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特表2023-515489タイヤ用途用カーボンブラックを含むナノセルロース分散組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】タイヤ用途用カーボンブラックを含むナノセルロース分散組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230406BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230406BHJP
   C08L 21/02 20060101ALI20230406BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20230406BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230406BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230406BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230406BHJP
   C08L 9/08 20060101ALI20230406BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20230406BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08L21/02
C08L91/06
C08L1/02
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/08
C08K9/04
B60C1/00 Z
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549875
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2021018564
(87)【国際公開番号】W WO2021168103
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/978,397
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521172701
【氏名又は名称】ビルラ カーボン ユー.エス.エー.,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】521174163
【氏名又は名称】グランバイオ インテレクチュアル プロパティ ホールディングス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ アール.ハード
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー エー.コムズ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ビー.タニクリフ
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】シャオポー パン
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA01
3D131BA02
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA12
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC31
3D131BC33
3D131BC39
3D131BC51
4J002AA001
4J002AB013
4J002AC011
4J002AC061
4J002AC081
4J002AE032
4J002AE052
4J002BB032
4J002DA036
4J002FB263
4J002FD013
4J002FD016
4J002FD202
4J002FD203
4J002GN01
(57)【要約】
分割剤及びナノセルロースを含むナノセルロース分散組成物、及びナノセルロース分散組成物の製造方法が、開示される。これらナノセルロース分散組成物は、カーボンブラック及び適切なエラストマーと共にタイヤ配合物に使用して、タイヤ及びトレッド用途に使用するための製造物品を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)ポリマー;
(II)
(i)カーボンブラックフィラー、エラストマーラテックス、ワックス、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む分割剤;及び
(ii)ナノセルロース、
を含むナノセルロース分散組成物(NDC);並びに
(III)カーボンブラック添加剤;
を含む、タイヤ組成物であって、
前記タイヤ組成物が、干渉顕微鏡法(IFM)によって決定される、少なくとも約90%の分散指数によって特徴付けられる、タイヤ組成物。
【請求項2】
(I)ポリマー;
(II)
(i)カーボンブラックフィラー、エラストマーラテックス、ワックス、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む分割剤;及び
(ii)ナノセルロース、
を含むナノセルロース分散組成物(NDC);並びに
(III)カーボンブラック添加剤;
を含む、タイヤ組成物であって、
前記タイヤ組成物が、少なくとも約300,000サイクルの100%引張歪みでの疲労寿命によって特徴付けられる、タイヤ組成物。
【請求項3】
前記ポリマーと前記ナノセルロース分散組成物との重量比(ポリマー:NDC)が、約100:1~約1:1、約80:1~約10:1、約75:1~約2:1、約60:1~約5:1、約50:1~約1:1、約40:1~約4:1、約75:1~約25:1、約90:1~約15:1、約75:1~約1.5:1、又は約50:1~約2:1の範囲である、請求項1又は2に記載のタイヤ組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、エラストマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項5】
前記ナノセルロース分散組成物が、前記分割剤を含まない前記ナノセルロースの分散性よりも大きい、前記ポリマー組成物中におけるナノセルロース分散性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項6】
前記ナノセルロースが、ナノセルロース結晶(NC)、ナノセルロースフィブリル(NF)、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項7】
前記ナノセルロースが、リグニン被覆ナノセルロース結晶(LCNC)、リグニン被覆ナノセルロースフィブリル(LCNF)、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項8】
前記ナノセルロースが、親水性セルロースナノセルロース結晶(CNC)、親水性セルロースナノセルロースフィブリル(CNF)、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項9】
前記ナノセルロース分散組成物(NDC)が、炭化水素油を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項10】
前記ポリマーが、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR)、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項11】
前記ワックスが、非分岐アルカンパラフィンワックス;天然鉱物、石油精製、若しくはリグニン精製の分岐パラフィンワックス若しくはセレシンワックス;ポリエチレンワックス;官能化ポリエチレンワックス;又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項12】
前記カーボンブラックフィラー及び前記カーボンブラック添加剤が、独立してファーネスカーボンブラック及び/又は表面改質されたファーネスカーボンブラックを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項13】
前記カーボンブラックフィラー及び前記カーボンブラック添加剤が、
約90m/g~約140m/gの窒素表面積;
約80m/g~約125m/gの外部表面積;
約2.5~約9のpH;
約55cm/100g~約67cm/100gの50GM空隙容積;
約50cm/100g~約60cm/100gの75GM空隙容積;
約45cm/100g~約55cm/100gの100GM空隙容積;
約2.5wt%~約4.5wt%の水分含有量;
約4.5wt%~約6.5wt%の揮発性成分含有量;
約2.5wt%~約5.5wt%の酸素含有量;又は
これらのいずれかの組み合わせ、
によって独立して特徴付けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項14】
前記分割剤が、前記カーボンブラックフィラー、前記エラストマーラテックス、及び前記ワックスのうち少なくとも2つを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項15】
前記分割剤と前記ナノセルロースとの重量比が、約0.1:1~約25:1、約0.1:1~約10:1、約0.1:1~約5:1、約0.1:1~約1:1、約0.25:1~約15:1、約0.3:1~約10:1、約0.5:1~約25:1、約0.75:1~約15:1、又は約1:1~約10:1の範囲である、請求項1~14のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項16】
前記ナノセルロース分散組成物(NDC)が、
(a)前記ナノセルロースの水性分散体を前記分割剤と組み合わせて、混合物を形成すること;及び
(b)前記混合物を乾燥させて、前記ナノセルロース分散組成物(NDC)を形成すること、
を含む工程によって製造される、請求項1~15のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項17】
前記ナノセルロース分散組成物(NDC)が、
(A)前記ナノセルロースの水性分散体を前記分割剤と組み合わせて、混合物を形成すること;及び
(B)前記混合物を乾燥させて、前記ナノセルロース分散組成物(NDC)を形成すること、
を含む工程によって製造され、
前記分割剤が前記NDC中で安定であり、ナノセルロース粒子間に間隔を空けて、前記NDC中での前記ナノセルロース粒子の凝集を低減又は防止する、請求項1~15のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項18】
前記タイヤ組成物が、
約20~約150phrのカーボンブラック、約1~約15phrのナノセルロース、及び約1~約15phrの炭化水素油;又は
約30~約100phrのカーボンブラック、約2~約10phrのナノセルロース、及び約2~約10phrの炭化水素油;又は
約40~約80phrのカーボンブラック、約2~約7.5phrのナノセルロース、及び約3~約9phrの炭化水素油、
を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項19】
前記タイヤ組成物が、干渉顕微鏡法(IFM)によって決定される、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、又は少なくとも約98%の分散指数によって特徴付けられる、請求項1~18のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項20】
前記タイヤ組成物が、干渉顕微鏡法(IFM)によって決定される、約8%以下、約6%以下、約4%以下、約3%以下、又は約2%以下の未分散材料の面積率によって特徴付けられる、請求項1~19のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項21】
