(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】構造化照明のための位相マスク
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20230406BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550229
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 US2021018202
(87)【国際公開番号】W WO2021167896
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522330832
【氏名又は名称】サーモ エレクトロン サイエンティフィック インスツルメンツ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】THERMO ELECTRON SCIENTIFIC INSTRUMENTS LLC
【住所又は居所原語表記】Legal Dept.,IP Docketing,5225 Verona Road,Madison,Wisconsin 53711,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ジョージアディス,マイケル
【テーマコード(参考)】
2H052
2H149
【Fターム(参考)】
2H052AA08
2H052AA09
2H052AC11
2H052AC15
2H052AC33
2H052AC34
2H052AF14
2H149AA00
2H149DA01
2H149FA42Y
2H149FC01
2H149FC02
(57)【要約】
基板上に配置された光遮断層を備える位相マスクであって、光遮断層は、第1のパターンとして各々が構成されたいくつかの光透過性領域を有する、位相マスクの一実施形態を記載する。第1のパターンは、互いに異なる位相構成を有する2つのセグメントを含み、光遮断層は、第1のパターンの少なくとも3つの角度配向を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相マスクであって、
基板と、
異なる位相構成を有する2つのセグメントを含む第1のパターンとして各々が構成された複数の光透過性領域を有する、前記基板上に配置された光遮断層であって、前記光遮断層は、前記第1のパターンの3つの角度配向を含む、光遮断層と、を備える、位相マスク。
【請求項2】
前記基板が、光学的に透明なガラスを含む、請求項1に記載の位相マスク。
【請求項3】
前記光学的に透明なガラスが、BK7ガラスを含む、請求項2に記載の位相マスク。
【請求項4】
前記光学的に透明なガラスが、反射防止コーティングを備える、請求項2に記載の位相マスク。
【請求項5】
前記光遮断層が、前記基板上に配置されたクロム層を含む、請求項1に記載の位相マスク。
【請求項6】
前記複数の光透過性開口部が、前記基板上に放射状に分布している、請求項1に記載の位相マスク。
【請求項7】
前記複数の光透過性開口部が、前記第1のパターンの6つのインスタンスを含む、請求項1に記載の位相マスク。
【請求項8】
前記6つのインスタンスが、各角度配向にある、前記第1のパターンの2つのインスタンスを含む、請求項7に記載の位相マスク。
【請求項9】
前記2つのセグメントの各々が、円弧形状を有する第1の側と、実質的に線形状を含む第2の側とを備える円形セグメントを含む、請求項1に記載の位相マスク。
【請求項10】
前記3つの角度配向が、0、π/3、および2π/3の角度を含む、請求項1に記載の位相マスク。
【請求項11】
第1のセグメントの前記位相構成が、ゼロの位相遅延を含み、第2のセグメントの前記位相構成は、πの位相遅延を含む、請求項1に記載の位相マスク。
【請求項12】
前記第2のセグメントが、前記第1のセグメントよりも長い光路長を含む、請求項11に記載の位相マスク。
【請求項13】
前記第2のセグメントが、材料コーティングを備える、請求項12に記載の位相マスク。
【請求項14】
共焦点顕微鏡であって、
光ビームを生成するように構成された光源と、
位相マスクであって、
基板、および
異なる位相構成を有する2つのセグメントを含む第1のパターンとして各々が構成された複数の光透過性領域を有する、前記基板上に配置された光遮断層であって、前記光遮断層は、前記光ビームに対して、前記第1のパターンの3つの角度配向を含む、光遮断層、を備える、前記位相マスクと、
