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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】強化された発現系及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/67 20060101AFI20230406BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C12N15/67 Z
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022549993
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2021076719
(87)【国際公開番号】W WO2021164704
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】202010102211.1
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/081464
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518330176
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】チェン チー
(72)【発明者】
【氏名】チャン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チュン-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リー ヤーロン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ピン
(72)【発明者】
【氏名】リエン トゥーチュアン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ユイチェン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ツイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン チョン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ チエシン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、piggyBacトランスポゾン及び/又は制御エレメントを利用する有効的なタンパク質発現系に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’-ITR(逆方向末端反復)配列;
3’-ITR配列;及び
配列番号1~15及び配列番号35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;
を含む、核酸。
【請求項2】
前記5’ITR配列は、配列番号68と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなり、前記3’ITR配列は、配列番号60と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記5’ITR配列は、配列番号68を含み、前記3’ITR配列は、配列番号60を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
さらに5’-内部ドメイン及び3’-内部ドメインを含む核酸であって、前記5’-内部ドメインが、配列番号66と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含み、前記3’-内部ドメインが、配列番号67と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含み、前記5’-内部ドメインが前記5’-ITRに直接隣接しており、前記3’-内部ドメインが前記3’-ITRに直接隣接している、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
前記核酸は、配列番号1~15からなる群から選択される1つ以上の制御エレメント配列(例えば、配列番号2)を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
前記核酸は、配列番号35~46からなる群から選択される1つ以上の制御エレメント配列(例えば、配列番号36)を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
さらにプロモーター及びポリペプチドをコードする配列を含む核酸であって、前記ポリペプチドをコードする配列が前記プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
前記ポリペプチドをコードする配列は、2つの制御エレメント配列の間に位置する、請求項7に記載の核酸。
【請求項9】
さらにプロモーター及び2つ以上のポリペプチドをコードする配列を含み、前記2つ以上のポリペプチドをコードする配列が前記プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項10】
前記配列が抗体重鎖及び抗体軽鎖をコードする、請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
前記核酸は、さらに配列番号35~46からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一性を有するWXRE配列を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項12】
前記核酸が2つ以上の発現カセットを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項13】
前記核酸が選択マーカーを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項14】
前記選択マーカーは、抗生物質耐性遺伝子、蛍光タンパク質をコードする配列、又はlacZである、請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項16】
配列番号68と少なくとも95%同一性を有する配列からなる5’ITR配列;
非トランスポゾン異種DNA配列;及び
配列番号60と少なくとも95%同一性を有する配列からなる3’ITR配列;
を5’から3’へ含む、トランスポゾンベクター。
【請求項17】
前記5’ITR配列が配列番号68からなり、前記3’ITR配列が配列番号60からなる、請求項16に記載のトランスポゾンベクター。
【請求項18】
さらに5’-内部ドメイン及び3’-内部ドメインを含むトランスポゾンベクターであって、前記5’-内部ドメインが配列番号66と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一性を有する配列を含み、前記3’-内部ドメインが、配列番号67と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一性を有する配列を含み、前記5’-内部ドメインが前記5’-ITRに直接隣接しており、前記3’-内部ドメインが前記3’-ITRに直接隣接している、請求項16に記載のトランスポゾンベクター。
【請求項19】
前記非トランスポゾン異種DNA配列がプロモーター及び1つ以上のポリペプチドをコードする配列を含み、前記1つ以上のポリペプチドをコードする配列が前記プロモーターに作動可能に連結されている、請求項16から18のいずれか一項に記載のトランスポゾンベクター。
【請求項20】
前記プロモーターは、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターである、請求項19に記載のトランスポゾンベクター。
【請求項21】
前記非トランスポゾン異種DNA配列は、さらに配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列を含む、請求項16から20のいずれか一項に記載のトランスポゾンベクター。
【請求項22】
前記非トランスポゾン異種DNA配列は、さらに配列番号35~46からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるWXRE配列を含む、請求項16から21のいずれか一項に記載のトランスポゾンベクター。
【請求項23】
前記非トランスポゾン異種DNA配列がマルチクローニングサイトを含む、請求項16から22のいずれか一項に記載のトランスポゾンベクター。
【請求項24】
以下の第1の核酸及び第2の核酸を含む発現系であって:
(a)
5’-ITR配列、
配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列を含む非トランスポゾン異種DNA配列、及び
3’-ITR配列
を含む第1の核酸;
(b)piggyBacトランスポザーゼをコードする第2の核酸。
【請求項25】
前記第2の核酸が、配列番号33と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるアミノ酸配列を有するpiggyBacトランスポザーゼをコードする、請求項24に記載の発現系。
【請求項26】
前記非トランスポゾン異種DNA配列がプロモーター及び1つ以上のポリペプチドをコードする配列を含み、前記1つ以上のポリペプチドをコードする配列が前記プロモーターに作動可能に連結されている、請求項24に記載の発現系。
【請求項27】
前記配列が抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をコードする、請求項26に記載の発現系。
【請求項28】
前記配列は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、組換えタンパク質、又は融合タンパク質をコードする、請求項26に記載の発現系。
【請求項29】
前記プロモーターは、CMVプロモーターである、請求項26に記載の発現系。
【請求項30】
前記プロモーターは、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、メタロチオネインプロモーター、又は糖質コルチコイド応答エレメント)である、請求項26に記載の発現系。
【請求項31】
前記非トランスポゾン異種DNA配列は、さらに配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列を含む、請求項24から30のいずれか一項に記載の発現系。
【請求項32】
前記非トランスポゾン異種DNA配列は、さらに配列番号35~46からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるWXRE制御エレメント配列を含む、請求項24から31のいずれか一項に記載の発現系。
【請求項33】
配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列を含む単離された核酸。
【請求項34】
さらにプロモーター及びタンパク質コード配列を含む、請求項33に記載の単離された核酸。
【請求項35】
前記制御エレメント配列は、前記プロモーターと前記タンパク質コード配列との間に位置する、請求項34に記載の単離された核酸。
【請求項36】
前記制御エレメント配列が前記タンパク質コード配列の3’末端に位置する、請求項34に記載の単離された核酸。
【請求項37】
前記制御エレメント配列が5’-UTR又は3’-UTRに転写可能である、請求項33から36のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項38】
さらに5’-ITR及び3’-ITRを含む核酸であって、前記制御エレメント配列が5’-ITRと3’-ITRとの間に位置する、請求項33から37のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項39】
請求項33から38のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項40】
piggyBacトランスポゾンを含有するベクターであって、
前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に以下の遺伝的エレメントを含む:
TR、5’-ITRスペーサー、IRを含む5’-ITR;
プロモーター;
配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;
タンパク質コード配列;及び
IR、3’-ITRスペーサー、TRを含む3’-ITR。
【請求項41】
piggyBacトランスポゾンを含有するベクターであって、
前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に以下の遺伝的エレメントを含む:
TR、5’-ITRスペーサー、IRを含む5’-ITR;
プロモーター;
タンパク質コード配列;
配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;及び
IR、3’-ITRスペーサー、TRを含む3’-ITR。
【請求項42】
piggyBacトランスポゾンを含有するベクターであって、
前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に以下の遺伝的エレメントを含む:
TR、3’-ITRスペーサー、IRを含む3’-ITR;
プロモーター;
配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;
タンパク質コード配列;及び
IR、5’-ITRスペーサー、TRを含む5’-ITR。
【請求項43】
piggyBacトランスポゾンを含有するベクターであって、
前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に以下の遺伝的エレメントを含む:
TR、3’-ITRスペーサー、IRを含む3’-ITR;
プロモーター;
タンパク質コード配列;
配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;及び
IR、5’-ITRスペーサー、TRを含む5’-ITR。
【請求項44】
前記TRが、配列番号61の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる;前記5’-ITRスペーサーは、配列番号62の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる;前記IRが、配列番号63の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる;前記TRが、配列番号64の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる;前記IRが、配列番号65の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる、請求項42又は43に記載のベクター。
【請求項45】
2つ以上の制御エレメント配列を含むベクターであって、それぞれは、配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である、請求項40から44のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項46】
さらに5’-内部ドメイン配列及び3’-内部ドメイン配列を含む、請求項40から45のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項47】
前記5’-内部ドメイン配列は、配列番号66と少なくとも又は約80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる;
前記3’-内部ドメイン配列は、配列番号67と少なくとも又は約80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる、請求項46に記載のベクター。
【請求項48】
前記制御エレメント配列が5’-UTR又は3’-UTRに転写可能である、請求項40から47のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項49】
さらにpiggyBacトランスポザーゼをコードする配列を含むベクターであって、前記piggyBacトランスポザーゼをコードする配列は、5’-ITRと3’-ITRとの間の領域以外にある、請求項40から48のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項50】
標的ポリペプチドを発現させるための、培養物中の細胞を産生する方法であって、
(a)
5’-ITR(逆方向末端反復)配列;
3’-ITR配列;
配列番号1~30及び配列番号35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;及び
標的ポリペプチドをコードする配列;を含むトランスポゾンベクターを細胞に導入すること、及び
(b) 適切な条件下で細胞を培養して、piggyBacトランスポゾンを細胞のゲノムに組み込み、
それにより、標的ポリペプチドを発現するための細胞を産生すること、
が含まれる。
【請求項51】
さらに、piggyBacトランスポザーゼをコードする配列を含有するベクターを細胞に取り込むことが含まれる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記トランスポゾンベクターは、piggyBacトランスポザーゼをコードする配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記トランスポゾンベクターは、マイクロインジェクション、高速推進、透過化、融合、又はエレクトロポレーションによって細胞に導入される、請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記細胞は、哺乳動物細胞又は昆虫細胞である、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
請求項1から14及び請求項33から38のいずれか一項に記載の核酸、請求項15から23、請求項39から49のいずれか一項に記載のベクター、又は請求項24から32のいずれか一項に記載の発現系を含む、細胞。
【請求項57】
前記細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
タンパク質を発現させるための方法であって、
細胞がタンパク質を発現することを可能にする条件下で請求項56又は57に記載の細胞を培養する;及び
タンパク質を収集・精製すること;
が含まれる。
【請求項59】
請求項56又は57に記載の細胞によって発現されるか、或いは請求項58に記載の方法によって生成されるタンパク質。
【請求項60】
請求項59に記載のタンパク質、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項61】
5’-ITR配列;
3’-ITR配列;及び
CHOに由来する1つ以上の制御エレメント配列
を含む核酸。
【請求項62】
以下の第1の核酸及び第2の核酸を含む発現系であって:
(a)piggyBacトランスポゾンを含む第1の核酸であって、前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に以下の遺伝的エレメントを含む:
第1のTTAA配列;
TR、5’-ITRスペーサー及びIRを含む5’-ITR;
5’-内部ドメイン(ID);
標的配列;
3’-ID;
IR、3’-ITRスペーサー及びTRを含む3’-ITR;及び
第2のTTAA配列
を含む前記第1の核酸;及び
(b)piggyBacトランスポザーゼをコードする第2の核酸。
【請求項63】
標的ポリペプチドを発現させるための細胞の産生方法であって、
(a)
5’から3’の方向に
第1のTTAA配列;
TR、5’-ITRスペーサー及びIRを含む5’-ITR;
5’-内部ドメイン(ID);
標的配列;
3’-ID;
IR、3’-ITRスペーサー及びTRを含む3’-ITR;及び
第2のTTAA配列;
という遺伝的エレメントを含むトランスポゾンベクターを細胞に導入すること;及び