前記タイヤ組成物が、少なくとも約325,000サイクル、少なくとも約350,000サイクル、少なくとも約375,000サイクル、又は少なくとも約400,000サイクルの100%引張歪みでの疲労寿命によって特徴付けられる、請求項1~20のいずれか一項に記載のタイヤ組成物。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のタイヤ組成物を含む、製造物品。
【請求項23】
前記物品が、空気入りタイヤ、乗用車用タイヤ、又はトラック及びバス用ラジアルタイヤである、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記物品が、タイヤトレッドである、請求項22に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、PCT国際特許出願として2021年2月18日に出願されるものであり、2020年2月19日に出願された米国仮特許出願第62/978,397号の優先権を主張し、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、ポリマー配合物において使用するためのナノセルロース分散組成物に関するものであり、より詳細には、タイヤ用途を意図したエラストマー配合物において使用するためのナノセルロース分散組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノセルロースは、プラスチック及びエラストマーなど、多くの異なる潜在的用途があるナノ材料として最近多くの注目を集めている。これらの用途におけるナノセルロースの使用は、ナノセルロースがバイオマスから由来し、炭化水素材料から由来しないため、得られる複合材料の性能を向上させ、将来に向けた材料の持続可能な性質を向上させることを意図する。しかし、ナノセルロースの1つの問題点として、ナノセルロースが結晶形であってもフィブリル形であっても、通常は、ナノセルロースは乾燥中にナノセルロース自身と結合し、ポリマー複合構造中にナノセルロースの大きな凝集体を生じさせるため、疎水性で非極性の溶媒及びマトリックス(プラスチック及びエラストマーを含む)への分散性がある。
【0004】
例えば、ナノセルロースをエラストマーコンパウンドに混合する場合、大きな凝集体を排除して、ナノセルロースをエラストマーマトリックスに組み込む十分な利益を得られるようなナノセルロースの良好な分散が望まれる。大きな凝集体は、応力集中を引き起こす可能性があり、大きな凝集体は、ポリマー複合材料の早期損傷を引き起こす可能性がある。
【0005】
したがって、ポリマー配合物におけるナノセルロースの分散性を大幅に改善する方法を考案することが重要となっており、これは、タイヤ及び他の最終使用用途におけるナノセルロースの開発、成長、及び商業化に直面する重要な問題として残っている。したがって、これらの目的こそが本発明が概ね対象とすることである。
【発明の概要】
【0006】
本概要は、詳細な説明において、以下で更に説明される概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。本概要は、特許請求の範囲に記載の主題の必要な又は必須の特徴を特定することを意図していない。また、本概要は、特許請求の範囲に記載の主題の範囲を限定するために使用されることを意図していない。
【0007】
本明細書に具体化され、広く説明される本発明の目的に従って、本開示は、一態様において、分割剤がそのまま残り、ナノセルロース結晶及びナノセルロースフィブリルが互いに結合することを防ぐように、ナノセルロース乾燥工程において又はその前に、分割剤を添加する工程に関する。その結果、タイヤ及び他の最終使用用途のエラストマー及びプラスチックなどのタイヤ配合物に容易に分散させることができるナノセルロース分散組成物が得られる。
【0008】
ナノセルロース分散組成物(NDC)は、本明細書に記載されており、NDCは、(i)カーボンブラックフィラー、エラストマーラテックス、ワックス、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む分割剤、及び(ii)ナノセルロースを含むことができる。このNDCは、タイヤ組成物に使用することができ、したがって、(I)ポリマー、(II)本明細書に開示されるナノセルロース分散組成物のいずれか、及び(III)カーボンブラック添加剤を含むことができる。幾つかの態様において、タイヤ組成物は、干渉顕微鏡法(IFM)によって決定される、少なくとも約90%の分散指数によって特徴付けることができ、一方で、他の態様において、タイヤ組成物は、少なくとも約300,000サイクルの100%引張歪みでの疲労寿命によって特徴付けることができる。本明細書に開示されるタイヤ組成物は、自動車用タイヤ及びトラックタイヤ並びにバス用タイヤなどの様々な製造物品を製造するために使用することができる。
【0009】
前述の概要及び以下の詳細な説明の両方は、例を提供し、説明的であるものに過ぎない。したがって、前述の概要及び以下の詳細な説明は、制限的なものであると考えるべきではない。さらに、特徴又は変形は、本明細書に規定されるものに加えて提供されてよい。例えば、特定の態様及び実施形態は、詳細な説明で説明された様々な特徴の組み合わせ及びサブコンビネーションを対象とし得る。
【0010】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図は、幾つかの態様を示し、説明と共に本発明の特定の原理を説明することに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1A及び1Bは、それぞれ、基準カーボンブラックグレードであるN234を使用して混合したモデル乗用車用タイヤトレッドコンパウンドの後方散乱走査電子顕微鏡(SEM)画像及び二次走査電子顕微鏡画像である。図1A及び1Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0012】
図1B図1A及び1Bは、それぞれ、基準カーボンブラックグレードであるN234を使用して混合したモデル乗用車用タイヤトレッドコンパウンドの後方散乱走査電子顕微鏡(SEM)画像及び二次走査電子顕微鏡画像である。図1A及び1Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0013】
図2A図2A及び2Bは、それぞれ、実施例2のコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、乾燥したリグニン被覆ナノセルロースフィブリル(LCNF)で置換した。図2A及び図2Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0014】
図2B図2A及び2Bは、それぞれ、実施例2のコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、乾燥したリグニン被覆ナノセルロースフィブリル(LCNF)で置換した。図2A及び図2Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0015】
図3A図3A及び3Bは、それぞれ、実施例3のコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF、表面修飾カーボンブラック(SMCB)、及びTDAE油を含むナノセルロース分散組成物(NDC)の一部として、LCNFで置換した。図3A及び図3Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0016】
図3B図3A及び3Bは、それぞれ、実施例3のコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF、表面修飾カーボンブラック(SMCB)、及びTDAE油を含むナノセルロース分散組成物(NDC)の一部として、LCNFで置換した。図3A及び図3Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0017】
図4A図4A及び4Bは、それぞれ、本開示の様々な態様に従う、実施例4のモデルトラックタイヤトレッドコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像である。図4A及び4Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0018】
図4B図4A及び4Bは、それぞれ、本開示の様々な態様に従う、実施例4のモデルトラックタイヤトレッドコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像である。図4A及び4Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0019】
図5A図5A及び5Bは、それぞれ、実施例5のコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、乾燥したLCNFで置換した。図5A及び5Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0020】
図5B図5A及び5Bは、それぞれ、実施例5のコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、乾燥したLCNFで置換した。図5A及び5Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0021】
図6A図6A及び6Bは、それぞれ、実施例6のコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF及び天然ゴムラテックスを含むNDCの一部として、LCNFで置換した。図6A及び6Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0022】
図6B図6A及び6Bは、それぞれ、実施例6のコンパウンド分散体の後方散乱SEM画像及び二次SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF及び天然ゴムラテックスを含むNDCの一部として、LCNFで置換した。図6A及び6Bのスケールは、同じである(スケールバー=300μm)。
【0023】
図7A図7A及び7B及び7Cは、それぞれ、実施例11の(レザーカット表面の目に沿った(with the grain))コンパウンド分散体の100μm、40μm及び10μmスケールバーを有する後方散乱SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF、表面修飾カーボンブラック(SMCB)、及びTDAE油を含むナノセルロース分散組成物(NDC)の一部として、LCNFで置換した。
【0024】
図7B図7A及び7B及び7Cは、それぞれ、実施例11の(レザーカット表面の目に沿った(with the grain))コンパウンド分散体の100μm、40μm及び10μmスケールバーを有する後方散乱SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF、表面修飾カーボンブラック(SMCB)、及びTDAE油を含むナノセルロース分散組成物(NDC)の一部として、LCNFで置換した。
【0025】
図7C図7A及び7B及び7Cは、それぞれ、実施例11の(レザーカット表面の目に沿った(with the grain))コンパウンド分散体の100μm、40μm及び10μmスケールバーを有する後方散乱SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF、表面修飾カーボンブラック(SMCB)、及びTDAE油を含むナノセルロース分散組成物(NDC)の一部として、LCNFで置換した。
【0026】
図8A図8A及び8Bは、それぞれ、実施例11の(レザーカット表面の目に逆らった(against the grain))コンパウンド分散体の100μm及び40μmスケールバーを有する後方散乱SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF、表面修飾カーボンブラック(SMCB)、及びTDAE油を含むナノセルロース分散組成物(NDC)の一部として、LCNFで置換した。
【0027】
