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特表2023-515502COVID-19を治療するための早期アポトーシス細胞の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】COVID-19を治療するための早期アポトーシス細胞の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/14 20150101AFI20230406BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230406BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230406BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K35/14
A61K35/17
A61P37/06
C12N5/078
C12N1/00 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550149
(86)(22)【出願日】2021-02-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 IL2021050198
(87)【国際公開番号】W WO2021171285
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/980,457
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/085,711
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/086,079
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/145,524
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515153004
【氏名又は名称】エンリヴェックス セラピューティクス アールアンドディー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィック、シャイ
(72)【発明者】
【氏名】メヴォラッチ、ドロール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB06
4B065BB07
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB34
4C087CA04
4C087DA12
4C087DA18
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB33
(57)【要約】
本明細書に開示された組成物及びその使用方法は、治療を必要とする対象におけるSARS-CoV-2ウイルス感染症を治療または予防するためのものであり、治療は、COVID-19に罹患した対象の生存期間を延長すること、及びCOVID-19またはその関連症状に起因する臓器機能不全または臓器不全を軽減することを含む。治療を必要とする対象におけるSARS-CoV-2ウイルス感染症を治療または予防する方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を含む組成物を対象に投与することを含む。本開示の組成物及びその使用方法は、COVID-19及びその症状に伴う負の炎症誘発作用を低減させることができる。さらに、抗炎症性サイトカインの放出を増加させることができる。特定の場合では、本開示の組成物は、追加の薬剤を含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象におけるCOVID-19を治療する方法であって、
早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を含む組成物を前記対象に投与する投与ステップを含み、
前記投与ステップによりCOVID-19を治療する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記治療は、COVID-19の症状の治療、抑制、発生率の低減、改善、または緩和を含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記症状は、臓器不全、臓器機能不全、臓器損傷、サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記臓器は、肺、心臓、腎臓、肝臓、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記臓器不全、前記臓器機能不全、または前記臓器損傷は、肺不全、肺機能不全、または肺損傷を含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記肺機能不全は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)または肺炎を含む、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、
前記臓器不全は、急性多臓器不全を含む、方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法であって、
前記臓器不全の治療は、前記臓器不全の軽減、進行の遅延、抑制、反転、修復、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記治療は、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていないCOVID-19対象と比較して、COVID-19対象の生存期間を増加させる、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記COVID-19は、軽症、中等症、重症、重篤のCOVID-19を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記COVID-19は、重症または重篤のCOVID-19を含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団は、
(a)24時間を超えて安定しているアポトーシス集団、
(b)非静止非アポトーシス細胞の数が減少した、生存非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された、または生存非アポトーシス細胞の増殖が低下した、アポトーシス集団、
(c)早期アポトーシス単核濃縮細胞のプールされた集団、または、
(d)それらの任意の組み合わせ、を含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記投与ステップは、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団の単回注入を含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記投与ステップは、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団の複数回注入を含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記投与ステップは、静脈内投与を含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、
前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団は、アポトーシス誘導後に放射線照射された早期アポトーシス細胞を含む、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
当該方法は、追加治療を実施するステップをさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記追加治療は、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を前記対象に投与する前、同時、または後に実施される、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、
当該方法は、前記対象の免疫応答を再調整するステップをさらに含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記免疫応答の再調整は、1種以上の炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、免疫調節因子、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を減少させることを含む、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
前記免疫応答の再調整は、1種以上の抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、またはそれらの組み合わせの分泌を増加させることを含む、方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法であって、
前記免疫応答の再調整は、
1種以上の炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、免疫調節因子、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を減少させ、かつ、
1種以上の抗炎症性のサイトカインもしくはケモカインを増加させることを含む、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、
当該方法は、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていないCOVID-19対象と比較して、集中治療室(ICU)に入院する対象の数を減少させる、方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法であって、
当該方法は、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていない対象と比較して、前記対象の入院期間を短縮する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示されるのは、COVID-19を治療するための、早期アポトーシス細胞またはその上清を含む組成物である。COVID-19を治療するための早期アポトーシス細胞の使用は、COVID-19に罹患している患者におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する。本明細書に開示される組成物は、患者におけるSARS-CoV-2感染症の症状を治療するため、及びCOVID-19患者の生存率を上げるために使用することができる。本開示の組成物は、単独で使用してもよいし、または、他の治療薬または治療法と組み合わせて使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、新たに認識されたSARS-CoV-2ウイルスに関連する臨床症候群に与えられた名前であり、パンデミックとなっており、死亡率は1~3%(中国からの報告に基づく)であり、入院患者の合併症は最大で15~25%の集中治療室への入院をもたらす。COVID-19の臨床症状には、上気道感染及び下気道感染の両方が含まれるが、患者が無症状の場合もある。入院患者の鼻や喉から採取したぬぐい液や唾液からSARS-CoV-2を正確に検出する診断用PCR法が、香港やベルリンで急速に開発され、世界中の公衆衛生当局で使用されている。SARS-CoVや他のコロナウイルスとの交差反応を回避するために、PCR法による検査では、SARS-CoV-2に特有のRNA依存性RNAポリメラーゼをコードする遺伝子領域を検出する。すべての患者が入院を必要とするわけではないが、感染拡大の指標が高いため、すべての陽性患者は、他者への感染を防止するために隔離される。
【0003】
ワクチンの開発が重要なステップであることは疑う余地がなく、新たなアウトブレイクの知らせが広まったときには、すでにいくつかのMERSワクチンが臨床試験に入っていた。しかしながら、効果的な(ただし、100%防ぐことは恐らくできない)正しいウイルスタンパク質の開発及び試験には時間がかかるであろう。一方、抗ウイルス薬の試験も行われている。これには、2種類のヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗ウイルス薬の併用が含まれる。ロピナビルとリトナビルとが、COVID-19の有望な治療薬として注目を集めている。そして、2020年3月のニュー・イングランド・オブ・メディスン誌(New England of Medicine)誌の記事によると、SARS-CoV-2に感染した中国人患者を対象にロピナビルとリトナビルとの併用療法を検証する無作為化臨床試験が少なくとも3件登録されており(NCT04255017、NCT04252885、及びNCT04251871)、そのうちの1件は陰性という結果であった。現在、SARS-CoV-2を対象とした臨床試験が進行中の他のHIV抗ウイルス薬はほんの一握りであり、それらには、米国の製薬会社ジョンソン・エンド・ジョンソン社が中国上海市の公衆衛生臨床センターに寄贈したダルナビル・コビシスタットが含まれる。
【0004】
ヌクレオシド類似体も検討されており、レムデシビルが、SARS-CoV-2に感染した最初の米国人患者の治療に使用され、その患者は回復した。また、北京の中日友好病院が統括する武漢のSARS-CoV-2感染患者を対象とした第III相試験(NCT04252664及びNCT04257656)も実施されている。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスは、コロナのメインプロテアーゼであるM-proを含む独自のプロテアーゼを有しており、HIV抗ウイルス薬は、ヒト細胞に対するオフターゲット作用を回避するために、HIVプロテアーゼの活性を特異的に遮断するように設計及び調節されている。このため、HIV抗ウイルス薬も、SARS-CoV-2プロテアーゼと結合する可能性が低い。最近、クロロキンが、新しい抗ウイルス薬として提案された。加えて、仮に、抗ウイルス療法がSARS-CoV-2に対して有効であることが認められたとしても、抗ウイルス療法が、ICUに入院した患者に対する治療法として選択されるかどうかは不明である。
【0005】
「サイトカインストーム」という用語は、免疫系の異常や、炎症反応の制御不能を指す言葉である。この用語は、一般社会や科学界などから注目を集めており、一般メディア及び科学文献の両方で使用されることが増えている。実際、いくつかの文献では、COVID-19の合併症の重要な部分がサイトカインストームに関連していることを示している(「Huang et al. (2020) Lancet vol. 395:497-506」、「Mehta et al. (2020) Lancet vol. 395:1033-1034」)。
【0006】
サイトカイン放出症候群(CRS)は、危険な、そして時には生命を脅かす副作用であり、細胞が全身性の炎症反応を引き起こすことで、血流中にサイトカインが急速にかつ大量に放出され、それにより、危険な低血圧、高熱、震えをもたらす。
【0007】
CRSの重症例では、患者はサイトカインストーム(別名、サイトカインカスケードまたは高サイトカイン血症)を経験し、サイトカインと白血球との間で正のフィードバックループが生じ、サイトカインのレベルが非常に上昇する。これにより、心機能障害、成人呼吸窮迫症候群、神経毒性、腎不全、肝不全、肺水腫、及び播種性血管内凝固を含む、生命を脅かす可能性のある合併症が生じる恐れある。
【0008】
例えば、T細胞上のCD28受容体に結合するモノクローナル抗体TGN1412を投与された最近の第I相試験の6人の患者は、サイトカインストーム及び多臓器不全の重症例を示した。これは、TGN1412の用量が、動物実験で安全が確認された用量の500分の1であったにもかかわらず起こった(「St. Clair EW: The calm after the cytokine storm: Lessons from the TGN1412 trial. J Clin Invest 118: 1344-1347, 2008」)。
【0009】
サイトカインストームは、他の感染性または非感染性の刺激の後にも問題となる。サイトカインストームでは、インターロイキン-1(IL-1)、IL-6、g-インターフェロン(g-IFN)、及び腫瘍壊死因子-α(TNFα)などの様々な炎症性サイトカインが放出され、それにより、低血圧、出血が生じ、最終的には多臓器不全に至る。1918年のH1N1型インフルエンザの大流行や、最近の鳥インフルエンザH5N1感染において、免疫系が正常であると思われる若者の死亡率が比較的高いのは、サイトカインストームに起因する。また、このサイトカインストームまたはサイトカイン放出症候群は、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エプスタインバーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症、敗血症、グラム陰性敗血症、マラリア、及びエボラ感染を含む様々な他の感染症の進行期または末期の症例で生じることが知られている。
【0010】
免疫系は通常、病原菌(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫)と戦って、感染を予防する。感染が発生した場合、免疫系はそれと戦おうとするが、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤などの薬剤の助けを必要とする場合もある。
【0011】
アポトーシス細胞は、生理学的細胞死の1つの経路であり、最も一般的にはアポトーシスを介して発生し、それにより、認識、免疫応答、及び除去プロセスを含む一連の分子恒常性維持機構を誘起する。さらに、早期アポトーシス細胞は、樹状細胞及びマクロファージに対する免疫寛容を直接的及び間接的に誘導することができる免疫調節性細胞である。アポトーシス細胞は、樹状細胞及びマクロファージを調節して、それらを寛容原性にし、炎症性サイトカインの分泌及び共刺激分子の発現などの炎症性活性を阻害することが分かっている。
【0012】
ヒトの体内では、3×10個もの細胞が1時間ごとにアポトーシスを起こす。アポトーシス細胞によって発現される主要な「eat me」シグナルの1つは、ホスファチジルセリン(PtdSer)の膜曝露である。アポトーシス細胞自体が、貪食プロセスの「非炎症性」性質の主な原因であり、トロンボスポンジン1(TSP-1)またはアデノシン一リン酸を分泌し、場合によってはマクロファージ及びDCと相互作用する他の免疫調節「calm-down」シグナルを生成する。また、アポトーシス細胞は、「find me」シグナルや「tolerate me」シグナルを生成して、これらのシグナルのいくつかに対する特異的受容体を発現するマクロファージ及びDCを誘引し、免疫調節を行う。
【0013】
アポトーシス細胞と免疫系との相互作用のプロホメオスタシス的性質は、Toll様受容体(TLR)、NF-κB、インフラマソーム、脂質活性化核内受容体、Tyro3、Axl、及びMertk受容体に関連するマクロファージ及びDCにおける既知のアポトーシス細胞シグナル伝達事象において示される。さらに、シグナル伝達物質の誘導、転写1の活性化、及び、サイトカインシグナル伝達の抑制は、免疫系のサイレンシング及びDC寛容をもたらす(「Trahtemberg, U., and Mevorach, D. (2017). Apoptotic cells induced signaling for immune homeostasis in macrophages and dendritic cells. Front. Immunol. 8; article 1356」)。
【0014】
最近まとめられたように(「Trahtemberg and Mevorach, 2017」)、早期アポトーシス細胞は、動物モデル及びインビトロモデルの両方において、PAMP及びDAMPに由来する抗炎症性サイトカイン及び炎症性サイトカインの両方の下方制御により、異常な免疫応答に対して有益な効果を示す。この点で、敗血症患者における免疫調節の第Ib相臨床試験が最近完了し、主な結果は、早期アポトーシス細胞注入であるアロセトラ-OTSが安全であることが証明され、有意な免疫調節作用を有し、サイトカインストームを解消することであった。
【0015】
興味深いことに、Zouらの最近の研究(「Zou et al (2020) Lancet vol. 395:1054-1062, of 191 patients (135 from Jinyintan Hospital and 56 from Wuhan Pulmonary Hospital)」)では、COVID-19の191人の患者(武漢金銀潭病院135人、武漢肺科病院56人)のうち、137人が退院し、54人が病院で死亡した。91人(48%)の患者が併存疾患を有し、高血圧症が最も一般的(58人[30%]の患者)であり、糖尿病(36人[19%]の患者)と冠動脈心疾患(15人[8%]の患者)がそれに続いた。多変量回帰の結果、COVID-19患者における院内死亡の可能性の増加は、高齢と、入院時の順次臓器不全評価(SOFA)スコアの高さとに関連していることが示された。著者は、高齢以外の潜在的な危険因子として、SOFAスコアが高いこと、及び、D-ダイマが1μg/ml以上であることを指摘している。
【0016】
中等症から重症のCOVID-19患者に観察される症状は、最近敗血症で示されたものと同様の免疫学的作用機序が基礎にあると考えられるが、その知見は不明である。敗血症患者において単一のサイトカインに対するモノクローナル抗体を用いた過去の40件の臨床試験は敗血症では失敗しており(Cohenら、2012)、単一の抗サイトカイン剤で治療するのではなく、サイトカインストームを修正する必要があることが指摘されている。
【0017】
SARS-CoV-2ウイルスの感染患者において、COVID-19及びそれに関連する呼吸器感染症や多臓器不全などを治療する組成物及び方法に対する満たされていないニーズが依然として存在する。
【0018】
本明細書に記載の使用方法は、早期アポトーシス単核濃縮細胞の使用を含み、それにより、上記のニーズ、及び、SARS-CoV-2ウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者の生存時間の延長に取り組む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第4、752、614号明細書
【特許文献2】米国特許第4、761、490号明細書
【特許文献3】米国特許第4、764、461号明細書
【特許文献4】米国特許第4、929、739号明細書
【特許文献5】米国特許第4、962、207号明細書
【特許文献6】米国特許第5、093、135号明細書
【特許文献7】米国特許第5、102、908号明細書
【特許文献8】米国特許第5、213、899号明細書
【特許文献9】国際公開第2014/087408号
【特許文献10】米国特許出願公開第2013/0156794号明細書
【特許文献11】国際公開第2014/106666号
【特許文献12】米国特許出願公開第2015/0275175A1号明細書
【特許文献13】米国特許第6、489、311号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示の一態様では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象におけるCOVID-19を治療する方法であって、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を含む組成物を対象に投与する投与ステップを含み、上記投与ステップによりCOVID-19を治療する、方法が提供される。関連する態様では、治療は、COVID-19の症状の治療、抑制、発生率の低減、改善、または緩和を含む。
【0021】
さらなる関連する態様では、COVID-19の症状は、臓器不全、臓器機能不全、臓器損傷、サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらに別の関連する態様では、臓器は、肺、心臓、腎臓、肝臓、またはそれらの任意の組み合わせを含む。さらなる別の関連する態様では、臓器不全、臓器機能不全、または臓器損傷は、肺不全、肺機能不全、または肺損傷を含む。特定の態様では、肺機能不全は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)または肺炎を含む。さらなる関連する態様では、臓器不全は、急性多臓器不全を含む。関連する態様では、臓器不全の治療は、臓器不全の軽減、進行の遅延、抑制、反転、修復、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0022】
関連する態様では、治療は、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていないCOVID-19対象と比較して、COVID-19対象の生存期間を増加させる。さらなる関連する態様では、COVID-19は、軽症、中等症、または重症のCOVID-19を含む。さらなる関連する態様では、COVID-19は、中等症、重症、重篤のCOVID-19を含む。さらなる関連する態様では、COVID-19は、重症または重篤のCOVID-19を含む。さらなる関連する態様では、COVID-19は、重症のCOVID-19を含む。さらなる関連する態様では、COVID-19は、重篤のCOVID-19を含む。
【0023】
関連する態様では、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団は、(a)24時間を超えて安定しているアポトーシス集団、(b)非静止非アポトーシス細胞の数が減少した、生存非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された、または生存非アポトーシス細胞の増殖が低下した、アポトーシス集団、(c)早期アポトーシス単核濃縮細胞のプールされた集団、または、(d)それらの任意の組み合わせ、を含む。
【0024】
関連する態様では、上記投与ステップは、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団の単回注入を含む。さらに関連する態様では、上記投与ステップは、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団の複数回注入を含む。さらなる関連する態様では、上記投与ステップは、静脈内投与を含む。
【0025】
関連する態様では、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団は、アポトーシス誘導後に放射線照射された早期アポトーシス細胞を含む。
【0026】
関連する態様では、当該方法は、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団の投与に加えて、追加治療を実施するステップをさらに含む。さらに関連する態様では、追加治療は、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を対象に投与する前、同時、または後に実施される。
【0027】
関連する態様では、当該方法は、対象の免疫応答を再調整するステップをさらに含む。さらに関連する態様では、免疫応答の再調整は、1種以上の炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、免疫調節因子、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を減少させることを含む。さらなる関連する態様では、免疫応答の再調整は、1種以上の抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、またはそれらの組み合わせの分泌を増加させることを含む。さらに関連する態様では、免疫応答の再調整は、1種以上の炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、免疫調節因子、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を減少させ、かつ、1種以上の抗炎症性のサイトカインもしくはケモカインを増加させることを含む。
【0028】
関連する態様では、当該方法は、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていないCOVID-19対象と比較して、集中治療室(ICU)に入院する対象の数を減少させる。別の関連する態様では、当該方法は、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていない対象と比較して、対象の入院期間を短縮する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本特許または本出願は、少なくとも1つのカラー図面を含んでいる。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開の写しは、請求し必要な手数料を支払うことで、特許商標庁から提供される。
【0030】
本明細書に開示された主題は、明細書の結論部分で特に指摘され、明確に主張されている。しかしながら、本明細書に開示された組成物及び方法は、構成及び動作方法の両方に関して、また、その目的、特徴、及び利点と共に、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことによって最もよく理解されるであろう。
【0031】
図1図1は、初期アポトーシス細胞集団の作製プロセスのいくつかの実施形態における各ステップのフローチャートを示し、この作製プロセスは、抗凝固剤を添加するステップを含む(実施例、例えば、実施例1を参照)。収集された末梢血単核細胞(PBMC)は、いくつかの実施形態では自己由来であり、他の実施形態では同種異系である。また、いくつかの実施形態では、不適合単核細胞が使用される。複数の細胞供給源を使用する場合、追加のステップは、アポトーシス誘導を行った後、そのアポトーシス細胞に対して放射線を照射し、不適合細胞をプールすることを含む。
図2A図2Aは、HLA-DRの発現によって測定した、アポトーシス細胞との相互作用後の樹状細胞(DC)の成熟阻害を力価試験の結果を示す。新鮮な最終生成物AのHLA DR平均蛍光(t0)。
図2B図2Bは、HLA-DRの発現によって測定した、アポトーシス細胞との相互作用後の樹状細胞(DC)の成熟阻害を力価試験の結果を示す。2~8℃で24時間後の最終生成物AのHLA DR平均蛍光。
図3A図3Aは、CD86の発現によって測定した、アポトーシス細胞との相互作用後の樹状細胞(DC)の成熟阻害の力価試験の結果を示す。新鮮な最終生成物AのCD86平均蛍光(t0)。
図3B図3Bは、CD86の発現によって測定した、アポトーシス細胞との相互作用後の樹状細胞(DC)の成熟阻害の力価試験の結果を示す。2~8℃で24時間後最終生成物AのCD86平均蛍光。
図4図4は、安全性及び有効性の評価のための第II相COVID-19試験の概略を示す。
図5A図5A図5Lは、第I相COVID-19陽性バイオマーカの経時的な(1日あたりの)プロファイルを示す。赤丸は健康な対照を示し、患者は四角形(患者1)、上向き三角形(患者2)、下向き三角形(患者3)、ひし形(患者5)、及び白丸(患者6)で表される。図5Aのマーカは、WBCであった。
図5B図5Bのマーカは、好中球%であった。
図5C図5Cのマーカは、好中球数であった。
図5D図5Dのマーカは、リンパ球%であった。
図5E図5Eのマーカは、リンパ球数であった。
図5F図5Fのマーカは、血小板数であった。
図5G図5Gのマーカは、CRPであった。
図5H図5Hのマーカは、フェリチンであった。
図5I図5Iのマーカは、D-ダイマであった。
図5J図5Jのマーカは、CPKであった。
図5K図5Kのマーカは、クレアチニンであった。
図5L図5Lのマーカは、LDHであった。
図6A図6A図6Hは、第I相COVID-19陽性サイトカインの経時的な(1日あたりの)プロファイルを示す。赤丸は健康な対照を示し、患者は四角形(患者1)、上向き三角形(患者2)、下向き三角形(患者3)、ひし形(患者5)、及び白丸(患者6)で表される。図6Aで測定したサイトカインは、IL-6であった。
図6B図6Bで測定したサイトカインは、IL-18であった。
図6C図6Cで測定したサイトカインは、IFN-αであった。
図6D図6Dで測定したサイトカインは、IFN-γであった。
図6E図6Eで測定したサイトカインは、IL-10であった。
図6F図6Fで測定したサイトカインは、IL-2Rαであった。
図6G図6Gで測定したサイトカインは、IL-8であった。
図6H図6Hで測定したサイトカインは、IL-7であった。
図7A図7A図7Oは、第II相COVID-19陽性バイオマーカの経時的な(1日あたりの)プロファイルの中間測定値を示す。赤円は基準範囲を示し、患者は四角形(患者01-001)、上向き三角形(患者01-002)、下向き三角形(患者01-003)、ひし形(患者01-004)、白丸(患者01-005)、白抜きの四角形(患者01-007)、白抜きの上向き三角形(患者01-008)、白抜きの下向き三角形(患者01-009)で表される。図7Aのマーカは、CRPであった。
図7B図7Bのマーカは、フェリチンであった。
図7C図7Cのマーカは、D-ダイマであった。
図7D図7Dのマーカは、CPKであった。
図7E図7Eのマーカは、クレアチニンであった。
図7F図7Fのマーカは、WBCであった。
図7G図7Gのマーカは、好中球%であった。
図7H図7Hのマーカは、好中球数であった。
図7I図7Iのマーカは、リンパ球%であった。
図7J図7Jのマーカは、リンパ球数であった。
図7K図7Kのマーカは、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)であった。
図7L図7Lのマーカは、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)であった。
図7M図7Mのマーカは、アルカリホスファターゼ(ALP)であった。
図7N図7Nのマーカは、総ビリルビンであった。
図7O図7Oのマーカは、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)であった。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細を用いることなく実施してもよいことは、当業者には理解されるであろう。他の例では、よく知られている方法、手順、及び構成要素は、本発明を不明瞭にしないように、詳細に記載されていない。
【0033】
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の臨床症状は、曝露から最大14日間の推定潜伏期間を経て現れる。症状の範囲は、無症候性感染症から、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴う重症の肺炎及び死亡までである。COVID-19の重症例は、急性呼吸窮迫症候群やサイトカインストームを引き起こす複数の炎症性サイトカインの上昇、及び/または、基礎疾患である併存症の悪化を伴い得る。COVID-19患者の症例としては、軽症(肺炎なし、または軽症の肺炎)、重症(呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、SpO≦93%の測定値、PaO/FiO<300mmHgの測定値、及び/または、24~48時間以内での>50%の肺浸潤と定義される)、重症(呼吸不全、敗血症性ショック、及び/または臓器機能不全または臓器不全と定義される)が報告されている。COVID-19患者は、肺疾患に加えて、心臓、肝臓、腎臓、または中枢神経系の疾患を発症する場合もある。
【0034】
COVID-19は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した患者で発見された新しい病気の名前である。いくつかの実施形態では、「COVID-19」、「COVID19」、「COVID」、及び「コロナ」という用語は、SARS-CoV-2感染の結果としてのヒト対象における疾患に関して互換的に使用され、すべて同じ性質及び意味を有し得る。いくつかの実施形態では、用語「SARS-CoV-2」、「コロナウイルス」、及び「コロナ」は、COVID-19を引き起こすウイルスに関して互換的に使用され、すべて同じ性質及び意味を有し得る。当業者であれば、疾患とウイルスとのどちらについて言及しているかは、文脈から理解できるであろう。
【0035】
NIHガイドラインによると、「COVID-19患者は、様々な炎症性サイトカインを高濃度で発現し、血行動態や呼吸状態の悪化を伴う場合が多い。これはしばしば「サイトカイン放出症候群」または「サイトカインストーム」と呼ばれるが、これらは不正確な用語である。集中治療専門医は、他の治療可能なショックの原因(例えば、肺または肺外の感染源に起因する細菌性敗血症、COVID-19に関連しない消化管出血による血液量減少性ショック、COVID-19に関連する心機能不全または併存するアテローム性動脈硬化症、ストレス性副腎不全)を除外するため、ショックの完全な鑑別診断を検討する必要がある」とされている(「NIH: COVID-19 Treatment Guidelines; https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/」)。
【0036】
COVID-19における臓器不全は、ウイルスや細菌の感染に対する人体の免疫系の過剰反応(サイトカインストーム)の結果であると考えられている。
【0037】
この過剰な免疫反応は、臓器障害を引き起こす。この免疫発作は、通常、肺、心臓、腎臓、肝臓などの重要な臓器で発生する。臓器に障害が発生し、ゆっくりと機能不全を起こし始め、臓器不全、多臓器不全、及び死亡に至る可能性がある。サイトカインストームが、ICUに入院したCOVID-19患者で最近報告され、ICUに入院した患者は、サイトカイン及びケモカインの血漿中濃度が高かった(「Huang et al. www.thelancet.com Published online January 24, 2020 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30183-5」)。
【0038】
現時点では、COVID-19に対して承認された治療法は存在しない。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19を治療する方法であって、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含有する組成物を患者に投与するステップを含む方法である。いくつかの実施形態では、COVID-19の治療は、COVID-19の少なくとも1つの症状を治療することを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、早期アポトーシス細胞を含有する組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、早期アポトーシス細胞と別の薬剤との組み合わせを含有する組成物である。いくつかの実施形態では、別の薬剤は、COVID-19及びその症状を治療するための治療剤を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示は、早期アポトーシス状態のプールされた個々の単核細胞集団を含むプールされた単核アポトーシス細胞調製物を含有する医薬組成物の作製方法を提供し、この医薬組成物は、生存非アポトーシス細胞の割合が減少した細胞調製物、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された細胞調製物、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖が低下した細胞調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、本開示の方法は、早期アポトーシス状態のプールされた個々の単核細胞集団を含むプールされた単核アポトーシス細胞調製物を含有する医薬組成物を提供し、この医薬組成物は、非静止非アポトーシス細胞の割合の減少を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、SARS-CoV-2に感染した対象におけるCOVID-19を治療する方法であって、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を対象に投与するステップを含む方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、COVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する方法である。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象におけるサイトカイン産生を低減または防止し、それによって、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する。別の実施形態では、本明細書に開示される、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する方法は、早期アポトーシス単核濃縮細胞を含有する組成物を対象に投与するステップを含む。さらに別の実施形態では、本明細書に開示される、対象におけるサイトカイン産生を低減または阻害する方法は、早期アポトーシス単核濃縮細胞を含有する組成物を対象に投与するステップを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しているか、あるいはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しやすい対象におけるサイトカイン産生を低減または阻害する方法であって、本明細書に開示されるような早期アポトーシス細胞上清または該上清を含有する組成物を投与するステップを含む方法である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞-食細胞上清を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を低減または阻害するための本明細書に開示される方法は、早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス細胞上清を含有する組成物を対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン産生を低減または阻害するための本明細書に開示される方法は、対象における少なくとも1種の炎症性サイトカインの産生を低減または阻害する。
【0046】
別の実施形態では、本開示は、サイトカイン放出症候群(CRS)、サイトカインストーム、臓器機能低下、臓器不全、またはそれらの任意の組み合わせを含む、COVID-19の症状を治療するための、それらを必要とする患者における、本明細書に記載されるような早期アポトーシス状態の単核細胞を含むプールされた早期アポトーシス単核細胞調製物の使用方法を提供する。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、プールされたアポトーシス単核細胞調製物であり、特定の実施形態では、そのような細胞調製物の使用は、例えばHLAタイピングによるドナー及びレシピエントの適合を必要としない。
【0047】
サイトカインストーム及びサイトカイン放出症候群
【0048】
特定の実施形態では、サイトカイン放出症候群(CRS)、重症CRS(sCRS)、またはサイトカインストームは、SARS-CoV-2感染の結果として生じる。一実施形態では、サイトカインストーム、サイトカインカスケード、または高サイトカイン血症は、サイトカイン放出症候群のより重症の形態である。
【0049】
様々な研究で、肺における活性化マクロファージの蓄積と、単核食細胞(MNP)コンパートメントの活性化の調節不全とが、COVID-19関連過剰炎症の一因であることが指摘されている。これらの細胞は、軽症から重症のCOVID-19患者の気管支肺胞液中で増加することが分かっている。さらに、MNPの組成は、重症患者における組織常在性肺胞マクロファージの枯渇と、豊富な炎症性単球由来マクロファージとによってさらに特徴付けられた。これらの細胞は、強いインターフェロン遺伝子シグネチャを有している。
【0050】
いくつかの最近の研究に基づくと、COVID-19合併症は古典的なCRS関連症状ではなく、浸潤マクロファージの病原性は急性炎症の促進にとどまらない可能性がある。したがって、依然として、活性化マクロファージの応答を制御することが、軽症から重症または重篤なCOVID-19患者の治療における鍵であるように思われる。特定の実施形態では、アロセトラ-OTC(早期アポトーシス細胞)の投与は、COVID-19のCRS関連症状の治療において役割を果たす。いくつかの実施形態では、アロセトラ-OTCによる治療は、活性化マクロファージを改善し、CRSを減少させる(例えば、「Merad and Martin (2020) Pathological inflammation in patients with COVID-19: a key role for monocytes and macrophages. Nature Reviews Immunology, 20: 355-362」を参照されたい。この文献は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0051】
