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特表2023-515503積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20230406BHJP
   A61M 60/178 20210101ALN20230406BHJP
   A61M 60/873 20210101ALN20230406BHJP
【FI】
H02J50/12
A61M60/178
A61M60/873
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550153
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 US2021019378
(87)【国際公開番号】W WO2021173642
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/980,575
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ジョン フレディ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD01
4C077JJ30
4C077KK30
(57)【要約】
本開示によれば、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化する方法であって、コンピュータ装置を使用して実施される、無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、送信共振器及び受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップと、生成された設計パラメータの複数のセットのうちの1つのセットを選択するステップと、選択された1つのセットに基づいて、無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、を含む方法が提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化する方法であって、
コンピュータ装置を使用して、前記無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、前記無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、前記送信共振器及び前記受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、前記ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップと、
前記コンピュータ装置を使用して、生成された前記設計パラメータの複数の異なるセットのうちの1つのセットを選択するステップと、
前記コンピュータ装置を使用して、選択された前記1つのセットに基づいて、前記無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、
前記コンピュータ装置を使用して、前記初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、
前記コンピュータ装置を使用して、前記初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、前記無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記コンピュータ装置を使用して、前記無線電力伝送システムの前記次集団から候補となる無線電力伝送システムを選択するステップと、
前記候補となる無線電力伝送システムに対応する物理的な無線電力伝送システムを製造するステップと、をさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記物理的な無線電力伝送システムを製造する前記ステップは、新しい無線電力伝送システムを製造することを含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記物理的な無線電力伝送システムを製造する前記ステップは、既存の無線電力伝送システムを改変することを含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記設計パラメータは、前記送信共振器及び前記受信共振器の少なくとも一方における誘電層の厚さを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記設計パラメータは、前記送信共振器及び前記受信共振器の少なくとも一方おける、誘電層の誘電率、誘電層の内径、誘電層の外径、誘電層の数、導電層の厚さ、導電層の角度スパン、導電層の数、導電層の内径、及び導電層の外径のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記初期集団内の各無線電力伝送システムを評価する前記ステップは、前記無線電力伝送システムの予想される電力伝送効率に少なくとも部分的に基づいて、前記初期集団内の各無線電力伝送システムのスコアを計算することを含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記初期集団を生成する前記ステップは、選択された前記1つのセット内の1つ以上の前記設計パラメータの値をランダムに変化させることによって前記初期集団を生成することを含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記次集団を生成する前記ステップは、前記初期集団内の複数の無線電力伝送システムを、ランダムにまたは前記評価に基づいて組み合わせることを含む、方法。