(b)適切な条件下で前記細胞を培養すること
が含まれる。
【請求項64】
piggyBacトランスポゾンをゲノムに安定して組み込んだ細胞株であって、
前記piggyBacトランスポゾンには、
5’-ITR配列;
配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;及び
3’-ITR配列;
という遺伝的エレメントを含む。
【請求項65】
piggyBacトランスポゾンをゲノムに安定して組み込んだ細胞株であって:
前記piggyBacトランスポゾンには、
TR、5’-ITRスペーサー及びIRを含む5’-ITR;
5’-内部ドメイン(ID);
標的配列;
3’-ID;
IR、3’-ITRスペーサー及びTRを含む3’-ITR;という遺伝的エレメントを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、piggyBacトランスポゾン及び/又は制御エレメントを利用する有効的なタンパク質発現系に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えタンパク質には、細菌、酵母、真菌、昆虫、植物、哺乳類細胞など、多くの発現系がある。タンパク質発現系の大きな違いは、タンパク質の発現、単離、精製に影響を与える可能性がある。一例を挙げると、細菌などの低レベルの発現系では、生物学的活性を達成するためにグリコシル化などの複雑な翻訳後修飾を必要とする特定のタイプのタンパク質の発現に用いられることができない。また、多くの治療用タンパク質は、生物学的活性を達成するために、グリコシル化などの複雑な翻訳後修飾を必要とする。
【0003】
治療用組換えタンパク質を生産するための哺乳類の発現系は、通常製薬会社に使用されている。哺乳類細胞は、多くのタンパク質の治療上な活性に必要な、適切なタンパク質の折り畳みと複雑な翻訳後修飾を達成する能力を持っている。多くの哺乳類の細胞発現系は、治療用タンパク質の生産に使用することが承認されています。しかし、治療用組換えタンパク質の安定した哺乳類細胞発現系を確立することは時間のかかるプロセスであり、発現レベルが最適化されていない場合もあるため、大規模な生産には理想的とは言えない。
【0004】
したがって、さまざまな治療用組換えタンパク質を高いレベルで発現できる安定した細胞株を生成するための柔軟なプラットフォームとして使用できる、改良された発現系が必要です。タイムリーに製造プロセスへ供給でき、同じ宿主細胞で組換えタンパク質を発現するための安定した細胞株を生成する能力は、初期段階の医薬品開発において特に有用です。転写および翻訳効率が向上した発現系も必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、piggyBacトランスポゾン及び/又は制御エレメントを利用する有効的なタンパク質発現系に関する。この発現系は、標的核酸を細胞のゲノムに効率的に組み込んで、細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞など)でのタンパク質発現を大幅に増加させることができる汎用のツールを提供する。一態様では、発現系は、トランスポゾンベクターにおけるベクター配列(例えば、2つのpiggyBac ITR間の配列)を標的ゲノムに効率的に移行させることができる。前記システムは、様々なタンパク質(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖)を発現させるための安定した細胞株を確立するために使用できる。一態様では、piggyBac発現系をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞とともに使用して、組換えタンパク質を生産して、研究及び生物医薬品製造の両方の目的に供する。
【0006】
一態様では、本明細書で提供される核酸は、5’-ITR(逆方向末端反復);3’-ITR配列;及び配列番号1~30及び配列番号35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、5’ITR配列は、配列番号68と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなり、3’ITR配列は、配列番号60と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0008】
いくつかの実施形態において、5’ITR配列は、配列番号68を含む;3’ITR配列は、配列番号60を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の核酸は、さらに5’-内部ドメイン及び3’-内部ドメインを含む。いくつかの実施形態において、5’-内部ドメインが、配列番号66と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、3’-内部ドメインが、配列番号67と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、5’-内部ドメインが5’-ITRに直接隣接しており、3’-内部ドメインが3’-ITRに直接隣接している。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、配列番号1~15からなる群から選択される1つ以上の制御エレメント配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、配列番号35~46からなる群から選択される1つ以上の制御エレメント配列(例えば、配列番号36)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の核酸は、さらにプロモーター及びポリペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドをコードする配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、ポリペプチドをコードする配列は、2つの制御エレメント配列の間に位置する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の核酸は、さらにプロモーター及び2つ以上のポリペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、2つ以上のポリペプチドをコードする配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、配列が抗体重鎖及び抗体軽鎖をコードする。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、さらに配列番号35~46からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるWXRE配列を含む。いくつかの実施形態において、核酸が2つ以上の発現カセットを含む。いくつかの実施形態において、核酸が選択マーカーを含む。いくつかの実施形態において、選択マーカーは、抗生物質耐性遺伝子、蛍光タンパク質をコードする配列、又はlacZである。
【0015】
一態様では、本明細書は、本明細書に記載されるような核酸を含むベクターを提供する。
【0016】
一態様では、本明細書は、配列番号68と少なくとも95%同一である配列からなる5’ITR配列;非トランスポゾン異種DNA配列;及び配列番号60と少なくとも95%同一である配列からなる3’ITR配列が5’から3’へ含まれるトランスポゾンベクターを提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、5’ITR配列が配列番号68からなり、3’ITR配列が配列番号60からなる。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるようなトランスポゾンベクターは、さらに5’-内部ドメイン及び3’-内部ドメインを含む。いくつかの実施形態において、5’-内部ドメインが、配列番号66と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、3’-内部ドメインが、配列番号67と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において、5’-内部ドメインが5’-ITRに直接隣接しており、3’-内部ドメインが3’-ITRに直接隣接している。
【0019】
いくつかの実施形態において、非トランスポゾン異種DNA配列がプロモーター及び1つ以上のポリペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のポリペプチドをコードする配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターである。
【0020】
いくつかの実施形態において、非トランスポゾン異種DNA配列は、さらに配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、非トランスポゾン異種DNA配列は、さらに配列番号35~46からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるWXRE配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、非トランスポゾン異種DNA配列がマルチクローニングサイトを含む。
【0023】
一態様では、本明細書は、(a)5’-ITR配列;配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一性である制御エレメント配列を含む非トランスポゾン異種DNA配列;3’-ITR配列;を含む第1の核酸;及び(b)piggyBacトランスポザーゼをコードする第2の核酸を含む発現系を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態において、第2の核酸が、配列番号33と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一であるアミノ酸配列を有するpiggyBacトランスポザーゼをコードする。
【0025】
いくつかの実施形態において、非トランスポゾン異種DNA配列がプロモーター及び1つ以上のポリペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のポリペプチドをコードする配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0026】
いくつかの実施形態において、配列が抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をコードする。いくつかの実施形態において、配列は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、組換えタンパク質、又は融合タンパク質をコードする。
【0027】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、メタロチオネインプロモーター、又は糖質コルチコイド応答エレメント)である。
【0028】
いくつかの実施形態において、非トランスポゾン異種DNA配列は、制御エレメント配列をさらに含み、前記制御エレメント配列は、配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。
【0029】
いくつかの実施形態において、非トランスポゾン異種DNA配列は、WXRE制御エレメント配列をさらに含み、前記WXRE制御エレメント配列は、配列番号35~46からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。
【0030】
一態様では、本明細書は、配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列を含む単離された核酸を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、さらにプロモーター及びタンパク質コード配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、制御エレメント配列は、プロモーターとタンパク質コード配列との間に位置する。
【0033】
いくつかの実施形態において、制御エレメント配列は、タンパク質コード配列の3’末端に位置する。
【0034】
いくつかの実施形態において、制御エレメント配列が5’-UTR又は3’-UTRに転写可能である。いくつかの実施形態において、単離された核酸は、さらに5’-ITR及び3’-ITRを含み、制御エレメント配列が5’-ITRと3’-ITRとの間に位置する。
【0035】
一態様では、本明細書は、本明細書に記載されるような核酸を含むベクターを提供する。
【0036】
一態様では、本明細書は、piggyBacトランスポゾンを含有するベクターを提供する。前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に、TR、5’-ITRスペーサー、IRを含む5’-ITR;プロモーター;配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;タンパク質コード配列;及びIR、3’-ITRスペーサー、TRを含む3’-ITR;という遺伝的エレメントを含む。
【0037】
一態様では、本明細書は、piggyBacトランスポゾンを含有するベクターを提供する。前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に、TR、5’-ITRスペーサー、IRを含む5’-ITR;プロモーター;タンパク質コード配列;配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;及びIR、3’-ITRスペーサー、TRを含む3’-ITR;という遺伝的エレメントを含む。
【0038】
一態様では、本明細書は、piggyBacトランスポゾンを含有するベクターを提供する。前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に、TR、3’-ITRスペーサー、IRを含む3’-ITR;プロモーター;配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;タンパク質コード配列;及IR、5’-ITRスペーサー、TRを含む5’-ITR;という遺伝的エレメントを含む。
【0039】
一態様では、本明細書は、piggyBacトランスポゾンを含有するベクターを提供する。前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に、TR、3’-ITRスペーサー、IRを含む3’-ITR;プロモーター;タンパク質コード配列;配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;及びIR、5’-ITRスペーサー、TRを含む5’-ITR;という遺伝的エレメントを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、5’-ITRが、配列番号68の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0041】
いくつかの実施形態において、3’-ITRが、配列番号60との逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0042】
いくつかの実施形態において、TRが、配列番号61の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0043】
いくつかの実施形態において、5’-ITRスペーサーは、配列番号62の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0044】
いくつかの実施形態において、IRが、配列番号63の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0045】
いくつかの実施形態において、TRが、配列番号64の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0046】
いくつかの実施形態において、IRが、配列番号65の逆配列又は逆相補配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0047】
いくつかの実施形態において、ベクターが2つ以上の制御エレメント配列を含む。制御エレメントのそれぞれは、配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である。
【0048】
いくつかの実施形態において、ベクターは、さらに5’-内部ドメイン配列及び3’-内部ドメイン配列を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、5’-内部ドメイン配列は、配列番号66と少なくとも又は約80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなり、3’-内部ドメイン配列は、配列番号67と少なくとも又は約80%、85%、90%、95%又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。
【0050】
いくつかの実施形態において、制御エレメント配列が5’-UTR又は3’-UTRに転写可能である。
【0051】
いくつかの実施形態において、ベクターは、さらにpiggyBacトランスポザーゼをコードする配列を含む。いくつかの実施形態において、piggyBacトランスポザーゼをコードする配列は、5’-ITRと3’-ITRとの間の領域以外にある。
【0052】
一態様では、本明細書は、標的ポリペプチドを発現するための細胞を産生する方法を提供する。前記方法は、(a)5’-ITR(逆方向末端反復)配列;3’-ITR配列;配列番号1~30及び35~58からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;及び標的ポリペプチドをコードする配列を含むトランスポゾンベクターを細胞に導入すること;及び(b)適切な条件下で細胞を培養することが含まれる。いくつかの実施形態において、piggyBacトランスポゾンは細胞のゲノムに組み込まれ、それにより、標的ポリペプチドを発現するための細胞を産生する。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記方法は、さらにpiggyBacトランスポザーゼをコードする配列を含有するベクターを細胞に導入することが含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、piggyBacトランスポザーゼをコードする配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、マイクロインジェクション、高速推進(high velocity propulsion)、透過化、融合、又はエレクトロポレーションによって細胞に導入される。いくつかの実施形態において、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞又は昆虫細胞である。
【0056】
一態様では、本明細書は、本明細書に記載されるような核酸、本明細書に記載されるようなベクター、又は本明細書に記載されるような発現系を含む細胞を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0058】
一態様では、本明細書は、タンパク質を発現させるための方法を提供する。前記方法は、本明細書に記載されるような細胞がタンパク質を発現することを可能にする条件下で培養される;及びタンパク質が収集及び精製されることが含まれる。
【0059】
一態様では、本明細書は、本明細書に記載されるような細胞によって発現されるか、或いは本明細書に記載されるような方法によって生成されるタンパク質を提供する。
【0060】
一態様では、本明細書は、本明細書に記載されるようなタンパク質及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0061】
一態様では、本明細書で提供される核酸は、5’-ITR配列;3’-ITR配列;及びCHOに由来する1つ以上の制御エレメント配列を含む。
【0062】