前記位相マスクに動作可能に結合され、前記位相マスクを動かして、前記光透過性開口部を前記光ビームの経路内に配置するように構成されたデバイスと、を備える、共焦点顕微鏡。
【請求項15】
前記複数の光透過性開口部が、前記第1のパターンの6つのインスタンスを含む、請求項14に記載の共焦点顕微鏡。
【請求項16】
前記6つのインスタンスが、各角度配向にある、前記第1のパターンの2つのインスタンスを含む、請求項15に記載の共焦点顕微鏡。
【請求項17】
前記3つの角度配向が、0、π/3、および2π/3の角度を含む、請求項14に記載の共焦点顕微鏡。
【請求項18】
第1のセグメントの前記位相構成が、ゼロの位相遅延を含み、第2のセグメントの前記位相構成は、πの位相遅延を含む、請求項14に記載の共焦点顕微鏡。
【請求項19】
前記第2のセグメントが、前記第1のセグメントよりも長い光路長を含む、請求項18に記載の共焦点顕微鏡。
【請求項20】
前記第2のセグメントが、材料コーティングを備える、請求項19に記載の共焦点顕微鏡。
【請求項21】
共焦点顕微鏡であって、
光ビームを生成するように構成された光源と、
試料からの光に応答して信号を生成するように構成された検出器と、
位相マスクであって、
基板、および
異なる位相構成を有する2つのセグメントを含む第1のパターンとして各々が構成された複数の光透過性領域を有する、前記基板上に配置された光遮断層であって、前記光遮断層は、前記光ビームに対して、前記第1のパターンの3つの角度配向を含む、光遮断層、を備える、前記位相マスクと、
前記位相マスクに動作可能に結合され、前記位相マスクを動かして、前記光透過性開口部を、前記試料からの前記光ビームの経路内に配置するように構成されたデバイスと、を備える、共焦点顕微鏡。
【請求項22】
前記試料からの前記光が、前記光ビームと前記試料との相互作用から生成される、請求項21に記載の共焦点顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年2月19日に出願された米国特許出願第62/978,351からの優先権を主張し、すべての目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、構造化照明顕微鏡検査のための干渉縞パターンを生成するように構成された位相マスクを対象とする。
【背景技術】
【0003】
様々な蛍光顕微鏡について、構造化照明顕微鏡検査(SIM)システムが市販されていると、一般に理解される。しかしながら、これらのSIMシステムは、典型的には、「広視野」照明を使用する。本明細書で使用される場合の「広視野照明」という用語は、概して、対物レンズ要素に入る前に、光源からのコリメート光を集束レンズを通して送ることによる、大きな試料領域の照明を指す。蛍光画像化の通常の目的は、スペクトル全体を収集することではなく、対象の波長の発光光を単にフィルタリングして、それをカメラに導くことである。典型的には、広視野顕微鏡検査は、様々な蛍光画像化用途に好適であるが、共焦点顕微鏡が優れている場合もある。共焦点顕微鏡は、(ときにはアパーチャとも称される)ピンホールを利用して、焦点が合っていない光を排除し、それによって、画像化を大幅に改善し、厚い試料を通しての画像化には得に有用である。共焦点画像は、(広視野画像化のように)広い領域ではなく、ピクセルごとに構築されるので、共焦点顕微鏡検査は、発光または散乱光をピンホール下流の分光器に送ることができるがゆえに、分光画像化によく適合している。共焦点顕微鏡検査の特定の用途には、厚くて、かつ不均一な試料を用いた蛍光セクショニングと、ラマン顕微鏡検査の画像化の場合などのハイパースペクトル画像化と、が挙げられる。
【0004】
共焦点顕微鏡におけるSIMの適用の一例が、2020年4月1日に出願された「Enhanced Sample Imaging Using Structured Illumination Spectroscopy」と題された米国出願第16/837,512号に記載されており、すべての目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、‘512出願は、典型的には干渉縞(例えば、光が同相または異相であることに起因する、均一な間隔の交互の明暗の帯のパターン)と称されるものは、集束ビームよりも細かい周期性を有することができるということを利用する干渉縞パターンを使用して、試料をポイントごとに複数回、走査することを記載している。‘512出願は、空間光変調器(Spatial Light Modulator)と称されるものを使用して干渉縞パターンを生成することを記載している。
【0005】