【請求項10】
積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化するコンピュータ装置であって、
メモリ装置と、
前記メモリ装置に通信可能に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、前記無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、前記送信共振器及び前記受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、前記ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップと、
生成された前記設計パラメータの複数の異なるセットのうちの1つのセットを選択するステップと、
選択された前記1つのセットに基づいて、前記無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、
前記初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、
前記初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、前記無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、
を実行するように構成された、コンピュータ装置。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータ装置であって、
前記プロセッサは、前記無線電力伝送システムの前記次集団から候補となる無線電力伝送システムを選択するステップをさらに実行するように構成された、コンピュータ装置。
【請求項12】
請求項10に記載のコンピュータ装置であって、
前記設計パラメータは、前記送信共振器及び前記受信共振器の少なくとも一方における誘電層の厚さを含む、コンピュータ装置。
【請求項13】
請求項10に記載のコンピュータ装置であって、
前記設計パラメータは、前記送信共振器及び前記受信共振器の少なくとも一方おける、誘電層の誘電率、誘電層の内径、誘電層の外径、誘電層の数、導電層の厚さ、導電層の角度スパン、導電層の数、導電層の内径、及び導電層の外径のうちの少なくとも1つを含む、コンピュータ装置。
【請求項14】
請求項10に記載のコンピュータ装置であって、
前記初期集団内の各無線電力伝送システムを評価する前記ステップは、前記無線電力伝送システムの予想される電力伝送効率に少なくとも部分的に基づいて、前記初期集団内の各無線電力伝送システムのスコアを計算することを含む、コンピュータ装置。
【請求項15】
請求項10に記載のコンピュータ装置であって、
前記初期集団を生成する前記ステップは、 選択された前記1つのセット内の1つ以上の前記設計パラメータの値をランダムに変化させることによって前記初期集団を生成することを含む、コンピュータ装置。
【請求項16】
請求項10に記載のコンピュータ装置であって、
前記次集団を生成する前記ステップは、前記初期集団内の複数の無線電力伝送システムを、ランダムにまたは前記評価に基づいて組み合わせることを含む、コンピュータ装置。
【請求項17】
コンピュータ実行可能命令を格納した非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記コンピュータ実行可能命令は、メモリ装置と、前記メモリ装置に通信可能に接続された少なくとも1つのプロセッサとを備えたコンピュータ装置によって実行されたときに、
前記コンピュータ装置の前記プロセッサに、
無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、前記無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、前記送信共振器及び前記受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、前記ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップと、
生成された前記設計パラメータの複数の異なるセットのうちの1つのセットを選択するステップと、
選択された前記1つのセットに基づいて、前記無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、
前記初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、
前記初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、前記無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、
を実行させる、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
請求項17に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記コンピュータ装置によって実行されたときに、
前記コンピュータ装置の前記プロセッサに、
前記無線電力伝送システムの前記次集団から候補となる無線電力伝送システムを選択するステップをさらに実行させる、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
請求項17に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記設計パラメータは、前記送信共振器及び前記受信共振器の少なくとも一方における誘電層の厚さを含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