図8B図8A及び8Bは、それぞれ、実施例11の(レザーカット表面の目に逆らった(against the grain))コンパウンド分散体の100μm及び40μmスケールバーを有する後方散乱SEM画像であって、カーボンブラックの一部を、本開示の様々な態様に従って、LCNF、表面修飾カーボンブラック(SMCB)、及びTDAE油を含むナノセルロース分散組成物(NDC)の一部として、LCNFで置換した。
【0028】
図9図9~12は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、MDR T90硬化時間、ムーニーT5スコーチタイム、ムーニー粘度、及びショアA硬度をまとめた棒グラフである。
【0029】
図10図9~12は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、MDR T90硬化時間、ムーニーT5スコーチタイム、ムーニー粘度、及びショアA硬度をまとめた棒グラフである。
【0030】
図11図9~12は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、MDR T90硬化時間、ムーニーT5スコーチタイム、ムーニー粘度、及びショアA硬度をまとめた棒グラフである。
【0031】
図12図9~12は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、MDR T90硬化時間、ムーニーT5スコーチタイム、ムーニー粘度、及びショアA硬度をまとめた棒グラフである。
【0032】
図13図13は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、100%、200%、及び300%伸長時の(目に沿った)静的弾性率をまとめた棒グラフである。
【0033】
図14図14は、実施例7及び実施例11のコンパウンド分散体の引張強度対パーセント伸度を説明するプロットである。
【0034】
図15図15は、目に沿った粉砕方向及び目に逆らった粉砕方向、並びに目に沿った引張試験及び目に逆らった引張試験を説明する図面である。
【0035】
図16図16は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、100%、200%、及び300%伸長時の(目に沿った及び目に逆らった)静的弾性率をまとめた棒グラフである。
【0036】
図17図17は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、100%、200%、300%伸長時の機械的異方性をまとめた棒グラフである。
【0037】
図18図18~20は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、(目に沿った及び目に逆らった)引張強度、破断伸度、及び臨界引裂強度をまとめた棒グラフである。
【0038】
図19図18~20は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、(目に沿った及び目に逆らった)引張強度、破断伸度、及び臨界引裂強度をまとめた棒グラフである。
【0039】
図20図18~20は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、(目に沿った及び目に逆らった)引張強度、破断伸度、及び臨界引裂強度をまとめた棒グラフである。
【0040】
図21図21~25は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、DIN摩耗、60℃での反発、フレクソメーター熱蓄積、60℃でのtanδMAX、及び60℃でのΔG’をまとめた棒グラフである。
【0041】
図22図21~25は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、DIN摩耗、60℃での反発、フレクソメーター熱蓄積、60℃でのtanδMAX、及び60℃でのΔG’をまとめた棒グラフである。
【0042】
図23図21~25は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、DIN摩耗、60℃での反発、フレクソメーター熱蓄積、60℃でのtanδMAX、及び60℃でのΔG’をまとめた棒グラフである。
【0043】
図24図21~25は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、DIN摩耗、60℃での反発、フレクソメーター熱蓄積、60℃でのtanδMAX、及び60℃でのΔG’をまとめた棒グラフである。
【0044】
図25図21~25は、実施例7~11のコンパウンド分散体について、それぞれ、DIN摩耗、60℃での反発、フレクソメーター熱蓄積、60℃でのtanδMAX、及び60℃でのΔG’をまとめた棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の追加の態様は、一部は以下の説明で述べられ、一部は説明から明らかであり、又は本発明の実施によって知ることができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素及び組み合わせによって、実現され達成される。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載の本発明を制限するものではないことが理解される。
【0046】
詳細な説明
本発明は、以下の発明の詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。
【0047】
本コンパウンド、組成物、物品、システム、装置、及び/又は方法が、開示され説明される前に、それらは、当然ながら異なり得るので、他に指定されない限り特定の合成方法に、又は他に指定されない限り特定の試薬に限定されないことが理解される。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の態様を説明する目的のために過ぎず、限定することを意図していないことが理解される。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、例示的かつ代表的な方法及び材料は、これから説明される。
【0048】
本明細書で言及した全ての出版物は、その出版物の引用に関連した方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般に理解されることと同じ意味を有する。
【0050】
本明細書で使用する試験方法は、当業者には知られており、理解されている。適切な場合には、特定の試験方法について参考文献が提供される。例えば、ASTM D2663、Standard Test Methods for Carbon Black -Dispersion in Rubber、Method Dを使用して、(例えば、分散指数、及び未分散材料-カーボンブラック及びナノセルロースなどのフィラー、の面積率を決定するために)干渉顕微鏡分析(IFM)を行った。
【0051】
本明細書で使用される場合、特に反対の記載がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数の代替物を含む。したがって、例えば、「ポリマー」又は「分割剤
」への言及は、特に明記しない限り、それぞれ、2つ以上のポリマー又は分割剤の混合物又は組合せを含む。
【0052】
組成物及び方法は、様々な成分又は工程を「含む」という用語で本明細書に記載されているが、組成物及び方法はまた、特に明記しない限り、様々な成分又は工程「から本質的になる」又は「からなる」ことができる。例えば、本発明の態様に一致するナノセルロース分散組成物(NDC)は、(i)分割剤及び(ii)ナノセルロースを含むことができ;あるいは、(i)分割剤及び(ii)ナノセルロースから本質的になることができ;又はあるいは、(i)分割剤及び(ii)ナノセルロースからなることができる。
【0053】
範囲は、本明細書では、ある特定の値から「約」、及び/又は他の特定の値から「約」と表現することができる。このような範囲が表現される場合、他の態様は、ある特定の値から及び/又は他の特定の値まで含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値が他の態様を形成することが理解される。各範囲の終点は、他の終点との関係においても、及び他の端点から独立していても有意であることが更に理解される。また、多くの値が本明細書で開示され、各値はまた、その値自体に加えて、その特定の値について「約」として本明細書で開示されることが理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。また、2つの特定の単位の間の各単位も開示されること理解される。例えば、10と15が開示される場合、11、12、13、14も開示される。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「任意の(optional)」及び「任意に(optionally)」は、その後に説明する事象又は状況が発生し得ること、又は発生し得ないこと、及び説明は事象又は状況が発生する例及び発生しない例を含むことを意味する。
【0055】
開示されるものは、本発明の組成物を調製する方法に使用される成分及び組成物そのものである。これら及び他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの化合物の各様々な個別及び集団の組み合わせ及び配列の特定の言及は明示的に開示することはできないが、各々は本明細書に具体的に熟考され記載されていることが理解される。例えば、特定の化合物が開示され議論されて、当該化合物を含む多数の分子に対して行われ得る多数の変更が議論される場合、特に反対の指示がない限り、化合物及び可能な変更の一つ一つの組み合わせ及び配列が具体的に熟考される。したがって、分子A、B、Cのクラス及び分子D、E、Fのクラスが開示され、組み合わせ分子の一例であるA-Dが開示される場合、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれが個別かつ集合的に熟考されており、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fは開示されていると考えられることを意味する。同様に、これらのいずれかのサブセット又は組み合わせも開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、及びC-Eのサブグループは、開示されていると考えられる。この概念は、本発明の組成物の製造方法及び使用方法における工程を含むが、これらに限定されない本出願の全ての態様に適用される。したがって、実施できる様々な追加工程がある場合、これらの追加工程の各々は、本発明の方法の特定の態様又は態様の組み合わせで実施できることが理解される。
【0056】
簡単に上記で説明したように、本開示は、乾燥時に安定なままでありかつナノセルロース粒子間に間隔を空けて、個々のナノセルロースフィブリル及び/又は結晶間の結合-及び凝集-を防止する分割剤を含む、水性系における個々のフィブリル又は結晶状態で存在するナノセルロースの分割のための方法を提供する。一態様において、本開示は、ナノセルロースを分割する方法を提供し、他の態様において、本開示は、ナノセルロース添加の十分な利益を実現できるように、これらのポリマー及びエラストマーコンパウンド中のナノセルロース分散を改善するために、様々なポリマー及びエラストマーコンパウンドと適合可能であるナノセルロース組成物を提供する。例えば、エラストマー材料におけるナノセルロース分散を改善することの利点としては、トレッドコンパウンドと非トレッドコンパウンドの両方について、タイヤの総合性能に重要であると考えられる、ヒステリシス又は熱蓄積の低下、コンパウンド重量の低下、及びタイヤコンパウンドの他の性能特性を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0057】
