ペロブスカイト前駆体層、部分的に形成された光起電力構造、光起電力デバイスおよび光起電力システム、ならびに層、構造、およびデバイスを形成する方法の、様々な実施形態は、本明細書においてより詳細に記載される。
【0012】
[0030]光起電力デバイスは、支持体にわたって連続的に堆積させた、複数の物質層を含有することができる。蒸気堆積(蒸着)は、支持体上に複数の層を堆積するために使用することができる。半導体物質堆積に使用される、1つの物理蒸着技術は、蒸気搬送堆積(VTD)として知られている。VTDは、支持体上に、薄膜のII~VI型半導体物質を迅速に、かつ一様に、複数の薄い固体薄膜層として堆積するための、信頼できる技術として確立された。VTDは、一部の物質、例えばII~VI型半導体物質と共に使用するために確立されたものの、VTDは、ペロブスカイト物質と共に使用するために、またはペロブスカイト前駆体層を形成するために確立されてはいなかった。
【0013】
[0031]VTD法は、多くの他の物理蒸着技術よりもより高い圧力で実施され得る。例えば、真空熱蒸発は、ペロブスカイト物質を製造するために使用されてきたが、こうした方法は、圧力10-5Torr未満を必要とし、高処理量の生産にあまり適さない装置の使用を伴う。こうした装置はまた、腐食を引き起こし得る試薬、例えば、一部のハロゲン化物蒸気の使用を不可能にすることもある。有利なことに、VTD法は、0.1Torr以上の圧力で実施することができる。
【0014】
[0032]既知のVTDシステムの一例は、米国特許第5,945,163号に記載されている。VTDシステムにおいて、米国特許第5,945,163号で示されるように、粉末形態の半導体物質が、キャリアガス支援付きの浸透気化チャンバーの内部に継続して供給される。気化チャンバーは、粉末を気化するのに十分に高い温度まで加熱され、蒸気は、気化チャンバーの浸透壁を通過する。次いで、蒸気は、支持体に対する分配器によって誘導され、支持体に対して蒸気を誘導する分配器の、1つまたは複数の開口部を通過する。蒸気は、支持体スタックの表面に薄膜として凝縮する。支持体スタックは、支持体上に、支持体物質および予め形成された層を含む。
【0015】
[0033]VTDシステムは、粉末送達器、粉末気化器、蒸気分配器、および真空堆積器のうちの1種または複数を含むことができる。VTD粉末気化器は、一般に、原料物質粉末をガス状形態に気化する、または昇華させるように設計される。一部の粉末気化器において、粉末送達器からの原料物質粉末を、キャリアガスと組み合わせ、浸透性加熱シリンダーとして形成された気化器に注入する。物質はシリンダー内で気化され、気化物質は、気化器の浸透壁を通して、蒸気分配器中に拡散する。分配器は、気化器シリンダーを取り囲み、支持体上の薄膜物質の堆積のために、支持体に対して面する開口部に向かって、集めた蒸気を誘導する。
【0016】
[0034]VTDシステムは、粒状および/または粉末の原材料を使用するように改造することができる。一部のシステムにおいて、粒状物質をホッパーによって供給し、振動作動物質源を使用し、そこで振動フィーダーによって導入された振動によって、粒状および/または粉末の物質がホッパーから傾斜路中に徐々に動かされる。このように、原材料物質は、キャリアガス源からの1種または複数のキャリアガスと共に供給管に導入される。
【0017】
[0035]図1は、支持体または支持体スタック13上に物質を送達し、堆積させるための蒸気搬送堆積システム20の一例を説明し、例えば、支持体13は、薄膜ソーラーモジュールの生産において使用されるガラス支持体であってもよい。不活性キャリアガス源25および不活性キャリアガス源27、例えば、ヘリウムガス(He)源、アルゴンガス(Ar)源、および/または窒素ガス(N)源はそれぞれ、粉末または粒状の物質を含有するキャリアガスを粉末フィーダー21および粉末フィーダー23に提供する。ガスは、インジェクターポート17、インジェクターポート19を通って、粉末または粒状の物質を気化器および分配器アセンブリ10の反対端に搬送する。気化器および分配器アセンブリ10は、粉末および/または粒状の物質を気化し、それを支持体スタック13上に堆積させるために分配する。
【0018】
[0036]図2は、粉末気化器および分配器アセンブリ10の一例である図1の切断線2-2に沿った断面図である。気化器12は、加熱された管状浸透性部材として考えられる。それは、AC電源29によって加熱され得る抵抗材料で形成され、キャリアガスによって、インジェクターポート17、インジェクターポート19を通って気化器12中へ搬送された物質粉末を気化する。分配器15は、気化器12および/または別のソースからの放射熱で加熱される筐体である。分配器15である筐体は、気化器12を取り囲み、気化器12の壁を通して拡散する物質蒸気を捕らえる。半導体物質蒸気は、分配器によって、支持体13の表面に面する、スロットまたは一連の孔14に対して誘導され、気化器および分配器アセンブリ10を通過する。説明された種類のVTDシステムのより詳細な例は、例えば、米国特許第5,945,163号、米国特許第5,945,165号、米国特許第6,037,241号、米国特許第7,780,787号、および米国特許第8,382,901号において見出すことができる。
【0019】
[0037]VTD堆積で使用される温度は、約200℃~約1200℃の範囲であってもよい。気化器12は、グラファイトまたは炭化ケイ素(SiC)で形成された、加熱可能な管状浸透性部材として形成され得る。分配器15は、セラミック物質、例えばムライトのシュラウドで形成され得る。蒸着は、駆動ローラーなどの支持体搬送メカニズムを含む筐体内で起こる。セラミックシートもまた、筐体内で熱遮蔽として使用され得る。
【0020】
[0038]VTD加工システムは、物質の堆積のために支持体(例えば、ガラスシートまたは1種もしくは複数の薄膜で被覆されたガラスシート)を加工することができる。システムは、物質を支持体上に堆積させる加工チャンバーを画定する筐体を含むことができる。筐体は、入口ステーションおよび出口ステーションを含むことができる。入口ステーションおよび出口ステーションは、ロードロックまたはスリットシールとして考えることができ、それによって、支持体が加工チャンバーに入り、かつ加工チャンバーを出る。筐体の内部を、所望の加工温度まで加熱し、加工圧力で維持することができる。
【0021】
[0039]VTD加工システムは、分配器アセンブリを含むことができる。分配器アセンブリは、支持体の上向きの表面に物質を堆積させるように、コンベヤー上に設置することができる。コンベヤーは、加工中のその運搬のために、支持体の下向きの表面を支えるロールを含む、ロールタイプのものであってもよい。分配器アセンブリは、加工チャンバー内に引かれた真空で、例えば、約0.1~約50Torrまたは約10~約6600Paの範囲で使用することができる。したがって、加工システムは、初めに、かつその後連続的にキャリアガスおよび第2のガスを取り除くために、筐体の加工チャンバーを排気するための、好適な排気ポンプを含むことができる。
【0022】
[0040]分配器アセンブリの実施形態は、マニホールド、少なくとも1個の気化器、および少なくとも1個の加熱器を含むことができる。分配器アセンブリは、蒸気カーテンに沿って半導体蒸気を分配するように構成されたマニホールドを含むことができる。気化器は、マニホールドに支持され、取り付けられ、または流体連通することができ、堆積のために、粉末または粒状の物質を気化するように構成され得る。加熱器は、マニホールドに支持され、取り付けられ、または熱的連通することができ、マニホールドの少なくとも一部を加熱するように構成され得る。マニホールドは、一般に、通過する支持体上に気化半導体物質を誘導し、ローリングコンベヤーなどの分配器アセンブリの下のパスに沿って搬送することができるように構成された、少なくとも1個のスロットまたはノズル(「ノズル」は「ジェット」とも称され得る)を含む。
【0023】
[0041]一部の実施形態において、分配器アセンブリにより、1mよりも大きいサイズの蒸気カーテンを提供することによって、大規模堆積が可能になる。一部の実施形態において、蒸気カーテン幅は1~2mの間、または約1.2mである。一部の実施形態において、分配器アセンブリは、約0.5ミクロン毎秒、約1.0ミクロン毎秒、または約1.5ミクロン毎秒の堆積速度を実現する。
【0024】
[0042]光起電力デバイスの生産は、それに限定されないが、スパッタリング、噴霧、蒸発、分子線堆積、熱分解、閉空間昇華(CSS)、パルスレーザー堆積(PLD)、化学蒸着(CVD)、電気化学堆積(ECD)、原子層堆積(ALD)、または蒸気搬送堆積(VTD)などの、1種または複数の堆積法によって、層の「スタック」において機能層または層前駆体を連続的に配置するステップを含むことができる。一部の実施形態において、VTDは、より優れたスループット速度および品質のために好まれることがある。
【0025】
[0043]光起電力デバイスの生産は、例えば、スクライブによる、層のスタックの、ある層部分の選択的な除去をさらに含み、光起電力デバイスを複数の光起電力セルに分割することができる。
【0026】
[0044]図3を参照すると、ペロブスカイト化合物は、ABX構造を有し、但し、AおよびBはカチオンであり、Xはハロゲンアニオンである。特有の物質および化合物が、光起電力デバイスで使用するために研究されてきた。これらのペロブスカイト構造において、A部位は、MA、FA、Cs、またはRbのうちの1種または複数によって占有され得る。B部位は、Pb、Sn、またはGeのうちの1種または複数によって占有され得る。さらに、X部位は、I、Br、またはClのうちの1種または複数によって占有され得る。
【0027】
[0045]有機-無機または無機のハロゲン化金属ペロブスカイト物質を使用して、光起電力デバイスの光エネルギーを吸収することができる。光起電力デバイスにおいて、ペロブスカイト物質は、負電荷輸送層および正電荷輸送層と接触して、かつ負電荷輸送層と正電荷輸送層との間に位置する。ペロブスカイト光起電力デバイスは、N-I-PまたはP-I-Nの配向のいずれかで、デバイスの光入射側に対して負電荷輸送層または正電荷輸送層のいずれかを伴って構成され得る。
【0028】