請求項17に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記設計パラメータは、前記送信共振器及び前記受信共振器の少なくとも一方おける、誘電層の誘電率、誘電層の内径、誘電層の外径、誘電層の数、導電層の厚さ、導電層の角度スパン、導電層の数、導電層の内径、及び導電層の外径のうちの少なくとも1つを含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月24日出願の米国特許仮出願第62/980、575号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、無線電力伝送システムに関し、より詳細には、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムのモデル化に関する。
【背景技術】
【0003】
VADとして知られる心室補助装置は、植込み型の血液ポンプであり、一般に心不全またはうっ血性心不全と呼ばれる心臓が十分な循環を提供することができない症状を患っている患者において、短期(すなわち、数日または数か月)及び長期(すなわち、数年または生涯)の両方で使用される。心不全を患っている患者は、心臓移植を待つ間に、または、長期のDT治療(destination therapy)として、VADを使用することができる。別の例では、患者は、心臓手術後の回復期に、VADを使用することができる。このように、VADは、弱った心臓を補助したり(すなわち、部分的に補助したり)、自然の心臓の機能を効果的に置き換えたりすることができる。
【0004】
VADへの電力供給には、無線電力伝送システムを使用することができる。無線電力伝送システムは、一般に、外部送信共振器と、患者の体内に植え込まれるように構成された植込み型受信共振器とを備える。このような無線電力伝送システムは、経皮エネルギー伝送システム(TETS)とも呼ばれている。
【0005】
TETSなどの無線電力伝送システムは、互いに協動する多数の構成要素を含む。相互に関連する構成要素の数及び複雑さは、従来の技術を用いてシステムを最適化するプロセスを、扱いにくく、時間がかかるものとし、場合によっては不可能にする。このことは、積層板型共振器を使用する無線電力伝送システムに特に当てはまる。大抵の場合、積層板型共振器を完全にモデル化するための一連の閉じた方程式を生成することは不可能である。例えば、積層板型共振器の共振周波数は、多数の設計パラメータ及びそれらの設計パラメータ間の相互関係に基づいて決定される。したがって、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムの最適解を適時に求める方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化する方法に関する。本開示の方法は、コンピュータ装置を使用して、無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、送信共振器及び受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップを含む。本開示の方法は、さらに、コンピュータ装置を使用して、生成された設計パラメータの複数の異なるセットのうちの1つのセットを選択するステップと、コンピュータ装置を使用して、選択された1つのセットに基づいて、無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、コンピュータ装置を使用して、初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、コンピュータ装置を使用して、初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、を含む。
【0007】
また、本開示は、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化するコンピュータ装置に関する。本開示のコンピュータ装置は、メモリ装置と、メモリ装置に通信可能に接続されたプロセッサと、を備える。プロセッサは、無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、送信共振器及び受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップを実行するように構成される。プロセッサは、さらに、生成された設計パラメータの複数の異なるセットのうちの1つのセットを選択するステップと、選択された1つのセットに基づいて、無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、を実行するように構成される。
【0008】
また、本開示は、コンピュータ実行可能命令を格納した非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。コンピュータ実行可能命令は、メモリ装置と、メモリ装置に通信可能に接続された少なくとも1つのプロセッサとを備えたコンピュータ装置によって実行されたときに、コンピュータ装置のプロセッサに、無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、送信共振器及び受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップと、生成された設計パラメータの複数の異なるセットのうちの1つのセットを選択するステップと、選択された1つのセットに基づいて、無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の無線電力伝送システムの一実施形態の簡略化された電気回路図である。