本開示のナノセルロースは、結晶形態又はフィブリル形態であるかどうか、及びそれが何らかの他の方法で既に処理又は修飾されているかどうかに係わらず、あらゆるナノセルロースを含むことができることに留意されたい。ナノセルロースの供給源は、木材パルプ又は他のバイオマス材料から作られたかどうか、及びあらゆる工業工程によって作られたものとして、適切な供給源とすることができる。バイオマス繊維は、セルロースナノ結晶(NC)及びセルロースナノフィブリル(NF)を含む様々な形状及び大きさで工業的に抽出することができるセルロース構造構成要素で構成される。さらに、ナノセルロースの特定の大きさ及び形状は、幅及び/又は長さがナノスケールからミクロンスケールまでの範囲であることができる。NFは、典型的に幅5~20nm及び長さ500~2000nmの寸法を有し、セルロースの非晶質ドメイン及び結晶質ドメインの両方を含む。NCは、典型的に5~8nmの幅及び100~300nmの長さを有し、主に結晶性である。これらの範囲及び寸法は典型的であるが、本発明は、粒子形状又は粒子径/寸法に係わらず、全てのNC材料及びNF材料を包含する。
【0058】
ナノセルロースが使用される実質的に全ての非水性系用途において、その分散性の向上、及びこれらの用途に対する有用性及び利点は、本技術の実施における大きな障害となっている。したがって、分散性を向上させ、ナノセルロースをエラストマーコンパウンドなどのポリマーに高分散させる経済的かつ実用的な方法及び工程を見出すことが重要となってきた。後処理技術ではなく、ナノセルロースの乾燥工程自体で又はその前に、分割剤を使用することは、本目標を達成することに役立つことができる。
【0059】
ナノセルロース分散の改善に関しては、様々な化学的表面改質への取り組みが乾燥後に試みられており、幾つかは最終的に成功したものがあるが、これらは通常、商業量へのスケールアップが困難であることが判明し、非経済的である、極端な手段を必要とする。概して、これらの方法は、ナノセルロースの不可逆的な粒子間結合を防止するために実験室で確立された方法である、ナノセルロースの凍結乾燥(フリーズドライ)に基づく。凍結乾燥は、ナノセルロースの商業生産には経済的でなく、スケールアップも不可能である。
【0060】
したがって、より簡単で経済的な方法が望まれる。このように、乾燥前又は乾燥中にナノセルロース間の結合を防ぐためにナノセルロースを分割する方法が提供され、その結果、プラスチック及びエラストマーなどのポリマー中のナノセルロース分散が改善される。
【0061】
ナノセルロース分散組成物
ナノセルロースは、例えば、化学的手段、機械的手段、又は化学的手段と機械的手段の組み合わせを使用して、バイオマスをサブミクロンセルロースナノフィブリル又はナノ結晶に分解することによって製造することができる。例えば、細菌ナノセルロース及び被嚢類ナノセルロースなどの、ナノセルロースを提供する他の方法も利用可能である。典型的に、ナノセルロースの製造は、2つの初期段階で行われる。第1段階は、リグニン、ヘミセルロース、抽出物、及び無機汚染物質など、バイオマス中の非セルロース成分の殆どを除去するためのバイオマスの精製である。これは、典型的に従来のパルピング及び漂白によって行われる。セルロースナノフィブリルを製造する場合、第2段階は、典型的に精製されたバイオマス繊維の機械的精製を伴う。セルロースナノ結晶の場合、第2段階は、典型的に精製繊維の酸加水分解とそれに続く高剪断機械処理を伴う。汎用性の高いAVAP(登録商標)法などの新しい製造方法では、SO及びエタノール(度数は異なる)を使用したバイオマスの化学的分別とそれに続く機械処理によって、セルロースナノ結晶又はセルロースナノフィブリルのいずれかを製造することができる。ナノセルロースの種類に関わらず、最終的な機械的処理段階の後、ナノセルロースは、閾値濃度(典型的に2wt%より大きい固形分)を超えて安定したゲルとして水溶液中に多くの場合懸濁している。乾燥して水を除去すると、ナノセルロース粒子は、通常、不可逆的に結合して凝集するため、結果としてポリマー系への分散が悪くなる。
【0062】
乾燥中にナノセルロースがそれ自体に結合することを低減又は防止するために、本明細書に記載するように、分割剤を、水性ナノセルロース分散体に添加することができ、その分割剤はナノセルロースの表面と十分に相互作用し、及び/又はナノセルロース粒子間に均一に分布して、ナノセルロースの凝集を低減又は防止する。
【0063】
ポリマーへの分散性を改善するために水性系でナノセルロースを分割する第1方法は、(a)ナノセルロースの水性分散体を分割剤と組み合わせて混合物を形成すること、及び(b)混合物を乾燥させてナノセルロース分散組成物(NDC)を形成すること、を含むことができる。水性系中のナノセルロースを分割剤で分割する第2方法は、(A)ナノセルロースの水性分散体を分割剤と組み合わせて混合物を形成すること、及び(B)混合物を乾燥させてナノセルロース分散組成物(NDC)を形成すること、を含むことができる。分割剤は、NDC中で安定化することができ、ナノセルロース粒子間に間隔を空けて、NDC中のナノセルロース粒子の凝集を低減又は防止することができる。本明細書に開示されるいずれかの方法によって製造されるナノセルロース分散組成物もまた、本発明に包含される。ナノセルロース分散組成物(NDC)は、少なくとも、分割剤及びナノセルロースを含むことができ-分割剤は、カーボンブラックフィラー、エラストマーラテックス、又はワックス、及びこれらの材料のいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0064】
第1方法及び第2方法の工程(a)及び工程(A)において、ナノセルロースの水性分散体は、分割剤と組み合わせて混合物を形成することができる。ナノセルロースの水性分散体は、適切な量のナノセルロースを含むことができるが、概ね、少なくとも約2wt%の固形分及び最大10wt%の固形分(例えば、約2wt%~約5wt%の固形分)である。
【0065】
適切な容器及び条件を、水性ナノセルロース分散体と分割剤とを組み合わせるために使用することができ、このようなことは、バッチ式で又は連続的に達成することができる。例として、ナノセルロース分散体及び分割剤は、大気圧下、任意に撹拌又は混合しながら、適切な温度、多くの場合、約15℃~約60℃の範囲で、適切な容器(例えば、タンク)内で組み合わせることができる。
【0066】
ナノセルロースに対して使用する分割剤の量は、特に限定されないが、ナノセルロース分散組成物中の分割剤とナノセルロースの重量比は、約0.1:1~約25:1の範囲にわたることが多い。幾つかの態様において、ナノセルロースに対する分割剤の重量比は、約0.1:1~約10:1、約0.1:1~約5:1、約0.1:1~約2:1、約0.1:1~約1:1、約0.25:1~約25:1、約0.25:1~約15:1、約0.3:1~約10:1、約0.5:1~約25:1、約0.7:1~約15:1、約0.75:1~約15:1、約1:1~約10:1、約1.2:1~約12:1、約1.8:1~約8:1、約1.5:1~約10:1、約4:1~約15:1、又は約0.1:1、0.25:1、0.4:1、0.6:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.4:1、1.6:1、1.8:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1若しくは25:1の範囲に収まる。複数の分割剤を使用する場合、分割剤の総量で重量比を決定する。
【0067】
水性ナノセルロース分散体又はナノセルロース分散組成物(NDC)において、ナノセルロースの種類も、特に限定されない。一態様において、例えば、ナノセルロースは、ナノセルロース結晶(NC)、ナノセルロースフィブリル(NF)、又はこれらの組み合わせを含むことができる。ナノセルロースは、表面リグニンとして、及び/又はバルク粒子に含まれるリグニンとして、リグニンを更に含んでよい。他の態様において、ナノセルロースは、リグニン被覆ナノセルロース結晶(LCNC)、リグニン被覆ナノセルロースフィブリル(LCNF)、又はこれらの組み合わせを含むことができる。概して、これらのリグニン被覆材料は、より疎水性である。さらに他の態様において、ナノセルロースは、親水性セルロースナノセルロース結晶(CNC)、親水性セルロースナノセルロースフィブリル(CNF)、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0068】
典型的に、適切な分割剤は、ポリマー(例えば、エラストマー、タイヤ配合物)と適合し、NDCにおけるナノセルロースの凝集を低減し、ポリマー配合物における凝集を低減することができる。多くの場合、ナノセルロース分散組成物中の分割剤、又はナノセルロース分散組成物を形成するために使用される分割剤は、カーボンブラックフィラー、エラストマーラテックス、ワックス、又はこれらのいずれかの組合せを含むことができる。いずれかの適切なゴムラテックスを使用することができ、その実例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR)などを挙げることができるが、これらに限定されない。2つ以上のゴムラテックス材料の混合物又は組合せを使用することができる。
【0069】
ワックス成分としては、非分岐アルカンパラフィンワックス、分岐パラフィンワックス及びセレシンワックスを含むマイクロクリスタリンワックス(天然鉱物、石油精製又はリグニン精製のいずれか)、ポリエチレンワックス、官能化ポリエチレンワックスなど、又はこれらのいずれかの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明のカーボンブラックは、存在する場合、採用されるNDC及び/又はエラストマー材料と共に使用することに適したカーボンブラックを含むことができる。一態様において、カーボンブラックは、ファーネスカーボンブラックを含む(又はファーネスカーボンブラックから本質的になる、又はファーネスカーボンブラックからなる)ことができる。 さらに又はあるいは、カーボンブラックは、酸化されたファーネスカーボンブラックなどの、表面改質されたファーネスカーボンブラックを含む(又はファーネスカーボンブラックから本質的になる、又はファーネスカーボンブラックからなる)ことができる。他の態様において、カーボンブラックは、ゴム、例えば、タイヤにおける使用に適したカーボンブラックを含むことができる。他の態様において、カーボンブラックは、タイヤトレッド又はタイヤカーカスにおける使用に適したカーボンブラックを含むことができる。種々な態様において、カーボンブラックは、N900シリーズカーボンブラック、N800シリーズカーボンブラック、N700シリーズカーボンブラック、N600シリーズカーボンブラック、N500シリーズカーボンブラック、N400シリーズカーボンブラック、N300シリーズカーボンブラック、N200シリーズカーボンブラック、N100シリーズカーボンブラック、又はこれらの混合物を含むことができる。本発明において有用であり得る例示的なカーボンブラックの様々な物理的特性を、以下に列挙する。これらの値及び範囲は、本質的に例示的なものであることを意図しており、本発明はいかなる特定の範囲、値、又は組み合わせにも限定されないことを理解されたい。
【0071】
カーボンブラックは、例えば、ASTM法D6556-14によって決定される、約8m/g~約140m/g;約20m/g~約140m/g;約45m/g~約140m/g;約60m/g~約140m/g;約90m/g~約140m/g;約95m/g~約135m/g;約100m/g~約130m/g;約105m/g~約125m/g;約110m/g~約125m/g;約115m/g~約125m/g;約110m/g~約120m/g;約115m/g~約120m/g;約115m/g~121m/g;又は約116m/g~約120m/gの窒素表面積を有することができる。他の態様において、カーボンブラックは、約90m/g、約92m/g、約94m/g、約96m/g、約98m/g、約100m/g、約102m/g、約104m/g、約106m/g、約108m/g、約110m/g、約112m/g、約114m/g、約116m/g、約118m/g、約120m/g、約122m/g、約124m/g、約126m/g、約128m/g、約130m/g、約132m/g、約134m/g、約136m/g、約138m/g、又は約140m/gの窒素表面積を有することができる。別の態様において、カーボンブラックは、約8m/g、約10m/g、約12m/g、約14m/g、約16m/g、約18m/g、約20m/g、約22m/g、約24m/g、約26m/g、約28m/g、約30m/g、約35m/g、約40m/g、約45m/g、約50m/g、約55m/g、約60m/g、約65m/g、約70m/g、約75m/g、約80m/g、約85m/g、約90m/g、約95m/g、約100m/g、約105m/g、約110m/g、約115m/g、約120m/g、約125m/g、約130m/g、約135m/g、又は約140m/gの窒素表面積を有することができる。更に他の態様において、カーボンブラックは、約118m/gの窒素表面積を有することができる。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、本明細書に具体的に列挙されたいずれかの値よりも大きい又は小さい窒素表面積を有することができ、本発明は、いかなる特定の窒素表面積値に限定されることを意図するものではない。