[0046]図4は、ペロブスカイト光起電力デバイス用の一例のデバイス構造を示す。描かれた例において、負電荷輸送層は、デバイスの光入射側に近接している。
[0047]図4を参照すると、光起電力デバイス100の一実施形態が、図式的に描かれる。光起電力デバイス100は、光を受け、光を電気信号へ変換するように構成することができ、例えば、光子は、光から吸収され、光起電力効果を介して電気信号へ変換され得る。したがって、光起電力デバイス100は、例えば太陽などの光源に暴露されるように構成される、エネルギー側、入射光側、または前側102を画定することができる。光起電力デバイス100はまた、例えば、複数の物質層によって入射光側102から隔てた反対側104を画定することもできる。用語「光」は、それに限定されないが、紫外(UV)、赤外(IR)、および電磁スペクトルの可視部分の波長などの、様々な波長の電磁スペクトルを指すことができることに留意されたい。本明細書において「太陽光」は、太陽によって発せられた光を指す。
【0029】
[0048]光起電力デバイス100は、入射光前側102と反対側104との間に配置された複数の層を含むことができる。本明細書において、用語「層」は、表面に提供された物質の厚さを指す。それぞれの層は、表面の全てまたはいずれかの部分を覆うことができる。一部の実施形態において、光起電力デバイス100の層を、光起電力セルの配列に分割することができる。例えば、光起電力デバイス100を、複数のシリアルスクライブおよび複数のパラレルスクライブに従ってスクライブすることができる。
【0030】
[0049]光起電力デバイス100の層は、光起電力デバイス100中への光の透過を容易にするように構成された支持体110を含むことができる。支持体110は、光起電力デバイス100の前側102に配置され得る。支持体110は、光起電力デバイス100のエネルギー側102に実質的に面する、第1の表面112、および光起電力デバイス100の反対側104に実質的に面する、第2の表面114を有することができる。1種または複数の物質層は、支持体110の第1の表面112と第2の表面114との間に配置され得る。
【0031】
[0050]支持体110は実質的に透明であることができる。一部の実施形態において、支持体は、実質的に透明な物質、例えば、ガラスを含む。好適なガラスには、ソーダ石灰ガラス、低減された鉄含量のガラス、または透過率約90%のガラスが挙げられる。場合により、支持体110は、外部の、または光が面する表面を形成するために塗布される性能被覆を含むことができる。性能被覆、例えば、それに限定されないが、反射防止被覆、防汚被覆、またはその組み合わせは、光と相互作用するために、または支持体110の耐久性を改善するために構成され得る。
【0032】
[0051]光起電力デバイス100は、場合により、劣化および層間剥離をもたらすことがある、支持体110からの混入物質の拡散を軽減するように構成された障壁層130を含むことができる。障壁層130は、光起電力デバイス100の前側102に実質的に面する、第1の表面132、および光起電力デバイス100の反対側104に実質的に面する、第2の表面134を有することができる。一部の実施形態において、障壁層130は、支持体110に隣接して設けられ得る。例えば、障壁層130の第1の表面132は、支持体100の第2の表面114上に設けられ得る。本明細書における語句「隣接して」は、2つの層が接して配置され、層の少なくとも一部分の間にいずれの介在物質も存在しないことを意味する。
【0033】
[0052]一般に、障壁層130は、実質的に透明、熱的安定であり、減少した数のピンホールを有し、ナトリウム遮断機能および良好な粘着特性を有することができる。あるいは、または追加で、障壁層130は、光に対して色抑制を施すように構成され得る。障壁層130は、それに限定されないが、酸化スズ、二酸化ケイ素、アルミニウムドープ酸化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸化アルミニウムなどの好適な物質の、1種または複数の層を含むことができる。障壁層130は、第1の表面132および第2の表面134によって結合された任意の好適な厚さ、例えば、一実施形態において約100Åよりも厚く、別の実施形態において約150Åよりも厚く、またはさらなる一実施形態において約200Å未満などを有することができる。
【0034】
[0053]光起電力デバイス100は、光起電力デバイス100によって生じた電荷キャリアを輸送するための電気接点をもたらすように構成された透明電極層140を含むことができる。透明電極層140は、光起電力デバイス100のエネルギー側102に実質的に面する、第1の表面142、および光起電力デバイス100の反対側104に実質的に面する、第2の表面144を有することができる。一部の実施形態において、透明電極層140は、障壁層130に隣接して設けられ得る。例えば、透明電極層140の第1の表面142は、障壁層130の第2の表面134上に設けられ得る。一般に、透明電極層140は、実質的に透明であり、ワイドバンドギャップを有する、n型半導体物質の1種または複数の層から形成され得る。詳細には、ワイドバンドギャップは、光の光子のエネルギーと比較して、より大きなエネルギー値を有することができ、それにより、望ましくない光の吸収を軽減することができる。透明電極層140は、それに限定されないが、二酸化スズ、ドープ二酸化スズ(例えば、F-SnO)、酸化インジウムスズ、またはスズ酸カドミウムなどの好適な物質の1種または複数の層を含むことができる。
【0035】
[0054]光起電力デバイス100は、電子輸送層(ETL)150を含むことができる。電子輸送層(ETL)は、負電荷輸送層、n型接点、e選択的接点、または電子選択層とも称され得る。それは、アノードとして機能する透明電極と接触して置くことができる。ETL150は、光起電力デバイス100の前側102に実質的に面する、第1の表面152、および光起電力デバイス100の反対側104に実質的に面する、第2の表面154を有することができる。一部の実施形態において、ETL150は、透明電極層140に隣接して設けられ得る。例えば、ETL150の第1の表面152は、透明電極層140の第2の表面144上に設けられ得る。ETL150は、第1の表面152と第2の表面154との間に任意の好適な厚さ、例えば、一実施形態において約2nmよりも厚く、別の実施形態において約10nmから約80nmまでの間、またはさらなる一実施形態において約15nmから約60nmまでの間を有することができる。ETLは、それに限定されないが、PCBM(フェニル-C61-酪酸メチルエステル)、C60、BCP(バソクプロイン)、フッ化リチウム(LiF)、または金属酸化物、例えば、TiO、ZnO、SnOZnSnO、もしくはSrTiOなどの好適な物質の、1種または複数の層を含むことができる。一部の実施形態において、ETL150は、酸化スズ(SnO)を含む。
【0036】
[0055]支持体110、ETL150、およびその間の層を含む、部分的に形成されたデバイスは、支持体スタック113とも称され得る。
[0056]光起電力デバイス100は、隣接した層と協働し、光起電力デバイス100内でP-I-N接合を形成するように構成された、ペロブスカイト物質を含む吸収体層160を含むことができる。したがって、光の吸収された光子は、電子-正孔対を自由にすることができ、キャリアフローを生じ、それによって電力を生じ得る。
【0037】
[0057]ハロゲン化鉛ペロブスカイト化合物およびハロゲン化スズペロブスカイト化合物を光起電力デバイスの吸収体層において使用することができる。ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、ABX構造を有し、但し、AおよびBはカチオンであり、Xはハロゲンアニオンである。例において、A部位は、1種または複数の、有機カチオンまたは無機カチオンによって占有され得る。例えば、A部位は、メチルアンモニウム(MA)カチオン、ホルムアミジニウム(FA)カチオン、セシウム(Cs)カチオン、またはルビジウム(Rb)カチオンのうちの1種または複数で構成され得る。B部位は、1種または複数の金属、例えば、鉛(Pb)またはスズ(Sb)によって占有され得る。さらにX部位は、1種または複数のハロゲン化物、例えば、ヨウ素(I)、臭素(Br)、または塩素(Cl)によって占有され得る。ペロブスカイト吸収体層は、1種または複数のA型カチオンまたはA-X型化合物と1種または複数のB-X化合物を選択し、反応させることによって形成され得る。吸収体層用のペロブスカイト化合物を形成することにおいて、B-X化合物として使用するのに好適なハロゲン化金属物質には、金属、アルカリ金属、および/またはその組み合わせと組み合わせた、ヨウ化物、臭化物、および/または塩化物が挙げられる。一部の実施形態において、B-X物質は、14族金属塩である。ペロブスカイト化合物における使用に好適なハロゲン化金属またはB-X物質には、それに限定されないが、ヨウ化鉛(PbI)、ヨウ化セシウム(CsI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、および/または塩化スズ(SnCl)が挙げられる。光起電力デバイスにおいて、ペロブスカイト物質の吸収体層は、負電荷輸送層および正電荷輸送層と接触して、かつ負電荷輸送層と正電荷輸送層との間に位置することができる。
【0038】
[0058]吸収体層160は、光起電力デバイス100のエネルギー側102に実質的に面する、第1の表面162、および光起電力デバイス100の反対側104に実質的に面する、第2の表面164を有することができる。吸収体層160の厚さは、第1の表面162と第2の表面164との間に画定され得る。
【0039】
[0059]一例のデバイスにおいて、吸収体層160の厚さは、約150nm~10000nmの間、例えば、一実施形態において500nm~10000nmの間、一実施形態において1000nm~7000nmの間、一実施形態において200nm~6000nmの間、一実施形態において300nm~3000nmの間、一実施形態において400nm~2000nmの間、一実施形態において400nm~1500nmの間、または別の実施形態において1500nm~4000nmの間であってもよい。図4に示された実施形態において、吸収体層160は、ETL150に隣接し、かつ正孔輸送層に隣接する。