図2図2は、図1の無線電力伝送システムを心室補助装置(VAD)への電力の供給に使用した様子を示す図である。
図3A図3Aは、図2に示した無線電力伝送システムに使用することができる積層板型共振器の一実施形態の概略図である。
図3B図3Bは、図3Aに示した積層板型共振器の分解図である。
図4図4は、本明細書に記載のシステム及び方法を実施するために使用することができるコンピュータ装置の一実施形態のブロック図である。
図5図5は、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化する方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化するシステム及び方法に関する。本開示の方法は、コンピュータ装置を使用して、無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、送信共振器及び受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップを含む。本開示の方法は、さらに、コンピュータ装置を使用して、生成された設計パラメータの複数の異なるセットのうちの1つのセットを選択するステップと、コンピュータ装置を使用して、選択された1つのセットに基づいて、無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、コンピュータ装置を使用して、初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、コンピュータ装置を使用して、初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、を含む。
【0011】
次に図面を参照すると、図1は、例示的な無線電力伝送システム100の簡略化された電気回路を示す。本システム100は、外部送信共振器102と、植込み型受信共振器104とを備える。図1に示すシステムでは、電源Vsが送信共振器102に電気的に接続されており、電源Vsは送信共振器102に電力を供給する。受信共振器104は、負荷106(例えば、植込み型医療装置)に接続されている。受信共振器104及び負荷106は、スイッチングまたは整流デバイス(図示せず)に電気的に接続されてもよい。
【0012】
例示的な本実施形態では、送信共振器102は、コンデンサCxによって電源Vsに接続されたコイルLxを含む。また、受信共振器104は、コンデンサCyによって負荷106に接続されたコイルLyを含む。コイルLx(インダクタLx)とコイルLy(インダクタLy)とは、結合係数kで接続される。Mxyは、2つのコイル間の相互インダクタンスである。相互インダクタンスMxyは、結合係数kと下記の式(1)に示すような関係にある。
【0013】
【数1】
【0014】
動作中、送信共振器102は、電源Vsから供給された電力を無線送信する。受信共振器104は、送信共振器102から無線送信された電力を受信し、受信した電力を負荷106に供給する。
【0015】
図2は、外部コイル202(例えば、図1に示す送信共振器102)を使用して、患者200の体内に植え込まれた植込み型コイル204(例えば、図1に示す受信共振器104)に電力を無線送信する一実施形態を示す。植込み型コイル204は、受信した電力を使用して植込み型装置206に電力を供給する。例えば、植込み型装置206としては、ペースメーカーまたは心臓ポンプ(例えば、左心室補助装置(LVAD))が挙げられる。いくつかの実施形態では、植込み型コイル204及び/または植込み型装置206は、電池を備えてもよいし、または電池に接続されてもよい。
【0016】
一実施形態では、外部コイル202は、コンピュータ装置210との間で信号を送受信できるように、例えば有線接続または無線接続を介してコンピュータ装置210に通信可能に接続されている。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、外部コイル202の電源としての役割も果たす。他の実施形態では、外部コイル202は、代替の電源(図示せず)に接続される。コンピュータ装置210は、メモリ装置214と、メモリ装置214に通信可能に接続されたプロセッサ212とを備える。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能命令がメモリ装置214に格納される。
【0017】
コンピュータ装置210は、ユーザインターフェース(UI)216をさらに備える。ユーザインターフェース(UI)216は、ユーザ(例えば、患者200)に情報を提示する。ユーザインターフェース(UI)216としては、例えば、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LED(OLED)ディスプレイ、及び/または、「電子インク」ディスプレイなどのディスプレイ装置に接続されるディスプレイアダプタ(図示せず)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、1以上の表示装置を含む。さらに、いくつかの実施形態では、プレゼンテーションインターフェースは、視覚的コンテンツを生成せずに、可聴及び/またはコンピュータで生成された音声コンテンツを生成する。例示的な実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、外部コイル202と植込み型コイル204との間の接続が最適になるように、患者200が外部コイル202を配置するのを支援するよう作られた1以上の表現または画像を表示する。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、ウェアラブルデバイスであってもよい。例えば、一実施形態では、コンピュータ装置210は腕時計であり、ユーザインターフェース(UI)216は腕時計に表示される。
