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特表2023-515492電極構造体、これを含む金属空気電池の陽極用電極構造体、及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】電極構造体、これを含む金属空気電池の陽極用電極構造体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20230406BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20230406BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01M12/08 K
H01M4/86 M
H01M4/88 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549879
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 KR2021002215
(87)【国際公開番号】W WO2021167432
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0021252
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0021253
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0021894
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0164654
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0164655
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518453545
【氏名又は名称】漢陽大学校エリカ産学協力団
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY-UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION HANYANG UNIVERSITY ERICA CAMPUS
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】李政昊
(72)【発明者】
【氏名】シンデ サンバジ シバジ
(72)【発明者】
【氏名】金東亨
【テーマコード(参考)】
5H018
5H032
【Fターム(参考)】
5H018AA10
5H018BB01
5H018BB03
5H018BB05
5H018BB06
5H018BB12
5H018BB13
5H018BB16
5H018DD03
5H018EE11
5H018HH03
5H018HH05
5H032AA01
5H032AS02
5H032AS03
5H032AS11
5H032EE03
5H032EE15
(57)【要約】
金属空気電池の陽極用電極構造体が提供される。前記金属空気電池の陽極用電極構造体は、銅、リン、及び硫黄の化合物から形成され、フィブリル化された複数の繊維が網をなすメンブレンを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属、リン、及びカルコゲン元素の化合物を含み、
XRD分析結果、(101)結晶面に対応するピーク値が、他の結晶面に対応するピーク値と比較して、最大値を有し、
複数の繊維からなるメンブレンを含むことを特徴とする電極構造体。
【請求項2】
前記(101)結晶面に対応するピーク値は、2θ値が19°~21°の範囲でみられることを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項3】
前記遷移金属は、銅、マグネシウム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、チタン、亜鉛、アルミニウム、又は錫のうちの少なくともいずれか1つを含み、
前記カルコゲン元素は、硫黄、酸素、セレン、又はテルルのうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項4】
金属空気電池の陽極用電極構造体であって、
前記電極構造体は、銅、リン、及び硫黄の化合物からなり、フィブリル化された複数の繊維が網をなすメンブレンを含むことを特徴とする金属空気電池の陽極用電極構造体。
【請求項5】
前記銅、リン、及び硫黄の化合物からなる前記複数の繊維は、
複数の幹と、
前記複数の幹から分岐された複数の枝とを含むことを特徴とする請求項4に記載の金属空気電池の陽極用電極構造体。
【請求項6】
前記複数の幹及び前記複数の枝は、互いに異なる工程で製造されることを特徴とする請求項5に記載の金属空気電池の陽極用電極構造体。
【請求項7】
前記電極構造体の前記メンブレンは、スポンジ構造を有し、フレキシブルであることを特徴とする請求項4に記載の金属空気電池の陽極用電極構造体。
【請求項8】
前記金属空気電池の充電及び放電状態によって、
HRTEMでみられる前記電極構造体の前記メンブレリンの格子間隔が、可逆的に増加又は減少されることを特徴とする請求項4に記載の金属空気電池の陽極用電極構造体。
【請求項9】
請求項1又は請求項4による前記電極構造体を含み、酸素を陽極活物質として用いる陽極電極と、
前記陽極電極上の陰極電極と、
前記陽極電極及び前記陰極電極の間の電解質とを含むことを特徴とする金属空気電池。
【請求項10】
前記金属空気電池の放電状態で、前記電極構造体の前記メンブレンに対するHRTEM分析結果、格子間隔が0.466nmであることを特徴とする請求項9に記載の金属空気電池。
【請求項11】
前記金属空気電池の充電状態で、前記電極構造体の前記メンブレンに対するHRTEM分析結果、格子間隔が0.478nmであることを特徴とする請求項9に記載の金属空気電池。
【請求項12】
前記電極構造体の前記メンブレンに対するXRD分析結果、2θ値が18.5°~19.5°の範囲で基準ピークがみられ、
前記金属空気電池が放電状態で充電されることによって、前記基準ピークがみられる2θ値が、19°~21°の範囲で逐次減少することを特徴とする請求項9に記載の金属空気電池。
【請求項13】
前記金属空気電池が放電状態で充電されることによって、前記基準ピークが、2つに分割されることを特徴とする請求項12に記載の金属空気電池。
【請求項14】
前記金属空気電池の放電状態で、前記メンブレンに含まれたリンは、2酸化価数を有し、
前記金属空気電池の充電状態で、前記メンブレンに含まれたリンは、2及びn酸化価数(2<n<3)を有することを特徴とする請求項9に記載の金属空気電池。
【請求項15】
カルコゲン元素を有する第1の前駆体、リンを有する第2の前駆体、遷移金属を有する第3の前駆体を準備するステップと、
前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、及び前記第3の前駆体を混合し、第1の還元剤を添加して、混合物を製造するステップと、
前記混合物を共沈させて、複数の幹を有する中間生成物を製造するステップと、
前記中間生成物に第2の還元剤を添加し、加圧熱処理することにより、前記複数の幹から複数の枝を分岐させて、前記遷移金属、前記カルコゲン元素、及びリンを含むフィブリル化された複数の繊維を製造するステップとを含むことを特徴とする電極構造体の製造方法。
【請求項16】
前記第1の前駆体は、ジチオオキサミド(dithiooxamide)、ジチオビウレット(Dithiobiuret)、ジチオウラシル(Dithiouracil)、アセチルチオウレア(Acetylthiourea)、チオウレア(Thiourea)、N-メチルチオウレア(N-methylthiourea)、ビス(フェニルチオ)メタン(Bis(phenylthio)methane)、2-イミノ-4-チオビウレット(2-Imino-4-thiobiuret)、N、N′-ジメチルチオレア(N、N′-Dimethylthiourea)、アンモニウムスルフィド(Ammonium sulfide)、メチルメタンスルホネート(Methyl methanesulfonate)、硫黄粉末(Sulfur powder)、硫酸塩(sulphates)、N、N-ジメチルチオホルムアミド(N、N-Dimethylthioformamide)、又は、デイビー試薬メチル(Davy Reagent methyl)のうちの少なくともいずれか1つを含み、
前記第2の前駆体は、テトラデシルホスホン酸(tetradecylphosphonic acid)、イホスファミド(ifosfamide)、オクタデシルホスホン酸(Octadecylphosphonic acid)、ヘキシルホスホン酸(Hexylphosphonic acid)、トリオクチルホスフィン(Trioctylphosphine)、リン酸(Phosphoric acid)、トリフェニルホスフィン(Triphenylphosphine)、アンモニウムホスフィド(Ammonium Phosphide)、ピロホスフェート(pyrophosphates)、デイビー試薬メチル(Davy Reagent methyl)、シクロホスファミドモノハイドレート(Cyclophosphamide monohydrate)、三塩化リン(Phosphorus trichloride)、塩化ホスホリル(Phosphorus(V) oxychloride)、チオホスホリルクロライド(Thiophosphoryl chloride)、五塩化リン(Phosphorus pentachloride)、又は五塩化二リン(Phosphorus pentasulfide)のうちの少なくともいずれか1つを含み、
前記第3の前駆体は、塩化銅(copper chloride)、硫酸銅(II)(copper(II) sulfate)、硝酸銅(II)(copper(II) nitrate)、セレン化銅(copper selenide)、オキシ塩化銅(copper oxychloride)、酢酸銅(cupric acetate)、炭酸銅(copper carbonate)、チオシアン酸銅(copper thiocyanate)、硫化銅(copper sulfide)、水酸化銅(copper hydroxide)、ナフテン酸銅(copper naphthenate)、又はリン酸銅(II)(copper(II) phosphate)のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項15に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項17】
前記第2の還元剤と共に、カルコゲン元素を有するカルコゲン元素供給源を更に添加することを特徴とする請求項15に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項18】
冷却状態で、前記第2の還元剤が添加されることを特徴とする請求項15に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項19】
前記第1の還元剤は、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、又は水酸化テトラメチルアンモニウムのうちの少なくともいずれか1つを含み、
前記第2の還元剤は、Triton X-165、Triton X-102、Triton X-45、Triton X-114、Triton X-405、Triton X-101、トリメシン酸、ジアミド、Peroxynitrite、ホルムアルデヒド、チメロサール、又はクロラミンTのうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項15に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項20】
前記カルコゲン元素は、硫黄であり、
前記遷移金属は、銅であることを特徴とする請求項15に記載の電極構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造体及びその製造方法に関し、より詳しくは、複数の繊維からなるメンブレンを含む電極構造体、これを含む金属空気電池の陽極用電極構造体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の小型デバイス及び家電製品用の二次電池を超えて、電気自動車及びエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)など、中大型の高エネルギー応用分野が急激に成長することにつれ、二次電池産業の市場価値は、2018年、約220億ドルに過ぎなかったが、2025年には、約1,180億ドルに成長することと見込まれる。このように二次電池が、中大型エネルギーの記憶媒体として活用されるためには、現在の水準よりも画期的に向上した価格競争力、エネルギー密度、及び安定性が要求される。