【0040】
[0060]正孔輸送層(HTL)180はまた、正電荷輸送層、p型輸送層、正孔輸送物質、h選択的接点、または正孔選択層とも称され得る。それは、カソードとして機能する、導電層または背後電極と接触して位置することができる。HTL180は、吸収体層160への電気接点を提供する。HTL180は、光起電力デバイス100の前側102に実質的に面する、第1の表面182、および光起電力デバイス100の反対側104に実質的に面する、第2の表面184を有することができる。HTL180の厚さは、第1の表面182と第2の表面184との間で画定することができる。HTL180の厚さは、約5nm~約200nmの間、例えば、一実施形態において約10nm~約50nmの間であってもよい。示された実施形態において、HTL180は、吸収体層160に隣接して設けられる。例えば、HTL180の第1の表面182は、吸収体層160の第2の表面164上に提供される。
【0041】
[0061]一部の実施形態において、HTL180は、金属酸化物、ポリマー、小分子、または有機正孔輸送物質を含むことができる。一部の実施形態において、正孔輸送物質は、酸化ニッケル(NiO)、チオシアン酸銅(CuSCN)、銅フタロシアニン(CuPc)、酸化タングステン(WO)、ヨウ化銅(CuI)、または酸化銅(CuO)のうちの1種または複数を含むことができる。一部の実施形態において、HTL180は、酸化ニッケル(NiO)で本質的に構成され得る。一部の実施形態において、HTL180は、有機化合物、例えば、2,2’,7,7’-テトラキス[N,N-ジ(4-メトキシフェニル)アミノ]-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)を含むことができる。Spiro-OMeTADのCAS番号は、207739-72-8である。一部の実施形態において、HTL180は、Spiro-OMeTAD、PTAA(ポリ-トリアリールアミンまたはポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン])、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル))、P3HT-COOH(ポリ[3-(6-カルボキシヘキシル)チオフェン-2,5-ジイル])、またはポリ-TPD(4-ブチル-N,N-ジフェニルアニリンホモポリマー)のうちの1種または複数を含むことができる。
【0042】
[0062]光起電力デバイス100は、導電層または背後電極190を含むことができる。導電層190は、光起電力デバイス100のエネルギー側102に実質的に面する、第1の表面192、および光起電力デバイス100の反対側104に実質的に面する、第2の表面194を有することができる。一部の実施形態において、背後電極190は、HTL180に隣接して設けられ得る。例えば、導電層190の第1の表面192は、HTL180の第2の表面184上に設けられ得る。導電層190は、導電物質、例えば、窒素含有金属、銀、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、パラジウム、クロム、モリブデン、金などのうちの1種または複数の層を含むことができる。窒素含有金属層の例には、窒化アルミニウム、窒化ニッケル、窒化チタン、窒化タングステン、窒化セレン、窒化タンタル、または窒化バナジウムが挙げられる。
【0043】
[0063]光起電力デバイス100は、支持体110と協働して光起電力デバイス100用の筐体を形成するように構成された背後支持体196を含むことができる。背後支持体196は、光起電力デバイス100の反対側102に配置され得る。例えば、背後支持体196は、背後電極190に隣接して形成され得る。背後支持体196は、例えば、ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス)などの任意の好適な物質を含むことができる。一部の実施形態において、封止層もまた、背後支持体196として機能することができる。
【0044】
[0064]光起電力デバイス100は、場合により、1種または複数の内部層および/または1種または複数のバッファー層を含むことができる。バッファー層は、隣接した層の間に絶縁層をもたらすように構成され得る。バッファー層は、隣接した層よりもより高い抵抗率を有する物質を含むことができ、それに限定されないが、内在する二酸化スズ、酸化亜鉛マグネシウム(例えば、Zn1-xMgO)、二酸化スズ(SnO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛スズ、酸化亜鉛、酸化スズケイ素、またはその組み合わせを含むことができる。一部の実施形態において、バッファー層の物質は、隣接した半導体層のバンドギャップに実質的に一致するように構成され得る。バッファー層は、例えば、一実施形態において約10nmよりも厚い、別の実施形態において約10nmから約80nmまでの間、またはさらなる一実施形態において15nm~60nmの範囲の厚さを有することができる。
【0045】
[0065]一部の実施形態において、N-I-P構造は、P-I-N配向の逆であり、そこで、正電荷輸送層は、負電荷輸送層に対して前側に近接する。一部の実施形態において、HTL、ペロブスカイト吸収体、およびETLを含む、選択された層は、タンデムデバイスにおいて含まれる。タンデムデバイスを形成する方法において、ペロブスカイト層を形成する方法は、支持体スタックのコンタクト層にわたってペロブスカイト層を形成するステップを含むことができ、但し、支持体スタックは、セルスタックおよびトンネル接合を含む。
【0046】
[0066]図5は、一例の、P-I-N配向を有するデバイス200を示す。層は、図4について記載されたものと同じであるが、図5で示されるように位置付けることができる。支持体110、HTL180、およびその間の層を含む、部分的に形成されたデバイスは、支持体スタック213とも称され得る。
【0047】
[0067]支持体の反対側の支持体スタックの層は、第1のコンタクト層または第1の電荷輸送層とも称され得る。支持体スタックの第1の電荷輸送層は、P-I-N配向を有するデバイスのHTL、またはN-I-P配向を有するデバイスのETLに等しい。本明細書において、支持体スタック(13、113、213)は吸収体層を含まない。完全に形成されたデバイスにおいて、吸収体層は、第1の電荷輸送層と第2の電荷輸送層との間に配置され、第2の電荷輸送層は、第1の電荷輸送層とは反対の電荷を有する。
【0048】
[0068]図6を見ると、光起電力デバイスを形成するための、一例の工程フローの概要が示される。
[0069]支持体スタックが形成され、準備される610である。支持体は、透明支持体、例えばガラス、ならびに透明支持体上の透明電極および第1の電荷輸送層、例えばHTLまたはETLで形成することができる。場合により、支持体スタックは、第1のスクライブセット、および1種または複数の追加の層、例えばバッファー層、高抵抗層、または反射防止層をさらに含むことができる。
【0049】
[0070]支持体スタックは、場合により洗浄され得る620。支持体スタックは、流体、例えば溶媒またはガスで洗浄することができる。例えば、支持体スタックは、UVオゾンまたはプラズマで洗浄することができる。
【0050】
[0071]第1のペロブスカイト形成組成物、例えば、ハロゲン化鉛またはハロゲン化スズは、VTD630によって、支持体スタックの電子輸送物質上に堆積して、前駆体層を形成する。第1のペロブスカイト形成組成物の堆積のために、支持体を、堆積チャンバー内に送ることができる。堆積チャンバーの温度および圧力は、堆積工程中に制御することができる。
【0051】
[0072]一例の工程において、堆積チャンバー温度は、0.1Torr~5Torrの範囲の圧力で、20℃~150℃の範囲である。堆積チャンバーは、不活性キャリアガスまたは空気および不活性ガスの組み合わせを含む雰囲気を有することができる。第1の原料物質は、375℃~550℃の範囲の温度に加熱された、ハロゲン化金属源、例えば、ハロゲン化鉛またはハロゲン化スズを含むことができる。第1の原料物質は、キャリアガスを使用して、支持体に対して搬送することができる。キャリアガスは不活性であってもよい。キャリアガスは、ヘリウム、窒素、またはアルゴンのうちの1種または複数を含むことができる。第1の前駆体層は、PbI、SnI、PbBr、SnBr、またはその組み合わせであってもよい。キャリアガスによって運ばれる気化原料物質は、支持体パスに近接して位置したマニホールドを通過することができる。支持体がマニホールドを過ぎて送られるとき、マニホールドは、気化原料物質を誘導して、支持体パスに実質的に垂直な、支持体の幅にわたって堆積させる。支持体を支持体パスに沿って連続的に送ることができ、その結果、第1の前駆体物質の実質的に均一な厚さを、支持体スタックの第1の電荷輸送層に隣接した連続層に堆積させる。一部の実施形態において、第1のペロブスカイト形成組成物を、支持体幅に沿って、厚さ100n~2000nmまで同時に堆積させる。一例において、支持体幅は1メートルから2メートルの範囲である。
【0052】
[0073]次いで、前駆体層被覆を有する支持体スタックを、第2のペロブスカイト形成前駆体組成物640に暴露する。第2の前駆体組成物には、例えば、MAI、FAI、および/または他のペロブスカイト形成化合物の液体または蒸気が挙げられる。
【0053】
[0074]第1のペロブスカイト形成組成物を含む支持体スタックを、第2のペロブスカイト形成組成物を含む反応物に暴露し、アニールして反応させ、第1の前駆体層をペロブスカイト層650へ変換する。第2のペロブスカイト形成前駆体組成物640を用意するステップおよび第1の前駆体層をペロブスカイト層650へ変換するステップは、同時に、または続けて実施することができる。
【0054】
[0075]一例において、アニール工程中に、第1の前駆体層を第2のペロブスカイト形成組成物に接触させる。