【0018】
図3Aは、図1に示すシステム100を実施するために使用される積層板型共振器300の一実施形態の概略図である。例えば、積層板型共振器300を使用して、外部送信共振器102、植込み型受信共振器104、外部コイル202、及び/または植込み型コイル204を実現することができる。図3Bは、図3Aに示した積層板型共振器300の分解図である。
【0019】
図3A及び図3Bに示すように、積層板型共振器300は、磁性コア304と、磁性コア304に配置された複数の積層板302とを含む。分かりやすくするために、図3A及び図3Bでは、各積層板302の厚さは誇張されている。例えば、いくつかの実施形態では、各積層板302の厚さは、10~200μmの範囲であり得る。例えば、より具体的には、各積層板302の厚さは、20~70μmの範囲であり得る。また、図3A及び図3Bでは、積層板型共振器300は、5枚の積層板302を含んでいる。しかし、当業者であれば、積層板型共振器300が任意の適切な数の積層板302を含んでもよいことを理解するであろう。
【0020】
磁性コア304は、底部310と、周壁部312と、ポスト部314とを含む。いくつかの実施形態では、周壁部312は省略される。図3A及び図3Bに示すように、各積層板302は、ポスト部314を受け入れるように寸法決めされた開口部320を有し、ポスト部314を概ね取り囲むようにして、ポスト部314と磁性コア304の周壁部312との間に配置される。底部310から周壁部312の上端までの高さは、ポスト部314の高さと同じであってもよいし、異なってもよい。磁性コア304は、ニッケル系またはマンガン系のフェライトなどのフェライト材料から形成することができる。ニッケル系フェライトは、一般に、電気伝導率が低く、損失が少ない。一方、マンガン系フェライトは、透磁率が高く(損失は許容範囲)、磁力線の封じ込めを容易にし、近くの導体(例えば、近くのPCBのチタン製の筐体や銅)に入る漏れ磁場を減らして、損失を防止する。他の実施形態では、他のタイプのフェライト材料を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、マグネシウム系フェライト(例えば、約1メガヘルツ(MHz)の周波数範囲においてニッケル系またはマンガン系のフェライトよりも性能が優れているMgCuZn)を使用してもよい。
【0021】
積層板302は、複数の誘電層322及び導電層324を交互に積層させることにより形成される。図3A及び図3Bに示す実施形態では、各誘電層322は、略O字状の形状を有する環状プレートであり、内径と外径との間に延在する。各導電層324は、ノッチ326を画定するように略C字状の形状を有し、内径と外径との間に延在する。各導電層324は、ノッチ326を画定するために360°未満の角度(本明細書では「角度スパン」と称する)にわたって周方向に延在する。誘電層322は、例えば、セラミック、プラスチック、ガラス、及び/またはマイカから形成することができる。
【0022】
さらに、各導電層324は、誘電層322を挟んで互いに隣接する導電層324のノッチ326が互いに180°の角度をなすように、誘電層322を挟んで隣接する導電層324に対して反対方向に配向される。このような反対方向の配向により、誘電層322を挟んで互いに隣接する導電層324によって、2つのコンデンサが形成される。あるいは、他の角度の配向を用いてもよい。
【0023】
一実施形態では、1つの導電層324は、2つの端子332を有する底部導電層330である。この2つの端子332によって、積層板型共振器300は、例えば、電源(送信共振器として機能する場合)や負荷106(受信共振器として機能する場合)に接続される。さらに、いくつかの実施態様では、積層体の頂部及び底部を形成する積層板302は、誘電層322ではなく、導電層324である。あるいは、誘電層322を、積層体の頂部及び/または底部に配置してもよい。
【0024】
動作中、送信共振器として動作する積層板型共振器300に電力が供給されると、電流が導電層324によって形成されたコンデンサを通って流れ、それにより、誘導電流ループが形成される。具体的には、第1の積層板型共振器300は、電力が供給されると並列LC共振器として機能し、第1の積層板型共振器300と第2の積層板型共振器との共振周波数が重なることを条件に、第2の積層板型共振器300(同様に並列LC共振器として機能する)に電力を無線伝送することができる。
【0025】
積層板型共振器300の共振周波数は、例えば、6.78MHz程度とすることができる。具体的には、積層板型共振器300の共振周波数は、積層板型共振器300のインダクタンスとキャパシタンスとの積の平方根に反比例する。インダクタンス及びキャパシタンスは、積層板型共振器300の設計に基づいて決定される。したがって、積層板型共振器300の設計を変更することによって、共振周波数を変更することができる。
【0026】
当業者には理解されるように、一般に、送信共振器から受信共振器に送信される無線電力の量を増加/改善/最適化することが望ましい。したがって、本開示のシステム及び方法は、コンピュータ装置を使用して、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムの動作をモデル化及びシミュレーションすることにより、無線電力伝送システムにおける無線電力伝送の改善を容易にする。無線電力伝送システムの動作をモデル化及びシミュレーションするために、コンピュータ装置は、人工知能(AI)を利用してもよい。人工知能(AI)として、例えば、探索及び最適化アプローチ、論理、確率的方法(ファジー論理)、統計的学習、遺伝的アルゴリズム、ヒューリスティック探索、及びニューラルネットワークが挙げられる。