【0003】
このような技術的ニーズにより、様々な二次電池用電極が開発されている。
【0004】
例えば、韓国公開特許第10-2019-0139586号公報には、炭素ナノチューブ、及び前記炭素ナノチューブの表面に蒸着されるRuOを含み、前記RuOは、前記炭素ナノチューブの表面欠陥部位に蒸着され、前記RuOは、粒子のサイズが1.0~4.0nmであり、前記RuOは、前記炭素ナノチューブの表面欠陥部位で炭素分解を抑制し、前記炭素ナノチューブの表面に形成されるLiの分解を促すリチウム-空気電池用電極が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、電極構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明が解決しようとする他の技術的課題は、製造コストが安価であり、製造工程を簡素した電極構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
更に、本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、向上したORR、OER、及びHER特性を有する電極構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、長寿命で且つ高安定性を有する電極構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
更に、本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、金属空気電池の陽極用電極構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、製造コストが安価であり、製造工程が簡素した金属空気電池の陽極用電極構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、向上したORR、OER、及びHER特性を有する金属空気電池の陽極用電極構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明が解決しようとする更に他の技術的課題は、長寿命で且つ高安定性を有する金属空気電池の陽極用電極構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前述したことに限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記技術的課題を解決するために、本発明は、電極構造体を提供する。
【0015】
一実施例によると、前記電極構造体は、遷移金属、リン、及びカルコゲン元素の化合物を含み、XRD分析結果、(101)結晶面に対応するピーク値が、他の結晶面に対応するピーク値と比較して、最大値を有し、複数の繊維からなるメンブレンを含むことを特徴とする。
【0016】
前記(101)結晶面に対応するピーク値は、2θ値が19°~21°の範囲でみられる。
【0017】
前記遷移金属は、銅、マグネシウム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、チタン、亜鉛、アルミニウム、又は錫のうちの少なくともいずれか1つを含み、前記カルコゲン元素は、硫黄、酸素、セレン、又はテルルのうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0018】
また、前記課題を解決するために、本発明は、金属空気電池の陽極用電極構造体を提供する。
【0019】
一実施例によると、金属空気電池の前記陽極用電極構造体において、前記電極構造体は、銅、リン、及び硫黄の化合物からなり、フィブリル化された複数の繊維が網をなすメンブレンを含む。
【0020】
前記銅、リン、及び硫黄の化合物からなる前記複数の繊維は、複数の幹と、前記複数の幹から分岐された複数の枝とを含む。
【0021】
前記複数の幹及び前記複数の枝は、互いに異なる工程で製造される。
【0022】
前記電極構造体の前記メンブレンは、スポンジ構造を有し、フレキシブルである。
【0023】
前記金属空気電池の充電及び放電状態によって、HRTEMでみられる前記電極構造体の前記メンブレリンの格子間隔が、可逆的に増加又は減少される。
【0024】
更に、前記技術的課題を解決するために、本発明は、金属空気電池を提供する。
【0025】
一実施例によると、前記金属空気電池は、前記実施例による前記電極構造体を含み、酸素を陽極活物質として用いる陽極電極と、前記陽極電極上の陰極電極と、前記陽極電極及び前記陰極電極の間の電解質とを含むことを特徴とする。
【0026】
前記金属空気電池の放電状態で、前記電極構造体の前記メンブレンに対するHRTEM分析結果、格子間隔が0.466nmである。
【0027】
前記金属空気電池の充電状態で、前記電極構造体の前記メンブレンに対するHRTEM分析結果、格子間隔が0.478nmである。
【0028】
前記電極構造体の前記メンブレンに対するXRD分析結果、2θ値が18.5°~19.5°の範囲で、基準ピークがみられ、前記金属空気電池が放電状態で充電されることによって、前記基準ピークがみられる2θ値が19°~21°の範囲で逐次減少される。
【0029】
前記金属空気電池が放電状態で充電されることによって、前記基準ピークが、2つに分割される。
【0030】
前記金属空気電池の放電状態で、前記メンブレンに含まれたリンは、2酸化価数を有し、前記金属空気電池の充電状態で、前記メンブレンに含まれたリンは、2及びn酸化価数(2<n<3)を有する。
【0031】
また、前記技術的課題を解決するために、本発明は、電極構造体の製造方法を提供する。
一実施例によると、前記電極構造体の製造方法は、カルコゲン元素を有する第1の前駆体、リンを有する第2の前駆体、遷移金属を有する第3の前駆体を準備するステップと、前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、及び前記第3の前駆体を混合し、第1の還元剤を添加して、混合物を製造するステップと、前記混合物を共沈させて、複数の幹を有する中間生成物を製造するステップと、前記中間生成物に第2の還元剤を添加し、加圧熱処理する方法で、前記複数の幹から複数の枝を分岐させて、前記遷移金属、前記カルコゲン元素、及びリンを含むフィブリル化された複数の繊維を製造するステップとを含むことを特徴とする。
【0032】
前記第1の前駆体は、ジチオオキサミド(dithiooxamide)、ジチオビウレット(Dithiobiuret)、ジチオウラシル(Dithiouracil)、アセチルチオウレア(Acetylthiourea)、チオウレア(Thiourea)、N-メチルチオウレア(N-methylthiourea)、ビス(フェニルチオ)メタン(Bis(phenylthio)methane)、2-イミノ-4-チオビウレット(2-Imino-4-thiobiuret)、N、N′-ジメチルチオレア(N、N′-Dimethylthiourea)、アンモニウムスルフィド(Ammonium sulfide)、メチルメタンスルホネート(Methyl methanesulfonate)、硫黄粉末(Sulfur powder)、硫酸塩(sulphates)、N、N-ジメチルチオホルムアミド(N、N-Dimethylthioformamide)、又はデイビー試薬メチル(Davy Reagent methyl)のうちの少なくともいずれか1つを含み、前記第2の前駆体は、テトラデシルホスホン酸(tetradecylphosphonic acid)、イホスファミド(ifosfamide)、オクタデシルホスホン酸(Octadecylphosphonic acid)、ヘキシルホスホン酸(Hexylphosphonic acid)、トリオクチルホスフィン(Trioctylphosphine)、リン酸(Phosphoric acid)、トリフェニルホスフィン(Triphenylphosphine)、アンモニウムホスフィド(Ammonium Phosphide)、ピロホスフェート(pyrophosphates)、デイビー試薬メチル(Davy Reagent methyl)、シクロホスファミドモノハイドレート(Cyclophosphamide monohydrate)、三塩化リン(Phosphorus trichloride)、塩化ホスホリル(Phosphorus(V) oxychloride)、チオホスホリルクロライド(Thiophosphoryl chloride)、五塩化リン(Phosphorus pentachloride)、又は五塩化二リン(Phosphorus pentasulfide)のうちの少なくともいずれか1つを含み、前記第3の前駆体は、塩化銅(copper chloride)、硫酸銅(II)(copper(II) sulfate)、硝酸銅(II)(copper(II) nitrate)、セレン化銅(copper selenide)、オキシ塩化銅(copper oxychloride)、酢酸銅(cupric acetate)、炭酸銅(copper carbonate)、チオシアン酸銅(copper thiocyanate)、硫化銅(copper sulfide)、水酸化銅(copper hydroxide)、ナフテン酸銅(copper naphthenate)、又はリン酸銅(II)(copper(II) phosphate)のうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0033】
前記第2の還元剤と共に、カルコゲン元素を有するカルコゲン元素供給源を更に添加する。
【0034】
冷却状態で、前記第2の還元剤が添加される。
【0035】
前記第1の還元剤は、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、又は水酸化テトラメチルアンモニウムのうちの少なくともいずれか1つを含み、前記第2の還元剤は、Triton X-165、Triton X-102、Triton X-45、Triton X-114、Triton X-405、Triton X-101、トリメシン酸(Trimesic acid)、ジアミド(Diamide)、ペルオキシニトライト(Peroxynitrite)、ホルムアルデヒド(formaldehyde)、チメロサール(Thimerosal)、又はクロラミンT(chloramine-T)のうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0036】
前記カルコゲン元素は、硫黄であり、前記遷移金属は、銅である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の実施例による電極構造体の製造方法は、カルコゲン元素を有する第1の前駆体、リンを有する第2の前駆体、及び遷移金属を有する第3の前駆体を準備するステップと、前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、及び前記第3の前駆体を混合し、第1の還元剤を添加して、混合物を製造するステップと、前記混合物を共沈させて、複数の幹を有する中間生成物を製造するステップと、前記中間生成物に第2の還元剤を添加し、加圧熱処理することにより、前記複数の幹から複数の枝を分岐させて、前記遷移金属、前記カルコゲン元素、及びリンを含むフィブリル化された複数の繊維を製造するステップとを含む。
【0038】
これにより、前記電極構造体の製造工程が簡素化され、前記電極構造体を安価で容易に製造することができる。
【0039】
また、前記電極構造体は、複数の繊維が網をなす前記メンブレンから構成され、フレキシブルなスポンジ構造を有し、高いORR、OER、及びHER特性を有することができる。前記電極構造体の高い電気化学特性により、前記電極構造体を陽極電極に用いる金属空気電池の充放電容量及び寿命特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明の実施例による亜鉛空気電池の陽極用電極構造体の製造方法を説明するためのシーケンス図である。
図2図2は、本発明の実施例による亜鉛空気電池の陽極用電極構造体の製造過程を説明するための図である。
図3図3は、本発明の実験例1により製造された電極構造体を撮影した写真である。
図4図4は、本発明の実験例1により製造された電極構造体の応力(Stress)-ひずみ(Strain)グラフである。