いくつかの実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、早期アポトーシス細胞、または、アポトーシス細胞を含有する組成物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、アポトーシス細胞上清、または、アポトーシス細胞上清を含有する組成物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、CTLA-4遮断薬を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、アポトーシス細胞を含有する組成物、またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、CTLA-4遮断薬とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、アルファ-1抗トリプシン、またはその断片もしくはその類似体を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、アポトーシス細胞を含有する組成物、またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、アルファ-1抗トリプシン、またはその断片もしくはその類似体とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、テルル系化合物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、アポトーシス細胞を含有する組成物、またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、テルル系化合物とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、免疫調節剤を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、アポトーシス細胞を含有する組成物、またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、免疫調節剤とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、Treg細胞を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、アポトーシス細胞を含有する組成物、またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、Treg細胞とを含む。
【0052】
当業者であれば、毒性サイトカイン放出または毒性サイトカインレベルを減少させることが、対象における毒性サイトカインの産生を阻害または低減すること、あるいは、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減することを含むことを理解するであろう。別の実施形態では、毒性サイトカインレベルは、CRSまたはサイトカインストームの間に低減する。別の実施形態では、毒性サイトカインの産生を阻害または低減することは、CRSまたはサイトカインストームを治療することを含む。別の実施形態では、毒性サイトカインの産生を阻害または低減することは、CRSまたはサイトカインストームを予防することを含む。別の実施形態では、毒性サイトカインの産生を阻害または低減することは、CRSまたはサイトカインストームを緩和することを含む。別の実施形態では、毒性サイトカインの産生を阻害または低減することは、CRSまたはサイトカインストームを改善することを含む。別の実施形態では、毒性サイトカインは、炎症性サイトカインを含む。別の実施形態では、炎症性サイトカインは、IL-6を含む。別の実施形態では、炎症性サイトカインは、IL-1βを含む。別の実施形態では、炎症性サイトカインは、TNF-αを含む。別の実施形態では、炎症性サイトカインは、IL-6、IL-1β、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0053】
一実施形態では、サイトカイン放出症候群は、いくつかの炎症性サイトカインのレベルの上昇と、低血圧、高熱、及び震えなどの対象における有害な身体的反応とによって特徴付けられる。別の実施形態では、炎症性サイトカインは、IL-6、IL-1β、またはTNF-αを含む。別の実施形態では、CRSは、IL-6、IL-1β、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせのレベルの上昇によって特徴付けられる。別の実施形態では、CRSは、IL-8、IL-13、またはそれらの任意の組み合わせのレベルの上昇によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、GM-CSF、IL-5、フラクタルカイン、それらの任意の組み合わせ、またはそれらのサブセットの増加によって特徴付けられる。さらに別の実施形態では、IL-6は、CRSまたはサイトカインストームのマーカを含む。
【0054】
別の実施形態では、ヒトまたはマウスにおけるCRSまたはサイトカインストームにおいて増加したサイトカイン、下記の表1及び表2に列挙したサイトカインの任意の組み合わせを含む。
【0055】
【表1】
【0056】
いくつかの実施形態では、表1に示したサイトカインFlt-3L、フラクタルカイン、GM-CSF、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-2Rα、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12及びIL-13が、CRSまたはサイトカインストームにおいて重要であると思われる。別の実施形態では、表1に示したIFN-α、IFN-β、IL-1、及びIL-1Rαが、CRSまたはサイトカインストームにおいて重要であると思われる。別の実施形態では、M-CSFが、未知の重要性を有する。別の実施形態では、表1に列挙した任意のサイトカイン、またはそれらの組み合わせを、CRSまたはサイトカインストームのマーカとして使用することができる。
【0057】
【表2】
【0058】
一実施形態では、表2に示したIL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-22、IP-10、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、及びTNF-αが、CRSまたはサイトカインストームにおいて重要であると思われる。別の実施形態では、表2に示したIL-27、MCP-3、PGE2、RANTES、TGF-β、TNF-αR1、及びMIGが、CRSまたはサイトカインストームにおいて重要であると思われる。別の実施形態では、IL-23及びIL-25が、未知の重要性を有する。別の実施形態では、表2に列挙した任意のサイトカイン、またはそれらの組み合わせを、CRSまたはサイトカインストームのマーカとして使用することができる。別の実施形態では、マウスサイトカインIL-10、IL-1β、IL-2、IP-10、IL-4、IL-5、IL-6、IFNα、IL-9、IL-13、IFN-γ、IL-12p70、GM-CSF、TNF-α、MIP-1α、MIP-1β、IL-17A、IL-15/IL-15R、及びIL-7が、CRSまたはサイトカインストームにおいて重要であると思われる。
【0059】
当業者であれば、「サイトカイン」という用語が、サイトカイン(例えば、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α))、ケモカイン(例えば、MIP-1α、MIP1-β、RANTES)、及び、他の可溶性の炎症メディエータ(例えば、活性酸素種、一酸化窒素)を包含し得ることを理解するであろう。
【0060】
一実施形態では、特定のサイトカインの放出の増加は、大幅であるか、重要であるか、または未知の重要性を有するかにかかわらず、そのサイトカインがサイトカインストームの一部であることを先験的に意味するものではない。一実施形態では、少なくとも1つのサイトカインの増加は、サイトカインストームまたはCRSの結果ではない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイトカインの増加は、SARS-CoV-2感染及び/またはCOVID-19に関連する症状の結果である。
【0061】
別の実施形態では、サイトカイン放出症候群は、悪寒を伴うまたは伴わない発熱、倦怠感、疲労、食欲不振、筋肉痛、関節痛、吐き気、嘔吐、頭痛、皮膚発疹、悪心、嘔吐、下痢、頻呼吸、低酸素血症、心血管頻脈、脈圧拡大、低血圧、心拍出量増加(早期)、潜在的な心拍出量減少(後期)、D-ダイマの上昇、出血を伴うまたは伴わない低フィブリノゲン血症、高窒素血症、肝臓の高トランスアミナーゼ血症、高ビリルビン血症、頭痛、精神状態変化、精神錯乱、せん妄、喚語困難または明らかな失語症、幻覚、振戦、測定障害、歩行障害、及び発作から選択される症状のうちのいずれかまたはすべてによって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、IL-2放出及びリンパ球増殖によって特徴付けられる。
【0062】
別の実施形態では、サイトカインストームは、例えば、心機能不全、成人呼吸窮迫症候群、神経毒性、腎不全、肝不全、及び播種性血管内凝固などの、生命を脅かす可能性のある合併症をもたらす。
【0063】
当業者であれば、サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの特徴が、CRSまたはサイトカインストームのトリガーの数日後ないし数週間後に発生すると推定されることを理解するであろう。
【0064】
一実施形態では、サイトカインストームの指標としてのサイトカインレベルまたは濃度の測定は、サイトカインレベルまたは濃度の倍率増加、パーセント(%)増加、正味増加、または変化率として表すことができる。別の実施形態では、特定のレベルまたは濃度を超えるサイトカインの絶対的なレベルまたは濃度が、サイトカインストームを発症しているか、またはまさに発症しようとしている対象の指標となる。
【0065】
当業者であれば、「サイトカインレベル」という用語が、濃度の尺度、倍率変化の尺度、パーセント(%)変化の尺度、または変化率の尺度を包含し得ることを理解するであろう。さらに、血液、唾液、血清、尿、及び血漿中のサイトカインを測定するための方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0066】
一実施形態では、サイトカインストームがいくつかの炎症性サイトカインの上昇に関連するという認識にもかかわらず、IL-6レベルが、サイトカインストームの一般的な尺度として、及び/またはサイトカインストームの治療の有効性の一般的な尺度として使用され得る。当業者であれば、他のサイトカイン、例えば、TNF-α、IB-1α、IL-8、IL-13、またはINF-γがサイトカインストームのマーカとして使用され得ることを理解するであろう。さらに、サイトカインを測定するためのそのアッセイ法は、当該技術分野でよく知られている。当事者であれば、サイトカインストームに影響を与える方法が、同様にサイトカイン放出症候群に影響を与え得ることを理解するであろう。
【0067】
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症している対象におけるサイトカイン産生を低減または阻害する方法である。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しやすい対象におけるサイトカイン産生の減少または阻害の方法である。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症している対象におけるサイトカイン産生を低減または阻害し、表1及び/または2に列挙した任意のサイトカインまたはサイトカインの群の産生を低減または阻害する。別の実施形態では、サイトカインIL-6の産生を低減または阻害する。別の実施形態では、サイトカインIL-1βの産生を低減または阻害する。別の実施形態では、サイトカインIL-8の産生を低減または阻害する。別の実施形態では、サイトカインIL-13の産生を低減または阻害する。別の実施形態では、サイトカインTNF-αの産生を低減または阻害する。別の実施形態では、サイトカインIL-6、IL-1β、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせの産生を低減または阻害する。
【0068】
一実施形態では、サイトカイン放出症候群は等級分けされる。別の実施形態では、グレード1は、症状が生命を脅かすものではなく、対症療法のみを必要とするサイトカイン放出症候群、例えば、発熱、吐き気、疲労、頭痛、筋肉痛、倦怠感について記載する。別の実施形態では、グレード2の症状は、酸素、輸液、または、血圧のための昇圧剤などの中等症の介入を必要とし、それに応答する。別の実施形態では、グレード3の症状は、積極的な介入を必要とし、それに応答する。別の実施形態では、グレード4の症状は生命を脅かす症状であり、人工呼吸器を必要とし、患者は臓器毒性を示す。
【0069】
別の実施形態では、サイトカインストームは、IL-6及びインターフェロンガンマの放出によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、表1及び表2に列挙した任意のサイトカインまたはそれらの組み合わせの放出によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、当該技術分野で既知の任意のサイトカインまたはそれらの組み合わせの放出によって特徴付けられる。
【0070】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する方法は、早期アポトーシス細胞集団、早期アポトーシス細胞上清、またはそれらを含有する組成物を投与するステップを含む。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞集団、早期アポトーシス細胞上清、またはそれらを含有する組成物は、CRSまたはサイトカインストームの発生を阻害または低減するのを補助することができる。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞集団、早期アポトーシス細胞上清、またはそれらを含有する組成物は、CRSまたはサイトカインストームの治療を補助することができる。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞集団、早期アポトーシス細胞上清、またはそれらを含有する組成物は、CRSまたはサイトカインストームの予防を補助することができる。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞集団、早期アポトーシス細胞上清、またはそれらを含有する組成物は、CRSまたはサイトカインストームの改善を補助することができる。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞集団、早期アポトーシス細胞上清、またはそれらを含有する組成物は、CRSまたはサイトカインストームの緩和を補助することができる。
【0071】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する方法であって、早期アポトーシス細胞集団、早期アポトーシス細胞上清、またはそれらを含有する組成物を投与するステップを含む方法は、薬剤を投与するステップをさらに含む。別の実施形態では、薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの発生を阻害または低減するのを補助することができる。別の実施形態では、薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの治療を補助することができる。別の実施形態では、薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの予防を補助することができる。別の実施形態では、薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの改善を補助することができる。別の実施形態では、薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの緩和を補助することができる。
【0072】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する方法は、別の薬剤を投与するステップを含む。別の実施形態では、別の薬剤は、COVID-19療法を補助することができる。
【0073】
別の実施形態では、別の薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの発生を阻害または低減するのを補助することができる。別の実施形態では、別の薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの治療を補助することができる。別の実施形態では、別の薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの予防を補助することができる。別の実施形態では、別の薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの改善を補助することができる。別の実施形態では、別の薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの緩和を補助することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、CTLA-4遮断薬を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、アルファ-1抗トリプシン、またはその断片もしくはその類似体を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、テルル系化合物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を減少させるための別の薬剤は、免疫調節剤を含む。
【0075】
アルファ-1抗トリプシン(AAT)
【0076】
アルファ-1抗トリプシン(AAT)は、主に肝臓で産生される52kDaの循環糖タンパク質である。AATは主にセリンプロテアーゼ阻害剤として知られており、遺伝子SERPINA1によってコードされる。AATは好中球エラスターゼを阻害し、循環AATの遺伝性欠損は、肺組織の悪化及び肝疾患をもたらす。健常人の血清AAT濃度は、炎症中に2倍に増加する。
【0077】
AATレベルといくつかの炎症性疾患の重症度との間には、負の相関がある。例えば、AATのレベルまたは活性の低下が、HIV感染症、糖尿病、C型肝炎感染誘発性の慢性肝疾患、及びいくつかのタイプの血管炎を有する患者において報告されている。
【0078】
ヒト血清由来のアルファ-1抗トリプシン(AAT)が、炎症性サイトカインの産生を低減させ、抗炎症性サイトカインを誘発し、樹状細胞の成熟を妨げることを示す証拠が増えている。
【0079】
実際、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)へのAATの添加は、LPS誘導性TNF-α及びIL-1βの放出を阻害するが、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)及びIL-10産生を増加させる。
【0080】
AATはインビトロでIL-1β媒介膵島毒性を低減させ、AAT単剤療法は膵島同種移植片の生存期間を延長し、マウスにおける抗原特異的免疫寛容を促進し、非肥満糖尿病(NOD)マウスにおける糖尿病の発症を遅延させる。AATは、実験モデルにおいてLPS誘導性急性肺損傷を阻害することが示された。最近、AATは、急性心筋虚血再灌流傷害のマウスモデルにおいて、梗塞のサイズ及び心不全の重症度を低減させることが示された。
【0081】
臨床グレードのヒトAAT(hAAT)による単剤療法は、循環炎症性サイトカインを減少させ、移植片対宿主病(GvHD)の重症度を低減させ、実験的同種異系骨髄移植後の動物の生存期間を延長させる(「Tawara et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Jan 10;109(2):564-9」。この文献は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。AAT治療は、同種反応性Tエフェクター細胞の増殖を減少させたが、T制御性T細胞(Treg)の回復を増強した。したがって、病理学的プロセスを低減するために、ドナーTエフェクター細胞とT制御性細胞との比率を変更した。インビトロでは、AATは、TNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインのLPS誘導性インビトロ分泌を抑制し、抗炎症性サイトカインIL-10の産生を増強し、宿主樹状細胞におけるNF-κB転座を阻害した。参照により本明細書に組み込まれる「Marcondes, Blood. 2014 (Oct 30;124(18):2881-91)」は、AATによる治療がGvHDを改善するだけでなく、移植片対白血病(GVL)効果を維持し、おそらくは増強さえすることを示す。
【0082】
テルル系化合物
【0083】
テルルは、人体内に存在する微量元素である。様々なテルル化合物は、免疫調節特性を有し、多様な前臨床及び臨床研究において有益な効果を有することが示されている。テルル含有化合物の特に有効なファミリーは、例えば、特許文献1~4に開示されている。テルル含有化合物のこのファミリーの免疫調節特性は、例えば、特許文献4~8に記載されている(これらの文献は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0084】
有望な化合物の1つは、トリクロロ(ジオキシエチレン-O、O´)テルル酸アンモニウムであり、これは、本明細書及び当該技術分野ではAS101とも呼ばれている。AS101は、上述したテルル含有化合物のファミリーの代表的な例であり、抗ウイルス性を示す(「Nat. Immun. Cell Growth Regul. 7(3):163-8, 1988; AIDS Res Hum Retroviruses. 8(5):613-23, 1992), and tumoricidal activity (Nature 330(6144):173-6, 1987; J. Clin. Oncol. 13(9):2342-53, 1995; J. Immunol. 161(7):3536-42, 1998)」)。さらに、AS101は、低毒性を特徴とする。
【0085】
一実施形態では、テルル含有免疫調節化合物を含む組成物は、テルル系化合物が免疫応答の先天性及び後天性のアームを刺激する、本明細書に開示される方法で使用され得る。例えば、AS101は、マウスにおけるインターフェロン(IFN)の強力な活性化因子であることが示されている(「J. Natl. Cancer Inst. 88(18):1276-84, 1996) and humans (Nat. Immun. Cell Growth Regul. 9(3):182-90, 1990; Immunology 70(4):473-7, 1990; J. Natl. Cancer Inst. 88(18):1276-84, 1996)」)。
【0086】
別の実施形態では、テルル系化合物は、IL-1α、IL-6、及びTNF-αなどの一連のサイトカインのスペクトルの分泌を誘導する。
【0087】
別の実施形態では、テルル系化合物は、免疫調節特性を有することが当該技術分野で知られているテルル系化合物を含む。別の実施形態では、テルル系化合物は、トリクロロ(ジオキシエチレン-O、O´)テルル酸アンモニウムを含む。別の実施形態では、テルル系化合物は、サイトカインストームまたはサイトカイン放出症候群(CRS)の発生を阻害または低減する。
【0088】
一実施形態では、テルル系化合物は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を阻害する。別の実施形態では、テルル系化合物は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を低減する。
【0089】
別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しているか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しやすい対象におけるサイトカイン産生を低弁または阻害する方法であって、テルル系化合物を含む組成物を対象に投与するステップを含む方法である。
【0090】
一実施形態では、テルル系化合物は、サイトカイン放出を制御するために単独で投与される。別の実施形態では、テルル系化合物及びアポトーシス細胞の両方またはそれらの組成物、あるいはアポトーシス細胞上清またはその組成物が、サイトカイン放出を制御するために投与される。
【0091】
免疫調節剤
【0092】
当業者であれば、免疫調節剤が、細胞外メディエータ、受容体、細胞内シグナル伝達経路のメディエータ、翻訳及び転写の調節因子、並びに免疫細胞を包含し得ることを理解するであろう。一実施形態では、本明細書に開示される別の薬剤は、当該技術分野で知られている免疫調節剤である。別の実施形態では、本明細書に開示される方法における免疫調節剤の使用は、少なくとも1つのサイトカインのレベルを低減させる。別の実施形態では、本明細書に開示される方法における免疫調節剤の使用は、CRSまたはサイトカインストームの発生を低減または阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における免疫調節剤の使用は、腫瘍または癌の治療、予防、成長の阻害、疾患進行の遅延、腫瘍負荷の低減、発生率の低減、またはそれらの任意の組み合わせのためのものである。
【0093】
一実施形態では、免疫調節剤は、サイトカインまたはケモカインの放出を遮断、阻害、または低減する化合物を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、IL-21、IL-23、またはそれらの組み合わせの放出を遮断、阻害、または低減する化合物を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ケモカイン受容体-5(CCR5)受容体アンタゴニストクラスの抗レトロウイルス薬、例えばマラビロクを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、抗DNAM-1抗体を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ヘパリン硫酸、ATP、尿酸、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される傷害/病原体関連分子(DAMP/PAMP)を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、シアル酸結合Ig様レクチン(シグレック)を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、寛容の細胞メディエータ、例えば、制御性CD4 CD25 T細胞(Treg)またはインバリアントナチュラルキラーT細胞(iNKT細胞)を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、樹状細胞を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、単球を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、マクロファージを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ルキソリチニブ及びトファシチニブからなる群から選択されるJAK2またはJAK3阻害剤を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)の阻害剤、例えば、フォスタマチニブを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤ボリノスタットアセチル化STAT3を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ネディレーション阻害剤、例えば、MLN4924を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、miR-142アンタゴニストを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、シチジンの化学的類似体、例えばアザシチジンを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤、例えばボリノスタットを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ヒストンメチル化の阻害剤を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、抗体を含む。別の実施形態では、抗体は、リツキシマブ(RtX)である。
【0094】
別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、早期アポトーシス細胞と、イピリムマブなどの1種以上のCTLA-4-遮断薬との併用療法を利用する。
【0095】
別の実施形態では、CTLA-4は、自己寛容を維持するのを助けるT細胞活性化の強力な阻害剤である。別の実施形態では、抗体である抗CTLA-4遮断薬の投与が、T細胞活性化の正味の効果をもたらす。
【0096】
いくつかの実施形態では、ウイルスまたは細菌の感染は、対象においてサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを引き起こす。一実施形態では、感染は、SARS-CoV-2感染である。一実施形態では、感染は、インフルエンザ感染である。一実施形態では、インフルエンザ感染は、H1N1である。別の実施形態では、インフルエンザ感染は、H5N1鳥インフルエンザである。別の実施形態では、感染症は、重症急性呼吸器症候群(SARS)である。別の実施形態では、対象は、エプスタインバーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を有する。別の実施形態では、感染症は、敗血症である。一実施形態では、敗血症は、グラム陰性菌によって引き起こされる。別の実施形態では、感染症は、マラリアである。別の実施形態では、感染症は、エボラウイルス感染症である。別の実施形態では、感染症は、痘瘡ウイルスである。別の実施形態では、感染症は、全身性グラム陰性細菌性感染症である。別の実施形態では、感染症は、ヤーリッシュヘルクスハイマー症候群である。
【0097】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)である。別の実施形態では、HLHは、散発的なHLHである。別の実施形態では、HLHは、マクロファージ活性化症候群(MAS)である。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、MASである。
【0098】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、慢性関節炎である。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、スティル病としても知られる全身型若年性特発性関節炎(sJIA)である。
【0099】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)である。別の実施形態では、CAPSは、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)としても知られる家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)を含む。別の実施形態では、CAPSは、マックルウェルズ症候群(MWS)を含む。別の実施形態では、CAPSは、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群を含む。さらに別の実施形態では、CAPSは、FCAS、FCU、MWS、CINCA症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、FCASである。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、FCUである。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、MWSである。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、CINCA症候群である。さらに別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、FCAS、FCU、MWS、CINCA症候群、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0100】
別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、CIASI遺伝子としても知られる、NLRP3遺伝子における遺伝性またはデノボの機能獲得変異を含むクリオピリン症である。
【0101】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、遺伝性の自己炎症性疾患である。
【0102】
一実施形態では、炎症性サイトカインの放出のトリガーは、リポ多糖(LPS)、グラム陽性毒素、真菌毒素、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)、またはRIG-1遺伝子発現の調節である。
【0103】
別の実施形態では、患者は、治療後に発生したサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを有する。
【0104】
COVID-19
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象(患者)におけるCOVID-19を治療する方法であって、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含有する組成物を対象に投与するステップを含む方法である。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法は、COVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法によって治療される患者は、高齢であり、かつ別の疾患、これに限定しないが、例えば、癌、糖尿病、高血圧症、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、腎疾患、及び肥満などに罹患している。
【0106】
SARS-CoV-2ウイルスの伝播は主に呼吸器分泌物を介して起こり、また、程度は低いが汚染された表面との接触を介しても起こる。ほとんどのウイルス伝播は、咳やしゃみなどによる飛沫を介して起こると考えられている。
【0107】
患者がSARS-CoV-2ウイルスに暴露した後のCOVID-19の推定潜伏期間は、暴露から最大14日間であり、中央値は4~5日間である。したがって、いくつかの実施形態では、COVID-19の治療は、症状の出現前に患者を治療することを含む。このことは、「危険にさらされている」患者にとって特に重要である。危険にさらされている患者とは、免疫不全であるか、免疫が抑制されているか、または別の疾患に罹患している患者を含む。いくつかの実施形態では、危険にさらされている患者は、癌、糖尿病、肺欠損症などに罹患している患者である。
【0108】
いくつかの実施形態では、COVID-19は、無症候性感染症、肺炎、または、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴う重症肺炎を含む。このように、COVID-19の症状は多岐にわたる。いくつかの実施形態では、COVID-19は、肺炎、または軽症肺炎の症状を含まない軽症である。いくつかの実施形態では、COVID-19は、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、SpO≦93%の測定値、PaO/FiO<300mmHgの測定値、及び/または、24~48時間以内での>50%の肺浸潤を含む重症である。いくつかの実施形態では、COVID-19は、呼吸不全、敗血症性ショック、及び/または臓器機能不全または臓器不全の症状を含む重篤であると考えられる。
【0109】
いくつかの実施形態では、臓器機能不全または臓器不全は、肺の機能不全または肺不全を含む。いくつかの実施形態では、臓器機能不全または臓器不全は、肺の損傷を含む。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。いくつかの実施形態では、肺不全は、呼吸不全を含む。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、軽症または重症であり得る肺炎を含む。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、呼吸器合併症を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、臓器機能不全または臓器不全は、多臓器機能不全または多臓器不全を含む。いくつかの実施形態では、多臓器機能不全または多臓器不全は、急性の機能不全または不全を含む。いくつかの実施形態では、多臓器機能不全または多臓器不全は、慢性の機能不全または不全を含む。いくつかの実施形態では、複数の臓器の機能不全または不全は、少なくとも2つの臓器の機能不全及び/または不全を含む。いくつかの実施形態では、複数の臓器の機能不全または不全は、少なくとも3つの臓器の機能不全及びまたは不全を含む。いくつかの実施形態では、複数の臓器の機能不全または不全は、少なくとも4つの臓器の機能不全及びまたは不全を含む。いくつかの実施形態では、多臓器機能不全または不全は、肺、心臓、腎臓、肝臓、またはそれらの任意の組み合わせの機能不全及び/または不全を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、COVID-19の症状は、発熱、咳、息切れ、筋肉痛、頭痛、下痢、めまい、鼻漏、嗅覚脱失、味覚異常、咽頭痛、腹痛、食欲不振、嘔吐、肺炎、軽症の肺炎、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、SpO≦93%の測定値、PaO/FiO<300mmHgの測定値、肺浸潤、呼吸窮迫、ARDS呼吸不全、敗血症性ショック、臓器機能不全もしくは不全、または多臓器機能不全もしくは不全のいずれかを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19症状は、発熱、咳、息切れ、筋肉痛、頭痛、下痢、めまい、鼻漏、嗅覚脱失、味覚異常、咽頭痛、腹痛、食欲不振、嘔吐、肺炎、軽症の肺炎、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、SpO≦93%の測定値、PaO/FiO<300mmHgの測定値、肺浸潤、呼吸窮迫、ARDS呼吸不全、敗血症性ショック、臓器機能不全もしくは不全、多臓器機能不全もしくは不全、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0112】
肺の症状は、当該技術分野でよく知られている方法、例えば胸部X線検査や胸部コンピュータ断層撮影(CT)を用いて診断することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、発熱、咳、咽頭痛、倦怠感、頭痛、筋肉痛を伴うが、息切れ、労作時呼吸困難、画像診断異常を伴わない、様々な徴候及び症状によって定義される軽症疾患を発症している患者を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、海面レベルでの室内空気においてSpO≧94%の臨床評価または画像診断によって下部呼吸器疾患の証拠として定義される中等症のCOVID-19疾患を発症している患者を含む。熟練した臨床医であれば、中等症のCOVID-19の患者では肺疾患が急速に進行することを理解するであろう。肺炎またはサイトカインストームの初期段階が疑われる場合、いくつかの実施形態では、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与することを含む本明細書に開示される使用方法は、より重症の症状が現れる前の予防手段として、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含有する組成物の投与を含む。同様に、肺炎またはサイトカインストームの初期段階が疑われる場合、いくつかの実施形態では、早期アポトーシス上清を投与することを含む本明細書に開示される使用方法は、より重症な症状が現れる前の予防手段として、早期アポトーシス上清を含有する組成物の投与を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、海面レベルでの室内空気においてSpO<94%、30回/分以上の呼吸頻度、PaO/FiO<300mmHg、または、>50%の肺浸潤である重症疾患を発症している患者を含む。熟練した臨床医であれば、COVID-19患者では、重症のCOVID-19が急速に進行することを理解するであろう。肺炎またはサイトカインストームの初期段階が疑われるか、または証明された場合、いくつかの実施形態では、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与することを含む本明細書に開示される使用方法は、より重症の症状が現れる前の予防手段として、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含有する組成物の投与を含む。同様に、肺炎またはサイトカインストームの初期段階が疑われる場合、いくつかの実施形態では、早期アポトーシス上清を投与することを含む本明細書に開示される使用方法は、より重症な症状が現れる前の予防手段として、早期アポトーシス上清を含有する組成物の投与を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、呼吸不全、敗血症性ショック、及び/または多臓器機能不全または不全に罹患している重篤な疾患を発症する患者を含む。いくつかの実施形態では、COVID-19の重症例は、急性呼吸窮迫症候群、ウイルス誘発性分布性ショックを呈し得る敗血症性ショック、心機能不全、サイトカインストームを誘発する複数の炎症性サイトカインの上昇、及び/または、併存疾患の悪化を伴い得る。COVID-19患者は、肺疾患に加えて、心臓、肝臓、腎臓、または中枢神経系の疾患を発症する場合もある。熟練した臨床医であれば、COVID-19の重症患者は症状が急速に進行し死に至る場合があることを理解するだろう。
【0117】
COVID-19の状態は、当該技術分野でよく知られている方法、例えば、肺の画像診断(胸部X線、超音波、または必要であればCT)、及び、必要であればECGを用いて評価することができる。実験室評価には、CBC及び白血球分画、並びに、肝機能検査及び腎機能検査を含む代謝プロファイルが含まれる。
【0118】
いくつかの実施形態では、重症のCOVID-19疾患は、急性呼吸窮迫症候群、ウイルス誘発性分布性ショックを呈し得る敗血症性ショック、心機能不全、サイトカインストームを誘発する複数の炎症性サイトカインの上昇、及び/または、併存疾患の悪化を伴い得る。いくつかの実施形態では、重症のCOVID-19疾患は、肺疾患と、心臓、肝臓、腎臓、または中枢神経系疾患との組み合わせを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、重篤なCOVID-19は、呼吸不全、敗血症性ショック、及び/または多臓器機能不全または不全を含む。いくつかの実施形態では、重篤なCOVID-19は、呼吸不全、敗血症性ショック、及び/または多臓器機能不全または不全と、心臓、肝臓、腎臓、または中枢神経系疾患との組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、重篤なCOVID-19は、呼吸不全、敗血症性ショック、及び/または多臓器機能不全または不全と、血栓塞栓症との組み合わせを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、様々な炎症性サイトカインを高濃度で発現し、血行動態や呼吸状態の悪化を伴う場合が多い。これは、本明細書に詳細に記載されるように、しばしば、「サイトカイン放出症候群」または「サイトカインストーム」と呼ばれる。