【0027】
図4は、本開示のシステム及び方法を実施するために使用することができるコンピュータ装置400のブロック図である。コンピュータ装置400は、少なくとも1つのメモリ装置410と、メモリ装置410に接続された、命令を実行するためのプロセッサ415とを備える。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能命令がメモリ装置410に格納される。この実施形態では、コンピュータ装置400は、プロセッサ415をプログラミングすることによって、本明細書に記載する1以上の動作を実行する。例えば、プロセッサ415は、動作を1以上のコンピュータ実行可能命令としてコード化し、そのコンピュータ実行可能命令をメモリ装置410に提供することによってプログラムすることができる。
【0028】
プロセッサ415は、(例えば、マルチコア構成では)1以上の処理ユニットを含み得る。さらに、プロセッサ415は、メインプロセッサが単一チップ上の二次プロセッサと共に存在する1以上の異種プロセッサシステムを用いて実現してもよい。別の例示的な例では、プロセッサ415は、同じタイプの複数のプロセッサを含む対称型マルチプロセッサシステムであってもよい。さらに、プロセッサ415は、任意の適切なプログラム可能回路、例えば、1以上のシステム及びマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、及び、本明細書に記載する機能を実行することができる任意の他の回路を用いて実現してもよい。
【0029】
この実施形態では、メモリ装置410は、コンピュータ実行可能命令及び/または他のデータなどの情報を格納及び検索することを可能にする1以上のデバイスである。メモリ装置410としては、1以上のコンピュータ可読媒体、これに限定しないが、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ソリッドステートディスク、及び/または、ハードディスクなどが挙げられる。メモリ装置410は、これに限定しないが、アプリケーションソースコード、アプリケーションオブジェクトコード、関心のあるソースコード部分、関心のあるオブジェクトコード部分、構成データ、実行イベント、及び/または、任意の他のタイプのデータを格納するように構成され得る。
【0030】
この実施形態では、コンピュータ装置400は、プロセッサ415に接続されたプレゼンテーションインターフェース420を備える。プレゼンテーションインターフェース420は、ユーザ425に情報を提示する。例えば、プレゼンテーションインターフェース420としては、陰極線管、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LED(OLED)ディスプレイ、及び/または、「電子インク」ディスプレイなどのディスプレイデバイスに接続されるディスプレイアダプタ(図示せず)が挙げられる。いくつかの実施形態では、プレゼンテーションインターフェース420には、1以上の表示装置が含まれる。本明細書に記載の実施形態を用いて処理された入力信号及び/またはフィルタリングされた信号は、プレゼンテーションインターフェース420に表示され得る。
【0031】
この実施形態では、コンピュータ装置400は、ユーザ入力インターフェース435を備える。ユーザ入力インターフェース435は、プロセッサ415に接続され、ユーザ425から入力を受け取る。ユーザ入力インターフェース435としては、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、マウス、スタイラス、タッチセンサパネル(例えば、タッチパッドまたはタッチスクリーン)、ジャイロスコープ、加速度計、位置検出器、及び/または、オーディオユーザ入力インターフェースが挙げられる。タッチスクリーンなどの単一のコンポーネントは、プレゼンテーションインターフェース420とユーザ入力インターフェース435との両方の表示装置として機能することができる。
【0032】
この実施形態では、コンピュータ装置400は、プロセッサ415に接続された通信インターフェース440を備える。通信インターフェース440は、1以上の遠隔装置と通信する。遠隔装置と通信するために、通信インターフェース440は、例えば、有線ネットワークアダプタ、無線ネットワークアダプタ、及び/または移動通信アダプタを含み得る。
【0033】
図5は、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化する方法500の一実施形態のフローチャートである。本方法500は、様々な進化を遂げた遺伝的アルゴリズムまたは探索ヒューリスティックを利用する。遺伝的アルゴリズムなどの進化的最適化アルゴリズムは、直接分析することが困難で時間のかかる複雑な問題に対する最適解を求める技術である。このような技術は、積層板型共振器の回路設計などの回路設計において、異なる構成要素間の相互関係によって回路が比較的複雑である場合でも、複数のパラメータについての問題を一度に最適化するために使用することができる。
【0034】
最適化アルゴリズムの利点の1つは、最適化を定義するために閉形式の方程式を確立することなく、複雑なシステムを解くために使用できることである。したがって、最適化を実現するために、モデル化されたシステム内の相互作用を完全にまたは包括的に理解する必要はない。
【0035】
上述したように、無線電力伝送システムは、送信共振器として機能する第1の積層板型共振器と、受信共振器として機能する第2の積層板型共振器とを備える。本方法500は、このような無線電力伝送システムのための最適化式を生成することを容易にする。本実施形態では、回路構成を固定し、設計パラメータを変更することによって、最適化を容易にすることができる。