[0076]一例において、第2の前駆体層を第1の前駆体層上にスプレー塗布することによって、第1の前駆体層を第2のペロブスカイト形成組成物に暴露する。
【0055】
[0077]一例において、蒸気搬送堆積によって、第2の前駆体層を堆積させることによって、第1の前駆体層を第2のペロブスカイト形成組成物に暴露する。
[0078]アニール工程は、温度、湿度、圧力、反応物濃度、反応物暴露時間、および加熱時間長を制御するステップを含むことができる。一部の実施形態において、1種または複数のドーパントをアニール工程中に組み込むことができる。
【0056】
[0079]一例のアニール工程において、支持体の長さおよび幅に対応する大きさを有する移動板の表面を、イソプロピルアルコールの溶媒中に溶解させたヨウ化メチルアンモニウム(MAI)で被覆し、乾燥させて溶媒を蒸発させた。MAIで被覆した移動板は、移動板と前駆体層との間の距離0.5~10センチメートルの範囲で、支持体スタックの表面の第1の前駆体層に隣接して位置付ける。移動板を20~120分の時間で、75~125℃の範囲に加熱し、移動板からMAIを気化し、第1の前駆体層をMAI蒸気に暴露する。アニール工程は、アニールチャンバーにおいて実施され得る。
【0057】
[0080]ペロブスカイト物質の形成後、ペロブスカイト層は、場合により不動態化することができる660。
[0081]第1の電荷輸送層と反対の電荷を有する、第2の電荷輸送層、例えば、ETLまたはHTLが、ペロブスカイト吸収体層にわたって形成される670。拡散障壁または湿気障壁層が形成され得る。ペロブスカイト層およびHTLを含む支持体スタックは、追加の加工ステップ680によって加工され得る。追加の加工ステップは、追加の層の形成、洗浄、スクライブ、封止、またはブッシング接続(bussing connection)の適用のうちの1つまたは複数を含むことができる。ペロブスカイト層および第2の電荷輸送層を含む支持体スタックは、場合により、例えば、レーザーによって、別のスクライブセットを形成するようにスクライブされ得る。導電層または背後電極は、第2の電荷輸送層にわたって形成され得る。導電層を含む支持体スタックは、背後スクライブセットを形成するようにスクライブされ得る。封止層は、完成した層スタックにわたって施され得る。ブッシング接続または他の電気接続および背後支持体をデバイスに加えることができる。
【0058】
[0082]例示の方法によって形成されたペロブスカイト光起電力デバイスのための中間体構造は、アニールおよび前駆体層からペロブスカイト吸収体層への変換の前に十分に構造化された前駆体層を有する。この前駆体層構造は、明確な輪郭の、連続的なペロブスカイト粒構造を有する、密なペロブスカイト被覆を生じ、信頼できる、効率的な光起電力電力変換に寄与する。
【0059】
[0083]第1の前駆体層は、電荷輸送層を覆う層に配置されたハロゲン化金属物質を含む。ペロブスカイト化合物における使用に好適なハロゲン化金属物質には、金属、アルカリ金属、および/またはその組み合わせと組み合わせた、ヨウ化物、臭化物、および/または塩化物が挙げられる。ペロブスカイト化合物における使用に好適なハロゲン化金属物質には、それに限定されないが、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、および/または塩化スズ(SnCl)が挙げられる。
【0060】
[0084]記載された方法を使用して、光起電力パネルを生産するのに好適な方法を使用して、有利な特質を有する前駆体層を、確実に、かつ効率的に製造することができる。効率的な変換を容易にするために、堆積させたハロゲン化金属は高い多孔率を有する。他の方法の中でも、多孔率は、空隙率を決定することができる3次元測定をもたらす走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて調べることができる。記載の方法によって製造された薄膜は、多孔率およそ50%を有することができる。一例において、前駆体層は、多孔率約50%を有する。一例において、前駆体層は、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、および/または45%~55%の範囲の多孔率を有する。
【0061】
[0085]前駆体層は、花弁状結晶粒構造の大部分の、支持体スタックの表面に実質的に垂直な高さが、支持体スタックに平行な、断面の粒幅よりも実質的に大きくなるように配向した、密に充填された花弁状結晶粒構造を有することができる。前駆体層は、結晶粒構造の、実質的に均一な、かつ密な芝状層を有することができる。層は、ピンホールまたは間隙を有さない吸収体層を製造するための、十分な材料をもたらすことができる。層は、未反応ハロゲン化金属物質を含まない、第2の前駆体層との完全な反応を促進するための、好ましい表面積対体積比をもたらすことができる。一例の前駆体層において、前駆体層の粒の、少なくとも3分の1は、200nm~500nmの範囲である高さ、および50nm未満である、断面の粒幅の寸法を有する。
【0062】
[0086]一例において、前駆体層は、支持体スタックの表面に垂直な高さ、および支持体スタックの表面に平行な幅を有する、複数のヨウ化鉛結晶粒構造を含み、前駆体層の粒構造の少なくとも4分の1が、200nm~700nmの範囲である高さ、および100nm未満である幅を有する。
【0063】
選択された温度でのPbI のVTD
[0087]一連の試料支持体スタックを準備した。次いで、試料支持体スタックを、VTDチャンバー内に置いた。ヨウ化鉛(PbI)を、第1の前駆体層のための原料物質として使用した。原料物質を、選択された温度、約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、約500℃、および約600℃に加熱した。チャンバー温度を加熱された原料物質よりも低い温度で維持した。支持体温度はチャンバー温度以下であった。ヘリウムを含むキャリアガスは、支持体に対して気化PBIを誘導した。PbIを厚さ100~1000nmまで堆積させた。得られた薄膜を定性的に評価した。本実施例で製造された薄膜の品質は、試験範囲の中央値により近い温度で、より好ましい品質を有することが分かった。
【0064】
[0088]追加の温度試験を、圧力レベルおよびキャリアガス流量の範囲について実施した。実験結果は、希ガスを含むキャリアガスを使用した、0.1~2.0Torrの範囲の圧力の堆積チャンバー内の堆積について、375℃~550℃の範囲の温度に加熱されたハロゲン化金属源の層形成を示した。実験条件の下、層の品質は、400℃~525℃の範囲内の温度に加熱された原料から製造された層について改善された。
【0065】
選択された圧力および堆積速度でのPbI のVTD
[0089]図7~10を見ると、前駆体膜は、選択された圧力および堆積速度で製造された。一連の試料支持体スタックを準備した。それぞれの試料支持体スタックをVTDチャンバー内に置いた。ヨウ化鉛(PbI)粉末を、第1のペロブスカイト前駆体層のための原料物質として使用した。原料物質を400℃よりも高く加熱した。チャンバー温度を約25℃~約100℃の範囲で維持した。支持体温度はチャンバー温度以下であった。
【0066】
[0090]4つの条件が試された。図7に示された実施例に対応するセットA;図8に示された実施例に対応するセットB;図9に示された実施例に対応するセットC;および図10に示された実施例に対応するセットD。ヘリウムを含むキャリアガスが、気化PbIを支持体に対して誘導した。PbIを、PbIで本質的に構成される層に、100~1000nmの範囲の厚さまで堆積させた。セットAおよびセットBにおいて、チャンバー圧力は、約1.5Torrで維持された。セットCおよびセットDにおいて、チャンバー圧力は、約0.3Torrで維持された。セットAおよびセットCにおいて、キャリアガス流量は約110sccm(sccm-標準立方センチメートル毎分)であり、堆積速度は約0.25um/分(250nm/分)であった。セットBおよびセットDにおいて、キャリアガス流量は約110sccmであり、堆積速度は約0.04um/分(40nm/分)であった。PbI層の堆積の後、次の加工ステップの前に、支持体を室温まで冷却させた。
【0067】
[0091]図7~10は、条件のそれぞれのセット(A、B、C、およびD)の下で形成された前駆体層のSEM画像を示す。図7~10のそれぞれの上方のパネルは、スケールバー1ミクロン(1000nm)の、前駆体層の表面の画像を示す。図7~10のそれぞれの下方のパネルは、前駆体層および下地層を通した断面画像を示す。図8の下方パネルのスケールバーは400nmであり、図7図9、および図10の下方パネルのスケールバーは500nmである。画像に見られるように、セットB、セットC、およびセットDで形成された前駆体層は、閉空間花弁状結晶粒構造の好ましい粒構造を表し、セットDは、支持体スタックに対して、粒の実質的な直立配向を示す。プルテストによって表されるように、得られた薄膜は、良好な粘着を示した。
【0068】
VTDによって堆積させたPbI をアニールし、そしてペロブスカイトへ変換すること
[0092]図11Aは、左から右に4つのパネルを示し、上記のセットA~Dそれぞれに対応する前駆体層のSEM画像を図示する。図11Bは、左から右に、セットA~Dそれぞれに対応する4つのパネルを示し、第2のペロブスカイト形成物質を含む反応物への暴露および熱処理と実質的に同じ条件の下、それぞれの前駆体層がペロブスカイトへ変換された後のペロブスカイト層を図示する。図11Aおよび図11Bに図示された画像のスケールバーは1ミクロン(1000nm)である。本実施例において、第2のペロブスカイト形成物質はMAIを含み、MAPbI3ペロブスカイト層をもたらす。示されるように、セットAのペロブスカイト層は、不連続的であり、不規則的であり、低品質な層を示唆する。セットDで示された層は、規則的であり、均一であり、連続的である、高品質な層を示唆する特質を有し、大きい、同じサイズのペロブスカイト粒を有する。
【0069】
[0093]セットDの方法によって製造される材料用の高品質ペロブスカイト吸収体物質の形成は、高フォトルミネッセンス(PL)測定によってさらに確かめられた。
【0070】
方法パラメーターおよび得られる薄膜品質