当業者は、SLMの実施形態が、よく知られており、照明ビームの強度および位相の両方を空間的に変調することができ、それは、共焦点-構造化照明併用顕微鏡検査用途に重要であることを理解している。しかしながら、SLMは、任意のパターンの強度および位相を生成するための優れたデバイスであるが、一般に、商品化された製品で使用するには劣等なデバイスである。例えば、SLMの実施形態は、一般に、法外に高価であり、光パワーを非効率的に利用し、様々な複雑な光学的および電子的オーバーヘッドを必要とする。
【0006】
したがって、照明ビームの強度および位相を空間的に変調することができ、SLMの欠点を被らないデバイスの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
これらおよび他の必要性に対処するシステム、方法、および製品は、例示的、非限定的な実装に関して本明細書に説明される。様々な代替、変更、および等価物が可能である。
【0008】
基板上に配置された光遮断層を備える位相マスクであって、光遮断層は、第1のパターンとして各々が構成されたいくつかの光透過性領域を有する、位相マスクの一実施形態が説明される。第1のパターンは、互いに異なる位相構成を有する2つのセグメントを含み、光遮断層は、第1のパターンの少なくとも3つの角度配向を含む。
【0009】
いくつかの実装態様では、基板は、BK7ガラスを含み得る光学的に透明なガラスで構築される。光学的に透明なガラスはまた、反射防止コーティングも含み得、光遮断層は、基板上に配置されたクロム層を含むことができる。さらに、光透過性開口部が、基板上に放射状に分布され得、場合によっては、第1パターンの6つのインスタンスが周りに分布され、各角度配向に、第1パターンの2つのインスタンスを有する。
【0010】
また、2つのセグメントは、円形セグメントとして構成され得、円形セグメントは、いくつかの実装態様では、円弧形状の第1の側と実質的に直線形状の第2の側とを有することができる。第1のパターンの3つの角度配向は、0、π/3、および2π/3の角度を含み得る。加えて、第1のセグメントの位相構成はゼロの位相遅延を含み得、第2のセグメントの位相構成はπの位相遅延を含み得、第2のセグメントは第1のセグメントよりも長い光路長を有し得る。いくつかのインスタンスでは、これは、第2のセグメントに材料をコーティングを有して達成される。
【0011】
さらに、光ビームを生成するように構成された光源と、位相マスクとを含む共焦点顕微鏡の一実施形態が記載される。位相マスクは、基板上に配置された光遮断層を有し、光遮断層は、第1のパターンとして各々が構成されたいくつかの光透過性領域を有する。第1のパターンは、互いに異なる位相構成を有する2つのセグメントを含み、光遮断層は、第1のパターンの少なくとも3つの角度配向を含む。共焦点顕微鏡はまた、位相マスクに動作可能に結合されて、位相マスクを動かして、光透過性開口部を光ビームの経路内に配置するデバイスも含む。
【0012】
いくつかの実装態様では、光透過性開口部は、第1のパターンの6つのインスタンスを含み、各角度配向に、第1のパターンの2つのインスタンスを有する。場合によっては、3つの角度配向は、0、π/3、および2π/3の角度を含み、ゼロの位相遅延を含む第1のセグメントのための位相構成と、πの位相遅延を含む第2のセグメントのための位相構成とを含み得る。位相構成は、場合によっては第2のセグメント内の材料コーティングを使用して達成され得る、第1のセグメントよりも長い光路長を有する第2のセグメントを含むことができる。
【0013】
加えて、光ビームを生成するように構成された光源、試料からの光に応答して信号を生成するように構成された検出器、および位相マスクを含む共焦点顕微鏡の一実施形態が記載される。位相マスクは、基板上に配置された光遮断層を有し、光遮断層は、第1のパターンとして各々が構成されたいくつかの光透過性領域を有する。第1のパターンは、互いに異なる位相構成を有する2つのセグメントを含み、光遮断層は、第1のパターンの少なくとも3つの角度配向を含む。共焦点顕微鏡はまた、位相マスクに動作可能に結合されて、位相マスクを動かして、光透過性開口部を、試料からの光路内に配置するデバイスも含む。
【0014】
いくつかの実装態様では、試料からの光は、光ビームと試料との相互作用から生成される。
【0015】