【0072】
カーボンブラックは、統計的厚み法(STSA、ASTM D6556-14)に基づく、約8m/g~約125m/g;約20m/g~約125m/g;約45m/g~約125m/g;約60m/g~約125m/g;約80m/g~約125m/g;約85m/g~約120m/g;約90m/g~約115m/g;約95m/g~約110m/g;約95m/g~約105m/g;約98m/g~約104m/g;又は約99m/g~約103m/gの外部表面積を有することができる。他の態様において、カーボンブラックは、約101m/gの外部表面積を有することができる。他の態様において、カーボンブラックは、統計的厚み法に基づく、約8m/g、約10m/g、約12m/g、約14m/g、約16m/g、約18m/g、約20m/g、約22m/g、約24m/g、約26m/g、約28m/g、約30m/g、約35m/g、約40m/g、約45m/g、約50m/g、約55m/g、約60m/g、約65m/g、約70m/g、約75m/g、約80m/g、約85m/g、約90m/g、約95m/g、約100m/g、約105m/g、約110m/g、約115m/g、約120m/g又は約125m/gの外部表面積を有することができる。様々な態様において、カーボンブラックの外部表面積は、ゴムコンパウンドが使用可能な特定の表面積である。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、本明細書に具体的に列挙されたいずれかの値よりも大きい又は小さい外部表面積を有することができ、本発明は、いかなる特定の外部表面積値に限定されることを意図するものではない。
【0073】
本発明のカーボンブラック-ファーネスカーボンブラックなど-は、例えば、試験法A又は試験法Bのいずれかを使用してASTM法D1512-15で測定したpHが、約2.5~約9、約2.5~約7、又は約4~約7を有することができる。一態様において、カーボンブラックは、概ねpHが約2.5~約4、あるいは約2.8~約3.6、あるいは約3~約3.4;又はあるいは約3.2である、酸化されたカーボンブラックであり得る。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、本明細書に具体的に列挙されたいずれかの値よりも大きい又は小さいpHを有することができ、本発明は、いかなる特定のpH値に限定されることを意図するものではない。
【0074】
本発明のカーボンブラックは、例えば、ASTM方法D6086-09aによって決定される、約55cm/100g~約67cm/100g(50GM);約60cm/100g~約65cm/100g(50GM);約25cm/100g~約60cm/100g;約30cm/100g~60cm/100g;約35cm/100g~60cm/100g;約40cm/100g~60cm/100g;約45cm/100g~60cm/100g;約50cm/100g~約60cm/100g(75GM);約53cm/100g~約58cm/100g(75GM);約45cm/100g~約55cm/100g(100GM);又は約47cm/100g~約53cm/100g(100GM)の空隙容積を有することができる。他の態様において、カーボンブラックは、約62.2cm/100gの50GM空隙容積、約55.3cm/100gの75GM空隙容積、及び/又は約50.4cm/100gの100GM空隙容積を有することができる。他の態様において、本発明のカーボンブラックの空隙容積は、本明細書に具体的に列挙されたいずれかの値よりも大きくても小さくてもよく、本発明は、いかなる特定の空隙容積に限定されることを意図するものではない。
【0075】
本発明のカーボンブラックは、例えば、ASTM方法D1509-15によって測定される、約2.5wt%~約4.5wt%、約3wt%~約4wt%、又は約3.2wt%~約3.8wt%の水分含有量を有することができる。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、約3.5wt%の水分含有量を有することができる。カーボンブラック材料の水分含有量は、例えば、環境及び/又は貯蔵条件に応じて変化できること、及びこのように、カーボンブラックの所定の試料の特定の水分含有量は、変化できることを理解されたい。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、本明細書に具体的に列挙されたいずれかの値よりも大きい又は小さい水分含有量を有することができ、本発明は、いかなる特定の水分含有量値に限定されることを意図するものではない。
【0076】
一態様において、本発明のカーボンブラックは、酸化されたファーネスカーボンブラックなどの酸化されたカーボンブラックである。例えば、オゾン処理などのカーボンブラックを酸化させるための様々な方法が存在し、カーボンブラックを酸化させる特定の方法は、複数の所望の酸素含有官能基がカーボンブラックの表面に存在することを条件とすれば、様々な方法が可能である。酸化されたカーボンブラックの表面に存在し得る典型的な酸素含有官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フェノール類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、キノン類及びヒドロキノン類を挙げることができる。様々な態様において、酸化されたカーボンブラックの表面に存在する官能基の量及び種類は、酸化処理の強度及び種類に応じて変化することができる。一態様において、カーボンブラックは、オゾンによる処理によって酸化されている。
【0077】
本発明のカーボンブラックは、約0.5wt%~約6.5wt%;約1wt%~約6.5wt%;約1.5wt%~約6.5wt%;約2wt%~約6.5wt%;約2.5wt%~約6.5wt%;約3wt%~約6.5wt%;約3.5wt%~約6.5wt%;約4wt%~約6.5wt%;約4.5wt%~約6.5wt%;約5wt%~約6wt%又は約5.2wt%~約5.8wt%の揮発性成分含有量を有することができる。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、少なくとも約4.5wt%、少なくとも約5wt%、少なくとも約5.5wt%、又はそれ以上の揮発性成分含有量を有することができる。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、約5.5wt%の揮発性成分含有量を有することができる。更に他の態様において、カーボンブラックの揮発性成分含有量は、本明細書に具体的に列挙されたいずれかの値よりも大きくても小さくてもよく、本発明は、いかなる特定の揮発性成分値に限定されることを意図するものではない。
【0078】
本発明のカーボンブラックは、約0.25wt%~約5.5wt%;約0.5wt%~約5.5wt%;約1wt%~約5.5wt%;約1.5wt%~約5.5wt%;約2wt%~約5.5wt%;約2.5wt%~約5.5wt%;約3wt%~約5wt%;約3.5wt%~約4.5wt%;又は約3.7wt%~約4.3wt%の酸素含有量を有することができる。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、少なくとも約3.5wt%、少なくとも約4wt%、又はそれ以上の酸素含有量を有することができる。他の態様において、本発明のカーボンブラックは、約4wt%の酸素含有量を有することができる。更に他の態様において、カーボンブラックの酸素含有量は、本明細書に具体的に列挙されたいずれかの値よりも大きくても小さくてもよく、本発明は、いかなる特定の酸素含有量値に限定されることを意図するものではない。
【0079】
任意に、炭化水素油は、分割剤と共に使用することができる。例えば、工程(a)又は工程(A)において、ナノセルロースの水性分散体は、分割剤及び炭化水素油と組み合わせて、混合物を形成することができる。炭化水素油は、一態様において、脂肪族炭化水素を含むことができ、一方で、他の態様において、炭化水素油は、芳香族炭化水素を含むことができる。さらに、他の態様において、炭化水素油は、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素の混合物又は組み合わせを含むことができる。適切な脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素を使用することができるが、炭化水素は、水性ナノセルロース分散体及び分割剤を組み合わせる条件下では、液相であることが有益である。分割剤として使用することができる適切な炭化水素油の例示的かつ非限定的な例は、処理された留出芳香族抽出物(TDAE)油である。
【0080】
任意に、水性ナノセルロース分散体、分割剤、及び任意の炭化水素油は、個々の成分の均一な分布を確実にするために高剪断下で混合することができる。高剪断混合技術としては、均質化、シグマブレード混合、ローターステーター混合、及び静的インライン混合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
第1方法及び第2方法の工程(b)及び工程(B)において、混合物を乾燥させて、ナノセルロース分散組成物(NDC)を形成することができる。あらゆる適切な装置及び乾燥技術を使用することができる。一態様において、水性混合物は、適切な乾燥工程に曝して、水を除去することができる。乾燥技術としては、蒸発、噴霧乾燥、凍結乾燥、スピンフラッシュ乾燥、高剪断混合、乾燥、及びドラム乾燥を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。結果として得られるナノセルロース分散組成物-分割剤及びナノセルロースを含む-は、概ね1.5wt%未満の水/水分を含む。
【0082】
乾燥工程中及び乾燥状態において、1つ又は複数のカップリング化学物質をNDC組成物に任意に導入して、例えば、ナノセルロースの表面を改質し、NDCを使用して調製したゴムコンパウンドの加硫中に、セルロース表面とゴムマトリックスのその後のカップリングを可能にすることができる。カップリング剤は当業者によく知られており、様々な態様において、例えば、3,3’-ビス-(トリエトキシシリルプロピル)-テトラスルフィドなどの一般的な二官能性含硫カップリングシランを含む、メルカプト、アルコキシ、ビニル、アミノ、及びメタクリロキシ化学に基づく単官能性シラン及び/又は二官能性シランを挙げることができる。
【0083】
有益に、(i)分割剤及び(ii)ナノセルロースを含むことができるナノセルロース分散組成物(NDC)は、干渉顕微鏡法(IFM)で測定したときに、ポリマー配合物におけるナノセルロース分散性が分割剤を含まないナノセルロース分散性よりも、典型的に25%超、又は50%超優れている。例えば、IFMによる(面積ベースの)未分散材料の量が、分割剤を含まないナノセルロースに対して12%であった場合、25%の改善では、未分散材料の面積率が9%となり、50%の改善では、未分散材料の面積率が6%となる。
【0084】
タイヤ組成物及びその製造物品
本発明は、幾つかの変形において、本明細書に開示されるナノセルロース分散組成物(及び、分割剤及びナノセルロースの相対量、分割剤の種類、及びナノセルロースの種類などの、それぞれの特性又は特徴)のいずれかを含む組成物、配合物、及び製造物品にも向けられ、これらを包含する。本発明の特定の態様において、タイヤ組成物が開示され、この態様において、タイヤ組成物は、適切なポリマー(1つ又は2つ以上)、本明細書に開示されるナノセルロース分散組成物のいずれか、及びカーボンブラック添加剤を含むことができる。タイヤ組成物は、多くの場合、タイヤ配合物、又はタイヤコンパウンドなどとして称することができる。