【0121】
いくつかの実施形態では、COVID-19は、小児における潜在的に重症な炎症性症候群(小児における多系統炎症性症候群またはMIS-C)を伴う。
【0122】
いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、これに限定しないが、例えば、心筋炎や心膜機能不全などの心機能不全を発症し得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、重症のCOVID-19疾患は、肺機能不全及び/または肺不全と、腎機能不全及び肝機能不全との組み合わせを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、COVID-19疾患の症状は、敗血症を含む。したがって、COVID-19を治療するための本明細書に開示された方法は、治療を必要とする患者の敗血症を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することをさらに含み、この方法は、早期アポトーシス細胞集団またはその上清を含有する組成物を抗生物質と組み合わせて患者に投与するステップを含む。この投与により、COVID-19を治療するだけでなく、患者の敗血症を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、敗血症は、重症の敗血症を含む。いくつかの実施形態では、敗血症は、軽症の敗血症を含む。いくつかの実施形態では、敗血症は、急性敗血症を含む。いくつかの実施形態では、敗血症は、高度に侵襲性の敗血症を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、敗血症の原因は、肺炎を含む。いくつかの実施形態では、敗血症の原因は、血管内メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む。いくつかの実施形態では、敗血症の原因は、尿路感染症(UTI)を含む。いくつかの実施形態では、敗血症の原因は、胆道感染症を含む。
【0127】
アポトーシス細胞
【0128】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞の組成物は、早期アポトーシス状態の単核細胞を含む単核アポトーシス細胞集団を含有する。この単核アポトーシス細胞集団は、非静止生存非アポトーシス細胞の割合の減少、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化の抑制、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0129】
本開示は、いくつかの実施形態では、早期アポトーシス状態の単核細胞を含むプールされた単核アポトーシス細胞調製物を提供する。このプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、プールされた個々の単核細胞集団を含む。また、このプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、生存非アポトーシス細胞の割合の減少、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化の抑制、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、このプールされた単核アポトーシス細胞は、放射線照射される。別の実施形態では、本開示は、いくつかの実施形態では献血から得られた白血球分画(WBC)を使用する、プールされた単核アポトーシス細胞調製物を提供する。多くの場合、このWBC分画は、血液バンクで廃棄されるか、または、研究での使用を目的としている。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞集団は、不活化される。別の実施形態では、不活化は、放射線照射を含む。別の実施形態では、不活化は、T細胞受容体の不活化を含む。別の実施形態では、不活化は、T細胞受容体の編集を含む。別の実施形態では、不活化は、細胞調製物の免疫応答を抑制または排除することを含む。別の実施形態では、不活化は、細胞調製物に含まれる複数の個々の細胞集団間の交差反応を抑制または排除することを含む。他の実施形態では、不活化は、細胞調製物に含まれる複数の個々の細胞集団間のT細胞受容体活性を低減または排除することを含む。別の実施形態では、不活化細胞調製物は、生存非アポトーシス細胞の割合の減少、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化の抑制、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0131】
別の実施形態では、不活化細胞集団は、放射線照射されていない細胞調製物と比較して、非静止非アポトーシス細胞の数が減少する。いくつかの実施形態では、不活化細胞集団は、50パーセント(%)の生存非アポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、不活化細胞集団は、40%の生存非アポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、不活化細胞集団は、30%の生存非アポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、不活化細胞集団は、20%の生存非アポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、不活化細胞集団は、100%の生存非アポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、不活化細胞集団は、0%の生存非アポトーシス細胞を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、不活化早期アポトーシス細胞集団を調製する方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、非静止生存非アポトーシス細胞の割合の減少、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化の抑制、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団を産生する方法であり、この方法は、末梢血の単核濃縮細胞集団を得るステップと、抗凝固剤を含有する凍結培地中で単核濃縮細胞集団を凍結するステップと、単核濃縮細胞集団を解凍するステップと、約10~100μg/mLの最終濃度のメチルプレドニゾロン及び抗凝固剤を含むアポトーシス誘導培養培地中で、単核濃縮細胞集団を培養するステップと、投与培地中のアポトーシス細胞集団を再懸濁するステップと、単核濃縮細胞集団を不活性化するステップとを含む。不活化はアポトーシス誘導後に起こり、それにより、非静止生存非アポトーシス細胞の割合の減少、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化の抑制、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団を産生する。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団は、アポトーシス誘導後に放射線照射された早期アポトーシス細胞を含む。
【0133】
別の実施形態では、放射線照射は、ガンマ線照射またはUV照射を含む。さらに別の実施形態では、放射線照射された細胞調製物は、放射線照射されていない細胞調製物と比較して、非静止非アポトーシス細胞の数が減少する。
【0134】
別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞は、T細胞受容体が不活化されている。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞は、T細胞受容体が編集されている。
【0135】
いくつかの実施形態では、プールされた血液は、レシピエントに対してHLA一致またはHLA不一致の供給源からの第三者の血液を含む。
【0136】
特定の実施形態では、早期アポトーシス単核細胞濃縮集団、(a)24時間を超えて安定しているアポトーシス細胞集団、(b)非静止非アポトーシス細胞の数が減少した、生存非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された、または生存非アポトーシス細胞の増殖が低下した、アポトーシス細胞集団、(c)早期アポトーシス単核濃縮細胞のプールされた集団、または、(d)それらの任意の組み合わせ、を含む。
【0137】
本明細書に開示される組成物及び方法に用いられるアポトーシス細胞(「ApoCell」)の作製は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献9に記載されており、また、後記する実施例1で簡潔に説明する。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法に用いられる早期アポトーシス細胞は、当該技術分野で既知の任意の方法で作製される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法に用いられる早期アポトーシス細胞は、治療を受けている対象の自己由来である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法に用いられる早期アポトーシス細胞は、治療を受けている対象の同種異系である。別の実施形態では、本開示の組成物に含有される早期アポトーシス細胞は、本明細書に開示される早期アポトーシス細胞、または当該技術分野で既知の早期アポトーシス細胞を含む。
【0138】
当業者であれば、「自己由来」という用語が、ドナーとレシピエントとが同一の個体に由来する組織、細胞、核酸分子、またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。
【0139】
当業者であれば、「同種異系」という用語が、同一種の別個の個体に由来する組織、細胞、核酸分子、またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、同種異系ドナー細胞は、レシピエントとは遺伝的に異なる。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法による単核濃縮細胞組成物(mononuclear-enriched cell)を得るステップは、白血球アフェレーシス(白血球除去)によって達成される。当業者であれば、「白血球アフェレーシス」という用語が、ドナーの血液から白血球を除去するアフェレーシス処置を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ドナーの血液は白血球アフェレーシスに供され、それにより、本明細書に開示される作製方法により単核濃縮細胞組成物が得られる。収集された細胞の凝固を防ぐために、当該技術分野で知られているように、白血球アフェレーシス中に少なくとも1つの抗凝固剤を使用する必要があることに留意されたい。
【0141】
いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシス処置は、本明細書に開示される作製方法により単核濃縮細胞組成物を収集することを可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシスによって得られた細胞収集物は、少なくとも65%の単核細胞を含む。他の実施形態では、本明細書に開示されるように、白血球アフェレーシスによって得られた細胞収集物は、少なくとも70%、または少なくとも80%の単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法の単核濃縮細胞組成物を得るステップと並行して、細胞ドナーから血漿が収集される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法の単核濃縮細胞組成物を得るステップと並行して、細胞ドナーから約300~600mlの血漿が収集される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法の単核濃縮細胞組成物を得るステップと並行して収集された血漿は、凍結培地及び/または培養培地の一部として使用される。本明細書に開示される組成物及び方法に用いられるアポトーシス細胞の濃縮された単核細胞集団を得る別の詳細な方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献9に記載されている。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる早期アポトーシス細胞は、少なくとも85%の単核細胞を含む。さらなる実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる早期アポトーシス細胞は、少なくとも85%の単核細胞、90%の単核細胞、または90%超の単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる早期アポトーシス細胞は、少なくとも90%の単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる早期アポトーシス細胞は、少なくとも95%の単核細胞を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、細胞収集時の単核濃縮細胞調製物は、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%の単核細胞を含むが、本明細書に開示される方法に用いられる早期アポトーシス細胞の作製方法により得られた最終的な医薬集団は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の単核細胞を含むことに留意されたい。
【0144】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる早期アポトーシス細胞の組成物の作製に使用される単核濃縮細胞調製物は、細胞収集時に少なくとも50%の単核細胞を含む。特定の実施形態では、ドナーの末梢血から少なくとも50%の単核細胞を含む単核濃縮細胞調製物を得るステップを含む、医薬集団の作製方法が本明細書に開示される。特定の実施形態では、少なくとも50%の単核細胞を含む単核濃縮細胞調製物を凍結(冷凍保存)するステップを含む、医薬集団の作製方法が本明細書に開示される。
【0145】
いくつかの実施形態では、細胞調製物は少なくとも85%の単核細胞を含み、細胞調製物中の細胞の少なくとも40%は早期アポトーシス状態にあり、細胞調製物中の細胞の少なくとも85%は生細胞である。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞調製物は、15%以下のCD15high発現細胞を含む。
【0146】
当業者であれば、「早期アポトーシス状態」という用語が、アポトーシスの後期徴候は示さず、アポトーシスの早期徴候を示す細胞を包含し得ることを理解するであろう。細胞におけるアポトーシスの早期兆候の例には、ホスファチジルセリン(PS)の暴露、及びミトコンドリア膜電位の喪失が含まれる。後期兆候の例には、ヨウ化プロピジウム(PI)の細胞内への侵入、及び最終的なDNA切断が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞が「早期アポトーシス」状態にあることを証明するために、アネキシンV及びPIの染色によるPS曝露検出が用いられ、アネキシンVで染色されるがPIでは染色されない(またはPIでは最小限しか染色されない)細胞は、「早期アポトーシス細胞」(AnPI)と見なされる。いくつかの実施形態では、最小限のPI染色は、細胞集団内で、15%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、最小限のPI染色は、細胞集団内で、10%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、最小限のPI染色は、細胞集団内で、5%以下のPI細胞を含む。
【0147】
別の実施形態では、アネキシンV FITC及び高PIの両方によって染色される細胞は、「後期アポトーシス細胞」と見なされる。いくつかの実施形態では、高PI染色は、細胞集団内で15%超のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、高PI染色は、細胞集団内で16%以上のPI細胞を含む。別の実施形態では、アネキシンVまたはPIのいずれによっても染色されない細胞は、非アポトーシス生細胞と見なされる。
【0148】
いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも40%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも45%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも50%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも55%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも60%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも65%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも70%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも75%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも80%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも85%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも90%が、早期アポトーシス状態にある。いくつかの実施形態では、細胞調製物中の細胞の少なくとも95%が、早期アポトーシス状態にある。
【0149】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、15%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、10%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、9%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、8%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、7%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、6%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、5%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、4%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、3%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、2%以下のPI細胞を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物は、1%以下のPI細胞を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも40%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも45%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも50%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも55%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも60%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも65%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも70%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも75%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも80%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも85%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、15%、14%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも90%が早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞調製物中の細胞の少なくとも95%は、早期アポトーシス状態(An)にあり、早期アポトーシス細胞調製物は、5%、4%、3%、2%、1%、または0%以下のPIを含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、「早期アポトーシス細胞」、「早期アポトーシス単核濃縮細胞」、「アポトーシス細胞」、「アロセトラ(Allocetra)」、「ALC」、及び「ApoCell(アポ細胞)」という用語、並びにその文法的変形が、互換的に使用され、すべて同じ性質及び意味を有し得ることを当業者であれば理解するであろう。本明細書に記載の組成物及び方法が、いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞を含むことを当業者であれば理解するであろう。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、早期アポトーシス細胞は、レシピエント(早期アポトーシス細胞を含有する組成物を必要とする対象)にHLA適合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、早期アポトーシス細胞は、レシピエント(早期アポトーシス細胞を含有する組成物を必要とする対象)にHLA適合しない。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞を含有する組成物を必要とするレシピエント(治療を必要とする対象)に適合しない早期アポトーシス細胞は、本明細書に詳細に記載されるように放射線照射される。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は、外来ドナーに適合しない。いくつかの実施形態では、放射線照射された適合しない細胞は、「アロセトラ-OTS」または「ALC-OTS」と称される。
【0152】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態の細胞を含む。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、その少なくとも90%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、その少なくとも80%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、その少なくとも70%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、その少なくとも60%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、その少なくとも50%が早期アポトーシス状態にある細胞を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞を含有する組成物は、抗凝固剤をさらに含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は安定的である。当業者であれば、いくつかの実施形態では、安定的は、例えば、約2~8℃での保管時の早期アポトーシス細胞特性の維持などの、経時的な早期アポトーシス細胞特性の維持を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、安定的は、凍結温度、例えば、0℃以下の温度での保管時の早期アポトーシス細胞特性の維持を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる早期アポトーシス細胞の作製方法により得られた単核濃縮細胞集団は、凍結培地で凍結される。いくつかの実施形態では、凍結は段階的に行われる。いくつかの実施形態では、細胞収集後、細胞は、凍結されるまで室温で維持される。いくつかの実施形態では、細胞調製物は、細胞収集後、かつ凍結前に、洗浄培地中で少なくとも1回の洗浄ステップに供される。
【0156】
本明細書で使用するとき、「細胞を得る」及び「細胞収集」という用語や表現は、互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、収集後の3~6時間以内に凍結される。いくつかの実施形態では、細胞調製物は、細胞収集後の最大6時間以内に凍結される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、収集後の1、2、3、4、5、6、7、または8時間以内に凍結される。他の実施形態では、細胞調製物の細胞は、収集後の8、12、24、48、または72時間以内に凍結される。他の実施形態では、細胞収集後、細胞は、凍結されるまで2~8℃に維持される。
【0157】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-18℃~約-25℃で凍結するステップと、次いで、細胞調製物を約-80℃で凍結するステップと、最終的に、細胞調製物を解凍するときまで液体窒素中に保管するステップとを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-18℃~約-25℃で少なくとも2時間凍結するステップと、次いで、細胞調製物を約-80℃で少なくとも2時間凍結するステップと、最終的に、細胞調製物を解凍するときまで液体窒素中に保管するステップとを含む。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、解凍するときまで少なくとも8、10、または12時間、液体窒素中に保管される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、解凍してアポトーシス誘導培養培地で培養するときまで、液体窒素中に保管される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、造血幹細胞移植の当日まで、液体窒素中に保管される。非限定的な例では、細胞収集及び凍結から最終的な細胞集団の調製までの期間は、1~50日間、または6~30日間であり得る。別の実施形態では、細胞調製物は、少なくとも数ヶ月間などの、より長い期間にわたって液体窒素中に保管され得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-18℃~約-25℃で少なくとも0.5、1、2、または4時間凍結するステップを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-18℃~約-25℃で約2時間凍結するステップを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-80℃で少なくとも0.5、1、2、4、または12時間凍結するステップを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または20ヶ月間にわたって凍結状態に維持される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも0.5、1、2、3、4、または5年間にわたって凍結状態に維持される。特定の実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも20ヶ月間にわたって凍結状態に維持される。
【0160】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも8、10、12、18、または24時間凍結される。特定の実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも8時間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも約10時間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも約12時間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、約12時間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物の総凍結期間(約-18℃~約-25℃、約-80℃、及び液体窒素中)は、少なくとも8、10、12、18、または24時間である。
【0161】
いくつかの実施形態では、凍結は、単核濃縮細胞組成物の細胞において、早期アポトーシス状態を少なくとも部分的に誘導する。いくつかの実施形態では、凍結培地は、L-グルタミン、Hepes、Hes、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び血漿を含有するRPMI-1640培地を含む。いくつかの実施形態では、凍結培地中の血漿は、細胞集団の単核濃縮細胞を提供したドナーの自己由来血漿である。いくつかの実施形態では凍結培地は、2mMのL-グルタミン、10mMのHepes、5%のHes、10%のジメチルスルホキシド、及び20v/v%の血漿を含有するRPMI-1640培地を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、凍結媒体は、抗凝固剤を含む。特定の実施形態では、凍結培地、培養培地、及び洗浄培地を含む、早期アポトーシス細胞集団の作製時に使用される培地の少なくともいくつかは、抗凝固剤を含有する。特定の実施形態では、抗凝固剤を含有する、早期アポトーシス細胞集団の作製時に使用されるすべての培地は、同一濃度の抗凝固剤を含有する。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、細胞集団の最終的な懸濁培地には添加されない。
【0163】
いくつかの実施形態では、少なくとも凍結培地への抗凝固剤の添加により、細胞調製物の収率が向上する。他の実施形態では、凍結培地への抗凝固剤の添加により、高いトリグリセリド濃度の存在下で細胞調製物の収率が向上する。本明細書で使用するとき、細胞調製物の収率の向上とは、凍結細胞中の生細胞の割合、生細胞中の早期状態にあるアポトーシス細胞の割合、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの向上に関する。
【0164】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は、少なくとも24時間にわたって安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、24時間にわたって安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、24時間を超えて安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、少なくとも36時間にわたって安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、36時間にわたって安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、36時間を超えて安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、少なくとも48時間にわたって安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、48時間にわたって安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、48時間を超えて安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、少なくとも72時間にわたって安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、72時間にわたって安定的である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、72時間を超えて安定的である。
【0165】
当業者であれば、「安定的」という用語が、PS陽性(ホスファチジルセリン陽性)が維持され、かつ、PI陽性(ヨウ化プロピジウム陽性)の割合が非常に小さいアポトーシス細胞を包含し得ることを理解するであろう。PI陽性細胞は、膜の安定性の指標を提供し、PI陽性細胞は、細胞への侵入が可能であり、膜の安定性が低いことを示す。いくつかの実施形態では、安定的な早期アポトーシス細胞は、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、または少なくとも72時間にわたって、早期アポトーシス状態が維持される。別の実施形態では、安定的な早期アポトーシス細胞は、24時間、36時間、48時間、または72時間にわたって、早期アポトーシス状態が維持される。別の実施形態では、安定的な早期アポトーシス細胞は、24時間、36時間、48時間、または72時間を超えて、早期アポトーシス状態が維持される。別の実施形態では、安定的な早期アポトーシス細胞は、長期間にわたって早期アポトーシス状態が維持される。
【0166】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、細胞凝集体を欠いている。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、大きな細胞凝集体を欠いている。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、ドナーからの細胞収集(白血球アフェレーシス)以外のステップで抗凝固剤を添加することなく調製されたアポトーシス細胞集団と比較して、細胞凝集体の数が少ない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団またはそれを含む組成物は、抗凝固剤を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は、細胞凝集体を欠いており、早期アポトーシス細胞は、血中トリグリセリド濃度が高い対象から得られる。いくつかの実施形態では、対象の血中トリグリセリド濃度は、150mg/dL超である。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、細胞凝集体を欠いており、アポトーシス細胞集団は、正常な血中トリグリセリド濃度を有する対象から得られた細胞から調製される。いくつかの実施形態では、対象の血中トリグリセリド濃度は、150mg/dL以下である。いくつかの実施形態では、細胞凝集体は、アポトーシス細胞の作製方法の実施中に細胞損失を生じる。
【0168】
当業者であれば、「凝集体」または「細胞凝集体」という用語が、低い剪断力下または静止状態での血球の可逆的な凝集を包含し得ることを理解するであろう。細胞凝集体は、アポトーシス細胞の作製の培養ステップ中に、視覚的に観察することができる。細胞凝集は、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、光学顕微鏡下でサンプルを視覚的に画像化する方法、またはフローサイトメトリ法を用いて測定することができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、酸性クエン酸デキストロース(ACD)-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0170】
早期アポトーシス細胞集団及びそれを含む組成物を調製する方法のいくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地に抗凝固剤が添加される。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地は、凍結培地、洗浄培地、アポトーシス誘導培養培地、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0171】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。当該技術分野で既知の他の抗凝固剤、これに限定しないが、例えば、フォンダパリヌクス、ビバリルジン、及びアルガトロバンなどを使用してもよいことに留意されたい。
【0172】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地は、10U/mlのヘパリンを含有する5%のACD-A溶液を含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、細胞集団の最終的な懸濁培地には添加されない。本明細書で使用するとき、「最終的な懸濁培地」及び「投与培地」という用語は、互換的に使用され、すべて同一の性質及び意味を有する。
【0173】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地は、0.1~2.5U/mlの濃度のヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地は、1~15v/v%の濃度のACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、凍結媒体は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結培地と培養培地との両方が、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0174】
いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、凍結媒体中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、培養培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、培養培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、酸-クエン酸-デキストロース(ACD)-Aの溶液である。いくつかの実施形態では、細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地に添加される抗凝固剤は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含むACD-Aである。
【0175】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製に使用されるアポトーシス誘導培養培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製に使用される凍結培地及びアポトーシス誘導培養培地の両方が抗凝固剤を含む。いかなる理論及び機序にも拘束されることを望まないが、異なる細胞組成物において高いかつ安定した細胞収率を維持するために、細胞収集プロトコルに関係なく、いくつかの実施形態では、抗凝固剤の添加は、アポトーシス細胞集団の作製時における凍結培地及びアポトーシス誘導培養培地の両方への抗凝固剤の添加を含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物内の高いかつ安定した細胞収率は、アポトーシス誘導に使用される初期細胞集団の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、一般的には少なくとも50%の細胞収率を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、凍結培地及び培養培地の両方が抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、培養培地及び凍結培地の両方への抗凝固剤の添加により、これに限定しないが、例えば、細胞収集中に抗凝固剤を添加するタイミングや添加される抗凝固剤の種類などの細胞収集条件に関係なく、細胞集団の異なる細胞調製物間で高いかつ安定した細胞収率が得られる。いくつかの実施形態では、培養培地及び凍結培地の両方への抗凝固剤の添加により、白血球アフェレーシス中に抗凝固剤を添加するタイミング及び/または添加される抗凝固剤の種類に関係なく、細胞調製物の高いかつ安定した収率が得られる。いくつかの実施形態では、高いトリグリセリド濃度の存在下での細胞調製物の作製は、異なる細胞調製物間で低い及び/または不安定な細胞収率をもたらす。いくつかの実施形態では、高いトリグリセリド濃度を有するドナーの血液からの細胞調製物の作製は、細胞調製物の低い及び/または不安定な細胞収率をもたらす。いくつかの実施形態では、「高いトリグリセリド濃度」という用語とは、同一の性別及び年齢の健康な対象の正常濃度を上回るトリグリセリド濃度を指す。いくつかの実施形態では、「高いトリグリセリド濃度」という用語は、約1.7mM/Lを超えるトリグリセリド濃度を指す。本明細書で使用するとき、高いかつ安定した収率とは、対象に投与したときに治療効果を示す用量の調製を可能にするのに十分高い、細胞集団における細胞収率を指す。いくつかの実施形態では、治療効果とは、対象の免疫疾患、自己免疫疾患、または炎症性疾患を治療、予防、または改善する能力を指す。いくつかの実施形態では、高いかつ安定した収率とは、最初に凍結させた細胞からの細胞集団における、少なくとも30%、場合によっては少なくとも40%、一般的には少なくとも50%の細胞収率である。
【0177】
いくつかの実施形態では、高いトリグリセリド濃度を有するドナーから細胞調製物を得る場合、ドナーは、トリグリセリド低下薬(これに限定しないが、例えば、スタチン及び/またはベザフィブラートなど)の献血前の服用、献血前の少なくとも8、10、または12時間の断食、献血前の少なくとも24、48、または72時間の血中トリグリセリド濃度を下げるための適切な食事の摂取、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの措置をとる。
【0178】
いくつかの実施形態では、細胞集団における細胞収率は、アポトーシス誘導に供される細胞の最初の数のうちの組成物中の細胞数に関連する。本明細書で使用するとき、「早期アポトーシス状態の誘導」及び「アポトーシスの誘導」という用語は、互換的に使用され得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、凍結及び解凍後に培養培地で培養される。いくつかの実施形態では、解凍と培養との間に少なくとも1つの洗浄ステップが存在する。本明細書で使用するとき、「培養培地」及び「アポトーシス誘導培養培地」という用語は互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、培養培地は、L-グルタミン、Hepes、メチルプレドニゾロン、及び血漿を含有するRPMI-1640培地を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、2mMのL-グルタミン、10mMのHepes、及び10v/v%血漿を含む。いくつかの実施形態では、培養培地中の血漿は、細胞調製物の細胞が由来するドナーと同一のドナーに由来する。いくつかの実施形態では、血漿は、培養の当日に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、培養は、37℃及び5%COで行われる。
【0180】
いくつかの実施形態では、培養培地は、メチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態では、培養培地内のメチルプレドニゾロンは、単核濃縮細胞組成物中の細胞をさらに誘導して、早期アポトーシス状態にする。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物中の細胞は、メチルプレドニゾロンの存在下での凍結及び培養の両方によって早期アポトーシス状態にするように誘導される。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製は、有利なことに、壊死を実質的に誘発することなく早期アポトーシス状態に誘導することを可能にし、細胞は、作製後の約24時間、早期アポトーシス状態で安定した状態に維持される。
【0181】