上記の実施形態および実装は、必ずしも互いに包含的または排他的ではなく、それらが、同一または異なる、実施形態または実装と関連して提示されているか否かにかかわらず、矛盾せず、かつ別様に可能な任意の様式で組み合わせられ得る。1つの実施形態または実装態様の説明は、他の実施形態および/または実装態様に関して限定的であることを意図するものではない。また、この明細書の他の箇所に説明されているいかなる1つ以上の機能、ステップ、動作、または技術も、代替実装態様において、発明の概要に説明されたいかなる1つ以上の機能、ステップ、動作、または技術とも組み合わせられ得る。したがって、上記の実施形態および実装態様は、限定的ではなく、例示的である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
上記およびさらなる特徴は、添付の図面と併せて読まれたときに、以下の詳細な説明からより明確に理解されよう。図面において、類似の参照番号は、類似の構造、要素、または方法ステップを示し、参照番号の左端の数字は、参照要素が最初に現れる図の番号を示す(例えば、要素110は、
図1の最初に現れる)。しかしながら、これらの規則のすべては、限定ではなく、典型的または例示的であることを意図している。
【0017】
【
図1】コンピュータと通信する共焦点顕微鏡の1つの実施形態の機能ブロック図である。
【
図2】位相マスクを有する
図1の共焦点顕微鏡の1つの実施形態の簡略図式表示である。
【
図3】基板上の光遮断層の複数のパターンを示す、
図2の位相マスクの1つの実施形態の上面図の簡略図式表現である。
【
図4】基板を保持するベースおよび締結具を示す、
図3の位相マスクの1つの実施形態の側面図の簡略図式表現である。
【
図5】
図3の位相マスクを使用して収集された画像と、標準的な共焦点構成を使用して収集された画像との比較の簡略図式表現である。
【
図6】
図3の位相マスクを使用して収集された画像と、標準的な共焦点構成を使用して収集された画像との比較の簡略図式表現である。
【0018】
同様の参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下でより詳細に説明するように、説明される発明の実施形態は、照明ビームの強度および位相を空間的に変調するように構成された位相マスクを含む。より具体的には、位相マスクは、ラマン分光法および/または蛍光分光法に対応した共焦点顕微鏡を使用するSIMのために構成されている。
【0020】
図1は、コンピュータ110および顕微鏡120と相互作用することができるユーザ101の、簡略化された例示的な実施例を提供する。共焦点顕微鏡120の実施形態は、様々な市販の顕微鏡を含み得る。例えば、共焦点顕微鏡120は、Thermo Fisher Scientificから入手可能なDXR共焦点対応ラマン顕微鏡を含み得る。
図1はまた、コンピュータ110と共焦点顕微鏡120との間のネットワーク接続も示しているが、
図1は、例示的であることが意図され、追加またはより少ないネットワーク接続が含まれ得ることが理解されるであろう。さらに、要素間のネットワーク接続は、(例えば、稲妻形で表されているような)「直接の」有線または無線データ送信、および他のデバイス(例えば、スイッチ、ルータ、コントローラ、コンピュータ、その他)を介した「間接的な」通信を含み得、したがって、
図1の実施例は、限定的なものと見なされるべきではない。
【0021】
コンピュータ110は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、タブレット、「スマートフォン」、1つ以上のサーバ、コンピュートクラスタ(ローカルもしくはリモート)、または他の現在もしくは将来のコンピュータもしくはコンピュータクラスタなどの、任意のタイプのコンピューティングプラットフォームを含み得る。コンピュータは、典型的には、1つ以上のプロセッサ、オペレーティングシステム、システムメモリ、メモリ記憶デバイス、入出力コントローラ、入出力デバイス、およびディスプレイデバイス等の既知の構成要素を含む。コンピュータ110の1つよりも多い実装が、異なる実施形態において様々な動作を実行するために使用されてもよく、したがって、
図1のコンピュータ110の表現が、限定と見なされるべきではないこともまた理解されよう。
【0022】