図5図5は、本発明の実験例1により製造された電極構造体のXRDグラフである。
図6図6は、本発明の実験例2により製造された電極構造体のXRDグラフである。
図7図7は、本発明の実験例3により製造された電極構造体のXRDグラフである。
図8図8は、本発明の実験例4により製造された電極構造体のXRDグラフである。
図9図9は、本発明の実験例1による電極構造体のSEM写真を撮影した図である。
図10図10は、本発明の実験例1による電極構造体のTEM写真を撮影した図である。
図11図11は、本発明の実験例1による電極構造体の原子構造のシミュレーション及び格子縞を示している。
図12図12は、本発明の実験例1による電極構造体のSEADパターンを示している。
図13図13は、本発明の実験例1による電極構造体のHAADF-STEM画像を示している。
図14図14は、本発明の実験例1による電極構造体の比表面積及び気孔を説明するためのグラフである。
図15図15は、本発明の実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のXPS測定グラフである。
図16図16は、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、及び銅ホイルのEXAFS k2χ(k)Rスペースフーリエ変換(Fourier transform)を示している。
図17図17は、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のCu 2p XPSスペクトラグラフである。
図18図18は、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のCu L-edge XANESスペクトラグラフである。
図19図19は、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、及び銅ホイルのCu K-edge XANESスペクトラグラフである。
図20図20は、本発明の実験例1及び実験例3による電極構造体のS K-edge XANESスペクトラグラフである。
図21図21は、本発明の実験例1及び実験例3による電極構造体のS L-edge XANESスペクトラグラフである。
図22図22は、本発明の実験例1及び実験例3による電極構造体のS 2p XPSスペクトラグラフである。
図23図23は、本発明の実験例1及び実験例4による電極構造体のP K-edge XANESスペクトラグラフである。
図24図24は、本発明の実験例1及び実験例4による電極構造体のP L-edge XANESスペクトラグラフである。
図25図25は、本発明の実験例1及び実験例3による電極構造体のP 2p XPSスペクトラグラフである。
図26図26は、本発明の実験例1による電極構造体のTGA測定結果である。
図27図27は、本発明の実験例1及び実験例2による電極構造体のORR特性を説明するためのCV(Cyclic voltammogram)グラフである。
図28図28は、本発明の実験例3及び実験例4による電極構造体及びPt/C電極のORR特性を説明するためのCVグラフである。
図29図29は、本発明の実験例1乃至実験例4による電極構造体、Pt/C電極、及びカーボンファイバーのORR特性を説明するためのLSV(linear sweep voltammetry)グラフである。
図30図30は、本発明の実験例1乃至実験例4による電極構造体及びPt/C電極のRRDE(Rotating Ring Disk Electrode)polarization plot、及び電子移動係数(electron transfer number)グラフである。
図31図31は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極の化学的耐久性を比較したグラフである。
図32図32は、本発明の実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体及びカーボンファイバーのORR特性を説明するためのEIS(Electrochemical Impedance Spectroscopy)グラフである。
図33図33は、本発明の実験例1による電極構造体のORR特性を説明するためのサイクル回数によるLSV及びCVグラフである。
図34図34は、Pt/C電極のサイクル回数によるCV及びLSVグラフである。
図35図35は、本発明の実験例1による電極構造体、及びPt/C電極のORR特性を説明するためのクロノアンペロメトリー(chronoamperometric)測定グラフ、及びファラデー効率(Faradaic efficiency)を測定した図である。
図36図36は、本発明の実験例1による電極構造体のOER特性を説明するためのガスクロマトグラフィ測定結果である。
図37図37は、本発明の実験例1乃至実験例4による電極構造体、カーボンファイバー、及びRuO電極のOER特性を説明するためのLSVグラフ、及びターフェル(tafel)プロファイルである。
図38図38は、本発明の実験例1、実験例3、実験例4、及びカーボンファイバーのOER特性を説明するためのEISグラフである。
図39図39は、本発明の実験例1による電極構造体及びRuO電極のOER特性を説明するためのサイクル回数によるLSVグラフである。
図40図40は、本発明の実験例1による電極構造体及びRuO電極のOER特性を説明するためのクロノアンペロメトリー測定グラフ、及びファラデー効率を測定した図である。
図41図41は、本発明の実験例1乃至実験例4による電極構造体、Pt/C電極、RuO電極、及びカーボンファイバーの両機能性(bifunctional)の酸素特性を説明するためのグラフである。
図42図42は、本発明の実験例1による電極構造体と、現在まで報告された他の電極の両機能性の酸素特性を比較したグラフである。
図43図43は、本発明の実験例1乃至実験例4、Pt/C電極、及びカーボンファイバーのHER特性を説明するためのLSVグラフである。
図44図44は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極のHER特性を説明するためのクロノアンペロメトリー測定グラフである。
図45図45は、本発明の実験例1乃至実験例4、Pt/C電極及びカーボンファイバーのHER特性を説明するためのターフェルプロファイルである。
図46図46は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極のHER特性を説明するためのサイクル回数によるLSVグラフである。
図47図47は、本発明の実験例1による電極構造体と、現在まで報告された他の電極のHER特性を比較したグラフである。
図48図48は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極の酸性環境でORR特性を説明するためのLSVグラフである。
図49図49は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極の酸性環境でHER特性を説明するためのLSVグラフである。
図50図50は、本発明の実験例1による電極構造体と、現在まで報告された他の電極の酸性環境で、HER特性を比較したグラフである。
図51図51は、本発明の実験例1及び実験例2による電極構造体、Pt/C電極、及びRuO電極のORR、OER、及びHER特性を比較するためのmass activityグラフである。
図52図52は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のイン・サイチュ(in-situ)XRD測定グラフである。
図53図53は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体を撮影したHRTEM写真である。
図54図54は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のCu K-edge XANESスペクトラグラフである。
図55図55は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のS K-edge及びP L-edge XANESスペクトラグラフである。
図56図56は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のS L3,2-edge XANESスペクトラである。
図57図57は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のS 2p XPSスペクトラグラフである。
図58図58は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のP 2p XPSスペクトラグラフである。
図59図59は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のHRTEM写真を撮影した図である。
図60図60は、本発明の実験例1による電極構造体において、結晶面によるOER、ORR、及びHER特性を評価したグラフである。
図61図61は、本発明の実験例1による電極構造体のP及びSの組成比によるORR、OER、及びHER特性を評価したグラフである。
図62図62は、本発明の実験例1による電極構造体のP及びSの組成比によるCu 2p、P 2p、及びS 2p XPSスペクトラグラフである。
図63図63は、本発明の実験例3による電極構造体のCu及びSの組成比によるORR、OER、及びHER特性を評価したグラフである。
図64図64は、本発明の実験例3による電極構造体のCu及びSの組成比によるXRDグラフである。
図65図65は、本発明の実験例3による電極構造体のCu及びSの組成比による格子パラメータを示すグラフである。
図66図66は、本発明の実験例1による電極構造体を含む亜鉛空気電池の電流密度による放電電圧を比較したグラフである。
図67図67は、本発明の実験例1による亜鉛空気電池の充放電容量を説明するためのグラフである。
図68図68は、本発明の実験例1による亜鉛空気電池の充放電回数による電圧値を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳述する。しかし、本発明の技術的思想は、ここに説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化することもできる。ここで紹介する実施例は、開示された内容が徹底的で且つ完全になるように、そして、当業者に本発明の思想が十分伝達されるようにするため、提供するものである。
【0042】
また、本明細書の様々な実施例において、第1、第2、第3などの用語が、様々な構成要素を述べるために使われているが、これらの構成要素が、このような用語により限定されてはいけない。これらの用語は、単に、ある構成要素を他の構成要素と区別するために使われているだけである。そこで、ある一実施例に、第1の構成要素として言及されたものが、他の実施例では、第2の構成要素として言及されることもできる。ここに説明及び例示される各実施例は、その相補的な実施例も含む。また、本明細書において、「及び/又は」は、前後に羅列した構成要素の少なくとも1つを含む意味として使用されている。
【0043】
明細書において、単数の表現は、文脈上、明らかに異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。また、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、構成要素、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとすることであり、1つ又はその以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を排除することと理解してはいけない。また、本明細書において、「連結」は、複数の構成要素を間接的に連結すること、及び直接的に連結することをいずれも含む意味として使われる。
【0044】
また、本発明を説明することに当たり、関連する公知機能又は構成に対する具体的な説明が、本発明の要旨を不要に濁していると判断される場合は、その詳細な説明は、省略する。
【0045】
図1は、本発明の実施例による電極構造体の製造方法を説明するためのシーケンス図であり、図2は、本発明の実施例による電極構造体の製造過程を説明するための図である。
【0046】
図1及び図2に示しているように、カルコゲン元素を有する第1の前駆体、リンを有する第2の前駆体、遷移金属を有する第3の前駆体を用意する(S110)。
【0047】