[0094]ペロブスカイト層における良好な薄膜品質を生じることに関する特性および因子には、圧力、温度、湿度、物質選択、結晶構造、粒径、隣接層、厚さ、および/または多孔率が挙げられる。前駆体層が、高い多孔率、または高い表面積対体積比を表す場合、その後の第2の前駆体への暴露が高められ、それによって薄膜が生成され、そこで第2の前駆体との化学反応が、迅速にかつ同時に進行して完了する。記載されたVTDのシステムおよび方法は、物質の堆積パラメーターを制御するのに特に有効であり、故に、結果として、所望の特性を有する層がもたらされる。
【0071】
[0095]図12は、記載の方法によって形成されたペロブスカイト層の画像を示す。変換されたペロブスカイト粒は、密に充填され、大きく、ピンホールまたは間隙を有さない。左のパネルは、スケールバー400nmの断面SEMを示す。右のパネルは、スケールバー1ミクロンの、ペロブスカイト層の上面SEM画像を示す。
【0072】
[0096]図13~15を見ると、吸収体品質の測定が示される。図13は、記載の方法によって形成された吸収体の、波長による吸収を示す。図14は、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)被覆ガラス支持体上のペロブスカイト層の光透過測定を示す。吸収端の位置および急な上昇は、予め特性決定されたペロブスカイト層と一致する。図15は、特徴的なペロブスカイト(PK)ピークを有する、ペロブスカイト層のX線回折測定を示す。PbIのピークの欠如は、前駆体層のペロブスカイトへの変換が完了し、有意な測定可能なPbI残留分がなかったことを示唆する。
【0073】
[0097]ペロブスカイト膜を、機能デバイスに組み入れた。図16は、構造:FTO/ETL/ペロブスカイト層/HTL/Au背後接点を有するペロブスカイトデバイスの逆方向走査による、電流-電圧(IV)測定の一例を示す。デバイスは、13%よりも高い効率を実現した。
【0074】
[0098]図17~18は、PbI第1の前駆体層のVTD、およびその後の湿式法変換によって製作されたペロブスカイトデバイスの断面SEM画像を示す。薄膜は、幅500nmよりも大きい平均ペロブスカイト粒径を有する厚さ約400nmである。図17および図18それぞれは、スケールバー500nmを有する。
【実施例
【0075】
実施例-臭化セシウム(CsBr)のVTD
[0099]支持体スタックを準備し、少なくとも1種の試料の支持体スタックをVTDチャンバー内に送る。臭化セシウム(CsBr)を含む粉末物質を、第1のペロブスカイト前駆体層用の原料物質として使用する。原料物質を400℃よりも高く加熱する。チャンバーを温度25℃~150℃の範囲および圧力0.1Torr~2.0Torrの範囲で維持する。キャリアガスは、キャリアガス流量80sccm~150sccmの範囲で、マニホールドを通して、支持体スタックの表面に対して気化原料物質を誘導し、支持体スタックにわたって、100~2000nmの範囲の厚さを有する層で、臭化セシウムを含む前駆体層を堆積させる。一部の実施形態において、原料物質は、スズおよび/または鉛をさらに含む。
【0076】
実施例-ヨウ化セシウムスズ(CsSnI )のVTD
[00100]支持体スタックを準備し、少なくとも1種の試料支持体スタックをVTDチャンバー内に送る。ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)を含む粉末物質を、第1のペロブスカイト前駆体層用の原料物質として使用する。原料物質を400℃よりも高く加熱する。チャンバーを温度25℃~150℃の範囲および圧力0.1Torr~2.0Torrの範囲で維持する。キャリアガスは、キャリアガス流量80sccm~150sccmの範囲で、マニホールドを通して、支持体スタックの表面に対して気化原料物質を誘導し、支持体スタックにわたって、100~2000nmの範囲の厚さを有する層で、ヨウ化セシウムスズを含む前駆体層を堆積させる。
【0077】
実施例-臭化鉛(PbBr )のVTD
[00101]支持体スタックを準備し、少なくとも1種の試料支持体スタックをVTDチャンバー内に送る。臭化鉛(PbBr)を含む粉末物質を、第1のペロブスカイト前駆体層用の原料物質として使用する。原料物質を400℃よりも高く加熱する。チャンバーを温度25℃~150℃の範囲および圧力0.1Torr~2.0Torrの範囲で維持する。キャリアガスは、キャリアガス流量80sccm~150sccmの範囲で、マニホールドを通して、支持体スタックの表面に対して気化原料物質を誘導し、支持体スタックにわたって、100~2000nmの範囲の厚さを有する層で、臭化鉛を含む前駆体層を堆積させる。
【0078】
[00102]デバイスを生産する加工ステップは、1種または複数のプロセッサーを備えるシステムを使用して実現され得る。本明細書に記載の実施形態によれば、プロセッサーは、機械読み取り可能な指示を実行することができる、任意のデバイスを意味する。したがって、1種または複数のプロセッサーのそれぞれは、コントローラー、集積回路、マイクロチップ、コンピューター、または任意の他の計算装置であってもよい。
【0079】
[00103]1種または複数のプロセッサーは、ロジックまたはソフトウェアを実行するように、かつシステムおよび層スタックの相対的な動き、ならびにシステムの加工特性、例えば、コンベヤー速度、温度、圧力、およびガス流量または物質流量を制御する機能を実施するように構成され得る。さらに、1種または複数のプロセッサーは、1種または複数のプロセッサーによって受け取られる、ロジックおよび/またはインプットを格納することができる、1種または複数のメモリー部品に通信可能に連結され得る。メモリー部品は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードドライブ、または機械読み取り可能な指示を格納することができる任意のデバイスであってもよい。
【0080】
[00104]本明細書において、用語「通信可能に連結される」は、部品が、例えば、導電媒体を介した電気信号、空気を介した電磁信号、光導波路を介した光信号など、互いにデータ信号をやり取り可能であることを意味する。
【0081】
[00105]本開示の実施形態は、プログラミング言語で書かれた、機械読み取り可能な指示またはアルゴリズムを含むロジックを含み、機械読み取り可能な指示にコンパイルされるか、またはアセンブルすることができ、機械読み取り可能な媒体に格納され得る、プロセッサー、またはアセンブリ言語、オブジェクト指向プログラミング(OOP)、スクリプト言語、またはマイクロコードによって直接実行され得る、機械言語を含む。あるいは、ロジックまたはアルゴリズムは、ハードウェア記述言語(HDL)、例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)構成または特定用途向け集積回路(ASIC)、およびその均等物のいずれかによって実装されたロジックで書くことができる。したがって、ロジックは、予めプログラムされたハードウェア要素として、またはハードウェア部品およびソフトウェア部品の組み合わせとして、任意の従来のコンピュータプログラミング言語で実装され得る。
【0082】
[00106]本明細書に記載の分配器アセンブリおよび方法は、蒸気分布の実質的な均一性をもたらす。本明細書で提供される分配器アセンブリは、スケーラブルであり、大きな支持体、例えば、長さおよび/もしくは幅で約1m以上、長さおよび幅で0.5mから2.0mまでの範囲、または長さおよび/もしくは幅で最大で約2mまでの寸法を有する支持体を被覆する。
【0083】
[00107]本明細書で示された実施形態によれば、蒸気搬送堆積システム用の分配器アセンブリは、マニホールド、少なくとも1種の気化器、少なくとも1種の加熱器、およびマニホールドにおけるスロットまたはノズルを含むことができる。少なくとも1種の気化器は、マニホールドに支持され、連結され、または流体連通することができ、半導体物質または半導体前駆体物質の粉末を気化するように構成され得る。マニホールドにおけるスロットまたはノズルは、通過する支持体上に蒸気を誘導するように構成され得る。
【0084】
[00108]本明細書で示された実施形態によれば、蒸気搬送堆積(VTD)を行う方法は、分配器アセンブリの他の部品を実質的に加熱しないように、粉末源を選択的に加熱するように構成された、特化した気化器を備えた分配器アセンブリにおいて、物質の粉末源を気化するステップ、および分配器アセンブリを通過する支持体上に気化半導体物質を堆積させるステップを含むことができる。
【0085】
[00109]上記の実施形態のいずれかによれば、分配器アセンブリは、幅1.0~2.0メートルを有する支持体スタックの幅に沿って、均一な気化および蒸気の分布を同時に供給することが可能である。幅は、端に垂直、かつ運搬の方向に垂直な範囲の両端で測定することができる。
【0086】
[00110]上記の実施形態のいずれかによれば、分配器アセンブリは、堆積速度0.05~1.75ミクロン毎秒で、支持体スタック上に物質を堆積させるように構成され得る。一例において、堆積速度は、少なくとも0.25ミクロン毎秒である。一例において、堆積速度は少なくとも0.5ミクロン毎秒である。一例において、堆積速度は少なくとも1ミクロン毎秒である。一例において、堆積速度は約1.5ミクロン毎秒である。
【0087】
[00111]上記の実施形態のいずれかによれば、マニホールドは、気化器および加熱器を収容する一体型筐体を画定することができる。
[00112]上記の実施形態のいずれかによれば、分配器アセンブリは、通過する支持体上に蒸気を誘導するように構成された、複数のスロットまたはノズルを含むことができる。
【0088】
[00113]本明細書で示された実施形態によれば、ペロブスカイト前駆体層を形成する方法は、堆積チャンバー内に支持体スタックを用意するステップであって、支持体スタックが、第1の電極上に第1の電荷輸送層を有する、ステップ;蒸気搬送堆積によって、原料物質を375℃~550℃の範囲の温度に加熱し、0.1~2.0Torrの範囲の圧力を有する堆積チャンバー内で、キャリアガスを使用して、支持体スタックに対して、第1のペロブスカイト形成物質の蒸気を誘導することによって、堆積チャンバー内で、支持体スタックにわたって第1のペロブスカイト形成組成物を堆積させるステップ;および第1の前駆体層を厚さ100~2000nmまで形成するステップを含むことができる。