いくつかの実施形態では、培養培地は、約10~100μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、約40~60μg/ml、または約45~55μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、50μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、培養は、約2~12時間、場合によっては4~8時間、一般的には約5~7時間行われる。いくつかの実施形態では、培養は、約6時間行われる。いくつかの実施形態では、培養は、少なくとも6時間行われる。好ましい実施形態では、培養は、6時間行われる。
【0183】
いくつかの実施形態では、培養培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、培養培地への抗凝固剤の添加により、細胞調製物の収率が向上する。いくつかの実施形態では、培養培地中の抗凝固剤の濃度は、凍結培地中の抗凝固剤の濃度と同一である。いくつかの実施形態では、培養培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、培養培地で使用される抗凝固剤は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含有するACD-Aである。
【0184】
いくつかの実施形態では、培養培地は、ヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、培養培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、培養培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/ml、場合によっては0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlである。特定の実施形態では、培養培地中のヘパリンの濃度は、約0.5U/mlである。
【0185】
いくつかの実施形態では、培養培地は、ACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、培養培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、培養培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%、場合によっては4~7v/v%、一般的には約5v/v%である。いくつかの実施形態では、培養培地中のACD-Aの濃度は、約5v/v%である。
【0186】
いくつかの実施形態では、細胞調製物の収率の向上は、その細胞調製物を産生した凍結細胞の数のうちの、細胞調製物の早期アポトーシス生細胞の数の向上を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、凍結培地への抗凝固剤の添加により、医薬集団の異なる細胞調製物間で高いかつ安定した収率が得られる。好ましい実施形態では、少なくとも凍結培地及び培養培地への抗凝固剤の添加により、使用される細胞収集プロトコルに関係なく、医薬組成物の異なる細胞調製物間で高いかつ安定した収率が得られる。
【0188】
いくつかの実施形態では、凍結培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結培地で使用される抗凝固剤は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含有するACD-Aである。いくつかの実施形態では、凍結培地は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含有するACD-A溶液を5v/v%の濃度で含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、凍結培地は、ヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/ml、場合によっては0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlである。特定の実施形態では、凍結培地中のヘパリンの濃度は、約0.5U/mlである。
【0190】
いくつかの実施形態では、凍結培地は、ACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%、場合によっては4~7v/v%、一般的には約5v/v%である。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aの濃度は、約5v/v%である。
【0191】
いくつかの実施形態では、培養培地及び/または凍結培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセリド濃度に関係なく、細胞集団において高いかつ安定した細胞収率が得られる。いくつかの実施形態では、正常なまたは高いトリグリセリド濃度を有するドナーの血液から得た場合、培養培地及び/または凍結培地への抗凝固剤の添加により、本明細書に開示した組成物において高いかつ安定した細胞収率が得られる。いくつかの実施形態では、少なくとも培養培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセリド濃度に関係なく、組成物において高いかつ安定した細胞収率が得られる。いくつかの実施形態では、凍結培地及び培養培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセリド濃度に関係なく、組成物において高いかつ安定した細胞収率が得られる。
【0192】
いくつかの実施形態では、凍結培地及び/または培養培地及び/または洗浄培地は、少なくとも0.1U/ml、場合によっては少なくとも0.3U/ml、一般的には少なくとも0.5U/mlの濃度のヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地及び/または培養培地及び/または洗浄培地は、少なくとも1v/v%、場合によっては少なくとも3v/v%、一般的には少なくとも5v/v%の濃度のACD-Aを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、細胞収集後、かつ、凍結培地中で再懸濁されて凍結される前に、少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、凍結及び解凍の後に、少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、洗浄ステップは、単核濃縮細胞の組成物の遠心分離を含み、その後、上清の抽出及び洗浄培地中での再懸濁が行われる。
【0194】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、早期アポトーシス細胞集団の作製の各段階の間に少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、早期アポトーシス細胞集団の作製プロセスの洗浄ステップ中に、洗浄培地に添加される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、培養後に少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、PBSを使用して、培養後に少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、投与培地中の細胞調製物の再懸濁前の最終洗浄ステップでは添加されない。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、投与培地中の細胞調製物の再懸濁前の最終洗浄ステップで使用されるPBSには添加されない。特定の実施形態では、抗凝固剤は、投与培地に添加されない。
【0195】
いくつかの実施形態では、培養中の細胞濃度は、約5×10細胞/mlである。
【0196】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、凍結、解凍、及び培養の後に投与培地中で懸濁され、それにより、医薬集団が得られる。いくつかの実施形態では、投与培地は、適切な生理学的緩衝液を含む。適切な生理学的緩衝液の非限定的な例は、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)などである。いくつかの実施形態では、投与培地は、PBSを含む。いくつかの実施形態では、投与培地は、細胞の生存率の維持を助けるための補助剤を含む。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、投与前に濾過される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、少なくとも200μmのフィルタを使用して投与前に濾過される。
【0197】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞集団は、得られる細胞調製物の最終体積が100~1000ml、場合によっては200~800ml、一般的には300~600mlになるように、投与培地中で再懸濁される。
【0198】
いくつかの実施形態では、細胞収集とは、単核濃縮細胞の組成物を得ることを指す。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製時に実施される洗浄ステップは、洗浄培地中で実施される。特定の実施形態では、早期アポトーシス細胞集団の作製時の培養ステップが洗浄培地中で実施される前に、洗浄ステップが実施される。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、L-グルタミン及びHepesが補充されたRPMI-1640培地を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、2mMのL-グルタミン及び10mMのHepesが補充されたRPMI-1640培地を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、洗浄培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中の抗凝固剤の濃度は、凍結媒体中の抗凝固剤の濃度と同一である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中の抗凝固剤の濃度は、培養培地中の抗凝固剤の濃度と同一である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中で使用される抗凝固剤は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含むACD-Aである。
【0200】
いくつかの実施形態では、洗浄培地は、ヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/ml、場合によっては0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlである。特定の実施形態では、洗浄培地中のヘパリンの濃度は、約0.5U/mlである。
【0201】
いくつかの実施形態では、洗浄培地は、ACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%、場合によっては4~7v/v%、一般的には約5v/v%である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aの濃度は、約5v/v%である。
【0202】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への細胞集団の投与の数時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、約33~39℃で解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、約30~240秒間、好ましくは40~180秒間、最も好ましくは50~120秒間解凍される。
【0203】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への細胞集団の投与の少なくとも10時間前、あるいは対象への細胞集団の投与の少なくとも20、30、40または50時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への細胞集団の投与の少なくとも15~24時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への細胞集団の投与の少なくとも約24時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への細胞集団の投与の少なくとも20時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への細胞集団の投与の30時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、解凍の前及び/または後に洗浄培地中で洗浄する少なくとも1つの洗浄ステップに供される。
【0204】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、メチルプレドニゾロンをさらに含む。いくつかの実施形態では、メチルプレドニゾロンの濃度は、30μg/mlを超えない。
【0205】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、高用量で使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、高濃度で使用される。いくつかの実施形態では、ヒトアポトーシス多形核好中球(PMN)が使用される。いくつかの実施形態では、50%がアポトーシス細胞である細胞群が使用される。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は、メイギムザ染色されたサイトプレップによって確認される。いくつかの実施形態では、細胞の生存率は、トリパンブルー色素排除試験法によって評価される。いくつかの実施形態では、細胞のアポトーシス及び壊死状態は、FACSによる検出を伴うアネキシンV/ヨウ化プロピジウム染色によって確認される。
【0206】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される早期アポトーシス細胞は、壊死細胞を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される早期アポトーシス細胞は、1%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される早期アポトーシス細胞は、2%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される早期アポトーシス細胞は、3%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される早期アポトーシス細胞は、4%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される早期アポトーシス細胞は、5%未満の壊死細胞を含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、それが投与される対象以外の対象から得られた細胞から調製される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献10に記載された1以上のステップを含む、同種異系ドナー細胞の拒絶反応の克服に有用な追加のステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アポトーシス細胞(いくつかの実施形態では同種異系のアポトーシス細胞である)の投与前に、完全または部分的なリンパ球枯渇化(lymphodepletion)ステップを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇化(リンパ球除去)は、同種異系のアポトーシス細胞がサイトカイン放出を制御するのに十分な期間、宿主対移植片反応を遅延させるように調節される。いくつかの実施形態では、本方法は、リンパ節からの同種異系アポトーシスT細胞の放出を遅延させる薬剤を投与するステップを含む。そのような薬剤には、2-アミノー2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール(FTY720)、5-[4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル-1]-1,2,4-オキサジアゾール(SEW2871)、3-(2-(-ヘキシルフェニルアミノ)-2-オキソエチルアミノ)プロパン酸(W123)、2-アンモニオ-4-(2-クロロ-4-(3-フェノキシフェニルチオ)フェニル)-2-(ヒドロキシメチル)リン酸水素ブチル(KRP-203リン酸塩)、または当該技術分野で既知の他の薬剤などが含まれる。そのような薬剤は、本明細書に開示される組成物及び方法の一部として使用されることにより、効力を有し、かつ移植片対宿主病を開始させない同種異系アポトーシス細胞の使用を可能にする。別の実施形態では、同種異系アポトーシスT細胞によるMHC発現をサイレンシングして、同種異系細胞の拒絶反応を低減する。
【0208】
いくつかの実施形態では、本方法は、非静止非アポトーシス生細胞の割合が減少した、非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された、非アポトーシス生細胞の増殖が低下した、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団を作製するステップを含む。本方法は、末梢血の単核濃縮細胞集団を収集するステップと、単核濃縮細胞集団を、抗凝固剤を含む凍結培地中で凍結するステップと、単核濃縮細胞集団を解凍するステップと、約10~100μg/mLの最終濃度のメチルプレドニゾロン及び抗凝固剤を含有するアポトーシス誘導培養培地で、単核濃縮細胞集団を培養するステップと、アポトーシス細胞集団を投与培地中で再懸濁するステップと、単核濃縮集団を不活化させるステップと、を含み、不活化ステップは、アポトーシス誘導の後に行わる。本方法により、非静止非アポトーシス生細胞の割合が減少した、非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された、非アポトーシス生細胞の増殖が低下した、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団が作製される。
【0209】
いくつかの実施形態では、本方法は、アポトーシス細胞集団を対象に投与する前に、同一の対象に由来するアポトーシス細胞集団(自己由来アポ細胞)を放射線照射するステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アポトーシス細胞の集団をレシピエントに投与する前に、対象に由来するアポトーシス細胞集団(同種異系アポ細胞)を放射線照射するステップを含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、細胞は、アポトーシス細胞集団内の残存生細胞の増殖及び/または活性化を抑制する方法で放射線照射される。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合を減少させる方法で放射線照射される。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、細胞集団の50%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、細胞集団の40%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、細胞集団の30%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、細胞集団の20%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、細胞集団の10%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された早期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、細胞集団の0%に減少する。
【0211】
別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞は、それらの早期アポトーシス特性、免疫調節特性、安定性特性のすべてを維持する。別の実施形態では、本方法の放射線照射ステップは、UV線照射を使用する。別の実施形態では、本方法の放射線照射ステップは、γ線照射を使用する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、非アポトーシス生細胞の割合が減少した細胞調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された細胞調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する非アポトーシス生細胞の増殖が低下した細胞調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約1%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約2%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約3%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約4%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約5%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約6%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約7%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約8%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約9%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約10%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約15%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI)を、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%を超えて増加させない。
【0213】
いくつかの実施形態では、非アポトーシス生細胞の割合が減少した、または非アポトーシス生細胞が存在しない細胞集団は、一実施形態では、生細胞を有していない単核早期アポトーシス細胞集団を提供する。いくつかの実施形態では、非アポトーシス生細胞の割合が減少した、または非アポトーシス生細胞が存在しない細胞集団は、一実施形態では、レシピエントにおいてGVHDを誘発しない単核アポトーシス細胞集団を提供する。
【0214】
いくつかの実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞を使用することにより、アポトーシス細胞集団(ごく一部の生細胞を含む)の使用によって生じ得る移植片対白血病効果が排除され、この効果は、アポトーシス細胞によって得られるが、アポトーシス細胞集団内に存在する、細胞活性を有する生存可能な増殖細胞集団からは得られないことが実証される。
【0215】
別の実施形態では、本方法は、レシピエントへの投与の前に、ドナーからのWBCに由来するアポトーシス細胞を放射線照射するステップを含む。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、アポトーシス細胞集団内の残存生細胞の増殖及び/または活性化を抑制する方法で放射線照射される。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞は、それらの早期アポトーシス特性、免疫調節特性、安定性特性のすべてを維持する。別の実施形態では、放射線照射するステップは、UV線照射を使用する。別の実施形態では、放射線照射するステップは、γ線照射を使用する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、非アポトーシス生細胞割合の割合が減少した細胞調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された細胞調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する非アポトーシス生細胞の増殖が低下した細胞調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は、プールされた単核アポトーシス細胞調製物を含む。いくつかの実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、早期アポトーシス状態の単核細胞を含み、プールされた単核アポトーシス細胞は、非アポトーシス生細胞の割合が減少した細胞調製物、非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された細胞調製物、非アポトーシス生細胞の増殖が低下した細胞調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞は、放射線照射される。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、プールされた単核アポトーシス細胞調製物であって、いくつかの実施形態では、提供された血液から得られた白血球画分(WBC)に由来するものである。
【0217】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞調製物は、放射線照射される。別の実施形態では、放射線照射は、γ線照射、またはUV線照射を含む。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞調製物と比較して、非アポトーシス細胞の数が減少する。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞調製物と比較して、増殖した細胞の数が減少する。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞集団と比較して、潜在的に免疫学的に活性な細胞の数が減少する。
【0218】
いくつかの実施形態では、プールされた血液は、ドナーとレシピエントとが一致しない第三者の血液を含む。
【0219】
当業者であれば、「プールされた」という用語が、複数のドナーから収集され、後で使用するために調製され、保存された血液を包含し得ることを理解するであろう。この収集された血液のプールを後で処理することにより、プールされた単核アポトーシス細胞調製物が作製される。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、単核アポトーシス細胞の容易に利用可能な供給を確実にする。別の実施形態では、細胞は、アポトーシスが誘導される培養ステップの直前にプールされる。別の実施形態では、細胞は、培養ステップ後に再懸濁のステップでプールされる。別の実施形態では、細胞は、放射線照射ステップの直前にプールされる。別の実施形態では、細胞は、放射線照射ステップ後にプールされる。別の実施形態では、細胞は、本作製方法における任意のステップでプールされる。
【0220】
いくつかの実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2~25単位の血液中に存在する細胞に由来する。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2~5、2~10、2~15、2~20、5~10、5~15、5~20、5~25、10~15、10~20、10~25、6~13、または6~25単位の血液中に存在する細胞から構成される。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25単位の血液中に存在する細胞から構成される。必要な血液の単位数は、血液からのWBC回収率にも依存する。例えば、WBC回収率が低い場合には、単位数を多くする必要があるが、WBC回収率が高い場合には、必要な単位数は少なくする。いくつかの実施形態では、各単位は、血液バッグである。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、少なくとも25単位の血液、少なくとも50単位の血液、または少なくとも100単位の血液中に存在する細胞から構成される。
【0221】
いくつかの実施形態では、血液の単位は、献血からの白血球(WBC)画分を含む。別の実施形態では、献血は、血液センターまたは血液バンクから得られたものであり得る。別の実施形態では、献血は、プールされたアポトーシス細胞調製物の調製時に集められた病院内のドナーから得られたものであり得る。別の実施形態では、複数のドナーから得られたWBCを含む血液の単位は、本明細書に開示される組成物及び方法の目的のために設立された独立した血液バンクで保存及び維持される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法の目的のために設立された血液バンクは、複数のドナーからのWBCを含む血液単位を供給することができ、また、白血球アフェレーシス装置を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、プールされたWBCの単位は、HLA適合によって制限されない。したがって、結果として得られるプールされたアポトーシス細胞調製物は、HLA適合によって制限されない細胞集団を含む。そのため、特定の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、同種異系細胞を含む。
【0223】
HLA適合によって制限されないプールされたWBCに由来するプールされた単核アポトーシス細胞調製物の利点は、WBC供給源の利用が容易であること、及びWBC取得コストを削減できることである。
【0224】
いくつかの実施形態では、プールされた血液は、HLA適合とは無関係の複数のドナーからの血液を含む。別の実施形態では、プールされた血液は、レシピエントとのHLA適合が考慮された複数のドナーからの血液を含む。例えば、ドナーとレシピエントとの間で、1つのHLA対立遺伝子、2つのHLA対立遺伝子、3つのHLA対立遺伝子、4つのHLA対立遺伝子、5つのHLA対立遺伝子、6つのHLA対立遺伝子、または7つのHLA対立遺伝子が適合している。別の実施形態では、複数のドナーが部分的に適合し、例えば、いくつかのドナーがHLA適合しており、1つのHLA対立遺伝子、2つのHLA対立遺伝子、3つのHLA対立遺伝子、4つのHLA対立遺伝子、5つのHLA対立遺伝子、6つのHLA対立遺伝子、または7つのHLA対立遺伝子が、いくつかのドナーとレシピエントとの間で適合している。各可能性は、本明細書に開示される実施形態を含む。
【0225】
特定の実施形態では、いくつかの非アポトーシス生細胞(アポトーシス抵抗性)は、後述するアポトーシスの誘導ステップ後に残存し得る(実施例1)。これらの非アポトーシス生細胞の存在は、いくつかの実施形態では、放射線照射ステップの前に観察される。これらの非アポトーシス生細胞は、増殖または活性化され得る。いくつかの実施形態では、複数のドナーに由来するプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、宿主に対して活性化されるか、互いに活性化されるか、またはその両方であり得る。
【0226】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される放射線照射された細胞調製物は、放射線照射されていない細胞調製物と比較して、細胞活性化が抑制され、増殖が低下した。別の実施形態では、放射線照射は、γ線照射またはUV線照射を含む。別の実施形態では、放射線照射された細胞調製物は、放射線照射されていない細胞調製物と比較して、非アポトーシス細胞の数が減少した。別の実施形態では、放射線照射は、約15グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約20グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約25グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約30グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約35グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約40グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約50グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約55グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約60グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、最大で2500グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射されたプールされたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないプールされたアポトーシス細胞調製物と同一または同様のアポトーシスプロファイル、安定性、及び有効性を維持する。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大24時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも24時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、24時間を超えて安定的である。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大36時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも36時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、36時間を超えて安定的である。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大48時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は少なくとも48時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、48時間を超えて安定的である。
【0228】
いくつかの実施形態では、プールされた細胞調製物を作製する方法は、細胞調製物を放射線照射するステップを含み、それにより、単一の適合ドナーに由来するアポトーシス調製物において観察される早期アポトーシス特性、免疫調節特性、及び安定性を維持する。なお、細胞調製物を放射線照射するステップは、含まなくてもよい。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、移植片対宿主病(GVHD)応答を誘発しない。
【0229】
細胞調製物への放射線照射は、当該技術分野では安全であると考えられている。現在、WBCとの反応を防ぐために、献血された血液に対する放射線照射処置が日常的に行われている。
【0230】
別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物中のアポトーシス細胞の割合は100%に近く、これにより、細胞調製物中の非アポトーシス生細胞の割合を減少させる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも40%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも50%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも60%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも70%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも80%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも90%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも99%である。したがって、非アポトーシス生細胞の割合が減少した、または非アポトーシス生細胞が存在しない細胞調製物は、一実施形態では、レシピエントにおいてGVHDを誘発しないプールされた単核アポトーシス細胞調製物を提供し得る。各可能性は、本明細書で開示される実施形態を表す。
【0231】
あるいは、別の実施形態では、非アポトーシス性の生WBCの割合は、例えば標的沈殿により、生細胞集団を特異的に除去することによって減少させてもよい。別の実施形態では、ホスファチジルセリンに結合する磁気ビーズを使用して、非アポトーシス生細胞の割合を減少させてもよい。別の実施形態では、アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカに結合するが、非アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカには結合しない磁気ビーズを使用して、非アポトーシス生細胞の割合を減少させてもよい。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカに結合するが、非アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカには結合しない磁気ビーズを使用して、さらなる調製のために選択してもよい。別の実施形態では、非アポトーシス性の生WBCの割合は、超音波の使用によって減少させてもよい。
【0232】
一実施形態では、アポトーシス細胞は、プールされた第三者のドナーから得られる。
【0233】
いくつかの実施形態では、プールされた細胞調製物は、リンパ球、単球、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される少なくとも1つの細胞型を含む。別の実施形態では、プールされた細胞調製物は、単核細胞の濃縮された集団を含む。いくつかの実施形態では、プールされた単核は、リンパ球、単球、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される細胞型を含む単核濃縮細胞調製物である。別の実施形態では、単核濃縮細胞調製物は、顆粒球(すなわち、好中球、好塩基球、及び好酸球)としても知られている15%以下、あるいは10%以下、一般的には5%以下の多形核白血球を含む。別の実施形態では、プールされた単核細胞調製物は顆粒球を欠いている。
【0234】
別の実施形態では、プールされた単核濃縮細胞調製物は、15%以下、あるいは10%以下、一般的には5%以下のCD15高発現細胞を含む。いくつかの実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、15%未満のCD15高発現細胞を含む。
【0235】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物は、少なくとも80%の単核細胞、少なくとも85%の単核細胞、あるいは少なくとも90%の単核細胞、または少なくとも95%の単核細胞を含む。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物は、少なくとも85%の単核細胞を含む。
【0236】
別の実施形態では、最終的に少なくとも80%の単核細胞がプールされた任意のプールされた細胞調製物が、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物と見なされる。したがって、多数の多形核細胞(PMN)を有する細胞調製物を、多数の単核細胞を有する細胞調製物とプールし、その結果、少なくとも80%の単核細胞を「プール」することにより、本明細書に開示される細胞調製物が得られる。いくつかの実施形態では、単核細胞は、リンパ球及び単球を含む。
【0237】
当業者であれば、「単核細胞」という用語が、1つの葉状の核を有する白血球を包含し得ることを理解するであろう。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされたアポトーシス細胞調製物は、5%未満の多形核白血球を含む。
【0238】
驚くべきことに、アポトーシス細胞は、サイトカインストームに関連するサイトカイン、これに限定しないが、IL-6、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、またはそれらの組み合わせの産生を減少させる。一実施形態では、アポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルに影響を与える。別の実施形態では、ポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを低下させる。一実施形態では、アポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを抑制する。一実施形態では、アポトーシス細胞は、マクロファージにおけるサイトカイン発現レベルを阻害する。
【0239】
別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、CRSの減少をもたらす。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、重症なCRSの減少をもたらす。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、CRSの抑制をもたらす。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、重症なCRSの抑制をもたらす。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、CRSの阻害をもたらす。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、重症なCRSの阻害をもたらす。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、CRSの予防をもたらす。別の実施形態では、マクロファージ、DC、またはそれらの組み合わせにおけるサイトカイン発現レベルに対するアポトーシス細胞の効果は、重症なCRSの予防をもたらす。
【0240】
別の実施形態では、アポトーシス細胞は、サイトカイン発現レベルの変化を介さずに、T細胞の死をトリガーする。
【0241】
別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、サイトカインストームを増幅するサイトカインを分泌するためのマクロファージ及び樹状細胞のプライミングに拮抗する。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、炎症反応を抑制する及び/またはサイトカインの過剰な放出を防止するTregを増加させる。
【0242】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1種以上の炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインは、IL-1β、IL-6、TNF-α、IFN-γ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、1種以上の炎症性サイトカインの阻害は、炎症性サイトカインの下方制御を含み、1種以上の炎症性サイトカインの分泌量を減少させる。
【0243】
別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1種以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。いくつかの実施形態では、抗炎症性サイトカインは、TGF-β、IL-10、PGE2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1種以上の炎症性サイトカインを阻害し、かつ1種以上の抗炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、1種以上の炎症性サイトカイン及び1種以上の抗炎症性サイトカインの阻害は、1種以上の炎症性サイトカインの下方制御とそれに続く1種以上の抗炎症性サイトカインの下方制御とを含み、1種以上の炎症性サイトカイン及び1種以上抗炎症性サイトカインが分泌量を減少させる。したがって、当業者であれば、アポトーシス細胞が、炎症性サイトカイン及び抗炎症性サイトカインの両方の下方制御により、異常な自然免疫応答に対して有益な効果を有し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、この有益な効果は、自然免疫系の構成要素によるPAMP及びDAMPの認識に続いて生じ得る。