【0085】
タイヤ組成物に使用されるナノセルロース分散組成物の量は特に限定されないが、ポリマーとナノセルロース分散組成物(ポリマー:NDC)との重量比は、多くの場合、約100:1~約1:1、約80:1~約10:1、約75:1~約2:1、約60:1~約5:1、約50:1~約1:1、約40:1~約4:1、約75:1~約25:1、約90:1~約15:1、又は約100:1、約98:1、約96:1、約94:1、約92:1、約90:1、約85:1、約80:1、約75:1、約70:1、約65:1、約60:1、約55:1、約50:1、約45:1、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、約8:1、約6:1、約4:1、約2:1、又は約1:1の範囲にわたる。幾つかの態様において、ポリマー:NDCの重量比は、約75:1~約1.5:1、又は約50:1~約2:1の範囲に入ることができる。
【0086】
一態様において、タイヤ組成物中のポリマーは、熱可塑性ポリマーを含むことができ、一方で、他の態様において、ポリマーは、熱硬化性ポリマーを含むことができる。他の態様において、ポリマーは、単独で又はいずれかの組み合わせで、エポキシ、アクリル、エステル、ウレタン、シリコーン、及び/又はフェノール類を含むことができる。更に他の態様において、ポリマーは、単独で又はいずれかの組み合わせで、ポリエチレン(例えば、エチレンホモポリマー又はエチレン系コポリマー)、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル(EVA)コポリマー、及び/又はポリオレフィン-スチレン(例えば、エチレン-スチレン)を含むことができる。
【0087】
他の態様において、タイヤ配合物/組成物/コンパウンドに使用されるポリマーは、単独で又はいずれかの組み合わせで、適切なゴム又はエラストマーを含むことができ、非限定的な例としては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、合成シス-ポリイソプレン(IR)、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR)、溶液スチレンブタジエンゴム(SSBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR/CIIR/BIIR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルエラストマー(NBR)、水素化ニトリルエラストマー(HNBR)、カルボキシル化ニトリルエラストマー(XNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM/EPDM)、フルオロエラストマー(FPM/FKM)、ポリウレタンゴム(AU/EU/PU)など、及びこれらのいずれかの組合せを挙げることができる。
【0088】
タイヤ組成物中に存在するカーボンブラックの総量は、特に限定されないが、典型的に、約20~約150phrの範囲である。これは、配合物中に存在するカーボンブラック添加剤だけでなく、NDC中に存在するカーボンブラックフィラーも包含する。一態様において、例えば、カーボンブラックの総量は、約25~約125phr、他の態様において約30~約100phr、更に他の態様において約35~約85phr、及び更に他の態様において約40~約80phrの範囲とすることができる。他の態様において、カーボンブラックの総量は、本明細書に具体的に列挙された最小カーボンブラック含有量から最大カーボンブラック含有量までの範囲とすることができ、本発明は、カーボンブラックのいかなる特定のphr量に限定されることを意図するものではない。
【0089】
同様に、タイヤ組成物中のナノセルロースの総量は、特に限定されないが、典型的に、約1~約15phrの範囲である。幾つかの態様において、ナノセルロースの量は、約1~約10phr、約1~約8phr、約1~約7phr、又は約1~約6phrの範囲とすることができ、一方で、他の態様において、ナノセルロースの量は、約2~約15phr、約2~約10hr、約2~約7.5phr、又は約2~約5phrの範囲とすることができる。さらに、ナノセルロースの量は、本明細書に具体的に列挙された最小ナノセルロース含有量から最大ナノセルロース含有量までの範囲とすることができ、本発明は、ナノセルロースのいかなる特定のphr量に限定されることを意図するものではない。
【0090】
同様に、タイヤ組成物中に存在する炭化水素油(例えば、TDAE油)の総量は、特に限定されないが、典型的に、約1~約15phrの範囲である。これは、配合物中に存在する炭化水素油だけでなく、NDC中に存在する炭化水素油も包含する。一態様において、例えば、炭化水素油の総量は、約2~約12phr、別の態様では約2~約10phr、更に他の態様において約3~約9phr、及び更に他の態様において約4~約8phrの範囲とすることができる。他の態様において、炭化水素油の総量は、本明細書に具体的に列挙された最小炭化水素油含有量から最大炭化水素油含有量までの範囲とすることができ、本発明は、TDAEなどの炭化水素油のいかなる特定のphr量に限定されることを意図するものではない。
【0091】
有益に、開示されたタイヤ組成物-適切なゴム又はエラストマーなどのポリマー、分割剤及びナノセルロースを含むナノセルロース分散組成物(NDC)、及びカーボンブラック添加剤を含む-は、カーボンブラック添加剤及びナノセルロースの両方の分散に優れている。一態様において、例えば、本明細書に開示されるタイヤ組成物は、干渉顕微鏡法(IFM)によって決定される、約8%以下、約6%以下、約4%以下、約3%以下、又は約2%以下の未分散材料の面積率によって特徴付けることができる。さらに又はあるいは、本明細書に開示されるタイヤ組成物は、干渉顕微鏡法(IFM)によって決定される、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、又は少なくとも約98%の分散指数によって特徴付けることができる。
【0092】
予想外に、NDCを含むタイヤ組成物は、NDCを含まない類似のタイヤ配合物に匹敵する疲労寿命値を有する。例えば、タイヤ組成物は、少なくとも約300,000サイクル、少なくとも約325,000サイクル、少なくとも約350,000サイクル、少なくとも約375,000サイクル、又は少なくとも約400,000サイクルの100%引張歪みにおける疲労寿命(ASTM D4482)によって特徴付けることができる。
【0093】
一態様において、開示されたタイヤ組成物(NDCによるナノセルロースを含む)のtanδMAX(60℃)は、同等の総フィラー充填量で、NDC(又はナノセルロース)を含まない、他の同等のタイヤ組成物のtanδMAX以下であることができる。他の態様において、10phrのN234がLCNFと置換されたN234ベースのタイヤ組成物(50phrのN234)のtanδMAXは、10phrのN234がN660と置換された他の同一の組成物のものと同等であることができる。例えば、40phrのN234及び10phrのLCNFを有するタイヤ組成物のtanδMAXは、40phrのN234及び10phrのN660を含む他の同一の組成物のものと類似してよく、これらは両方とも50phrのN234を含む他の同等の組成物のものより低いtanδMAXを有してよい。
【0094】
製造物品は、本発明のタイヤ配合物(タイヤ組成物、タイヤコンパウンド)から形成することができ、及び/又はタイヤ配合物を含むことができ、したがって、本明細書に包含される。例えば、本発明の配合物を含むことができる物品としては、空気入りタイヤ、乗用車用タイヤ、トラック及びバス用ラジアル(TBR)タイヤ、又はタイヤトレッドなどを挙げることができるが、これらに限定されない。一態様において、本明細書に記載される組成物のいずれかを、1つ又は複数のタイヤコンパウンドに使用することができる。様々な態様において、このようなタイヤコンパウンドは、未硬化エラストマーコンパウンド又は硬化エラストマーコンパウンドであってよい。他の態様において、本明細書に記載の組成物のいずれかを、例えば、タイヤトレッド、サイドウォール、サブトレッド、ビード、インナーライナーなどを含む、タイヤの1つ以上の部品で使用することができる。更なる態様において、このようなタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック又はバス用ラジアルタイヤ、又は本明細書に記載の組成物を含むことに適した他のタイヤを含むことができる。本明細書に記載される組成物の個々の成分は、このような配合物の1つ又は複数の従来の成分に加えて、又はその代わりに、エラストマー配合物に添加できることを理解されたい。また、組成物のこのような個々の成分は、従来のエラストマー配合物の他の成分と相互作用することができることを理解されたい。
【実施例
【0095】
本発明は、以下の実施例によって更に説明されるが、実施例は、本発明の範囲に制限を課すものとしていかなる方法でも解釈されるべきではない。様々な他の態様、実施形態、変更、及びその同等物を、本明細書の説明を読み取った後、本発明の精神又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆することができる。
【0096】
さらに、これらの例は、決して、ポリマー配合物に使用するためのナノセルロース分散組成物を調製するために使用され得る、利用可能な分割剤又は利用可能なナノセルロース材料の範囲(scope)又は範囲(range)を制限すべきではなく、分割剤及びナノセルロースを高分散性NDCへと組み合わせることの概念を示す目的のための例として説明されているに過ぎない。
【0097】
これらの実施例におけるナノセルロース結晶又はナノセルロースフィブリルは、上記で説明したAVAP(登録商標)法、及びフィブリル又は結晶の表面にリグニンを堆積させて疎水性を高め、ポリマー及びエラストマーとの相溶性を高める独自の方法を使用して製造した。
【0098】
実施例1において、参照カーボンブラックグレードであるN234を使用して、モデル乗用車用タイヤトレッドコンパウンドを混合した。このコンパウンドは、典型的なカーボンブラック分散レベルを示すための参照として含まれる。N234は、このコンパウンド中のフィラーの100%を構成し、これはコンパウンド配合物中の75phrに相当する。代表的なコンパウンド配合物の詳細な説明(phrの値)及び標準的な混合手順を、表1-2に纏めている。図1A及び図1BのSEM画像に示されるように、N234カーボンブラックは、優れた分散性を有した。図1Aは、レザーカットコンパウンド表面の後方散乱電子画像であり、図1Bは、同じ領域の二次電子画像である。干渉顕微鏡法(IFM)で定量した分散度は、概ね分散指数98~100%の範囲にあり、未分散のカーボンブラックの面積率は、0.8%であった。
【0099】
実施例2は、実施例1と同じ混合手順を使用して製造したが、N234のごく一部(6.7wt%)を乾燥したリグニン被覆ナノセルロースフィブリル(LCNF)に置換された。LCNFは総フィラー充填量の6.7wt%を含み、これはコンパウンド配合物の5phrに相当する。残りのフィラー充填量は、N234(93.3wt%)を含んでおり、これはコンパウンド配合物の70phrに相当する。図2A及び2Bは、後方散乱SEM画像(図2A)及び二次SEM画像(図2B)により、コンパウンド断面全体にナノセルロースフィブリルの大きな凝集体があるため、ナノセルロースの分散が非常に悪かったことを実証する。未分散材料の面積率は、干渉顕微鏡(IFM)で定量化され、9.11%であった。
【0100】
実施例3は、実施例2と同じ手順を使用して製造した。実施例2のように乾燥した独立型のLCNFを添加する代わりに、実施例3では、表面改質されたカーボンブラック(SMCB、N234)で処理したLCNFを分割剤として含むNDC、及びTDAE油並びに天然ゴムラテックスを使用した。LCNF:SMCB:TDAE油:NRラテックスの重量比は、1:1:1:1であった。NDCは、ナノセルロースの水性分散体をSMCB、TDAE油及びNRラテックスと混合し、次いで高剪断均質化し、水が1.5wt%未満となるように乾燥させることによって調製された。NDCの総充填量は20phrであり、最終コンパウンドに添加されたLCNFは、総フィラー充填量に対して6.7wt%であり、これは、コンパウンド配合物における5phrに相当する。