一実施例によると、前記カルコゲン元素は、硫黄を含む。この場合、例えば、前記第1の前駆体は、ジチオオキサミド(dithiooxamide)、ジチオビウレット(Dithiobiuret)、ジチオウラシル(Dithiouracil)、アセチルチオウレア(Acetylthiourea)、チオウレア(Thiourea)、N-メチルチオウレア(N-methylthiourea)、ビス(フェニルチオ)メタン(Bis(phenylthio)methane)、2-イミノ-4-チオビウレット(2-Imino-4-thiobiuret)、N、N′-アンモニウムスルフィド(N、N′Ammonium sulfide)、メチルメタンスルホネート(Methyl methanesulfonate)、硫黄粉末(Sulfur powder)、硫酸塩(sulphates)、N、N-ジメチルチオホルムアミド(N、N-Dimethylthioformamide)、又は、デイビー試薬メチル(Davy Reagent methyl)のうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0048】
または、他の実施例によると、前記カルコゲン元素は、酸素、セレン、又はテルルのうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0049】
例えば、前記第2の前駆体は、テトラデシルホスホン酸(tetradecylphosphonic acid)、イホスファミド(ifosfamide)、オクタデシルホスホン酸(Octadecylphosphonic acid)、ヘキシルホスホン酸(Hexylphosphonic acid)、トリオクチルホスフィン(Trioctylphosphine)、リン酸(Phosphoric acid)、トリフェニルホスフィン、アンモニウムホスフィド(Ammonium Phosphide)、ピロホスフェート((pyrophosphates)、デイビー試薬メチル(Davy Reagent methyl)、シクロホスファミドモノハイドレート(Cyclophosphamide monohydrate)、三塩化リン(Phosphorus trichloride)、塩化ホスホリル(Phosphorus(V)oxychloride)、チオホスホリルクロライド(Thiophosphoryl chloride)、五塩化リン(Phosphorus pentachloride)、又は、五塩化二リン(Phosphorus pentasulfide)のうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0050】
一実施例によると、前記第2の前駆体は、リンを含む互いに異なる異種を用いる。例えば、前記第2の前駆体として、テトラデシルホスホン酸(tetradecylphosphonic acid)及びイホスファミド(ifosfamide)が1:1(M%)で混合した混合物が用いられる。これにより、前記遷移金属、リン、及び前記カルコゲン元素の化学量論比が、1:1:1に制御される。結果として、後述するように、本発明の実施例による前記陽極電極が、コベリン(covellite)構造を有し、前記陽極電極の電気化学特性が向上される。
【0051】
一実施例によると、前記遷移金属は、銅を含む。この場合、例えば、前記第3の前駆体は、塩化銅(copper chloride)、硫酸銅(II)(copper(II)sulfate)、硝酸銅(II)(copper(II)nitrate)、セレン化銅(copper selenide)、オキシ塩化銅(copper oxychloride)、酢酸銅(cupric acetate)、炭酸銅(copper carbonate)、チオシアン酸銅(copper thiocyanate)、硫化銅(copper sulfide)、水酸化銅(copper hydroxide)、ナフテン酸銅(copper naphthenate)、又は、リン酸銅(II)(copper(II)phosphate)のうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0052】
又は、他の実施例によると、前記遷移金属は、マグネシウム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、チタン、亜鉛、アルミニウム、又は、錫のうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0053】
前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、及び前記第3の前駆体を混合し、第1の還元剤を添加して、混合物を製造する(S120)。
【0054】
前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、及び前記第3の前駆体は、溶媒に混合された後、前記第1の還元剤が添加される。例えば、前記溶媒は、エタノール及びエチレンジアミンの混合物である。又は、例えば、前記溶媒は、エタノール及びトルエンの混合物である。
【0055】
一実施例によると、前記溶媒の種類及び混合比によって、後述する電極構造体の結晶面の方向を制御する。言い換えると、前記溶媒の種類及び混合比によって、前記電極構造体において、(101)結晶面の発達可否が制御され、これによって、前記電極構造体の電気化学特性が制御される。
【0056】
本発明の実施例によると、前記電極構造体において、(101)結晶面が発達されるように、前記溶媒が選択され(例えば、エタノール及びエチレンジアミンの1:3体積比の混合)、これにより、前記電極構造体の電気化学特性(例えば、ORR、OER、HER)が向上される。
【0057】
前記溶媒に、前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、及び前記第3の前駆体を混合した後、図2の(a)に示しているように、核生成及び結晶化が進行される。
【0058】
例えば、前記第1の還元剤は、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、又は水酸化テトラメチルアンモニウムのうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0059】
前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、前記第3の前駆体、前記第1の還元剤、及び前記溶媒を含む前記混合物を共沈させて、複数の幹を有する中間生成物を製造する(S130)。
【0060】
前記混合物は、熱処理されて、図1の(b)に示しているように、中間生成物が形成される。前記中間生成物は、複数の幹を有し、前記複数の幹は、互いに網を構成する。
【0061】
例えば、前記第1の還元剤が添加された前記混合物は、120℃で還流(reflux)熱処理された後、脱イオン水及びエタノールで洗浄される。
【0062】
前記第1の還元剤は、熱処理される間、還元剤の機能を行うと共に、pHを維持させ、反応速度を増加させる。これにより、前記複数の幹を有する前記中間生成物を容易に製造することができる。例えば、前記遷移金属が銅であり、前記カルコゲン元素が硫黄である場合、前記中間構造体は、コベリン結晶構造のCuPSである。
【0063】
前記中間生成物に第2の還元剤を添加し、加圧熱処理する方法により、前記複数の幹から複数の枝を分岐させて、前記遷移金属、前記カルコゲン元素、及びリンを含むフィブリル化された複数の繊維を製造する(S140)。
【0064】
一実施例によると、脱イオン水に、前記中間生成物及び前記第2の還元剤を添加した後、加圧熱処理工程を行う。
【0065】
例えば、前記第2の還元剤は、Triton X-165、Triton X-102、Triton X-45、Triton X-114、Triton X-405、Triton X-101、トリメシン酸、ジアミド、Peroxynitrite、ホルムアルデヒド、チメロサール、又はクロラミンTのうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0066】
一実施例によると、前記第2の還元剤と共に、前記カルコゲン元素を含むカルコゲン元素供給源を更に添加する。これにより、反応過程で失われる前記カルコゲン元素が、前記カルコゲン元素供給源により補足されることで、後述するフィブリル化された複数の繊維が網を構成するスポンジ構造の前記電極構造体を容易に形成することができる。
【0067】
例えば、前記カルコゲン元素が硫黄である場合、前記カルコゲン元素供給源は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムチオメトキシド、ナトリウムエタンチオラート、又はナトリウムメタンチオラートのうちの少なくともいずれか1つを含む。
【0068】
脱イオン水に、前記中間生成物及び前記第2の還元剤を混合する過程は、冷却状態で行われる。前記第2の還元剤が添加される過程で発生した熱により、反応速度が過度に増加することを防止し、もって、後述する前記電極構造体の電気化学特性が向上される。
【0069】
前述したように、前記中間生成物に第2の還元剤を添加し、加圧熱処理されて、図2の(c)に示しているように、前記複数の幹から複数の枝が分岐され、これにより、フィブリル化された複数の繊維が網を構成するスポンジ構造の前記電極構造体が形成される。
【0070】
スポンジ構造の前記電極構造体は、脱イオン水及びエタノールで洗浄した後、液体窒素に浸漬する。これにより、スポンジ構造の前記電極構造体の機械的特性及び柔軟性が向上する。
【0071】
また、液体窒素に浸漬された後、スポンジ構造の前記電極構造体は、凍結乾燥され、残存した溶媒が除去されて、2次反応を最小化することができる。
【0072】
前記電極構造体は、前述したように、前記複数の幹から前記複数の枝が分岐され、フィブリル化された前記複数の繊維が、網を構成するスポンジ構造のメンブレンを含む。これにより、前記電極構造体は、1~2nmの複数の気孔を有する多孔性構造を有し、フレキシブル可能である。
【0073】
また、前述したように、前記第1の前駆体、前記第2の前駆体、及び前記第3の前駆体と共に混合される前記溶媒の種類及び割合が制御されることで、前記電極構造体において、(101)結晶面が発達される。これにより、前記電極構造体に対するXRD分析に際して、(101)結晶面に対応するピーク値が、他の結晶面に対応するピーク値と比較して、最大値を有することができる。XRD測定に際して、(101)結晶面に対応するピーク値は、2θ値が19°~21°の範囲でみられる。
【0074】
前記電極構造体を構成する前記複数の繊維は、前記遷移金属、リン、及び前記カルコゲン元素の化合物を含む。例えば、前記遷移金属が銅であり、前記カルコゲン元素が酸素である場合、前記繊維は、下記の化学式1で示される。
【0075】
[化学式1]
CuP
【0076】
前記電極構造体を構成する前記繊維が、前記化1のように示される場合、x+y=1、0.3≦x≦0.7、0.3≦y≦0.7である。
【0077】
もし、前記化学式1において、xが0.3未満又は0.7超えであり、yが0.3未満又は0.7超えである場合、前記電極構造体のORR、OER、及びHER特性が低下し、このため、前記電極構造体を陽極として含む金属空気電池の充放電過程で、前記電極構造体が可逆的に反応しないことがある。
【0078】
ところが、本発明の実施例によると、前記電極構造体がCuPで表される場合、Pの組成比は、0.3以上0.7以下であり、Sの組成比は、0.3以上0.7以下である。これにより、前記電極構造体のORR、OER、及びHER特性が向上し、前記電極構造体を陽極として含む金属空気電池の充放電特性、及び寿命特性が向上する。
【0079】
一方、前記とは異なり、一変形例によると、前記電極構造体は、前記遷移金属及び前記カルコゲン元素(例えば、硫黄)の化合物であり得る。また、他の変形例によると、前記電極構造体は、前記遷移金属及びリンの化合物である。
【0080】
前記電極構造体を陽極として含む前記金属空気電池が充放電を行う場合、前記電極構造体に含まれた前記繊維の格子間隔が可逆的に変わることがある。具体的に、前記金属空気電池が充電された場合、格子間隔は、0.478nmであり、前記金属空気電池が放電した場合、格子間隔は、0.466nmである。前記繊維の格子間隔は、HRTEMにより確認することができる。
【0081】
本発明の実施例によると、前記カルコゲン元素を有する前記第1の前駆体、リンを有する前記第2の前駆体、及び前記遷移金属を有する前記第3の前駆体を混合し、共沈及び加圧熱処理する方法により、フィブリル化された前記複数の繊維が網をなすメンブレン形状の前記電極構造体を製造することができる。
【0082】