【0036】
本方法は、コンピュータ装置400を使用して、無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップ502を含む。図3A及び図3Bを再び参照して、無線電力伝送システムにおける積層板型共振器300は、複数の設計パラメータによって定義される。本実施形態で使用される設計パラメータとしては、例えば、送信共振器及び受信共振器のうちの少なくとも一方における、誘電層322の厚さ、誘電層322の誘電率、誘電層322の内径、誘電層322の外径、誘電層322の数、導電層324の厚さ、導電層324の角スパン、導電層324の数、導電層324の内径、及び、導電層324の外径が挙げられる。当業者であれば、追加の及び/または別の設計パラメータを使用できることを理解するであろう。
【0037】
例えば、設計パラメータは、無線電力伝送システムに含まれる非線形電子部品に関連し得る。例えば、設計パラメータは、アクティブ整流に使用される電界効果トランジスタ(FET)に関連するものであり得る。電界効果トランジスタ(FET)は、一定のオーム伝導損失(すなわち、電流の2乗に比例する)を有するが、大きなスイッチング損失及びダイオード伝導損失(電流に線形比例する)も有する。したがって、設計パラメータは、可能性があるFETのライブラリからFETを選択することを含み得る(そして、これらを以下に説明する「組み合わせる(mating)」に含める)。さらに、設計パラメータは、様座なスイッチング・ストラテジ(例えば、ゼロ電流スイッチング)を含み得る。別の例では、設計パラメータは、ダイオードのライブラリからダイオード(例えば、パッシブ整流用)を選択することを含み得る。さらに別の例では、設計パラメータは、入力電圧の生成(例えば、パルス幅変調電圧を生成するために使用されるデューティサイクルの特性)に関連し得る。
【0038】
生成された設計パラメータの複数のセットの各々は、1以上の設計パラメータ(例えば、上記の1以上の設計パラメータ)に対してランダムに選択された値を含む。設計パラメータの複数のセットは、コンピュータ装置400を使用して自動的に生成することができる。各セットにおける1以上の設計パラメータの値は、コンピュータ装置400を使用して、所定の範囲内でランダムに選択することができる。例えば、誘電層322の厚さ及び導電層324の厚さの値は、0~200μmの範囲内でランダムに選択することができる。いくつかの実施形態では、上記の所定の範囲は、ユーザが指定してもよい(例えば、コンピュータ装置400へのユーザ入力により指定してもよい)。
【0039】
本方法500はさらに、生成された設計パラメータの複数のセットのうちの1セットの設計パラメータを選択するステップ504を含む。1セットの設計パラメータは、コンピュータ装置400を使用して、そのセットについて計算された効率(性能)に基づいて自動的に選択することができる。すなわち、生成された設計パラメータの各セットについて、コンピュータ装置400は、そのセットを含む無線電力システムの動作をシミュレートし、シミュレートされた動作に基づいてそのセットの無線電力伝送効率を計算することができる。そして、コンピュータ装置は、計算された効率が最も高いセットを選択する。
【0040】
本方法500はさらに、選択されたセットに基づいて無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップ506を含む。無線電力伝送システムは、実際の物理的なシステムではなく、本明細書に記載するように、モデル化及びシミュレーションの目的で使用される無線電力伝送システムのデジタル表現(例えば、メモリ装置410に記憶される)である。一実施形態では、無線電力伝送システムの初期集団は、選択されたセットにおける設計パラメータの1以上の値を、コンピュータ装置を使用して、ランダムに変化させることによって生成される。この場合も、設計パラメータの値は、所定の範囲内で変化させることができる。無線電力伝送システムの初期集団は比較的多い(例えば、少なくとも1万の異なる無線電力伝送システムを含む)。
【0041】
本方法500はさらに、コンピュータ装置400を使用して、初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップ508を含む。一実施形態では、無線電力伝送システムの評価は、各無線電力伝送システムのスコアを計算することを含む。例えば、各無線電力伝送システムの動作をシミュレーションし、その結果から、無線電力伝送の効率、電圧利得、入力電流、受信共振器での電力損失、及び、受信共振器での電圧などのうちの少なくとも1つに基づいて、合計スコアを計算することができる。すなわち、合計スコアは、複数のサブスコアを合計することによって計算することができ、各サブスコアは、異なる成分(例えば、無線電力伝送の効率、電圧利得など)のうちの1つに関連する。さらに、スコアを計算する際に、異なる成分を異なる重み付けをして、異なるサブスコアが異なる重み付けを有するようにしてもよい。例えば、無線電力伝送の効率は、受信共振器の電圧よりも大きく重み付けしてもよい。当業者であれば、任意の適切なスコアリング方法を用いて、初期集団内の各無線電力伝送システムを評価できることを理解するであろう。
【0042】