【0245】
別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、TLRリガンドへの曝露後の樹状細胞成熟を阻害する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、潜在的に寛容原性の樹状細胞が産生され、その樹状細胞は、いくつかの実施形態では遊走可能であり、いくつかの実施形態では、その遊走はCCR7に起因する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、様々なシグナル伝達事象が誘起され、そのシグナル伝達事象は、一実施形態では、TAM受容体シグナル伝達(Tyro3、Axl、及びMer)であり、そのTAM受容体シグナル伝達、いくつかの実施形態では、抗原提示細胞の炎症を抑制する。
【0246】
いくつかの実施形態では、Tyro-3、Axl、及びMerは、付着分子様細胞外ドメイン及びキナーゼドメイン内の保存配列によって特徴付けられる受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAMファミリーを構成する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、MerTKを介したシグナル伝達が活性化される。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路が活性化され、それにより、いくつかの実施形態では、NF-κBを負に調節する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、インフラマソームが負に調節され、それにより、一実施形態では、炎症性サイトカイン分泌、DC成熟、またはそれらの組み合わせを阻害する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、Nr4a、Thbs1、またはそれらの組み合わせなどの抗炎症遺伝子の発現が上方制御される。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、高レベルのAMPが誘導され、そのAMPは、いくつかの実施形態では、パネキシン1依存的に蓄積される。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与により、炎症が抑制される。
【0247】
アポトーシス細胞上清(ApoSup及びApoSup Mon)
【0248】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法及び治療において使用するための組成物には、本明細書に開示されるようなアポトーシス細胞上清が含まれる。
【0249】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)上記のステップ(a)で提供されたアポトーシス細胞を培養するステップと、(c)培養されたアポトーシス細胞から上清を分離するステップと、を含む方法によって得られる。
【0250】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清の作製に使用される早期アポトーシス細胞は、治療を受けている対象からの自己由来である。別の実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清の作製に使用されるアポトーシス細胞は、治療を受けている対象と同種異系である。
【0251】
アポトーシス細胞上清が得られる「アポトーシス細胞」は、当業者に知られているアポトーシスを誘導する方法に供された、対象の任意の細胞型、または任意の市販の細胞株から選択される細胞であり得る。アポトーシスを誘導する方法は、低酸素、オゾン、熱、放射線、化学物質、浸透圧、pHシフト、X線照射、ガンマ線照射、UV線照射、血清枯渇、コルチコイド、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいは、本明細書に記載のまたは当該技術分野で既知の任意の他の方法であり得る。別の実施形態では、アポトーシスを誘導する方法は、早期アポトーシス状態にあるアポトーシス細胞を作製する。
【0252】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、白血球である。
【0253】
一実施形態では、アポトーシス白血球は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。別の実施形態では、アポトーシス白血球は、プールされた第三者ドナーに由来する。別の実施形態では、アポトーシス白血球は、同種異系である。
【0254】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、非付着性白血球を選択し、選択された非付着性白血球をアポトーシス誘導に供し、その後、培養培地で細胞培養ステップを施すことによって提供される。アポトーシス細胞-食細胞上清の作製に使用される「白血球」は、免疫系及び/または造血系の有核細胞の任意の系統または亜系統、これに限定しないが、例えば、樹状細胞、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、造血幹細胞、骨髄細胞、ナチュラルキラー細胞などに由来し得る。白血球は、用途及び目的、所望の白血球系統などに応じて、一般的に実施されている様々な方法を用いて、様々な好適な解剖学的区画から取得することができる。いくつかの実施形態では、ソース白血球は、初代白血球である。別の実施形態では、ソース白血球は、初代末梢血白血球である。
【0255】
初代リンパ球及び単球は、末梢血から簡単に得られる。末梢血白血球としては、70~95%のリンパ球、及び5~25%の単球が挙げられる。
【0256】
血液から特定の種類のソース白血球を取得するための方法は、日常的に実施されている。ソースリンパ球及び/または単球の取得は、例えば、ヘパリンまたはクエン酸などの抗凝固剤の存在下で血液を収集することによって達成される。次いで、収集した血液をフィコールクッション上で遠心分離すると、勾配界面にリンパ球と単球が、ペレットに好中球及び赤血球が分離される。
【0257】
白血球は、それらの特異的な表面マーカを用いた標準的な免疫磁気選択法または免疫蛍光フローサイトメトリ技術によって、あるいは遠心溶出法によって、互いに分離される。例えば、単球はCD14分画として選択され、Tリンパ球はCD3分画として選択され、Bリンパ球はCD19分画として選択され、マクロファージはCD206分画として選択される。
【0258】
リンパ球及び単球は、それらを、組織培養処理された培養レシピエントにおける静置培養などの基質付着条件に供することによって互いに分離することができ、単球は細胞付着性基質に選択的に付着をするが、リンパ球は細胞付着性基質に付着しない。
【0259】
また、白血球は、末梢血単核細胞(PBMC)からも得られ、本明細書に記載されるようにして単離させることができる。
【0260】
当業者であれば、本明細書に開示される所望の量の培養ソース白血球を作製するために初代白血球を適切に培養するために必要な専門知識を有するであろう。また、そのような培養方法を実施するための十分な指針は、当該技術分野の文献から得ることができる。
【0261】
当業者であれば、アポトーシス白血球を誘導するための好適な確立された白血球細胞株を確立、購入、または他の方法で取得するために必要な専門知識を有するであろう。好適な白血球細胞株は、米国培養細胞系統保存機関(ATCC:American Tissue Type Collection)などの供給業者から入手することができる。ソース白血球は、該白血球がアポトーシス性白血球を産生する能力を著しく阻害する技術を用いて取得するべきではないことは、当業者には明らかであろう。
【0262】
別の実施形態では、アポトーシス細胞は、アポトーシスリンパ球であり得る。初代リンパ球などのリンパ球のアポトーシスは、初代リンパ球を血清枯渇、コルチコステロイド、または放射線照射で処理することによって誘導され得る。別の実施形態では、コルチコステロイドでの処理によって初代リンパ球のアポトーシスを誘導することは、初代リンパ球をデキサメタゾンで処理することによって達成される。別の実施形態では、初代リンパ球を約1マイクロモルの濃度のデキサメタゾンで処理する。別の実施形態では、放射線照射によって初代リンパ球のアポトーシスを誘導することは、初代リンパ球をガンマ線照射で治療することによって達成される。別の実施形態では、初代リンパ球を約66ラジアンの線量で放射線照射する。このような処理により、食細胞との共培養ステップに好適なアポトーシスリンパ球が作製される。
【0263】
さらなる実施形態では、早期アポトーシス細胞は、初代単球などのアポトーシス単球であり得る。アポトーシス単球を作製するために、単球は、血清枯渇の条件下で、基質/表面付着のインビトロ条件に供される。このような処理により、食細胞との共培養ステップに好適な非炎症性アポトーシス単球が作製される。
【0264】
他の実施形態では、アポトーシス細胞は、同種異系のアポトーシス細胞、第三者のアポトーシス細胞、及びアポトーシス細胞のプールを含む、本明細書に記載の任意のアポトーシス細胞であり得る。
【0265】
他の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞を他の細胞と共培養することによって得ることができる。
【0266】
したがって、いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)他の細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップと、を含む方法によって得られるアポトーシス細胞上清である。
【0267】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞と共培養される他の細胞は、白血球である。
【0268】
したがって、いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)白血球を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。
【0269】
いくつかの実施形態では、白血球は、マクロファージ、単球、または樹状細胞などの食細胞であり得る。
【0270】
いくつかの実施形態では、白血球は、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー(NK細胞)であり得る。
【0271】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法及び治療で使用される組成物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献11に記載されるアポトーシス細胞-食細胞上清を含む。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用される早期アポトーシス細胞-食細胞上清は、当該技術分野で既知の任意の方法を用いて作製される。
【0272】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清は、食細胞とアポトーシス細胞との共培養によって得られる。
【0273】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清は、(a)食細胞を提供するステップと、(b)アポトーシス細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップと、を含む方法によって得られる。
【0274】
「食細胞」という用語は、有害な異物、細菌、及び、死滅した細胞または死にかけている細胞を摂取(貪食)することによって体を保護する細胞を意味する。食細胞としては、例えば、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び肥満細胞と呼ばれる細胞、優先的には、樹状細胞及び単球/マクロファージが挙げられる。食細胞は、樹状細胞(CD4+ HLA-DR+ 系統-BDCA1/BDCA3+)、マクロファージ(CD14+ CD206 +HLA-DR+)であり得るか、または単球由来(CD14+)であり得る。これらの様々な食細胞を区別するための技術は、当業者には知られている。
【0275】
一実施形態では、単球は、プラスチック付着ステップによって得られる。単球は、マーカCD14+によって、B細胞とT細胞とを区別することができる。不要なB細胞は、CD19+及びT細胞CD3+を発現する。マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)誘導成熟後、得られたマクロファージは、いくつかの実施形態では、マーカCD14+、CD206+、HLA-DR+に対して陽性である。
【0276】
一実施形態では、食細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。
【0277】
食細胞は、食細胞を得るための当該技術分野で既知の任意の方法によって提供することができる。いくつかの実施形態では、マクロファージまたは樹状細胞などの食細胞は、対象から直接単離されるか、または成熟ステップによって前駆細胞から誘導される。
【0278】
いくつかの実施形態では、マクロファージは、対象の腹腔から直接単離され、完全RRPMI培地で培養される。マクロファージは、脾臓から単離することもできる。
【0279】
また、食細胞は、末梢血単球から得ることができる。この場合、単球は、その培養時に、細胞培養培地に、これに限定しないが例えばマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を添加すると、単球由来のマクロファージに分化する。
【0280】
例えば、食細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来し得る。例えば、PBMCは、フィコール勾配遠心分離によって、個体からのサイタフェレーシスバッグから単離され完全RPMI培養培地(10%のFBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン)中で、90分間の細胞付着ステップによって播種される。付着していないT細胞は、プラスチック付着ステップによって除去され、付着したT細胞は、組換え型ヒトM-CSFを補充した完全RPMI環境で培養される。培養期間後、単球由来のマクロファージが得られる。
【0281】
食細胞は、細胞付着ステップによって選択することができる。「細胞付着ステップ」とは、培養細胞を、或る表面、すなわち、細胞付着表面(例えば、組織培養皿、マトリックス、ナイロン、または、プラスチック製の適切な種類のサックまたはバック)に付着させることを可能にする培養状態によって、食細胞、または食細胞に成熟することができる細胞を選択することを意味する。当業者であれば、「細胞付着表面」という用語が、親水性及び負に帯電したものを包含し得ること、並びに、当該技術分野で知られている様々な方法のいずれかによって得られること、別の実施形態では、例えば、コロナ放電、またはガスプラズマを使用してポリスチレン表面を改変することによって得られることを理解するであろう。これらのプロセスは、表面が親水性になり、かつ負に帯電するように表面のポリスチレン鎖にグラフトする、高エネルギーの酸素イオンを生成する。細胞付着を促進するように設計された培養レシピエントは、様々な供給業者(例えば、コーニング社(Corning)、パーキンエルマー社(Perkin-Elmer)、フィッシャー・サイエンティフィック社(Fisher Scientific)、エバーグリーン・サイエンティフィック社(Evergreen Scientific)、ヌンク社(Nunc)など)から入手可能である。
【0282】
B細胞、T細胞、及びNK細胞は、そのような細胞を得るための当該技術分野で知られている任意の方法によって提供され得る。いくつかの実施形態では、B細胞、T細胞、またはNK細胞は、対象から直接単離されるか、または成熟ステップによって前駆細胞から誘導することができる。別の実施形態では、B細胞、T細胞、またはNK細胞は、B細胞株、T細胞株、またはNK細胞株に由来し得る。当業者であれば、好適な確立されたB細胞、T細胞、及びNK細胞株を、確立、購入、または他の方法で取得するために必要な専門知識を有するであろう。好適な細胞株は、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)などの供給業者から入手することができる。
【0283】
一実施形態では、食細胞、B細胞、T細胞、またはNK細胞などのアポトーシス細胞及び白血球は、上記の共培養ステップ(d)の前に個別に培養される。
【0284】
食細胞の細胞成熟は、例えば培地への成熟因子の添加により、細胞培養中に行われる。一実施形態では、成熟因子は、M-CSFであり、例えば、単球由来のマクロファージを得るために使用され得る。
【0285】
食細胞の成熟または選択に使用される培養ステップは、数時間から数日間にわたって実施され得る。別の実施形態では、未成熟食細胞は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、または58時間にわたって、適切な培養培地で培養される。
【0286】
食細胞の培養培地は当業者に知られており、これに限定しないが、例えば、RPMI、DMEM、X-vivo、及び超培養環境であり得る。
【0287】
一実施形態では、アポトーシス細胞と食細胞との共培養は、生理学的溶液中で行われる。
【0288】
この「共培養」の前に、細胞は、洗浄ステップに供され得る。いくつかの実施形態では、白血球(例えば、食細胞)及びアポトーシス細胞は、共培養ステップの前に洗浄される。別の実施形態では、細胞は、PBSで洗浄される。
【0289】
共培養の間、白血球(例えば、マクロファージ、単球、または食細胞などの食細胞類、あるいは、B細胞、T細胞、またはNK細胞)及びアポトーシス細胞は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1の比率(白血球:アポトーシス細胞)、あるいは、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10の比率(白血球:アポトーシス細胞)で混合され得る。一例では、白血球とアポトーシス細胞との比率は、1:5である。
【0290】
細胞の共培養は、数時間から数日間にわたって実施され得る。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、または52時間培養される。当業者であれば、抗炎症化合物の存在、白血球の生存量、及び、除去されなかったアポトーシス細胞の量を測定することによって、共培養の最適な時間を評価することができるであろう。食細胞によるアポトーシス細胞の除去は、アポトーシス細胞の消失に起因して、光学顕微鏡で観察可能である。
【0291】
いくつかの実施形態では、白血球(例えば、マクロファージ、単球、または食細胞などの食細胞類、あるいは、B細胞、T細胞、またはNK細胞)を含む培養物との共培養などの、アポトーシス細胞の培養は、例えば、対象への注射などの投与に適合する培養培地及び/生理学的溶液中で行われる。
【0292】
当業者であれば、「生理学的溶液」が、培養時間内に白血球を死滅させない溶液を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、生理学的溶液は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、または52時間にわたって白血球を死滅させない。他の実施形態では、生理学的溶液は、48時間、または30時間にわたって白血球を死滅させない。
【0293】
いくつかの実施形態では、白血球(例えば、マクロファージ、単球、または食細胞などの食細胞類、あるいは、B細胞、T細胞、またはNK細胞)と、アポトーシス細胞とは、生理学的溶液中で少なくとも30分間培養される。この培養時間により、食作用の開始、並びに、サイトカイン及び他の有益な物質の分泌が可能となる。
【0294】
一実施形態では、このような生理学的溶液は、白血球由来マクロファージによるアポトーシス性白血球の除去を阻害しない。
【0295】
培養または共培養ステップの終了後、上清は、任意選択で、培養されたアポトーシス細胞または共培養された細胞から分離される。細胞から上清を分離する技術は、当該技術分野で既知である。例えば、細胞及びデブリを除去するために、上清の収集、濾過、及び/または遠心分離を行うことができる。例えば、上清は、それを細胞から分離するために、室温で15分間、3000rpmで遠心分離され得る。
【0296】
上清は、使用前に、例えば放射線照射によって、「不活化」され得る。したがって、アポトーシス細胞上清を調製する方法は、任意選択の追加の放射線照射ステップ(f)を含み得る。「放射線照射」ステップは、血液製剤を不活化させるために日常的に行われているような、微生物を殺滅するのに十分な量のX線照射(25~45Gy)を使用する消毒方法と考えることができる。
【0297】
上清への放射線照射は、当該技術分野では安全であると考えられている。現在、WBCへの反応を防ぐために、献血された血液に対する放射線照射処置が日常的に行われている。
【0298】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、本明細書で詳細に説明されるように、対象への投与に適した医薬組成物に製剤化される。
【0299】
いくつかの実施形態では、最終産物は、+4℃で保存される。別の実施形態では、最終産物は、向こう48時間以内に使用するためのものである。
【0300】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清、または、その上清を含む医薬組成物は、例えば-80℃での保存のために凍結乾燥され得る。
【0301】
具体的な一実施形態では、特許文献11の実施例1に記載されているように、アポトーシス細胞-食細胞上清は、アポトーシス細胞として胸腺細胞を使用して作製することができる。単離後、胸腺細胞を放射線照射し(例えば、35X-Grayの放射線照射で)、次いで、完全DMEM培地で例えば6時間培養し、アポトーシスを発生させる。それと並行して、腹腔からマクロファージを分離し、洗浄し、完全RPMI(10%FBS、Peni-Strepto、EAA、Hepes、NaP、及び2-MercaptoEthanol)中で培養する。次に、マクロファージ及びアポトーシス細胞を洗浄し、フェノールを含まないX-vivo培地で、1/5のマクロファージ/アポトーシス細胞比で、さらに48時間共培養する。その後、上清を収集し、遠心分離してデブリを除去し、保存のために冷凍または凍結乾燥させる。マクロファージの濃縮は、FACSによるF4/80の陽性染色を使用して確認することができる。アポトーシスは、7AAD除去及びAnnexin-V陽性染色を使用したFACSによって確認することができる。
【0302】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、別々に培養したマクロファージまたはアポトーシス細胞のいずれかから得られた上清と比較して、TGF-βの活性型及び潜在型の両方でTGF-β濃度が高い。一実施形態では、IL-10濃度も、単独で培養されたマクロファージと比較して増加し、かつ、単独で培養されたアポトーシス細胞と比較して劇的に増加する。別の実施形態では、IL-6などの炎症性サイトカインは検出されず、また、IL-1β及びTNFは検出されないか、または非常に低濃度である。
【0303】
一実施形態では、TGF-β及びIL-10に加えて、アポトーシス細胞上清は、単独で培養されたマクロファージまたは単独で培養されたアポトーシス細胞に由来する上清と比較して、炎症を制御するための上清の寛容原性の役割に関与していると考えられるL-1ra、TIMP-1、CXCL1/KC、及びCCL2/JE/MCP1の濃度が増加する。
【0304】
別の特定の実施形態では、特許文献11の実施例3に記載されているように、ヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来するマクロファージと、アポトーシスPBMCとの共培養から作製することができる。したがって、PBMCは、例えば、フィコール勾配遠心分離によって、健康なボランティアからのサイタフェレーシスバッグから単離される。次に、PBMCを完全RPMI培養培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)中で90分間播種する。次いで、付着しないT細胞を除去し、例えば35Gy用量のX線照射を使用してアポトーシスを発生させ、アポトーシスの発生を可能にするために、完全RPMI環境で4日間培養する(最初の48時間培養後の細胞洗浄を含む)。それと並行して、付着したT細胞は、最初の48時間培養後の細胞洗浄を含む4日間、50μg/mLの組換え型ヒトM-CSFを補充した完全RPMI環境で培養される。4日間の培養期間の終了後、単球由来のマクロファージ及びアポトーシス細胞を洗浄し、X-vivo培地で再び48時間、マクロファージ:アポトーシス細胞を1:5の比率で共培養する。その後、後者の培養物から上清を収集し、遠心分離して細胞及びデブリを除去し、保存及びその後の使用のために凍結または凍結乾燥させる。
【0305】
一実施形態では、特許文献11に記載されているように、アポトーシス細胞-食細胞上清は、末梢血単核細胞(PBMC)から6日で得られる。培養物にM-CSF添加を使用してPBMC由来マクロファージを得るために4日、0日目に単離された非付着性PBMCに対応するアポトーシス細胞とPBMC由来マクロファージとの共培養にさらに2日である。
【0306】
一実施形態では、特許文献11に記載されているように、標準化されたヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、ドナーまたはPBMCの供給源(サイタフェレーシスまたはバフィーコート)とは無関係に得られる。プラスチック付着ステップは、濃縮された単球の有意な開始集団(プラスチック培養皿に付着後のCD14+細胞の20~93%)を得るのに十分である。加えて、そのような付着性T細胞は、B細胞及びT細胞の存在数が非常に少ないことを示す(CD19+B細胞は1.0%、CD3+T細胞は12.8%)。M-CSFの存在下で付着性T細胞を4日間培養した後、単球由来マクロファージの割合は、CD14+CD206+HLA-DR+マクロファージの0.1%~77.7%に大幅に増加する。そして、単球由来マクロファージをアポトーシス非付着性PBMC(Annexin-V染色及び7AAD除去によって示されるように、47.6%のアポトーシス)と48時間共培養することにより、アポトーシス細胞-食細胞上清を作製することができる。
【0307】
一実施形態では、収集されたアポトーシス細胞-食細胞上清は、単球由来マクロファージ単独、または炎症状態(+LPS)で処理した単球由来マクロファージの培養上清よりも著しく多くの潜在的TGFを含み、IL-1βやTNFなどの炎症性サイトカインは微量または低濃度でのみ含む。
【0308】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含有する組成物は、抗凝固剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、酸性クエン酸デキストロース(ACD)-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0309】
別の実施形態では、抗凝固剤は、アポトーシス細胞の作製プロセス中に添加される。別の実施形態では、添加される抗凝固剤は、ACD、ヘパリン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、ACDの濃度は、1%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、2%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、3%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、4%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、5%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、6%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、7%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、8%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、9%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、10%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約1~10%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約2~8%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約3~7%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約1~5%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約5~10%である。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.5U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.1~1.0U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.2~0.9U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.3~0.7U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.1~0.5U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.5~1.0U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.01~1.0U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.1U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.2U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.3U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.4U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.5U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.6U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.7U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.8U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.9U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、1.0U/mlである。別の実施形態では、ACDの濃度は5%であり、ヘパリンの最終濃度は0.5U/mlである。
【0310】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、メチルプレドニゾロンをさらに含む。いくつかの実施形態では、メチルプレドニゾロンの濃度は、30μg/mlを超えない。
【0311】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、対象の体重1キログラムあたり約2億個の細胞(70kgの対象の場合)に相当するサイタフェレーシスによって得られた約14×10個のCD45+細胞の共培養に由来するアポトーシス細胞上清の総用量またはアリコートで使用され得る。一実施形態では、そのような総用量は、対象の体重1キログラムあたり約1億個の細胞に由来する上清の単位用量として投与されるか、及び/または、週間隔で単位用量として投与される。この実施形態による好適な総用量には、対象の体重1キログラムあたり約1000万~約40億個の細胞に由来する上清の総用量が含まれる。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約4000万~約10億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約8000万~約5億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約1億6000万~約2億5000万個の細胞に由来する。この実施形態による好適な単位用量には、対象の体重1キログラムあたり約400万~約4億個の細胞に由来する上清の単位用量が含まれる。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約800万~約2億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約1600万~約1億個個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約3200万~約5000万個の細胞に由来する。
【0312】
驚くべきことに、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清は、サイトカインストームに関連するサイトカイン、例えばIL-6などの産生を減少させる。別のサイトカインであるIL-2は、DC及びマクロファージから少量分泌されるが、サイトカイン放出症候群には関与しない。
【0313】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清は、マクロファージ及びDCにおけるサイトカイン発現レベルに影響を与えるが、T細胞自体におけるサイトカイン発現レベルには影響を与えない。
【0314】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、サイトカイン発現レベルの変化を介さずに、T細胞の死をトリガーする。
【0315】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清は、サイトカインを分泌するためのマクロファージ及び樹状細胞のプライミングに拮抗する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、炎症反応を抑制する及び/またはサイトカインの過剰な放出を防止するTregを増加させる。
【0316】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清の投与は、1種以上の炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインは、IL-1β、IL-6、TNF-α、IFN-γ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、1種以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。いくつかの実施形態では、抗炎症性サイトカインは、TGF-β、IL-10、PGE2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0317】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清の投与は、TLRリガンドへの曝露後の樹状細胞成熟を阻害する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、潜在的に寛容原性の樹状細胞が産生され、その樹状細胞は、いくつかの実施形態では遊走可能であり、いくつかの実施形態では、その遊走はCCR7に起因する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、様々なシグナル伝達事象が誘起され、そのシグナル伝達事象は、一実施形態では、TAM受容体シグナル伝達(Tyro3、Axl、及びMer)であり、そのTAM受容体シグナル伝達、いくつかの実施形態では、抗原提示細胞の炎症を抑制する。いくつかの実施形態では、Tyro-3、Axl、及びMerは、付着分子様細胞外ドメイン及びキナーゼドメイン内の保存配列によって特徴付けられる受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAMファミリーを構成する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、MerTKを介したシグナル伝達が活性化される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路が活性化され、それにより、いくつかの実施形態では、NF-κBを負に調節する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、インフラマソームが負に調節され、それにより、一実施形態では、炎症性サイトカイン分泌、DC成熟、またはそれらの組み合わせを阻害する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、Nr4a、Thbs1、またはそれらの組み合わせなどの抗炎症遺伝子の発現が上方制御される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、高レベルのAMPが誘導され、そのAMPは、いくつかの実施形態では、パネキシン1依存的に蓄積される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、炎症が抑制される。
【0318】
組成物
【0319】
本明細書で使用するとき、「組成物」及び「医薬組成物」という用語は、いくつかの実施形態では、互換的に使用され、すべて同一の性質及び意味を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載されるような状態または疾患を治療するための医薬組成物である。
【0320】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、CRSまたはサイトカインストームの発生を低減または阻害するための医薬組成物である。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、対象におけるCOVID-19を治療するための組成物である。別の実施形態では、対象におけるCOVID-19を治療するための組成物は、CRSまたはサイトカインストームの発生を低減または阻害することをさらに含む。
【0321】
別の実施形態では、医薬組成物は、早期アポトーシス細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アポトーシス上清を含む。
【0322】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載のCOVID-19を治療するための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の早期アポトーシス細胞単核濃縮集団と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。別の実施形態では、本明細書に記載のCOVID-19を治療するための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量のアポトーシス上清と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0323】
別の実施形態では、本明細書に開示される方法で使用される本明細書に開示の組成物は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清と、医薬的に許容される賦形剤とを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物は、例えば、対象におけるCOVID-19またはその症状を治療するために、本明細書に開示される方法で使用される。
【0324】
別の実施形態では、本開示の組成物に含まれる早期アポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。別の実施形態では、本開示の組成物に含まれる早期アポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナー細胞である。別の実施形態では、本開示の組成物に含まれるアポトーシス細胞上清は、早期アポトーシス細胞から採取される。別の実施形態では、本開示の組成物に含まれるアポトーシス細胞上清は、プールされた第三者ドナー細胞から採取される。
【0325】
一実施形態では、別の医薬組成物は、一実施形態ではイピリムマブであるCTLA-4遮断剤を含む。別の実施形態では、別の医薬組成物は、本明細書に開示されるアルファ-1抗トリプシン、またはその断片もしくはその類似体を含む。別の実施形態では、別の医薬組成物は、本明細書に開示されるテルル系化合物を含む。別の実施形態では、別の医薬組成物は、本明細書に開示される免疫調節剤を含む。別の実施形態では、別の医薬組成物は、CTLA-4遮断剤、アルファ-1抗トリプシンまたはその断片もしくはその類似体、テルル系化合物、免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0326】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、アポトーシス細胞と、別の薬剤とを含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、アポトーシス細胞と、抗体またはその機能的断片とを含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、アポトーシス細胞と、RtX抗体またはその機能的断片とを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞と、抗体またはその機能的断片とが、別個の組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞と、抗体またはその機能的断片とが、同一の組成物に含まれる。
【0327】
当業者であれば、「医薬組成物」という用語が、生理学的に適切な担体及び賦形剤などの他の化学成分を含む、本明細書に記載の1種以上の活性成分の調製を包含し得ることを理解するであろう。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0328】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、軽症のCOVID-19またはその症状を治療するための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、中等症のCOVID-19またはその症状を治療するための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、重症のCOVID-19またはその症状を治療するための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、重篤なCOVID-19またはその症状を治療するための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、軽症のCOVID-19の罹患患者の生存率を高めるための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、中等症のCOVID-19の罹患患者の生存率を高めるための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、重症のCOVID-19の罹患患者の生存率を高めるための医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、重篤なCOVID-19の罹患患者の生存率を高めるための医薬組成物である。
【0329】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されるような早期アポトーシス細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されるような早期アポトーシス細胞集団と、医薬的に許容される賦形剤とを含む。
【0330】