【0089】
[00114]本明細書で示された実施形態によれば、ペロブスカイト光起電力デバイスのための中間体構造は、第1の電極、第1の電極上の第1の電荷輸送層、および第1の電荷輸送層上の前駆体層を含むことができ、前駆体層は、100~2000nmの範囲の厚さ、および50%未満の層内の厚さ偏差を有し、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックス中に、少なくとも1種のハロゲン化金属を含む。
【0090】
[00115]本明細書で示された実施形態によれば、ペロブスカイト系光起電力デバイスを形成する方法は、第1の電極上に第1の電荷輸送層を堆積させるステップ;一連のVTD条件の下、キャリアガスを用いた蒸気搬送堆積(VTD)によって、電荷輸送層にわたって第1のペロブスカイト形成組成物を堆積させて、前駆体層を形成するステップ;前駆体層を第2のペロブスカイト形成組成物に接触させるステップ;一連のアニール条件の下、前駆体層を第2のペロブスカイト形成組成物と反応させることによって、前駆体層をペロブスカイトへ変換して、ペロブスカイト物質を含む光活性吸収体層を形成するステップ;第1の電荷輸送層とは逆極性を有する、第2の電荷輸送層をペロブスカイト物質上に堆積させるステップ;および第2の電荷輸送層上に導電性物質を堆積させて、第2の電極を形成するステップを含むことができる。
【0091】
[00116]一部の実施形態において、第1のペロブスカイト形成組成物は、IV族ハロゲン化金属を含むことができる。一部の実施形態において、第1のペロブスカイト形成組成物は、ハロゲン化鉛および/またはハロゲン化スズの1種または複数を含むことができる。一部の実施形態において、第1のペロブスカイト形成組成物は、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、および/または塩化スズ(SnCl)のうちの1種または複数を含むことができる。
【0092】
[00117]一例において、第1のペロブスカイト形成組成物はヨウ化鉛を含む。
[00118]一例において、第1のペロブスカイト形成組成物は臭化鉛を含む。
[00119]一例において、第1のペロブスカイト形成組成物は臭化セシウムを含む。
【0093】
[00120]一部の実施形態において、ハロゲン化金属は、I、Br、またはClのうちの1種または複数を含む。
[00121]一部の実施形態において、ハロゲン化金属は、ヨウ素および/または臭素を含む。
【0094】
[00122]一部の実施形態において、ハロゲン化金属は、少なくとも1種のIVA族金属を含む。
[00123]本明細書で示された実施形態によれば、前駆体層は、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、および/または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含む。一例において、前駆体層はヨウ化鉛(PbI)を含む。
【0095】
[00124]一部の実施形態において、前駆体層は、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する。
【0096】
[00125]一部の実施形態において、一連のVTD条件は、20℃~150℃の範囲の堆積チャンバー温度;375℃~550℃の範囲の温度に加熱された、第1のペロブスカイト形成組成物のための原料物質;不活性キャリアガスを含む堆積チャンバー雰囲気;および0.05Torr~5.0Torrの範囲の堆積チャンバー圧力を含む。一部の実施形態において、第1の前駆体層を堆積させるステップ中のチャンバー圧力は、0.1~5.0Torr、0.1~2.0Torr、0.1~1.5Torr、0.25~1.5Torr、0.25~1.0Torr、0.25~0.75Torr、または0.25~0.50Torrの範囲である。
【0097】
[00126]一例において、第1のペロブスカイト形成組成物のための原料物質は粉末を含む。
[00127]一部の実施形態において、原料物質を400℃~525℃の範囲の温度に加熱する。一例において、原料物質を400℃~500℃の範囲の温度に加熱する。一例において、原料物質を450℃~525℃の範囲の温度に加熱する。一例において、原料物質を400℃~475℃の範囲の温度に加熱する。
【0098】
[00128]一部の実施形態において、堆積チャンバー内の支持体スタックは、20℃~150℃の範囲の温度を有する。
[00129]一部の実施形態において、キャリアガスは不活性である。一部の実施形態において、キャリアガスは希ガスを含む。一例において、キャリアガスはヘリウムを含む。一例において、キャリアガスはアルゴンを含む。一例において、キャリアガスは窒素を含む。
【0099】
[00130]一例において、VTDによって第1の前駆体層を堆積させるステップは、0.01~1.50ミクロン毎分の範囲の堆積速度、0.5分~5分の範囲の堆積時間長、および厚さ100nm~2000nmを有する前駆体層を製造するステップを含む。一部の実施形態において、VTDによって第1の前駆体層を堆積させるステップは、0.05~1.00μm毎分、0.05~0.75μm毎分、0.05~0.50μm毎分、または0.01~0.35μm毎分の範囲の堆積速度を含む。
【0100】
[00131]本明細書で示された実施形態によれば、ペロブスカイト光起電力デバイスのための中間体構造は、第1の電荷輸送層上に前駆体層を含むことができる。
[00132]本明細書で示された実施形態によれば、前駆体層は、100nm~2000nmの範囲の厚さを有する。一部の実施形態において、前駆体層の厚さは、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、および/または350~800nmの範囲である。一部の実施形態において、前駆体層は、200~1000nm、300~700nm、350~600nm、または400~500nmの範囲の厚さを有する。一例において、前駆体層厚さは、300~1200ナノメートルの範囲である。
【0101】
[00133]一部の実施形態において、前駆体層は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または15%未満の、層内の厚さ偏差を有する。一例において、前駆体層は、実質的にピンホールを有さず、前駆体層全体を通して最小厚さ100nmを有する。一例において、前駆体層は、実質的にピンホールを有さず、前駆体層全体を通して最小厚さ200nmを有する。
【0102】
[00134]一部の実施形態において、前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、その粒構造は、支持体スタックの表面に垂直な高さ、および支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である。一例において、粒構造はヨウ化鉛を含む。
【0103】
[00135]一部の実施形態において、前駆体層は、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、および/または45%~55%の範囲の多孔率を有する。一例において、多孔率は、40%よりも高い。
【0104】
[00136]一部の実施形態において、第2のペロブスカイト形成組成物は、セシウム(Cs)カチオン、ルビジウム(Rb)カチオン、メチルアンモニウム(MA)化合物、および/またはホルムアミジニウム(FA)化合物のうちの少なくとも1種を含む。
【0105】
[00137]一例において、一連のアニール条件は、0.1Torr~1000Torrの範囲のアニールチャンバー圧力、1~90分の範囲のアニール時間長、40~60%の範囲の湿度、および50~200℃の範囲のアニールチャンバー温度を含む。一部の実施形態において、アニールするステップ中の圧力は、0.1~100.0Torr、0.1~20.0Torr、0.1~5.0Torr、0.1~2.0Torr、または0.25~1.5Torrの範囲である。
【0106】
[00138]本明細書で示された実施形態によれば、光起電力デバイスのための第1の電荷輸送層は、正孔輸送層または電子輸送層を含むことができ、第2の電荷輸送層は、電子輸送層または正孔輸送層を含むことができ、但し、第1の電荷輸送層および第2の電荷輸送層は、逆の電化極性を有する。
【0107】
[00139]本明細書で示された実施形態によれば、ペロブスカイト系光起電力デバイスを形成する方法は、第1の電極上に、第1の正孔輸送層または第1の電子輸送層を堆積させるステップ;蒸気搬送堆積(VTD)によって、一連のVTD条件の下、第1の正孔輸送物質または第1の電子輸送物質上に、ハロゲン化鉛またはハロゲン化スズなどの、第1のペロブスカイト形成組成物を堆積させて、前駆体層を形成するステップ;第2のペロブスカイト形成組成物を堆積させるステップ;一連のアニール条件の下、前駆体層を第2のペロブスカイト形成組成物と反応させることによって、前駆体層をペロブスカイトへ変換して、第1の正孔輸送層または第1の電子輸送層上に、ペロブスカイト物質を含む光活性層を形成するステップ;ペロブスカイト物質上に、第1の正孔輸送層または第1の電子輸送層とは逆極性を有する、第2の正孔輸送層または第2の電子輸送層を堆積させるステップ;および第2の正孔輸送層または第2の電子輸送層上に、導電性物質を堆積させて、第2の電極を形成するステップを含むことができる。
【0108】
[00140]一部の実施形態において、一連のVTD条件は、20℃~150℃の範囲のチャンバー温度、不活性キャリアガスを含む雰囲気、375℃~550℃の範囲の温度に加熱されたハロゲン化金属源、0.10~1.00ミクロン毎分の範囲の堆積速度、0.1Torr~5Torrの範囲の圧力を含む。一部の実施形態において、0.5分~5分の範囲の堆積時間長で、前駆体層を400~500nmまたはそれ以上の厚さで堆積させる。
【0109】