いくつかの実施形態では、コンピュータ110は、制御ロジック(例えば、プログラムコードを含むコンピュータソフトウェアプログラム)をその中に記憶しているコンピュータ使用可能媒体を含むコンピュータプログラム製品を採用し得る。制御ロジックは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに本明細書に説明されている一部または全ての機能を実施させる。他の実施形態では、いくつかの機能は、例えばハードウェアステートマシンを使用して、主にハードウェアに実装される。本明細書に説明されている機能を実行するようなハードウェアステートマシンの実装態様は、当業者には明らかであろう。また、同じまたは他の実施形態では、コンピュータ110は、ネットワークを介してリモート情報にアクセスすることを可能にされた専用ソフトウェアアプリケーションを含み得るインターネットクライアントを採用し得る。ネットワークは、当業者には周知の多くのタイプのネットワークのうちの1つ以上を含み得る。例えば、ネットワークは、通信するために一般にTCP/IPプロトコルスイートと称されるものを採用し得るローカルまたはワイドエリアネットワークを含み得る。ネットワークは、一般にインターネットと称される世界的な相互接続コンピュータネットワークシステムを含んでもよいし、または様々なイントラネットアーキテクチャを含むこともできる。当業者はまた、ネットワーク環境内の一部のユーザは、(ときには、パケットフィルタ、または境界保護デバイスとも称される)一般的に「ファイアウォール」)と称されるものを採用して、ハードウェアおよび/またはソフトウェアシステムに出入りする情報トラフィックを制御することを好む場合があることを理解するであろう。例えば、ファイアウォールは、ハードウェアもしくはソフトウェア要素、またはそれらの組み合わせを含んでもよく、典型的には、例えば、ネットワーク管理者等のユーザによって設定されたセキュリティポリシーを執行するように設計されている。
【0023】
本明細書に記載されるように、説明される発明の実施形態は、共焦点顕微鏡でのSIMのための位相マスクを含む。説明される実施形態では、位相マスクは、SIMを使用するラマン分光法および/または蛍光分光法に特に有用である。例えば、上述したように、位相マスクは、SLMよりも実質的に高いレベルの効率およびより低いコストを有し、実装するのも容易である(例えば、位相マスクは、効果的に動作するために、SLMが必要とする追加の光学部品およびソフトウェアを必要としない)。
【0024】
図2は、位相マスク200を含む共焦点顕微鏡120の簡略化された例示的な実施例を提供する。共焦点顕微鏡120は、光ビーム217を生成する光源215など、市販の共焦点顕微鏡に典型的に見られる要素を含む。光源215は、レーザー、発光ダイオード(LED)、広帯域、または当業者には知られている他のタイプの光源を含むがこれらに限定されない、共焦点顕微鏡検査に使用される任意のタイプの光源を含み得る。共焦点顕微鏡120の実施形態はまた、特定の波長範囲の光を対物レンズ227および試料205に選択的に反射し、かつ特定の波長範囲内で透過性であって、光が通過して、レンズ229に至り、アパーチャ223(例えば、「ピンホール」タイプのアパーチャ)を通って検出器235に至ることを可能にする、ビームスプリッタ225も含み得る。検出器235は、CCD、光電子増倍管、または当業者には知られている他のタイプの検出器など、市販の共焦点顕微鏡で典型的に見られる任意のタイプの検出器を含み得る。関連技術の当業者は、
図2が例示の目的で提供されていること、ならびに共焦点顕微鏡120の他の要素および/または構成が、説明される発明の範囲内にあるとみなされることも理解するであろう。例えば、検出器235に到達する前に、光は、まず、光をスペクトルに分光するための分光器を通過し得る。
【0025】
図2の実施例では、位相マスク200は、光ビーム217の経路内に配置されて、試料205に送達される励起光をパターン化する。しかしながら、位相マスク200は、光219の経路内に配置されて、試料205から検出器235への光(例えば、光ビーム217と試料205との相互作用の結果として放出、散乱などされた光)をパターン化できることも理解されよう。
【0026】
図3は、位相マスク200の上面図の例示的な実施例を提供する。位相マスク200の実施形態は、既知の光学特性を有する光透過性材料から構築された基板307を含む。例えば、基板307は、良好な光学的および機械的特性を有し、化学的および環境的な損傷に耐性である「クラウンガラス」と称されるものなど、レンズおよび他の光学部品に使用されるタイプの光学ガラスから構築された60mm×60mmのエリアを含み得る。位相マスク200に有用な1つの特定のタイプのクラウンガラスは、Schott AGから入手可能なBK7ガラスなど、ホウケイ酸添加物を含むガラスを含む。
【0027】
図3に示されたように、基板307は、基板307を通る光の透過を遮断することができる任意のタイプの構成を含み得る光遮断領域305を含む。1つの実施例は、(例えば、上面または底面であり得る)基板307の表面上に、クロム材料層の堆積を備える構成を含む。また、