一態様では、本明細書は、以下の発現系を提供する。この発現系には、(a) piggyBacトランスポゾンを含む第1の核酸;前記piggyBacトランスポゾンには、5’から3’の方向に、第1のTTAA配列;TR、5’-ITRスペーサー及びIRを含む5’-ITR;5’-内部ドメイン(ID);標的配列;3’-ID;IR、3’-ITRスペーサー及びTRを含む3’-ITR;及び第2のTTAA配列;という遺伝的エレメントを含む;及び(b)piggyBacトランスポザーゼをコードする第2の核酸が含まれる。
【0063】
一態様では、本明細書は、標的ポリペプチドを発現するための細胞を産生する方法を提供する。前記方法は、(a)5’から3’の方向に、第1のTTAA配列;TR、5’-ITRスペーサー及びIRを含む5’-ITR;5’-内部ドメイン(ID);標的配列;3’-ID;IR、3’-ITRスペーサー及びTRを含む3’-ITR;及び第2のTTAA配列;という遺伝的エレメントを含むトランスポゾンベクターを細胞に導入すること、及び(b)適切な条件下で細胞を培養することが含まれる。
【0064】
一態様では、本明細書は、そのゲノムにpiggyBacトランスポゾンが安定して組み込まれた細胞株を提供する。前記piggyBacトランスポゾンには、5’-ITR配列;配列番号1~15からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%同一である制御エレメント配列;及び3’-ITR配列;という遺伝的エレメントを含む。
【0065】
一態様では、本明細書は、そのゲノムにpiggyBacトランスポゾンが安定して組み込まれた細胞株を提供する。前記piggyBacトランスポゾンには、TR、5’-ITRスペーサー及びIRを含む5’-ITR;5’-内部ドメイン(ID);標的配列;3’-ID;IR、3’-ITRスペーサー及びTRを含む3’-ITR;という遺伝的エレメントを含む:。
【0066】
一態様では、本公開は、トランスポゾンベクターを提供する。前記トランスポゾンベクターには、配列番号31と少なくとも95%同一である配列を含むか、或いはそれからなる第1のPBトランスポザーゼ認識部位配列;非トランスポゾン異種DNA配列;及び配列番号32と少なくとも95%同一である配列を含むか、或いはそれからなる第2のPBトランスポザーゼ認識部位配列;が含まれる。
【0067】
一態様では、本公開は、さらに本明細書に記載されるようなポリヌクレオチド分子を含むベクターに関する。いくつかの実施形態において、ベクターは、組換え発現ベクターである。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書は、1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子をさらに含むベクターを提供する。
【0069】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、抗体、融合タンパク質、酵素、可溶性タンパク質、膜タンパク質、構造タンパク質、リボソームタンパク質、ザイモゲン、細胞表面受容体タンパク質、転写調節タンパク質、翻訳調節タンパク質、クロマチンタンパク質、ホルモン、細胞周期調節タンパク質、Gタンパク質、神経活性ペプチド、免疫調節タンパク質、血液成分タンパク質(blood component protein)、イオンゲートタンパク質(ion gate protein)、熱ショックタンパク質、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、抗生物質耐性タンパク質、任意の上記タンパク質の機能的フラグメント、任意の上記タンパク質のエピトープフラグメント、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0070】
一態様では、本開示は、本明細書に記載されるようなベクターを含む組換え宿主細胞に関する。
【0071】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明で使用される方法及び材料が本明細書に記載されているが、当技術分野で知られている他の適切な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び例は例示にすぎず、限定することを意図したものではない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0072】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1A図1Aは、piggyBacトランスポゾンプラスミドを示す概略図である。
【0074】
図1B図1Bは、piggyBacトランスポザーゼプラスミドを示す概略図である。
【0075】
図2図2は、トランスフェクションされた宿主細胞における3つの抗体(A、B、及びC)のタンパク質発現レベルを示す棒グラフである。
【0076】
図3図3は、様々な制御エレメントを持つ宿主細胞におけるタンパク質発現レベルを示す棒グラフである。
【0077】
図4図4は、制御エレメント有り/なしの、piggyBacトランスポゾンプラスミドでトランスフェクションされた宿主細胞における3つの抗体(D、E、及びF)のタンパク質発現レベルを示す棒グラフである。
【0078】
図5図5は、(1)piggyBac 5’-ITR;(2)piggyBac 3’-ITR;及び(3)piggyBacトランスポザーゼのアミノ酸配列を示す。
【0079】
図6-1】図6-1は、WXRE IDs:A-Lの配列を示す。
【0080】
図6-2】図6-2は、WXRE IDs:A-Lの配列を示す。
【0081】
図6-3】図6-3は、WXRE IDs:A-Lの配列を示す。
【0082】
図6-4】図6-4は、WXRE IDs:A-Lの配列を示す。
【0083】
図6-5】図6-5は、WXRE IDs:A-Lの配列を示す。
【0084】
図6-6】図6-6は、WXRE IDs:A-Lの配列を示す。
【0085】
図6-7】図6-7は、WXRE IDs:A-Lの配列を示す。
【0086】
図6-8】図6-8は、WXRE IDs:A-Lの配列を示す。
【0087】
図7-1】図7-1は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0088】
図7-2】図7-2は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0089】
図7-3】図7-3は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0090】
図7-4】図7-4は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0091】
図7-5】図7-5は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0092】
図7-6】図7-6は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0093】
図7-7】図7-7は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0094】
図7-8】図7-8は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0095】
図7-9】図7-9は、WXRE IDs:A-Lの逆相補配列を示す。
【0096】
図8図8は、人CMWプロモーター及びヒトEF-1α遺伝子イントロン1の配列を示す。
【0097】
図9図9は、WXREが挿入されていないGFP発現ベクターの概略図を示す。
【0098】
図10図10は、WXREが挿入されているGFP発現ベクターの概略図を示す。
【0099】
図11図11は、融合タンパク質の発現レベルに対する転写制御エレメントA~Kの添加後の効果を示す。ここで、A1とA2はそれぞれ、転写制御エレメントAの順方向と逆方向を示す。そのほかも同様である。
【0100】
図12図12は、融合タンパク質の発現の特定の生産性(specific productivity)に対する転写制御エレメントA~Kの添加後の効果を示す。ここで、A1とA2はそれぞれ、転写制御エレメントAの順方向と逆方向を示す。そのほかも同様である。
【0101】
図13図13は、アダリムマブの重鎖を発現するWXRE挿入ベクターの概略図を示す。ここで、HCの意味は重鎖である。
【0102】
図14図14は、アダリムマブの軽鎖を発現するWXRE挿入ベクターの概略図を示す。ここで、LCの意味は軽鎖である。
【0103】
図15図15は、転写制御エレメントの異なる組み合わせ条件下での14日目のアダリムマブの発現レベルの比較を示す。ここで、サンプル1~12では、重鎖の上流と軽鎖の上流の転写制御エレメントの成分を表8に示す。
【0104】
図16図16は、PD-L1のA鎖、アダリムマブの重鎖(HC)、及び軽鎖(LC)のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0105】
DNAトランスポゾンは、動物のゲノムで自然に発生する反復配列である。昆虫のゲノムで最初に発見されたpiggyBacトランスポゾンには、トランスポザーゼや逆方向末端反復配列などの重要なエレメントが含まれている。piggyBacトランスポゾンシステムは、ゲノムとプラスミドの間で「カットアンドペースト」して、DNA配列を置き換えることができる。他のトランスポゾンシステムと比較して、piggyBacトランスポゾンは、末端逆方向反復配列と反復配列の間にある配列を、ゲノムDNAを他の修飾や損失なしに、「TTAA」ヌクレオチド配列を含むゲノムDNAに正確に置き換えることができる。トランスポゾンシステムは、幹細胞研究、遺伝子改変、及び細胞工学の多くの分野で使用されてきた。
【0106】
より速く、より効率的なタンパク質発現技術は、学界及び産業界の主要な関心事の1つである。一過性発現技術は、約2週間でグラムスケール(gram-scale)の組換えタンパク質を送達できるが、タンパク質の発現レベルは、古典的な安定した細胞プール(stable cell pool)と比較して制限されている。一方、安定した細胞プールのゲノムは、主に従来の安定したトランスフェクション法によるゲノムへの外因性DNAのランダムな組み込みのために、外因性DNAが挿入される可能性が低くなる。この非効率的なDNA組込の問題は、抗生物質の選択中の回復を遅らせる可能性がある。組換えタンパク質の発現レベルが比較的高いにもかかわらず、安定したプールでのタンパク質の時間のかかる生産は、この古典的な技術の広範な使用を制限し、産業のニーズを満たすことができない。
【0107】
いくつかの既存のトランスポゾンシステムを使用して、組換えタンパク質生産のための安定した細胞株を構築することができる。しかし、これらのシステム(例えば、Tol2トランスポゾン)は、通常、有用な安定した細胞株を生成するのに1か月以上かかり、従来の安定した細胞プールアプローチに比べて時間的な利点がない。CHO細胞株ための、本開示に記載されているpiggyBacシステムの効率は、他のトランスポゾンシステム(例えば、Sleeping Beauty及びMos1)と比較して、有意な効率上の利点を有する。
【0108】
また、外因性タンパク質の発現は、制御エレメント(RE)によって調節することができる。転写・翻訳調節機能を有する多くの因子は、タンパク質の発現レベルに影響を与える可能性がある。本開示は、さらにRNA存在量分析によって同定されたいくつかのDNA制御エレメントを提供する。それらが外来タンパク質の発現を改善できることを実証するために、さらなる実験が行われた。
【0109】
本公開は、piggyBacトランスポゾン及び/又は制御エレメントを利用する非常に効率的な発現系を提供する。発現系は、比較的短期間で高レベルで組換えタンパク質を発現できる安定した細胞株の確立を可能にする。
【0110】
PiggyBacトランスポゾンとトランスポザーゼ
DNAベースのトランスポゾンシステムは、メダカゲノムからのSleeping Beautyトランスポゾンシステムの復活に続いて、哺乳類細胞のゲノム工学のための効率的なツールとして最初に登場した。トランスポゾンDNAベクターは、トランスジェニック、遺伝子治療、遺伝子トラッピング、又は細胞のゲノムへの他のDNAエレメントの挿入を含む多くの目的のために設計することができる。piggyBac(PB)トランスポゾンシステムは自然に活性であり、もともと昆虫細胞で発見され、イラクサギンウワシの蛾(cabbage looper moth)Trichoplusia niからのTN-386細胞株でバキュロウイルス(Baculo-virus)を感染させる。
【0111】
PiggyBacに基づく遺伝子導入(mobilization)は、「カットアンドペースト」メカニズムによって実行される。piggyBacトランスポザーゼタンパク質が哺乳動物細胞で発現すると、トランスポゾンの逆方向反復位置に結合し、DNAにニックを入れ、トランスポゾンの両端にある3'ヒドロキシル基を放出する。これにより、隣接するTTAA配列の親水性攻撃(hydrophilic attack)とヘアピン形成が起こり、プラスミドバックボーンからトランスポゾンが放出される。次に、プラスミドバックボーンは、相補的なTTAAオーバーハングのライゲーションによって宿主サイトカインによって修復される。PiggyBacトランスポザーゼは、TTAA配列を哺乳類細胞のゲノムDNAに配置する。トランスポゾンのヘアピン分解(hairpin resolution)と、ゲノムDNAに対するトランスポゾンにおける30個のヒドロキシル基の親水性攻撃により、ゲノムDNAに千鳥状の4塩基対(bp)のカットが作成され、その結果、切断サイトに隣接するTTAAオーバーハングを伴う一時的な二本鎖(ds)切断が発生する。次に、トランスポゾンがゲノムDNAのTTAA部位に挿入され、トランスポゾンの両端にTTAAが見つかるようにTTAAが複製される。配列はゲノムに挿入され、配列はすべての子孫細胞に渡される。piggyBacトランスポザーゼによるトランスポゾンの切除の場合、遺伝子導入細胞を除去するように誘導及び選択でき、一本鎖TTAAを再ライゲーションして単一のTTAAを形成する。したがって、piggyBac転位の独自のメカニズムは、トランスポゾン配列のシームレスな切除という独自の利点をもたらす。piggyBacがDNAからトランスポゾンを切り出した後、元のpiggyBacターゲットサイトをシームレスに生成する。piggyBacの詳細な説明は、例えば、Woodardらの「piggyBac-ing models and new therapeutic strategies.」Trends in biotechnology 33.9(2015):525-533;Caryらの「Transposon mutagenesis of baculoviruses:analysis of Trichoplusia ni transposon IFP2 insertions within the FP-locus of nuclear polyhedrosis viruses.」 Virology 172.1(1989):156-169にあり、両方とも、参照によりその全体がここに組み込まれる。
【0112】
野生型piggyBacは、逆方向末端反復配列(ITR)とITR内の594アミノ酸トランスポザーゼを備えた2472bpトランスポゾンである。PBトランスポザーゼはPB 5’-ITR及びPB 3’-ITRを認識する。野生型5’-ITRには、左末端反復(TR)、31bpスペーサー(5’-ITRスペーサー)、及び左内部反復(IR)が含まれる。野生型5’-ITRの配列は、CCCTAGAAAGATAATCATATTGTGACGTACGTTAAAGATAATCATGCGTAAAATTGACGCATG(配列番号68)である。在野生型5’-ITRでは、TRの配列は、CCCTAGAAAGATA(配列番号61)である。31bpスペーサー的配列は、ATCATATTGTGACGTACGTTAAAGATAATCA(配列番号62)である。IRの配列は、TGCGTAAAATTGACGCATG(配列番号63)である。
【0113】
同様に、野生型3’-ITRには、右末端反復(TR)、短スペーサー(GAC;3’-ITRスペーサー)、及び右内部反復(IR)が含まれる。野生型3’-ITRの配列は、CATGCGTCAATTTTACGCAGACTATCTTTCTAGGG(配列番号60)である。野生型3’-ITRでは、TRの配列は、TATCTTTCTAGGG(配列番号64)である。IRの配列は、CATGCGTCAATTTTACGCA(配列番号65)である。図5に示すように、末端反復は単一の下線で表され、内部反復は二重下線で表される。
【0114】
本明細書で使用されるように、「5’-ITR」という用語は、トランスポゾン活性についてpiggyBacトランスポザーゼによって認識される配列を指し、それは、TR、IR、必要に応じてその間にスペーサー(例えば、31bpスペーサー)を含む。本明細書で使用されるように、「3’-ITR」という用語は、トランスポゾン活性についてpiggyBacトランスポザーゼによって認識される配列を指し、TR、IR、必要に応じてその間にスペーサーを含む。
【0115】
本公開は、piggyBac発現系を提供する。いくつかの実施形態において、piggyBacトランスポザーゼとpiggyBacトランスポゾンは、2つの別々のプラスミド(例えば、トランスポゾンベクターとトランスポザーゼベクター)に保有される(図1A-1B)。トランスポザーゼとトランスポゾンは、同じプラスミド(cis)で送達することもできる。この場合、トランスポザーゼ遺伝子は、トランスポゾンの逆方向末端反復エレメント(ITR)の外側にある。
【0116】
いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、piggyBac(PB)5’-及び3’-逆方向末端反復(ITR)を有する。5’-ITRは、例えば、TR、及びIR、及び必要に応じてスペーサー(例えば、31bpスペーサー)を含むか、或いはそれからなる。3’-ITRは、例えば、TR、及びIR、及び必要に応じてスペーサー(例えば、GAC)を含むか、或いはそれからなる。標的配列(例えば、標的遺伝子又はGOI)は、ベクターにおける5’-ITRと3’-ITRの間、又はPBトランスポザーゼ認識部位配列の間に挿入されることができる。いくつかの実施形態において、GOIは、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、GOIは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の制御エレメントに機能的に連結されている。制御エレメントは、GOIの5’末端又はGOIの3’末端に位置することができる。いくつかの実施形態において、制御エレメントは、プロモーターとGOIの間、又は在GOIとpolyAシグナル配列の間に位置することができる。polyAシグナル配列は、転写されたmRNAのポリアデニル化のシグナルを提供する。いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、選択可能なマーカーをさらに含み得る。選択可能なマーカーは、同一プロモーター又は異なるプロモーターに作動可能に連結することができる。いくつかの実施形態において、選択マーカーとGOIは、同一プロモーターの制御下に置くことができる。いくつかの実施形態において、選択マーカーは、独自のプロモーターを持つことができる。通常、宿主細胞のゲノム自体は、選択可能なマーカー機能を提供しない。したがって、正しい修飾を施した細胞を、選択可能なマーカーにてスクリーニングすることができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、標的配列には、様々な遺伝子エレメント、例えば、制限部位、loxP部位、調節エレメント、プロモーター、エンハンサー、発現カセット、遺伝子オペレーターなどが含まれる。いくつかの実施形態において、標的配列にはタンパク質コード配列がいずれも持っていない。
【0118】
いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼベクターを提供する。PBトランスポザーゼベクターは、PBトランスポザーゼを発現するように設計されている。実験中、宿主細胞(例えば、CHO-K1細胞)に両方のベクターをトランスフェクトした。PBトランスポザーゼベクターから発現されるPBトランスポザーゼは、トランスポゾンベクター上にあるPB5'-ITR及びPB3'-ITRを認識し、PB5'-ITRと3'-ITRとの間にある核酸配列(PB5’-ITR及び3’-ITR両方をも含む)が効率的に移動され、細胞内の染色体内のTTAA部位に組み込まれる。いくつかの実施形態において、次に、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)とタンパク質発現活性によって細胞が選択される。