当業者であれば、「生理学的に許容される担体」、「薬学的に許容される担体」、「生理学的に許容される賦形剤」、及び「薬学的に許容される賦形剤」という用語や表現は互換的に使用することができ、生物に大きな刺激を与えず、かつ投与された活性成分の生物学的活性及び特性を損なわない、担体、賦形剤、または希釈剤を包含し得ることを理解するであろう。
【0331】
当業者であれば、「賦形剤」が、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、賦形剤には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な種類の糖やデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0332】
薬物の製剤化及び投与の技術は、参照により本明細書に組み込まれる、米国ペンシルバニア州イーストン所在のマック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)の「Remington's Pharmaceutical Sciences」の最新版に記載されている。
【0333】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、治療用組成物を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、治療効果をもたらす。
【0334】
製剤
【0335】
早期アポトーシス細胞集団を含む本明細書に開示される医薬組成物は、無菌液体製剤、例えば、選択されたpHに緩衝され得る、等張性水溶液、懸濁液、エマルション、分散液、または粘性組成物として便利に提供することができる。液体製剤は、通常、ゲル、他の粘性組成物、及び固体組成物よりも調製が容易である。加えて、液体組成物は、特に注射によって投与できるので、幾分より便利である。一方、粘性組成物は、特定の組織との接触期間をより長くするために、適切な粘度範囲内で調製することができる。液体組成物または粘性組成物は、溶媒や分散媒などの担体を含むことができる。溶媒または分散媒には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物が含まれる。
【0336】
無菌注射液は、本開示の方法の実施に用いられる、本明細書に記載される早期アポトーシス細胞集団を、所望に応じて、様々な量の他の成分を含有する必要量の適切な溶媒に組み込むことによって調製することができる。このような組成物は、適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどと混合してもよい。また、本開示の組成物は、凍結乾燥することもできる。このような組成物は、投与経路及び所望の調製に応じて、湿潤剤、分散剤、乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化剤、粘度増強添加剤、防腐剤、香味料、着色料などの補助物質を含有してもよい。参照により本明細書に組み込まれる「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE", 17th edition, 1985」などの標準的なテキストを、過度の実験なしに適切な製剤を調製するために参照してもよい。
【0337】
組成物の安定性及び無菌性を高める様々な添加剤、例えば、抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、及び緩衝液などを加えてもよい。微生物の作用は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実に防止することができる。注射用製剤の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。しかしながら、本明細書の開示によれば、使用する媒体、希釈剤、または添加剤は、遺伝子組換え型免疫応答性細胞またはその前駆体に適合する必要がある。
【0338】
本明細書に記載される組成物または製剤は、等張性であり得る、すなわち、血液及び涙液と同一の浸透圧を有し得る。本明細書に開示される組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、または、他の薬学的に許容される薬剤、例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、または他の無機溶質もしくは有機溶質などを用いて達成することができる。ナトリウムイオンを含む緩衝液では、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0339】
組成物の粘度は、所望に応じて、薬学的に許容される増粘剤を使用して、選択したレベルに維持することができる。メチルセルロースが、容易かつ経済的に入手可能であり、かつ扱いやすいので、好ましい。
【0340】
他の適切な増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の好ましい濃度は、選択した薬剤に依存する。重要な点は、選択した粘度を達成する量を使用することである。適切な担体及び他の添加剤の選択は、正確な投与経路と、例えば液体剤形などの特定の剤形の性質(例えば、組成物が、溶液、懸濁液、ゲル、または別の液体剤形、例えば、持続放出形態や液体充填形態など、に製剤化されるかどうか)とに依存することは明らかである。
【0341】
当業者であれば、本明細書に開示される方法で使用するために、組成物または製剤の成分は、化学的に不活性であり、本明細書に記載の早期アポトーシス細胞集団の生存率または効力に影響を与えないように選択されるべきであることを理解するであろう。このことは、化学分野の当業者及び薬学的原理に対して問題を提示しないであろう。または、本開示及び本明細書が引用した文献から、標準的なテキストを参照するか、または(過度の実験を伴わない)単純な実験によって、問題を容易に回避することができるであろう。
【0342】
使用方法
【0343】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象(患者)におけるCOVID-19を治療する方法であって、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含有する組成物を患者に投与するステップを含む方法である。いくつかの実施形態では、本開示の治療方法は、COVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含む。特定の実施形態では、本開示の治療方法、COVID-19の症状の出現を防止することを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含有する組成物を投与するステップを含む、COVID-19を治療する方法は、SARS-CoV-2のPCR陰性の結果をもたらす。
【0344】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含有する組成物を投与するステップを含む、COVID-19を治療する方法は、COVID-19患者の入院日数を減少させる。いくつかの実施形態では、入院日数は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与されていない患者と比較して、約10~90%減少する。いくつかの実施形態では、入院日数は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与されていない患者と比較して、約10~50%減少する。いくつかの実施形態では、入院日数は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与されていない患者と比較して、約50~90%減少する。いくつかの実施形態では、入院日数は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与されていない患者と比較して、約10%、15%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、25%75%、80%、85%、または90%減少する。
【0345】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を含有する組成物を投与するステップを含む、COVID-19を治療する方法は、COVID-19患者が病院の集中治療室(ICU)に滞在する期間を減少させる。いくつかの実施形態では、ICUの滞在期間は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与されていない患者と比較して、約10~90%減少する。いくつかの実施形態では、ICU滞在は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与されていない患者と比較して、約10~50%減少する。いくつかの実施形態では、ICU滞在は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与されていない患者と比較して、約50~90%減少する。いくつかの実施形態では、ICU滞在は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与されていない患者と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%減少する。
【0346】
いくつかの実施形態では、COVID-19を治療することは、軽症のCOVID-19に罹患している患者を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療することは、中等症のCOVID-19に罹患している患者を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療することは、重症のCOVID-19に罹患している患者を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療することは、重篤なCOVID-19に罹患している患者を治療することを含む。
【0347】
COVID-19の急速な進行の知識を用いて、いくつかの実施形態では、COVID-19を治療することは、SARS-CoV-2に感染した無症候性の患者を予防的に治療することを含み、その結果、患者の症状が、より重症の形態のCOVID-19(軽症、中等症、重症、または重篤)に進行することが予防されるか、阻害されるか、または低減される。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療することは、軽症のCOVID-19に罹患している患者を予防的に治療することを含み、その結果、患者の症状が、より重症の形態のCOVID-19(中等症、重症、または重篤)に進行することが予防されるか、阻害されるか、または低減される。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療することは、中等症のCOVID-19に罹患した患者を予防的に治療することを含み、その結果、患者の症状は、より重症の形態のCOVID-19(重症または重篤)に進行することが予防されるか、阻害されるか、または低減される。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療することは、重篤なCOVID-19に罹患した患者を治療することを含み、その結果、患者の症状は、より重症の形態のCOVID-19(重篤)または死亡に進行することが予防されるか、阻害されるか、または低減される。
【0348】
いくつかの実施形態では、治療方法は、COVID-19の症状を治療することを含み、症状は、臓器不全、臓器機能不全、臓器損傷、サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、単一の症状を治療する。いくつかの実施形態では、治療方法は、少なくとも2つの症状を治療する。いくつかの実施形態では、治療方法は、複数の症状を治療する。
【0349】
当業者であれば、臓器機能不全が、臓器がその期待される機能を発揮しない状況を包含し得ることを理解するであろう。さらに、臓器不全は、外部の臨床的介入なしでは正常な恒常性を維持することができない程度の臓器機能不全を包含し得る。
【0350】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、臓器機能不全または臓器不全を発症している患者におけるCOVID-19を治療することを含み、臓器は、肺、心臓、腎臓、または肝臓、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、臓器機能不全、臓器損傷、臓器不全、またはそれらの任意の組み合わせの症状を治療する。臓器機能不全や臓器不全によって臓器が損傷を受けると、様々な症状が併発する。いくつかの実施形態では、臓器損傷は、修復可能である。いくつかの実施形態では、臓器損傷は、永続的である。いくつかの実施形態では、臓器機能不全の治療は、臓器機能不全の軽減、進行の遅延、阻害、反転、修復、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、臓器損傷の治療は、臓器損傷の軽減、進行の遅延、阻害、反転、修復、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、臓器不全の治療は、臓器不全の軽減、進行の遅延、阻害、反転、修復、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0351】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、肺機能不全、肺損傷、肺不全、またはそれらの任意の組み合わせの症状を治療する。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、呼吸困難、30回/分以上の呼吸頻度、SpO≦93%の測定値、PaO/FiO<300mmHgの測定値、または、24~48時間以内での>50%の肺浸潤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、呼吸困難(息切れ)を含む。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、30回/分以上の呼吸頻度を含む。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、SpO≦93%の測定値、及び、PaO/FiO<300mmHgの測定値を含む。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、24~48時間以内での>50%の肺浸潤を含む。いくつかの実施形態では、肺機能不全は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞を使用する治療方法は、呼吸器合併症を治療する。
【0352】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、心臓機能不全、心臓損傷、心臓不全、またはそれらの任意の組み合わせの症状を治療する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、腎臓機能不全、腎臓損傷、腎臓不全、またはそれらの任意の組み合わせの症状を治療する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、肝臓機能不全、肝臓損傷、肝臓不全、またはそれらの任意の組み合わせの症状を治療する。
【0353】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、多臓器機能不全、多臓器損傷、多臓器不全を含む、臓器機能不全、臓器損傷、臓器不全、またはそれらの任意の組み合わせの症状を治療する。いくつかの実施形態では、多臓器機能不全、多臓器損傷、多臓器不全は、肺、心臓、肝臓、及び腎臓のうちの少なくとも2つの任意の組み合わせの機能不全、損傷、または不全を含む。
【0354】
いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19を治療することは、COVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含み、ここで、症状は臓器不全を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19を治療することは、COVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含み、ここで、症状は臓器機能不全を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19を治療することは、COVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含み、ここで、症状は、臓器損傷を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19を治療することは、COVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含み、ここで、症状は、急性多臓器不全を含む。
【0355】
いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19の治療は、臓器機能不全に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することを含み、それによって、臓器機能不全を治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減する。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19の治療は、臓器不全に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することを含み、それによって、臓器不全を治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減する。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19の治療は、臓器損傷に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することを含み、それによって、臓器損傷を治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減する。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19の治療は、急性多臓器不全に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することを含み、それによって、急性多臓器不全を治療するか、阻害するか、その発生率を低下させるか、改善するか、または軽減する。
【0356】
いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19の治療は、臓器機能不全に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することを含み、それによって、臓器機能不全を治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減する。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19の治療は、臓器不全に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することを含み、それによって、臓器不全を治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減する。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19の治療は、臓器損傷に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することを含み、それによって、臓器損傷を治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減する。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した患者におけるCOVID-19の治療は、急性多臓器不全に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することを含み、それによって、急性多臓器不全を治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減する。
【0357】
いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2感染中の臓器不全は、重要な臓器、これに限定しないが、例えば、肺、心臓、腎臓、肝臓、及び血液臓器の不全を含む。いくつかの実施態様では、COVID-19の一部としての多臓器不全は、肺、心臓、腎臓、肝臓、及び血液臓器の組み合わせの不全を含む。いくつかの実施形態では、COVID-19中の血液学的異常は、血小板減少、リンパ球減少、好中球減少、好中球増加、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、臓器不全は、これに限定しないが、順次臓器不全評価(SOFA)スコアを含む、当該技術分野で既知の基準を用いて測定され得る。
【0358】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、心血管機能不全の発生の予防、阻害、または低減を含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、急性腎障害の発生の予防、阻害、または低減を含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、肺機能不全の発生の予防、阻害、または低減を含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、肝機能不全の発生の予防、阻害、または低減を含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、血液学的異常の発生の予防、阻害、または低減を含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、心血管機能不全、急性腎障害、肺機能不全、及び血液学的異常の任意の組み合わせの発生の予防、阻害、または低減を含む。
【0359】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核細胞を投与することにより、心血管機能不全の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核細胞を投与することにより、急性腎障害の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核細胞を投与することにより、肺機能不全の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核細胞を投与することにより、肝機能不全の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核細胞を投与することにより、血液学的異常の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核細胞を投与することにより、心血管機能不全、急性腎障害、肺機能不全、及び血液学的異常の任意の組み合わせの発生の予防、阻害、または低減が達成される。
【0360】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、心血管機能不全の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、急性腎障害の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、肺機能不全の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、肝機能不全の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、血液学的異常の発生の予防、阻害、または低減が達成される。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、心血管機能不全、急性腎障害、肺機能不全、及び血液学的異常の任意の組み合わせの発生の予防、阻害、または低減が達成される。
【0361】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核濃縮細胞を投与することにより、COVID-19の症状の治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核濃縮細胞を投与することにより、臓器不全、臓器機能不全、臓器損傷、サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含むCOVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核濃縮細胞を投与することにより、早期アポトーシス細胞を投与されていない患者と比較して、臓器不全、臓器機能不全、臓器損傷、サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含むCOVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することができる。
【0362】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、COVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、臓器不全、臓器機能不全、臓器損傷、サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含むCOVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、早期アポトーシス上清を投与されていない患者と比較して、臓器不全、臓器機能不全、臓器損傷、サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含むCOVID-19の症状を治療すること、阻害すること、発生率を低下させること、改善すること、または軽減することができる。
【0363】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス単核濃縮細胞を投与することは、COVID-19の治療において非常に有効である。いくつかの実施形態では、COVID-19の効果的な治療の指標は、所定の時間枠内にCOVID-19から回復する患者の割合を含む。いくつかの実施形態では、COVID-19の効果的な治療の指標は、早期アポトーシス細胞を投与しなかった患者の割合と比較して、集中治療から解放された患者の割合を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞を投与されたCOVID-19の患者は、早期アポトーシス細胞を投与しなかったCOVID-19患者と比較してより迅速に回復する。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞を投与されたCOVID-19の患者は、早期アポトーシス細胞を投与しなかったCOVID-19患者と比較してより完全に回復する。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞で治療したCOVID-19患者の死亡率は、早期アポトーシス細胞を投与しなかった患者と比較して減少する。
【0364】
いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、ヒトを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、ヒトの成人を含む。いくつかの実施形態では、COVID-19患者は、ヒトの小児を含む。
【0365】
いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法は、軽症のCOVID-19を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法は、中等症のCOVID-19を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法は、重症のCOVID-19を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法は、重篤なCOVID-19を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法は、軽症、中等症、重症、または重篤のCOVID-19を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法は、中等症、重症、または重篤のCOVID-19を治療することを含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を治療する方法は、重症または重篤のCOVID-19を治療することを含む。
【0366】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、サイトカインストームを治療すること、阻害すること、その発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、サイトカインストームまたはケモカインストームを治療すること、阻害すること、その発生率を低下させること、改善すること、または軽減することを含む。
【0367】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することにより、サイトカインストームを治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することにより、ケモカインストームを治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することにより、サイトカインストームまたはケモカインストームを治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減することができる。
【0368】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、サイトカインストームを治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、ケモカインストームを治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、サイトカインストームまたはケモカインストームを治療するか、阻害するか、発生率を低下させるか、改善するか、または軽減することができる。
【0369】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、患者の免疫応答を再調整することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、炎症性サイトカインの分泌を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、炎症性サイトカイン/ケモカイン及び抗炎症性サイトカイン/ケモカインの分泌を減少させることを含む。
【0370】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することにより、患者の免疫応答を再調整することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することにより、炎症性サイトカインを減少させることができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス細胞を投与することにより、炎症性サイトカイン/ケモカイン及び抗炎症性サイトカイン/ケモカインの分泌を減少させることができる。
【0371】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、患患者の免疫応答を再調整することができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、炎症性サイトカインを減少させることができる。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患している患者に早期アポトーシス上清を投与することにより、炎症性サイトカイン/ケモカイン及び抗炎症性サイトカイン/ケモカインの分泌を減少させることができる。
【0372】
いくつかの実施形態では、免疫応答の再調整は、1種以上の炎症性サイトカインもしくはケモカイン、抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫応答の再調整は、1種以上の抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、またはそれらの組み合わせの分泌を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、免疫応答の再調整は、1種以上の炎症性もしくは抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、または免疫調節剤の分泌を減少させ、かつ、1種以上の抗炎症性のサイトカインもしくはケモカインの分泌を増加させることを含む。
【0373】
特定の実施形態では、COVID-19を治療する方法は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与しなかったCOVID-19患者と比較して、COVID-19患者の生存期間を延長することを含む。特定の実施形態では、COVID-19を治療する方法は、早期アポトーシス上清を投与しなかったCOVID-19患者と比較して、COVID-19患者の生存期間を延長することを含む。
【0374】
特定の実施形態では、COVID-19の症状を治療する方法は、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団を投与しなかったCOVID-19患者と比較して、COVID-19患者の生存期間を延長することを含む。特定の実施形態では、COVID-19の症状を治療する方法は、早期アポトーシス上清を投与しなかったCOVID-19患者と比較して、COVID-19患者の生存期間を延長することを含む。
【0375】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、COVID-19及びその症状に罹患している患者の死亡率の減少を含む。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、COVID-19患者の生存期間を改善することを含む。
【0376】
当業者であれば、COVID-19を治療することは、特定の実施形態では、COVID-19の症状を治療することを含み得ることを理解するであろう。
【0377】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を60%超増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を70%超増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を80%超増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を90%超増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を95%超増加させる。
【0378】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約25~50%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約50~100%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して患者の生存期間を約80~100%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療は方法、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約80、90、または100%増加させる。
【0379】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約100~2000%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約200~300%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を100%超増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を200%超増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を300%超増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を400%超増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を500%、600%、700%、800%、900%、または1000%超増加させる。
【0380】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約100%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約200、300、400、500、600、700、800、900、または1000%増加させる。
【0381】
いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約100~1000%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約100~500%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約500~1000%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約70~80%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約50%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約60%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約70%増加させる。いくつかの実施形態では、治療を必要としている患者におけるCOVID-19の治療方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を投与されていない患者と比較して、患者の生存期間を約80%増加させる。
【0382】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症するか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しやすい対象におけるサイトカイン産生を低減または阻害する方法は、サイトカイン産生を低減または阻害する。別の実施形態では、本開示の方法は、炎症性サイトカインの産生を低減または阻害する。さらなる実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1つの炎症性サイトカインの産生を低減または阻害する。
【0383】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、COVID-19を治療する方法であって、COVID-19患者におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または減少させる方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、COVID-19を治療する方法であって、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しているCOVID-19患者におけるサイトカイン産生を阻害または減少させる方法である。この方法は、早期アポトーシス細胞またはその上清を含有する組成物を投与するステップを含む。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、COVID-19患者におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを治療する方法である。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、COVID-19患者におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを予防する方法である。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、COVID-19患者におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを軽減する方法である。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、COVID-19患者におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを改善する方法である。
【0384】
当業者であれば、本明細書でサイトカインに関して使用する場合、「産生」という用語が、細胞からのサイトカインの分泌だけでなくサイトカインの発現も包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、サイトカインの産生が増加すると、細胞からのサイトカインの分泌が増加する。別の実施形態では、サイトカインの産生が減少すると、細胞からのサイトカインの分泌が減少する。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を減少させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、IL-6の分泌を減少させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法は、IL-2の分泌を増加させる。
【0385】
別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、腫瘍細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、T細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、免疫細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、マクロファージである。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、B細胞リンパ球である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、肥満細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、内皮細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、線維芽細胞である。別の実施形態では、少なくとも1つのサイトカインを分泌する細胞は、間質細胞である。当業者であれば、サイトカイン分泌細胞のサイトカインの分泌レベルが、サイトカイン分泌細胞を取り巻く環境に応じて増加または減少し得ることを認識するであろう。
【0386】
さらに別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を増加させる。さらに別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を維持する。さらなる別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を減少させない。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-2の分泌を増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-2Rの分泌を増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-2の分泌レベルを維持する。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを維持する。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-2の分泌レベルを減少させない。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-2の分泌レベルを維持または増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを維持または増加させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-2Rの分泌レベルを減少させない。