高い電気化学特性を有する前記電極構造体を、安価で製造することができる。
【0083】
また、前記電極構造体は、共沈及び加圧熱処理で製造されて、大量生産が容易であり、製造工程が簡素化した金属空気電池の陽極用電極構造体を提供する。
【0084】
以下、前述した本発明の実施例による前記電極構造体を含む金属空気電池について説明する。
【0085】
前記金属空気電池は、陽極電極、陰極電極、及び前記陽極電極及び前記陰極電極の間の電解質を含む。
【0086】
前記陰極電極は、亜鉛、又はリチウムを含む。
【0087】
前記電解質は、固体電解質である。一実施例によると、後述するように、前記電解質は、バクテリアセルロース、及び前記バクテリアセルロースに結合したキトサンを含む複合繊維が、網を構成するメンブレンである。又は、前記電解質は、酸化物系、硫化物系、又は、ポリマー系電解質である。
【0088】
前記陽極電極は、図1及び図2で説明した前記電極構造体を含み、酸素を陽極活物質として使用する。
【0089】
以下、本発明の具体的な実験例に、他の電極構造体、及びこれを含む金属空気電池の特性評価結果について説明する。
【0090】
<実験例1による電極構造体及び二次電池の製造>
硫黄を有する第1の前駆体として、ジチオオキサミド(dithiooxamide)を準備し、リンを有する第2の前駆体として、テトラデシルホスホン酸及びイホスファミドの混合物(1:1M%)を準備し、銅を有する第3の前駆体として、塩化銅(copper chloride)を準備し、溶媒として、エタノール及びエチレンジアミンの混合物(1:3v/v%)を準備した。
【0091】
第1乃至第3の前駆体を溶媒に添加した後、撹拌して、懸濁液を製造した。
【0092】
以後、2.5M%の水酸化アンモニウムを、第1の還元剤として添加し、2時間撹拌し、120℃で6時間、熱処理した後、中間生成物を得、脱イオン水及びエタノールで洗浄し、50℃の真空で乾燥した。
【0093】
氷水槽で、第2の還元剤であるTriton X-165、及び硫黄元素供給源である亜硫酸水素ナトリウムを有する脱イオン水20mlに、中間生成物を混合及び撹拌した。以後、120℃で24時間、加圧熱処理して、銅、リン、及び硫黄の化合物として形成され、フィブリル化された複数の繊維が、網をなすメンブレンを製造した。
【0094】
メンブレンを脱イオン水及びエタノールで洗浄して、中性pHで調整し、-70℃で2時間、保管した後、液体窒素に浸漬し、真空状態で凍結乾燥して、(101)結晶面が発達された実験例1によるCuPS電極構造体を製造した。
【0095】
実験例1による電極構造体の製造過程で、硫黄を有する前記第1の前駆体、及びリンを有する前記第2の前駆体の割合を調整して、CuPSにおいて、P及びSの割合をそれぞれ、0.1:0.9、0.2:0.8、0.3:0.7、0.5:0.5、0.7.0.3、及び0.9:0.1に調整した。
【0096】
実験例1によるCuPS電極構造体を陽極として用い、後述する実験例による固体電解質、及びパターニングされた亜鉛陰極を積層して、実験例1による亜鉛空気電池を製造した。
【0097】
<実験例2による電極構造体の製造>
前述した実験例1と同一の方法で行い、溶媒として、エタノール及びトルエンの混合物(1:1v/v%)を用い、150℃で24時間、加圧熱処理を行って、実験例2によるCuPS電極構造体を製造した。
【0098】
実験例1による電極構造体の製造過程で、硫黄を有する前記第1の前駆体、及びリンを有する前記第2の前駆体の割合を調整して、CuPSにおいて、P及びSの割合をそれぞれ、0.1:0.9、0.2:0.8、0.3:0.7、0.5:0.5、0.7.0.3、及び0.9:0.1に調整した。
【0099】
<実験例3による電極構造体の製造>
前述した実験例2と同一の方法で行い、リンを有する第2の前駆体を省略して、実験例3によるCuS電極構造体を製造した。
【0100】
<実験例4による電極構造体の製造>
前述した実験例2と同一の方法で行い、硫黄を有する第1の前駆体を省略して、実験例4によるCP電極構造体を製造した。
【0101】
<実験例による固体電解質の製造>
バクテリア菌株として、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)を準備し、キトサン誘導体を準備した。キトサン誘導体は、1gのキトサン塩化物を、1%(v/v)の水性酢酸で溶解させた懸濁液を、1Mのグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(glycidyltrimethylammonium chloride)で、N雰囲気で、65℃で24時間、処理した後、沈殿させ、エタノールで複数回ろ過して製造した。
【0102】
パイナップルジュース(2% w/v)、酵母(0.5% w/v)、ペプトン(0.5% w/v)、リン酸二ナトリウム(0.27% w/v)、クエン酸(0.015% w/v)、及び前記キトサン誘導体(2% w/v)を含むヘストリン-シュラム(HS)培地を準備し、20分間、121℃で蒸気滅菌させた。また、アセトバクター・キシリナムを、前培養ヘストリン-シュラム(HS)培地において、30℃で、24時間活性化させた後、酢酸を添加して、pH6に維持させた。
【0103】
以後、アセトバクター・キシリナムを、ヘストリン-シュラム(HS)培地において、30℃で、7日間、培養した。
【0104】
得られたバクテリアペリクル(pellicle)を脱イオン水で洗浄して、上澄液のpHを中性化させ、105℃の真空で脱水した。生成されたセルロースを、1NのHClを用いて、30分間、脱塩(demineralized)して、(質量比1:15、w/v)過量の試薬を除去した後、上澄液が中性pHとなるまで、脱イオン水を用いて、複数回遠心分離して精製した。最終的に、全ての溶媒を100℃で蒸発させた後、ベース複合繊維(キトサン-バクテリアセルロース(CBC))を製造した。
【0105】
2mMのTEMPO水溶液に分散された2gのベース複合繊維繊維を、NaBr(1.9mM)と反応させた。5mMのNaClOを酸化剤として使用した。
【0106】
反応懸濁液を超音波で撹拌し、室温で3時間の間、反応させた。0.5MのNaOH溶液を連続して添加することで、懸濁液のpHが10を維持するようにした。ついで、懸濁液に1NのHClを添加して、3時間の間、pHを中性に維持させた。懸濁液内に生成された酸化されたパルプを、0.5NのHClを用いて、3回洗浄し、脱イオン水を用いて、上澄液が中性pHとなるようにした。
【0107】
洗浄されたパルプを、30分間、アセトン、トルエンに交換し、乾燥させて、溶媒を蒸発させ、最終的に、第1の複合繊維(oCBC)を得た。
【0108】
N,N-ジメチルアセトアミド(35ml)溶液に分散した1gのベース複合繊維を、LiBr(1.25g)懸濁液と30分間、撹拌しながら反応させた。N-ブロモスクシンイミド(2.1g)、及びトリフェニルホスフィン(3.2g)をカップリング剤として用いた。2つの反応混合物を、10分間撹拌し、60分間、80℃で反応させた。
【0109】
ついで、反応懸濁液を室温で冷却させ、脱イオン水に添加し、ろ過し、脱イオン水及びエタノールでリンスし、凍結乾燥させて、臭素化されたベース複合繊維(bCBC)を得た。
【0110】
臭素化されたベース複合繊維を、100mlのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、1.2gの1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(octane)カップリング剤と反応させた。
【0111】
以後、混合物を、30分間、超音波処理した後、室温で24時間の間、反応させた。生成された溶液を、ジエチルエーテルに混合し、ジエチルエーテル/酢酸エチルで5回洗浄し、凍結乾燥させて、第2の複合繊維(Covalently quaternized CBC(qCBC))を得た。
【0112】
超音波を用いて、前記第1の複合繊維(oCBC)及び前記第2の複合繊維(qCBC)を、同一の重量比で、ジクロロメタン、1,2-プロパンジオール、及びアセトンの混合物(8:1:1 v/v/v%)で溶解させ、架橋剤として、1wt%のグルタルアルデヒド、及び開始剤として、0.3wt%のN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを添加した。
【0113】
真空室(200Pa)を用いて、ゲル懸濁液の気泡を除去し、60℃で6時間、ガラス上にキャストした。複合繊維膜に脱イオン水で凝固させて剥離し、脱イオン水でリンスし、真空乾燥させた。
【0114】
1MのKOH水溶液、及び0.1MのZnTFSIに、常温でそれぞれ6時間の間、イオン交換して、固体電解質(CBCs)を製造した。この後、COと反応及び炭酸塩の形成を避けるため、N雰囲気で、脱イオン水で洗浄及び浸漬工程を行う。
【0115】
図3は、本発明の実験例1により製造された電極構造体を撮影した写真であり、図4は、本発明の実験例1により製造された電極構造体の応力-ひずみグラフである。
【0116】
図3及び図4に示しているように、前記実験例1により製造された電極構造体(CuP0.50.5)を撮影し、約40%の相対湿度及び常温条件で、応力によるひずみを測定した。
【0117】
図3に示しているように、実験例1による電極構造体は、約10cmの長さを有し、フレキシブルであることが確認できる。
【0118】
また、図4に示しているように、1000回応力を与えた後にも、約94%の高い復元率を有し、実験例1による電極構造体が、高い柔軟性、圧縮性、及び弾性力を有することが確認できる。
【0119】
図5は、本発明の実験例1により製造された電極構造体のXRDグラフであり、図6は、本発明の実験例2により製造された電極構造体のXRDグラフであり、図7は、本発明の実験例3により製造された電極構造体のXRDグラフであり、図8は、本発明の実験例4により製造された電極構造体のXRDグラフである。
【0120】
図5乃至図8に示しているように、実験例1により様々なP及びSの組成比を有するCuPS電極構造体、実験例2により、様々なP及びSの組成比を有するCuPS電極構造体、実験例3及び実験例4によるCS及びCP電極構造体のXRD測定を行った。
【0121】
図5及び図6から確認できるように、実験例1及び実験例2によるCuPS電極構造体において、P及びSの組成比に応じて、パターンが変わることが確認でき、(101)結晶面に対応するピークのサイズが、他の結晶面に対応するピークのサイズよりも大きいことが分かる。
【0122】
また、図6の実験例2によるCuPS電極構造体と比較して、(101)結晶面が発達された実験例1によるCuPS電極構造体の場合、(101)結晶面に対応するピークのサイズが、(101)結晶面の他の結晶面に対応するピーク値と比較して、顕著に高いことが確認できる。
【0123】
図7及び8から分かるように、実験例3及び実験例4によるCuS及びCuP電極構造体の場合、実験例1及び2のCuPS電極構造体とは異なり、(101)結晶面に対応するピークが大きくないか、又は、(101)結晶面に対応するピークがみられなかった。
【0124】
また、実験例1及び2のCuPS電極構造体は、斜方晶系(orthorhombic)の結晶構造Pnm21スペース群として、コベリン(covellite)相を有することが分かり、実験例3のCuS電極構造体は、六方晶系(hexagonal)の結晶構造P6/mmcスペース群を有し、実験例4のCuP電極構造体は、六方晶系の結晶構造P6cmスペース群を有することが確認できる。
【0125】
図9は、本発明の実験例1による電極構造体のSEM写真を撮影した図であり、図10は、本発明の実験例1による電極構造体のTEM写真を撮影した図であり、図11は、本発明の実験例1による電極構造体の原子構造のシミュレーション及び格子縞を示す図である。
【0126】
図9乃至図11に示しているように、実験例1によるCuPS電極構造体(CuP0.50.5)に対して、SEM写真及びTEM写真を撮影し、原子構造のシミュレーション及び格子縞を示した。図10の(a)は、実験例1の電極構造体の高解像度(スケールバー2nm)のTEM写真であり、図10の(b)は、実験例1の電極構造体の低解像度(スケールバー30nm)のTEM写真であり、図11の(a)は、実験例1の電極構造体の(101)結晶面の原子配列をシミュレートとして示す図であり、図11の(b)は、実験例1の電極構造体の格子縞のトポグラフィクプロットプロファイル(Topographic plot profile)を示す図である。
【0127】
図9から分かるように、実験例1の電極構造体は、複数の繊維が網を構成している。
【0128】
また、図10及び図11から分かるように、実験例1の電極構造体の格子間隔は、0.466nmである。
【0129】