【0119】
いくつかの実施形態において、5'-内部ドメイン及び3'-内部ドメインを使用して、5'-ITR及び3'-ITRと連結し、PBトランスポゾンの組込効率を高めることができる(例えば、5'-内部ドメイン配列又は3'-内部ドメイン配列のないPBトランスポゾンと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%の増加がある)。いくつかの実施形態において、PBトランスポゾン認識部位には、図5に示す5'-内部ドメイン配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である5'-内部ドメイン配列が含まれている。図5の5'-内部ドメイン配列は、TGTTTTATCGGTCTGTATATCGAGGTTTATTTATTAATTTGAATAGATATTAAGTTTTATTATATTTACACTTACATACTAATAATAAATTCAACAAACAATTTATTTATGTTTATTTATTTATTAAAAAAAAACAAAAACTCAAAATTTCTTCTATAAAGTAACAAAACT(配列番号66)である。
【0120】
いくつかの実施形態において、PBトランスポゾン認識部位には、3’-内部ドメイン配列が含まれる。3’-内部ドメイン配列は、図5に示す3’-内部ドメイン配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である。図5の3’-内部ドメイン配列は、
TATCTATAACAAGAAAATATATATATAATAAGTTATCACGTAAGTAGAACATGAAATAACAATATAATTATCGTATGAGTTAAATCTTAAAAGTCACGTAAAAGATAATCATGCGTCATTTTGACTCACGCGGTCGTTATAGTTCAAAATCAGTGACACTTACCGCATTGACAAGCACGCCTCACGGGAGCTCCAAGCGGCGACTGAGATGTCCTAAATGCACAGCGACGGATTCGCGCTATTTAGAAAGAGAGAGCAATATTTCAAGAATG(配列番号67)である。
【0121】
いくつかの実施形態において、PBトランスポゾンは、配列番号66の少なくとも又は約50、100、110、120、130、140、150、160、170又は172の連続するヌクレオチドを有する5’-内部ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態において、PBトランスポゾンは、配列番号67の少なくとも又は約50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、又は272の連続するヌクレオチドを有する3’-内部ドメイン配列を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、PBトランスポゾンには5’内部ドメイン配列を有さない。いくつかの実施形態において、PBトランスポゾンには3’-内部ドメイン配列を有さない。
【0123】
本明細書で使用されるように、「PBトランスポザーゼ5’-認識部位」という用語は、PBトランスポザーゼが認識及び相互作用する2対の部位のうちの1つを指し、これは、核酸の5'方向に位置する(コード配列又は参照配列のセンス鎖の5'から3'の方向に基づく)。「PBトランスポザーゼ3’-認識部位」という用語は、PBトランスポザーゼが認識及び相互作用する2対の部位のうちの1つを指し、これは、核酸の3'方向に位置する(コード配列又は参照配列のセンス鎖の5'から3'の方向に基づく)。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ5’-認識部位配列は、TRを含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ3’-認識部位配列は、TRを含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ5’-認識部位は、TR及びIR、及び必要に応じてスペーサー及び/又は内部ドメイン配列を含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ3’-認識部位は、TR及びIR、及び必要に応じてスペーサー及び/又は内部ドメイン配列を含むか、或いはそれからなる。
【0124】
5’-ITR及び3’-ITRの位置は、トランスポゾンベクター上で交換できる。したがって、いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ3’-認識部位配列は、TRを含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ5’-認識部位配列は、TRを含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ3’-認識部位は、TR及びIR、及び必要に応じてスペーサー及び/又は内部ドメイン配列を含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ5’-認識部位は、TR及びIR、及び必要に応じてスペーサー及び/又は内部ドメイン配列を含むか、或いはそれからなる。
【0125】
いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ5’-認識部位が、配列番号31と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ3’-認識部位が、配列番号32と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である配列を含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ5’-認識部位は、配列番号31の少なくとも又は約50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、又は230の連続するヌクレオチド又は完全な配列を有する配列を含むか、或いはそれからなる。いくつかの実施形態において、PBトランスポザーゼ3’-認識部位は、配列番号32の少なくとも又は約50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、又は310の連続するヌクレオチド又は完全な配列を有する配列を含むか、或いはそれからなる。
【0126】
いくつかの実施形態において、ITR又はPBトランスポザーゼ認識部位間の配列の長さは、少なくとも又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100kbである。いくつかの実施形態において、トランスポゾンには、1.5-3kb、1.5-5kb、1.5-10kb、1.5-20kb、1.5-30kb、1.5-50kb、1.5-75kb、2-5kb、2-10kb、2-20kb、2-30kb、2-50kb、2-75kb、3-5kb、3-10kb、3-20kb、3-30kb、3-50kb、3-75kb、5-10kb、5-20kb、5-30kb、5-50kb、5-75kb、10-20kb、10-30kb、10-50kb、又は10-75kbの範囲のインサートが含まれる。
【0127】
本開示は、さらに目的の遺伝子又は配列を含むトランスポゾンベクターを調製するためのベクターを提供する。いくつかの実施形態において、ベクターは、本明細書に記載されるような5'-ITRと3'-ITR、及び5'-ITRと3'-ITRの間のリンカー配列を含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、本明細書に記載されるようなPBトランスポザーゼ5’認識部位及びPBトランスポザーゼ3’認識部位、ならびに2つの認識部位間のリンカー配列を含む。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、近接して配置された多くの異なるエンドヌクレアーゼ制限部位を含む短い長さのDNA(例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は200ヌクレオチド未満)である。リンカー配列の存在は、発現カセットなどの様々な外来配列の容易な挿入及び除去を可能にし、それにより、特定の標的DNAフラグメントを含むベクターを調製するプロセスを単純化するので有利である。本明細書で使用されるように、発現カセットは、トランスフェクトされた細胞によって発現される遺伝子及びその遺伝子の調節配列を有するベクター、又は配列からなるコンポーネントである。いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、例えば、プロモーター(例えば、誘導性プロモーター)、エンハンサー、又はインシュレーターなどの様々な調節又は遺伝的エレメントを有することができる。
【0128】
このトランスポゾンベクターが宿主細胞に導入されると、隣接する逆配列に特異的なトランスポゾン活性の存在下で、標的DNA配列が導入されたベクターから切り出され、ゲノムの位置に挿入される。トランスポサーゼ活性の存在下で、標的DNAの転位が促進される。トランスポザーゼをコードする遺伝子は、宿主細胞のゲノムにすでに存在するトランスポゾンベクターに物理的に連結するか、或いは別のベクターの一部として細胞に導入することができる。いくつかの実施形態において、誘導性プロモーターは、産生又はトランスポナーゼ活性を開始する手段として使用することができる。
【0129】
制御エレメント
本公開は、さらに様々な制御エレメントを提供する。本明細書で使用されるように、本公開における「制御エレメント」という用語は、遺伝子の転写及び/又は翻訳の調節に関与する配列を指す。いくつかの実施形態において、制御エレメントは、転写制御エレメント又は翻訳制御エレメントである。いくつかの実施形態において、制御エレメントはmRNAを安定化させることができる。いくつかの実施形態において、これらの制御エレメント、CHO-K1細胞に由来する。いくつかの実施形態において、これらの制御エレメントは、標的遺伝子の発現レベルを増加させる。
【0130】
本公開からわかるように、表1に記載されている制御エレメントは、標的遺伝子の発現レベルを高めることができる。理論に縛られることを望まないが、これらの制御エレメントは転写効率を高め、転写されたmRNAを安定化させることができるとの仮説が立てられている。いくつかの実施形態において、これらの制御エレメントは、分解に対するmRNA耐性を向上する。
【0131】
配列番号1~15は制御エレメントの配列である。逆相補配列は、配列番号16~30に提供されている。一態様では、本公開は、単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。単離されたポリヌクレオチド分子は、(i)配列番号1~15のいずれか1つの配列;(ii)配列番号1~15のいずれか1つの配列の逆相補配列;(iii)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下又は非常に高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で、(i)又は(ii)の配列とハイブリダイズできる配列の逆相補配列;及び(iv)配列番号1~30少なくとも又は約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である配列を含む。本明細書で使用されるように、本公開における「逆相補配列」という用語は、元のポリヌクレオチドの配列と反対方向にあり、また元のポリヌクレオチドの配列にも相補的な配列である。例示的には、元のポリヌクレオチド配列がACTGAACである場合、その逆相補体はGTTCAGTである。
【0132】
一態様では、本開示は、さらにプロモーター及び標的遺伝子を含む配列を提供する。制御エレメント配列は、標的遺伝子の5'末端(例えば、プロモーターと目的の遺伝子の間)に位置し、又は標的遺伝子の3'(例えば、標的遺伝子とpolyAシグナル配列の間)に位置することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、制御エレメントは、配列番号1~30のいずれか1つの配列に対して少なくとも又は約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値の間のすべての範囲及びパーセンテージを含む)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、前記配列は、配列番号1~30からなる群から選択される配列と少なくとも又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドが異なる。いくつかの実施形態において、前記配列は、配列番号1~30から選択される配列と1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド以下が異なる。
【0134】
シーケンスは順方向又は逆方向を持つことができる。いくつかの実施形態において、制御エレメント配列は、外因性タンパク質の発現を、(例えば、制御エレメント配列のない対照配列と比較して)約又は少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%増加させることができる。
【0135】
制御エレメント配列は、プロモーターの後に(例えば、コード配列のセンス鎖の5'から3')、又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの後に(例えば、コード配列のセンス鎖の5'から3'に)位置することができる。いくつかの実施形態において、制御エレメントは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの前に位置している(例えば、5'非翻訳領域(5'-UTR)に転写される)。いくつかの実施形態において、制御エレメント配列とプロモーターの間、又は制御エレメント配列とポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの間には、少なくとも又は約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000のヌクレオチドが存在する。いくつかの実施形態において、制御エレメント配列とプロモーターの間、又は制御エレメント配列とポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの間には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又はl000以下のヌクレオチドしか存在しない。
【0136】
いくつかの実施形態において、制御エレメント配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの後(例えば、直後に)に位置することができる(例えば、3’-UTRに転写される)。いくつかの実施形態において、制御エレメント配列とポリペプチドをコードする配列の末端の間、又は制御エレメント配列とpolyAシグナル配列の間には、少なくとも又は約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000のヌクレオチドが存在する。いくつかの実施形態において、制御エレメント配列とポリペプチドをコードする配列の末端の間、又は制御エレメント配列とpolyAシグナル配列の間には、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000以下のヌクレオチドしか存在しない。
【0137】
本公開は、さらに制御エレメント配列をスクリーニングする方法を提供する。いくつかの実施形態において、RNAシーケンシング(RNA-seq)は、細胞(例えば、CHO細胞)のmRNAをシーケンシング及び定量するために使用できる。全RNAを抽出する。いくつかの実施形態において、cDNAは、抽出されたRNAから生成される。RNAの量を存在量でランク付けす。そして、トップRNAの非翻訳領域の配列が選択される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような実験は、タンパク質発現に対する制御エレメントの効果を検証するために実施された。一態様では、様々な段階の望ましい宿主細胞(例えば、CHO-K1細胞)のmRNAは、ハイスループットシーケンシング法(例えば、RNA-seq)によって配列決定及び定量化される。いくつかの実施形態において、一過性及び安定したトランスフェクションが可能である。一過性トランスフェクションにより、適切な時間(例えば、6日目、8日目、10日目、12日目、又は14日目)後に適切な量(例えば、少なくとも又は約10、20又は30)のサンプルから全RNAを抽出できるか、或いは適切な時間(例えば、6日目、8日目、10日目、12日目、又は14日目)での従来のフィードバッチプロセス(fed-batch process)(例えば、14日間のフィードバッチプロセス)後に適切な量(例えば、少なくとも又は約10、20、又は30)の安定トランスフェクションサンプル(例えば、安定したタンパク質発現細胞株)のサンプルから全RNAを抽出できる。
【0138】
いくつかの実施形態において、(例えば、逆転写によって)cDNAを生成し、(例えば、ハイスループットシーケンシングによる)配列決定に使用することができる。シーケンシングデータと相対読み取り(read)数の助けを借りて、mRNAを抽出し、すべてのサンプルの平均存在量でランク付けすることができる。いくつかの実施形態において、制御エレメント(RE)配列は、トップランクのmRNA(例えば、少なくとも又は約トップ5、トップ10、トップ15、トップ20、トップ25、トップ30、トップ35、トップ40又はそれ以上)の非翻訳領域から抽出することができる。
【0139】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の制御エレメント配列は、融合タンパク質発現プラスミド(例えば、組換えタンパク質発現遺伝子の直前又は直後)に組み込むことができる。いくつかの実施形態において、制御エレメント配列を含まない対照サンプルを使用して、制御エレメントの効果を決定することができる。
【0140】
WXRE制御エレメント
制御エレメントは、遺伝子の転写及び/又は翻訳を調節することができる。いくつかの実施形態において、制御エレメントは、例えばWXRE制御エレメントなどの転写制御エレメントである。図6に示すように、本公開におけるWXREには、転写制御エレメントA(配列番号35)、転写制御エレメントB(配列番号36)、転写制御エレメントC(配列番号37)、転写制御エレメントD(配列番号38)、転写制御エレメントE(配列番号39)、転写制御エレメントF(配列番号40)、転写制御エレメントG(配列番号41)、転写制御エレメントH(配列番号42)、転写制御エレメントI(配列番号43)、転写制御エレメントJ(配列番号44)、転写制御エレメントK(配列番号45)、及び転写制御エレメントL(配列番号46)を含む。これに対応して、図7に示すように、本公開におけるWXREの逆相補配列には、転写制御エレメントAの逆相補配列(配列番号47)、転写制御エレメントBの逆相補配列(配列番号48)、転写制御エレメントCの逆相補配列(配列番号49)、転写制御エレメントDの逆相補配列(配列番号50)、転写制御エレメントEの逆相補配列(配列番号51)、転写制御エレメントFの逆相補配列(配列番号52)、転写制御エレメントGの逆相補配列(配列番号53)、転写制御エレメントHの逆相補配列(配列番号54)、転写制御エレメントIの逆相補配列(配列番号55)、転写制御エレメントJの逆相補配列(配列番号56)、転写制御エレメントKの逆相補配列(配列番号57)、転写制御エレメントLの逆相補配列(配列番号58)を含む。
【0141】