【0387】
さらに別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-6の分泌を減少させる。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-6の分泌を減少させ、かつ、IL-2の分泌レベルを維持する、増加させる、または減少させない。別の実施形態では、本明細書に開示された方法で使用される別の薬剤は、IL-6の分泌を減少させ、かつ、IL-2Rの分泌レベルを維持する、増加させる、または減少させない。
【0388】
投与
【0389】
一実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示されるようなアポトーシス細胞を含有する組成物を投与する。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示されるようなアポトーシス細胞上清を含有する組成物を投与する。
【0390】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、上記で詳細に記載されるように、単核濃縮細胞集団を含む早期アポトーシス細胞集団を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、安定的な細胞集団を含む早期アポトーシス細胞集団を投与することを含み、該細胞集団は、24時間超安定である(例えば、実施例1参照)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、細胞凝集体を欠く細胞集団を含む早期アポトーシス細胞集団を投与することを含む。細胞凝集体を欠く早期アポトーシス細胞集団及びそれらの作製方法は、上記に詳細に説明されている。
【0391】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、自己由来の早期アポトーシス細胞集団を必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、同種異系の早期アポトーシス細胞集団を必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団の単回注入を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス上清の単回注入を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス単核濃縮細胞集団の複数回注入を含む。いくつかの実施形態では、早期アポトーシス上清の複数回注入を含む。
【0392】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団またはその組成物の投与方法は、早期アポトーシス細胞集団またはその組成物の単回注入を行うことを含む。いくつかの実施形態では、単回注入は、癌または腫瘍のリスクがあると事前に判断された対象に対して予防のために行われ得る。いくつかの実施形態では、単回注入は、対象の治療処置の一部として、癌または腫瘍に罹患している対象に対して定期的に行われ得る。いくつかの実施形態では、単回注入は、転移性癌の予防、リスクの低減、または出現の遅延のために、癌または腫瘍に罹患している対象に対して予防のために行われ得る。
【0393】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞集団またはその組成物の投与方法は、早期アポトーシス細胞集団またはその組成物の複数回注入を行うことを含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、癌または腫瘍のリスクがあると事前に判断された対象に対して予防のために行われ得る。いくつかの実施形態では、複数回注入は、対象の治療処置の一部として、癌または腫瘍に罹患している対象に対して定期的に行われ得る。いくつかの実施形態では、複数回注入は、転移性癌の予防、リスクの低減、または出現の遅延のために、癌または腫瘍に罹患している対象に対して予防のために行われ得る。
【0394】
いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも2回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、2回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、2回超の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも3回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、3回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、3回超の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも4回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、4回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、4回超の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも5回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、5回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、5回超の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも6回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、6回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、6回超の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも7回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、7回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、7回超の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも8回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、8回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、8回超の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも9回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、9回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、9回超の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも10回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、10回の注入を含む。いくつかの実施形態では、複数回注入は、10回超の注入を含む。
【0395】
いくつかの実施形態では、複数回注入は、より少ない量の早期アポトーシス細胞を含み、ここで、投与される細胞の総投与量は、すべての注入の合計である。
【0396】
いくつかの実施形態では、複数回注入は、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、数日間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも12時間の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも24時間の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも1日の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも2日の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも3日の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも4日の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも5日の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも6日の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも7日の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも1週間の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、複数回注入は、少なくとも2週間の間隔を置いて、数時間にわたって行われる。
【0397】
いくつかの実施形態では、複数回注入における細胞量は、互いに実質的に均一である。いくつかの実施形態では、複数回注入における細胞量は、互いに異なる。
【0398】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、COVID-19及びその症状を治療するための別の薬剤を対象に投与するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、別の治療薬を対象に対して実施するステップをさらに含む。
【0399】
いくつかの実施形態では、別の薬剤または治療薬は、早期アポトーシス細胞の投与と同時にまたは実質的に同時に投与される。いくつかの実施形態では、別の薬剤または治療薬は、早期アポトーシス細胞を含有する組成物中に含まれる。いくつかの実施形態では、別の薬剤または治療薬は、早期アポトーシス細胞を含有する組成物とは別の組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、別の薬剤は、早期アポトーシス細胞または上清を含む組成物と同一の組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、別の薬剤は、早期アポトーシス細胞または上清を含む組成物と異なると同一の組成物に含まれる。
【0400】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、第一選択療法を含む。
【0401】
当業者であれば、「第一選択療法」という用語が、疾患に対して最初に行われる治療を包含し得ることを理解するであろう。単独で使用する場合、第一選択療法は、最良の治療法として認められている。病気を治せなかったり、重い副作用が生じたりする場合は、他の治療法が追加されるか、または代わりに使用され得る。第一選択療法は、寛解導入療法、一次療法、一次療法とも呼ばれている。
【0402】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、アジュバント療法(術後補助療法)を含む。
【0403】
当業者であれば、「アジュバント療法」という用語が、一次療法または初期療法に加えて行われる療法を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、アジュバント療法は、さらなる治療に備えて一次療法の前に行われる療法を含み得る。いくつかの実施形態では、アジュバント療法は、中等症、重症、または重篤なCOVID-19症状のリスクを低下させるために、一次療法の後に行われる別の療法を含み得る。いくつかの実施形態では、アジュバント療法は、重症または重篤なCOVID-19症状のリスクを低下させるために、一次療法の後に行われる別の療法を含み得る。
【0404】
いくつかの実施形態では、COVID-19を発症している対象への早期アポトーシス細胞またはその上清の投与は、静脈内投与を含む。いくつかの実施形態では、COVID-19を発症している対象へのアポトーシス細胞の投与は、初期標準治療後の静脈内投与を含む。
【0405】
いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから12~24時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから12~36時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから24~36時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから12~18時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから18~24時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから18~30時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから24~30時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから24~36時間後の投与を含む。
【0406】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから約12時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから約13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35または数時間後の投与を含む。いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患した対象への早期アポトーシス細胞の投与は、COVID-19と診断されてから24時間±6時間以内の投与を含む。
【0407】
いくつかの実施形態では、COVID-19に罹患しており、早期アポトーシス細胞またはその上清を含有する組成物を投与された対象の応答は、用量反応を含む。
【0408】
いくつかの実施形態では、約140×10~210×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約10~100×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約20×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約30×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約40×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約50×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、60×10個のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約60×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約70×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約80×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約90×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1~15×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約15×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。
【0409】
いくつかの実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1010個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1011個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1012個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。
【0410】
いくつかの実施形態では、高用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、35×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、210×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、70×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、140×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、35~210×10個の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。
【0411】
いくつかの実施形態では、単回用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、複数回用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、2用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、3用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、4用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、5用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、6用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、7用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、8用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、9用量の早期アポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、9用量を超える早期アポトーシス細胞が投与される。
【0412】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞は、当該技術分野で既知の任意の方法、これに限定しないが、例えば、静脈内投与、皮下投与、リンパ節内投与、髄腔内投与、胸膜内投与、腹腔内投与、または胸腺への直接投与など、によって投与される。
【0413】
別の実施形態では、10×10個の用量の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1010個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1011個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1012個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞が投与される。
【0414】
いくつかの実施形態では、35×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、210×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、70×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、140×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、35~210×10個の早期アポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量の早期アポトーシス細胞上清が投与される。
【0415】
いくつかの実施形態では、早期アポトーシス細胞上清、または早期アポトーシス細胞上清を含有する組成物は、本明細書に詳細に記載されているように、当該技術分野で知られている任意の方法によって、これに限定しないが、静脈内、皮下、結節内、腫瘍内、髄腔内、胸膜内、腹腔内、及び直接胸腺に投与され得る。
【0416】
別の実施形態では、早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス細胞上清は、サイトカイン放出症候群が発生したときに、治療のために投与され得る。一実施形態では、アポトーシス細胞または上清は、サイトカイン放出症候群が開始されたとき、またはその開始を証明するサイトカイン放出が検出されたときに、投与され得る。一実施形態では、アポトーシス細胞または上清は、サイトカインレベルの増加、またはサイトカイン放出症候群を終結させ、その続発症を回避することができる。
【0417】
別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、複数の時点で治療のために投与され得る。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、本明細書に記載されている少なくとも2つの時点において行われる。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、本明細書に記載されている少なくとも3つの時点において行われる。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、CRSまたはサイトカインストームの発生前、サイトカイン放出症候群の発生後、またはそれらの組み合わせにおいて行われる。
【0418】
一実施形態では、早期アポトーシス細胞は、対象に対して異種である。一実施形態では、早期アポトーシス細胞は、1人以上のドナーに由来する。一実施形態では、早期アポトーシス細胞は、1人以上の骨髄ドナーに由来する。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、1以上の血液バンク輸血に由来する。一実施形態では、ドナーは、適合ドナーである。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、不適合第三者ドナーに由来する。一実施形態では、早期アポトーシス細胞は、ユニバーサル同種異系のアポトーシス細胞である。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、同系のドナーに由来する。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナー細胞に由来する。一実施形態では、ドナーは、骨髄ドナーである。別の実施形態では、ドナーは、血液バンクのドナーである。別の実施形態では、早期アポトーシス細胞は、対象に対して自己由来である。この実施形態では、患者自身の細胞が使用される。
【0419】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療用単核濃縮細胞調製物、または早期アポトーシス細胞上清は、対象に全身投与される。別の実施形態では、投与は、静脈内経路を介して行われる。あるいは、治療用単核濃縮細胞または上清は、様々な他の経路、これに限定しないが、非経口、腹腔内、関節内、筋肉内、または皮下経路を介して対象に投与され得る。
【0420】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療用単核濃縮細胞調製物または別の薬剤は、対象に全身投与される。別の実施形態では、投与は、静脈内経路を介して行われる。あるいは、治療用単核濃縮細胞または別の薬剤は、様々な他の経路、これに限定しないが、非経口、腹腔内、関節内、筋肉内、または皮下経路を介して対象に投与され得る。
【0421】
一実施形態では、細胞調製物は、例えば、患者の身体の特定の領域に直接注射することによって、全身的ではなく局所的に投与される。
【0422】
別の実施形態では、治療用単核濃縮細胞または上清は、好適な生理学的緩衝液、これに限定しないが、生理食塩水、PBS、HBSSなど懸濁させて対象に投与される。加えて、懸濁培地は、細胞の生存能力を維持するための補助剤をさらに含み得る。別の実施形態では、別の薬剤は、好適な生理学的緩衝液、これに限定しないが、生理食塩水、PBS、HBSSなどに懸濁させて対象に投与される。
【0423】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、単回用量で投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、複数回用量で投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、2回用量で投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、3回用量で投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、4回用量で投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、5回以上の用量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内注射用に製剤化される。
【0424】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は1回投与される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は2回投与される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は3回投与される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は4回投与される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は少なくとも4回投与される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は4回を超えて投与される。
【0425】
当業者であれば、「有効量」(または「治療有効量」)が、治療、これに限定しないが、例えばCOVID-19の症状の治療において有益なまたは所望の臨床結果を得るのに十分な量を包含し得ることを認識するであろう。有効量は、1以上の用量で対象に投与することができる。治療に関しては、有効量は、疾患を緩和、改善、安定化、逆行、または進行を遅延させるか、または、疾患の病理学的帰結または症状(これに限定しないが、例えば、呼吸困難など)を軽減させるのに十分な量である。有効量は一般的に、医師によってケースバイケースで決定され、当業者の技術の範囲内である。有効量を達成するための適切な用量を決定するときは、通常、いくつかの要因が考慮される。そのような要因としては、対象の年齢、性別及び体重、治療する症状、その症状の重症度、並びに、投与される抗原結合断片の形態及び有効濃度が挙げられる。
【0426】
当業者であれば、本明細書に開示される方法で投与される組成物中の細胞、並びに、任意選択の添加剤、媒体、及び/または担体の量を容易に決定することができる。一般的には、添加物(活性細胞、及び/または薬剤に加えて組成物中に含まれる)は、リン酸緩衝生理食塩水中に0.001~50重量%溶液の量で存在し、活性成分は、約0.0001~5重量%などの、マイクログラムからミリグラムのオーダーで存在する。いくつかの実施形態では、約0.0001~1重量%である。さらに別の実施形態では、約0.0001~0.05重量%、または約0.001~20重量%である。さらなる実施形態では、約0.01~10重量%である。いくつかの実施形態では、約0.05~5重量%である。当然のことながら、動物またはヒトに投与される任意の組成物、及び特定の投与方法については、例えば、適切な動物モデル、例えばマウスなどのげっ歯動物における致死量(LD)及びLD50などの毒性と、適切な応答を誘発するための組成物の投与量、組成物中の成分の濃度、及び組成物を投与するタイミングとを決定することが好ましい。このような決定は、当業者の知識、本開示、及び本明細書に引用された文献からの過度の実験を必要としない。また、順次投与のための時間は、過度の実験を行うことなく把握することができる。
【0427】
当業者であれば、「含む(comprising)」という用語が、当該技術分野で知られている組成物の抗力に影響を与える組成物の他の成分の含有を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス細胞上清を含有する組成物を含む。したがって、組成物の有用性に直接関与しない他の成分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、「~からなる(consisting)」という用語は、本明細書に記載された任意の態様または実施形態において、本明細書に開示されたような早期アポトーシス細胞または早期アポトーシス細胞上清を含有する組成物を包含する。
【0428】
当業者であれば、「約(about)」という用語が、示された数値または数値範囲からの0.0001~5%の逸脱を包含し得ることを理解するであろう。さらに、「約」という用語は、示された数値または数値範囲からの1~10%の逸脱を包含し得る。さらに、「約」という用語は、示された数値または数値範囲からの最大25%の逸脱を包含し得る。
【0429】
当業者であれば、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、その指示対象の複数形も含むことを理解するであろう。例えば、「1つの薬剤」または「少なくとも1つの薬剤」という用語は、複数の薬剤、またはそれらの組み合わせ含み得る。
【0430】
いくつかの実施形態では、「治療すること」は、治療的処置を含み、「予防すること」は、予防的または防止的手段を含み、その目的は、上述したような標的とする病理学的状態または障害を予防または軽減することである。したがって、いくつかの実施形態では、治療することは、COVID-19に関連する症状に直接影響を与えること、症状を治癒すること、症状を抑制すること、症状を阻害すること、症状を予防すること、症状の重症度を低減すること、症状の発症を遅延させること、症状を軽減すること、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、「治療すること」、「改善すること」、及び「緩和すること」は、とりわけ、進行を遅延させること、回復を加速させること、代替治療薬の有効性を増加させること、代替治療薬に対する耐性を低下させること、またはそれらの任意の組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、「予防すること」は、とりわけ、症状の発症を遅延させること、疾患の再発を予防すること、再発エピソードの数もしくは頻度を低減すること、症候性エピソード間の潜伏期を増加させること、またはそれらの任意の組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、「抑制すること」または「阻害すること」は、とりわけ、症状の重症度を低下させること、急性エピソードの重症度を低下させること、症状の数を低下させること、疾患関連症状の発生率を低下させること、症状の潜伏期を減少させること、症状を改善すること、二次症状を低減すること、二次感染を低減すること、患者の生存期間を延長させること、またはそれらの任意の組み合わせを指す。
【0431】
当業者であれば、「治療(treatment)」という用語が、治療される個体または細胞の疾患経過を変化させるための臨床的介入を包含し、予防のために、または臨床病理の経過中に実施され得ることを理解するであろう。治療の効果としては、これに限定しないが、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的帰結の低減、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、及び、寛解または改善された予後が挙げられる。疾患または障害の進行を予防することにより、治療は、罹患したまたは診断された対象、またはその障害を有すると疑われる対象における障害に起因する悪化を防止することができ、またさらには、障害のリスクのある対象、または障害を有すると疑われる対象における障害の発症または症状を予防することができる。いくつかの実施形態では、改善された予後は、入院期間の短縮を含む。
【0432】
当業者であれば、「対象(subject)」という用語が、脊椎動物、いくつかの実施形態では哺乳動物、いくつかの実施形態ではヒトを包含し得ることを理解するであろう。
【0433】
当業者であれば、「有効量」という用語が、治療効果を得るのに十分な量を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、「有効量」は、腫瘍の継続的な増殖、成長、または転移(例えば、浸潤、または遊走)を阻止、改善、または阻害するのに十分な量である。
【0434】
本出願の全体を通じて、本発明の様々な実施形態を範囲形式で示すことがある。範囲形式での記載は単に便利さ及び簡潔さのためのであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲形式での記載は、その範囲内に含まれる個々の数値だけでなく、その範囲内に含まれるすべての可能な部分的な範囲を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1から6までという範囲の記載は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6まで、・・・、という部分的な範囲、並びに、その範囲内に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5、及び6)を具体的に開示したものと見なされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0435】
本明細書において数値範囲を指定している場合は常に、指定された数値範囲内に含まれるすべての数値(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指定数と第2の指定数と「の間の範囲」という表現、及び第1の指定数「から」第2の指定数「までの範囲」という表現は、本明細書では相互交換的に使用されており、第1の指定数及び第2の指定数、並びにこれらの間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0436】
以下の実施例は、本明細書に開示される実施形態をより完全に説明するために提示される。しかしながら、これらは、決して本開示の広範な範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0437】
実施例
【0438】
実施例1:アポトーシス細胞の作製
【0439】
目的:早期アポトーシス細胞を作製する。
【0440】
方法:早期アポトーシス細胞集団を作製する方法は、特許文献9及び特許文献12に詳細に記載されており、例えば、実施例に先行する方法セクションの「早期アポトーシス細胞集団の作製」及び「アポトーシス細胞の作製」(段落[0223]~[0288])、並びに、実施例11、12、13及び14を参照されたい(これらの記載内容の全体は本明細書に援用される)。
【0441】
図1に示すフローチャートは、早期アポトーシス細胞集団の作製プロセスにおいて実施されるステップの一実施形態の概要を提供する。本実施形態では、解凍ステップ及びアポトーシス誘導ステップにおいて抗凝固剤が添加される。特許文献9及び特許文献12の実施例14に詳細に記載されているように、凍結時、培養時、または、凍結時及び培養時の両方において抗凝固剤を添加し、早期アポトーシス細胞集団を作製した。使用した抗凝固剤は酸クエン酸デキストロースであり、NIH-A(ACD-A)にヘパリン10U/mlを添加して、総量の最終濃度が、ACD5%、ヘパリン0.5U/mlとなるようにした。
【0442】
簡潔な説明:細胞を収集し、次いで、5%の抗凝固剤クエン酸デキストロース-A及び10U/mlヘパリン(ACDhep)を凍結培地に添加し、凍結(冷凍保存)した。そして、解凍し、5%のACDhepを含有するアポトーシス誘導培地中で培養し、最終産物の作製は閉鎖系内で行った。
【0443】
アポトーシス及び生存率の分析、効力アッセイ、及び細胞集団の特徴付けを各実験において行った。早期アポトーシス細胞産物の作製における一貫性を確立するために、アポトーシス細胞の初期バッチの最終産物(FP)を2~80℃で保存し、t0、t24h、t48h及びt72hの時点で調べた。各時点のアポトーシス分析において、ショート効力アッセイ(出願人のCD14+凍結細胞)、トリパンブルー測定、及び細胞集団の特徴付けを行った。FPの細胞数を調べて、保存中、アポトーシス分析中、及び生存率分析中における平均細胞喪失(平均細胞損失)を評価した。
【0444】
前述の特許文献9及び特許文献12の方法セクション及び実施例11に、抗凝固剤の非存在下でのアポトーシス細胞集団の他の実施形態の作製方法の詳細が記載されている(これらの記載内容の全体は本明細書に援用される)。
【0445】
放射線照射されたアポトーシス細胞を作製する方法:同様の方法を用いて、不活性化されたアポトーシス細胞集団を作製した。作製された早期アポトーシス単核細胞集団は、非静止非アポトーシス細胞の割合の減少、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化の抑制、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖の低下、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0446】
簡潔に説明すると、白血球アフェレーシス処置を用いて、健康な適格ドナーから濃縮単核細胞分画を収集した。白血球アフェレーシス処置の完了後、細胞を洗浄し、5%の抗凝固剤クエン酸デキストロース溶液-A(ACD-A)、及び0.5U/mlのヘパリンを含有する凍結培地中で再懸濁した。その後、細胞を徐々に凍結し、液体窒素中で長期間期保存した。
【0447】
PBMC由来の放射線照射された早期アポトーシス単核濃縮細胞(アポ細胞)の作製のために、凍結保存した細胞を解凍し、洗浄し、そして、5%のACD-A、0.5U/mlのヘパリンナトリウム、及び50μg/mlのメチルプレドニゾロンを含有するアポトーシス誘導培地中で再懸濁した。その後、細胞を、5%のCO中で37°Cにて6時間培養した。培養の終了後、細胞を収集し、洗浄し、そして、細胞処理システム(ドイツ国、Fresenius Kabi)を使用してハルトマン溶液中で再懸濁した。作製の完了後、放射線治療ユニット(Hadassah Ein Kerem)のg-カメラを使用して、4000cGyでアポ細胞に放射線照射した。アネキシンV(Annexin-V)及びPI(米国マサチューセッツ州、MBL)染色(それぞれ、40%以上及び15%以下)を使用して、アポ細胞のアポトーシス及び生存率をフローサイトメトリによって測定した。その結果を、FCS Expressソフトウェアを使用して解析した。このようにして、早期アポトーシス細胞の作製後(アポトーシス誘導後)に、早期アポトーシス細胞を放射線照射した。
【0448】
この放射線照射されたアポ細胞集団は、早期アポトーシス細胞を含み、存在する生存細胞の細胞活性が抑制され、増殖能力が低下または抑止されたと考えられる。特定の場合では、アポ細胞集団は、生存する非アポトーシス細胞を有していない。
【0449】
結果:
【0450】
凍結時及び培養時(アポトーシス誘導時)に抗凝固剤を添加して作製し、その後に2~8°Cで保存した最終産物(FP)の安定性を下記の表3に示す。
【0451】
【表3】
【0452】
誘導培地に抗凝固剤を添加せずに細胞を作製した場合、その細胞は、24時間にわたって安定的であり、その後、不安定になった。表3に示すように、予期せぬことに、抗凝固剤の使用により、アポトーシス細胞集団の安定性が少なくとも72時間に延長された。
【0453】
【表4】
【0454】
表4の結果は、最終産物(FP)の生存率が、少なくとも72時間にわたって高レベルに維持されたことを示す。
【0455】
【表5】
【0456】
表5のデータから、作製された細胞集団中の細胞の大部分が早期アポトーシス状態にあることが確認された。細胞集団中の早期アポトーシス状態にある細胞の割合(An+PI-)は50%超であり、場合によっては60%超であった。作製された細胞集団は、後期アポトーシス細胞または死滅細胞を最小の割合で含む(6%以下)。下記の表7も参照されたい。
【0457】
表5の結果は、アポトーシス細胞対壊死細胞の割合が、早期アポトーシス細胞の割合と同様に、細胞の作製後、少なくとも72時間の長期間にわたって維持されたことを示す。
【0458】
凍結時とアポトーシス誘導時との両方において抗凝固剤を添加した場合に、安定的な早期アポトーシス細胞が、最も一貫して高い収率で得られた(早期アポトーシス細胞の平均収率61.3±2.6%対48.4±5.0%。100%の収率は凍結時の細胞数に基づく)。この高収率は、2~8°Cで72時間保存した後も維持された。
【0459】
次に、凍結時、解凍時、またはその両方における抗凝固剤の含有量を比較し、収集率(%)及び安定性を測定した。抗凝固剤は、すべての細胞集団において、アポトーシスの培養混合物に含まれていた。下記の表6は、これらの試験結果を示す。
【0460】
【表6】
【0461】
抗凝固剤を添加して作製した早期アポトーシス細胞集団(細胞バッチ)と、抗凝固剤を添加しないで作製した早期アポトーシス細胞集団(細胞バッチ)とのさらなる集団分析比較は、これらの結果の一貫性を示す。
【0462】
【表7】
【0463】
抗凝固剤の存在下または非存在下における最終産物細胞の割合(収率):表3に示した上記の結果と同様に、表6に示したデータは、抗凝固剤の存在下で凍結された細胞から作製された早期アポトーシス細胞が、抗凝固剤の非存在下で凍結された細胞と比較して、新鮮な最終産物(FP)の平均収率において有益な効果を有することを示す。有益な効果は、抗凝固剤を凍結時にのみ使用した場合(61.3±2.6%対48.4±5.0%)と、抗凝固剤を凍結時及び解凍時の両方において使用した場合(56.5±5.2%対48.4±5.0%)とで見られた。抗凝固剤を解凍時にのみ使用した場合には、有益な効果はそれほど顕著ではなかった(44.0±8.5%対48.4±5.0%)。これらは、非高トリグリセリド試料であった。
【0464】
凝集に対する抗凝固剤の効果:これらの3例の非高トリグリセリド試料、または21例の追加試料では、細胞凝集は見られなかった(データは示さず)。しかしながら、抗凝固剤の非存在下で作製した別の41例の非高トリグリセリド試料では、軽度の凝集が10例(24.4%)で見られ、重度の凝集が5例(12.2%)で見られた(データは示さず)。したがって、抗凝固剤は、完全な細胞凝集を阻止した。
【0465】
安定性に対する抗凝固剤の効果:抗凝固剤の存在下または非存在下で作製した新鮮な最終産物(FP)を、2~8°Cで24時間保存し、作製手順へのACDhepの添加がFPの安定性を損なうか否かを調べた。24時間保存後、細胞をサンプリングし、収率を細胞数で計算した。表3に示した長期間(最大72時間)についての結果と同様に、表6は、抗凝固剤を凍結時にのみ使用した場合(59.8±2.1%対47.5±4.7%)と、抗凝固剤を凍結時及び解凍時の両方において使用した場合(56.4±5.3%対47.5±4.7%)とで、有益な効果が維持及び観察されたことを示す。抗凝固剤を解凍時にのみ添加した場合には、有益な効果はそれほど顕著ではなかった(42.4±6.1%対47.5±4.7%)。これらはすべて、非高トリグリセリド試料であった。これらの結果は、凍結中及び解凍中の両方において抗凝固剤で処理した細胞は、24時間のFP保存後の細胞喪失(細胞損失)が、すべての処理中で最小であるという有意な利点を有することを示す。凍結時のみに抗凝固剤で処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合が1.9±3.3%であるのに対して、2.3±3.2%であった。解凍時のみに抗凝固剤で処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合が1.9±3.3%であるのに対して、3.0±4.7であった。また、凍結時及び解凍時の両方においてACDhepで処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合が1.9±3.3%であるのに対して、0.2±0.4%であった。要約すると、収率における抗凝固剤の有益な効果は、少なくとも24時間維持された。