図12は、本発明の実験例1による電極構造体のSEADパターンを示す図であり、図13は、本発明の実験例1による電極構造体のHAADF-STEM画像を示す図である。
【0130】
図12及び図13に示しているように、前記実験例1によるCuPS電極構造体(CuP0.50.5)の(101)面に対して、SEADパターン(スケール2nm-1)を求め、HAADF-STEM(High Angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscopy)画像を撮影し、Cu、P、及びSに対して、マッピング結果を示している。
【0131】
図12及び図13から、実験例1の電極構造体が(101)結晶面を有する斜方晶系の結晶構造であり、Cu、P、及びSの化合物から形成されていることが分かる。
【0132】
図14は、本発明の実験例1による電極構造体の比表面積及び気孔を説明するためのグラフである。
【0133】
図14に示しているように、前記実験例1によるCuPS電極構造体(CuP0.50.5)のBET表面積を測定した。実験例1による電極構造体は、比表面積1168m/gで、多孔性構造を有し、1~2nmの気孔を多量保有していることが確認できる。
【0134】
図15は、本発明の実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のXPS測定グラフである。
【0135】
図15に示しているように、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体に対して、XPS測定を行い、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のCu、P、及びSの比率を計算した。また、ICP(Inductively Coupled Plasma Spectrometer)、及びEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のCu、P、及びSの比率を、以下の表1~表3のように計算した。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
表1~表3から分かるように、実験例1による電極構造体は、Cu、P、及びSが、実質的に1:0.5:0.5の比率を有し、実験例3による電極構造体は、Cu及びSが実質的に1:1の比率を有し、実験例4による電極構造体は、Cu及びPが実質的に3:1の比率を有している。
【0140】
図16は、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、及び銅ホイルのEXAFS kχ(k)Rスペースフーリエ変換であり、図17は、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のCu 2p XPSスペクトラグラフであり、図18は、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のCu L-edge XANESスペクトラグラフであり、図19は、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、及び銅ホイルのCu K-edge XANESスペクトラグラフである。
【0141】
図16に、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、銅ホイル、及び30,000回の充放電サイクルが行われた、実験例1による電極構造体のEXAFS kχ(k)Rスペースフーリエ変換を示している。実験例1の電極構造体として、CuP0.50.5が使用されている。
【0142】
図16から、実験例1の電極構造体の場合、1/2S-Cu-1/2P結合を有し、コベリン結晶構造を有することが分かり、30,000回のサイクルが行われた後にも、構造的な変更なく、実質的に一定に維持されることが分かる。また、実験例3の電極構造体の場合、Cu-S結合が確認でき、実験例4の電極構造体の場合、Cu-Pの結合が確認できる。
【0143】
図17に示しているように、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、及び30,000回の充放電サイクルが行われた実験例1による電極構造体のCu 2p XPS測定を行い、図18に示しているように、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体のCu L-edge XANES測定を行い、図19に示しているように、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、及び銅ホイルのCu K-edge XANES測定を行った。
【0144】
図17及び図18から、930.9eV及び950.8eVで、Cu 2p3/2及びCu 2p1/2の2pから3dへの特性転移(characteristic transition)を確認することができ、これは、図19の約8986eVに対応し、結果として、C(II)酸化数が優勢であることが分かる。
【0145】
また、図17及び図18において、実験例4のCP電極構造体のピークが、約2.8eV右側へ移動したことは、Cu(I)の3d10状態(state)への転移を示している。また、実験例1の電極構造体のように変形した格子は、Cu 3d及びS 2pを混成化して、Cu 3dからS 2pに電子がより容易に伝達されるようにすることができる。
【0146】
図20は、本発明の実験例1及び実験例3による電極構造体のS K-edge XANESスペクトラグラフであり、図21は、本発明の実験例1及び実験例3による電極構造体のS L-edge XANESスペクトラグラフであり、図22は、本発明の実験例1及び実験例3による電極構造体のS 2p XPSスペクトラグラフである。
【0147】
図20乃至図22に示しているように、実験例1及び実験例3による電極構造体のS K-edge XANESスペクトラ、及びS L-edge XANESスペクトラを測定し、実験例1及び実験例3による電極構造体、及び30,000回のサイクルが行われた実験例1による電極構造体のS 2p XPSスペクトラを測定した。実験例1の電極構造体として、CuP0.50.5が用いられている。
【0148】
図20に示しているように、実験例1の電極構造体の場合、約2471eVで、プレエッジ(pre-edge)が確認され、約2477eVで、ブロードエッジ(broad-edge)が確認され、これは、S2-状態(state)を意味する。
【0149】
図22に示しているように、実験例1の電極構造体は、30,000回の充放電サイクルが行われた後にも、実質的に同一構造を維持することが確認でき、S 2p3/2及びS 2p1/3の電子が、S L3,2-edgeに対応する電子のない反結合性状態に、スピン軌道(spin-orbit)転移することが分かる。
【0150】
図23は、本発明の実験例1及び実験例4による電極構造体のP K-edge XANESスペクトラグラフであり、図24は、本発明の実験例1及び実験例4による電極構造体のP L-edge XANESスペクトラグラフであり、図25は、本発明の実験例1及び実験例3による電極構造体のP 2p XPSスペクトラグラフである。
【0151】
図23乃至図25に示しているように、実験例1及び実験例4による電極構造体のP K-edge XANESスペクトラ、及びP L-edge XANESスペクトラを測定し、実験例1及び実験例4による電極構造体、及び30,000回の充放電サイクルが行われた実験例1による電極構造体のP 2p XPSスペクトラを測定した。
【0152】
図23乃至図25に示しているように、2144.2eV及び2152.6eVで、X線が吸収され、これは、P 2p状態で電子が満たさないdオービタルへの臨界電子転移であって、約129eV及び約129.8eVで、P2p3/2及びP2p1/2のスピン軌道分割(split)が発生することが分かる。
【0153】
図26は、本発明の実験例1による電極構造体のTGA測定結果である。
【0154】
図26に示しているように、実験例1によるCuPS電極構造体(CuP0.50.5)を、窒素ガス及び大気ガス雰囲気で、5℃に昇温しながらTGA分析を行った。
【0155】
図26から、実験例1による電極構造体は、高温で安定した状態を維持することが分かる。窒素雰囲気では、605℃~732℃で重量が失われ、大気ガス雰囲気では、565℃~675℃で重量が失われている。大気ガス雰囲気と比較して、窒素ガス雰囲気で更に安定していることが分かり、これは、実験例1による電極構造体におけるCuOの形成のためである。
【0156】
結果として、実験例1による電極構造体は、斜方晶系結晶構造の高い熱的安定性を有することが確認できる。
【0157】
図27は、本発明の実験例1及び実験例2による電極構造体のORR特性を説明するためのCV(Cyclic voltammogram)グラフであり、図28は、本発明の実験例3及び実験例4による電極構造体、及びPt/C電極のORR特性を説明するためのCVグラフである。
【0158】
図27及び図28に示しているように、電解質として、0.1MのKOHを用いて、実験例1乃至実験例4による電極構造体及び市販のPt/C電極(20wt%)の循環電流電圧曲線を測定した。実験例1及び実験例2の電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。図27及び図28における点線は、窒素飽和条件であり、実線は、酸素飽和条件である。
【0159】
図27及び図28から、実験例1乃至実験例4による電極構造体の酸素還元電位を確認することができ、商用化されたPt/C電極と比較しても、優れたORR特性を有することが分かる。
【0160】
図29は、本発明の実験例1乃至実験例4による電極構造体、Pt/C電極、及びカーボンファイバーのORR特性を説明するためのLSV(linear sweep voltammetry)グラフであり、図30は、本発明の実験例1乃至実験例4による電極構造体、及びPt/C電極のRRDE(Rotating Ring Disk Electrode)polarization plot及び電子移動係数(electron transfer number)グラフである。
【0161】
図29乃至図30に示しているように、実験例1乃至実験例4による電極構造体、市販のPt/C電極、及び市販のカーボンファイバーに対して、ORR特性を比較した。実験例1及び実験例2の電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。また、実験例1乃至実験例4による電極構造体、及びPt/C電極のRRDE polarization plot及び電子移動係数を示し、実験例1による電極構造体のOH 収率を示している。
【0162】
図29から、実験例1により、(101)結晶面が強化したCuPS電極構造体のORR特性が最も優れ、電子移動係数値が最も高いことが確認できる。また、実験例2のCuPS電極構造体、及び実験例3のCuS電極構造体も、市販のPt/Cよりも少し低いが、優れたORR特性を有することが確認できる。
【0163】
結果として、本発明の実験例1乃至実験例3による電極構造体を用いて、Pt/Cよりも安価で、Pt/Cと同等以上のORR特性を有する電極構造体を製造可能であることが確認できる。
【0164】
図31は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極の化学的耐久性を比較したグラフである。
【0165】
図31に示しているように、0.1MのKOHを用いて、1600rpm条件で、実験例1による電極構造体及び市販のPt/C電極に、メタノール(2M)及びCO(10V%)を注入して、化学的耐久性を測定した。実験例1による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0166】
図31に示しているように、実験例1による電極構造体の場合、メタノール及びCOが注入された後にも、安定して駆動することが確認できる。一方、Pt/C電極の場合、メタノールが注入されるか、又は、COが注入された場合、電流値が顕著に低下することが確認できる。
【0167】
結果として、本発明の実験例1によるCuPS電極構造体が、商用化されたPt/C電極と比較して、高いORR特性を有することはもちろん、優れた耐化学性を有することが分かる。これにより、本発明の実験例1によるCuPS電極構造体が、アルカリ環境で安定して活用されることが分かる。
【0168】
図32は、本発明の実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、及びカーボンファイバーのORR特性を説明するためのEIS(Electrochemical Impedance Spectroscopy)グラフである。