いくつかの実施形態において、WXRE配列は、配列番号35~58のいずれか1つの配列の少なくとも又は約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値の間にすべての範囲とパーセンテージを含む)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、WXRE配列は、配列番号35~58からなる群から選択される配列とは、少なくとも又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のヌクレオチドだけ異なる。いくつかの実施形態において、WXRE配列は、配列番号35~58からなる群から選択される配列と1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以下のヌクレオチドだけ異なる。
【0142】
WXRE配列は順方向又は逆方向を持つことができる。本明細書で使用されるように、センス鎖(5’から3’)が標的配列と同じ配列を有する場合、標的配列は順方向を有する。センス鎖が標的配列に逆相補的である配列を有する場合、標的配列は逆方向を有する。配列番号35~46に逆相補的な配列は、それぞれ配列番号47~58に記載されている。
【0143】
いくつかの実施形態において、WXRE配列は、外因性タンパク質の発現を(WXRE配列を持たない制御配列と比較して)約又は少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%増加させることができる。
【0144】
いくつかの実施形態において、WXRE配列、プロモーター、及びポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、WXRE配列、プロモーター、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び1つ以上のその他の制御エレメントは、互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、その他の制御エレメントは本明細書に記載されるような制御エレメント(例えば、配列番号1~30)である。いくつかの実施形態において、EF-1αのイントロン(例えば、ヒトEF-1αの第1のイントロン)を使用して、発現を増加させることができる。作動可能に連結されたWXRE配列、プロモーター、及びポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、様々な配置を有することができる。例えば、WXRE配列は、プロモーターの前(例えば、コード配列のセンス鎖上の5’から3’)又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの後(例えば、コード配列のセンス鎖上の5’から3’)に位置することができる。いくつかの実施形態において、WXRE配列とプロモーターの間、又はWXRE配列とポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの間には、少なくとも又は約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000又は5000のヌクレオチドが存在する。いくつかの実施形態において、WXRE配列とプロモーターの間、又はWXRE配列とポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの間には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、200、300、400、500、600、700、800、900、l000、2000、3000、4000又は5000以下のヌクレオチドしか存在しない。いくつかの実施形態において、1つ以上のその他の制御エレメントは、プロモーターとポリペプチドをコードする配列の間に位置する。
【0145】
いくつかの実施形態において、本公開に記載されている転写制御エレメント(WXRE)の使用により、外因性タンパク質は、発現レベルを大幅に増加(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、又は30倍)させながら、その生物学的活性を依然として維持することができる。
【0146】
いくつかの実施形態において、本公開に記載されている転写制御エレメント(WXRE)は、全体として他の制御エレメントと一緒に使用して、外因性タンパク質の発現レベルを大幅に増加させながら、それらの生物学的活性を維持することができる。
【0147】
したがって、一態様では、本開示は、単離されたポリヌクレオチド分子に関する。この単離されたポリヌクレオチド分子には、以下の(i)から(iv)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む;(i)配列番号35~46のいずれか1つの配列;(ii)配列番号35~46のいずれか1つの配列の逆相補配列;(iii)高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下又は非常に高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で(i)又は(ii)の配列とハイブリダイズできる配列の逆相補配列;及び(iv)(i)又は(ii)の配列と少なくとも80%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、任意に、少なくとも95%の配列同一性、好ましくは少なくとも97%の配列同一性、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列。
【0148】
様々なWXRE配列及びそれらを使用するための方法は、例えば、WO2020/034097A1及びWO2020/034986A1に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0149】
本公開のいくつかの実施形態において、WXRE配列は、両方のベクターに挿入され得る。それらは同じでも異なっていてもよく、順方向又は逆方向を持つことができる。2つのベクターにおけるWXREの例示的な組み合わせを表2に示す。
【0150】
【表1-1】
【0151】
【表1-2】
【0152】
【表1-3】
【0153】
【表1-4】
【0154】
【表1-5】
【0155】
発現系
本開示は、本明細書に記載されるようなpiggyBacトランスポゾン及び/又は1つ又は複数の制御エレメントを利用する効率的なタンパク質発現系を提供する。本明細書で使用されるように、「タンパク質発現系」又は「発現系」という用語は、宿主と、異種配列(例えば、外因性遺伝子)を含むベクターとを含むシステムであり、宿主における異種配列の発現を達成することができるものを指す。タンパク質発現系には通常、次の成分が含まれる。(1)細菌、酵母、植物細胞、動物細胞などから選択できる、タンパク質を発現する生物である宿主。(2)1つ以上のベクトル。ベクターのタイプは宿主と一致する。宿主に応じて、ベクターは、原核生物(細菌)発現ベクター、酵母発現ベクター、植物発現ベクター、哺乳動物発現ベクター、昆虫発現ベクターなどであり得る。ベクターには異種遺伝子のフラグメントが含まれている。異種遺伝子は、ベクターを介して宿主で発現させることができる。いくつかの実施形態において、発現されたタンパク質産物は分泌される。いくつかの実施形態において、ベクターは、宿主細胞DNAに組み込まれる。
【0156】
ベクターは、ポリヌクレオチドの送達ビヒクル(delivery vehicle)であり得る。いくつかの実施形態において、ベクターには、特定のタンパク質をコードし、遺伝子操作された組換え技術における該タンパク質の発現を可能にする、それに作動可能に挿入されたポリヌクレオチド配列を含む。ベクターは、宿主細胞の形質導入、形質転換(transduce)、又はトランスフェクションに使用できる。本開示におけるベクターは、染色体、非染色体、及び合成核酸ベクター(様々なエレメントを発現する核酸配列の適切なセットを含む)を含む任意の適切なベクターであり得る。例えば、ベクターは、組換えプラスミドベクター、組換え真核生物ウイルスベクター、組換えファージベクター、組換え酵母ミニ染色体ベクター、組換え細菌人工染色体ベクター、又は組換え酵母プラスミドベクターであり得る。
【0157】
いくつかの実施形態において、本公開におけるは、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、及びウイルス核酸(RNA又はDNA)などのベクターを含むことができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0158】
本明細書で使用されるように、本開示における「宿主細胞」という用語は、異種ポリヌクレオチド及び/又はベクターが導入された細胞を指す。宿主細胞は、真核生物宿主細胞又は原核生物宿主細胞であり得、ここで、真核生物宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞、昆虫宿主細胞、植物宿主細胞、真菌宿主細胞、真核藻類(algae)宿主細胞、線虫(nematode)宿主細胞、原生動物宿主細胞、及び魚宿主細胞であり得る。例示的には、本開示における宿主細胞は、例えば、哺乳動物の宿主細胞などの真核生物の宿主細胞である。いくつかの実施形態において、哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、Vero細胞、SP2/0細胞、NS/O骨髄腫細胞、未成熟ハムスター腎臓細胞(immature hamster kidney cell)、HeLa細胞、ヒトB細胞、cv-1/EBNA細胞、L細胞、3T3細胞、HEPG2細胞、PerC6細胞、ヒト胚性腎臓293(HEK 293)細胞、又はMDCK細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、アデノウイルス5型(ad5)の形質転換初期領域(E1)を持つヒト胚性網膜細胞(PER.C6)である。CHO細胞は、バイオ医薬品用タンパク質の生産に日常的に使用されている。いくつかの実施形態において、CHO細胞は、CHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、又はCHO-S細胞である。好ましい実施形態において、CHO細胞は、CHO-K1細胞である。
【0159】
タンパク質発現の重要なステップは、目的のタンパク質をコードする異種遺伝子を含むベクターでトランスフェクトされた組換え宿主細胞の選択である。一般的に使用される選択マーカーのほとんどは、ベクターに含まれている。選択可能なマーカーは、マーカーを含む組換え宿主細胞とマーカーを含まない組換え宿主細胞との分離を可能にする遺伝子又はDNA配列であり得る。選択マーカーと選択培地の組み合わせは、ベクターでトランスフェクトされた組換え宿主細胞の増殖を可能にし、いくつかの実施形態では、トランスフェクトに失敗した宿主細胞の増殖を阻害する。
【0160】
抗生物質耐性遺伝子は、組換え宿主細胞選択のために最も一般的に使用されるマーカーである。選択については、選択可能なマーカーとして抗生物質耐性遺伝子を、抗生物質を含む選択培地と併用して達成することができる。例示的な抗生物質選択マーカーには、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ポリミキシンB耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、カルベニシリン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシンB耐性遺伝子などが含まれるが、これらに限定されない。したがって、選択抗生物質には、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、テトラサイクリン、ポリミキシンB、エリスロマイシン、カルベニシリン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、ブラストサイジン、ネオマイシン、ピューロマイシン、ゼオシン、及びハイグロマイシンBなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、選択マーカーはブラストサイジン耐性遺伝子である。いくつかの実施形態において、選択マーカーはゼオシン耐性遺伝子である。
【0161】
いくつかの実施形態において、選択培地は、以下の成分のうちの1つ以上を含み得る:血清、多糖類(例えば、グルコース(glucose)及び/又はデキストロース(dextrose))、ピルビン酸ナトリウム、グルタチオン、エタノールアミン、アミノ酸(例えばグリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、グルタミン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及び/又はバリン)又はその塩、ビタミン(例えば、アスコルビルホスフェート、塩化コリン、D-パントテン酸カルシウム、葉酸、ナイアシンアミド、塩酸ピリドキシン、リボフラビン、塩酸チアミン、及び/又はイノシトール(i-inositol))、無機塩(例えば、塩化カルシウム、硝酸第二鉄、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び/又はリン酸水素二ナトリウム)、タンパク質(例えば、ヒトトランスフェリン及び/又は組換えインスリン)、及び/又は微量元素(例えば、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸銅、二塩化マンガン(manganous chloride)、及び/又は亜セレン酸ナトリウム)。
【0162】
発現系は、例えば抗体、融合タンパク質、酵素、可溶性タンパク質、膜タンパク質、構造タンパク質、リボソームタンパク質、ザイモゲン、細胞表面受容体タンパク質、転写調節タンパク質、翻訳調節タンパク質、クロマチンタンパク質、ホルモン、細胞周期調節タンパク質、Gタンパク質、神経活性ペプチド、免疫調節タンパク質、血液成分タンパク質、イオンゲートタンパク質、熱ショックタンパク質、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、抗生物質耐性タンパク質、任意の上記タンパク質の機能的フラグメント、任意の上記タンパク質のエピトープフラグメント、及びそれらの任意の組み合わせなどの様々なタンパク質又はポリペプチドを発現するために使用することができる。
【0163】
本明細書で使用されるように、本公開におけるという用語は「抗体」は、イムノグロブリン、そのフラグメント、又はそれらの誘導体を指す;且つinvitro又はinvivoで生成されたかどうかにかかわらず、抗原結合部位を含むすべてのポリペプチドが含まれる。この用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、多重特異性抗体、非特異性抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体(fully human antibody)、キメラ抗体、単一ドメイン抗体、一本鎖抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体(heterozygous antibody)、変異抗体(mutated antibody)、及び移植抗体(grafted antibody)などが含まれるが、これらに限定されない。「抗体」という用語は、さらに例えばFab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAbなどの抗体フラグメント、及び抗原結合機能を保持する他の抗体フラグメントを含む。典型的には、このようなフラグメントには、抗原結合フラグメントが含まれる。
【0164】
本明細書で使用されるように、本公開における「融合タンパク質」という用語は、それぞれのペプチド骨格を介して共有結合によって連結された2つ以上のタンパク質又はそのフラグメントを含む分子を指し、より好ましくは、融合タンパク質は、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現によって生成される。いくつかの実施形態において、融合タンパク質には免疫グロブリンドメインが含まれる。いくつかの実施形態において、融合タンパク質はFc融合タンパク質である。
【0165】
いくつかの実施形態において、発現系と組み合わせて使用できる抗体には、例えば、アダリムマブ(Adalimumab)、ベズロトクスマブ(Bezlotoxumab)、アベルマブ(Avelumab)、デュピルマブ(Dupilumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)、ブロダルマブ(Brodalumab)、レスリズマブ(Reslizumab)、オララツマブ(Olaratumab)、ダラツムマブ(Daratumumab)、エロツズマブ(Elotuzumab)、ネシツムマブ(Necitumumab)、インフリキシマブ(Infliximab)、オビルトキサキシマブ(Obiltoxaximab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、セクキヌマブ(Secukinumab)、メポリズマブ(Mepolizumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、アリロクマブ(Alirocumab)、エボロクマブ(Evolocumab)、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、ベドリズマブ(Vedolizumab)、シルツキシマブ(Siltuximab)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、オビヌツズマブ(Obinutuzumab)、ブレンツキシマブ(Brentuximab)、ラキシバクマブ(Raxibacumab)、ベリムマブ(Belimumab)、イピリムマブ(Ipilimumab)、デノスマブ(Denosumab)、オファツムマブ(Ofatumumab)、ベシレソマブ(Besilesomab)、トシリズマブ(Tocilizumab)、カナキヌマブ(Canakinumab)、ゴリムマブ(Golimumab)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、セルトリズマブ(Certolizumab)、カツマキソマブ(Catumaxomab)、エクリズマブ(Eculizumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、ナタリズマブ(Natalizumab)、オマリズマブ(Omalizumab)、セツキシマブ(Cetuximab)、エファリズマブ(Efalizumab)、イブリツモマブ(Ibritumomab)、ファノレソマブ(Fanolesomab)、トシツモマブ(Tositumomab)、ゲムツズマブ(Gemtuzumab)、パリビズマブ(Palivizumab)、ネシツムマブ(Necitumumab)、バシリキシマブ(Basiliximab)、リツキシマブ(Rituximab)、カプロマブ(Capromab)、サトゥモマブ(Satumomab)、及びムロモナブ(Muromonab)が含まれる。
【0166】
いくつかの実施形態において、本開示において有用な融合タンパク質には、例えば、エタネルセプト(Etanercept)、アレファセプト(Alefacept)、アバタセプト(Abatacept)、リロナセプト(Rilonacept)、ロミプロスチム(Romiplostim)、ベラタセプト(Belatacept)、及びアフリベルセプト(Aflibercept)が含まれる。
【0167】
いくつかの実施形態において、発現系は、少なくとも2つのトランスポゾンベクターを提供する。1つのトランスポゾンベクターは、第1のポリペプチド(例えば、抗体重鎖)をコードする配列を運ぶように設計されている。第2のトランスポゾンベクターは、第2のポリペプチド(例えば、抗体軽鎖)をコードする配列を運ぶように設計されている。いくつかの実施形態において、1つの単一のトランスポゾンベクターは、2つ以上のポリペプチドをコードする配列を提供する。例えば、抗体重鎖をコードする配列及び抗体軽鎖をコードする配列は、同じトランスポゾンベクター上にあり得る。それらは、トランスポゾンベクターの同じ発現カセット又は異なる発現カセットに配置することができる。
【0168】
いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、5’から3’までの1つ以上の下記エレメントを含むか、又はそれらからなる配列を含み得る:TTAA、5’-ITR、必要に応じて5’-内部ドメイン、プロモーター、標的遺伝子、選択マーカー、必要に応じて3’-内部ドメイン、3’-ITR、及びTTAA。いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、5’から3’までの1つ以上の下記エレメントを含むか、又はそれらからなる配列を含み得る:PBトランスポザーゼ5’-認識部位、プロモーター、標的遺伝子、選択マーカー、及びPBトランスポザーゼ3’-認識部位。いくつかの実施形態において、配列はさらに2つ以上の制御エレメントを含む。1つの又は2つの制御エレメントは、プロモーターと標的遺伝子の間及び/又は標的遺伝子とpolyAシグナル配列の間に位置する。したがって、いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、5’から3’までの1つ以上の下記エレメントを含むか、又はそれらからなる配列を含み得る:TTAA、5’-ITR、必要に応じて5’-内部ドメイン、プロモーター、制御エレメント、標的遺伝子、制御エレメント、polyAシグナル配列、選択マーカー用のプロモーター、選択マーカー、選択マーカー用のpolyAシグナル配列、必要に応じて3’-内部ドメイン、3’-ITR、及びTTAA。いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、5’から3’までの1つ以上の下記エレメントを含むか、又はそれらからなる配列を含み得る:PBトランスポザーゼ5’-認識部位、プロモーター、制御エレメント、標的遺伝子、制御エレメント、polyAシグナル配列、選択マーカー用のプロモーター、選択マーカー、選択マーカー用のpolyAシグナル配列、及びPBトランスポザーゼ3’-認識部位。
【0169】
標的遺伝子は、実際には、2つ以上のポリペプチド(例えば、抗体重鎖及び抗体軽鎖)をコードする配列を含み得る。これらの配列は、自己切断ペプチド(例えば、P2A又はT2A)又はプロテアーゼ認識部位(例えば、フューリン(furin))をコードする配列によって互いに分離することができる。これによって、オープンリーディングフレーム(ORF)は、翻訳中又は翻訳後に個々のタンパク質に切断できる単一のポリタンパク質をコードする。同様に、トランスポザーゼベクターは、プロモーター、piggyBacトランスポザーゼコード配列、polyAシグナル配列を含むか、又はそれらからなる配列を有し得る。いくつかの実施形態において、トランスポザーゼベクターは、選択マーカーをさらに含む。
【0170】
標的遺伝子の発現は、WXRE転写制御エレメントによってさらに増強することができる。いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、5’から3’までの1つ以上の下記エレメント、又はそれからなる配列を含み得る:TTAA、5’-ITR、必要に応じて5’-内部ドメイン、WXRE転写制御エレメント、プロモーター、必要に応じてヒトEF-1αの第1のイントロン、制御エレメント、標的遺伝子、制御エレメント、polyAシグナル配列、選択マーカー用のプロモーター、選択マーカー、選択マーカー用のpolyAシグナル配列、必要に応じて3’-内部ドメイン、3’-ITR、及びTTAA。いくつかの実施形態において、トランスポゾンベクターは、5’から3’までの1つ以上の下記エレメント、又はそれからなる配列を含み得る:PBトランスポザーゼ5’-認識部位、WXRE転写制御エレメント、プロモーター、必要に応じてヒトEF-1αの第1のイントロン、制御エレメント、標的遺伝子、制御エレメント、polyAシグナル配列、選択マーカー用のプロモーター、選択マーカー、選択マーカー用のpolyAシグナル配列、及びPBトランスポザーゼ5’-認識部位。
【0171】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーターである。いくつかの実施形態において、CMVプロモーターは、配列番号59に示される配列と配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、配列番号59に示される配列と配列同一性を有する配列は、配列番号59に示される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値の間にすべての範囲とパーセンテージを含む)の配列同一性を有する。
【0172】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターには、誘導剤への曝露に応答して規定の遺伝子によって産生される遺伝子産物の量を増加させることができる任意のプロモーターが含まれる。したがって、このコンストラクトを使用すると、宿主細胞に導入された標的機能遺伝子又はトランスポザーゼの発現制御が可能になる。誘導性プロモーターは、当業者に知られており、発現を駆動するために使用することができる様々な誘導性プロモーターが存在する。誘導性システムには、例えば、熱ショックプロモーターシステム、メタロチオネインシステム、糖質コルチコイドシステム、組織特異的プロモーターなどが含まれる。70 kDaの熱ショックタンパク質をコードする遺伝子に一般的に関連するプロモーターなど、熱ショックによって調節されるプロモーターは、高温にさらされると発現を数倍に増加させる可能性がある。糖質コルチコイドシステムは、遺伝子発現の誘発にもうまく機能する。このシステムは、ステロイドホルモン(即ち、糖質コルチコイド又はデキサメタゾンなどのその合成同等物の1つ)の存在下でステロイドホルモンと複合体を形成する糖質コルチコイド受容体タンパク質(GR)をコードする遺伝子で構成されている。次に、この複合体は糖質コルチコイド応答エレメント(GRE)と呼ばれる短いヌクレオチド配列(26 bp)に結合し、連結された遺伝子は、この結合によって発現が活性化される。したがって、誘導性プロモーターは、導入された遺伝子の発現を制御するための環境誘導性プロモーターとして使用することができる。
【0173】
いくつかの実施形態において、誘導性プロモーターは、T7プロモーターである。いくつかの実施形態において、誘導性プロモーターは、PA1lacO1プロモーターである。いくつかの実施形態において、誘導性プロモーターは、IPTG、サリチル酸ナトリウム、オクトピン(octapine)、ノパリン、クォーラムシグナル(quorum signal)3OC6HSL、aTc、クミン酸(cuminic acid)、DAPG、及びサリチル酸からなる群から選択される薬剤によって活性化される。いくつかの実施形態において、誘導性プロモーターにはターミネーターがあり、ターミネーターは、誘導性プロモーターの下流にある。外因的に提供されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例には、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーターシステム、エクジソン昆虫プロモーター、テトラサイクリン阻害システム(tetracycline-repressible system)、テトラサイクリン誘導性システム、及びラパマイシン誘導性システムが含まれる。
【0174】
プロモーターは、さらにポリシストロン性(ジシストロン性又はトリシストロン性)であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、転写ユニットは、IRES(内部リボソーム侵入部位)を含むバイシストロンユニットとして設計することができ、単一のプロモーターからの情報によって遺伝子産物(例えば、抗体重鎖及び抗体軽鎖をコードする)の共発現を可能にする。任意に、場合によっては、単一のプロモーターが以下のRNAの発現を指示することができる。前記RNAは、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)内に自己切断ペプチド(例えば、P2A又はT2A)又はプロテアーゼ認識部位(例えば、フリン)をコードする配列によって互いに分離された2つ又は3つの遺伝子(TCRのアルファ及び/又はベータチェーンをコードする)を含む。したがって、ORFは、翻訳中(T2Aなどの2Aの場合)又は翻訳後のいずれかで個々のタンパク質に切断される単一のポリタンパク質をコードする。場合によっては、例えばT2Aなどのペプチドにより、リボソームは2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップし(リボソームスキップ(ribosome skipping))、これにより、2A配列の末端と下流の次のペプチドが分離され得る。
【0175】
ヒトEF-1αの第1のイントロンを使用して、発現レベルを上げることができる。ヒトEF-1αの第1のイントロンは、配列番号34に示される配列と配列同一性を有する配列を有し得る。いくつかの実施形態において、配列番号34に示される配列と配列同一性を有する配列は、配列番号34(ヒトEF-1αの第1のイントロン)に示される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(これらの値の間にすべての範囲とパーセンテージを含む)の配列同一性を有する。
【0176】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような発現系は、外因性タンパク質の発現量を(例えば、制御エレメント配列又はpiggyBacトランスポゾンを有しないコントロール発現系と比較して)約又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、又は50倍増加させることができる。
【0177】
本公開は、さらに本明細書に記載の任意のヌクレオチド配列と少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である核酸配列を提供し、及び本明細書に記載の任意のアミノ酸配列と少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載されるような任意のペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は本明細書に記載されるような任意のヌクレオチド配列によってコードされる任意のアミノ酸配列に関する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、1000、又は5000個未満のヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、500、又は1000個未満のアミノ酸残基である。
【0178】
本明細書で使用されるように、本公開における「配列同一性」及び「百分比同一性」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の同一(即ち、相同)のヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージを指す。2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の配列同一性は、以下の方法によって決定することができる。ポリヌクレオチド又はポリペプチドのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を整列させ、整列されたポリヌクレオチド又はポリペプチドにおける同じヌクレオチド又はアミノ酸残基を含む位置の数をスコアリングし、整列されたポリヌクレオチド又はポリペプチドにおける相異ヌクレオチド又はアミノ酸残基を含む位置の数と比較する。ポリヌクレオチドは1つの位置で異なる場合があり、例えば、異なるヌクレオチド(即ち、置換又は突然変異)を含めることによるか、又はヌクレオチド(1つ以上)を削除することによる(即ち、1つの又は2つのポリヌクレオチドにヌクレオチド(1つ以上)を挿入するか又はヌクレオチド(1つ以上)削除することによる)。ポリペプチドは、例えば、1つの位置で異なる場合があり、例えば、異なるアミノ酸を含むこと(即ち、置換又は突然変異)によるか、アミノ酸の欠失(即ち、1つ以上)による(即ち、ポリペプチドにアミノ酸の挿入(1つ以上)又はアミノ酸の欠失(1つ以上)による)。配列同一性は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基を含む位置の数を、ポリヌクレオチド又はポリペプチド中のアミノ酸残基の総数で割ることによって計算することができる。例えば、同一性パーセントは、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基を含む位置の数を、ポリヌクレオチドのヌクレオチドの総数又はポリペプチド中のアミノ酸残基の総数で割ることによって計算することができる。したがって、2つの配列間の同一性の割合は、ギャップの数と各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数の関数であり、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要がある。本開示の目的のために、シーケンスの比較と2つのシーケンス間の同一性パーセントの決定は、例えば、Blossum 62スコアリングマトリックスと12のギャップペナルティ、4のギャップ拡張ペナルティ、及び5のフレームシフトギャップペナルティを使用して実行できる。
【0179】
本開示は、さらに本明細書に記載されるような組換え宿主細胞を含むキット、及び/又は本明細書に記載されるようなベクター又は発現系を含むキットを提供する。
【0180】
発現系、トランスポゾンベクター、及びトランスポザーゼベクターの使用方法
【0181】
本公開は、発現系、トランスポゾンベクター、及びトランスポザーゼベクターの使用方法を提供する。
【0182】
一態様では、本明細書は、宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、又は当技術分野で知られているタンパク質発現に一般的に使用される任意の細胞)において組換えタンパク質を産生するための発現系を使用する方法を提供する。
【0183】
いくつかの実施形態において、適切な数の宿主細胞(例えば、少なくとも又は約100万、200万、300万、500万、600万、800万、900万、1000万、2000万、3000万、4000万、5000万、又は1億個)は、適切な量のトランスポゾンベクター(例えば、組換えタンパク質発現プラスミド)、及びトランスポザーゼベクター(例えば、トランスポザーゼ発現プラスミド)でトランスフェクションされる。いくつかの実施形態において、細胞密度は350万から450万個細胞/mLの範囲であった。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、合計で少なくとも又は約1μgのトランスポゾンベクターでトランスフェクションされた(例えば、少なくとも又は約1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、又は100 μg)。
【0184】
いくつかの実施形態において、トランスフェクションに使用されるトランスポゾンベクター(例えば、組換えタンパク質発現プラスミド)、及びトランスポザーゼベクター(例えば、トランスポザーゼ発現プラスミド)は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1、約16:1、約17:1、約18:1、約19:1、又は約20:1の質量比を有する。次に、トランスフェクションされた細胞は、適切な量(例えば、少なくとも又は約1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、又は50mL)の宿主細胞培養物に再懸濁される。得られた溶液を混合し、振とうインキュベーター(例えば、Kuhner(登録商標)振とうインキュベーター)で培養することができる。
【0185】
ベクターを細胞に導入するために、多くの形質転換又はトランスフェクション技術を使用することができる。エレクトロポレーションは、DNAを細胞に導入するために使用される一般的な方法でもある。この技術では、細胞は、外因性DNA配列の侵入可能のように生体膜を可逆的に透過性にする高電界強度(high field strength)の電気パルスにさらされる。いくつかの実施形態において、受精卵にベクターをマイクロインジェクションする。いくつかの実施形態において、PEI(ポリエーテルイミド)を添加して、本明細書に記載されるようなプラスミドを宿主細胞(例えば、CHO-K1細胞)に形質導入することができる。いくつかの実施形態において、マイクロピペットを使用して、ベクターを細胞に直接マイクロインジェクションすることができる。任意に、高速弾道法(high velocity ballistic)を使用して、小さなDNA保有粒子(small DNA associated particles)を細胞内に推進することができる。いくつかの実施形態において、細胞は、ポリエチレングリコールの存在によって透過性になり、拡散によってDNAが細胞に入ることができる。DNAは、プロトプラストを他のDNA含有ベクターと融合させることによって細胞に導入することもできる。これらのベクターには、ミニセル(minicell)、細胞、リソソーム、又はその他の可溶性脂質表面体(lipid-surfaced body)が含まれる。得られた細胞培養物は、インキュベーター(例えば、振とうインキュベーター)内の適切な容器(例えば、スピンチューブ(spin tube))で培養することができる。
【0186】
トランスフェクションからの適切な時間(例えば、少なくとも又は約2時間、4時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間又はそれ以上)の後、選択抗生物質(例えば、ブラストサイジン、ジェネティシン(G-418)、ハイグロマイシンB、ミコフェノール酸、ピューロマイシン、ゼオシン)を含む新しい培地を適切な量(例えば、少なくとも又は約1mL、2mL、5mL、10mL、15mL、又は20mL)でトランスフェクションされた細胞培養物に加えることができる。抗生物質試薬は、本明細書に記載の抗生物質耐性遺伝子に対応する。抗生物質の濃度は、ネイティブ宿主細胞(例えば、未修飾細胞)で(例えば、キル曲線アッセイによって)決定することができる。また、補充培地の濃度は、選択に使用される通常の抗生物質濃度と同じかそれより高くすることができる(例えば、少なくとも又は約2倍、3倍、4倍、5倍又はそれ以上)。
【0187】
いくつかの実施形態において細胞は、選択した抗生物質を含む新鮮な培地で継代された(例えば、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、又は6日ごと)。播種密度は、細胞増殖条件(例えば、細胞生存率、増殖速度、倍加時間)に基づいて調整できる。
【0188】
いくつかの実施形態において、適切な期間(約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間以上)の抗生物質による選択後、細胞培養物を使用して、トランスフェクトされた各細胞培養物について決定されたものとほぼ同じ播種密度で、生産用基本培地に別々に接種することができる。生産用細胞培養物は、振とうインキュベーターで培養できる。
【0189】
いくつかの実施形態において、生産プロセスは、バッチ流加培養によって実行することができる。それに応じて、適切な種類と量の補足培地(feeding medium)を培養物に補充することができる。
【0190】