本方法500は、コンピュータ装置400を使用して、初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、無線電力伝送システムの次集団を生成するステップ510をさらに含む。例えば、所定の閾値(例えば、無線電力伝送システムが比較的良好に動作することを示す閾値)を超えるスコアが割り当てられた初期集団内の全ての無線電力伝送システムの設計パラメータ値をランダムに変化させることによって、次集団を生成することができる。あるいは、次集団は、所定の数の無線電力伝送システム(例えば、最良のスコアを有する無線電力伝送システム、最良のスコアを有する10の無線電力伝送システム、最良のスコアを有する50の無線電力伝送システムなど)の設計パラメータ値を、そのシステムのスコアに基づいてランダムに変化させることによって生成することができる。さらに別の実施形態では、次集団は、無線電力伝送システムをランダムに「組み合わせて(mating)」して、「子(child)」の無線電力伝送システムを生成することによって(例えば、両方が好ましいスコアを有する異なる無線電力伝送システム間で設計パラメータ値をランダムに交換することによって)、生成することができる。別の実施形態では、アルゴリズムが局所最適に収束するのを避けるために、互いに比較的多様な初期集団からの無線電力伝送システムを用いて、次集団を生成することができる。
【0043】
さらに別の実施形態では、無線電力伝送システムのパラメータを、そのシステムのサブスコアに基づいて組み合わせる及び/または変更することによって、次集団を生成することができる。例えば、電圧利得のサブスコアが比較的低いが、電力伝送効率のサブスコアが比較的高い無線電力伝送システムがあるとする。このようなシステムの合計スコアは中程度になる(電圧利得のサブスコアが低いことに起因して)。しかしながら、電力伝送効率のサブスコアが比較的高いことから、この無線電力伝送システムを用いて次集団を生成することは、依然として有益であり得る。
【0044】
次集団の生成後、コンピュータ装置400を使用して、次集団から、候補となる無線電力伝送システムを選択する(例えば、無線電力伝送の効率、電圧利得、入力電流、受信共振器での電力損失、受信共振器での電圧などに基づいて選択する)。次集団を生成する上記のステップ510に起因して、候補となる無線電力伝送システムが望ましい動作特性を有する可能性は高い。したがって、候補となる無線電力伝送システムに基づいて、物理的な無線電力伝送システムを製造することができる(ステップ514)。このステップ514における物理的な無線電力伝送システムの製造には、新しい無線電力伝送システムを製造すること、または、既存の無線電力伝送システムを改変することが含まれる。
【0045】
あるいは、次集団を生成する上記のステップ510の後、次集団内の各無線電力伝送システムを評価して(ステップ508と同様に)、さらなる次集団を生成してもよい(ステップ510と同様に)。当業者であれば、物理的な無線電力伝送システムを製造するステップ514のための候補となる無線電力伝送システムを選択するステップ512の前に、次集団を評価してさらなる次集団を生成する上記のステップを任意の回数繰り返してもよいことを理解するであろう。一般に、次集団を評価してさらなる次集団を生成する上記のステップを繰り返す数が多くなるほど、候補となる無線電力伝送システムの特性がより望ましいものとなる(なぜなら、アルゴリズムは一般に、繰り返す回数が多くなるほど、より良好な集団を生成するからである)。いくつかの実施形態では、候補となる無線電力伝送システムは、部分的に重複するが異なる共振周波数範囲を有する中継共振器及び受信共振器を備える。
【0046】
様々な実施形態では、最適化アルゴリズムは、上述の任意の技術の任意の組み合わせを利用する。
【0047】
本開示は、積層板型共振器を備える無線電力伝送システムをモデル化するシステム及び方法に関する。本開示の方法は、コンピュータ装置を使用して、無線電力伝送システムの設計パラメータの複数の異なるセットを生成するステップであって、無線電力伝送システムは、送信共振器及び受信共振器を備え、送信共振器及び受信共振器の各々は、ポスト部を有する磁性コアと、ポスト部を囲むように積層された複数の交互誘電層及び導電層とを含む、該ステップを含む。本開示の方法は、さらに、コンピュータ装置を使用して、生成された設計パラメータの複数の異なるセットのうちの1つのセットを選択するステップと、コンピュータ装置を使用して、選択された1つのセットに基づいて、無線電力伝送システムの初期集団を生成するステップと、コンピュータ装置を使用して、初期集団内の各無線電力伝送システムを評価するステップと、コンピュータ装置を使用して、初期集団内の各無線電力伝送システムの評価に基づいて、無線電力伝送システムの次集団を生成するステップと、を含む。
【0048】
本明細書に開示される実施形態及び実施例を、特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本開示の原理及び適用の単なる例示であることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態及び実施例に対して様々な変更を加えること、及び、他の構成を考案できることを理解されたい。したがって、本出願は、これらの実施形態及びその均等物の改変及び変形を包含することを意図している。
【0049】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ、本発明を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに組み込まれた任意の方法の実施を含む)することを可能にする。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、当業者が想到可能な別の実施形態も含まれ得る。そのような別の実施形態は、各請求項の文言と相違しない構成要素を含む場合、または、各請求項の文言とは実質的に相違しない均等な構成要素を含む場合、その請求項の範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】