[00141]一部の実施形態において、光起電力デバイスのペロブスカイト吸収体層を製作する方法は、第1のペロブスカイト形成組成物から形成されたハロゲン化金属前駆体層を含む中間体構造を用意するステップ;中間体構造を第2のペロブスカイト形成組成物に暴露するステップ;および第2のペロブスカイト形成組成物と共に中間体構造をアニールするステップを含む。一部の実施形態において、第2のペロブスカイト形成組成物は、セシウム(Cs)カチオン、ルビジウム(Rb)カチオン、メチルアンモニウム(MA)化合物(IもしくはBr)、またはホルムアミジニウム(FA)化合物のうちの少なくとも1種を含み;一連のアニール条件は、0.1Torr~1000Torrの範囲の圧力、10分~90分の範囲のアニール時間長、45~60%の範囲の湿度、50℃~150℃の範囲の温度を含むことができる。一部の実施形態において、中間体構造を第2のペロブスカイト形成組成物に暴露するステップは、前駆体層を第2のペロブスカイト形成組成物を含む蒸気に接触させるステップを含む。一部の実施形態において、中間体構造を第2のペロブスカイト形成組成物に暴露するステップは、前駆体層にわたる層において、第2のペロブスカイト形成組成物を含む物質を堆積させるステップを含む。
【0110】
[00142]一部の実施形態において、方法は、幅500nmよりも大きい平均ペロブスカイト粒径を有する、厚さ約400nmのペロブスカイト吸収体層を製造する。一部の実施形態において、方法は、200~800nmの範囲の厚さを有するペロブスカイト吸収体層を製造する。一部の実施形態において、方法は、平均ペロブスカイト粒の高さよりも大きい、平均ペロブスカイト粒の幅を有するペロブスカイト粒を含むペロブスカイト吸収体層を製造する。一部の実施形態において、方法は、ピンホールまたは間隙を実質的に有さないペロブスカイト吸収体層を製造する。一部の実施形態において、方法は、200nmよりも大きい厚さを有するペロブスカイト吸収体層を製造する。一部の実施形態において、方法は、200nm~10000nmの範囲の厚さを有するペロブスカイト吸収体層を製造する。一部の実施形態において、方法は、200nm~6000nmの範囲、または300nm~3000nmの範囲の厚さを有するペロブスカイト吸収体層を製造する。
【0111】
[00143]本明細書で開示されたデバイス、装置、および方法のある実施形態は、上記の実施例において画定される。特定の実施形態を示唆する、これらの実施例は、例としてのみ与えられると理解されるべきである。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者は、本開示の本質的な特徴を確かめることができ、本明細書に記載の組成物および方法を多様な利用および条件に適合させるために、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および改変を行うことができる。本開示の本質的な範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、様々な均等物を本発明の要素と置き換えることができる。さらに、本開示の本質的な範囲を逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの改変を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2022-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト前駆体層を形成する方法であって、
堆積チャンバー内に支持体スタックを用意すること、ここで前記支持体スタックは、電極上に第1の電荷輸送層を有する、および
蒸気搬送堆積(VTD)法によって、前記堆積チャンバー内で、前記支持体スタック上に第1のペロブスカイト形成組成物を堆積させること
を含み、
ここで前記蒸気搬送堆積(VTD)法は
原料物質を375℃~550℃の範囲の温度に加熱すること、
前記堆積チャンバー内でキャリアガスを使用して、蒸気カーテンを提供することにより前記支持体スタックに対して前記原料物質の蒸気を誘導すること、ここで前記蒸気カーテンは1mより大きい幅を有し、前記堆積チャンバーは、0.1~2.0Torrの範囲の圧力を有する、および
0.01~1.50μm毎分の範囲の堆積速度で、厚さ100~2000nmまで前記前駆体層を形成すること、ここで前記前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、この粒構造は、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、
を含む、
上記のペロブスカイト前駆体層を形成する方法。
【請求項2】
前記堆積チャンバーが、0.1~1.0Torrの範囲の圧力を有し;
前記堆積チャンバーが、20℃~150℃の範囲の温度を有し;
前記原料物質が、400℃~525℃の範囲の温度に加熱され;
80sccm~150sccmの範囲のキャリアガス流量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体層が、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記前駆体層が、複数のヨウ化鉛結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、前記前駆体層の粒構造の、少なくとも4分の1が、200nm~700nmの範囲である高さ、および100nm未満である幅を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記堆積速度が、0.05~0.50μm毎分の範囲である、請求項2または請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリアガスが、アルゴン、ヘリウム、または窒素のうちの少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前駆体層厚さが、100~1900nmの範囲であり、50%未満の層内の厚さ偏差を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記支持体スタックを用意することが、前記支持体スタックをコンベヤーによって前記堆積チャンバーへ運搬することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
支持体スタック上の第1の電極、ここで前記支持体スタックは1mよりも大きい幅を有する;
前記第1の電極上の第1の電荷輸送層;および
前記第1の電荷輸送層上の前駆体層
を含む、ペロブスカイト光起電力デバイスを製造するための中間体構造であって、
前記前駆体層は、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含み;
前記前駆体層は、100~2000nmの範囲の厚さを有し;
前記前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、この粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、
上記の中間体構造。
【請求項13】
前記前駆体層の、前記複数のハロゲン化金属結晶粒構造が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックスを形成する、請求項12に記載の中間体構造。
【請求項14】
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する、請求項13に記載の中間体構造。
【請求項15】
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の中間体構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
[00143]本明細書で開示されたデバイス、装置、および方法のある実施形態は、上記の実施例において画定される。特定の実施形態を示唆する、これらの実施例は、例としてのみ与えられると理解されるべきである。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者は、本開示の本質的な特徴を確かめることができ、本明細書に記載の組成物および方法を多様な利用および条件に適合させるために、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および改変を行うことができる。本開示の本質的な範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、様々な均等物を本発明の要素と置き換えることができる。さらに、本開示の本質的な範囲を逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの改変を行うことができる。

[発明の態様]
[1]
ペロブスカイト前駆体層を形成する方法であって、
堆積チャンバー内に支持体スタックを用意すること、ここで前記支持体スタックは、電極上に第1の電荷輸送層を有する、および
蒸気搬送堆積(VTD)法によって、前記堆積チャンバー内で、前記支持体スタック上に第1のペロブスカイト形成組成物を堆積させること
を含み、
ここで前記蒸気搬送堆積(VTD)法は
原料物質を375℃~550℃の範囲の温度に加熱すること、
前記堆積チャンバー内でキャリアガスを使用して、前記支持体スタックに対して前記原料物質の蒸気を誘導すること、ここで前記堆積チャンバーは、0.1~2.0Torrの範囲の圧力を有する、および
0.01~1.50μm毎分の範囲の堆積速度で、厚さ100~2000nmまで前記前駆体層を形成すること、ここで前記前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、この粒構造は、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、
を含む、
上記のペロブスカイト前駆体層を形成する方法。
[2]
前記堆積チャンバーが、0.1~1.0Torrの範囲の圧力を有し;
前記堆積チャンバーが、20℃~150℃の範囲の温度を有し;
前記原料物質が、400℃~525℃の範囲の温度に加熱され;