図3は、光遮断領域305を実質的に円形のリングとして示しているが、リング構成は例示的であり、他の構成が利用され得ることが理解されよう(例えば、一方の側の基板307の表面積のかなりの部分が、光遮断領域305を含んでもよいし、または光遮断領域305は、線形ストリップとして構成されてもよい)。
【0028】
さらに、
図3は、パターン310として示されている、光遮断領域305内の複数の光透過性領域を示す。上述したように、
図3に示されたような、光遮断領域305のリング構成および各パターン310の各々の構成は、例示的であり、限定的である見なされるべきではない。いくつかの実施形態では、パターン310は、線形ストリップ状の光遮断領域310を含んでもよいし、または上述したように、パターン310の構成が実質的に線形であり得る、基板307の表面の表面積のかなりの部分を含んでもよい。例えば、リングまたは線形構成では、パターン310は、約4mm×4mmのパターン被覆領域を含み得る。線形の実施形態では、これは、約4mm×24mmで構成される線形構成の光遮断領域305を含み得る。
【0029】
図3はまた、ナット/ボルト構成または当業者には知られている任意の他の締結具構成を含み得る締結具320も示す。
図4は、ベース405に動作可能に結合された締結具320によって適所に保持されている実質的に平坦な構成および実質的に一貫した厚さを有する基板307を含む位相マスク200の側面図を示す。いくつかの実施形態では、ベース405は、締結具320の周りで軸を中心に位相マスク200を回転させるモータ(例えばステッパモータ)などの並進デバイスに、位相マスク200を動作可能に接続するためのクランプ機構を利用する。位相マスク200が線形構成のパターン310を含む実施形態では、並進デバイスは、位相マスク200に線形運動を提供するように構築および構成される。並進デバイスは、ピエゾ、その他など、関連技術で知られている他のタイプの要素を含み得ることも理解されよう。
【0030】
さらに、
図3は、(例えば、パターン310のインスタンスが光路内に配置されるときの)光ビーム217の光路に対して様々な角度にあるパターン310の6つのインスタンスを示すパターン310の各インスタンスは、位置インジケータ303によって示される光遮断領域305の位置にある。光遮断領域305はまた、位置インジケータ303によって示される第1の位置に、光ビーム217の実質的にすべてが基板307を通過することを可能にするように実質的に円形であるパターン313を含み、そして、位置インジケータ303によって示される位置2に、光ビーム217の実質的にすべてが基板307を通過するのを遮断する、光透過パターンのない領域を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、位相マスク200は、3つの角度配向を含み、角度ごとにパターン310の2つのインスタンス、つまり、堆積層セグメント315および基板セグメント317を含むパターン310の1つのインスタンスと、基板セグメント317が2つ出現するパターン310の第2のインスタンスとが存在する。また、パターン310は、ときには「円形セグメント」と称され得る、「スリット」形状要素(例えば、スリットは細長い開口部を含む)として構成された2つのセグメントを含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、パターン310の円形セグメントの直径は、対物レンズ227の後方アパーチャ直径に整合される。例えば、Olympus100x0.9NAでは、その直径は>=3.24mmになり、長い動作距離のOlympus100x0.8NAでは、その直径は>=2.88mmになる。また、ここで説明されている実施例では、各円形セグメントの一方の側は、例えば実質的に円形状(例えば、円の約1/4)などの円弧形状を有し得、第2の側は実質的に直線である。
【0032】
重要なことは、パターン310のいくつかのインスタンスでは、パターン310の2つのセグメント間に光路長差があることである。換言すれば、セグメントは、通過する光に位相差を生じさせる互いに異なる光路長を有する(例えば、より長い光路長を有するセグメントは、それを通過する光ビーム217の一部分に、より短い光路長を有するセグメントに対して位相遅延を生成する)。いくつかの実施形態では、光路差は、基板307のみを含むパターン310の基板セグメント317と比較したとき、基板307と組み合わされて、より長い光路を含む堆積層セグメント315を生成するための、パターン310のセグメントのうちの一方における、基板307(例えば、基板307は一貫した厚さを有する2つの実質的に平坦な表面を備える)上への追加材料の堆積を使用して生成され得る。堆積材料は、基板307と同じ材料または他の好適な材料であり得る。代わりに、または堆積と組み合わせて、セグメント内の基板307からの材料の除去を使用して、パターン310のセグメントのうちの一方の光路長を短くしてもよい。