【0101】
図3A及び3Bは、ゴムコンパウンドミキサーにLCNF/SMCB/TDAE/NR NDCを添加した際に達成されたナノセルロース分散体を示す。図3Aは、レザーカットコンパウンド表面の後方散乱電子画像であり、図3Bは、同じ領域の二次電子画像である。未分散材料の面積率は2.78%(IFMにより定量化)であり、実施例2(図2A及び図2B)よりも大幅に改善されており、断面内に存在するナノセルロース凝集体は、より少なく、より小さい。当該分散性は、実施例1のN234カーボンブラックの分散性(図1A及び1B)とより類似しており、未分散領域がわずかに存在する。
【0102】
実施例4において、基準カーボンブラックグレードであるN234を使用して、モデルトラックのタイヤトレッドコンパウンドを混合した。このコンパウンドは、典型的なカーボンブラック分散レベルを示すための参照として含まれる。N234は、このコンパウンド中のフィラーの100%を含み、これは、コンパウンド配合物中の50phrに相当する。代表的なコンパウンド配合物の詳細な説明(phrの値)及び標準的な混合手順を表1及び3に纏めている。図4A及び4Bに示されるように、N234カーボンブラックは、優れた分散性を有した。図4Aは、レザーカットコンパウンド表面の後方散乱電子画像であり、図4Bは、同じ領域の二次電子画像である。干渉顕微鏡法(IFM)で定量化した分散度は、概ね分散指数98~100%の範囲にあり、未分散のカーボンブラックの面積率は0.15%であった。
【0103】
実施例5は、実施例4と同じ混合手順を使用して製造したが、N234のごく一部(10wt%)を乾燥したリグニン被覆ナノセルロースフィブリル(LCNF)に置換された。LCNFは、総フィラー充填量の10wt%を含み、これは、コンパウンド配合物中の5phrに相当する。残りのフィラー充填量は、N234(90wt%)を含み、これは、コンパウンド配合物の45phrに相当する。図5A及び5Bは、後方散乱SEM画像(図5A)及び二次SEM画像(図5B)により、コンパウンド断面全体にナノセルロースフィブリルの大きな凝集体があるため、ナノセルロースの分散が非常に悪かったことを実証する。未分散材料の面積率は、干渉顕微鏡(IFM)で定量化され、11.52%であった。
【0104】
実施例6は、実施例1と同じ混合手順を使用して製造した。実施例5のように乾燥した独立型のLCNFを添加する代わりに、実施例6では、実施例3と同一のNDCを使用した。この特定の例において、NRラテックスは、トラックトレッドのレシピで共通の材料であるため、NDCに使用されたが、他のラテックスエラストマー材料を使用してよい。LCNF:SMCB:TDAE油:NRの重量比は、1:1:1:1であった。NDCは、実施例3と同様の方法で調製した。NDCの総充填量は20phrであり、最終的なコンパウンドに添加されたLCNFは総フィラー充填量の10wt%であり、これは、コンパウンド配合物中の5phrに相当する。図6A及び6Bは、ゴムコンパウンドにLCNF/SMCB/TDAE/NR NDCを添加した際に達成されたナノセルロース分散体を示す。図6Aは、レザーカットコンパウンド表面の後方散乱電子画像であり、図6Bは、同じ領域の二次電子画像である。未分散材料の面積率は、IFMによって定量化されたように2.44%であり、実施例5(図5A及び5B)と比較して大幅に改善されている。SEM断面における少数の未分散領域は、図5A及び5Bのものよりも著しく小さいことに留意されたい。このコンパウンドにおけるナノセルロースの測定された分散レベルは、実施例4のものと同様である。
【0105】
実施例7~11において、表4に纏めたように、参照カーボンブラックグレードであるN234、及びLCNFの有無に関わらず、モデルTBR(トラック及びバス用ラジアル)タイヤトレッドコンパウンドを製造した。実施例7は、典型的なカーボンブラック性能を示すための参照配合物であり、N234はフィラーの100%を含み、これは、コンパウンド配合物中の50phrに相当する。実施例8は、実施例7よりも2.5phr少ないカーボンブラックを含み、実施例9は、実施例7よりも5phr少ないカーボンブラックを含んだ。実施例10-11では、カーボンブラックの一部をLCNFで置換したが、実施例3及び実施例6に記載の同じNDCを使用した。LCNFの量は、実施例10では2.5phrであり、実施例11では5phrであった。標準的な混合手順は、表5及び6に纏められている。実施例7-11は、代表的なTBRタイヤトレッド配合物を利用するが、開示されたNDCは、適切なエラストマーを使用して、様々な非トレッド配合物(例えば、サイドウォール、サブトレッド、ビード/エイペックスなど)に組み込むことができる。
【0106】
剪断により、LCNFは典型的に粉砕方向に配列するため、ポリマー配合物及びLCNF分散体の特性は、例えば、目に沿った又は目に逆らった方向に基づいて変化する可能性がある。カーボンブラックの分散に関して、ASTM D3053では、マクロ分散を概ね2μmから100μmのスケールでコンパウンドへのフィラーの分布の度合いとして規定する。マクロ分散は、IFM(干渉顕微鏡法、ASTM D2663 Method D)により分析することができ、IFMで表面粗さを測定して、少なくとも5μmの直径を有するフィラーのマクロ分散を定量化する。この試験法はカーボンブラック用に開発されたが、分析データは、LCNFのマクロ分散を評価するために使用することができる。実施例7-11の分散結果を、目に沿ったスキャン及び目に逆らったスキャンについて表7に纏めた。IFMによるマクロ分散は、カーボンブラックについて較正される一方で、表7のデータは、未分散フィラー量の相対的な変化を推定するために使用することができる。面積率の測定は、未分散フィラーの量を最も正確に表すと考えられている。実施例11は、5phrのLCNFを含み、実施例11の未分散フィラーの面積率(目に沿って0.51、目に逆らって0.83)が、カーボンブラックのみを含む実施例7-9のものと同様であるという、予想外に良好な分散結果を得た。
【0107】
図7A-7Cは、実施例11におけるN234カーボンブラック及びLCNFの両方の優れた分散性を示す、目に沿ったレザーカット表面の後方散乱SEM画像である。配列された離散的な繊維の証拠が、高倍率で示され、全体的に予想外に良好なマクロ分散が、全ての倍率で示される。図8A及び8Bは、目に逆らったレザーカット表面の後方散乱SEM画像における実施例11の同様の結果を示す。
【0108】
図9-25は、実施例7-11のそれぞれのカーボンブラック配合物の様々な特性を比較する。T90硬化時間は、図9に示されるように、実施例10-11におけるLCNFの存在によって影響を受けなかったが、スコーチタイムは、図10に示されるように、実施例10-11について同等からわずかに長かった。図11は、LCNFを含むNDCを使用した実施例10-11の配合物について、わずかなムーニー粘度の減少を実証する。図12のショアA硬度は、N234カーボンブラックの除去により低下し、LCNFの添加によりわずかに増加した。
【0109】
LCNFの高アスペクト比及び異方性のために、応力-歪み挙動は、目に沿った又は目に逆らった試験に基づいて異なる結果を示した。図13は、100%、200%、及び300%伸長における実施例7-11の5つの試験の中央値についての静的弾性率を説明する。概して、カーボンブラックの除去は、低い弾性率をもたらし、LCNFの添加は、弾性率の増加をもたらした(特に、中程度の歪みにおいて)。LCNFの添加による高い歪み弾性率の著しい減少はなかった。同様に、図14は、実施例7及び11の引張応力比較において同様の結果を示し、LCNF配合物は、中程度の歪み剛性(及びこれは潜在的なタイヤハンドリングの利点に変換され得る)及び同等の高い歪み剛性がわずかに向上させた。
【0110】
図15は、目に沿った及び目に逆らった粉砕方向、並びに、目に沿った及び目に逆らった引張試験を説明する。図16は、図13のデータ(目に沿った)を含み、静的弾性率について目に逆らったデータを追加する。100%、200%、及び300%伸長における、実施例7-11の5つの試験の中央値に基づき、LCNF含有配合物についてより顕著な機械的異方性の幾つかの証拠が存在した。これは、特に低い歪み及び中程度の歪みにおいて、LCNFの添加によって導入された機械的異方性を示す図17でより明確に図示される。
【0111】
図18及び19は、それぞれ、実施例7-11の5つの試験の中央値について、目に沿った状態及び目に逆らった状態の両方の引張強度及び破断伸度を説明する。目に沿った引張強度は、目に逆らった引張強度よりも常に大きく、LCNF含有試料は、実施例7の対照試料と概ね一致した。破断伸度のデータでは、明確な異方性の傾向は見られず、LCNF含有試料は、概ね破断伸度の値がわずかに低かった。
【0112】
実施例7-11の5つの試験の中央値に対しての図20の臨界引裂エネルギー(Tc)データは、実施例7-9の対照試料については異方性を示さなかったが、LCNF含有試料については、目に逆らった引裂方向に対して驚くほど大きい(~40%大きい)Tc値を示した。
【0113】
図21図22、及び図23は、実施例7-11の2つの試験の平均について、それぞれ、DIN摩耗、60℃での反発、及びフレクソメーター発熱を纏める。DIN摩耗データは、LCNFの添加により、DIN摩耗損失がわずかに増加することを実証した。反発は、カーボンブラックの除去に伴い概ね線形に増加し、これらの恩恵は、配合物へのLCNFの添加によって維持された。発熱データは、反発データと同じ傾向を示した。
【0114】
図24及び図25は、実施例7-11の2つの試験の平均について、それぞれ、60℃におけるARES歪み掃引データからのtanδMAX及びΔG’を説明する。概して、歪み掃引データは、反発データ及び発熱データと同じ傾向を示した。実施例7の対照試料に対して、実施例10-11のヒステリシスにおける、小さいが一貫した改善があった。
【0115】
要約すると、これらの結果は、開示されたNDCが、カーボンブラック及びゴムベースの配合物の結果としての特性において明白な犠牲は殆どない状態で、持続可能なフィラー(LCNF)の効果的な組み込み及び分散を可能にすることを実証する。予想外に、-NDCによって導入された-LCNFを含むNRベースの配合物は、LCNFを含まないN234カーボンブラック対照物と比較して、静的剛性を維持又は向上させ、引裂抵抗を維持又は向上させ、ヒステリシスを改善(減少)させた。
【0116】
実施例12-15において、表8に纏めたように、参照カーボンブラックグレード、N660、及びLCNFの有無に関わらず、モデルインナーライナーコンパウンドを製造した。実施例12-13は、典型的なカーボンブラック性能を示すための参照配合物であり、N660はフィラーの100%を含み、これは、コンパウンド配合物中の60phrに相当する。実施例14は、実施例12-13よりも5phr少ないカーボンブラックを含み、実施例15は、実施例12-13よりも10phr少ないカーボンブラックを含んでいた。実施例14-15では、カーボンブラックの一部をLCNFで置換したが、N234カーボンブラックをN660カーボンブラックに置換したことを除いて、実施例3及び実施例6に記載の同じNDCを使用した。LCNF量は、実施例14において5phrであり、実施例15において10phrであった。NDCは、NRベースの組成物であったため、2つの対照試料を使用して、ブチルゴムのNRを用いる置換を模倣した(実施例12は5phrのNRを含み、一方で、実施例13は10phrのFRを含んだ)。表9は、標準的な混合手順を纏めた。
【0117】
表10では、実施例12-15のそれぞれのカーボンブラック配合物の特性の様々なものを比較する。T90硬化時間は、LCNFの存在に概ね影響されず、実施例14の硬化時間は、対照実施例12-13より長く、実施例15の硬化時間は、対照実施例12-13より短かった。T5及びT35スコーチタイムは、NDC含有実施例14-15について、対照実施例12-13に対してわずかに長かった。反対に、表10は、LCNFを含むNDCを使用した実施例14-15の配合物について、わずかなムーニー粘度の低下を実証する。ショアA硬度は、N660カーボンブラックの除去によりわずかに低下し、LCNFの添加量の増加によりわずかに増加した。
【0118】