いくつかの局面において、本開示は、ヘテロ多量体(例えば、抗体)の発現を急速に増加させるように設計された方法を提供する。例えば、抗体を効率的に発現させるには、抗体の重鎖と軽鎖を約1:1の比率で発現させる必要がある。選択用抗生物質の濃度が低すぎる場合、細胞内の機能的担体の量が少なすぎる可能性がある。選択用抗生物質の濃度が高すぎると、細胞の培養に不利な条件が生じる可能性がある。いくつかの実施形態において、この方法の発現系は、2つのベクターのペアを含み、1つは抗体重鎖をコードする異種遺伝子を運び、もう1つは抗体軽鎖をコードする異種遺伝子を運ぶ。2つのベクターにおける選択マーカーは異なってもよい。一実施形態において、第1のベクターにおける選択マーカーはブラストサイジンであり、第2のベクターは、ゼオシンである。ブラストサイジン及びゼオシンの濃度は本明細書に記載されるような任意の濃度であり得る。いくつかの実施形態において、この方法は、さらに抗体重鎖をコードする異種遺伝子及び抗体軽鎖をコードする異種遺伝子を含む単一のベクターに関する。2つのベクターの比率を適切に調整する必要がある。多くの異なる条件下での実験に基づいて、本明細書で提供される方法は、抗体を高効率で発現し、比較的短時間でヘテロ多量体発現を確実に増加させるために使用できることが決定された。また、本明細書で提供される方法は、高発現レベルで抗体を発現することができる。したがって、いくつかの実施形態において、この方法は、2つのトランスポゾンベクターのペアで細胞をトランスフェクトすることに関し、1つは第1のポリペプチドをコードする異種遺伝子を保有し、もう1つは第2のポリペプチドをコードする異種遺伝子を保有する。2つの選択マーカーが使用された。1つの選択マーカーはブラストサイジン耐性遺伝子であり、もう1つの選択マーカーはブレオマイシン耐性遺伝子である。いくつかの実施形態において、ブラストサイジンは1~15μg/mLの量で選択培地に存在し、ブレオマイシンは50~1500μg/mLの量で存在した。いくつかの実施形態において、トランスフェクションの約18~30時間(例えば、約24時間)後、ブラストサイジン(例えば、9μg/mL)及びブレオマイシン(例えば、400μg/mL)を含む適切な細胞培養培地で細胞を培養した。次に、細胞は、ブラストサイジンとブレオマイシンを含む新しい培地に2~4日ごとに継代された。細胞生存率が90%以上に回復すると、ヘテロマルチマーの発現レベルを流加培養で評価できる。いくつかの実施形態において、流加培養用培地は、本明細書に記載されている任意の培地であり得る。いくつかの実施形態において、流加培養にはブラストサイジンとブレオマイシンが含まれていた。
【0191】
本開示は、さらにトランスジェニック動物を作製する方法を提供する。一態様では、この方法は、本明細書に記載されるようなトランスポゾンベクターを含む核酸、及び同じベクター又は別のベクターに本明細書に記載されるようなトランスポザーゼをコードするヌクレオチド配列をエクスビボで非ヒト脊椎動物の胚又は受精された卵母細胞に導入することが含まれる。得られた非ヒト脊椎動物の胚又は受精された卵母細胞を選択し、次に、胚をトランスジェニック非ヒト脊椎動物に発達させるのに有利な条件下で、同じ種の養母(foster mother)に移植することができる。次に、胚はトランスジェニック非ヒト脊椎動物に発達することができ、外因性ヌクレオチド配列を含むトランスジェニック非ヒト脊椎動物を制作できる。
【0192】
選択マーカーについては、例えば、抗生物質、農薬(pesticide)、殺虫剤(insecticide)、除草剤に対する耐性を提供する遺伝子;例えば、目の色や緑色蛍光タンパク質などの宿主の生理機能を変更して、目に見える表現型を変化させる遺伝子;など多くの選択マーカーを使用することができる。挿入されたDNAはゲノムに組み込まれ、その子孫に安定して受け継がれる。いくつかの実施形態において、交雑育種(cross-breeding)は、挿入された配列を持つヘテロ接合又はホモ接合のトランスジェニック動物を生成するために実行される。
【0193】
いくつかの実施形態において、動物は、牛、猫、犬、馬、羊、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ミンク(mink)、パンダ、又は豚である。いくつかの実施形態において、細胞は、哺乳動物由来であり、本明細書に記載の様々な動物から得ることができる。
【0194】
一態様では、本開示は、タンパク質を安定して発現する組換え宿主細胞を作製する方法に関する。この方法は、本明細書に記載されるようなベクターを宿主細胞に挿入するステップを含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの実施形態において、本発明は、タンパク質産生を可能にする条件下で、本明細書に記載されるような組換え宿主細胞を培養するステップを含む方法を提供する。
【0195】
一態様では、本開示は、さらに所望の特性(例えば、結合特異性又は機能性)を有するポリペプチドを同定するための方法を提供する。この方法は、異なる特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの異なるセット、好ましくはプラスミドベクター又は二本鎖DNA PCRアンプリコンを生成することを含む。ここで、前記ポリヌクレオチドは、ITR配列の間に位置するポリペプチドをコードする配列を含み、前記ITR配列は、少なくとも1つのトランスポザーゼによって認識され、それとともに機能する。次に、ポリヌクレオチドの異なるコレクションが宿主細胞に導入される。前記逆方向末端反復配列と共に機能する少なくとも1つのトランスポザーゼは、異なるセットのポリヌクレオチドが宿主細胞ゲノムに組み込まれて、前記ポリヌクレオチドの異なるセットを発現する宿主細胞の集団を提供するように、宿主細胞で発現される。前記ポリヌクレオチドは、異なる特性を持つポリペプチドをコードする。次に、宿主細胞をスクリーニングして、所望の特性(例えば、結合特異性又は機能性)を有するポリペプチドを発現する宿主細胞を同定する。次に、挿入された配列が宿主細胞から決定される。
【0196】
一態様では、本開示は、本明細書に記載されるような組換え宿主細胞を含むキットに関して、異常なタンパク質発現に起因する疾患を検出するための試薬又はキットの調製における本明細書に記載されるような組換え宿主細胞の使用方法にも関する。一態様では、本開示は、さらに疾患の治療又は予防のための医薬組成物の調製において本明細書に記載されるような組換え宿主細胞を使用する方法を提供する。本開示は、さらに本明細書に記載の少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)のタンパク質(例えば、抗体又は抗原結合フラグメント)を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、当技術分野で知られている任意の方法で調製することができる。
【0197】
実施例
本発明は、以下の実施例にさらに記載されており、これらは、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
【0198】
実施例1:ベクターライブラリの構築及び緑色蛍光タンパク質発現用安定池(stable pool)の構築
【0199】
1.1 チャイニーズハムスター卵巣細胞のゲノム断片を含むベクターライブラリーの調製
【0200】
1.1.1 1μgのGFP発現ベクター(即ち、図9で示されるベクター)を、制限エンドヌクレアーゼBamHIを含有する消化キット(NEB)に付属のBamHIで消化し、線形化させ、37℃で一晩インキュベートした(酵素切断反応における試薬の組成と含有量を表3に示す)。なお、BamHIは、GFPに対応するプロモーターの上流に存在する特定の切断部位に対応する他のエンドヌクレアーゼで置き換えることができる。
【0201】
GFP発現ベクターの概略図は、図9に示すようである。
【0202】
【表2】
【0203】
1.1.2 約500万個のCHO宿主細胞を回収し、DNeasy Blood & Tissue Kit(QIAGEN)を使用してCHO宿主細胞のゲノムDNAを抽出し、ゲノムDNAを前述キットに付属の洗浄バッファー100 μLに溶解した。
【0204】
1.1.3 5 μgのゲノムDNAを100ユニット(unit)の制限エンドヌクレアーゼBglII(NEB)又はDpnII(NEB)で消化した(消化反応における試薬の組成と含有量を表4に示す)。ステップ1.1.1で線形化されたベクターのエンドヌクレアーゼの粘着末端と一致する限り、他の制限エンドヌクレアーゼも使用できる。
【0205】
【表3】
【0206】
1.1.4 1.1.1で線形化されたベクターは、2ユニットの子ウシ腸由来アルカリホスファターゼ(NEB)で37℃で約30分間処理された。他のタイプのアルカリホスファターゼも使用できる。
【0207】
1.1.5 1.1.4で線形化されたGFP発現ベクターと1.1.3で消化されたCHOゲノムDNAは、アガロースゲル電気泳動によって分離された。GFP発現ベクターの断片と消化されたゲノムの1~4 kbの断片をゲル切断により回収し、Gel Extraction Kit(QIAGEN)を使用して電気泳動したアガロースゲルからDNAを抽出した。
【0208】
1.1.6 DNAライゲーションキット(Ligation Kit)(Takara, Cat# 6022)を用いて、1.1.5で回収したGFP発現ベクターフラグメントとゲノムフラグメントをライゲーションした。ライゲーション反応は16℃で45分間行った(ライゲーション反応における試薬の組成と含有量を表5に示す)。
【0209】
【表4】
【0210】
1.1.7 1.1.6で得られたライゲーション産物10μLを取り、コンピテントセル100μLを加え、30分間氷浴し、42℃で1分間熱ショックを与え、氷上に1分間置いた。抗生物質を含まない500μLの新鮮なLB培地を各チューブに加え、37℃で細胞を45分間で復活させた。プレーティングステップを省略し、100 mg/Lアンピシリンを含む500mLの培地を直接添加した。ベクター抽出は、プラスミド抽出キット(Plasmid Maxi Kit)(QIAGEN)を使用して実行された。抽出したDNAをベクターライブラリーとして使用した。
【0211】
1.1.8 制限部位がベクターバックボーンの原核生物領域にのみ位置する制限エンドヌクレアーゼ(例えば、PvuI(NEB))を使用して、1.1.7で得られたベクターライブラリーを線形化し、1.1.1と同じ反応条件下で、37℃で一晩培養した。翌日、フェノール・クロロホルム法でDNAを回収し、トランスフェクションに使用した。
【0212】
1.2緑色蛍光タンパク質を発現する安定したプールの構築
【0213】
1.2.1 約500万個のCHO宿主細胞を遠心分離し、上清を廃棄した。同時に、Amaxa SF Cell Line 4D-Nucleofector Kit L(Lonza、Cat# VCA-1005)に含まれる90 μLのSF Cell Line Solution、20 μLのサプリメントI(Supplement I)及びステップ1.1.8で得られた0.3μgから0.6 μgの線形化ベクターライブラリーとよく混合し、この混合溶液で細胞を再懸濁し、エレクトロポレーション用チューブ(electroporation cuvette)に移した。4D-Nucleofector(商標)Systemエレクトロポレーターの各宿主細胞に対応するプログラムを使用して、細胞をトランスフェクトした。エレクトロポレーションした細胞を5mLの抗生物質を含まない培地に再懸濁し、37℃のシェーカーでインキュベートした。
【0214】
1.2.2 トランスフェクションの24時間後、ベクター中の耐性遺伝子に対応する抗生物質を含む等量の選択培地を、選択のために細胞培養培地に添加した(この実験では、抗生物質はブレオマイシン(800μg/mL)であった)。
【0215】
1.2.3 細胞は、2~4日ごとにカウントされ、細胞は、その増殖に応じて継代され、ベクターの耐性遺伝子に対応する抗生物質を含む選択培地を使用してスクリーニングされた(この実験では、抗生物質はブレオマイシン(400μg/mL)であった)。細胞生存率が90%以上に回復した後、モノクローナルのスクリーニングを準備した。
【0216】
実施例2:緑色蛍光タンパク質を高発現しているクローンのスクリーニング
【0217】
2.1 単細胞のソーティングと増幅
【0218】
2.1.1 実施例1のステップ1.2.3で回収されたプールから、より高いGFP発現レベル(例えば、発現レベルの上位0.5%)を有する細胞を、FACS AriaIIフローサイトメトリーにより培養用96ウェルプレートにソーティングして、培養した。
【0219】
2.1.2 回収された細胞が肉眼で見えるようになるまで、2~4日ごとにプレート内の培地の75%を交換した。
【0220】
2.2 GFP発現の高いクローンのスクリーニング
【0221】
2.1.2で回収された細胞は、新しい96ウェルプレートに順次に移して、合計約300クローンが得られた(各ウェルのすべての細胞は、1つの細胞に由来するため、本明細書ではクローンと呼ばれる)。GFPの発現レベルはFACSAriaIIフローサイトメーターによって検出され、上位10%の検出強度のクローンは増幅のために24ウェルプレートに移された。
【0222】
実施例3:転写制御エレメントのスクリーニング、同定及び検証
【0223】
3.1転写制御エレメントの候補配列の同定
【0224】
3.1.1 2.2での24ウェルプレートで増殖した細胞がプレートの底に実質的にコンフルエントになったとき、DNeasy Blood&Tissue Kit(QIAGEN)を使用して各クローンのゲノムを抽出した。
【0225】
3.1.2 ベクター内にフォワードプライマーとリバースプライマー(それぞれBamHIの制限部位の約200bp上流と下流)を設計し、3.1.1で抽出したゲノムに対してPCR増幅を行った。PCR反応において、フォワードプライマーの配列は、GCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGG(配列番号69)であり、リバースプライマーの配列は、CATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTA(配列番号70)である。
【0226】
上記のPCR反応の反応系は表6に示すようである。
【0227】
【表5】
【0228】
上記のPCR反応の反応ステップは表7に示すようである。
【0229】
【表6】
【0230】
3.1.3 PCR産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、ゲルを切断して1 kb以上の特定のバンド(1つ以上)を回収し、QIAquickゲル抽出キット(Gel Extraction Kit)(QIAGEN)を使用してDNAを抽出した。
【0231】
3.1.4 回収されたバンド(1つ以上)はシーケンスに委託して、候補となる転写制御エレメントの配列A~Gが同定された。
【0232】
3.1.5 シーケンシングにより同定された転写制御エレメントの配列A~Gは以下のとおりであり、その中で、
【0233】
転写制御エレメントAの配列は、配列番号35に示される配列である(転写制御エレメントAの逆配列は、配列番号47に示される配列である);
【0234】
転写制御エレメントBの配列は、配列番号36に示される配列である(転写制御エレメントBの逆配列は、配列番号48に示される配列である);
【0235】
転写制御エレメントCの配列は、配列番号37に示される配列である(転写制御エレメントCの逆配列は、配列番号49に示される配列である);
【0236】
転写制御エレメントDの配列は、配列番号38に示される配列である(転写制御エレメントDの逆配列は、配列番号50に示される配列である);
【0237】
転写制御エレメントEの配列は、配列番号39に示される配列である(転写制御エレメントEの逆配列は、配列番号51に示される配列である);
【0238】
転写制御エレメントFの配列は、配列番号40に示される配列である(転写制御エレメントFの逆配列は、配列番号52に示される配列である);
【0239】
転写制御エレメントGの配列は、配列番号41に示される配列である(転写制御エレメントGの逆配列は、配列番号53に示される配列である);
【0240】
転写制御エレメントHの配列は、配列番号42に示される配列である(転写制御エレメントHの逆配列は、配列番号54に示される配列である);
【0241】
転写制御エレメントIの配列は、配列番号43に示される配列である(転写制御エレメントIの逆配列は、配列番号55に示される配列である);
【0242】
転写制御エレメントJの配列は、配列番号44に示される配列である(転写制御エレメントJの逆配列は、配列番号56に示される配列である);及び
【0243】
転写制御エレメントKの配列は、配列番号45に示される配列である(転写制御エレメントKの逆配列は、配列番号57に示される配列である)。
【0244】
3.2 転写制御エレメントの検証
【0245】
3.2.1 In-Fusionクローナルキット(Cloning Kit)(Takara)を使用して、3.1.5でシーケンシングして特定された転写制御エレメントA~Kを、GFP遺伝子含有ベクターの対応するプロモーターの上流のBamHI制限部位にそれぞれ挿入した。図10に示すように転写制御エレメントが挿入されたベクターが得られた(ここで、WXREは、転写制御エレメントAからKのうちの1つを示す)。前述のベクターは、ベクターバックボーンの原核生物領域にのみ位置する制限部位を有する制限エンドヌクレアーゼ(例えば、PvuI(NEB))を使用して線形化され、37℃で一晩インキュベートされた。翌日、フェノール-クロロホルムでDNAを回収し、トランスフェクションに使用した。
【0246】
3.2.2 約500万個のCHO宿主細胞を遠心分離し、上清を廃棄した。同時に、Amaxa SF Cell Line 4D-Nucleofector Kit L(Lonza、Cat# VCA-1005)に含まれる90 μLのSF Cell Line Solution、20 μLのサプリメントI及び発現させるタンパク質の遺伝子を含む線形化ベクター(3.2.1で得られた)30 μgを均一に混合し、この混合溶液で細胞を再懸濁し、エレクトロポレーションチューブに移した。4D-Nucleofector(商標) Systemエレクトロポレーターの各宿主細胞に対応するプログラムを使用して、細胞をトランスフェクトした。エレクトロポレーションした細胞を5mLの抗生物質を含まない培地に再懸濁し、37℃のシェーカーで培養した。各サンプルには1つの転写制御エレメントが含まれているか、転写制御エレメントのないコントロールであった。
【0247】
3.2.3 トランスフェクションの24時間後、ベクター中の耐性遺伝子に対応する抗生物質を含む等量の選択培地を、選択のために細胞培養培地に添加した。抗生物質(1つ以上)を含む培地を使用して、細胞を2~4日ごとに継代した。
【0248】
3.2.4 細胞生存率が90%以上に回復した後、タンパク質の発現レベルに対する転写制御エレメントAからKの効果をバッチ流加培養によって評価した。
【0249】
実施例4:異種タンパク質の発現に使用されるタンパク質発現システムの発現レベルに対する転写制御エレメントの影響
【0250】
4.1.1 In-Fusionクローニングキット(Takara)を使用して、転写制御エレメントA~Kを融合タンパク質(前述の融合タンパク質はPD-L1のA鎖であり、その配列は配列番号71に示す配列である)のプロモーターの上流BamHI位置に順方向及び逆方向に構築した。図10に示すように、転写制御エレメントが挿入されたベクター(WXREは転写制御エレメントA~Kの1つである)を取得し、転写制御エレメントのテール番号1は順方向を示し、転写制御エレメントのテール番号2は逆方向を示す。例えば、転写制御エレメントA1(配列番号35に示されている)は、コード配列のセンス鎖に転写された、配列の順方向(即ち、5'から3')を示す。転写制御エレメントA2は、配列の逆相補体を示し、配列番号47に示されている。即ち、実施例4のタンパク質コード配列のセンス鎖の転写制御エレメントA1は、本開示の実施例3の転写制御エレメントAと同等である。
【0251】
前述のベクターは、ベクター骨格の原核生物領域にのみ位置する制限部位を有する制限エンドヌクレアーゼ(例えば、PvuI(NEB))を使用して線形化され、37℃で一晩インキュベートされた。翌日、翌日、フェノール-クロロホルムでDNAを回収し、トランスフェクションに使用した。
【0252】
4.1.2 約500万個のCHO宿主細胞を遠心分離し、上清を廃棄した。同時に、Amaxa SF Cell Line 4D-Nucleofector Kit L(Lonza、Cat# VCA-1005)に含まれる90 μLのSF Cell Line Solution、20 μLのサプリメントI及び融合タンパク質(4.1.1で取得)の遺伝子を含む線形化ベクター30 μgを均一に混合し、この混合溶液で細胞を再懸濁し、エレクトロポレーションチューブ(electroporation cuvette)に移した。4D-Nucleofector(商標) Systemエレクトロポレーターの各宿主細胞に対応するプログラムを使用して、細胞をトランスフェクトした。エレクトロポレーションした細胞を5mLの抗生物質を含まない培地に再懸濁し、37℃のシェーカーで培養した。1グループのサンプルには、特定の方向(つまり、順方向又は逆方向)の転写調節エレメントが1つだけ含まれ、転写調節エレメントを含まないサンプルがコントロールとした。
【0253】
4.1.3 トランスフェクションの24時間後、800μg/mLのブレオマイシンを含む等量の培地をトランスフェクトされた細胞に添加した。
【0254】
4.1.4 400μg/mLのブレオマイシンを含む培地で2~4日ごとに細胞を継代した。
【0255】
4.1.5 細胞生存率が90%以上に回復した後、融合タンパク質PD-L1の発現レベルをバッチ流加培養によって評価した。