【0169】
図32に示しているように、0.1MのKOHを用いて、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体及びカーボンファイバーのEIS測定を行った。実験例1による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0170】
図32から、実験例1のCuPS電極構造体が、最も低いインピーダンス値を有し、実験例1のCuPS電極構造体、実験例3のCuS電極構造体、実験例4のCP電極構造体、及びカーボンファイバーの順に、高いORR特性を有することが確認できる。
【0171】
図33は、本発明の実験例1による電極構造体のORR特性を説明するためのサイクル回数によるLSV及びCVグラフであり、図34は、Pt/C電極のサイクル回数によるCV及びLSVグラフであり、図35は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極のORR特性を説明するためのクロノアンペロメトリー(chronoamperometric)測定グラフ、及びファラデー効率(Faradaic efficiency)を測定した図である。
【0172】
図33乃至図35に示しているように、0.1MのKOHを用い、酸素条件で、実験例1によるCuPS電極構造体及び市販のPt/C電極に対して、サイクル回数によるLSV及びCV測定を行った。また、実験例1によるCuPS電極構造体及びPt/C電極に対して、0.9Vの条件でクロノアンペロメトリーで測定し、実験例1によるCuPS電極のファラデー効率を測定した。実験例1による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0173】
図33乃至図35から、実験例1による電極構造体は、30,000回の充放電サイクルが行われた後にも、実質的な変化なく、安定して駆動することが確認できる。また、約500時間の間、実質的な変化なく、安定して駆動され、約98%以上のファラデー効率を有することが確認できる。
【0174】
一方、Pt/C電極の場合、サイクルが行われることによって、電流密度値が顕著に減少し、実験例1の電極構造体と比較して、顕著に特性が低下することが確認できる。
【0175】
結果として、実験例1によるCuPS電極構造体が、商用化されたPt/C電極と比較して、高いORR特性及び優れた耐化学性を有することはもちろん、長寿命を有することが分かる。
【0176】
図36は、本発明の実験例1による電極構造体のOER特性を説明するためのガスクロマトグラフィ測定結果である。
【0177】
図36に示しているように、0.1MのKOHを用い、酸素条件で、実験例1によるCuPS電極構造体のガスクロマトグラフィ測定を行った。実験例1による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0178】
図36から、実験例1によるCuPS電極構造体の表面で、酸素ガスが発生することが確認できる。
【0179】
図37は、本発明の実験例1乃至実験例4による電極構造体、カーボンファイバー、及びRuO電極のOER特性を説明するためのLSVグラフ及びターフェル(tafel)プロファイルであり、図38は、本発明の実験例1、実験例3、実験例4、及びカーボンファイバーのOER特性を説明するためのEISグラフである。
【0180】
図37及び図38に示しているように、実験例1乃至実験例4による電極構造体、カーボンファイバー、及びRuO電極のLSV測定を行い、ターフェル値を示している。また、実験例1、実験例3、及び実験例4による電極構造体、及びカーボンファイバーのEIS測定を行った。実験例1及び実験例2による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0181】
図37及び図38から、実験例1のCuPS電極構造体、RuO電極、実験例2のCuPS電極構造体、実験例4のCP電極構造体、実験例3のCuS電極構造体、及びカーボンファイバーの順に、高いOER特性を有することが確認できる。特に、実験例1によるCuPS電極構造体は、10mAcm-2で260mVに最も低い過電圧値を有し、ターフェル値も、58mVdec-1であることが確認でき、商用化されたRuOと比較して、顕著に高いOER特性を有することが分かる。
【0182】
図39は、本発明の実験例1による電極構造体及びRuO電極のOER特性を説明するためのサイクル回数によるLSVグラフであり、図40は、本発明の実験例1による電極構造体及びRuO電極のOER特性を説明するためのクロノアンペロメトリー測定グラフ及びファラデー効率を測定した図である。
【0183】
図39及び図40に示しているように、0.1MのKOHを用い、1600rpm条件で、実験例1によるCuPS電極構造体及び市販のRuO電極に対して、サイクル回数によるLSV測定を行った。また、実験例1によるCuPS電極構造体及びRuO電極に対して、1.5V条件で、クロノアンペロメトリーで測定し、実験例1によるCuPS電極のファラデー効率を測定した。実験例1による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0184】
図39及び図40から、実験例1による電極構造体は、30,000回のサイクルが行われた後にも、実質的な変化なく、安定して駆動することが確認できる。また、約500時間の間、実質的な変化なく、安定して駆動され、約99%以上のファラデー効率を有することが確認できる。
【0185】
これに対して、RuO電極の場合、サイクルが行われることによって、過電圧が急激に増加して、電流密度値が急激に低下し、24時間後に、85%以上の損失が発生することが確認できる。
【0186】
結果として、実験例1によるCuPS電極構造体が、商用化されたRuO電極と比較して、高いOER特性を有することは勿論のこと、長寿命を有することが分かる。
【0187】
図41は、本発明の実験例1乃至実験例4による電極構造体、Pt/C電極、RuO電極、及びカーボンファイバーの両機能性(bifunctional)の酸素特性を説明するためのグラフであり、図42は、本発明の実験例1による電極構造体と、現在まで報告された他の電極の両機能性の酸素特性を比較したグラフである。
【0188】
図41及び図42に示しているように、実験例1乃至実験例4による電極構造体、Pt/C電極、RuO電極、及びカーボンファイバーのORR及びOER特性を比較した。実験例1及び実験例2による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。可逆的な酸素の両機能性反応は、ORR及びOERの過電圧の差(ΔE)により決められ、差が小さいほど、高い可逆性を有することができる。
【0189】
図41に示しているように、実験例1の電極構造体の場合、ORR及びOERの過電圧の差は、0.59Vであって、商用化されたPt/C電極及びRuO電極と比較して、優れた可逆性を有することが確認できる。
【0190】
また、図42に示しているように、実験例1の電極構造体の場合、現在まで報告された他の電極と比較しても、ORR及びOERの過電圧の差が最も少なく、OER及びORR反応に対する優れた可逆性を有することが確認できる。
【0191】
図43は、本発明の実験例1乃至実験例4、Pt/C電極、及びカーボンファイバーのHER特性を説明するためのLSVグラフであり、図44は、本発明の実験例1による電極構造体、及びPt/C電極のHER特性を説明するためのクロノアンペロメトリー測定グラフであり、図45は、本発明の実験例1乃至実験例4、Pt/C電極、及びカーボンファイバーのHER特性を説明するためのターフェルプロファイルである。
【0192】
図43乃至図45に、実験例1乃至実験例4による電極構造体、カーボンファイバー、及びPt/C電極のLSV測定を行い、ターフェル値を示している。また、実験例1による電極構造体及びPt/C電極に対して、クロノアンペロメトリーで測定した。実験例1及び実験例2による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0193】
図43乃至図45から、実験例1の電極構造体、Pt/C電極、実験例2の電極構造体、実験例4の電極構造体、実験例3の電極構造体、及びカーボンファイバーの順に、HER特性が優れていることが分かる。
【0194】
特に、実験例1によるCuPS電極構造体が、商用化されたPt/C電極と比較して、高いHER特性を有することが確認できる。特に、実験例1の電極構造体のターフェル値は、20mVdec-1と、Pt/C電極のターフェル値(30mVdec-1)よりも低く、これは、実験例1の電極構造体が、HER過程が、ボルマー-ターフェル(Volmer-Tafel)メカニズムで行われることを意味する。
【0195】
図46は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極のHER特性を説明するためのサイクル回数によるLSVグラフである。
【0196】
図46に示しているように、実験例1によるCuPS電極構造体及びPt/C電極に対して、サイクル回数によるLSV測定を行った。
【0197】
図46から、Pt/C電極の場合、20,000回のサイクルが行われた後、過電圧が大きく増加して、HER特性が急激に低下することが確認できる。それに対して、実験例1による電極構造体は、30,000回のサイクルが行われた後にも、実質的な変化なく、安定して駆動されることが確認できる。
【0198】
結果として、実験例1によるCuPS電極構造体が、商用化されたPt/C電極と比較して、高いHER特性を有することはもちろん、長寿命を有することが分かる。
【0199】
図47は、本発明の実験例1による電極構造体と、現在まで報告された他の電極のHER特性を比較したグラフである。
【0200】
図47に示しているように、実験例1による電極構造体(CuP0.50.5)の場合、現在まで報告された他の電極と比較して、過電圧値が小さいことが確認でき、これにより、実験例1による電極構造体が、高価な貴金属を使用することなく、高いHER特性を具現できることが分かる。
【0201】
図48は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極の酸性環境で、ORR特性を説明するためのLSVグラフであり、図49は、本発明の実験例1による電極構造体及びPt/C電極の酸性環境で、HER特性を説明するためのLSVグラフであり、図50は、本発明の実験例1による電極構造体と、現在まで報告された他の電極の酸性環境で、HER特性を比較したグラフである。
【0202】
図48及び図49に示しているように、0.1MのHClOを用いて、ORR特性を確認するため、実験例1による電極構造体及びPt/C電極のLSV測定を行った。また、0.5MのHSO環境で、実験例1による電極構造体と、現在まで報告された他の電極のHER特性を比較した。実験例1による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0203】
図48から分かるように、実験例1による電極構造体は、酸性環境でも安定して駆動されて、10,000回のサイクルが行われた後にも、実質的なORR特性が変わっていない。これに対して、Pt/C電極は、酸性環境で、10,000回のサイクルが行われてた後、過電圧が急激に増加して、ORR特性が低下したことが分かる。
【0204】
また、図49から、実験例1の電極構造体は、20,000回のサイクルが行われた後、少し過電圧が増加して、酸性環境でも、HER特性が安定して維持されているが、Pt/C電極の場合、20,000回のサイクルが行われた後、顕著に過電圧が増加して、HER特性が低下することが確認できる。
【0205】
また、図50から、実験例1の電極構造体は、現在まで報告された他の電極と比較して、酸性環境でも高いHER特性を維持することが確認できる。
【0206】
図51は、本発明の実験例1及び実験例2による電極構造体、Pt/C電極、及びRuO電極のORR、OER、及びHER特性を比較するためのmass activityグラフである。
【0207】
図51に示しているように、実験例1及び実験例2による電極構造体、Pt/C電極、及びRuO電極のORR、OER、及びHERで、mass activityを計算した。実験例1及び2による電極構造体は、CuP0.50.5を用いた。
【0208】
図51に示しているように、実験例1及び実験例2による電極構造体が、ORR、OER、HERにおいて、Pt/C電極及びRuO電極と比較して、高いmass activityを有することが確認できる。
【0209】