【0466】
最終産物(FP)の代表的な細胞集団の特徴を、下記の表8に示す。
【0467】
【表8】
【0468】
表8の結果は、凍結時または解凍時に抗凝固剤を添加して、または添加せずに作製した最終産物(FP)の細胞特性を示す。バッチを採取し、単核マーカを染色し、フローサイトメトリによって分析して各試料の細胞分布を測定し、抗凝固剤の添加が細胞集団に影響を及ぼすか否かを調べた。表8に示すように、凍結時または解凍時に抗凝固剤を添加して、または添加せずに作製した細胞集団において、有意差は検出されなかった。新鮮なFPにおける平均T細胞集団(CD3+細胞)は、凍結前が62.9±1.1%であるのに対して、処理間で62.3±1.2%であった。平均B細胞集団(CD19+細胞)は、凍結前が3.1±0.8%であるのに対して、処理間で8.3±2.5%であった。平均ナチュラルキラー細胞集団(CD56+細胞)は、凍結前が12.9±0.5%であるのに対して、処理間で9.5±0.7%であった。平均単球細胞集団(CD14+細胞)は、凍結前が17.5±0.3%であるのに対して、処理間で13.8±0.5%であった。平均顆粒球集団(CD15+細胞)は、凍結時では0.35±0.2%であるのに対して、新鮮FPでは0.0%であった。
【0469】
また、早期アポトーシス集団の効力も調べた。
【0470】
【表9】
【0471】
表9に示す結果は、各最終産物における、LPSで刺激した後の未成熟樹状細胞(iDC)における寛容原性状態を強化する能力を測定するために実施された効力アッセイによって得られたものである。寛容原性効果は、早期アポトーシス細胞集団との相互作用及びLPS上方制御をもたらす様々な処理後に、iDCにおける共刺激分子HLA-DR及びCD86発現の下方制御を評価することによって測定した。DCsign+細胞の分析を行った。結果は、早期アポトーシス細胞集団との相互作用後、及びLPSの添加後の、LPS誘導成熟の遅延の割合を表す。実験では、抗凝固剤の存在下または存在下で作製した新鮮なFP(t0)の効力を試験した。表9に示した結果は、抗凝固剤の存在下または非存在下で作製されたアポトーシス細胞が、両方の共刺激マーカの耐性効果を用量依存的に高めることを示す。
【0472】
作製された早期アポトーシス細胞は、非高トリグリセリド試料由来であった。この安定的な早期アポトーシス細胞の一貫した高収率は、ドナー血漿のトリグリセリド濃度が高い場合でも得られた(例えば、特許文献9及び特許文献12の実施例12及び13を参照されたい)。なお、抗凝固剤は、投与される最終早期アポトーシス細胞の作製に使用されたPBS培地には添加しなかったことに留意されたい。
【0473】
要約:
【0474】
本試験の目的は、安定的で高収率の早期アポトーシス細胞集団を作製することであった。抗凝固剤の使用の合理的な理由は、凝集体が、まず高トリグリセリドの患者で見られ、その後、他の患者のかなりの部分で見られることであった。ここでの懸念事項は、特許文献13における、抗凝固剤の使用が細胞アポトーシスを防止するという開示であった。
【0475】
手短に説明すると、抗凝固剤を添加した場合には、最終産物中の収集された細胞数(収率)において少なくとも10~20%の有意な向上が見られ、かつ、細胞の組成、生存率、安定性、及びアポトーシス性に対する影響は最小限であった。本試験では、収率において最大で13%の増加が示され、制御された条件下では収率の26.8%の増加を示し、実際のGMP条件下では最大で33%の増加を示し、細胞数のより多くの増加が単一の収集において得られた。この効果は、ドナーからの2回目のアフェレーシスの必要性を回避することができるので、極めて重要である。
【0476】
予想される影響は軽度の凝集体の溶解であったので、この効果は驚くべきものであった。抗凝固剤を添加して作製し凍結した細胞を解凍すると、凝集体の量が減少するという仮説が立てられていた。凝集体が形成されると、最終的に大量の細胞喪失がもたらされる。抗凝固剤を添加せずに作製し凍結した細胞は、解凍し、洗浄した直後に凝集体の形成を示した。さらに、抗凝固剤を添加せずに作製し凍結し、抗凝固剤を含有する培地中で再懸濁した細胞においても、高レベルの凝集体が検出された。抗凝固剤を添加して作製し凍結し、抗凝固剤を含有する培地中で再懸濁した細胞には、凝集体は見られなかった。まとめると、凍結時及びアポトーシス誘導時の抗凝固剤の添加は非常に重要であり、かつ、細胞集団に対する早期アポトーシスの誘導に悪影響を与えないように思われるという結論に達した。
【0477】
早期アポトーシス細胞の回復率を、安定性を目的として、例えば2~8°Cで24時間保存した後にさらに試験した。その間の平均細胞喪失は、作製条件にかかわらず3~4.7%であり、抗凝固剤を含有する培地で凍結及び解凍した細胞については良好な結果が得られた(24時間のFP保存後において、0.2±0.4%の細胞喪失)。このことは、凍結時及び解凍時の抗凝固剤の添加が重要であり、最終的な作製後は、早期アポトーシス細胞集団が安定的であることを示唆する。延長時点の実験は、この安定性が少なくとも72時間の時点まで持続することを示した。
【0478】
FP(最終産物)のアポトーシス及び生存性並びに細胞組成は、凍結段階及び/または解凍段階での抗凝固剤の添加による有意な影響を受けなかった。幅広い特性から測定した値は類似しており、このことは、ACDhepは早期アポトーシス細胞の特性を変化させず、最終産物が、アポトーシス細胞40%以上という合格基準を満たしていることを示す。
【0479】
アポトーシス細胞の効力を試験するために用いたアッセイは、食作用、抗原提示、及びサイトカイン産生などの機能によって特徴付けられる樹状細胞(DC)である、未成熟樹状細胞(iDC)に基づいている。
【0480】
HLA-DR(MHCクラスII)膜分子及び共刺激分子CD86が、抗原提示細胞(APC)の寛容原性効果を検出するマーカとして選択された。フローサイトメトリ法を用いて、iDC上のHLA-DR及びCD86の発現の変化を、LPSでの刺激後に測定し、また、抗凝固剤の存在下または非存在下で作製し、LPSで刺激した早期アポトーシス細胞集団の存在下で測定した。早期アポトーシス細胞集団は、iDC:早期アポトーシス細胞集団の比率が、1:2、1:4、及び1:8でDCに提供された。表6に示すように、早期アポトーシス細胞集団は、刺激されたDCにおいて、寛容原性効果を用量依存的に高め、凍結時及びアポトーシス誘導時の両方において抗凝固剤の存在下で作製した早期アポトーシス細胞集団では、わずかに良好な結果を示した。
【0481】
まとめると、凍結時及びアポトーシス培地への抗凝固剤の添加は、細胞の回収率を高め、凝集体に起因する大量の細胞喪失を回避し、かつ、多くの場合はドナーからの2回目のアフェレーシスを回避するために重要であるという結論に達した。すべての細胞が、有効なFPの合格基準を満たしておりれ、抗凝固剤を添加してもFPが損なわれないことが示された。
【0482】
実施例2:複数の個々のドナーからのアポトーシス細胞の安定性基準
【0483】
本試験の目的は、複数の個々のドナーからのアポトーシス細胞の安定性基準を、非照射HLA適合アポトーシス細胞とのコンパラビリティ試験によって開発することである(「Mevorach et al. (2014) Biology of Blood and Marrow Transplantation 20(1): 58-65; Mevorach et al. (2015) Biology of Blood and Marrow Transplantation 21(2): S339-S340」)。
【0484】
アポトーシス細胞の最終産物調製物を、2~8℃で8、24、48、及び60時間保存した後、各時点でサンプリングし、細胞数、生存率、アポトーシス表現型、及び効力について評価した。アポトーシス細胞の最終産物ロットは、標準作業手順書(SOP)(実施例1)及びバッチ記録(BR、すなわち特定の作製手順)にしたがって作製した。効力評価のために、早期アポトーシス細胞調製物の最終産物ロットの試料を、未成熟樹状細胞(0~24時間の時点)または単球(0~6時間の時点)でのリポ多糖(LPS)誘導性のMHC-II発現の上方制御の阻害について試験し、SOPにしたがって行い、BRに記録した。これらの一連の試験は、それぞれ複数の個別のドナー及び単一のドナーに由来する調製物中のプールされた産物及びプールされていない産物に対して行われる。
【0485】
加えて、CD3(T細胞)、CD19(B細胞)、CD14(単球)、CD15(顆粒細胞)及びCD56(NK細胞)のフローサイトメトリ分析の結果を記録する。本試験の目的は、狭い範囲の結果との一貫性を実証することである。予備試験の結果はこれらの目標と一致しており、SOPからの逸脱は認められず、技術的な問題も報告されていない。しかしながら、効果的な治療の範囲及び安定性を結論付けるためには、さらなる試験が必要である。予備試験の結果は、これらすべてのパラメータが同等であることを示した。さらに、単一ドナーの安定性試験は、少なくとも48時間にわたって安定性を示した(実施例1を参照)。
【0486】
実施例3:最終アポトーシス細胞産物に対する放射線照射の影響
【0487】
アポトーシス細胞は、その固有の免疫調節及び抗炎症特性のために、新しい治療戦略においてますます使用されている。早期アポトーシス細胞調製物は、20~40%もの生存細胞を含み得る(PS曝露の欠如及びPI染色なしによって測定される;Annexin V陰性及びヨウ化プロピジウム陰性)。生存細胞の一部は、輸血での使用後にアポトーシス状態になり得るが、一部は生存し続けるであろう。適合ドナーからの骨髄移植の場合、レシピエントは実際の移植において、より多くの生存細胞をすでに受け取っているため、生存細胞は臨床上の問題にはならない。しかしながら、第三者輸血の場合(またはプールされたアポトーシス単核細胞調製物に表される場合は第四者以上)、生存細胞を含むアポトーシス細胞集団の使用は、第2のGvHD誘導物質を導入し得る。さらに、早期アポトーシス細胞の免疫調節能に対する放射線照射の影響は、これまで評価されていない。当業者であれば、早期アポトーシス細胞集団への追加の放射線照射が、細胞をアポトーシスまたは壊死の後期段階に進行させ得ると考えるであろう。これは臨床応用に関して特に関連する問題であると思われるので、以下に示す実験はこの問題に対処するために設計され、少なくとも1つの目標は機能的なアポトーシス細胞の生物学的安全性を改善することである。
【0488】
したがって、その目的は、アポトーシス細胞の効力が、移植細胞の移植ではなくバイスタンダー効果に依存し得る多くの適応症に対するアポトーシス細胞の臨床利用を促進することである。
【0489】
目的:アポトーシスの誘導後の早期アポトーシス細胞に対する放射線照射の効果を調べる。
【0490】
方法(概略):3つの別々の早期アポトーシス細胞バッチを異なる日に作製した(コレクション404-1、0044-1、及び0043-1)。
【0491】
各最終産物を、3つの群に分けた:
【0492】
未治療。
【0493】
2500rad。
【0494】
4000rad。
【0495】
照射後、早期アポトーシス細胞を直ちに(t)、細胞数、Annexin V陽性-PI陰性染色、細胞表面マーカ(異なる細胞型の集団%)、及び効力(樹状細胞(DC))について試験した。tでの試験後、早期アポトーシス細胞を2~8℃で24時間保存し、同じ試験パネル(T24h)を使用して次の日に試験した(細胞数、Annexin V陽性-PI陰性染色、細胞表面マーカ、及び効力)。
【0496】
従来は、耐性を誘導するドナーの早期アポトーシス単核細胞(早期アポトーシス細胞)の能力を評価する、放出後効力アッセイが開発されている(「Mevorach et al, BBMT 2014」)。このアッセイは、LPSへの曝露後のiDC膜でのMHCクラスII分子(HLA-DR)及び共刺激分子(CD86)発現のフローサイトメトリ評価に基づいている。繰り返して上述したように、寛容原性DCは、アポトーシス細胞との相互作用によって生成され(「Verbovetsky et al., J Exp Med 2002, Krispin et al., Blood 2006」)、LPS処理DCの成熟阻害(DR及びCD86の発現阻害)は、用量依存的に生じる。
【0497】
早期アポトーシス細胞臨床試験のフェーズ1/2a中に、各バッチが耐性を誘導する能力を評価するために、早期アポトーシス細胞バッチごとに放出後効力アッセイを実施した(全体結果n=13)(結果を図1に示す、「Mevorach et al. (2014) Biology of Blood and Marrow Transplantation 20(1): 58-65」)。
【0498】
DCは、未知の無関係な健康なドナーから収集した新鮮なバフィーコートから早期アポトーシス細胞バッチごとに生成し、様々な比率(1:2、1:4、及び、1:8;DC:早期アポトーシス細胞)で早期アポトーシス細胞と組み合わせた。早期アポトーシス細胞との培養、及びLPSへの曝露後、DC:早期アポトーシス細胞の1以上の比率で、HLA DRまたはCD86のいずれかのDC膜発現の下方制御に基づいて効力を測定した。13のアッセイすべてにおいて、早期アポトーシス細胞は寛容原性効果を示し、この寛容原性効果は、ほとんどのDC:早期アポトーシス細胞の調製物、及び両方のマーカで、用量依存的に見られた。
【0499】
健康なドナーの末梢血PBMCから生成された単球由来の未成熟DC(iDC)を、1%自家血漿、G-CSF、及びIL-4の存在下で培養した。次いで、iDCを、新たに調製された最終産物または2~8℃で24時間保存された最終産物のいずれかのアポトーシス細胞と共に、1:2、1:4、及び1:8の比率で2時間プレインキュベートした。保存がアポトーシス細胞の効力に影響を与えるか否かを決定するために、上記の2つの最終産物を同時に調べた。培養後、LPSを指定ウェルに添加し、さらに24時間放置した。培養後、iDCを収集し、洗浄し、発現の変化を測定するために、DC-signとHLA-DRまたはCD86との両方で染色した。フローサイトメータを使用して細胞を分析し、DC-sign陽性細胞ゲートからFCS-expressソフトウェアを用いて分析を実行し、DCのみの分析を確実にした。
【0500】
図2A及び図2Bならびに図3A及び図3Bは、非照射単一ドナー細胞と比較した、プールされた照射アポトーシス細胞の効力試験を示す。
【0501】
結果:
【0502】
単一ドナーの調製
【0503】
表10は、非照射アポトーシス細胞及び照射アポトーシス細胞の比較結果を示す;24時間での平均セル損失(%);0時間及び24時間でのAnnexin陽性()ヨウ化プロピジウム(PI)陰性()%(早期アポトーシス細胞の%);0時間及び24時間でのAnnexin陽性()ヨウ化プロピジウム(PI)陽性()%(後期アポトーシス細胞の%);0時間及び24時間での細胞表面抗原CD3(T細胞)、CD19(B細胞)、CD56(NK細胞)、CD14(単球)、及びCD15(顆粒球)の存在。
【0504】
【表10】
【0505】
表10の結果は、非照射アポトーシス細胞と照射アポトーシス細胞との両方が、早期(行2及び3)及び後期(行4及び5)のアポトーシス細胞の同程度の割合を有することを示す。したがって、25Gyまたは40Gyの照射は、この高レベルのガンマ線照射の前に誘導されたアポトーシスまたは壊死プロセスを加速させなかった。さらに、細胞型に関して、照射細胞集団と対照の非照射集団との間に一貫性があった。
【0506】
図2A及び図2B(HLA-DR発現)及び図3A及び図3B(CD86発現)に示された効力アッセイの結果は、非照射アポトーシス細胞と比較した場合、新鮮な(図2A図3A)または24時間保存された(図2B及び図3B)照射アポトーシス細胞の免疫調節能力に変化がなかったことを示す。
【0507】
図2A及び図2B図3A及び図3Bとの両方では、成熟剤LPSへの曝露後、HLA-DR発現及びCD86発現の両方において明らかな上方制御が存在する。単一のドナーと照射されたプールドナーとの両方かの新たに調製したアポトーシス細胞の存在下で、両方の共刺激マーカの有意な(p<0.01)用量依存的な下方制御が観察された。加えて、2~8℃で24時間保存されたアポトーシス細胞の存在下で、両方のマーカにおいて用量依存的な下方制御が維持され、24時間保存後の最終産物は安定性及び効力を示した。
【0508】
樹状細胞に対する作用。アポトーシス細胞の免疫調節能力を試験するために、放出後効力アッセイを用いた(「Mevorach et al., (2014) BBMT」)。樹状細胞における免疫調節アッセイの変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0509】
混合リンパ球反応(MLR)に対する作用。免疫調節作用をさらに試験するために、標準化されたMLRアッセイが確立された。ここで、刺激細胞と応答細胞、すなわちMLRの共培養は、強力で信頼性の高い増殖をもたらした。非照射アポトーシス細胞をMLRに添加すると、リンパ球の増殖は5倍を超えて有意に減少し、細胞増殖の阻害を明確に示した。照射アポトーシス細胞により媒介されたMLRにおけるリンパ球増殖の阻害は、完全に同等であった(データは示さず)。
【0510】
次のステップは、完全にミスマッチしたマウスモデルにおいて、インビボで照射及び非照射のアポトーシス細胞を評価することであった。図示のように、照射及び非照射の早期アポトーシス細胞調製物は、インビボで同等の有益な効果を示した。
【0511】
単一ドナーの調製の結論:
【0512】
結論として、25Gyまたは40Gyの照射は、アポトーシスを有意に促進せず、アポトーシス細胞集団の壊死を誘導しなかった。重要なことには、これらのアポトーシス細胞集団は、インビトロ及びインビボの両方で、アポトーシス細胞の免疫調節作用を維持した。
【0513】
複数のドナーの調製
【0514】
次に、実験を行って、単一ドナー第三者調製で観察された現象が、複数ドナーの第三者調製にも当てはまることを確認した。予期せぬことに、プールされた個々のドナーのアポトーシス細胞調製物を使用すると、不適合単一ドナーの有益な効果が失われた。これは、GvHDに起因するものではない。各ドナーの有益な効果が別々に維持されていたからである(試験結果は示さず)。1つの可能性としては、早期アポトーシス細胞調製物の有益な効果が、個々のドナー細胞間の相互作用により失われたことが挙げられる。異なるドナーのこの相互作用の可能性が、ガンマ線照射によって回避できるか否かをさらに調べた。
【0515】
図示のように、単一ドナーの有益な効果は、ガンマ線照射後に完全に回復し、照射された複数ドナー調製物及び単一ドナー調製物(照射または非照射)は、同様の生存パターンを示した。
【0516】
結論:
【0517】
驚くべきことに、放射線照射(及びT細胞受容体の阻害をもたらす任意の方法)が、T細胞の望ましくない増殖及び活性化を回避するだけでなく、複数ドナーの第三者アポトーシス細胞の調製物を使用する場合、免疫調製の有益な効果を可能にすることが、ここに初めて示された。
【0518】
実施例4:SARS-CoV-2コロナウイルス関連臓器不全の予防
【0519】
SARS-CoV-2コロナウイルスに曝露された無症候性患者は、本明細書に開示された早期アポトーシス組成物によって治療した。その後、SARS-CoV-2コロナウイルス感染症に関連する体温上昇または他の臨床症状や兆候を調べるために、サイトカイン/ケモカインのレベルや主要臓器の機能を含む、無症候性患者の健康全般を少なくとも約3週間にわたってモニタする。また、主要臓器の機能も、標準プロトコルにしたがってモニタした。患者は、フェレットやコウモリなどの動物モデルであり得る。
【0520】
実施例5:SARS-CoV-2コロナウイルス関連臓器不全の治療
【0521】
SARS-CoV-2コロナウイルスに曝露された症候性患者は、本明細書に開示された早期アポトーシス組成物によって治療した。その後、SARS-CoV-2コロナウイルス感染症に関連する体温上昇または他の臨床症状や兆候を調べるために、サイトカイン/ケモカインのレベルや主要臓器の機能を含む、無症候性患者の健康全般を少なくとも約3週間にわたってモニタした。
【0522】
実施例6:COVID-19及び呼吸機能障害の重症患者における臓器不全の予防のためのアロセトラ-OTSの安全性を評価する多施設共同非盲検試験
【0523】
目的:いくつかの場合は肺機能不全を伴うCOVID-19患者において、標準治療と組み合わせた早期アポトーシス細胞(アロセトラ)の使用を評価する。評価項目には、安全性、忍容性、サイトカインプロファイル、及び有効性パラメータが含まれ、PaO/FiO比の変化、有害事象及び重篤な有害事象の重症度を主要評価項目とした。
【0524】
有効性の予備試験:COVID-19に伴う呼吸器機能不全の予防を評価する。
【0525】
主要評価項目:呼吸機能不全及びCOVID-19の患者におけるアロセトラ-OTSの安全性を評価する。
【0526】
方法:
【0527】
試験デザイン:本試験は、重症または重篤なCOVID-19及び呼吸機能障害を有する患者におけるアロセトラ-OTSの安全性を評価する多施設共同非盲検試験である。
【0528】
予備的な臨床試験を実施し、重症(3人)または重篤(2人)のCOVID-19を罹患している5例のCOVID-19患者を登録した。重篤な2例は、人工呼吸器を装着していなかった。このように、本試験に登録された患者には、COVID-19が重度かつ重篤な状態にある患者が含まれている。
【0529】
患者によるインフォームドコンセントに署名後、1日目は、適格な時刻(0時)から24+6時間以内に、適格なレシピエントに、以下のように治験薬(IP)を単回静脈内投与した。375mLのリンガー乳酸溶液中に140×10±20%細胞/kg体重(スクリーニング体重)のアロセトラ-OTS(外来ドナー由来の不適合早期アポトーシス単核細胞)を含有する組成物を投与した。患者は、例えば治験薬投与後の28日間にわたって、経時的に有効性及び安全性の評価を受けた。さらに、PaO/FiO比の変化を少なくとも28日間追跡した(実施例7の追跡を参照)。
【0530】
患者は、COVID-19のために入院し、その後、医学的に適応とされた。アロセトラ製剤を静脈内(IV)投与し(1日目)、その後、28日間にわたって有効性及び安全性を評価した。本試験に参加した患者の来院日は、3日目、5日目、及び7日目であった。より大規模な多施設共同試験では、14日目と28日目の来院も行われた。
【0531】
試験期間
各参加患者の試験期間は、以下のように最大28日間であった。
【0532】
【表11】
【0533】
適格性基準-以下に定義される、呼吸機能障害及びCOVID-19と診断された18歳以上80歳未満の男女。
・任意の診断用サンプリング源からの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によるSARS-COV-2感染が検査室で確認された。
・NIH重症度分類(下記参照)により、重症または重篤に分類された患者。
・臨床試験に参加した5人の患者は、担当医が、クレキサンの最小用量の40mg/日、デキサメタゾン、及び、一部にはレムデシビルを投与して治療した。
【0534】
除外基準
・妊娠、授乳、及び出産の可能性のある女性で、試験期間中、許容される避妊手段を用いることを望まない場合。
・ステージ4の重症慢性腎臓病または透析を必要とする(すなわち、推定糸球体濾過量(eGFR)が30未満の)他の臓器不全を合併している場合。
・悪性腫瘍の患者、他の重篤な全身疾患の患者、または、精神病患者。
・他の臨床試験に参加している患者、または本試験と矛盾する可能性のある治験薬(すなわち、生物学的製剤)による治療を受けている患者。
・HIVや結核との重感染している患者。
・免疫抑制状態または免疫抑制作用が分かっている薬剤(次ページの併用禁止薬剤を参照)を服用している患者。
・挿管されている患者(インフォームドコンセントに署名できないため)。
・P/F比が150未満の患者または適格性が変化した患者であって、適格性と実際の薬物送達との間でP/F比が急激に低下した患者。
【0535】
試験介入、投与経路、及び投与形態
【0536】
治験薬(IP):アロセトラ-OTSは、ドナーの早期アポトーシス細胞からなる細胞ベースの治療薬である。早期アポトーシス細胞を上記の実施例1と同様にして調製した。本製剤は、少なくとも40%の早期アポトーシス細胞(アネキシンV≧40%、及びPI≦15%)を含有する液体懸濁液の形態の同種異系ドナー単核濃縮細胞(外来ドナー由来の不適合細胞)を含む。懸濁液をRinger乳酸溶液で調製し、静脈内投与した。懸濁液は、注入前20+25分までは2~8°Cで保存し、その後は室温で保存した。
【0537】
アロセトラ-OTSの用量は、照射を受けたトランスファーパック中の総体積量375mLの乳酸リンゲル液中にレシピエントの体重kgあたり140×10±20%の細胞を含み、調整されたフィルタを介して、容積式ポンプを用いて、48mL/時の開始速度(16滴/分)で、15~25分毎に15mL/時(追加の5滴/分)で漸増して最大速度102mL/時で静脈内投与された。5人の患者の各々は、アロセトラ-OTSの単回投与を受けた。さらに、患者に対して、クレキサン、デキサメタゾン、及び、一部にはレムデシビルを投与した。
【0538】
試験介入は、細胞の作製工程の完了後の72時間以内に完了した。
【0539】
本製剤の投与中は、体積減少に起因する医学的な指示がない限り、乳酸リンゲル液や生理食塩水などの他の輸液は並行して投与することがなかった。
【0540】
患者分類(NIH:https://www.covid-19treatmentguidelines.nih.gov/overview/management-of-covid-19/)。
【0541】
一般的に、COVID-19の成人患者は、以下の重症度カテゴリに分類される。
・無症候性または前駆症状の感染症:分子診断法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)または抗原検査によるウイルス学的検査でSARS-CoV-2陽性を示すが、無症状の患者。
・軽症:COVID-19に類似した様々な症状及び徴候(例えば、発熱、咳、咽頭痛、倦怠感、頭痛、筋肉痛)の所見があるが、息切れ、呼吸困難、及び胸部画像検査の異常の所見がない患者。
・中等症:臨床的評価または画像診断により下気道疾患の所見があり、海抜0mの室内空気での酸素飽和度(SpO)が94%以上の患者。
・重症:呼吸回数が30回/分以上、海抜0mの室内空気でのSpOが94%未満、動脈血酸素分圧/吸気酸素濃度比(PaO/FiO)が300mmHg未満、または肺浸潤が50%超の患者。
・重篤:呼吸不全、敗血症性ショック、多臓器不全を有する患者。
【0542】
臨床試験では、提供されたNIHガイドラインに基づいて、2人のCOVID-19患者が重篤な疾患を有し、3人のCOVID-19患者が重症な疾患を有すると認定された。
【0543】
標準治療(SOC):COVID-19のSOCは、治験基準に準拠している。治験SOCには、クレキサン、抗ウイルス薬、クロロキンもしくはヒドロキシクロロキン、レムデシビル、またはその他の薬剤が含まれる。
【0544】
併用薬:禁止薬:10mg/日を超える慢性コルチコステロイド、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、及び任意の生物学的治療を含む重大な免疫抑制薬。COVID-19の治療薬として知られているSOC医薬;ヒドロキシクロロキン、クロロキン、及びアジスロマイシンは、アロセトラ-OTSとの相互作用の可能性は知られていない。どちらも抗ウイルス剤ではない。
【0545】
血液検体の取扱い:治験薬を投与し(1日目)、その後、3日目、7日目、14日目、28日目に、サイトカインまたはケモカインの測定のために採血した。血液試料を採取し、治験ガイドライン及び承認にしたがって処理した。
【0546】
統計解析:データは、試験治療群別に経時的に表にまとめ、連続データについては、平均値、標準偏差、最小値、中央値、最大値、及び患者数を示し、カテゴリーデータ及び事象データについては、適宜、件数及び割合を表に示す。「Time to」データは、生存曲線を用いて記述される。患者別のデータリストが提供される。
【0547】
大規模非盲検臨床試験における記述的解析と、必要に応じて統計的検定を、2つのグループ(アロセトラ-OTSと賦形剤)間で比較する。
【0548】
すべての統計分析が実行され、SAS(登録商標)システム(米国ノースカロライナ州ケアリー、SASインスティテュート社(SAS Institue))、バージョン9.4以降を使用して、データ付録が作成される。この試験の結果の一般的な適用可能性への影響を決定するために、コンプライアンス違反、脱落、及び、年齢、性別、施設などの共変量の影響が記述的に評価された。
【0549】
安全性、患者の体内動態、及び、ベースラインの特性を、安全性解析対象集団について示す。FAS集団及びPP集団における有効性を評価する。これらの解析についての包括的な記述は、統計解析計画書(SAP)に詳述されている。
【0550】
結果:
【0551】
重症または重篤なCOVID-19患者を対象としたアロセトラ(TM)の臨床試験で、良好な結果が得られた。
【0552】
アロセトラ-OTSによる治療は安全であり、5人の患者の全員で良好な結果が得られた。本製剤の投与による重大な有害事象は認められず、忍容性も良好であった。
【0553】
5人の患者の全員は、重症または重篤な状態から完全に回復し、アロセトラ(TM)の投与後、平均5.5日(重症の場合)または8.5日(重篤の場合)で退院した。重症のCOVID-19患者の平均入院期間は5.5日であり、重篤なCOVID-19患者の平均入院期間は8.5日であった。アロセトラ-OTSによる治療の結果、退院時に5人の患者の全員がSARS-CoV-2ウイルスに対してPCR陰性であった。さらに、治療した患者は、O飽和度/流量比の劇的な改善が見られた。分析の結果、CRPとフェリチンの値が低下することが分かった。
【0554】
重症のCOVID-19患者における呼吸器機能障害の改善及びPaO/FiO比の改善の分析を行った(実施例7し示すデータを参照)。アロセトラ-OTSで治療した患者は、健康かつウイルス陰性で退院した。これには、治療前に困難かつ重篤な状態にあった患者が含まれている。
【0555】
結論:現時点では、重症または重篤なCOVID-19患者に対するアロセトラ-OTSの驚くべき効果に基づいて、アロセトラ-OTSは安全であり、特に重症または重篤な状態のCOVID-19患者の治療における使用については、より大規模な試験で評価する必要があるという結論に達した。
【0556】
実施例7:重症または重篤な状態のCOVID-19患者を対象とした第Ib相/第II相臨床試験
【0557】
目的:COVID-19及び呼吸機能障害の重症または重篤な患者における臓器不全の治療及び予防に対するアロセトラ-OTSの安全性及び有効性を評価する。
【0558】
方法:
【0559】
安全性評価のために5例を登録した(第Ib相試験;実施例6に示したのと同じ患者集団である。これらの患者から得られた追加データをここに示す)。また、最大24例の有効性及び安全性を評価した(第II相試験)。選択基準:(1)PCRと臨床的COVID-19によりSARS-CoV-2感染が確認された患者、(2)重症または重篤な疾患に対するNIH分類を満たしている患者(上記の実施例6のガイドラインを参照)、(3)人工呼吸器を使用していない患者、(4)18~82歳の患者。
【0560】
第Ib相の患者の特徴を以下の表12に示す。この患者、上記の実施例6で説明し、治療した患者集団である。
【0561】
【表12】
【0562】
評価項としては、安全性、退院までの期間、人工呼吸器及び酸素ボンベを使用しない日数、昇圧剤を使用しない日数、早期警告スコア2(National Early Warning Score 2:NEWS2;患者の病気の程度を決定し、集中治療の介入を促すために用いられる)の基準値に復帰した日数、基本的な7項目評価までの期間((1)死亡;(2)侵襲的人工換気または体外式膜型人工肺(ECMO)を用いる入院;(3)非侵襲的換気または高流量酸素供給装置を用いる入院;(4)酸素補給を必要とする入院;(5)酸素補給を必要としない入院;(6)入院せず、活動制限を受ける;(7)入院せず、活動制限を受けない)、あらゆる原因による死亡率、集中治療室(ICU)または集中管理室(IMU)及び/または入院の累積日数、CRPが20mg/L未満になるまでの期間、並びに、サイトカインまたはケモカイン、これに限定しないが、例えば、IL-6、IL-18、IFN-α、IFN-γ、IL-10、IL-2Rα、IL-8、またはIL-7のレベルの変化が挙げられる。
【0563】
図4は、本試験の概略図を示す。
【0564】
NIHガイドラインを用いて患者を特徴付けた。上述したように、重症の患者には、海抜0mの室内空気でのSpOが94%未満、動脈血酸素分圧/吸気酸素濃度比が300mmHg未満、呼吸回数が30回/分以上、または、肺浸潤影は50%超の患者が含まれる。重篤な患者には、呼吸不全、敗血症性ショック、及び/または多臓器機能不全を有する患者が含まれる(実施例6も参照されたい)。
【0565】
治療:患者は、レムデシビル(4/5)とデキサメタゾン(5/5)との両方を含むCOVID-19の「標準治療」を受けた(実施例6も参照されたい)。
【0566】
アロセトラ-OTSの単回用量を、静脈内注射に投与した。アロセトラ-OTSの調製、用量、及び投与は、第II相試験において、1×10±20%の細胞(アロセトラ-OTS)の固定用量を静脈内(IV)注射によって再び投与した以外は、実施例6に示した通りであった。
【0567】
結果:
【0568】
第I相試験の要約(初期結果及び実施例6に示した詳細):
【0569】
副次評価項目。すべての副次評価項目のすべての結果を表13に示し、さらに表14にまとめた。
【0570】
【表13】
【0571】
【表14】
【0572】
重症のCOVID-19患者の3例(94%未満の酸素飽和、及び肺浸潤が認められると定義される)と、重篤なCOVID-19患者の2例(どちらも機械的換気をしていないが、どちらも高流量酸素供給を受けており、肺浸潤が認められた)を本試験に組み入れ治療した。
【0573】
アロセトラの投与後、すべての患者は良好な転帰を示し、酸素飽和/吸入酸素濃度比及び臨床症状の段階的な改善や、呼吸機能の段階的な改善が見られた。
【0574】
既往歴や併用薬の投与状況などの患者特性は、上記の表11に示した通りであった。
【0575】
上記の表14は、全5例の臨床経過をまとめたものである。7段階の重症度評価尺度では、すべての患者で、初期平均スコアは3.6点であり、8.8日以内に正常スコア(7点)に戻った。NEWS2の平均スコアは5点であり、8.8日以内に正常スコア(0/1)に戻った。加えて、4人の患者は軽度から中等度のARDS(2/3が中等度ARDS)であり、3人は重症の基準(NIV)を満たした。5人全員が退院時にPCR陰性であり、完全に回復した。平均入院期間は10.4日であった;アロセトラを投与した6.6日後。4/5がARDSであったにもかかわらず、ICU入院や人工呼吸器を必要とした患者はいなかった。アロセトラ投与後の平均入院期間は、重症患者で3.5日、重篤患者で8.6日であった。
【0576】
各患者の検査結果を、図5A図5L及び図6A図6Hに示す。図5A図5Lは、第I相COVID-19陽性バイオマーカの経時的な(1日あたりの)プロファイルを示す。マーカは、WBC(図5A)、好中球%(図5B)、好中球数(図5C)、リンパ球%(図5D)、リンパ球数(図5E)、血小板数(図5F)、CRP(図5G)、フェリチン(図5H)、D-ダイマ(図5I)、CPK(図5J)、クレアチニン(図5K)、及びLDH(図5L)が含まれる。図6A図6Hは、第I相COVID-19陽性サイトカインの経時的な(1日あたりの)プロファイルを示す。測定されたサイトカインには、IL-6(図6A)、IL-18(図6B)、IFN-α(図6C)、IFN-γ(図6D)、IL-10(図6E)、IL-2Rα(図6F)、IL-8(図6G)、及びIL-7(図6H)であった。
【0577】
リンパ球数は改善し(図5E)、CRP(図5G)、フェリチン(図5H)、及びD-ダイマ(図5I)のレベルは、アロセトラ-OTSによる治療後に低下し、臨床状態の改善と相関した。すべての患者は、アロセトラ投与前に肝酵素の軽度の上昇を示したが、28日目までに消失した。最も注目すべきは、すべての患者が、SAR-CoV-2(COVID-19)のPCR陰性で退院したことである。図6A図6Hに示すように、サイトカインストームは、アロセトラによる治療後に消失した。IFN-αは、ほとんどの患者で増加した。
【0578】
第II相試験の中間結果の概要。
【0579】
現在までに、21人の重症または重篤な患者(第Ib相:5例、第II相:16例)を募集した。18人の患者が、28日間の評価を完了した。現在の患者特性は以下の通りであった:男性/女性(16/4)、平均年齢57(37~81)、肥満(9/20)、高血圧(7/20)。第II相試験に参加した16人の患者のうち14人は、アロセトラの最初の投与から平均5.3日以内に自宅に退院した。
【0580】
第II相試験は、現在も継続中である。SOC治療と併用したアロセトラの単回投与後、(1)重症患者の11/11は健康に退院し、アロセトラ治療後の平均入院期間は5.3日間であった;(2)重篤な患者の7/9は健康に退院し、アロセトラ治療後の平均入院期間は7.6日であった;(3)重篤な患者の2/9は28日目にICUで人工換気されていた。表15に患者の特徴及び転帰を示す。
【0581】
【表15】
【0582】
図7A図7Oは、第II相COVID-19陽性バイオマーカの経時的な(1日あたりの)プロファイルの中間測定値を示す。マーカは、CRP(図7A)、フェリチン(図7B)、D-ダイマ(図7C)、CPK(図7D)、クレアチニン(図7E)、WBC(図7F)、好中球%(図7G)、好中球数(図7H)、リンパ球%(図7I)、リンパ球数(図7J)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)(図7K)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(図7L)、アルカリホスファターゼ(ALP)(図7M)、総ビリルビン(図7N)、及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(図7O)であった。
【0583】
安全性:4つの重篤な副作用(SAE;アロセトラに関係しない)が20人の患者で報告された:2人の患者は人工呼吸器に移行し、その後、体外膜型人工肺(ECMO)に移行した。1つのAE(副作用)は、アロセトラの投与に関係している可能性があった。報告されたAEは、患者006のアロセトラ投与の終わり頃の短時間の震えであり、プロメタジン12.5mgを静脈内投与すると解消した。このAEは、アロセトラ投与に関係している可能性があったが、菌血症に起因する可能性もあり、またCOVID-19の症状である可能性もあった。
【0584】
本明細書では、本発明の特定の特徴を図示し、説明してきたが、様々な改変、置換、変更、及び均等物が、当業者であれば想到し得るであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の要旨の範囲内に含まれるそのような全ての改変及び変更を包含することを意図していることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図7K
図7L
図7M
図7N
図7O
【手続補正書】
【提出日】2022-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2ウイルスに感染した対象におけるCOVID-19治療に使用するための組成物であって、
早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を含む、組成物
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、
前記治療は、COVID-19の症状の治療、抑制、発生率の低減、改善、または緩和を含む、組成物
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、
前記症状は、臓器不全、臓器機能不全、臓器損傷、サイトカインストーム、サイトカイン放出症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む、組成物
【請求項4】
請求項3に記載の組成物であって、
前記臓器は、肺、心臓、腎臓、肝臓、またはそれらの任意の組み合わせを含む、組成物
【請求項5】
請求項4に記載の組成物であって、
前記臓器不全、前記臓器機能不全、または前記臓器損傷は、肺不全、肺機能不全、または肺損傷を含む、組成物
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、
前記肺機能不全は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)または肺炎を含む、組成物
【請求項7】
請求項3に記載の組成物であって、
前記臓器不全は、急性多臓器不全を含む、組成物
【請求項8】
請求項3に記載の組成物であって、
前記臓器不全の治療は、前記臓器不全の軽減、進行の遅延、抑制、反転、修復、またはそれらの任意の組み合わせを含む、組成物
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の組成物であって、
前記治療は、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていないCOVID-19対象と比較して、COVID-19対象の生存期間を増加させる、組成物
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の組成物であって、
前記COVID-19は、軽症、中等症、重症、重篤のCOVID-19を含む、組成物
【請求項11】
請求項10に記載の組成物であって、
前記COVID-19は、重症または重篤のCOVID-19を含む、組成物
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の組成物であって、
前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団は、
(a)24時間を超えて安定しているアポトーシス集団、
(b)非静止非アポトーシス細胞の数が減少した、生存非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された、または生存非アポトーシス細胞の増殖が低下した、アポトーシス集団、
(c)早期アポトーシス単核濃縮細胞のプールされた集団、または、
(d)それらの任意の組み合わせ、を含む、組成物
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の組成物であって、
当該組成物は、単回注入用に製剤化される組成物
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の組成物であって、
当該組成物は、複数回注入用に製剤化される組成物
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の組成物であって、
当該組成物は、静脈内投与用に製剤化される組成物
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の組成物であって、
前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団は、アポトーシス誘導後に放射線照射された早期アポトーシス細胞を含む、組成物
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の組成物であって、
COVID-19の治療のための追加療法の使用をさらに含む、組成物
【請求項18】
請求項17に記載の組成物であって、
前記追加療法は、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を前記対象に投与する前、同時、または後に実施される、組成物
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の組成物であって、
当該組成物は、前記対象の免疫応答を再調整する、組成物
【請求項20】
請求項19に記載の組成物であって、
前記免疫応答の再調整は、1種以上の炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、免疫調節因子、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を減少させることを含む、組成物
【請求項21】
請求項19に記載の組成物であって、
前記免疫応答の再調整は、1種以上の抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、またはそれらの組み合わせの分泌を増加させることを含む、組成物
【請求項22】
請求項19に記載の組成物であって、
前記免疫応答の再調整は、
1種以上の炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、抗炎症性のサイトカインもしくはケモカイン、免疫調節因子、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を減少させ、かつ、
1種以上の抗炎症性のサイトカインもしくはケモカインを増加させることを含む、組成物
【請求項23】
請求項1~22のいずれかに記載の組成物であって、
当該組成物は、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていないCOVID-19対象と比較して、集中治療室(ICU)に入院する対象の数を減少させる、組成物
【請求項24】
請求項1~23のいずれかに記載の組成物であって、
当該組成物は、前記早期アポトーシス単核細胞濃縮集団を投与されていない対象と比較して、前記対象の入院期間を短縮する、組成物
3
【国際調査報告】