【0256】
4.1.6 発現により得られたPD-L1の配列が配列番号71に示す配列と同一であるかどうかを確認した。
【0257】
4.2 実験結果
【0258】
図11に示すように、融合タンパク質のプロモーターの上流に転写制御エレメントを挿入すると、転写制御エレメントを含まない対照群と比較して、標的タンパク質の発現レベルを約10%から25%増加させることができた(図11におけるA2、B1、B2、D2、E2、F2、G1、H1、I2、J1、及びK2を参照)。前述の配列は、プロモーターの方向性に関連している可能性があるから、ある方向でのタンパク質発現を別の方向よりもよく促進する。
【0259】
図12に示すように、発現レベルに対応して、順方向又は逆方向の転写制御エレメントは、ユニット生産性を約10%増加させ、特定の生産性を約10%増加させることができた(図12におけるA2、B1、B2、D2、E2、F2、G1、H1、I2、J1、及びK2を参照)。
【0260】
そして発現により得られたPD-L1の配列は、配列番号71に示す配列と同一であることが確認された。
【0261】
実施例5:アダリムマブの発現に使用されるタンパク質発現システムの発現レベルに対する転写制御エレメントの影響
【0262】
5.1.1 転写制御エレメントAの逆配列(A2)、転写制御エレメントBの順配列(B1)、及び転写制御エレメントGの順配列(G1)は、アダリムマブを発現する遺伝子のプロモーターの上流に、タカラ社のIn-Fusionクローニングキットを使用して構築された(具体的な条件を表7に示す)。図13及び図14に示すように、それぞれ、転写制御エレメントが挿入されたベクター(WXREは転写制御エレメントA~Gの一種である)を取得した。「重鎖の上流の転写制御エレメント」は図13に示すベクターにクローン化され、「軽鎖の上流の転写制御エレメント」は図14に示すベクターにクローン化された。その中で、図13のアダリムマブの重鎖(HC)のアミノ酸配列は、配列番号72に示されている。図14のアダリムマブの軽鎖(LC)のアミノ酸配列を配列番号73に示されている。
【0263】
前述のベクターは、ベクターのバックボーンの原核生物領域にのみ位置する制限部位を有する制限エンドヌクレアーゼ(例えば、PvuI(NEB))を使用して線形化され、37℃で一晩インキュベートされた。翌日、フェノール-クロロホルムでDNAを回収し、トランスフェクションに使用した。
【0264】
【表7】
【0265】
5.1.2 約500万個のCHO宿主細胞を遠心分離し、上清を廃棄した。同時に、Amaxa SF Cell Line 4D-Nucleofector Kit L(Lonza、Cat# VCA-1005)に含まれる90 μLのSF Cell Line Solution、20 μLのサプリメントI及びアダリムマブの配列を含む線形化ベクター(5.1.1で得られた)30 μgを均一に混合し、この混合溶液で細胞を再懸濁し、エレクトロポレーションチューブ(electroporation cuvette)に移した。4D-Nucleofector(商標) Systemエレクトロポレーターの各宿主細胞に対応するプログラムを使用して、細胞をトランスフェクトした。エレクトロポレーションした細胞を5mLの抗生物質を含まない培地に再懸濁し、37℃のシェーカーで培養した。1グループのサンプルには、特定の方向(つまり、順方向又は逆方向)の転写調節エレメントが1つだけ含まれ、転写調節エレメントを含まないサンプルがコントロールとした。
【0266】
5.1.3 抗体発現の迅速な評価のために設計された方法を使用した。この方法により、抗体の重鎖と軽鎖がほぼ1:1の比率で発現され、抗体の発現を比較的短時間で確実に評価できる。トランスフェクションの24時間後、18μg/mLのブラストサイジンと800μg/mLのブレオマイシンを含む等量の培地をトランスフェクトした細胞に添加した。
【0267】
5.1.4 9μg/mLブラストサイジンと400μg/mLブレオマイシンを含む培地を使用して、2~4日ごとに細胞を継代した。
【0268】
5.1.5 アダリムマブの発現レベルは、細胞生存率が90%以上に回復したときに流加培養によって評価された。アダリムマブの重鎖発現ベクターと軽鎖発現ベクターの両方を同じ宿主細胞にトランスフェクトできるため、アダリムマブの重鎖と軽鎖を同時に発現させることができる。前述の重鎖及び軽鎖は宿主細胞内で自己組織化することができるため、無傷のアダリムマブが得られた。
【0269】
5.1.6 得られたアダリムマブの生物活性の測定。
【0270】
5.2 実験結果
【0271】
対照群と比較して、転写制御エレメントBを含むいくつかのフォワード配列(サンプル1、2、及び4を参照)では、アダリムマブの発現レベルが10%から20%増加した(図15を参照)。
【0272】
本異種タンパク質発現ベクターから発現されるアダリムマブの生物学的活性を決定することにより、その生物学的活性は、既知の市販のアダリムマブのものと同一であることが見出された。
【0273】
実施例6:トランスポゾンベースの安定性プールの開発
【0274】
組換えタンパク質発現遺伝子及び抗生物質耐性遺伝子は、piggyBacトランスポザーゼによって認識される一対の末端反復配列の間に挿入された。例えば、組換えタンパク質(例えば、抗体又はFc融合タンパク質)が複数の発現ユニットを含む場合、これらの異なる発現ユニットは、異なる抗生物質耐性遺伝子を含むベクターにクローン化することができた。
【0275】
piggyBacトランスポザーゼ発現遺伝子を含むプラスミド及び組換えタンパク質発現遺伝子を含むプラスミドは、それぞれエンドトキシンフリープラスミドキットによって調製された。これらのプラスミドは、いずれも消化によって線形化する必要はなかった。
【0276】
トランスフェクションに使用された宿主細胞は、懸濁液に適応したCHO-K1細胞であった。宿主細胞の生細胞密度は、100万から300万細胞/mLの間であることが望ましい。
【0277】
異なるヒトIgG1抗体(A、B及びC)を発現する細胞プールを生成するため、1,000万個の宿主細胞に、抗体発現のために10:1の質量比であるトランスポゾンベクターとトランスポザーゼベクターの合計20 μgをトランスフェクトした。トランスポゾンベクターは、約1:1の比率である抗体重鎖用のトランスポゾンベクターと抗体軽鎖用のトランスポゾンベクターを含む。
【0278】
次に、トランスフェクトした細胞を10mLの細胞培養液に再懸濁した。コントロールについては、同量の宿主細胞に同量の線状化抗体発現プラスミドをトランスフェクトした。これらの線形化された抗体発現核酸は、トランスポザーゼ発現プラスミドに挿入されなかった。細胞をプラスミドと混合し、Kuhner(登録商標)振とうインキュベーターで培養した。
【0279】
トランスフェクションの24時間後、選択用の抗生物質を含む10mLの新鮮な培地を細胞培養に加えた。抗生物質は抗生物質耐性遺伝子に対応する。抗生物質濃度は、宿主細胞での殺傷曲線実験によって決定された。また、補充培地の濃度は、選択用の抗生物質濃度の2倍だった。これにより、得られた細胞培養の実際の抗生物質濃度を選択用の抗生物質濃度レベルにすることができた。
【0280】
細胞は、選択した抗生物質を含む新鮮な培地で2~4日ごとに継代された。播種密度は、細胞の生存率、増殖速度、倍加時間に基づいて調整された。
【0281】
約2週間の培養後、細胞培養物を使用して、トランスフェクトされた各細胞培養物について決定されたのと同じ播種密度で生産基本培地に接種した。振とうインキュベーターで生産用細胞培養を増殖させた。
【0282】
生産プロセスは、バッチ流加培養によって実施された。したがって、適切な種類及び量の補足培地を培養物に補充した。
【0283】
結果を図2に示す。14日間の培養後、piggyBacトランスポゾンシステムを使用した宿主細胞のバッチ供給培養により、2.4g/Lの抗体A、4.1g/Lの抗体B、及び4.6g/Lの抗体C(PB D14力価)が生成された。図が示すように、可変領域の異なる配列は、異なる発現レベルをもたらす可能性がある。しかし、各抗体について、piggyBacトランスポゾン発現システムは発現レベルを大幅に増加させた。
【0284】
対照的に、従来の安定したプールコントロールは0.2g /L未満の抗体を産生した(従来のプールD14力価)。したがって、同じ条件下で、piggyBacトランスポゾンシステムはタンパク質発現を10倍以上増加させた。
【0285】
実施例7:制御エレメントのスクリーニング
【0286】
以下に説明するように、CHO-K1細胞からのmRNAのRNAシーケンシングは様々な段階で実施された。一過性/安定なトランスフェクションを行い、以下のサンプルから全RNAを抽出した。サンプルは、1)一過性トランスフェクション後6日目に10個のサンプル;2)一過性トランスフェクション後8日目に10個のサンプル;3)従来のバッチ供給を14日間実施する過程中の、10日目に安定してトランスフェクトされた10個のサンプル;である。
【0287】
cDNAが生成され、配列決定された。相対的な読み取り長に基づいて、mRNAが抽出され、30個のサンプルすべての平均存在量によってランク付けされた。制御エレメント(RE)配列は、上位のmRNAから抽出され、以下の表にリストされている。
【0288】
【表8】
【0289】
タンパク質発現に対するこれらのRE配列の効果を評価するために実験が行われた。これらのRE配列は、組換えタンパク質発現遺伝子の直後に融合タンパク質発現プラスミドに組み込まれた。対照サンプルには、制御エレメント配列は含まれていなかった。
【0290】
合計1,000万個の宿主細胞に、異なるRE配列を持つ20 μgの融合タンパク質発現プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を10mLの宿主細胞培養物に再懸濁した。得られた溶液を混合し、Kuhner(登録商標)振とうインキュベーターで培養した。
【0291】
トランスフェクションの24時間後、選択抗生物質を含む10mLの新鮮な培地をトランスフェクトされた細胞培養物に加えた。細胞は、選択した抗生物質を含む新鮮な培地で2~4日ごとに継代された。播種密度は、細胞の生存率、増殖速度、倍加時間に基づいて調整された。
【0292】
抗生物質の選択の約2週間後、細胞培養物を別々に使用して、トランスフェクトされた各細胞培養物について決定されたのと同じ播種密度で生産基本培地に接種した。振とうインキュベーターで生産用細胞培養を増殖させた。
【0293】
生産プロセスは、バッチ流加培養によって実施された。したがって、適切な種類及び量の補足培地を培養物に補充した。
【0294】
図3に示すように、ほとんどの制御エレメントは、コントロールと比較してタンパク質発現の生産性を少なくとも10%増加させた。
【0295】
実施例8:piggyBacと制御エレメントの組み合わせ
【0296】
組換えタンパク質発現遺伝子、標準的な制御エレメント配列、及び抗生物質耐性遺伝子は、piggyBacリコンビナーゼによって認識される一対の末端反復配列の間にクローン化された。例えば、組換えタンパク質(例えば、抗体又はFc融合タンパク質)が複数の発現ユニットを含む場合、これらの異なる発現ユニットは、異なる抗生物質耐性遺伝子を含むベクターにクローン化することができた。
【0297】
piggyBacトランスポザーゼ発現遺伝子を含むプラスミド及び組換えタンパク質発現遺伝子を含むプラスミドは、それぞれ、エンドトキシンフリーのプラスミドキットによって調製された。これらのプラスミドはいずれも消化によって線形化されなかった。
【0298】
トランスフェクションに使用した宿主細胞は、懸濁液に適応したCHO-K1細胞であった。宿主細胞の生細胞密度は、100万から300万細胞/mLの間であることが望ましい。
【0299】
異なるヒトIgG1抗体(D、E、及びF)を発現する細胞のプールを生成するために、1,000万個の宿主細胞に20 μgのpiggyBacトランスポゾンベクター(WXRE ID:B(配列番号36)有り/なし)とトランスポザーゼベクターを10:1の質量比でトランスフェクトした。次に、トランスフェクトされた細胞を10mLの宿主細胞培養物に再懸濁した。従来の安定したプールコントロールとして、同量の宿主細胞に同量の線状化抗体発現プラスミドをトランスフェクトした。得られた溶液を混合し、Kuhner(登録商標)振とうインキュベーターで培養した。
【0300】
トランスフェクションの24時間後、選択抗生物質を含む10mLの新鮮な培地をトランスフェクトされた細胞培養物に加えた。抗生物質は、本明細書で決定される抗生物質耐性遺伝子に対応した。抗生物質濃度は、宿主細胞での殺傷曲線実験によって決定された。また、補充培地の濃度は、選択に使用される選択された抗生物質濃度の2倍であるため、得られる細胞培養物の実際の抗生物質濃度は、選択された抗生物質濃度と同じであった。
【0301】
細胞は、選択した抗生物質を含む新鮮な培地で2~4日ごとに継代された。播種密度は、細胞の生存率と倍加時間に基づいて調整された。
【0302】
抗生物質選択の2週間後、細胞培養物を別々に使用して、トランスフェクトされた各細胞培養物について決定されたのと同じ播種密度で生産基本培地に接種した。振とうインキュベーターで生産用細胞培養を増殖させた。
【0303】
生産プロセスは、バッチ流加培養によって実行された。したがって、適切な種類及び量の補足培地を培養物に補充した。
【0304】
図4に示すように、14日後、piggyBacトランスポゾンシステムのみ(RE配列なし)を使用した生産用細胞培養の3つのグループのタンパク質発現(力価)は、それぞれ2.1g/L、3.9g/L、及び5.5 g/Lであった。それに対して、抗体発現プラスミドにRE配列が存在する場合、発現はそれぞれ2.8g/L、5.2g/L、6.5 g/Lに増加した。結果は、piggyBacトランスポゾンシステムと制御エレメント配列(例えば、WXRE)の組み合わせがタンパク質生産をさらに増加させることができることを示している。
他の実施形態
【0305】
本発明は本発明の詳細な説明と併せて説明されてきたが、前述の説明は例示を意図しており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の側面、利点、及び修正は、添付の特許請求の範囲内にある。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図6-6】
図6-7】
図6-8】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図7-5】
図7-6】
図7-7】
図7-8】
図7-9】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2023515501000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023515501000001.app
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’-ITR(逆方向末端反復)配列;
3’-ITR配列;及び
配列番号1~15及び配列番号35~58からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である制御エレメント配列;
を含む、核酸。
【請求項2】
前記5’ITR配列は、配列番号68と少なくとも90%同一である配列を含み、前記3’ITR配列は、配列番号60と少なくとも90%同一である配列を含むか、或いはそれからなる、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記5’ITR配列は、配列番号68を含み、前記3’ITR配列は、配列番号60を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
さらに5’-内部ドメイン及び3’-内部ドメインを含む核酸であって、前記5’-内部ドメインが、配列番号66と少なくとも90%同一である配列を含み、前記3’-内部ドメインが、配列番号67と少なくとも90%同一である配列を含み、前記5’-内部ドメインが前記5’-ITRに直接隣接しており、前記3’-内部ドメインが前記3’-ITRに直接隣接している、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
前記核酸は、配列番号1~15からなる群から選択される1つ以上の制御エレメント配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
前記核酸は、配列番号35~46からなる群から選択される1つ以上の制御エレメント配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
さらにプロモーター及びポリペプチドをコードする配列を含む核酸であって、前記ポリペプチドをコードする配列が前記プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸。
【請求項8】
前記ポリペプチドをコードする配列は、2つの制御エレメント配列の間に位置する、請求項7に記載の核酸。
【請求項9】
さらにプロモーター及び2つ以上のポリペプチドをコードする配列を含み、前記2つ以上のポリペプチドをコードする配列が前記プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
前記配列が抗体重鎖及び抗体軽鎖をコードする、請求項9に記載の核酸。
【請求項11】
前記核酸は、さらに配列番号35~46からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一性を有するWXRE配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項12】
前記核酸が2つ以上の発現カセットを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項13】
前記核酸が選択マーカーを含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項14】
前記選択マーカーは、抗生物質耐性遺伝子、蛍光タンパク質をコードする配列、又はlacZである、請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
請求項1に記載の核酸を含むベクター。
【請求項16】
前記5’-ITRは、TR 、5’-ITRスペーサー、IR を含み、前記3’-ITRは、IR 、3’-ITRスペーサー、TR を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項17】
前記TR が、配列番号61の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含み;前記5’-ITRスペーサーは、配列番号62の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含み;前記IR が、配列番号63の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含み;前記TR が、配列番号64の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含み;前記IR が、配列番号65の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
5’から3’の方向に以下の遺伝的エレメントを含む請求項15に記載のベクター:
TR 、5’-ITRスペーサー、IR を含む5’-ITR;
プロモーター;
制御エレメント配列;
タンパク質コード配列;及び
IR 、3’-ITRスペーサー、TR を含む3’-ITR。
【請求項19】
前記TR が、配列番号61の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含み;前記5’-ITRスペーサーは、配列番号62の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含み;前記IR が、配列番号63の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含み;前記TR が、配列番号64の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含み;前記IR が、配列番号65の逆配列又は逆相補配列と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
請求項1に記載の核酸を含む細胞。
【国際調査報告】