特に、実験例1による電極構造体の場合、30,000回のサイクルが行われた後にも、mass activity値が、実質的な変化なく、維持されることが分かる。
【0210】
結果として、実験例1及び実験例2による電極構造体が、商用化されたPt/C及びRuOと比較して、高いORR、OER、HER特性を有することが確認できる。
【0211】
図52は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のインシチュ(in-situ)XRD測定グラフであり、図53は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体を撮影したHRTEM写真である。
【0212】
図52及び図53に、実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のインシチュXRD測定を行い、これと共に、定電流(galvanostatic)充放電プロファイル、及び実験例1の電極構造体のユニットセルのボリューム変化を示している。そして、これと共に、実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のHRTEM写真を撮影した。
【0213】
図52及び図53から、実験例1の電極構造体は、2θ値が18.5°~19.5°の範囲内でピークがみられ、放電状態で充電が行われることによって、ピークに対応する2θ値が左側に移動して減少し、ピークが2つに分割されることが確認できる。また、格子間隔が0.466nmで2.2Vに緩衝された場合、0.478nmに増加して、ユニットセルのボリュームが、287.2Åから294.6Åに増加したことが確認できる。すなわち、充放電の間、実験例1の電極構造体が斜方晶系の結晶構造を維持しながら、ソリッドソリューション反応(solid-solution reaction)が発生することが分かる。
【0214】
図54は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のCu K-edge XANESスペクトラグラフであり、図55は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のS K-edge及びP L-edge XANESスペクトラグラフであり、図56は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のS L3,2-edge XANESスペクトラグラフであり、図57は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のS 2p XPSスペクトラグラフであり、図58は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のP 2p XPSスペクトラグラフである。
【0215】
図54乃至図58に示しているように、実験例1による二次電池の充放電による、実験例1による電極構造体のCu K-edge、S K-edge、P L-edge、S L-edge XANES、及びS 2p XPS測定を行った。
【0216】
図54から、1.7Vから2.2Vに充電される状態、及び2.2Vから0.0Vに放電される過程で、Cu K-edgeの可逆的な変換を確認することができる。
【0217】
また、図55の(a)から分かるように、S K-edgeスペクトラで、充電状態となることにつれ、プレエッジの強度が増加し、ブロードエッジが約2.9eV増加している。
【0218】
プレエッジの強度増加は、フェルミレベルよりも高い硫黄の非占有状態(unoccupied state)が強化したことを意味し、これは、S 3p及びCu 3dの電子により補償される酸化還元反応に対応することができる。また、ブロードエッジの移動は、S2-からSy-(y<2)への電子密度の減少を意味する。
【0219】
また、図56及び図57から、充電後、S 2p XPSで、162.2~163.3eVの高い結合エネルギーに対する更なる2つのピークが確認でき、S L3,2-edgeが1.5eV移動しており、これは、部分的に酸化されたSn-(n<2)を意味する。放電後、S 2p XPSにおいて、更なる2つのピークは消えており、S L3,2-edgeが充電前状態に回復したことが分かり、もって、硫黄の酸化還元反応が可逆的に行えることが確認できる。
【0220】
図55の(b)及び図58から、充電及び放電過程で、リンの可逆的な酸化還元反応を確認することができる。充電後、プレエッジ及びブロードエッジがそれぞれ、約0.41eV及び0.32eV移動しており、P 2p XPSにおいて、更なる2つのピークが確認でき、これは、酸化されたリン(P- Pn-、2<n<3)の存在を確認することができる。また、放電後、P 2p XPSにおいて、更なる2つのピークは消えており、充電前の状態に回復して、可逆的な酸化還元反応が行えることが確認できる。
【0221】
図59は、本発明の実験例1による二次電池の充放電状態で、実験例1による電極構造体のHRTEM写真を撮影した図である。
【0222】
図59に示しているように、実験例1による二次電池の充電及び放電状態で、実験例1による電極構造体のHRTEM写真を撮影した。実験例1による電極構造体として、CuP0.10.9、CuP0.50.5、及びCuP0.90.1を用いた。図59のa、b、cは、CuP0.10.99のHRTEM写真であり、図59のd、e、fは、CuP0.50.5のHRTEM写真であり、図59のg、h、iは、CuP0.90.1のHRTEM写真である。
【0223】
前述したように、CuP0.10.9及び CuP0.90.1の場合、S 3pバンドよりもCuの酸化還元バンドが高い箇所に位置し、酸化された硫黄が不安定となることがある。これにより、図59に示しているように、充放電が行われても、格子間隔が可逆的に回復しないことが確認できる。これに対して、CuP0.50.5の場合、充電前の格子間隔が0.466nmであり、充電後の格子間隔が0.478nmであり、放電後の格子間隔が0.466nmであって、充電及び放電が行われた後、格子間隔が可逆的に回復することが確認できる。
【0224】
図60は、本発明の実験例1による電極構造体において、結晶面によるOER、ORR、及びHER特性を評価したグラフである。
【0225】
図60に示しているように、実験例1によるCuPS電極構造体の結晶面から、OER及びORR反応(bifunctional activity)に対する過電圧、及びHER反応に対する過電圧を、離散フーリエ変換で計算した。
【0226】
図60から、(101)結晶面の過電圧値が最も低いことが確認でき、もって、本発明の実施例により、(101)結晶面が発達された電極構造体のORR、OER、HER特性が向上することが確認できる。
【0227】
結果として、(101)結晶面が発達した前記電極構造体を製造し、これを金属空気電池の陽極に活用することが、金属空気電池の充放電特性を向上させる効率的な方法であることが分かる。
【0228】
図61は、本発明の実験例1による電極構造体のP及びSの組成比によるORR、OER、及びHER特性を評価したグラフである。
【0229】
図61に示しているように、実験例1によるCuPS電極構造体において、P及びSの組成比によるORR、OER、及びHER特性を測定して示している。
【0230】
図61から、CuPS電極構造体において、Pの組成比が0.3超え0.7未満であり、Sの組成比が0.7未満0.3超えの場合、ORR、OER、及びHER特性が優れたことが確認できる。言い換えると、CuPS電極構造体において、Pの組成比が0.3超え0.7未満であり、Sの組成比が0.7未満0.3超えとなるように制御することが、ORR、OER、及びHER特性を向上させる効率的な方法であることが確認できる。
【0231】
図62は、本発明の実験例1による電極構造体のP及びSの組成比によるCu 2p、P 2p、及びS 2p XPSスペクトラグラフである。
【0232】
図62に示しているように、実験例1によるCuPS電極構造体において、P及びSの組成比によるCu 2p、P 2p、及びS 2p XPS測定を行い、成分比を、以下の表4のように計算した。
【0233】
【表4】
【0234】
図63は、本発明の実験例3による電極構造体のCu及びSの組成比によるORR、OER、及びHER特性を評価したグラフであり、図64は、本発明の実験例3による電極構造体のCu及びSの組成比によるXRDグラフであり、図65は、本発明の実験例3による電極構造体のCu及びSの組成比による格子パラメータを示すグラフである。
【0235】
図63及び図64に示しているように、実験例3によるCuS電極構造体において、Cu及びSの比率に応じて、ORR、OER、及びHER特性を測定し、XRD測定を行い、格子パラメータ値を計算した。
【0236】
図63及び図64から、実験例3によるCuS電極構造体の場合、Sの組成比が0.35以上0.6以下であると、CuS電極構造体がコベリン結晶相を有し、向上したORR、OER、及びHER特性を有することが確認できる。また、Sの組成比が0.6を超える場合、CuS、CuS、残存したS、及びCuSなどの相が混合して見られ、Sの組成比が0.35未満の場合、CuS及び輝銅鉱(chalcocite)相が現れることが確認できる。
【0237】
また、図65から、Sの組成比が増加する場合、実験例3の電極構造体のユニットセルの格子パラメータが増加し、これにより、ユニットセルの体積が増加し、もって、図49でのように、ピーク値が移動することが確認できる。
【0238】
図66は、本発明の実験例1による電極構造体を含む亜鉛空気電池の電流密度による放電電圧を比較したグラフである。
【0239】
図66に示しているように、Pt/C及びRuO陽極、A201(Tokuyama)電解質、亜鉛陰極を用いて、比較例による亜鉛空気電池を製造し、実験例1による電極構造体を含む亜鉛空気電池と5~200mAcm-2電流密度による放電電圧を測定した。
【0240】
図66から、実験例1によるCuPS電極構造体を含む亜鉛空気電池の放電電圧が顕著に高いことが確認でき、特に、電流密度が高くなるほど、比較例によるPt/C及びRuO陽極を含む亜鉛空気電池は、放電電圧が顕著に低下することが確認できる。これに対して、実験例1によるCuPS電極構造体を含む亜鉛空気電池は、電流密度が高い条件でも、比較例による亜鉛空気電池と比較して、放電電圧が大きく低下しないことが確認できる。
【0241】
図67は、本発明の実験例1による亜鉛空気電池の充放電容量を説明するためのグラフである。
【0242】
図67に示しているように、前記比較例による亜鉛空気電池、及び実験例1による亜鉛空気電池の電流密度による容量を測定した。
【0243】
図67から、CuPS電極構造体を含む実験例1による亜鉛空気電池は、25mAcm-2条件ではもちろん、50mAcm-2条件でも、Pt/C及びRuOを陽極に用いた比較例による亜鉛空気電池の25mAcm-2の条件よりも、高い容量値を有することが確認できる。
【0244】
図68は、本発明の実験例1による亜鉛空気電池の充放電回数による電圧値を測定したグラフである。
【0245】
図68に示しているように、実験例1による亜鉛空気電池に対して、50mAcm-2条件及び25mAcm-2の条件で、充放電回数による電圧値を測定した。
【0246】
図68から、約600回の充放電の間、安定して駆動することが確認できる。すなわち、前述した本発明の実施例により製造されたCuPS電極構造体が、固体電解質と共に、陽極電極として、安定して使用できることが確認できる。
【0247】
以上、本発明を好適な実施例を使用して詳しく説明したが、本発明の範囲は、特定の実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲により解析されるべきである。また、当該技術分野における通常の知識を有する者であると、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの修正と変形が可能であることを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の実施例による電極構造体は、二次電池、エネルギー貯蔵システム、電気自動車用バッテリー、水電解セル、及び燃料電池のような電気化学素子など、様々な産業分野に利用可能である。
図1
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図3
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図5
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【国際調査報告】