分散指数(IFM経由)は、典型的に、カーボンブラックをNDCで置換することによって減少し、結果として生じる分散指数は、カーボンブラックグレード及びLCNFの充填レベルに依存し得る。しかしながら、そして予想外に、実施例14-5phrのLCNF充填を有する-は、優れた分散を有した(93.7%の分散指数)。
【0119】
表10では、100%、200%、及び300%伸長における実施例12-15の5つの試験の中央値についての静的弾性率も纏める。より高い歪みで同等の結果が得られたが、一方で、100%伸長では、LCNFの添加により弾性率が向上した。引張強度及び伸度は、カーボンブラックをNDCで置換しても、概ね影響を受けなかった。60℃における反発弾力は、N660カーボンブラックをLCNFで置換することによって、概ね段階的に増加した。
【0120】
表10は、実施例12-15の2つの試験の平均についての60℃でのRPA歪み掃引データからのtanδMAX及びΔG’を含む。NDCによるカーボンブラックのLCNFへの置換は、tanδMAX及びΔG’の両方におけるわずかな有益な減少をもたらした。有益に、表10におけるNDC実施例14-15の100%引張歪みでの疲労寿命値は、対照実施例12-13と同等であった。
【0121】
上記のように、これらの結果は、開示されたNDCが、カーボンブラック及びゴムベースの配合物の結果としての特性において明白な犠牲は殆どない状態で、持続可能なフィラー(LCNF)の効果的な組み込み及び分散を可能にすることを実証する。予想外に、-NDCによって導入された-LCNFを含むブチルゴムベースの配合物は、LCNFを含まないN660カーボンブラック対照物に匹敵する特性を有した。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0122】
本発明は、多数の態様及び特定の実施例を参照して上記で説明される。多くの変形が、上記の詳細な説明に照らして、当業者にそれら自身を示唆される。全てのこのような明白な変形は、添付の特許請求の範囲の完全な意図される範囲内である。本発明の他の態様としては、以下のもの(態様は、「含む」として記載されるが、あるいは、「から本質的になる」又は「からなる」ことができる)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0123】
態様1
(I)ポリマー;(II)(i)カーボンブラックフィラー、エラストマーラテックス、ワックス、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む分割剤、及び(ii)ナノセルロース、を含むナノセルロース分散組成物(NDC);及び(III)カーボンブラック添加剤、を含むタイヤ組成物。
【0124】
態様2
ポリマーとナノセルロース分散組成物の重量比(ポリマー:NDC)が、約100:1~約1:1の範囲である、態様1に規定のタイヤ組成物。
【0125】
態様3
ポリマーとナノセルロース分散組成物の重量比(ポリマー:NDC)が、約50:1~約2:1の範囲である、態様1に規定のタイヤ組成物。
【0126】
態様4
ポリマーが、熱可塑性を含む、態様1~3のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0127】
態様5
ポリマーが、エラストマーを含む、態様1~3のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0128】
態様6
ポリマーが、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、合成シス-ポリイソプレン(IR)、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR)、溶液スチレンブタジエンゴム(SSBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR/CIIR/BIIR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルエラストマー(NBR)、水素化ニトリルエラストマー(HNBR)、カルボキシル化ニトリルエラストマー(XNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM/EPDM)、フルオロエラストマー(FPM/FKM)、ポリウレタンゴム(AU/EU/PU)、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、態様1-3のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0129】
態様7
分割剤が、ポリマーと相溶性があり、ナノセルロースの凝集を低減させる、態様1-6のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0130】
態様8
ナノセルロース分散組成物が、分割剤を含まないナノセルロースの分散性よりも大きい、タイヤ組成物中におけるナノセルロース分散性を有する、態様1-7のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0131】
態様9
ナノセルロースが、ナノセルロース結晶(NC)、ナノセルロースフィブリル(NF)、又はこれらの組み合わせを含む、態様1-8のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0132】
態様10
ナノセルロースが、リグニン被覆ナノセルロース結晶(LCNC)、リグニン被覆ナノセルロースフィブリル(LCNF)、又はこれらの組み合わせを含む、態様1-9のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0133】
態様11
ナノセルロースが、親水性セルロースナノセルロース結晶(CNC)、親水性セルロースナノセルロースフィブリル(CNF)、又はこれらの組み合わせを含む、態様1-10のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0134】
態様12
ナノセルロース分散組成物(NDC)が、炭化水素油を更に含む、態様1-11のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0135】
態様13
炭化水素油が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はこれらの組み合わせを含む、態様12に規定のタイヤ組成物。
【0136】
態様14
炭化水素油が、処理留出芳香族抽出物(TDAE)油を含む、態様12に規定のタイヤ組成物。
【0137】
態様15
エラストマーラテックスが、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR)、又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、態様1-14のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0138】
態様16
ワックスが、非分岐アルカンパラフィンワックス;天然鉱物、石油精製、又はリグニン精製の分岐パラフィンワックス又はセレシンワックス;ポリエチレンワックス;官能化ポリエチレンワックス;又はこれらのいずれかの組み合わせを含む、態様1-15のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0139】
態様17
カーボンブラックフィラー及びカーボンブラック添加剤が、独立して、ファーネスカーボンブラック及び/又は表面改質されたファーネスカーボンブラックを含む、態様1-16のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0140】
態様18
カーボンブラックフィラー及びカーボンブラック添加剤が、独立して、約90m/g~約140m/gの窒素表面積;約80m/g~約125m/gの外部表面積;約2.5~約9のpH;約55cm/100g~約67cm/100gの50GM空隙容積;50cm/100g~約60cm/100gの75GM空隙容積;約45cm/100g~約55cm/100gの100GM空隙容積;約2.5wt%~約4.5wt%の水分含有量;約4.5wt%~約6.5wt%の揮発性成分;約2.5wt%~約5.5wt%の酸素含有量;又はこれらのいずれかの組み合わせ、によって特徴付けられる、態様1-17のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0141】
態様19
分割剤が、カーボンブラックフィラー、エラストマーラテックス、又はワックスを含む、態様1-18のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0142】
態様20
分割剤が、カーボンブラックフィラー、エラストマーラテックス、及びワックスのうちの少なくとも2つを含む、態様1-18のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0143】
態様21
ナノセルロースに対する分割剤の重量比が、約0.5:1~約25:1の範囲である、態様1-20のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0144】
態様22
ナノセルロースに対する分割剤の重量比が、約1:1~約10:1の範囲である、態様1-21のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0145】
態様23
ナノセルロース分散組成物(NDC)が、(a)ナノセルロースの水性分散体を分割剤と組み合わせて混合物を形成すること、及び(b)混合物を乾燥させてナノセルロース分散組成物(NDC)を形成すること、を含む工程によって製造される、態様1-22のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0146】
態様24
ナノセルロース分散組成物(NDC)が、(A)ナノセルロースの水性分散体を分割剤と組み合わせて混合物を形成すること、及び(B)混合物を乾燥させてナノセルロース分散組成物(NDC)を形成すること、を含む工程によって製造され、分割剤がNDC中で安定であり、ナノセルロース粒子間に間隔を空けて、NDC中でのナノセルロース粒子の凝集を低減又は防止する、態様1-22のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0147】
態様25
タイヤ組成物が、適切な量、例えば、約20~約150phr、約30~約100phr、又は約40~約80phrのカーボンブラックを含む、態様1-24のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0148】
態様26
タイヤ組成物が、適切な量、例えば、約1~約15phr、約2~約10phr、又は約2~約7.5phrのナノセルロースを含む、態様1-25のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0149】
態様27
タイヤ組成物が、適切な量、例えば、約1~約15phr、約2~約10phr、又は約3~約9phrの炭化水素油を含む、態様1-26のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物。
【0150】
態様28
態様1-27のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物を含む、製造物品。
【0151】
態様29
態様1-27のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物を含む、空気入りタイヤ。
【0152】
態様30
態様1-27のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物を含む、乗用車用タイヤ。
【0153】
態様31
態様1-27のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物を含む、トラック及びバス用ラジアルタイヤ(TBR)。
【0154】
態様32
態様1-27のいずれか一態様に規定のタイヤ組成物を含む、タイヤトレッド。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【国際調査報告】