80sccm~150sccmの範囲のキャリアガス流量である、1に記載の方法。
[3]
前記原料物質が、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、および/または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含む粉末である、1に記載の方法。
[4]
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する結晶マトリックス中に、少なくとも1種のハロゲン化金属を含む、1に記載の方法。
[5]
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、1に記載の方法。
[6]
前記前駆体層が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックス中に、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、またはヨウ化セシウムスズ(CsSnI)のうちの少なくとも1種を含む、1に記載の方法。
[7]
前記前駆体層が、複数のヨウ化鉛結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、前記前駆体層の粒構造の、少なくとも4分の1が、200nm~700nmの範囲である高さ、および100nm未満である幅を有する、1に記載の方法。
[8]
前記堆積速度が、0.05~0.50μm毎分の範囲である、1に記載の方法。
[9]
前記キャリアガスが、アルゴン、ヘリウム、または窒素のうちの少なくとも1種を含む、1に記載の方法。
[10]
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、1に記載の方法。
[11]
第1の電極;
前記第1の電極上の第1の電荷輸送層;および
前記第1の電荷輸送層上の前駆体層を含む、ペロブスカイト光起電力デバイスのための中間体構造であって、前記前駆体層が、100~2000nmの範囲の厚さを有し、前記前駆体層が、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、中間体構造。
[12]
前記前駆体層の、前記複数のハロゲン化金属結晶粒構造が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックスを形成する、11に記載の中間体構造。
[13]
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する、11に記載の中間体構造。
[14]
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、11に記載の中間体構造。
[15]
前記前駆体層が、300~1200ナノメートルの範囲の厚さを有する、11に記載の中間体構造。
[16]
前記前駆体層内の厚さ偏差が30%未満である、11に記載の中間体構造。
[17]
前記前駆体層が、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、および/または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含む、11に記載の中間体構造。
[18]
前記前駆体層がヨウ化鉛を含む、11に記載の中間体構造。
[19]
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、11に記載の中間体構造。
[20]
前記前駆体層が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックス中に、少なくとも1種のハロゲン化金属を含み、および50%未満の前記前駆体層内の厚さ偏差を含む、11に記載の中間体構造。
[21]
光起電力デバイスを製造するための、ペロブスカイト前駆体層を有する中間体構造を形成する方法であって、
堆積チャンバー内に支持体スタックを用意すること、ここで前記支持体スタックは、電極上に第1の電荷輸送層を有する、および
蒸気搬送堆積(VTD)法によって、前記堆積チャンバー内で、前記支持体スタック上に第1のペロブスカイト形成組成物を蒸着させること
を含み、
蒸気搬送堆積法は、
原料物質を375℃~550℃の範囲の温度に加熱すること、ここで前記原料物質が、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含む粉末である、
前記堆積チャンバー内で、キャリアガスを使用して、前記支持体スタックに対して、前記原料物質の蒸気を誘導すること、ここで前記堆積チャンバーが、0.1~2.0Torrの範囲の圧力を有する、ならびに
0.01~1.50μm毎分の範囲の堆積速度で、厚さ100~2000nmまで前記前駆体層を形成すること、ここで前記前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、
を含む、
を上記の、ペロブスカイト前駆体層を有する中間体構造を形成する方法。
[22]
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する、2または21に記載の方法。
[23]
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、2または21から22のいずれか一項に記載の方法。
[24]
前記前駆体層が、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、2または21から23のいずれか一項に記載の方法。
[25]
前記前駆体層が、複数のヨウ化鉛結晶粒構造を含み、粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、前記前駆体層の粒構造の、少なくとも4分の1が、200nm~700nmの範囲である高さ、および100nm未満である幅を有する、2または21から24のいずれか一項に記載の方法。
[26]
前記堆積速度が、0.05~0.50μm毎分の範囲である、2または21から25のいずれか一項に記載の方法。
[27]
前記キャリアガスが、アルゴン、ヘリウム、または窒素のうちの少なくとも1種を含む、2または21から26のいずれか一項に記載の方法。
[28]
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、2または21から27のいずれか一項に記載の方法。
[29]
前駆体層厚さが、100~1900nmの範囲であり、50%未満の層内の厚さ偏差を有する、2、21から22、または24から28のいずれか一項に記載の方法。
[30]
前駆体層多孔率が、40%よりも高い、2または21から29のいずれか一項に記載の方法。
[31]
第1の電極;
前記第1の電極上の第1の電荷輸送層;および
前記第1の電荷輸送層上の前駆体層
を含む、ペロブスカイト光起電力デバイスを製造するための中間体構造であって、
前記前駆体層は、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム鉛(CsPbI)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、塩化鉛(PbCl)、ヨウ化スズ(SnI)、臭化スズ(SnBr)、または塩化スズ(SnCl)のうちの少なくとも1種を含み;
前記前駆体層は、100~2000nmの範囲の厚さを有し;
前記前駆体層は、複数のハロゲン化金属結晶粒構造を含み、この粒構造が、前記支持体スタックの表面に垂直な高さ、および前記支持体スタックの表面に平行な幅を有し、平均粒幅が、平均粒高さの3分の1未満である、
上記の中間体構造。
[32]
前記前駆体層の、前記複数のハロゲン化金属結晶粒構造が、35%よりも高い多孔率を有する結晶マトリックスを形成する、31に記載の中間体構造。
[33]
前記前駆体層が、35%~65%の範囲、40%~60%の範囲、または45%~55%の範囲の多孔率を有する、31に記載の中間体構造。
[34]
前記前駆体層が、200~1500nmの範囲、300~1200nmの範囲、300~900nmの範囲、または350~800nmの範囲の厚さを有する、12または31から33のいずれか一項に記載の中間体構造。
[35]
前記前駆体層が、300~1200ナノメートルの範囲の厚さを有する、12または31から33のいずれか一項に記載の中間体構造。
[36]
前記前駆体層内の厚さ偏差が、30%未満である、12または31から35のいずれか一項に記載の中間体構造。
[37]
前記前駆体層が、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウムスズ(CsSnI)、またはその組み合わせで本質的に構成される、12または31から36のいずれか一項に記載の中間体構造。
[38]
前記前駆体層が、ヨウ化鉛(PbI)を含む、12または31から37のいずれか一項に記載の中間体構造。
[39]
前記前駆体層が、複数の結晶粒を含み、粒の30~100%が、200~800nmの範囲の長さを有する、少なくとも1つの寸法のサイズを有する、12または31から38のいずれか一項に記載の中間体構造。
[40]
1から10または20から30のいずれか一項に記載の方法によって形成される、ペロブスカイト光起電力デバイスを製造するための中間体構造。
[41]
11から19または31から40のいずれか一項に記載の中間体構造を用意すること;
前記中間体構造を第2のペロブスカイト形成組成物に暴露すること;および
前記第2のペロブスカイト形成組成物と共に前記中間体構造をアニールすること
を含む、光起電力デバイスのペロブスカイト吸収体層を製作する方法。
[42]
前記第2のペロブスカイト形成組成物が、セシウム(Cs)カチオン、ルビジウム(Rb)カチオン、メチルアンモニウム(MA)化合物、またはホルムアミジニウム(FA)化合物のうちの少なくとも1種を含む、41に記載の方法。
[43]
前記アニールするステップが、0.1Torr~1000Torrの範囲の圧力で、10分~90分の範囲の時間長で、45~60%の範囲の湿度で、50℃~150℃の範囲の温度で実施される、41または42に記載の方法。
【国際調査報告】