【0033】
例えば、基板307に使用されるBK7ガラスと空気との間の屈折率差は、パターン310のセグメント間に、ある光路差を生み出す。BK7ガラスの屈折率は、532nmの励起波長で1.52であるので、光は、空気中よりもBK7を通してよりゆっくり進む。したがって、光路差は、セグメントのうちの一方の上のBK7の制御堆積によって生成することができる。当業者は、nを屈折率とし、dを長さとすると、d1=d2の場合(例えば、光が、BK7を通過するときと同じ距離を空気中で進む場合)、光路差(OPD)は、n1*d-n2*dに等しくなる(d=OPD/(n1-n2)とも表し得る)。本実施例では、532nmの励起波長において、n1は、空気に対する1.0003であり、n2は、BK7に対する1.52である(例えば、値は波長に依存する)。SIM用途では、セグメント間のπ位相差が非常に望ましく、それは、532nmの励起波長に対して266nmのOPDに相当する。dについて解くと、セグメントのうちの一方に厚さ512nmでBK7材料を堆積させると、所望のπ位相差が生成される。したがって、光ビーム217の部分が、基板セグメント317、および512nmのBK7ガラスのコーティングを含む堆積層セグメント315を通過するとき、セグメント315および317を通過する光の間の位相差はπになる。
【0034】
図3に示された実施形態では、パターン310の6つのインスタンスは、0、π/3、および2π/3の3つの異なる角度を含み、各角度に対して、パターン310は、0の位相遅延を有する基板セグメント317およびπの位相遅延を有する堆積層セグメント315を含む。説明された実施形態では、パターン310の6つのインスタンスは、各インスタンスが光ビーム217の光路内に配置される(例えば、
図3に示されたような円形構成の場合には光路内に回転されるか、または線形構成では線形に並進される)ときに、光ビーム217がパターン310の各インスタンスを連続的に通過することを可能にすることによって、構造化照明を実行するのに有用である。例えば、画像を処理するために位相マスク200およびコンピュータ110が装備された共焦点顕微鏡120の実施形態は、SIMを実装して、試料を画像化し、典型的な共焦点顕微鏡の回折限界300nmに対して2倍の改善である150nmの空間分解能を得ることができる。
【0035】
図5は、位相マスク200を使用して収集されたSIM-ラマン画像510および関連SIM-ラマンデータ515と、標準的な共焦点顕微鏡検査構成を使用して収集された共焦点画像520および関連共焦点データ525との比較の例示的な例を提供しており、ここでは、SIM-ラマン画像510および共焦点画像520の両方が、250nmピッチで分離された縦線および横線の配列を含む基板の同じ視野を有する。
図5の例は、目視検査において、SIM-ラマン画像510は、共焦点画像520よりも優れた解像度を有し、それは、共焦点データ525に対して、データ線505に沿って収集されたデータの優れた強度弁別を示すSIM-ラマンデータ515によってさらに強調されることを明確に示す。
【0036】
図6は、位相マスク200を使用して収集されたSIM-ラマン画像610および関連SIM-ラマンデータ615と、標準的な共焦点顕微鏡検査構成を使用して収集された共焦点画像620および関連共焦点データ625との比較のさらなる例示的な例を提供しており、ここでは、SIM-ラマン画像610および共焦点画像620の両方が、重なり合うカーボンナノチューブの配列を含む基板の同じ視野を有する。やはり、
図6の例も、目視検査において、SIM-ラマン画像610は、共焦点画像620よりも優れた解像度を有し、それは、共焦点データ625に対して、データライン605に沿って収集されたデータの優れた強度弁別を示すSIM-ラマンデータ615によってさらに強調されることを明確に示す(例えば、SIM-ラマン画像610は、2つの別個のカーボンナノチューブを明確に解像しているが、共焦点画像620では、2つ一緒の画像は、ナノチューブの遠位端を除いて、ぼやけている)。
【0037】
様々な実施形態および実装を説明してきたが、上述のものが例示的なものにすぎず、限定ではなく、単なる例として提示されたものであることが当業者に理解されるべきである。説明された実施形態の様々な機能要素間で機能を分配するための多くの他のスキームが可能である。任意の要素の機能は、代替実施形態において様々な方式で実行され得る。
【国際調査報告】